したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【ぼく勉】 文乃 「今週末、天体観測に行くんだよ」

206以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:34:48 ID:cxG0DenQ
水希 「………………」

フゥ

水希 「……そう。そうですか」

水希 「そう、ですよね」

文乃 「へ……?」

文乃 「怒らないの……?」

水希 「はぁ?」 ジロリ 「怒って欲しいんですか?」

文乃 「い、いや、そういうわけじゃないけど……」

水希 「怒りませんよ。怒れるわけないじゃないですか。お兄ちゃんのこと、好きになったことを」

水希 「仕方ないです。お兄ちゃんは本当に魅力的な人ですから」

文乃 「そっか……」

水希 「わたしはただ、煮え切らない態度を取っているあなたに怒っていただけです」

水希 「あなたは、好きになることを遠慮しているような、ためらっているような……」

水希 「……そんな風に、見えたから」

文乃 「んっ……」

207以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:35:30 ID:cxG0DenQ
文乃 「……そうだね。そうかもしれない」

文乃 「でも、決めたよ。わたし、もう逃げない。わたしは、“起きてる” から」

文乃 「わたし、負けたくない。成幸くんのこと、大好きだから」

水希 「……そうですか」

水希 「………………」

ギリッ

水希 「……私は……――」


文乃 「――――だからわたしたち、今からライバルだね!!」


水希 「……へ?」

文乃 「え? だってそうでしょ? わたしは成幸くんのことが好き。水希ちゃんも成幸くんのことが好き」

文乃 「ってことは、ライバルでしょ?」

水希 「………………」

水希 「……へぇ!?」 カァアアアア……

水希 「わ、わたしは、べ、べべべべべべつに!? お兄ちゃんのことなんか好きじゃないですけど!?」

208以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:36:04 ID:cxG0DenQ
文乃 「………………」

文乃 「え、えぇぇええ〜〜……今さらツンデレ妹キャラ出しちゃう……?」

水希 「だ、だってそんな、わたし、妹だし……」

水希 「お兄ちゃんは、お兄ちゃんだし……そんなの……」

文乃 「? でも、水希ちゃん、お兄ちゃんのこと好きなんでしょ?」

水希 「……そ、それは、まぁ……その……」

コクリ

水希 「……好き、です、けど」 ボソッ

文乃 「じゃあわたしたちライバルだよ! 負けないからね!」

水希 「ら、ライバルって……古橋さんは、変だと思わないんですか?」

水希 「気持ち悪いって思わないんですか? 私のこと……」

文乃 「へぇ? 何で?」

水希 「何でって……実の、血の繋がった兄が好きって、変でしょう……?」

文乃 「んー……まぁ、一般的な社会通念的にはズレてるかな、とは思うけど」

文乃 「でも、成幸くんのこと好きなんでしょ?」

209以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:36:57 ID:cxG0DenQ
水希 「す、好き……ですけど……」

文乃 「じゃあいいじゃない。マイノリティが尊重される時代だよ」

文乃 「妹がお兄ちゃんを好きでも、べつに問題ないじゃない。まぁ、遺伝子的にはちょっとアレかもしれないけど……」

グッ

文乃 「なんにせよ、がんばれ、水希ちゃん! 応援してるよ!」

水希 「………………」

クスッ

水希 「応援って……。それ、まずいんじゃないですか?」

文乃 「はっ!? そ、そういえば、わたしも成幸くんのこと好きなんだった!」

文乃 「い、今の取り消し! やっぱり応援はしない!」

文乃 「負けないからね、水希ちゃん!」

水希 「………………」 ニヤリ 「こちらこそ、です」

水希 「絶対負けませんからね、古橋さん!」

210以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:37:49 ID:cxG0DenQ
水希 「………………」

水希 (ああ、この人は、こういう人だ……)

水希 (だからわたしは、この人のことが、好きなんだ……)

水希 (お兄ちゃんから約束のブッキングのことを聞いて、悔しくて、でも……)

水希 (同時に、古橋さんと一緒に出かけられるのが、少し楽しみで……)

水希 (そう、わかってたんだ。この人は、優しくて、とてもいい人)

水希 (わたしの、お兄ちゃんへの、拙い愛情すら、肯定してくれる人


―――― 『……それもあります』

―――― 『? それ “も” ?』


水希 (ああ、もう。バレてないよね)

水希 (“あなたにだったら、お兄ちゃんを任せてもいいよ” って……)

水希 (思いかけてしまっていること、バレていないよね……)

おわり

211以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:38:38 ID:cxG0DenQ
………………幕間 『最強の敵』

水希 「それにしても、誰も彼も、お兄ちゃんのことを好きになりますね」

文乃 「ああ、りっちゃんたちのこと?」

水希 「そうです。緒方さんや、この前家に来ていた先輩と先生もです」

水希 「まったく。お兄ちゃんの魅力に気づくのはいいですが、虫みたいにたからないでほしいです」

文乃 「虫って……」

水希 「でも、大丈夫です。お兄ちゃんと私には、とてても心強い味方がいますから」

文乃 「味方?」

水希 「もちろん、武元先輩です!」

文乃 「えっ」

水希 「武元先輩は、いつもお兄ちゃんのことを気にかけてくれて、変化があるとすぐに教えてくれるんです!」

水希 「武元先輩だけは、私の味方なんです!」 キラキラキラキラ……

文乃 「あー……」

文乃 (……ごめん、水希ちゃん。うるかちゃんは多分、最強の敵だよ)

おわり

212以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:39:48 ID:cxG0DenQ
読んでくださった方ありがとうございました。
安価もありがとうございました。
文乃さんと迷われているようだったので余計なお世話とは思いつつ文乃さんも入れてしまいました。

213以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 02:45:27 ID:cxG0DenQ
すみません、もう少しだけお付き合いいただけると助かります。

【ぼく勉】 成幸 「今週末は、>>216>>217する約束なんだ」

文章繋がらなくても適当にタイトルにするので構いません
>>216キャラ名と>>217何かすることをお願いします。
同じ方が二つとも踏んでくれても構わないのですが、
別の方が踏んでくれるとわたしはとても楽しいです。たぶん。
よろしくお願いします。

214以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 14:06:48 ID:WO/bOOK.

美春

215以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 17:42:01 ID:/Jb6XPw.
せんせー

216以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 18:16:44 ID:szoPGfYA

智波ちゃん

217以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 18:22:43 ID:qv24418c
真冬先生

218以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 19:41:45 ID:s9TtTp0U
色々と早すぎてビビるわ?

219以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 20:03:23 ID:7hh4/SuM
おつつつつ

文乃お姉ちゃんだからね、そら妹ともセットになるよ(錯乱)

220以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 21:05:49 ID:0kLsBePI

妹と文系の関係好きよ

221以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/30(木) 22:30:19 ID:WO/bOOK.
サプライズ

222以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/31(金) 12:11:16 ID:dNyovOrg
誰得だよ

223以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/31(金) 22:02:39 ID:M0/tNEls
公式で姉妹してて草
https://i.imgur.com/BR6EOIo.jpg

224以下、名無しが深夜にお送りします:2019/06/01(土) 08:52:21 ID:doYRSdv6
>>223
この妹ちゃんの表情好き

225以下、名無しが深夜にお送りします:2019/06/02(日) 22:55:40 ID:.H2ShQb.
A組ですね…
https://i.imgur.com/JT0YSng.jpg

226以下、名無しが深夜にお送りします:2019/06/05(水) 00:14:15 ID:Kp9YTYeQ
12巻記念で誰か先生SS書いてくれないかなぁ

227以下、名無しが深夜にお送りします:2019/06/05(水) 01:46:17 ID:1mj172Qg
シエンタ

228以下、名無しが深夜にお送りします:2019/06/06(木) 00:10:26 ID:35cU.sxE
1は小説版読んだのかな

229以下、名無しが深夜にお送りします:2019/06/23(日) 14:20:19 ID:JgZpUIGg
アニメの先輩くっそかわいいじゃん!

230以下、名無しが深夜にお送りします:2019/06/24(月) 00:22:21 ID:9bd34RUc
原作でもかわいいぞ

231以下、名無しが深夜にお送りします:2019/06/27(木) 21:03:17 ID:PuAMbG86
小説版の表紙すき
https://i.imgur.com/tGR3sAa.jpg

232以下、名無しが深夜にお送りします:2019/06/28(金) 17:58:07 ID:J6iebV6k
アニメ2期決定記念ssはよ

233以下、名無しが深夜にお送りします:2019/06/29(土) 20:45:38 ID:dBK094l2
すまん、智波ちゃんて誰や?

234以下、名無しが深夜にお送りします:2019/06/29(土) 22:57:53 ID:WpIDvgmM
>>233
水泳部の短髪の方って言えばいいかな?

235以下、名無しが深夜にお送りします:2019/06/30(日) 03:10:09 ID:Vo0o6zq2
アニメ終わったし再開してほしいな

236以下、名無しが深夜にお送りします:2019/07/05(金) 12:30:29 ID:90wSHPuQ
追いついた支援

237以下、名無しが深夜にお送りします:2019/07/07(日) 12:38:52 ID:hh8gsOaI
七夕ssはよはよ

238以下、名無しが深夜にお送りします:2019/07/11(木) 01:50:36 ID:KqXiYuIo
アニメ2期まであと3ヶ…

239以下、名無しが深夜にお送りします:2019/07/29(月) 01:02:14 ID:IdsuREVE
>>231
いい表情だなぁ…

240以下、名無しが深夜にお送りします:2019/08/01(木) 23:21:40 ID:GfAUGzic
花火大会やBBQといった夏の話書いてほしい

241以下、名無しが深夜にお送りします:2019/08/08(木) 12:29:26 ID:rM9R1Nd2
天の光はすべて星

242以下、名無しが深夜にお送りします:2019/08/13(火) 00:55:30 ID:XKR43jLw
読み返していて思ったが>>1の自己安価タイトル一挙できていいな

243以下、名無しが深夜にお送りします:2019/08/16(金) 04:13:38 ID:zmPo8FRw
前スレにあった面白かったssだけど
ポニーテールは振り向かないが最高でしたわ・・・

244以下、名無しが深夜にお送りします:2019/08/17(土) 13:31:03 ID:jBdNViHc
そういやC96をぼく勉でエントリーしたって言ってたな
やっぱ小説なのかね?

245以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/01(日) 20:07:59 ID:R3mdfaZw
3ヶ月か

246以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/01(日) 23:01:09 ID:rFmw/ZZ6
俺は待ち続けるぞ

247以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:29:23 ID:x0BKGJhc
>>1です。
もし待っていてくださった方がいらっしゃったらありがとうございます。
申し訳ありませんでした。
とりあえず投下します。
>>213の安価からです。

書いていて楽しかったですが色々とくどいかもしれません。



【ぼく勉】 成幸 「桐須先生の補習に出たら週末に海原が家に来ることになった」

248以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:30:03 ID:x0BKGJhc
………………一ノ瀬学園

成幸 「ふぁ……ぁあ……」

文乃 「? 成幸くん、すごいあくびだね。昨日夜遅くまで勉強でもしてたの?」

成幸 「あー……」

成幸 「……うん、まぁそんなとこかな」

文乃 「ふふ、仕方ないなぁ。でも次の授業は桐須先生だよ」

文乃 「居眠りなんかしたら大目玉だよ。気をつけてね」

成幸 「わ、わかってるよ。ビビらせるなよ……」

文乃 「ふふふ、ごめんごめん」

文乃 (……まったく。夜更かししちゃうなんて、仕方ないなぁ)

文乃 (もし成幸くんが居眠りしちゃったら、お姉ちゃんが起こしてあげるとしようかな)

文乃 (手のかかる弟だよ、まったく……)

249以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:30:41 ID:x0BKGJhc
………………授業中

真冬 「この時代の事象は後の世に大きな影響を与えるの」

真冬 「大航海時代の今後を決める重要な事件・事柄ばかりよ」

真冬 「この周辺に関しては、一年ごとに重要なイベントを覚えるようにした方がいいわ」

文乃 (ふむふむ。この時代に関しては、一年ずつ覚えていく、と……)

カリカリカリ……

文乃 (さて、成幸くん、大丈夫かな。お舟漕いでたりしないかな、っと……)

成幸 「………………」 Zzzzz……

文乃 「!?」

文乃 (ふ、舟を漕ぐどころの騒ぎじゃねえ、だよ……)

文乃 (がっつり眠りの大海原を彷徨ってるよ!?)

文乃 「ち、ちょっと、成幸くん」 コソッ 「まずいよ。起きてよ」

成幸 「………………」 Zzzzz……

文乃 (起きる様子がない!!)

250以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:31:21 ID:x0BKGJhc
文乃 「成幸くんってば!」

成幸 「む……ふむ……」

文乃 「あ、成幸くん、起きた……?」

成幸 「えへ……ふふ……」

ニヘラ

成幸 「文乃姉ちゃん……」

文乃 「っ……///」

文乃 (なっ、何!? わたしの夢を見てるの……?)

文乃 (わ、笑いながらわたしの夢を見てるって……一体、どんな夢なの……?)

文乃 (うぅ……お、起こすに起こせないよ。続きが気になって……)

成幸 「だ、ダメだよ、文乃姉ちゃん……」

文乃 (だっ、ダメって何かな、成幸くん……) ドキドキドキドキ…… (まさか、ちょっとエッチな……――)

成幸 「――……そんなに食べたら……また太るよ……。おなかぽにょぽにょになるよ……」

文乃 「………………」 ピキッ 「……へぇ?」

文乃 「へぇえ……」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

251以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:31:58 ID:x0BKGJhc
文乃 「………………」

スッ

文乃 「桐須先生」

真冬 「? 質問かしら、古橋さん」

文乃 「いえ、報告です。唯我くんが居眠りしています」

真冬 「………………」 ピクッ 「……なんですって?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「……むにゃむにゃ……」

真冬 「……なるほど」

カツカツカツ……

真冬 「……唯我くん」

成幸 「……むにゃ」

真冬 「唯我くん」 トントン

成幸 「へ……?」

パチッ

252以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:32:36 ID:x0BKGJhc
成幸 「………………」

真冬 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

文乃 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「……あ、えっと……」

成幸 (……目覚めた瞬間、目の前には怒り顔の桐須先生と、なぜか同じように怒っている古橋の顔があった)

成幸 (状況はよくわからなかったが、ひとつ、間違いなく言えることは……)

真冬 「いい度胸ね、唯我くん。まったく、どうしてくれようかしら……」

文乃 「まったくだよ。本当に君は、仕方のない生徒だね……」

成幸 (……あ、俺、死んだな)

253以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:33:25 ID:x0BKGJhc
………………昼休み

成幸 「うぅ……」

理珠 「なるほど。それで桐須先生に絞られて、そんなにやつれているんですね」

うるか 「居眠りしちゃうなんて、成幸はしかたないなー」

成幸 「……まったくその通りだから返す言葉もないよ」

文乃 「ふんだ。自業自得だよ、まったく……」

理珠 「……しかし、それでどうして文乃が怒っているのですか?」

成幸 「それが、理由を教えてくれないんだよ」

文乃 「ふーん、だ!」 プイッ

成幸 「……でさ、本題なんだけど、今日の放課後、桐須先生に居眠り分の補習って言われちゃってさ」

成幸 「だから、勉強会少し遅れると思う。先に図書室で始めててくれ」

うるか 「ん、わかった。できるだけ早く来てよね、成幸」

成幸 「分かってるよ。俺だってそうしたいところだけど、桐須先生次第かな……」

理珠 「まぁ、成幸さんが悪いのだから仕方ありません。がんばってください」

成幸 「おう、ありがとな」

254以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:33:55 ID:x0BKGJhc
………………午後

真冬 「……で、あるからして、残されたパイを奪い合う大航海時代が幕を開けたわけね」

真冬 (……ふぅ。午前中は唯我くんが居眠りをして、少し驚いたけれど)

真冬 (さすがに受験生だもの。午後の授業は、居眠りする生徒なんていなそうね)

真冬 「ん……?」

コクリ……コクリ……

真冬 (……舟を漕いでいる生徒がいるわね。一体誰からしら。心当たりなら何人かいるけれど)

真冬 (まったく……)

カツカツカツ……

真冬 「……起きなさい」

? 「ふぇっ……? あ……」

? 「す、すみません、桐須先生! 私、寝ちゃってました……?」

真冬 「……あら、あなたは……」

真冬 (めずらしいことが続くものね。普段まじめな子が、立て続けに居眠りをするなんて……)

255以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:34:34 ID:x0BKGJhc
………………放課後

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「うぅ……」 (心なしか、生徒指導室から怒りが漏れ出ている気がする……)

成幸 (気のせい……気のせいだよな……)

成幸 (そもそも、授業後にあれだけ絞られたんだ。今日の授業内容をおさらいしてくれるだけだろ……)

成幸 (たぶん……)

ガラッ

成幸 「し、失礼します。3年B組の唯我です!」

? 「おや? 唯我くん?」

成幸 「へ……? う、海原?」

智波 「やぁやぁ、桐須先生から補習はもう一人いるって聞いてたけど、唯我くんだったんだね」

成幸 「お前も補習なのか。居眠りでもしたのか? めずらしいな」

智波 「あはは。そういう唯我くんこそ、ガリ勉くんなのにめずらしいね」

成幸 「ガリ勉くんは余計だよ。悪かったな」

智波 「褒めてるんだよー」 ケラケラケラ

256以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:35:19 ID:x0BKGJhc
成幸 「で、どうしたんだ? 夜遅くまで勉強、ってキャラじゃないだろ、お前」

智波 「まぁね。ちょっと、色々やってたら寝るのが遅くなっちゃってさ」

成幸 「……?」

成幸 「……海原、お前ひょっとして……――」

――――ガラッ……

真冬 「ふたりとも時間厳守で揃っているようね。結構」

真冬 「では、補習を始めます。唯我くん、号令」

成幸 「あ、は、はい! 起立! 気をつけ! 礼!」

成幸&智波 「「お願いします!!」」

真冬 「よろしい。でははじめましょう」

真冬 「今日の内容は、大航海時代の始まりと変遷に関してよ」

真冬 「重要な事象ばかりだから、ざっくり時系列順に並べるから、頭にたたき込むこと」

成幸 「は、はい!」

257以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:36:03 ID:x0BKGJhc
カリカリカリ……

智波 (うへー。ノート書くだけで大変だよー)

智波 (まぁ、仕方ないよね。授業中に居眠りしちゃった私が悪いし)

智波 (むしろ、わざわざ時間を取って補習までしてくれる桐須先生に感謝だよ)

成幸 「………………」

ガリガリガリガリ……

智波 (相変わらずすごいなぁ、唯我くん。シャーペンの音が大きいな)


―――― 『……海原、お前ひょっとして……』


智波 (そういえば、さっき唯我くん、何を言おうとしてたんだろ)

258以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:36:36 ID:x0BKGJhc
………………校内 ベンチ


―――― 智波 『ごめん、陽真くん! 授業中に居眠りして、桐須先生に呼び出されてるんだ!』

―――― 智波 『すぐ終わらせるから、待っててくれると嬉しいなっ!』


陽真 「ふふ。まったく、智波ちゃんったら仕方ないなぁ」

陽真 (そろそろ来る頃かな。早く会いたいな……)

陽真 「あっ……」 (向こうから歩いてくるのは……智波ちゃんと、成ちゃん……?)

成幸 「――……それにしても、夜更かしの理由が俺とまったく同じだったとはな」

智波 「えへへ、びっくりだね。考えることがこんなに被るなんて、さすが同中だねぇ」

成幸 「いや、べつに同中なのは関係ないだろ」

陽真 (……? なんかすごく楽しそうだなぁ。成ちゃんと智波ちゃんってあんなに仲良かったっけ?)

陽真 (なんか、声かけるのがためらわれるな……)

智波 「でも、なかなかうまくいかなくてさ。唯我くんそういうの上手だからうらやましいよ」

成幸 「まぁ、昔から色々やってきたからな。良かったら教えようか?」

智波 「ほんとに!? うわー、すごく助かるよ!」

259以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:37:21 ID:x0BKGJhc
陽真 (……何の話してるんだろ?) モヤモヤモヤ (……なんだろう。すごくモヤモヤする)

ハッ

陽真 (お、俺は一体何を考えてるんだ! 大好きな彼女と幼なじみを疑うようなことを考えるなんて!)

成幸 「じゃあ、土曜とかどうだ? 俺は午後なら空いてるけど」

陽真 (へ……?)

智波 「うん、私も大丈夫! じゃあ、お願いしてもいい?」

陽真 (へぇっ……?)

成幸 「おう。ちょっと弟妹の面倒も見なきゃいけないから、うちでもいいか?」

陽真 (!?)

智波 「ん、分かった! じゃあ、土曜日は唯我くんの家にお邪魔するね!」

陽真 (!!??)

智波 「あっ……」 パァアアアアアア……!!! 「陽真くん! ごめん、お待たせ!」

陽真 「あ……えっと……」

智波 「? 陽真くん?」

陽真 「……あ、ううん、なんでもない。補習、おつかれさま」

260以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:37:56 ID:x0BKGJhc
陽真 「成ちゃんも桐須先生に呼び出されてたんだ。めずらしいね」

成幸 「ああ、まぁ、授業中に居眠りなんて普通はしないからな……」

陽真 「………………」

成幸 「小林……?」

陽真 (今、ふたりで、土曜日に何かする約束をしてたよね……)

陽真 (……って、聞けたらどんなに楽だろう。ダメだ。怖い)

陽真 (彼女と幼なじみをいっぺんに失ってしまうんじゃないと思うと、怖い……)

智波 「? 陽真くん、どうかした? 大丈夫?」

陽真 「へ? あ、うん。大丈夫だよ。ごめんごめん」

成幸 「じゃ、俺はこの後うるかたちと勉強会だから、もう行くな」

陽真 「うん。また明日ね、成ちゃん」

成幸 「おう。海原も、またな」

智波 「うん、ばいばーい!」

261以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:38:46 ID:x0BKGJhc
陽真 「……じゃあ、行こうか」

智波 「うん。本当に待たせてごめんね、陽真くん」

陽真 「気にしないで。全然待ってないからさ」

陽真 「……と、ところでさ、」

智波 「うん?」

陽真 「さっき、成ちゃんとすごく楽しそうに話してたけど、何の話をしてたの?」

智波 「う゛ぇっ……?」

智波 「え、えっと……そ、その、大した話じゃないよ。うん。全然、これっぽっちも」

陽真 「……智波ちゃん?」

智波 「ほ、ほんと! 全然大した話じゃないから!」

智波 「え、えへへ……」 アセアセアセ……

陽真 「………………」 (めっちゃ動揺してる!?) ガーーーン!!!

陽真 (えっ、ちょっと待って。まさか、本当に、そういう感じ……?)

陽真 (い、いやいや、智波ちゃんと成ちゃんに限って、そんなはず……)

262以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:39:49 ID:x0BKGJhc
智波 「あ、そうだ、ねぇねぇ陽真くん」

陽真 「? な、なぁに?」

智波 「唯我くんの連絡先、教えてくれない? さっき聞くの忘れちゃって……」

陽真 「へっ……? い、いいけど……どうして?」

智波 「えっと、それは……」

カァアアアア……

智波 「な、ナイショっ! 恥ずかしいから……///」

陽真 「!?」 ガーーーン

陽真 (こ、これは、まさか、本当に……)

智波 「? 陽真くん? どうかした?」

陽真 「………………」 チーーーン

智波 「陽真くん!? わー、陽真くんが固まっちゃったー!!」

智波 「陽真くーーーーーーーん!!」

263以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:40:19 ID:x0BKGJhc
………………土曜日

陽真 「………………」

ハァ

陽真 (……今ごろ、智波ちゃんと成ちゃん、何してるんだろう)

陽真 (成ちゃん家で、何を……)

ブンブンブン

陽真 (ああもう! よくよく考えたら、智波ちゃんと成ちゃんがそんなことするはずないじゃないか)

陽真 (女々しいなぁ、俺。こんなウジウジするならはっきり聞けば良かったんだよ)

陽真 (……いや、今からでも、智波ちゃんに電話して聞いてみればいいんだよ)

陽真 「………………」

陽真 (……それができない時点で、俺は彼女と幼なじみのことを疑ってるんだよな)

陽真 (……情けない)

陽真 (家にいても気が滅入りそうだ。ちょっと散歩にでも出ようかな……)

264以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:41:05 ID:x0BKGJhc
………………商店街

水希 (……部活が長引いて遅くなっちゃったな)

水希 (お兄ちゃんにお留守番してもらってるから、早く帰らないと……)

水希 「ん……?」

陽真 「……あっ、水希ちゃん」

水希 「小林さん? お久しぶりです。こんにちは」

陽真 「うん、こんにちは。部活の帰り?」

水希 「はい! 小林さんはお買い物ですか?」

陽真 「あー……まぁ、そんなところかな」

水希 「……?」

水希 「小林さん、なんか元気ないですね。大丈夫ですか?」

陽真 「え……? あ、いや、そんなことないよ。全然……」

水希 「む……」

ズイッ

陽真 「み、水希ちゃん……?」

265以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:41:40 ID:x0BKGJhc
水希 「……私、これでも、小林さんのこと、もうひとりのお兄ちゃんみたいに思ってるんですよ」

水希 「だから、分かります。小林さんが何かで悩んでることくらい」

水希 「私じゃお役に立てないかもしれないですけど、それでも、もしよければ……」

ニコッ

水希 「話だけでも聞かせてもらえませんか?」

陽真 「水希ちゃん……」

陽真 「……ごめん。ありがとう。すごく嬉しいよ」

陽真 「じゃあ、お言葉に甘えて、聞いてもらおうかな」

水希 「はい!」

266以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:42:12 ID:x0BKGJhc
………………

陽真 「成ちゃんから聞いてるかもしれないけど、実は、夏に彼女ができたんだ」

水希 「そうだったんですね。おめでとうございます」

水希 「小林さんの彼女さんって、すごく幸せな人ですね」

水希 「小林さんみたいな優しくて格好良い人の彼女になれるなんて、うらやましいです」

陽真 「はは……。そうだったらよかったんだけどね……」

水希 「? 彼女さん、どうかしたんですか?」

陽真 「……うん。実は、今日、彼女の智波ちゃんが俺の友達の家に行くみたいでさ」

水希 「へ……?」 カァアアアア…… 「と、友達って、男の人、ですか?」

陽真 「うん……」

水希 「な、なんですかそれ! 彼女さん、陽真さんという人がいながら、他の男の人に行くなんて……!」

水希 「そんなの、ひどいじゃないですか!」

陽真 「あ、で、でもね、そうとも言い切れなくて……」

水希 「? 何でですか?」

陽真 「いや、その……その友達っていうのがさ、何を隠そう……――」

267以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:43:01 ID:x0BKGJhc
………………

水希 「………………」

テクテクテクテク……

水希 「………………」

クスッ

水希 (まったくもう、小林さんったら……)


―――― 水希 『お兄ちゃん?』

―――― 水希 『やだなぁ、小林さん。お兄ちゃんがそんなことするわけないじゃないですか』

―――― 水希 『小林さんもよく知ってるでしょう? お兄ちゃんがどんな人か』

―――― 水希 『きっと何かの聞き間違いですよ。ね?』

―――― 陽真 『そう……そうだよね』

―――― 陽真 『ごめんね、水希ちゃん。変なこと言って。水希ちゃんの言うとおりだ』


水希 (でも、小林さんも納得してくれたみたいだし、少し元気も出たみたいだったし)

水希 (よかったよかった) ニコニコニコ

268以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:43:47 ID:x0BKGJhc
水希 (……ん、もう家だ。お留守番してたお兄ちゃんたちのために、お菓子でも作ってあげようかな)

ガラッ

水希 「ただいまー。帰ったよー……――」


成幸 「ん、そうそう。上手いぞ、海原。その調子だ」

智波 「……うん。えへへ、我ながら良い出来だよ。この調子で、っと……」


水希 「………………」

ワナワナワナワナ……!!!

水希 (お兄ちゃんが知らない女を連れ込んでるーーーーーー!?)

水希 (えっ、っていうか、あの女の人ってもしかして……)

成幸 「ん、水希、おかえり。葉月と和樹は良い子にしてたぞ」

智波 「あっ、こんにちは! お兄さんの友達の海原智波です。お邪魔してます」


―――― 『……うん。実は、今日、彼女の智波ちゃんが俺の友達の家に行くみたいでさ』


水希 「もしかしなくてもそうだった……」 ガクッ

269以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:44:31 ID:x0BKGJhc
成幸 「? 急にうなだれてどうしたんだ?」

水希 「………………」

成幸 「ひょっとして、海原って七尾南水泳部のOGだし、会ったことあるんじゃないか?」

水希 「………………」

智波 「私はうるかと違って中学にお呼ばれしたりしてないからなぁ……」

水希 「………………」

成幸 「……水希?」

水希 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

海原 「水希ちゃん……?」

水希 「………………」 スッ 「……正座」

成幸 「へ?」

水希 「正座、してください。お兄ちゃんも、海原先輩も」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

270以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:45:14 ID:x0BKGJhc
………………小林家

陽真 「………………」

ドキドキドキドキ……

陽真 (……水希ちゃんにはああ言ったものの、実際電話をかけようと思うと緊張するなぁ)

陽真 (うん。よくよく考えてみれば、智波ちゃんも成ちゃんも、そんなことをするはずないし)

陽真 (よし……電話を、して……)

陽真 「………………」 ガクッ (……うぅ。ダメだ。やっぱり怖くてできない)

陽真 (ふたりのこと信じてるのに……)

陽真 (俺って、こんな弱虫だったんだな……)

――ピンポーン……

陽真 (……? 今日、荷物でも届く予定あったかな。何だろう)

トトトトト……ピッ

陽真 「……へ?」

成幸 『あ、こんにちは。唯我と申しますが……』 智波 『こんにちは。海原と申します……』

陽真 「……成ちゃんと智波ちゃん!?」

271以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:45:49 ID:x0BKGJhc
………………

成幸&智波 「「このたびは本当に申し訳ありませんでした!!」」

バーーーン!!!

陽真 「……いや、家に上がってすぐ土下座されても……」

陽真 「えっと……謝るってことは、もしかして……」

智波 「あ、ち、違うんだよ、陽真くん! わたしと唯我くんは全然そんなじゃないよ!?」

成幸 「そうだぞ小林! そもそも俺みたいなガリ勉男を好きになる女子がいるわけないだろ!」

陽真 「いや、こんなときまでツッコミをさせないでほしいな、成ちゃん……」

智波 「ほんとにね……」

成幸 「へ? へ? へ?」

陽真 「……まぁいいや。えっと、ふたりにいくつか聞きたいことがあるんだけど……」

成幸 「ああ、その気持ちはわかるし、俺たちも色々と説明したいんだが……」

智波 「ごめんね、陽真くん。その前にひとつ、やってしまいたいことがあるんだ」

陽真 「?」

272以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:46:24 ID:x0BKGJhc
成幸 「……よし、じゃあいくぞ、海原」

智波 「うん。せーのっ……」

陽真 「……?」


成幸&智波 「「小林陽真くん! お誕生日おめでとう!!」」 バーーーン!!!


陽真 「………………」

陽真 「……へ!? 誕生日!?」

成幸 「……ん、まぁ、正確に言うともう数日先だが、緊急事態だから仕方ないと思ってな」

陽真 「これって……プレゼント?」

智波 「うん。私からのと、唯我くんからのの二つだよ」

智波 「がんばって用意したんだけど、気に入ってくれたら嬉しいな」

陽真 「あっ……ありがとう」

陽真 「……開けてもいい?」

智波 「……うんっ」

カサカサカサ……

273以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:47:03 ID:x0BKGJhc
陽真 「……エプロン?」

陽真 「これ、ひょっとして智波ちゃんの手作りなの?」

智波 「うん。だから、ちょっと不格好なところもあるんだ。ごめんね」

陽真 「いや、すごくよくできてるよ! すごいよ」

智波 「最近、陽真くんお料理にこってるみたいだったからがんばって手作りしたんだけど、」

智波 「喜んでくれてよかったよ。唯我くんに手伝ってもらって、今日完成させたんだ」

陽真 「成ちゃんに手伝ってもらって……今日……?」

陽真 「あっ……」


―――― 『まぁ、昔から色々やってきたからな。良かったら教えようか?』

―――― 『ほんとに!? うわー、すごく助かるよ!』


陽真 (そっか。あのとき言ってたのはこのことだったんだ……)

274以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:47:44 ID:x0BKGJhc
智波 「……で、話を戻すんだけどね。今日、実は唯我くんの家に行ってたの」

智波 「でも勘違いしないでね! ほんとに、やましいことは一つもないんだよ!」

成幸 「というか葉月も和樹もずっと一緒だったしな。そんなことありえないっていうか……」

智波 「……そもそも、こんなこと言うと唯我くんに悪いかもしれないけど、」

智波 「唯我くんのこと、男の子として見てなかったっていうか……」

成幸 「うんうん。俺も海原のことはただの友達としか思ってなかったから、つい家に誘ってしまってな」

智波 「だから唯我くんのお家にお邪魔することに、少しも疑問を持たなかったんだ……」

智波 「陽真くんに内緒にしてたのは、サプライズのつもりだったからなんだけど……」

智波 「でも、陽真くんからすれば心配だよね。嫌だよね。そういうこと考えられなくて、本当にごめんね」

陽真 「………………」

智波 「……陽真くん?」

陽真 「……よかった」 グスッ 「本当に、何もなくてよかった……」

成幸 「わ、わー! 小林、泣くな! すまん!! 本当に悪かった! 申し訳ない!!」

智波 「わーん! 陽真くん、本当にごめんねー!!!」

275以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:48:37 ID:x0BKGJhc
………………

陽真 「……急にぐずったりしてごめん」 グスッ

智波 「ううん。気にしなくていいんだよ。私たちが悪いんだから」

成幸 「本当に悪かったな。家に帰ってきた水希に散々説教されて、ようやく気づいたんだ」

陽真 「水希ちゃんが……そっか……」

智波 「………………」

ギュッ……

陽真 「ん、智波ちゃん?」

智波 「……心配にさせて、本当にごめんね」

陽真 「あ、いや……」 カァアアアア…… 「もう大丈夫だよ」

陽真 「俺の方こそ、勝手に変な勘ぐりして、疑ってごめんね、智波ちゃん」

智波 「ううん。謝らないで、陽真くん」

陽真 「智波ちゃん……」

成幸 (ん……?)

276以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:49:20 ID:x0BKGJhc
成幸 「あー……じゃあ、俺はそろそろおいとまするな」

成幸 「……えっと、その、ちなみに、俺のプレゼントの中身はミトンだから」

成幸 「俺も、最近料理に凝ってるお前のために作ったんだけど、海原とかぶらなくてよかったよ」

成幸 「ちなみに、ちゃんとワタたくさんつめて作ったから、使いやすいと思う……って」

陽真 「智波ちゃん……」 智波 「陽真くん……」

成幸 「……もう聞いちゃいないか。じゃ、またな」

ガチャッ……パタン……

成幸 「………………」

ドキドキドキドキ……

成幸 (な、なんだろう、今の雰囲気……///)

成幸 (ものっそいドキドキするぅ……)

277以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:49:55 ID:x0BKGJhc
………………

智波 「………………」

ギュッ

智波 「……ねえ、陽真くん。今日もご両親は遅いのかな」

陽真 「……うん」

智波 「……あのね、もう少し一緒にいても、いい?」

陽真 「……もちろん」

ギュッ

智波 「ねぇ、陽真くん」

智波 「大好きだよ」

陽真 「……うん。俺も、大好きだよ。智波ちゃん」

…………………………

……………………

………………

278以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:50:57 ID:x0BKGJhc
………………翌週

成幸 「うぃーす、小林」

陽真 「おはよ、成ちゃん」

陽真 「もらったミトン、早速使ってみたよ。すごく使いやすかったよ」

陽真 「ありがとね。それから、ヘンなことで疑ってごめんね」

成幸 「いやいや、常識的に考えればおかしいのは俺だから、謝るなって」

成幸 「俺の方こそごめんな。そういうの疎くてさ。水希に叱られて初めて気づいたよ」

陽真 「いや、もう大丈夫だよ。気にしないで」

陽真 「おかげで、智波ちゃんともっと仲良くなれたしね」

成幸 「……?」

成幸 (小林って元々落ち着いてて大人っぽかったけど……)

成幸 (なんか、今まで以上に、余裕があるというか……? 大人っぽいというか……)

成幸 「………………」

成幸 (……いやいや、そんな、まさか、なぁ?)

おわり

279以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:51:35 ID:x0BKGJhc
………………幕間1 「唯我家での一幕」

智波 「でも、私がエプロン、唯我くんがミトンを手作りって、すごい偶然だね」

成幸 「まぁなぁ。お互いかぶらなくてよかったよ」

チクチクチクチク……

葉月 「姉ちゃんは嫁候補じゃない?」

智波 「ごめんねぇ。私は陽真くんの彼女さんだからねぇ」

和樹 「そうかー。残念……」

智波 「でも大丈夫だよちびっ子たち。お兄さんはモテモテだからねぇ」

成幸 「ははは、本気にするなよー、葉月、和樹」

成幸 「兄ちゃんはモテたりしないからなー」

智波 「これがなければねぇ……」

葉月&和樹 「「ほんとにねぇ……」」 ウンウン

成幸 「な、何で初対面なのにそんなにシンパシー感じてるんだお前ら……」

おわり

280以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:52:06 ID:x0BKGJhc
………………幕間2  「虫さされです」

智波 「おはよー、うるか、あゆ子」

あゆ子 「おう、おはよ、智波……って……」

うるか 「おはよー、海っち……あっ……」

智波 「? どうしたの、ふたりとも。顔真っ赤にして……」

あゆ子 「えっと、とりあえず、これ……///」

智波 「へ? バンソーコー?」

うるか 「……うん。首、貼っといた方がいいかも……///」

智波 「へっ? あっ……///」

おわり

281以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:53:46 ID:x0BKGJhc
>>1です。
小林くんは間違いなくこんなに面倒くさい男ではないです。
申し訳ないことです。

次投下します。


【ぼく勉】 紗和子 「今週末は発表会の予定なのよ」

282以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:54:21 ID:x0BKGJhc
うるか 「発表会? なにそれ?」

理珠 「あっ、ひょっとして例の、化学部で参加するという発表会ですか?」

紗和子 「さすがは我が親友、緒方理珠ね! その通りよ!」


―――― 『15時間効果を維持する超強力接着剤よ!』

―――― 『え…… だって 今度化学部が発明品を発表会に出展するじゃない?』

―――― 『当然OGとして試作品のひとつでも作りたいじゃない?』


成幸 「ああ、あのときの……」


―――― 『何故全部脱いでいるのですか関城さん!?』

―――― 『え? 脱がなきゃ服が濡れちゃうじゃない こっち見ないでよ唯我成幸』

―――― 『お…… 緒方……!? ちょ……ッ』

―――― ((寝れる…… わけあるかこんなん!!!))


成幸 (あのときのか……///)

文乃 (……その反応、また何かあったんだね、成幸くん) キリキリキリ……

283以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:55:00 ID:x0BKGJhc
成幸 「じゃあ、例の15時間キープする接着剤について発表するんだな」

紗和子 「ええ。『1DAYトレンD』 ね」

成幸 「……で、それをなぜ図書室にまで来て俺たちに言うんだ?」

紗和子 「えっ? だって、部員たちもみんな自分の発明品を発表するじゃない?」

成幸 「フム……」

紗和子 「発表会に、ひとりは知ってる人に来てもらいたいじゃない?」

理珠 「フムフム……」

紗和子 「で、化学部以外でこんなことに呼べる友達、あなたたちしかいないじゃない……?」

文乃 「お、おー!! わざわざ誘いに来てくれたんだね紗和子ちゃん! 嬉しいなぁ! 光栄だよ!」

うるか 「あーもうこりゃ行くっきゃないね! さわちんの晴れブタイを見に!」

紗和子 「……ほ、本当!?」 パァアアアアアア……!!!

文乃 「えっと、今週末は……」  うるか 「えーっと……」

文乃 「あっ……。ごめん、紗和子ちゃん。その日はちょっと鹿島さんたちと用事が……」

うるか 「……ごめん、さわちん。あたしも海っちたちと約束がある……」

紗和子 「そう……そうよね……。みんな、私と違って、他にもお友達がいるものね……」 ズズズズズーン

284以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:55:32 ID:x0BKGJhc
成幸 「あ、だ、大丈夫だぞ関城! 俺はその日空いてるぞ! せひ見に行かせてくれ!」

成幸 (本当は勉強したかったけど!!)

理珠 「わ、私も空いていますよ、関城さん! ぜひ見に行かせてください!」

理珠 (本当は成幸さんと勉強会の予定でしたけど!!)

紗和子 「あなたたち……」 キラキラキラ……!!!!

紗和子 「これ、パンフレットよ! 私の勇姿、とくとその目に焼き付けるといいわ!」

成幸 「お、おう、ありがとな」

成幸 (……まぁ、関城には世話になってるし、これくらいはな)

理珠 「……あ、あの、関城さん」

紗和子 「? 何かしら、緒方理珠」

理珠 「楽しみです。がんばってくださいね!」

紗和子 「あ……」 カァアアアア…… 「え、ええ! ありがとう、がんばるわ!」

成幸 (……緒方もまんざらでもなさそうだしな) クスッ

285以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:56:08 ID:x0BKGJhc
………………週末

成幸 「………………」

成幸 (んー、緒方のやつ遅いな。そろそろ待ち合わせの時間だけど……)

ピロン……

成幸 (ん? 緒方からメッセージ……?)

 『すみません、成幸さん。お店に急に大口の出前が入って、手伝いをしなければならなくなりました』

 『関城さんの発表時間には絶対に間に合うように行くので、先に会場に入っていてください』

成幸 「あー……」 (お店が急に忙しくなったんじゃ仕方ないよな……)

成幸 (関城の発表には間に合うみたいだし、緒方の言うとおり、俺は先に入ってるとするか)

286以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:56:40 ID:x0BKGJhc
………………会場内

ガヤガヤガヤガヤ……

成幸 (へー、色んな学校が発表に来てるんだな)

成幸 (小さなホールと廊下に展示物がいっぱいだ)

成幸 (各学校のブースで、今日の発表物の展示をしてるんだな)

成幸 (で、発表会は、大きなホールでやるんだな。ふむふむ……)

成幸 (高校生の展示なのに、結構面白そうな発明品が並んでるな。あとでゆっくり見てみようかな)

成幸 (とりあえず、一ノ瀬の化学部のブースは、と……)

紗和子 「……」 イソイソイソイソ……

成幸 (……探すまでもなかったな。制服の上に白衣を着てるようなやつ、ひとりしかいないもんな)

成幸 「よ、関城。精が出るな」

紗和子 「あら、唯我成幸。早いわね。発表会はまだよ?」

成幸 「ああ、緒方とふたりでちょっと早めに待ち合わせしてたからさ」

成幸 「あ、そうだ。緒方が店の手伝いで少し遅れるってさ」

成幸 「発表会には間に合うみたいだから、心配しなくていいってさ」

287以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:57:32 ID:x0BKGJhc
紗和子 「そう。それは良かったわ」

紗和子 「……っと、ごめんなさい。実はブースの設営を急いでやらなくてはいけなくて」

成幸 「ああ、悪い。邪魔しちゃったみたいだな」

成幸 「……ん? っていうか、他の化学部の部員はどこに行ったんだ?」

紗和子 「ああ、それなら……」 スッ 「ほら、向こうで来てくれた保護者の相手をしてるわ」

ワイワイワイワイ……

成幸 「ああ、あれか……」 ハッ 「いやいや、だからOGのお前ひとりで大忙しなんだろ。何でこんな……」

紗和子 「だって仕方ないじゃない。あの子たちには、晴れ舞台を見にきてくれる家族がいるんだから」

紗和子 「その相手をさせてあげられないようじゃ、化学部元部長、関城紗和子の名が廃るというものよ」

成幸 「お前が保護者のところに行けって言ったのか。でも、お前だって……」

紗和子 「私の親、今日も仕事だから。元々、来てくれるはずもないからパンフも渡してないけどね」

成幸 「あっ……」 シュン 「すまん……」

紗和子 「……気にしなくていいわよ。湿っぽい話して、こちらこそごめんなさいだわ」

紗和子 「一般開場の時間までにブースを仕上げないといけないの。悪いけど、別の学校でも見ていてちょうだい」

ガチャガチャ……トン……ポン……

288以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:58:04 ID:x0BKGJhc
成幸 「………………」


―――― 『うちの親は放任主義だし 共働きであまりいないから 一晩ぐらい問題ないわよ』


成幸 (そういえばそうだ。前、そんなことを言ってたな……)


―――― 『だって仕方ないじゃない。あの子たちには、晴れ舞台を見にきてくれる家族がいるんだから』


成幸 (あのときと同じ、寂しそうな声だった。やせ我慢してるような、声……)

成幸 (引退したくせに、部員がやるべき仕事を買って出て、ひとりで無理して……)

成幸 (まったく……)

紗和子 「……ん、これ、どう設置しようかしら。こうした方が見栄えがいいかしら」

成幸 「………………」

スッ

成幸 「こっちのほうがいいんじゃないか。この小さいのは全部、台の上に乗せようぜ」

紗和子 「へ? 唯我成幸……?」

成幸 「手伝うよ。俺は部外者だから、お前が気にする必要もないだろ」

289以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:58:40 ID:x0BKGJhc
成幸 「それに、他校のブースも、完成してから見たいしな。それまで、暇つぶしさせてくれよ」

紗和子 「唯我成幸……」

紗和子 「し、仕方ないわね! 手伝わせてあげるわ!」 プイッ

成幸 「はいはい。感謝するよ、関城」

成幸 「これ、台の上に置いちゃっていいか?」

紗和子 「え、ええ。お願いするわ」

紗和子 「………………」

紗和子 「……唯我成幸」

成幸 「ん? なんだ?」

紗和子 「……あっ、ありがとう」

成幸 「………………」

クスッ

成幸 「……おう。どういたしまして」

290以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 22:59:11 ID:x0BKGJhc
………………一般開場

ザワザワザワザワ…………

成幸 (ふー、なんとか開場に間に合ったな。よかったよかった)

紗和子 「……唯我成幸、はい」

成幸 「ん? 缶コーヒー?」

紗和子 「手伝ってくれたお礼よ。受け取りなさい」

成幸 「……ん、ありがとう。じゃあ、いただくな」

プシュッ……

紗和子 「……ふぅ。一仕事終えた後の缶コーヒーはたまらないわね」

成幸 「おっさんみたいなこと言うなよ」

成幸 「……俺と一緒にいていいのか? ブースの店番とかはないのか?」

紗和子 「さすがにその辺の本業は現役部員にやらせるわよ。じゃないと育たないしね」

紗和子 「私は、発表会以外は裏方に徹することに決めてるの」

成幸 「……ふーん。そっか」

成幸 (……なんだかんだ、しっかり部活や部員のこと考えてるんだよなぁ、こいつ)

291以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 23:00:18 ID:x0BKGJhc
成幸 「………………」

成幸 「……なぁ、関城」

紗和子 「何かしら?」

成幸 「……ご両親のことだけどさ」

成幸 「今からでも、メッセージとか、送れないかな」

成幸 「ひょっとしたら、来られるかも、とか……」

紗和子 「………………」

紗和子 「ありえないわ、そんなの。仕事だもの。来られるはずがないわ」

紗和子 「……何を勘違いしているのか知らないけど、唯我成幸」

紗和子 「私ももう高三よ? 親が来てくれないから寂しい、なんて思ってるはずないじゃない」

成幸 「ん……そっか。ならいいんだけどさ」

  「あ、お父さんお母さん! 来てくれたの!?」

  「当然だろ〜! 発表会、全部ビデオ撮っておくからな!」

紗和子 「………………」 フッ 「……でも、いいものよね、ああいうの」

紗和子 「ああいう親子の幸せそうな笑顔って、私から見ても、素敵に見えるもの」

292以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 23:01:07 ID:x0BKGJhc
成幸 「関城……」

紗和子 「ふふ、ごめんなさい。なんかガラにもないこと言っちゃったわね」

紗和子 「……じゃあ、そろそろ発表会の準備があるから、私はもう行くわね」

成幸 「ああ、発表、がんばってな。緒方とふたりで見てるからな」

紗和子 「ええ。ありがとう」

トトトトト……

成幸 「………………」


―――― 『私ももう高三よ? 親が来てくれないから寂しい、なんて思ってるはずないじゃない』

―――― 『ああいう親子の幸せそうな笑顔って、私から見ても、素敵に見えるもの』


成幸 「関城……」

成幸 (寂しくないって言うなら、もっとどうでもよさそうな顔しろっての)


―――― 『当然だろ〜! 発表会、全部ビデオ撮っておくからな!』


成幸 「……ビデオ、か」

293以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 23:02:01 ID:x0BKGJhc
………………発表会場

理珠 「……はっ、はっ……」

トトトトト……

理珠 「まっ、間に合いました……」

成幸 「ん、緒方。ぎりぎりだな。間に合ってよかったよかった」

理珠 「すみません。配達に手間取ってしまって……」

成幸 「そろそろ関城の番だぞ。ほら、隣座れよ」

理珠 「はい。ありがとうございます」

理珠 「……あの、ところで成幸さん?」

成幸 「ん?」



理珠 「携帯電話を構えて、一体何をしているのですか?」

294以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 23:02:16 ID:GbDmtDdc
来てるやん!!?!?

295以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 23:02:39 ID:x0BKGJhc
………………

 『無事間に合いました! 客席に座っています。がんばってくださいね!』

紗和子 「……ふふ」 (緒方理珠、急いできてくれたみたいね)

紗和子 (大親友が応援してくれている。私は、それだけで十分だわ)


―――― 『私ももう高三よ? 親が来てくれないから寂しい、なんて思ってるはずないじゃない』


紗和子 (……そう。だから、何の問題もない。緒方理珠と唯我成幸が見にきてくれているだけで、)

紗和子 (私は大満足だわ。他に何を望む必要もない)

  『続きまして、一ノ瀬学園化学部、関城紗和子さんの発表です!』

紗和子 (……私は、私のためにきてくれたふたりのために、がんばるだけよ)

紗和子 (ふたりに恥じないような、最高の発表を見せてあげなくてはね!)

296以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 23:03:13 ID:x0BKGJhc
………………発表後

紗和子 (……はぁ。さすがにちょっと緊張したわね。でも、手応えもあったし、これは賞も狙えるんじゃないかしら)

紗和子 (ふふ、楽しみだわ)

紗和子 (さて、私も観客席で後輩たちの発表でも見てあげようかしら)

紗和子 「ん……」

理珠 「あ、関城さん」 コソッ 「発表、お疲れさまでした。堂々としていて、いい発表でしたよ」

紗和子 「あっ……」 カァアアアア…… 「あ、ありがとう。緒方理珠」 コソッ

紗和子 (と、友達に……大親友に褒められるって、こんな気持ちなのね……///)

紗和子 「……あら?」

紗和子 「ねえ、唯我成幸は? 一緒じゃないの?」

理珠 「ああ、成幸さんなら、関城さんの発表が終わった瞬間、会場を飛び出していきましたよ」

紗和子 「へ……?」


―――― 『悪い、緒方。やることができたから、関城によろしく伝えてくれ!』


理珠 「……とのことです」

297以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 23:04:14 ID:x0BKGJhc
紗和子 「そう……」

紗和子 (ひょっとして、唯我成幸、今日は私のために無理してきてくれていたんじゃ……)

紗和子 「唯我成幸、本当は今日、用事でもあったのかしら」

紗和子 「私が無理を言ってしまって、迷惑をかけたんじゃ……」

理珠 「あ、そうではないと思います。そもそも、今日は私と勉強する予定でしたから」

理珠 「それに、やることができた、と言っていました。元々用事があったのならそんな言い方はしないと思います」

理珠 「……だから、そんな言い方しないでください。そんな顔、しないでください」

ニコッ

理珠 「成幸さんも私も、関城さんの発表を見たいから、ここに来たんですから」

理珠 「なんといっても、私も成幸さんも、関城さんの友達、ですからね」 エッヘン

紗和子 「緒方理珠……」 クスッ 「……ごめんなさい。ありがとう」

紗和子 (……少し前まで、こんなことを言えるような子ではなかったのに)

紗和子 (唯我成幸のおかげで、こんなに変わることができたのね。この子は)

298以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 23:04:58 ID:x0BKGJhc
紗和子 (……そして、きっと私も)


―――― 『手伝うよ。俺は部外者だから、お前が気にする必要もないだろ』

―――― 『それに、他校のブースも、完成してから見たいしな。それまで、暇つぶしさせてくれよ』


紗和子 (私も、唯我成幸のおかげで、きっと……)


―――― 『お前…… 楽しみにしてたんじゃないの? 今日 緒方と出かけるの……』

―――― 『あーあー 楽しみにしてたわよ 何!? 悪い!?』


紗和子 「………………」


―――― 『あーもー とにかく急いで誤魔化すぞ!! そっち持ってくれ関城!』

―――― 『あああ 愛してるわ唯我成幸ーー!!』


紗和子 (……よくよく思い返してみれば、いつも助けられてばかりね、私)

紗和子 (今度、お礼でもしないといけないわね……)

299以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 23:05:36 ID:x0BKGJhc
理珠 「……? 関城さん」

紗和子 「へっ? な、何かしら、緒方理珠」

理珠 「いえ、大したことではないのですが……」

理珠 「顔が少し赤いですが、大丈夫ですか? 体調でも悪いのでは……?」

紗和子 「!?」 (顔、赤……!? そ、そんなこと……)

ピトッ

紗和子 (……熱いわ。ほっぺ)


―――― 『……なんか最近 少し頼もしくなったわね』

―――― ((ちょっとカッコイイじゃない))


紗和子 「……なんでもないわ。大丈夫よ」

理珠 「? そうですか」

紗和子 (……そう。大丈夫。だって私は……)

紗和子 (私は、この子の大親友だから……)

紗和子 (だから……――――)

300以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 23:06:06 ID:x0BKGJhc
………………

成幸 「……ああ、小林。急に悪い」

成幸 「今家か? ……ん、そりゃ良かった。今から家に行ってもいいか?」

成幸 「お前、パソコン持ってたよな。ちょっと頼みたいことがあるんだ」

成幸 「……うん。わかった。詳しいことは家に行ったら話すよ。いつも悪いな」

成幸 「ああ、ありがとう。じゃあ、また」

ピッ……

成幸 「………………」


―――― 『そういうの自慢できる友達…… あなたたちしかいないじゃない……?』

―――― 『発表会に、ひとりは知ってる人に来てもらいたいじゃない?』

―――― 『ああいう親子の幸せそうな笑顔って、私から見ても、素敵に見えるもの』


成幸 (……こんなの、ただのお節介だろう。ありがた迷惑だろう)

成幸 (でも……)

成幸 (あんな寂しそうな顔してるやつ、放っておくこと、できないよな)

301以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 23:07:05 ID:x0BKGJhc
………………夜 関城家

紗和子 「……ただいまー」

紗和子 (緒方理珠と勉強していたら、もうこんな時間だわ)

紗和子 (ギリギリ補導されるような時間ではないけれど、至福の時間というのは早く流れるものね)

紗和子 (でも、今日は本当は唯我成幸と勉強する予定だったらしいし、悪いことしてしまったわね)

紗和子 (……少なくとも、勉強面では役に立てたならいいのだけど)

紗和子 「ん……?」

「おかえりなさい、紗和子」

紗和子 「……お、お母さん!? お父さんも……」

紗和子 (ふたりそろって出迎えてくれるなんてめずらしい。何かあったのかしら……)

「今日は発表を見に行ってあげられなくてごめんね」

「その代わりといってはなんだが、これ、一緒に見ないか?」

紗和子 (……? どうしてお母さんとお父さんが発表会のことを知っているのかしら)

紗和子 (それに、それって……)

紗和子 「DVD……?」

302以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 23:07:56 ID:x0BKGJhc
………………翌週 登校時

成幸 「………………」

ヨミヨミヨミ……

紗和子 「……唯我成幸」

成幸 「……へ? あ、関城」

紗和子 「おはよ。いくら受験が近いと言ったって、歩きながらの参考書は感心しないわよ」

成幸 「ああ、悪い。つい、な……」

紗和子 「まったく。本当にガリ勉ね」

成幸 「そんなところでどうしたんだ? 誰か待ってるのか?」

紗和子 「ええ。待っていたの。あなたをね」

成幸 「……俺を?」

紗和子 「……週末はどうもありがとう。設営の手伝いや、発表を見てくれたりして」

成幸 「あ、ああ。なんだ、そんなことか。何かやらかしたかと思ったよ」

成幸 「どういたしまして。気にしなくていいよ。片付け手伝えなくてごめんな」

紗和子 「それこそ謝られるようなことではないけどね」

303以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 23:08:40 ID:x0BKGJhc
紗和子 「……それから、」

成幸 「ん?」

紗和子 「これ。あなたね? うちの両親に渡したの」

成幸 「……なんだ、それ? CDか?」

紗和子 「私の発表が録られたDVDよ。分かってるくせに、とぼけちゃって」


―――― 『紗和子の友達だって言う男の子が届けてくれたのよ』


成幸 「へ、へぇ。親切なやつがいたもんだな」

紗和子 「言っておくけど、私の男友達なんて、あなた以外いないわよ?」

成幸 「………………」

紗和子 「……ん?」

成幸 「……はぁ。悪かったよ、余計なマネして。良かれと思ってさ」

紗和子 「謝れなんて言ってないわよ。悪いとも言ってない。ただ……」

成幸 「ん?」

紗和子 「……どうしてそんなことをしてくれたのか、教えてほしいだけよ」

304以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 23:09:27 ID:x0BKGJhc
成幸 「どうしてって……。言わせるのか、それを」

紗和子 「何よ。気になるから聞いてるんだから、教えなさいよ」

成幸 「っ……まぁ、いいけどさ……」

成幸 「………………」

成幸 「……――に、見えたから……」

紗和子 「……? よく聞こえないのだけど……」

成幸 「いや、だから……」 カァアアアア…… 「……お前が、寂しそうに見えたから」


―――― 『私の親、今日も仕事だから。元々、来てくれるはずもないからパンフも渡してないけどね』


紗和子 「へ……?」

成幸 「……お前がどう思ってるかなんて分からなかったから、余計なお世話だったかもしれないけど」

成幸 「お前ががんばってきたものを、お前のお父さんとお母さんにも見せてあげたいと思ったんだよ」

成幸 「化学部で三年間がんばってきたこと、ご両親が全然知らないなんて、寂しいだろ」

紗和子 「唯我成幸、あなた……」 カァアアアア…… 「は、恥ずかしい人ね。そんなこと考えてたの……」

305以下、名無しが深夜にお送りします:2019/09/04(水) 23:10:22 ID:x0BKGJhc
成幸 「悪かったな。仕方ないだろ。そうしたいと思ったんだから」

紗和子 「……まったく。あの後、家に帰ってから大変だったんだから」

成幸 「? 何かあったのか?」

紗和子 「自分が発表している姿を延々とリピートされる様を想像してみなさいよ」

紗和子 「しかも両親と一緒に、よ。気恥ずかしくて仕方なかったわ」

成幸 「……ああ、それは確かに恥ずかしそうだな」

紗和子 「それに、あなた余計なこと言ったでしょ」

成幸 「へ?」

紗和子 「『今まで寂しい思いをさせてごめんね』 って謝られたわ」

紗和子 「受験が終わったらどこかに行こうとか、欲しいものはないかとか……」

成幸 「あ、いや、俺は……すまん。お前に迷惑をかけるつもりは、本当になかったんだ……」

成幸 「家庭に口を出すつもりもなかったんだが……つい、口から……」

紗和子 「………………」 クスッ 「……冗談。迷惑とか余計とか、全然思ってないわ」

ニコッ

紗和子 「唯我成幸。私、あの日の夜、本当に嬉しかったのよ。あなたのおかげよ。だから、本当にありがとう」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板