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【ぼく勉】成幸 「キスと呼べない何か」
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………………昼休み 一ノ瀬学園 3-B教室
大森 「なぁなぁ、一学期に唯我がキスしただの何だのって話あったじゃん?」
成幸 「………………」
成幸 (……こいつほんっっっとロクでもねーことしか言わないな!!)
成幸 「……そういえばそんなこともあったな。どうでも良すぎて忘れてたが」
大森 「結局噂もなくなっちゃって、俺としては不完全燃焼というかなんというか」
成幸 「っていうかお前が廊下で大声上げて走り回ったせいで噂になったんだけどな!?」
大森 「でもキスはしたんだろ?」
成幸 「………………」
プイッ
成幸 「……黙秘権を行使する」
小林 (それもう自白してるようなもんだけどね、成ちゃん)
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成幸 「お、落ち着けよ。いきなりどうしたんだ、古橋」
成幸 「近いから。な? 少し離れようか」
文乃 「なんでわたしがなだめられてる感じを出すのかな!?」
文乃 (い、いけない。とんでもないことを言われたからつい取り乱してしまった)
文乃 (落ちつかないと。うん。落ち着いて……落ち着いて……)
成幸 「いや、それにしても、緒方って寝相悪いのな」
成幸 「抱きつかれたときはどうなるかと思ったよ。ははは」
文乃 「なんで笑ってられるのかなきみは!?」
文乃 「りっちゃんの部屋でりっちゃんに抱きつかれたの!?」
成幸 「あ、いや、ちょっと語弊があったか。抱きつかれたって言うと、あいつの名誉にかかわるもんな」
文乃 (ほっ……。言葉の綾だったみたいだ。よかったよかった……――)
成幸 「――正確に言うと、急に布団から飛び起きて腰に手を回されてのしかかられたって言うべきか?」
文乃 「わたしに聞かれても知らないし余計まずい感じになってることに気づかないのかなきみは!?」
文乃 (わたしとうるかちゃんが呑気にラーメン食べてる間にきみは一体何をやってたのかな!?)
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文乃 「……ねぇ、唯我くん」
成幸 「?」
文乃 「聞いたよね、わたし。それに答えたよね、きみ」
―――― [………… ドサクサに紛れて変なこと……してないよね……?]
―――― [しっ してません!! 神に誓って!!]
成幸 「あ、ああ……。まぁ、言ったというか、アイコンタクトだったけど、まぁ……」
文乃 「あれはその後なら変なことしていいって意味じゃないからね?」
成幸 「当たり前だろ!? 変なことなんてしてねーよ!」
成幸 「ちょっと朝まで(親父さんと)激しい運動してただけだよ!」
文乃 「おいちょっと待てコラ唯我くん」
文乃 「はぁああああああああ!? ほんとに何やってたのきみたちは!?」
成幸 「うーん……いや、あれは運動というよりは戦いだったな……」
文乃 「やかましいよ! 余計生々しくしてどうするのかな!?」
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………………帰り道
文乃 「りっちゃんを寝かしつけてたら驚異的な寝相の悪さでのしかかかられ、」
文乃 「折悪く帰宅したりっちゃんのお父さんに見つかって一晩中戦っていた、と……」
文乃 「……なんだ。そういうことだったのね」
成幸 「いや、だから最初からそう言ってただろ……」
文乃 (きみがまぎらわしい言い方をするから誤解が広がったんだけどね)
文乃 (……まぁいいや。早とちりして疑ってしまったわたしも悪いし)
ジトーーーッ
成幸 「な、なんだよ。その目は」
文乃 「……ほんとにりっちゃんに何もしてないんだよね?」
成幸 「してないよ!」
文乃 「ほんとに? 抱きつかれたときに唯我くんもこっそり腰に手を回したりしてない?」
成幸 「してないよ! するわけないだろそんなこと!」
文乃 「どさくさにまぎれてあの暴力的なおっぱいを揉んだりとかは?」
成幸 「お前は俺のことを何だと思ってるんだ!?」
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文乃 「……ま、いいや。信じてあげる」
クスッ
文乃 「でも、寝相だったとしても、りっちゃんに抱きつかれて少しはドキッとしてたりして」
成幸 「そ、それは……」
プイッ
成幸 「仕方ないだろ。俺だって男だし、緒方は……ほら、客観的に言ってかわいいし……」
―――― ((普段は小動物みたいな奴だけど……))
―――― ((こうして改めて見るとやっぱり すげぇ美少女だな……))
文乃 (おや……? おやおや?)
文乃 (これは意外と、りっちゃんのことをちゃんと意識してるのかな?)
文乃 「へー」 ニヤニヤ 「つまりきみは、寝ているりっちゃんに欲情した、と?」
成幸 「他にもっと言い方ないかな古橋さん!!」
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文乃 「………………」
ホッ
文乃 (ま、いいや。何もなかったのは本当のことみたいだし)
文乃 (結果的に、唯我くんがりっちゃんのことを意識するきっかけになってくれれば悪くもないし)
文乃 (……ただひとつ、明確に言えること)
文乃 「……ねぇ、唯我くん」
成幸 「ん?」
文乃 「りっちゃん家で一夜を明かしたこと、絶対に他の人に喋っちゃだめだからね」
成幸 「? まぁ、男子たちに話したらどう思われるか分かったもんじゃないし話すつもりはないけど」
成幸 「武元は? あいつになら笑い話として話せるかなー、なんて――」
文乃 「――バカなの?」
成幸 「辛辣すぎません!?」
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文乃 (なんでそこでよりによって一番話しちゃいけない相手にならいいとか思っちゃうのかな!?)
文乃 (……まったくもう)
文乃 「いい? 誰にも話しちゃダメだからね? うるかちゃんにも!」
成幸 「そ、そういうもんか。俺にはまったくわからん……」
文乃 (……本当に、唯我くんは手がかかるなぁ)
文乃 (ま、念も押したし、大丈夫だよね。間違ってもうるかちゃんの耳にこのことが届くことはないだろう)
文乃 「………………」
―――― 『タスケテ』
文乃 (……あのメールを見て、唯我くんは誰より早くりっちゃんの家に駆けつけたんだよね)
文乃 (もしわたしが同じようなメールを出したら、唯我くんは……)
文乃 「……ねえ、唯我くん」
成幸 「ん?」
文乃 「もしわたしがりっちゃんと同じように困っていたら、わたしのことも助けてくれる?」
成幸 「えっ……?」
-
文乃 「………………」
ハッ
文乃 (わ、わたし一体何を聞いてるの!? なんでそんなこと、唯我くんに……) カァアアアア……
文乃 「ご、ごめん! 唯我くん! 変なこと聞いちゃったけど、忘れて――」
成幸 「――そんなの、当たり前だろ」
文乃 「へ……?」
成幸 「俺はお前たちの 『教育係』 だからな。当然、お前の家にも行くよ」
文乃 「そ、そっか……」 (唯我くん……)
文乃 (わたしのところにも、来てくれるんだ……)
成幸 「ま、夜に急に呼び出すのは、本当の緊急時に限ってほしいけどな」
文乃 「……だ、大丈夫だよ。わたしホラー映画怖くない人だし!」
成幸 「そういう問題かよ」 クスッ 「じゃ、俺こっちだから。また明日、古橋」
文乃 「……うん。また明日ね。唯我くん」
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………………数ヶ月後 問89後 いつもの場所
文乃 「………………」
成幸 「………………」
カリカリカリ……
文乃 (……なつかしいこと思い出しちゃったな)
チラッ
文乃 (あのとき言ってくれた通りだね。成幸くん、君は、本当にわたしを助けてくれたんだ)
成幸 「ん……? どうかしたか、古橋?」
文乃 「へっ? う、ううん。なんでもない」
文乃 (……そう。なんでもない)
文乃 (なんでもないんだよ、成幸くん)
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成幸 「……大丈夫か、古橋?」
成幸 「仲直りはしたみたいだけど、やっぱりまだお父さんと顔を合わせるのは怖いか?」
文乃 「……えっ?」
カァアアアア……
文乃 「あっ……そ、そうだね……」
成幸 「?」
文乃 (な、なんて不謹慎なのわたし!? 成幸くんはわたしのこと心配してくれてるのに……)
文乃 (わたし、全然べつのこと考えてた……)
文乃 「………………」 (そっか……)
文乃 (わたし、この人の隣にいると、辛かったこと全部、忘れちゃうんだ……)
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成幸 「古橋……?」
文乃 「……ねえ、成幸くん。わたし、本当にきみがいてくれてよかった」
成幸 「へ……?」
文乃 「ううん。違うな。君が変わらず君でいてくれてよかった、って言うべきかな」
成幸 「えっと……? それは、どういう意味だ?」
文乃 「……ううん。なんでもない」 クスッ 「ごめんね、ヘンなこと言って」
文乃 「勉強、もどろ?」
成幸 「ん……ああ……」
文乃 (……君は、りっちゃんだから家に駆けつけたわけじゃない)
文乃 (そして、わたしだから家に泊めてくれているわけでもない)
文乃 (わかってる。だから、これは君の優しさに甘えているだけのこと)
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文乃 (……ねぇ、成幸くん)
文乃 (君は約束通り、わたしを助けてくれた)
文乃 (でもね、わたし、わがままだ)
文乃 (りっちゃんと同じように助けてもらうだけじゃ、満足できないみたい)
成幸 「………………」
―――― 『起きてる』
―――― 『だから…… あとほんのちょっとだけ…… このままでもいい……?』
文乃 (成幸くん、ねえ、気づいてる? わたし、もう “起きてる” んだよ?)
文乃 (だから、わたし……)
文乃 (君を……)
ギュッ……
文乃 (君を、好きになっても、いいのかな……)
おわり
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………………幕間 「死屍累々」
うるか 「よー、リズりん。今日も勉強がんばろーねー!」
理珠 「はい。今日もしっかりと励みましょう」
うるか 「……ん?」
鹿島&猪森&蝶野 「「「………………」」」 ピクピクピク……
うるか 「!? A組のみんな!? どうしたの!?」
鹿島 「あ……た、武元さん〜……」
鹿島 「我々は〜、もうだめです〜……」
猪森 「と、文x成の尊みが強すぎて……」 ゴフッ
蝶野 「我が人生に一片の悔いなし……」 ガクッ
おわり
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>>1です。読んでくださった方ありがとうございました。
時系列が途中で飛ぶのはあまり好ましくないかもしれません。
申し訳ないことです。
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>>1です。
連投失礼します。
もう一つ投下できるかなーと書いていたのですが、このスレに収まらない気がするのでやめておきます。
このスレにはもうSSは投下しません。長らくお付き合いありがとうございました。
アニメが始まる直前ではありますが、2つめのスレも無事埋められて良かったなと思います。
感想をくれた方、乙をくれた方、本当にありがとうございました。
最初のスレと比べて、書きたいものがどんどんマニアックになっていく上に、
わたし独自の解釈も増えていき、大層読みにくかったと思います。申し訳ないことです。
厚かましいお願いではありますが、読んでいただいた方、
最後に感想などを残していただければすごく嬉しいです。
一番面白かったSSなど教えていただければ、今後の参考にさせていただきます。
次のスレを立てるかどうかは分かりません。
もし立てるとすれば、前回今回と同様、完成したSSのタイトルをスレタイにすると思います。
そのときは、また読みに来ていただけると嬉しいです。
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乙です
真冬 「それがあなたの長所でしょう?」
真冬 「彼は教え子につき」
かな。真冬先生最高です
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おつんこここ
このスレだと
【ぼく勉】 成幸 「クリスマス、うちに来ないか?」
が印象深い
時間軸超えてるとか知ったことではないわ!
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おつでした
毎日更新楽しみしてました!次スレも期待してます!
難しいけど、成幸 「キスと呼べない何か」が一番好き
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おつ
アニメ思ったより出来良いな
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2スレも乙
タイトル覚えてないが文系ちゃんとプラネタリウム見に行く話が記憶に残ってる
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おつつ
個人的には1スレ目にあったこれ
【ぼく勉】桐須先生 「不可解。どうしたというの、唯我くん」
原作とごっちゃになった(いい意味で)
しばらく経って読み返すまでこの話は原作の話だと勘違いしてたレベル
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いま、【ぼく勉】文乃 「なんてベタな……」まで読んだ
どれも面白い
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たくさんの感想、ありがとうございます。
励みになります。参考にもなります。
さて、投下しないと言っておきながら、
スレにあそびがあるのももったいないので、短く書き上がったものを投下します。
大してみじかくなっていないので、ギリギリですが。
全キャラの“今週末シリーズ”は新しいスレの方に投下しますので、
今回はシーズンネタを投下します。
ギリギリになってしまいましたが、母の日です。
【ぼく勉】 文乃 「そっか。今週末は母の日だね」
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文乃 (だからこんなに街中赤いカーネーションだらけなんだね)
「パパ! これあげたらお母さん喜ぶかなー!」
「きっと大喜びだよ。一緒にプレゼントしようね」
「うん!」
文乃 (ふふ。お父さんと娘さんかな。何をプレゼントするんだろ)
文乃 (微笑ましいなぁ……)
―――― 『だから文乃もね もし今後何かカベにぶつかったとしても それでいいの』
―――― 『「できない子」代表のお母さんが許す!』
―――― 『好きなことを全力で 好きにやりなさい』
文乃 (……うん。大丈夫。悲しいとか、辛いとかは、ない)
文乃 (お母さんの言葉は、わたしの中で生きている)
文乃 (そのお母さんの言葉で、わたしはやりたいことを目指して、今もがんばっている)
文乃 (だから、大丈夫) グッ (さびしくなんか、ない)
文乃 「……ん?」
-
………………
成幸 「………………」
成幸 「うーーーーーーん……どうしたもんかな……」
成幸 「これは……いやいや、高すぎるな。絶対嫌がるよな……」
成幸 「これか……? いやしかし、あまり家事を連想させるものを贈るのはよくないし……」
成幸 「これか? いや、でも前新しいの買ってたし……」
成幸 「……うーむ。どうしたもんか……――」
文乃 「――成幸くん? こんなところで何やってるの?」
成幸 「のわっ!? ふ、古橋!?」
文乃 「やっ。一週間ぶりくらいかな。元気にしてたようで何より何より」
成幸 「そりゃ当たり前だろ。体調崩してたらこんなとこうろついてないよ」
文乃 「はは、それもそうだね」
文乃 「……で? 今日は一体どうしたの?」
成幸 「う゛ぇっ!? あ、いや……」
-
成幸 「た……大したことじゃ、ないんだけど……」
文乃 「へぇ〜?」 ニンマリ 「母の日のプレゼント選び、そんなに大したことじゃないかなぁ?」
成幸 「なっ……ば、バレてたのかよ……」
文乃 「そりゃ、母の日ギフトのコーナーで右往左往してれば誰だって分かるって」
文乃 「……まったく、君は高校を卒業しても相変わらず優しいね」
文乃 「わたしが傷つかないように、母の日のプレゼント選びしてたって言わなかったんでしょ?」
成幸 「い、いや、そんな……」 カァアアアア…… 「……ことは、なくは、ないけど」
文乃 「ふふ。だと思った。ほんと……」
文乃 (……ほんと、優しいんだから)
文乃 (まぁ、そういうところが……ゴニョゴニョ……なんだけどさ……///)
成幸 「……? どうした? 顔赤いぞ?」
文乃 「な、なんでもないよ」
オホン
文乃 「ところで、悩める若人に、この古橋文乃が力を貸してしんぜようか?」
成幸 「へ?」
-
文乃 「だから、」 ニコッ 「プレゼント選び、付き合ってあげよっか? って言ってるの」
成幸 「本当か!? 助かるよ!」
文乃 「ふふん。まぁ、わたしは君のお姉ちゃんでもあるからね。それくらいお安いご用だよ」
成幸 「さすが、頼りになるよ。文乃姉ちゃん」
文乃 「……とはいえ、成幸くんが贈りたいものを贈るのが、一番いいと思うけどね」
成幸 「お、おいおい、身もふたもないこと言い出すなよ」
成幸 「……っていうか、欲しいもの聞いたとき、母さんにも同じようなこと言われたぞ」
成幸 「だからプレゼントを決められなくて困ってるんだよ……」
文乃 「ああ、なるほど……」
文乃 「ちなみに、水希ちゃんたちは何をあげるの?」
成幸 「ああ、水希はご馳走用意するって言ってたな。はりきって下ごしらえしてるぞ」
文乃 「も、もうお料理を始めてるんだ……。すごいね」
成幸 「葉月と和樹は、絵をプレゼントするって。大作を鋭意製作中だよ」
文乃 「いいねぇ。微笑ましいねぇ」
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成幸 「……で、俺は何も決まらず悩んでるんだけど、」
成幸 「俺、進路を決めるとき母さんに迷惑かけたし、貯金も使わせてもらったし……」
成幸 「母さんのおかげでここまで大きくなれた。母さんのおかげで希望の進路を目指せる」
成幸 「バイト代も結構貯まったしさ、今まで俺を育ててくれた母さんに、いいプレゼントをあげたくてさ」
文乃 「成幸くん……」
成幸 「……でもそうやって気負うとまた迷うんだよ」
文乃 「………………」
文乃 「……ふふ、腕が鳴るよ」
成幸 「古橋……?」
文乃 「成幸くんのお母さんへの想い、心に響いたよ!」
文乃 「よーし、文乃お姉ちゃんが、はりきってお手伝いするよ!」
成幸 「……おう。ありがとな、古橋。よろしく頼むよ」
文乃 「うん! がんばって最高のプレゼントを見つけようね!」
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………………
文乃 「装飾品とかどうかな? ブローチとか」
成幸 「俺もそういうの考えたんだけどさ……」
成幸 「ほら、結構値段が張るだろ?」
文乃 「? うん」
成幸 「俺はいいんだけど、母さんが絶対嫌がるんだよ」
成幸 「“そんな大金私のために使うくらいなら貯金しろー!” ってさ」
文乃 「ああ……」 (成幸くんのお母さん、たしかに言いそう……)
文乃 「じゃあ、普段の家事で使うようなものは? かわいいミトンとか菜箸とか……」
成幸 「うん。それも考えたんだけど、昨日テレビでやっててさ……」
成幸 「“家事を連想させるものを贈るのは、もっと家事をしろ、と受け止められる場合があります” って」
文乃 「ああ……」 (余計なことを言うテレビ番組だなぁ……)
文乃 「じゃあこっちはどうかな。かわいい文房具とか……」
成幸 「文房具、この前一式新しいの買ってたんだよな……」
文乃 「ああ……」
-
………………
文乃 「じゃあ、基本に立ち返ってカーネーションとかは?」
成幸 「“生花は手間がかかるため嫌がられることがあります” ってテレビで……」
………………
文乃 「じゃあ布とか買って手作りで何か作ったらどうかな」
成幸 「うーん、普段から服とか作りすぎて、そもそも俺の手作り品が結構家に溢れてるからな……」
………………
文乃 「お高めのスイーツとかどう?」
成幸 「水希が洋菓子店顔負けのケーキも作るって息巻いてるから、悪いし……」
………………
文乃 「商品券!」
成幸 「うちの母親のことだから、商品券とか現金くれるくらいなら何もくれるな貯金しろ、って言うと思う……」
………………
………………………………
………………………………………………
-
………………
文乃 「………………」
成幸 「………………」
グッタリ……
成幸 「……なんかすまん。俺のワガママに付き合わせてるみたいだな」
文乃 「う、ううん。わたしが自分から言い出したことだから、大丈夫だよ……」
文乃 (……うーん、これは想像以上だよ。NG要素が多すぎる……)
文乃 (成幸くんが気にしすぎとも思うけど、でも……)
成幸 「うーん、母さんに何をプレゼントしたら、一番いいか……」 ブツブツ……
文乃 (成幸くんは本当に、心の底からお母さんに感謝してて、だからこそ喜んでもらいたいんだよね……)
成幸 「ちなみに、参考までに聞きたいんだけど、」
文乃 「うん?」
成幸 「……もし古橋がお母さんになったとして、母の日のプレゼントに何をもらったら嬉しいと思う?」
文乃 「えー……想像もつかないけど……」
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文乃 (わたしがお母さんで、もらって嬉しいプレゼント、かぁ……)
文乃 「………………」
文乃 「……あくまで、今の想像だけどさ、」
文乃 「わたしは、手作りのものをもらったら、すごく嬉しいと思うよ」
文乃 「だから成幸くんの服飾テクニックとか、すごくいいと思うんだけど……」
成幸 「……んー、母さんの部屋着とか、俺が作ったのも結構あるからなぁ」
文乃 「成幸くんの家はそうだよね……」
成幸 「悪いな、変なこと聞いて」
文乃 「ううん。参考にならなくてごめんね」
文乃 (なんかいいものないかなぁ……)
キョロキョロキョロ
文乃 「……ん?」 ハッ 「わっ……わわっ……」
トトトトト……
成幸 「? 古橋?」
-
文乃 「こっ、このぬいぐるみ……かわいい……」
パァアアアアアア……!!!
文乃 「さ、触り心地も気持ちいい……」
文乃 「ふおお……」
成幸 「………………」
成幸 「あ、えっと……古橋、さん……?」
文乃 「……!?」 ハッ 「ご、ごめん、成幸くん。あんまりにも好みの顔のぬいぐるみがあったから、つい」
文乃 「真剣にプレゼント選びをしてるのに、ごめんね……」
成幸 「いや、いいよ。お前も買い物とかあったらしていいからな?」
文乃 「ううん。大丈夫。ありがと」
文乃 「さ、もうひと頑張り、いってみよー!」
成幸 「おう!」
-
………………
成幸 「……ありがとな、古橋。おかげでちゃんと考えて選べたよ」
文乃 「どういたしまして。お母さん、喜んでくれるといいね」
成幸 「おう。本当にありがとな」
文乃 (結局、あれから、悩んで悩んで悩んだ末、無難にハンカチをプレゼントすることになった)
文乃 (たくさんあって困るものではないし、オシャレで上等なものが見つかったというのもある)
成幸 「散々悩んで振り回して悪かったな。その割にはハンカチって、何の意外性もないし……」
文乃 「ううん。そんなのいいんだよ」
文乃 「それにわたしも楽しかったよ。自分がプレゼント選んでるみたいで」
文乃 「わたしのお母さんはもういないから、ひとりじゃこんなことできないしね」
成幸 「ん……」
文乃 「あっ、ごめんね。変なこと言って。忘れて忘れて」
文乃 「とにかく、ちゃんと選べて何よりだよ」
成幸 「……おう」
-
成幸 「あっ、ヤバい。もうこんな時間か」
成幸 「すまん、古橋。この後バイトの予定なんだ」
成幸 「散々振り回したお詫び、今度必ずするから。また連絡するな」
文乃 「そんなの気にしなくていいってば」
文乃 「バイトがんばってね。いってらっしゃい」
成幸 「ああ、ありがとう。でもお礼はさせてくれ」
成幸 「またな、古橋」
文乃 「うん。じゃあね、成幸くん」
ニコッ
文乃 「また今度」
文乃 「………………」
文乃 「……わたしも、」
文乃 「カーネーションでも一本、買って帰ろうかな」
-
………………母の日
文乃 「………………」
文乃 (……成幸くん、ちゃんとプレゼント渡せたかな)
クスッ
文乃 (なんて、子どもじゃないんだから大丈夫に決まってるよね)
文乃 (ふふ。本当に “弟” みたいなところあるからなぁ、成幸くんって)
文乃 (いけないいけない。いつまでも姉弟ごっこなんてしていられないよね)
ピンポーン
文乃 「……? インターフォン、誰だろ……」
トトトトト……
文乃 「……へ?」
『あ、どうも、こんにちは。唯我と申します……』
文乃 「成幸くん……?」
-
………………
文乃 「ど、どうしたの、成幸くん。突然家に来るなんてびっくりしたよ」
成幸 「いや、悪い。連絡しようかとも思ったんだが……」
成幸 「……あのさ、これ」 スッ 「良かったら、もらってくれないか?」
文乃 「へ?」
キョトン
文乃 「ラッピング……? ぷ、プレゼント!? 何で!?」
成幸 「いや、えっと……この前のお礼、というか、なんというか……」
文乃 「……ああ、母の日のプレゼント選びのお礼?」
成幸 「まぁ、そうなるのかな……」
成幸 「ただ、それプラス、なんというか、その……」
文乃 「?」
成幸 「……お前にはいつも色んな相談に乗ってもらったりとか、お世話になってるし、」
成幸 「母の日のプレゼント的な意味合いも、あるんだけど……」
文乃 「へぇ?」 ジトーーーッ 「わたし、きみを産んだ憶えはないんだけど……」
-
成幸 「い、いや、悪い。そういうことじゃなくて、えっと……」
ハッ
成幸 「ほ、ほら! 母の日、お父さんがお母さんにプレゼント贈ったりってあるだろ」
文乃 「……まぁ、たしかに。旦那さんが奥さんにプレゼント、とかよく聞くね」
成幸 「そうそう。だから、まったく変な意味はなくて、」
成幸 「夫から妻に贈る母の日ギフトみたいなものだと思ってくれ!」
文乃 「………………」
文乃 「へ……?」
成幸 「あっ……」
成幸 「……い、いや、それもまた、ちょっと、語弊があるな……///」
文乃 「そ、そうだね……///」
文乃 「……じ、じゃあ、とにかく、いただくね。ありがとう」
文乃 「開けても、いい?」
成幸 「お、おう」
-
ガサゴソガサガサ……
文乃 「これって……」
―――― 『こっ、このぬいぐるみ……かわいい……』
文乃 「あ……あのときのぬいぐるみ……?」
文乃 「でも、あれ? なんか違うような……?」
成幸 「ん、さすがにバレるか」
成幸 「それ、俺が作ったんだ。あのぬいぐるみを思い出しながら作ったんだけど、やっぱり変か」
文乃 「……!? これ手作りなの!? 全然見えないよ!?」
成幸 「ぬいぐるみ用の生地とか買ってみたからな。縫い方とかも勉強したし」
成幸 「……本物を買おうかなとも思ったんだけどさ、」
―――― 『わたしは、手作りのものをもらったら、すごく嬉しいと思うよ』
―――― 『だから成幸くんの服飾テクニックとか、すごくいいと思うんだけど……』
成幸 「あのとき、ああ言ってくれたのがすごく嬉しくてさ……」
-
文乃 「あっ……ありがとう! すごく嬉しいよ!」
文乃 「えへへ……」
ムギュッ……
文乃 「……かわいい。すごくかわいいよ」
文乃 「抱き心地も最高……」
成幸 「そうか。それなら良かったよ」
成幸 「……で、古橋。ひとつ相談なんだが、この後空いてるか?」
文乃 「この後? うん、特に用事はないけど、どうかしたの?」
成幸 「ああ、実はこの後うちで水希が用意したごちそうをみんなで食べることになってるんだけど……」
成幸 「もし良かったらなんだけど、うちに来て一緒に食べないか?」
文乃 「へ……?」
-
成幸 「実は、母さんにプレゼント渡して、古橋と一緒に選んだって言ったら……」
―――― 花枝 『文ちゃんも一緒にプレゼント選んでくれたの!?』
―――― 花枝 『よくやったわ成幸! それならもう文ちゃんは名実ともに私の娘も同然ね!』
―――― 花枝 『今すぐ文ちゃんの家に行って今日の母の日パーティに誘ってきなさい!』
成幸 「……って」
文乃 「………………」
成幸 「なんか、すまん、古橋……」
文乃 「……ううん」 フルフル
―――― 『それはそれとして私の可愛い文ちゃんにひどいこと言ってから!!!』
―――― 『オッケー文ちゃん!! 向こうの頭が冷えるまでいくらでもウチにいなさい!!』
文乃 「……成幸くんのお母さん、あのとき、そう言って、わたしを家に置いてくれて」
文乃 「すごく頼もしくて、嬉しくて……本当に、ふたりめのお母さんみたいだって……」
文乃 「……わたしも、思ってるから」 ニコッ
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文乃 「………………」
文乃 「……ねぇ、成幸くん。わたし、お邪魔してもいいのかな?」
成幸 「へ? 無理しなくていいぞ? 嫌だったら嫌って……――」
文乃 「――行ってもいいのか聞いてるんだけど?」 ジトッ
成幸 「いや、そりゃ、まぁ……来てくれれば、母さんは喜ぶだろうし、葉月と和樹も喜ぶだろうし……」
成幸 「水希はツンケンするかもしれないけど、あいつなんだかんだお前がご飯食べるの見るの好きみたいだし……」
文乃 「………………」 ジーーーーッ
成幸 「……えっと、その……俺も……お前が来てくれれば、嬉しい、かな……」
文乃 「……よろしい」 クスッ 「じゃあ、お言葉に甘えて、お邪魔しちゃおうかな」
文乃 「水希ちゃんのご飯食べたいし、葉月ちゃんと和樹くんとも遊びたいし」
文乃 「ちょっと待っててね。すぐ準備してくるから!」
成幸 「おう、急がなくていいぞ。ゆっくり待ってるから」
文乃 「ありがと! じゃ、準備してくるね!」
トトトトト……
-
……パタン
文乃 「………………」
カァアアアア……
文乃 「ま、まったくもう、成幸くんったら、分かってるのかな……」
―――― 『夫から妻に贈る母の日ギフトみたいなものだと思ってくれ!』
―――― 『よくやったわ成幸! それならもう文ちゃんは名実ともに私の娘も同然ね!』
文乃 「成幸くんも、お母さんも、まったく……」
―――― 『天文学の前は…… 幸せなお嫁さんになるのも夢だったから!!』
文乃 「………………」
ムギュッ
文乃 「……もう、母の日のプレゼントももらっちゃったし」
文乃 「わたしのもうひとつの夢、結構早く、叶っちゃうかも……なんて。えへへ……」
おわり
-
………………幕間 「唯我水希」
水希 (まったくもう! お母さんのために作った料理を、どうして古橋さんに……)
文乃 「ふわぁ〜〜、これ美味しい〜〜〜〜。とろける〜〜〜〜!!」
ムシャムシャムシャムシャムシャムシャ
文乃 「あれも、これも……ふわぁ……全部美味しい……」
パクパクパクパクパクパク
水希 「………………」
水希 「……古橋さん」
文乃 「!?」 ハッ 「ご、ごめん、水希ちゃん。お母さんのお祝いなのに、調子に乗って食べ過ぎ……――」
水希 「……次は、このソースにつけて食べてみてください」 コトッ
文乃 「わぁ……」 パァアアアアアア……!!! 「美味しい!! 味が少し変わったよ!!」
水希 「……えへへ」
花枝 (……水希はほんと、文ちゃんが食べるの見るの好きよねぇ)
葉月 「水希姉ちゃんは」 和樹 「ツンデレだなー」
おわり
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読んでくださった方ありがとうございました。
受験が終わって新生活に突入してすぐくらいの話でしょうか。
完結してもいない作品の先を描くなんて野暮なことはしたくないのですが、
日常回程度なので許していただけると嬉しいです。
今度こそこのスレは終わりだと思います。
ありがとうございました。
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乙ですわ!
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乙神
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