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雑兵の雑草記
86
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/06/10(日) 23:10:11 ID:7iqUfXjI
兵長「伍長さんと一等兵コンビなら多分のってくれると思うぜ…あのいたずらコンビなら楽しむかもな」
上等兵「一等兵のやつはこといたずらに関しては頭が軍師並みに切れますしねぇ、雑兵の作戦が何かは知らないが…」
兵長「大丈夫だろ…まぁ無理でも今は新隊員だし…」
天使「…」
上等兵「祈るしかないっすね」
「天使さーん、ちょっと救急キットの使い方を教えてあげて欲しいんだけど」
天使「は、はい!」
兵長「まぁ今は自分の心配だな」
上等兵「衛生部隊にはこんでしょう」
兵長「だといいが…?ん?」
上等兵「どうしました?」
兵長「あの丘…木茂ってたっけ」
上等兵「…て、敵襲!!!!」
_
__
87
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/06/12(火) 23:29:50 ID:VPjdSs2s
__
_
「衛生の新隊員教育隊の展開地が奇襲されたそうだ…」
「衛生って事は…俺ら展開地の近くじゃん」
騎士団長「いいなぁいいなぁあの狼狽っぷり」
副団長「趣味が悪いですよ騎士団長…まぁ楽しいですが…」
騎士団長「我々が新隊員の時を思い出すな、副団長?」
副団長「はい、自分もあの時は、あの子らみたく右も左も分からないまま展開地に入れられましたからね」
騎士団長「覚えてるか?当時の騎士団長が奇襲攻撃のため敵が集結してるのを気付いて無くて、我々も行軍してたら…」
副団長「あぁ、鉢合わせで傭兵団長も騎士団長も腰抜かして…あん時はほんと笑いを堪えましたねぇ」
88
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/06/12(火) 23:32:26 ID:VPjdSs2s
騎士団長「…ではそろそろ仕掛けてもらうかな…」
副団長「傭兵団長の所に打ち合わせに行くんですか?」
騎士団長「あぁ、盛大にやるぞ」
一等兵「だとよ…付いて行ってみるか?」
雑兵「しかしまだ会敵もしてないのに離れたら…」
89
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/06/12(火) 23:37:38 ID:VPjdSs2s
伍長「大丈夫、助っ人きたから」
兵長「よっ…ウチんとこはこてんぱんにやられてたよ」
上等兵「まーた悪さしようとしてるな?一等兵」
一等兵「うひぁあ勢揃いだすなぁ、おろ?もう一名の新隊員は…」
兵長「捕虜になっちまったよ、怪我人手当してる最中に」
上等兵「まぁ状況外だな…しかし最後まで怪我人の手当してたなぁあいつ」
雑兵「マジですか?今はどこに…」
上等兵「分からんが…大方傭兵団の展開地の近くだろ」
雑兵「…」
一等兵「ほら、行くど」
雑兵「はい」
兵長「雑兵…ありゃあ助けに行くかもな…」
伍長「どうさねぇ、目の前のことにいっぱいいっぱいって感じだったぜ」
上等兵「どうなる事やら…」
90
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/06/13(水) 22:04:03 ID:p8JjfBrI
傭兵団の展開地は城下町に近く、襲撃なんのそのと言ったテンションでどんちゃん騒ぎをしていた。
一等兵「剥ぎ取るにぁあ…あの外れで寝っ転がってるやつを剥ぎ取るべや」
雑兵「分かりました…一人しかいないっすね…」
一等兵「お前ならどうする?」
雑兵「もちろん自分が行きます」
一等兵「よし、おらはちょっくらいたずらしてくるべ…上手くやれや」ザッ...ザッ...
雑兵「ふぅー...よし」
91
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/06/25(月) 00:37:56 ID:2AbNVJgs
雑兵「失礼っと…」 ガザゴソ...
「Zzz...」
雑兵「うっわ…汗でドロッドロ…まぁいいや…」
雑兵「一等兵さん…何するつも…
ズド----ン!!!!
「な!なんだぁ!?」
「オイ!燃料樽に引火してっぞ?!!誰だあそこで火焚いたの!!?」
「おい!みな燃えちまったら俺らの賃金向こう半年は燃料代に消えちまう!!」
「消せ消せ!」
雑兵「や、やるぅ…」
92
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/06/25(月) 00:40:43 ID:2AbNVJgs
雑兵「よし、傭兵団が混乱してるうちに…」
「おい!そこのお前!」
雑兵「うへぃ!」
「団長に報告してこい!!燃料樽に引火!ダイナマイトで爆破された可能性アリと!!」
雑兵「り、了解!!」ダダダッ
「ん?なんかあったのかぁ…Zzz」
93
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/06/25(月) 00:44:14 ID:2AbNVJgs
勇者「なんの騒ぎ?」
「まだ情報が…奴ら何してんすかねぇ」
雑兵「ほ、報告します!物資集積所の燃料樽がダイナマイトで爆破された模様!!」
「うっそ?!せっかく国からタダでくすねたってぇのに!!」ダダッ
雑兵「あ、行っちゃった…じゃあ自分も〜…」キョロキョロ
天使「…」ジトッ
94
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/06/25(月) 00:57:29 ID:2AbNVJgs
雑兵『もうちょい辛抱してくれ!必ず助けるから!』(伝わってないハンドサイン)
天使「???」
雑兵「さ、さぁてとぉ火消しまくろっかなぁ…と」ソソクサ
勇者「ねぇ」
雑兵「ひゃい!?」
勇者「明日の合言葉って…何だっけ?」
雑兵(この子…心なしか騎士団長に似てる…てか誰?傭兵団長ってさっき走ってたやつだし…多分)
俺はこの時、傭兵団長の顔を知らない事に気づいてしまった。
雑兵(だが俺よりも小さいからな…多分子どもだろまだ)
雑兵「ここは子どもの来るとこじゃねぇぞ、早く家帰れよ」
勇者「こ、こ、子ども??」
雑兵「ダメだぞ?親が心配するから帰らない…とぉ?」
勇者「君…何者だ?」ゴゴゴゴゴゴ...
雑兵(素人の俺でもわかる…この覇気的なやつはヤバイやつだ…なんでキレてんの?)
雑兵「お、おい…落ち着けって、まだ小さいんだからこんな物騒な…キラキラした…Oトの剣みてぇな…???」
95
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/06/25(月) 00:59:02 ID:2AbNVJgs
雑兵「…」
勇者「…」ゴゴゴゴゴゴゴ...
雑兵「よ、傭兵団長でございますよねぇ?」
勇者「曲者」
雑兵「っ!!」ダダダッ!!!
96
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/06/25(月) 01:04:52 ID:2AbNVJgs
勇者「待て!!」
雑兵「やべぇって!!やべぇって!!」
勇者「逃げられると思った?!」
雑兵「う、うわぁ!!はや?!キショ?!」
勇者「ちょ!キショ?!って何?!なんで忍び込んてんの?!新隊員の野営でしょコレ!?」
雑兵「し、忍び込んでねぇし?!俺傭兵団だし?!」
勇者「じゃあ明日の合言葉 渡る世間は?」
雑兵「バネ秤?」
勇者「アホ」
雑兵「あ、アホって…まぁ頭悪いけど…」
97
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/06/25(月) 01:11:09 ID:2AbNVJgs
勇者「見た所、君は新隊員だね?怒らないから何しにきたか言ってごらん?」
雑兵「ヤダよ、ガキ」
勇者「っうらぁ!」ッバッチィイン!!
雑兵「ア!(即死)汗で引っ付いて更に痛え!?!?背中ビンタはあかん!!」
勇者「怒らないから、ほんとに」
雑兵「ックソ…優秀賞取りに来たんだよ…」
勇者「ゆ、優秀賞?何でそんなものを…」
雑兵「ゆ、優秀賞取ったら騎士団長に会えるからな…少し話す時間あるらしいから…ちょっと聞きたいことが…」
勇者「…忍び込んで団長である僕を?」
雑兵「まぁ…大将やっつけたら終わるかな?って」
勇者「んん〜…多分組織的な動きをさせたいから…僕やっつけてもあんまり…意味無いんだよね…?基本君たちの動きに合わせるのが野営だから…」
98
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/06/25(月) 01:37:25 ID:2AbNVJgs
雑兵「は?じゃあ何で襲撃を…」
勇者「一応は演習という事で僕らもやってるから、ある程度の状況は必要だろ?だから襲撃するの」
雑兵「ってことはよ?俺がお前を倒しても大体は出来レースだから…」
勇者「まぁ僕の指示なしでも予めしめされた動きで動くよね?僕指揮官じゃないし…」
雑兵「」
99
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/06/26(火) 00:01:52 ID:t1hPT7Lo
雑兵「兵長ぉ!言ってること違うじゃないすかぁ!!」
勇者「その服は…ウチの傭兵団員の服だね?どこから拝借したか知らないけ…ど?」
雑兵「こうなりゃ評支の陣にダイナマイトでも投げ込んで…」カリカリカリカリ
勇者(とても物騒なこと考えてる…?!)
勇者「と、とにかく君は捕虜になってもらうよ?色々聞かないといけないからね」
雑兵「捕虜…あぁ、あの鉄格子ん中に入れられてた奴らか?」
勇者「君も入るんだよ、話はそこで聞こうか?」
雑兵(そいやぁ天使の奴もあんなかにいたなぁ…捕虜…逃したら…うーん)
100
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/06/26(火) 00:18:09 ID:t1hPT7Lo
雑兵「…わかったよ、つかまりゃいいんだろ」
勇者「話が早くて助かるよ、じゃあ戻ろうか」
_
__
101
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/06/27(水) 02:12:43 ID:iIVeRM6Y
__
_
雑兵(さぁて…どう天使を助けて逃げ出すか…相手は勇者…)
雑兵(無理ゲじゃね?これ、普通に詰んでる気がする)
勇者「ねぇ」
雑兵「なんすか?」
勇者「なんでお姉…騎士団長と話したいの?」
雑兵「あぁ…まぁ、色々つもる話しがありまして…」
勇者「へー…好きなの?」
雑兵「全っ然?あんま知らねぇし」
102
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/07/07(土) 20:35:55 ID:JyscVFz.
__
_
勇者「騎士団長にあってなに聞くの?」
雑兵「別に、お前には関係ない…かな?」
勇者「いや、知らないよ」
雑兵「…お前ってさ、前世的な記憶ある?」
勇者「前世?いや無いけど…」
雑兵「なんかさ、突然目が覚めたような感じでこの世界に来たとかさ」
勇者「うーん?保育園の年少組の記憶がないとかそんな感じのやつ?」
雑兵「言ってることわかるけど違げぇよ…なんか…こう言っちゃアレだけど前世で死んでさ、目が覚めたらここにいた的な」
103
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/07/08(日) 21:17:05 ID:5g2WHWiw
勇者「し、知らないよ…普通に育ってきたつもりだよ…」
雑兵「じゃ、じゃあ騎士団長…あの女はどっから生まれた?いや知ってんだよ、お前がどうやってこの世界へ来たかってのは、お前も自分のことだ、何か知ってんだろ?」
勇者「え…?え…?分からないって…本当だって…」
雑兵「この世界へ来て魔法とかエライ強くなったんだろ?元からあった力じゃねぇんだろ?教えてくれって!なぁ!俺にもなんか力とかあるんだろ?!」ガシッ
勇者「ひぅ…し、知らないよぉ…」
雑兵「こんなトコに来てまでなんもねぇ俺じゃいられねぇだろ!?ここまで協力してもらってなんもねぇままじゃ申し訳がねぇんだよ!頼むからどうすればお前みたいな力が貰える?騎士団長みたいな強さを得られるんだ?」
104
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/07/08(日) 21:37:26 ID:5g2WHWiw
勇者「ど、努力すればいいじゃん…!僕だって姉ちゃんだって努力したんだよ…!女の子なのに血反吐吐くまで…!何もかも捨てて努力したんだよ!!!」
雑兵「っ…」
勇者「何なんだよいきなり!!おかしいよお前!!」
雑兵「…クソが…やってらんねぇやマジで」
勇者「何なんだよ…知らないよ…」
騎士団長「…」
副団長「あの新兵…!」ッダ
騎士団長「待て副団長」
副団長「しかしあの新兵にあるまじき態度は…」
騎士団長「私が話をする、このことは内密にしていてくれ」
105
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/07/09(月) 22:07:38 ID:Mj.02n5c
副団長「…わかりました、隊を引かせます」
騎士団長「後で合流する」
雑兵(うわー恥ずかしっ…年端も行かねぇ女の子に必死こいてた…どうしよ)チラッ
勇者「…」ムッス-
雑兵「そ、そんな怒るなって」
勇者「うるさい」
雑兵「ってぇか、騎士団長とお前姉妹なのな、確かに軽く面影あると思ったが」
勇者「うるさい」
雑兵「クゥ-ン...」
106
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/07/14(土) 15:13:28 ID:iFfk.m1Q
雑兵(果てし無く怒ってんな、どうしましょう…)
勇者「…君の前世の記憶ってさ、なんなの?」
雑兵「え?前世の…あぁ、大した人生じゃ無かったなぁ、小さい頃から勉強もせずブラついて、パチンコ屋出た時に脱水症で死んだ」
勇者「パチンコ屋…?」
雑兵「博打ミテェなもんだよ、結構面白かったが…ハマるほどになったら運の尽きだな」
勇者「ふぅーん…なんか逆にリアリティないね」
雑兵「俺の人生の説明にリアリティなんか求めてたら紙切れ一枚で終わるぜ、本当に何もしなかったからなぁ」
勇者「じゃあ今の方がアグレッシブなの?」
雑兵「まぁそうだなぁ、今ならお前の尻もしばける気がするくらいだからなぁ」
勇者「キッショ、て言うか僕勇者なんだけど何その口の聞き方、この世界を災悪から救ってあげたんだよ?」
雑兵「俺はその災悪とか知らねぇから救われてねぇ、無関係だ」
107
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/07/14(土) 21:07:20 ID:iFfk.m1Q
勇者「変な奴…」
雑兵「
108
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/07/16(月) 18:07:48 ID:K2863yjk
いいね
続きはよ
109
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/07/17(火) 21:12:14 ID:vIumYvU.
勇者「変な奴…」
雑兵「うるせぇ、そんな歳なのに死ぬ気で努力した人間に言われたかねぇや」
勇者「は?つーか野営どうすんの?もうそろそろ評支の部隊が教育隊にぶつかる頃だよ」
雑兵「そうだった…うーん…紛れ込むのももう遅いよなぁ」
勇者(ていうか優秀隊員貰えるの?めっちゃ単独行動してるけど…まあ言わないとこ)
雑兵「よし、ここは一等兵さんに習って宿営地燃やすか」
勇者「だからなんでそうなるのさ!!」
雑兵「敵どうにかしねぇとダメだろ!?他になんかあんのかよ!!」
勇者「ないけど!?あっても言うわけないじゃん!」
110
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/07/17(火) 21:16:08 ID:vIumYvU.
雑兵「しょうがねぇな…よし、ついてこい勇者」
勇者「は?」
雑兵「は?」
勇者「いや…君捕虜じゃん?」
雑兵「いやそんなん知らんし」
勇者「…はぁ〜あぁもう!めんどくさ!いいよ!ついてってあげるよ!」
雑兵「よし、評支の部隊んとこまで俺を送り届けてくれ」
勇者「はぁ?…もう勝手にすれば」
111
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/07/17(火) 21:20:04 ID:vIumYvU.
騎士団長「あいつら何してんだ…」コソコソ
雑兵「まぁ優秀隊員取るまでの辛抱だからさぁ、そんな怒るなよ」
勇者「そんなこと言って姉ちゃんにあんな変なこと言わないでよホントに」
雑兵「優しく聞くから」
勇者「聞くなっつってんの!」
騎士団長(私の何を聞くんだ…?力を得るとか言ってたが…)
112
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/11(土) 21:41:55 ID:WQy8SuiY
勇者(てか…常識的に考えて…エラい単独行動してる隊員が優秀なんか取れないんだけどね…)
雑兵「あー疲れたぁ…まだ二日目だぜ、あんな大量の敵さんがまともに突入したらヤベェよな、一気に過労死するわ」
勇者「する訳ないじゃん…実戦じゃないんだから、まだヌルい方だよ、天幕建てれる時点で」
雑兵「天幕なんかねぇよ、いろんな部隊に派遣されてっから、邪魔だしたてねぇんだと」
勇者「ふーん」
雑兵「木っ端にゃ興味なしですか、まぁ俺も上の人間にゃ興味なしだからいっか」
113
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/11(土) 21:54:13 ID:WQy8SuiY
雑兵「ってか、評支次どこ攻めんの?」
勇者「言うわけ無いジャン」
雑兵「ってか勇者って何が目的でそんなど偉い力手に入れたの?魔王?」
勇者「いや...特にこだわりとかはなかったけど...」
雑兵「へぇー、いいんちゃう?」
勇者「そんだけ?敬意の念とか無いの?」
雑兵「ねえよ、自分のやりたいことできりゃそれで良いんじゃね」
勇者「ほんっと捻くれたやつ...」
騎士団長(そろそろ評支の部隊にぶつかる...何をするつもりなんだ...)
114
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/11(土) 22:15:03 ID:WQy8SuiY
勇者「で?そろそろ...ぶつかっちゃうよ?ウチの部隊に」
雑兵「お、いいねぇ...じゃあちょっと失礼して...」ガサゴソ
勇者「?」
雑兵「ちょ、ちょっと縛らして...」
勇者「アホ!?」
雑兵「いや、そういうのいいから...」シュルシュル
勇者「よくねえよ!」
雑兵「ええい!頑固者めが!」ガシッ
勇者「ッヒイ?!どっからこんな力...」
雑兵「ウヘヘヘ...徹底的にやるんだよオ...」
ドスッ
雑兵「う...」ドサッ
騎士団長「ったく...会った時から変な事しか...」
勇者「ね、姉ちゃん?」
騎士団長「騎士団の新隊員は壊滅だよ、さすが評支...いや、傭兵団」
115
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/11(土) 22:26:29 ID:WQy8SuiY
勇者「まぁ、いつもどうりだよ、こいつどうするの?」
騎士団長「原隊に返すさ、兵一人にこの演習をむちゃくちゃにされたら示しが付かない」
勇者「確かに」
騎士団長「傭兵団の指揮はいいのか?」
勇者「あらかじめ動きは示しているから良いと思うよ」
雑兵(ん?俺の首取れた?首から下の感覚がねえ)
騎士団長「お灸をすえないといけないな...このトンでも新兵にゃ...」
勇者「一生タダ働きでいいんじゃない?」
雑兵(うっわ、怖っツートップがそろってら)
116
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/11(土) 23:45:14 ID:WQy8SuiY
雑兵(あーあ、優秀賞は無しかぁ…どんな顔して戻ろっかなぁ…)
騎士団長「おい、起きているんだろ?体もそろそろ動くはずだ、起きろ」
雑兵「っへ、お見通しって感じか」ムクッ
騎士団長「まったく…とんでもない新兵だよお前は…所で原隊へ帰すまえに聞きたいんだが…」
雑兵「…分かってんなら俺から言うよ、騎士団長…いや女騎士、勇者…お前らはどこの世界の人間だ?」
勇者「ま、またそんなこと聞いて…!」
女騎士「…お前と同じ世界だと思う、ただ私たちがこの世界に来たのは本当に小さい頃だ」
雑兵「理由っつうか…死因は?」
女騎士「平成入ってすぐ位か…大規模な土砂災害があったのは知っているか?」
雑兵「あー…なんか夏にワイドショーとかでやってた気がする…なんとか町大規模土砂災害とかってやつ…」
117
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/11(土) 23:51:28 ID:WQy8SuiY
女騎士「そう…私とこの子はあの土砂災害で死んだ、と言っても最初に起きた小規模な土砂崩れに巻き込まれて死んだんだけどね」
雑兵「…」
勇者「…知らないよ、そんなこと」
女騎士「一瞬だったからね、でも私の名前ずっと呼びかけてたよ、何が起きたかなんて小さかった君にはまだ分かんないよね…」
勇者「…」
雑兵「そうか…んで、その二人の力ってぇのはこっちに転生した時に?」
女騎士「それは違うね、勇者なんか特に死ぬほど努力して…今の地位があるんだよ」
雑兵「勇者なんか死ぬほど努力すりゃ誰にでもなれる、俺が聞きたいのはお前のことだ女騎士、お前だって並大抵の努力なんかじゃ敵わねぇ地位じゃねぇかよ」
118
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/12(日) 01:31:26 ID:RbLhLfCE
雑兵「なんか不思議な力とかねぇのか?」
女騎士「魔法の類はまったく使えないな、ウチから湧き上がるものはやる気だけだ」
雑兵「…」
女騎士「確かにこの様な世界に来てしまったら…不思議な力が欲しくなるね、特に強い力が…でも何もなかったよ、私たちは死ぬ程努力したんだ、それだけ」
雑兵「…そうかい、やっと諦めがついた気がするよ…」
女騎士「諦め?」
雑兵「俺が今まで見て来たラノベやネット小説みたいな事はねぇってことさ、不思議な力とかエグい魔法とか…」
女騎士「その…ラノベやネット小説っていうのは良くわからないが、その作品の中ではどんな書き方をされているんだ?」
雑兵「主人公は元の世界で死ぬかひょんな事からファンタジーの世界へ飛んで来た、その世界へ行ったら不思議な力とかエグい魔法がで初期設定で備わってましたとさ…的な?」
女騎士「ふーん、欲望を素直に表すのはいいことだと思うぞ」
119
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/12(日) 22:19:35 ID:QGyijy9o
雑兵「面倒クセェなぁ、兵隊辞めよっかな」
女騎士「何でそうなる、軍隊は頑張れば頑張る程上に上がれるぞ?」
雑兵「えー?無理だって、無理」
女騎士「大隊長だって最初は下っ端だったんだぞ?お前も努力すれば…」
雑兵「どっからそのやる気バロメータだせってんだよ、身寄りもねぇし目標もねぇのに」
勇者「うーん、じゃあ今からここで目標設定すれば?金貯めるとかなんかで賞取るとか」
雑兵「賞?しょうなら…」
女騎士「悪いが優秀賞はもう無理だぞ…分からないと思う新隊員
120
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/12(日) 22:21:32 ID:QGyijy9o
雑兵「面倒クセェなぁ、兵隊辞めよっかな」
女騎士「何でそうなる、軍隊は頑張れば頑張る程上に上がれるぞ?」
雑兵「えー?無理だって、無理」
女騎士「大隊長だって最初は下っ端だったんだぞ?お前も努力すれば…」
雑兵「どっからそのやる気バロメータだせってんだよ、身寄りもねぇし目標もねぇのに」
勇者「うーん、じゃあ今からここで目標設定すれば?金貯めるとかなんかで賞取るとか」
雑兵「賞?しょうなら…」
女騎士「悪いが優秀賞はもう無理だぞ…分からないと思うがな、新隊員の部隊の全てを指揮する総司令部も一応あるからな?そいつらの指揮系統を無視した動きをしたらな…」
勇者「大隊長も分かってると思うけどね、そこらへんは」
121
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/16(木) 15:16:44 ID:cFcTm.26
雑兵「やっぱ?」
勇者「やっぱ?ってあんた...」
雑兵「どうやって辞めようかなぁ〜、何かいい手無い?」
女騎士「無いよ、観念して原隊へ帰れ...」
雑兵「うへぇ...」
_
__
122
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/19(日) 23:07:35 ID:ujo3oyZQ
__
_
隊長「クックックッ....」
兵長「…」プルプルッ...
上等兵「…ッブッ」
伍長「まぁ…これが独立大隊だな…ンフッ」
雑兵「分かってたんスか?…」
一等兵「わかるに決まっとるがな、新兵訓練でガチる奴なんか初めて見たわいや…」
雑兵「…ッ」
天使「ざ、雑兵…?」
雑兵「んほぉぉおぉぉ!!!恥ずかしいぃぃぃぃい?!」
隊長「んなぁっは!ぶふぅ!?」
上等兵「リアルな話…っぶふっ…優秀賞なんかもう最初から出来レースで決まってたんだよ…あの入隊式では端っこに変なの集まってただろ?あいつらは特殊な力を持っててな、魔法やらなんやらなんでもござれで…まぁ謂わば将来の幹部コースだな」
雑兵「やっぱりっすか…」
隊長「いやぁでも騎士団長の話聞いてて面白かったなぁ…勇者様を縛りあげようとするなんて…」
123
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/19(日) 23:34:56 ID:ujo3oyZQ
雑兵「んぬぅっ!(憤死)」
天使「もう…ホントにバカ…」
兵長「なかなか濃い教育期間だったなぁしかし…お前らうちに来れると思うが」
雑兵「え?他にもあるんすか?」
天使「独立大隊にも分派があるんですね…」
上等兵「あぁ、ここから東にあるフィッハー港の分屯地に独立大隊の分遣隊、南東の国境地帯にある街の駐屯地に分遣隊があるんだ、南東は人が充足してるから多分フィッハー分屯地かもな、行くとしたら」
雑兵「へぇ〜初めて知りました」
天使「ここにいたいなぁ…」
隊長「まぁそこらは上の人事の気持ちひとつだからな、気持ちの準備はしとけや」
124
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/19(日) 23:52:57 ID:ujo3oyZQ
雑兵「じゃあ自分達は営内の後片付けしてきます、いくか」
天使「うん」
バタン...
隊長「…天使は間違いなくうちに来るだろうな」
兵長「はぁ、自分もそう思います、患者に対する対応が衛生隊の現役隊員よりも確実でした、上が移動させる訳が無いですよ…」
隊長「問題は雑兵だな」
上等兵「命令不履行、単独行動…上からの評価は正直…」
兵長「無茶苦茶言われてたよ、素行不良の烙印ときたらもう…」
一等兵「素行不良でしたら自分も異動っすかね」
隊長「大丈夫、まだ上にゃ燃料爆破したのバレてねぇからほっとけ」
125
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/19(日) 23:57:26 ID:ujo3oyZQ
隊長「両方手放したかぁねぇが…仕方ねぇな…焚きつけた俺にも責任がある」
兵長「ただの部隊配置としての異動なので文句も言えませんよ」
伍長「しかし最近のフィッハー港近辺の良い噂は聞きませんな、なんでも変な宗教が…」
兵長「あぁ、あの世界終末論がどうこうって言ってたブルジョワの?」
伍長「はい、まだ港には直接的な影響は無いですが、近辺の村や町には洗脳された住民が多数いるそうですよ」
隊長「過激じゃねぇと良いがなぁ」
_
__
126
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/20(月) 00:02:01 ID:L.5EZYIo
__
_
修了式当日…
女騎士「諸君、この一月半の新隊員訓練、誠にご苦労であった、実は国王も諸君らの訓練を陰から見ていたが…今年の新隊員は精鋭揃いと太鼓判を貰った、誇りを持って各部隊へ配置されたい!以上!」
「それでは、只今から配置部隊を達する!王国騎士団!…」
127
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/20(月) 00:04:57 ID:L.5EZYIo
「ど、独立大隊…?天使!独立大隊 ビギニング駐屯地へ!」
天使「はい!」
「同じく 雑兵! 独立大隊分遣隊! フィッハー分屯地へ!」
雑兵「は、はい!!」
女騎士「…」
勇者「やっぱあいつ飛ばされるんだね」
女騎士「仕方ないよ、人事発令は上からの評価もある」
勇者「ま、良いけどね、あんな変態」
128
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/20(月) 00:21:45 ID:L.5EZYIo
女騎士「しかしフィッハーか…今の情勢で…」
勇者「あぁ、あの世界終末なんたらの?…どうなんだろう、あの人達って」
女騎士「あぁ…何人か諜報員を送り込んでいるが、皆…」
勇者「結構ヤバ目なトコだね…でも分屯地だから大丈夫だと思うよ?」
女騎士「いや…あのバカなら風俗街に行くだろうなと思って…そこから問題が起こりそうだ」
勇者「あー多分行くね…」
雑兵「ッイックシ!」
129
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/20(月) 00:25:50 ID:L.5EZYIo
隊長「まさか本当に行くとはなぁ…」
兵長「単独で行くことになるが大丈夫か?」
雑兵「馬車で一本なら多分平気だと思うんすけどねぇ」
上等兵「フィッハーの風俗街でハメ外しすぎるなよ?あそこマジでハマるから、な?一等兵」
一等兵「独立大隊でハマらん人はいないっすからねあそこ、ヘルスで我慢しとけよ」
雑兵「風俗街ってでかいんですか?」
伍長「うーん…大きさ的にはこっちとどっこいどっこいかなぁ…」
上等兵「ただ選べる種類が豊富なのはフィッハーだな」
130
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/21(火) 22:52:16 ID:NQI9RqXM
一等兵「出発は明後日か?」
兵長「荷造りが早く済むんなら明日でもいいけどな、早く行ったらそこの部隊のことも早く知れるぞ?」
雑兵「そうっすね、荷物もそんなないんで明日でも良いっすかね?」
隊長「そんな早く出たいのか…なら一応フィッハー行きの馬車切符渡しとくぞ」
雑兵「ありがとうごさいます」
天使「…」
_
__
131
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/21(火) 23:15:15 ID:NQI9RqXM
__
_
雑兵「っしゃあこの生活も明日までだなぁ」
天使「…」
雑兵「……んだよ」
天使「あっさり行っちゃうんだね、と思ってさ」
雑兵「そりゃあ移動ならシャーないんじゃないのか?」
天使「でもさ…今までの思い出とか振り返らないのかなって…ずっと二人で頑張ってきたじゃん…」
雑兵「えー…そこ行くか天使…」
天使「だって…」
132
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/21(火) 23:20:38 ID:NQI9RqXM
雑兵「…この異動の理由だって分かってんだよ、いろいろ好き勝手やったからな」
天使「だからってそんなあっさり…」
雑兵「仕方なかろうて、独立大隊だって厄介払いできてよかろうもん、天使だって俺と絡むよりももっと別の人間と絡んでだな…」
天使「うるさい!!バカ!!」
雑兵「うっおっと…ンダてめぇ…?」
天使「雑兵の中で僕は何だったのさ!ただの同期?!僕は違う!家族みたいなものだと思ってた!!」
雑兵「し、知らんがな、どう泣いても足掻いても異動するんだから…俺だって…寂しいけどもさぁ、考えちまったらなんか果てしなくね?」
133
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/21(火) 23:25:14 ID:NQI9RqXM
天使「果てしなくても良いじゃん!もっと思い出とか噛み締めてよ!!僕との思い出とか!」
雑兵「…俺のこと好きなの?」
天使「家族としてだよ!!?」
雑兵「じゃあもっと知らんが、ん10年近くもまともに会話せずに金だけむしり取ってただけの仲だ、元の家族とはな、普通の家族なんか知らん」
天使「…サイッテー…」タタタッ...ガチャ!バタン!
雑兵「…あいつはロマンチストなんだな」
_
__
134
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/21(火) 23:29:58 ID:NQI9RqXM
__
_
チュンチュン...
天使「ん…」
天使「…アレ…雑兵は…」
ガチャ
上等兵「うーっす、独立大隊点…呼?雑兵の奴は?」
兵長「あー雑兵は員数にはもういれなくていい、朝早くに出発したらしい」
天使「え…」
兵長「隊長叩き起こされて報告されたってよ」
上等兵「そんなにここ嫌だったのか?」
天使「…」
雑兵『考えちまったらなんか果てしなくね?』
天使「それはないと思います…」
上等兵「…?」
135
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/21(火) 23:40:39 ID:NQI9RqXM
ガラガラガラガラガラ...
雑兵(おっそ)
馬主「フィッハー行きに兵隊さん乗せるなんて何年振りかねぇ、しかしこの時勢にフィッハー地方に行くなんざぁ運がないよアンちゃん」
雑兵「なんかあるんす?」
馬主「カルトだよ、カルト教団…フィッハー港と港町フィッハーにはまだ来ちゃいねぇが…フィッハー地方の町村は既に洗脳済みと来たもんだ…」
雑兵「カルトって、なんの宗教っすか?」
馬主「さぁてなんだったかなぁ…確か世界終末生存論とかなんとか…終末が近いから世界終末後の秩序の維持…だったかなぁ?」
雑兵「うっへぇ、終末なったら死にたいっすねぇ」
馬主「そうさねぇ、何でも町村民のあいだじゃ…世界終末に向けての間引きやら…訓練という名の弱者排除…所謂殺しでさぁね…」
雑兵「…」
馬主「兵隊さん、あんたが最後の客だね、あっしはこの運航を最後にフィッハー地方から離れるよ…馬車主達はみんなそうしてる…フィッハーの港町は孤立するけど」
136
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/21(火) 23:51:20 ID:NQI9RqXM
そりゃそうだ、自分の命を投げ出してまで客を運ぶ人間なんか人として信用できない、自分を大切しない奴になんで人を大切にできるのか、つまりそういうことだ。カルトの名前は最終章 世界…なんとも厨房が考えそうな名前である、しかしこの最終章は中々に侮れない教団である、私設軍もあるとか。
雑兵「いいんだよ、おっちゃん…それで」
馬主「ん?なんか言ったかい?」
雑兵「どれくらいで着きそうっす?」
馬主「あと半日さね」
雑兵(長いわアホ)
_
__
137
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/26(日) 23:52:08 ID:bIooe4RU
__
_
『フィッハー港 フィッハー分屯地について』
曹長「早かったな若造、独立大隊は俺とお前だけだぜ」
雑兵「え?じゃあずっと曹長一人で…?」
曹長「前任の一等兵が…本隊にいる奴じゃないぞ?そいつがトンズラこきやがってな、独立大隊ってんで補充兵の話も相手にされなかったもんだからよ、新隊員から一人貰ったってわけよ」
138
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/27(月) 00:15:11 ID:zg2nes7A
雑兵「そうなんすか」
曹長「んじゃあ軽く説明するわ、ここは知っての通りフィッハー分屯地…ビギニング駐屯地の分屯地って訳だ、部隊は警備隊と業務隊、分屯地業務隊と輸送業務隊とを兼任してる、以上」
雑兵「す、少なくないっすか?」
曹長「俺ら入れても15人くらいか?警備隊も一個小隊くらいだし、業務隊なんか片手で数えられるくらいだ」
雑兵「そんで…自分ら独立大隊は…その人らの雑務をと…」
曹長「表向きはそうだな…だが実際の所そいつらと同じ仕事してるな、警備業務に輸送業務…ん?まてよあいつらより仕事あるくね?」
雑兵「あ?気付きました?」
139
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/27(月) 23:07:10 ID:oDv91Kmw
曹長「まぁ本隊よか仕事の幅はあらぁな、俺はここ気に入ってるし」
雑兵「へぇ、そういえば輸送業務の方は何をするんす?」
曹長「フィッハー港に陸軍の施設があるんだわ、クソ小さいとこだけどな、そこに文書届けたり荷物を届けるんだ」
雑兵「なかなか大変そうっすね」
曹長「慣れりゃ楽だぜ、仕事は明日からだ、今日は休みな」
雑兵「はい、ありがとうございます」
_
__
140
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/27(月) 23:28:55 ID:HfqKjIyQ
__
_
フィッハー分屯地、フィッハーの港町の入り口にあり、城門の役割も担っているとか、フィッハー分屯地は港の開港とともに設立され、最初期は駐屯地並みの規模で、別大陸との戦争中にはビギニング駐屯地の臨時司令部も置かれた。
雑兵「食堂の飯は美味いな」
「見ない顔だな…」
「独立大隊の新隊員だってさ」
「珍しいな…」
141
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/28(火) 00:22:35 ID:z/tsaack
年齢層は若干や高めで、なんか定年前の掃き溜め感がある。
雑兵「ごっそさんでした〜」
「あいよー」
人数も少ないし、個人的には好きなトコかもしれない。
_
__
142
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/28(火) 01:05:44 ID:Ti5BjGho
__
_
雑兵「港町の地図の受領に参りました〜」
事務員「あらぁ?!新しい子?んまぁ〜なん年ぶりかしらね!」
雑兵「はぁ…?」
事務員「おばちゃんね、この分屯地ができてからずうっとここで働いてるのよ!駐屯地の時は若い子たくさんいたんだけどねぇ、分屯地になってからは、おじさんしか来なかったのよぉ!」
雑兵「そ、そうなんすね」
事務員「あ!ごめんね!?地図よね!はいどうぞ!」
雑兵「ありがとうございます」
143
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/28(火) 22:26:43 ID:f5FT3jQo
ヤスイヨ-!!
雑兵(やっぱヨーロッパの港町って感じだな、ご丁寧にフォークリフトまでありやがるからファンタジーの世界観ねえけど)
雑兵「ここがメイン通りで…漁港の横が旅客ターミナルって感じか?」
「おう!?アンちゃん兵隊さんかい!?」
雑兵「うおっ…は、はい、昨日に移動して来ました」
「若い兵隊さんなんか久々だねぇ!ほれ!祝いに魚でも持ってけ!」
雑兵「うえっ!?こんなに!?いいんすか?!」
「いいってことよ!出世払いな!」
雑兵「あざっす!」
雑兵(大らかすぎんだろ…先に持って帰ろ…)
144
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/28(火) 22:29:21 ID:f5FT3jQo
雑兵「ってことなんすけど…」
「んまぁ!こんなに沢山?!」
「やるわねぇあんた!」
糧食班長「いやぁありがたいなぁ!晩飯は魚の煮付けだな!」
雑兵「じゃ、じゃあ見回りに戻ります…」
雑兵(アットホームっちゃあアットホームなのか…)
_
__
145
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/28(火) 22:40:56 ID:f5FT3jQo
__
_
雑兵「で…ここが噂の風俗街ですか」
『手コキのみ!30分一万G!』
雑兵(手コキだけで一万!?)
『異種族の子集まってます!』
雑兵「あっ…///ん?」
『(すごい小さい字)ドワーフ、オーク♀含む』
雑兵「なーるへそ…いつか世話になろっと」
「兵隊さん、見ない顔っすね?どうです?」
雑兵「うーん」チラッ
『ハズレなし!90分5000G!』
雑兵(この安さが逆に怖い…)
雑兵「今回は手持ちないんでいいっす…」
146
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/28(火) 23:18:40 ID:f5FT3jQo
雑兵(しかし生臭せぇところだな、魚の匂いがヤベェわ…ん?)
「離してって!!」
「貴様!命の恩人に楯突く気か?!」
「襲われた村にハイエナしに来ただけじゃない!!」
「ストリッパーならタッチショーの1つや2つはできるだろう!!」
「好きでやってんじゃないわよ!」
雑兵「うへぇ…やっぱあるんだねぇそういうの…くわばらくわばら…」
「ッチィ!使えん女だ!!貴様はもう奴隷商に売りに出してやる!!外のカルトにでも売り払ってやるわ!」
「っ…!!あのカルトだけは…!!」
「両親を殺したカルトにケツでも振っておくんだな!この売女めが!!」
147
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/28(火) 23:23:19 ID:f5FT3jQo
雑兵「…」
『恨むなら死んだ親を恨め、それが嫌なら誰も恨まずなにも考えず生きろ、身勝手に人恨んで迷惑かけんじゃねぇぞマジで』
『腐っているな、貴様は…』
『これだから独立大隊は…』
雑兵「…」
『ただ償いなんてことはしない、これは私の自己満足からくる行動だ、私たちが一端を作ったのなら私たちで収集をつけねばいけないんだ』
雑兵「カルトの蔓延も…俺らが発端なのかな…」
148
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/28(火) 23:27:47 ID:f5FT3jQo
「こい!!オラァ!」
雑兵「うーっす、喧嘩っすか?」
「?!…なーんだ兵隊さんかい…いやねぇ?ちょーっと仕事のことで揉めてただけでして…な!」
「っ…」
雑兵「へぇー大変っすねぇオーナー側も色々あるっすもんねぇ」
「そ、そうなんでさぁ…へへっ…」
雑兵「で?その仕事の話の流れで…カルトに売り飛ばすってなぁどういう了見で言ったんだ?」
「いっ!いや!言葉の綾ってやつで…」
雑兵「話を聞くにゃぁ…カルトってぇのは国様に楯突いてる団体だよなぁ?そのカルトどもにこの娘っ子売り飛ばすってことは…お前国様に楯突いてんのか?」
149
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/28(火) 23:38:30 ID:f5FT3jQo
「っいやぁ!そんな!!兵隊さんたちゃあいい客でさぁ!!」
雑兵「知らんわ初耳じゃ、てめぇがこの街にどれだけ居座ってたか知らんがよ、次その面ァ見せてみろ、守る体面もねぇ人間が何するか…おめーが一番よぉく知ってんだろぉ…」
「…っ!き、貴様!!」
雑兵「い、いや、殺しゃしねぇよ?流石に」
「今更日和っても遅いわ!!!こんの…!!」
雑兵「うひぃ!怖い!」バッ
「คลื่นกระแทก!!!」ッシュパァン!!
「っがぁ!!?!」ズゥン...
雑兵「うへぇ…?や、やるぅ…」
「あんた…この街から逃がしてくれるの…?」
雑兵「いや…逃げるか逃げないかはお前の自由だけど…」
150
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/28(火) 23:42:25 ID:f5FT3jQo
「はぁ?助けてくれた訳じゃないの?」
雑兵「いや…おれ煽っただけだし…カルトがこの国に楯突いてるのもしらねぇ…し?」
「な、なによ…」ピョコ
雑兵「お前…俗にいうエルフってやつ…?」
エルフ「じゅ、純粋なエルフではないけど…人間とのハーフで、寿命は人間より」
雑兵「へぇ受け継いだのは耳と魔法だけか、まぁいいや、治安悪そうだしさっさと家に帰れよ」
151
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/08/28(火) 23:50:02 ID:f5FT3jQo
エルフ「んあんた…話聞いてなかったの…?」
雑兵「あ、あんま」
エルフ「ほんっっと人間の男ってサイッテー…」
雑兵「いやそんなこと言われてもなぁ」
エルフ「は?なんか文句言える訳?」
雑兵「いや、だってさあ、なんらかの原因で帰る家が無くなったのとここに連れてこられた理由ってあんま関係なくないって思って…」
152
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/09/02(日) 19:09:32 ID:ASoDJwkM
エルフ「…は?」
雑兵「は?」
エルフ「どう言う意味よ…それ!!」
「な、なんだ…?」
「痴話喧嘩か?」
雑兵「なんでここ来たかしらねぇけど、家が無くなったからここに連れてこられた訳じゃねぇんだろ?自分の意思で来たんなら最終的にゃ自分でなんとかしろよ、俺はお前に逃げるきっかけを与えただけだ。残るも逃げるもお前次第で、お前が今できるのはそれだけで、それ以外は何もないぞ」
153
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/09/02(日) 19:11:14 ID:ASoDJwkM
雑兵「人のせいにするにゃ今は随分楽な身分だとは思うがよ、今はそれどころじゃないだろ?どうすんだ?」
エルフ「…げるわよ」
雑兵「ん?」
エルフ「逃げるに決まってるじゃないの…」
雑兵「よし、ついてこい」
_
__
154
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/09/02(日) 19:21:17 ID:ASoDJwkM
__
_
エルフ「…あんた、兵隊なの?」
雑兵「あぁ、今年入隊したばっかだ」9
エルフ「兵隊、ね…人間の兵隊は嫌いだわ…小さい時からいい話を聞かないしね…侵略した村の略奪…女たちをレイプ…そればっかよ…」
雑兵「いや俺知らんし、モンスターの兵隊たちだって略奪もレイプもすっだろ、脳みそがある生き物はみんなそうなんじゃねぇかな、知らんけど」
エルフ「そう…なのかな」
雑兵「さぁ?ついたぞ、分屯地だ」
エルフ「ちょちょちょ…私は入っていいの?」
雑兵「いや、分からんす…」
155
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/09/02(日) 22:50:13 ID:ASoDJwkM
事務員「あらぁおかえりなさい!街はどうだった?」
雑兵「あの〜すいません…」
事務員「ん?…あらま…」
エルフ「…」
事務員「その格好…ううん、言わなくてもいいわ、こっちへ来なさいな、お着替えしましょ、ね?」
エルフ「え、でも…」チラ...
雑兵「その格好でうろつきたくないだろ」
エルフ「あ、あぁ…」
事務員「ささっ、奥の部屋へ…後で分屯地司令に報告しておくわ、明日くらいに呼び出しがあると思うから綺麗な服をね?」
雑兵「はい、ありがとうございます」
156
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/09/02(日) 22:50:56 ID:ASoDJwkM
事務員「あらぁおかえりなさい!街はどうだった?」
雑兵「あの〜すいません…」
事務員「ん?…あらま…」
エルフ「…」
事務員「その格好…ううん、言わなくてもいいわ、こっちへ来なさいな、お着替えしましょ、ね?」
エルフ「え、でも…」チラ...
雑兵「その格好でうろつきたくないだろ」
エルフ「あ、あぁ…」
事務員「ささっ、奥の部屋へ…後で分屯地司令に報告しておくわ、明日くらいに呼び出しがあると思うから綺麗な服をね?」
雑兵「はい、ありがとうございます」
157
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/09/02(日) 22:56:20 ID:ASoDJwkM
雑兵「いやぁ…カルトってのも考えものだな…」
ガチャ
雑兵「戻りましたー…」
曹長「うーっす、聞いたぞ坊主、ハーフエルフの嬢ちゃんを助けたんだってなぁ」
雑兵「え、あぁ…助けたと言うか…」
曹長「あーあー細かぁことはいいんだ、お陰でストリップ劇場は暫く閉鎖だよ」
雑兵「す、すいません…」
曹長「いやいや、人助けて責めるバカなんかこの分屯地にゃいやしねぇよ、よくやったな」
雑兵「あ、ありがとうございます!」
158
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/09/02(日) 22:58:37 ID:ASoDJwkM
曹長「お陰でビギニングの隊に話す内容が出来たぜ、新隊員のくせに体はりやがって」
雑兵「ははっ…まぁ…」
曹長「明日は町の軍施設を案内するからな、よく使うから場所は覚えとけ」
雑兵「はい」
_
__
159
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/09/02(日) 23:03:36 ID:ASoDJwkM
__
_
隊長「はぁ、はぁそんなことが…いや私としても嬉しい話ですよ、はい、はいそれでは…」チン
兵長「どうかしたんですか?」
隊長「雑兵の奴が風俗街で絡まれてたエルフの娘さんを助けたそうだ」
兵長「マジっす?風俗街ってトコが気になりますが…やりますね」
隊長「分屯地司令直々に電話して来たからな、ここのお偉方にも話は行くだろうぜ」
兵長「まぁ…話が行ったところで、ですがね…」
隊長「いいんだよ、あいつが元気ならそれで」
天使「雑兵…すごいなあ…」
160
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/09/02(日) 23:12:13 ID:ASoDJwkM
一等兵「雑兵が行く前にまーた喧嘩したんだってな?」
天使「は、はぁ…」
一等兵「あいつも不器用だからなぁ
161
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/09/02(日) 23:14:00 ID:ASoDJwkM
一等兵「雑兵が行く前にまーた喧嘩したんだってな?」
天使「は、はぁ…」
一等兵「あいつ不器用だからなぁ、あっちでも変なことに首突っ込まなきゃいいが…今度こそは助けられんからなぁ…」
天使「はい…」
_
__
162
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/09/17(月) 00:02:06 ID:tI04yI9U
__
_
曹長「ここが港湾詰所、デケェ船の出入港時に割り当てられた人員でここの出入を監視するんだ、まぁあまり使わねぇな」
雑兵「この街デカいっすけど…この分屯地の人数で守ってるんすか?」
曹長「いんや、この港のすぐ下に南フィッハー地方との境界線があってな、その境界線の街にある駐屯地が有事の時は来てくれるんだ」
雑兵「へぇ」
曹長「ってもここ何年も来てねぇからな、実質俺らが治安維持してる感じだ」
雑兵「正直いっていいすか…」
曹長「言うな何も、俺も思ってはいるが治安がいいのが救いだ」
163
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/09/20(木) 16:54:39 ID:wn7pC86s
乙?
164
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/09/25(火) 23:45:50 ID:hUPnnA5M
雑兵(そんな治安良い訳じゃねぇと思うけどなぁ…)
曹長「あのエルフの娘っ子さんの件で治安なんてどう見たって悪く見えるが…まだマシな方なんだよ」
雑兵「まぁマシってレベルが一番安定してるんすかね…」
曹長「そうさな、あんなエルフの娘っ子さんみたいな境遇の人間はこの町にゃ沢山いらぁ、正直ビギニングの貧民街よりも闇は深いぜ」
雑兵「まぁみんながそれで良いなら自分は特になにも…それよりもあのエルフは?」
曹長「いま面接を受けてるよ、もしかしたら昨今のカルトのパトロンかも知れねぇからな」
雑兵「ふーん…」
165
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/09/26(水) 22:10:18 ID:0ITO2Olo
曹長「気になるか?」
雑兵「あー、あの若さで両親亡くしてこの先どうするんかなぁと思って…」
曹長「まぁ大体だったらエルフの国の団体さんが身柄を引き取りに来てくれるが…なんせハーフだとなぁ」
雑兵「魔法は使えてましたよ」
曹長「じゃあ…もしかしたらだがビギニング駐屯地にいる部隊に引き取られるかもな、混成騎士団とかに」
雑兵「そんなんあるんすか?」
曹長「まぁ異種族の集まりだわな、エルフは勿論…ドワーフや獣人やらなんやら…」
雑兵「うっへぇ、ごちゃ混ぜっすね」
曹長「知能がある種族が集められた騎士団だわ、王国騎士団と同じくらいの立場だぜ*
166
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/02(火) 20:10:08 ID:D6ufMqDM
おつ
167
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/06(土) 23:26:34 ID:5Ejd.6w6
雑兵「まぁ安泰ならそれで良しっすね、自分は駐屯地の方には戻りたくないっすけど」
曹長「お?なんかやらかしたのかい?」
雑兵「やらかしたと言うか自爆したと言うか…とにかく自分は分屯地の規模が性に合ってるっすね」
曹長「若い兵隊が珍しいなぁ…まぁお前がそれでいいなら別にいいけど…そいじゃあ明日から早速仕事だ、これを港の事務所に届ける仕事な」
雑兵「
168
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/06(土) 23:29:54 ID:5Ejd.6w6
雑兵「さっきから気になってたリヤカーって荷物なんすね」
曹長「あぁ、港湾施設の小さい事務所でも軍人は軍人だってことで武器が入って来たんだ、それを明日届けに行く」
雑兵「港湾施設の人めっちゃ定年間際的な感じでしたけど」
曹長「籍がある以上は軍人だぜ、明日はこの仕事だけだ、ちゃっちゃと終わらせようや?」
雑兵「了解です」
_
__
169
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/08(月) 12:32:41 ID:.9xa6myQ
__
_
「はぁ、定年間際なんで持つことはないと思ってたんだがなぁ」
曹長「フィッハーものっぴきならん事態ですからな、ただの弱小宗教で終わってくれりゃ事も無し
なんですが、どうもそうしてくれんみたいで...」
「あぁいいんだよ、この組織に入ったからにゃぁな、それはそうと情報が入ったぜ」
曹長「情報?」
「あぁ、隣の大陸にある諸国連合のお偉方連中が、今月にもここに寄港する...ってのは建前で...
亡命してくるらしい」
曹長「亡命?また何で...」
「隣の大陸で国民が決起したらしい、理由は...まぁ連合をあげての賄賂や...」
曹長「はぁ〜...それで関係ないウチまで巻き込まれたんですか?」
170
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/14(日) 22:59:46 ID:9RstfeqY
「まぁ仕方ねぇさ、確かに荷物は受け取った、ありがとよ」
曹長「うっす、情報提供感謝します、雑兵行くか」
雑兵「はい」
「頑張れよ若いの、分屯地は良いところだぜ」
雑兵「はぁ、ありがとうございます」
_
__
171
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/14(日) 23:18:49 ID:9RstfeqY
__
_
曹長「本日の業務は終了ですっと、じゃあ俺ぁ家戻るわ」
雑兵「あ、家持ってるんすね、分屯地で寝泊まりしてるのかと…」
曹長「お前が配属されてきたからな、官舎暮らしの妻一人子一人…良い物件だ」
雑兵「ん?て事は自分あの部屋で一人なんす?」
曹長「独立大隊の営内者は一人だぜ?やったな」
雑兵「マジすかぁ、荷物妙に少ないと思ってたけど」
曹長「明日は分屯地の草刈り、開始時刻は0900、集合場所は隊舎の下以上解散」
雑兵「…何しよう」
172
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/14(日) 23:25:50 ID:9RstfeqY
雑兵「…あいつどうなってんだろ」
事務員「あら?今日はお仕事終わり?」
雑兵「はい、荷物届けるだけだったんで…あの、エルフの子は…」
事務員「あぁ、あの子?明日付でビギニングの混成騎士団に入隊するらしいわ…魔法使えるみたいだから苦労しなさそうね」
雑兵「そっすか」
事務員「でも寂しくなるわぁ…生きてたら娘くらいの年だもの、心配で心配で…」
雑兵「ん?事務員さん…ご家族は…」
事務員「…死んじゃったのよ、30年くらい前かしら、夫は行方不明…そのショックのせいか…流産しちゃって…双子だったんだけどね…」
雑兵「あ…そうなんすか…すみません…」
事務員「いや良いのよ、こうして若い子達に触れ合えて楽しいもの!」
173
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/14(日) 23:27:08 ID:9RstfeqY
事務員「あ、そうだ!会ってあげたら?今なら外来の隊舎にいると思うわ、入ってすぐ右に部屋があるから」
雑兵「は、はい、行ってみます」
_
__
174
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/14(日) 23:32:55 ID:9RstfeqY
__
_
エルフ「…」
『人のせいにするにゃ今は随分楽な身分だとは思うがよ、今はそれどころじゃないだろ?』
エルフ「人の…せいか」
コンコン
エルフ「…っ!ど、どうぞ」
ガチャ...
雑兵「う、うーっす…」
エルフ「あ…あなただったのね…」
雑兵「混成騎士団に入るんだって?良かったな」
エルフ「混成騎士団って良いところなの?」
雑兵「あ、ごめん知らないっす…」
エルフ「っはぁ〜…適当な事ばっか言っちゃって…」
雑兵「まぁ…独りよかマシだと思うぜ?同族もいるみたいだしな」
エルフ「知ってる、私の知り合いも何人かいるわ、あ、でも口利きで入ったわけじゃないからね?」
雑兵「
175
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/14(日) 23:38:36 ID:9RstfeqY
雑兵「いや…別にお前がいいならどんな入り方でもいいと思うけど」
エルフ「…あなたって…思った事すぐ口に出すのね?」
雑兵「あ、ごめん…それで何回か同期怒らせたんだ」
エルフ「ほんとバカ…まぁいいわ…」
雑兵「…お前の家族ってみんな殺されたのか…?」
エルフ「…そうね、カルトの信者達に…みんな家に閉じ込められて…異端な民族は浄化とかって火を放った…直接は見てないけど生き残ってた子がそんなこと言ってたわ」
雑兵「そ、そうなのか、よく生きてたな…」
エルフ「丁度薪を山に取りに行ってたのよ、山から麓に村が見えるんだけど…そこで村が燃えてるのを見たわ」
176
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/14(日) 23:43:58 ID:9RstfeqY
エルフ「あいつら意味わかんない、村には普通の人間も暮らしてたのよ、私達異種族と呼ばれてる者たちが殺されるのはまぁ稀にあるけど、あいつら村ごとよ…ほんと意味わかんない…」
雑兵「…あのストリップのオーナーに拾われたのは…」
エルフ「…最初は良い人に見えたの、難民保護がどうこうと言ってたけど…女しか取らないのを早く気付くべきだった」
雑兵「そうか…まぁここいらじゃ嫌な思い出が多いと思うが…ホントに気にせず生きろ、気兼ねなくな…」
エルフ「気にせずに?気兼ねなく?あんた正気?そんな言葉よく出てくるわね…!」
雑兵「いや…辛いのは分かるがよ…その辛さに押し潰されちまったら…アレじゃねぇか、やるせねぇじゃん?」
177
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/14(日) 23:48:17 ID:9RstfeqY
エルフ「あ、あんた…はぁ、なんだかあんたと話してると落ち込むのもバカバカしくなってきた…」
雑兵「う、上手く言えねえけど…まぁ第二の人生もっと女の子らしく生きろ…いやなんか違うな…」
エルフ「なーに言葉取り繕おうとしてんのよバカ…あなたが心から心配してくれてることは分かったわ…ありがと…ホントに…」
雑兵「あ、あぁ、あっちでも元気でな、独立大隊をよろしく頼むよ」
エルフ「独立大隊?」
雑兵「雑用しかしない部隊だけどさ、いい人たちたくさんいっから、俺の同期もいるぜ?めっちゃ治療とかがうまいらしい」
178
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/14(日) 23:51:11 ID:9RstfeqY
エルフ「うん…あっち行ったら挨拶するわよ、あんたの事も話す」
雑兵「い、いや俺のことはいいよ…」
エルフ「あら何照れてるの?恩人だもの、上司の株上げたいでしょ?」
雑兵「ほ、ホントにいいから…褒められるのとかあんま慣れてねぇんだ…チャランポランに生きてきたから…」
エルフ「…」
エルフ「!」💡
179
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/14(日) 23:52:28 ID:9RstfeqY
エルフ「雑兵、こっち座って」
雑兵「?」スポン
エルフ「褒められるときにお母さんによくやって貰った
180
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/14(日) 23:57:03 ID:9RstfeqY
エルフ「雑兵、こっち座って」
雑兵「?」スポン
エルフ「はーい体の力を抜いて〜」
ッス...
雑兵「!ひ、膝枕?」
エルフ「いい事したときに、よくお母さんにやって貰ったの…私の一番好きな褒められ方」ナデナデ
雑兵「…」
エルフ「あなた、多分私と歳近いのになんで兵隊に…?」ナデナデ
雑兵「…お、俺…入隊前は浮浪者でさ…いつの間にかこの国に来ちまって…こんな事言って信じてもらえるか分かんねぇけどよ…俺転生したんだ、別の世界から…」
エルフ「別の世界?」
181
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/15(月) 00:01:34 ID:WDOLW7SI
雑兵「あぁ…暑い中でぶっ倒れてそのまま死んだと思ったら…ビギニングの王国の近くにある森で目覚めて…」
エルフ「…それが本当なら…あなたは何もわからない状態でここまで頑張ったのね…偉いね…」ナデナデ
雑兵「ちょちょちょ、ナデナデはやめてくれ…なんか変な気分になっちまう…」
エルフ「…んふっ…変態」
雑兵「くっそ…からかうな…」
エルフ「じゃあおしまーい」
雑兵「ったっく…///なんて奴だ…」
エルフ「雑兵、また会おうね…」
雑兵「え?今日出るのか?」
エルフ「早めに出ようかと思って準備してたんだけど…事務員の人に雑兵が来るまでは待ちなさいって…でも待ってて正解だったかも…なんかスッキリした」9
182
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/15(月) 00:04:48 ID:WDOLW7SI
雑兵「そ、そうか…待たせちまってすまねぇ…」
エルフ「いいのよ…付き合い短かったけどホントに楽しかったわ」
雑兵「あぁ、俺も」
エルフ「…次会うときは綺麗な鎧着て来るから、見惚れないでよ?」
雑兵「ワカンねぇ、四方八方に目ぇいくから」
エルフ「この節操なし…じゃ、また…」
雑兵「あぁ」
_
__
183
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/15(月) 00:08:27 ID:WDOLW7SI
__
_
事務員「行っちゃったのね…」
雑兵「はい…」
事務員「仕方ないわね…あの子とても苦労したみたいだから、騎士団にはいれば将来安泰だから良かったのよ」
雑兵「俺もそう思います、独りよかナンぼかいい…ん?」
「おい、例の
184
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/15(月) 00:22:43 ID:WDOLW7SI
__
_
事務員「行っちゃったのね…」
雑兵「はい…」
事務員「仕方ないわね…あの子とても苦労したみたいだから、騎士団にはいれば将来安泰だから良かったのよ」
雑兵「俺もそう思います、独りよかナンぼかいい…ん?」
「おい、例の亡命船、今週末に来るってよ」
「マジ?やべなんの準備もしてねぇや」
「王国からも直々に儀仗隊やらなんやらが来るらしい、天幕貼る部隊や風呂焚きに来る部隊まで…分屯地じゃまかなえんぞ」
185
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/15(月) 22:04:53 ID:WDOLW7SI
雑兵「船が来るってぇことは…自分も出る感じですね」
事務員「あらー船が来るなんて久しぶりねえ、外来足りるかしら…じゃあちょっと情報収集行って来るからまたね」
雑兵「あ、はい」
_
__
186
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/15(月) 22:12:09 ID:WDOLW7SI
__
_
雑兵「ヒッマだな営内ってのはよ…」
雑兵「テレビもねぇしゲームもねぇし…この世界来て初めて後悔してんぞ…」
雑兵「…そいえば俺今幾らぐらい貯金あるんだ…?」
雑兵「ずっと駐屯地の中にいたから分かんなかった…ヤベェ、ATMとかあんのかこの世界…」
雑兵「き、聞いてみりゅぅ?」
187
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/15(月) 22:24:22 ID:WDOLW7SI
厚生館
小さいながら売店や体育館がある場所だ、中には軍が経営してる銀行的なのもあって金利もかなりいいと専らの噂だ
雑兵「自分の給料って…」
「ちょっと待っててねぇ…でもダメだよ君、金銭関係のことはちゃんと自分で掌握しとかないと、教育隊の人言ってくんなかった?」
雑兵「あー…あんま聞いてなかったかも…」
「全く…雑兵…っと…うっわ、手付かず過ぎて教えるの憚られるわぁ」
雑兵「お、教えて下さいよぉ…駐屯地じゃほぼ缶詰だったんすから…」
「仕方ないなぁ…一月半だけど、実質二ヶ月分の給金で…知らないだろうけど入隊俸給もあるから…84万Gだね」
雑兵「84万…?」
「んでぇ…明日は何日だ」
雑兵「えーっと…18日?」
「そう、給料日で手取り16万…」
雑兵「リ、リアルっすか?」
「一般の新隊員にしちゃ持ってる方じゃないの?」
188
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/19(金) 12:24:33 ID:FAliUmn.
「使いすぎんなよ」
雑兵「あざっす」
_
__
189
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/19(金) 18:44:39 ID:FAliUmn.
__
_
雑兵「つっても美味い飯屋とかしらんなぁ...お、分屯地掲示板になんかはってある」
『今週遂に来航!プラニス皇国の御召艦『砲艦ニクルス』
来航にあたり我が国とプラニス皇国軍の市中パレードを行います
ぜひご覧下さい!』
雑兵「へえ、大変じゃないの」
「おかしいな、昨年来航したから2年後に来るもんかと思ってたが」
「なんでも皇国内で決起が起きたってよ、殿下と御付はなんとか亡命したらしいが...
皇帝は自決したってよ」
「亡命ねぇ...しかし決起で大変だってのになんて時期に来航すんのかね」
「さあね」
雑兵(ふ〜ん...この世界ってなかなか血気盛んなんだな)
_
__
190
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/19(金) 19:02:30 ID:FAliUmn.
__
_
「しかしいきなりのパレードですからね、課業外も練習をしないと無理ですよ、
新隊員もいますし」
勇者「しかしなーんでこんな早くに来航しちゃったのかなぁ面倒くさい」
女騎士「あっちも大変なんだよ、きっと」
「では明後日フィッハーに出発で調整します、失礼しました」
バタン
女騎士「...たぶんだが...」
勇者「殿下来るね」
女騎士「あちらの国に恩はない、匿う必要もないだろう」
勇者「そうだね、まだ小さい子だけど...」
女騎士「...」
191
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/19(金) 19:57:37 ID:v3jI9Nb.
勇者「…割り切れないのは分かるけどさ」
女騎士「いや…雑兵の奴、こんな時はどうするんだろうなとふと思ってな…」
勇者「ぞ、雑兵?なんで今?」
女騎士「分からん…本当にふと思ってな、深くは考えてないんだ」
勇者「雑兵ねぇ…どうするんだろうね、雑兵も見捨てるんじゃない?縁起もへったくれも無さそうだし」
女騎士「そうか、そう思うか…」
コンコン「騎士団長殿、今よろしいですか?」
女騎士「いいぞ」
「失礼します、実は昨日混成騎士団に入隊したエルフの娘が…」
女騎士「ああ、彼女か、どうしたんだ?」
「フィッハー分屯地に異動したいと…」
女騎士「フ、フィッハー??何でだ?」
「何でも恩人がいるとか…」
192
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/10/19(金) 23:01:21 ID:s1Eeu7cw
女騎士「しかしそれは幾ら何でもな…騎士団は都にいなければ…」
「騎士団長殿から説得していただけませんか…?」
勇者「恩人ねぇ〜、話聞くだけなら聞いても良いんじゃない?」
女騎士「そうだね…その恩人とやらも気になる、よし、連れてきてくれ」
「ありがとうございます…」
193
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/16(金) 08:44:12 ID:O4LmN1P.
乙
194
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/05(土) 02:14:01 ID:elqldSYY
エルフ「失礼します」
女騎士「あぁ、君がフィッハーから来たエルフ君か」
エルフ「はい、初めまして騎士団長」
女騎士「積もる話もない...率直に聞こうか、なぜフィッハーに?」
エルフ「恩人に会いたいし、助けになりたいからです」
女騎士「助け...とは?」
エルフ「はい、彼はこの世界にきてまだ間もない...と言っていました、普通だったら意味が分からない話なんですが、
彼の日常にたいする不安が手に取るようにわかり、助けになれるのは私以外にいないと思いました」
女騎士「...はあ、やっぱり雑兵か」
エルフ「...っ、なぜ騎士団長が...?」
195
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/05(土) 02:19:25 ID:elqldSYY
女騎士「そんなことはどうでもいい、君は立場というものを理解すべきだな、栄えある混成騎士団の団員とはいえ、訓練も
受けていない君ははっきり言って新兵以下だ、わかるね?」
エルフ「...」
女騎士「厳しいことを言うが...ここは軍隊だ、君の思い通りにはいかないこともある、特に初めのころはね...今はこらえてくれるか?」
エルフ「...はい、失礼しました」
女騎士「うん、先輩たちに謝っておくようにね、いきなり異動したいって言ってとても心配していたぞ」
エルフ「はい...」
バタン
勇者「こっわ〜」
女騎士「言わないで...はあ...雑兵ってホント不思議な奴...」
196
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/05(土) 03:08:01 ID:elqldSYY
勇者「エルフの心情把握の結果見てみたけど、ストリッパーだったんだね」
女騎士「そんなこと関係ないさ、彼女も彼女なりに頑張って生きていたんだから」
勇者「いや、そうじゃなくて、雑兵ってそういう街に行ったってことだよね?」
女騎士「...彼のプライベートも尊重するべきだよ」
勇者「はぁい...」
勇者(フィッハーについたら弄り倒そっと♪)
_
__
197
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/05(土) 03:27:22 ID:0iFx66CQ
__
_
雑兵「曹長、プラニスの船が来たら自分は何をするんですか?」
曹長「いつも通りの業務だよ、寄港日は週末なので週末の業務」
雑兵「つまり軍の事務所に荷物届けて、街の見回りっすね...詰所とかには行かなくていいんですか?」
曹長「あぁ、今回のはちょいとイレギュラーだな、ビギニングの大層な連中がくるだろ?そいつらについてくる木っ端部隊らが見てくれるってさ」
雑兵「分屯地は特になんもないんすねぇ」
曹長「そうでもないぜ?騎士団の連中がくるってんで分屯地の偉い奴らはりきってら」
雑兵「でもそうなったら今週末の休みが潰れそうで怖いっすよ」
曹長「我慢しろい、兵隊だろ」
198
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/05(土) 14:04:53 ID:RIbmRdKg
「曹長、分屯地指令がお呼びです、今週末の件で...」
曹長「え?まさか俺らも出んの?」
「いやぁそういうことじゃなさそうっすよ、独立大隊が何人か来るってんで...」
曹長「あぁ、喫食と外出の件か行く行く」
「あざっす、そいやぁ雑兵君はなんかあんの?」
雑兵「自分はいつも通りの業務です、週末が潰れないか心配っすよ」
「はっは、地区警備隊は休み潰れそうだよ、代休付くけど」
雑兵「殿下とかくるんですよね?どんな人なんすかね」
「あぁ、子供だってよ、小さいながらに波乱な人生だよ、国が国民によって滅ぼされるって」
199
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/05(土) 14:08:45 ID:RIbmRdKg
雑兵「へぇ、大事ないといいっすね」
「いや...もう結構な大事だと思うけど...」
_
__
200
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/05(土) 16:35:48 ID:nj3DY9eA
__
_
「殿下、お気をつけて...」
「この港は我々で抑えます、事態の収拾が着くまでどうか息災で...」
殿下「...みんな、危なくなったら迷わずに逃げてくれ、僕との約束だ」
「大丈夫ですよ殿下、皇国騎士団が指揮をとって下さるんですよ、港湾守備隊は安泰でさぁ」
殿下「...」
「船が出ます、危険が及ばない内に...」
殿下「...」
事態が収拾するというは、この兵隊達はみな...
もうこの国の皇帝は、お父様はいない、お母様も...
大切な人たちは、みな民衆に殺された、お父様が愛していた民衆に...
殿下「...ッ」ギリッ
殿下「殺してやる...あの家畜ども...」
_
__
201
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/05(土) 16:41:39 ID:nj3DY9eA
__
_
曹長「おお、来やがったか」
兵長「久しぶりです班長、俺が入隊した時に教育して下さった班長だ」
天使「は、初めまして!」
曹長「...なぁ」
上等兵「男っすよ」
曹長「し、知ってらぁ、伍長と一等兵はどうした?」
兵長「次の馬車できますよ、曹長がいるんすから、あいつらが来ないわけが無いっすよ」
曹長「っへ、問題児共が来るのか、外禁だな」
202
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/05(土) 16:58:58 ID:nj3DY9eA
兵長「そう言えば...雑兵は?」
曹長「あぁ、あいつなら港の事務所にいるぜ、荷物届けに行ってると思うが...多分端末地の人とだべってるんじゃねかな」
上等兵「ぶ、分屯地に染まってますねぇ」
曹長「いいことだぜ、じゃぁ、お待ちかね...これがお前らの外出証な」
伍長「いっただきまーっす!」
一等兵「ごちっす!!」
曹長「うわあ!ビビったぁ!!」
兵長「おいおい...そういえば曹長、自分ら呼ばれたんすけど何すりゃいいんすか?」
曹長「騎士団の雑務だろ、詳しくは団長に聞いてくれ」
兵長「あ、あぁ...あの人っすか...」
203
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/05(土) 17:43:54 ID:UcNk5UhU
曹長「まぁ言いたいこたぁわかるけども」
上等兵「雑兵の件で結構騎士団から目ぇ付けられましたからねぇ」
曹長「っはは、雑兵が帰ってきたら弄り倒してやれ」
_
__
204
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/05(土) 23:04:54 ID:DgH7KJvU
__
_
雑兵「人多いっすよ外」
「そりゃぁねぇ、一国の殿下が来るんだよ?出店や観光客であふれるさ」
雑兵「見回り行きたくないっすよ」
「仕事しなさい仕事を」
雑兵「はーい...」
バタンッ
205
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/05(土) 23:24:32 ID:DgH7KJvU
雑兵「出店出てんなぁ...寄港前日だってのに」
「お!独立の兵隊さんじゃないの!今日も暇そうだね」
雑兵「うっす、魚屋のおっちゃん、儲かってる?」
「ぜーんぜん、出店とウチじゃぜんぜん違うからねぇ、そういえば首都の兵隊さん達みんな来てたよ、騎士団もね」
雑兵「き、騎士団もっすか...」
「綺麗さん揃いだねぇ騎士団って、おっと客だ、じゃあな」
雑兵「はい、お疲れっす」
雑兵(やっぱ騎士団くんのね...)
雑兵「まぁ相手にされないか、大丈夫だな」
206
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 15:21:07 ID:fQaps30U
雑兵「えーと...街を見回って事務所の火気点検...今回は港の見回りか、今日は遅くなりそうだな」
街の見回り、独立大隊分遣隊の恒常業務の一つで、毎日行っている、しかし週末は特別で港湾施設にある事務所の課業終了後の火気点検も
含まれている、しかし暗黙のルールで荷物を届けに行く際にこっそり印鑑を押している。
しかし独立大隊の火気点検簿を見る人は全くおらず、記入用紙がいっぱいになったら焼却処分している、こればかりは必要性が感じられない。
雑兵「やだなぁ、今日は何もないといいな...」
「てめぇからぶつかってきたんだろうが!!」
「だから謝ってんだろうがよ!!」
雑兵「はぁ、やれやれ」ソソクサ
「あ!独立の兄ちゃんじゃん!助けてよぉウチの店の前でやられちゃ困るんだ!」
雑兵「うへぇマジっすか...しゃあないっすね」
_
__
207
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 15:37:14 ID:fQaps30U
__
_
雑兵「うっわぁもう12時やんけ...観光客喧嘩起こしすぎやが...」
ガラの悪い街に祭り事があるといつもこうで、似た者同士しか集まらないのがこの町の欠点だ、国の大事な祭事なら何とかしてでも治安を
良くして欲しいものだ、いや待て、その仕事今の俺らに振られそうだから言うのやめよ。
雑兵「戸締りよし...ん?」
「ウィック...」
雑兵「雑貨屋のおじちゃん...どうしたのこんな所で」
「あ〜?お、いつものアンちゃんじゃないの...いやぁ...家内に逃げられてねぇ...」
雑兵「なんでです、仲良かったじゃぁないですか」
208
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 15:54:52 ID:fQaps30U
「いやぁ...近頃さぁ周りの村々に変な宗教出来たっていうじゃん、ずっとねぇ首都に移ろうって家内に言われたんだけど...
金なんかないしさぁ...無理なわけじゃんン?」
雑兵「...」
「それで俺っち喧嘩しちゃって...まあ見限られたわけよ、酒癖も悪かったのもあってかなぁ」
雑兵「あぁ...」
「それで...まぁ死のうかなって...水漬かって」
雑兵「何を言いよるんですか!死んじまったら元も子もないでしょうが!」
「そうだけどさぁ...」
雑兵「死ぬ言うてもおじちゃん、まだ仲直りもしてないのに死んじまったら奥さん悲しむよきっと」
「そんなこと...?なぁアンちゃん、寄港って...明日の予定だよな?」
雑兵「えぇ...明日の予定なんですけど...」
ッボーッッ!!!
雑兵「う、うるせぇ...!じいちゃん、ちょっともう帰ってくんない?」
「あ、あぁ、そうするわ...」
_
__
209
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 16:05:34 ID:fQaps30U
__
_
「殿下、小型艇の用意が出来ました」
殿下「ありがとう、君は...」
「ボイラーの機関が冷えるまで上陸は控えます...正直この船員はまだ信用なりません...」
殿下「...分かった」
「お気をつけて...」
210
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 16:23:55 ID:fQaps30U
殿下「...」
ッポンッポンッポン...
「いやぁ殿下もお大変でしたなぁ、ささっエンジンは温まっていますから...」
殿下「ありがとう」
(ッチ、イケすかねえガキだ...本船の奴らも上手くやってくれると良いが...)
「皇帝も皇后も亡くなられちまってどうなるんですかねぇあの国は、まぁ尤も俺ら水夫にゃ国なんて関係ない話ですがね」
殿下「そう...」
「...」
(ッチ、顔だけはいっちょ前に皇后に似てらぁ、売り飛ばしゃいい値段するだろうになぁ勿体ねえ...まぁいい、桟橋に着いたら後ろからグサリだ
、そうすりゃあの皇国は完ぺきに滅亡だぜ)
211
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 16:24:28 ID:fQaps30U
「着きましたよ、ビギニング王国です...殿下」
殿下「...ありがとう、この純金のブレスレットしかないけど...売れば高くなる、受け取ってください
ここにはいないと思うけど、反乱軍のスパイに見つかればただじゃすみません...あなたも早く逃げてください」
「...あ、ど、どうも...」
(ん、んだよ...まぁいい、さっさと上陸してくれや...)
殿下「ここが...」
「殿下、すみませんが...!?」
雑兵「あ、あんたら何しとるんだ」
212
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 17:06:35 ID:fQaps30U
殿下「っき、君は何者だ...!」
雑兵「こっちのセリフだクソガキがぁ、おめえがだれか知らんが...寄港届けだしてんだろうな?おい水夫、どういうことだ
つーかそのナイフ仕舞えおい、怖いです」
「...ッ!」
雑兵「明日...ても日付跨いだから今日だな、隣の国さんの船が来る予定なんだよ、殿下かなんかを乗せてな、
で、ここに来る船はなんもこねえはずだ...じゃぁお前らはなんだ?」
殿下「ぼ、僕は...」
213
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 17:07:20 ID:fQaps30U
「ええい!クソッタレ!」
雑兵「うおっ!ナイフ仕舞えって言ったじゃん!!」シャキンッ
「お、お前何なんだよ!殿下の家臣か?!」
雑兵「あぁ?!殿下だか家電だか知らんがなぁ!こっちゃぁ遅くまで仕事してんだよ!それに付随してお前らの狼藉!許せんぞ!!」
殿下「...」
雑兵「こい坊主...坊主だよね?」
殿下「んな?!っこ、この無礼者!!」
「てめぇ!そのガキを俺に渡せ!」
雑兵「え?な、なんで?」
「い、いや...お、お守り...する義務的な...」
214
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 17:15:36 ID:fQaps30U
雑兵「...そのナイフただ事じゃなさそうだな、この子は渡せねえ、今すぐその面を...」
ッチュッドーーーン!!!!!!
雑兵「うっわ、沖の船が...」
殿下「っあ...あぁ...!」
『お気をつけて...』
『事態の収拾が着くまでどうかご息災に...』
殿下「み、みんな...そんな...」
「な、なんで爆発が...家臣殺しゃいい話だったんじゃ...?!」
雑兵「...」ッドスッ!!
「ウッ...」
215
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 17:27:58 ID:fQaps30U
雑兵(やべぇ、この子供殿下説が)
殿下「ッウ...ヒッグ...」
雑兵「...い、いきましゅかなぁ...ッ」ガシッ
殿下「...僕を...匿ってくれ」
雑兵「離してくれ、面倒事は嫌だ...見回りは異状なく終わったって言いたいんだ」
殿下「もう無理だよ...それともさっきまでの発言...」
雑兵「お宿はどちらにしますか?」
殿下「見たところ君は...この国の兵隊だね?」
雑兵「ん、んだよ...」
殿下「この町に駐屯地か何かがあるはず、そこへ連れてって」
雑兵「はぁ...分かったよ、今は騎士団なりなんなりが来てる、話しゃ分かるはずだ」
殿下「ありがとう」
216
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 17:47:53 ID:fQaps30U
雑兵(どうしよ...子供だしなぁ...うーん放っておいたらあれだしなぁ)
殿下「...」
雑兵「ちょっとこの事務所に入っててくれ、もうじき人が来始める」
殿下「ありがとう...」
雑兵「会えるか分らんが...騎士団長に話してみる、電気はつけないでくれ、温かいもんしかねえがなんか飲みたかったらそこの
薪をくべて...ねぇ、沸かし方...」
殿下「...え、えーと」
雑兵「ちょ、ちょっと沸かしちゃおっかなぁ...俺もコーヒー飲みたいし...はは...」
殿下「...ごめん...」
雑兵「いいんだよ、俺だって最初は分かんなかった、火つけるなんてコンロでしかなかったしな...」
殿下「コンロ...?」
雑兵「いや、こっちの話...いいか、薪はこう井の字に組んでだな...」
殿下「井の字...?」
217
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 18:03:23 ID:fQaps30U
雑兵「あ、こういう感じに組んだら火が上手く着くんだ、空気の流れができるからな、どこでも使えるテクだよ」
殿下「す、すごい...」
雑兵「で、木屑と多少の薪を置いて、この火打石で...」
ガチャ
「あれ、鍵が...あれ?雑兵君?」
雑兵「あ、どうも...ちょっと...個々の事務所の人だ、大丈夫」
殿下「...ッ」コソッ
「...なるほど、港の件の...雑兵、君はどうしたい?」
雑兵「じ、自分はっすか...?いやどうしたいっても自分ができることなんて無いっす...」
「そうかな...その子が今一番信用できる人間は今の時点じゃ君しかいない、そうですね?ニプラス皇国殿下」
殿下「...」
218
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 18:34:17 ID:fQaps30U
「わかるだろう、そのお方は殿下...君が動かないとどうしようもないんだ」
雑兵「...分かりましたよ...出来るこたぁやりますよ...でも」
「わかっている、初年兵に多くは求めないよ、これでも俺は中尉だ、何かあれば頼ってくれ」
雑兵「うっす、やってみますよ...殿下、見つかっちまった、もう分屯地に行こう」
殿下「う、うん...」
「い、一応敬語はつかってな?」
雑兵「あ、すいません」
_
__
219
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 19:34:37 ID:vemigt26
__
_
曹長「はい、はい...分かりました、ありがとうございます」
兵長「雑兵は...」
曹長「うーん、いねえなぁ、風俗街は粗方電話したんだが...」
上等兵「風俗街にゃいねえでしょ...」
曹長「...沖合で起きた爆発事故と関係は...いやまさか...」
兵長「...」
雑兵「う、うっす〜...」
曹長「おうコラ?!連絡もなしに風俗通いたぁ...ってわけでも無さそうだな」
殿下「...」
上等兵「よう、久しぶりだな」
220
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 20:52:39 ID:vemigt26
雑兵「うおっ、上等兵さん」
殿下「ぞ、雑兵、この人達は...」
雑兵「大丈夫っすよ殿下、自分の上司っす」
兵長「でででで、殿下ぁ?」
雑兵「あ」
上等兵「ほんっとこいつだきゃあ次から次へと...」
雑兵「さぁて...どうしましょうかね」
曹長「っははは...どうしよ」
雑兵「なんかアイデアある?」
殿下「え...うーん...」
221
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 21:11:57 ID:vemigt26
雑兵「...騎士団に売り渡しちまうか」
殿下「う、売り?!」
曹長「アホ...でもまぁ...なんとかしてくれる気がするな」
雑兵「じゃ、じゃぁ騎士団へは願います...」
殿下「え...ぞ、雑兵は...」
兵長「お前が行くんだよ、殿下直々に雑兵雑兵言われてんだぜ?一番信頼されてるお前がついて行ってやれなくてどうすんだ」
雑兵「クーン...」
殿下「だ、大丈夫だよ雑兵...ここはいい国だし...それに...」
雑兵「...わあったよ、行くぞ...乗りかかった船だ、とことんまで行くぞ」
222
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 21:19:40 ID:vemigt26
殿下「雑兵...!」
雑兵「騎士団はどこです?」
兵長「あぁ、分屯地の外来で寝てる、騎士団長は外来の貴賓宿だ」
雑兵「あぁあのデカいとこっすか?了解っす、行くか」
殿下「うん」
曹長「あいつ...変なところでリミッター外れるな」
兵長「そういう奴なんすよ」
_
__
223
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 22:15:30 ID:vemigt26
__
_
女騎士「先ほどの爆発は?」
「は、はぁ...先ほど使いを出したのですが...」
勇者「もう、今日の昼にはニプラス皇国の船が来るのになぁ」
女騎士「そういえば、殿下と知った仲だったな」
勇者「深くまでは知らないけどね...でも元気にしてっかな〜殿下」
「き、騎士団長...ちょっと...」
224
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 22:16:16 ID:vemigt26
女騎士「?」
「えー...ちょ、入ってくるな!まだアポは...」
雑兵「うるせえぞ、このお方をどなたと心得るかこの無礼者め、うし、行くぞ、もう大丈夫だ」
殿下「う、うん...」
「お、お前も相当無礼だぞ...」
女騎士「ぞ、雑兵?」
雑兵「おう、わざわざ儀仗にご苦労さん...殿下」
殿下「初めまして、ニプラス皇国の殿下です...久しぶりです、勇者様」
勇者「殿下?!うそ?マジで?!」
225
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 22:52:38 ID:vemigt26
女騎士「...雑兵、そこに座れ」
雑兵「ははぁ...(マジメ君)」
女騎士「す わ れ」
雑兵「...」
勇者「皇帝は...」
殿下「父も母も亡くなりました...宮廷になだれ込んだ民衆によって...」
勇者「うっそ...なんで...?」
女騎士「殿下、遠路はるばるお疲れ様です...しかし殿下の国内の情勢は...」
殿下「はい...」
226
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 23:08:05 ID:vemigt26
雑兵「...」
雑兵(へぇこの子、結構苦労したんだな)
女騎士「で...雑兵、殿下とどういった関係で?」
雑兵「え?いや〜港で...そのー...」
女騎士「今回ばかりは冗談では済まされんぞ...国家間の重大な事態に関与している自覚はあるのか?」
雑兵「勘弁して下さいよ、自分だって関与したくてした訳じゃ...」
殿下「ご、ごめん...」
雑兵「い、いや、いいんだよ、そっちの話はすんだのか?」
殿下「いや...まだ...」
227
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 23:17:18 ID:vemigt26
雑兵「自分の考え言えばいいんだからな、大丈夫だ」
女騎士「...」 ッバン!!
雑兵「...ッ」
女騎士「冗談で済まされないといっただろう?それに君の殿下に対する態度...どういうつもりだ?もう一度聞くぞ...
貴様はなぜ殿下と一緒にいる?」
雑兵「...港の見回りをしててな、したら桟橋にこいつと水夫がいてな...水夫については知らねえ、こいつに聞けや」
女騎士「...殿下、本当ですか?」
殿下「はい、恐らく...あの水夫に自分は殺されそうになっていたのを彼に助けられました」
勇者「あんた...やるじゃない」
雑兵「...」
228
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 23:39:43 ID:vemigt26
女騎士「...そうか、ご苦労だった。もう戻ってもいいぞ」
雑兵「はぁ、了解です」
殿下「ぞ、雑兵...?」
雑兵「もとから自分とあんたは...まぁ月と鼈の存在っすからね、この先の話をするんなら似た者階級の方ががいいだろう」
殿下「でも...まだお礼も」
雑兵「んなこたあどうでもいい、今は自分の置かれる立場ってのを確立させろ、いつまでも宙ぶらりんな立場だと困るのは
自分だ...俺も半年前まではそうだったからな」
女騎士「...はぁ、雑兵、もう少しここにいてくれ...殿下もその方が安心でしょう?」
雑兵「はぁ?何でです、もういいでヒデブ
女騎士「こ こ に い ろ」
勇者「こう見えて結構お姉ちゃん切れてるからね?」
雑兵「いや手に取るように分かるっす」
229
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/06(日) 23:50:25 ID:vemigt26
殿下「こんなことを言うのも烏滸がましい話ですが...国の事態が収拾するまで僕を匿って欲しいのです」
女騎士「か、匿って欲しい...ですか?」
殿下「はい」
勇者「そういう事は国王にだねぇ...そう思うだろ?」
雑兵「そ、そうっすねぇ」
勇者「なんで分かってて連れてきたの」
雑兵「いや、面倒にならないかなあって思って」
230
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/07(月) 00:30:11 ID:X6OfLJDU
勇者「あんたねぇ...」
女騎士「...殿下、殿下は我々と共に首都に来てもらいます、出発は明後日、それまではどうぞ休息なさって下さい」
殿下「ありがとうございます」
女騎士「君、殿下をご案内してくれ」
「っは、かしこまりました、殿下、こちらへどうぞ」
殿下「...」チラッ
雑兵「後で顔だすから安心しろ」
女騎士「...はぁ、困るな、ホント...」
雑兵「すいません...なんか見捨てておけなくて...」
女騎士「エルフの子の時もそんな感じだったんだろう?」
231
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/07(月) 13:45:24 ID:Gntq/5l.
雑兵「知ってるんすか?」
女騎士「何回か話したことがある、いい子だったよ」
雑兵「へぇ」
勇者「出発明後日って言ってたけどあたしたちはどうすんの?」
女騎士「っふ、休息だ」
_
__
232
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/07(月) 14:15:22 ID:Gntq/5l.
__
_
「いきなし休みって言われてもなぁ...」
「寄港がいきなり取り消しって何だよなぁ、首都くんだりまで来た意味がないぜ」
雑兵「...」
天使「ひ、久しぶり...」
雑兵「お、おう...来てたんだな」
天使「うん...話聞いたよ、あんま大きな声でいっちゃいけない話だから言わないけど」
雑兵「偶然だから別に...」
天使「...あの、異動前の件...」
雑兵「あ、あぁ、どうしたの」
天使「その...いきなり怒ってごめん...」
233
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/07(月) 14:42:12 ID:Gntq/5l.
雑兵「あぁ、別に...誰も悪いわけじゃねえし...気にしなくて良いんじゃね?」
天使「う、うん」
雑兵「今日どうすんの?風俗?」
天使「い、行かないよ!伍長さんたちは行っちゃったけど...」
雑兵「勿体ねぇ、一度は行ったほうがいいぜ?」
天使「雑兵は行ったの?」
雑兵「実は行ったことはない、看板とかは見るけど、なんか怖いんだよ」
天使「行ってないんじゃん...」
雑兵「でもストリップは良いぜ?綺麗な姉ちゃんが踊ってんだけどなかなかどうして...」
勇者「へ ん た い ♡」
雑兵「うっわぁ!!!耳くすぐった?!」
234
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/07(月) 15:05:47 ID:Gntq/5l.
勇者「なーに話してんのよ公衆の面前で」
雑兵「公衆の面前でいきなし耳元で話しかけんなマジで、ちょ、ちょっとヤバかったぞ」
天使「ゆ、勇者様!お疲れ様です!」
勇者「おっす〜、ねぇ雑兵?ストリップって何?」
雑兵「え?知ってて俺に変態って言ったんじゃないのかよ」
勇者「いや、あんたはどうあがいても変態でしょじゃなきゃここに飛ばされないわよ」
雑兵「ンヌウ(即死)」
勇者「ねぇ連れてってよ?ストリップ」
雑兵「お、お前まだ子供だろ...いや、待て...」
勇者「?」
天使「ど、どうしたの?」
雑兵「おれ...そういやぁまだ未成年だった」
勇者「え?」
雑兵「俺まだギリ17歳やった...うわすっごビビったわなんか...」
235
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/07(月) 15:16:09 ID:Gntq/5l.
天使「え...ちょっと待ってよ、僕18なんだけど」
雑兵「あ、お、お疲れ様です」
勇者「あんたって...」
_
__
236
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/08(火) 23:53:20 ID:1w2FVOwQ
__
_
雑兵「俺のプライベート干渉して楽しいのか…」
勇者「あら、いいじゃない?一度こういうトコ行って見たかったんだよねぇ」
雑兵「旅してりゃ嫌でも目につくだろ、パーティーの仲間はそういうトコいかねぇのか?」
勇者「な、仲間がどうこうなんて別にどうでもいいじゃないそんなコト...」
雑兵「...なぁ、もしかしてだけど」
勇者「は?」
雑兵「何でもない」
雑兵(まさかのボッチ旅だったのか...)
237
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/08(火) 23:59:00 ID:1w2FVOwQ
雑兵(辛くなかったのかな、いや、でもこの反応から察するに...)
雑兵「まぁDQ1の勇者もボッチ旅だったからな」
勇者「は、はぁ...?な、なんですって...?」プルプル...
雑兵「しかしよく考えるとお前凄いな、一人で旅して魔王倒したんだろ?ぼっちとか辛くなかったの?」
勇者「ぼっちぼっちいうなぁ!!僕だって...っ!仲間とか欲しかったんだよ!!」
「ストリップ劇場の前で喧嘩してるぞ!」
「兄妹か?」
238
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/09(水) 00:03:56 ID:m8WBCeLQ
雑兵「そ、そんな大声出すなって...ごめんって早く劇場入ろ?ね?ね?」
勇者「うるさい!この変態!!」
「け、警備隊呼ぶか?」
「やめとけやめとけ...この街が使いづらくなるだけだ」
雑兵「へ、変態じゃねぇよこの野郎!俺のプライベートここまで干渉しやがって!!意地でも入れてやるからな!オラッ!」
勇者「は、離してよ!」
伍長「お、お前それは洒落にならん!!」
一等兵「雑兵!流石にその子の手ば離すだ!!犯罪はいかん!」
239
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/09(水) 00:10:43 ID:m8WBCeLQ
雑兵「あーもう!演習の時といいおめぇといるとロクなことにならねぇ!!第一お前は自分勝手なんだよ!」
勇者「う、うるさい!つーか兵卒の癖になんだよ!!」
雑兵「うるせぇ!ぶらりぼっち旅!!俺ぁ厄災から解放されたなんて恩恵これっぽっちも受けてねぇんだよ!!お前の活躍なんて知るか!!」
勇者「う...うゥ...グズッ...な、何なんだよぉ...あ、相手してくれてもいいじゃん...なのにそこまで言わなくたって...ズズッ...」
雑兵「えあっ、な、泣くなよぉ!」
勇者「ぼ、僕だって...ズズッ...一人は嫌だったんだ...友だちも欲しかったし...」
240
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/09(水) 00:19:44 ID:m8WBCeLQ
勇者「でも...お姉ちゃん頑張ってるから...僕も頑張らないとって...僕だって
普通の女の子として生きたかったんだよ...!でも...退魔の剣抜いちゃったから...」
雑兵(ヤバ、退魔の剣の下りちょっと面白い)
勇者「でも...魔王倒す旅なんて誰が付いて行くんだよ...痛いの治したくても
薬草苦かったし...辛い所でも一人だったし...」
雑兵「...」
勇者「魔王倒したかと思えば英雄扱いで...街に出てもろくに買い物も出来ない...
可愛い小物も欲しいのに...友だちなんてそんな状況でどうやって作るんだよ...」
雑兵「で、でも傭兵団はお前の方慕ってたじゃねぇか...」
勇者「もう慕われるだけじゃ嫌だ...」
241
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/09(水) 00:28:24 ID:m8WBCeLQ
雑兵「...」
女の子を泣かしたとかの後悔はなく、俺なんかよりもずっと努力している普通の女の子
がどうしてこんなに辛い思いをしているのか、いやまぁ泣いたのは俺が発端だけど、
少なくとも年頃の女の子に対する世間の扱いに対して疑問を抱いた、退魔の剣を抜いた
からと死ぬ気で努力させ、ロクな仲間も付けずぼっち旅を押し付け魔王討伐に赴かせた
世間は今のこの子を見てどう思うのか、そんな疑念が頭の中をぐるぐる駆け巡った。
雑兵「...」
勇者「もうお前なんか...嫌い...?!」ガシッ
242
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/09(水) 00:32:15 ID:m8WBCeLQ
雑兵「...いますぐ分屯地に帰るぞ」
勇者「ちょ、なんだよ...!離してよ...!ほっといて!」
雑兵「黙ってついてこい」
勇者「な、なんだよ...」
伍長「あいつ何がしたかったんだ」
一等兵「一先ずおおごとにならんかったということで」
伍長「いやおおごとだろ」
_
__
243
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/09(水) 00:37:11 ID:m8WBCeLQ
__
_
「いや、全額下ろすの?!」
雑兵「はい、残す金額指定してないから降ろせるっすよね」
勇者「ちょ、何してるの?」
雑兵「後でわかる、降ろせるんすよね?」
「お、降ろせるけどさぁ...一気に降ろしたら部隊長に報告行くぞ...」
雑兵「構わないっす、お願いします」
「わ、わあったよ...ほんと、お金は大事につかぇ グワシャッ
雑兵「ありがとうございます!行くぞ!」
勇者「ちょ!ちょっと!」
「お、おう...なんで勇者様の手ずっと握ったまま...」
244
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/09(水) 00:43:12 ID:m8WBCeLQ
雑兵「ここがフィッハーの街だ、色んな店が揃ってる」
勇者「だ、だから何?」
雑兵「一緒に見て回って、お前の欲しいもの、買いたいものをなんでも言え、
俺が買ってやる」
勇者「え...?え?」
雑兵「そこの雑貨屋は女性向けの雑貨も売ってある、そこは
女性向けの服屋さんだ、見てみるか?」
勇者「ちょ...待ってよ...」
雑兵「いいか、お前は今日から普通の女の子だ、それをお前にも
周りの人間にも分からせてやる、良いな?」
勇者「...」
雑兵「パフェもある...ね、ねぇ反応してくれないとそろそろこのキャラ恥ずかしくなるから...」
245
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/09(水) 00:46:03 ID:m8WBCeLQ
勇者「...分かった、さっきの店全部回る」
雑兵「よ、よし」
勇者「欲しいもの全部買ってもらう、何から何まで」
雑兵「そうだ、買えなかったものはなんでも買え...あでもちょっと手加減...」
勇者「僕はね...一度も手加減したこと無いんだ」
_
__
246
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/09(水) 00:49:50 ID:m8WBCeLQ
__
_
勇者「このワンピース...」
雑兵「いい感じじゃねえか?着てみろよ」
勇者「で、でもノースリーブ...」
雑兵「うるせぇ関係ねぇ、それにとても似合うと思う」
勇者「分かった、雑兵が言うなら買う」
雑兵「か、買うんすね」
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247
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/09(水) 00:52:38 ID:m8WBCeLQ
__
_
勇者「このネックレス...似合う?」
雑兵「ごめん、すっごい似合う、ボーイッシュ系のアイドルかと思った」
勇者「じゃあコレも...後このブレスレットも...」
雑兵「ぶ、ブレスレットは金額的に似合わないんじゃないかなぁ」
勇者「僕が付けたら可愛くないの?」
雑兵「クッソ可愛い」
_
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248
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/09(水) 00:56:39 ID:m8WBCeLQ
__
_
勇者「パフェ初めて食べる...」
雑兵「お、俺も...」
「はい、あーん♡」
「あーん♡」
雑兵「張り倒してや...」チラッ
勇者「あ、あーん...///」
雑兵「は、恥ずかしかったらやらなくても」
勇者「た、食べて...///」
雑兵「...」パクッ
_
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249
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/11(金) 00:37:55 ID:1wD8iGSg
__
_
雑兵(金ねンだわ)
勇者「う″〜〜ん″...っはぁ、楽しかった...」
雑兵「もういいのか?」
勇者「もう雑兵お金ないでしょ」
雑兵「う、うん、もう勘弁して欲しい」
勇者「安月給のウチに無理しすぎるからだよ、まさか軍の共済まで下ろすなんて...」
雑兵「いや、別にいいよ、俺も楽しかったし、この世界来て初めて沢山遊んだわ」
勇者「僕はずっといたつもりだったけど...うん、初めて沢山遊んだ」
雑兵「次は自分の金で目一杯楽しめよ?楽しみ方分かっただろ」
勇者「うん、分かった...雑兵といると楽しい」
雑兵「うん、うん?」
250
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/11(金) 00:49:04 ID:1wD8iGSg
雑兵「いや、俺と遊ぶのはやめとけって」
勇者「エッチな店行けないから?」
雑兵「いや、そ、まぁそれもあるけど、いや他にも理由はあるからな?!」
勇者「ふーん?雑兵は遊んでくれる女の子よりもエッチな店を選ぶんだぁ?」
雑兵(そ、そんなワンピース姿で質問を投げかけないでくれ...)
雑兵「いや、あの、プライベートの節調は大事なんだよ、わかるか?」
勇者「あーあ...残念だなぁ」
雑兵「...わあったよ、呼んてくれりゃ遊ぶから...」
251
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/11(金) 23:51:43 ID:1wD8iGSg
勇者「じゃ、約束ね?」
雑兵「あぁ、どこでも駆けつけてやらぁ」
_
__
252
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/14(月) 00:59:07 ID:EvgnaMsY
__
_
雑兵「うーっす...って」
殿下「あ、雑兵...」
雑兵「おう、気分どうだ?」
殿下「ちょっと休んだら楽になった...ありがとう」
雑兵「これからどうなるんだろうな...お前の立場わかんねぇから...」
殿下「うん...皇国に戻れるようにしたいけど...」
雑兵「戻るったって...大丈夫か?戻ってったって民衆の奴らが...」
殿下「...分かってるよ、でも戻らないといけないんだ...」
253
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/14(月) 23:20:57 ID:GgB.Yypg
雑兵「戻ってどうするんだ、正直言って国建て直すのはもう...」
殿下「建て直さなくたっていいよ...でも、僕なんかの為に死んでいった部下達に...」
雑兵「弔合戦的なやつか」
殿下「...」
雑兵「無理だな、現時点のお前にゃ...何もかもが足りねぇよ」
殿下「足りないって...雑兵に何が分かるのさ...!父さんも母さんも...大切な人達を失った僕の気持ちも...」
雑兵「知らん、苦労したのは分かるがそこまで興味ねぇ、恨むなら自分の境遇を恨め、勝手に恨み辛みの延長線上で人に当たるな」
殿下「...ッ」
254
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/14(月) 23:25:02 ID:GgB.Yypg
雑兵「お前に足りないのは今の状況を自分でどうにかするって思考だ、こりゃ俺の考えだが国のトップ殺して、あの民衆らがどうなるかなんて...」
殿下「ど、どうなるの?」
雑兵「互いの足引っ張りあって自滅さ、それか木っ端共を集めた集団なんて飲み込まれるだけさ、飲み込まれたら最期、その国というのは完全に無くなる、つまりニプラス皇国はパーペキに終わりだ」
255
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/14(月) 23:28:07 ID:GgB.Yypg
雑兵「あいつらがどこまで国を愛してたかが見ものだな」
殿下「それじゃあ...僕の居場所なんて...」
雑兵「さぁ、どうなるんだろうなぁ、そこは騎士団長の腕一つだ」
殿下「...」
雑兵「...まぁ、もし本当にどうしようもなくなったら俺んとこに来い、ここにずっといるからさ」
殿下「雑兵...優しいのかそうじゃ無いのか分からないね」
雑兵「や、優しい方じゃないか?」
_
__
256
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/14(月) 23:33:36 ID:GgB.Yypg
__
_
勇者「雑兵も殿下と来ればいいのに」
雑兵「俺ぁ分屯地の方が合ってるからな、デケェとこはどうも苦手だ」
勇者「そんなんで本当にすぐ駆けつけられるの?言っとくけど来なかったらサイテーだからね」ツ-ン
雑兵「う、うーん...」
勇者「...嘘だよ、雑兵、雑兵と離れるの嫌だけど、また遊びに来るし、たまには来てね」
雑兵「あぁ、行けたら行くわ」
勇者「それ来ないやつじゃん」
257
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/14(月) 23:37:09 ID:GgB.Yypg
上等兵「うっす、俺らも帰るわ」
雑兵「あんま話せなかったっすね、たまに行くんでお願いしまし」
兵長「来るんじゃねぇ、厄介ごと持って来るつもりだろ」
雑兵「た、たまにゃあ良いじゃないっすかぁ」
伍長「ほんっと恐ろしい男だよお前は、勇者様手篭めにするたぁ...でもまだ手は」
雑兵「出さないっすよ」
天使「ぞ、雑兵...」
258
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/14(月) 23:54:38 ID:GgB.Yypg
雑兵「お、おう、お前も元気でな...」
天使「...他になんか無いの」
雑兵「いや、その...あんまり...」
天使「あっそ...この変態」
雑兵「えぇ〜何どういう事ぉ」
天使「僕に抱き付いてきた癖に、色んな人にちょっかいかけて...」
雑兵「え、あぁ、え?!それ今出す!?」
天使「いつ出すのさ」
259
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/14(月) 23:58:25 ID:GgB.Yypg
雑兵「ご、ごめんって、いやその、移動したから何言えばいいのかわかんねぇし...喧嘩別れしちまったし」
天使「...そういうとこだけ鈍いのホントズルイ、でも変わってなかったからいいや」
雑兵「えぇ...」
一等兵「雑兵ってスケコマシでさぁね」
上等兵「いや天使に迄とは思わなかった」
_
__
260
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/15(火) 00:02:59 ID:XjIGNPTg
__
_
雑兵「行ったなぁ」
曹長「寂しいか?いっちょまえに」
雑兵「一丁前とか関係ないっすよ...」
曹長「まぁ感慨に耽るのも昼までだ、ごめんちょっと首都と地方の境界線にある分屯地のに荷物届けてくんないすか」
雑兵「え?!嘘でしょ」
曹長「いやホントホント、たまに行くんだよ、荷物の輸送」
雑兵「えぇ...絶対首都帰る連中に会うじゃないっすか...途中でキャンプするでしょあいつら」
261
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/15(火) 00:05:49 ID:XjIGNPTg
曹長「大丈夫だって、ロバだからあんま暴れねぇよ」
雑兵「いやんなこたぁ聞いてないっすよロバなら安心すけど」
曹長「境界線っても北上するから防寒用意しとけよ、あと糧食は食堂で受け取ってくれ」
雑兵「了解です、早めに言って欲しかったっす」
曹長「ごめんって」
_
__
262
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/15(火) 00:11:32 ID:XjIGNPTg
__
_
フィッハー地方と首都の境界線には街や村は無いが、少し北上した場所にフィッハー補給処があるらしい、
付近の村々は長閑な村らしく、フィッハー補給処も分屯地と同様地元が近い定年間際の人たちがいる場所だ。
雑兵「フィッハーから外出るの初めてだなぁ、この道通るのも来た時に通っただけだから二ヶ月近くぶりかぁ、なぁロバ吉」
ロバ吉「ンア"ア"...」
雑兵「馬の声と違うんだな」
263
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/15(火) 00:18:59 ID:XjIGNPTg
雑兵「馬車あって良かったけど重くないかロバ吉、重くても我慢してくれよ」
ロバ吉「...」
雑兵「なんとか言って...まぁいいや」
荷物の中身は書類と返納する被服、あとは土産くらいだ、なんと長閑な仕事だろうか。
雑兵「独立大隊っぽい仕事だなぁ、まぁまだ仕事内容よう知らんけど」
首都へ帰還する連中とは顔をあまりあわせたくないが、仕事なので仕方がない、キャンプしてるとこを追い抜かそう。
そろそろ夏も本番となり、季節的には7月中盤だろうか、元いた世界の季節感覚はニート中に狂ってしまったが、やはり季節感は本能なのかだいぶ外の気候にも慣れた。
264
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/15(火) 00:26:48 ID:XjIGNPTg
雑兵「しかし...勇者のワンピ可愛かったな...エルフもああいうの着るのかな」
エルフと離れてもう2ヶ月近く、自分が初めて街の見回りをしていた時に会った、
飛び級的な奴で混成騎士団に入ったが上手くやれているだろうか。
雑兵「みんなとじっくり話ししてぇなぁ...」
天使からは部隊はどうか聞きたいし、女騎士からは前世で何をしていたかも聞きたい、
勇者からはお金返してもらいたいし、エルフは今の状況を聞きたい、この世界へ来て
友人が増えて来たし、物事に対する興味もある程度湧いて来た。
雑兵「俺ずっと分屯地勤務なのかなぁ、それも良いけど別のとこも行ってみたいなぁ」
265
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/24(木) 23:05:31 ID:ijyolZeQ
雑兵「しかしフィッハーの補給処なのになんで郊外に建てるかなぁ、港の外も土地有り余りすぎだろうに...ん?」
?「...」
雑兵「行き倒れってやつか...?おばあちゃん、大丈夫?」
老婆「ううっ...み、水を...」
雑兵「ほら、しかしいつから...」
老婆「はぁ...早朝にフィッハーを出たのですが...急に胸が苦しくなり...」
雑兵「早朝?マジで?先に出た騎士団連中はど真ん中に倒れてたばあちゃんシカトしたの?」
老婆「え、あぁ、騎士団ですか...?」
雑兵「うん、でもまぁ良かったよ、馬車に乗りなよばあちゃん、俺も暫く道なりに行くから楽になるまでは休んでな」
老婆「ありがとうございます...」
266
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/24(木) 23:11:18 ID:ijyolZeQ
雑兵「しかし騎士団連中も薄情だよ、おばあちゃん無視るなんて罰当たりなねぇ」
老婆「そうですねぇ...この国を守ってくださる方々と思ったのですが...老いぼれ一人も...」
雑兵「ロクな連中じゃないからねホント、そいえばおばちゃんどこまで行くの?」
老婆「首都までですよ、息子夫婦が一緒に暮らそうと...お爺さんも亡くなったので孤独でしたが...」
雑兵「そっかぁ、じゃあ境界までは連れてってあげるよ」
老婆「本当ですか?ありがとうございます...」
雑兵「いいんだよ、この辺もへんな宗教がのさばってるって話だしねぇ、最終章世界だがなんだか忘れたけど...」
老婆「えぇ私の村にも教祖様が来ましたよ...それはもう神々しい...」
雑兵「え?なんか言った?」
老婆「い、いえいえ...」
267
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/26(土) 20:08:25 ID:wz2CJhIo
雑兵「先行った連中にガツンと言わなきがすまんですねばあちゃん、なんなら言ってやりましょうか?」
老婆「い、いえいえ...お気持ちだけでも嬉しいですよ」
_
__
268
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/26(土) 20:23:24 ID:wz2CJhIo
__
_
「今日はここで休止します、よろしいでしょうか」
女騎士「うん、だが不寝番はつけるようにして...不寝番につかせる者は直ぐに休息をとらせろ」
「っは」
勇者「〜♬」
女騎士「どうした、ご機嫌だな」
勇者「このペンダント雑兵に買って貰ったんだ、綺麗でずっと見てられるよ...」
女騎士「へぇ、あいつにもそんな甲斐性がねぇ」
勇者「姉ちゃんも何か頼めば?弱みに付け込んだら...」
女騎士「っはは、今は金欠だろうから俸給が入った時に頼んでみるよ」
行商「酒につまみはいらんかねぇ、フィッハーの特産だよ〜」
269
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/26(土) 20:29:00 ID:wz2CJhIo
「お、行商だ」
「鼻がいいなぁおっちゃん」
行商「っへへ、あっしは金の匂いがする所は直ぐにわかる性質でして、おっ!これは
騎士団長様!それに勇者様もいらっしゃるじゃないですか!どうです?お酒など...」
女騎士「私は遠慮しておく、酒に弱いからね」
勇者「僕は未成年」
行商「つれないですなぁ...あ、そう言えば、この地方にのさばってる宗教についてご存知です?」
女騎士「あぁ」
行商「あいつら...今度は軍人を狙うと言い出してます、フィッハーの港にも信者が何名か紛れ込んでいました...しかしニプラスの船
爆破とは関係はありませんでした」
270
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 16:23:29 ID:YU9Oc/P2
女騎士「ではニプラス皇国の船舶の爆発は事故か或いは...まぁいい」
勇者「何人か諜報員送り込んだのが仇になったのかな、みんな優秀だったけど...」
女騎士「助けられる奴は助ける、私が送り込んだ手前見捨てる訳にはいかない」
行商「ま、そこら辺は貴方方の管轄なので知った事ではありません、自分もそろそろ遠くへトンズラしますよ、あいつらも鼻がいい」
女騎士「あぁ、ありがとう。報酬は副団長に頼んでくれ、色をつけるよう頼んでおいた」
271
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 17:00:10 ID:YU9Oc/P2
勇者「早めに戻って準備しなきゃダメだね、傭兵団呼びもどそうかなぁ」
女騎士「あぁ、味方は多い方が良い...再来週まで我々騎士団に休みは無さそうだな」
_
__
272
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 17:11:09 ID:dfO7d3DU
__
_
雑兵「おばあちゃん、そろそろ暗くなるから近くの村に泊まろうか、村あったよね」
老婆「そうですねぇ...この近くなら...ラング村があります、村長のラング様なら兵隊さんを温かく迎えてくださるでしょう...」
雑兵「じゃあその村にしようか」
273
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 17:20:25 ID:dfO7d3DU
『ラング村』
村長 シュトゥル・ラングの祖先が首都から現村付近を開拓した事により村が誕生した、首都とフィッハー港を結ぶ街道から少し外れた場所にあり、旅人の憩いの村でもある。
雑兵「...」
雑兵(何でだろう、村入った途端道行く人たちに見られてる気がする...ばあちゃん載せてるの珍しいのかな)
「反乱者だ...教祖様を連れ出しに来たんだ...」
「殺すか...?」
「まだだ...」
雑兵「...?」
274
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 17:26:49 ID:dfO7d3DU
雑兵「ばあちゃん、この村静かだね」
老婆「そうですねぇ、とても良い村ですよ...誰にも邪魔されない村で...」
雑兵「...」
このばあちゃん...村に入ってから眼つきが鋭くなってきた、村の人達も大きい家に近づくにつれ...なんだろう敵意の様なものを剥き出してきた。
275
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 17:32:20 ID:dfO7d3DU
雑兵「よいしょ...ちょ、ちょっと村長さんの所に挨拶に行ってくるからばあちゃんは宿でも取って休んでてよ」
老婆「はぁい...お言葉に甘えてぇ...」ニタァ...
雑兵「...ッ」ゾクッ
雑兵「...こ、こんばんわぁ」
ッダン ッドンドンッ!! ガシャン!!
雑兵「...?!」
ア...アア バタン!!!!
276
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 17:35:41 ID:dfO7d3DU
ガチャ
ラング「いやぁすいません、家内がちょっとびっくりして鍋を...」
雑兵「い、いやこちらこそ夜分遅くに申し訳ありません...奥様怪我ありませんか?」
ラング「大丈夫ですよ、今奥で手当てしてますので...腕利きの家政婦がいるのでね」
雑兵「そ、そうですか」
ラング「それはさて置き...兵隊さん如何なさいましたか?」
277
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 17:55:59 ID:dfO7d3DU
雑兵「はい、ちょっと仕事でフィッハーの補給処へ行く途中で...夜も遅くなったのでこの村で宿泊させていただこうと思いまして...」
ラング「あぁ、そういう事ですか、お疲れ様です兵隊さん、どうぞ我が家でお休み下さい、ささっ、どうぞ」
雑兵「いやそんな..悪いですよ」
278
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 18:02:17 ID:dfO7d3DU
ラング「いえいえ、若い兵隊さんは我が王国の宝ですから...」
雑兵「で、ではお言葉に甘えて...」
雑兵「...うっ?!!?」
雑兵(な、何だこの匂い...?!汗?!いや違う...糞尿の香り...それ以上に、まさか?!)
雑兵「ラ、ラング...てめぇ」
ラング「...っ」ドスッ
雑兵「うっ...ぐ」バタ...
279
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 19:33:02 ID:hiyxoSP2
ラング「一人で兵隊を捕まえて来るなんですごいね」
老婆「他愛ないですよ、無法者共なんてこんなもんです」
ラング「十分休んで、また異端者狩りをお願いしますね、教祖様の祝福を...」
老婆「はい...教祖様の仰せのままに...」
_
__
280
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 22:17:21 ID:hiyxoSP2
ラング「一人で兵隊を捕まえて来るなんですごいですね」
老婆「他愛ないですよ、無法者共の扱いにはなれておりますから」
ラング「十分休んで、また異端者狩りをお願いしますね、貴方に教祖様の祝福を...」
老婆「はい...全ては教祖様の仰せのままに...」
_
__
281
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 22:25:58 ID:hiyxoSP2
__
_
?「兵隊を捕まえたか...でかしたぞラング、我が教団の活動を邪魔される前に人質を取れば常に先手を打てる」
ラング「はっ、その兵隊を捕まえたのは老婆で御座います...お褒めの言葉はアイツに...」
?「ふむ、分かった...して兵隊はいまどこへ?」
ラング「はっ、例の部屋へ...」
?「例の...あぁ『身籠部屋』か、そこへ置いてどうするつもりなのだ」
282
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 22:27:36 ID:hiyxoSP2
ラング「はっ、少々ばかり王国へ罠を仕掛けようと思い...」
?「罠...っふ、何を考えているか分かったぞ...恐ろしい奴だ」
_
__
283
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 22:38:14 ID:hiyxoSP2
__
_
「特別警務隊!人員50名!編成完結!」
「特別騎馬隊!人員60名編成完結!」
「混成騎士団 総員100名集合完了!」
女騎士「休ませ」
「「「休め!」」」
女騎士「みな、先日のフィッハー港への遠征から帰還して、またすぐに出発させる羽目になって本当に申し訳なく思う、皆も既に聞いたと思うが、フィッハー地方でのさばっている宗教団体が遂に我々に牙を剥いた」
284
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 22:43:23 ID:hiyxoSP2
女騎士「既に混成騎士団や警務隊から何名かの諜報員を差し出して来たが...皆連絡が取れなくなっている事態になったのは私の責任だ、本作戦は宗教団体の信者達に捕まった諜報員の救出を主たる任務とする、しかし作戦遂行中に信者から攻撃を受けた場合はいかなる措置をもってしても脅威を排除せよ、必ずみんな生きて帰るぞ、以上」
「作戦本部長に対し敬礼」
「かしらー!なか!」
_
__
285
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 22:50:30 ID:hiyxoSP2
__
_
雑兵「っ...うっ...」
雑兵「こ、ここは...?」
頭がガンガン痛む...周りは真っ暗、手足は縛られてないのが幸いだが...ダルすぎて動かすのもままならない。
だんだん頭が回り出し各感覚が正常になりだした...
雑兵「っうぶっ!?んだこの臭い...!?」
何かの腐臭、排泄物のアンモニア臭に
286
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 22:52:58 ID:hiyxoSP2
__
_
雑兵「っ...うっ...」
雑兵「こ、ここは...?」
頭がガンガン痛む...周りは真っ暗、手足は縛られてないのが幸いだが...ダルすぎて動かすのもままならない。
だんだん頭が回り出し各感覚が正常になりだした...
雑兵「っうぶっ!?んだこの臭い...!?」
何かの腐臭、アンモニア臭に混じって大便に似た匂い...言葉にするのもはばかられるくらい不快な臭いが充満していた。
雑兵「ん、んだよ...肥溜めに捨てられたのか...?」
287
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 22:58:36 ID:hiyxoSP2
「肥溜めの方がマシよ...」
雑兵「...?」
「後ろよ、貴方の後ろ」
雑兵「え...う、うぁっ??!?!」
そこにいたのは手足を切断され、鎖を脇に通し吊るされていた女性だった。
その光景は、猟奇的趣味のイラストとそっくりな光景だった。
女性の尊厳というか、人の尊厳をフル無視した行いだった。
女性「ごめんね、こんなトコいち早く出たいでしょうけど...」
雑兵「んな事言ってる場合じゃ...!」
288
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 23:11:28 ID:hiyxoSP2
女性「今は私に構っている暇はないのよ、早く脱出しないと...」
腐臭の原因が分かった、医療行為で行われる適切な切断なんて物ではなく、ただ目的の為に切り落とした手足の切断面が壊死していたのだ。
雑兵「ま、待ってろいま鎖を...っうぷ...」
女性「近づかないで!!!お願いだから...私達のことはほっといて...早く脱出して...」
雑兵「た、達?」
女性「周りを見渡しなさい...」
雑兵「え...」 チラ...
「ウ...ウ...」
「...」
「カヒュ-...カヒュ...」
そこにいたのは喉を切られた女性達だった...皆身籠っているのか腹部が膨らんでおり...やはり手足を切断され自由を奪われていた。
雑兵「な、なんなんだよ...!なんでこんなことされて...」
289
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 23:16:22 ID:hiyxoSP2
女性「そんなの私達が聞きたいよ...いきなり勧誘され...しつこいから強い口調で断ったら...」
雑兵「フィッハーにのさばってる宗教団体か...?」
女性「そうねその宗教団体にね、フィッハーの村々がこんな状態になっているにも関わらず貴方達王国軍は何一つ助けてくれることも無く、今に至るわ」
雑兵「...」
女性「そこの小さい女の子...知ってる子なんだけどね...本当に歌が上手だったわ...今じゃ声帯を切られて...もう二度と...そこのエルフの女の子はエルフの王国の一人娘なのよ...?姫さまなのよ?なのに何故...」
雑兵「...し、知らなかったんだ、なんか変な事してるってのは聞いてたが...」
290
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 23:23:36 ID:hiyxoSP2
女性「そう、なら貴方の無知を恨みなさい...そして地上にもし出られたらこの事を国王に伝えて頂戴」
雑兵「...ッ」
「ウ...ウ...」
雑兵「...」
女性「鎖が食い込んで痛むのね...可哀想に...緩めてあげて...」
雑兵「...」ジャラ...
「ウ-...ウ-...」
雑兵「...んでなんだよ、グズッ...」
女性「どうしたの?」
雑兵「んでこんな...みんな罪もねぇし年端もいかねぇ子達が...」
女性「あなたがそんなこと言ってもしょうがないでしょ?もうみんなこんな姿にされて...今更兵隊さんにそんな泣かれても困るわよ」
291
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 23:35:18 ID:hiyxoSP2
ドンドン!
雑兵「?!」
女性「食事の時間ね...あなたがここは運び込まれた時にラングのやつが餌はこいつにやらせるって言ってたわね...」
雑兵「え、餌って...」
女性「取りに行ってくれないかしら?」
雑兵「あ、あぁ」
ガチャ
292
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 23:41:06 ID:hiyxoSP2
老婆「っひひ...これは臭いのう」
雑兵「...んんのクソババァゴラ!!!」 ガッシャァァン!!!
老婆「うあ!?ほ、吠えるでない若造が...さ、さっさと餌を運びな」
雑兵「てんめ"ぇ"!!何してんだオイ!!?あの子らに何したんだオイゴラァ!!!」ッガシャン!!ガッシャン!!!
老婆「う、うるさいのう...は、早く餌を運ぶんじゃぞ...」ガチャ... バタン
雑兵「お"い"!!聞いてんのかゴラァ!!」
293
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 23:48:48 ID:hiyxoSP2
女性「ちょっと」
雑兵「んの外道...ぶっ殺す...ぶっ殺す...」
女性「ちょっと、ご飯早くしてくれないかしら?」
雑兵「め、飯...?これ残飯...」
女性「残飯でもね...命を永らえさせられてる以上はご飯なのよ」
雑兵「...っクソ!クソクソ!!クソが!!!」
「ウ...」
294
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 23:52:17 ID:hiyxoSP2
女性「ちょっと、怖がってるじゃないの...」
雑兵「...あ」
女の子「ウッ...ウ-...」
雑兵「ご、ごめんな、ほら...残飯の中じゃマシな...!」
女性「その子歯全部抜かれちゃったから噛めないわよ...あなたが噛んで食べさせてあげて」
女の子「...」
雑兵「...ッ」パク
雑兵(クソクソクソクソクソ...あの村の外道共...)
雑兵「くひ あーんしへ」
女の子「...」ア-ン
雑兵「っん...食えるか?」
女の子「...」コクコク
295
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 23:53:30 ID:hiyxoSP2
雑兵「...」ジャララ...
女の子「ウ...?」
雑兵「鎖、痛いだろ、みんな下ろしてやっからな...」
女の子「ウ-...ウ-...」
雑兵「君も...」
エルフの姫「...ッ!」ブンブンッ
女性「あの子達に無闇に近寄らないであげて、男がトラウマなのよ...初めてが...最悪なんだから」
雑兵「ご、ごめん...近寄らないから」
296
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 23:54:57 ID:hiyxoSP2
雑兵「...」
女性「鎖なんか持ってどうしたのよ」
雑兵「いや、ちょっとな...」
ドンドン!!
「あけな!桶の回収だよ!!」
雑兵「...」
女性「ちょっと...」
297
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/03(日) 23:58:30 ID:hiyxoSP2
老婆「おーおー柵がへしゃげてしもうとるわい...」
雑兵「...」ポイ
老婆「ったく、ちょっと取れないじゃないか...最近の若もんは礼儀ってものが...」ブツブツ...
雑兵「っ!」ジャラッ!
老婆「カヒュッ!? グ、グゲェ!?」
雑兵「...っ」ギリッ...
老婆「ッカ!ア°ァッ!?」
298
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 00:00:22 ID:dnLJxD16
雑兵「っ!!!」 ポキッ
老婆「」ガクッ...
雑兵「鍵...あった」ガチャン...
299
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 00:04:30 ID:dnLJxD16
女性「ちょっと、何して...!」
老婆「」
雑兵「安心してくれ、死んでるから」
女の子「?!?!」
女性「あ、あんたなんて事を...!」
雑兵「そこのダストシュートどれだけ深いんだろうな...まぁいいや」ポイ
ガダン!ダダダタン!!
ド-ン...
300
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 00:08:31 ID:dnLJxD16
女性「なんてことを...」
雑兵「ごめん、気が済まなくてさ...次も上手い具合に処理するよ」
女性「あ、あなた...リミット外れちゃった顔してるわよ...」
雑兵「...ごめんな、怖い思いさせて...すぐ出させてやるから...」
女の子「ウ-...ウ-...」
雑兵「...」
女性「出すなら...その子だけにしてちょうだい...」
301
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 00:10:08 ID:dnLJxD16
雑兵「なんで...」
女性「こんな姿で白日のもとに晒されるなんてごめんよ...みんなそう思ってるわ、出るときはここを焼き払って...お願い...」
雑兵「...」
_
__
302
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 00:13:26 ID:dnLJxD16
__
_
「あれがラング村です、村はもう信者に制圧されています...従わなかった者は信者に...」
女騎士「ふむ...ここには2名送り込んだな...各部隊から20名を選出し村への突入隊を編成する、急いでくれ」
「はっ!」
303
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 00:19:18 ID:dnLJxD16
槍兵隊長「エルフ、あなたは後ろで詠唱に集中しててね?」
エルフ「分かってますよ、あのクソ共を木っ端微塵にすれば...」
重装歩兵隊長「口が過ぎるわよエルフ、まだ相手全員殺したら意味ないから軽めよ軽め」
エルフ「はぁい」
エルフ(雑兵...元気かなぁ、フィッハーの話全く聞かないから何もわからない...)
「魔砲撃隊!攻撃始め!」
エルフ「よし...スゥ...」
_
__
304
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 00:21:46 ID:dnLJxD16
__
_
「異端者共が村へ!!」
「あいつらいきなり攻撃を!!」
ラング「うーん、来るとは思ったが早いなぁ...よし、ある程度信者を残して君たちは逃げなさい、私はやることがある」
「ラング様!」
ラング「大丈夫、上手くやるさ」
チュド-ン... チュド-ン...
305
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 00:24:32 ID:dnLJxD16
「第1救世主分隊は左翼を!第2は右翼を固めろ!異端者どもを足止めし時間を稼げ!!教祖様も期待されているぞ!!」
「教祖様の仰せのままに!!」
勇者「それじゃあ警務隊さんと混成騎士団さん達...信者を何人か残す程度でお願いしまーす」
「了解です」
306
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 00:32:02 ID:dnLJxD16
雑兵「じゃあ...行くか、裸は恥ずかしいからこれ着な?」
女の子「ウ-...」
女性「男ならそうでなくちゃね...」
エルフの姫「...」
雑兵「...本当に良いのか、お天道様見たって別にお前らに辛く当たることは...」
女性「い、良いのよ、もう、みんなの気分が変らないうちに早く...ね?」プルプル...
雑兵「っ...あぁ...」
雑兵「...行こうか」
女の子「ウ-...ウ-...」フルフル
雑兵「...だよなぁ、みんなと行きたいよなぁ」
ラング「そうはいかないんだよねぇ」ッブウン!! バキィ!!
雑兵「っがぁ!??」
307
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 00:35:02 ID:dnLJxD16
雑兵「っがぁぁぁぁ!!?!」
ラング「戻れって」ッドス!!
ッダン!!ダダタン!!
雑兵「っぎぃ!」
ドスン!!
女性「え?!」
ラング「お久しぶりですね、信者達の子は孕んでそうですか?」
女性「ラ、ラング!あんた!!」
ラング「この子も...」ポイッ
ドサッ
女の子「っ...!」
雑兵「て、てんめぇ!」
308
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 00:41:58 ID:dnLJxD16
ラング「君には...ちょっとやってもらいたい事があってね、ちょっとズボン脱いで貰うよ」 プチッ プチッ
雑兵「お、おい!!やめろって!」
女性「...!まさかラング!あなた!」
ラング「そうなんだよ、もう村に軍が入ってきてねぇ...信者達もいい金ヅル達だったんだが...もう僕には必要ないくらい儲けさせてもらったから、そろそろ潮時かなと思ってね...お、なかなか良いモノだね...うーん勃っては無いか...まぁいいや...っと!!」 ッバキィ!
雑兵「え?な、何してんだ!?」
ラング「あ、忘れてた」ッシュ
女性「あなた!早く逃げ...?!」
ラング「喋られちゃ困るからね、みんなと同じで声はもう...悲しいね、あいたた...」
女性「っ?!っ!?」
「地下室だぞ!!!」
「物音だ!突入しろ!!」
309
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 00:49:55 ID:dnLJxD16
ラング「っぐあ!」ガッシャン!
「うわっ!な、なんだ!?」
ラング「た、隊長?!!た、助けて下さい!!この信者が!」
雑兵「は?!は?!」
「お、お前その格好...どこの部隊に...ラング「諜報員です!!あそこで倒れている男に暴力を振るわれ!周りも見て下さい!」
「え?...っうわ!」
「なんて酷いことを...!!その倒れてる男を捕まえろ!」
雑兵「ま、待てって!俺も兵隊で...」
「どこに証拠がある!」
雑兵「そこの女の子にくるんでる服...ラング「この男、私が突入した時にこの女の子に乱暴をしてました!!なので私の使ってない軍服を...」
「そ、そうか、お手柄だな、その男を連れてけ!」
「はっ!来いオラァ!」
雑兵「違うんだっ!!俺もっ!モゴゴ」
「黙ってろ、おい、頭陀袋も被せろ、どうせ処刑だからな」
310
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 00:57:31 ID:dnLJxD16
そして
女騎士「信者は何名捕まえたんだ?」
「はっ、10名です」
女騎士「そうか、この村の惨状を見た...奴らには相応の罰を受けてもらわないとな、連れて行け」
「はっ!」
勇者「諜報員、2名とも死んでたよ、遺体も見つけた」
女騎士「...そう、2名ともダメだったか」
「え、一人諜報員を救出したと報告が...」
311
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 00:58:21 ID:dnLJxD16
勇者「うそ?その人どこに?」
「た、確かまだ捕まってる人がと言いながら何処かへ...」
女騎士「...早急に探し出せ!!」
「は、はい!!!」
「な、なぁ...俺らが頭陀袋被せた奴って...なんか見覚えある奴じゃ...」
「知らねぇよ、それにもう連れてかれちまったから確認しようがねぇし」
「そ、そうだな...しかし可哀想に...もう大丈夫だからな...」
女の子「ウ-!ウ-!」
_
__
312
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 01:03:39 ID:dnLJxD16
__
_
『フィッハー補給処』
曹長「よぉ、やっぱ来てたんだな」
兵長「あ、先日ぶりっすね、フィッハー港の方はどうなんですか?」
曹長「うん、今は南のウルムガルド駐屯地から来た竜騎兵隊が警備してるから安心だ」
上等兵「安心して雑務に励めますね」
曹長「あぁ、あの飛んでとコンビと可愛子ちゃんの新兵は?」
兵長「治療班のとこへ行ってます、あのコンビは作戦中に酒で急造火炎瓶作りやがって...それ投げつけて軽く火傷したんすよ、天使ちゃんは治療班の手伝いっす」
曹長「そうか、アホだなあいつら...それはそうと...雑兵のやつ見なかったか?」
313
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 01:10:09 ID:dnLJxD16
兵長「いや、見てないっすねぇどうかしたんすか?」
曹長「いやなぁ、三日前にここフィッハー補給処に荷物届けさせる仕事任せたんだが...」
女騎士「すみません、あなたが曹長ですか?」
曹長「っと、はい、フィッハー分屯地 独立大隊分遣隊の曹長です」
女騎士「ありがとう、早速だがフィッハーに雑兵と言う兵隊がいるはずだが...」
曹長「はい、いますよ...ただ三日前から姿を眩ませやがって...まさか今回の件でなにか...」
女騎士「はい、ラング村に補給処へ届けるはずの物資があって...馬車の管理番号を見たら、分遣隊の管理になってて」
曹長「ま、まさかロバの馬車ですか!?そしたらそりゃうちの馬車です!」
314
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 01:14:55 ID:dnLJxD16
女騎士「ラング村の怪しい所を全て回ったんですが、雑兵の姿は無くて...遺体も確認したが、認識票が無くてですね」
曹長「に、認識票が無い?兵長、認識票が無いってどういう事だ、着けさせていたんじゃ無かったのか?」
兵長「す、すみません...認識票を着けさせる教育は...行ってませんでした」
曹長「それじゃあ...」
女騎士「遺体は焼け焦げたものから傷みの激しい遺体まであります...性別の確認も出来ないので...」
曹長「ぞ、雑兵...」
315
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 23:37:13 ID:dnLJxD16
ラング村
勇者「...違う、絶対雑兵じゃない...」
エルフ「...ホント残忍な事を...」
重装歩兵隊長「エルフちゃん、そろそろフィッハー補給処に行きましょ」
エルフ「はい、ドワーフさん、なんで人間同士がこんな酷いこと出来るんですかね」
重装歩兵隊長「さぁね...同じ人間でもお互いに譲れないものがあるのよ、きっと」
エルフ「...」
重装歩兵隊長「それにしても勇者様...誰を探してるのかしら」
エルフ「聞いてみたんですが知り合いがいるかも知れないって...」
勇者「...雑兵じゃない...」
316
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 23:43:53 ID:dnLJxD16
勇者「雑兵...僕と遊ぶんだから早く帰って来てよ...」
_
__
317
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 23:48:00 ID:dnLJxD16
__
_
ガラガラガラ...
早く帰って来てよ...
雑兵「...っうお...夢か...?」
「教祖様がきっと助けに来て下さる、怯える事はないさ」
「そうだ、我々は教祖様の為に戦ったんだ、助けに来ないわけが無い」
雑兵「...なぁキチガイ、この馬車ってどこ行ってんの」
「な、なんだ君は...」
「い、異端者か??なぜこんな奴が...」
318
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/04(月) 23:59:38 ID:dnLJxD16
雑兵「質問に答えろオ"イ"ッ!!」 ッバキィッ!!!
馬主「っうわぁ!騎士さん!信者が暴れてる!」
「貴様、黙らんとここで切り捨てるぞ!」ドスッ!
雑兵「っぐ!...」バタッ...
「あぁ教祖様...お助けください...」
「ったっく...しかしなんだろう...なんかこいつ見覚えあるな...」
319
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/05(火) 01:13:32 ID:EL2a86Ik
馬主「騎士さん、ビギニング刑場です」
「うん、ご苦労だった、報酬は会計課から受け取ってくれ、さぁ降りろ!!」
「きょ、教祖様ならきっと...」
「必ず来るさ、教祖様なら...」
雑兵「こ、ここは...?」
看守「罪人ども、そこへ並べ、この首輪にある番号が今日から貴様らの名前だ」
雑兵「おい、ここはどこだ」
看守「どこって...ビギニング刑場に決まってるだろ、死刑囚なんだから」
雑兵「は...?」
320
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/05(火) 01:22:08 ID:EL2a86Ik
ビギニング刑場
首都の北西に位置し、終身刑の判決を言い渡された罪人や死刑判決を受けた罪人が集められる刑場、所長の判断によって多い日には4〜5人の死刑が執行されることもある。
看守「ラング村での残忍な行為は賭け値なしで死刑確定だからな...まぁお前らは人殺していい思いして来たんだ、次はお前らの番って事だな」
「この異端者め...」
「教祖様が必ず助けに来て下さるからな、それまでの辛抱だ」
雑兵「だから俺は信者でもなんでも...」
看守「信者でないなら何故あの場にいたんだ、でなきゃあの行為はキチガイのやるド外道行為だぞ」
雑兵「俺だってこのキチガイ共に捕まったんだよ、フィッハー分屯地に独立大隊の雑兵っていやぁ分かるはずだ」
看守「あー分かった分かった、いいから檻ん中へ入れ」
ガチャ
雑兵「くっそ...どうすりゃ...」
321
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/05(火) 23:49:04 ID:EL2a86Ik
「あ...?何だえらい若い奴だな...」
雑兵「クソ...年貢の納め時ってなこの事なのか」
「おい若造、何だってこんなトコに...」
雑兵「え?あぁ...ちょっとインチキ宗教団体の信者共とイザコザがあって...」
「インチキ宗教団体...あぁ、新顔共の噂話で聞いた事あるな、フィッハー地方にのさばり出したって...」
雑兵「あぁ...ちょっとした手違いなんだが...策士な奴に嵌められて信者に見られちゃって...信者を討伐して来た部隊に捕まったんだ」
322
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/05(火) 23:55:56 ID:EL2a86Ik
「そうか、まぁこのビギニング刑場に来たからにゃもう何も考える必要はねぇよ、ここから出られる事はまずねぇからな」
雑兵「ビギニング刑場...?」
「なんだ、ここのことも知らないのか...まあいい、知ったところでだからな、先が短い同士仲良くやろうや」
雑兵「...」
「しかし若そうだな、お前今何歳だ?」
雑兵「そろそろ18になる」
「じゅ、18?おいおいそんな若いのに...この国はいよいよ可笑しい国だな」
雑兵「もうどうでもいいよ、また死ぬだけだ」
「何だえらいファンタジーな野郎だな...じゃあ俺も軽く自己紹介してやるよ」
323
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/05(火) 23:59:00 ID:EL2a86Ik
「おれはバウナー軍曹、先の大陸戦争でやらかしてな...終身刑を言い渡されて早6年だ」
雑兵「何したんだ」
軍曹「ちょっとな...敵さんの捕虜を殺しちまって...敵だって俺らの捕虜沢山殺した筈なんだが...いかんせんあちら側が有利な状態で停戦しちまったから...まぁ元敵国の顔色伺いで俺ぁ戦犯になっちまったよ」
324
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/07(木) 23:59:48 ID:QVZdHQA.
雑兵「へぇ...大変じゃないの」
軍曹「いや...お前の置かれてる立場も結構大変だと思うが...見ろ、あの処刑台を」
雑兵「...」
軍曹「この刑場が出来て以来何千もの罪人の慟哭を聞いた処刑台だよ、今日も一人執行される」
雑兵「あいつは何をしたんだ」
軍曹「あぁ、聞いた話じゃ国境沿いの小さな町に手下の蛮族をけしかけて...後は分かるだろ」
雑兵「死んで当然の人間だな...首吊りとか首切るんじゃないんだな」
軍曹「ここからじゃ見えねぇけど執行台の向こう側はエライ崖になっててな、まあまあ見りゃ分かる」
325
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/09(土) 00:09:32 ID:iHryWjZ2
雑兵「...?」
グオオオ...
軍曹「来たぜ...」
雑兵「え?え?」
カタカタと檻が揺れ、地の底からハラワタにズーンとくるような揺れが始まった、揺れは鳴き声とともに次第に大きくなり、その声の主が姿を現した。
?「グウォオォオオオオオオ!!!!!」
雑兵「うっわ...」
軍曹「ふぅ、やっぱ何年も見てるが慣れるもんじゃねぇな、俺らは通称刑場の龍神と呼んでる...昔は由緒正しい龍神だったらしいが、今や人喰いの龍だ」
326
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/12(火) 00:48:04 ID:lqqq4T56
雑兵「由緒正しかったにしちゃあ随分と汚い身なりだな」
軍曹「龍使いがいねぇのさ、どんな龍にも使いの者が王国から派遣されるんだが...ここの龍だけにゃ使いがいねぇんだ、だから何らかの傷を負っても治してくれる奴がいないから治るまで待つか...酷い時にゃ膿んで悪臭が立ち込めるかだな」
雑兵「この龍が何したってんだ...」
「言い残すことはありますか?」
罪人「ねえな」
「では...彼の魂に永遠の安らぎのあらんことを...」
327
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/12(火) 00:51:51 ID:lqqq4T56
罪人「さぁ食っちまえ薄汚えトカゲ野郎!!」
人喰いの龍「グゥォオオオオ!!!!」
バクッ ガッツガッツッ!!
雑兵「うわ...マジで人食ってる」
軍曹「綺麗に食ってくれるときゃいいが、たまにこっちにまで肉片飛ばしてくるからそればっかは勘弁して欲しいな...」
「明日はカルト信者の処刑だ、
328
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/12(火) 00:56:34 ID:lqqq4T56
「所長がカルト信者はいち早く処分した方がいいとのことだからな、無いとは思うが変な宗教をこの刑場で広められたらかなわん」
雑兵「信者の処刑って...」
「誰からやるか?無論明日のうちに全員執行する、頭陀袋を準備しておけ」
329
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/14(木) 00:57:37 ID:RDVUw0kE
軍曹「まぁ、ご愁傷様ってことだな」
雑兵「クソ...ここまで来てこんな死に方かよ...」
_
__
330
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/14(木) 01:02:29 ID:RDVUw0kE
__
_
女騎士「...」
勇者「雑兵...じゃない」
「勇者様どうしたんだ、魂抜けてるって感じだな」
「知り合い探してるらしいが...えらい執着してんな」
女騎士「勇者、そろそろ行こうか」
勇者「...」
女騎士「大丈夫、雑兵はどこかにいるさ、
あいつならどんな逆境も乗り越えられる...というかうまくかわしていくさ」
勇者「うん...」
331
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/17(日) 01:00:01 ID:WEGzaIRk
女騎士(雑兵の運の悪さも桁外れだな...会った時は多分リミッターが外れた状態で憎まれ口叩かれるのかな...的得てる時のあれ結構効くんだよなぁ...)
「ではお先に帰隊します、お疲れ様でした」
女騎士「あぁ、帰ったらゆっくりと休んでくれ」
勇者「...」
女騎士「大丈夫、雑兵なら案外ピンピンしてるだろう、先に帰って休んで...」
勇者「...ッ」プルプルッ...
女騎士「...先に帰ってて、ね?」
勇者「...」コクッ
332
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/17(日) 01:00:56 ID:WEGzaIRk
女騎士「さあて...人の妹を泣かせた罪は重いからな...雑兵」
_
__
333
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/17(日) 01:09:51 ID:WEGzaIRk
__
_
雑兵「グ-...」
軍曹(こいつ...明日にゃ処刑だってのによく寝られるな...肝が座ってんのかどうなのか...)
軍曹(しかし...こんな若えのにこんなトコに連れて来られる兵隊がいるたぁなぁ...何をしでかしたのか...)
雑兵「んん...ラング...テメェ...グ-...」
軍曹「...ラング...?ちょっと待て...ラングってまさか...」
334
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/17(日) 22:41:57 ID:RG.XuhIs
軍曹「おい、起きろ!」
雑兵「んあ?...んだよこれから死ぬんだから寝かせてくれよ」
軍曹「お前ラングって奴知ってるのか?」
雑兵「ラング?あぁ村長を名乗ってた」
軍曹「クソ...あいつやはり生きてたか...」
雑兵「知り合い?じゃあお前ロクなやつじゃねえな」
軍曹「うっ、いやまぁ...そいつとは入隊が同期でな、中々策士な奴だったよ...都合が良けりゃ俺らにつき、悪けりゃ上官側に付く...まぁ要領がいい奴だったな」
335
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/17(日) 23:44:28 ID:RG.XuhIs
雑兵「なんで元軍人のそいつが今じゃ宗教団体に」
軍曹「多分だが...金目当てだろうな、金には相当がめつい奴だった、入信自体はしてないだろ」
336
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/18(月) 00:50:35 ID:iq/FNwg2
雑兵「そっかぁ、そんな奴だったんだなぁ...まぁ俺にゃもう関係ねぇや、明日死ぬ身なんだ」
軍曹「お前えらく達観してんな...どうやって生きて来たんだ...」
雑兵「テキトーだよテキトー...童貞卒も出来ずに死ぬのは惜しいけど、まぁそれも人生だわなぁ、来世に期待だ...Zzz...」
軍曹「おかしな奴だ...こんな奴雇って王国は大丈夫なのか...?」
_
__
337
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/18(月) 00:55:58 ID:iq/FNwg2
__
_
「すみません、この先で馬車同士が事故を起こして...肥料が撒き散らされて結構エグい事に...」
「本当か?どうしますか騎士団長?」
女騎士「うむ...下手に通って疲れている部下たちに肥やしの匂いを嗅がすのは忍びないからな...迂回してビギニング刑場の道を通ろう」
「了解です」
女騎士(勇者はもう帰ったかな...落ち込み過ぎて無いといいけど...)
338
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/18(月) 01:02:29 ID:iq/FNwg2
「ビギニング刑場といやぁ昨日の信者達がもう送られた頃ですね、ラング村のは特段酷かった...」
「あぁ、ありゃぁ人のやれる事じゃねぇや...年端もいかねぇ女の子まで...」
「この先どう生きるんだろうな...被害者の人ら、ホントに生き長らえたかったのかと助けた今でも思うよ」
女騎士「...」
女騎士(助けられた女性達を見たが、皆何かを訴え掛けていた目つきをしていたな...一体何を...)
「しかしあの捕まえた中の一人...やっぱ見覚えあるんだよなぁ...」
「...まさか...いやそんなはずは無い...だって独立大隊だし...」
「え?なんか言った?」
「いや、なんでもないさ」
339
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/18(月) 01:10:59 ID:iq/FNwg2
女騎士(この二人...やけに捕まえた一人の信者を気にしてるな、何があったのだろうか...)
「なぁ、やっぱ見覚えあったってあいつ!訓練所で喧嘩してた奴だ!」
「や、やめろって!縁起でもねえ!」
女騎士「...そいつの事、詳しく聞かせてくれ」
「き、騎士団長...大声出してすみま
女騎士「いいから聞かせろ」
「は、はぁ...あの地下牢から女性達を救出した時に...あの男もいたんです」
「はい...諜報員のオトコが言うにはあの男が女性達に酷い事をと...」
女騎士「諜報員...例の一人生き残ってた奴か、どこへ行ったかまだ情報は無いらしいな」
「はい...」
女騎士「...この隊列の中で一番速い馬を連れてこい!」
「は!自分の馬です!」
女騎士「すまない!少し借りる!」ガシャッ
女騎士「生きていろ...!必ず!」
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340
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/19(火) 00:14:12 ID:FNB8Lv3M
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「罪状?人殺しておいてのうのうと生き長らえてる罪だろ」
「ちょっとは真面目に考えてくれ、根拠が必要なんだよ、このロクデナシ共を殺すのにも」
雑兵「早くしろクソ雑魚、トカゲちゃん谷底で待ってんだろうが」
「な、なんだテメェその態度は!」
「肝座り過ぎなんだよ!自分が処刑されるってのを自覚しろ!」
雑兵「あ?うるせぇよなんの調べもしねぇ癖に俺様を取っ捕まえやがって、この国ってホントガバガバなのな」
341
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/02/19(火) 23:22:12 ID:FNB8Lv3M
「クッソ...生意気な奴だな...いいだろう、望み通り最初に執行してやる!」
雑兵「それで良いんだよそれで」
「ちったあ感傷に浸れって...」
雑兵(まぁこの世界じゃ失敗しただけだし...次があらぁな)
雑兵(天使、上等兵、兵長に曹長、エルフや勇者...殿下や女騎士に会えねぇのは寂しいが...仕方ねぇさ、失敗したのは俺だ)
「そこに立て」
雑兵「あいよっと」
342
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/04/02(火) 14:40:30 ID:k7O/axok
続きはよ
343
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/04(土) 21:28:49 ID:gB1j7POU
「何か言い残すことはありますか?」
雑兵「フィッハー分屯地の独立大隊分遣隊の曹長に、迷惑かけてスマンコって言っておいてくれ」
「で、では魂の安らぎのあらんことを...」
グオオオオオオ...
雑兵「...次はどこかなぁ」
「その処刑をやめろーーっ!!」
「うぇ?!誰だ!?」
344
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/04(土) 23:33:46 ID:gB1j7POU
女騎士「はぁっ...間に合った...」
「き、騎士団長?な、何故ここに...」
女騎士「良いから早くあの男の処刑を止めろ!」
「は、はい!し、しかし...」
「龍神は出て来たが最期...罪人を喰らわねば凶暴化してしまいます!」
345
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/05(日) 15:24:25 ID:I8tNDh3E
待ってたぜ乙
346
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/07(火) 23:44:44 ID:bVoDkEPY
雑兵「ンだよ死ぬ時くらい静かにって...なにしてんの?」
女騎士「お前を待ってる物好きな人達がいるのでな、迎えに来てやったぞ、雑兵」
雑兵「そ、そりゃありがたいけど...もう龍ちゃん来ちゃってっからさぁ...」
女騎士「ンなもの次の処刑人呼べば良い話だ、だろう?」
「ま、まぁ食えりゃ暴れませんからね...お、おい早めに連れて来い!」
「は、はっ!」タタタツ
雑兵「お、お前ちょっとだけ残酷な奴だな、ちょっと恩人ながら思考にドン引きだわ...」
女騎士「猟奇殺人者に与えられる良心はまだ無くてな...さぁ戻ろう、話したい事や聞きたい事がいっぱいある」
_
__
347
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/07(火) 23:51:06 ID:bVoDkEPY
__
_
雑兵「ロバ吉は無事なの?」
女騎士「ロ、ロバ吉?あぁ、曹長殿が引き取ったよ、元気そうだった」
雑兵「そうか...で、ち、地下牢の人達は...?」
女騎士「あぁ...あの惨状で救出と言って良いのか分かないが、救出したよ」
雑兵「そうかぁ...そっかぁ...良かった、しかしビビったなぁアレは...久々に吐いたわあの光景は...」
女騎士「ずっとあそこに閉じ込められてたのか?」
雑兵「あぁ、あそこで俺イかれちゃぁもう助けられんなと思った何とか耐えたが...ッヒッグありゃあヒデェよ...」
348
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/08(水) 00:09:01 ID:/SmOklWw
女騎士「...今は泣いてても良い、手綱は私が持とう」
雑兵「た、頼む...ウッ...アァッ...」
女騎士(こいつも泣くことがあるんだな...やはり私が思ってたほどに強いメンタルは...)
女騎士「お前に人間味があって安心したよ」
雑兵「あ″...?うるせぇ″っ..,!俺が来る前から貴様ら軍隊にやる気がありゃカルトものさばらなかったんだ!!俺に人間味?泣いて当然だあんなん見せられたら!一等冷酷なのはお前らだクソッタレ!」
女騎士「す、すまない...」
雑兵「何が考えさせられる事があっただ...!スラム街のジャリを救えて、地方のカルト教団の被害を受けてる人らは救えなくて何を考えてた今まで!答えろ!」
女騎士「...地方での有事は領主らの要請がないと動けない法があってな...要請もなくおいそれと動けなかったんだ...」
349
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/08(水) 00:16:18 ID:/SmOklWw
雑兵「領主様の要請なんぞでもなけりゃ国民を救えられねぇのかこの国は...トンデモな国だな...」
女騎士「...私もこの法は正直変えたい、今回の件で上層部連中も動くだろう...騎士団としても救助に行きたかったんだ、諜報員の連絡が途絶えやっと行けたんだ...」
雑兵「...兵隊なり将校なりなんぞが捕まりゃやっと重いケツあげれるってか?成る程なぁ、アホらしすぎて涙も枯れたわ」
女騎士「すまない...」
雑兵「いや、お前が悪いんじゃねぇ、怒鳴って悪かった、悪いのはぜーーんぶ国だ、国王だ」
女騎士「お、お前...、国王に使える兵士としてその発言は頂けない...」
350
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/08(水) 00:19:03 ID:/SmOklWw
雑兵「国民の命カルトに頂きますさせた癖して一丁前に俺の事を不敬罪ってか、良い度胸だな」
女騎士「いや良い度胸なのはお前の方だ、絶対みんなの前でそんな話するな、いいな?」
雑兵「だ、だって...」
女騎士「お前が本当に捕まってしまって...悲しむのは誰だと思うんだ?」
雑兵「...え?いるの?」
女騎士「え?」
雑兵「いねえだろそんな物好き」
351
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/08(水) 22:25:03 ID:/SmOklWw
女騎士「お前...もう少し自分の立場っていうのを理解した方がいいぞ...全てにおいてな...」
雑兵「え?なんで今更?」
女騎士「まぁいい、帰ったら分かる」
_
__
352
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/08(水) 22:58:11 ID:/SmOklWw
__
_
「しかしですな、あのカルトから五体満足で生還できた兵隊...本当に捕まってしまったのかという事ですよ、送り出した者達は皆...」
「ご子息を亡くされて心中お察ししますよ、シンパの可能性もありますからな」
「それであれば生還できたのも頷けるというものだ」
勇者「...ションベン蟻共がっ!」ガタッ!
女騎士「抑えて、貴様らが言う通り、たしかに我が軍で送り出した者達は皆無念な姿で発見された、この中にもご子息を送り出した者もいる、しかし彼は地下に閉じ込められた彼女達を、これ以上の惨状を避けるために身を呈した」
353
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/08(水) 23:05:57 ID:/SmOklWw
女騎士「五体満足?そんな訳がないだろう、彼の脳裏には今もあの惨状が思い浮かぶと言ってた。彼は深く彼女達に詫びていた、この国の法の杜撰さを憎んでいた、貴重な戦力と行動力貴様らは無碍に何故できるのだ?」
「し、しかしですね...」
女騎士「まだ何か?」
「あの様な一兵卒が...」
女騎士「あの様な一兵卒だからこそ成し遂げてくれたんだ、私たちも見習わなければならない行動力だぞ」
「...」
勇者「まだ文句あんなら辞表出してよ、事務仕事できる幹部なんか幾らでもいるんだから」
「ゆ、勇者様まで...わ、分かりました、では件の兵に特別な配慮を...」
雑兵「いらねぇよ配慮なんかよ」
354
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/08(水) 23:10:43 ID:/SmOklWw
勇者「でも...雑兵は頑張ったんだよ?」
雑兵「頑張った俺が今も何故か檻の中に入れられてんだぜ?逃げる訳ねぇってのに...可笑しいぜここの警備隊は、まぁいいけどさ」
勇者「もう取り調べは無いの?」
雑兵「うん、粗方...そいやぁ殿下はどうなった?」
勇者「姉が国王に掛け合って、暫くは主賓外来に泊めさせるって」
雑兵「良かった...」
勇者「会いたがってたよ?雑兵に」
355
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/13(月) 22:17:02 ID:rgxenKdk
雑兵「俺もみんなにあいてぇよ、てかエルフ元気してんの?」
勇者「うん、最初は落ち着いてなかったけど、今はみんなと仲良くやってる」
雑兵「そっか、なら安心だな...」
勇者「...地下牢にいた人達、みんな長くもたないかもって医師が言ってたら言ってた、切断されたとかの腐敗や...性病とかも患ったらしくて...」
雑兵「...っそ、そうか...やっぱあそこで死なせとくべきだったのかなぁ...」
勇者「...もし仮にだよ?仮に僕があの人達の立場になったら...多分死んだ方がマシだなって思ってくると思う...好きでもない人に...」
雑兵「お前そういうの疎かっただろ」
勇者「ぼ、僕だって勉強してるんだよ?」
雑兵「ごめん」
356
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/13(月) 22:32:01 ID:rgxenKdk
雑兵「俺もう辞めよっかなぁ兵隊、キツイわなんか」
勇者「や、辞めたいなら...僕の傭兵団に来ない?」
雑兵「人の話聞いてた?兵辞めてえってのに兵隊はいってどうすんだよ」
勇者「じゃあ今後の生活どうすんのさ、雑兵みたいな人雇ってくれるとかないよ」
雑兵「そ、そんなこたぁ」
勇者「みんな優しいから雑兵の破茶滅茶な行動を許してるだけで外の世界じゃそんな事許されないからね、上官に対する態度もそうだし、あと
雑兵「ご、ごめんって!もうやめて下さい、そろそろ泣きそうになる」
357
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/19(日) 20:35:24 ID:LlLvqE2U
勇者「だから...もう辞めるとか言わないで...それにみんなを心配させないでね?」
雑兵「...あぁ、すまん」
_
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358
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/19(日) 20:45:18 ID:LlLvqE2U
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_
「あの兵卒ぁ厄介もんだな」
「勇者様と騎士団長のお気に入りだから迂闊に文句も言えん」
「どうするよ、次の″左遷先″は」
「そうだな...もう二度と団長らの手の届かないトコがいいからなぁ」
「...国境守備隊って独立大隊の派遣要請してた?」
「してない、だが職種変換なら俺らでもできる」
359
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/19(日) 20:48:50 ID:LlLvqE2U
「職種変換なぁ...国境守備隊の職種は...主に歩兵科か...」
「やっちまおうぜ、もう面倒はゴメンだ」
「だなぁ...あの兵卒自身も国境守備ならやり甲斐もあらぁ」
「決まりだな、おい学生、独立大隊の隊長に内線」
「はい」
プルルル... プルルル...
_
__
360
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/19(日) 20:55:31 ID:LlLvqE2U
__
_
兵長「それほぼほぼ島流しじゃないっすか...」
隊長「うん、何回か掛け合ったが...やはり人事参謀の連中も...まぁ雑兵の悪評に辟易してるな」
上等兵「悪評って...あいつも巻き込まれてですよ」
隊長「まぁ、そうだろうが...独断をして周りを混乱させてるのもまた事実だ、殿下の件がいい例だ」
上等兵「そんな...それは周りがどうにかしろと言ったのも原因じゃないですか」
361
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/19(日) 21:23:59 ID:LlLvqE2U
隊長「そうだとも、けしかけた奴も悪い...」
上等兵「なら...」
隊長「だが身の程というのを本人も弁えるべきだった...それだけ事なんだ」
兵長「...そうっすね」
天使「...」
362
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/19(日) 22:08:40 ID:LlLvqE2U
上等兵「はぁ...どうしようもないなぁこればかりは...」
天使「雑兵が異動って本当ですか?」
上等兵「あぁ、しかも職種まで変えさせての異動だ...もう二度と独立大隊には帰れない」
天使「二度と...」
上等兵「お前ら二人で切磋琢磨してたのになぁ...あいつにもまぁ...問題はあったが、周りの人間にも問題がなぁ...」
天使「...なんで雑兵ばっかりこんな目に...」
上等兵「...」
_
__
363
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/19(日) 23:03:06 ID:LlLvqE2U
__
_
天使「...知ってたんだね」
雑兵「あぁ、取り調べ受けてる時にな、人事参謀の木っ端将校がズケズケ来やがってよ、今日付けで第2国境警備隊、国境守備中隊に配属だってよ、歩兵に職変」
天使「第2国境警備隊ってどこなの?」
雑兵「分かんない、なんか北のほうって聞いたけど」
天使「北...トルティア地方の国境かな...?」
雑兵「ど、どんなトコなの」
天使「うーん...あまり話し聞かないトコ...辺境にあって、あんま交通の便は...」
雑兵「ガチ島流しやんけ」
364
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/19(日) 23:59:48 ID:LlLvqE2U
天使「でも第2国境警備隊も聞かないなぁ...どこが指揮してるんだろう」
雑兵「なんか国境警備専門の偉いトコとかあるんじゃないか?まぁいいや、今日付けで異動だからな...檻から出た瞬間にゃもうそのトルティア地方に行かにゃならん」
天使「またすぐ行っちゃうんだね」
雑兵「申し訳ねぇがこればっかりはなぁ...」
天使「...もう二度と独立大隊に帰れないって言われてたけど...いつでも顔だしてね?」
雑兵「うん、帰れたらすぐに顔出すよ、元気でな」
「雑兵、トルティアへ移動だ、荷物は後で郵送させるからそのまま来い」
雑兵「はいよ...じゃあな...」
天使「...」
_
__
365
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/20(月) 23:42:18 ID:vLLDIlFY
__
_
トルティア地方
険しい山岳地帯が広がっており、最も低い地点でも首都と比べると海抜千mもある、
北の国境を抜けると亡国オムエン国の跡地が広がっている。
雑兵「そのオムエンにゃ人いないの?」
「あーまだ住んでる人は住んでっけど、俺らの国よりにいるねぇ、首都付近や地方の都市なんかはもう廃墟しかねぇよ、まぁその廃墟ん都市も魔物で溢れてて、もうお手上げって感じさね」
雑兵「ふーん」
オムエン国はかつては栄華を誇った王国であったが50年前、突如魔物の集団に攻め込まれ、あまりの奇襲であったため為すすべも無く国王は討ち死、敗残兵と化した王国軍も撃破され、現在は魔物の溜まりとなっている広いただの土地である。
366
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/25(土) 00:37:09 ID:cP8WzBJk
「しかし兵隊さんも不運だね、あの国境にゃホント何もねぇぞ」
雑兵「何もないってのはいい事だ...人も死ぬことはねえ」
「そうか...そうなのかもな...着いたぜ」
雑兵「着いたって...山道の入り口じゃん」
「こっからは一人で行ってくれ、あの警備隊の空気はあんまり好きじゃねぇんだ」
雑兵「あそうなんすか...」
367
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/25(土) 01:30:58 ID:cP8WzBJk
雑兵「...人も馬車も通ってない事はないんだな」
まだ新しい馬車の轍、オムエンから王国へ続く道へは幾たびも往復している跡があった、多分人通りがゼロなんて事は無いのだろう。
雑兵「行ってみるか」
轍にそって山道を歩く、辺りは薄暗く静かで、虫の音色しか聞こえない。
雑兵「もう夏にはいるんだなぁ」
「おい」
368
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/25(土) 01:35:09 ID:cP8WzBJk
「お前、見かけねえ顔だな、どこの部隊だ」
雑兵「独立大隊、ってもクビになって国境警備隊に職種変換になったよ、あんた国境警備隊?」
「あぁ、まぁそんなトコだ...しかし雑用部隊から国境警備隊ってなぁどういう了見なんだ?」
雑兵「俺が知るかよ...」
「まぁいい、新顔って事だな、俺は警備隊伍長、元は会計隊に居たのをここは島流しって訳よ」
369
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/25(土) 21:37:57 ID:hnvCh/3Y
雑兵「横領でもやったのか」
「あぁ横領だけならまだ重営倉で済んだが、ごちゃごちゃ言ってきた課長のツラぶん殴っちまって、ツラも二度と見たくねえってな、ここへ一昨年な」
雑兵「アホな事を」
「あぁ、それもこれも戦死した兄の弔意金をくすねやがった課長のせいだクソッタレ」
雑兵「いつかの大陸戦争かなんかの話か?」
「いつかの?5年しかたってねぇんだぜ?
370
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/25(土) 21:56:42 ID:By/RiEek
雑兵「あ、そんな最近だったんだな、まぁいいや、警備隊って何人くらいいんの?」
「ん?警備隊...?ちょっと待てよ何人くらいだったかなぁ...10人...いや20...?」
雑兵「マジで?人のこと言えないけど人に興味無さすぎだろ」
「だってなぁ、みんな我関せず、個人の世界観にどっぷりハマってっからさぁ、気持ち悪いんだよなんか」
雑兵「あーそういうタイプの部隊か」
「最初は仲良くなろうとしたけどさぁ、みんな反応イマイチで」
雑兵「そうか、まぁいいんじゃないの」
「適当だな...ココだよ、第2国境警備隊、オムエン国境分遣隊」
371
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/26(日) 00:00:50 ID:sQTRseFk
雑兵「...国境警備隊?」
「あぁ、一応な」
オムエン国境警備隊、亡国オムエン全土をを見下ろす位置に配置されており、オムエン国は朝焼けに染まり美しく映った、だが肝心の国境警備隊の建物は無く。
雑兵「これっていわゆるアレじゃねぇの、塹壕じゃねぇの?」
「あぁ、その通りだよ、でも屋根は付いてるだろ?まぁ雨は凌げど流水は凌げねぇ、風通しの良い職場ってなぁまさにここのことだよ」
372
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/27(月) 21:46:20 ID:nIQyPA3Y
雑兵「人っ子一人見当たらねぇけど、どこいんの?」
会計伍長「さぁ、大方オムエンに入ってなんかやってんじゃねぇの?」
雑兵「なんかあんのか」
会計伍長「あぁ、麓の廃墟になった村や町から金になりそうなの漁ってるよ、それを持って帰って、勝手に町に降りて売り捌いてる」
雑兵「逞しいことこの上ないな」
会計伍長「俺も金欲しいが、オムエンに入ってまでは嫌だな、運悪けりゃ町に降りた守備隊の奴ら全員帰ってこねぇって事もあったぜ」
373
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/28(火) 00:05:51 ID:/z5sbDZU
雑兵「帰ってこねぇってぇのはもしかして...」
会計伍長「あぁ、廃墟にゃ魔物の群れや、抜きん出て強い魔物がウロついてる事もある、あそこらはもう魔物にとっての獲物がないからそこまで多くはないが...それでも運が悪いとな」
雑兵「そうか、まぁここに魔物を連れて来なきゃ何でもいいさ」
会計伍長「ホントそれだな...お、帰ってきたぜ」
「ッチ、たったこれっぽっちかよ...」
「新顔二人を囮にして死なせてこんだけじゃあなぁ、まぁ補充は幾らでもくらぁ」
374
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/28(火) 00:10:25 ID:/z5sbDZU
「お、会計の、また塹壕に篭ってやがったのか?」
会計伍長「あぁ、命あっての物種だ」
「ビビってんじゃねぇよ玉無し、魔物どもなんか来やしねぇって、そりゃそうと、明日の留守番頼むわ」
会計伍長「街におりんのか、そろそろ街の憲兵も嗅ぎまわってるぜ」
「っへ、上手くやるさ...ところでそこのは見ねえ顔だな?」
雑兵「うーっす、精が出るな」
「んだこいつ、新顔のくせに態度デケェやつだな」
「あんまナメてっとオメェも魔物の餌にしちまうぞ?あ?」
375
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/28(火) 00:15:10 ID:/z5sbDZU
会計伍長「あーあー...血の気が多いやつばっかで」
雑兵「オメェこそ口の利き方に気をつけろ、こっちはこんなトコに連れて来られて、しかもオメェらみてぇなハゲタカが視界に入って気が立ってんだよ」
「て、てんめぇ...!」
雑兵「そいやあさ会計伍長、この二匹しか上がって来なかったけど他は?」
会計伍長「え?多分だが死んだんじゃねえか?前は結構な人数いた気がするけど、金欲しさに街に降りてそれっきりな気がするなぁ、興味なかったから確かな情報じゃないけど」
376
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/28(火) 00:19:47 ID:/z5sbDZU
雑兵「やっぱ雑魚は淘汰されるのかなぁ」
会計伍長「さぁ、知らんけど」
「お、おい!話を書きやがれコラ!!」
雑兵「あ?ウルセェんだよサンピンが、フィッハーでオメェら以上に厄介な奴らに楯突いたからもう怖かねえぞ」
「んのクソ野郎!ぶっ殺してやる!!」
雑兵「うわぁ怒らんでや、仲ようやろ」
会計伍長「おめぇ変なやつだな」
377
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/29(水) 00:22:47 ID:4B1ZrAFw
グルルル...
「お、おい...今の声って...」
雑兵「おい、まさかとは思うが魔物とやらを連れてきた訳じゃあるめぇよな」
「ぜ、前々回に下った時に殆どの警備兵を惨殺しやがった奴だ...」
雑兵「お前ら死ねよもう」
会計伍長「...やっぱ来るわなぁ、お前ら縄張り荒らすから...」
オークジェネラル「グゥウウウ....」
雑兵「うっわくっそ強そうやんけ...」
会計伍長「随分前にだがな...国境警備隊の陣地にオークジェネラル率いるオークウォリアーの軍団が攻めてきてな...」
雑兵「よく陣地持ったな」
会計伍長「いや、惨敗だった、陣地も荒らされ警備兵も殺されるだけ殺されて...目も当てられねぇ惨状だったよ」
378
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/29(水) 00:27:34 ID:4B1ZrAFw
雑兵「お前よく生きてたな」
会計伍長「死んだフリで対処しただけだ」
雑兵「そ、そっか」
会計伍長「まぁ聞けよ、その時に殺られた奴らがな、縄張りを荒らした奴らだけだったんだよ、あいつらも知能があるって事だな」
雑兵「え?じゃあほっといたら勝手に殺して帰るってことか」
会計伍長「そういう事、まぁコーヒーでも飲もうや」
雑兵「だな」
「お、おい!!ほっといてねぇで助けてくれ!!!頼むよ!!」
「お、俺にゃ家族がいるんだよ!!」
会計伍長「じゃあ一家もろとも死んだ方が良いぜ」
「って、てめぇ!鬼かオイ!!」
379
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/29(水) 00:30:20 ID:4B1ZrAFw
オークジェネラル「グゥウウウ...!!」ブゥン!!
「あ」グチャッ...
「ッヒィ!?」
雑兵「本当に狙わねぇな」
会計伍長「だろ?だからオムエンにゃ行かない方がいいんだ」
雑兵「あぁ、だな」
「う、うわぁぁぁあ!!!」タッタッタッタッタ...
380
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/05/29(水) 00:34:06 ID:4B1ZrAFw
会計伍長「あんのバカ野郎、オムエンの方に逃げやがった」
雑兵「南無阿弥陀ってとこだな」
会計伍長「しかしお前はなんか達観してるよな、今まで来た奴らとは一線を画してるぜ」
雑兵「まぁいい事悪い事が交互に続いたらねぇ、リアクション薄くなるよね」
会計伍長「そ、そうなのか」
雑兵「周りはいい事って言っても上の人間らからしたらよろしくない事だった、それをし過ぎたんだな俺も」
381
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/09(日) 22:14:29 ID:YSenMjf6
会計伍長「そうかい、ここじゃなんの事件も起きねえ、たまにゃゆっくりしようぜ」
雑兵「だな」
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382
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/09(日) 22:56:09 ID:YSenMjf6
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オムエン国境の1日はとてものどかな物だった、朝は適当に起きて夜は適当に寝る、飯はトルティアに駐屯する糧食兵が運んで来てくれる、実に優雅な部隊だ、しかし彼等に他の兵はどこ言ったのかと聞かれるので口裏合わせに困る。
会計伍長「さぁて、そろそろ飽きてきたな?」
雑兵「死ぬほど飽きたわ」
会計伍長「やっぱりな、俺もそうだったよ...でもいつかその飽きたって感情も吹き飛ぶぜ」
雑兵「そうかぁ...人として死にそうだな」
会計伍長「実はな、面白い噂があってな、詳しい話は知らねえけどよ」
雑兵「え?」
会計伍長「勇者様とデートしてる兵卒がいるって話や...隣国の殿下を拉致った兵卒がいるとか」
雑兵「ら、拉致ってはねぇんじゃねえかな...」
会計伍長「...やっぱお前だったんだな、独立大隊の兵卒ってのは」
383
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/09(日) 22:57:37 ID:YSenMjf6
__
_
オムエン国境の1日はとてものどかな物だった、朝は適当に起きて夜は適当に寝る、飯はトルティアに駐屯する糧食兵が運んで来てくれる、実に優雅な部隊だ、しかし彼等に他の兵はどこ言ったのかと聞かれるので口裏合わせに困る。
会計伍長「さぁて、そろそろ飽きてきたな?」
雑兵「死ぬほど飽きたわ」
会計伍長「やっぱりな、俺もそうだったよ...でもいつかその飽きたって感情も吹き飛ぶぜ」
雑兵「そうかぁ...人として死にそうだな」
会計伍長「実はな、面白い噂があってな、詳しい話は知らねえけどよ」
雑兵「え?」
会計伍長「勇者様とデートしてる兵卒がいるって話や...隣国の殿下を拉致った兵卒がいるとか」
雑兵「ら、拉致ってはねぇんじゃねえかな...」
会計伍長「...やっぱお前だったんだな、独立大隊の兵卒ってのは」
384
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/09(日) 22:58:30 ID:YSenMjf6
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オムエン国境の1日はとてものどかな物だった、朝は適当に起きて夜は適当に寝る、飯はトルティアに駐屯する糧食兵が運んで来てくれる、実に優雅な部隊だ、しかし彼等に他の兵はどこ言ったのかと聞かれるので口裏合わせに困る。
会計伍長「さぁて、そろそろ飽きてきたな?」
雑兵「死ぬほど飽きたわ」
会計伍長「やっぱりな、俺もそうだったよ...でもいつかその飽きたって感情も吹き飛ぶぜ」
雑兵「そうかぁ...人として死にそうだな」
会計伍長「実はな、面白い噂があってな、詳しい話は知らねえけどよ」
雑兵「え?」
会計伍長「勇者様とデートしてる兵卒がいるって話や...隣国の殿下を拉致った兵卒がいるとか」
雑兵「ら、拉致ってはねぇんじゃねえかな...」
会計伍長「...やっぱお前だったんだな、独立大隊の兵卒ってのは」
385
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/10(月) 20:28:15 ID:QjDn6YBA
読んでるぞ
386
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/11(火) 22:23:03 ID:FOmD0xAE
雑兵「いや...まぁそうだけどさ」
会計伍長「はぁ、やっぱ兵卒にゃ特別な人間なんかいらねぇんだなぁ」
雑兵「特別なわけじゃねぇよ、ただ運が良い時と悪い時の差が人より激しいだけだ」
会計伍長「十二分に特別な人間だっつーの...ずっとこんな所にいるつもりか?」
雑兵「さぁ、上の命令によりけり」
会計伍長「お前...死んだ方がいい」
387
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/11(火) 22:32:38 ID:FOmD0xAE
雑兵「お前流石にストレート過ぎて泣きそうだわ」
会計伍長「ごめん、言い直すわ、死んだフリして旅でもしろよ、そしたら自由だせ?」
雑兵「死んだフリ?」
会計伍長「あぁ、こんな国だ、死んだフリしてもバレねぇぜ?国境守備隊の奴らも死んだフリしてバックれた奴らもいるしな」
雑兵「死んだフリってもなぁ...」
もう社会的に死んだようなトコに来た俺だが、人として死ぬ程の絶望感は今の所持ち合わせてない。
388
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/11(火) 22:39:17 ID:FOmD0xAE
雑兵「いや、まだ生きておくわ、金が入り続ける限りはな」
会計伍長「使い所なんかないぜ?」
雑兵「いいんだよ、ねえよりかはな」
会計伍長「お前、やっぱ変な奴だなぁ」
雑兵「二度目の人生だからな、まだ死なないでいいんなら生かしといて欲しい」
会計伍長「そうか...なんでもねぇ、忘れといてくれ」
389
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/12(水) 23:06:55 ID:zC6iGXzo
乙?
390
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/13(木) 22:06:56 ID:7xypLiWE
雑兵「なぁ、気になってたんだがこの国境って人の行き来あるの?」
会計伍長「あー俺が来るちょい前はあったらしいぜ、それこそ奴隷商の馬車とか...」
雑兵「奴隷?そんなもんがまだあったのか」
会計伍長「現在進行形だろ、でもオムエンにまだ働かせられる程の人間がいるのかな」
雑兵「ふぅん...」
会計伍長「ま、仮に馬車が来たとしても俺は放っておくけどな、変な事には巻き込まれたくねぇし」
雑兵「だな、俺も干渉せんようにしよう」
_
__
391
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/16(日) 17:54:18 ID:YopklQQU
__
_
勇者「雑兵がどこ異動したのか分からない?」
エルフ「はい、人事部に所属してる同族にも密かに聞いたのですか...人事参謀は公開する必要性なしと」
勇者「あーまぁただの兵卒だからねぇ...」
エルフ「仕方がないとは思います」
勇者「しょうがないか...それと、殿下の事なんだけど」
エルフ「はい、殿下を亡国オムエンが良いと思われます、領土の広さも我が国よりは広く無いので脅威になる事も無いでしょう、オムエンの調査に先立ち腕が立つ者を何名か連れて行きたいのですが」
392
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/16(日) 20:18:29 ID:YopklQQU
勇者「うん、僕も行こうか?」
エルフ「え?よろしいのですか?お忙しいかと思い...」
勇者「忙しく無いよ、むしろ暇なんだよねぇ」
エルフ「勇者様も一緒なら百人力ですね、では出発は後日知らせます」
勇者「うん、ありがとう」
_
__
393
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/17(月) 00:24:50 ID:NbnMXM7w
__
_
雑兵「なぁ、あっち側にゃまだ少数だが人が住んでるって聞いたんだが、本当に住んでるのか?」
会計伍長「あー俺もたまに聞くが見た事ねぇ、まぁおおかた国が滅んでからも息災に住めてるってこたぁ、多分魔物も寄り付かないぐらいの田舎なんじゃないかな」
雑兵「そっかぁ、なんか難民とか来そうな気がしてさぁ」
会計伍長「幾らかはきたみてぇだぜ、それこそ魔物に奇襲食らって3日4日くらいは難民でごった返したそうだ...しかしうちの国は冷酷でなぁ...みんな追い返しちまった、無理に入ろうとしたら女子供関係なくスパッとってなもんだ」
雑兵「...どこまでこの国は冷酷になれんのかなぁ」
会計伍長「冷酷は底なしだぜ、うちの国にゃ良い事でも個で見りゃあそりゃぁもう」
394
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/17(月) 00:27:59 ID:NbnMXM7w
雑兵「そんなもんかなぁ...っとお?」
ガラガラガラガラ...
「みんな、もう少しでビギニングだぞ」
「気をしっかり持て!」
雑兵「見たところパンピーだけど...」
会計伍長「馬車...しかも大人数を乗せてる...」
雑兵「話聞いてみっか?」
会計伍長「入国はさせない方向で頼むぜ」
395
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/17(月) 00:33:15 ID:NbnMXM7w
雑兵「聞くだけ聞いてみる、おーい、止まれ」
「あ、兵隊さん...」
「ビギニングは入れてくれないって...」
雑兵「何があったの」
「はぁ...自分達はオムエンの難民キャンプで暮らしている者なのですが...先日いきなり魔物の襲撃を受けてしまいまして...」
「いままでは襲ってくる気配すら無かったんです...しかしどこかの火事場泥棒でしょうか...あの連中が魔物達に攻撃を受けていたので救助をしたのです...」
雑兵「それでその火事場泥棒諸共キャンプを襲われたと...ちょっと待ってろ」トコトコ
雑兵「絶対うちの守備隊のせいだろこれ」ヒソヒソ
会計伍長「俺もそう思う...しかし俺らだけで対処なんか出来ないぜ...?」ヒソヒソ
396
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/17(月) 00:41:26 ID:NbnMXM7w
雑兵「出来ないけどさぁ...」
会計伍長「何とかして帰ってもらえ、面倒ごとは嫌いだ」
雑兵「俺だって嫌いだよ、でもなぁ...原因はうちだぜ?」
会計伍長「そうだけど...」
雑兵「隣の国が滅んのは俺らのせいじゃねえから難民追い返しても正直文句は言わねぇと思うが、難民キャンプが襲われたのはほぼほぼうちのせいだろ」
会計伍長「う〜ん」
雑兵「黙って通してさ、しらばっくれようぜ?女子供も載ってるんだし追い返しちまっ死にでもしたらクッソ後味悪いぞ」
397
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/17(月) 23:13:06 ID:NbnMXM7w
会計伍長「くっそ...今回だけだぞ」
雑兵「恩にきる、おい、そこの」
「は、はい...」
雑兵「黙って通れ、何も言わず、振り返らずに黙って通れ」
「は、はい...!」
「ありがとうございます...ありがとうございます...」
雑兵「早く行けこんちくしょうが」
会計伍長「しーらね」
雑兵「あとはあいつらがしらばっくれて何言われても俺らのことを口に出さにゃええがなぁ」
398
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/19(水) 23:19:24 ID:PqtQAMkU
会計伍長「我関せずの方かと思ったが、なかなか情に弱い男だな」
雑兵「いや、お前フィッハーの惨状見てみろよ、そりゃ情けも掛けたくなるわってレベルだぜ」
会計伍長「あぁ、噂でしか聞いたことないがな...って、オイ、オムエンの方見てみろよ」
雑兵「うわ、千客万来だなオイ」
オムエンからは呆れ返る程の馬車がビギニング王国へ向かっており、その車列は蛇のように伸び切っていた。
雑兵「一体亡国のどこからこんなに人間が来るんだよ」
会計伍長「ウッソだろ...」
399
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/20(木) 23:30:27 ID:CyR5Lzsw
雑兵「おーい止まれ、何事だ」
「へぇ、自分らは難民キャンプで生活をしていたんですが...今まで相手にしてこなかった魔物達がいきなり襲いかかってきて...周りのキャンプの人たちもかき集めて脱出したとこなんです...」
雑兵「キャンプ?そんなのあるのか?」
会計伍長「いや...聞いたことがないな...」
雑兵(しかし見るからに胡散臭い集団だな...)
雑兵「わかった、ここいらは安全だからちょっと待っててくれ、伍長ちょっと」
400
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/21(金) 23:43:06 ID:YuJn2mCw
雑兵「ここいらとは別に、ビギニングからオムエンに通ずる道ってどのくらいあるんだ」
会計伍長「え?えーっと...一番デカイので、フィッハーからオムエンに行ける切り通しの街道かな...山を崩して作った街道だ、あんま使われてないけどな」
雑兵「なるほどな...伍長、さっき通した馬車はまだ近くに居るはずだ、少し追いかけて...そうだな...教祖様はどちらに?って聞いてくれ」
会計伍長「え?なんでだよ」
雑兵「頼む」
401
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/22(土) 03:02:01 ID:ITLzDF9.
雑兵「あ、あと、相手がそれ言って変な様子だったら...一目散に逃げてくれ」
会計伍長「あたりめぇだ、おまえ上手くやれよ」
雑兵「あぁ...」
雑兵「待たせたな」
「おや、もう一人は...」
雑兵「あぁ、麓の街で受け入れが可能かどうか聞きに行ってる、もう少し待っててくれるか?」
「なんだ、そういう事ですか、分かりました、待ちましょう」
402
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/23(日) 00:06:56 ID:BdT3A7MA
雑兵「しかし魔物に襲われるとは大変だな、前に通した人らも難民キャンプから逃げて来たみたいだが...あと何個くらいキャンプがあるんだ?」
「そうですね...知ってる限りだと4、5個は...」
雑兵「そうか...」
会計伍長「お、おい」
雑兵「戻ったか、どうだった?」ヒソヒホ
会計伍長「なんか教祖様って単語出したらすんげぇキチガイみたいになった...」ヒソヒソ
雑兵「連れて来れそうか?」
会計伍長「あ、あぁ、その場に留めてるから多分...」
雑兵「連れてきてくれ...さてと、教祖様は元気ですか?」
403
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/24(月) 00:04:41 ID:D2GTkcEs
「...はい、しかしラング村が堕ちてしまい、新たな拠点を探している最中です」
雑兵「オムエンは国土はまあまあですが...いかんせん魔物が」
「はい、廃村などを巡ったのですが既に魔物の巣窟で...信者もオムエンで多数失いました」
雑兵「教祖様はまだビギニングにおられるのですか?」
「はい、しかし最高幹部のラング様が姿を消してしまい...非常に心を病んでおります」
雑兵「やはり...ラング様は右腕のようなものでしたからね...」
404
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/24(月) 00:08:25 ID:D2GTkcEs
雑兵(ラングの野郎はこのキャラバンにゃいねえってことか...まぁいい後はこいつらをどう始末するかだな)
会計伍長「連れてきたぞ...」ヒソヒソ
雑兵「ありがとう、先ほどの...」
「同志だったのですね...気付かず申し訳ありません」
雑兵「いえ、こちらこそ...麓の街は警備がとても厳しい場所ですから街に入ったら最後でした」
「それは有難い...しかし我々はどこへ行くべきなのか...」
雑兵「暫くここへいて下さい、すこ調整すれば良い具合に町をとおれますから」
405
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/24(月) 00:11:30 ID:D2GTkcEs
会計伍長「こいつら知ってんのか?」
雑兵「あぁ、フィッハーから逃れたカルトの敗残兵共だ」
会計伍長「どうすんだよここに引き止めて」
雑兵「しかし街にゃ入れられねぇだろ...ここで足止めして、明日くる糧食の奴に上手いこと伝えるんだよ」
会計伍長「それまでどうする」
雑兵「野となれ山となれだ、上手い具合に話つけてやる」
会計伍長「頼むぜ...」
406
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/06/30(日) 01:58:51 ID:SR4h7ID2
雑兵「先程通した女子供しか乗ってない馬車は一体?」
「あぁ、我々のキャラバンの家族です、先に通して大丈夫かどうかを...」
雑兵「あぁなるほど...」
雑兵(女子供盾にして安全かどうか確かめてたんだな...あの人らが本当に信者かどうか確かめねえとな...)
会計伍長「来たぜ、さっき通した馬車だ」
雑兵「なぁ、少しだけここにいてくれ、何も話さなくていいから」
会計伍長「マジかよ...なんか策あるんだろうな」
雑兵「ねぇよ、あったらとっくに逃げてるよ」
会計伍長「そうかい...言っとくが逃げられそうだったら俺逃げるからな?」
雑兵「あぁ、そうしてくれ」
407
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/07/06(土) 15:22:51 ID:iETZYnsk
おつ
408
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/07/14(日) 23:33:05 ID:sQ7AvG0w
雑兵「おい、お前...」
「は、はい...」
雑兵「率直に聞くぞ、貴様はあの教団の手先か?」
「冗談じゃない...!俺らはあの教団に家族を...!」
雑兵「お前のキャンプは本当に魔物におそわれたのか?」
「あいつらだよ...!あいつらがいきなり来やがって...変な講釈を垂れて来やがったから追い返したら...夜中に...」
雑兵「このキャラバンに手先はいるか?いいか、正直に答えねぇと殺すぞ」
「いねぇ、ここの人らはみんな家族を殺された人たちだ...」
雑兵「信じるぞ...もし嘘だったら分かってんだろうな...?」
「あたりめぇだ...!」
雑兵「さぁて...ここに残ってるのは世捨て人だけってか...」
409
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/07/14(日) 23:37:25 ID:sQ7AvG0w
会計伍長「...」
「教祖様がきっと見守っててくれるさ、ここの砦にいる者たちが信者なのもお導きだ」
「良かった、ここを拠点にまた活動を再開できる...」
会計伍長(んのキチガイども...教団が壊滅してもまだ足掻くのか...ゴキブリみてぇだな)
410
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/07/29(月) 23:34:38 ID:5ye6Iyrs
雑兵(おう、首尾はどうだ)
会計伍長(首尾もクソもあるかってんだ...やつらここを拠点にする腹でいやがる...あの先のキャラバンは?)
雑兵(被害者だ、問題ねえさ、ありゃあ殺してた)
会計伍長(そ、そうかい...んで、どうすんだよこれから)
雑兵(いいか、あと少しで糧食を運搬しにくる奴らがくる、お前はそいつらにここのことを報告しろ、いいか?)
会計伍長(い、いいけど、お前は?)
雑兵(こいつらを見張っておく、さぁ行け!)
会計伍長(あ、あぁ...) ソロリソロリ...
411
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/07/29(月) 23:41:19 ID:5ye6Iyrs
ただの落ちこぼれが、こんな目にあうとは、人生は分からんもんだ、だが多分、この麓の村の人たちが不幸になって良いはずが無い。
教団に壊滅させられた村も、家族を殺された人をこれ以上増やせば、多分俺がこの世界に送られた意味がなくなる気がする、ただの雑兵だが、ここの拠点で食いとどめくたばるだけの役目は果たせるだろう。
雑兵「どうせ俺はどちらの世界でも死に損ないだ、死後の世界が得ならあいつらもろとも案内してやらねえとな...」
412
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/07/29(月) 23:45:20 ID:5ye6Iyrs
「おお...朝日が...!」
「こんな綺麗な朝日をまたゆっくりと拝めるとは...」
雑兵「なぁ、ちょっとこっちへ来て手伝ってくれないか?」
「いいでしょう、この拠点へ導いてくれた同志の手を煩わせる訳にはいきませんから」
雑兵「おうよ...」
「で、私はなにをすれば...」
雑兵「お前さん、家族はいるか?」
「か、家族ですか...?その様な縛りはとうに断ち切りました、あなたも...」
雑兵「そうかい」ドスッ...
「う″っ...な、なに
雑兵「ッフ」 ザシュッ...
413
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/07/29(月) 23:52:59 ID:5ye6Iyrs
雑兵「一人で運ぶにゃ辛いな...あの守備隊の連中何人か生かしとくべきだったか」ズルズル...
雑兵「よし、次だ」
どれだけ援軍が来るか分からない、俺が死ぬまでに何人処分できるだろうか...そんな考えが浮かんでは消えている、人を殺める事なんて前の世界では考えた事も無かった...だがこの世界では簡単に、作業的に行なっている、この世界に染められたのか、元の世界でも同じ様な事があれば俺も出来たのか...
雑兵「なぁ、ちょっと来てくれよ...」
「どうしました?」
雑兵「お前、家族は?」
「家族?何を言っているんですか、家族なんて...はェ...
雑兵「...」ズルズル...
414
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/14(水) 22:48:04 ID:IFUAR.q6
その頃
「いやーまさか飯運ぶだけの道で、勇者様ご一行に会えるとは」
勇者「結構な量じゃん、そんなに人いるの?」
「はあ、書類の員数では、ですがね...ここだけの話、何人かは任務そっちのけでオムエンに入って、破壊された町で金品漁ってますよ、まだ魔物がいるってのに...」
勇者「そっか〜、敵対する魔物殺しちゃえばオムエンもまだ使い道あるかもね」
エルフ「そうですね、手始めに最初の村から...あれ?」
415
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/14(水) 22:48:42 ID:IFUAR.q6
会計伍長「ッハア...ッハア...」
「あ、ありゃあ国境守備隊の伍長です、どうしたんだ?ついに魔物に?」
会計伍長「ま、魔物のほうがまだ知能があらぁ...カルトがオムエンから来やがった...」
「カルトってェと...フィッハーで壊滅したはずじゃ」
勇者「幹部連中と幾らかは逃がしちゃったんだ、まさか残党がフィッハーにいるとは...」
エルフ「生き残ったのは君だけ?」
会計伍長「いや、一人が足止めしてる...一回奴らとやり合った奴らしい...俺は飯を運搬する連中に援軍を...」
「っど、どうしましょう」
勇者「町へ戻って体調に報告して、この馬車使っていいから」
「っは、はい」
416
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/31(土) 00:23:02 ID:7f2zZM1k
会計伍長「はやくアイツのとこに戻らねぇ...と...」バタンッ...
エルフ「ちょっ、大丈夫?!」
勇者「気絶してる、暫く起きないだろうから木陰に寝かせとこ」
エルフ「はい」
_
__
417
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/08/31(土) 00:28:06 ID:7f2zZM1k
__
_
雑兵「っはぁ...!っはぁ...!」
「逃すな!!アイツだ!アイツがフィッハーにいた奴だ!」
「同志達の仇だ!!」
すこぶるヤバい、六人目を殺す瞬間に悲鳴をあげやがったもんだからバレてしまった...何をトチ狂ったのかオムエンの方へ逃亡してしまった、まったく地理が分からない。
雑兵「あーもう疲れた、無理だ!どこかに隠れよう...!」
守備隊の奴らが漁っていたであろう村に入った頃にはもう体力の限界が来ていた、会計伍長のやつうまく逃げられてたらいいが...
418
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/09/09(月) 00:05:41 ID:7n0VtSN2
雑兵「クッソ...しちめんどくせぇ...!」
急いで入った建物は二階建ての厩舎だった、ずいぶん前に食い荒らされたであろう家畜の死骸、ボウフラが沸いている水桶、あまり長居したくない環境であった。
雑兵「二階に隠れよう...こんなとこ見て回っても一人か二人だ...」
二階は農機具や酪農に使う器具が所狭しと置いてあった、だが金属部品は全て取り払われており、おそらくうちの守備隊がかすめ取って金に換えたのだろう。
雑兵「はぁ...伍長は大丈夫かなぁ...」
階級は上だったがこういう事はあまり慣れてない様子だった、まぁ俺も最近慣れたくらいだから仕方がない。
雑兵「...勇者とかがいてくれりゃあなぁ」
ガタンッ!
419
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/09/09(月) 00:10:18 ID:7n0VtSN2
雑兵「うおっ!何もんだ!」
「プギ-...」
雑兵「...豚?いや...ありゃあ...オークってやつか?」
オーク「プギィ-...」
雑兵「まだ子どもっぽいな...どうした?親とはぐれたのか?なんか食いもん...干し肉しかねぇ」
オーク「プギャッ!」
雑兵「お、食えるのか?じゃあ食えよ」
オーク「♪」
雑兵「ちっこいなぁ、何があったんだ...」
「この厩舎を見てこい!!」
420
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/09/09(月) 00:14:53 ID:7n0VtSN2
雑兵「ヤベッ...!」ッサ
ギィ... ギィ...
「出てこい異端者め...!同志を騙し殺した罪は重いぞ...!」
オーク「プギッ...」
雑兵「静かに...大丈夫だ」
雑兵(一人か...ここで殺すべきか...?いやしかし、ここで殺してしまって、やつら員数が合わなければこの村を重点的に探すか...)
「いないようだな...ここはいないぞ!」
雑兵「...ふぅ、危なかった...静かにしてて偉いぞ、あとで親んとこ送ってやるからな」ナデナデ
オーク「プギッ!」
421
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/09/12(木) 21:06:11 ID:vdeHBQPY
乙全裸待機
422
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/11/30(土) 22:42:53 ID:YJoDfn8g
雑兵「ちっこいなぁお前、どこから来たんだ?っても言葉分かんねえよな」
オーク 「?」
雑兵「出てみっか、もうちょっと静かにしててくれな」
オーク コクッ
_
__
423
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/11/30(土) 23:15:34 ID:YJoDfn8g
__
_
雑兵「...」コソ-
雑兵「い、嫌に静かだな...っ!?」
「た、助けてっ
オークジェネラル「...」ザシュッ!!
「あ...あぁ...」
雑兵「...父ちゃん?」
オーク 「プギッ♪」
雑兵「...」
オークジェネラル「グゥゥゥウ...」
「教祖様助けて下さい...」
ブシュッ!
「」
オークジェネラル「...」キョロキョロ
雑兵(ぜってぇチビ探してる...そっと置いて帰ろう)ソ-ッ...
オーク 「プギッ♪プギッ♪」
424
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/01(日) 00:13:01 ID:8XoKhjSA
雑兵「うおっ...!」
オークジェネラル「?!」
オーク「プギッ!」トテテ
雑兵「に、逃げ...」
オークジェネラル『待て...』
雑兵「えっ...」
オークジェネラル『貴公を追っていたこの者達は殺しても良かったのだろうか』
雑兵「そ、そんな事後確認されても、死んで当然の奴らだ、自覚なしで人に害しか持ってこねえとんでもねぇ奴らだよ」
425
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/01(日) 00:19:00 ID:8XoKhjSA
オークジェネラル『そうか...なら良い、見たところ貴公からは敵意は感じられない、しかも迷子であった我の息子を見つけ届けてくれた、感謝に耐えない』
雑兵「い、いや偶然だから別にいい、ところであんたは...」
オークジェネラル『失礼、紹介が遅れた、我はオークジェネラル、この国のオーク族を統べる者だ』
雑兵「この国ってえと、オムエンか...じゃあウチの人間が結構迷惑かけたと思うが...」
オークジェネラル『是非もない、皆骨のない奴らばかりだった』
雑兵「そ、そうかい、じゃあ俺はビギニングに戻る」
426
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/01(日) 03:55:03 ID:8XoKhjSA
オークジェネラル『達者で暮らせ、オムエンの地は人間にとっては辛い場所だろう』
雑兵「...聞けるなら聞きたいんだが、なんでお前らはオムエンを襲ったんだ?」
オークジェネラル『襲った、と言えば語弊がある、人間が戦争に負けたのだ』
雑兵「戦争...」
オークジェネラル『オムエンは永らく人間と我々、其方の言葉で言えばいわゆる異種族...両者は共存し互いを助け合って暮らしてきた、しかし前国王が死没し、お付きの大臣が実質的に政権を握ったのだが...我々に差別的な人間で徐々に生活を締め付けて来たのだ』
427
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/01(日) 04:01:35 ID:8XoKhjSA
雑兵「...」
オークジェネラル『そしてある日、ゴブリン族の一家が謂れのない罪を擦りつけられ、一家もろとも...そこから人間と我々は対立するようになった』
雑兵「そして戦争へ...か」
オークジェネラル『そうだ、戦局は我々に圧倒的有利で、敵対する人間を国外へ追いやった、しかし我等と共存を望む人間もいた、我々も同じだったが...次は我らが人間を迫害し始め...最後には皆国外へ出て行った』
雑兵「ふーん...」
オークジェネラル『我の立場ではなにも介入させる事が出来ない、また人間と暮らしたいものだが...』
雑兵「人間と...そう言えば...殿下まだプーだったよな...」
428
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/01(日) 22:14:39 ID:IsFVK7lA
雑兵「なぁ...物は相談なんだが...また人間と暮らしてみねぇか?」
オークジェネラル『人間と共存?いや...そちら側が認めぬだろう』
雑兵「いるんだよ、こっちの大陸で居場所が欲しい奴がよ、話だけでも聞いてみねえか?」
オークジェネラル『うーむ...そうだな、″オーク族としては″賛成しよう』
雑兵「ってぇことは他の族は...」
オークジェネラル『遺恨は根深いのだ、思っているよりもな』
雑兵「そうか...分かった、なんとかしてみるよ」
オークジェネラル『あぁ、次会うときは共に生きる者同士の話をしよう』
_
__
429
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/03(火) 22:11:52 ID:vvZBbDb6
__
_
国境警備隊陣地
勇者「誰もいない...」
エルフ「勇者様!死体です!」
勇者「あ...カルトの奴らじゃん、こんな人数誰がやったんだろ」
エルフ「我が軍の警備兵も見当たりませんね...全滅か或いは逃亡か...?」
勇者「さっきの伍長が言ってた、一人残ってるってのが気になるんだよね、恐らくこのカルトを殺した奴だと思うんだ」
430
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/03(火) 22:17:14 ID:vvZBbDb6
エルフ「物陰に死体...隠れて殺してたってことは、バレて逃亡した可能性もありますね」
勇者「オムエン側に逃げちゃったのかなぁ...ん?」
雑兵「つっかれたぁマジで...つーかよう考えりゃおれ殿下に会える機会もうねぇし、あーもうダメだダメ、二度とよらんあんな国...あ」
エルフ「うっそ、生きてた...」
勇者「ここにいたんだね」
雑兵「あ〜...何しに来たの?」
431
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/07(土) 22:51:22 ID:2KcF5zTE
勇者「殿下の次の安住の地をね、もうあっちには戻れないでしょ」
エルフ「それでオムエンへってこと...魔物なんか倒しちゃいいし」
雑兵「あーあいつのね...」
勇者「でも魔物がいるんでしょ?だから先に駆除しておいて...」
雑兵「魔物...あぁ、いや、倒さなくていいんじゃないか?うん」
エルフ「え?」
432
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/07(土) 23:28:33 ID:2KcF5zTE
雑兵「うん、いい奴もいたしなぁ魔物」
勇者「ど、どんな体験したのここで」
雑兵「敵対する魔物もそりゃいるが、全員がそうでは無いからなぁ、後からでもいいんじゃないかな、そういうの」
勇者「いや良いわけないでしょ...てかボロボロじゃん、大丈夫?」
雑兵「ん?あぁ、ちょっとカルトの連中に追われてな、オムエンへ逃げちまってさぁ、カルト連中は話のわかる魔物が倒してくれたんだ」
433
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/08(日) 23:39:55 ID:yrumHM82
雑兵「ところで伍長いなかったか?あいつが街へ増援求めたと思うんだが」
勇者「あぁ、伍長なら途中の木陰で休ませてるよ、倒れちゃってさ」
雑兵「そっか...良かった」
エルフ「これからどうするの?確実なのは国境警備隊壊滅状態だよ?まぁ脱走とかでいなくなってるのは知ってるけど」
雑兵「どうするってもなぁ、俺の立場じゃ与えられた場所に行くしかねぇんだよなぁ」
勇者「うーん...そうだなぁ、姉ちゃんに掛け合ってみるかぁ」
雑兵「来たがる奴いんのか?こんなところ」
勇者「連れてくるしかないでしょ」
434
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/08(日) 23:41:57 ID:yrumHM82
雑兵「まぁそうだけど」
勇者「しゃーない、一旦帰るね、オムエンについての報告は...」
エルフ「共存を求めてる魔族も居るから前向きな報告でいきましょうよ」
勇者「そうだね、じゃあね雑兵」
雑兵「俺一人かよ」
_
__
435
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/08(日) 23:51:27 ID:yrumHM82
__
_
女騎士「しかし国境警備隊にいたのかあいつ」
勇者「うん、まーた面倒ごと背負い込んでたよ」
女騎士「その件については報告書で確認した...まったく天賦の才だな...」
勇者「いつまでもカルトに付き纏われてちゃあ休まらないよねぇ...」
女騎士「国境警備隊については人員がいなくちゃ勤まらない、そうだなぁ...」
_
__
436
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/08(日) 23:57:19 ID:yrumHM82
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_
ビギニング刑場
副団長「団長、こんなとこへ来てどうするんですか?」
女騎士「ちょっとイキの良い人間をね...いた」
軍曹「これはこれは騎士団長殿...いつ以来でしたかな...」
女騎士「やぁ、元気そうで何よりだ、看守を呼んでくれ」
副団長「はい」
軍曹「何しにきた、俺をこの手で殺しに来たのか」
女騎士「キミを檻に入れたのは私だからね、出すのも私だと思っただけだよ」
437
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/09(月) 00:02:12 ID:Vk5VyAkE
女騎士「それに...私は間違っていない、君は休戦による顔色伺いの為だと思っているが...」
軍曹「うるせぇ偽善者、今もアマちゃんなんだなおめぇは...そうだなぁ檻に入れられた原因に思い当たる節、あとは...」
女騎士「...やめろ」
軍曹「おいおいそんなもう生娘でもねえだろ、おっと未遂だったからまだ生娘か、体はだけどな」
女騎士「...」
_
__
438
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/09(月) 00:07:41 ID:Vk5VyAkE
__
_
数年前
「頼む...!降参するから!」
軍曹「降参?おーい聞いたかみんな、散々俺らのシマで好き勝手やって、降参だとよ」
「殺そうぜ兄貴!」
軍曹「まあ待て、おい、お前の仲間は今どこに居る」
「し、知らねぇ!ホントだ!みんな逃げちまった!」
軍曹「そうかぁ...連れてけ」
「了解!」
「待てっ!俺は何もしちゃいなぁ!ホントだ!!!」
439
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/09(月) 00:32:44 ID:Vk5VyAkE
軍曹「さて...今回はどんな公開処刑を」
女騎士「おい、何をしているんだ?」
「ゲッ...騎士団長...」
軍曹「これは騎士団長、村を襲った賊を捕まえました、行った蛮行を鑑みるに処刑が妥当だと思いますので」
女騎士「そんなことお前が決めることじゃないだろう、然るべき裁判を経てやる事じゃないのか?少なくともウチの軍隊じゃそうしてるが」
軍曹「ッチ...おい、捕虜にしとけ」
「りょ、了解です兄貴...」
440
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/09(月) 00:44:17 ID:Vk5VyAkE
軍曹「かわんねぇなお前」
女騎士「悪い物は悪い」
軍曹「ったく...なんて同期だ...」
軍曹、部隊は違うが、彼とは入隊時期が被っており、一度だけ行われた新隊員懇親会でウマが合い、よく話す間柄になった、入隊後はかなりの好成績を叩き出しいち早く軍曹へ承認したが今の階級が気に入っているのかこれ以上階級を上げるつもりは無いらしい。
女騎士「ダメだろ好き勝手したら、お前も今後が...」
軍曹「お、嬉しいねぇ、オレとの将来心配してくれてんの?」
女騎士「う、うるさい!」
開戦直前、彼に告白された、彼は遊び人でこなれた感じの告白だったが...私にははじめての告白であった。
441
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/09(月) 23:17:47 ID:Vk5VyAkE
女騎士「まったく...大事になる前に誰が処理してると思っているんだか、そう言う事案は、普通騎士団長なんかにお伺いを立てずそのまま上に流すべきなのに...」
軍曹「そのお陰でオレが助かってんのね、苦労かけるな」
女騎士「ま、まぁ知ってくれたのなら次からは...」
昔の私はまだ甘かった、完全に惚れた訳ではない、ただ今の関係が心地良かったのだ。
幼少時代、その時は訳も分からず妹と森林に突っ立ていた、老人の誘いで街まで出たが、金など当然持ち合わせておらず、右も左も分からない状態だった、スラムに妹と暮らし始め、奴隷商に攫われる直前、前騎士団長に私達は拾われた。
442
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/09(月) 23:23:25 ID:Vk5VyAkE
不幸中の幸いであった、勉学を受けさせて貰い、自由な道を歩めと言われた私と妹は、助けてくれた騎士団長に報いる為、並々ならぬ努力を続け、私は騎士団へ、妹は英雄の道へと進んでいった。
女騎士「しかし未だに信用できないなぁ、本当に同郷の人間なのか?」
軍曹「あぁ...お前も、妹さんも大規模な土砂災害で死んだんだよ、俺は警察でな、災害の後に被災地に立ち入った時に事故で死んじまったんだ、だから分かるんだ」
女騎士「そうか...まぁ今はお前だけしか信用出来ないから信じてやろうかな?」
軍曹「嬉しい事言ってくれるじゃねぇの」
とても心地が良い関係だった...終戦の間際までは。
443
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/09(月) 23:33:07 ID:Vk5VyAkE
「...」
「何もしてぇっつうの...」
「神様...」
軍曹「これで全員か?」
「へい、村を襲った奴らです、間違いありやせん」
軍曹「そうか...」チラッ...
軍曹(いや、誰を待ってんだ俺は...さっさとやっちまおう)
軍曹「さぁてと、村人の証言によると家々の金品を盗み...女子供に手ェかけたそうじゃねえか...」
「お、お前らだってやってんだろ!」
「先に戦争吹っかけたのはそっちじゃねえかよ!」
軍曹「俺の知ったことかタコ、俺様のシマで暴れてんのが気に入らねぇって事だよ」
444
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/14(土) 22:56:20 ID:84U0Eg2E
「閣下、こちらが襲われた村です」
「うむ...敵も酷い事をする...ん?」
軍曹「さぁておめぇで最後の一人だな」
「ヒィィィ...!」
「兄貴、さっさと殺しちまいやしょうや」
「きっ貴様ら!!閣下の前でなにを!!?」
「うえっ?や、ヤベェ!」
軍曹「あぁ、閣下殿...今更どうしたんですか??」
「お...おまえ...!捕虜の虐殺は...!!」
445
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/14(土) 23:01:41 ID:84U0Eg2E
軍曹「いいでしょう、こいつらも村を襲って...」
「て、てめぇなぁ!戦争ってのはルールがあるんだよ!!こっちが勝ってもルール違反したらな!!国民がついていかねぇんだよ!!」
「落ち着きたまえ、うーん...しかしなんて事を...」
軍曹「他の部隊もやってる事でしょう」
「...それは知っている、だがな、今回はタイミングが悪過ぎたな...」
「時間的にももう間に合いません...」
軍曹「え?」
女騎士「こちらが休戦調印会場です」
「うむ」
「しかし今回の戦...敵ながら天晴れな...」
446
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/14(土) 23:07:25 ID:84U0Eg2E
軍曹「お、女騎士...」
「...騎士団長!こちらへ!」
女騎士「え?...うわっ...」
「ん?あ、あの死体は我が軍の兵士...?」
「どういう事だ...」
女騎士「貴様...!なんで今...!」
軍曹「ちょ、ちょっと...」
「騎士団長、こいつ貴様の知り合いだったな?このタイミングでこの行いはどういう事なのか教えてく」
447
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/14(土) 23:17:44 ID:84U0Eg2E
女騎士「閣下...これは私に責任が...」
「...前騎士団長に恩義がある...君もよく頑張ってくれていた、よし責任は全てこいつらにとらせる、参謀長」
「はっ、軍曹については終身刑...部下については...まぁ処刑でいいでしょう」
「うむ、そうしよう...敵方にもそれで話をつけさせよう、兵卒の分際で面倒な事をしやがって...」
女騎士「ちょ、ちょっと」
軍曹「お、おい待てって!こいつは関係ねぇ!」
「しょ、処刑...」
「決まった事だこの腐れが、おいこいつを縛ってくれ、敵に見せつけて殺すからな」
「了解です、こっち来いカス」
「ま、待ってくれ!」
448
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/15(日) 00:39:17 ID:E4KkUhMg
「あ、兄貴助けてくれよ!」
軍曹「お、おい!止めてくれ!」
女騎士「...もう無理だ、お前だけでも...」
軍曹「え...」
「誠に申し訳ありませんでした、これで手打ちに...」
「いやはや驚いた...」
_
__
449
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/15(日) 01:53:15 ID:E4KkUhMg
__
_
軍曹(まぁ考えてみりゃあ逆恨みも甚だしい話だな)
軍曹「ところで騎士団長さんよ、俺ぁどこに連れてかれるんだ」
女騎士「国境だよ、国境警備隊の員数が不足しててね、君が現地で警備隊の長として現場を任せようと思ってるんだ」
軍曹「どういう風の吹き回しだてめぇ...今まで音沙汰無しで...前も刑場に来たと思ったらあの若いのを...」
女騎士「あの若いのもいるぞ、それに音沙汰無しなんてなんの立場で言っているんだ」
450
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/15(日) 01:54:07 ID:E4KkUhMg
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軍曹(まぁ考えてみりゃあ逆恨みも甚だしい話だな)
軍曹「ところで騎士団長さんよ、俺ぁどこに連れてかれるんだ」
女騎士「国境だよ、国境警備隊の員数が不足しててね、君が現地で警備隊の長として現場を任せようと思ってるんだ」
軍曹「どういう風の吹き回しだてめぇ...今まで音沙汰無しで...前も刑場に来たと思ったらあの若いのを...」
女騎士「あの若いのもいるぞ、それに音沙汰無しなんてなんの立場で言っているんだ」
451
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/15(日) 02:10:36 ID:E4KkUhMg
軍曹「なぁ昔の誼だ、そんなつっけんどんにならなくても....」
女騎士「それもそうだな...昔の話だものな」
軍曹「...ッチ」
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452
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/15(日) 21:40:56 ID:E4KkUhMg
__
_
雑兵「おい、頼むからこのタイミングで面倒事はやめろ」
「頼む!見逃してくれ!三度も食い逃げしちまったら流石に殺されちまうよ!」
雑兵「見逃すもクソも勝手におめえが絡んできたんだろうが!!」
「だっだって勝手に越境したら!」
雑兵「つーかオムエン逃げるよか首都にでもいけよ、その方が逃げられるだろうが」
「...それもそうだった」
453
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/15(日) 23:53:00 ID:E4KkUhMg
雑兵「分かったんならさっさとうせろ」
「わあったよ、しかしいつにも増して静かだな、警備兵の連中どこに行ったんだ」
雑兵「俺が知るかよ、まぁ伍長は暫く休み貰ってる」
「休暇?珍しいねぇ」
雑兵「じゃあ分かったんならさっさと...ん?」
454
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/16(月) 00:15:58 ID:d1RiDFbg
勇者「おーい」
雑兵「あれ?どうしたんだ?首都に帰ったんじゃ...」
勇者「いんや、ずっと麓の村で村長さんと話ししてたんだ、今日帰ろうと思って
455
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/26(木) 02:42:48 ID:uPS1GuSo
雑兵「あ〜そうなのか...」
勇者「でね、明日増員来るから出迎えお願いね?」
雑兵「増員...」
この期に及んでの増員、やっぱ上の人間の考えは分からない、しかし軍隊とは
そういう組織なのかもしれない。
雑兵「そうか、また賑やかになるな、いつまで続くんだろな」
勇者「...雑兵は動く気はないの?」
456
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/26(木) 02:54:35 ID:uPS1GuSo
雑兵「動く?...っても居場所はないと思うけど」
勇者「居場所なんて...みんな雑兵が帰ってくるの待っている人も...」
雑兵「あぁ...今の俺には、それだけで十分だ、みんなが俺の事を知っていてくれるだけで」
勇者「なーに達観してんの...死ぬわけじゃ無いんだから」
雑兵「はは...確かに」
確かに死ぬわけでは無いが、ここへ飛ばされたと言う事はそう言うことだ、駐屯地にも分屯地にも居てはいけない、ここの軍隊
の流儀は知らないが、地の果てにあのタイミングで飛ばされたってことは、まぁ俺でも露骨にわかる。
勇者「何だったら...その...首都に来ても...」
雑兵「ありがとう、でもうちょっとここでやってみるよ」
457
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/27(金) 04:18:22 ID:0S865AKo
勇者「こんなとこじゃ...」
雑兵「ここもここで楽しかったよ、伍長にも会えて、あいつ帰ってきて俺がいなかったら多分泣くだろうし」
勇者「伍長...あぁ、彼なら退職するって、お金も溜まって、故郷にある恋人と店出すんだって」
雑兵「おい待て初耳だぞ」
勇者「その程度の付き合いだったって事じゃない?」
雑兵「ここの守備隊へ来て過去一泣きそうなんだが...」
勇者(まぁ、雑兵の事心配して、退職伸ばして戻ろうか悩んでたけど...大切な約束があるんならそっちが優先だし)
勇者「だから雑兵も居場所なんか気にせず、ここに拘らなくて良いんだよ?分屯地だって...首都にだって雑兵の帰りを待ってる人がいるんだもん」
雑兵「...そうか、そうだな...伍長の奴をぶん殴らねぇと気が済まねぇが、もう無理そうだな」
458
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/27(金) 04:23:43 ID:0S865AKo
雑兵「ありがとう勇者、でも無理に帰すなんて事はやめてくれよ、俺が惨めったらしいから」
勇者「知ってるよ、そんな一朝一夕で帰せる訳ないじゃん、だから...だからもう少しだけここにいてね...?」
雑兵「お、おう...?」
そんないきなり潤った目と、湿った声色で言わないで欲しい、ほぼこの守備隊で禁欲生活を強いられた俺にはとても効く。
雑兵「なぁ帰れたら、もし帰れたらたくさん金あると思うからさ、次は首都で...」
勇者「...うん、約束ね、破ったらサイテーだからね...?」
雑兵「もうサイテーな場所にいるから大丈夫だよ」
勇者「バカ...じゃあ行くね?明日になったらお願い」
雑兵「うん、じゃあな」
459
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/27(金) 04:53:40 ID:0S865AKo
雑兵「...あいてぇなぁみんなに」
_
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460
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/27(金) 06:32:04 ID:0S865AKo
__
_
軍曹「ふぁぁぁ...なぁ、そろそろ着いても良い頃合だろ、まだか?」
女騎士「もう少しで守備隊の詰所と陣地に着く、お前が今のところ最高責任者になるんだから気を引き締めろ」
女騎士(雑兵のやつ、元気にしてるかな...勇者は陣地へ行ったから話はしただろうな...)
軍曹「なぁ、そこにいるのは俺一人って事は無いよなさすがに」
女騎士「あぁ、雑兵という隊員がいる、当初二人だが後からまた増員が来る」
軍曹「雑兵...なぁまさかそいつって、お前が刑場から...」
女騎士「そうだ、私が助けた」
軍曹「っ...な、何もんだそいつ」
461
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/27(金) 06:35:50 ID:0S865AKo
女騎士「そうだな...ゲス...思いやりのかけら無し...体力も無し...」
軍曹「な、なーんだ...大した奴じゃ...」
女騎士「でも、思いやりは無いが、骨の髄まで人の為に動く奴だな、ほんと、脊髄反射で動いてるようなもんだなアレは」
軍曹「...」
女騎士「最初見た時、アイツはお前なんかとは比べ物にならな位くらい人間味に欠けてたと感じたが...私の目が節穴だったのかな」
軍曹「...そうかよ」
_
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462
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/27(金) 06:45:24 ID:0S865AKo
__
_
雑兵「...哨所の陣地はこんなもんだな...隠れるようなとこでもねぇし...」
雑兵「結構サマになったなぁ」
一週間、ほぼほぼ一人陣地に取り残された俺は損壊した陣地の修復に当てていた、と言っても哨所の補修、バリケードの有刺鉄線貼り直し、矢盾に木をくくり付け強度を強めたに過ぎないがまぁマシにはなったと思う。
次の連中が大切に扱うとは微塵も思わないが見栄えも大事だ。
463
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/27(金) 07:08:28 ID:0S865AKo
ガラガラガラガラ...
雑兵「お、馬車の音...」
女騎士「っよ」
軍曹「ほんっとに一人じゃねぇか...」
雑兵「ん?なんで女騎士が送り迎えなんかしてんだ?」
軍曹「へぇ...随分と馴れ馴れし女騎士「あぁ、人員も不足してるし、騎士団や他部隊の皆になるべく早く休暇を与えたくてな」
雑兵「女騎士は休暇取らないのか?」
女騎士「いや、これが終われば休暇だよ」
雑兵「そっか、確かに最近忙しかったもんな」
464
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/27(金) 07:11:41 ID:0S865AKo
女騎士「雑兵ほどじゃないよ...しかし、やはり聞いた通り員数が驚く程合ってないな」
雑兵「つーか、員数自体ナンボいる事になったんだ?」
女騎士「ざっと50人から60人いれば充足率90%ってとこかな?」
雑兵「ははっ、充足率もクソもねぇな」
軍曹「ちょちょちょ、ちょっと良いか?」
雑兵「ん?この人は?」
女騎士「新入りだよ、っても雑兵よりも階級は上だからな?」
465
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/27(金) 17:08:02 ID:0S865AKo
軍曹「な、なんか仲が良すぎじゃね?」
雑兵「仲は良かねえよ、まぁ入隊のきっかけではあるが」
女騎士「少なくとも友の間柄ではないな」
軍曹「っそ、そうか...」
何だこいつ、刑場で会っただけだからあんま印象無かったが...結構ヤキモチ焼きなんだな。
雑兵「あっちが詰所だ、荷物は勝手に入れといてくれ」
軍曹「お、おう...」
雑兵「あいつお前の事...」
女騎士「何も言うな...」
466
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/27(金) 17:55:41 ID:0S865AKo
雑兵「まぁ、お前に好意寄せてる人間見当たらねえなぁって不思議に思ってたが...っても俺の
周りの人間しか見てねえけど」
女騎士「まぁ最初はたくさんいたよ、それこそ騎士団に入りたての時期は...何にも興味が湧かなかったが...
まぁあいつは、なんかウマがあっただけだな...今思えば」
雑兵「ふーん、ってェ事は最初は女騎士もなぁ...ッププ」
女騎士「な、なにが言いたいんだ...」
雑兵「最初は女の子してたって...いやすみません何でもないです」
467
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/27(金) 18:06:46 ID:0S865AKo
女騎士「ふんっ...」
雑兵「...まぁお前もそろそろ身ぃ固めてもいい歳だろ」
女騎士「っはは、さすがにまだ早い気がするなぁ...まだ二十歳だぞ」
雑兵「二十歳で苦労背負い込みすぎだろ」
女騎士「お前が言うな、背負い込んでは無いが巻き込まれすぎだ」
軍曹「...ッチ」
468
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/12/28(土) 02:45:13 ID:TJycpoQs
雑兵「いつ帰るんだ?」
女騎士「そうだな、明日の朝には出よう」
雑兵「そっか、寝るとこは詰所ン中だ、外来はねえし...女性用のベッドはねえから...小奇麗なのを...」
女騎士「寝藁があれば十分だよ、ありがとう」
雑兵「...一人は疲れたなぁ」
軍曹「なぁ...ここいいか?」
雑兵「あぁ」
軍曹「いやなトコだなここは...何もありゃしねえ」
469
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/02/21(金) 23:38:50 ID:nzRQFspQ
おもしろい
一気読みした
続き待っとるよ
470
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/08(日) 23:58:17 ID:/Y65tpYg
雑兵「そう、ナーンにもねぇくせに次から次へ人が来る...あんたの方が先輩だから分かるでしょ」
軍曹「わ、わぁってる、最果てに来ちまったことはな...」
雑兵「...あんた女騎士好きだろ?」
軍曹「...昔は好きだったな、だがもうあいつの気持ちも分かっちまった...」
雑兵「ふーん、ほっといてたらありゃ婚期逃しそうだぞ」
軍曹「じゃあお前が貰えよ」
雑兵「いやそこまで知り合ってはねぇよ」
事実俺は、女騎士の事は騎士団長であり、勇者の姉であること以外は殆ど何も知らない。
471
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/09(月) 00:04:00 ID:RpgB10rE
雑兵「しかしあいつの気持ちって、なんだよ?」
軍曹「なんつーか...恋だの生涯添い遂げるとか...なんな感じの事情は興味が湧いてねぇだつう感じだな、今のあいつは」
雑兵「そうか、そりゃ難儀だな」
軍曹「それに、俺はあいつに頼り過ぎた...あいつの苦労にあぐらかいて好き勝手やってたからな...」
この軍曹という男、話を聞く限りは昔はかなりのやり手だったらしい...まぁ見る影もないが。
雑兵「ま、新しい恋でも見つければ良いんじゃねぇの?女騎士はもう言うなれば天上人みてぇな存在だ」
軍曹「そうだな...なんかお前と仲良い感じでいるの見て嫉妬した俺がバカみてぇだな」
雑兵「だから仲良くねえって」
_
__
472
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/09(月) 23:38:51 ID:blTIc282
__
_
雑兵「なーんて事言ってたけど、付き合ってはなかったんだな、ちょっと意外なんだけど」
女騎士「まぁ...昔は少なからずとも嫌ってはいなかった、それだけのことだな」
雑兵「そっかぁ、勿体ねぇな、再会したなら俺だったら運命感じるけど」
女騎士「再会というかだな...まぁもう夢ばかりも見ていられないんだ」
雑兵「そんなもんかぁ、そ言えば明日からここの人員増えるんだって?軍曹みてぇな札付きっぽい奴とか連れてきたらそれこそ前の隊との二の舞だと思うが」
女騎士「そう思うだろうが、ここに隊を置くのはもう国境警備だけじゃなくなったんだ、オムエンに赴き新たな政府を作る」
雑兵「...まさか殿下か?」
女騎士「あぁ、独り立ちという事だな」
473
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/14(土) 15:31:47 ID:f7iVAnpo
おつ
474
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/18(水) 22:14:33 ID:u1NoYCpg
雑兵「いつまでも置いとけないって感じか」
女騎士「あぁ、まかり間違っても一国の王子...プラニス皇国が例え滅んでいたとしても直系の血族が残っていれば、おいそれと無碍に出来ない」
雑兵「ストレートに言やぁ邪魔ってか」
女騎士「あぁ、王国の大臣共としてはって感じだな、私個人では子供1人をどうにも出来ない訳が無いと思うんだが...いかんせん頭が固いやら面倒ごとは押し付けるわで...」
雑兵「そうか...苦労してんだな」
女騎士「あぁ...今までに無い仕事だ、疲れたよ」
雑兵「そりゃ申し訳ない事したな...俺がそもそもの面倒ごと持って来ちまった」
475
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/18(水) 22:17:46 ID:u1NoYCpg
女騎士「あぁ、お前の責任だ、どうあがいても首都に帰らせ、迷惑をかけた人たちに奉公して貰うつもりだ」
雑兵「はは...そ、そんなんで帰りたくはねぇな...」
女騎士「冗談だ...しかしお前はここにいるには勿体ない位みんなから心配されてる、その点についてもお前の処遇を考慮しないとな」
雑兵「なんかするつもりかよ」
女騎士「ま、それは無事お前が帰ってこれた時のお楽しみってことだ」
_
__
476
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/18(水) 22:44:21 ID:u1NoYCpg
__
_
雑兵(そんなこんなで四日ほど経ちましたが)
「おーい、後方陣地にバリスタ設置しとけ!」
「ここの石弓隊の壕は浅すぎる、もう少し掘るんだ!」
「了解!」
雑兵「一気に増えたなんてレベルじゃねぇぞ」
軍曹「ここ数日でこの国境警備隊の戦力は一個大隊レベルまで増えたぜ、ったく、何考えてんだか...」
雑兵「そう言うあんたは歩兵小隊の指揮官かよ、刑場からえれぇ栄典もあったもんだな」
軍曹「そりゃあぶち込まれる前は小隊指揮官を命ぜられてたからな、しかし何の因果か...」
ここ数日で国境警備隊はフィッハー分屯地以上に増えた、何より驚いたのが各隊の統制が取れており、勝手に街に降りる者やオムエンに入り空き巣泥棒をする者がにいないと言うことだ、いや、それが軍隊にとって当たり前だし、驚くのはおかしい事はわかるが、相当驚いたのも事実だ。
477
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/21(土) 03:30:01 ID:hq/HtDYo
雑兵(しかし女騎士の言ってた処遇ってのは一体なんだろう)
首都へ帰る事になるのか、はたまた別の駐屯地かどこかへ飛ばされるのか、どちらにせよまた人事参謀の連中がごちゃごちゃ言うに決まってる、檻の中に収監されているときチラッと人事参謀の連中の事を看守が呟いていた。
雑兵「どっか行くならもうそこが最後の土地にして欲しいもんだな...」
_
__
478
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/21(土) 03:45:41 ID:hq/HtDYo
__
_
人事参謀「イヤもう勘弁してくださいよ、雑兵って兵卒の名前出す度にですよ、上の連中に嫌な顔されてですねぇ」
女騎士「勘弁も何も、雑兵の異動を企んだのは君達の方だろう、人事発令通知での異動や、騒動が起こった後に何故か独立大隊から警備隊への職種変換...それもこれも君たちが行った事だ、私にとって君達の感情なんて関係ない」
人事参謀「い、いや、だって各部隊長からの評価も新兵の時分からみそっかすでですよ?独立大隊の隊長や...まぁ騎士団長である貴方からの評価は高めでしたけど...それでもですよ」
女騎士「部隊長評価で新兵の異動を決めていたのか?それはそれで問題だぞ」
人事参謀「あ...いやそう言う訳では無くてですね...部隊長の評価もありますけど...各部隊の充足率を鑑みた結果でですね...」
女騎士「そうだな、確かにフィッハーの分遣隊は1人姿を晦ましたから完全な編成では無かったな」
人事参謀「そうなんですよ、全て理由があって...」
女騎士「では何故彼の職種変換を?」
479
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/21(土) 03:55:35 ID:hq/HtDYo
人事参謀「そ、それは...オムエン国境警備隊の数がですね...」
女騎士「首都に国境警備隊の予備隊員は沢山いるじゃないか、それも過剰なまでにだ、何故雑兵だったんだ?」
人事参謀「そ、それは...」
女騎士「別に正直に答えてても咎めはしないさ、お前の立場の苦しみは分かるつもりだ」
人事参謀「...まぁ...厄介払いっすかね...」
女騎士「はぁ...やはりな...厄介と思う気持ちは分かる、だがな、一度変えた職種は元に戻すことは軍法上出来ない、君のその指示は、勝手な私情で兵を1人を最悪無駄死にさせる可能性があった行いだ、あまり言いたくはないが、過去に例がないレベルで最悪の人事だ」
人事参謀「...ッ」
女騎士「まぁ別にいい、その仕事の仕方ではその座は長くは持たないぞ、考えておけ」
人事参謀「...っは、はい」
480
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/21(土) 04:04:33 ID:hq/HtDYo
人事参謀「...っクソが...」
「だ、大丈夫ですか...?」
人事参謀「大丈夫な訳あるかよ...今までで死ぬ程最悪な気分だ...どうすりゃいい...」
「騎士団長の話だと、雑兵って兵卒を首都の警備隊へ異動させて欲しいと...別に戻して丸く収まるなら...」
人事参謀「馬鹿野郎ちったぁ考えてみろ、俺ら人事の手で追い出した奴をだな、俺ら人事の手で戻せって言ってんだあのアマ...」
「...あぁそっか、騒動後の短期間で職種変換から異動...そしてまた異動...」
人事参謀「厄介だから異動させただけだ...普通の部隊長連中になら咎められることは無かったが...騎士団長直々に咎められた」
「...詰んでませんかこれ、異動させなければ騎士団長が上に報告するかもしれませんし...異動させれば上から短期間での異動はどう言う事かと問われますし...」
481
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/22(日) 22:51:47 ID:4MQgDR0E
人事参謀「騎士団長が上に報告か...わっかんねぇ、上の人間共が厄介払いで出した奴だぞ...それを上の人間が戻せって...」
「...戻しましょうや、もう騎士団長の胸借りるしかねぇっすよ」
人事参謀「はぁ...職変はもう出来ねぇ...そんで人を欲しがってる警備隊かぁ...」
「強襲警備団なんかどうです?騎士団直轄の部隊だから騎士団長の下におけるし、最近は定年退職や依願退職で充足率も減ってます」
人事参謀「なるほど、厄介者をすぐそこに置かせりゃあ、嫌でも目につくってか...そりゃ良いかもな」
「はい、それで騎士団長が辛抱たまらずこちらに異動の話を持ちかけてくれば...」
人事参謀「おめぇも存分食えねぇ奴だな、よし、おい学生、この書類を警備隊長に持ってってくれ」
_
__
482
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/22(日) 23:20:36 ID:4MQgDR0E
__
_
女騎士「雑兵が強襲警備団にですか?」
警備隊長「はい、先程人事部の方から書類が届きましてな、『本日付で一等兵 雑兵を国境警備隊オムエンから強襲警備団ビギニング へ異動を銘ずる』とありまして、強襲警備団はあなた方のお膝元ですから我々に書類を渡すのは畑違いでね」
女騎士「そうですか、人事の方には後で言っておきます」
警備隊長「いえ、ワシの方から言っておきます、まぁ今までの適当な仕事っぷりが招いたミスですな、然程重大なミスではありませんがね」
女騎士「っふふ、私だけじゃなく、警備隊長からもお灸を据えられる事態になるのは少々可哀想です」
警備隊長「はは、以前から目に余る仕事っぷりですじゃ、一言文句言ってもバチは当たりゃしますまい、では書類は渡しましたのでこれにて」
女騎士「ありがとうございます」
483
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/23(月) 00:38:01 ID:PbTQqQMI
女騎士(まぁ、お膝元に厄介者を配置させて、厄介事を大量に舞い込ませ、辛抱ならんと人事に泣き付かせる魂胆だったんだろうな...)
女騎士「っふ、お膝元に置かせると言う対応は正解だな」
_
__
484
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/23(月) 00:48:41 ID:PbTQqQMI
__
_
女騎士「強襲団長、次から隊員をよろしくお願いします」
団長「っへ、ようやく補充が来ると思いきや、フィッハーやオムエンで厄介事ばかり背負い込んでたあいつか、粗方騎士団長のお膝元においておきゃぁ疲れて人事に泣きつくって魂胆だったんだろうぜ」
女騎士「恐らくは、まぁ目に見える範囲に置く対応は正解だと思います」
強襲団長「次くる奴ぁ...名前見る限りだと、こりゃ同胞だな?いつの時代から来たか分かるんかい?」
女騎士「私と妹が死んで...多分少し経った未来からだと思いますが、あまりその手の話は聞いて無いので...」
強襲団長「そうかい、同胞は大事にしねぇとな、軍曹みてぇな輩を産みかねん、元警官の癖に外道に身を落としやがって」
女騎士「...」
強襲団長「ま、外道は俺も言えた事じゃねぇが...捕虜殺害はお前に軍曹が気を許し過ぎて起こった事件だ、今回は大丈夫だろうな」
女騎士「はい、線引きはちゃんとしました...それに雑兵はそんな事をする人間では無いと感じました」
強襲団長「そうか...会ったらゆっくり話をしてみよう」
485
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/23(月) 00:54:48 ID:PbTQqQMI
強襲団長...私がこの世界に来る十数年も前からら強襲警備団団長の職に着かれていた、私と妹は、この方から剣術や体術を教わり、今は姉妹共に団長を師匠と思っている。
私が生まれる何十年も前の戦争で命を落とし、気付いたらこの世界に来ていたそうだ。
強襲団長「ま、お前のお墨付きなら大丈夫だろうな、情報ありがとよ」
女騎士「はい、彼をよろしくお願いします」
_
__
486
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/23(月) 01:02:37 ID:PbTQqQMI
__
_
二週間後
雑兵「だからいきなりの異動はですね」
「知らねぇよ俺に文句言うな、お前を連れて来いって命令受けたから連れ去りに来ただけだ、さっさと馬車に乗れ」
雑兵「はぁ...やっと活気溢れてきたって思ったらもうお払い箱か」
オムエンの国境守備隊の増強により、麓の村では日用品や嗜好品の需要が増え、そろそろ新しい店がオープンするって噂を聞いた位に異動命令が下った。
雑兵(さらばオムエンよ、二度とこねぇぞくそったれ)
「早くしてくれよ」
雑兵「少しは感情に浸らせてくれよ」
軍曹「よう、異動するのか、どこの部隊だ?」
雑兵「軍曹、さぁて今回はどこ行くかてんで知らされて無いからなぁ、強襲警備団...ってとこらしいけど」
軍曹「強襲警備団といやぁ...騎士団直轄の部隊だぜ?首都に帰れるじゃねぇか」
雑兵「え??首都なの?」
487
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/24(火) 23:20:26 ID:ycHRcovs
軍曹「っへ、騎士団長がお前を引き抜いたんだろうよ、よかったな」
雑兵「首都かぁ...俺分屯地に帰りたかったんだけど...」
軍曹「クソ贅沢な野郎だな、さっさといっちまえ」
雑兵「わぁったよ、じゃあな」
軍曹「同じ世界から来たってのにこの違い、か...良心は最後まで捨てるもんじゃねぇんだな...」
_
__
488
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/24(火) 23:38:16 ID:ycHRcovs
__
_
雑兵「しかし強襲警備団ってなんなんすか?」
「あ〜、ハナッから説明するとだな、一口に警備隊って言っても、ウチの国にゃ種類があって、警備の心臓、つまりボスの部隊は国家警備隊、んでその直轄部隊には、駐屯地又は分屯地警備隊、まぁ憲兵みたいなもんだ、そしてお前のいた国境警備隊、歩兵の連中で成り立ってるが隊長は憲兵が多いな」
雑兵「隊長いなかったすけど」
「あそこは特殊過ぎたんだ例外だよ例外、んで強襲警備団ってのは、まぁカチコミしてくる憲兵って感じだな、だが普通の憲兵とは違って軍隊の規律を維持するのが仕事で無くて、国や国民に直接害を与える連中相手にカチコミをかますんだ」
雑兵「疑わしきは突っ込めってことすか」
「いやまぁ流石に裏どりや証拠を調べて打っ込むぜ」
雑兵「そっかぁ...なかなかエラいとこですね」
489
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/24(火) 23:44:47 ID:ycHRcovs
「で、強襲警備団の創設は国家警備隊だけども、部隊の編成替え等で、現在は騎士団直轄の部隊になっていますって感じだな」
雑兵「成る程...」
「隊員はそんな多くねぇけど、一人一人の剣術等々の練度は騎士団員と同等に高いぜ」
雑兵「うわぁ...嫌なとこいっちまうのかも」
「まぁ...がんばれってとこだな」
_
__
490
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/28(土) 13:57:59 ID:JsCjFC4Y
__
_
1945年 北支那方面
「米谷陣地通信途絶えました!」
「釜谷砲兵陣地通信途絶!」
強襲団長「米谷も釜谷も死んだか...」
「丸石の機関砲陣地からの緊急電です、援軍を求めています」
強襲団長「司令部陣地にも人の余裕がない、引けるものは今すぐ司令部に引かせるよう各陣地に」
「はい!」
本土からの連絡も途絶えた、師団長もその参謀連中も逃げた、今残っているのは何も知らされず、列車も来ない駅と、指揮官など誰もいない司令部を守らされている将兵達だ。
強襲団長「しかし露助の連中もいい塩梅できやがったなぁ」
491
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/28(土) 14:05:49 ID:JsCjFC4Y
「やはりロシアですか?」
強襲団長「モンゴルの向こう側から来る連中って言ったらロシアしかあるめぇ、よし、各陣地に伝達、只今から各陣地の指揮を石丸中尉が指揮する、戦局が芳しくないと判断すりゃ直ぐにでも我が陣地にも撤退するように」
「伝達します!」ッタッタッタ...
強襲団長「しかし列車も何も来ない駅に何の価値が...!」
ッポオォオオォ...
「列車...?援軍か?」
「いや...ありゃロシア方面からきてらぁ...」
強襲団長「双眼鏡かせ!」
「はい!」
強襲団長(ロシアの連中か?!それとも...)
492
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/28(土) 14:15:48 ID:JsCjFC4Y
強襲団長「ありゃ...ロシアじゃねぇ」
「じゃあ味方ですか?!」
強襲団長「いや...民間人を乗せた列車だ、民間の列車だ」
「民間?この先にまだ民間人が...」
我々より先に陣を構えていた味方が撤退と言い訳し見捨てた民間人、我が陣に迎え入れる余裕もない。
「止めますか?」
強襲団長「いや...進ませろ、俺らが殿部隊だ」
ッポォーー!!! ガッシャン ガッシャン シュ-...
強襲団長「...車長はどちらに」
「俺だよ、兵隊さん、あんた達も乗りな!もうロシア直ぐそこまで来とる!」
強襲団長「気遣い感謝します、しかし我々はこの陣地を放棄する訳にはいきませんので急いで移動してください」
493
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/28(土) 15:23:44 ID:JsCjFC4Y
「あんたら...もう戦争は負けてるのに気付かないのか!?無駄死にだ!」
強襲団長「無駄死ですか...私達はそうは思いませんがね」
「死に急いで...狂ってる...」
強襲団長「さぁ狂ってるでしょうな、でもね、あなた達民間人が一寸でも一尺でも日本に近付けられれば、それができれば我々の任務は完遂出来ます、それに見ればこの列車には子ども達も多く乗っている、この子たちが国に帰られれば...この果てに送られてきた甲斐があると言う物です」
「...」
「指揮官もこう仰っています、早く行きなさい」
「分かりました、ご武運を...」
494
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/28(土) 15:35:51 ID:JsCjFC4Y
ガッシャン... ガッシャン ガッシャン
「帰りたかったなぁ日本に」
強襲団長「...俺もだよ」
ブォン... ブォン ...
「歩哨より緊急電!!敵の斥候と接敵!!」
「唐川陣地より入電!ロケット砲による攻撃です!」
ッドン!! ドン!! ドンッ!!
強襲団長「あぁ、こっちにも聞こえるよ」
「敵の戦車と歩兵が台頭してこちらに向かってます!!凄い数です!!」
強襲団長「よし...死ぬ気で戦え!!!」
_
__
495
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/28(土) 15:40:30 ID:JsCjFC4Y
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「ア...ア...」
強襲団長「カヒュ-...カヒュッ」
『ここのヤポンスキー共は手強かった』
『まさかこんな陣地で自走砲が5両も破壊されるとは...この将校生きてるぞ』
『殺せ、ヤポンスキーは皆殺しとの命令だ』
強襲団長「...っ」 カチッ
『こ、こいつ!爆薬を...
ドォォォン...
_
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496
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/28(土) 15:57:01 ID:JsCjFC4Y
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_
「起きろ、首都についたぜ」
雑兵「んがっ...」
「強襲警備団は騎士団の修練場の中にある、強襲団長に挨拶でもしてこい」
雑兵「ああ...ありがとよ」
「いっとくが歴戦の古兵だからな団長は、あの騎士団長や勇者様を育て上げたお方だ、無礼のないようにな」
雑兵「了解ですっ...と」
497
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/28(土) 23:33:47 ID:JsCjFC4Y
ガチャ
雑兵「失礼します...」
強襲団長「おう来たか兄弟、まぁ座れや」
雑兵(うっわおっさんなのにゴツい)
強襲団長「女騎士から聞いたぜ、お前も日本からだろ?」
雑兵「はぁ...日本から来ました」
強襲団長「その人となりじゃ、俺よりも未来から来たってぇ感じだな、俺ん名前は石丸、石丸中尉と呼んでくれや」
雑兵「中尉ってのは今の階級なんすか?それとも...」
強襲団長「昔も今もって事だ、いつか教えてやるよ」
498
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/30(月) 15:12:53 ID:oN/QTdRk
強襲団長「ところでお前さん...この強襲警備団ってぇのは何をする所かちゃんと勉強してきたかな?」
雑兵「いえ全然、名前しか知らされずに連れてこられましたから
499
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/30(月) 15:23:24 ID:oN/QTdRk
強襲団長「ところでお前さん...この強襲警備団ってぇのは何をする所かちゃんと勉強してきたかな?」
雑兵「いえ全然、名前しか知らされずに連れてこられましたから、道中聞いた話だとカチコミ部隊としか」
強襲団長「そうかい、まぁ概ね間違ってはねぇさ、ただちゃんと分別をつけてぶっ込んでる、そこで、だ」
雑兵「?」
強襲団長「お前に人は殺せるか?」
雑兵「殺せるか否かって言ったら...まあ殺せはしますけど」
強襲団長「積極的にやりたいものではないって事だな」
雑兵「当たり前でしょう、狂人になった覚えは無いっすよ」
強襲団長「なった覚えはない...ねぇ、お前さんの書類に目を通すに...カルト教団を数人殺してるみてぇだが...ホントは何人殺した?」
雑兵「何人って...その書類に書いてある通り...」
強襲団長「あーすまん聞き方に言葉足らずがあったな、直接的だけじゃなくて...間接的に何人殺した?ってこと」
雑兵「間接的にって...」
雑兵(カルトのババアは直接殺した...間接的に...あ)
雑兵「オムエンの廃村漁ってた...奴らも...」
500
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/03/31(火) 00:47:10 ID:PSpGWtjY
強襲団長「例えそいつが屑だろうと、そいつを見殺しにして今何も思っていないのは立派な狂人だぜ」
雑兵「あ、あぁ...」
強襲団長「お前さんに足りてないのはそう言う所、味方の見殺しは立派な軍の規律違反だ、そいつ家族居たのに可哀想だなぁ」
雑兵「いや...盗賊紛いの事してたんで...」
強襲団長「あぁ俺なら間違いなくそいつは部隊から追い出す、だが愚連隊でも軍に籍がある以上は兵隊なんだわ、お前の立場で味方を見捨てるその考えが、我が団員に今後危険が及ぶ事になるのであれば...俺はお前を殺す、分かったな」
雑兵「は、はい...」
501
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/04(土) 21:36:11 ID:AulFFdcs
強襲団長「なぜ見殺しにした?魔物に抗う術ならあった筈だ」
雑兵「いや...強そうだったし...屑みたいな連中だったんで...」
強襲団長「そうか、お前の主観で我が隊員を見殺しにされては敵わんからな、その根性を叩き直すからな」
雑兵「は ッバキィ!!!
ガッシァャ-ン!!
雑兵「っづぁっ!」
強襲団長「痛いか?でも見殺しにされた隊員はもっと痛かった筈だぞ我慢しろ」
ッドゴォッ!!
雑兵「ゔぅっ...!」
死ぬ程痛い、なぜ俺がこんな目に、しかも味方から...味方から。
雑兵(味方に見捨てられるって...これ以上に辛いことなのか...?)
502
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/04(土) 23:40:17 ID:AulFFdcs
強襲団長「よく聞けよ、お前が生まれる前の戦争でな、俺は味方に見捨てられて、大事な部下を大勢殺してしまった」
雑兵「...知ったこっちゃねぇよハゲ」
強襲団長(お、きたきた)
雑兵「しちめんどくせぇなおめぇ...お前が味方に見捨てられたから何だってんだ...?」
強襲団長「ほう?」
雑兵「黙ってりゃ好き放題...先輩日本人だからって死に損ないが偉そうによ...」
強襲団長「...」
雑兵「見捨てられたからって部下大勢殺しておいて、俺様に狂人だ?戦争でお前が何してきたか知らねぇがな...何も考えずに指示待ちで部下殺しただけで偉そうにしやがって」
強襲団長「...」
503
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/08(水) 00:04:46 ID:ThBweReY
雑兵「ロートルがごちゃごちゃ...あぁ腹が立って仕方がねぇ、でもおめぇは俺の隊長だ、金さえ寄越してくれりゃ文句は言わねぇよ、せいぜいてめぇの大好きな部下を教育しとけや」
強襲団長「...っはっはっは!!、いいぞその怒り、その怒りが殺しに繋がるのか」
雑兵「あ?」
強襲団長「お前の殺しの根元を知りたくてな、いや簡単に出たのはちょっと驚いたが、強襲警備団にはいい人材だ」
雑兵「な、なにが...」
強襲団長「いや、任務をこなしていけばわかってくる、今日は帰って良いぞ」
雑兵「っち...意味分かんねぇ」
バタンッ!!
504
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/12(日) 00:22:14 ID:.NP4hgz.
プルルッ
強襲団長「はい強襲警備団...あぁ警備隊長、おう、分かった、直ぐに出る」
_
__
505
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/12(日) 00:29:49 ID:.NP4hgz.
__
_
女騎士「もう出動させるのですか?」
強襲団長「おうよ、あいつの殺意の根源...本当に怒りからくるのかが知りたくてな」
女騎士「あの警備隊員達を見殺しにした、それも怒りから来ている物なのかって話ですね」
強襲団長「今回の相手は殺しあげるのには不足ない相手だ、あいつを試す」
506
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 21:41:59 ID:yV8mmbi.
女騎士「お手柔らかにお願いします、彼も存外苦労していますから...」
強襲団長「まぁお前らよかぁ苦労はしてねぇさ、お前らが耐えれたんだからあの男も耐えてもらわにゃならん」
_
__
507
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 21:52:31 ID:yV8mmbi.
__
_
エヤッ!! トゥッ!!
雑兵(うっわ場違い感がハンパない...早く出よう...)
「なぁ、アイツって...」
「俺らがラング村で捕まえた...」
「新兵の総合野営でやらかした奴だろ、そんな奴がなんでここに居るんだ?」
「噂だと部隊をたらい回しにされてるらしいぜ?独立大隊からもハブられてるってよ」
「マジかよ?あの雑用隊にまで?」
雑兵(ちょっとはこうなるたぁ思ったけどもよ...)
508
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 21:58:35 ID:yV8mmbi.
騎士見習い「おい、お前」
雑兵「うおっ何でしょうか」
騎士見習い「っは、入隊同期に敬語とは...まぁお似合いだから良いか、単刀直入に聞くが、何故お前なんかがここに居る」
雑兵「お、俺も知らない、国境警備隊からここへ...」
騎士見習い「警備隊からここへ?バカ言うなお前の原隊は、え〜っと...どこだったかな?」
「えっと、雑用大隊じゃなかった、独立大隊だったな」
騎士見習い「あぁそうだった、なんの苦労もせずに、教育期間を終えてたから印象に残ってなかった、いや総合野営の時には目立とうとしていたな...まぁいいか」
509
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:05:26 ID:yV8mmbi.
雑兵「は、はぁ...満足したなら...」
騎士見習い「いや質問に答えてくれ、何故お前なんかが騎士団の修練場に足を付けている」
雑兵「いや知らねぇって、俺だって来たくは無かったけど」
騎士見習い「来たくは無かったのなら出て行ってくれないか?そして二度とツラを見せるな、入隊同期だけでも恥ずかしいんだよ、騎士団のみならず、どこの部隊に移動した同期でもそう思ってるよ」
雑兵「あ、あぁそうなんすね、じゃ、じゃあチャンバラ稽古頑張ってください...」
騎士見習い「チャ...チャンバラだと...?ここで行っている修練は我が王国を守る為の修練だ!」
雑兵「あっごめん...思った事が口に出ちゃって」
510
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:09:52 ID:yV8mmbi.
騎士見習い「貴様...立場というものを弁えていないようだな...」
雑兵「立場ったって入隊同期なら同じだろ、騎士団入れても変わるもんなのか?」
「こ、こいつ...」
騎士見習い「わ、分かった...お前が相当な世間知らずなのはわかったからそのツラを二度と見せないでくれるか...」
雑兵「あぁ?さっきから黙って聞いてりゃぁ調子乗りやがって...」
騎士見習い「な、なんだ...」
雑兵「
511
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:21:41 ID:yV8mmbi.
雑兵「それにんだてめぇそのふざけた胸パッドはオイ、肉襦袢にしてもデケェんだよ盛りすぎだろカスが!」
「???」
騎士見習い「え...?肉...なに?」
雑兵「外せよ、チキッてんのか?オイ!!」ガシッ!!
騎士見習い「ちょっ...!」
「お、おいやめろ!そいつは白薔薇騎士団に...!」
雑兵「白薔薇ぁ?!んなもん知らねぇよチンカスがぁ!!中居君の黒バラしか見てねぇわ!!!外せコラ!タイマンじゃ!!」
ブチィッッッ!!
騎士見習い「ひっ...!///」
雑兵「さっきから舐めた事ばっか言いやがって...なにが苦労してねぇだ...!!ばあちゃん助けたらカルトだったし...目の前でダルマんなっちまった女や子供助けられなかった...国境警備行けばよ!!クソカルト共の相手だ!!!魔物の方が理性あるわハゲ!!!」
騎士見習い「ちょっ...今ノーブラで...」
512
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:32:00 ID:yV8mmbi.
雑兵「この手で何人も殺したんだよ...!カルトのクソババアも!カルトも!!そしてクソみてぇな味方も見殺しにした!!!殺しは二度とごめんだ!!何の罪もない人が殺されるのも!!!なのになんでお前らクソ共のお膝元で働かにゃならん!!分屯地に帰らせろよ!!なぁあ?!!」
騎士見習い「し、知ったこと...
雑兵「知った事ねぇとは言わせねぇぞクソアマ!?言ってやるぞてめぇら騎士団がなってねぇからなぁ!!罪もねぇ村人もっ!!!罪もねぇエルフの村も!!!!罪もねぇエルフの姫も!!!子どもも!!!酷い目に遭わなかったんだ!!!何も知らねぇのに俺は見ちまったんだよ!!!」
騎士見習い「...っ」
雑兵「お前の苦労は何してきた...?新兵で配属されて教育が終わる迄の苦労で...この国の民になんの奉仕が出来たんだよ、あぁ...?殿下助けりゃ上の奴らは勝手な事するな...子どもなのに助けるなだぜ...可笑しいんだよこの国...」
騎士見習い「...」
513
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/20(月) 22:47:34 ID:yV8mmbi.
「お、おい...手放せよ...」
雑兵「いいかクソアマよく聞けよ...戦場で俺を見捨てるのは別にいいがな...今後騎士団の立場なのに...苦しむ国民を見捨てるようなら...俺がお前をこの手で殺すからな...」
騎士見習い「...は、はぃ...」
雑兵「失せろ...」
騎士見習い「っ...!」ダダッ
雑兵「あ?何見てんだ...いや、お前...」
「あ、ぞ、雑兵だっけ...あの、ごめんな?その、勘違いで捕まえちまって...」
「こいつも俺もあ、あんま顔覚えてなかったからよ!」
雑兵「...もう死ねやサンピン騎士団共が」ッタッタッタ...
「...やべぇな」
「う、うん、白薔薇騎士団の子、王族の親戚の子だし...しかも白薔薇騎士団出身の女騎士様も黙ってねえぞ多分...」
_
__
514
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/21(火) 23:18:32 ID:HE.vMP8Y
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_
女騎士「...なるほど」
騎士見習い「ヒッグ...グスッ...」
勇者「雑兵...女の子泣かすとか最低」
エルフ「うーん、でもその子も言い過ぎですよ、部隊に優劣なんか無いはずです」
女騎士「そうなんだけど...」
勇者「泣かす事は無いっしょって感じかな」
エルフ「まぁー確かに」
女騎士「で?どうするんだ?」
雑兵「...謝んねぇぞ」
勇者「雑兵が大変な思いをしてるのは僕たちも分かってる、でもそれはこの子の苦労を否定する理由にはならないと思うなぁ」
雑兵「否定してきたのはそっちだ、俺は何も悪くない」
515
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/04/21(火) 23:24:25 ID:HE.vMP8Y
女騎士「全く...なんで戻って早々喧嘩なんかするからなぁ」
騎士見習い「ヒッグ...団長、申し訳ありません...」
女騎士「うん、君も雑兵に対して思う事はあるだろうが...彼は今の君達よりも辛い思いをしてるのも確かだからね...でも君の苦労を否定するのもいけないことだ」
勇者「雑兵には分かんないだろうけど剣の稽古も大変なんだからね、特に女の子はさぁ」
雑兵「わ、分かんねぇことは...」
女騎士「お前配属されて以来まともに剣術の稽古なんかしていないだろう、全部筒抜けだからな」
雑兵「...」
女騎士「剣術の稽古というのは、剣を保有する者にとってはすべき事なのだ、彼女は剣を持って以来ずっと剣術の稽古に励んでいる、今は入隊した隊員の中で1番の剣捌きだ」
516
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/01(金) 23:33:06 ID:O3d2OSbw
勇者「コレばっかりは雑兵にも非があるよ。素直に謝らないの、雑兵の悪いとこだよ」
雑兵「わ、わあったよ...ちとカッとなっちまて...申し訳ねぇ」
騎士見習い「...こちらこそすまない、騎士の見習いなのに騎士らしからぬ態度を取ってしまった...」
女騎士(最初の頃は私も騎士という立場を鼻にかけてたっけなぁ...)
勇者「じゃあ!仲直りという事で!」
雑兵「あ、あぁ...」
女騎士「で、この後はどうするんだ?」
雑兵「挨拶回りに行こうと思ってた所だ...独立大隊の人たちに会いたいからな」
517
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/02(土) 01:40:06 ID:HNzX2Isg
女騎士「挨拶回りか、殊勝な心がけだな」
勇者「んじゃぁ僕もついて行こーっと♪」
雑兵「え?何で?」
勇者「独立大隊ってあんま分かんないんだよねぇ、なんの職種になるんだろ、気になるから教えて貰うの」
雑兵「ま、まぁ別に良いけど」
女騎士「ふむ...では私も行ってみるか」
雑兵「うぇ?何でだよ」
女騎士「隊長に挨拶をと思ってな」
雑兵「そ、そうかい...」
_
__
518
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/02(土) 03:39:45 ID:HNzX2Isg
__
_
「団長、先月より調査を行なっていた盗賊団の最終情報が入りました」
強襲団長「どんな具合だ」
「は、やはり強襲団長の仰っていたように、定期的に砦を移しているようです、主として使っている砦から順々と回っています」
強襲団長「へぇ、して、次はどこの砦だ?」
「内通者からだと、次が主に使っている砦との事...盗賊団の妻子や略奪品、奴隷等はここに集められている様子で...本隊が不在の時も駐屯している者もいるようです」
強襲団長「ってぇこたぁ...駐屯部隊も含めたら大規模な盗賊団になるなぁ...まぁ数はどうでもいい、場所だ場所」
「は、ビギニング平原の果てにある...『転生の森』との事です」
強襲団長「...あの森か...」
_
__
519
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/03(日) 23:16:42 ID:2BcoA6lU
__
_
隊長「いやぁ、勇者様と騎士団長まで...」
雑兵「すみません、二人が勝手に...」
兵長「バカっそんな言い方...」
女騎士「いや、ホントの事だ、隊長にお話があってね」
兵長「...雑兵、天使に会ってやれよ、今や他部隊からも欲しがられる程の衛生技術だぞ」
雑兵「そうなんですね、俺とは大違いだ」
兵長「いや...そう言うわけじゃ...まあいいから行こうぜ!」
バタンッ!
隊長「...新兵の部隊配属は、俺ではどうしようもありませんでした、あっち行ってから死ぬ程辛い目に遭ってんですねアイツ」
女騎士「はい、ですが異動に関しては、人事参謀と...一部他部隊の隊長が異動を推薦してました、貴方への責任は何もありません」
隊長「そう言って下されば多少は心が救われますよ、でもアイツにハッパかけて変なやる気を出させたのは俺ですからね...そこからある意味狂っちまったのかも...」
520
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/03(日) 23:18:38 ID:2BcoA6lU
女騎士「...コレからは私と勇者で彼を保護します、ある意味では遠縁なので」
隊長「はい、アイツをよろしく頼みます...」
女騎士「では、失礼しました」
_
__
521
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/06(水) 01:15:01 ID:wDnXqOnY
__
_
勇者「首都で本腰据えれて良かったね」
雑兵「良くねぇよ強襲警備団だぞ、まだ何するかもあんま分かってねぇ」
勇者「う〜ん...強襲警備団かぁ...」
雑兵「そ、そこまでヤバイの?」
兵長「カチコミ部隊ってのは聞いてんだろ、国王に盾突く組織や盗賊...盾突くなら村も丸ごと襲う部隊だぜ」
雑兵「なんでそんな法外な...」
勇者「いや、ちゃんと裏どりしてカチコみしてるよ?そこは大丈夫」
雑兵「う〜ん...」
兵長「お、天使ちゃん、ちょうど良いとこに」
天使「あ、兵長さん...あれ...雑兵?」
雑兵「おう、久しぶり」
522
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/06(水) 01:29:13 ID:wDnXqOnY
天使「雑兵...もしかして帰って来れたの?」
雑兵「んー首都に戻れたっちゃ戻れたけど、別の部隊だ」
天使「あ...そうか、国境警備だから歩兵だよね...」
雑兵「本当は分屯地帰りたかったけど...ここも知り合い沢山いるから悪くはないよ、うん」
勇者「まーた分屯地帰りたがって!」
雑兵「し、仕方ないだろ、世話になったし愛着も...」
天使「ふーん、ここに愛着は無いんだ」
雑兵「んな!?やめろってそう言うのは!」
天使「ふふっ...嘘だよ雑兵、お帰り」
雑兵「まったく...ヒヤヒヤさないでくれ」
523
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/06(水) 22:27:10 ID:gorHnERE
天使「あ、ちょっと仕事あるからもう行かなきゃ、じゃあね」
雑兵「おう、またな」
勇者「さぁて、次は?」
雑兵「エルフか...殿下のとこに行きてぇな」
勇者「お、丁度よかった、エルフいま殿下のお世話役やってんだ」
雑兵「マジで?出世したなアイツも」
勇者「んじゃ行こうか!」
524
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/06(水) 22:30:04 ID:gorHnERE
そして
勇者「いま殿下は貴賓外来で寝泊まりしてるよ、独学で勉強もしてるんだって」
雑兵「流石だなぁ...ここか」トントン
「どうぞ」
ガチャ...
エルフ「あ、勇者様...え!?雑兵!?」
殿下「雑兵?来てるの?!」
雑兵「よう、久方ぶりだな二人とも」
525
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/22(金) 21:50:31 ID:vX3LzdQM
雑兵「結局殿下どうなんの?」
殿下「近いうちにオムエンってとこに行くんだ、ビギニングの統治下で国を作るよ」
雑兵「そっか、オムエンにいる魔物連中もいいヤツもいるからよろしくしてやってくれ、特にオークジェネラルはいい奴だったぜ」
エルフ「魔物とも交流を...」
雑兵「いや流れでだから、俺自身から行ったわけじゃ無いよ」
殿下「ねぇ、今回は雑兵はずっと首都にいるの?」
雑兵「あぁ、ずっといる予定だ、多分」
エルフ「...今回は騎士団長と勇者様の保護下みたいなものだ、もう大丈夫だと思うよ」
雑兵「だといいけど」
526
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/22(金) 21:59:51 ID:vX3LzdQM
エルフ「強襲警備団だって?また凄まじいとこに」
雑兵「なぁみんなそう言うよな?!なんなのあそこマジで!」
勇者「まあ〜...辛かったら助けてあげるから」
雑兵「えぇ〜...」
_
__
527
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/06/06(土) 23:44:13 ID:wrED8uhE
__
_
「それではミーティングを始める、今回の標的は山賊だ、最近は山の中だけでせせこましく生きてるだけじゃ飽き足らず、山を下り村を襲うようになって来た」
雑兵(襲う前から消しとけばいいのに)
強襲団長「多分この中でハナッから消したけば良いと思った人間もいると思うが、そんな簡単な話じゃねぇって事くらいはみんなも分かってるよな」
「いるんですかそんな奴?まぁいいです、この山賊は方々の砦を転々とし、所在を一発で分らせないようにしている、今回は本丸に賊の長が補給と休養の為帰ってくると情報を掴んだ、そこを叩く」
強襲団長「場所は平原の向こうにある転生の森って場所だ、出発は明朝、各人準備を怠るな、今回は下手すりゃ誰か死ぬぞ」
528
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/06/06(土) 23:49:38 ID:wrED8uhE
「...団長、質問なんですが」
強襲団長「なんだ」
「新入りも連れて行くのですか?」
雑兵「...」
強襲団長「勿論、心配か?」
「いえ、足手まといになるのは確実かと」
強襲団長「あぁなるだろうな、まぁ関係ないだろ、足手まといになるときゃ死ぬ時だ」
雑兵(そりゃ嬉しいことで...)
「分かりました」
「明日の襲撃には騎士団も同行する、支援がてら研修も行うとのことだ、皆依存は無いな?」
「はい」 「無し」「数が多けりゃ死ぬ確率も減ります」
529
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/06/07(日) 22:59:08 ID:.GhjKivU
雑兵(良くも悪くも個性的だな...)
強襲団長「んじゃあ今日は解散、各人早く休めよ」
_
__
530
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/06/07(日) 23:05:44 ID:.GhjKivU
__
_
雑兵「んで、俺の営内は無いから鍛錬場の仮眠室に居住しろってことか」
雑兵「はぁ...常に身一つなのが救いか...どっしりと構えれる場所が一つもねぇな」
分屯地も長くて1ヶ月半程しかおらず、国境には異動というよりもなんか居たって感じだし、ほんとどの入隊同期よりもあちこち移動しまくってる。
この仮眠所はベッドしかなく、騎士団当直室の名残だそうで。
雑兵「ベッド固てぇなおい...」
531
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/06/07(日) 23:09:31 ID:.GhjKivU
まだ時間で言えば15時程で、疲労しか残らない半日ではあった。
雑兵「...そう言えば明朝っても何時に出るんだろうか」
固いベッドでも疲れている体が横たわれば、自然とうつらうつらと眠気が来て、明日のことは多大な不安は残っているがそのまま落ちてしまった。
532
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/06/07(日) 23:15:59 ID:.GhjKivU
団長室
女騎士「...強襲団長、何故雑兵を即実戦に...」
強襲団長「お、不安か?」
女騎士「当たり前です、雑兵は剣術のけのじも知らないに等しい...兵士として情けない話ですが、絶対に即戦力になれません」
強襲団長「まぁ〜間引きと言われたら否定はしねぇさ、向上心もないし捻くれてるし、その癖苦労だけはしてるからそれを鼻にかけてめんどくせぇ奴だよ」
女騎士「...」
強襲団長「だから死ぬ程苦労してもらう、鼻にかけてごちゃごちゃ言う元気もなくなる位にな、その過程で奴が死ねばそれで終わりだし、生き残ればもっともっと苦労してもらう...一人前の雑兵になる為にゃあ、あいつのレベルじゃそれしか方法がねぇ」
533
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/06/14(日) 00:30:12 ID:Pyd7sCsM
強襲団長「しかし妹以外の人間に興味持つのは珍しいなぁ、あの軍曹以来かな?っても今回は入れ込みが...」
女騎士「い、いえ、雑兵相手にに限ってそういうのは...第一、勇者がかなり気に入ってますから」
強襲団長「そうかい、お前の父ちゃんに言われて厳しく育てた俺が言えた事じゃねえが...そろそろ色恋ってのも悪くねぇと思うぜ?女にしちゃぁ青春は捨てすぎだ、軍曹に関してはもうさっぱり切っちまったんだろ?」
女騎士「あまりからかわないで下さい、そう言うのは自分なりにですね...」
強襲団長「っへ、いらん親心ってやつだな...」
534
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/06/22(月) 00:03:15 ID:q0lv3sL6
女騎士「兎に角、また何をしでかすか分かりません、任務中は私の近くに置いておきます」
強襲団長「いや、ダメだ」
女騎士「ダメなのは分かります、あいつの為にもなりませんし...」
強襲団長「違げぇよ、アレなんかどうだって良いんだよ、ようは示しがつかねぇんだ、お前のな。既にあいつは騎士団の中でも厄介者だ、白薔薇のお嬢ちゃんと喧嘩しちまったからな、そしてお前が雑兵に沙汰を下すと期待してる連中も大勢いる、その流れでお前が雑兵を近場に置いてたら...あいつらどう思うよ」
女騎士「...」
強襲団長「それによく考えてみろよ、お前の玉の輿みてぇになっちまったらよ、あいつの今までの本当の苦労は全て水の泡になっちまう...それは余りにも酷いと思わねえか?」
女騎士「...分かりました...アイツを頼みます」 ツカツカ
バタンッ
強襲団長(妹がアイツを気に入ってるとしても偉いいれこむなぁ...まぁ良いけど)
強襲団長「強襲警備団に来たからにゃぁ俺のやり方でするしかねぇんだ...可哀想だが」
_
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535
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/06/22(月) 00:10:17 ID:q0lv3sL6
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_
「敬礼!直れ!」
強襲団長「強襲警備団 討伐隊20名編成完結!」
白薔薇騎士団長「白薔薇騎士団 討伐隊50名編成完結!」
騎士団直接支援隊「騎士団直接支援隊 討伐隊45名編成完結!」
女騎士「王国騎士団総本部16名編成完結、以上 討伐隊 総員131名編成完結!」
国王「うむ...みな休ませよ」
536
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/06/22(月) 00:18:39 ID:q0lv3sL6
女騎士「せいれーつ、休め!」
国王「この国最大の惨事であったカルト教団の討伐から、はや2ヶ月...落ち着いてきた時期であるのにこの国の賊は休ませる暇も与えてはくれないな?」
女騎士「全くです」
国王「本当にわが国の防人は皆頼りになるな、騎士団長...無理は禁物じゃぞ?」
女騎士「はっ、ありがたきお言葉...みな無事に帰って参ります」
国王「うむ、
537
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/06/22(月) 00:20:31 ID:q0lv3sL6
女騎士「せいれーつ、休め!」
国王「この国最大の惨事であったカルト教団の討伐から、はや2ヶ月...落ち着いてきた時期であるのにこの国の賊は休ませる暇も与えてはくれないな?」
女騎士「全くです」
国王「本当にわが国の防人は皆頼りになるな、騎士団長...無理は禁物じゃぞ?」
女騎士「はっ、ありがたきお言葉...みな無事に帰って参ります」
国王「うむ、気を付けて行って来い」
538
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/06/22(月) 00:29:31 ID:q0lv3sL6
雑兵「騎士団直接支援隊ってなんなんすか?」
「あ?んでそんな事...まぁ言うなれば、衛生補給整備が集まった混成部隊だな、怪我したら衛生兵が、飯とか消耗品が無くなりそうだったら補給が、剣の刃こぼれや鎧の打ち直しなら整備がって感じ」
雑兵「独立大隊はいないんすね」
「独立大隊が騎士団の雑用に回るのはあんまり無いぜ、確か前の新兵の訓練でも結局呼んでなかったな、やれる事は俺らだけでやるのが騎士団だ」
雑兵「へぇ〜見上げた根性っすねぇ」
「て、てめぇ舐めてんのか...」ヒクヒクッ
雑兵「あ、いやそう言うわけでは」
強襲団長「よーしみんな馬車に乗り込めよー、雑兵、お前は荷物車な」
雑兵「えー、まぁあの山と積んである馬車以外ならどこでも良いですよ」
「お前が乗るのはあの山と積んである馬車だっつってんの」
539
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/06/22(月) 23:30:25 ID:Sx78DvCY
雑兵「ひでぇ事しやがる...ヨイショっと...誰もいねえって事は運転しろってか、無免許だぞ...」
強襲団長「よし、出発!!」
雑兵「うわぁ前の荷台にいる連中、もう寝てやがる...腹立つわぁ」
巡り巡って首都に帰ってきた、しかし思いの外原隊は離れており、しかも復帰は二度と無いとまで来た。
雑兵(結局独立大隊の仕事らしい仕事ってのは分屯地でやった事だけだった「おい」なぁ、まぁあの仕事内容だったらどこ行っても「おーい」同じか)
雑兵「次の異動先はどこになるんだろうなぁ〜」
女騎士「お前...もう異動する気か?」
雑兵「...って、うわぁぁ本気でびっくりした、なんのリアクションも出せなかった」
気付いたら毛ツヤの良い馬に跨っている騎士団長殿が隣にいた、まさか後ろつまってる?
雑兵「いや、詰まってる訳じゃねぇな、本部ってみんな自分で移動すんのか?」
540
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/11/08(日) 22:51:18 ID:qVX9zu3w
女騎士「不測事態にすぐ対応出来るように心掛けているんだ、それに馬車の中は窮屈で敵わない」
雑兵「なるほどねぇ」
女騎士「...実質初めての実戦だな、緊張しているか?」
雑兵「ん?あー、ある程度は緊張してる、てかちょっと気付いたことがあってさ」
女騎士「どうした?」
雑兵「今回ズブのトーシロの俺を出した理由って、間引きだろ?」
女騎士「...何故そう思う」
雑兵「各地に飛ばされて分かったんだ、俺って何処からも必要とされてねぇって」
女騎士「そんなこと...」
雑兵「大切に思ってくれてる人がいるのは知ってるよ、でも組織から見りゃ、誰が思ってくれても意味はねぇんだなぁって」
女騎士「...」
雑兵「この仕事で最期にするよ、死場所を与えれたもんだしな、でも適当にはしないから安心してくれよ」
541
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/11/09(月) 00:42:20 ID:nXHbtbHE
お?
542
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/11/15(日) 21:56:30 ID:s7HKZi.k
女騎士「...やはり何も分かっちゃいないんだな」
女騎士は全てを達観したような表情でこちらを見つめる、瞳の奥は吸い込まれるような黒で、彼女の言っている意図を理解するにも出来ない位思考が止まってしまった。
雑兵「な、何がだよ」
女騎士「もういい、好きにしろ...」
雑兵「...」
直感的に、俺は捨てられた、そう判断せざるを得なかった。
一体何を間違ったのだろうか、何を言えば良かったのだろうかと思考が逡巡する。
雑兵「んだよクソッタレが...」
この日から元の世界でもならなかった、本当に孤独な存在になることをまだ雑兵は知る由もなかった。
543
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/11/15(日) 23:01:07 ID:s7HKZi.k
討伐隊は林道へ差し掛かり、雑兵が当初訪れた森へ入っていった。
強襲警備団長の戦闘隊形に移行の号令の下、討伐隊は個々の配置へつく。
雑兵「俺はどこに行けば良いんですか?」
「あ?知らね、団長にでも聞けよ」
雑兵「は、はぁ...」
皆は素っ気ない態度で俺に当たる、どこの部隊へ行っても多少は関係を築けたと思ったが、今回ばかりは人間関係と言うものは構築できなさそうだ。
それもそうだ、仕事で来ているのに何すれば良いのかと問われれば、何言ってるんだこいつとも思うだろう。
雑兵(何も聞いてねぇんだから仕方ねぇだろ...)
自分から考えて聞きに行けと言うことなのだろうが、労働をした事のない雑兵にとって、そこに至るまでの思考が無く、今の今まで好き勝手にやってきたツケが、ジワジワと雑兵の首を締めにかかってきた。
「アイツマジで何しに来たんだ」
「別にどうでも良いっすよ、間引きで来たってのを恥ずかしいと思ってない奴なんか」
544
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/11/15(日) 23:10:42 ID:s7HKZi.k
聞こえるように話される自分への侮蔑や嘲笑の声、前は気にならなかったが、今は一つ一つの言葉が胸に深く突き刺さる。
頼むからやめてくれ、そう思いながらも、何処かで女騎士や勇者が何やかんや助けてくれると期待を抱いていた。
しかし勇者はここにはおらず、女騎士は見放したように、まるで最初から赤の他人だったと言うようにこちらに見向きもしなかった。
雑兵「す、すみません、自分の配置場所は...」
口内が緊張で乾き、最初の達観した顔も嘘のように消したんだ、本当は実は達観などしておらず、どこか雰囲気を作っていただけだったのだろう。
「あー、お前確か前衛の方だった気がするけど、何で知らないの?」
雑兵「聞いていなかったので...」
「編成表貼り出してっからミーティングの後は見とけよ、どこの部隊でもそうだろ」
雑兵「す、すみません」
「ったく...」
前衛、聞き慣れない言葉だが何をするのだろうか、疑問が疑問を呼び、更に雑兵を不安に陥れる。
「前衛の連中は揃ったか?」
前衛の単語が聞こえた、あそこで間違い無いだろう。
545
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/11/15(日) 23:22:19 ID:s7HKZi.k
雑兵「前衛ってここですか?」
「あ?お前は前衛分隊の方だろ」
「ここは前衛の主力だよ、分隊はさっき行ったよ?」
前衛の主力?分隊?何だそれは、何一つ分からない。
雑兵「あ、ありがとうございます!」
遮二無二指を刺された方向へ走るしかなかった、後で知ったがら前衛とは、部隊主力の行進が円滑に行われるよう、前方を行進し敵を殲滅する行動との事だった。
強襲警備団は前衛を任されることが多いらしく、専ら有事の際は前衛の行動を行うそうだ。
雑兵(か、勘弁してくれよマジで...)
546
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/11/15(日) 23:30:24 ID:s7HKZi.k
走り際に女騎士がこちらの顔を見ているのをフと確認した、出来の悪い隊員を不快な気持ちで見る顔だった、もう助けてくれることは無いのだろう。
雑兵「...」
ひたすら林道を走るが前衛分隊とやらは一つも見えなかった、まさか道を間違えたのか、しかし分かれ道は無かった、森の中に入っているのか、未熟な思考はどの考えにも落着しなかった。
雑兵「クソっ...どうすれば良いんだよ...!ん...?」
目を凝らすと前方に馬車が見えた、森の中に進んでいっている、前衛か、もしくは盗賊か。
何にせよ雑兵にとってはどちらも救いだった。
雑兵(前衛なら合流...盗賊なら皆殺しだ..,!)
547
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/11/20(金) 23:35:43 ID:Lt3RZ1eI
前衛主力の出発後、騎士団並びに直接支援隊は出発準備を完了した、団員の多くは新米の騎士であり、皆緊張感を持った面持ちで出発を待っていた。
「前衛主力は前進を開始しました、ただ一名が前衛分隊とはぐれているとの事です」
警備団長「はぐれてるってなぁ...あぁ、アイツか、終始オロオロしてたがそう言う理由だったんだな」
女騎士「警備団長、討伐隊主力出発時刻です」
警備団長「おう、しかしお前も酷な事をするなぁ、いきなり切り捨てるこたぁ」
女騎士「...人に何度も何度も心配を掛けてもなお、自分がどれほど思われているかを理解もせず、勝手に自分は死ねば良いと思っている奴に何を言っても無駄かと思いました、私の妹の心配も無碍にする前に切り捨てなければ、アイツはもうどうしようもありません」
女騎士(人の心配も他所に、勝手に突っ走っては帰ってくる、それで人の心配も他所に次は死ねば済むなどと...勝手にも程がある...妹に迷惑を掛ける前にアイツを正さ無ければ、私自身が持たない)
警備団長「そうかい、お前自身がスパッと切り捨てれればその言葉にも重みが出るだろうよ」
548
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/11/23(月) 00:53:32 ID:s/ff.Ld.
警備団長「ま、お前の選んだ道なら間違いは無いだろうな、だがな一度切り捨てたらとことん切り捨てろよ、とことんまでな」
女騎士「はい、大丈夫です」
王国の騎士団長の人脈を持ってすれば、一兵士の立場などは塵一つ無くなるだろう。
雑兵の長く辛い孤独な生活が始まる。
そうとは知らずに雑兵は遮二無二任務に邁進する。
雑兵(この馬車...知らねぇ馬車だ、ってこたぁ盗賊らの)
荷台は樽や木箱で一杯だった、馬車に追いついた雑兵は音を立てずに馬車に乗り込んだ。
雑兵(監視とか付けてねぇのな...)
荷台は刀剣や盾が雑多に積んでおり、値札がついている事から盗品の可能性が高くなってきた。
するとふと隅に目をやると、子どもが二名座っていた。足枷をされ、皮が剥けたのか足首がずり向けて血が滲んでいた。遠くを見つめておりこちらに気づいた様子は無かった。
雑兵(き、君たち、何かあったの?)
「...」
雑兵「...?もしかして捕まって...っ!!?」
よく見るとハエが集っており、チラチラと蛆虫が見えた、僅かに香る腐臭、少し前に事切れたのだろう、すると馬主が独り言を言い出した。
549
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/11/23(月) 00:57:33 ID:s/ff.Ld.
「クッソ〜せっかく捕まえた奴隷を死なせちまったなぁ...カシラぁブチギレるだろうなぁ...」
雑兵「...」
静かに抜いた剣を、何も言わず振り下ろした。
ザシュッ! ブシャァァァァア
動脈を切られ鮮血が散り、馬主は静かに死んでいった、しでかしたことに対して事足りぬ死に様だ。
雑兵「この先が砦って事だな」
馬主を蹴落とし、二人の子どもの遺体に毛布を掛けた。
貧民街で見かけた子どもをふと思い出した、元気にしているのだろうか。
同じくらいの歳だ、息災に成長していればどんな大人になれたのだろうか。
様々な思考が逡巡していくウチに、涙が滂沱として止まなかった。
雑兵「ロクな国じゃねぇなあ...ったくよ」
550
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/11/26(木) 00:46:24 ID:TO4z85x2
おつ
少し久し振りに来たけど読んでるよ
551
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/11/26(木) 23:11:21 ID:cyUiHDtk
一本道は森の奥まで続いており、恐らくこの奥が賊の砦になるのだろう。
結果、また一人で乗り込む事になるが、雑兵にとってはもうどうでも良い事だった、頼りの人から突如として見捨てられ、部隊でも上手くいかない、ここまで来れば死んだ方がマシであると思えてきた。
すると、ふと先に丸太で植杭された砦が見えてきた、砦の上からは何名かがこちらに顔を覗かせているのが見えた。
雑兵「...」
震えが止まらない、武者震いだろうか、ただ怖いだけなのだろうか、自分が達観したのさえ信じられない。
「おーい!随分と遅かったじゃねえか!?」
552
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/11/26(木) 23:26:01 ID:cyUiHDtk
雑兵「あ、あぁ!途中で車輪がイかれちまってな!」
「今開けるから待ってろよ!」
大きな丸太が括り付けられた扉が開いた、中は小さな街と見紛う程栄えており、酒場は勿論武器屋から何から全てが揃っていた、山賊の砦とは思えない。
「お頭が奥で待ってっからな」
山賊の一人が指差す方向には洞窟があり、入り口は馬車が対向出来るほど余裕のある広さだ、ざっと見でも100名はいる、討伐隊の人数で対処出来るのだろうか。
雑兵(しかしやはり山賊の砦と言うべきか...)
「さぁそれでは!ここでコイツを競りたいと思うんですよ。まず、30万から!コイツの出来る技は...
端を見れば奴隷市場であろうか、足に重りを付けさせられている筋骨隆々の若い男がステージの上で競られていた、
553
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/11/28(土) 00:00:44 ID:Hh1xwkZ.
ステージの奥では競り落とされるのを待っている奴隷達が沢山いた、人やら異種族やら、この世界へ来てエルフ以外に初めて見る種族ばかりだ。
雑兵(年端もいかねぇガキを殺す奴らだ...相当逝かれた連中だろうなぁ)
逃げ出したい欲求に駆られるが、馬車は奥へと進む、天然の洞窟を利用した倉庫だろうか。
雑兵(一体どんな奴が頭張ってん...?!)
ラング「随分遅かったじゃないか、何を手間取っていたんだ?」
554
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/11/29(日) 00:35:52 ID:QEjTV43o
雑兵「ラング...てめぇ...」
ラング「ん?...あぁ、君はいつぞやの...生きてたのか」
あの顔、あの喋りかた、片時も忘れた事のない男が目の前に立っていた。
雑兵「あのカルト共はどうした」
ラング「うーん、金を落とさなくなってきたから教祖を殺して抜けたよ、お陰でフィッハーの方でもあまりカルト集団の話を聞かないだろう?」
雑兵「知るか...今度はここで賊のお頭ってか、ご苦労さんだな」
ラング「前のお頭はあまり頭が良くなかったからね、ちょっと細工をして忍び込んでみれば...すぐ幹部になれたよ」
雑兵「前の頭はどうした」
ラング「死んでもらったよ、不幸な事故でね」
555
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/11/29(日) 22:54:08 ID:QEjTV43o
雑兵「そうかい、あいも変わらず腐った奴だな」
ラング「金が手に入れば腐っていようが、なんであろうが関係ないよ、ところでそろそろ周りに気を配った方がいいじゃないかな?」
雑兵「...」
周りを見渡すと完璧に囲まれていた、如何にも山賊ですと言う風貌で俺に剣先を向けている。
恐らくこの世界ではもう最期の時だと覚悟した
556
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/11/29(日) 23:01:26 ID:QEjTV43o
「頭目!ぶっ殺しましょうや!」
ラング「と言う事だ、皆は短気なんでね、申し訳ないが...遺言だけは聞いてあげるよ」
雑兵「そうかい、ひと足先に地獄で待ってるぜ屑共」
ラング「ひと足先にとはどう言う...」
「頭目!!王国の騎士団連中だ!!!奴ら攻めてきやがった!!」
ラング「...成る程、君はそれでここにいたのか、おい、こいつを牢にぶち込んでおけ」
雑兵「んなっ、殺してくれよ」
ラング「前みたくエサにできれば使ってやる、安心しろ」
557
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/03(木) 13:53:11 ID:bDv73e96
おつ
558
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/04(金) 00:00:02 ID:MaSHLLrs
雑兵「そうかい、まぁ討伐隊連中に精々と足掻いて薄汚いネズミ共と死ねや、おい寝ぐらに案内しろ」
ラング「ず、随分と余裕だな...」
雑兵「もう俺の周りにゃ誰も居なくなったからな、本当に好き勝手できるさ」
「お頭!逃げ道も塞がれました!!」
「戦いましょうや!」
ラング「ま、マジか...」
雑兵「二度目の人生を送っても、人の性根が変わらなけりゃ何も出来ねぇんだなぁ、チートがあっても能力があってもな、まぁ俺は何にも無かったけども」
ラング「二度目の人生...?貴様何を
雑兵「死に行くおめぇには毛頭関係のねぇ事だよマヌケ、逃げるならさっさと金くすねて逃げとけ、お前の人生にゃお似合いだ」
559
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/04(金) 00:09:49 ID:MaSHLLrs
砦の周りは討伐隊に囲まれており、既に逃げ道なぞ存在せず、前衛分隊は立ち塞がる盗賊を切り捨てながら前進し、遂に門前にまで至った。
警備団長「騎士団長、前衛の仕事は終わった、後はおめぇの采配だぜ」
女騎士「はい...スゥ...盗賊の頭目に告ぐ!!今すぐ武器を捨て投降せよ!!諸官らは先の戦争の終結後行く宛もなく賊の道に身を落とた事は既に聞いている!!私の顔馴染みもいる事も知っている!!今すぐ武器を捨て投降すれば更生出来る!!」
警備団長(うーん甘ちゃんなのは変わらないが...仕方のねぇ事だな)
戦争終結後、各方面に散らばった将兵は戦火に家を焼かれ、家族全員が戦塵に散った者も多く、未来への希望が無くなり賊に身を落とす者が後を立たなかった。
560
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/05(土) 23:04:20 ID:gwigevsk
砦の外から女騎士の声が聞こえる、ラングを投降させる?何を言っているんだ、この場で殺すに決まっているだろう。
この男は生かしてはいけない人間であり、情けの一つも描けてはならない男だ。
ラング「クソ...面倒臭い、お前ら砦の外で迎撃しろ」
「は、はい!」
「そ、外出るのか...?」
雑兵「まーた逃げるのかよ頭目様、カルト教団から出てって盗賊から出てってもう何もねぇだろ、次はポン引きでもすんのか?」
「頭目...カ、カルト教団ってあの...?」
「嘘だろ...頭目って俺の村を焼いたカルトの一員だったのかよ...」
ラング「バ、バカな事を言うな戯言だ」
「お、おい、本当なのかよ!」
雑兵「あ?うるせぇ黙ってろ、ラングお前だけは絶対に逃さねぇぞ、必ず殺してやる」
561
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/05(土) 23:18:47 ID:gwigevsk
全身全霊をもってラングを殺す、いま雑兵の血はかつて無いほど煮え滾っていた、刺し違えたっていい、こいつを殺せるならば死んでも構わないと思っていた。
雑兵「カルトの件じゃ死ぬ程世話になったな、楽に殺したくはねえが、俺は楽に生きたいから楽に死んでくれや」
「やっぱ頭目ってカルト...」
「聞いたことあるぜ、教祖殺して、幹部が一人金をくすねて消えたって...」
雑兵「前の頭目も殺して、次はお仲間も殺してスタコラたぁ良い身分だな、まぁこいつらのことなんか知ったこっちゃねぇけど」
ラング「や、やめろ...!おい、こいつを殺せ!」
「頭目を殺した...?」
「何かおかしいと思ったんだよ...」
ラング「くっ...」
562
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/05(土) 23:26:47 ID:gwigevsk
雑兵「そういうことでお前が死ねば一件の落着ということだ、おい、剣返せ」
「...っくそ!」
随分と単純な連中だ、あっさりと剣を返しやがった、頭目のことを少しは信用してやってもいいものだと思うが。
雑兵「お前のカリスマ性の無さが自分を殺したんだ、じゃあな」
ラング「ま、待て!金ならやる!!なんなら自由にだって...」
雑兵「もう死ぬ程自由に生きてきちまってこの様...だっ!!」
振り下ろされた剣はラングの袈裟を斬りつけた、瞬間避けたラングに浅く刃が通った。
ラング「っ!てめぇら!何してる!」
雑兵「賊共、投降するなら今だぜ、討伐隊相手じゃお前らにゃ勝てっこないだろ、知らねえけど」
「...俺何やってたんだろ...」
「まさかオレの家族を殺した奴の下についていたなんて...」
雑兵「あっさり過ぎだろお前ら...慕われてなかったのかお前」
ラング「うるせぇ!クソっ!」
雑兵「まぁどうでもいいかっ!」
563
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/05(土) 23:35:58 ID:gwigevsk
再び剣が振り下ろされ、ラングの動脈を切り付けた。
ラング「っがあっ...」
血飛沫が飛び上がる、そろそろ死ぬだろうが、この男の死に様にしては手ぬるい死に様だ、被害にあった彼女らへの手向けになるなかは知らないが、もうこの男がのさばる事は二度と無いだろう。
雑兵「...奴隷解放しなけりゃな」
賊たちは既に投降していった、砦の檻の中には奴隷として売られる者たちが大勢いた、解錠し自由にしたが、この者たちは今後どうなるのだろうか。
雑兵「ゆっくり歩けよ、外に討伐隊がいるから保護してもらえ」
「ありがとうございます...!」
「恩人だ...」
国の不手際の尻拭いで助けただけだ、何一つ感謝されるいわれなどない、雑兵は心の奥底からそう思え手放しには喜べなかった。
雑兵「...クソみたいな国だなぁやっぱ」
564
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/06(日) 00:19:46 ID:2tUccCcw
賊が投降のため門を開く、瞬間に討伐隊は雪崩れ込んできた、賊は武装解除の為に一列に並んでいた。
警備団長「あ、ありゃ、みんな意気消沈してんじゃねえか」
「一体何が...」
女騎士「...お前、何をした」
雑兵「別に、お前らの国がしでかした不手際の尻拭いをしただけだマヌケが、ノコノコと入ってきてむしろお前は何したんだよ」
「その死体は...」
雑兵「見りゃわかんだろ、頭目だよ、そしてフィッハーの村を襲った元カルトの幹部だ」
その瞬間何故か今までに湧かなかった怒りが沸沸と湧いてきた、いきなし騎士団に連れてこられたと思いきや、即切り捨てられた。
雑兵「おい、教えてくれ、なんで俺は騎士団なんぞに連れてこられた?」
女騎士「...さぁな、大方問題児をお膝元に置いて監視でもしたかったんじゃないか?」
雑兵「そうか、お前の意思で連れてこられた訳じゃないんだな?」
565
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/06(日) 00:26:10 ID:2tUccCcw
女騎士「当たり前だ、何故お前なんかを近くに置きたがる」
雑兵「それを聞いて安心したよ、じゃなきゃ怒りでオレの全身全霊をもってお前を殺すところだったぜクソアマ、この男みてぇにな」
女騎士「...っ不愉快だ、消え失せろ」
雑兵「そうかい、今までありがとよ、二度とそのツラを見せるなよ」
強襲団長「おいおい、勝手にどっか行こうとするなよ、お前はまだ辛うじて俺の部隊の団員なんだからな?」
雑兵「そうかよ、じゃあさっさと辞めさせてくれ」
この一件により、女騎士と雑兵の関係は立ち消えた、上官への反抗を行なったが、雑兵が盗賊を鎮めたのもまた事実であるため、この件は内々に納められた。
566
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/06(日) 00:29:48 ID:2tUccCcw
首都へ帰還したが、騎士団連中からの視線は以前よりも痛く突き刺さった。
それもそうだ、騎士団長への無礼な態度を取れば狂信的な連中は自ずとそのような態度になるだろう。
強襲団長「え〜胸が非常に痛むが、雑兵には無期限で非常勤についてもらう」
雑兵「嘘つけよクソジジイが、どこ行くんだ」
強襲団長「隊員浴場で勤務...まぁ下手すりゃ定年まで三助業務だな」
雑兵「そうかい、そりゃありがたい事だ」
567
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/06(日) 00:35:15 ID:2tUccCcw
三助、正式には浴当で風呂清掃や、ボイラーの監視、非常勤であれば半月で交代の業務だが、俺に関しては死ぬまでだそうだ。
「申し送りはこんくらいだな...まさかお前のツラを生で拝めるとは思わなかったよ」
雑兵「どういう意味だよ」
「お前有名だぜ、雑兵の身分で勇者様といちゃついてるかと思いきや、騎士団長に楯突いて...まぁ兎に角お前はクッソ有名人だって事だ、面白いって意味でも悪い意味でもな」
雑兵「噂料取るぞ間抜け共って伝えとけ、テメェらの風呂の握ったのは俺だからな、言葉一つで冬に水風呂つからせるぞ」
568
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/16(水) 19:19:43 ID:1mjWRa7c
まってるよ
569
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/17(木) 02:49:02 ID:r7ua6sZY
俺も
570
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/18(金) 23:54:01 ID:SZV8qqoA
「おー怖い怖い、じゃ、頑張ってやれや〜」
雑兵「...」
何もかもをかなぐり捨てて辿り着いたのが浴場とは、笑いも出ない。
今はただニヒルな表情で、大丈夫だと言い聞かせているが、いつ決壊するのだろうか。
_
__
571
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/18(金) 23:56:26 ID:SZV8qqoA
「おー怖い怖い、じゃ、頑張ってやれや〜」
雑兵「...」
何もかもをかなぐり捨てて辿り着いたのが浴場とは、笑いも出ない。
今はただニヒルな表情で、大丈夫だと言い聞かせているが、いつ自分の全ては決壊するのだろうか。
_
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572
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/19(土) 00:17:12 ID:.cA4cuQ6
__
_
勇者「...雑兵に会うなってどういう事?」
女騎士「そのままの意味、今回の件ではっきりと分かった、これ以上雑兵に会ったら勇者には悪影響しか無い」
勇者「今回の件って...雑兵は何も悪く無いじゃん!みんなが寄ってたかって一人相手に...!」
女騎士「寄ってたかって一人を相手に?その原因を作ったのはアイツだ、無力なクセに傲慢で、しかも無礼な奴で...面倒は一人で背負い込んで何とかしようと一人だけで足掻いて...そのクセ人の心配は無視して...私は勇者の心配を無碍にするような奴を、絶対に許さない、人からの心配を振り払うような奴は...」
勇者(お姉ちゃん...自分で気付いて無いのかな、言ってて辛そうなのに...)
女騎士「兎に角ダメだ、アイツには直々に付配置の内示を出す、騎士団にいられては末代まで舐められる」
勇者「...分かった...お姉ちゃんが完全に切り離せるなら、雑兵は捨てる」
姉は完璧に切り捨てる事など不可能だろう、瞳にうっすらと浮かぶ涙がその証拠だ。
でも辛そうな姉を見ると、無力な自分には従うしか出来なかった。
573
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/19(土) 00:19:00 ID:.cA4cuQ6
勇者「...三人で遊べる日が来るといいね」
女騎士「...」
今の僕には、それしか言えない。
良い意味でも悪い意味でも、彼は僕の周りを掻き回した。
_
__
574
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/19(土) 00:25:56 ID:.cA4cuQ6
__
_
三助業務が始まって二週間がたった。
釜炊きは点火すれば直ぐに行えて、桶から椅子から一切の水垢を落とし、浴槽内は隅々までブラシで擦り上げた。
雑兵「浴場清掃に終わりはねえってか...」
浴場の詰め所の壁にはそう書かれ、3畳半の部屋には煎餅布団と机しか置かれておらず、非常勤には持ってこいだが常勤には辛い空間だ。
雑兵「みんな、俺がここにいる事知ってんのかな」
ふと知り合いの顔が浮かんだ、浴場勤務は時間はあれど常駐が基本なので、他人に会う時間は多くない。
雑兵「PXにでも行ってみるか...」
575
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/19(土) 00:32:31 ID:.cA4cuQ6
PXは城内の売店であり、菓子類や日用品、私物の鎧や兜、武器も揃っている。
新隊員の期間は行く事は無かったが、三助業務を行うとこういう場所はでも少しの時間は行けるので、多少は心の癒しになる、本当に微々たるものだが。
「おい、アイツまだ辞めてなかったのかよ」
「アイツ今なんの仕事してんだ?」
雑兵(聞こえないフリ聞こえないフリ)
心の癒しに少しでもするにはこうするしかない、でなければ自分自身が持たなくなる。
「あいよ、760Gね」
雑兵「ありがとおばちゃん」
天使「...雑兵?」
576
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/19(土) 00:38:16 ID:.cA4cuQ6
雑兵「...よう」
天使「首都に来てたなら教えてよ、いつまで?仕事で来たの?」
もしかして俺がここにいる事は誰も知らないのか?風の噂ってのは大事なところにまでは届かないのか?
雑兵「...あぁ、ちょっとな、直ぐ出てくけど」
天使「あまりゆっくりできないんだ...話したい事たくさんあったのに...」
雑兵「チラッとでも良いから教えてくれよ、少しだけど時間はある」
天使「あ、あのね!僕ね!騎士団付の衛生兵になったんだ!」
雑兵「...ッ」
天使「技量が騎士団長と国王からも認められてやっと国家公認の衛生兵になって...それでね...?」
雑兵「そ、そうなのか...」
577
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/19(土) 00:41:59 ID:.cA4cuQ6
元々天使には衛生救護に関しては天賦の才能があった、独立大隊に行かされたのが間違いだったのだ。
一番近しい同期は実力で出世している、俺は?同じ騎士団にいたが、出世はおろか危なっかしいからお膝元に置かれ、最後には身近な人からも諦められた。
雑兵「そ、そうか...良かったな」
天使「雑兵...大丈夫?」
雑兵「え?大丈夫だって」
天使「でも...泣いてるよ?」
578
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/19(土) 00:46:51 ID:.cA4cuQ6
雑兵「...天使、多分だけど、もう会う事ないかも知れないんだよ、聞いてると思うけど俺色々やらかしたからさ」
天使「やらかした...?何を?」
雑兵「風の噂でどうせ聞くよ、騎士団に入ったなら尚更だ」
天使「雑兵...何か辛いことがあるなら...」
雑兵「お前みたいに良いやつがな、俺に近づいてくれる事が一番辛いんだよ、俺の事は忘れてくれ、でなくても多分忘れさせられる」
天使「ちょ...何言ってるの...?」
意味の分からないって顔をしているが、騎士団に入れば直ぐにでもわかるだろう、知られた状況で会われればそれこそ首を括ってしまいそうだ。
雑兵「じゃあな、頑張れよ」
579
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/19(土) 00:50:17 ID:.cA4cuQ6
課業開始の鐘がなる、雑兵はもう大切な人とは会う事はないだろうと直感した。
そして自分と会う事は大切な人たちにとっては不利益になるのも、周りの視線からよく分かる。
雑兵(噂が好きなクセに何で大切な所には回らないんだろうな)
3畳半の詰め所で、勤務が始まるまで一人になる、兎に角釜炊きを始めなければ。
_
__
580
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/19(土) 21:52:21 ID:.cA4cuQ6
__
_
女騎士「アイツはどこへやったのですか?」
警備団長「あ?何で聞きたがるよ」
女騎士「アイツはフラッと現れる奴ですから、また厄介ごとを持ち込むか...」
警備団長「...一人で抱え込んで、自滅するか...だな、経歴見りゃ分かるよ、相当の苦労人だってのはな、しかし俺にもお前にも、騎士団にも関係のねぇ事だ」
女騎士「困るんです、勇者の前に現れられては...勇者はまだ幼く...」
警備団長「そりゃあちぃっと、妹さんを舐めすぎじゃねえかな?」
女騎士「え?」
警備団長「勇者は自分で考えれる子だ、お前の心配も分かるが、お前の意思は汲み取ってるよ、あの子」
581
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/19(土) 21:58:44 ID:.cA4cuQ6
警備団長「お前の、アイツを見捨てると言うやり方、俺は悪手とは思っちゃあ居ないが、もしアイツが変われるタイミングで見捨てられたら...アイツはいつ変われるんだろうな、お前の望むアイツに」
女騎士「...もう遅いです、これ以上迷惑をかける存在であれば、アイツ自身が...
警備団長「アイツアイツじゃねぇよ、お前はどうしたいんだよ、お前自身はどうしたいんだ」
女騎士「...わかりません」
警備団長「元来人を見捨てるのが苦手なお前がな、雑兵を見捨てるなんて土台無理な話なんだよ、盗賊でさえも見捨てられなかったお前がな...あの盗賊ら、俺だったら殺してるな」
女騎士「な、何故ですか」
警備団長「荷台見てねぇのか?アイツらガキ二人を無責任に死なせてるぜ、雑兵の奴はそれを見て、盗賊らは許さなかったんだろうな」
582
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/26(土) 01:27:31 ID:MWO3O6Js
女騎士「その件は知っています、ですがそれは賊に身を落としてしまった我が軍の兵士達を見捨てる理由にはなりません」
警備団長「いや、賊に身を落としたならまだしも、外道に走った連中はとことんまで見捨て、斬り捨てるべきだな、国民への示しなんぞは犬に食わせりゃ良い話だがな、アイツらがガキ二人にした仕打ちは...カルトの連中と同じことをしたんだぜ?お前はカルトの連中をどうした?」
女騎士「...斬り捨てました」
警備団長「だからまだ甘ちゃんなんだよ、外道共を切り捨てない代わりに雑兵を切り捨てる...何度も言うが悪手とは思わないが、お前のその考えはひとっつも分からん、アイツは外道に染まったのか?」
女騎士「...」
警備団長「バカなだけだった、アイツの働きっぷりは外道とは思わねえがな、まぁ苦労を鼻にかけるのは腹立つけど」
女騎士「...そんな事言われても、どうすればいいんですか...」
警備団長「そりゃお前次第だ、切り捨てるなら切り捨てろ、俺にゃ何の関係もない」
583
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/28(月) 03:20:57 ID:QIj3dm7I
警備団長「まぁ幸いなのはどちらに転んでもみんなお前の味方だってことだな、よくよく考えろよ」
女騎士「...」
_
__
584
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/29(火) 22:12:44 ID:WVv9zpfk
__
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『 OPEN 1730〜1900 』
雑兵「よし、後は寝るだけだ」
課業終了30分後に風呂を開ける、この仕事も三週目に突入した、定年までこれか?てか定年っていつだ。
お陰で時間まで、思考を停止させる術を編み出してしまった。
雑兵「さぁて...事務所に行きますかな」
見習い騎士「すまない、浴当の方は...あ」
雑兵「あ...どうもっす」
585
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/29(火) 22:19:08 ID:WVv9zpfk
雑兵「で...競技会が長引くから風呂の時間延長してくれって事か、いいよ、最後上がるやつは俺に言うようなしてくれ」
見習い騎士「すまんな、ところで...」
やめろ、何も聞いてくれるな。
雑兵「聞き及んでんじゃねぇのかよ」
見習い騎士「あ、あぁ...だが他の団員の噂話程度でしか聞かなかったから眉唾物の話しだと思ってな」
雑兵「そうか、まぁどこまで内容が合ってるか分かんないけど概ねその内容で間違い無いと思うぜ」
見習い騎士「しかし、君はこの前の盗賊の討伐で多大な戦果を治めたじゃないか」
雑兵「一体どこまで噂話は広がってんだよ」
586
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/12/30(水) 21:32:51 ID:bra77rGs
見習い騎士「う〜ん、騎士団長に楯突いて...浴当に一生上番?」
雑兵「何一つ間違ってねぇよこの野郎」
見習い騎士「間違っていると言ってくれ、しかし何で楯突いたんだ?」
雑兵「うーん、方向性の違い?」
見習い騎士「売れない音楽家みたいな事を言うな...まぁいい、よろしく頼む」
雑兵「あぁ」
一週間ぶりに人と会話した、こんなにも嬉しく楽しい物だとは思わなかった。
587
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/03(日) 21:50:24 ID:nld2PlrU
見習い騎士「勇者様、本日の競技会は見事な剣捌きでした」
勇者「そう?いやーみんな強かったねぇ、さすが姉ちゃんの騎士団だよ」
見習い騎士「本当です、しかし私なんかの錬成のため最後まで残って下さって...誠に感謝します」
勇者「歳も近いんだからそこまで改まらないでさ、気楽に行こうよ」
見習い騎士「しかし...」
勇者「まっ、裸の付き合いでもしましょうや〜」コチョコチョ
見習い騎士「うひぃっ...!や、やめてくださいよ〜」
_
__
588
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/04(月) 01:26:56 ID:qprksynM
__
_
カポ-ン...
勇者「いや〜...普段は水浴びで済ませてるけど、風呂もいいもんだねぇ〜」
見習い騎士「ゆ、勇者様...つかぬことお伺いするのですが、雑兵って」
勇者「...最近見ないから、いつも通りだよ、あいつ勝手にどっか行くもん」
見習い騎士「勇者様は噂とか聞かないのですか?」
勇者「あまり隊員とか、騎士団の人と話さないから...分かるの?」
見習い騎士「はい、最初は風の噂だったのですが、浴当に上番してます」
勇者「マジで?確かなの?」
見習い騎士「はい、浴場の延長に行った時に雑兵が」
勇者「...上がったら行くんだよね」
見習い騎士「は、はい」
見習い騎士(勇者様、怒ってるのかな...)
589
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/04(月) 01:27:33 ID:qprksynM
__
_
カポ-ン...
勇者「いや〜...普段は水浴びで済ませてるけど、風呂もいいもんだねぇ〜」
見習い騎士「ゆ、勇者様...つかぬことお伺いするのですが、雑兵って」
勇者「...最近見ないから、いつも通りだよ、あいつ勝手にどっか行くもん」
見習い騎士「勇者様は噂とか聞かないのですか?」
勇者「あまり隊員とか、騎士団の人と話さないから...分かるの?」
見習い騎士「はい、最初は風の噂だったのですが、浴当に上番してます」
勇者「マジで?確かなの?」
見習い騎士「はい、浴場の延長に行った時に雑兵が」
勇者「...上がったら行くんだよね」
見習い騎士「は、はい」
見習い騎士(勇者様、怒ってるのかな...)
590
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/04(月) 01:33:33 ID:qprksynM
雑兵「...」
『浴場勤務5箇条
浴場清掃に終わり無し
常に湯船を清潔に
常にアカを落とすべし
水虫は国家の天敵
常に旺盛な向上心を持て』
雑兵「…」
ガララッ!
雑兵「うおっ、見習い騎士入る時は入室要領をだな...」
勇者「…」
見習い騎士(ごめん雑兵、言っちゃった)
雑兵(初めてアイコンタクトが分かったよ畜生め)
591
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/04(月) 02:01:25 ID:qprksynM
彼女は怒りと悲しみの表情でこちらに近付いてきた、怒りの理由は見当がつく、しかしどうしようもないだろう、その瞬間彼女の腕が振り上げられた。
雑兵「...なんd
勇者「...ッ」
振り上げた手は綺麗に頬に当たった、しかし痛みはあまり感じなかった、やり場のない怒りだったのだろうか。
雑兵「…ごめん、多分俺お前の姉ちゃんに酷い事言っちまった」
勇者「ホントだよ...お陰で姉ちゃん...すっごく辛そうだもん...」
雑兵「...なんで辛そうなんだよ、騎士団長だろ...付配置にするって警備団長から言われたよ、直々に」
勇者「姉ちゃんだからだよ...っ!優しくて、すぐ抱え込んで...」
見習い騎士(か、帰ろっか?)
雑兵(う、うん、ちょっと席を外してほしいです)
アイコンタクトが初めて成立した、見習い騎士は用事があると出ていった。
592
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/04(月) 17:40:44 ID:qprksynM
雑兵「...お前はどうすんだ、仲介に来ましたって感じでもなさそうだが」
勇者「うん、仲介はしないよ...雑兵の敵にもならないし味方にもならない」
雑兵「そんなこと言う為に来たってのか、態々こんなとこへ?」
勇者「うん、だっていつまでも助けてもらえるって思われても困るし、雑兵自身で解決する問題に
巻き込まれたくないから」
雑兵「...ッ」
何言ってやがる、助けを乞うだと?な、なんで俺がお前なんかに、お前らなんかに...
雑兵「った、助けなんかとっくの前に...諦めて...」
勇者「...じゃ、そう言う事、あまり姉ちゃんの周りをちょろちょろしないでね」
593
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/04(月) 17:51:46 ID:qprksynM
雑兵「っこ、こっちから願い下げじゃボケが...くそっ...」
散々な言われようだ、体がフルフルと震えている...胸の隅にあった望みが立ち消えた、しかし
認めたくない、助けを望んでいたなどと。
_
__
594
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/04(月) 20:04:18 ID:qprksynM
__
_
勇者から直々にお前は助けぬとのお言葉を賜り早一週間が過ぎた、仕事の内容は相変わらずで浴場の主と化してきた。
PXに行くのも怖くなってきた、食堂には閉まる少し前の時間に行き人の少ない時間を選んでいる、人に会うのが怖いのだ。
雑兵「...」
これでは前の人生となんら変わりのない、違うとすれば金を貰って飯をタダで食ってるだけの事、プー太郎の時代は窓際族の人間は嘲笑していた対象だった、今思えばどんな立場で嘲笑していたのだろうか。
雑兵(一言も話さない日が何日も続くと喋れるか心配になってくるな)
出る声といえばため息くらいだ、もう、本当に気が狂いそうになる。
595
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/05(火) 03:45:06 ID:i22fyR1Y
この場合何をすれば良いのだろうか、謝ればいいのか?しかし誤って済む問題ならこんな所へは飛ばされないだろう。
雑兵「どうすりゃいいんだよクソ...」
_
__
596
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/05(火) 03:48:47 ID:i22fyR1Y
__
_
勇者(どうしようどうしようどうしよう...)ブツブツ
勇者(完璧に見捨てたと思われたよね絶対、そりゃそうだよどこにも救いよう無いもんあの言葉じゃ)
勇者(姉ちゃんの気持ち全面に押し出し過ぎた、雑兵も辛いのに...コレじゃ雑兵死んじゃうかも知れない...)
勇者(やば、なんか吐き気してきた)
女騎士「...さっきから何ぶつぶついってるの?」
勇者「え...?あ、あはぁ何でもないよ姉ちゃん」
597
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/06(水) 00:39:17 ID:GqaK0FpE
女騎士「...雑兵の所にいったの?」
勇者「...うん」
女騎士「...アイツなんか言ってた?」
勇者「姉ちゃんには悪いと思ってるって、それだけ」
女騎士「そっか...でもわざわざ勇者が行くこと無かったのに...」
勇者「だって姉ちゃんだけ辛い思いさせるのやだもん、姉ちゃんは雑兵の為に怒ったんでしょ?好き好んで見捨てた訳じゃないんだよね?」
女騎士「...うん」
勇者「じゃあいつか仲直りしてさ、三人で遊びに行こうよ、フィッハーから帰る時姉ちゃん前言ってたじゃん」
女騎士「うん...何とかしてみるよ」
勇者「姉ちゃんと仲直りするまで雑兵の事は放っておくから、姉ちゃん頑張ってね」
女騎士「...ありがとう」
_
__
598
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/06(水) 00:46:16 ID:GqaK0FpE
__
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雑兵(タバコ吸ってみました、不思議と吸えるものですね)
勇者からの放置宣言を受けて二週間が過ぎた、暇すぎてタバコを買った、本当は欲しくなかったがPXに行かねば流石に小腹も減る、相当勇気を出したが。
雑兵「スゥ...はぁ...美味いもんじゃねえな」
肺に煙を入れるのにも慣れ普通に吸えるようになった、しかしこの光景を知り合いにでもみられたら...
ッバァン!!
殿下「雑兵...っ!久しぶり!!」
雑兵「うおっ!ビビったぁ!殿下?何してんだよ」
殿下「雑兵がここにいるって聞いたから、エルフと来たんだよ」
エルフ「っよ、久しぶり」
雑兵「...ッ」
いかん、涙が出てきた、何よりも忘れられていないのがとても嬉しかった。
殿下「雑兵...?」
雑兵「いやっ、タバコの煙が目に入って、すぐ消す、子どもに悪影響だからなっ!」
599
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/06(水) 01:39:48 ID:GqaK0FpE
雑兵「んで、オムエンにゃいつ行くんだ?」
殿下「周りの人からは近いうちにってさ、いつかは教えてくれないんだよね、あ、でもね?オムエンにいる魔物達の代表みたいなのが明日来るってさ!」
雑兵「オムエンの?」
エルフ「オムエンには様々な種族がいてな、エルフ族は勿論ドワーフにゴブリン...サキュバスとオークも居たかな?それらの代表が明日来るんだ」
雑兵「オークってこたぁ...オークジェネラルか?」
エルフ「知ってるのか?」
雑兵「あぁ、国境警備隊に居た時にな、ちいと世話になった」
エルフ「あぁあの時魔物がどうこうって言ってたが、そういう事なんだな」
殿下「雑兵もこんな所に居ないでさ、僕と一緒に行こうよ」
雑兵「...ありがとな、こんな子どもに気ィ使わせちまったな」
殿下「むぅ...もう子どもじゃないよ!」
雑兵「ごめんごめん、行けたら行くわ」
エルフ「それ行かないやつの常套句じゃないか...」
雑兵「行きたくても行けねぇんだよ...うわさはちいっと聞いてるだろ」
600
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/06(水) 01:47:41 ID:GqaK0FpE
エルフ「...まぁちょっとは、びっくりしたよ本当に」
雑兵「俺が一番びっくりしてる、調子に乗り過ぎたな俺も」
エルフ「ここ最近じゃお前程の働きを見せる兵卒なんか居ないのに」
雑兵「可愛がってもんが無いんだよ俺にゃあ、多分」
エルフ「バカなことを...殿下、そろそろ戻りましょうか」
殿下「えー...」
エルフ「勉強の途中ですよ?ごねるんだったらおやつ抜きにしますからね」
殿下「うそうそ!やる、やります!じゃあね雑兵、また来るよ」
雑兵「あぁ、楽しかったよ、勉強頑張れな」
エルフ「雑兵、ありがとね...でもね、雑兵がどんな立場でも味方は沢山いるってことは忘れないでね」
雑兵「...ッあぁ、申し訳ねぇ」
今までどれだけの人に助けられたのか、今になってわかった、天使、上等兵さんに兵長、勇者や、特に女騎士にも...たしかに心配を無碍にして死にに行くって言うなんて酷い態度だ、お膝元に置かれたと言う事は、俺の負担を少しでもを減らすと言う事だったのだろう、多分
601
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/06(水) 01:49:57 ID:GqaK0FpE
雑兵「俺バカだなぁ、やっぱ」
ひたすらみんなに謝りたい、女騎士や勇者に、俺からアクションをおこなさねば行けない、只管土下座するか無いだろう。
取り敢えず明日はオークジェネラルに会えたら会おう
_
__
602
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/06(水) 23:18:24 ID:ZCtcsigc
__
_
翌日の首都は慌ただしかった、隣国のオムエンを廃墟にまで追いやった魔物の代表が城に来るのだ、見物する兵隊、警備する兵隊、人間のごった煮のようだ。
サキュバスクイーン「あらあら...こんなに沢山の人間に見られちゃったら緊張しちゃうわね?」
ゴブリンキング「っち...しちめんどくせぇよ野次馬ってのは...ちったぁ仕事しろってんだ」
オークジェネラル「無理を言ってやるな、人間達にとっては物珍しい異種族だ」
ドワーフ王「さっさと済ませて鍛治仕事を終わらせたいもんじゃ、のうエルフの族長よ」
エルフ族長「まあ、ちいっとは羽を休め、ドワーフ族と言うのは働きすぎだ、時にオークジェネラルよ、なぜご子息を?」
オークジェネラル「前に助けられた人間のことを忘れられぬようでな、王都は行けば会えると駄々をこねて...」
オーク「♪」
サキュバスクイーン「相変わらず可愛い、お姉さんと一緒に観光しましょうね?」
603
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/07(木) 00:39:06 ID:CnC0B.zE
「ようこそおいで下さいました、殿下はこちらでお待ちになっています」
オークジェネラル「うむ、申し訳ないが暫し子供を預かって貰いたいのだが...」
「ご子息のお預かりですね、掛け合ってみますので会議場にてお待ち下さい」
サキュバスクイーン「お父さんと離れて寂しいわよね?いい子にしてるのよ?」
オーク「プギッ!」
オークジェネラル「サキュバスクイーンよ、我の息子だぞ」
ドワーフ王「っだははは!子どもとは可愛いもんじゃ!」
ゴブリンキング「ドワーフのおっさんうるせぇって」
エルフ族長「まあまあ」
604
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/07(木) 00:41:07 ID:CnC0B.zE
「暇な隊員はいるかな」
「暇な隊員?さぁて...ここは警備の者しかいないからなぁ...」
「隣の浴当に預けりゃいいんじゃ無いすか、今の時間暇でしょ」
「そうすっか、アイツだけどこんくらいなら出来るだろ」
_
__
605
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/07(木) 00:47:53 ID:YXHYp.CE
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_
雑兵「全部聞こえてんだよてめぇ、誰が暇だこのどサンピン警備員、ぶっ殺すぞ」
「う、噂に違わぬ態度の悪さだな...!お前でもできる仕事だ、オークの子どもを預かれ!」
オーク「プギッ♪」テチテチテチ
雑兵「おっ!オークジェネラルの!元気にしてたかぁ?よーしよしよしっ!」
オーク「プギィッ♪プギャッ」
雑兵「久しぶりだなぁ、ん?お前まだいたの?仕事しろや」
「っく...兵卒の分際で...」
雑兵「あのおっちゃんで怖かっただろ?もう安心しろよ、ほらお菓子もあるぞ」
オーク「♪♪♪」
雑兵「ひゃ〜可愛い子だ、父ちゃん元気にしてるか?」
オーク「プヒッ!」コクコク
雑兵「言葉わかるのか!っかぁ〜偉いなぁお前は」ナデナデナデナデ
606
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/10(日) 00:47:56 ID:vRZCytpo
雑兵「お前の父ちゃんに会いてえな、でも俺なんかが言ったらダメなんだよなぁ」
オーク「?」
雑兵「いや、何でもねぇ、外出てみるか?」
オーク「プギッ!!」タタタッ
雑兵「ちょ、走ったらこけるぞ〜」
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607
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/10(日) 00:59:05 ID:vRZCytpo
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_
殿下「オムエンに赴き、人と他の種族が共存できる国を作りたいのです」
ゴブリンキング「人間と共存だ?冗談抜かして欲しくねぇなぁ、誰が1番先に被害被ったか...おい、お前らなら分かるだろ」
サキュバスクイーン「それは勿論分かっているわ?でも過去の歴史を見ても私たちから始めた戦争もあるのよ?」
ゴブリンキング「ッチ...」
ドワーフ王「ワシらは異なる種族と書かれる通り、異種の生き物じゃ、異種の物と言われておるワシらを人間が受け入れるか、そしてワシらは人間を受け入れるかじゃ」
エルフ族長「私は賛成だ、この王国では私たちの同胞も働いておる、その王国の後ろ盾なら私は信頼できる」
ゴブリンキング「元来俺らはよぉ、忌み嫌われる種族なんだよ、英雄物語じゃ人を襲い村を焼く...オークだってそう書かれてんだろ?」
オークジェネラル「無論把握している、しかし信頼できない人間が居るのなら、信頼できぬ同胞もいる、逆もまた然り...我は全面的に賛成しようと思う」
608
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/10(日) 01:08:01 ID:vRZCytpo
ゴブリンキング「俺だけかよ反対派はよぉ、確かにゴブリンの子分たちも人間の生活に憧れちゃあいる、しかしそりゃ一部だ、遺恨ってのは深えんだよ」
オークジェネラル「それを諭すのが同胞たちの代表である我々じゃないのか?」
ゴブリンキング「...」
サキュバスクイーン「私的には、エルフ族長が賛成なのは少し驚きなのだけれど?」
エルフ族長「何故だ?」
サキュバスクイーン「ほら、あのカルトの一件よ、こちらの王国に住んでた、ほかのエルフ族のお姫様...それに同胞たちも...相当な怒りようだったわよ?怒るのはすごくわかるけど...」
エルフ族長「...確かにそれは怒り狂った、しかし聞いた話があってな」
ドワーフ王「檻に一緒に閉じ込められた兵士...あの者が身を挺しながら彼女らを助けようとしたという話じゃな?」
エルフ族長「その通り、他族の為に怒り狂い、涙を流した...そして助けようとした、私は人間という生き物はなんて慈悲深く、興味を持てる部族かと感動すら覚えたよ...ほかのエルフ族も同意見だ」
609
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/10(日) 01:15:13 ID:vRZCytpo
ゴブリンキング「そんな骨のある人間が多けりゃ良いがな...」
殿下「その兵士の話...もしかして雑兵の話かな...」
エルフ族長「知っておられるのなら是非御礼を申したいのだが」
殿下「そうですね、確認してみましょう」
「雑兵なら只今外出てオークジェネラルのご子息と...」
殿下「呼んできてくれるかな?」
「御意」
610
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/12(火) 01:01:14 ID:xcluM3GE
雑兵「ど、どうもっす...」
殿下(雑兵、緊張しすぎだよ)
雑兵(緊張しねぇ訳がねぇだろ...)
エルフ族長「君が件の兵士か、同胞のために涙を流し、身を挺してくれて本当にありがとう、エルフ族を代表して御礼申し上げる」
雑兵「そ、そんな、ですが結局は救えませんでした...」
エルフ族長「だが、救ってくれた同胞もいるだろう?」
雑兵「...あぁ、エルフの事ですか」
エルフ族長「そうだ、君のような人情溢れる人間がいてくれたからこそ彼女は救われたんだ、そして彼女達もまた今際に絶望感だけを味合わずに済んだのだ...」
雑兵「...」
611
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/12(火) 01:09:56 ID:xcluM3GE
雑兵「そう言ってくれると...励みになります」
エルフ族長「オークジェネラルも何かあるのだろう?」
オークジェネラル「うむ、兵士よ、改めて申し上げる、我が子を助けてくれて本当にありがとう、あの時我が息子を見つけてくれなければ間違いなくカルトの餌食となっただろう」
雑兵「い、いや、それは本当に偶然ですから」
オークジェネラル「偶然でも助けてくれたことは事実だ、御礼を申し上げない理由にはならん、それに敬語はやめてくれんか?あの時は確か敬語じゃ無かったはずだ」
雑兵「...そりゃ世間知らずも甚だしかったからな...ありがとよ、なんか元気出た」
オークジェネラル「うむ、同胞にも良く伝える」
サキュバスクイーン「あらあら...お話を聞くだけでもカッコいいわ?二人でお話ししない?」
雑兵「ど、どちら様でしょうか...」
ドワーフ王「だぁっはっは!!早速サキュバスに気に入られちまったな若造!精力剤は沢山飲んどけよぉ!」
雑兵「さ、サキュバスさんですか...お気持ちだけ受け取ります...」
ゴブリンキング「っと、そろそろじゃねえか、国王と騎士団長が来んの」
雑兵「き、騎士団長?うっえやべ、か、帰ります!」
612
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/12(火) 18:32:28 ID:uPURho.6
読んでるよ
613
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/16(土) 02:18:44 ID:2yNUyAyc
殿下「雑兵、逃げたらダメだよ」
雑兵「に、逃げるなんてそんな...」
なんで知ってる顔で言いやがる、真剣な眼差しで見つめられては逃げようが無い。
殿下「雑兵なら大丈夫だよ、僕に居場所をくれたんだもん」
雑兵「…」
ガチャ
国王「殿下よ、話は進んでおるかな?」
殿下「国王陛下、やはり共存するには相互の理解が必要だと実感しました」
国王「そうだとも、人間に考えがあるのと同じ、オーク、ゴブリン、エルフにドワーフ...それにサキュバスの全員に考えがある...参加されている皆様、我が国へようこそおいで下さった」
614
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/16(土) 02:29:09 ID:2yNUyAyc
女騎士「…」
何故いるなんて顔でこっちを見るな、俺が聞きたいくらいだ。
エルフ族長「ビギニングの王よ、まず国王と貴国の兵に御礼を申し上げます、彼は我がエルフ族の悲劇に涙を流し、身を挺しながら希望の光を与えようと尽力した立派な兵士だ」
国王「ほう...君が件の兵士だな、盗賊の討伐は見事な戦果を納めたと聞く、まぁ喧嘩は良くあることじゃ、ワシも家臣と喧嘩を良くする...のう?騎士団長よ」
女騎士「は...お恥ずかしい限りです」
雑兵「あ、いや、いえ...俺...いえ自分の浅はかな...意地がその...」
ゴブリンキング「へぇ〜上の人間に楯突いたってぇのか、それで骨がある訳だ...わぁったよ、ゴブリンの怒りは俺が納めてやらぁ」
オークジェネラル「どういう心変わりだゴブリンキング」
615
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/16(土) 02:33:33 ID:2yNUyAyc
ゴブリンキング「いや、別にどうってこたぁねぇ、面白そうだから共存してやるってだけだ」
サキュバスクイーン「あらあら、貴方も意地っ張りなのね?」
ゴブリンキング「う、うるせぇ」
エルフ族長「決まりですな殿下、我々と共にオムエンに光を灯しましょう」
殿下「はい、皆さま、オムエンを再び再興しましょう」
雑兵「じゃ、じゃあ自分は仕事があるので...」
女騎士(おい、後でお前に話がある)
雑兵(...なら浴場裏に来てくれ)
616
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/16(土) 02:35:51 ID:2yNUyAyc
国王「うむ...では失礼した、みなつもる話もありそうでな、陰ながらではあるが期待するぞ、兵士よ」
雑兵「っは、はい」
_
__
617
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/16(土) 02:48:33 ID:2yNUyAyc
__
_
頗る緊張するのは何故だろうか、何故コイツはここにいるのか、俺にサヨナラを告げたじゃ無いか、ダメだ色んな感情が溢れてくる。
女騎士「...」
雑兵「こ、ここが俺の今の職場だ」
女騎士「タバコ...」
雑兵「え?」
女騎士「タバコを吸うようになったのだな、何を考えているんだ?」
雑兵「い、いいだろ、いや、怒ってる訳じゃ...その...」
女騎士「...何故お前はあのとき最期の仕事と言ったのだ?」
最期の仕事、今まで仕事でも無いのに死戦を嫌でも潜り抜けさせられた、しかし死のうとは思わなかった、なのに何故あの時だけ。
雑兵「...達観してただけだ、嫌になってさ、あちこち異動して、でお前のお膝元みてぇなとこ行かされて、あーなんかもう疲れたなぁって感じで...」
女騎士「...お前は私や、勇者のお膝元は嫌だったのか?」
618
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/16(土) 02:50:48 ID:2yNUyAyc
雑兵「い、嫌じゃねぇ、今は偶然でも助けの手を差し伸べられたと思ってる...」
女騎士「あぁ...それは本当に偶然だ、人事参謀が嫌がらせで私の膝元に送ったのだ」
雑兵「嫌がらせって言うなよ、俺がまるでゴミみてぇじゃん」
女騎士「うるさい」
雑兵「うるさいって...」
女騎士「なぁ...もっと自信を持ってくれ、お前は...雑兵は誰からも誇れる仕事をした、私は何度も掛け合ったし、それこそ参謀連中に直訴もした、無意味な更迭はやめろと」
雑兵「…」
619
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/16(土) 02:57:27 ID:2yNUyAyc
女騎士「ねぇ...雑兵はどうすれば自信を持ってくれるの?」
今までの上官みたいな喋り方はなく、一人の人間として語りかけてくれる、あぁ...優しい人だ。
雑兵「自信を持ちたい...けどさ、俺こっち来る前なんか学校も行かずぷらぷらして...遊び呆けて最後にゃバカな死に方したんだ...いつかその性根が爆発しちまったら...」
女騎士「…」
雑兵「調子に乗れねぇ...怖いんだよ、みんなが大切にしてくれてたのは最近気付いた、でも性根が見られたら俺...」
女騎士「...前の世界にいたときの雑兵の事は分からない、確かに雑兵が言う通り褒められた人間じゃなかったのかもしれないけど...雑兵は確かに多くの人を助けて、助けになる働きもした、この世界ではそんな雑兵しか知らない」
620
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/16(土) 03:01:19 ID:2yNUyAyc
雑兵「...ごめん女騎士、お前の心配も、勇者の心配も無碍にしちまった...気付いたよ、お前らがいねぇと、助けて貰わねぇと俺ダメだ」
女騎士「...どうするの?」
雑兵「どうしよ...助けてくれ...」
女騎士「分かった、もう少し辛抱して...ね?」
雑兵「うん...」
_
__
621
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/16(土) 03:14:36 ID:tT3EbaoA
__
_
「騎士団長!流石に承諾出来ません!!何故あのような男を?!」
「今で側近など求めなかったではありませんか!!」
「側近にするのであれば副団長がいるではありませんか!」
副団長「皆の者静まれ、騎士団長の決めた事だ」
「しかし...っ!」
副団長「あの男の今までの働きを見ろ、見習う点も多々あるでは無いか」
女騎士「副団長ありがとう、私から話そう」
副団長「はっ」
622
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/16(土) 18:09:48 ID:pP/.nFPA
「万が一あの男を側近にし、我が王国の騎士団が国民と他部隊から侮辱されるような事態に発展してしまった場合はどうされるおつもりか!!」
「腹を切らせて詫びさせろ!!」
「そうだ!!」
副団長「静まれ無礼者共!!!騎士団長からのお言葉も聞けんのか!!」
「しかし...っ!」
女騎士「貴様らの不安や不満も分かっているつもりだ、私自身以前はアイツに不満を抱いていた、向こう見ずで自信過剰...上官には楯突く、聞くだけでも最悪な男だ」
「ならなぜ...」
女騎士「アイツの人情...と言えばいいかな、向こう見ずなのは人を助ける為、私に楯突いたのは被害を被った人々の為...そしてそれらのつもりに積もった不満を私にぶち撒けたのだ」
「それだけでもアイツを受け入れない理由ができます!騎士団長に楯突くなど...」
女騎士「いや...私も完璧な人間では無い、失敗もするし見逃す所も多々あった、そこを突かれたのかな...とても心に響いた事もあったよ」
「…」
女騎士「確かに気にいる方が可笑しいのかもな、だがアイツを助ける為の理由は幾つも思い浮かぶ、アイツは人を助け、エルフを助け、他種族の為に涙を流した、結果オムエン再興に大きな一歩を歩めたのだ、我々には成し遂げられなかっただろうな」
623
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/18(月) 00:49:23 ID:3BbAB.Bc
「…分かりました、騎士団長の意向に従います、最後に一つだけ聞きたいのですが」
女騎士「なんだ?」
「あの男に好意を寄せているのですか?」
女騎士「好意...?分からん、今まで好意を寄せた相手など居なかったからな、どんな気持ちが好意なのか見当もつかん」
「…そうですか」
副団長「騎士団長、あの男を騎士団の一員として鍛えなければならない点についてはご了承下さい」
女騎士「うん、ドンドンやってやれ」
_
__
624
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/19(火) 00:07:44 ID:Kk3iLemw
__
_
雑兵「お、俺が?!そっ、側近?!おおお前何やってんの??!」
女騎士「なんだ?不安か?」
雑兵「不満しかねぇわ!第一お前の取り巻き連中怖いんだよ!マジで!」
女騎士「その点については大丈夫だ、ちゃんとたしなめた」
雑兵「たしなめた?!じゃあみんなキレてたの?!ねぇ!そりゃキレるよ〜何処の馬の骨かも分からん奴がお前の側近だよ?!」
女騎士「男の癖にごちゃごちゃうるさいな、もう決まった事だ、それ以上文句を言ったら怒るぞ」
雑兵「いやっ、すみません、ですがね」
女騎士「いいから早くこの私物だらけの部屋を撤収しないか」
625
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/19(火) 00:14:08 ID:Kk3iLemw
やってくれた、遂に想像もしなかった事をコイツは淡々とやってくれた。
側近って何をするんだ、伝令?茶出し?無理無理伝令なんか頭悪過ぎて覚えられないし、お茶なんか自販機で買ったのしか飲んだ事ないし。
雑兵「ここが俺の部屋になるのか...」
部屋は分屯地にいた頃の営内と似ており、変わったところといえば台所と便所がついている事位だ。
思えば完璧に自分の部屋っていうのはなく、独立大隊は二人部屋、分屯地にいた時は一人だったが他部隊の人の私物がたくさん置いてあり、国境警備隊に関しては部屋もクソも無かった。
雑兵「私物少なくてよかった...」
また出ていくことがあるかも知れない、その可能性は大いにあるのだ。
626
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/19(火) 00:33:35 ID:Kk3iLemw
雑兵「...一服でもしますか」
不安は無限に湧き出てくる、しかしここへきてしまった以上はもう逃げたくない、あの騎士団長に恥ずかしいところ見られたし、何だよ助けてって。
雑兵「...スゥ...フゥ〜...」
しまった、灰皿をボイラー室に置いてきてしまった。
ガチャッ
女騎士「雑兵、荷解きは...って、居室は禁煙だぞ」
雑兵「あっすみません騎士団長」
女騎士「まったく、今どきタバコを吸う男はモテないぞ?」
雑兵「モテなくたっていいよ、お前や俺の大切な人らが息災にいてくれりゃそれで」
女騎士「...」
雑兵「な、なんか変なこと言いましたか?」
女騎士「はぁ...妹も苦労するなと思ってな」
雑兵「な、何に苦労するんだよ」
女騎士(言えるかバカ...)
女騎士「まずは業務内容を説明するぞ、ついてこい」
627
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/19(火) 21:32:47 ID:ZrZ1IaHw
女騎士「お前の業務は各書類の提出、私の部屋の書類整理、各種業務の調整に客へのお茶出し等だ以上」
雑兵「つまり雑用ってことなんだ...いや、雑用ですね」
女騎士「口の聞き方も気を付けろ、二人きりなら良いがな、団員や他部隊の連中に聞かれたら殺されるぞ」
雑兵「分かりました...って二人きりなら良いのかよ」
女騎士「今更敬語を使う間柄じゃないと思ってたが?」
雑兵「...ありがとよ」
女騎士「なんの、では早速だが作戦課にこの書類を、人事課にはこの書類を提出してくれ」
雑兵「了解です」
_
__
628
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/19(火) 21:41:14 ID:ZrZ1IaHw
__
_
「なぜ貴様が書類の提出をしているんだ?」
雑兵「はぁ、騎士団長に頼まれたので...」
「そうじゃない、なぜ貴様がここに存在しているという意味だ、簡潔に答えろ」
雑兵「騎士団長に呼ばれたので...それよりも忙しいので早く受け取ってもらえないでしょうか、嫌なら別に良いんですが」
「...寄越せ」
雑兵「確かに渡しました、失礼しました」
ガチャ バタン...
「あの男、なかなかの豪傑者ですね」
「騎士団長の真意が分からん...」
「でもあの男結構活躍してますよ、それこそ他の兵卒や...下手したら騎士団の団員よりも」
「そんな事は分かっとる、要は物言いが気に食わんのだ物言いが」
629
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/19(火) 21:43:57 ID:ZrZ1IaHw
雑兵「めんどくせぇ奴ら...」
下手すりゃ近場にいるからカルトよりも厄介な連中だ、信者なんてもんは怖気が走る。
警備団長「よぅ、小僧元気にしてるか?」
雑兵「は、はぁ、息災にやってます、では」
警備団長「まぁ待てって、話でもしながら一服しようや、タバコ吸い出したんだろ?」
雑兵「...はい」
630
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/23(土) 23:23:25 ID:swzATwh.
警備団長「結局、女騎士のお膝元ってぇ立場なんだな」
雑兵「言わんで下さい、それほど信用が無いんですよ」
警備団長「いやぁそんな事はねえと思うがなぁ、まぁ良いやそこいらは切磋琢磨して気付けや」
雑兵「そうっすね」
警備団長「さぁて次は勇者と仲直りって感じだな、どうすんの?」
雑兵「土下座して詫びるしかないでしょうよ、日本人の魂をぶつけるしか」
警備団長「アイツだって一応は日本人だが...日本人か、今思えば全てが懐かしい、そいえばお前産まれはどこだ?」
雑兵「広島です」
警備団長「広島か...俺も広島でな、妻と赤ん坊が市内に住んでた」
雑兵「住んでた...って事は」
警備団長「原爆でな、生死は不明だが市内のど真ん中に住んでて...疎開はしねえってなってよ」
雑兵「...」
警備団長「まぁ同郷同士仲良くしようや?」
雑兵「そうっすね」
631
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/23(土) 23:25:31 ID:swzATwh.
雑兵「じゃあ戻ります、また話聞かせて下さい」
警備団長「おうよ、あそうだ、タバコ臭いままで部屋入ったらあいつに怒られっぞ」
雑兵「...まぁ誤魔化しますわ」
_
__
632
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/23(土) 23:37:01 ID:swzATwh.
__
_
「ビギニングに攻め込むのですか...?」
「無論だ、皇帝の血族は絶やさねばならん」
「しかし国民は動くのでしょうか、みな内戦は収束の空気を流しております、それにもともと家臣を討てば良かっただけの運動だったのに...まさか皇帝陛下や皇后まで...」
「それは国民が無能だったから起こったのだ、我々の管轄ではない」
「...」
「立ち上がれば事を成せるという甘い蜜を知った以上、国民を口減らしせねばならん、それでビギニングを取れれば上々だ」
(...何を考えているんだこの人は)
633
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/24(日) 23:53:17 ID:cwsOfxss
「国民を今一度召集しろ、皇帝の血は根絶やしにせねばならん」
「...御意」
_
__
634
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/24(日) 23:58:26 ID:cwsOfxss
__
_
雑兵「戻りやした〜...」
女騎士「ありがとう...その顔...また何か言われたのか...?
雑兵「ま、まぁ言われたし思うところもあったしって感じの顔だ、こたえちゃいねぇから心配しないでくれ」
女騎士「周りの連中にもよく言い聞かせるからあまり心配するな、何があろうと雑兵は私の目の届く場所にずっと置くからな?」
雑兵「あ、あぁ...なんかヤンデレみたいで怖いな」
女騎士「ヤンデレ...?」
雑兵「いや、妄言だ忘れてくれ」
あの一件以来、どうも女騎士のお姉さん味というか、とても魂を擽られる喋り方をされましてとても困っている。
635
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/25(月) 00:02:33 ID:qbkSA0L2
雑兵(まぁちょい年上だから似合ってるんだよな、眼福眼福)
女騎士「暫くは何も無いから茶でも淹れて寛いでいてくれ」
雑兵「いや、何もないなら勇者に会ってくる」
女騎士「妹に...あぁ、とても怒ってたぞ、私の比じゃないくらいに」
雑兵「土下座で乗り切るさ、大和魂を見せつけてやる」
女騎士「であれば私も同行しよう、私がいれば話もわかりやすいだろう」
雑兵「いや男の覚悟をですね」
女騎士「うるさい」
雑兵「う、うるさいて...」
636
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/25(月) 23:41:17 ID:9DuynOrw
雑兵「わあったよ、どこまでも着いてこいよちくしょうめ...」
女騎士「なんだ?告白か?」
雑兵「っば...馬鹿!何言ってやがる、そもそもそう言うの興味ないって...」
女騎士「それなんだがな、私も身を固めないといけない歳になってきたし」
雑兵「歳ってほど歳じゃねぇだろ、まぁ良い人が見つかると良いな...」
遂にこの堅物の騎士団長も色恋を気にし始めたか、軍曹を気にしてるのかは分からないが、まぁ新しい恋に目覚めるのもいい事だ。
雑兵「まぁそうなりゃ応援するから
637
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/25(月) 23:42:17 ID:9DuynOrw
女騎士「応援...まぁ良い、まだ一押しが足りないからな」
雑兵(な、何言ってんだこいつ)
_
__
638
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/26(火) 16:57:27 ID:LvLw5Z6A
__
_
ビギニング城 情報・作戦室
参謀副官「ニプラスのスパイからの情報によると、早くても二週間...船団にて仕掛けてくるとの事です」
作戦参謀「国民がクーデターを起こして半年...殿下を匿ったから来るとは思ってたよ、上陸する場所は...まぁフィッハーだろうな」
参謀副官「すぐに国王に報告を...」
作戦参謀「まぁ待て...クーデター如き、上陸しても余裕叩ける...あの騎士団長に一泡吹かせてみねぇか?」
参謀副官「は?」
情報参謀「...確かに、あの女、件の兵卒を匿って、気に入らねぇな...あの皇帝のガキはあそこで殺させときゃ奴らも来ることは無かった」
作戦参謀「件の兵卒のお陰で、我が国にクーデターが上陸...フィッハーで暴虐の限りを尽くし騎士団が派遣されるも、既に手遅れ...ってぇシナリオだ、無論その兵卒を匿っている騎士団長にも責任を追求する」
参謀副官(外道...)ギリッ...
639
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/26(火) 18:24:21 ID:LvLw5Z6A
参謀副官「た、確かにあの兵卒は好き勝手やっておりました、しかしそれとこれとは話が...」
作戦参謀「人事参謀の件、聞いただろ?奴ぁ権力に物言わして人事参謀の顔に泥塗りやがった、ここで一回よ、あんま調子こいてっと将校連中はみんなお前についていかねぇって見せつけてやるんだよ、あのアマにな」
参謀副官「し、しかし...」
情報参謀「いいか副官、誰にもチクるんじゃねぇぞ?ここいらで我が王国軍は騎士団連中の掌の上で踊ってるだけじゃねえって分からせんだよ」
参謀副官「…わかりました、もう何も申しません」
参謀副官(腐ってる...)
_
__
640
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/26(火) 18:30:11 ID:LvLw5Z6A
__
_
勇者「…」ツ-ン
雑兵「…」
女騎士「…」
雑兵「あのですね、今回の件に関しましては、自分の不徳の致すところで...その、お姉さまに多大なご迷惑を...あれですね」
勇者「…」ツ-ン
雑兵「面目次第も御座いませんと言うかですね...いや申し訳ありませんって感じで」
女騎士「…プフッ!」
雑兵「な、何がおかしいんだよ...!」
勇者「っくっく...雑兵ってばバカじゃないの?」
雑兵「な、何だよ」
勇者「はぁ〜僕最初に言ったじゃん、敵にもならないし味方にもならないって、お姉ちゃんと雑兵の問題だもん、別に雑兵にだけ怒ってた訳じゃ無いし」
雑兵「え、あぁ....んん?」
641
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/26(火) 18:34:35 ID:LvLw5Z6A
勇者「まさか部屋入った瞬間土下座するなんて...びっくりするでしょ普通」
雑兵「それしか知らねんだ...」
勇者「まぁいいや!お姉ちゃんと雑兵が仲直りしたんなら、ぞ、雑兵もあまり困らせないでよね?」
雑兵「あ、あぁ...?」
勇者「…ちょっと雑兵席外してくれない?」
雑兵「…わかった」
バタン...
勇者「…ッヒッ...グズッ...」
女騎士「…勇者、ごめんね、心配かけて...最悪雑兵に嫌われるような事まで言わせちゃって...」
勇者「ううん...僕がやり...グスッたかったから...雑兵の為に...」
642
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/26(火) 23:43:32 ID:LvLw5Z6A
勇者「でも、雑兵嫌ってなくて良かった...死んじゃったらどうしよってずっと考えてた...」
女騎士「...勇者は雑兵の事は好き?」
勇者「え...うん...よく分からないけど...多分僕は雑兵の事が大好き、他の女の子と話ししてるの見てると胸がキュッて締め付けられる...」
女騎士「そっか...」
勇者「そう言うお姉ちゃんだって雑兵の事好きでしょ」
女騎士「私は...うーんよく分からない、年下で放って置けないのもあるし...でももう離れて欲しくない、また辛い思いを一人でさせたくない」
勇者「そしたら、お姉ちゃんのその気持ちは、僕と同じ気持ちだよ?雑兵の事が好きだから...」
女騎士「…そうなのかも知れないね、でも私はこの気持ちはまだ内緒にしとく、あいつ調子に乗るかもしれないし」
勇者「そうだね、僕も内緒にする、エッチなお店行かなくなるまでは」
女騎士「何やかんやでまだ行ってないと思うけど...」
643
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 17:34:20 ID:1yhUyTms
あんな辛そうな顔、流石の俺でも分かる、大事な人間を傷付けてしまったんだ、どう償えば良いのだろうか。
雑兵「はぁ...帰ろう」
今はただ皆に心配をかけないようにするしかない。
_
__
644
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 19:18:40 ID:1yhUyTms
__
_
雑兵「つーか、休みが欲しい」
入隊してから、今までまともな土日ってぇのを過ごした試しがない、確かあるはずだ。
雑兵「女騎士に掛け合ってみるかぁ...ちょっと疲れたもん〜」
参謀副官「おい、貴様」
雑兵「...何でしょう」
参謀副官...書類の提出や会議で何回か見た事がある、この国の参謀連中は騎士団長をあまりよく思ってないのか尊大ぶった態度を取りやがる。
参謀副官「ついて来い、話がある」
雑兵「?」
645
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 19:23:33 ID:1yhUyTms
少し歩くと城の裏庭へ出た、こんな所に呼び出されてちょっと怖い。
参謀副官「ここなら誰も来ないな...」
雑兵「何か...」
参謀副官「貴様...いや、雑兵に頼むのは非常に忍びない、元は俺がしっかりしていれば済む話だったんだが...」
雑兵「ど、どう言うことですか」
参謀副官「参謀連中は腐ってやがる、お前も会議の席で死ぬほど嫌な顔をしてるからそう思うだろ?」
雑兵「は、はぁ...まぁ」
ここで正直に答えたら確実に女騎士に迷惑が掛かるだろう...しかし何か伝えたそうだ。
参謀副官「ここだけの話だが、この二週間のうち、確実にニプラスからクーデターが船団で攻め込んでくる」
雑兵「攻めてくるって...まさか殿下の奴の命を...」
646
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 19:27:34 ID:1yhUyTms
参謀副官「あぁ、奴らの狙いは、お前が連れてきてしまった殿下の命だ」
雑兵「連れてきてしまったって...」
参謀副官「俺ぁつくづく自分が非情な人間になっちまったと思うよ、子供の命を助けたお前を非難してるなんてな...」
雑兵「で、本題はなんだ...いや、何でしょうか」
参謀副官「俺にゃもうタメ口でいい、機密をペラペラ喋っちまってる時点で将校の道を外れちまった...参謀連中はな、この件を内密にして、フィッハーを攻め込ませるって算段なんだ」
雑兵「はぁ?それが何の得になるんだよ」
参謀副官「狙いは、お前を引き込んだ騎士団長の失脚だ」
雑兵「?!」
647
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 19:49:54 ID:1yhUyTms
参謀副官「お前が殿下を助けたお陰で...クーデターは来る必要のないフィッハーに上陸し、フィッハーで暴虐の限りを尽くさせる」
雑兵「はぁ?何考えんだよ参謀連中は...しかし...何でその情報を」
参謀副官「作戦情報課は密かにスパイを送ってんだよ、国王は勿論、騎士団長にさえも言ってねぇ、確かな情報筋だ」
雑兵「なんかインチキ臭え連中だな...」
参謀副官「いいか、今王国の将兵で騎士団長に最も近いのはお前だ、騎士団長に何としてでも伝えてくれ、頼む」
雑兵「まて、女騎士が俺の言葉を信用すると思うか?曲がりなりにもアイツは参謀連中にゃ信頼してる」
参謀副官「じゃあお前がどうにかできるのか?自分の立場を分かっているのなら尚更伝えるべきだ」
648
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 19:57:10 ID:1yhUyTms
雑兵「…参謀連中が女騎士を信用してねぇって俺の口から伝えろってのか、それこそ無理だ...アイツに辛い思いさせろってのか?叩くべきは参謀連中だ」
参謀副官「奴らを叩ける証拠がねぇんだ、この情報だって非公式だ、統帥権の無視も甚だしい行いだ...」
雑兵「...わぁった、俺がどうにかする、だがお前の力も必要だ」
参謀副官「お前がどうにかするって...」
雑兵「フィッハーにいたカルト、まだ残党は残ってんだろ?お前らは忘れてそうだが」
参謀副官「忘れる訳ねぇだろ、舐めんな」
雑兵「そいつらの残党を狩るって名目でフィッハーに派兵すりゃ良い」
参謀副官「お前...派兵ってぇのは一朝一夕で決まるもんじゃねぇんだぞ」
雑兵「俺がフィッハーに行く、カルトを炙り出して、襲わせりゃぁ嫌でも動かざるを得ないだろ、これでも俺ぁ騎士団長の側近だぞ?」
649
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 20:10:31 ID:1yhUyTms
参謀副官「お前...下手すりゃ死んじまうぞ...それにどうやって襲われたって...」
雑兵「フィッハー分屯地までおめおめと逃げるさ、創傷負ってりゃぁ目立つさ、後は内線の力を使うんだよ、あれ結構使えるんだぜ?」
参謀副官「もし死んだらどうすんだって」
雑兵「そん時は、厄介払いができてお前んとこのトップはウハウハだろ?そして正義感の強い騎士団長が派兵して...どちらに転んでもwin-winだ」
参謀副官「お、お前...死んじまうぞ」
雑兵「死にたくはねぇがな、今まで迷惑をかけたツケは払わねぇといけねぇ、今がその時だ」
参謀副官「...強いなぁお前は、だが緊急時にゃすぐ派兵出来るよう調整してやる、絶対に生きて帰れ、そして騎士団長にしばかれろ」
雑兵「そ、それは嫌だな」
650
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 20:17:43 ID:1yhUyTms
雑兵(さぁて...後はフィッハーにどうやっていくかだが...)
雑兵「っつー訳でさぁ、休みが欲しいんですよ」
女騎士「休み?あぁ...確かに雑兵ずっと働き詰めだったから...どのくらい?」
雑兵「一週間程」
女騎士「一週間...まぁ雑兵の働きならその位貰ってもバチは当たらないか...いいよ、でも危険な所には絶対に行かないこと、約束して」
雑兵「あ、あぁ...」
また心配を掛けてしまった、つくづく優しい人だ...参謀連中の思惑を話しゃすぐに済む事だが...俺が撒いた種をまたみんなに摘ませてしまう、女騎士は本当に参謀連中を信用している、それ故にアイツらに裏切られていると分ったら...俺の心配事も、自分の事も背負い込ませてしまう。
651
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 20:21:36 ID:1yhUyTms
雑兵「これまでありがとな、女騎士...勇者は勿論、お前が居なかったら俺ダメだったよ」
女騎士「な、何いきなり?まるで死にに行くような言い方しないでよ」
雑兵「いや、果てしない感謝をちょこちょこ出してかないと俺破裂しちまうからな、これからも出していくから」
女騎士「本当にやめて、心臓に悪い...真剣な顔で言うから...今は比較的平和なんだからね?」
雑兵「あぁ、平和が1番だな」
ごめん女騎士、帰ったら沢山しばき回して欲しい。
652
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 20:22:25 ID:1yhUyTms
雑兵「これまでありがとな、女騎士...勇者は勿論、お前が居なかったら俺ダメだったよ」
女騎士「な、何いきなり?まるで死にに行くような言い方しないでよ」
雑兵「いや、果てしない感謝をちょこちょこ出してかないと俺破裂しちまうからな、これからも出していくから」
女騎士「本当にやめて、心臓に悪い...真剣な顔で言うから...今は比較的平和なんだからね?」
雑兵「あぁ、平和が1番だな」
ごめん女騎士、帰ったら沢山しばき回して欲しい。
653
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 20:27:08 ID:1yhUyTms
次の日、空はまさしく青天の霹靂で、たった一人の戦いにゃ持って来いの日だった。
雑兵「剣は置いてって...ちっこい短剣だけありゃ良いな」
勇者「雑兵聞いたよ?休みなら僕とどっか行こうよ」
雑兵「あぁ〜ごめんな、ちょっとフィッハーに用事があってさ」
勇者「用事?なら一緒に行くよ!僕も暇だし」
雑兵「いやっ、一人でいかねぇとダメなんだ、分ってくれるか?いや分ってくれ」
勇者「むぅ...何でさ」
雑兵「何でって...」
勇者は強いと言えど年下で、兄弟がいりゃあ妹でも可笑しくない、女騎士も勇者も今は巻き込みたくない...勇者だって色々と動いてるんだ、俺も動かないとダメなんだ。
654
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 20:35:01 ID:1yhUyTms
もう無駄な心配を掛けたくない、俺もお前らの役に立ちたい、いろんな欲が渦巻いてきた。
勇者「また二人でどっか行こうっていったじゃん?僕結構お店調べたんだよ、それこそフィッハーも!」
雑兵「あ、あぁ、すげぇな、また今度行こうな?」
勇者「むぅ〜邪魔しないから、ね?あ、でもエッチなお店行くのはダメだよ?それは阻止するから!」
ブチッ
雑兵「そんなんじゃねぇ!!!てめぇ邪魔だから来るなってんだよ!!!」
勇者「…っ?!じゃ、邪魔...?え...?そんな...」
雑兵「っは〜...っは〜...あ...ち、ちが...」
勇者「邪魔ってなんで...やっぱ嫌って...」
雑兵「違う、違う今のは...ごめん...」
655
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 20:47:16 ID:1yhUyTms
バカだ、あり得ない、心配かけたくない相手になんてことをダメだ謝ろう、そして連れて行ってやろう、よく考えりゃ二馬力なら、いやそれ以上の力を持ってる勇者なら俺よりも...
勇者「フッ...ウエッ..ヒッグ...雑兵...ごめんね...ごめんなさいィ...」
雑兵「...」
あぁ、また泣かせてしまった、周りの視線も気にならない位にまた後悔の念が湧き出てくる。
「ゆ、勇者様が泣いてっぞ...」
「やっぱあの男...」
雑兵「勇者...ごめん、違うんだ、その...」
勇者「ごめんねぇっ...!あんな言葉言っちゃったからっ...ヒッグ...うぇぇん...」
雑兵「っ...ごめん!!」
逃げてしまった、俺の為に二人は心配して近くに置いてくれたのに、恩人なのにこんな酷いことを。
雑兵「っはぁ...!っはぁ...!!」
首都の外まで逃げてきた、さらに馬鹿だ、馬車を使わなけりゃ歩いても二日は掛かる、時間は無い。
雑兵「クソ、要領が悪い!こっそり忍び込んで...」
656
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 20:55:03 ID:1yhUyTms
嘘だろ、馬が向かってきている、誰が乗っている?憲兵じゃねぇ、誰だ?
雑兵「...うおっ、マジかよ」
女騎士とエルフだ、確実に死ぬ程怒ってる。
雑兵「クソッ!クソ!!」
迷惑をかけまいと思ってまた迷惑をかける悪循環だ、何も出来ないくせに何かしようとして、無能な働き者だ。
女騎士「雑兵...っ!雑兵!!待ちなさい!!!」
エルフ「雑兵!止まって!!話を...!!」
雑兵「くっ来るんじゃねぇ!来るんじゃねぇよ!!もうお前らに助けらてばかりじゃ嫌なんだよ!!!帰れって!!」
騎士団で最高に速い馬だ、逃げれるわけが無い、参謀副官ごめん、早速破綻しちゃった。
女騎士「っはぁ〜…っはぁ…」
657
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 21:04:24 ID:1yhUyTms
エルフ「あんたねぇ...!勇者様に土下座して早々何やってんのよ...!!」
雑兵「っばか!帰ってくれ!たの ッバチ-ン!!!!
雑兵「っぐぁっ!!」
凄い力のビンタだ、口の中血の味がする。
女騎士「バカは貴方よ...!!私たちが心配して...っ!!膝下に置いても貴方は...!!そんなにみんなが嫌いなの?!貴方は気付いたんじゃないの!!?」
雑兵「っちげぇよ!!寧ろ大好きだよ!!だから!!」
女騎士「だから何!?貴方の大好きな私の妹を泣かせてまで、フィッハーに行く用事ってなによ!!」
エルフ「ちゃんと理由を説明して雑兵、何か考えがあるんでしょ?」
雑兵「...ックソ...クソ...」
658
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 21:11:18 ID:1yhUyTms
女騎士「助けてくれって言ったじゃない...!貴方は十分人々を助けたのよ...?!だから私たちは貴方を助けたのよ...!自分の身だけは置いてけぼりにして...!人ばかり心配してっ!バカ!バカァ...!」
雑兵「...な、泣いてんのか...?」
エルフ「そりゃ泣きもするって...なんだもかんでも一人で背負い込んで、結局余裕無くなって...でも一人でなんとかしようとして、信頼されてないように思われたらさ」
雑兵「...ごめん女騎士...俺勇者に...死ぬ程酷いこと言っちまった...」
女騎士「そうよ...っ償いきれない心の傷を...貴方は無造作に...!!」
雑兵「...」
その後、洗いざらい吐いた、参謀連中は女騎士を失脚させようとしていることを、フィッハーにニプラスのクーデター軍の船団が来ることを、最初からこうすれば良かったのだ。
659
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 21:19:30 ID:1yhUyTms
エルフ「参謀連中、そんな腐敗してたんですね...[
女騎士「そんなことを貴方一人でなんとか出来るわけ無いでしょ...!死んじゃったらどうするの?!」
雑兵「お、俺が...死んでもお前らが息災ならそれで...」
結局また死のうとしている、バカだ、それでこの前も女騎士を傷付け失望させたんじゃねえか、元に戻る事ない関係を近づけるまで辛い思いしたじゃねえか。
女騎士「...雑兵は何も分ってなかったの...?貴方が死んだら...私...」
エルフ「…」
雑兵「違う、違うんだよ!死のうとした訳じゃ無いんだ!そ、そう!切り傷でも付けられてさ!分屯地に行けば嫌でも派兵せざるを得ないだろ!」
女騎士「そんなこと...すぐに出来るわけ無いでしょ...!?準備ってのはね最低でも3日は掛かるのよ...そして移動に1日と半...貴方、フィッハーまでの移動にどれくらいの時間がかかるか分かるでしょ...!?」
660
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 22:58:33 ID:1yhUyTms
雑兵「でも...二週間はあるから...」
エルフ「移動を計算外にしても、市街地に展開して、住人を避難させる日にちも考えなさい、それに二週間丁度で行きますなんて都合のいい敵がいる訳無いてしょ?」
雑兵「え?そんなもんなのか...?」
エルフ「あったりまえでしょ!バカ!」
女騎士「雑兵、怪我で済めば良いってもんじゃ無いのよ...?みんな心配するんだよ...雑兵...私だって...もし雑兵が怪我でもしたら...分ってよ...」
雑兵「...ごめん、死ななけりゃ良いって...」
エルフ「騎士団長、帰りしょう、説教は落ち着いてからしましょう」
女騎士「あぁ...エルフ、申し訳ない、不甲斐ない姿を見せてしまったな…」
エルフ「いえ、雑兵を思う心は騎士団長も、勇者様も、そして私も一緒です」
雑兵「…」
661
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 23:08:17 ID:1yhUyTms
フィッハーの守備はウルムガルド駐屯地の竜騎士隊が担当し、予定より一週間早くクーデターの船団は到来、しかし竜騎士隊の防衛によりクーデターの上陸阻止に成功、みな一般市民で統制などは全く取れていない烏合の衆で戦闘にもならなかったと言う。
参謀副官「...お前、バカなんだな」
雑兵「俺が1番わかってる」
参謀副官「まぁ良い、守備は最高し、機密をバラした俺は更迭だな...まぁ良いよ終わりよければ全て良しだ」
雑兵「申し訳ない、本当に」
参謀副官「いやまだ決まってねぇから、それに最後に参謀連中に一泡吹かせて良かったぜ、アイツらの慌てふためく顔は面白かった」
雑兵「…」
参謀副官「…まぁゆっくり関係は戻していけ、お前がこの国の為に必死こいたのは、俺が1番分かってるからよ」
雑兵「でも...結局みんなに迷惑かけちまった」
参謀副官「そりゃそうだな、しかしどう転んでも迷惑はかけてたんだよ、それにお前が死ぬ事が1番の迷惑だったんだ、騎士団長にも勇者様にも...死ぬまで尽くせよ、それがせめてもの償いってもんだ」
雑兵「うん...」
参謀副官「男ならドンと構えとけって、やっちまったもんはしゃあねぇやな、誠心誠意謝れ」
662
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 23:17:53 ID:1yhUyTms
参謀副官「じゃあな、作戦参謀と情報参謀と仲良く行ってくらぁ」
雑兵「あの連中とお前は違うだろ」
参謀副官「良いんだよ、将校の外道を歩んだのは一緒だ」
雑兵「…」
参謀副官「んじゃ、お前は騎士団長のとこへ行ってお説教を沢山受けて来い、今日は部屋に誰も入れねぇってよ」
雑兵「マジかよ...緊張で吐き気がしてきた」
参謀副官「っははバーカ、じゃあな」
663
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/28(木) 23:44:15 ID:Zr95t0bQ
コンコン
雑兵「は、入ります」
女騎士「さっさと入れ」
雑兵「は、はい」
あの件から戻ってきてここ一週間、対応やらなんやらで結局説教は無かった、勇者の姿は見かけておらず、女騎士の伝令業務もギクシャクしながら行っていた。
雑兵「…!勇者…」
勇者「…」
女騎士「座れ」
雑兵「はい…」
目からは生気が消え掛かっており、俗に言うヤンデレみたいなの表情だった、デレはないからただのヤンだが。
雑兵「…その、勇者...」
勇者「…っ!ご、ごめんなさい...ごめんなさい...」
雑兵「え?あっいや違う、謝るのは...」
女騎士「見ての通り、妹はこの状態だ...人前に出せないからずっと私の部屋に匿っていた」
雑兵「だから...」
664
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/28(木) 23:52:19 ID:Zr95t0bQ
女騎士「一度傷ついた心を修復するのは難しい、しかも齢16にも満たない女の子だ...それを雑兵、貴方は無造作に傷付けたの」
雑兵「…」
勇者「…ごめんなさい...雑兵...ごめん...」
どうすれば良い、無い知恵振り絞っても何も出てきやしない、大切だと自分で思っておきながら感情に身を任せ傷付けてしまった、修復不可能なんじゃないのか?
雑兵「...そ、そうだ!勇者!一緒に買い物行こう!俺首都は逆にわかんねぇからさ!教えてくれよ!な?!」ガタンッ!!
勇者「ヒッ...」
雑兵「あ...」
女騎士「正直、あなたを助けたのをちょっと後悔している、まさかここまでバカだったとは、いや、分かってたけど成長していると思ってたのに」
雑兵「…だって、お前なぜか参謀連中信頼してたし...」
女騎士「腹の裏は知った事でない、結局は仕事をしてくれるか否かだ、まぁ今回の件に関しては極刑もあり得るレベルだが...」
雑兵「ならっ!」
女騎士「お前よりも信用があっただけの話だ」
雑兵「…」
665
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/29(金) 00:00:40 ID:E8Rn9UHI
雑兵「…信用ったってお前も嫌われてんじゃねえかよ」
女騎士「お前よりは嫌われてない」
雑兵「同じだって、俺は殿下助けた責任取らされそうになって、お前は俺のせいで失脚させられそうになった、何も変わらねぇ」
女騎士「ふざけているのか?」
雑兵「俺なりの優しさだろうがよ」
女騎士「だったら!妹を泣かせて傷付けたのは何?!私が参謀らを信用していたからいけないっての?!」
雑兵「いけねぇ訳じゃねぇよ!要は観察眼をもてってんだよ!!上に立つ人間なら!」
女騎士「いちいちわかる訳無いでしょ!?興味もない人の腹の裏なんか!」
雑兵「興味を持てよ!!だから軍曹みてぇなヤツに引っかかるんだよ!!」
女騎士「…っ!!」
パチンッッ!!
雑兵「ってぇな...!」
666
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/29(金) 00:08:20 ID:E8Rn9UHI
女騎士「軍曹の話は...関係ないでしょ...」
雑兵「…ごめん、でも嫌なんだ...お前が信頼していた奴が、裏切ったり外道に走ったり...それでお前が傷付くのは...」
女騎士「...あなただって大概好き勝手してるじゃない」
雑兵「それは...本当にごめん...」
女騎士「自分は死んでも構わないって言って...それも信頼している人たちを裏切っているのよ..,?私や、勇者を」
雑兵「...うん」
勇者「…二人とも...喧嘩は...ダメ…」
女騎士「勇者...っ」
勇者「雑兵...僕達のためを考えてくれて...それで...」
雑兵「…っごめん、勇者...本当にごめん...」
ギュッ...
勇者「雑兵...泣いてるの...?」
雑兵「バカだった俺...良いところ見せるだけが信頼じゃねぇのに...女騎士や勇者に良いところ見せたいって、変わったんだぞ俺って...でも何一つ変わってなかった...挙句勇者を泣かせて...」
勇者「…よしよし、コレじゃ逆じゃん、僕がいつも泣かされるのに」
667
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/29(金) 00:12:00 ID:E8Rn9UHI
雑兵「ごめん...」
女騎士「...雑兵がカルトに捕まってた時も、勇者は必死に村中を探したの、遺体を丁寧に運びながらあなたの事をね、その時も泣いていたのよ?」
雑兵「...お前らにゃ一生かけても償い切れないな...」
勇者「一生側にいてくれれば僕はそれで良い...ね?お姉ちゃん」
女騎士「一生側に置くか...私もそうしたいが、苦労するぞ?」
勇者「もう慣れました」
雑兵「え?え?どう言う事?」
勇者「察してよ、バカ...///」
女騎士「ホント、バカだね…///」
雑兵「…??」
668
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/02/01(月) 00:25:38 ID:2T7Ztrnk
色々な誓いが今までの誓いに上書きで保存されてゆく、キャパオーバーしそうだ。
雑兵「ところでよ、参謀副官はどうなるんだ?」
女騎士「どうなるかと言われれば、知らないとしか言えないな、今回の件は憲兵隊の管轄だから介入してはいけないんだよ」
雑兵「極刑もあり得んのかよ?」
女騎士「うーんそれはないと思う、結局は誰かに喋ったから、まぁ軍人としては重い罪に問われると思うけど」
雑兵「そうか...」
あの時、すぐ女騎士に報告していればまだ軽い罪になっていたのだろうか。
結局自分の行いが後手に回ってしまった。
勇者「あまり思い詰めちゃダメだよ...?雑兵はなんとかしようと動いてたんだから...」
雑兵「いや...でもそれで二人に迷惑かけて...」
勇者「そう思うんなら一生かけて償ってね?」
雑兵「じゃ、じゃあ思わねえよ」
勇者「一生居てくれないの...?」
雑兵「ひ、卑怯者かお前は...」
669
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/02/03(水) 17:10:58 ID:qr6H1Uns
おつ
670
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/02/13(土) 23:00:30 ID:QVz09GSA
全て丸く収まる訳ではないようで、憲兵隊の取り調べに俺も出なくてはならないようだ。
「んで、参謀副官の話にのって...勇者様を泣かせたっと」
雑兵「いやっ、ちょっと語弊が...」
「語弊も憲兵もねぇ、泣かせたのは事実だ」
雑兵「う、まぁそうなんですが...」
「まぁ〜...聞きたいことはそれだけだから、取り調べは終わりってなもんで、で、個人的な話だがな、今回の件でお前の株が半々に分かれたぜ」
雑兵「半々...?」
「あぁ、騎士団連中の狂信的な信者半分が悪い方、国軍の連中が良い方で半分ってなもんだ、女泣かせてもなお側に置いてもらってる兵卒なんかお前位だ」
雑兵「は、はぁ...」
671
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/02/13(土) 23:15:46 ID:QVz09GSA
「謂わば兵卒の星って感じだな、みんな歳食っても英雄にゃ憧れる、お前の働きは賞賛されるべき事が多いからな、カルト全般の件や殿下助けた件...後はオムエン再興もお前の働きのお陰が功を奏したってな、みんな気付き始めてるぜ」
雑兵「いや、詫びなきゃならん人が沢山います」
「それは詫びりゃええさ、英雄譚しか知らない俺らにゃ知った事じゃねぇさ」
雑兵「...」
照れ臭すぎる、しかし周りの目は大体感じ取っていた、女騎士に楯突いた時は腫れ物を見る目で、今は英雄を見る目だそうだ、何が面白いのか。
「ま、騎士団連中にゃ気を付けろよ、最悪内戦が起きかねんレベルだからな」
雑兵「き、気をつけます」
672
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/02/14(日) 08:38:16 ID:dk8WsBYE
どこに行っても狂信的な連中が付き纏ってくる、困った物だが今回は味方が多い、ドンと来いだ。
「まぁお前の株が落ちることはもうねぇと思うぜ、独立大隊の連中や、混成騎士団の連中がお前の仕事を言って回ってんだからよ」
雑兵「独立大隊の...」
「元上司の人たちに感謝しとけよ、それに期待されてるって事はそれ相応の働きをせにゃならんからな...まぁ年食いの戯言だと思ってくれ」
雑兵「...ありがとうございます」
「あと、参謀副官の件だが...国王陛下直々に不問にしてくれって頼まれたから安心しろ、まぁ憲兵隊もそこまで重い処分は加えるつもりは無かったが...」
雑兵「分かりました、以後気を付けます」
「おう、じゃあ原隊復帰していいぞ」
673
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/02/15(月) 22:22:55 ID:.cyDZNzk
参謀副官がお咎めなしなのは国王のお陰とのことだ、もしかして俺が勇者泣かせたのも知ってるのかも知れない。
女騎士「取り調べはどうだった?」
雑兵「あぁ、つつがなく終わった、とりあえずはお咎めなしってさ」
女騎士「そっか、ところで...」
雑兵「ん?」
女騎士「雑兵この前休暇欲しいって言ってたよね?一週間だったかな」
雑兵「あ、あぁ...でもそれはアレだ...」
女騎士「休んでないのは事実でしょ、二週間の休暇許可あげるから休めばいい」
674
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/02/15(月) 22:26:01 ID:.cyDZNzk
雑兵「に、二週間?良いのかよ」
女騎士「今は仕事もあんまないから、それに休みなしであっちこっちいってたでしょ?」
雑兵「あぁ...」
女騎士「だから今は何も考えず休んで、ね?」
雑兵「...ありがとよ」
女騎士「なんの、偉くなればここまで出来るの」
675
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/02/15(月) 22:31:42 ID:.cyDZNzk
貰った二週間の休暇、正直どのように使えばいいのか検討も付かなかった。
雑兵「...お礼参りでもしろってことかな」
思い立ったが吉日、近場から回る事にした。
雑兵「天使元気にしてっかな、ちらちら見かけるけど、俺と違って忙しそうだしな」
騎士団の衛生隊は王国でも指折りの治療技術を持っており、各部隊の衛生隊へ技術提供の支援で回っている。
雑兵「確か...今の時間は衛生隊の事務所かな」
そろそろ終礼が終わる時間だ、少し話すにはいい頃だろう。
雑兵「失礼しまーす...」
「ん?雑兵じゃん、書類の提出?」
雑兵「いや、天使に用がありまして」
「天使ちゃんならいつもの所だ、そろそろ帰る頃じゃねえかな?」
676
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/02/23(火) 23:49:39 ID:ggQUZw1Q
天使「あれ?雑兵?」
雑兵「よっ、休暇もらったんで挨拶回りでもしようかってな」
天使「確かに、雑兵結構見るようになったけど、お話は出来ないもんね」
雑兵「衛生班忙しそうだしな、あんま話しかけれなかった」
天使「そうだね、ちょっと忙しいかも、でもやりがいはあるよ?」
雑兵「そりゃ良い事だ、でもいつ騎士団に?」
天使「下士官候補生なんだ、雑兵が色々異動してる間に受けて、この前やっとこさ教育が終わったからあとは昇任するだけ」
雑兵「す、すげぇな...」
天使「上等兵さんも一緒のタイミングで合格して、下士官候補生課程の教育は一緒に受けたんだ」
雑兵「下士官ねぇ...」
677
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/01(月) 00:26:55 ID:TEx.IVck
天使「まぁ雑兵も、ここに身を置くならいつか受けなきゃならないときが来るよ、大丈夫だよ、やることは新隊員教育隊と変わらないから」
雑兵「新教の内容あまり覚えてないのですが」
天使「じゃあ苦労するね」
雑兵「勘弁してくれよ...まぁ受かるか分からんから、行けるかどうかも怪しいな」
天使「多分強制的に受けさせられると思うよ、雑兵の立ち位置って騎士団長の側近で、王国軍の最先任兵だからね」
雑兵「さ、最先任兵ってなんだよおっかねぇな」
天使「仕方ないでしょ?僕らの同期って殆どが辞めたか、僕みたいに下士官になったかだからね」
雑兵「わぁったよ...でも一等兵さんとかもいたじゃねえか」
「あの人結構前に受かったよ」
雑兵「マジかよ..,」
678
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/01(月) 00:47:56 ID:8NQCVzIY
天使「じゃあ僕そろそろ行くね、今日当直なんだ」
雑兵「そっか、すまねぇな忙しい時に、こんど飲みに行こうぜ」
天使「うん、絶対だからね?」
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679
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/15(月) 22:10:45 ID:dBHBjLT6
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独立大隊はここ最近忙しいようで、以前のようにいつも暇で雑用ばかりやらされているような待遇は一切合切無くなったらしく、元々個人の能力は高かった部隊でもあった為か、現在は訓練評価支援隊と部隊名が変わり各部隊の訓練等の対抗部隊として出払っているようだ。
雑兵「ちょうど訓練中か...エルフや殿下も忙しいみてぇだしなぁ」
両者はオムエン再興の為、各異種族の代表と復興に向けた打ち合わせを連日行なっている、混成騎士団からの引き抜きもあり得るとの事だ。
雑兵「フィッハーにでも行ってみるか...?」
思い立ったが吉日、他地方への渡航申請を済ませ、出発した。
680
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/15(月) 22:17:19 ID:dBHBjLT6
道中の馬車にて...
雑兵「で...なんで着いてきたわけで?」
勇者「だって暇なんだもん、お姉ちゃんも忙しそうだし」
雑兵「そいえば女騎士ってばきちんと休んでんのか?」
勇者「うーん...前とかは週二のペースで完徹してる時もあるよ、雑兵が来てから休むようになったけど」
雑兵「俺が来てから?」
勇者「うん、雑兵があっちこっち行ってくれるからその時間を削れてるっぽいよ、以前は姉ちゃんが調整とか書類の提出行ってたんだよ」
雑兵「あぁそうなの?でも連休とかそう言うのとってねぇよな」
勇者「指揮官でもあるからねぇ...雑兵にもう少しカリスマ性があれば...副々団長的なポジになれるのに」
681
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/15(月) 22:24:20 ID:dBHBjLT6
なくて悪かったな、しかし指揮官という器でもないのは分かってはいる。
雑兵「ほいでものぅ、まだ若い言うても、ちったぁ休まにゃぁで...」
勇者「...なにその喋り方」
雑兵「おもしれぇだろ、俺の故郷の訛りでな、方言っつうんだよ」
勇者「へぇ〜、ねぇなんか喋ってみて!」
雑兵「えぇ〜…ほいじゃあ...勇者、フィッハー着いたらどこ行きたいんなら、ワレの行きたい所何処へでも連れてっちゃるけぇ」
勇者「なんか似合わないね」
雑兵「そう言われるけぇあんま訛って喋らのんよ、あやべ、元の喋りに戻ってきた」
勇者「自然体でいいと思うのになぁ」
682
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/15(月) 22:32:02 ID:dBHBjLT6
雑兵「勇者もこの喋り方で喋ってみろよ、女の子が喋るの結構人気なんだって」
勇者「そんな事言われても分かんないよ」
雑兵「そうだなぁ...ほいじゃあ、言葉の最後にじゃけぇとか入れてみろよ」
勇者「やだよめんどくさい」
雑兵「っちぇ、まぁ良いけど...」
馬主「そろそろフィッハー地方ですぜ、カルトの連中も消え去って良かった」
雑兵「もう姿形も見えないんですか?」
馬主「あぁ、山奥に逃げたっきり出てこねぇ、オムエンとかに逃げたんじゃねえかなぁ」
683
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/21(日) 01:29:17 ID:MsIUzd1w
雑兵「オムエンか...まぁオークジェネラルとかいるし大丈夫かな」
馬主「オムエンといえば、最近あっちに移り住んで新しい生活を始めるみてぇな活動されてますが、兵隊さん何かわかりますかね?」
雑兵「あぁ、オムエンいる異種族の連中と手ェ取り合って生きてこうってさ、あちらの異種族連中も乗り気だから成功するんじゃねえかな」
馬主「へぇ〜そりゃあ凄い計画ですなぁ、カルトの連中に村ぁ焼かれた人らが移り住みてぇってなことを言ってたんですよ、今度順調だって教えてあげなきゃな」
勇者「やっぱまだ村を追われた人の生活基盤とかは確立されてないんだね」
雑兵「それがこの国の悪い部分なんだよ」
_
__
684
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/21(日) 01:33:17 ID:MsIUzd1w
__
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勇者「雑兵、フィッハーについたよ」
雑兵「ンガッ...完璧に寝てた、おやっさん、コレで足りるかね」
馬主「はいはい丁度、ご贔屓に〜」
勇者「フィッハーに用事って...曹長?」
雑兵「あぁ、姿眩ませてから一回も会ってないから...」
勇者「姿眩ませたって、雑兵悪くないじゃん...」
雑兵「悪くなくてもケジメが必要なの、行こうか」
勇者「うん!」
685
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/28(日) 21:57:42 ID:k9nMO5Oc
フィッハーの入り口まで差し掛かると妙な物々しさを感じた、以前は衛兵は一人しか立っていなかったが、今は駐屯地の入り口みたく固く警備されていた。
フィッハーの警備隊とは違い、重装の兵士やバリスタを構えた兵士が街道を睨んでいた。
勇者「この前のニプラスのクーデター軍が来た件で、フィッハー港が防衛に重要視されちゃったらしくて」
雑兵「マジか...入れるかな」
勇者「うーん、僕がいなかったらちょっと面倒だったかもね」
「お疲れ様です勇者様、一応身分証を拝見してもよろしいでしょうか」
勇者「ん」
「ありがとうございます...ん?雑兵じゃねえか」
雑兵「あれ、会ったことありましたっけ」
「あ〜直接はあってねぇけど、入隊同期だよ、ほら鍛錬場でお前同期と喧嘩してただろ」
雑兵「あ、あ〜してた...」
686
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/28(日) 23:06:59 ID:k9nMO5Oc
勇者「そんなところで喧嘩って何やってんの...」
雑兵「し、仕方ねぇだろ、右も左もわかんなかったんだから...てかここ営門できたの?」
「あぁ、クーデター軍が来て以来、なぁんでかカルトの残党もチラホラ出てき始めたらしくてな...クーデター軍だけなら強化もされなかったが、なぁんでここに執着するのかねぇ」
雑兵「さぁてなぁ、海でも渡りたいんじゃねえか」
勇者「それはあるかもね、ここじゃあもう味方は居ないから」
「可哀想な連中だよ、さっさと改心すりゃいいのに」
雑兵「改心したところで皆殺しだ、あんな連中はとっ捕まえたら先ずは殺す以外にないだろ」
「お、おう...」
勇者「ちょっと、雑兵ってば顔怖くなってる、もう何もしちゃダメなんだからね?」
雑兵「ご、ごめん...」
687
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/29(月) 23:54:09 ID:fCOW.CTk
聞くところによると、分屯地は近々駐屯地へ格上げされるとのこと、カルトが来るにしろ来ないにしろ、フィッハー港とその周辺を重要な防衛拠点であると上層部は判断したようだ。
雑兵「久々だなぁ分屯地...めっちゃ住み心地良かったんだよなぁ」
勇者「ふーん...今よりも?」
雑兵「い、いや、アナザースカイって奴だよ、第二の故郷的な感じ、第3はオムエンとの国境」
勇者「ま、どこが住み心地よかろうと雑兵はもう逃さないもんね〜」
雑兵「ちょ...あまり腕を掴まれると勘違いしちゃうから...」
勇者「ん〜?勘違いって何?」
雑兵「そんな上目遣いでこ、困っちゃうなぁ」
勇者「キモいよ」
雑兵「はっ倒すぞ」
688
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/04/02(金) 14:31:33 ID:g7tftC/I
「曹長なら退職されたぞ、分屯地の分遣隊が廃止になったと同時にな」
雑兵「った、退職...?は、廃止ですか?」
「あぁ、分屯地から駐屯地へ格上げされるのが決定したからな、雑用部隊はもう要らねえって判断
されたんだろうぜ...それに前に分遣隊に来た新隊員がカルトに捕まって以来、心労気味になってな...」
雑兵「...」
曹長は退職され故郷に帰ったそうだ、心労による退職、百パーセント俺のせいだ
雑兵「...はぁ...」
勇者「...帰ろっか?」
雑兵「...いや、ちょっと遊んでから帰るか」
勇者「...うん!」
_
__
689
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/04/02(金) 14:43:50 ID:g7tftC/I
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雑兵「っお、この店見たことないね」
勇者「前来た時なかったよね、アクセサリーショップかな?」
雑兵「何かほしいのあるか?」
勇者「欲しいの〜?うーん...」
赤い小鳥のアクセサリーがふと目に飛び込んだ、二つあると言う事はペアのペンダントだろうか。
勇者「ぼく、これがいいな」
雑兵「こんなのでいいのか?」
勇者「うん、これでいい」
690
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/04/04(日) 23:57:27 ID:IA63b0Ik
ペアルックのペンダントを購入し、今夜泊まる宿にチェックインした、部屋の都合上勇者と一緒になってしまった、この宿今まで満室になったことないのは知っているが、店主の粋な計らいと言うべきか。
雑兵「…勇者、俺この先どうすりゃいいんだろ」
勇者「え?」
雑兵「前の人生でも家族とかに迷惑かけて、勝手に死んだと思えばこの世界に飛ばされて...そしたらこの世界でもいろんな人に迷惑かけてきてさ、良かれと思ったこと全てが良いことじゃ無かったから、勇者傷付けちまうし、曹長が病んじまうし...」
勇者「...」
691
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/04/05(月) 00:05:18 ID:lpggwMDs
雑兵「女騎士に掛けた迷惑も、お前に掛けた迷惑も...この先どうやって償おうかってずっと考えてたけど...なんか段々と方々に掛けた迷惑がのしかかって来て...
勇者「月並みな考えだけどさ、生きてればたくさん迷惑かけるもんだと思うな、お姉ちゃんだって、僕だってそうだと思うよ、現に雑兵が僕達のために悩んでらのも迷惑を掛けてるって事だし」
雑兵「そ、そんな事...」
勇者「僕ね、勇者になった時は右も左も分からなかったんだ、そのせいで村一つ滅し掛けてしまったんだ」
雑兵「え...」
勇者「村に迷惑かけてた山賊と魔物の連中を討伐してたら命乞いされちゃって、逃したんだ、改心したんだと思ってその村に報告して、去った後にね...」
692
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/04/05(月) 00:12:37 ID:lpggwMDs
雑兵「襲われちまったのか...?」
勇者「うん、忘れ物取りに戻らなかったら、本当に滅んでた位に襲われてた...その場で全員の首を刎ねたけど...村人からはすんごい複雑な目で見られて...」
雑兵「あぁ...」
勇者「多分だけど、その場に雑兵がいたら僕にすごい罵詈雑言浴びせてたと思うよ」
雑兵「ん、んな訳...無いこともないな...」
勇者「それが僕が人に掛けた迷惑だね、一生消えることのない迷惑だよ、お姉ちゃんだって、軍曹との話聞いたでしょ?」
雑兵「あ、あぁ」
勇者「みーんな迷惑かけるの、思い悩むのは別にいいけど、それが自分の全てだって勘違いしたらダメだからね?雑兵の良いところ沢山知ってるもん」
693
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/04/13(火) 23:03:02 ID:g1coIpcQ
雑兵「...ありがとな、なんかスッキリした気がするよ」
勇者「どういたしまして、ライバルは多いからこういうところで点稼がないとね♪」
雑兵「ラ、ライバルって...」
勇者「誰かは言わないけど...雑兵ももう分かるでしょ?」
雑兵「あ、あぁ...」
そう言った露骨な好意は小学校以来向けられた事はなかった、小坊の頃は無茶をやる奴や足の速いやつが好かれていたが、その頃は無茶もしたし足も早かった。
694
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/05/20(木) 23:55:10 ID:dk95zEgo
だが引きこもりの生活を送れば必然と人の好意など疎くなるものだ、好意を向けられる事もない、言い訳ではない、本当なのだ。
だが今なら変われる、そう思えてきた。
雑兵「俺、頑張るから、お前らの横に居ても恥ずかしくないような人間になる」
勇者「えぇ?そんな事ないのに」
雑兵「俺自身が嫌なの、俺自己中だから俺が許せない、みんなに迷惑かけるのも、悲しませるのも」
勇者「...うん」
雑兵「でもちょっと無茶するときもあるから...そん時は助けてくれ...」
勇者「いいよ、助けてあげる」
695
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/05/23(日) 21:46:09 ID:TWLMKmzs
勇者「明日城に帰る?」
雑兵「あぁ、あっちでゆっくり休むわ、着いてきてくれてありがとな」
勇者「ううん、僕も楽しかったよ」
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696
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/05/24(月) 00:58:33 ID:WcPOQvNI
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雑兵「で、参謀長になりましたと?」
参謀長「まああの件でかなりの連中が更迭か懲戒免職くらったからな、なし崩しに俺が参謀長になった訳よ」
かなりの繰上げだが大丈夫だろうか、まぁ俺より遥かに頭が冴えているから当たり前の昇任ではある。
参謀長「んで、早速だが...カルトの連中についてだ」
雑兵「えっ」
参謀長「まだ終わった訳じゃねえぜ、カルトの最高幹部殺ったくらいじゃあな...残党が続々とフィッハーに集まってるらしい、どうもスパイからの情報だと隣国に逃げ込むって腹だそうだ」
697
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/05/24(月) 01:50:55 ID:WcPOQvNI
教祖が殺されて、実質解散状態だったカルト教団であったが、やはり信心深さの賜物なのか未だに集団で群れて方々の集落を転々としているそうだ、転々と言っても、集落の後には何も残らないが。
雑兵「まだ村とか襲ってんのか」
参謀長「おう、最近はフィッハー補給処とかからすぐ応援が行ける様になったが...手遅れな状態になることも多々あってな、フィッハーにある村や集落はほぼ無人状態になってる」
雑兵「殺すしかないですね」
参謀長「まぁ王国軍はこっちで決めるが、そっちは騎士団長が決めるだろ、また暴走すんなよ?」
雑兵「あ、あぁ...」
参謀長「この件は別に話してもいいからな、話せよ?絶対に話せよ?」
雑兵「なんのフリだそれは」
698
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/05/30(日) 01:02:02 ID:sKhOYfJg
雑兵「ってことだってさ、王国軍は討伐したいと」
女騎士「そう...最近の王国軍は若干我々騎士団に任せっきりな状態だね」
雑兵「まぁ騎士団って強いし楽だし」
女騎士「偶には王国軍が出なきゃ、そうでなくても今評価すごい低くなってるのに」
事実、最近の行われた盗賊の討伐等々の任務は騎士団が派遣されている、騎士団は元来国王の直近にて待機していなければならないとこの国の小六法には書かれている、任務を受けるなという訳ではないがおいそれと使いまくっていい部隊ではないようだ。
699
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/05/30(日) 01:05:34 ID:sKhOYfJg
雑兵「参謀長に言ってこようか、たまにゃ働けって」
女騎士「...いや、私が直接行こう、参謀長に上番してから挨拶もしていなかったから好都合だ、雑兵はまだ休暇だからついて来なくていいよ」
雑兵「あぁ...まぁ喧嘩せずにな」
女騎士「する訳ないでしょ」
_
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700
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/05/30(日) 21:03:15 ID:sKhOYfJg
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情報参謀「カルトの連中を討伐し切らんかったのは騎士団の落ち度でしょうが!」
女騎士「フィッハーに駐屯している王国軍が不甲斐ないから被害が拡大したのだ、我々だけで片付けるのは土台無理な話だ」
兵站参謀「そもそも騎士団は働かなさすぎる!その癖王国軍の兵站だけは持っていかれるのは納得がいかん!!」
女騎士「貴様ら王国軍に信頼が寄せられていお陰で、我々が出払っていても尚働かないと言うか?無駄飯くらいも良い所だな」
兵站参謀「な、何を!」
参謀長「やめんか貴様ら、惨めったらしいぞ」
情報参謀「しかしですね!」
参謀長「我々王国軍に対する国民の信頼度はどんどん落ちてってるのは事実だ、そしてフィッハーのカルト集団に対応していなかったのもまた事実なんだよ、お前ら参謀してんのに分かんねぇのか」
女騎士「そりゃ腐った将校が生まれる訳だな」
兵站参謀「きっ貴様!」
701
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/05/30(日) 21:09:34 ID:sKhOYfJg
女騎士「誰に向かって貴様かこの無駄飯食いが、もういい参謀長、役に立たん連中がいては揃う足並みも揃わない」
参謀長「同感ですな、この場所にいる連中に告げるが、文句だけ垂れるなら出てってくれ、カルトの連中を一掃するのにお前らが邪魔だ」
兵站参謀「っぐ...」
参謀長「俺が参謀長になったからには腐った将校は一掃する、本当に国の為に動く奴だけを残す...さて本題に入りましょう」
女騎士「カルトの残党は隣国に脱出しようとしている、情報によれば百名足らずだが...まだ信仰は捨てていないのかフィッハーの町村を襲っては転々と移動している...混成騎士団が追撃を行なっているがまだ人数が足りない」
702
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/05/30(日) 21:13:40 ID:sKhOYfJg
参謀長「そこでやっと王国軍の出番ってことですね、いいでしょう、幾らでも派遣しましょう」
女騎士「ありがとう、だがカルトの集団の中には信仰に疑問を持ち始めた連中もいるとのことでな...脱出しようにもできないという状況にある者もいるそうだ」
参謀長「その連中は救助せよ...って事ですか?」
女騎士「あぁ、皆殺しにするよりは」
参謀長「しかし...それは国民感情が許すでしょうかね」
女騎士「許すようにするのだ、殺しの連鎖をここで断ち切らねばならない、我々が慈悲を見せれば蛮行を止める者も出てくるだろう」
703
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/02(水) 22:08:04 ID:Xi85E3jY
来てた
読むよ
704
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/02(水) 23:20:29 ID:51UAHFxM
参謀長「...そうですか、連鎖を断ち切るため慈悲深さも必要になってくるのでしょうね、しかし本当に大丈夫ですか?」
女騎士「何が言いたい」
参謀長「あなたの身内に一人いるでしょうよ、カルトに関しては情け容赦のない男が」
女騎士「彼は...雑兵は今回は前線には赴かせない、絶対にだ」
参謀長「まぁ一人の人間のために皆の足並みが揃わんとなれば作戦の立てようもありませんからね、手綱は上手く握って下さいよ」
女騎士「あぁ、もちろんだ」
_
__
705
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/02(水) 23:23:26 ID:51UAHFxM
__
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斯くして、カルト教団の掃討作戦が始まった。
王国軍約千人、騎士団及び混成騎士団約三百人からなる大部隊は一路フィッハー地方へ向かった。
706
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/02(水) 23:33:41 ID:51UAHFxM
雑兵「俺は後方勤務だと?ふざけるな俺も行かせろ!」
女騎士「お前がカルトを相手にしてしまえば皆殺しにしかねないからな、今回は脱出者の救助も任務だ、見境なしに殺すお前は前線には向かわせられない」
雑兵「いや殺さなきゃダメだろ!アイツらが何してきたか分からねぇお前じゃないだろ!ここで厄災は断ち切らねぇとまた同じ轍を踏むぞ!」
女騎士「何をしてきたかは分かっている、しかし信者には子連れもいる、老幼婦女子まで手にかかるつもりか?」
雑兵「当たり前だ、カルトってぇのはババアの一匹に至るまで殺さねえとダメなんだよ、野郎共ゴキブリみてえに繁殖しやがって...」
女騎士「...もう教祖は死んだ、最高幹部もお前が始末しただろう...これ以上何を望むんだ」
雑兵「カルトの一掃、それだけだ」
女騎士「王国軍や騎士団の隊員に虐殺をさせろと言うのか?」
雑兵「立派な治安維持だろうがよ、それにその脱出してぇ連中は本当に信用出来んのか?お前らの情報筋なんてとことん信用してねえからな」
707
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/02(水) 23:45:58 ID:51UAHFxM
女騎士「...命令でも聞かないか?」
雑兵「あぁ、無理だ、譲れねえ」
女騎士「...命令でも無理だと言うのなら、お前を軍法会議にかける、命令の不服従、素行不良、倫理に反する行い...最悪でも一年の重営倉だな」
雑兵「ちょ...ちょっと待てよ、何で軍法会議なんか...俺は国の為を思って言ってんだぞ!参謀連中なんぞよりも考えてんだぞ!!」
女騎士「文句があるのなら命令を聞け...それが出来ないのなら私はどうすれば良い?服を脱いでお前の前に這いつくばれば良いのか?」
雑兵「ばっ、馬鹿!そういう事じゃねぇんだよ!」
女騎士「お前の恨みも悲しみも...私が全て晴らしてやる、ここで雑兵について回ってきた邪悪を私が振り払ってあげる...信用してよ...」
雑兵「...っ!わ、分かった...!わかった...お前らにゃ迷惑は掛けれねぇ...だが...」
女騎士「なに?」
雑兵「アイツらがお前や勇者...みんなに舐めた真似しようとしたら容赦なく殺しに行く、だから怪我とかしないでくれ」
女騎士「分かった、約束」
708
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/03(木) 22:20:48 ID:navcOhuE
女騎士「では出発するが、留守中にも書類等は提出されるからな、いつも通り区分ごとに分けてくれ」
雑兵「わぁったよ...」
女騎士「...絶対に付いて来ちゃダメだからな、目を付ける人はいない、二度と私達を裏切らないでくれ」
雑兵「分かってるって、信用してくれ」
女騎士「よし..,」
騎士団の討伐隊は未明に出発した、本当は女騎士や勇者のそばに居たいが、助けに行くことが裏切りとなるのなら、もう裏切れない。
709
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/11(金) 00:11:23 ID:ZyKXNvVc
「おめえが居残りか、なんか意外だな」
雑兵「仕方ねえだろ、団長様直々にお前は来るなって言いやがったんだからよ」
「まぁ今回の任務にゃ不適だったんだろうぜ、気持ちは分かるけどお上が憐みの令出しちまったら殺さねえんだよ」
雑兵「でもよ...カルトってぇのはガキの一匹でも残ってりゃ危険なんだよ、老幼婦女子関係のねぇ...見てきたんだよ俺は...」
「…俺も親族がカルトに殺された口だからな、今回の任務、居残り組のほとんどがそう言う連中だ、家族や友人をカルトに殺された連中がな...」
雑兵「復讐もできねぇのか...」
「復讐はオメェがしてくれたんだよ、信者も最高幹部も殺してくれた、後はもう野となれ山となれだ、ちったあ休もうや?」
710
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/11(金) 01:43:06 ID:ZyKXNvVc
あまり知らない隊員と隊員クラブで飲み明かし、愚痴を溢しまくった、そんな二日酔いで頭がガンガンする朝、前線から電報が届いた。
『 騎士団長 行方不明、指揮は副団長に一任する』
雑兵「...」
裏切りったなど知った事ではない、舐めた真似をしたら皆殺しにする、そう言ったはずだ。
雑兵「馬ァ出してくんねえか...?」
「...行っちまうのかよ、おめぇお上が...」
雑兵「約束を破ったのは女騎士だから...」
「...付き合ってらんねぇな、持ってけ」
711
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/11(金) 01:54:35 ID:ZyKXNvVc
雑兵「恩に着るっ!」ッタタタッ
「無事に帰って来いよ、ヒーロー」
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712
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/11(金) 02:06:03 ID:ZyKXNvVc
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頭がガンガン痛む、フィッハーに到着した後、偵察のため郊外に出て...そうだ迷い子を見つけたんだ...家族と逸れたと言っていた、その子と行動を共にしていたが...その後が思い出せない。
「チクショウ...何だってここまで酷い目に...」
「汚い言葉を使うな、教祖様は必ず助けてくださる」
女騎士「ウッ...」
「起きたな、教団に仇なす者よ...そして子羊を向かい入れた者よ」
女騎士(こ、子羊...?クソっ!口が塞がれて声が出ない...)
「思えばあの子羊が...!あいつから始まった!!崩壊が!」
「教祖様の死!ラング様の死!同胞達の死!全てあいつが連れてきた!子羊が死を連れて来たのだ!」
女騎士(何を言っているんだこいつらは...)ガチャガチャ!
713
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/11(金) 02:10:56 ID:ZyKXNvVc
「怯えるな、畏れるな、青白い馬に教祖様が連れてゆかれたとしても、君のような弱者でも、教祖様は許して下さる」
女騎士(…約束、破っちゃったなぁ、雑兵、怒ってるだろうなあ)
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714
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/11(金) 02:15:35 ID:ZyKXNvVc
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「クソッ!!騎士団長はまだ見つからないのか!?」
「フィッハーは広大なんですよ!そもそも騎士団長一人で偵察させてる時点で...!」
「騎士団は何やってたんだ!」
副団長「静まれ...静まらんか!!」
「ふ、副団長...」
副団長「目星も何も付いていない状態で、闇雲に探させても兵力の無駄遣いだ...ここはまずカルトの捕縛を優先させなければならない」
「しかし...それでは騎士団長が!」
「死んでしまっては元も子もないんですよ!それに...カルトの女の扱いときたら!」
「早く見つけなくては!」
715
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/11(金) 02:23:01 ID:ZyKXNvVc
副団長「クソッ...どうすれば...!」
「勇者様を派遣しましょう!あの方なら必ず!」
「今はオムエンにいる!早くても呼ぶのに三日!到着に三日!計六日も使うんだぞ!!」
「じゃあ誰がいるんだ!!」
「俺らがいるだろうが!!」
副団長「...参謀長、知恵を借りたい」
参謀長「騎士団長の動向を先に探るべきではないか、どこへ向かって、何をしていたか」
「フィッハー港周辺の偵察を行っていました」
「いや郊外だ、偵察隊を組んでいだろ」
参謀長「なぜ騎士団のお前らが団長の正確な行動と位置を知らんのだ!!!副団長!!」
副団長「確実にわかる行動は、迷い子を一人保護していた、その子供を一人でフィッハーに送ろうとして、行方不明になった」
716
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/11(金) 02:27:57 ID:ZyKXNvVc
参謀長「その子供...まさかカルトの使いじゃねえか?」
副団長「あり得るな、その子どもを使って...拉致を」
参謀長「問題はどこに連れて行かれたかなんだよ...」
「フィッハー港の付近では?」
「確かに、隣国へ逃げたいのならフィッハー港の周辺で体制を整える筈だ」
参謀長「フィッハー港の周辺は山狩りを行っただろ、草の根一本でも残らない位毟り取ったのを忘れたのか」
副団長「...雑兵がいてくれれば...」
「ぞ、雑兵ですか...しかし奴は...」
717
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/11(金) 02:34:02 ID:ZyKXNvVc
雑兵「...俺が来る来ねぇレベルの話にまで来てるくらい話進んでねぇのか?」
参謀長「雑兵...!いつここに!」
雑兵「いつだっていい、見つかったのかよ」
副団長「まだだ...フィッハー港周辺の可能性が...」
雑兵「アイツらは捻くれてて、そしてとても聡い奴らだ...周辺の雑木林レベルまで目を凝らしたが、お前ら草の根一本でも残さんレベルで抜いたな」
「貴様、先ほどからなんだその態度は...」
参謀長「黙れ、雑兵...どう見る」
雑兵「隣国へ逃れたい、そして付近の村々は襲撃されました、何やってんだよお前ら...使えねぇな、人が多く残ってる所はどこだ」
「...フィッハー港以外無いな」
雑兵「木を隠すなら森の中、人を隠すなら人の中だ、全ルート遮断しろ!細いドブ溝一本にいたるまでな!外から中へ入れる場所!中から外へ出られる場所全部だ!」
718
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 00:29:38 ID:5GgxwrEg
雑兵「副団長、ここから先はアンタに任せます、面子もあるでしょ」
副団長「団長を拐われた段階で面目丸潰れだ...しかしそうだな、お前にお株を奪われたらたまったものではない」
雑兵「俺は討伐隊の人間じゃないんで勝手に探します、そちらはそちらで」
参謀長「まったく、嵐のように現れて去ってったな」
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719
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 14:53:14 ID:5GgxwrEg
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カルトの残党が付近で確認され、フィッハー港では船舶の出入港は制限され、貨物船の荷揚げと卸しは昼間のみ行われる、夕方になるまでには船は沖合に停泊し安全を確保する事になった、効率は大幅に下がったが、カルトの他国への逃亡を考えるとやむなしとの判断だそうだ。
雑兵「カルトはまだフィッハーの街に潜伏している...問題はこの街は人が多すぎる事だ」
港には捨てられた家屋や倉庫が並んでいる、多数で潜伏するのであれば好都合ではある。
しかし連中は聡い、前にも一般人に紛れた老婆に痛い目にあった。
雑兵(...しらみ潰しに探すしかない、時間は無いがそうせねば無駄足で時間を潰すよりも...)
720
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 14:57:32 ID:5GgxwrEg
雑兵「おっちゃん、久しぶり」
「ああ、いつかの...」
雑兵「奥さん帰ってきた?」
「いや...行方不明になっちまったよ...首都にいる母方の親族にも聞いて見たが...」
雑兵「...もしかしてカルトにか?」
「わからねぇ...フィッハー出てすぐに行方がわからなくなっちまったのはたしかだけど...」
雑兵「そっか...あんまビビらす事言いたくねぇんだけど、カルトがフィッハーの街に潜伏してる、隣国に逃げるためだそうだが船が出てねぇから」
「そんな...いや、でも確かに最近になって辺な様子の連中が増えてきたな...店にも大量に野菜を買いに来た、向かいの精肉店にもだ」
雑兵「行き先わかる?」
721
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 14:58:50 ID:5GgxwrEg
「いやぁ...住宅街に向かって歩いて行ってるのは見かけたが、そこからは」
雑兵「いやそれで十分だ、ありがとう」
「...気ぃつけてな」
雑兵「うん」
722
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 17:49:13 ID:5GgxwrEg
雑兵「あ、港湾の従業員さん、ちょうど良いところに」
「あれ?最近見ないと思ってたんだよ、どこ行ってたの?」
雑兵「はは...ちょっと...それよりも最近この付近で新しく見かけた人とか居ませんか?」
「新しく...あぁそういえば、そこのアパートの大家さんに聞いたんだけど、前まで全室空き部屋だったのに、急に上の階全部が埋まったらしいんだよ、でも埋まってから暫く経つけど...一人か二人位しか出入りしてるの見てねぇんだよなあ、しかも暑いのにフードかぶって出てくるから顔もわからないんだ」
雑兵「何か言われたりとかしました?」
「あまり関わりがなかったからねぇ...あ、でもなんか夜になると...その、女の人の声が...」
雑兵「...どんな声だ」
「な、なーんか苦しそうな...そこまで聞いてるわけじゃないから分かんないけど」
雑兵「ありがとうございます、あの家の連中にゃ関わらないで下さい」
723
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 17:50:10 ID:5GgxwrEg
「あ、あぁ...」
雑兵(応援は呼ぼう...一人で行って失敗したら、周りの住人に何をされるか分かったものじゃない)
_
__
724
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 17:53:16 ID:5GgxwrEg
__
_
雑兵「ってことです」
副団長「それは確証があるのか?」
雑兵「それを俺が調べるんですよ、違えば無駄足をアンタらが踏んだだけで済む、合っていれば制圧すりゃ良い、違いますか?」
参謀長「俺らは港付近の倉庫とか調べてたのに...どうやって行き着いたんだ」
雑兵「いやまだ確証は無い、ただ変な連中ってだけだ、そしておそらくだが騎士団長はそこにいる」
副団長「…っ!分かった、手配しよう」
725
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 18:17:53 ID:5GgxwrEg
「お、おい雑兵、大丈夫か?」
雑兵「あぁ、15分たって戻ってこなければ、まぁそういうことだと思ってくれ」
副団長「例え騎士団長が無事でなくても...いや、必ず助けよう」
雑兵「当たり前だ、その為に俺が来たんだ、じゃあ行くからな」
「気をつけて...!」
726
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 18:26:22 ID:5GgxwrEg
雑兵(声が聞こえるってのはどの部屋かわからないんだっけな...)
雑兵「憲兵っぽく...ん″ん″っ」
トントン
雑兵「ここの住人はおられるか!」
ドンッ!! ガシャン!! ズルズル
雑兵(まさかのビンゴか?)
ガチャ
「ど、どうも憲兵さん...何かありましたか?」
雑兵「最近この付近の家で、人の暴行されている声が聞こえると通報があった、現在憲兵隊をもって全ての家を回っている、捜査に協力してもらいたい」
「は、はぁ...ど、どうぞ」
雑兵「失礼...」
727
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 18:27:01 ID:5GgxwrEg
雑兵(この臭い...前程は酷くねえが明らかに誰かを監禁してる...)
「ど、どうでしょうか」
雑兵「一人暮らしか?」
「い、いえ、仕事仲間と相部屋です」
雑兵「そうか...隣の部屋の住人はいつ戻られるかわかるか?」
「いえ...」
雑兵「ふ〜む...」
「も、もういいでしょう?うちの部屋に女っけは...」
雑兵「…女と言っていないのに何故分かった?」
「うっ...」
728
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 22:12:11 ID:3B1.AQdM
雑兵「テメェカルトだな?もし人質に何かあってみろ...その場で血抜きしてやるからな...」
「クッ...何故この場所が...!」
雑兵「どこに隠した...」
「だ、誰がしゃべ ザシュッ
雑兵「使えねえ、まあこの部屋にいるのは分かってる...おい!いるなら返事しろ!できなければ暴れろ!」
ガタッ!ガタン!!
雑兵「た、タンスの裏?!よく入れれたな...」 ズズッ
女騎士「ンム-ッ!!」
雑兵「あぁ...っ!良かった!生きてた!今解く!」
729
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 22:24:38 ID:3B1.AQdM
女騎士「ップハッ!...どうしてここが...」
雑兵「あぁ、ツテとか色々な...それよりも大丈夫か?!怪我とかしてないか!」
女騎士「何もされてない、大丈夫だ...あと少し遅かったら分からなかったが」
雑兵「あぁ...良かった...今回約束破ったのはお前だからな、文句は言うなよ」
女騎士「まったく、それよりも皆に迷惑を掛けてしまったな...」
雑兵「みんなアパートの外で待機してる、残りのカルトを狩らねぇといけねぇ...立てるか?」
女騎士「うん...ッツ痛っ...」
雑兵「え...うっわ...!」
見落としてた、足枷にはボルトが付いており刺さっては居ないが足の肉と骨がゴリゴリ削られていた。
雑兵「クソ共が...モンキかレンチがねえとハズレねぇな、ちいっと我慢してくれ」
ヒョイ
女騎士「きゃっ...///」
730
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 22:59:27 ID:3B1.AQdM
雑兵「カルトは何人くらいいたんだ?」
女騎士「他の部屋は分からないけど...あそこだけで10人弱はいたかな」
雑兵「カルトの残党の人数って大体分かるのか?」
女騎士「最新の情報では100人弱だったかな...あのアパート以外にももしかしたら潜んでるかも...」
雑兵「あ〜2階の部屋全部入れても、5部屋しかない...ざっとみても半分くらいしか居ないかもな」
女騎士「はぁ...疲れたな...」
雑兵「お疲れ様、そろそろみんなの前に出るけどどうする」
女騎士「...このままで良いや」
雑兵「かしこまりました、お姫様」
女騎士「くっ...後でしばく」
731
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 23:59:06 ID:3B1.AQdM
副団長「き、騎士団長...!ご無事でしたか...!」
女騎士「副団長、不在にして申し訳なかった」
参謀長(いやまず姫様抱っこされてることに突っ込めよ!)
雑兵「そ、そろそろ降ろしてもよろしいでしょうか」
女騎士「おろさないって言ったのはお前じゃないか、発言には責任を持つように」
雑兵「えっ、いや、それとこれとは」
副団長「騎士団長、偵察の者が周辺の住宅を捜査したところ、似たようなアパートに半数のカルトが潜伏していることがわかりました、ここで根こそぎ捕獲或いは排除すれば...」
雑兵「いや突っ込めって!」
参謀長「よく言ってくれた」
732
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/20(日) 23:15:31 ID:zCTT/s.s
女騎士「イマイチ緊張感に欠ける奴だな...まぁいい副団長、指揮はお前に一任する、今の私は前線に立っても役に立たないだろう、後方に下がり治療をする」
副団長「はっ、お任せください」
女騎士「と、言うことだ雑兵、護衛は頼んだぞ?」
雑兵「あ、あぁ...でも良いのかよ」
副団長「雑兵は元々員数に入っていないだろう、騎士団長を安全に送り届けるのが今の任務だ」
733
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/21(月) 22:30:03 ID:WleHf5gk
フィッハーに潜伏するカルトの残党は無事捕獲、或いは排除された。
教団に対する不信感を持つ信者も現れ始めた頃に、教祖の死そして最高幹部の脱退が相次いで起こり、脱走者が増加し始めた、捕獲された信者の一部は首都に送られ、取り調べを受けるそうだ。
「教団に不信感を抱いていたら無罪ってかよ」
「それなら俺の殺された家族はどうなるんだ」
734
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/21(月) 22:34:38 ID:7CSEL2Ow
「おい雑兵!お前なら分かるはずだぜ、殺された連中の無念がよ!」
雑兵「あぁ、死ぬ程わかる」
「なら何故捕獲なんて選択肢があったんだよ!」
雑兵「俺に言うなよ、上の連中が捕まえたかったから捕まえたんだろ、俺だって殺してやりてえがよ、立場ってもんがあるんだよ俺の直属の上司にゃあよ」
「…クソ!」
雑兵「俺に当たるなよ、第一てめぇ軍人の立場だってぇのに家族一人も守れなかったのかよ、視野を広げりゃオメェの家族の住む所が危ねえって気付けただろ」
「なっ...!てめっぇ!」
「お、おい雑兵!それまでにしとけ...!」
735
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/23(金) 17:00:58 ID:ZTIpzSoI
雑兵「どう更生させるかは俺の知った事ではねぇ、お上がそう決めたのなら俺らはそうするしかないだろ、分かるだろお前らなら」
「...そりゃ分かるけどよ」
雑兵(連中がどう更生しようが、犠牲者の墓前に奴らが死ぬ迄詫び入れさせてやる...何もかもを捨てさせて…)
_
__
736
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/23(金) 17:07:43 ID:ZTIpzSoI
__
_
国王「して、元信者の様子はどうかな?」
参謀長「はっ、全員過去の教団の行ったことと、自身の行ったことを認識させ、皆反省の色を伺わせています、しかし完璧に更生させるにはまだまだ時間が必要です」
国王「どう取り繕っても、彼らは我が国の国民じゃ、我々が道を作ってやらねばならん...反対意見も見受けられるが」
参謀長「はぁ...反発してる者の最たるものは雑兵ですね、雑兵も今は気持ちを押し殺しておりますが、元信者に対する殺意は凄まじい、子どもの信者でさえも殺してしまえと言う男でしたから」
国王「うぅむ...物心ついた時に、親からそうと教わればそれしか出来ないものじゃ、それを理解してくれれば...」
参謀長「彼は被害者を目の当たりにしましたからね」
国王「...雑兵を呼んできてくれないか、話がしたい」
参謀長「はっ」
737
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/23(金) 17:12:47 ID:ZTIpzSoI
女騎士「元信者の更生は順調だ、我が国が総出で行っているからな、まぁ時間は掛かるだろうが仕方がない、あぁ、それじゃ」 ガチャン
雑兵「勇者か?」
女騎士「うん、あちらも落ち着きそうだから帰ってくると思うよ」
雑兵「そうか」
女騎士「...やはり反対か?」
雑兵「...お前らがそう決めたんだろ、じゃあ従うしかないだろ」
女騎士「お前の意見が聞きたい」
雑兵「俺の意見はお前の意見だ、それ以上もそれ以下もない」
女騎士「ん...」
やはり元信者の更生は反対なのだろう、元信者の子供の基本教育の時間に、雑兵を連れて視察に行ったが...溢れ出る殺気は子どもにさえも伝わっていた。
738
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/25(日) 10:56:08 ID:TLOW1PoA
久し振り
見てるよ
739
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/25(日) 13:35:48 ID:.Uqee9Ik
そうこうと考えが逡巡しているとドアのノックが聞こえた。
女騎士「どうぞ」
参謀長「失礼します、雑兵はいますか?」
女騎士「あぁ、どこへでも連れていけ」
雑兵「参謀長、どうされました?」
参謀長「国王がお呼びだ、雑兵だけ来てくれ」
女騎士「国王が?」
参謀長「はい、まぁ...今後の事ということで」
女騎士「そうか、雑兵、粗相のないように」
雑兵「了解」
740
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/25(日) 13:42:07 ID:.Uqee9Ik
雑兵「んで、何かやったか俺?」
参謀長「何もしてねぇけど、まぁ元信者の事でだ、国王はお前のその内に秘めた復讐心でだいぶ頭悩ませてる、有り体に言えば子どもに手ェかけるんじゃねえかって」
雑兵「あぁ...まぁ否定はしないけど」
参謀長「もう全て終わった事だ、こんな事は言いたくないがもう諦めてくれ、子どもにまで手をかけられたら擁護のしようがない」
ラング村での一件は未だに国の中でも尾を引いており、元信者であろうとその村にいた者は極刑にすべきと議論は続いている。
しかし国王はその場を諌め、邪の道に堕ちてしまった者であろうと更生させよと発言した。
741
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/25(日) 13:46:31 ID:.Uqee9Ik
ラング村の一件は、現在確認される生存者は皆無で、被害者も皆病死或いは自殺してしまう程の残酷な事件であった。
雑兵「…お上が生かすって決めたなら生かせばいいだろ、俺にゃ関係なくないか?」
参謀長「あぁ関係無いけどな、騎士団長と一番近しい人間が露骨に殺意剥き出してんだぜ?」
雑兵「それは...すまない」
参謀長「大丈夫だ、胸の内をあかせ、国王とサシで話せるんだ」
雑兵「あぁ...」
742
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/01(日) 00:24:46 ID:R/1kYHk6
コンコン
「雑兵、入ります!」
国王「うむ」
雑兵「お待たせしてしまい申し訳ありません」
国王「いや、いきなり呼んで悪かった、そこに掛けよ」
雑兵「はっ」
国王「大体は参謀長から聞いたであろう」
雑兵「はい、自分の胸の内も明かしました」
国王「そうか、気持ちは変わらんか?」
雑兵「はい、ですが結局のところは気持ちだけです、自分自身はどうこうするつもりは毛頭ありません、騎士団長の言う通りに動きます」
743
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/01(日) 00:29:58 ID:R/1kYHk6
国王「ラング村での一件...雑兵はよく働いてくれた、そして雑兵が元信者を許せない気持ちも分かる」
雑兵「…」
国王「ここは一つどうだろうか雑兵、貴様が信者の子供たちの教育に携わってみんか?」
雑兵「きょ、教育ですか?しかし自分は学がなく...寧ろ教育を施してほしい程なのですが」
国王「教育といっても何を教えると言うことはない、一緒に暮らし、遊ぶだけじゃ」
雑兵「しかし...あの連中の前に立ってしまえば、自分でも何をするか分かりません」
国王「貴様のその行動が騎士団長に迷惑を掛けるとわかっていてもか?」
雑兵「そっそれは...」
国王「今は気持ちを抑えてくれんか、子どもに罪は無いでな」
744
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/01(日) 00:31:55 ID:R/1kYHk6
雑兵「...分かりました、もし、もしですが、取り返しのつかない事になった場合...俺を殺して下さい」
国王「殺す...とな?」
雑兵「はい、騎士団長...いや、女騎士や勇者...ほかの方々にこれ以上迷惑をかけてしまうのであれば、死んだ方がマシです」
745
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/01(日) 00:38:17 ID:R/1kYHk6
国王「...わかった、きっと処刑してやろう」
雑兵「ありがとうございます」
国王「ふうむ、中々どうして肝が座った男よ、元々の性格なんじゃろうな...では命令を下す、これは国王命令じゃ」
雑兵「はっ!」
国王「命令!王国騎士団 騎士団長補佐雑兵!!元信者の孤児に対する教育係兼取締り係の任務を命ずる!!復唱不要」
雑兵「はっ!それでは申し受けに参ります」
バタン
国王「...」カチャ
国王「聞いてたな、騎士団長」
女騎士『...はい』
746
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/01(日) 00:42:09 ID:R/1kYHk6
国王「雑兵め中々に男前じゃな、捕まえて離すでないぞ」
女騎士『お、お戯れは...』
国王「戯れなどではない、アレは中々どうしていい男じゃぞ、貴様を心から愛している」
女騎士『...だと良いのですが、しかし本当に処刑をするのですか?』
国王「ほっほっ、言うたであろうきっと処刑すると、するに決まっておる、奴は覚悟して掛かった、ワシも本気でせねば雑兵に申し訳がたたん」
747
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/12(木) 00:10:41 ID:/uAStXDQ
我が国における命令には種類があり、部隊長の権限で、個々の隊員に発せられる個別命令、日常業務に対し発せられる日日命令、部隊の編成、配置、派遣等は参謀長、駐屯地や分屯地の長が発せられる一般命令、そしてその全ての命令を司るのが国王である、そして参謀長のみならず如何なる場所に所在する隊員一人、国民一人に対してでも発令できる国王命令がある。
国王命令はどの命令よりも重くまた何があろうと絶対に遂行される命令である。
雑兵(国王命令...ってことは絶対に処刑するってことだもんな)
国王命令には罪人や戦争犯罪を犯した隊員の処刑も含まれており、刑場で行われる処刑は全て国王が発令して行われるのである。
748
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/12(木) 00:16:21 ID:/uAStXDQ
参謀長「国王命令ってお前...しかも直々に何かしたら処刑するって下されたのかよ」
雑兵「あぁ、きっと殺すってさ」
参謀長「国王から言われたんじゃ...騎士団長でさえも止められねぇな...」
雑兵「止めてくれなくたって構わねえさ、俺が殺してくれって言ったんだ」
参謀長「だとしても...お前ってほんとバカだなぁ」
雑兵「そんなことは俺が一番分かってるよ、所でその子供らってのはどこにいるんだ?」
参謀長「あぁ、城の中にある教会が面倒見てる、外じゃ被害者遺族が危害を加える恐れもあるからな」
雑兵「了解、ほいだら行ってくるか」
参謀長「頑張れよお前...何を頑張ればいいかしらねぇけど」
雑兵「みんなに迷惑をかけないように頑張るだけさ、行ってくるな」
749
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/12(木) 00:21:33 ID:/uAStXDQ
城の中にある教会は孤児院の役割も果たしており、戦災孤児や両親を様々な理由で亡くした子供たちはここへ預けられ、基本教育等を受けて成人を迎えたら外で働きに出るそうだ。
雑兵「失礼します」
神父「どうも、雑兵さんですね?国王から通達を受けました、お世話になります」
雑兵「こちらこそよろしくお願いします...それで、子供たちは」
神父「はい、今は勉学の時間ですから...教会の者が教室で授業を行っていますよ、見に行ってあげてください」
雑兵「ありがとうございます」
750
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/12(木) 00:23:34 ID:/uAStXDQ
神父(子どもたちに危害を加えたなら処刑...本人がそう言ったとは言え、国王もそれを承諾するとは...カルトが与えた影響はまだまだ続くのか)
雑兵「…すみません、教室ってどこですか?」
神父「おやおや…」
__
___
751
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/12(木) 00:28:11 ID:/uAStXDQ
__
__
シスター「ここにはリンゴがあります、このリンゴ同士は幾つありますか?」
「2!」
シスター「すばらしい!」
雑兵(見たところ全員普通の子どもだな...子どもに罪は無いと言うが...あのカルトの子どもか)ギリッ...
シスター「…みんな、周りのみんなでこの問題を解いてみましょう、シスターがはいと言ったら答えてください」
「「「「は〜い!」」」
シスター「すみません、ちょっとよろしいでしょうか」
雑兵「…あ、は、はい」
752
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/12(木) 00:33:40 ID:/uAStXDQ
シスター「貴方が今日来られる雑兵さんですね?子ども殺意を向けるとはどう言うことです」
雑兵「…殺意なんてそんなこと」
シスター「いえ、私にも伝わりました、子どもたちにそんな感情を抱くなんて...何を考えているのですか!?」
雑兵「す、すみません...カルトの連中の子どもだと思うとつい...」
シスター「カルト信者の子どもであろうと、みな神の名の下に生を受けた者達です、許せない気持ちは分かりますが、子どもには何も関係のない事と貴方も分かっているでしょう?」
雑兵「…」
シスター「…あなたの事は昨日神父様から聞きました、
753
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/12(木) 00:37:01 ID:/uAStXDQ
シスター「そしてあなたの覚悟も、みな驚いていました」
雑兵「…」
シスター「貴方が道を外さないよう、私も含めて皆で援助します、ですからどうか今は寛大な心で子どもたちと接して下さい、お願いします」
雑兵「はい...すみません」
シスター「分かればよろしい、次の時間は自由時間です、子どもたちと交流を深めて下さい」
雑兵「…は、はい」
754
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/12(木) 00:38:02 ID:/uAStXDQ
雑兵(交流...交流か...)
雑兵「そう言えばここって...」
_
__
755
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/13(金) 01:53:35 ID:SsPxegCc
__
_
雑兵「やっぱり、ここに眠ってたんだな」
埋葬されて新しい墓石が複数建てられていた、ラング村のあの部屋で残忍な行為を行われた彼女たちの墓石だ。
雑兵が誤認で捕まった後、彼女達は保護されたが、皆重度の性病又は精神病の苦痛を数日間耐え抜いたのち病死又は自殺した、誰一人として救える状況ではなかった、しかし誰一人として救えなかったのだ。
雑兵「…子どもに罪はねぇけどよ、罪もねぇ子供も殺されたんだよ...」
シスター「雑兵さん?ここにいらしたのですね、授業が終わったので子どもたちと交流を...」
雑兵「...ウッ...ウウッ...」
シスター「...雑兵さん、やはりあなたやめた方が」
雑兵「...いえ、誓ったんですよ、この国の教育で元信者が更生しようとしまいと、一生を掛けてでもこの墓前に跪かせるって、子どもたちにはそんな事はさせませんがね、自分の親が何をしたか位は教えてやります」
756
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/13(金) 14:23:39 ID:SsPxegCc
シスター「それは...」
雑兵「俺の生まれ故郷の言い方だと...道徳の授業かな」
シスター「道徳...物は言いようですね、子どもにそんな残酷な事を教えられるのですか?」
雑兵「残酷な事もお前らが教えねえから禄でもない大人が世に出てくるんだよ、神だけじゃどうしようも
無いこともあるんだよ」
シスター「っそ、それは聞かなかったことにします、わかりました、あなたの覚悟は神父様からも聞きました、
あなたの思うようにして下さい、しかし変な真似はしないように」
雑兵「大丈夫だ、連れてきてくれ」
757
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/28(土) 16:27:25 ID:gjv04x0o
さてどこから話せばいいか、子どもなら間接的な表現よりも直接...
雑兵「おう、来たか」
シスター「ちょっと、何もわざわざ墓地でなんて...」
雑兵「すまん、だがケジメはつけたくてな、すぐ終わらす」
「シスター?この人は?」
「兵隊さん?」
雑兵「おう、すまん紹介がまだだったな、まぁ陰に座って話そうや」
シスター「私は隅で見てますから、みんないい子にしてね?」
「はーい」
雑兵「紹介する、俺は雑兵、今は騎士団長付の秘書をしている」
758
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/09/20(月) 22:53:58 ID:MYjU7P8M
雑兵「んで、俺はお前らの親を殺させてもらった、悪いとは一つも思っていない」
「…ッど、どういう...」
雑兵「いいかお前ら、お前らにはカルトの連中が行ったことに対して詫びる事はない、何故なら何一つとしてお前らに罪はないからな、自信を持って良い」
「へ、兵隊さん...何言ってるの...?」
雑兵「俺はお前らに人として真っ当な、お前らの親のような人間に育てない為にお前らの所に来た、別に厳しく接する訳じゃない、その仕事はこの教会の連中が勝手にやるからな」
シスター「ぞ、雑兵さん...!黙って聞いていればあなた一体どう言う...!」
雑兵「今まで黙って聞いてたんならこれからも黙って聞いてろマヌケ。いいかお前ら、お前らにゃこれから親がしでかした事を教え込んでやる、親に対する誇りも、愛情も一切無くしてやる、これがお前らに出来る教育で、犠牲になった人らに対する弔いだ」
759
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/09/20(月) 23:01:59 ID:AjWHNiGE
シスター「神父様!雑兵とやらを即刻辞めさせねば!」
神父「子どもたちに手を...出したのですか?」
シスター「いえ...しかし子どもに対する教育的模範となる人間ではありません!いつ子どもたちに危害を加えるか...」
神父「...確かに、カルト信者の子ども達を保護している事に対して反発をしている国民がいるのも事実です、雑兵はどうやらその人達の代弁者として来たのでしょうね...しかし彼ならやってくれます、子ども達を導いてくれるでしょう」
シスター「なんの根拠が...」
神父「彼の行いは見てきたし、聞いてきました...とても慈悲深い人であると同時に、自身の発言で苦労する人間ですね、すべて本音で話してしまうから...」
760
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/10/22(金) 22:33:19 ID:G2c8hVWk
神父「彼は死ぬ覚悟で当たっています、我々の発言で人を一人殺めてしまう、思う所もあるでしょうが、彼は道を間違えないでしょう」
シスター「…わかりました」
_
__
761
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/10/25(月) 22:26:21 ID:m6cIyoq.
読んでるよ
762
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/10/27(水) 15:38:27 ID:.LdszHqs
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参謀長「その後どうです?奴の子守は」
女騎士「神父から聞いたが、やはりぶっ込んだようだな...手こそは出していないが」
参謀長「国王から直々に命令が下り...しかもなんかやらかしたら殺してくれですからね、豪胆なのかバカなのか」
女騎士「バカで豪胆なのに臆病者だ、ほんと意味が分からない性格だよ」
参謀長「そうですか、まぁ奴なら大丈夫でしょう、やばそうだったらもうすっ飛んできてますよ」
女騎士「随分と皆で懲らしめたからな、誰かが唆したお陰でやっとあいつも気付いてくれた」
参謀長「ま、まぁそれはそうとして...」
763
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/10/31(日) 00:21:00 ID:pb4JE2js
参謀長「諜報部からの情報だと、プラニスの残党と南のホイシュレッケ王国との情報の行き来が盛んになったと」
女騎士「ホイシュレッケ...」
参謀長「あぁ...あとあそこの殿下も王位に就くそうですよ、実はもう来てるでしょう?」
女騎士「婚約の申し込みか、あぁ、もう何ヶ月も前から来てたよ、一つも目を通してなかったが国王から流石にシカトは可哀想だから返信しろと言われた」
参謀長「気苦労が絶えませんな、どうするんです?あの殿下、断りでもしたら戦争に発展させる勢いの告白でしたよ」
女騎士「あのパーティーの時の告白見てたのか」
参謀長「副官の時にですがね、どんくらい立ちますっけ?」
女騎士「雑兵が来る前だから...一年とちょっとだな」
764
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/10/31(日) 00:25:05 ID:pb4JE2js
参謀長「雑兵換算ですか?」
女騎士「あ...いや別に特別な訳は無いぞ、うん」
参謀長「はいはい...では週間ミーティングは終わります、男を代表して言いますがね、早く想い伝えないと手遅れになりますよ」
女騎士「う、うるさい、まだ温めてる最中だ」
参謀長「雑兵も可哀想に...ではまた来週もお願いします」ガチャ
女騎士「あぁ、また」
バタン
女騎士「伝えるったって、一つも進展してないしなぁ」
765
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/08(月) 00:25:13 ID:DxJMtq/6
女騎士(全てが落ち着かないとなぁ…)
女騎士「…まぁ、今はまだね」
_
__
766
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/08(月) 00:41:02 ID:DxJMtq/6
__
_
雑兵「どうだ、シスターの授業はついていけてるか?」
「算数が難しい〜」
雑兵「算数かぁオレも実質学校行ったことないようなもんだからなぁ…気合いでなんとか乗り切れ気合いで」
シスター「あのですね...」
雑兵「なんでしょう」
シスター「気合も大事でしょうがちゃんと筋道を立てた勉強をしてんですよ」
雑兵「すみません」
「また喧嘩してら」
「飽きないねぇ〜」
767
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/14(日) 02:50:40 ID:YZa5Mki6
この孤児院へ来て数週間、時間はあっという間に経ちカルトの子ども達ともだいぶ打ち解けて来た、最初はやはりと言うべきか怖がられていたが、何をするでもなくただ一緒に授業や飯を食っていれば好奇心旺盛な子は近付いてくる訳で。
雑兵(ただ一々人数や体調を管理するのはしちめんどくせぇ訳でして)
シスター「雑兵さん、日夕点呼の記入お願いしますね」
雑兵「あいあい...」
この点呼も人数の点検や体調の良し悪しを管理する為に必要で、朝と晩に行われる。
雑兵「おーい、さっさとベッド入れよ〜」
「雑兵!絵本読んで!」
「ずるーい!私が先に読んでもらうの!」
雑兵「もー寝なさいよ、明日も見れんでしょうが」
768
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/14(日) 02:52:19 ID:YZa5Mki6
雑兵「点呼異状なしっと...俺も寝るべな」
この点呼は確実に行わなければならない
_
__
769
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/14(日) 03:01:26 ID:26mneQFM
__
_
ホイシュレッケ王国はビギニング王国と同じく君主制であり、ビーネ国王の元に統治されている、ビギニングとは長年交流が盛んであり毎年年末になると国王同士交流の為の晩餐が開かれる。
ビーネ国王にはラヴィーネという一人息子がおり、現在はホイシュレッケ王国の王国騎士団長を拝命され、その座に君臨している。
ラヴィーネ「お父様、今回の晩餐会は勇者様も来られるとか」
ビーネ「あぁ、貴様のが愛してやまない騎士団長も来るぞ」
ラヴィーネ「あぁ...騎士団長...早く会いたい...会ってあなたと添い遂げたい...」
ビーネ(ひとっつも進展していないのにこの自信は誰譲りなのだろうか...)
770
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/14(日) 03:06:53 ID:26mneQFM
ビーネ(以前の交流会でいきなり告白したかと思えばこっぴどく振られたのに...我が息子ながら気持ち悪いな)
ビーネ「そいえば...最近ビギニング王国の騎士団長に噂が流れていてな、なんでも側近の男を付けたとか...」
ラヴィーネ「側近ですか...?副団長がいるのに...」
ビーネ「分からんが、兵卒上がりなのにずっと騎士団長の側に付かせているようでな...」
ラヴィーネ「あぁ...そんなバカな...嘘だ...ありえない」
ビーネ(せっかく男いる事匂わせてんのに諦めぬ男だな...揉め事を起こさなければ良いが...)
771
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/14(日) 03:09:32 ID:26mneQFM
その夜
ラヴィーネ「…いいかい?絶対にバレないようにするんだ、その側近とやらの情報を手に入れ...可能な限り始末しろ」
間者「御意」
_
__
772
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/14(日) 03:14:39 ID:9/PidJuw
__
_
勇者「ただいま〜…」
女騎士「おかえり、疲れてるね」
勇者「何もしなさすぎて疲れたよ〜、オムエンにいる魔物たちホント何もしないし、むしろ人間とも仲良いし」
女騎士「それはいい事だね、雑兵にはもうあった?」
勇者「あ、まだだ!会わないと!どこにいるんだっけ?」
女騎士「教会だよ、子どもたちと一緒だからあまりひっつき過ぎないように」
勇者「それってお姉ちゃんのお願いでしょ、なんの進展も無かったんだ、僕にもチャンスあるね」
女騎士「い、いや...進展は...」
773
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/14(日) 03:17:22 ID:9/PidJuw
勇者「どうせしてないんでしょ、流石の僕でもわかります」
女騎士「進展も何も...まだ始まってすらいないしなあ」
勇者「ほーん、まぁ弱気なら僕に敵はいないね、じゃそゆことで〜」バタン
女騎士「...好きだけど、何もなさすぎるんだよ」
_
__
774
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/23(火) 23:25:36 ID:4qvQ9v22
__
_
雑兵「今晩の見回りも異状なしっと...」
ガチャ...
雑兵「ん?...扉が開いた音がした気が...まぁ気のせいか」
間者(...見回りは毎晩欠かさずに行なっているな、真面目な奴だ、しかし隙だらけの巡回だな)
間者(孤児の人数は...意外と多いな...フム...)
775
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/23(火) 23:27:46 ID:4qvQ9v22
間者(しかし騎士団長付の秘書がこんな所で何をしているのだろうか...まぁどうでも良い、まずは情報だな…)
_
__
776
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/23(火) 23:34:45 ID:eUx8qTow
__
_
間者(なんだこの城は、業者を偽れば簡単に忍び込める...まぁ良い、事前に貰った雑兵とやらの経歴は...独立大隊、国境守備隊...そして騎士団長付の秘書か、騎士団に近付いてみるか)
天使「へぇ〜雑兵ってば孤児の面倒を?」
エルフ「うん、しかも国王陛下直々の命令だって...大丈夫かな雑兵」
天使「雑兵なら大丈夫だと思うな、優しいし」
エルフ「でも孤児って、カルト信者の孤児でしょ?雑兵の心がいつまで持つか...」
天使「大丈夫、雑兵なら上手く付き合えるよ」
間者(国王命令でか...しかし雑兵とやら、かなり信頼を置かれているな...)
777
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 00:20:47 ID:vs84Y4zs
間者(国王命令...と言うことは何かしらの粗相があれば重罪は免れんと言うことか...)
間者「気は乗らないが...これも仕事だからな」
_
__
778
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 00:24:20 ID:JPWMvU12
__
_
雑兵「あれ…なんか一人多い...?」
シスター「雑兵さん?どうかしましたか?」
雑兵「日夕点呼で子供達の数を数えたんだけど、なんか一人多くて...誰かまた増えた?」
シスター「いえ、新しい子が来る報告は来ていませんから...前々から数え間違えてたのでは?」
雑兵「あぁ〜そうかもなぁ...いや、でもなぁ...」
シスター「明日の朝に確認しましょう、今日はもう遅いですし、新顔の子がいたら分かりますから」
雑兵「そうするか...」
779
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 00:28:17 ID:JPWMvU12
__
_
間者「…」
ガチャ
間者「上手く忍びこんだな」
「はい…来ました...その、ちゃんと殴られたらお金くれるってほんと?」
間者「あぁ、暫くは妹さんと暮らせる程の大金だ、だがちゃんと働かないとダメだぞ、大金といえど使い方によってはお金はすぐなくなるからな」
「わかった...」
間者「じゃあ...耐えてくれ...よっ!!」
バキイッ!
_
__
780
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 00:32:23 ID:ZphAVgRw
__
_
雑兵「よーし、点呼とるぞ〜...ん?」
シスター「はい、一列に並んでください…そ、その傷、どうしたの?」
「…」
雑兵「誰かに殴られたのか...?」
「…」ッス
雑兵「…は、はぁ...?」
シスター「ぞ、雑兵さん...?嘘ですよね...?」
781
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 00:37:49 ID:bUyEy5xA
雑兵「いや、いやいや!殴ってねぇ、ぜってぇ殴ってねえって!そうだ!神父、神父呼べ!そしたらこのガキが何者か分かるって!」
シスター「神父様はいま出張で居ません…」
雑兵「ちょっ、ちょっと待て!いやお前嘘つくなってホント!なぁ!」
「……」
シスター「雑兵さん…失望しました...なんでここまで来て...」
雑兵「いやいやいやいや、冷静に考えてみろって!」
シスター「とにかく...事実確認のため憲兵を呼ばせて貰います、この子が貴方に殴られたと言った以上は...」
雑兵「いやいやいや...まさか、そんな...」
782
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 00:43:37 ID:bUyEy5xA
その夜
「…」
間者「よくやったな、雑兵ってやつはお陰で監獄に打ち込まれたそうだ、憲兵の取り調べにも一貫して殴られたって言ったか?」
「...うん」
間者「よし、これで奴の始末は完了だな、あのバカ自分で国王に手を出したら死刑にして下さいと言ったそうだ、やる事が裏目に出過ぎだ...まぁいい、約束の褒美だ、妹さんと達者で暮らせ、まずは孤児院とスラム街から抜け出して、奉公先を見つける事だ、いいな?」
「うん」
間者「元気でな」
_
__
783
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 00:51:10 ID:C51cIBKw
__
_
女騎士「…嘘だ、嘘だあり得ない、あり得ない!!」
副団長「しかし...子どもは一貫して殴られたと主張しています、しかもあの殴ったアザは間違いなく大人が殴らねば出来ないほどの威力...」
「おかげで騎士団は末代まで舐められますね、騎士団長?」
副団長「口を慎め若造!騎士団長...もしかしたら、もしかしたら何かの間違いかもしれません...国王陛下にまで誓ったあの覚悟を無碍にするような男では...」
「ですが副団長、あの男は卑劣で野蛮な男ですよ、規律を守ると言う気概もなく上官には楯突いて...しかも国王陛下にまで楯突くとk バキイッ!!
女騎士「ハァ...ハァ…黙れ...貴様如きにアイツの何が...」
副団長「騎士団長、いけません」
「っく...なんであの男ばかり...!あんたおかしいんだよ!!オレら騎士団の方が遥かにあんたに忠誠を誓ってた!アイツは忠誠のカケラもねぇのに!!」
784
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 00:53:31 ID:C51cIBKw
副団長「貴様!出てゆけ!」
女騎士「……」
「くそ!あんなやつなんか死んでしまえ!!」
バタン!
副団長「…少し席を外します...」
女騎士「あぁ...」
副団長「…ックソ!」
バタン!!
女騎士「何かの間違いだ...何かの...」
785
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 01:02:19 ID:eTk/3V6E
国王「…ふぅむ...」
参謀長「先月からホイレシュッケ王国と我が国の国境を商人の行き来が多くなっています、多くが彼の国の商人です」
「しかし商人の行き来のが多い割に、財政の動きが見られません、ここまで多く来るのであれば多少なりとも物価は変動するのですが...」
国王「相分かった、国境の警備を更に厳重にせよ、それと参謀長は残るように」
参謀長「はっ、それでは本日の報告会は終了します」
786
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 01:14:31 ID:eTk/3V6E
国王「して...雑兵の様子はどうだ?」
参謀長「はぁ、取り乱しております、未だに無罪を主張しておりますが...いかんせん証拠が...」
国王「やっていない証拠が無い...そういう所か...被害者の子どもは?」
参謀長「いまは孤児院で治療を受けております、幸い跡が残る傷も、殴られた側の歯も無事でした、器用に殴りやがって…」
国王「…わかった、証拠が集まらん以上は命令通りにするしか無い...四日以内だ」
参謀長「…はい、有りとあらゆる手段を尽くします」
_
__
787
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/05(日) 00:47:45 ID:xXOBpoRA
__
_
神父「ふうむ...出張で帰ってきてみれば、なんたることか...
シスター「神父様、やはり最初から無茶だったんです、人の心の底というのは変われるものでは...」
神父「...いま、被害者の子はどこに?」
シスター「城の軍病院で入院しています、軽症ですが一応軍医の判断で…」
神父「ふむ、ちょっと様子を見てみよう、シスターは残っててくれ」
シスター「はい」
788
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/05(日) 00:51:01 ID:xXOBpoRA
「どこに消えたんだ?」
「便所じゃねえか?」
神父「おや、何やら騒がしいですな」
「神父様、被害者の子どもが姿を眩ましてですね...」
「飯食った後にどこかに...多分便所だと思うんですがね」
神父「それは大変だ、病人ですから今すぐに探し出さねば」
789
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/05(日) 00:52:37 ID:xXOBpoRA
神父(失踪...行く当ても無い子どもが何処に...いやもしかすれば…)
神父「…なかなか面倒な事態になったな」
_
__
790
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/05(日) 01:00:56 ID:xXOBpoRA
__
_
勇者「被害者の子が消えたんなら本当に殴られたか分からないじゃん!」
参謀長「しかし今の段階では子供の証言が一番有利でしてね、殴られた傷は間違いなく大人が殴らないと出来ないほどの傷ですし…」
強襲団長「そもそも子ども一人逃げ出せる軍病院もどうなっているんだって話だな」
参謀長「あと二日...明日にゃ雑兵は刑場に送られる...」
強襲団長「…バカな話だが、変な意地張った雑兵も悪いけどな、弁護士も無しで雑兵が殺されるってなぁこの国の司法もとんでもねえぞ」
参謀長「弁護のしようがないんですよ、殴らないと言う約束で子どもたちの子守りして、殴られた子どもがいるんですよ。しかもカルトの子だ、雑兵が100%殴らないとは言えないんですよ」
勇者「そんな…!じゃあ雑兵死刑になっちゃう…!やだ…やだぁ!」
791
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/05(日) 01:05:51 ID:xXOBpoRA
強襲団長「…仕方がねぇ、強襲警備団全員でそのジャリを探し出してやらぁ」
参謀長「えっいやしかし強襲警備は国王からの命令が無ければ...」
強襲団長「んなもんお前がどうにかしろや」
参謀長「しかしなぁ...!」
国王「許可する、さっさとやってこい」
強襲団長「はっ、直ちに捜索します」
参謀長「こ、国王陛下...!」
国王「許せ参謀長、ワシもまだ望みに賭けたいのでな」
勇者「王様...」
国王「勇者よ、泣いてしまっては雑兵が困ってしまう、今は雑兵を信じてやるだけじゃ」
792
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/05(日) 01:07:11 ID:xXOBpoRA
勇者「王様...うん!」
国王「して、騎士団長は大丈夫かな?」
参謀長「…一応は気丈に振る舞ってはいますが...」
国王「…仕方がない、今はな...」
793
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/05(日) 14:14:29 ID:xXOBpoRA
国王「真実を掴み取るのじゃ、さもなくば雑兵はきっと…」
参謀長「…はっ、我が王国軍の誇りにかけて」
_
__
794
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/06(月) 00:15:17 ID:Ux8kuR4c
___
_
雑兵「はぁ〜.…
「えらい落ち着きようだな...明後日にゃお前...」
雑兵「そうだけどさ、やってねぇ証拠がねぇって言われたらもうお手上げなんだよなぁ〜…」
「心配すんなって、オメェの味方は多いぜ、まぁカルトのガキだから殴りたくなるのも...」
雑兵「だけん殴ってねぇってのに…」
「あ、すまん...」
795
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/06(月) 00:19:51 ID:Ux8kuR4c
雑兵「もう疲れたなぁ…なんべん同じ事を繰り返しゃ済むのかなぁ」
「諦めんなって、いま王国軍総出でその逃げ出したガキ探してんだからよ、強襲警備団も捜索にあたってんだぞ、あの国王から直々に命令されたんだ」
雑兵「強襲団長がよくそんな事を...」
「まぁお前との関係はわかんねぇけど...弟子の二人は相当参ってるらしいからなぁ」
雑兵「…あぁ、もう勘弁してくれ...何度も何度も…」
「まだ粘れって、大丈夫だ」
雑兵「でも明日には刑場でしょ?」
「まぁそれが俺らの仕事だからな」
_
__
796
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/26(日) 23:16:36 ID:91FGGNTs
__
_
強襲団長「まずは孤児に話を聞くんだ、殴られた子の特徴性格孤児院に入った時期も、ありったけを聞き出せ」
「了解ッス」
「お前らはスラム街の捜索だ、顔にアザが残ってるはずだ、怪我をしているガキがいたら徹底的にマークしろ、情報が入り次第随時伝える」
「「「了解」」」
強襲団長「いいかお前ら、この任務は国王から直々に許可を得た任務だ、必ず任務達成させるぞ」
「「「「おう!!」」」」
797
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/26(日) 23:20:32 ID:91FGGNTs
勇者「強襲団長…」
強襲団長「…まぁそんなに落ち込むなよ、雑兵は俺らが必ず見つける、いまは休んどれや」
勇者「でも...雑兵がもし...処刑になんてなったら...」
強襲団長「…雑兵を信じて、俺らの事も信じてくれ、さぁ、今は休め、あと女騎士の奴にも休んどけって言っといてくれ」
勇者「…うん」
798
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/27(月) 00:28:33 ID:ebqXyHlQ
強襲団長(ったく、まだ二人ともガキだってぇのに女の顔し出しやがって...雑兵の奴、死んでも逃がさねぇぞ)
_
__
799
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/27(月) 00:32:21 ID:ebqXyHlQ
__
_
女騎士「はぁ...」
女騎士(孤児が殴られたと聞き、真っ先に雑兵の顔が思い浮かんだ...やはり雑兵を信じられなかったのかな...大丈夫と送り出した時は信じていた筈なのに...)
ガチャ
勇者「お姉ちゃん...」
女騎士「ん?どうしたの?」
勇者「強襲団長がお姉ちゃんも休めって...」
女騎士「あぁ...まったく、周りの人にまで迷惑をかけてしまったな...勇者、今日は一緒に休もうか?」
800
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/27(月) 00:33:08 ID:ebqXyHlQ
勇者「…うん」
女騎士「じゃぁ着替えてベッド入ってて、私もすぐ行くから」
801
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/27(月) 00:37:40 ID:crneizSw
勇者「…お姉ちゃん、雑兵大丈夫かな」
女騎士「大丈夫だよアイツなら、幾つもの試練を乗り越えてきたんだから」
勇者「…」
女騎士「…強襲団長も頑張ってくれてるんだから、信じよ?ね?」
勇者「…」
女騎士「明日もお仕事だから、早く休もうね」
勇者「うん…」
_
__
802
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/27(月) 00:45:14 ID:crneizSw
__
_
ピピーッッ
「逃げたぞ!」
「もう逃さねえぞスパイ!!」
間諜「ックソ...!あとちょっとで出国できたのに何故いきなり…!」
間諜(非公認の任務だから検問は通れない、ここまでか...)
「やっと観念しやがったな」
間諜「何故俺がスパイだと...」
「最近ホイシュレッケ王国とビギニングに商人の往来が激しくなってな、しかし我が方の財政は上がるわけでもないからおかしいと睨んだわけよ」
「まぁ全員が全員スパイじゃねぇけどよ、明らかに商人を名乗るのにお前は城の出入りが激しかったんだわ」
間諜「出入りが...?商人と化けてれば大丈夫と思ったのに...」
803
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/27(月) 00:49:47 ID:ny/TnjW.
「バカ野郎、うちの城ん中じゃ外国の商品は買わねぇんだよ、それは色んな国の商人が知ってることだ、それを商人ですと入ってきたら怪しむに決まってんだろ」
間諜「最初から泳がせてたのだな…」
「まぁんな事はどうでも良い、知った情報を返して貰おうか」
間諜「生憎だが俺は別の任務でビギニングに立ち寄ったのでな...情報はさほど手に入れていないんだ」
「なに...?それってぇのは…」
間諜「ちょっとした火遊びだよ、ちょっとしたな」
「…クソ、連行しろ、ちいと手荒く聞かなきゃいけなくなっちまった」
804
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/29(水) 19:53:07 ID:6hGg15RI
「しちめんどくせぇ、いったい何しでかしやがった」
間諜「…そろそろだな」
「あ?そろそろ?」
「まぁいい、取り敢えず首都まで連行しろ、ったっくここから首都まで遠いんだぞ」
間諜「…雑兵って奴知ってるか?」
「雑兵?いや知らんな」
「小隊長…雑兵ってぇのは忠義に熱い男で、所謂俺ら兵卒の星って奴ですよ、でも確か風の噂ですけど、なんか死刑確定してるらしくて…」
805
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/02(日) 19:55:03 ID:wHoZMaps
「死刑?何しでかしたんだ」
「なんでも、国王に頼まれた仕事に不備でもあったら殺してくれって言ったみたいで」
「バ、バカなのかアイツ…そんな簡単に命投げ捨てて…」
間諜(やはり早めに処分しておいて良かった、雑兵とやらなにかと影響力はあるようだな)
「はぁ、そこ知れないバカですが…でもとても良いやつですよ、義理堅くて、アイツが処刑でもされたらどうすんだろうなぁ」
「知った事ではない、さっさと連れてゆくぞ」
「了解ですっと」
_
__
806
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/02(日) 20:12:54 ID:wHoZMaps
__
_
参謀長「なんの手がかりもねぇだと?!てめぇ何してたんだよ!」
強襲団長「まぁまてや若造、件のジャリの情報は聞いた、奴は妹と行動し、今は何やら遠出の支度をしているらしい」
参謀長「だったら!」
強襲団長「スラムの連中の結束力は固いんだよ、オレらみたいな不成者の警備隊に嗅ぎ回られるって感じられたらそりゃ口も固くなるわな」
参謀長「クソ、もう雑兵も連れてかれちまうのに…」
強襲団長「…いま総出で捜索にあたってる、ジャリ如きに振り回されてたまるか」
参謀長「…ックソ!」
807
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/02(日) 23:44:16 ID:kwiYoz4s
「雑兵出ろ、移動だ」
雑兵「…おう、世話なったのう」
「…達者でな、オメェと飲んだ時は楽しかったぜ」
雑兵「…あぁ、また会おうや」
ガチャン
808
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 01:34:43 ID:1peUaHg6
バタン
雑兵「…やめとけ」
女騎士「…いや」
「き、騎士団長…」
雑兵「味方に刃向けて、いやなんてことはねぇだろ、やめとけ」
女騎士「うるさい、さっさとその拘束を解け」
「…で、出来ません、国王の命令です」
雑兵「…」
女騎士「…」
雑兵「女騎士…すまん、お前の約束守れなんだ、愛してるぞ、お前も、勇者も」
女騎士「…っいや!」
「…」
809
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 01:39:09 ID:B1X54npI
女騎士「何が愛しているだ…!そんな態度も言葉も…一切合切…」
雑兵「お前らから言ってくれたもんな…でもオレは言えなかった、愛してる、でも多分オレはお前らを幸せにできない、だって現に一人に絞れてないんだぞ」
女騎士「それでもいい…私も、勇者も愛してくれるなら…それで…」
「…時間です、申し訳ありませんがこれ以上邪魔だてするのであれば…」チャキ...
女騎士「…すまん、取り乱した」
雑兵「俺が死んでも、忘れないでくれ…あっちでもこっちでも忘れられたら寂しいからさ」
女騎士「絶対忘れない…死んでも…」
810
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 01:42:52 ID:B1X54npI
「…いくぞ、馬車に乗れ」
雑兵「あぁ…」
バチン! ブルルッ
雑兵(すまねぇ、みんな、すまねぇ)
勇者「ッハァ…ハァハァ…雑兵ーー!!」
雑兵「勇者…!女騎士にも言ったけど!愛してるぞ!だけど他にもいい男見つけろ!」
勇者「無理だよ…!雑兵以外になんて…」
雑兵「だったらオレが…!生まれ変わってでもお前のところに、女騎士のところにいってやる!無理なら待ってろ!」
勇者「…一生待ってる!!」
811
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 01:47:49 ID:pwXLll2E
「…城出るぞ、格子の扉閉めろ」
雑兵「あぁ…」 カシャッ
この世界にきて一年と半年くらい、前の世界では出来なかったことも出来るようになった、チートとか異能魔法も一切無かったけど、それでも楽しかった、次の世界はあるのだろうか…無ければどうなるのだろうか。
雑兵「ありもしない未来が浮かんでくらぁ…」
息災に子守を終え、女騎士と勇者との生活、家は城の中になるが、タダだからそれでもいい。
そんなありえない未来が浮かんでくる。
雑兵「もう手遅れだけどな…」
812
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 01:55:10 ID:jFjHKSv2
ビギニング刑場はカルト信者の処刑も終えひと段落していた、龍で咬み殺されるだけではキャパオーバーだったので再び処刑人が登場した事もあったらしい、しかし今はあらかた処刑も終わり閑散としていた。
雑兵「前はもう少しいたのに…」
「カルトの処刑は流れ作業でやってたらしいが、間違えて国王の命令が出てない死刑囚も殺しちまったみたいで…」
雑兵「バカだなぁ」
「仕方ねぇよ、番号も振られてねぇしなぁ、じゃあお前の処刑は明日だ…今日はまぁ休んどけ」
雑兵「おうよ…」
雑兵(休めるかってんだ)
813
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 23:28:44 ID:M1f6fDqM
そして、なんの音沙汰もないまま次の朝を迎えた。
「雑兵…出ろ」
雑兵「…はい」
万に一つの可能性があったとしても、それは全て後の祭りであろう、刑は既に執行される、知らせが来る気配もない、身代わりもいない。
「言い残したことは?」
雑兵「女騎士…いや、騎士団長と勇者に愛してると伝えてくれ、他の人にはこの紙に…」
「しかと受けとりました…主よ、みもとに召された人々に、永遠の安らぎを与え、あなたの光の中で憩わせてください。神よ、深い淵から、あなたに叫び嘆き祈るわたしの声を聞いてください。あなたが悪に目を留められるなら、主よ、だれがあなたの前に立ち得よう」
814
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 23:34:23 ID:hnZD8k5s
グオオオオオ....!
「いつくしみ深い神よ、今この世からあなたのもとにお召しになる雑兵を心に留めてください。洗礼によって神の死に結ばれた者が、その復活にも結ばれることができますように」
グオオオオオオオオ!!!!
雑兵「…っ!」
「雑兵の心に永遠の安らぎのあらんことを…」
処刑龍「オオオオオオおおおっっっっ!!」
教誨師の言葉につられるように、大きく口が開けられる、数多の死刑囚を喰らい尽くした龍、こんなのがまだ生きているとは、そして使われているとは…
815
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 23:40:31 ID:GzKOFo0c
雑兵「…うぅっ″!」
その瞬間、世界が反転し、そして真っ暗になった、下へ落下していく感覚、そして強烈な腐敗臭、喰われたのだ。
奈落への落下は腐敗臭と、そして不気味な暖かさに包まれていた…
雑兵(早く、飲み込んで殺してくれ…)
他の死刑囚もこのような感覚だったのだろうか、巣で貪り食われるのか、それとも落下しながら徐々に食うのか…
口の中で地面についた感覚があった、意外にも底は早く着いた。
雑兵(…何も起きない、何やってんだコイツ)
処刑龍「ッペ」
雑兵「うおおおおおおっ!!」ゴロンゴロン
816
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 23:43:13 ID:GzKOFo0c
雑兵「って、てめぇ!人を不味いみたいに吐き捨てやがってこの!!」
処刑龍『グルル…』
雑兵「…な、なんだよ」
処刑龍『…実際不味いんだよ人の肉って』
雑兵「しゃ、喋った?!」
処刑龍『そりゃ喋るわいな、何千何万と生きておるのだぞ』
雑兵「な、何で…オレのことは食わなかった」
817
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 23:50:14 ID:GzKOFo0c
処刑龍『問いかけの多いやっちゃなぁ、オレ人の心読めるんだけども、お前冤罪で捕まったな?』
雑兵「あ?あ、あぁ…」
処刑龍『そんなもんすぐに分かる、何故人間がわからないのかが理解できないが…心の奥底でな、お前の記憶を少しのぞかせてもらった』
雑兵「…」
処刑龍『可哀想に…どこぞの誰かに冤罪をふっかけられ、子どもを暴行したと思われたのだな…』
雑兵「あぁ…誰かは分からないが…そんなところだ」
処刑龍『全く、最後まで戦いんしゃいホントに…冤罪ってのはね優秀な弁護士によって証明されるのであってだな、痴漢の冤罪被害も諦めない心を持って…」
雑兵「…お前、日本人か?」
処刑龍『ありゃ、ありゃりゃ?分かった?そうそう、今はこんなナリだけど、昔は普通のサラリーマンだったんだど、事故で死んじまったけど』
818
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 23:54:54 ID:GzKOFo0c
雑兵「はぁ、あるあるだな、オレはパチ屋出てすぐ脱水症状と熱中症で死んじまった」
処刑龍『あらかわいそう、オレもさぁ事故って死んで異世界転生っても、龍のなりじゃ遊べなくてねぇ』
雑兵「そうだよな…でも過去はすげぇ龍だったんじゃ」
処刑龍『そりゃ昔はね、ん万年も前だと、人の争いよりも龍の争いが絶えなかった、どちらかが死ぬまで行われる争いは、大地を割り山を砕きってなもんで生まれたのがここビギニング刑場、オレが割ったんだど』
雑兵「そ、そうかい…」
819
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/05(水) 00:00:08 ID:C54xsvvk
処刑龍『でも結局俺が勝ち残って崇められてもさ、誰も信仰してくれなくちゃこんな汚い身なりにもなる訳ですよ、腐敗龍なんて呼ばれちゃって、腐ってねぇよ風呂入ってねぇだけだ」
雑兵「どうなでもなるだろ龍ならよ」
処刑龍『いやこれが案外どうにもならないわけ、毎日ひっきりなしに死刑囚食わせやがってよ、休む暇もねえっての土日祝日は休ませろってな』
雑兵(これまたクセのすごい奴に会ったもんだ、今まだで一番癖がすごいかも知れん)
処刑龍『考えてること分かるんだってば、まぁどうでもいいや、で?どうやって帰る?』
雑兵「え?」
処刑龍『帰んないと、ここにいられても困るよ』
雑兵「いや…帰りたいのは山々なんだけど…冤罪って証明してくれる弁護士がいなければ、ほとぼりも冷めてない状況でして…」
820
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/05(水) 00:02:26 ID:C54xsvvk
処刑龍『うわぁ帰りにくい〜でもここにいてもどうすんのさ、誰が無実でしたよ〜って届けてくれるの?』
雑兵「あぁ…そっか…」
処刑龍『まぁ満足するまでいなよ、困るけどすごかってわけじゃないし』
雑兵「ありがとう…」
_
__
821
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/09(日) 23:24:24 ID:4fp84BjE
__
_
「雑兵の処刑、異状なく完了しました」
勇者「…あ…」
女騎士「…」
参謀長「分かった、わかった…」
「こちら、雑兵からの伝言です」
『私に関わってくださった全ての方々に深い御礼を、騎士団長、勇者殿、愛しております また会う日まで』
勇者「…これだけなの?」
「はぁ、それしか受け取っていません」
勇者「何か、何か他に言わなかったの?!」
「騎士団長並びに勇者様を愛していると、以上です」
女騎士「そうか…雑兵はもう…」
参謀長「こんな…こんなクソみたいな最期で…結局死んでんじゃねぇかよ…」
女騎士「もう分かった、参謀長、仕事に戻ろう、業務は残っている」
参謀長「騎士団長…!何故泣かないのですか!あんたにゃ人としての…それに雑兵に愛されてたのではないのですか?!」
822
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/09(日) 23:29:19 ID:4fp84BjE
女騎士「今更泣いて何になる、奴の決めた結果だ、参謀長も落ち着いたら業務に戻れ」ガチャ
バタン
騎士団の長たるものとしてのプライド、弱みを他者に見せる事など許されない、自分の仕事が嫌になる、愛した男一人の死にでさえも泣けないとは。
しかし不思議な男であった、あった当初は浮浪者同然の姿だったのに、今では国の兵卒達に希望と言われる存在である、自分を偽らない性格、難儀な性格で苦労するだろうし、実際に苦労していたが、嫌いじゃなかった、むしろ雑兵だったからこそ好きになれた。
女騎士「…ッアゥ…」
部屋を入るまで泣いてはいけない、いけないのだ。
823
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/09(日) 23:30:48 ID:4fp84BjE
勇者「お姉ちゃん…」
女騎士「…どうしたの?」
勇者「部屋入ったらさ…一緒に泣いて良い…?」
女騎士「…うん、いっぱい泣こうね」
家族の前では、せめて素直になろう
824
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/09(日) 23:34:12 ID:4fp84BjE
参謀長「強襲団長…話ってなんだ」
強襲団長「ホイレシュッケのスパイを捕まえた奴が吐いた」
参謀長「吐いたってお前、わざわざそんなことをオレに」
強襲団長「ガキに金掴ませて、殴った後に孤児院に忍び込ませたとの事だ、アイツが処刑されたから吐いたんだ」
参謀長「…ッんのボウフラァ!どこで取り調べやってんだ!!」
強襲団長「警備隊の取調室だ」
参謀長「ぶっ殺す…!!」
825
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/09(日) 23:40:10 ID:4fp84BjE
バァン!
「さ、参謀長!今取り調べの…」
参謀長「…てめぇがホイレシュッケの間諜か?」
間諜「あぁ、そうだが、」
参謀長「ふざけるな貴様、何やったか分かってるよな、おい警備の、剣寄越せ貴様剣」
「い、いけません!ホイレシュッケとは同盟国で…」
参謀長「黙れ、コイツの首をホイレシュッケの国王に送りつけてやる」
間諜「好きにしろ、仕事は恙無く終わった」
参謀長「てめぇ誰の策略でそんなことを…」
間諜「お前らの知ったことでは無いだろ」
参謀長「…ホイレシュッケ…はあ、なるほどなぁ…あのクソ王子からだな?」
間諜「…」
参謀長「騎士団長の周りをうろちょろしている男が気に食わねぇと…どうせそんな腹づもりだろ」
間諜「知るか」
826
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/19(水) 23:49:56 ID:tuEf78UU
間諜「何はともあれ全ては後の祭りだ、オレの任務は完了した、さぁ好きにしろ」
参謀長「っ…!!まぁいい…言質は取れた、邪魔したな」
_
__
827
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/19(水) 23:55:09 ID:iVbmH4FY
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_
国王「…なんということだ」
参謀長「我々は間諜の掌の上で踊っていたと、つまりはそういう事です」
国王「ホイレシュッケ…あそこの殿下は腐っていると聞くがそこ迄とは…国王は聡明な方であるのに…」
参謀長「…もうこの話しは無かったことにするしか無いかと、隣国と戦争をする理由がまさか一兵卒のいざこざで、しかも我々に落ち度しかありません」
国王「戦争などはせぬ、だがツケは払って貰おう」
参謀長「いかがなされますか?」
国王「ただちにホイレシュッケに行き、国王と対談する、この様な狼藉を働いた息子に対し何かしてやらねば気が済まん」
参謀長「御意、すぐに対談の手配をします」
828
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/19(水) 23:58:33 ID:iVbmH4FY
参謀長「ということだ騎士団長、動向をしてもらおう」
女騎士「そんな…そんなしょうもない事で雑兵は…わかった、騎士団を護衛に付けさせよう」
参謀長「勇者様も連れてきて貰えますか?」
女騎士「勇者も?」
参謀長「はい、あの国の殿下にはこの件に関し全ての者に対し弁明してもらう」
女騎士「分かった…連れてゆこう」
829
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/03/01(火) 04:24:42 ID:J.banIVQ
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