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粒子が超える世界の電離

79 ◆8YCWQhLlF2:2019/08/06(火) 22:42:17 ID:K.L6tQ7I

少女「ここから先はデータ不足で確証はなけど聞く?」

天気アナ「当然」

男「聞こうじゃないか、少女博士君」

少女「」キッ

男「冗談だよ」

少女「EECRって知ってる?」

男「知るわけないだろ、お前と一緒にすんな」

店主「大丈夫、僕も詳しく知らないから。 簡単に言うと高いエネルギーを持った宇宙線のことだね」

男「高いって?」

少女「エネルギーで換算すると発電所が不要になる位の量」

男「よろしければ捕まえ方を教えて頂けないでしょうか。 あと買取先も」

店主「小さな粒子だからね。 検出器で捕らえるのがやっとってレベルなんだよ」

80 ◆8YCWQhLlF2:2019/08/06(火) 22:43:21 ID:K.L6tQ7I

少女「そのEECRがこの日、大量に地球に到達しているわ」

天気アナ「7500万光年先の天体から?」

男「そんな遠くから地球になんか届くのか?」

店主「各地に設置してある測定施設のデータを確認したから間違いないよ」

天気アナ「・・・もしかしてη星のジェット放射?」

少女「さすがお天気お姉さん、良いところに気付いたわね」

男「?」

店主「η星は特殊な天体でね。 定期的に爆発的な放射線をジェット放出しているんだ」

天気アナ「でも宇宙空間で散乱して地球までは届かないって聞いたわ」

店主「そう。 通常の荷電粒子ならね」

少女「重要なのはそれを掻い潜って大量に到達したってところ」

天気アナ「?」

81 ◆8YCWQhLlF2:2019/08/06(火) 22:44:46 ID:K.L6tQ7I

少女「結論から先に言うわ。 高エネルギーニュートリノよ」

天気アナ「ニュートリノ?」

少女「電子とかと同じ粒子の一つ」

男「そのニュートリノってヤツは遠くからも届くのか?」

店主「小さすぎて他とほとんど衝突することがないから地球まで届くんだ」

少女「ニュートリノを米粒だとすると、他の粒子は地球サイズになる」

男「そんなに!?」

天気アナ「まさか、そのニュートリノが女の子を消したと?」

少女「今言ったでしょ? ニュートリノは小さすぎて他の物質と相互作用しないって」

男「じゃあ関係ないじゃん」

天気アナ「気プセンから放射されたエネルギー体が関係してるって事ね」

店主「今までの仮説を加味すると高エネルギーニュートリノと作用を起こす事の出来る何か」

天気アナ「あなたたちは知っているのね? その正体を」

少女「知ってるわ。 でもお話しできるのはここまで」

82 ◆8YCWQhLlF2:2019/08/06(火) 22:45:50 ID:K.L6tQ7I

男「少女はいつも良いところで勿体ぶるよな」

少女「そうじゃない。 これ以上はバックボーンがないと聞いても混乱するだけ」

天気アナ「・・・・・・」

男「でも、なんで気プセンがそんな事を? ただの気象予測施設だろ」

天気アナ「・・・・・・。 Z財団」

少女「一応忠告します。 これ以上は命に関わりますよ?」

店主「そうだね。 流石にお天気お姉さんの身を危険に晒す訳にはいかないね」

男「命・・・」ゴクリ

天気アナ「あなた達、何を調べているの? 一体何者?」

少女「調べたんじゃないんですか?」

天気アナ「・・・調べたわ。 だから聞いてるの」

少女「随分と面白い返しですね」

天気アナ「・・・・・・」

83 ◆8YCWQhLlF2:2019/08/06(火) 22:46:57 ID:K.L6tQ7I

天気アナ「もう一つ見てもらいたい映像があるの」

パッ

店主「これは・・・」

天気アナ「5年前、匿名で局に届いた映像なんだけど」

店主「まさか、ヴォイニッチ実験!?」

天気アナ「え? ヴォイニッ―――」

少女「」バタリ

男「少女?」

天気アナ「ちょ、どうしたの!?」

男「おい、大丈夫か? 少女」

天気アナ「救急車呼んだ方が良いかしら」

店主「いや、隣の部屋に布団が敷いてあるから僕が―――」

男「俺、運びます」ヨイショ

店主「あぁ、すまないね。 廊下を出て右隣が少女の部屋だよ」

男「分かりました」スタスタ

84 ◆8YCWQhLlF2:2019/08/06(火) 22:47:56 ID:K.L6tQ7I

天気アナ「どうしたのかしら」

店主「・・・・・・」

天気アナ「でも丁度良いかな」

店主「?」

天気アナ「店主さんに聞きたいことがあるんです」

店主「僕に?」

天気アナ「2人の情報がある時期より前が全く分からない件について」

店主「・・・ねるほどね」

天気アナ「私はこれでも報道上がりのジャーナリスト。 狙ったスクープは逃さない」

店主「それは良い精神だね」

天気アナ「5年前の件、教えてくれますか?」

店主「悠長にしている時間もなくなってきたようだね」

85 ◆8YCWQhLlF2:2019/08/11(日) 03:35:13 ID:8NCY1q8I

○ 30分後/少女の部屋

男(こいつの部屋、見事なまでに何も無いな)キョロキョロ

少女「・・・ん」ボー

男「おっ、お目覚めですか姫」

少女「ここは・・・」キョロキョロ

男「ビックリするから倒れるなら事前に打ち合わせしといてくれよ」

少女「倒れ・・・」

男「呪いのビデオを見てる途中で」

少女「ビデオ・・・・・・!!」ブルブル

男「おい大丈夫か? 悪い・・・ 変なこと言った」

少女「ご、ごめんなさい。 大丈夫よ」

男「もう少し寝てろ。 絵本でも読んでやろうか?」

86 ◆8YCWQhLlF2:2019/08/11(日) 03:35:54 ID:8NCY1q8I

少女「店主は?」

男「隣の部屋。 天気アナさんと何か話してるっぽいけど」

少女「・・・・・・」

男「なぁ、さっきの映像って何なんだ? 人が消えるとか意味分かんないんだけど」

少女「次元電離よ」

男「相変わらず説明する気ゼロですか・・・」

少女「ここを出るわよ」スッ

男「はあ? 出るってどこへ?」

87 ◆8YCWQhLlF2:2019/08/11(日) 03:36:35 ID:8NCY1q8I

○ 居間

バンッ

天気アナ・店主「!?」ビクッ

少女「出かけるわ」

店主「まだ休んでいた方が良いんじゃないかい?」

天気アナ「そ、そうよ・・・ 顔色も良くないし」

少女「じゃ私と男だけでここを出る」

店主「どこへ行くんだい?」

少女「・・・・・・」

店主「分かったよ。 出かける準備をしよう」

88 ◆8YCWQhLlF2:2019/08/11(日) 03:37:23 ID:8NCY1q8I

少女「それと店主、エレベータの仕掛けを遠隔にして」

店主「・・・・・・」

少女「一旦存在を攪乱させたい」

店主「それを僕に言っちゃうの?」

少女「お願い、協力してほしい」

店主「・・・分かった、脱出セットを持っていこう」ハァ

少女「お天気アナさん、迷惑でなければ車で送ってくれませんか?」

天気アナ「え!? か、構わないけど」

店主「ここ居心地良かったんだけどなぁ」

89 ◆8YCWQhLlF2:2019/08/11(日) 03:38:08 ID:8NCY1q8I

● 車内

ブーン

天気アナ「どこに行けば良いの?」

少女「男の家」

男「うち!?」

少女「写真の件もあるし、それに帰る家もないし」

男「家? あのボロショップにはもう帰らないのか?」

少女「店主、お願い」

店主「はいよ、さよなら僕のコレクション達」ポチッ

90 ◆8YCWQhLlF2:2019/08/11(日) 03:38:43 ID:8NCY1q8I

ボーン

男「え? 何、今の音」

店主「何かが爆発した音だね」

少女「そうね、家が爆発した音に似てるわ」

天気アナ「ちょっと、後ろの方で煙りが上がってるのってあなた達の家じゃない?」

男「おいおい洒落になんねーよ」

少女「本当にエレベータの仕掛けが役に立つとは思わなかったわ」

男「ちょっと待てよ。あれ木っ端微塵だろ」

店主「結構な爆薬仕込んだからね」

少女「これで帰る場所がなくなったわ」

男「自分で破壊しておいて何言ってんだよ・・・」

天気アナ「・・・・・・」

ブーン

91 ◆8YCWQhLlF2:2019/08/11(日) 03:39:25 ID:8NCY1q8I

● 男の家

キキッ

天気アナ「ここで良いのかしら?」

男「はい、ありがとうございます」

天気アナ「」チラッ

店主「・・・・・・」

天気アナ「私はこの後、本番があるから。 近いうちまた」

男「テレビ絶対見ますから!」

ブーン

92 ◆8YCWQhLlF2:2019/08/11(日) 03:40:07 ID:8NCY1q8I

男「さて、それじゃ家に行きますか」

店主「随分と変わった神社だね」

少女「池の上にある変な建物が自宅?」

男「アホか、本殿だよ。 地下に水源があるらしくて下が池になってんだ」

店主「独特な造りだね」

男「本殿だけ後から作り直したんで。 それ以外は結構古いらしいです」

少女「このアンバランス加減、良い趣味ね」

男「周りの評判は結構悪いんですが・・・」

店主「少女は少しセンスが変わってるからね。 私服を見たら絶対笑―――」

少女「セイ!」ボコッ

店主「うっ゛」ゴロッ

男「・・・・・・。 い、今のもツボというヤツでしょうか?」

少女「イラッとしたから全力で殴っただけよ」

男「・・・家はこの裏ですのでご案内します、姫」

少女「ありがと」

93 ◆8YCWQhLlF2:2019/08/11(日) 03:40:46 ID:8NCY1q8I

○ 男の家/居間

男「で、少女達はどうするの?」

少女「どうって?」

男「いや、家爆発しただろ」

少女「店主、次の家は?」

店主「ないね」

少女「だって。 しばらくお世話になるわ」

男「ちょっと何を言ってるのか分かんないですね」

少女「じゃこの家を私達に売って」

男「アホか。 俺はどうすんだよ」

少女「1日2万で泊めてあげる」

男「高けーよ! だったら俺が金もらって泊めるわ」

94 ◆8YCWQhLlF2:2019/08/11(日) 03:41:29 ID:8NCY1q8I

少女「交渉成立。 店主、1泊2万でいいって」

店主「分かった」

男「お前・・・ そういうテクニックどこで覚えてくるの?」

少女「あんたの好きな占い通りにもなっていいじゃない」

男「はあ?」

少女「夜になったら一緒に星を見てあげるから」

男「ねぇ、話聞いてた? “麗しき美女と星空の下で語らう”だぞ?」

少女「感謝しなさい。 超弦理論の欠点をたっぷり語ってあげる」

男「・・・・・・。 1泊5万な」

少女「構わないわよ、こう見えてお金は結構あるの」

店主「安心して良いよ。 お金を出すのは僕だけどね」

男「嘘です、お金はいいですよ。 その代わり〜」

少女「?」

95 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/03(火) 02:59:12 ID:xSoKrPaw

○ 神礼所

少女「何で私がこんな事しなくちゃいけないわけ?」

男「神社に巫女さんが居るのが俺の夢だったんだよ」

少女「私は科学者、客が来ても非科学的な説明なんかしないわよ」

男「こんな寂れた田舎の神社に人が来ると思うなよ」

少女「・・・・・・。 それ、私が居る必要ないんじゃない?」

男「だから言っただろ。 少女は俺の夢を叶えるためにココにいるんだ」

少女「あのね、私はそんな暇じゃないの」

男「少女の仕事はただ一つ。 俺の前で巫女姿を見せる、それだけだ」

少女「何よそれ。 ただ巫女が見たいだけじゃない」

男「さっきからそう言ってるだろ。 人の話聞いてた?」

少女「はいはい、分かったわよ・・・ 居候の身分ですからその位は我慢してあげる」

男「じゃ、よろしく〜」

少女「ハァ〜・・・」

96 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/03(火) 03:00:16 ID:xSoKrPaw

○ 居間

店主「男君、ちょっとテレビ借りても良いかな」

男「どうぞ、ほとんど見ませんし」

店主「助かるよ」ガチャガチャ

男「パソコン繋げるんですか? パソコンモニターなら余ってるのありますよ」

店主「男君は時間ある? 一緒に遊ばないかい」

男「構いませんけど。 ゲームですか?」

店主「コレなんかどうかな」ポチッ

男「ヴォ、ヴォイニッチ!!」

店主「念のためバックアップを持ってきておいたんだ」

男「店主さんマジ天使ゅ! 地獄の果てまでお供します」

店主「嬉しいね。 少女はあまり乗り気じゃなかったし」

男「俺はひと味違いますよ?」

店主「それじゃ、やりますか」ポチッ

97 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/03(火) 03:01:04 ID:xSoKrPaw

○ 1時間後/神礼所

少女「ハァ〜・・・ 本当に誰も来ないなんて、この神社の経営はどうなってんの?」

チュンチュン

少女「良い天気・・・」ボー

???「学業祈願のお守りもらえるかしら」

少女「えっ? あっ、はい」ゴソゴソ

???「お金は後で男が払うわ」

少女「え?」

???「あら、あなた・・・ その瞳の色」

少女「・・・・・・」

男「お〜 姉貴帰ってきたんだ」テクテク

???「え? あっ、ただいま」

少女「姉貴?」

98 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/03(火) 03:01:57 ID:xSoKrPaw

○ 居間

姉「ビックリしたわよ。 家に着いたら神礼所に知らない巫女が居るんだもん」

男「少女はしばらくうちに泊まることになってるから」

姉「奥手のアンタが女の子を連れ込みですか〜」

少女「男さんには異性として1ミリも興味ありませんのでご安心下さい」

男「もう少しオブラートに包めよ」

店主「おまけで僕も付いていますけどね」

姉「イケメンさんですね。 少女ちゃんとはどういうご関係で?」

店主「一応は保護者役といいますか」

少女「腐れ縁の赤の他人です。 敵として扱ってもらって構いません」

姉「あら、それは女の敵って言う意味?」

少女「良いですね、その意味も追加で結構です」

店主「・・・・・・」

男「店主さん可哀想・・・」

99 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/03(火) 03:02:36 ID:xSoKrPaw

姉「そうだ、お土産買ってきたから皆で食べようよ」ゴソゴソ

パラ パラッ

男「姉貴、なんか紙落ちたぞ」

店主「拾いますよ。 少女、そっちの頼む」

姉「あ〜 ゴメンね」

少女「これ・・・ お姉さんはどこかの教育機関か研究所にお勤めで?」

姉「あら、なんで分かったの? 私ってもしかしなくても有名人?」

少女「私は存じ上げませんが、これ論文ですよね。 宇宙物理でしょうか?」

男「姉貴は研究都市にある何とかっていう所に勤めてるんだよ」

姉「高エネルギー粒子研究所。 最先端の研究所よ! 凄いでしょ」ドヤッ

100 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/03(火) 03:03:15 ID:xSoKrPaw

店主「そういえば、前に一度行ったことあるよね」

姉「あら、見学に来たことがあるの?」

男「少女は、こう見えて博士なんだってよ。 海外にあるなんとかって所の」

少女「Z財団粒子物理学研究機構」

姉「・・・・・・。 に、お務めの博士の娘さん?」

少女「私が博士です」

姉「面白い子ね。 ユーモアセンスがある人ってお姉さんは好きよ」

少女「嘘じゃないです。 一応専門は粒子物理です」

姉「・・・・・・」

101 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/03(火) 03:04:02 ID:xSoKrPaw

少女「それよりこの論文、着眼点が面白いですね」ペラッ

姉「あ、ありがとうございます・・・」

少女「CvBとCMBの関連性に関するシナリオ、とても興味深いテーマです」

姉「もしかして、私も財団の粒子物理学研究機構で通用しますでしょうか」

少女「私はこの分野の専門ではないので何とも。 でもよく出来ていると思います」

姉「気になる点などあればご教授を!」

少女「そうですね・・・ 強いていうなら変換式が煩雑で精度が落ちている点でしょうか」

姉「でも一般的にはその式を使うしか・・・」

少女「第2項から先が気になります。 こうしてみたらどうでしょう」カキカキ

姉「・・・・・・」

少女「だいぶ短縮できましたがイマイチですね、すいません偉そうな事言っておいて」

姉「いえ、あの・・・ この式って見たことないんですが・・・」

少女「あっ、神礼所開けっ放しだ。 戻らないと」タッタッタッ

姉「・・・・・・」ポケー

102 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/03(火) 03:04:35 ID:xSoKrPaw

男「姉貴?」

姉「ねぇ、彼女何者?」

男「さっき言ったろ」

姉「そうじゃなくて。 こんなの発表したら学会がザワつくくらい凄いんですけど」

店主「少女が手を入れた論文は大抵業界内がザワつくからね」

姉「う〜ん・・・ でも、わたし彼女の名前の論文を見たことないと思う」

店主「何というか・・・ 別の形では出てはいるんだけど、表舞台が嫌いみたいで」

姉「それって、もしかして上司の名前で発表してるとか?」

店主「でも成果が話題になると、ドヤ顔で研究所内を歩き回っていたけどね」

姉「なんて健気な」キュン

男「健気か? かなりウザくて嫌な性格だろ」

103 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/03(火) 03:05:10 ID:xSoKrPaw

姉「私、少女ちゃんともっとお話ししたい!」

男「止めとけって。 ああ見えて少女は人をイラッとさせる天才でもあるから」

姉「男! 私の巫女服を用意して!」

男「は? 姉貴が巫女してるところなんか見たことないんだけど」

姉「私は少女ちゃん・・・ いえ、少女博士の助手としてもっとお近づきになりたいの!」

男「巫女関係ないだろ」

姉「これだからあんたはバカなのよ。 部下は上司の後ろ姿を追いかけていくの」

男「頭大丈夫か?」

姉「少女博士〜 私もお守り売りお手伝いいたします〜」タッタッタッ

男「すいません店主さん。 少女に有害なゴミが付いちゃいました」

店主「まぁ良いんじゃない? 話が合う相手がいた方が退屈しないだろうし」

男「合うのかなぁ・・・」

104以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/28(土) 20:03:34 ID:ykGVyMo.
いい

超期待
待ってる

105 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/30(月) 04:31:46 ID:zQrP0nyk

○ 神礼所

姉「♪〜」

少女「・・・・・・。 あの」

姉「何ですか博士」

少女「博士は止めて下さい。 お姉さんの方が年上なんですから少女で良いです」

姉「お姉さん!? 何て良い響き」モジモジ

少女「・・・・・・」

姉「でも私達は上司と部下の関係。 一線を越えてはいけないわ」

少女「私、お姉さんの部下になったつもりはないんですが」

姉「何言ってるの? 私が部下よ」

少女「・・・・・・」

106 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/30(月) 04:32:52 ID:zQrP0nyk

姉「そうだ! 博士には特別に神社のご神体見せてあげる」

少女「ご神体?」

姉「きっと興味持つと思うわよ? 私の代からの門外不出なんだから」

少女「随分最近なんですね・・・ でも、私あまりそういうのは」

姉「え〜 この私がド直球で興味持った位なのになぁ〜」

少女「すみません。 今の言葉で余計興味がなくなりました」

姉「残念。 じゃあ話を変えて、少女ちゃんはどうしてうちに?」

少女「私は・・・・・・。 あっ!!」

姉「?」

107 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/30(月) 04:34:27 ID:zQrP0nyk

少女「忘れてた!!」ジタバタ

姉「ちょ、少女ちゃんどうしたの!?」

少女「すいません、ちょっと戻ります」タッタッタッ

姉「私も行くー!」

少女「お釣り用のお金があるんですから! そこでお守り売ってて下さい!」タッタッタッ

姉「ここ数年参拝者の来ない神礼所に1人残すなんて何という拷問!」



姉「・・・・・・」ハァ

姉「頑張ってきたんだけどなぁ・・・ 私、どうすれば良いのかな・・・」ボソッ

108 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/30(月) 04:35:15 ID:zQrP0nyk

○ 居間

少女「店主!」ズカズカ

店主「どうしたんだい? 少女もヴォイニッチ手伝ってくれるのかい?」

少女「男は?」キョロキョロ

店主「部屋で休憩だね。 それより、今かなり良い線まで進んでるんだけど」

少女「そんなの後よ!」

店主「でも、ここをクリアすれば次のコードキーが」

少女「どうでも良い! アンタもついてきなさい!」

店主「?」

109 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/30(月) 04:36:01 ID:zQrP0nyk

○ 男の部屋

バンッ

男「うおっ! ビックリした。 急にドア開けるなって」

少女「ビックリしたのは私の方よ!」

男「何だよ急に。 あっ!」

少女「思い出したようね」

男「いや、激おこな巫女さんの仁王立ちっていう構図がなんか良いなって」

店主「その気持ち分かるかも。 僕もそっち側から見ても良いかな?」

少女「あんた達の片足をマイクロブラックホールに突っ込むわよ」

男「だから何なんだよ、その意味不明な恐ろしい表現は・・・」

110 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/30(月) 04:36:39 ID:zQrP0nyk

少女「写真!」

男「あ〜 撮っていいの? じゃぁそのままで」カシャ

少女「違う! 私はお守りを売るためにここに来たんじゃないの!」

男「家を爆発させたからだろ?」

少女「それは一理あるけど・・・ 写真を見るために来たの!」

男「あ〜 廃研究所の写真か」

店主「忘れてたね」

男「もうこの平和なスタイルで物語を紡いでいった方が良くない?」

少女「紡がないし平和じゃない!」

111 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/30(月) 04:37:34 ID:zQrP0nyk

○ 30分後

男「あれ? ここら辺に仕舞った気がするんだけどなぁ」ゴソゴソ

少女「ねぇ、まだ見つからないの?」

男「結構前だし、こっちの箱の中かなぁ?」

少女「それにしても、アンタの部屋マンガと雑誌しかないじゃない」ゴソゴソ

男「おい、本棚漁るなよ」

少女「下の方に薄い本が沢山あるわね」

男「取説とかマニュアルだよ。 言い方気をつけろよ」

店主「男君だって年頃だし、ね」

少女「何を言ってるのか意味が分からないわ。 私は論文かと思っただけよ」

男「そんなもんあるわけないだろ。 って、お〜 見つけた」

少女「本当!? 早く見せて頂戴」タッタッ

112 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/30(月) 04:38:24 ID:zQrP0nyk

男「待てって。 え〜と・・・ あった! これだ」

少女「どれ!」グイッ

男「ちょ、そんなにくっ付いてくるなよ・・・」

少女「これは・・・」

男(少女の頭が目の前に!?)ゴクリ

店主「どうだい?」

少女「間違いない」

店主「この形状はシステム3だね。 やっぱりあの施設にあったんだ」

少女「でかしたわ男。 あなたの評価を10段階上げて―――・・・」

男(少女の髪、良い匂い・・・)クンクン

113 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/30(月) 04:39:08 ID:zQrP0nyk

店主「男君? 楽しんでるところ悪いんだけど、目を開けて」

男「え?」パチッ

少女「」ジー

男「・・・・・・。 少女さんの瞳、とても綺麗です・・・」

少女「ありがと。 あなたもね」ニコッ

ボフッ!

男「」ゴロッ

店主「うわ〜 今のは痛そうだね・・・ ちなみに、今のもツボってやつ?」

少女「ただの全力の腹パンよ」

114 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/30(月) 04:40:12 ID:zQrP0nyk

● MHKテレビ

記者「そんな・・・ 冗談ですよね?」

天気アナ「私も同じ意見だった、これを見るまでは」スッ

記者「ビデオ?」

天気アナ「再生するわね」

パッ

記者「これは!」

天気アナ「5年前に局に送られてきた映像のマスターよ」

記者「マスター!? どこからこんな物を・・・」

天気アナ「これに関わった人物。 映像に加工がされていない事は確認した」

記者「・・・・・・」

天気アナ「少し飛ばすわね」カチャカチャ

115 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/30(月) 04:41:07 ID:zQrP0nyk

パッ

記者「僕の持ってる映像はこの辺で終わっていましたが」

天気アナ「そうね。 この後、カメラがぶれて・・・」

記者「えっ・・・? ちょ、待って下さい。 何ですかこれ!?」

天気アナ「見た通りよ」

記者「そんな・・・」ゴクリ

天気アナ「この映像は5年前行われたZ財団の極秘実験のものらしいわ」

記者「Z財団・・・ やっぱり・・・」

天気アナ「前に調べてもらって過去が追えない人物がいたの覚えてる?」

記者「はい、確か2人」

天気アナ「なんとかして調べられないかしら、特にこの子」ペラッ

記者「この子は・・・」

116 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/30(月) 04:41:53 ID:zQrP0nyk

天気アナ「できるだけ古い情報、どんな事でも構わない」

記者「分かりました。 一つツテがあります」

天気アナ「たぶん、全てはこの子から始まっている」

記者「この子に何か秘密が?」

天気アナ「世界がひっくり返るスクープかも」

記者「明日まで時間下さい。 絶対に情報を持ってきます」タッタッタッ


天気アナ(あの子・・・ どうする気なのかしら・・・)

117 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/30(月) 04:42:38 ID:zQrP0nyk

● 夜/境内

少女「・・・・・・」ボー

男「夜の境内で月明かりを浴び黄昏れる巫女。 絵になるね〜」

少女「」チラッ

男「1日中着るほど巫女服が気に入ったか。 分かるよその気持ち」

少女「他に着る物がないだけよ」

男「あ〜・・・ 姉貴のお下がりで良ければ後でもらっておくけど」

少女「ここは夜空が綺麗ね」

男「それしか取り柄がない村だしな。 その代わり他には何も無い」

少女「こんなに星を見たのは初めてかも」

118 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/30(月) 04:43:28 ID:zQrP0nyk

男「・・・もしかして、このシチュは今日のおみくじの回収?」

少女「だったら、超弦理論の欠点についてでも語る?」

男「遠慮しとく」

少女「そう、残念」

男「・・・・・・。 なぁ、少女は世界最高レベルの研究所にいたんだろ?」

少女「そうね」

男「せめて謙遜位はしろよ・・・」

少女「失礼、そこそこのレベルの研究所いた最高レベルの科学者。 これで良い?」

男「そっちかよ・・・ しかも財団の研究所をそこそこって」

少女「本当のことなんだし、自分を否定する言い方は好きじゃないの」

119 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/30(月) 04:44:11 ID:zQrP0nyk

男「その最高レベルの科学者さまがここに来たのは出張とか?」

少女「・・・・・・。 抜け出してきた」

男「え?」

少女「研究所はZ財団の持ち物。 私がやっていることを正当化するはずない」

男「なるほどな。 目的はよく分からんが、財団に楯突いてるのだけは分かる」

少女「あそこしか私のいる場所がなかった」

男「それは頭脳的な意味でか?」

少女「そのままの意味よ」

男「?」

120 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/30(月) 04:45:11 ID:zQrP0nyk

少女「あなたは、今の生活が好き?」

男「何の脈略もない質問だな」

少女「急に新しい環境で生活しろって言われたら、あなたどうする?」

男「違う環境って海外とかそういう事か? まぁ少女からしたらここは外国だしな」

少女「・・・・・・」


姉「私なら天才的知識をひけらかして、どこへ行っても無双できるわ」


少女・男「?」クルッ

姉「でも、実際には難しい問題よね」フム

121 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/30(月) 04:45:54 ID:zQrP0nyk

少女「お姉さん!?」

男「姉貴、なんで夜に神礼所なんかいるんだよ。 怖えーよ」

姉「私は博士の言いつけ通りこの場所を守っているだけよ?」

少女「まさか、ずっとここに!?」

姉「この放置プレイが終わったら博士と一緒にお風呂に入る約束をしているから」

少女「してません。 あと博士は止めて下さい」

姉「この場合“違う環境”の定義が重要よね。 外国なのかそれとも・・・」

男「何の話だよ」

姉「アンタその手の小説好きでしょ? 主人公が異世界に飛ばされる話」

男「あ〜 話が続いてたのね。 っていうか異世界ってどっから出てきたんだよ」

122 ◆8YCWQhLlF2:2019/09/30(月) 04:46:48 ID:zQrP0nyk

少女「興味あるわね、その小説の内容」

男「まぁ大抵は元の世界の知識を使って無双するな」

姉「あら、私と同じ思考ね。 その作者よく分かってる」

少女「元の世界には帰ろうとしないの?」

男「そっちのほうが盛り上がるだろ。 異世界の方が刺激が強いしな」

少女「刺激、か」

姉「少女ちゃんならどうする?」

少女「・・・・・・。 私は・・・」

姉「難しいわよね。 と、いうことで夜を徹して学者同士二人で議論しましょう」

男「その話題は学問じゃないだろ・・・」

少女「・・・・・・」

123 ◆8YCWQhLlF2:2020/04/29(水) 05:11:52 ID:4hSEygD6

○ 居間


男「うわ〜 あと少しだったんだけどなぁ〜」

店主「残念。 次は僕が挑戦してみるよ」

男「やっぱりここまで来ると難易度高いですよね」

店主「ヴォイニッチ暗号の深層まで来ているからね」

男「店主さんぶっ続けでやって疲れないんですか?」

店主「休みたいとか言ってられる状況でもなくてね」

男「ふ〜ん。 何か理由が?」

店主「・・・・・・。 まぁ何というか、作った本人が解けないのも癪じゃない?」

男「“代理人”がいればだいぶ楽なんですけどね」

店主「代理人?」

男「“時の女神の代理人”ってゲーマー、知りません?」

124 ◆8YCWQhLlF2:2020/04/29(水) 05:12:44 ID:4hSEygD6

店主「そんなIDの人いたっけ? 上位の人なら僕も聞き覚えあると思うんだけど」

男「コード解析専門なんで、プレイは他人任せだったみたいですし」

店主「それはハッカーと言う事かな?」

男「簡単に言うとそうですね」

店主「でも、ゲーム部分と暗号部は異なるからハッキングしてもクリアできないと思うんだけど」

男「難攻不落のマップ28って覚えてます?」

店主「あったね〜。 まさかあんな方法でクリアできるとは思わなかったよ」

男「あのマップの攻略法を編み出したのが、代理人なんです」

店主「・・・・・・。 男君は、その人と知り合いなの?」

男「何度か闇チャットでやり取りしたくらいですけど。 当時は学生だって言ってましたね」

125 ◆8YCWQhLlF2:2020/04/29(水) 05:13:18 ID:4hSEygD6

店主「ちょっとそのログ覗かせてもらおうかな」カチャカチャ

男「そんな事出来るんですか?」

店主「あそこのサーバーはセキュリティーに欠陥があるからね」


パッ


店主「侵入完了」

男「店主さん・・・ それ犯罪」


店主「あった、これだね」

男「お願いですから変なログは見ないで下さいね・・・」

126 ◆8YCWQhLlF2:2020/04/29(水) 05:13:59 ID:4hSEygD6

店主「ん〜 確かに・・・ 少し荒いけどこのコードは凄いね」

男「代理人がいなかったら進めなかったマップは数知れずですよ」

店主「これ・・・ 深層プログラムを直接いじってる・・・」ボソッ


男「んじゃ、切りが良いんで俺そろそろ寝ます」

店主「ん? あぁ、遅くまで付き合わせてすまなかったね」

男「気にしないで下さい、好きで付き合ってるんですから」

店主「じゃ、お休み」

男「また明日手伝いま〜す」スタスタ


店主「・・・・・・」

127 ◆8YCWQhLlF2:2020/04/29(水) 05:14:49 ID:4hSEygD6

店主「時の女神の代理人、か・・・」スッ


ピポパ
prrr prrr


店主「遅くにすまないね。 人探しのお願いがあるんだけど良いかな?」

店主「あぁ、情報提供の見返りって事で。 なんなら、これから起こるスクープも提供するよ」



――― 廊下

少女「・・・・・・」コソッ

128 ◆8YCWQhLlF2:2020/04/29(水) 05:15:29 ID:4hSEygD6

○ 翌日・朝/神礼所


少女「フワァ〜〜」ムニャムニャ

男「よっ、大きなあくびですなぁ〜」ニヤニヤ

少女「!?」ビクッ

男「少女も大口開いてあくびとかするんだな」

少女「他の人に言ったらマイクロ波を連続照射するから」

男「だから・・・ もう良いや」ハァ

少女「・・・・・・」ジー

男「何だよ・・・」

少女「それはこっちの台詞。 何か用?」

男「今日のおみくじを引きに」

少女「おみくじ?」

129 ◆8YCWQhLlF2:2020/04/29(水) 05:15:59 ID:4hSEygD6

男「俺の日課、知ってるだろ?」

少女「あれって自分の神社のヤツなの!?」

男「そうだよ。 ほら、巫女さんらしく対応して」

少女「ハァ・・・ この機械のレバーを引けば良いの?」

男「お前が引いたら意味ないだろ。 おみくじするヤツが引くんだよ」

少女「そうですか。じゃ、サッサと引いて私の視界から消えて下さい」

男「イラッとする巫女だなぁ」ガチャン


ストン


男「さてと、今日の運勢は〜」

130 ◆8YCWQhLlF2:2020/04/29(水) 05:17:45 ID:4hSEygD6

少女「そんな物で一日の行動を縛るなんて滑稽ね」

男「うるせー。 ってか何これ・・」

少女「?」

男「・・・・・・。 枝に縛って厄払いするか」

少女「ちょっと待ちなさい」

男「何だよ。 見せねーぞ」

少女「お金」

男「はあ?」

少女「おみくじの代金、ちゃんと払って行きなさい」

男「・・・・・・」

131 ◆8YCWQhLlF2:2020/04/29(水) 05:18:32 ID:4hSEygD6

店主「おや、朝早くからご苦労さんだね」スタスタ

男「店主さんもやりません? このおみくじ当たるんですよ。 最近少し調子悪いですけど」

店主「へ〜 少女はどうだった?」

少女「私がこんなものやるわけないでしょ」

店主「物は試し。 折角だしやってみたら?」

男「そうだよ、少女も日頃の行ないを神様に正してもらえ」

少女「ハァ〜・・・」ガチャン

ストン

少女「・・・・・・。 何よコレ」

男「“リードエラー” 斬新な結果だな・・・ 初めて見た」

132 ◆8YCWQhLlF2:2020/04/29(水) 05:19:27 ID:4hSEygD6

店主「僕も引いてみようかな」ガチャン

ストン

男「どうです?」

店主「“善は急げ、気になることは最優先で取り組む事”だって」

少女「気に入らないわね」ガチャン

ストン

少女「・・・・・・」

男「うわ、また“リードエラー”って。 神は少女を見捨てたり」

少女「データベース不良を起こすような機械に頼る神はこちらから願い下げよ」

店主「・・・・・・。 この機械ちょっと見せてもらっても良い?」

男「どうぞ、中には少女嫌いの小さい神様がいるかも知れないですけど」

少女「面白いわね、出てきたら徹底的に調べましょう。 家に麻酔はある?」

男「だから表現!」

133 ◆8YCWQhLlF2:2020/04/29(水) 05:20:03 ID:4hSEygD6

店主「フフッ」ニコッ

少女「何がおかしいの?」イラッ

店主「いいや別に。 それより、このおみくじ機械は昔からこの神社にあるのかい?」

男「そうですね、結構前から。 いつからあるんだろう」

少女「店主、ココ見て。 名盤に書かれた製造元」

店主「どれどれ・・・ 榊総研!?」

男「さかきそうけん?」

少女「溶接で閉められていて中は見られそうにないわね」

店主「下の方にコンソール用のポートがあるね。 ノーパソ持ってくるよ」スタスタ

男「榊総研って何?」

少女「Z財団の前身よ。 正確に言えば吸収されたんだけど」

男「え? 財団っておみくじの機械まで作ってたの?」

少女「・・・・・・」

134以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/29(水) 07:33:19 ID:YQCBIqEc
待ってた

135 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/02(土) 02:02:00 ID:H7JdC4ZM

○ 数分後


店主「お待たせ、ちょっとパソコンと繋げてみようか」カチャカチャ

少女「どう?」

店主「う〜ん・・・ 何というか衝撃だね」

男「何かマズいことでも?」

店主「このおみくじ機械はオルビスに繋がってる」

少女「!?」

男「オルビスって、人工知能のオルビス?」

少女「まさか・・・ 財団にバレて」

店主「大丈夫。 通信がシステム3のパターンで暗号化されてるから財団は追えないよ」

少女「ちょっと待って。 システム3が駆動しているの!?」

店主「ん〜 動いている気配はないね・・・」

少女「・・・言ってる意味が分からないんだけど」

店主「そうだね、僕も自分で何を言っているのか分からないよ」

136 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/02(土) 02:03:21 ID:H7JdC4ZM

少女「仮説は?」

店主「そうだねぇ・・・ 間違いなく言えることはシステム3の電源は落ちている」

少女「なのにシステム3のパターンが検出されるという事は・・・」

店主「システム3用の量子ユニットが微弱ながら生きてるって事だね」

少女「おみくじ機械がシステム3の代わりになっている」

店主「そう考えるのがしっくりくるね」

少女「ユニットの場所を追える?」

店主「さすがに無理かな。 信号が微弱すぎて経路情報が分からない」

少女「分かっていたら財団が先に手を出すはずか」

男「もしかしてオルビス絡みの何かがうちの神社にあるって言ってる?」

少女「言ってるわ」

137 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/02(土) 02:04:16 ID:H7JdC4ZM

男「気プセンにあるヤツじゃないのか? ここからも近いし」

少女「システム3の本体は行方不明よ」

男「は?」

店主「実は無くなっちゃったんだ」

男「そんな落とし物みたいに言われても・・・」

店主「以前は“ハゲ山”近くの廃研究所に設置してあったようだけどね」

少女「アンタが昔に忍び込んで撮った写真に写っていたのがシステム3よ」

男「あの紫色の玉が?」

店主「球自体は量子ユニットって言ってdeusの転送装置なんだけどね」

少女「3台の人工知能が量子ユニットで繋がって特殊な演算と通信をしているのよ」

男「でも、もぬけの空だったよな。 どこかに移したんじゃないの?」

少女「だからその動かした先が不明って言ってるでしょ」

138 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/02(土) 02:05:19 ID:H7JdC4ZM

男「つまり・・・ 3台が繋がってオルビスなのに、実は2台しかないって事?」

店主「簡単に言うとそうなるね。 まぁ残りの1台らしきものが今見つかったけど」

少女「何でアンタの家の神社にオルビスの痕跡があるの? お願いだから教えて」

男「知らねーよ」

少女「そう言えば、前におみくじは人工知能の結果とか言ってたわね」

男「あ〜 この機械の中にデータが入っていると思ってた・・・」

少女「通りで結果が当たる訳ね。 行動予測をオルビスがやっているんだもの」

店主「少女の結果が出なかったのも納得だね」

少女「・・・・・・」

139 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/02(土) 02:05:59 ID:H7JdC4ZM

男「どういう意味?」

少女「何でもないわ」

店主「あ〜・・・ でも、何でこんなものがここにあるんだろうね」

男「姉貴に聞いてみますか、何か知ってるかも」

店主「そう言えばお姉さんは?」

少女「町に買い物へ行くって朝早くに出て行ったわ」

店主「買い物ならすぐ戻ってくるかもね」

男「繁華街はバスで2時間かかりますから夜まで戻りませんよ」

店主「田舎あるあるだね」ハハハ

140 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/02(土) 02:06:47 ID:H7JdC4ZM

● 翌日・朝/MHKテレビ


天気アナ「随分早かったわね」

記者「情報の鮮度はいくらお金を渡すかで変わりますから」

天気アナ「賄賂?」

記者「このネタにならいくら使おうが痛くありませんよ」

天気アナ「上から報道規制がかかるかも知れない案件よ?」

記者「その時は別の手を考えましょう」

天気アナ「たくましいわね・・・ それで、調査の方は?」

記者「良い収穫がありました。 見て下さい」ペラッ

141 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/02(土) 02:07:23 ID:H7JdC4ZM

天気アナ「この紙は?」

記者「役所の倉庫に保管されていた戸籍謄本の原本です」

天気アナ「戸籍?」

記者「今はオルビスが管理してますが、その前まで役場で管理されていた物です」

天気アナ「でもデータはそのままオルビスに移行されているんでしょ?」

記者「見比べてみて下さい。 こっちがオルビス経由で取得したものです」スッ

天気アナ「特に不審な点はないわね」

記者「そして、こっちが役場に保管されていた原本」

天気アナ「え!? これってどういう事?」

142 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/02(土) 02:08:00 ID:H7JdC4ZM

記者「書き換えられているんです」

天気アナ「・・・・・・」

記者「原本には載っていないのに現在の戸籍には子供が登場しています」

天気アナ「あの人が言ったことに間違いはなかったか・・・」

記者「こんな事が出来るのは財団の人間かオルビスの設計者だけです」

天気アナ「この子の両親は?」

記者「2人とも財団の前身である榊総研の上級研究員だったようです」

天気アナ「榊総研・・・」

記者「しかも、オルビスの開発者である教授と同じ研究チームでした」

143 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/02(土) 02:09:01 ID:H7JdC4ZM

天気アナ「・・・子供として偽装したと言う事ね」

記者「おそらく。 オルビスの戸籍情報を改竄して」

天気アナ「・・・・・・」

記者「もう一つ、昨日夜にお願いされてた尋ね人ですが」

天気アナ「つかめそう?」

記者「それが・・・ 偶然なのかそれとも」

天気アナ「?」

記者「この戸籍謄本の・・・ ここに記載されている人物が“時の女神の代理人”です」

天気アナ「嘘でしょ・・・」

144 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/05(火) 06:51:52 ID:dRZoMmQw

○ 男の家

姉「ただいま〜」

男「お、姉貴帰ってきた」

姉「いやー疲れた。 またバスの本数減ったんじゃない?」

男「町まで何買いに行ってたんだ?」

姉「これよ、はい少女ちゃんにプレゼント」

少女「私に?」

姉「その巫女服だけじゃ流石に、ね」

少女「そのためにわざわざ・・・」

姉「サイズは大丈夫だと思うけど試着してみて」

少女「ありがとうございます。 隣の部屋借りても良いですか?」

姉「どうぞ」

少女「じゃあ着替えてきます」スタスタ

145 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/05(火) 06:52:37 ID:dRZoMmQw

店主「なんかすみません、僕がすべきことなんですが」

姉「気にしないで。 私が好きで買ってきたんだし」

男「姉貴って意外と気が利くのな」

姉「うるさいわよ」


ガチャッ


少女「あの、お姉さん・・・?」ヒョコッ

姉「サイズはどう?」

男「顔だけ出してどうしたんだ? 恥ずかしがってないで出てこいって」

少女「・・・・・・」

店主「どうしたんだい少女」

少女「・・・・・・」テクテク

146 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/05(火) 06:53:17 ID:dRZoMmQw

男「なんだよ巫女服のままじゃん。 着替えてこいよ」

少女「着替えたわ」

男「は?」

姉「サイズは丁度みたいね。 良かった」

男「え? もしかして姉貴・・・」

姉「巫女服の代えがあった方が良いでしょ? 売ってるところ探すの苦労したわ」

一同「・・・・・・」


prrr


店主「あっ、僕だ。 ちょっと失礼するね」スタスタ

少女「・・・・・・」チラッ

147 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/05(火) 06:54:03 ID:dRZoMmQw

男「店主さんに電話なんて珍しいな」

少女「あれも色々と縛りがあるから。 まぁ気にする必要ないわ」

男「ふ〜ん。 あっ、それより姉貴に聞きたい事があるんだけど」

姉「あら、何?」

男「神礼所に置いてあるおみくじの機械の事って何か知ってる?」

姉「・・・あぁ、あれね」

少女「単刀直入に聞きます。 オルビスに繋がっているようですが」

姉「・・・・・・」

少女「その反応、何かご存じなんですね」

姉「今日の夜って少し時間あるかしら、見せたい物があるの」

少女「?」

姉「暗くなったら皆で本殿に行きましょう」

148 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/05(火) 06:54:49 ID:dRZoMmQw


ガチャッ


店主「ごめんね、話の途中で外しちゃって」スタスタ

男「あっ、店主さん。 丁度良かった」

店主「?」

男「今日の夜って時間あります? 皆で本殿に行くんですけど」

店主「本殿?」

姉「とっておきの物を見せてあげる」

店主「・・・・・・」

姉「?」

少女「どうしたの店主」

店主「えっ、あぁ分かった。 夜だね?」

姉「じゃぁ後で。 私は部屋で少しお仕事してくるわね」スタスタ

149 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/05(火) 06:55:44 ID:dRZoMmQw

○姉の部屋


コンコン


姉「は〜い」


ガチャ

店主「お邪魔します。 少し良いかな?」


姉「あら、どうぞ入って」

店主「凄い量の本だね」キョロキョロ

姉「物理学者ですからこの位は当然! 気になる物があればお貸ししますよ?」

店主「さすが物理書ばかりだね。 僕の専門とは少し・・・ おや、この本は珍しいね」

姉「どれどれ?」

150 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/05(火) 06:56:20 ID:dRZoMmQw

店主「『第四深層からのゲーミングプログラム』」

姉「・・・・・・」

店主「難しいみたいで全然売れなかったみたいだけど、理解できた?」

姉「結構手こずったけどね」

店主「これ、名前は変えてあるけど僕の著書なんだ」

姉「・・・・・・」

店主「机の横にあるパソコンも凄いね。 通信ケーブルが研究施設用だ」

姉「話って何かしら?」

店主「相談・・・ というか、お願いがあるんだ」

151 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/05(火) 06:57:05 ID:dRZoMmQw

○夜・本殿前


姉「ごめ〜ん、遅くなっちゃった」テクテク

男「自分から呼びだしておいて遅れるなよ」

姉「ちょっと研究所の方に電話してたから」

男「あれ? 店主さんは?」

少女「お姉さんと一緒じゃなかったんですか?」

姉「あ〜 なんかゲーム大会があるとかで出かけたわよ」

男「ゲーム大会? こんな時間に?」

少女「・・・・・・」

姉「私も詳しく聞いていないからよく分からないけど」

少女「そうですか」

152 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/05(火) 06:57:52 ID:dRZoMmQw

男「店主さんてイマイチ何を考えているか分からないな」

姉「確かに飄々としてるわね」

男「少女は一緒に行かなくても良かったのか?」

少女「何か勘違いしているようだから言っておくけど、店主は私の監視役よ?」

男「はい?」

少女「財団から私を監視するように言われて一緒にいるだけ」

男「ちょっと待って、それって敵っていう事?」

少女「店主を見張りに立てる事が、私が財団の研究所を出る条件だった」

男「え? ちょ・・・ え!?」

少女「さ、早く本殿に行きましょ」スタスタ

男「どういう事!?」

姉「・・・・・・」

153 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/05(火) 22:13:59 ID:dRZoMmQw

○ 神社/参道


テクテク

男「いや〜 店主さんが財団の回し者なんて信じられないんだよなぁ〜」

少女「根は学者だし、色々と便利だったわ」

姉「店主さんの専門って?」

少女「量子情報工学です。 その道ではトップクラスの学者です」

男「そんなに凄いの?」

少女「店主の右に出る専門家はいないと私は思ってる」

姉「通りで・・・」

少女「?」

姉「いえ、何でもない。 私もいつかそんな風に言われたいものだわ」ハァ

154 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/05(火) 22:15:21 ID:dRZoMmQw

少女「失礼ですがお姉さんはどうして学者の道を?」

姉「・・・・・・。 私はどうしても量子物理学者になりたいの。 それもとびきり優秀な」

男「超勉強してたもんな。 でも情報工学にいくと思ってたのに何で物理に変えたんだ?」

姉「そう・・・ あれは5年前、私が学者を志すきっかけが訪れ―――」

男「姉貴、急に自分語りするクセ直した方が良いぞ?」

姉「あら、これは初めて話す私のとっておきなんだけど」

少女「その話、よろしければ聞かせてもらえないでしょうか」

男「え〜 聞くの〜?」

姉「昔ね、この神社で火災があったの」

少女「火災?」

男「あ〜 落雷があって本殿が燃えたんだよ」

姉「その時、本殿の修復費用を全額出してくれた方がいた」

男「へ〜 それは初めて聞いたな」

155 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/05(火) 22:15:57 ID:dRZoMmQw

姉「その人が物理学者だった。 格好いいわよね」フッ

少女・男「・・・・・・」

男「終わりか?」

少女「その学者は同じ研究所の方ですか?」

姉「・・・・・・。 残念だけどお亡くなりになったわ」

少女「そうですか・・・」

姉「5年前の飛行機事故で」

少女「!?」

男「あの事故か・・・」

少女「あ、あの・・・」

姉「?」

156 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/05(火) 22:16:37 ID:dRZoMmQw

少女「そ、それって・・・ もしかしてこの人じゃ・・・」スッ

姉「少女ちゃんて結構古い携帯使ってるのね」

少女「こ、この・・・ 右側にいる・・・」

姉「そう、この人。 この写真少女ちゃんも一緒に写ってるわね」

男「少女は相変わらず無愛想な顔してるな」

姉「おみくじ機械も教授さんが設置していった物よ」

少女「なんで・・・」

男「このおじさん少女の知り合い?」

少女「なんで教授が・・・ ここに・・・」

157 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/05(火) 22:17:13 ID:dRZoMmQw

○ 神社/本殿


ギーッ

男「うはっ、ほこり臭いな」ケホケホ

姉「アンタが普段から掃除しないのが悪いんでしょ」

少女「聞かせて下さい。 教授のこと」

男「先におみくじの件だろ」

姉「まぁ待って。 私が話をするより見てもらった方が早いと思うし」

男「見るって、本殿には何もないだろ」

姉「この辺一帯は昔の鉱山跡だって知ってる?」

少女「はい。 先日男から聞きました」

姉「至る所に坑道があってね、この本殿の下にもあるの」

男「マジで?」

158 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/05(火) 22:17:52 ID:dRZoMmQw

姉「案内するわ。 男、電気付けて」

男「あぁ」パチ

姉「そしたら、そのスイッチの蓋を開いて」

男「蓋? このカバーのことか?」

姉「そう、下の部分を持って上げれば開くわ」

男「こうか?」パカッ


グイーン


男・少女「・・・・・・」

姉「坑道の入り口」

男「こんな仕組みあったのかよ」

姉「教授さんの設計よ」

少女「・・・・・・」

姉「下に行きましょ」スタスタ

159 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/05(火) 22:18:36 ID:dRZoMmQw

○ 坑道内


テクテク

男「すげー・・・ こんなトンネルがうちの地下にあったのかよ・・・」

姉「本殿を建て直す時に、教授さんからある物を預かって欲しいって頼まれたの」

少女「教授から!?」

男「まさか宝!」

姉「私はご神体って呼んでるけど」

少女「見せてもらう事は出来ますでしょうか」

姉「え〜 この前興味ないって言ったのに〜」

少女「うっ・・・ あれは・・・ ごめんなさい」

姉「冗談よ、見てもらうために来たんだから。 でも、条件があるの」

男「勇者にしか抜けない剣的な?」

姉「決められた時間以外はその部屋の扉を開けられない」

少女「どういう事ですか?」

160 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/05(火) 22:19:15 ID:dRZoMmQw

姉「昔、この一体の鉱山は何を採掘してたか知ってる?」

男「鉱山って言ったら石炭だろ」

少女「・・・・・・。 ウラン・・・」

男「ウラン?」

少女「放射性鉱石ですね?」

姉「その根拠を教えてもらえるかしら」

少女「ハゲ山に行きました」

姉「あ〜 なるほど。 あそこ行ったんだ」

少女「参道の石畳は遮蔽のためですよね? 線量計の挙動が変でした」

姉「正解。 今は問題ないけど、あそこは特に質の良い放射性鉱脈だったらしいわ」

男「それが何か関係あるのか?」

姉「この扉の向こうは地下水の影響で数時間おきに放射線の線量が上がるの」

161 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/05(火) 22:19:56 ID:dRZoMmQw

男「ちょ・・・ それってココに住んでるのヤバくない?」

姉「安心なさいな、昔からちゃんと対策は取ってあるから。 本殿下の池も遮蔽の一つよ」

男「でも扉の向こうは危険なんだろ?」

姉「隠し場所にはもってこいだと思わない?」

少女「その扉は、次いつ開けられますか」

姉「ん〜 あと1時間位かな」

少女「ここで待たせてもらっても良いでしょうか」

姉「もちろん」

男「俺も付き合う」

162 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/08(金) 21:50:09 ID:.WD6eC8k

○ 30分後


姉「暇ね」

男「なんか持ってくれば良かったな」

姉「男、面白い話をして」

男「無茶言うなよ」

姉「少女ちゃんは話すことない?」

少女「・・・・・・」

姉「じゃぁ、私がとっておきのネタを。 あれは私が高校生―――」

少女「15年前、教授率いる研究グループが未知の粒子を発見しました」

男「少女?」

少女「・・・・・・」

163 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/08(金) 21:51:12 ID:.WD6eC8k

姉「聞かせて?」

少女「Z粒子と名付けたそれは、ある特殊な性質を持っていました」

姉「Z粒子・・・ 初耳ね。 どんな性質?」

少女「光速を超える瞬間的な情報伝達と次元演算です」

姉「次元?」

少女「その後、教授はZ粒子で3つの“もつれ”状態を作り出すことに成功しそれらをdeusと命名しました」

姉「3粒子間での量子テレポーテーションか・・・」

男「ゴメン、何言ってるか分からない・・・」

少女「気にしないで、アンタに理解させようと思って話してないから」

男「・・・・・・」

164 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/08(金) 21:52:30 ID:.WD6eC8k

少女「当時財団は“オルビット”という次世代演算装置の開発を急ピッチで進めていました」

男「オルビット? オルビスとは違うのか?」

少女「前身って言えば良いかしら。 店主が中心で開発していた財団のプロジェクトよ」

男「店主さんが!?」

少女「財団はdeusとオルビットを統合する実験を教授と店主に命じた」

姉「瞬間的な情報伝達と処理が可能なら、飛躍的に性能は上がるわね」

少女「完成したのが、3台のオルビットにdeusを格納した次元演算コンピュータネットワーク」

姉「それがオルビス・・・」

少女「はい。 オルビスの核は3つのもつれ状態にあるdeusを制御する次元転送ユニットです」

男「よく分からんが、まさに最先端科学の結晶って感じだな」

少女「そうね、最先端だわ。 でも、最先端過ぎた」

男「どういう意味だ?」

165 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/08(金) 21:54:39 ID:.WD6eC8k

少女「オルビス完成後、運用中にdeusを構成するZ粒子の減少と正体不明のエネルギーが発生したの」

男「?」

少女「調査の結果、その異変はη星の爆発放射のタイミングと一致していることが確認されたわ」

姉「η星・・・ 高エネルギー放射線が原因って事?」

少女「はい。 Z粒子はη星から来るある高エネルギー粒子と相互作用を起こすと倍のエネルギーが発生する性質を持っていました」

姉「倍って・・・ 不足分のエネルギーはどこから?」

少女「別次元から落ち込んでくると推察されます。博士は“次元電離”と呼んでいました」

姉「次元っていうのがよく分からないけど・・・ 聞く限りでは夢のような現象ね」

男「そうなのか? 簡単に言って」

姉「お金を入れたら倍のお金が出てくる両替機」

男「何それ素敵」

少女「でも出てくるのは見た事もない別の国の通貨だけど」

男「は?」

少女「変よね? だから財団は教授に命じて実証実験を行うように指示したわ」

166 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/08(金) 21:55:33 ID:.WD6eC8k

少女「実験のプロジェクト名は・・・ “ヴォイニッチ”」

男「え?」


少女「ヴォイニッチ実験の結果は想像を超えるものだった」

少女「教授は財団にオルビスをシャットダウンする事を提言した」

姉「そこまで危険な物だったの?」

少女「次元電離が発生するとエネルギー均衡を維持するためにある現象が起こります」

姉「別の次元から得たエネルギー分がこの次元から消える・・・」

男「それって、もしかして神隠し?」

少女「」コクリ

167 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/08(金) 21:57:27 ID:.WD6eC8k

姉「神隠し?」

少女「私が知る限り、この次元から12人が犠牲になっています」

姉「私達のいる世界から人が消えたって事!?」

少女「私の仮説だと一つ下の次元世界に」

姉「そんな・・・ とても信じられない・・・」

少女「それを実証したのが、ヴォイニッチ実験でした」

男「なるほど、それは危険だな」

少女「そうね。 ヴォイニッチ実験の研究成果を全て暗号化して封印する位には」

男「暗号化? まさか、そのデータって」

168 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/08(金) 21:58:00 ID:.WD6eC8k

少女「そうよ、あのゲームの中身はヴォイニッチ実験の研究データ」

男「!?」

姉「・・・・・・」


少女「結局教授は独断でオルビスの一つであるシステム3をシャットダウンした」

姉「オルビスの機能停止事件」

少女「神の怒り・・・ そう呼ばれているようですね」

男「裏にそんな理由があったなんて・・・」

少女「博士は、その後会見を開いてオルビスの危険性を訴えた。 でも帰りの飛行機で・・・」

姉「教授だけでなく会見を開いた関係者と、記者の全員が巻き込まれたのよね」

男「・・・・・・」

169 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/08(金) 21:58:36 ID:.WD6eC8k

少女「真相は勿論、会見の内容も公表されないまま」

姉「η星の爆発放射が飛行計器に誤作動を起こしたのが原因って言われてるけど・・・」

少女「その日、財団は何かしらのエネルギー体を飛行機に向け大量放出しています」

姉「えっ?」

少女「今となっては何かは分かりませんが、多分それに関係しているかと」

姉「まさか・・・」

少女「上空で次元電離が発生した。 私はそう思っています」

姉「・・・・・・」

少女「Z粒子は今の科学技術で扱うにはリスクが高すぎます」

男「それで少女はオルビスを壊そうとしてたのか?」

少女「・・・・・・」

170 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/08(金) 21:59:12 ID:.WD6eC8k

姉「あれ? オルビスは教授さんがシャットダウンしたのよね?」

少女「はい」

姉「だとしたら、何でオルビスは今でも動いているの?」

男「そう言えば、神の怒りの数日後に復旧しているよな」

少女「財団はシステム3の代わりを疑似システムで運用して急場をしのいでいます」

姉「疑似・・・ 何となくだけど、効率が悪そうね」

少女「Z粒子の量子もつれが上手くいかず、膨大なエネルギーロスが発生しているようです」

姉「そういえば、ここ数年財団は結構な数の発電所を造っているわね」

少女「付け焼刃のようですが」

姉「でも今の技術じゃ限界よね。 そんな効率の良いエネルギーを造り出すなんて・・・」

少女「一つだけ方法があります」

姉「?」

171 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/08(金) 22:00:21 ID:.WD6eC8k

少女「次元電離発生時に得られる膨大なエネルギー」

姉「Z粒子をη星からの高エネルギー粒子と反応させる」

少女「はい。 粗悪ですがZ粒子を大量放出させる最新型の照射装置が気プセンで実験中です」

姉「でもそれをしたら・・・」

少女「・・・完成して駆動すれば次元電離による犠牲が出ます」

姉「財団はシステム3が存在していることは知らないの?」

少女「教授が運び出して処分したと思っています」

男「そのシステム3ってヤツを財団は新しく作れないのか?」

少女「コンピュータは作れても完全なもつれ状態のZ粒子は作れない」

男「そんなに難しいものなのか?」

少女「そうね。 ヴォイニッチ実験のデータが解読できれば作れるかもだけど」

172 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/08(金) 22:01:00 ID:.WD6eC8k

姉「少女ちゃんはどう思ってるの?」

少女「私は、システム3はまだあると信じています」

姉「根拠は?」

少女「店主がそう言ったんです」

姉「店主さんを信じているのね」

少女「・・・・・・。 でも、教授がすでに破壊したんじゃないかって思い始めていたんですが・・・

少女「今はあると断言できる。 さっきそれを確信した」

男「おみくじの機械か・・・」

少女「量子ユニットとシステムは分離できない。 絶対この近辺にシステム3がある」

姉「少女ちゃん? これからはお姉さんの言う事はきちんと聞くこと」

少女「? どうしたんですか急に」

姉「線量計の数値下がったわね。 扉開けましょうか」

173 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/08(金) 22:01:45 ID:.WD6eC8k


ギー


少女「あっ・・・」

男「これって・・・」

姉「うちのご神体改め、オルビスの第3システムとその量子ユニット」

男「なんでそれがココに!?」

姉「言ったでしょ? 教授さんから預かって欲しいって頼まれたって」

少女「やっと・・・」ガクッ

男「少女?」


少女「やっと・・・ 見つけた・・・」

174 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/09(土) 23:55:52 ID:0bg4i7eI

○ 本殿前


男「いや〜 まさか、あんな物がうちに隠されていたなんて」

姉「私も初めて見たときはびっくりしたわ」

男「少女はアレお持ち帰りするの?」

少女「あんな大きな物どうやって持って出るのよ」

男「でもあれを動かして使うんだろ?」

少女「まずは起動させる条件を揃えないとね」

男「そう簡単には動きそうにないしな」

姉「私もアレの使い方は全く知らないわ」

175 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/09(土) 23:56:31 ID:0bg4i7eI

男「っていうか、姉貴はあんな物を預かってどうする気だったんだよ」

姉「私が預かったんじゃなくて両親なんだけど」

男「この神社、俺の知らないことだらけで怖い」

少女「あの・・・」

姉「?」

少女「・・・いえ、何でもないです」

姉「両親の話だったら構わないわよ」

男「あぁ、もう5年も前のことだし」

少女「事故と伺っていますが」

姉「5年前の飛行機事故。 あれに両親も乗っていたの」

少女「え!?」

176 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/09(土) 23:57:02 ID:0bg4i7eI

姉「二人とも研究者でね。 教授さんとはとても仲良かったらしいわ」

少女「そうだったんですか。 それで・・・」

姉「榊総研って知ってる?」

少女「はい。 教授が作った私設研究所ですよね」

男「さっきZ財団の前身って言ってたよな」

少女「今は解散してZ財団に技術移転されている」

男「ふ〜ん」

姉「うちの両親は榊総研の研究員だったの」

男「は? 財団の人間だったの?」

姉「財団に吸収される前に辞めたわ」

男「あれ? そう言えば、少女に両親の事なんか話したっけ?」

少女「・・・・・・」

177 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/09(土) 23:57:34 ID:0bg4i7eI

姉「少女ちゃん、ここに来た理由は他にもあるんでしょ?」

男「?」

姉「もしかして、15年前の事かしら」

少女「・・・・・・」

姉「やっぱり」

男「15年前にも何かあったの?」

姉「私より少女ちゃんから聞いた方が良いと思うわ」

男「少女ってそんな前から研究に関わってんのか?」

少女「勘違いしているようだから言うけど、私はオルビスの研究や開発には一切タッチしてないわ」

男「そうなのか? にしては詳しいな」

178 ◆8YCWQhLlF2:2020/05/09(土) 23:58:15 ID:0bg4i7eI

少女「・・・・・・。 私はヴォイニッチ実験の被害者だから」

男「は?」

姉「・・・・・・」

少女「私は次元電離が原因でこの世界に来た」

男「えーと・・・ ちょっと、何を言っているのか分からないんだけど・・・」


少女「“私の名前は少女。 この次元とは違う世界の日本という国から来た”」


男・姉「?」

男「あの・・・ 何て言ったの? 今の何語?」

少女「私が元いた世界で使っていた言葉で日本語という言語よ」

男「・・・・・・」


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