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女「気になる貴方」
1
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/04/18(木) 22:24:52 ID:fvi4nIJE
女「はぁ、はぁ……」
女「もう、無理」
女「お母さんゴメンね……私、薬を、見つけられ──」
??「大丈──か!?」
女「天国からのお迎え……?」
??「──!」
女(持ち上げられてる……ゴツゴツしてて痛い)
女(あっ、そっちはダメ……薬草が、とれな、い)
65
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/04/25(木) 01:35:20 ID:xSie5le2
男「最後は母ですね」
男「母は……心が綺麗な人、と表現するのが一番ですかね。器が大きく、誰にでも公平で、善いことも悪いことも、全部優しく受け止めてくれました」
男「けど頑固なところもあって、自分の体調が悪くても何も言わず、指摘されても気丈に振る舞い、何がなんでも弱っているところを見せようとはしなかった」
男「家族の為に、自分を犠牲にしながら家庭を守っていたんだなと思います」
女「強く素敵な方ですね……聞いているだけで幸せな家庭だと伝わってきます」
男「自慢の家族ですし、すごく幸せでした……っと、この先が目的の場所、洞窟の最深部ですね」
66
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/04/25(木) 01:36:04 ID:xSie5le2
女「今日は初めてだらけです……」
男「どうですか?」
女「すごく綺麗……夢みたい」
男「あはは、現実ですよ」
女「洞窟の中に湖があるなんて……しかも普通の湖じゃない、まるで魔法が掛けられているみたい。でも、あの光はどこから……」
男「分かりません。見る限り天井に穴とかはありませんし、何がこの湖を照らしているのか、全く分からないんです」
女「神秘的ですね……」
67
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/04/25(木) 19:56:33 ID:xSie5le2
男「よいしょっと……目的はここの水だったんです。この蓋を持っていてもらえますか」
女「何か特別な事でもあるんですか?」
男「はい、ここの水は凄いんですよ」
男「傷を治すことが出来る水、と言いますか、切り傷などをこの水に浸けていると傷口が塞がっていくんです」
女「……流石に嘘ですよね?」
男「実際にやってみましょうか? まずは右手をナイフで……」
女「だ、駄目です! 何やろうとしてるんですか!?」
男「さっき言った通り水に浸ければ傷口は塞がりますし」
女「で、でも……自分の手を切ろうとするなんて」
男「見るのが一番だと思うのでっ」
女「ひっ……」
68
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/04/25(木) 19:57:15 ID:xSie5le2
男「さっき汲んだ水をこの窪みに入れてください」
女「……」
男「そのくらいで大丈夫です。ランタンを窪みの横に置いてもらえますか?」
女「こんな感じですか?」
男「いい感じです。じゃあ手を入れますね、よく見ててください」
女「……!」
男「分かりますか?」
女「す、凄い! 傷がゆっくりと塞がって、本当に魔法が……」
男「本当に魔法なんてものがあるのなら、そうかもしれませんね」
69
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/04/25(木) 19:58:03 ID:xSie5le2
女「結構な量の水を汲みましたね……何に使うんですか?」
男「薬です」
女「樹木化の薬ですか?」
男「えぇ、今使っている薬にも少量ですが入っています」
女「この水のお陰で薬が……」
男「正しい分量を見つけることが出来れば樹木化も治すことが出来るとのですが……色々あって研究が進まず、今に至ります」
女「色々……?」
男「はい、色々です。そろそろ戻りましょうか、女さんがまた家に帰れなくなる」
女「なっ、あのときは陽射しが気持ちよくて寝ちゃっただけで、起こさなかった男さんも悪いわけで!」
男「あはは、転ばないようにして下さいね」
70
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/04/25(木) 21:52:07 ID:xSie5le2
「女ちゃーん! 買い物してってよー!」
女「また今度行きますねー!」
「必ず来ておくれよー」
「おっ、いらっしゃい女ちゃん。サービスするよ」
女「いつもありがとうございます!」
「いいのいいの、こっちも女母さんのお店にお世話になってるからね」
「女ちゃーん、新しい服作ったから着てみてー!」
女「わ、私が着るって必要ありますか?」
「女ちゃんはスタイルがいいから私が幸せになれるのよー。ほら、脱いで脱いで!」
女「ちょ、ちょっと!」
71
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/04/25(木) 21:53:17 ID:xSie5le2
「お、女ちゃん、今夜俺と一緒に星でも見に行きませんか!」
女「ごめんなさい、夜はお店のお手伝いをしなきゃいけないの」
「で、でしたら、お店が終わった後にでも……」
女「え、えっと……」
狩人「よぉ、女」
「か、狩人さん」
女「こんばんは、狩人さん。またこの町に来たんですね」
狩人「どうしても落とせない女が居て困ってんだ」
女「それは大変ですね」
72
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/04/25(木) 21:53:53 ID:xSie5le2
狩人「ところでコイツは何をしてたんだ? 俺の女に声を掛けるとはいい度胸してるな」
「ひっ……」
女「……俺の女とか言うのやめてくれます?」
狩人「別にいいじゃねぇかよ」
女「よくないです」
「お、女ちゃん……」
女「あっ、一緒に星は見れないけどまたお店に来てね」
「う、うん! 必ず行くよ!」
狩人「チッ」
女「では狩人さん、さようなら」
狩人「おいおい、俺には何も言わねぇのかよ……ったく」
73
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/04/25(木) 21:55:05 ID:xSie5le2
狩人「クソっ、昨日の夜に飲み過ぎせいか頭が……ん? あれは、女か?」
女「……」
狩人「朝っぱらから随分と重そうな荷物を抱えて女のやつは何処に行く気なんだ」
女「よいしょっと……よしっ!」
狩人「……」
─────
───
─
狩人「見失っちまったか……この先は森だがそこに一人で入るほど女も馬鹿じゃないだろう」
狩人「……頭いてぇ」
74
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/04/25(木) 21:56:46 ID:xSie5le2
男「お腹が空きましたね」
女「……」
男「大きな音が鳴りましたね」
女「……///」
男「私にも聞こえるくらい大きな音で少し長めに鳴り響いて──」
女「お、男さん!」
男「あはは、つい」
女「もうっ……今日は私がお昼を作りますからお皿出しておいて下さい!」
男「本当に大きな音で──」
女「恥ずかしいからもう止めて……///」
75
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/04/29(月) 09:21:46 ID:NDAQHiXY
まだかな?
76
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/02(木) 23:26:47 ID:SkmkPYl6
女「あれ? 男さん、左腕が少し欠けてませんか?」
男「あぁ、昨日森で狼に襲われまして」
女「えっ!?」
男「幸い噛み付いたのが左腕だったので追い払うことが出来ました。けど、欠けたとはいえぱっと見た感じあまり変わっていない気もするのですが……よく気が付きましたね」
女「男さんのことはよく見てますから……じゃなくて! なんで何も言ってくれないんですか!」
男「え、何をですか?」
女「何をって……昨日狼に襲われたのに平然と何事も無かったかのように私とお話してて」
男「えっと、心配を掛けたく無かったので……あと私は元気ですし、言わなくても大丈夫かなと」
77
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/02(木) 23:27:26 ID:SkmkPYl6
女「……」
男「女さん……?」
女「男さん、私は怒っています」
男「えっ」
女「私がなんで怒っているか……分かりますか?」
男「……」
女「男さん、私はそんなに頼りないですか?」
男「そ、そんな事ないですよ! 研究でもすごく助かってますし、ご飯も美味しいですし」
女「じゃあ何で狼に襲われた事を私に言ってくれなかったんですか?」
男「それは、心配を掛けないように……」
78
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/02(木) 23:28:23 ID:SkmkPYl6
女「狼に襲われたら誰だって心配します! なのに、何も言われなかったら心配することさえ出来ません……」
男「……!」
女「私だって……あれっ、なんでこんな……涙が、ごめんなさい、男さんは私の事を思って言わなかったのは分かるんです……でも、でも」
女「心配で、でも、気に掛ける事も出来ないのは、悲しくて……きゃっ、あ、あの……えっと」
男「ごめんなさい」
79
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/02(木) 23:30:20 ID:SkmkPYl6
男「私が1人で生きることに慣れすぎて、誰かに心配されるという感覚をいつの間にか忘れていました」
男「これからは、何かあれば女さんに伝えます。どんなに些細な事でも、女さんに全部伝えます」
女「男さん……」
男「女さんに気付かされました。女さんはこんな姿の私の事を気に掛けてくれる優しい人です」
女「優しくなんて……今だって我が儘で、面倒くさくて、迷惑を掛けて……」
男「女さん、少し外に行きませんか?」
女「外ですか……?」
男「そんなに遠くはないのでこのままで大丈夫だと思います」
女「分かりました。じゃあ行きましょう」
男「今から行く場所はちょっとした思い出の場所なんです」
女「思い出の場所?」
男「ちょっとした花畑です」
80
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/02(木) 23:30:59 ID:SkmkPYl6
男「ここです」
女「森の中にこんな場所があったなんて」
男「綺麗な場所でしょう?」
女「はい……凄く綺麗な所です」
男「昔よくここで花冠を作ってもらったんですよ」
女「妹さんに、ですか」
男「えぇ、幸せが詰まっている素敵な場所なんです」
女「どうして私をここに?」
男「研究が辛くなったり、投げ出したくなったりしたら、この花畑に来て心を落ち着かせるんです」
女「……」
81
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/02(木) 23:31:33 ID:SkmkPYl6
男「私は、女さんが思っているような強い人間ではなんです。 いつも心が折れそうになっている弱い、とても弱い人間なんです」
女「そんな事……」
男「実際、薬の研究はほぼ諦めていました。手詰まりの状態が長く続いていて、現実から目を逸らそうとここに来る途中で会ったのが女さん、あなたです」
男「女さん森に来るようになってなら毎日がとても楽しいです」
男「研究も女さん、女母さんの為にと思うと寝なくてもいいと思うくらいに……どれも女さんのお陰です」
男「女さん、あなたに会えて本当によかった」
女「男さん……私も、男さんに会えてよかったです」
82
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/02(木) 23:32:54 ID:SkmkPYl6
男「ちょっと恥ずかしいですね」
女「でもなんで急に」
男「お詫びの気持ちもありましたけど……女さんに感謝の気持ちをどうしても伝えたくて」
女「そう、ですか……あっ、顔真っ赤ですね」
男「あまりこういう事は経験なくてですね」
女「可愛いですよ?」
男「それは……褒めてないです」
女「ふふっ、男さんを知れてよかったです」
83
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/03(金) 12:35:37 ID:EU8GfjyQ
いい雰囲気だ
84
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/09(木) 22:29:02 ID:cViebBek
女母「ふぅ」
「女母さん、お疲れ様です」
女母「うん、今日は忙しかったわね」
「そうですねぇ……ん?」
女母「どうかした?」
「女母さん、指先に何か付いてますよ」
女母「指先? なんだろう……!?」
「なんか緑っぽいですねー。あ、 もしかして野菜を触りすぎて指先が変色しちゃったとか?」
女母「あ、あはは、そうかもね」
「女母さんは手も綺麗ですね……なんか付いちゃってるけど」
女母「家に帰ったらよーく洗っておくわ」
「そうしてください! じゃあ後片付け始めますね」
女母「……うん」
85
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/09(木) 22:29:39 ID:cViebBek
女「あれ、お母さんなんで手袋なんかしてるの? 家出る時はしてなかったのに」
女母「え、えぇ、ちょっとお洒落を……ね?」
女「ふーん、似合ってるよ!」
女母「そう? ありがとう」
女「今日の夜は何を食べよっか」
女母「そうねぇ……」
「あ! お二人さーん、安くするよー!」
女母「お肉買って帰ろうか」
「お! 女母さん、女ちゃん、これ安いよー!」
女「ふふっ、野菜もね」
86
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/09(木) 22:30:41 ID:cViebBek
女「こんにちはー」
女「男さんは居ないのかな……? あ、でも荷物は置いてある」
女「男さーん、居ないんですかー?」
女「どこだろう……あれ、こんな色の薬あったっけ?」
女「新しい薬とか、なのかな?」
男「あ、女さん」
女「男さん! どこに居たんで……す、か」
男「すいません、屋根裏に籠っていて気付きませんでした」
87
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/09(木) 22:31:33 ID:cViebBek
女「お、男さんの体が、体から木が無くなって見えるのは……気のせい、ですか?」
男「いえ、気のせいじゃないです。ほっぺ引っ張りましょうか?」
女「お願いします」
男「はい」
女「い、いひゃい……夢じゃない?」
男「えぇ、夢じゃないです」
女「じゃ、じゃあ薬が完成したんですか!?」
男「いえ、まだ未完成です」
88
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/09(木) 22:32:07 ID:cViebBek
女「でも、見た感じ元に戻って」
男「それも見た目だけで……っ」
女「男さん!?」
男「ぐっ……あがっ、くっ、はぁ……はぁ……」
女「木が……!」
男「はぁ、はぁ、このように時間が経つと元に──」
女「わっ!?」
女「きゅ、急に倒れちゃった……お医者さん! は、多分ダメだし……と、取り敢えずベッドに運んで……!」
女「お、重いぃ」
89
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/09(木) 22:33:17 ID:cViebBek
女「息はしてる、 体も欠けたりはしてない……よかった」
女「自分を犠牲にしてまで薬の研究を……」
女「そんなに、してくれるなんて……お母さんの為に男さんは自分の体を犠牲にして」
女「男さん……」
─────
───
─
男「……っ、ん?」
男「寝てたのか……ここは、ベッド?」
女「……」
男「女さんが寝てる……まぁ人は呼べないし、運んでくれたのかな」
90
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/09(木) 22:36:20 ID:cViebBek
男「また、心配させちゃったかな」
女「すぅ……んっ」
男「……っ、右手の指先が更に硬くなってる、木が進行したのか……あの薬を飲んだ影響だろうな」
男「未完成の薬を渡すわけにはいかない。自分の体で効果を確かめるしかないがこれじゃ数十回、いや数回が限界か……」
男「いや、もう立ち止まらないって決めたんだ。父が私にやったように、私も女さん達を助けるんだ」
男「よいしょっと……あっ、女さんが風邪引かないようにしなきゃ……よしっ、少ししたら起こそう」
91
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/10(金) 03:00:24 ID:dUhAqv9M
どんな結末になるのか
92
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/10(金) 22:53:19 ID:KB9b4kCg
「──さん」
女「うーん」
「女さん」
女「んー?」
「……朝ですよ、お店はいいんですか?」
女「おみ…せ?」
「女母さんが待ってますよ、起きてください」
女「お母さん……はっ!」
「おはようございます」
93
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/10(金) 22:53:52 ID:KB9b4kCg
女「お、男さん、おはようございます! い、いま何時頃か分かりますか!?」
男「はい、女さんがここに来てから2時間くらいです」
女「2時間ってそんな……ん?」
男「私が倒れて、女さんが私をベッドに運んで、さっき起きた私が女さんを起こしました」
女「あ、朝っていうのは?」
男「起きるかなーって」
女「もうっ、ビックリしたじゃないですか!」
男「あはは、ごめんなさい」
女「でもよかった……って、よくないです!」
94
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/10(金) 22:54:30 ID:KB9b4kCg
女「体の方は大丈夫なんですか!?」
男「えぇ、お陰さまで」
女「私は何もしてないです! 男さんが普通の体に戻ってて、木が生えて、倒れて、それで……」
男「落ち着いてください、深呼吸です」
女「すぅーはぁー」
男「はい、どうぞ」
女「昼のアレは何が起こったんですか!?」
男「あはは……未完成だった薬に少し手を加えてまして」
女「それって最初会った時に危険と言ってた……」
95
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/10(金) 22:56:32 ID:KB9b4kCg
男「えぇ、女さんが居ない間に危険と言っていた薬を使って色々と実験をしていたんです」
男「2日前ですかね、実験中に躓いて机に手をついたのですが、机が大きく揺れてそのまま体勢を崩し転んでしまったんです」
男「そのとき薬が入った瓶がコロコロと机の上から転がって私の顔に落ちてきまして」
女「意図せず薬を飲んだ結果、体が元に戻っていたという事ですか」
男「その通りです。けど時間が経つと痛みと共に体から木が生えて元の姿に……」
女「どうしたんですか? も、もしかして木の進行が更に進むとかじゃないですよね」
男「……いいえ、私の体は今のところ急な変化はありません」
女「……本当ですか?」
男「はい、まぁ、体が元に戻る瞬間は凄く痛いのであまり使いたくはない……ですかね」
96
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/10(金) 22:58:45 ID:KB9b4kCg
男「でも良い事もありました。薬に手を加えた結果、人の体にも木の体にも比較的安全に戻れた事は凄く大きいと思います」
女「でも、木の姿に戻る時は凄く痛いって……」
男「痛いです、けど生きています」
女「……!」
『完全に治す薬は無いんですか……?』
『それに近いものはあります。しかし、未完成でとても危険です。最悪、命を落とします』
女「誰かが……命を落としていたんですね」
男「はい、なので慎重に扱っていました。けど私の不注意というか、躓いたせいで薬を被ってしまいました」
女「躓く……男さん、もしかして足が」
男「最近、思うように動かない事が増えてきました。元々、太ももまで木に覆われていましたし、頃合いなんでしょう」
女「……」
97
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/10(金) 22:59:39 ID:KB9b4kCg
男「あっ、女さん! そろそろ帰らないと森を夜に歩く事になってしまいますよ!」
女「そう、ですね……帰らないと」
男「あっ、そうだ、帰る前にこれをどうぞ」
女「凄く綺麗……これは?」
男「昨日洞窟に行った時に見つけた青くて綺麗な石です。ブローチっぽくしてみました」
女「私に?」
男「はい、女さんなら似合うと思って」
女「あ、ありがとう……ございます。とっても嬉しいです」
98
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/10(金) 23:00:42 ID:KB9b4kCg
女母「あら、それどうしたの?」
女「男さんから貰ったの」
女母「へぇー、綺麗でいいじゃない」
女「濃い青だけど透き通ってて、本当に綺麗……」
女母「大切にするのよ」
女「うん……無くさないようにしまっておいた方がいいかな?」
女母「そういう物は身に付けてこそよ?」
女「そっか……そうだね。あっ、お母さん、杖とかあったりしない?」
女母「杖? うーん……ちょっと待っててね」
女「?」
99
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/10(金) 23:02:11 ID:KB9b4kCg
女母「これとかどうかしら?」
女「わっ、立派な杖だ! でもなんでこんなに立派な杖が家に?」
女母「お父さんって何でも受けとる人だったでしょう? その内の一つよ」
女「へぇー」
女母「確か、『お前の作る料理で足が良くなったから礼にコレをやる』とかなんとかお客様に言われて貰ったの杖だった気がするわ……ふふっ、よく分からない理由よね」
女「私それ知らない」
女母「んふふ、あなたが生まれる前の事だもの」
女「そっか、でもコレ貰っていいの? お母さんはお父さんの物を大切に残してるし……」
女母「別にいいわよ。残してるんじゃなく捨てられないだけなのよ、埃を被っているよりは男さん使ってもらった方がいいでしょう」
女「そうだね……へっ?」
女母「あれ、男さんにあげるんじゃないの?」
女「そ、そうだけど……どうして分かったの?」
女母「母ですから」
100
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/10(金) 23:11:16 ID:KB9b4kCg
女「あっ、男さーん」
男「女さん、おはようございます」
女「おはようございます。杖、使ってくれているんですね」
男「えぇ、とても助かっています。でも本当に貰ってよかったんですか?」
女「気にしないでください。杖も埃を被っているよりは使ってもらった方がうれしいでしょうし」
男「そうですかね?」
女「きっとそうです」
101
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/11(土) 06:39:11 ID:QHIepPTA
治るといいな
102
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 00:08:39 ID:5toFFkdo
女「ずっと気になっていた事があるんですけど聞いてもいいですか?」
男「なんですか?」
女「屋根裏には何があるんですか?」
男「屋根裏ですか?」
女「たまに屋根裏に籠っていたりするので何かあるのかなーって」
男「あーまぁ、あるにはありまが」
女「……?」
男「じゃあ、見てみますか? 屋根裏」
女「はい!」
103
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 00:09:13 ID:5toFFkdo
男「天井に頭を打たないよう気を付けてくださいね」
女「分かりました……狭いですね」
男「ただの屋根裏収納ですから」
女「この箱には何が入ってるんですか?」
男「私が小さい頃に着ていた服とかですかね?」
女「開けてみてもいいですか?」
男「どうぞ」
女「これは……なるほど、きっと小さい頃の男さんにはこの可愛らしいスカートも似合っていたんでしょうね」
男「……それ、分かってて言ってますよね?」
女「ふふっ、ごめんなさい」
104
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 00:10:00 ID:5toFFkdo
女「これは人形と、小さな家?」
男「父と母が妹の為に作ったやつですね」
女「なんだか、素敵ですね」
男「……女さん、こっちに来てもらえますか」
女「はい」
男「そこで待っててくださいね……よっと」
女「そんなところに扉が……全く分からなかったです」
男「ここは暗いですし少し見えにくい場所に取っ手がありますからね……うっ」
女「うっ、眩しい」
男「こっちです」
105
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 00:11:06 ID:5toFFkdo
女「ここは?」
男「屋根裏部屋です」
女「あの窓は外から家を見たときに見える窓ですね」
男「そうです。 あっ、ここに座って少し待っててください」
女「?」
男「よいしょっと……」
女「大丈夫ですか? そこに並べてある植木鉢を運ぶなら私も……」
男「いえ、大丈夫です……っと」
女「ここで育ててるんですか?」
男「まぁ、そう……ですね」
106
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 00:12:09 ID:5toFFkdo
男「……」
女「どうかしました?」
男「いえ、大丈夫です」
女「?」
男「実は、この三つの木には家族との思い出が詰まってまして」
男「赤い植木鉢の一番育っている木は母との思い出が、隣の白い植木鉢は妹との思い出が、一番大きな植木鉢には父との思い出が……」
女「大きい植木鉢の木は他と比べるとあまり育ってないですね」
男「植えた時期が違いますからね」
女「この木の名前は何て言うんですか?」
男「それが分からないんですよね。森の中で同じ木を探しているのですが見つからなくて」
女「え、じゃあどうやってこの木を植えたんですか?」
男「……落ちていた枝を植えたらこうなりました」
女「それ、本当ですか?」
男「はい」
107
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 00:13:35 ID:5toFFkdo
男「屋根裏はこんな感じですね、どうでした?」
女「面白かったです」
男「よかったです」
女「私も、私の知らない男さんを知れてよかったです」
男「そ、そうですか?」
女「ふふっ、はい」
108
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 01:43:02 ID:NxJfX1Xw
(´・ω・`)
109
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 23:43:06 ID:5toFFkdo
狩人「女、仕事終わったら俺と遊ぼうぜ」
女「結構です、しつこいですよ」
狩人「いいじゃねぇか、楽しいぜ?」
女「狩人さん、あなた町の女性に手を出しまくってると有名ですからね? そんな人と関わりなんて持ちたくないです」
狩人「それは俺がハンサムなのが悪い。実際寝た女共は皆満足してったぞ?」
女「そうですか、私には関係ないです」
狩人「チッ、親子揃ってつれないねぇ」
女「さっさと自分の町に帰ってください」
狩人「……」
110
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 23:43:48 ID:5toFFkdo
狩人「依頼したい事がある」
??「またですか?」
??「狩人さんは本当に金持ちっすねぇ」
狩人「まぁな」
??「……で、依頼とやらは?」
狩人「前と同じように指定した女に絡んでくれるだけでいい」
111
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 23:45:06 ID:5toFFkdo
女「や、やめてください」
チンピラ1「いいじゃんかよー、俺達と一緒に遊ぼうぜ」
チンピラ2「そうそう、きっと楽しいよー?」
女「こ、声を、大声を出しますよ!」
チンピラ1「やってみなぁ?」
チンピラ2「女ちゃんはそろそろ俺達が優しく誘っている事に気付いた方がいいよー?」
チンピラ1「男二人になんて勝てない゛っ!」
チンピラ2「なっ、このクソ女が調子に゛っ」
女「っ!」
チンピラ1「ま、待てこの……ぐっ」
チンピラ2「クソが、クソが」
112
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 23:45:41 ID:5toFFkdo
狩人「あーあ、簡単な事を頼んだ筈なのに……」
チンピラ1「狩人さん、違うんだ! これはあのクソ女が!」
チンピラ2「そうだ! あのクソ女のせいで」
狩人「お前らが女を引き止めて、困っている所を俺が助ける。これだけなのに……難しい事か?」
狩人「股押さえてるだけの無能を雇った俺が馬鹿だった……報酬は無しだ、失せろ」
チンピラ1「チッ、クソが」
113
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 23:46:25 ID:5toFFkdo
女「行ってきまーす」
女母「気を付けてね」
女「うん」
??「……噂の通り、朝早くから何処かに出掛けているな」
??「行くぞ」
??「あぁ」
114
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 23:48:21 ID:5toFFkdo
女「……」
女(後ろに誰か……いや、きっと気のせい)
女(あと少しで男さんの家だし、少し走ろうかな)
女「!」
チンピラ1「よぉ、女ちゃん」
女「どうして、ここに」
チンピラ1「そりゃあ後をつけてきたからな」
チンピラ2「何でか知らないけどこんな森に入っちゃってねぇ……まぁ、誰も来ないだろうし有難いけど」
115
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 23:49:49 ID:5toFFkdo
チンピラ1「昨日は散々だったぜ……なぁ、相棒?」
チンピラ2「あぁ、玉蹴られるし、依頼は果たせず報酬はパーだ。困ったもんよ」
チンピラ1「だからさ、女ちゃん」
チンピラ2「俺達のストレス発散に付き合ってくんない?」
女「な、何を……」
チンピラ1「おっと、昨日のような事は考えるなよ? 今の俺達がキレたら女ちゃんはこのナイフでズタズタにされちゃうよぉ?」
チンピラ2「昨日は優しくしたが、今日はそうじゃない。俺達を怒らせた女ちゃんが悪いんだからな」
女「いやっ、来ないで!」
116
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 23:52:11 ID:5toFFkdo
チンピラ1「どんなに声を出してもここは森の中だ」
チンピラ2「誰も助けには来ない」
女「や、やめて、近寄らないで!」
チンピラ1「騒ぐなって、綺麗な肌が傷つくぜ?」
チンピラ2「楽しくなってきたなぁ、まずはどうするか」
チンピラ1「服が邪魔だしこのナイフでボロボロにして、そのままヤッちまおうぜ」
チンピラ2「いいねぇ」
女「ひっ……」
チンピラ1「こいつの胸柔らけぇ」
チンピラ2「マジ? 俺に揉ませろよ」
チンピラ1「どうせ揉むだろ、早く服を裂け」
女「いやぁ……ぐすっ、いやぁ……っ」
117
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 23:52:46 ID:5toFFkdo
チンピラ2「仕方ねぇな、じゃあ女ちゃんの綺麗な体を見せてもらおうか──がっ、ぐっ……!」
チンピラ1「お、おい、急に倒れてどうし……!?」
「早くここから逃げるんだ!」
118
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 23:53:21 ID:5toFFkdo
男「女さん! 大丈夫ですか!?」
チンピラ1「ば、化け物!」
男「ぐっ……この!」
女「男さん!」
男「女さんは逃げるんだ! 走れ!」
女「……っ!」
チンピラ1「よくも俺の相棒を……許さねぇ!」
119
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 23:55:46 ID:5toFFkdo
女「もう日が落ちて……」
女「……誰かがこっちに来てる」
女「えっと、えっと、薪割り用の斧……一応持っていこう」
女(男さん……!)
「はぁ……はぁ……」
女「だ、誰ですか?」
男「わ、私です。あ、あの、斧は降ろしていただけると嬉しいです」
女「……っ」
男「うわっ、斧持ったまま抱き付くのは危ないですよ」
女「よかった……本当に、よかった」
120
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 23:56:54 ID:5toFFkdo
女「怪我とかはありませんか!?」
男「え、えぇ、大丈夫です。女さんはその……大丈夫でしたか?」
女「私は……平気です。あの人達は……いえ、何でもないです」
男「……もう日が落ちてしまいますし、夜の森は危険なので今日は泊まっていってください」
女「……はい」
男「じゃあ家に入りましょう」
女「あっ、男さんは休んでいて下さい。私が明かりをつけます」
121
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 23:57:36 ID:5toFFkdo
女「男さん、お茶を淹れて……来まし、た」
男「あっ、ちょっ、ま、待って下さい!」
女「その手に持っている物は何ですか? あと、その左腕に刺さっているナイフは……ナイフ? 」
男「えっと、その、刺されたら貫通しちゃいまし、て……あはは」
女「わ、笑い事じゃないです! 何で黙ってたんですか!?」
122
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/17(金) 23:59:02 ID:5toFFkdo
男「刺さったナイフが抜けなくて困っていたのですが、女さんがナイフに気付かなかったので、その……黙ってました」
女「そこにある木槌は何ですか」
男「左腕はあまり痛みを感じないので木槌で叩けばすぐ抜けるかなって」
女「どうしてそんな……」
男「女さんは隣の部屋で待っていてください。大丈夫、すぐ終わりますから」
女「て、手伝います」
男「えっ」
女「元は私が原因なんです。私のせいで男さんの腕にナイフが刺さったんです」
123
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/18(土) 00:00:23 ID:FDYt65S6
男「女さんは何も悪くは」
女「私のせいなんです……! だから、私にやらせてください、お願いします……」
男「……じゃあ、これを」
女(大丈夫、大丈夫……私がやらなきゃ、私が男さんを助けなきゃ)
女「一度引っ張ってみてもいいですか」
男「私は左腕が動かないように固定してますね」
女「抜けない……じゃあ、本当にこれで叩いて」
男「あまり無理しない方が」
女「大丈夫、です……いきます!」
124
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/18(土) 00:01:50 ID:FDYt65S6
男「あはは、思ったより痛くてビックリしました」
女「ごめんなさい……」
男「気にしないで下さい。無事ナイフも抜けましたし」
女「あっ、包帯が……」
男「木ですからね、包帯が上手く巻けないのも仕方ないですよ」
女「……っ」
男「ど、どこか痛いんですか!? もしかして、女さんもどこか怪我を……」
女「ち、違うんです……痛いとかじゃ、なくて、ごめんなさい、涙が……止まらなくて」
男「!」
女「少しだけ、こうさせてください」
男「……はい」
女「うっ、うぅ」
男「……」
125
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/18(土) 00:03:03 ID:FDYt65S6
男「落ち着きましたか?」
女「ありがとうございます……」
男「いえいえ……そうだ、お腹空いてませんか?」
女「……少しだけ」
男「もうすっかり夜ですし夕食を作りましょう?」
女「夕食……そうですね」
男「あ、女さんは休んでてください」
女「え?」
男「疲れているでしょうし、お皿を並べるのも私がやりますね」
女「でも、男さんは怪我して」
男「左腕ならもう大丈夫ですよ。それにちゃんと美味しいご飯を作りますから、座って待っていてください」
126
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/18(土) 00:03:38 ID:FDYt65S6
女「……はい」
女「……っ」
女「男さん」
男「あれ?」
女「私も作ります」
男「え、ですが」
女「ダメ……ですか?」
男「……じゃあ、一緒に作りましょうか」
女「はい、一緒に」
127
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/18(土) 00:04:13 ID:FDYt65S6
男「……」
女「……」
男「女さん」
女「なんですか?」
男「なんだか……近くないですか」
女「そう、ですね……手も握ってますし」
男「で、ですよね! あはは、はは……はは」
女「……」
男「……あはは」
128
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/18(土) 00:05:07 ID:FDYt65S6
男「……」
女「……」
男「お、女さん」
女「はい」
男「あ、あのですね……私はあの、こういう事はその、あれで……その、えっとですね」
女「……前に私を抱きしめてれたじゃないですか」
男「あれは……! で、でも、一緒に寝る必要は無いんじゃないかと……その、思うのですが」
女「男さん」
男「は、はい!」
女「夕食、美味しかったですね」
男「た、確かに美味しかったです」
女「……」
男「女さん?」
129
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/18(土) 00:08:25 ID:FDYt65S6
女「もう少し、こっちに来ませんか?」
男「そ、それはちょっと」
女「じゃあ私がそっちに寄りますね」
男「ちょっ、待って……!」
女「……っ」
男「震えて、いるんですか……?」
女「ごめんなさい、どうしても昼の事を思い出しちゃって……体が震えちゃうんです」
女「けど男さんの傍に居ると震えも……なので、傍に居て、欲しくて」
男「……」
女「!」
男「寝ますか」
女「……はいっ」
130
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/18(土) 00:09:00 ID:FDYt65S6
男「寝れなかった」
女「んっ、んぅ……」
男「でも女さんはすぐ寝れたっぽいし、まぁいいか」
女「すぅ……んっ」
男「……体洗って朝食の準備をしよう」
131
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/18(土) 00:09:34 ID:FDYt65S6
女「男さん、今日はどこかに行くんですか?」
男「行きませんよ」
女「じゃあその荷物は?」
男「女さんを町の近くまで送ろうと思いまして」
女「一人でも帰れますよ」
男「あの男達がまだ居るかもしれませんし、念のためです」
女「……」
男「よしっ、じゃあ出発しますか」
132
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/18(土) 00:10:25 ID:FDYt65S6
男「少し、寄り道してもいいですか?」
女「寄り道?」
男「もう居ないと思いますが……男達の姿を確認しに行きます」
女「もう居ないってどういう?」
男「……男達があの場所で夜を越したのなら、狼などの肉食動物に連れていかれていると思います」
女「狼……」
男「ここは夜行性の動物も多いので……っと 、ここですね」
女「散らばった布と、黒い跡は……」
男「血、ですかね」
女「……向こうに続いてますね」
男「これ以上追うのは危険ですし、このまま町に向かいましょう」
133
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/18(土) 00:11:26 ID:FDYt65S6
男「無事に町が見える場所まで来れましたね」
女「もう少しで開けた道に出ちゃいますね」
男「……そうですね」
女「男さん」
男「はい」
女「その……手を、繋ぎませんか? 昨日の夜みたいに」
男「……いいですよ」
女「あっ、ふふっ」
男「ゆっくり歩きますか?」
女「はい、そうしましょう」
134
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/18(土) 00:12:24 ID:FDYt65S6
男「ここら辺が限界ですね」
女「はい」
男「……」
女「また、男さんの家に行きますね」
男「……っ」
女「そんな顔をしないでください」
男「森は動物だけじゃなく人も危険だと分かった以上、女さんには森に来ない方がいいと、言うべきなのですが、私は……」
女「駄目って言われても、私は通いますよ?」
男「しかし……」
135
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/18(土) 00:13:15 ID:FDYt65S6
女「あっ」
男「?」
女「男さんに助けてもらったお礼をまだ言ってなかったですね」
男「お礼なんて要らな──んぐっ!」
女「んっ……ぷはっ、歯が当たって少し痛かったですね……ふふっ」
男「な、お、女さん!」
女「襲われた私を助けてくれて、夜も私の傍に居てくれて本当にありがとうございます」
男「だ、だからってこれは……!」
女「男さん」
女「また、会いに行きますね」
136
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/18(土) 00:14:29 ID:FDYt65S6
女母「男さんの所に泊まっているんだろうなとは思ってたけど、結構心配したのよ?」
女「うん、ごめんなさい……んふふ」
女母「……」
女「ダメ、頬が……ふふっ」
女母「これは、どっち?」
女「んへへ……///」
137
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/18(土) 00:15:03 ID:FDYt65S6
女母「私もついにおばあちゃんか……」
女「? お母さんはまだまだ若いよ?」
女母「……」
138
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/19(日) 00:06:39 ID:LGe5Ip.g
「うぅ……薬草採取に夢中になっていたらもうすぐ夜になりそうだ」
「日差しがあまり入らないから余計暗く感じる……怖い」
「そして道はこっちだった……はず」
「はぁ、お腹空いた……ん?」
「ん? あっ」
「ひっ、ビックリした……でも人に会えてよかった。あなたはここでなに……を、して」
「あっ、えっと、道に迷っているならあっちが町ですよ」
「あばばばばばば」
「……それでは」
「ば、ばばばば、化け物が……森に」
「に、逃げ、逃げなきゃ……い、急いで知らせなきゃ……」
139
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/19(日) 00:07:13 ID:LGe5Ip.g
狩人「あぁ? 森で化け物を見たぁ?」
「そ、そうなんですよ! 人の形をした化け物が居たんです!」
狩人「夢でも見てたんじゃねぇの?」
「体が木に覆われていて、片手に棒状の武器を持ってて、更に鋭い爪で私に襲い掛かって来たんです!」
狩人「へーへー、どうせ熊とかだろ」
「嘘じゃないんです、くそっ、なんで誰も信じてくれないんだ!」
狩人「そりゃあ、お前の頭がおかしいからだ。俺は今機嫌が悪いんだ、さっさとどっかに行け」
140
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/19(日) 00:08:02 ID:LGe5Ip.g
「……どう思う?」
「恐らく、あの時と同じだな」
「あぁ、けど、俺は親父みたいな行動はしたくない」
「町が危険な目に遭ってもか?」
「あのとき町の中では男母さん以外誰も木が生えたりなどしていなかった!何か解決策があるはずだ!」
「どういう経緯で発症するのかよく分からないからこそ追い出したのだ」
「けど、今回も同じ事をしたらこの町はどうなる? 女母さんが、女ちゃんがこの町から居なくなったらどうなる?」
「人は忘れる……世代が変われば、より何も無かったかのように生活していくだろう。男父家族の件だってそうだ、あれから数十年経つが町の皆は元気に暮らしている」
「そんなのって」
「お前はこの町長だ。町の為に、何が正しいのか、よく考えて行動しろ」
「……っ、クソッ」
141
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/19(日) 00:08:39 ID:LGe5Ip.g
女母「ふぅ……疲れた」
女「お母さん、お客さんが来てるよ」
女母「誰が来たの?」
女「町長さん」
女母「町長さん?」
女「そう、町長さん。ピークも過ぎたし会ってきてもいいよ? 私が厨房に入る」
女母「そう? じゃあ少しだけ開けるわね」
女「うん、行ってらっしゃい」
女母「お店よろしくね」
女「はーい」
142
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/19(日) 00:10:10 ID:LGe5Ip.g
女母「こんにちは、町長さん」
町長「こんにちは」
女母「今日は何のご用件ですか?」
町長「えーっと、少し聞きたいことがありまして……」
女母「はぁ、なんでしょうか」
町長「少し、手袋を外してもらえませんか」
女母「!」
町長「女母さん、お願いします」
女母「……場所を変えましょう」
143
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/19(日) 00:11:09 ID:LGe5Ip.g
町長「これは、あの木の病気ですね」
女母「……」
町長「女ちゃんは知っているんですか?」
女母「えぇ、知っています」
町長「なぜ、私達に隠していたんですか」
女母「誰かに知られれば町から追い出されるでしょう」
町長「そんな事……!」
女母「『そんな事はしない』本当にそう言えますか? 男父さん達の事、忘れたんですか?」
町長「いえ、あんな事件を忘れられるわけが……」
女母「それを娘に見せない為に私一人で町を出る準備をしていましたが、知られた以上、それも難しくなりましたね」
144
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/19(日) 00:16:09 ID:LGe5Ip.g
女母「ですが、少しだけ時間をください。夫が残した店をしっかりと閉めたいんです……その期間中に荷造も済ませますから」
女母「町長さん、あなたは優しい人です。きっと、まだ誰にもこの事は話していないのでしょう?」
町長「二人とも出ていくなんて……」
女母「町の人達から見たら、私は謎の病気を患っている人間で、追い出されるべき人間です。そして私に最も近い存在の娘も例外ではない」
女母「町長さん、あなたは正しいことをしています」
町長「くっ、町の為とはいえ、こんな……!」
女母「どうかお願いします……もう少しだけ、私達に時間をください」
町長「……分かりました。少しでも、女母さん達に時間を与えられるように頑張ってみます」
女母「ありがとうございます」
狩人「……」
145
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/23(木) 19:20:06 ID:v.RZ2Plk
やばい奴に聞かれたがな
146
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/24(金) 23:39:10 ID:/OSwRirg
狩人「よぉ、女母さん」
女母「あら、こんばんは狩人さん」
狩人「実は聞きたいことがあってだな……うわっ!」
女母「わっ!? 大丈夫ですか?」
狩人「あぁ、少し飲み過ぎてな……ん?」
女母「……っ! て、手袋を返してください」
狩人「手袋を取ってしまってすまない」
女母「あ、ありがとう」
狩人「……」
女母「わ、私はこれで……」
狩人「ん? あぁ、急いでいるところを止めてしまってすまない」
147
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/24(金) 23:39:54 ID:/OSwRirg
狩人「相変わらず暗い森だ」
狩人「俺の町では『森に近づくな、森に魅入られる』という馬鹿みたいな言い伝えがある……」
狩人「女母さんの指先は確かに変色していた」
狩人「あの町長は事情を知っているみたいだがこの話を下手に広めると女母さんや女が追い出されると……」
狩人「先ずは1人で情報を集めるとしよう。奥に行けば行くほど危険と言われるこの森に何か手掛かりがあるはずだ」
狩人「『森の化け物』のな」
狩人「きっと原因はそいつだ。あの薬屋の言っていた事が確かならきっとその化け物が何かしたに違いない」
狩人「フハハッ、問題を解決してやればきっと女母さんも女も俺に落ちるだろうな」
狩人「さぁ、姿を見せろ」
148
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/24(金) 23:41:18 ID:/OSwRirg
─────
───
─
狩人「チッ、これ以上森に居ると危険か。今日はここら辺で切り上げ……あ?」
狩人「これは……なんかの血痕か?」
狩人「狼か、または化け物が動物を食らった後かもしれないな」
狩人「もう少し調べるか……いや、ここは戻ろう。帰れなくなる」
狩人「必ず化け物を見つけ出して正体を暴いてやる」
149
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/24(金) 23:42:26 ID:/OSwRirg
男「よし、完成だ」
男「女さんはお店のお手伝いだと言ってた気がするし……今しかない」
男「飲んで効果を確かめよう」
男「……ぷはっ」
男「前回の薬は人の体に戻れはしたが時間が経つと木が生えて元の姿に戻ってしまったが、今回はどうだ……っ」
男「ぐっ、うぁ……がっ、な、何だ……これっ、木が」
男「くっ、だ、駄目だ! このままだと完全に、木に……!」
男「何か手段は、前回の薬でどうにかならないか……? いや危険すぎるっ!」
男「くそっ、左腕が動かない……右手も覆われてっ!」
男「ぐっ、い、痛みで意識が」
男「駄目だ、もう……立っていられな───」
150
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/24(金) 23:43:01 ID:/OSwRirg
男「んっ……」
男「倒れてたのか……はぁ、体がまったく動かない」
男「私は、木になったのか」
男「母さんや妹のように……木に、なってしまったのか……!」
男「父さん……ごめん、約束守れなかった……」
男「ごめんなさい……女さん」
男「!?」
男「指が……動いた?」
男「気のせいじゃない、確かに動いた!」
男「まだ終わってない……!」
151
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/24(金) 23:43:46 ID:/OSwRirg
男「身体中がすごく痛む……立つのがやっとだな」
男「全身が木に覆われている……私はなんで生きているんだ」
男「手足も少しだけ動く、力も入る……そして、呼吸をしている」
男「心臓までは木になっていないという事か? 今の私はどうなっているんだ……」
男「今は元に戻る方法を探すのが先だな。いつか心臓も木に侵され止まるという事だ」
男「少しでも時間を延ばさなくては……薬を作らなければ」
男「……とりあえず前回の薬を飲んでみるか?」
男「それしか浮かばない自分を責めたいが木に影響を与える物はこれしかない」
男「一か八か、体内の木が無くなってもう少し動きやすくなる事を信じて……」
152
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/24(金) 23:46:04 ID:/OSwRirg
男「左腕は前と同じ、右腕は手首まで木が侵食」
男「太もも半ばで止まっていた木が腰まで進行、侵食……まぁ、立って歩けているだけいい方か」
男「顔も人肌に……とはならず、顔の半分は木のまま、額からは木が生えて角みたいだ」
男「……」
男「やらかしたなぁ」
男「もう少し慎重に……いや、いま考えてもどうにもならないか」
男「体の負担も大きいし、この姿に戻れたのも運が良かっただけかもしれない」
男「次に活かしたいが……次が最後かもしれないな」
男「けど休んでいる時間は無い、薬を作り直そう」
153
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/25(土) 11:56:13 ID:xh4XgFqA
薬が出来るといいな
154
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/26(日) 22:14:18 ID:T6e0hRPw
狩人「朝から森を歩き回っても何も見つからず……か」
狩人「化け物への手掛かりはあの血痕と薬屋の証言だけ……しかし、化け物と女母の手、これを繋ぐ鍵に心当たりがある」
狩人「血痕の後を追うのもいいが今回は……」
─────
───
─
女「行ってきまーす」
女母「えぇ、行ってらっしゃい。気を付けるのよ」
狩人「……」
155
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/26(日) 22:15:40 ID:T6e0hRPw
狩人「少しひらけた場所……そこに木造の家と、あれは畑か?」
女「男さーん、こんにちはー」
狩人「そして、あの家に入ろうとする女。声は聞こえないが恐らく女母さんを人質にとられているんだろうな」
狩人「扉が開いた……っ!」
男「女さん……こんにちは」
女「えっ……」
男「……ごめんなさい、取り敢えず家の中に入りましょう」
狩人「な、なんだ、あれは……頭から鋭利な角が生えている化け物が……! 化け物がこの森に、本当に存在したとは……」
狩人「はっ! お、 女が震えながら化け物の住処に入ったぞ」
狩人「今すぐ助けに……っ、女が化け物側に居る以上こちらが不利だ。迂闊に手を出せば女の命が危ない」
狩人「チッ……」
156
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/26(日) 22:16:49 ID:T6e0hRPw
男「新しい薬を飲みまして……」
男「そしたら全身が木に覆われてしまって、思い付きで前回の薬を飲んで今に至ります」
女「……それで、今は何をしているんですか?」
男「薬を作ってます」
男「本当はもう何回か私の体を実験台に出来ると思っていたのですが……この姿になってしまったので次が最後かもしれないですね……あはは」
女「ぁ……っ、や、やめ……研究をやめて……」
男「やめません」
女「でも……」
男「私に残された時間が、一気に無くなってしまいましたから……」
女「男さんはどうして……そんな、そんなにも、自分を犠牲にして……」
男「……ごめんなさい」
157
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/26(日) 22:17:45 ID:T6e0hRPw
狩人「女を待っている間にこの辺りを見て回るか」
狩人「歩いてる間に女が町に帰るかもしれないが……どうするか」
狩人「ここに来る道のりはそれほど危なくもなく、獣道なども無かった……女が無事に町に帰れるよう祈るか?」
狩人「どっちにしろあの化け物を退治する方法を考えないとな……あぁ、くそっ!」
158
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/31(金) 00:58:39 ID:AtOGFuWs
女母「……」
女「お母さん大丈夫? 疲れてるなら後は私がやるよ」
女母「……大丈夫よ。でも、少しだけ休憩しようかしら」
女「うん! 片付けは私がやっておくね」
女母「ねぇ、女」
女「なに?」
女母「明日は男さんの所に行くの?」
女「うん、朝から行こうかなって」
女母「そう……」
女「お母さん?」
町長「女母さん! 女母さんは居ますか!?」
女母「町長さん!?」
女「そ、そんなに急いでどうしたんですか?」
町長「木の事が、あなたの手の事が町の人達に知られてしまいました……!」
159
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/31(金) 00:59:33 ID:AtOGFuWs
女母「そんな、どうして」
女「え、えっ」
町長「よくこの町に来る狩人という男が親父や町の人達に言いふらしているんです」
女母「なぜ狩人さんがこの事を知って……」
町長「分かりません。今は女母さんが木の病気を患っている事と、もう一つ……」
女母「もう一つ?」
町長「森に化け物が居て、そいつが原因だと」
女「!?」
町長「そんな話、誰も信じないと思っていたのに町の人達は何故かそれを信じて……」
女「……っ」
160
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/31(金) 01:02:15 ID:AtOGFuWs
女母「……!」
女「な、何の音?」
町長「これは……!」
元町長「やぁ、女母さん」
女母「元町長さん……どうしてここに?」
元町長「それはですね」
狩人「お前たちをここに閉じ込める為だ」
女「と、閉じ込める?」
「狩人さん!」「もっと言葉を選んでください!」
狩人「チッ……店から出さないようにするんだから閉じ込めるで合ってるだろ」
女母「どういう事ですか?」
狩人「俺達は明日の早朝に化け物の住処を燃やしに行く」
狩人「女母さん達、特に女は洗脳されている可能性がある。だからここに閉じ込める」
161
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/31(金) 01:03:01 ID:AtOGFuWs
男「ふぅ……完成した。後は飲んで効果を確かめるだけ」
男「一応、今までの研究はノートにまとめたから私が死んでしまっても大丈夫……大丈夫……」
男「手が震えている……足も、体もだ」
男「死にたくない……な」
男「……よしっ、飲むか。最後の実験だ」
162
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/31(金) 01:04:53 ID:AtOGFuWs
─────
───
─
男「んっ……?」
男「生きて……る?」
男「体は……動く。あ、あぁ……足が元に、人の姿に戻ってる!」
男「だ、駄目だ、喜ぶのはまだ早い。取り敢えず人の姿に戻れただけ、時間経過で木に戻らないかどうか、そこが重要だ」
男「でも、歩ける内に外に出てみるか」
男「肌に自然を感じられるのも最後かもしれないからな」
男「女さんが来るのは明日の昼頃……もう一度、この姿で女さんに会いたい」
男「成功しててくれ……っ!」
163
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/01(土) 02:02:55 ID:rCF5xr4Q
男「もう少しで花畑か」
男「前回人肌に戻った時は家に籠って土とか触らなかったけど今回は色んな物の感触を確かめよう」
男「さっき水浴びしたからか風が気持ちいいな……っと、足は動くのに上手く歩けないのは木の体に慣れすぎたせいかな」
男「到着だ」
男「薬を飲んでから結構な時間が経ったが木に戻る気配は無し、体の内側も痛くない」
男「長いこと感じることの無かった、足裏から伝わる土と草の感触、全身を通っていく風、左手ので物に触れる……っ」
男「本当に、本当にやり遂げたのか……私は、人間に戻れたのか」
男「父さん、母さん、妹」
男「ようやく……樹木化を止められたよ」
男「まだ昼だし、ここで横になってもいいか、日が暮れる前には起きるだろうさ……」
男「本当に、長かった……」
男「……さ、ん……」
164
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/01(土) 02:03:58 ID:rCF5xr4Q
男は夢を見た
昔の夢
町に住んでいた頃の夢
ある日、母の身体に異変が起きた。
手先が変色し、木のように硬くなっている。
侵食が進み町での生活が難しくなったとき、妹にも同じ症状が現れた。
父は樹木化を治そうと研究に力を入れた。
しかし、何も分からないまま半年程が経った。
その頃には町の人達から疎まれ、距離を置かれ、買い物も出来ない程関係が崩れていた。
気味悪がる人達には畑を燃やされ、町長からは町からの出ていって欲しいと言われた。
父が森にいい所があるというので男家族は森へ行き、そこでひっそりと暮らす事になった。
森の中には幾つかの廃屋があったが大型動物が住んでいたりで大変だった。
しかし、歩き回った甲斐あって陽当たりもよく、水辺も遠くはない素敵な場所を運良く見つけることができた。
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