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ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですね、是非!」

1Mii:2019/03/31(日) 10:37:38 ID:iLEqj1bw
このスレは

 ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですか?」

を前スレとする続編となります。
前スレをご覧になられていない方はそちらを先にどうぞ。

遅い進行のスレですが引き続き頑張っていきたいと思います。
よろしくお願いします。





パルテナ「そのほか、いくつか注意点があります。

     ・スレ主のスマブラfor経験は、CPU(Lv.9)とのタイマンで
      勝ち越せない程度の実力しかありません。
      戦闘描写に過度な期待をすると酷いことになります。
      むしろ、『うわあ、この描写ニワカだな』と粗探しするくらいの気持ちで
      読むようにしてください(最重要)。

     ・前スレ同様、いろいろとパロデイ、メタ発言が散りばめられています。
      キャラが自分たちの背景情報を活用する…みたいなご都合主義は
      白ける方もいらっしゃると思います。そんな時は…
      別のスレに移って、このスレのことは忘れましょう。
      
     パルテナお姉さんとのお約束ですよ♪うふふふふ」

338Mii:2019/10/29(火) 01:16:38 ID:L3Ow0O9U
すぅっと、しっかりと、デイジー姫の方を向きつつ、身構えます。
…嘘です。格闘におけるポジションなど知りません。
ついでに言うと、心臓を隠せるようにだとか、足腰のバネに力を蓄えてとか…
にわか仕込みの、小手先の動きでどうにかなる相手ではないのです。

身長差からすると、私が有利…なんてことはなく、むしろ掻い潜られそう。
そう思った矢先っ!



デイジー「フッ!!」ゴウッ!

ロゼッタ「……っ!!」

――認識できない、ほどではない、拳。
――余裕を持って躱せる、なんてことはさらさらない、拳。

直感で腕を伸ばして、鳩尾を狙うデイジー姫の腕の軌道を妨害――



ロゼッタ「――しても無駄なのでっ!」



手のひらから…隔壁を、幾重にも展開、展開、展開っ!!
ただし、間違っても真正面から生成してはいけません。
デイジー姫と私との力量差の前では、向こうの拳が貫通弾となってしまいます。
繊細に…力を逃がすべく、斜めに滑らせ、受け流す!

339Mii:2019/10/29(火) 01:26:43 ID:L3Ow0O9U
ロゼッタ(よし、うまくいきました!!受け流し成功で――)

デイジー「人間の腕が2本あるのはなんでか、知ってるか?
      …交互に拳を絶え間なく繰り出すため、だぞ?」



ドガガガガガガッ!!

ロゼッタ「わっ、わわっ!?」パシン パシン

駄々をこねる子供のように、遮二無二腕を振り回すデイジー姫。
当然ながら、体のひねりなどロクに使えないため、力は籠められないはず…なのですがっ!
1発1発が、凄まじく、速くて重いですっ!山カンで防ぎに行くのが精いっぱい!



右、左、右、左、左――――っ!



フェイントも時たま交えつつ、連続攻撃で弄ばれます。
私はひたすら、体の脇へ脇へと受け流す、受け流す!

ピイイイイイィィィィン――!!

それでも。反発の勢いで、腕が大きく逸らされていきます。
その勢いは凄まじく、体ごと持って行かれます。

その隙を…見逃してくれるわけがありません。

340Mii:2019/10/29(火) 01:31:18 ID:L3Ow0O9U
くるり、とデイジー姫が身を翻します。



デイジー「セイヤッ!!!」ドゴォッ

ロゼッタ「がはっ」ガフッ ダンッ!



…何回かバウンドしながら、フィールドの反対側まで吹っ飛ばされました。
たいじゅうのこもった、ま、まわしげり、だなんて、は、はんそくです。
そんな威力の体術、秘匿しないでおいてほしかったですね。

…ああ、また口元に血が付いています。
いい加減、血を吐くのは飽きてきました。
このままではドレスが赤く染まって、ファイアロゼッタになってしまうではないですか…なーんて。
…実際は復活のたびに汚れはきれいさっぱりなくなりますが。

袖でグイッと拭って、さっさと立ち上がることにします。
そんな私を、フィールドの反対側から見ている、デイジー姫。
早く戻ってこい、と手招き状態。

…なんだか、にやにや笑っている気がします。
余裕ぶった態度に、少しだけ、カチンと来ました。

341Mii:2019/10/29(火) 01:33:58 ID:L3Ow0O9U
ロゼッタ「――――よし」ポワアアアン

何食わぬ顔で近づきつつ、こっそりFPを充填していきます。

一歩。また一歩。
歩くたびに、どんどんFPを蓄えます。

デイジー「のんびり歩くな、時間は有限だぞ」

ロゼッタ「すいません、今行きまーす!」

こう、呑気に手なんか振ってみたりして。

相手の視線、および死角の確認、OK。
移動先の座標、OK。
移動後の迅速な正拳を、イメージ。



…なんだか、わくわくしてきました。
ダメージを与えられるかどうかはともかく、
これが当たって、デイジー姫が少しでも驚いてくれたら、と考えただけで。

…準備完了。
最後は、少し小走りになりつつ、残り10メートルになったところで――

342Mii:2019/10/29(火) 01:38:08 ID:L3Ow0O9U
シュンッ!!

ロゼッタ「それっ!!」ブンッ!

テレポートからの、完全なる不意打ちですっ!
素晴らしい集中力の賜物で、数F程度のラグをもって拳を振るえています!
後頭部…は気が引けたので、背中に…会心の一撃!これは決まりました!





デイジー「……」クルリッ グワシッ!





ロゼッタ「…ふえっ!?」

…あれ?あれれー?
どうして、振り向きざまに拳を掴まれているのでしょう?

デイジー「気配。癖。それに勘。見破る鍵はいくらでもあるぞ。
     妙にワザとらしく手など振って、姑息なことを考えていることがバレバレだ」

ロゼッタ「」アゼン

343Mii:2019/10/29(火) 01:40:55 ID:L3Ow0O9U
デイジー「…根本的な問題として、移動と攻撃動作、合わせて10Fもあれば…
     余裕を持って対処くらいできるさ。私を誰だと思っているんだ?ん?」

ロゼッタ「あなたはデイジー姫です♪」

デイジー「…………」

ロゼッタ「…………」

デイジー「…………」ゴゴゴゴゴゴ・・・

ロゼッタ「…あ、いえ、そのう……せめて楽に死にたいなあって…」

デイジー「ハラワタをぶちまけるくらいまで殴る」

ロゼッタ「やめてください三途の川でも死んでしまいます」ガクガクブルブル

デイジー「フンッ!!!」バキィッ!



ロゼッタ「」チーン

――見失ってからの10Fでも余裕で対処可能だなんて…
――どうしようもないじゃないですか…。

344以下、名無しが深夜にお送りします:2019/10/29(火) 22:56:53 ID:BjpT48L.
時計が 午後7時を 指している▼

デイジー「…よし。今日は此処までとしよう。お前たち、精々休んでおくことだな。
     食事を摂ろうが惰眠をむさぼろうが構わないが、特訓から逃げようとしようものなら――」ギロッ

ロゼッタ「一撃も入れられませんでした…はあ。速さが足りない…。
      逃げません逃げません、そんな恐れ多いことしませんってば。
     ね、ゼルダ姫にヒルダ姫!」ボロッ



ゼルダ「」

ゼルダ「」

ゼルダ「」シンダメ

ヒルダ「」

ヒルダ「」

ヒルダ「」シンダメ

ゼルダは たたかう きりょくが のこっていない

ヒルダは たたかう きりょくが のこっていない▼

ロゼッタ「」

デイジー「…そこに転がってる2人はロゼッタ、お前がなんとかしろよ」スタスタ バタン・・・

345Mii:2019/10/29(火) 23:08:55 ID:BjpT48L.
ロゼッタ「あのー、もしもし?私の声が聞こえますか?」ブンブン!

ゼルダ「」

ヒルダ「」

ロゼッタ「これは駄目かもしれません」

ゼルダ「」

ヒルダ「」

ロゼッタ「とりあえず…………血濡れの2人の体を『浄化』してっと…」パアアアアア

ロゼッタ「…ああ、もうっ!無反応なら、勝手に運びますからね!
     文句は受け付けませんよ、失礼します!!」

面倒になったので、両脇に1人ずつ抱えて、仮眠室まで連れていくことにしました。
借りてきた猫…というより借りてきた人体模型なみに、ピクリとも動きませんでした。

ロゼッタ「あれ、もしかして…これって…
     血濡れのフィールドの清掃は私一人でやれということですか…
     なんという貧乏くじでしょう…はぁ…あとでやっておかなければ…」ガックリ

346Mii:2019/10/29(火) 23:12:30 ID:BjpT48L.
フィールドの料理を、チコたちとせっせと仮眠室へ運びます。
チコたちには、血生臭い場面を見せたくないこともあって、
基本的に仮眠室のお手入れをお願いしています。おかげでほこり一つありません。
私も家族の一員として誇らしいです。…シャレじゃないですよ。

ロゼッタ「さーて、それでは明日に備えて、しっかり食べておきますか――













    ……あの。ゼルダ、ひめ?
    ……一体、何をやっているのですか?」


いざ食べようとしたところ、椅子に強引に座らせたゼルダ姫が見当たりません。
はて?と見返すと、呪怨のように言葉にならない声を出しながら、
仮眠室のベッドを持ち上げて、扉の前に運んでいるではありませんか。

347Mii:2019/10/29(火) 23:14:10 ID:BjpT48L.
ロゼッタ「ふふ、まさか…デイジー姫に恐怖する余りのパニック衝動で
     彼女から少しでも遠ざかろうとする短絡的行為の現れじゃ……」





ゼルダ「…………」ポロポロ

ロゼッタ「図星ですか!?重症ですね!?」

そんな無意味な、むしろ逆効果な行為をしないでくださいよ!
デイジー姫に知れたら、一瞬笑った後、ベッドと扉もろとも吹き飛ばされますよ!?
あの強気なゼルダ姫が、ここまで動転しているだなんて…!

もちろん、そんな未来は御免被りたいので。
私とヒルダ姫で、とっとと元通りに…。

ヒルダ「…………」フラフラ

ロゼッタ「頼みます。お願いですから、そのタンスをもとの場所に戻してください。
     ゼルダ姫の後追いをしないでほしいのですが」

ヒルダ(ブンブン)ポロポロ

348Mii:2019/10/29(火) 23:15:55 ID:BjpT48L.
ロゼッタ「…チコ。みんな以外に味方がいないようなので、
     元の場所に戻すのを手伝ってもらえるかしら?」

チコ「わ、わかった!」

チコ「はーい!」

チコ「おしごとおしごとー!」



ヒルダ「やあああぁぁ……」ポロポロ

ロゼッタ「しがみ付かないでください!幼児退行までしないでください!心が痛むではないですか!
     それでも、ここは心を鬼にして…強行突破です!」ガシッ

349Mii:2019/10/29(火) 23:17:26 ID:BjpT48L.
どうにかこうにか、再び席に着かせたのはいいものの。
ぼそ、ぼそ、と。
うわ言を吐き続けて、一向に食事を摂らないお二人。
黙々と私だけ食事を摂ります。



…………沈黙が痛い。



ヒルダ「――――は」

ロゼッタ「……もぐ。はい?どうかされましたか、ヒルダ姫?」モグモグ



ヒルダ「――ロゼッタ、は。どうし、て。へいき、なの、ですか…?」



ロゼッタ「…別に、平気というわけではありません。
     撃墜されれば痛いですし、骨肉を毟り取られれば悶絶する痛さです。
     でも、自分の成長のためと割り切れば――」

350Mii:2019/10/29(火) 23:23:14 ID:BjpT48L.
ゼルダ「そんな、ことっ!
    …できるはずが、ないでしょうっ!!」バンッ!!



ゼルダ姫の渾身の一殴りが、テーブルをいとも簡単に粉砕していきました。
木くずが、ばらばらばらと、はじけ飛びます。
…料理を巻き添えにして。ああああっ!!なんてことを!

料理の心配をしている私の襟元を掴んで、涙ながらにゼルダ姫が訴えてきます。



ゼルダ「ロゼッタっ!貴方は、精神がおかしい!
    どうして、平然として、いられるのですか!?狂っているっ!
    此処まで虚仮にされてっ!此処まで殴り倒され虐げられてっ!

    …命を、幾度となく、笑いながら、奪われてっ!

    尊厳もなにもないっ!なにもないのですよっ!!」ポロポロ

ロゼッタ「…それは、デイジー姫が『特訓に本気になっている』だけで」

ゼルダ「違うっ!認識を改めなさいっ!
     あの女は、もはや単なる狂人なのだと!
     なんとしてでも、あの殺人鬼を、止めなければならないっ!」ググッ

351Mii:2019/10/29(火) 23:25:53 ID:BjpT48L.
…っぐ。流石に、首が締まります。

ロゼッタ「…ゼルダ姫の気が少しでも晴れるのなら、私の命の一つくらい…
      喜んで差し上げますよ。いつでもどうぞ。すぐ復活しますし。
      
      ですが、そちらこそ、訂正してください。
      …デイジー姫を侮辱する行為は、彼女の友人である私が…
      ぜったい、に。ゆる、しません」

ゼルダ「――っ!!」



そのひとことに、目を見開いて。
毒気も抜かれたのか、パッと手を離してしまうゼルダ姫。

そのまま、放心したのか膝まで付いて、顔を手で覆って――
再び泣き始めてしまいます。
もう、女王の威厳など、どこにも残っていないのです。

352Mii:2019/10/29(火) 23:40:11 ID:BjpT48L.
ゼルダ「グズッ…ロゼッタ…あなた、確実に…完全に、壊れているわ…」
(致死寛容レベル:Lv.5)

ヒルダ「あと――何回、いのちを、おとせば、かいほうされるのでしょう、か…。
    もう、いや…だれか、おしえてください…
    10かい、ですか?……100かい、ですか!?ねえ、誰か――っ!」シンダメ
(致死寛容レベル:Lv.3)



ポンッ。

ヒルダ「――ロゼッタ?」

ロゼッタ「大丈夫ですよ――――――――




      1日あたり18時間の特訓として、3分ごとに命を落とし続けたとしても、
      1時間で20回、18時間で360回。90日で32400回。…1人あたり、たかだか10800回が限界です!
      何とかなります、頑張りましょう!」

(致死寛容レベル:Lv.32    残機がある限り 致死・致命傷の精神負担に対し + 31%鈍感化!)

ヒルダ「ロゼッタっ!!もうちょっと命を大事にしましょうよっ!?
     これはゲームじゃないんですよ!?」ソウハク

ロゼッタ「まあまあ、そんな甘いことを言っていては…
     …うっ、なんだかブーメランが刺さったような錯覚が」イタタ

353以下、名無しが深夜にお送りします:2019/11/09(土) 03:28:34 ID:4hNQ2EJY
寛容などというレベルじゃない

354Mii:2019/11/10(日) 17:32:57 ID:EJfM3NDc



朝を、迎えました。



ロゼッタ「おはようございます…って、その疲れ切った顔…まさか徹夜したのですか?」ジトー

ゼルダ「……なんで、すか。文句、ありますか?」ブルブル

ヒルダ「夢から醒めるまで、寝ていたい…っ!」ブルブル



私はともかく、ゼルダ姫とヒルダ姫は、ガタガタ震えるばかりで、
休息を取るどころか逆に疲労困憊、満身創痍の状況です。酷いクマができています。
自分で自分の首を絞めていないでしょうか…心配です。

355Mii:2019/11/10(日) 17:39:03 ID:EJfM3NDc
そのとき。
ドドドドドドド――――ッと、突如として、激しい地響き、駆ける音。

ゼルダ「――ひっ!?」ブルッ

ヒルダ「――――っ!!」ガタガタブルブル

思わず互いに抱き合う、ゼルダ姫とヒルダ姫。どう考えても、デイジー姫でしょう。

ゼルダ「いいい、一体何事ですか!?」サァッ

ロゼッタ「あ、そういえば。少し寝過ごしたせいか…
     昨日の開始時刻より30分ばかり遅れていますね」

ヒルダ「ひいいいぃぃ!?ま、ままままさか、それで激怒して乗り込ん、で――」

ヒルダ姫の顔色が、青色を通り越して土気色になっています。
…あ、目の色まで死にました。頼みます、戻ってきてください。ゆさゆさ。

ゼルダ「ヒルダ姫っ!こうなったら、土下座でもなんでもして許しを請うのですっ!
    いいですかヒルダ姫っ!デイジー姫…いえデイジー様が靴を舐めろと言ったら、
    満面の笑みをもって、言われた通り舐めるのですよ!」

ヒルダ「ワカリマシタ」

ロゼッタ「え、あの。ゼルダ姫――?
      昨日あれだけ自信満々に言っていた、ゼルダ姫を奮い立たせるはずの誇りとか立場とか、
      どちらのゴミ捨て場にお捨てになられたのですか?」

356Mii:2019/11/10(日) 17:40:47 ID:EJfM3NDc
なんだか馬鹿な感想を口にしてしまう私をよそに、
扉が強く、強く叩き開けられ、デイジー姫が乱入してきます。

すぐさま、ゼルダ姫とヒルダ姫が、なけなしの元気を振り絞って。

ゼルダ「大変申し訳――――」

ヒルダ「生まれてきてごめんなさい、どうか――――」











デイジー「ほんっっっっっとぉぉぉぉ――――――――――――に、
      すんませんっしたあああぁぁぁぁああ――――っ!!」ドゲザ

ロゼッタ「」

ゼルダ「」

ヒルダ「」

357Mii:2019/11/10(日) 17:42:11 ID:EJfM3NDc
ゼルダ姫が、口を、ぱくぱく、させています。
わかります、わかりますよ、その気持ち。



ロゼッタ「…………『気絶するか、寝るか、はたまた命を落とすかで…
      意識を一度失うと、自己暗示が解ける』…?」

デイジー「そぉー!そぉなの、100点満点の理解、ありがとねロゼッタぁっ!!
     暗示が一度掛かると、自分の意志だとどうしようもできなくてっ!
     ただ、自ら暗示を解こうとはしないけれど、
     眠くなって自然と寝る分には割と素直みたいだから、私――っ!」

ゼルダ「は、はは、は」
     
ゼルダ姫が、ぷつんと緊張の糸が切れたのか、
へなへなと座り込んでしまいました。

乾いた笑いをしばらく続けたあと、大きな大きな、ため息、ひとつ。
警戒は無駄に終わってしまいましたが…心底、安心していることでしょう。
ほら、目元が潤んでいます。

ヒルダ「う…うわあああああぁぁぁあんっ!よかった、よかったです――――っ!」

ロゼッタ「ちょ、ちょっとヒルダ姫。感極まって抱き着かないでくださいな」

ヒルダ姫、泣きじゃくります。…仕方ないですねえ。
思う存分、泣いて、泣いて、すっきりしてください。
優しく背中をさすって抱きしめてあげると、一層激しく泣き始めました。

358Mii:2019/11/10(日) 17:44:59 ID:EJfM3NDc
デイジー「…………」

ロゼッタ「…………」ジッ

未だ、デイジー姫は――委縮したまま、土下座を続けて、
視線を下へ下へ持って行こうとしています。
彼女は…心底、私達を傷付け、殺めたことを…悔いて、嘆いているようです。

デイジー「……ねえ、みんな。私、少しは、みんなの役に、立てた、かな?」

ロゼッタ「やっぱり、デイジー姫は、素晴らしいファイターだったのですね。
      …ええ、デイジー姫の特訓、とても厳しくて…ために、なりました」

デイジー「――――そっか。それなら、まあ、悔いはない、かな。
      ――――ロゼッタ。ゼルダ。ヒルダ。

      ――――これまで、色々と、ありがとう、ね。
      ――――楽しかった。本当に、本当に…楽しかった」グズッ

ロゼッタ「…え?一体、なにを――」





デイジー「ごめん。私もう、ここには――居られないよ。
     ――これは、チカラを使うと決めたときからの――既定事項」

359Mii:2019/11/10(日) 17:46:59 ID:EJfM3NDc
ロゼッタ「…本当に――何を、言っているの、ですか?」



おもむろに立ち上がったデイジー姫が、一歩、二歩、三歩。
まるで「ちょっと用事を思い出したからじゃあね」と言わんばかりの軽やかな足取りで、
ごく自然に去っていくもので…思わず、5秒ほど、固まってしまいました。



大切な物を、手の指の隙間からこぼれ落としそうな気がして、
慌てて、必死に、全力で。
デイジー姫を追いかけ、その腕を掴みます。



ロゼッタ「答えてください、デイジー姫っ!!」



掴まれ動きを止められて、それでもこちらを振り返ることなく、
デイジー姫は、淡々と口を開きます。

デイジー「気持ち悪かったよね?軽蔑し、憎悪したよね?『あの』私。
      みんなのこと――たくさん、たくさん、殺したんだ。
      こうなること、わかってた。私、馬鹿で、融通利かないから」

360Mii:2019/11/10(日) 17:49:23 ID:EJfM3NDc
ロゼッタ「それはデイジー姫の過失ではありません!むしろ貴方は被害者でしょう?気に病む必要なんて――」

デイジー姫は、相変わらず、遠い彼方を見ながら。

デイジー「あるよ。幾ら唆されようが…最終的に、『肉体暴走』することを選んだのは、私。
     知性暴走なら、まあ死人が出ることはなかったんだけどなー。あーあ、残念―。
     まあ、絶交されること覚悟で、納得して使ったけど、さ。

     …ゼルダの激怒も、ヒルダの絶望も、至極尤もだよ。
     気付いていないかもしれないけど、とんでもない恐怖を、
     私は――みんなの頭の奥に突き刺したんだから。

     この恐怖、完全に消えることはないよ。あのピーチですら、今でも――
     私の言動の中にチラッと暴走の気配を感じれば、息が止まるって言ってたし」

ゼルダ姫、ヒルダ姫が――まだ怯えを見せながら、デイジー姫の方をみやります。
――孤高の、姫を、みやります。

ロゼッタ「…それで。ここから離れて、どうするおつもりですか?
     そもそも、今は結界にみんな閉じ込められている状況なのですが」

デイジー「脱出のための共闘は惜しまないよ。
      でも、一緒に同じ場所にいるのは、やめにしよう。
      みんなが特訓するときは、私は部屋にこもってる。
      出くわさないようにうまいこと食事は運び込むから、
      そっちはそっちで、こっちはこっち一人で…頑張ろう。
      脱出するまで…脱出してから、も」

361Mii:2019/11/10(日) 17:51:26 ID:EJfM3NDc
…なんでしょう。うまく言い表せないのですが…こう、もやもやとした怒りが、
沸々と胸の奥底から湧き上がってきます。

ロゼッタ「それは…なんとも、馬鹿げた話ですね。
     私は、デイジー姫と…これからもずっと、仲良く――」



デイジー「――――無理だよっ!!」



ロゼッタ「…っ!」

デイジー「もう、そんな呑気なことを言える資格なんて、私には残ってない!
     一方的に、みんなの心を踏みにじった罪は、消えてくれないっ!
     みんなと顔を合わせるたび…血みどろになったみんなが脳裏に蘇って、
     胸が張り裂けそうで張り裂けそうで、堪らないよ!」

ロゼッタ「……」

デイジー「何度命を奪ったと思ってるの?
     ゼルダ75回、ヒルダ76回、……ロゼッタ229回だよ!?
     それも、安らかな死とは程遠いありさまで!」

あ、横の2人がまた気分が悪くなって口元を抑え込んでしまいました。
ヒルダ姫に至っては、私の背中に隠れてブルブル震えています。
い、一応確認しておきますが、その位置からリバースしないでくださいね?
復活すれば衣装も元通り?それは流石にレディを馬鹿にしています。

362Mii:2019/11/10(日) 17:52:53 ID:EJfM3NDc
改めて数を突き付けられると、得体のしれない薄気味悪さ。
…でも、どうしたことでしょう。
皆さんに「異常だ」と言われている私、ことロゼッタ。
いまいち、絶望感が襲ってきません。

というか、どうして3人の中で、ゼルダ姫が一番死亡回数が少ないんですか!
そしてどうして私だけ飛び抜けて多いのですか!?むしろ驚きの方が大きいです!

…はい、2人の肩代わりで特訓をし続けたからです、終わり。
なんだか理不尽です。
     


嗚咽を漏らしながら、ただ泣くだけのデイジー姫。
デイジー姫は、根が優しいですから。本当に。
自責の念に駆られて、駆られて。どうしようもない状態なのでしょう。

363Mii:2019/11/10(日) 17:55:12 ID:EJfM3NDc
ゼルダ「…そう、ですね。私たちも調子に…乗って、いました。
    金輪際、あの姿の貴方は見たくない。今の状態の方が好ましい――」

ヒルダ姫も、おずおずと、ゆっくりと、か細い声で問いかけます。

ヒルダ「……で、でも。その。もう、あんな暴走状態になることはないんですよね?
    あの狂暴だった時のデイジーとはとても仲良くはやっていけないかもしれませんけど…!
    今の、穏やかなデイジー姫となら、問題なく友達として、友人として――」



――違う。

――違う。



ロゼッタ「……違い、ますっ!!」バッ!

ヒルダ「!?」

ヒルダ姫には悪いですが、なんとか振り絞ろうとしていた声に横槍。
それでは駄目です、2人とも。全然、デイジー姫のことを想えていません。

ロゼッタ「ゼルダ姫っ!ヒルダ姫っ!失礼ながら、穏やかな状態のデイジー姫を慕い、
     野性味を浴びた状態のデイジー姫を憎む…などといった使い分けは
     私は…私は、承服しかねます!」

2人の方を向いて、赤裸々に想いを語る。語らなければなりません!

364Mii:2019/11/10(日) 17:56:31 ID:EJfM3NDc
ゼルダ「…どう、してですか?」

ロゼッタ「どちらも、デイジー姫が人生で得てきた人格、姿ではないですか!
     どちらが正義でどちらが悪だとか、優劣があるだとか、
     価値のない、秘めておくべき人格があるとか…そんなこと、おかしいです!」

デイジー「……っ!」

デイジー姫が、一瞬息を、飲む。しかし、すぐに真顔に戻ります。

デイジー「……ありがとう、ロゼッタ。私をそこまで庇ってくれて。
     でも、私自身、『裏の私』の逸脱ぶり、危険性は重々承知してるから。
     他人に庇ってもらえるようなもんじゃない。
     …だから、余計な事、しないでほしいな。
     もっとも、表の方の私との友達付き合いがしたいっていう――
     ゼルダ姫やヒルダ姫の願いも叶えることは無理なんだけど」

ロゼッタ「デイジー姫、貴方まで、なんてことを言うのですか!
     貴方自身が否定してしまったら、何もかも――」

365Mii:2019/11/10(日) 17:58:44 ID:EJfM3NDc
デイジー姫が、ゆらりと、立ち上がりました。



デイジー「――――れ」

ロゼッタ「……え?今、なんと――」





デイジー「――――黙れっ!」ゴウウウッ!!





ロゼッタ「…………なっ!?」ゾワッ!

ヒルダ「…ひっ!!!!」カキーン!

ゼルダ「…嘘……!ま、まさか、貴方――!!」

デイジー「何?ビックリしたか?所詮、同じ『私』だからな。
     『裏の私』の思考をトレースし、殺気を真似ることくらい…できるさ。
     まあ、自己暗示不足のせいで、戦闘力は底上げされてないけど、さ」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

366Mii:2019/11/10(日) 18:00:53 ID:EJfM3NDc
まさか、表の状態のデイジー姫でも、この位の造作ならできる、だなんて。

そのまま、猛烈な眼光、殺気をもって私を睨み据えます。

たちまち、私は、凍えきってしまいます。

ロゼッタ「…………くっ――」ジリッ

デイジー「だから、無駄なことはやめろ。
     ゼルダ姫たちと同調するのも、当然許さない。
     私とは…そうだ、言ってみれば今後はビジネスパートナーとして、
     最低限の助け合い、利害一致による協力関係さえあれば――」



ロゼッタ「――――う…あ…………」ガクガク



自分の意志が、呑み込まれていく。
強者に従うまま、喉元で意見が押し戻される。
わたし、には。どうする、ことも――。

367Mii:2019/11/10(日) 18:02:48 ID:EJfM3NDc





――――それで、いいの?





ロゼッタ(…………っ!!)

よいわけが、ありません。





――――ママは、そんなに、弱い人じゃ――ないよね?
――――困っている人のためなら、人一番頑張れる、人だもん。



ロゼッタ(…………)

ロゼッタ(……………………)

ロゼッタ(…………………………………………ありがとう、サヤカ。
     もう少し…いえ、まだまだ――私は、頑張れる!)

368Mii:2019/11/10(日) 18:04:29 ID:EJfM3NDc
ほんのちょっと、夢の世界にでも飛び立っていたのでしょうか。
一瞬だけ下を向いて、小さくひとつ、息を吸って、吐く。

目の前に立ちはだかる、デイジー姫を。
顔で怒って、心で泣いている、彼女を、しかと、二つの眼で睨みつけて。



デイジー姫が、私を、そう睨みつけるように――!!





ロゼッタ「――いい加減に、しなさいっ!!!!!」ギンッ!!





デイジー「――――っ!?」



デイジー姫の、信じられないという感じで面食らう顔。
それに優越感を得るわけでなく、考えを改めようともせず。
私は、気持ちと気合をありったけ篭めて、声をデイジー姫にぶつけます――!

369Mii:2019/11/10(日) 18:07:20 ID:EJfM3NDc
ロゼッタ「デイジー姫!結局貴方は、やはり私たちのことを信じてくれていない!
     自分ひとりで何もかも判断して、全部背負って!
     私たちの言葉に耳を塞ぐだけ!

     自分の気持ちを、分かってもらおうとする努力を怠って!
     心配でならない私たちの気持ちを、理解する努力を怠って!
     
     ならば、こちらにも考えがある!
     幾ら嫌だと、関わりたくないと駄々をこねても!
     救いの手を、声を、拒絶しつづけ切り裂き続けても!

     手を差し伸べ続けることを、決してやめない!
     齧り付いてでも、羽交い絞めにしてでも、深淵の闇から引き摺りだしてみせる!」

デイジー姫が、固まっています。戸惑っています。
まさか、私に反撃されるとは思ってもみなかったのでしょう。
感情の奔流に、私が呑み込まれると――心底思っていたに違いありません。

370Mii:2019/11/10(日) 18:09:23 ID:EJfM3NDc
デイジー「な、なにを急に、らしくもない――」

ロゼッタ「――らしくも」

激情に任せて、体が勝手に動く。

ロゼッタ「――ないのは」

信じられない、力が、湧いてくる。
懐かしい愛娘には、感謝、感謝です。



ロゼッタ「――貴方だ、デイジー姫っ!!」ガンッ!



デイジー「――ぐっ……何!?」ダンッ!

ゼルダ「――なん、ですって」

不意を衝いたとはいえ、激しく地を蹴って俊敏に動いた私の体は――
固く握った拳をこめかみにクリンヒットッ!
…させることはできず咄嗟に両手で受け止められたものの、
かなりの勢いを殺し切れずに、大きくズサァっと後退させる。

そのままダダッと追い縋り、全身全霊で突撃しながらの――肘突きっ!
すぐ後ろの壁に叩きつけられ、さしものデイジー姫もカハッと空気を吐きます。
そのまま、凄まじい剣幕で、伸ばした腕をドンッと彼女の肩に突き付け――。

371Mii:2019/11/10(日) 18:11:18 ID:EJfM3NDc
ロゼッタ「……………………」ウツムキ

デイジー「……ロ、ロゼッタ?」






ロゼッタ「……こひゅぅ……こひゅぅ――」ペタン

ロゼッタ「すいま、せん。電池、切れです」ゼェゼェ

ゼルダ「」

ヒルダ「」

デイジー「」



肩に押し付ける、どころか軽くタッチすることも出来ず、
火事場の馬鹿力の反動で、全身から力が抜けて…
激しくぜぇぜぇ息を吐きながら、デイジー姫の足元に膝を付いてしまいました。
ギャグ的に言うなら目がグルグル〜、の状態です。全然、格好が、付きません。

372Mii:2019/11/10(日) 18:13:33 ID:EJfM3NDc
ロゼッタ「……ごほごほっ――で、でもま、あ。
     今のデイ、ジー姫、が。『表の状態』であったと、して、も。
     力量差が、思い切り、あるの、ですから、ね。
     とう、ぜん、でした、か――ごほっ…」

デイジー「…………」

デイジー姫が、心配そうな顔をして、私を見つめています。
手を差し伸べようとしゃがみ込もうとして、躊躇して、そんな感じ。
…仰天したせいで裏の顔のなりきりが途切れたのか、よく知る朗らかなデイジー姫です。

ロゼッタ「――――言って、おきま、すが、さっきの、私の、主張、は、本心、ですよ」

デイジー(ビクッ)



そこに映るのは、後悔、恐怖、怯え、色々な感情が混ざる表情。

まだ体が本調子ではないですが、五臓六腑を奮い立たせて、なんとかかんとか立ち上がる。
そのまま、デイジー姫に一歩一歩、ふらりふらりと近づきます。
体中痛みますが、目線は決して逸らさない。

373Mii:2019/11/10(日) 18:16:20 ID:EJfM3NDc
デイジー「…い、嫌。やめ、てよ、ロゼッタ。…こっち、来ないで!」

両腕で自身を抱きしめて、悲嘆はまだまだ尽きない様子。

ロゼッタ「やめません。デイジー姫とは、これまでもこれからも、
     親友で、居たいですから」

デイジー姫が、怯えるまま後ずさる。
その分だけ、――いえその分以上に、私は歩を進め、距離を減らす。

デイジー「何度も、何度も、何度もっ!
     ロゼッタ、貴方の命を奪ったのよ!?」

ロゼッタ「残機があった、とそれこそ何度言えば分かるのですか。
     それに、貴方は――その回数まで、しっかり覚えてくれている。
     1回1回、その瞬間を軽んぜず、脳裏に刻んだということでしょう?
     むしろ、私の方が『辛い思いをさせて本当に御免なさい』ですね」

デイジー「ちが…ちがうよ、そんなに私…思いやりのある、優しい人間じゃない…………
     自分の力不足を他力本願で埋め合わせようとしたロクデナシで…」

374Mii:2019/11/10(日) 18:19:03 ID:EJfM3NDc
ロゼッタ「私にとっては十二分に、優しさに満ち溢れた人ですよ?
     …『表のデイジー姫』も、『裏のデイジー姫』も、ね」

デイジー「……っ!!」ハッ

ロゼッタ「私の知るデイジー姫は、そうですね…。

     表では、はっちゃけていて、ちょっと仕事に不真面目で…
     真面目に政務を執るピーチ姫からは頻繁に呆れられていて。
     突拍子もないことを言って、周囲を振り回したりして。
     でも、どんなときでも前向きで、めげなくて、ムードメーカーで。
     困難に立ち向かおう、強敵にも果敢に挑もうっていう強い意志の塊で。
     ピーチ姫や私を、その元気と勇気で数多く助けて、救ってくれた。

     裏では、視界に入る者すべて、思い通りにならないと済まない苛烈な人で。
     最適解を妨害する者、導出に意義を唱える者には遠慮なく制裁するスタンスで。
     …でも、私たちの無理強いと自分の未来とを天秤にかけて、一度決めた事なら。
     たとえそれが、『表のデイジー姫』の耐え難い苦痛、苦難になったとしても、
     少しでも早く私たちが経験値を積めるように、冷酷に徹することができて。
     自分本位のようでいて、あくまで他人本位の本質は変わっていない。

     おまけに、ゼルダ姫も白旗を上げる、凄まじい戦闘力――
     これを遺憾なく発揮できる、素晴らしいファイターであることに気付かされました。
     ……私は、1人の友人として、とても嬉しく、誇らしく思います」

375Mii:2019/11/10(日) 18:21:33 ID:EJfM3NDc
デイジー姫が、目尻にぎっしりと、涙を蓄えています。
どんな葛藤が、これまであったのか。私などには知る由もありませんが。

優しく、優しく。デイジー姫を、ふんわりと抱き締めました。
今は、これだけで、十分でしょう。

ロゼッタ「ですから。親友でいられないだなんて、
     悲しいこと、言わないでください。寂しいこと、言わないでください。
     私たちはそんなこと耐えられませんし、貴方だってきっと耐えられない。

     これからももっと、デイジー姫のことを知っていきたい。
     デイジー姫に、私たちのこと、もっともっと知ってもらいたい。
     呆れられたり、時には喧嘩することもあったりするでしょうが、
     ずっと親友でいたい。

     ――この願い、どうか叶えて頂けないでしょうか?」ギュッ

デイジー「――――――――う―――あ――――――――」

ロゼッタ「最後に決めるのは、『表のデイジー姫』でも、『裏のデイジー姫』でもない。
     全部ひっくるめて、貴方が決めちゃってください、『デイジー姫』!」

デイジー「――――――――――――――――――――――――
     うわああああああああああぁぁぁぁ――――ん!!!!!!」



堰を切ったかのように、たちまち涙雨、号泣し出すデイジー姫。
ああ、本当に、本当に……お疲れさま、でした。

376Mii:2019/11/10(日) 18:24:24 ID:EJfM3NDc
ひっく、ひっくと、デイジー姫は私の腕の中で、まだまだ泣き続けます。

デイジー「グズッ…マリオに、縋って、わだじ、強く、なったの。
     厳しい、条件付きとはいえ、確かに、強く、なったの。

     でも、お父様亡き後のサラサ・ランドで政務に本格的に取り掛かってみたら…
     性格の苛烈さが仇となって…表の私がびっくりするくらい、裏の私に怪我を貰う人たちが続出して!
     もともと、それほど仲の悪くなかった大臣や役人たちにまで、愛想尽かされて!

     お城に生き残った1割の、更に半分が下野しちゃって!
     一体私、何をやってるんだろうって悔やむばかりでぇっ!!」

ロゼッタ「…今は、どうなのですか?」

デイジー「……私のこの二面性を受け入れてくれている人――
     そんな人たちだけで、ほぼ全ての役職役員が構成されてる。
     そのおかげで、ようやく軌道には乗り出したけど、でも…!」

ロゼッタ「なら、よいではないですか。デイジー姫のことですから、
     苛烈になりながらも真面目に改革を図ったのでしょう?
     理屈で負けているのにそれに異論を唱えて、女王に反撃されて。
     それで下野するというのなら、それまでの人材だったということですよ」

ゼルダ「ロ、ロゼッタ。施政者でないとはいえ、ズバッと斬りますね…。
    ヒルダ姫、彼女の言い方を真に受け過ぎてはなりませんよ。
    上に立つ者としては、清濁併せ持ち、吟味に吟味を重ねて…」

ヒルダ「は、はい、わかったようなわからない、ような…」

むう。そんなこと、今言わなくてもいいじゃないですか。

377Mii:2019/11/10(日) 18:27:01 ID:EJfM3NDc
ロゼッタ「デイジー姫。ともかく、貴方が『仮面の姫』となるすべを身に付けたことは、
     何ら恥じるべきことではない、と私は思います。むしろ誇るべきです。

     ただ、仮面という表現の仕方はちょっと違いますね。
     どんな姿であろうとデイジー姫なのですから。切り離すことなどできないのですから。
     そこを正々堂々と主張して主張して、認めさせればよかったのですよ。
     ええ、認めさせてやりましょう!私も微力ながら、協力させていただきます。
     困ったときは、いつでも仰ってください」



デイジー姫は、泣きながら、こくこく、とうなずくばかり。



ロゼッタ「離れ離れだなんて提案は撤回してくださいね。
      これからも、よろしくお願い致しますね!」



デイジー「うんっ!――うんっ!!ロゼッタが親友で――本当に、よかった」ポロポロ

378Mii:2019/11/10(日) 18:29:58 ID:EJfM3NDc
ゼルダ姫とヒルダ姫も、思わず貰い泣きしています。
これで、一件落着といったところですかね。

ロゼッタ「それでは、とりあえず朝食としましょう。
     皆さん、お腹がすいたことでしょう?
     デイジー姫も、いっぱい食べて、元気になって下さいね!」

デイジー「うんっ!――うん!!」ポロポロ

ロゼッタ「さあ、私たちの友情も雨降って地固まる。弾みも付きましたし、
     明日からの特訓も、是非お願い致しますね、デイジー姫!
     少しでもデイジー姫のご期待に沿えるよう、全力を尽くします!」グッ

デイジー「うんっ!――うん!!










     ――――――――――――――――うん?」ピタリ

ゼルダ「うん?」

ヒルダ「うん?」

379Mii:2019/11/10(日) 18:33:40 ID:EJfM3NDc



デイジー「……ごめん、それって、どういうこと?」



はて、デイジー姫が泣き止んで、素の状態に戻っています。
それは嬉しいのですが、一体どうしたというのでしょう。



ロゼッタ「え?ですから……





     前の日から自己暗示が必要、発動したら就寝まで効果が持続するということは…
     あの特訓、1日おきになら問題なくできるということでしょう?
     効率はもともとの予定の半分ですが、それでも十分やる価値はあると思います!」フンスッ

デイジー「ファッ!?」

ゼルダ「」

ヒルダ「」

380Mii:2019/11/10(日) 18:37:19 ID:EJfM3NDc
ゼルダ「じょ、冗談ではありませんっ!もう、あのような拷問はこりごりです!
    どんなことがあろうとも、デイジー姫を暴走させてはならない!」マッサオ

ロゼッタ「私の話をちゃんと聞いていましたか?
     そういう、二面性の一方を否定すること自体が誤りなのですよ?」

ゼルダ「い、いえ、流石にそれとこれとは話が別でしょう!?
    特訓に本気にさせることはよろしくない、と言っているのですよ!!」

デイジー「そ、そーだよロゼッタ!今回ばかりは、ゼルダの主張が100%正しいよ!」

ヒルダ(こくこくこくこく)

ロゼッタ「むむぅ…では、私だけでもいいので鍛えて頂けませんか?
     そのように自己暗示をすれば解決するのですよね?」

デイジー「ま、まあ、ロゼッタのみに絞った特訓をするって自己暗示くらいなら、
     できなくはない、とは思うけど…やったことはないけど…」

ゼルダ「……付き合いきれません。そんなに死にたいのなら勝手にやってください。
     あとで泣いて後悔しても遅いですし助太刀も一切しませんよ」プイッ

デイジー「ゼルダぁ、ロゼッタを諦めさせるの、協力してよ…」

ロゼッタ「……………………」

381Mii:2019/11/10(日) 18:41:47 ID:EJfM3NDc
ロゼッタ「よし、なんだかワクワクしてきました!デイジー姫!
     とりあえず、残りの期間を全て私に充てて頂けるのならば、
     ゼルダ姫 く ら い なら実力で追い抜けますよね!頑張ります!」

ロゼッタは ちょうはつした!▼

ゼルダ「は?」イラッ

ロゼッタ「デイジー姫の指導は、ゼルダ姫 な ん か とは比べ物にならないほど
      的確でお上手ですからね!最長で90日もあれば、
      外の世界で何年分、いえ何十年分も特訓するのと同じ価値がありますよ!
      こんな特訓を独り占めできるだなんて、なんて私は幸運なのでしょう!」ウットリ

ゼルダ「あぁん?」ギロッ

ロゼッタ「どうしたのですか、ゼルダ姫。
     特訓から尻尾を巻いて逃げ出す貴方には、関係のない話でしょう?
     私は勝手に強くなりますので、どうぞどうぞ、安全第一で過ごしてください」

ゼルダ「誰が逃げると言いましたか、誰がっ!
    よいでしょう、そこの馬鹿な女を黙らせるために、
    私も特訓を続行しようではないですか!後悔することですね!
    デイジー姫、さあ、さあ、さあっ!」ズイッ

ゼルダは ちょうはつに のってしまった!▼

デイジー「ゼルダァ――ッ!?」

ヒルダ「」

382Mii:2019/11/10(日) 18:49:39 ID:EJfM3NDc
デイジー「」チラッ

ヒルダ「わわわわわ私は絶対に嫌ですからねっ!逃げますからねっ!?
    後ろ指差されようと、馬鹿にされようと、断固拒否しますからねっ!!!」ズサッ

デイジー「う、うん。わかってる、わかってるから。
     そんな怯えた目で私を見ないでくれるかな」

ロゼッタ「では朝食を持って参ります!私にお任せください!
     みなさんはお疲れでしょうから、ここで待っていてくださいね!」

バタン。

デイジー「…ふう。参ったな、こりゃ。ロゼッタにはかなわないや。
      ――――――――――――――――――――――――ありがとう」ボソッ

ヒルダ「…凄いですね、ロゼッタは。…あれ、ゼルダ姫?また顔が青く…」

デイジー「今頃になって挑発の効果が解けて後悔しだしてるんじゃないかなー。
      なんだったら、私からロゼッタに『ゼルダはやめておく』って伝えておこうか?」クスッ

ゼルダ「いいいいりましぇんよそんな気遣い!」ガクガクブルブル

ヒルダ「…ふふっ」

デイジー(あれ?そういえば、何かの事故で血塗れたりしたら…私って
      ゼルダとヒルダの見分け、しっかり付くのかな…ま、いっか)

ヒルダ「…っ!?何ですか、この悪寒は!?」

383Mii:2019/11/10(日) 18:52:51 ID:EJfM3NDc
ロゼッタ「お待たせしました!
     今朝は、割とフルーツが多めに出現してくれましたよ!
     脂っこく無くて、本当によかったです!

     あと、栄養のことを考えて、こちらも大量に用意しておきました!
     いくらでも飲んでくださいね!お代わりもすぐ作れますから!」トンッ




トマトジュース「1人あたり2Lもあるぞ」マッカッカ



ゼルダ「…………」

ヒルダ「…………」ウプッ

ロゼッタ「…あれ?どうしたのですか、2人とも。急に顔色を変えて、口元を押さえて…
     え?ちょっとトイレに行ってくる?い、いきなりどうしたのですか!?」



ダダダダダダダッ――――



ロゼッタ「何か、悪いことをしてしまったのでしょうか…?」

デイジー「そ、そうだね、私から見ても極悪非道なことをやったと思うよ」

384Mii:2019/11/28(木) 22:13:04 ID:glH1He8A
雨降って地固まる!
なし崩しで、1日おきの猛特訓をすることに。
空いた日は空いた日で、普通の特訓をしてまいります!



…と、早合点していたのですが。



デイジー「嫌われずに済んで万々歳、となったら気が抜けて……
      やる気でなーい。遊びたーい。

      というか、これから1日おきにあのモードになるなら、
      インターバルはしっかり休む―。みんなも休め―」グダー

ロゼッタ「えっ」

ゼルダ「えっ」

ヒルダ「…?」



デイジー姫は、ベッドでゴロゴロ。だらけ切っています。
昨日の反動か、まったくもって戦闘準備をしていません。
昨日とのあまりの違いに、皆さん、目を白黒させています。

385Mii:2019/11/28(木) 22:16:21 ID:glH1He8A
デイジー「あー。もともと、火事場の馬鹿力の凄い版、だからねー。
      結構次の日はくるんだよー。

      だるさMAX、やる気激減、最大パワー抑制、みたいな副作用がねー。
      ま、治らない後遺症みたいなのはないから、十分便利ではあるけどー」グデー

デイジー姫が、脚だけバタバタさせながら、枕に顔をうずめています。
その姿は、まるで子供のよう。微笑ましいという意味で。
ですが、私としてはちょっと不完全燃焼です。

ロゼッタ「そんな…」

デイジー「休むのも立派な特訓だよー。
     万全の状態で明日を迎えたほうがいいよー」

ゼルダ「そうですよロゼッタ、戦闘狂でもあるまいし」

ヒルダ「そうですそうです」

ロゼッタ「…あれ?私、割と引かれてますか?」ガーン



そこまで言われると、なんだか、恥ずかしくなってきてしまいました。

386Mii:2019/11/28(木) 22:18:57 ID:glH1He8A
ゼルダ「しかし、そうなると…きょ、今日は一日、何をいたしましょう」ビクッ

デイジー「…別に、私の顔色伺わなくてもいいよー、はぁ…。
     分かってはいるけど、トラウマはトラウマ、か。
     そーだねー。私は…あ、引きこもってゲームでもしておくかー」ガサゴソ

ロゼッタ「ゲーム…?」



ふらっと立ち上がったデイジー姫が、トコトコ歩いて行って。
オシャレなリュックの中をあさって、取り出したのは――
すこしちいさな電子機器でした。それは、まるで――








ロゼッタ「…お弁当箱?」

デイジー「…あ、間違えた。これ初代ゲームボーイだった。こっちこっち…
      ぱんぱかぱーん!『ニンテンドーDS lite』―!ゲーマーの必需品だねー!」

ゼルダ「その間違いは絶対におかしい」

387Mii:2019/11/28(木) 22:22:49 ID:glH1He8A
ヒルダ「ゲームって、本当の意味での携帯ゲーム機ってことですか…
    現物を見るのは、初めてですが…」

まじまじと、私たちはその機器を見やります。

ロゼッタ「デイジー姫は、その『げぇまぁ』としても凄い実力をお持ちなのですか!
     素晴らしいです!」

デイジー「…ごめん、ほんとごめん。調子に乗った気はしないけど
     そういう言われ方をすると凄まじく恥ずかしい」カアァ

ばつの悪そうな顔をしたあと、そのままゲームをプレイする準備に入ったもよう。
専用のケースファイルに入れられた、カードのようなものをあれこれ見ていきます。
その数、10、20、…………お、多くないですか!?

ゼルダ「い、一体どれだけの数があるというのですか?」

デイジー「DS 用のソフトだけでも100以上あるよー。
      他にもGB、GBC、GBA…任天堂の携帯ゲーム機用のソフト揃ってるよー。
      旅のお供として常備してるんだー。
      定期的に任天堂本社に裏取引しに行く甲斐はあるよー」ペラペラ

ゼルダ「」ドンビキ

ヒルダ「ゲーマー、です…」



ゼルダ姫とヒルダ姫が引いています。

388Mii:2019/11/28(木) 22:26:04 ID:glH1He8A
デイジー「なんだったら、対戦でもするぅー?
     カートリッジひとつでダウンロード対戦できる機能、
     備わってるソフトもそれなりにあるよー?」

ゼルダ「…そ、その。ちょっと、興味があまり……。
    そもそも、ソフトはともかく、携帯機そのものは人数分なければ、
    当然遊べないでしょ――」



ドサッ!



デイジー「はい、4人対戦をデフォとして、布教用の本体3つー」サッ

ロゼッタ「わぁ」

ヒルダ「」

ゼルダ「」

デイジー「経験の差は当然あるだろうけどー。
     ずるっこはなしってことで、事前にレクチャーはするからさー。
     あと、3対1で掛かってきてもらって構わないよー、あははー。

     …ねえ、その冷めた目はやめてほしいです」

389Mii:2019/11/28(木) 22:28:39 ID:glH1He8A
3人して、顔を見合わせます。

ゼルダ「…どうしますか?正直、興味が本当にまるで湧かないのですが」

ヒルダ「でも、やってみたら案外気に入るかもしれませんよ?
    そ、それに。デイジー姫には色々とご迷惑をお掛けしたことですし、
    午前中だけでも、付き合ってあげるというのも…」

ロゼッタ「そうですね、この奇天烈さも、デイジー姫の持ち味です。
     きっといい気分転換になりますよ。
     未知の遊びにちょっと期待しています」

信じられない、という目を向けてくるゼルダ姫。
い、いいじゃないですか。

ゼルダ「…はあ、わかりました。私だけ悪者にはなりたくありませんから。
    付き合ってあげましょう」

デイジー「あはは、相変わらず偉そうだねー」

ゼルダ「めめめ滅相も御座いません!」ズサァ

デイジー「それをやめいと言っとるんですが。
     じゃあさ、好きなソフト、選んでちょうだいな。
     任天堂の特別製だからそう簡単には壊れないけど、
     あまり乱雑には扱わないでねー」

ゲームの素人たちで、あまりどういうゲームジャンルかもわからないまま、
ゲームを選ぼうとします。それをデイジー姫が遠目から、ニヤニヤと眺めます。

390Mii:2019/11/28(木) 22:32:20 ID:glH1He8A
ゼルダ姫が「幼稚な絵ですね…」と思わず呟いて。
デイジー姫が「そういったゲームにこそ掘り出し物は山ほどあるのー」と、のほほんと答えます。
ヒルダ姫は、どちらかというと数に圧倒されていて、あたふたして決めれられない。

さて、私も、面白そうなものを頑張って選んでみましょうか…。



ロゼッタ「……あっ!これにします!なんだか、面白そう!ティンと来ました!」

デイジー「お、ロゼッタは決断力があるねー。どれを選んだのかなー?」

ロゼッタ「これです!」サッ



TETRIS「デデーン」

デイジー「」



ロゼッタ「デイジー姫?一体どうしたのですか?」

デイジー「……組合せ変更。
     ロゼッタ1人に対して私たち3人、のチーム戦ねー。
     それじゃあ、簡単にルールと戦術をレクチャーするよー」

ロゼッタ「!?」

391Mii:2019/11/28(木) 22:35:36 ID:glH1He8A
ヒルダ(…………えっと、これをこうして…あれ、ラインが消えてくれません。
     …ああっ!あんなところに隙間が!どうリカバリすれば…!)ピコ ピコ

ゼルダ(ふむ、とりあえず一筋だけ残してしっかり埋めて、ホールドしておいたIミノで
    テトリス消しを行う。この繰り返しですね。…あまり作戦はないのでは。
    ロゼッタ虐めになってしまいそうですね)ピコピコ

デイジー(T-spin double!からーの…T-spin triple!ついでにテトリスいっちゃうよー!
      
      悪いね、初心者といえど――空間把握能力の高いロゼッタ相手だから、
      ちょっと…いや、むっちゃくちゃ本気出すよー!これでどうだー!)ピコピコピコ

    



ロゼッタ「T-spin triple , T-spin triple――テトリス――10REN――
     T-spin triple, T-spin triple, 15RENパフェ――
     T-spin triple, T-spin triple, 気分転換に17REN――」シュババババ

デイジー「ぎゃああああああ!この子、プレイ歴5分の癖に、
      既に基本ハードドロップしか使ってないぃー!」チュドーン

ヒルダ「あ、負けちゃい…ました」

ゼルダ「」

392Mii:2019/11/28(木) 22:42:06 ID:glH1He8A
ロゼッタ「なるほど、T-spin triple back to back T-spin tripleを毎度しっかり仕掛けながら、
      残りのミノで臨機応変に攻撃するゲームなのですね。面白いです!」パアアアア

デイジー「違う、違うよ!?その安直な作戦が超速で100%決まりまくるのは
     ロゼッタだけだからね!?
     何が悲しくて、『10秒おきの13段攻撃のついでで』通常攻撃を食らわなきゃいけないのさ!?
     ち、違うゲームにしよう、ねっ!?」

ロゼッタ(シュン)ションボリ

ロゼッタ「…では、こちらで」サッ

デイジー「…うん、ごめんね、無理言っちゃってー。
      でも、さすがにもうこんなことには…」









ぷよぷよ「 セー↑ ガー↓ !」

デイジー(アカン)

393Mii:2019/11/28(木) 22:43:45 ID:glH1He8A
デイジー「フィバ伸ばしなんかさせてられっか!
      ええい、怖いけど通ルールで勝負だー!
      ゼルダにヒルダ、波状攻撃を仕掛けるよーっ!」ピコピコ

ゼルダ「は、はい!えっと、これで…5連鎖、ですか?」ハッカ!

ヒルダ「2連鎖ダブル、です!」ハッカ!

デイジー「モタモタしてるけど…呑み込みが結構早いね、いいよ!」

ゼルダ「いくら初心者といえど、ハイラルのトップですから。
    階段積み、とか鍵積み、とかいう組み方くらい、楽に覚えられますよ」フフン

デイジー(なんだか微妙にシュールなことをのたまうゼルダでした)

ロゼッタ「ぐっ、このジャブは食らっていられません!
     仕方ありません、対応します!えい、それ!」ハッカ! ハッカ!

デイジー「よしっ、大きく形が崩れた!卑怯と言いたいなら言うがいい!
     はいっ、5連鎖!もう主砲を撃つしかないよ!」ダンッ!

ロゼッタ「…仕方ありません。10連鎖、参ります!」ハッカ!

394Mii:2019/11/28(木) 22:50:31 ID:glH1He8A
ゼルダ「じゅ、10連鎖!?私たちではとても対応できませんよ!?」

デイジー「まっかせなさーい!そのくらいなら――ほい、ほいっと。
     それっ、おっかえしだー!11連鎖くらい行ったでしょ!
     主砲を撃たせて撃ち返す!これがこのゲームの醍醐味だ!」ハッカ!

ロゼッタ「正確には10連鎖ダブルみたいですね!」シュババババ

デイジー「…お前さん、いつ凝視してたんや」

ロゼッタ「まあ、これでも返されてしまうので…」シュババババ

デイジー「そ、そうだよね!…って、え、なに、そのミラクルな不定形の繋ぎ方…………
     いやもっと千切ろうよ、おかしいよ!?」

デイジー(あ!でも、このままなら折り返しで1個足らない!連鎖数がガクッと落ちるよ!
     気付いていないみたいだ!にひひひひ…)

ロゼッタ「発火、間に合いましたっ!」カチッ!

ヒルダ「……あ、13段目から青が落ちてきました」

デイジー「え゙」

ゼルダ「ま、まさか最後まで繋がって…」

ロゼッタ「17連鎖ダブルで返します」ババババババヨエーン!

デイジー「」👑👑

395Mii:2019/11/28(木) 22:53:15 ID:glH1He8A
ヒルダ「」👑👑

ゼルダ「」👑👑

デイジー「ははははは」

ゼルダ「ふふふふふ」

ヒルダ「…グズッ」

ロゼッタ「…あ、あの?」





デイジー「……やってられっかー!!落ちゲー禁止ぃ!」

ゼルダ「異議なし!」

ロゼッタ(シュン)ションボリ

396Mii:2019/11/28(木) 22:57:36 ID:glH1He8A
ボンバーマン「バーイ ハドソンッ!」



デイジー「…ふふふ。死にたいらしいな。殺してやるよぉー」ボムッ ボムッ

ロゼッタ「あ、あの!デイジー姫!
     どうして私ばっかり爆弾で狙うのですか!?
     ちょ、ちょっと!蹴ってくるのはやめてください!
     嫌ぁ!なんだか微妙に溜めてありますよ!?」ダダッ

ゼルダ「何を言っているのですか、今は個人戦でしょう?
    デイジー姫の攻撃軌道上で貴方がノロノロしているだけでしょうに」ダダッ

ヒルダ「しかし、ロゼッタ。
    空間把握で、爆弾の位置くらい…らくらく察知できるはずなのでは?
    …というより、リアルタイムの操作ゲームなら敵なしのはずなのでは」

ロゼッタ「互いに独立した空間情報が戦術のほぼ全てを占めるゲームなら、ですね!
     残念ながら、皆さんの爆弾数や特殊能力、更に設置された爆弾の火力など
     覚えていられません!互いの干渉領域も被り過ぎています!」アワワ

397Mii:2019/11/28(木) 22:59:07 ID:glH1He8A
デイジー「…………どれ?」ボムッ

ロゼッタ「ひっ、爆弾!逃げないと――きゃあああ!?」ウワァー

デイジー「あらー、私の爆弾の火力を過大評価して逃げようとするあまり
      無理して爆風につっこんでるー…って、うわぁ!?」ウワァー

ゼルダ「よそ見するデイジー姫にお土産です…あ、キックがばら撒かれましたね。
     拾いに行きま――」フフ



ヒルダ「壁越しグローブ、えいっ」

ゼルダ「」ドカーン



ヒルダ「フッ」

ゼルダ「やってくれましたね、ヒルダ姫――っ!」ワナワナ

ロゼッタ「こ、これが友情破壊ゲーム…!」ブルッ

398Mii:2019/11/28(木) 23:01:54 ID:glH1He8A
北京オリンピック「On your mark...」



パアァン!

ロゼッタ「はあああああああっ!!」ガガガッ

デイジー「はははっ、遅いおそーい!そして私のソニックは速いぞー!」ガガガガガッ

ロゼッタ「ハァッ…デイジー姫っ!おかしいです、このゲーム!
      マリオが…マリオがっ!100メートル走るのに10秒以上掛かっています!
      まるで…まるで一般人ではないですか!」ガ゙ガガッ

デイジー「そこは許してあげてちょ」

ロゼッタ「ま、まさか世界の圧力が掛かっているとでもいうのですか…!恐ろしい…!」ゴクリ

ゼルダ「これは酷いですね。デイジー姫、貴方、遅すぎますよ。
    100メートル走るのに12秒も掛かるだなんて。スピードタイプの名が泣きますよ」

ヒルダ「アスリートとは思えない遅さですね…ピーチ姫と仲良く最下位・7位フィニッシュです」

デイジー「腕の悪さを私のせいにしないでくれるかなー」

399Mii:2019/11/28(木) 23:06:40 ID:glH1He8A
ロゼッタ「それにしても、こちらのゲームは…えっと、デイジー姫曰く、
      オリンピック地方で実際に行われた大会を再現しているのですね」

デイジー「厳密には、『北京っていう伝承のみ残る地方で、もしも――
     オリンピックというスポーツの祭典が開催されたとしたら』っていう
     たられば的なゲームだけどねー」

ロゼッタ「…も、もしかして。いつか、私も操作キャラになったりするのでしょうか?
     嬉しいような、恥ずかしいような…!
     そのためには、私も大会に出るだけの力を身に付けなければいけませんね!」

デイジー「…あ、あー。そ、そうじゃ、ないかなー。うん。
      かんっぜんにセクシー担当を意識されてたり、
      一部スポーツ限定のゲストキャラなんていう『ありがたき名誉の差別』を食らったり、
      まさかそんな未来が待ってるなんてわけないよねー」

ロゼッタ「もう、デイジー姫ったら、そんなご冗談を言って…ふふふ」

デイジー「HAHAHA、さあさあ次に行こう」サササッ

ロゼッタ「は、はい……あれ?」

400Mii:2019/11/28(木) 23:09:20 ID:glH1He8A




デイジー「あーそーんーだぁー!!だいまんぞーく!」バタリ

デイジー姫が、仰向けにベッドに倒れ込みます。
憑き物まるでない顔で、心の底から楽しんだよう。

ゼルダ「ちょっと待ってください。勝ち逃げなど許しませんよ!
    こちらはもうスタンバイできています!」

デイジー「ゲームはやらされるものじゃないやーい」

ヒルダ(思いっきりはまっていませんか、ゼルダ姫…
    ま、まあ。あまり娯楽という物に触れてきませんでしたからね。
    ゼルダ姫も…私も。のめり込む素質はあるのでしょうか)

デイジー「やるとしても、私はそろそろ自己暗示に取り掛からなきゃいけないし。
     今度からの暗示は、すんなりいくとは思うけどねー。
     もう操作方法は分かってるだろうから、3人で対戦しといてよー」

ゼルダ「むぅ…」

401Mii:2019/11/28(木) 23:13:43 ID:glH1He8A
ロゼッタ「えっと、私はそろそろリアルタイムの画面に目が疲れてきたので、遠慮させていただきます。
      一人でじっくりできるゲームがあるならば、やってみるのもやぶさかではありませんが」

デイジー「…私が言うのもなんだけど、見事にゲーマーの第一歩を踏み出してるねー。
      一人でじっくりできる、かあ。じゃあ、ポケモンでもやるー?
      …はい、『ポケットモンスター ブラック』!
      周回用だから、セーブデータは消してもらって構わないよー」

ロゼッタ「…『ポケモン』?ピカチュウ選手やリザードン選手が該当する種族群のことですよね?
      どういったゲームなのですか?」

あと、「しゅうかいよう」って、なんでしょう。…集会用?

デイジー「舞台は架空の世界観の一地方。
      非力な一般人が、何十倍何百倍も戦闘力があるポケモンを、
      絶対服従のマジックアイテムで捕獲して、束縛して、連れ回して、旅をする。
      
      ポケモンに戦闘欲があることをいいことに『目と目があったら即バトル』が
      暗黙の了解となっている世紀末のロールプレイングゲームだよ。
      ポケモンを育てて強くして、相手からお金を巻き上げながら進んでいくんだ。
      たとえ相手がジェントルマンや園児でもね」

ロゼッタ「碌でもないですね!?面白いとは思えないのですが?」

デイジー「面白いよー?限られた選択肢をうまく使って敵を倒していくのはー。
     親切なチュートリアルが散りばめられてるから、やってみてよー」

ロゼッタ「はあ……」

402Mii:2019/11/28(木) 23:16:51 ID:glH1He8A
デイジー「最終的には熱い通信対戦も待ってるしー」

ロゼッタ「…対戦もできるのですか?」ズイッ

デイジー(……あ、マズった。攻略本も何もないし、
      このゲーム、経験が勝敗にモロに出る類のやつだった)
     
デイジー「ま、まあ対戦はさておいて。私は退散するから、
      ぜひプレイしてみてよー。ストーリーだけでも楽しめるし」テクテク

ロゼッタ「はい。…今日は完全に休養日にしてしまいましょうか」



    ハーイ! ポケットモンスターノ セカイヘ ヨウコソ!
    ワタシノ ナマエハ アララギト イイマス!
    ミンナカラハ ポケモンハカセト ヨバレテイルワ

ロゼッタ「……」

ロゼッタ(世界を牛耳るマフィアのボス、みたいなものでしょうか)

アララギ(チガウワヨ)

403Mii:2019/11/28(木) 23:19:07 ID:glH1He8A




…もう!デイジー姫も意地が悪いですよ!
普通に競技としてポケモンバトルを楽しむ世界観があるだけじゃないですか!
まったくもう!

ジムリーダーが待ち構える、ジムという施設を回って、
最終的にチャンピオンを倒すことが目的のようですね。
道中、怪しげな宗教団体さんともお会いしましたが…。

ソシテ アナタガ サイショニエランダ パートナーハ クサタイプ ナンダヨネ
トイウコトデ ホノオタイプデ モヤシマクル オレ ポッドガ アイテヲスルゼ!

…炎は草に強く、草は水に強く、水は炎に強い。
なるほど、こういった相性ジャンケンをしっかり踏まえて行けば
戦いを有利に進められるのですね。今後は一層重要になってきそうです。



オラ! ユメノケムリ ダセ!
ヤメタゲテヨオ!

ロゼッタ「やめたげてよお!」

ゼルダ(ロゼッタが変になっています)

404Mii:2019/11/28(木) 23:20:27 ID:glH1He8A
〜翌日〜



デイジー「…さーて。
     本日も、楽しい楽しい特訓、やっていこうか」カクセイ!

ロゼッタ「はい!一撃くらい入れて見せます!」フンッ

ゼルダ「……」ガクガクブルブル

ヒルダ「…私は関係ない私は関係ない私は関係ない」



デイジー「2人いるのも3人いるのも大して変わらないか。
     区別するのも面倒だ、お前も付き合え」グイッ

デイジーの じこあんじの ていぎづけが ふかんぜんだった▼ 

ヒルダ「嫌あああああああぁぁぁぁ――――――――!!」ガクガクブルブル

405Mii:2019/12/10(火) 01:46:27 ID:NQWsVIhA
……私は、デイジー。

ようやく、本来の自分まるごと、認めてもらえた、幸運過ぎるお姫様。
…まあ、ピーチにも認めてもらってはいるが。

とはいっても。心残りがなくなって一層本腰モードとなった私に対し、
1日2日で耐性ができるなんてことは、あり得なくて。
目の前には、相変わらずの光景が、見事に広がっているんだがな。

――ゼルダ。
プライドのせいで引き下がれなくなったのが大いに災いし、また私に扱かれることに。
遠くから光の弓矢やら炎やらをぱしぱし撃つだけの、クソ詰まらない戦闘を仕掛けてくるものだから。

デイジー「せりゃ」

ゼルダ「があ゙っ…」

不意を衝いて急接近。遅い、反応が遅すぎる。何をやってる。
まだ場外の方がマシだと、自ら身を投げようと更に後退するものだから。
こちらは更に加速して、パンチ一発。

イタイ?クルシイ?そりゃ、拳が胴を貫通してるからそうだろうな。
ゼルダの背の後ろに、何度目か数えるのもだるくなる血飛沫の花が咲く。

406Mii:2019/12/10(火) 01:48:55 ID:NQWsVIhA
デイジー「酷いありさまだな、さっさと残機復活したいよな?
      このまま横に腕を振るって、内臓ぐちゃぐちゃにしつつ体引き千切るから。
      はい、歯を食いしばれ。さん、にぃ、いーち」

ゼルダ「――――――――っ!!――――っ!!!」ポロポロ

私の腕だけで支えられて、宙ぶらりんで。相変わらずの光宿さない眼と、痙攣した手で。
力なく、ペシペシと私の体をはたいて猛抗議の意を示すが。
やる気がないなら、お構いなし。

デイジー「フンッ」ブオォッ

ゼルダ「」ドシャァ

…なんでこうなるのか、わからないものかな。

407Mii:2019/12/10(火) 01:51:30 ID:NQWsVIhA
デイジー「お次は――」クルッ



ヒルダ「『ファントム・ユガ』召喚っ!!」パアアアア

ファントム・ユガ「WOOOOOOO――!」ズゴゴゴゴ

ヒルダ「わ、わ、私を守りなさいっ!」バッ

ファントム・ユガ「GAAAAAAAA――!」ダダダッ

ファントム・ユガの 槍突き!▼





デイジー「ぎゅっ……ポキッと」

デイジーは 穂の部分を 片手でつかんで へしおった!▼



デイジー「へえ、そんな隠し玉を覚えたのか。面白いな。
     中々の図体してるし、目くらましにはなるんじゃないか?」

ヒルダ「」

408Mii:2019/12/10(火) 01:53:43 ID:NQWsVIhA
デイジー「これ、返す」ブンッ!!



ファントム・ユガ「」グサッ

ヒルダ「あ゙」ザクッ

ヒルダ「――」バタン



―ヒルダ。
少しは自分の意志で行動しようという気にはなっているみたいだが、
あいかわらず、とりあえず、逃げよう隠れようという意図が見え見え。
力ずくで捻りつぶすだけの力量差もある。話にならない。

ぶん投げた穂の切れ端が首に刺さったのは気まぐれだ。
あ、でも打開を願って成長していることは褒めてやろう。
…いや、3歩進んで5歩戻る精神状態との噂もあるな。

409Mii:2019/12/10(火) 01:55:40 ID:NQWsVIhA
そして、ロゼッタは――。







ロゼッタ「ハァッ、ハァッ……『浄化』っ!『浄化』っ!『浄化』ぁ――っ!!
     ああもう!せっかく綺麗に掃除したのに、1時間でフィールドが…
     元の木阿弥、赤くて黒くて何か吐かれてて…嫌ああああぁぁ!
     きちゃないです!誰が掃除するというのですか!――どうせ私だけですよ!
     デイジー姫は手伝ってくれませんし!お二人は気力が残っていませんしっ!

     無駄に浄化の熟練度が上がっていく気がします!
     3か月後の私なら、もしかしなくても――あの血濡れの私の衣装、
     自力で蒼色に復元できたのではないですかねっ!?
     もう終わった話ですけどっ!!」シュババババ
 
デイジー「……」

ロゼッタ「ああっ、ゼルダ姫!復活したそばから倒れ込まないでください!
     そこまだ掃除が終わって…あああ、血がべっとりと!
     目に悪いです、再復活まで待っていられません!ちょっと脱がしますよっ!
     …はい、綺麗になりました!ここに置いておきますから着直してくださいね!
     いつまでも下着姿で寝転ばないでくださいね!ねっ!」パアアアア

デイジー「……」

410Mii:2019/12/10(火) 01:59:06 ID:NQWsVIhA
ゼルダ「――」

ロゼッタ「…………あ、結界を破ってリンクさんが」

ゼルダ「!?」ガバッ

ロゼッタ「ウ ソ で す♪」ペロッ

ゼルダ「――――――――ちょっと殴らせなさい……!!」ゴゴゴゴ

ロゼッタ「……デイジー姫の威を借る、ロゼッタ」スッ!

デイジー「…おい」

ゼルダ「ぐぬぬぬぬ……で、デイジー様。そちら、どいて頂けないでしょうか」プルプル

デイジー(なんというか、ロゼッタの周りだけギャグ空間にでもなっているのかと
      ついつい錯覚してしまうくらい…とても活き活きしている)

デイジー「その必要は、ない」ザッ・・・

ゼルダ「申し訳ございませんでした差し出がましいことを申し上げました
     どうか寛大なご処置を」ガクガクブルブル

デイジー「そういうことではなくて。割とイラッと来たんで私が制裁してやろう」ドゴォッ

ロゼッタ「」ベシャッ

――そんなこんなで、不満はありつつも飽きない1日。

411Mii:2019/12/10(火) 02:02:22 ID:NQWsVIhA
〜次の日〜

デイジー「いやあ、朝ごはんがおいしーい!
      ロゼッタ、お代わりあるー?山盛り持ってこーい―!」パクパク

ロゼッタ「はい、いくらでも食べてくださいね!
      …まあ、私が料理したわけでもなんでもないんですが」

すっかり吹っ切れたデイジー姫。元気元気、超元気といったところです。



ゼルダ「……」フラフラ

ヒルダ「――」グズッ

一方、精神的に参ったままの人もいるようです。
ヒルダ姫に至っては碌に食事を摂らずに机(修理済み)に突っ伏しています。
目に光が宿っているようにはみえません。

とりあえず、また休養日というデイジー姫のお達しが出ました。
ゲームの続きでもしましょうか。
…え?薄情じゃないかって?そんなこと…ないですよ?

412Mii:2019/12/10(火) 02:04:17 ID:NQWsVIhA
デイジー「お、ヤグルマの森かあ。
      もう2つ目のジムまでクリアしたんだー。
      ツタージャ選んどいて、なかなかやるねー」ノゾキコミ

ロゼッタ「…今の言葉で察しました。
     最初のポケモン選択で難易度が変わるのですね?
     不公平なのではないですか?」

デイジー「…ちゃうねん。ツタージャが弱いんやないねん。
      虫に飛行に毒に炎にトドメの氷に、
      草タイプがシナリオで無駄に弱点を衝かれまくるのが悪いねん」

ロゼッタ「むう…レベルアップも結構苦労しました」

ジャノビー Lv28
ヒヤップ Lv.15
タブンネ Lv.13
チョロネコ Lv.12
ヨーテリー Lv.11
マメパト Lv.9

デイジー「バランスわるっ!?単騎同然じゃーん!
     …ついでに言うと、ジャノビーのHPが危ういよ!?
     ピコンピコン鳴ってるでしょこれ!大丈夫!?
     倒されたりでもしたら大ピンチだよー!?」

413Mii:2019/12/10(火) 02:08:08 ID:NQWsVIhA
ロゼッタ「ここのダンジョンの虫ポケモン達に苦しめられて…
     で、でも、Lv.24でメガドレインを覚えたのです!
     回復しながら戦えるので強いですよ!」

デイジー「どうしてそれで自信が持てるんだってばよ。
      大体、このダンジョン、どこだかわかってるの?もう一度言ってみ?」

ロゼッタ「ですから、ヤグルマの森、ですよね?」

デイジー「…モンメンかクルミルかマメパトかフシデが出たらどうするの?」

ロゼッタ「…その時は体当たりで!」

デイジー「じゃあずっと体当たりだね」

ロゼッタ「え」

414Mii:2019/12/10(火) 02:12:11 ID:NQWsVIhA
マメパトLv.15「くるっぽー」

あ! 野生の マメパトが 飛びだしてきた!▼

デイジー「あちゃあ、言ってる傍から…食らうとまずいよー?
     逃げよう逃げよう、それか回復だー」

ロゼッタ「大丈夫です!このポケモンは防御力が低いので…
    体当たりで一撃で倒せるはず!
    そして、素早さも――余裕を持って勝っています!」

デイジー「そのレベル差で倒したところで大した経験値が……
     ……………………………………………………………
     ちょっと待ったあああああああああ――――っ!!」

ロゼッタ「……え?」ポチッ

デイジー「」

ロゼッタ「もう押しちゃいま――」



マメパトの でんこうせっか!▼

急所に 当たった!
ジャノビーは 倒れた!▼

ロゼッタ「」

415Mii:2019/12/10(火) 02:14:53 ID:NQWsVIhA
マメパト「どや」ポッポッポー

デイジー「…………あーあ。しーらない。下手すると全滅するよー」

ロゼッタ「……あ、あの、デイジー姫」

デイジー「んー?」

ロゼッタ「ど、どうして私のジャノビーが…先に攻撃されたのですか!?」

デイジー「そりゃ、相手の技が先制技の電光石火だから、でしょ」

ロゼッタ「…先制技?」

デイジー「……」

ロゼッタ「……」クビカシゲ

デイジー「…あー、ゲーム初心者のロゼッタには、その概念自体がなかったかー。
     ターン制のバトル、対戦を繰り広げるゲームでは…往々にして、
     先制技…すなわち『優先度が高い技』が設けられているんだよ」

ロゼッタ「ゆ、ゆうせんど?」

416Mii:2019/12/10(火) 02:17:10 ID:NQWsVIhA
デイジー「威力の高い技は、相手に大きなダメージを与えられるから強い。
      命中の高い技は、外すことなく確実にダメージを与えられるから強い。
      
      それと同じように――
      優先度の高い技は、本来の先攻後攻の関係を取っ払って攻撃できる強みを
      主張することで、その他のスペックは低くてもプレイヤーに愛用されるんだ。

      自分の方が先に動ける…と思ってる相手の出鼻を挫けるのは大きいよ。
      …今のがその典型例だね。
     
      ま、ゲームの世界だからこそ設定できる項目だけどねー。
      たとえば現実世界のピカチュウも電光石火は使えるけど、
      あくまで『非常に素早く動く』だけ。

      ゲーム内のピカチュウのように『優先度+1で動く』なんて芸当は
      逆立ちしたってできないよー」

ロゼッタ「……」

デイジー「とりあえず、現状を打開しよう、かあ。
      一応聞いとくけど、最後のレポート、どこ?」

ロゼッタ「…………2番目のジム戦の直前です!
      『かたきうち』を掻い潜ってようやく突破したのに!」サアッ

デイジー「なんでジム突破直後にレポート書かなかったんだー!!」

417Mii:2019/12/10(火) 02:19:27 ID:NQWsVIhA
〜夜〜

ヒルダ「…………」

ヒルダ「……誰か、助けて、くださいよう…」シンダメ



シンと静まる、仮眠室。明かりといえば、柔らかに光る小さな電灯一つきり。
私はただ、天井を――そう、天井を。感情もなく見やります。

今日は休息日。そう、「今日」は。
明日になれば、再びデイジー姫が覚醒し。
ロゼッタは何故か喜々として、ゼルダ姫は身から出た錆で特訓に巻き込まれ。
……どうせ、私も――渦の中に囚われる、気がする。

国を背負う女王として、色々と辛いことはあるとは思っていましたが。
延々と命を弄ばれ続けることは、さすがに想定していませんでした。
少し前の情景を思い出したとたん、目の前の景色がぼやけます。

418Mii:2019/12/10(火) 02:20:42 ID:NQWsVIhA
ロゼッタは、ああは言うけれど。
デイジーの、暴れる絡繰りこそ、わかったけれど。
現実は、何も変わらない。あのとき安心したのは、何だったんだろう。馬鹿みたい。

自分の意志…もとい不手際で参加する羽目になったゼルダ姫とは違って、
私は、これ以上戦う意志だって、強くなりたい意志だってないと、散々主張しているのに。
昨日だけで、何度吐いて、何度血を流して、何度命を奪われたことか。

デイジー、ゼルダ姫、ロゼッタ。誰も、私の弱さを理解してくれていない。
いいように丸め込まれた自分の境遇が…ただただ、恨めしい――!

…寝転ぶまま、涙滲ませながら、強く手を握り締めて…ドス黒い感情に、ハッとする。
こんなに暗い気持ちに、なりふり構わない気持ちになったのは、まるで――

ハイラルから聖三角を奪おうとした時、以来ではないですか。



きっと、私は何かに侵食でもされている。自分が自分でない感覚。
このままだと、コワレテしまう。スデニ、テオクレカモシレナイ。
あと2か月以上だなんて、耐えられない。

419Mii:2019/12/10(火) 02:22:27 ID:NQWsVIhA
隣を見れば、顔を青くしてうなされながらも、必死に眠っているゼルダ姫。
…貴方だって、私よりはよほど、マシでしょうに。
私なんて――この瞬間にも発狂しかねないほどの動悸に、発作に、
襲われ続けていると、いうのに――っ!

きっと、今の私、酷い目をしています。
目に光が宿ったかに見えて、血走って、視界に入るもの全て否定したくなるような、目。

反対側のベッドを見れば、どうせ、気ままにすいよすいよと寝息を立てるロゼッタが……。



ロゼッタ「……………………」

ロゼッタ「……………………」



…あれ?

予想に反して、ロゼッタはしっかりと起きていました。
大きく動きこそしませんが、枕に頭を乗せ、私と「同じく」天井を見つめて…………
私と「大違いで」凛とした表情で、何か思案しています。

ヒルダ「…………」

ロゼッタ「…………」

私が横から見つめていることにも気付かず、一点を見つめたまま。

420Mii:2019/12/10(火) 02:23:56 ID:NQWsVIhA
私が見つめ出してから、5分くらい経ったでしょうか。



ロゼッタ「……………………うん」

ヒルダ「……っ!!」スッ

おもむろにロゼッタが、ベッドから身を起こします。
つい、寝入った振りをしてしまいました。
つたない寝入り方でしたが、何かに気を取られているロゼッタは――
一切気付くことなく、そのままいそいそと、足音を立てずに部屋を出て行きます。

ヒルダ(…………?)

謎の行動に、ちょっと興味が湧いて、荒んだ気持ちも一時的に落ち着いて。

1分。

2分。

5分。

――――10分。



――――30分。

ヒルダ(何を、やっているのでしょうか……確かめに、行きましょう)スッ

421Mii:2019/12/10(火) 02:26:50 ID:NQWsVIhA
ゼルダ「っ!…………はあっ、はあっ…!!」ガバッ!

傍にある、汲んでおいた水を一気に飲み干します。
どっと流れ出ている汗、汗、汗。



ゼルダ「…酷い、夢を、見ました、ね」ブルッ

顔をつねる。痛いです。――いっそのこと、今もなお夢の方がいいのですが。
時刻を確認。日付が変わったばかりのよう。

…あと数時間で、また地獄がやってくる。震える、体。



みっともない形相を見られたのではと我に返り、周りを見渡せば……え?
別室にこもっているデイジーが居ないのは当然として。
ヒルダ姫のベッドも、ロゼッタのベッドも、もぬけの殻。

一体、どこに消えたというのでしょうか。

422Mii:2019/12/10(火) 02:29:24 ID:NQWsVIhA
仮眠室を出て、左右を確認。
外界とは閉ざされた、限られた空間…という割に、あまり全容を把握できていません。

とりあえず、フィールドへ向かってみました。…誰も、見当たりません。
不安を抱いて、見当たる扉――ひとつひとつ、開けて確認していきます。

いない。

いない。



やっぱり、いない。



少しずつ、恐れと焦りで、駆け足になっていきます。
お願いですから、誰か――――っ!!

ゼルダ「出て、来なさいよ――――っ!!」ガチャッ!ガチャッ!

ガチャッ!





デイジー「――先ほどから耳障りだ」ドゴオッ

ゼルダ「」チーン

423Mii:2019/12/10(火) 02:31:12 ID:NQWsVIhA
デイジー「…ふん」ガチャリ

ゼルダ「――――」

奥の部屋まで駆けて行ったところで、既に自己暗示完了状態、
苛つき度MAXのデイジー姫に鳩尾一発、食らいました。
…貫通していませんが、生暖かい物が流れて行って、激痛です。こ、きゅ、うが――。

ふわりと意識がどこか遠くへ行って、気付いた時には傷ひとつなく。
…もう、考えるのは――やめましょう。そうしましょう。
…異常事態発生、というわけではなさそう。
それが分かったのは、不幸中の幸いでした。

触らぬ神に祟りなし、と通路を一目散に逃げ帰ろうとしたところで。





…階段?





柱の陰に隠れていて、仮眠室側からは見えなかった…階段がありました。
誘われるように――2階へと、登っていきます。

424Mii:2019/12/10(火) 02:36:29 ID:NQWsVIhA
びりっ。

びりりっ。

ゼルダ「…!」ゾワッ



どうしたことでしょうか。
体が、言いようのない魔力を感じ取ります。
ですが、不快な感じではありません。
よりエネルギーの濃い方へ濃い方へと、自然と足が進みます。

どうやら、2階は…部屋数が少ない代わりに、一つ一つの部屋が
贅沢な広さを確保している趣のようですね。扉の数がグッと減りました。



…ヒルダ姫が、いました。



寝間着姿で、体も冷えかねないというのに、
扉の一つをちょっとだけ開けて、中を盗み見しているのでしょうか。

近付こうとすると、ますます魔力濃度は高まります。
…いえ、高まる、なんてものではありません。呑み込まれそうなほどです。
ですが、それでもいいと思えるくらいの、不思議な心地よさ。

425Mii:2019/12/10(火) 02:38:54 ID:NQWsVIhA
ゼルダ「…ヒルダ姫、探しまし――」

ヒルダ「……」シーーーッ!

話しかけようとしたところで、特段私に驚きもしないヒルダ姫に――制止させられます。
その目は、久方ぶりに、輝いて見えました。

ちょいちょいと、彼女に促されるまま、私も、中の様子を伺います。











ゼルダ「――――――――――――なっ……………………!?」









私はその光景を、二度と忘れることはないでしょう。

426Mii:2019/12/10(火) 02:41:27 ID:NQWsVIhA
そこにあった、ものは。
さながら、切り取った……宇宙。





ロゼッタ「――――――――」〜〜〜〜〜〜〜





目を閉じ、両手をなだらかに下ろし、大部屋の中央に浮かびながら。
聴こえるけれども理解のできない、重ね掛け詠唱《オーバーラップ》を紡ぎ続ける、
神秘的な風貌の大魔法使いと。



ゼルダ「……嘘、でしょ」



彼女を囲み、囲み、囲み過ぎている――
あまりにも多すぎる、大小様々な魔法陣、だったのです。

427Mii:2019/12/10(火) 02:45:21 ID:NQWsVIhA
私は、これでも魔法は相当に得意な方です。

デイジー姫はそもそもまともに食らってくれないため、どうしようもありませんが…
私の光の弓矢の魔法としての完成度と言ったら、ハイラルで私の右に出る者はいないでしょう。
…リンクは、ただ単にHPが多すぎるだけなのです。

キノコ王国のファイターにしても、易々と負けるつもりはありません、でした。
たった今、目の前の光景を見る、までは。



平時の私として。一度に展開できる、まともな魔法陣…術式は、せいぜい3つ。

たった10分でも…4つ使えば数日は碌に動けず、
5つ使えば軽くない後遺症が残り、
7つも使えば確実に、魔力暴走で死に至るでしょう。

そもそも、一流の魔法使いでも、ステレオ=マジックの素質は一握り。
まともな魔法陣は、それだけで手一杯になるから「まとも」と言えるのです。

428Mii:2019/12/10(火) 02:49:13 ID:NQWsVIhA
それを、目の前の「彼女」は…

気が滅入りそうになりながらも、何度も何度も数え直して…
それが錯覚でも何でもないことに気付いて、戦慄します。





ゼルダ「さ……さんじゅう――!?」

ヒルダ「…違い、ますよ」

ヒルダ姫が、ロゼッタの足元を指で示して……っ!

ヒルダ「ひときわ大きい、部屋をはみ出るほどの大魔法陣が――
     床に描かれている、でしょう?…ほら、天井にも対になる物が。

     …ええ。全部で…32個ですね。
     正直な所、あの2つだけで通常の魔法陣10個分の負荷はありそうですけど。

     私が気付いて覗き出したときから…軽く1時間は経っていますが。
     理解はできないけれども耳に心地よい詠唱とともに――
     これっぽっちも、『術式崩れ』が起きていません…!」



…ありえ、ない!
何ですか、この魔法のレベルの高さは!これほどまで――!

429Mii:2019/12/10(火) 02:51:29 ID:NQWsVIhA
宙に浮かんだままの、ロゼッタ。
流石に全精力を詠唱に割いているためか、一向にこちらには気付きません。

激しく溢れる魔力の奔流とともに、彼女のドレスが、髪が激しく波打ちますが、
気にする様子はまったくありません。…いえ、気付いてすらいないのでしょう。
光り輝く魔法陣たちが、ガーディアンのごとく彼女を幾重にも覆い隠します。

はたと気付けば、せっせとあちこちに動いているチコたちが。
FPが不足しないよう、ロゼッタを手助けしているようです。
そのうちの1人が、休憩がてら、ふよふよと近づいてきました。

チコ「あ、ゼルダ姫が増えた―。ママの邪魔はしないでね」

ゼルダ「ね、ねえ。これは、何を行っているのかしら?」

チコ「ひっみつー!というより、僕たちも詳しいことは分からないんだ。
   ただ…経験上、こうなったママは、すっごいんだよー!
   絶対に、とんでもない成果を出しちゃうんだー!
   だから、僕たちは喜んでママのことを応援するんだ!」

ヒルダ姫と、顔を見合わせます。

…一体、どんな「とんでもない成果」を出すというのでしょう。
彼女の魔法に見惚れて…ヒルダ姫と共に、そのまま、覗き続ける私。

2時間後も、3時間後も。
ロゼッタの詠唱が尽きることは、ありませんでした。
そして――。

430Mii:2019/12/10(火) 02:54:44 ID:NQWsVIhA
〜翌日〜

デイジー(…………?)



皆の様子が、どうにも変だ。

やたら眠そうで、その一方でロゼッタをチラチラと眺める、ゼルダにヒルダ。

当のロゼッタは、何か――決意に満ちた顔で、私に話しかけるタイミングをうかがっている。
今まで通りウキウキと、なら分かるんだが。…いや、それも本来はおかしいが。



おっと、そう思ったそばから、ロゼッタがつかつかと歩み寄ってきた。
そして、いきなり。








ロゼッタ「…デイジー姫。特訓の前に、ちょっとだけ…勝負、してみませんか?」

431Mii:2019/12/10(火) 02:58:48 ID:NQWsVIhA
デイジー「…勝負、だと?」

ロゼッタ「はい。…ルールは単純明快。

     今から私が、デイジー姫に攻撃を3回仕掛けます。
     3回仕掛けて、1回でもまともに当たったら私の勝ち。
     逆に、3回とも躱されたり防がれたりしたらデイジー姫の勝ちです。
     ただし、ダメージを受けたかどうかは考慮しないものとします」

その無茶な吹っ掛けに、ゼルダが驚いている。
そうだろう、今のロゼッタと私の戦闘力差では――

3回どころか、1000回仕掛けたところでロゼッタの攻撃は当たらない。

デイジー「3打席勝負か…野球かな?
      まさか、『反撃はしないでください』とは言わないな?」

ロゼッタ「うっ…本当は遠慮していただけるのなら嬉しいのですが。
     ただ、反撃はともかく、そもそも私が攻撃する機会がないほど
     攻め立てるのは…流石に止めてくださいね!?
     あ、あと残機が減ったとしても、3回目の攻撃がまだならば
     その時点で私の負けにはなりませんからねっ!?」

デイジー「…いいだろう。当然、何時までたってもそちらが仕掛けない…とかは
     こっちの勝ちでいいんだな?…さあ、いつでもどうぞ」スッ・・・

何を考えているのかは定かではないが、面白そうだから…乗ってやろう。

432Mii:2019/12/10(火) 03:01:22 ID:NQWsVIhA
多少は背伸びしてしまうのも仕方ないだろう、と強者の余裕。

私に合わせて、ロゼッタもスッと構えを取る。
だいぶ様にはなってきたが…別に、昨日の今日で劇的に何かが変わったようには見えない。



ロゼッタ「それでは…まず、1発目っ!」ダッ



宣言してから仕掛けるとは…舐められたものだ!

直線的にただ突進してきて、拳を付き出すロゼッタ。
この数日で動きはよくなったが――。



余裕に余裕を重ねて、指一本で受け止める。
それもあえて小指で。



ロゼッタ「…………うわぁい」ゾッ

なんだか、非常に達観された顔をされた。

デイジー「もちろん、今のは…私を油断させるための手抜き、とかなんだろう?」

ロゼッタ「ももも、もちろんじゃないですっかー!」ビクビク

433Mii:2019/12/10(火) 03:04:31 ID:NQWsVIhA
ビクビクしながら、それでいてモチベーションは下がっていない。
一旦引いたロゼッタが、パチンと自分の頬を叩いて、気合いを入れて――。
こんどは、ゆっくりと歩み寄って、すこしずつ速めて行って――!



シュンッ!



ロゼッタ「…………2発目ぇーっ!」シュインッ!


テレポートから背後を取って、振りかぶり。
…そう、まるで、いつぞやの。

こんなことで、私が今度こそ引っ掛かると思ったのか。
多少はアクションが速くなっているといえど、無性に腹が立ってくる。
苛立ちのまま、振り向いて――拳、一貫。

ロゼッタ「――うぐっ」ボスッ ズサァッ

咄嗟に身を捩じって避けようとしたことは褒めてやるが。
その結果、胴体のかわりに肩甲骨を強打。鈍い音、破壊音。
勢いも殺せず、壁にドシンとぶつかって止まるまで…地を滑っていく。

434Mii:2019/12/10(火) 03:07:21 ID:NQWsVIhA
ロゼッタ「――っ…い…ったい、です――」ドクドク

デイジー「おう、腕が千切れなかっただけ御の字と言う奴だな。
      …やめるか?今ので確実に、右肩は使えなくなったろう。
      そんな体では、ますます戦えまい」

そう、諭してみたのだが――。

ロゼッタ「……ふ、ふふ」ヨロッ

ヒルダ「…な、何がおかしいのです?ロゼッタ…」

妙な笑顔をしたまま、壊れた肩を押さえつつ、ロゼッタは起き上がる。


ロゼッタ「…むしろ僥倖、といったところでしょうか。
     満身創痍の方が、『使い甲斐』がありそうなので」ドクドク

また、訳の分からないことを言うものだ。

435Mii:2019/12/10(火) 03:09:51 ID:NQWsVIhA
デイジー「…結局は、フリなんだろ?最初から、3発目に賭けているんだろう?
     だったら、見せて、もらおうか」

ロゼッタ「…………………………………………
     ええ、では、見て頂きましょう、かっ!」ドクドク

デイジー「…全力で、受けて立とうじゃないか」ニヤリ



シイイイイイイイィィィン――――



ゼルダとヒルダが息を飲みつつ心配そうに見守る中。
5秒、10秒と睨み合いが続いたところで――
ロゼッタが…三度、駆けた。



ロゼッタ「…参りますっ!!」ダダッ!



デイジー(ぼんやりと…体が、光っている。何かしらの強化を掛けたな?
     だが…小手先の魔法で埋め合わせできるほどの差では、ないっ!)

ロゼッタの戦闘力が、素早さが1割2割上がったところで、なんだというのだ。
いや、2倍3倍ですらどうとでもなる絶対的な差が、そこにはある。
…なんだか、フラグっぽくて嫌だな。

436Mii:2019/12/10(火) 03:12:42 ID:NQWsVIhA
再び、ロゼッタが姿を消す。
――――性懲りもない!!



横目で、後ろの気配を確認。…流石に学習したか。

左右、上。ロゼッタのことだから真下というのも十分に考えられる――

そう、周囲を満遍なく把握したところで…ロゼッタが現れた。



デイジー(…真正面?一体何を――)

ロゼッタ「はああああああああっ!!!!」ドンッ!

一気に、ロゼッタが…ロゼッタなりに、トップスピンを掛ける。
大怪我で体のバランスを崩しながら、痛みに耐えながら、ぎこちない体で。
それを私は、地獄の笑みを以て、遠慮なくフルパワーで――

デイジー「その思い上がり、悔い改めるんだな――」ブンッ



ゼルダが思わず目を背け。ヒルダが思わず顔を覆い。
誰もがその分かりきった結末を――

437Mii:2019/12/10(火) 03:17:16 ID:NQWsVIhA







一陣の風が、吹く。








ロゼッタ「…………疾風の一撃《ゲイルアタック》――――っ!!」ギュンッ!!

ロゼッタの 周囲の空間が ねじ曲がった!▼



デイジー(……途端に、速くッ!
      …ちぃっ、このままでも相手に大ダメージは入るだろうが…
      ダブルノックは気に入らない、断じて。
    
      仕方ない、瞬時にガードに甘んじて――――――――――――――――
      ―――――――――――――――――――――――――――――――
      ―――――――――――――――――――――――――――――――
      ―――――――――――――――――――――――――――――――)


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