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少女「私を忘れないで」

1 ◆WRZsdTgWUI:2018/02/17(土) 23:13:03 ID:SLrOQBwc
(プロローグ)
〜体育館裏・少女さん〜
男子「少女さん、わざわざ来てくれてありがとう!」

少女「……」

男子「えっと、その……明日から冬休みだね」

少女「そうですね」

男子「それでその……クリスマスの日は予定が開いてますか」

少女「クリスマスの予定?」

男子「は、はいっ!」

少女「ひとつ聞きたいのですけど、あなたと私は今日はじめて会いましたよねえ。それなのに、どうして教えないといけないんですか」

男子「それは少女さんのことが好きだからっ!」

少女「……?!」

男子「文化祭のときに笑っている少女さんを見て可愛いなって思って、それで一緒に話が出来たらいいなってずっと思っていたんです。だから、僕と付き合ってくれませんか!」

603以下、名無しが深夜にお送りします:2018/08/30(木) 00:43:48 ID:XVeZh2l2
双妹と妹友さんが部屋を出て行き、俺は話を戻そうと少女さんに向き直った。
すると、少女さんは窓の外を眺めていた。
今は雨が止んでいるみたいで、妹友さんが濡れて帰る心配はなさそうだ。


少女「ねえ、男くん。窓を開けて空気を入れ換えませんか?」

男「別にそこまでする必要はないと思うんだけど」

少女「でも、気になるから。双妹さんにもそう言ってきます」

男「ああ、うん」


俺は少女さんを見送り、とりあえず部屋の空気を入れ換えることにした。
雨上がりの生暖かい空気が部屋に入ってきて、春の訪れを予感させる。
そんな季節の移ろいに感じ入りながら外を眺めると、妹友さんの姿が目に入った。
何やら歩道の植え込みが気になるらしく、いろいろな角度でスマホを向けているようだ。
そして今度は街路樹を見上げると、スマホを向けて覗き込んだ。

もしかして、妹友さんには雪吊り萌えの趣味があるのか?

とりあえず、見なかったことにしてあげよう。
俺はそっと窓を閉め、少女さんが戻ってくるのを待つことにした。

604以下、名無しが深夜にお送りします:2018/08/30(木) 00:51:38 ID:FEAzqMNw
おつ

605以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/03(月) 22:34:11 ID:1isJsRnE
(3月6日)sun
〜北倉駅前・バス停〜
みんなで水族館に行く日の朝、俺と双妹は友と合流して北倉駅に向かった。
相変わらずの曇り空と春のような暖かい陽気。
今日は絶好のお出かけ日和だ。


友香「おはようございます」

少女「友香ちゃん、おはよう〜」


待ち合わせ場所に着き、お互いに挨拶を交わす。
そして、友香さんが心配そうな顔で友を見詰めた。


友香「怪我、大丈夫ですか?」

友「腫れは引いてきたし、もう大丈夫。男がいなかったら、今頃は病院送りだったかもしれないけど――」

友香「そうなんだ。やっぱり、悪霊って怖いんですね」

606以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/03(月) 23:16:20 ID:6xTANxTA
双妹「ふと思ったんだけど、今から人が集まる場所に行く訳でしょ。そんなところで憑依霊に取り憑かれたりしたら、大変な騒ぎになるんじゃないかなあ」

友「恐らく、その心配はないと思う」

双妹「どうして?」

友「友香さんには説明していないからもう一度言うけど、憑依霊は欲望や不安、抑圧した気持ちに付け込んで意識を支配して来るんだ。だから、俺たちを排除するつもりなら、俺たちに対して悪意を持っている人に取り憑かなければならないんだ」

双妹「……そうなんだ」

友香「つまり、無い袖は触れないということですね」

友「まあ、そういうことです。最近、英語の授業中に悪目立ちとかしてたし、それがマズかったかなあ」

双妹「じゃあ、みんなは私のことを――」

男「双妹。あんな奴らのこと、もう忘れろよ」


これから遊びに行くのだから、委員長たちに言われたことを思い出す必要はない。
俺は双妹の頭をぽんぽんと叩き、笑顔を向けた。


双妹「うん、そうだね。ありがとう」

607以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/03(月) 23:36:47 ID:6xTANxTA
〜水族館〜
バスに揺られること約1時間、俺たちは海の見える水族館に到着した。
大人4人に特別料金の少女さん。
こういうときは、誰からも見えないのはお得だと思う。

そんな訳で俺たちは悠々と館内に入り、まずは目玉のジンベエザメ館に向かった。
そして建物の中に入ると、巨大水槽で雄大な泳ぎを見せるジンベエザメが迎えてくれた。
一気にテンション上げあげだ!


友「さすがジンベエだな。迫力が違うぜっ!」

男「この圧倒的な存在感、修学旅行で行った水族館に負けてないよな」

友「おうっ、絶対に負けてないっ!」

少女「エイが泳ぐ姿も可愛いよね」

双妹「それ分かる。すごく優雅な泳ぎ方だもんね」

友香「そうそう! 私はあの長い尻尾も可愛いと思うよ」

少女「ジンベエさんが泳いでいて刺さったりしないのかなあ」

友香「ああ……それ、絶対いそう!」

少女「だよね!」

608以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/03(月) 23:46:31 ID:6xTANxTA
ジンベエザメ館を満喫した後、俺たちは別棟の本館に移動した。
そこはテーマごとに水槽が分けられていて、水族館の醍醐味が集約されている場所だ。


双妹「回遊魚が泳いでいる姿を見ていると、何だか落ち着くよね」

男「そうだな。魚たちの洗練された泳ぎを見ていると、それだけで癒されてくるよな」

双妹「そうそう♪」

友「くそうっ! 今はマリンガールの餌付けショーをしてないみたいだ」

男「どうしたんだよ」

友「男も見たいだろ。可愛いマリンガールが餌付けされる姿を!」

男「それ、逆だから!」

友香「はいはい、見られなくて残念でしたね」

友「少女さん、ちょっと水槽の中に入ってみてくれる?」

少女「ええぇっ?! いやですよ。私でオチを付けようとしないでください!」プンスカ

609以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/04(火) 00:13:05 ID:utajcjjE
友香「そんなことより、あっちに家族連れが集まっている場所があるわよ」

友「ほんとだ。ちょっと行ってみようか」


俺たちは何がいるのか気になり、人の少ない場所から中に入ることにした。
すると、そこには浅い水槽が設置されていた。
どうやら、ウニやヒトデ、イソギンチャクなどに触ることが出来るようだ。


友香「へえ、触れるんだ」

友「ヒトデって、確かひっくり返しても元に起き上がれるんだよな」クルクル

友香「だからって、本当にひっくり返すのは可哀想でしょ」

友「ふれあいコーナーだし、たくさん触って楽しまないと。ほら、可愛いから触ってみなよ」

友香「……あっ、ヒトデって結構しっかりしてるんだ」クルリ

双妹「友香さん、そっちでヤドカリが歩いてる」

友香「ほんとだ。触っても良いのかなあ♪」

610以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/04(火) 00:22:05 ID:9QACQJ6A
少女「男くん、私たちはあっちの水槽を見に行きませんか?」

男「そうだな。ここは友に任せよう」

少女「見てみてっ。この水槽、魚がいっぱい生えてますよ!」

男「えっと、水族館の不動の人気者。チンアナゴとニシキアナゴだって」

少女「じっとして動かないし、砂の中はどうなっているんだろ」

男「雑草みたいに、ブワァーって根っこが生えていたりして」

少女「ええぇっ、変なことを想像させないでくださいよ〜」

男「少女さん、見てみて。あのニシキアナゴ困った顔してる」

少女「どれどれ?」

男「あの手前に生えてるシマシマ模様のやつ」

少女「ほんとだ、困ってる。きっと根っこが生えてるとか言ったからだよ」クスクス

611以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/04(火) 00:48:37 ID:lbXl2de2
少女「ねえねえ、あれは何かなあ」

男「クラゲの光ファンタジーだって」

少女「何だか面白そうだし、行ってみようよ♪」


俺は少女さんの要望に応えて、暗闇の中に入って行くことにした。
すると、その奥に幻想的な空間が広がっていた。
円筒形の大水槽やアクアリウム水槽が透明感のある青い光で照らされ、その中をクラゲがふわりふわりと漂っている。
しかもピンクや黄色、緑といった光を当てることでクラゲたちが光り輝き、本当に幻想的な世界に迷い込んでしまったかのようだ。


少女「わあぁ、すごい……」

男「そうだね」


俺は少女さんの手を取り、クラゲたちを見上げた。
そして揺らめく光に包まれ、いつしか心を奪われていた。

612以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/04(火) 22:13:58 ID:9QACQJ6A
双妹「やっぱり、ここにいた」

男「ああ、双妹。どうかしたのか?」

双妹「もうすぐ、イルカプールの時間だよ」

少女「わわっ! もうそんな時間なんだ。行くいくっ!」


イルカプールの時間が迫っていると知り、少女さんは慌てた様子で言った。
ここのイルカショーは触れ合い体験も実施しているので、俺もイルカに触るのが楽しみだ。


男「それじゃあ、行こうか」


俺たちは外で待っていた二人と合流し、急ぎ足でイルカの訓練施設に移動した。
そして、インストラクターの同伴でイルカプールに入場した。

613以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/04(火) 22:16:56 ID:utajcjjE
イルカ「キューキュー」

少女「いやん、可愛い〜//」

双妹「こっちに来てくれるかなあ」

友香「あっ、こっち見てるよ!」


スイスイ
ザバ〜ンッ・・・


双妹「わわっ、2頭も来てくれた!」

イルカ「キュッ」「キュ〜」

少女「……」

イルカ「キュキュッ」チラリ

少女「……」フワフワ

イルカ「キュゥ」「キューッ」チラッ

614以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/04(火) 22:21:39 ID:lbXl2de2
少女「……!」

少女「見えてる! このイルカさんたち、私のことが見えてるよ!!」

友香「イルカには健常者と障がい者を見分ける能力があって、障がい者を助けることが出来るって聞いたことがあるわよ。もしかしたら、それで少女の姿が見えているのかも!」

男「すごいな、イルカって」

友「霊感が人間以上に発達しているのかな」

双妹「多分、幽霊が珍しいんだよ。視線を独り占めだね」

イルカ「キューキュゥッ♪」ピトッ

少女「……?!」

少女「ねえ、みんな手を出してみて」

男「手を?」

少女「いいから、出してみて」

615以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/04(火) 22:25:37 ID:lbXl2de2
そう言われて俺たちが手を差し出すと、少女さんはみんなの手を触って回った。
俺と双妹、友に友香さん。
少女さんは幽霊なので、もちろん触ろうとしても手がすり抜ける。


少女「触れるよ! 私、イルカさんに触れるよっ!」ペタペタ

イルカ「キュウッ!」

少女「すご〜い、ツルツルしてる//」

友香「いいな、私も触りたい!」

双妹「ほんとだ、ツルツルしてる〜」

男「何だか、長靴のつま先みたいだな」

双妹「もう、そんなこと言わないでよっ!」

616以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/04(火) 22:28:51 ID:utajcjjE
少女「見てみて〜。イルカさんに乗ってみた♪」ふわふわ

イルカ「キュキューッ!」

友香「あはは、何やってるのよ〜」

友香「そうだ! 写真を撮るから、そのままでいてね」

少女「ええっ?! 私は写らないんだけど」

友香「いいのいいの。スマホには少女が写らなくても、私の心には映っているんだから」

少女「……うん、ありがとう」


少女さんがうれしそうに微笑すると、友香さんはスマホを構えた。
こんな状況でも、二人は今を楽しもうとしている。
そして、イルカプールにシャッター音が鳴り響いた。

617以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/04(火) 22:38:04 ID:lbXl2de2
・・・
・・・・・・
イルカプールで盛り上がったあと、俺たちはお昼ご飯を食べることにした。
そしてイルカの訓練施設に戻ってイルカショーに参加し、ペンギンの散歩に同行して、海の生態館でアザラシの泳ぎを堪能した。
友と友香さんを取り持つ作戦が成功したのかどうかは知らないけれど、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
最後に思い出補正付きで集合写真を撮り、俺たちは水族館を後にした。


少女「はあぁ、今日はすごく楽しかった」

友香「少女が水槽にもぐってアザラシに突撃したときは、少しびっくりしたけどね」

少女「だって、触れるかな〜って思ったから」

男「水槽にへばり付かされた俺の身にもなってくれよ」

少女「あはは♪ でも、どうしてイルカさんだけは触ることが出来たんだろ」

友「よく分からないけど、霊波動は波の性質があるから、イルカが出している超音波と干渉したのかもしれない」

少女「ふうん、不思議ですね」

618以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/04(火) 23:03:03 ID:utajcjjE
〜バス停〜
友香「男くんと双妹さんに話したいことがあるんですけど、ちょっと良いですか」

男「俺たちに話したいこと?」

少女「あ、ああ……。それじゃあ、私は友くんの所に行ってるわね」

友香「うん、ありがとう」


少女さんは友香さんに目配せをすると、気を利かせて隣のベンチに移動した。
一体、俺と双妹にどんな話があるのだろう。


友香「えっと、その……今日は来てくれて本当にありがとうございました」

男「こちらこそ、誘ってくれてありがとう」

双妹「私も気晴らしになって楽しかったです。今日はありがとう」

友香「そう言ってもらえて、本当に良かったです」

友香「先月の13日に少女が自殺をして、毎日がすごく苦しかった。でもこうして楽しい時間を一緒に過ごすことが出来て、別れは当然来るんだけど、それでも気持ちの整理が出来るようになりました。男くんと双妹さん、そして友くんのおかげです」

男「俺たちは何もしてないよ」

双妹「うん」

友香「それでも、男くんと双妹さんには感謝しているんです」

619以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/04(火) 23:11:08 ID:RxUZQAY.
友香「こういう話をするのはどうかと思うのですけど、私が看護師になりたいと思ったのは、男くんと双妹さんのことをテレビで見たからなんです」

男・双妹「テレビで?」

友香「はい。2分の1成人式のバラエティー番組に出演して、異性一卵性双生児の解説やNICUに入院しているときのエピソードなどが放送されましたよね。実は私にも双子の兄がいるんですけど、だから余計にそれを見て、生命の神秘や人々の想いに共感することが出来たんです」

友香「それでその、私が小学校3年生のときに死んでしまったお母さんのことを思い出して、もし私に医学の知識や看護の知識があれば何かが変わっていたかもしれない。そう考えると、居ても立ってもいられなくなって――」

男「それで看護師を目指しているんだ」

友香「そうなんです。男くんと双妹さんがいなければ、私は少女と出逢うことはなかっただろうし、生きる目標も見つけることが出来なかったと思います」

双妹「そっか、私たちの想いは友香さんに繋がっていたんだ……。人の縁って不思議ですよね」

友香「そうですよね。もしよければ、今度はみんなでお花見に行きませんか? その頃には少女はいないかもしれないけど、この繋がりを大切にしていきたいんです」

双妹「そうですね。私も楽しみにしています」

男「ああ、俺も楽しみにしてるよ。またみんなで遊びに行こう」

友香「はいっ♪」

620以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/04(火) 23:16:16 ID:utajcjjE
友香「それじゃあ、私は少女たちと話をしてきますね。聞いてくれてありがとう」


友香さんは軽く微笑み、隣のベンチに移動した。
そして少女さんと友の話に加わって、3人で談笑を始める。


双妹「ねえ、男」

双妹「今まで私たちのことを悪く言う人が沢山いたけど、それ以上に感謝してくれている人がいるのかもしれないわね。私が知らないだけで――」

男「そうかもしれないな。少なくとも俺たちが二卵性双生児なら、今日みんなでここに来ることはなかっただろうな」

双妹「……うん。それで今日、どうして少女さんは生きていないんだろうって思ってしまったの。今までは話を合わせていただけだったんだけど、一緒にいてすごく楽しかった」

双妹「少女さんの気持ちは誰に繋がっているんだろうね――」


双妹はそう言うと、少女さんを見詰めた。
その表情はとても優しく、そしてどことなく寂しげな面持ちになっていた。

621以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/05(水) 02:44:51 ID:dzf88gHg
おつ

622以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/10(月) 23:01:16 ID:tCoNXZIk
(3月7日)mon
〜自宅・部屋〜
月曜日の朝、久しぶりに双妹が起こしに来るよりも先に目が覚めた。
とりあえずベッドから降りて、暖房を入れて制服に着替える。
そして、俺に引っ張られて双妹の部屋からすり抜けてきた少女さんに声を掛けた。


男「少女さん、おはよう」

少女「男くん、おはよう。今日は早いですね」

男「何となく目が覚めてしまったから、もう起きようかなって」

少女「いつもこれくらいに起きれば、双妹さんが起こしに来なくて済むのに」

男「そうかもしれないけど、双妹は目覚まし時計の代わりにちょうど良いんだ」

少女「でも、だからって甘えるのは良くないと思いますよ」

男「じゃあ、今日は特別に俺が起こしてやるか」

623以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/10(月) 23:09:04 ID:ExT4FHac
〜双妹の部屋〜
トントン・・・
軽くノックをして、双妹の部屋に入る。
そして二段ベッドを見ると、双妹はまだ横になっていた。


男「月曜日だぞ。双妹、起きろーっ」

双妹「んぅ、ぉひへふ〜」


すでに起きていたらしく、くぐもった声で返事が返ってきた。
ちゃんと声を出せないのは、婦人体温計を口にくわえているからだろう。

異性一卵性双生児の俺たちが2ヶ月毎に受診している精密検査において、双妹は生殖機能の検査項目で基礎体温表を提出することになっている。
10歳の誕生日から毎朝測って記録していて、基礎体温表はもう5冊目だ。
大学病院がどのようにデータ活用をしているのかは知らないけれど、双妹は生理周期の把握や体調管理などに役立てているらしい。

それはそうと、いつもなら検温が終わっている時間のはずだ。
少し気になって様子を伺うと、双妹の顔色が悪く鼻をすすっていることに気が付いた。

624以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/10(月) 23:41:58 ID:ExT4FHac
男「もしかして、風邪を引いてるのか?」

双妹「……」コクリ

少女「昨日、水族館で冷えちゃったのかもしれないですね」


それだけなら良いのだけど、双妹のことが心配で心配で堪らない。
俺は検温が終わるのを待ち、双妹から婦人体温計を受け取った。

37.41℃


男「うわっ、かなり高いな……」

双妹「……はくちゅん……うぅっ、くしゅん……悪いけどノート取って」

男「ああ、分かったからじっとしてろ」


俺は基礎体温表とシャーペンを手に取り、双妹に手渡した。
そして記録が終わるのを待ちながら、折れ線グラフをぱっと見る。
今は生理後の低温期が続いている状態で、高温期の基礎体温と比べてみても、かなり異常な値を示しているようだ。


男「母さんに言っておくから、とりあえず寝てろよ」

双妹「うん、ごめん……くちゅんっ」

625以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/10(月) 23:59:35 ID:tCoNXZIk
〜最寄り駅〜
双妹は学校を休むことになり、俺は少女さんと最寄り駅に向かった。
その道すがら、友と合流した。


友「うっす!」

男「うっす!」

少女「友くん、おはよう」

友「双妹ちゃんは?」

男「風邪を引いて、学校を休むんだ」

友「……風邪?」

男「かなり熱が出ているみたいで、もしかしたらインフルエンザかもしれない」

友「ええっ?! 先週は妹友さんがずっと休んでいたし、今年はまだ流行っているのか」

男「そうみたいだな。早く治ってくれたらいいんだけど、マジで心配だよ」

友「そうだよな。俺も心配していたって、双妹ちゃんに言っといてくれ」

男「ああ、分かった」

626以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/11(火) 19:28:05 ID:XdxYYZ2I
〜学校・HR〜
学校に着いて教室に入ると、クラスのみんながざわめき立っていた。
先週末に集団パニックが発生し、ネット上では幽霊原因説が論争されているのだから仕方がないだろう。
そのことについては否定し続ける方針で定まっているので、俺が何かを言うつもりはない。

そう思っていると、不良グループが絡んできた。
不良とDQNは最初に暴れた男子生徒だが、状況が異常だったので厳重注意だけで済んでいる。


不良「おっす、やっと来やがったか」

友「お……おっす」ビクッ

男「うっす、俺たちに用でもあるのか」

不良「あるから声を掛けたんだろうが。友、怪我はもう大丈夫なのか」

友「えっと、その……来週中には治ると思う」

不良「そうか、悪かったな。悪霊だか何だか知らねえが、クスリをやっているせいで幻覚を見たのかと思ったぜ!」

友「……」

男「いやいやいや、不良が言うと冗談に聞こえないからっ!」

不良「まああれだ、俺たちのせいでお前らに迷惑を掛けたのは間違いないしな。今度、ジュースの1本でも奢ってやるから許してくれ」

DQN「それじゃあな。アデュー!」

627以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/11(火) 19:45:20 ID:..70nbaw
友「うおー、マジびびった……」ガクブル

少女「DQNくん、アデューって言ってたけど退学処分になったのかなあ」

男「いや、響きが格好いいから使ってるだけだろ」

少女「そうなんだ。それなら良いんだけど、もう学校に来なくなるのかと思って心配しちゃった」


不良グループはDQNを取り囲んで雑誌を読んでいるみたいだし、あいつらなりの謝罪だったのだろう。
憑依霊に乗っ取られて暴れていただけだし、これくらいがちょうど良いのかもしれない。
そう思いつつ席に着くと、今度は才女さんが話しかけてきた。


才女「あの……男くん。おはようございます」ペコリ

男「あ、ああ、おはよう」

才女「えっと……その…………」


才女さんは小さな巾着袋を抱えると、そわそわと視線を泳がせた。
そして、気まずい雰囲気に包まれていく。

628以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/11(火) 20:23:58 ID:RhuilIqM
男「もしかして、幽霊騒ぎのこと?」

才女「は……はいっ! えっと、少し言いにくいのですけど、お身体は大丈夫でしたか」

男「あ、ああ……。あれくらいなら、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」キリッ

才女「良かった……。私、あんなことをしてしまった自分が怖くて、それでずっと謝りたいと思ってて……。幽霊のせいとか信じられないけど、私がその……してしまったことだと思うから、だから…………本当にごめんなさいっ」

男「うん、もう大丈夫だから」

才女「そ……それで、少しでも早くお身体が良くなるようにと思いまして、カキフライを作って来ましたの。よろしければ、召し上がってください」


才女さんは上ずった声で言うと、巾着袋を机の上に置いた。
お弁当のおかずでカキフライって、食べても大丈夫なのだろうか。
俺は紐を緩めて、恐る恐る中を覗き見る。
すると、才女さんがカキフライに対する思いの丈をぶつけてきた。

629以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/11(火) 20:39:04 ID:RhuilIqM
才女「牡蠣には亜鉛が多く含まれていて、男性の精力増進に効果があるそうなんです。クエン酸やビタミンCを含む食べ物と一緒に食べると吸収率が良くなるので、レモンを搾って召し上がってくだされば宜しいかと思います。ですから、タルタルソースではなくてカットレモンを入れて――」

男「わわっ、説明はもういいからっ。気を使わせたみたいで悪いけど、本当にありがとう。お昼休みに美味しく食べさせてもらうよ」

才女「は……はいっ、どうぞ召し上がってください」ソワソワ


才女さんが席を離れると、今度はデブとガリがやって来た。
双妹が欠席していることに気付き、自分たちのせいで休んでいるのではないかと考えると怖くなってきたらしい。
そして半泣きになりながら、双妹にしたことを謝ってくれた。


男「お前たちが謝ってくれたことは双妹に伝えておくから、二度と同じことをするなよ」

デブガリ「ううっ……本当にすいませんでしたぁ!!」

630以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/11(火) 20:47:10 ID:RhuilIqM
男「……はあ、やっと席に戻ってくれたし」

少女「ネット上で幽霊のせいだと言われているのに、みんな謝ってくれるだなんて――。本当のことを言えないのが、何だか心苦しいです」

男「憑依霊のことは黙っているしかないんだから、それは仕方ないよ。内心では色々と思うところはあるのかもしれないけど、みんな本当に良いやつらだよな」

少女「……うん、そうだね」


少女さんは寂しそうに言うと、教室を見渡した。
俺も釣られて、教室を見渡す。
友の席には女子が集まっていて、何だか満更でもなさそうだ。

その様子を見ているとチャイムが鳴り、HRの代わりに校内放送を利用した臨時の全校集会が始まった。
憑依霊のせいで全校生徒を巻き込んだ集団パニックになってしまったが、雨降って地固まる。
小中学生の頃とは違う、そんな何かを感じられた。

631以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/18(火) 23:55:40 ID:uvno5Y4Y
〜学校・お昼休み〜
午前中の授業が終わり、お昼休みになった。
才女さんが作ってくれたカキフライは油っぽくなく、真牡蛎の濃厚な味わいを楽しみながらレモン汁でさっぱりと食べることが出来た。
これは他のおかずも食べてみたくなるレベルだ。


男「才女さん、カキフライありがとう。すごく美味しかったです。タッパーは洗って返したほうがいいのかな」

才女「そのままでも大丈夫ですよ。また明日も何か作ってきますね」

少女「……」ジー

男「それは気持ちだけ受け取っておくよ。彼女に怒られそうだし」アセアセ

才女「あ、ああ……それは困りますよね」

男「じゃあ、今日はありがとう。ごちそうさま」

才女「どういたしまして。私のほうこそ、申し訳ありませんでした」ペコリ

632以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/19(水) 00:16:14 ID:EgYSAV/k
少女「ねえ、男くん」

男「何?」

少女「私だって、身体があれば美味しいお弁当を作れるんだからね!」

男「分かってるって。少女さんは家庭科の成績良さそうだし」

少女「むぅっ、信じてないでしょ……」

妹友「男く〜ん、誰と話してるの?」


少女さんと話をしていると、妹友さんが不思議そうな顔で声を掛けてきた。
最近は文字入力が面倒で普通に話をすることが多かったけれど、やはり周囲の人からは異様な光景に見えるのだろう。


男「実は彼女と話をしていたんだ」キリッ

妹友「あはは、少しキモいよ」

男「ずばっと言うなあ」

少女「……」

633以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/19(水) 00:20:19 ID:sOXpK.Jk
男「それで、どうかしたの?」

妹友「双妹ちゃんからメッセが来てたんだけど、やっぱりインフルエンザだって」

男「そうだったみたいだな。それで、ぐったりした卵キャラのスタンプが送られてきたよ」

妹友「あっ、へばってて可愛い//」


スマホを見せると、妹友さんは頬を緩ませた。
インフルエンザは心配だけど、遊び心があるようだから精神的な余裕はありそうだ。
暖かくして寝ていれば、すぐに治るだろう。


妹友「双妹ちゃんには悪いことしちゃったな。これって、私がうつした感じだよね」

男「まあ、そうだろうな」

妹友「ううっ、映画は春休みまでお預けか」ショボン

634以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/19(水) 00:28:01 ID:nc2MEiWY
友「なあ、男。大事な話があるんだけど、ちょっといいか」


妹友さんと話していると、今度は友がやって来た。
そして何を思ったのか、友はさりげなく手を伸ばして妹友さんの胸を触った。
妹友さんはそれに驚き、反射的に友の腕を払いのける。


妹友「いきなり何するのよっ!」

友「妹友さん、ごめん。足を怪我しててふらついて……」

妹友「はあ? もう信じらんないっ!」


妹友さんは不愉快そうに友を睨み付けると、自分の席に戻っていった。
友はその背中を見遣り、真剣な表情で俺の前の席に座る。


男「今のはさすがに不味いだろ。普段から仲が良いって訳じゃないんだし」

少女「そうですよ。セクハラだと思います!」

友「それなんだけど、妹友さんは憑依霊に憑かれていたんだ」

635以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/19(水) 00:31:45 ID:nc2MEiWY
男「ちょっと待て! クラスのみんなには低級霊が寄り付かないようにしているはずだろ」

少女「……!」

少女「妹友さんは学校を休んでた」

男「そうか! あの日、妹友さんだけはいなかったんだ」

友「ああ、そうなんだ。俺もそのことを失念していて破魔の印を施すことにしたんだけど、どうやら少し遅かったみたいだ。鳩尾に触って調べてみたら、わずかに霊的な痕跡が残されていた」

男「でも、集団パニックがあったのは金曜日だよなあ。憑依霊に取り憑かれていた痕跡が残っているのは、おかしくないか?」

友「月曜日だ。双妹ちゃんも少女さんの姿が見えているから、低級霊たちは何かあると考えて、友達の妹友さんに監視の目を付けていたんだろう」

男「そうなると、この1週間、妹友さんには低級霊が憑きっぱなしだったことになるんじゃないのか?!」

少女「じゃあ、もう男くんの家がバレてる!!」

636以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/19(水) 23:43:20 ID:stUbnw.o
友「どういうことだよ」

男「土曜日に妹友さんが遊びに来たんだ。でも、憑依されているような感じではなかったぞ」

少女「そうですよね。私もまったく分からなかったです」

友「だけど、憑依されていた痕跡が残っていたんだ。間違いなく、何らかの欲望を利用して意識を支配されていたはずだ」

男「くそっ、映画だ! 双妹と一緒に映画を観に行く約束をしていたけど、風邪を引いていて我慢するしかない。その気持ちに付け込んで、双妹に会いに行かせたんだ」


憑依霊は欲望や不安、抑圧した気持ちに付け込んで意識を支配して来る。
そこから生じる攻撃的な衝動は、何も暴力だけとは限らない。
雨が降っている中、風邪を引いているにもかかわらず映画を観に行こうとする。
そのような強硬手段に出ることも、立派な攻撃衝動だ。


少女「じゃあ、どうして私たちに何もしてこなかったのでしょうか」

友「恐らく、少女さんの居場所を突き止めた時点で、妹友さんの役目が終わったからだろうな。それなのに不自然なことをしてしまったら、俺たちに警戒されてしまうだろ」

少女「あっ! そうですよね」

637以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/19(水) 23:50:12 ID:sOXpK.Jk
友「それにしても、男の家がバレたということは、いよいよリーダー格の悪霊が出てくる事になるだろうな。男から少女さんを引き剥がさないといけないし」

男「ついに直接対決ってことか」

友「問題はどうやって少女さんを引き剥がすかだけど、一番簡単な方法は男を殺すことだ」

男「……は?」

少女「男くんを殺すって、どういうことなんですかっ?!」

友「人間は死んだ後、肉体から幽体や霊魂が離脱して幽霊になるだろ。つまり、依り代が死ねば憑依霊も離脱することになるんだ」

友「でも、この一番簡単な方法が最も実行することが出来ない方法なんだ。本気で殺してしまいたいと思われるほど、誰かに恨まれているなんてことはないだろ」

男「そりゃあな」

友「つまり、男を殺す以外の方法で少女さんを引き剥がす必要があるってことだ。その場合に一番簡単な方法は、四十九日を過ぎるのを待つことだ」

638以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/19(水) 23:54:32 ID:nc2MEiWY
少女「ただ待つだけなんですか?」

友「その日を境にして、少女さんは幽体が劣化して悪霊になるだろ。そうなれば、少女さんは男の守護霊に弾き出されることになるからな」

少女「ええっ、そうなんですか?!」

友「忘れているみたいだけど、少女さんが男に憑依出来ているのは四十九日を迎えていない浮遊霊だからだよ」

少女「そういえば、そんなことを言ってたっけ……」

男「殺せないし待つしかないってことは、当面は大丈夫ってことか。もし俺を殺すつもりなら、集団パニックのときに俺が優先的に狙われていたはずだしな」

少女「そうですよね。そうなると、私がちゃんと成仏できれば問題ないってことになりますね」

639以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/19(水) 23:56:20 ID:stUbnw.o
友「それがそうじゃないんだ。双妹ちゃんは風邪を引いているから、守護霊の力が弱くなっているはずだ。そして低級霊が妹友さんに付き纏っていたことから考えて、そのことに気が付いている可能性が高い」

男「じゃあ、今は双妹が危険な状態ってことなのか?!」

友「そうだと思う。でも、殺人衝動がなければ憑依する意味がないだろ。とりあえず相手の出方を見ながら、男は風邪をうつされないように気を付けてくれ」

男「分かった」

少女「破魔の印は効果がないんですか?」

友「守護霊の力を利用しているから、今の状態では効果を期待できない。風邪が治れば守護霊の力も強化された状態に戻るし、それまで様子を見るしかないと思う。双妹ちゃんは男と仲が良いし、何も心配はないと思うよ」

少女「仲が良い……ねえ」

少女「とりあえず、今日は帰りにマスクを買って帰りましょうか」

男「ああ、そうしよう」

640以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/20(木) 00:07:11 ID:6K4keb5s
友「んっ、ちょっと悪い。重要なメールが来たみたいだ」


友はそう言うと、スマホを取り出した。
そしてメールを読み始めて、目を丸くした。


友「――マジか!!」

男「どうかしたのか?」

友「例の幽霊探知機を修理に出していたのは知ってるだろ」

男「ああ、以前少女さんが壊したやつな」

友「それなんだけど、壊れていなかったんだ!」

男「良かったじゃないか」

少女「そうですよね。私が壊した訳じゃなくて、ほっとしました」

友「それだけかよ! 壊れていなかったということは、全国各地に少女さんの幽体があるっていう探知結果が正しかったことになるんだぞ!!」

641以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/20(木) 00:18:34 ID:6K4keb5s
男「ええっ?! あれって、確かたくさん表示されていたよな」

友「そう、それがすべて本当に少女さんの幽体だったんだ!」

少女「それって、どういうことなんですか?!」

友「ごめん、それはまだ分からない。業者に症状を説明しているんだけど、前例がなくて分からないみたいなんだ」

少女「そうなんですね。どういうことなんだろ……」

友「それと幽霊探知機が10日に返送されてくるから、うさぎのぬいぐるみに残されていた痕跡を調べてみようと思う。それでもしリーダー格の悪霊と関連性があれば、多くのことが一気に解決するはずだ」

男「おおっ、すげえじゃねえか!」

友「このピンチを乗り切って反撃するぞ!」

男「おうっ!」

642以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/20(木) 06:10:01 ID:Rjx8SiAE
おつ

643以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/24(月) 21:10:59 ID:mKHiXUy.
〜自宅・部屋〜
放課後になり、マスクを買って自宅に帰ってきた。
友とはいつも通りに別れ、家には呼ばないことにした。
俺たちが気付いたことに気付かれないために、あえて除霊をしないという方法を選ぶことにしたからだ。


男「少女さん。双妹のことが心配だから、ちょっと様子を見てきてくれる?」

少女「そうですね。もし起きていたら体調も聞いてきます」

男「ああ、頼むよ」


少女さんは壁をすり抜けて、双妹の部屋に入った。
普通の風邪なら俺も様子を見に行きたいところだけど、インフルエンザは感染性が高いので仕方がない。
俺も部屋で大人しくしているほうがいいだろう。
そう考えていると、少女さんが戻ってきた。

644以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/24(月) 21:15:01 ID:EI7f9ivQ
男「おかえり、双妹はどうだった?」

少女「熱はかなり高いけど、食欲はちゃんとあるらしいです。大人しく横になっていれば、悪化の心配はなさそうですよ」

男「そっか、良かった」

少女「それでですね、双妹さんが図書館で借りている本なんですけど、明日が返却日らしいんです。返しに行けないから返してきて欲しいって頼まれたんですけど、どうしますか?」

男「明日までで良いなら、明日の学校帰りに返しに行こうか」

少女「……そうですね」


少女さんは気が進まないといった様子で、返事を返してきた。
俺も今は双妹の部屋に入るのを控えた方が良いとは思うけれど、特別な事情があるのだから仕方がない。
とりあえず、さくっと図書館の本を受け取りに行くことにした。

645以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/24(月) 21:19:58 ID:h8Pr7HNo
〜双妹の部屋〜
トントン・・・
俺は軽くノックをして双妹の部屋に入った。
双妹はちゃんとベッドで寝ているようだ。


男「双妹、風邪は大丈夫か?」

双妹「男、おかえり……。はくちゅん、くしゅん…………うぅ、何とか大丈夫」

男「ゆっくり休んで、早く治せよ」

双妹「……うん」

男「それで図書館の本って、どこにあるんだ?」

双妹「いつものところに3冊と男に渡した本が1冊。あれ、どうだった?」

男「少女さんとはタイプが違うけど、面白かったよ。主人公はあの後、日常に戻っていくんだろうな」

双妹「私は男と少女さんの関係も、そんな感じで終わってほしいと思ってる」

男「そっか……」

少女「……」

646以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/24(月) 21:22:24 ID:7Nxxdq4o
俺は双妹と軽く話をしながら、図書館の本を手に取った。
用事も済んだし、さっさと出て行くことにしよう。


男「じゃあ、明日返してくるから」

双妹「……くしゅんっ」

双妹「はうぅ……もうひとつ言いたいことがあるんだけど、今日から私が一緒じゃないからって、お風呂で変なことをしたら許さないからね」

少女「し……しませんよっ//」

男「そうそう」

双妹「……」

男「それじゃあ、もう部屋に戻るから」

双妹「うん、心配してくれてありがとう。図書館の本、お願いね」

男「ああ、分かったよ」

647以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/25(火) 21:47:26 ID:DcafSPis
(3月8日)tue
〜北倉駅・放課後〜
授業が終わり、俺は双妹に頼まれていた図書館の本を返しに行くことにした。
学校前の駅から電車に乗って、自宅の最寄り駅を通り過ぎて北倉駅。
そこを出て、歩いてすぐのところに図書館がある。

そう、目の前にある。
それなのに、行くことが出来なかった。


友「男、どうかしたのか」

男「いや……何て言うか、ここに見えない壁があるみたいで」

友「見えない壁?」

少女「……ごめんなさい」


背後から少女さんのしょんぼり声が聞こえてきた。
俺はまさかと思い、振り返る。
すると、俺たちは約1.5メートルの行動範囲に縛られていた。

648以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/25(火) 22:06:03 ID:UsCBEXxI
男「もしかして、図書館に行きたくないってこと?」

少女「そんなことはないんですけど、何となくここから出るのが嫌なんです」

男「ここから出るのが嫌だって言うけど、今までそんなことは一度もなかっただろ」


少女さんが入院していた北倉総合病院と、日曜日に行った水族館。
そのどちらに行くときも、少女さんが嫌がることはなかった。
それなのに、どうして今日は嫌なのだろう。


少女「……すみません」

友「とりあえず返却するくらいなら俺でも出来るから、代わりに行ってこようか」

男「そうだな。悪いけどそうしてもらえるかな」


仕方なく、通学鞄から図書館の本を取り出す。
そして友に渡そうとすると、ふいに女子生徒に声を掛けられた。

649以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/25(火) 22:08:32 ID:UsCBEXxI
友香「こんにちは。こんな所で何をしてるの?」

友「あっ、友香さん。こんにちは」

男「こんにちは。俺たちは今から図書館に行こうとしていたんだけど、あのときみたいに動けなくなって。それで、友に本を返しに行ってもらおうとしていたところなんだ」

少女「……」ショボン

友香「ふうん」

友「友香さんは今、帰り?」

友香「そうだよ。今日は部活がないから」

男「……!」

男「もしかして、少女さんは学校に行きたくないんじゃないのか?!」


少女さんが通っている北倉高校。
そこに行きたくないのだと考えれば、総合病院や水族館に行けた理由が自然と分かる。
徒歩ではなくて、北倉駅に併設されているバス停を利用したからだ。

650以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/25(火) 22:10:51 ID:chudDYkc
少女「……そうです」

少女「学校に行ってはいけないような気がするんです」

男「やっぱりそうか。学校に行きたくないから、通学路に出たくないということだったんだ」

友香「少女が自分の部屋に戻りたくないのは分かる。でも、どうして学校にも行きたくないの?」

男「そうだよな。少女さんは看護師になる夢を真剣に考えていたし、行きたくない理由がない」


いや、待てよ。
本当にそうなのか?


友「しまった!!」

友香「まさか、そんな――」

少女「……私、分かっちゃった」


そう呟いた少女さんの表情は、とても冷たくて――。
そして、ぞっとするような乾いた笑みを浮かべていた。

651以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/25(火) 23:34:19 ID:chudDYkc
少女「あははは……、そっか……そうなんだ…………」

少女「私、少年くんに取り憑かれて自殺したんだ!」

少女「……どうして、どうしてなのっ?!」

男「少女さんっ!」


俺は通学鞄を投げ捨て、少女さんを抱き寄せた。
すると上半身と両腕に少女さんの身体を感じ、温もりが伝わってきた。
大丈夫だ。
彼女はまだ俺を求めてくれている――。


少女「ううっ……うわあああぁぁんっ…………!!」

少女「こんなことで死にたくない。いやだ、いやだよぉ……」

少女「ねえ、私は何のために生まれてきたの。何のために、今まで頑張ってきたの?!」

少女「分からない、分からないっ!」

少女「……ううっ、ううぅぅぅっ…………」

652以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/26(水) 00:01:59 ID:5r7j3qhI
男「分からないことがあるなら、それが見つかるまで一緒に探そうよ。少女さんは一人じゃないんだから!」

友香「そうそう! 私もいるんだし、絶対大丈夫だよっ!」

少女「男くん、友香ちゃん……」

友「俺もだ!」

少女「みんな…………私は、もう……死んでいるんだよ。生きている人と一緒にいることなんて出来っこない!!」

男「そんな事はないっ! 少女さんは死んでないし、俺たちの心の中でずっと生き続けているんだ!」

友香「そ……そうだよ。水族館で撮った写真、私たちには少女の姿が見えているんだからっ!」

少女「ぐすっ、ううっ……そんなのいやだよ…………思い出の中でしか生きられないなんて――」

男「少女さん、ごめん。生きている俺たちでは、やっぱり少女さんの気持ちを分かることは出来ないのかもしれない。でも話をすることが出来て、姿を見ることが出来て、少女さんと一緒にいるとすごく楽しいんだ」

男「この繋がりを大切にしたい。そして、少女さんの気持ちがみんなに繋がっていくようなことを一緒に探したいんだ!」

少女「ううっ、うあああんんっ…………!」

653以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/26(水) 00:23:31 ID:7DszYVlA
理不尽な死を突き付けられ、ただただ泣き叫んでいる少女さん。
やがて気持ちが落ち着いたのか、少女さんの身体が俺の腕をすり抜けた。
その表情は暗く沈んでいるが、先ほどまでのような不安はまったく感じない。


男「少女さん……」

少女「……」

友「とりあえず、気持ちが落ち着いたなら移動しよう。人が集まってる」

少女「……はい」

友香「じゃあ、反対側に行きましょ」

友「そうだな」

少女「……」


俺たちは通学路とは反対方向に進み、駅前の広場に移動した。
ここならば人も少ないし、落ち着いて話すことが出来そうだ。

654以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/26(水) 00:41:08 ID:5r7j3qhI
友「えっと……少女さんに言っておきたいんだけど、いや、言ったところで何も変わらないかもしれないけど、少女さんは少年に成すすべなく殺された訳ではなくて呪いに打ち勝ったけど死んでしまったんだ」

少女「どういう……こと、ですか」

友「憑依霊は依り代が死ねば、その肉体から離脱するんだ。だからもし少女さんに少年の霊が憑いていたとすれば、病院で少女さんが幽体離脱をしたときに少年の霊も一緒に肉体から離脱していたはずだ。でも、幽体離脱をしたときに少年はいなかった」

少女「……はい」

男「つまり、少女さんは憑依されていなかったということか」

友「そういうことだ。そもそも、少年は少女さんに憑依することが出来なかったんだ。だから、うさぎのぬいぐるみに霊的な痕跡が残っていたんだ」

男「うさぎのぬいぐるみの痕跡は少年のものだったのか?!」

友「それは未確認だけど、聞いた限りでは少年の痕跡で間違いないと思う。少女さんに心霊催眠を試したとき、うさぎのぬいぐるみを手に取ったときから感情が反転していたからな」

655以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/26(水) 00:53:45 ID:UdcFhXDo
友香「うさぎのぬいぐるみに憑依しても、少女に憑依出来ないなら同じことじゃないの?」

友「それが同じじゃないんだ」

友「少女さんは男に彼女がいると思っていたし、男に告白するとマスコミに悪質な記事を書かれると思っていた。それでも男に告白しようと決意できるほど、前向きに考えることが出来る女子なんだ」

友「だけど少女さんには、うさぎのぬいぐるみに自己投影をして相談をする習慣があった。少女さんはそこに心の弱さを見出されて、少年に付け込まれて呪われたんだ」

少女「……」

友「でも、無い袖は振れない。自殺の意思がない少女さんは、意識を完全に支配される直前に打ち勝ったんだ。だけど、首を通した後だったので助からなかった。それが少女さんの自殺の真相だ」

友香「少女は少年くんに……自分の弱さに負けた訳じゃなかったんだ」

友「ああ、そうだよ。少年は少女さんが意識を取り戻して強引にぬいぐるみから切り離されたせいで、一時的に霊的な力を大きく消耗してしまった。だから友香さんや家族にも憑依できなかったし、救急車を追跡することも出来なかった」

友「そのおかげで、少女さんは男に会えたんだ」

656以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/26(水) 00:57:09 ID:0urfkMkY
少女「そっか……、私……頑張ったんだ…………」

友香「ねえ、友くん。何とかできないの?!」

友「何とかって、何をさ」

友香「少年くんを除霊することに決まってるじゃない! このままだと少女が救われないし、そんなの私も嫌だよっ」

友「明後日になれば、幽霊探知機が返送されて来るんだ。そこで一気に除霊する」

友香「明後日じゃなくて、今すぐ出来ないの?」

友「俺も出来ることならそうしたいけど、居場所を特定してから攻撃しないと双妹ちゃんが危ないんだ。だから、幽霊探知機が帰ってくるまで動かないほうが懸命だと思う」

友香「そういえば、男くんの家がバレてるんだっけ……」

友香「分かった。こうなったら明後日でもいいから、徹底的にお願いね!」

友「ああ、それは任せとけ」

657以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/26(水) 01:20:33 ID:0urfkMkY
男「それじゃあ、少女さん。俺たちは家に帰ろうか」


今日は少女さんにとって、いろいろあり過ぎた。
気持ちの整理をする時間が必要だと思う。
そう考えて声を掛けたが、少女さんは力強く顔を上げていた。


少女「ううん、私は図書館に行く」

少女「私は……少年くんなんかに…………負けたりしない!」


図書館は通学路を歩くことさえ出来れば、すぐ目の前にある。
しかし、そこに行くためには殺された恐怖に打ち勝たなければならない。
それでも、少女さんは前に歩み出した。

658以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/26(水) 22:46:35 ID:azV/wDwg
おつ

659以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/01(月) 23:35:17 ID:gnr0Nuk2
(3月9日)wed
〜自宅・部屋〜
少女「男くん、おはよう。朝ですよ」

男「……少女さん、おはよう」


水曜日の朝、いつもの時間に少女さんが起こしに来てくれた。
昨日は大変なことがあったというのに、いつもと変わらない表情で微笑んでいる。
やっぱり、少女さんは強い人だと思う。

それはそうと、何だか動く気になれない。
頭がぼんやりして、強い寒気を感じる。


男「……はっくしょん…………」

少女「もしかして、風邪を引いたのですか?」

男「そうかも――」


俺は身体を起こして、おでこに手を当てた。
何となく、少し熱い気がする。
マスクをしたり注意はしていたけれど、双妹から風邪をもらってしまったのかもしれない。

660以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/01(月) 23:38:48 ID:ekzoC0lU
少女「双妹さんのインフルエンザがうつったのなら、学校は休んで病院に行ったほうが良さそうですね」

男「でも、今は大切な時期だし寝ている訳にはいかないだろ」

少女「気持ちはうれしいけど、今は休んでください。私のことより、男くんの身体のほうが心配ですから」

男「少女さん、ごめん……」

少女「とりあえず、お母さんに話さないといけないですね」

男「……そうだな……へっくしょん…………。うぅ、さむっ」


外は強い雨が降っているらしく、部屋がいつもより薄暗い。
俺は暖房と明かりをつけて、部屋着に着替えた。
そして少女さんを見ると、何となく落ち着かない様子で何もない場所を眺めていた。


男「どうかした?」

少女「いえ……何となく見られているような気がしたので――」

男「何だかんだで、俺と双妹は有名人だからなあ。気にしないほうが良いと思うよ」

少女「……」

661以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/01(月) 23:42:10 ID:ilEmohKw
〜リビング〜
男「……うぅ、母さん、風邪を引いたかも」

母親「熱はあるの?」

男「今から測ってみる」


俺は救急箱から体温計を取り出し、熱を測ることにした。
ぼんやりする頭で待つこと3分。


男「……37度9分」

少女「やっぱり、双妹さんからもらってしまったみたいですね」

母親「かなり高いわねえ。とりあえず、部屋で暖かくして寝てなさい。朝ご飯を食べたら病院に連れて行ってあげるから」

男「……分かった」

662以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/01(月) 23:48:55 ID:gnr0Nuk2
〜部屋〜
俺は気怠い足取りで部屋に戻り、ベッドの中に潜り込んだ。
それからしばらくして、スマホに電話が掛かってきた。
俺は仕方なく身体を起こし、棚の上に手を伸ばしてスマホを取る。
どうやら、友が心配して掛けてきてくれたようだ。


男「もしもし、友?」

友『もしもし。そろそろ電車が来るんだけど、どうかしたのか?』

男「実は風邪を引いてしまったみたいで、これから病院に行くんだ」

友『マジかよっ!』

男「悪いけど、今週は休むことになりそうだ」

友『大丈夫だとは思うけど、一応気を付けろよ。何かあったら、すぐに連絡してくれ』

男「ああ、そうする。じゃあな」

663以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/01(月) 23:59:18 ID:gnr0Nuk2
電話を切ると、ノックの音がして双妹が部屋に入ってきた。
どうやら、俺の様子を見に来てくれたようだ。


双妹「男、おはよう。私の風邪をうつしちゃったね」

男「おはよう。結構、気を付けていたんだけどな――」

双妹「熱はあるの?」

男「さっき測ったら、37度9分だった。双妹はもう大丈夫なのか?」

双妹「私は36.98だったよ。後で普通の体温計でも測り直すつもりだけど、熱も下がってきたし体力が出てきたかも……くしゅん」

少女「まだ大人しく寝ていたほうがいいですよ」

双妹「はいはい。じゃあ、部屋に戻るわね」

男「そうだな。来てくれてありがとう。双妹もゆっくり寝てろよ」

双妹「……うん//」

664以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/02(火) 20:13:34 ID:bMV6LAuM
〜かかりつけの病院〜
朝ご飯を食べた後、俺は母さんに連れられてかかりつけの病院に行くことになった。
俺と双妹は異性一卵性双生児として研究協力をするために、大学病院で精密検査を受けている他に既病歴やカルテなども管理されている。
だから新しい病院に掛かる時は大学病院に連絡をしないといけないし、風邪などを引いたときは協力関係にあるかかりつけの病院に行かなければならない。


看護師「男くん、どうぞ〜」


かかりつけの病院に着き、待合室で待つこと30分。
ようやく、俺の名前が呼ばれた。
そして診察室に入ると、医師は問診表を片手に俺を見た。


医師「熱が高いみたいですね。インフルエンザの検査をしてみましょう」

男「……はい」


検査の結果、インフルエンザウイルスに感染していることが判明した。
やはり、双妹からもらってしまったようだ。

665以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/02(火) 20:23:21 ID:5ly4mtX2
〜自宅・部屋〜
薬局で吸入粉末剤を2本吸入し、家に帰ってきた。
治療はこれで終わりで、他には解熱剤を少し処方されただけだった。
たくさん薬を渡されると思っていたので、ちょっと拍子抜けだ。


少女「私がばっちり看病して見せますから、今日はもうゆっくり寝てくださいね」

男「……はあ、そうするか」


俺は意気込む少女さんを見遣り、パジャマに着替えてベッドに潜った。
すると少女さんの手が毛布をすり抜けて来て、俺の手に触れた。
こうして近くにいてくれるだけで、すごく安心する。


男「少女さん。風邪が治ったら、また一緒に遊びに行こうか」

少女「そうですね。楽しみにしています♪」

666以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/02(火) 20:25:50 ID:5ly4mtX2
母親「男、ちゃんと寝てる?」


しばらくして、母さんが様子を見に来てくれた。
今からどこかに出掛けるらしく、冬物のコートを着ている。


男「うん、寝てる」

母親「それなら良いんだけど……ひとつ聞いていい?」

男「聞くって何を」

母親「少女さんのことで、何か隠してない?」

少女「……!」

男「隠すって何をだよ」

母親「先週の金曜日、学校で集団パニックがあったでしょ。その後から、家に何かがいるような気配を感じるのよね。気のせいかと思っていたんだけど、男なら知ってるんじゃないかと思って」


母さんは若い頃に友の家の神社で働いていた。
少女さんの姿は見えないようだけど、低級霊の気配は感じることが出来るのだろう。
だけど、低級霊に俺たちが気付いていることを気付かれる訳にはいかない。

667以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/02(火) 20:27:58 ID:QTev1Qv2
男「今は風邪を引いてだるいから、治ってからにしてくれるかな」

少女「本当のことを言わないんですか?! お母さん、きっと私のことも知ってますよ」

母親「そう……まあいいわ」

男「……」

母親「それじゃあ、買い物に行ってくるから大人しく寝てるのよ」

男「分かった」

母親「あと……何かあったら、すぐに連絡しなさい。急いで帰るから」


母さんは言い含めるように言うと、部屋を出て行った。
きっと、これで良かったのだ。
明日になれば、低級霊たちをすべて除霊出来るのだから――。

668以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/02(火) 20:31:55 ID:.tt/dfC.
少女「ねえ、どうして本当のことを言わなかったんですか」

男「言える訳ないだろ。少女さんが死んでいる人だなんて」


俺はそう言いつつ、少女さんに目配せをした。
この会話も低級霊たちに聞かれているかもしれない。


少女「あ……ああ、そうですよね」

男「ごめん」

少女「それじゃあ私、双妹さんの様子を見てきます。そっちも気になるので――」


少女さんは取り繕うようにして言うと、壁をすり抜けて双妹の部屋に入っていった。
そしてそれと同時、少女さんの悲鳴が聞こえた。

669以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/06(土) 05:20:11 ID:/ZWkaV6E
何があった

670以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/08(月) 19:17:32 ID:qAA63VlY
少女『きゃあああぁぁぁっ!!』

男「な……なんだ?!」


俺は何事かと思い、壁を見る。
すると、少女さんが青ざめた表情で俺のベッドに飛び込んできた。
そして声を震わせる。


少女「見える……見えるのっ!」

男「見えるって、何のことだよ」

少女「低級霊が双妹さんの部屋にいるの。あ……あああ、こっちに入ってきた」

男「低級霊が見えるって、どういうことだよ。少女さんには見えないんじゃないのか?!」


違うっ!
友が言っていたはずだ。
少女さんは俺の守護霊が守っている範囲の中にいるから、他の浮遊霊の姿が見えないのだ――と。
つまり、俺が風邪を引いて守護霊の力が弱くなってきたから、低級霊の姿が見えるようになったのだ。

671以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/08(月) 19:21:13 ID:rD8RnIkY
少女「どうしよう。友くんに電話をしたほうがいいんじゃないの?!」

男「そ……そうだな!」


俺はそう言いつつ、重たい身体を起こす。
そしてベッドに腰をかけ、棚の上のスマホに手を伸ばした。

なぜ、急に低級霊の姿が見えるようになったのか。
それは見えるようになっていたけど、俺の近くに低級霊がいなかったからだ。

なぜ、俺の近くにいなかったのか。
それは、俺が母さんと一緒にいたからかもしれない。
巫女をしていた母さんならば、低級霊を追い払うことが出来るのだ。

そうだ。
電話をするなら、今は学校にいる友ではなくて母さんだ。


男「うぐっ?!」

少女「うそ……いやっ…………中に入ってくる。だめっ、だめえっ!!」

672以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/08(月) 19:26:21 ID:ku1ArhBA
男「少女さん、俺にも見えるようにしてくれ!」

少女「えっ?!」

男「前に友が言ってただろ。少女さんが見ているものを、俺にも見せてくれ!」

少女「い……いいの?!」

男「早くっ!」


まるで金縛りにあったかのように動かない身体。
この状況を打開するためには、まずは見えるようにならないといけない。
そう思った次の瞬間、どす黒くただれた不定形の化け物が何体も俺にまとわり付いているのが見えるようになった。


男「うあああぁぁっ!!」

少女「男くんっ!」

男「だらくそっ! こんなやつらが俺たちに――!!」

673以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/08(月) 19:29:31 ID:gFr08i/o
双妹「ねえ、何を騒いでるの?」


ふと声が聞こえた場所を見ると、いつの間にか双妹が俺の部屋に入っていた。
俺たちの声に驚いて、様子を見に来てくれたのだろう。
だけど、最悪のタイミングだ。

いや……。
すでに双妹は若い男の低級霊に憑依されていた。


男「双妹っ!」

少女「あっ……あああ…………少年くん……」

男「何だって?! こいつが少女さんを!」

674以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/08(月) 19:34:45 ID:gFr08i/o
少年「少女さん、やっと会えたね!!」

少女「そんな……どうして、こんなことを――」


少女さんは及び腰ながら、声を振り絞った。
図書館に本を返しに行ったときのように、顔を上げて向き合おうとしている。


少年「僕がどんな気持ちだったのか、人殺しのキミには分からないんだね。少女さんのことが好きで好きで好きで好きで、好きで好きで好きだからずうっと探していたんじゃないか!!」

少女「私は……人殺しなんかじゃありません。自分の弱さを、わた……私のせいにしないでくださいっ!!」

少年「でも、周りの人はどう思っているだろうね」

675以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/08(月) 19:39:36 ID:qAA63VlY
男「俺は少女さんが人殺しだなんて思ってない!」


俺は少年と向かい合い、声を張り上げた。
失恋したショックで自殺をしておいて、それが人殺しだなんて一方的な逆恨みじゃないか。


男「少女さんのことが好きなら、どうして自殺したんだ。そのせいで少女さんがどれほど苦しんできたのか、お前には分からないのかよっ!」

少年「お前は僕のことが見えるのか。良いだろう、冥土の土産に教えてやる」

少年「そう! 僕は少女さんの永遠になったんだ!! 少女さんの心の中に僕を刻み込んで、世界中の人間に僕と少女さんの絆を刻み込んで、僕は自殺をして呪い続けることで永遠の存在になったんだ!!」

少年「でもさあ……死んでも世界が続いていくことを知ったんだよお。死んでも生きていくことが出来るんだ。だから殺した」

少年「少女さんが自殺をしてくれれば、僕と少女さんの絆をもっと深く刻み込むことが出来るじゃないか。そして、こっちの世界で一緒にいられるじゃないか!」

676以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/08(月) 19:43:17 ID:ku1ArhBA
男「そんなことのために、少女さんを殺したのか?! ふざけんなっ!」

少年「そんなことだとっ! 好きな人と一緒にいたいと思って何が悪い!! 好きな人をお前から取り戻そうとして何が悪いっ!!」

少女「少年くんっ! あなたの気持ちはよく分かりました」

少年「じゃあ、僕と付き合ってくれるんだね!」

少女「いいえ。私は……死んでもあなたとは付き合いませんっ!」


少女さんは、その言葉をきっぱりと言い切った。
そして、鋭い視線を少年に向ける。


少年「どうして、どうして僕の気持ちに応えてくれないだよおっ! こんなに少女さんのことが好きなのに!!」

少女「少年くんは自分の気持ちを押し付けようとしているだけです。私のことを苦しめることしか考えていないし、だから嫌なんですっ!」

677以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/08(月) 19:50:31 ID:rD8RnIkY
少年「僕は少女さんのことが好きなのにっ! う゛あ゛あ゛あ゛ああぁぁっっ!!」

少女「きゃああぁぁっ!」

男「少女さんっ!!」


少年の雄たけびと同時、浮遊していた低級霊たちが少女さんを取り囲んで羽交い絞めにした。
そして、俺の中に次々と闇が入ってくる。
息が苦しくなり、意識が朦朧としてきて俺はベッドに倒れ込んだ。


少年「全部お前のせいだ! お前がいなくなれば、少女さんは僕だけを見でぐれるんだあぁっ!!」

男「うっうううぅっ――」

少女「いやっ……いやあっ…………男くんの中に入ってこないで!」

少年「僕から少女さんを奪ったお前は絶対に許さない!!」

少女「……渡さない! 男くんは渡さない、絶対に死なせたりなんてしないんだからあっ!!」

男「……はあはあ…………」

少年「なんで! なんで、少女さんがこいつを守るんだよ!!」

少女「だって、好きな人だから!」

678以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/08(月) 20:05:12 ID:ku1ArhBA
双妹「……はくちゅん…………」

双妹「もう話は終わった? 早くしないとお母さんが帰ってくるんだけど」


緊迫した状況の中、双妹は場違いなテンションで俺たちを見た。
そして畳んでいたミニテーブルを広げて、部屋の中ほどに設置する。


双妹「この辺かなあ//」

少年「ぶはっ! ぶははははっ!! まあいいや、お前の弱点が妹だってことはもう分かってるんだ」

男「……! 双妹に何をさせるつもりだ!!」

少年「言っただろう、お前は絶対に許さないって」

679以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/08(月) 20:13:49 ID:gFr08i/o
少年は禍々しい笑みを浮かべると、双妹の中に入り込んだ。

くそっ!
すぐ近くに除霊が出来る手袋があるというのに、まったく身体の自由が利いてくれない。
このままだと除霊をするどころか、双妹に殺されてしまう。

――殺される?
双妹が俺を殺したいほど憎んでいなければ、少年が憑依しても俺を殺すことは出来ないはずだ。
それじゃあ、一体どうやって俺を殺すつもりなんだ。

そう考えていると、双妹はポケットからスマホを取り出して床に座った。
そしてミニテーブルの上にスマホを置いて、真剣な表情で画面を覗き込む。
やがて納得したのかピロリ〜ン♪という電子音が鳴り、用意していたスタンドにスマホを立てかけた。

680以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/09(火) 20:54:19 ID:wQSEOu2.
少女「双妹さん、まさか――」

双妹「ふふっ♪」


双妹が俺とスマホの間に回りこんで、スマホの背面に顔を向ける。
そして、可愛い声を作って話し始めた。


双妹「私は、奇跡のミックスツインと呼ばれている異性一卵性双生児の双妹です。今から大好きなもう一人の私、双子のお兄ちゃんと一緒にラブラブセックスを始めます」

双妹「もちろん、それが許されないことだということは分かっているつもりです。だけど、私のことを分かってくれる人は男しかいないんです。そのことは、もう嫌になるほど思い知らされました」

双妹「だから、認めてください。これを見ているあなたに……くしゅん…………うぅ、私たちの関係を認めてもらいたいです//」

681以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/09(火) 21:01:48 ID:Wejf5glM
双妹「えへへ、大切なところでくしゃみをしちゃった//」


双妹は苦笑いをすると、羽織っていたガウンを脱いで床に置いた。
そしてネグリジェのボタンを外し、誘うような視線を向けてきた。
淡いベージュのぬくぬくインナーがあらわになり、肩先からネグリジェがするりと脱げ落ちる。
やっぱりこれが双妹の攻撃衝動、俺に対する気持ちなのか――。


男「双妹……本気なのか?! 今のお前は操られているだけなんだ!」

少女「双妹さんは双子の妹なんだよ! こんなの間違ってる!!」

双妹「そんなの、もう関係ない! 私は今まで、双子の兄妹だから好きになってはいけない人だと自分に言い聞かせてきた。でもね、少女さんに出会って気付いたの」

双妹「生きている人と死んでいる人の恋愛を認めれば、私の気持ちを認めてもいいんじゃないかって――」

少女「えっ?!」

少女「じゃあ、双妹さんは自分の気持ちを否定するために……」

双妹「私を認めないなら、私も少女さんを認めない。そう、私と少女さんは同じなんだよ。でも、私には少女さんには出来ないことが出来る。男とひとつになることが出来る!」

682以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/10(水) 00:38:08 ID:Ri1bK6EM
男「双妹の気持ちはうれしいけど、俺は今、少女さんと付き合っているんだ。だから、そういうことが出来るわけないだろ」

双妹「そうかもしれないけど、お願いしたら受け入れてくれるんでしょ♪ 最近はオナニーをしていないみたいだし、もう我慢なんて出来るわけがないもん」


双妹はそう言って微笑むと、ぬくぬくインナーに手を掛けた。
そしてゆっくりと裾をめくり上げ、豊満な乳房が見えそうになったところで手を止めた。
すると伸縮素材のインナーが乳房に張り付き、乳首の形がくっきりと浮かび上がった。


双妹「ほらね、私から目を離せない//」


双妹は挑発的な声で言い、誘うような視線を向けてきた。
その性的な雰囲気に心がざわつき、苦しくなってきた股間を楽に整える。
そんな俺に気を良くしたのか、双妹はインナーを脱ぎ捨て、さらに3分丈のぬくぬくボトムを下ろし始めた。
すると足の付け根くらいで生地が裏返り、陰毛があらわになって割れ目から透明な粘液がつうっと糸を引いた。
そして双妹は色っぽい仕草で前屈し、谷間を見せつけながらボトムから足を抜いた。

683以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/10(水) 00:44:05 ID:by.zDGbY
少女「……どうして!」

少女「どうして、双妹さんは男くんのことを異性として好きになってしまったの?!」

双妹「少女さんには話さなかったっけ」

双妹「男子はみんな、私が男と100%同じ遺伝子だから気持ち悪いと言ってくるの。男はいつも、そんな悪口を言ってくる男子から守ってくれた。すごくうれしかった。そして、集団パニックで襲われたときに思い知らされたの」

双妹「ああ、やっぱり私には男しかいないんだ。男が一番好きなんだ――って」


中学2年生のとき、双妹が失恋して少し様子がおかしい時期があった。
そのときにいろいろと話し合い、双妹は気持ちの整理をすることが出来た。
しかし、先日の集団パニックで再認識させられてしまったのだろう。


少女「男くんは兄妹なんだから、双妹さんに何かあれば守るのは自然なことでしょ。それに対して恋愛感情を募らせるのはおかしいと思う!」

双妹「人が人を好きになるっていうのは理屈じゃないんだよ。双子の兄妹だとしても、私は男が好き。それだけで十分なの!」

684以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/10(水) 00:46:30 ID:4PYpDRcg
男「悪霊なんかに取り憑かれてこんなことをしたら、俺は双妹が傷付くだけだと思う! 今ならまだ引き返せるから、正気に戻ってくれ!!」

双妹「……」


双妹は口をつぐみ、わずかに眉を寄せた。
そして、スマホの背面を見詰めた。


双妹「……もう引き返せないよ。だって、SNSで生配信してるもん」

男「はっ?」

少女「生配信って、どういうこと?!」

双妹「もうみんなに見られてる。だから、何をしても同じなんだよ//」

685以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/10(水) 00:51:07 ID:4PYpDRcg
これは間違いなく、ただの動画撮影だ。
それに双妹はSNSによるデートDVに対して、とても嫌悪感をあらわにしていた。
だから、撮影した動画をSNSに投稿するようなこともしないはずだ。

そう思っていると、双妹が俺のパジャマを脱がせてきた。
低級霊に身体の自由を奪われ、なすすべなく裸にされていく。


双妹「男のおちんちん、すごく大きくなってるよ♪」

少女「……!」

双妹「ヌルヌルも出てるし、いやらしいことを期待しているのかなあ//」


双妹は指先で我慢汁に触って糸を引き、鈴口の周辺をぬるぬると弄ぶ。
そして、カリ首に被っている包皮をゆっくりと剥き始めた。
亀頭が完全に露出し、双妹はそれでも包皮を引き下げていく。
やがてピンと伸ばされてキノコのようになり、双妹はそれを見ると満足そうに口元を緩めた。

686以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/10(水) 01:12:40 ID:YHISsWKY
男「SNSに生配信をしているなんて、ウソなんだろ! こんなやり方で俺とセックスをして、双妹は本当に満足できるのか?!」

双妹「もういいよ、そういう話は。男が口で何と言っても、身体は反応してる。私とやりたくて興奮してる」

双妹「ねえ、私たちはどうして性別が分かれちゃったんだろうね//」


双妹はにんまりと笑い、俺のスマホをミニテーブルの上に持っていった。
そして笑顔で戻ってくると、唇を重ねてきた。
そのぷるんとした柔らかさに心を奪われ、俺は双妹と舌を絡ませる。


男「んんっ……」

双妹「えへへ、キスしちゃった//」

男「……なんだ、これ…………」


ぼんやりとした頭に、何かが入り込んでくる。
そして、心の奥底に押し込んでいた感情が何かに引きずり出されていく。


少女「だめっ……少年くんが入ってくる…………。男くん、双妹さん。負けないで、少年くんなんかに負けないでよおっ!!」

687以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/13(土) 07:56:03 ID:96EUWPNw
エロくていい

688以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/15(月) 21:29:56 ID:9TUleZmU
(12月13日)thu
〜大学病院・男13歳〜
教授「――という訳で、今回から採精検査を実施します」

母親「ちょっと待ってください。その検査は本当に必要なんですか?!」

教授「同じ遺伝子を持つお二人の成長を詳細に記録することは、小児内科医療や遺伝子学などの進歩に必ず貢献します。それによって、成長障害をともなう子どもたちを救うことが出来るようになるんです。それは性発達も例外ではありません」

母親「そのことは承知していますけど、母親として戸惑いがあるというか……。男と双妹はもう中学生ですし、本当は恥ずかしくてしたくない検査もあると思うんです」

男「お母さん、俺は別に平気だから。俺たちにしか出来ないことだし、これからも頑張っていきたいと思う」

双妹「そうそう、私も男と一緒だよ。病気で苦しんでいる小さい子どもたちの力になれるのがうれしいし、もっといろんな検査に挑戦したい。それに女医さんが悩みを聞いてくれるから、専門の先生に相談できて助かるねってお母さんも言ってたでしょ」

689以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/15(月) 21:35:11 ID:9TUleZmU
教授「お母さん。お二人は本当に頑張ってくれていますし、我々スタッフもお二人の成長が楽しみでいつも元気を分けてもらっているんです。お子さまの健康管理のためにも、ぜひご協力お願いします!」

母親「……」

母親「ずっと継続していくのですよね」

教授「はい、それは変更ありません。18歳までは2ヶ月毎の調査研究で、その後は段階的に調査回数を逓減し、23歳から年1回の定期調査に移行する予定です。ただし成人後にお二人の合意を得られれば、何らかの双子研究にご協力をお願いすることがあると思います」

母親「……分かりました。でも、わたしは男と双妹の気持ちを尊重する姿勢を変えるつもりはありませんから」

教授「ありがとうございます」

690以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/15(月) 21:49:02 ID:PaJp4j8A
教授の面談と問診表の記入が終わり、12月の双子調査が始まった。
まず最初は基本的な身体検査で、身長や体重などを測定しタナー分類に関する写真撮影をして性成熟度の判定を受けることになっている。
その次に体力測定を行い、外来患者の隙間を縫うようにして精密検査を受けていく。

検査項目は調査する月によって違っていて、血液検査や尿検査のように毎回するものもあれば、頭部と骨盤のX線撮影やMRI検査など調査する月が決まっているものもある。
そして、最後に経腹・陰嚢超音波検査を受けて男性器の診察が終われば、俺の双子調査はすべて終了だ。
しかし今回から生殖機能の検査項目に追加があるので、診察が終わった後にトイレを済ませるように言われ、検査室の中待合の通路を歩いて別室に移動することになった。

691以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/15(月) 22:02:48 ID:38RTeEbU
看護師「この部屋を使うときは、必ず最初に手を洗って消毒してくださいね」


検査室に入ると看護師さんに手を洗うように言われ、まず手指消毒を行った。
そして、新しい検査をするための場所を見渡す。
そこはカラオケBOXくらいの広さで、椅子やマットに座ってテレビを見たり漫画を読めるようになっていた。
どちらかと言うと、検査室ではなくて休憩室といった雰囲気だ。
そのことに少し戸惑っていると好きな場所に座るように言われ、俺はマットの上に座ることにした。


看護師「説明を始める前に聞きたいことがあるんだけど、前回実施した双子調査で保護者の問診表に『9月28日に夢精で精通した』と書いてあったのね。それなのに今回、男くんの性行動についての調査でマスターベーションの頻度を『したことがない』と回答しているでしょ」

男「はい」

看護師「もしかして、男くんがマスターベーションをしたことがないのは、自分の手で刺激をして射精する方法が分からないからなのかなあ」

男「えっと……はい、よく分からないです」

看護師「そっか。じゃあ、まずはこの部屋の使い方から教えてあげるわね」

692以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/15(月) 22:28:04 ID:PaJp4j8A
俺は看護師さんに小冊子を渡され、それを読みながら説明を聞いた。
この検査室は採精室と言って、男性特有の病気を検査するときや赤ちゃんを作りたい夫婦のお手伝いをするときに使う部屋らしい。
本棚にはお母さんに買って欲しいとは言えない漫画や写真集が並んでいて、エッチなシーンがある深夜アニメもいくつか見られるようだった。


看護師「――それで勃起したペニスをしこしこしていたら気持ちよくなってくるから、失敗しないようにこの容器を被せて射精して欲しいの。そのときに必ず精液を全部入れて、採精した時刻を記入してください。もしこぼれてしまったら、そのときは必ず教えてくださいね。そして、培養室の窓口まで持って来てくれたら採精検査は終了です。あと、お風呂で洗うときと同じで、包皮を剥いたら元に戻すのを忘れないでね」

看護師「どう? 初めてだけど、一人で出来そうかなあ」

男「看護師さんは手伝ってくれないんですか」

看護師「ごめんね。お姉さんが手伝ってあげられると良いんだけど、そういうことが出来ない決まりになっているの」

男「……分かりました」

看護師「それじゃあ、1時間が過ぎても終わっていなかったら様子を見に来るから、それまでにリラックスをして採るようにしてくださいね♪」

693以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/15(月) 23:38:42 ID:9TUleZmU
看護師さんが採精室を出て行き、俺は適当に漫画を手に取ってペラペラと読んでみた。
するとどのページを開いても下着姿の女の子やおっぱいがいっぱいで、恋人同士でキスをしたり裸で抱き合っているシーンもたくさん描いてあった。

これって、たぶんアレをしているんだよな――。
俺はすごくドキドキしてきて、夢中になってページをめくり続ける。
そして2冊目をじっくり読んでいると、ふいにドアをノックする音が聞こえてきた。
俺は何となく双妹が来たのではないかと感じ、漫画を片付けてドアを開けた。


双妹「やっぱり、ここにいたんだ。男は今、何をしてるの?」

男「今日から始まった新しい検査をしてるんだ。双妹はもう終わったのか?」

双妹「うん。それで男が検査室に入ったまま出てこないから、どこにいるのか心配になって探しに来たの。そうしたら通路の奥にも部屋があったから、そこにいるような気がして……」

男「ああ、そっか」

双妹「私も一緒にいていい?」

男「良いけど、ここに入るときは必ず手を洗って消毒しないといけないんだ」

双妹「うん、分かった」

694以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/15(月) 23:49:51 ID:38RTeEbU
双妹「それで、新しい検査ってどんなことをしているの?」

男「男性だけの検査で、詳しいことはその小冊子に書いてあるよ」

双妹「どれどれ? 私も読んでみたい!」


双妹は小冊子を手に取ると、俺の隣に座ってじっくりと読み始めた。
そして読み進むに連れて赤面し、興味津々な様子で俺を見詰めてきた。


双妹「今から、男もこれに書いてあることをするんだよねえ//」

男「それはまあ、そういう検査だし。でも、初めてでよく分からなくて……」

双妹「じゃあ、一緒に頑張ろうよ! 男はもう一人の私だし、私もちゃんと知りたいから!」

男「ああ。俺も一人で不安だったし、双妹がいてくれたらうれしいよ」

双妹「やったあ〜。ここの漫画、私も読んで良いんだよね♪」


双妹はそう言うと、本棚を物色し始めた。
俺も本棚を漁って写真集を取り出し、双妹と二人でマットに腰を下ろす。
そして、俺たちは一緒に本を読むことにした。

695以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/16(火) 00:40:58 ID:xPFwf616
双妹「ねえっ! この漫画、セックスをしてるんだけど//」

男「こっちはほらっ、あの巨乳アイドルの下着姿とか裸の写真ばっかりだぞ」

双妹「ほんとだ。もしかして私たち、ものすごくえっちな部屋に入ってるの?!」

男「間違いなく、ものすごくえっちな部屋に入ってる」

双妹「そ、そうだよね。私たち、これからえっちな事をするんだもんね//」


双妹は恥ずかしそうに言うと、もじもじと太ももを擦り合わせた。
そして、うっとりとした表情で吐息を漏らす。
俺はそんな双妹から目を逸らすことが出来なくなり、心の奥底から期待感が込み上げてきた。

双妹とえっちな事をしてみたい――。
それが伝わったのか、双妹と視線が交わる。
しかも、その瞳はまるで何かを求めて待っているかのように潤んでいて……。
俺たちは気持ちが舞い上がり、完全にその場の雰囲気に飲まれていた。

696以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/16(火) 06:51:01 ID:.XXWDOC6
エロいの頼む

697以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/16(火) 23:43:30 ID:xPFwf616
双妹「男、どうしよう。検査もしないといけないんでしょ。やっぱり、そっちのほうが大切だよねえ」

男「あ、ああ、そうだよな。分かってる」

双妹「それで思ったんだけど、私が……してもいい?」


その言葉を受けて、俺たちはお互いに見詰め合う。
そして数秒後、双妹がいやらしい笑みを浮かべて、俺の股間に目を向けた。


双妹「うふふ、もう大きくなってるよ//」

双妹「早く脱いで。脱いでくれないと検査が出来ないし♪」


どうやら、双妹は俄然やる気になっているようだ。
俺はその期待に応えてパンツを脱ぎ、元の場所に座り直す。
そして双妹が俺の後ろに座ると、勃起した陰茎に手を伸ばしてきた。

698以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/17(水) 00:24:10 ID:6eea0UUY
双妹「そういえば、消毒をしないといけないんだっけ。確か、おちんちんの皮を剥いて中身を出してから拭くんだよねえ」

男「そうそう。それで看護師さんが、亀頭だけじゃなくて包皮も根元まで剥いてしっかり消毒するようにって言ってた」

双妹「うん、分かった。それじゃあ、痛かったら教えてね」


双妹は陰茎を指で挟み、包皮をゆっくりと引き下げた。
ピンク色の亀頭が露出し、裏返った包皮がさらに引き伸ばされていく。
そして、双妹は俺の背中に柔らかい膨らみを押し付けながらウエットティッシュを手に取ると、弛んで戻った包皮を左手で下ろし直して亀頭を拭き始めた。


男「ぬおっ?!」

双妹「ご、ごめん。痛かった?!」

男「まあ、ちょっとだけ痛かったかも。そういうので擦られると、本当に痛くて絶対に無理な感じだから――。でも、剥くときに触られたときはすごく気持ち良かった」

双妹「そっか。おちんちんの中身って、すごく敏感なんだ。じゃあ、しこしこするときは元に戻したほうが良いのかなあ」

男「そうしてくれたほうが痛くないし、剥いたら戻すように言われているから」

双妹「ふうん、そうなんだ。もう少し成長したら、お父さんみたいに中身が出たままになって平気になるんだろうけど、それまではちょっと痛くても我慢しないとだね」

男「んなっ?! ちょっ! だから、そこはマジで無理、むりぃっ!」

699以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/17(水) 00:35:29 ID:6eea0UUY
双妹「はい、終わったよ♪」

男「はあはあ、やっと終わった……」

双妹「ふふふ、よく頑張りました♪ それじゃあさあ、今度は男が私のおっぱい、触ってみない?」

男「えっ、双妹のおっぱいを?」

双妹「うん。男にも私のことを知ってもらいたいから//」


双妹はウエットティッシュを捨てると、セーターとブラウスを脱いでソフトブラを外した。
着替えのときやお風呂に入ったときにいくらでも見られる、膨らみが目立ち始めた双妹のおっぱい。
それがとても魅惑的なものに見えて、俺は立ち上がると双妹と向かい合い、そっとおっぱいに触ってみた。
すると想像していたよりも弾力があり、何かこりこりとした硬いものがあることに気が付いた。


双妹「……どんな感じ?」

男「おっぱいの中に硬いものがあるんだけど」

双妹「その硬いものは乳腺で、おっぱいが膨らむサインなんだよ。これから少しずつ丸く膨らんできて、柔らかくなるのはその後なんだって。あまり触ると痛いから、強く揉んだりしないでね//」

男「へえ、とにかく揉めばいいって訳じゃないんだ」

700以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/17(水) 00:53:36 ID:gw368WfI
双妹「そう、そんな感じで触ってくれたら気持ちいい……//」

男「じゃあ、これはどうかな」


さっきまで読んでいた漫画のようにおっぱいを包み込み、優しく円を描く。
すると、双妹があまい声を漏らして身体を震わせた。


双妹「……はうんっ……んんっ…………//」

男「……双妹?」

双妹「変な声、出ちゃった//」

男「あははっ、何だよそれ」

双妹「だって、すごく気持ち良くなって急にびくんってなったんだもん//」

男「そうなんだ。でも今の声、初めて聞いたけど、俺は可愛いと思ったよ」

双妹「ええっ、そうなの? 私はちょっと恥ずかしかったんだけど……」

男「そんな事ないって。だから、もう一回やってみようか」

双妹「だ、だめだめ! 検査のほうが大切だし、おちんちんをしこしこしないといけないでしょ//」

701以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/17(水) 01:51:20 ID:gw368WfI
双妹はマットの上に置いていた容器を拾うと、上目遣いで俺を見詰めながら手をしこしこと動かし始めた。
すると、その動きに合わせて半分くらい剥けては戻りを繰り返し、今まで経験したことのない心地よさに包まれてきた。


男「……双妹、気持ちいい…………」

双妹「これって、そんなに気持ちいいんだ」

男「もう、ずっと双妹にしこしこされていたいくらい気持ちいい」

双妹「ふうん、そうなんだ。いいよ、私がいっぱい気持ち良くしてあげるわね//」


双妹はお姉さんっぽい口調で言うと、手の動きを早くした。
そのおかげなのか急激に気持ち良くなってきて、俺は夢中になって双妹のおっぱいを触り続けた。
そしてキスをして、おっぱいを触って、割れ目がある大切なところを撫でてみて。
もう双妹のことを考えただけで気持ち良くて、心の奥底から愛しさが込み上げてくる。

兄妹でしてはいけないことをしているけれど、そんな事はどうでもいい。
今までお互いに知らなかった一面が次々と見えてくることが楽しくて、もう感情が溢れ出してしまいそうだ。
そんな中、抑えることが出来ない何かが押し寄せてきた。

702以下、名無しが深夜にお送りします:2018/10/17(水) 02:10:48 ID:fryOy3pA
男「双妹……何だか、ヤバイかも…………」

双妹「ヤバイって、何が?」

男「きゅぅって締まってる感じがする」

双妹「おちんちんがすごく硬くなってるからかなあ//」

男「ううぅっ、双妹…………もう我慢できないっ!」

双妹「もしかして、精液が出そうってことなの?! わわっ! いいよ、ちゃんと受け取ってあげる、いっぱい出してっ//」


双妹は亀頭の先端をを容器の中に入れ、陰茎を扱きながら好奇の眼差しを集中させた。
もう我慢できない。
双妹のおっぱいと募っていく快感、それ以外のことはもう考えられない。
そして限界まできゅぅっと引き締まると、一気に絶頂感が駆け抜けてきた。


男「ぅくっ……!!」

どぴゅっ
どぴゅどぴゅっ・・・


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