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【ぼく勉】 文乃 「今週末、天体観測に行くんだよ」

717以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:02:32 ID:9adJZdO2
宗二朗 「………………」 ポワポワポワ……

かすみ 「……は〜、宗二朗ちゃんったらなんか別世界に行っちゃったみたい」

かすみ 「それで? お話って一体なぁに? なんか深刻そうだけど」

あすみ 「あ、ああ、実は……――」

成幸 「――……いや、先輩。俺から話しますよ」

あすみ 「後輩、でも……」

成幸 「……まず最初に、謝らせてください。先輩のお父さん、お母さん、本当に申し訳ありませんでした」

かすみ 「……? 謝られるようなことをされた憶えはないんだけどなぁ」

成幸 「ずっとウソをついてきました。先輩とのことです。俺は……」

成幸 「……俺と先輩は、恋人同士ではありません」

かすみ 「……へ?」

718以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:03:35 ID:9adJZdO2
かすみ 「……あー、うん。まぁ、知ってたけど」

あすみ 「まぁ、お袋はそうだよな。それはそうなんだけど……」

宗二朗 「………………」

あすみ 「問題はこっちだよな。おい、親父、なんとか言ったら……って」

宗二朗 「………………」 プスプスプスプス……

あすみ 「……死んでる?」

かすみ 「縁起でもないこと言わないで、あすみちゃん。生きてるから」

かすみ 「ただ、あー、これは……」

宗二朗 「……アレ ココハドコ? ワタシハ ダレ?」

かすみ 「元に戻るのに一時間はかかるかな〜?」

719以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:04:26 ID:9adJZdO2
………………一時間後

成幸 「――……と、いうわけなんです」

かすみ 「は〜、なるほどねぇ。あすみちゃんの方から唯我君に頼んで、恋人役をやってもらってたとー」

かすみ 「まぁ、ママはそんなところじゃないかなー、って踏んでたけどね!」 エッヘン

宗二朗 「………………」

成幸 「あの、お父さん、ご存知であったとはいえ、お母さんも、騙すようなことをして本当にすみませんでした」

あすみ 「いや、アタシが無理言ってやってもらってたんだから、お前は悪くねぇだろ」

あすみ 「……謝るとしたら、アタシだ。本当に悪かったよ、親父」

かすみ 「? あれ、あすみちゃん。私はー?」

あすみ 「あんた最初っから気づいてただろ!!」

かすみ 「てへっ☆」

宗二朗 「………………」

あすみ 「……いや、っていうか、親父もなんか言えよ。さすがにずっと黙ってると怖いんだが」

宗二朗 「………………」 ボソッ 「……成幸君」

成幸 「! は、はいっ!」

720以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:05:20 ID:9adJZdO2
成幸 「あ、あの、本当に申し訳ありませんでした! 大切な娘さんのことで、ウソをつくようなことをして!」

成幸 「あの、だから、その……」

宗二朗 「……謝らないでくれ、成幸君。娘が迷惑をかけてしまってすまなかった」

成幸 「!? あ、頭を上げてください! お父さんが謝るようなことを何も……!」

宗二朗 「……ふふ。まだ私を “お父さん” と呼んでくれるか」

成幸 「あっ……す、すみません」

宗二朗 「……構わんよ。いや、本当に楽しかった。君とあすみの将来を考えるのも、君と将来酒を汲み交わす想像をするのも」

宗二朗 「……本当に楽しかった」

あすみ (……アタシが言うことじゃねぇけどこの親父重いな)

宗二朗 「よくよく考えてみれば、うちのじゃじゃ馬娘が君のような好青年を捕まえられようはずもない」

成幸 「いや、そんな……」

宗二朗 「ほんの一時だけでも夢を見させてくれてありがとう。本当にすまなかった」

成幸 「………………」

スッ

成幸 「……こちらこそ、本当に申し訳ありませんでした」

721以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:06:31 ID:9adJZdO2
成幸 「……では、先輩」

あすみ 「ん」

成幸 「これで本当に、ニセモノの関係はおしまいですね」

あすみ 「………………」

あすみ 「……ああ」

あすみ 「なんか悪かったな、今まで」

あすみ 「親父を騙すために恋人のフリなんて頼み込んで、色々なところに連れ出して……」


―――― 『小妖精メイドあしゅみぃちゃんのビキニ姿が拝める幸せ者なんて そうそういねーぞ?』


あすみ 「お前に勉強を教わるだけに留まらず、勉強の邪魔みたいなこともして……」


―――― 『親父へのダメ押しに もう1枚♪』


あすみ 「本当に……」

722以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:07:16 ID:9adJZdO2
あすみ (……ああ、そうか)


―――― 『この診療所がなくなったって…… 世界も夢も終わりません!』

―――― 『先輩は必ず立派な医者になるんですっ!!』

―――― 『場所なんかどこだって 先輩がいればそこが新しい小美浪診療所になるんですッッ!!』


あすみ (アタシ、本当に……)


―――― 『な? 冗談冗談♪』


あすみ (本当に、こいつのことが……)

あすみ 「………………」

あすみ 「……本当に、ずっと悪いコトしたな。後輩。すまん」

ポロ……

あすみ 「あ、あれ? なんで、目、潤んで……」

ポロポロポロ……

あすみ 「なんで、涙なんか……」

723以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:08:00 ID:9adJZdO2
かすみ 「あすみちゃん……」

成幸 「………………」

成幸 「……先輩、ハンカチどうぞ」

あすみ 「っ……や、やめろよ。アタシとお前は、もうべつに、ニセモノの恋人とかじゃない……」

あすみ 「……ただの、先輩後輩なんだから。だから……」

あすみ 「……もう、やめろよ。そうやって優しくするなよ」

あすみ 「そういうこと、されると……っ」

あすみ (また……)

あすみ (また、お前と、そういう関係に……)

成幸 「………………」

成幸 「……俺たちの関係はこれで終わって、ただの先輩後輩。そうですね」

成幸 「では、その上で改めて、先輩にひとつお願いがあります」

あすみ 「お願い……? なんだよ」

成幸 「先輩」


成幸 「改めて、お願いします。俺と、ホンモノの恋人になってもらえませんか?」

724以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:09:54 ID:9adJZdO2
あすみ 「………………」

ボッ

あすみ 「……へ?」

成幸 「先輩のことが好きです。先輩のホンモノの彼氏になりたいです」

あすみ 「へ? へ?」

成幸 「だから俺とお付き合いしていただけませんか?」

あすみ 「へ? へ? へ?」

かすみ 「あらぁ♪ 唯我君ったら意外と情熱的♪」

あすみ 「ふぇ……」

あすみ 「ふぇぇえええええええええ!?」

あすみ 「こっ、このタイミングで、何言ってんだ、お前!」

あすみ 「じ、冗談なら笑えねーぞ!!」

成幸 「………………」

ギュッ

あすみ 「ふぇっ!?」 (手、手……ぎゅって……手……///)

725以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:11:00 ID:9adJZdO2
成幸 「……先輩」

あすみ 「はっ、はいっ!」 ドキッ

成幸 「冗談でこんなこと言わないです。先輩じゃありませんから」


―――― 『いや? けっこーいいと思ってっけど? カワイーじゃん そいつ』

―――― 『ま ウソだけど』


あすみ 「そ、その節は、本当になんというか、申し訳なかったというか……」

グイッ

あすみ 「ひゃっ!?」

成幸 「……先輩」

あすみ (ち、近い近い近い……!?)

成幸 「先輩のことが好きです」

成幸 「先輩のまっすぐなところとか、一生懸命なところとか、気遣ってくれるところとか……」

成幸 「あと、お客さんに分け隔てなく接するところとか、仕事に対するプロ意識とか……あと……」

あすみ 「もっ、もういい……/// わ、わかったから……」

726以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:12:03 ID:9adJZdO2
かすみ (……唯我君ってこういうとき積極的なのね。意外だなー♪)

成幸 「………………」

フーーーー

成幸 「……以上、お願いでした」

あすみ 「き、急に冷静になるなよ……」

あすみ 「………………」

カァアアアア……

あすみ 「……わ、わかったよ。あ、アタシのこと、好きになっちまったんだろ」

あすみ 「仕方ねーな。ほ、本当に仕方ねーから、だけど……」

あすみ 「こっ……」

あすみ 「……こちらこそ、よろしくお願いします」

成幸 「……?」

成幸 「………………」

成幸 「ええええぇえええええええええええええええ!?」

あすみ 「!? な、なんだよ! 急に大声上げんじゃねーよ!」

727以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:12:36 ID:9adJZdO2
あすみ 「っていうかなんでお前が驚いてんだよ!」

成幸 「いや、だって……」

オロオロオロオロ……

成幸 「お、オーケーされるとは思ってなかったので……」

成幸 「いや、っていうか、先輩、本当に……?」

あすみ 「し、仕方ねーからだって言ってるだろ。仕方ねーから、お前のホンモノの彼女になってやるよ」

成幸 「……あ、いえ、そんな、義務感からだったら、申し訳ないので結構です」

ズーーーーーン

成幸 「やっぱりそうですよね。先輩みたいなエネルギッシュで何でもできちゃう美人さんと俺じゃ、釣り合わないですよね……」

あすみ 「!? い、いや、違くて……」

かすみ 「………………」

コソッ

かすみ 「……こんなときくらい、素直にならないと〜」

あすみ 「お、お袋……」

かすみ 「また後悔してさっきみたいに泣いちゃうゾ♪」

728以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:13:12 ID:9adJZdO2
あすみ 「っ……わかったよ……わかってるよ」

あすみ 「……こ、後輩。いや、その……成幸……くん」

成幸 「……?」

あすみ 「アタシも、その……」

あすみ 「……お前のこと、好き、なんだ」

あすみ 「好きなんだよ」

あすみ 「だから、その……」

あすみ 「アタシからも、頼む。お願いします」

あすみ 「アタシの彼氏になってください!」

あすみ 「フリとかニセモノじゃない、ホンモノの、恋人に、なってください!」

成幸 「……へ? あ……」

カァアアアア……

成幸 「ぜ、ぜひ……あ、よ、よろしく、お、お願いします……」

あすみ 「あ、ああ……///」

729以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:14:01 ID:9adJZdO2
成幸 「………………」

あすみ 「………………」

あすみ 「……ってことで、じゃあ、後は――いや、成幸くん、これからもよろしくな」

成幸 「はいっ! 先ぱ――じゃなくて……えっと、なんて呼んだら……?」

あすみ 「知るかよ。お前が勝手に決めたらいいだろ」

成幸 「は、はい。じゃあ……えっと……」

成幸 「“あすみさん”」

あすみ 「っ……///」

成幸 「あ、あはは。なんか恥ずかしいですね」

あすみ 「……いい」

成幸 「へ?」

あすみ 「そ、それで、いい」

成幸 「は、はい。じゃあ……あすみさん」

あすみ 「ん……」

730以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:15:13 ID:9adJZdO2
あすみ 「……っていうかお前、実の親の前で告白って、どんな罰ゲームだよ」

成幸 「あ、すみません。でも、一度関係をリセットさせないと、前に進めないと思ったので……」

あすみ 「……ん」


―――― 『これ以上ウソをつき続けるわけにはいきませんし、何よりこのままじゃ……』


あすみ (……あれは、そうか)

あすみ (“このままじゃアタシと本当の恋人になれない” ってことか……)

あすみ 「………………」

ニマァ

あすみ 「……そうか///」

かすみ (雨降って地固まる……というよりは、自分たちでホースで水を撒いて踏み固めた感じかしら)

かすみ (まぁふたりが幸せそうで何より……ん? 何か忘れてるような〜……)

宗二朗 「………………」

ノソリ

かすみ 「……あ、宗二朗ちゃん」

731以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:16:01 ID:9adJZdO2
あすみ 「!? お、親父……」

宗二朗 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「お、怒ってます……よね?」

成幸 「そりゃそうですよね。愛する一人娘と不誠実な交際をしていた男が、今さら本当にお付き合いを始めるなんて……」

成幸 「父親だったら怒って当然だと思います! 殴られても仕方ないと思っています! ですが、俺も本気です!」

成幸 「娘さんと交際させてください!」

あすみ 「お、親父! アタシからも頼むよ! ウソをついてたことは謝る!」

あすみ 「でも成幸くんは悪くねーんだ! だから、成幸くんとの交際を認めてくれ! 頼む!」

宗二朗 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「お父さん……!」

あすみ 「親父!」

宗二朗 「……何を言っているんだ、あすみ、成幸くん!」

パァアアアアアア……!!!

あすみ 「へ……?」

宗二朗 「結婚式はどこにする? チャペルか? 神前式か?」

732以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:16:34 ID:9adJZdO2
成幸 「……えっと」

宗二朗 「ウェディングドレスもいいが、白無垢も捨てがたいな」

宗二朗 「無論、成幸くんもだ! モーニングも似合うだろうな。紋付袴も捨てがたい!」

宗二朗 「うぅむ……」 ハッ 「そうだ! 両方とも着ればいいんだな!」

宗二朗 「よし、パパちょっと結婚式代奮発しちゃうぞ!」

あすみ 「……おい、親父」

宗二朗 「……と、いうことだ」

ニコッ

宗二朗 「これからもどうか、末永くうちの娘をよろしく頼むよ、成幸くん」

成幸 「は……はいっ!! こちらこそ、よろしくお願いします!」

733以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:17:36 ID:9adJZdO2
………………診療所前

あすみ 「……ったく、親父の奴」

―――― 宗二朗 『ん、もうこんな時間か。夜も遅いし送って行きなさい、あすみ』

あすみ 「娘に彼氏を送らせるか、フツー」

成幸 「あはは、親父さんらしいですね」

成幸 「まぁ、さすがに夜道をひとりで帰らせるわけにはいかないので、お見送りだけでいいですよ」

成幸 「それじゃ、先輩、また明日」

あすみ 「む……」

成幸 「……あっ、じゃなくて……」

成幸 「……また明日、あすみさん」

あすみ 「……ん。また明日、成幸くん」

成幸 「………………」

あすみ 「………………」

734以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:18:32 ID:9adJZdO2
成幸 「………………」

あすみ 「………………」

あすみ (……冗談じゃ、ない)

あすみ (ウソでも、ない)

あすみ (ニセモノでもない)

あすみ (ホンモノの、恋……)

成幸 「……じゃあ……――」

あすみ 「――……ま、待った」

成幸 「……?」

あすみ 「………………」

ギュッ

成幸 「……せ、先輩……?///」

成幸 「なんで、抱きついて……」

あすみ 「察せ、バカ」

735以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:19:15 ID:9adJZdO2
あすみ 「………………」

成幸 「………………」

ドキドキドキドキ……

成幸 「ん……」

ギュッ

あすみ 「っ……///」

ドキドキドキドキ……

あすみ 「……なぁ、成幸くん?」

成幸 「な、なんですか?」

あすみ 「こーいうとき、どうしたらいいと思う?」

成幸 「………………」

成幸 「……目、つむってください」

あすみ 「ん……」

成幸 「………………」

あすみ 「………………」

736以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:19:59 ID:9adJZdO2
成幸 「……あすみさん」

あすみ 「成幸くん」

スッ…………

かすみ 「………………」

宗二朗 「………………」

ジーーーーーーーッ

あすみ 「……って何見てんだジジババーーーーーー!!!!」

宗二朗 「む。見つかってしまったか。かすみちゃんがもっと近づこうって言うから〜」

かすみ 「だってー、あすみちゃんの記念すべき初キス、しっかり見ておきたかったんだもーん」

成幸 「……はは、本当に愉快なご両親ですね、あすみさん」

あすみ 「ああいうのは愉快って言わねぇよ。迷惑って言うんだよ。ったく……」

あすみ 「じゃあ、また次回にお預けだな、成幸くん」

成幸 「そうですね。また今度ですね」

あすみ 「ああ、また今度……」

737以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:20:43 ID:9adJZdO2
あすみ 「………………」

あすみ (診療所がなくなることも)

あすみ (受験に失敗して、医者を諦めることも)

あすみ (もう、ない)

あすみ (そして……)

成幸 「……? どうかしましたか、あすみさん?」

あすみ (こいつと……成幸くんとの関係が、ウソで終わることも、ない)

あすみ (また今度が、何度でも……)

あすみ (これからも、ずっと……)

あすみ 「えへへ……」

成幸 「先輩?」

あすみ 「これからもよろしくな、成幸くん」

成幸 「はいっ! こちらこそよろしくお願いします、あすみさん」

おわり

738以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:21:31 ID:9adJZdO2
………………幕間 『気振り両親』

宗二朗 「かすみちゃん、できたー?」

かすみ 「うん、完ぺき♪ 宗二朗ちゃんは?」

宗二朗 「こっちもオッケーだ」

あすみ 「? 何作ってんだ? 患者さんのリストかなんかか?」

かすみ 「ちがうよー、あすみちゃん」

キャピッ

かすみ 「これは〜、あすみちゃんと成幸くんの結婚式の招待客リストだよっ」

あすみ 「……あー、うん」

ビリッビリッビリッ

宗二朗 「あ゛ーーーーー!!! 私とかすみちゃんの二時間の苦労の結晶がーーーー!!」

おわり

739以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:26:53 ID:9adJZdO2
>>1です。
以前から妄想していたことを、本編であすみさん編が始まったらやれないなぁと思い、書き上げました。
あまり良い二次創作ではないと思います。申し訳ないことです。
明日はとうとう明日の夜の小妖精編ですね。楽しみです。
また投下します。

740以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 23:21:07 ID:BhceomUc
おつ
ニヤニヤさせられたぜ

741以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 14:13:23 ID:Uhv0hfU6
良かった
あすみ可愛い

742以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:32:44 ID:lMbr6Vko
>>1です。
書いていたら書き上がってしまったので投下します。
どのルートにも分岐していない12月28日以降の話だと思います。
投下します。

【ぼく勉】 美春 「彼は教え子につき……?」

743以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:33:21 ID:lMbr6Vko
………………真冬の家

美春 「感謝感激。急にお邪魔したのにもてなしてもらってすみません、姉さま」

真冬 「そう思うなら来るときは事前に連絡をちょうだい」

真冬 (危なかったわ。昨日唯我くんが偶然家に来て掃除をしてくれていて助かったわ)

真冬 「まったく、もう大学生なのにあなたは変わらないわね」

美春 「えへへ、そう言われると照れてしまいます」

真冬 「褒めてはいないのだけれど」

ハァ

真冬 「そういえば職場でいただいたお菓子があったわね。持ってくるわ」

美春 「わぁ、嬉しいです! ありがとうございます、姉さま」

美春 (ふふ、姉さまのおうちは、いつ来てもきれいで落ち着きます)

美春 (さすがは姉さまですね)

美春 (例の一件以来、ずっと布がかぶせてあったトロフィーの棚も出しているし……)

美春 (何より、今の姉さまは本当に楽しそう。笑顔も増えました)

美春 (……認めたくはありませんが、これも全て、唯我成幸さんのおかげ、ですね)

744以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:34:21 ID:lMbr6Vko
美春 「………………」

美春 (ま、まぁ、だからといっておふたりの交際を認めるわけにはいきませんけど)

美春 (姉さまは教師。唯我成幸さんは生徒。おふたりは決してそういう仲になってはいけない関係です)

美春 (けれど、燃え上がったおふたりの恋は、阻むものが多ければ多いほど燃え上がるもの!)

美春 (そしておふたりはきっと、もうお互いのことしか目に入っていません)

美春 (ならばやはりここは私が、私の色香で唯我成幸さんを誘惑するしかありませんね……)

美春 「………………」

美春 (ま、まぁ? もしも唯我成幸さんが、私の大人の色香に惑わされることなく卒業を迎えたなら)

美春 (おふたりの交際を認めてあげないことも、ありませんけれど)

美春 (……ん?)


『彼は教え子につき ①』


美春 「彼は教え子につき……?」

美春 (きっ、驚天動地! 姉さまの本棚に漫画本が置いてあるだなんて!!)

美春 (少女漫画ですね。でも、私が読んだことがない漫画です……)

745以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:35:03 ID:lMbr6Vko
美春 「………………」

美春 (姉さまはまだ戻ってきませんよね。それに、漫画くらい無断で見てもお怒りにはならないでしょうし)

美春 (姉さま、ちょっと拝見させていただきます)

ペラッ……

『俺……やっぱり先生じゃなきゃ……』

美春 「……!?」

ペラッ

『だ だめよ結人君! 私とあなたは教師と生徒! でも……っ』

美春 「ひゃっ……!」

ドキドキドキドキ……

美春 (こ、この内容は……これではまるで……――)

真冬 「――美春」 ヒョコッ

美春 「ひゃいっ!?」サササササッ

真冬 「紅茶でいいかしら? それともコーヒー?」

美春 「ど、どちらでも大丈夫です! 姉さまと一緒でいいです!」

746以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:35:44 ID:lMbr6Vko
真冬 「? そう、わかったわ」

美春 (……あ、危なかったです。漫画くらい読んでも怒られはしないと思っていましたが)

美春 (こ、この内容は、まずいです。たぶん、これは……)

ペラッ……ペラッ……

美春 (……姉さまの、願望……!!)

美春 「………………」

ペラッペラッペラッ……

美春 (な、なんて過激なんでしょう。教師と生徒が、こんな……こんな……!)

美春 (は、は、ハレンチです!!)

747以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:36:43 ID:lMbr6Vko
美春 (姉さまは唯我成幸さんと、こんなことを……――)

真冬 「――お待たせ。お菓子とお茶よ」

美春 「ひゃうっ!?」 スッ

美春 (あっ……! つ、つい、カバンの中に隠してしまいました!)

真冬 「? どうかしたの? 顔が赤いけれど……」

美春 「い、いえ! ちょっとこの部屋暑いですかね! 暖房の温度を下げてもいいですか、姉さま?」

真冬 「そうね。たしかに少し暖めすぎかもしれないわ。ええと、リモコンは、と……」

美春 (な、なんとか誤魔化せましたが……これは……)

美春 (……これは、由々しき事態ですよ!)

748以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:45:02 ID:lMbr6Vko
………………帰り道

美春 「………………」

トボトボトボ……

美春 (この漫画本……)

美春 (……結局、あのまま返すタイミングも逸して、バッグに入れたままになってしまいました)

美春 (今度真冬姉さまに謝らなければ……)

美春 (……いえ、そんなことよりも)

美春 (唯我成幸さん)


―――― 『お義姉さんのことで協力してほしいんですッ!!!』

―――― 『姉さまのために協力!? 当然至極ッ!!』

―――― 『――……残念至極 ですが姉さまがそう決めたのでしたら仕方ありませんね』

―――― 『でも姉さま 少し声が明るくなりました 美春はそれが一番嬉しいです!』


美春 (……ええ、そうです。本当は分かっているんです。私だって)

美春 (今の姉さまがあるのは、唯我成幸さんのおかげだということを)

749以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:45:37 ID:lMbr6Vko
美春 (……分かっているんです)


―――― 『あなたにはずっと…… お礼を言わなければと思っていました』

―――― 『あなたのおかげで 最近家族に笑顔が増えてきたんです』

―――― 『姉さまも昔に比べて 仕事が楽しそうですし』

―――― 『その道において姉が迷いなく幸せならば きっそそれをこそ天職と呼ぶのですから』


美春 (私がもう……)


―――― ((衝撃展開……!! 恋人云々はともかくここまでマニアックな間柄とは……!))

―――― ((いけません! せめて卒業まではプラトニックな関係でいてもらわねば……!!))


美春 (……心の奥底では、おふたりの関係を認めてしまっているということを)

美春 (……ですが!)

美春 (殿方は皆狼! 唯我成幸さんも一時のハレンチな考えひとつで姉さまに近づいているだけという可能性も絶無ではありません!)

美春 (ここはもう、姉さま最愛の妹であるこの私が、確認するしかありません!!)

美春 (善は急げ、ですね! 待っていてください、姉さま! 私が唯我成幸さんの真意を確認して参ります!)

750以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:46:29 ID:lMbr6Vko
………………唯我家

水希 「お兄ちゃん、お夕飯できたよー」

成幸 「ん、もうそんな時間か」 ノビーー

成幸 (久々にひとりでじっくり勉強、捗った捗った……)

成幸 (……って、やったのはほとんどあいつら向けの問題作成だけど)

ピンポーン

水希 「? なんか届く予定あったかな?」

成幸 「ああ、俺が出るよ。みんな先食べててくれ」

……ガラッ

成幸 「どちら様ですか……って」

美春 「夜分に申し訳ありません。こんばんは、唯我成幸さん」

成幸 「……美春さん!?」

花枝 「成幸ー? どなたかいらっしゃったの? ……あら?」

花枝 「……あらあらあらあら」

パァアアアアアア……!!!

751以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:48:03 ID:lMbr6Vko
………………食卓

水希 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

花枝 「………………」 ニコニコニコニコニコニコニコ……!!!!!!

葉月 「きりすみはるせんしゅだー」

和樹 「ゆーめーじんだー」

美春 「すみません、突然の訪問だというのに、ご相伴にあずかってしまいまして」

成幸 「いえ……」

美春 「美味佳肴! お夕飯、とても美味しいです! 栄養バランスもよく考えられていて、味付けも濃くなく薄くなく……」

モグモグモグ……!!!

成幸 (すみませんと言う割にはたくさん食べるなこの人……)

成幸 「あの、美春さん、今日は一体どうしたんですか? っていうかどうして俺の家の場所を……?」

美春 「……はっ! あまりのご飯の美味しさに失念しておりました」

モグモグモグ……

美春 「でもどうしましょう。お箸が止まりません!」

成幸 「……食べてからでいいですよ」

752以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:48:40 ID:lMbr6Vko
水希 「………………」 (お、お兄ちゃんにたかる新しいメスがまた一人……!!)

美春 「はぁ〜〜〜、美味、美味、美味です〜〜〜〜〜!!」

水希 (しかもすごい美人さんだし! っていうか現役フィギュアスケート選手!?)

水希 (そんなの反則だよーーーー!!)

花枝 「………………」 (たしかこの娘、前にランジェリーショップで成幸の写真を出して……)


―――― 『すみません こういう男性を悩殺できそうな下着はありますか』


花枝 (……これはもう確実ね) フンス (このお嬢さんは成幸の彼女またはそれに類する何か!!!)

花枝 (でかしたわ成幸!! 文ちゃんやりっちゃんに興味を示さなかったのはそういうことだったのね!)

成幸 「……!」 ゾクッ

成幸 (なんだか知らないが水希と母さんからの圧がすごい……!)

成幸 (美春さん早くご飯食べ終えてくれーーーー!!!)

753以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:49:42 ID:lMbr6Vko
………………食後

美春 「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」

成幸 「お口に合ったなら何よりです。それで、一体どんなご用件でしょうか」

成幸 「……あと、どうして俺の家の場所を知っていたのかも教えてもらえると……」

美春 「愚問愚答。この私が、お姉様と特別な関係にあるあなたのご自宅を特定していないわけがないではありませんか」

成幸 「はぁ……」

美春 「姉さまとお酒を飲んでいるときに聞いたら教えてくれましたよ?」

成幸 (教員の情報セキュリティとは……)

美春 「そして、唯我成幸さん、今日はあなたにお伺いしたいことがあって来ました」

成幸 「伺いたいこと……?」

美春 「はい、それは……」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「それは……」 ゴクリ……!!!

美春 「………………」

美春 「……あなたと、姉さまとの関係についてです」

成幸 「……? 桐須先生と俺の関係……?」

754以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:50:26 ID:lMbr6Vko
成幸 (関係……? ってなんだろう。俺と先生はただの教師と生徒だし……)

美春 「………………」 ジーーーーーーッ

成幸 (でも、美春さんはすごく真剣な顔してるし……)

成幸 (なんなんだろうか……)

美春 「……単刀直入に伺います」

美春 「唯我成幸さん、あなたは真冬姉さまのことをどう思っていらっしゃるのですか?」

成幸 「桐須先生のことをどう思っているか……?」

美春 「はい。誠心誠意。あなたの本心を教えてください」

成幸 「えっと……」

成幸 (先生をどう思っているか? そんなの……)


―――― 成幸 『とんでもなくドジで家事下手な人ですね』

―――― 成幸 『今まで無事一人暮らしをして来られたのが不思議なくらいですよ。ははは』


成幸 「………………」

成幸 (……って言えるかぁあああああ!!)

755以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:51:03 ID:lMbr6Vko
成幸 (たしか美春さんって……)


―――― 『詮無い嘘はやめてください 私の尊敬する完璧な姉さまに限って 苦手なものなど存在しません』

―――― 『もし百億が一姉さまに苦手なものが発覚した場合』

―――― 『24時間365日お傍に張りついて誠心誠意 いかなる手段をもってしても克服にあたらせて頂く所存です』


成幸 (……多分、美春さんは俺がそんなことを言っても信じないだろうし)

成幸 (もし万が一、俺の言うことを信じてしまった場合……)


―――― 美春 『姉さま? 聞きましたよ? お掃除とお料理が “少々” 苦手なのですね?』

―――― 真冬 『ち、違うのよ、美春。そんな事実はなくて、その……――』

―――― 美春 『――問答無用。ご心配には及びません、真冬姉さま』

―――― 美春 『今から私が、姉さまが苦手を克服するまでつきっきりでお教えいたしますので』


成幸 「………………」

成幸 (……最悪、桐須先生が、死ぬな)

756以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:51:36 ID:lMbr6Vko
美春 「……?」 (どうしたんでしょう、唯我成幸さん。難しい顔をして黙りこくって……)

美春 (姉さまのことをそれだけ真剣に考えてくれているということなのでしょうが……)

美春 (お、男ならズバッと言ったらどうですか!! 男らしくありません!)


―――― 成幸 『真冬先生は、俺の大切な人です! 大好きな人です!』

―――― 成幸 『だから誰になんと言われようと俺は……』

―――― 成幸 『絶対に真冬先生と添い遂げてみせます!!!!』


美春 「はうっ……///」

美春 (そ、そこまで覚悟が決まっているなら、私だって……)

美春 (おふたりの関係を認めるに吝かではないのに……)

成幸 「………………」

成幸 (ど、どうするどうするどうする!?)

成幸 (正直に話してしまったが最後、最悪桐須先生が死ぬ未来が見える以上、本当のことは話せないし……)

成幸 (かといって、こんな真剣な顔をしている美春さんに嘘をつくのも申し訳ないし……)

成幸 「………………」 グッ (……よしっ!)

757以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:52:19 ID:lMbr6Vko
成幸 (……ここはなんとか、嘘をつかない範囲で誤魔化そう!!)

成幸 「……俺にとって、桐須先生は、」

美春 「……!」

美春 (き、来ますか! 来るんですか!?)

美春 (カレエゴのようなとんでもない一撃が!?)

成幸 「えっと……」

成幸 「“放っておけない人” ですかね……」

美春 「………………」

美春 「……放っておけない人、ですか?」

成幸 「はい」

美春 「む……」 モヤモヤ (な、なんでしょう。何か釈然としないような……)

成幸 「桐須先生って、すごくしっかりしている人じゃないですか」

美春 「当然至極。姉さまは絶対的に完璧な理想の体現者です」

成幸 (すごい表現の仕方だ……)

758以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:52:51 ID:lMbr6Vko
成幸 「でも、どこか放っておけないような危うさもありませんか?」

美春 「……?」

成幸 「美春さんだってしょっちゅう先生の家を訪ねているじゃありませんか」

成幸 「それは、先生のことが心配だからではないですか?」

美春 「む……」

美春 「……単純に姉さまに会いたいから、という気持ちもありますが」

美春 「まぁ、たしかにそれはありますね」

成幸 「だから、俺も先生のことが放っておけなくて、先生の家を訪ねている側面があります」

成幸 「……たしかに、今の俺と先生の(掃除を手伝うような)関係は適切ではないかもしれません」

美春 「ええ。世間一般に照らし合わせれば、あなたと姉さまの(恋人)関係は適切とは言えないでしょう」

成幸 「でも、先生には俺が必要なんです。詳しくは……桐須先生の名誉のために言えませんが」

美春 「!?」 (姉さまの名誉のために言えない!? 姉さまはどんな破廉恥な理由であなたを求めているのですか!!)

成幸 「先生は意外と不器用で、できないことも多いんです」

成幸 「あ! で、でも美春さんが先生に教える必用はないですよ。俺がしっかり教えますから。手取り足取り!」

美春 「!?!?」 (手取り足取り!? 手取り足取りどんな破廉恥なことを姉さまに教えるつもりですか!!)

759以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:54:47 ID:lMbr6Vko
成幸 「だからその、これからも俺と先生の(家で掃除・勉強をする)関係を認めていただけたら……」

美春 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「……って、あの、美春さん? 聞いてます?」

美春 (や、やはり殿方はケダモノ! 唯我成幸さんも紛れもない狼……!)

美春 「み、認められるわけないでしょう! やはりあなたも姉さま(の体)が目的なんですね!!」

成幸 「先生が目的……?」

ハッ

成幸 (た、たしかに。先生に勉強を教えてもらうと捗るから、それをアテにしている面は否めない……!)

成幸 「……た、たしかにその通りかもしれません。俺は、先生のためといいつつ、先生をアテにしているかもしれません)

成幸 「でも、美春さん! たぶん先生は俺がいなくなったら(ゴミだまりに埋まって)廃人になりますよ!」

美春 「!?」 (姉さまはもうそこまで身も心も唯我成幸さんのトリコに……!?)

美春 (悪逆非道! なんて卑怯な人でしょうか……!)

成幸 「だからどうか……」

ギュッ

美春 「ひゃあっ……!?」 (手!? 手を、握……握られ……!)

760以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:55:25 ID:lMbr6Vko
成幸 「お願いします、美春さん。俺と先生の関係を、認めてください……!」

美春 「ひゃっ……ひゃっ……」 (と、殿方に手を! 手を握られています!?)

成幸 「あと、俺が先生の家に(掃除をするために)通うのを認めてください!」

ギュッ……!!!

美春 (!? つ、強く……握……)

美春 「わっ、わかりました! わかりましたから!」

美春 「あなたと姉さまの(恋人)関係を認めます!」

美春 「それからあなたが姉さまの家に(恋人として)通うことも認めますから!!」

美春 「だ、だから……離してください!!」

成幸 「へ……? わっ」 バッ 「す、すみません、つい興奮して……」

美春 (わ、私にまで興奮するなんて、ケダモノ……!)

カァアアアア……

美春 (……殿方に初めて手を握りしめられてしまいました……)

美春 (もうお嫁に行けません……)

761以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:56:38 ID:lMbr6Vko
成幸 「あの、美春さん、大丈夫ですか? 顔が赤いですけど……」

美春 「!? 赤くなんてなってません!!」

キッ

美春 「あ、あなたの熱意に免じて、今回は認めてあげます」

美春 「認めはしましたけどね……! でも……」

美春 「まだ、結婚まで認めたわけじゃありませんからねーーーーーーーー!!!」

バッ!!!!

成幸 「あ、美春さん!? もう帰るんですか!? っていうか結婚って何の話ですか!?」

美春 「唯我成幸さんのお母さま! ご飯ごちそうさまでした! 夜分に失礼しました!」

美春 「妹さん! ご飯とっても美味しかったです! 今度お礼は必ずしますね!」

美春 「双子さんたちも、また今度! それでは失礼致します!」

タタタタタ……

成幸 (わ、わざわざ俺の家族に挨拶をしてから走り去って行った……律儀な人だ……)

花枝 「あのお嬢さん、一体どうしたの?」

成幸 「俺に聞かないでくれ。俺にもわけがわからないんだ」

762以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:57:16 ID:lMbr6Vko
………………帰路

タタタタタ……

美春 「………………」 (……今回は私の負けです。唯我成幸さん、あなたの熱意に負けました)

美春 (あんな情熱的に姉さまへの愛を宣言されてしまえば、認めざるをえません……)

美春 (ですが!!)

美春 (両親は厳しいですよ! 姉さまとの結婚をそうすぐ認めてくれると……)


―――― 母 『真冬さんの言う部屋の片付けを手伝ってくれる殿方ってどんな方かしらねぇ』

―――― 父 『あの気むずかしい子が気に入るのだからきっと良い子だろう』

―――― 母 『なんにせよ、あの子ももういい歳ですし、そろそろ結婚してほしいですねぇ』

―――― 父 『うむ。あの子が連れてくる男なら信用できるだろう。早く家に連れてきてくれるといいのだが』


美春 (……いえ、外堀全埋めでしたね)

美春 (ですが、私はそんなに甘くありませんよ! あなたと姉さまの関係を全て認めたわけではありませんから!)

美春 (今日のような熱意を見せてくれなければ、絶対に結婚なんか認めませんからね!!)

おわり

763以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:57:50 ID:lMbr6Vko
………………幕間1 『カレエゴ』

真冬 「あら? カレエゴの一巻が本棚から消えているわね」

真冬 (昨日の掃除のときにどこかへやってしまったかしら)

フッ

真冬 「まぁ問題ないわね」

スッ……サッ……トッ

真冬 「うっかり一巻をもう一冊買ってしまってあるから何の問題もないわ!」

バーーーーン

真冬 「………………」

真冬 (……大ゴマで偉そうに言うことではないわね)

764以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:58:33 ID:lMbr6Vko
………………幕間2 『許すまじ』

花枝 「それにしてもお上品で感じの良いお嬢さんだったわね」

成幸 「美春さんのこと? あの人、桐須先生の妹だよ」

花枝 「真冬ちゃんの? あー、そういえばなんとなく感じが似ている気もするわね」

水希 「………………」 ブツブツブツ……

成幸 「……で、水希は隅っこで一体何をやってるんだ」

水希 「……許すまじ。兄に近づく、不貞の女郎。許すまじ……」

ブツブツブツ……

成幸 「………………」

成幸 「……さ、明日のあいつらの勉強の準備でもするかな〜、っと」

葉月 「兄ちゃん、逃げたー」

和樹 「見なかったことにしたー」

おわり

765以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 21:00:08 ID:lMbr6Vko
>>1です。読んでくださった方ありがとうございました。
まだ本編中に拾えそうなエピソードがたくさんあると思います。
全部書き上げられるとは思えませんが、少なくともこのスレがエンプティを迎えるまでは投下したいと思います。
お付き合いいただけたら嬉しいです。

感想、乙等励みになります。いつもありがとうございます。
またageていたら読みに来てくださると嬉しいです。

また投下します。

766以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/12(水) 00:45:23 ID:xA1Z/oUM
おつ
新作も楽しみにしてます

767以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/12(水) 00:46:08 ID:ck16vYpg
おつおつ

768以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/12(水) 14:34:43 ID:7Oag0XBE
やばい、最高すぎる

769以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:28:39 ID:PHnQenq6
>>1です。
書いていたら書き上がってしまったので投下します。
文学の森の眠り姫編ルート後です。


【ぼく勉】 水希 「新しいこれからをあなたと」

770以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:29:12 ID:PHnQenq6
………………問.168後 某日 唯我家

文乃 「………………」

水希 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

チクタクチクタク……

文乃 「あっ……な、成幸くん、帰ってくるの遅いね」

水希 「………………」

チラッ

水希 「……そうですね」

文乃 「あ……あはは……」

文乃 (きっ……きまずい……!)

文乃 (なんでこんなことに……?)

文乃 (今日、わたし……)

文乃 (わたし、誕生日なのにーーーーー!!!)

771以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:32:12 ID:PHnQenq6
………………少し前

成幸 「誕生日おめでとう、文乃」

文乃 「えへへ、ありがとう、成幸くん」

成幸 「早速だけど、はい、プレゼント」

文乃 「わぁ! 本当に作ってきてくれたんだ!!」

文乃 「ねぇねぇ! 着てみていい?」

成幸 「ああ、もちろん」

成幸 「……でも良かったのか? 誕生日プレゼント、そんなので」

成幸 「俺の手作りのエプロンがいいなんて……」

文乃 「“そんなの” じゃないよ」

シュルシュル……スッ

文乃 「世界で一着だけの、わたしの彼氏さんが作ってくれたエプロンだよっ」

文乃 「えへへ、どうかな? 似合う?」 クルッ

成幸 「っ……」

772以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:32:56 ID:PHnQenq6
文乃 「? どうかした、成幸くん?」

成幸 「い、いや……///」

成幸 (ま、まずい。せっかく文乃に着てもらうんだからと、これでもかと可愛く作ったから……)

成幸 「可愛すぎる……っ」

文乃 「へえっ……?///」

成幸 「あっ……」 (口に出してしまった……)

文乃 「……えへへ。嬉しいな」

成幸 「いや、こちらこそ、そんなに可愛く着てくれて嬉しいよ」

文乃 「もうっ、成幸くんったら……///」

成幸 「いや、ほんとに……///」

水希 「………………」

文乃 「えへへ……」

成幸 「はは……」

水希 「………………」

文乃 「……!?」 バッ 「み、水希ちゃん!? いたの!?」

773以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:33:35 ID:PHnQenq6
水希 「……はい、こんにちは、古橋さん」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

水希 「もちろんいますよ。ここは私の家ですから」

文乃 「あ、それはそうだよね……」

成幸 「帰ってたのか。早かったな、水希。おかえり」

水希 「うん、ただいま、お兄ちゃん」

文乃 (あれ……? わたしにツンケンするのはいつものことだけど……)

文乃 (なんでだろう? 大好きなお兄ちゃんを相手にしても、なんか表情が暗い……?)

水希 「……お兄ちゃん」

成幸 「ん?」

水希 「ちょっとお遣い頼んでもいいかな。ちょっと今日は部活で疲れちゃったんだ」

成幸 「あ、ああ。俺は構わないけど……」 チラッ

文乃 「……わたしは大丈夫だよ。待ってるよ」

成幸 「ん。悪いな、文乃。水希、何を買ってきたらいいんだ?」

水希 「……うん。えっとね……」

774以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:34:10 ID:PHnQenq6
………………現在

文乃 (……そして今、わたしは水希ちゃんとふたりきり、顔をつきあわせている)

水希 「………………」

文乃 (いつもなら……)


―――― 水希 『やっと兄と交際を始めて半年くらいでしょうか?』

―――― 水希 『まぁよく保った方だと思いますよ。兄の我慢あってのことでしょうけどね!』


文乃 (……って感じで直接ツンケンしてくるけど)

文乃 (今日はなんか、怒ってる……? というよりは、苦しそうというか、悲しそうというか……)

文乃 (……どうしたんだろう?)

水希 「………………」

文乃 (……よしっ)

グッ

文乃 (わたしはもう成幸くんの彼女さん! と、いうことは、水希ちゃんは妹同然!)

文乃 (なら、わたしが水希ちゃんのお悩みを解決してあげなくちゃ!!)

775以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:34:42 ID:PHnQenq6
文乃 「あ、あのさ、水希ちゃん」

水希 「……なんでしょうか」

文乃 「どうかしたのかな? なんか表情が優れないけど……」

水希 「………………」

プイッ

水希 「……べつに何もありませんけど」

文乃 「いやぁ……」

文乃 「……嘘がヘタだなぁ。お兄ちゃんそっくりだね」

水希 「っ……」

水希 「……べつにあなたには関係ないでしょう」

文乃 「いやいやいや、関係ないわけないでしょ」

文乃 「わたしは成幸くんの彼女だよ! そして水希ちゃんは成幸くんの妹さん!」

文乃 「ってことは、水希ちゃんはわたしの妹みたいなものだからね!!」

水希 「古橋さん……」

776以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:35:25 ID:PHnQenq6
文乃 (……ふふ。我ながらキマったね。良い姉できたね……――)

水希 「――……彼女になった程度でもう兄の妻気取りですか……?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

文乃 (あーーーーー!!! 地雷だったーーーーーー!!!)

水希 「………………」

ハァ

水希 「……まぁ、あなたと兄がくだらない理由で別れるなんてことはないでしょうから」

水希 「あなたはいずれ、本当に私の姉になるんでしょうね」

文乃 「へ……?」

カァアアアア……

文乃 「あ、あはは……/// そ、そうなったらわたしは、うん……嬉しいけど……」

水希 「………………」

文乃 「……?」 (水希ちゃん、まだ暗いままだ……)

文乃 (うーん……)

777以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:36:22 ID:PHnQenq6
文乃 「……お友達と喧嘩した?」

水希 「仲良しです。良い友達に恵まれました」

文乃 「お母さんか、葉月ちゃん和樹くんと何かあった?」

水希 「そんなわけがないでしょう」

文乃 (……うーん)

文乃 「水泳のタイムが伸びない、とか……?」

水希 「………………」

ハァ

水希 「しらみつぶしですね。違います」

水希 「……もう。お節介。本当に……」

文乃 「ん……ごめん」

水希 「……本当に、そういうところが、兄を惹きつけたんでしょうね」

水希 「そしてきっと、その兄に似ている、私やお母さん、葉月と和樹も……」

文乃 「……?」

778以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:36:55 ID:PHnQenq6
水希 「………………」

文乃 「水希ちゃん……?」

水希 「……古橋さん、最初に謝っておきます。ごめんなさい」

文乃 「へ? へ?」

水希 「それから……」 スッ 「誕生日おめでとうございます」

文乃 「へっ……? へぇ!?」

文乃 「わ……わたしへの誕生日プレゼント!? 水希ちゃんが!?」

水希 「……私が? 私がプレゼントを用意したら何かおかしいですか?」

文乃 「う、ううん。すごく嬉しいよ! 嬉しい……」

文乃 「本当に……」 クスッ 「嬉しいんだよ、水希ちゃん。ありがとう」

水希 「……いえ」

文乃 「ねぇ、開けてもいい?」

水希 「っ……」

コクリ

水希 「……はい」

779以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:37:47 ID:PHnQenq6
文乃 「なんだろうなぁ〜♪」

ガサガサ……

文乃 「……ん? 包丁?」

文乃 「………………」

水希 「……あ、あの」

水希 「ちがうんです! その……私……」

水希 「包丁がそういうものだって知らなくて……」

水希 「常識知らずだって言われたらそれまでですけど、本当に……」

水希 「……知らなくて」

780以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:38:28 ID:PHnQenq6
………………数日前

成幸 「………………」

ガガガガガガガガ……!!!!

水希 「……? お兄ちゃん、何作ってるの?」

成幸 「ん? 文乃への誕生日プレゼントだよ」

水希 「ん……そっか、古橋さん、そろそろ誕生日なんだ」

成幸 「何がほしいか聞いたら、俺手作りのエプロンがいいってさ」

成幸 「まぁ、水希のおかげで文乃も料理がどんどん上手くなってるからな」

成幸 「キッチンに立つのが楽しいみたいだ」

水希 「ふーん。そっか……」

成幸 「なんか、包丁も新しいのを買おうとか言ってたな。出刃包丁とか……」

成幸 「水希が使ってるのを見て欲しくなったとか言ってたぞ」

水希 「……ふーん。古橋さん、包丁がほしいんだ。出刃包丁かぁ」

781以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:39:02 ID:PHnQenq6
………………

水希 (高校に入ってからバイトもしてるし、家計の分を引いても……)

水希 (……うん。古橋さんへのプレゼントのお金を出しても問題ない)

水希 (古橋さん、お料理上手くなってきたけど、まだ疎いから)

水希 (……えへへ。喜んでくれるかな)

水希 「すみません、この左利き用の包丁いただけますか?」

782以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:39:36 ID:PHnQenq6
………………現在

水希 「……それで、その後、テレビで包丁はプレゼントしちゃダメだって知って」

水希 「“縁を切ることを表すから” って……」

水希 「私、いつも古橋さんにきつく当たってるから……」

水希 「包丁なんかプレゼントしたら、古橋さんを嫌な気持ちにさせちゃうかもしれないし……」

水希 「でも、せっかくバイト代で買ったものだから、相応しい人に使ってほしいし……」

水希 「それで、その……――」


文乃 「――――すっごーーーーーーーい!!!!!」 ガバッ


水希 「へ……?」

文乃 「すごいよ水希ちゃん!  これ私が欲しかった出刃包丁だね!? この包丁すごく高そうだけど大丈夫!?」

文乃 「えっ!? っていうかパッケージに左利き用って書いてある!? 包丁に利き手って関係あるの!?」

文乃 「たしかにハサミは左利き用じゃないと切りにくいけど、包丁は考えたことなかったよ!」

水希 「い、いや、あの……」 カァアアアア…… 「そんなに、まくし立てられても答えられないっていうか……」

水希 「ち、近い、です……///」

783以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:42:22 ID:PHnQenq6
文乃 「あっ……ごめんごめん」

文乃 「つい興奮しちゃったよ。水希ちゃんからプレゼントがもらえるなんて思ってなかったから……」

文乃 「……すごく、嬉しくって」 ニコッ

水希 「っ……///」

水希 「……バイトしてますから、お金はお気になさらずに。大丈夫です」

水希 「あと、普通の包丁は、あんまり利き手は関係ないですけど……」

水希 「古橋さんが欲しがってた出刃は、片刃なので……」

水希 「左利き用じゃないと多分、切りにくいと思います」

文乃 「はぇ〜、そうなんだ。危ない危ない。普通の買うとこだったよ……」

水希 「あと、古橋さんが包丁を欲しがっているのは、兄から聞いていたので……」

文乃 「そうなのかぁ。なんか、成幸くん経由でねだっちゃったみたいになっちゃったなぁ……」

文乃 「でも、本当にありがとう。すごく嬉しいよ、水希ちゃん。えへへ」

水希 「ん……どういたしまして、です」

784以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:43:02 ID:PHnQenq6
文乃 「……っていうことは、ひょっとして、水希ちゃんが今日暗かったのは、」

文乃 「包丁のプレゼントはあまり縁起が良くないってことを知って、悩んでたから……?」

水希 「ん……」

水希 「……ごめんなさい」

文乃 「なんで謝るの? わたしはすごく嬉しいから何の問題もないよ」

水希 「でも……」

文乃 「………………」 クスッ 「……水希ちゃんは優しいね」

水希 「……?」

文乃 「包丁のプレゼントが縁起が悪くて、そのせいでわたしと成幸くんがどうにかなったら嫌だ、ってこと?」

文乃 「そうだね。たしかに、わたしと成幸くんに万が一何かがあって、それで水希ちゃんが気に病むのはわたしも嫌だなぁ」

文乃 「……ってことで、こうしましょう」 ゴソゴソ……

水希 「……?」 (お財布……?)

文乃 「おっ、よかったよかった。あった」

文乃 「水希ちゃん、包丁ありがとう。大切に使うね」 スッ 「その代わり、はい、この五円玉を差し上げます」

785以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:45:44 ID:PHnQenq6
水希 「五円玉……? なんで……?」

文乃 「ふふふ、わたしはこれでも “文学の森の眠り姫” なんてあだ名で呼ばれていたこともあってね」

文乃 「おまじないやしきたりにも詳しかったりするんだよ」

文乃 「刃物をプレゼントされたら、五円玉を相手に渡すんだ」

文乃 「そうすると、縁起の悪い “切った” 御縁を結び直すことができるんだ」

文乃 「これでわたしたちは今まで以上に強固な関係で結ばれたよ!」

文乃 「だから、大丈夫。これで何も縁起が悪いことはなくなったよ。新しい縁を結んだからね」

文乃 「ありがとう、水希ちゃん。この包丁、大切に使わせてもらうね!」

水希 「……古橋さん」

水希 (この人は、ああ、本当に……)

水希 (すごい人だ)

水希 「……はいっ!! 古橋さん!」

786以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:46:21 ID:PHnQenq6
………………

文乃 「……えっと、こう、かな」

ガッ……

文乃 「うぅ、また骨に引っかかった……」

水希 「お魚はもっと、こう……」

ググッ……ゴッ……

水希 「……です」

文乃 「む、難しいんだよ……」

文乃 「……でもせっかく水希ちゃんがプレゼントしてくれた包丁だし、がんばるね!」

ググ……ゴッ……

文乃 「……!? できたー!」

水希 「……やれやれ。頭を落としただけでそんなに喜んじゃって」

水希 「いつまでもメシマズのままじゃ、兄に愛想尽かされちゃいますよー?」 プークスクス

文乃 「最近はちゃんと口内出血しないもの作ってるもん!!!」

水希 「そんなの当たり前なんですよ!!!」

787以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:46:52 ID:PHnQenq6
文乃 「……ま、まったく、水希ちゃんは本当に口が減らないんだから」

水希 「古橋さんこそ、いつまで兄の彼女面してるつもりですか」

文乃 「だから本当に彼女なんだってばー!」

水希 「………………」


―――― 『刃物をプレゼントされたら、五円玉を相手に渡すんだ』

―――― 『そうすると、縁起の悪い “切った” 御縁を結び直すことができるんだ』

―――― 『これでわたしたちは今まで以上に強固な関係で結ばれたよ!』

―――― 『だから、大丈夫。これで何も縁起が悪いことはなくなったよ。新しい縁を結んだからね』


水希 (“新しい縁” “今まで以上の関係” かぁ……)

水希 「そ、そうですか。彼女ですか。じゃあ、早く魚くらいさばけるようにならないとですね」

水希 「ふっ……」

カァアアアア……

水希 「……文乃、お姉ちゃん」

文乃 「!?」

788以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:47:39 ID:PHnQenq6
………………

成幸 「ただいまー」 (……ふー。遠くのスーパーじゃないと買えないようなものばっかりだったから大変だったな)

ドタドタドタドタ!!!!

成幸 「ん……?」

文乃 「お帰り成幸くん!! ねぇ聞いて聞いて聞いて成幸くん聞いて!!!」

成幸 「のわっ!? いきなりどうした、文乃」

文乃 「あのね!!! 水希ちゃんがね!!! わたしのこと、お姉ちゃんって……!!!」

水希 「だああああああ!!! 何でお兄ちゃんに言うんですかバカー!!」

水希 「文乃お姉ちゃんのバカーーーー!!!」

文乃 「また言ったーー!! ねぇねぇすごくない!? すごいよね成幸くん!!」

水希 「もういいです!! これからもそう呼ぶって決めましたから恥ずかしくないです!!」

水希 「その代わり、私が姉と呼ぶんですから、兄と別れたりしたら承知しませんからね!!」

成幸 「あーー……」 (一体俺は何を見せられているんだろうか……)

成幸 (でも、まぁ……水希も文乃も嬉しそうだし、いいか……)

おわり

789以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:48:14 ID:PHnQenq6
………………幕間 『それは』

文乃 「ん? ひょっとして今までわたしがお料理ベタだったのは、包丁が合っていなかったからなのでは?」

水希 「いえ、それは関係ないと思います」

成幸 「そういうレベルの料理ベタじゃなかったしな」

文乃 「冗談だよ!! そんな兄妹そろってバッサリ切ることないでしょーー!!」

おわり

790以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:51:20 ID:PHnQenq6
>>1です。
今日が左利きの日だと知り、書きました。
読んでくださった方ありがとうございました。

また投下します。

791以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 22:58:30 ID:LSj4gG8g
左利きの日初めて知った

おつ

792以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/14(金) 00:51:33 ID:EUDJ4FCo
おつんこ!!!
この組み合わせほんと好き

793以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/14(金) 12:28:55 ID:KaScJ.CI
新作ありです!
前にも書いたけど、やはり水文はイイ…

794以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/16(日) 01:25:33 ID:lhHct9mI
ええな
右利きの日ssも待ってるで

795以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/31(月) 01:58:07 ID:BTv1ZgZ.
乙乙

796以下、名無しが深夜にお送りします:2020/09/17(木) 04:31:14 ID:kclaCEMM
文系の姉ムーブほんとすこ

797以下、名無しが深夜にお送りします:2020/09/19(土) 13:50:51 ID:ExCQ8DXo
おつおつ
水希ちゃん可愛くて幸せ

798以下、名無しが深夜にお送りします:2020/10/02(金) 18:15:47 ID:D7rB3x7M
19巻の発売日やな

799以下、名無しが深夜にお送りします:2020/10/24(土) 02:07:16 ID:u9vjyso.
わたしと
お兄さんは
絶対そんな関係にはならないから
…ゴゴゴゴ

800以下、名無しが深夜にお送りします:2020/10/27(火) 04:44:43 ID:cy8SENR6
1つ目のスレから見返して思ったがやっぱ完成度高いわ

801以下、名無しが深夜にお送りします:2022/02/10(木) 16:58:48 ID:xZHZuzMo
久しぶりに読み返したけどやっぱり良いなぁ


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