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【ぼく勉】 文乃 「今週末、天体観測に行くんだよ」

672以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/23(木) 23:07:40 ID:8/XR1gKQ
紗和子 「………………」

クスッ

紗和子 「……じゃあ、お言葉に甘えて、いただきます」

ズルズルズル……

真冬 「関城さん……」

紗和子 「……せっかくですし、桐須先生。ごちそうになって行きませんか?」

真冬 「………………」

真冬 「……承知。仕方ないわね。美味しいうどんがこんなにあるのだから、遠慮するのも野暮かしらね」

親父さん 「あっ……そういや紗和子ちゃん! 大学合格おめでとうな!」

紗和子 「へ……? あ、ありがとうございます!」

紗和子 「……あれ? 私、合格したこと言いましたっけ?」

673以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/23(木) 23:08:16 ID:8/XR1gKQ
理珠 「……!?」 ハッ 「ちょっ、待ってください! お父さん……――」

親父さん 「――いやいや、リズたまから聞いてるんだよ。リズたまったら嬉しそうにさー」


―――― 理珠 『そうそう。関城さんも合格したんですよ。同じ大学です!』

―――― 理珠 『友人がひとりもいないかもと不安でしたが……』

―――― 理珠 『関城さんがいてくれて良かったです。春からが本当に楽しみです!』


親父さん 「なんて言っててさ……」 シミジミ

理珠 「っ……///」

紗和子 「お、緒方理珠が、そんなことを……///」

親父さん 「いや、ほんと、リズたまの友達でいてくれてありがとうな、紗和子ちゃん」

親父さん 「これからもリズたまのことをよろしくな」

紗和子 「は、はい! 任されました! 緒方理珠のキャンパスライフは私が守ります!」

親父さん 「うんうん。これで俺も安心だ」

674以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/23(木) 23:09:40 ID:8/XR1gKQ
親父さん 「……ってことで、俺はこれで失礼――」

――――ガシッ

理珠 「……お父さん」

親父さん 「ひっ!? リズたま……? 腕を掴んでくれるのは嬉しいが、ちょっと痛……」

ギリギリギリ……!!!!!

親父さん 「痛っ!? めちゃくちゃ痛い!?」

理珠 「うどんの打ち過ぎもそうですが、私の話を勝手に関城さんにして……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

理珠 「許せません。お母さんに一度怒られてください」

ズルズルズル……

親父さん 「いや、ちょっと、リズたま!? せっかくママにはバレないと思ったのに!?」

親父さん 「あ〜〜〜〜…………」 ズルズルズル……

真冬 「………………」 ポカーン 「……なんというか、すごいお父様ね」

紗和子 「………………」 ポーーー…… 「……緒方理珠が、私に、いてくれて良かったって……」

紗和子 「……えへへ」

675以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/23(木) 23:10:14 ID:8/XR1gKQ
真冬 「………………」

フッ

真冬 「……良かったわね、関城さん」

紗和子 「……はい。あの、先生」

真冬 「? 何かしら?」

紗和子 「……ありがとうございます」

紗和子 「先生のおかげで、緒方理珠ときちんとお話することができました」

紗和子 「本当にありがとうございました」

真冬 「……ええ。どういたしまして」

理珠 「……まったくもう。お父さんは」 プンプン

紗和子 「あっ、お帰りなさい、緒方理珠。お父様は?」

理珠 「お母さんに預けてきました。今頃お説教されていると思います」

676以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/23(木) 23:11:19 ID:8/XR1gKQ
理珠 「ところで、関城さん、先生」

理珠 「実は、うるかさんと文乃と、泊まりで卒業旅行に行こうという話をしていまして……」

真冬 「あら、そうなの」

真冬 (……まぁ、教師としては、生徒の外泊はあまり推奨できないけれど)

真冬 (卒業旅行くらいで野暮なことは言えないわね)

理珠 「それでですね、もしよかったら、お二人も一緒に行きませんか?」

真冬 「……は?」

紗和子 「へ……? わ、私も?」

紗和子 「私も誘ってくれるの……?」

理珠 「? もちろん、嫌なら無理にとは言わないですが……」

紗和子 「い、いいい嫌なわけないわ! 行く! 絶対行くわ!」

紗和子 「高熱が出ても何があっても絶対に行くわ!」

理珠 「いや、高熱が出たら来ないでください」

紗和子 「……卒業旅行。緒方理珠と、卒業旅行。友達と……卒業旅行……えへへ」

真冬 「……えっと、緒方さん?」

677以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/23(木) 23:11:56 ID:8/XR1gKQ
理珠 「? はい?」

真冬 「聞き間違いかしら? 私も……?」

理珠 「はい! さっき文乃と話したんです! 先生も一緒だったら、きっと楽しいですねって」

真冬 「っ……///」

理珠 「だから先生も、もしお嫌でないなら、一緒に行きませんか?」

真冬 「い……嫌、とかではない、けれど……」

真冬 (い、いいのかしら? 生徒たちの卒業旅行に、教員がついていくなんて……)

真冬 (さすがに言い逃れできない気がするけれど……でも……)


---- 『自分の気持ちに素直にな』


真冬 (……行きたい、と。私は、思ってしまっているのね)

真冬 「……学園長に、相談するわ」

真冬 「その上で、“引率” として許されるのであれば……」

真冬 「……私も、ご一緒してもいいかしら?」

理珠 「……!」 パァアアアアアア……!!! 「はい! ぜひ!」

678以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/23(木) 23:12:48 ID:8/XR1gKQ
………………

紗和子 「それで、旅行の行き先はどこなの、緒方理珠?」

理珠 「あまり詳しくは決まっていないのですが、うるかさんと文乃はスキーがしたいと言っていました」

真冬 「ん……スキー? それなら、もしかしたら親戚のペンションを紹介できるかもしれないわ」

キャッキャ……

紗和子 「スキーなんて久しぶりだから楽しみね!」

理珠 「関城さんは本当に何でもできるんですね。すごいです」

紗和子 「ふ、ふふ」 ニヤァ 「……手取り足取り教えてあげるわ、緒方理珠」

理珠 「……なんか怖いので別の人に教わります」

紗和子 「なぜ!?」 ガーーーン

真冬 「………………」 クスッ (……よかった)

真冬 「……ねぇ、関城さん」 クスッ 「楽しみね、卒業旅行」

紗和子 「ん……」

紗和子 「……はい! 本当に楽しみです、桐須先生!」

おわり

679以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/23(木) 23:13:40 ID:8/XR1gKQ
………………幕間1 『高熱』

紗和子 「ごほっ……げほっ……ごほっ……」

関城母 「あー……。まだ熱高いですね、紗和子さん」

関城母 「ゆっくり休んで早く治しましょうね」

紗和子 「うぅ……」

紗和子 「私も卒業旅行行ぎだがっだーーーーー!!!」

680以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/23(木) 23:14:28 ID:8/XR1gKQ
………………幕間2 『お土産』 卒業旅行中 水族館

理珠 「むむむむ……」

真冬 「……? どうしたの、緒方さん。すごい顔ね」

理珠 「あ、先生。ちょっと関城さんへのお土産で悩んでいて……」

理珠 「関城さんはしましま模様が好きなので、しましまのぬいぐるみを買おうと思うのですが……」

理珠 「このキンチャクダイぬいぐるみとニシキアナゴぬいぐるみ、どちらがいいと思いますか!?」 バーーーン!!!

真冬 「そ、そうね、どっちがいいかしらね……」

理珠 「むむむむむ……」 ポン 「決めました。悩ましいですが、こちらのニシキアナゴにします!」

真冬 「そう。あの子はボーダーが好きなのね」 クスッ 「じゃあ、私はこのキンチャクダイにするわ」

理珠 「へ……?」

真冬 「……関城さん、卒業旅行すごく楽しみにしていたものね」

真冬 「せめてお土産だけでも渡して、喜んでもらいましょう、緒方さん」

理珠 「んっ……」 ニコッ 「そうですね、桐須先生!」

おわり

681以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/23(木) 23:15:42 ID:8/XR1gKQ
>>1です。
読んでくださった方ありがとうございました。

また投下します。

682以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/24(金) 21:18:11 ID:A4ZqtiGY
おつ

683以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/26(日) 13:17:31 ID:S8lTMXwY
関城ママ導入はやいうまい嬉しい
イッチは単行本組から本誌組になったのかな

684以下、名無しが深夜にお送りします:2020/06/10(水) 05:27:57 ID:5oDpqj/k
乙でした!
久しぶりに覗きにきたら新作上がってて大歓迎です!

685以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 00:24:31 ID:XrL0W91.
>>1です。
長く間隔を開けてしまいました。
もし待っていてくださった方がいましたら申し訳ありません。
投下します。

眠り姫編の途中くらいからスタートです。


【ぼく勉】 水希 「お料理を教えてほしい?」

686以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 00:25:05 ID:XrL0W91.
………………“文学の森の眠り姫” 編中 唯我家

水希 「どうしたの、お兄ちゃん。急にお料理だなんて……」

水希 「本試験だって間近なのに……」

成幸 「いやな、ほら、古橋が俺をかばったせいでけがをしただろ?」

水希 「? うん、それは知ってるけど……」

成幸 「それで、俺が今身の回りのお世話をしに行ってるだろ?」

水希 「………………」

水希 「……ウン、ソウダネ」

成幸 (……今の間はなんだ?)

成幸 「それで、料理を作ったりもするだんだけどさ、あんまりうまく作れなくて……」

成幸 「だから、水希に料理を習って美味しいものが作れるようになったら、古橋もよろこんでくれるかな……って」

水希 「………………」

成幸 「だ、大丈夫か、水希。なんかすごい顔してるけど……」

687以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 00:25:51 ID:XrL0W91.
水希 (ふ、古橋さんめ……) ゴゴゴゴゴゴ……!!!

水希 (お兄ちゃんに身の回りのお世話をしてもらっているにとどまらず、手料理まで作ってもらってるなんて……!!)

水希 (古橋さんめ……!!)

成幸 「水希……? ダメ、かな?」

水希 (……でも、古橋さんは、お兄ちゃんのことを助けてくれたんだよね)

水希 (もし古橋さんが助けてくれなかったら、お兄ちゃんが落ちて、大けがしてたかもしれないし……)

水希 (……何よりお兄ちゃんに上目遣いでお願いされたら断れるわけないでしょー!!)

水希 「……いいよ」 ハァ 「お料理、教えてあげる」

成幸 「!? 本当か!?」 パァァァアアアア!!! 「ありがとう、水希!!」

水希 (……本当に嬉しそうな顔。よっぽど古橋さんに美味しいものを食べさせてあげたいのかな)

ズキッ

水希 (……ふんだ。べつに、お兄ちゃんは古橋さんに恩返ししているだけだもんね)

水希 (だからべつに、特別なことなんてないんだから……!)

688以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 00:27:16 ID:XrL0W91.
………………

成幸 「………………」

トン……トン……トン……

成幸 「……よし」

成幸 (自分で言うのもなんだが、食材はきれいに切れたぞ。最近古橋の家でごはんを作ってた成果だな)

水希 「………………」 ジーーーーーッ

水希 「……お兄ちゃん。ちゃんと切れてはいるけど、こうした方がもっといいかな」

スッ……トントントン……

水希 「お野菜とお肉に火を通す場合は、同じくらいの大きさにそろえた方がいいんだよ」

水希 「じゃないと、火の通り具合がまちまちになっちゃうでしょ?」

成幸 「ああ、なるほど。合理的だな……」

成幸 「食材を切るときは大きさをそろえる……と」 メモメモ

水希 (お兄ちゃんったら、メモまでとっちゃってマジメだなぁ)

水希 (……かっこいいなぁ) キュンキュン

成幸 「えーっと、たしか、煮込むまえに炒めるんだよな……」 スッ……

689以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 00:28:02 ID:XrL0W91.
水希 「お兄ちゃん、炒める順番を考えてね」

成幸 「ああ、肉とか固い野菜からだろ」

成幸 「だから、肉とにんじんとじゃがいもを先に……」

水希 「だーめ。じゃがいもはたしかに固いけど、火が通るとすぐ崩れちゃうんだから」

水希 「じゃがいもは最後だよ、お兄ちゃん」

成幸 「あ、そうか。そういえば古橋とふたりでカレー作ったときもそうだったような……」

水希 「む……」 (また古橋さん……) モヤモヤ

水希 「あとは、たまねぎだけ先に炒めて飴色にする場合もあるけど、今日はいいかな」

成幸 「ああ、メイラード反応の代表例だな」

成幸 「ちなみにあまり知られていないけど肉を焼いたとき色が変わるのも実はメイラード反応なんだぞ」

水希 「お兄ちゃん、お料理は得意じゃないのにそういうことは詳しいんだよね……」

水希 (まぁ、そういうところがかっこいいんだけど……えへへ)

水希 「さ、じゃあ炒めて、お兄ちゃん」

成幸 「おう!」

690以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 00:28:39 ID:XrL0W91.
成幸 「………………」

ジューーーー……

水希 「………………」 (……真剣な顔してお料理するお兄ちゃん、かっこいいなぁ)

成幸 「……のわっ! たまねぎがとんだ!」 アタフタアタフタ

水希 (慌てふためくお兄ちゃんもかっこいいし……)

成幸 「なぁ、水希、そろそろ水を入れたらいいかな?」

水希 (わたしに指示を求めるお兄ちゃんもかっこいい……)

水希 「うん。じゃあそろそろお水入れようか。こぼれないようにゆっくりね」

成幸 「ああ」

水希 「………………」

水希 (古橋さんは、毎日こんなお兄ちゃんを見てるんだよね)


―――― 『だから、水希に料理を習って美味しいものが作れるようになったら、古橋もよろこんでくれるかな……って』


水希 (……そしてきっと、たぶん)

水希 (これからもずっと、見ることになるんだろうな……)

691以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 00:29:39 ID:XrL0W91.
………………

葉月&和樹 「「うまーーーーーーーー!!!!」」

ガツガツガツガツ

水希 「ほら、葉月も和樹も、そんなに急いで食べないの」

成幸 「うんうん……」 モグモグモグ

成幸 「我ながら美味しくできたな」

水希 「うん、とっても美味しいよ、お兄ちゃん。すごいよ」

成幸 「まぁ、カレーはまえに一度作ってるからな……」

成幸 (……というか、市販のカレールーを使って、レシピ通りに作って美味しくできない方がおかしいんだよな)

水希 「じゃあ次は、もう少し難しいお料理にチャレンジしてみようか」

成幸 「ああ! よろしくな、水希!」

692以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 00:31:01 ID:XrL0W91.
………………数日後

成幸 「最近、古橋だけでなく親父さんも、俺の料理を美味しいって言いながら食べてくれるんだよ」

ニコニコニコ

水希 (お兄ちゃん、嬉しそうだなぁ……かわいいなぁ)

成幸 「この前作ったハムチーズサンドも古橋がすごく喜んでくれたんだ」

成幸 「あと特製スムージーも美味しいって……」

成幸 「ああ、あとな……」

ペラペラペラ……

水希 「………………」

水希 (……それはそれとして、最近古橋さんの話ばっかりだ)

成幸 「あ、そろそろ古橋の家に行く時間だ! じゃ、行ってきます!」

ビュン!!

水希 「あ、いってらっしゃい……って、もう行っちゃった」

水希 (学校お休みになったら、家にいる時間増えるかなって思ったけど)

水希 (……最近ずっと古橋さん家に行ってばっかり) ハァ 「……買い物でも行こ」

693以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 00:31:41 ID:XrL0W91.
………………買い物帰り

水希 (お兄ちゃん、今日も夕食は古橋さん家で食べるんだろうな)

水希 (古橋さんは、毎日お兄ちゃんと一緒にご飯食べてるんだよね)

水希 「………………」

水希 「……いいなぁ」

ハッ

水希 「!?」 (い、いけない。古橋さんがけがをしたのは、お兄ちゃんをかばったからなのに……)

水希 (“いいなぁ” なんて、そんなこと思っちゃだめだよね……)

水希 「………………」

水希 「……わたし――」


  「――本当に歩いて大丈夫か、古橋。けがに響かないか?」

 「大丈夫だってば。少しは動かないと逆に体に悪いって言われてるし」


水希 「!?」 (この声って……) サササッ

694以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 00:32:11 ID:XrL0W91.
成幸 「でも、まだあんまり歩きすぎない方が……」

文乃 「いやいや、近所のスーパー行くだけでしょ……」

文乃 「何度も言うけど、成幸くんは過保護すぎだよ」

成幸 「そうは言ってもな……」

水希 (やっぱりお兄ちゃんと古橋さんだー!!) コソッ

水希 (……って、何でわたし隠れてるんだろ)

成幸 「痛かったら言えよ? いつでもおぶるからな?」

文乃 「もーっ! だから大丈夫だって……とっ」

コケッ

成幸 「古橋!」

ギュッ……グイッ

文乃 「あっ……///」

成幸 「大丈夫か、古橋」

文乃 「ご、ごめん。ちょっと松葉杖引っかかっちゃって……」

文乃 「……ありがとう、成幸くん」

695以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 00:32:59 ID:XrL0W91.
成幸 「歩けるか?」

文乃 「うん。大丈夫」

成幸 「気をつけろよ。早く治さなくちゃ本試験にも響くからな」

文乃 「そうだね。気をつけるよ」

水希 「………………」

水希 (……うん。そう。わかってるんだ、わたし)

水希 (あのふたりがとってもお似合いのカップルだって)

水希 (……わかってる。わかってるんだよ)

水希 (でも、だからこんなに、悔しいんだよ……)

水希 「……わたし」

水希 「わたしだって……!」

水希 (もしお兄ちゃんが階段から落ちそうになったとき、そばにいたのがわたしだったら)

水希 (わたしだって絶対、古橋さんと同じことをしたのに……)

水希 「………………」

水希 (ああ、最低だ、わたし……)

696以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 00:33:45 ID:XrL0W91.
文乃 「今日の晩ご飯は何にするの?」

成幸 「何が食べたい? ……って聞いても、そんなにレパートリーはないけどな」

文乃 「ふふ。成幸くんが作ってくれるお料理、全部美味しいから悩んじゃうな」

成幸 「全部水希に教わった料理だけどな」

水希 (だめ、これ以上考えちゃ……)

水希 (だめなのに……)

水希 「………………」

水希 (もし、そのとき、お兄ちゃんのそばにいたのが、古橋さんじゃなくてわたしだったら)

水希 (……いま、お兄ちゃんの隣にいたのは、古橋さんじゃなくて、わたしだったのに)

水希 (わたしだったのに……!)

水希 「……る……い」


水希 「……ずるいよ、古橋さん」


水希 「………………」

水希 (……ああ) フルフル (本当に、わたし、最低だ)

697以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 00:34:29 ID:XrL0W91.
水希 (古橋さんはお兄ちゃんを助けてくれたのに)

水希 (そんな古橋さんに、わたし、“ずるい” なんて思ってる……)

水希 (わたし、なんて嫌な子なんだろう……――)


  「――――そうだよ! 水希ちゃん、すっごく良い子なんだから!!」


水希 「へ……?」

成幸 「わ、わかってるよ。水希は俺にはもったいないくらい良い妹だよ」

文乃 「もーっ! だからそれを声に出してちゃんと伝えてるの? って言ってるの」

成幸 「それは……」

成幸 「……あんまり、してないかも」

文乃 「でしょ? だから言ってるの」

成幸 「……すまん」

文乃 「わたしに謝っても仕方ないでしょ。ちゃんと水希ちゃんに……」

文乃 「……って、君にいつもお世話してもらってるわたしが、あんまり偉そうに言えることじゃないね。いつもありがとね、成幸くん」

成幸 「いや、それは全然、そもそも俺のせいだし……」

698以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 00:36:03 ID:XrL0W91.
文乃 「あっ、そうだ!」

文乃 「ねえ、わたしの足が治って、受験も終わったらさ、ふたりでお料理を作らない?」

成幸 「えっ……」 ドキッ 「ふ、ふたりで?」

文乃 「うん! それで、水希ちゃんに食べてもらうの」

文乃 「わたしは、成幸くん経由でいつも美味しいごはんをありがとう、って」

文乃 「成幸くんは、日頃の感謝を全部こめたらいいよ」

成幸 「ああ、それいいな」

成幸 「……夏にカレーを作ったときを思い出すな」

文乃 「そうだね。でも、今度は逆だよ、成幸くん」

文乃 「あのときはなんとかがんばって君にお料理を教えられたけど、」

文乃 「……今度は君が、わたしに教えてね、成幸くん」

成幸 「……ああ、任せとけ」

グッ

成幸 「なんてったって、俺は最高の妹から最高の料理を教えてもらってるからな」

文乃 「うん! ふたりで、水希ちゃんに美味しいお料理作ってあげようね!」

699以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 00:36:39 ID:XrL0W91.
水希 「………………」

水希 「……そっか」

水希 (うん、そうだ。わたし、悔しいんだ)

水希 (古橋さんにお兄ちゃんを取られちゃったみたいで、悔しいんだ。でも、それと同じくらい、思ってる……)



水希 (……今、お兄ちゃんの隣にいるのが、古橋さんでよかった、って)



水希 (……美味しいお料理、か)

クスッ

水希 (上等ですよ、古橋さん。せいぜいがんばって作ってください)

水希 (中途半端なものだったら、お兄ちゃんは絶対に渡しませんからね!)

おわり

700以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 00:37:28 ID:XrL0W91.
………………幕間1 眠り姫編エピローグ後『鏡に向かって』

水希 「………………」

ドキドキドキドキドキ…………

水希 (べ、べつに大した意味があることじゃないけど)

水希 (ただ、ちょっと試してみるってだけのことだけど……)

水希 「………………」

水希 「ふっ……文乃お姉ちゃん……///」

カァァァアアアアア………………

水希 「や、やっぱなし! こんな呼び方……///」 ハッ

文乃 「………………」

水希 「ふ、古橋さん!? いつから!?」

文乃 「……えっと、ごめん。水希ちゃんが鏡に向かって何かブツブツ言ってるから、心配になって……///」

文乃 「あー……」 オホン 「ふ、文乃お姉ちゃんだよー? なんちゃって……///」

水希 「あ゛ーーーーーーーー!!! 忘れて! 忘れてくださいー!!」

701以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 00:38:10 ID:XrL0W91.
………………幕間2 『お姉ちゃん記念日』

文乃 「成幸くん成幸くん!!」

成幸 「な、なんだ、文乃。そんなに息を切らして……」

文乃 「今日をお姉ちゃん記念日にするよ!」

成幸 「……は?」

文乃 「だから、今日をお姉ちゃん記念日にするって言ってるの! お姉ちゃん記念日!」

成幸 「えっと……」

水希 「あ゛ーーーー!!! 何でお兄ちゃんに言うんですかー! もーーーっ!!」

成幸 「水希までどうした!?」

文乃 「えへへ……/// “文乃お姉ちゃん” かぁ……///」

水希 「もーっ!! だから忘れてくださいってば!!!」

成幸 (まぁ、よくわからんが……)

成幸 (こうしてみると、本当に仲良し姉妹みたいだな) クスッ

おわり

702以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 00:38:48 ID:XrL0W91.
>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。
また投下します。

703以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 02:31:01 ID:Mjcjmj9E
新作感謝です!
やはり水文はいいなぁ

704以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 03:32:38 ID:f.2oOeYQ
おつ!

705以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/05(水) 09:14:12 ID:9VrKvByM
あなたの作品が大好きです。
これからも頑張ってください!

706以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/06(木) 18:52:38 ID:/CR7VUKw
おつんこ
文系ルートほんとすこ

707以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/09(日) 02:43:32 ID:OoFNWP3g
来てるやん乙
19巻の発売が待ち遠しい…

708以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 20:52:46 ID:9adJZdO2
>>1です。
普段と環境が違うので文字化け等あるかもしれません。
投下します。
誰のルートでもないIfルートの話だと思っていただければと思います。

【ぼく勉】 成幸 「そういえば、先輩」 あすみ 「ん?」

709以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 20:53:34 ID:9adJZdO2
………………受験後

成幸 「この前、先輩のお父さん、言ってましたよね」

あすみ 「? 言ってたって、何だよ」

成幸 「いや、ほら……」


―――― 『言ってる通り 人生医者が全てじゃあない ……が まぁ やるだけやってみなさい』


成幸 「……って」

あすみ 「ん、ああ。そういやそんなこと言ってたな」

あすみ 「……けどそれがどうかしたのか?」

成幸 「いや、だって考えてみてくださいよ」

成幸 「あれってつまり、お父さんが先輩の夢を認めてくれたってことでしょう?」

あすみ 「……あー、まぁ、そういうことになるのか」

あすみ 「………………」

あすみ (……改めて言われるとハズいな)

710以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 20:54:51 ID:9adJZdO2
成幸 「それに、そもそももう受験も終わったわけじゃないですか」

あすみ 「まぁ、そうだな。おかげさまで無事国立医学部に入れたな」

成幸 「ということはですよ?」

あすみ 「ん?」

成幸 「もう、俺と先輩は、恋人のフリをする必要はないのでは……?」

あすみ 「へ……?」

あすみ 「………………」

あすみ 「……へぇ!? 何でそうなるんだ!?」

711以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 20:55:37 ID:9adJZdO2
成幸 「いや、だってそうですよね。そもそも俺が先輩の彼氏のフリを始めたのって……」


―――― 『な……なんか お前に免じて もうしばらく様子見てくれるってよ……』


成幸 「お父さんに医学部受験を認めてもらうためですよね。なら……」

成幸 「もうお父さんが先輩の夢を認めてくれていて、なおかつ先輩も無事医学部に合格できた今……」

成幸 「そこに俺が介在する必要はないのでは?」

あすみ 「……あ、えっと、いや、まぁ……」

フラフラフラ……

あすみ 「……そりゃ、そうっちゃ、そうかもしれんけど、な?」

成幸 「……?」 (先輩どうしたんだろ。なんか目ぐるぐる回ってるし、急に足下もおぼつかなくなったぞ……)

712以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 20:56:39 ID:9adJZdO2
あすみ 「い、いや、でもな。ほら、実はウソでしたー! なんてやったら、親父の奴烈火の如く怒るぞ、きっと」

成幸 「それはそうでしょうけど、仕方ないんじゃないですか? ウソをついたのは事実なわけですし」

成幸 「いつまでもウソをついているのも気が引けるので、こうなった以上、ちゃんと謝りましょう」

あすみ 「……あー、うん。まぁ、そうだな」

あすみ 「………………」

あすみ 「いや、でも、もう少しだけ、この恋人のフリ、続けちゃダメか?」

成幸 「へ? 何でですか?」

あすみ (……このヤロウ。本当に疑問しかないような顔しやがって)

あすみ 「いやー、親父はお前のこと相当気に入っちゃってるからさー」

あすみ 「今ウソでした、なんて言ったら、怒るどころかヘコんじまうと思うんだよな」

あすみ 「……きっと来年度から、診療所の土日営業もできないくらいに」

成幸 「へぇ!? それは大変だ。なら……」

あすみ 「お、おう。だから……――」

成幸 「――……なおのこと、早く、ウソだって告白しないとですね!」

あすみ 「何でそうなる!?」

713以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 20:57:37 ID:9adJZdO2
成幸 「へ? だってそうでしょう? 今の段階でそんなにショックを受けるんだったら、」

成幸 「できるだけ早く早くウソを告白して、ショックから立ち直ってもらって、来年度もちゃんと診療所をやってもらわないと!」

あすみ 「……あー、うん。そうだな。そうだよな。お前はそういう奴だよな」

成幸 「? 先輩?」

あすみ 「いや、でも、ほら、愛憎ってのは表裏一体だからな。親父はお前のことを気に入ってはいるが……」

あすみ 「アタシがお前と結婚するって思い込んでるくらいだから、それがウソだって分かったら……」

あすみ 「……アタシとお前を八つ裂きにするくらいには、怒るかもなぁ」

成幸 (さっきから怒るって言ったりヘコむって言ったり、どっちなんだろう……)

成幸 「それくらいは覚悟の上です。大切なお嬢さんについて騙していたも同然なんですから」

成幸 「誠心誠意謝ります。その上で、殴られることもやむなし、と……」

あすみ 「……い、いやいや!? さすがに親父も巻き込まれただけのお前を殴ったりはしないと思うぞ!?」

成幸 「……?」 (八つ裂きにするかもとか言ってたのに……)

714以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 20:58:08 ID:9adJZdO2
成幸 「……先輩」

あすみ 「な、なんだよ」

成幸 「さっきからちょっと様子が変ですよ? 言ってることも支離滅裂だし、どうかしたんですか?」

成幸 「そんなにお父さんに怒られるのが怖いんですか?」

あすみ 「いや、そんなことはねーけど……」

あすみ 「………………」

あすみ 「……なぁ、後輩」

成幸 「はい?」

あすみ 「お前は、そんなに嫌かよ。アタシと、恋人のフリするの……」

成幸 「へ?」

カァアアアア……

成幸 「い、いえ、嫌とか、そういうわけではないですけど……」

あすみ 「……じゃあ、いいじゃねーか」

あすみ 「いつか、親父にはウソだって言うよ。でも、今じゃなくてもいいだろ?」

あすみ 「……この関係、もう少し続けちゃ、ダメか?」

715以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:00:02 ID:9adJZdO2
成幸 「………………」

フルフル

成幸 「……いえ、やっぱりダメです」

あすみ 「!? な、なんでだよ……」

成幸 「これ以上ウソをつき続けるわけにはいきませんし、何よりこのままじゃ……」

成幸 「………………」

あすみ 「…… “このままじゃ" なんだよ」

成幸 「……いえ、なんでもないです。とにかく、早く親父さんに謝りに行きましょう」

あすみ 「っ……」

あすみ 「そ、そうかよ! わかったよ! そうするよ!」

あすみ (“このままじゃ” ……)

ハッ

あすみ (“このままじゃ、好きな相手と付き合うこともできない” とかか……?)

あすみ 「っ……」 ズキッ (……んだよ、後輩の野郎)

716以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:01:37 ID:9adJZdO2
………………小美浪家

宗二朗 「………………」

成幸 「………………」

あすみ 「………………」

宗二朗 (娘とその恋人が神妙な顔をして尋ねてきて、“大事な話がある” ときたものだ……) ドキドキドキドキ……

宗二朗 (こ、これは期待してもいいのだろうか……)


―――― 成幸 『お父さん、娘さんを僕にください!!』

―――― あすみ 『親父! アタシたちは本気だ! 頼む!』


宗二朗 (こんな感じの展開をパパ期待しちゃってもいいのかしら!? いや、それとも……)


―――― 成幸 『じ、実は、娘さんのお腹の中には僕の子どもが……』

―――― あすみ 『無責任なことをするつもりはねぇ! アタシはこいつとこの子を育てる!』

―――― 成幸 『だから娘さんを僕にください!』


宗二朗 (こんな感じのを期待しちゃってもいいのかーーー!?)

717以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:02:32 ID:9adJZdO2
宗二朗 「………………」 ポワポワポワ……

かすみ 「……は〜、宗二朗ちゃんったらなんか別世界に行っちゃったみたい」

かすみ 「それで? お話って一体なぁに? なんか深刻そうだけど」

あすみ 「あ、ああ、実は……――」

成幸 「――……いや、先輩。俺から話しますよ」

あすみ 「後輩、でも……」

成幸 「……まず最初に、謝らせてください。先輩のお父さん、お母さん、本当に申し訳ありませんでした」

かすみ 「……? 謝られるようなことをされた憶えはないんだけどなぁ」

成幸 「ずっとウソをついてきました。先輩とのことです。俺は……」

成幸 「……俺と先輩は、恋人同士ではありません」

かすみ 「……へ?」

718以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:03:35 ID:9adJZdO2
かすみ 「……あー、うん。まぁ、知ってたけど」

あすみ 「まぁ、お袋はそうだよな。それはそうなんだけど……」

宗二朗 「………………」

あすみ 「問題はこっちだよな。おい、親父、なんとか言ったら……って」

宗二朗 「………………」 プスプスプスプス……

あすみ 「……死んでる?」

かすみ 「縁起でもないこと言わないで、あすみちゃん。生きてるから」

かすみ 「ただ、あー、これは……」

宗二朗 「……アレ ココハドコ? ワタシハ ダレ?」

かすみ 「元に戻るのに一時間はかかるかな〜?」

719以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:04:26 ID:9adJZdO2
………………一時間後

成幸 「――……と、いうわけなんです」

かすみ 「は〜、なるほどねぇ。あすみちゃんの方から唯我君に頼んで、恋人役をやってもらってたとー」

かすみ 「まぁ、ママはそんなところじゃないかなー、って踏んでたけどね!」 エッヘン

宗二朗 「………………」

成幸 「あの、お父さん、ご存知であったとはいえ、お母さんも、騙すようなことをして本当にすみませんでした」

あすみ 「いや、アタシが無理言ってやってもらってたんだから、お前は悪くねぇだろ」

あすみ 「……謝るとしたら、アタシだ。本当に悪かったよ、親父」

かすみ 「? あれ、あすみちゃん。私はー?」

あすみ 「あんた最初っから気づいてただろ!!」

かすみ 「てへっ☆」

宗二朗 「………………」

あすみ 「……いや、っていうか、親父もなんか言えよ。さすがにずっと黙ってると怖いんだが」

宗二朗 「………………」 ボソッ 「……成幸君」

成幸 「! は、はいっ!」

720以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:05:20 ID:9adJZdO2
成幸 「あ、あの、本当に申し訳ありませんでした! 大切な娘さんのことで、ウソをつくようなことをして!」

成幸 「あの、だから、その……」

宗二朗 「……謝らないでくれ、成幸君。娘が迷惑をかけてしまってすまなかった」

成幸 「!? あ、頭を上げてください! お父さんが謝るようなことを何も……!」

宗二朗 「……ふふ。まだ私を “お父さん” と呼んでくれるか」

成幸 「あっ……す、すみません」

宗二朗 「……構わんよ。いや、本当に楽しかった。君とあすみの将来を考えるのも、君と将来酒を汲み交わす想像をするのも」

宗二朗 「……本当に楽しかった」

あすみ (……アタシが言うことじゃねぇけどこの親父重いな)

宗二朗 「よくよく考えてみれば、うちのじゃじゃ馬娘が君のような好青年を捕まえられようはずもない」

成幸 「いや、そんな……」

宗二朗 「ほんの一時だけでも夢を見させてくれてありがとう。本当にすまなかった」

成幸 「………………」

スッ

成幸 「……こちらこそ、本当に申し訳ありませんでした」

721以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:06:31 ID:9adJZdO2
成幸 「……では、先輩」

あすみ 「ん」

成幸 「これで本当に、ニセモノの関係はおしまいですね」

あすみ 「………………」

あすみ 「……ああ」

あすみ 「なんか悪かったな、今まで」

あすみ 「親父を騙すために恋人のフリなんて頼み込んで、色々なところに連れ出して……」


―――― 『小妖精メイドあしゅみぃちゃんのビキニ姿が拝める幸せ者なんて そうそういねーぞ?』


あすみ 「お前に勉強を教わるだけに留まらず、勉強の邪魔みたいなこともして……」


―――― 『親父へのダメ押しに もう1枚♪』


あすみ 「本当に……」

722以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:07:16 ID:9adJZdO2
あすみ (……ああ、そうか)


―――― 『この診療所がなくなったって…… 世界も夢も終わりません!』

―――― 『先輩は必ず立派な医者になるんですっ!!』

―――― 『場所なんかどこだって 先輩がいればそこが新しい小美浪診療所になるんですッッ!!』


あすみ (アタシ、本当に……)


―――― 『な? 冗談冗談♪』


あすみ (本当に、こいつのことが……)

あすみ 「………………」

あすみ 「……本当に、ずっと悪いコトしたな。後輩。すまん」

ポロ……

あすみ 「あ、あれ? なんで、目、潤んで……」

ポロポロポロ……

あすみ 「なんで、涙なんか……」

723以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:08:00 ID:9adJZdO2
かすみ 「あすみちゃん……」

成幸 「………………」

成幸 「……先輩、ハンカチどうぞ」

あすみ 「っ……や、やめろよ。アタシとお前は、もうべつに、ニセモノの恋人とかじゃない……」

あすみ 「……ただの、先輩後輩なんだから。だから……」

あすみ 「……もう、やめろよ。そうやって優しくするなよ」

あすみ 「そういうこと、されると……っ」

あすみ (また……)

あすみ (また、お前と、そういう関係に……)

成幸 「………………」

成幸 「……俺たちの関係はこれで終わって、ただの先輩後輩。そうですね」

成幸 「では、その上で改めて、先輩にひとつお願いがあります」

あすみ 「お願い……? なんだよ」

成幸 「先輩」


成幸 「改めて、お願いします。俺と、ホンモノの恋人になってもらえませんか?」

724以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:09:54 ID:9adJZdO2
あすみ 「………………」

ボッ

あすみ 「……へ?」

成幸 「先輩のことが好きです。先輩のホンモノの彼氏になりたいです」

あすみ 「へ? へ?」

成幸 「だから俺とお付き合いしていただけませんか?」

あすみ 「へ? へ? へ?」

かすみ 「あらぁ♪ 唯我君ったら意外と情熱的♪」

あすみ 「ふぇ……」

あすみ 「ふぇぇえええええええええ!?」

あすみ 「こっ、このタイミングで、何言ってんだ、お前!」

あすみ 「じ、冗談なら笑えねーぞ!!」

成幸 「………………」

ギュッ

あすみ 「ふぇっ!?」 (手、手……ぎゅって……手……///)

725以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:11:00 ID:9adJZdO2
成幸 「……先輩」

あすみ 「はっ、はいっ!」 ドキッ

成幸 「冗談でこんなこと言わないです。先輩じゃありませんから」


―――― 『いや? けっこーいいと思ってっけど? カワイーじゃん そいつ』

―――― 『ま ウソだけど』


あすみ 「そ、その節は、本当になんというか、申し訳なかったというか……」

グイッ

あすみ 「ひゃっ!?」

成幸 「……先輩」

あすみ (ち、近い近い近い……!?)

成幸 「先輩のことが好きです」

成幸 「先輩のまっすぐなところとか、一生懸命なところとか、気遣ってくれるところとか……」

成幸 「あと、お客さんに分け隔てなく接するところとか、仕事に対するプロ意識とか……あと……」

あすみ 「もっ、もういい……/// わ、わかったから……」

726以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:12:03 ID:9adJZdO2
かすみ (……唯我君ってこういうとき積極的なのね。意外だなー♪)

成幸 「………………」

フーーーー

成幸 「……以上、お願いでした」

あすみ 「き、急に冷静になるなよ……」

あすみ 「………………」

カァアアアア……

あすみ 「……わ、わかったよ。あ、アタシのこと、好きになっちまったんだろ」

あすみ 「仕方ねーな。ほ、本当に仕方ねーから、だけど……」

あすみ 「こっ……」

あすみ 「……こちらこそ、よろしくお願いします」

成幸 「……?」

成幸 「………………」

成幸 「ええええぇえええええええええええええええ!?」

あすみ 「!? な、なんだよ! 急に大声上げんじゃねーよ!」

727以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:12:36 ID:9adJZdO2
あすみ 「っていうかなんでお前が驚いてんだよ!」

成幸 「いや、だって……」

オロオロオロオロ……

成幸 「お、オーケーされるとは思ってなかったので……」

成幸 「いや、っていうか、先輩、本当に……?」

あすみ 「し、仕方ねーからだって言ってるだろ。仕方ねーから、お前のホンモノの彼女になってやるよ」

成幸 「……あ、いえ、そんな、義務感からだったら、申し訳ないので結構です」

ズーーーーーン

成幸 「やっぱりそうですよね。先輩みたいなエネルギッシュで何でもできちゃう美人さんと俺じゃ、釣り合わないですよね……」

あすみ 「!? い、いや、違くて……」

かすみ 「………………」

コソッ

かすみ 「……こんなときくらい、素直にならないと〜」

あすみ 「お、お袋……」

かすみ 「また後悔してさっきみたいに泣いちゃうゾ♪」

728以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:13:12 ID:9adJZdO2
あすみ 「っ……わかったよ……わかってるよ」

あすみ 「……こ、後輩。いや、その……成幸……くん」

成幸 「……?」

あすみ 「アタシも、その……」

あすみ 「……お前のこと、好き、なんだ」

あすみ 「好きなんだよ」

あすみ 「だから、その……」

あすみ 「アタシからも、頼む。お願いします」

あすみ 「アタシの彼氏になってください!」

あすみ 「フリとかニセモノじゃない、ホンモノの、恋人に、なってください!」

成幸 「……へ? あ……」

カァアアアア……

成幸 「ぜ、ぜひ……あ、よ、よろしく、お、お願いします……」

あすみ 「あ、ああ……///」

729以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:14:01 ID:9adJZdO2
成幸 「………………」

あすみ 「………………」

あすみ 「……ってことで、じゃあ、後は――いや、成幸くん、これからもよろしくな」

成幸 「はいっ! 先ぱ――じゃなくて……えっと、なんて呼んだら……?」

あすみ 「知るかよ。お前が勝手に決めたらいいだろ」

成幸 「は、はい。じゃあ……えっと……」

成幸 「“あすみさん”」

あすみ 「っ……///」

成幸 「あ、あはは。なんか恥ずかしいですね」

あすみ 「……いい」

成幸 「へ?」

あすみ 「そ、それで、いい」

成幸 「は、はい。じゃあ……あすみさん」

あすみ 「ん……」

730以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:15:13 ID:9adJZdO2
あすみ 「……っていうかお前、実の親の前で告白って、どんな罰ゲームだよ」

成幸 「あ、すみません。でも、一度関係をリセットさせないと、前に進めないと思ったので……」

あすみ 「……ん」


―――― 『これ以上ウソをつき続けるわけにはいきませんし、何よりこのままじゃ……』


あすみ (……あれは、そうか)

あすみ (“このままじゃアタシと本当の恋人になれない” ってことか……)

あすみ 「………………」

ニマァ

あすみ 「……そうか///」

かすみ (雨降って地固まる……というよりは、自分たちでホースで水を撒いて踏み固めた感じかしら)

かすみ (まぁふたりが幸せそうで何より……ん? 何か忘れてるような〜……)

宗二朗 「………………」

ノソリ

かすみ 「……あ、宗二朗ちゃん」

731以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:16:01 ID:9adJZdO2
あすみ 「!? お、親父……」

宗二朗 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「お、怒ってます……よね?」

成幸 「そりゃそうですよね。愛する一人娘と不誠実な交際をしていた男が、今さら本当にお付き合いを始めるなんて……」

成幸 「父親だったら怒って当然だと思います! 殴られても仕方ないと思っています! ですが、俺も本気です!」

成幸 「娘さんと交際させてください!」

あすみ 「お、親父! アタシからも頼むよ! ウソをついてたことは謝る!」

あすみ 「でも成幸くんは悪くねーんだ! だから、成幸くんとの交際を認めてくれ! 頼む!」

宗二朗 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「お父さん……!」

あすみ 「親父!」

宗二朗 「……何を言っているんだ、あすみ、成幸くん!」

パァアアアアアア……!!!

あすみ 「へ……?」

宗二朗 「結婚式はどこにする? チャペルか? 神前式か?」

732以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:16:34 ID:9adJZdO2
成幸 「……えっと」

宗二朗 「ウェディングドレスもいいが、白無垢も捨てがたいな」

宗二朗 「無論、成幸くんもだ! モーニングも似合うだろうな。紋付袴も捨てがたい!」

宗二朗 「うぅむ……」 ハッ 「そうだ! 両方とも着ればいいんだな!」

宗二朗 「よし、パパちょっと結婚式代奮発しちゃうぞ!」

あすみ 「……おい、親父」

宗二朗 「……と、いうことだ」

ニコッ

宗二朗 「これからもどうか、末永くうちの娘をよろしく頼むよ、成幸くん」

成幸 「は……はいっ!! こちらこそ、よろしくお願いします!」

733以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:17:36 ID:9adJZdO2
………………診療所前

あすみ 「……ったく、親父の奴」

―――― 宗二朗 『ん、もうこんな時間か。夜も遅いし送って行きなさい、あすみ』

あすみ 「娘に彼氏を送らせるか、フツー」

成幸 「あはは、親父さんらしいですね」

成幸 「まぁ、さすがに夜道をひとりで帰らせるわけにはいかないので、お見送りだけでいいですよ」

成幸 「それじゃ、先輩、また明日」

あすみ 「む……」

成幸 「……あっ、じゃなくて……」

成幸 「……また明日、あすみさん」

あすみ 「……ん。また明日、成幸くん」

成幸 「………………」

あすみ 「………………」

734以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:18:32 ID:9adJZdO2
成幸 「………………」

あすみ 「………………」

あすみ (……冗談じゃ、ない)

あすみ (ウソでも、ない)

あすみ (ニセモノでもない)

あすみ (ホンモノの、恋……)

成幸 「……じゃあ……――」

あすみ 「――……ま、待った」

成幸 「……?」

あすみ 「………………」

ギュッ

成幸 「……せ、先輩……?///」

成幸 「なんで、抱きついて……」

あすみ 「察せ、バカ」

735以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:19:15 ID:9adJZdO2
あすみ 「………………」

成幸 「………………」

ドキドキドキドキ……

成幸 「ん……」

ギュッ

あすみ 「っ……///」

ドキドキドキドキ……

あすみ 「……なぁ、成幸くん?」

成幸 「な、なんですか?」

あすみ 「こーいうとき、どうしたらいいと思う?」

成幸 「………………」

成幸 「……目、つむってください」

あすみ 「ん……」

成幸 「………………」

あすみ 「………………」

736以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:19:59 ID:9adJZdO2
成幸 「……あすみさん」

あすみ 「成幸くん」

スッ…………

かすみ 「………………」

宗二朗 「………………」

ジーーーーーーーッ

あすみ 「……って何見てんだジジババーーーーーー!!!!」

宗二朗 「む。見つかってしまったか。かすみちゃんがもっと近づこうって言うから〜」

かすみ 「だってー、あすみちゃんの記念すべき初キス、しっかり見ておきたかったんだもーん」

成幸 「……はは、本当に愉快なご両親ですね、あすみさん」

あすみ 「ああいうのは愉快って言わねぇよ。迷惑って言うんだよ。ったく……」

あすみ 「じゃあ、また次回にお預けだな、成幸くん」

成幸 「そうですね。また今度ですね」

あすみ 「ああ、また今度……」

737以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:20:43 ID:9adJZdO2
あすみ 「………………」

あすみ (診療所がなくなることも)

あすみ (受験に失敗して、医者を諦めることも)

あすみ (もう、ない)

あすみ (そして……)

成幸 「……? どうかしましたか、あすみさん?」

あすみ (こいつと……成幸くんとの関係が、ウソで終わることも、ない)

あすみ (また今度が、何度でも……)

あすみ (これからも、ずっと……)

あすみ 「えへへ……」

成幸 「先輩?」

あすみ 「これからもよろしくな、成幸くん」

成幸 「はいっ! こちらこそよろしくお願いします、あすみさん」

おわり

738以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:21:31 ID:9adJZdO2
………………幕間 『気振り両親』

宗二朗 「かすみちゃん、できたー?」

かすみ 「うん、完ぺき♪ 宗二朗ちゃんは?」

宗二朗 「こっちもオッケーだ」

あすみ 「? 何作ってんだ? 患者さんのリストかなんかか?」

かすみ 「ちがうよー、あすみちゃん」

キャピッ

かすみ 「これは〜、あすみちゃんと成幸くんの結婚式の招待客リストだよっ」

あすみ 「……あー、うん」

ビリッビリッビリッ

宗二朗 「あ゛ーーーーー!!! 私とかすみちゃんの二時間の苦労の結晶がーーーー!!」

おわり

739以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 21:26:53 ID:9adJZdO2
>>1です。
以前から妄想していたことを、本編であすみさん編が始まったらやれないなぁと思い、書き上げました。
あまり良い二次創作ではないと思います。申し訳ないことです。
明日はとうとう明日の夜の小妖精編ですね。楽しみです。
また投下します。

740以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/10(月) 23:21:07 ID:BhceomUc
おつ
ニヤニヤさせられたぜ

741以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 14:13:23 ID:Uhv0hfU6
良かった
あすみ可愛い

742以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:32:44 ID:lMbr6Vko
>>1です。
書いていたら書き上がってしまったので投下します。
どのルートにも分岐していない12月28日以降の話だと思います。
投下します。

【ぼく勉】 美春 「彼は教え子につき……?」

743以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:33:21 ID:lMbr6Vko
………………真冬の家

美春 「感謝感激。急にお邪魔したのにもてなしてもらってすみません、姉さま」

真冬 「そう思うなら来るときは事前に連絡をちょうだい」

真冬 (危なかったわ。昨日唯我くんが偶然家に来て掃除をしてくれていて助かったわ)

真冬 「まったく、もう大学生なのにあなたは変わらないわね」

美春 「えへへ、そう言われると照れてしまいます」

真冬 「褒めてはいないのだけれど」

ハァ

真冬 「そういえば職場でいただいたお菓子があったわね。持ってくるわ」

美春 「わぁ、嬉しいです! ありがとうございます、姉さま」

美春 (ふふ、姉さまのおうちは、いつ来てもきれいで落ち着きます)

美春 (さすがは姉さまですね)

美春 (例の一件以来、ずっと布がかぶせてあったトロフィーの棚も出しているし……)

美春 (何より、今の姉さまは本当に楽しそう。笑顔も増えました)

美春 (……認めたくはありませんが、これも全て、唯我成幸さんのおかげ、ですね)

744以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:34:21 ID:lMbr6Vko
美春 「………………」

美春 (ま、まぁ、だからといっておふたりの交際を認めるわけにはいきませんけど)

美春 (姉さまは教師。唯我成幸さんは生徒。おふたりは決してそういう仲になってはいけない関係です)

美春 (けれど、燃え上がったおふたりの恋は、阻むものが多ければ多いほど燃え上がるもの!)

美春 (そしておふたりはきっと、もうお互いのことしか目に入っていません)

美春 (ならばやはりここは私が、私の色香で唯我成幸さんを誘惑するしかありませんね……)

美春 「………………」

美春 (ま、まぁ? もしも唯我成幸さんが、私の大人の色香に惑わされることなく卒業を迎えたなら)

美春 (おふたりの交際を認めてあげないことも、ありませんけれど)

美春 (……ん?)


『彼は教え子につき ①』


美春 「彼は教え子につき……?」

美春 (きっ、驚天動地! 姉さまの本棚に漫画本が置いてあるだなんて!!)

美春 (少女漫画ですね。でも、私が読んだことがない漫画です……)

745以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:35:03 ID:lMbr6Vko
美春 「………………」

美春 (姉さまはまだ戻ってきませんよね。それに、漫画くらい無断で見てもお怒りにはならないでしょうし)

美春 (姉さま、ちょっと拝見させていただきます)

ペラッ……

『俺……やっぱり先生じゃなきゃ……』

美春 「……!?」

ペラッ

『だ だめよ結人君! 私とあなたは教師と生徒! でも……っ』

美春 「ひゃっ……!」

ドキドキドキドキ……

美春 (こ、この内容は……これではまるで……――)

真冬 「――美春」 ヒョコッ

美春 「ひゃいっ!?」サササササッ

真冬 「紅茶でいいかしら? それともコーヒー?」

美春 「ど、どちらでも大丈夫です! 姉さまと一緒でいいです!」

746以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:35:44 ID:lMbr6Vko
真冬 「? そう、わかったわ」

美春 (……あ、危なかったです。漫画くらい読んでも怒られはしないと思っていましたが)

美春 (こ、この内容は、まずいです。たぶん、これは……)

ペラッ……ペラッ……

美春 (……姉さまの、願望……!!)

美春 「………………」

ペラッペラッペラッ……

美春 (な、なんて過激なんでしょう。教師と生徒が、こんな……こんな……!)

美春 (は、は、ハレンチです!!)

747以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:36:43 ID:lMbr6Vko
美春 (姉さまは唯我成幸さんと、こんなことを……――)

真冬 「――お待たせ。お菓子とお茶よ」

美春 「ひゃうっ!?」 スッ

美春 (あっ……! つ、つい、カバンの中に隠してしまいました!)

真冬 「? どうかしたの? 顔が赤いけれど……」

美春 「い、いえ! ちょっとこの部屋暑いですかね! 暖房の温度を下げてもいいですか、姉さま?」

真冬 「そうね。たしかに少し暖めすぎかもしれないわ。ええと、リモコンは、と……」

美春 (な、なんとか誤魔化せましたが……これは……)

美春 (……これは、由々しき事態ですよ!)

748以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:45:02 ID:lMbr6Vko
………………帰り道

美春 「………………」

トボトボトボ……

美春 (この漫画本……)

美春 (……結局、あのまま返すタイミングも逸して、バッグに入れたままになってしまいました)

美春 (今度真冬姉さまに謝らなければ……)

美春 (……いえ、そんなことよりも)

美春 (唯我成幸さん)


―――― 『お義姉さんのことで協力してほしいんですッ!!!』

―――― 『姉さまのために協力!? 当然至極ッ!!』

―――― 『――……残念至極 ですが姉さまがそう決めたのでしたら仕方ありませんね』

―――― 『でも姉さま 少し声が明るくなりました 美春はそれが一番嬉しいです!』


美春 (……ええ、そうです。本当は分かっているんです。私だって)

美春 (今の姉さまがあるのは、唯我成幸さんのおかげだということを)

749以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:45:37 ID:lMbr6Vko
美春 (……分かっているんです)


―――― 『あなたにはずっと…… お礼を言わなければと思っていました』

―――― 『あなたのおかげで 最近家族に笑顔が増えてきたんです』

―――― 『姉さまも昔に比べて 仕事が楽しそうですし』

―――― 『その道において姉が迷いなく幸せならば きっそそれをこそ天職と呼ぶのですから』


美春 (私がもう……)


―――― ((衝撃展開……!! 恋人云々はともかくここまでマニアックな間柄とは……!))

―――― ((いけません! せめて卒業まではプラトニックな関係でいてもらわねば……!!))


美春 (……心の奥底では、おふたりの関係を認めてしまっているということを)

美春 (……ですが!)

美春 (殿方は皆狼! 唯我成幸さんも一時のハレンチな考えひとつで姉さまに近づいているだけという可能性も絶無ではありません!)

美春 (ここはもう、姉さま最愛の妹であるこの私が、確認するしかありません!!)

美春 (善は急げ、ですね! 待っていてください、姉さま! 私が唯我成幸さんの真意を確認して参ります!)

750以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:46:29 ID:lMbr6Vko
………………唯我家

水希 「お兄ちゃん、お夕飯できたよー」

成幸 「ん、もうそんな時間か」 ノビーー

成幸 (久々にひとりでじっくり勉強、捗った捗った……)

成幸 (……って、やったのはほとんどあいつら向けの問題作成だけど)

ピンポーン

水希 「? なんか届く予定あったかな?」

成幸 「ああ、俺が出るよ。みんな先食べててくれ」

……ガラッ

成幸 「どちら様ですか……って」

美春 「夜分に申し訳ありません。こんばんは、唯我成幸さん」

成幸 「……美春さん!?」

花枝 「成幸ー? どなたかいらっしゃったの? ……あら?」

花枝 「……あらあらあらあら」

パァアアアアアア……!!!

751以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:48:03 ID:lMbr6Vko
………………食卓

水希 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

花枝 「………………」 ニコニコニコニコニコニコニコ……!!!!!!

葉月 「きりすみはるせんしゅだー」

和樹 「ゆーめーじんだー」

美春 「すみません、突然の訪問だというのに、ご相伴にあずかってしまいまして」

成幸 「いえ……」

美春 「美味佳肴! お夕飯、とても美味しいです! 栄養バランスもよく考えられていて、味付けも濃くなく薄くなく……」

モグモグモグ……!!!

成幸 (すみませんと言う割にはたくさん食べるなこの人……)

成幸 「あの、美春さん、今日は一体どうしたんですか? っていうかどうして俺の家の場所を……?」

美春 「……はっ! あまりのご飯の美味しさに失念しておりました」

モグモグモグ……

美春 「でもどうしましょう。お箸が止まりません!」

成幸 「……食べてからでいいですよ」

752以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:48:40 ID:lMbr6Vko
水希 「………………」 (お、お兄ちゃんにたかる新しいメスがまた一人……!!)

美春 「はぁ〜〜〜、美味、美味、美味です〜〜〜〜〜!!」

水希 (しかもすごい美人さんだし! っていうか現役フィギュアスケート選手!?)

水希 (そんなの反則だよーーーー!!)

花枝 「………………」 (たしかこの娘、前にランジェリーショップで成幸の写真を出して……)


―――― 『すみません こういう男性を悩殺できそうな下着はありますか』


花枝 (……これはもう確実ね) フンス (このお嬢さんは成幸の彼女またはそれに類する何か!!!)

花枝 (でかしたわ成幸!! 文ちゃんやりっちゃんに興味を示さなかったのはそういうことだったのね!)

成幸 「……!」 ゾクッ

成幸 (なんだか知らないが水希と母さんからの圧がすごい……!)

成幸 (美春さん早くご飯食べ終えてくれーーーー!!!)

753以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:49:42 ID:lMbr6Vko
………………食後

美春 「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」

成幸 「お口に合ったなら何よりです。それで、一体どんなご用件でしょうか」

成幸 「……あと、どうして俺の家の場所を知っていたのかも教えてもらえると……」

美春 「愚問愚答。この私が、お姉様と特別な関係にあるあなたのご自宅を特定していないわけがないではありませんか」

成幸 「はぁ……」

美春 「姉さまとお酒を飲んでいるときに聞いたら教えてくれましたよ?」

成幸 (教員の情報セキュリティとは……)

美春 「そして、唯我成幸さん、今日はあなたにお伺いしたいことがあって来ました」

成幸 「伺いたいこと……?」

美春 「はい、それは……」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「それは……」 ゴクリ……!!!

美春 「………………」

美春 「……あなたと、姉さまとの関係についてです」

成幸 「……? 桐須先生と俺の関係……?」

754以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:50:26 ID:lMbr6Vko
成幸 (関係……? ってなんだろう。俺と先生はただの教師と生徒だし……)

美春 「………………」 ジーーーーーーッ

成幸 (でも、美春さんはすごく真剣な顔してるし……)

成幸 (なんなんだろうか……)

美春 「……単刀直入に伺います」

美春 「唯我成幸さん、あなたは真冬姉さまのことをどう思っていらっしゃるのですか?」

成幸 「桐須先生のことをどう思っているか……?」

美春 「はい。誠心誠意。あなたの本心を教えてください」

成幸 「えっと……」

成幸 (先生をどう思っているか? そんなの……)


―――― 成幸 『とんでもなくドジで家事下手な人ですね』

―――― 成幸 『今まで無事一人暮らしをして来られたのが不思議なくらいですよ。ははは』


成幸 「………………」

成幸 (……って言えるかぁあああああ!!)

755以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:51:03 ID:lMbr6Vko
成幸 (たしか美春さんって……)


―――― 『詮無い嘘はやめてください 私の尊敬する完璧な姉さまに限って 苦手なものなど存在しません』

―――― 『もし百億が一姉さまに苦手なものが発覚した場合』

―――― 『24時間365日お傍に張りついて誠心誠意 いかなる手段をもってしても克服にあたらせて頂く所存です』


成幸 (……多分、美春さんは俺がそんなことを言っても信じないだろうし)

成幸 (もし万が一、俺の言うことを信じてしまった場合……)


―――― 美春 『姉さま? 聞きましたよ? お掃除とお料理が “少々” 苦手なのですね?』

―――― 真冬 『ち、違うのよ、美春。そんな事実はなくて、その……――』

―――― 美春 『――問答無用。ご心配には及びません、真冬姉さま』

―――― 美春 『今から私が、姉さまが苦手を克服するまでつきっきりでお教えいたしますので』


成幸 「………………」

成幸 (……最悪、桐須先生が、死ぬな)

756以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:51:36 ID:lMbr6Vko
美春 「……?」 (どうしたんでしょう、唯我成幸さん。難しい顔をして黙りこくって……)

美春 (姉さまのことをそれだけ真剣に考えてくれているということなのでしょうが……)

美春 (お、男ならズバッと言ったらどうですか!! 男らしくありません!)


―――― 成幸 『真冬先生は、俺の大切な人です! 大好きな人です!』

―――― 成幸 『だから誰になんと言われようと俺は……』

―――― 成幸 『絶対に真冬先生と添い遂げてみせます!!!!』


美春 「はうっ……///」

美春 (そ、そこまで覚悟が決まっているなら、私だって……)

美春 (おふたりの関係を認めるに吝かではないのに……)

成幸 「………………」

成幸 (ど、どうするどうするどうする!?)

成幸 (正直に話してしまったが最後、最悪桐須先生が死ぬ未来が見える以上、本当のことは話せないし……)

成幸 (かといって、こんな真剣な顔をしている美春さんに嘘をつくのも申し訳ないし……)

成幸 「………………」 グッ (……よしっ!)

757以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:52:19 ID:lMbr6Vko
成幸 (……ここはなんとか、嘘をつかない範囲で誤魔化そう!!)

成幸 「……俺にとって、桐須先生は、」

美春 「……!」

美春 (き、来ますか! 来るんですか!?)

美春 (カレエゴのようなとんでもない一撃が!?)

成幸 「えっと……」

成幸 「“放っておけない人” ですかね……」

美春 「………………」

美春 「……放っておけない人、ですか?」

成幸 「はい」

美春 「む……」 モヤモヤ (な、なんでしょう。何か釈然としないような……)

成幸 「桐須先生って、すごくしっかりしている人じゃないですか」

美春 「当然至極。姉さまは絶対的に完璧な理想の体現者です」

成幸 (すごい表現の仕方だ……)

758以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:52:51 ID:lMbr6Vko
成幸 「でも、どこか放っておけないような危うさもありませんか?」

美春 「……?」

成幸 「美春さんだってしょっちゅう先生の家を訪ねているじゃありませんか」

成幸 「それは、先生のことが心配だからではないですか?」

美春 「む……」

美春 「……単純に姉さまに会いたいから、という気持ちもありますが」

美春 「まぁ、たしかにそれはありますね」

成幸 「だから、俺も先生のことが放っておけなくて、先生の家を訪ねている側面があります」

成幸 「……たしかに、今の俺と先生の(掃除を手伝うような)関係は適切ではないかもしれません」

美春 「ええ。世間一般に照らし合わせれば、あなたと姉さまの(恋人)関係は適切とは言えないでしょう」

成幸 「でも、先生には俺が必要なんです。詳しくは……桐須先生の名誉のために言えませんが」

美春 「!?」 (姉さまの名誉のために言えない!? 姉さまはどんな破廉恥な理由であなたを求めているのですか!!)

成幸 「先生は意外と不器用で、できないことも多いんです」

成幸 「あ! で、でも美春さんが先生に教える必用はないですよ。俺がしっかり教えますから。手取り足取り!」

美春 「!?!?」 (手取り足取り!? 手取り足取りどんな破廉恥なことを姉さまに教えるつもりですか!!)

759以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:54:47 ID:lMbr6Vko
成幸 「だからその、これからも俺と先生の(家で掃除・勉強をする)関係を認めていただけたら……」

美春 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「……って、あの、美春さん? 聞いてます?」

美春 (や、やはり殿方はケダモノ! 唯我成幸さんも紛れもない狼……!)

美春 「み、認められるわけないでしょう! やはりあなたも姉さま(の体)が目的なんですね!!」

成幸 「先生が目的……?」

ハッ

成幸 (た、たしかに。先生に勉強を教えてもらうと捗るから、それをアテにしている面は否めない……!)

成幸 「……た、たしかにその通りかもしれません。俺は、先生のためといいつつ、先生をアテにしているかもしれません)

成幸 「でも、美春さん! たぶん先生は俺がいなくなったら(ゴミだまりに埋まって)廃人になりますよ!」

美春 「!?」 (姉さまはもうそこまで身も心も唯我成幸さんのトリコに……!?)

美春 (悪逆非道! なんて卑怯な人でしょうか……!)

成幸 「だからどうか……」

ギュッ

美春 「ひゃあっ……!?」 (手!? 手を、握……握られ……!)

760以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:55:25 ID:lMbr6Vko
成幸 「お願いします、美春さん。俺と先生の関係を、認めてください……!」

美春 「ひゃっ……ひゃっ……」 (と、殿方に手を! 手を握られています!?)

成幸 「あと、俺が先生の家に(掃除をするために)通うのを認めてください!」

ギュッ……!!!

美春 (!? つ、強く……握……)

美春 「わっ、わかりました! わかりましたから!」

美春 「あなたと姉さまの(恋人)関係を認めます!」

美春 「それからあなたが姉さまの家に(恋人として)通うことも認めますから!!」

美春 「だ、だから……離してください!!」

成幸 「へ……? わっ」 バッ 「す、すみません、つい興奮して……」

美春 (わ、私にまで興奮するなんて、ケダモノ……!)

カァアアアア……

美春 (……殿方に初めて手を握りしめられてしまいました……)

美春 (もうお嫁に行けません……)

761以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:56:38 ID:lMbr6Vko
成幸 「あの、美春さん、大丈夫ですか? 顔が赤いですけど……」

美春 「!? 赤くなんてなってません!!」

キッ

美春 「あ、あなたの熱意に免じて、今回は認めてあげます」

美春 「認めはしましたけどね……! でも……」

美春 「まだ、結婚まで認めたわけじゃありませんからねーーーーーーーー!!!」

バッ!!!!

成幸 「あ、美春さん!? もう帰るんですか!? っていうか結婚って何の話ですか!?」

美春 「唯我成幸さんのお母さま! ご飯ごちそうさまでした! 夜分に失礼しました!」

美春 「妹さん! ご飯とっても美味しかったです! 今度お礼は必ずしますね!」

美春 「双子さんたちも、また今度! それでは失礼致します!」

タタタタタ……

成幸 (わ、わざわざ俺の家族に挨拶をしてから走り去って行った……律儀な人だ……)

花枝 「あのお嬢さん、一体どうしたの?」

成幸 「俺に聞かないでくれ。俺にもわけがわからないんだ」

762以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:57:16 ID:lMbr6Vko
………………帰路

タタタタタ……

美春 「………………」 (……今回は私の負けです。唯我成幸さん、あなたの熱意に負けました)

美春 (あんな情熱的に姉さまへの愛を宣言されてしまえば、認めざるをえません……)

美春 (ですが!!)

美春 (両親は厳しいですよ! 姉さまとの結婚をそうすぐ認めてくれると……)


―――― 母 『真冬さんの言う部屋の片付けを手伝ってくれる殿方ってどんな方かしらねぇ』

―――― 父 『あの気むずかしい子が気に入るのだからきっと良い子だろう』

―――― 母 『なんにせよ、あの子ももういい歳ですし、そろそろ結婚してほしいですねぇ』

―――― 父 『うむ。あの子が連れてくる男なら信用できるだろう。早く家に連れてきてくれるといいのだが』


美春 (……いえ、外堀全埋めでしたね)

美春 (ですが、私はそんなに甘くありませんよ! あなたと姉さまの関係を全て認めたわけではありませんから!)

美春 (今日のような熱意を見せてくれなければ、絶対に結婚なんか認めませんからね!!)

おわり

763以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:57:50 ID:lMbr6Vko
………………幕間1 『カレエゴ』

真冬 「あら? カレエゴの一巻が本棚から消えているわね」

真冬 (昨日の掃除のときにどこかへやってしまったかしら)

フッ

真冬 「まぁ問題ないわね」

スッ……サッ……トッ

真冬 「うっかり一巻をもう一冊買ってしまってあるから何の問題もないわ!」

バーーーーン

真冬 「………………」

真冬 (……大ゴマで偉そうに言うことではないわね)

764以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 20:58:33 ID:lMbr6Vko
………………幕間2 『許すまじ』

花枝 「それにしてもお上品で感じの良いお嬢さんだったわね」

成幸 「美春さんのこと? あの人、桐須先生の妹だよ」

花枝 「真冬ちゃんの? あー、そういえばなんとなく感じが似ている気もするわね」

水希 「………………」 ブツブツブツ……

成幸 「……で、水希は隅っこで一体何をやってるんだ」

水希 「……許すまじ。兄に近づく、不貞の女郎。許すまじ……」

ブツブツブツ……

成幸 「………………」

成幸 「……さ、明日のあいつらの勉強の準備でもするかな〜、っと」

葉月 「兄ちゃん、逃げたー」

和樹 「見なかったことにしたー」

おわり

765以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/11(火) 21:00:08 ID:lMbr6Vko
>>1です。読んでくださった方ありがとうございました。
まだ本編中に拾えそうなエピソードがたくさんあると思います。
全部書き上げられるとは思えませんが、少なくともこのスレがエンプティを迎えるまでは投下したいと思います。
お付き合いいただけたら嬉しいです。

感想、乙等励みになります。いつもありがとうございます。
またageていたら読みに来てくださると嬉しいです。

また投下します。

766以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/12(水) 00:45:23 ID:xA1Z/oUM
おつ
新作も楽しみにしてます

767以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/12(水) 00:46:08 ID:ck16vYpg
おつおつ

768以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/12(水) 14:34:43 ID:7Oag0XBE
やばい、最高すぎる

769以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:28:39 ID:PHnQenq6
>>1です。
書いていたら書き上がってしまったので投下します。
文学の森の眠り姫編ルート後です。


【ぼく勉】 水希 「新しいこれからをあなたと」

770以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:29:12 ID:PHnQenq6
………………問.168後 某日 唯我家

文乃 「………………」

水希 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

チクタクチクタク……

文乃 「あっ……な、成幸くん、帰ってくるの遅いね」

水希 「………………」

チラッ

水希 「……そうですね」

文乃 「あ……あはは……」

文乃 (きっ……きまずい……!)

文乃 (なんでこんなことに……?)

文乃 (今日、わたし……)

文乃 (わたし、誕生日なのにーーーーー!!!)

771以下、名無しが深夜にお送りします:2020/08/13(木) 21:32:12 ID:PHnQenq6
………………少し前

成幸 「誕生日おめでとう、文乃」

文乃 「えへへ、ありがとう、成幸くん」

成幸 「早速だけど、はい、プレゼント」

文乃 「わぁ! 本当に作ってきてくれたんだ!!」

文乃 「ねぇねぇ! 着てみていい?」

成幸 「ああ、もちろん」

成幸 「……でも良かったのか? 誕生日プレゼント、そんなので」

成幸 「俺の手作りのエプロンがいいなんて……」

文乃 「“そんなの” じゃないよ」

シュルシュル……スッ

文乃 「世界で一着だけの、わたしの彼氏さんが作ってくれたエプロンだよっ」

文乃 「えへへ、どうかな? 似合う?」 クルッ

成幸 「っ……」


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