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善子「夜桜と白の堕天使」梨子「リトルデーモンの答え」
106
:
◆32r/eU7DO2
:2018/04/06(金) 17:44:44 ID:TOGHUXFs
今回はここまでです!
107
:
◆32r/eU7DO2
:2018/04/28(土) 11:12:06 ID:PDxtXZdA
騎士「あれ? 」
騎士「何で降りたら誰もいないのよ」
騎士「まったく、携帯渡してて良かった」スッスッ
プルルルル プルルルル
ガチャ
騎士「もしもし、ヨハネ? 」
善子『大変なの!梨子が、梨子がっ!! 』
騎士「な、何!?急に大声出さないでよ!! 」
善子『ご、ごめん』
騎士「びっくりした……」
騎士「で、何があったの? 」
善子『梨子が、崖に落ちてしまって!! 』
108
:
◆32r/eU7DO2
:2018/04/28(土) 11:13:14 ID:PDxtXZdA
騎士「……なるほど、分かった」
騎士「梨子には電話してみた? 」
善子『それが、取らないのよ! 』
騎士「それは怖いわね……」
騎士「今からあなたの所に向かうから、居場所を教えてもらえる? 」
善子『あ、うん』
善子『えっと、特徴になるものは……』
善子『崖を挟んで向こう側に、テントみたいなのが沢山見えるわ』
騎士「なるほど、あの村か……」
109
:
◆32r/eU7DO2
:2018/04/28(土) 11:14:14 ID:PDxtXZdA
騎士「大体方角は分かったから、とりあえずそこに向かってみるわ」
騎士「いい、そこから動いちゃダメよ? 」
善子『でも、梨子が!! 』
騎士「一人で崖下に行くより、二人の方が良いわよ」
騎士「一人でどうやって梨子を助けるつもり?算段はあるの? 」
善子『それは……』
騎士「谷底は行ったこと無いけど、私の方が、あなたよりこの世界に詳しいもの」
騎士「だから、一緒に行くべきよ」
善子『……分かった』
善子『早く来てね? 』
騎士「もちろんよ」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
110
:
◆32r/eU7DO2
:2018/04/28(土) 11:14:57 ID:PDxtXZdA
【星降りの丘:谷底】
???「やぁっっ!! 」ブンッ
謎の人物は刀を振り、壁を崩す事で、ゴーストたちを退けていた。
梨子「あんなに大規模な崩壊を起こせるんだ」ビクビク
梨子「私なんかが出会ったら、すぐに死んでしまいそうだね」
梨子「あの人、さっきからガムシャラに攻撃してるのかな」
???「はぁっっ!! 」ブンッ
111
:
◆32r/eU7DO2
:2018/04/28(土) 11:15:55 ID:PDxtXZdA
梨子「なんだろう……」
???「たぁっっ!! 」ブォン
梨子「ピアノを弾けない人が、デタラメに鍵盤を叩いてるイメージ……? 」
梨子「よく分からないけどとりあえず頑張ってみてる、って感じがする」
梨子「もしかしてあの人も私みたいに、この世界に来て戸惑っている人かもしれない」
梨子「考えすぎかな」
???「はっ!! 」ブンッ
112
:
◆32r/eU7DO2
:2018/04/28(土) 11:16:49 ID:PDxtXZdA
プルルルル!!プルルルル!!
梨子「ちょっ、今はダメ……!! 」
プツッ
梨子「音で存在がバレちゃうから……ごめんね、善子ちゃん」
梨子「マナーモードって無いのかな、これ」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
113
:
◆32r/eU7DO2
:2018/04/28(土) 11:17:24 ID:PDxtXZdA
善子「意外と早かったわね」
騎士『はぁ……はぁ……全速力で、走ってきたからね』
騎士「じゃあさっそく、降りちゃいましょうか」
善子「どうやって降りるの? 」
騎士「言ったでしょ、想像力があれば何でも作れるって」
騎士「はっ」
ボンッ!!
人間が4人は入れるんじゃないかってくらい大きい傘が現れた。
114
:
◆32r/eU7DO2
:2018/04/28(土) 11:18:09 ID:PDxtXZdA
騎士「これに捕まってぷわぷわーお」
善子「ぷわぷわーお? 」
騎士「じゃなかった、ふわふわっと降りていくのよ」
騎士「登りは、後で考えましょうか」
騎士「じゃあ、私に掴まっててね」
善子「振り落とさないでよ……? 」
騎士「そんなことしないわよ」
善子「最初に優しくしてくれた人がラスボス、みたいなゲーム何個もやってきたんだからね? 」
善子「あなたがラスボスの可能性も───」
騎士「ふふ、私がラスボスなら、出会った瞬間にあなたを刺しているはずよ」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
115
:
◆32r/eU7DO2
:2018/04/28(土) 11:19:51 ID:PDxtXZdA
【星降りの丘:谷底】
騎士「よいしょ、っと」スタッ
善子「ほっ」ピョンッ
善子「随分降りたわね」
騎士「ね」
騎士「初めて来たけど……どこを見ても土しかないわね」
善子「おーい、リリーッ!! 」
しーん
善子「近くにいないのかな」
騎士「電話かけても、やっぱり取らないわ」プルルル
116
:
◆32r/eU7DO2
:2018/04/28(土) 11:21:07 ID:PDxtXZdA
善子「梨子は右と左、どっちに行ったのかな……」
騎士「んー、どっちかしらね」
善子「左は瓦礫まみれだし、おそらく右ね」
善子「梨子があんなに危険な道を進むとは思えない」
善子「というか、あんな危ない道進んで欲しくないから」
騎士「私は瓦礫の方かなぁって思うんだけど」
善子「どうして? 」
騎士「JKは、冒険したいお年頃だから♡」ニコッ
善子「なによそれ」ムスッ
騎士「冗談よ、真顔やめてっ」ペチッ
騎士「あ、ほっぺ柔らかーい」プニプニ
善子「ひゃやく行くわひょ!! 」ムニムニ
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
117
:
◆32r/eU7DO2
:2018/04/28(土) 11:21:45 ID:PDxtXZdA
騎士「歩きながらで悪いけれど、色々質問してもいい? 」
善子「別にいいけど、なに? 」
騎士「梨子とはどういう関係なの、お友達? 」
善子「友達以上恋人未満……かな」
騎士「へぇ」
善子「凄く仲良いし、毎日のようにLINEするし、会ったらイチャイチャするし」
善子「もう付き合ってるのも同然かなと思って、告白してみたの」
騎士「どんな感じ? 」
善子「えー」コホン
118
:
◆32r/eU7DO2
:2018/04/28(土) 11:22:37 ID:PDxtXZdA
ヨハネ「くっくっく、リリー、私のリトルデーモンにならない? 」
善子「えっ、リトルデーモンだなんてよく分かんないよぉ(><)」
ヨハネ「貴方の喉から奏でる旋律は、私の魂への鎮魂歌」
ヨハネ「貴方なら、まだ見ぬシャングリラへ連れて行ってくれると、冥界から御告があったのです!! 」
ヨハネ「リトルデーモンの中でも、リリーは特別」
ヨハネ「そう、俗に言う恋人……!! 」
善子「わたし、そういうのはちょっと……(--;)」
ヨハネ「えぇっ」
119
:
◆32r/eU7DO2
:2018/04/28(土) 11:23:18 ID:PDxtXZdA
善子「と、いうわけ」
善子「詳しいことは省いたけどね」
騎士「なるほどね、とりあえず一人芝居お疲れ様」
善子「ありがと」
120
:
◆32r/eU7DO2
:2018/04/28(土) 11:24:07 ID:PDxtXZdA
善子「あのね」
善子「梨子と楽しく絡みたいはずなのに、どうしても楽しく話す自信が無くて」
善子「それでヨハネに頼っちゃうところがあるの」
善子「中二病を演じていれば、恥ずかしいセリフでも堂々と言えるし」
善子「別人格ってほどじゃないけどさ、梨子と二人きりになると、ついやっちゃうのよね」
騎士「んー、そっか……」
-----------------------------
善子『私は、天使には、なれないの』
-----------------------------
騎士「天使にはなれない、か……」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
121
:
◆32r/eU7DO2
:2018/04/28(土) 11:26:30 ID:PDxtXZdA
今回はここまでです。
更新頻度が遅くなってしまってすみません、絶対にエタらないので、のんびり待っていただけると嬉しいです。
122
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/28(土) 11:54:26 ID:ermvZixE
乙
123
:
◆32r/eU7DO2
:2018/04/28(土) 12:47:31 ID:PDxtXZdA
乙コメありがとうございます!
いつも返答出来ていないので、この機会に感謝を伝えたいです。
124
:
◆32r/eU7DO2
:2018/05/30(水) 22:19:52 ID:RJ2DlfDs
時々ゴーストが現れるけど、騎士と私の二人がかりなら、相手にするのは容易いものだった。
騎士が剣を振るとゴーストは形が崩れ、モワッと空中に漂うだけになる。
しばらくするとまた意識が戻ったみたいに動き出すんだけど、モワッと漂ってる時なら私の武器で吸い込むことが出来る。
掃除機に吸い込んでしまえばこっちのもの。さっきから何匹ぐらい吸いこんだかな、多分七匹くらいかな?
掃除機の中には、さっきまでゴーストだった、白い煙が充満していた。
125
:
◆32r/eU7DO2
:2018/05/30(水) 22:20:56 ID:RJ2DlfDs
善子「やっと端まで来たわね」
善子「でも梨子はいなかったかぁ……」
騎士「うーん……」
騎士「梨子、やっぱり逆の道なんじゃない? 」
善子「いーや、ここよ」
善子「梨子なら、ここのはず」
善子「なんで見つけられなかったんだろう」
騎士「ねぇ、あれ見て」
善子「なに? 」
騎士「あっちの方に階段があるんだけど」
善子「階段?あっ、ほんとだ」
騎士「あの階段から上に登ってったんじゃない? 」
善子「そうね、その可能性が高そう」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
126
:
◆32r/eU7DO2
:2018/05/30(水) 22:22:01 ID:RJ2DlfDs
階段を上ると、沢山のテントがある場所に出た。
善子「さっき向こう側から見てたけど、この場所はいったい何なの……? 」
騎士「んーっと、そうね、強いて言うなら……」
騎士「想像力の無い人が集まる村、かな」
騎士「私もここに来るのは初めてなんだけど、前から噂は聞いてたのよ」
騎士「想像力の欠けた人達が集まってる村がある、ってね」
騎士「その村に立派な家は建ってなくて、村民全員がテント暮らしらしいのよ」
善子「なるほど、その情報だと、この村が噂の村ね」
127
:
◆32r/eU7DO2
:2018/05/30(水) 22:23:09 ID:RJ2DlfDs
善子「すみませーん、誰かいますかー!? 」
遠くの方から、ボロボロの布を身にまとった老人がやってきた。
??「あい、何のようですかな」
騎士「あなた、誰? 」
村長「私はこの村の村長です」
善子「村長さんか」
村長「本当はこんな責任のある役職にはつきたくなかったんですがね、えぇ」
村長「村長とは言っても、それらしい動きをするのは葬式の時だけでしてね」
村長「私が育てている花を手向けてやるくらいです、えぇ」
騎士 (へぇ、人が死んだりするんだ……初めて知ったわね)
128
:
◆32r/eU7DO2
:2018/05/30(水) 22:25:03 ID:RJ2DlfDs
村長「さて、あなた方は一体何の御用ですかな? 」
善子「あー、人を探してて」
善子「あずき色の髪で、学校の制服着てる子、見かけなかった? 」
騎士「それと、光に包まれた明るい空間とか見たことない? 」
村長「光に包まれた空間は知りませんが」
村長「学校の制服を着た人なら、さっきこの村に来ておりましたぞ」
善子「えっ、ホントに!? 」
騎士「この村にまだいるの? 」
村長「えぇ、あっちの赤色のテントで休んでおります」
善子「あっちね! 」タッタッタッ
騎士「ふふ、ヨハネは梨子のことが本当に大好きなのね」
129
:
◆32r/eU7DO2
:2018/05/30(水) 22:25:43 ID:RJ2DlfDs
騎士「私、単純にこの村に興味があるから、少し回らせてもらうわね」
村長「何も無い村ですよ、何も」
騎士「へぇ、そう」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
130
:
◆32r/eU7DO2
:2018/05/30(水) 22:26:13 ID:RJ2DlfDs
【赤いテント:食堂】
善子「梨子!! 」バッ
テントの入口の布を勢いよく開ける。
村の中でもひときわ大きいこのテントは食堂となっていて、村の人々が食事をとっていた。
梨子「善子ちゃん!! 」
ちびっ子A「わあっ、また誰か来た!! 」
空間のすみっこの方で、梨子は大勢の子供たちと共に居た。
131
:
◆32r/eU7DO2
:2018/05/30(水) 22:26:50 ID:RJ2DlfDs
善子「梨子、怪我はない? 」
梨子「うん、怪我無いよ」
ちびっ子B「お姉ちゃんの友達? 」
梨子「あ、うん」
善子「この子達は? 」
梨子「村の子供たちだよ」
梨子「村の外から来た私が珍しいみたいで、さっき質問攻めにあってたところ」
善子「そうなんだ」
132
:
◆32r/eU7DO2
:2018/05/30(水) 22:27:47 ID:RJ2DlfDs
善子「あっ、そういえば崖に落ちたあとどうやってここまで来たの? 」
善子「ゴースト達たくさん居たし、1人で乗り切れる難易度じゃなかったと思うけれど」
梨子「あぁ、それならね」
梨子「なんだか凄い強い人が居て、その人の後ろをこっそり付けてったの」
善子「へぇ、私達以外に人が居たんだ」
梨子「その人、辺り一面ボロボロになるくらい剣を振り回してて、私死んじゃうかと思ったよ」
善子「なるほど……」
133
:
◆32r/eU7DO2
:2018/05/30(水) 22:28:27 ID:RJ2DlfDs
ちびっ子A「黒いお姉ちゃんは想像力豊かなの? 」
善子「へ? 」
善子「ま、まぁ想像力はある方だと思うわ! 」
ちびっ子A「じゃあ、気をつけてね」
善子「……!? 」
梨子「この子達、私にも同じ質問してきて、今みたいなことを」
善子「ねぇ、気をつけてねっていうのはどういうことかな? 」
梨子「うん、それ気になる」
ちびっ子A「んー、あんまり大声で話せないから耳貸して」
善子「……」スッ
134
:
◆32r/eU7DO2
:2018/05/30(水) 22:29:23 ID:RJ2DlfDs
ちびっ子A「想像力強いと、殺されちゃうよ」
善子「!? 」ドタドタドタッ
梨子「えっ」ゾワッ
ちびっ子A「あんまり物を生み出しちゃダメだからね……! 」
ちびっ子B「大人には気をつけて……! 」
ちびっ子C「私達子供しか自由に発想するのは許されていないの……」
善子「なんかヤバい村に来ちゃったわね」
梨子「騎士さん連れて、早く出よ? 」
善子「そうね、こんな危ないところ居たくない」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
135
:
◆32r/eU7DO2
:2018/05/30(水) 22:29:57 ID:RJ2DlfDs
【緑のテント:集会所】
騎士「こんにちはー」
村人A「あぁ死にてぇなぁ……」
村人B「酒作れたらもっと楽になれるのによ」
村人C「なーんにも動く気がしない」
村人A「元気出さなきゃってのは分かるんだけどなぁ」
村人C「元気出すための元気が無いんだよな〜」
村人A「分かるわぁ」
136
:
◆32r/eU7DO2
:2018/05/30(水) 22:30:48 ID:RJ2DlfDs
騎士「あのー、すみませーん」
村人B「ん、この村の者じゃねぇな」
騎士「えぇ、そうよ」
騎士「向こうの谷底からやってきたんだけど、テントが沢山あって気になるなぁと思ってね」
村人A「谷底から?そりゃ辛かったろうに」
村人B「あんな谷、行くのも億劫だよ」
137
:
◆32r/eU7DO2
:2018/05/30(水) 22:31:26 ID:RJ2DlfDs
騎士「皆さんは今、何をしていたの? 」
村人B「何もしてないよ」
村人A「俺たち生きてるけど死んでるようなもんだからなぁ」
村人C「やる気は出ないし、疲れたし、辛い現実から目を逸らすだけで精一杯さ」
騎士「あー、そう……」
騎士「何か私に手助け出来る事はあるかしら? 」
138
:
◆32r/eU7DO2
:2018/05/30(水) 22:32:16 ID:RJ2DlfDs
村人A「んーそうだなぁ、何でもいいから俺を楽にして欲しい」
騎士「お酒を飲んで、辛いことを忘れるのはどうかしら? 」
騎士「すぅ……」ググッ
騎士「はっ! 」
ボワンッ!!
大きめのジョッキに入ったビールが現れた。
139
:
◆32r/eU7DO2
:2018/05/30(水) 22:33:15 ID:RJ2DlfDs
村人A「!! 」
村人B「なんだ……あんた想像出来る人か」
村人C「死ねよ」
集会所にいる大勢の村人達が、一斉に騎士を睨む。
騎士「なによ、あなた達」キッ
村人A「お前らみたいなのがいるから、俺たちが報われねぇんだ」
村人A「何でもかんでもアイデア思いつきやがるから、何も思いつかない俺たちがどんどん惨めになる」
140
:
◆32r/eU7DO2
:2018/05/30(水) 22:33:50 ID:RJ2DlfDs
村人B「俺達のこと助けようともせず、のうのうと暮らしやがって」
村人B「想像力がないっていうだけで、どれだけ苦しんで来たのか、お前に分かるか? 」
騎士「知らないわよ、あなた達の事情なんて」
村人C「俺たちはそういう奴を見かけたら、腹いせにボコボコにする」
村人C「恨みとか、イライラした気分が晴れるんだよ」
村人C「やる気は無いけど、殺る気はある……ってな」
141
:
◆32r/eU7DO2
:2018/05/30(水) 22:34:34 ID:RJ2DlfDs
村人A「悪いけど、俺たちのストレス発散を手伝ってくれよ」
騎士「嫌よ」
村人B「集会所にはざっと50人くらい居るんだぞ、抵抗しても無駄だよ」
騎士「50人……!? 」
騎士 (さて……困ったわね、ヨハネと梨子を呼ぶのは危険すぎる)
騎士 (1vs50で勝てそうもないし…)
騎士 (どうしましょうか……)
142
:
◆32r/eU7DO2
:2018/05/30(水) 22:35:56 ID:RJ2DlfDs
今回はここまでです、更新遅くなってすみません。
143
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/30(水) 22:42:58 ID:92yUeAIs
乙
よしりこはいいね
144
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/05/31(木) 22:41:10 ID:rUk1QL1g
乙
続き待ってるで
145
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/09(月) 20:37:25 ID:QSsHmsh6
絶対エタらないので、気長に待ってくださると嬉しいです!
146
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/07/10(火) 00:55:07 ID:nKp6uYSo
気長に待つから焦らなくてもいいよ
147
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 21:59:37 ID:VN8d/I9c
村人A「おらぁ! 」
村人達は武器も持たず、素手による攻撃を繰り出す。
騎士 (剣で受けちゃダメ、少し間違えば殺してしまう……!! )
騎士「くっ……」パシッ
村人B「後ろがガラ空きだ! 」ゲシッ
騎士「っ!! 」
背中を蹴られ、騎士は膝をついた。
騎士「……いいわ、体術勝負といこうじゃない」
148
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 22:00:32 ID:VN8d/I9c
騎士 (50人と戦うのは分が悪すぎる、まずは数を減らさないと)
騎士 (なら、縄を創造して一気に縛りあげるっ!! )
騎士「はっ!! 」ボンッ
長い長い縄が現れた。
村人C「また創った!! 」
149
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 22:01:27 ID:VN8d/I9c
村人A「想像力あって羨ましい限りだよ、ほんと」
村人A「何かを生み出せないのなら、この世界では価値が無いんだ……」
騎士「そんなこと無いわ、誰にだって価値が…」
村人A「腹いせに人を殴るような俺たちにもか!? 」
騎士「っ……」
騎士「あ、あるわよ!! 」
騎士「私がまだ見つけられてないだけで、あなた達にも良いところはあるはずよ……!! 」
村人B「はっ、腑抜けたこと抜かしやがって」
150
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 22:01:58 ID:VN8d/I9c
村人B「創造力のあるやつは、どうしてこうもポジティブなんだ」
騎士「それは貴方達の思い込みよ」
騎士「私だって根っこから明るいわけじゃないわ」
騎士「辛いことに耐えられないから、辛くならないように今を生きてるのよ……!! 」
騎士「貴方達も明るい未来を、きっと想像出来るはずよ!! 」ビュンッ
騎士は間合いを詰め、村人Bの腹に打撃を与えた。
騎士「はぁっ!! 」
村人B「く゛あ゛っ゛!! 」
村人B「がはっ!げほっげほっ!! 」
151
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 22:02:44 ID:VN8d/I9c
村人B「手ぇ掴んだぞ!! 早く鎧を外せ!! 」ガシッ
騎士「!! 」グイグイ
村人C「はーい残念、お疲れ様でした」カポッ
村人B「……やれ!! 」
村人A「ずっと暗闇にいると、光が眩しくて目が痛いんだ……」ガンッ
村人Bが注意を惹き、村人Cが頭部の装備を外す。そして、背後からAが殴る。数を活かした戦法は、騎士との力の差を埋めた。
騎士「きゃっ!! 」
騎士「……」クラッ
村人A「あっけない、頭を殴れば一撃か」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
152
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 22:03:18 ID:VN8d/I9c
一方、よしりこの二人は……
善子「"想像力強いと殺される"ってどういうことよ!? 」タッタッタッ
梨子「はぁ……はぁ……分からない!! 」タッタッタッ
梨子「だけど、ここに居たら危ないって事は分かる!! 」タッタッタッ
善子「はぁ……そうね、早く……はぁ……騎士連れて出ましょう!! 」タッタッタッ
善子「そうだ、携帯!! 」
善子「はぁ……はぁ……お願い、電話出て!! 」プルルル
153
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 22:03:53 ID:VN8d/I9c
プルルル……プルルル……
ピッ
善子「!! 」
善子「もしもし、あんた今どこに…」
村人A『もしもしぃ』
善子「誰、あんた……!! 」
154
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 22:04:25 ID:VN8d/I9c
村人A『騎士さんの仲間かな? 』
村人A『早く来ないと、騎士さん殺しちゃうよ〜』
梨子「えっ……」
『離しなさいっ!! 』
善子「今の声……!! 」
善子「今すぐ向かうから、騎士に手を出さないで!! 」
村人A『はーい、じゃ、緑のテントまでおいで』
善子「あんた達、覚悟しなさいよ……」
善子「……」ピッ
155
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 22:05:02 ID:VN8d/I9c
善子「……ボス戦ね」
善子「ゲームの世界なんだもの、敵は倒したって構わないわよね……? 」
梨子「敵を倒さないと、騎士さんが危ないよ」
善子「そうよね……」
善子「あの騎士が勝てなかった相手に、私達は勝てるのかしら」
梨子「私達、戦闘は苦手だし……」
善子「……」
善子「向かいながら、作戦を考えましょう」
梨子「うん」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
156
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 22:05:38 ID:VN8d/I9c
【緑のテント:集会場】
善子「さぁ、騎士を離しなさい! 」
騎士「ヨハネ、梨子……!! 」
村人A「"離す"なんて言ってないんだけど」
善子「これを見ても同じ事が言えるかしら」スチャッ
村人B「銃……!! 」
157
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 22:06:25 ID:VN8d/I9c
梨子「銃なら力は要らない、私達でもあなた達に勝てるはず……!! 」スチャッ
村人C「残念だけど、脅しにはならないよ」
善子「来ないで、撃つわよ」
騎士「撃たないで!! 」
善子「? 」
騎士「その人達だって、生きてる!!命がある!! 」
善子「……!! 」
善子(そっか……私にとってはただのゲームキャラでも、騎士にとっては生きた人間なんだ)
158
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 22:07:11 ID:VN8d/I9c
村人A「撃ってもいいぞ、俺達は撃たれてもかまわない」
梨子「どうしてそんな強気でいられるの……? 」ガタガタ
村人A「俺達は"無敵の人"だからだよ」
村人A「職も無い、人との繋がりも無い、法なんて怖くない」
村人A「死も怖くない」
村人A「死んだ方が楽になれるとさえ思ってる」
村人A「でも自分で自分を手にかけるのは出来ないな、怖いし」
村人A「周りへの恨みを晴らして俺が死刑になるなら、それでも良い」
善子「なんてやつ……!! 」
159
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 22:08:09 ID:VN8d/I9c
善子「私達に情が無かったらあんたなんてすぐ倒すのに……!! 」
村人A「情なんかじゃないだろう」
村人A「俺を殺すのが可愛そうなんじゃなくて、人を殺すのが怖いだけだろ? 」
善子「こ、怖い? 」ドクン
善子「こ、怖くなんて……怖くなんて……!! 」ドクンドクン
160
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 22:08:55 ID:VN8d/I9c
ヨハネ「怖くなんてないわよ、大事な人を守る為なら、どんな罪でも背負うわ」
.
161
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 22:10:41 ID:VN8d/I9c
騎士「……!? 」
梨子「……善子ちゃん? 」
ヨハネ「早く騎士を離しなさい、死なない程度に撃つわよ」
村人A「なんだなんだ、急につよ」
パァン!!
村人A「危ねぇ!足に当たるとこだったぞ!! 」
ヨハネ「今のは威嚇よ、次は本当に撃つ」
162
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 22:12:15 ID:VN8d/I9c
梨子「善子ちゃん、急にどうしたの!? 」
梨子「なんだか怖いよ……」
ヨハネ「私が、怖い……? 」
ヨハネ「……ごめん」
善子「……」
善子「……? 」
善子「え、何」
善子「何この空気、何か私ヤバいことやったっけ? 」
梨子「覚えてないの? 」
善子「一瞬立ちくらみしたなぁ……ってしか」
163
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 22:12:45 ID:VN8d/I9c
村人A「今だ、やれぇぇっ!! 」
村人C「オラッ!! 」ガンッ
善子「がっ」
梨子「善子ちゃん!! 」
村人C「はい、人質二人目〜」
村人B「大人しく捕まった方がいいよ」
梨子「い、いや……!! 」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
164
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 22:13:24 ID:VN8d/I9c
村人A「全員確保〜〜」
善子「……」キッ
騎士「ごめん、私が捕まりさえしなければ……」
梨子「元はと言えば私がはぐれたからです……ごめんなさい……」
善子「身体を縛られたって、創造出来るわ! 」
騎士「ヨハネ、やめて! 」
騎士「下手に武器を増やすと、彼らに取られてしまうわ」
騎士「……現に、私たちの武器も取られてる」
善子「くっ……じゃあどうすれば……!! 」
165
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 22:16:25 ID:VN8d/I9c
お待たせしてすみません、今回はここまでです!
気長に待つと言って下さって、ありがとうございます!!
早く続きを書きたいので、ペースは今より早くしたいなと思ってます!
166
:
◆32r/eU7DO2
:2018/07/13(金) 22:17:49 ID:VN8d/I9c
すみません、age忘れです
167
:
◆32r/eU7DO2
:2018/08/27(月) 02:41:38 ID:kg6Vu5Oc
騎士は「耳を貸して」と、顎で私に合図した。
騎士 ( 小型のナイフを私が造ったわ、これで手首のロープを切るのよ )ボソッ
善子 ( 分かった、アンタのロープ切るからナイフ貸して )
騎士 ( 私が動けるようになったら、このテントを切り崩す )
騎士 ( あいつらが怯んでいるうちに、あなた達のロープも切って逃げましょう )
善子 ( 了解!! )
騎士の手首に巻き付くロープをナイフで切り始めた。手首のスナップを効かせ、一本ずつロープの繊維を裂く。
168
:
◆32r/eU7DO2
:2018/08/27(月) 02:42:44 ID:kg6Vu5Oc
村人A「この剣、切れ味が良さそうだねぇ」カチャッ
村人A「その綺麗な顔を、身体から切り離してあげよう」
村人B「これは……掃除機? 」
村人B「何でこんなもん持ってんだよ」
村人C「人を殺す覚悟が無いなら、こんな物騒な武器持たない方が良いよ」
騎士「……人を守るための武器よ」
村人A「武器が無いと誰も守れないね、可愛そう」スタスタ
剣を床に引きずる音が響く。
騎士 ( ちょっと、まだ!? )
善子 ( まだ!! )
169
:
◆32r/eU7DO2
:2018/08/27(月) 02:43:38 ID:kg6Vu5Oc
音は徐々に近づき、鼓動が早まるのを促す。
騎士 ( 早く!! )
善子 ( やっと半分!! )
村人A「遊んでくれてありがとよ」スッ
村人A「じゃあな」
剣を振りかざしたその瞬間、善子の脳裏にある作戦が思い浮かんだ。
善子 ( あいつが持ってる私の掃除機……ゴーストを沢山吸い込んであったはず )
善子 ( あれを壊せばこの場はパニックに……!! )
170
:
◆32r/eU7DO2
:2018/08/27(月) 02:44:34 ID:kg6Vu5Oc
ナイフを持つ反対の手に、銃を創る善子。
パァン!!
後ろ手で銃を構え、善子は村人Bが持っている掃除機を撃った。
掃除機は割れた。
村人B「うおっ!! 」
騎士「えっ? 」
梨子「凄い命中力……!! 」
掃除機の中から、おびただしい数のゴーストが溢れ出した。
171
:
◆32r/eU7DO2
:2018/08/27(月) 02:45:25 ID:kg6Vu5Oc
村人B「ゴ、ゴーストだ!! 」
村人A「お前ら、今助けるぞ!! 」タッタッタッ
騎士「助かった……」
騎士「そうだ、今のうちに早く切って!! 」
善子「分かった!! 」
村人B「わっ、やめ」
村人C「何で俺のとこ来るん」
去り際のセリフすら最後まで言わせてもらえない、ゴーストは無慈悲だった。
まるで死神のよう、寿命が尽きたら天へと連れていくみたいに。
172
:
◆32r/eU7DO2
:2018/08/27(月) 02:46:06 ID:kg6Vu5Oc
騎士「早く解いて!! 」
騎士「あの人達を助けないと!! 」
善子「もう少しで切れる!! 」
騎士「動けたら、動けたらあの人達を助けられるのに!! 」
梨子「騎士さん……」
騎士「目の前にいるのに助けられないなんて……嫌よ!! 」
善子「暴れないで!切れないでしょ!! 」
およそ三十秒、その場に居た村人達は全員ゴーストに包まれた。
ゴースト達は、ボロボロの天井、その隙間から天へと昇る。
数匹のゴーストをこの場に残して。
173
:
◆32r/eU7DO2
:2018/08/27(月) 02:47:17 ID:kg6Vu5Oc
さっきよりも静かになった。
善子「もう少し、もう少し……!! 」
騎士「早く逃げないと、わたし達もヤバいわよ……!! 」
梨子「二人とも、ゴーストがもうこっちに向かって来てる!! 」
善子「切れた!! 」
騎士 ( 武器を想像する時間が無いかっ……!! )
騎士 ( 効果あるか分かんないけど、とりあえずマスクだけでも!! )
174
:
◆32r/eU7DO2
:2018/08/27(月) 02:48:15 ID:kg6Vu5Oc
騎士「みんなとりあえずマスク付けて!! 」ダッダッダッ
騎士は小さな仮面を三つ作り、自身に装着し、善子達二人の顔に当てる。
その時、「危ない! 」という声が響いた。その声は私達三人の声では無い。
騎士「あなた、誰……? 」
斬撃が飛び、天井は大きく崩れ、ゴースト達に覆いかぶさった。
梨子「あっ、崖下で会った人……!! 」
背後から現れたのは、長い髪を揺らし、黒いセーラー服を着た女だった。
右手に刀、左手に鞘を持った立ち姿はどこか大和撫子のような雰囲気を醸し出していた。
女は黒い仮面を被っており、顔はよく見えない。
175
:
◆32r/eU7DO2
:2018/08/27(月) 02:48:51 ID:kg6Vu5Oc
???「……」
???「ふむ、幽霊とは言っても障害物はすり抜けられない、と」
???「気体では無く、液体のような感じなのでしょうか」
善子 ( ん?この声、どこかで )
???「あっ」
私達の姿を見ると、一目散に立ち去ろうとする。
善子「ちょっとまっ」
騎士「ちょっと待って!! 」
梨子「騎士さん……? 」
176
:
◆32r/eU7DO2
:2018/08/27(月) 02:49:23 ID:kg6Vu5Oc
騎士「あなた、仮面を外してもらえる? 」
???「無理です」
善子「声高っ! 」
善子「絶対裏声で喋ってるでしょ」
騎士「私と勝負して、私が勝ったら仮面を外す……っていうのはどうかしら? 」
???「……分かりました」
???「あなた、断ってもしつこく頼んできそうですし」
騎士「分かってるじゃない」
177
:
◆32r/eU7DO2
:2018/08/27(月) 02:50:22 ID:kg6Vu5Oc
善子「急になんなの? 」
騎士「彼女、姫かもしれない」
善子「えぇ!? 」
騎士「何となくだけど、雰囲気とか」
騎士「彼女が剣を振る瞬間を見てたんだけど、剣道のフォームをしていた」
騎士「私の探している姫も、剣道の心得があるの」
梨子「じゃああの人は、お姫様!? 」
善子「でも、私が最初に出会った時と服装が違うわ」
善子「もっと着物みたいな服装だった」
騎士「悩む必要は無いわ、私が勝負に勝ってあの仮面を外させればいい」
???「……」
騎士「ここにはゴーストもいる事だし、移動しましょうか」
???「えぇ」
178
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:11:58 ID:PyP04hKo
【草原】
"創造力落ちの村"から約500m、月明かりに照らされた草原で戦いを始める。
星空の広がるこの場所は、夜景が綺麗なデートスポットとして噂が広がっている。
だが、近くにある"創造力落ちの村"の悪評で人は寄り付かない。
騎士「ヨハネと梨子は手を出さないで」
騎士「そこの岩陰で待っててちょうだい」
善子「分かった」
梨子「足でまといになっちゃうもんね」
善子「……えぇ、そうね」
善子「あの黒セーラーの女、崖下で会ったんだっけ」
梨子「うん、何だか凄い力任せに周りを攻撃してたよ」
善子「力任せか……」
179
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:14:48 ID:PyP04hKo
善子「あの人、私が最初にあった姫とは、多分違う気がする」
善子「あいつを仮に姫だとして、騎士と戦うとは思えないのよね」
梨子「仮姫さんには仮姫さんの事象があって、騎士さんと戦ってるんじゃない? 」
善子「んー」
-----------------------------
姫「あの穴の中から、声が聞こえるんですよ」
姫「私の、とても大切な人です」
姫「その人をここに連れてきてくれませんか? 」
-----------------------------
善子「やっぱり違う気がする」
180
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:15:58 ID:PyP04hKo
騎士「さて、勝敗の決め方はどうしましょうか」
仮姫「動けなくなったら、でどうでしょう」
騎士「分かりやすくて良いわね、そのルールでいきましょうか」
騎士「今からこのコインを宙に投げる」
騎士「このコインが地面に落ちた時、戦闘開始よ」
仮姫「分かりました」
ピンッ!
騎士 ( 勝負を挑んだとはいえ、こっちは手負い )
騎士 ( 短期決戦でいくわよ! )
騎士 ( 一撃で決める! )
181
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:17:26 ID:PyP04hKo
トサッ
コインが地に着いた。
騎士「はぁぁぁぁぁぁぁ!! 」タッタッタッ
仮姫「はっ! 」
仮姫の一振りは大きな衝撃波を飛ばした。
騎士「危ないっ!! 」バッ
梨子「きゃあっ! 」
善子「凄い風圧……!! 」
善子「梨子、もっと遠くに行きましょう」
梨子「うん! 」
騎士「こんなの、食らったら一発で負けじゃない……! 」
182
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:18:33 ID:PyP04hKo
仮姫「すみません、加減がまだ上手くいかなくて」
騎士「あら、加減なんて必要無いわよ」
騎士「全部避けるから、大丈夫」
騎士 ( とは言ったものの……正直厳しいわね )
仮姫「遠距離では避けられてしまいますね……」タッタッタッ
騎士「来たっ! 」
騎士 ( あれ、案外…… )
仮姫「だぁっ!! 」ブンッ
仮姫 ( しゃがみで避けられた!? )
騎士「」ニヤッ
騎士 ( まずは腹に一発! )ドッ
仮姫「がはっ! 」
183
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:19:06 ID:PyP04hKo
騎士 ( 蹴りでその仮面を剥がす! )ブンッ
仮姫「はっ」グルン
バッバッバッ!
後方へバク転を三回、騎士の蹴りを避けた。
騎士 ( 思ったより攻撃の動作が大きかった )
騎士 ( 私の動体視力なら、充分に動きを見てから避けられる! )
184
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:19:50 ID:PyP04hKo
仮姫 「ひとつ聞きたいんですが」
騎士「何」
仮姫「このゲームって、人が死んだりしますか? 」
騎士「ゲーム? 」
仮姫 ( そうか、ゲームキャラに"自分はゲームキャラだ"なんていう自覚はありませんね )
仮姫「すみません、聞き方が悪かったですね」
仮姫「死んだらどうなりますか? 」
仮姫「私が力のあまりに貴方の命を奪ってしまったら……どうなりますか? 」
仮姫「どこか復活ポイントでも? 」
騎士「復活ポイントなんて無いわ」
仮姫「! 」
185
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:20:26 ID:PyP04hKo
騎士「死んだら、眠り込んだようにその場に倒れるだけ」
騎士「肉体が腐る事も無いから、ずっとその場に身体は残る」
騎士「遺体を気持ち悪く思ったセントラルの住人達は、それを崖に投げ捨てて葬っているわ」
仮姫「あそこの崖ですか? 」
騎士「そうよ、テント村の近くの」
仮姫「私そこに居ましたけど、遺体なんて見つかりませんでした」
騎士「私は遠くの方に三体」
騎士 ( 空気が重くなるから、ヨハネには言ってないけどね…… )
仮姫「他の遺体は? 」
騎士「さぁね、崖下のゴースト達が空に連れてったんじゃないかしら」
仮姫「……なるほど」
186
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:21:17 ID:PyP04hKo
騎士「なんでこんなこと聞いたの? 」
仮姫「力加減が出来ないので、間違って貴方の命を奪ってしまったら……と思って」
騎士「はっ、余計なお世話ね」ポイッ
ボワンッ!
騎士は煙幕弾を投げた。
仮姫「ゴホッゴホッ、いつの間にこんなものを!! 」
騎士「喋ってる時に創ったのよ! 」
187
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:22:00 ID:PyP04hKo
騎士「いくら攻撃力があっても、見えなくては意味が無いでしょう!? 」
ブンッ!
仮姫の一振りで煙は晴れてしまう。
騎士「!? 」
仮姫「こんな小細工、効きません」
騎士「そんな細身なのに、どんな馬鹿力持ってんのよ」
仮姫「お覚悟! 」ダッ
ガキィン!ガキィン!
仮姫は目も止まらぬ早さで剣を打ち付ける。
188
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:22:52 ID:PyP04hKo
騎士「速すぎる……!! 」
仮姫「貴方が受けきれなくなるまで、攻撃の手は休めません! 」ブンッ
騎士 ( くっ……そもそもの身体能力に差がありすぎる! )
騎士 ( 私が攻撃を弾く時には、もう次の攻撃が始まっている! )
キィン!
仮姫「遅いッ!! 」
騎士の胴に一撃入る。
騎士「きゃあああああっ!! 」ビュオオオオ
ドサッ
仮姫「良かった、死んでない」
189
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:24:08 ID:PyP04hKo
騎士「っ……」ガクガク
騎士「はぁっ、はぁっ、一撃でこんな……」
騎士「そうか、村でのダメージがまだ……」クラッ
騎士「まだ、倒れちゃ、ダメ」フラフラ
騎士「目の前に、いるんだもの……」フラッ
バタッ
騎士は倒れた。
善子「騎士!! 」ダッ
梨子「騎士さん! 」ダッ
190
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:24:49 ID:PyP04hKo
仮姫「じゃあ私はこれで……」スタスタ
善子 ( 姫である可能性があるなら、逃がすわけには……!! )
善子「梨子、騎士さんお願い! 」ダッダッダッ
梨子「えっ」
善子「姫待てぇぇぇぇぇぇぇぇ!! 」
仮姫「げっ」
ブンッ!
仮姫は善子へ警告するかのように、二人の間に線を引いた。
善子「きゃっ」ドテッ
仮姫「来ないでください」
善子 ( こんな力、絶対勝てない……!! )ガタガタ
191
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:25:27 ID:PyP04hKo
仮姫「……あっ、ひとつ聞きたいんですけど」
仮姫「これ、どうやってゲームから出るんですか? 」
善子「わ、分からないです……」ガタガタ
仮姫「そうですか」
仮姫「では」ダッダッダッ
善子「あ、待っ」
梨子「騎士さん!! 」
善子「! 」
梨子「騎士さん、起きて! 」
善子「そうだ、騎士!! 」ダッ
192
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:27:24 ID:PyP04hKo
善子「大丈夫そう? 」
梨子「うん、息はあるよ」
梨子「ただ、凄い熱」
善子「梨子、騎士をセントラルに連れて帰ろう! 」
善子「医者みたいなのがいるはずでしょ」
騎士「……いないわよ」
善子「騎士! 」
騎士「頭に響くから、大声はやめて」
善子「ごめん」
騎士「自力で回復出来るから、とりあえずセントラルまで私を連れてって欲しい……」
騎士「セントラルには、私の家がある」
騎士「安全な場所なら、自己治療に専念出来るわ」
193
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:28:48 ID:PyP04hKo
善子「でも、どうやって騎士を運べば……」
騎士「はぁ、はぁ、台車とか、創って……」
善子「そんなデカいもの、私の想像力で創れるかしら」
梨子「私たち小さいものしか作れない……」
騎士「二人で、想像してみて」
善子「二人で? 」
騎士「言ってなかったけど、創造は二人でも出来るの……」
騎士「ただ、二人の意思が相当通いあってないと無理」
194
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:29:42 ID:PyP04hKo
騎士「セントラルにとある夫婦がいて、その人達から聞いたの」
騎士「二人で同じもの思い浮かべたら、でっかい銅像を創れた……って」
騎士「その夫婦以外、前例がないから」
騎士「無理かと思って、今まで言ってなかったけれど」
騎士「もしかしたら、貴方達ならいけるかも」
善子「騎士、無理に喋らないで」
騎士「方法教えないと、私がセントラルまで帰れないかもしれないでしょ」
善子「あ、そっか」
195
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:30:43 ID:PyP04hKo
善子「じゃあ梨子、木製の台車を創りましょう! 」
梨子「うん! 」
善子「サイズは、人間二人分くらいね」
梨子「はぁぁぁぁ」ググッ
善子「はぁぁぁぁぁ」グググッ
善子と梨子「「はぁっ!! 」」
しーん
何も出なかった。
善子「うそ……」
梨子「っ……」
騎士 ( あちゃー…… )
196
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:32:20 ID:PyP04hKo
今日はここまでです、遅くなってすみません!
197
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/09/28(金) 23:44:50 ID:0aKaHpNI
乙!
198
:
◆32r/eU7DO2
:2018/09/28(金) 23:56:07 ID:PyP04hKo
ありがとうございます!
199
:
◆32r/eU7DO2
:2018/10/31(水) 22:51:29 ID:Tn5.wQJA
善子 ( 二人で創れなかった……!? )
二人で想像を合わせられなかった。
つまり、息が合ってないということ。
『私と梨子は分かり合えない』と言われた感じがして、心が痛い。
梨子「あ、じゃあ」ググ
ポンッ!
ローラーシューズが現れた。
梨子「騎士さんがこれ履くのはどうかな」
善子「なるほどね、それなら騎士を運べるわ」
騎士「? 」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
200
:
◆32r/eU7DO2
:2018/10/31(水) 22:52:53 ID:Tn5.wQJA
【セントラル:入り口】
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
騎士「あの、やっぱり恥ずかしいんだけど」
ローラーシューズを履いた騎士に体育座りをしてもらう。
その状態の騎士に縄をつけ、二人で引っ張った。
梨子「ごめんなさい、私にもっと力があれば」
善子「騎士の家って、どこにあるの? 」
騎士「あそこの路地裏あるでしょ、そこに入って」
騎士「路地裏を少し進んだ先に、私の家があるわ」
善子「了解」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
201
:
◆32r/eU7DO2
:2018/10/31(水) 22:53:41 ID:Tn5.wQJA
【セントラル:騎士の家】
大きなベッドには、ピンクの毛布が被せられていた。
壁には様々な花の写真が貼られ、大きな本棚がいくつかある。
善子「へぇ、部屋は意外と乙女チックなのね」
騎士「そうかしら」
梨子「この家は、自分で創ったんですか? 」
騎士「いいえ、違うわ」
騎士「最初からあった場所に、私が勝手に住み着いているだけよ」
騎士「この街の皆もそう、最初からあった場所に住み着いているのよ」
善子「想像で家を建てたり……なんてのは無いの? 」
騎士「基本的には無いわね」
騎士「ただ、例外はいるわ」
善子「例外? 」
202
:
◆32r/eU7DO2
:2018/10/31(水) 22:54:37 ID:Tn5.wQJA
騎士「さっき言った"夫婦"覚えてる? 」
善子「あぁ、二人で協力してひとつの物を創ったっていう」
騎士「そう、その人達はこの世界で唯一、家を創った事がある」
善子「えぇ、凄い」
騎士「この世界トップの創造力を持っている二人ですら、家を創るのに相当苦労していたらしいわよ」
203
:
◆32r/eU7DO2
:2018/10/31(水) 22:56:06 ID:Tn5.wQJA
善子「その二人でさえも、二人の想像力を合わせることに苦労したのよね」
善子 ( 私と梨子が想像力を合わせられなかったからって、別にどうってことは無いんだ )チラッ
梨子「なに? 」
善子「あっ、ううん、何でもない」プイッ
善子 ( 梨子…… )チラッ
騎士「……」
騎士 ( あーもう! じれったいわね、この二人!! )
204
:
◆32r/eU7DO2
:2018/10/31(水) 22:57:20 ID:Tn5.wQJA
騎士「二人とも、私が休んでいる間に外を回ってきて欲しいんだけど」
善子「えっ」
梨子「でも……」
善子 ( でも!? )
善子 ( "でも"って何!? めっちゃ気になるんだけど…… )
騎士「ほら、私が休んでる間も二人には探して欲しいの」
騎士「白い空間をね」
騎士「私の回復を待ってたら、時間が勿体ないわよ」パチッ
騎士は私に向かってウィンクをした。
『二人きりになってこい』って言われた気がする。
背中を、押された気がする。
205
:
◆32r/eU7DO2
:2018/10/31(水) 22:58:49 ID:Tn5.wQJA
善子「ふぅ……」
善子「すぅ……」
善子「梨子、二人で行きましょ! 」
梨子「……うん、そうしよっか」
梨子は、口角を上げて眉毛は下げて、嬉しいような悲しいような、難しい表情をしていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
206
:
◆32r/eU7DO2
:2018/10/31(水) 23:08:00 ID:Tn5.wQJA
今回はここまでです!
207
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/06(火) 23:57:27 ID:Ps9dcmFg
【セントラル】
二人で街を歩く。何ヶ月ぶりだろう、隣に梨子が居るのは。
少し薄暗い路地裏で、腰を下ろした。
梨子「よいしょ、っと」
善子「大丈夫? 」
善子「スカート汚れたりとか……」
梨子「ううん、大丈夫だよ」
梨子「ありがとね」
208
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/06(火) 23:58:07 ID:Ps9dcmFg
梨子「……この世界での怪我は、瞑想で治るんだね」
善子「騎士が言うには、治るイメージを続ければ回復していくとか」
梨子「治る想像をする、ってことかな」
梨子「本当に、この世界では想像で何でも出来ちゃうんだね」
善子「……不思議」
梨子「うん、不思議」
209
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/06(火) 23:58:45 ID:Ps9dcmFg
善子「なんかさ、ゲームだと思えないくらいリアルよね」
梨子「うん、凄く分かるよ」
梨子「浦の星に居た時と、どっちが現実なのか分からなくなってしまいそう」
善子「ね、ほんと」
梨子「うん」
しーん……
善子 ( ま、まずい……会話が続かない!! )
善子 ( どどどどうしよ、えっと、何か話題を )
善子「良い天気ね」
善子 ( ああああああああああああぎこちなさすぎる!! )
210
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/06(火) 23:59:38 ID:Ps9dcmFg
梨子「うん、綺麗な夜空だよね」
梨子「月も綺麗」
善子「!? 」
善子 ( これ、あれ、もしかして月が綺麗ですね的なあれ!? )カァ〜
梨子「ご、ごめん!決して告白とかじゃなくて……その……」
梨子「本当に綺麗な月だな、って思って……」
善子「だだ、大丈夫よ、梨子には前に振られたでしょ? 」
善子「あの時にもう気持ちの整理はついてるからさ、気にしないで」
211
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/07(水) 00:00:42 ID:KOgdN/O.
善子「それにしても、月、綺麗ね」
善子「沼津では最近くもりが多かったから、満月を見るのは久しぶりかも」
善子「これくらい綺麗だと、お月見がしたいわね」
梨子「そうだね、二人でお団子食べて、お話して」
善子「やっちゃう? 」
梨子「えっ」
善子「想像で何でも出来るんだもの、団子作ってお月見しましょ」
梨子「そっか、想像で何でも……」
212
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/07(水) 00:01:26 ID:KOgdN/O.
梨子「じゃあ、あのね、私お花見もしたい」
善子「お花見とお月見を一緒に? 」
梨子「あっ、ううん、そこまでは考えてなかったんだけど」
梨子「でもいいかも、お花見とお月見を一緒にやるなんて現実じゃ難しいし」
善子「団子は創造出来るけど、桜の木は今の私たちじゃ創れないわね」
梨子「騎士が言ってた夫婦にお願いするのはどう? 」
善子「それいい! 」
213
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/07(水) 00:02:18 ID:KOgdN/O.
善子「うんと星が綺麗に見える場所に、桜の木を創ってもらってさ、二人で時間を過ごしたい! 」
梨子「うん! 」
善子「じゃあ、夫婦を探しにいこっか」
梨子「わかった! 」
善子 ( 夫婦を探しながら、色んなお店に行って、デートして…… )
梨子「あ、でも待って」
梨子「少し現状の整理がしたいな」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
214
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/07(水) 00:03:10 ID:KOgdN/O.
夫婦を探す前に、路地裏で私たち二人は現状の整理を始めた。
色んなことが頭の中でゴチャゴチャしていて難しかったから。
善子「私たちギルキスの三人で、曲作りのアイデアを得るために、このゲーム世界に入った」
梨子「あれ、そういえば鞠莉ちゃんをまだ見かけないけど、どうしたのかな」
善子「あっ」
善子 ( 実は私と梨子二人しかゲーム世界に来ていない )
善子 ( 鞠莉の粋な計らいで、ギクシャクしていた私と梨子が二人きりになれる機会をくれた )
善子 ( 私は昔、梨子に振られて……うぅ、あんまり思い出したくないわ )
善子「あ、言い忘れてた……鞠莉は急用を思い出したから、先に帰るって」
善子「一番最初の白い空間で、先に出口から帰っちゃった」
梨子「なんだ、そうだったんだね」
もちろん、鞠莉が帰ったなんて嘘。
そもそも鞠莉はゲームに参加すらしていないもの。
215
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/07(水) 00:04:00 ID:KOgdN/O.
善子「まず、このゲームの目的はお姫様を救うこと」
善子「そして、このゲームでは想像したものが創造出来る」
善子「想像力の強さに応じて、創れるものも変わってくる」
善子「想像力が高ければ、創造力も高い」
善子「私たちのこの世界での姿は、無意識のうちに想像していた姿」
善子「つまり、なりたい理想像」
善子「私が堕天使ってのは分かるんだけど……」
梨子「私は普通の制服」
善子「理想像とかないの? 」
梨子「うーん、考えたことないかも」
216
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/07(水) 00:04:30 ID:KOgdN/O.
善子「次に、今までの振り返りね」
善子「私が目覚めると、真っ白い空間にいて、大きな穴と黒い扉があった」
梨子「善子ちゃんは一番最初にそこで、運良くお姫様と出会ったんだよね」
善子「うん、姫とはそこで出会った」
善子「だけど、姫は私と一緒に外の世界へ出ることを拒んだ」
善子「"穴の中から自分を呼ぶ声がする"と」
善子「"声の主を姫の元へ連れてこれば、一緒に出る"と姫は言った」
善子「それで私は穴の中に飛び込んだってわけ」
217
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/07(水) 00:05:20 ID:KOgdN/O.
梨子「目覚めたら見知らぬ森で、すぐに騎士さんと会ったんだっけ? 」
善子「そうね、すぐに騎士とは仲良くなって色んなことを教えて貰ったわ」
善子「騎士は姫を探していたわ、それで騎士が"声の主"であることが分かったの」
善子「それから梨子と出会って、姫の居る空間を探し始めた」
梨子「ここは夜の世界なのに、姫がいたところは真っ白な世界……」
善子「私が目覚めた森の近くにその空間はあるんじゃないか、と思って探しに行ったけど、そこには無かった」
218
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/07(水) 00:05:58 ID:KOgdN/O.
善子「私の推測だけど、ワープホールのようなものを創造出来る人がこの世界にいるんじゃないかと思ってる」
善子「真っ白い空間を創れるほどの想像力があれば、ワープホールくらい容易く創れるはず」
善子「私はそのワープホールに落ちてしまって、世界のどこかにランダムで飛ばされてしまった」
梨子「たまたま飛ばされた先が森だった、ってことか……」
梨子「ワープホールを創れるほどの想像力を持つ人、その人を探す方が早いのかもね」
梨子「白い空間を探すより」
善子「そうかもしれない」
善子「となると、この世界で一番想像力があるのは……」
梨子「あっ」
よしりこ「例の夫婦!! 」
梨子「偶然だけど、色んなことが重なった気がするね」
219
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/07(水) 00:07:11 ID:KOgdN/O.
善子「まだ整理が付けられないことも話しましょうか」
梨子「うん」
善子「まず、仮姫」
梨子「私が崖下で会った、強い人だね」
善子「騎士が言うには、剣道っぽい動きをしてたから、姫の可能性があるとか」
善子「でも私は仮姫は姫じゃないと思う」
善子「なんか、なんとなく違うと思う」
220
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/07(水) 00:08:47 ID:KOgdN/O.
梨子「整理が付けられないと言えば、ひとつ分からないことがあるのだけど」
善子「なに? 」
梨子「テント村で、善子ちゃんが急に豹変したこと」
-----------------------------
村人A「俺を殺すのが可愛そうなんじゃなくて、人を殺すのが怖いだけだろ? 」
善子「こ、怖い? 」ドクン
善子「こ、怖くなんて……怖くなんて……!! 」ドクンドクン
ヨハネ「怖くなんてないわよ、大事な人を守る為なら、どんな罪でも背負うわ」
-----------------------------
221
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/07(水) 00:09:19 ID:KOgdN/O.
善子「それ、私もよく覚えてないのよね……」
善子「一瞬クラッとして、その間の記憶が無くてさ」
梨子「うーん、そっか……善子ちゃんにも分からないことだし、整理するのは難しいね」
梨子「もしかして"怖い"と思ったら人格が変わっちゃうとか? 」
善子「まさか、ね……」
善子「だって私、別に多重人格とかじゃないしさ」
梨子「だよね」
善子「でもやっぱり怖い、これからクラっと来たら気をつけないと」
222
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/07(水) 00:10:21 ID:KOgdN/O.
善子「で、これからやることも整理しましょ」
善子「まず騎士が回復している間、私たちは夫婦に会いに行く」
梨子「夫婦は白い空間について何か知ってるかもしれないよね」
善子「ついでに夫婦にお願いして、桜の木を創ってもらって」
善子「二人でお花見とお月見を同時にやる」
梨子「うん」
善子「騎士が回復したら、また白い空間を目指して歩く」
梨子「夫婦が白い空間のことを知ってたら、ゲームの終わりは近いね」
善子「もし夫婦が何も知らなかったら、今度は仮姫を探して捕まえる」
善子「夫婦も仮姫も白い空間のことを知らないなら、ゲームは振り出し」
223
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/07(水) 00:11:02 ID:KOgdN/O.
善子「どう、整理出来た? 」
梨子「うん、さっきよりは! 」
善子「よっ、と」スッ
善子「じゃあ、夫婦を探しましょうか! 」
梨子「うん! 」
私は梨子に手を差し伸べた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
224
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/07(水) 00:11:43 ID:KOgdN/O.
今回はここまでです
225
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/07(水) 07:10:37 ID:cDrVbW8A
乙
前回の更新見逃してた
226
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/07(水) 08:53:15 ID:meYZB1dQ
乙
227
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/12(月) 01:14:57 ID:uDqJU1Hs
【セントラル】
夫婦を探すとはいっても、私にとっては梨子との最後のデート。
本当は夫婦なんて探さずに、ずっとずっと二人で歩いていたい。
善子「梨子、こっちこっち! 」
善子「見てこのアイスクリーム、夜空みたい」
梨子「綺麗……!! 」
店員「おや、このアイスが食べたいのかい? 」
善子「」コクッ
店員「嬉しいなぁ、このアイスはおじちゃんの夢なんだ」
228
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/12(月) 01:16:28 ID:uDqJU1Hs
店員「子供の頃から色んなアイスを考えてたんだけど、実現出来なくてね」
店員「でもここなら願いが叶う、本当に夢のような世界だよ」
善子「凄く綺麗、私はこのアイス好きよ」
梨子「うん、私も好きかな……」
店員「いい子達だなぁホントに」ウルウル
店員「はい、特別にちょっと増量! 」スッ
善子「えっ、あ、ありがと……! 」
梨子「ありがとうございます! 」
善子「」ペロッ
アイスクリームじゃお腹は満たされないけれど、少しだけ心が満たされるような気がした。
229
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/12(月) 01:17:00 ID:uDqJU1Hs
善子「あっ、その、次はどこに行く? 」
梨子「えっ、夫婦を探すん……」
善子「アクセサリー屋さん、いや、それとも綺麗な景色の見える場所……」ブツブツ
梨子「……」
梨子 ( ふふっ、今は夫婦を探そうなんてこと言うのは野暮だよね ) ニコッ
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
230
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/12(月) 01:18:01 ID:uDqJU1Hs
【 アクセサリーショップ 】
善子「こ、これ梨子に絶対似合う! 」
桜の花びらを模した髪留め、散ることのないその花びらは、永遠に綺麗なままで梨子を飾ってくれると思う。
梨子「う、うん……ありがとう……! 」
この世界の商品は大体そうなんだけど、店員さんにしか創れないようなものが多い。
到底、私なんかじゃ想像もつかないようなものばっかり。
231
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/12(月) 01:18:45 ID:uDqJU1Hs
善子「あのさ、えっと、ネックレスとか好きだったりする? 」
梨子「え、まぁ……うん、好きかな」
善子「良かった、じゃああの、ドクロのやつとかどうかな」
梨子「うーん、骸骨はちょっと怖いかも……」
梨子「……」
善子 ( 梨子が苦い顔になった……!! )
善子 ( どうしよう、どうしよう、せっかく最後のデートなのに、私じゃ梨子を楽しませられない )
善子 ( このまま余計に仲が悪くなってしまったら、どうしよう )
善子 ( Aqoursの活動もある、一緒に曲作らなちゃ、梨子を諦めなくちゃ、梨子に迷惑かけちゃダメだ、梨子に…… )
ドクン、ドクン─────
鼓動が大きくなって、心臓の音しか聞こえない……!!
足の震えも止まらない……!! ダメだ、こんな様子じゃ梨子が近寄りにくいじゃない……!!
232
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/12(月) 01:20:17 ID:uDqJU1Hs
善子「っ……」
梨子 ( 善子ちゃん……? )
善子 ( 意識が遠のく……クラっとしないように…… )
酷く頭が痛い……!!
善子「はぁっ……はぁっ……」
善子「はぁ……私が……」
善子「耐えないと……はぁっ……」
善子「はぁ……」
電源が落ちたように、フラリと倒れ込む善子。
梨子「善子ちゃん、まさか……!! 」
梨子「大丈夫、大丈夫だから! しっかりして!! 」タッタッ
梨子は、善子のことを強く強く抱き締めた。
233
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/12(月) 01:21:39 ID:uDqJU1Hs
善子「はぁっ……はぁっ……」ガチガチガチ
梨子「怖くない、怖くないよ!! 」
梨子「大丈夫だから……ね? 」
善子「ふぅ……はぁ……はぁ……」
梨子 ( やっぱり……何かを怖がってるように見える )
234
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/12(月) 01:22:35 ID:uDqJU1Hs
善子「梨子……梨子……? 」
善子「リリー……」
せっかく我慢していたのに、涙が出てしまう。
善子「……」ポロポロ
梨子「っ……!! 」ギュウッ
善子「うぅっ……ごめん、ありがと、ありがとね……!! 」
梨子「ううん……!! 」
悲しくほほ笑む梨子の目尻は、少し輝いていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
235
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/12(月) 01:25:16 ID:uDqJU1Hs
店内では流石に迷惑になってしまうので、梨子に連れられ外に出た。
人通りの少ない大通り、涙を風で乾かす。
善子「ありがとう、もう大丈夫よ」
梨子「うん、落ち着いたみたいで良かった」
梨子 ( 善子ちゃんの異変について、しっかり向き合わなきゃ )
梨子 ( もう一度、思い出そう…… )
-----------------------------
善子「こ、怖くなんて……怖くなんて……!! 」ドクンドクン
ヨハネ「怖くなんてないわよ、大事な人を守る為なら、どんな罪でも背負うわ」
-----------------------------
梨子 ( 普段の善子ちゃんじゃなかった、あれは多分…… )
梨子 ( 堕天使ヨハネ )
236
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/12(月) 01:27:12 ID:uDqJU1Hs
梨子 ( 善子ちゃんが厨二病魂を発揮している時と似ている……よね )
梨子 ( 善子ちゃんが堕天使を自称していることと、何か関係があるのかな? )
梨子「ねぇ、善子ちゃん」
善子「どうしたの? 」
梨子「善子ちゃんは、どうして堕天使なの? 」
善子「えっ」
梨子「善子ちゃんの様子が急変することと、何か関連があるんじゃないか……と思って」
善子「あ、うん、唐突でビックリした」
善子「えっと……私の人生ってさ、結構辛いことばっかりでさ」
237
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/12(月) 01:28:33 ID:uDqJU1Hs
善子「思い込みだと思うんだけど、運が悪いっていうか不幸っていうか……辛いことが本当に多くて」
善子「傘を持って出かけたら晴れるし、よくものを無くすし、ジャンケン弱いし」
善子「本当はさ、凄く辛いの、強がってるだけで……詳しくは言いたくないんだけど……」
善子「"辛いのは、神様からのバツなんだ"って思わないと、やっていけないよ……」
善子「とーっても美人だから、天界から追放されたんだ」
善子「って、自分に言い聞かせてる」
善子「本音を言えば、別に自分が美人だなんて思ってないわよ」
善子「でも"自分は堕天使だ"って、冗談でも言っておかないと、辛いの」
238
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/12(月) 01:29:27 ID:uDqJU1Hs
善子「……」
-----------------------------
善子パパ「よっちゃんは可愛いなぁ、天使みたいに可愛いよ」
善子(4歳)「えへへ、 パパだいすき! 」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
善子パパ「……」
善子「や゙だぁ゙ぁ゙ぁぁ゙ぁ!! 」ポロポロ
善子「しな゙っ、じな゙ないでよ゙!! パパァァ゙ァ゙ァァァ゙!! 」
善子「ゔわ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁぁ゙ぁ゙ぁぁぁ゙ん゙!! 」
-----------------------------
善子「何だろうね、自分でも分かんないけど……」
善子「"堕天使"って設定に頼りっきりだよ」
梨子 ( ……? )
239
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/12(月) 01:30:15 ID:uDqJU1Hs
梨子「何かあったの……? 」
善子「ううん、何でもない! 」ニコッ
善子「堕天使はまぁ、設定よ、設定」
善子「さ、行きましょ! 」
善子「私はもう大丈夫だからさ」
善子 ( パニックにならないように、焦らないようにしなきゃ )
善子 ( 今後のことは考えないで、今この瞬間を楽しむことに集中しよう )
善子 ( 梨子への想いを忘れるための、最後のデートなんだから )
梨子 ( ……何か隠してる気がする )
夫婦を探して、再び歩みを進めた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
240
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/12(月) 01:42:03 ID:uDqJU1Hs
今回はここまでです。
すみません、まだまだ物語の2/5くらいしか進められてないです……
絶対にエタらないので気長に付き合って下さると嬉しいです。
早めに完結出来るように頑張ります!
241
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/12(月) 19:21:38 ID:pq1RINSE
いつも楽しく読ませてもらってるよ
長編嬉しいわ
242
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/12(月) 22:24:53 ID:uDqJU1Hs
ありがとうございます!
243
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:11:03 ID:YAHNZS5Q
【アパレルショップ】
セントラルの中でも、ひときわオーラを放つ店を見つけたので寄ってみた。
店は二階建てで、屋根には社交ダンスをする男女の大きな銅像が建っている。
しばらく物色をしてから、梨子に色々な服を試着してもらってるのだけど、やっぱりどれも似合う。
梨子「着替えたよ」
試着室のカーテンから顔を少しだけ覗かせる梨子、少しだけ頬が赤い。
梨子「どうかな? 」
善子「うっ……似合いすぎてるわ…!! 」
梨子「はい! 」
善子「ぎゃーっ! 美しいーー!! 」
梨子「えへへ」
善子「冬服もまた似合う……っ!! 」
244
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:11:58 ID:YAHNZS5Q
梨子「ホントにいいの? 」
善子「うん、梨子の浴衣姿を見たかったから」
梨子「じゃあ……」スッ
善子「……!! 」
善子「浴衣……」
浴衣には想い出がある。
私が梨子に振られたあの日、夏祭りの日のこと。
『よっちゃんとリリー』から『善子と梨子』に変わったあの日……
245
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:12:49 ID:YAHNZS5Q
-----------------------------
-----------------------------
今から約半年前……
【浦の星女学院 部室】
千歌「なんとなんと、市長から夏祭りライブの依頼が!! 」
鞠莉「私達の努力を見込んで "ライブで夏祭りを盛り上げて欲しい" って」
曜「浴衣を着られる! 」
果南「夏祭りかぁ、昔は三人でよく行ったよね」
ダイヤ「昔から変わらず、街をあげて盛り上がる一大イベントでしたね」
梨子「こっちの夏祭りはどんな感じなの? 」
千歌「屋台とか沢山並んで、夜には花火がババーンって打ち上がるよ」
ルビィ「綺麗だよね、花火」
花丸「夜空にパッと咲いてはすぐに散る花……儚いずら」
246
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:13:34 ID:YAHNZS5Q
梨子「いつやるの? 」
千歌「8月13日だよ」
善子「13日!? 」
千歌「夏休みだから学校は無いよー」
善子「いや、それで驚いているんじゃなくて」
善子「13日は、ペルセウス座流星群が観測される日なの」
ルビィ「流星群!? 」
曜「凄い偶然! 」
梨子「奇跡みたい……!! 」
千歌「流れ星の下でライブするんだ、良い! 良いよそれ! 」
鞠莉「私達も、夜空の星に負けないように輝かないとね! 」
果南「当日は晴れるといいね」
ダイヤ「晴れますよ、きっと」
247
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:14:30 ID:YAHNZS5Q
花丸「何の曲を披露するの? 」
千歌「それなら千歌が考えてきた案があんだけど」
千歌「"あん"だけに、なんつって! 」コンッ
しーん
鞠莉「oh…it's so cold……」
千歌「あははー……」
善子「で、どんな曲なの? 」
千歌「えっとね、盆踊りみたいな、音頭みたいな感じ」
千歌「皆で浴衣着て踊りたい」
曜「さんせーーい、浴衣賛成でありまーす」
248
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:15:28 ID:YAHNZS5Q
善子「……」コソコソ
善子「リリー、今日も夜にお話出来る? 」ヒソヒソ
梨子「うん、夜10時くらいからでもいい? 」
善子「うん、分かった」
六月くらいから、私達二人は互いに距離を縮めていた。
東京からの転校生であるリリーと、長らく不登校だった私が意気投合するのは、必然というか何というか。
周りから浮いている、周りに馴染めない二人だったから、惹かれあったんだと思う。
初めはただの友達だったけれど、それは段々と恋心に変わっていった。
今は夜に長電話する仲なのだけど、恋人同士ってわけじゃない。
告白する勇気が出ないからね、仕方ないわよ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
249
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:16:44 ID:YAHNZS5Q
夜……
【善子の家】
善子「でさー、今日はカクカクシカジカ……」
梨子『……』
善子「どうかしたの? 」
梨子『あっ、ううん』
梨子 ( どうしよう、話がよく分からない )
梨子 ( ハルマゲドンとか、ソドムとゴモラとか、多分神話のお話なんだろうけど…… )
梨子 ( リアクション薄いままだと、よっちゃんに嫌われちゃうかもしれないもんなぁ…… )
善子「聞いてる? 」
梨子『あ、ごめん! ボーッとしてた』
250
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:17:35 ID:YAHNZS5Q
善子 ( うーん……堕天使とかはよく分かんないわよね )
善子 ( やっぱり私の趣味を押し付けるのはダメね、リリーが知ってる話題に変えなくちゃ )
善子 ( リリーが知ってる話題……なんだろう )
善子 ( 音楽、ピアノ、かな? )
善子「リリー、そういえばさ……」
梨子『ん? 』
善子「……」
梨子『? 』
善子 ( 音楽分かんないーーーーっ!! )
善子 ( ピアノの知識も無いわ……どうしよ )
梨子『……? 』
善子 ( あああああああああダメだ、しーんってなっちゃう! )
善子 ( えーっと、えっと )
251
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:19:08 ID:YAHNZS5Q
善子「あ、あのさ、アレよ、アレ」
梨子『アレって? 』
善子「きょ、今日は学校どうだった? 」
梨子『楽しかったよ! 』
善子「そ、そう……良かった〜」
梨子 ( よっちゃん、多分緊張してるよね…… )
梨子 ( 二人きりになるといつも焦ってて、何だか申し訳ないなぁ…… )
梨子 ( 私が頑張らなくちゃだね……!! )
252
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:20:01 ID:YAHNZS5Q
梨子『よっちゃんは学校どうだった? 』
善子「えっ、私? 」
善子「今日は休み時間に皆を占ってあげた」
梨子『へぇ、占いやったんだね! 』
善子「えぇ、本格的なものじゃないんだけど」
梨子『今度私も占って欲しいなぁ』
善子「うん、分かったわ」
253
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:20:49 ID:YAHNZS5Q
善子 ( 変ね……リリーがこんなに積極的に話題を振ってくるなんて )
善子 ( もしかして私の話題が面白くないから? )
善子 ( それとも、私がテンパってるのを心配して……? )
善子 ( 分かんないけど、どっちにしろ私がもっとしっかりしなきゃいけないわね )
善子 ( リリーが好きそうな話題を、勉強してこよう! )
梨子 ( よっちゃんが好きそうな話題を、勉強してこなくちゃ! )
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
254
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:21:31 ID:YAHNZS5Q
梨子「七つの大罪、強欲、色欲、嫉妬、怠惰……」
梨子「審判、ルシファー、黙示録、ゼウス、金獅子、ヘルメス、ミノタウルス……」
梨子「いっぱい単語が出てくるね……暗記苦手だけど、頑張らなくちゃ」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
255
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:22:11 ID:YAHNZS5Q
善子「んん、ヘ音記号? ハ長調? 」
善子「クレッシェンド、これは知ってる! 教科書で見た」
善子「コード進行……うーん、よく分かんないわね」
善子「ああああああ難しい!! でもこのままじゃリリーを楽しませられない!! 」
ふと、机の上の占いグッズに気づく。
善子「……占いとかで話題広げようかしら」
自分でもよく分からないままに、なんとなく私とリリーの今後を占いたくなった。
善子「リリーとの恋は上手くいきますか」サッサッ
256
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:22:47 ID:YAHNZS5Q
善子「……」
善子「恋愛関係にはなれない……か」
善子「いや、もっかい占いすればワンチャンあるかも! 」
善子「……」
善子「うぅ……さっきと一緒かぁ……」
善子「リリーに占い頼まれたとしても、この結果は見せたくないわね……」
善子「上手くいかないなんて、嘘よ」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
257
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:23:50 ID:YAHNZS5Q
夏祭りに行く前に、二人きりで映画を見に行くことになった。
その映画は、いわゆる感動系の恋愛モノ。
流れ星の日に愛を誓い合った夫婦の物語で、結婚生活の途中ですれ違い、二人は別れてしまう。
それから二人は別々の人生を歩むけれど、30年後、二人は運命的な出会いをする。
その日はたまたま流れ星が観測される日で、二人は再び愛を誓い合う……という映画。
ありきたりな展開だけど、映像が凄く綺麗って話題なのと、近々私達も流れ星を見ることになるだろうから、一度見ておきたかった。
258
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:24:30 ID:YAHNZS5Q
【 映画館:入口 】
善子 ( ストーリーは大体ネタバレくらっちゃったから、正直楽しみが薄いのよね…… )
善子 ( はぁぁぁぁぁ……この映画みたいに、流れ星の日にリリーと結ばれて……あああああああああああ照れる……/// ) ジタバタ
梨子「待たせちゃってごめんね!」タッタッタッ
梨子「バスが渋滞に引っかかっちゃって……」
善子「全然大丈夫よ、上映時間までまだまだあるし」
善子「そこで座って開始まで待ちましょうか」スタスタ
梨子「うん」スタスタ
二人同時に腰を下ろす。
259
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:25:56 ID:YAHNZS5Q
梨子 ( よし、沢山勉強してきた成果を見せる時! )
梨子 ( でもいきなり天使とか悪魔の話すると、唐突すぎて変よね )
梨子 ( よっちゃんがそういう話をしてきた時に、良い感じに返せばいいかな )
梨子 ( じゃあまずは、そういうの以外から……えーっと )
梨子「あ、占い! 」
善子「!! 」
梨子「この前に二人で話した時に、よっちゃん私のこと占ってくれるって言ってたよね」
善子「え、えぇそうね」
善子 ( ヤバい……二人の今後とか聞かないでねマジで頼むわよ神様仏様ヨハネ様〜〜! )
梨子 ( これから恋愛モノ見に行くんだし、そういうムードにした方がいいよね )
梨子 ( よっちゃんとは、恋人になりたいから……そういう雰囲気にするのは大事!! )
260
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:26:49 ID:YAHNZS5Q
梨子「その……よっちゃんと私って、相性どうかな」
善子 ( ウソでしょ、マジ!? )
梨子「あ、別にその、えっと」
梨子「これからそういう映画見に行くじゃない? もし私たちが登場人物だったら、どうなるのかなぁって」
善子「それは、えーっとつまり、二人の今後みたいな? 」
梨子「え、えぇ、まぁその、もしもね、もしも! 」
手遊びするリリー、多分結果を期待してるけど不安なんだ。
善子「それなら、もう占ってあるわよ」
善子「二人の未来は青空! 太陽のように眩しい結末が待ってるわ」
善子「私の占いは外れないわよ、安心しなさい! 」ドヤァ
梨子「良かった……!! 」
261
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:27:32 ID:YAHNZS5Q
嘘をついた。
.
262
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:28:21 ID:YAHNZS5Q
善子「あ、ごめん……急なんだけど、ちょっとトイレしてくるね」スッ
梨子「うん、ここで待ってるね」
善子「すぐ戻ってくる」
個室の中で、沢山泣いた。
涙が、止まらない。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
263
:
◆32r/eU7DO2
:2018/11/15(木) 01:28:52 ID:YAHNZS5Q
今回はここまでです
264
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/11/17(土) 03:53:13 ID:WODAqF/k
lcll ;.- ;ll 切ないですわ
265
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/12(水) 00:12:11 ID:poWg5mIk
『上映中』
俳優「あぁ、綺麗な夜空だね」
女優「ひとつ、ふたつ、流れ星が沢山見える」
俳優「僕達も、あの星々のように輝かない? 」
俳優「二人で」
女優「素敵……!! 」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俳優「俺は毎日仕事で忙しいんだよ、帰ったら早く寝たいんだ! 」
女優「私だって疲れてるわ! 」
俳優「じゃあ早く寝ればいいだろ!? 」
女優「そういう言い方無いでしょ!! 」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
266
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/12(水) 00:13:40 ID:poWg5mIk
俳優「別れてからもう五年か……」
俳優「どうして素直になれなかったんだ……」
女優「あの時もっと優しく声をかけていたなら……」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
それから25年が経った。
俳優「1人で花見に来るのも、悪くは無いかな」
俳優「今夜は満月かぁ、散っていく桜との画が綺麗だな」
俳優「……あれ、もしかしてアイツじゃないか? 」
俳優「はぁ……はぁ……」タッタッタッ
女優「なんでここに……!! 」
俳優「ごめん! 」
俳優「ずっと謝りたかった、ごめん!! 」
女優「ううん、あたしの方こそごめん」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
267
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/12(水) 00:14:30 ID:poWg5mIk
女優「綺麗な夜桜……!! 」
俳優「あっ、あれ見て! 流れ星! 」
女優「流れ星……!! 」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
映画は流れ星と夜桜、そして満月をバックに、二人のキスシーンで幕を閉じた。
……
268
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/12(水) 00:15:23 ID:poWg5mIk
映画を観終えた。また涙が溢れ出てくる。
映画の影響で泣いたのか、梨子との将来が不安で泣いたのか、よく分からない。
でも今は映画のせいで泣いたってことにしよう。
善子「綺麗だったわね、流れ星」
梨子「うん、月も桜も綺麗だった」
善子「……」
梨子「……」
269
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/12(水) 00:16:58 ID:poWg5mIk
梨子「次はどこ行こっか」
善子「あ、えっと……」
善子 ( ……あれ、行くところ事前に考えたはずなのに、どこだったっけ? )
善子 ( ダメだ……早く思い出さないと…… )
梨子 ( よっちゃん…… )
その日のデートは、あまり話が弾まなかった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
270
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/22(土) 23:26:21 ID:wB6FVKSU
翌日、練習帰りのバス車内
曜「今日も練習疲れたねー」
善子「うん、そうね」
曜「そういえばさ、最近テレビでやってた……」
善子「……」
曜「大丈夫? 」
善子「……えっ」
善子「あーごめん!ちょっと魔界の眷属達と通信してた」
曜「そっか……」
曜「私で良ければ話聞くからさ、無理しないでね」
善子「うん」
善子 ( 曜にだったら、話しても良いかもしれない、リリーとの事 )
善子 ( 梨子と学年同じだし、千歌はリリーと近すぎるからリリーに相談内容バレるかもしれないし…… )
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
271
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/22(土) 23:27:36 ID:wB6FVKSU
また別の日、練習が終わってから、私は曜を呼んだ。
【教室】
曜「二人きりだね」
曜「もしかして告白!? 」
善子「違うわよ」
曜「あははー、だよね、分かってたよ」
善子「あのさ、相談があるんだけど」
善子「ほら、前にバスで言ってくれたでしょ? 」
曜「うん」
272
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/22(土) 23:31:11 ID:wB6FVKSU
善子「その……梨子の最近の様子ってどんな感じ? 」
曜「あー……」
曜「最近はあんまり喋らないかも」
曜「悩んでるのかなと思ったんだけど、何も言ってくれなくて……」
曜「だから理由はよく分かんないんだ」
善子「そう……」
曜「もしかして梨子ちゃんと何かあったの? 」
善子「んー、まぁちょっとね」
273
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/22(土) 23:33:02 ID:wB6FVKSU
善子「その……梨子の最近の様子ってどんな感じ? 」
曜「あー……」
曜「最近はあんまり喋らないかも」
曜「悩んでるのかなと思ったんだけど、何も言ってくれなくて……」
曜「だから理由はよく分かんないんだ」
善子「そう……」
曜「もしかして梨子ちゃんと何かあったの? 」
善子「んー、まぁちょっとね」
274
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/22(土) 23:35:29 ID:wB6FVKSU
曜「梨子ちゃんへの愛があれば大丈夫、大丈夫だよ」
曜「梨子ちゃんのことが好きなら、真っ直ぐ好きって伝えれば良いと思う! 」
善子「……そうね」
善子「って、今なんて言った!? 」
曜「あっ」
275
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/22(土) 23:37:21 ID:wB6FVKSU
善子「もしかして、私が梨子のこと好きなの知ってた!? 」
曜「……」
曜「うん」
曜「他のみんなも知ってるよ」
善子「え、マジ? 」
曜「マジ」
善子「……/// 」
曜「私も含めて皆、影ながら二人を応援してたんだよ」
善子「は、恥ずかしい!! 」
276
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/22(土) 23:39:59 ID:wB6FVKSU
その頃、教室の外では
梨子 ( あ……善子ちゃんと、曜ちゃん……? )
梨子 ( 二人で何を話しているんだろう )
梨子 ( 練習後に二人きりって、余程特別なお話なんだよね、多分 )
梨子 ( 善子ちゃんが顔を赤らめて……曜ちゃんは笑顔…… )
梨子 ( もしかして、もしかするのかな )
277
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/22(土) 23:41:05 ID:wB6FVKSU
梨子 ( 前のデート、私、ダメダメだったもんね )
梨子 ( もしかして善子ちゃん、私より曜ちゃんのことが好きだったりして )
梨子 ( 最近、善子ちゃんから軽く無視されてる気がするし )
梨子 ( やっぱり私じゃダメなのかな……善子ちゃんを、幸せに、出来ないのかな…… )
梨子 ( 泣いちゃダメだよ、二人にバレちゃう……うぅ…… )
梨子 ( もし善子ちゃんが、曜ちゃんのこと好きなら、じゃ……邪魔しちゃいけないよね )
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
278
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/22(土) 23:42:55 ID:wB6FVKSU
【梨子の家】
梨子「転校する前に、音ノ木坂の友達が話してた気がする」
梨子「恋心を諦める時は、新しい恋を始めた方が良いって」
梨子「私も、新しい恋を始めた方が良いのかな」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
279
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/22(土) 23:45:57 ID:wB6FVKSU
今回はここまでです
280
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/12/23(日) 03:20:30 ID:DrrkzLdY
待ってました🐺
281
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/26(水) 23:07:29 ID:05AK/eUE
それから数ヶ月後、夏祭り当日
千歌「みんな金魚すくいやったー? 」
花丸「マルは9匹取ったよ」
曜「えっ、すごい!! 」
ルビィ「花丸ちゃんにそんな特技があったなんて、ルビィびっくりだよ! 」
花丸「えへへ」
千歌「私は1匹も取れなかった……」
千歌「あれ、でも花丸ちゃん取った金魚は? 」
花丸「返したずら」
282
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/26(水) 23:08:37 ID:05AK/eUE
曜「ねぇ、ちょっといい? 三年生は? 」
千歌「それならあそこに……」
千歌「あれ、いない!? 」
ルビィ「お姉ちゃん達なら、善子ちゃん達と一緒に射的しに行ったよ」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
283
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/26(水) 23:09:41 ID:05AK/eUE
果南「……」
パァン!
鞠莉「果南、また腕上げたんじゃない? 」
ダイヤ「幼い頃から上手かったですけど、何か練習とかしてましたの? 」
果南「お父さんが射的上手くてさ、一緒に練習してたんだ」
果南「射的、カッコよくて憧れてたから」
鞠莉「なるほどねぇ〜」
284
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/26(水) 23:10:38 ID:05AK/eUE
鞠莉「今は何を狙ってるの? 」
果南「ぬいぐるみ」
鞠莉「……」ニヤッ
ダイヤ「ふふ」
果南「ん、どうかした? 」
ダイヤ「なんていいますか、その」
鞠莉「果南のそういうとこ可愛いなぁって、ね? 」
ダイヤ「ふふ、えぇ」
果南「……/// 」
果南「それ、どういう意味!! 」
285
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/26(水) 23:11:33 ID:05AK/eUE
善子「三年生、盛り上がってるわね」
梨子「あ、うん……」
鞠莉「盛り上がってるわよ〜! 」ガバッ
善子「わあっ!! 」ビクッ
鞠莉「私たち、もうちょっとだけ射的やってたいから、二人は先に戻ってて! 」
善子「えぇ、分かったわ」
善子「行こ」
梨子「うん」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
286
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/26(水) 23:12:40 ID:05AK/eUE
二人は人混みに揉まれ、川沿いへと迷い込んでしまう。
そこでは、夜空の星々とホタルが風景を彩っていた。
善子「うぅ、まさか迷ってしまうとは」
梨子「道、混んでたもんね、迷っちゃうのも無理ないよ」
梨子「早く皆のところに戻らないと、もう打ち上げ花火始まっちゃうよ」
梨子「善子ちゃん、戻ろ」
善子「待って」ガシッ
善子 ( こ、告白するなら今がチャンス、よね…… )ゴクリ
287
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/26(水) 23:13:50 ID:05AK/eUE
梨子「……なに? 」
善子「えっと」
鼓動が大きくなる。
頭が真っ白になる。
善子「その……!! 」
息が詰まる。
.
288
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/26(水) 23:14:56 ID:05AK/eUE
好き。
善子「私と、恋人になってください!! 」
静寂に、花火の音だけが響く。
.
289
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/26(水) 23:16:07 ID:05AK/eUE
梨子「え」
善子 ( ダメだ、怖い )
善子「リリー、私のリトルデーモンにならない? 」
梨子「待って、リトルデーモンって言われても、分かんない……」
290
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/26(水) 23:17:13 ID:05AK/eUE
善子「貴方の喉から奏でる旋律は、私の魂への鎮魂歌」
善子「貴方なら、まだ見ぬシャングリラへ連れて行ってくれると、冥界から御告があったのです!! 」
梨子「待って」
善子「リトルデーモンの中でも、リリーは特別」
善子「そう、俗に言う恋人……!! 」
梨子「待って!! 」
善子「!! 」
291
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/26(水) 23:18:30 ID:05AK/eUE
梨子「わたし、そういうのはちょっと……今は違うっていうか……その……」
梨子「ごめんなさい!! 」
善子「えっ」
走り去る梨子の背中を追いかける気にはなれなかった。
この手は、きっと届かないと思ったから。
涙が乾くまでは、みんなの所には戻れないや。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
292
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/26(水) 23:20:36 ID:05AK/eUE
梨子は一人、泣いていた。
梨子「どうして……どうして今になって……!! 」
梨子「善子ちゃんは曜ちゃんのことが好きなんじゃ無かったの!? 」
梨子「今の私は! 千歌ちゃんが好き! 善子ちゃんよりも! 」
梨子「いまさら告白されても、善子ちゃんを本気で愛せないよ……!! 」
梨子「私の方からもっと早く告白してれば、こんな事には……」
梨子「なんで!! なんで今!! 」
梨子「うぅ……」
293
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/26(水) 23:21:53 ID:05AK/eUE
梨子「ごめんなさい、善子ちゃん……」
梨子「ごめんなさい……!! 」
梨子「……あれって、流れ星……だよね」
梨子「こんな私の願いでも、叶えてくれるかな」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
294
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/26(水) 23:23:18 ID:05AK/eUE
善子「グスッ……」
善子「あ、流れ星……」
善子「神様、堕天使のわがまま、叶えてよ」
『 どうか、私のことを嫌いになってくれますように 』
.
295
:
◆32r/eU7DO2
:2018/12/26(水) 23:24:52 ID:05AK/eUE
今回はここまでです
296
:
◆32r/eU7DO2
:2019/01/23(水) 20:12:16 ID:iYRv3IEo
-----------------------------
-----------------------------
【アパレルショップ】
嫌いになって欲しい、口ではそう願っていても、梨子のことはどこか諦めきれていない。
だけど
善子「梨子、あのさ」
梨子「……」
善子「あの時は変なこと言ってごめんっていうか、なんていうか、その……」
梨子「え、いや、私の方こそ……」
善子「わがまま言ってもいい? 」
梨子「うん」
善子「あのことは、もう気にしないで欲しい! 」
297
:
◆32r/eU7DO2
:2019/01/23(水) 20:13:29 ID:iYRv3IEo
善子「梨子、私と居るとあんまり笑えてないっていうか」
善子「もしかしたら夏祭りのこと、気にしてるのかなって思ってさ」
梨子「……気になるよ」
善子「やっぱりむずか」
梨子「だって、善子ちゃんの事が好きだった!! 」
善子「……! 」
298
:
◆32r/eU7DO2
:2019/01/23(水) 20:15:10 ID:iYRv3IEo
善子「じゃあどうしてあの時」
梨子「曜ちゃんと善子ちゃんがずっと仲良くしてたから、私が勝手に勘違いしてしまって」
梨子「事実を確認せずに憶測だけで善子ちゃんは曜ちゃんが好きなんだと決めつけてしまった」
梨子「善子ちゃんの事は諦めようって」
梨子「他の人のことを好きになれば、この恋は忘れられると、そう思ったの」
善子「そう……そういうことだったの」
299
:
◆32r/eU7DO2
:2019/01/23(水) 20:16:55 ID:iYRv3IEo
梨子「夏祭りの時には、もう他の人が好きになっていたから……だから」
梨子「善子ちゃんに嘘をつきたくはなかったの……!! 」
梨子「……ごめんなさい」
善子「謝らないで」
善子「私がもっと早く告白していたら良かった」
善子「ただそれだけの事だし、勇気が足りなかった故の結果よ」
善子「もう一度告白して、梨子とお付き合いしたいだとか、今はそういう事はいいの」
梨子「……」
300
:
◆32r/eU7DO2
:2019/01/23(水) 20:18:03 ID:iYRv3IEo
善子「このゲームに入ったのだって、作詞作曲だけが目的じゃない」
善子「梨子と二人きりで話がしたかった」
善子「……」
善子「ほら、私達がギクシャクしたままだったら、Aqoursの活動にも支障でるでしょ……? 」
梨子「……うん」
善子「だから、仲直りしたくて」
善子「私も梨子のこと、しっかり諦めたいからさ」
善子「このゲームの中で、最後のデートをして、それでもう諦めるつもりだった」
301
:
◆32r/eU7DO2
:2019/01/23(水) 20:18:51 ID:iYRv3IEo
善子「騙すような形になっちゃって、ごめんね」
梨子「謝ることじゃないよ」
善子「……ごめん」
善子「あ」
梨子「制服に着替えてくるね」
善子「うん」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
302
:
◆32r/eU7DO2
:2019/01/23(水) 20:19:51 ID:iYRv3IEo
善子「梨子? 」
おかしい、10分くらい待っているけれど梨子が出てこない。
呼びかけても返事が無いし、だからって更衣室を勝手に開けてもいいのかな……
善子 ( えぇい焦れったい! ) シャーッ
善子 ( 誰もいない……!? )
善子 ( スンスン……何、この匂い )
善子 ( 梨子の残り香……!! )
善子 ( いやいや、ふざけてる場合じゃないわ )
善子 ( 頭がクラクラする……催眠ガス……? )フラッ
善子 ( はっ、寝ちゃダメ! ) ザッ
303
:
◆32r/eU7DO2
:2019/01/23(水) 20:21:02 ID:iYRv3IEo
善子 ( 梨子はログアウトしたのかしら )
善子 ( いやいや、簡単にゲームから出られないから私たちは困ってるんだわ )
善子 ( じゃあ、考えられることは…… )
善子 ( 更衣室になんかある!! )
ポンッ!
ハンカチを創った。
304
:
◆32r/eU7DO2
:2019/01/23(水) 20:22:53 ID:iYRv3IEo
善子 ( 更衣室の中には全身を写す鏡と、洋服を置く台だけ…… )
善子 ( 全身を写す鏡…… )
善子 ( そっか、この世界で私は堕天使なんだった )
改めて、折れた翼が生えてるのを見ると、なんかこう、テンションが上がる。
善子 ( ん、なんか……私の翼が風になびいてる気がする )
善子 ( 床? )
善子 ( 微妙にだけど、床に隙間がある )
305
:
◆32r/eU7DO2
:2019/01/23(水) 20:23:40 ID:iYRv3IEo
善子 ( じゃあ可能性があるなら、こう )
善子 ( 梨子が着替えている時に催眠ガスが放出、梨子は眠ってしまう )
善子 ( 床が何らかのキッカケで開き、梨子は下へと落とされた )
善子 ( 流石に妄想が過ぎるかしら…… )
善子 ( いや、可能性があるなら確かめる! )
ポンッ!
バールが現れた。
306
:
◆32r/eU7DO2
:2019/01/23(水) 20:24:28 ID:iYRv3IEo
ガンッ!
善子「テコの原理ィィィィィィィ!! 」ググググ
少し床が開く。ひんやりとした風が、下から吹いてくる。
善子「やっぱり開いた! 」
善子「ぬぬぬぬぬぬぬ!! 」ググググ
善子「開けェェェェェェェェェ!! 」ググググ
ガコッ!!
苦戦の末、何とか床を開けることが出来た。
307
:
◆32r/eU7DO2
:2019/01/23(水) 20:25:20 ID:iYRv3IEo
善子 ( 待っててね、梨子 )
善子「ヨハネ……」
善子「堕天!! 」ピョンッ
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2019/01/23(水) 21:37:45 ID:9HWS6cws
続ききた!
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