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提督「艦娘殺処分計画!?」

71以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/17(日) 23:22:19 ID:F9GXIIzo

ワイワイ ガヤガヤ

提督「ん?あれは何をしてるんだ?」

大和「七夕ですよ。みんなで短冊を書いてるんです。この戦争が終わったら、何をしたいとか、どうなりたいとか…」

提督「そっか…そういえば今日だったな……。大和は何か書いたのか?」

大和「え、私ですか?」

提督「大和の願い事ってどんなんだろうな。後で見せてもらおう」

大和「え」

72以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/17(日) 23:23:23 ID:F9GXIIzo

赤城『制海権を奪還したあかつきには、加賀さんと国内外のグルメを制覇できますように』

加賀『赤城さんの願いが叶いますように』

龍驤『大きくなりますように』

金剛『テートクのハートをシスターと仲良くシェアしたいデース!』

榛名『みんな仲良く過ごせますように』

比叡『気合!入れて!生きます!』

霧島『コンタクトにしたいです』

大淀『ずっと誰かの支えでありたい』

73以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/17(日) 23:24:17 ID:F9GXIIzo

暁『一人前のレディになれますように』

雷・電『背が伸びますように』

響『Будьте всеми сестрами вместе мирно навсегда』

羽黒『しっかり者になれますように』

那智『不撓不屈』

足柄『いい男を見つけられますように』

大井『ずっと一緒に居られますように』

北上『平穏無事に過ごしたい』

まるゆ『皆さんの力になれますように』

武蔵『女を磨く』

吹雪『普通の女の子として楽しく生きられますように』

74以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/17(日) 23:24:54 ID:F9GXIIzo



大和『皆が笑顔で平和に過ごせるようになりますように』





木曾『        』

75以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/17(日) 23:25:24 ID:F9GXIIzo
今日はここまで

76以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/17(日) 23:55:31 ID:1syN1dHc
おつ

77以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/18(月) 01:39:17 ID:Y.gkNUtk


781:2016/01/19(火) 21:10:29 ID:OmKqKjf.
ゆるゆると投下

79以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:11:32 ID:OmKqKjf.

翌日 横須賀近海 哨戒出撃

ザザザザザザザ

天龍「この指輪、すっげえな!確かに、いつも以上の力が湧いてくるぜ」

電「身体の動きがいつもよりいいのです!!」

雷「これなら最終決戦も怖いものなしだわ!」

木曾「…」

天龍「…おい木曾…てめぇは何か思うところはねえのかよ?」

木曾「最終決戦を前にして、てめぇみたいに能天気にはしゃぐ余裕はねぇな」

天龍「んだとてめぇ!黙って聞いてりゃ重雷装巡洋艦だからって調子に乗りやがって、新入りの癖に…!」

木曾「ぁあ!?」

大和「二人とも、止めてください」ガシッ

天龍「いててててて」ミシッ

木曾「ぐっ…」ミシッ

80以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:12:41 ID:OmKqKjf.

大和「駆逐艦の子たちの見てる前で、恥ずかしいとは思わないんですか?」

大和「天龍さん、いくら鎮守府の古参だからって、後から配属された艦娘を見下すのはよくありませんよ?」

天龍「べ、別に俺は…」

大和「木曾さんも、どうしてわざわざ人の感情を逆なでするようなことを言うんですか?」

木曾「…」

大和「最終決戦を前にして、艦隊の中核となるべき水雷戦隊のお二人がそんな様子じゃ…」

雷「水平線上に敵艦隊発見!艦影6!」

電「編成はヲ級1、リ級1、ロ級4なのです!」

大和「!!」

木曾「…ヲ級が艦載機を発艦させてるぞ」

大和「いいでしょう。これより我が艦隊は敵艦隊を攻撃します」

81以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:13:54 ID:OmKqKjf.

大和「艦載機は大和が遠距離から叩きます。皆さんは水雷戦闘に移行してください!」

天龍「了解。水雷戦隊の指揮は俺が執るぞ。いいな?」

雷・電「はい!」

木曾「…悪ぃが俺は勝手にやらせてもらうぜ」ザザザッ

天龍「おいってめぇ!勝手に突撃すんなって…おい!」

大和「対空戦闘。全46センチ主砲、三式弾装填…調定よし。指向よし」ゴゴゴゴ…

大和「…横鎮に来て初めての実戦ですね。大和、やります…!」

大和「撃ち方はじめ!射ぇっ!!!!」ズドォォォォォオオオオオンン!!

ヒルルルルル…  パパパッ  ズバァアアアアアアアン!!

電「すごい…一撃で敵機の数個編隊が蒸発したのです!」

ドドドドドドッ

雷「電、前見て!!敵も砲撃を開始したわよ!」

天龍「ちっ…一斉回避だ!」ザザザッ

ヒルルルルル…バシャーン!ザバーン!

82以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:16:19 ID:OmKqKjf.

木曾「…ヲ級の奴、カタパルトの調子が悪いらしいな?発艦が上手くいってねぇな」

木曾「こっちにとっちゃ好都合だ。20センチ連装砲、用意…射ぇっ!!」ドゴォン!!!

ヒルルルル… ズズン!

ヲ級「!!!」

雷「木曾さんの第一斉射、ヲ級カタパルトに直撃!」

天龍「ちっ…先走ったにしてはやるじぇねえか…これで敵艦載機の発艦は不可能ってわけか…」

天龍「残りの艦は俺らでやるぞ!針路1-8-2へ抜けながら魚雷散布!しっかりついて来い!」

天龍「時間差雷撃だ!1秒毎に各管発射用意…射ぇっ!!!」

バシュッ!!!!ズズーン…

雷「ロ級すべてに命中!1杯轟沈、3杯大破!」

電「リ級、全魚雷を回避!木曾さんに向かっていくのです!」

天龍「ちっ…お前たちはロ級に止めを刺せ!俺はリ級を叩く!」

天龍「おい木曾っ!重雷装艦が聞いてあきれるぜ!いつまで手こずってやがんだ!?」ザザッ

83以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:17:15 ID:OmKqKjf.

リ級「…」ザザザ

木曾(くっ…こいつは相当の手練れだ…かなり海戦慣れしてやがる…!)

天龍「聞いてんのか木曾!てめぇと俺とでリ級の野郎を魚雷挟撃だ!てめぇは針路2-3-0に取れ!」

木曾「ちっ…了解!」

木曾「…全発射管、再装填よし!」

天龍「射ぇっ!!」

バシューッ!!!ザバババババン

天龍「くっ…木曾の奴、さすがに見事な雷撃じゃねえか…」

木曾「この雷数を回避できるかってんだ…!」

シャアアアアアアア…

リ級「…」ジャキッ ドドドッ!

スバァアアアン!!!

木曾「なっ!?」

天龍「し、主砲弾で魚雷を迎撃しやがった…!!!」

84以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:18:16 ID:OmKqKjf.

リ級「…」ゴゴゴゴゴゴ

天龍「ちきしょう…あんな高速艦にまとわりつかれたら大和に支援砲撃を頼むわけにもいかねぇ…下手すりゃこっちの数が仇になって、駆逐艦のガキどもが喰われる可能性も…」

天龍「くそっ…どうする…」

木曾「…おい」

天龍「んだよ!人が作戦考えてるときに話しかけんな!」

木曾「てめぇの作戦なんかどうでもいい。それより、気づいた事がある」

天龍「ぁあ!?」

木曾「あのリ級、立ち往生してるヲ級のことを気にしてるみてぇだ」

天龍「…確かに、そんな様子があるな。こっちを叩いて、あわよくば曳航して脱出しようって肚か?」

木曾「かもな。だったらそれを逆に利用してやればいい」

天龍「あん?」

木曾「俺があのヲ級をすぐそばで吹っ飛ばす構えを見せる。恐らくリ級は血相を変えるか混乱するかするだろう。それに乗じて、あとはお前らが奴を叩けばいい」

天龍「…却下だ」

木曾「ぁあ!?」

85以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:19:43 ID:OmKqKjf.

天龍「それだと………てめぇが危険だ。リ級がヲ級もろともてめぇをふっ飛ばさねえ保障はどこにもねえんだぞ」

木曾「…いつまで俺たちがたった一杯の敵に振り回されるなんて茶番を続けるつもりだ?ぁあ?」

天龍「…」

木曾「考えてる暇はねぇぞ。さっさと展開しろ」ザザッ

天龍「ちっ…!二人とも聞いてたな?行くぞ!」

雷「は、はい!」

電「了解なのです!」

ヲ級「…」ブルブル

木曾「よう深海野郎。気分はどうだ?」ジャキン

ヲ級「!!」

リ級「っ!!!」ザザッ

天龍「…木曾の野郎の言ったとおりだ。リ級め、わき目もふらずに向かって来やがった!」

木曾「そうだ…来い!てめぇの相手はこの俺だ!」

86以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:21:47 ID:OmKqKjf.

木曾「…」

リ級「…!」ジャキン!!!!

木曾(…いっそ、このまま)

天龍「今だっ!全主砲・全魚雷、斉射ぁっ!!!」ズドッ!

雷「ぜぇんぶ喰らいなさいっ!!」ドゴォン!

電「電の本気を見るのです!!」バシューッ!

シュルルルルルルルル… ドゴォォォォオオオオオオオオオオオオン!!!

バシャシャ…ザバ…チャプ…

電「…敵リ級、視界より消失、なのです」

天龍「…鎮守府に戦闘終了を打電。帰るぞ」

天龍「おい木曾…囮役ご苦労だったな。…ま、てめぇが無事で…」

木曾「ちっ……」ギリッ…

天龍「…!?」

天龍(…今のは…?????????????)

87以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:22:37 ID:OmKqKjf.

木曾「…」

大和「皆さん、大丈夫ですか!?」ザザザ

電「大和さんのおかげで、艦載機の攻撃を受けずに済んだのです!」

ヲ級「…」ブルブル

木曾「てめぇの役目は終わりだ。さっさとあいつの後を追うんだな」ジャキッ!

ヲ級「!!」ビクッ

天龍「ちょ、ちょっと待てよ」

木曾「あ?」

天龍「こいつからこっちに有益な情報が取れるかもしれねえだろ。せっかく無傷で拿捕できたんだ。無為に沈めるのは割に合わねえ」

木曾「劣勢のこいつらからこれ以上どんな情報が必要だってんだ。こいつは用無しだ」

天龍「待てよおい!だいたいこの艦隊の旗艦はてめぇじゃねえだろうがよ!」

木曾「…」

天龍「…どうする、大和?」

88以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:23:34 ID:OmKqKjf.

大和「…曳航して帰りましょう。もうこのヲ級は戦意を喪失してます」

大和「天龍さんの言う通り、もし何か情報が引き出せるなら…決号作戦をより戦いやすくできるかもしれません」

大和「それに…提督なら、無慈悲にこの娘を処分するようなことはされないでしょうし」

天龍「ああ、そうだな」

電「ヲ級さん、よかったのです!」

雷「貴女は私たちのゲストよ!」

ヲ級「…guest?」

木曾「ちっ…」

天龍「おいてめぇ…いいかげんそんな態度やめろってんだ…」

木曾「…帰るぞ」スッ

天龍「っの野郎…!!鼻持ちならねぇ…!!」プンスカ

大和「木曾さん…」ボソッ

木曾「…なんだ?」

89以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:25:29 ID:OmKqKjf.

大和「…どうして、死に急ぐような真似をしたんですか?」

木曾「っ…!」

大和「大和の目はごまかせませんよ。単独で敵に向かっていったのもそうですし、…何より、リ級が向かってきたとき、貴女にはまるで応戦しようとする意志が見られませんでした」

木曾「…」

大和「木曾さん。大和は、貴女の事が心p…」

木曾「何が…」

大和「え…?」

木曾「…大和に俺の何が分かるってんだ。すでに“手に入れてる”やつなんかに、俺の何がっ…!」ギリッ…

大和「…!?」ゾクッ

木曾「…俺の事を詮索するのは止めてくれ。…心配しなくても、自分の務めは果たすさ」ザザッ

大和「…」ザザザ

90以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:27:32 ID:OmKqKjf.

大本営海軍部 

元帥「決号の作戦発動日が決まった。…この戦争の終幕だ」

副官「元帥閣下の描かれる形での終戦が、ついに実現するわけですね」

元帥「ああ」

副官「いよいよですね…!」

元帥「…君は、1970年には生まれていたかね?」

副官「は…???いえ、その頃はまだ…」

元帥「…私は、まだ佐官になりたての頃だった」

元帥「秋も深まってきたある午後の事だ…私はその日非番でな、たまたま中央線に乗っておった」

91以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:28:59 ID:OmKqKjf.

元帥「そうするとな、市ヶ谷の方角からおびただしい数のサイレン音とヘリのローター音が聞こえてきた」

元帥「もしや左翼のテロかクーデターかと思い慌てて駆けつけてみると、…市ヶ谷の陸軍駐屯地のバルコニーから、ある作家が日の丸の鉢巻きを締めて演説をぶっていた」

副官「それは…まさか、あの…」

元帥「数人の同志と共に駐屯地を襲撃し、陸軍参謀長を人質にした作家の弁はまさに霊気がかっていた」

元帥「…彼はこう言っていた。このままでは日本はなくなってしまう。なくなって、その代わりにこの国土には、無機的で灰色でカネだけはあって抜け目のない経済的大国が残るだけになってしまう。諸君らはそれでいいのか、決して短くない伝統に彩られた我々の祖国が喪われてもいいのか…とな」

副官「…」

元帥「周りで聞いていた将官たちは嘲笑しながら見物しているだけだった。…私は、哀れな作家の問いかけに答えることが出来なかった」

元帥「…そうして、作家は割腹した」

副官「…」

92以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:29:38 ID:OmKqKjf.

元帥「…あれからもう半世紀近く経とうとしている。今度の決号作戦を控えて…私は最近立て続けに二つの悪夢を見るのだ」

副官「悪夢…でありますか?」

元帥「一つは幼い頃の悪夢だ。そしてもう一つは…あれからもう半世紀も経とうとしているのに、いまだにあの作家の問いに誠意をもって答えることができず、それどころか彼の憂いていた未来を加速させようとしている私を、あの作家が斬ろうとしている夢をな」

副官「っ…」

元帥「…年を取ると、どうも感傷深くなっていかんな」

副官「その通りであります。どのような形であれ、閣下が日本のために尽くされてようとしているのは副官たる自分が誰よりも存じております。日本海軍は、まさにそのために今存在しているのです」

副官「…悔いることはさらさらありません。自分は、…自分だけでも、ルビコン渡河をご一緒させていただきたいものであります」

93以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:31:06 ID:OmKqKjf.

元帥「…ひょっとしたら、渡るのは三途の川かも知れんぞ」

副官「覚悟は出来ております。遅いか早いかだけと思えば、これほど楽なことはありません」

元帥「…そうか。分かった、頼むぞ」

副官「は。何ものであろうと、閣下の邪魔はさせません…!!」ザッ!

94以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:33:08 ID:OmKqKjf.

横須賀鎮守府

大淀「大和さん率いる哨戒艦隊から打電です。1300時に小規模な敵機動部隊に遭遇」

大淀「うち五杯を撃沈、ヲ級型空母一杯を拿捕しました。我が方に損害はないとのことです」

提督「そうか!大和も頑張ってくれたな…」

大淀「調子はいいみたいですね。それで、拿捕したヲ級についてですが…」

提督「…状況はよく分からないが、まあ一応はこちらで保護しようか」

95以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:34:34 ID:OmKqKjf.

提督「取り扱いについてはまた考えよう。とりあえず、無用な殺生は寝覚めが悪い」

大淀「はい!」

大淀「それと、先ほど軍令部から外線が入りました。提督に出頭命令です」

提督「軍令部から出頭命令…?どこの部局からだ?」

大淀「第一部です」

提督「第一部…ってことは作戦担当部局から?」

大淀「恐らく、今度の決戦の打ち合わせじゃないでしょうか?」

提督「たぶんそうだろうけど…分かった。行ってくる」

96以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:36:48 ID:OmKqKjf.

その後 深海

ル級『…本日の戦闘も、私たちの一方的な敗北でした』

戦姫『…』

ル級『今年に入ってからというもの、私たちの損亡率は日々うなぎ上りです』

ル級『それに、ろくに燃料も弾薬も廻ってこないんじゃ、練度も上がりません!』

ル級『しかも弾薬自体の質も落ちてます。先日の戦いでは私たちの魚雷の実に68%が不発でした!』

戦姫『…』

ル級『……それでも、近いうちに私たちの残存兵力を挙げた攻勢をかけるつもりですか?』

戦姫『…仕方ない。それが“上”からの命令だ』

ル級『“上”…ですか。その上が出してくる命令も、果たして当てにならないものばっかりですよ…今年になってからは特にです』

戦姫『…それでも従わなければならないのが私たちだ』

97以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:37:45 ID:OmKqKjf.

ル級『…今度、もし大攻勢をかけようものなら、私たちは間違いなく全滅しますよ』

リ級『…』フフッ

ル級『何がおかしいの?』

リ級『だとしたら因果なものね』フン

ル級『…何よその言い方。真面目に聞いてるの?』

リ級『…』

戦姫『よく無事で帰ってきたな…傷はどうだ?』

リ級『私の傷はどうってことありません。もう修復してます』

リ級『…私が怒ってるのは、あの娘のカタパルトが明らかにまだ不調だったにもかかわらず出撃を強行させたことです』

戦姫『…このじり貧の状況では仕方ない。出せる戦力は出し切らなけばならないのだ』

リ級『そうね。それで、あの娘がみすみす敵の手に落ちて捕虜になってしまったのも仕方ないってわけですね。そういうことなのね』

ル級『いい加減になさいよ!終わってしまったことをいつまでもぐちぐちぐちぐちと!!!戦姫様に失礼でしょう!?』

98以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:38:58 ID:OmKqKjf.

戦姫『…捕虜になった、というのはどういうことだ?お前はそれを見ていたのか?』

リ級『…そうじゃありません。日本軍が去った後、あの海にあの娘の残骸は欠片も見つかりませんでした。ですから状況からみて、あの娘は…敵のヨコスカ鎮守府に拿捕されていったんだと思います』

戦姫『…』

ル級『…へえ。それで?』

リ級『…それで?って何よ…!?』

ル級『だから、そうだとして一体貴女は何を期待してるの?戦力を編成して敵の本拠地に乗り込んで、あの娘の救出作戦でもしたいの?』

リ級『…何なのよそれ。じゃあ貴女はあの娘が日本軍から情報を搾り取られた挙句、嬲り殺されてもいいって言うの!?』

ル級『現状がそれを許さないってことくらい貴女にも分かるでしょう!?』

戦姫『二人ともいい加減にしろ!!』

ネ級『…』シクシク

ル級『…』

リ級『…』

99以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:40:23 ID:OmKqKjf.

リ級『分かりました。なら、私一人で行きます』

ル級『なっ…!貴女、一人で敵地に乗り込む気!?』

リ級『そうよ。それなら文句ないでしょう?』

ル級『…貴女だって大切な戦力なのよ!?そんなことで命を危険にさらすような…』

戦姫『…待て』

リ級『…』

戦姫『…私たちを、見捨てないでくれよ』

リ級『…』スッ

100以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:42:46 ID:OmKqKjf.

大本営海軍部・軍令部第一部 部長室

提督「失礼いたします!」

参謀「入れ」

提督「…あ、あなたは…!!!」

参謀「…久しぶりだな。海大卒業以来か?」

提督「…先輩…だったんですか」

参謀「…このたびパラオ鎮守府から異動となり、新たに軍令部第一部長職を拝命した。貴様も将官なら海軍官報にはきちんと目を通しておくんだな」

提督「…」イラッ

提督「…相変わらず辛辣ですね」

参謀「…」

提督「ともあれ、まずはご栄転おめでとうございます」

参謀「………一体どこがめでたいというんだ」ボソッ

提督「?」

101以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:44:48 ID:OmKqKjf.

参謀「ところでだ。例の作戦…貴様は『決号作戦』の詳細については聞いているな?」

提督「はい」

参謀「…」

参謀「貴様、作戦について何か思うところはないか?」

提督「…お話の意味がよくわかりませんが?」

参謀「…」

参謀「率直に言う。軍令第一部としては、この作戦には反対だ」

提督「…は?」

提督「どうしてですか。敵の残存兵力を我が近海に引き寄せ、それを自分の艦隊を主幹とする友軍が全力をもって迎撃、これを殲滅せんとする…」

提督「この作戦のどこに反論の余地があるんです?自分には分かりかねます」

提督「敵兵力が質量ともに著しく低下し、彼我の優劣が明確となった今こそ、今次作戦を成功させれば人類の悲願である深海棲艦の完全な壊滅を…」

参謀「敵の残存兵力が雁首並べておめおめ我が制海圏下にやってきてくれるという根拠はどこにある?」

提督「…」

102以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:45:30 ID:OmKqKjf.

参謀「貴様が敵の司令官なら、貴重な兵力をむざむざと敵の膝元に差し出す真似をするか?そう聞いているんだ」

提督「っ…」

提督「ですが、作戦要綱の通りに、小規模な囮艦隊で刺激すれば、敵はこれまでのデータから鑑みても間違いなく…」

参謀「ふん。…司令官としては愚の骨頂だな」フン

提督「…何ですって?」ムカッ

参謀「俺が敵司令官なら、これ以上無理はせず深海棲艦の特徴を生かした海上ゲリラ戦を採る。先の大戦で敵ガトー級潜水艦が我が国に対してやったようにだ」

参謀「その上で人類側に再び損失を強い、こちらは戦力を温存・再編させて再起を図る」

参謀「それが常識的なセオリーの一つだ。どうだ?」

提督「…」

参謀「人類の思惑通りに敵が動いてくれるなどとはおめでたいにも程がある」

提督「そ、それは…」

参謀「作戦意思の決定にあたり希望的観測を持ち込むのはタブーだと海大で教わったはずだ。忘れたか?」

103以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:46:33 ID:OmKqKjf.

提督「陛下が裁可された作戦に対し横槍を入れることは言語道断だとも教わりましたが?」

参謀「…何だと?」

提督「…今次作戦に不満があるのなら、なぜはっきり異議申し立てをなさらないんですか…??」

参謀「…」

提督「今次作戦は大本営統帥部が正式に決定した作戦です」

提督「ということは、この作戦には陛下のご裁可もあるということです」

提督「…にもかかわらず、先輩は今次作戦の発動に批判的でいらっしゃる」

提督「しかもその発動の阻止を、大本営に対してではなく一鎮守府に対して行った…」

提督「これは明らかに、軍の統率を無視した統帥権干犯ではありませんか!!!」

参謀「っ!」

提督「…」

参謀「大本営が来ると言ったら来る、だと?」

104以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:47:14 ID:OmKqKjf.

参謀「ふふん。唾棄すべき精神主義だな。貴様の言いよう、まるで神風は必ず吹くと言わんばかりだ」

提督「何ですって?」

参謀「我々の先輩の中に、そうした空疎な精神主義に冒され、若く有望な将兵を、あたら無為に自爆攻撃に至らしめた愚か者どもがかつて存在したことを思い出しただけだ」

提督「…」

提督(…大本営が来ると言ったら敵は実際に来るんだ。敵の行動分析の結果からしても、今までずっとそうだったじゃないか!!!)

提督「先輩は敵に勝ちたくないんですか?」

提督「ただでさえ不況と震災に苦しんでいた日本に降ってわいた深海棲艦という脅威」

提督「いっとき我が国は完全に崩壊してしまう一歩前まで追いやられました」

提督「しかし、過去からよみがえってきた艦娘たちのおかげで、今や彼我の優劣は逆転したんです」

提督「あと少し…あと少しで、日本は…いえ人類は深海棲艦を壊滅させ、海上交通の安全を手に入れることができるんです!」

提督「ひいては、それが人々の生活と未来のためになるんです!」

105以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:48:36 ID:OmKqKjf.

参謀「戦争に勝ちたいのは俺も同じだ…!だがな…!」

提督「だが何なんです?」

参謀「…いいか、俺は命令しているんじゃない。ただ艦隊司令である貴様に、今作戦への盲従は決して将来のためにならないということを強く言っておきたいのだ」

提督「その将来とは一体誰の将来ですか?」

提督「国家ですか?海軍ですか?…それとも先輩ご自身ですか?」

参謀「…その全ては言うに及ばない。それだけではない」

参謀「貴様の将来も含まれているのだ」

提督「俺の…?」

参謀「貴様…艦娘とのケッコンはまだだったな?」

提督「…そうですが?いきなり何の話を…」

参謀「ケッコンしないまま戦争を終えるつもりか?」

提督「あり得ません。決号の発動前にはケッコン指輪を渡したいと考えています」

参謀「それはめでたいことだ。相手がどの艦であろうとな」

提督「…??」

106以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:49:26 ID:OmKqKjf.

参謀「だが…貴様が相手に選ぶ艦娘も…いや、貴様が指揮下に置いているすべての艦娘も、決号を強行すれば失われるかもしれんのだぞ」

提督「どういうことですか!?まるで自分の指揮では艦隊が海の藻屑になってしまうみたいな言い方じゃないですか!」

提督「…確かに軍事作戦ですから、こちらにも損害は出るでしょう」

提督「しかし、自分は信頼する艦娘達と一心同体で戦い、必ず全員そろって勝利の時を迎えてみせますよ…!!!」

参謀「…貴様は腐っても俺の後輩だ。敵に勝利するのは間違いないだろう」

提督「…」

提督「…???」

提督「何を言ってるんです…?」

提督「敵には勝てる、しかし艦娘も失う…?」

提督「特攻作戦でもないのに、どうしてそんな矛盾したことを…??」

参謀「…作戦にあたって特殊物資が手元に届かなかったか?」

107以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:52:00 ID:OmKqKjf.

提督「特殊物資…ああ、決号のために艦娘全員に配布される指輪のことですか?」

参謀「そうだ」

提督「はい。受領しています」

参謀「…貴様はその物資がどういった性質のものかは知っているのか?」

提督「艦娘達の練度をいくばくかアップする指輪でしょう?」

提督「ケッコン指輪ほどの能力はありませんが、それでも艦娘全員の練度が多少なりとも上がるのであれば…」

参謀「そうか。では、その特別物資は俺によこしてくれ」

提督「…は?」

参謀「そんな小細工に頼るのは日本海軍の名折れだ。この戦いには必要なかろう」

提督「指輪を全部寄越せですって!?それは明らかに利敵行為です!先輩、あんたは深海棲艦のスパイですか!?」

108以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 21:53:19 ID:OmKqKjf.

提督「その指輪は艦隊全体の練度を底上げするために使う画期的なものです!それがないばかりに轟沈艦が出たらどうするんですか!陛下があんたを許そうとも俺は許さないぞ!」

参謀「貴様はバカか!そんな指輪がどうしてこのタイミングで出てきたのか少しは頭を使って考えてみろ!」

提督「バカはあんたでしょう!!どうせあんたはパラオでもその仏頂面で通してきたんでしょう!!どうせあんたは艦娘を兵器としか考えられないんだろ!!」

参謀「もう一度言ってみろ貴様!」ガタッ

提督「ああ何度でも言ってやる!この金づち野郎!!艦娘を道具としか思ってないこの人非人!」

参謀「貴様ぁああああ!!」ボカッ!

提督「ぐっ…」ヨロ

参謀「…」ハァハァ

提督「…帰ります。上官侮辱罪で告訴なさりたいなら、どうぞご自由にされてください」

ガチャ バタン

参謀「……くそっ!!!!」

109以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 22:11:48 ID:OmKqKjf.

夜 横鎮防波堤

ザパーン… パシャ… ザパァアアアン…

木曾「…」カチャ…

木曾「…」パタン…

木曾「…」カチャ…

ザッ

木曾「!!」

木曾「だ、誰だ…?」

大井「…やっぱりここにいたのね、木曾」

木曾「お…大井姉さんか…」

110以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 22:12:33 ID:OmKqKjf.

大井「…それ、“提督”からもらったものよね?」

木曾「…」パタン

木曾「…夜遅くに何だよ。まだ起きてたのかよ」

大井「誰のおかげで遅くまで悩んでたと思ってるの?」

木曾「…」

大井「ねえ木曾…貴女、いつまで他の娘たちとの間に壁を作るつもりなの?」

木曾「…」

大井「…ここに私たちと転属してきてこのかた、貴女、ずっと周囲に素っ気ないまま来てるじゃない」

木曾「…」

大井「言いたかないけど、貴女、一部の艦娘たちから敬遠されてるわよ」

木曾「…だろうな」

大井「北上さんも、多摩姉さんや球磨姉さんも心配してるのよ?まるゆだって…」

111以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 22:13:37 ID:OmKqKjf.

木曾「…俺のせいで姉さんたちにまで迷惑かけちまってるのは申し訳ねえな」

大井「そんなことはいいの!」

木曾「!?」

大井「…まあ、貴女が北上さんの心痛の原因になってることに腹が立たないと言えば嘘だけどね」クスッ

木曾「…」

大井「ねえ、木曾?貴女…」

大井「忘れられないんでしょう、あのパラオ鎮守府にいたころの事が」

木曾「っ…」

大井「気持ちは…分からなくもないわ。けど、もう終わってしまったことなのよ」

木曾「…分からなくもないって何だよ」

大井「…」

112以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 22:14:47 ID:OmKqKjf.

木曾「…大井姉さんには北上姉さんがいるじゃねえか。そして球磨姉さんには多摩姉さんがいる」

大井「…」

木曾「俺は…ずっと独りぼっちだった」

大井「木曾、…」

木曾「だけどな姉さん、俺にはその寂しさから逃れることができた日々が、あの時、確かに存在したんだよ!」

大井「っ…!」

木曾「…結局、短い幻みてぇに終わっち まったけどさ」

大井「…」

木曾「姉さん…お願いだよ。こんな俺にだって、すがり付きてぇ過去の幻があるんだ。それを…邪魔しないでくれよ…」

大井「…」

113以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 22:16:42 ID:OmKqKjf.

大井「…ごめんなさい。遅くに押しかけて悪かったわね」スッ

大井「…けど約束して。作戦中に死に急ぐようなことはもう絶対にしないで」

木曾「!!」

大井「…大和さんから聞いたわよ。今日の戦闘のこと」

木曾「…もしかして、大和に…喋っちゃいないだろうな…?姉さん…」

大井「“提督”との事?…もちろん、言わないわ」

木曾「…すまねえ。ありがとな」

大井「…貴女は、私たちの大切な妹なんだから。…それだけは忘れないでね。それと、せめて同じ戦隊の娘たちには笑顔を見せてあげて」

木曾「…」

大井「じゃあね…おやすみ、木曾」ザッ

木曾「…」

バシャーン… ザパァアアン…

114以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 22:17:19 ID:OmKqKjf.
また今度ね

115以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/19(火) 22:36:05 ID:/Qp/mlro
おつ

116以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/20(水) 05:00:56 ID:7bCwYahU
どうかBAD ENDだけは……BAD ENDだけは、堪忍してくだせぇ……

117以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/20(水) 09:46:10 ID:PEe49/eg
この提督は駄目だな

118以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/21(木) 12:00:04 ID:nr2IYRZw
正直木曾以外全滅して最悪な終わりにしてほしい

119以下、名無しが深夜にお送りします:2016/01/21(木) 13:46:57 ID:fky5JsdM
勝手に自分で書いてどうぞ

120以下、名無しが深夜にお送りします:2016/02/12(金) 09:35:35 ID:CCsmx2ek
速攻でエタった

121:2016/02/29(月) 20:17:14 ID:z9AhfYok
週末に投下します

122以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/01(火) 03:05:20 ID:xubOOBM6
お帰りなさい
待ってるよ

1231:2016/03/06(日) 08:29:07 ID:h4kJ.fM.
仕事前に投下

1241:2016/03/06(日) 08:31:10 ID:h4kJ.fM.

次の日

横須賀鎮守府 倉庫の一角

提督「これが、拿捕したヲ級か…」

大和「はい。他の艦娘たちには伏せたうえで、ここに拘束しています」

天龍「カタパルトと砲塔は取っ払って海に沈めた。こいつに残ってるのは推進系だけだ」

提督「…」

提督「………」

ヲ級「…」ションボリ

大淀「ともあれ、この戦争で敵深海棲艦を無傷で拿捕した艦隊司令は提督が初めてのはずです。おめでとうございます」

提督「…めでたいんだろうか」

大淀「提督…このヲ級の処遇については、もうお決めになってますか?」

提督「…そこなんだよ。迷いどころは…」

提督「なぁ大和…お前はどう思う?」

大和「私は、提督がどう判断されようとも、その決断に従います」

天龍「俺らもだ」

125以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/06(日) 08:45:46 ID:h4kJ.fM.

大淀「ええ」

雷「そうね」

電「なのです!」

提督「……………お前らにとっては…深海棲艦は憎むべき敵だろう?」

天龍「…かも知れねぇな。けど、正直ここまで近くで向き合ったことはねぇからな…」

大和「…まるで、私たち艦娘と生き写しですね。このヲ級…」

提督「お前たちと同じ人間の少女、だ。紛れもなく…」

提督「…人型の深海棲艦の素顔ってのは…まさしく人そのものだな…」

提督「…俺は、正直なところこのヲ級を殺処分したくはない」

大和「…」

126以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/06(日) 08:47:08 ID:h4kJ.fM.

提督「もちろん、深海棲艦どもには俺だって辛い思いをさせられた。開戦初期には罪もないタンカーや輸送船を沈められ…」

提督「……同じ釜の飯を食ってきた同期や先輩達も、イージス艦と共に海に散っていったし…」

提督「艦娘艦隊の司令官となってからは…沈めてしまった艦娘も、一人や二人じゃ……」

大和「っ…」

提督「…しかし…ふっ…、まさかこうもあどけない少女だったとはな…。神様も残酷だよ、見るんじゃなかったかも知れないな…」

提督「……笑ってくれ。無線越しじゃなく、こうして…それも無抵抗の敵を目の当たりにしてしまった以上、俺は非情にはなり切れない」

提督「甘いと思うか?」

大和「…提督の危惧されているところは理解できます。確かに、深海棲艦を沈めず拿捕したという事実は、他の皆の士気にも関わるかもしれません。二重の意味で」

大和「躊躇いを覚える娘と、一層の憎悪を募らせる娘とが出てくるかもしれません…というか、きっとそうなるでしょう」

大淀「艦娘は日々敵と命を的に砲火を交えているんですし、実際に僚艦や姉妹艦を沈められた娘もいますから…」

提督「…」

大和「…でも、無抵抗の敵を害するのは、やはり私たちの誇りに反すると思います。かつて帝海の軍艦だった私たちの誇りに…」

天龍「ああ。シーマンシップってやつだ」

127以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/06(日) 08:56:56 ID:h4kJ.fM.

提督「だが…そんな甘さがお前たちを決号作戦で殺してしまうかもしれないぞ…?」

大和「私たちが、提督の甘さを補えないほどに弱いとお思いですか?」

提督「………!」

提督「…そうか。分かった。俺の腹は決まった」

提督「このヲ級はこのまま、終戦までここに拘束・秘匿する。他の艦娘たち、大本営やマスコミにはもちろん伏せておこう」

提督「戦争が終わって、大本営の戦時体制が解除され、報道体制も平時状態に戻ってから、改めてこのヲ級の存在は公にしよう」

提督「…その方が、今このヲ級の存在を明らかにするよりも幾分状況がいいに決まってる。…あとは戦後の情勢がどう判断するかだな」

提督「…俺にできることは、これくらいだ」

提督「だがこれだけは約束する。人類のためにも、そしてお前たちのためにも…その生存のために、来たる決号作戦では敵に容赦はしない…!」

雷「…」ホッ

電「司令官さん、ありがとうなのです!」

天龍「よかったな、チビ空母」ツンツン

ヲ級「…???」

128以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/06(日) 08:58:38 ID:h4kJ.fM.

提督「ところで、このヲ級には何か食事を与えてるか?」

大淀「それが…彼らがどういったものを摂取しているのか分からないので、とりあえずゼリー状のレーションを与えてみたのですが…」

天龍「そこそこ食べるんだな、これが」

提督「…食べるのか。やっぱり…俺らと一緒なんだな…」

大和「…分からないことばかりですね」

提督「ではこの件は、ここにいる皆だけの秘密だぞ」

大淀「それと木曾さんも、ですね」

天龍「大丈夫だろ。あのヤロー、そもそも他の奴と話したりしてる様子もねぇし」

提督「…そうか」

提督「では俺は執務に戻る。お前たちも決戦準備のほうを頼むぞ。もう日がないからな」

大淀「はい!」

雷「でも元気ないね、このヲ級」

電「…虜囚は心細いと思うのです」

ヲ級(…)

129以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/06(日) 09:01:12 ID:h4kJ.fM.

ヲ級(ノーちゃん…)

ヲ級(私なんかを助けるために、沈められちゃうなんて…そして、私だけ生き残っちゃうなんて…!)

ヲ級(…)グスン

大淀「ではしばらくは、私達で交代でヲ級の様子を見に来ましょう。他の娘たちには見つからないようにね」

天龍「ああ」

大和「…」

大和「やはり…このヲ級を拿捕して帰ってしまったことが、結果的に提督を悩ませてしまいました…」

大淀「気にしなくていいと思いますよ」

大和「え…?」

大淀「大和さんがこのヲ級を冷徹に沈めることが出来る方だったとしたら…提督はそもそも大和さんに想いを寄せなかったでしょう」

大淀「いいんです。そうやって迷うということは、私たちがとりもなおさず魂と心を宿した人という存在であることの何よりの証明なんですから」

大和「…!」

130以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/06(日) 09:02:15 ID:h4kJ.fM.

横鎮 敷地内ベンチ

チュンチュン

武蔵「ふぅ…いい天気だな…」

まるゆ「…あ、あの…」オズオズ

武蔵「ん?お前は…?」

まるゆ「ご、ご挨拶が遅れました!今次再編でこちらに配属された、陸軍潜水艦のまるゆです!」

武蔵「おお、そういえばそうだったな。陸軍の可愛いチビっこだったな」ヨシヨシ

まるゆ「な!チビっこじゃありません!」

武蔵「はっはっは、かわいい奴め」

まるゆ「むぅ…」

まるゆ(武蔵さん、おっきい戦艦だから怖いと思ってたけど、人当たりがいいなぁ)

まるゆ「武蔵さん、いまお忙しくはなかったですか?」

武蔵「別に。見ての通り、ただ海を見ながらボーっとしてただけさ」

武蔵「…大和姉さんに秘書艦の任を譲ったからな。引継ぎも終わったし、やることが少し減ったのさ」

まるゆ「…なんか複雑ですね」

131以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/06(日) 09:03:27 ID:h4kJ.fM.

武蔵「複雑?…ああ、確かに秘書艦を降りることにはなったが、それより姉さんと再会できた方がずっと嬉しいよ」

武蔵「それに、別に私は姉さんみたいに提督に熱を上げてるわけでもないからな」

まるゆ「そうなんですか?」

武蔵「ああ」

まるゆ「ということは、他にだれかいい人がいるんですか?」

武蔵「…///」

まるゆ(あ、赤くなった)

武蔵「…私はな、ここに来る前は佐世保鎮守府にいたんだ」

まるゆ「佐世保って、九州は長崎の佐世保ですか?」

武蔵「ああ。私はそこで秘書艦をしてたんだよ」

まるゆ「へえ、佐世保でも…」

まるゆ「つまり、武蔵さんは佐世保の司令官さんの事が好きっていうことなんですね」

武蔵「…///」

まるゆ(あ、かわいい)

132以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/06(日) 09:04:13 ID:h4kJ.fM.

武蔵「…まぁ、私を初めて拾ってくれた男だからな」

まるゆ「おぉぅ」

武蔵「転属となってしまって、今はもう1000キロ以上も離れてしまったが…彼は約束してくれたんだ」

まるゆ「あ、彼氏なんですね」

武蔵「この戦争が終わったら、必ず迎えに来てくれるとな」

まるゆ「ごちそうさまです」

武蔵「だから私は戦えるんだ。待っててくれる人がいる、というその事実だけで…」

まるゆ「幸せですねぇ」

武蔵「戦争が終わればまるゆにもいい男が見つかるさ」

まるゆ「…」

まるゆ「……………」

まるゆ「…武蔵さんなら、ぜひ分かってくださると思います」

武蔵「ん?何か言ったか?」

まるゆ「武蔵さんに、お話しておきたいことがあるんです」

武蔵「話?何の話だ?」

133以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/06(日) 09:04:59 ID:h4kJ.fM.

まるゆ「…木曾さんのことです」

武蔵「木曾…ああ、姉さんが心配してるあの重雷装巡洋艦か…」

武蔵「様子はだいたい見聞きしてるから分かる。ずいぶんと尖ってるらしいな」

まるゆ「…この話をしたこと、木曾さんには内緒ですよ?」

武蔵「ああ。分かった」

まるゆ「…木曾さん、ここに来る前はパラオ鎮守府にいたんです」

武蔵「パラオ?ああ、南洋庁のあるパラオか」

まるゆ「はい。球磨型のみなさんやまるゆも一緒でした」

武蔵「そうだったのか…私はそこまで南洋に行ったことはないな。パラオはどうだった?」

まるゆ「…」

武蔵「…まるゆ?」

まるゆ「…最初は、あんまりいいところじゃありませんでした」

武蔵「?」

まるゆ「最初の隊長さん…司令官さんが怖い方だったんです」

武蔵「…」

134以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/06(日) 09:05:31 ID:h4kJ.fM.

まるゆ「とにかく、何かにつけて艦娘をひどく扱う人だったんです。…陸軍出身のまるゆなんかは、特にそうでした」

武蔵「…そうだったのか」

まるゆ「木曾さんは、そんなまるゆを気にかけてくれました。もちろん大井さんたちもそうでしたけど、とりわけ木曾さんはよくしてくれました」

まるゆ「そんなことをすれば、自分だって余計に司令官からいびられるのに…」

武蔵「…優しい姉貴分なんだな」

まるゆ「そうです、そうなんです」

まるゆ「でも、そのうち司令官さんが替わって、パラオ鎮守府はとってもいい鎮守府になりました」

武蔵「ほう、それはよかったな」

まるゆ「はい。…一番嬉しかったのは木曾さんだと思います」

135以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/06(日) 09:06:04 ID:h4kJ.fM.

横鎮司令官執務室

ガチャ ジーコジーコ

提督「もしもーし。横鎮だ。佐世保か?」

佐世保提督「ももしし。誰かと思えば貴様か」

提督「もうすぐ例の作戦発動だな。準備はどうだ?」

佐世保提督「ああ、順調だ。おかげさまで、皆元気でやってるよ。そっちは?」

提督「こっちもさ。色々あるが、皆張り切ってる。そっちも元気で何よりだ」

佐世保提督「そうか。ところで…貰った電話で悪いが、その、あいつは…元気にしてるか?」

提督「武蔵か?もちろん、元気にしてるよ」

佐世保提督「そ、そうか」ホッ

提督「妬けるねぇ」

佐世保提督「何言ってんだ。お前も大和といい感じなんだろ?水交社で噂になってるぞ」

提督「ははっ。お互い戦後が楽しみだなぁ。ええ?」

136以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/06(日) 09:06:48 ID:h4kJ.fM.

佐世保提督「まあな。半年前、武蔵がうちから転属になると知った時は目の前が真っ暗になったが…」

提督「悪いが今回、武蔵を秘書艦から外させてもらったぞ」

佐世保提督「構わん。貴様の手から少しでも遠ざかるんなら安心だ」

提督「何言ってやがる。俺を信頼してなかったのか」

佐世保提督「冗談だよ。同期の貴様の鎮守府が武蔵の転属先だったことは幸運だと思ってる」

提督「そうかそうか。心配するな、俺のハートを撃ち抜いたのは大和のほうだ」

佐世保提督「大和といえば…話は聞いたぞ。酷ぇハラスメント野郎もいたもんだな。例の馬鹿野郎、駿河の司令官だったっけか?海軍将校の風上にも置けない奴だな」

提督「同感だ。一生営倉から出られんようにしてほしいくらいだ」

提督「そういや、今度の軍令部人事でめんどくさいのが軍令第一部部長になったぞ」

佐世保提督「ああ、俺らの二期上の先輩だろ?あんな理屈屋がすぐそばにいるなんて、横須賀も大変だなぁ」

提督「人ごとみたいに言うなよこの田舎者ww」

佐世保提督「まあせいぜいがんばらんばwww」

提督「方言は分かりませんバイwwwバイバイww」

佐世保提督「泣くぞww」

137以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/06(日) 09:07:30 ID:h4kJ.fM.

提督「冗談はさておきだ。ところで…貴様、そっちに特殊物資…の指輪は送られてきたか?」

佐世保提督「ああ、届いたよ。うちの艦娘たちに配布して演習させてみたが、確かに練度が向上してる」

提督「やっぱりか。すごいよなぁ。これで決号も…」

佐世保提督「…だが、ヘンだとは思わないか?」

提督「…」

佐世保提督「こんなブツがあるんなら、どうしてもっと早いうちに実戦配備されなかったんだ?」

提督「…開発が遅れてたんだろ」

佐世保提督「だとしても、それならこの指輪についての前情報とか噂が出ててもおかしくないじゃないか」

佐世保提督「ついに最終決戦と言うこの時期になって唐突に出てきたんだぞ、あの指輪。貴様だって前もってそんな話、聞いてなかっただろ?」

提督「…軍機だからだろ。何せ開発元は民間じゃない、艦政本部だからな」

佐世保提督「にしてもどうも引っ掛かるな…。なんだろう、これ」

138以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/06(日) 09:08:24 ID:h4kJ.fM.

提督「心配すんな。現にその指輪で艦娘の練度が向上してる。その事実を前に、他に何が要るってんだ?」

佐世保提督「…まあ、そうだな」

提督「さっさとこの戦争に片をつけて、早いとこ武蔵を佐世保に帰してやるよ。そしたら結婚するんだろ?ケッコンじゃなくて、結婚のほうだ」

佐世保提督「ああ。うちの親も最初は渋ってたが、とうとう納得させてやったよ。今や逆に式を楽しみにしてるくらいだ。あとは戦後に武蔵を落とすだけさ」

提督「万々歳じゃないか。よく説得できたな」

佐世保提督「艦娘だって普通の少女と何ら変わらんことを一番よく知ってるのは俺たちだろ?」

提督「ああ。その通りだ」

佐世保提督「じゃあ、武蔵をよろしく頼む。貴様らも仲良くやれよ。そして決戦のほうも頼むぞ」

提督「ああ、絶対に誰も沈めないぞ。戦争が終わればダブルデートしようぜ」

佐世保提督「楽しみだ。その時はぜひ佐世保に来い。いい街だから案内してやる。じゃあまたな、しっかりやれよ。海兵128期、万歳」

提督「達者でな。海兵128期、万歳」

ガチャ チーン

提督「…」

提督「………特殊物資の件、不信を抱いてたのは俺だけじゃなかった、か」フゥ

139以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/06(日) 09:09:45 ID:h4kJ.fM.

まるゆ「…木曾さんは、本当に幸福だったんです。新しい司令官さんと巡り合えて…」

武蔵「…!!!!」

武蔵「…それは、…」

まるゆ「…木曾さんはあの時、艦娘じゃなく、…一人の恋する少女だったんです。武蔵さんと同じように」

武蔵「…」

まるゆ「でも、今度の鎮守府再編で、パラオ鎮守府は解散してしまいました。…木曾さんは、司令官さんと離れ離れになっちゃったんです」

まるゆ「それは、誰よりも木曾さんにとって、とってもとってもつらいことだったんです」

まるゆ「…その後、司令官さんからの手紙や連絡なんかも全くないみたいですし…」

武蔵「…」

まるゆ「とにかく…それ以来、木曾さんは自分を封じ込めてしまいました」

まるゆ「それだけじゃありません…まるゆにはわかるんです。木曾さんは自分を消してしまおうとすらしてる…」

武蔵「…!」

140以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/06(日) 09:10:43 ID:h4kJ.fM.

武蔵「そこまで…思い詰めているのか?」

まるゆ「それは不思議な事じゃありません」

まるゆ「木曾さんは…まるゆの知ってる誰よりも優しく、そして誰よりも清純な人ですから…」

まるゆ「このままじゃ…木曾さん、あんまりにも可哀想です…」

武蔵「案ずるな。この戦争が終われば、二人はまた会えるさ。うん、探して会いに行けるさ」

まるゆ「本当、ですか…?」

武蔵「そうだろ。そうは思えないか?」

まるゆ「…本当に、会えるんでしょうか…」

武蔵「え…?」

141以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/06(日) 09:11:16 ID:h4kJ.fM.
今日はここまで 
亀更新スマソ

142以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/06(日) 15:22:24 ID:pYU49ycw
おつおつ
面白かったよ

143以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 09:58:18 ID:B9Bkk9m6
提督「………特殊物資の件、不信を抱いてたのは俺だけじゃなかった、か」キリッ
前回参謀にボロクソ言ったアホはどこのどいつだよ

1441:2016/03/13(日) 13:20:38 ID:ld51Pyrw
日曜なのでゆっくり投下

145以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 13:22:47 ID:ld51Pyrw

まるゆ「武蔵さん、この戦争が終わったら、艦娘はどうなるんですか?」

まるゆ「…大本営は、統帥部は…皆さんが言っているように、本当に艦娘を普通の生活に解き放ってくれるんですか…?」

武蔵「…??」

まるゆ「皆さん、そのつもりで最終決戦を頑張って勝利しようとしてるんです。その希望は…本当にかなえられるんでしょうか…?」

武蔵「…提督たちだってそう言っている。戦争が終わったら、私たちは普通の少女として生きられるんだ、とな」

武蔵「私たちは昔みたいな鋼鉄の兵器じゃないんだ。こうして、互いに言葉を交わし、喜怒哀楽を抱きながら生きてる少女だ」

武蔵「そんな私たちを、戦争が終わったからと言って処分がなされるわけがないだろう?」

まるゆ「それは…そうかもしれません…けど…」

武蔵「心配する必要はないと思うぞ?」

まるゆ「武蔵さんがそうおっしゃるんなら…そうなんでしょうね…」

146以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 13:24:25 ID:ld51Pyrw

武蔵「ああ。というかそんなこと、私は気に掛けたこともなかった」

まるゆ「量産型だったまるゆと、大和型戦艦の武蔵さんの違いでしょうかね」

武蔵「ま、そんなことよりも今は目の前の作戦の準備だ。まるゆはどんな役回りを与えられてるんだ?」

まるゆ「まるゆは補給物資を抱えて戦闘海域に沈底待機してます。もし敵潜が出てきたら、その時は艦首魚雷で…!!」

武蔵「おお、その意気だ。補給も大切な任務だ、しっかり私たちを助けてくれ」

まるゆ「は、はいっ!!まるゆ、がんばります!」

武蔵「話してたら小腹がすいたな。よし、間宮にでも行くか!」

まるゆ「はい!」

まるゆ(…よかった。武蔵さんと話せて、少しは気が楽になりました…)

まるゆ(…木曾さんとも、またお茶しに行きたいな…昔みたいに…)

147以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 13:27:11 ID:ld51Pyrw
同じ頃

提督「…」テクテク

提督(…とりあえず、ヲ級の件はあれでよし、と…)

提督(それより、集中すべきは目の前の決号作戦だな…)

提督「…」

148以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 13:28:21 ID:ld51Pyrw




参謀『貴様はバカか!そんな指輪がどうしてこのタイミングで出てきたのか少しは頭を使って考えてみろ!』





提督「………………………………………くそっ…!先輩が余計なこと言うから、あれ以来心のどっかにモヤモヤが巣食っちまったじゃないか…!」





佐世保提督『…ヘンだとは思わないか?こんなブツがあるんなら、どうしてもっと早いうちに実戦配備されなかったんだ?ついに最終決戦と言うこの時期になって唐突に出てきたんだぞ、あの指輪。どうも引っ掛かるな…。なんだろう、これ』





提督「しかも同期だって、俺よりもまともに思考を働かせてやがった…!」

149以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 13:31:11 ID:ld51Pyrw


提督「…大本営に何か他意があるのか…?くそっ、海軍そのものに疑心暗鬼を抱いてちゃ、決号作戦に艦娘たちを送り出せねえ…!!」



<キュィーン カンカンカン



提督「…あ、ここは…」

150以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 13:32:01 ID:ld51Pyrw

工廠

工作妖精「…」トンテンカン トンテンカン

提督「……邪魔するよ」

工作妖精「あ、提督さん!」

提督「ご苦労さん。忙しそうだな」

工作妖精「何と言っても最終決戦前だからね。弾薬の増産で朝から晩までフル稼働だよ!」

提督「ありがとう。あまり根を詰め過ぎないようにな」

工作妖精「えへへ」

提督「…そこに並んでる弾薬は?」

工作妖精「ああこれ?大和さんから頼まれてたものの試作だよ。その名も新型三式弾!」

提督「新型三式弾??」

工作妖精「うん。大和さん、とっても張り切ってるみたいだよ。愛しの提督さんのお役に立とうって!」

提督「よ、よせよ」カァ

工作妖精「幸せ者だなぁ」コノコノ

151以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 13:33:22 ID:ld51Pyrw

提督「…そうそう。こんなに忙しいときに悪いんだが、時間に空きがあればこれを分析してもらいたいんだ」スッ

工作妖精「これは…ケッコン指輪?」

提督「いや、これはこないだ艦娘全員に配った練度向上用の指輪だ」

工作妖精「なんだ、ケッコン指輪に大和さんの名前入れるんじゃないんだね」

提督「このクソ忙しいときに優秀な妖精さんの手をそんなことで煩わせられるか…まあそれは今度お願いするよ」

工作妖精「えへへ、りょーかい……で、この指輪を…分析するって?これ、艦政本部直送ものでしょ?」

提督「…いやなに、初めて使うものだから、もし万が一不具合でもあれば困るなーって思っただけだよ。頼めるか?」

工作妖精「うん、分かった。まったく提督さんの艦隊の娘たちは幸せだね。ここまで気にかけてもらって」

提督「まあ、当然のことさ」

工作妖精「とにかく、急ぎでないんなら何とか時間見つけて分析してみるよ」

提督「忙しいのに済まないな」

工作妖精「いつもお世話になってるからねっ!」

152以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 13:42:14 ID:ld51Pyrw

吹雪「で、決号作戦序盤での私たちの艦隊の動きはこうこうこうで…」

叢雲「ふんふんふん」

白雪「なるほど…あっ!島風ちゃん!!島風ちゃーーん!!!」」

島風「えっ…何??」テクテク

白雪「ねえ、島風ちゃんも作戦会議に出てよ!」

島風「え〜、だって私たちのやることは要するに囮戦闘でしょ?」

白雪「そうだけど、でも艦隊内での打ち合わせをしとかなくちゃ…」

島風「いいもん。私一人だって十分な作戦なんだし」

白雪「えっ…」

深雪「おいおい…そりゃないだろ…」

島風「と、とにかく、私はいいから!じゃあね!」ダッ

白雪「あっ…行っちゃった…」

吹雪「…困ったなぁ…」

153以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 13:43:19 ID:ld51Pyrw

島風「…ふんだ。作戦会議なんて、私には意味ないよ」

島風「…だって協同戦闘なんて退屈で非効率なんだもん。みんな私よりおそいし」

島風「ね、そう思うでしょ?連装砲ちゃん」

連装砲ちゃんA「キュイ」

連装砲ちゃんB「………」

島風「あ〜あ、つまんない。潮風でも浴びに行こっと」タッ

154以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 13:44:53 ID:ld51Pyrw

防波堤

島風「あ…」

木曾「…」

島風「…ちょっと、ここは私の特等席なんだから。あっち行ってよ」

木曾「…俺が先客だ。生憎だったな」

島風「…このぼっち軽巡」ボソッ

木曾「…てめぇが言える立場か。それに俺は雷巡だ。ぼっち駆逐め」

島風「…」グッ

島風「た、大正生まれの鈍足のくせに!」

木曾「…」ハァ

島風「せ、せいぜい決号作戦では私の足引っ張らないでよね!それじゃ!」ダッ

木曾「…」アキレ

木曾「…ふん………」

155以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 13:57:52 ID:ld51Pyrw
  昼       飯

156以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 14:34:47 ID:ld51Pyrw

同じ頃 敷地内

大和「…」テクテク

榛名「あ、大和さん!」タッ

大和「は、榛名さん、こんにちは」

榛名「大和さん、どちらかに行かれるんですか?」

大和「ええ…今回せっかく横須賀鎮守府に来たのですから、せめて鎮守府の周りの地理をお勉強したいと思って…お散歩です!」

榛名「そうですか…なら不肖、この榛名がご案内しましょう!」

大和「いいんですか…?」

榛名「ええ。私のほうは決号作戦の準備もだいたい終わってますから。大和さんは?」

大和「はい、大和も妖精さんに新型砲弾の製作をお願いしてます。今のところは秘書艦業務も一段落しましたので…」

榛名「へぇ…。まあ何にしろ、今は一息つけそうってことですね!」

大和「すみません、お世話をおかけします」

榛名「何言ってるんですか、同じ戦艦じゃないですか」

憲兵「行ってらっしゃい」

157以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 14:35:31 ID:ld51Pyrw

大和「…♪」テクテク

榛名「大和さん、楽しそうですね」クス

大和「あ…つい浮かれちゃって…」

榛名「いいんですよ?」 

大和「大和は…70年近くも冷たい海の底で眠っていました。陽も当たらず、風もそよがず、花も咲かない寂しい海の底で…」

榛名「…」

大和「…だから大和はこうして陸をお散歩するのが大好きなんです。とっても幸せです」

榛名「ええ、榛名もです。過去の自分では決して見ることのできなかった陸からの海景…榛名は大好きです」

大和「ええ、分かります」

158以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 14:59:22 ID:ld51Pyrw

榛名「…あれ?」

ゴホッ ゲホゲホッ

榛名「お婆さん!お婆さんじゃないですか!」

婆ちゃん「おや…はるなちゃんじゃないの」

大和「お知り合いの方なんですか?」

榛名「顔見知りのお婆さんです。横須賀鎮守府は地域交流のために清掃や高齢者施設の慰問のボランティアもしていますから」

大和「へぇ…。それはいいことですね!」

榛名「ちなみにこのお婆さんは近くのデイサービスに通われてる方です」

大和「でい…さーびす?」

榛名「ご自宅での生活が難しい高齢の方が、日中だけ通いで利用される生活施設です」

大和「なるほど…そういった施設があるんですね…」

159以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 15:00:29 ID:ld51Pyrw

榛名「お婆さん、大丈夫ですか?」

婆ちゃん「大丈夫だよ。昔、若いころに喉をやられてしまってねぇ…」

榛名「…」

大和「…???」

婆ちゃん「勤労動員って知ってるかい?」

大和「ええ。大戦後期に、銃後の学生さんたちが農作業や工場での作業に動員されたことですよね?」

婆ちゃん「あら、若いのによう知ってるねぇ」

婆ちゃん「あたしゃこの近くの工場で、軍艦用の滑り止め塗料の配合作業をさせられてたんだよ」

婆ちゃん「その時、配合するシンナーのせいで喉が悪くなってしまってねぇ」

大和「っ…」

160以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 15:01:02 ID:ld51Pyrw

婆ちゃん「戦争は嫌だよ。どんな理由があったとしても、必ず誰かが命を奪われて、傷ついて、不幸になってしまうんだ」

婆ちゃん「何より平和が一番だよ…」

婆ちゃん「この歌を知ってるかね?」

婆ちゃん「若き 血潮の 予科練の…」

大和・榛名「七つボタンは 桜に錨…」

婆ちゃん「今日も飛ぶ飛ぶ 霞ヶ浦にゃ…」

大和・榛名「でっかい希望の 雲が湧く…」

婆ちゃん「あたしの最初の旦那が教えてくれた歌だよ。予科練にいたのさ」

婆ちゃん「…そして特攻で死んでしまったよ。短い新婚生活だったよ…」

大和・榛名「…」

161以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 15:01:39 ID:ld51Pyrw

婆ちゃん「綺麗な子だねぇ。名前は?」

大和「大和、って言います」

婆ちゃん「やまと、ちゃんね…。まつ毛が長くて綺麗な顔をしてるねぇ」

大和「そ、そんな…」カァア

婆ちゃん「お世辞じゃないよ。はるなちゃん、やまとちゃんに薄化粧のやり方を教えてあげたらどうだい?」

榛名「そうですね。それよりお婆さんに教えてもらったほうが綺麗だと思いますよ?」

大和「ひょっとしたら、半世紀以上前にお婆さんが必死に作ってくれたお化粧品のお世話になってたかもしれませんし…」

榛名「ね」

婆ちゃん「??」

???「あ、見つけたっ!!!」

大和・榛名「???」

162以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 15:02:26 ID:ld51Pyrw

介護職員「はぁはぁ…お婆さん、こんなところにいらっしゃったんですか…」ハァハァ

婆ちゃん「あれ、見つかっちゃったかね」

介護職員「見つかっちゃったじゃないですよ!もう、勝手にデイを抜け出したりして!あたし達がどれだけ心配して探したか…」

婆ちゃん「塗り絵をしたり唱歌を歌ったりだなんて退屈なもんさ。抜け出して何が悪いもんかね」

介護職員「はぁ…。もういいから戻りましょう?ほら、所長もハイエースで迎えに来てますから」

介護職員「あ、ハルナさんもいらっしゃったんですね!」

榛名「お久しぶりです。お仕事ご苦労様ですね」クスッ

介護職員「ほんとですよ…もう、このお婆さんには鍛えられっぱなしです…」ハァ

介護職員「そちらの方は?」

大和「大和です。はじめまして」

介護職員「あ、はじめまして!ヤマトさんもお仕事頑張ってくださいね!」

大和「…!」

大和「はい!ありがとうございm…」

???「おい」

163以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 15:04:00 ID:ld51Pyrw

介護職員「あ、所長…」

デイ相談員「…お婆さん、探しましたよ」

婆ちゃん「あれ、所長さんまで来てるのかね」

相談員「さ、帰りますよ。乗って乗って」

婆ちゃん「やれやれ、捕まっちまったねぇ。じゃあまたね、はるなちゃん、やまとちゃん」

介護職員「し、失礼します…」

バタン ブロロロロ…

介護職員「すみません、所長。お待たせしました」

介護職員「申し訳ありません。利用者を行方不明にさせてしまって…」

相談員「……まあしょうがない。エスケープは困るが、一人で外出しようとされるのは、それだけお元気な証拠ってもんさ。ま、これからは見守りをより徹底してくれ」

介護職員「ええ…」

相談員「それより…お婆さんを艦娘と会わせたのか?」

介護職員「あ、会わせたというより、偶然出会ったみたいで…」

相談員「ちっ…困るよ…うちの利用者さんを不必要に艦娘なんかと接触させるなんて」

介護職員「…」

164以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 15:05:05 ID:ld51Pyrw

相談員「上は高齢者と艦娘の交流機会をぜひ取れって言うけどさ、俺自身は嫌なんだよな」

相談員「あいつら、殺人兵器だろ?」

介護職員「!?」

相談員「介護現場にロボットなんかを導入しようって言うのと同じで、不気味さしか感じないよ」

介護職員「所長、艦娘さんはロボットじゃ…」

相談員「じゃああいつらは人間か?」

介護職員「でも艦娘さんたちがボランティアでデイに来てくれたら利用者さんたちや、そのご家族も喜んでくださってるじゃないですか…」

相談員「…」

介護職員「私たちだって業務が軽減されて助かってるっていうのに、そんな言い方って…!」

相談員「だとしてもあいつらが兵器であることに違いはないだろう!」

介護職員「…」

介護職員「所長、お言葉ですが、人間だって完全じゃありません。そうでなければ、夜勤中に入居者を建物から突き落す事件が起こるでしょうか?」

介護職員「そんな人の皮を被ったような悪魔より、ハルナさんたち艦娘さんたちのほうが、どれほど人間らしいか…」

相談員「周囲の環境に左右されうる人間と、存在そのものが何かを破壊するためにある艦娘を一緒にするのか!?」

介護職員「…」

165以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 15:08:28 ID:ld51Pyrw

相談員「そうでなくても今度の制度改定でうちみたいな小規模通所型は経営が大変なんだ」

相談員「完全に法人内の特養とかSS(ショートステイ…短期通所)の収益に助けられてる状況さ」

相談員「その特養やSSのベッド稼働率も大変なことになってるんだ。待機者が50人いようが100人いようが、特養はホテルとは違うからな…」

相談員「ったく…。それもこれも政権が軍事に…艦娘なんかにカネを使いまくるからだ。肝心な社会福祉はなおざりにしちまいやがって…!!」

介護職員「…今度の介護保険制度改定で、レセプトの中で介護職員処遇改善加算を取れるようにもなったのに、ですか?」

相談員「…マイナンバーとかいう面倒で煩雑な制度を持ち込まれて、介護現場の仕事を無駄に増やされているにもかかわらず、そう言えるのか?」

介護職員「…」

相談員「…もういい。早く戻ろう」

介護職員「…はい」

婆ちゃん「zzz」

166以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 15:09:36 ID:ld51Pyrw

榛名「…榛名は、あのお婆さんとお話しするたびに、いつも複雑な思いになります」

大和「…分かります」

大和「でも決して、あのお婆さんは大和たちのことを嫌ったり、傷つけたりしようとしてああ言ってるんじゃないと思います」

榛名「ええ。その通りです」

大和「ただ…大和たちの本来の存在理由が求められる状況というのは、同時にいろいろな人たちの幸せをも奪い去ってしまう状況でもあるということなんですね」

榛名「…皮肉でもあり悲しいことでもありますけど、そうですよね」

榛名「…だから榛名は、この戦争が終わって、早く普通の女の子としてお姉さまたちや他の娘たちと幸せに、そして平和に過ごせる時が来るのを心待ちにしてます」

大和「それは…いいですね…!」

榛名「何を言ってるんですか?」

大和「?」

167以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 15:14:06 ID:ld51Pyrw

榛名「人ごとじゃありません。大和さんも一緒に普通の女の子として幸せになるんです。…提督と」

大和「!!?」

榛名「大和さんが提督のことをお慕いしているのは周知の事実じゃないですか。提督も大和さんに同じ想いを持たれてるようですし…」

榛名「…ちょっと妬いちゃいますけどね」ボソ

大和「…大和が、そんなに幸せになってもいいんでしょうか?」

榛名「え…???」

大和「…」

榛名「…どうして……そんなことを言うんです?……ご自分に自信を持てないんですか?」

大和「…」

168以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 15:15:05 ID:ld51Pyrw

榛名「榛名には不思議です。私たちの象徴たる大和さんともあろう方が…」

大和「でも…大和は…」

憲兵「おうお帰り」

榛名「あ、憲兵さん」

大和「戦艦大和と戦艦榛名、ただ今帰投しました!」

憲兵「そうそう、提督が大和ちゃんのこと探してたよ。頼みたいことがあるから帰ったら執務室に来てくれってさ」

大和「…?」

榛名「あらあら」クスッ

169以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 15:23:12 ID:ld51Pyrw

司令官執務室

提督「おう大和、お帰り。散歩はどうだった?」

大和「はい、榛名さんとご一緒出来て、楽しかったです!」

提督「そうか、そりゃよかった」

大和「それで、ご用件は?」

提督「ああ。明日だけどな、大本営に行ってもらいたいんだ」

大和「大本営…軍令部にですか?」

提督「そうだ。決号作戦の物資絡みの稟議書を出してもらいたくてさ」スッ

大和「提督印、秘書艦印、各戦隊旗艦印…全部揃ってますね」パラ

提督「ああ。あとは軍令部のお偉方に査収してもらうだけだ。決戦前に書類関係は片しときたいしな」

大和「はい、分かりました」

大和(提督もお忙しいですもんね。これくらいの事はお役に立たなくちゃ)フンス

提督(…俺が出向いてまた先輩に鉢合わせしたら…気まずいしな…)

170以下、名無しが深夜にお送りします:2016/03/13(日) 15:23:56 ID:ld51Pyrw

コンコンコン

天龍「邪魔するぜ。今日の演習の結果を…って取り込み中か。何かあったのか?」

大和「ええ。明日、大和は軍令部におつかいに行くよう命ぜられました」

天龍「あ、提督!!俺も大本営行きたい!!」ピョンピョン

提督「え?ったく、遊びに行くんじゃないんだぞ…」

天龍「コーガクのためだよ。いいだろ?」

提督「わかった。なら木曾も随員として一緒に連れて行け」

天龍「えーーーー!?やだよ、せっかくの外出なのに、なんであんな野郎と…」

提督「その“あんな野郎”と背中を守り合いながら戦うんだぞ。水雷戦隊の面倒見のいい姉貴分の言葉とは思えないなぁ」

天龍「ちっ…分かったよ」

提督「おお。それでこそ我らが天龍だ。期待してるぞ」

天龍「けっ…褒めても何も出ねえよ」ピコピコピコ 
 
大和(提督、天龍さんの扱いがうまいなぁ)


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