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賢者「勇者様の遺志を継ぎ、私が魔王を倒します」

1 ◆49HRmRlKYE:2017/04/14(金) 06:17:21 ID:PCLf6UWk
平原――

賢者「(私は賢者、魔道のエキスパート)」ハッ ハッ

賢者「(勇者様の旅立ちを知り、仲間になるべく旅に出ました」ハァッ ハヘッ

賢者「(ですが、そこには大きな問題があったのです)」グヘッ

賢者「(私の家から勇者様の旅立ちの地は遠く、私は体力がない……)」ウエエ

賢者「ああーん、もう歩けませんよっ!」ペタン

賢者「どーして勇者様の仲間になるために旅をしなきゃならないんですかー!」

賢者「私の噂を聞き付け、勇者様の方からやってくると思ったのにィー」ジタバタ

273以下、名無しが深夜にお送りします:2017/06/04(日) 20:34:12 ID:/ISanyzw
おつ

274以下、名無しが深夜にお送りします:2017/06/06(火) 14:41:26 ID:n1CuaZjA
ちゅーだろちゅー

275 ◆49HRmRlKYE:2017/06/11(日) 17:51:44 ID:Gv2LcCes
門――
ガヤガヤ

武闘家「見事だったぜ、剣士殿!」

剣士「見ていたのか?」

武闘家「見るなって言う方が無理だぜ。大半の人は見守っていただろうよ」

剣士「そ、そうか……」

武闘家「お、そうだった。伝言を預かっているんだ」

剣士「伝言?」

武闘家「市長が街を救ってくれた剣士殿にお礼がしたいからお屋敷まで来てくれってよ」

剣士「断れそうにないな」

武闘家「なんで断るんだよ!?」

剣士「苦手なんだよな。そういうの……」

賢者「好意を無碍にはできませんよ。行きましょう!」

276 ◆49HRmRlKYE:2017/06/11(日) 17:52:45 ID:Gv2LcCes

屋敷――

使用人「お越しくださりありがとうございます。市長をお呼びしますので少々お待ちを」

武闘家「ほへー、おっきな屋敷。あるところにはあるんだな」

賢者「え? なんで武闘家くんもお屋敷の中にいるんですか?」

武闘家「決めたからな。俺も剣士殿の仲間になるって」

賢者「え゙……?」

武闘家「露骨に嫌そうな顔すんなよ!!」

魔法使い「ねえ、剣士。まだ時間かかりそうだから少し話さない、二人で」

剣士「わかった……」

魔法使い「ちょっと席を外すわね」ガタッ

賢者「え、あ、はい……」

剣士「すぐ戻るよ」スクッ

277 ◆49HRmRlKYE:2017/06/11(日) 17:53:34 ID:Gv2LcCes
魔法使い「今回の事どうして話さなかったの? なんで何も相談しないのよ!」ガッ

剣士「言えば止められると思った」

魔法使い「当り前でしょッ!?」

剣士「だから俺は……」

魔法使い「私達仲間じゃなかったの?」

剣士「それは、すまなかった……」

魔法使い「貴方の悪い癖だわ。全部自分で抱え込んで、自分だけで解決しようとして――」

魔法使い「仲間だなんて言うのも、貴方にとってその方が都合いいからでしょ?」

剣士「違う!」

魔法使い「だったらなんで……?」

剣士「知りたかった。勇者に代わる力が俺にあるのかどうかを……」

魔法使い「答えになってないわ!!」

278 ◆49HRmRlKYE:2017/06/11(日) 17:55:04 ID:Gv2LcCes
剣士「女神の塔は知っているか?」

魔法使い「聖域だったかしら、勇者の武具が祭られている……?」

剣士「その塔には女神の守りなるものがあり、その力によって魔王すら踏み入る事ができないとか……」

魔法使い「それがなに?」

剣士「魔王を弱らせ、その塔にブチ込む」

魔法使い「ふ、封印しようと言うの!?」

剣士「そうだ。殺せなくても魔王としての機能を停止させれば勝てる!」

魔法使い「無理よ。だって……」

剣士「ああ。無理だと言われ続け、そう思い込んでいた。だが――!」

魔法使い「命がいくつあっても足りないわ!」

剣士「だな。女神の加護が欲しくなる」

279 ◆49HRmRlKYE:2017/06/11(日) 17:56:47 ID:Gv2LcCes
魔法使い「そうよ。貴方がやろうしている事はただの……」

剣士「だったら勇者になればいい」

魔法使い「驕らないで。今回も運がよかっただけ、相手が退かなければ貴方は今頃……」

剣士「生き残ったさ。俺にはまだ余力があった。そして後ろには君が控えていた」

魔法使い「?!」

剣士「できる。俺達なら!」

魔法使い「ば、馬鹿じゃないの……?」

剣士「馬鹿でもいいじゃないか。全てを諦め、文句を言いながら死を待つより…… だろ?」

魔法使い「変ったわね、貴方……」

剣士「賢者が俺を変えてくれた。……いや、違うな。もらったんだ、勇気を」

魔法使い「――ッ!?」

280 ◆49HRmRlKYE:2017/06/11(日) 18:00:15 ID:Gv2LcCes
賢者「お二人ともどこにいるんですか? そろそろお見えになるそうですよー!」

剣士「ああ、今行くよ。――魔法使い、また話そう。もう隠し事はしない」

魔法使い「え、ええ……」

魔法使い「(貴方はこの戦いで力を示し、答えを出した。もう止まる事はない――)」

魔法使い「(離れていく、私を置いて……)」

賢者「なにかご褒美とか貰えちゃうんですかね」ワクワク

武闘家「そりゃ謝辞を述べて終わりって事はねーだろ」

賢者「わーお!」

剣士「――気になっていたんだが、エルフの里はいいのか?」

武闘家「うん。俺も剣士殿のように誰かの助けになりたいんだ。駄目かな?」

剣士「想いが同じでは断れないか……」

281 ◆49HRmRlKYE:2017/06/11(日) 18:03:27 ID:Gv2LcCes
武闘家「じゃ、じゃあ!!」

剣士「ああ、よろしく」

賢者「え゙ええええーー!!」

武闘家「剣士殿がいいって言ったんだ。文句ねーだろ!!」

賢者「武闘家くんなんかに剣士さんは渡しませんよ!」

武闘家「そうはいくか! これから剣士殿に色々とご指導願うんだい!」

剣士「(仲間、か……)」

剣士「(魔法使いの言う通り、俺は自分の都合で使い分けているのかもしれない)」

剣士「(わかっている。このままじゃ駄目だと言う事は。だが――)」チラッ

賢者「?」ニコッ

剣士「(俺は怖い。彼女を失う事が何よりも……)」

魔法使い「……」ジー

282以下、名無しが深夜にお送りします:2017/06/11(日) 18:33:13 ID:gZX3ewsI


283以下、名無しが深夜にお送りします:2017/07/23(日) 01:06:18 ID:M8eLG1Jc
madacana?

284 ◆49HRmRlKYE:2017/07/23(日) 23:52:01 ID:Q9mEL5AM
gomen!ukabanakute!!

285 ◆49HRmRlKYE:2017/07/23(日) 23:52:55 ID:Q9mEL5AM
数日後 平原――

武闘家「あの市長も太っ腹だよな。馬車を褒美でくれるなんて」

剣士「荷台には貴重な薬品類まで入っていた。なんだか申し訳ないな……」

魔法使い「活躍に見合った報酬だと思うけれど?」

賢者「そうですよ、好意は素直に受け取りましょう。大助かりですし!」ノリッ

魔法使い「あ、また馬車の中に!」

剣士「いいじゃないか。今のところ危険はなさそうだし、俺も休もうかな」

魔法使い「ちょ、ちょっと!!」アセッ

剣士「何かあったら声をかけてくれ」ノリッ

武闘家「オッケー!」

魔法使い「じゃ私も中で休むわね」

武闘家「え!? うっそ、俺一人ですかい!?」

魔法使い「新入りなんだから頑張って!」ノリッ

286 ◆49HRmRlKYE:2017/07/23(日) 23:54:08 ID:Q9mEL5AM
馬車――

賢者「あ、剣士さん!」

剣士「隣いいか?」

賢者「ど、どうぞ///」モソッ

剣士「そういえばまだ謝っていなかったな」

賢者「?」

剣士「一騎打ちの事話し合うべきだった、すまない……」

賢者「あれは仕方ないですよ、話し合う時間なかったですし」

剣士「実を言うとそうじゃないんだ。その前の晩、ホモと名乗る詩人が四天王の襲来を俺に告げてくれていたんだ」

賢者「え、それって……」

魔法使い「グリフォンの時と似ているわね」

287 ◆49HRmRlKYE:2017/07/23(日) 23:55:52 ID:Q9mEL5AM
剣士「魔法使い!? じゃあ今、武闘家一人か?」

魔法使い「そんな事より、その話は本当なの?」

剣士「あ、ああ……」

魔法使い「ふざけた話、偶然とはとても思えない……」

賢者「同一人物だというのなら正体は――」

剣士「だとして、エルフが人間の味方をする理由はなんだ?」

魔法使い「人間の味方、そう決めつけていいの?」

剣士「どういう意味だ?」

魔法使い「本当に人間の味方をする気があるなら貴方だけに話す?」

魔法使い「少なくとも市長には事を話し街の協力を得るべきだった」

288 ◆49HRmRlKYE:2017/07/23(日) 23:56:41 ID:Q9mEL5AM
剣士「そう簡単に信じてもらえる話でもないだろう」

魔法使い「信じてもらえる人間に変化できるのに?」

剣士「あ……」

魔法使い「でもそうしなかった。あえて貴方だけに教えた。その意味は? 目的は何?」

剣士「それは……」

魔法使い「いずれにしても警戒するべきだと思うわ」

剣士「鵜呑みにするのは危険? いや、だが……」

魔法使い「で、それだけ?」

剣士「だけ?」

魔法使い「隠し事よ。この際だから全部ゲロったら?」

剣士「他にはとくに……」

魔法使い「ふーん、そう」

289 ◆49HRmRlKYE:2017/07/23(日) 23:58:28 ID:Q9mEL5AM
剣士「じゃあ俺は戻るよ。武闘家一人に任せるのも悪いしな」スクッ

賢者「あ、はい!」

魔法使い「……」

賢者「(す、凄く気まずい……)」

魔法使い「――私は絶対に無理だと思うわ。魔王討伐なんて」

魔法使い「あれを目の当たりにした今でもその考えは変わらない」

賢者「まだ信じられないんですか?」

魔法使い「貴女は気楽でいいわね。信じていれば剣士が叶えてくれると思っているんだから」

賢者「え?」

魔法使い「確かに剣士は強くなった。勇者を越えたと断言してもいいくらいに……」

魔法使い「四天王を一人で打ち破るなんて歴代の勇者ですら成し得なかった事だもの」

290 ◆49HRmRlKYE:2017/07/23(日) 23:59:47 ID:Q9mEL5AM
賢者「あ、あぁ……!?」

魔法使い「私の言いたい事がわかったみたいね。――そう、一人の力には限界がある」

魔法使い「だから勇者は仲間を集い、力を分け与える事で魔王に対抗したのよ」

賢者「勇者との契約……」

魔法使い「ねえ、貴女にはその力がある。剣士を支え導くだけの力が?」

賢者「そ、それは……」

魔法使い「ハッキリ言って今の私にはないわ」

魔法使い「けど、それを理由にアイツが旅をやめるとは思えない。わかるこの意味?」

賢者「う……」

魔法使い「ふざけた話よね。本当にふざけてる……」ギリッ

賢者「(お姉様の言う通りだ。私はなにもわかっていなかった、何も変わっては……)」

291 ◆49HRmRlKYE:2017/07/24(月) 00:00:35 ID:0mmwdqtM
街 夜――

武闘家「着いたぜ、二人ともー!」

賢者「随分とまた大きな街ですね」

魔法使い「首都だからね」

賢者「え!? あー、この国の……」

魔法使い「しっかりしなさい」

賢者「そ、それにしても海に面した王国なんて素敵ですねーっ!!」

剣士「船を手に入れられればいいんだが……」

魔法使い「地道に当たっていくしかないんじゃない?」

武闘家「とりあえず飯にしようぜ。腹減っちまったよ」

292以下、名無しが深夜にお送りします:2017/07/25(火) 21:18:54 ID:LFgFFn/Y
剣士がホモに気に入られてるだけ説

293以下、名無しが深夜にお送りします:2017/08/07(月) 18:32:09 ID:dzI6FFfA
ホモは優しいからな
おつおつ

294 ◆49HRmRlKYE:2017/08/10(木) 01:12:33 ID:uLcfPVGE
酒場――
ガヤガヤ ワーワー

剣士「酒場か……」

魔法使い「他になかったのだから仕方ないでしょ。それに色んな情報聞けるかもよ」

剣士「あとでマスターと話してみよう。――しかしまあ騒がしい場所だ」

魔法使い「時間も時間だし、静かだったら逆に困るわ」

剣士「活気があるのはいい事か」

武闘家「うお、飯キター! このパテうめえええ!!」ガツガツ

魔法使い「ちょっとマナーってものがなってないわ!」

武闘家「ここのマナーはただ一つ、楽しく飲み食いする事だろ。なあ剣士殿!」

剣士「楽しく食べるのは賛成だが、汚く食べていいという理由にはならないんじゃないか?」

武闘家「あー、それもそうだよな。はは、悪い」

295 ◆49HRmRlKYE:2017/08/10(木) 01:13:43 ID:uLcfPVGE
ガシャーン

荒くれ者「ちょっとくらいいいじゃないかよー!」ガシッ

店員「そんな事を言われても困ります!?」

荒くれ者「サービスが悪すぎるんじゃないかー?」

店員「そう言われても……」

荒くれ者「酒くらいついでくれたっていいじゃねーか。金は払うからさぉ」グイ

店員「あ、ちょっ……」

荒くれ者「ほら、ここお座り。んほー、いい体してるじゃない!」サワサワ

店員「ヒィ!」

荒くれ者「げへへ」

296 ◆49HRmRlKYE:2017/08/10(木) 01:14:34 ID:uLcfPVGE
武闘家「なんて野郎だ。あいつこそマナーがなってないぜ!」

魔法使い「いかにもって感じではあるけどね」

賢者「だからって許せるものでもありませんよ。助けに行きましょう、剣士さん」ガタッ

剣士「え?」ビクッ

賢者「え……!?」

武闘家「剣士殿が行ってくれるのか。じゃ俺はここで。全員で殴り込みに行くのもな!」

剣士「そ、そうだな」スクッ

魔法使い「嫌なら断ればいいのに……」

賢者「あ、あぅ……」シュン

魔法使い「で、貴女はなに?」

賢者「また剣士さんに頼ってしまった、無意識に……」グス

魔法使い「はあー??」

297 ◆49HRmRlKYE:2017/08/10(木) 01:15:47 ID:uLcfPVGE
荒くれ者「ねえ、このあと暇? だったらさ、俺の部屋に……」グイ

店員「や、やめてって……」

荒くれ者「ああん? なんだってぇー!?」ゲヘヘ

剣士「ゴホン。そこのアンt……」

偽剣士「もうやめたらどうだい。レディが困っているじゃないか」バーン!!

荒くれ者「なんだテメー!」

偽剣士「私をご存じない? やれやれ、とんだ田舎に来てしまったのかな」

店員「そ、その紅い髪。腰に携えた片刃の刀剣は……!」

偽剣士「フッ……」ニカッ

荒くれ者「まさか、あの紅蓮の剣士だと!」ガタン

ガヤガヤガヤ ナニィー アレガ ウワサノ…

剣士「えぇ……」ポツン

298 ◆49HRmRlKYE:2017/08/10(木) 01:16:53 ID:uLcfPVGE
賢者「剣士さんの偽者、ですか!?」

魔法使い「いずれ現れると思ったけど、これはちょっと……」

武闘家「いずれってどういう?」

魔法使い「勇者の偽者もよく現れたそうよ」

賢者「つまり、それは――」

賢者「人々の間でも剣士さんは勇者様に代わる存在だと思われはじめているという事ですか?」

魔法使い「随分と派手な事をやった後だし、あり得るんじゃない?」

賢者「……」

武闘家「けど運がなかったな。まさかご本人が近くにいるなんて」

魔法使い「んー、その本人がどうでるか……」

299 ◆49HRmRlKYE:2017/08/10(木) 01:18:23 ID:uLcfPVGE
荒くれ者「ぐ、紅蓮だからなんだ。これは俺と姉ちゃんの問題だぜ、部外者が口を出すんじゃねーよ」

偽剣士「じゃ聞こうか。君はこの豚野郎と一緒にいたい?」

荒くれ者「ぶ、豚だと!」

偽剣士「そうだろう? 鼻息を荒くして、下品極まりない」

荒くれ者「こ、この!!」グッ

偽剣士「おっと。暴力はやめた方が身のためだ。君が魔王より強いなら話は別だけど」

荒くれ者「ぐぬぬ…… お、覚えていやがれー!!」ダッ

偽剣士「レディ、もう大丈夫ですよ」スッ

店員「あ、ありがとうございます。紅蓮の剣士様……///」

偽剣士「当然の事をしただけさ」ニコッ

オーオー ヒューヒュー カッコイイゾー 

剣士「仕方ない、ひとまず戻るか……」クルッ

300 ◆49HRmRlKYE:2017/08/10(木) 01:19:47 ID:uLcfPVGE
剣士「ただいま」スワリ

武闘家「ただいまって…… なんで帰ってきちゃうの!?」

剣士「あの空気では無理だろう」

武闘家「それはそうかもしれねーけど……」

魔法使い「このまま放っておくのもありじゃない?」

剣士「あー、それもありか」

武闘家「変な噂がたったらどうすんだよ、あの偽者のせいでさ!」

剣士「大げさな。酒場での些細な出来事だぞ」

魔法使い「ええ、こんなの一晩たったら忘れるでしょ。お酒入ってるんだし」

武闘家「けどよ、おさまりが悪いっつーか……」モゴモゴ

魔法使い「見下せばいいんじゃない? 哀れだなーって」

武闘家「それもそれでなんかなあ」

301以下、名無しが深夜にお送りします:2017/08/10(木) 19:49:17 ID:5YeI/fKU
前作ってどれ?

302以下、名無しが深夜にお送りします:2017/09/18(月) 01:54:15 ID:CXR88s3g
まだかー

303 ◆49HRmRlKYE:2017/10/27(金) 23:53:06 ID:G3ZFyWkY
誠に申し訳無く候。ukabanaino-

304 ◆49HRmRlKYE:2017/10/27(金) 23:55:18 ID:G3ZFyWkY
>>301
あ、これが一応過去作です。貼っておきやす!
魔王「もう無理だ。勇者に勝てるわけないよ……」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1491946724/l50
読まなくてもなんの問題もないです。正当な続編というわけではないので

305 ◆49HRmRlKYE:2017/10/27(金) 23:58:11 ID:G3ZFyWkY
剣士「にしても俺の偽者か……」

魔法使い「よかったわね。勇者に代わる存在として認められつつあるって事じゃない」

剣士「べつに世間に認めてもらいたいわけじゃない」

魔法使い「ふーん」

剣士「まあ、悪い事ではないんだろうが……」

剣士「さて、そろそろ宿に戻ろうか。腹も膨れたことだし」

魔法使い「じゃ先に戻ってて。マスターと話してくるわ」

306 ◆49HRmRlKYE:2017/10/27(金) 23:59:05 ID:G3ZFyWkY
剣士「なら俺が……」

魔法使い「まだここに貴方の偽者がいるのよ?」

魔法使い「せっかくだし今日くらいゆっくり休んだらいいじゃない」

剣士「気持ちは嬉しいが、あいつがくるかもしれない」

魔法使い「あいつって例の……?」

剣士「ああ、だから俺が残るよ」

魔法使い「そう、わかった。じゃ貴方に任せるわ」

剣士「すまない。何かあれば必ず話すよ」

307 ◆49HRmRlKYE:2017/10/28(土) 00:00:16 ID:tC4D9c5.
宿屋 ロビー――

賢者「よかったんですか?」

魔法使い「例のエルフは剣士が一人の時にしか現れないのかもしれない……」

賢者「そういう事ですか。やっぱり私達って……」

魔法使い「そう思うならやめたら?」

賢者「そ、それは……」

魔法使い「考えておくことね」

武闘家「何を考えておくんだ?」ヒョコッ

魔法使い「貴方には関係ない事。気にしないで」

武闘家「えー、仲間外れにしなくたっていいじゃん。いじけちゃう」シュン

魔法使い「楽しそうでなによりだわ」ハア

308 ◆49HRmRlKYE:2017/10/28(土) 00:01:08 ID:tC4D9c5.
武闘家「それより聞きたい事あんだけど。ここって魔王に一番近い人間の国なんだよな」

武闘家「なのになんでこんなに平和なんだろ。真っ先に狙わる場所じゃないのか?」

賢者「魔王軍の侵略ルートについては色々な仮説がたっていますね。えっと確か……」

賢者「転移魔法を使って攻めてきているのではないか、というのが有力だったかな?」

武闘家「それって勇者が使うワープの事だよな。んじゃ同じ力を持つ魔王が侵攻部隊を送ってるってわけか」

魔法使い「ちょっと違うけど、だいたいそんなところじゃない?」

武闘家「なるほどなー。だから奴らはどこにでも沸いて出てくるのか。……んん??」

武闘家「けど、それが本当ならもっとヤバイ事になってね?」

魔法使い「転移魔法は扱いの難しい魔法よ。厳しい制約が課せられているんだと思うわ」

魔法使い「だからこの程度で済んでいるのかもね」

309 ◆49HRmRlKYE:2017/10/28(土) 00:02:19 ID:tC4D9c5.
武闘家「あー、そういう事ね。勇者のワープも万能じゃないって話聞いた事あるな」

魔法使い「ま、あくまで憶測。実際はどうか……」

武闘家「いや、あってると思うぜ。輸送船を作るための資源とかも、あの大陸じゃ確保し辛いだろうし――」

武闘家「そういった特殊な手段でしか攻め入れないんだな。ほぇー、スッキリした」

武闘家「しかし転移か。盲点だったぜ」

賢者「一般的な魔法ではありませんからね」

武闘家「勇者と魔王だけの特権魔法じゃ、俺達には馴染みねーわな」

魔法使い「(そうとは限らない。もしあの城のような転移施設が存在してるのなら可能――)」

魔法使い「(だけれど、それを見つけたところで意味はない。やはり、ここは剣士を説得して……)」

魔法使い「(くっ、ダメ。そうしたらきっと、もう二度と彼の傍にいられなくなる)」

賢者「……」

310 ◆49HRmRlKYE:2017/10/28(土) 00:09:30 ID:tC4D9c5.
酒場 カウンター――

マスター「」スッ

剣士「え? まだ何も……」

マスター「これは俺からのおごりだ。うちのスタッフを助けようとしてくれたろう」

剣士「ええ。ですが実際に助けたのは――」

マスター「偽者様の方だったな」ハハッ

剣士「!?」

マスター「長年こういう商売やってるとわかるんだよ。――それで何を探している? 本題に入ろうか」

剣士「船を探しています。魔王のいる大陸に渡る為の……」

マスター「驚いたな。本気で言ってるのかい?」

剣士「やはり船は出ていませんか。でしたら何か他に渡る為の方法を知っていませんか?」

311 ◆49HRmRlKYE:2017/10/28(土) 00:10:47 ID:tC4D9c5.
マスター「あーいやね。剣士殿は本気で魔王を倒す気でいるんだなと。そっちに驚いたのさ」

剣士「?」

マスター「俺だったら――いや大抵の奴なら四天王を倒して、それで満足しそうなもんだ」

マスター「見てみなよ、あの偽者を。お前さんもあれと同じように面白おかしく生きていけるんだぜ?」

剣士「……」チラッ

マスター「勇者の使命を背負ってるわけじゃない。これ以上の危険を冒す必要はないと思うんだがね」

剣士「それで他には?」

マスター「ん?」

剣士「ですから、船の他に何か知らないでしょうか?」

マスター「アッハハハッ!」

312 ◆49HRmRlKYE:2017/10/28(土) 00:19:29 ID:tC4D9c5.
マスター「これはとんだ失礼を。もう一杯おごらせてくれ」スッ

剣士「いえ、貴方の言いたい事はわかります。だが、それはしたくない」

マスター「その志の高さは尊敬に値するが、わかってるのかい?」

剣士「所詮は伝承。勇者だけが、などという馬鹿な事はないはず……」

マスター「やはりわかってなかったか。いや、馬鹿にしているわけじゃないぜ」

マスター「今や人々にとって紅蓮の剣士は光の勇者に代わる存在――、滅亡の危機を救ってくれるかもしれない新たな希望ってわけだ」

マスター「知ってるかい? お前さんが活躍しだしてから人々に活気が戻ったんだ。もしその身に何かあれば再び……」

剣士「俺の、いや勇者の遺志を継いだ者が現れる。違いますか?」

マスター「魔族、それも四天王ほどの敵と相対できる人間がどれだけいると思ってるんだ?」

剣士「俺は希望を与えるだけの存在になりたくない。そんなものどこかの王がやればいい」

剣士「そうではなく紅蓮の名が、というのであれば好きなだけ名乗れ。くれてやるよ」

マスター「アッハハアッ! そりゃあそうだ。名前で何かが守れるわけじゃない」

313 ◆49HRmRlKYE:2017/10/28(土) 00:24:03 ID:tC4D9c5.
マスター「本当にすまない。けど、紅蓮の剣士がどういう男なのか知りたいっていう一般人の気持ちもわかってほしいね」

剣士「満足、ですか?」

マスター「大いに満足。気に入ったよ。俺に出来る事なら何でも協力するぜ」

剣士「というと?」

マスター「こんなご時世にもかかわらず海に出ている馬鹿どもを知っている。紹介できるかもしれん」

剣士「もしかしてその船というのは……」

マスター「安心していい。それについては俺が保証しよう」

剣士「はあ……」

マスター「話は俺の方からしておく。ニ、三日したらまたこの酒場に来てくれ」

剣士「では、よろしくお願いします」

マスター「期待に添える事ができればいいんだがね」

剣士「それじゃ俺はここで。また来ます」

マスター「ああ、またのお越しを!」

314 ◆49HRmRlKYE:2017/10/28(土) 00:25:53 ID:tC4D9c5.
宿屋――

剣士「ただいま」ガチャ

武闘家「おかえりんりん!」

剣士「え……?」バタン

賢者「それで、どうでしたか?」

剣士「あ、ああ。一応、紹介してもらえる事になったんだが……」

魔法使い「何か問題でも?」

剣士「その船というのが、おそらく……」

魔法使い「海賊船?」

剣士「まだわからないが、察するにそうかもって」

315 ◆49HRmRlKYE:2017/10/28(土) 00:27:43 ID:tC4D9c5.
賢者「断った方がよいのでは?」

剣士「あってから考えるよ。まだそうと決まったわけじゃない。それに海賊といっても様々だろう」

魔法使い「例のエルフは?」

剣士「会えなかった。という事はこの辺りはまだ安全なのかもな」

魔法使い「信用しすぎるのは――って言いたいけどそれに関してはどうしようもないのよね」

武闘家「どこにでも現れる可能性があるんじゃあな」

剣士「魔王軍出現の話か?」

賢者「ですです!」

剣士「予兆のようなものがあるんだろうが……」

賢者「あったとしても私達に感じ取れるものじゃないですよ、きっと」

剣士「そうだな」

316 ◆49HRmRlKYE:2017/10/28(土) 00:30:20 ID:tC4D9c5.
魔法使い「んー。じゃ、しばらくはこの街に留まる感じ?」

剣士「まあ、そうなるな」

賢者「あの、それっていつもよりゆっくりしていられるって事ですよね?」

剣士「え、ああ」

賢者「でしたら剣士さんのお時間を私にくれませんか、ほんの少しで構いませんから」

剣士「気を使わなくても。どうしたんだ?」

賢者「それは、その…… その時にお話しします!」

剣士「わ、わかった……」

武闘家「こ、これはアレじゃな!!」

魔法使い「へぇー」

317以下、名無しが深夜にお送りします:2017/11/05(日) 19:01:42 ID:YHMxetVw
デートか

318以下、名無しが深夜にお送りします:2017/11/15(水) 17:44:41 ID:gPmRwDbc
それぞれを何歳でイメージすればいいんだろ?

319 ◆49HRmRlKYE:2017/12/09(土) 04:45:17 ID:1sKoMfF6
>>318
年齢は前に軽く触れただけでしたね。主要人物のだいたい年齢はこんな感じです。
剣士20歳。魔法使い19歳。武闘家17歳。賢者・勇者・魔王16歳。
あと剣士が敬語で話す相手はだいたい年上です。

320 ◆49HRmRlKYE:2017/12/09(土) 04:46:48 ID:1sKoMfF6
翌日――

剣士「」ソワソワ

武闘家「どうしたんだよ、剣士殿。便所か――って、あーっ!」

剣士「ああ。賢者を待っていて」

武闘家「なるほどなー」

剣士「これから出かけるんだが、馬鹿をした。昨日マスターに船の事だけじゃなく、この街についても少し聞いておけばよかった」

武闘家「そんな気使う事でもないと思うぜ」ハハッ

剣士「まあな。だが、こういう機会は滅多にないだろうから……」

武闘家「剣士殿は賢者を大事にしているんだな」

剣士「大事に、か。難しいな。こうして戦いを続けていけば危険は増していくばかりだ。いつどこで命を落とすか……」

武闘家「そりゃそうだけど、それを承知で俺達は集ったんだぜ。想いが同じだからな」

剣士「想い?」

武闘家「なーに言ってんだよ、剣士殿が言ったんだぜ?」

321 ◆49HRmRlKYE:2017/12/09(土) 04:49:22 ID:1sKoMfF6
武闘家「ま、確かに剣士殿からみれば俺達はまだ弱くて危なっかしいかもしれねぇけど――」

武闘家「そこはもうちょっと待っててくれ。必ず剣士殿に追いついてみせるからよ!」

剣士「だが無理は…… いや、これは違うな」

武闘家「おうよ! 共に戦っていこうぜ。人々を救う為に!」グッ

剣士「ああ!」

賢者「すみませーん。待たせしてしまって」バタバタ

剣士「ゆっくりでよかったのに」

武闘家「んじゃ俺もどっか、ぶーらぶらーっとしてくるよ」

剣士「ありがとう。話せてよかった」

武闘家「ん? ……おお!?? 気にすんなって!!」

剣士「俺達も行こうか」

賢者「はい!」

322 ◆49HRmRlKYE:2017/12/09(土) 04:51:41 ID:1sKoMfF6
街――

剣士「(外へ出たはいいが、どうしたものか。賢者は何か話があると言っていたが……)」

賢者「あの、ちょっと歩きながらお話しませんか?」

剣士「え、ああ。構わないよ」

剣士「(しかし、なんて美しい街並みだ。流石は断崖の上に築かれた王国といったところか。うちとは大違いだな)」ホケー

賢者「よく晴れてよかったですね。空も海も透き通るような真っ青で、全てがキラキラと輝いて見えますよ」

剣士「ああ、ここが水の都と言われている所以がわかったよ」

賢者「ええ。正直このような場所に自分がいるのが信じられません。よくここまで、と」

剣士「なにを。感傷に浸るにはまだ早いじゃないか?」

賢者「……」グッ

賢者「ねえ、剣士さん。この海を越えた先に魔王がいるんですよね?」バッ

剣士「あ、ああ。それが?」

323 ◆49HRmRlKYE:2017/12/09(土) 04:53:15 ID:1sKoMfF6
賢者「私、思うんです。ちょっと急ぎすぎているんじゃないかなって。紹介してもらえる船というのもわけがありそうな感じですし――」

賢者「それに仲間も随分と増えましたよね。最初は二人だけだったのに今では多くの人達に支持されるようにもなって……」

剣士「怖く、なったのか?」

賢者「……」コクン

剣士「まあ気持ちはわかるよ。なんだか凄く期待されているみたいだし重いよな」ハハッ

剣士「でもこれはいい事だよ。人の期待を背負うという事は、その人の為に戦えているという事。このプレッシャーを力に変えていこう」ポン

賢者「そうじゃなくて。いえ、それもあるんですけど……」

賢者「わからなくなっちゃったんです。本当にこのままで、勇者と同じやり方で魔王を倒せるのかなって」

324 ◆49HRmRlKYE:2017/12/09(土) 04:55:20 ID:1sKoMfF6
賢者「お姉様が言っていました。一人の力には限界がある。あの勇者ですら仲間を集め、力を分け与える事で魔王に対抗したと」

賢者「それだけじゃありません。勇者には女神の祝福を受けた上質な武具の数々があって。で、でも貴方には何も……」

賢者「だからこのままじゃきっと――ううん違う。私は、私の弱さがいつか貴方を……」

剣士「俺は死なないよ。約束できる事ではないが、それでも約束する」

賢者「――っ!?」

剣士「確かに伝承を信じるのであれば魔王は俺達人間には到底敵わない存在――」

剣士「だが、それは魔王に限った話でもなかっただろう? 何もかもが等しく強大だった」

剣士「それでも俺達はここまで辿り着いた。そう、辿り着けたんだ。あとはただ、己を信じて突き進むだけ。違うか?」

賢者「本当にそう信じて?」

剣士「ああ。俺はそう信じる」

325 ◆49HRmRlKYE:2017/12/09(土) 04:58:18 ID:1sKoMfF6
賢者「貴方は、強くなりましたね。あの頃とは比べ物にならないほど」

剣士「でなければ困るだろう?」ニコッ

賢者「そりゃそうでしたね」フフッ

賢者「(私は卑怯だ。泣きついて許されようとしていた。無力である事を)」

賢者「(でも違う。そうじゃない。私も彼と同じよう足掻き続けなきゃいけなかったんだ。最初にそれを約束したのは私だったのに……!)」

剣士「さて、いい時間だな。昼食にしようか」

賢者「あ、なにか作ってくればよかったですね」

剣士「それはまた今度にしよう」

賢者「今度ありますかね?」

剣士「あるさ。なんなら明日でもいい」

賢者「ほ、本当に!? わーい、やったー!」

326 ◆49HRmRlKYE:2017/12/09(土) 05:01:48 ID:1sKoMfF6
宿屋 昼――

魔法使い「はあ……」パタン

魔法使い「朝まるまるつぶしちゃったわ、魔導書を読むだけで」コロン バタッ

魔法使い「本当なにしてるんだろう、私……」グスン

魔法使い「……」グーー

魔法使い「お腹すいた。何か食べてこよう」ムクッ

魔法使い「あーでもお店行くのはめんど。馬車にあるもの適当に食べて済ませよ」

外――

魔法使い「賢者が作った保存食がいくつかあったはず……」ゴソゴソ

執事「失礼。貴女がその馬車の持ち主でしょうか?」

魔法使い「ほえ?」キョトン

327 ◆49HRmRlKYE:2017/12/09(土) 05:04:02 ID:1sKoMfF6
魔法使い「ええ、そうよ。べつに盗みを働いてるわけじゃないわ」

執事「いえ、そういうつもりでは……」オドッ

魔法使い「で、貴方は? ルームサービスを頼んだ覚えはないんだけれど」

執事「見ての通り王宮に使えるものです。わけあって紅蓮の剣士を探しております。ご存じありませんか?」

魔法使い「ごめんなさい。知らないわ」

執事「では、この荷台に積まれている高価な薬品の数々は一体どこで? そう簡単に入手できるものではないと思うのですが……」

魔法使い「中身を見たの?」

執事「密輸の取り締まりも一応やっておりましてね」

魔法使い「ふーん、そういうこと」

執事「もう一度伺います。紅蓮の剣士をご存じありませんか?」

魔法使い「ふぅ、知ってるわ。それであいつになんの用? ま、察しはつくけど」ハァ

328以下、名無しが深夜にお送りします:2017/12/10(日) 10:59:55 ID:v4kH9Tio
おつ

329 ◆49HRmRlKYE:2018/06/29(金) 05:55:03 ID:cIw/hk2s
tesu

330 ◆49HRmRlKYE:2018/06/29(金) 05:55:51 ID:cIw/hk2s
夕方――

賢者「たっだいまー!!」

魔法使い「おかえりなさい。剣士は?」

剣士「俺がどうした?」

魔法使い「昼に王宮の使者と名乗る男が訪ねてきたわ。貴方に頼みたい事があるってね」

剣士「頼み?」

魔法使い「詳しい事は聞いてないわ。直接本人に話したいって何も話してくれなかったのよ」

魔法使い「どーせ、魔族の事なんでしょうけど」

賢者「そりゃそうですよね。わざわざ剣士さんを頼ってくるくらいですし」

剣士「どうだろう。そうなら例のエルフが先に何か言ってきそうなものだが……」

魔法使い「それは事の大きさにもよるんじゃない?」

魔法使い「流石にそのエルフも魔王軍全ての動きを把握してるとも思えないし」

剣士「それもそうか」

331 ◆49HRmRlKYE:2018/06/29(金) 05:57:28 ID:cIw/hk2s
武闘家「ただいまー! お、皆さんお早いお帰りで――って何かあった感じ?」

賢者「はい。剣士さんに王宮からの依頼が来たとかで」

武闘家「んでまた? あー、昨日の騒ぎで剣士殿がここにいるって知られちゃったからか?」

賢者「あれ? それだったら偽者さんの方に依頼がいってそうですけど……」

剣士「酒場からの紹介で来たんじゃないのか?」

魔法使い「違うと思うわ。馬車の荷から貴方を探したみたいだから……」

剣士「荷から? わざわざ調べ回ったのか。酒場に行けばすぐ済むものを」

魔法使い「事情があるのかも。表には出せないような」

武闘家「金でも握らせておけば黙っていてくれそうなもんだけどな」

剣士「そうでなくともあのマスターなら守ってくれそうだが……」

魔法使い「酒場に訪れた痕跡さえも残したくなかったとか、理由なんて腐るほど出来てくるわ。考えるだけ時間の無駄よ」

剣士「だな。――で、どうしたらいい?」

332 ◆49HRmRlKYE:2018/06/29(金) 05:58:36 ID:cIw/hk2s
魔法使い「明日また出直すって言ってたから……」

剣士「ここにいればいいのか。出向く必要はないんだな?」

魔法使い「で、いいと思う」

武闘家「どんな依頼にせよ。こういうのって話聞いちゃうと断りにくいんだよなー」

剣士「そんな事もないだろう」

魔法使い「ほんとに? 貴方ってすぐ見栄を張るから……」

剣士「耳が痛いな」

魔法使い「とにかく慎重にね。いいように使われるのはごめんよ」

剣士「わかってる。気を付けるさ」

剣士「(確かに勇者に代わるなどと言われるようにもなれば、俺達を利用しようと考える輩も現れるか)」

333 ◆49HRmRlKYE:2018/06/29(金) 06:00:54 ID:cIw/hk2s
剣士「(そう言えば勇者の力は、その強大さゆえに法王庁が管理していたな)」

剣士「(勇者の力を行使するには法王庁の許可が必要で、魔王討伐の旅の間も何かある事に教会に報告するよう義務付けられていたっけか)」

剣士「(まあ、今は昔ほど厳密に守る必要はないと勇者は語ってはいたが……)」

賢者「また眉間にしわがよっていますよ」ツン

剣士「あ、いや」

賢者「気になるのはわかりますけど、明日になればわかる事なんですし――」

剣士「考えても仕方ない、だろ? わかってるよ」

賢者「はあい!」ニコッ

剣士「(力には相応の責任が伴うという事なんだろうが、面倒くさい話だな)」

魔法使い「……」ムッ

武闘家「(魔法使いさん、なんか不機嫌だな。てか、剣士殿と賢者が話してるといつも――)」

武闘家「(あっ、そういう事か!?)」テコリン!

334 ◆49HRmRlKYE:2018/06/29(金) 06:02:16 ID:cIw/hk2s
翌日 昼すぎ――

武闘家「まだかな?」チラッ

魔法使い「んー、来るならそろそろじゃない。昨日もこのくらいだったし」

剣士「なあ、全員で話を聞くのか? 俺と魔法使いに投げて遊びに行ったって……」

賢者「もしかして邪魔でした?」

剣士「いや、つまらないかなーって。話を聞くだけだしな」

賢者「こ、子供じゃないんですから!」

剣士「俺は苦手だからさ」

武闘家「そう言えば市長の時も嫌がってたな」

コンコン

魔法使い「あ、来たみたい。私が通すわ。待ってて」

剣士「あ、ああ」

335 ◆49HRmRlKYE:2018/06/29(金) 06:03:57 ID:cIw/hk2s
魔法使い「どうぞ。中央に座っているのが剣士よ」スッ

執事「おお。これは紅蓮の剣士殿。貴方のような英傑にお会いでき光栄であります」ペコッ

剣士「話は聞いています。貴方が昨日、私を訪ねてきた王宮の方ですね。早速ですが何を私に……」

姫騎士「それについては私が話そう」バサッ

剣士「貴女は?」

姫騎士「失礼した。私はこの国の第一王女。皆からは姫騎士と呼ばれている。ソナタ達を是非そう呼んでくれ」ニカッ

剣士「聞いてないぞ?」ボソッ

魔法使い「私だってそうよ!」コソッ

姫騎士「玄関では誰かに見られる危険性があってな、正体を明かせなかった。せめて事前に私の事を伝えてくれればよかったのだが……」

執事「自重なさって下さい。今日だって私一人でここを訪れる予定でしたのに」

姫騎士「わかっている。だが、事が事だ。私が直接説明した方が事の重大さが伝わるだろう」

執事「ですが姫様が仰っていた通りの事が王宮で起こっているのなら怪しまれる事があってもならないはず。これ以上はお控え頂かないと……」

剣士「すみません。私達にもわかるように話してくれませんか?」

336 ◆49HRmRlKYE:2018/06/29(金) 06:05:25 ID:cIw/hk2s
姫騎士「あ、ああ。すまん。見苦しい所を見せた」

姫騎士「今の会話で察したかもしれんが、個人的な頼みでな。王宮の総意ではないのだ」

剣士「姫様個人が私になにを?」

姫騎士「それなんだが、とあるエルフの秘宝を取ってきてもらいたい」

剣士「エルフの?」

姫騎士「真実の水晶という魔道具の一種なのだが、聞いた事はないだろうか?」

姫騎士「なんでも、その水晶越しに覗けば、見たものの真実の姿を映し出すのだという」

剣士「つまり変化の魔法を見破るような道具だと?」

姫騎士「ほう、変化の魔法を知っているのか。なら話が早い」

剣士「しかし、それはエルフにしか扱えないとされる古の魔法。もしや、変化の力を秘めた魔道具も存在しているのですか?」

姫騎士「察しがいいな」

337 ◆49HRmRlKYE:2018/06/29(金) 06:08:07 ID:cIw/hk2s
姫騎士「今話した真実の水晶と変化の指輪は古来よりこの国に伝わる秘宝でな」

姫騎士「それらは北と南にある二つの祠にそれぞれ隠されていると言われてたのだが――」

剣士「何者かに変化の指輪が盗まれてしまった。その犯人を捜す為に水晶が欲しいと?」

姫騎士「そういう事だ」

剣士「盗まれたという証拠はあるのですか?」

姫騎士「もちろんある。先日、執事に二つの祠を調べさせた。そのところ……」

執事「はい。変化の指輪の祠には何者かが立ち入った痕跡が見つかりました」

執事「その見つかった痕跡というのはここ最近のもので偽者を疑うようになったのもここ最近の事なのです」

姫騎士「というわけだ。――で、私はその何者かは人間ではなく、魔族だと睨んでいる」

剣士「魔族が?」

姫騎士「というのも、その祠には侵入者を撃退する仕掛けがいくつもあり、並みの冒険者では秘宝まで辿り着けないようになっているんだ」

姫騎士「大昔の勇者が秘宝の悪用を恐れ、そのような場所に隠したとか……」

338 ◆49HRmRlKYE:2018/06/29(金) 06:11:19 ID:cIw/hk2s
剣士「勇者でなければ盗み出せない。従って魔族が、と考えたわけですか」

姫騎士「おかしい事ではないだろう。このような時代だ」

賢者「そうだとして、どれくらいの魔族が入れ替わっていると見ているんですか?」

姫騎士「正確な数まではわからん。だが確実に一人、それも王宮で最も力を持ったものに化けているのはわかっている」

賢者「そ、それって……!」アセッ

姫騎士「私の父、この国の王だ。今は大人しくしているようだが、いずれその立場を使いこの国を滅ぼそうとするはず―――」

姫騎士「そうなる前に真実を暴き出し、魔族の野望を阻止しなければならないのだ!」

剣士「……」

姫騎士「ん? どうした? 何かあるのなら言ってくれ」

剣士「あ、いえ。魔族がわざわざ指輪を盗み出し、王宮を乗っ取ろうなど考えるだろうかと」

剣士「それ以前に盗まれているかどうかも怪しい。調べたと言っても秘宝そのものを確認したわけではないのでしょう?」

執事「え、ええ。それはそうなのですが……」

339 ◆49HRmRlKYE:2018/06/29(金) 06:13:43 ID:cIw/hk2s
姫騎士「ではこれをどう説明するというのだ?」

剣士「勘違いという事も……」

姫騎士「あれは私が知る父ではない。間違いなく何者かが化けている!」

剣士「そう疑ってしまうのは単に変化の指輪の存在を知ってしまったからではなくて?」

執事「かもしれませんね。ですが、それも水晶があれば明らかになる事なのです」

魔法使い「かもしれない。その程度の理屈に命を賭けろっていうの?」

執事「幾度となく魔族を打ち破った剣士殿なら水晶を持ち去るくらい……」

魔法使い「噂でしか知らない癖によくそんな事が言えるわね」

姫騎士「もういい。私がとってくる。やはりこのような者に頼る事自体間違いだったのだ!」

執事「お、お待ちください! 姫様の身に何かあれば……」

姫騎士「私を誰だか忘れたか。私だって勇者に匹敵する力があると自負しているつもりだ!」

武闘家「ちょ、ちょっと待ってくれよ。何もやらないとは言ってないよな、剣士殿?」アセッ

剣士「え、ああ!」

340 ◆49HRmRlKYE:2018/06/29(金) 06:15:49 ID:cIw/hk2s
姫騎士「そうなのか?」

剣士「すみません。細かい事が気になってしまう性分ゆえ……」

姫騎士「あ、いや、こちらこそすまん。このような事態は初めてでな」

剣士「でしょうね」

姫騎士「ではやってくれるのだな?」

剣士「……ええ」

姫騎士「ふぅ、最初から素直にそう言ってくれればよいものを……」

剣士「連絡はどう取れば?」

姫騎士「直接城に来てくれて構わない。門番に取り次ぐよう頼んでおく」

剣士「わかりました」

姫騎士「それでは頼んだぞ。吉報を期待している」

341 ◆49HRmRlKYE:2018/06/29(金) 06:17:18 ID:cIw/hk2s
バタン

剣士「帰ったか……」

魔法使い「なんであんな事言ったのよ?」

武闘家「だって、そう言わなきゃあの姫さんあのまま突っ走っちゃいそうだったし――」

武闘家「断る理由も特にないような気がしてさ」

魔法使い「あるでしょ。姫様の早とちりだったらどうするのよ?」

武闘家「やっぱ二人は勘違いだって思うわけ?」

剣士「そう断定できないから困ってる。ただ、魔族のやり口にしては回りくどいとは思う」

武闘家「それこそ姫様の思い込みで、盗んだのは人間かもしれないぜ?」

剣士「――とりあえず、俺達の方でもこの偽者騒動を調べてみないか?」

武闘家「えー!? 取りに行っちゃえば早いじゃん!」

剣士「まあな。だが、取りに行かず真相がわかればそれに越した事はないだろう」

武闘家「まー、そうだけど……」

342 ◆49HRmRlKYE:2018/06/29(金) 06:20:33 ID:cIw/hk2s
賢者「武闘家くんの言いたい事もわかりますけどね」

武闘家「だろ!? それにさ、変に嗅ぎまわって怪しまれでもしたら困るじゃん?」

剣士「確かにその危険性はあるが……」

魔法使い「そこまで言うなら貴方一人で取りに行ったら?」

武闘家「えっ、それは……」

賢者「なに意地悪言っているんです。危険な場所にあるって話じゃないですか!」

魔法使い「そうよ。だから行かなくて済むよう考えてるんじゃない」

剣士「あ、いや。俺は少しでも姫様の主張が理解できたらと、それだけだよ」

剣士「納得できれば取りにも行く。真実の水晶そのものに興味もあるしな」

武闘家「わ、わかったよ」

剣士「すまない。俺に時間をくれ」

343 ◆49HRmRlKYE:2018/06/29(金) 06:22:19 ID:cIw/hk2s
剣士「じゃあ、酒場で話を聞いてくるよ。船の事もわかったかもしれない」スクッ

武闘家「俺も外の空気吸いに行ってこようかな」ガタッ

魔法使い「あ、さっきの話なら気にしないで。冗談だから」

武闘家「大丈夫、わかってるよ」

魔法使い「そう。ならよかった」ホッ

バタン

賢者「……」ジー

魔法使い「なに?」

賢者「冗談なら最初から言わなきゃいいのになって」

魔法使い「うるさいわね! 貴女はどっか行かないの?」

賢者「洗濯物を取り込まないといけないので。あと夕飯の支度もありますし」

魔法使い「夕飯? なんで?」

賢者「剣士さんが外で食べるより、私の作ったご飯の方がおいしいって!」エヘッ

魔法使い「あっそ!!」

344 ◆49HRmRlKYE:2018/06/29(金) 06:23:51 ID:cIw/hk2s
賢者「剣士さんと言えば…… 船、手に入るんですかね?」

魔法使い「さあ?」

賢者「あ! 姫騎士さんから貰えれば……」

魔法使い「怪しいと思うけど?」

賢者「えー、うーん…… 鳥のように飛べたらなぁ――って、あるかもしれませんよ!」

魔法使い「なにが?」

賢者「風の国にあった転送施設ですよ。隠し通路に使われていた。秘密の!」

賢者「あれと同じような、こちらの大陸と魔王の大陸を繋ぐ転送施設があれば……」

魔法使い「そんな都合のいいものがあると思う? あったとしてどうやって探すのよ?」

賢者「例のエルフさんなら知ってるかもしれません。あの施設を教えてくれたのも彼でした」

魔法使い「で?」

賢者「でって…… 解決じゃありません?」

魔法使い「私はこれを理由にこの旅をやめるべきだって言ってるの。手段がなければ諦めるしかないでしょ、アイツだって」

345 ◆49HRmRlKYE:2018/06/29(金) 06:26:48 ID:cIw/hk2s
賢者「ただ、生きていればそれでお姉様は満足なんですか?」

魔法使い「私は自分の至らなさでアイツを殺すのが嫌なのよ」

賢者「だったら強くなればいいじゃないですか」

魔法使い「無茶言わないで。そもそもそこまでして魔王に挑む必要ってある?」

賢者「ないと思います」

魔法使い「そう。ないのよ――って、えぇ!?」ビクッ

賢者「勝てるかどうかわからない魔王に挑むより、勝てる事がわかった侵攻部隊を迎撃していた方がいいって言うんでしょ?」

賢者「でもそれじゃ駄目なんです。この戦いは終わらない。長引けばもっと多くの人が……」

魔法使い「夢見る少女の戯言よ。理想でしかないわ」

賢者「だから現実にしたいんじゃないですか。――それに、もう夢物語なんかじゃない」

賢者「お姉様は言いましたよね。剣士さんは勇者を越えたって。それって私達次第で魔王に勝てるって事じゃないですか!?」

魔法使い「それは力あるものだけが言えるセリフよ。出来る事を言いなさいよ!」

賢者「私は振り向かないと決めたんです。ブーブー言うだけのお姉様に、あーだこーだ言われる筋合いはありませんよ!!」

346 ◆49HRmRlKYE:2018/06/29(金) 06:31:59 ID:cIw/hk2s
魔法使い「そこまで言う!?」

賢者「た、確かに言い過ぎました。すみません。でも私は……」

魔法使い「もういいわ」

賢者「……」

魔法使い「そろそろ夕飯の支度をしなきゃいけないんじゃない?」

賢者「あ、洗濯物も取り込まないと……」

魔法使い「それは私がやっておくから」

賢者「じゃあ、お願いしますね」タッ

魔法使い「……」

魔法使い「貴女に言われなくたってわかってる。私だって力になりたい。でも……」クッ

347以下、名無しが深夜にお送りします:2018/06/30(土) 20:04:07 ID:gukQqP4Y
続いた━━━━(゚∀゚)━━━━!!
待ってたよ!

348 ◆49HRmRlKYE:2018/07/18(水) 20:34:04 ID:vm1yjPNU
待っていてくれたなんて、こんなに嬉しい事はないです!
遅くなって申し訳ない!

349 ◆49HRmRlKYE:2018/07/18(水) 20:35:10 ID:vm1yjPNU
酒場――
カランカラン

マスター「おお。いらっしゃい」

マスター「すまんな。アイツ等からまだ連絡来てないんだ。伝わってるとは思うんだが……」

剣士「わかりました。それよりも聞きたい事が……」

マスター「なんだい?」

剣士「ここ最近で王宮に何か変わった事はありませんでしたか?」

マスター「王宮で? いや、聞かないな。姫様のおてんばは相変わらずらしいし――」

マスター「んー、しいて言えば騎士団がよく働くようになったくらいかね?」ハハッ

剣士「ここ最近で?」

マスター「ああ。なんでも周辺警護の強化とかで頻繁に出撃しているよ。ちょっと前までは余程の事がない限り動いちゃくれなかったんだがね」

剣士「どうして急に?」

マスター「さあ? 剣士殿のご活躍に感化されたから、とかじゃないのかい?」

350 ◆49HRmRlKYE:2018/07/18(水) 20:36:40 ID:vm1yjPNU
剣士「納得できるものなんですか、それで?」

マスター「納得も何も、悪い事じゃないからね。お陰で街の不安は払拭されているし――」

マスター「騎士達も納得して任務にあたっている様子だったよ」

剣士「そうですか……」

マスター「そんな事を気にするなんて、何かあったのかい?」

剣士「あ、いえ、俺が訪れるところはどこも魔族の被害を受けていたので……」

マスター「アハハッ! それじゃ近いうち何か起こるかもしれんな」

剣士「(これだけを聞くと魔族が国王に代わっているとは思えないな。例のエルフも依然として姿を現さない――)」

剣士「(いや、もうエルフと決めつける事も出来ないのか。本当に変化の魔道具が存在しているのだとしたら……)」

マスター「すまん、すまん。冗談だよ。そんな怖い顔しなさんなって」

剣士「あ、すみません。――それじゃ、俺はそろそろ行きます。ありがとうございました」

マスター「ああ、またのお越しを――って、何か飲んでいけばいいのに」ハハッ

351 ◆49HRmRlKYE:2018/07/18(水) 20:39:16 ID:vm1yjPNU
部屋 夜――

剣士「という話をマスターから聞いたんだが、どう思う?」

賢者「うーん、そう言われましても……」

武闘家「騎士団がよくなったのは国王が何者かに代わったからなのか?」

賢者「王としての自覚が芽生えたとも言えるんじゃないですか?」

魔法使い「魔族に結び付けるなら、計画を実行するにあたり信頼を得る必要があったとか?」

剣士「やはりこれだけじゃ何とも言えないよな。もう少し探ってみるか……」

武闘家「んな悠長に構えてて大丈夫なのかよ?」

剣士「どうだろう」

武闘家「やっぱ取りに行っちゃう方が早いんじゃない?」

剣士「それもなぁ……」

352 ◆49HRmRlKYE:2018/07/18(水) 20:40:19 ID:vm1yjPNU
賢者「剣士さんにしては珍しいですね」

剣士「慎重になりすぎているのはわかってる。わかっているんだが……」

剣士「(納得できない事に賢者達を付き合わせたくないんだよな。かといって俺一人で盗み出せる代物でもないだろうし――)」

剣士「(そうでなくても、また単独行動するわけには……)」チラッ

魔法使い「ん? 慎重なのはいい事だと思うわよ」

剣士「そうだよな」

魔法使い「うん。何時何時までとは言われてないし」

賢者「催促はされそうですけどね」

魔法使い「それまで気楽にやっていけばいいじゃない?」

賢者「うーん、それでいいんでしょうか……」

剣士「すまない。もう少しだけ時間をくれ」

武闘家「んー……」

353 ◆49HRmRlKYE:2018/07/18(水) 20:41:55 ID:vm1yjPNU
翌日 朝――

剣士「よし、今日は騎士団の後をつけてみようと思う!」グワッ

魔法使い「なによ、いきなり!?」ビクッ

剣士「彼等の行動を探れば何かわかるかもしれない。王宮の様子も聞けたら聞いてみる」

魔法使い「流石に騎士達に接触するのは不味いんじゃない?」

剣士「そうか。……じゃあ遠くから騎士団の様子をうかがうだけにするよ」

魔法使い「うん。とりあえず今日はそうしたら?」

剣士「――ところで武闘家は?」

賢者「修行するぞーって朝早く出かけていきましたよ」

魔法使い「ほんとに修行?」

賢者「気にしすぎですよ。昨日だってちゃんと帰ってきたじゃないですか」

魔法使い「わかってるんだけど……」

354 ◆49HRmRlKYE:2018/07/18(水) 20:43:31 ID:vm1yjPNU
剣士「勇者が隠し場所に選んだ祠だ。おそらく魔法の罠をはじめとした難解な罠が仕掛けてある可能性が高い」

剣士「そんな場所に一人で行こうとは思わないだろう。大丈夫だよ」

魔法使い「待って。そこまで考えてるかしら?」

剣士「考えないかな?」

魔法使い「わからない。まだ付き合い短いし……」

剣士「あー、見に行ってこようか?」

魔法使い「貴方は他にやる事があるでしょ?」

剣士「しかし……」

賢者「待ってみませんか。疑うのは失礼ですよ」

魔法使い「そうよね。考えすぎよね……」

剣士「じゃあ俺はさっき話した通り騎士団を追ってみるよ」

魔法使い「え、ええ」

355 ◆49HRmRlKYE:2018/07/18(水) 20:45:16 ID:vm1yjPNU
夕方――

魔法使い「ねえ、どこで修行してるとかは聞いてないのよね?」

賢者「え!? ええ、聞いてないですけど……」

魔法使い「修行にしては帰り遅くない?」

賢者「大丈夫ですよ。行ってないですって!」

魔法使い「なくはないでしょ? もしこれで死んじゃったら……」

賢者「縁起でもない。やめてくださいよ――って、あー!!」

魔法使い「なに!?」

賢者「あ、いえ、食材の買い忘れがありまして……」

魔法使い「なんだ、そんな事か……」

賢者「一大事ですよ。買いに行ってきます!!」ガタッ

魔法使い「こっちは気が気じゃないのに、もー!!」

356 ◆49HRmRlKYE:2018/07/18(水) 20:47:12 ID:vm1yjPNU
街――

賢者「まだ市場やってるかな。急がないと。もう陽が沈みそう――って、ああー!」ビシッ

武闘家「おおぅ!?」バッタリ

賢者「こんなところで何してるんですか。お姉様が心配していましたよ。一人で祠に行ったんじゃないかって!」

武闘家「あー、それなんだけどさ……」

賢者「どうしたんですか?」

武闘家「ジャジャジャジャーン!!」ドーンッ

賢者「え……?」

武闘家「アハッ、アハハハッ!!!」アセッ

賢者「手に持っているのって、まさか……っ!?」

武闘家「そう、そのまさか――、真実の水晶さー!!」

賢者「ええーっ!?」

357 ◆49HRmRlKYE:2018/07/18(水) 20:49:09 ID:vm1yjPNU
武闘家「すげーだろ。どやー!」

賢者「本物なんですよね?」

武闘家「多分な。確かめようにも偽ってる人間がいなきゃ確かめようがないし――」

武闘家「あっ、賢者ならわかるんじゃないか。見てみてくれよ」スッ

賢者「うーん、とてつもない魔力が秘められている事はわかりますけど」ジーッ

武闘家「マジかよ! んじゃ、やっぱこれって……」

賢者「ええ、どちらかと言えば本物っぽいですかね」

武闘家「やったぜ!」 

賢者「……」

武闘家「やっぱ不味かったかな?」

賢者「そうですね。せめて何か一声欲しかったです」

武闘家「けど言い出せる雰囲気じゃなかったし、俺が引き受けちまったようなものだったからさ」

358 ◆49HRmRlKYE:2018/07/18(水) 20:50:26 ID:vm1yjPNU
賢者「気にしすぎですよ」

武闘家「ごめん。居ても立っても居られなくて……」

賢者「それにしてもよく盗み出せましたね。大昔の勇者が隠したなんて言われていたのに!」

武闘家「ほ、褒めんなよ。照れちゃうじゃん////」

賢者「魔法の罠とかなかったんですか?」

武闘家「なんだよ、それ? 確かに罠はいくつも仕掛けられてあったけど――」

武闘家「落とし穴とか、鉄球が転がってくるとか、そんな古典的な罠しかなかったぜ」

賢者「あれ? じゃあ剣士さんの杞憂だったって事ですか……」フム

武闘家「考えすぎなんだよ、剣士殿は!」アハハッ

賢者「否定はしませんけども……」

359 ◆49HRmRlKYE:2018/07/18(水) 20:52:52 ID:vm1yjPNU
武闘家「んじゃ、これ姫様に渡してくるな」

賢者「待ってくださいよ。二人には話さないんですか!?」

武闘家「だって気まずいじゃんか。それに、どうせ姫様の勘違いだよ」

武闘家「魔族だったとしても正体を確かめるだけで戦いはしないだろ? 大丈夫だって!」

賢者「そうでしょうか……」

武闘家「頼む。事件を解決した後の方が気持ち楽なんだよ。今謝るのも後で謝るのも変わんないって!」

賢者「万が一って事もありますし、やっぱり話した方が……」

武闘家「魔族の犯行だって思うわけ? そもそも国王が本当に入れ替わってるとも限らないって言ってたじゃーん!!」

賢者「そりゃ、まぁ……」

武闘家「お願いだ。俺にカッコつけさせてくれー!!」ドゲザッ

360 ◆49HRmRlKYE:2018/07/18(水) 20:54:54 ID:vm1yjPNU
賢者「カ、カッコつけるって??」

武闘家「この王宮お騒がせ偽者騒動は俺が解決したぜ――って告白する方がカッコイイじゃーん!!」

賢者「そういう事ですか。――わかりましたよ。でも一つ、条件があります」

武闘家「なんだ! 馬のフンでもにぎりゃあいいのか?」

賢者「気持ち悪い事を言わないでください。そうじゃなくて、私も一緒にいきます」

武闘家「へ? それが条件なの?」

賢者「この事を二人に黙っているなんて私には出来ませんからね……」

武闘家「すまねえ。恩に着るぜ」

賢者「じゃあ行きましょう」

武闘家「おう! サクッと依頼達成して帰ろうぜ。あと後で一緒に謝ってくれい」

賢者「それは嫌です……」

361以下、名無しが深夜にお送りします:2018/08/10(金) 22:32:29 ID:gSDabTo2
追い付いた

362 ◆49HRmRlKYE:2018/08/20(月) 23:25:48 ID:ASSFgiHY
城門 夜――

賢者「あのー……」コソッ

門番「ああ、君達あれだろう。話は聞いているよ。姫様が頼んでた骨董品を届けにきた冒険者だよね?」

賢者「え、ええ」

門番「こんな夜遅くまでとは可哀想に。どれだけ急かしてるんだか、あの馬鹿姫は」ボソッ

賢者「え……?」

門番「あー、申し訳ない。急ぎだというのに。ささ、中へどうぞ」アセッ

門番「入ったら係りの者が案内しますので指示に従ってください。くれぐれも無礼のないように」

賢者「あ、はい」

武闘家「そういう話で通してたのか。本当の事は言えないもんな」

賢者「(もしかして姫様は城の者に好かれていない?)」

363 ◆49HRmRlKYE:2018/08/20(月) 23:26:45 ID:ASSFgiHY
城 客室――

姫騎士「おお。待ちかねたぞ」

武闘家「これがそうです」スッ

姫騎士「ほう、これが……!」パシッ

姫騎士「しかし、見た目だけではわからんな。ただの丸玉の水晶にしか見えんぞ?」

執事「学者に調べさせますか?」

姫騎士「馬鹿を言え。どう説明するつもりだ。彼等を信用していないわけでも――」

姫騎士「ん? そう言えば剣士の姿が見えんがどうかしたのか?」キョロキョロ

武闘家「あー、それはその…… そうだ。あの後すぐ高熱出しちゃって!」アセッ

賢者「え゙?!」

姫騎士「私が帰った後に風邪を? では誰がこの水晶を?」

武闘家「俺です。俺が剣士殿の代わりに取ってきました!」

姫騎士「疑うわけではないが、本当なのか?」

武闘家「剣士殿の辱めるような事をするわけないじゃないですか。信じてください!」

364 ◆49HRmRlKYE:2018/08/20(月) 23:30:07 ID:ASSFgiHY
賢者「なに嘘ついているんですか」ボソッ

武闘家「俺が取ってきたのは事実だろ?」

姫騎士「よし、確かめてみるか!」グッ

賢者「い、今からですかっ!?」

姫騎士「ああ。この時間なら王はもう寝室に戻っているはず。都合がいい。ソナタ達も一緒に来てくれるな?」

武闘家「はい。もちろんです!」ガタッ

賢者「だ、大丈夫なんでしょうか?」

武闘家「心配性だなあ。寝込みを襲うんだぜ。大丈夫だろ?」

武闘家「それによ、変化を使って王宮を陥れようとするような奴が強いとは思えないぜ」

賢者「まぁ、確かに……」

姫騎士「何してる。行くぞ」

武闘家「今行きます! ――大丈夫だって。行こうぜ!」

賢者「え、ええ」

365 ◆49HRmRlKYE:2018/08/20(月) 23:32:42 ID:ASSFgiHY
寝室 前――

武闘家「見張りが二人いますぜ。――って、国王の寝室にいなかったら逆におかしいか」

姫騎士「水晶が反応しない。ではあれが真実の姿か。魔族であれば切り捨てるのだが……」

執事「本物の近習相手にそれは出来ませんね。ここは訳を話して通してもらいましょう」

姫騎士「信じると思うか? 私は思わんな。ここは少し荒っぽいが……」チャキッ

執事「暴力はいけませんよ。それに上手くいくかどうか……」

武闘家「俺と姫様が同時に飛び掛かれば、と思ったけど。確かに絶対じゃないか(姫様の実力知らねえしな)」

賢者「なら私に任せてもらえませんか?」

執事「何か策があるのですか?」

賢者「策と呼べるほどのものじゃないんですけど、魔法で眠らせてみます」

姫騎士「催眠術が使えるのか?!」

賢者「た、たぶんですよ。成功するかちょっと自信ないんですけど……」

姫騎士「まあいい。物は試しだ。執事もいいだろう、眠らせるだけなら?」

執事「そうですね。それなら、まあ……」

366 ◆49HRmRlKYE:2018/08/20(月) 23:36:01 ID:ASSFgiHY
賢者「では唱えますよ! でやあ!!」パァ

ナンダ マブタガ キュウニ オモク… バタッ

賢者「ふぅー、よかったぁ。ちゃんと眠ってくれました」ホッ

姫騎士「見事なものだな。あの二人を眠らせるとは、大した魔導師じゃないか!」

賢者「お姉様に負けていられませんからね」フフン

姫騎士「部屋の鍵は近習が持っているはず…… よし、あった」ゴソゴソ

武闘家「なあ、ここまでして姫様の勘違いだったら困っちゃうな」ボソッ

賢者「こんな時に何言ってるんですか!?」

武闘家「いやだってその可能性もないわけじゃないだろ。むしろその方が高いっつーか……」

賢者「それならそれでいいじゃないですか。何もなかった事がわかるだけでも」

武闘家「あー、だよな。ごめん、なんか落ち着かなくって。緊張してんのかも」ハハッ

姫騎士「おい、静かにしろ。突入するぞ」

武闘家「あ、すみません!」アセッ

ガチャ キィ

367 ◆49HRmRlKYE:2018/08/20(月) 23:37:22 ID:ASSFgiHY
寝室――

姫騎士「暗くてよく見んが、ベッドはあそこだな……」ジリッ

パッ!

姫騎士「ま、まぶしっ!? 燭台に火が、どうして急に……」ビクッ

国王「夜遅く、それもノックもせずとは一体何事だ。訳を話しなさい、我が娘よ」

賢者「(見つかった!? というより来る事が最初からわかっていたような……)」ゾッ

姫騎士「娘だと!? どの口がほざく。貴様の正体はわかっているんだぞ!」

国王「何を寝ぼけておる?」ハハッ

姫騎士「笑っていられるのも今のだけだ。これを見ろ!!」バン

国王「ほう、それは真実の水晶。手に入れたのか……」ジッ

賢者「不味いっ!?」

姫騎士「水晶よ、真実の姿を映したまえ!!」ピカー

368 ◆49HRmRlKYE:2018/08/20(月) 23:39:16 ID:ASSFgiHY
呪術師「やれやれ。思ったより早かったの。さて、どうしたものか……」フゥ

武闘家「老けやがった!? おっさんが爺になるとは、水晶は玉手箱だったーっ!?」

賢者「何言っているんですか。よく見てください」

賢者「あの頭に生えた角に、エルフほどじゃありませんが縦に伸びた耳。あれは――」

武闘家「人魔の魔族だよな。やっぱ見間違いじゃなかったか。こいつはたまげたぜ」

賢者「ええ。最悪の事態です……」

武闘家「いや、そうとも限らないぜ。人魔ならまだ何とかなる。人魔は戦闘に不向きな魔族。見た目通り、実力も人間と大差ないぜ」

賢者「確かに一般的にはそう言われています。ですが、あのお爺ちゃんは違う――」

賢者「一瞬で、それも正確にこの部屋にあるすべての燭台に魔法で火を灯しました」

武闘家「そんなに凄い事なのか? 一見、戦いにはなんの関係もなさそうだけど」

賢者「あれが警告だとしたら? 感じるんです。計り知れない異様な魔力を……」

呪術師「ほう。儂の魔力をそのように感じ取る者がいるとは……」

369 ◆49HRmRlKYE:2018/08/20(月) 23:40:41 ID:ASSFgiHY
姫騎士「気圧されるな。しっかりしろ」

武闘家「そうだ。数じゃこっちが勝ってる。それにどんな魔力秘めてようが所詮は人魔だぜ」

賢者「や、やらないとは言っていませんよ!」

賢者「(わかってる。ここで怖気づくようじゃ剣士さんの力になんて一生なれっこない。だけど、この不安感は……)」

呪術師「見事な覚悟じゃが、儂が三魔将の一人、灰の呪術師だと知ってもまだそう申すか?」

武闘家「は? なんだ、それ?」

呪術師「やはり知らんか。この時代から生まれた新たな地位じゃし、驚きはせんが……」

賢者「名を冠した将軍? 四天王のような実力者だと言いたいんですか?」

呪術師「わかってもらえたようじゃな。その通り、実力も四天王に優るとも劣らないと言われておる」

姫騎士「なるほど。虚勢を張ってこの場から逃げようという魂胆か。如何にも人を欺いてきた奴が言いそうなセリフだ!」

呪術師「勘違いしておるようじゃが、儂はこの国を滅ぼそうとは思っておらん。少し利用させてもらっただけじゃ」

370 ◆49HRmRlKYE:2018/08/20(月) 23:43:31 ID:ASSFgiHY
姫騎士「黙れ。どう言い逃れしようと貴様は我が国を愚弄した。その事実は変わらん!」

呪術師「やはり戦いは避けられぬか。なれば致し方なし――」

呪術師「場所を移すとしよう。ここは戦いづらいのでな。よいか?」

姫騎士「仲間と合流する気か!」

呪術師「はて? 水晶を使い確認したのではないのか? 魔族はこの王宮に儂一人じゃよ」

武闘家「たった一人で乗り込んできたってのか!?」

呪術師「言ったはずじゃ、四天王にも劣らぬと。その気になれば儂一人でこの王宮など落とせる」

姫騎士「減らず口を! どこでも変わらん。この場で叩き斬ってやる!」ダンッ

呪術師「戯けが!!」ボシュッ

姫騎士「ぐわあああ」ドシャアア

呪術師「やれやれ。お主のせいで豪奢な寝室が台無しになってしまったではないか」

賢者「なんて早い火球!? そうか。炎系魔法を極めた魔導師、だから灰の……」

呪術師「これでわかってもらえたかの。なぜ儂が三魔将と呼ばれ恐れられておるのか」

371 ◆49HRmRlKYE:2018/08/20(月) 23:49:51 ID:ASSFgiHY
姫騎士「なんだ、あれは。一瞬チカっと光ったと思ったら火の玉が目の前に……」ヨロッ

呪術師「ほう。加減したとはいえ自力で立ち上がれるとは……」

姫騎士「当たり前だ。鍛え方が違う!」

呪術師「まったくじゃよ。流石は王宮に伝わる秘宝の鎧と盾じゃ。魔法を軽減する効果が付与されておったとは恐れ入ったわ」

呪術師「それを快く与えてくださった優しきお父様に感謝する事じゃ、姫騎士よ」

姫騎士「き、貴様ァ!!」バッ

呪術師「待て待て、今度はボヤではすまなくなるぞ」

姫騎士「くっ!?」ピタッ

呪術師「ついてまいれ。そちらもそれでよいな?」

武闘家「ああ、いいぜ」

賢者「執事さん、戦いの間他の人が近づかないようにしてもらえますか?」

執事「ええ、そうするつもりです。――ですから姫様の事を頼みます。どうか」ペコッ

賢者「……はい」

372 ◆49HRmRlKYE:2018/09/06(木) 21:16:14 ID:lS6htfpE
玉座の間――

武闘家「ここは玉座の間か?」

呪術師「城内で戦うのであればここしかあるまい。偽の国王との決着をつけるわけじゃしな」

姫騎士「またも愚弄して……!」ギリッ

呪術師「半分は冗談じゃよ。儂等の戦いに他の者を巻き込みたくなくてな。ここならその心配もない。何より戦いやすかろう」

呪術師「まあ城外で戦えるのが一番じゃが、それは儂を逃がすのと同義。困るのじゃろ?」

武闘家「凄い自信だな、爺さんよ」

呪術師「自信がなければここにはおらんよ。――そうじゃ儂は半端な覚悟で来たのではない」

呪術師「お主等には悪いが、ここで終わるわけにはいかんのじゃ」

賢者「それは私達も同じです。引けない理由がある」

呪術師「この国にそこまで肩入れする事もなかろうに。――まあよい。そろそろ始めよう。夜が明けては騒ぎになる」

賢者「(ついに始める。剣士さん不在の魔族戦。出来る限りを全力でやれば、きっと!)」


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