したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

幽霊「ツーリング浪漫を求めて」女「仕方ないから付き合います」

47以下、名無しが深夜にお送りします:2014/05/26(月) 22:16:25 ID:OXV0WSjk
同じVツインのVRX400もえぇバイクなんやで……

48以下、名無しが深夜にお送りします:2014/05/27(火) 00:03:49 ID:l6c.H7pY
VT系はいいよね、扱いやすくて壊れにくい
スパーダしか乗ったこと無いけど低速からトルクあるし回せば速いし楽しかったなあ

49以下、名無しが深夜にお送りします:2014/05/27(火) 08:44:22 ID:PPmi.qFw
俺はユーレイだからずっとゆうちゃんで読んでた

50 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 11:40:57 ID:Mj6uYtbk

……………
………


…約一ヵ月後、女の職場


女友「…で? 明日〜明後日の週末は、どう過ごすのかな?」

女「えーと…えへへ」


女友「全くもう…最近ぜんぜん付き合ってくれないんだから」

女「ごめんね、真夏や冬場は乗る頻度落ちると思うんだ」

女友「はいはい、どーせ私達はバイクに乗れない時の保険ですよーだ」


女「そんなつもりじゃないよ!」

女友「…解ってるよ、ちょっと意地悪言ったんだ」

51 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 11:41:57 ID:Mj6uYtbk

女友「でもさ、みんな心配してるからね?」

女「うん…」

女友「だってあんた、近くの○○峠に行ってるって言うじゃない」

女「…そんなに攻め込んだ走りはしてないよ」


女友「あそこ、事故多いって聞くしさ…ほら何年か前には死亡事故もあったって」

女「そうなの?」

女友「えー、有名だよ? 兄妹で二人乗りしてて、妹さんだけ死んじゃったって……胸が痛くなるような話でしょ」

女「妹だけ…」


女友「お兄さんもまだ未成年だったから大きく報じられはしなかったらしいけど、女子高生のユウレイ見たって話もあるよ」

女「!!」

52 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 11:43:19 ID:Mj6uYtbk

女友「近道に使えるから私も時々車で通るけど、ガードレールにいっつも花が供えてあるんだよね」

女「…△△市側に下りる手前のところ?」

女友「そうそう、ちょうどオトコの人が供えてるのも見た事ある。もしかしてその人なのかなって思うと…いたたまれないよ」

女「私も見たかも…」


女友「あんたは二人乗りするわけじゃないんだろうけど、危ないのは同じだからね?」

女「うん、解ってる」


女友「…やだよ? 同僚達と花を供えに行くなんて」

女「お花よりお菓子がいいかな」

女友「ぶっとばすよ」

女「…ごめん」

53 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 11:44:06 ID:Mj6uYtbk

……………
………


…翌日


ドロロロロロッ──


幽《──おはようございます》フワッ

女「…おはよ」

幽《あれ…元気ないですか?》

女「ううん…大丈夫だよ。パーキング、誰もいなかったら停まろっか」

54 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 11:44:59 ID:Mj6uYtbk

………



幽《──そう…聞いたんですか、私がユウレイになった事故の事》

女「やっぱりそうなんだ」

幽《…はい》


女「ガードレールの花…お兄さんが供えてるんだよね?」

幽《毎月はじめの休みの日に必ず来てくれます。土曜日だったり日曜日だったりはするけど》

女「うん、先月の時は見かけたよ」

幽《…気付いてたんですね。私も目が合ったかなと思いました》


女「お兄さんが乗ってたバイクって…もしかして?」

幽《私はよく知らなかったけど、確か『スーパーフォア』って言ってたと思います》

女「乗せてもらったって言ってたもんね」

55 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 11:46:11 ID:Mj6uYtbk

幽《でも、お兄ちゃん…バイク乗らなくなっちゃった》

女「無理もないかな…」


幽《『乗せて』ってせがんだのは私なんです》

女「…うん」

幽《お兄ちゃんは『危ないから』って言ってたのに『安全運転でツーリングに連れてって』なんて、しつこく》

女「………」

幽《それでお兄ちゃんは、休みの日に部活がある私を『学校に送るだけしてやる』…って》


幽《朝、行きがけは遠回りしてでもこの峠は通りませんでした》

幽《…でも帰りの時間、部活が長引いて遅くなってしまって》

幽《私はその日、友達の家の誕生日会に呼ばれてて》

幽《お兄ちゃんに『19時までにどうしても帰りたい』って無理を言って…》

56 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 11:47:08 ID:Mj6uYtbk

女「…帰りはここを通ったんだ」

幽《春の事で、もう辺りは薄暗かったです》


女「あのコーナー、砂が出てる事あるよね」

幽《もしかして明るい内…行きがけに通ってたら、それにも気付いてたのかもしれないですね》

女「…時間に追われて、薄暗い峠道…か」

幽《危ないですよね、どう考えても》


幽《…お兄ちゃんは悪くない》

幽《砂が出てたとはいえ、運転のミスはあったのかもしれません》

幽《でも無理に後ろに乗ったのも、急かしたのも…私なんです》

幽《なのにお兄ちゃん…すごく傷ついて…バイクもやめちゃった──》

57 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 11:48:04 ID:Mj6uYtbk

女「お兄さんには、幽の姿は見えないの?」

幽《…見えてないみたいです。私が死んだ事、受け入れられてないから…かな》


女「今日は月はじめの土曜日だけど、来てないみたいだね」

幽《わかりません…でもこの時間に来ないなら、明日なのかも》


女「…よし、話そう」


幽《えっ…?》

女「お兄さんがずっと罪の意識に囚われてるの、辛いんでしょ?」

幽《それは…そうだけど》

女「お兄さんに落ち度が無いわけじゃないけど…でも、あまりにも悲し過ぎるよ」

58 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 11:49:07 ID:Mj6uYtbk

幽《でも、どう言うんですか? ユウレイの私に会ったって…?》

女「それしかないよね、本当の事だし」

幽《女さん、変な人扱いされちゃいますよ》


女「大丈夫! 同僚からはすっかり『バイクが恋人の変人』扱い受けてるよ!」

幽《…それは、確かに》


女「あん?」ピキッ

幽《な、なんでもないですっ──》

59 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:33:23 ID:NKaHf3oM

……………
………


…その夜、女の部屋


女(明日、お兄さん来るかなー)

女(間違いなく怪しまれるだろうけど…話せば解るんじゃない?)

女(だって当時高校生の幽と、今OLやってバイク乗りの私…接点が無いはずだもの)


女(あれから幽の事は随分聞いた)

女(お兄さんに対して、私がユウレイになった幽を知ってるって根拠にできるように)

女(好きだった食べ物…アーティスト、お兄さんと観に行った映画)

60 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:34:09 ID:NKaHf3oM

女(お兄さんが少しでも罪の意識から救われて、悲しみが癒えるなら)

女(…それでまたバイクに乗るようになるかは、本人次第だけど)

女(少なくとも、幽はお兄さんの事を恨んだりなんかしてないんだよ)


女(お兄さんが乗ってる軽自動車、なんの飾り気も無いベーシックなタイプだった)

女(年齢を考えれば、一番楽しい青春真っ盛りの頃のはずなのに)

女(きっと幽の事ばかりを考えて、自分が幸せになる事は避けてるんだ)


女(お兄さん…それじゃ逆に幽は悲しんでしまうんだよ)

女(きっと貴方がそうだから、幽は──)

61 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:34:53 ID:NKaHf3oM

……………
………


…翌日、峠道


──ヴァオオオォオォォンッ!


女(いけない…! 考え過ぎて眠れなかったから、起きるの遅くなっちゃった…!)

女(お兄さん、まだ居るといいけど…)


幽《──ちょっと飛ばし過ぎですよ、女さん》フワリ

女「幽! 遅くなってごめん、お兄さんは!?」

62 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:35:29 ID:NKaHf3oM

幽《大丈夫です。さっき来て、まだゆっくりしてます》

女「そっか、よかった…」ホッ


幽《でも、女さん。やっぱりやめませんか…?》

女「何を言ってんの、お兄さんの心を軽くしてあげたくないの!?」

幽《それは…でも、私…》


女(言いたい事…怖れてる事は解ってるよ、幽…)

幽《………》

女(それを考えてたから、昨夜は寝付けなかったんだよ──)

63 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:36:05 ID:NKaHf3oM

………



幽兄「──暑くなってきたな」

幽兄「もう花屋には、向日葵が列んでたよ」

幽兄「好きだったろ、お前」


幽兄「……もう三年以上にもなるんだな」

幽兄「兄ちゃん…お前がいないなんて、まだ信じられなくてさ」

幽兄「理解して…詫びなきゃいけないのにな…」

幽兄「嘘みたいなんだよ…あんなに大事にしてた妹を…」

64 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:36:43 ID:NKaHf3oM

幽兄「自分が、殺し──」

女「──違うよ」


幽兄「…何を、貴女は?」

女「幽の友達」

幽兄「幽…妹の?」


女「そう、最近知り合ったばっかだけどね」

幽兄「最近…って、冗談にしても笑えないですよ」

女「…妹さんなら、いるよ」

幽兄「ふざけないで下さい」

65 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:37:32 ID:NKaHf3oM

女「ふざけてない。妹さんは今、私の横に立ってる」

幽兄「性質の悪い冗談はやめてくれ! 妹は三年も前に…!」

女「……っ…」

幽兄「三年…前……俺が殺した…死んだんです…」


女「…違うってば」

幽兄「貴女が妹の生前の友人なら、俺を恨んでも当然です……すみません、俺が怒鳴ったりして」

女「ふぅ…じゃあ落ち着いて、こっちの話を聞いてくれるかな?」

幽兄「……?」

女「とりあえず、信じられなくても黙って聞いて? 戯言だと思っててもいいから、ちゃんと耳に入れてね──」

66 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:38:47 ID:NKaHf3oM

………



幽兄「じゃあ、今…妹は週末の度に貴女のタンデムシートに座ってると?」

女「そうだよ、とっても仲良しなの」


幽兄「…あんな事があったのに、バイクが原因で死んだのに…それでもバイクに乗りたがってる…」

女「本当は貴方の後ろに乗りたいんだと思うけどね」

幽兄「俺はもう…バイクに乗る資格も、その話が本当だったとしてもアイツを乗せる資格も無いですよ」


女「…妹さんは、貴方がそうやって自分を責めてる事が気がかりなんだよ」

幽兄「責めないわけにいかないじゃないですか」

女「それはそうする事で、自分の罪の意識を消さないようにしようとしてるだけだと思う」

67 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:39:31 ID:NKaHf3oM

女「妹さんが貴方に、ちゃんと自分の幸せを見つけて欲しいと願ってたら? …それに応えてあげる方が彼女に報いる事だと思わない?」

幽兄「………」


女「妹さんは貴方を恨んでなんかない。むしろ貴方の心をずっと縛りつけてしまっている事が辛いの」

女「だから彼女は私の後ろに乗っても、この峠から出られない。貴方の心が縛られている限り、あの娘も解放されないんだよ」

女「…貴方が自分を少しずつでも許していく事が、妹さんに対する供養なんじゃないかな」


女「…そうしないと」

幽《女さん、私は…》

女「幽は、いつまでも──」

幽《…お兄ちゃんには自分を許してあげて欲しいけど…! 私はずっと貴女と…!》

女「──成仏できないから」

幽《女…さん…》

68 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:40:08 ID:NKaHf3oM

幽兄「…わかった」

女「おっ…信じてくれるんだ?」

幽兄「いや、信じられないけど……でも貴女の言いたい事はわかりました」


女「…信じようよ、そこは」

幽兄「信じたいですよ」

幽《お兄ちゃん…》


幽兄「でも、やっぱり非現実的だ。アイツがそう望んでくれてるなら、確かにそうしたいけど…どう考えたって都合が良すぎる」

69 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:41:24 ID:NKaHf3oM

女「…幽は、たまの休みに貴方が作る手作りホットケーキが好きだったわ」

幽兄「そうでしたね」

女「最後に観に行った映画は『タイタンの戦い』、とんだB級で笑ったってね」

幽兄「ええ、覚えてます」

女「…全部、あの娘から聞いた事だよ」


幽兄「貴女が生前からの知り合いなら、聞いてるかもしれません。あるいは友人から聞いたか──」

女「──たらこおにぎり」


幽兄「…はい?」

女「貴方が彼女をバイクで学校に送った日、行きがけのコンビニで食べた朝ごはん」

70 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:42:14 ID:NKaHf3oM

女「コンビニの駐車場で車止めの縁石に腰掛けて、バイクを眺めて食べた…って。すごくワクワクして美味しかったって」

幽兄「…そんなに印象深かったなら、部活の友人に話したかもしれませんね」


女「じゃあ、ポカリスエット」

幽兄「…!!」

女「部活終わり、迎えに来た貴方が運動後の彼女のために買ってたってね。待たせたから仕方ないけど、ちょっとぬるかったって言ってたよ」

幽兄「……信じない」


女「それを半分飲んでからスーパーフォアの後ろに跨る時、彼女は反対から乗ろうとして」

幽兄「…やめて下さい」

女「タンデムステップじゃなく、買ったばかりのサイレンサーに足を掛けて酷く怒られたって」

幽兄「…やめてくれっ」

71 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:42:53 ID:NKaHf3oM

女「そして帰り道。学校からほど近い雑貨屋に寄って、友達の誕生日祝いのプレゼントを探した」

幽兄「なんで…そんな事まで」

女「不思議でしょ? だって学校を出発した後の事だもの。貴方自身と彼女しか知り得ない…貴方が誰かに詳細に話したならともかくね」

幽兄「……っ…」


女「プレゼントは髪留め、スズランを模した七宝焼の飾りがついてた。彼女は断ったけど、貴方はお金を出したわ」

幽兄「…本当…なのか」

女「さっきからそう言ってるよ」


幽兄「そんなの…信じられない、信じたら俺は…」

幽《…お兄ちゃん》

幽兄「…自分を許そうとしてしまう」ポロッ

72 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:45:08 ID:NKaHf3oM

女「…これ、貴方が持っておくべきだと思う」スッ

幽兄「!!」

女「買った髪留め…事故の時、彼女のポケットから落ちたんでしょうね。このコーナーのガードレールの外、草むらにあったって」

幽兄「…うっ…ぅう…」ボロボロ…


女「本当は友達へのプレゼントだけど、貴方が買ってくれた物だから…ここに遺るユウレイになった彼女は拾って大事に持ってたわ」

幽兄「妹……妹っ…」ガクッ

女「貴方を憎んでたら、そうするわけない…解るでしょ?」

幽兄「…は…ぃ……」

女「スズランの花言葉ってね、幸せが訪れる…なんだって。貴方、幸せにならなきゃ…ね?」


フワッ…スゥーッ


幽《お兄ちゃん──》

幽兄「──妹っ…!?」

73 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:46:10 ID:NKaHf3oM

幽《…よかった。私の事を信じてくれた今なら、きっと見えるんじゃないかと思ったの》

幽兄「妹…! お前…俺の事…!」

幽《恨んだりするわけないじゃん、馬鹿兄貴》

幽兄「ごめん…ごめんな…!」


幽《謝るのは私だよ》

幽《わがまま言って無理矢理後ろに乗って》

幽《わがまま言って急がせて》

幽《そのせいでお兄ちゃんを傷つける事になったんだ》

幽《それなのに、ずっと来てくれてありがとう…お兄ちゃん》

74 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:47:06 ID:NKaHf3oM

幽兄「違う…俺がもっとしっかり運転してれば…帰りもこの峠を通らなかったら!」

幽《『たら』とか『れば』をたくさん使えば、誰のせいにだってできちゃうよ》

幽兄「……でも…!」


幽《お兄ちゃん、私…幸せだった》

幽《あんな事になっちゃったけど、バイク…大好きなんだ》

幽《…バイクに乗ってるお兄ちゃんが、大好きだったから》

幽《だから…もういいの》

幽《お願いだから、お兄ちゃんは自分の幸せを見つけて欲しい》

75 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:48:06 ID:NKaHf3oM

幽《女さん…ありがとう》ニコッ

女「幽…私は──」グスン


幽《これできっと私、成仏しちゃうんだろうから…最初は怖かった》

幽《…貴女とずっと走ってたかった》

幽《でも、お兄ちゃんを縛りつけたままじゃだめだよね》

幽《やっぱり…これで良かったんだと思います》


──スゥーッ


女「幽っ…!」

76 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:49:16 ID:NKaHf3oM

幽兄「妹…俺、この髪留めずっと持っとくから!」

幽《うん…いつかそのスズランが幸せを呼んでくれたら、その後は渡すつもりだった友達にあげて欲しいな》

幽兄「解った…解ったよ、約束する!」


幽《女さん…私、貴女の後ろに乗せて貰ったこと忘れない》

女「私も…絶対忘れないからっ! このバイクの名前『幽』にする! ずっと一緒に走るんだからね!」

幽《バイクの名前…いいんですか?》

女「うん! それしかつけられないよ!」

幽《嬉しい…ずっと…どこまでも…》フワッ

77 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:49:59 ID:NKaHf3oM

女「幽っ!」

幽兄「妹…!」

幽《ありが…とう──》


──フッ


女「…幽……」

幽兄「………」

幽《………》

女「………」

幽《………》

女(…なんで消えないの?)

幽《…あれ?》

78 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:51:06 ID:NKaHf3oM

幽兄「妹…ありがとう。俺、少しずつでも前に向くから…!」

女(ん? お兄さんには見えてないな…?)

幽《お兄ちゃーん?》


幽兄「…女さん、ありがとうございました。まだ信じられないくらいだけど、俺…救われた気がします」ペコリ

女「えっ? あ、ああ…そだね! 良かった良かった!」

幽《えっと、お兄ちゃん…私の事見えてない?》


女「じゃあ、私…行くね! お兄さんも元気出してね!」アタフタ

幽《あ、あの…?》

幽兄「はい、これからも毎月花を供えには来るつもりなので、お会いするかもしれませんね」

幽《女さん…?》

女「うん、いつかまたバイクで来れるようになったらいいね! そ、それじゃ…!」

79 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:52:12 ID:NKaHf3oM

………



…ヴァオオオォオォォンッ


幽《もう…なんで急にあの場を離れたんですか?》

女「だって、幽がまだ消えてないとか言ったら『やっぱり思い遺しがあるのかな』とか、お兄さんが気になっちゃいそうじゃん!」

幽《うーん、そう…かも?》


女「ってゆーか、消えないじゃん! 成仏しないじゃん! 何それ!」

幽《あ、ひっどい! 消えた方が良かったって言うんですか!?》

女「違うよ! ただ、すっごい悲しくて寂しくなってた自分が馬鹿みたいじゃない!」


幽《あららー、私って愛されてますね》

女「もう…! 目上のヒトをからかわないの! あ…峠道、終わっちゃう──」

80 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:53:00 ID:NKaHf3oM

幽《──あれ?》

女「えっ」


幽《…出られた、峠から》

女「まま…まさか、お兄さんの呪縛が解けたから…?」

幽《これは…アレですね。私、地縛霊から浮遊霊にクラスチェンジしましたね》

女「クラスチェンジって」


幽《でも、やったぁ! これでどこにでもお供できますね!》

女「…まじですか」

幽《今日はどこ行きます!? ああ…ワクワクするっ!》

81 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:54:06 ID:NKaHf3oM

女「とりあえず安全運転で、気の向くまま行ってみよっか」

幽《それでいいです! 頼みますよー、バイクの『幽』ちゃん!》

女「あっ、そうだった! それ無し! 貴女がいるんだったら、この子が『幽』である必要ないもん!」

幽《あははっ、やっぱりダメですか》

女「名前は…もうしばらく未定かな、ピンとくるのが閃くまで」


幽《あの交差点、左に行きましょう。確かあっちは海の方ですよね? 山にばかりいたから、海見たーい》

女「いいね、今日のところは海沿いを流そうか」

幽《ツーリング! ロマンを求めて! …なんちゃって》

女「あははっ…なんか昔、TV番組のタイトルで聞いたような? 仕方ない…満足して成仏できるまで、付きあったげよう──」


──カツンッ
ヴァオオオォオォォンッ!

82 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 19:55:30 ID:NKaHf3oM

《おわり》

過去作置場、よかったら覗いてやって下さい
http://garakutasyobunjo.blog.fc2.com/

83以下、名無しが深夜にお送りします:2014/05/27(火) 19:57:52 ID:OtNPWoOo
乙!
もっと続いてもいいと思った

84以下、名無しが深夜にお送りします:2014/05/27(火) 20:26:06 ID:gnq.Yf7w
乙です

85以下、名無しが深夜にお送りします:2014/05/27(火) 20:38:07 ID:fS1UM.LY

もっと続いてほしかったな

86 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 20:45:56 ID:VqEzua8s
ありがとうございます
ナビの話の焼き直しみたいなもんなんですが、これなら続き書けるだろうと思ってます
なのでたぶんそのうちブラッとバイク旅な続編SS書きます

87以下、名無しが深夜にお送りします:2014/05/27(火) 20:47:07 ID:fS1UM.LY
期待してまってる

88以下、名無しが深夜にお送りします:2014/05/27(火) 21:02:25 ID:2KSs9cU2
以下のURLから登録すると、漏れなく500円分のポイントが手に入ります!

■PC/スマホから登録する
http://www.dmm.co.jp/netgame/social/friend_invite/-/invited/=/fid=cf61d86beb291ac501cd68a41bcef3c8/
■ケータイから登録する
http://mobile-freegames.dmm.co.jp/friendinvite/-/invited/=/fid=cf61d86beb291ac501cd68a41bcef3c8/


登録が終わったら自分の紹介ページを出して、招待URLを貼り付けましょう。
招待側は1500円分のポイントが手に入ります!
計2000円分のポイントが手に入ります!!

89以下、名無しが深夜にお送りします:2014/05/27(火) 21:02:29 ID:k/iZuH8g
物足りないけど乙
>>1はこの手のSS好きだよね
定番いずべすと

90 ◆M7hSLIKnTI:2014/05/27(火) 21:08:34 ID:2fsN7BQ.
毎度すんません
まあこのSSは、ここまで幽霊を出すための前フリみたいなもんという事で
次からは釣りロマンみたいにまったりバイクライフを書きます

91以下、名無しが深夜にお送りします:2014/05/27(火) 21:51:11 ID:k/iZuH8g
語弊があったかもしれんが俺もこういう定番好きだぜって言いたかった
どんどん書いてくれ

92以下、名無しが深夜にお送りします:2014/05/27(火) 22:22:07 ID:esnZ2Rdk
超期待
まったりと続けて欲しい

93以下、名無しが深夜にお送りします:2014/05/28(水) 01:57:48 ID:uiB/FQzM


何か良くわからないんだけどレバーのたらこ炒め作らなきゃいけない気がした

94以下、名無しが深夜にお送りします:2014/05/28(水) 23:51:41 ID:XhDeQu5.
わっふるわっふる!

95以下、名無しが深夜にお送りします:2014/05/29(木) 00:15:41 ID:9bHvqvX6
おつ

96以下、名無しが深夜にお送りします:2014/05/29(木) 20:52:52 ID:/SVolgNk
題名で誰か分かるって素敵

97以下、名無しが深夜にお送りします:2014/05/31(土) 11:11:20 ID:o2Xx1Smc
>>1愛されてるなぁ
バイクの事とか全く分からないけど、>>1のSSは何か惹き込まれる物を感じる
乙です、続き期待!

98以下、名無しが深夜にお送りします:2014/06/14(土) 11:58:42 ID:Vs8PDysk
つづき

99以下、名無しが深夜にお送りします:2014/06/14(土) 12:44:07 ID:6S7D/JAA
今日自動二輪の卒検な俺にリアルタイムなスレだから、もっとバイクライフ読みたいです。
超凄絶超絶最強無敵支援。

100 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/01(火) 11:29:38 ID:/sQFMb2Q

……………
………



女「──おっはよーう!」

幽《ふわわ…まだ早いですよーう。今日は土曜日じゃないですか…》


女「ふっふーん、この土曜日になにがあるかは言っておいたはずだけど?」

幽《はいはい…ツーリングですよね?》

女「そう!梅雨だってのにせっかく今日は晴れてくれたんだから!」

幽《はぁ…眠い》


女「それにしても、なんで毎朝生身の私が幽霊の貴女を起こしてるわけ?」

幽《それは偏見ってものです。私、もともと朝には弱かったから》

女「すっかりこの部屋にも馴染んじゃって、全然幽霊って感じしないなぁ…」

101 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/01(火) 11:30:26 ID:/sQFMb2Q

女「とりあえず朝9時に道の駅で待ち合わせしてるんだから、もう寝てる時間なんて無いよっ」

幽《大丈夫なんですか? ネットで知り合った人なんて…》

女「実名晒したSNSの女性ライダー専用コミュニティだもん、あとは馬が合うかどうかだけでしょ」

幽《そんな事言って、会ってみたら男性だったりして…?》

女「夜会うわけでも、ひと気の無いところで会うわけでも無いんだから、そうだったら『嘘つき!』って言って帰るよ」


幽《……いい人だといいですね》

女「うーん、願わくば…」

幽《?》

女(幽が見えたら、いいな──)

102 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/01(火) 11:31:16 ID:/sQFMb2Q


女「ツーリング浪漫を求めて」 幽《日帰り温泉ツアー編!》

.

103 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/01(火) 11:32:14 ID:/sQFMb2Q

【「渇いた音の戦闘機」の巻】

………



ドロロロロロロンッ──


女「時間的には少し余裕あるし、安全運転だねー」カコッ

幽《ツーリングで事故なんて、一番あっちゃいけない事ですよ》

女「全くです。たとえ慣れた峠を走るにしても、無理せず急がず…」


ビイイイイイイィィィンッ!


幽《……?》

女「ん?」

幽《お…女さん、後ろからバイク来ます!》

女(速いっ…!)

104 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/01(火) 11:32:54 ID:/sQFMb2Q

幽《うわ…アッという間に追いつかれた!》

女「公道でレースする気はないからね…左、寄るよ」ドロロロロッ…


シャラララッ…ビィンッ!ビイイイイィィンッ!


幽《派手なカラーリング…競技用みたい》

女「うん、まさにね。それを模したレーサーレプリカだから」


シャラッ…ビイイイイイィィィィンッ──!


幽《…もう見えなくなっちゃった。なんか古い原付みたいな音なのに、すごく速かったなあ…》

女「それだけじゃないよ、クラッチ切った時の渇いた音…聞こえた?」

幽《はい、なんだか金属音がシャラシャラ言ってました》

女「今となっちゃ希少なバイクだよ、あれは」

幽《へえ…?》

女「…2サイクル250cc、乾式クラッチと片持ちプロアーム、ロスマンズカラーでキーはなんとカード式──」

105 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/01(火) 11:34:30 ID:/sQFMb2Q
さて、なんでしょう

106以下、名無しが深夜にお送りします:2014/07/01(火) 11:40:23 ID:HA5bC3qE
>>105
NSR?

107以下、名無しが深夜にお送りします:2014/07/01(火) 12:15:58 ID:9yiLOJfM
つづききた!これで勝つる!
MC28のSPすな

108 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/01(火) 13:54:19 ID:/sQFMb2Q
>>106>>107
さすが、簡単すぎるな

109 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/01(火) 13:54:51 ID:/sQFMb2Q

女「排ガス規制の波によって姿を消したけど、80〜90年代のハイパフォーマンス2サイクルクォーター、その結晶だよ…あれは」

幽《…名前は?》

女「ホンダNSR250SP。解る…? 頭文字が『N』なんだ」

幽《N…何か意味が?》


女「最初もN360だったし、今もスモールカーなんかによく与えられてはいるけど、Nの頭文字はホンダの本気の現れだと思う」

幽《本気ですか》

女「うん、軽自動車ではエコとか快適性に本気出してるんだと思うけど、それだけじゃないよ」


幽《そういえばアパートのTVでCM観ましたよ。イッツ・ア・スモールワールドのBGMで、ニッポンノリモノ! …って》

女「あはは、New-Next-Nippon-Norimonoだね。スモールカーに与えるNはその中でもN360の頃から『Norimono』のNなんだって」

110 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/01(火) 13:55:55 ID:/sQFMb2Q

幽《…じゃあ、NSRは?》

女「あのNSRも楕円ピストンのNRも、四輪のNSXも…与えられてるのは『New』のNだそうよ」

幽《新しい…かぁ》


女「うん、でもね…それだけじゃないと思う」

幽《…?》

女「きっと『New』のNを冠する車両は、その時のホンダの全力を注がれた特別な存在──」


──ドロロッ…カツンッ、ヴァオオオォォンッ!


女「HO『N』DA…その真ん中のNなんじゃないかなっ!」

幽《わわっ…!?》

女「ええい、コイツについてないのが悔しいぜっ!」

111 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/01(火) 13:56:26 ID:/sQFMb2Q

幽《…あっ、NSRが折り返してきました》

女「うわ…さすがに速いなぁ……って、あれ?」

幽《後ろからもう一台、喰らいついてますよ!》


シャラッ…ビイイイイイィィィィンッ!
ビイイイイィィンッ──!


女「すっごい、なんかタイムスリップしたみたい!」

幽《もう一台のバイクは?》

女「全盛期、NSRと火花を散らしたライバル。ヤマハのTZR250だね…ああ、これでガンマが加われば…!」

幽《がんま?》

女「うん、スズキのRGV-Γ(ガンマ)。どれも日本の2ストローククォーターの代名詞的存在だね」

112 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/01(火) 13:57:35 ID:/sQFMb2Q

幽《そのどれもが排ガス規制で?》

女「そうなんだ…4ストと比べて点火頻度は2倍、しかもオイルを一緒に燃やす2ストはねぇ…」

幽《仕方ないのかもしれないけど、なんとなく寂しい感じですね》

女「まあね…でも実際、スペックに特化し過ぎて実用的では無かったよね」


幽《私、VTRのトコトコエンジン好きですよ?》

女「うん、気持ちよくバイクを楽しむだけなら、このスペックでも充分に爽快感あるし」

幽《なにより女さんに似合ってます》クスクス

女「どーせあんな戦闘機みたいなマシン、扱いきれませんよーだ」


幽《音速なんて出なくていいですよ。のんびり気球の旅でいきましょ》

女「それは遅すぎるよー、せめてセスナ機くらいにはしてよー」



【「渇いた音の戦闘機」の巻】おわり

113以下、名無しが深夜にお送りします:2014/07/01(火) 17:28:29 ID:LuIjJPe.
KR-1R「...」

114 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/01(火) 18:11:22 ID:/sQFMb2Q
>>113
いや…だってMC28とは年代かぶらないじゃん…?
後にZXRとか4ストは出すからさ、ね?

115以下、名無しが深夜にお送りします:2014/07/01(火) 21:20:20 ID:aKYVLe/2
つまりまだこのスレで続きが読めるってことですねやったー
乙!

116以下、名無しが深夜にお送りします:2014/07/01(火) 21:30:37 ID:8M7S.a1U
おつおつ
気持ちよく走る我が愛車エリミの出番はありますか

117以下、名無しが深夜にお送りします:2014/07/01(火) 23:52:25 ID:cJPHH2o6
女の周りで2スト4ストのレプリカ勢が幽を巡って追っかけっこ始める展開が見えた!…気がした。

118以下、名無しが深夜にお送りします:2014/07/02(水) 23:04:30 ID:/ozU/wmE
2ストは乗ってて楽しいよね
ZXRの出番楽しみだにゃん

119以下、名無しが深夜にお送りします:2014/07/07(月) 08:23:17 ID:Zgwr/mvw
乙!2スト乗ったことないけど楽しそう!

120以下、名無しが深夜にお送りします:2014/07/08(火) 22:18:45 ID:ixK5HaBE
なんと・・・2スト未経験とゎ‥‥

DT童貞50のエンジン6基フレーム3本とYZ80の脚周り3セットを走り込んでお釈迦にし(125クロッサーを追いかけ回した)、その後に新車で買ったKDX200SRを『オフ車を4万以上乗った人は初めて見た』って買った店のメカ担当に言われ、'89KDX200SRのトラブルと云うトラブルの全てを体験したオッサンが通りますよ(笑)
友人曰く『耐久自腹テスター?』だったらしいwww

121以下、名無しが深夜にお送りします:2014/07/08(火) 22:26:03 ID:mKLRjWTU
2stいいよね
初めてCR125乗ったときのパワーバンドでの暴力的な加速は忘れられない
その代わり下はスッカスカですぐカブるし
あれ乗ったら2stレプがかなりマイルドに感じたなー

122以下、名無しが深夜にお送りします:2014/07/08(火) 22:56:39 ID:zCgU5pac
懐かしいな

20年前に90のSP乗ってたよ
普通に通勤に使ってた
ノーマルでも2速・3速でフロントがリフトする楽しいバイクだったな(ただホンダ特有の2速→3速でニュートラル入って恥かいた事も多数ありw)

信号ダッシュばっかやってて乾式から煙吹いたのは良い思い出

あと、お巡りさんに力説したのに乾式を「そんなわけあるかぁ、整備不良じゃ」て言われた時は苦労したなwwwww

123以下、名無しが深夜にお送りします:2014/07/10(木) 00:26:42 ID:p2nHOmrs
TD125だったっけ?スズキの2st原二オフ。試乗という形で乗させてもらったけど、原付乗りにはパワーがありすぎて扱いきれない、怖いという感想しか持てんかった。
今だったらその楽しさが理解できただろうになぁ…勿体無い

124 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/24(木) 10:47:52 ID:ZDuT61is

【「受け継がれる心臓」の巻】

………


ドロロロロロロッ…


女「──川沿いは脇道が無いから、気楽でいいなぁ」

幽《ですねー、土手の草が風に靡いていい景色。…あ、対抗からバイクですよ》

女「おっ」ピッ

幽《…あ、ピースサイン出してくれた!》ピッ

女「嬉しいもんだよねー」

幽《ソロツアラー同士ですから、親近感ありますもんね》


女「うん、でもピースしてくれた理由はそれだけじゃないかも」

幽《他にどんな?》

女「さっきのバイク、型式はMC20…ホンダの250cc水冷Vツインエンジンを積んでるんだ──」

125 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/24(木) 10:50:11 ID:ZDuT61is
長らく間を空けてごめんなさい
ひとまずこの巻10レス分くらいは書き溜め完了してます

さて、なんのバイクでしょう

126以下、名無しが深夜にお送りします:2014/07/24(木) 11:18:55 ID:HCB7DUZA
待ってたー☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
VT兄弟**
骨太アニキ、スパーダ**

127 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/24(木) 11:36:08 ID:ZDuT61is
おk!

128 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/24(木) 11:36:47 ID:ZDuT61is

女「──正式な名前はVT250SPADA(スパーダ)だよ」ニヤリ

幽《…VT!》


女「そう、ホンダの250ccVTシリーズのひとつ。このVTRと同じ系譜に属する一台なんだ」

幽《なるほど、それは仲間意識ですね。…同じ系譜に属するって事は、他にも?》

女「よくぞ訊いてくれましたっ!」ワキワキ


幽《あ、長くなりそう。やっぱいいです》

女「まあまあ、そう言わずに! 短く纏めるから聞いていってよ、お嬢さん!」

幽《…あぅ、なんか変なキャラになってるよー》

129 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/24(木) 11:37:17 ID:ZDuT61is

女「まず250ccのVTシリーズは、80年代はじめにデビューしたVT250Fから始まるの」

幽《ほうほう》

女「この頃のVTは2スト車に4ストで真っ向勝負を挑む、本気モード全開のコンセプトだったそうよ」


幽《2ストって、さっき峠で会ったような?」》

女「うん、ただレプリカじゃあなくて当時デビューしたヤマハの2サイクルネイキッドRZ250を事実上のライバルと睨んでた」

幽《レプリカじゃない2サイクルとかあるんだ…》

女「もちろん2サイクルの瞬発力なんかには及ばない部分もあったけど、ピークの出力なんかは遜色ないくらい。けっこう常識破りの4サイクル車だったの」


幽《なんとなくこのVTRとはイメージが違いますね》

女「そうだね、でもそれはこの90°V型水冷二気筒エンジンの優秀さを表すものでもあるんだよ」

幽《どういう事ですか?》

130 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/24(木) 11:38:19 ID:ZDuT61is

女「80年代半ばには、VT250Fからカウルを取り払って価格を下げたネイキッドモデルのVT250Z…その後のVTZ250が登場して」

幽《なんか名前がややこしくなってきた!》

女「80年代後半には、さっきすれ違ったVT250スパーダが。設計を一新されてVT史上一番軽く、走りのスペックが高い一台だったんだけどね」

幽《…けど?》


女「90年代に入って、次にデビューしたのはXELVIS(ゼルビス)。今度はうってかわってシリーズ最大の車格のツアラータイプだった」

幽《随分と進路変更するんですね》

女「まだまだ…だよ。ゼルビスと時期を並行して94年にデビューしたのは、なんとアメリカンクルーザーのVツインマグナなんだ」

幽《えっ!? マグナってVTシリーズなんですか!?》

女「うん、フェイクエンジンカバーをつけられて空冷ルックに仕立てられたけど、れっきとしたMCシリーズ水冷エンジンの持ち主だよ」

131 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/24(木) 11:39:55 ID:ZDuT61is

幽《…なんかVTシリーズ、迷走してません?》

女「そして90年代終わり、ついにこのVTRがデビューしたの。スパーダを彷彿とさせる少しコンパクトな車格のネイキッドとしてね」

幽《じゃあこのVTRって息の長いモデルなんですねー》


女「2009年に排ガス規制の関係で電子制御化されて、実質二代目だけどね。でも型式のMC33は引き継いでるし、息の長いモデルなのは間違ってないかな」

幽《VTの文字は車名から消えたりしてても、型式名のMCは伝統あるんだなー》

女「そう、MCって名前こそVTの系譜の文字通り心臓なんだよ。エンジン型式、最初はMC08…そして今も現役のこのMC15E」


幽《…ちょっと待って、じゃあそのエンジンは30年以上も現役なんですか?》

女「そこだよ、肝心なのは。デビュー当初、2ストと勝負するために開発されたMC型エンジンは、そのスペック以上に耐久性や扱いやすさに優れていたの」

幽《それで長く使われたんだ…》

132 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/24(木) 11:41:01 ID:ZDuT61is

女「『買い換えたくても壊れない』とさえ言われたからね。バイク便がよくVT系の車両を採用してるのも、それを物語ってる」

幽《すごい事ですよね、それ》

女「一線級のスポーツエンジンだったMCも、その後の四発クォーターやレプリカ2サイクルには及ぶはずもなくてね。やがてその丈夫さと素直さが売りに変わっていった」

幽《だから色んなタイプのバイクで使われたんですねー》


女「そういう事、ツアラーのゼルビスなんかは今になって中古相場が上がってきてたりしてね」

幽《へえ…?》

女「車検が無い250ccで、ロングツーリングに耐えうる車格…維持費のかさむバイクは持たせてもらえないパパライダーにとっては、貴重なタイプなんだよ」

幽《ああ…身体の大きい人にはVTRじゃ少しサイズが足りないですもんね》

女「ツーリング向けなハーフカウル付きのVTR-Fもデビューしたけど、全体的な大きさは変わらないからね」

133 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/24(木) 11:41:35 ID:ZDuT61is

幽《このエンジン、いつの時代まで使われるんでしょうね》

女「多くの車種・エンジンが姿を消した排ガス規制をも乗り越えた名機だからね」

幽《けっこうすごいバイクだったんだなぁ、この娘》


女「初めてのバイクにVTの系譜を選ぶのは、色んな意味で良い選択だと思うなぁ」

幽《あっ、あの道の駅じゃないですか? 待ち合わせ場所…》

女「うん、そうだよ。さーて…二人の女性ライダーに会う事になってて、内一人が何に乗ってるかは聞いてるけど」

幽《もう一人は聞いてないんですね》

134 ◆M7hSLIKnTI:2014/07/24(木) 11:42:38 ID:ZDuT61is

女「コミュニティで仲良くなったその娘の友達なんだって。…例えその人が何に乗ってようと」

幽《羨ましくなんてないですね!》

女「…でも色んなバイクに乗ってみたいかなぁ」

幽《あれっ──?》


ドロロロロロロッ…


【「受け継がれる心臓」の巻】おわり

135以下、名無しが深夜にお送りします:2014/07/24(木) 12:03:39 ID:rS00.RX2
自分は13年VTR、地元の友人がゼルビス。
なかなか地元に帰れなくて久しぶりに会って一緒に走った時、信号待ちで友人が
「やっぱりエンジン音は同じだな。」って言われてその時なんか感動したな〜

136以下、名無しが深夜にお送りします:2014/07/24(木) 15:37:33 ID:cRQ.jhTk
スパーダって結構レアだよね
友達が乗ってるけど一緒に走ったツー先で同色同年式と出会ったときはお互いかなり驚いてた記憶

137以下、名無しが深夜にお送りします:2014/07/24(木) 16:24:55 ID:HCGY7xik
最近天気が良いから、休みの日に室戸岬か根曳峠通って大豊の方ににツーリングしよっかな。

138以下、名無しが深夜にお送りします:2014/07/25(金) 02:00:47 ID:tbRdqddk
50しか免許無いんでバイク乗りとはとても言えませんが…
TZRが出てきたなら黙っていられないTZR50R海苔w
こないだオイルポンプ故障からのエンジンブローで腰上交換しました…

139以下、名無しが深夜にお送りします:2014/07/26(土) 01:04:29 ID:lF1or78k
AX-1とかもV型250?tエンジンだったら、あんな短命で終わらずに済んだのだろうか‥‥て云うか、オフ系ツアラーのVT250エンジン搭載車って出てないよね?トランザルプも600と400だけで250は無かったし。

あの当時はRFVC単気筒押しだったからかなぁ…ホンダ。

あの当時のオフ系ツアラーで多気筒って云うと‥‥KLEとTDRくらいですかね?

140 ◆M7hSLIKnTI:2014/08/04(月) 19:26:26 ID:uR4a72L2

【「レトロな星と究極の翼」の巻】

………


…待ち合わせの道の駅


ドロロロロロ…ドルンッ…カチャッ


女「…まだ来てないのかなぁ?」

幽《バイクの姿、ありませんねー》


女「ま、時間には少し早いしね。自販機の前に停めたんだし、コーヒーでも買おうっと」

幽《缶コーヒーとバイクって、セットですよね》

女「その通りっ!」ガコンッ

141 ◆M7hSLIKnTI:2014/08/04(月) 19:27:20 ID:uR4a72L2

女「よっ…と」プシッ

幽《女さん…私がいるからって声に出してると、周りから見たらオジさん臭い独り言だと思われますよ》


女「失敬な…じゃあ、黙ってた方がいい?」

幽《前に練習したじゃないですか》

女「ああ…心の中で幽に話しかけるつもりで念じるアレ?」


幽《私がここにいるのを解ってて、伝えようと意識すれば聞こえるはずなんですよ》

女「だって声に出した方が早いんだもーん」

幽《これから他の人と合流するなら、そうもいかないでしょ》

142 ◆M7hSLIKnTI:2014/08/04(月) 19:27:59 ID:uR4a72L2

女「うーん…じゃあ、やってみようか…」

幽《はい、それじゃ『幽、大好き』って念じて下さい》ニコッ

女「そんなの念じる内容を幽が知ってたら伝わったかどうか解らないじゃん。違う事……じゃあ、今夜の晩ご飯の事を念じるよ」

幽《ちぇっ、どうぞー》

女(…カニ炒飯、カニ炒飯、カニ炒飯──)

幽《ん? …よく聞こえない…》


??「あ、あの…」


女(天津飯、中華丼、親子丼、オムライス、スープカレー、カルボナーラ……あ、カルボナーラ食べたいなぁ)

幽《あれ? ちょ…女さん、色んな事考えてません?》

女「あはは、バレたかー」テヘヘ


??「あ、ええと、その…すみません…」

143 ◆M7hSLIKnTI:2014/08/04(月) 19:28:45 ID:uR4a72L2

幽《ん?》

女「ん?」


??「お取り込み中でしたか…?」


女(げっ、気づかなかった。どこから見られてただろ…)

幽《栗色のお嬢様ヘア、背も150cmあるのかな……なんかバイク乗りっぽくないけど、もしかしてこの人が…》


??「あの、女さん…ですよね? バイク、赤のVTRだし」

女「そ、そうだよ! ごめんなさい…考え事してたの。貴女が『お嬢』さん…?」

お嬢「はいっ、お嬢って呼んでくれて構いません。お会いできて嬉しいです」


女「そっか…よろしくね、お嬢。改めて私、女だよ」

お嬢「よろしくお願いします」ニコッ

144 ◆M7hSLIKnTI:2014/08/04(月) 19:29:40 ID:uR4a72L2

女《よかった…いい人っぽいや》

幽《あ、今の聞こえましたよ。よかったですねー、可愛い感じの人だなぁ…》

お嬢「ふふっ…ありがとう、お隣の方のお名前は?」


女&幽《えっ》


お嬢「あっ…ごめんなさい。私…視えるんです、昔から」クスクス

幽《視える…って、私の事ですか? 声も…!?》

お嬢「はい、制服姿までバッチリ」


女「驚いた…でも良かった! 幽が視えるヒトならいいなって、思ってたんだ!」

お嬢「幽…っていうんですね、よろしくお願いしますね」ニコッ

145 ◆M7hSLIKnTI:2014/08/04(月) 19:30:33 ID:uR4a72L2

幽《………》

女「……幽?」

幽《………》

お嬢「あら…? 何かまずい事を言ったかしら…」


幽《…ふぇ…っ…》グスッ

女&お嬢「ふぇ?」


幽《ふええぇぇえぇぇぇん……嬉しい…よぅ…》ポロポロ


女「幽…」

幽《うぅ…っ……女さんと会えただけでも幸せな事だけど、こうしてまた何人もで話をできるなんて…なんか…生きてた頃を思い出して…っ》グスン

お嬢「…あらあら」

女(良かったね…幽…)ホロリ

146 ◆M7hSLIKnTI:2014/08/04(月) 19:31:44 ID:uR4a72L2

………


お嬢「──ここの道の駅わかり難いですけど、二輪の駐車スペースはこっちなんですよ」

女「あっ、ほんとだ。バイクたくさんあるや」


幽《どれがお嬢さんのバイクなんです?》

お嬢「…これなんです」ポンッ

女「うん、コミュに上げてた写真で見てたけど、やっぱりお洒落だね」

幽《わあ…なんだか可愛くて格好いいっ》


女「ロングストロークなSOHC単気筒エンジンに、クラシカルスタイル…やっぱりいいねぇ」

お嬢「えへへ」

女「男のバイクなイメージが強いカワサキ車だけど、これは彼女みたいな小柄な女性にもピッタリな足つき性だからね」


幽《うん、お嬢さんにすごく似合ってますよ! …なんてバイクなんです?》

女「車名はスペイン語で星を現す単語、日本では通常カタカナ表記するかな?」

お嬢「その事が多いですね──」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板