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男「お願いだ、信じてくれ」白蓮「あらあら」

520ぬえ ◆ufIVXIVlPg:2019/03/08(金) 09:00:11 ID:qOdTnLdw
しかし今は状況が違う。悪いことにここにいる鴉天狗はほぼ同じ階級で統一されており、この中から新たに指揮する者を選んでも諍いとなるだけであり、そうなれば統率は容易く崩壊し、烏合の衆となりえる。

これは椛が統率をしやすくするための計略の一つだったが、今となってはそれが完全に裏目にでていた。

「どうせ今日はもう、なにもないよな」

文句を言えるだけ言った後はおそらく酒でも飲んでどんちゃん騒ぎとなるのは天狗達にとっていつもの事だった。彼も酒を呑むことは嫌いではなかったがそういう気分になれる今ではない。

長い鼻を二回さすると彼は宙へ体を投げ出した。

風の隙間を見極め、そこをかき分け山を下り落ちていく。その方向は椛が逃げたとされる旧地底の方向であった。

できるだけ唾棄すべき味方から離れ、賞賛すべき敵となった椛の元へ近づきたいという無意識下での動き。

疾く、疾く。

それだけは彼が同世代の天狗と比べて明確に優れていると言える点だった。すぐに妖怪の山の裾野までたどり着く。

境界を越えれば規律違反となる。椛の脱走から妖怪の山の警備は厚くなっている今、脱走を成功させるなどなど百に一の確率すら考えられない。

からんころんと下駄歯の先だけを境界線より向こうに投げ出して座る事だけが精一杯の抵抗であった。

「はぁ…」

天を仰ぐと冬の曇天とした色が広がる。あの過労でくすんだ白髪に少し色が似ていると彼は思った。せめて花の一輪でも渡しておけばよかっただろうか。そう考えながら彼は横になる。

目を閉じればありし日の思い出が浮かんでは消えていく。その泡沫の中彼は微睡みへ落ちていき

そんな最中に仲間であった天狗が一人残らず死んでいっているなど想像していなかった。


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