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ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですね、是非!」
1
:
Mii
:2019/03/31(日) 10:37:38 ID:iLEqj1bw
このスレは
ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですか?」
を前スレとする続編となります。
前スレをご覧になられていない方はそちらを先にどうぞ。
遅い進行のスレですが引き続き頑張っていきたいと思います。
よろしくお願いします。
パルテナ「そのほか、いくつか注意点があります。
・スレ主のスマブラfor経験は、CPU(Lv.9)とのタイマンで
勝ち越せない程度の実力しかありません。
戦闘描写に過度な期待をすると酷いことになります。
むしろ、『うわあ、この描写ニワカだな』と粗探しするくらいの気持ちで
読むようにしてください(最重要)。
・前スレ同様、いろいろとパロデイ、メタ発言が散りばめられています。
キャラが自分たちの背景情報を活用する…みたいなご都合主義は
白ける方もいらっしゃると思います。そんな時は…
別のスレに移って、このスレのことは忘れましょう。
パルテナお姉さんとのお約束ですよ♪うふふふふ」
363
:
Mii
:2019/11/10(日) 17:55:12 ID:EJfM3NDc
ゼルダ「…そう、ですね。私たちも調子に…乗って、いました。
金輪際、あの姿の貴方は見たくない。今の状態の方が好ましい――」
ヒルダ姫も、おずおずと、ゆっくりと、か細い声で問いかけます。
ヒルダ「……で、でも。その。もう、あんな暴走状態になることはないんですよね?
あの狂暴だった時のデイジーとはとても仲良くはやっていけないかもしれませんけど…!
今の、穏やかなデイジー姫となら、問題なく友達として、友人として――」
――違う。
――違う。
ロゼッタ「……違い、ますっ!!」バッ!
ヒルダ「!?」
ヒルダ姫には悪いですが、なんとか振り絞ろうとしていた声に横槍。
それでは駄目です、2人とも。全然、デイジー姫のことを想えていません。
ロゼッタ「ゼルダ姫っ!ヒルダ姫っ!失礼ながら、穏やかな状態のデイジー姫を慕い、
野性味を浴びた状態のデイジー姫を憎む…などといった使い分けは
私は…私は、承服しかねます!」
2人の方を向いて、赤裸々に想いを語る。語らなければなりません!
364
:
Mii
:2019/11/10(日) 17:56:31 ID:EJfM3NDc
ゼルダ「…どう、してですか?」
ロゼッタ「どちらも、デイジー姫が人生で得てきた人格、姿ではないですか!
どちらが正義でどちらが悪だとか、優劣があるだとか、
価値のない、秘めておくべき人格があるとか…そんなこと、おかしいです!」
デイジー「……っ!」
デイジー姫が、一瞬息を、飲む。しかし、すぐに真顔に戻ります。
デイジー「……ありがとう、ロゼッタ。私をそこまで庇ってくれて。
でも、私自身、『裏の私』の逸脱ぶり、危険性は重々承知してるから。
他人に庇ってもらえるようなもんじゃない。
…だから、余計な事、しないでほしいな。
もっとも、表の方の私との友達付き合いがしたいっていう――
ゼルダ姫やヒルダ姫の願いも叶えることは無理なんだけど」
ロゼッタ「デイジー姫、貴方まで、なんてことを言うのですか!
貴方自身が否定してしまったら、何もかも――」
365
:
Mii
:2019/11/10(日) 17:58:44 ID:EJfM3NDc
デイジー姫が、ゆらりと、立ち上がりました。
デイジー「――――れ」
ロゼッタ「……え?今、なんと――」
デイジー「――――黙れっ!」ゴウウウッ!!
ロゼッタ「…………なっ!?」ゾワッ!
ヒルダ「…ひっ!!!!」カキーン!
ゼルダ「…嘘……!ま、まさか、貴方――!!」
デイジー「何?ビックリしたか?所詮、同じ『私』だからな。
『裏の私』の思考をトレースし、殺気を真似ることくらい…できるさ。
まあ、自己暗示不足のせいで、戦闘力は底上げされてないけど、さ」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
366
:
Mii
:2019/11/10(日) 18:00:53 ID:EJfM3NDc
まさか、表の状態のデイジー姫でも、この位の造作ならできる、だなんて。
そのまま、猛烈な眼光、殺気をもって私を睨み据えます。
たちまち、私は、凍えきってしまいます。
ロゼッタ「…………くっ――」ジリッ
デイジー「だから、無駄なことはやめろ。
ゼルダ姫たちと同調するのも、当然許さない。
私とは…そうだ、言ってみれば今後はビジネスパートナーとして、
最低限の助け合い、利害一致による協力関係さえあれば――」
ロゼッタ「――――う…あ…………」ガクガク
自分の意志が、呑み込まれていく。
強者に従うまま、喉元で意見が押し戻される。
わたし、には。どうする、ことも――。
367
:
Mii
:2019/11/10(日) 18:02:48 ID:EJfM3NDc
――――それで、いいの?
ロゼッタ(…………っ!!)
よいわけが、ありません。
――――ママは、そんなに、弱い人じゃ――ないよね?
――――困っている人のためなら、人一番頑張れる、人だもん。
ロゼッタ(…………)
ロゼッタ(……………………)
ロゼッタ(…………………………………………ありがとう、サヤカ。
もう少し…いえ、まだまだ――私は、頑張れる!)
368
:
Mii
:2019/11/10(日) 18:04:29 ID:EJfM3NDc
ほんのちょっと、夢の世界にでも飛び立っていたのでしょうか。
一瞬だけ下を向いて、小さくひとつ、息を吸って、吐く。
目の前に立ちはだかる、デイジー姫を。
顔で怒って、心で泣いている、彼女を、しかと、二つの眼で睨みつけて。
デイジー姫が、私を、そう睨みつけるように――!!
ロゼッタ「――いい加減に、しなさいっ!!!!!」ギンッ!!
デイジー「――――っ!?」
デイジー姫の、信じられないという感じで面食らう顔。
それに優越感を得るわけでなく、考えを改めようともせず。
私は、気持ちと気合をありったけ篭めて、声をデイジー姫にぶつけます――!
369
:
Mii
:2019/11/10(日) 18:07:20 ID:EJfM3NDc
ロゼッタ「デイジー姫!結局貴方は、やはり私たちのことを信じてくれていない!
自分ひとりで何もかも判断して、全部背負って!
私たちの言葉に耳を塞ぐだけ!
自分の気持ちを、分かってもらおうとする努力を怠って!
心配でならない私たちの気持ちを、理解する努力を怠って!
ならば、こちらにも考えがある!
幾ら嫌だと、関わりたくないと駄々をこねても!
救いの手を、声を、拒絶しつづけ切り裂き続けても!
手を差し伸べ続けることを、決してやめない!
齧り付いてでも、羽交い絞めにしてでも、深淵の闇から引き摺りだしてみせる!」
デイジー姫が、固まっています。戸惑っています。
まさか、私に反撃されるとは思ってもみなかったのでしょう。
感情の奔流に、私が呑み込まれると――心底思っていたに違いありません。
370
:
Mii
:2019/11/10(日) 18:09:23 ID:EJfM3NDc
デイジー「な、なにを急に、らしくもない――」
ロゼッタ「――らしくも」
激情に任せて、体が勝手に動く。
ロゼッタ「――ないのは」
信じられない、力が、湧いてくる。
懐かしい愛娘には、感謝、感謝です。
ロゼッタ「――貴方だ、デイジー姫っ!!」ガンッ!
デイジー「――ぐっ……何!?」ダンッ!
ゼルダ「――なん、ですって」
不意を衝いたとはいえ、激しく地を蹴って俊敏に動いた私の体は――
固く握った拳をこめかみにクリンヒットッ!
…させることはできず咄嗟に両手で受け止められたものの、
かなりの勢いを殺し切れずに、大きくズサァっと後退させる。
そのままダダッと追い縋り、全身全霊で突撃しながらの――肘突きっ!
すぐ後ろの壁に叩きつけられ、さしものデイジー姫もカハッと空気を吐きます。
そのまま、凄まじい剣幕で、伸ばした腕をドンッと彼女の肩に突き付け――。
371
:
Mii
:2019/11/10(日) 18:11:18 ID:EJfM3NDc
ロゼッタ「……………………」ウツムキ
デイジー「……ロ、ロゼッタ?」
ロゼッタ「……こひゅぅ……こひゅぅ――」ペタン
ロゼッタ「すいま、せん。電池、切れです」ゼェゼェ
ゼルダ「」
ヒルダ「」
デイジー「」
肩に押し付ける、どころか軽くタッチすることも出来ず、
火事場の馬鹿力の反動で、全身から力が抜けて…
激しくぜぇぜぇ息を吐きながら、デイジー姫の足元に膝を付いてしまいました。
ギャグ的に言うなら目がグルグル〜、の状態です。全然、格好が、付きません。
372
:
Mii
:2019/11/10(日) 18:13:33 ID:EJfM3NDc
ロゼッタ「……ごほごほっ――で、でもま、あ。
今のデイ、ジー姫、が。『表の状態』であったと、して、も。
力量差が、思い切り、あるの、ですから、ね。
とう、ぜん、でした、か――ごほっ…」
デイジー「…………」
デイジー姫が、心配そうな顔をして、私を見つめています。
手を差し伸べようとしゃがみ込もうとして、躊躇して、そんな感じ。
…仰天したせいで裏の顔のなりきりが途切れたのか、よく知る朗らかなデイジー姫です。
ロゼッタ「――――言って、おきま、すが、さっきの、私の、主張、は、本心、ですよ」
デイジー(ビクッ)
そこに映るのは、後悔、恐怖、怯え、色々な感情が混ざる表情。
まだ体が本調子ではないですが、五臓六腑を奮い立たせて、なんとかかんとか立ち上がる。
そのまま、デイジー姫に一歩一歩、ふらりふらりと近づきます。
体中痛みますが、目線は決して逸らさない。
373
:
Mii
:2019/11/10(日) 18:16:20 ID:EJfM3NDc
デイジー「…い、嫌。やめ、てよ、ロゼッタ。…こっち、来ないで!」
両腕で自身を抱きしめて、悲嘆はまだまだ尽きない様子。
ロゼッタ「やめません。デイジー姫とは、これまでもこれからも、
親友で、居たいですから」
デイジー姫が、怯えるまま後ずさる。
その分だけ、――いえその分以上に、私は歩を進め、距離を減らす。
デイジー「何度も、何度も、何度もっ!
ロゼッタ、貴方の命を奪ったのよ!?」
ロゼッタ「残機があった、とそれこそ何度言えば分かるのですか。
それに、貴方は――その回数まで、しっかり覚えてくれている。
1回1回、その瞬間を軽んぜず、脳裏に刻んだということでしょう?
むしろ、私の方が『辛い思いをさせて本当に御免なさい』ですね」
デイジー「ちが…ちがうよ、そんなに私…思いやりのある、優しい人間じゃない…………
自分の力不足を他力本願で埋め合わせようとしたロクデナシで…」
374
:
Mii
:2019/11/10(日) 18:19:03 ID:EJfM3NDc
ロゼッタ「私にとっては十二分に、優しさに満ち溢れた人ですよ?
…『表のデイジー姫』も、『裏のデイジー姫』も、ね」
デイジー「……っ!!」ハッ
ロゼッタ「私の知るデイジー姫は、そうですね…。
表では、はっちゃけていて、ちょっと仕事に不真面目で…
真面目に政務を執るピーチ姫からは頻繁に呆れられていて。
突拍子もないことを言って、周囲を振り回したりして。
でも、どんなときでも前向きで、めげなくて、ムードメーカーで。
困難に立ち向かおう、強敵にも果敢に挑もうっていう強い意志の塊で。
ピーチ姫や私を、その元気と勇気で数多く助けて、救ってくれた。
裏では、視界に入る者すべて、思い通りにならないと済まない苛烈な人で。
最適解を妨害する者、導出に意義を唱える者には遠慮なく制裁するスタンスで。
…でも、私たちの無理強いと自分の未来とを天秤にかけて、一度決めた事なら。
たとえそれが、『表のデイジー姫』の耐え難い苦痛、苦難になったとしても、
少しでも早く私たちが経験値を積めるように、冷酷に徹することができて。
自分本位のようでいて、あくまで他人本位の本質は変わっていない。
おまけに、ゼルダ姫も白旗を上げる、凄まじい戦闘力――
これを遺憾なく発揮できる、素晴らしいファイターであることに気付かされました。
……私は、1人の友人として、とても嬉しく、誇らしく思います」
375
:
Mii
:2019/11/10(日) 18:21:33 ID:EJfM3NDc
デイジー姫が、目尻にぎっしりと、涙を蓄えています。
どんな葛藤が、これまであったのか。私などには知る由もありませんが。
優しく、優しく。デイジー姫を、ふんわりと抱き締めました。
今は、これだけで、十分でしょう。
ロゼッタ「ですから。親友でいられないだなんて、
悲しいこと、言わないでください。寂しいこと、言わないでください。
私たちはそんなこと耐えられませんし、貴方だってきっと耐えられない。
これからももっと、デイジー姫のことを知っていきたい。
デイジー姫に、私たちのこと、もっともっと知ってもらいたい。
呆れられたり、時には喧嘩することもあったりするでしょうが、
ずっと親友でいたい。
――この願い、どうか叶えて頂けないでしょうか?」ギュッ
デイジー「――――――――う―――あ――――――――」
ロゼッタ「最後に決めるのは、『表のデイジー姫』でも、『裏のデイジー姫』でもない。
全部ひっくるめて、貴方が決めちゃってください、『デイジー姫』!」
デイジー「――――――――――――――――――――――――
うわああああああああああぁぁぁぁ――――ん!!!!!!」
堰を切ったかのように、たちまち涙雨、号泣し出すデイジー姫。
ああ、本当に、本当に……お疲れさま、でした。
376
:
Mii
:2019/11/10(日) 18:24:24 ID:EJfM3NDc
ひっく、ひっくと、デイジー姫は私の腕の中で、まだまだ泣き続けます。
デイジー「グズッ…マリオに、縋って、わだじ、強く、なったの。
厳しい、条件付きとはいえ、確かに、強く、なったの。
でも、お父様亡き後のサラサ・ランドで政務に本格的に取り掛かってみたら…
性格の苛烈さが仇となって…表の私がびっくりするくらい、裏の私に怪我を貰う人たちが続出して!
もともと、それほど仲の悪くなかった大臣や役人たちにまで、愛想尽かされて!
お城に生き残った1割の、更に半分が下野しちゃって!
一体私、何をやってるんだろうって悔やむばかりでぇっ!!」
ロゼッタ「…今は、どうなのですか?」
デイジー「……私のこの二面性を受け入れてくれている人――
そんな人たちだけで、ほぼ全ての役職役員が構成されてる。
そのおかげで、ようやく軌道には乗り出したけど、でも…!」
ロゼッタ「なら、よいではないですか。デイジー姫のことですから、
苛烈になりながらも真面目に改革を図ったのでしょう?
理屈で負けているのにそれに異論を唱えて、女王に反撃されて。
それで下野するというのなら、それまでの人材だったということですよ」
ゼルダ「ロ、ロゼッタ。施政者でないとはいえ、ズバッと斬りますね…。
ヒルダ姫、彼女の言い方を真に受け過ぎてはなりませんよ。
上に立つ者としては、清濁併せ持ち、吟味に吟味を重ねて…」
ヒルダ「は、はい、わかったようなわからない、ような…」
むう。そんなこと、今言わなくてもいいじゃないですか。
377
:
Mii
:2019/11/10(日) 18:27:01 ID:EJfM3NDc
ロゼッタ「デイジー姫。ともかく、貴方が『仮面の姫』となるすべを身に付けたことは、
何ら恥じるべきことではない、と私は思います。むしろ誇るべきです。
ただ、仮面という表現の仕方はちょっと違いますね。
どんな姿であろうとデイジー姫なのですから。切り離すことなどできないのですから。
そこを正々堂々と主張して主張して、認めさせればよかったのですよ。
ええ、認めさせてやりましょう!私も微力ながら、協力させていただきます。
困ったときは、いつでも仰ってください」
デイジー姫は、泣きながら、こくこく、とうなずくばかり。
ロゼッタ「離れ離れだなんて提案は撤回してくださいね。
これからも、よろしくお願い致しますね!」
デイジー「うんっ!――うんっ!!ロゼッタが親友で――本当に、よかった」ポロポロ
378
:
Mii
:2019/11/10(日) 18:29:58 ID:EJfM3NDc
ゼルダ姫とヒルダ姫も、思わず貰い泣きしています。
これで、一件落着といったところですかね。
ロゼッタ「それでは、とりあえず朝食としましょう。
皆さん、お腹がすいたことでしょう?
デイジー姫も、いっぱい食べて、元気になって下さいね!」
デイジー「うんっ!――うん!!」ポロポロ
ロゼッタ「さあ、私たちの友情も雨降って地固まる。弾みも付きましたし、
明日からの特訓も、是非お願い致しますね、デイジー姫!
少しでもデイジー姫のご期待に沿えるよう、全力を尽くします!」グッ
デイジー「うんっ!――うん!!
――――――――――――――――うん?」ピタリ
ゼルダ「うん?」
ヒルダ「うん?」
379
:
Mii
:2019/11/10(日) 18:33:40 ID:EJfM3NDc
デイジー「……ごめん、それって、どういうこと?」
はて、デイジー姫が泣き止んで、素の状態に戻っています。
それは嬉しいのですが、一体どうしたというのでしょう。
ロゼッタ「え?ですから……
前の日から自己暗示が必要、発動したら就寝まで効果が持続するということは…
あの特訓、1日おきになら問題なくできるということでしょう?
効率はもともとの予定の半分ですが、それでも十分やる価値はあると思います!」フンスッ
デイジー「ファッ!?」
ゼルダ「」
ヒルダ「」
380
:
Mii
:2019/11/10(日) 18:37:19 ID:EJfM3NDc
ゼルダ「じょ、冗談ではありませんっ!もう、あのような拷問はこりごりです!
どんなことがあろうとも、デイジー姫を暴走させてはならない!」マッサオ
ロゼッタ「私の話をちゃんと聞いていましたか?
そういう、二面性の一方を否定すること自体が誤りなのですよ?」
ゼルダ「い、いえ、流石にそれとこれとは話が別でしょう!?
特訓に本気にさせることはよろしくない、と言っているのですよ!!」
デイジー「そ、そーだよロゼッタ!今回ばかりは、ゼルダの主張が100%正しいよ!」
ヒルダ(こくこくこくこく)
ロゼッタ「むむぅ…では、私だけでもいいので鍛えて頂けませんか?
そのように自己暗示をすれば解決するのですよね?」
デイジー「ま、まあ、ロゼッタのみに絞った特訓をするって自己暗示くらいなら、
できなくはない、とは思うけど…やったことはないけど…」
ゼルダ「……付き合いきれません。そんなに死にたいのなら勝手にやってください。
あとで泣いて後悔しても遅いですし助太刀も一切しませんよ」プイッ
デイジー「ゼルダぁ、ロゼッタを諦めさせるの、協力してよ…」
ロゼッタ「……………………」
381
:
Mii
:2019/11/10(日) 18:41:47 ID:EJfM3NDc
ロゼッタ「よし、なんだかワクワクしてきました!デイジー姫!
とりあえず、残りの期間を全て私に充てて頂けるのならば、
ゼルダ姫 く ら い なら実力で追い抜けますよね!頑張ります!」
ロゼッタは ちょうはつした!▼
ゼルダ「は?」イラッ
ロゼッタ「デイジー姫の指導は、ゼルダ姫 な ん か とは比べ物にならないほど
的確でお上手ですからね!最長で90日もあれば、
外の世界で何年分、いえ何十年分も特訓するのと同じ価値がありますよ!
こんな特訓を独り占めできるだなんて、なんて私は幸運なのでしょう!」ウットリ
ゼルダ「あぁん?」ギロッ
ロゼッタ「どうしたのですか、ゼルダ姫。
特訓から尻尾を巻いて逃げ出す貴方には、関係のない話でしょう?
私は勝手に強くなりますので、どうぞどうぞ、安全第一で過ごしてください」
ゼルダ「誰が逃げると言いましたか、誰がっ!
よいでしょう、そこの馬鹿な女を黙らせるために、
私も特訓を続行しようではないですか!後悔することですね!
デイジー姫、さあ、さあ、さあっ!」ズイッ
ゼルダは ちょうはつに のってしまった!▼
デイジー「ゼルダァ――ッ!?」
ヒルダ「」
382
:
Mii
:2019/11/10(日) 18:49:39 ID:EJfM3NDc
デイジー「」チラッ
ヒルダ「わわわわわ私は絶対に嫌ですからねっ!逃げますからねっ!?
後ろ指差されようと、馬鹿にされようと、断固拒否しますからねっ!!!」ズサッ
デイジー「う、うん。わかってる、わかってるから。
そんな怯えた目で私を見ないでくれるかな」
ロゼッタ「では朝食を持って参ります!私にお任せください!
みなさんはお疲れでしょうから、ここで待っていてくださいね!」
バタン。
デイジー「…ふう。参ったな、こりゃ。ロゼッタにはかなわないや。
――――――――――――――――――――――――ありがとう」ボソッ
ヒルダ「…凄いですね、ロゼッタは。…あれ、ゼルダ姫?また顔が青く…」
デイジー「今頃になって挑発の効果が解けて後悔しだしてるんじゃないかなー。
なんだったら、私からロゼッタに『ゼルダはやめておく』って伝えておこうか?」クスッ
ゼルダ「いいいいりましぇんよそんな気遣い!」ガクガクブルブル
ヒルダ「…ふふっ」
デイジー(あれ?そういえば、何かの事故で血塗れたりしたら…私って
ゼルダとヒルダの見分け、しっかり付くのかな…ま、いっか)
ヒルダ「…っ!?何ですか、この悪寒は!?」
383
:
Mii
:2019/11/10(日) 18:52:51 ID:EJfM3NDc
ロゼッタ「お待たせしました!
今朝は、割とフルーツが多めに出現してくれましたよ!
脂っこく無くて、本当によかったです!
あと、栄養のことを考えて、こちらも大量に用意しておきました!
いくらでも飲んでくださいね!お代わりもすぐ作れますから!」トンッ
トマトジュース「1人あたり2Lもあるぞ」マッカッカ
ゼルダ「…………」
ヒルダ「…………」ウプッ
ロゼッタ「…あれ?どうしたのですか、2人とも。急に顔色を変えて、口元を押さえて…
え?ちょっとトイレに行ってくる?い、いきなりどうしたのですか!?」
ダダダダダダダッ――――
ロゼッタ「何か、悪いことをしてしまったのでしょうか…?」
デイジー「そ、そうだね、私から見ても極悪非道なことをやったと思うよ」
384
:
Mii
:2019/11/28(木) 22:13:04 ID:glH1He8A
雨降って地固まる!
なし崩しで、1日おきの猛特訓をすることに。
空いた日は空いた日で、普通の特訓をしてまいります!
…と、早合点していたのですが。
デイジー「嫌われずに済んで万々歳、となったら気が抜けて……
やる気でなーい。遊びたーい。
というか、これから1日おきにあのモードになるなら、
インターバルはしっかり休む―。みんなも休め―」グダー
ロゼッタ「えっ」
ゼルダ「えっ」
ヒルダ「…?」
デイジー姫は、ベッドでゴロゴロ。だらけ切っています。
昨日の反動か、まったくもって戦闘準備をしていません。
昨日とのあまりの違いに、皆さん、目を白黒させています。
385
:
Mii
:2019/11/28(木) 22:16:21 ID:glH1He8A
デイジー「あー。もともと、火事場の馬鹿力の凄い版、だからねー。
結構次の日はくるんだよー。
だるさMAX、やる気激減、最大パワー抑制、みたいな副作用がねー。
ま、治らない後遺症みたいなのはないから、十分便利ではあるけどー」グデー
デイジー姫が、脚だけバタバタさせながら、枕に顔をうずめています。
その姿は、まるで子供のよう。微笑ましいという意味で。
ですが、私としてはちょっと不完全燃焼です。
ロゼッタ「そんな…」
デイジー「休むのも立派な特訓だよー。
万全の状態で明日を迎えたほうがいいよー」
ゼルダ「そうですよロゼッタ、戦闘狂でもあるまいし」
ヒルダ「そうですそうです」
ロゼッタ「…あれ?私、割と引かれてますか?」ガーン
そこまで言われると、なんだか、恥ずかしくなってきてしまいました。
386
:
Mii
:2019/11/28(木) 22:18:57 ID:glH1He8A
ゼルダ「しかし、そうなると…きょ、今日は一日、何をいたしましょう」ビクッ
デイジー「…別に、私の顔色伺わなくてもいいよー、はぁ…。
分かってはいるけど、トラウマはトラウマ、か。
そーだねー。私は…あ、引きこもってゲームでもしておくかー」ガサゴソ
ロゼッタ「ゲーム…?」
ふらっと立ち上がったデイジー姫が、トコトコ歩いて行って。
オシャレなリュックの中をあさって、取り出したのは――
すこしちいさな電子機器でした。それは、まるで――
ロゼッタ「…お弁当箱?」
デイジー「…あ、間違えた。これ初代ゲームボーイだった。こっちこっち…
ぱんぱかぱーん!『ニンテンドーDS lite』―!ゲーマーの必需品だねー!」
ゼルダ「その間違いは絶対におかしい」
387
:
Mii
:2019/11/28(木) 22:22:49 ID:glH1He8A
ヒルダ「ゲームって、本当の意味での携帯ゲーム機ってことですか…
現物を見るのは、初めてですが…」
まじまじと、私たちはその機器を見やります。
ロゼッタ「デイジー姫は、その『げぇまぁ』としても凄い実力をお持ちなのですか!
素晴らしいです!」
デイジー「…ごめん、ほんとごめん。調子に乗った気はしないけど
そういう言われ方をすると凄まじく恥ずかしい」カアァ
ばつの悪そうな顔をしたあと、そのままゲームをプレイする準備に入ったもよう。
専用のケースファイルに入れられた、カードのようなものをあれこれ見ていきます。
その数、10、20、…………お、多くないですか!?
ゼルダ「い、一体どれだけの数があるというのですか?」
デイジー「DS 用のソフトだけでも100以上あるよー。
他にもGB、GBC、GBA…任天堂の携帯ゲーム機用のソフト揃ってるよー。
旅のお供として常備してるんだー。
定期的に任天堂本社に裏取引しに行く甲斐はあるよー」ペラペラ
ゼルダ「」ドンビキ
ヒルダ「ゲーマー、です…」
ゼルダ姫とヒルダ姫が引いています。
388
:
Mii
:2019/11/28(木) 22:26:04 ID:glH1He8A
デイジー「なんだったら、対戦でもするぅー?
カートリッジひとつでダウンロード対戦できる機能、
備わってるソフトもそれなりにあるよー?」
ゼルダ「…そ、その。ちょっと、興味があまり……。
そもそも、ソフトはともかく、携帯機そのものは人数分なければ、
当然遊べないでしょ――」
ドサッ!
デイジー「はい、4人対戦をデフォとして、布教用の本体3つー」サッ
ロゼッタ「わぁ」
ヒルダ「」
ゼルダ「」
デイジー「経験の差は当然あるだろうけどー。
ずるっこはなしってことで、事前にレクチャーはするからさー。
あと、3対1で掛かってきてもらって構わないよー、あははー。
…ねえ、その冷めた目はやめてほしいです」
389
:
Mii
:2019/11/28(木) 22:28:39 ID:glH1He8A
3人して、顔を見合わせます。
ゼルダ「…どうしますか?正直、興味が本当にまるで湧かないのですが」
ヒルダ「でも、やってみたら案外気に入るかもしれませんよ?
そ、それに。デイジー姫には色々とご迷惑をお掛けしたことですし、
午前中だけでも、付き合ってあげるというのも…」
ロゼッタ「そうですね、この奇天烈さも、デイジー姫の持ち味です。
きっといい気分転換になりますよ。
未知の遊びにちょっと期待しています」
信じられない、という目を向けてくるゼルダ姫。
い、いいじゃないですか。
ゼルダ「…はあ、わかりました。私だけ悪者にはなりたくありませんから。
付き合ってあげましょう」
デイジー「あはは、相変わらず偉そうだねー」
ゼルダ「めめめ滅相も御座いません!」ズサァ
デイジー「それをやめいと言っとるんですが。
じゃあさ、好きなソフト、選んでちょうだいな。
任天堂の特別製だからそう簡単には壊れないけど、
あまり乱雑には扱わないでねー」
ゲームの素人たちで、あまりどういうゲームジャンルかもわからないまま、
ゲームを選ぼうとします。それをデイジー姫が遠目から、ニヤニヤと眺めます。
390
:
Mii
:2019/11/28(木) 22:32:20 ID:glH1He8A
ゼルダ姫が「幼稚な絵ですね…」と思わず呟いて。
デイジー姫が「そういったゲームにこそ掘り出し物は山ほどあるのー」と、のほほんと答えます。
ヒルダ姫は、どちらかというと数に圧倒されていて、あたふたして決めれられない。
さて、私も、面白そうなものを頑張って選んでみましょうか…。
ロゼッタ「……あっ!これにします!なんだか、面白そう!ティンと来ました!」
デイジー「お、ロゼッタは決断力があるねー。どれを選んだのかなー?」
ロゼッタ「これです!」サッ
TETRIS「デデーン」
デイジー「」
ロゼッタ「デイジー姫?一体どうしたのですか?」
デイジー「……組合せ変更。
ロゼッタ1人に対して私たち3人、のチーム戦ねー。
それじゃあ、簡単にルールと戦術をレクチャーするよー」
ロゼッタ「!?」
391
:
Mii
:2019/11/28(木) 22:35:36 ID:glH1He8A
ヒルダ(…………えっと、これをこうして…あれ、ラインが消えてくれません。
…ああっ!あんなところに隙間が!どうリカバリすれば…!)ピコ ピコ
ゼルダ(ふむ、とりあえず一筋だけ残してしっかり埋めて、ホールドしておいたIミノで
テトリス消しを行う。この繰り返しですね。…あまり作戦はないのでは。
ロゼッタ虐めになってしまいそうですね)ピコピコ
デイジー(T-spin double!からーの…T-spin triple!ついでにテトリスいっちゃうよー!
悪いね、初心者といえど――空間把握能力の高いロゼッタ相手だから、
ちょっと…いや、むっちゃくちゃ本気出すよー!これでどうだー!)ピコピコピコ
ロゼッタ「T-spin triple , T-spin triple――テトリス――10REN――
T-spin triple, T-spin triple, 15RENパフェ――
T-spin triple, T-spin triple, 気分転換に17REN――」シュババババ
デイジー「ぎゃああああああ!この子、プレイ歴5分の癖に、
既に基本ハードドロップしか使ってないぃー!」チュドーン
ヒルダ「あ、負けちゃい…ました」
ゼルダ「」
392
:
Mii
:2019/11/28(木) 22:42:06 ID:glH1He8A
ロゼッタ「なるほど、T-spin triple back to back T-spin tripleを毎度しっかり仕掛けながら、
残りのミノで臨機応変に攻撃するゲームなのですね。面白いです!」パアアアア
デイジー「違う、違うよ!?その安直な作戦が超速で100%決まりまくるのは
ロゼッタだけだからね!?
何が悲しくて、『10秒おきの13段攻撃のついでで』通常攻撃を食らわなきゃいけないのさ!?
ち、違うゲームにしよう、ねっ!?」
ロゼッタ(シュン)ションボリ
ロゼッタ「…では、こちらで」サッ
デイジー「…うん、ごめんね、無理言っちゃってー。
でも、さすがにもうこんなことには…」
ぷよぷよ「 セー↑ ガー↓ !」
デイジー(アカン)
393
:
Mii
:2019/11/28(木) 22:43:45 ID:glH1He8A
デイジー「フィバ伸ばしなんかさせてられっか!
ええい、怖いけど通ルールで勝負だー!
ゼルダにヒルダ、波状攻撃を仕掛けるよーっ!」ピコピコ
ゼルダ「は、はい!えっと、これで…5連鎖、ですか?」ハッカ!
ヒルダ「2連鎖ダブル、です!」ハッカ!
デイジー「モタモタしてるけど…呑み込みが結構早いね、いいよ!」
ゼルダ「いくら初心者といえど、ハイラルのトップですから。
階段積み、とか鍵積み、とかいう組み方くらい、楽に覚えられますよ」フフン
デイジー(なんだか微妙にシュールなことをのたまうゼルダでした)
ロゼッタ「ぐっ、このジャブは食らっていられません!
仕方ありません、対応します!えい、それ!」ハッカ! ハッカ!
デイジー「よしっ、大きく形が崩れた!卑怯と言いたいなら言うがいい!
はいっ、5連鎖!もう主砲を撃つしかないよ!」ダンッ!
ロゼッタ「…仕方ありません。10連鎖、参ります!」ハッカ!
394
:
Mii
:2019/11/28(木) 22:50:31 ID:glH1He8A
ゼルダ「じゅ、10連鎖!?私たちではとても対応できませんよ!?」
デイジー「まっかせなさーい!そのくらいなら――ほい、ほいっと。
それっ、おっかえしだー!11連鎖くらい行ったでしょ!
主砲を撃たせて撃ち返す!これがこのゲームの醍醐味だ!」ハッカ!
ロゼッタ「正確には10連鎖ダブルみたいですね!」シュババババ
デイジー「…お前さん、いつ凝視してたんや」
ロゼッタ「まあ、これでも返されてしまうので…」シュババババ
デイジー「そ、そうだよね!…って、え、なに、そのミラクルな不定形の繋ぎ方…………
いやもっと千切ろうよ、おかしいよ!?」
デイジー(あ!でも、このままなら折り返しで1個足らない!連鎖数がガクッと落ちるよ!
気付いていないみたいだ!にひひひひ…)
ロゼッタ「発火、間に合いましたっ!」カチッ!
ヒルダ「……あ、13段目から青が落ちてきました」
デイジー「え゙」
ゼルダ「ま、まさか最後まで繋がって…」
ロゼッタ「17連鎖ダブルで返します」ババババババヨエーン!
デイジー「」👑👑
395
:
Mii
:2019/11/28(木) 22:53:15 ID:glH1He8A
ヒルダ「」👑👑
ゼルダ「」👑👑
デイジー「ははははは」
ゼルダ「ふふふふふ」
ヒルダ「…グズッ」
ロゼッタ「…あ、あの?」
デイジー「……やってられっかー!!落ちゲー禁止ぃ!」
ゼルダ「異議なし!」
ロゼッタ(シュン)ションボリ
396
:
Mii
:2019/11/28(木) 22:57:36 ID:glH1He8A
ボンバーマン「バーイ ハドソンッ!」
デイジー「…ふふふ。死にたいらしいな。殺してやるよぉー」ボムッ ボムッ
ロゼッタ「あ、あの!デイジー姫!
どうして私ばっかり爆弾で狙うのですか!?
ちょ、ちょっと!蹴ってくるのはやめてください!
嫌ぁ!なんだか微妙に溜めてありますよ!?」ダダッ
ゼルダ「何を言っているのですか、今は個人戦でしょう?
デイジー姫の攻撃軌道上で貴方がノロノロしているだけでしょうに」ダダッ
ヒルダ「しかし、ロゼッタ。
空間把握で、爆弾の位置くらい…らくらく察知できるはずなのでは?
…というより、リアルタイムの操作ゲームなら敵なしのはずなのでは」
ロゼッタ「互いに独立した空間情報が戦術のほぼ全てを占めるゲームなら、ですね!
残念ながら、皆さんの爆弾数や特殊能力、更に設置された爆弾の火力など
覚えていられません!互いの干渉領域も被り過ぎています!」アワワ
397
:
Mii
:2019/11/28(木) 22:59:07 ID:glH1He8A
デイジー「…………どれ?」ボムッ
ロゼッタ「ひっ、爆弾!逃げないと――きゃあああ!?」ウワァー
デイジー「あらー、私の爆弾の火力を過大評価して逃げようとするあまり
無理して爆風につっこんでるー…って、うわぁ!?」ウワァー
ゼルダ「よそ見するデイジー姫にお土産です…あ、キックがばら撒かれましたね。
拾いに行きま――」フフ
ヒルダ「壁越しグローブ、えいっ」
ゼルダ「」ドカーン
ヒルダ「フッ」
ゼルダ「やってくれましたね、ヒルダ姫――っ!」ワナワナ
ロゼッタ「こ、これが友情破壊ゲーム…!」ブルッ
398
:
Mii
:2019/11/28(木) 23:01:54 ID:glH1He8A
北京オリンピック「On your mark...」
パアァン!
ロゼッタ「はあああああああっ!!」ガガガッ
デイジー「はははっ、遅いおそーい!そして私のソニックは速いぞー!」ガガガガガッ
ロゼッタ「ハァッ…デイジー姫っ!おかしいです、このゲーム!
マリオが…マリオがっ!100メートル走るのに10秒以上掛かっています!
まるで…まるで一般人ではないですか!」ガ゙ガガッ
デイジー「そこは許してあげてちょ」
ロゼッタ「ま、まさか世界の圧力が掛かっているとでもいうのですか…!恐ろしい…!」ゴクリ
ゼルダ「これは酷いですね。デイジー姫、貴方、遅すぎますよ。
100メートル走るのに12秒も掛かるだなんて。スピードタイプの名が泣きますよ」
ヒルダ「アスリートとは思えない遅さですね…ピーチ姫と仲良く最下位・7位フィニッシュです」
デイジー「腕の悪さを私のせいにしないでくれるかなー」
399
:
Mii
:2019/11/28(木) 23:06:40 ID:glH1He8A
ロゼッタ「それにしても、こちらのゲームは…えっと、デイジー姫曰く、
オリンピック地方で実際に行われた大会を再現しているのですね」
デイジー「厳密には、『北京っていう伝承のみ残る地方で、もしも――
オリンピックというスポーツの祭典が開催されたとしたら』っていう
たられば的なゲームだけどねー」
ロゼッタ「…も、もしかして。いつか、私も操作キャラになったりするのでしょうか?
嬉しいような、恥ずかしいような…!
そのためには、私も大会に出るだけの力を身に付けなければいけませんね!」
デイジー「…あ、あー。そ、そうじゃ、ないかなー。うん。
かんっぜんにセクシー担当を意識されてたり、
一部スポーツ限定のゲストキャラなんていう『ありがたき名誉の差別』を食らったり、
まさかそんな未来が待ってるなんてわけないよねー」
ロゼッタ「もう、デイジー姫ったら、そんなご冗談を言って…ふふふ」
デイジー「HAHAHA、さあさあ次に行こう」サササッ
ロゼッタ「は、はい……あれ?」
400
:
Mii
:2019/11/28(木) 23:09:20 ID:glH1He8A
・
・
・
デイジー「あーそーんーだぁー!!だいまんぞーく!」バタリ
デイジー姫が、仰向けにベッドに倒れ込みます。
憑き物まるでない顔で、心の底から楽しんだよう。
ゼルダ「ちょっと待ってください。勝ち逃げなど許しませんよ!
こちらはもうスタンバイできています!」
デイジー「ゲームはやらされるものじゃないやーい」
ヒルダ(思いっきりはまっていませんか、ゼルダ姫…
ま、まあ。あまり娯楽という物に触れてきませんでしたからね。
ゼルダ姫も…私も。のめり込む素質はあるのでしょうか)
デイジー「やるとしても、私はそろそろ自己暗示に取り掛からなきゃいけないし。
今度からの暗示は、すんなりいくとは思うけどねー。
もう操作方法は分かってるだろうから、3人で対戦しといてよー」
ゼルダ「むぅ…」
401
:
Mii
:2019/11/28(木) 23:13:43 ID:glH1He8A
ロゼッタ「えっと、私はそろそろリアルタイムの画面に目が疲れてきたので、遠慮させていただきます。
一人でじっくりできるゲームがあるならば、やってみるのもやぶさかではありませんが」
デイジー「…私が言うのもなんだけど、見事にゲーマーの第一歩を踏み出してるねー。
一人でじっくりできる、かあ。じゃあ、ポケモンでもやるー?
…はい、『ポケットモンスター ブラック』!
周回用だから、セーブデータは消してもらって構わないよー」
ロゼッタ「…『ポケモン』?ピカチュウ選手やリザードン選手が該当する種族群のことですよね?
どういったゲームなのですか?」
あと、「しゅうかいよう」って、なんでしょう。…集会用?
デイジー「舞台は架空の世界観の一地方。
非力な一般人が、何十倍何百倍も戦闘力があるポケモンを、
絶対服従のマジックアイテムで捕獲して、束縛して、連れ回して、旅をする。
ポケモンに戦闘欲があることをいいことに『目と目があったら即バトル』が
暗黙の了解となっている世紀末のロールプレイングゲームだよ。
ポケモンを育てて強くして、相手からお金を巻き上げながら進んでいくんだ。
たとえ相手がジェントルマンや園児でもね」
ロゼッタ「碌でもないですね!?面白いとは思えないのですが?」
デイジー「面白いよー?限られた選択肢をうまく使って敵を倒していくのはー。
親切なチュートリアルが散りばめられてるから、やってみてよー」
ロゼッタ「はあ……」
402
:
Mii
:2019/11/28(木) 23:16:51 ID:glH1He8A
デイジー「最終的には熱い通信対戦も待ってるしー」
ロゼッタ「…対戦もできるのですか?」ズイッ
デイジー(……あ、マズった。攻略本も何もないし、
このゲーム、経験が勝敗にモロに出る類のやつだった)
デイジー「ま、まあ対戦はさておいて。私は退散するから、
ぜひプレイしてみてよー。ストーリーだけでも楽しめるし」テクテク
ロゼッタ「はい。…今日は完全に休養日にしてしまいましょうか」
ハーイ! ポケットモンスターノ セカイヘ ヨウコソ!
ワタシノ ナマエハ アララギト イイマス!
ミンナカラハ ポケモンハカセト ヨバレテイルワ
ロゼッタ「……」
ロゼッタ(世界を牛耳るマフィアのボス、みたいなものでしょうか)
アララギ(チガウワヨ)
403
:
Mii
:2019/11/28(木) 23:19:07 ID:glH1He8A
・
・
・
…もう!デイジー姫も意地が悪いですよ!
普通に競技としてポケモンバトルを楽しむ世界観があるだけじゃないですか!
まったくもう!
ジムリーダーが待ち構える、ジムという施設を回って、
最終的にチャンピオンを倒すことが目的のようですね。
道中、怪しげな宗教団体さんともお会いしましたが…。
ソシテ アナタガ サイショニエランダ パートナーハ クサタイプ ナンダヨネ
トイウコトデ ホノオタイプデ モヤシマクル オレ ポッドガ アイテヲスルゼ!
…炎は草に強く、草は水に強く、水は炎に強い。
なるほど、こういった相性ジャンケンをしっかり踏まえて行けば
戦いを有利に進められるのですね。今後は一層重要になってきそうです。
オラ! ユメノケムリ ダセ!
ヤメタゲテヨオ!
ロゼッタ「やめたげてよお!」
ゼルダ(ロゼッタが変になっています)
404
:
Mii
:2019/11/28(木) 23:20:27 ID:glH1He8A
〜翌日〜
デイジー「…さーて。
本日も、楽しい楽しい特訓、やっていこうか」カクセイ!
ロゼッタ「はい!一撃くらい入れて見せます!」フンッ
ゼルダ「……」ガクガクブルブル
ヒルダ「…私は関係ない私は関係ない私は関係ない」
デイジー「2人いるのも3人いるのも大して変わらないか。
区別するのも面倒だ、お前も付き合え」グイッ
デイジーの じこあんじの ていぎづけが ふかんぜんだった▼
ヒルダ「嫌あああああああぁぁぁぁ――――――――!!」ガクガクブルブル
405
:
Mii
:2019/12/10(火) 01:46:27 ID:NQWsVIhA
……私は、デイジー。
ようやく、本来の自分まるごと、認めてもらえた、幸運過ぎるお姫様。
…まあ、ピーチにも認めてもらってはいるが。
とはいっても。心残りがなくなって一層本腰モードとなった私に対し、
1日2日で耐性ができるなんてことは、あり得なくて。
目の前には、相変わらずの光景が、見事に広がっているんだがな。
――ゼルダ。
プライドのせいで引き下がれなくなったのが大いに災いし、また私に扱かれることに。
遠くから光の弓矢やら炎やらをぱしぱし撃つだけの、クソ詰まらない戦闘を仕掛けてくるものだから。
デイジー「せりゃ」
ゼルダ「があ゙っ…」
不意を衝いて急接近。遅い、反応が遅すぎる。何をやってる。
まだ場外の方がマシだと、自ら身を投げようと更に後退するものだから。
こちらは更に加速して、パンチ一発。
イタイ?クルシイ?そりゃ、拳が胴を貫通してるからそうだろうな。
ゼルダの背の後ろに、何度目か数えるのもだるくなる血飛沫の花が咲く。
406
:
Mii
:2019/12/10(火) 01:48:55 ID:NQWsVIhA
デイジー「酷いありさまだな、さっさと残機復活したいよな?
このまま横に腕を振るって、内臓ぐちゃぐちゃにしつつ体引き千切るから。
はい、歯を食いしばれ。さん、にぃ、いーち」
ゼルダ「――――――――っ!!――――っ!!!」ポロポロ
私の腕だけで支えられて、宙ぶらりんで。相変わらずの光宿さない眼と、痙攣した手で。
力なく、ペシペシと私の体をはたいて猛抗議の意を示すが。
やる気がないなら、お構いなし。
デイジー「フンッ」ブオォッ
ゼルダ「」ドシャァ
…なんでこうなるのか、わからないものかな。
407
:
Mii
:2019/12/10(火) 01:51:30 ID:NQWsVIhA
デイジー「お次は――」クルッ
ヒルダ「『ファントム・ユガ』召喚っ!!」パアアアア
ファントム・ユガ「WOOOOOOO――!」ズゴゴゴゴ
ヒルダ「わ、わ、私を守りなさいっ!」バッ
ファントム・ユガ「GAAAAAAAA――!」ダダダッ
ファントム・ユガの 槍突き!▼
デイジー「ぎゅっ……ポキッと」
デイジーは 穂の部分を 片手でつかんで へしおった!▼
デイジー「へえ、そんな隠し玉を覚えたのか。面白いな。
中々の図体してるし、目くらましにはなるんじゃないか?」
ヒルダ「」
408
:
Mii
:2019/12/10(火) 01:53:43 ID:NQWsVIhA
デイジー「これ、返す」ブンッ!!
ファントム・ユガ「」グサッ
ヒルダ「あ゙」ザクッ
ヒルダ「――」バタン
―ヒルダ。
少しは自分の意志で行動しようという気にはなっているみたいだが、
あいかわらず、とりあえず、逃げよう隠れようという意図が見え見え。
力ずくで捻りつぶすだけの力量差もある。話にならない。
ぶん投げた穂の切れ端が首に刺さったのは気まぐれだ。
あ、でも打開を願って成長していることは褒めてやろう。
…いや、3歩進んで5歩戻る精神状態との噂もあるな。
409
:
Mii
:2019/12/10(火) 01:55:40 ID:NQWsVIhA
そして、ロゼッタは――。
ロゼッタ「ハァッ、ハァッ……『浄化』っ!『浄化』っ!『浄化』ぁ――っ!!
ああもう!せっかく綺麗に掃除したのに、1時間でフィールドが…
元の木阿弥、赤くて黒くて何か吐かれてて…嫌ああああぁぁ!
きちゃないです!誰が掃除するというのですか!――どうせ私だけですよ!
デイジー姫は手伝ってくれませんし!お二人は気力が残っていませんしっ!
無駄に浄化の熟練度が上がっていく気がします!
3か月後の私なら、もしかしなくても――あの血濡れの私の衣装、
自力で蒼色に復元できたのではないですかねっ!?
もう終わった話ですけどっ!!」シュババババ
デイジー「……」
ロゼッタ「ああっ、ゼルダ姫!復活したそばから倒れ込まないでください!
そこまだ掃除が終わって…あああ、血がべっとりと!
目に悪いです、再復活まで待っていられません!ちょっと脱がしますよっ!
…はい、綺麗になりました!ここに置いておきますから着直してくださいね!
いつまでも下着姿で寝転ばないでくださいね!ねっ!」パアアアア
デイジー「……」
410
:
Mii
:2019/12/10(火) 01:59:06 ID:NQWsVIhA
ゼルダ「――」
ロゼッタ「…………あ、結界を破ってリンクさんが」
ゼルダ「!?」ガバッ
ロゼッタ「ウ ソ で す♪」ペロッ
ゼルダ「――――――――ちょっと殴らせなさい……!!」ゴゴゴゴ
ロゼッタ「……デイジー姫の威を借る、ロゼッタ」スッ!
デイジー「…おい」
ゼルダ「ぐぬぬぬぬ……で、デイジー様。そちら、どいて頂けないでしょうか」プルプル
デイジー(なんというか、ロゼッタの周りだけギャグ空間にでもなっているのかと
ついつい錯覚してしまうくらい…とても活き活きしている)
デイジー「その必要は、ない」ザッ・・・
ゼルダ「申し訳ございませんでした差し出がましいことを申し上げました
どうか寛大なご処置を」ガクガクブルブル
デイジー「そういうことではなくて。割とイラッと来たんで私が制裁してやろう」ドゴォッ
ロゼッタ「」ベシャッ
――そんなこんなで、不満はありつつも飽きない1日。
411
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:02:22 ID:NQWsVIhA
〜次の日〜
デイジー「いやあ、朝ごはんがおいしーい!
ロゼッタ、お代わりあるー?山盛り持ってこーい―!」パクパク
ロゼッタ「はい、いくらでも食べてくださいね!
…まあ、私が料理したわけでもなんでもないんですが」
すっかり吹っ切れたデイジー姫。元気元気、超元気といったところです。
ゼルダ「……」フラフラ
ヒルダ「――」グズッ
一方、精神的に参ったままの人もいるようです。
ヒルダ姫に至っては碌に食事を摂らずに机(修理済み)に突っ伏しています。
目に光が宿っているようにはみえません。
とりあえず、また休養日というデイジー姫のお達しが出ました。
ゲームの続きでもしましょうか。
…え?薄情じゃないかって?そんなこと…ないですよ?
412
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:04:17 ID:NQWsVIhA
デイジー「お、ヤグルマの森かあ。
もう2つ目のジムまでクリアしたんだー。
ツタージャ選んどいて、なかなかやるねー」ノゾキコミ
ロゼッタ「…今の言葉で察しました。
最初のポケモン選択で難易度が変わるのですね?
不公平なのではないですか?」
デイジー「…ちゃうねん。ツタージャが弱いんやないねん。
虫に飛行に毒に炎にトドメの氷に、
草タイプがシナリオで無駄に弱点を衝かれまくるのが悪いねん」
ロゼッタ「むう…レベルアップも結構苦労しました」
ジャノビー Lv28
ヒヤップ Lv.15
タブンネ Lv.13
チョロネコ Lv.12
ヨーテリー Lv.11
マメパト Lv.9
デイジー「バランスわるっ!?単騎同然じゃーん!
…ついでに言うと、ジャノビーのHPが危ういよ!?
ピコンピコン鳴ってるでしょこれ!大丈夫!?
倒されたりでもしたら大ピンチだよー!?」
413
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:08:08 ID:NQWsVIhA
ロゼッタ「ここのダンジョンの虫ポケモン達に苦しめられて…
で、でも、Lv.24でメガドレインを覚えたのです!
回復しながら戦えるので強いですよ!」
デイジー「どうしてそれで自信が持てるんだってばよ。
大体、このダンジョン、どこだかわかってるの?もう一度言ってみ?」
ロゼッタ「ですから、ヤグルマの森、ですよね?」
デイジー「…モンメンかクルミルかマメパトかフシデが出たらどうするの?」
ロゼッタ「…その時は体当たりで!」
デイジー「じゃあずっと体当たりだね」
ロゼッタ「え」
414
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:12:11 ID:NQWsVIhA
マメパトLv.15「くるっぽー」
あ! 野生の マメパトが 飛びだしてきた!▼
デイジー「あちゃあ、言ってる傍から…食らうとまずいよー?
逃げよう逃げよう、それか回復だー」
ロゼッタ「大丈夫です!このポケモンは防御力が低いので…
体当たりで一撃で倒せるはず!
そして、素早さも――余裕を持って勝っています!」
デイジー「そのレベル差で倒したところで大した経験値が……
……………………………………………………………
ちょっと待ったあああああああああ――――っ!!」
ロゼッタ「……え?」ポチッ
デイジー「」
ロゼッタ「もう押しちゃいま――」
マメパトの でんこうせっか!▼
急所に 当たった!
ジャノビーは 倒れた!▼
ロゼッタ「」
415
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:14:53 ID:NQWsVIhA
マメパト「どや」ポッポッポー
デイジー「…………あーあ。しーらない。下手すると全滅するよー」
ロゼッタ「……あ、あの、デイジー姫」
デイジー「んー?」
ロゼッタ「ど、どうして私のジャノビーが…先に攻撃されたのですか!?」
デイジー「そりゃ、相手の技が先制技の電光石火だから、でしょ」
ロゼッタ「…先制技?」
デイジー「……」
ロゼッタ「……」クビカシゲ
デイジー「…あー、ゲーム初心者のロゼッタには、その概念自体がなかったかー。
ターン制のバトル、対戦を繰り広げるゲームでは…往々にして、
先制技…すなわち『優先度が高い技』が設けられているんだよ」
ロゼッタ「ゆ、ゆうせんど?」
416
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:17:10 ID:NQWsVIhA
デイジー「威力の高い技は、相手に大きなダメージを与えられるから強い。
命中の高い技は、外すことなく確実にダメージを与えられるから強い。
それと同じように――
優先度の高い技は、本来の先攻後攻の関係を取っ払って攻撃できる強みを
主張することで、その他のスペックは低くてもプレイヤーに愛用されるんだ。
自分の方が先に動ける…と思ってる相手の出鼻を挫けるのは大きいよ。
…今のがその典型例だね。
ま、ゲームの世界だからこそ設定できる項目だけどねー。
たとえば現実世界のピカチュウも電光石火は使えるけど、
あくまで『非常に素早く動く』だけ。
ゲーム内のピカチュウのように『優先度+1で動く』なんて芸当は
逆立ちしたってできないよー」
ロゼッタ「……」
デイジー「とりあえず、現状を打開しよう、かあ。
一応聞いとくけど、最後のレポート、どこ?」
ロゼッタ「…………2番目のジム戦の直前です!
『かたきうち』を掻い潜ってようやく突破したのに!」サアッ
デイジー「なんでジム突破直後にレポート書かなかったんだー!!」
417
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:19:27 ID:NQWsVIhA
〜夜〜
ヒルダ「…………」
ヒルダ「……誰か、助けて、くださいよう…」シンダメ
シンと静まる、仮眠室。明かりといえば、柔らかに光る小さな電灯一つきり。
私はただ、天井を――そう、天井を。感情もなく見やります。
今日は休息日。そう、「今日」は。
明日になれば、再びデイジー姫が覚醒し。
ロゼッタは何故か喜々として、ゼルダ姫は身から出た錆で特訓に巻き込まれ。
……どうせ、私も――渦の中に囚われる、気がする。
国を背負う女王として、色々と辛いことはあるとは思っていましたが。
延々と命を弄ばれ続けることは、さすがに想定していませんでした。
少し前の情景を思い出したとたん、目の前の景色がぼやけます。
418
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:20:42 ID:NQWsVIhA
ロゼッタは、ああは言うけれど。
デイジーの、暴れる絡繰りこそ、わかったけれど。
現実は、何も変わらない。あのとき安心したのは、何だったんだろう。馬鹿みたい。
自分の意志…もとい不手際で参加する羽目になったゼルダ姫とは違って、
私は、これ以上戦う意志だって、強くなりたい意志だってないと、散々主張しているのに。
昨日だけで、何度吐いて、何度血を流して、何度命を奪われたことか。
デイジー、ゼルダ姫、ロゼッタ。誰も、私の弱さを理解してくれていない。
いいように丸め込まれた自分の境遇が…ただただ、恨めしい――!
…寝転ぶまま、涙滲ませながら、強く手を握り締めて…ドス黒い感情に、ハッとする。
こんなに暗い気持ちに、なりふり構わない気持ちになったのは、まるで――
ハイラルから聖三角を奪おうとした時、以来ではないですか。
きっと、私は何かに侵食でもされている。自分が自分でない感覚。
このままだと、コワレテしまう。スデニ、テオクレカモシレナイ。
あと2か月以上だなんて、耐えられない。
419
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:22:27 ID:NQWsVIhA
隣を見れば、顔を青くしてうなされながらも、必死に眠っているゼルダ姫。
…貴方だって、私よりはよほど、マシでしょうに。
私なんて――この瞬間にも発狂しかねないほどの動悸に、発作に、
襲われ続けていると、いうのに――っ!
きっと、今の私、酷い目をしています。
目に光が宿ったかに見えて、血走って、視界に入るもの全て否定したくなるような、目。
反対側のベッドを見れば、どうせ、気ままにすいよすいよと寝息を立てるロゼッタが……。
ロゼッタ「……………………」
ロゼッタ「……………………」
…あれ?
予想に反して、ロゼッタはしっかりと起きていました。
大きく動きこそしませんが、枕に頭を乗せ、私と「同じく」天井を見つめて…………
私と「大違いで」凛とした表情で、何か思案しています。
ヒルダ「…………」
ロゼッタ「…………」
私が横から見つめていることにも気付かず、一点を見つめたまま。
420
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:23:56 ID:NQWsVIhA
私が見つめ出してから、5分くらい経ったでしょうか。
ロゼッタ「……………………うん」
ヒルダ「……っ!!」スッ
おもむろにロゼッタが、ベッドから身を起こします。
つい、寝入った振りをしてしまいました。
つたない寝入り方でしたが、何かに気を取られているロゼッタは――
一切気付くことなく、そのままいそいそと、足音を立てずに部屋を出て行きます。
ヒルダ(…………?)
謎の行動に、ちょっと興味が湧いて、荒んだ気持ちも一時的に落ち着いて。
1分。
2分。
5分。
――――10分。
――――30分。
ヒルダ(何を、やっているのでしょうか……確かめに、行きましょう)スッ
421
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:26:50 ID:NQWsVIhA
ゼルダ「っ!…………はあっ、はあっ…!!」ガバッ!
傍にある、汲んでおいた水を一気に飲み干します。
どっと流れ出ている汗、汗、汗。
ゼルダ「…酷い、夢を、見ました、ね」ブルッ
顔をつねる。痛いです。――いっそのこと、今もなお夢の方がいいのですが。
時刻を確認。日付が変わったばかりのよう。
…あと数時間で、また地獄がやってくる。震える、体。
みっともない形相を見られたのではと我に返り、周りを見渡せば……え?
別室にこもっているデイジーが居ないのは当然として。
ヒルダ姫のベッドも、ロゼッタのベッドも、もぬけの殻。
一体、どこに消えたというのでしょうか。
422
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:29:24 ID:NQWsVIhA
仮眠室を出て、左右を確認。
外界とは閉ざされた、限られた空間…という割に、あまり全容を把握できていません。
とりあえず、フィールドへ向かってみました。…誰も、見当たりません。
不安を抱いて、見当たる扉――ひとつひとつ、開けて確認していきます。
いない。
いない。
やっぱり、いない。
少しずつ、恐れと焦りで、駆け足になっていきます。
お願いですから、誰か――――っ!!
ゼルダ「出て、来なさいよ――――っ!!」ガチャッ!ガチャッ!
ガチャッ!
デイジー「――先ほどから耳障りだ」ドゴオッ
ゼルダ「」チーン
423
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:31:12 ID:NQWsVIhA
デイジー「…ふん」ガチャリ
ゼルダ「――――」
奥の部屋まで駆けて行ったところで、既に自己暗示完了状態、
苛つき度MAXのデイジー姫に鳩尾一発、食らいました。
…貫通していませんが、生暖かい物が流れて行って、激痛です。こ、きゅ、うが――。
ふわりと意識がどこか遠くへ行って、気付いた時には傷ひとつなく。
…もう、考えるのは――やめましょう。そうしましょう。
…異常事態発生、というわけではなさそう。
それが分かったのは、不幸中の幸いでした。
触らぬ神に祟りなし、と通路を一目散に逃げ帰ろうとしたところで。
…階段?
柱の陰に隠れていて、仮眠室側からは見えなかった…階段がありました。
誘われるように――2階へと、登っていきます。
424
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:36:29 ID:NQWsVIhA
びりっ。
びりりっ。
ゼルダ「…!」ゾワッ
どうしたことでしょうか。
体が、言いようのない魔力を感じ取ります。
ですが、不快な感じではありません。
よりエネルギーの濃い方へ濃い方へと、自然と足が進みます。
どうやら、2階は…部屋数が少ない代わりに、一つ一つの部屋が
贅沢な広さを確保している趣のようですね。扉の数がグッと減りました。
…ヒルダ姫が、いました。
寝間着姿で、体も冷えかねないというのに、
扉の一つをちょっとだけ開けて、中を盗み見しているのでしょうか。
近付こうとすると、ますます魔力濃度は高まります。
…いえ、高まる、なんてものではありません。呑み込まれそうなほどです。
ですが、それでもいいと思えるくらいの、不思議な心地よさ。
425
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:38:54 ID:NQWsVIhA
ゼルダ「…ヒルダ姫、探しまし――」
ヒルダ「……」シーーーッ!
話しかけようとしたところで、特段私に驚きもしないヒルダ姫に――制止させられます。
その目は、久方ぶりに、輝いて見えました。
ちょいちょいと、彼女に促されるまま、私も、中の様子を伺います。
ゼルダ「――――――――――――なっ……………………!?」
私はその光景を、二度と忘れることはないでしょう。
426
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:41:27 ID:NQWsVIhA
そこにあった、ものは。
さながら、切り取った……宇宙。
ロゼッタ「――――――――」〜〜〜〜〜〜〜
目を閉じ、両手をなだらかに下ろし、大部屋の中央に浮かびながら。
聴こえるけれども理解のできない、重ね掛け詠唱《オーバーラップ》を紡ぎ続ける、
神秘的な風貌の大魔法使いと。
ゼルダ「……嘘、でしょ」
彼女を囲み、囲み、囲み過ぎている――
あまりにも多すぎる、大小様々な魔法陣、だったのです。
427
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:45:21 ID:NQWsVIhA
私は、これでも魔法は相当に得意な方です。
デイジー姫はそもそもまともに食らってくれないため、どうしようもありませんが…
私の光の弓矢の魔法としての完成度と言ったら、ハイラルで私の右に出る者はいないでしょう。
…リンクは、ただ単にHPが多すぎるだけなのです。
キノコ王国のファイターにしても、易々と負けるつもりはありません、でした。
たった今、目の前の光景を見る、までは。
平時の私として。一度に展開できる、まともな魔法陣…術式は、せいぜい3つ。
たった10分でも…4つ使えば数日は碌に動けず、
5つ使えば軽くない後遺症が残り、
7つも使えば確実に、魔力暴走で死に至るでしょう。
そもそも、一流の魔法使いでも、ステレオ=マジックの素質は一握り。
まともな魔法陣は、それだけで手一杯になるから「まとも」と言えるのです。
428
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:49:13 ID:NQWsVIhA
それを、目の前の「彼女」は…
気が滅入りそうになりながらも、何度も何度も数え直して…
それが錯覚でも何でもないことに気付いて、戦慄します。
ゼルダ「さ……さんじゅう――!?」
ヒルダ「…違い、ますよ」
ヒルダ姫が、ロゼッタの足元を指で示して……っ!
ヒルダ「ひときわ大きい、部屋をはみ出るほどの大魔法陣が――
床に描かれている、でしょう?…ほら、天井にも対になる物が。
…ええ。全部で…32個ですね。
正直な所、あの2つだけで通常の魔法陣10個分の負荷はありそうですけど。
私が気付いて覗き出したときから…軽く1時間は経っていますが。
理解はできないけれども耳に心地よい詠唱とともに――
これっぽっちも、『術式崩れ』が起きていません…!」
…ありえ、ない!
何ですか、この魔法のレベルの高さは!これほどまで――!
429
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:51:29 ID:NQWsVIhA
宙に浮かんだままの、ロゼッタ。
流石に全精力を詠唱に割いているためか、一向にこちらには気付きません。
激しく溢れる魔力の奔流とともに、彼女のドレスが、髪が激しく波打ちますが、
気にする様子はまったくありません。…いえ、気付いてすらいないのでしょう。
光り輝く魔法陣たちが、ガーディアンのごとく彼女を幾重にも覆い隠します。
はたと気付けば、せっせとあちこちに動いているチコたちが。
FPが不足しないよう、ロゼッタを手助けしているようです。
そのうちの1人が、休憩がてら、ふよふよと近づいてきました。
チコ「あ、ゼルダ姫が増えた―。ママの邪魔はしないでね」
ゼルダ「ね、ねえ。これは、何を行っているのかしら?」
チコ「ひっみつー!というより、僕たちも詳しいことは分からないんだ。
ただ…経験上、こうなったママは、すっごいんだよー!
絶対に、とんでもない成果を出しちゃうんだー!
だから、僕たちは喜んでママのことを応援するんだ!」
ヒルダ姫と、顔を見合わせます。
…一体、どんな「とんでもない成果」を出すというのでしょう。
彼女の魔法に見惚れて…ヒルダ姫と共に、そのまま、覗き続ける私。
2時間後も、3時間後も。
ロゼッタの詠唱が尽きることは、ありませんでした。
そして――。
430
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:54:44 ID:NQWsVIhA
〜翌日〜
デイジー(…………?)
皆の様子が、どうにも変だ。
やたら眠そうで、その一方でロゼッタをチラチラと眺める、ゼルダにヒルダ。
当のロゼッタは、何か――決意に満ちた顔で、私に話しかけるタイミングをうかがっている。
今まで通りウキウキと、なら分かるんだが。…いや、それも本来はおかしいが。
おっと、そう思ったそばから、ロゼッタがつかつかと歩み寄ってきた。
そして、いきなり。
ロゼッタ「…デイジー姫。特訓の前に、ちょっとだけ…勝負、してみませんか?」
431
:
Mii
:2019/12/10(火) 02:58:48 ID:NQWsVIhA
デイジー「…勝負、だと?」
ロゼッタ「はい。…ルールは単純明快。
今から私が、デイジー姫に攻撃を3回仕掛けます。
3回仕掛けて、1回でもまともに当たったら私の勝ち。
逆に、3回とも躱されたり防がれたりしたらデイジー姫の勝ちです。
ただし、ダメージを受けたかどうかは考慮しないものとします」
その無茶な吹っ掛けに、ゼルダが驚いている。
そうだろう、今のロゼッタと私の戦闘力差では――
3回どころか、1000回仕掛けたところでロゼッタの攻撃は当たらない。
デイジー「3打席勝負か…野球かな?
まさか、『反撃はしないでください』とは言わないな?」
ロゼッタ「うっ…本当は遠慮していただけるのなら嬉しいのですが。
ただ、反撃はともかく、そもそも私が攻撃する機会がないほど
攻め立てるのは…流石に止めてくださいね!?
あ、あと残機が減ったとしても、3回目の攻撃がまだならば
その時点で私の負けにはなりませんからねっ!?」
デイジー「…いいだろう。当然、何時までたってもそちらが仕掛けない…とかは
こっちの勝ちでいいんだな?…さあ、いつでもどうぞ」スッ・・・
何を考えているのかは定かではないが、面白そうだから…乗ってやろう。
432
:
Mii
:2019/12/10(火) 03:01:22 ID:NQWsVIhA
多少は背伸びしてしまうのも仕方ないだろう、と強者の余裕。
私に合わせて、ロゼッタもスッと構えを取る。
だいぶ様にはなってきたが…別に、昨日の今日で劇的に何かが変わったようには見えない。
ロゼッタ「それでは…まず、1発目っ!」ダッ
宣言してから仕掛けるとは…舐められたものだ!
直線的にただ突進してきて、拳を付き出すロゼッタ。
この数日で動きはよくなったが――。
余裕に余裕を重ねて、指一本で受け止める。
それもあえて小指で。
ロゼッタ「…………うわぁい」ゾッ
なんだか、非常に達観された顔をされた。
デイジー「もちろん、今のは…私を油断させるための手抜き、とかなんだろう?」
ロゼッタ「ももも、もちろんじゃないですっかー!」ビクビク
433
:
Mii
:2019/12/10(火) 03:04:31 ID:NQWsVIhA
ビクビクしながら、それでいてモチベーションは下がっていない。
一旦引いたロゼッタが、パチンと自分の頬を叩いて、気合いを入れて――。
こんどは、ゆっくりと歩み寄って、すこしずつ速めて行って――!
シュンッ!
ロゼッタ「…………2発目ぇーっ!」シュインッ!
テレポートから背後を取って、振りかぶり。
…そう、まるで、いつぞやの。
こんなことで、私が今度こそ引っ掛かると思ったのか。
多少はアクションが速くなっているといえど、無性に腹が立ってくる。
苛立ちのまま、振り向いて――拳、一貫。
ロゼッタ「――うぐっ」ボスッ ズサァッ
咄嗟に身を捩じって避けようとしたことは褒めてやるが。
その結果、胴体のかわりに肩甲骨を強打。鈍い音、破壊音。
勢いも殺せず、壁にドシンとぶつかって止まるまで…地を滑っていく。
434
:
Mii
:2019/12/10(火) 03:07:21 ID:NQWsVIhA
ロゼッタ「――っ…い…ったい、です――」ドクドク
デイジー「おう、腕が千切れなかっただけ御の字と言う奴だな。
…やめるか?今ので確実に、右肩は使えなくなったろう。
そんな体では、ますます戦えまい」
そう、諭してみたのだが――。
ロゼッタ「……ふ、ふふ」ヨロッ
ヒルダ「…な、何がおかしいのです?ロゼッタ…」
妙な笑顔をしたまま、壊れた肩を押さえつつ、ロゼッタは起き上がる。
ロゼッタ「…むしろ僥倖、といったところでしょうか。
満身創痍の方が、『使い甲斐』がありそうなので」ドクドク
また、訳の分からないことを言うものだ。
435
:
Mii
:2019/12/10(火) 03:09:51 ID:NQWsVIhA
デイジー「…結局は、フリなんだろ?最初から、3発目に賭けているんだろう?
だったら、見せて、もらおうか」
ロゼッタ「…………………………………………
ええ、では、見て頂きましょう、かっ!」ドクドク
デイジー「…全力で、受けて立とうじゃないか」ニヤリ
シイイイイイイイィィィン――――
ゼルダとヒルダが息を飲みつつ心配そうに見守る中。
5秒、10秒と睨み合いが続いたところで――
ロゼッタが…三度、駆けた。
ロゼッタ「…参りますっ!!」ダダッ!
デイジー(ぼんやりと…体が、光っている。何かしらの強化を掛けたな?
だが…小手先の魔法で埋め合わせできるほどの差では、ないっ!)
ロゼッタの戦闘力が、素早さが1割2割上がったところで、なんだというのだ。
いや、2倍3倍ですらどうとでもなる絶対的な差が、そこにはある。
…なんだか、フラグっぽくて嫌だな。
436
:
Mii
:2019/12/10(火) 03:12:42 ID:NQWsVIhA
再び、ロゼッタが姿を消す。
――――性懲りもない!!
横目で、後ろの気配を確認。…流石に学習したか。
左右、上。ロゼッタのことだから真下というのも十分に考えられる――
そう、周囲を満遍なく把握したところで…ロゼッタが現れた。
デイジー(…真正面?一体何を――)
ロゼッタ「はああああああああっ!!!!」ドンッ!
一気に、ロゼッタが…ロゼッタなりに、トップスピンを掛ける。
大怪我で体のバランスを崩しながら、痛みに耐えながら、ぎこちない体で。
それを私は、地獄の笑みを以て、遠慮なくフルパワーで――
デイジー「その思い上がり、悔い改めるんだな――」ブンッ
ゼルダが思わず目を背け。ヒルダが思わず顔を覆い。
誰もがその分かりきった結末を――
437
:
Mii
:2019/12/10(火) 03:17:16 ID:NQWsVIhA
一陣の風が、吹く。
ロゼッタ「…………疾風の一撃《ゲイルアタック》――――っ!!」ギュンッ!!
ロゼッタの 周囲の空間が ねじ曲がった!▼
デイジー(……途端に、速くッ!
…ちぃっ、このままでも相手に大ダメージは入るだろうが…
ダブルノックは気に入らない、断じて。
仕方ない、瞬時にガードに甘んじて――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――)
438
:
Mii
:2019/12/10(火) 03:24:22 ID:NQWsVIhA
<Acceleration!Acceleration!!……….Acceleration!!!>キュイィィ―――――ン
疾風の一撃には 『優 先 度 +1』 が付いている!
デイジーが 行動を早めるほど それ以上に ロゼッタは 行動が早くなる!
ロゼッタの攻撃を ガードすることは 因果律として 不 可 能 だ!▼
ゼルダ「!?」
ヒルダ「!?」
デイジー「――――――っ!?ぐっ―!」ガード:1F
ズドンッ!
ロゼッタ「――っ!!左、すとれーと…届い、たぁ―――!!」アタック:0.1F
439
:
Mii
:2019/12/10(火) 03:29:22 ID:NQWsVIhA
信じられない、この私が目で一切追えなかった…ロゼッタの爆速の一撃…!
ダメージこそ見かけに反してとても小さいが、なんてことだ。一体、何をしでかした…!
自分の不甲斐なさと、親友の成長への喜びがごちゃ混ぜになる。
でも、今は、自分の情けなさは置いておこう。
純粋に、ロゼッタを褒めてやらないまでもない…そう、思えるほど。
そう、「裏の私」に似合わず、小さく穏やかに笑って見せようとして――
ロゼッタ「――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――」
次の瞬間、一気に顔を青くした私は。
あらん限りに握り締めた拳で、ロゼッタに殴り掛かっていた。
440
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/10(火) 04:41:49 ID:TvJVWXbI
宝具じみてんなお前
441
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/10(火) 07:08:53 ID:0KYaSB46
つよい
442
:
Mii
:2019/12/14(土) 17:39:43 ID:uGh3sj7.
―――…――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――…――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――…――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――…―――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――…―――――――――
…。
……。
………しこうに、もざいく。
……………ここは、いったい、どこですか?
かくにん、したいのに。
なぜか、めが、あけられません。
443
:
Mii
:2019/12/14(土) 17:41:39 ID:uGh3sj7.
「――――――」
なにかが、きこえる。
「――――――――」
だれかが、よんでいる、こえが、する。
ああ、きっと、みんなして…わたしをとりかこんでいるのですね。
ゼルダひめ、ヒルダひめ、そして…デイジーひめ。
ひっきりなしに、こえをかけながら。
そういえば、すこしまえに。
かってにわたしが、ちぬれたドレスをみつけてしまい…きを、うしなったときに。
めざめてみれば、なきはらしている、ピーチひめが、いましたっけ。
きっと、いまもおんなじような……。
…………おんなじ、ような?
444
:
Mii
:2019/12/14(土) 17:43:27 ID:uGh3sj7.
かく、せい…ええ、覚醒。
行方知らずの意識と思考を、じわりじわりと取り戻し。
一瞬震えた後、ようやく私は…眼を、うっすらと開けていきました。
目の前には――
当たってほしくは、なかった。
私の目覚めに目を見開いた状態の、泣き腫らして憔悴しきった…デイジー姫。
デイジー「――――っ!!ロゼ…ッタ!?やっと…やっと、目を覚ましたのねっ!?」
私は、寝たきりの姿勢もそのままに、無言のまま、恐ろしくゆっくりと頷きます。
デイジー「…っ!よかった、本当に、よかった、よぉ――っ!!うわああぁぁん!!
この、まま、死んじゃうんじゃないかってっ!
本気でっ!思ってた、くらい、なんだからぁっ!」ポロポロ
ゼルダ「…バカっ!このっ、虚け者っ!!
結局自分が、周りを悲しませているでは…ないですかっ!
偉そうに…説教、しておいてっ!」ポロポロ
ヒルダ(ギュッ)ポロポロ
445
:
Mii
:2019/12/14(土) 17:44:57 ID:uGh3sj7.
口調こそ荒いとはいえ、泣き腫らした顔を隠しもせずゼルダ姫がのたまい。
ヒルダ姫は、静かに泣きながら、私の腕を、ただひたすら強く抱きしめます。
結局最後は、皆が私に覆いかぶさるような感じになりました。
ロゼッタ「…………」
まだ微妙に、思考がふわふわしている気がしなくもないですが。
辛い思いをしている人の頭って、どうして撫でたくなるんでしょうね。
ありがとうとごめんなさいの気持ちを込めて、皆さんの頭をつい撫でてしまいました。
呆れられるわけでもなく、一層激しく泣き出す皆さん。…ええと、本当にごめんなさい。
しかし、どうにも体の動きがぎこちないのが、気懸り。
挙動ひとつひとつが、やたらもっさりしています。
速く動かすことができません。…気のせい、ですかね?
…皆の嬉し泣きに包み込まれる中、肝心の私の方はというと。なんとも滑稽なことに。
必死で、周りの方々が泣いている理由を考え始めていました。
…いや、だってですね。
このままだと死ぬんじゃないかと思われていた?そんな気絶の仕方を?私が?
そもそも、死んだら残機を使って復活するだけではないですか…?
446
:
Mii
:2019/12/14(土) 17:48:39 ID:uGh3sj7.
デイジー「…!?も、もしかしてロゼッタッ!
何が起きてこうなったか…いや、『今何が起きてるか』、
まるで分かってないの!?」
ロゼッタ「……は、はい。大変申し訳ございません。皆さんはお分かりなのですか?」
デイジー姫は、信じられないような顔を一度して。
暫しののち、無表情になって、ふっと。
デイジー「――ごめん、ロゼッタ。本当に、ごめん。
思い切り、歯を食いしばって、くれるかな?今から私、『手を離す』から」
ゼルダ「…そ、そんなっ!」
デイジー「…いや、現状を理解してもらうには必要なことだよ。残酷な話、だけど。
はい、歯を食いしばったね?無意味な可能性も超特大だけど」
…よくわかりませんが、デイジー姫は間違ったことは言わないので。
既に準備は整っていました。1UPキノコ片手に準備万端のデイジー姫の姿を思い出します。
デイジー「…ゼルダ。暴れた時に備えて、右半身押さえてて。…特に、右手!私は左半身に対応するから。
ヒルダは悪いこと言わない、5メートル以上下がってて」
2人は一瞬、憂いの目をしたあと、あっさりとデイジー姫に従います。
そして、デイジー姫が――
私の体から、どういうわけか「すっかり黒ずんだ」手を、恐る恐る…離しました。
447
:
Mii
:2019/12/14(土) 17:57:14 ID:uGh3sj7.
その、途端。
ロゼッタ「――――――――――――――――っ!!!
ガア゙ア゙ア゙アアアアアァァァ――――――――――!?」
この世の物とは思えない、全身を駆け巡る、痛み、苦しみに。
はしたなさなど彼方へ捨て去り、絶叫、絶叫、ただただ、絶叫――
ロゼッタ「ガハッ―――ア、ア、ア、ア―――――――――――――っ!!!
――――――――――っ!!」ポロポロ
ヒルダ「もう十分でしょうっ!デイジー姫、はやくっ…はやくっ!!
助けてあげて、くださいっ!!」
イタイ。死んでしまう。いえ、死んだ方が100万倍マシ――そう思えてしまう、極限の痛み。
心臓に針を突き刺される…なんて表現、生ぬるい。
あらゆる器官が、微塵切りにでもされていくかのような、痛み――――っ!
歯を食いしばりすぎて出血し、狂乱し、体中を激しく掻き毟る。
とりわけ『右目』の疼き、異物感が我慢ならず、必死でもがきますが、
慌てて腕を掴んだゼルダ姫によって、阻止されてしまいます。
痙攣し呻きながら、悲しみではなく痛みのせいで、涙が延々と流れ出ます。
デイジー「まずっ、白目剥いてる!…ロゼッタっ!ロゼッタぁ――っ!!」
ゼルダ「起きてっ!お願いだから、起きなさいっ!」
ヒルダ「ロゼッタが死んじゃうっ!もうやめてぇっ!!」
448
:
Mii
:2019/12/14(土) 17:58:36 ID:uGh3sj7.
ロゼッタ「……ハァッ、ハァッ、ハアッ」ボロッ
今度は私にも、気絶していたことがわかりました。
デイジー姫が、離すものかという掴み方で私の体を捕まえています。
デイジー「…よかった…グズッ。一体、何度私たちを泣かせたら…
ロゼッタは…気が済むの、さあ」グズッ
ゼルダ「目の焦点が完全にまずいことになっていました…
恨みますよ、デイジー」ポロポロ
残機がある、はずなのに。
痛みには、割と慣れてきたと…思っていたのに。
激しく動揺しながら、2人の方を見上げます。
449
:
Mii
:2019/12/14(土) 18:01:16 ID:uGh3sj7.
デイジー「………………………ねえ、ロゼッタ。
昨日の…私との3回勝負、覚えてる?」
ロゼッタ「お、覚えていま――――」
ああ、そうだ。そうでした。
私は、思い立ったまま会得してしまった秘密兵器をぜひ試したい、と…
デイジー姫に喧嘩を売ってしまったのでした。
デイジー「…そっか。じゃあ、何をやったか、詳しくロゼッタの口から…教えてくれるかな?
推測だけであれこれ騒ぎ立てるのは、もうこりごり」
ロゼッタ「…わかり、ました。
とはいっても、そんなに、複雑な話ではないんです。
私は以前、『デイジー姫という新要素から作戦を引っ張り出すことで
敵の裏をかくことができる』という旨の話をしましたよね?」
デイジー「…うん」
やはり、いまだに息切れしそうですが、なんとか堪えて話を続けます。
ロゼッタ「……これは、別に特訓中に限った話ではありません。
何気ない会話の中にも、日課や癖の中にも…
拾える可能性のあるものは無尽蔵にあります。
私は…どうしても攻撃の速度が足らないと悩んでいました。
奇しくもそこに、昔なら無縁極まりないゲームの世界から、
『優先度』というものを教えていただきました。
私は思ったんです。……これだ、と」
450
:
Mii
:2019/12/14(土) 18:03:54 ID:uGh3sj7.
デイジー姫が、驚きに口をぽかんと開けます。
デイジー「…ま、まさか――!」
ロゼッタ「さっそく、S++ランクの超高等魔法として昇華させようと、
昨日…いえ一昨日から、術式を構築し始めました。
基礎となる格子を編み込み、条件式の肉付けをしていって――
針の穴に通すような繊細な作業でしたが、なんとか…完成に至りました。
とはいえ、本当に、本当に――現実に『優先度』を持ち込むというのは困難で、
使った後に残機が減ることを、織り込み済みだったんですけどね」
ヒルダ「…織り込み、済み?」
あ、なんだかちょっとだけ、気分が落ち着いてきました。
そんな感じに驚く顔を、見てみたかったです。
ロゼッタ「…ええと。発動させることまでは、何とかなりそうだったんですけど。
この魔法…というより、魔法が掛かった状態で繰り出す、この技。
相手の行動の早さに応じて、私の意志そっちのけで自動加速が掛かるので…
ぶちゃけた話、体が消費予定のFPを事前準備できないんですよね」
3人が、固まりました。
451
:
Mii
:2019/12/14(土) 18:07:44 ID:uGh3sj7.
ロゼッタ「それを承知で、魔術回路をちょっとばかし騙して、
技自体は正常発動させたのですが。その場合、どうなるか、というと…
借金してまで豪遊した人が、我に返って慌てふためいて…
日用品を叩き売って返済に充てるがごとく。
かなり非効率な交換レートで、体がHPを無理やりFPに変換し出すんですねー」
デイジー「なっ…!?」
ロゼッタ「私の計算だと、不足分のFPを補うために、私のHPは枯渇ぎりぎり、
というところまで追いつめられるはずでした。
まあでも、そのくらいのこと、最近は幾らでも経験していますし。
万が一、『ギリギリアウト』で死亡したとしても、残機制度のおかげで…そのままあっさり元通り!
今の特訓環境だからこその、したたかで思い切った作戦だと思いませんか!
…実際、御覧の通り元通りに――――」
凄い魔法の成功に、ついつい得意げになってしまい、語り出し――
…あれ?おかしいです。
――では。さっきの痛みは、後遺症のようなものは。いったい、なんなのです、か…?
デイジー「――馬鹿…!!――元通りに、なってないよ、ロゼッタ…っ!
優先度なんてものを付けることがどれだけ禁忌か、わかってないよ…!
私の行動の早さ、馬鹿に、して――っ!」ポロポロ
452
:
Mii
:2019/12/14(土) 18:11:29 ID:uGh3sj7.
ヒルダ「……あの、これ」
ロゼッタ「……鏡?」
ヒルダ姫がおずおずと…持ってきてくれた、1枚の手鏡。
顔を見ろということでしょうか。…使ってみました。
…酷い顔色はしていますが、それ以外に、特に変わったところはなさそうですが。
暴れたせいでボサボサになった髪を、すっと払います。
「魔眼」呼びしていた右目に、幾重にもヒビが入っていました。
光を失う…を通り越して黒ずんで、もやまで掛かって、今にも砕け散りそうです。
…………………………………………………………は?
453
:
Mii
:2019/12/14(土) 18:14:53 ID:uGh3sj7.
ロゼッタ「…………………………え…なに、これ…」ガタガタ
余りのショックに、呆然とします。
こんなこと、生まれてこのかた、なった覚えがありません。
デイジー「落ち着いて、聞いて、ロゼッタ。私、なんとなく状況が把握できた、から」
虚ろな目で、デイジー姫を見上げます。
まるで、あまりのみっともなさを恥ずかしがるように、前髪が再び――右目を覆い隠します。
デイジー「…あのとき。私は、ムキになって、持ちうる限りの速度でもって、ガードに移ろうとした。
それを抜き去ろうとするために、ロゼッタの体は加速した。
…ロゼッタの予測すらゴミにしかならないくらい、猛烈にね。
FPが、あまりにも、あまりにも…『桁違いに』不足しすぎた。
異常を察知した私が強引にロゼッタの命を速やかに奪って…
復活するまでのごくごくわずかな時間すら、FPの代償を大量に求められて――
魔力回路そのものが、ズタズタに荒らされたんだ。
ロゼッタの例えを参考にするなら、
待ちきれなくなった借金取りが怒号をあげながら家に乗り込んできて
あらゆる家具は持ち出され、あるいは破壊され尽くした状態、かな」
ロゼッタ「…!?」サアッ
454
:
Mii
:2019/12/14(土) 18:20:59 ID:uGh3sj7.
デイジー「…ロゼッタの右目、おそらく…単なる遠くが見えるだけの魔眼、じゃない。
空間認識を極めに極めていく中で、ロゼッタの体のFP循環の根幹に関わっていった…
超重要な制御装置、心臓部分だったみたい。…自覚、ないわけじゃないでしょ?
その機能を失って、FPが無差別で体中に漏れ出して、
…えーっと、魔法が誤発動され続けているような有様なんじゃないか…と…。
つい条件反射的にFPを送り込もうとして、
なしくずしで治療し始めることができて、本当に幸いだったよ。
私のサポートがないと、何もできない。しばらくは、リハビリだね。
薄々分かってるとは思うけど――リハビリが終わったところで、
金輪際、『ゲイルアタック』とかいう技の行使は禁止。
今度は確実に、残機制度があるところで使おうと、あの世行きだよ。
だいたい、ロゼッタは仕様を理解してたみたいだけど…あの技。
『優先度+1』のためだけにエネルギーの99.99%とか、つぎ込んでるんでしょ?
とんでもない見た目の行動の早さは、『攻撃の運動エネルギー』自体には
一切乗ってなくて…捨てられてるんだよね?
革命的に凄いことをしたことは認めるけど、FPが勿体ないよ…ほんと…」
ゼルダ「そうだったのですか!?」
…はい。それは理解していました。しかし、そこまで危険な代物、だったとは―!
慢心があったにちがいありません。
455
:
Mii
:2019/12/14(土) 18:25:27 ID:uGh3sj7.
さらに、デイジー姫は、ひどく申し訳なさそうな顔で――
最悪な結末を、私に突き付けてきたのです。
デイジー「…ここまでのことは、まあ、いいんだ。いや、全然よくはないだろうけど、
リハビリは一時的なことだし、技の行使の抑止は意識してればいいし。
まだ許せるんだ。私、全力でFPの流れのコントロール、サポートするから。
…でも。
その右目、ただのHPじゃなくて、神秘性とかLP、すなわち生命力とか、
『残機制度で救済されない、取り返しのつかない ナ ニ カ 』をゴッソリ失った、みたい。
残機制度による完全復活ありきで無茶をしたロゼッタにとって、酷過ぎる…話だけど。
とにかく、通常の回復じゃあ一切対処ができない。
リハビリが無事完了したところで…
自慢の魔法の制御力、何分の1になったか知らないけど、下がりに下がって…
奇跡でも起こらない限り…二度と、元には戻らない、よ」
デイジー姫が、必死に声を絞り出します。
――――とてつもない、途方もない、代償に。
――――目の前が、真っ暗になりました。
456
:
Mii
:2019/12/14(土) 18:27:54 ID:uGh3sj7.
デイジー「…………」
涙流れた跡残すまま、気を失ってしまったロゼッタ。
当たり前だけど、今まで積み上げてきたもの、失うのは辛すぎる、よね…!
とりあえず私ができることは、彼女の腕を通じて強制的にFPの流れを作って、
回復に努めること、だけ。他に何もできなくて、歯痒い。
私の負担もけっこー大きいけど…そんなこと、言ってられない。
食い溜めしつつ、できるだけ睡眠時間はカットだ。
デイジー「…まあ、そんなわけで。しばらく、特訓は中止にさせてもらうよ。
私のチカラ、こっちに注ぎ込まなきゃならないし、気分も全く乗らないし…ごめんね。
…まあ、ちょうどよかったんじゃない?」
そう言って…自分にも言い聞かせて、見守る2人に向き直る。
ゼルダ「…………」
ヒルダ「…………はい」
457
:
Mii
:2019/12/14(土) 18:33:23 ID:uGh3sj7.
デイジー「…まあ、2人はそんなに気を落とさないで。私がなんとしてでも、ロゼッタはこれ以上苦しませないから。
よかったら、フィールドで…2人で普通のトレーニングを再開しちゃってよ。
私は参加できないけど、ロゼッタを背負って同行してアドバイスすることくらいならできるからさ」
ゼルダ「……そう、ですね。時間が、勿体ない…ですもの、ね」
ヒルダ「…………」コク
デイジー「…………やっぱり、暗いの、苦手。ええい、もっと明るく行くぞー!!ビバ、空元気っ!
このモヤモヤを、トレーニングにぶつけるぞ!ウオオオオオォォォ!
はい、2人とも、拳を天に突き出して『オーッ!』て叫べ―!」
2人「「お、オーッ……?」」グッ
さあ、フィールドに向かっちゃおう!後ろは振り向かないっ!
ロゼッタ「」ズルズル
デイジー「…って、身長差のせいでロゼッタ背負えないんだった!?ごめん!引き摺ってる!
こんちくしょーめ!こうなったらお姫様だっこだ!
抱き上げる方もお姫様の、純度100%のお姫様抱っこだぞー…って、どうでもいいわ!」ツッコミ
ゼルダ「――ああ」
デイジー「ほらほらどうしたの、早く支度するっ!」
ゼルダ(彼女の挙動にビクビクしてばかりの私でしたが―
ロゼッタの言っていた彼女の朗らかさとムード、ようやく私にもちょっとだけ、
理解できた気がしました。節穴…でしたね)
458
:
Mii
:2019/12/14(土) 18:35:44 ID:uGh3sj7.
ロゼッタ「…う」パチッ
デイジー「お、ようやく起きたねロゼッタ」
ロゼッタ「…ど、どうして私、担がれているのですか?」
デイジー「私が3人の面倒を同時に見るにはこれしかなかったっす」
ロゼッタ「………………………っ、わ、私は――そうです、一体どうすれば――」
なんとか、しなければ。対策を考えなければっ!
呑気にデイジー姫に身を預けている暇ではないと、降りようともがきますが…
デイジー「おっと、そうは問屋が卸しません…降ろさないだけに。
そうだね…この感じなら…あと1週間ばかりは、私が付きっ切りで介抱だね」
ロゼッタ「そん、な―!貴重な、時間がっ!離してっ、下さい!お願いですからっ!」
私の覚醒に気付いたのか、フィールド中央で躍動していた2人も動きを止めて、
こちらに駆け寄ってきます。
459
:
Mii
:2019/12/14(土) 18:39:20 ID:uGh3sj7.
ロゼッタ「えいっ!」ドンッ
デイジー「あ、ちょっとぉっ!?」
デイジー姫の腕の中から、なんとか抜け出したとたん。
また、あの絶望的な侵食に、痛みに襲い掛かられます。
たまらず、もんどりうって、地面に這いつくばってしまう、私。
一瞬にして目の焦点が合わなくなり、涙が流れるままになる体たらく。
ゼルダ「なにをやっているのですか、ロゼッタっ!」
デイジー「もー、馬鹿ッ!いいから私に面倒見られてよっ、このアンポンタン!」
デイジー姫がすぐさま私の体を再度抱き上げ、FPの循環を再開してくれているようです。
痛みが、少しずつ、引いて行きます。…私の心の中の暗雲は、際限なく拡がるばかり。
ロゼッタ「ハアッ、ハアッ――!このままでは、状況が、悪化する一方では、ないですかっ!
何か、何か策があるはずです!
早くここから脱出する術が見つかれば、ピーチ姫やマリオならば有用な知識を持っていて
劣化が抑えられるかもしれませんし!
――そ、そうです!新しい、魔法っ!
私自身、目を修復できる新しい回復魔法を生み出してですね!
そうすれば話は早いでしょうっ!?」
デイジー「…焦らないでよ、ロゼッタ。視界以上に思考が曇ってるよ。
流石にそんな淡い希望に縋って一層無茶をするなんて、断固として許さないよ…?」ゴゴゴ
ロゼッタ「……!」
460
:
Mii
:2019/12/14(土) 18:49:36 ID:uGh3sj7.
デイジー「唯一の救いは、目の劣化が、使用回数とは関係ないことだね。
容体が安定したら、精度は下がってるにしても魔法を使い出してOKだよ。
特訓再開も…まあ考えておいてあげる。でも。
今はロゼッタを止めるのが私の役目。お願い、理解して」
私を宥めて、抱きしめてくれるデイジー姫ですが。
ポロ、ポロと。絶望から、自分勝手ながら、涙が更に溢れてきます。
ロゼッタ「何をやっているのですか、私…!貴重な時間を、みすみすフイにして…!
恵まれた環境下を活かして、もっともっと、強くならなければいけないのに…!」
デイジー「…ほんと、いつの間にか、戦闘狂だよ。気持ちは、わかる、けど」グズッ
ゼルダ「…自分を追い込み過ぎ、ですよ」
ロゼッタ「騒動の原因ですらあるのですから、追い込んで当然です!
それに…それにっ!これからの私がどんどん…魔法使いとして弱くなるのならば!
――既に、自分の存在意義にも直結して、崩れ去りそうではありますがっ!
余計に、今できることを、今のうちに全てしなければ、後悔してもし足りないではないですか!
デイジー姫、何かできることはないですか!?
とりあえず、体を慣らしつつ、新しいFP動力源の構築を
開始すべきだと考えるのですが、如何でしょうか!?
ああ、そのためには一層の基礎体力も必要ですね―
食事療法、ストレッチ、筋トレに走り込み、それからそれから――」
激しい動揺、動転を隠しもせず、泣き腫らしながら想いを吐露して、足掻こうとしたところで…
――強い衝撃を受けて、再び私の意識は、深く沈んでいきました。
461
:
Mii
:2019/12/14(土) 18:54:31 ID:uGh3sj7.
――たった今、手刀一発で、ロゼッタの意識を刈り取ったのは…
――デイジー姫では、ありません。
デイジー「……え?」ボウゼン
ゼルダ「……ヒルダ、姫?」アゼン
ヒルダ「……」スッ
行為者は、予想もしない人物、でした。
気絶したロゼッタの胸に手をやって、数秒。
その手を自分の胸の所に持って行って、抱きしめて。目を瞑ること、数秒。
ヒルダ「――――強く、なりたい」
462
:
Mii
:2019/12/14(土) 18:56:37 ID:uGh3sj7.
いつもの、弱弱しい面影は、どこへ行ってしまったのでしょうか。
ヒルダ「――そうだ、私。強く、なりたいんだ」
今度は、更に力強い声。
デイジー姫が、思わず息を呑んでいます。もちろん、私も。
ここまで凛とした顔のヒルダ姫は初めてです。
ヒルダ「ロゼッタの想い…私も、欠片だけでも受け継ぎたい。
今回のロゼッタは…少しだけ思いきり過ぎたかも、しれないけど。
私も、ロゼッタみたいに――
やりたいこと、やらなければならないこと、全力で挑戦できる人になりたい」
私たちの方もじっと眺めて――
ヒルダ「皆さんより遥かに弱い私ですが。現状、足手まといにしか、なっていませんが。
必死で足掻いて、追い縋りたい。役に立って、喜んでほしい。だから――
お願いします、デイジー姫。あの特訓、続けてください」
デイジー姫が、完全に固まる。まさに窮鼠猫を噛む。
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