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少女「私を忘れないで」
1
:
◆WRZsdTgWUI
:2018/02/17(土) 23:13:03 ID:SLrOQBwc
(プロローグ)
〜体育館裏・少女さん〜
男子「少女さん、わざわざ来てくれてありがとう!」
少女「……」
男子「えっと、その……明日から冬休みだね」
少女「そうですね」
男子「それでその……クリスマスの日は予定が開いてますか」
少女「クリスマスの予定?」
男子「は、はいっ!」
少女「ひとつ聞きたいのですけど、あなたと私は今日はじめて会いましたよねえ。それなのに、どうして教えないといけないんですか」
男子「それは少女さんのことが好きだからっ!」
少女「……?!」
男子「文化祭のときに笑っている少女さんを見て可愛いなって思って、それで一緒に話が出来たらいいなってずっと思っていたんです。だから、僕と付き合ってくれませんか!」
202
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/03/28(水) 20:40:21 ID:kfKbvawM
少女「はあ……。帰りたくないんだって、察してくださいよ」
友「それは分かってる。ぬいぐるみを調べるときに少女さんも来てくれって訳じゃないから」
少女「でも、私の部屋に入るんですよねえ」
友「あっ! 俺が一人で行っても入れないのか」
少女「そうですよ。残念でしたね♪」
友「少女さんの友達を紹介してもらえたら助かるんだけど、他に何か上手い方法はないかなあ――」
少女さんの友達?
そういえば今、双妹が友香さんに会っているはずだ。
しかも、彼女は俺に会いたがっているらしい。
203
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/03/28(水) 22:35:26 ID:kfKbvawM
男「少女さんの友達なら、俺が紹介できるかもしれない」
少女「紹介って、まさか友香ちゃんを?!」
友「マジかっ! 男に宛があるなら、俺に紹介してくれよ!」
男「良いけど、実は俺もまだ会ったことがないんだ」
友「どういうことだよ、それ」
男「何だか俺に会いたがっているらしくて、近い内に会う約束をしているんだ。だから、そのときに友の話を振ってみる」
友「……」
友「少女さんのことを考えると、訳ありなんだろうな。とりあえず、いい感じで頼む」
男「分かった」
204
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/03/28(水) 22:37:49 ID:VGtwCazY
友「さてと、上手く行けば、来週の日曜日には調べられそうだな」
少女「来週の日曜日って、そんなに急ぐ事なんですか?」
友「そりゃあ、少女さんも早く安心したいだろ」
少女「それはそうですけど、散らかっている部屋を見られたくないです」
友「大丈夫。ご両親がきれいに掃除してくれているはずだから」
少女「そういう問題じゃなくて、家に帰ると本当に良くないことが起きると思うんです」
友「だから、俺がそう思う原因を取り除いてあげるよって言ってるんだ」
少女「でも、でも……」
ぬいぐるみの調査が現実味を帯び始めて、少女さんが渋り始めた。
友に自分の部屋を見られたくない気持ちは分かるけど、それでは今までと何も変わらない。
そう思い、友に助け舟を出すことにした。
205
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/03/28(水) 22:41:33 ID:kfKbvawM
男「少女さんは催眠術の提案をされたとき、『自分を見詰めることが出来るようになれば、いろんなことが分かるようになる』って、そう言っていただろ」
少女「……はい」
男「死んだときの記憶を思い出して、何か分かった?」
少女「分かったと言うか、やっぱり私が自殺をするなんておかしいです。だって、男くんに告白するって決めたんだもん!」
少女「……あっ! いえ、これは違うんです!!」アセアセ
男「いいよ、ありがとう。少女さんはつらいことがあっても、前向きに頑張っていける人だと思う。俺はそう思ってる」
少女「……うん」
男「少女さんの記憶は戻ったけど、少女さんの主観だけでは分からない部分があるんだ。だから、もう少し一緒に頑張ってみようよ」
少女「そう……ですね。調べてみてください、私の部屋を――」
少女さんはそう言うと、友を見詰めた。
その表情には、強い意志を感じられた。
206
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/03/30(金) 20:45:49 ID:57eyaXz.
〜市街地〜
少女さんの催眠術が無事に終わり、俺と少女さんは友の家を後にした。
そして、二人で歩く日曜日の午後。
お互いに告白のことを意識してしまい、ずっと沈黙が続いている。
そんな気まずい雰囲気の中、少女さんが口を開いた。
少女「ちょっと休んでいきませんか」
少女さんはそう言って、公園を指差した。
普段なら親子連れが多い場所だけど、昨日の雨で水たまりが出来ていて、今日は誰もいないようだ。
二人で話をするにはちょうど良いかもしれない。
207
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/03/30(金) 22:51:09 ID:twkEuJY2
男「そうだね。少し休んでいこうか」
少女「……」
俺はぬかるんだ地面に気を付けながら、公園の中に入った。
その隣を少女さんがふわふわと付いてくる。
そして、二人でベンチに座った。
少女「えっと、その……さっきの告白のことなんですけど――」
少女さんは不安げな様子で言い、顔を俯けた。
もしかして、告白の続きをしてくれるのだろうか。
その気持ちはとてもうれしいけれど、彼女はすでに死んでいる。
付き合うことなんて出来るはずがない。
だけど、理屈ではなくて……。
彼女の気持ちと前向きな想い、そして自殺の悲しみ。
それらを二人で分かち合いたいと思った。
208
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/03/30(金) 23:15:19 ID:N9jhFgDI
男「……少女さん!」
俺は力強く立ち上がり、まっすぐに少女さんを見詰めた。
少女「は……はいっ……」
男「俺は少女さんのことが好きです!」
これが今の俺の気持ちだ。
それを伝えると、少女さんは唖然とした表情になり、やや遅れて驚きの声を上げた。
少女「ええぇっ?!」
男「こういう時ってさあ、やっぱり男子のほうから告白するべきだと思うから」
少女「本当に私なんかで良いんですか?!」
男「ああ、俺は少女さんのことが好きなんだ。だから、付き合ってください!」
きっと、大丈夫。
この告白は絶対に成功するはずだから――。
しかし、ややあって少女さんは冬の空のように顔を曇らせた。
209
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/03/30(金) 23:38:12 ID:kMqQQSmc
少女「……どうして、どうしてそんなことを言うんですか?!」
男「俺じゃあ、駄目なのかな」
少女「だって、私は死んでいるんですよ! 恋愛なんて出来るわけがないし、付き合うことなんて出来るわけがないじゃないですか」
男「でも、少女さんは俺に告白するつもりだったんだろ。そう言ってたじゃないか」
少女「それは……それは、生きていたときの話です!」
少女「私は結婚が出来ないし、赤ちゃんを産むことも出来ません。だからあのとき、私は双妹さんの前から逃げ出したんです」
少女「男くんのことが好きだからこそ気持ちを伝えないって、そう決めたんです!」
少女「それなのに――」
自殺の動機に、俺と双妹が関わっていた。
そしてその記憶と告白の決意を、催眠術を通してしゃべってしまった。
それは、少女さんにとって想定外のことだったのだ。
210
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/03/30(金) 23:45:34 ID:kMqQQSmc
男「人が人を好きになるのに、そんな理屈は関係ないんだよ!」
男「確かに少女さんは死んでいるし、幽霊だから付き合えないって思ってた」
男「だけど少女さんが記憶を思い出していくにつれて、つらいことがあっても前向きに頑張っていける人なんだなと思った。そして、そんな少女さんと気持ちを分かち合いたいと思ったんだ」
少女「でも、でも……私は4月1日でいなくなるんですよ!」
男「だから、そんな理屈は関係ないって言ってるだろ!」
少女「ふふっ……」
男「何がおかしいんだよ」
少女「ご……ごめんなさい。ちょっと、友香ちゃんの言葉を思い出して」
男「友香さんの?」
少女「好きな人に告白するのは、本当に勇気がいることだと話していたんです。それでその後スイーツ店でおしゃべりをしていたんですけど、やっぱり強引さも必要だったんだなと思って」
少女「男くん……本当に幽霊の私なんかで良いんですか?」
211
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/03/31(土) 00:12:46 ID:JlnGkhdU
男「だから、そう言ってるだろ」
少女「私も男くんのことが好きです。付き合って欲しいです!」
男「これで俺たちは恋人同士……だね」
そう言うと、少女さんは気恥ずかしそうに立ち上がった。
そして、右手を差し出してきた。
少女さんの手が触れて、そのまますり抜ける。
そう思った瞬間、彼女の右手が俺の左手に触れた。
少女「私ね、実は触ることが出来るんです」
男「それって、俺に姿を見せている方法と同じ理屈でってこと?」
少女「理屈なんて関係ないですよ//」
男「そうだな」
俺たちに理屈なんて関係ない。
今までは触れることが出来なかった、少女さんの身体。
その身体に触れることが出来て、体温を感じることが出来ている。
その事実だけで、俺の心は満たされていた。
212
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/02(月) 22:36:44 ID:2kwO/qSg
〜自宅・部屋〜
少女「な……何だか緊張しますね」ソワソワ
男「緊張するって言うけど、今朝までと何も変わらないだろ」アセアセ
少女「でも、付き合い始めたその日にお泊りだなんて//」
少女さんはそわそわと落ち着きがない様子で、ベッドに座った。
あまり離れられないので、俺もその隣に座る。
男「お、お泊りとか言うなよ」
少女「そ、そうですよね」
男「でもその……これってお泊りというか同棲だよな」
少女「はわわ// 同棲とか言わないでくださいよ」
男「あの、少女さん――」
213
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/02(月) 23:37:27 ID:2kwO/qSg
双妹「男、おかえり」
少女さんと落ち着いて話をしようかと思った矢先、双妹が部屋に入ってきた。
男「双妹、ただいま」
双妹「……」
双妹「…………」
男「どうかしたのか、黙り込んで」
双妹「ごめん、何でもない――」
214
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/03(火) 00:20:10 ID:Ifp8Goqw
男「何でもないってことはないだろ。もしかして、何かあったのか」
双妹「……うん」
双妹は力なく頷くと、俺の隣に腰を下ろした。
そして、そこに座っていた少女さんが慌てて横によける。
少女「もうっ、そこは私が……って、あ、ああ、そっか」
少女さんは言葉を詰まらせると、悲しげな表情を見せた。
双妹も同じく、悲しげでつらそうな表情をしている。
双妹は友香さんに会い、知ってしまったのだ。
少女さんの死を――。
215
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/03(火) 00:23:35 ID:LpENAeT2
男「話しにくいことなら、今日でなくても大丈夫だけど……」
双妹「ごめん、大丈夫」
双妹は気丈に言うと、軽く笑って見せた。
それだけで、これから話す内容があまり思わしくないものであることが分かる。
双妹「友香さんのことなんだけどね、明日のお昼に学校を休んで会えないかな」
男「学校を休んで?!」
双妹「……うん。ちょっと事情があって、多分その時間じゃないと駄目なの」
男「事情?」
双妹「驚かずに聞いてくれる?」
男「あ……ああ」
双妹「少女さんね、病院でずっと寝たきりになっているの」
216
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/03(火) 12:14:43 ID:VF91oP8A
幽体離脱ないしは生き霊か
217
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/03(火) 23:41:58 ID:Ifp8Goqw
男「それって、どういうことだよ」
少女さんが病院でずっと寝たきりになっている?
だったら、どうしてここに少女さんがいるんだ。
まるで訳が分からない。
双妹「13日のお昼に友香さんが少女さんの家に行ったら、少女さんが部屋で倒れていたんだって。それで病院に運んだんだけど、まだ意識が戻ってないの」
双妹「それでね、友香さんと一緒にお見舞いに行ってきた。本当は家族しか会えないんだけど、ご家族の方がいらして特別に会わせてくれたの」
男「少女さんに会ったのか?!」
双妹「……うん。でも、でもね……機械がいっぱいつながっていて、私はとても見ていられなかった――」
男「じゃあ、少女さんは……」
少女「そんなの、あり得ないです!」
218
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/03(火) 23:47:27 ID:Ifp8Goqw
双妹「ねえ、友香さんに会える?」
双妹「友香さんは男が少女さんに会えば、目が覚めるんじゃないかって。奇跡が起きるんじゃないかって、そう思ってる」
男「明日、友香さんに会いに行く。そして、病院で寝ている少女さんに会ってみたい!」
少女「……」
双妹「じゃあ、友香さんに連絡しておくわね。あと、私も一緒に行くから」
男「分かった。双妹、ありがとう」
双妹「少女さんに会えるかどうか分からないけど、本当に奇跡が起きるといいよね――」
双妹は肩を落とし、力なく立ち上がった。
そして「晩ご飯の手伝いをしてくる」とだけ言い残し、部屋を出て行った。
219
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/03(火) 23:57:36 ID:Z3abjQzU
男「少女さん! 少女さんは死んでなんていなかったんだ!」
思いも寄らない報せに、俺は声を上げた。
死んでいると思っていた少女さんが実は生きていただなんて、こんなにうれしいことはない。
考えてみれば、少女さんが生きていることを示す証拠はいくらでもあった。
少女さんが最初に病院で気が付いたこと。
新聞に少女さんの死を報じる記事がなかったこと。
妹友さんが『今は学校に来ていない』と言っていたこと。
恐らく、少女さんは幽体離脱をしてしまったのだろう。
だから入院している少女さんは、ずっと寝たきりで意識が戻らないのだ。
少女「私は首吊り自殺をしたんですよ。生きているはずがありません!」
男「じゃあ、友香さんと双妹が嘘を吐いているってこと?」
少女「それは……」
220
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/04(水) 00:05:58 ID:r0MSXfIg
男「友香さんのこと、友達なら信じてみようよ。もしかしたら、本当に奇跡が起きるかもしれないだろ」
少女「でも、私には分かるんです」
男「分かるって言うけど、少女さんが生きているのは事実だろ。少女さんが病院に戻れば、ぱちって目が覚めるんじゃないかな。それがハッピーエンドってやつじゃないか」
少女「そんな小説みたいなこと、起きる訳がありません」
男「もしかして、少女さんは生き返りたくないの? 俺たちは付き合い始めたわけだし、生き返れば色んなことが出来るようになると思うよ」
少女「私だって生き返れるならそうしたいです。でも、無理なんです。奇跡なんて起こりようがないんです!」
男「どうして、そう思うんだよ。もっと前向きに考えてみろよ」
221
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/04(水) 00:25:43 ID:r0MSXfIg
少女「心肺蘇生法の救命率はご存知ですか」
男「心肺蘇生法の救命率?」
少女「病気などで心肺停止状態になってしまったとき、その時間が長くなると救命率が下がっていくんです。一般的に、2分以内に心肺蘇生法が開始された場合の救命率は90%程度だと言われています」
男「それなら、保健体育の授業で習ったかも」
少女「それでその救命率なんですけど、4分後で50%程度、5分後には25%程度にまで下がってしまいます。どうして、こんなに早く下がると思いますか?」
男「それは心臓が止まって酸素が回らなくなるからだろ」
少女「そうです。その時間がわずか3分で、脳細胞がダメージを受けてしまうんです。だから、早期の救命活動が必要なんです」
男「少女さんの場合も同じだって言いたいのか」
少女「私の場合は首吊り自殺なので、頸部の動脈が締められて脳に血液が流れなくなります。だから発見が遅れれば遅れるほど、脳に致命的な障害が残ることになるんです」
男「じゃあ、少女さんは……」
少女「それが分かっていても、前向きに考えられるんですか!」
222
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/04(水) 00:34:12 ID:uNOmdCEA
男「それでも、希望はあると思うんだ!」
少女「そんなのないですよ!」
男「だって、友香さんも看護科の生徒なんだろ」
少女「その友香ちゃんが奇跡にすがっている時点で、もう駄目ってことじゃないですか」
男「だったら、俺が傍にいてやるよ」
少女「えっ?」
男「意識が戻ったら、今度は俺が傍にいてあげるから」
少女「……私の身体は自殺の後遺症が残っているかもしれないんですよ」
男「告白したときに言っただろ。少女さんはつらいことがあっても、前向きに頑張っていける人だと思う。俺はそんな少女さんと気持ちを分かち合いたいんだ」
少女さんは変に知識があるせいで、希望を持つことが出来ないのかもしれない。
だけど、助かるはずの命が消えてしまったら、それはもう二度と取り返しがつかないのだ。
自殺の後遺症なんて、一緒に克服して行けばいいと思う。
223
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/04(水) 01:01:17 ID:r0MSXfIg
今日はここまでにします
レスありがとうございました
224
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/04(水) 20:34:31 ID:uNOmdCEA
少女「気持ちを分かち合う……か」
男「そうだよ、一緒に頑張ろう。そうすれば、後遺症があったとしても乗り越えられるはずだから!」
少女「……」
少女「ありがとう。私、まだ死にたくない。もっと生きていたい!」
男「絶対に大丈夫。奇跡を信じて、友香さんに会ってみようよ」
少女「うんっ!」
男「じゃあ、友に連絡してみるか」
少女「友くんに?」
男「幽体離脱をした少女さんが身体に戻れなくなっているなら、俺たちよりも友のほうが詳しいはずだろ」
少女「そうだね」
男「それじゃあ、電話してみる」
225
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/04(水) 23:02:24 ID:TiT1XedY
PiPoPa...
男「もしもし」
友『もしもし、男か。どうしたんだ?』
男「実はな、少女さんは死んでいなかったんだ。それで友に相談したいことがあるんだけど、大丈夫かな」
友『ちょっと待て! 死んでなかったって、どういうことだよ』
男「双妹によれば、少女さんは病院でずっと寝たきりになっているらしいんだ」
友『いや、普通に考えて、少女さんは間違いなく死んでいる。誰かと間違えているんじゃないのか』
男「そんな訳ないだろ。間違いなく死んでいるって、どうしてそんなことが分かるんだよ」
友『それは少女さんの霊子線が切れているからだ』
226
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/04(水) 23:07:56 ID:uNOmdCEA
男「霊子線?」
友『霊体と肉体を繋ぐ幽体の線のことで、いわゆる命綱みたいなものだ。少女さんに生きていて欲しいって気持ちは分かるけど、それが切れているってことはもう死んでいるってことなんだ』
そう言われ、俺は少女さんを見てみた。
しかし、線のようなものが繋がっているようには見えなかった。
男「確かにそんな線は見えないけど、双妹は実際に会ってきたんだぞ」
友『本当の本当に、双妹ちゃんが会ってきたのは少女さんなのか?』
男「当たり前だろ。友香さんと一緒に行ったんだから」
友『もしかすると、少女さんは何らかの理由で生かされているのかもしれない』
男「生かされている?」
友『霊子線が切れている状態で心臓が動いているはずがない。それなのに生きているとしたら、それは人工的に延命されているからだ』
227
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/04(水) 23:43:03 ID:uNOmdCEA
男「人工的に延命されているって、どういうことだよ」
友『最近の医療技術はすごく発達しているから、ごく稀にそんな浮遊霊がいるらしいんだ』
男「へえ、そうなのか」
友『……んっ? ちょっと待て!』
友『もしかして、男は少女さんを生き返らせたいと考えているのか?!』
スマホの向こう側で、友が声を上げた。
さすが、察しがよくて助かる。
男「ああ、少女さんの身体が生きているのなら魂が戻れるはずだろ」
友『そうなんだけど、霊子線が切れているからなあ。戻れないことはない……と思うけど、期待は出来ないと思う』
228
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/04(水) 23:47:51 ID:uNOmdCEA
男「明日の昼、友香さんと一緒に少女さんが入院している病院に行くんだけど、友も来てくれないかな」
友『明日の昼?』
男「午後の授業を休んで、お見舞いに行くんだ。少しでも早く、少女さんを自分の身体に戻してあげたいだろ」
友『でも、マジでそんなことが出来ると思っているのか?』
男「さっき、戻れないことはないって言ってたじゃないか」
友『確かにそう言ったけど、一度切れた霊子線は二度と繋がらないんだ。奇跡でも起きない限り、少女さんの魂は肉体に定着しないと思う』
男「だから、俺たちはその奇跡を起こしに行こうって言ってるんだ」
友『奇跡を起こす……か』
男「ああ。助けられるかもしれない命を何もせずに諦めるなんて、出来るわけがないだろ」
友『そうだな。やれるだけやってみるか!』
男「おうっ! ありがとう」
229
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/06(金) 23:26:30 ID:uL3Kg94E
・・・
・・・・・・
交際が始まって初めての夜。
お風呂から上がって話をしていると、いつの間にか午後11時を過ぎていた。
男「明日は月曜日だし、そろそろ寝ようか」
少女「そうですね。おやすみなさい//」
男「うん、おやすみ」
俺は電気を消してベッドに入った。
しかし、まったく眠くならない。
俺のすぐ隣で、少女さんが眠っている。
しかも彼女は幽霊なのに、身体に触れることが出来る。
あまりにも無防備すぎて、意識するなと言う方が無理なのだ。
230
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/06(金) 23:30:28 ID:v1oUjXs2
少女「あれっ? 男くん、まだ起きているんですか」
男「ちょっと、寝付けなくて……」
少女「実は私もなんです」
男「少女さんもなんだ」
少女「うん// 眠れないなら、もう少し話をしませんか」
男「そうだね」
そう言うと、少女さんは今日の出来事を振り返り始めた。
それを聞いていると、改めて今日は色んなことがあったんだなと実感させられた。
231
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/07(土) 00:48:21 ID:IX9C7RdA
少女「ところで、お風呂はドキドキしましたね//」
男「それはだって、少女さんが相変わらず一緒に入りたいって言うから」
少女「男くんも健全な男子だもんね。やっぱり、私とその……えっちなことをしてみたいですか//」
男「えぇっ?!」
男「それはまあ何と言うか、少女さんは可愛いし、はっきり言うとしたい……と思ってる」
少女「ふふっ、そうなんだ//」
少女さんは恥ずかしそうに微笑み、上目遣いで俺を見詰めてきた。
すると俺はその視線に興奮し、急激に性衝動が湧き起こってきた。
心臓が激しく脈を打ち、陰茎が勃起してガチガチに硬くなる。
そんな状況の俺に、少女さんが手を重ねてきた。
そして、あまい声でささやく。
少女「それなら、一緒に触りっこをしませんか//」
232
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/07(土) 00:59:17 ID:IX9C7RdA
男「いやいや、さすがにそれは駄目だろ」
少女「駄目じゃないよ。初めてだから、その……優しくしてほしいです//」
男「そういうのはまだ早いって」
少女「私には時間が残されていないし、付き合っているんだから……ね?」
少女さんはそう言いつつ、俺の上半身から下半身へと指先を滑らせる。
そして、その手が硬くなっている陰茎に触れた。
しかし、性的な刺激はほとんど感じない。
少女「今度は男くんが触る番だよ//」
男「……それじゃあ、優しく触るから」
233
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/07(土) 01:26:40 ID:PKJXtEjs
少女「……んっ//」
男「少女さん、すごく柔らかい」
少女さんの胸に軽く触れると、手のひらにその柔らかさが伝わってきた。
可愛らしい表情とお皿のような微乳の膨らみ。
このままでは、限界まで溜まっている欲望が一気に溢れ出してしまいそうだ。
というか、もう1週間以上もオナニーをしていないのだ。
今までずっと我慢してきたけれど、もうしたくてしたくて堪らない。
少女「私ね、今ドキドキしているの//」
男「そんな事を言われたら、途中で止めることが出来なくなるけど」
少女「良いよ、もっとたくさん触ってほしいです//」
男「それじゃあ、本当にするから」
俺は少女さんを見詰め、優しく撫でるようにして身体に触れた。
胸の膨らみを、そして少女さんの柔肌を。
しかし次の瞬間、俺が感じたのは毛布とシーツの激しい抵抗だった――。
234
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/07(土) 01:47:04 ID:v8BcVV4Y
男「……!」
少女「期待させてごめんなさい」
少女「私は触っていると錯覚させることは出来る。だけど、本当に触ることが出来る訳じゃないんです」
少女「だからもし我慢できなくなったら、そのときは新しい彼女を作ってください。幽霊の私に好きだって言ってくれただけで、もう十分だから……」
男「その言い方、俺が身体目当てで告白したみたいに聞こえるんだけど」
少女「そう聞こえたのなら、ごめんなさい。でも、今のうちに話しておきたかったんです」
少女さんはそう言うと、毛布をすり抜けて背中を向けた。
実際のところ、少女さんはどの程度の障害を負ってしまったのだろうか。
自分の身体に戻ったあと、いつも通りの生活に戻ることが出来るのだろうか。
235
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/07(土) 01:52:51 ID:v8BcVV4Y
男「不安なのは分かるけど、奇跡を信じて前向きに考えようよ。たくさんお見舞いに行くから、一緒にリハビリを頑張ろうぜ」
少女「……うん」
結局、明日になってみなければ何も分からないのだ。
だから、今は奇跡を信じるしかない。
男「少女さん、おやすみ」
俺は少しでも気持ちがほぐれるように、優しく声を掛けた。
そして、どうしようもないほど興奮している欲望を必死に抑えながら、明日に備えて目を閉じた。
236
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/08(日) 23:28:14 ID:gl9fWclk
おつ
237
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/09(月) 22:12:35 ID:TJz.3EOY
(2月13日)sat
〜病院・少女さん〜
う……ううん。
ここはどこなんだろう。
気が付くと、私はベッドで横たわる自分の姿を見下ろしていた。
いくつもの機械が設置されていて、何本ものチューブやケーブルが身体につながっている。
人工呼吸器とよく分からない装置、そして各種モニターと点滴注射。
高度な医療機器を使っていることから察するに、ここは病院のICUらしい。
どうして、私はこんなところにいるのだろう。
しばらく考えてみた。
しかし、うまく思い出すことが出来ない。
238
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/09(月) 23:54:47 ID:iAbOuIbQ
あれっ。
そういえば、私って私を見下ろしてない?
もしかして、このまま死んじゃうのかな。
だから、自分を見下ろしているのかなあ。
まだ、やり残したことがいっぱいある。
男くんに告白をしてないし、看護師になる夢も諦めたくはない。
だけど、もう叶うことはないのだ。
ならば、ささやかな願いを一つだけ――。
会いたい。
せめて、最期に男くんに会いたいよ。
私は病室のドアを見詰める。
そして、強く念じてドアをすり抜けた。
239
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/09(月) 23:58:39 ID:iAbOuIbQ
少女「むぎゅうっ」
病室を出たと思った瞬間、私はまた病室の中に引き戻されていた。
身体が引っ張られて、病室から出ることが出来ない。
どうして出られないの?
私は男くんに会いたいだけなのに……。
半ば諦めて振り返る。
すると、眠っている私の頭から銀色の紐みたいなものが伸びていることに気が付いた。
どうやら、それが私の頭と繋がっているらしい。
これ、外せないかなあ。
とりあえず引っ張ってみた。
だけど、頭から抜ける気配はない。
つなぎ目も探してみたけど、そんなものはなさそうだ。
こうなったら、引き千切るしかない!
私は意を決して、銀色の紐を手に取った。
240
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/09(月) 23:59:46 ID:VEubA3ic
今日はここまでにします
レスありがとうございました
241
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/10(火) 22:57:51 ID:yHHUh7VU
(2月22日)mon
男「なあ、少女さん。俺、すごいことに気が付いたんだけど!」
少女「すごいことですか?」
男「俺が少女さんに触ろうとしたら、力加減が出来なくて通り抜けてしまうだろ」
少女「そうですね」
男「でも、少女さんが触ろうとすれば俺に触れるわけだ」
少女「正確には触っていると錯覚させているだけですけど」
男「その触っている感覚を工夫すれば、えっちなことも出来るんじゃないかと思うんだ!」
少女「すごいことって、そういうこと?!」アセアセ
男「ちょっと試してみようよ!」
少女「ええぇっ! ほ……本当にちょっとだけですからね//」
・・・・・・
・・・
242
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/10(火) 23:00:55 ID:yHHUh7VU
〜自宅・部屋〜
少女「男くん、おはよう♪」
男「んっ……あ、ああ、おはよう。なんだ、夢だったのか」
少女「ふふっ、今朝はどんな夢を見ていたんですか。すごく気持ち良さそうな寝顔でしたよ//」
男「どんな夢だったっけ……」
俺はまどろむ頭で、夢の内容を振り返った。
少女さんが恥ずかしそうに服を脱ぎ、いやらしい手付きでしごいてくれる夢。
その刺激で興奮が高まっていき、俺は欲望を吐き出した。
そんな夢だったとは、とても言えそうにない。
俺はそう思いつつ身体を起こすと、下半身にぬるりとした違和感を感じた。
男「やべっ、夢精してるし!!」
少女「むせい?」
少女「それってもしかして、噂で聞くオトコの人のアレってことですか?!」
243
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/10(火) 23:04:29 ID:KfN5/umY
男「ご、ごめん! とりあえず、後ろを向いてくれるかな」
少女「は、はいぃっ!!」アセアセ
少女さんが背中を向けたことを確認し、ベッドから下りてパジャマを脱いだ。
そして下着をめくると、想像を絶する惨劇が繰り広げられていた。
しかも、イカ臭いにおいがむわっと部屋中に拡散していく。
もう完全に気付かれているだろうな。
そう思いつつ下着を脱ぐと、部屋のドアが開いた。
いつの間にか、双妹が起こしに来てくれる時間になっていたようだ。
244
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/11(水) 00:54:17 ID:Z1t07Bbw
双妹「男、おはよう♪」
男「おはよう」
双妹「ふふっ、やっぱり夢精しちゃったんだ//」
男「なんて言うか、あれから一度も出来なくて」
双妹「ふうん。でも、お互いにこういう日ってあるよね。私も生理の血が下着に付いちゃって、朝からすごくショックだよー」
男「ああ、双妹は今日から生理なのか。いつもちゃんとしてるのに、失敗するって珍しいな」
双妹「うん。準備はしていたんだけど、予定より1日早く来ちゃったみたいで――。これってさあ、双子のシンパシーかなあ」
男「いや、さすがにそれは微妙なんだけど」
245
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/11(水) 01:00:58 ID:TGdJA6B2
双妹「あはは、冗談だってば。それじゃあ、下着をもらっていくわね」
双妹は俺の下着を手に取ると、未だかつてない惨劇を見て口元を緩ませた。
そしてティッシュで軽く拭き取り、ゴミ箱に手を伸ばす。
双妹「はあはぁ……//」
男「なあ、双妹。ついでに、パジャマも持っていってくれないかな」
双妹「ん? うん、良いよ。お風呂を温めておくから、身体を拭いたら下りてきてね」
男「ああ、ありがとう」
246
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/11(水) 01:06:56 ID:TGdJA6B2
少女「ねえ、男くん」
少女「双妹さんのことなんですけど、いくら兄妹でも、さすがにおかしくないですか?」
双妹が部屋を出て行くと、少女さんが困惑した様子で口を開いた。
兄妹なのにおかしいと言われても、俺と双妹にとっては普通のことだ。
少女さんには男兄弟がいないらしいので、そういう部分で感覚が違うのだろう。
男「おかしいとか言われても生理現象だからよくあることだし、これくらい兄妹なんだから当たり前だと思うけど」
少女「そういうものなのかなあ」
247
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/11(水) 01:20:49 ID:rprvFlh6
男「それはそうと、見られたら恥ずかしいんだけど」
少女「えっ? ああ……ふふっ//」
少女「もしかして、私が誘惑したからえっちな夢を見ちゃったんですか」
男「それはまあ、そうかもしれない」
少女「えへへ、ちょっとうれしいかも// オトコの人のって初めて見たけど、何だか初夏の匂いがするんですね」スンスン
男「少女さんは匂いも分かるのか。意外とむっつりスケベなんだな」
少女「はわわ、そんなことないですから//」
少女さんは力強く否定すると、慌てて後ろを向いた。
俺はそんな彼女を見やり、身体を拭いて着替えることにした。
248
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/11(水) 03:04:25 ID:p.OsMKuo
おつ
249
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/11(水) 19:10:10 ID:Z1t07Bbw
〜最寄り駅〜
今にも雪が降ってきそうな寒い朝。
最寄り駅に着いた俺と双妹は、暖を取るために待合室に入った。
双妹「今日からしばらく、座席争いはしなくて良さそうだね」
男「そうだな。3年生がいなくなっただけで、こんなに変わるのか」
一昨日の土曜日、俺たちの学校で卒業式があった。
そのおかげで、電車を待っている学生の数が半分くらいに減っている。
新学期が始まるまでは、ゆっくり座ることが出来そうだ。
双妹「うちの学校って、他より卒業式が早いよね。やっぱり、進学とか就職の準備をしないといけないからなのかなあ」
男「そうだろうな。県外に行く人は引越しの準備もあるだろうし、早いほうが助かるんじゃないか」
双妹「そうだよね。私は県内の大学に進学するつもりなんだけど、ゆっくり準備が出来るしそのほうがいいと思う」
男「大学って保育士の勉強?」
双妹「うん。子どもたちの力になりたいから、障がい児保育とか専門的な勉強もしておきたいの」
男「ふうん、ちゃんと考えているんだな」
250
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/11(水) 19:21:24 ID:Z1t07Bbw
双妹「ところで、今日のお昼のことなんだけど」
男「お弁当を食べたら、速攻で行くって事でいいんだろ」
双妹「そうなんだけど、その……会えるとは限らないから」
男「友香さんがいれば、何とかなるんじゃないの?」
双妹「集中治療室って、基本的に家族以外の面会は禁止されているらしいの。それで面会可能な時間も限られているから、私たちは家族の人がいる時間に合わせて行こうってことになっているの」
男「そうなのか。何とかして会いたいんだけどな……」
俺はそう言いつつ、ちらりと少女さんを見た。
不安に思っているのか、とてもつらそうな表情をしている。
双妹「友香さんもそのことを心配してた」
男「そのときは強行突破も持さない覚悟が必要かもな」
双妹「……いやいや、それは普通に無理でしょ」
251
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/11(水) 20:47:04 ID:Ppn/r2wI
男「そうなると、友だけが頼りだな」
双妹「そういえば、友くんも来るんだっけ」
男「ああ。少女さんのことで、色々と協力してもらっているんだ」
双妹「協力?」
男「まあ、ちょっとな」
霊能力でどんなことが出来るのかは分からないけれど、いざとなれば友が何とかしてくれるだろう。
俺は邪魔をしないように、サポート役に撤すればいい。
男「とりあえず、病院に行ってみないと分からないな」
双妹「そうだね」
まずは、面会が出来ますように。
俺はそう願いつつ、電車を待つことにした。
252
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/11(水) 20:54:35 ID:Ppn/r2wI
今日はここまでにします
レスありがとうございました
253
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/11(水) 22:50:53 ID:Sx9rvh56
生きかえるのか?
皆んなが幸せになるといいな
254
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/12(木) 20:05:59 ID:PnP.t9GE
〜学校・HR〜
男「友、うっす」
友「うっす! 双妹ちゃん、おはよう」
双妹「おはよう。今日のお昼、友くんも来るって聞いたんだけど」
友「そうそう。少女さんの件で、俺もちょっと用事があるんだ」
双妹「ふうん、そうらしいわね。でも、面会が出来るとは限らないわよ」
友「えっ、何でだよ」
双妹「私たちも会えるか分からないし、一度に面会できる人数が決まっているから」
友「やっぱり、普通の病室じゃないのか」
双妹「うん。そういうことだから、そのつもりでいてね」
友はそう言われ、双妹の説明を聞きながら双妹の席までついて行った。
俺はそんな二人を見やり、自分の席に座ることにした。
255
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/12(木) 20:21:58 ID:JKEMspaM
男『少女さん、今朝のことで何か怒ってる?』
少女「……別にそんなことはないです」
男『それなら良いんだけど、ちょっと気になったから』
いつもは俺の隣でふわふわと浮いている少女さん。
それなのに、今日は俺の後ろにいることが多い。
ちょっとしたことだけど、何だかそれが心に引っかかる。
男『もしかして、緊張してる?』
少女「そうかもしれないです」
少女さんはそう言うと、窓の外を眺めた。
やっぱり、病院のことが気になっているのかもしれない。
そう思っているとチャイムが鳴り、HRが始まった。
そしてHRが終わると、1限目の英語の授業が始まった。
256
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/12(木) 20:32:35 ID:OkQKmZLg
女教師「今日は仮定法過去完了について勉強しましょう」
女教師「もしあのとき〜だったら、……だったのに」
女教師「仮定法過去完了はこのような意味で、if節に過去完了、主節に助動詞の過去形+have+過去分詞を用いるのが原則です」
男「少女さん、分かる?」ヒソヒソ
少女「……」
少女「ごめんなさい、聞いてなかったです……」
男「少し調子が悪そうだけど、大丈夫?」
少女「何だか胸が痛いというか、お腹もちょっと調子が悪くて……」
男「幽霊なのに、胸が痛い?」
少女「……ううっ、あうううぅっ!!」
女教師「If I had known she was in hospital, I would have・・・」
257
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/12(木) 20:36:11 ID:loKH8gnc
男「えっ?!」
少女「うぐううぅっ、んんっ! んんんっ……んぐぅぅっっ!!」
少女さんは呻き声を上げながら、床に崩れ落ちた。
必死な形相で胸を押さえ、丸くなって身悶えしている。
そんな彼女に、俺は慌てて席を立ち声を掛けた。
男「少女さん! 大丈夫っ!?」
少女「んんっ! むうぅぅっ……!!」
俺の呼びかけに応え、苦しそうな表情で首を横に振る。
こんなとき、どうすればいい。
保健室?
いや、急病人が出たなら救急車だ!
258
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/12(木) 20:47:12 ID:JKEMspaM
男「今から救急車を呼ぶから! すぐに楽になるから!!」
少女「ぅぅっ……」
女教師「男くん、何度言えば分かるの! 席に着きなさいっ!」
その言葉と同時、女教師が俺の前にやってきた。
そして、苦痛で呻いている少女さんの頭を踏みつけた。
男「……なっ! 何してんだよっ!!」
俺は立ち上がり、女教師を睨み付ける。
女教師「な……何ですか、その態度はっ!」
双妹「男、だめだよっ!」
双妹「先生、そこに立たないでください! そこを踏みつけないでくださいっ!!」
259
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/12(木) 21:03:47 ID:OkQKmZLg
女教師「双妹さんまで授業妨害ですか!」
双妹「そんなつもりはありません。でも、理由があると思うんです!」
双妹「ねえ、前々から、ずっと気になってた。男には何が見えているんだろう、誰と話をしているんだろうって」
双妹「やっと分かったわ」
双妹は厳しい視線を足元に向けた。
そして、すべてを見透かしたかのように優しい視線を向けてきた。
双妹「男には少女さんが見えているのね――」
260
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/12(木) 21:06:54 ID:loKH8gnc
男「……!」
男「今、少女さんが苦しんでる。俺は何とかして、彼女を助けたいんだ!」
双妹「助けたいって言われても、私たちには男が一人で騒いでいるようにしか見えないんだよ。まずはみんなに分かってもらわないと、助けることなんて出来ないと思う」
確かに双妹の言う通りだ。
少女さんの姿はみんなには見えていない。
だから、少女さんを助けるためには、その存在を知ってもらわなければならないのだ。
男「くそっ! どうやって説明すればいいんだ――」
友「男、遅れてすまん。少女さんのことは俺に任せてくれ!」
男「友っ!」
双妹「……友くん?」
261
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/12(木) 21:17:41 ID:JKEMspaM
女教師「あなたは席に戻りなさい!」
友「いや、男がこうなったのは俺のせいなんです」
女教師「あなたの?」
友「はい。昨日、俺の家で心霊催眠の実験をしまして……。どうやら、それがうまく解けていなかったみたいなんです」
女教師「心霊催眠?!」
友「催眠術の一種です。とりあえず、保健室で休ませてもらっても良いですか?」
女教師「そうね、そうしなさい」
友は俺に目配せをすると、内履きを履きなおす振りをして少女さんを抱き上げた。
両手にはめている手袋が霊的な道具なのか、少女さんの容態が落ち着いていく。
それを見て、俺はほっと胸を撫で下ろした。
262
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/12(木) 21:26:03 ID:JKEMspaM
今週はここまでにします
レスありがとうございました
263
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/15(日) 18:19:23 ID:sawrlJaQ
ドキドキ
264
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/16(月) 22:15:15 ID:8oTMeYxY
〜保健室〜
保健室に入り、俺と少女さんはベッドに横になった。
俺が横になる必要はないと思うのだけど、催眠術で情緒不安定になっているという設定なので仕方がない。
少女さんの容態はすでに落ち着いていて、友によればすぐに目を覚ますだろうとの事だ。
男「友、ありがとう」
友「気にするな。俺のほうこそ、出るタイミングを逸して遅くなった」
男「いや、助かったよ。その手袋が霊的な道具なのか?」
友「まあ、一応な。これで触れば、興奮した霊を鎮めることが出来るんだ」
双妹「興奮した霊を鎮めるって、どういうこと?」
友「それは少女さんが目を覚ましたら説明するよ。そのほうが手間が省けるし」
双妹「……分かった」
265
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/16(月) 22:45:51 ID:kCQDvhVk
少女「……うっ、ううん」
しばらくして、少女さんが目を覚ました。
そして周囲を見渡し、俺に気が付くと困惑した様子で呟いた。
少女「えっと……ここは?」
男「少女さん、おはよう。ここは保健室だよ」
少女「保健室?」
男「ああ。俺の体調が悪いことにして、少女さんを連れてきたんだ。どこか痛いところはない?」
俺は身体を起こし、隣で寝ている少女さんに尋ねた。
すると少女さんは思案めき、掛け布団をすり抜けてふわりと浮かび上がった。
266
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/16(月) 22:47:09 ID:kCQDvhVk
少女「もう大丈夫です。ご心配おかけしました」
男「良かったあ。心配したんだよ!」
少女「ごめんなさい。周りを気にせずに声を掛けてくれて、すごく嬉しかったです//」
双妹「ねえ、気が付いたの?」
少女「……」
少女「えっ、ええっ! もしかして、私の姿が見えているんですか?!」
男「見えていないけど、少女さんのことはもう知ってるよ」
少女「そ……そうなんだ」
267
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/16(月) 23:22:18 ID:8oTMeYxY
友「それじゃあ、場所を変えようか」
男「場所を変えるってどこに?」
友「駅前の喫茶店でいいんじゃね?」
男「授業はどうするんだよ」
友「どうせ昼で帰るんだし、早退しようぜ!」
男「そうだなあ。どうせ午前中で帰るんだよな」
双妹「だったら、家で話をしようよ。喫茶店だと人目に付くし、落ち着いて話が出来ないだろうから――」
男「そうだな。それじゃあ、担任の教師に早退するって言ってくる」
双妹「あっ、待って。私も行くっ!」
俺はベッドから下り、双妹と少女さんを連れて職員室に向かった。
268
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/16(月) 23:26:27 ID:xArkhchg
今日はここまでにします
レスありがとうございました
269
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/17(火) 20:14:08 ID:ccSemnQg
〜自宅・部屋〜
俺たちは学校を早退し、みんなで俺の部屋に集まることにした。
そして部屋に入ってすぐ、友が話を切り出した。
友「双妹ちゃん、休みの日とか遊びに行くときに身に着けているアクセサリーって、何か持ってない?」
双妹「持ってるけど、何に使うの?」
友「少女さんの姿を見えるようにしてあげようかなと思って。多分、そのほうが話を理解しやすいと思うし」
男「そんなことが出来るのか」
友「まあな。でも、霊感がない人間に浮遊霊の姿を見えるようにするのは、本当は良くないことなんだ」
男「双妹、どうする?」
双妹「姿が見えないと話にならないし、部屋から持ってくる」
双妹はそう言うと、部屋を出て行った。
そしてしばらくして、ブレスレットを持って戻ってきた。
270
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/17(火) 22:07:47 ID:ccSemnQg
双妹「これで良い?」
友「大丈夫、いけると思う。それじゃあ、儀式を始めるから」
友は双妹にブレスレットを持たせ、その上に御札を重ねた。
そして、何やら怪しい言葉を念じ始める。
相変わらず、中二っぽいぞ。
友「我の名は友。我が作り出したるは、幽界の者を見し霊具。この器にて彼の者を捉え、共鳴する力を生み出したるは――」
双妹「な……何これ、すごく胡散臭いんだけど」
男「大丈夫だ。俺もそう思ってる」
友「じゃあ、少女さん。これに触れて、意識を集中させて欲しい」
少女「はい。分かりました」
271
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/17(火) 22:37:17 ID:ccSemnQg
少女さんがブレスレットに触れると、双妹がとっさに手を引いた。
そして、不機嫌そうに友を見詰める。
双妹「今、ビリッとしたんだけど」
友「大丈夫、今ので完成だから。少女さん、ありがとう」
少女「あっ、はい。どういたしまして」
友「それじゃあ、双妹ちゃん。それを着ける前に、この御守りを受け取ってくれるかな」
友は通学鞄から御守りを取り出すと、双妹に手渡した。
272
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/17(火) 22:41:40 ID:LbnPQ3lQ
双妹「これは?」
友「幽霊が見えることを低級霊たちに知られると、面倒なことになる場合があるんだ」
双妹「低級霊?」
友「平たく言うと、四十九日を過ぎても現世に留まっている悪霊のことだ」
双妹「悪霊……」
友「そう。だから、守護霊の力を高めておく必要があるんだ。半年くらいは効果があるから、カバンの中にでも入れっぱなしにしておいてくれるかな」
双妹「別にいいけど、守護霊の力ってこんなことで強くなるものなの?」
友「この御守りはあくまでも補助的なもので、特に大切なことは健康な心身を保つことだ。しっかりと食事を取って、運動をして体力づくりをして、よく寝てストレスを溜めないこと」
友「そんな健康的な生活を送ることで、守護霊は強くなるんだ」
双妹「それって、もう守護霊とか関係ないような気が……」
友「あと、守護霊がいるって信じることも重要な」
双妹「何だか信じられないなあ」
男「大丈夫だ。俺もそう思ったから」
273
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/17(火) 22:47:42 ID:yk1xbTBc
友「それじゃあ、双妹ちゃん。そのブレスレットを着けてみて」
双妹「う……うん」
双妹は恐る恐る、ブレスレットを右腕にはめた。
そして、緊張した面持ちで顔を上げる。
双妹「……!」
双妹「見える。見えるよ、本当にっ!!」
男「マジかよ! すげえな!!」
少女「わわっ! えっと、双妹さん。はじめまして」ペコリ
双妹「は、はじめまして」アセアセ
友「ふふん、成功だな」
双妹「友くん、ありがとう。えっと……男から少女さんの気配を感じるんだけど、それは何なの?」
友「少女さんは憑依霊だから、男の身体を共有している状態なんだ。双妹ちゃんが感じているものは根っこみたいなものだよ」
双妹「ふうん、そうなんだ」
274
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/18(水) 00:05:08 ID:Omd.hWJw
双妹「それで、これは外しても大丈夫なの?」
友「ああ、霊力が馴染めば3週間くらいは効果が持続すると思う。霊具として使えるのは少女さんが成仏するまでだから、理論上は4月の半ばくらいまで使える計算になるかな」
双妹「効果があるのは3週間で、使えるのは4月半ばまで――か」
友「もちろん、少女さんが身体に戻れたらすぐに使えなくなるけどね」
双妹「ふうん、そうなんだ」
双妹「でも、びっくりしたあ! まさか、本当に見えるようになるとは思わなかったわ」
友「俺のこと、ちょっとは尊敬しただろ」どやぁ
双妹「あはは。霊能力があるって、絶対に冗談だと思ってた」
友「これを機に惚れてもいいんだぜ」キリッ
双妹「ごめん、それはあり得ないから。いつも女の子の幽霊の裸ばっかり見ていそうだし」
少女「それってもしかして、双妹さんには私のことが裸のように見えているんですか?」
双妹「そうだけど、違うの?」
少女「違うに決まっているじゃないですか。私はちゃんと服を着ていますから」
275
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/18(水) 22:53:54 ID:Omd.hWJw
双妹「ねえ、男。少女さんって、本当に服を着ているの?」
男「当たり前だろ。何言ってるんだよ」
双妹「もしかして、裸だと思っているのは私だけ?!」
男「なあ、友。そのブレスレット、失敗じゃないのか」
友「あのさあ、常識で考えて、幽霊が服を着ているほうがおかしいじゃないか。だって、生身の体がないんだぞ」
少女「はいぃぃっ?!」
男「ちょっと待て! 少女さんが服を着ていると思っているのは、もしかして俺だけなのか?!」
友「逆に聞きたいんだけど、男には少女さんがどんな服を着ているように見えるんだ?」
男「どんなって、少女さんは今、俺たちの学校の制服を着ているじゃないか」
双妹「……どう見ても裸でしょ」
友「ああ、そういうことか! 男は少女さんの姿が見えているんじゃなくて、少女さんが見せている姿が見えているんだ」
276
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/18(水) 23:38:38 ID:mXX5xWPQ
男「おい、ちょっと待て。そうなると、友は今まで少女さんの裸を見続けていたことになるよなあ。かなり気に入らないんだけど――」
友「安心しろ。浮遊霊の裸には興味ないから」キリッ
男「はあ?! それはそれで微妙に気に入らないんだけど」
少女「二人とも喧嘩はやめてください。こうすればいいんですよねえ」ポンッ
友「マジかよっ! 少女さんって、そういうことも出来るのか?!」
少女「ふふん、すごいでしょ〜!」ドヤッ
少女さんは得意げに言うと、ドヤ顔になった。
友もかなり驚いているし、一体何をしたのだろうか。
男「俺にはよく分からなかったんだけど、少女さんが何かしたのか?」
双妹「今、少女さんがうちの学校の制服姿に変身したの」
男「……変身?」
男「つまり、俺が見ている姿と同じ姿が見えるようになったってことか」
双妹「多分、そうだと思う」
277
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/18(水) 23:46:16 ID:Omd.hWJw
少女「男くん、その……今まで気付かなくてごめんなさい」
友「俺も悪かった。てっきり、男も同じように見えているものだとばかり思っていたから」
男「まあ、今まで助けられてばっかりだったし、今回だけだからな」
友「分かってるって」
友「ところで、少女さん。それは幽体の見た目を変えたってことだよね」
少女「ああ……はい、そうです。だから、この制服も私の身体の一部で――」
少女「……?!」
少女「それって結局、私は裸のままって事じゃないですか!」
男「……!!」
友「いやいやいや! 制服を着ているように見えている時点で、裸じゃないから!」
少女「そ……そうですかねえ」
友「そうだから! あまり変なことを言うと、男と双妹ちゃんからの心象が悪くなるからっ!」
278
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/19(木) 07:21:20 ID:Y4iuq9Tk
面白い
279
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/21(土) 19:19:12 ID:uaLdt28o
双妹「あまり時間もないし、そろそろ本題に入ろうよ」
男「そうだな」
双妹「それじゃあ聞くけど、少女さんは入院しているはずでしょ。それなのに幽霊とか浮遊霊とか、どういうことなの?」
男「実は――」
俺たちは双妹にこれまでの経緯を説明した。
その要所要所で思い当たる節があるらしく、双妹はときどき小さく頷いていた。
双妹「ふうん、そういうことがあったんだ。それで、これからどうするの?」
友「少女さんの魂を身体に戻せないか試そうと思ってる」
双妹「そんなことが出来るの?」
友「やってみないと分からないけど、勝算がないわけでもない」
280
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/21(土) 19:30:29 ID:ns7zdREs
少女「私、本当に生き返ることが出来るんですか?!」
友「少女さんは英語の授業中、胸を押さえながら倒れてしまっただろ。それで気になって詳しく霊視をしてみたんだけど、少女さんは普通の浮遊霊よりも幽体が少ないことが分かったんだ」
少女「幽体が少ない?」
双妹「ねえ、友くん。幽体とか魂って、結局何なの?」
友「そう聞かれると超ひも理論の説明をしないといけなくなるんだけど、イメージ的にはこんな感じかな」
肉体:現世の体、死んだときに脱ぎ捨てる。
幽体:肉体と霊魂を繋ぎとめる役割がある。死後の世界で体として利用し、成仏をするときに脱ぎ捨てる。
霊体:成仏をした後の体。
魂:人間の本質で霊波動という波を発している。
友「――つまり、魂は三つの体を重ね着しているんだ」
双妹「何となく分かったかも」
281
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/21(土) 20:07:05 ID:52C9RiiE
友「それで話を戻すけど、少女さんの幽体が少ないのは肉体に幽体が残されているからだと思うんだ。病院で幽体離脱をしたとき、頭に銀色の線がつながっていなかった?」
少女「あっ……ありました! でも、自分で切ってしまったんです」
友「なるほどな。少女さんは幽体が肉体から完全に離れてしまう前に霊子線を切ってしまったから、普通の浮遊霊よりも幽体が少ないんだ」
男「つまり、少女さんが授業中に倒れてしまったのは、幽体が少なくて霊的に不安定だったからなのか」
もしそうだとするならば、一刻も早く自分の身体に戻ったほうが良いだろう。
そう考えていると、友が少女さんを一瞥して思案めいた。
282
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/21(土) 20:30:14 ID:52C9RiiE
友「いや、むしろ幽体が少ないから、少女さんは普通の浮遊霊では考えられないほど霊的な力が強いんだ」
少女「えっ、そうなんですか?!」
男「少女さんの霊的な力が強いのは、うるう年の影響とか特殊な死因だからじゃなかったっけ」
友「それも関係あるんだけど、特に幽体の少なさが影響しているみたいだ。例えば、ホースの先を摘むと水が勢いよく出るようになるだろ。霊的な力もそれと同じような原理で強くなるんだ」
男「へえ、そういうものなのか」
少女「それで、どうすれば生き返ることが出来るんですか?」
友「それなんだけど、少女さんは幽体の状態を変化させることが出来るだろ。だから、自分の身体に憑依して肉体に残されている幽体を変化させれば、霊子線をつなぎ直すことが出来るはずだ」
283
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/21(土) 20:32:52 ID:uaLdt28o
少女「銀色の紐をつなぎ直せば、私は生き返ることが出来るんですね!」
友「まあそうなんだけど、実は一度切れた霊子線は二度と繋がらないんだ」
少女「……!」
友「でも、自分で霊子線を切ってしまった浮遊霊なんて聞いたことがないから、少女さんならば奇跡を起こすことが出来るかもしれない。いや、起こせるはずだ」
男「少女さん、俺と双妹がすでに奇跡みたいなものだから――。だから、諦めなければ絶対に大丈夫だ」
少女「うん、そうだよね。私は絶対に生き返るんだ!」
きっと、少女さんはたくさんの不安を感じているだろう。
それでも、彼女の言葉にはそれを感じさせないほどの力が込められていた。
284
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/21(土) 20:41:17 ID:uaLdt28o
今日はここまでにします
レスありがとうございました
285
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/21(土) 23:03:53 ID:9wU12fzk
よし
生き返れ
286
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/23(月) 20:07:18 ID:kjv3n51I
〜北倉駅前・バス停〜
お昼になり、俺たちは友香さんとの待ち合わせ場所に向かった。
少し早く着いたらしく、北倉駅に併設されているバス停にはそれらしい人の姿はない。
双妹「ねえねえ、友くん。このブレスレットを使えば、友香さんも少女さんの姿が見えるようになるの?」
友「いや、見えるようにはならないよ。その霊具は双妹ちゃんの魂の力を利用して作っているから、他の人では使えないんだ」
双妹「……ふうん、私と同じ魂じゃないと使えないのか」
男「それじゃあ、友香さんも少女さんの姿が見えるように出来ないかな。そのほうが説明しやすくなると思うし」
友「確かにそうかもしれないけど、友香さんは少女さんが目を覚ます望みを捨てていないんだろ。だったら、今の時点で浮遊霊の少女さんと対面させるのは慎重になったほうがいいと思う」
少女「私も友くんの意見に賛成です。今の私が友香ちゃんに会うと、不必要につらい思いをさせてしまうことになると思うんです」
男「言われてみれば、そうかもしれないな」
友「少女さんが自分の身体に戻れれば良いだけだし、今は友香さんには内緒にしておこう」
男「分かった」
双妹「そうだね」
287
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/23(月) 20:14:56 ID:kjv3n51I
少女「あっ! 友香ちゃんが来ましたよ!!」
自分の姿は見えないというのに、少女さんが手を振って呼びかけた。
どうやら、こちらに歩いてくる学生服姿の女子が友香さんらしい。
さすが看護師を目指しているだけあって、とても清楚な感じがする外見だ。
そう思っていると、俺たちに気付いたらしく慌てた様子で駆け寄ってきた。
友香「すみません。お待たせしました」
双妹「ううん、私たちも今着いたところだから」
友香「……うん、ごめんね。それでこちらの男子が――」
双妹「えっと、紹介するわね。こちらが私のお兄ちゃんで、そっちが友くん」
男「はじめまして、男です」
友「友です」
友香「こんにちは、友香です。今日は来てくれて、本当にありがとうございます!」
男「こちらこそ、会ってくれてありがとう」
288
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/23(月) 20:17:57 ID:Ogk2A2Qk
友香「一応確認しておきたいのですけど、男くんが少女に会いたがっているという話は間違いないですか」
友香さんは真剣な眼差しを向けてきた。
俺もそれに倣って、言葉を返す。
男「はい、俺はそのために来たんです」
友香「双妹さんから聞いていると思うけど、少女は今、病院のICUで寝たきりになっています。もう意識が戻る見込みがないそうです」
男「……」
友香「でも、男くんが会ってくれれば少女は目を覚ますかもしれない。そう思うんです」
男「俺もそう思う。ICUには面会制限があるみたいだし、まずは会えることを祈らないとな」
友香「そうですね!」
289
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/23(月) 20:26:37 ID:Ogk2A2Qk
男「そういえば、少女さんが入院している北倉総合病院にはどれくらい掛かるのかな」
双妹「バスに乗って10分くらいだよ」
男「10分も掛かるのか」
双妹「でも、バスを降りたら目の前だから」
男「そっか、早く来ないかなあ」
俺は待ち遠しく感じて、道路の向こう側を見やった。
しかし、バスの姿はない。
友香「あのっ、失礼ですけどひとつ聞いてもいいですか」
男「えっと、俺に?」
友香「はい。男くんと双妹さんは一卵性双生児なんですよねえ」
290
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/23(月) 20:37:52 ID:Ogk2A2Qk
男「あ……ああ、そういう話か。確かに、俺と双妹は一卵性双生児ですよ」
友香「えっとね! 昨日も双妹さんに言ったのですけど、ずっと会ってみたいと思っていたんです」
男「俺たちに?」
友香「はいっ!」
友香「お二人は雰囲気がすごく似ているけど、身長や体格がまったく違いますよね。性染色体がたった1本違うだけなのに、すごく興味深いです」
男「性別が違うんだから、体格が違うのは当然のことだと思うんだけど」
友香「それってつまり、従性遺伝と限性遺伝の影響が大きいってことですよね」
291
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/23(月) 20:43:33 ID:BANKwkBM
友香さんの口から、唐突に生物用語が飛び出してきた。
従性遺伝は常染色体上の遺伝子の優劣関係が雌雄で異なる遺伝のことで、限性遺伝はY染色体上の遺伝子による遺伝のことだ。
他にも双妹にはライオニゼーションの影響があり、2本あるX染色体のうち1本がランダムで不活性化されている。
そのことは伴性遺伝の発現にも関係しているし、一卵性双生児だとはいっても違いがあるのは当然だ。
男「詳しいことは分からないけど、そうだと思うよ」
友香「――ですよね。だから発生や遺伝って面白いし、生命はとても神秘的だなって思うんです」
292
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/23(月) 20:52:34 ID:kjv3n51I
双妹「こんな反応を示す人、初めて見た」
男「ああ、そうだよな」
ほとんどの人は異性の一卵性双生児は絶対に生まれないと主張してくるし、中には人格まで否定してくる人もいる。
そうでなくても、興味本位で迂闊なことを言ってくる人が多い。
しかし、友香さんは生命の誕生や遺伝子のほうに興味があるらしい。
とりあえず、生物の授業が好きなんだろうなということは分かった。
友香「……!」
友香「すみません。初対面なのに一人で舞い上がってしまって……。私のこと、変な女子だと思いましたよね」アセアセ
双妹「いえ、友香さんって優等生タイプだなって思っただけです」
男「少女さんもそんな感じだったし、別におかしくないですよ」
友香「……あれっ? 少女はお二人が双子だと知っているんですか」
男「そうだけど、それがどうかした?」
友香「それはおかしいです。少女は双妹さんのことを知らないはずなんです。いつ話したんですか」
293
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/23(月) 20:56:00 ID:BANKwkBM
……しまった!
俺が少女さんに双子の妹がいることを話したのは、先週の月曜日だ。
しかし自殺未遂をしたのはその前の土曜日なので、友香さんの視点では辻褄が合わないことになってしまう。
本当のことは言えないし、一体どうやって答えればいいのだろう。
少女「はあ、仕方ないですね。12日の夜に私が電話をしたことにしましょう」
男「えっと、12日の夜に少女さんから電話が掛かってきたんだ」
友香「12日の夜に?」
男「それでそのときに聞かれたから教えたんだけど、何かおかしいですか」
友香「いえ、おかしくないです。でも、そうだとすると少女は――」
少女「ねえ、男くん。バスが来ましたよ!」
男「ほんとだ。ようやくバスが来たみたいだ」
双妹「友香さん、行きましょうか」
友香「そ……そうですね」
294
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/23(月) 21:11:03 ID:Ogk2A2Qk
今日はここまでにします
レスありがとうございました
295
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/23(月) 22:22:46 ID:iBAgHl9w
よし
頑張れ
296
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/24(火) 20:13:05 ID:dGBrRWQE
〜総合病院・入院患者病棟〜
バスで揺られること10分。
ようやく少女さんが入院している総合病院に到着した。
少女「いよいよですね。何だか緊張してきました」
男「俺も緊張してきたかも。ちゃんと中に入れるかなあ」
双妹「どうなんだろ」
友「まあ、いざというときは少女さんだけでもどうにかしてみるから」
俺たちは不安に思いつつ、面会者用の出入り口から中に入った。
すると、すぐ脇に窓口があった。
どうやら、ここで受付を済ませないと面会することが出来ないようだ。
友香「あのー、すみません」
受付「こんにちは。いかがされましたか」
友香「少女さんに面会したいのですけど、よろしいですか?」
297
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/24(火) 21:15:06 ID:DLGSxhXw
受付「少女さんですか。その女性でしたら、申し訳ありませんが本日、退院なさいました」
少女「えっ?!」
友香「それって、どういうことなんですか! 少女はとても退院出来るような状態ではなかったですよねえ」
受付「そう言われましても――」
男「だったら、少女さんはどこの病院に転院したんですか? それだけでも教えてください。どうしても会いたいんです!」
友香「お願いします!」
俺たちが強く訴えると、受付の女性がどこかに電話を掛け始めた。
そして俺たちのことを話し、険しい表情で受話器を置いた。
298
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/24(火) 21:16:10 ID:WZJjxK8k
どうなんだ?
299
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/24(火) 21:20:45 ID:voB9GsOM
受付「皆さんは少女さんのご友人ですか?」
友香「はいっ!」
受付「そうですか……」
受付「個人情報が含まれるので詳しいことはお伝え出来ませんが、少女さんは2月20日にお亡くなりになられました。申し訳ありませんが、ご家族の方以外はお引取りください」
友香「亡くなったって、少女が……死んだ?」
少女「そんな! うそでしょ?!」
男「本当に、少女さんは――」
受付「申し訳ありません」
友「ちょっと待て! 2月20日って、一昨日だよな。おかしくないか?」
男「……!」
友香「そ、そうよ! 昨日、私たちはおばさんに許可を頂いて面会することが出来たんですよ!」
双妹「そうですよね。一昨日に少女さんが亡くなっていたのなら、どうして昨日は面会することが出来たんですか?」
受付「それは個人情報ですので、お答えすることは出来ません」
300
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/24(火) 21:35:55 ID:voB9GsOM
友香「今は面会可能時間ですよね。本当は、おじさんやおばさんが来ているんじゃないんですか? どうしても会わせて欲しいんです!」
受付「申し訳ありませんが、他の患者さんのご迷惑にもなりますし、お引取り願えませんか」
友香「でも、でもっ……!!」
少女「私、そんなの信じられない。自分で確かめてくる!」
その言葉と同時、少女さんの姿が見えなくなった。
俺に取り憑くことよりも、自分の身体に戻ることを優先したのだろう。
それほどまでに、少女さんの中で生き返りたいという想いが高まっていたのだ。
男「少女さん!」
双妹「外で待っていて欲しいだって」
友「一度、出直そう。まだ終わりだと決まった訳じゃないんだから」
男「そう、だな……」
301
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/04/24(火) 21:37:02 ID:dGBrRWQE
今日はここまでにします
レスありがとうございました
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