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少女「私を忘れないで」
1
:
◆WRZsdTgWUI
:2018/02/17(土) 23:13:03 ID:SLrOQBwc
(プロローグ)
〜体育館裏・少女さん〜
男子「少女さん、わざわざ来てくれてありがとう!」
少女「……」
男子「えっと、その……明日から冬休みだね」
少女「そうですね」
男子「それでその……クリスマスの日は予定が開いてますか」
少女「クリスマスの予定?」
男子「は、はいっ!」
少女「ひとつ聞きたいのですけど、あなたと私は今日はじめて会いましたよねえ。それなのに、どうして教えないといけないんですか」
男子「それは少女さんのことが好きだからっ!」
少女「……?!」
男子「文化祭のときに笑っている少女さんを見て可愛いなって思って、それで一緒に話が出来たらいいなってずっと思っていたんです。だから、僕と付き合ってくれませんか!」
2
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/17(土) 23:18:18 ID:tJ8TVtFs
少女「えっと、私を好きになってくれてありがとうございます」
少女「でも……ごめんなさい。あなたとは付き合えません」
男子「ど、どうして……」
少女「私は今、好きな人がいるんです。だから、気持ちだけ受け取っておきますね」
男子「……」
少女「それでは、さようなら」ペコリ
男子「少女さん、待ってよっ!」
少女「えっ?! あ……あのっ、手を離してくれませんか!」
男子「どうして、僕の気持ちに応えてくれないだよおっ! こんなに少女さんのことが好きなのに!!」
少女「も……もう一度言いますけど、私には好きな人がいるんです」
男子「うあ゛あ゛あ゛あああぁぁっっ! な゛んでっ、何でなんだよおっ!!」
少女「ご、ごめんなさい。さよならっ!」タタタタッ・・・
3
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/17(土) 23:20:46 ID:tJ8TVtFs
少女「……はあはあ」
友香「少女、用事って何だったの?」
少女「えっと、な……なんて言うか告白されちゃった」
友香「こ、告白?! 相手は誰よ!」
少女「それがその、全然知らない人で……」
友香「手紙にも名前はなかったの?」
少女「うん。それでね、断ったら腕を掴んで怒鳴ってきて、すごく怖かった」
友香「うっわあ、何もされなくて良かったね」
少女「う……うん、そうだよね。もう思い出したくないし、何か温かいものでも食べに行かない?」
友香「じゃあ、いつもの喫茶店に行こっか」
少女「うん、行こいこっ!」
友達の友香ちゃんと過ごす冬休み。
クリスマスやお正月といった楽しい時間は、あっという間に過ぎていく。
そして、三学期が始まった。
4
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/17(土) 23:25:19 ID:SLrOQBwc
(2月15日)mon
〜学校・お昼休み〜
友「ようっ、男。昨日はどうだった?」
お弁当を食べ終えて漫画を読んでいると、友が話しかけてきた。
昨日は柔道部の交流試合があり、朝から北倉高校に遠征していたのだ。
試合結果を言うのを忘れていたので、恐らくそのことだろう。
男「何とか俺たちの勝ちだった。夏に試合をしたときは圧勝だったんだけど、向こうも相当稽古をしているみたいだな」
友「お前、何の話をしてるんだよ」
男「何の話って、昨日の交流試合の話だけど」
友「そうじゃなくて、チョコは貰えたのかって聞いてるんだ」
男「試合じゃなくて、そっちのほうか」
友「それで、どうなんだよ」
男「もちろん貰ったぞ。双妹からだけど!」
5
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/17(土) 23:29:12 ID:tJ8TVtFs
友「なんだそりゃ。そんなもん、ノーカウントだっつうの」
男「彼女がいない俺たちには、まったく関係ないイベントだな」
友「はあ、確かに……」
友「そういえばさあ、中学生のとき隣のクラスの女子に告白していただろ。その子は今、どこで何をしているんだろうな」
男「……さあな。学校でお弁当でも食べているんじゃないのか」
友「いやいや、そういうことじゃなくてだなあ」
男「もう3年も前のことなんだから、考えても仕方ないだろ」
俺が少女さんに告白したのは、中学1年生のときだ。
その後3年生のときに同じクラスになったけれど、失恋した相手に告白する勇気を出せなくて、結局何も起こらないまま少女さんは北倉高校に進学した。
卒業してから一度も顔を見ていないし、もう二度と会うことはないだろう。
友「それはそうかもしれないけど、今のお前なら彼女なんて楽勝で出来ると思うぞ。あのときみたいに突貫してみろよ。来月のホワイトデーにっ!」
男「それを言いたかっただけだろ。いい加減忘れてくれよ」
友「はははっ。あんな面白いこと、絶対に忘れてやるものか!」
6
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/17(土) 23:31:23 ID:tJ8TVtFs
双妹「ねえねえ。二人とも、今は大丈夫?」
友と雑談していると、双子の妹が話しかけてきた。
そういえば、今日は友にチョコを渡すとか言ってたな。
男「大丈夫だよ」
双妹「なら、ちょうど良かった。友くんに渡したい物があるんだけど」
友「俺に?」
双妹「昨日はバレンタインデーだったでしょ」
友「うおおぉぉっ! 双妹ちゃん、ありがとう!!」
双妹「いえいえ、どういたしまして」
7
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/17(土) 23:33:25 ID:tJ8TVtFs
友「男っ! 見ろよ、双妹ちゃんからチョコをもらえたぞ!」
男「大げさだなあ」
友「これって、本命チョコだよな」
男「それは絶対にない。俺が受け狙いで選んだチョコレートだし」
友「……」
友「……またまたあ、そんなご冗談を」
男「俺からの気持ちをぜひ受け取ってくれ」
友「お前の気持ちだけ選り分けて食べてやるよ!」
8
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/17(土) 23:35:19 ID:zMDr2mn6
〜放課後〜
顧問「今日の稽古はここまでだ」
男「お疲れさまでした!」
部員「お疲れさまでした!」
男「それじゃあ、帰るとするか」
俺は更衣室で制服に着替えて、外に出た。
空はすでに暗くなっていて、雪がドカドカと降り続いている。
昨日の激しい雨がまるで嘘だったかのように、今では真冬の装いだ。
この調子だと、明日の朝は大変なことになっているかもしれないな。
そう思いつつ足早に歩いていると、校門脇で女子生徒に声をかけられた。
9
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 00:08:26 ID:NNrVydJo
女子「部活、お疲れさまでした」
男「えっ? ああ、お疲れさま」
俺は彼女に返事をしつつ、彼女の制服に目を向けた。
どうやら彼女はうちの学校の生徒ではないらしく、北倉高校が指定している冬用コートを着用している。
雪が降っているというのに傘も差さず、こんな所で何をしているのだろうか。
男「寒くないの?」
女子「大丈夫です。私、寒さには強いんです」
男「ふうん、そうなんだ。誰を待っているのか知らないけど、風邪を引かないように気をつけてね」
俺はそう言って、彼女から視線を外した。
部活仲間に見られて勘違いされると面倒だし、さっさと帰ることにしよう。
10
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 00:12:53 ID:xFYKTtmE
女子「わわっ、待ってくださいよ。男くんですよねえ」
男「そうだけど」
女子「私のこと、覚えていませんか」マジマジ
男「あっ! もしかして、少女さん?」
少女「えへへ♪ 久しぶりだね」
男「ああ、久しぶり! 中学生のときと雰囲気が違っていて、まったく気付かなかったよ」
お昼休みに少女さんのことを思い出して、まさかその日のうちに会うとは思わなかった。
もしかして友のやつ、知っててネタ振りしてきたんじゃないだろうなあ。
しかし、俺が告白した相手を知っているのは双妹だけだ。
双妹が友に話したとは考えられないし、きっとただの偶然だろう。
そうなると、少女さんがここにいる理由はひとつしか考えられない。
11
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 00:16:57 ID:NNrVydJo
男「それで、今日はどうしてこんなところに?」
昨日はバレンタインデー。
しかも少女さんは学校帰りに来て、ずっと俺のことを待ってくれていたようだ。
もしかすると、これはかなり期待しても良いのではないだろうか。
少女「男くんに会いたくて、ここまで来たんです」
男「そ、そうなんだ!」
少女「えっと、実は渡したいものがあって――」
少女「あれっ!? あっ、ああ、そっか……」
男「どうかした?」
少女「あはは、家に置いて来ちゃったみたいです」テヘッ
男「じゃあ、取りに帰ればいいんじゃないかな。傘に入れてあげるよ」
少女「それは……出来ないんです」
12
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 00:19:23 ID:NNrVydJo
男「出来ないって、どういうこと?」
少女「家に帰りたくないというか、帰ってはいけないというか――。何となく、近付いてはいけないような気がするんです」
男「もしかして、お母さんがそういうことに厳しいとか?」
少女「……いえ。私、死んでしまったみたいなんです」
男「死んだ?!」
少女「はい――」
久しぶりに会えてうれしいと思っていたけど、とんでもない言葉が彼女の口から出てきた。
こうして話をしているのに、死んだとか訳が分からない。
そして、さらに彼女が言葉を続ける。
少女「私自身、どうしてこんなことになってしまったのか分かりません。記憶がすごく曖昧で、気が付くと病院のベッドで横たわる自分の姿を見下ろしていました」
男「ふ……ふうん、大変だったね」
13
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 00:25:03 ID:fegUyZeA
少女「とりあえず、男くんの家に行ってもいいですか?」
男「えっ、俺の家に?! ドカ雪が降っているし、今日は早く帰ったほうがいいんじゃないかな」
少女「だから、帰りたくないんですよね……」
俺が知っている少女さんは、こんなことを言うような人ではなかった。
しばらく会わないうちに、性格が変わってしまったのかもしれない。
家に帰りたくないと言ってはいるけど、俺が帰れば少女さんも家に帰ってくれるだろう。
男「それじゃあ、俺は部活で疲れているから。少女さん、またね」
少女「……」
俺は少女さんに手を振って、駅に向けて歩き始めた。
そして校門を出てすぐ、少女さんがどうやって帰るのかが気になった。
彼女は同じ中学校に通っていたのだから、今から俺と同じ電車に乗ることになるはずだ。
もしそこで出会ってしまうと、絶対に気まずい。
少女さん――か。
久しぶりに会えてうれしかったし、バレンタインチョコを渡しに来てくれてすごくうれしかった。
やっぱり、どうしてあんなことを言ったのか最後まで聞いてみよう。
俺はそう思い、足を止めて振り返った。
しかし、少女さんはすでにいなくなっていた。
14
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 00:36:10 ID:fegUyZeA
今日はここまでにします。
ジャンル的には、
女幽霊/双妹(いもうと)SSです。
15
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 10:50:29 ID:J0dyUVSA
〜自宅・部屋〜
少女「ふうん、ここが男くんの部屋なんだ〜」
男「……ええっ?!」
背後から声が聞こえて振り返ると、なぜか少女さんが立っていた。
校門で別れたはずなのに、どうして俺の家にいるのだろう。
というか、付いてきている事にまったく気が付かなかったぞ。
少女「お邪魔してます♪」
男「お邪魔してますって、どうやってここに?!」
少女「それはだって、私は幽霊だもん」
男「幽霊?」
少女「はい。だから、姿を消して付いていくことも出来ちゃうんです」ドヤァ
16
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 10:54:03 ID:J0dyUVSA
男「それ、本気で言ってるの?」
少女「もちのろんです」
男「じゃあ、証拠を見せてほしいかな」
少女「証拠ですか?」
男「俺には霊感なんてないし、少女さんが死んでいるとか信じられる訳がないだろ」
少女「それもそうですね。それじゃあ、私に触ってみてください」
少女さんは得意げに言うと、手を差し出してきた。
それを見て、俺は彼女の手を握ろうとした。
しかし握手をしようとした瞬間、手がすり抜けてしまった。
17
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 10:56:29 ID:xFYKTtmE
男「……んなっ!?」
少女「これで私が幽霊だと証明出来ましたよね」
男「し、信じられない」
少女「でも、これが現実なんです」
男「そう……だよな。少女さんに触れないし、よく見たら空中にも浮いてるし」
少女「何だか魔法少女みたいですよね♪」
少女さんはそう言うと、ふわふわと空中に舞い上がった。
そして、俺のベッドに着地した。
少女「えへへ、すごくないですか!」
男「確かに魔法みたいだ」
少女「実は私、子供のころに憧れていたんです。るんらら〜♪」
18
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 11:01:49 ID:fegUyZeA
もしこれが魔法だったとすると、少女さんに実体がないことの説明が出来ない。
少女さんの身体を触ることが出来ないこと。
少女さんがベッドに座っても、物理的に体重が加わっている様子がないこと。
そして、少女さんの影が出来ていないこと。
やっぱり、少女さんは幽霊なのだ。
そんな彼女に、俺は一体何が出来るのだろう――。
男「あのさあ、うまく言うことが出来ないけど、俺もお通夜とかお葬式に行ったほうがいいのかな」
少女「男くんは私の家を知っているんですか?」
男「知らないけど、同級生だったから行ったほうが良いと思うんだ」
少女「気持ちはうれしいですけど、お葬式は終わっていると思いますよ」
男「終わってる?」
少女「はい。私が死んだのは一昨日なんです」
19
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 11:06:56 ID:fegUyZeA
男「一昨日ってことは13日か。どうして、その……死んでしまったの?」
少女「それなんですけど、なぜ死んでしまったのかよく覚えていないんです」
男「そうなんだ」
少女「……はい。バレンタインデーの前日に死んでしまうなんて、一生の不覚です!」ショボン
男「もしかして、誰かにチョコを渡す予定だったとか?」
少女「そ、それは……//」
男「そういえば校門で会ったとき、俺に渡したい物があると言ってたよね」
少女「は……はうぅっ//」
どうやら図星だったらしく、少女さんは顔を赤面させた。
そして照れ笑いを浮かべながら、恥ずかしそうにベッドの上で丸くなった。
何だか乙女チックで、すごく可愛い。
そんなことを思いながら見ていると、少女さんの身体がふいにベッドの中に沈み込んだ。
さすがにシュールすぎる光景だ。
20
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 11:12:37 ID:xFYKTtmE
少女「わわっ、前が見えない〜」
少女さんがじたばたともがきながら、慌てた様子で言った。
かなり深く潜っているようなので、もしかすると親父の書斎に天井から足が生えているかもしれない。
どうやら、天然っぽいところは変わっていないようだ。
それからしばらくして、少女さんが照れ臭そうに毛布から顔を出した。
少女「あははは// 修学旅行とかでいますよね〜。テンション上がって、布団の上で水泳始める子」アセアセ
男「そうだな。いるいる、まさに少女さんみたいな人が」
少女「ううっ、男くんのいじわる〜」プンスカ
男「あはは、ごめんごめん」
21
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 11:17:08 ID:xFYKTtmE
少女「じゃ、じゃあ、許してあげる代わりに、今日からここに泊めてくれませんか//」
男「それって、どういうこと」
少女さんのはにかんだ表情に、俺は一瞬ドキッとした。
しかし、よくよく考えてみると彼女は幽霊なのだ。
普通ならうれしいシチュエーションだけど、警戒せずにはいられない。
少女「えっと……実は私、男くんに取り憑いているんです」
男「ちょっと待った! 俺に取り憑いてる?!」
少女「えへへ、そうですよ//」テレッ
22
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 11:24:02 ID:xFYKTtmE
PiPoPa...
男「もしもし」
友『もしもし、男か。どうしたんだ?』
男「実はさあ、幽霊に取り憑かれたんだけど除霊してくれないかな」
少女「えっ、ええぇっ!! 私、いきなり除霊されちゃうの?!」
友『幽霊に取り憑かれたって、どういうことだよ』
男「そのままの意味だ。除霊、出来るんだろ?」
友『やろうと思えば出来るけど、見える……のか?』
男「ああ、冗談抜きで見えてる。何とかしてあげてくれないかな」
友『分かった。少し待ってろ』
男「じゃあ、待ってるから」
23
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 11:26:21 ID:fegUyZeA
少女「久しぶりに会えたのに、もうお別れなんですね……」
電話を切ると、少女さんが悲しげな表情を向けてきた。
何だか悪いことをしているみたいだけど、彼女は人に取り憑く幽霊なのだ。
少しでも早く成仏をするほうが、きっと少女さんのためになる。
男「もう少し話をしたかったけど、早く成仏をしたほうが少女さんのためになると思う。だから、分かって欲しい」
少女「成仏をしたほうが私のためになる……か。つまり、私のことが嫌いだから除霊するわけじゃないんですね」
男「そうだよ」
少女「そっか……。嫌われた訳じゃなくて、本当によかった――」
男「それじゃあ、友が来るまでの間、何か話でもしない?」
少女「……そうですね、そうしたいです」
少女さんはそう言うと、かすかに微笑んだ。
そして、俺たちは中学校の思い出を話し合うことにした。
24
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 11:28:56 ID:J0dyUVSA
少女「――そういえば男くん、中学生のときに告白してくれたよね。よく知らない人だったし、あのときは恋愛に興味がなくて断っちゃったけど」
男「それが本当の理由だったのか。それじゃあ、3年生のときに告白し直していたらチャンスがあったのかな」
少女「それはその……たぶん付き合っていたと思います//」
少女「男くんと同じクラスになって、ずっと意識していたんだよ。告白してくれた人だし、部活動を頑張っていることがすごく伝わってきたから――。でもへたれで弱くて、いつも負けてばっかりだったけどね」
男「へたれって言うけど、入部して早々に小学生の頃からやっていた奴らに勝てるわけないだろ」
少女「あはは、それもそうだね。でも、どうして部活を始めたの?」
男「それはまあ、少女さんに振られたから……かな」
少女「えっ、私に振られたから?」
男「少女さんのことが好きだったし、何かスポーツを頑張って見返してやりたいと思ったんだ」
少女「そうだったんだ。男くんは見違えたと思うよ//」
男「ありがとう」
25
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 11:45:26 ID:fegUyZeA
中学3年生のとき、どちらかが勇気を出していれば俺たちは交際が始まっていたのかもしれない。
その時間を埋め合わせるかのように、楽しかった学校行事を振り返る。
春の運動会の話からはじまり、文化祭や修学旅行、そして日帰りのスキー実習の思い出を話し合う。
やがて話に一区切りが付いたところで、来客のチャイムが鳴った。
どうやら、友が来てくれたようだ。
俺は部屋を出て、玄関に向かった。
友「――あのチョコ、ネタに走りすぎじゃないかなあ」
双妹「男が友くんはなんば辛いものが好きだと言っていたから、あれにしたんだけど」
友「確かに好きだし美味しかったけど、まじで男が選んだのかよ……」
双妹「そうだよ。友くんは幼馴染みたいなものだし、男が選んで私が買えば、二人でチョコを渡したことになるよねって」
友「あ、ああ……そういうことか」ショボン
少女「あれっ? この女子は――」
双妹「男、友くんが来てるよ〜」
男「分かってる。少し用事があって呼んだんだ」
26
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 11:48:24 ID:fegUyZeA
男「ドカ雪が降ってるのに、わざわざ来てくれてありがとう。とりあえず、家に上がってくれ」
友「ああ、お邪魔します」
友はそう言って、俺の隣をちらりと見た。
そこには少女さんが立っている。
どうやら、幽霊が見えるという話は冗談ではなかったらしい。
友「おいっ、男。取り憑かれたって、まさか――」
男「その話は部屋でしよう」
友「そうだな」
双妹「……?」
27
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 12:01:15 ID:xFYKTtmE
友を部屋に招き入れると、友は担いでいたカバンを床に置いた。
恐らく、その中に除霊グッズが入っているのだろう。
少女さんがしきりにカバンを気にしている。
少女「……友くん、お久しぶりです。というか、今朝も会いましたよね」
友「あ、ああ……あれは少女さんだったのか。まさか亡くなっているだなんて思ってもみなかったから、まったく気が付かなかったよ」
少女「やっぱり気付いてなかったんだ」
友「ごめんごめん。なんて言えばいいのか困るけど、お悔やみ申し上げます」
少女「あっ、はい……ありがとう」
男「少女さんのこと、双妹には見えていないみたいだけど友には見えるんだな」
友「当たり前だろ。俺の家はそういう家系だからな」
少女「それで、友くんは私を除霊するために来たんですよねえ」
友「そのことだけど、俺は少女さんの除霊をするつもりはないよ」
少女「えっ、そうなんですか?!」
友「ああ。除霊っていうのは、その必要があるときにするものなんだ」
28
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 12:04:20 ID:J0dyUVSA
男「除霊をしないって、どういうことだよ。成仏させてあげたほうが少女さんのためになるんじゃないのか?」
友「人が亡くなったとき、故人が極楽浄土に行けるように四十九日の法要を営むだろ。宗派によって違いはあるけど、少女さんは今、成仏をするために気持ちの整理をしている時期なんだ」
友「そんな大切なときに除霊をしてしまうと、成仏をする機会を与えずに霊魂を破壊することになってしまう。だから、除霊をしないんだ」
男「なるほど」
少女「それじゃあ、私はこれからも男くんと一緒にいられるんですね」ルンルン
友「一応そういうことになるけど、男に取り憑いていることが気になるんだよな」
友はそう言うと、険しい表情になった。
そして、俺と少女さんを交互に見比べる。
29
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 12:10:09 ID:xFYKTtmE
男「取り憑かれていることは俺も気になるけど、やっぱり不味いのか?」
友「まあな。こういう言い方はしたくないけど、少女さんがしていることは悪質な憑依霊と同じことなんだ。本来ならば、問答無用で除霊してしまいたいくらいだ」
少女「私は悪いことをするつもりはありません! ただ、その……男くんと一緒にいたいだけなんです」
友「それが成仏をするために必要な気持ちの整理ってことになるんだろうけど、どう考えても異常なんだよな」
少女「私が異常って、どうしてですか」
男「少女さんに対して、そういう言い方はないんじゃないか!」
友「じゃあ聞くけど、男は今まで幽霊を見たことがあるのか?」
男「ある訳ないだろ」
友「そういうことだよ。男が少女さんの姿を見て、普通に会話までしている。例えどんな死に方を選んでいたとしても、普通の浮遊霊がこんなに強力な力を持っているはずがないんだ」
30
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 12:14:17 ID:xFYKTtmE
トントン
不意にノックをする音がして、双妹が部屋に入ってきた。
双妹「晩ご飯の準備が出来たんだけど、どうする?」
男「俺は後で食べる」
友「男、ご飯時なら俺はもう帰るぞ」
男「帰るって、今の話がかなり気になるんだけど」
友「現状では深刻な問題は起きないから、気にしなくても大丈夫だ。もう少し考えを煮詰めてから話をしたいし」
男「ということは、この状態が続くと問題が起きるということか……。分かった、雪も心配だし続きは明日聞かせてくれ」
友「ああ、任せとけ」
男「来てくれてありがとうな」
31
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 12:17:19 ID:J0dyUVSA
友「それじゃあ、今夜は変なことをするなよ」ニヤニヤ
少女「変なこと?」
男「何もしないっつうの!」
友「ははっ、冗談だ」
友はそう言うと、カバンを持って立ち上がった。
そして俺と双妹は友を玄関まで見送り、リビングに向かった。
その傍らには、少女さんが付いてきている。
男「やっぱり、双妹には見えていないんだな」
双妹「見えていないって、何が?」
男「いや、何でもない」
少女さんには、普通の浮遊霊では考えられないほどの力があるらしい。
その力が俺に対する未練に関係しているのなら、それを解消する手伝いをしてあげたい。
俺は晩ご飯を食べつつ、そう思った。
32
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 23:21:26 ID:xFYKTtmE
男「ふぅ、食った食った」
俺は部屋に戻り、ベッドの上に座った。
そして、傍らに少女さんがちょこんと座る。
少女「あの……男くんって、妹がいたんですね」
男「そうだよ。知らなかった?」
少女「はい」
男「実は、俺と双妹は双子の兄妹なんだ」
少女「ええっ! 双子なんですか?!」
俺と双妹が双子だと教えると、少女さんは目を丸くして驚いてくれた。
この様子だと、俺たちが一卵性双生児だということも知らないのかもしれない。
男「男女の双子って珍しいだろ」
少女「そうですよね。そっか、そう……だったんだ」
33
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 23:24:27 ID:fegUyZeA
男「ところで、少女さんの未練って何なのかな」
少女「私の未練ですか?」
男「普通の浮遊霊では考えられないほどの力を持った理由が俺にあるなら、それを解消する手伝いをしたいなと思って」
少女「男くんに会いたいという願いは叶ったし、他にあるとすれば……その、あれかもしれないです」
男「あれって、バレンタインチョコを渡せなかったこと?」
少女「……たぶん//」
男「じゃあ、明日の放課後、部活を休んで少女さんの家に行ってみよう。それで何か分かるかもしれないし」
少女「だ、だめです!」
少女さんが慌てて声を上げた。
家に帰りたくないとは聞いていたけど、俺が行くのもだめらしい。
男「だめって、どうして?」
少女「私、男くんに取り憑いているんですよ。男くんが私の家に行けば、私も家に帰ることになるじゃないですか」
34
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 23:26:06 ID:xFYKTtmE
男「あのさあ、自分の家だろ。どうして帰りたくないの?」
少女「何となく、近付いてはいけないような気がするんです。きっと良くないことが起きると思います」
男「良くないこと?」
少女「それが何かは分かりません。でも……いやなんです」
少女さんはそう言うと、顔を伏せた。
もしかすると、生きているときに余程のことがあったのかもしれない。
それを何とかして克服しなければ、少女さんが未練を解消することは出来なさそうだ。
男「家に帰るのが嫌なら、まずは家に帰りたくない理由を探すしかなさそうだね」
少女「……そうですね」
35
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 23:28:11 ID:fegUyZeA
男「それじゃあ、とりあえずお風呂に入ってくるから」
少女「もうそんな時間なんだ」
男「悪いけど、少女さんは部屋で待っててくれるかな」
俺はそう言って、洋服ダンスから着替えを取り出した。
そして部屋を出ると、なぜか隣に少女さんが立っていた。
男「あのさあ、部屋で待っててくれたらいいから」
少女「……はい」
男「……」トテトテ
少女「……」フワフワ
36
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 23:31:55 ID:xFYKTtmE
〜お風呂〜
男「えっとさあ、ここがお風呂なんだけど」
少女「わ……分かっています」アセアセ
男「じゃあ、どうして付いてくるの」
少女「それがその、男くんから離れられないというか――」
距離にして、約1.5メートル。
それ以上は離れようとしても離れられないようだ。
少女さんの背丈もそれくらいだし、もしかすると関係があるのかもしれない。
男「こうなったら、浴室の壁の向こう側で待っていてもらうしかないな」
少女「い、いやですよ。外は寒いし雪が降っているじゃないですか!」
男「寒さには強いって言ってなかったっけ」
少女「そ、そんな設定はなくなりました!」アセアセ
37
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/18(日) 23:43:51 ID:NNrVydJo
男「それなら、俺と一緒に入る?」
少女「それはその……仕方ない…………ですよね」
少女さんはそう言って、視線を泳がせた。
やっぱり、いくら幽霊だとはいっても一緒に入るのはまずいよな――。
何か良い方法はないだろうか。
男「そうだ! 部屋から水着を取ってくるよ」
少女「水着、ですか?」
男「それなら安心して一緒に入れるだろ」
少女「そうですね。気を使わせてごめんなさい」
男「別に謝らなくても良いから。それじゃあ、取ってくる」
38
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/20(火) 00:31:21 ID:n8a7uILg
俺は少女さんを連れて部屋に戻り、洋服ダンスから水着を取り出した。
そして、お風呂場に戻って制服を脱ぐと、少女さんは慌てて両手で顔を隠した。
少女「わわっ// 急に脱がないでくださいよ」アセアセ
男「えっ? ああ、ごめんごめん」
少女「水着に着替えるなら、バスタオルを腰に巻くとかその……してくれませんか」
男「それもそうだな。でも俺も見られていたら気になるし、少女さんは後ろを向いてくれるかな」
少女「そ……そうですね」アセアセ
双妹「ねえ、男。ちょっと良いかなあ」
少女さんと話をしていると、双妹がひょっこりと脱衣所に入ってきた。
そしてすぐに俺が持っている水着に気付き、呆れた顔を向けてきた。
39
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/20(火) 00:44:17 ID:PYfLsmYE
双妹「もしかして、水着を着てお風呂に入るつもり?」
男「いろいろと事情があってな」
双妹「事情ねえ……。身体を洗うときはどうするの」
男「そのときは脱ぐし」
双妹「脱ぐなら、着る必要なくない?」
少女「これは……双妹さんの言うとおりですね」
男「はあ、分かったよ」
双妹「分かればよろしい♪ ところで、来週からお父さんが海外出張でしょ」
男「土曜日に出発するんだっけ」
双妹「そうそう。だから、今週は私がバス停まで迎えに行ってあげようと思っているの。それでね、今日はお父さんと一緒に入るから設定を変えておいてね」
男「分かった。雪が積もってるから気を付けて行けよ」
双妹「うん、ありがとう。それじゃあ、行ってきます♪」
40
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/20(火) 00:48:13 ID:n8a7uILg
少女「あの……双妹さんって、未だにお父さんとお風呂に入っているんですか」
双妹が脱衣所から出て行くと、少女さんが困惑した面持ちで口を開いた。
そんな当たり前のことに、どうして驚いているのだろう。
男「そうだけど、それがどうかした?」
少女「いえ……私だったら嫌だなと思って…………」
男「ふうん、そうなんだ。とりあえず、水着を着るのはやめるから」
少女「そ、そうですね//」
少女「こうなれば実習の時間だと思って、洗い方をしっかりと確認させていただきますから! 覚悟しておいてくださいね!!」
男「覚悟しろって、変に意識しちゃうんだけど……」
少女「べべ……別に変な意味じゃないですし//」アセアセ
少女さんは声を上ずらせながら、俺の下半身をガン見してきた。
恥ずかしさを誤魔化そうとしているのが見え見えだけど、意外と肝が据わっているのかもしれない。
そう思いつつ脱ぐのを躊躇っていると、少女さんははっとした表情で我に返り後ろを向いてくれた。
41
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/20(火) 00:54:21 ID:xtymmhLM
ガラララッ・・・
少女さんと久しぶりに再会した日に、そのまま二人で一緒にお風呂。
俺は気まずい視線を背中に感じながら、緊張した足取りで浴室に入った。
そして湯船に浸かると、少女さんが浴室の中に入ってきた。
約1.5メートルの距離以上に離れることが出来ないからだ。
まあ、そこまではいい。
服を着てさえいれば――。
少女「わわっ、何これ! 男くんの家のお風呂、すごく広いし!」
男「ちょっと少女さん、どうして裸なんだよ!」アセアセ
少女「えっと、実は一昨日からずっとお風呂に入っていなくて……。恥ずかしいので、あまり見ないでください//」
見ないで欲しいと言われても、裸でいられると気になって仕方がない。
控えめな乳房と女性らしい腰付き。
少女さんを見ないように顔を背けてはいるけれど、どうしても意識がそちらに向いてしまう。
そんな俺の心境を知ってか知らずか、少女さんが湯船に入ってきた。
もちろん水位は上がらないし、波も立たない。
42
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/20(火) 00:57:57 ID:ojXTULs.
男「――?!」
少女「ごめんなさい。やっぱり、気に障りましたか」
男「いや、そうじゃなくて……」
俺はそれを見た瞬間、急速に興奮が冷めていった。
少女さんの首に何かで絞められた痕が残っていたからだ。
少女「もしかして、私の身体がどこかおかしいですか?」
男「それはその――」
少女「あっ、ああ……そういうことだね//」ドキドキ
少女さんは何を思ったのか、期待の眼差しを向けてきた。
だけど、彼女は死んでいるのだ。
それを強く実感してしまった今、浮ついた気分にはならなかった。
43
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/20(火) 18:54:50 ID:n8a7uILg
〜部屋〜
男「……」
少女「……」
お風呂場から戻ってくると、部屋が気まずい沈黙に包まれた。
いや、正確にはお風呂に入っているときからかもしれない。
男・少女「あ……あのっ!」
男「少女さんから言ってよ」
少女「えっとその……すごく緊張しましたね//」
男「あ、ああ、そうだね」
少女「緊張……し過ぎていたんですよね?」
男「し過ぎていた……か。確かにそうかもしれない」
少女「やっぱり、そうだったんだ。あまり元気がないようだったので、どうしたのかなって気になっていたんです」
男「なんと言うか、少女さんが死んでいることを実感させられて……。それで、ずっと考え事をしていたんだ」
44
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/20(火) 19:55:22 ID:xtymmhLM
少女「考え事って、どんな事ですか?」
少女さんはそう言うと、真剣な眼差しを向けてきた。
彼女は今、北倉高校の冬用の制服を着用している。
そのおかげで、今は首を絞められた痕が見えなくなっている。
男「別に話してもいいけど、かなり不快な気分になると思うんだ。それでも大丈夫?」
少女「そう言われると少し迷うけど、私に関係がある話なんですよねえ」
男「そうだよ。もしかすると、少女さんの死因が分かったかもしれない」
少女「ええっ?! そういう話なら、ぜひ聞かせてほしいです!」
男「それじゃあ言うけど、恐らく少女さんは誰かに殺されたのだと思う」
少女「誰かに殺された?! それって、どういうことなんですか!」
男「少女さんの首に紐か何かで絞められた痕があったんだ」
45
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/20(火) 20:30:55 ID:xtymmhLM
少女「……」
少女「それって……首を絞めて殺されたということですか?」
男「……うん。そうだとしか思えない」
少女さんは家に帰りたくないと言っている。
それは、家に侵入してきた何者かに殺されたからなのかもしれない。
だから近付きたくないのだ。
少女「でも、記憶がすごく曖昧であまり覚えていないんですよね」
男「それが証拠だよ。心が思い出すことを嫌がっているんだ」
少女「そっか――」
男「とりあえず、人が殺されたら新聞記事になるはずだろ。今から調べてみる?」
少女「そうですね。家に帰りたくない理由を知るためにも、私はなぜ殺されたのか知りたいです」
男「それじゃあ、取ってくる」
俺はそう言って、リビングから古新聞を持ってきた。
そして、少女さんが亡くなった13日の新聞から目を通すことにした。
46
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/20(火) 23:17:43 ID:n8a7uILg
・・・
・・・・・・
リビングから持ってきた新聞を読み終わり、俺は小さく溜め息をもらした。
どうやら、この近隣で殺人事件は発生していないようだ。
最初は事件が発覚していないだけかと思ったけれど、少女さんは『気が付くと病院のベッドで横たわる自分の姿を見下ろしていた』と言っている。
したがって、事件が発覚していないなんてことは有り得ない。
少女「載っていませんでしたね」
男「そうだな。これで殺人事件の線がなくなった」
少女「良かった〜。誰にも殺されていなくて」
男「俺も少女さんに話した後で、そんなことがある訳ないと思ってた。変なことを言って、本当にごめん」
少女「別に良いですよ。気にしないでください」
少女さんはそう言うと、にこりと微笑んでくれた。
しかしふと、俺は新しい可能性に思い当たった。
誰かに殺された訳ではないのならば、自分で死んだことになってしまうのではないか?
そう。
首吊り自殺だ――。
47
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/20(火) 23:50:40 ID:ojXTULs.
今年の冬休み、少女さんが通っている北倉高校で男子生徒が自殺をした。
詳しいことは知らないけれど、ニュースによれば遺書が遺されていたらしい。
そこまでは、まあよく聞く話だ。
きっと、少女さんもいじめに遭っていたのだろう。
しかし、少女さんの場合はそれだけでは終わらない。
風紀活動が厳しくなっていた中でのいじめだから、より巧妙で陰湿なものになっていたはずだ。
さらに北倉高校はただの進学校ではなくて、看護科や福祉科など医療系の勉強を教えている専門学校として有名だ。
そんな学校が、短期間のうちに二人目の自殺者を出してしまったらどうなるか。
もしかすると少女さんが死亡した記事がないのは、学校の評価が下がることを恐れて揉み消しているからなのかもしれない。
48
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/20(火) 23:55:35 ID:xtymmhLM
男「そうだ!」
少女「どうかしたんですか?」
男「新聞に載っていないなら、スマホで検索してみようよ。ニュースサイトに記事があるかもしれないだろ」
少女「……いやです」
少女「私の名前を検索するのは……何となく嫌なんです」
男「――」
ふいに思考が途切れ、軽い眠気を感じた。
今日はいろいろありすぎて、少し疲れが出てきたのだろう。
男「そうだな。今日はこれくらいにして、また明日にしようか」
少女「……ごめんなさい」
49
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/21(水) 11:45:45 ID:bBe.WQZo
乙面白いぜ乙
50
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/21(水) 22:05:25 ID:LvO5J0iE
男「それじゃあ、もう寝ようかと思うんだけど、明日は少女さんも俺の学校に来るのかな」
少女「……そうですねえ、そうなりますね。男くんの学校ではどんなことを勉強しているのか、すごく楽しみです♪」
男「へえ、そうなんだ」
俺はそう返しつつ、予想とは違う反応に驚いた。
少女さんが学校でいじめを受けていたのなら、あまり気が進まないのではないかと思ったからだ。
しかしそんな様子はなく、純粋に楽しみにしているように見える。
それは違う学校だからだろうか。
少女「それはそうと、準備が出来たのでお布団の中に入ってください//」
明日のことを考えていると、いつの間にか少女さんが枕元に移動して正座をしていた。
しかも、なぜか期待の眼差しを向けている。
51
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/21(水) 22:12:51 ID:UeSLK9Ho
男「ひとつ聞きたいんだけど、そこで何をしているの?」
少女「えっと、ほら! 幽霊は夢枕に立つって言うじゃないですか」
男「いやいやいや、すごく縁起が悪そうなんだけど!」
少女「ふふっ、いい夢を見させてあげますよ// だめ……ですか?」
男「だからそれ、すごく怖いんだけど!」
少女「むうっ……それじゃあ、洋服ダンスの中で寝ることにします」
男「何でタンスなんだよ。ていうか、幽霊なのに寝るのかよっ」
少女「そんなことを言われても、昨日からずっと寝ていないので眠たいんです。それに、女幽霊は洋服ダンスの中から現れるのがお約束なんですよ!」
男「そんなの初耳だし」
少女「えー、知らないんですか」
男「よく分からないけど、それも縁起が悪そうだから却下な」
52
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/21(水) 22:19:57 ID:LvO5J0iE
少女「それじゃあ、私はどこで寝ればいいんですか?」
男「双妹の部屋が隣にあるから、そっちで寝れば良いんじゃないかな。そこなら二段ベッドがあるし、そのほうが健全だと思う」
少女「双妹さん、ねえ……」
少女「私の未練は、男くんと一緒に寝ることだったような気がします//」
男「今、思い付いただろ」
少女「そんなことない……ですよ。ねえねえ、一緒に寝ようよ〜」
男「はあ、仕方ないな。もう好きにすればいいよ」
少女「わ〜い♪」
結局、少女さんに押し切られてしまった。
これで未練がひとつ解消するなら、協力してあげよう。
53
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/21(水) 22:34:52 ID:UeSLK9Ho
少女「男くん、おやすみなさい//」
男「おやすみ」
明かりを消してベッドに入ると、少女さんが隣に入ってきた。
そして目が合い、少女さんがにこりと微笑んだ。
少女さんが同じ部屋にいる。
中学生のときに好きだった少女さんが、今は俺のベッドの中にいる。
一緒にお風呂に入って、そのときは裸で何も着ていなくて――。
やばい、緊張して眠れなくなってきた!
彼女は俺に取り憑いている幽霊なんだぞ。
触ることも出来ないし、ムフフな展開とかあまい期待はするだけ無駄なんだ。
そう。
俺は少女さんが成仏できるように協力しているだけだ。
だから、何も起こらない。
俺は自分にそう言い聞かせながら、ゆっくりと目を閉じた。
54
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/21(水) 22:44:27 ID:LvO5J0iE
今日はここまでにします。
レスありがとうございました。
55
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/22(木) 19:52:27 ID:CDUzyq9M
(2月11日)thu
〜お買い物・少女さん〜
バレンタインデーが迫り来る、2月11日。
私は友香ちゃんと一緒にショッピングモールにやってきた。
もちろん、チョコレートを買うためだ。
少女「どのお店のチョコが美味しいんだろ」
友香「想像以上にたくさんあるんだね。こうなったら、一通り試食してから決めようよ」
少女「それ、賛成!!」
友香「まずは有名ホテルの専属パティシエが作ったシフォンケーキから♪」
少女「しっとりしてて、すっごく濃厚だね」
友香「うますぎ〜。これを自分で食べずに彼氏にあげる人がいるだなんて、もう信じられないよ」
少女「あはは、そうだね」
友香「このトリュフもカカオパウダーが絶品過ぎるしぃ。ねえねえ、今度はあっちの和チョコを食べに行こうよ!」
56
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/22(木) 20:23:52 ID:kcY6ZLyI
・・・
・・・・・・
友香「はあ、どれも美味しかった//」
少女「そうだね〜」
友香「それで決めたの?」
少女「えっと……和チョコにしようかなって思ってる」
友香「ああ、すっごく和風で美味しかったよね」
少女「そうそう。男くん、喜んでくれるかなあ//」
友香「きっと大丈夫だよ!」
少女「そう……だよね。じゃあ、買ってくる!」
57
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/22(木) 20:29:10 ID:CDUzyq9M
男くんに渡すチョコレートを買い、今度は友香ちゃんの買い物に付き合うことにした。
行き先は紳士服売り場で、お父さんに渡すネクタイを買うつもりらしい。
その移動中、催事場の一画にバレンタインコーナーが設けられているのを見つけた。
さっきまでいた有名店の特設会場とは違い、お菓子売り場の延長のような雰囲気になっている。
友香「少し寄っても良いかなあ」
少女「うん、いいよ」
私は二つ返事で応え、友香ちゃんと催事場に入った。
そこには子供向けの駄菓子やBig系のパーティーお菓子、笑えるダジャレ系のチョコレートが並んでいて、見ているだけで楽しい気分になってくる。
私もお父さんに何か買って帰ろうかなあ。
そう思いつつ見て回っていると、セクシーなチョコを扱う一画で友香ちゃんが立ち止まった。
58
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/22(木) 20:43:20 ID:daFXzB42
友香「ねえねえ、これなんてどう思う?」
少女「ええっ?! そういうのは良くないんじゃないかな」アセアセ
友香「お兄はこういうのが好きみたいだし、面白いでしょ」
少女「あ、ああ……お父さんじゃなくて、お兄さんにあげるんだ。でも、どっちにしても普通のチョコのほうが喜んでくれると思うよ」
友香「えー、そんなの面白くない!」
少女「バレンタインチョコに面白さって必要なの?!」
友香「当たり前でしょ。本命チョコじゃないんだから、くすっと笑えて楽しいほうが良いじゃない」
少女「それはそうかもしれないけど、それなら普通のチョコのほうが――」
友香「決めたっ! 今年はこれにしようっ!」
59
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/22(木) 20:52:44 ID:kcY6ZLyI
友香ちゃんはそう言うと、セクシーなミルクチョコを手に取って、堂々とレジに並んだ。
もしかして、本当にそれを買うの?!
私はさすがに気恥ずかしくなり、催事場の外で友香ちゃんを待つことにした。
周りにはたくさん人がいるのに、恥ずかしくないのかなあ……。
何だか感心してしまう。
だけど、私も友香ちゃんくらい大胆になったほうがいいのかもしれない。
カマトト女子は受けが悪いって聞くし、そんなことで男くんに嫌われたくはない。
私はそう思い、羞恥心を堪えてセクシーなチョコ売り場に目を向けた。
すると、無意識のうちに視線が一点に奪われた。
その場所には男くんがいて、見知らぬ女子と一緒に楽しそうにチョコを選ぶ姿があった。
60
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/22(木) 20:57:50 ID:daFXzB42
あの人は誰なの。
どうして、あんな場所で一緒にバレンタインチョコを選んでいるの?
友香「少女、お待たせ〜♪」
少女「……」
友香「どうかした?」
友香ちゃんはそう言うと、私の視線を追った。
そして、困惑した様子で言った。
友香「もしかして、あの人が男くんなの?」
少女「……うん」
友香「そうなんだ。思い切って声をかけてみる?」
少女「無理だよ。そんなこと――」
61
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/22(木) 21:10:04 ID:CDUzyq9M
女子「ねえ、男。見てみて、おっぱいチョコ。大人のミルク入りだって〜」
男「恥ずかしいから、そういうことを大きな声で言うなよ」
女子「あはは、もしかして想像しちゃった? 男はえっちぃ事が好きだし、これも買ってあげるわね♪」
男「そう言って、双妹が食べたいだけなんだろ。そんなことより、あれを見てみろよ」
女子「ん、どれどれ? チョコに唐辛子が入ってるんだ」
男「そうそう。チョコに唐辛子が入っているなんて、絶対に受け狙いだよな」
聞き耳を立てると、男くんと女子は名前で呼び合っていることが分かった。
しかも、えっちな話もオープンに出来る関係らしい。
このタイミングで、こんなことは知りたくなかった。
少女「男くんには彼女がいたんだ……。邪魔をしたら悪いし、早く行こっ」
友香「ちょっ、それでいいの?!」
少女「だって、名前で呼び合っているんだよ」
何だか気分が優れない。
私は逃げるようにして、紳士服売り場に向かった。
62
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/23(金) 22:02:23 ID:y7jUjsdA
(2月16日)tue
〜自宅・部屋〜
少女「男くん、朝ですよ〜♪」
男「……少女さん?! あっ、ああ、そうだった」
少女「おはようございます」
男「うん、おはよう」
朝起きて、隣に少女さんがいる。
それはとても不思議な感覚だった。
彼女が成仏をするまで、これからずっとこんな生活が続くのだろうか。
俺はそう思いつつ、ベッドから降りて暖房と明かりをつける。
そして着替えることを伝えて、パジャマから制服に着替えた。
男「ふと気になったんだけど、幽霊も夢って見るの?」
少女「夢ですか」
男「寝言をしゃべっているようだったから、どんな夢を見ているのかなと思って」
63
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/23(金) 23:39:21 ID:gIiIo4Hc
少女「……寝言って、どんな?!」
男「俺の彼女がどうとか」
少女「あうぅ、恥ずかしい……」
男「で、どんな夢を見ていたの?」
少女「生きていたときの思い出です。友香ちゃんとバレンタインデーのチョコを買いに行く夢でした」
男「友香ちゃんって、少女さんの友達?」
少女「はい、同じクラスの友達です。それで夢の中で、双妹さんのことを男くんの彼女だと勘違いしていたんです。笑っちゃいますよね」
少女さんは双妹のことを知らなかった。
それならば、双妹を俺の彼女だと勘違いしたとしても仕方がない。
一卵性なので小学生の頃は瓜二つだったけれど、中学生になった頃から容姿や体格などの性差が顕著になってきたからだ。
実際に、勘違いをされたことが何度かある。
男「それが笑い事じゃないんだよな……。小学生の頃は双子の姉妹だと勘違いされたこともあるし、もしかしたら『双子あるある』なのかも」
少女「へえ、そうなんですね。男くんは見た感じが優男だし、何となく分かる気がします」
男「まあ、俺たちは母親似だからね。あの頃は本当に大変だったよ」
64
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/24(土) 00:27:47 ID:/LkPoHmQ
双妹「男、起きてる〜?」
少女さんと話をしていると、双妹が入ってきた。
いつも決まった時間に起こしに来てくれるのだけど、今日はかなり早い。
つまり、昨夜から降っている雪の影響があるということだろう。
男「おはよう」
双妹「おはよう♪ お父さんがね、雪どかしを手伝って欲しいんだって」
男「やっぱり、相当積もったみたいだな。それじゃあ、行ってくるよ」
双妹「うん。私は朝ご飯を用意しておくから」
少女「男くん、頑張ってきてくださいね――って、わわっ! 引っ張られる!!」
部屋を出ると、少女さんもふわふわと部屋を出てきた。
俺から離れることが出来ないので、付いてくるしかないらしい。
男「少女さんも手伝ってくれるのか。それは助かるよ」
少女「ふえぇ、そんなあ……」ショボン
65
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/25(日) 10:24:25 ID:Ugzat92Q
〜最寄り駅〜
少女さんの声援を貰いながら雪をどかし、早めに朝ご飯を食べて学校に行くことにした。
昨日から降り続いているドカ雪の影響で、電車が遅延しているかもしれないからだ。
しかし、意外と大丈夫だった。
双妹「電車、意外と大丈夫だったわね」
男「そうみたいだな」
少女「あの〜、私は定期券を持ってないんですけど……」
男「ああ、そっか。少女さんは切符を買わないといけないのか。それじゃあ、昨日はどうやって電車に乗ったの?」
少女「駅員さんが普通に通してくれましたよ」
男「だったら、今日も大丈夫だろ」
双妹「ねえ、一人で何を言ってるの?」
双妹が怪訝そうに俺を見た。
そして少女さんが立っている場所を見て、首を傾げる。
66
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/25(日) 10:36:03 ID:Ugzat92Q
男「なあ、真面目な話なんだけど、双妹は幽霊っていると思うか」
双妹「……幽霊?」
男「うん。どうやら、取り憑かれてしまったみたいなんだ」
双妹「もしかして、先週から始まったえっちな漫画の話?」
男「そうじゃなくて、本当の話。何とかして成仏させてあげたいんだけど、双妹も手伝ってくれないかなあ」
双妹「真面目な話って言うから何事かと思ったけど、幽霊なんている訳がないでしょ。でももし本当にいるなら、私じゃなくてお母さんに相談したほうがいいんじゃないかなあ」
男「そうかもしれないけど、双妹じゃないと駄目なんだ」
双妹「それじゃあ、横断歩道から融雪剤を持ってきて清めてあげれば?」
少女「融雪剤は塩化カルシウムですから! そんなものでお清め出来ませんから!」
男「思いっきり突っ込みいれられてるぞ」
双妹「はいはい、もう分かったから。そんなことより、待合室に行こうよ。もう寒くて寒くて――」
双妹は声を震わせながら言うと、有人改札を抜けて暖房の利いた待合室に入っていった。
やっぱり、少女さんの姿が見えないと信じてもらうことは出来ないのかもしれない。
俺は相談を諦めて、双妹と一緒に電車を待つことにした。
67
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/25(日) 10:38:54 ID:kvJFJVk6
少女「……はあ。せっかく男くんと一緒にいるのに、お話できませんね」
待合室で暖を取っていると、少女さんが残念そうにつぶやいた。
だけど、それは仕方がない。
こんな所で話をすれば、俺は不審者扱いを受けてしまう。
しかし、それでは少女さんと話を出来る場所が限られてしまう。
何か良い方法はないだろうか。
そう思っていると、待合室の学生たちがしきりにスマホを操作する姿が目に入った。
そうか。
メモアプリを使って、筆談すればいいんだ!
男『そうでもないよ。スマホを使えば話が出来る』
少女「さすが、男くん! まったく思い付かなかったです」
男『それじゃあ、外で話したいことがあるときはスマホを使うから』
少女「うん、了解です♪」
68
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/25(日) 10:41:39 ID:CFRra0aU
少女「ところで、この制服は似合ってますか」
男『それって、うちの制服?』
少女「はい。双妹さんの制服姿を参考にして、ちょっと着替えてみました」
男『似合ってるよ』
少女「えへへ//」
男『ふと思ったんだけど、こんなところで着替えて脱いだ服はどうなったの』
少女「それはまあ、私は幽霊ですから。魔法少女みたいに、ぱーっと変身したんです」
男『そんなことが出来るんだ』
少女「すごいでしょ〜♪」ドヤッ
69
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/25(日) 10:44:52 ID:CFRra0aU
双妹「ねえ、そろそろ電車が来るみたいよ」
男「じゃあ、ホームに移動しようか」
双妹「そうだね」
俺たちは待合室を出て、雪が積もっているホームに移動した。
俺の後ろを歩く少女さんの足跡は、当然残らない。
それにしても、少女さんはどうやって電車に乗るのだろうか。
重力の影響や慣性の法則など、物理法則がどうなっているのかはっきり言って謎が多過ぎる。
男『少女さんって、電車に乗れるの?』
少女「もちのろんです。昨日、男くんと一緒に帰ったんですから」
男『そうだったね』
文章を入力して改行すると、ちょうど電車が入ってきた。
俺は自動ドアのボタンを押して、ドアを開ける。
そして、俺たちは電車に乗り込んだ。
70
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/26(月) 23:50:52 ID:sxSwg5kk
〜学校・HR〜
少女「あれが男くんの教室ですよね」
学校に着いて廊下を歩いていると、少女さんは俺の教室を見つけて駆け出した。
そしてドアの前まで行ったところで、1.5メートルの制限に縛られた。
少女「あうぅ、中に入れない〜」
男「何やってるんだよ。ほら、もう入れるはずだよ」
俺はそう言いつつ、少女さんに歩み寄る。
少女「えへへ。ちょっと、はしゃぎすぎちゃいました」
双妹「言われなくても、普通に入るし……」
男「いや、双妹のことじゃないから」
双妹「……?」
71
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2018/02/26(月) 23:53:02 ID:94L8Z7Tw
男「友、うっす」
友「うっす! 双妹ちゃん、おはよう」
双妹「おはよう」
すでに席に着いていた友と軽く挨拶を交わして、双妹は自分の席に向かった。
それを見やり、友がニヤニヤといやらしい笑みを浮かべてきた。
友「少女さん、おはよう。昨日の夜はどうだった?」
少女「えっ?! そ、それは……//」
少女さんはそう言うと、俺を見た。
そして、恥ずかしそうに視線をそらした。
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