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【ぼく勉】 文乃 「今週末、天体観測に行くんだよ」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:07:13 ID:9nEg0gUI
理珠 「ほう。天体観測ですか。どこかの天文台へ行くのですか?」

文乃 「ううん。バスツアーなんだけどね、車で二時間くらいの高原に行くんだよ」

文乃 「結構コアなツアーでね。参加者全員望遠鏡を自分で持って行って、思い思いにレンズを覗くんだ」 ワクワク

文乃 「深夜に駅を出て、数時間天体観測をしたら、早朝に駅に戻ってくるって感じのツアーだよ!」

うるか 「ほへー。そんなのがあるんだねぇ」

成幸 (……それはツアーで行く意味があるのか? とかそういうことは置いておくとして)

成幸 (受験も近いのに大層な余裕だな、というツッコミも置いておくとして)

成幸 「……お父さんと一緒に行くのか?」

文乃 「うんっ! お父さんがね、誘ってくれて……」

文乃 「“一緒に行かないか” って。えへへ……」

成幸 「そうか」 クスッ 「よかったな、古橋」

文乃 「うん! ありがと、成幸くん! 道中のバスではちゃんと勉強するから安心してね!」

成幸 (この寝ぼすけ眠り姫が深夜と明け方のバスで勉強するとは思えないが……)

成幸 (まぁ、たまの息抜きぐらい、問題ないだろうし、何より……)

成幸 (古橋とお父さんの関係が、少しずつ改善しているのが、嬉しい)

98以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:18:37 ID:7uI8KgCw
………………

あすみ 「………………」

モグモグモグ……

あすみ (……お料理は、とてつもなくウマい……けど、)

あすみ (味がよく分からない……)

成幸 「はぁ……美味しい……」 ウルウルウル 「葉月と和樹にも食べさせてあげたい……」

あすみ (……結局、まだ後輩にも謝れてないし)

あすみ (そもそも、そんな気分にならねーし……)

「ね、ね、あすみ」 コソッ

あすみ 「ん? あんだよ? コソコソと……」

「いや、ね。あすみは婚約者クンに愛されてるな、って」

あすみ 「はぁ? いきなり何だよ?」

「さっき、あすみがトイレ行ってる間、ちょっとカレシと話したんだよ。そしたらね……――」

99以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:19:15 ID:7uI8KgCw
………………少し前

『ねぇねぇ、カレシくんはさ、あすみのどんなところが好きなの?』

成幸 『へ……!? い、いきなり何ですか?』

『いやー、気になっちゃってさ。ねぇ?』

『うんうん。あたしもめっちゃ気になるよ。あすみもいないし、ぶっちゃけちゃいなよ』

成幸 『そ、そんなこと言われても……うーん……』

成幸 『せんぱ――あすみさんの好きなところかぁ……』

『……あれ? そんなに悩む感じ?』

『あすみちっちゃくて可愛くて美人だし、そういうトコじゃないのー?』

『うんうん。あすみちっちゃくて子どもみたいで可愛いよねぇ』

成幸 『いや、まぁ、あすみさんが可愛くて美人なのはその通りなんですけど……』

成幸 『………………』

成幸 『……でも、あんまりちっちゃいって思ったことはないですかね』

『へ……?』

100以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:19:48 ID:7uI8KgCw
成幸 『いや、出会ったときはそれこそ中学生と勘違いしたりもしましたけど、』

成幸 『知り合って、お付き合いをさせてもらっているうちに、あんまり小さいと思わなくなって……』

成幸 『あすみさんって、すごいんですよ。リアリストで、考え方も大人で……』


―――― 『塾の授業聞くだけで成績伸びる奴なんて一部の天才だけだ』

―――― 『自分で努力せずに 結果なんて出るわけねーのにな』


成幸 『自分の夢のために一生懸命で、いつもいつも、本当に頑張っていて』

成幸 『……なのに、俺のことも気にかけてくれて』


―――― 『塾ってのは自分で勉強することを軸に 必要なものを捕捉するために存在するんだ』

―――― 『その位置づけは間違うなよ後輩』

101以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:20:39 ID:7uI8KgCw
成幸 『俺だけじゃない。他の人のことも、いつも……』


―――― 『……世話やかせやがって…… できれば触らずに助けたかったのに……』

―――― 『でもま ガキ泣かせとくような医者にゃ なりたくねーからな』


成幸 『だから……』

成幸 『すごく “おっきいな” って感じるんです』

成幸 『だから、えっと、その……』

成幸 『恥ずかしいですけど、俺があすみさんを好きなのは……』

成幸 『綺麗で、可愛くて、美人なところ……でも、それ以上に……』

成幸 『頼りになるところ。大人なところ。優しくて、人のためにがんばれるところ』

成幸 『……そういう、“おっきい” ところなんだと思います』

『へ、へぇー……///』

『そ、そっか。あすみのこと、よく見てるんだね……///』

成幸 「……あっ! だ、ダメですよ!? 今の、絶対先輩――あすみさんに言わないでくださいね!』

102以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:21:36 ID:7uI8KgCw
………………

「――……って感じでさぁ。聞いてるこっちが恥ずかしくなっちゃったよ」

「ほんとほんと。ごちそうさま、って感じ」

あすみ 「お、お前ら、アタシがいない間に後輩で遊んでじゃねーよ」

あすみ 「ったく……」

あすみ 「………………」

あすみ (……へ、へぇ。ふーん。なるほどねぇ)

あすみ (“おっきい” とこ、かぁ……///)

カァアアアア……

「あれぇ?」 ニヤァ 「あすみ、顔真っ赤だよ?」

あすみ 「……!? はぁ!?」

「わっ、あすみ可愛い〜! 照れてんの?」

あすみ 「て、照れてねーよ!」

成幸 「? どうしたんです、先輩?」

あすみ 「っ……な、なんでもねーよ!」

103以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:22:24 ID:7uI8KgCw
………………お見送り

先輩 「今日は来てくれてありがとね、あすみちゃん。それから、唯我クンも」

成幸 「いえ、こちらこそお招きいただいてありがとうございました」

あすみ 「……ったく」 コソッ 「こんな無茶はこれきりにしてくださいよ、先輩」

先輩 「ごめんって。そっちのときはご祝儀はずむからさ」

あすみ 「……そっちのとき?」

先輩 「えぇ? 何とぼけてんのー?」 ニヤァ 「あすみちゃんと唯我クンの結婚式に決まってんじゃん」

成幸 「っ……///」

あすみ 「………………」

あすみ (……アタシと後輩の結婚式、ね) ジーーーーッ

成幸 「……?」

ムギュッ

成幸 「……へ? あ、あすみさん? 何で、腕、組んで……///」

成幸 (ど、ドレスで腕組まれると、素肌に触れちゃって、や、ヤバい……)

104以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:23:15 ID:7uI8KgCw
あすみ (アタシと後輩は、ただの、役だけの、恋人)


―――― ((いっ、今の物言いじゃまるで、アタシと後輩が結婚するのが前提みたいじゃねーか……))

―――― ((お、親父が悪い! 勝手に後輩との結婚を考えたり、後輩との子どもの名前を考えたりするから!))

―――― ((親父が悪いわけで、アタシが後輩と結婚したいわけじゃないからな!))


あすみ (親父を誤魔化すためだけの、ニセモノの、恋人)

あすみ (……でも)

あすみ (アタシのことをしっかりと見てくれる……アタシのことをいつも助けてくれる、相手)

あすみ (もう、きっと、否定することなんて、できない、アタシの……)

あすみ (好きな、人……)

あすみ 「……じゃ、約束ですよ。先輩」

クスッ

あすみ 「アタシたちの結婚式、絶対来てくださいねっ」

おわり

105以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:23:51 ID:7uI8KgCw
………………幕間 『小美浪家にて、つい』

あすみ 「ん、そろそろ昼飯の時間だな。作ったら食うか? 後輩」

成幸 「あ、ほんとですか。助かります、あすみさん」

宗二朗 (ナチュラルに名前呼びだと!?)

おわり

106以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 00:24:28 ID:7uI8KgCw
読んでくださった方ありがとうございました。

107以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 01:27:26 ID:DlsPH506
超乙!

108以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 12:53:31 ID:bslqJdkU
おつんこ

109以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 18:38:44 ID:8nynuKFY
おつ

110以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/07(火) 19:48:16 ID:20t1F.Ek
ワイトは先輩も好きです。

111以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/08(水) 12:54:38 ID:f/auRlPw


先輩の長編はどう落ち着くだろう

112以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/08(水) 23:49:38 ID:8fDF2L2Q
あしゅみー先輩のデレは良いなあ

113以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/10(金) 16:07:28 ID:gizsFNOQ
書いてくれてありがとう

114以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 22:59:28 ID:UawLMgbI
【ぼく勉】 うるか 「今週末、ちびっ子向けの水泳教室をやるんだ」

115以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:00:02 ID:UawLMgbI
文乃 「へぇ? 水泳教室?」

うるか 「うん。なんかこのあたりの子どもを集めて学校で教室を開くんだって」

うるか 「水泳部がやることになってさ。なんでも、地域コーケン活動ってやつらしいよ?」

理珠 「なるほど。感心なことですね」

成幸 「……うーん。まぁ、感心なことではあるけどなぁ」

成幸 「受験が差し迫った受験生にやらせることか、それ……?」

うるか 「あたしは息抜きになるからいいんだけどね」

うるか 「でも、滝沢先生もなんかぼやいてたなぁ……」

116以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:00:37 ID:UawLMgbI
………………少し前

滝沢先生 「……ってわけで、悪いが全員で水泳教室の講師役をやってくれ」

あゆ子 「えー? それほんとですかー?」

あゆ子 「私たち、一応受験生なんですけどー」 ブーブー

滝沢先生 「ああ、そうなる気持ちも分かるが、さすがに一、二年生だけじゃ足りないしな」

滝沢先生 「協力してくれ。頼む。この通りだ」

智波 「先生にそこまで言われちゃったら、協力せざるを得ないよねぇ」

うるか 「? あたしは元々協力するつもりだよ?」

あゆ子 「うぐっ……まぁ、私もべつに、構わないですけど……」

滝沢先生 「悪いな、お前ら。助かるよ」

あゆ子 「にしても、近隣の子ども向け水泳教室ねぇ。去年はこんなのやらなかったのに」

滝沢先生 「ああ、まぁ……」

滝沢先生 「今年は、色々あったからな。主に、武元がらみで」

うるか 「へ? あたし? あたしなんかしたっけ?」

117以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:02:01 ID:UawLMgbI
智波 「ああ……」 あゆ子 「なるほど……」

あゆ子 「つまり、うるかが軽く有名人になったから、学園の広報に利用しようって算段ですね」

滝沢先生 「うぐっ……。そうずけずけと言ってくれるなよ。学園長命令なんだよ」

智波 「先生も辛い立場ですよねぇ」

滝沢先生 「いや、逆に理解を示されても反応に困るんだけどな……」

うるか 「??? あたしがユーメイジン? どういうこと???」

あゆ子 「あ、うん。あんたはわかんなくていいよ」

智波 「うん。うるかはわかんなくていいよ。大丈夫だよ」

うるか 「?」

滝沢先生 (……ったく、学園長め。生徒に頼み込まなきゃいけないこっちの身にもなれっての)

滝沢先生 (武元のがんばりを大人の事情で利用するようで癪だが……)

滝沢先生 (水泳教室に来た子どもが、武元に憧れて学園に入学してくれれば……という広報の気持ちも分かる)

滝沢先生 (まぁ何にせよ、引き受けてしまった以上、最善を尽くさなきゃな)

滝沢先生 「……じゃあ、悪いが、今週末頼むな」

うるか 「はーい!」

118以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:02:41 ID:UawLMgbI
………………

うるか 「って感じでさぁ」

文乃 「あ、うん……」

理珠 「そうですか……」

成幸 「………………」

うるか 「? 何でみんなちょっと渋い顔をしてるの?」

文乃 「いや、何でもないよ。うるかちゃんはいつまでもそんなうるかちゃんのままでいてね」 ギュッ

理珠 「今日だけはよしよししてあげます。よしよし。うるかさんはいい子ですね」 ナデナデ

うるか 「へ? へ? 何これ何これ? 何のゲーム?」 ワクワク

成幸 (……ったく。あの学園長、ほんと利用するものは全部利用する、って感じだよな)

成幸 (あの人だけは、教育者っていうよりは経営者って感じだな)

成幸 (……まぁ、一ノ瀬学園の全教職員のことを考えれば、管理職としては妥当なのかな)

成幸 (うるかのがんばりを利用するみたいで、俺はあんまり、好きになれないけど……)

成幸 「……ま、何にせよ、やるならがんばれよ、うるか」

うるか 「へ? そんなのトーゼンっしょ! うるかちゃんがんばっちゃうかんね!」

119以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:03:38 ID:UawLMgbI
………………前日 唯我家

和樹 「行きたい行きたい行きたいー!」

葉月 「お願いー! かーちゃーん!!」

花枝 「そう言われてもね……。私は明日仕事だし、水希は登校日だし」

花枝 「一緒に行ってくれる人がいないのよ。ごめんね」

葉月 「うぅ……」 和樹 「でも、行きたい……」

成幸 「? 母さん、どうかしたのか?」

花枝 「ああ、成幸。こんなチラシがポストに入っててね」

花枝 「それで、ふたりが行きたいって言って聞かないのよ……」

成幸 「チラシ……?」

 『武元うるか選手にの泳ぎを見よう! 一ノ瀬学園主催、ちびっ子水泳教室!』 バーーーーン!!!

成幸 「………………」

成幸 (こ、これ、うるかが言ってたやつじゃないか……)

成幸 (学園長、露骨にうるかを推してきたな。こりゃ明日大変だぞ、うるか……)

成幸 (……ほんと、大変だろうな。きっと)

120以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:04:10 ID:UawLMgbI
成幸 「……で、葉月と和樹はこれに行きたいのか?」

葉月 「うん! うるか姉ちゃんに水泳教わりたい!」

成幸 「そうか……」 ニッ 「わかった。じゃあ、兄ちゃんが連れてってやるよ」

和樹 「!? ほんとに!?」

花枝 「成幸、行ってくれるの? 勉強は大丈夫なの?」

成幸 「ああ、まぁ。明日一日くらいなら問題ないよ」

花枝 「それに、あんた泳げないけど、大丈夫……?」 ジトーーーッ

成幸 「そ、その辺はまぁ、こいつらに万が一がないように、十分気をつけるよ……」

花枝 「……そう」 ニコッ 「じゃあ、よろしくね、成幸」

成幸 「おう!」

葉月 「やったー!!」 和樹 「明日はプール! プール!」

成幸 「………………」 (……まぁ、葉月と和樹のお願いを聞いてやりたいっていうのも、もちろんあるけど、)


―――― 『そんなのトーゼンっしょ! うるかちゃんがんばっちゃうかんね!』


成幸 (……こんなチラシ作られて、うるかが大丈夫かも、気になるしな)

121以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:06:21 ID:UawLMgbI
………………当日

ザワザワザワザワザワ……

うるか 「うおう……」

あゆ子 「うわぁ、こりゃまたすごい数のちびっ子たちだな……」

智波 「プールに入りきるのかな。こりゃ大変だよ」

池田 「先輩方が来てくれて良かったです。こんなの現役生だけじゃ絶対無理ですよぅ……」

あゆ子 (……まぁ、逆にうるかが来るって大々的に触れ込んだせいでもあるんだけどな)

あゆ子 (ったく、学校側はいい広報になってウハウハだろうな。バイト代くらいよこせっての)

うるか 「へへ、腕が鳴るぜー! 今日はみんなで力を合わせてがんばろうね!」

あゆ子 「ん? あ、ああ」 (うーむ。素直なうるかを見ると、自分が嫌なやつみたいに思えてくるな……)

あゆ子 「……よしっ、いっちょやるとするかー……って、ん?」

智波 「? あゆ子、どうかしたの?」

あゆ子 「いや……私の見間違いか? あの奥にいる、ちびっ子ふたりを連れた若い男……」

あゆ子 「あれ、唯我じゃないか?」

うるか 「………………」 ハッ 「……へぇ!? 成幸!?」

122以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:07:14 ID:UawLMgbI
………………

成幸 「すごい人数だな。改めて、うるかってすごいんだな……」

葉月 「とーぜん! だって、うるか姉ちゃんは有名人だから!」

成幸 「ほんとになぁ。近隣の子どもたち、うるかのことみんな知ってるんだなぁ」

成幸 「……ほんと、すごい奴だな、うるかは……――」

うるか 「――えへへ。改めて言われると、さすがに照れるね」

成幸 「へ……?」 ビクッ 「う、うるか!? びっくりした!」

うるか 「それはこっちの台詞だよ成幸ー! 来るなら来るって教えてくれればよかったのにー!」

成幸 「あ、ああ。悪い悪い。あんまり意識させない方がいいかな、って思ってさ」

和樹 「うるか姉ちゃんだー!」 葉月 「有名人だー!」

成幸 「俺は葉月と和樹の付き添いだから、気にするなよ」

「ほんものだー!」  「かわいいー!」  「あくしゅしてー!」  「あとでサインくださいー!」

うるか 「わっ……わわっ……」 (ち、ちびっ子たちに囲まれちった……)

成幸 「ほら、うるかは有名人なんだから、お客さんのほうに来たらそりゃ大変だろ」

うるか 「そ、そだね。じゃあ、あたし一回戻るね。また後でね、成幸!」

123以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:08:03 ID:UawLMgbI
………………水泳教室開始

あゆ子 「ほーら、まず水バシャバシャして……」

あゆ子 「冷たくない? じゃあ、とりあえず入ってみようか。おいで」

智波 「ふふ、あゆ子って子どもには優しいんだね」

あゆ子 「う、うるさいな。ほら、智波の担当の子たちも来たぞ」

智波 「はいはーい。じゃあきみたちもバシャバシャして水に慣れよー。おいでー」

うるか (川っちも海っちも頑張ってるなぁ。よーし、あたしもがんばるぞー)

うるか 「あたしの担当の子どもたちは……」

和樹 「はーい!」 葉月 「わたしたち!」

うるか 「!?」 (成幸とみずきんとこのチビちゃんたち!)

うるか (これは……)

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

うるか (上手に教えられれば、成幸の好感度アップも狙えるかも……!?) ギラリ

うるか (よーし! がんばっちゃうぞー!)

124以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:08:48 ID:UawLMgbI
………………プールサイド 保護者席

成幸 (うるかの奴、すごい張り切ってるな)

成幸 (それにしても、うるかが教えるのが葉月と和樹とは。変な因果だな……)

滝沢先生 「よう、唯我。お前も来てたのか」

成幸 「あ、滝沢先生。おはようございます」

成幸 「今うるかに教わってる子どもたち、うちの弟妹なんですよ」

滝沢先生 「ああ、葉月ちゃんと和樹ちゃんか。大きくなったな」

成幸 「……? 何であのふたりの名前を……?」

滝沢先生 「ああ、いや、な……」

滝沢先生 「こういう物言いは適切ではないかもしれないが……まぁ、お前ももう三年生だから、いいか」

滝沢先生 「唯我先生――お前のお父上には、私も新任の頃散々お世話になってな」

成幸 「あっ……」 (そっか。滝沢先生も父さんのこと……)

滝沢先生 「葬儀のとき以来だが、元気に育っているようで何よりだ」

成幸 「……はい。おかげさまで」

125以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:09:42 ID:UawLMgbI
滝沢先生 「……唯我、お前、教育大学を目指しているんだってな」

成幸 「……はい」

成幸 「なれるか分からないですけど、学校の先生になりたいので」


―――― 『ある人が そうしてくれたように』

―――― 『人に寄り添って教えられるような教育者を目指したい』


滝沢先生 「……そうか」

ニコッ

滝沢先生 「なれるさ。お前なら。お前は、唯我先生にそっくりだからな」

成幸 「滝沢先生……」

滝沢先生 「……ま、教職取るには、大学でも体育は必須だからな」

滝沢先生 「高校卒業までに、少しは運動神経磨いとけよ?」

成幸 「うっ……ぜ、善処します……」

成幸 「ん……?」

126以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:10:17 ID:UawLMgbI
………………プール

うるか 「よーし、プールに顔はつけられるみたいだから、身体を伸ばして浮かんでみようか」

葉月&和樹 「「はーい!」」

ザブン……

ブクブクブクブク……

うるか 「わー! 沈んでるー!」

ザバァ!!!

葉月 「ぷはぁ! ふ、不思議だわ……」

和樹 「水に沈むのって楽しいな!」

うるか 「え、えっとね、チビっこたち。くるっとすると水に沈んじゃうんだよ」

うるか 「だから、顔を水につけたら、ピーンってしてみようか」

葉月 「くるっ?」 和樹 「ピーン?」

うるか 「……えっと、えっと……」

うるか (そ、そういえばあたし、成幸に泳ぎを教えたときも上手くできなかったんだったー!)

うるか (ど、どどど、どうしよう!?)

127以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:11:54 ID:UawLMgbI
………………プールサイド

成幸 「………………」

滝沢先生 「………………」

ハァ……

滝沢先生 「……まぁ、分かってたことだけどな」

成幸 「だったらうるかひとりにしないであげてくださいよ……」

滝沢先生 「あいつには人に教える能力も必要だよ。将来を見据えるならな」

滝沢先生 「そのいい訓練になってくれればと思ったが……うーむ。難しいな」

滝沢先生 「とはいえ、私は全体を見ていなければならないし、水泳部で空いている奴もいない」

滝沢先生 「さて、どこかに、泳ぎは苦手だけど、困ってる人を見ると放っておけない奴はいないかな」

成幸 「……言われるまでもないですよ。俺、手伝ってもいいんですね?」

滝沢先生 「助かるよ、唯我。頼む」

タタタタタ……

滝沢先生 「……はぁ、嫌なもんだな」

滝沢先生 「生徒を利用している時点で、私も結局学園長先生と同じ穴の狢、か」

128以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:13:04 ID:UawLMgbI
………………プール

葉月&和樹 「「うるか姉ちゃん、次は、次は?」」 キラキラキラ……!!!!

うるか (うぅ……純粋な視線が痛いよ……)

うるか (まだ浮くこともできてないのに、次も何もないよー!)

ザブン……

うるか 「へ? ざぶん?」

成幸 「よう、うるか」

葉月&和樹 「「兄ちゃんだー!!」」

うるか 「へぇ!? 成幸!? プール入って大丈夫なの!?」

うるか 「っていうか何でプール入ってきたの!?」

成幸 「さすがに子ども用に浅くしたプールだから大丈夫だよ。多分……」

うるか (それでも多分なんだ……)

成幸 「俺もお前らを見てたらプール入りたくなっちゃってさ。ついでに手伝うよ」

うるか 「えっ、で、でも……」

成幸 「俺もこの学園の生徒なんだから、いいんだよ。手伝わせてくれ、うるか」

129以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:13:43 ID:UawLMgbI
うるか 「……う、うん。そこまで言うなら……」

成幸 「よし、じゃあ、まずは伸びて浮くところからだな」

葉月 「うん。でも、沈んじゃうの」

和樹 「ぶくぶくぶくー、って!」

成幸 「うんうん。じゃあ、とりあえず顔をつけたら、手足を伸ばしてみな。お腹を支えてあげるから」

成幸 「よいしょっ、と……」

プカプカプカプカ……

葉月 「……ぷはっ」 キャッキャ 「沈まなかったー! ちゃんとできたー!」

成幸 「多分、身体が丸まっちゃうから沈んじゃうんだよ」

成幸 「もう一回お腹支えてあげるから、手足を伸ばす感覚を覚えるんだぞ」

葉月 「はーい!」

成幸 「……ほら、うるかも、和樹にやってあげてくれ」

うるか 「へ……!? あ、うん! じゃあ、かずきんも」

和樹 「うん!」

130以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:14:26 ID:UawLMgbI
プカプカプカプカ……

成幸 「おー、ふたりとも上手だぞー……ん?」

うるか 「………………」 ジーーーッ

成幸 「ん? どうかしたか、うるか?」

うるか 「……成幸、泳ぐの苦手だよね?」

うるか 「なのに、どうしてちゃんと教えられるの……?」

成幸 「へ? いや、ちゃんと教えられてはいないと思うけど……」

成幸 「……逆に、まともに泳げないから、かな」

うるか 「……?」

成幸 「俺はそもそも運動神経が足りてないからまともに泳げないけど、こいつらは違うから」

成幸 「補講で散々教えてもらったことを、こいつらに分かりやすく伝えるだけだからさ」

成幸 「それは逆に、泳げない俺だからこそできることかな、って」

うるか 「そっか……」

131以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:15:11 ID:UawLMgbI
葉月 「ぷはっ! ちゃんと浮いたよ、兄ちゃん!」

成幸 「そうだな。すごいぞ、葉月」

成幸 「じゃあ、次はお腹の支えなしで浮いてみようか」

葉月 「うん!」

うるか 「………………」

うるか (やっぱり、成幸はすごいな……)

うるか (……それに比べて、あたしは……)

ハッ

うるか (……いやいやいや! 落ち込んでる暇はないっしょ! がんばんないと!!)

132以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:16:03 ID:UawLMgbI
………………

うるか 「次は手を引くから、少し進んでみよう!」

葉月 「はーい!! がぼがぼがぼ……」

うるか 「わー! また沈んでるー!」

成幸 「ほら、葉月。手足を伸ばした感覚を忘れるなー?」

葉月 「はーい、兄ちゃん!」

プカプカプカ……

成幸 「おお、葉月。上手だぞ。和樹もちゃんと浮けてるな。すごいすごい」

和樹 「ぷはぁ! やった、兄ちゃん! 少し進んだよ!」

成幸 「そうだな。手を引いてもらえれば、もうちゃんと伸びて浮けるようになったな」

うるか 「むぐぐぐ……」

うるか (ま、まだまだ! 次はもっとうまくやるぞー!)

133以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:16:49 ID:UawLMgbI
………………

うるか 「じゃあ、ひとりで浮けるようになったところで、次はバタ足の練習だよ!」

バチャバチャバチャバチャ……

和樹 「ぷはっ……。あり? あんまり進んでない……」

うるか 「かずきん、バタ足がね、バチャバチャって感じなんだよ」

うるか 「それだと進まないから、パシャパシャって感じにしてみて」

和樹 「???」

うるか 「あ、えっと……えっと……」

成幸 「……俺が昔よく言われたのは、こんな感じかな」

成幸 「和樹、ちょっとプールサイドに手をついてみな」

和樹 「はーい!」

成幸 「で、ちょっと足の先持つぞー? 足の先を、こうやって……」

成幸 「親指と親指を擦り合わせる感じで……」

成幸 「ここを曲げないで、ここを動かして、バタ足するんだ」

134以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:17:28 ID:UawLMgbI
和樹 「……? えっと、こう?」

バシャバシャバシャ……

成幸 「そうそう。そんな感じだ。良い調子だぞ、和樹」

コソッ

成幸 「……子ども相手だから、難しい言葉とか表現は分からないし、こんな風に身体に触って直接教えてもいいかもな」

成幸 「大人相手にはできないかもしれないけど」

うるか 「あ……う、うん。じゃあ、はづきんもバタ足の練習してみようか!」

葉月 「はーい!」

うるか 「足を伸ばして……伸ばしたまま、こうやって……」

葉月 「おー……」

バシャバシャバシャ……

うるか 「……うん。良い感じだよ、はづきん!」

135以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:18:09 ID:UawLMgbI
………………

うるか 「………………」

うるか (……はぁ。あたし、やっぱりダメダメだな)

うるか (がんばってもがんばっても、空回りしてる気しかしないよ……)

成幸 「おー! ふたりともバタ足で進めるようになってきたなー。すごいすごい!」

葉月&和樹 「「えへへー」」

ピンポンパンポン

 『休憩時間に入ります。プールから上がってください』

成幸 「ん、もう休憩時間か。じゃあプールから上がろうか」

葉月&和樹 「「はーい!」」

成幸 「ほら、うるかも」

うるか 「へ? あ、う、うん。そだね……」

成幸 「……?」

成幸 (うるか……?)

136以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:18:48 ID:UawLMgbI
………………ベンチ

うるか 「………………」

うるか 「……はぁ」

うるか (あたし、何やってんだろ。全然うまくできなかったよ……)

智波 「うーるかっ」 あゆ子 「よっ」

うるか 「? 海っち、川っち……」

智波 「見てたよー、うるか」 ワクワク 「唯我くんと一緒に子どもたちに教えてたでしょー」

あゆ子 「どうだ? ちゃんと唯我にアピールできたか?」

うるか 「………………」

うるか 「……えへへ、むつかしいかな。なかなかうまくいかないね」

うるか 「成幸に手伝ってもらって、なんとかなったって感じだよ。それどころじゃなかった、かな」

あゆ子 「うるか……」

智波 「あ……ご、ごめんね? 浮かれたこと聞いちゃって……」

うるか 「ううん。大丈夫。こっちこそごめんね」

うるか 「……ちょっと飲み物でも買ってくる。またね、海っち、川っち」

137以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:19:33 ID:UawLMgbI
………………

うるか 「……はぁ。ふたりに変なところ見せちゃったな」

うるか 「あたしから元気取ったら何が残るんだよー、ってね……」

うるか 「はは……」 ズーン (……自分で言っててヘコんできたよ)


―――― 『……逆に、まともに泳げないから、かな』

―――― 『補講で散々教えてもらったことを、こいつらに分かりやすく伝えるだけだからさ』

―――― 『それは逆に、泳げない俺だからこそできることかな、って』


うるか 「………………」

うるか 「……ほんと、成幸はすごいな……――」

成幸 「――へ? 俺がどうかしたか?」

うるか 「へぇ!?」 ガバッ 「な、成幸!?」

成幸 「よっ。どうした、うるか?」

うるか 「……ベ、べつに、何もないよ」

138以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:20:08 ID:UawLMgbI
成幸 「そうか? ならいいけど……」

成幸 「……ほら、葉月と和樹がお世話になったお礼に奢ってやるよ。スポドリでいいか?」

うるか 「へ? い、いいよ。あたし何にもしてないし……」

成幸 「何もしてないことはないだろ。ふたりとも大喜びだったぜ?」

成幸 「ちなみに今は海原と川瀬に遊んでもらってて大喜びだ。ほんと、連れてきてよかったよ」

うるか 「でも、あたしは、ほんとに何もできてないし……」

成幸 「………………」 フゥ 「……じゃ、スポドリでいいな」

スッ

成幸 「……ほら」

うるか 「あっ……」

うるか 「……ありがと、成幸」

成幸 「どういたしまして」

139以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:20:42 ID:UawLMgbI
………………

成幸 「………………」

うるか 「………………」

成幸 「……何に落ち込んでるんだ?」

うるか 「………………」 ハァ 「……やっぱり分かる? さすが成幸だね」

成幸 「いつも元気なお前が静かだからな。そりゃ分かるよ」

成幸 「……どうしたんだ?」

うるか 「反省中、なんだ……」

成幸 「反省?」

うるか 「……全然、うまく教えられなかったな、って」

うるか 「トクイな水泳のはずなのに、全然うまく教えられなかったな、って」

うるか 「せっかく来てくれた子どもたちなのに、成幸がいなかったら大変なことになってたよ……」

うるか 「だから、反省してるんだ」

成幸 「……そっか」

140以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:21:19 ID:UawLMgbI
うるか 「……もっと、成幸みたいに」

成幸 「ん?」

うるか 「成幸みたいに教えられたらいいな、って思うのに、全然だね」

うるか 「へへへ、やっぱり無理なのかな。あたしバカだし」

うるか 「がんばってみたけど、うまくいかないし、やっぱりあたしは……」

うるか 「……成幸みたいには、なれないのかな」

成幸 「………………」

成幸 「……まぁ、俺みたいになる必要はないと思うけどさ、」

成幸 「できるよ。うるかなら。うるかなら、絶対教えられるようになるよ」

うるか 「……? 成幸?」

成幸 「だってうるかはさ、」

ニコッ

成幸 「“できない奴” の気持ちが分かるじゃないか」

うるか 「“できない奴” ……?」

141以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:22:01 ID:UawLMgbI
成幸 「うん。うるかも、英語が苦手で、なかなか勉強進まなかっただろ?」

成幸 「水泳で伸び悩んだときもあっただろ?」

うるか 「う、うん。そうだけど……」

成幸 「そのとき辛かっただろ? 大変だっただろ? 悔しかっただろ?」

うるか 「……うん」

成幸 「それが分かるなら大丈夫だよ。お前はその気持ちが分かるから、大丈夫」


―――― 『なあ成幸 今の悔しさだけは忘れちゃならねえぞ』

―――― 『お前は できない奴をわかってやれる男になれ』

―――― 『「できない」 気持ちがわかるのは できなかった奴だけだからな』


成幸 「……今日はうまくいかなかったかもしれないけど、いつかきっとうまくできるよ、うるか」

ニッ

成幸 「だからまた、葉月と和樹に泳ぎを教えてやってくれよ」

うるか 「成幸……」

うるか 「うん、わかったよ! うるかちゃんに任せなさい!」

142以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:22:31 ID:UawLMgbI
うるか 「………………」

ドキドキドキドキ……

うるか 「……あのときと、同じだ」

成幸 「へ?」


―――― 『一度負けたくらいで そこまで悔しがれるなんて すごく価値のある才能だと思うけどな』

―――― 『俺には何もないから うらやましいよ』

―――― 『そこまで本気になれるものがあるって すげぇ幸せなことだもんな』


うるか (……あのときと、同じ。成幸は、いつだってあたしが本当にほしい言葉をくれるんだ)

うるか (あたしのこと、励まして、勇気づけて……元気をくれるんだ……)

うるか 「……ううん。なんでもない。えへへ、ありがとね、成幸」

成幸 「? ん、おう……」

うるか (……だから、好きだよ)

カァアアアア……

うるか (大好きだよっ、成幸!)

143以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:24:17 ID:UawLMgbI
………………

学園長 『皆様、本日の水泳教室は楽しんでいただけたでしょうか?』

学園長 『未来のトップアスリートを目指して、皆さんが本校に入学してくれるのを待っています』

滝沢先生 (……ったく。急に来たかと思えば、広報活動か)

滝沢先生 (熱心なことだね、ほんと。まぁ、学園のためといえば、何も言えないんだけどな)

学園長 『それでは、最後になりますが、本校が誇るトップスイマー、武元うるか選手によるデモンストレーションです!』

ワーワーワー!!! カッコイイーー!! カワイイー!! タケモトセンシュー!!! ガンバレーーー!!!

うるか 「やぁやぁー! どうもありがとうー!」

成幸 (ほんと、すごい人気だな、うるかの奴……)

うるか 「………………」

シーーーーン

成幸 (……真剣な泳ぎとなるや、表情が変わるんだもんなぁ)

成幸 (大人も子どもたちも、一斉に静かになった。その場を変えるような雰囲気を持っている、)

成幸 (ホンモノの、アスリート――――)

――――――ピッ…………パシャン……

144以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:25:07 ID:UawLMgbI
成幸 「………………」

ゴクリ

成幸 「……すげぇ」

葉月 「ふぁー……」 和樹 「はやいなぁ……」

成幸 (……それは、その場を支配するような泳ぎだった)

成幸 (競技会のときとは違う、ある種余裕のある伸びやかな泳ぎは、むしろ、)

成幸 (うるかの強さを誇示するかのようで……)

成幸 (そしてそれは、それ以上に……)

成幸 (……ただただ、美しくて)

成幸 (きっと、その場にいた誰もが、改めて垣間見ただろう)

成幸 (武元うるかというアスリートの、輝かしい未来を)

145以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:25:46 ID:UawLMgbI
………………

うるか 「……ぷはぁ」

うるか (まー、こんなもんかなー)

うるか (滝沢先生には、それなりに本気で泳げって言われたから、まぁまぁがんばったつもりだけど……――)

パチパチパチパチパチパチ!!!!

うるか 「……へ?」 (拍手……!?)

うるか (お、泳いで拍手されるって初めてだよ。なんか……恥ずかしいな……///)

うるか 「あっ……」

成幸 「……」 グッ

うるか (……成幸。ちゃんと見ててくれたんだ)

うるか 「………………」

うるか 「えへへっ……」

146以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:26:17 ID:UawLMgbI
………………

「すごいね、たけもとせんしゅ!」 「かっこいいね!」

「それなのにきれいでかわいくて、アイドルみたい……」

「ねえねえお母さん! わたし、たけもとせんしゅみたいになりたい!」

葉月 「……うーん。わたしも目指そうかな……」

和樹 「ならまずは水希姉ちゃん越えないとなー」

成幸 「………………」 クスッ (……なんだよ、もうできてるじゃないか、うるか)

成幸 (今日は、あんまりうまく教えられなかったかもしれないけど、それでも……)

成幸 (泳いだだけで、こんなに多くの子どもたちに、たくさんのことを教えられてるんだ)

成幸 (……なぁ、うるか。お前は俺みたいになりたいなんて、嬉しいこと言ってくれるけどさ、)

成幸 (俺は……)

グッ

成幸 (……お前みたいになれるように、がんばってるんだよ)

成幸 (お前は俺の、憧れる人の、ひとりだから)

おわり

147以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:26:58 ID:UawLMgbI
………………幕間  「逆」

水希 「………………」 ブスーーーッ

成幸 「? 水希の奴不機嫌そうだけど、どうしたんだ?」

花枝 「どうも、葉月と和樹に自分が教える前に他人に水泳を教えられたから、ご機嫌ナナメみたいなの」

成幸 「我が妹ながらめんどくさい奴だな……」 (なるほどなぁ……)

花枝 「成幸。逆、逆」

成幸 (……うーん。仕方ない。ちょっとご機嫌取ってやるか)

成幸 「……あーあ、葉月と和樹も少し泳げるようになったし、俺が泳げないままじゃ長男の沽券に関わるなぁ」

成幸 「水希、今度水泳教えてくれないか?」

水希 「!?」 パァアアアアアア……!!! 「プールデート!? それとも海デート!?」

水希 「とりあえず室内プールデートだね! 来年の夏は海に行こうね!!」

成幸 「……お、おう」

花枝 「我が娘ながら少し怖いわね……」 (ほんと、仲良いわね)

葉月 「母ちゃん、」 和樹 「逆、逆」

おわり

148以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/11(土) 23:27:36 ID:UawLMgbI
読んでくださった方ありがとうございました。

149以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/12(日) 01:40:34 ID:A/pleFt.
アニメ見て改めて思ったがあれだよな
妹ぐうかわ

150以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/12(日) 02:30:12 ID:ejYXBOmc
おつ

151以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/12(日) 21:13:54 ID:WeWBxLmg
あすみー先輩もっともっと読みたいな

152以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/13(月) 00:36:13 ID:IV/CI4Dg
向こうに書けなかったからこっちに乙
脳内再生余裕過ぎてビビる
母の日との相性最悪だと思ってたけど、そういうパターンがあるのね
流石だわ

153以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/21(火) 23:22:03 ID:fSGKTlJQ
おつやで

154以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/27(月) 00:19:52 ID:CjO02D7I
すまん、妹かわいすぎんか?

155以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:53:02 ID:AmFXmFmY
【ぼく勉】 真冬 「今週末、家を徹底的に掃除しようと思うの」

156以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:53:37 ID:AmFXmFmY
成幸 「あ、はい、分かりました。何時に伺えばいいですか?」

真冬 「……?」 ジトッ 「……君は、私のことを何だと思っているのかしら」

成幸 「へ?」

真冬 「私は教員よ? これ以上、生徒に家事の手伝いをさせるわけにはいかないわ」

真冬 「当然、やるのは私ひとりで、よ。私の部屋なのだから当たり前ね」

成幸 「はぁ……? まぁ、自分で掃除するのはいいことだと思いますけど……」

成幸 「なぜそれを俺に……?」

真冬 「これは私なりの、あなたに甘えることへの決別の決意表明なの」

真冬 「あなたに宣言することで、これ以上あなたに甘えることがないように自分を戒めるのよ」

真冬 「……と、いうことで」

真冬 「覚悟しておきなさい、唯我くん。私はもう、きみに惨めな姿をさらすことはないのよ」

成幸 (何を覚悟しろというんだろう……?)

真冬 「今度、きれいになった部屋にご招待して差し上げるわ」

成幸 (あ、掃除の手伝い抜きで家に伺うのはありなんだ……)

157以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:54:14 ID:AmFXmFmY
………………週末 HighStage

成幸 「ありがとうございましたー! いってらっしゃいませー!」

成幸 「ふー……」 (今日は本当にお客さん多いな。急に呼ばれるわけだよ……)

あすみ 「よ、後輩。雨だってのに、忙しいからって急に呼んで悪かったな」

成幸 「いえ、気にしないでください。頼られるのは嬉しいですから」

成幸 「最近、緒方たちもできるだけ自分で勉強しようとして、なかなか頼ってくれなくて……」

成幸 「桐須先生も……」


―――― 『これは私なりの、あなたとに甘えることへの決別の決意表明なの』


あすみ 「あん? 真冬センセがどうかしたのか?」

成幸 「あ、いえ、なんでもないです」

成幸 「とにかく、最近頼られることが少なくて落ち着かなかったのでちょうど良かったです」

あすみ 「お、おう。そうか、そりゃ良かった……のか?」

あすみ (なんかこいつ、将来付き合う女を次から次へとダメ人間にしそうだな……)

あすみ (……し、仕方ねーなぁ。被害者を出さないためにも、アタシがこいつのこともらってやるしかねーか///)

158以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:55:11 ID:AmFXmFmY
成幸 「じゃあ、俺そろそろトイレ掃除入りますね!」

あすみ 「ん、おう。じゃあ頼むわ」

成幸 (危ない危ない。先生のことを話すところだった……)

成幸 (小美浪先輩に話したら、また先生がからかわれてしまう)

成幸 「………………」


―――― 『今週末、家を徹底的に掃除しようと思うの』


成幸 (……先生、大丈夫かな。ちゃんとできてるかな)

成幸 (また部屋が嵐の後のようにならないといいんだけど……)

成幸 (って、人の心配してる場合じゃないな。急に呼ばれたとはいえ、バイト中なんだから)

成幸 (がんばらないと。よーし、トイレ掃除気合い入れてピッカピカにするぞ!)

159以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:56:11 ID:AmFXmFmY
………………閉店後

成幸 (結構雨降ってたけど、結局閉店まで店は混み合ったままだったな……)

ヘトヘト

成幸 (……つかれた)

マチコ 「ごめんね、唯我クン。せっかくのお休みなのに、ずっとバイト入ってもらっちゃって……」

マチコ 「受験生なのに、悪いことしちゃったよね……」

成幸 「いえ、気にしないでください。お役に立てたなら何よりです」

マチコ 「唯我クン……」 キューン 「本当にいい子だねぇ、唯我クンは。そういうところ、大好きっ」

成幸 「は、はい。ありがとうございます……」 ドキドキ (気軽に大好きとか言わないでほしいなぁ……)

マチコ 「今日の出勤分、特別手当も足しておくからね。進学費用の足しにしてね」

店長 「えっ!?」

成幸 「へ? いいんですか?」

マチコ 「もちろん!」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「いいですよね、店長?」

店長 「あ、ああ。もちろんだ。好きにつけてくれ……」 ガックリ

成幸 (マチコさん強い!!) キラキラキラ

160以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:56:41 ID:AmFXmFmY
マチコ 「店内もトイレも、忙しいのにピッカピカにしてくれたしね」

マチコ 「給料日楽しみにしててね、唯我クンっ」

成幸 「はい、ありがとうございます、マチコさん!」

成幸 (……ピッカピカ、かぁ)

成幸 (大丈夫かな、桐須先生。ちゃんと掃除できてるかな……)

あすみ 「ほら、受験生だなんだっていうなら、もう解放してやれよ、マチコ」

あすみ 「……っていうか、それ言うならアタシも受験生なんだけどな?」

マチコ 「やだなぁあしゅみー。ナンバーワンのあしゅみーの給料をこれ以上上げたら、うちの店潰れちゃうよ」

あすみ 「……調子いいこと言いやがって。ま、いいけどな」

あすみ 「で、後輩、どうだ? この後、どこかで一緒に勉強、とか……」

あすみ 「今日親父は学会で遅くまで帰ってこないから、うち来るか?」

ドキドキドキドキ……

あすみ 「今日の詫びに晩飯も作るし、何だったら泊まってってくれてもいいし……」

マチコ (!? 今日のあしゅみー積極的! かわいい〜!)

161以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:57:31 ID:AmFXmFmY
成幸 「………………」 (心配だ。また部屋をグチャグチャにしてないだろうか……)

あすみ 「……? 後輩?」

成幸 「……へ?」 ハッ 「あ……すみません。少し考え事してて、聞いてませんでした」

成幸 「もう一回言ってもらってもいいですか?」

あすみ 「………………」

成幸 「……先輩?」

あすみ 「……ふん。知らねー」 スタスタスタスタ……

成幸 「へ? 先輩? どうしたんですか?」

あすみ 「知らねーって言ってるだろ。ついてくんな。また今度な!」 スタスタスタスタ……

成幸 「行っちゃった……なんだったんだろ……?」

ポン

成幸 「……? マチコさん?」

マチコ 「今のは唯我クンが悪いよ……」 シミジミ……

店長 「……うむ」 シミジミ……

成幸 「店長まで!?」

162以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:58:03 ID:AmFXmFmY
………………帰路

成幸 (あしゅみー先輩、何だったんだろ)

成幸 (俺が話を聞いてなかったせいで怒らせちゃったし、悪いことしちゃったな……)

成幸 (今度謝らないと……)

成幸 「………………」

テクテクテクテク……

成幸 「……ああ、もう」

成幸 (ここ通ったら家まで遠回りのはずなのに。雨も降ってるから、早く帰りたいってのに、何で俺は……)

成幸 (……まぁ、理由なんて分かりきってるけどさ)


―――― 『今週末、家を徹底的に掃除しようと思うの』


成幸 (この角を折れたら、マンションの入り口だ)

成幸 (もしあの人が困り果てていたら、きっと、入り口前に腰かけているはず……)

スッ………………

成幸 「………………」 (……いない、か。まぁ、雨だしな)

163以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:58:44 ID:AmFXmFmY
成幸 (……不思議な気持ちだ)

成幸 (ホッとしたような、肩すかしを食らったような……複雑な気分)


―――― 『私は教員よ? これ以上、生徒に家事の手伝いをさせるわけにはいかないわ』

―――― 『当然、やるのは私ひとりで、よ。私の部屋なのだから当たり前ね』

―――― 『これは私なりの、あなたに甘えることへの決別の決意表明なの』

―――― 『あなたに宣言することで、これ以上あなたに甘えることがないように自分を戒めるのよ』


成幸 (まぁ、あそこまで言っておいて、俺に頼るようなことはしないか……)

成幸 (……何やってんだ、俺は。早く帰ろ……)

成幸 「………………」 (でも、本当に大丈夫だろうか……)

トコトコトコトコ……

成幸 「………………」 (逆に、俺に頼ることができないから、余計とんでもないことになっているんじゃ……)

…………ピタッ

成幸 「……ちょっとだけ」

成幸 「ちょっとだけ、様子を見るだけだから……」

164以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 22:59:27 ID:AmFXmFmY
………………マンション二階廊下 201号室前

成幸 「………………」

成幸 (……いやいやいや!? 結局部屋の前まで来ちゃったぞ!?)


―――― 『違います誤解です!! 俺はここの住人の友人で……ッ!!』

―――― 『ストーカーはみんなそう言うんだよ!』


成幸 (いかん! 人の家の前で突っ立ってるなんて……)

成幸 (古橋のときみたいに、またいらん誤解を受けるかもしれない)

成幸 (もう帰ろう……)

成幸 「………………」

ボソッ

成幸 「……大丈夫、だよな」


 『キャーーーーーーーー!!』


成幸 「……へ?」

165以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:00:05 ID:AmFXmFmY
成幸 (先生の部屋から、悲鳴……?)

成幸 「………………」

成幸 「……いやいやいや! 迷ってる場合じゃない!!」

成幸 「先生!? 先生、大丈夫ですか!?」

ガチャッ!!

成幸 (あっ、鍵空いてる!!)

成幸 「すみません、先生! 入ります!!」

バン!!!!

成幸 「先生!」

真冬 「あ……唯我くん!!」

成幸 「……!?」

成幸 「せ……先生?」

カァアアアア……

成幸 「な、何で、バスタオル一枚なんで……――」

――――――タタタタタ……!!! ガバッ!!!! ムギュッ!!!

166以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:00:44 ID:AmFXmFmY
成幸 「うぺぇ!?」

真冬 「お……おおお、恐ろしいわ……」

ムギュッムギュッ!!!!

成幸 (れ、冷静に、今の状況を、分析すると……)

成幸 (バスタオル一枚を身体に巻き付けた、先生が……)

成幸 (俺の姿を認めるや否や、走り寄ってきて、抱きついて……)

成幸 (げ……玄関で、押し倒されて……いる……)

成幸 「………………」

成幸 (……なんだこの状況!?)

成幸 「きっ、桐須先生! 一体どうしたんですか!?」

成幸 「……っていうか、離れてください! 色々とマズいです!」

真冬 「む、無理……。腰が抜けてしまったわ……」

成幸 「な、なんかすごくデジャヴるんですが……まさか……」

カサカサカサカサカサカサ……

成幸 「……ああ、やっぱり出たんですね、G……」

167以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:01:31 ID:AmFXmFmY
成幸 「っていうか、それにしたって、何で裸なんですか!?」

真冬 「シャワーを浴びていたのよ! そうしたら排水溝から……」


―――― G『やぁ』


真冬 「って……」 ガタガタガタガタ

成幸 「ああ、あいつら水回り移動しますからね。マンションとかだと排水溝から出てくるらしいですね」

真冬 「戦慄! 恐ろしいことを言わないで!!」

ハラ……ハラハラリ……

成幸 「……!?」 (せ、先生のバスタオルの締めがゆるくなりつつある……)

成幸 (これはマズい! 色々な意味でまずい!)

成幸 (っていうか今まさにダイレクトに感じられる先生のやわらかい肌とか濡れた髪とかがヤバいのに!)

成幸 (その上バスタオルがはだけたりしたら……それ以前に、ないとは思うけどこんなところを誰かに見られたら……――)


美春 「――――――こんにちはー、姉さまー!! 美春がサプライズで参りましたよー!」 バーーーン!!!


成幸 「!?」

168以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:02:12 ID:AmFXmFmY
美春 「……へ?」

美春 「ね……姉、さま……? 唯我、成幸、さん……?」

ポワンポワンポワンポワン……


―――― 成幸 『せ、先生、ダメですよ。こんなところで……///』

―――― 真冬 『ふふ。ダメなことないわ、唯我くん。私、もうベッドまで我慢できないもの……』

―――― 成幸 『あっ……せ、先生……』

―――― 真冬 『ベッドではできない悪いコト、教えてアゲル……』


……ポワンポワンポワンポワン

美春 「………………」

成幸 「み、美春さん? 違います。これは、違うんですよ?」

美春 「………………」

成幸 「……あ、あの、美春さん?」

169以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:03:02 ID:AmFXmFmY
美春 「……うわぁああああああああああん!!! 美春の姉さまがーーーー!!」

美春 「すっかりイケない女教師になってしまいましたーーーーー!!!」

美春 「悪いコトってどんなコトですかーーーーーーー!?」

タタタタタタ……!!!

成幸 「えっ、ちょっ、待って!! 待ってください!! 美春さん!!」

成幸 「悪いコトって何の話ですかーーーー!!」

ムギュッ

成幸 「はうぁ!?」

真冬 「き、禁止! 何でもするから!! 私を置いていかないで!!」

成幸 (この人はこの人で何でもとか言い出したぞ!?)

成幸 (っていうか……///)

成幸 「せ、先生、どこも行かないですから、あんまりしがみつかないでください!!」

成幸 「い、色々と……!! 当たってますから!!」

170以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:03:39 ID:AmFXmFmY
カサカサカサカサカサカサ……

真冬 「ヒッ!? 音がするわ! 動いてるわね!? 動いてるのね!?」

ムギュムギュムギュムギュッ!!!!

成幸 「い、いやいや、変に動かないでください!! 当たってるんですってば!!」

真冬 「当たってる!? (Gが)当たっているの!?」

成幸 「はい! ですから当たってます!! (Eが)当たってるんですって!!」

真冬 「きゅうっ……」

……クタッ

成幸 「へ……? 先生!? ちょっと、しっかりしてください! 先生!?」

真冬 「………………」

成幸 「先生ーーーー!! しっかりしてください!!!」

171以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:04:25 ID:AmFXmFmY
………………

真冬 「………………」

成幸 「………………」

オホン

真冬 「さっきは取り乱してしまって申し訳なかったわね」

成幸 (身だしなみを整えて、今さら体裁を保とうとしている……)

成幸 (まぁ、ゴキは退治したし、もう大丈夫だとは思うけど……)

真冬 「虫が出て、少し動揺してしまったわね。もう大丈夫よ」

成幸 「いや、えっと……」

グッチャァァアアア……

成幸 「何も大丈夫じゃないと思うんですが……。あの、今日は掃除をしていたのでは……?」

真冬 「し、していたわ。していたけれど……」

真冬 「やっぱり、なかなかどうして、うまくいかなくて……」

成幸 「……いや、掃除終わってないのに何でシャワーを浴びようとしたんですか」

真冬 「!? それは、その……」

172以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:05:14 ID:AmFXmFmY
真冬 「そ、掃除中にバケツをひっくり返してしまって、水をかぶってしまったの」

真冬 「だから一度シャワーを浴びていたのよ」

成幸 「なるほど……」

成幸 (……いや、なるほどとか言ってるけどまったく理解はできないけど。本当に、器用に不器用な人だな……)

成幸 「………………」 ウズウズ (しっ……仕方ないなぁ……)

ニコニコニコニコ

成幸 「先生、俺、掃除手伝いますよ」

真冬 「えっ、いや、でも……」

成幸 「このままじゃ日をまたいでも終わらないですよ、掃除」

真冬 「うっ……」 モジモジ 「でも、今日こそ、あなたの手を借りずに……」

成幸 (まじめな人だもんなぁ。一度決めたことを曲げたくないんだよな……)

成幸 (その気持ちは汲んであげたいし、偉いと思うけど……)

成幸 (さすがに、この部屋の惨状をこのままにはできないし……)

173以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:05:55 ID:AmFXmFmY
成幸 「………………」

成幸 「……分かりました。では、」

真冬 「……?」

成幸 「俺が勝手に手伝います。先生は、嫌だって言ってるのに、俺が勝手に手伝うだけなら、いいでしょう?」

真冬 「へ? あ……えっと……」

成幸 「あっ、先生はいいと言ったらダメですね。俺が勝手にやるんだから」

成幸 「ってことで、勝手に掃除始めます。迷惑だと思いますけど、ごめんなさい」

イソイソイソイソ……

真冬 「あっ……」

真冬 「………………」

真冬 「……ごめんなさい。お願いするわ」

成幸 「いえいえ、謝ることじゃないです」 ニコニコニコニコ

真冬 「……?」 (唯我くん、どうしてあんなに嬉しそうなのかしら……?)

174以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:06:40 ID:AmFXmFmY
………………

真冬 「……おお」

ピカピカピカピカ……

成幸 「ふー。こんなもんですかね」

成幸 (なんとか日をまたぐ前には終わったな。良かった良かった……)

成幸 (一日中バイトしてからの掃除……結構ハードだったな……)

真冬 「……結局、今回もきみに頼ってしまったわね。唯我くん」

真冬 「生徒に――受験生にさせることじゃないわ。本当にごめんなさい……」

成幸 「いえ、気にしないでください。俺が好きでやったことですから」

真冬 「……そういうわけにはいかないわ」

成幸 「へ……?」

真冬 「私は教員で、あなたは生徒。そこは明確な線引きがなされなければならない」

真冬 「なのに私は、生徒であるあなたに、毎度毎度頼ってしまって……」

真冬 「……情けないわ」 ズーーン

175以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:07:40 ID:AmFXmFmY
成幸 (あー……)


―――― 『あっ、先生はいいとら言ったダメですね。俺が勝手にやるんだから』

―――― 『ってことで、勝手に掃除始めます。迷惑だと思いますけど、ごめんなさい』


成幸 (まさかこんなに気に病んでいたなんて、申し訳ないことしてしまったな……)

成幸 「……あの、ごめんなさい。先生がそんなことまで考えているとは思わなくて……」

成幸 「勝手にお手伝いをしてしまって……」

真冬 「!? ち、違うのよ? きみを責めているわけではないの」

真冬 「ただ、自分が情けないだけで……」

成幸 「いや、でも俺……最初から、先生のこと、手伝うつもりでここに来たので……」

真冬 「え……?」 ハッ


―――― 『先生!』

―――― 『あ……唯我くん!!』


真冬 「そういえば、どうして唯我くんはうちに……?」

176以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:08:10 ID:AmFXmFmY
成幸 「……すみません、先生。俺、先生のことが心配で、家まで来てしまったんです」

成幸 「俺、今日一日、先生のことが頭から離れなくて……」

成幸 「大丈夫かなって、何度も考えてしまって……」

成幸 「こんなこと言うと気持ち悪いと思われるかもしれませんけど、」

成幸 「……わざと遠回りして、このマンションの前を通って……」

成幸 「先生がいないから大丈夫だろうって思ったんですけど、気づいたら部屋の前まで行ってて……」

成幸 「悲鳴が聞こえたから中に入ったんです」

真冬 「………………」

成幸 (……いやいやいや!! 冷静に考えてみると、俺、ストーカーそのものじゃないか!?)

成幸 「す、すみません! 家まで押しかけちゃって……」

成幸 「先生はもう俺の手伝いはいらないって言ってたのに、迷惑ですよね……」 ペコリ 「本当に、ごめんなさい!!」

成幸 (こ、怖い……。先生、どんな顔をしているんだろう。きっと、軽蔑するような顔を……)

真冬 「………………」

真冬 「……顔を上げなさい、唯我くん」

177以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:08:49 ID:AmFXmFmY
成幸 (あれ……? 先生、怒ってないのかな……?)

真冬 「謝る必要はないわ、唯我くん。私も同じだもの」

成幸 「同じ……?」

真冬 「ええ。恥ずかしい話だけど、白状するわ。私がシャワーを浴びていた本当の理由」

真冬 「バケツをひっくり返したなんてウソよ。本当は、表で自動車に水を浴びせられたの」

成幸 「……? え、でも、何でそんなウソを……?」

真冬 「それは、その……」

真冬 「……――みを、…………って、いた、から……」

成幸 「え? すみません、よく聞こえないんですが……」

真冬 「だっ、だから……! 君を……待っていたから、って言ったのよ……」

成幸 「へっ?」

真冬 「……君が来てくれるんじゃないかと期待して、外で待っていて……」

真冬 「そのときに自動車に水を浴びせられて、そんなこととても君には言えないから……」

真冬 「だから、ウソをついたの。ごめんなさい……」

178以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:09:28 ID:AmFXmFmY
成幸 「い、いやいや、謝ることではないですよ。そんなの……」

成幸 (え……? でも、先生、俺を、待っていてくれた……?)

成幸 (俺を……///)

真冬 「恥ずかしいわ。私、教師だというのに、結局あなたを頼ろうとしてしまったわ」


―――― 『これは私なりの、あなたに甘えることへの決別の決意表明なの』

―――― 『あなたに宣言することで、これ以上あなたに甘えることがないように自分を戒めるの』


真冬 「あんなことまで言ったというのに、私は結局……」 ズーン

成幸 「………………」

成幸 「……えっと、あの、どう言ったらいいのか分からないので、思ったことをそのまま言いますね」

真冬 「……?」

成幸 「……すごく、嬉しいです」

真冬 「う、嬉しい……?」

成幸 「はい、さっきも言いましたけど、俺、先生のこと心配していたので……」

成幸 「先生が俺のことを頼ろうとしてくれたのが、とても嬉しいんです」

179以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:10:12 ID:AmFXmFmY
成幸 「……もちろん、俺と先生は生徒と教師で、線引きは必要でしょうけど、」

成幸 「でも、俺は、こうやって先生の部屋を片付けるの嫌いじゃないです。だから……」

成幸 「もし先生が嫌でないなら、これからもずっと先生の部屋の掃除をしたいです!」

真冬 「ずっ……ずっと……?」

成幸 「はい! むしろ、高校を卒業してからの方が健全ですよね!」

真冬 「そ、それはその通りだと思うけど……」

真冬 「君は、高校を卒業した後も、私の家に来て、掃除をしてくれるというの?」

成幸 「はい!」

真冬 「っ……」

真冬 (まっすぐ返事をしてくれるものだわ。まったく、こっちの気も知らないで……)


―――― 『最愛の息子が…… 親のいぬ間に半裸の年上女性を連れ込んで…… 私は一体どうしたら……』

―――― 『あぁぁやっぱりダメエェ!! そういうのはせめて!! せめてしっかり卒業してからに……』

―――― 『あ でもなんにせよそういうのはちゃんと卒業してからね』


真冬 (お母さんを心配させないように配慮したこっちの気も知らないで……まったく……)

180以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:11:04 ID:AmFXmFmY
真冬 (お母さんを不安にさせまいと、君を家から遠ざけようとしたというのに……)

成幸 (? 先生、黙り込んじゃってどうしたんだろ……?)

真冬 (あ、でも……)

真冬 (“卒業” してからなら、いいのかしら……?)

真冬 「………………」

ハッ

真冬 (教師である私が、一体何を考えているのかしら!?)

真冬 (でも、もし……もしも……)


―――― 『でも、俺は、こうやって先生の部屋を片付けるの嫌いじゃないです。だから……』

―――― 『もし先生が嫌でないなら、これからもずっと先生の部屋の掃除をしたいです!』


真冬 (卒業した後も、本当に彼が同じように言ってくれるなら……)

真冬 (……少し、お言葉に甘えても、いいのかしら)

おわり

181以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:11:54 ID:AmFXmFmY
………………幕間 『責任』

真冬 (!? でも、このまま受験生の彼の勉強の邪魔ばかりしていては……)


―――― 成幸 『うぅ……第一志望に落ちてしまった……』


真冬 「………………」 ワナワナワナ (それはまずいわ! 絶対ダメよ!)

真冬 (そんなことになったら、“先生” にも顔向けできないわ!)

真冬 (でも、もし、万が一そういうことになったら……)

成幸 「……? あの、先生? どうかしましたか?」

真冬 「………………」

ガシッ

成幸 「!? せ、先生……? ど、どうして手を……///」

真冬 「安心して、唯我くん!」

真冬 「万が一のことがあったら、私が責任を取ってあげるから!!」

成幸 「!?」

おわり

182以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:12:31 ID:AmFXmFmY
読んでくださった方ありがとうございました。

183以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:18:21 ID:AmFXmFmY
>>1です。
ちょっとやってみたいことがあるので、安価というほどのことではないですが、
少しお付き合いいただけたら嬉しいです。
タイトルだけ安価をさせてください。よろしくお願いします。
(メインヒロインでもサブヒロインでもいいですが、女子キャラだと助かります)


【ぼく勉】 成幸 「今週末は、>>186と出かける約束なんだ」

184以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:19:49 ID:AmFXmFmY
>>1です。連投申し訳ないです。
安価が踏まれてから書いて投下しますので、ラグがあると思います。

185以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/29(水) 23:57:29 ID:XaFv5NuY
来てるやんけ!!

186以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 00:03:50 ID:Ca35RFNY
おつんこ
文乃が好きだから文乃で、
と思ったけど水希ちゃんでお願いします!

187以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 00:06:07 ID:iwhEGbg2
そういや乙な

>>186
スレ監視してそう

188以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 00:10:19 ID:Ca35RFNY
>>187
更新待ち遠しくて定期的に確認してるからね…

189以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 00:27:13 ID:WO/bOOK.
乙です

190以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:23:58 ID:cxG0DenQ
【ぼく勉】 成幸 「今週末は、水希と出かける約束なんだ」

191以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:24:28 ID:cxG0DenQ
うるか 「ほへー、みずきんと?」

成幸 「ああ、買い物に付き合ってほしいらしいんだ」

成幸 「勉強もあるけど、最近あんまりあいつに構えてないしな」

成幸 「ま、たまの家族サービスかな」

理珠 「サラリーマンみたいなことを言いますね……」

文乃 (ふふ、成幸くん、微笑ましいなぁ。パパみたい)

ハッ

文乃 (……ん? 今週末?)

ペラッ……ペラッ……

文乃 「………………」

文乃 「……えっと、成幸くん、あの、水を差すようで悪いんだけど、」

成幸 「ん? どうした、古橋?」

文乃 「今週末、わたしの新しい問題集選びに付き合ってくれる約束をしていたような……」

成幸 「え……?」

192以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:25:20 ID:cxG0DenQ
成幸 「!? そういやそんな約束してたような気がするぞ……」

ペラッ……ペラッ……

成幸 「で、でも、手帳の予定表には何も書いてないぞ。おかしいな……」

文乃 「えっと、その約束したとき、たしか成幸くんは、」

文乃 「……手帳じゃなくて、スマートフォンの方に予定を登録していたような……」

成幸 「へ……?」

スッ……

成幸 「うわっ、ほんとだ。しっかりカレンダーに予定登録してある……」

理珠 「……まったく。機械オンチなのに無理してスマホの機能を使うからです」

うるか 「あちゃー。完全にブッキングしちゃってるねぇ」

成幸 「ど、どうしよう。水希とは昨日約束してしまったし……」

成幸 「古橋とはもっと前から約束してるわけだし……」

オロオロオロオロ……

文乃 「………………」 ハァ 「……まったくもう、仕方ない弟だよ、君は」

文乃 「わたしのことは気にしなくていいよ。また別の日に付き合ってよ」

193以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:26:00 ID:cxG0DenQ
成幸 「いや、しかしな。お前の勉強を円滑に進めるために、できるだけ早く参考書は買っておきたいし……」

成幸 「何より、お前の方が先に約束をしていたんだから、そっちをなくすというのも道義的にな……」

文乃 「そ、そこまで深刻に考えなくても……」

成幸 「………………」

成幸 「よしっ、決めた! 古橋、週末はやっぱり一緒に参考書選びをしよう!」

文乃 「えっ、でも水希ちゃんは?」

成幸 「水希も一緒に買い物に行く! 三人で一緒に行けば全部解決だ!」

文乃 「………………」

文乃 (……さも名案を思いついたような顔で何を言い出すのかな!?)

うるか 「まぁ、そうすれば問題ないよね」 理珠 「ですね」

文乃 (君たちもどうしてしたり顔でうなずけるのかな!?)

文乃 (相手はあの水希ちゃんだよ!? お兄ちゃんとのデートにわたしが着いていったりしたら……)


―――― 水希 『……へぇ。お兄ちゃんと私のデートを邪魔するつもりですか。いい度胸ですね』 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!


文乃 (ってなるに決まってるじゃない!!)

194以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:26:37 ID:cxG0DenQ
成幸 「とりあえず帰ったら水希に聞いてみるから、またメッセージで伝えるな!」

文乃 「あっ、ちょっと、成幸くん!?」

成幸 「じゃあ、また明日な!」

ビューン!!!!

文乃 「……あー、もうっ。行っちゃったよ」

理珠 「? どうかしましたか、文乃?」

うるか 「文乃っち元気ない?」

文乃 「いや、うん、まぁ……大丈夫だよ……」

シュン……

文乃 「………………」

文乃 (……ふんだ。成幸くんの、バカ)

文乃 (参考書選びとはいえ、久々にふたりきりでのお出かけだって、楽しみにしてたのに)

文乃 (……楽しみに、してたのにな)

195以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:27:08 ID:cxG0DenQ
………………週末 デパート

成幸 「……あ、古橋。悪い、待たせたな」

文乃 「成幸くん。ううん、今来たトコだよ。大丈夫」

成幸 「そうか。ならよかった」

文乃 「えへへ……」

文乃 (……なんか、デートみたいな受け答えしちゃった)

文乃 (これで……)

水希 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

水希 「……どうも、こんにちは、古橋さん」

文乃 「こ、こんにちは、水希ちゃん」

文乃 (……圧たっぷりの水希ちゃんがいなければなぁ、なんて)

ハッ

文乃 (いけないいけない。今日のわたしは、兄妹水入らずを邪魔してしまっている立場なんだから)

文乃 (謙虚な気持ちを忘れないようにしないと……)

文乃 「水希ちゃん、今日はごめんね。せっかく兄妹でのお出かけなのに、邪魔しちゃって……」

196以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:27:41 ID:cxG0DenQ
水希 「ふふ、可笑しなことを言いますね、古橋さん」 ニコッ

文乃 (……? あれ、意外と怒ってないのかな……?)

水希 「しっかりと邪魔をしておいて、“ごめんね” なんて、ああ可笑しい……」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

文乃 (あ、うん。しっかり怒ってるね、これは)

成幸 「こ、こらこら、水希。悪いのは約束をブッキングさせてしまった俺なんだから、古橋を責めるなよ」

水希 「………………」

ニコッ

水希 「……そうだね、お兄ちゃん。ごめんなさい、古橋さん。変なこと言っちゃって」

文乃 「う、ううん。大丈夫だよ。邪魔しちゃってるのは事実だし……」

成幸 「邪魔なんかじゃないよ。ほら、まずは古橋の問題集選びだ。行こうぜ」

水希 「うん、お兄ちゃん♪」

文乃 「うん、成幸くん。よろしくね」

197以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:28:42 ID:cxG0DenQ
………………書店

成幸 「うーん、古橋もだいぶ応用がきくようになってきたからな」

成幸 「ちょっと難しい問題集にするべきか……」

成幸 「いやしかし、受験も近い。今から応用を鍛えるよりは、基礎を固めた方が堅実か……」

成幸 「うーむ……」

水希 「………………」

文乃 「………………」

文乃 (うー……。問題集選びを手伝ってもらうと言えば聞こえはいいけど、実質選ぶのは成幸くんだし……)

文乃 (水希ちゃんとふたりきりは、少し気まずいな……)

文乃 「そ、そういえば、水希ちゃんも高校受験だよね」

文乃 「どこを受けるのかな?」

水希 「……一応、水泳のスポーツ推薦を狙っているので、取ってくれるところなら、どこでも」

水希 「二ツ葉でも、一ノ瀬でも、どこでも……」

文乃 「スポーツ推薦かぁ。大変だね、それは」


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