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【ぼく勉】 文乃 「今週末、天体観測に行くんだよ」

528以下、名無しが深夜にお送りします:2019/11/22(金) 22:32:24 ID:69Y3XYnQ
いい夫婦の日記念ssはよ

529以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/01(日) 01:49:56 ID:ET2AQN0g
アニメが神回だったのでこのスレも復活はよ

530以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/09(月) 19:41:38 ID:G3/J96O2


531以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/26(木) 17:05:46 ID:Plix4l3.


532以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:36:27 ID:bivwmP6g
>>1です。
すみません、結局長らくお待たせしてしまいました。
待っていてくださった方、いらっしゃいましたらありがとうございます。ごめんなさい。

アニメ二話直後の話と思っていたければ幸いです。
ついでに、桐須先生のお誕生日記念のSSだと思っていただければ嬉しいです。

成幸 「俺ひとりで家事代行サービスですか?」

533以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:41:43 ID:bivwmP6g
………………朝 メイド喫茶HighStage

マチコ 「そうなの。唯我クンご指名なの。必ずひとりで来るように、って」

マチコ 「しかも時間指定は上限一杯で依頼は掃除だよ。変だよね」

成幸 「はぁ……?」

ヒムラ 「なにそれ? ちょっと怪しくない?」

ミクニ 「唯我クン可愛いからなぁ。ファンの妙齢のお姉さんとかじゃない?」

ヒムラ 「だとすれば、唯我クンが無防備にひとりで家に入った瞬間、パクッと……」

ミクニ 「!? だから時間が上限一杯なのね!? 唯我クンを目いっぱい堪能できるように!」

成幸 (何言ってるんだろうこの人たちは……)

マチコ 「うーん、そんなことになったらあしゅみーが悲しむよねぇ……」

マチコ 「怪しいし、やっぱり断っておいた方がいいかな」

成幸 「ちなみに、どんな方からのお願いなんですか?」

マチコ 「ああ、うん。お名前と住所はこれだよ。この人」

成幸 「……? ん?」 ハッ 「えっ、この人ですか……?」

マチコ 「へ? 唯我クン、知り合いなの?」

534以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:42:13 ID:bivwmP6g
………………マンション前

成幸 「………………」

成幸 (……なぜあの人がわざわざ俺を指名したのか、理由は分からなくはないけど)

成幸 (でも、何でわざわざハイステージにお願いをしたんだろうか……)

成幸 (ま、いいけどさ。そろそろ時間だし、インターフォン押すか……)

ピンポーーン……ガチャッ

?? 「正確。時間厳守ね。素晴らしい心がけだわ」

成幸 「どうも、こんにちは。ハイステージから家事代行で参りました、唯我です……」

成幸 「……って、わざわざ自己紹介する必要もないですよね……」


成幸 「――……桐須先生」


真冬 「ええ。では、お願いするわ。唯我君」

成幸 「はい。お邪魔します」

535以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:42:48 ID:bivwmP6g
成幸 (どうせいつもどおりグチャグチャなんだろうな……)

成幸 「……!?」

キラキラキラ……!!!!

成幸 「なっ……!」

真冬 「どうかしたかしら?」

成幸 「……す、すごく綺麗な部屋ですね。桐須先生」

真冬 「あら、どうもありがとう」 フフン

成幸 (すごいドヤ顔だ。がんばって掃除したんだろうな……)

成幸 「でも、家事代行の依頼は掃除になっていますけど……」

真冬 「謝罪。どうやら、生来の綺麗好きがたたってしまったようね」

クスッ

真冬 「……と、いうことで、掃除に関してはしてもらうことはないわ」

成幸 「へ……? でも先生、時間は上限一杯指定されてますけど……」

536以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:43:20 ID:bivwmP6g
真冬 「ええ。だから、あなたには他に何をしてもらおうかしら」

成幸 「……!?」


―――― 『なにそれ? ちょっと怪しくない?』

―――― 『唯我クン可愛いからなぁ。ファンの妙齢のお姉さんとかじゃない?』

―――― 『だとすれば、唯我クンが無防備にひとりで家に入った瞬間、パクッと……』

―――― 『!? だから時間が上限一杯なのね!? 唯我クンを目いっぱい堪能できるように!』


成幸 (ま、まさか、ヒムラさんとミクニさんが言っていた通り……!?)

真冬 「さ、唯我君。早く出しなさい」

成幸 「だ、出しなさいって、いや、そんな……」

真冬 「どうせ持っているんでしょう? 勉強道具」

成幸 「いや、俺は、その、そういうのは……」

成幸 「………………」

成幸 「……へ?」

537以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:44:10 ID:bivwmP6g
………………

成幸 「………………」

カリカリカリ……

真冬 「完璧。だいぶ基礎が身についてきているわね。いいことだわ」

成幸 「あ、はい。ありがとうございます、先生」

成幸 (……何をアホな勘違いをしていたんだろうか、俺は)

成幸 (いや、でもまさか、お金を払って俺を家に呼んで、勉強させるとは思わないもんな……)

成幸 (……っていうか俺、何で仕事中に勉強してるんだろう)

真冬 「……ん、そろそろお昼ね。休憩しましょうか」

成幸 「はい、わかりました。お茶でもいれますね」

真冬 「いいわ。君は座ってなさい。私がいれてくるから」

成幸 「あっ……」

成幸 (……俺が動く前に、本当に台所に行ってしまった)

成幸 (俺が家事をしなくちゃならないのに、先生にさせるのは申し訳ないな)

成幸 (っていうか大丈夫かな。また湯飲みでも割ってケガでもしないかな……)

538以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:44:44 ID:bivwmP6g
真冬 「お待たせ。緑茶よ……って」

真冬 「……救急箱を持って何をしているの、君は」

成幸 「あ、いえ。先生がいつケガしてもいいようにスタンバイしてました」

真冬 「……君は本当に私のことを何だと思っているのかしら」

成幸 (……ドジっこ無防備女教師)

真冬 「今、とてつもなく失礼なことを考えていないかしら……?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「め、滅相もないです! お茶、いただきます!」 ズズズ……

真冬 「まったく……」 ズズズ……

成幸 「………………」

成幸 「……あの、先生」

真冬 「? 何かしら?」

成幸 「どうして俺を指名して家事代行をお願いしたんですか?」

成幸 「しかも、掃除を依頼していたのに、しっかりと掃除してあるし……」

真冬 「前と同じよ。教師の威厳を保つために、小美浪さんには汚い部屋なんて見せられないわ」

真冬 「だから君を指名して家事代行をお願いしたのよ」

539以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:45:14 ID:bivwmP6g
真冬 「そうしたら偶然掃除をする気になってきて、君が来る前に部屋が綺麗になってしまったの」

真冬 「それだけよ」

成幸 「………………」

成幸 「……いや、それで納得しろというのはいくらなんでも無理ですよ、先生」

真冬 「ん……」

成幸 「………………」 ジーーーーッ

真冬 「……分かったわ。白状するわよ」

真冬 「この前のお詫びよ。それから、日頃の感謝かしら」

成幸 「へ……?」

真冬 「この前、小美浪さんと一緒に家事代行に来たとき、あなたに掃除をさせてしまったでしょう?」

真冬 「あなたに申し訳ない事をしてしまったから、そのお詫びと……」

真冬 「いつも、あなたに掃除をさせてしまって、勉強時間を奪ってしまっているから……」

真冬 「その感謝の気持ちも込めて、バイトの時間も勉強をさせてあげようとしたの」

カァアアアア……

真冬 「羞恥。自分で話すと恩着せがましくて嫌だわ。だから言いたくなかったのよ……」

540以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:46:01 ID:bivwmP6g
成幸 「先生……」

クスッ

真冬 「唯我君……?」

成幸 「……まったくもう。最初は何事かと思いましたよ。そんなことを考えてくれてたんですね」

成幸 「ありがとうございます。そのお気遣いだけで嬉しいです」

成幸 「でも、さすがに勉強を教えてもらってお金は受け取れないですよ」

真冬 「不可。後で払うからちゃんと受け取りなさい。それは正規の契約に基づいた謝礼なのだから」

成幸 「でも……」

真冬 「日頃掃除をしてもらっているのだから、それくらいさせてちょうだい」

真冬 「でないと、一生あなたに頭が上がらなくなってしまうわ」

成幸 「……わかりました」 ニコッ 「ありがとうございます、先生」

真冬 「それから、もう一つ……約束もあったから」

成幸 「へ? 約束……?」

ピンポーーーーン

真冬 「来たようね。ちょっと待っていてちょうだい」

541以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:46:42 ID:bivwmP6g
成幸 「?」 (お客さんかな……?)

真冬 「ご苦労様です。どうもありがとう」

成幸 (いや……)

真冬 「……お待たせしたわね。さ、机の上を片付けてくれるかしら」

成幸 「へっ? 先生、それって……」

成幸 「店屋物?」

真冬 「ええ。少し早いけど、お昼ご飯にしましょう」

コトッ

真冬 「これで、やっと約束が果たせるわね。さ、どうぞ」

成幸 「……!?」

成幸 (こ、この四角い器は、お重!? これは、まさか……)

成幸 (噂に名高い超高級品の……)

パカッ

成幸 「ほんとにうな重だー!?」

キラキラキラキラキラ……!!!!!

542以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:47:19 ID:bivwmP6g
成幸 (キラキラと独特の光沢を放つ焦げ目……)

成幸 (身の合間から見えるタレの染みこんだご飯……)

成幸 (そして何と言ってもこの、香ばしいタレの香り……)

グゥゥゥウウウ……

成幸 (なんて食欲をそそる食べ物なんだ……!!)

成幸 (でも……)

真冬 「? どうかしたかしら?」

成幸 「こ、こんなお高い食べ物を、いただいていいんでしょうか……?」

真冬 「……? 何を言っているの、唯我君。約束したでしょう」

成幸 「えっと……すみません、さっきから言ってる “約束” って……」

真冬 「したわ。小美浪さんとふたりでうちに来たとき」

真冬 「……あなたに掃除をしてもらったときに」

543以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:48:07 ID:bivwmP6g
成幸 「へ……?」


―――― 『うわっ なんでたった数日で元に戻ってるんですか!』

―――― 『え……? 教師の威厳? はぁ……』

―――― 『えっ うな重!!?』


成幸 「あっ……」 ハッ 「あのときですか!」

真冬 「ええ。思い出してもらえたようで何よりだわ」

真冬 「そういうことだから、遠慮する必要はないわ。食べてちょうだい」

成幸 「じ、じゃあ、そういうことなら……」

成幸 「いただきます!」 モグッ…… 「……!?」

成幸 (う、うなぎやわらかー! タレとからまって、ご飯とよく合うなー!)

成幸 (うな重って、こんな美味しいものなのか……)

モグモグモグ……

成幸 (し、幸せ……) ジーーーン……

真冬 「………………」 クスッ (……まったく。美味しそうに食べてくれるものね)

544以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:49:10 ID:bivwmP6g
………………夜

成幸 「………………」

ピピピピピピ……

成幸 「あっ、仕事終わりのアラーム……ってもうこんな時間か」

真冬 「時間が経つのを忘れていたということは、集中できていた証拠よ。がんばったわね」

成幸 「はい。いつもより頭が冴えている感じがします。ありがとうございました、先生」

真冬 「……だから、何度も言わせないでちょうだい。日頃のお返しよ」

真冬 「さ、では暗くなる前に帰りなさい。今日は家事代行ご苦労様でした」

成幸 「何もしてないですけどね」

成幸 「うな重もごちそうさまでした。めちゃくちゃ美味しかったです」

真冬 「それも約束を果たしただけよ。気にすることはないわ」

真冬 「……いつも、本当にありがとう」

成幸 「っ……」 ドキッ 「い、いえ。べつに、そんな……」

成幸 (な、なんだろ。今日の先生、妙にしおらしくて、少しヘンな感じだ……)

545以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:49:49 ID:bivwmP6g
真冬 「………………」

成幸 「………………」

ドキドキドキドキドキドキドキドキ……

成幸 (な、なんか、調子狂うな……――)

ガタッ……

成幸 「ん……?」

バタバタバタバタドンガラガッシャーン!!!!

成幸 「!?」

真冬 「あっ……」

成幸 (クローゼットと戸棚から一斉に、物が雪崩のようにくずれ落ちてきたぞ!?)

真冬 「………………」

成幸 「……あの、先生? 片付けたって言ってましたよね?」

真冬 「………………」 プイッ 「……一応、片付いてはいたでしょう?」

成幸 「ゴミや不要物をどこかに押し込めることを片付けとはいいませんよ!」

真冬 「む……」

546以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:50:19 ID:bivwmP6g
真冬 「………………」

プクゥ

成幸 「またそんなむくれた顔をして……」

成幸 (……まったくもう)

クスッ

真冬 「……な、なんにせよ、あなたの家事代行の時間は終わったでしょう。早く帰りなさい」

成幸 「ええ、そうですね。家事代行は終わったので……」

スッ……

真冬 「……っ、何をやっているの。片付けは私がやるわ。だから君は――」

成幸 「――家事代行は終わったので、いつもどおり一緒に片付けをしましょうか、先生」

真冬 「へ……?」

成幸 「今日はいつも勉強を教わるのを、先払いしてもらっちゃいましたし」

クスッ

成幸 「さ、先生も。早くやりましょう」

547以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:50:54 ID:bivwmP6g
真冬 「唯我君……」

クスッ

真冬 「……まったくもう。またお返しをしなくちゃいけないじゃない」

成幸 「それより何より、まず部屋を汚さないようにしてください」

真冬 「し、辛辣。正論は時に人を傷つけることを知るべきだわ、君は」

成幸 「はは……」

成幸 「………………」

成幸 (……先生、いつも俺が掃除をしていること、感謝してくれてたんだな)

成幸 (でも、先生)


―――― 『時間が経つのを忘れていたということは、集中できていた証拠よ。がんばったわね』


成幸 (それと同じくらい、俺も……)

成幸 (先生が勉強を教えてくれること、感謝してるんですよ)

おわり

548以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:51:46 ID:bivwmP6g
………………幕間 「におい」

葉月 「んー?」

成幸 「ん、どうした、葉月。兄ちゃんにそんなにべったりくっついて」

葉月 「なんか、兄ちゃんの服から良い匂いがするの。美味しそうな匂い……」

成幸 「あ、ああ。今日兄ちゃん、ごちそう食べて来ちゃったからな……」

成幸 「ごめんな、葉月。いつか兄ちゃんがお金稼げるようになったら、葉月にも食べさせてあげるからな」

水希 「………………」

ギラリ

水希 「……そうだね、葉月。お兄ちゃんから匂いがするね」

水希 「どこの誰か知らないけど、発情した年上のメスネコらしき匂いが……!」

和樹 「そっち!?」

おわり

549以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:58:34 ID:bivwmP6g
>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。
長らく間を開けてしまって申し訳ありません。

宣伝というわけではないですが、本日、某イベントに参加します。
夏はこの一連のスレで投下したSSを小説調に直して頒布というかなり手抜きな内容だったのですが、
今回はきちんとイベントのために書いた小説を頒布します。
恐らく明日ぼく勉で参加するのは私だけかと思いますので特定は簡単かもしれません。それが何だというわけではありませんが。
とりとめもない自分語りをしてしまいました。申し訳ないことです。


来年はできるだけ間を開けないようにこのスレにSSを投下し続けたいと思います。
本編も佳境に入ってきたような気がしますが、今後が非常に楽しみですね。明日のアニメもとても楽しみです。
このスレも、時々覗いていただければ幸いです。

本年、見ていただいた皆さん、レスをくださった皆さん、ありがとうございました。
また来年も見て頂ければ、レスをいただければ嬉しいです。

550以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 03:49:05 ID:mybs7Tvg
おつ。来年もよろしく

551以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 04:37:45 ID:6QT4AYjQ
乙です
久しぶりの投下ありがとうございます
来年も宜しくお願いします

552以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/29(日) 16:56:02 ID:FLk5IAt2
おおお!!


553以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/29(日) 23:33:11 ID:FLk5IAt2
遅れてアニメ見たら酷過ぎてビビったわ

554以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/30(月) 00:50:23 ID:GpJqPOZY
まあ、作者がうるかエンドにするって決めたんだからしゃあない
もう辛くて原作読めないが
このssスレだけ楽しみにしてます…

555以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/31(火) 03:21:53 ID:eMIy9H3g
アニメネタバレはしないでしょ(願望)
3期を完全に潰された方が辛いよ

556以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/01(水) 08:50:24 ID:.YtgyuNg
おつんこ!

コミケのタイミング悪いな
あのアニメと同日の開催て
うるか好き以外全滅したで

557以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/01(水) 09:28:23 ID:Pg.blAn6
まあ何はどうあれ>>1のssは神
今年も楽しみに待ってます…!!

558以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 18:17:43 ID:8j7WrGb.
後生だからコミケの本委託してくれ

559以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:00:59 ID:cJVSX9MM
>>1です。
投下します。


【ぼく勉】 理珠 「もう気づいてしまいましたから」

560以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:01:30 ID:cJVSX9MM
………………年末 七緒図書館

理珠 「うー……」

文乃 「むむむむ……」

うるか (リズりんと文乃っち、難問に当たってるみたいだなぁ)

うるか (クリスマスからずっと根詰めてるもんね。センター受ける組は大変だ)

うるか (でも最近険しい顔してることが多い気がするなぁ。うーん……)

ハッ

うるか 「……ねぇねぇ、リズりん、文乃っち」

理珠 「? なんですか、うるかさん?」

うるか 「大晦日の夜なんだけどさ、一緒に初詣に行かない?」

文乃 「へ? 初詣?」

うるか 「うん! 息抜きとゴーカクキガンも兼ねてさ! 最近ふたりとも根詰めすぎだかんね!」

文乃 「うるかちゃん……」

理珠 「うるかさん……」

561以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:02:26 ID:cJVSX9MM
文乃 「せっかくだし、行こっか、りっちゃん」

理珠 「そうですね。少しくらいならいいですよね」

うるか 「せっかくだし、みんなも誘っちゃおっか! あたし、海っちと川っちに声かけてみんね!」

文乃 「んー、じゃあわたしも鹿島さんたちに声かけてみようかな」

理珠 「では、私は関城さんに声をかけてみます」

うるか 「えへへ、なんか楽しみになってきたね! 屋台で色んなもの食べよーね!」

理珠 「まったく……。うるかさん、メインはお参りと合格祈願ですからね」

文乃 「ふふ、そんなこと言って、りっちゃんも屋台のうどんが楽しみなんじゃない?」

理珠 「む……。それは、否定しませんが……」 プイッ 「文乃はずるいです」

文乃 「えへへ、ごめんごめん。わたしも屋台の食べ物楽しみだよ」

文乃 「アメリカンドッグに焼き鳥に焼きそば……。あと牛串とか……」

うるか 「ふ、文乃っち。どんだけ食べるつもりなの……」

562以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:04:14 ID:cJVSX9MM
うるか 「……あっ、でさ、あのさ」

カァアアアア……

うるか 「べ、べつに他意はないけどさ。その……のけ者にするみたいで嫌だし……」

うるか 「なっ、なな、成幸もさ、その……誘って、みよっか、とか……///」

うるか 「べ、べつにヘンな意味はないからね!? と、友達として? 誘ってあげるだけで……」

理珠 「おお、それはいいですね。成幸さんこそ根を詰めすぎな気がします。いい気晴らしになると思います」

うるか 「そ、そうだよね!」 パァアアアアアア……!!! 「じゃあ、こばやんと大森っちに誘ってもらうね!」

文乃 (うるかちゃん乙女すぎるよ。色々とだだ漏れだよ……)

文乃 (ここにいるのがりっちゃんじゃなかったら色々とお察しされてるところだよ……)

理珠 「……成幸さんが、来る。成幸さんと一緒に、お参り……///」

理珠 「ふふふ。楽しみです……///」

文乃 (りっちゃんはりっちゃんで色々と漏れてるよ……)

文乃 (まったく。ふたりとも可愛いんだから) クスッ

文乃 「………………」

文乃 (……成幸くん、来るのかぁ)

563以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:04:57 ID:cJVSX9MM
文乃 (べつに、だからってわたしは、ふたりと違って何かあるわけじゃないけど……)


―――― 『ねーねーどうかなぁ唯我君? ゆ・か・た! 似合ってる?』

―――― 『ふ 2人とも似合ってるな』

―――― 『古橋なんてとくに板についてるというか…… 大和撫子って感じだよな』


文乃 「………………」

文乃 「……わたし、振り袖でも着てっちゃおうかな」 ボソッ

文乃 (そしたらまた、夏祭りの時みたいに褒めてくれるかな……)

ハッ

文乃 (わ、わたしってば、何バカなこと考えてるのかな。そんなの……)

うるか 「文乃っち……?」 理珠 「文乃……」 ジーーーーッ

文乃 「へ……? へぇ!?」

文乃 (ひ、ひょっとしてわたし、声に出してた!?)

うるか&理珠 「「………………」」 ジーーーーーーーーッ

文乃 (ま、まずいよ〜〜〜! 2人とも滅茶苦茶こっち見てくるよ〜〜〜〜!)

564以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:06:20 ID:cJVSX9MM
うるか 「いいね! 振り袖って着たことないけど着てみよっか!」

文乃 「へ……?」

理珠 「わたしも興味があります。和装は慣れていますが、振り袖は着た事がありません」

文乃 「あ……そ、そうだよね。ふたりも着てみたいよね!」

文乃 (せ、セーフ! 成幸くんに関してのところは声に出してなかったみたい!)


―――― ((そしたらまた、夏祭りの時みたいに褒めてくれるかな……))


文乃 「っ……」

文乃 (わたし……何考えてるんだろ。成幸くんはわたしの弟みたいなもので、りっちゃんとうるかちゃんの好きな人で……)

文乃 (でも……――)

うるか 「――でも、振り袖ってどうやって着るの? っていうか、家にあるかなー」

文乃 「へ!? あ、そ、そうだね。たぶん美容室とかでレンタルと着付けをしてもらうんだと思うけど……」

文乃 「……よく考えたら年の瀬の今からで間に合うかな。もうどこも予約で一杯かな」

うるか 「うーん……」

理珠 「美容室ですか……」

565以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:07:53 ID:cJVSX9MM
理珠 「………………」

文乃 「りっちゃん?」

うるか 「リズりん?」

理珠 「……ちょっと聞いてみないと分かりませんが」

理珠 「予約が空いているであろう美容室に心当たりがあります」

566以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:08:30 ID:cJVSX9MM
………………大晦日

文乃 「………………」


―――― 理珠 『電話をしてみたところ、快くオーケーをしてくれました』

―――― 理珠 『振り袖もたくさんあるから、好きなものを選んでもらって構わないとのことです』

―――― 理珠 『大晦日の夕方くらいに伺う予約を取ったので、待ち合わせて一緒に行きましょう』

―――― うるか 『さっすがリズりん! すごいね!』


文乃 (……水を差すようで嫌だったから何も言わなかったけど、怪しいよね)

文乃 (着付けまでしてくれる美容室って、この時期すごく忙しいんじゃないのかな……)

文乃 (しかも、ついこの前まで自分で髪を切ってたりっちゃんがそんな美容室をしってるなんて……)

文乃 (……変なお店だったら、わたしがりっちゃんとうるかちゃんを守らないと)

うるか 「あ、文乃っちー! こっちこっちー!」

文乃 「あっ、うるかちゃん、りっちゃん」

理珠 「全員揃いましたね。では――」

「――――きゃァーーーーーーッ!! すごい逸材揃いだわァ!?」

567以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:09:02 ID:cJVSX9MM
文乃 「!?」

ドドドドドド……!!!!

文乃 (変な女の人がすごい勢いでこっちに走ってくる!? 変質者!?)

理珠 「あちらの方が美容室の烏丸さんです」

文乃 「あれが!?」

烏丸 「は、はぁ、はぁ……」 ゴクリ 「ち、近くで見ると、改めてすごいわァ……!」

烏丸 「緒方さん、ご紹介ありがとう! あなたのお友達だけあって美人揃いねェ!」

烏丸 「ダイヤにルビーにサファイア……! 壮観な光景だわァ!!」

ツーーーー……

烏丸 「い、いけないわァ。興奮しすぎて鼻血が……」

文乃 (紗和子ちゃんといいこの人といい、りっちゃんはこの手のヘンタイに好かれるフェロモンでも出してるのかな!?)

うるか 「あはは、なんかすごい人だねぇ、文乃っち」

文乃 「あの人を笑って済ませられるあたりうるかちゃんも大物だよね……」

牧上 「……あっ、いた! ちょっと、店長! 勝手に店飛び出してどこかに行かないでくださいよ!!」

568以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:09:47 ID:cJVSX9MM
………………SALON'DE KARASUMA

牧上 「先ほどは店長が大変失礼致しました……」 ペコペコ

文乃 「い、いえ……」 (この店員さん、苦労してそうだなぁ)

牧上 「ヘンな人ですが、腕は確かなので安心してくださいね」

烏丸 「牧上さァん! 準備できたかしら!? 私もう我慢できないわァ!」

文乃 (そうは言っても不安だよ……)

烏丸 「ん……? んん!?」 ズズイ

文乃 「ひっ……!? な、なんですか?」 (近い! 近すぎだよこの人!)

うるか 「ほんとにすごい人だね、文乃っち」 クスクスクス

文乃 「笑ってられるうるかちゃんもなかなかだよ……」

烏丸 「この香りは……あなたたち、恋をしているわねェ?」

文乃&うるか 「「!?」」

文乃 「な、何を、いきなり、そんな……」

うるか 「こ、恋なんて、なんのことやら分からないかなぁ〜……?」

569以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:10:18 ID:cJVSX9MM
烏丸 「誤魔化してもダメよォ。この毛先から香る恋する乙女のフレグランスを見落とす私じゃないわァ」

烏丸 「し・か・も」

クスッ

烏丸 「この後、ひょっとしてその相手と会う予定があるんじゃないかしらァ?」

文乃&うるか 「「!!??」」 ギクギクッ

うるか 「な、何のことだか〜、わ、わかりませんなぁ〜」

アタフタアタフタ

うるか 「こ、恋とかフレグランスとか、身に覚えがないというかなんというか〜」

文乃 (誤魔化すうるかちゃんも可愛いなぁ……) ホッコリ

烏丸 「武元さんは認めてくれないようだけど、あなたはどうかしら? 古橋さん?」

文乃 「へ!? い、いやいや、わたしも何のことだか分かりませんけど!?」

570以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:11:22 ID:cJVSX9MM
烏丸 「あら、ほんとにィ?」

文乃 「本当ですよ! 恋とか、そんなの……」


―――― 『星のこと話してる古橋 俺は好きだけどな』

―――― 『起きてる』


文乃 「!?」

文乃 (わ、わたしのバカバカバカ! 何で成幸くんのことなんて思い浮かべてるのよー!)

文乃 (成幸くんはりっちゃんとうるかちゃんの好きな人なんだからー!)

文乃 (そういうのじゃないんだからー!)

ポカポカポカポカポカ!!!

うるか 「ふ、文乃っち大丈夫? 急に自分の頭たたき出してどうしたの……?」

烏丸 「フフフ、可愛い子たちねェ」

烏丸 「あら……?」

理珠 「………………」 ペラ……ペラ…… 「……ふむ、なるほど。こんな髪型もあるのですね……」

理珠 「毛染めは……受験に支障が出る可能性があるのでやめておいた方がいいですね」

571以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:12:18 ID:cJVSX9MM
烏丸 (一心不乱に女性向け雑誌を読んでいる……?)

理珠 「ふむふむ……」

烏丸 「………………」


―――― 『あ あの…… 美容室って初めてでよくわからないのですが……』

―――― 『そこまでするものなのですか……? 私あまりお金は……』


烏丸 (以前とは全然違うわね。すごくいいことだわ……)

烏丸 「……緒方さん、ちょっと待っていてちょうだいねェ。先に二人をやってしまうから」

理珠 「はい、わかりました。待ってます」

烏丸 「……さ、では始めましょうか、武元さん、古橋さん」

烏丸 「ふたりの魅力を振り袖で最大限引き出すヘアメイクをしてあげるわァ!」

うるか 「はーい! よろしくお願いしまーす!」 文乃 「あはは……よろしくお願いします」

烏丸 「さァ! ルビーとサファイアの原石をピッカピカに磨いていくわよォ!」

牧上 「店長! 採算のことは考えてくださいね!?」

572以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:19:15 ID:cJVSX9MM
………………

うるか 「………………」 文乃 「………………」

キラキラキラ……!!!!

うるか 「な、なんか、すごいね、文乃っち」

文乃 「う、うん。少し髪を整えてもらっただけなのに、なんか、綺麗になった気分……」

文乃 (腕は確かだったんだなぁ、あの人……)

烏丸 「フフ♪ お相手さんに褒めてもらえるといいわねェ」

うるか 「!? だ、だから、べつに相手なんて……」

うるか (でも、成幸が褒めてくれたら……えへへ……///)

文乃 (ふふ、いちいち可愛いなぁ、うるかちゃん)

文乃 (ダメダメ朴念成幸くんが褒めてくれるわけないけど、でも、もし褒めてくれたら……)

文乃 「……///」

牧上 (店長じゃないけど、このふたり可愛いな……)

牧上 「……では、着付けとメイクをしますので、こちらへどうぞ」

文乃&うるか 「「はーい!」」

573以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:19:45 ID:cJVSX9MM
烏丸 「……さて、お待たせしたわねェ、緒方さん」

スッ

烏丸 「前より髪が伸びたわねェ。どうする? 前みたいにエクステを使ってみる?」

理珠 「いえ、あれは重くて大変なので……」

理珠 「それに、今回は一時的なものではなく、その髪型をできるだけ維持したいと思っているので……」

烏丸 「あら? イメチェンしたいってことかしらァ」

烏丸 「なら、どんな髪型にしたいかしら?」

理珠 「それが……先ほどから雑誌を読んでいるのですが、よく分からなくて……」

理珠 「どんな髪型が有効なのか、まるで分からないのです」

烏丸 「有効……?」

理珠 「はい」

スッ……

理珠 「好きな相手が、どんな髪型が好きか。どんな私なら好きになってくれるか……」

理珠 「それが、まるで分からないのです」

烏丸 「!?」

574以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:20:45 ID:cJVSX9MM
烏丸 「お、緒方さん……?」

理珠 「? どうかしましたか?」

烏丸 (す、すごい変化だわァ! 進歩というべきかしらァ!?)

ドキドキドキドキドキドキドキドキ……

烏丸 (それにしても、とんでもなくストレートに感情を表す子ね……)

烏丸 (不覚だわァ。この私がこんなにドキドキさせられるなんて)

理珠 「……あの、烏丸さん。だから、お願いしたんです」

理珠 「烏丸さんにお任せします。私を、可愛く、綺麗に、魅力的に、してください」

理珠 「私はもう……」


―――― 『私は すこぶる ゲームに弱いのですね』

―――― 『好きになれました いいえ たぶん……』

―――― 『大好き です』


理珠 (……私はもう、気づいてしまいましたから)

575以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:21:20 ID:cJVSX9MM
理珠 「文乃も、うるかさんも、とても綺麗な人です。そんなふたりと一緒だからこそ……」

理珠 「私を、あのふたりと同じくらい……いえ、あのふたりより綺麗にしてください」

烏丸 「緒方さん……」

理珠 「……そんなことが不可能なのは分かっています。でも、私は……」


―――― 『ああ そうか』

―――― 『この人は 私のなりたい私だ』

―――― 『私の…… なれない私だ』


理珠「……好きになってほしい相手がいます。その人に振り向いてほしいから」

理珠 「私の好きな人に、私を好きになってもらいたいから」

理珠 「だから……」

烏丸 「……あなた、変わったわね。以前とは大違いだわ」

烏丸 「良い恋ね。本当に素敵な恋をしているのね」

烏丸 「……いいわァ、緒方さん。燃えてきたわよォ……!!」

576以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:21:52 ID:cJVSX9MM
烏丸 「全力でいくわ。いいえ、全力を超えていくつもりで……」

理珠 「……烏丸さん」


―――― 『はァ……』

―――― 『フゥ…… やる気が出ないわァ 牧上さん……』


烏丸 (やる気が出ず、無為に時間を過ごしていた私をたたき起こしてくれたこの子のために……)

烏丸 (……そして、この子なら)

烏丸 (いいえ、この子だからこそ、私ももっと高みを目指せる気がするわァ……!)

烏丸 「あなたというダイヤを、ピッカピカに磨き上げてあげるわァ!!」

烏丸 「そしてあなたの恋を、きっと成就させてみせるわァ!!!」

カッ!!!!!!

理珠 「は……はいっ!」

理珠 「よろしくお願いします!!」

577以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:23:04 ID:cJVSX9MM
………………

文乃 「いっえーい!」 パシャッ

うるか 「えへへ、なんか振り袖で自撮りって照れちゃうね。自分じゃないみたいだよ」

文乃 「あはは、でもうるかちゃんとっても似合ってるよ。可愛いよ」

うるか 「えへへ、ありがと、文乃っち。文乃っちもめっちゃ似合ってるよ」

うるか 「こーいうのなんて言うんだっけ? イタについてる、って感じ?」

文乃 「……ほう? 誰のどこが板だって?」 ズイッ

うるか 「ど、どしたん、文乃っち。なんか怖いよ」 アセアセ

うるか 「それにしても、リズりん遅いね。どうかしたのかな」

文乃 「そういえば、わたしたちより時間かかってるね。大丈夫かな」

うるか 「リズりんのおっぱいが収まる振り袖がないとかかなー? なんて……――」

文乃 「――ひょっとしてわたしに喧嘩を売るのが目的かな?」

うるか 「だからなんで怒ってるの文乃っち!?」

スッ……

牧上 「お待たせしました。緒方さんも着付けが終わりました」

578以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:23:52 ID:cJVSX9MM
うるか 「あ、文乃っち、終わったみたいだよ……って」

文乃 「うるかちゃん? ねぇ、同じことをわたしの胸を見ながらでも言えるの……って」

理珠 「あ、文乃、うるかさん。お待たせしてしまってすみません」

キラキラキラ……!!!!

うるか 「り、リズりん……?」

文乃 「りっちゃん……?」

理珠 「! ふたりとも、振り袖がよくお似合いですね! とても綺麗です!」

うるか 「へ? あ、う、うん。ありがと」

文乃 「ありがとう、りっちゃん……」

理珠 「? ふたりとも、どうしたのですか? 何か様子が変ですが……」

理珠 「……はっ!? ひ、ひょっとして、私何か変ですか!? 似合っていないですか!?」

理珠 「や、やはり、髪型をいじってもらうべきではなかったのでしょうか……」

うるか 「!? ち、違うよ? なんていうか、その……」

文乃 「似合ってないなんてことないよ! とっても綺麗だよ、りっちゃん! ただ……」

理珠 「!? その、なんですか、うるかさん! ただ、なんですか、文乃!」

579以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:24:49 ID:cJVSX9MM
うるか 「……キレイになりすぎじゃない、リズりん」

理珠 「……へ?」

文乃 「うん。なんていうか、雰囲気が大人っぽくなったっていうか……」

理珠 「き、綺麗……。大人……」

カァアアアア……

理珠 「お、お世辞でも嬉しいです。ありがとうございます」

うるか 「お世辞なんかじゃないよ! リズりんめっちゃキレーだよー!」

文乃 「うんうん! ほんと、雰囲気が変わっちゃって一瞬誰だか分からなかったくらいだよ!」

理珠 「ふ、ふたりとも褒めすぎです……///」

理珠 (……でも、良かった。私は、少しでもふたりに近づけたでしょうか)

理珠 (成幸さんも……)

カァアアアア……

理珠 (……キレイと言ってくれるでしょうか)

文乃 「………………」 クスッ (……りっちゃん、本当に変わったな)

580以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:25:41 ID:cJVSX9MM
文乃 (……ねぇ、りっちゃん)


―――― 『好きになりたかったはずの自分が どんどん嫌いになる』

―――― 『私は文乃 ずっとあなたのようになりたかった けれど昔以上に 今はそれが遠く感じる』


文乃 (泣きそうな顔であんなことを言っていたりっちゃんは、もういないんだね)


―――― 『好きになれました いいえ たぶん……』

―――― 『大好き です』


文乃 (りっちゃん、がんばってね。うるかちゃんは強敵だよ)

文乃 (……ふふ、成幸くんったら、こんな美少女ふたりに好意を寄せられて、幸せ者だね)

ズキッ

文乃 (っ……)

文乃 (……痛くない。苦しくない。何も、ない)

文乃 (だってわたしは、りっちゃんとうるかちゃんの、友達なんだから……)

おわり

581以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:26:16 ID:cJVSX9MM
………………幕間1 「裏で」

智波 「ってことで、うるかに頼まれたんだけど、陽真くん、唯我くんのこと初詣に連れ出せる?」

陽真 「それくらいならお安いご用だよ。成ちゃんにも息抜きが必要だし」

智波 「でも、ごめんね、陽真くん。ふたりきりで初詣できなくなっちゃって……」

陽真 「気にしなくていいよ。俺は、友達を大事にする智波ちゃんが大好きだよ」

智波 「陽真くん……」

ギュッ

智波 「わたしも、そんな陽真くんが大好き……///」

あゆ子 「……うん、色々言いたいことはあるが、」

奏 「とりあえず俺らがいないみたいな空気で話を進めるのはヤメロ」

582以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:26:53 ID:cJVSX9MM
………………幕間2 「採算」

牧上 「でも店長、うちの店、振り袖三着セットもあったんですね。私見たことないですけど」

烏丸 「当然よォ。だって、緒方さんに三人分の着付けとレンタルをお願いされてから買ったんだもの」

牧上 「へ……?」

烏丸 「京都から取り寄せた最高級の振り袖よォ。ふふふ、それをしっかりと着こなすあの三人の行く末が怖いわァ……!」

牧上 「………………」

烏丸 「……? 牧上さん?」

牧上 「店長……」

クワッ

牧上 「久々のお客さんなのに、完全に赤字じゃないですかーーーーー!!」

牧上 「ただでさえ閑古鳥が鳴いてるのにーーー!! どうやって年を越すんですかもぉおおおおおおお!!!!」

おわり

583以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 20:29:00 ID:cJVSX9MM
>>1です。読んでくださった方ありがとうございました。

年末に間に合えばよかったのですが無理でした。
今年も読んでもらえると嬉しいです。

また投下します。

584以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 21:22:26 ID:M8JcjeDk
乙です、次も期待しています

585以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/02(木) 22:49:40 ID:8j7WrGb.
おつぞ

586以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/03(金) 00:18:36 ID:0mZtDmLA
おつ

587以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/13(月) 00:20:22 ID:i657rC06
>>1です。投下します。

>>474さんリク書きました。


【ぼく勉】 蝶野 「あなたが感謝してくれたから」

588以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/13(月) 00:20:58 ID:i657rC06
………………三学期 蝶野家 朝

蝶野 「………………」

パチッ

蝶野 「………………」

リリリリリリリリリリ……!!!!

……カチャッ

蝶野 「………………」

蝶野 (……三学期、三年生は自由登校)

蝶野 (いつものくせで、目覚ましをかけてたみたいっスね)

蝶野 (目覚ましがなかったところで、結局その前に目が覚めてるんだから、習慣ってすごいっス……)

蝶野 「………………」

蝶野 (受験生としては、さっさと起きて勉強をするべきっスけど……)

蝶野 (……とりあえず、SNSでも見て、と……って、うわっ)

589以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/13(月) 00:21:28 ID:i657rC06
………………タイムライン

「バタフライフィールドの占いが更新されなくなって早数日……」

「バタフライフィールドの占いがないと不安で会社に行くのが怖いです」

「お願いだから早く復活して!」

………………

蝶野 「あー……」

蝶野 「………………」

蝶野 (……見なかったことにして、ネットニュースでも、っと……わっ)

………………ネットニュース

【速報】バタフライフィールドのブログコメ欄、オーバーフロー

【悲報】テレビ局も困り果てた!? バタフライフィールドはどこへ!?

………………

蝶野 「………………」

蝶野 (……冬休みに入ったから更新お休みしてたらすごい騒ぎになってるっスね)

蝶野 (テキトーにやってるだけなのになぁ)

590以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/13(月) 00:24:10 ID:i657rC06
蝶野 「………………」

ポチポチポチポチ……ピッ

蝶野 「……まぁ、これで文句はないっスかね……――」

――――ピロンピロンピロンピロンピロン!!!!!

蝶野 (こ、コメントがすごい勢いで増えているっス……)

蝶野 (こんなことで感謝感激されるとは、なんともはや……)

蝶野 「………………」

蝶野 (……まぁべつに、悪い気はしないっスけど)

蝶野 「………………」

蝶野 (目、覚めちゃったし……)

蝶野 (久しぶりに学校にでも行ってみるっスかね……)

591以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/13(月) 00:26:00 ID:i657rC06
………………

 一年生の、晩秋の頃のことだっただろうか。

 『おはよ、蝶野さん』

 『おはようっス、古橋さん』

 その人は、百人中百人が認めるであろう、美しい女性だった。

 同級生で同性の自分すら――いや、きっとクラスメイト全員が見惚れるくらい、美しい女性だった。

 『今日も冷えるね。冷え性だから困っちゃうよ』

 『午後から雨みたいっスよ。だからもっと寒くなるかもしれないっスね』

 『ええっ!? 雨なの!? 天気予報で言ってなかったから傘持ってきてないや……』

 『あー……』

 いらないことを言ったと思った。

 私は、天気予報なんて見てはいない。なんとなく、分かるから言っただけだ。

 私にはなんとなく分かる。見える。午後、雨が降ることが。

 自分でも気味が悪いことだが、分かるのだ。

 自分でも気味悪く思えることを、どうして言ってしまったのだろう。

592以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/13(月) 00:26:40 ID:i657rC06
 『雨、降るのかぁ……』

 『あ、いや、天気予報で降らないって言ってたなら、降らないかも……――』

 『――よしっ! いまのうちに職員室で傘を借りてこよう! 降り出してからじゃみんな殺到するもんね!』

 『へ……? いや、でも、天気予報では降らないって……』

 『信じるなら、天気予報なんかより友達の言葉でしょ』

 その人は、あっけらかんとそう言った。

 『じゃ、職員室行ってくるね、蝶野さん』

 『あ、は、はいっス……』

 その人は、職員室に向かう素振りを見せたかと思えば、パタリと立ち止まり。

 『あ、言い忘れることだった。

 その美しい顔で、咲った。

 『雨のこと教えてくれてありがとね、蝶野さん』

 その笑顔を、きっと、私は一生忘れないだろう。

 本当に本当に美しかったのだ。

593以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/13(月) 00:27:27 ID:i657rC06
………………通学路

蝶野 「………………」

蝶野 (……二年以上も前のことっスね)

蝶野 (それから、かしまんといのぽんとも意気投合して、いばらの会を作ったんスよね)

蝶野 (あの人の笑顔を曇らせたくないから。あの人を、近くで見守るために)

蝶野 (でも、あの人は……)

蝶野 「………………」

蝶野 (……段々と、笑わなくなっていった)

594以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/13(月) 00:28:15 ID:i657rC06
………………

 『おはよう、蝶野さん』

 『あ、おはよっス、古橋さん』

 それは表面的には何も変わらず訪れた、些細な変化だ。

 疲れるような、辛いような、苦しいような。

 そのどれとも違うような、複雑な何かが見えた。

 私には、猪森さんのように、超常的な何かを見る力はない。

 けれど、なんとなく、行く末が見える。

 なんとなく、雨が降る、だとか。なんとなく、よくないことが起こる、だとか。

 目の前に相対した人の、少し先が、漠然と見える。

 『……大丈夫っスか、古橋さん』

 『へ? 何が?』

 その人は、出会った頃と変わらない笑顔で、あっけらかんと言った。

 『大丈夫だよ。元気も私の取り柄の一つだからね!』

595以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/13(月) 00:29:13 ID:i657rC06
 『っ……』

 その瞬間、見えた。

 見えてしまった。

 その人が――美しいその人が、苦悶の表情を浮かべ、涙する姿が。

 その人の将来に、良くないことが――とても良くないことが起こる、その未来が。

 『そ、そうっスか。なら、良かったっス……』

 けれど、私はそれ以上何も言えなかった。

 何を言っても、力になれないと思ったから。

 そのときから、そう。

 私は、ずっと。

  ((助けて))

 待ち続けていたのだろう。

  ((誰か、この美しい人を、助けて))

 彼女に手を差し伸べてくれる、王子様のような人が、現れるのを。

596以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/13(月) 00:30:14 ID:i657rC06
………………通学路

蝶野 「………………」

蝶野 (……で、また、なんというか、タイミングが良いというか悪いというか……)

成幸 「……ん? あ、えっと、蝶野……で合ってるか?」

蝶野 「おはようっス。合ってるっスよ。古橋さんのクラスメイトの蝶野っス」

成幸 「おう、おはよ。自由登校なのに朝早くに登校とは感心だな」

蝶野 「そっちも同じじゃないっスか」

成幸 「せっかくだし学校まで一緒していいか?」

蝶野 「それはまぁ、構わないっスけど……」

蝶野 「大丈夫っスかね? 唯我ファンに刺されたりしないっスか?」

成幸 「ははっ、なんだそりゃ。俺のファンなんか俺の弟妹くらいだから安心していいぞ」

蝶野 (半分冗談半分本気だったっスけど、本当に無自覚っスね、この人……)

蝶野 (あなたの周りの女子、ほとんどあなたのファンっスよ)

蝶野 (……って言っても、信じないっスよね)

蝶野 (うちの姫も含めて、みんなあなたのファンっスよ。まったく……)

597以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/13(月) 00:31:14 ID:i657rC06
………………

 三年生に上がってすぐのときだ。

 その人は、とある男子生徒と出会った。

 その人にかかっていた、暗い暗い何かが、少し晴れて見えた。

 少しずつ、本当に少しずつだけれど、暗い何かが減っていくのが分かった。

 それと同時に、その人の未来が、少しずつ変わっていくのが分かった。

 相変わらず暗い未来だったけれど、明確に変わった。

 その人が、ひとりきりではなくなった。

 どんなに苦しいことや辛いことがあっても、誰かが一緒にいてくれるような、そんな未来。

 そして、数ヶ月が経ったある日。

 それは、劇的に変化した。

 ピカピカと光り輝いて見えた。

 元々美しかったその人が、なお一層輝いて美しく見えた。

598以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/13(月) 00:32:43 ID:i657rC06
 『何かいいことでもあったっスか?』

 私は、思わずそう聞いていた。

 『えっ? い、いいことって、べつに……』

 その人は、逡巡した後、こっそりと教えてくれた。

 『……実は、お父さんと仲直り……ってわけじゃないけど、なんていうか……』

 『少し、腹を割ってお話できたんだ。進路も認めてくれるって言ってくれて……』

 『あとは、成幸くんが……』

 『……って、これは絶対言っちゃダメな奴だ! 今のなし! なしだからね、蝶野さん!』

 ああ、もう結果なんてわざわざ言うまでもないだろうけれど。

 その人の未来は、決定的に変わっていた。

 私には、たしかな未来は見えない。はっきりとした何かは見て取れない。

 占いのようなものだ。不定形の、もやのようなカタチでしか分からない。

 けれど、その人の未来が、美しく切り替わったのだけは、分かった。

 きっと夢を叶え、多くの人に囲まれて、幸せに生きているであろう未来が、見えたのだ。

599以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/13(月) 00:33:27 ID:i657rC06
………………通学路

蝶野 「唯我さんは、今日はどうして登校するんスか?」

成幸 「ん、ああ、今日は古橋と約束があるんだよ。センター前の最終確認だな」

成幸 「センターまで十余日。あんまり猶予はないけど、最後までできることはしてやりたいからな」

蝶野 「………………」 クスッ 「……まじめっスねぇ」

成幸 「悪かったな。俺はどうせ、ガリ勉しか能がないつまらない男だよ」

蝶野 「そんなこと言ってないっスよ」

ニコッ

蝶野 「唯我さんはカッコ良くて、頼りになるって思ってるっスよ。本当に」

成幸 「っ……」

成幸 「そ、そうかよ……」 プイッ

成幸 (お世辞でも同級生にカッコいいとか言われると、照れるな……)

蝶野 「………………」

蝶野 (……そう、本当に)

蝶野 (本当にそう思ってるっスよ、唯我さん)

600以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/13(月) 00:34:35 ID:i657rC06
………………

 ―――― 『雨のこと教えてくれてありがとね、蝶野さん』

 あの日、あなたの笑顔が嬉しかったから、占いも始めた。

 ブログで発信したら、たくさんの人が喜んでくれて、良かったと思った。

 私にたくさんのものをくれたあなたのために、恩返しがしたいと思った。

 あなたが好きな――きっとあなたを救ってくれたのであろう、彼と。

 末長く結ばれてほしいと思った。

 でも、残念。

 私には、はっきりとした未来は見えない。

 だから、あなたの好きな彼の未来を占っても、やはり幸せそうな姿しか、見えない。

 その隣に立っている、誰かの正体までは、分からない。

 けれど、ああ、願わくは。

 彼の隣で立っている誰かが――彼の手を取る誰かが、あなたであることを。

 あなたが彼の隣で、幸せになることを。

 おわり

601以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/13(月) 00:35:17 ID:i657rC06
………………幕間 「似た者父娘」

文乃 「………………」

ドキドキドキドキドキドキドキドキ……

文乃 「……!? バタフライフィールドのブログが更新された!?」

零侍 「何!? それは本当か、文乃!?」

文乃 「よ、良かったよぅ。最近これを見ないと少し不安だったから……」

零侍 「ああ、本当に良かった。私もこれがないと不安でな……」

 父娘そろってすっかりバタフライフィールドにハマってました。

おわり

602以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/13(月) 00:39:35 ID:i657rC06
>>1です。

完全な妄想です。私の脳内で補完した内容が大変多いです。
不快に思われた方がいたら申し訳ないことだと思います。

3-Aの生徒ほぼ全員が古橋姫の見た目の美しさだけに心酔しているとは思えないので、
きっと皆何かしら古橋姫の内面の美しさに触れる機会があったのだろうなと思っています。
かしまんもいのぽんも、きっとそうだと思っています。


あとすみません、今回のSSと関係ないですが、ひとつ前の理珠さんの話ですが、
皆さんお分かりと思いますが原作123話の直前のつもりです。
理珠さんのイメチェンには、絶対に烏丸さんが関わってるだろうと踏んだ私の妄想です。


また投下します。

603以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/13(月) 00:55:23 ID:bSUr.7/U
おつ

604以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/13(月) 03:18:12 ID:70dsccVA
おつです

605以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/13(月) 10:59:55 ID:mnBZANRY
ええな

606以下、名無しが深夜にお送りします:2020/01/14(火) 02:06:38 ID:ot7Jjn3M
蝶野さんにこんな裏設定があってもいいよね

607以下、名無しが深夜にお送りします:2020/02/27(木) 18:51:33 ID:89TR1vm2
前々スレから全部読ませて頂きました、最高です
水希ちゃんをこんなにも天使に描いてくれて本当にありがとうございます

608以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/10(火) 00:11:49 ID:HnGnPGK6
今週の成幸の告白凄く良かった

マルチエンドには関城さんや美春も含まれてて欲しいな

609以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/10(火) 14:43:44 ID:4grvA.BE


610以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/10(火) 16:30:52 ID:HFd6/XeA
イッチの美春さん長編ほんとすこ
よくできた映画一本観たくらいの充実感ある

611以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/11(水) 01:33:09 ID:jh6ojSss
本編パラレルええな

612以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 23:04:35 ID:7Jz2yKsQ
>>1です。投下します。

数ある世界線の中でアニメ時空に一番近い世界線と思っていただければ幸いです。


【ぼく勉】 あすみ 「誕生日をあなたと」

613以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 23:05:49 ID:7Jz2yKsQ
>>1です。投下します。

数ある世界線の中でアニメ時空に一番近い世界線と思っていただければ幸いです。


【ぼく勉】 あすみ 「誕生日をあなたと」

614以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 23:06:55 ID:7Jz2yKsQ
………………大学 ガイダンス

 『――……えー、つまり、皆さんはまだ学生ではありますが、もう医者としての一歩を踏み出しているのです』

 『生半可な学生気分は己を殺します。そして、その先には患者を殺してしまう未来があります』

 『気を抜くことなく勉学に励みなさい。そうでないと、本当に将来患者を殺すことになりますよ』

あすみ 「………………」

あすみ (……さすが、国立医学部。言うことが厳しいな)

あすみ (教員だけじゃない。周りの新入生も皆まじめに話を聞いている)

あすみ (予備校とは全然雰囲気が違うな……)

あすみ 「………………」

あすみ (……アタシも頑張らねーとな)

615以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 23:07:54 ID:7Jz2yKsQ
………………帰り道

あすみ 「……はぁ」

あすみ (高いとは聞いてはいたけどな)

あすみ (まさかあんなにかかるとは。教科書代……)

あすみ (がんばって貯めたバイト代がかなり吹き飛んだな)

あすみ (……んー、勉強がんばるのは当然としても、)

あすみ (バイトも今まで以上にやらないと、こりゃ後期の学費と教科書代が怪しいぞ)

あすみ (受験なんか比じゃないくらい忙しくなりそうだな……)

あすみ 「………………」


―――― 『受験が終わったら……』


あすみ (……あんな風に言ってたのが遠い昔のことみてーだ)

あすみ (いかんいかん。せっかくやりたいことができるようになったんだ)

あすみ (勉強が忙しかろうと、バイトが忙しかろうと、アタシが望んだことなんだから)

あすみ (アタシががんばらねーとダメだろ)

616以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 23:08:35 ID:7Jz2yKsQ
あすみ (今日は、後輩が家に来る日)

あすみ (……たぶん、最後になるであろう後輩との時間)

あすみ (いつまでも後輩を頼りにするわけにはいかないし、)

あすみ (後輩に彼氏のフリをしてもらう必要も、もうない)

あすみ (……もう、ない)

あすみ 「………………」

あすみ 「……べつに、だから何だってわけじゃないけどさ」

あすみ 「……早く帰ろ」

617以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 23:10:47 ID:7Jz2yKsQ
………………小美浪家

かすみ 「はーい、唯我君。あーん」

成幸 「いや、あの、自分で食べられるんで……」

かすみ 「もーっ。彼女の母親にそんなに照れちゃって。可愛いなぁ」

かすみ 「そんなんじゃまたあすみちゃんにからかわれちゃうぞ〜?」

かすみ 「ってことで、はい、あーん……」

成幸 「いや、だから……って」 ハッ

あすみ 「………………」

成幸 「せ、先輩!?」

かすみ 「あら、あすみちゃん。おかえりなさーい!」

かすみ 「いま、唯我君と母子水入らずのスキンシップ中だったの」

かすみ 「あすみちゃんも混ざる?」

あすみ 「……混ざる? じゃねー! 何やってんだババアー!」

かすみ 「きゃーっ。あすみちゃんが怒った〜」

618以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 23:11:21 ID:7Jz2yKsQ
………………

あすみ 「……ったく、あのバカ親」 ブツブツブツ

成幸 「あ、あの、先輩……」

あすみ 「お前もお前だよ、まったく」 ブツブツブツブツ

あすみ 「人の母親にデレデレしやがって……」

成幸 「すみません。いや、デレデレしてるつもりはなかったんですが……」

あすみ 「………………」 ジロリ

成幸 「……人のお母さんにデレデレしてすみませんでした」 ドゲザー

あすみ 「……ふん」

あすみ 「………………」 (……これじゃダメだ。せっかく、最後なのに)

あすみ 「……そんなことより、お前、家に来るの随分早かったな」

あすみ 「約束の時間はまだだろ」

619以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 23:12:03 ID:7Jz2yKsQ
成幸 「……はい。ちょっと早めに来る必要があったので」

あすみ 「?」

成幸 「すみません、先輩。今日はガイダンス後の勉強計画立て……の予定でしたけど」

成幸 「実は少しウソついてました」

あすみ 「……ウソ?」

成幸 「すみません、先輩。とりあえず、何も聞かずについてきてもらえませんか?」

あすみ 「……?」

620以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 23:12:46 ID:7Jz2yKsQ
………………High Stage入り口

成幸 「………………」

あすみ 「お、おい、後輩。何も聞くなとは言うけどな……」

あすみ 「何でハイステージに来たんだ? 今日はバイト入ってねーだろ」

あすみ 「っていうか、今日は休店日だって店長が言ってたし……」

成幸 「……まぁ、休店日というよりは、貸し切りが正しいですかね」

あすみ 「後輩……?」

成幸 「じゃ、皆さん、入りますよー!」

ガチャッ

成幸 「……さ、どうぞ、先輩」

あすみ 「どうぞって、お前、一体……」

パン……パンパンパン!!!!


 『お誕生日おめでとーーーーー!!!!』


あすみ 「……!?」

621以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 23:13:31 ID:7Jz2yKsQ
あすみ 「へ? へ? へ?」

マチコ 「あしゅみー戸惑ってる。可愛いー!」

ヒムラ 「意外と想定外のことに弱いよね、あしゅみーって」

ミクニ 「ほら、あしゅみーこっち向いてこっち向いて」

パシャリ

ミクニ 「はい、あしゅみーの戸惑い顔チェキもらいましたー」

あすみ 「お、お前ら、何で……? って……」


――――あしゅみー誕生日おめでとう!!――――


あすみ 「何だあの横断幕ー!?」

あすみ 「……ん? 誕生日?」

あすみ 「………………」

ハッ

あすみ 「……そ、そうか。そういやアタシ、今日誕生日か。だから誕生日会か」

マチコ 「今さらー!?」

622以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 23:14:05 ID:7Jz2yKsQ
店員 「さ、さ、あしゅみーのアネゴ。こっちです」

店長 「お誕生日席はこっちだ、あしゅみー。唯我君、同伴ご苦労だったな。ありがとう」

成幸 「いえいえ。俺も先輩にはお世話になってますから」

あすみ 「お、おい、後輩。これ、どういうことだよ」

成幸 「すみません、先輩。サプライズだったので、結果的に嘘つくことになっちゃいましたけど」

成幸 「ハイステージの皆さんが、先輩を驚かせたいとがんばっていたので、協力しちゃいました」

理珠 「私たちもいますけどね」

文乃 「そうだよー、成幸くん! わたしたちも飾り付けとかお料理とか手伝ったよー!」

うるか 「文乃っちは早々にキッチン出禁になってたけどね」

あすみ 「のわっ!? お前らまで!?」

文乃 「成幸くんから先輩のサプライズ誕生日パーティをするって聞いたので」

うるか 「ならあたしたちも混ぜてもらわないとだよねー! って」

理珠 「はい。私たちも、先輩にたくさんお世話になりましたから」

あすみ 「お前ら……」

あすみ 「……ん?」

623以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 23:14:54 ID:7Jz2yKsQ
真冬 「………………」 コソコソコソ

あすみ 「……先生?」

真冬 「っ……」 ビクッ

あすみ 「何してるんですか、そんな隅っこで……」

あすみ 「……っていうか、何でメイド服着てるんですか」

真冬 「ふっ、不可! その質問は不許可よ、小美浪さん」

マチコ 「真冬ちゃんはねー、ふふふ〜♪」

マチコ 「たまたま店の前を通りかかったところを捕まえちゃいましたっ」

あすみ 「捕まえちゃいましたっ、じゃねーよ。えげつないことしやがって……」

あすみ 「すみません、先生。アタシの誕生日会になんかに巻き込んで……」

真冬 「……べつに、巻き込まれたとは思っていないわ」 プイッ

真冬 「……お誕生日おめでとう、小美浪さん」

あすみ 「あっ……」 クスッ 「ありがとうございます、真冬ちゃん」

真冬 「なっ……」 カァアアアア…… 「そ、その呼び方はやめなさいと何度も……!!」

624以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 23:16:03 ID:7Jz2yKsQ
マチコ 「さささー、それじゃこの辺で本日のメインイベント、いってみよー!」

ドーーーーン!!!!

ヒムラ 「みんなでがんばってこしらえて誕生日ケーキのろうそくに火をつけてー」 シュボボボ!!!

ミクニ 「電気を消してー!」 パチパチパチッ

あすみ 「ろうそくが二十本……。そっか、アタシももう二十歳か……」

〜♪

 『ハッピーバースデー♪ トゥ、あしゅみー♪』

あすみ 「ん……」

フゥ……

 『おめでとー!!!』

パチパチパチパチパチパチパチパチ……!!!!!

………………………………

………………

625以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 23:18:07 ID:7Jz2yKsQ
………………

マチコ 「はい、あしゅみー。これ、わたしたちからのプレゼント」

ミクニ 「図書カードだよ。これから色々入り用になるでしょ」

ヒムラ 「がんばって立派な女医になって、ハイステージに本物の女医として君臨してくれ」

あすみ 「はは……。ハイステで女医やれるかはわかんねーけど、ありがとな」

店長 「これは我々からだ」

あすみ 「……? これ、メイド服?」

店長 「新作だ。唯我君にも手伝ってもらってデザインした」

あすみ 「お、おぅ……」

店長 「これから勉強で忙しくなるとは思うが、たまにでいいから店に出てくれると助かる」

あすみ 「……はい、店長。アタシも、金は必要なんで、ぜひ」

626以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 23:18:46 ID:7Jz2yKsQ
うるか 「先輩、これはあたしからー!」

理珠 「私は、これを」

文乃 「お誕生日おめでとうございます、先輩」

あすみ 「お前らまで……。なんか悪いな。ありがとう」

真冬 「……私からも、つまらないものだけど」

あすみ 「先生まで!? ありがとうございます。今日の今日でよく準備できましたね……」

ワイワイワイ……

あすみ (……ったく。わざわざ誕生会なんて。アタシのガラじゃねーっての)

あすみ (みんな誕プレまで用意してくれて、なんか……)

クスッ

あすみ (……ちくしょう。嬉しいじゃねーか)

成幸 「……先輩」

あすみ 「ん? おう、後輩」

あすみ 「……ったく、何がサプライズだよ。騙しやがって」

成幸 「あはは、それはすみません。でも、嬉しかったみたいで良かったです」

627以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 23:19:22 ID:7Jz2yKsQ
あすみ 「なっ……」 カァアアアア……

あすみ 「……そりゃまぁ、こんな風に祝ってもらえりゃ嬉しいに決まってるだろ」

成幸 「まぁ、そうですよね」


―――― ((……たぶん、最後になるであろう後輩との時間))

―――― ((いつまでも後輩を頼りにするわけにはいかないし、))

―――― ((後輩に彼氏のフリをしてもらう必要も、もうない))


あすみ (……まぁ、残念でもあったけどな、なんて言えるわけもないよな)

成幸 「先輩、お誕生日おめでとうございます。これ、俺からのプレゼントです」

あすみ 「お前まで用意してくれたのか。悪いな……」

あすみ 「………………」

あすみ 「……開けてもいいか?」

成幸 「どうぞ」

あすみ 「ん……」

あすみ 「ノート……?」


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