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善子「影廊」ルビィ「夕暮れの迷宮から脱出」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/05(金) 10:40:05 ID:9xbPbDTk
ラブライブ!SS

これはホラーゲーム「影廊 -Shadow Corridor-」のパロディSSです。


ゲームは有料版と無料版があります。

リンクは貼りません。興味のある方は各自で検索してください。


ゲームに関する過度なネタバレはなるべく避けるようにします。


それでもネタバレが気になる場合はお戻りください。


また、SS内では設定の一部改変があります。



この物語はフィクションです。

462以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:07:49 ID:0q8CGXTE
善子「今度の回廊も気を引き締めていくわよ、ルビィ」

ルビィ「うゆ……」


私たちは回廊へと入っていく……


ピチャ……ピチャ……


善子「中は……気味が悪いわね……歩くと水の音がピチャピチャと鳴るわね」

ルビィ「うう……ここ怖いよ……」

善子「ええ、不気味さは前の回廊の比ではないわ……」

463以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:08:19 ID:0q8CGXTE
善子「え……これって……」

ルビィ「善子ちゃん……」

善子「下の階がある……この回廊、上の階と下の階に分かれて複雑な構造になっているわ」

ルビィ「え……ということは……」

善子「今まで以上にきびしい探索になりそうね」

ルビィ「うゆ……」

善子「やることは同じはずよ……勾玉を5つ集めて祭壇に納める……」

ルビィ「うん……でも前の回廊よりも難しいよね……」

善子「……」

464以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:09:07 ID:0q8CGXTE
ルビィ「上と下、どっちに行くの?」

善子「下を見てみましょう……」


下の階を見るために階段を降りる……


善子「下の階には水が張っているわ……おそらく腰まで浸かるくらいの深さ……」

善子「これは歩くのも大変だわ……水が張っていて速く走れないから、下の階で徘徊者に襲われればまず逃げ切れないでしょうね……」

ルビィ「ぴぎぃ……」

善子「しかも奥まで複雑に回廊が続いている……ここを長時間探索するのは得策ではないわ……」

ルビィ「うゆ……」

善子「念のため水が張っていない上の階から調べていきましょう」

ルビィ「そうだね、そのほうが安全だよね」


私とルビィは上の階から調べることにした。

465以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:09:38 ID:0q8CGXTE
善子「とはいえ……上の階も複雑な構造をしているわね……」

ルビィ「うゆ……」

善子「タンスや棚を調べていきましょう」

善子「こっちには……カメラ、爆竹……」

ルビィ「こっちも調べるよ……ひかり石、それから……」

善子「鍵を見つけたわ」

ルビィ「うゆ、鍵があれば勾玉が取れるね」

善子「ええ、あと手鏡とかがあれば欲しいわね」

466以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:10:50 ID:0q8CGXTE
善子「こっちにはレバーがあるわ」

ルビィ「うゆ……何のレバーだろう?」

善子「引いてみるわね」ガチャ


ザッパァァァァァンンンン


その瞬間、下で水の音が鳴った。

どうやら水門の板が下に落ちた音のようだ。


善子「これでここが通れるようになるけど、下は通れなくなったわけね」

ルビィ「ということは……下を通りたい場合、上のレバーを引かなきゃいけないから……」

善子「かなり複雑な構造の上に、この仕掛けはきびしいわね」

善子「これまで以上に気を引き締めていくわよ」

ルビィ「うゆ……」

467以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:11:38 ID:0q8CGXTE
善子「それからこっちを通って……」


善子「えっ?」


ルビィ「どうしたの善子ちゃん?」


善子「……もう1つ上の階がある」

ルビィ「え……」

善子「嘘でしょ……ここに来て複雑になりすぎじゃない……?」

ルビィ「うゆぅ……」

468以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:12:21 ID:0q8CGXTE
善子「しかも見て……階段が……」

ルビィ「うゆ? 階段……?」

善子「例えばあそこの階に上るにはあっちからまわっていって……階段を上ったあとそっちにある階段を……」

ルビィ「ええ……これじゃあどこにいるか分からなくなっちゃうよ」

善子「そうね、どっちに進んでいるのかも分からないわね……」

ルビィ「でもコンパスがあれば大丈夫でしょ?」

善子「そうだけど……あっちに行くには……」


そこまで言いかけて気がついた。


廊下の奥から何かが来ている!

469以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:12:53 ID:0q8CGXTE
善子「ルビィ、隠れるわよ……何かいる!」

ルビィ「うゆ!」


私とルビィは障子を閉めて小部屋に隠れた。

外の様子はところどころ破れた障子や格子窓から見える。


善子「何かしら? あれ……」


見ると、人の顔をした霊魂のようなものが浮遊している。

何かぶつぶつと囁いているのも聞こえてくる。

470以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:13:41 ID:0q8CGXTE
善子「徘徊者かしら? でも能面を被っていないし……燭台のろうそくの反応もない……」

善子「でもここに隠れていれば大丈夫なはず……ルビィ、コンパスで方向を確認しましょう」

ルビィ「善子ちゃん、それが……」

善子「……どうしたの?」


ルビィ「コンパスの針がくるくるまわってて、祭壇がどっちなのか分からないよ」


善子「嘘でしょ……?」


そうしている間にも霊魂のような何かは浮遊しながら私たちの横を通っていった。

471以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:14:33 ID:0q8CGXTE
善子「とにかくアレに見つからずに済んだわ」

善子「もし見つかればどうなるか分からないもの」

ルビィ「うゆ……あれ?」

善子「どうしたのルビィ?」

ルビィ「あのお化けしゃんが通りすぎた後、コンパスのくるくるが止まったよ」

善子「え? ということは祭壇の方角を指しているのね」

ルビィ「うゆ」

善子「……なるほど、あのお化けが近くにいるとコンパスが狂ってしまうというわけね」

ルビィ「お化けしゃんが近くにいるとコンパスがおかしくなる……」

善子「ええ、いつ使い物にならなくなるか分からないからこまめに確認しましょう」

ルビィ「うゆ……」


私たちは先を進んでいく……

472以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:15:16 ID:0q8CGXTE
グスン……グスン……


善子「どこかに泣き声の主がいるわね……」

ルビィ「うゆ、下の階にいるみたいだね」

善子「勾玉があるってことね」

ルビィ「上と真ん中と下があるからどこに徘徊者しゃんがいるか分かりにくいね」

善子「階段があるわ、これで下に降りて勾玉を取りにいきましょう」

ルビィ「うゆ」


グスン……グスン……


善子「いたわ、勾玉が置かれた台の横にいる……爆竹で誘導して勾玉を取るわよ」

ルビィ「隠れられそうな場所は……」

善子「このあたりはなさそうね、もし襲われたらそっちに逃げましょう」

473以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:15:54 ID:0q8CGXTE
善子「爆竹を……えいっ」ヒョイ


……


パチパチパチパチパチ……


グスン……グスン……


善子「移動し始めたわ、誘導できているうちに慎重に勾玉を取るわよ」

ルビィ「うゆ」


私たちは台の上から勾玉を取ると、その場から立ち去った。

474以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:17:03 ID:0q8CGXTE
善子「なんとか1個目ゲットね」

ルビィ「うゆ、頑張ろう善子ちゃん」

善子「ええ、脱出するわよルビィ」


ドコニイルノ……


善子「待って、歩いてる泣き声の主もいるわ」

ルビィ「うゆ……」

善子「離れるまで慎重に移動するわよ」


ドコ……ドコニイルノ…………ドコニイルノ……


私とルビィは静かに移動する。

475以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:17:44 ID:0q8CGXTE
善子「ふう、これで大丈夫ね。 びっくりしたわ……」

ルビィ「うゆ……これだけ離れれば大丈夫だね」


そのときだった……


リーン……


どこからか鐘の音が聞こえてくる。


ルビィ「ぴぎぃ!? 何の音!?」

善子「落ち着いてルビィ……新しい徘徊者かしら……」

ルビィ「怖いよ善子ちゃん……」


鐘の音……それともただどこかで音がしただけ……?


善子「とにかくここから離れるわよ」

ルビィ「うん」

476以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:18:31 ID:0q8CGXTE
善子「ここまで来れば大丈夫かしら」

ルビィ「ねえ善子ちゃん」

善子「どうしたの?」

ルビィ「向こうから水たまりがすごいスピードで近づいてくるよ?」

善子「どういうこと?」


ピチャピチャ……


善子「本当ね……水たまりがこっちに来てる……そして私たちの足元で止まった」


チャポポポポポ……


ルビィ「水たまりの中からお年寄りの人が出てきたよ……」

善子「本当ね……じゃないわよ! 徘徊者じゃない!?」

ルビィ「ピギィ!?」


なんと水たまりの中から提灯と鐘を持つ老人の姿をした徘徊者が出てきた!

他の徘徊者と同様に顔には能面をつけている。

477以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:19:35 ID:0q8CGXTE
善子「逃げるわよルビィ! 完全に姿を現す前に!!」

ルビィ「うゆ!!」

私たちはその場から離れる!


善子「かなり距離を離したわ、これでなんとか……」


リンリンリンリン!!


ルビィ「見つかっちゃったよ!!」


老人の姿をした徘徊者は鐘を鳴らしながらゆっくりとこちらに向かってくる。


善子「鐘を鳴らしてるわね、足はそんなに速くないわ」

ルビィ「これなら逃げられるね」


善子「いえ、違うわ!! 走って!!」

ルビィ「違うってどういうこと!?」


私とルビィはそのまま走り続ける!

478以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:20:29 ID:0q8CGXTE
善子「いい? あの徘徊者は鐘の音を鳴らしながら追ってくるわ!」

善子「そして近くには泣き声の主がいる! あの子はすごく耳がいいわ!」

ルビィ「まさか……」


ドコニイルノ!!


予想通り泣き声の主が物凄い速さでこちらに走ってきていた!


善子「あの子は足が速い!! 振り切れないわ!!」

ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!!」


ドコニイルノ!!

479以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:21:23 ID:0q8CGXTE
善子「走って!!」

ルビィ「もうダメぇ!! 追いつかれちゃう!!」


そのときだった!


ガラガラガッシャーン!!


天井が崩落して徘徊者と私たちの間の道が塞がれた!

廊下には棚や木材が落ちてきていて、徘徊者がこちらに来ることはできない。


善子「はあッ……はあッ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


善子「助かった……」

ルビィ「ぴぎぃ……」

善子「あの老人の姿の徘徊者はまわりの徘徊者を呼び寄せるみたいね……」

ルビィ「怖いよ……」

480以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:22:11 ID:0q8CGXTE
善子「はあ……はあ……さあ、先に進みましょう」


一歩踏み出したその時だった!


バァァァァァァァンンンン!!!!


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


目の前の扉から神楽鈴の徘徊者が飛び出してくる!!


善子「嘘でしょ!? ここ罠部屋なの!?」

ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!!」

善子「後ろには逃げられない!! 横の部屋に入るわよ!!」

ルビィ「ぴぎぃ!!」


私とルビィはすぐ横の部屋に入る!


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン

481以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:23:02 ID:0q8CGXTE
ルビィ「ぴぎぃ!? この部屋行き止まりだよ!!」

善子「嘘でしょ!?」


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


善子「待って!! あの台を見て!! 勾玉があるわ!!」

ルビィ「手鏡もあるよ!!」


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


善子「飛ぶわよ!! ルビィ!!」

ルビィ「うゆ!!」


私たちは2個目の勾玉を取るとすぐ横に置いてあった手鏡でワープした……

一瞬で景色が変わる。

どうやら上手く他の部屋に移動したみたいだ……

482以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:23:40 ID:0q8CGXTE
善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」


善子「何なのよ……本当に……」

ルビィ「うゆ……」


善子「今までの回廊の比ではないわ……複雑さだけでなく徘徊者も……」

ルビィ「ルビィ怖くなってきたよ……」


私たちは少し休んでから探索を続けることにした。

483以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:24:18 ID:0q8CGXTE
善子「台の上に何かの記事があるわ」

ルビィ「記事?」

善子「ちょっと読んでみるわね」


善子「……」

ルビィ「……」


善子「ふむふむ……」

ルビィ「どんな内容だったの?」

善子「向こうの世界で新聞を読んだじゃない?」

ルビィ「うゆ……神隠し事件の記事だったよね」

善子「これもその話みたい」

ルビィ「うゆ?」

484以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:24:48 ID:0q8CGXTE
善子「化け物が神隠し事件を起こした、と。 その詳細が載ってるわね」

ルビィ「うゆ……」

善子「要約するわよ。 千里眼の能力を持つ不思議な力を持った母親とその子供が村から離れた神社に住んでいたんだって」

ルビィ「千里眼……未来とか見えるんだよね」

善子「ええ、それで千里眼の能力を忌み嫌った村人はこの家族から距離を置いていたらしいの。 母親には冷たく接していたみたい」

ルビィ「…………」

善子「村人たちは、その子供もいつか本性を現し、母親をないがしろにした自分たちに復讐するのではないかと恐れていたらしいわ」

ルビィ「うゆ……」

485以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:25:21 ID:0q8CGXTE
善子「そして、そのときが来た……その子供が川に鉄砲水を起こして、その結果、村の子供たちは流されてしまったみたいね……」

ルビィ「そんな……」

善子「村人たちは村の子供たちが○されたと怒って、その母親と子供を○そうとしたらしいの」

ルビィ「ぴぎぃ……」

善子「そのとき、その子供が光り輝いて、その光が森を飲み込んだ……まわりのものすべてが、はじめから何もなかったかのように消えていた」

善子「神社も人々も夕暮れのヒグラシの声も……という話らしいわ。 その昔、当事者の誰かにインタビューして、その人が答えたことをまとめた記事みたいね」

ルビィ「うゆ……千里眼……鉄砲水……神隠し事件……」

善子「でもなんでこんな記事がこの回廊にあるのかしら……」

ルビィ「うゆ……」


私とルビィは回廊の探索を続ける……

486以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:26:34 ID:0q8CGXTE
ルビィ「今度は開けた場所に出たね」

善子「ええ、真ん中にレバーと床は……」


見ると床は木でできており、格子状になっている。


ルビィ「まるで落とし穴だね……レバーを引いたら床が落ちたりして」

善子「そうね、これは落とし穴……だからレバーは引いちゃダメよ」」

ルビィ「うゆ、やっぱり落とし穴だよね……」

善子「そのレバーを引くとここの木の床が落ちるようになっているわね……」

ルビィ「なんでこんな分かりやすい罠があるのかな……」

善子「分からないわ……下が見えるわね……そんなに高くはない……おそらく落ちても怪我はしない……」

善子「あれは……?」

ルビィ「どうしたの善子ちゃん?」


善子「部屋があるわ……」

487以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:27:09 ID:0q8CGXTE
ルビィ「部屋……?」

善子「ええ、落とし穴のすぐ下の壁、穴があるわ」

ルビィ「穴……本当だ、部屋かな? 行ってみる?」

善子「いえ、後にしましょう……祭壇と勾玉が優先よ」

ルビィ「うゆ、そうだね……」


私たちは落とし穴の部屋を後にする……

488以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:27:45 ID:0q8CGXTE
善子「とにかく複雑な構造ね……」

ルビィ「うゆ……ここはどこだろう……うゆ……? なんだろうこれ?」


見ると変わった模様の鈴が置いてあった。


善子「猫がつけてる鈴って感じね」

ルビィ「あの猫しゃんの鈴に似てるね……」

善子「これも何かに使えるかしら……? 分からないわ……」

ルビィ「かわいいから持っていっていい?」

善子「いいけど……他の使えるものが優先よ、カメラとか爆竹とか」

ルビィ「うゆ」

善子「それにしてもさっきの記事といい、なんでこんなものが置いてあるのかしら……」


私たちは先を進んでいく……

489以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:28:21 ID:0q8CGXTE
善子「下に勾玉があるわね」

ルビィ「でもあそこってどうやって行くんだろう?」

善子「分からないわ……」

善子「鍵を開けただけでは手に入らないようになっているわね」

善子「今までの回廊とまるで違うわ……」


ドタドタドタドタドタドタ……


善子「隠れなきゃ」

ルビィ「うゆ」


シャン……シャン……シャン……シャン……

490以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:28:54 ID:0q8CGXTE
善子「ここに隠れて……」


シャン……シャン……シャン……シャン……

ドタドタドタドタドタドタ……

ドコ……ドコニイルノ……ドコニイルノ……

リーン

シャン……シャン……シャン……シャン……


善子「すごい数ね……鈴の徘徊者なんて近くに2体もいるわ」

ルビィ「これじゃあ全然動けないね……」

491以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:29:44 ID:0q8CGXTE
ルビィ「ここに隠れて何分くらい経つんだろう」

善子「そもそもこの世界に時間の概念があるとは思えないけど……」


善子(複雑すぎる回廊……数が多すぎる徘徊者……祭壇の位置はコンパスがくるくるまわって分からない……)

善子(まるで地獄絵図だわ……身動き一つ取れないし……徘徊者が通るたびにプレッシャーがかかる……)

善子(見つかれば○される……どうすればいいのかしら……)


善子「はあ……はあ……」

ルビィ「善子ちゃん……?」

善子「大丈夫、ちょっと疲れただけよ」

ルビィ「善子ちゃん……」ギュッ


ルビィは私を抱きしめてくれた。


善子「ルビィ……大丈夫よ」

ルビィ「無理しないで……ルビィも頑張るから」

善子「ええ、ありがとう……ルビィのおかげで落ち着いたわ。 一緒に脱出しましょう」

492以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:30:20 ID:0q8CGXTE
現状、2人が分かっている徘徊者の情報

・警鐘の徘徊者
提灯と鐘を持つ老人の姿をした徘徊者。
顔には能面をつけている。
水たまり状態で索敵し、高速で接近してくる。
実体化すると鐘を鳴らしてまわりの徘徊者を呼び寄せる。

493以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:31:25 ID:0q8CGXTE
善子「ここは鍵がかかってるわね」

ルビィ「鍵を開けるよ」ガチャ

善子「……何もない部屋ね」

ルビィ「レバーがあるよ」

善子「このレバーを引くと……」ガチャ

カラカラカラカラ……


善子「下の水門が開いたわね……」

ルビィ「あそこに勾玉があるよ」

善子「これであそこにある勾玉が取れるってわけね……やっぱり鍵を使うだけじゃ勾玉を入手できないようになっているわね……」

ルビィ「うゆ、あっちに行って勾玉を取ろうよ」

善子「ええ……」


私たちは下の階で3つ目の勾玉を入手した。

494以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:32:41 ID:0q8CGXTE
善子「ずいぶん近いところに4つ目の勾玉があるわね」

ルビィ「うゆ、真ん中においてあるね」

善子「それじゃあ取りにいくわよ」

ルビィ「うゆ」


バァァァァァァァンンンン!!!!


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


善子「嘘でしょ!? ここも罠部屋なの!?」

ルビィ「善子ちゃん!!」

ルビィは咄嗟にカメラのフラッシュを焚く!!


パシャ!!


凄まじい光で神楽鈴の徘徊者は怯んだ!

ルビィ「善子ちゃん、勾玉を取って逃げよう!」

善子「ありがとうルビィ! 助かったわ!!」

495以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:33:13 ID:0q8CGXTE
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


善子「まだ追ってくるわよ!」

ルビィ「うゆ!」

善子「ここの扉を閉めて時間稼ぎするわ! 扉を蹴破ってる間に走って逃げて物陰に隠れるわよ!」


ガラガラ……


私は扉を閉めた!


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


ダン! ダン!ダン!ダン! ダァァァァンン!!


バァァァァァァァンンンン!!!!


シャンシャン!! ……シャン……シャン……シャン……シャン……

496以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:33:46 ID:0q8CGXTE
善子「はあ……ッ はあ……ッ」

ルビィ「はあ……ッ はあ……ッ」

善子「どうやら逃げ切ったみたいね……見失ったみたい」

ルビィ「うゆ……」

善子「でもこれで勾玉4つ……あと1つで脱出できるわ」

ルビィ「うん!」


私とルビィは暗闇の中を進む……

497以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:34:30 ID:0q8CGXTE
善子「それにしても暗いわね……下へ降りる階段がある……」

ルビィ「下は水が張り巡らされてるね……」

善子「ええ、襲われればひとたまりもないわ」

ルビィ「ここを通るしかないよね」

善子「ええ……」


善子「……」バシャバシャ

ルビィ「……」バシャバシャ


善子(かなり疲れてきている……)

善子(ここで襲われれば逃げ切れない……)

善子(はやく上に上がる階段を見つけなきゃ……)


ドタドタドタドタドタドタ……

498以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:35:08 ID:0q8CGXTE
ドタドタドタドタドタドタ……


ルビィ「善子ちゃん……」

善子「大丈夫よ、上の階だわ……」

ルビィ「分かりにくいね……」

善子「ええ、下に降りてこないといいわね」

ルビィ「ぴぎぃ……」


霊魂のような存在も何かをつぶやきながら近くを通っているようだ……

ボソボソという声が移動しているのが聞こえてくる……


善子「コンパスが狂うわね……勾玉が4つあるから、5つ目は祭壇の近くで取りたいわ」

ルビィ「祭壇に向かいたいのにコンパスが使えないと移動しにくいね……」

499以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:35:48 ID:0q8CGXTE
善子「上にのぼる階段……ようやくね」

ルビィ「うゆ……」


私とルビィは階段をのぼり、先に進む……


ルビィ「善子ちゃん、あの開けたところに勾玉があるよ!」

善子「また罠かしら……慎重に近づくわよ……」


私とルビィは勾玉を取りに近づく……


善子「……」

ルビィ「……」


善子「何も起こらないわね……」

ルビィ「うゆ……」

500以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:36:20 ID:0q8CGXTE
善子「じゃあ5つ目の勾玉を取るわよ、祭壇に向かいましょう」

ルビィ「うゆ!」


勾玉を取ったその時だった!


オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛アアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!


どこからかあの化け物の叫び声が聞こえてくる!!

憎悪を振りまく影がいる!


ルビィ「善子ちゃん……ッ!!」

善子「嘘でしょ……」


おぞましい○気が近づいてくる……

501以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:36:53 ID:0q8CGXTE
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


その叫び声はこちらに向かってきている!


善子「あの時……前の回廊でも5つ目の勾玉を取ったときあの化け物は現れたわ」

善子「今回も現れるなんて……」

ルビィ「善子ちゃん……!!」


善子(完全に油断していた……あれだけ注意を払ったつもりだったのに……)

善子(しかも今回はまずい……まだ祭壇の位置を把握していない……コンパスも使い物にならない……)

善子(祭壇に向かえばいいはずだけど……どっちに逃げればいいのか分からないわ……)


ルビィ「善子ちゃん……ッ!!」

善子「ルビィ! カメラの用意をして!」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!

502以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:37:24 ID:0q8CGXTE
善子「カメラはあと何回使える!?」

ルビィ「あと1回だよ!」

善子「1回……そのうちに祭壇を見つけるの……ッ!?」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


ルビィ「ぴぎぃ!! 善子ちゃん!! もう来てるよ!!」

善子「ルビィ、走って!!」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!

503以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:37:57 ID:0q8CGXTE
善子「はあ……ッ はあ……ッ」

ルビィ「はあ……ッ はあ……ッ」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


ルビィ「もう追いつかれちゃうよ!!」

善子「待って!! あの棚に手鏡がある!! あれでワープするわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


私たちは手鏡を拾うとすぐにワープする!!

一瞬で景色がどこかの部屋へと変わる。

どうやら別の場所に移動できたようだ。

504以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:38:44 ID:0q8CGXTE
善子「はあ……ッ はあ……ッ」

ルビィ「はあ……はあ……これで大丈夫?」

善子「いいえ、あいつはどこまでも追いかけてくる……ここに来るのも時間の問題よ!」

ルビィ「ぴぎぃ!! どうするの!!」

善子「コンパスはまだ使えない?」

ルビィ「うゆ、まだダメだよ」


善子「身を守れるものは……あとカメラ1回だけ……そしてコンパスは使えない……これで祭壇まで行く……」

ルビィ「無理だよそんなの!!」

善子「やるしかないのよルビィ! やらなければ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」

505以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:39:56 ID:0q8CGXTE
ルビィは持っていた猫の鈴を握りしめ、祈るように言う……

ルビィ「お願い、猫しゃん……ルビィたちを助けて……」

善子「ルビィ……」

そのときだった……


シャリン……


私たちの目の前に光の球が現れた!

善子「これは……あの時の光……私たちを助けてくれたあの光だわ」

ルビィ「猫しゃん……」

宙に浮かぶ光の球はどこかへと移動しはじめる……

善子「私たちを導いてくれるの……?」

ルビィ「ついて行こう善子ちゃん!!」

善子「ええ、今はそれしかないわ!」


私とルビィはその光についていく……

506以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:40:27 ID:0q8CGXTE
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


善子「来てるわね」

ルビィ「うゆ……」

善子「カメラを用意して!」

ルビィ「できてるよ!」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!

507以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:41:23 ID:0q8CGXTE
善子「来たわ!! カメラを使って!! 今よ!!」

ルビィ「えい!!」


パシャ!!


オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛アアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!


凄まじい光に化け物は叫び声を上げて怯んだ!


善子「今のうちにあの光の球についていくわ!」

ルビィ「うゆ!!」

508以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:42:04 ID:0q8CGXTE
光は暗闇を照らしながら進む……


すると祭壇のような場所へと辿り着いて消えた……


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


善子「着いたわ!! あいつが来てる!! はやく勾玉を納めるわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


私たちは集めた5つの勾玉を祭壇に納めた!


おぞましい○気はどこかへと消え去った……


そして目の前の扉が開いた……

509以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:42:36 ID:0q8CGXTE
善子「とにかく中に入りましょう」

ルビィ「うゆ!」


私とルビィは走って奥へ行く。

すると……


バタン!!


後ろで扉が閉まった……それと同時に!


バァァァァァァァンンンン!!!!


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


目の前の扉を蹴破って神楽鈴の徘徊者が飛び出してきた!!

510以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:44:26 ID:0q8CGXTE
善子「嘘でしょ!? 後ろの扉は閉まってるし逃げられる場所なんてないわよ!?」

ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!!」


シュィィィィィンン


突然、神楽鈴の徘徊者は謎の光に包まれる!

そして神楽鈴の徘徊者は倒れて動かなくなった……


善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……怖かった……」


善子「何が起きているのかしら……」


私たちは奥へと進んでいく……

511以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:45:03 ID:0q8CGXTE
奥へ行くと祭壇のような場所に出た……

そしてそこには畳と布団があり、誰かが布団に横になっている……


ルビィ「誰だろう……」

善子「眠っているのかしら……?」


そのとき、後ろから声が聞こえた。


???「私のお母さんよ」


振り向くとそこにはあのときの謎の少女がいた……

512以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:45:38 ID:0q8CGXTE
善子「あなた……」

ルビィ「この人、あなたのお母さんなんだね」

謎の少女「もうずっと長い間眠ったまま。その魂は体を離れ、底知れぬ憎悪に苛まれながら、今もこの世界を彷徨い続けている」

謎の少女「何とか体は維持していたけど……あの子が器を壊してしまった」

善子「Kのことね……」

謎の少女「もう時間がない、今すぐ生き返らせなければ……」

善子「どういうこと……?」

謎の少女「魂と体を一体化させるためには、途方もない力が必要なの。あの器で普通の魂を集めても、お母さんの体を維持するのでやっと」

謎の少女「だから、これを被せた」


少女が手をかざすとあの能面が現れた。


謎の少女「この面を被れば、魂の力が何倍にも増幅される。元となる魂が強ければ強いほどね」

謎の少女「その力の大きさゆえに大抵は自我を失い、人ならざる者へと変異する。でも、そういう者達は普通の魂を集めるのに役に立った」

謎の少女「あの子は素晴らしい魂を持っていた。あんなに自我を保っていられるなんて、正直驚いたわ」

ルビィ「Kしゃん……」

513以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:46:12 ID:0q8CGXTE
謎の少女「本当は、増幅した魂を収穫したかったけど……分かるでしょ、もう時間がないの」

謎の少女「あなたたちには、今○んでもらうわ……」

善子「……ッ!?」

ルビィ「ぴぎぃ!?」


謎の少女はそう言って手をかざす……


ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!」

善子「ここまでなの……ッ!!」


しかし何を思ったのか、少女はその手を下ろした……


謎の少女「……」

善子「……?」

謎の少女「……まあいいわ……素の魂なんて、足しにもならない」

ルビィ「……え? 助かったの……?」

謎の少女「そこで見てるといい」

514以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:46:57 ID:0q8CGXTE
善子「何をするつもり……」


少女は横たわる彼女の母親の前に進み、力を使う……

緑色のエネルギーのような光が母親に注がれていく……


母親を蘇らせようというのだろうか……


しかし……


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


その光の中から異形の姿をした怪物が飛び出してきた!


善子「なに……ッ!?」

ルビィ「ぴぎぃ……」


謎の少女「なんで……!? こんなはずじゃない!! 待って、お母さん!!」

515以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:47:41 ID:0q8CGXTE
善子「なんだったの……」


見ると目の前から少女と母親はいなくなっていた……

あたりは崩壊し、岩が落ち、ところどころ炎が上がっている……


???「遅かった……」


振り返ると、そこにはあの黒猫がいた。

首には勾玉の首飾りをつけている。


ルビィ「猫しゃん、あなたが話したの……?」

猫「やっと私の声が届きましたね」

善子「猫がしゃべってる……」

猫「事態は一刻を争うので、手短に話します。私のことは、ひとまず置いておいてください」

猫「彼女は、復活に不足していた力をこの世界を構成する力で補填したようです」

猫「お陰で私の声が届くようになりましたが……この世界はまもなく崩壊するでしょう」

516以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:48:20 ID:0q8CGXTE
猫「復活のために集められた魂はどれも苦痛や憎悪によって歪んでいた」

猫「それがあの人を変えてしまいました」

猫「今のあの人は、もはや人ではありません。底なしの憎しみに呑み込まれた怪物。憎悪そのものです」

ルビィ「そんな……」

猫「あの怪物は、やがてあなたの世界に現れることになります。人の魂を食らい、さらにその力を増し、とてつもない災厄になる……」

善子「なんですって……」

猫「まだ力が弱いうちに、こちらの世界で対処しなければなりません」

ルビィ「どうやって?」

猫「この世界の礎となった27の人柱、その魂が燻っている場所があります。今なら、私でもその封印を解けるでしょう」

猫「27の人柱は膨大な力を蓄えている。とても制御はできませんが、真っ先にあの怪物に向かっていくはずです」

猫「あとは、彼らが足止めしてくれます。時間が稼げれば、あの怪物もこの世界と共に消え去るでしょう」

猫「あなたたちは、その場所まで怪物を誘導してください。道中は、私が力を貸します」

517以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:48:50 ID:0q8CGXTE
猫「上手くいけば、あなたたちを元の世界に返しましょう。 それでいいですね?」

善子「……」

猫「この首飾りを持って行ってください。あなたの身を守ってくれます。封印を解くためにも必要ですので、くれぐれも無くさないように」


そう言って猫は勾玉の首飾りを私たちの足元に置いた。


猫「私は先回りしています。また後で会いましょう」


そう言い残して猫はどこかへと行ってしまった。


ルビィ「……大変なことになっちゃったね」

善子「……ええ」

518以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:49:20 ID:0q8CGXTE
善子「話をまとめましょう……あの子のお母さんは怪物へと姿を変えた……」

ルビィ「そのお母さんはルビィたちの世界にやって来ちゃうんだよね」

善子「そうならないためにも今ここで足止めをする……」


善子「……ええ…………」

ルビィ「うゆ……ルビィたちに出来るかな……」

善子「やらなければならないわ……絶対に……」

ルビィ「うゆ……」


私たちは歩みを進める……


祭壇の奥にあった鏡から別の場所へと移動した……

────
──

519以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:49:50 ID:0q8CGXTE
復活した少女の母は

少女が望んでいた、かつての母の姿ではなかった


強大な力を得て肥大化した憎悪は

今、全ての命を食らい尽くさんとしている


いずれこの世界は消滅する

私たちが生き残るためにも

あの怪物を止めなければならない

520以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 12:59:07 ID:PdR/OAs.
世界観に引き込まれる

最後まで頼む

521以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:22:15 ID:1///zhAs
─???─

善子「ここは……」

ルビィ「綺麗なところ……」


荒廃した世界は夕陽に照らされ橙色に染まっていた。

建物は崩壊し、岩や鳥居は宙を浮いている。

広い荒野の地面が続いている……


善子「歩いていきましょう……」

ルビィ「うゆ……」


私たちはこの荒廃した美しい世界を進んでいく……

522以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:23:04 ID:1///zhAs
橋を渡っていくと、崖の前にあの謎の少女がいる……


善子「近づいてみましょう」

ルビィ「うゆ」


謎の少女「私は昔……人間として生きようとした」

謎の少女「でも……大切なものは全て人間が奪っていった」

謎の少女「私は、人間であることを捨て、心を捨てた。そして、数えきれない人間を殺した」

謎の少女「全ては、もう一度お母さんに会うため……そのためだけに……」

謎の少女「これで終わらせない……もう、あの時の私とは違う……」

謎の少女「今度こそ……絶対にお母さんを助ける……!」


少女の手は震えていた……そしてその震える手を握りしめる……


善子「……」

ルビィ「……」

523以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:23:49 ID:1///zhAs
オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


肥大化した憎悪がその姿を現した!

少女の母は醜い化け物へと姿を変えていた。

その姿は、浮遊する巨大な金魚のようであった……

おぞましい叫び声、魚のような外見、するどく巨大な牙……

激しい憎悪によって歪んでしまったその姿は、あの猫の言う通り、まさしく憎悪そのものだった。


善子「あれが……あの子のお母さん……」

ルビィ「そんな……こんなひどいことが……」

524以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:24:26 ID:1///zhAs
憎悪の化け物は少女に向けて金魚型の追尾弾を発射する!

ゆらゆらと揺れながら少女めがけて飛んでいく金魚型の追尾弾……


シャン!!


少女は手をかざす。

金魚たちは少女の目の前で爆発する。

着弾する前に打ち落としたようだ。


少女は鳥居の上に瞬間移動する! 彼岸花のような光が飛び散る。


しかし……


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


憎悪の化け物は鳥居ごと食い散らかし、すべてを破壊する!!

少女はたまらず崖の下へと落下していった……

525以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:25:24 ID:1///zhAs
ルビィ「ああ!! あの子が!!」

善子「ルビィ! 私たちも行くわよ!! 人柱が封印されている場所へ、アレを誘導するの!!」

ルビィ「うゆ……ッ!!」


後ろから巨大な金魚の化け物が私たちを追いかけてくる。 私とルビィは走り出した!

化け物は、地面も建物も、何もかもを食らい尽くしながら迫ってくる!!


善子「はあッ……はあッ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


ガラガラガッシャーン!!


善子「とんでもなくやばいわね! 追いつかれたらそれこそ終わりよ!!」

ルビィ「ぴぎぃ!!」


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!

526以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:26:08 ID:1///zhAs
善子「はあ……はあ……廊下みたいなところに来たわね!」

ルビィ「うゆ……嫌な予感がするよ……」


すると、私たちの足元から影ような黒い手が無数に生えてきた!!


ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!! 下から手がたくさん出てくる!!」

善子「捕まったら終わりよ!! 走って!!」


空間を切り裂くように無数の手が地面から出てくる……

私たちはそれを避けながら走る……


善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!

527以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:26:56 ID:1///zhAs
善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……今度は開けた場所に来たよ」


憎悪は自分の体から金魚型の追尾弾を無数に発射する!!


善子「あれは……ルビィ!! あの岩の裏に隠れるわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


私たちは岩の裏に隠れて様子をうかがう……


金魚型の追尾弾は着弾すると爆発して消えるようだ……


善子「あれを食らうとやばいわね……ルビィ、隠れてやり過ごしながら走るわよ!」

ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁぁ無理ぃぃぃぃ!!!!」

善子「やらなければ帰れないわ!!」


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!

528以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:27:43 ID:1///zhAs
善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」


金魚たちは私たちを追うようにゆらゆらと揺らめきながら飛んでくる……


善子「まだ走って!! あそこまで行くのよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


善子「今度は建物の中……障子がいっぱいあるわね」


バァァァァァァァァンンンン!!!!


金魚たちは障子に着弾すると障子が木っ端みじんになって飛び散る!!


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!

529以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:28:25 ID:1///zhAs
善子「タイミングを見計らって走るわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


バァァァァァァァァンンンン!!!!


善子「はあッ……はあッ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


バァァァァァァァァンンンン!!!!


善子「あの物陰に隠れるわ!!」

ルビィ「うゆ!!」


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!

530以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:29:06 ID:1///zhAs
善子「はあ……はあ……」


あの巨大な化け物は私たちの真横まで接近する……


ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!!」


キィィィィィィン


すると化け物の目が光り出す!!


善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」


善子「神通力で攻撃してきてるみたいね!! この辺り一帯を焼き尽くす光の攻撃……物陰に身を潜めてやり過ごすわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」

善子「あのおぞましい○気よりやばいわ……あれは目を合わせると呪いの力で命を削り取られたけど、こっちは光に当たるだけで体力を持っていかれる!!」

善子「物陰に隠れていれば大丈夫みたいね」

531以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:29:48 ID:1///zhAs
キィィィィィィン


善子「いい? 光が消えた瞬間に向こうの物陰まで走るわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」

善子「今よ!! 走って!!」

ルビィ「はあ……はあ……」


キィィィィィィン


善子「隠れて!!」

ルビィ「うゆ!!」


善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」

532以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:30:41 ID:1///zhAs
憎悪の化け物からの攻撃は苛烈を極める……

私とルビィはなんとかやり過ごしながら目的地へと走る!


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


善子「はあッ……はあッ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


善子「今度は建物の中ね……」

ルビィ「暗くてよく見えないよ」


シャリン……


あの光の球が現れた!


ルビィ「猫しゃん!!」

善子「あの光についていくわよ!!」

533以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:31:17 ID:1///zhAs
私たちが光の球についていくと下から影のような黒い手がまた無数に出現する!


善子「また来たわね! 走るわよルビィ!!」

ルビィ「うゆ!!」


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


私たちは走って光の後をついていく!


外へと出ると光の球は消えた……


善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」

534以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:31:59 ID:1///zhAs
善子「ここは……開けた場所ね」

ルビィ「彼岸花がいっぱい咲いてるね」


赤い巨大な鳥居が立てられ、地面は石畳になっている。

彼岸花が辺り一面に咲いている。


そして、奥に高台が見える!!

あそこが目的地だ!!


善子「あそこまで行くわよ!」

ルビィ「うゆ!!」


彼岸花が咲き乱れる地を走って進んでいく!


善子「はあッ……はあッ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」

535以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:32:32 ID:1///zhAs
高台に到着するとあの化け物が浮遊していた……

どうやら上手く誘導できたようだ!


そして勾玉の首飾りが光り出した!


化け物の下の大地に紋様が浮かび上がり、光り出す!


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


地の底から無数の巨大な手が伸びてきた!


無数の手は肥大化した憎悪を捕まえると地の底へと引っ張っていく!


謎の少女が化け物に向かって走りながら叫ぶ!!


謎の少女「お母さん!」


あの黒猫がその後ろから少女を追いかける。


猫「いっちゃだめ!」

536以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:33:19 ID:1///zhAs
少女は高台から飛び降り、化け物が引きずり込まれた地の底へと落ちていった……


善子「そんな……」

ルビィ「あの子が……」


猫「……」


猫「こうするしか方法がなかったの……ごめんなさい……ヒバナ……」


ルビィ「あの子、ヒバナちゃんっていうんだ……」

善子「ヒバナ……」


猫は少女が落ちていった地の底を見つめている……

537以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:34:01 ID:1///zhAs
猫「……」


猫「彼女はこの世界で、あまりにも多くの人の命を奪ってきました」

猫「ですが、母に会うために彼女はそうするしかなかったんです」

善子「……」

ルビィ「かわいそう……」


猫「彼女は人としての心を捨て、母のために化け物として生きた」

猫「その苦悩は想像を絶します。 彼女は、とても優しい人でしたから……」

猫「ですが……もうこれ以上、彼女が苦しむこともありません」

善子「……そうね」

538以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:34:34 ID:1///zhAs
猫「この世界も間もなく消え去り、誰かが迷い込むことも無くなります」

猫「あなたたちのお陰です」

ルビィ「……」

猫「あなたたちには、話しておきたいことが沢山ありましたが……」

猫「残念ながら、もう時間がありませんね」

善子「話しておきたいこと……」

猫「約束通り、あなたを元の世界へと送りましょう」

ルビィ「猫しゃんも一緒に脱出しないの……?」

猫「私は、この世界に残ります」

猫「この世界は、彼女の心そのもの。彼女が創ったこの世界の終わりを、見届けてあげたいんです……」

猫「あなたたちが来てくれてよかった」

善子「……」

539以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:35:13 ID:1///zhAs
猫「ありがとう……ございました……」

 
  
   
     
善子「…………ごめんなさい」

 
  
   
私たちは元の世界へと帰ったのだった……

540以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:35:51 ID:1///zhAs
─元の世界─


気がつけばあのトンネルにいた……

外からは光が差し込んでいる……


善子「……」

ルビィ「……」


ルビィ「……かわいそうだったね」

善子「……ええ」


???「ルビィちゃん! 善子ちゃん!」

541以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:36:36 ID:1///zhAs
ルビィ「……花丸ちゃん……花丸ちゃぁ!!」ギュ

花丸「ルビィちゃん!!」ギュ

善子「……帰ってきたのね、私たち」

花丸「よかったずら……本当に無事でよかったずら……」グスン

ルビィ「花丸ちゃぁ……」グスン

542以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:37:09 ID:1///zhAs
化け物と恐れられた少女は母と共に奈落へと消え

その悲願を遂げることは叶わなかった

それは、彼女が背負った業なのだろう


「もう一度母に会いたい」という少女の願いは

化け物と呼ばれるには、あまりにも人間らしく純粋なものだった……

543以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:37:40 ID:1///zhAs
善子「……ごめんなさい」

ルビィ「……善子ちゃん?」

善子「……ごめんね」グスン

ルビィ「善子ちゃん……」

花丸「……善子ちゃん…………」ギュ

善子「ずら丸……」

花丸「……マルには何があったか分からないけれど、善子ちゃんのせいじゃないずらよ」

善子「そう……だけど……」

544以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:38:12 ID:1///zhAs
善子「私には……私には、あの子が悪いだなんて、そう簡単に切り捨てることはできない……」

善子「失った命を蘇らせるなんて…………あの子のやったことは決して正しいと言えることではない」

善子「でもね、あの暗闇の迷宮はあの子の心……あの子がどれほど悲しい思いをしてきたか、すごく分かるの」

花丸「善子ちゃんは優しいから……」

善子「やっと分かったの……私、この前、あの世界から戻ってきてからずっと心の底に引っかかりを感じてた」

善子「心がなんかもやもやして……ずっと……でもようやく分かった……あの迷宮はあの子の悲しみ……きっとあのときの私はそれを感じ取ったのよ」

ルビィ「善子ちゃん……」

善子「もしかしたら私はあの子を助けられたかもしれない……そう思うの」

善子「そう考えたら……悲しくて……私がもっとちゃんとしていたら……」

花丸「善子ちゃん……」

花丸「残酷な時の流れを巻いて戻す術なんてないずら……」

花丸「善子ちゃんの心の傷を治す術も……マルには……」

花丸「……」

545以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:39:06 ID:1///zhAs
花丸「善子ちゃん……もう一度やり直せるとしたら、善子ちゃんはまた前を向いてくれる?」

善子「ええ……でも時を戻すことなんてできない……いくらあんたでも……」

花丸「マルにはそんな力ないずら……でも……」


花丸「これがあるずら」


花丸は珍しい和柄の懐中時計を握っていた……


善子「それは……」

花丸「これは……時をほんのわずかに戻すことができる時計ずら……」

花丸「マルのお寺にあった時計……書物にも書いてあった……」

花丸「1回だけしか使えない……本当は見せるつもりもなかった……」

花丸「でも……マルはこんなに悲しむ善子ちゃんを見たくないの……」

546以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:39:39 ID:1///zhAs
善子「それを使えば、あの子を助けられるの……?」

花丸「分からない……崩壊して消え去った世界まで戻るかどうかも……」

花丸「でも賭けてみる価値はある……」

善子「……」

花丸「使ってみる……?」

善子「……ええ」

ルビィ「そんな……善子ちゃん! あの世界に戻るなんて!」

花丸「オラも本当は行って欲しくないずら……」

花丸「大事な友達が危険な目にあうなんて……もしものことがあったら……オラの心は耐えられないずら……」グスン

善子「ずら丸……」

547以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:40:26 ID:1///zhAs
善子「でも私、やっぱりあの子を助けたいの! お願い! 力を貸して!」

花丸「……そう……でも約束して……必ず生きて帰ってくるって」

善子「ええ……」

ルビィ「善子ちゃん!!」

善子「ルビィ、あんたは残りなさい……一緒に来る必要なんてないわ」

ルビィ「ううん、ルビィも行くよ……ルビィもあの子を助けたいもん!」

善子「ルビィ……」

花丸「決まりずらね……オラも一緒に行くずら」

善子「でもあんたは戻った時の先にいないわよ……」

花丸「すぐに追いかけて行くから先に行っててほしいずら」

善子「……分かったわ」

花丸「……与えられた猶予を大事にしてね」

善子「ええ……きっとやり遂げる」

548以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:41:05 ID:1///zhAs
私たち3人は手をつないだ。


善子「一緒に行くわよ!」

ルビィ「あの子を助けて、みんなで生きて帰るよ!」

花丸「マルも協力するずら!」


私たち3人は時を戻す懐中時計を使った……


あの子を助けるために……再びあの世界へと戻る……


キュキュキュキュキュキュ……

────
──

549以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:41:44 ID:1///zhAs
─???─

善子「ここは……船の上……Kとの別れて、そのあと船でうとうとしていた時ね……」

善子「いま私たちは時を巻き戻してここまで戻ってきた……」

善子「花丸はいないわよね……別行動を取るつもりみたいね……ルビィ! ルビィ起きて!」

ルビィ「うゆ……ここは……」

善子「どうやらあの世界へと戻って来たみたいよ」

ルビィ「本当だ……戻って来てる……」

善子「ルビィ……やるわよ……」

ルビィ「うゆ!」

550以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:42:20 ID:1///zhAs
ルビィ「善子ちゃん、具体的には何をするの?」

善子「ここまで戻ってきたということは何か意味があるはず」

善子「でも、さっきと同じことをやったのでは最悪の未来は避けられないわ」


善子「今まで祭壇の扉を開くためには勾玉を5つ集めてきたわよね」

ルビィ「うん」

善子「じゃあ大勾玉は今いくつある?」

ルビィ「ええっと、4つあるよ」

善子「そう、4つ……あと1つあるってことよ」

ルビィ「どういうこと?」

善子「大勾玉は何かを守っている……大事な何かをね」

善子「賭けてみるのはそれよ! この先のあの不気味な回廊で大勾玉を取るわ」

善子「そして、その大勾玉でもう一つの未来をつかみ取るわ!」

ルビィ「うん……ルビィは善子ちゃんを信じるよ」

善子「私を信じてくれてありがとう、ルビィ」

551以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:43:37 ID:1///zhAs
善子「そしてあなたのことも助けるわ、猫ちゃん」

私は船首に座る猫に言う。


船はあの不気味な回廊の船着き場へと着いた……

あの猫はどこかへといなくなってしまった……


善子「いくわよ……」

ルビィ「うゆ……」


善子「いい? 今回はいつも取っている勾玉は取らないわ」

善子「大勾玉だけ取ることを考えましょう」

ルビィ「うゆ」


私たちは大勾玉を取るため前へと進む……

552以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:44:20 ID:1///zhAs
善子「本当に不気味な回廊ね……」

ルビィ「うゆ……」

善子「おそらく大勾玉は鍵のかかった部屋にあるわ」

善子「そして、特別な部屋にも鍵がかかっているはず」

ルビィ「特別な部屋……?」

善子「ええ、落とし穴の部屋を覚えてる?」

ルビィ「うん」

善子「あそこに特別な部屋があるわ」

ルビィ「そうなの?」

善子「おそらく…………あと戻りできない場所に大勾玉を置くとは考えにくいわ」

善子「そうなると大勾玉は別の場所にあって、あそこは特別な部屋ということになるわ」

ルビィ「……その落とし穴の下の部屋に鏡があれば戻れるんじゃない?」

善子「ちょっと! 急に不安になってきたじゃない!」

553以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:45:00 ID:1///zhAs
善子「でもやることは一緒よ、大勾玉を探して、見つけたら落とし穴の部屋から下に降りる」

善子「仮に見つけられなくても下に降りてみる」

善子「これでもし落とし穴の下の部屋が大勾玉の祭壇だったとしても大丈夫よ」

善子「念のため手鏡も持って行きましょう」

善子「下の部屋から帰れなくなると困るから」

ルビィ「うゆ! 分かったよ!」


私たちは暗闇の中を彷徨い続ける……


あの徘徊者たちをやり過ごして先へと進んでいく……


そしてついに大勾玉の祭壇を見つけることができた……


鬼の面が飾ってある祭壇だ……私たちは大勾玉を取った。

554以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:48:21 ID:1///zhAs
善子「これで大勾玉5つゲットよ!」

ルビィ「うゆ! 落とし穴の部屋に行こう!」


私とルビィは落とし穴の部屋に行った……

────
──

善子「落とし穴の部屋を見つけた……さあ、やるわよ……レバーを引いて下に落ちる……あそこの穴、つまり部屋に飛び移るわよ」

善子「高さはさほど高くないから落ちても大丈夫よ」

ルビィ「うゆ!」

善子「いくわよ……穴に向かって走って!!」

ルビィ「うゆ!!」


私とルビィは走りながら下へと落ちていく……

そして部屋のある穴に飛び移ることに成功した!

555以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:49:00 ID:1///zhAs
善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」

善子「ルビィ、どこか怪我してない? 足とか痛くない?」

ルビィ「うゆ、大丈夫だよ」

善子「私も大丈夫よ……さあ、中に入りましょう」


私とルビィは鍵を開けて部屋の中へと入っていく……

556以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:49:31 ID:1///zhAs
部屋の中には鏡があった……


善子「これでどこかへワープするのね」

ルビィ「うゆ、行こう」


私とルビィは鏡に触れた……一瞬で景色が変わり、どこかへと移動したことが分かる……


善子「ここは……どこかの部屋ね」

ルビィ「奥に扉があるよ!」

善子「行きましょう」


私とルビィは部屋の奥へと行く……

557以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:50:27 ID:1///zhAs
善子「また綺麗な場所に出たわね」

ルビィ「うゆ」


扉を開けると中には大きな鳥居があった。

あちこちから滝のように水が流れ落ちている。

まわりには灯りのともった石灯籠があり、洞窟の中のような場所なのに明るい。

石畳の階段の上には何かの祭壇のようなものがあり、大勾玉を5つ納めることができそうだ。


善子「行きましょう、あそこよ」


私たちはゆっくりと階段をのぼっていく。

558以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:51:20 ID:1///zhAs
善子「納めるわよ……」

ルビィ「うん!」


この世界のあちこちで手に入れた特別な勾玉……大勾玉を5つ納めると目の前の巨大な石の門が開いていく……


ゴゴゴゴゴゴゴ……


石の扉は大きな音を立てて開いた。


善子「開いたわ……」

ルビィ「すごいよ善子ちゃん! 大勾玉の秘密を解いちゃうなんて!」

善子「でもここからよ、ルビィ」


善子「あの子を助けるために、行くわよ」

ルビィ「うゆ!」

559以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:51:55 ID:1///zhAs
巨大な石の門をくぐり、中へ行くとそこには彼岸花が咲き乱れる石畳の道があった。

洞窟の中のような場所だが、灯りのともった石灯籠があちこちにあり、明るかった。

彼岸花は赤く光り、その花びらは宙へと舞っていた。

彼岸花と石灯籠による光の道が続いていた。


善子「進むわよ」

ルビィ「綺麗な場所だね」


進んでいくと小さな赤い鳥居があった。

彼岸花に囲まれ、その中央には台座と鏡が置いてあった。


善子「行くわよ……」

ルビィ「うゆ……」


私とルビィは鏡へと触れた……一瞬で景色が変わる……どこかへと移動したようだ。

560以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:52:25 ID:1///zhAs
まるで何かを守っているかのように

堅く閉ざされていた石の大扉が

重々しい音を立てて開いた


少女のこと……

不思議な猫のこと……

この世界のこと……


私たちは、隠された真実に迫ろうとしていた

561以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 07:24:32 ID:PYsN6Aj.
いよいよ聖域か…
続き期待


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