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男「忘れてしまった貴女との約束」
1
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/07/13(土) 01:27:38 ID:1UnGgfV2
林に囲まれたとある神社。
大きな麦わら帽子を被った自分よりも背の高い少女が私に向かって何か語り掛けていた。
「──ね、おとこくんの事がすき!」
「ほんとう? ぼくも──ちゃんの事すき!」
「えへへ、両思いになれてうれしい! じゃあ大きくなったら──」
───────
─────
───
─
「……んぁ」
64
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/03(土) 00:39:23 ID:T1Kw3mLE
女「ほぉ……ほぅ」
男「お、女ちゃん? そろそろ離れてくれるとありがたい……かなって」
女「あっ、ご、ごめん……夢中になっちゃって……ね」
男「だ、大丈夫」
気まずくて黙ってしまう……。
女ちゃんも離れてからはずっと俯いたままだ。
沈黙の時間も嫌いではないが、これは耐えられない沈黙。
女「あ、あのさ!」
顔を真っ赤に染めた彼女は綺麗な瞳をうるうるさせながらこちらを見つめている。
女「明日さ、川に……行かない?」
男「川……?」
女「そう、川」
川というと土手の奥で流れている川の事だろうか。
65
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/03(土) 00:40:10 ID:T1Kw3mLE
女「だめ……かな?」
男「……いいよ」
女「本当!? じゃあ明日の朝迎えに行くから待っててね!」
男「けど川に何をしに……」
「帰ったぞー」
女「あ、祖父さんが帰ってきたね。じゃあ私もそろそろ帰ろうかな……ん、しょっと」
川で何をするのと聞こうと思っていたのだが無理に引き留めるのもよくないのでこのまま見送る事にした。
女「じゃあ、明日ね」
男「うん、ばいばい」
女「ばいばい」
66
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/03(土) 00:41:30 ID:T1Kw3mLE
男「……」
落ち着かない。
明日は川で何をするのだろう、川という事は水だ。つまり、水着……あぁ、あまりよろしくない思考だ。
自分を叱りたい。
男「水着とか持ってきてないけど川は浅かった気がするし……普通の服でもいいか」
泳ぐと決まったわけでもないのに気分が高まってしまう。
女ちゃんはどんな水着を着るんだろうか。
男「……はっ! ダメだ、今日は早く上がって早く寝よう」
67
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/03(土) 00:42:08 ID:T1Kw3mLE
男「スマホは……っと」
『電話していい?』
男「……なんで?」
姉から届いていたメッセージだった。
こっちに来てからというもの、少しだけ姉からの連絡が多くなった気がする。
男「電話するか」
習慣になりつつある。
男「……もしもし?」
姉『ん』
男「それで、なに?」
姉『何ってなによ』
男「……切るよ?」
姉『……明日の夜、そっちに行くけど何か欲しいものとかある?』
男「とくに無いけど……それだけ?」
姉『そう……』
68
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/03(土) 00:43:01 ID:T1Kw3mLE
電話越しでも分かるくらい姉の気分が落ちている。
仕事で何かあったのか、私の発言が悪かったのか、理由は分からないが姉は落ち込んでいる。
面倒くさい。
男「……今日ね、女兄くんに会ったよ」
姉『女兄ってあの? 懐かしいわね』
男「そうそう、ガッチリした日焼け男になってた」
姉『やっぱり農家だから筋肉ついてるんでしょうね。日焼けはまぁ……そっちならそうねって感じ』
男「うん、格好よかったよ」
姉『あんたも結構筋肉ついてる方だけどね』
男「大学に入ってからはあんまり運動してないからなー」
69
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/03(土) 00:44:28 ID:T1Kw3mLE
姉『私は自信もっていいと思うけどね。脚とか凄いじゃない』
男「脚が細くならなくて困ってんだけどね」
姉『女みたいな悩み方するんじゃないよ』
男「だって細くならないんだもん。鍛えてないと太いだけになるし嫌でしょ」
姉『まぁね、私も太った男は……まぁまぁ嫌かな』
男「でしょう?」
姉『そうね』
姉の機嫌もだいぶ良くなった気がする。
男「そろそろ切るね」
姉『明日は夜にはそっちに着くから』
男「そういえば何で来るの?」
姉『電車、お迎えよろしく』
男「……りょーかい」
姉『ふふっ、じゃあ……おやすみ』
男「おやすみ」
70
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/03(土) 00:46:35 ID:T1Kw3mLE
通話を終了する。
姉の機嫌が戻ってみたいで良かった。
何が切っ掛けで落ち込んだのか分からない、けどこういう時はどんな内容であれ話すのが一番だ。
姉はどんなにくだらない話であっても聞いてくれるし、話してあげると何かと気分が晴れるらしい。
ツボがいまいち分からない。
男「あっ、明日は朝から女ちゃんが来るんだった」
すっかり忘れていた
男「水着……」
男「ダメだ、寝よう。明日は忙しくなりそうだからな、寝よう寝よう……よし、寝よう」
男「……寝よう、俺」
71
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:38:01 ID:alXXxjAI
少女は悲しんでいた。
大粒の涙は頬を伝い、足元に落ちた涙で池が出来てしまいそうだ。
「どうして……?」
その問に答えられない。
体が動かない、喋ろうとしても口が開かない。
「えっ、それ……ほんと?」
何も言っていない。
しかし、少女の顔はさっきとは違う晴れた表情に変わっている。
「じゃ、じゃあ……約束だよ?」
私は何を言ったんだ。
少女に向けて叫ぶ、届かなくても叫ぶ。すると、彼女の流した涙の池がゆっくりとせり上がり私を飲み込む。
72
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:38:42 ID:alXXxjAI
もう少しでモヤモヤが晴れそうだというのに、ここまでしか教えないよと誰かが悪戯に弄んでいる。
「──くんが言い出したんだからね! 忘れたりとか絶対に許さないからね!」
「忘れないよ! 大きくなったら──」
─────
───
─
男「……」
女「あ、おはよ」
男「……おはようございます」
女「寝汗凄いね」
73
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:39:20 ID:alXXxjAI
女「今日はあんまり驚かないね、慣れた?」
男「なんか、驚かなかった」
さっきまで会っていた様な感覚が体に残っているからなのか、先日のように驚いてしまう事はなかった。
女「ふふっ、じゃあ顔洗って歯磨きしてきなよ」
男「……いま何時?」
女「7時!」
女ちゃんは相変わらずだ。
74
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:40:12 ID:alXXxjAI
祖母「汗すごいねぇ」
男「なんか焦る夢をみたから、それのせいだと思う」
祖父「風呂場でシャワー浴びていいぞ」
男「ありがと。じゃあシャワー浴びてくるね」
女「うん、行ってらっしゃい」
朝から女ちゃんがこの家に居る事への違和感が無さすぎる。
祖母「女ちゃんは朝ごはん食べたのかい?」
女「はい! 家で作った梅干しで口をきゅーっとしました」
祖父「梅干しか、ちょっとうちの梅でもどうだ?」
女「いいんですか?」
祖母「今年のはうめぇと思うから食ってみぃー? じぃ持ってきてくれ」
祖父「わかった」
女「祖母さんの梅干し楽しみです」
75
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:41:02 ID:alXXxjAI
男「……」
女「梅干し美味しかったね」
男「……っ」
女「苦手なら苦手って言えばいいのに意地張って食べるから……ふふっ」
仕方ないじゃないか、ばあちゃんが満面の笑みを浮かべながら作った梅干を出してくるんだ。
断れる訳がない。
女「涙を堪えながら『美味い……』ってね……ふふっ、すっぱいの苦手なのに」
正直に言うと梅干しは苦手だ。
食べている時はそれを悟られないように上手く隠したつもりだった、なのに女ちゃんにはバレてしまった。
でもまぁ、ばあちゃんは喜んでいたからそれでいい。
76
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:41:59 ID:alXXxjAI
女「それじゃあ、準備しよう」
男「準備?」
女「川、昨日行こうって……忘れてた?」
男「あっ」
女「男くんは忘れっぽいもんね」
男「そんな事ないよ。それはもう凄い記憶力で全ての事を覚えてるよ」
女「……れてるくせに、ばか」
何故か馬鹿と言われてしまった。
女「まぁ、持っていく物とかは特に無いんだけどね」
男「えっ、川で何するか決めてないの?」
女「うん! ほら、早く着替えて行こう行こう」
77
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:43:36 ID:alXXxjAI
土手を越え、林を抜け、少し開けた場所に出ると踏んでいた土が砂利や石にに変わり、その先には緩やかに流れる川が現れた。
男「涼しい……」
土手の上からは川の下流を見ることが出来るがここは川の上流……かな?
浅く透明感のあるこの川では小さい頃によく水遊びをしていた懐かしい場所だ。
女「水場ってのもあるけど木が日差しを防いでるからかな? 風が凄く涼しいね」
男「水も冷たくて気持ちいいよ」
女「あー、ひゃっこい」
二人で川の中に手を入れる。
女ちゃんは目を細めながら年よりじみた声を出している。
おばあちゃんだ。
78
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:44:34 ID:alXXxjAI
女「さて、何しようか」
男「本当に何も考えてないんだ。 流石女ちゃん」
女「へへっ」
男「褒めてない」
女「よしっ」
立ち上がり川に入っていく彼女を目で追う。
この川の深さは脛辺り、水面から可愛らしいサンダルを履いた女ちゃんの足が見える。
そして手も見える。
男「……手?」
女「えいっ」
男「わっぷ」
女「あはは、びしょびしょ」
男「……なるほど?」
彼女も水遊びをして濡れたいらしい。
79
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:45:29 ID:alXXxjAI
男「それなら俺だって……おわっ!」
女「男くん、女の子に水を掛けようとするのは駄目だよ? おとなしく掛けられてなさい」
何を言っているのか私には全然理解できない。
女ちゃんは続けて水をすくうと、ぱしゃぱしゃとこっちに向けて水を掛けてくる。
80
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:47:10 ID:alXXxjAI
女「こうしてると昔を思い出さない?」
男「昔?」
女「そう、一緒に遊んでた時のこと」
女ちゃんは私に水掛けを止めると、川の上で踊るように動き出す。
女「覚えてる? ここから少し降りた所にある神社の裏側に出る裏道」
男「そんな道あったっけ?」
女「……やっぱり覚えてないか、男くんはバカ者だ。ばーかばーか」
男「えぇ……どうしたのさ」
女ちゃんが急に幼くなってしまった。
今朝といい女ちゃんは昔の事をあまり覚えていない私の事を非難してくる。
81
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:48:10 ID:alXXxjAI
女「じゃあ明日はその神社に行こうか」
男「明日? 今日じゃダメなの?」
女「今日は午後から買い物に行くらしいの。私も一緒に行くから駄目なんだ」
男「そっか、じゃあ明日……」
ふと、何か大切な用事とまではいかないが何かあったような気がしてきた。
少しの間、腕を組み考えてみる。
男「あっ」
女「?」
男「そういえば明日、母さん達がこっちに来るんだった」
女「そうなんだ! じゃあ挨拶しに行かなきゃね!」
男「別に来なくてもいいんだよ? でも、母さん達も女ちゃんに会ったら喜ぶかもね」
女「ふふっ、楽しみ」
82
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:48:48 ID:alXXxjAI
男「……」
祖母「眠いのかい?」
男「少し、だけね……」
女ちゃんとの川遊びはとても楽しかった。
あれから何回も水を掛けられたりしたが時間を忘れるくらいには川で楽しく遊んでしまった。
別れ際、土手の上で女ちゃんは「明日が楽しみ!」と、素敵な笑顔で言うと土手を駆け降り、勢いそのまま自分の家に走っていった姿を思い出す。
祖母「眠いなら寝るといいぞ」
男「でも、姉ちゃんを迎えに行くから……起きてないと」
意識が途切れ途切れになりながら会話する。
83
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:49:35 ID:alXXxjAI
祖父「バイクで駅まで行くんだべ? 眠いまま運転する方が危ないから少し寝てすっきりした方がいいぞ」
男「そう、かな……」
祖母「起こしてあげっから寝ちゃいなさい」
祖父「あぁ、それに来るとしても夜だからな。今から寝たとしてもそれまでには起きんべ」
確かに姉がそこまで早くこっちに着くとは思えない。
それにこんな状態でバイクに乗るのも危ない。
男「じゃあ少しだけ寝るね」
祖父母が私を起こしてくれる。その言葉に甘え、私はゆっくりと意識を切り離していった。
84
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:50:36 ID:alXXxjAI
男「……あれ?」
寝起きの頭では状況を理解することが出来なかった。
目を覚まし辺りを見回すと、日が沈み窓から入ってくる外の光はなく、家の中は暗い。
部屋の電気を点ける。
明るくなった部屋では椅子に座ったまま眠る祖母、座布団の上で横になり寝息をたててる祖父。
そして、テーブルの上でチカチカと点滅を繰り返している自分のスマホ。
男「……やば」
必要な物を持ち、スマホを開きながら急いで家から飛び出した。
スマホの待ち受け画面には姉からのメッセージが表示されていた。
『馬鹿』
今日は罵られてばかりだ。
85
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:51:17 ID:alXXxjAI
男「……っ、どこだ」
駅まで急いでやって来た。
姉が来ると言っていた駅はここのはず……というか、隣の駅との距離がとても長くここ以外あり得ない。
辺りを見渡すと、駅の入口から出てすぐ横にある自動販売機の光に照らされたベンチに踞るような姿勢で座っているの人が見えた。
ゆっくりと近付く。
すると、こちらに気付いたのか体を起こし私を見た。
男「……お待たせ」
姉「遅い」
86
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:51:54 ID:alXXxjAI
自動販売機の光が姉の顔を照らしだす。
姉の後ろで赤い怒っていますよオーラがゆらゆらと揺れている。
姉「1時間は待った」
姉「男の事だから早めに来て待ってると思ってた。でも、来たら居ないし、電話しても反応ないしでちょっと心配した」
男「あー……」
寝てなければ、早めに来て姉が駅から出てくるのを待っていたとは思う。
寝ていなければ、ね。
姉「それで、何か言うことは?」
男「ごめん」
姉「ん」
87
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:53:03 ID:alXXxjAI
ずっと私を待っていた姉に対して「 俺が来るのを待ってないでバスに乗って行けば?」と言えなかった。
姉は私を信頼し、暗く誰も居ない駅でずっと待っていたのだ。
何も言えない。
姉「じゃあ、じいちゃん家まで送って」
男「りょーかい」
姉「あぁー、座りっぱなしでお尻痛い」
姉は立ち上がるとパンパンとお尻を叩いて汚れを落とす。
男「意識してなかったけど姉ちゃんスーツなの?」
姉「仕事終わらせてからまっすぐこっちに来たからね」
男「なんでそんな急いで来んのさ。別に今日じゃなくて母さん達と一緒に来ればよかったのに」
姉「うるさい」
姉のこういう所、よく分からない。
88
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:56:16 ID:alXXxjAI
───
─
姉「ところでさ」
私の腰に手を巻き、背中にピッタリ付いた姉が話し掛けてきた。
姉「どうしてメッセージや電話に反応しなかったの?」
「寝てた」と言った場合、姉はどう反応するのか。
姉「ねぇ、聞こえてないの?」
男「んー?」
姉「……バイクは駄目だな」
89
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:57:33 ID:alXXxjAI
姉「じいちゃん、ばあちゃん、来たよー」
祖母「姉か? 可愛くなったねぇ」
姉「ふふっ、ありがと。じいちゃんは?」
祖母「そこで寝てるよ」
姉「本当だ。お酒でも飲んだの?」
祖母「昼寝だ」
姉「昼寝? ばあちゃん、もう夜だよ」
祖母「じゃあ長い昼寝だ。男が眠そうだったから起こしてあげるよと私達が言ってなー、気持ち良さそうに眠る男を見てたらこっちも寝ちゃったんだ」
姉「へぇ……ふふっ、可愛いじゃん」
祖母「まっ、可愛いくなんてないよー」
90
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:58:18 ID:alXXxjAI
祖母「んだけど、男には悪いことしたねぇ」
姉「ちゃんと迎えに来たから大丈夫だよ」
男「ただいまー」
祖母「じぃ、男帰ってきたから起きて飯食うべ」
祖父「んがっ、あ? あー、寝ちまったな」
男「二人とも起きた? ただいま」
祖母「お帰り。じゃあ、ご飯を作るべな……姉は着替えておいで」
姉「分かった。あっちの部屋で着替えてくるね」
91
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:58:55 ID:alXXxjAI
今日も今日とて、風呂の中で一日を振り返る。
男「寝ちゃったのは川で遊んだから、かなぁ」
女ちゃんと二人で川遊び。
水着は無かった……けど、すごく楽しかった。
しかし、気になる事もある。
男「神社」
女ちゃんがやたら神社を気にしていた、意識していた……気がする。
気がするだけかもしれない。
男「約束もなぁ、分かんないなぁ……」
今日の女ちゃんを見て、私は小さいときに彼女とどんな約束を交わしたのか、それも気になっていた。
男「はぁ、子供のときの俺は何やったんだ。何を約束したんだ……」
ここに来てから心を覆い続けるこのモヤモヤはまだ晴れそうにない。
92
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/10(土) 23:59:47 ID:alXXxjAI
風呂から上がり部屋に戻る。
祖父母はもう寝ているだろう。しかし、姉がどこで寝るのかが分からない。
姉が使う布団を出してあげなきゃいけないのだが……。
ギシギシと鳴る床を歩きながら自分が使っている部屋のふすまを開けた。
すると──
姉「あっ、お風呂入っていいの?」
男「……」
姉が寝転がっていた。
男「……ここで寝んの?」
姉「あっちの部屋怖いんだもん」
もう一つの空き部屋は確かに怖い。
祖父が作ったお面やこけしなど、夜に見ると不気味に感じてしまう物が多く飾ってある。
93
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/11(日) 00:07:34 ID:V6FpEkwA
男「布団は?」
来客用の布団や枕は、その不気味な部屋の押し入れにある。
姉「……お風呂入ってくるから、お願い」
姉らしい逃げ方。
しかし、私は弟なのだ。
それに応えなければならない。
男「分かった、やっとく」
姉「ありがと」
男「俺は疲れたからもう寝るけど起こしたりしないでね」
姉「……」
姉は何も言わず、ただ視線を逸らす。
勘弁してくれと、目で訴えるが姉はそのまま風呂場へと姿を消してしまった。
男「姉ちゃんの布団敷いて寝よう」
今日はとても短く感じる一日だった。
明日は親戚も集まって来るだろうし、きっと今日と同じくらいか、それ以上の日になるかも。
男「けど余裕があれば、女ちゃんと神社に……」
94
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 20:59:22 ID:zZVcRqpA
男「……んがっ」
お腹が何かに押し潰されて目が覚めた。
見ると脚が私の腹の上に乗っかっている。
私はそれを隣で寝ている姉から繰り出されたものだと簡単に理解することが出来た。
姉「……ぅぁ」
敷いた布団に対して体が横を向いて寝ている。
掛け布団はそっぽに振り払われ、お腹を出したまま寝るその姿は昨日のスーツ姿とは似ても似つかなくて、とてもだらしない。
寝相が悪すぎる。
姉「……んぅ」
男「ぐっ!」
もう一方の足が私のお腹を襲う。
男「くそっ、動けない……」
体を覆うように置かれた姉の脚を簡単に避ける事は出来そうになかった。
95
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 20:59:56 ID:zZVcRqpA
諦めよう。
変に動いて起こしてしまうのも良くない。
折れた私は姉の両足をお腹に乗せたまま枕元に置いていたスマホを手に取ると、電源を付け画面に表示された時間を確認した。
男「6時か」
いつもなら二度寝する時間だ。
けど目が冴えてしまって眠れる気がしない。
ここに来てからというもの、早起きという習慣がが体に染み付きつつある。
大学生としては恐ろしい習慣だ。
姉「んー……」
男「……あ?」
寝返りを打った姉の足が綺麗な弧を描きながら私の頭上に現れると、勢い残したまま綺麗に顔面を目掛けて落ちてきた。
男「ちょ、ちょっと待て、待て待てまっ──」
96
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 21:00:42 ID:zZVcRqpA
祖父「おっ、起きたか」
男「起きた……ふぁ」
欠伸混じりに祖父と言葉を交わす。
テーブルの向こう側ではお茶を啜る祖母が椅子に座ってテレビを眺めていた。
祖母「デカい欠伸だな。ご飯出来てるから顔洗ってきな」
男「うん、顔洗ってくる……あ」
姉「おはよう寝坊助さん」
男「……おはよ」
顔を洗いに行こうとしたら洗面所から姉が出てきた。
誰のせいで寝てしまったのか、このだらしない姉に時間を掛けて教えてやりたい。
97
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 21:01:32 ID:zZVcRqpA
祖父「男、今日は人来るから酒いっぱい飲めるぞ」
男「今日のためにお酒買ったもんね」
祖母「お母さん達はいつ頃来るか聞いてっか?」
姉「昼過ぎだと思う。今年は泊まっていくらしいよ」
祖父「そっか、賑やかになりそうで嬉しいな。なぁ、ばぁ」
祖母「んだねぇ」
男「叔父さん達も来るんだよね?」
祖母「何時に来るか知らんけど来るべ」
98
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 21:02:09 ID:zZVcRqpA
姉「何か手伝う事はある?」
祖母「いいのかい? じゃあ一緒にお料理してくれないか」
姉「うん、手伝うよ。 ね、男」
男「ん」
姉「男もやるって」
何も言ってない。
姉「よし、ご飯食べちゃおう」
男「ん」
姉「ちゃんと喋りさないよ」
男「いでっ、食べてるんだって」
99
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 21:03:12 ID:zZVcRqpA
姉と二人、台所で今日食べる物の下ごしらえをする。
トントンと野菜を切る音が心地よい。
男「姉ちゃんってあんまり料理しないくせに切るの上手いよね」
姉「普通でしょ」
姉ちゃんの野菜を切るペースが上がった気がする。
速いペースで切っているのにどうしてこんなにも綺麗に切れるのか、自分が切った物と比べて技量の無さに落ち込んでしまう。
姉「……包丁をこう持って、トントンとね」
男「なるほど?」
姉「ふふっ、違う違う……こう」
100
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 21:04:21 ID:zZVcRqpA
昼前に家の外でドンと大きな音が響いた。ガラガラと玄関の扉を開ける音が鳴ると、懐かしさを感じる声が私の耳に届く。
叔父「帰ったよー」
叔母「おはようございまーす」
祖父「おぉ、来たか」
従妹「じーちゃーん!ばーちゃーん!」
祖母「よく来たねぇー、よしよし」
叔父「んー? 姉さんか兄さんが来てたりする?」
祖父「男と姉が来てる」
従妹「え!? お姉ちゃん達が来てるの! どこどこ!」
祖母「あっちに居るぞ」
従妹「パパ、ママ、行っていい?」
叔父「いいよ、荷物は出しとくから」
叔母「あんまり迷惑かけちゃ駄目よ?」
従妹「うん!」
101
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 21:05:26 ID:zZVcRqpA
従妹「お姉ちゃん、お兄ちゃん!」
姉「久しぶりー、また大きくなって、それに可愛くなってー」
従妹「へへっ、ありがとお姉ちゃん」
男「1年ぶり? 久しぶりだな」
従妹「2年だよ! 去年ここに来たときはお兄ちゃん達帰ってて会えなかった」
男「そっか、2年ぶり」
従妹「うん!」
従妹。
叔父さんの一人娘で中学2年生の女の子。
姉「それにしても肌が随分と……」
従妹「黒いでしょー」
確かに従妹の肌は綺麗に日に焼けていた。
女ちゃんくらいか、それ以上かもしれない。
102
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 21:06:17 ID:zZVcRqpA
姉「黒いわ。運動って男と同じヤツをやってるんでしょ?」
従妹「室内スポーツ!」
男「そこまで焼けるか?」
従妹「焼けた!」
元気でよろしい。
きっとランニングや走り込みで焼けたのだろう……が、焼けすぎだと私は思う。
103
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 21:06:57 ID:zZVcRqpA
叔父「おぉ、男に姉じゃないか」
叔母「久しぶり」
男「お久しぶりです」
姉「元気にしてましたか?」
叔父「あぁ、もうピンピンよ。ところでお母さん達は居ないのか?」
姉「昼には来ると思います」
叔母「という事は、二人は先にこっちへ来たの?」
男「俺が4日前に一人で来て、姉ちゃんが昨日の夜に来ました」
104
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 21:07:36 ID:zZVcRqpA
叔母「へぇ、面白いわね……来年の夏は娘にやらせてみましょうか?」
叔父「だ、駄目だ! 迷ったりしたらどうする!?」
従妹「そ、そうだよ! 私はパパ達と来るから!」
叔父「ほっ」
従妹「ほっ」
叔母「面白そうなのに、残念ねぇ」
従妹「残念って何よ! もう!」
105
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 21:08:48 ID:zZVcRqpA
>>104
叔母「へぇ、面白いわね……来年の夏は娘にやらせてみましょうか?」
叔父「だ、駄目だ! 迷ったりしたらどうする!?」
従妹「そ、そうだよ! 私はパパ達と来るから!」
叔母「しょうがないわねぇ」
叔父「ほっ」
従妹「ほっ」
叔母「面白そうなのに、残念」
従妹「残念って何よ! もう!」
106
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 21:10:05 ID:zZVcRqpA
「こんにちはー」
また玄関から誰かの声が聞こえてきた。
「ほれ、さっさと入れ。あとこれ、爺さんに渡しといてくれ」
「分かった」
硝子戸の先に大きなシルエットが見えると祖父母は立ち上がり玄関へ向かい歩き始めた。
従弟「こんにちは、来たよ」
祖父「従弟! よく来たなー!」
祖母「また大きくなったんじゃないかい?」
従弟「うん、また身長伸びたんだ。あとこれ、お土産」
祖母「ありがとなー、冷蔵庫に入れてくるわ」
107
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 21:10:42 ID:zZVcRqpA
伯父「ふぅ……腰が」
伯母「あなたも年取ったわね」
伯父「本当に……な」
従弟「父さん持とうか?」
伯父「ま、任せた……」
祖父「お前はいい加減に痩せろ」
伯父「ぐっ、従弟は先に入ってていいぞ」
従弟「分かった」
108
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 21:12:44 ID:zZVcRqpA
硝子戸越しに見える従弟の姿。
大柄なのに足音はとても静かだ。
従弟「おわっ、今年は勢揃いだ」
戸を開けた瞬間、自分に集まる視線に驚いたようで従弟はキョロキョロと周りを見回す。
叔父「従弟、久しぶりだな」
叔母「また身長が伸びたんじゃない?」
従弟「久しぶりです。身長も少し伸びました」
従弟。
伯父の子供で高校1年生。
109
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 21:13:48 ID:zZVcRqpA
叔父「お父さんもまだ身長伸びてるんだろ? 不思議だな」
従弟「あれは足の皮が厚くなっているか頭の皮が厚くなっているかのどっちかです」
叔父「ははっ、なるほどな!」
祖母「頭が寂しくて厚みを増したんだべなぁ」
従弟「あっ、男君に姉ちゃんが居る」
私達の存在に気付いた従弟がこちらに笑顔で寄ってきた。
男・姉「「久しぶり」」
従弟「何年ぶり?」
姉「え、従弟ともそんなに会ってなかった?」
お盆という機会が毎年あるのに会えていないのが不思議に感じる。
110
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 21:14:38 ID:zZVcRqpA
従妹「私は従弟くんと毎年会ってたけどお兄ちゃん達とは2年ぶりだし……ホントこっちに来なさすぎ!」
男「えぇ……?」
従妹に怒られてしまった。
この二人は毎年どの季節であれ最低1回は泊まりに来るとのこと。
男「しかし、まぁ……デカくなったな」
従弟「うん」
姉「男、従弟と並んでみてよ」
男「なんで」
姉「いいから、ほらほら」
111
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 21:15:19 ID:zZVcRqpA
嫌々立ち上がり従弟の横に立つ。
私の身長は平均的なため大きくもなく、小さくもなく。 そんな私が従弟と並ぶと……もうちょっとだけ身長が欲しくなる。
男「身長ちょうだい」
従弟「いいよ」
姉「ばーか」
従妹「お兄ちゃんはもう諦めなよ」
私に優しいのは従弟だけだ。
112
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 21:16:16 ID:zZVcRqpA
伯父「はぁ……疲れた」
伯母「お疲れさまでした」
叔父「おつかれさん」
伯父「久しぶりだな」
伯父たちが顔を会わせ言葉を交わす。
後は私の家族が来れば一家全員集合となる。
伯父「男か、車無いけど母はどうした?」
男「もうすぐしたら来るよ」
伯母「姉ちゃん久しぶりね! また綺麗になって〜!」
姉「あはは、ありがとうございます」
似た雰囲気の者達が集まっているこの光景がとても面白く、つい口が綻んでしまう。
従妹「お兄ちゃん何でニコニコしてんの?」
男「ん? んー、楽しくてかな」
泊まりに来て良かったと、心からそう思えた。
113
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/24(土) 21:16:57 ID:zZVcRqpA
母「お疲れさま」
父「暑い、暑いぞ」
母「風は気持ちいいわよ。お母さーん、お父さーん、来たわよー」
祖母「はーい」
祖父「もう皆集まってっぞー」
昼を少し過ぎた頃、私の家族が1つの家に集合した。
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