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少女「私を忘れないで」

1 ◆WRZsdTgWUI:2018/02/17(土) 23:13:03 ID:SLrOQBwc
(プロローグ)
〜体育館裏・少女さん〜
男子「少女さん、わざわざ来てくれてありがとう!」

少女「……」

男子「えっと、その……明日から冬休みだね」

少女「そうですね」

男子「それでその……クリスマスの日は予定が開いてますか」

少女「クリスマスの予定?」

男子「は、はいっ!」

少女「ひとつ聞きたいのですけど、あなたと私は今日はじめて会いましたよねえ。それなのに、どうして教えないといけないんですか」

男子「それは少女さんのことが好きだからっ!」

少女「……?!」

男子「文化祭のときに笑っている少女さんを見て可愛いなって思って、それで一緒に話が出来たらいいなってずっと思っていたんです。だから、僕と付き合ってくれませんか!」

394以下、名無しが深夜にお送りします:2018/05/29(火) 21:54:39 ID:tzJNo6uM
(2月14日)sun
〜校門前・少女さん〜
今日は待ちに待ったバレンタインデー。
それなのに、私は男くんの学校の前で立ち尽くしている。

今日の試合、男くんは勝てたのかなあ。
学校に行って、応援したかったな。
それなのに、どうしてこんなことになってしまったんだろう。

激しい雨の中、私はただ立ち尽くす。
ぼんやりと、ただ時間だけが過ぎていく。

395以下、名無しが深夜にお送りします:2018/05/29(火) 21:57:12 ID:NawV7Wcg
(2月15日)mon
〜校門前・少女さん〜
激しい雨が降っているにもかかわらず、音が何も聞こえない寂しい夜。
なぜ音が聞こえないのか疑問に思いつつ、男くんが登校してくるのを待ち続ける。
やがて日付が変わり、朝が近付くにつれて雨が重たい雪に変わっていった。
幹線道路は消雪装置が起動し、歩道には少しずつ雪が積もり始めている。

それからしばらくして、車や電車を利用する人々が通るようになり喧騒が戻ってきた。
なぜ音が聞こえるようになったのか、それは分からない。
そんなことよりも、誰も私に気が付いてくれないことが悲しかった。
学校に登校してきた生徒たちも、私に気が付くことなく校舎の中に入って行く。

やっぱり、私の姿は見えないんだ……。
それでも、男くんに会いたい。
そのために、ここで待っているんだから――。

396以下、名無しが深夜にお送りします:2018/05/29(火) 21:58:30 ID:MvORlNJY
私は気を取り直し、駅がある方向を見た。
歩道の雪はすでに踏み固められていて、その上を多くの生徒が列をなして歩いている。
人も増えてきたし、そろそろ男くんが登校してくるだろう。

そう思っていると、歩道の脇に溜まっていたシャーベット状の雪を車が踏みつけた。
そのせいで、歩いていた男女に氷水が撥ねる。
しかし、間一髪のところで男子生徒が傘を倒して防ぎ、難を逃れることが出来たようだ。

そして、走り去った車を見据える男女。
その二人は、男くんと彼女と思しき女子だった。

397以下、名無しが深夜にお送りします:2018/05/29(火) 22:00:08 ID:MvORlNJY
男「双妹、浴びてないか?」

女子「大丈夫だよ。ありがとう」

男「融雪道路に出てきた途端、これだもんな。勘弁して欲しいよ」


どういうこと……。
二人は一緒に登校するくらい仲がいいの?!

以前、友香ちゃんは彼女のことを妹かもしれないと言っていた。
しかしそれが正しいとすると、彼女は男くんと同い年だということになってしまう。
普通に考えて、そんなことがあるはずがない。

やっぱり、男くんは彼女と付き合っているんだ――。

そう思うと、心がちくりと痛んだ。
でも、これで良かったのかもしれない。
私は自分にそう言い聞かせ、男くんを見送った。

398以下、名無しが深夜にお送りします:2018/05/29(火) 22:02:27 ID:NawV7Wcg
今日はここまでにします
レスありがとうございました

399以下、名無しが深夜にお送りします:2018/05/30(水) 07:54:00 ID:A2qqw8wY


400以下、名無しが深夜にお送りします:2018/05/31(木) 23:22:02 ID:WN7doU.w
それからしばらく立ち尽くしていると、ふいに背後から視線を感じた。
私は慌てて振り返り、周囲を見渡す。
すると男子生徒が自転車に跨ったまま、じっとこちらを見ていることに気が付いた。

お互いに目が合い、彼がしまったという顔で目を逸らす。
その顔には見覚えがあった。
中学生のときに同じクラスだった友くんだ。


少女「もしかして、私のことが見えているんですか?」

友「……そうだけど」

少女「すごいっ! 私のことが見えているんだ!!」

友「俺は今、浮遊霊なんかに構っている暇はないんだけど」

少女「あっ、ああ……ですよね」

友「じゃあな」

401以下、名無しが深夜にお送りします:2018/05/31(木) 23:23:35 ID:WN7doU.w
友くんはそれだけを言うと、私を一瞥して校舎裏に向かって自転車を漕ぎ出した。
その後ろ姿を見つつ、私はふと疑問に思った。
友くんには、どうして私の姿が見えていたのだろう。

そもそも、見えるとは何だろうか。

私は生物の授業で勉強したことを思い出す。
目の働きと視覚情報の伝達経路。
ものが見えるのは、網膜に映った像が視神経を通じて大脳に伝達されるからだ。

大脳に伝達される?

……あっ!
分かったかもしれない。

402以下、名無しが深夜にお送りします:2018/05/31(木) 23:25:07 ID:4f0YciQ6
友くんに私の姿が見えていた理由は、依然として分からない。
だけど、最終的に情報を処理するのは大脳だ。
つまり大脳に直接情報を与えることが出来れば、普通に会話が出来るようになるはずだ。

会話をする方法があるなら、せめて最期に男くんと話をしたい。
男くんの恋を応援してあげたい。
でも、どうすればそんなことが出来るのかな。

私は幽霊なんだし、男くんに取り憑いてみるとか?
ぴったりくっついて、手をつないだりとかしちゃったりして――。

いやいやいや。
男くんには彼女がいるんだし駄目だよ、そんなことは!
私は妄想を振り払い、お昼休みに男くんの教室に行ってみることにした。

403以下、名無しが深夜にお送りします:2018/05/31(木) 23:37:40 ID:aPy.ofvI
〜お昼休み・少女さん〜
男くんの教室を探して中に入ると、友くんと例の彼女も同じ教室だということが分かった。
男くんは一人で漫画を読んでいて、彼女さんは友達と雑談をしているようだ。
その様子を窺っていると、友くんが席を立った。
彼には私の姿が見えているので、もしかすると勝手に教室に入ったことで何か言われるかもしれない。
私はそう思い、急いで隠れることにした。


友「そうじゃなくて、チョコは貰えたのかって聞いてるんだ」

男「試合じゃなくて、そっちのほうか」

友「それで、どうなんだよ」

男「もちろん貰ったぞ。双妹からだけど!」

友「なんだそりゃ。そんなもん、ノーカウントだっつうの」

男「彼女がいない俺たちには、まったく関係ないイベントだな」

友「はあ、確かに……」

404以下、名無しが深夜にお送りします:2018/05/31(木) 23:43:14 ID:WN7doU.w
その会話を聞いて、私は自分の耳を疑った。
『双妹』は男くんの彼女の名前だ。
その彼女からチョコレートを貰ったのに、男くんは彼女がいないと言っている。

もしかして、ただの女友達なのだろうか。
そう思っていると、例の彼女さんがやってきた。
そして、友くんにチョコレートを手渡した。
しかも、それは男くんが選んだものらしい。

これって、私にもまだチャンスがあるってこと?

そう考えると、急激に気持ちが高まってきた。
私がここに存在していることを知ってもらいたい。
そして、男くんに気持ちを伝えたい。

こんなとき、友香ちゃんならどんなアドバイスをしてくれるのだろう。
それを頭に思い浮かべながら、私は校門脇に戻って男くんの帰りを待つ。
やがて辺りが暗くなり、男くんが雪の中を歩いてきた。
私は勇気を出して、さり気なく声を掛ける。


少女「部活、お疲れさまでした――」

405以下、名無しが深夜にお送りします:2018/05/31(木) 23:45:31 ID:4f0YciQ6
今日はここまでにします
レスありがとうございました

406以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/01(金) 02:39:49 ID:GFXcQPeo


407以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/04(月) 20:54:46 ID:MDznBl7o
いつもありがとうございます
諸事情により、今回から一区切り兼お礼の下げ更新を控えようと思います

408以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/04(月) 20:55:32 ID:8yEwcyAM
(2月23日)tue
〜自宅・部屋〜
翌朝、目が覚めて隣を見ると、そこに少女さんの姿がなかった。
いつもなら俺を起こしてくれたり、掛け布団をすり抜けて寝姿を晒している少女さん。
その彼女が隣にいないことが、何だかもの寂しく感じた。
いつの間にか、一緒に寝ることが当たり前になっていたらしい。


男「まあ、着替えるとするか」


俺はベッドから降りて、暖房と明かりをつける。
そして洋服ダンスに歩み寄り、パジャマから制服に着替えた。


少女「えっ、あれっ?!」


ふいに背後から少女さんの戸惑う声が聞こえた。
背丈ほどの高さの場所で横になり、寝ぼけた表情で浮遊している。
どうやら、俺に引っ張られて双妹の部屋からすり抜けてきたようだ。

409以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/04(月) 21:21:56 ID:MDznBl7o
男「少女さん、おはよう」

少女「えっと、あの……男くん、おはよう」アセアセ

男「壁をすり抜けるとか、ものすごい寝相の悪さだね」

少女「そ……そんなことはないです//」


少女さんは恥ずかしそうに否定すると、ふわりと浮かんだままゴミ箱を覗き込んだ。
そして顔を赤らめ、まじまじと好奇の視線を向けてきた。
昨日のこともあって軽い冗談で爽やかな朝を演出しようとしたけれど、少女さんは俺がオナニーをしたのかどうかが気になるようだ。
我慢できなくなって抜いてしまったけど、ひょっとすると失敗したかもしれない。

410以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/04(月) 22:12:00 ID:MDznBl7o
男「どうかした?」

少女「いえ、昨日の朝と同じ匂いがするから、あのあと本当に一人でしたんだなと思って//」

男「あ、ああ、どうしても我慢できなくなって……」

少女「ふふっ、男くんは健全な男子だもんね。えっちな事をしたくなるのが普通なのに、今まで我慢をさせてごめんなさい」

男「いや、良いって。別に謝るようなことじゃないし」

少女「でも私、双妹さんに言われるまでずっと性的なことをないがしろにして来たと思うんです」

少女「男くんが週に5回もえっちな事をしているなんてびっくりしたけど、そういう一面も好きになるから、これからは我慢をしたりしないでくださいね//」

男「そんな事を言われると恥ずかしいけど、少女さんに嫌われなくてほっとしたかも」

少女「ふふっ。男くんがどんなにえっちでも、私が男くんを嫌いになることは絶対にあり得ないですから//」

男「ありがとう。俺も少女さんのことが好きだよ」

少女「うん、私も男くんが大好きです//」

411以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/04(月) 23:26:24 ID:8yEwcyAM
双妹「男、おはよう♪」

男「おはよう」


少女さんといい雰囲気になってきたところで、双妹が部屋に入ってきた。
そして、ゴミ箱に視線を向けて少女さんを見据える。


少女「双妹さん、おはようございます」

双妹「おはよう。少女さんは早起きだね」


双妹は皮肉混じりに言いつつ、お腹をさすった。
今日は生理2日目ということもあり、ちょっと辛そうだ。

412以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/04(月) 23:48:49 ID:C2vzJyDI
男「やっぱり、今日は少し辛そうだな」

双妹「まあね」

男「俺が朝ご飯の準備を手伝ってくるから、双妹はゆっくりしてろよ」

双妹「うん、ありがとう。そうしてくれると助かる」

男「それじゃあ、行こうか」


俺は少女さんに声を掛け、部屋を出た。
すると双妹が俺の隣に駆け寄り、頬を緩めた。
まあ、こうなるだろうなとは思った。


双妹「ふふっ♪」

少女「……」

413以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/05(火) 20:01:49 ID:LzAneh2Y
〜学校・お昼休み〜
新しい朝が始まり、いつも通りに授業が始まる。
そしてお昼休みになってスマホを手に取ると、友香さんからメールが来ていることに気が付いた。
一体、どんな用事があるのだろう。
俺はそう思い、早速開いてみることにした。



From:友香さん
件名:土曜日あいてますか

本文:
今週の土曜日なんですけど、少女の家にお線香をあげに行きませんか
男くんが行けば、少女が喜んでくれると思います
都合のいい時間があったら教えてください(^O^)

414以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/05(火) 20:12:09 ID:2Cj10nYY
男「お線香か……」


少女さんのお葬式は身内だけで行うことになっているので、友香さんは日を改めて弔問することにしたのだろう。
そのお誘いメールが来たわけだけど――。


男「少女さんが家に帰れないと、俺も行けないんだよな」

少女「ですよね」

男「とりあえず、土曜日は部活があるから都合が悪いって返そうか」

少女「でも、朝から夜まで部活って訳じゃないですよねえ」

男「そうだけど、行けないだろ」

少女「私、男くんだけじゃなくて友香ちゃんも一緒なら、今度こそ家に帰れると思うんです。だから、行くって返事をしてください」

男「……分かった。少女さんがそう言うなら、昼から行こうって返信するから」

少女「はい、お願いします」

415以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/05(火) 20:23:05 ID:AlgI77fQ
友「男、二人で何を話してるんだ?」

男「今度の土曜日、少女さんの家にお線香をあげに行こうって友香さんからメールがあって」

友「そうなのか。俺には来てないんだけど!」

男「それは知らないけど、友も行くだろ? うさぎのぬいぐるみを調べないといけないし」

友「そうしたいのは山々なんだけど、ちょっと無理かもしれない」

男「何かあったのか?」

友「昨日の英語の授業のことで、俺の家に連絡があったみたいで――」


昨日の英語の授業中、少女さんが胸の痛みで苦しみ始めた。
しかし他の人には少女さんの姿が見えないので、俺と双妹が騒いで授業妨害をしているかのように見えていたのだ。
それを友が上手くフォローしてくれたのだけど、心霊催眠が解けていなかったと説明したことが不味かったようだ。
そのせいで家に連絡があり、親にひどく叱られたらしい。

416以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/05(火) 20:24:25 ID:AlgI77fQ
友「そんな訳で神社の評判にも関わるから、しばらくは大人しくしていないといけないんだ」

男「そうなのか、俺のせいで……ごめん」

少女「ごめんなさい」

友「まあ、良いってことよ」

男「じゃあ、今日の放課後、俺も友の親父さんに謝りに行かせてくれ。元はといえば俺が原因だし、ちゃんと事情を説明しておいたほうが良いと思うから」

少女「そうですよね。私も謝ります!」

友「……悪いな」

男「そのついでに、期末テストの勉強も一緒にしようぜ」

友「そうだな」

417以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/06(水) 11:55:56 ID:d6mZ93L.
続きが楽しみだ

418以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/06(水) 16:48:22 ID:njMceeBs


419以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/07(木) 00:25:21 ID:Mfgssff.
〜友の家・神社〜
放課後になり、俺と少女さんは友の家に向かった。
今回は神社の宮司である親父さんに会うということで、前回以上に少女さんは緊張している。
怖い人ではないけど、さすがの俺も緊張してきた。


友「親父は社務所で仕事をしていると思うから、そっちに行こうか」

男「そうだな」

少女「あ……あの、神社に行くんですか?!」

男「そういえば、少女さんは神社に入るのが怖いんだっけ」

少女「そっ、そうなんです。いきなり除霊されたりしませんよねえ」オロオロ

友「それは大丈夫だよ。少女さんは除霊する必要がない浮遊霊だから」

少女「そうかもしれないけど、神社は神聖な場所だし――」

男「少女さん。ここには謝るために来たんだから、ごねるのはやめにしようよ。もし除霊されそうになったら、俺が守ってあげるから」

少女「ううっ、そうですね。ごめんなさい……」

420以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/07(木) 00:42:00 ID:O.1.hxHU
少女さんを説得し、俺たちは鳥居をくぐった。
そして境内に入ると、授与所にいた巫女さんが俺たちに挨拶をしてくれた。


友「巫女さん、ただいま。親父に会いたいんだけど、今は大丈夫かな」

巫女「大丈夫だと思いますよ。今は社務所にいらっしゃるはずです」

友「そっか、ありがとう。じゃあ、行こうか」

男「そうだな。それじゃあ、お邪魔します」


俺はそう言って、巫女さんに会釈をした。
すると笑顔を返してくれて、俺の背後に視線を向けた。
そこには、少女さんが立っている。


少女「あの巫女さん、私の姿が見えているみたいですね」

友「うちの神社では、本職巫女の霊的な神聖性を高めているんだ。そのおかげで神事や祭事にも定評があって、巫女舞を奉納するときには神霊の気配も感じ取ることが出来るほど高まっているんだ」

少女「へえ、そうなんだ!」

男「お祭りのときに見たことがあるけど、そんなにすごい舞だったのか」

友「ああ、密かにすごいんだぜ。うちの神社は――」

421以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/07(木) 00:43:10 ID:YAksLV5E
〜社務所〜
友に連れられて社務所に入ると、友の親父さんが仕事をしていた。
見たところ、桃の節句の準備をしているようだ。


男「えっと、こんにちは」

友父「こんにちは。男くん、久しぶりだね」

男「今日はちょっと謝りたいことがあって来たんですけど、少しいいですか」

友父「それは、そちらの可愛いらしいお嬢さんのことが関係あるのかな?」

男「はいっ」

友父「それじゃあ、3人ともそこに座りなさい」


そう言われ、俺たちは中に入って正座をした。

やばい。
かなり緊張してきた。

422以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/07(木) 00:45:22 ID:Mfgssff.
男「昨日のことなんですけど、友は俺たちを助けてくれただけで何も悪いことはしていないんです」

少女「……そうなんです。友くんは何も悪くありません」


俺たちは友の親父さんに事の成り行きを説明した。
少女さんに取り憑かれて、友に相談したこと。
記憶を思い出すために、少女さんに心霊催眠を試してみたこと。
少女さんが授業中に苦しみ始めて、介抱するために力を貸してくれたこと。


男「だから、悪いのは俺なんです。本当にすみませんでした!」

少女「すみませんでした」

友「俺は二人に協力したいんだ。迷惑をかけないように気を付けるから、もう少し続けさせてくれ!」

423以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/07(木) 00:49:01 ID:O.1.hxHU
友父「大体の事情は分かった」

友「じゃあ、続けさせてくれるんだ」

友父「こちらの浮遊霊は少女さんだったかな。かなり強力な力を持っているようだが、それをどのように考えているんだ?」

友「事故死霊の特徴を持った自殺霊で、幽体が通常よりも少ないから霊波動の影響が強く現れやすいと考えているんだけど」

友父「事故死をした自殺霊……ねえ」


友の親父さんはそう言うと、少女さんの首元を見据えた。
そこには、首吊り自殺をしたときの自殺痕が残されている。
やがて首元から視線を外し、優しい表情で少女さんに話しかけた。


友父「人はみな、生まれてきた意味を持っている。貴女はそれを探しなさい」

少女「生まれてきた意味を、ですか?」

友父「そうです。生きた証が見付かったとき、貴女の救いがそこにあるはずです」

少女「……はい」

424以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/07(木) 01:01:21 ID:VGQ1TV5c
友父「男くん、友。二人とも、彼女の力になってあげなさい」

男「もちろんです!」

友「それって、許してもらえたってことでいいのかな」

友父「まだまだ未熟者で足を引っ張っているみたいだけど、まあ、やれるところまでやってみなさい」

友「分かった、全力でやってみる!」

少女「男くん、友くん。よろしくお願いします」ペコリ

男「ああ、俺に任せてくれ」

友「そうだな。俺たちがいれば、大船に乗ったつもりでいてくれて大丈夫だ」


少女さんの生きた証。
それを見付けたとき、少女さんは家に帰ることが出来るようになるのだろうか。
そして、成仏をすることが出来るのだろうか。

そのためにも、まずは期末テストを片付けなければならない。
俺は友の家に行って、一緒にテスト勉強をすることにした。

425以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/07(木) 13:30:51 ID:PC9BRAf6
生き返る事はやはりないのか…

426以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/11(月) 19:57:56 ID:YN4BfG4M
〜自宅・部屋〜
1時間ほど友の家で勉強をし、外が暗くなってきたので家に帰ることにした。
明日は得意科目だし、いざとなれば少女さんもいる。
少しくらい勉強をしなくても、期末テストは楽勝だろう。
そんな訳で、俺は家に着くと古新聞を部屋に持って上がり、少女さんの生きた証を探すことにした。


少女「私の生きた証が新聞に載ってますかねえ」

男「載っているとは思えないけど、少女さんが亡くなったときの記事を読めば手掛かりを掴めるかもしれないだろ」

少女「……そうですね」

男「とりあえず、探してみようよ。少女さんが亡くなったのは、公式には2月20日だよな」

少女「ICUの受付さんを信じるなら、そうなりますね」

男「じゃあ、20日の朝刊から探してみよう」

427以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/11(月) 20:05:52 ID:naVE0Xjg
俺は少女さんと一緒に、20日の新聞を隅々まで読む。
しかし、それらしい記事は掲載されていなかった。
同じく21日と22日、そして今日の新聞も読んでみたが、少女さんのことはまったく書かれていなかった。


男「ないなあ」

少女「そうですね。私のことは報道する価値もないってことなのかな」

男「そんなことはないと思うけど、もしかしたら報道規制をされているのかもしれない。北倉高校は看護系の専門学校だし、二人目の自殺者が出たとか報道できないだろ」

少女「たしかに……学校のイメージが悪くなってしまいますもんね」

男「もうすぐ受験シーズンだし、それが影響しているのかもしれないな」

少女「もしそうだとしたら、すごく悲しいです」

428以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/11(月) 20:18:42 ID:xiIOF3xg
〜リビング〜
結局、新聞を読んでも何も分からないことが分かり、俺は仕方なく晩ご飯の準備を手伝いに行くことにした。
そして古新聞を元の場所に戻し、キッチンを覗きみる。
すると、ふわりとみその香りが漂ってきた。
どうやら、今日の晩ご飯はとり野菜鍋のようだ。


母親「男、ちょうどいいところに来たわね。おこたの上にお鍋を運ぶから、新聞を敷いてくれない?」

男「ああ、うん」


俺は食器類を運び、さっき読んだ古新聞をコタツの上に置いた。
そして、ふと思った。
母さんにとって、生きた証は何なのだろう。


男「なあ、母さん。ひとつ聞きたいことがあるんだけど、いいかな」

母親「良いけど、何を?」

男「母さんにとって、生きた証って何かなあと思って」

429以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/11(月) 20:54:24 ID:naVE0Xjg
母親「生きた証?」

男「そう」

母親「変なことを聞くのね」


母さんはそう言うと、コタツの上にお鍋を置いて首を傾げた。
双妹も俺の言葉を聞いて、コタツから顔を出す。


双妹「ねえねえ、私も聞きたいかも」

母親「ええっ?!」

少女「……私もぜひ聞かせて欲しいです!」

母親「二人がそう言うなら仕方ないわねえ。わたしの生きた証は、男と双妹が生まれてきてくれたことかしら」

男「俺と双妹が?」

双妹「どうして私たちが生きた証なの?」

母親「どうしてって、男と双妹も子どもが出来れば、きっとそう思うようになるはずよ」

男「ふうん、そういうものなんだ」

430以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/11(月) 20:59:20 ID:zL/MGWqM
少女「子ども……か」

双妹「じゃあ、子どもがいない人にとって、生きた証は何なのかなあ」

母親「それは人それぞれだろうけど、そもそも生きた証は考える必要がないことなのよ」

双妹「考える必要がない?」

母親「そうよ。お父さんがいつも言っているでしょ。人はみんなでみんなを支えて生きているって。そうすることで、自分の想いがみんなに繋がっていくの」

母親「つまりね、精一杯生きることがそのまま生きた証になるのよ。だから、二人とも今は自分のやりたいことを頑張りなさい」

双妹「そうだね」

男「そうだな。ありがとう」

少女「……」

母親「それじゃあ、冷める前にお鍋を食べましょ。今日は白菜がすっごく安かったのよ♪」

男「そうなんだ。いただきます」

双妹「いただきます♪」

431以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/12(火) 19:56:33 ID:zB7epf4A
〜部屋〜
晩ご飯を食べた後、少女さんはとり野菜鍋のシメについて語り始めた。
少女さんの家では素麺を入れてシメるのが定番で、うどんやラーメンはほとんどしたことがないそうだ。
作り方は下茹でした素麺を入れて、かまぼこと刻んだねぎを浮かべるだけ。
それが少女さんのマイベストらしく、部屋に戻っても延々と語り続けている。


少女「とにかく、試してみてくださいよ! おみそ汁にお素麺を入れるでしょ? それと同じじゃないですか」

男「いやいや、それとお鍋のシメは別問題だから」

少女「そういえば、私の未練はみそ素麺を普及させることだったような気がします」

男「まあ、そこまで言うなら食べてみてやろうじゃないか」

少女「ふふっ♪ 一度食べたら、もうラーメンには戻れなくなりますから」

男「さあ、それはどうだろうな。超少数派の素麺ふぜいが我が家の定番を覆すつもりだとは、片腹痛いわっ!」

少女「……その言葉、食べ終わった後でも言えますかねえ」

男「ふはははは、言うではないか!」

432以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/12(火) 19:59:17 ID:zB7epf4A
双妹「テスト勉強もせずに、二人で何をやってるの?」


うどん・ラーメン派と素麺派の戦いを繰り広げていると、双妹が俺たちに呆れたような視線を向けていた。
いつの間にか部屋に入ってきていたらしい。


男「お鍋のシメを素麺にするべきか否かで、論争を繰り広げていたんだ」

双妹「まだ続いてたんだ……」

少女「双妹さんもぜひ食べてみてください!」

双妹「そんなことより、そろそろお風呂に入らない?」

少女「そんなことより?!」ショボン

男「お風呂って言うけど、まだ晩ご飯を食べたばっかりじゃないか」

双妹「でも今のうちにお風呂に入っておけば、ゆっくりテスト勉強が出来るでしょ」

男「……それもそうだな。もう一度復習しておくか」

双妹「じゃあ、先に行ってるわね」

男「分かった」

433以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/12(火) 20:19:38 ID:zB7epf4A
〜お風呂場〜
双妹が部屋を出た後、俺は5分ほど時間をずらしてお風呂場に向かった。
昨日から3人で入ることになった訳だけど、今は双妹が生理中なので布ナプキンを洗わないといけないからだ。
別に時間をずらす必要はないと思うのだけど、昨日はいつも通りに双妹がじゃぶじゃぶと洗い始めて、経血で赤くなっていく水を見た少女さんがドン引きしてしまった。
それで、少女さんに配慮することになったのだ。
この辺りの感覚も、やっぱり普通の兄妹とは違うようだ。


少女「ねえ、男くん」

男「どうかした?」

少女「お風呂なんですけど、やっぱり双妹さんと一緒に入るのは変だと思います。このまま上がってくるのを待つことにしませんか」

男「それをすると、少女さんの印象が悪くなるだけだと思う。昨日も言ったけど、歩み寄るチャンスだと思ったほうがいいんじゃないかな」

少女「それはそうかもしれないけど、双妹さんを見ていると何かが違うような気がするんですよね」

434以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/12(火) 20:22:06 ID:ZY0Bv2qw
男「それって、どういうこと?」

少女「それを聞かれると困るんだけど、何となく距離感が近すぎるような気がして。一卵性双生児の兄妹は普通の兄妹とは違って、私が想像している以上に仲が良くなったりするものなのかなあ」

男「んー、それはあるかもしれない。双妹は俺にとって、本当にかけがえのない存在だと思うし」

少女「あ、ああ……やっぱり、そうなんだ…………」

男「異性一卵性双生児は世界中に俺と双妹だけしかいないから、この感覚は俺と双妹だけが分かるものなんだろうな」

少女「そう……かもしれないですね」

男「それじゃあ、あまり遅くなると双妹の機嫌を損ねるし、そろそろお風呂に入ろうか」

少女「はあっ、そうですね」


少女さんは小さく嘆息し、後ろを向いた。
どうやら双妹に対して不満があるみたいだけど、絶対に嫌だという訳ではなさそうだ。
とりあえず、俺は着替えを棚に置いて服を脱ぐことにした。

435以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/12(火) 21:44:20 ID:z6wEpRvA
おつ

436以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/14(木) 20:32:57 ID:55QZOZf.
ガラララッ・・・
浴室に入ると、双妹がまだ洗い物をしていた。
今日は生理2日目なので、布ナプキンを使った枚数が多かったのだろう。
俺は双妹が寒くないのか気になりつつ、少しぬるめのお風呂に浸かって少女さんを招き入れた。


双妹「少女さん、今日はビキニ姿なんだ。男にもその水着姿が見えているの?」

少女「……そうですよ」

男「多分、双妹が見ている姿と同じだと思う」

双妹「ふうん、すごく可愛いよね」

男「ブラにフリルが付いてて、それが可愛いよな」

双妹「自分のイメージで好きな水着を着られるって、ちょっと羨ましいかも」


双妹はそう言うと、布ナプキンを浸け置き用のミニバケツに入れてふたをした。
そしてスポンジを手に取り、身体を洗い始める。

437以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/14(木) 20:37:51 ID:Vl/BfX5g
双妹「そういえばさあ、どうしてお母さんに生きた証を聞いていたの?」

男「実は今日、友の家の神社に行って、親父さんに生きた証を探したほうがいいって言われたんだ」

双妹「そうなんだ」

少女「双妹さんは生きた証って何だと思いますか?」

双妹「それは少女さんのって意味? それだったら、お母さんが言っていた通りじゃないかなあ」

少女「でも、それは死んでしまった私に言えることではないですよね」

双妹「そんなことはないと思うよ。生きていたときに頑張っていたことの中に、少女さんの生きた証があると思う」

少女「頑張っていたこと……か。私は将来の夢を諦めてしまったんですよね」

双妹「でも1年間頑張っていたんだから、振り返ってみれば気が付くことがあると思う。一度、学校に行ってみたら良いんじゃないかなあ」

少女「そうだね。あまり気が進まないけど――」

438以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/14(木) 20:41:58 ID:Vl/BfX5g
男「逆にさあ、今から生きた証を残す方法もあるんじゃないかな」

少女「それって、どうやるんですか?」

男「ほらっ、少女さんは超マイノリティーな素麺を普及させようとしていただろ。それを俺がネットに投稿すれば、少女さんの想いが残り続けることになると思うんだ。つまり、そういう感じかな」

少女「超マイノリティーは余計ですっ」プンスカ

双妹「私は反対だな」

少女「ええっ?! 美味しいですよ、みそ素麺!」

双妹「そっちじゃなくて、ネットに投稿して生きた証を残すことに反対だと言ってるの。少女さんはSNSでデートDVに遭っているんだよ。生きた証がそれと一緒にヒットするって考えたら、私なら絶対に嫌だと思う」


そうだった。
少女さんはSNSでデートDVの被害に遭っているのだ。
双妹が言うように、ネットに投稿するなんて論外だ。

439以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/14(木) 21:14:08 ID:P2F57jiQ
少女「……」

双妹「あれっ? ネット投稿は意外と嫌じゃない感じ?」

少女「いえ、そんなことはないです。本当に早く削除されてほしいし!」

双妹「やっぱり、そうだよね」

男「少女さんはSNSで被害に遭っていたのに、気持ちをまったく考えていなかった。本当にごめん……」

少女「別に謝るほどのことじゃないです。あまり気にしないでください」

双妹「それはそうと、今度みそ素麺を試してみようと思ってるの」

少女「えっ、本当ですかっ?! ぜひ試してみてください!」


双妹は少女さんに笑顔を返し、身体の泡をすすぎ落とした。
どうやら、双妹も少女さんのことを考えてくれているようだ。
そしてそのことが少女さんに伝わったのか、何となく少女さんの態度が軟化したかのように感じられた。
何だかんだ言いつつ、女同士で分かり合える部分があるのだろう。

440以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/14(木) 21:16:18 ID:Vl/BfX5g
少女「ところで、双妹さん。布ナプキンって、洗うのが面倒じゃないですか」

双妹「え? もみ洗いをして浸け置きするだけだし、明日の朝に洗濯かごに入れておけばお母さんが洗ってくれるから、別に面倒だと思わないけど」


双妹はそう言いつつ、風呂椅子を洗い流して湯舟に浸かってきた。
さすがに3人だと狭いので、俺が入れ替わりで湯舟を出て身体を洗う。


少女「そうなんだ。でも、どうして普通のナプキンを使わないんですか」

双妹「私は事情があって2ヶ月毎に精密検査を受けているんだけど、肌トラブルのことで女医さんに相談したら布ナプキンを勧めてくれたの。肌触りがすごく良いし、蒸れないから快適だよ」

少女「へえ、そうなんだ」

双妹「そうそう。慣れるまで戸惑うことがあるかもしれないけど、少女さんも少ない日から試してみたら?」

441以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/14(木) 21:30:32 ID:Vl/BfX5g
少女「それがその、私にはもう来ることがないだよね……」

双妹「……!」

双妹「ごめん、今のはうっかりしてた」

少女「いいですよ、別に――」

双妹「え……えっと、少女さんは今日がお葬式だっけ」

少女「……多分」

双妹「それでお昼休みに友香さんからラインが来たんだけど、土曜日にお線香をあげに行く約束をしているんでしょ。少女さんは家に帰れるの?」

少女「それは分からないけど、今度こそ家に帰れるように気持ちの整理をしたいと考えています」

双妹「そうなんだ。じゃあ、私たちが期末テストを受けているときに、少女さんも試験勉強を頑張らないといけない感じだね」

少女「そうなりますね」

双妹「私に出来ることがあれば協力するから、遠慮なく言ってくださいね」

少女「はい、よろしくお願いします」

442以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/14(木) 21:58:10 ID:Ryed0ANY
〜部屋〜
お風呂から上がり、部屋に戻ってきた。
時刻はまだ10時前なので、テスト勉強をする時間は十分にある。
俺はミニテーブルの脚を広げて設置し、双妹が来るまでに参考書の準備をしておくことにした。

それからすぐに双妹が来て、お互いに得意科目を教えあいながら勉強をした。
その間、少女さんは俺のベッドに座って何やら考え事をしているようだった。

それが何かは分からないけれど、きっと土曜日のことを考えていたのだろう。
生きた証と心的外傷後ストレス障害。
これらの問題を解決して気持ちの整理をしなければ、少女さんは家に帰ることができない。

明日から3日間。
その間に、少女さんは答えを見付けることが出来るのだろうか――。

443以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/16(土) 08:02:39 ID:6nC0vdOk
おつ

444以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/18(月) 19:52:40 ID:OijKQv2g
(2月27日)sat
〜市街地〜
期末テストが無事に終わり、土曜日になった。
今日は少女さんの家にお線香をあげに行く日だ。
俺は朝から部活に行き、学校帰りにお昼ご飯を食べてから待ち合わせ場所に向かった。

その途中で、空を見上げる。
雲行きは少し怪しい感じだけど、今日は久しぶりに晴れ間が覗いている。
昨日のドカ雪のせいで歩道には雪が残っているけれど、それも歩くことに支障はない。


男「少女さん、気持ちの整理は大丈夫?」

少女「たぶん大丈夫です。お葬式も終わったんだし、いつまでも現実から目を背けているわけには行かないから――」

男「そっか、一緒に頑張ろうな」

少女「うんっ!」

445以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/18(月) 19:54:25 ID:UOAwxQmw
〜最寄り駅〜
最寄り駅に着いて有人改札を抜けると、北側の出入り口でみんなが待っていた。
それぞれ学生服を着ていて、友香さんは胸に供花を抱いている。
俺は急いで駆け寄り、3人に声を掛けた。


男「お待たせっ」

双妹「やっと来た。遅いわよ」

男「ごめんごめん」

友香「男くん、こんにちは」

男「こんにちは」

友香「それじゃあ、供花代をお願いします」


俺はそう言われ、友香さんに500円を手渡した。
供花は白を基調とした花が多く、とても可愛らしくまとまっている。
少女さんはそれを見て、笑顔がこぼれていた。

446以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/18(月) 19:57:15 ID:R2vYSZjI
友香「それじゃあ、みんな揃ったし、そろそろ行きましょうか」


俺たちは友香さんに付いて歩き、駅舎を出て歩道に出た。
すると、双妹が小声で話しかけてきた。


双妹「ねえ、男。少女さんは大丈夫なの?」

男「どうだろうな。大丈夫だと思いたいけど……」

少女「今日は友香ちゃんもいるし、頑張ります!」


少女さんは威勢よく答えると、ふわふわと俺たちの前に浮かんだ。


双妹「意気込みだけは十分みたいだね」

少女「意気込みだけじゃないですっ」


しかしすぐに少女さんは立ち止まり、俺たちと肩を並べた。
そして、約1.5メートル。
やっぱり、今回も同じだった。

447以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/18(月) 19:58:55 ID:72TLzY7c
双妹「駄目だったね」

少女「すみません」ショボン

男「でも、先週より前に進んでいるだろ。もう少し頑張れるんじゃないか?」

少女「そ……そうですよね!」

男「ぐぬぬぬ――」


全力で右足を踏み出そうとしたが、やはりピクリとも動かない。
それだけ、少女さんの心の闇が深いということだろう。


友香「……あの、どうかしましたか?」


友香さんが歩みを止め、振り返った。
そして歩道の真ん中で立ち往生をしている俺たちを見て、眉をひそめた。

448以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/18(月) 20:01:41 ID:OijKQv2g
男「何て言うか、身体が動かなくて」

友香「身体が動かない?」

双妹「えっと、ほら。好きな人の家に行くのかと思って、それで緊張しているのかも」アセアセ

友香「あ、ああ……なるほど」

男「そ、そうなんだ」

友「……」

友「友香さんに話しておきたいことがあるんだけど、いいかな」

友香「私に?」

友「俺たちは今、少女さんが亡くなった理由を調べているんです。そのことで少し協力してくれませんか」


その言葉に俺は驚いた。
まさか少女さんのことを話すつもりなのか?!
しかし、現状を考えると友香さんの協力が必要なことは間違いないだろう。

449以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/19(火) 19:21:00 ID:SFP9K7sE
友香「亡くなった理由を調べているって、どういうことですか」

友「単刀直入に言って、少女さんを成仏させるためです」

友香「あの、言っていることの意味が分からないんですけど」


友香さんはそう言うと、怪訝そうに友を見据えた。
そして、友が慎重に口を開く。


友「少女さんは今、自分が死んだ理由が分からなくて現世をさまよっています。そんな彼女の魂を救うためには、どうしても友香さんの協力が必要なんです」

友香「こんなときにふざけるのは止めてください!」

男「友香さん、俺たち3人には少女さんの姿が見えているんだ。彼女は今もここにいて、家に帰ることが出来ずに苦しんでいるんです!」

双妹「信じられないかもしれないけど、本当のことなの」

友香「少女が今も苦しんで……いる?」

男「そうです。俺たちではなくて、少女さんに力を貸してあげてください」

450以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/19(火) 19:23:41 ID:54bXVuLU
友香「信じられないけど、その……分かりました。それで私は何をすればいいんですか」

少女「もしよければ、友香ちゃんと話をしたいです」

友「そうだな、そのほうが手っ取り早いもんな。それじゃあ、最初に友香さんも少女さんの姿を見えるようにしたいと思います」

友香「そんなことが出来るの?」

双妹「友くんには霊能力があって、私も見えるようにしてもらっているんです」

友香「霊能力?!」

友「今、日常的に身に着けているアクセサリーを持っていますか?」

友香「持ってないけど、それがないと駄目なんですか」

友「いや、大丈夫です」

友「……少女さん。今回は前と違って霊具を作ることが出来ないから、友香さんの鳩尾に手を添えて意識を集中してくれるかな」

少女「は、はいっ。分かりました」

友「それでは、友香さんは俺が合図を送るまで目を瞑っていてください。次に目を開いたとき、少女さんの姿が見えるようになっているから」

友香「う……うん」

451以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/19(火) 19:27:42 ID:6HF/dohc
友香さんが言われるがままに目を瞑ると、少女さんが歩み寄りそっと友香さんの鳩尾に手を添えた。
そしてその手に、友が御札を重ねる。


友「我の名は友。心の臓より送りたるは幽界の者を見し力。此の者は彼の者を捉え、干渉する力を生み出したるは――」


本人は真剣にやっているのだろうけど、相変わらず胡散臭い。
この中二っぽい呪文はどうにかならないのだろうか。
やがて儀式が終わり、友が少女さんの手から御札を離した。


友「もう目を開けても大丈夫ですよ」

友香「……」

少女「友香ちゃん。私のことが見えていますか」

友香「えっ……うそでしょ。本当に少女なの?!」

少女「そうだよ。たくさん心配掛けてごめんね」

452以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/19(火) 19:31:13 ID:6HF/dohc
友香「どうして? どうして、自殺なんてしちゃったのよお!」

少女「それは――」

友香「つらいことがあるなら、一人で悩まずに相談して欲しかった。だって、私たち親友でしょっ!」


友香さんは気持ちを昂ぶらせ、供花を手にしたまま、悲痛な表情で少女さんを抱き締めようとした。
しかし、その腕は身体をすり抜ける。
そして友香さんはそのまま泣き崩れた。


友香「ううっ、うわあああんっ!」

少女「友香ちゃん、ごめんなさい――」

男「これで良かったのかな」

双妹「これで良かったんだよ、きっと……」

男「……そうだな」

453以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/20(水) 15:01:01 ID:mpmZxSJY


454以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/20(水) 19:37:17 ID:gl0cKDkA
やがて気持ちが落ち着いたのか、友香さんがしゃくりあげながら立ち上がった。
そんな彼女に友が説明を始める。
少女さんの姿を見ることが出来る期間や守護霊の力を強めるための御守り。
それらの説明が終わると、友香さんは赤く腫れた目で少女さんを見詰めた。


少女「友香ちゃん。私は私がどうして死んでしまったのか、その理由を知りたいの。だから、私に協力して欲しい」

友香「……ひっく、分か……ってる。私は何を……したらいいの」

友「うさぎのぬいぐるみを調べたいので、少女さんの部屋に案内してほしいです」

友香「少女の……部屋?」

友「少女さんの自殺は意図的なものではなくて、偶発的な事故によるものなんです」

友香「あれが、事故だって言うの?!」

友「その事故原因が分からないせいで、少女さんは家に帰ることが出来ないんです。詳しいことを話すと長くなるので、まずは少女さんの家に行きませんか」

友香「そう……ですね」

455以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/20(水) 19:39:47 ID:nOyQoMbQ
男「なあ、友。俺たちは少女さんの家に行けないんだけど」

友「行けないものは仕方ないだろ。ちゃんと調べてくるから、後のことは任せてくれ」

友香「あの……どうして男くんは行けないんですか」

友「憑依霊には霊的占有範囲というものがあって、男の霊的中心が少女さんの占有範囲から出られない状態になっているんです」

友香「ふうん、そんなことをしているんだ」

双妹「ねえ、少女さん。このままだと男がお線香をあげられないわよ」

少女「そうなんだけど、やっぱり怖くて……」

双妹「そっか。それじゃあ、仕方ないわね」

456以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/20(水) 19:42:10 ID:IDe8nIjw
男「友香さん。そういう訳だから、ごめん」

友香「ひとつ聞きたいんですけど、その動けないのって、いわゆる金縛りなんですか?」

男「多分、金縛りとは違うんじゃないかなあ」

双妹「金縛りって言うより、男が無意識に全力で抵抗している感じだよね」

男「もしかしたら、少女さんが運動神経を操作しているのかも」


少女さんは視覚や聴覚、触覚の操作をしている。
それくらい霊的な力が強いのだから、さして驚くほどのことではない。


友香「私に良い考えがあるんだけど」

男「良い考え?」

友香「男くんが自分で動けないなら、誰かに運んでもらえばいいんです」

双妹「それはもう考えたし、押しても引いても駄目でしたよ。さっきも言ったけど、全力で抵抗して来るんです」

友香「だったら、抵抗しても無駄な状況を作ってしまえばいいじゃないですか」

457以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/20(水) 19:43:41 ID:gl0cKDkA
友香さんはそう言うと、スマホを取り出して何かを調べ始めた。
そして少し距離を取り、どこかに電話を掛ける。


双妹「何をするつもりなんだろ」

男「……さあ」

少女「友香ちゃんのことだから、突拍子もないことだと思うけど――」

双妹「突拍子もないこと?」


そうこう話していると、友香さんが戻ってきた。
何となく、にこやかな表情をしているように見える。


友香「電話で聞いたら、すぐに来てくれるって」

男「来てくれるって、誰がですか」

友香「タクシー」

男「ええっ、タクシー?!」

458以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/20(水) 20:07:59 ID:IDe8nIjw
双妹「ね……ねえ、本当にタクシーがこっちに来てるよ!」

男「まじかよっ!」

双妹「もしかして、あれに乗って強引に連れて行くってこと?!」

友香「そうですよ。男くんが少女から離れられないなら、少女も男くんから離れることが出来ないはずですよね。私も供花を持って歩くのが大変だから、ちょうどいいかなと思うんです」

友「なるほど。車に乗せるのは盲点だったな」

双妹「ちょっと待ってよ! もし少女さんの留まる力のほうが強かったら、男はどうなるの?!」

男「あ、ああ……確かに」


車の中でぺちゃんこになるとか、魂が身体から抜け落ちるとか。
最悪の場合、そんな状況になるんじゃないのか?!

459以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/20(水) 20:12:09 ID:R1owHpMY
男「でも少女さんに一歩を踏み出す勇気があるなら、俺は友香さんの提案を試してみたいと思う。少女さんはどうしたい?」

少女「今のままだと、私は何も変われない。だから、死を受け入れるために家に帰りたいです」

男「そうか。じゃあ少女さん、一緒に頑張ろう!」

双妹「男、何を考えているのよ! もし万が一のことがあれば、死ぬかもしれないのよ!」

男「そうかもしれないけど、俺は少女さんを支えてあげたいんだ」

双妹「じゃあ、少女さんは責任を取れるの?」

少女「双妹さんの気持ちは分かります。だけどここで私が頑張らないと、男くんの気持ちに応えることが出来ないと思うんです」

少女「双妹さん、私は前に進みたいんです!」

460以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/20(水) 20:15:52 ID:IDe8nIjw
双妹「口で言うのは簡単だけど、そもそも少女さんは――」

友「まあ、はっきり言って大丈夫だけどな」

男・双妹「えっ?」

友「男は守護霊を強化しているだろ。最悪の場合、少女さんが弾き出されるだけだから」

双妹「……」

少女「……」

双妹・少女「そういうことは先に言ってよね!!」

友「ご、ごめん」アセアセ

461以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/20(水) 20:19:15 ID:nOyQoMbQ
友香「えっと、タクシーに乗るのは大丈夫ってことで良いんですか?」

双妹「まあ、そうだね」

友香「じゃあ、待たせているから行きましょうか」


そう言われて友香さんが指差したほうを見ると、タクシーが駅前に停車していた。
いつの間にか到着して、俺たちを待っていたらしい。


男「少女さん、頑張ろう!」

少女「はいっ」


俺は少女さんの手を取り、駅前のタクシーへと歩みを進めた。
その足取りは少しぎこちなく、まるで自分の身体ではないかのようだ。
しかし、それは少女さんが勇気を出している証なのだ。

一歩、一歩、また一歩。
前に向かって足を踏み出していく。
そして、ついに少女さんはタクシーに乗ることに成功した。

462以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/21(木) 05:32:57 ID:94L/6ilk


463以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/25(月) 19:59:13 ID:aSBwdqro
〜住宅街〜
駅からタクシーで走ること数分。
さっきまで帰ることが出来なかったのが信じられないほど、簡単に少女さんの家に到着した。
タクシー代はみんなで割り勘にし、車から降りる。
そして、俺は少女さんの様子を確認した。


男「家に着いたけど大丈夫?」

少女「だ……大丈夫です」


その声はわずかに震えていた。
自分が死んだ場所に戻ってきたのだから、もちろん怖いに決まっている。
それでも、少女さんは気丈に振舞って頑張っているのだ。


男「ここまで着たら、もう一息だな」

少女「そうですね」

464以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/25(月) 20:02:11 ID:aSBwdqro
双妹「そういえば、少女さんの家って浮遊霊が集まっているんだっけ」

友香「ええっ、そうなの?!」

友「確かに浮遊霊の集会場みたいになっているけど、そのほとんどは少女さんのことが心配で来ているだけだから特に気にする必要はないと思う」

友香「……ふうん。よく分からないけど、少女は謝っておいたほうが良さそうだね」

少女「そうかもしれないけど、本当に浮遊霊が集まっているんですか?」


少女さんはそう言うと、友に疑いの眼差しを向けた。
どうやら、少女さんには他の浮遊霊の姿が見えないらしい。


友「少女さんは男の守護霊が守っている範囲の中にいるから、他の浮遊霊の姿が見えないんだ」

少女「じゃあ、取り憑くのを止めれば見えるようになるってことですか」

友「そういうことになるね」

少女「ずっと家に帰っていなかったし、怒られたりするのかなあ」

友「それはあり得るかも」

少女「いやだな……」ショボン

465以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/25(月) 20:03:44 ID:aSBwdqro
男「とりあえず、心配をかけているなら早く帰って安心させてあげようよ」

双妹「そうだね。もう2週間近く帰っていないんだし」


ピンポーン♪
ガチャリ


少女「……お母さん、ただいま」

少女母「友香ちゃん、双妹さん、いらっしゃい。中学校の同級生も一緒だと聞いていたけど、男の子だったのね」

少女「……」

友香「……はい、そうなんです」

双妹「私のお兄ちゃんと友くんです」

男「こんにちは、男です」

友「友です」

少女母「みんな、今日はありがとう。どうぞ上がってください」

466以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/26(火) 08:07:18 ID:PfOvCzvE
どうなる

467以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/26(火) 22:37:10 ID:bPt9NxvQ
〜少女さんの家〜
友香さんが供花をおばさんに渡すと、俺たちは仏間に案内された。
仏壇の横に中陰壇が置かれ、遺影や遺骨が安置されている。

少女さんの死が、すぐそこにある――。

月曜日に自分の死を知り、泣き崩れていた少女さん。
死を受け入れるために、勇気を出していた少女さん。

ようやく自分の身体がある場所に戻ってくることが出来て、彼女は一体何を考えているのだろうか。
寡黙に佇んでいる彼女の心境は、生きている俺では推し量ることが出来ない。

そう考えていると、友香さんが仏壇の前に座った。
俺たちもそれに倣い、仏壇と向かい合う。
そして、友香さんがお線香に火をつけるとお香の香りが仏間に広がり、俺たちは静かに手を合わせた。

468以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/26(火) 22:46:21 ID:bPt9NxvQ
少女母「お友達が来てくれて、きっと少女も喜んでいるわね」

少女「……」

友香「そ……そうですよね」

少女母「それじゃあ、みんな。お菓子を用意するから、ぜひ食べていってね」


おばさんはそう言うと、あんころ餅とコーヒーを座卓に並べてくれた。
一口食べると小豆の優しい甘さが口いっぱいに広がり、それがコーヒーのほろ苦さを中和して風味を引き立ててくれている。
小腹を満たして冷えた身体も温まり、とてもほっとさせられた。


男・双妹「ごちそうさまでした」

友香「ごちそうさまでした」

友「なあなあ、友香さん。あの話を――」

友香「えっと……ああ、うん」

469以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/26(火) 22:53:14 ID:bPt9NxvQ
友香「あの、おばさ……」

少女母「そうだ! 男くんって、もしかして柔道部をやってる男くん?」

男「はい、そうですけど」

少女母「やっぱり、そうなんだ。思い出したことがあるから、少し待っててくれるかしら」


おばさんは笑顔を見せると、仏間を出て行った。
そのせいで、友香さんは言葉を切り出すタイミングを逸してしまったようだ。
それからしばらくして、おばさんが戻ってきた。


少女母「少し迷ったのだけど、これを受け取ってくれませんか?」


おばさんはそう言うと俺に向かって座り、小さな箱を差し出してきた。
その箱は四つ葉のクローバーがデザインされた包装紙に包まれていて、緑色のリボンで十字にラッピングされていた。
それはとても温かく、まるで優しい気持ちが伝わってくるかのようだ。

470以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/26(火) 22:56:02 ID:bPt9NxvQ
少女「わああぁぁっ!」

少女「ちょっと、お母さん! みんなの前で、何やっちゃってくれてるのよお!!」アセアセ

友香「あのっ、おばさん。私たち、少女さんの部屋に行っても大丈夫ですか」

少女母「でも、あそこは――」

友香「それは分かっていますけど、私たちがいたら少女さんが恥ずかしいかもしれないし」

少女母「それもそうね。みんなの前で渡したりなんて出来ないわよね」

友香「じゃあ、私たちは少し席を外させていただきます」


友香さんは立ち上がり、仏間を出て行った。
その後を友が付いて行き、双妹が少女さんを一瞥して席を立つ。
どうやら、無事に少女さんの部屋の調査が出来そうだ。

471以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/26(火) 23:07:54 ID:bPt9NxvQ
少女母「これをお渡しする前に、娘の話をしても良いかしら」

男「……はい、ぜひお願いします」

少女母「男くんのことは、よく少女から聞かされていたの。夏の大会で頑張っていたこととか、14日に学校で練習試合があることとか――。他所の学校の生徒なのに、とても熱心に応援していたみたいだわ」

男「そう……なんですね」

少女母「だけど少しつらいことがあって、それでも男くんにチョコレートを渡すんだってすごく照れ臭そうに話してくれたときは、私も応援してあげたい気持ちでいっぱいだったの」

少女母「それなのに、どうしてこんなことになっちゃったのかしらね――」

少女「お母さん……」

男「今週の月曜日、妹と一緒に少女さんのお見舞いに行ったんです。でもそうしたら土曜日に亡くなったと聞いて、すごく驚きました。少女さんはどうして亡くなったのですか」

少女母「あの娘は看護師になるのが夢だったの」

男「それは知っています。小学生のときに入院したことがあって、そのときに看護師に憧れたと話してくれました」

少女母「……」

少女母「ごめんなさい。やっぱり湿っぽい話になってしまうわね」

472以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/26(火) 23:10:27 ID:bPt9NxvQ
少女母「ところで、男くんには好きな人はいるの?」

男「はい」


俺はそう答え、少女さんを一瞥した。
そして、名前を告げる。


男「少女さんのことが好きなんです」

少女「……!」

少女母「男くん、ありがとう――」


おばさんの表情はとても寂しげで、それでいて気恥ずかしそうな笑みを浮かべていた。
もしかすると、お世辞だと思われたのかもしれない。

473以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/26(火) 23:12:46 ID:bPt9NxvQ
少女「男くん」


少女さんが緊張した面持ちでおばさんの隣に座り、俺と向かい合った。
そして、彼女は声を振り絞った。


少女「私もあなたのことが好きです。遅くなってしまったけど、私の気持ちを受け取ってくれませんか」


およそ2週間遅れのバレンタインチョコ。
俺は少女さんの死を肌で感じながら、彼女の気持ちを受け取った。

474以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/27(水) 20:32:28 ID:R/aW0NRI
〜住宅街〜
弔問を済ませ、俺たちは少女さんの家を後にした。
何だか、今はとても複雑な心境だ。

少女さんの死と家族の悲しみ。
おばさんは娘を亡くして、それでもその現実を受け入れようとしていた。
それなのに、俺たちの前には少女さんが当たり前のように立っている。

それは少女さんが成仏をしていないからだ。
きっと、この状況は望ましいことではないのだろう。
俺と少女さんは、いつかは――。


少女「ねえ、友くん。私の部屋を調べて何か分かりましたか?」

友「少なくとも、盗撮カメラが仕掛けられていた痕跡はなかった。マスコミは関係ないと思う」

少女「そうなんですね」

475以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/27(水) 21:22:25 ID:R/aW0NRI
友「それはそうと、男も無事にチョコを貰えたようだな」

男「俺は本命だけど、友は義理じゃないか」

双妹「そうそう。男に絡む余裕があったら、早く彼女を作ったほうがいいんじゃないかなあ」

友「ぐぬぬ……双妹ちゃん、容赦ないな」ショボン

少女「そ、そうだ! 友くんって、意外と友香ちゃんと気が合うかも」

友香「……えっ?」

少女「友くんはすごく親身になってくれるし、良い人だよ。試しに話だけでもしてみたらどうかなあ」

双妹「それは良いアイデアかも!」

友香「ちょっ、え……ええっ?!」

476以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/27(水) 21:23:00 ID:R/aW0NRI
友「それじゃあ、あの喫茶店で少し休んで行きませんか? 少女さんのことで、今までのことを話しておきたいし」


嫌そうな顔をしている友香さんに対して、友は少女さんを誘う口実に使った。
今までのことを話すとなれば容易には断れないし、友香さんが困り切った表情で俺と双妹に視線を向ける。


友香「もちろん、みんなも来てくれるんでしょ?」

男「俺たちが聞いても仕方がないし、雨が降りそうだから帰ります」

少女「友香ちゃん、まずは最初の一歩が肝心だよ!」

友香「えええぇぇっ?!」

友「そこまで嫌そうにされると、さすがの俺もちょっと傷付くかも――」

友香「はあっ、分かりました。少女のこともあるし、話を聞かせてもらうだけですからね」

友「了解。それじゃあ、友香さん。行こうか」

477以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/27(水) 21:25:39 ID:R/aW0NRI
俺たちは駅前で二人と別れ、駅舎へと入っていった。
そして様子を見るために一度振り返ると、友と友香さんがこちらを見ていた。
あの二人は喫茶店に行かずに、俺たちを見送って何をしているのだろう。
俺は疑問に思いつつ、駅舎の中を通り抜けて南側の出入り口から外に出た。


双妹「今頃、友くんたちはいい雰囲気になってるのかなあ」

男「少女さんのことを話すわけだし、楽しい話題にはならないんじゃないか?」

双妹「それもそっか。でももし二人が付き合うことになったとしたら、男もうかうかとしていられないわよ」

男「……は?」

双妹「だって少女さんは幽霊だし、私は絶対に交際を認めないもん」

男「絶対なんだ」

双妹「当たり前でしょ」

478以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/27(水) 21:32:04 ID:R/aW0NRI
少女「でも双妹さん、北倉駅前の図書館で幽霊ものの恋愛小説を借りてきて、最近ずっと読んでいますよね」

男「ふうん、そんな本を読んでいるんだ」

双妹「そうだけど、どうして内容を知ってるの?!」

少女「私、本を読むのが好きなんです」

双妹「べ……別に二人の交際を認めるつもりはないんだからね!」プイッ

少女「ところで、バレンタインチョコの消費期限は大丈夫ですか」


双妹がただのツンデレだと察した少女さんが、チョコレートの話題を切り出してきた。
ここでアピールをしてくるとは、なかなかの策士かもしれない。
俺は通学鞄からチョコレートを取り出して、消費期限を確認した。
すると、それには一度はがして貼りなおした痕跡が残されていた。


男「まだ1ヶ月くらいあるみたい」

少女「そっか、よかった//」

479以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/27(水) 21:37:03 ID:R/aW0NRI
双妹「それはそうと、少女さんはどうしてまだ男に取り憑いているの。チョコは渡したし家にも帰れるようになったんだから、自分の家に帰るべきなんじゃないかなあ」

少女「確かに家に帰れるようにはなったけど、今度は家の中にいるのが嫌なんです」

双妹「もしかして、知らない浮遊霊が集まっているから?」

少女「そうじゃなくて、良くないことが起きるような気がするんです」

双妹「それって、杞憂なんじゃないの? 実際、何も起きなかったし」

少女「でも、もやもやした気持ちは変わっていないんですよね――」

男「家に帰ったとは言っても、自分の部屋には戻っていないだろ。それが関係しているのかも」


少女さんが自殺をしたのは自分の部屋だ。
しかし今日は家に帰っただけで、自分の部屋には戻っていない。
友香さんたちを呼びに行こうとしたけれど、少女さんの行動範囲に縛られて2階に上がることが出来なかったからだ。
気持ちの整理も出来ていなかったし、今回は家に帰れただけでも前進したと考えるべきだろう。

480以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/27(水) 22:29:04 ID:R/aW0NRI
双妹「……そっか。結局、まだ気持ちの整理が出来ていないし、家に帰れただけでも前進したと考えるべきなのかもしれないわね」

男「そうそう、俺もちょうどそう思ってた」

少女「すみません。次は部屋に入れるように頑張ります」

男「まあ、そんなに焦ることはないよ」


俺はそう言い、話題を変えて雑談をすることにした。
しかし会話が盛り上がってきたところで、冷たい雨が降り始めた。


双妹「男は傘を持ってる?」

男「ああ、降りそうだったし持って来てる」


俺はそう言いつつ、傘を差して双妹を入れてあげた。
その一方で、少女さんは幽体の見た目を変えてレインコート姿になっている。
何だか可愛い。
それからしばらくして雨が強くなり、俺たちは足早に家に帰ることにした。

481以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/28(木) 08:59:59 ID:g725WIZs
友はうまく行くといいな

482以下、名無しが深夜にお送りします:2018/07/02(月) 20:52:12 ID:fJyNSwOQ
〜自宅・部屋〜
自宅に着いて部屋に戻ると、俺は暖房をつけて部屋着に着替えた。
そして通学鞄からチョコを取り出し、ミニテーブルの上に置いた。
少女さんは俺の隣で、そわそわと浮いている。


男「じゃあ、いただきます」

少女「……うん//」


俺は若葉のような色のリボンを解き、四つ葉のクローバーがデザインされた包装紙を破った。
すると土色の小箱が出てきて、和チョコというラベルが貼られていた。
中は10個入りのアソートになっていて、5種類の味が楽しめるようだ。


男「抹茶と小豆は分からなくはないけど、醤油ショコラ?!」

少女「試食したんだけど、すごく美味しかったよ」

男「へえ、そうなんだ」


醤油ショコラを手に取り、ぱくっと食べてみた。
噛むと舌の上で溶け、優しい甘さと香ばしい風味が口の中で広がっていく。
奥深い味が絶妙で、今までにない楽しさを感じることが出来る。

483以下、名無しが深夜にお送りします:2018/07/02(月) 20:55:30 ID:DpuvkNLw
男「確かに、すごく美味しいな!」

少女「でしょでしょっ♪」

男「他にもほうじ茶生トリュフと桜チョコがあるのか」

少女「そ……それとね、包装紙にも意味があるんですよ//」

男「包装紙に?」


俺は抹茶チョコを食べ、包装紙を手に取った。
四つ葉のクローバーが描かれているので、幸せとか幸運といった意味だろう。


少女「その4枚の葉っぱにはそれぞれ願いが込められていて、すべて揃って『真実の愛』を表しているんです。そして四つ葉のクローバーにも花言葉があって――」

男「花言葉?」

少女「そのひとつが『ビー・マイン』なんです」

少女「だ……だから、私はその包装紙に包み変えたんですっ//」

484以下、名無しが深夜にお送りします:2018/07/02(月) 20:59:01 ID:.qfiyutw
ビーマイン。
Be mine.

直訳すると、私のものになって――か。

チョコレートは手作りではなくて、市販のものかもしれない。
だけど包装紙を交換し、ちゃんと少女さんの想いが込められている。
俺はそれがすごくうれしかった。


男「少女さん、ありがとう。俺はもう少女さんの彼氏だから!」

少女「……うん//」

男「それで明日、一緒にどこかに行かない? 付き合い始めたのに、まだデートらしいことをしていないだろ」

少女「そうですよね。デートに行きたいです//」

485以下、名無しが深夜にお送りします:2018/07/02(月) 21:02:02 ID:fJyNSwOQ
トントン・・・
ノックの音がして、双妹が入ってきた。


双妹「そろそろいい雰囲気になってる頃かなと思って、邪魔をしに来たわよ」

男「双妹、ちょうど良いところに来てくれたな」

双妹「ちょうど良いところ?」

男「明日少女さんとデートに行くんだけど、お勧めの映画って何かないかな」

双妹「映画デートに行くの?」

男「そうそう」

双妹「それなら、『魔王の命令なんて聞かないんだから!』って映画はどうかな。すごく話題になっているみたいだよ」


俺たちの交際は認めないと言いつつ、素直にお勧めの映画を教えてくれた。
それにしても――。
何だよ、そのラノベみたいなタイトルの映画は。
よく分からないけど、魔王軍を裏切った側近が勇者と共闘するファンタジー映画なのだろう。
それはそれで面白いかもしれない。

486以下、名無しが深夜にお送りします:2018/07/02(月) 21:13:27 ID:DpuvkNLw
少女「双妹さん、それって今日から公開されている映画ですよねえ!」

双妹「うん」

少女「私、すごく楽しみにしていたんです!」

双妹「へえ、そうなんだ」

少女「ねえねえ、男くん。一緒に観に行こうよ」

男「別にいいけど、それって勇者系のファンタジー映画とか?」

少女「もうっ、違いますよ!」

少女「魔王役の外島くんと天使役の知波くんがヒロインを奪い合う、胸きゅんラブストーリーです//」

男「……ふうん、恋愛映画なんだ。それじゃあ、明日はそれを観に行こうか」

少女「やったあ♪」


俺は喜ぶ少女さんを見やり、二人分のオンラインチケットを予約した。
そして映画の話題で盛り上がる少女さんと双妹の話を聞きながら、その後の予定を考えることにした。

487以下、名無しが深夜にお送りします:2018/07/03(火) 03:26:01 ID:ndUWB3TI
おつ

488以下、名無しが深夜にお送りします:2018/07/03(火) 20:30:41 ID:gZXHDvA.
(2月28日)sun
〜映画館〜
雲の隙間から晴れ間が覗く日曜日。
俺と少女さんは電車とシャトルバスに揺られて、ショッピングモールに併設されている映画館にやってきた。


少女「見てみて、今日の上映分はもう満席みたい。予約しておいて良かったね」

男「ああ、やっぱりすごく人気があるんだな。それじゃあ、チケットを発券してくる」


俺はそう言って、券売機を操作した。
後方通路側の座席を2枚。
そこが俺と少女さんの席だ。


少女「あれっ? 私の分の座席も予約していたんですか」

男「隣の人と重なり合うわけには行かないし、落ち着いて観られないだろ」

少女「……そうですよね。男くん、ありがとう」

489以下、名無しが深夜にお送りします:2018/07/03(火) 20:48:41 ID:CHRtutMM
やがて上映時間になり、俺たちは席に着いたのだが……。
観客は若い女性や女子中高生ばかりで、男性は俺だけしかいなかった。
もしかして、俺ってものすごく場違いじゃないのか?!


少女「男くん、いよいよだね♪」

男「あ……ああ、うん」


閉じた状態の座席にふわりと腰をかけている少女さん。
照明が暗くなり、予告編が始まっただけですでに興奮を隠し切れない様子だ。
まあ恋愛映画は主に女性が観るものだし、少女さんが楽しんでくれればいいだろう。
俺は居心地の悪さを感じつつ、スクリーンに目を向けた。

490以下、名無しが深夜にお送りします:2018/07/03(火) 21:08:22 ID:gZXHDvA.
・・・
・・・・・・
映画の上映が終わり、俺たちは表に出た。
最初はどうなることかと思ったけれど、ヒロインを中心とした三角関係が複雑に絡み合っていて面白く観ることが出来た。
とはいえ、女性たちの黄色い声のせいで居心地は良くなかったが――。


少女「はふぅっ// 魔王くん、格好良かったね♪」

男「ヒロインにバイオリンを手ほどきするシーンとか、気障っぽいけどすごく良かったよな」

少女「そこ、面白かったよね。みんなも笑ってたし」

男「でも友達の皐月ちゃん、少し可哀想だったな」

少女「うーん、そうだよね。でも、舞踏会の帰りには気付いていたんじゃないかな。ヒロインのことを疑っている感じだったし」

男「そうだけど、俺はヒロインが告白する前に皐月ちゃんにチャンスを与えてあげるべきだったと思うんだ。皐月ちゃんのほうが先に魔王のことを好きになっていたんだから」

少女「えー、それって嫌味に聞こえない?」

男「そうかなあ。恋愛ものじゃないんだけど、魔法少女もののアニメで三角関係の話があって――」

少女「多分あれのことだと思うけど、それとは状況が違うと思うよ」

491以下、名無しが深夜にお送りします:2018/07/03(火) 21:25:36 ID:gOqLEb4Q
〜ショッピングモール〜
少女さんは意外とアニメに詳しいことが分かり、フードコートでお昼ご飯を食べながらアニメの話に花が咲いた。
しかしふと、少女さんが寂しそうな表情になっていることに気が付いた。


男「どうかしたの?」

少女「えっ、どうして?」

男「ちょっと寂しそうな顔をしているような気がしたから」

少女「……気のせいだよ」ニコッ


少女さんは笑って誤魔化したが、視線は気持ちを訴えていた。
恐らく、一緒にお昼ご飯を食べられないことに心を痛めているのだろう。
このままだと、今日一日、少女さんに寂しい思いをさせてしまうかもしれない。

何かないだろうか。
俺と少女さんが二人で一緒に出来ることは――。

492以下、名無しが深夜にお送りします:2018/07/04(水) 23:56:22 ID:6aUFAEms
アニメの話で盛り上がった後、俺はスマホのゲームアプリの話をした。
そしてその流れで、俺は少女さんをゲームコーナーに連れて行った。
もちろん、考えがあってのことだ。


男「ここに来たら、やっぱり太鼓のベテランだよな!」

少女「ふうん、そうなんだ。私、こういうところに来たことがなくて……」

男「ゲーセンで遊んだことがないんだ」

少女「はい」

男「そっか。太鼓のベテランは音楽に合わせて流れてくるアイコンを太鼓で叩くゲームなんだけど、まずは俺がプロの技を見せてあげるよ」ポチッ

太鼓くん『いよっしゃー! ドンパチかましてやろうぜ!!』

〜♪
ドドドンッドドド・・・
カツカツ、ドドドンドンッ!!

男「ふうっ、ざっとこんなもんかな」

太鼓くん『やるじゃねえか。漢がたぎってくる熱いスピリットを感じたぜ!』

493以下、名無しが深夜にお送りします:2018/07/05(木) 00:15:07 ID:q8BnLock
少女「すご〜い!!」

男「少女さんもやってみる?」

少女「ええっ?! 私じゃあ触れないし無理ですよ」

男「ほらっ、少女さんの家に帰るとき、俺を動けなくしていただろ。それを逆に考えれば、少女さんは俺の身体を操ることが出来るってことになると思うんだ」

少女「でも……」

男「いいから、一緒にやってみようよ。すごく楽しいから」

少女「そう……ですね。やってみます」

太鼓くん『せいやあ! もういっちょ、魂の鼓動を感じて叩いてくれや!!』


開始の太鼓を叩くと曲が流れ始め、俺はまず全身の力を抜いた。
すると何となく身体が熱を帯びてきて、両腕がゆっくりと上がり始めた。
そして自分の身体ではなくなってしまったかのような浮遊感を感じ、俺は少女さんにすべてを委ねることにした。


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