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雑兵の雑草記
627
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/19(火) 21:32:47 ID:ZrZ1IaHw
女騎士「お前の業務は各書類の提出、私の部屋の書類整理、各種業務の調整に客へのお茶出し等だ以上」
雑兵「つまり雑用ってことなんだ...いや、雑用ですね」
女騎士「口の聞き方も気を付けろ、二人きりなら良いがな、団員や他部隊の連中に聞かれたら殺されるぞ」
雑兵「分かりました...って二人きりなら良いのかよ」
女騎士「今更敬語を使う間柄じゃないと思ってたが?」
雑兵「...ありがとよ」
女騎士「なんの、では早速だが作戦課にこの書類を、人事課にはこの書類を提出してくれ」
雑兵「了解です」
_
__
628
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/19(火) 21:41:14 ID:ZrZ1IaHw
__
_
「なぜ貴様が書類の提出をしているんだ?」
雑兵「はぁ、騎士団長に頼まれたので...」
「そうじゃない、なぜ貴様がここに存在しているという意味だ、簡潔に答えろ」
雑兵「騎士団長に呼ばれたので...それよりも忙しいので早く受け取ってもらえないでしょうか、嫌なら別に良いんですが」
「...寄越せ」
雑兵「確かに渡しました、失礼しました」
ガチャ バタン...
「あの男、なかなかの豪傑者ですね」
「騎士団長の真意が分からん...」
「でもあの男結構活躍してますよ、それこそ他の兵卒や...下手したら騎士団の団員よりも」
「そんな事は分かっとる、要は物言いが気に食わんのだ物言いが」
629
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/19(火) 21:43:57 ID:ZrZ1IaHw
雑兵「めんどくせぇ奴ら...」
下手すりゃ近場にいるからカルトよりも厄介な連中だ、信者なんてもんは怖気が走る。
警備団長「よぅ、小僧元気にしてるか?」
雑兵「は、はぁ、息災にやってます、では」
警備団長「まぁ待てって、話でもしながら一服しようや、タバコ吸い出したんだろ?」
雑兵「...はい」
630
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/23(土) 23:23:25 ID:swzATwh.
警備団長「結局、女騎士のお膝元ってぇ立場なんだな」
雑兵「言わんで下さい、それほど信用が無いんですよ」
警備団長「いやぁそんな事はねえと思うがなぁ、まぁ良いやそこいらは切磋琢磨して気付けや」
雑兵「そうっすね」
警備団長「さぁて次は勇者と仲直りって感じだな、どうすんの?」
雑兵「土下座して詫びるしかないでしょうよ、日本人の魂をぶつけるしか」
警備団長「アイツだって一応は日本人だが...日本人か、今思えば全てが懐かしい、そいえばお前産まれはどこだ?」
雑兵「広島です」
警備団長「広島か...俺も広島でな、妻と赤ん坊が市内に住んでた」
雑兵「住んでた...って事は」
警備団長「原爆でな、生死は不明だが市内のど真ん中に住んでて...疎開はしねえってなってよ」
雑兵「...」
警備団長「まぁ同郷同士仲良くしようや?」
雑兵「そうっすね」
631
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/23(土) 23:25:31 ID:swzATwh.
雑兵「じゃあ戻ります、また話聞かせて下さい」
警備団長「おうよ、あそうだ、タバコ臭いままで部屋入ったらあいつに怒られっぞ」
雑兵「...まぁ誤魔化しますわ」
_
__
632
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/23(土) 23:37:01 ID:swzATwh.
__
_
「ビギニングに攻め込むのですか...?」
「無論だ、皇帝の血族は絶やさねばならん」
「しかし国民は動くのでしょうか、みな内戦は収束の空気を流しております、それにもともと家臣を討てば良かっただけの運動だったのに...まさか皇帝陛下や皇后まで...」
「それは国民が無能だったから起こったのだ、我々の管轄ではない」
「...」
「立ち上がれば事を成せるという甘い蜜を知った以上、国民を口減らしせねばならん、それでビギニングを取れれば上々だ」
(...何を考えているんだこの人は)
633
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/24(日) 23:53:17 ID:cwsOfxss
「国民を今一度召集しろ、皇帝の血は根絶やしにせねばならん」
「...御意」
_
__
634
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/24(日) 23:58:26 ID:cwsOfxss
__
_
雑兵「戻りやした〜...」
女騎士「ありがとう...その顔...また何か言われたのか...?
雑兵「ま、まぁ言われたし思うところもあったしって感じの顔だ、こたえちゃいねぇから心配しないでくれ」
女騎士「周りの連中にもよく言い聞かせるからあまり心配するな、何があろうと雑兵は私の目の届く場所にずっと置くからな?」
雑兵「あ、あぁ...なんかヤンデレみたいで怖いな」
女騎士「ヤンデレ...?」
雑兵「いや、妄言だ忘れてくれ」
あの一件以来、どうも女騎士のお姉さん味というか、とても魂を擽られる喋り方をされましてとても困っている。
635
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/25(月) 00:02:33 ID:qbkSA0L2
雑兵(まぁちょい年上だから似合ってるんだよな、眼福眼福)
女騎士「暫くは何も無いから茶でも淹れて寛いでいてくれ」
雑兵「いや、何もないなら勇者に会ってくる」
女騎士「妹に...あぁ、とても怒ってたぞ、私の比じゃないくらいに」
雑兵「土下座で乗り切るさ、大和魂を見せつけてやる」
女騎士「であれば私も同行しよう、私がいれば話もわかりやすいだろう」
雑兵「いや男の覚悟をですね」
女騎士「うるさい」
雑兵「う、うるさいて...」
636
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/25(月) 23:41:17 ID:9DuynOrw
雑兵「わあったよ、どこまでも着いてこいよちくしょうめ...」
女騎士「なんだ?告白か?」
雑兵「っば...馬鹿!何言ってやがる、そもそもそう言うの興味ないって...」
女騎士「それなんだがな、私も身を固めないといけない歳になってきたし」
雑兵「歳ってほど歳じゃねぇだろ、まぁ良い人が見つかると良いな...」
遂にこの堅物の騎士団長も色恋を気にし始めたか、軍曹を気にしてるのかは分からないが、まぁ新しい恋に目覚めるのもいい事だ。
雑兵「まぁそうなりゃ応援するから
637
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/25(月) 23:42:17 ID:9DuynOrw
女騎士「応援...まぁ良い、まだ一押しが足りないからな」
雑兵(な、何言ってんだこいつ)
_
__
638
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/26(火) 16:57:27 ID:LvLw5Z6A
__
_
ビギニング城 情報・作戦室
参謀副官「ニプラスのスパイからの情報によると、早くても二週間...船団にて仕掛けてくるとの事です」
作戦参謀「国民がクーデターを起こして半年...殿下を匿ったから来るとは思ってたよ、上陸する場所は...まぁフィッハーだろうな」
参謀副官「すぐに国王に報告を...」
作戦参謀「まぁ待て...クーデター如き、上陸しても余裕叩ける...あの騎士団長に一泡吹かせてみねぇか?」
参謀副官「は?」
情報参謀「...確かに、あの女、件の兵卒を匿って、気に入らねぇな...あの皇帝のガキはあそこで殺させときゃ奴らも来ることは無かった」
作戦参謀「件の兵卒のお陰で、我が国にクーデターが上陸...フィッハーで暴虐の限りを尽くし騎士団が派遣されるも、既に手遅れ...ってぇシナリオだ、無論その兵卒を匿っている騎士団長にも責任を追求する」
参謀副官(外道...)ギリッ...
639
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/26(火) 18:24:21 ID:LvLw5Z6A
参謀副官「た、確かにあの兵卒は好き勝手やっておりました、しかしそれとこれとは話が...」
作戦参謀「人事参謀の件、聞いただろ?奴ぁ権力に物言わして人事参謀の顔に泥塗りやがった、ここで一回よ、あんま調子こいてっと将校連中はみんなお前についていかねぇって見せつけてやるんだよ、あのアマにな」
参謀副官「し、しかし...」
情報参謀「いいか副官、誰にもチクるんじゃねぇぞ?ここいらで我が王国軍は騎士団連中の掌の上で踊ってるだけじゃねえって分からせんだよ」
参謀副官「…わかりました、もう何も申しません」
参謀副官(腐ってる...)
_
__
640
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/26(火) 18:30:11 ID:LvLw5Z6A
__
_
勇者「…」ツ-ン
雑兵「…」
女騎士「…」
雑兵「あのですね、今回の件に関しましては、自分の不徳の致すところで...その、お姉さまに多大なご迷惑を...あれですね」
勇者「…」ツ-ン
雑兵「面目次第も御座いませんと言うかですね...いや申し訳ありませんって感じで」
女騎士「…プフッ!」
雑兵「な、何がおかしいんだよ...!」
勇者「っくっく...雑兵ってばバカじゃないの?」
雑兵「な、何だよ」
勇者「はぁ〜僕最初に言ったじゃん、敵にもならないし味方にもならないって、お姉ちゃんと雑兵の問題だもん、別に雑兵にだけ怒ってた訳じゃ無いし」
雑兵「え、あぁ....んん?」
641
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/26(火) 18:34:35 ID:LvLw5Z6A
勇者「まさか部屋入った瞬間土下座するなんて...びっくりするでしょ普通」
雑兵「それしか知らねんだ...」
勇者「まぁいいや!お姉ちゃんと雑兵が仲直りしたんなら、ぞ、雑兵もあまり困らせないでよね?」
雑兵「あ、あぁ...?」
勇者「…ちょっと雑兵席外してくれない?」
雑兵「…わかった」
バタン...
勇者「…ッヒッ...グズッ...」
女騎士「…勇者、ごめんね、心配かけて...最悪雑兵に嫌われるような事まで言わせちゃって...」
勇者「ううん...僕がやり...グスッたかったから...雑兵の為に...」
642
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/26(火) 23:43:32 ID:LvLw5Z6A
勇者「でも、雑兵嫌ってなくて良かった...死んじゃったらどうしよってずっと考えてた...」
女騎士「...勇者は雑兵の事は好き?」
勇者「え...うん...よく分からないけど...多分僕は雑兵の事が大好き、他の女の子と話ししてるの見てると胸がキュッて締め付けられる...」
女騎士「そっか...」
勇者「そう言うお姉ちゃんだって雑兵の事好きでしょ」
女騎士「私は...うーんよく分からない、年下で放って置けないのもあるし...でももう離れて欲しくない、また辛い思いを一人でさせたくない」
勇者「そしたら、お姉ちゃんのその気持ちは、僕と同じ気持ちだよ?雑兵の事が好きだから...」
女騎士「…そうなのかも知れないね、でも私はこの気持ちはまだ内緒にしとく、あいつ調子に乗るかもしれないし」
勇者「そうだね、僕も内緒にする、エッチなお店行かなくなるまでは」
女騎士「何やかんやでまだ行ってないと思うけど...」
643
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 17:34:20 ID:1yhUyTms
あんな辛そうな顔、流石の俺でも分かる、大事な人間を傷付けてしまったんだ、どう償えば良いのだろうか。
雑兵「はぁ...帰ろう」
今はただ皆に心配をかけないようにするしかない。
_
__
644
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 19:18:40 ID:1yhUyTms
__
_
雑兵「つーか、休みが欲しい」
入隊してから、今までまともな土日ってぇのを過ごした試しがない、確かあるはずだ。
雑兵「女騎士に掛け合ってみるかぁ...ちょっと疲れたもん〜」
参謀副官「おい、貴様」
雑兵「...何でしょう」
参謀副官...書類の提出や会議で何回か見た事がある、この国の参謀連中は騎士団長をあまりよく思ってないのか尊大ぶった態度を取りやがる。
参謀副官「ついて来い、話がある」
雑兵「?」
645
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 19:23:33 ID:1yhUyTms
少し歩くと城の裏庭へ出た、こんな所に呼び出されてちょっと怖い。
参謀副官「ここなら誰も来ないな...」
雑兵「何か...」
参謀副官「貴様...いや、雑兵に頼むのは非常に忍びない、元は俺がしっかりしていれば済む話だったんだが...」
雑兵「ど、どう言うことですか」
参謀副官「参謀連中は腐ってやがる、お前も会議の席で死ぬほど嫌な顔をしてるからそう思うだろ?」
雑兵「は、はぁ...まぁ」
ここで正直に答えたら確実に女騎士に迷惑が掛かるだろう...しかし何か伝えたそうだ。
参謀副官「ここだけの話だが、この二週間のうち、確実にニプラスからクーデターが船団で攻め込んでくる」
雑兵「攻めてくるって...まさか殿下の奴の命を...」
646
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 19:27:34 ID:1yhUyTms
参謀副官「あぁ、奴らの狙いは、お前が連れてきてしまった殿下の命だ」
雑兵「連れてきてしまったって...」
参謀副官「俺ぁつくづく自分が非情な人間になっちまったと思うよ、子供の命を助けたお前を非難してるなんてな...」
雑兵「で、本題はなんだ...いや、何でしょうか」
参謀副官「俺にゃもうタメ口でいい、機密をペラペラ喋っちまってる時点で将校の道を外れちまった...参謀連中はな、この件を内密にして、フィッハーを攻め込ませるって算段なんだ」
雑兵「はぁ?それが何の得になるんだよ」
参謀副官「狙いは、お前を引き込んだ騎士団長の失脚だ」
雑兵「?!」
647
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 19:49:54 ID:1yhUyTms
参謀副官「お前が殿下を助けたお陰で...クーデターは来る必要のないフィッハーに上陸し、フィッハーで暴虐の限りを尽くさせる」
雑兵「はぁ?何考えんだよ参謀連中は...しかし...何でその情報を」
参謀副官「作戦情報課は密かにスパイを送ってんだよ、国王は勿論、騎士団長にさえも言ってねぇ、確かな情報筋だ」
雑兵「なんかインチキ臭え連中だな...」
参謀副官「いいか、今王国の将兵で騎士団長に最も近いのはお前だ、騎士団長に何としてでも伝えてくれ、頼む」
雑兵「まて、女騎士が俺の言葉を信用すると思うか?曲がりなりにもアイツは参謀連中にゃ信頼してる」
参謀副官「じゃあお前がどうにかできるのか?自分の立場を分かっているのなら尚更伝えるべきだ」
648
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 19:57:10 ID:1yhUyTms
雑兵「…参謀連中が女騎士を信用してねぇって俺の口から伝えろってのか、それこそ無理だ...アイツに辛い思いさせろってのか?叩くべきは参謀連中だ」
参謀副官「奴らを叩ける証拠がねぇんだ、この情報だって非公式だ、統帥権の無視も甚だしい行いだ...」
雑兵「...わぁった、俺がどうにかする、だがお前の力も必要だ」
参謀副官「お前がどうにかするって...」
雑兵「フィッハーにいたカルト、まだ残党は残ってんだろ?お前らは忘れてそうだが」
参謀副官「忘れる訳ねぇだろ、舐めんな」
雑兵「そいつらの残党を狩るって名目でフィッハーに派兵すりゃ良い」
参謀副官「お前...派兵ってぇのは一朝一夕で決まるもんじゃねぇんだぞ」
雑兵「俺がフィッハーに行く、カルトを炙り出して、襲わせりゃぁ嫌でも動かざるを得ないだろ、これでも俺ぁ騎士団長の側近だぞ?」
649
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 20:10:31 ID:1yhUyTms
参謀副官「お前...下手すりゃ死んじまうぞ...それにどうやって襲われたって...」
雑兵「フィッハー分屯地までおめおめと逃げるさ、創傷負ってりゃぁ目立つさ、後は内線の力を使うんだよ、あれ結構使えるんだぜ?」
参謀副官「もし死んだらどうすんだって」
雑兵「そん時は、厄介払いができてお前んとこのトップはウハウハだろ?そして正義感の強い騎士団長が派兵して...どちらに転んでもwin-winだ」
参謀副官「お、お前...死んじまうぞ」
雑兵「死にたくはねぇがな、今まで迷惑をかけたツケは払わねぇといけねぇ、今がその時だ」
参謀副官「...強いなぁお前は、だが緊急時にゃすぐ派兵出来るよう調整してやる、絶対に生きて帰れ、そして騎士団長にしばかれろ」
雑兵「そ、それは嫌だな」
650
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 20:17:43 ID:1yhUyTms
雑兵(さぁて...後はフィッハーにどうやっていくかだが...)
雑兵「っつー訳でさぁ、休みが欲しいんですよ」
女騎士「休み?あぁ...確かに雑兵ずっと働き詰めだったから...どのくらい?」
雑兵「一週間程」
女騎士「一週間...まぁ雑兵の働きならその位貰ってもバチは当たらないか...いいよ、でも危険な所には絶対に行かないこと、約束して」
雑兵「あ、あぁ...」
また心配を掛けてしまった、つくづく優しい人だ...参謀連中の思惑を話しゃすぐに済む事だが...俺が撒いた種をまたみんなに摘ませてしまう、女騎士は本当に参謀連中を信用している、それ故にアイツらに裏切られていると分ったら...俺の心配事も、自分の事も背負い込ませてしまう。
651
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 20:21:36 ID:1yhUyTms
雑兵「これまでありがとな、女騎士...勇者は勿論、お前が居なかったら俺ダメだったよ」
女騎士「な、何いきなり?まるで死にに行くような言い方しないでよ」
雑兵「いや、果てしない感謝をちょこちょこ出してかないと俺破裂しちまうからな、これからも出していくから」
女騎士「本当にやめて、心臓に悪い...真剣な顔で言うから...今は比較的平和なんだからね?」
雑兵「あぁ、平和が1番だな」
ごめん女騎士、帰ったら沢山しばき回して欲しい。
652
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 20:22:25 ID:1yhUyTms
雑兵「これまでありがとな、女騎士...勇者は勿論、お前が居なかったら俺ダメだったよ」
女騎士「な、何いきなり?まるで死にに行くような言い方しないでよ」
雑兵「いや、果てしない感謝をちょこちょこ出してかないと俺破裂しちまうからな、これからも出していくから」
女騎士「本当にやめて、心臓に悪い...真剣な顔で言うから...今は比較的平和なんだからね?」
雑兵「あぁ、平和が1番だな」
ごめん女騎士、帰ったら沢山しばき回して欲しい。
653
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 20:27:08 ID:1yhUyTms
次の日、空はまさしく青天の霹靂で、たった一人の戦いにゃ持って来いの日だった。
雑兵「剣は置いてって...ちっこい短剣だけありゃ良いな」
勇者「雑兵聞いたよ?休みなら僕とどっか行こうよ」
雑兵「あぁ〜ごめんな、ちょっとフィッハーに用事があってさ」
勇者「用事?なら一緒に行くよ!僕も暇だし」
雑兵「いやっ、一人でいかねぇとダメなんだ、分ってくれるか?いや分ってくれ」
勇者「むぅ...何でさ」
雑兵「何でって...」
勇者は強いと言えど年下で、兄弟がいりゃあ妹でも可笑しくない、女騎士も勇者も今は巻き込みたくない...勇者だって色々と動いてるんだ、俺も動かないとダメなんだ。
654
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 20:35:01 ID:1yhUyTms
もう無駄な心配を掛けたくない、俺もお前らの役に立ちたい、いろんな欲が渦巻いてきた。
勇者「また二人でどっか行こうっていったじゃん?僕結構お店調べたんだよ、それこそフィッハーも!」
雑兵「あ、あぁ、すげぇな、また今度行こうな?」
勇者「むぅ〜邪魔しないから、ね?あ、でもエッチなお店行くのはダメだよ?それは阻止するから!」
ブチッ
雑兵「そんなんじゃねぇ!!!てめぇ邪魔だから来るなってんだよ!!!」
勇者「…っ?!じゃ、邪魔...?え...?そんな...」
雑兵「っは〜...っは〜...あ...ち、ちが...」
勇者「邪魔ってなんで...やっぱ嫌って...」
雑兵「違う、違う今のは...ごめん...」
655
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 20:47:16 ID:1yhUyTms
バカだ、あり得ない、心配かけたくない相手になんてことをダメだ謝ろう、そして連れて行ってやろう、よく考えりゃ二馬力なら、いやそれ以上の力を持ってる勇者なら俺よりも...
勇者「フッ...ウエッ..ヒッグ...雑兵...ごめんね...ごめんなさいィ...」
雑兵「...」
あぁ、また泣かせてしまった、周りの視線も気にならない位にまた後悔の念が湧き出てくる。
「ゆ、勇者様が泣いてっぞ...」
「やっぱあの男...」
雑兵「勇者...ごめん、違うんだ、その...」
勇者「ごめんねぇっ...!あんな言葉言っちゃったからっ...ヒッグ...うぇぇん...」
雑兵「っ...ごめん!!」
逃げてしまった、俺の為に二人は心配して近くに置いてくれたのに、恩人なのにこんな酷いことを。
雑兵「っはぁ...!っはぁ...!!」
首都の外まで逃げてきた、さらに馬鹿だ、馬車を使わなけりゃ歩いても二日は掛かる、時間は無い。
雑兵「クソ、要領が悪い!こっそり忍び込んで...」
656
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 20:55:03 ID:1yhUyTms
嘘だろ、馬が向かってきている、誰が乗っている?憲兵じゃねぇ、誰だ?
雑兵「...うおっ、マジかよ」
女騎士とエルフだ、確実に死ぬ程怒ってる。
雑兵「クソッ!クソ!!」
迷惑をかけまいと思ってまた迷惑をかける悪循環だ、何も出来ないくせに何かしようとして、無能な働き者だ。
女騎士「雑兵...っ!雑兵!!待ちなさい!!!」
エルフ「雑兵!止まって!!話を...!!」
雑兵「くっ来るんじゃねぇ!来るんじゃねぇよ!!もうお前らに助けらてばかりじゃ嫌なんだよ!!!帰れって!!」
騎士団で最高に速い馬だ、逃げれるわけが無い、参謀副官ごめん、早速破綻しちゃった。
女騎士「っはぁ〜…っはぁ…」
657
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 21:04:24 ID:1yhUyTms
エルフ「あんたねぇ...!勇者様に土下座して早々何やってんのよ...!!」
雑兵「っばか!帰ってくれ!たの ッバチ-ン!!!!
雑兵「っぐぁっ!!」
凄い力のビンタだ、口の中血の味がする。
女騎士「バカは貴方よ...!!私たちが心配して...っ!!膝下に置いても貴方は...!!そんなにみんなが嫌いなの?!貴方は気付いたんじゃないの!!?」
雑兵「っちげぇよ!!寧ろ大好きだよ!!だから!!」
女騎士「だから何!?貴方の大好きな私の妹を泣かせてまで、フィッハーに行く用事ってなによ!!」
エルフ「ちゃんと理由を説明して雑兵、何か考えがあるんでしょ?」
雑兵「...ックソ...クソ...」
658
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 21:11:18 ID:1yhUyTms
女騎士「助けてくれって言ったじゃない...!貴方は十分人々を助けたのよ...?!だから私たちは貴方を助けたのよ...!自分の身だけは置いてけぼりにして...!人ばかり心配してっ!バカ!バカァ...!」
雑兵「...な、泣いてんのか...?」
エルフ「そりゃ泣きもするって...なんだもかんでも一人で背負い込んで、結局余裕無くなって...でも一人でなんとかしようとして、信頼されてないように思われたらさ」
雑兵「...ごめん女騎士...俺勇者に...死ぬ程酷いこと言っちまった...」
女騎士「そうよ...っ償いきれない心の傷を...貴方は無造作に...!!」
雑兵「...」
その後、洗いざらい吐いた、参謀連中は女騎士を失脚させようとしていることを、フィッハーにニプラスのクーデター軍の船団が来ることを、最初からこうすれば良かったのだ。
659
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 21:19:30 ID:1yhUyTms
エルフ「参謀連中、そんな腐敗してたんですね...[
女騎士「そんなことを貴方一人でなんとか出来るわけ無いでしょ...!死んじゃったらどうするの?!」
雑兵「お、俺が...死んでもお前らが息災ならそれで...」
結局また死のうとしている、バカだ、それでこの前も女騎士を傷付け失望させたんじゃねえか、元に戻る事ない関係を近づけるまで辛い思いしたじゃねえか。
女騎士「...雑兵は何も分ってなかったの...?貴方が死んだら...私...」
エルフ「…」
雑兵「違う、違うんだよ!死のうとした訳じゃ無いんだ!そ、そう!切り傷でも付けられてさ!分屯地に行けば嫌でも派兵せざるを得ないだろ!」
女騎士「そんなこと...すぐに出来るわけ無いでしょ...!?準備ってのはね最低でも3日は掛かるのよ...そして移動に1日と半...貴方、フィッハーまでの移動にどれくらいの時間がかかるか分かるでしょ...!?」
660
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 22:58:33 ID:1yhUyTms
雑兵「でも...二週間はあるから...」
エルフ「移動を計算外にしても、市街地に展開して、住人を避難させる日にちも考えなさい、それに二週間丁度で行きますなんて都合のいい敵がいる訳無いてしょ?」
雑兵「え?そんなもんなのか...?」
エルフ「あったりまえでしょ!バカ!」
女騎士「雑兵、怪我で済めば良いってもんじゃ無いのよ...?みんな心配するんだよ...雑兵...私だって...もし雑兵が怪我でもしたら...分ってよ...」
雑兵「...ごめん、死ななけりゃ良いって...」
エルフ「騎士団長、帰りしょう、説教は落ち着いてからしましょう」
女騎士「あぁ...エルフ、申し訳ない、不甲斐ない姿を見せてしまったな…」
エルフ「いえ、雑兵を思う心は騎士団長も、勇者様も、そして私も一緒です」
雑兵「…」
661
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 23:08:17 ID:1yhUyTms
フィッハーの守備はウルムガルド駐屯地の竜騎士隊が担当し、予定より一週間早くクーデターの船団は到来、しかし竜騎士隊の防衛によりクーデターの上陸阻止に成功、みな一般市民で統制などは全く取れていない烏合の衆で戦闘にもならなかったと言う。
参謀副官「...お前、バカなんだな」
雑兵「俺が1番わかってる」
参謀副官「まぁ良い、守備は最高し、機密をバラした俺は更迭だな...まぁ良いよ終わりよければ全て良しだ」
雑兵「申し訳ない、本当に」
参謀副官「いやまだ決まってねぇから、それに最後に参謀連中に一泡吹かせて良かったぜ、アイツらの慌てふためく顔は面白かった」
雑兵「…」
参謀副官「…まぁゆっくり関係は戻していけ、お前がこの国の為に必死こいたのは、俺が1番分かってるからよ」
雑兵「でも...結局みんなに迷惑かけちまった」
参謀副官「そりゃそうだな、しかしどう転んでも迷惑はかけてたんだよ、それにお前が死ぬ事が1番の迷惑だったんだ、騎士団長にも勇者様にも...死ぬまで尽くせよ、それがせめてもの償いってもんだ」
雑兵「うん...」
参謀副官「男ならドンと構えとけって、やっちまったもんはしゃあねぇやな、誠心誠意謝れ」
662
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/27(水) 23:17:53 ID:1yhUyTms
参謀副官「じゃあな、作戦参謀と情報参謀と仲良く行ってくらぁ」
雑兵「あの連中とお前は違うだろ」
参謀副官「良いんだよ、将校の外道を歩んだのは一緒だ」
雑兵「…」
参謀副官「んじゃ、お前は騎士団長のとこへ行ってお説教を沢山受けて来い、今日は部屋に誰も入れねぇってよ」
雑兵「マジかよ...緊張で吐き気がしてきた」
参謀副官「っははバーカ、じゃあな」
663
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/28(木) 23:44:15 ID:Zr95t0bQ
コンコン
雑兵「は、入ります」
女騎士「さっさと入れ」
雑兵「は、はい」
あの件から戻ってきてここ一週間、対応やらなんやらで結局説教は無かった、勇者の姿は見かけておらず、女騎士の伝令業務もギクシャクしながら行っていた。
雑兵「…!勇者…」
勇者「…」
女騎士「座れ」
雑兵「はい…」
目からは生気が消え掛かっており、俗に言うヤンデレみたいなの表情だった、デレはないからただのヤンだが。
雑兵「…その、勇者...」
勇者「…っ!ご、ごめんなさい...ごめんなさい...」
雑兵「え?あっいや違う、謝るのは...」
女騎士「見ての通り、妹はこの状態だ...人前に出せないからずっと私の部屋に匿っていた」
雑兵「だから...」
664
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/28(木) 23:52:19 ID:Zr95t0bQ
女騎士「一度傷ついた心を修復するのは難しい、しかも齢16にも満たない女の子だ...それを雑兵、貴方は無造作に傷付けたの」
雑兵「…」
勇者「…ごめんなさい...雑兵...ごめん...」
どうすれば良い、無い知恵振り絞っても何も出てきやしない、大切だと自分で思っておきながら感情に身を任せ傷付けてしまった、修復不可能なんじゃないのか?
雑兵「...そ、そうだ!勇者!一緒に買い物行こう!俺首都は逆にわかんねぇからさ!教えてくれよ!な?!」ガタンッ!!
勇者「ヒッ...」
雑兵「あ...」
女騎士「正直、あなたを助けたのをちょっと後悔している、まさかここまでバカだったとは、いや、分かってたけど成長していると思ってたのに」
雑兵「…だって、お前なぜか参謀連中信頼してたし...」
女騎士「腹の裏は知った事でない、結局は仕事をしてくれるか否かだ、まぁ今回の件に関しては極刑もあり得るレベルだが...」
雑兵「ならっ!」
女騎士「お前よりも信用があっただけの話だ」
雑兵「…」
665
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/29(金) 00:00:40 ID:E8Rn9UHI
雑兵「…信用ったってお前も嫌われてんじゃねえかよ」
女騎士「お前よりは嫌われてない」
雑兵「同じだって、俺は殿下助けた責任取らされそうになって、お前は俺のせいで失脚させられそうになった、何も変わらねぇ」
女騎士「ふざけているのか?」
雑兵「俺なりの優しさだろうがよ」
女騎士「だったら!妹を泣かせて傷付けたのは何?!私が参謀らを信用していたからいけないっての?!」
雑兵「いけねぇ訳じゃねぇよ!要は観察眼をもてってんだよ!!上に立つ人間なら!」
女騎士「いちいちわかる訳無いでしょ!?興味もない人の腹の裏なんか!」
雑兵「興味を持てよ!!だから軍曹みてぇなヤツに引っかかるんだよ!!」
女騎士「…っ!!」
パチンッッ!!
雑兵「ってぇな...!」
666
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/29(金) 00:08:20 ID:E8Rn9UHI
女騎士「軍曹の話は...関係ないでしょ...」
雑兵「…ごめん、でも嫌なんだ...お前が信頼していた奴が、裏切ったり外道に走ったり...それでお前が傷付くのは...」
女騎士「...あなただって大概好き勝手してるじゃない」
雑兵「それは...本当にごめん...」
女騎士「自分は死んでも構わないって言って...それも信頼している人たちを裏切っているのよ..,?私や、勇者を」
雑兵「...うん」
勇者「…二人とも...喧嘩は...ダメ…」
女騎士「勇者...っ」
勇者「雑兵...僕達のためを考えてくれて...それで...」
雑兵「…っごめん、勇者...本当にごめん...」
ギュッ...
勇者「雑兵...泣いてるの...?」
雑兵「バカだった俺...良いところ見せるだけが信頼じゃねぇのに...女騎士や勇者に良いところ見せたいって、変わったんだぞ俺って...でも何一つ変わってなかった...挙句勇者を泣かせて...」
勇者「…よしよし、コレじゃ逆じゃん、僕がいつも泣かされるのに」
667
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/01/29(金) 00:12:00 ID:E8Rn9UHI
雑兵「ごめん...」
女騎士「...雑兵がカルトに捕まってた時も、勇者は必死に村中を探したの、遺体を丁寧に運びながらあなたの事をね、その時も泣いていたのよ?」
雑兵「...お前らにゃ一生かけても償い切れないな...」
勇者「一生側にいてくれれば僕はそれで良い...ね?お姉ちゃん」
女騎士「一生側に置くか...私もそうしたいが、苦労するぞ?」
勇者「もう慣れました」
雑兵「え?え?どう言う事?」
勇者「察してよ、バカ...///」
女騎士「ホント、バカだね…///」
雑兵「…??」
668
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/02/01(月) 00:25:38 ID:2T7Ztrnk
色々な誓いが今までの誓いに上書きで保存されてゆく、キャパオーバーしそうだ。
雑兵「ところでよ、参謀副官はどうなるんだ?」
女騎士「どうなるかと言われれば、知らないとしか言えないな、今回の件は憲兵隊の管轄だから介入してはいけないんだよ」
雑兵「極刑もあり得んのかよ?」
女騎士「うーんそれはないと思う、結局は誰かに喋ったから、まぁ軍人としては重い罪に問われると思うけど」
雑兵「そうか...」
あの時、すぐ女騎士に報告していればまだ軽い罪になっていたのだろうか。
結局自分の行いが後手に回ってしまった。
勇者「あまり思い詰めちゃダメだよ...?雑兵はなんとかしようと動いてたんだから...」
雑兵「いや...でもそれで二人に迷惑かけて...」
勇者「そう思うんなら一生かけて償ってね?」
雑兵「じゃ、じゃあ思わねえよ」
勇者「一生居てくれないの...?」
雑兵「ひ、卑怯者かお前は...」
669
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/02/03(水) 17:10:58 ID:qr6H1Uns
おつ
670
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/02/13(土) 23:00:30 ID:QVz09GSA
全て丸く収まる訳ではないようで、憲兵隊の取り調べに俺も出なくてはならないようだ。
「んで、参謀副官の話にのって...勇者様を泣かせたっと」
雑兵「いやっ、ちょっと語弊が...」
「語弊も憲兵もねぇ、泣かせたのは事実だ」
雑兵「う、まぁそうなんですが...」
「まぁ〜...聞きたいことはそれだけだから、取り調べは終わりってなもんで、で、個人的な話だがな、今回の件でお前の株が半々に分かれたぜ」
雑兵「半々...?」
「あぁ、騎士団連中の狂信的な信者半分が悪い方、国軍の連中が良い方で半分ってなもんだ、女泣かせてもなお側に置いてもらってる兵卒なんかお前位だ」
雑兵「は、はぁ...」
671
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/02/13(土) 23:15:46 ID:QVz09GSA
「謂わば兵卒の星って感じだな、みんな歳食っても英雄にゃ憧れる、お前の働きは賞賛されるべき事が多いからな、カルト全般の件や殿下助けた件...後はオムエン再興もお前の働きのお陰が功を奏したってな、みんな気付き始めてるぜ」
雑兵「いや、詫びなきゃならん人が沢山います」
「それは詫びりゃええさ、英雄譚しか知らない俺らにゃ知った事じゃねぇさ」
雑兵「...」
照れ臭すぎる、しかし周りの目は大体感じ取っていた、女騎士に楯突いた時は腫れ物を見る目で、今は英雄を見る目だそうだ、何が面白いのか。
「ま、騎士団連中にゃ気を付けろよ、最悪内戦が起きかねんレベルだからな」
雑兵「き、気をつけます」
672
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/02/14(日) 08:38:16 ID:dk8WsBYE
どこに行っても狂信的な連中が付き纏ってくる、困った物だが今回は味方が多い、ドンと来いだ。
「まぁお前の株が落ちることはもうねぇと思うぜ、独立大隊の連中や、混成騎士団の連中がお前の仕事を言って回ってんだからよ」
雑兵「独立大隊の...」
「元上司の人たちに感謝しとけよ、それに期待されてるって事はそれ相応の働きをせにゃならんからな...まぁ年食いの戯言だと思ってくれ」
雑兵「...ありがとうございます」
「あと、参謀副官の件だが...国王陛下直々に不問にしてくれって頼まれたから安心しろ、まぁ憲兵隊もそこまで重い処分は加えるつもりは無かったが...」
雑兵「分かりました、以後気を付けます」
「おう、じゃあ原隊復帰していいぞ」
673
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/02/15(月) 22:22:55 ID:.cyDZNzk
参謀副官がお咎めなしなのは国王のお陰とのことだ、もしかして俺が勇者泣かせたのも知ってるのかも知れない。
女騎士「取り調べはどうだった?」
雑兵「あぁ、つつがなく終わった、とりあえずはお咎めなしってさ」
女騎士「そっか、ところで...」
雑兵「ん?」
女騎士「雑兵この前休暇欲しいって言ってたよね?一週間だったかな」
雑兵「あ、あぁ...でもそれはアレだ...」
女騎士「休んでないのは事実でしょ、二週間の休暇許可あげるから休めばいい」
674
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/02/15(月) 22:26:01 ID:.cyDZNzk
雑兵「に、二週間?良いのかよ」
女騎士「今は仕事もあんまないから、それに休みなしであっちこっちいってたでしょ?」
雑兵「あぁ...」
女騎士「だから今は何も考えず休んで、ね?」
雑兵「...ありがとよ」
女騎士「なんの、偉くなればここまで出来るの」
675
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/02/15(月) 22:31:42 ID:.cyDZNzk
貰った二週間の休暇、正直どのように使えばいいのか検討も付かなかった。
雑兵「...お礼参りでもしろってことかな」
思い立ったが吉日、近場から回る事にした。
雑兵「天使元気にしてっかな、ちらちら見かけるけど、俺と違って忙しそうだしな」
騎士団の衛生隊は王国でも指折りの治療技術を持っており、各部隊の衛生隊へ技術提供の支援で回っている。
雑兵「確か...今の時間は衛生隊の事務所かな」
そろそろ終礼が終わる時間だ、少し話すにはいい頃だろう。
雑兵「失礼しまーす...」
「ん?雑兵じゃん、書類の提出?」
雑兵「いや、天使に用がありまして」
「天使ちゃんならいつもの所だ、そろそろ帰る頃じゃねえかな?」
676
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/02/23(火) 23:49:39 ID:ggQUZw1Q
天使「あれ?雑兵?」
雑兵「よっ、休暇もらったんで挨拶回りでもしようかってな」
天使「確かに、雑兵結構見るようになったけど、お話は出来ないもんね」
雑兵「衛生班忙しそうだしな、あんま話しかけれなかった」
天使「そうだね、ちょっと忙しいかも、でもやりがいはあるよ?」
雑兵「そりゃ良い事だ、でもいつ騎士団に?」
天使「下士官候補生なんだ、雑兵が色々異動してる間に受けて、この前やっとこさ教育が終わったからあとは昇任するだけ」
雑兵「す、すげぇな...」
天使「上等兵さんも一緒のタイミングで合格して、下士官候補生課程の教育は一緒に受けたんだ」
雑兵「下士官ねぇ...」
677
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/01(月) 00:26:55 ID:TEx.IVck
天使「まぁ雑兵も、ここに身を置くならいつか受けなきゃならないときが来るよ、大丈夫だよ、やることは新隊員教育隊と変わらないから」
雑兵「新教の内容あまり覚えてないのですが」
天使「じゃあ苦労するね」
雑兵「勘弁してくれよ...まぁ受かるか分からんから、行けるかどうかも怪しいな」
天使「多分強制的に受けさせられると思うよ、雑兵の立ち位置って騎士団長の側近で、王国軍の最先任兵だからね」
雑兵「さ、最先任兵ってなんだよおっかねぇな」
天使「仕方ないでしょ?僕らの同期って殆どが辞めたか、僕みたいに下士官になったかだからね」
雑兵「わぁったよ...でも一等兵さんとかもいたじゃねえか」
「あの人結構前に受かったよ」
雑兵「マジかよ..,」
678
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/01(月) 00:47:56 ID:8NQCVzIY
天使「じゃあ僕そろそろ行くね、今日当直なんだ」
雑兵「そっか、すまねぇな忙しい時に、こんど飲みに行こうぜ」
天使「うん、絶対だからね?」
_
__
679
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/15(月) 22:10:45 ID:dBHBjLT6
__
_
独立大隊はここ最近忙しいようで、以前のようにいつも暇で雑用ばかりやらされているような待遇は一切合切無くなったらしく、元々個人の能力は高かった部隊でもあった為か、現在は訓練評価支援隊と部隊名が変わり各部隊の訓練等の対抗部隊として出払っているようだ。
雑兵「ちょうど訓練中か...エルフや殿下も忙しいみてぇだしなぁ」
両者はオムエン再興の為、各異種族の代表と復興に向けた打ち合わせを連日行なっている、混成騎士団からの引き抜きもあり得るとの事だ。
雑兵「フィッハーにでも行ってみるか...?」
思い立ったが吉日、他地方への渡航申請を済ませ、出発した。
680
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/15(月) 22:17:19 ID:dBHBjLT6
道中の馬車にて...
雑兵「で...なんで着いてきたわけで?」
勇者「だって暇なんだもん、お姉ちゃんも忙しそうだし」
雑兵「そいえば女騎士ってばきちんと休んでんのか?」
勇者「うーん...前とかは週二のペースで完徹してる時もあるよ、雑兵が来てから休むようになったけど」
雑兵「俺が来てから?」
勇者「うん、雑兵があっちこっち行ってくれるからその時間を削れてるっぽいよ、以前は姉ちゃんが調整とか書類の提出行ってたんだよ」
雑兵「あぁそうなの?でも連休とかそう言うのとってねぇよな」
勇者「指揮官でもあるからねぇ...雑兵にもう少しカリスマ性があれば...副々団長的なポジになれるのに」
681
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/15(月) 22:24:20 ID:dBHBjLT6
なくて悪かったな、しかし指揮官という器でもないのは分かってはいる。
雑兵「ほいでものぅ、まだ若い言うても、ちったぁ休まにゃぁで...」
勇者「...なにその喋り方」
雑兵「おもしれぇだろ、俺の故郷の訛りでな、方言っつうんだよ」
勇者「へぇ〜、ねぇなんか喋ってみて!」
雑兵「えぇ〜…ほいじゃあ...勇者、フィッハー着いたらどこ行きたいんなら、ワレの行きたい所何処へでも連れてっちゃるけぇ」
勇者「なんか似合わないね」
雑兵「そう言われるけぇあんま訛って喋らのんよ、あやべ、元の喋りに戻ってきた」
勇者「自然体でいいと思うのになぁ」
682
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/15(月) 22:32:02 ID:dBHBjLT6
雑兵「勇者もこの喋り方で喋ってみろよ、女の子が喋るの結構人気なんだって」
勇者「そんな事言われても分かんないよ」
雑兵「そうだなぁ...ほいじゃあ、言葉の最後にじゃけぇとか入れてみろよ」
勇者「やだよめんどくさい」
雑兵「っちぇ、まぁ良いけど...」
馬主「そろそろフィッハー地方ですぜ、カルトの連中も消え去って良かった」
雑兵「もう姿形も見えないんですか?」
馬主「あぁ、山奥に逃げたっきり出てこねぇ、オムエンとかに逃げたんじゃねえかなぁ」
683
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/21(日) 01:29:17 ID:MsIUzd1w
雑兵「オムエンか...まぁオークジェネラルとかいるし大丈夫かな」
馬主「オムエンといえば、最近あっちに移り住んで新しい生活を始めるみてぇな活動されてますが、兵隊さん何かわかりますかね?」
雑兵「あぁ、オムエンいる異種族の連中と手ェ取り合って生きてこうってさ、あちらの異種族連中も乗り気だから成功するんじゃねえかな」
馬主「へぇ〜そりゃあ凄い計画ですなぁ、カルトの連中に村ぁ焼かれた人らが移り住みてぇってなことを言ってたんですよ、今度順調だって教えてあげなきゃな」
勇者「やっぱまだ村を追われた人の生活基盤とかは確立されてないんだね」
雑兵「それがこの国の悪い部分なんだよ」
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684
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/21(日) 01:33:17 ID:MsIUzd1w
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勇者「雑兵、フィッハーについたよ」
雑兵「ンガッ...完璧に寝てた、おやっさん、コレで足りるかね」
馬主「はいはい丁度、ご贔屓に〜」
勇者「フィッハーに用事って...曹長?」
雑兵「あぁ、姿眩ませてから一回も会ってないから...」
勇者「姿眩ませたって、雑兵悪くないじゃん...」
雑兵「悪くなくてもケジメが必要なの、行こうか」
勇者「うん!」
685
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/28(日) 21:57:42 ID:k9nMO5Oc
フィッハーの入り口まで差し掛かると妙な物々しさを感じた、以前は衛兵は一人しか立っていなかったが、今は駐屯地の入り口みたく固く警備されていた。
フィッハーの警備隊とは違い、重装の兵士やバリスタを構えた兵士が街道を睨んでいた。
勇者「この前のニプラスのクーデター軍が来た件で、フィッハー港が防衛に重要視されちゃったらしくて」
雑兵「マジか...入れるかな」
勇者「うーん、僕がいなかったらちょっと面倒だったかもね」
「お疲れ様です勇者様、一応身分証を拝見してもよろしいでしょうか」
勇者「ん」
「ありがとうございます...ん?雑兵じゃねえか」
雑兵「あれ、会ったことありましたっけ」
「あ〜直接はあってねぇけど、入隊同期だよ、ほら鍛錬場でお前同期と喧嘩してただろ」
雑兵「あ、あ〜してた...」
686
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/28(日) 23:06:59 ID:k9nMO5Oc
勇者「そんなところで喧嘩って何やってんの...」
雑兵「し、仕方ねぇだろ、右も左もわかんなかったんだから...てかここ営門できたの?」
「あぁ、クーデター軍が来て以来、なぁんでかカルトの残党もチラホラ出てき始めたらしくてな...クーデター軍だけなら強化もされなかったが、なぁんでここに執着するのかねぇ」
雑兵「さぁてなぁ、海でも渡りたいんじゃねえか」
勇者「それはあるかもね、ここじゃあもう味方は居ないから」
「可哀想な連中だよ、さっさと改心すりゃいいのに」
雑兵「改心したところで皆殺しだ、あんな連中はとっ捕まえたら先ずは殺す以外にないだろ」
「お、おう...」
勇者「ちょっと、雑兵ってば顔怖くなってる、もう何もしちゃダメなんだからね?」
雑兵「ご、ごめん...」
687
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/03/29(月) 23:54:09 ID:fCOW.CTk
聞くところによると、分屯地は近々駐屯地へ格上げされるとのこと、カルトが来るにしろ来ないにしろ、フィッハー港とその周辺を重要な防衛拠点であると上層部は判断したようだ。
雑兵「久々だなぁ分屯地...めっちゃ住み心地良かったんだよなぁ」
勇者「ふーん...今よりも?」
雑兵「い、いや、アナザースカイって奴だよ、第二の故郷的な感じ、第3はオムエンとの国境」
勇者「ま、どこが住み心地よかろうと雑兵はもう逃さないもんね〜」
雑兵「ちょ...あまり腕を掴まれると勘違いしちゃうから...」
勇者「ん〜?勘違いって何?」
雑兵「そんな上目遣いでこ、困っちゃうなぁ」
勇者「キモいよ」
雑兵「はっ倒すぞ」
688
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/04/02(金) 14:31:33 ID:g7tftC/I
「曹長なら退職されたぞ、分屯地の分遣隊が廃止になったと同時にな」
雑兵「った、退職...?は、廃止ですか?」
「あぁ、分屯地から駐屯地へ格上げされるのが決定したからな、雑用部隊はもう要らねえって判断
されたんだろうぜ...それに前に分遣隊に来た新隊員がカルトに捕まって以来、心労気味になってな...」
雑兵「...」
曹長は退職され故郷に帰ったそうだ、心労による退職、百パーセント俺のせいだ
雑兵「...はぁ...」
勇者「...帰ろっか?」
雑兵「...いや、ちょっと遊んでから帰るか」
勇者「...うん!」
_
__
689
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/04/02(金) 14:43:50 ID:g7tftC/I
__
_
雑兵「っお、この店見たことないね」
勇者「前来た時なかったよね、アクセサリーショップかな?」
雑兵「何かほしいのあるか?」
勇者「欲しいの〜?うーん...」
赤い小鳥のアクセサリーがふと目に飛び込んだ、二つあると言う事はペアのペンダントだろうか。
勇者「ぼく、これがいいな」
雑兵「こんなのでいいのか?」
勇者「うん、これでいい」
690
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/04/04(日) 23:57:27 ID:IA63b0Ik
ペアルックのペンダントを購入し、今夜泊まる宿にチェックインした、部屋の都合上勇者と一緒になってしまった、この宿今まで満室になったことないのは知っているが、店主の粋な計らいと言うべきか。
雑兵「…勇者、俺この先どうすりゃいいんだろ」
勇者「え?」
雑兵「前の人生でも家族とかに迷惑かけて、勝手に死んだと思えばこの世界に飛ばされて...そしたらこの世界でもいろんな人に迷惑かけてきてさ、良かれと思ったこと全てが良いことじゃ無かったから、勇者傷付けちまうし、曹長が病んじまうし...」
勇者「...」
691
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/04/05(月) 00:05:18 ID:lpggwMDs
雑兵「女騎士に掛けた迷惑も、お前に掛けた迷惑も...この先どうやって償おうかってずっと考えてたけど...なんか段々と方々に掛けた迷惑がのしかかって来て...
勇者「月並みな考えだけどさ、生きてればたくさん迷惑かけるもんだと思うな、お姉ちゃんだって、僕だってそうだと思うよ、現に雑兵が僕達のために悩んでらのも迷惑を掛けてるって事だし」
雑兵「そ、そんな事...」
勇者「僕ね、勇者になった時は右も左も分からなかったんだ、そのせいで村一つ滅し掛けてしまったんだ」
雑兵「え...」
勇者「村に迷惑かけてた山賊と魔物の連中を討伐してたら命乞いされちゃって、逃したんだ、改心したんだと思ってその村に報告して、去った後にね...」
692
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/04/05(月) 00:12:37 ID:lpggwMDs
雑兵「襲われちまったのか...?」
勇者「うん、忘れ物取りに戻らなかったら、本当に滅んでた位に襲われてた...その場で全員の首を刎ねたけど...村人からはすんごい複雑な目で見られて...」
雑兵「あぁ...」
勇者「多分だけど、その場に雑兵がいたら僕にすごい罵詈雑言浴びせてたと思うよ」
雑兵「ん、んな訳...無いこともないな...」
勇者「それが僕が人に掛けた迷惑だね、一生消えることのない迷惑だよ、お姉ちゃんだって、軍曹との話聞いたでしょ?」
雑兵「あ、あぁ」
勇者「みーんな迷惑かけるの、思い悩むのは別にいいけど、それが自分の全てだって勘違いしたらダメだからね?雑兵の良いところ沢山知ってるもん」
693
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/04/13(火) 23:03:02 ID:g1coIpcQ
雑兵「...ありがとな、なんかスッキリした気がするよ」
勇者「どういたしまして、ライバルは多いからこういうところで点稼がないとね♪」
雑兵「ラ、ライバルって...」
勇者「誰かは言わないけど...雑兵ももう分かるでしょ?」
雑兵「あ、あぁ...」
そう言った露骨な好意は小学校以来向けられた事はなかった、小坊の頃は無茶をやる奴や足の速いやつが好かれていたが、その頃は無茶もしたし足も早かった。
694
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/05/20(木) 23:55:10 ID:dk95zEgo
だが引きこもりの生活を送れば必然と人の好意など疎くなるものだ、好意を向けられる事もない、言い訳ではない、本当なのだ。
だが今なら変われる、そう思えてきた。
雑兵「俺、頑張るから、お前らの横に居ても恥ずかしくないような人間になる」
勇者「えぇ?そんな事ないのに」
雑兵「俺自身が嫌なの、俺自己中だから俺が許せない、みんなに迷惑かけるのも、悲しませるのも」
勇者「...うん」
雑兵「でもちょっと無茶するときもあるから...そん時は助けてくれ...」
勇者「いいよ、助けてあげる」
695
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/05/23(日) 21:46:09 ID:TWLMKmzs
勇者「明日城に帰る?」
雑兵「あぁ、あっちでゆっくり休むわ、着いてきてくれてありがとな」
勇者「ううん、僕も楽しかったよ」
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696
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/05/24(月) 00:58:33 ID:WcPOQvNI
__
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雑兵「で、参謀長になりましたと?」
参謀長「まああの件でかなりの連中が更迭か懲戒免職くらったからな、なし崩しに俺が参謀長になった訳よ」
かなりの繰上げだが大丈夫だろうか、まぁ俺より遥かに頭が冴えているから当たり前の昇任ではある。
参謀長「んで、早速だが...カルトの連中についてだ」
雑兵「えっ」
参謀長「まだ終わった訳じゃねえぜ、カルトの最高幹部殺ったくらいじゃあな...残党が続々とフィッハーに集まってるらしい、どうもスパイからの情報だと隣国に逃げ込むって腹だそうだ」
697
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/05/24(月) 01:50:55 ID:WcPOQvNI
教祖が殺されて、実質解散状態だったカルト教団であったが、やはり信心深さの賜物なのか未だに集団で群れて方々の集落を転々としているそうだ、転々と言っても、集落の後には何も残らないが。
雑兵「まだ村とか襲ってんのか」
参謀長「おう、最近はフィッハー補給処とかからすぐ応援が行ける様になったが...手遅れな状態になることも多々あってな、フィッハーにある村や集落はほぼ無人状態になってる」
雑兵「殺すしかないですね」
参謀長「まぁ王国軍はこっちで決めるが、そっちは騎士団長が決めるだろ、また暴走すんなよ?」
雑兵「あ、あぁ...」
参謀長「この件は別に話してもいいからな、話せよ?絶対に話せよ?」
雑兵「なんのフリだそれは」
698
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/05/30(日) 01:02:02 ID:sKhOYfJg
雑兵「ってことだってさ、王国軍は討伐したいと」
女騎士「そう...最近の王国軍は若干我々騎士団に任せっきりな状態だね」
雑兵「まぁ騎士団って強いし楽だし」
女騎士「偶には王国軍が出なきゃ、そうでなくても今評価すごい低くなってるのに」
事実、最近の行われた盗賊の討伐等々の任務は騎士団が派遣されている、騎士団は元来国王の直近にて待機していなければならないとこの国の小六法には書かれている、任務を受けるなという訳ではないがおいそれと使いまくっていい部隊ではないようだ。
699
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/05/30(日) 01:05:34 ID:sKhOYfJg
雑兵「参謀長に言ってこようか、たまにゃ働けって」
女騎士「...いや、私が直接行こう、参謀長に上番してから挨拶もしていなかったから好都合だ、雑兵はまだ休暇だからついて来なくていいよ」
雑兵「あぁ...まぁ喧嘩せずにな」
女騎士「する訳ないでしょ」
_
__
700
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/05/30(日) 21:03:15 ID:sKhOYfJg
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情報参謀「カルトの連中を討伐し切らんかったのは騎士団の落ち度でしょうが!」
女騎士「フィッハーに駐屯している王国軍が不甲斐ないから被害が拡大したのだ、我々だけで片付けるのは土台無理な話だ」
兵站参謀「そもそも騎士団は働かなさすぎる!その癖王国軍の兵站だけは持っていかれるのは納得がいかん!!」
女騎士「貴様ら王国軍に信頼が寄せられていお陰で、我々が出払っていても尚働かないと言うか?無駄飯くらいも良い所だな」
兵站参謀「な、何を!」
参謀長「やめんか貴様ら、惨めったらしいぞ」
情報参謀「しかしですね!」
参謀長「我々王国軍に対する国民の信頼度はどんどん落ちてってるのは事実だ、そしてフィッハーのカルト集団に対応していなかったのもまた事実なんだよ、お前ら参謀してんのに分かんねぇのか」
女騎士「そりゃ腐った将校が生まれる訳だな」
兵站参謀「きっ貴様!」
701
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/05/30(日) 21:09:34 ID:sKhOYfJg
女騎士「誰に向かって貴様かこの無駄飯食いが、もういい参謀長、役に立たん連中がいては揃う足並みも揃わない」
参謀長「同感ですな、この場所にいる連中に告げるが、文句だけ垂れるなら出てってくれ、カルトの連中を一掃するのにお前らが邪魔だ」
兵站参謀「っぐ...」
参謀長「俺が参謀長になったからには腐った将校は一掃する、本当に国の為に動く奴だけを残す...さて本題に入りましょう」
女騎士「カルトの残党は隣国に脱出しようとしている、情報によれば百名足らずだが...まだ信仰は捨てていないのかフィッハーの町村を襲っては転々と移動している...混成騎士団が追撃を行なっているがまだ人数が足りない」
702
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/05/30(日) 21:13:40 ID:sKhOYfJg
参謀長「そこでやっと王国軍の出番ってことですね、いいでしょう、幾らでも派遣しましょう」
女騎士「ありがとう、だがカルトの集団の中には信仰に疑問を持ち始めた連中もいるとのことでな...脱出しようにもできないという状況にある者もいるそうだ」
参謀長「その連中は救助せよ...って事ですか?」
女騎士「あぁ、皆殺しにするよりは」
参謀長「しかし...それは国民感情が許すでしょうかね」
女騎士「許すようにするのだ、殺しの連鎖をここで断ち切らねばならない、我々が慈悲を見せれば蛮行を止める者も出てくるだろう」
703
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/02(水) 22:08:04 ID:Xi85E3jY
来てた
読むよ
704
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/02(水) 23:20:29 ID:51UAHFxM
参謀長「...そうですか、連鎖を断ち切るため慈悲深さも必要になってくるのでしょうね、しかし本当に大丈夫ですか?」
女騎士「何が言いたい」
参謀長「あなたの身内に一人いるでしょうよ、カルトに関しては情け容赦のない男が」
女騎士「彼は...雑兵は今回は前線には赴かせない、絶対にだ」
参謀長「まぁ一人の人間のために皆の足並みが揃わんとなれば作戦の立てようもありませんからね、手綱は上手く握って下さいよ」
女騎士「あぁ、もちろんだ」
_
__
705
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/02(水) 23:23:26 ID:51UAHFxM
__
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斯くして、カルト教団の掃討作戦が始まった。
王国軍約千人、騎士団及び混成騎士団約三百人からなる大部隊は一路フィッハー地方へ向かった。
706
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/02(水) 23:33:41 ID:51UAHFxM
雑兵「俺は後方勤務だと?ふざけるな俺も行かせろ!」
女騎士「お前がカルトを相手にしてしまえば皆殺しにしかねないからな、今回は脱出者の救助も任務だ、見境なしに殺すお前は前線には向かわせられない」
雑兵「いや殺さなきゃダメだろ!アイツらが何してきたか分からねぇお前じゃないだろ!ここで厄災は断ち切らねぇとまた同じ轍を踏むぞ!」
女騎士「何をしてきたかは分かっている、しかし信者には子連れもいる、老幼婦女子まで手にかかるつもりか?」
雑兵「当たり前だ、カルトってぇのはババアの一匹に至るまで殺さねえとダメなんだよ、野郎共ゴキブリみてえに繁殖しやがって...」
女騎士「...もう教祖は死んだ、最高幹部もお前が始末しただろう...これ以上何を望むんだ」
雑兵「カルトの一掃、それだけだ」
女騎士「王国軍や騎士団の隊員に虐殺をさせろと言うのか?」
雑兵「立派な治安維持だろうがよ、それにその脱出してぇ連中は本当に信用出来んのか?お前らの情報筋なんてとことん信用してねえからな」
707
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/02(水) 23:45:58 ID:51UAHFxM
女騎士「...命令でも聞かないか?」
雑兵「あぁ、無理だ、譲れねえ」
女騎士「...命令でも無理だと言うのなら、お前を軍法会議にかける、命令の不服従、素行不良、倫理に反する行い...最悪でも一年の重営倉だな」
雑兵「ちょ...ちょっと待てよ、何で軍法会議なんか...俺は国の為を思って言ってんだぞ!参謀連中なんぞよりも考えてんだぞ!!」
女騎士「文句があるのなら命令を聞け...それが出来ないのなら私はどうすれば良い?服を脱いでお前の前に這いつくばれば良いのか?」
雑兵「ばっ、馬鹿!そういう事じゃねぇんだよ!」
女騎士「お前の恨みも悲しみも...私が全て晴らしてやる、ここで雑兵について回ってきた邪悪を私が振り払ってあげる...信用してよ...」
雑兵「...っ!わ、分かった...!わかった...お前らにゃ迷惑は掛けれねぇ...だが...」
女騎士「なに?」
雑兵「アイツらがお前や勇者...みんなに舐めた真似しようとしたら容赦なく殺しに行く、だから怪我とかしないでくれ」
女騎士「分かった、約束」
708
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/03(木) 22:20:48 ID:navcOhuE
女騎士「では出発するが、留守中にも書類等は提出されるからな、いつも通り区分ごとに分けてくれ」
雑兵「わぁったよ...」
女騎士「...絶対に付いて来ちゃダメだからな、目を付ける人はいない、二度と私達を裏切らないでくれ」
雑兵「分かってるって、信用してくれ」
女騎士「よし..,」
騎士団の討伐隊は未明に出発した、本当は女騎士や勇者のそばに居たいが、助けに行くことが裏切りとなるのなら、もう裏切れない。
709
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/11(金) 00:11:23 ID:ZyKXNvVc
「おめえが居残りか、なんか意外だな」
雑兵「仕方ねえだろ、団長様直々にお前は来るなって言いやがったんだからよ」
「まぁ今回の任務にゃ不適だったんだろうぜ、気持ちは分かるけどお上が憐みの令出しちまったら殺さねえんだよ」
雑兵「でもよ...カルトってぇのはガキの一匹でも残ってりゃ危険なんだよ、老幼婦女子関係のねぇ...見てきたんだよ俺は...」
「…俺も親族がカルトに殺された口だからな、今回の任務、居残り組のほとんどがそう言う連中だ、家族や友人をカルトに殺された連中がな...」
雑兵「復讐もできねぇのか...」
「復讐はオメェがしてくれたんだよ、信者も最高幹部も殺してくれた、後はもう野となれ山となれだ、ちったあ休もうや?」
710
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/11(金) 01:43:06 ID:ZyKXNvVc
あまり知らない隊員と隊員クラブで飲み明かし、愚痴を溢しまくった、そんな二日酔いで頭がガンガンする朝、前線から電報が届いた。
『 騎士団長 行方不明、指揮は副団長に一任する』
雑兵「...」
裏切りったなど知った事ではない、舐めた真似をしたら皆殺しにする、そう言ったはずだ。
雑兵「馬ァ出してくんねえか...?」
「...行っちまうのかよ、おめぇお上が...」
雑兵「約束を破ったのは女騎士だから...」
「...付き合ってらんねぇな、持ってけ」
711
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/11(金) 01:54:35 ID:ZyKXNvVc
雑兵「恩に着るっ!」ッタタタッ
「無事に帰って来いよ、ヒーロー」
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712
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/11(金) 02:06:03 ID:ZyKXNvVc
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頭がガンガン痛む、フィッハーに到着した後、偵察のため郊外に出て...そうだ迷い子を見つけたんだ...家族と逸れたと言っていた、その子と行動を共にしていたが...その後が思い出せない。
「チクショウ...何だってここまで酷い目に...」
「汚い言葉を使うな、教祖様は必ず助けてくださる」
女騎士「ウッ...」
「起きたな、教団に仇なす者よ...そして子羊を向かい入れた者よ」
女騎士(こ、子羊...?クソっ!口が塞がれて声が出ない...)
「思えばあの子羊が...!あいつから始まった!!崩壊が!」
「教祖様の死!ラング様の死!同胞達の死!全てあいつが連れてきた!子羊が死を連れて来たのだ!」
女騎士(何を言っているんだこいつらは...)ガチャガチャ!
713
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/11(金) 02:10:56 ID:ZyKXNvVc
「怯えるな、畏れるな、青白い馬に教祖様が連れてゆかれたとしても、君のような弱者でも、教祖様は許して下さる」
女騎士(…約束、破っちゃったなぁ、雑兵、怒ってるだろうなあ)
_
__
714
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/11(金) 02:15:35 ID:ZyKXNvVc
__
_
「クソッ!!騎士団長はまだ見つからないのか!?」
「フィッハーは広大なんですよ!そもそも騎士団長一人で偵察させてる時点で...!」
「騎士団は何やってたんだ!」
副団長「静まれ...静まらんか!!」
「ふ、副団長...」
副団長「目星も何も付いていない状態で、闇雲に探させても兵力の無駄遣いだ...ここはまずカルトの捕縛を優先させなければならない」
「しかし...それでは騎士団長が!」
「死んでしまっては元も子もないんですよ!それに...カルトの女の扱いときたら!」
「早く見つけなくては!」
715
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/11(金) 02:23:01 ID:ZyKXNvVc
副団長「クソッ...どうすれば...!」
「勇者様を派遣しましょう!あの方なら必ず!」
「今はオムエンにいる!早くても呼ぶのに三日!到着に三日!計六日も使うんだぞ!!」
「じゃあ誰がいるんだ!!」
「俺らがいるだろうが!!」
副団長「...参謀長、知恵を借りたい」
参謀長「騎士団長の動向を先に探るべきではないか、どこへ向かって、何をしていたか」
「フィッハー港周辺の偵察を行っていました」
「いや郊外だ、偵察隊を組んでいだろ」
参謀長「なぜ騎士団のお前らが団長の正確な行動と位置を知らんのだ!!!副団長!!」
副団長「確実にわかる行動は、迷い子を一人保護していた、その子供を一人でフィッハーに送ろうとして、行方不明になった」
716
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/11(金) 02:27:57 ID:ZyKXNvVc
参謀長「その子供...まさかカルトの使いじゃねえか?」
副団長「あり得るな、その子どもを使って...拉致を」
参謀長「問題はどこに連れて行かれたかなんだよ...」
「フィッハー港の付近では?」
「確かに、隣国へ逃げたいのならフィッハー港の周辺で体制を整える筈だ」
参謀長「フィッハー港の周辺は山狩りを行っただろ、草の根一本でも残らない位毟り取ったのを忘れたのか」
副団長「...雑兵がいてくれれば...」
「ぞ、雑兵ですか...しかし奴は...」
717
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/11(金) 02:34:02 ID:ZyKXNvVc
雑兵「...俺が来る来ねぇレベルの話にまで来てるくらい話進んでねぇのか?」
参謀長「雑兵...!いつここに!」
雑兵「いつだっていい、見つかったのかよ」
副団長「まだだ...フィッハー港周辺の可能性が...」
雑兵「アイツらは捻くれてて、そしてとても聡い奴らだ...周辺の雑木林レベルまで目を凝らしたが、お前ら草の根一本でも残さんレベルで抜いたな」
「貴様、先ほどからなんだその態度は...」
参謀長「黙れ、雑兵...どう見る」
雑兵「隣国へ逃れたい、そして付近の村々は襲撃されました、何やってんだよお前ら...使えねぇな、人が多く残ってる所はどこだ」
「...フィッハー港以外無いな」
雑兵「木を隠すなら森の中、人を隠すなら人の中だ、全ルート遮断しろ!細いドブ溝一本にいたるまでな!外から中へ入れる場所!中から外へ出られる場所全部だ!」
718
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 00:29:38 ID:5GgxwrEg
雑兵「副団長、ここから先はアンタに任せます、面子もあるでしょ」
副団長「団長を拐われた段階で面目丸潰れだ...しかしそうだな、お前にお株を奪われたらたまったものではない」
雑兵「俺は討伐隊の人間じゃないんで勝手に探します、そちらはそちらで」
参謀長「まったく、嵐のように現れて去ってったな」
_
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719
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 14:53:14 ID:5GgxwrEg
__
_
カルトの残党が付近で確認され、フィッハー港では船舶の出入港は制限され、貨物船の荷揚げと卸しは昼間のみ行われる、夕方になるまでには船は沖合に停泊し安全を確保する事になった、効率は大幅に下がったが、カルトの他国への逃亡を考えるとやむなしとの判断だそうだ。
雑兵「カルトはまだフィッハーの街に潜伏している...問題はこの街は人が多すぎる事だ」
港には捨てられた家屋や倉庫が並んでいる、多数で潜伏するのであれば好都合ではある。
しかし連中は聡い、前にも一般人に紛れた老婆に痛い目にあった。
雑兵(...しらみ潰しに探すしかない、時間は無いがそうせねば無駄足で時間を潰すよりも...)
720
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 14:57:32 ID:5GgxwrEg
雑兵「おっちゃん、久しぶり」
「ああ、いつかの...」
雑兵「奥さん帰ってきた?」
「いや...行方不明になっちまったよ...首都にいる母方の親族にも聞いて見たが...」
雑兵「...もしかしてカルトにか?」
「わからねぇ...フィッハー出てすぐに行方がわからなくなっちまったのはたしかだけど...」
雑兵「そっか...あんまビビらす事言いたくねぇんだけど、カルトがフィッハーの街に潜伏してる、隣国に逃げるためだそうだが船が出てねぇから」
「そんな...いや、でも確かに最近になって辺な様子の連中が増えてきたな...店にも大量に野菜を買いに来た、向かいの精肉店にもだ」
雑兵「行き先わかる?」
721
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 14:58:50 ID:5GgxwrEg
「いやぁ...住宅街に向かって歩いて行ってるのは見かけたが、そこからは」
雑兵「いやそれで十分だ、ありがとう」
「...気ぃつけてな」
雑兵「うん」
722
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 17:49:13 ID:5GgxwrEg
雑兵「あ、港湾の従業員さん、ちょうど良いところに」
「あれ?最近見ないと思ってたんだよ、どこ行ってたの?」
雑兵「はは...ちょっと...それよりも最近この付近で新しく見かけた人とか居ませんか?」
「新しく...あぁそういえば、そこのアパートの大家さんに聞いたんだけど、前まで全室空き部屋だったのに、急に上の階全部が埋まったらしいんだよ、でも埋まってから暫く経つけど...一人か二人位しか出入りしてるの見てねぇんだよなあ、しかも暑いのにフードかぶって出てくるから顔もわからないんだ」
雑兵「何か言われたりとかしました?」
「あまり関わりがなかったからねぇ...あ、でもなんか夜になると...その、女の人の声が...」
雑兵「...どんな声だ」
「な、なーんか苦しそうな...そこまで聞いてるわけじゃないから分かんないけど」
雑兵「ありがとうございます、あの家の連中にゃ関わらないで下さい」
723
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 17:50:10 ID:5GgxwrEg
「あ、あぁ...」
雑兵(応援は呼ぼう...一人で行って失敗したら、周りの住人に何をされるか分かったものじゃない)
_
__
724
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 17:53:16 ID:5GgxwrEg
__
_
雑兵「ってことです」
副団長「それは確証があるのか?」
雑兵「それを俺が調べるんですよ、違えば無駄足をアンタらが踏んだだけで済む、合っていれば制圧すりゃ良い、違いますか?」
参謀長「俺らは港付近の倉庫とか調べてたのに...どうやって行き着いたんだ」
雑兵「いやまだ確証は無い、ただ変な連中ってだけだ、そしておそらくだが騎士団長はそこにいる」
副団長「…っ!分かった、手配しよう」
725
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 18:17:53 ID:5GgxwrEg
「お、おい雑兵、大丈夫か?」
雑兵「あぁ、15分たって戻ってこなければ、まぁそういうことだと思ってくれ」
副団長「例え騎士団長が無事でなくても...いや、必ず助けよう」
雑兵「当たり前だ、その為に俺が来たんだ、じゃあ行くからな」
「気をつけて...!」
726
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 18:26:22 ID:5GgxwrEg
雑兵(声が聞こえるってのはどの部屋かわからないんだっけな...)
雑兵「憲兵っぽく...ん″ん″っ」
トントン
雑兵「ここの住人はおられるか!」
ドンッ!! ガシャン!! ズルズル
雑兵(まさかのビンゴか?)
ガチャ
「ど、どうも憲兵さん...何かありましたか?」
雑兵「最近この付近の家で、人の暴行されている声が聞こえると通報があった、現在憲兵隊をもって全ての家を回っている、捜査に協力してもらいたい」
「は、はぁ...ど、どうぞ」
雑兵「失礼...」
727
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 18:27:01 ID:5GgxwrEg
雑兵(この臭い...前程は酷くねえが明らかに誰かを監禁してる...)
「ど、どうでしょうか」
雑兵「一人暮らしか?」
「い、いえ、仕事仲間と相部屋です」
雑兵「そうか...隣の部屋の住人はいつ戻られるかわかるか?」
「いえ...」
雑兵「ふ〜む...」
「も、もういいでしょう?うちの部屋に女っけは...」
雑兵「…女と言っていないのに何故分かった?」
「うっ...」
728
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 22:12:11 ID:3B1.AQdM
雑兵「テメェカルトだな?もし人質に何かあってみろ...その場で血抜きしてやるからな...」
「クッ...何故この場所が...!」
雑兵「どこに隠した...」
「だ、誰がしゃべ ザシュッ
雑兵「使えねえ、まあこの部屋にいるのは分かってる...おい!いるなら返事しろ!できなければ暴れろ!」
ガタッ!ガタン!!
雑兵「た、タンスの裏?!よく入れれたな...」 ズズッ
女騎士「ンム-ッ!!」
雑兵「あぁ...っ!良かった!生きてた!今解く!」
729
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 22:24:38 ID:3B1.AQdM
女騎士「ップハッ!...どうしてここが...」
雑兵「あぁ、ツテとか色々な...それよりも大丈夫か?!怪我とかしてないか!」
女騎士「何もされてない、大丈夫だ...あと少し遅かったら分からなかったが」
雑兵「あぁ...良かった...今回約束破ったのはお前だからな、文句は言うなよ」
女騎士「まったく、それよりも皆に迷惑を掛けてしまったな...」
雑兵「みんなアパートの外で待機してる、残りのカルトを狩らねぇといけねぇ...立てるか?」
女騎士「うん...ッツ痛っ...」
雑兵「え...うっわ...!」
見落としてた、足枷にはボルトが付いており刺さっては居ないが足の肉と骨がゴリゴリ削られていた。
雑兵「クソ共が...モンキかレンチがねえとハズレねぇな、ちいっと我慢してくれ」
ヒョイ
女騎士「きゃっ...///」
730
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 22:59:27 ID:3B1.AQdM
雑兵「カルトは何人くらいいたんだ?」
女騎士「他の部屋は分からないけど...あそこだけで10人弱はいたかな」
雑兵「カルトの残党の人数って大体分かるのか?」
女騎士「最新の情報では100人弱だったかな...あのアパート以外にももしかしたら潜んでるかも...」
雑兵「あ〜2階の部屋全部入れても、5部屋しかない...ざっとみても半分くらいしか居ないかもな」
女騎士「はぁ...疲れたな...」
雑兵「お疲れ様、そろそろみんなの前に出るけどどうする」
女騎士「...このままで良いや」
雑兵「かしこまりました、お姫様」
女騎士「くっ...後でしばく」
731
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/13(日) 23:59:06 ID:3B1.AQdM
副団長「き、騎士団長...!ご無事でしたか...!」
女騎士「副団長、不在にして申し訳なかった」
参謀長(いやまず姫様抱っこされてることに突っ込めよ!)
雑兵「そ、そろそろ降ろしてもよろしいでしょうか」
女騎士「おろさないって言ったのはお前じゃないか、発言には責任を持つように」
雑兵「えっ、いや、それとこれとは」
副団長「騎士団長、偵察の者が周辺の住宅を捜査したところ、似たようなアパートに半数のカルトが潜伏していることがわかりました、ここで根こそぎ捕獲或いは排除すれば...」
雑兵「いや突っ込めって!」
参謀長「よく言ってくれた」
732
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/20(日) 23:15:31 ID:zCTT/s.s
女騎士「イマイチ緊張感に欠ける奴だな...まぁいい副団長、指揮はお前に一任する、今の私は前線に立っても役に立たないだろう、後方に下がり治療をする」
副団長「はっ、お任せください」
女騎士「と、言うことだ雑兵、護衛は頼んだぞ?」
雑兵「あ、あぁ...でも良いのかよ」
副団長「雑兵は元々員数に入っていないだろう、騎士団長を安全に送り届けるのが今の任務だ」
733
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/21(月) 22:30:03 ID:WleHf5gk
フィッハーに潜伏するカルトの残党は無事捕獲、或いは排除された。
教団に対する不信感を持つ信者も現れ始めた頃に、教祖の死そして最高幹部の脱退が相次いで起こり、脱走者が増加し始めた、捕獲された信者の一部は首都に送られ、取り調べを受けるそうだ。
「教団に不信感を抱いていたら無罪ってかよ」
「それなら俺の殺された家族はどうなるんだ」
734
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/06/21(月) 22:34:38 ID:7CSEL2Ow
「おい雑兵!お前なら分かるはずだぜ、殺された連中の無念がよ!」
雑兵「あぁ、死ぬ程わかる」
「なら何故捕獲なんて選択肢があったんだよ!」
雑兵「俺に言うなよ、上の連中が捕まえたかったから捕まえたんだろ、俺だって殺してやりてえがよ、立場ってもんがあるんだよ俺の直属の上司にゃあよ」
「…クソ!」
雑兵「俺に当たるなよ、第一てめぇ軍人の立場だってぇのに家族一人も守れなかったのかよ、視野を広げりゃオメェの家族の住む所が危ねえって気付けただろ」
「なっ...!てめっぇ!」
「お、おい雑兵!それまでにしとけ...!」
735
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/23(金) 17:00:58 ID:ZTIpzSoI
雑兵「どう更生させるかは俺の知った事ではねぇ、お上がそう決めたのなら俺らはそうするしかないだろ、分かるだろお前らなら」
「...そりゃ分かるけどよ」
雑兵(連中がどう更生しようが、犠牲者の墓前に奴らが死ぬ迄詫び入れさせてやる...何もかもを捨てさせて…)
_
__
736
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/23(金) 17:07:43 ID:ZTIpzSoI
__
_
国王「して、元信者の様子はどうかな?」
参謀長「はっ、全員過去の教団の行ったことと、自身の行ったことを認識させ、皆反省の色を伺わせています、しかし完璧に更生させるにはまだまだ時間が必要です」
国王「どう取り繕っても、彼らは我が国の国民じゃ、我々が道を作ってやらねばならん...反対意見も見受けられるが」
参謀長「はぁ...反発してる者の最たるものは雑兵ですね、雑兵も今は気持ちを押し殺しておりますが、元信者に対する殺意は凄まじい、子どもの信者でさえも殺してしまえと言う男でしたから」
国王「うぅむ...物心ついた時に、親からそうと教わればそれしか出来ないものじゃ、それを理解してくれれば...」
参謀長「彼は被害者を目の当たりにしましたからね」
国王「...雑兵を呼んできてくれないか、話がしたい」
参謀長「はっ」
737
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/23(金) 17:12:47 ID:ZTIpzSoI
女騎士「元信者の更生は順調だ、我が国が総出で行っているからな、まぁ時間は掛かるだろうが仕方がない、あぁ、それじゃ」 ガチャン
雑兵「勇者か?」
女騎士「うん、あちらも落ち着きそうだから帰ってくると思うよ」
雑兵「そうか」
女騎士「...やはり反対か?」
雑兵「...お前らがそう決めたんだろ、じゃあ従うしかないだろ」
女騎士「お前の意見が聞きたい」
雑兵「俺の意見はお前の意見だ、それ以上もそれ以下もない」
女騎士「ん...」
やはり元信者の更生は反対なのだろう、元信者の子供の基本教育の時間に、雑兵を連れて視察に行ったが...溢れ出る殺気は子どもにさえも伝わっていた。
738
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/25(日) 10:56:08 ID:TLOW1PoA
久し振り
見てるよ
739
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/25(日) 13:35:48 ID:.Uqee9Ik
そうこうと考えが逡巡しているとドアのノックが聞こえた。
女騎士「どうぞ」
参謀長「失礼します、雑兵はいますか?」
女騎士「あぁ、どこへでも連れていけ」
雑兵「参謀長、どうされました?」
参謀長「国王がお呼びだ、雑兵だけ来てくれ」
女騎士「国王が?」
参謀長「はい、まぁ...今後の事ということで」
女騎士「そうか、雑兵、粗相のないように」
雑兵「了解」
740
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/25(日) 13:42:07 ID:.Uqee9Ik
雑兵「んで、何かやったか俺?」
参謀長「何もしてねぇけど、まぁ元信者の事でだ、国王はお前のその内に秘めた復讐心でだいぶ頭悩ませてる、有り体に言えば子どもに手ェかけるんじゃねえかって」
雑兵「あぁ...まぁ否定はしないけど」
参謀長「もう全て終わった事だ、こんな事は言いたくないがもう諦めてくれ、子どもにまで手をかけられたら擁護のしようがない」
ラング村での一件は未だに国の中でも尾を引いており、元信者であろうとその村にいた者は極刑にすべきと議論は続いている。
しかし国王はその場を諌め、邪の道に堕ちてしまった者であろうと更生させよと発言した。
741
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/25(日) 13:46:31 ID:.Uqee9Ik
ラング村の一件は、現在確認される生存者は皆無で、被害者も皆病死或いは自殺してしまう程の残酷な事件であった。
雑兵「…お上が生かすって決めたなら生かせばいいだろ、俺にゃ関係なくないか?」
参謀長「あぁ関係無いけどな、騎士団長と一番近しい人間が露骨に殺意剥き出してんだぜ?」
雑兵「それは...すまない」
参謀長「大丈夫だ、胸の内をあかせ、国王とサシで話せるんだ」
雑兵「あぁ...」
742
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/01(日) 00:24:46 ID:R/1kYHk6
コンコン
「雑兵、入ります!」
国王「うむ」
雑兵「お待たせしてしまい申し訳ありません」
国王「いや、いきなり呼んで悪かった、そこに掛けよ」
雑兵「はっ」
国王「大体は参謀長から聞いたであろう」
雑兵「はい、自分の胸の内も明かしました」
国王「そうか、気持ちは変わらんか?」
雑兵「はい、ですが結局のところは気持ちだけです、自分自身はどうこうするつもりは毛頭ありません、騎士団長の言う通りに動きます」
743
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/01(日) 00:29:58 ID:R/1kYHk6
国王「ラング村での一件...雑兵はよく働いてくれた、そして雑兵が元信者を許せない気持ちも分かる」
雑兵「…」
国王「ここは一つどうだろうか雑兵、貴様が信者の子供たちの教育に携わってみんか?」
雑兵「きょ、教育ですか?しかし自分は学がなく...寧ろ教育を施してほしい程なのですが」
国王「教育といっても何を教えると言うことはない、一緒に暮らし、遊ぶだけじゃ」
雑兵「しかし...あの連中の前に立ってしまえば、自分でも何をするか分かりません」
国王「貴様のその行動が騎士団長に迷惑を掛けるとわかっていてもか?」
雑兵「そっそれは...」
国王「今は気持ちを抑えてくれんか、子どもに罪は無いでな」
744
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/01(日) 00:31:55 ID:R/1kYHk6
雑兵「...分かりました、もし、もしですが、取り返しのつかない事になった場合...俺を殺して下さい」
国王「殺す...とな?」
雑兵「はい、騎士団長...いや、女騎士や勇者...ほかの方々にこれ以上迷惑をかけてしまうのであれば、死んだ方がマシです」
745
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/01(日) 00:38:17 ID:R/1kYHk6
国王「...わかった、きっと処刑してやろう」
雑兵「ありがとうございます」
国王「ふうむ、中々どうして肝が座った男よ、元々の性格なんじゃろうな...では命令を下す、これは国王命令じゃ」
雑兵「はっ!」
国王「命令!王国騎士団 騎士団長補佐雑兵!!元信者の孤児に対する教育係兼取締り係の任務を命ずる!!復唱不要」
雑兵「はっ!それでは申し受けに参ります」
バタン
国王「...」カチャ
国王「聞いてたな、騎士団長」
女騎士『...はい』
746
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/01(日) 00:42:09 ID:R/1kYHk6
国王「雑兵め中々に男前じゃな、捕まえて離すでないぞ」
女騎士『お、お戯れは...』
国王「戯れなどではない、アレは中々どうしていい男じゃぞ、貴様を心から愛している」
女騎士『...だと良いのですが、しかし本当に処刑をするのですか?』
国王「ほっほっ、言うたであろうきっと処刑すると、するに決まっておる、奴は覚悟して掛かった、ワシも本気でせねば雑兵に申し訳がたたん」
747
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/12(木) 00:10:41 ID:/uAStXDQ
我が国における命令には種類があり、部隊長の権限で、個々の隊員に発せられる個別命令、日常業務に対し発せられる日日命令、部隊の編成、配置、派遣等は参謀長、駐屯地や分屯地の長が発せられる一般命令、そしてその全ての命令を司るのが国王である、そして参謀長のみならず如何なる場所に所在する隊員一人、国民一人に対してでも発令できる国王命令がある。
国王命令はどの命令よりも重くまた何があろうと絶対に遂行される命令である。
雑兵(国王命令...ってことは絶対に処刑するってことだもんな)
国王命令には罪人や戦争犯罪を犯した隊員の処刑も含まれており、刑場で行われる処刑は全て国王が発令して行われるのである。
748
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/12(木) 00:16:21 ID:/uAStXDQ
参謀長「国王命令ってお前...しかも直々に何かしたら処刑するって下されたのかよ」
雑兵「あぁ、きっと殺すってさ」
参謀長「国王から言われたんじゃ...騎士団長でさえも止められねぇな...」
雑兵「止めてくれなくたって構わねえさ、俺が殺してくれって言ったんだ」
参謀長「だとしても...お前ってほんとバカだなぁ」
雑兵「そんなことは俺が一番分かってるよ、所でその子供らってのはどこにいるんだ?」
参謀長「あぁ、城の中にある教会が面倒見てる、外じゃ被害者遺族が危害を加える恐れもあるからな」
雑兵「了解、ほいだら行ってくるか」
参謀長「頑張れよお前...何を頑張ればいいかしらねぇけど」
雑兵「みんなに迷惑をかけないように頑張るだけさ、行ってくるな」
749
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/12(木) 00:21:33 ID:/uAStXDQ
城の中にある教会は孤児院の役割も果たしており、戦災孤児や両親を様々な理由で亡くした子供たちはここへ預けられ、基本教育等を受けて成人を迎えたら外で働きに出るそうだ。
雑兵「失礼します」
神父「どうも、雑兵さんですね?国王から通達を受けました、お世話になります」
雑兵「こちらこそよろしくお願いします...それで、子供たちは」
神父「はい、今は勉学の時間ですから...教会の者が教室で授業を行っていますよ、見に行ってあげてください」
雑兵「ありがとうございます」
750
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/12(木) 00:23:34 ID:/uAStXDQ
神父(子どもたちに危害を加えたなら処刑...本人がそう言ったとは言え、国王もそれを承諾するとは...カルトが与えた影響はまだまだ続くのか)
雑兵「…すみません、教室ってどこですか?」
神父「おやおや…」
__
___
751
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/12(木) 00:28:11 ID:/uAStXDQ
__
__
シスター「ここにはリンゴがあります、このリンゴ同士は幾つありますか?」
「2!」
シスター「すばらしい!」
雑兵(見たところ全員普通の子どもだな...子どもに罪は無いと言うが...あのカルトの子どもか)ギリッ...
シスター「…みんな、周りのみんなでこの問題を解いてみましょう、シスターがはいと言ったら答えてください」
「「「「は〜い!」」」
シスター「すみません、ちょっとよろしいでしょうか」
雑兵「…あ、は、はい」
752
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/12(木) 00:33:40 ID:/uAStXDQ
シスター「貴方が今日来られる雑兵さんですね?子ども殺意を向けるとはどう言うことです」
雑兵「…殺意なんてそんなこと」
シスター「いえ、私にも伝わりました、子どもたちにそんな感情を抱くなんて...何を考えているのですか!?」
雑兵「す、すみません...カルトの連中の子どもだと思うとつい...」
シスター「カルト信者の子どもであろうと、みな神の名の下に生を受けた者達です、許せない気持ちは分かりますが、子どもには何も関係のない事と貴方も分かっているでしょう?」
雑兵「…」
シスター「…あなたの事は昨日神父様から聞きました、
753
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/12(木) 00:37:01 ID:/uAStXDQ
シスター「そしてあなたの覚悟も、みな驚いていました」
雑兵「…」
シスター「貴方が道を外さないよう、私も含めて皆で援助します、ですからどうか今は寛大な心で子どもたちと接して下さい、お願いします」
雑兵「はい...すみません」
シスター「分かればよろしい、次の時間は自由時間です、子どもたちと交流を深めて下さい」
雑兵「…は、はい」
754
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/12(木) 00:38:02 ID:/uAStXDQ
雑兵(交流...交流か...)
雑兵「そう言えばここって...」
_
__
755
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/13(金) 01:53:35 ID:SsPxegCc
__
_
雑兵「やっぱり、ここに眠ってたんだな」
埋葬されて新しい墓石が複数建てられていた、ラング村のあの部屋で残忍な行為を行われた彼女たちの墓石だ。
雑兵が誤認で捕まった後、彼女達は保護されたが、皆重度の性病又は精神病の苦痛を数日間耐え抜いたのち病死又は自殺した、誰一人として救える状況ではなかった、しかし誰一人として救えなかったのだ。
雑兵「…子どもに罪はねぇけどよ、罪もねぇ子供も殺されたんだよ...」
シスター「雑兵さん?ここにいらしたのですね、授業が終わったので子どもたちと交流を...」
雑兵「...ウッ...ウウッ...」
シスター「...雑兵さん、やはりあなたやめた方が」
雑兵「...いえ、誓ったんですよ、この国の教育で元信者が更生しようとしまいと、一生を掛けてでもこの墓前に跪かせるって、子どもたちにはそんな事はさせませんがね、自分の親が何をしたか位は教えてやります」
756
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/13(金) 14:23:39 ID:SsPxegCc
シスター「それは...」
雑兵「俺の生まれ故郷の言い方だと...道徳の授業かな」
シスター「道徳...物は言いようですね、子どもにそんな残酷な事を教えられるのですか?」
雑兵「残酷な事もお前らが教えねえから禄でもない大人が世に出てくるんだよ、神だけじゃどうしようも
無いこともあるんだよ」
シスター「っそ、それは聞かなかったことにします、わかりました、あなたの覚悟は神父様からも聞きました、
あなたの思うようにして下さい、しかし変な真似はしないように」
雑兵「大丈夫だ、連れてきてくれ」
757
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/08/28(土) 16:27:25 ID:gjv04x0o
さてどこから話せばいいか、子どもなら間接的な表現よりも直接...
雑兵「おう、来たか」
シスター「ちょっと、何もわざわざ墓地でなんて...」
雑兵「すまん、だがケジメはつけたくてな、すぐ終わらす」
「シスター?この人は?」
「兵隊さん?」
雑兵「おう、すまん紹介がまだだったな、まぁ陰に座って話そうや」
シスター「私は隅で見てますから、みんないい子にしてね?」
「はーい」
雑兵「紹介する、俺は雑兵、今は騎士団長付の秘書をしている」
758
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/09/20(月) 22:53:58 ID:MYjU7P8M
雑兵「んで、俺はお前らの親を殺させてもらった、悪いとは一つも思っていない」
「…ッど、どういう...」
雑兵「いいかお前ら、お前らにはカルトの連中が行ったことに対して詫びる事はない、何故なら何一つとしてお前らに罪はないからな、自信を持って良い」
「へ、兵隊さん...何言ってるの...?」
雑兵「俺はお前らに人として真っ当な、お前らの親のような人間に育てない為にお前らの所に来た、別に厳しく接する訳じゃない、その仕事はこの教会の連中が勝手にやるからな」
シスター「ぞ、雑兵さん...!黙って聞いていればあなた一体どう言う...!」
雑兵「今まで黙って聞いてたんならこれからも黙って聞いてろマヌケ。いいかお前ら、お前らにゃこれから親がしでかした事を教え込んでやる、親に対する誇りも、愛情も一切無くしてやる、これがお前らに出来る教育で、犠牲になった人らに対する弔いだ」
759
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/09/20(月) 23:01:59 ID:AjWHNiGE
シスター「神父様!雑兵とやらを即刻辞めさせねば!」
神父「子どもたちに手を...出したのですか?」
シスター「いえ...しかし子どもに対する教育的模範となる人間ではありません!いつ子どもたちに危害を加えるか...」
神父「...確かに、カルト信者の子ども達を保護している事に対して反発をしている国民がいるのも事実です、雑兵はどうやらその人達の代弁者として来たのでしょうね...しかし彼ならやってくれます、子ども達を導いてくれるでしょう」
シスター「なんの根拠が...」
神父「彼の行いは見てきたし、聞いてきました...とても慈悲深い人であると同時に、自身の発言で苦労する人間ですね、すべて本音で話してしまうから...」
760
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/10/22(金) 22:33:19 ID:G2c8hVWk
神父「彼は死ぬ覚悟で当たっています、我々の発言で人を一人殺めてしまう、思う所もあるでしょうが、彼は道を間違えないでしょう」
シスター「…わかりました」
_
__
761
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/10/25(月) 22:26:21 ID:m6cIyoq.
読んでるよ
762
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/10/27(水) 15:38:27 ID:.LdszHqs
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_
参謀長「その後どうです?奴の子守は」
女騎士「神父から聞いたが、やはりぶっ込んだようだな...手こそは出していないが」
参謀長「国王から直々に命令が下り...しかもなんかやらかしたら殺してくれですからね、豪胆なのかバカなのか」
女騎士「バカで豪胆なのに臆病者だ、ほんと意味が分からない性格だよ」
参謀長「そうですか、まぁ奴なら大丈夫でしょう、やばそうだったらもうすっ飛んできてますよ」
女騎士「随分と皆で懲らしめたからな、誰かが唆したお陰でやっとあいつも気付いてくれた」
参謀長「ま、まぁそれはそうとして...」
763
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/10/31(日) 00:21:00 ID:pb4JE2js
参謀長「諜報部からの情報だと、プラニスの残党と南のホイシュレッケ王国との情報の行き来が盛んになったと」
女騎士「ホイシュレッケ...」
参謀長「あぁ...あとあそこの殿下も王位に就くそうですよ、実はもう来てるでしょう?」
女騎士「婚約の申し込みか、あぁ、もう何ヶ月も前から来てたよ、一つも目を通してなかったが国王から流石にシカトは可哀想だから返信しろと言われた」
参謀長「気苦労が絶えませんな、どうするんです?あの殿下、断りでもしたら戦争に発展させる勢いの告白でしたよ」
女騎士「あのパーティーの時の告白見てたのか」
参謀長「副官の時にですがね、どんくらい立ちますっけ?」
女騎士「雑兵が来る前だから...一年とちょっとだな」
764
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/10/31(日) 00:25:05 ID:pb4JE2js
参謀長「雑兵換算ですか?」
女騎士「あ...いや別に特別な訳は無いぞ、うん」
参謀長「はいはい...では週間ミーティングは終わります、男を代表して言いますがね、早く想い伝えないと手遅れになりますよ」
女騎士「う、うるさい、まだ温めてる最中だ」
参謀長「雑兵も可哀想に...ではまた来週もお願いします」ガチャ
女騎士「あぁ、また」
バタン
女騎士「伝えるったって、一つも進展してないしなぁ」
765
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/08(月) 00:25:13 ID:DxJMtq/6
女騎士(全てが落ち着かないとなぁ…)
女騎士「…まぁ、今はまだね」
_
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766
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/08(月) 00:41:02 ID:DxJMtq/6
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雑兵「どうだ、シスターの授業はついていけてるか?」
「算数が難しい〜」
雑兵「算数かぁオレも実質学校行ったことないようなもんだからなぁ…気合いでなんとか乗り切れ気合いで」
シスター「あのですね...」
雑兵「なんでしょう」
シスター「気合も大事でしょうがちゃんと筋道を立てた勉強をしてんですよ」
雑兵「すみません」
「また喧嘩してら」
「飽きないねぇ〜」
767
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/14(日) 02:50:40 ID:YZa5Mki6
この孤児院へ来て数週間、時間はあっという間に経ちカルトの子ども達ともだいぶ打ち解けて来た、最初はやはりと言うべきか怖がられていたが、何をするでもなくただ一緒に授業や飯を食っていれば好奇心旺盛な子は近付いてくる訳で。
雑兵(ただ一々人数や体調を管理するのはしちめんどくせぇ訳でして)
シスター「雑兵さん、日夕点呼の記入お願いしますね」
雑兵「あいあい...」
この点呼も人数の点検や体調の良し悪しを管理する為に必要で、朝と晩に行われる。
雑兵「おーい、さっさとベッド入れよ〜」
「雑兵!絵本読んで!」
「ずるーい!私が先に読んでもらうの!」
雑兵「もー寝なさいよ、明日も見れんでしょうが」
768
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/14(日) 02:52:19 ID:YZa5Mki6
雑兵「点呼異状なしっと...俺も寝るべな」
この点呼は確実に行わなければならない
_
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769
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/14(日) 03:01:26 ID:26mneQFM
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ホイシュレッケ王国はビギニング王国と同じく君主制であり、ビーネ国王の元に統治されている、ビギニングとは長年交流が盛んであり毎年年末になると国王同士交流の為の晩餐が開かれる。
ビーネ国王にはラヴィーネという一人息子がおり、現在はホイシュレッケ王国の王国騎士団長を拝命され、その座に君臨している。
ラヴィーネ「お父様、今回の晩餐会は勇者様も来られるとか」
ビーネ「あぁ、貴様のが愛してやまない騎士団長も来るぞ」
ラヴィーネ「あぁ...騎士団長...早く会いたい...会ってあなたと添い遂げたい...」
ビーネ(ひとっつも進展していないのにこの自信は誰譲りなのだろうか...)
770
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/14(日) 03:06:53 ID:26mneQFM
ビーネ(以前の交流会でいきなり告白したかと思えばこっぴどく振られたのに...我が息子ながら気持ち悪いな)
ビーネ「そいえば...最近ビギニング王国の騎士団長に噂が流れていてな、なんでも側近の男を付けたとか...」
ラヴィーネ「側近ですか...?副団長がいるのに...」
ビーネ「分からんが、兵卒上がりなのにずっと騎士団長の側に付かせているようでな...」
ラヴィーネ「あぁ...そんなバカな...嘘だ...ありえない」
ビーネ(せっかく男いる事匂わせてんのに諦めぬ男だな...揉め事を起こさなければ良いが...)
771
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/14(日) 03:09:32 ID:26mneQFM
その夜
ラヴィーネ「…いいかい?絶対にバレないようにするんだ、その側近とやらの情報を手に入れ...可能な限り始末しろ」
間者「御意」
_
__
772
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/14(日) 03:14:39 ID:9/PidJuw
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勇者「ただいま〜…」
女騎士「おかえり、疲れてるね」
勇者「何もしなさすぎて疲れたよ〜、オムエンにいる魔物たちホント何もしないし、むしろ人間とも仲良いし」
女騎士「それはいい事だね、雑兵にはもうあった?」
勇者「あ、まだだ!会わないと!どこにいるんだっけ?」
女騎士「教会だよ、子どもたちと一緒だからあまりひっつき過ぎないように」
勇者「それってお姉ちゃんのお願いでしょ、なんの進展も無かったんだ、僕にもチャンスあるね」
女騎士「い、いや...進展は...」
773
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/14(日) 03:17:22 ID:9/PidJuw
勇者「どうせしてないんでしょ、流石の僕でもわかります」
女騎士「進展も何も...まだ始まってすらいないしなあ」
勇者「ほーん、まぁ弱気なら僕に敵はいないね、じゃそゆことで〜」バタン
女騎士「...好きだけど、何もなさすぎるんだよ」
_
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774
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/23(火) 23:25:36 ID:4qvQ9v22
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雑兵「今晩の見回りも異状なしっと...」
ガチャ...
雑兵「ん?...扉が開いた音がした気が...まぁ気のせいか」
間者(...見回りは毎晩欠かさずに行なっているな、真面目な奴だ、しかし隙だらけの巡回だな)
間者(孤児の人数は...意外と多いな...フム...)
775
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/23(火) 23:27:46 ID:4qvQ9v22
間者(しかし騎士団長付の秘書がこんな所で何をしているのだろうか...まぁどうでも良い、まずは情報だな…)
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776
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/23(火) 23:34:45 ID:eUx8qTow
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_
間者(なんだこの城は、業者を偽れば簡単に忍び込める...まぁ良い、事前に貰った雑兵とやらの経歴は...独立大隊、国境守備隊...そして騎士団長付の秘書か、騎士団に近付いてみるか)
天使「へぇ〜雑兵ってば孤児の面倒を?」
エルフ「うん、しかも国王陛下直々の命令だって...大丈夫かな雑兵」
天使「雑兵なら大丈夫だと思うな、優しいし」
エルフ「でも孤児って、カルト信者の孤児でしょ?雑兵の心がいつまで持つか...」
天使「大丈夫、雑兵なら上手く付き合えるよ」
間者(国王命令でか...しかし雑兵とやら、かなり信頼を置かれているな...)
777
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 00:20:47 ID:vs84Y4zs
間者(国王命令...と言うことは何かしらの粗相があれば重罪は免れんと言うことか...)
間者「気は乗らないが...これも仕事だからな」
_
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778
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 00:24:20 ID:JPWMvU12
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_
雑兵「あれ…なんか一人多い...?」
シスター「雑兵さん?どうかしましたか?」
雑兵「日夕点呼で子供達の数を数えたんだけど、なんか一人多くて...誰かまた増えた?」
シスター「いえ、新しい子が来る報告は来ていませんから...前々から数え間違えてたのでは?」
雑兵「あぁ〜そうかもなぁ...いや、でもなぁ...」
シスター「明日の朝に確認しましょう、今日はもう遅いですし、新顔の子がいたら分かりますから」
雑兵「そうするか...」
779
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 00:28:17 ID:JPWMvU12
__
_
間者「…」
ガチャ
間者「上手く忍びこんだな」
「はい…来ました...その、ちゃんと殴られたらお金くれるってほんと?」
間者「あぁ、暫くは妹さんと暮らせる程の大金だ、だがちゃんと働かないとダメだぞ、大金といえど使い方によってはお金はすぐなくなるからな」
「わかった...」
間者「じゃあ...耐えてくれ...よっ!!」
バキイッ!
_
__
780
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 00:32:23 ID:ZphAVgRw
__
_
雑兵「よーし、点呼とるぞ〜...ん?」
シスター「はい、一列に並んでください…そ、その傷、どうしたの?」
「…」
雑兵「誰かに殴られたのか...?」
「…」ッス
雑兵「…は、はぁ...?」
シスター「ぞ、雑兵さん...?嘘ですよね...?」
781
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 00:37:49 ID:bUyEy5xA
雑兵「いや、いやいや!殴ってねぇ、ぜってぇ殴ってねえって!そうだ!神父、神父呼べ!そしたらこのガキが何者か分かるって!」
シスター「神父様はいま出張で居ません…」
雑兵「ちょっ、ちょっと待て!いやお前嘘つくなってホント!なぁ!」
「……」
シスター「雑兵さん…失望しました...なんでここまで来て...」
雑兵「いやいやいやいや、冷静に考えてみろって!」
シスター「とにかく...事実確認のため憲兵を呼ばせて貰います、この子が貴方に殴られたと言った以上は...」
雑兵「いやいやいや...まさか、そんな...」
782
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 00:43:37 ID:bUyEy5xA
その夜
「…」
間者「よくやったな、雑兵ってやつはお陰で監獄に打ち込まれたそうだ、憲兵の取り調べにも一貫して殴られたって言ったか?」
「...うん」
間者「よし、これで奴の始末は完了だな、あのバカ自分で国王に手を出したら死刑にして下さいと言ったそうだ、やる事が裏目に出過ぎだ...まぁいい、約束の褒美だ、妹さんと達者で暮らせ、まずは孤児院とスラム街から抜け出して、奉公先を見つける事だ、いいな?」
「うん」
間者「元気でな」
_
__
783
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 00:51:10 ID:C51cIBKw
__
_
女騎士「…嘘だ、嘘だあり得ない、あり得ない!!」
副団長「しかし...子どもは一貫して殴られたと主張しています、しかもあの殴ったアザは間違いなく大人が殴らねば出来ないほどの威力...」
「おかげで騎士団は末代まで舐められますね、騎士団長?」
副団長「口を慎め若造!騎士団長...もしかしたら、もしかしたら何かの間違いかもしれません...国王陛下にまで誓ったあの覚悟を無碍にするような男では...」
「ですが副団長、あの男は卑劣で野蛮な男ですよ、規律を守ると言う気概もなく上官には楯突いて...しかも国王陛下にまで楯突くとk バキイッ!!
女騎士「ハァ...ハァ…黙れ...貴様如きにアイツの何が...」
副団長「騎士団長、いけません」
「っく...なんであの男ばかり...!あんたおかしいんだよ!!オレら騎士団の方が遥かにあんたに忠誠を誓ってた!アイツは忠誠のカケラもねぇのに!!」
784
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 00:53:31 ID:C51cIBKw
副団長「貴様!出てゆけ!」
女騎士「……」
「くそ!あんなやつなんか死んでしまえ!!」
バタン!
副団長「…少し席を外します...」
女騎士「あぁ...」
副団長「…ックソ!」
バタン!!
女騎士「何かの間違いだ...何かの...」
785
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 01:02:19 ID:eTk/3V6E
国王「…ふぅむ...」
参謀長「先月からホイレシュッケ王国と我が国の国境を商人の行き来が多くなっています、多くが彼の国の商人です」
「しかし商人の行き来のが多い割に、財政の動きが見られません、ここまで多く来るのであれば多少なりとも物価は変動するのですが...」
国王「相分かった、国境の警備を更に厳重にせよ、それと参謀長は残るように」
参謀長「はっ、それでは本日の報告会は終了します」
786
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/11/29(月) 01:14:31 ID:eTk/3V6E
国王「して...雑兵の様子はどうだ?」
参謀長「はぁ、取り乱しております、未だに無罪を主張しておりますが...いかんせん証拠が...」
国王「やっていない証拠が無い...そういう所か...被害者の子どもは?」
参謀長「いまは孤児院で治療を受けております、幸い跡が残る傷も、殴られた側の歯も無事でした、器用に殴りやがって…」
国王「…わかった、証拠が集まらん以上は命令通りにするしか無い...四日以内だ」
参謀長「…はい、有りとあらゆる手段を尽くします」
_
__
787
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/05(日) 00:47:45 ID:xXOBpoRA
__
_
神父「ふうむ...出張で帰ってきてみれば、なんたることか...
シスター「神父様、やはり最初から無茶だったんです、人の心の底というのは変われるものでは...」
神父「...いま、被害者の子はどこに?」
シスター「城の軍病院で入院しています、軽症ですが一応軍医の判断で…」
神父「ふむ、ちょっと様子を見てみよう、シスターは残っててくれ」
シスター「はい」
788
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/05(日) 00:51:01 ID:xXOBpoRA
「どこに消えたんだ?」
「便所じゃねえか?」
神父「おや、何やら騒がしいですな」
「神父様、被害者の子どもが姿を眩ましてですね...」
「飯食った後にどこかに...多分便所だと思うんですがね」
神父「それは大変だ、病人ですから今すぐに探し出さねば」
789
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/05(日) 00:52:37 ID:xXOBpoRA
神父(失踪...行く当ても無い子どもが何処に...いやもしかすれば…)
神父「…なかなか面倒な事態になったな」
_
__
790
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/05(日) 01:00:56 ID:xXOBpoRA
__
_
勇者「被害者の子が消えたんなら本当に殴られたか分からないじゃん!」
参謀長「しかし今の段階では子供の証言が一番有利でしてね、殴られた傷は間違いなく大人が殴らないと出来ないほどの傷ですし…」
強襲団長「そもそも子ども一人逃げ出せる軍病院もどうなっているんだって話だな」
参謀長「あと二日...明日にゃ雑兵は刑場に送られる...」
強襲団長「…バカな話だが、変な意地張った雑兵も悪いけどな、弁護士も無しで雑兵が殺されるってなぁこの国の司法もとんでもねえぞ」
参謀長「弁護のしようがないんですよ、殴らないと言う約束で子どもたちの子守りして、殴られた子どもがいるんですよ。しかもカルトの子だ、雑兵が100%殴らないとは言えないんですよ」
勇者「そんな…!じゃあ雑兵死刑になっちゃう…!やだ…やだぁ!」
791
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/05(日) 01:05:51 ID:xXOBpoRA
強襲団長「…仕方がねぇ、強襲警備団全員でそのジャリを探し出してやらぁ」
参謀長「えっいやしかし強襲警備は国王からの命令が無ければ...」
強襲団長「んなもんお前がどうにかしろや」
参謀長「しかしなぁ...!」
国王「許可する、さっさとやってこい」
強襲団長「はっ、直ちに捜索します」
参謀長「こ、国王陛下...!」
国王「許せ参謀長、ワシもまだ望みに賭けたいのでな」
勇者「王様...」
国王「勇者よ、泣いてしまっては雑兵が困ってしまう、今は雑兵を信じてやるだけじゃ」
792
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/05(日) 01:07:11 ID:xXOBpoRA
勇者「王様...うん!」
国王「して、騎士団長は大丈夫かな?」
参謀長「…一応は気丈に振る舞ってはいますが...」
国王「…仕方がない、今はな...」
793
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/05(日) 14:14:29 ID:xXOBpoRA
国王「真実を掴み取るのじゃ、さもなくば雑兵はきっと…」
参謀長「…はっ、我が王国軍の誇りにかけて」
_
__
794
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/06(月) 00:15:17 ID:Ux8kuR4c
___
_
雑兵「はぁ〜.…
「えらい落ち着きようだな...明後日にゃお前...」
雑兵「そうだけどさ、やってねぇ証拠がねぇって言われたらもうお手上げなんだよなぁ〜…」
「心配すんなって、オメェの味方は多いぜ、まぁカルトのガキだから殴りたくなるのも...」
雑兵「だけん殴ってねぇってのに…」
「あ、すまん...」
795
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/06(月) 00:19:51 ID:Ux8kuR4c
雑兵「もう疲れたなぁ…なんべん同じ事を繰り返しゃ済むのかなぁ」
「諦めんなって、いま王国軍総出でその逃げ出したガキ探してんだからよ、強襲警備団も捜索にあたってんだぞ、あの国王から直々に命令されたんだ」
雑兵「強襲団長がよくそんな事を...」
「まぁお前との関係はわかんねぇけど...弟子の二人は相当参ってるらしいからなぁ」
雑兵「…あぁ、もう勘弁してくれ...何度も何度も…」
「まだ粘れって、大丈夫だ」
雑兵「でも明日には刑場でしょ?」
「まぁそれが俺らの仕事だからな」
_
__
796
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/26(日) 23:16:36 ID:91FGGNTs
__
_
強襲団長「まずは孤児に話を聞くんだ、殴られた子の特徴性格孤児院に入った時期も、ありったけを聞き出せ」
「了解ッス」
「お前らはスラム街の捜索だ、顔にアザが残ってるはずだ、怪我をしているガキがいたら徹底的にマークしろ、情報が入り次第随時伝える」
「「「了解」」」
強襲団長「いいかお前ら、この任務は国王から直々に許可を得た任務だ、必ず任務達成させるぞ」
「「「「おう!!」」」」
797
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/26(日) 23:20:32 ID:91FGGNTs
勇者「強襲団長…」
強襲団長「…まぁそんなに落ち込むなよ、雑兵は俺らが必ず見つける、いまは休んどれや」
勇者「でも...雑兵がもし...処刑になんてなったら...」
強襲団長「…雑兵を信じて、俺らの事も信じてくれ、さぁ、今は休め、あと女騎士の奴にも休んどけって言っといてくれ」
勇者「…うん」
798
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/27(月) 00:28:33 ID:ebqXyHlQ
強襲団長(ったく、まだ二人ともガキだってぇのに女の顔し出しやがって...雑兵の奴、死んでも逃がさねぇぞ)
_
__
799
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/27(月) 00:32:21 ID:ebqXyHlQ
__
_
女騎士「はぁ...」
女騎士(孤児が殴られたと聞き、真っ先に雑兵の顔が思い浮かんだ...やはり雑兵を信じられなかったのかな...大丈夫と送り出した時は信じていた筈なのに...)
ガチャ
勇者「お姉ちゃん...」
女騎士「ん?どうしたの?」
勇者「強襲団長がお姉ちゃんも休めって...」
女騎士「あぁ...まったく、周りの人にまで迷惑をかけてしまったな...勇者、今日は一緒に休もうか?」
800
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/27(月) 00:33:08 ID:ebqXyHlQ
勇者「…うん」
女騎士「じゃぁ着替えてベッド入ってて、私もすぐ行くから」
801
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/27(月) 00:37:40 ID:crneizSw
勇者「…お姉ちゃん、雑兵大丈夫かな」
女騎士「大丈夫だよアイツなら、幾つもの試練を乗り越えてきたんだから」
勇者「…」
女騎士「…強襲団長も頑張ってくれてるんだから、信じよ?ね?」
勇者「…」
女騎士「明日もお仕事だから、早く休もうね」
勇者「うん…」
_
__
802
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/27(月) 00:45:14 ID:crneizSw
__
_
ピピーッッ
「逃げたぞ!」
「もう逃さねえぞスパイ!!」
間諜「ックソ...!あとちょっとで出国できたのに何故いきなり…!」
間諜(非公認の任務だから検問は通れない、ここまでか...)
「やっと観念しやがったな」
間諜「何故俺がスパイだと...」
「最近ホイシュレッケ王国とビギニングに商人の往来が激しくなってな、しかし我が方の財政は上がるわけでもないからおかしいと睨んだわけよ」
「まぁ全員が全員スパイじゃねぇけどよ、明らかに商人を名乗るのにお前は城の出入りが激しかったんだわ」
間諜「出入りが...?商人と化けてれば大丈夫と思ったのに...」
803
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/27(月) 00:49:47 ID:ny/TnjW.
「バカ野郎、うちの城ん中じゃ外国の商品は買わねぇんだよ、それは色んな国の商人が知ってることだ、それを商人ですと入ってきたら怪しむに決まってんだろ」
間諜「最初から泳がせてたのだな…」
「まぁんな事はどうでも良い、知った情報を返して貰おうか」
間諜「生憎だが俺は別の任務でビギニングに立ち寄ったのでな...情報はさほど手に入れていないんだ」
「なに...?それってぇのは…」
間諜「ちょっとした火遊びだよ、ちょっとしたな」
「…クソ、連行しろ、ちいと手荒く聞かなきゃいけなくなっちまった」
804
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/12/29(水) 19:53:07 ID:6hGg15RI
「しちめんどくせぇ、いったい何しでかしやがった」
間諜「…そろそろだな」
「あ?そろそろ?」
「まぁいい、取り敢えず首都まで連行しろ、ったっくここから首都まで遠いんだぞ」
間諜「…雑兵って奴知ってるか?」
「雑兵?いや知らんな」
「小隊長…雑兵ってぇのは忠義に熱い男で、所謂俺ら兵卒の星って奴ですよ、でも確か風の噂ですけど、なんか死刑確定してるらしくて…」
805
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/02(日) 19:55:03 ID:wHoZMaps
「死刑?何しでかしたんだ」
「なんでも、国王に頼まれた仕事に不備でもあったら殺してくれって言ったみたいで」
「バ、バカなのかアイツ…そんな簡単に命投げ捨てて…」
間諜(やはり早めに処分しておいて良かった、雑兵とやらなにかと影響力はあるようだな)
「はぁ、そこ知れないバカですが…でもとても良いやつですよ、義理堅くて、アイツが処刑でもされたらどうすんだろうなぁ」
「知った事ではない、さっさと連れてゆくぞ」
「了解ですっと」
_
__
806
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/02(日) 20:12:54 ID:wHoZMaps
__
_
参謀長「なんの手がかりもねぇだと?!てめぇ何してたんだよ!」
強襲団長「まぁまてや若造、件のジャリの情報は聞いた、奴は妹と行動し、今は何やら遠出の支度をしているらしい」
参謀長「だったら!」
強襲団長「スラムの連中の結束力は固いんだよ、オレらみたいな不成者の警備隊に嗅ぎ回られるって感じられたらそりゃ口も固くなるわな」
参謀長「クソ、もう雑兵も連れてかれちまうのに…」
強襲団長「…いま総出で捜索にあたってる、ジャリ如きに振り回されてたまるか」
参謀長「…ックソ!」
807
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/02(日) 23:44:16 ID:kwiYoz4s
「雑兵出ろ、移動だ」
雑兵「…おう、世話なったのう」
「…達者でな、オメェと飲んだ時は楽しかったぜ」
雑兵「…あぁ、また会おうや」
ガチャン
808
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 01:34:43 ID:1peUaHg6
バタン
雑兵「…やめとけ」
女騎士「…いや」
「き、騎士団長…」
雑兵「味方に刃向けて、いやなんてことはねぇだろ、やめとけ」
女騎士「うるさい、さっさとその拘束を解け」
「…で、出来ません、国王の命令です」
雑兵「…」
女騎士「…」
雑兵「女騎士…すまん、お前の約束守れなんだ、愛してるぞ、お前も、勇者も」
女騎士「…っいや!」
「…」
809
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 01:39:09 ID:B1X54npI
女騎士「何が愛しているだ…!そんな態度も言葉も…一切合切…」
雑兵「お前らから言ってくれたもんな…でもオレは言えなかった、愛してる、でも多分オレはお前らを幸せにできない、だって現に一人に絞れてないんだぞ」
女騎士「それでもいい…私も、勇者も愛してくれるなら…それで…」
「…時間です、申し訳ありませんがこれ以上邪魔だてするのであれば…」チャキ...
女騎士「…すまん、取り乱した」
雑兵「俺が死んでも、忘れないでくれ…あっちでもこっちでも忘れられたら寂しいからさ」
女騎士「絶対忘れない…死んでも…」
810
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 01:42:52 ID:B1X54npI
「…いくぞ、馬車に乗れ」
雑兵「あぁ…」
バチン! ブルルッ
雑兵(すまねぇ、みんな、すまねぇ)
勇者「ッハァ…ハァハァ…雑兵ーー!!」
雑兵「勇者…!女騎士にも言ったけど!愛してるぞ!だけど他にもいい男見つけろ!」
勇者「無理だよ…!雑兵以外になんて…」
雑兵「だったらオレが…!生まれ変わってでもお前のところに、女騎士のところにいってやる!無理なら待ってろ!」
勇者「…一生待ってる!!」
811
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 01:47:49 ID:pwXLll2E
「…城出るぞ、格子の扉閉めろ」
雑兵「あぁ…」 カシャッ
この世界にきて一年と半年くらい、前の世界では出来なかったことも出来るようになった、チートとか異能魔法も一切無かったけど、それでも楽しかった、次の世界はあるのだろうか…無ければどうなるのだろうか。
雑兵「ありもしない未来が浮かんでくらぁ…」
息災に子守を終え、女騎士と勇者との生活、家は城の中になるが、タダだからそれでもいい。
そんなありえない未来が浮かんでくる。
雑兵「もう手遅れだけどな…」
812
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 01:55:10 ID:jFjHKSv2
ビギニング刑場はカルト信者の処刑も終えひと段落していた、龍で咬み殺されるだけではキャパオーバーだったので再び処刑人が登場した事もあったらしい、しかし今はあらかた処刑も終わり閑散としていた。
雑兵「前はもう少しいたのに…」
「カルトの処刑は流れ作業でやってたらしいが、間違えて国王の命令が出てない死刑囚も殺しちまったみたいで…」
雑兵「バカだなぁ」
「仕方ねぇよ、番号も振られてねぇしなぁ、じゃあお前の処刑は明日だ…今日はまぁ休んどけ」
雑兵「おうよ…」
雑兵(休めるかってんだ)
813
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 23:28:44 ID:M1f6fDqM
そして、なんの音沙汰もないまま次の朝を迎えた。
「雑兵…出ろ」
雑兵「…はい」
万に一つの可能性があったとしても、それは全て後の祭りであろう、刑は既に執行される、知らせが来る気配もない、身代わりもいない。
「言い残したことは?」
雑兵「女騎士…いや、騎士団長と勇者に愛してると伝えてくれ、他の人にはこの紙に…」
「しかと受けとりました…主よ、みもとに召された人々に、永遠の安らぎを与え、あなたの光の中で憩わせてください。神よ、深い淵から、あなたに叫び嘆き祈るわたしの声を聞いてください。あなたが悪に目を留められるなら、主よ、だれがあなたの前に立ち得よう」
814
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 23:34:23 ID:hnZD8k5s
グオオオオオ....!
「いつくしみ深い神よ、今この世からあなたのもとにお召しになる雑兵を心に留めてください。洗礼によって神の死に結ばれた者が、その復活にも結ばれることができますように」
グオオオオオオオオ!!!!
雑兵「…っ!」
「雑兵の心に永遠の安らぎのあらんことを…」
処刑龍「オオオオオオおおおっっっっ!!」
教誨師の言葉につられるように、大きく口が開けられる、数多の死刑囚を喰らい尽くした龍、こんなのがまだ生きているとは、そして使われているとは…
815
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 23:40:31 ID:GzKOFo0c
雑兵「…うぅっ″!」
その瞬間、世界が反転し、そして真っ暗になった、下へ落下していく感覚、そして強烈な腐敗臭、喰われたのだ。
奈落への落下は腐敗臭と、そして不気味な暖かさに包まれていた…
雑兵(早く、飲み込んで殺してくれ…)
他の死刑囚もこのような感覚だったのだろうか、巣で貪り食われるのか、それとも落下しながら徐々に食うのか…
口の中で地面についた感覚があった、意外にも底は早く着いた。
雑兵(…何も起きない、何やってんだコイツ)
処刑龍「ッペ」
雑兵「うおおおおおおっ!!」ゴロンゴロン
816
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 23:43:13 ID:GzKOFo0c
雑兵「って、てめぇ!人を不味いみたいに吐き捨てやがってこの!!」
処刑龍『グルル…』
雑兵「…な、なんだよ」
処刑龍『…実際不味いんだよ人の肉って』
雑兵「しゃ、喋った?!」
処刑龍『そりゃ喋るわいな、何千何万と生きておるのだぞ』
雑兵「な、何で…オレのことは食わなかった」
817
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 23:50:14 ID:GzKOFo0c
処刑龍『問いかけの多いやっちゃなぁ、オレ人の心読めるんだけども、お前冤罪で捕まったな?』
雑兵「あ?あ、あぁ…」
処刑龍『そんなもんすぐに分かる、何故人間がわからないのかが理解できないが…心の奥底でな、お前の記憶を少しのぞかせてもらった』
雑兵「…」
処刑龍『可哀想に…どこぞの誰かに冤罪をふっかけられ、子どもを暴行したと思われたのだな…』
雑兵「あぁ…誰かは分からないが…そんなところだ」
処刑龍『全く、最後まで戦いんしゃいホントに…冤罪ってのはね優秀な弁護士によって証明されるのであってだな、痴漢の冤罪被害も諦めない心を持って…」
雑兵「…お前、日本人か?」
処刑龍『ありゃ、ありゃりゃ?分かった?そうそう、今はこんなナリだけど、昔は普通のサラリーマンだったんだど、事故で死んじまったけど』
818
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/04(火) 23:54:54 ID:GzKOFo0c
雑兵「はぁ、あるあるだな、オレはパチ屋出てすぐ脱水症状と熱中症で死んじまった」
処刑龍『あらかわいそう、オレもさぁ事故って死んで異世界転生っても、龍のなりじゃ遊べなくてねぇ』
雑兵「そうだよな…でも過去はすげぇ龍だったんじゃ」
処刑龍『そりゃ昔はね、ん万年も前だと、人の争いよりも龍の争いが絶えなかった、どちらかが死ぬまで行われる争いは、大地を割り山を砕きってなもんで生まれたのがここビギニング刑場、オレが割ったんだど』
雑兵「そ、そうかい…」
819
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/05(水) 00:00:08 ID:C54xsvvk
処刑龍『でも結局俺が勝ち残って崇められてもさ、誰も信仰してくれなくちゃこんな汚い身なりにもなる訳ですよ、腐敗龍なんて呼ばれちゃって、腐ってねぇよ風呂入ってねぇだけだ」
雑兵「どうなでもなるだろ龍ならよ」
処刑龍『いやこれが案外どうにもならないわけ、毎日ひっきりなしに死刑囚食わせやがってよ、休む暇もねえっての土日祝日は休ませろってな』
雑兵(これまたクセのすごい奴に会ったもんだ、今まだで一番癖がすごいかも知れん)
処刑龍『考えてること分かるんだってば、まぁどうでもいいや、で?どうやって帰る?』
雑兵「え?」
処刑龍『帰んないと、ここにいられても困るよ』
雑兵「いや…帰りたいのは山々なんだけど…冤罪って証明してくれる弁護士がいなければ、ほとぼりも冷めてない状況でして…」
820
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/05(水) 00:02:26 ID:C54xsvvk
処刑龍『うわぁ帰りにくい〜でもここにいてもどうすんのさ、誰が無実でしたよ〜って届けてくれるの?』
雑兵「あぁ…そっか…」
処刑龍『まぁ満足するまでいなよ、困るけどすごかってわけじゃないし』
雑兵「ありがとう…」
_
__
821
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/09(日) 23:24:24 ID:4fp84BjE
__
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「雑兵の処刑、異状なく完了しました」
勇者「…あ…」
女騎士「…」
参謀長「分かった、わかった…」
「こちら、雑兵からの伝言です」
『私に関わってくださった全ての方々に深い御礼を、騎士団長、勇者殿、愛しております また会う日まで』
勇者「…これだけなの?」
「はぁ、それしか受け取っていません」
勇者「何か、何か他に言わなかったの?!」
「騎士団長並びに勇者様を愛していると、以上です」
女騎士「そうか…雑兵はもう…」
参謀長「こんな…こんなクソみたいな最期で…結局死んでんじゃねぇかよ…」
女騎士「もう分かった、参謀長、仕事に戻ろう、業務は残っている」
参謀長「騎士団長…!何故泣かないのですか!あんたにゃ人としての…それに雑兵に愛されてたのではないのですか?!」
822
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/09(日) 23:29:19 ID:4fp84BjE
女騎士「今更泣いて何になる、奴の決めた結果だ、参謀長も落ち着いたら業務に戻れ」ガチャ
バタン
騎士団の長たるものとしてのプライド、弱みを他者に見せる事など許されない、自分の仕事が嫌になる、愛した男一人の死にでさえも泣けないとは。
しかし不思議な男であった、あった当初は浮浪者同然の姿だったのに、今では国の兵卒達に希望と言われる存在である、自分を偽らない性格、難儀な性格で苦労するだろうし、実際に苦労していたが、嫌いじゃなかった、むしろ雑兵だったからこそ好きになれた。
女騎士「…ッアゥ…」
部屋を入るまで泣いてはいけない、いけないのだ。
823
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/09(日) 23:30:48 ID:4fp84BjE
勇者「お姉ちゃん…」
女騎士「…どうしたの?」
勇者「部屋入ったらさ…一緒に泣いて良い…?」
女騎士「…うん、いっぱい泣こうね」
家族の前では、せめて素直になろう
824
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/09(日) 23:34:12 ID:4fp84BjE
参謀長「強襲団長…話ってなんだ」
強襲団長「ホイレシュッケのスパイを捕まえた奴が吐いた」
参謀長「吐いたってお前、わざわざそんなことをオレに」
強襲団長「ガキに金掴ませて、殴った後に孤児院に忍び込ませたとの事だ、アイツが処刑されたから吐いたんだ」
参謀長「…ッんのボウフラァ!どこで取り調べやってんだ!!」
強襲団長「警備隊の取調室だ」
参謀長「ぶっ殺す…!!」
825
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/09(日) 23:40:10 ID:4fp84BjE
バァン!
「さ、参謀長!今取り調べの…」
参謀長「…てめぇがホイレシュッケの間諜か?」
間諜「あぁ、そうだが、」
参謀長「ふざけるな貴様、何やったか分かってるよな、おい警備の、剣寄越せ貴様剣」
「い、いけません!ホイレシュッケとは同盟国で…」
参謀長「黙れ、コイツの首をホイレシュッケの国王に送りつけてやる」
間諜「好きにしろ、仕事は恙無く終わった」
参謀長「てめぇ誰の策略でそんなことを…」
間諜「お前らの知ったことでは無いだろ」
参謀長「…ホイレシュッケ…はあ、なるほどなぁ…あのクソ王子からだな?」
間諜「…」
参謀長「騎士団長の周りをうろちょろしている男が気に食わねぇと…どうせそんな腹づもりだろ」
間諜「知るか」
826
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/19(水) 23:49:56 ID:tuEf78UU
間諜「何はともあれ全ては後の祭りだ、オレの任務は完了した、さぁ好きにしろ」
参謀長「っ…!!まぁいい…言質は取れた、邪魔したな」
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827
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/19(水) 23:55:09 ID:iVbmH4FY
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国王「…なんということだ」
参謀長「我々は間諜の掌の上で踊っていたと、つまりはそういう事です」
国王「ホイレシュッケ…あそこの殿下は腐っていると聞くがそこ迄とは…国王は聡明な方であるのに…」
参謀長「…もうこの話しは無かったことにするしか無いかと、隣国と戦争をする理由がまさか一兵卒のいざこざで、しかも我々に落ち度しかありません」
国王「戦争などはせぬ、だがツケは払って貰おう」
参謀長「いかがなされますか?」
国王「ただちにホイレシュッケに行き、国王と対談する、この様な狼藉を働いた息子に対し何かしてやらねば気が済まん」
参謀長「御意、すぐに対談の手配をします」
828
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/01/19(水) 23:58:33 ID:iVbmH4FY
参謀長「ということだ騎士団長、動向をしてもらおう」
女騎士「そんな…そんなしょうもない事で雑兵は…わかった、騎士団を護衛に付けさせよう」
参謀長「勇者様も連れてきて貰えますか?」
女騎士「勇者も?」
参謀長「はい、あの国の殿下にはこの件に関し全ての者に対し弁明してもらう」
女騎士「分かった…連れてゆこう」
829
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/03/01(火) 04:24:42 ID:J.banIVQ
SS避難所
https://jbbs.shitaraba.net/internet/20196/
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