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【ぼく勉】 文乃 「今週末、天体観測に行くんだよ」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/03(金) 23:07:13 ID:9nEg0gUI
理珠 「ほう。天体観測ですか。どこかの天文台へ行くのですか?」

文乃 「ううん。バスツアーなんだけどね、車で二時間くらいの高原に行くんだよ」

文乃 「結構コアなツアーでね。参加者全員望遠鏡を自分で持って行って、思い思いにレンズを覗くんだ」 ワクワク

文乃 「深夜に駅を出て、数時間天体観測をしたら、早朝に駅に戻ってくるって感じのツアーだよ!」

うるか 「ほへー。そんなのがあるんだねぇ」

成幸 (……それはツアーで行く意味があるのか? とかそういうことは置いておくとして)

成幸 (受験も近いのに大層な余裕だな、というツッコミも置いておくとして)

成幸 「……お父さんと一緒に行くのか?」

文乃 「うんっ! お父さんがね、誘ってくれて……」

文乃 「“一緒に行かないか” って。えへへ……」

成幸 「そうか」 クスッ 「よかったな、古橋」

文乃 「うん! ありがと、成幸くん! 道中のバスではちゃんと勉強するから安心してね!」

成幸 (この寝ぼすけ眠り姫が深夜と明け方のバスで勉強するとは思えないが……)

成幸 (まぁ、たまの息抜きぐらい、問題ないだろうし、何より……)

成幸 (古橋とお父さんの関係が、少しずつ改善しているのが、嬉しい)

451以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:17:17 ID:KTVNI7b6
………………化学室

紗和子 「………………」

グツグツグツグツグツ……

紗和子 「ふふふふふ……」

紗和子 「あとはこれを、こう、と……」

コトコトコト……マゼマゼマゼ……

紗和子 「………………」

ニィィ……

紗和子 「ふふ……あとはこのチョコを型に流し込んで固めれば完成よ!!!」

部員 (関城元部長、引退したのに何やってるんだろ……?)

紗和子 「待っていなさい、唯我成幸! このチョコであなたもイチコロよ!」

部員 (ああ、チョコ作ってたんだ。バレンタインかな)

部員 (唯我成幸さんって、部長の好きな人なのかな。部長もそういう人いるんだなぁ)

紗和子 「ふふ……ふふふ……!!」

部員 (それはそうと、マッドな笑いが似合うなぁ部長……)

452以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:17:56 ID:KTVNI7b6
………………翌日 登校日 放課後

陽真 「なーりーちゃん、かーえろ」

陽真 「……って、どうしたの、その紙袋」

成幸 「ん? いや、なんかしらんけど今年はバレンタインのチョコをたくさんもらっちゃってさ」

成幸 「モテ期到来かー、なんてな。全部義理だよ。それでもありがたいけどな」

陽真 「………………」 ウーム 「……ちなみに誰からもらったの?」

成幸 「? えっと、これはうるかと緒方と古橋にもらったな」


―――― うるか 『なっ……成幸! こ、これ、チョコ! 食べてね! あたしの気持ちだから!』

―――― 理珠 『成幸さん! あの……よ、よかったら、食べてください……。私の、気持ちです……』

―――― 文乃 『お父さんに毒味してもらったから大丈夫! ちゃんと食べられるから!』


成幸 「全員顔真っ赤だったけど、風邪でも引いてんのかな。大事ないといいけど」

陽真 「あ、うん」

陽真 (……成ちゃん、間違いなくそれ全部本命だよ……)

453以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:18:35 ID:KTVNI7b6
陽真 「? でもそれにしてはチョコ多くない?」

成幸 「ああ、あとは学校に来る前に会ったOGの先輩と……」


―――― あすみ 『お、おう、後輩。朝から呼び出して悪いな。よかったら、これ……』


成幸 「……こっちは、内緒にしてくれって言われたけど、お前にならいいかな。桐須先生からなんだ」


―――― 真冬 『他の人には内緒よ。これ、がんばって作ったから、食べてくれたら嬉しいわ』


陽真 「あー、うん……」

成幸 「風邪、流行ってんのかな。ふたりも顔が真っ赤だったけど……」

陽真 (もはやそのニブさは犯罪的だよ成ちゃん……)

成幸 「で、実はこの後、緒方と勉強会なんだ。だから、悪いけどまだ帰れない」

陽真 「あ、そうなの。残念。大森も用事あるみたいだし、ひとりで帰るとしようかな」

成幸 「っていうか、せっかくのバレンタインなんだから海原と一緒に帰ったらいいだろ」

陽真 「智波ちゃんは部活だよ。卒業前の後輩への指導ラストスパートだってさ」

陽真 「でも心配ご無用。部活が終わった後デートの約束があるからね」

454以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:19:06 ID:KTVNI7b6
成幸 「そうかよ。聞くんじゃなかったよ……」

陽真 「はは、じゃ、成ちゃん勉強がんばってね――」


紗和子 「――――唯我成幸ーー!!」 バーーーーーン!!!


成幸&陽真 「「!?」」

紗和子 「教室にいてくれたのね、良かったわ」

成幸 「……せ、関城、急に登場するなよ。心臓飛び出るかと思ったわ」

紗和子 「間に合って良かったわ。うちのHRが長引いて、どうなることかとヒヤヒヤしたわ」

成幸 「? そんなに急いで何か用か?」

紗和子 「その前に確認なんだけど、あなたこの後緒方理珠と勉強会よね?」

成幸 「へ? そうだけど……」

紗和子 「……よし。完璧ね」 (ふふ……ふふふふふふ……!!)

成幸 「?」

紗和子 (さぁ、始めるわよ! 私の、在学中最後であろう、緒方理珠への恩返し!)

紗和子 (レッド・ホット・バレンタイン作戦、決行よ!!)

455以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:19:50 ID:KTVNI7b6
………………昨夜

紗和子 「……うんうん。見た目は完全にただのチョコね」

紗和子 「完璧に仕上がったわ。これで唯我成幸も緒方理珠の魅力に気づいてイチコロね!」

紗和子 「……でも、しまったわね。何も考えずに適当に安いチョコの型を買ってしまったから……」

キャピルーン♪

紗和子 (思いっきりハート型のチョコになってしまったわ)

紗和子 (それにラッピングも安いのを適当に買ったら、すごくハートハートしてるわ……)

紗和子 (……ま、まぁ、効能がしっかりあれば、形なんてどうでもいいのよ!)

紗和子 (ハート型だろうとなんだろうと、それでも問題はないはず!)

紗和子 (あとはこれを、明日の緒方理珠と唯我成幸の勉強会の直前に渡せば……!!)

紗和子 「……ふふ、ふふふふ!!」

紗和子 「そう、この新発明チョコレート、『レッド・ホット・チョコ・ペッパーズ』 、略してRHCPをね!!」

456以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:20:33 ID:KTVNI7b6
………………

紗和子 (RHCPは、唐辛子の辛み成分、カプサイシンを多分に含ませたチョコレートよ)

紗和子 (普通に唐辛子成分をチョコに混ぜ込んだのでは、当然チョコは辛くなってしまう)

紗和子 (けれど、このRHCPは、唐辛子からカプサイシンだけを抽出し、小さなカプセルで包みこんでいるわ!)

紗和子 (だからRHCPを口に入れても、辛みは感じない。ただの甘いチョコレートとしか感じないわ)

紗和子 (そしてそのカプセルは、チョコレートが胃に到達する段階で溶け出し、カプサイシンは人体に吸収される)

紗和子 (……そう、つまりこのチョコレートを食べると、辛みを感じることなくカプサイシンを摂取することができる!)

紗和子 (そしてカプサイシンには、新陳代謝を促進する効果がある。当然、脈拍も上がることになるわ)

紗和子 (今このチョコを唯我成幸に食べさせれば、緒方理珠と勉強をしている間にその効果が表れ始め……)

紗和子 (カプサイシンによる脈拍上昇。それによるドキドキで、ふたりの距離は……)


―――― 成幸 『……あれ? 何で俺、こんなにドキドキしているんだ……』

―――― 理珠 『成幸さん……?』

―――― 成幸 『っ……』 ドキッ 『お、緒方……。緒方って、なんでそんなに可愛いんだ……?』

―――― 理珠 『へっ……?』 トゥンク……

457以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:21:18 ID:KTVNI7b6
紗和子 (……そう! そして、ふたりは末永く結ばれることになるのよ!!) グッ

成幸 「……えっと、関城? 黙り込んじゃってどうしたんだ?」

成幸 (っていうか、拳握って天を仰いで、一体何やってんだこいつは……)

紗和子 「何でもないわ! ところで唯我成幸! 今日は何の日かしら?」

成幸 「へ? いや、何って……バレンタインデーだろ?」

紗和子 「そう、その通り、バレンタインよ! だからこれあげるわ!」

成幸 「え……? ああ、ありがとう」

成幸 「えへへ、なんか義理って分かってても、こういうのもらうと嬉しいよな……って」

成幸 「!?」

成幸 (……ら、ラッピングがめっちゃハートなんだけど!?)

成幸 「せ、関城、このチョコって……」

紗和子 「へ? そりゃ、バレンタインのチョコよ。決まってるでしょ?」

紗和子 (ふふ、感謝しなさいよ、唯我成幸! 私が全力で緒方理珠との仲を応援してあげてるんだから!)

紗和子 「……私の(緒方理珠への)想いがたっぷり詰まってるわ」

成幸 「!?」 陽真 「!!」 ニヤァ

458以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:21:52 ID:KTVNI7b6
紗和子 「……? どうしたのよ、顔を真っ赤にしちゃって」

ハッ

紗和子 「ま、まさか変なこと考えてるんじゃないでしょうね? 当然、義理よ?」

成幸 「あ、ああ、そうだよな。悪い、わかってる」

紗和子 「……じゃ、食べて?」

成幸 「へ?」

紗和子 「だから、食べて。今ここで」

成幸 「今? いや、でも……」

陽真 「いやぁ、成ちゃん」 ニヤニヤ 「女の子がこんなに、“食べて” って言ってるんだから、いただかないとバチが当たるよ?」

成幸 「……わかったよ。まぁ、小腹も空いてたし、いただくよ」

成幸 (なんか、もらったチョコを教室で空けるのって恥ずかしいな。他の奴の目もあるし……)

スッ……ハラリ……

成幸 「……!?」

成幸 (チョコもめっちゃハート型なんだけどー!?)

陽真 「!!」 ニンマリ

459以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:22:41 ID:KTVNI7b6
ザワザワザワザワ…………

「お、おい、唯我の奴、またチョコもらってるぞ!」

「しかもあれ、隠れファンも多い化学部の関城さんじゃ……」

「お姫様たちのみならず、関城さんまで……」

「唯我の野郎……!」

成幸 「せ、関城、これ……」 カァアアアア…… 「なんで、ハート型なんだ……?」

紗和子 「へ? 何でって……」 (うーん、型を適当に選んだからなんだけど、わざわざ言う必要もないわよね)

紗和子 「当然、その方が(緒方理珠のあなたへの)気持ちが伝わると思ったからよ!」

成幸 「ぶっ……!」

陽真 「……いやぁ、成ちゃんがモテモテで俺は嬉しいよ」

陽真 「じゃ、俺帰るね。成ちゃん、ごゆっくり」

成幸 「お、おい、小林! 変な言葉を残して行くな!」

紗和子 「……ねえ、唯我成幸。早く食べて?」

成幸 「へ? あ、ああ……じゃあ、いただきます」

パクッ

460以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:23:24 ID:KTVNI7b6
ムシャムシャムシャ……

紗和子 「………………」 ジーーーッ

紗和子 (大丈夫かしら。ちゃんと辛みは隠れてるかしら……)

成幸 (めっちゃ見てくる。なんだろう。感想でもほしいんだろうか)

成幸 「……えっと、美味しいぞ、関城」

紗和子 「えっ、あ、そう?」 ホッ 「なら良かったわ」

紗和子 「実は味見するのを忘れていたから、少し心配だったのよね」

成幸 「ん、味見してないのか。ほんとに美味しいから、お前も食べてみたらどうだ?」

パキッ

成幸 「ほら、口つけてないとこ」

紗和子 「あっ……ありがと……」 パクッ

紗和子 「ん……」 モグモグ 「あらほんと。我ながら結構美味しくできたわね」

紗和子 (うまく辛みも隠れているし、これなら大丈夫そうね)

成幸 「……ん、本当に美味しいな」 モグモグモグ……

紗和子 (……それにしても、美味しそうに食べてくれるわね。ちょっと嬉しいじゃない)

461以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:25:08 ID:KTVNI7b6
トトトトトトト……

理珠 「……あっ、成幸さん」

理珠 「よかった、まだ教室にいらっしゃったんですね」

成幸 「ああ、緒方。お前もHR終わったんだな。じゃあ図書室行くか」

理珠 「それが……父から電話がありまして、お店の手伝いに戻ってきてほしいと……」

理珠 「すみません、成幸さん。せっかく時間を取ってもらっているのですが、今日の勉強会に行けなくなりました」

紗和子 「!?」

紗和子 (な……なんですってー!?)

成幸 「ああ、そうなのか。大丈夫か? 俺も手伝いに行った方がいいか?」

理珠 「い、いえいえ! そこまでではありませんから、大丈夫です」

成幸 「そうか? なら、俺のことは気にせず帰ったらいいよ」

理珠 「はい。すみません、そうします。成幸さん、関城さんも、さようなら」

トトトトト……

成幸 「家業の手伝いじゃ仕方ないよな。今日はひとりで勉強するか……」

462以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:25:40 ID:KTVNI7b6
紗和子 (そ、想定外の事態だわ! まさか緒方理珠が勉強会をキャンセルするなんて……)

成幸 「んー、緒方に解いてもらいたい物理の問題があったんだけどな……」

紗和子 (ど、どうしようかしら。日を改めてまた唯我成幸にRHCPを食べさせて……)

成幸 「どこかに緒方くらい理系が得意な奴いないかな……」

紗和子 (……いやいやいや! さすがにバレンタインでもないのに手作りチョコなんか渡したら不自然だわ!)

成幸 「……ん?」

紗和子 (どうしたら……)

ガシッ

紗和子 「……へ? ゆ、唯我成幸!?」

成幸 「関城! この後時間あるか?」

紗和子 「へ……?」

463以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:26:15 ID:KTVNI7b6
………………生物室

紗和子 「………………」

カリカリカリ……

紗和子 「……はい、解けたわよ。たぶんこれで合ってると思うけど」

成幸 「……ん、解答と同じだ。さすがだな、関城」

紗和子 「ふふん。緒方理珠には及ばないまでも、理系の問題だったらそれなりの自信はあるわ」 ドヤッ

成幸 「ふむふむふむ……ああ、なるほど。こうやって解くのか」

成幸 「……関城の途中式、すごく分かりやすいから助かるよ」

紗和子 「……まぁ、教えてほしいって言われたからには、分かりやすく解いた方がいいでしょ」

成幸 「緒方は大体の問題を暗算で解くし、途中式書いてもらっても解読に時間がかかるからな……」

紗和子 「あの子は特殊なのよ。理系の物事に関しては脳みその作りが私たちと違うのよ」

成幸 (関城も結構そっち寄りだと思うけどな……)

成幸 「それにしても悪いな。無理言って勉強付き合ってもらっちゃって……」

紗和子 「べつにいいわよ。家に帰ったって勉強をするだけなんだから、変わらないわ」

464以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:27:20 ID:KTVNI7b6
紗和子 「………………」

カリカリカリ……

紗和子 (……まさか緒方理珠の代わりに私が勉強会の相手に指名されるなんて)

紗和子 (うまくいかないものね。お節介はやめろという神様の思し召しから)

紗和子 (……なんて、非科学的ね。私らしくもない)

紗和子 「……ねぇ、唯我成幸。緒方理珠からチョコレートはもらったのよね?」

成幸 「ん? ああ、もらったぞ」

紗和子 「そう。なら、まぁいいかしらね」

成幸 「?」

紗和子 (ひょっとしたら、私がお節介をかけるまでもないのかもしれないわね)

紗和子 (あの子にはもう、私の手助けは必要ないのかしらね……)

紗和子 (ふふ、そう考えると感慨深いような、寂しいような……)

紗和子 (……ん? でも、何か忘れているような)

成幸 「……それにしても暑いな。暖房そんな強くしてないのに不思議だな。上着脱ぐか」 ヌギヌギ

紗和子 「……!?」

465以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:27:54 ID:KTVNI7b6
紗和子 (わ、忘れてたーーーー!! 唯我成幸にRHCPを食べさせたんだったわ!!)

成幸 「ふーっ。なんか上着脱いでも暑いな。変だなぁ。関城は暑くないか?」

紗和子 「へっ!? べ、べつに暑くなんかないけど!?」

成幸 「? なんで焦ってんだお前。っていうか、汗すごいぞ?」

紗和子 「!?」 ダラダラ (そ、そういえば私も、少し暑いような気が……)

紗和子 「……あ」


―――― 『――お前も食べてみたらどうだ?』


紗和子 (そういえば私も食べたんだったわ!!)

紗和子 (さすが私の発明品ね! ひとかけら食べただけでカプサイシンの作用がすごいわ!)

紗和子 (……ってそんなこと考えてる場合じゃないわね!?)

紗和子 (とりあえず……) ヌギヌギ (暑いのは如何ともし難いから、白衣を脱ぎましょうか)

成幸 「っ……」

紗和子 「? どうかしたかしら?」

成幸 「い、いや、何でもない……」

466以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:28:41 ID:KTVNI7b6
成幸 「………………」

ドキドキドキドキ……

成幸 (な、何でこんなにドキドキしてるんだ、俺……?)

成幸 (っていうか、なんか……)

紗和子 「……?」

成幸 (……白衣を脱いだ関城って、なんか、不思議な感じだ)

成幸 (私服姿は何回か見たことがあるけど、制服姿は新鮮で……)

成幸 (かわいい……)

成幸 「……?」

ハッ

成幸 (……お、俺は何を考えてるんだ!? 女友達を “かわいい” だなんて……)

ドキドキドキドキ……

成幸 (ああ、もう! 何でこんなに暑いんだ? 何でこんなにドキドキするんだよ……)

成幸 (……いかんいかん。勉強に集中しなければ)

467以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:29:12 ID:KTVNI7b6
………………

成幸 「………………」 カリカリカリ……

紗和子 「………………」 カリカリカリ……

ドキドキドキドキ……

成幸 (……相変わらずドキドキするし、身体がぽかぽかするけど)

紗和子 (少なくとも勉強に支障はないわね)

成幸 (さすがに、俺から勉強会に誘っておいてもう解散ってのも悪いし……)

紗和子 (もう少し。もう少しだけ付き合ったら、別れないと……)

ドキドキドキドキドキドキドキドキ……

成幸 (……あっ、やっぱり関城ってすごくきれいだな。制服姿、似合ってるな)

紗和子 (……唯我成幸、前より筋肉質になったかしら。少しかっこいいじゃない)

成幸 「あっ……」 (やべっ、目が合った……)

紗和子 「ん……」 (いま、唯我成幸、私を見ていた……?)

成幸 (な、なんだ、この感じ……/// ものっそいドキドキする……)

紗和子 (図らずも私の発明品の効能が実証されつつあるわ……///)

468以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:30:06 ID:KTVNI7b6
ガラッ……

「あら、関城さん。今日もお勉強?」

紗和子 「あ……先生! すみません。今日もお借りしています」

生物教師 「いいのよ。以前に許可は出していますからね。勉強に使うのなら大歓迎よ」

生物教師 「あら……?」

成幸 「あっ、こ、こんにちは。関城さんにお願いして、俺も使わせてもらっています」

生物教師 「ふふ、関城さんが緒方さん以外の誰かと一緒に勉強をしているなんて、めずらしいわね」

生物教師 「それに、男の子だなんて。ふふ、本当にめずらしいわ」 ニコニコ

紗和子 「へ……? な、何ですか?」

生物教師 「彼氏かしら? 一緒にまじめに勉強ができる関係って、ステキね」

紗和子 「へぇ!?」

ボフッ

紗和子 「ち、違いますよ! 私たちは、そういう関係じゃ……」

紗和子 「ね、ねぇ!? 唯我成幸!」

成幸 「へ!? そこで俺に振るのかお前!?」

469以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:30:44 ID:KTVNI7b6
成幸 「い、いや、そりゃ、俺と関城は、そんなんじゃ……」

カァアアアア……

成幸 「……ない、です」

成幸 「あの、全然、ほんと、これっぽっちも……」

成幸 「関城のこと、きれいとか、かわいいとか、制服姿が新鮮で似合ってるとか……」

成幸 「……お、思ってないですから」

紗和子 「へぇ……!? ゆ、唯我成幸? あなた、何を言って……」 カァアアアア……

成幸 「へ……?」 ハッ (!? お、俺、何を言ってるんだ!?)

紗和子 (か、顔が赤くなるのが、自分でも分かる……。ほっぺが熱いわ……)

生物教師 「あらぁ、あらあらあら……」 ニコニコニコ

生物教師 「青春ねぇ。邪魔しちゃアレだから、私はもう行くわね」

紗和子 「あっ、ち、ちょっと待ってください! 絶対何か勘違いをしていますよね!」

生物教師 「それじゃ、ごゆっくり」

ピシャリ……

紗和子 「ああ……」 (行ってしまった。先生、絶対何か勘違いしてるのに……)

470以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:31:20 ID:KTVNI7b6
紗和子 「………………」

成幸 「………………」

成幸 「……あ、えっと……なんか、すまん」

紗和子 「……いいわ。元はと言えば、私のせいだし」

成幸 「?」

紗和子 「……そろそろお開きにしましょうか」

成幸 「ん、ああ。そうだな」

成幸 「今日は付き合ってくれてありがとな。問題の解き方も教えてもらったし」

紗和子 「どういたしまして。本当は緒方理珠が来られれば良かったのだけどね」

成幸 「……ん、まぁ、緒方が来られなくなったのは残念だけどさ、」

成幸 「お前とふたりきりで勉強できて良かったよ」

紗和子 「っ……」 プイッ 「そ、そう。それなら良かったわ」

成幸 「?」

471以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:31:58 ID:KTVNI7b6
紗和子 「………………」

ドキドキドキドキ……

紗和子 (……違うから。これは、ただのカプサイシンの効能だから)


―――― 『関城のこと、きれいとか、かわいいとか、制服姿が新鮮で似合ってるとか……』

―――― 『……お、思ってないですから』


紗和子 「っ……///」

ドキドキドキドキドキドキドキドキ……

紗和子 (違う! これは、私の発明品の効果がすごいだけ。だから……)


―――― 『お前とふたりきりで勉強できて良かったよ』


紗和子 「……はうっ///」

ドキドキドキドキドキドキドキドキ……

紗和子 (あー、もう! いい加減、効果消えなさいよ〜〜〜〜!!)

おわり

472以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:32:53 ID:KTVNI7b6
………………幕間 「妹はチョコッと危険なフレグランス」

水希 「ふふ……ふふふふふ……」 クワッ 「今年こそ実行に移すとき!」

水希 「チョコを何倍かに希釈した水を自分にスプレーして、っと……」

シュッシュッ……


―――― 水希 『ごめん、お兄ちゃん。お金がなくて、チョコ用意できなかったよ……』

―――― 成幸 『あれ? でも、水希からほのかにチョコの香りが……』

―――― 水希 『……うん。だから、お兄ちゃん。チョコの代わりに……わたしを食べて……?』


水希 「ふふっ……ふふふふふふっ……むふっ!!」

水希 「名付けて “妹はチョコッと危険なフレグランス” 作戦よ!!」

葉月 (……ああ、姉ちゃんがどんどんわけわからなくなっていく)

和樹 (姉ちゃんはぶれないよなぁ……)

葉月 「……じゃあ、とりあえず、和樹」

和樹 「ほいさ」 スッ

おわり

473以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 00:41:50 ID:KTVNI7b6
>>1です。
読んでくださった方ありがとうございました。
とりあえずたまっていたものはこれですべてです。
書きかけのはいくらでもありますが。

長らく空白の期間を設けてしまってすみません。
待っていてくださった方がいたら申し訳ありませんでした。

美春さんの話は、本当はもっとコンパクトにまとめたかったのですが、
どうせなら書きたいこと全部書いてやろうと思って滅茶苦茶長くなりました。
わたしのSSは短ければ10kB程度、長くても30kBいかない程度です。
が、これは60kBを超えました。もっとうまくできたかなーとも思います。
申し訳ないことです。

関城紗和子さんのSSを2つも書いているとは思いませんでした。
完成品を眺めていたら関城さんの名前が2つ並んでいて自分で笑ってしまいました。

なんだかんだ、アニメはすごく良かったと思います。
二期も楽しみですね。

レス全然見られていないのでリクエストっぽいのがあって書けそうだったら書きます。

自分語りが長くなりました。
申し訳ないことです。
また投下します。

474以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 01:19:28 ID:045EXMvQ

バタフライフィールドさんのお話とかどうでしょう

475以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 01:56:10 ID:xFu7Fop.
本誌読んだ時には全く気づかなかったわ

476以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 02:15:47 ID:cF0YOMt6
おつおつー。長くても面白いし全然OK

茨の会とかメイド喫茶のキャラ達みたいなサブキャラの話もみたいな

477以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/07(土) 02:44:18 ID:kSeqCqQQ
相変わらずの高クォリティで安心した

478以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/08(日) 10:00:28 ID:5lwwXXN.
再開待ってたわ

479以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/09(月) 15:24:27 ID:4g.A2kuQ
水泳部の池田さんの話をぜひお願いします

480以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/09(月) 19:19:09 ID:zf5nzWSU
敗北者じゃけえ…

481以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/12(木) 23:39:44 ID:jPNv9trQ
おつやで

482以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/18(水) 00:20:23 ID:wPto6ljY
原作の雰囲気が不穏だからこのスレにあるss読んで凌ぐんだ…

483以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/24(火) 00:26:52 ID:SvCQQs/k
不穏さは一週で消えたな

484以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/29(日) 20:32:26 ID:0l2HjuyQ
シエンタ

485以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/08(火) 12:28:53 ID:OArscQ9g
アニメ始まってるじゃん

486以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/13(日) 02:58:43 ID:SrnLRntY
ここのssもアニメ化してくれませんかね?

487以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 00:42:17 ID:WREau8ic
アマプラで2話見たけど、>>1のssで読んだ文系が居眠りするやつと頭の中でごっちゃになってて笑ったわ
完成度高すぎ

488以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 21:50:59 ID:yuN6bUJk
>>1です。
投下します。


【ぼく勉】 文乃 「合宿最終日はバーベキューだよ、唯我くん!!」

489以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 21:51:55 ID:yuN6bUJk
………………勉強合宿三日目夜 うかり荘

成幸 「急にハイテンションになってどうした、古橋」

文乃 「だ・か・ら! バーベキューなんだよ、唯我くん!」

文乃 「今さっき先生方がお話してるのを偶然聞いちゃったんだ!」

文乃 「明日の午前の講習が終わったら、先生方のカンパでバーベキューらしいよ!」

うるか 「!? それほんと、文乃っち!」

文乃 「ほんともほんとだよ〜! 何でも、高級牛肉からブランド豚肉までそろえてくれてるみたいだよ〜!」

成幸 「分かった分かった。そりゃ楽しみだけど、明日に取っておこうな」

成幸 (今さっき風呂場でとんでもないことがあったばかりのにもう立ち直りやがった……)

成幸 (ほんと食いしん坊だな、古橋は……)

理珠 「まったく、文乃とうるかさんは食いしん坊ですね」

成幸 「騒ぐのはそれくらいにして、今日のおさらいをやって早く寝るぞ」

文乃&うるか 「「はーい」」

成幸 (……にしても、先生方のカンパでバーベキューか。塾講師ってのも大変だな)

490以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 21:52:31 ID:yuN6bUJk
………………翌日 昼

真冬 「………………」

ブルルルン……プスプスプス……

真冬 「迂闊。やってしまったわね……」

真冬 (夏休みも終わりに近いからと有給を取って峠を攻めに……もとい、ドライブをしにきたけれど)

真冬 (まさかガソリンがこんなに減っていただなんて……)

真冬 (こんな峠道でガス欠なんて洒落にならないわ。どうしたものかしら……)

真冬 (夏休みとはいえ世間は平日。さっきから車も通りかからないし……)

真冬 「ん……?」

キャッキャ……ワーワー……

真冬 「……喧噪。近くに人がいるようね。キャンプかしら」

真冬 (恥を忍んでガソリンを譲ってもらうしかないわね)

491以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 21:53:01 ID:yuN6bUJk
………………広場

ワイワイガヤガヤ……

成幸 「おー、さすがに大盛り上がりだな。先生方も太っ腹だなぁ」

文乃 「お肉がたくさんあるよ、唯我くん!」

うるか 「旅館の人がカレーも作ってくれてるみたいだよ!」

理珠 「あっちに冷やしうどんもあるみたいですよ!」

グイグイグイグイ

成幸 「わっ、わかったわかった。わかったから引っ張るなって……」

成幸 「食べ過ぎてお腹壊したりしないようにな。ほら、好きなもん取ってこい」

文乃&うるか&理珠 「「「はーい!!」」」

バヒューン!!!!

成幸 「だー、もう! 人がたくさんいるんだから走るなよー!」

成幸 「……って、もういないよ。まったく」

492以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 21:54:01 ID:yuN6bUJk
成幸 「……はしゃいじゃってまぁ」

クスッ

成幸 「ま、今日の午前中まで目いっぱい勉強がんばってたしな。これくらいのご褒美があっても……――」

「――なーにひとりで呟いてんだ、こーはいっ」

ピトッ

成幸 「ひうっ!? 冷たっ!?」

あすみ 「にひひ、ほんといい反応してくれるよな、お前って」

成幸 「先輩……。やめてくださいよ、もう……」

あすみ 「悪い悪い。ほら、麦茶取ってきてやったから飲めよ」

あすみ 「散々子どもたちの引率してノドカラカラだろ、“先生” ?」

成幸 「引率って……。あいつらは俺と同い年ですよ」

成幸 「でも、ありがとうございます。たしかにノド乾いてたから嬉しいです」

あすみ 「ま、確かに引率の先生というよりは、娘たちに振り回されるパパって感じだったけどな」

成幸 「ぶっ……! だ、誰がパパですか! 変な事言わんでくださいよ!」

493以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 21:54:34 ID:yuN6bUJk
あすみ 「にひひ。そういやそうか。お前はパパじゃなくて、弟なんだっけ?」

成幸 「へ?」

あすみ 「……なぁ? “成幸くん” ?」

成幸 「なっ……なんですか、いきなり……」

あすみ 「いや、べつに大したことじゃねーんだけどな。昨日から気になっちまってさ」

ニヤニヤ

あすみ 「お前と古橋、どうして姉弟ごっこなんかするに至ったのかが、さ」

成幸 「いや、本当に大したことじゃないですよ。お祭りの日に……」

成幸 「……!?」 ハッ


―――― 『大ありです 問題ないと思ってる時点で問題だらけです』

―――― 『あとで徹底的に補習です』


成幸 (あっ、あっぶねー!! 古橋に言うなって言われてるの忘れてたー!)

成幸 (危うく先輩に言ってしまうところだった……!)

成幸 (さすがあしゅみー先輩! 隙をつくのが上手い……!!)
   ※成幸くんが隙だらけなだけです。

494以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 21:55:14 ID:yuN6bUJk
あすみ 「? ん、どうした、後輩?」

ニヤニヤニヤニヤ

あすみ 「なんか言えない事情でもあるのかー? んー?」

成幸 「い、いえ、べつに、そういうわけではないんですが……」

成幸 「っていうか、先輩、その……」

あすみ 「ん?」

成幸 「ち、近い、です……」

あすみ 「………………」 ニィ 「……ほーぅ、やっぱり先輩に迫られるのが好みか、後輩」

あすみ 「密室じゃなくて悪かったな」

成幸 「だ、だからあれは違うんですってば! もー!」

あすみ 「にひひ。ほんとにからかい甲斐がある奴だよな、お前って」

あすみ 「……で? 何で姉弟ごっこなんてすることになったのか、そろそろゲロっちまえよ」

成幸 「結局その話蒸し返すの!?」

あすみ 「えー、教えてくれないのかよー、後輩ー」

成幸 「ダメなんです! 話しちゃダメって言われてるんです!」

495以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 21:55:48 ID:yuN6bUJk
あすみ 「へー……」 (話しちゃダメ、ねぇ……?)

あすみ (どうせ大した話じゃねーだろと思ってたけど、ここまで隠そうとするとはな)

あすみ (それに、口止めされてる? 古橋にか?)

モヤモヤモヤ……

あすみ (なんかわかんねーけど、それはちょっと……ムカつく)

あすみ 「ちぇっ、ひどいよなー、後輩は」 チラッ

あすみ 「人に無理矢理キスしようとしといて、そんなツレない態度を取るのな」

成幸 「なっ……!?」 (あ、あの写真は……カラオケボックスでの写真……!?)

成幸 「それどう見ても先輩が俺にキスしようとしてるじゃないですか!」

――――ガサッ

真冬 「……失礼。ぶしつけで申し訳ないのですが、もしよろしければ、ガソリンを分けてもらえないでしょうか」

あすみ 「……へ?」

成幸 「へ?」

真冬 「……? こ、小美浪さん? 唯我君?」

成幸 「な……な、なんでここに先生が!?」

496以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 21:57:20 ID:yuN6bUJk
………………

あすみ 「へぇー」

ニヤニヤニヤ

あすみ 「峠を攻めに来たはいいけど、ガソリンの残量が少ないのを忘れていてガス欠、ですか」

真冬 「きっ、禁止! そう何度も言わなくてもいいでしょう、小美浪さん!」

真冬 「それに私は峠を攻めたりなんかしません! ちょっとドライブに来ただけよ!」

成幸 「ま、まぁまぁ。なんにせよ良かったですね。旅館の人にガソリンを分けてもらえて」

真冬 「その上、予備校の方にバーベキューにまで混ぜてもらってしまって……申し訳ないわ」


―――― 『ああ、一ノ瀬学園の先生ですか! 休暇中に生徒たちの様子を見に来るだなんて、熱心な先生ですね!』

―――― 『ぜひバーベキューに参加していってください! 生徒たちも喜ぶでしょう!」


真冬 (……予備校の先生にも盛大な勘違いをされてしまったわ。恥ずかしい……)

あすみ 「いやぁ、さすがは熱心ですね、真冬センセ?」

真冬 「や、やめなさいっ! 小美浪さん!!」

あすみ 「にひひひっ」

497以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 21:58:40 ID:yuN6bUJk
成幸 「ど、どうどうどう。先生、落ち着いてくださいよ」

成幸 「それに先輩もあんまりからかわないでください」

あすみ 「へいへい。わかったよ」

真冬 「……オホン。当然、最初からずっと落ち着いているわ」

成幸 (どこがだよ……)

成幸 「ところで、こんな奥にいないで、せっかくのバーベキューですし、何か食べに行きましょうよ」

真冬 「不可。そんなことできないわ」

成幸 「? どうしてですか?」

真冬 「あなたたちがいるということは、ここにはあの子たちもいるのでしょう?」

成幸 「あの子たち……? ああ、古橋と緒方ですか? まぁ、いますけど……」

真冬 「このバーベキュー、勉強合宿の最終日、最後の息抜きだと聞いているわ」

真冬 「あの子たちも、せっかくがんばった最後の息抜きに、私の顔なんか見たくないでしょう?」

成幸 「先生……」

真冬 「だから私はお誘いの面目が立つ間くらいここにいるわ。こんな端にあの子たちも来ないでしょう」

498以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 21:59:10 ID:yuN6bUJk
真冬 「……それに、まだあなたたちふたりに聞かなくてはならない話もあるし、ね」

ジロリ

真冬 「……さっきの話を詳しく教えてもらいたいのだけれど」

あすみ 「? さっきの話?」

成幸 「?」

真冬 「誤魔化そうとしたってそうはいきませんからね。さっき、とんでもないことを言っていたわね」


―――― 『人に無理矢理キスしようとしといて、そんなツレない態度を取るのな』

―――― 『それどう見ても先輩が俺にキスしようとしてるじゃないですか!』


成幸 「……!?」

あすみ 「あー……聞かれてたかー」

真冬 「………………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

真冬 「……どういうことか、しっかり教えてもらうわよ」

499以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 22:00:27 ID:yuN6bUJk
………………

文乃 「ふんふんふーん♪」

ムシャムシャムシャムシャムシャパクパクパクパクパクパク

文乃 「お肉も野菜もカレーもうどんもサイコー! やっぱり夏はBBQだね!」

文乃 「りっちゃんもうるかちゃんも楽しんでるみたいだし、先生方も粋なことしてくれるよねぇ」

文乃 「唯我くんも……って、そういえばさっきから見ないなぁ」

文乃 (先輩もいないし、ひょっとして……)

文乃 (……ふたりで、こんなときまで勉強してたりして)

文乃 「………………」

文乃 (あり得るなぁ……)

文乃 (勉強は良い事だけど、休むときはしっかり休まないとだよ)

文乃 (仕方ないなぁ……) クスッ (文乃お姉ちゃんがお肉でも持って行ってあげようかな)

文乃 「まったく、本当に……」

文乃 「手のかかる弟だなぁ、成幸くんは」

文乃 (さて、どこにいるのかな)

500以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 22:01:04 ID:yuN6bUJk
理珠&うるか 「「………………」」 キョロキョロキョロ

文乃 「……? りっちゃん、うるかちゃん、どうかしたの?」

理珠 「あ、文乃。成幸さんを見かけませんでしたか?」

うるか 「見当たらないんだよねー」

文乃 「唯我くん? 偶然だね。わたしも探してたとこなんだよ」

文乃 (……ん? りっちゃんとうるかちゃん、うどんとカレーを持ってるけど、ひょっとして……)

文乃 「……ふたりとも、ひょっとしてそれ、成幸くんに持って行ってあげるのかな?」

理珠 「へっ? あ、いえ、べつに、その……」

アセアセアセ

理珠 「……そ、そうです。先ほどから見当たらないので、どうせ勉強でもしているのだろうと」

理珠 「うどん持って行ったら喜んでくれ――じゃなくて、食べるかな、と」 カァアアアア……

文乃 (おっ、乙女ーーーー!! 恋する乙女すぎるよりっちゃん!)

うるか 「べ、べつに成幸に喜んでほしいとかじゃないからね!」

うるか 「お腹空かせてたら可哀想だから、持って行ってあげるだけだかんね!!」

文乃 (こっちはこっちでテンプレ乙女ーーーー! ふたりとも可愛すぎるよ!)

501以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 22:01:42 ID:yuN6bUJk
うるか 「……? ところで文乃っち、その大量のお肉は?」

文乃 「……へ?」

ハッ

文乃 「えっ、あ、いや、これは、その……」

うるか&理珠 「「………………」」 ジーーーーッ

文乃 (ど、どうしよう。成幸くんに持って行くつもりだったけど、この二人に知られたくないし……)

文乃 「も、もちろん自分用だよ。お肉美味しいから、いくらでも食べられちゃうね!」

うるか 「おー、さすが文乃っち。食べまくってんね」

理珠 「文乃ならフードファイターになれると思います。すごいです」

文乃 (ひ、人の気遣いも知らず、この子たちは……!)

文乃 「……ん?」

成幸 「……」

文乃 「あ、成幸くん。あんな茂みのほうで何やってるんだろ」

うるか 「? あ、ほんとだ」

理珠 「誰かと話しているのでしょうか。とりあえず行ってみましょうか」

502以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 22:02:32 ID:yuN6bUJk
………………

真冬 「まさかとは思うけれど、あなたたち、不純異性交遊をしているのではないでしょうね」

成幸 「うぇっ!? な、なんでいきなりそんな話になるんですか!?」

あすみ 「いや、まぁキスだの何だのの話を聞かれてたらそうなるだろ」

成幸 「先輩はどっちの味方なんですかー!」

真冬 「……唯我君、きみは小美浪さんに無理矢理キスをしようとしたの?」

成幸 「してませんよ!」

真冬 「じゃあ、小美浪さん、あなたは唯我君にキスをしようとしたの?」

あすみ 「んー……」

ニヤァ

あすみ 「……まぁ、それを肯定してもウソにはならないかなぁ」

成幸 「先輩!? 何言ってんですか!」

真冬 「……! ふ、不潔! やはり不純異性交遊をしていたのね!」

あすみ 「えー、やだなぁ、センセ」 ムギュッ 「不純じゃないですよ?」

成幸 「うぺぇ!? な、何で抱きつくんですか、先輩!?」

503以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 22:03:21 ID:yuN6bUJk
真冬 「!? 淫靡!! 離れなさい、小美浪さん!」 グイッ

成幸 「!?」

成幸 (ぎ、逆側から先生に……!?)

あすみ 「きゃー、センセったらだいたーん。先生も後輩に抱きつきたいんですか?」 グイッ

真冬 「か、からかわないでちょうだい! そんなわけないでしょう!」 グイグイ

あすみ 「どうだかなー?」 グイグイグイ

成幸 (り、両側から引っ張られて、やわらかいやら良い匂いやらで、何がなんだか……) フラフラ

文乃 「――成幸くーん? こんなところで何してるの?」

真冬 「!?」

シュバッ

成幸 「へ……? わっ……わわわっ……」 グラッ

あすみ 「……? のわっ……」

ドターーン!!!

文乃 「……? へ……?」

文乃 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「……本当に何をやってるのかな、きみは」

504以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 22:03:54 ID:yuN6bUJk
成幸 「いてててて……」

成幸 「……ん?」

あすみ 「………………」

成幸 「………………」

成幸 (……これはあくまで俺の推察だけれど)

成幸 (古橋たちの声が聞こえて、先生は慌てて俺の手を離して茂みに隠れて、)

成幸 (そのせいで先輩に一方的に引っ張られることになった俺は、そのまま先輩の方に引っ張られ……)

成幸 (結果として、先輩を押し倒しているような姿勢になってしまっている……のだろう)

文乃&理珠&うるか 「「「………………」」」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

文乃 「……ケダモノ」 ボソッ

成幸 「ち、違う! 断じて違うぞ! お前らは何か誤解をしている!」

理珠 「ほぅ。では成幸さんは、先輩を押し倒して何をするつもりだったのですか?」

成幸 「いや、べつに押し倒したつもりはないからな!?」

うるか 「成幸のヘンタイ! エッチ!」

成幸 「ストレートに傷つくからやめろ! 誤解だ!」

505以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 22:04:37 ID:yuN6bUJk
あすみ 「……おい、後輩。とりあえず重いから、どけ」

成幸 「あ、は、はい!」 イソイソ 「すみません、先輩……」

成幸 (先生、いくら古橋と緒方に会いたくないからって、急に手を放さないでほしいよ……)

理珠&文乃&うるか 「「「………………」」」 ジトーーーーーッ

成幸 (おかげで変な誤解をされてるし、正直に話してしまいたいところだけど……)

真冬 「………………」 フルフルフルフル

成幸 (茂みからの視線がすごい……。これは、話しちゃダメなやつだよな……)

成幸 (さて、どうしたもんか……)

あすみ 「………………」 ハァ (……ったく。しゃーねぇ後輩と先生だな)

あすみ 「……お前ら、何か勘違いしてるみたいだが、お前らが考えてるようなことはないぞ」

あすみ 「つまずいた後輩がよろけただけだ。偶然、アタシを押し倒したようになっちまったけどな」

成幸 「先輩……」

うるか 「な、なんだぁ。それだけかぁ」 ホッ

理珠 「そ、そんなことだろうと思ってました」

文乃 「そうだよね。わたしはもちろん、そう思ってたよ、成幸くんっ」

506以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 22:05:54 ID:yuN6bUJk
成幸 「お前ら、調子良いこと言うよなぁ……」

あすみ 「で、その食べ物、後輩のために取ってきてくれたんだろ?」

あすみ 「向こうのテーブルで食べるから、先待っててくれ。部屋に忘れ物があるんだ」

理珠 「分かりました! うどんもっと用意して待ってます!」

文乃 「肉も増やしておくね!」

成幸 「い、いや、それ以上はちょっと……」

うるか 「じゃ、待ってるねっ! 成幸! 先輩!」

トトト…………

あすみ 「……ふぅ。行ったか」 スッ 「出てきて大丈夫ですよ、真冬センセ」

真冬 「……感謝。うまく誤魔化してくれて助かったわ、小美浪さん」

あすみ 「ええ。後輩はアタシを押し倒した性犯罪者になりかけましたけどね」

成幸 「ぶっ……! 洒落にならんようなことを言わないでください!」

真冬 「……謝罪。急に手を放したのは申し訳なかったわ。ふたりともケガはないかしら?」

あすみ 「あれくらいでケガするようなヤワな身体はしてませんよ」

真冬 「そう……。よかったわ」

507以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 22:06:30 ID:yuN6bUJk
真冬 「………………」

成幸 「……先生?」

真冬 「あの子たち、とても楽しそうね」

成幸 「へ……?」

理珠 「……」 うるか 「……」 文乃 「……」 ワイワイワイ

成幸 「ああ……」 クスッ 「ええ。勉強は大変そうでしたけど、でも、充実してましたよ」

成幸 「たくさん頑張ったから、今はすごく楽しいんだと思います」

成幸 「そう……」

あすみ 「せっかくなんだし、声でもかけてったらいいじゃないですか」

真冬 「迷惑。あの子たちは、大嫌いな私の顔などみたくもないでしょう」

成幸 「そ、そんなこと……」

真冬 「………………」

クルッ

真冬 「予備校と旅館の方に挨拶をして帰るわ。これ以上、あの子たちと接触するリスクは避けたいから」

あすみ 「あれ、先生? キスのことはいいんですか?」 ニヤァ

508以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 22:07:17 ID:yuN6bUJk
成幸 「……!?」 (何でわざわざ蒸し返すんだ先輩!?)

成幸 (いや、間違いなく俺が困る様を見るためだろうけど!!!)

真冬 「………………」

成幸 「ち、違うんですよ先生! キスも何もないです! 俺と先輩はそういう関係じゃ……――」

真冬 「――……不問。キス云々のことは、とりあえずおいておくことにするわ」

成幸 「……って、へ?」

真冬 「あなたの帰りが遅くなると、またあの子たちが探しに来るわ。だから、仕方なく、よ」

ジロリ

真冬 「ただし、不純異性交遊は絶対に許しませんからね」

成幸 「先生……」

あすみ 「……だってさ、後輩?」 ニヤリ 「じゃ、不純じゃない交遊としゃれ込むか?」

成幸 「良い感じの話で終わりそうだったのに何でそう蒸し返すんですかー!!」

あすみ 「……とまぁ、後輩からかうのはこれくらいにして、と」

あすみ 「……真冬センセ」

真冬 「……? 何かしら?」

509以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 22:07:58 ID:yuN6bUJk
あすみ 「あいつら、べつに先生のこと嫌ってなんかいないと思いますよ」

真冬 「っ……。何の根拠があって、そんなことを言うのかしら」

あすみ 「根拠と言われると弱いですけど……」

あすみ 「アタシも散々進路変えろって先生に言われましたけど、」

あすみ 「……アタシ、べつに真冬センセのこと嫌いじゃないですよ?」

真冬 「………………」

カァアアアア……

真冬 「……し、主観。客観性に乏しい、ただのあなたの感想だわ、それは」

あすみ 「ま、そりゃそうか」 クスクスクス……

真冬 「……失礼するわ。邪魔したわね。唯我君、小美浪さん」

トトトトト……

あすみ 「……結局何も食べずに行っちゃったよ。ま、緒方たちがいるなら仕方ないか」

成幸 「………………」 ニヤニヤニヤ

あすみ 「……あんだよ、後輩。その生暖かい目は」

成幸 「いや、先輩も優しいところあるなぁ、って……」 ニヤニヤニヤ

510以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 22:08:33 ID:yuN6bUJk
あすみ 「ほーぅ。いい度胸だな、後輩」

あすみ 「今度真冬センセにあることないこと吹き込んでやろうか?」

成幸 「じ、冗談です! それだけは勘弁してください!」

あすみ 「……ったく。すぐヘタれるようじゃアタシに喧嘩売るのは百年はえーっての」

あすみ 「………………」

あすみ 「……なぁ、後輩」

成幸 「……? なんですか?」

あすみ 「いつか、センセと緒方たち、フツーに話ができるようになるといいな」

成幸 「………………」

成幸 「……はい、本当にそう思います」

成幸 (……本当に、いつになるか分からないし、そんなときが来るのかも分からないけど、)

成幸 (あのまっすぐな奴らと、まっすぐな先生が、一緒に笑い合えるような日がくれば、いいな)

おわり

511以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 22:13:47 ID:yuN6bUJk
………………幕間1 「別腹」

うるか 「あ、センパイ! 成幸! 遅いよもー!」

あすみ 「悪い悪い。ちょっと手間取ってさ」

理珠 「先輩の分も取ってありますから、存分に食べてください」

成幸 「ああ、ありがとな……って……」

ドーーーーーン

成幸 「な、なんだこの肉の量は……」

文乃 「へ? 成幸くん、男の子だからたくさん食べるかなと思って、一人前+α取っておいたよ?」

文乃 「ちょっと多かったかな? じゃあ私も一緒に食べるね!」

うるか 「あれだけ食べてまだ食べるの文乃っち……」

文乃 「もちろん! お日様の下で食べるお肉は別腹だよねー!」 ムシャムシャムシャ

あすみ 「ツッコむ気も湧かねーな……」

おわり

512以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 22:14:20 ID:yuN6bUJk
………………幕間2 「姉弟」

あすみ (……ん、そういや結局姉弟云々のこと後輩に聞きそびれちまったな)

あすみ (ったく。何が姉弟ごっこだよ。アタシは後輩が弟なんてご免だけどな……)

ポワンポワンポワンポワン………………

成幸(弟) 『あすみ姉ちゃん、受験頑張ろうな!』

成幸(弟) 『大丈夫だよ! 姉ちゃんなら絶対国立医学部受かるよ!』

成幸(弟) 『えへへ。姉ちゃんのために、対策プリントたくさん作ったからな』

成幸(弟) 『俺、姉ちゃんの作ってくれるご飯大好き! 姉ちゃんの料理は世界一だな!』

成幸(弟) 『いつもありがとな、姉ちゃん。姉ちゃん、大好きだよ!』

………………ポワンポワンポワンポワン

あすみ 「………………」 ハッ 「……あ、アタシは何考えて……ん?」

ツーーーーーポタッ……

あすみ 「な、何で鼻血が……」

おわり

513以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 22:18:13 ID:yuN6bUJk
>>1です。
読んでくださった方ありがとうございました。

>>240さんから着想を得て書きました。
ありがとうございました。
夏ももう終わってから投下するなよと自分でも思いますが。
申し訳ないことです。
今回の話はアニメに準拠しているつもりです。


毎週、アニメの話からSSを書こうかなと思います。
近いうちに第二話に関係したSSも投下したいと思います。
ちょっと出足が遅れてしまいましたが、三話以降はアニメ放送後すぐくらいに投下できるようにがんばりたいです。


また読んでくれたら嬉しいです。

514以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/15(火) 23:38:52 ID:XP21mx9w
おつー

515以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/16(水) 06:33:41 ID:YMQGMkAM
乙です

516以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/16(水) 12:10:38 ID:sWV4VY4k
きてるやん!!
おつんこ

517以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/16(水) 15:31:02 ID:maOO1N7.
乙です
楽しみにしていました

518以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/16(水) 22:43:58 ID:EIKuiBbg
おつ

519以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/29(火) 21:43:59 ID:TGvyu8.2
アニメは旅館後のsns騒動カットか…

520以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/30(水) 23:57:30 ID:ipRpMCgc
再開来てたか乙
ここのssもアニメ化してほしいわ

521以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/31(木) 21:46:25 ID:ssobg012
ハロウィンssはよはよ��

522以下、名無しが深夜にお送りします:2019/11/06(水) 03:49:42 ID:mn.Omhak
シエンタ

523以下、名無しが深夜にお送りします:2019/11/07(木) 00:15:10 ID:iLuObUaI
ようやっとアニメ5話まで見たぞ
やっぱり敵対心丸出しの水希ちゃんかわいいよね

だから>>190このssも早くアニメ化して?

524以下、名無しが深夜にお送りします:2019/11/14(木) 21:23:53 ID:xtkT2/V6
舞ってるで

525以下、名無しが深夜にお送りします:2019/11/19(火) 05:04:16 ID:PO4bTZT2
やっぱ文系回面白いわ

526以下、名無しが深夜にお送りします:2019/11/20(水) 00:19:00 ID:tKMIRqCI
ほんと1年振りくらいに話進展しましたね

527以下、名無しが深夜にお送りします:2019/11/21(木) 01:24:13 ID:ZalBax36
本スレで語りたいのに語れないジレンマ
五等分も僕勉も今週は神回よ

528以下、名無しが深夜にお送りします:2019/11/22(金) 22:32:24 ID:69Y3XYnQ
いい夫婦の日記念ssはよ

529以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/01(日) 01:49:56 ID:ET2AQN0g
アニメが神回だったのでこのスレも復活はよ

530以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/09(月) 19:41:38 ID:G3/J96O2


531以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/26(木) 17:05:46 ID:Plix4l3.


532以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:36:27 ID:bivwmP6g
>>1です。
すみません、結局長らくお待たせしてしまいました。
待っていてくださった方、いらっしゃいましたらありがとうございます。ごめんなさい。

アニメ二話直後の話と思っていたければ幸いです。
ついでに、桐須先生のお誕生日記念のSSだと思っていただければ嬉しいです。

成幸 「俺ひとりで家事代行サービスですか?」

533以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:41:43 ID:bivwmP6g
………………朝 メイド喫茶HighStage

マチコ 「そうなの。唯我クンご指名なの。必ずひとりで来るように、って」

マチコ 「しかも時間指定は上限一杯で依頼は掃除だよ。変だよね」

成幸 「はぁ……?」

ヒムラ 「なにそれ? ちょっと怪しくない?」

ミクニ 「唯我クン可愛いからなぁ。ファンの妙齢のお姉さんとかじゃない?」

ヒムラ 「だとすれば、唯我クンが無防備にひとりで家に入った瞬間、パクッと……」

ミクニ 「!? だから時間が上限一杯なのね!? 唯我クンを目いっぱい堪能できるように!」

成幸 (何言ってるんだろうこの人たちは……)

マチコ 「うーん、そんなことになったらあしゅみーが悲しむよねぇ……」

マチコ 「怪しいし、やっぱり断っておいた方がいいかな」

成幸 「ちなみに、どんな方からのお願いなんですか?」

マチコ 「ああ、うん。お名前と住所はこれだよ。この人」

成幸 「……? ん?」 ハッ 「えっ、この人ですか……?」

マチコ 「へ? 唯我クン、知り合いなの?」

534以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:42:13 ID:bivwmP6g
………………マンション前

成幸 「………………」

成幸 (……なぜあの人がわざわざ俺を指名したのか、理由は分からなくはないけど)

成幸 (でも、何でわざわざハイステージにお願いをしたんだろうか……)

成幸 (ま、いいけどさ。そろそろ時間だし、インターフォン押すか……)

ピンポーーン……ガチャッ

?? 「正確。時間厳守ね。素晴らしい心がけだわ」

成幸 「どうも、こんにちは。ハイステージから家事代行で参りました、唯我です……」

成幸 「……って、わざわざ自己紹介する必要もないですよね……」


成幸 「――……桐須先生」


真冬 「ええ。では、お願いするわ。唯我君」

成幸 「はい。お邪魔します」

535以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:42:48 ID:bivwmP6g
成幸 (どうせいつもどおりグチャグチャなんだろうな……)

成幸 「……!?」

キラキラキラ……!!!!

成幸 「なっ……!」

真冬 「どうかしたかしら?」

成幸 「……す、すごく綺麗な部屋ですね。桐須先生」

真冬 「あら、どうもありがとう」 フフン

成幸 (すごいドヤ顔だ。がんばって掃除したんだろうな……)

成幸 「でも、家事代行の依頼は掃除になっていますけど……」

真冬 「謝罪。どうやら、生来の綺麗好きがたたってしまったようね」

クスッ

真冬 「……と、いうことで、掃除に関してはしてもらうことはないわ」

成幸 「へ……? でも先生、時間は上限一杯指定されてますけど……」

536以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:43:20 ID:bivwmP6g
真冬 「ええ。だから、あなたには他に何をしてもらおうかしら」

成幸 「……!?」


―――― 『なにそれ? ちょっと怪しくない?』

―――― 『唯我クン可愛いからなぁ。ファンの妙齢のお姉さんとかじゃない?』

―――― 『だとすれば、唯我クンが無防備にひとりで家に入った瞬間、パクッと……』

―――― 『!? だから時間が上限一杯なのね!? 唯我クンを目いっぱい堪能できるように!』


成幸 (ま、まさか、ヒムラさんとミクニさんが言っていた通り……!?)

真冬 「さ、唯我君。早く出しなさい」

成幸 「だ、出しなさいって、いや、そんな……」

真冬 「どうせ持っているんでしょう? 勉強道具」

成幸 「いや、俺は、その、そういうのは……」

成幸 「………………」

成幸 「……へ?」

537以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:44:10 ID:bivwmP6g
………………

成幸 「………………」

カリカリカリ……

真冬 「完璧。だいぶ基礎が身についてきているわね。いいことだわ」

成幸 「あ、はい。ありがとうございます、先生」

成幸 (……何をアホな勘違いをしていたんだろうか、俺は)

成幸 (いや、でもまさか、お金を払って俺を家に呼んで、勉強させるとは思わないもんな……)

成幸 (……っていうか俺、何で仕事中に勉強してるんだろう)

真冬 「……ん、そろそろお昼ね。休憩しましょうか」

成幸 「はい、わかりました。お茶でもいれますね」

真冬 「いいわ。君は座ってなさい。私がいれてくるから」

成幸 「あっ……」

成幸 (……俺が動く前に、本当に台所に行ってしまった)

成幸 (俺が家事をしなくちゃならないのに、先生にさせるのは申し訳ないな)

成幸 (っていうか大丈夫かな。また湯飲みでも割ってケガでもしないかな……)

538以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:44:44 ID:bivwmP6g
真冬 「お待たせ。緑茶よ……って」

真冬 「……救急箱を持って何をしているの、君は」

成幸 「あ、いえ。先生がいつケガしてもいいようにスタンバイしてました」

真冬 「……君は本当に私のことを何だと思っているのかしら」

成幸 (……ドジっこ無防備女教師)

真冬 「今、とてつもなく失礼なことを考えていないかしら……?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「め、滅相もないです! お茶、いただきます!」 ズズズ……

真冬 「まったく……」 ズズズ……

成幸 「………………」

成幸 「……あの、先生」

真冬 「? 何かしら?」

成幸 「どうして俺を指名して家事代行をお願いしたんですか?」

成幸 「しかも、掃除を依頼していたのに、しっかりと掃除してあるし……」

真冬 「前と同じよ。教師の威厳を保つために、小美浪さんには汚い部屋なんて見せられないわ」

真冬 「だから君を指名して家事代行をお願いしたのよ」

539以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:45:14 ID:bivwmP6g
真冬 「そうしたら偶然掃除をする気になってきて、君が来る前に部屋が綺麗になってしまったの」

真冬 「それだけよ」

成幸 「………………」

成幸 「……いや、それで納得しろというのはいくらなんでも無理ですよ、先生」

真冬 「ん……」

成幸 「………………」 ジーーーーッ

真冬 「……分かったわ。白状するわよ」

真冬 「この前のお詫びよ。それから、日頃の感謝かしら」

成幸 「へ……?」

真冬 「この前、小美浪さんと一緒に家事代行に来たとき、あなたに掃除をさせてしまったでしょう?」

真冬 「あなたに申し訳ない事をしてしまったから、そのお詫びと……」

真冬 「いつも、あなたに掃除をさせてしまって、勉強時間を奪ってしまっているから……」

真冬 「その感謝の気持ちも込めて、バイトの時間も勉強をさせてあげようとしたの」

カァアアアア……

真冬 「羞恥。自分で話すと恩着せがましくて嫌だわ。だから言いたくなかったのよ……」

540以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:46:01 ID:bivwmP6g
成幸 「先生……」

クスッ

真冬 「唯我君……?」

成幸 「……まったくもう。最初は何事かと思いましたよ。そんなことを考えてくれてたんですね」

成幸 「ありがとうございます。そのお気遣いだけで嬉しいです」

成幸 「でも、さすがに勉強を教えてもらってお金は受け取れないですよ」

真冬 「不可。後で払うからちゃんと受け取りなさい。それは正規の契約に基づいた謝礼なのだから」

成幸 「でも……」

真冬 「日頃掃除をしてもらっているのだから、それくらいさせてちょうだい」

真冬 「でないと、一生あなたに頭が上がらなくなってしまうわ」

成幸 「……わかりました」 ニコッ 「ありがとうございます、先生」

真冬 「それから、もう一つ……約束もあったから」

成幸 「へ? 約束……?」

ピンポーーーーン

真冬 「来たようね。ちょっと待っていてちょうだい」

541以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:46:42 ID:bivwmP6g
成幸 「?」 (お客さんかな……?)

真冬 「ご苦労様です。どうもありがとう」

成幸 (いや……)

真冬 「……お待たせしたわね。さ、机の上を片付けてくれるかしら」

成幸 「へっ? 先生、それって……」

成幸 「店屋物?」

真冬 「ええ。少し早いけど、お昼ご飯にしましょう」

コトッ

真冬 「これで、やっと約束が果たせるわね。さ、どうぞ」

成幸 「……!?」

成幸 (こ、この四角い器は、お重!? これは、まさか……)

成幸 (噂に名高い超高級品の……)

パカッ

成幸 「ほんとにうな重だー!?」

キラキラキラキラキラ……!!!!!

542以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:47:19 ID:bivwmP6g
成幸 (キラキラと独特の光沢を放つ焦げ目……)

成幸 (身の合間から見えるタレの染みこんだご飯……)

成幸 (そして何と言ってもこの、香ばしいタレの香り……)

グゥゥゥウウウ……

成幸 (なんて食欲をそそる食べ物なんだ……!!)

成幸 (でも……)

真冬 「? どうかしたかしら?」

成幸 「こ、こんなお高い食べ物を、いただいていいんでしょうか……?」

真冬 「……? 何を言っているの、唯我君。約束したでしょう」

成幸 「えっと……すみません、さっきから言ってる “約束” って……」

真冬 「したわ。小美浪さんとふたりでうちに来たとき」

真冬 「……あなたに掃除をしてもらったときに」

543以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:48:07 ID:bivwmP6g
成幸 「へ……?」


―――― 『うわっ なんでたった数日で元に戻ってるんですか!』

―――― 『え……? 教師の威厳? はぁ……』

―――― 『えっ うな重!!?』


成幸 「あっ……」 ハッ 「あのときですか!」

真冬 「ええ。思い出してもらえたようで何よりだわ」

真冬 「そういうことだから、遠慮する必要はないわ。食べてちょうだい」

成幸 「じ、じゃあ、そういうことなら……」

成幸 「いただきます!」 モグッ…… 「……!?」

成幸 (う、うなぎやわらかー! タレとからまって、ご飯とよく合うなー!)

成幸 (うな重って、こんな美味しいものなのか……)

モグモグモグ……

成幸 (し、幸せ……) ジーーーン……

真冬 「………………」 クスッ (……まったく。美味しそうに食べてくれるものね)

544以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:49:10 ID:bivwmP6g
………………夜

成幸 「………………」

ピピピピピピ……

成幸 「あっ、仕事終わりのアラーム……ってもうこんな時間か」

真冬 「時間が経つのを忘れていたということは、集中できていた証拠よ。がんばったわね」

成幸 「はい。いつもより頭が冴えている感じがします。ありがとうございました、先生」

真冬 「……だから、何度も言わせないでちょうだい。日頃のお返しよ」

真冬 「さ、では暗くなる前に帰りなさい。今日は家事代行ご苦労様でした」

成幸 「何もしてないですけどね」

成幸 「うな重もごちそうさまでした。めちゃくちゃ美味しかったです」

真冬 「それも約束を果たしただけよ。気にすることはないわ」

真冬 「……いつも、本当にありがとう」

成幸 「っ……」 ドキッ 「い、いえ。べつに、そんな……」

成幸 (な、なんだろ。今日の先生、妙にしおらしくて、少しヘンな感じだ……)

545以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:49:49 ID:bivwmP6g
真冬 「………………」

成幸 「………………」

ドキドキドキドキドキドキドキドキ……

成幸 (な、なんか、調子狂うな……――)

ガタッ……

成幸 「ん……?」

バタバタバタバタドンガラガッシャーン!!!!

成幸 「!?」

真冬 「あっ……」

成幸 (クローゼットと戸棚から一斉に、物が雪崩のようにくずれ落ちてきたぞ!?)

真冬 「………………」

成幸 「……あの、先生? 片付けたって言ってましたよね?」

真冬 「………………」 プイッ 「……一応、片付いてはいたでしょう?」

成幸 「ゴミや不要物をどこかに押し込めることを片付けとはいいませんよ!」

真冬 「む……」

546以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:50:19 ID:bivwmP6g
真冬 「………………」

プクゥ

成幸 「またそんなむくれた顔をして……」

成幸 (……まったくもう)

クスッ

真冬 「……な、なんにせよ、あなたの家事代行の時間は終わったでしょう。早く帰りなさい」

成幸 「ええ、そうですね。家事代行は終わったので……」

スッ……

真冬 「……っ、何をやっているの。片付けは私がやるわ。だから君は――」

成幸 「――家事代行は終わったので、いつもどおり一緒に片付けをしましょうか、先生」

真冬 「へ……?」

成幸 「今日はいつも勉強を教わるのを、先払いしてもらっちゃいましたし」

クスッ

成幸 「さ、先生も。早くやりましょう」

547以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:50:54 ID:bivwmP6g
真冬 「唯我君……」

クスッ

真冬 「……まったくもう。またお返しをしなくちゃいけないじゃない」

成幸 「それより何より、まず部屋を汚さないようにしてください」

真冬 「し、辛辣。正論は時に人を傷つけることを知るべきだわ、君は」

成幸 「はは……」

成幸 「………………」

成幸 (……先生、いつも俺が掃除をしていること、感謝してくれてたんだな)

成幸 (でも、先生)


―――― 『時間が経つのを忘れていたということは、集中できていた証拠よ。がんばったわね』


成幸 (それと同じくらい、俺も……)

成幸 (先生が勉強を教えてくれること、感謝してるんですよ)

おわり

548以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:51:46 ID:bivwmP6g
………………幕間 「におい」

葉月 「んー?」

成幸 「ん、どうした、葉月。兄ちゃんにそんなにべったりくっついて」

葉月 「なんか、兄ちゃんの服から良い匂いがするの。美味しそうな匂い……」

成幸 「あ、ああ。今日兄ちゃん、ごちそう食べて来ちゃったからな……」

成幸 「ごめんな、葉月。いつか兄ちゃんがお金稼げるようになったら、葉月にも食べさせてあげるからな」

水希 「………………」

ギラリ

水希 「……そうだね、葉月。お兄ちゃんから匂いがするね」

水希 「どこの誰か知らないけど、発情した年上のメスネコらしき匂いが……!」

和樹 「そっち!?」

おわり

549以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 00:58:34 ID:bivwmP6g
>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。
長らく間を開けてしまって申し訳ありません。

宣伝というわけではないですが、本日、某イベントに参加します。
夏はこの一連のスレで投下したSSを小説調に直して頒布というかなり手抜きな内容だったのですが、
今回はきちんとイベントのために書いた小説を頒布します。
恐らく明日ぼく勉で参加するのは私だけかと思いますので特定は簡単かもしれません。それが何だというわけではありませんが。
とりとめもない自分語りをしてしまいました。申し訳ないことです。


来年はできるだけ間を開けないようにこのスレにSSを投下し続けたいと思います。
本編も佳境に入ってきたような気がしますが、今後が非常に楽しみですね。明日のアニメもとても楽しみです。
このスレも、時々覗いていただければ幸いです。

本年、見ていただいた皆さん、レスをくださった皆さん、ありがとうございました。
また来年も見て頂ければ、レスをいただければ嬉しいです。

550以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/28(土) 03:49:05 ID:mybs7Tvg
おつ。来年もよろしく


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