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【火は陰り】能力者スレ 置きレス用【王たちに玉座無し】

1 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/06/30(土) 18:55:45 o6XMS57s0
ようこそ、能力者たちの世界へ。
この世界は、数多の能力者たちが住まう世界。

こちらは置きレス用のロールスレです。
リアルタイムの進行が難しい時などにゆっくり使用できます。
混乱を防ぐため、なるべく最初から置きレス進行になる場合のみご活用ください。
時間軸は開始時・終了時など、当人同士で相談し合うとスムーズになります。
次スレは>>950の方が立ててください。


2 : 厳島の中 ◆zlCN2ONzFo :2018/07/01(日) 23:42:12 6.kk0qdE0
//>>1乙です

前スレ>>996

「解りました、虱潰しにはなりますが、一人一人調査していこうと思います」

【手渡し、そして仕舞われるファイル】
【極めて美しく、そして極めて流麗な仕草で、またその口調がミステリアスで神秘性を帯びた美しさを感じずにはいられない】
【一瞬、その手が筋張って見えたが、錯覚かあるいは職業的に銃器を取り扱う所以だろうと、するりと納得し】

「はい、光栄です!」
「今後は是非、よろしくお願いします!」

【恍惚と自信とに満ちた表情で、ミレーユを見送り】
【これから来るべき、その暗躍と戦いの日々を思う】
【のだったが……】

「あ……」
「な、なんじゃこれはあああああああああああああああッ!!」

【午後の気怠い昼下がりの夏、静寂を保っていた喫茶店内に悲鳴がこだました】
【領収書とは建て替えのシステム、つまり建て替えるお金は自分が出さねばならないのだった】



//お疲れ様です、ありがとうございました!


3 : ゴトウ ◆1miRGmvwjU :2018/07/02(月) 00:05:33 o6XMS57s0
前≫999

「下部構造は上部構造を規定する。それを否定してきた連中が、今になって上部構造から下部構造へのありもしない反作用を投げかければ ── ひずみが生じるのは必然、か。」
「推定でしかないが小さくはない。特に"肉体の放棄と精神の純化"なんてメッセージは貧困層に随分と響くみたいでね。」


【真っ白なサワーを呷って唇を濡らす。 ── しようと思えば名前だって消せたのだろう。それでも、そのハッカーは"そうしなかった"。】
【だからきっと自分なりの美学を持っているのだろう。其れがなんであるのかは、あまりに茫漠としているのだけれど。】


「 ……… ロマンチストの考えることは、おれにも良く分からないが。」「或いは案外、番号に拘りがあったりして、 ── なんてな。」
「まあ常識的に考えれば、どっかの誰かがやらかすのを待ってる、 ── 」「あるいは其の為の下準備をしている。」「 ……… そう受け取るのが普通だろう。」


【そうして次の言葉を急かされたのなら、 「 ── かなわねえなぁ。」そんな顔をして、観念したように言葉を綴る。】


「 ─── 妙に連中、余裕があるんだよな。…… F/A-36、通称"ゲイム"。同社が社運を賭け、かねてより開発していた第六世代のステルス戦闘爆撃機だ。」
「スペック自体は既存の戦闘機を大きく凌駕するモノだったらしいんだが如何せんコストが嵩み過ぎた。導入費も運用費も。結果として次世代戦闘機のコンペには敗北」
「無人化のプランもあったらしいが、空海軍の元アビエーターなお偉いさんがロビー活動に奮起して白紙化。結局の所、国内での販果は限定的なものに留まり」
「国外に輸出しようにもステルス技術関連は機密情報の宝庫だ。まして公的資金の投入も少なくなかった以上、ライナー社はダブついた在庫を山と抱え込むことになった ── 」


「これが一月ほど前のこと。なのに奴らは健全なセールス活動に必死こいてる様子もない。なにか約束されてるように。それどころか、 ── 」
「水国政府のタカ派に汚い金で働き掛けてる、なんて噂もある。あくまで噂、だけれどな。 ……… 案外こいつ、公安あたりの癒着と、関わっちゃいないかね?」


【 ──── 卓上に差し出されるのは一枚の写真。カナードと前進翼のついた、どうにもラディカルな戦闘機。売れなかったのは当然であったのかもしれない、けれど。】


4 : ◆3inMmyYQUs :2018/07/02(月) 16:07:29 WFKxT5bU0
>>938


【静寂な今が連続する】

【初瀬麻季音という時空連続体が紡いだ言葉は】
【宛先を欠き、空間に留まることなく揺らぎの奥へ消えた】

【砂漠に落とされた一滴の雫のように】
【それを観測する者が無ければどこにも記録の残らない事象未満】


【17時51分57秒】

【室内には、初めから初瀬麻季音一人しか存在していなかった場合と同質の静謐が充満している】
【少女の指でページをめくる音が、そこに微細な揺らぎを与える】


【その分厚い、辞典のようなハードカバーには題名が無かった】
【空間の隙間そのもののような純白をして、著者名も目次も無かった】
【ただその中身は言語も年代も異なる本を継ぎ接ぎしたかのように雑多であり混沌としていた】


【『真理局 検閲記録 No.32151-TT-X』】

【『量子情報の非可逆領域と可塑性に関する考察(1)』】

【『無題(黙示録文学・作者年代不詳)』】 【『仕様書:時空震動制御機構 No.8742-k』】

【『メモリーアーカイブ β-43711-iR-PT9より一部引用』】

【『存在と時間の多重性(p.232-234/p.556/p.711)』】 【『ホーキング・レポート a-578t』】

【『重力信号変換器 作動実験レポート No.1244-R-78』】 【『モナド構造としてのn次元(発行年:2Q31)』】 

【『水平線を見た羊(第4巻 36章)』】 【『Project:CeRN(頁番号163) 』】


【──何かのログ、詩文、哲学書、実験レポート、小説、設計書】
【およそ出典元の記載があるものを並べただけでも、ざっと十数種以上の文書が】
【一見すると何の統一性もなく、ただひたすら紙面上に詰め込まれていた】

【そして、この情報源のほとんどは、この現代においてはどのように検索をかけてもまず該当するものはない】
【仮に似た名前のものがあったしても、その内容は大きく乖離しているはずである】


【もし、この奇怪な文書をそれでも読み進めていったならば】
【あるとき、頁の間に一枚のメモが差し挟まれていることに気付くだろう】
【そこには、走り書きでこうある】



   【 “どうか 方舟を” 】




【これが一体何を意味するものなのか】
【説明を与える者はどこにも存在していなかった】


/もうワンシーンだけっ↓


5 : ◆3inMmyYQUs :2018/07/02(月) 16:11:18 WFKxT5bU0
>>938

【地上では、豪雨が降り続いていた】
【それはあたかも、地上の全てを押し流そうとする洪水の先駆けへならんとするかのように】



  【『────がここへ来たのは、本当の真実を取り戻すためだ』】



 【『────このままだと、やがて世界の全てを書き換えて────』】



【街中、インターネット上、精神内】
【世界では今日も多種多様な情報が、電子と量子とを問わず無数に交錯している】
【年々膨れあがる情報の濁流はしかし流れに沿い、氾濫し何かを壊し歪めることはない】

【少なくとも、今はまだ】


  【『────〈今〉が最後の砦なんだ』】


【──未来は、網膜に像を結ばない】
【ごく限られた、一部の才覚を持った者を除いて】

【故に誰かが真実を語るとき】
【大衆はそれを嘘吐きか気狂いとみなす】
【歴史はそのように繰り返されてきた】

【そう、例えば】
【一見すると何の関連もない無数の文書の中から】
【隠された共通項と、浮かび上がる関係性を見出し】
【そう遠くない未来、大規模な情報災害が引き起こされようとしていることを導き出してしまう】
【そんな可能性を秘めた、ある一人の天才と呼ばれた少女が辿り得るかもしれない物語のように】



 【『────どうか 〈方舟〉を』】



【もう既に存在していない誰かからのメッセージ】
【黒い未来を変えたい、という主体者の存在しない願いだけがそこには刻まれていた】


6 : ◆3inMmyYQUs :2018/07/02(月) 16:16:43 WFKxT5bU0
/ごちゃごちゃ書いてますが、要するに
/マキちゃんにタイムマシン的なもの(〈方舟〉)を作ってくれないかにゃあ、みたいなことを言っています。
/そうしないと大変なことになるんだってばよ、ということが天才ならではスゴイタカイIQで本から読み取れますよ、という話です。
/ややこしくてすみませんです。


7 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/02(月) 19:47:18 WMHqDivw0
//いちおつです!


>>968>>988 (>>995のかきなおしです!)

……そっか、わかった。厳島さんがどうしようもないってんなら仕方ないネ。
でもちゃんと覚えとく、カンナさんって人が危ない状態にあるってこと……
……うーん、せめて黒幕の本拠地がどこにあんのかさえわかればいいんだけど!

【何気なくそう言うけれど。厳島には思い当たる節があるんだろうか】
【例えば水の国の「特区」だとか。……そこにカンナがいるという確証は勿論ないけど】
【可能性のひとつとしては有り得る、というだけの話。全くのゼロよりは、少しだけ】

【続く、鈴音の話。聞いて――――】


――――あたしはこれから何が起ころうと、鈴音に対する「認識」改めるつもりはないから。
絶対そこは曲げない、曲げてやらない。それだけは約束できるから安心して。

……ね、つがるん? さっきつがるんだって、そう言ってくれたんだから。
今更文句なんてつけないでよ、ネッ。

【ややもはっきりとした強い口調で、そう言い切った。それからつがるにウインクして】
【彼女のアイメイクが滲んで崩れている理由。厳島にはわからないだろうが】
【けれどそこには、つがるとだけ交わした決意の表明が確かにあった。それは絶対曲げないって】
【……たぶんきっと、そこだけは安心していいんだろう。それくらいには強い口調だった】


8 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/02(月) 20:01:51 WMHqDivw0
>>1000

……あ、やっぱりそっちのが素? ずっとそっちでいいよ、その方が好みだし――――

【言いながら一歩、二歩、とカリヤに近付いていく。そのまま優雅な動作で手を取ろうとして】
【叶ったならやはり優雅な動作でそれを引いていくのだ、「手術台」に向かって、ゆっくりと】
【「じゃあちょっと手を貸して、この子をここに横にして」 ――それに従ってカリヤを其処に横たえたなら】
【両の手首と足首と、細い首に、かしゃん。音を立てて、枷で縛るだろう。そしたらその上の照明を点ける】
【棕櫚と女と、二人でカリヤを見下ろす姿勢になるだろうか。そんな状態で――冒涜者は、ひとつ問う】


――――――ね、ミスタ。これはかるーいアンケートみたいなモンなんだけどさ、
「ココロ」ってヤツは身体の何処にあると思う?
僕はロマンチストだからさ、心臓の位置にあると思ってんだけど――もしあなたがリアリストなら。
やっぱり脳の中にあるとか言っちゃうかな? ……ああ、それ以外でも全然いいよ。


【「そこを弄っていくから、ね――――」 言いながら手袋を装着する。通常の施術時に使うようなゴムのものではなく】
【何かしら――――魔術的なつくりをしてあるものだと、棕櫚にもすぐわかるだろう。その証拠に】
【その指先からちらちらと、肉眼でギリギリ見えるか見えないかくらいの――細い細い糸が】
【何本も何本も何本も空中を泳いで蠢いているんだから。今からそれをどうするかって、すぐわかってしまう】

【――――生きたまま、ソレを何処かしらの穴から捻じ込んでいくつもりだ。そうして全てを探ろうと――】


9 : ◆XLNm0nfgzs :2018/07/02(月) 23:11:58 BRNVt/Aw0
>>988 >>7

【レヴォルツィオーン社が不死の軍勢を造っていた。そしてそれを売り捌いていたのだと聞いてつがるは顔をしかめる】

ぞんび……って確かあれですよね?活動写し……キネマに出てくる腐ってるあれ……
死なないっていうのもあれですけど……非人道的にも程があるっていうか……
大丈夫かなセリーナさん……ちゃんと人間のままなのかな……
そっちも怖くなってきた……


信じる事は……確かに大切だとは思います
でも、いくら厳島さんと夕月ちゃんが信じてるからってやっぱり手放しにはそれらを信じたくない
良い人の振りをしてるに決まってる
……彼奴だって初めは無害な人間の振りをしてきたんだから……
それに……どーせ私は"ヒト"じゃないし
【最後はぼそり、と自嘲気味に呟いて】

【そうして厳島の言葉、それに続く夕月の言葉を聞くと強く頷く】

鈴音ちゃんに対する認識……それをどう歪められようとも私は変えない……ううん、私だって変えない、変えません
夕月ちゃんにもさっき言ったもの
鈴音ちゃんは例え悪い神様になっちゃっても鈴音ちゃんである事には変わりない
【だよね?と夕月にアイコンタクトを返して】


10 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/03(火) 00:06:52 WMHqDivw0
本スレ >>121

【青年の顔が渋面になる。人の家庭の事情――ましてや背中に羽根の生えた子供のご家庭の事情なんて想像できるはずもないのだが】
【少なくとも、放任主義で許される範囲ではなさそうだった】
【――ああ、いや。でもウチも似たようなものか、と思い至って溜息を吐いた。どこの世界でも子供と言うのは生き辛そうだが、目の前の幼女は少なくとも不幸そうな面はしていないので、まぁ良いのかも知れない】

チッ……


【口の中で、小さく舌打ちした。関わる必要なんてない。組織の大人達の煩い正論を真に受けるほど純真ではなかった】
【だから多分これも面倒事に違いはなかった。幸い、その鈴音と言う人間に心当たりはない】
【それで通して流せば、この幼女も別の場所を探しに行くだろう】


【褒められて嬉しそうな、そうではないような、幼く単純なロジックの中でも矛盾を垣間見せるような思考】
【幼子の感情の機微を読むのは得意――語弊がある。見慣れているのだった】


……戦闘要員じゃなかったのか。UTって今そんなに酷い状態なのか……?
ただの給仕が何だって行方不明なんかに――


【だから半分適当に聞き流していた。真面目に聞くと、拙いような気がしていたから】
【幼女の想い出を振り返るような、平和な情景の言葉――こんな子供が、過去を振り返らないといけないと言うのは何ともやるせない話だが、それも今はどうでも良い】
【……しかし、その中に引っかかる名前が有った。引っかかってしまった】


……カエデ?


【聞き返してから、しくじった、と思った。よくある名前だ。紐付ける必要なんてなかったのに】
【蜜姫かえで――報道されていたサーペント・カルトの幹部。死んだんだっけ?生きてるんだっけ?ニュースでは何て言っていただろう】
【何でその名前がこの幼女の口から出て来る?その鈴音と言う人間と知り合いだったのか】


【ああ、ヤバいなこれ。きっと、その少女は蛇神教の絡みでいなくなったんだろう。生贄にされたのか、あるいはその鈴音とやらもカルトの一員だったのか】
【いずれにしても絶対真っ当なことにはなっていそうもない】
【そんな思考に至ってしまったからだろうか。そうしてはいけないとは経験で察してはいたものの】


……さあ、な……


【苦虫を噛み潰したような声で、幼女の縋るような問いに最悪の返答を返したのだった】


11 : 名無しさん :2018/07/03(火) 00:38:24 jlTidb/Q0
>>10

そうなの! あのね、鈴音お姉ちゃんはね、お料理作るね、お姉さんなんだよ!
だからね、戦ってるところとかは、私、見たことないけど――、でもね! 能力はね、見せてくれたことね、あるよっ。
キラキラってしてね、うんと綺麗なの! だからね、私ね、だーいすきで――――。

【ぱぁと笑う。頬っぺたがふにっと持ち上がって、垂れ目の目じりが余計に溶けるみたいに笑顔に溢れて】
【聞き流されているのには多分気づいてない。だから彼の扱い方はきっと上手だったし正しかった、わあわあしゃべって、満足して、終わるはずだった】

【――――これがありふれたどうでもいい平和でしかない雑談だったなら】

……うん! カエデ! あれ? ネムお兄ちゃんね、カエデのこと、知ってるの? そしたらね、とっても嬉しいなっ!
カエデとね、何のお話したのっ? カエデったらね、よくね、怖い顔するでしょ――、私ね、だからね、いーっぱい、笑ってほしくって……。
鈴音お姉ちゃんとね、お話するーってね、言ってたんだよ! あっ、でもね、鈴音お姉ちゃんからメール来たんだっ、カエデとお話したよって――。

【――その瞬間に幼子の顔はきっとひどく色鮮やかに輝くんだろう。そうしたなら、何度もその名前を呼ぶ、さぞかし嬉しいことを聞いたみたいに】
【立ってたならぴょんぴょん跳ね回ってしまいそうに嬉しそうだった、――だから、その次の表情の落差。いっとう大きく目立たせる、お空が割れて落ちてきちゃうかのよう】

――――、っ、ぴ、

【最初はきょとんとした顔だった。それがすぐにむにいっと歪んで、息さえ忘れてしまっていたのが数十秒後にやっと吸い込んだなら、笛みたいな、変な声になってしまう】
【急に顔を真っ赤にしたならぷるぷる震えだす、――――――泣いてしまう、って、予感させた】


12 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/03(火) 01:30:13 WMHqDivw0
>>11
【子供の扱いは慣れていたはずだった。だからこれがただの有り触れた雑談なら、良いお兄さん、と言う印象だけを与えてそれで終わりだっただろう】
【次いで語られるのは、その鈴音と言う人物の能力か。流石、UTと言うべきか、給仕でも能力者だったらしい】
【しかし、語られる内容は抽象的過ぎて良く分からない――いや、そんなことは今は良いんだ】


いや、知らない。会ったことはないよ。
そのカエデって奴は、友達なのか?


【だから些か早口で応えることになった。どこでその名前を知ったのか、そこまで問いただす余裕は目の前の幼女にはないだろう】
【青年のすげない返答を聞いて、今にも泣きだしそうになってしまうのだから】
【いや、しかし、実際泣きたいのはこっちの方だった】
【空飛ぶ幼女に突然遭遇したら、カルト宗教の陰謀に行き当たりましたってなろう小説か】


いや、泣くな泣くな。飴やるから。


【泣き出した時ってどうやって収めれば良いんだったか……眉間に指を当てて唸る。少なくとも幼女相手にできることではなかった】
【ポケットから自分用に買っていたチュッパチャップスを取り出した。スイカ味】
【ザンバラの頭をガリガリと掻いて、視線は逸らしているが】


その……まぁ、その内に……帰って来るだろ。
UTにいるんだったら、仲間だっていっぱいいるだろうし、何か困ってたら、助けに行くだろうから。


【なるべく言葉を選んで返答する。雑な回答だったことは否めないが】
【その裏側では――彼の相方に対して、思念で呼びかけをしているのだった】


《おい!寝てんのかコマ!今からこっち来い!ジャストナウ!》


【子供の相手なら子供が得意だろうと言う浅はかな思考だったのだろうが、返答は聞こえず。眉間に一層皺が寄るのだった】


……はぁ……もう少し真面目に話聞くよ。
その"カエデ"さんと話したメールが、何だって?


13 : 名無しさん :2018/07/03(火) 01:42:04 jlTidb/Q0
>>12

【それはあるいはこの世界に今満ちている歪みのせいなのかもしれなかった、幼い子供と、まだきっと大人になりきっていない彼が、平和に話せないのは】
【本来であればいろんなことが平和のままに終わるべきであった。――そのはずだった。けれど現実に彼の目の前には、その顔をトマトみたいにまっかにして】
【ぷるぷる震えて泣きだしそうになっている幼子が一人。完全に事案だった、ここが屋上でよかったと思わせるような、光景だったものだから】

――ちがうわっ、カエデはね、私のね、姉妹なの――っ、お友達だけどっ! でもね、それよりね、いっぱいね、姉妹なんだからぁっ――、
ぐすっ――、鈴音お姉ちゃん返って来るもんっ! 前だってね、帰ってきたもんっ、ほんとだもん――!

【ぐすぐすしゃくりあげて――けれどまだ泣きださずに。幼子はめいっぱいに言葉を連ねるのだろう、曰く、"カエデ"は彼女の姉妹であるらしい】
【けれどだれかれ構わず姉だの兄だの言っている幼子のことだ、信用はできないのかもしれないけれど――それでも何か、他の人を姉や兄と呼ぶのとは違う温度感があり】
【お友達でありながらもそれより"いっぱい"姉妹なのだと言い張ったなら。今更ながらに相手の言葉に反論を述べていくのだ、尋ねたくせに、自分の中に応えはあって】
【であればそれを肯定してほしかったのだと思わせた、――今更だったし、ずいぶんとわがままだった。相手が思い通りになるって限らないのはどこの世界でも当然であるなら】

飴……。……。……――。

【ぐすぐすしているところに飴を差し出される。スイカ味のをもみじみたいなおててで受け取るのだろう、そうしたなら、包み紙を剥がそうとして】
【上手にできなくってまたぐすぐすひぐひぐやりだして――やりだすから、適当なところで包み紙を代わりに剥いでやったら良さそうだった、とは、余談なんだけど】
【とにかく包み紙が取れたなら、幼子はその飴を口に含んで。ほっぺたがもごっと丸くなる、かたっぽだけに種を詰め込みすぎたハムスターみたいになってしまって】

――――ん。

【――けれどそしたら明らかに機嫌がよくなっていたのだ。ゆえにこのそっけない返事は、単純に、口の中が飴でめいっぱいだったから】
【それでも単純な子だったから。――たとえ彼が雑だと思っていたんだとしても、彼女は、きっと安堵したらしかった。スイカの味のする飴が、歯に当たる音がころころ鳴ったら】

……えと、ねっ。あのね、カエデね、うんとね、大変だから……、私がねっ、言ったの! 鈴音お姉ちゃんとね、お話してみたら、って――。
鈴音お姉ちゃんね、UTのね、きゅーじさんだから! カエデはね、UTのヒトでしょ、だからね、――お話してみたら!って。
それでね、でもね、二人ともね、きっとね、忙しかったの! だからね、時間かかっちゃって――でもね、カエデとね、鈴音お姉ちゃんね、お話したよって……。

【よいしょ、と、飴を口から出す。ちょっとお行儀が悪いんだけど、そうしたなら、そうやって答えるんだろう】
【けれど――少し違和感があった。"カエデ"というのはUTの人間であるらしい。口ぶりからしてだいぶ前の約束が果たされたのが、ごく最近であるらしく】
【まだ元気いっぱいとは言えない声。言い終わったならまたよいしょって飴を口に含む。――やっぱり小動物みたいだった、リスとか、ハムスターとか、そういう系の】


14 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/03(火) 01:44:50 dgM1n0320
前スレ≫775


「 ── 何者でもないわ。」「強いて言うなら、人間かしら。」
「お喋りは止したほうが良さそうね。開くものも開いてしまったよう、だし。」

「どうにも歳下に死なれるのは寝覚めが悪いわ。 ── 護ってあげるから、上手く逃げること、ね。」

【去り行く背中に答えを伝える。更なる答えは期待していなかった。それでもまた構わなかった。】
【 ── 最後に少しだけ示すのは、彼女なりの優しさであったろうか。それでも白銀の髪は、触れなば冱つる色をしていた。】


≫576≫753≫838


「 ─── それで。」「まあ、落とし前は付けてくれるのでしょう?」
「あの位じゃあ教練にもなりやしないから。」「覚悟なさい、ね。」



【チャージングハンドルを握り締めトリガーに指をかける。 ── 先ほどまでとの有象無象とは格が違った。シナプスがヒリつくような殺意。】
【それでも細い唇が紡ぐのは挑発に似た言葉。冷たい声音で、けれど嘲笑うように。誰が来たって構わないと。撃鉄の準備はとうにできていたから。】


15 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2018/07/03(火) 05:57:05 IBKicRNQ0
/>>1乙です

前スレ>>943-944
それは気の毒に。住民票はこの病院の住所にでも書き換えておいた方がいいな

【どこぞの正義。彼女にとってはその程度だ。全ては信仰のため。そこに善悪の判断など考慮しない。それは狂信の徒】

お前たちにとってはそうだろうな。その信仰が世界のすべて、という連中には

【相槌もやはり適当なものになる。しかし、視線は外さない。三つの目は観察する】
【抑えきれない負の感情が流れてくるのを感じ取りながら。その柔肉の内側にどれほどの強い感情が流れているのだろう】
【ああ、それにしても美味そうな肉だ。しかし、他の蛇教徒の味を想えばやはり。そんなどうしようもない品評は、頭の片隅で】


やってみると面白いものだぞ? しばらく疑心暗鬼になるだろうがな
後者については忘れて良いと思うがね。そんな人間は、世界広しと言えども私くらいだろうよ

……似たようなことを言われたのは一度や二度ではないらしいな。ならば、私の感性もまだ一般的な余地を残しているらしい

【単純な脅しは、やはり笑ってしまうほど通用しない。彼女の表情の変化も、彼女が歩んできた歴史までは見通せない】
【ぶつかり合う視線は、何も語らず。ただ時ばかりがじわじわと過ぎていく】


ああ、そうだとも。イル=ナイトウィッシュは白神鈴音に痛くご執心だ
お前たちの信仰心とどちらが苛烈なのかまではわからないがね。あれは相当な執着ぶりだったよ

魔は人を騙すものだ。そして、討ち果たすのは困難だ。だからこそ、人はそれを恐れる
お前たちは踏み台にされた。少なくとも、彼奴に関することについてだけは、お前にエールを送りたいね
イル=ナイトウィッシュが邪魔であるということだけは、おそらくあらゆる勢力に一致するだろう

(マルタにいたあの男が本人の言う通り神だったなら、イルは自分の本来の仲間すら裏切ったわけか)
(そもそも、仲間だったかどうかすら怪しくはあるが。ともあれ、彼奴の味方は彼奴自身だけらしい)

【異形の目から見てもわかる、凄まじい怒り。言葉の端々から、病魔が教団内でも明らかにそのために動いていたことを察する】
【自分の行動を含め、蛇に纏わる何もかもが彼女一人のために。ある病魔がある神様に捧げた永遠の愛のために】
【生贄。蛇神のためではなく、鈴音のための。全ては病魔の愛の犠牲】

(――――くだらんな。イルもこいつらも。鈴音よ、お前はこれで良かったのか?)

盲目に白痴を塗り重ねたとはずいぶんな物言いじゃあないかね
あの日の儀式は本当に、病魔以外の誰の特にもならなかったのだな

さあて、ファンといっていいものかどうか。まあ、お前と同じように私にもそれなりの歴史があるということだ
……しかし、よく回る口だな。そろそろ思い出すべきじゃあないかね? 質問するのはお前ではない。私だ

そうか。なら遠慮なく

【あるいは、彼女たちも盲目だったのかもしれない。ただ一点を見つめているつもりで、その実バラバラの方向を向いていた】
【ただ一つ、信じているというたった一つの共通点だけを掲げて。その危険なまでに純粋な信仰は、病魔に侵された】

【鈴音を思い出す。彼女の悲痛な願いを、病魔は叶えたのだろうか。今まだ滅びていないこの世界に、まだいるのだろうか】
【きっと、いるのだろう。だって、今もなお刺さる視線を背中に感じている】


【それを振り払うように。異形は右手を伸ばした。彼女の包帯に覆われた右腕の肉を】
【恐るべき指の力で、一つまみ毟っていこうとするだろう。ほんの一つまみ。味見には十分な量。苦痛には十分な量】

【それが成功すれば、異形は指に掴んだ新鮮な肉と血を口中に放り込み、ゆっくりと咀嚼するだろう】
【やがて、その顔が歪み。盛大な溜息と共に彼女に向き直る】

……やはり、ダメだ。これだからカルト教団は嫌になる。『苦行、』『修行』、言い方はそれぞれ異なるが
たいていの場合、肉体に大きな負担を強いる行為。これを散々やった人間の肉質は落ちるんだよ

信仰のために己の肉体をズタボロにする……私とは相容れないな。よくそんな勿体ない真似が出来るものだ
本来なら、お前ほどの上玉の肉、この程度の味に留まるはずがないのに……

【勝手な肉の品評を述べれば、その三つ目はすっと細まる。より冷酷な光と共に】

……その左手の蛇。その入れ墨の部位なら、少しはマシかもしれないな

もう一度聞こう。そいつを抉られたくなければ、吐け
お前はこれから、誰と何をしようと企んでる? お前たちの神を矯正するために、何をする?
そうだ、質問を増やしておこう。お前をここに閉じ込めている連中、あれは何者だね? 彼奴等は何のためにこんなことを?

答えろ。知らなければ知っている範囲のことを話せ。それも嫌なら……蛇の入れ墨、つかみ取りサービス開催だ


16 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2018/07/03(火) 06:21:45 IBKicRNQ0
前スレ>>971
【カニバディールは自身の商品に毒は使わない。人肉を混ぜて出荷したことはあるが】
【この男なりのポリシーと、両立する歪に破綻した倫理。この男が異形であるのは、外見に限った話ではない】

ふ、ふ。耳が痛いな
だが、もっと怖いモノはいくらでもいるぞ。私は事実それを目にしてきた
お前たちも、その一つに入るかもな?


流石、カルトを専門に狩ってきただけあって、一家言あるのだな
確かに、目に見えた形があるというのはわかりやすいが、その分脆い。形あるものはいずれ壊れる

可能性はあるな。かつては大きな禍であった水害、氾濫した川の濁流を蛇に見立てた、などという話はよくある
……となれば、その崇拝の形を神そのものが晒し首にされるようにまで、歪めた者たちがいる
ケバルライとやらは、その筆頭なのだろう

【蛇の料理は、よく味が調整されている。カニバディール自身が味を見ながら思考錯誤して創り出したレシピ】
【サーペント・カルトの象徴存在が、形あるものとして教団最大の敵の胃袋に流し込まれていく】
【そんな皮肉な光景を見つつ、蚤の心臓またも密かに飛び跳ねる。単独ではないなら、パグロームクラスの猛者が他にもいるのか】

……ああ、よく知っているとも。忌々しいほどに
確かに、そうした〝擬態〟の才能は有りそうな女だった

まさに、それだ。一人おめおめと生き残った彼奴に、私は突撃インタビューを敢行してきたんだよ
結果は……お前の話の後に公開するとしようか。そちらに興味があるならな

鈴音については、私はそれなりには知っている。元々、自己犠牲的な面のある女だったが……
まさに、それこそ本来の自然崇拝というやつかもな。自然崇拝の本質は、自分たちの手ではどうにも出来ない強大な相手に
どうか何もしてくれるな、と頼み込むものだ。何かを叶えてくれ、苦しみから救ってくれなどと、崇めるものじゃあない

ああ、カルトの狂信者どもは納得すまいな。怒り狂うことだろう。我々の神ではない、これじゃない、と

【嘲笑するような言葉も、敗北の味を反芻する苦々し気なカニバディールの表情の前では頼りない】
【敵がいかに綿密に計略を練っていたか。そして、今なお練りつつあるのか。神でありながら策士。なんと忌々しいことだろう】


まったく、してやられた。口先を武器に滅ぼす神など、初めて見たよ……

ああ、無論だとも。未だにはらわたが煮えくり返っている。散々にコケにされ、利用された
蛇教の残党をいくら狩ろうと、いくら蛇を狩り殺して料理しても、まるで収まりそうにない

レッド・ヘリングの件もすでに知っていたのかね……ケバルライ曰く、あれは実体がある分、彼奴等の中では下級の神格らしいな
ジャ=ロ……それが彼奴の名か。我々を弄んだ神様とやらの名か

――――乗ろうじゃあないか。ならばこちらは、先に言ったインタビューで得た情報を渡そう
お互いまともとはかけ離れているが、だからこそお互いを利用し合うことも出来る

【カニバディールもまた、狂気を覆えるだけの理性は有している。それぞれの利のためなら、抑え込むくらいは出来た】
【こうして、異形の盗賊とカルト狩りの虚数渡りは、繋がった。今にも切れそうに細い、されど確かな線で】


17 : 厳島の中 ◆zlCN2ONzFo :2018/07/03(火) 14:05:19 6.kk0qdE0
>>7>>9

「ああ、活動写真のそれを思い浮かべて貰って構わないだろう」
「まさにあの話に出てくる様な者達だった、思考は無く、付近の生物に襲い掛かる本能しかなく、そして痛みも感じない」
「それを各地から捕まえてきた人間で製造している、酷い話だな……」
「セリーナは、恐らくだが無事だろう」
「恐らくだが、セリーナは他の人間達とは違う扱いだろう、先ず肩書か違う」
「UTの代表で、賞金稼ぎとしてもその名を轟かせるセリーナ・ザ・キッド、各機関との交渉、取引の材料としては十分な存在だ」
「少なくとも、俺ならば命と思考だけは無事に軟禁し、ここぞの切り札として使うね」

【最も、是に関しては確証が無い】
【相手が常人の思考をしているとも限らないのだ、この話は気休めにしかならないのだろう】
【つがるの最もな疑問に、こう答えた、続いて】

「つがる、君がそう決めているならば何も言わない」
「自分が何を信じるか、何を否定するか、決めるのは自分でなくてはならない」
「他人に言われて信じる、あるいは他人に言われたから否定する、それでは邪教の狂信者と変わらない存在だ」
「だが、自分の固定観念に囚われて真実を見逃すことも、また同じ位愚かな事だ、そこは気を付けなくてはいけない」

【つがるに諭すようにそう話し】
【続いて、夕月に向き直り】

「本拠地、か……夕月、君も聡い子だ」
「言いたいことは、解る、可能性も十分にある、だが、あまりに現状乗り込むには危険に過ぎる場所だ」
「……部下達の報告をまとめてみた物だが、特区、カミスシティに潜入した能力者の何名かは、その能力を奪われていると聞く」
「何かの注射を施され、対人に対し能力が使えない状態にされたとの報告が上がっている、十分に考えられる事だ」
「どちらも部下の報告で、片方の人物に関しては直接の面識すら無く定かな話ではないが……」
「へケメトとアウと言う人物と白坂佳月という人物が被害にあった様だ、詳しくは全く不明だ」

【現状の勢力で乗り込むには、あまりにも不確かかつ無鉄砲、だが可能性は現状最も高い】
【乗り込むならば、集められるだけの勢力を集め最善を尽くさねばならない、と】

「それに、手をこまねいているだけでは無い……」
「我々魔導海軍がチームMに、円卓に手を貸す理由の一つが、婦警の拉致及び殺害計画にある」
「その際に、こちらとしては出来うる限り情報を得たいと考えて居る……この右目の仇も、討たなければならないからな」

【忌々しそうに、右目の眼帯を手に触れ】
【やがて、夕月への話を終えると、今度は二人に向き直り】

「その話を聞いて安心した……二人とも、その心を決して忘れるなよ」

【互いにウィンクを、アイコンタクトを交わす少女二人】
【彼女達を見て、安どの表情を浮かべ、この話を始めてからようやくと、表情を緩めて】

「つがる、そして夕月もだが、今日ここへ来た理由の一つだ」
「つがるには、もうやってもらって居る事、情報収集の件だが」
「夕月、君も手伝ってくれるかい?勿論、報酬は支払う、どうだい?」

【夕月に再び視線を向けて、こう尋ねた】


18 : 名無しさん :2018/07/03(火) 14:15:32 jlTidb/Q0
>>15

【――くすん、と、変な息をした。それは笑うでもなければ泣くでもなく、ただ、――会話の温度感が変わったことに対する、心構えのような】
【けれど強いて言えば表情はあんまり変わらないだろう。明確にイラついているとき以外は何となく笑ったままを保っている――といっても、イラつくことも多いのだが】
【だからよっぽどこの少女にとっては重大な――そして気に喰わない現実が多すぎる、という、証明にもなって】

――――そんなの見て分かりますよ。あんなふうに自分の女に会いたいって泣くタイプじゃなさそうなツラしてんのに泣きましたからね。
だけど、それでも――、それでも。私は良かった、最後にウヌクアルハイ様が受肉されるのなら、――、でも、

【苦い顔はやがて陰鬱さにも似てくる。吐き捨てるような言葉の温度、あるいは彼にとって予想もしないような現実を伝えるんだろうか、"あの"彼女が泣いてしまうような】
【"これ"はそれほどまでのことであり。ゆえにこそ罪のない人々がたくさん死んでいった。――どこかの隙間で泣きじゃくる子を呼び戻す、ただそのためだけに】
【ぎゅうと服の布地を指先が掴んで握る――、それでもよかった。最初から知っていたら殺していた。それはきっと後悔だった、やり損ねたことがあると。思い知ったのだから】

――ウヌクアルハイ様はくだらぬ少女の神なんかであってはならなかった。データを見ましたけど。"あんなもの"が我らの神を穢したのだと思うと――っ、
神話も持たぬ神が穢してしまえるほどにウヌクアルハイ様は"ちいさく"ないはずだった、っ、――あの場に居合わせた偽善者どもが歪めてしまったんだ、私たちの――。

――――――あははっ、別に。馬鹿にしたりしないですよ? まあ、そのサイズ、多分普通の店では売ってないと思いますけど?

【――おそらく、口ぶりからして、少女は"あの少女"に会ったことがないのだろう。データを見たことがある、というのなら、蛇教内部にて纏められたものがあるのかもしれない】
【だけれど信徒たち、サーバントが何も知らなかったのを思えば、幹部クラスのみが知る情報であるのか。けれど言葉は続くことなく、かえって馬鹿にするような、笑い声】

/わけますっ


19 : 名無しさん :2018/07/03(火) 14:15:45 jlTidb/Q0
>>15>>18

【ぶづり、と、到底音に表しがたい音で、肉を毟り取られる。――弾ける吐息があるのだろう、けれど悲鳴は上げなかった。そればっかりはしたくない。みたいに】

――――っ、う、――、は、ははっ、勝手に人の肉食べておいて、ずいぶんな酷評じゃあ、ないですか?
肉牛とかだったら泣いてましたよぅ――、まあ私は食用じゃないので、泣きませんけど。――。

【それでも顔はわずかに色あせる。能力が封じられた密室の場で、明らかな力の差を見せつけられたのだ。――だからと言って媚びることは、きっとありえないんだけれど】
【わずかに薄く笑む、――それにしても。致死量以上の毒を投与されたり不衛生な環境に一月ほど幽閉されたり。そういう"修行"してきた彼女の肉は、多分、ほんとに、おいしくない】

っ――――、蛮族が。くそ、これだから正しい信仰を理解しない民は嫌なんです、――、邪教に耽るだけでなく正教を嘲る。憐れまれているのはそちらであるのに、――。
信徒に対して踏み絵を強いたのと変わらず、あるいはそれ以上に醜悪であられる。――ウヌクアルハイ様にお祈りされたらどうですか? その醜悪さからも救われるやもしれない。
もっとも――"今の"ウヌクアルハイ様では分かりませんけれども。――ゆえにこそ我らはウヌクアルハイ様を正しい神の座へお戻しする。……。

【――その言葉に、彼女の態度は初めてひどく強張った。肉の抉られた右手から溢れる血さえ気にしないくせに、いまだ無傷である左手をかばったなら】
【ぎりぎり、と、歯を噛み締める。――口から思わず出てしまいそうになる口汚い言葉をかろうじてその歯列でのみ留めて、睨む目つきが、鋭く映えるのだろう】

……我らは"歪んで"しまったウヌクアルハイ様を正しく定義しなおす。

彼らは……、おそらく正義に与する組織だと。ですが目的までは知りません。構成員と会ったことがあるだけです。ですが――、
"こんな場所"に居る時点で察せられるでしょう。

【――――であればその瞬間にいっとうとげとげしい顔をするに違いない。ただそれでも彼の求めたすべてを口にしてはいなかった】
【誰と問われたのに対して"我ら"という言葉を使う。企みについて述べはしたが、そのために何をするのか、は、言わない。――自身を閉じ込めた連中については】
【正義に与するものだということしか、知らない。――構成員と会ったことがある、とは言うが、その結果こうして閉ざされているなら、よほどの関係性であったのか】
【少なくとも利用価値があると判断されたのだろう。だからこそここに囚われているんだろう。――けれどそれを少女はまだ知らなかった、けれども】

【――それを知った後の少女は、ここには残っていないから。ゆえにこそ、彼が訪れたタイミングは奇跡であった、それこそ、神様が彼をここまで導いたかのようであったなら】


20 : 棕櫚 ◆D2zUq282Mc :2018/07/03(火) 14:58:26 JY1GydDk0
>>8


【"やっぱりとはご挨拶だな、冒涜者。猫被りすんのも結構ツかれんだから早く言ってくれや"】
【口ではモノは言わないが。冒涜者に向けた獰猛な眼光は確かにそう言って憚らない――】


(キヒヒッ、さてはて。どんな絶叫(ねいろ)を奏でてくれるのかねェ。コイツは理屈抜きに楽しみだ)
(冒涜者様がじきじきにその手腕を振るうんだ。タダで終わる訳が無いんだからよ―――)


【"断頭台への行進"――とでも言うべきなのか。手術台へと手を引く冒涜者に、言われるまま手を引かれるカリヤ】
【冒涜者の促されるままに棕櫚は手を貸して。カリヤを手術台へと横たえさせた後に、両手足と首を束縛する枷を見下ろせば】
【その姿はまるで断頭台に括りつけられた罪人そのもの。"――まるでベルリオーズだな"と棕櫚は諧謔混じりに一言、ポツリ】


【冒涜者による"解剖の準備"を横目で見遣ると、真っ先に目に入ったのは魔術的な作りの手袋】
【目を凝らせば、指先から幾多もの細糸が見て取れる。棕櫚はふふっ、と笑い声を零した後】
【外科医が手術を行う際のお決まりの口上――それを思わせる問いに、一瞬だけ間を置いた。答えが無いわけではなくて】


「ココロ」ねえ……。昔からよく議論のネタに上がるよな、それ。アリストテレス曰く胸(心臓)、ヒポクラテス曰く脳、或いは頭。

そもそも場所探しという問いかけが間違いだと俺は思うぜ。俺はギルバート・ライルに似た考えで、何処にあるなんて問いそのものが無意味だと思ってる。
一つの臓器に宿るなんて考えは解りやすいかもしれねえが、今日まで「ココロ」が何処にあるか断定出来たヤツはいない。その上で俺の見解を述べるぜ。

「ココロ」が物理的作用だとすると、物理的作用は脳内部に留まらない。体の隅から隅までを伝って、最終的に皮膚からそれと接する環境へと繋がっている。
結論を言えば、"「ココロ」というモノは、身体と環境に跨って発生・存在している"。だから何処の場所に存在している何てのは断言出来ねェよ。


【冒涜者への問いに対して、神妙な面持ちで己の見解を示す棕櫚。己の見解を示した後に始める"カリヤの解剖"】
【「ルル」をカリヤは、これから何をされるかを理解してしまった。故に――"やだ、やだ!ころさないで、二回もころさないで!"と懇願する】
【心底怯えた表情は痛苦に歪む事になる。おぞましい糸が、カリヤの「ココロ」と「カラダ」を蝕み、苛み、壊して回り。地下室には絶叫が木霊する】


21 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/03(火) 19:47:46 WMHqDivw0
>>9

……やっぱそんなヤバいんだ、「特区」ってヤツ。能力を、……、
……………………まってまってまって、シラサカカゲツ!? ねえ今、――カゲツっつった!?

【神妙な顔して聞いていたのに――その人名を聞いただけであまりにもひどい取り乱し方をした】
【「うそでしょ、まさか、あたしを追って、」 ……しばらく呆然としていたけれど、振り払うようにして首を振り】
【今は鈴音の話。――――そう、自分に言い聞かせるみたいに。吹っ切ってしまった、ぎこちなく】


……ん。あたしも言ったしつがるんも言った、これは乙女のヒミツだから厳島さんにはシークレット。
ってなワケであたしとつがるんは、「認識」に関してはダイジョーブ! 安心しなさいなっ

【つがるのアイコンタクトに頷いて、ふんと鼻を鳴らしながら。その詳細について訊かれても、きっと答えない】
【なんせ乙女の秘密だから。オトコノヒトには教えてあげない、そんなかるーい感じだったけど】
【きっと夕月もつがるも、その点においての約束は守る。それだけははっきり伝わるだろう】

ジョーホーシューシュー? おっけおっけ、あたしにできることならいくらでも……
……報酬なんていらないよ、そうだな、でもどうしても厳島さんが払いたいってんなら――

――――ここの手伝いしてくれる人、見繕ってくんない? それでチャラにしたげる。

【続く厳島の問いには、快諾。どうしても礼をしたいってんならそうしてくれ、って付け加えながら】


22 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/03(火) 20:01:53 WMHqDivw0
>>20

…………すごい、博識だねえミスタ。哲学者? 科学者? ……ううんどっちだろ。
そう、じゃああなたの回答は「どこにでもあって、どこにでもない」ってことだね。
うんうんそれでいい、これはただのアンケートなんだから。
最初はどっからいじくり回そうか? っていうたぐいの――――――

――――まあどうせ全身そうするんだから、何処から始めたって結末は同じなんだけどね!


【あはははは―――― 明るい明るい笑い声を響かせて、冒涜者が手袋を嵌めた手を伸ばす】
【行先はカリヤの可愛らしい頭だった。側頭部に手を置いて、撫で下ろすみたいに頬を伝って】
【それから指先を嫋やかに蠢かせて、髪を耳にかけてやる。そうして晒された耳の孔】
【――――人差し指を突っ込む。けれどそう深くまでは到達させない、「指で」そうする必要なんてないんだから】



                            【              ぞ、     】



【……なんて音が、カリヤには聞こえたんだろうか。突っ込んだ指の先から細い細い糸が何本も何本も】
【ナカに侵入してくる音。糸はどんどん伸びていく、外耳道を通って鼓膜を通過し】
【さらにその向こうの三半規管や蝸牛の中をぐるぐる蠢いて――神経まで。到達したらさらにその先へ】
【ずーっとずーっと神経を伝って伸びて伸びて伸びて――――最終的には、脳まで達してしまう、糸の先】

【思っていたより「痛く」はないだろう。けれどきっとその感覚はあまりにも「不快」がすぎるのだ】
【直に神経を伝って、何より大事な脳味噌まで到達されて、さらにそこでも蠢かれるのだから】
【そうして得られる感覚ってどのようなものだろう――――きっと身体の内部で無数の蟲が這い回るのにも似ていた】


………………ね、ね、どう? カリヤちゃん。
あなたの恥ずかしいところ直に触っちゃってるよ、脳の皺、ひとつひとつカタチがわかっちゃう――ふふ、ふふふふっ!


【そうしながらも冒涜者は探り続ける。まずは脳、何か常人のそれとは異なる点が見れないか、なんて】


23 : ◆XLNm0nfgzs :2018/07/03(火) 20:40:56 BRNVt/Aw0
>>17 >>21

【不死の軍勢についての詳細。映画のそれみたいなものだと聞いて、小さくうぇぇ……と呟く】
【どうやって無力化すれば良いんだ、そんなの。後で調べるけど分かるかな、なんて考えて】

成程……セリーナさんはあくまで交渉材料って訳ですか……
でも……交渉かぁ……UTどーなっちゃうんだろう本当に……
【はあ、とため息を吐いて】

【続く信頼の問題にはちょっとぶすくれたような表情になる】
【彼らと彼女の決定的な違い、それはきっと公安の人間に会った事があるかないかで。その上で人間に対する信頼を疑うような出来事があった"らしい"と予測されるからどうしようもないようで】

【気分を紛らわすみたいに厳島と夕月との会話を聞く。特区は思った以上に危険そうで、ならば噂に聞く「何やら恐ろしい場所のようだ」というのもあながち間違ってはいないらしい】
【能力を奪われる、対人への能力施行を制限される。黒幕が使用してくる何物かが此処でも適用されている。やっぱり厄介だなぁなどと思考】
【──しかけたその時に夕月が声を荒げる。どうやら能力を奪われた人間に知人がいたようで】

え、ど……どうしたの!?お、落ち着いて夕月ちゃん!
【取り乱す夕月につられたみたいに此方もおろおろし出す】
【ややあって落ち着いた相手を見て、大丈夫?なんておずおずと声を掛けたりもするのだが】


【認識については大丈夫だと豪語し、自分達で何を言っていたかはナイショなんだって夕月が言うのを聞くと、何というかイタズラを企んでる子供みたいに此方もふふん、と微笑んで】

情報収集……追加案件、ですか

手伝いをしてくれる人……あ、そうかそういえばそれもあったんだった……子供達を黒幕陣営などの外敵から護りつつ料理もっていうのは流石に二人だけだと……
【私からもお願いします、とつがるは頭を下げる】


24 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/03(火) 22:55:20 WMHqDivw0
>>13
【カルト宗教のことは、一応は神を信じている身としての憤懣はあれど、遠い他人事で有ったはずだが】
【気が付くとこんな身近なところにまで寄って来る。……能力者の、一応は"正義の"組織に属している以上、早々避けられるものでもないのかも知れないけれど】
【さりとて、たまさか幹部と同じ名前の姉がいる、と言う話を聞いただけのことで、まだ巻き込まれると決まった訳でもない】


お友達で姉妹……?えーと、それは鈴音"お姉ちゃん"とかとは違うって事?


【幼女が感情的になっているから、余り刺激しないように当たり障りのない相槌を打った】
【しかし、眉唾ではある。普通に考えて、姉妹を"お友達"とは呼ばない】
【つまり、姉妹であることを誓ったような、親友――と言うくらいの関係だろうか?】

喋るか、食べるかどっちかにしなよ。
ホラ、包みは剥がしてやるから。

【この辺の対応も手慣れたものだ。渡した飴の包み紙を剥がしながら、考えをまとめてみるも、さっぱり状況が掴めない】
【そもそもそのカエデとやらが、件の蛇神教の幹部と同一人物とも限らないのだけど】
【仮にそうだとしたら、つまり鈴音とその"カエデ"との関係はどういうことになるのだ?】

【どうやら飴に意識がよって機嫌を直したらしい。さっき泣いたカラスが――と言う奴か。羽根は黒くは無いようだったが】

ん?ちょっと待てよ。そのカエデってのもUTの人間なのか?
……ええと、カエデって苗字……でわかるか?カエデ以外の名前は無いのか?


【ちょっと雲行きが怪しい。蛇神教に入っていた人間が、UTにも所属していると言うのは……いや、スパイとかの可能性もあるだろうけれど、余り考えにくいことだ】
【だとすれば、ひょっとして本当に人違い?】


25 : 名無しさん :2018/07/03(火) 23:08:31 jlTidb/Q0
>>24

【――彼が慣れた手つきで飴玉の包み紙を剥がしてくれたなら嬉しそうに笑うだろう。さっきはしょんぼりしていて言いそびれたお礼の言葉、言い添えて】
【でも結局まだ口の中に入れたまんま。幼子の口にとっては大きいのだろう、だから声がひどくもごもごして、ちょっぴり以上に、聞き取りづらい】

そうよっ! 鈴音お姉ちゃんはね、鈴音お姉ちゃんなの、でもね、カエデはね、私のね、姉妹なのよ。
それでね、カエデはね、お父さんがいなくなっちゃったから、大変で――、だからねっ、元気になってほしかったの!
鈴音お姉ちゃんならね、私よりきっと難しいコト、いっぱい、分かるから……。

【時々もごもご、あるいは、歯と飴玉がぶつかり合う音。させながら、そうやって説明するんだろう、"お姉ちゃん"と"姉妹"には、彼女の中で違いがあるらしい】
【とはいえ外から聞けば何がなんだか、という様子でもあるだろう。――そしてそのカエデ、という人物には父親が居ないらしく。だから大変で、元気づけようとして】
【そのために件の鈴音、に協力を要請したようなのだが。――だけれど細かなことはよく分かってこない、なにせ実際に話し合った二人が、この場に居ないのだから】

――――んん、そうよ? カエデはね、UTでね、お仕事してるのっ。
えと……、カエデはね、紫色の子なのよ! ラベンダァイス――――あう、……ええと、ね……。

……カエデはね、ケツァル・コアトル=ラベンダァイス=カエデ=キャニドップ、……ケツァル・コアトルなのっ。
だからね、えっとね、私もね、そうなの! 私はね、黄色の子なのっ、あう――えっとね、ナイショよ! ヒミツなの、絶対っ。
あのね、あのねっ、ケツァル・コアトルは生物兵器だけど――私はね、そんなのね、ヤなのっ、そんなことね、したくないの!

だからね――内緒、にしててほしいなってね、思うの――。

【カエデがUTでお仕事している、と、行った時。きっとなぜか幼子は我がことのように得意げな顔をするんだろう、すごいでしょ!とでも、言い放つように】
【だけれど――続く言葉が急に淀んだ。言いたくないことに触れられたみたいに言葉が濁ったなら、視線がふらふら揺れる、あー、とか、うー、とか、変な声を繰り返し】
【しばらく悩むのだろう。確信に触れずに説明する方法を探そうとして。――やがて見つけられなかったならば、幼子は躊躇いがちに、本当のことを伝えてゆく】
【すなわちカエデという人物はUTに所属する生物兵器である。そしてまたこの幼子も、生物兵器であり。けれど――それについて言いふらさないでほしい、と、お願いする】

カエデもね、そんな悪いコトしないわっ、だからね、――。

【曰く、――自分は生物兵器であるが、そのようなことはしたくないから、と、言って。ひどく不安そうな目をするんだろう、ほっぺたを飴玉でふくらましたままであったけれど】
【一生懸命にお願いするのだろう、――まして、この、能力者やらなんやらが騒がれるご時世の中、生物兵器がどう、なんて、言われたら。きっと自分たちは嫌われてしまうから】
【ひどく不安そうであった、――そしてそれは大事な姉妹の立場を護るためでもあって。だからこそきっと譲らないんだろう、嫌だって言ったなら、そのまま、喧嘩になってしまいそうなほど】


26 : ◆X6pHyBiUKs :2018/07/03(火) 23:53:53 WMHqDivw0
>>16
【実際、人肉が混ざっていたとして、この男が気にするのかは定かではないが、少なくとも出て来た料理はきちんとした蛇料理だった】
【巷を賑わす大悪党が料理上手とは変なギャップを感じられる】
【しかもこれは、趣味どころではなく、しっかりとした仕事の味だった】


別に拘りが有るワケじゃアねェよ。
狩り過ぎて、何となく勘どころが良くなってるだけだ。
都合よく歪められた方を、本物だと信じるなんざ、全く持って度し難いですがァ?
狂信者にそれを言ったところで、正に馬の耳に念仏と言う奴かねェ。


【カニバディールの内心を知ってか知らずか、適当にフォークを使って蛇料理を突いていたが、"ムリフェン"の話題に登れば、片方だけの視線を持ち上げ、感心したように声を上げた】


流石は大悪党のカニバディール先輩だ。
神出鬼没は俺の専売特許でしたのにィ、もうとっくに侵入を果たしてインタビュー済とは。

アァ、でも実は奴さんの感想自体には興味はないんだが。
だが、まさか握手しに行ったワケじゃアなかろ?得られた情報には興味が有るね。
答え合わせにもなるかも知れねェからなア?


……なア?あの女、"元気"だったか?


【感想に興味はないと言いながら、彼女の精神状態を尋ねる。まるでそれが大事な点だとでも言いたげに】

クッヒッヒッヒ……自分で呼び出しといて、"コレジャナイ"と来たか。
果たしてどんな神様だったら納得出来たんだろうなァ?

神様に"良い"も"悪い"もねェよ。有るとしたら、そりゃア表と裏だ。


ま、宗教談義なんぞ程々にしておこう。
俺に言えるのは、あの連中が崇めるような蛇の神様なんぞ、いねェってだけだ。
それに――虚神とか抜かすハリボテの神もな。
"存在しない"。アレは"神じゃあない"。奴らの言葉を鵜呑みにするなよ、カニバディィィィル君。
そりゃア思う壺って奴よ。


【男は、自分の信じるもの以外を決して信じない。例えその証明が目の前に現れたとしても、"世界の方が間違っている"と断言できる】
【――それは、『集合的無意識から隔離されている』と言うこと。対虚神用に調整を受けた、精神性】


できるだろ、オマエも。信じてないだろ、実際のところ。
奴らのいた世界ならいざ知らず……神を名乗るような有象無象が山といるこの新世界で。
あいつらだけが無二の神だなんて……ク、ヒヒヒッ……まさかだろ?

正確じゃあねェな。レッドへリングより、ジャ=ロが格上だってワケじゃアない。
性質と、顕れ方が異なるだけだ。
ジャ=ロについて、確定して分かってることはほとんどねェ。

『Akzeriyyuth』なんて名乗っちゃあいるが――実際のところ、奴に取って死は身近な概念なんだろうよ。
いや、恐らく結果としての死は然程重要じゃねェ。
そこに至るまでの因果を作ることと、それを解きほぐすことが、奴の本領なのさ。

だが、別に遠く離れた御伽噺じゃアない。
あの連中はみんなそうだが、実によくある、身近なモノが奴らの正体なんだろうな。


【男の言葉は曖昧だ。ともすれば、煙に巻いているようにも聞こえるかも知れない】

悪党は話が早くて助かるね。…それで何の話だっけ。
……そう、俺の仲間が、近くジャ=ロの正体を掴むために、虚神達のねぐらに遊びに行くって話が出てる。
レッドへリングを殺ったなら知ってるかも知れんが、連中の心臓を掴むためには、奴らの正体を掴むことが不可欠ってワケだ。


27 : ◆T8m6bu9Ru. :2018/07/04(水) 00:15:05 WMHqDivw0
>>25
【何で、子供から離れて自由時間を満喫していたのに、また子守りをしているんだろう】
【何かのカルマでも背負ってしまったのだろうか】
【仕方ないからもう聞くだけ聞こう。最後まで聞いたら忘れよう。帰りにメンチカツ買ってこう】


…………何て?


【いや、素で聞いてしまった。想像していた名前とは全く違っていた。でもまた蛇の神様?】
【そうじゃなくて生物兵器?頭痛がしてくるような単語の数々を最初に聞かなくて良かった】
【――むしろ悪かったか?出足に聞いてたら幼子の妄言だと聞き流していたに違いない】


あー、えーと、うん、生物兵器。UTの。なるほど。


【なるほど。何か思考を放棄した。LINEでクマが蝶を追いかけてるスタンプみたいな心境になった】
【話を聞くと蛇神教の幹部とは全然関係なさそう。勝手に結び付けて中二病は自分の方か。恥ずかしい】
【あー、でも一つ得心が行った。"姉妹"――"姉妹機"ってことか】


正義の組織に属してるんだから、そこまで心配はしてないけど……ナイショね。OK。


【唇に人差し指を立てて、それに関しては請け負った。何にせよ懸念の一つが晴れたような気になって――全く晴れてはいないのだが】
【ふりだしにもどる。何にせよ、自分に思い至ることなど多くはなかった】


……それで、そのカエデって人にはもう聞けないのかな。
姉妹ってくらい仲悪いんだったら腹を割って――……いや、ナイショ話でもちゃんと教えてくれるんじゃないの?


28 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/04(水) 00:17:44 WMHqDivw0
>>16 >>25
それぞれ、パグロームと合歓のレスです。
相変わらず酉が効いてくれない……


29 : 名無しさん :2018/07/04(水) 00:27:33 jlTidb/Q0
>>27

ケツァル・コアトル!
あのね、あのね、私たちね、生物兵器なのよっ! それでね、だからね、うんとね、強いの!
でもね、あのね、私ね、みんながケガしたりするの、やだなって思って、だから、生物兵器なんてね、やめちゃうの! それで――。

【――ぷんすこ、って顔をするのだろう。聞き返されたならひどく真剣な説明の言葉が続く、――それが大人にとって明瞭であるか、は、全く別問題であり】
【そのあと何分か語られるだろう。つまり自分は生物兵器だが、そのように他人を傷つけるために力を振るう気はなく、むしろ世界平和を望む、その方法というのは】
【みんなと友達になることなのだと言って。――友達にひどいコトするヒトなんて居ないのよ、と、言葉を区切る。そうしてふんすとドヤ顔でもするだろうか】

【――――絶対百パーセント伝わった!って顔をしていた、けれど】

UTはね、違うわっ! 私たちが"起きた"時にね、UTってね、なかった!
だってね、知らないものっ、できたーって時にね、あのね、テレビで見たよ! だからね、私たちの方がね、"おねーさん"なんだから!

【さて、それで――そこに、少しばかりの違和感があった。どうやら彼女たちの稼働が開始したときに、件のUTは存在せず】
【そうして彼女たちはそれをきちんと覚えて置けるような年齢に設立を見届けたのだと言う。――であればやはり全うな生き物ではないと言う証左になるだろうか】
【UTの設立はもう何年も前のことである。――この幼子がまっとうに正しい子供であれば、覚えているはずも、ないほどであったなら】

そうっ! 内緒なのよっ、あのね、約束! ――――あう、カエデはね、あのね、たまにね、メールするよ!
でもね、きっとね、うんと忙しいから……その……――、むー! カエデね、大変なんだからっ! ネムお兄ちゃんたら、でりかしーが足りないの!

【ぷーと頬っぺたを膨らます、定期的なメールのやり取りがある。それでもなんだか気が引ける様子であるのはどうしてだったのか、――それは、あるいは、気遣いに似て】
【忙しい姉妹を気遣って。――そのくせ気にしていないわけではもちろんないんだけれど、なんだか適切な距離感がふわふわしてしまっているみたいに、困った顔を、する】


30 : 合歓 ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/04(水) 00:49:22 WMHqDivw0
>>29
なるほど、分からん。

【されど3分の1も伝わらない純情な感情】
【とにもかくにも幼女の話は要領を得ない】
【要領を得ない話は得意だと言ったが前言を撤回したくなってきた】
【いや、これもう幼女がどうのって話じゃなくない?】
【渾身のドヤ顔を眠そうな三白眼で、見返しながら、しかし額には汗していた。今日は暑いなあ】

せやな……友達100人出来た?

【取り敢えず、何をどう突っ込むべきか分からなくて、そんな返ししかできなかった】
【ひとまず生物兵器が思いっきり暴れるよりは、人間ごっこをしていてくれた方がまだマシだろう】
【UTの話も交わっていよいよ混迷してくる。昨日今日出来たような組織ではなかったはずだが……】
【いかん、こういう時は話を整理しよう】


UTにはじゃあ、後から所属したってことね。
ファラエナって歳いくつなんだっけ…?
あと、母親ってのも……えぇと、ファラエナと"同じ"なのか?


【つまるところ、見た目通りの年齢でない可能性がある。精神年齢も相応に幼く見えるのだが、ひょっとしたら幼女の皮を被った年上かも知れない】
【そうなるとさっき聞いた母の存在が俄然胡散臭くなって来る】
【同類項の可能性は低いだろうけど、なるべく、刺激しないように聞くために敢えて持って回った言い方をしたのだった】


えぇ……忙しいたって、鈴音さんの方は割と、急ぎの話なんだし……


【鈴音お姉ちゃんとやらへの不安よりも姉妹機の気遣いの方が優先?だとしたら思いの外ドライなのかも知れないけど、多分そこまで考えてないだけだろうな……と思って置く】


31 : 名無しさん :2018/07/04(水) 00:59:49 jlTidb/Q0
>>30

――えー! 嘘よ! ネムお兄ちゃんたらね、きっとね、居眠りしてたんでしょ! 目開けたままね、居眠りね、してたでしょ!?
もうっ――じゃあね、もっかいね、お話するね! するからねっ! 

【――ひどい話であった、渾身のドヤ顔に帰るのはなんとも手ごたえのない感じ、であれば幼子はもっかいブン殴ってみたらいいかも、と考える】
【すなわちもう一回言って聞かそう。そうやって考えたんだろう、そして、マジで実行に移す。――遮らなかったら同じ感じの発言がもう一回、繰り返されて】
【絶望的であるのはさっきので伝わらなかったのを考慮してかより一層話は長く複雑になる。つまり、もっと電波じみて来る。もう完全にユンユンしたあたりで】

――――――分かった!?

【本人もぜーはした息で確認するんだろう、――――嘘だとしても感銘を受けたみたいな顔してないと、多分、三度目の正直に挑みかかるに違いなくって】

私はね、えーっとね、八歳くらいかなってね、思うの! でもね、あんまりね、何歳ってね、考えたことがないから――。
お誕生日もね、よくね、覚えてないわっ! だってね、お母さんはね、そういうのは、あんまり関係がないからって言って……。

お母さんはね、お母さんなの! あう……えっとね、マスター!

【そうしたなら話は戻る。――年齢についてはよく分からないらしかった、誕生日とかっていうのも、彼女自身はあまり明確に把握していない様子であり】
【母親も同じなのか、と、問われれば。――それは違うらしかった、マスター。つまりこの個体を管理しているのだろうか、とにもかくにも主人のようなものがいるらしく】
【あるいは飼い主とも呼び変えられるのかもしれなくて。――――そうしたなら、続く表情は、今度は、うんと、うんと、悲し気に、なってしまった】

あのねっ、カエデはね、その……マスターがね、あのねっ、――死んじゃったの! だからね、うんとね、いっぱい、頑張ってるのっ。
頑張りすぎなの! 私ね、そうやって思ったんだけど、カエデはね、全然ね、聞いてくれなくって――私ね、カエデにね、笑っててね、欲しいのに!

だからあ――――――――。

【うんと大事な姉と、うんと大事な姉妹と。並べたときの混乱に似ていた、どっちが大事かって思ってきょろきょろするうちに、どっちも分からなくなって、泣いてしまいそうになって】
【姉のことは大事である。けれど姉妹も大事である。そして姉妹は状況の不安定さもあって、あまり無理させたくないように思っているのだろう、――それは家族を案ずるみたいに】
【だからといって、だからって、姉のことを放っておくことも出来ない。両方から引っ張られてしまったなら困ってしまう、困って――泣いてしまいたく、なるのなら】

【――ぐるぐるって思考回路がショートしてしまいそうになる。結局頼れそうな知り合いなんてあんまりいなかった、お友達になったみんなも、最近会ってない人たちばかりで】
【きゅうって小さな声が漏れたなら――、あるいは。彼が大人として何か勇気を授けてくれたなら、そちらに向かって歩いて行けるのかも、しれないんだけれど】


32 : 合歓 ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/04(水) 01:53:13 WMHqDivw0
>>31
【初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった】
【この言は、初めに神と共にあった。万物は言によって成った。成ったもので、言によらずに成ったものは何一つなかった】
【言の内に命があった。命は人間を照らす光であった。光は暗闇の中で輝いている。暗闇は光を理解しなかった】

あー……そういうことね、完全に理解した。

【腕を組んだまま完全に理解した顔をしていた。回線を引き込んだ電波に際しては、頭の中で別の言葉に変換していたのだけれど、取り敢えず理解した顔だけはしていた】
【本人も結構しんどかったらしく、小さな体で肩で息をしているようだった。何だってそこまで必死になるのやら】

8歳?……見た目よりはって感じだけど、やっぱり子供は子供だな……

【確かに5歳と言われると些か賢いような気はしていた。8歳と言われるとしっくり来る感じはする】
【そして母親に関しては概ね予想通り――正直なところ、馴染みが在り過ぎるモノだった】
【親、大人、マスター……飼い主】

【――頭を掻く。この世界は子供には生き辛い。そんなことは分かっているのだけれど】
【恐らく自分は子供と呼ぶほど幼くはなく、大人と言えるほど達観も出来ていない】
【だから多分、幼いなりに、人間関係の波に飲まれて溺れそうになっているこの幼女に、掛けられる上手い言葉もあんまりないのだが】

【気色ばる彼女の額をトン、と指で突いて】

……あー……子供が、余計なことまで気を回すもんじゃないって。

今、僕に目一杯喋り倒しただろ。
僕が分かるまで何度も言おうとしただろ?
それくらいのファイトでそのカエデさん?にも当たれば良いんじゃないのか。

そいつも忙しかったり、大変だったりするかも知れないけど、今のお前ほどはテンパってないし、大人だろうよ。
言うだけ言ったら、上手く処理してくれるよ。多分ね。

んで、カエデさんを何とかしたら、次は鈴音さんの話をすりゃ良い。順番だ。


33 : 厳島の中 ◆zlCN2ONzFo :2018/07/04(水) 14:17:56 6.kk0qdE0
>>21>>23

「私の時は、そうだな、足を狙ったそれで難を逃れたが……」
「具体的な対抗策となると、最早現状その位しか案が見えない」

【レヴォルの不死の軍勢に対しては、こう話す】
【あの状況では、この位の策しか見いだせなかった、それ程手強い相手だったとも言えるが】

「カンナが居ない事も厄介だが、それ以上にこちらは黒幕への対抗策が、現状チームMのみ、そしてそれも鈴音を欠いた状態にある」
「要は、この上なく不利な状況に近い……謎の調停官嵯峨野に、機関の狙撃手カチューシャ、婦警、あまりに危険が大きい」
「ましてやその状況で特区に向かうなど……ん?どうした夕月?」

【反応はつがると同時だったかもしれない】
【夕月が何気なく話した、又聞の名前に反応を示したのだった】

「白坂佳月、確かにそう言ったが、すまない、この人物は私も話を聞いた部下も面識は無い」
「部下の知り合いが、そんな人物と知り合い、特区でその佳月と言う人物が能力を奪われた、そんな話をしていたらしい、夕月の知り合いなのか?」

【どうにも、夕月にとっては深い関係性の在りそうな人物だったためか】
【自然な流れとして、じっと、目を見て、そう聞いた】

「乙女の秘密?そうか、それでは私が深く聞くわけにもいかないな」

【この部分に関しては、くつくつと、心底可笑しそうな笑みを浮かべて】
【こう答えるに留めた、随分とませた事を、年頃らしいと言う微笑ましい一面だ】
【あるいは、二人にはどんな状況でも、そんな年頃の少女らしさを失わないでいてほしいと言う、老婆心的な願いもあるのかもしれない】

「ああ、此方からすれば協力してくれる者が多ければ多いほど嬉しい事だ」
「なるほど、人手か……ああ、いいだろう、幸い良い心当たりがある」
「能力者としても軍人としても、腕は申し分無い、また料理の腕も保証しよう」
「ただ……性別が、な、その……何だ……」

【二人の提案に、快くそれを了承、魔導海軍の身内に一人そんな存在が居る様で】
【ただ、最後の部分は、彼には珍しく歯切れの悪い回答となったが】






「ふ、ふ、ふあっくしょんッ!!」
「どうしたですご主人?」
「ああ〜、誰か良からぬ噂あるいは企みしてるわ、主に私に関する」
「そんな古典的な、湿気でやられたです?」


【所変わって、同時刻水の国、魔導海軍拠点のマンションの一室で、ある人物とある少女がこんなやり取りをしていたと言う】



「さて、君達に頼みたい情報収集は以下に関してだ」
「勿論、噂程度の物で構わない、深追いは禁物だ」

・オーウェル、ハルモ二―に関する事柄
・イル・ナイトウィッシュ、あるいは虚神に関する事柄
・特区とその周辺に関して
・都市伝説、マスクドライダーに関して

「以上だ、オーウェル、ハルモ二―に関しては説明したとおりの理由だ」
「黒幕に特区のインフラ整備に関わる企業だ、絶対に裏がある」
「イルに関しても同様だ、現状鈴音を追うにはイルや虚神を追うのが最も近い道だろう」
「マスクドライダーだが、この都市伝説は知っているか?」
「悪い能力者が悪事を働く時、仮面をかぶり、バイクに乗って現れ人々を救う正義の存在、ありふれた都市伝説だが」
「噂を聞く限り、どうも……魔導海軍や公安ゼロ、三課、もちろんUT以外の何らかの組織の暗躍が考えられる」
「勿論全て情報は噂程度の物で良い、広く集めて教えて欲しい」
「それと、もし情報を追う過程で『婦警』、『動物の仮面をかぶった黒づくめの集団』、『フルフェイスマスクで顔を覆った機械じみた兵士たちの集団』に出くわしたら、直ぐに逃げるんだ、逃げ延びる事だけを考えて即座に逃げるんだ」

【一通りの話をして、二人を交互に見据えて、最後にこう忠告した】
【最後の忠告は、決して脅しでは無い、本当に危険な者達である、そんな気迫を込めて】


34 : 棕櫚 ◆D2zUq282Mc :2018/07/04(水) 14:39:24 JY1GydDk0
>>22

【室内に響く冒涜者の笑い声。今から行われる非道とは結びつかない程の底抜けの明るさ】
【顔の輪郭をなぞる様な指先は、今から非道が行われるとは思えぬ程に優雅でしなやかに】
【まるで官能的な光景だった。まるで扇情的な光景だった。――行き着く先が阿鼻叫喚だとしても】


――ははっ、まるで強姦魔みたいな口ぶりだな。冒涜者殿。
聞いてるこっちが恥ずかしくなる様な台詞を平気で吐きやがる。痺れるぜぇ。
俺が同じ事を言えば犯罪でしかないが、冒涜者殿が言えば最早口説き文句だ。


【棕櫚は軽口を叩き、そして嗤う。一見すれば廃退的な美女が、人形の様な少女に"悪戯"しているだけなのだが】
【その実、この瞬間に行われているのは徹底的な解剖。少女たちの尊厳を踏みにじる様な陵辱に他ならない】
【それが証拠に耳の孔から入り込む細糸が神経を伝い、人にとってのブラックボックスとも言える領域へと到達した瞬間――】


「いやぁあああああああああっっっっ――――……っ!!私のナカをあばれまわらないでえええええええええっ!!
 やめて、やめて、やめてぇえええええええええええええっっっっ、ぅぅう、ぁあああああああっっ、あっ、あっ、あっぁあああっ…!
 カリヤちゃん、カリヤちゃん!いや、いや、いやぁああああああ、"―――たすけて、わたしをたすけなさいよッ、「ルル」ぅ!!"」


【脳内を無数の蟲に蹂躙されるような感覚は、きっと筆舌し難いモノなのだろう――棕櫚は思う。"ご愁傷様"と】
【外側からの苦痛より、内側からの苦痛の方が格段に苦しいものだろう――何せ逃げ場が無いのだから】

【ただそれは痛みではなく、不快感であり。不快感を齎す細糸はカリヤの脳内を繊細かつ暴力的なまでに蠢いて】
【カリヤの脳内を蠢き回った末に、常人とは異なる点が見て取れる。脳内で二人分の思考が行われて――】
【「ルル」の慟哭に混じる「カリヤ」本人の叫び声と懇願。地下室に木霊する声は、一つではなく二つだった】

【もしかすると、冒涜者からすれば"脳内で二人分の思考が行われている"以外の発見があるかも知れないが、果たして】


35 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/04(水) 19:18:30 IIkXTD5Q0






【ずっと前から、なにかを思い出せずにいる。】






【蒸発し拡散したクオリアが、レム睡眠の冷却に曝されて結露する。閉じられた瞼を自覚する。シーツとベッドの狭間、己を隔てる衣装さえ無く、輪郭ない布地に包まれる自己の肌膚。目覚めの認識。】
【この夜において真っ当な意識を保つことに何の意味があろうか。其れを忘れる為凡ゆる方策を試したというのに。 ── 40℃のストレートと、十数mgのニコチンで喉を焼き燻し、】
【済めば分厚い制御工学の専門書にアイデンティティを探して、けれどアルコールに毒された思考の鈍麻ゆえ身も入らず、結局は奇妙な同居人へと強請るようにスプリングは呻いた。 ─── いつしか、眠っていた。】
【そのまま目覚めなければよかった。ずっと眠っていたかった。願わくば永遠に、せめて次の朝日が昇るまで。ほとんど祈るようにしたけれど、結局こうして叶えてもらえなかった。やっぱり、神様なんていやしない。】


「 ──── っ、 ………… 。」


【 ── きっとアリアは、其んな独白でも綴ったのだろう。シーツを軽くのけながら、片膝を立て、おもむろに身体を起こす。窓の外から差し込む月光が視覚素子に突き刺さり、鈍い痛みが皮質を抉る。】
【小さく、呻く。なにか忘れているようで、なにか引っかかり続けるようで、自分が自分でいられない感覚が、衝動と虚脱の入れ違いを繰り返し彼女に齎した。連れ出した、あの病院の日から。】
【月魄に照らし上げられ、微かに柔らかな色を帯びた真白い絖地の手指が、同じ色合いの横顔を堪えるように包んで、握って、絞り出した苦悩を嘆息に吐き出す。】
【なにも纏わない上半身は裸像に似て、けれど世界の終わりまで大理石を磨き上げたとして此んな風合にはならないのだろう。代わりに被る、乱れた白銀のヴェールは、艶と呼ぶには眩しすぎる光輝を湛えて】
【せめて彼女を世界から護っていた。それでも白い喉筋は堪え難い辛苦に蠢いて、ときどき片手は遣り場なくシーツを握るものだから、 ──── もしも"隣"に居るのなら、目醒めさせてしまうかもしれない、けれど。】


36 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/04(水) 20:06:34 WMHqDivw0
>>23>>33

【夕月を動揺させたワード、「シラサカカゲツ」について。二人にこれ以上何を聞かれようとも】
【「今はいい。そのうち話す、……だから今は鈴音の話だけしてよう」とだけしか答えない】
【ひどく個人的な問題であるらしかった、だから今つらつら喋ってしまって、本題をないがしろにできないって】
【そう言うのだ。ひどく個人的な我儘。言い終えたら――一呼吸、置いて】

んー? セイベツ? 男の人が来るかもってこと?
あたしは別に気にしないけどなあ、つがるんがどうかは知らないけど。
ね、つがるん、男の人苦手だったりする? ……しないかな、厳島さんとは普通に喋れてるワケだし。

……それはまあいいや、それで、あたしの脚まで使って探したい情報ってナニ?
レヴォルとかハルモニーのこと? 蟲のこと? それとも黒幕のこと、……もしかしてそれら全部?
……ンまあ、一回いいよって言っちゃったし。ちゃんとやるよお、でも何を求めてるのかだけは教えて!

【性別がなんだ、という言葉に対してはあっけらかんとそう返すけど。たぶんいろいろ勘違いしている】
【でもそれは置いといて――自分はどんな情報を集めればいいのかって。それを再確認するように】
【ちょっと真面目くさった顔して訊いてくるのだ。おそらく何と答えても、二つ返事で了承するだろうが】


37 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/04(水) 20:16:44 WMHqDivw0
>>34

……やだ、レディに向かってそんな言い草ないでしょ、強姦魔だなんて!
もーちょっと言葉には気を遣ってくださる? たとえばそうだなあ…………

――――「魔の女<ファム・ファタール>」とかそういう。かっこいいこと言ってくんない?

【けらけら笑いながら、カリヤの耳に突っ込んだ指先を時折くいくい動かして】
【カリヤの脳を直接なぞっていた。ひどい不快感を齎すその運動を、ずっと止めなかった】
【ひとつの脳にふたりぶんの思考が走っている。確かにそれを感じ取って、――笑っていた、面白そうに】


………………あ、こら、「姉妹喧嘩」はよしなさーいっ!
そういうことする子「たち」には、――――「こう」。……あれ、ここだったっけ? ここ?

【喉を裂かんばかりに叫ぶカリヤ「たち」の身体を見やりながら――冒涜者はふいに、指先を蠢かせた】
【するとカリヤの脳漿のナカで糸が蠢く、規則正しく先っぽを「その一点」だけに向けて――――】
【――――脳の中の、「痛みを司る部位」。其処に細い細い糸の先端を、何本も何本も突き立てようとして】
【貫く、ほどの勢いはない。けれど表面を何度も嬲るように浅く突き刺さって、抜けて、突き刺さって抜けて】
【それを繰り返す。そうしたらきっと、今度こそ筆舌尽くし難き「激痛」が走るだろう――――】

【――――それは、「カリヤ」に? それとも「ルル」に? あるいはふたりともに、だろうか】
【それを図ろうとしてやっていること、らしかった。そうしながらも指先はずっと運動を止めないで、甚振り続けるまま】


38 : ◆XLNm0nfgzs :2018/07/04(水) 21:13:13 BRNVt/Aw0
>>33 >>36

足を狙う……ですか……温度の変化などで動きを止める、まではいかなくても動きを遅くする、とかが出来れば良いんですが……
【どうしたものか、とため息を吐いて】

【夕月の口からは明確な答えは出ない。けれどもそのうち話すからと言われれば何かを察したのか少し真面目くさった顔つきで、うん、待ってるよ、なんて頷く】

軍人、という事は厳島さんの同僚か部下、といったところですか
それだったら信頼……うん?
【言いかけるが性別の事で厳島の歯切れが悪くなったのを見るとこて、と首を傾げて】
【男の人?つがるんは大丈夫?なんて夕月の言葉には、や、別に大丈夫だけど、なんて答えつつちょっと考えて】

……あー!"どっちもある"って事ですか!
大丈夫ですよ同族なんて雌雄あって無いようなもんですから!
【ぽん、と手を打って明け透けに笑う。性別で困られるという事は性別が曖昧とかそんな感じなんじゃないかと思った、ようなのだが何故そちらにいったのだろうか?やはり半分とはいえ妖怪だからなのだろうか?】

【そうして依頼内容を聞けば】

オーウェル社とハルモニー社について……それからイルって奴と虚神について……後は引き続き特区の周辺調査とそれから…………ん?

【指折り数えながら内容を確認していくその手がふと止まる】
【マスクドライダー。情報を調べていく中でふと耳にした都市伝説】
【最近"誰か"が口にしていた。その名前を】
【ふと思い出す雨の日の邂逅。まさかね、なんて内心笑う】

【まさか、"彼"がマスクドライダーの"関係者"な訳ないよね?ただ信じているだけの人だよね、なんて】

婦警に……動物の仮面を被った黒ずくめの集団……フルフェイスの機械兵っぽい奴等……ですか……分かりました、とにかく気を付けます
【そう言って頷くも、それらの特徴にあれ?と思う】
【婦警以外顔が隠れている、と】
【もしかしたら善き隣人の正体が動物の仮面の人物、なんて事も起きるんじゃ、なんてまた猜疑心を呼び起こして】


39 : 名無しさん :2018/07/04(水) 21:53:19 7.LrT6jc0
>>32

【完全に納得いった顔を相手がしてくれたのなら、幼子はようやっとそこで満足するのだろう。ふんすと得意げな顔、胸をうんと逸らして】
【ふふーんって感じに笑うんだった。――相手がすっごく気を使ってくれたとはきっと思っていなかった、子供だなんて生き物はきっとだいたいそんなものだし】
【であれば余計に生物兵器であると言う事実が嘘であるかのように思わせる、――あるいは、ここまで子供のように振る舞う生物兵器を作った目的、恐ろしくなりそうで】
【――――だけれど本人はこんなに何度も熱弁するほど"誰かが傷つくのはイヤ"みたいだから、そういう意味では、きっと大丈夫なんだと思わせるけれど】

あーうー、私ね、あのね、やっぱりね、子供かな!? ってね、思うの、だってね、難しいご本ってね、まだよく読めないし……。
でもね! カエデとかね、きっとね、うんと難しいこと、たくさんたくさん知ってるんだわっ。だからね、私もね、"おねーさん"になりたいなって思うの!

うぎゃっ!

【――彼の言葉に幼子はむっとした顔をする、どうにも"これで"おねーさんを目指しているところであるらしい、その癖に全部が全部きっと拙いのなら】
【きっと彼女にはまだ早すぎるか、向いてないんだと思わせた。――額を小突かれたならいっそ動物の鳴き声みたいな声を漏らす、びっくりしたみたいに数歩、後退してみせ】
【そんなにも強い力を込めたわけではないのだろうけど――めいっぱいに彼の方に言葉を投げていたならその瞬間ちょうどぐっと顔を出していた、ゆえに、額に赤い指の痕を残して】

んん……そうかなっ? そっか……――――そうかも!
じゃね、あとでね、カエデにメールしてみるわっ! それでね、聞いてみるっ、UTのヒトたちもね、きっとね、探してるし――。
だってね、そうよねっ。そしたらね、カエデとはね、一緒に探そうっ、――そしたらね、あのね、カエデだってね、きっとね、うんと無理しないし……。

【――――数秒ばかし、考えるような間があるのだろう。そうしたなら、表情がぱっと咲くのはあんまりに突然で、その瞬間に何か理解の回路が繋がったらしい】
【ぴょんぴょこ跳ねるみたいにしながら彼の言葉を自分なりに噛み砕いて――とりあえずUTメンバーで知り合いであるのは、もはやカエデだけであるのなら】
【まずそういう意味合いで連絡を取ってみよう、と、思い至る。そしたら他の人が探しているならそこに合流して。件の姉妹とは――いっしょに探せばいい、と、笑う】
【そうしたらきっと無理をしないから、と、呟いたなら。――ぱぁあと急に表情が華やぐから、ほんとに、もう、気まぐれ屋さん。ポジティブとプラス思考めいっぱい詰め込んで】

――――ネムお兄ちゃんね、きっとね、天才ね! 

【まだ飴玉で膨らんだ頬っぺた。それでも飴玉はちょっとだけ小さくなってきたから、声はさっきよりも明瞭に。ひまわりみたいな笑顔、真上から照らす太陽みたいに、まっすぐ向けて】


40 : 名無しさん :2018/07/04(水) 22:06:12 7.LrT6jc0
>>35

【――そして少女はその様子を、きっとひどく聖母のように慈しむ温度感で、見ていた】

【時刻は夜更けすぎ。目覚めるには早すぎて、そして、朝と呼べる時間はまだ遠く。窓から見える景色はひどく真っ暗だけれど、どこかにぽつぽつと灯が光る】
【湿度は目に見えないけれど、それでも見下ろす景色にはどこかでじめっぽさが感じられた。きっと部屋の中は快適な温度に保たれているんだろうけれど――】
【摩天楼の上の方。それなら世間的には上流階級を思わせて、けれどそこで目覚めるのが、言語を打ち砕かれたばかりの人々みたいに惑うなら、下層の民は絶望するんだろうか】

――――――――――――――――……んん、なんですか、もぉ……、

【――――それともゆえにこそ美しいとでも思うのだろうか。その言葉を聞き取るほどその距離は近くないなら不明瞭、どこかで車のクラクションがかすかに聞こえるのみで】
【であればそんなのよりも――よっぽどその声の方が、聞き取りやすかった。ごそりと衣擦れの中に紛れ込ますのはスズランの声、甘くて冷たくて、むずがるように】
【上手に整列して瞼を縁取る睫毛がふらふら揺れてから緩く持ちあがる、その向こうマゼンタ色を、透き通るようなウィステリアは綺麗に透かして見せたなら】
【真っ白の肌は、くしゃくしゃの掛布団を纏うきりで、――つまり少女も割とな恰好であった。とはいえ日替わりで勝手に拝借しているシャツ、はすぐ近くに脱いであり】

【(曰く、服を買いに行く服がない――と言ってだいたいなんか勝手に借りているんだろう、ひどい話)】

――寝ててください、よう、横で起きてられるの、気になるんで……。……ふぁあ、私ロングスリーパーなんですって……。

【わずかに開けた目は、けれど、すぐに眠気に負けて閉じてしまう。それでも眠ってはいないんだろう、たっぷり数十秒ほど黙った後に、そんな声を紡ぐから】
【片っ方だけの手が相手の方へ伸びたなら、きっとそのまま抱き寄せるように引きずり込もうとする。けど目を開けていないなら行き先はどこへやら、迷子になって】
【もしかしたら全く素っ頓狂な方向をふわふわ漂うかもしれないけど――とにかく少女はそうやって求めた、相手の気持ちだなんて、きっと知りもしないで】

【――――ううん、きっと、その全部でなくても、いくらかは辿りながら。小さく小さく仕上げた足を撫でて愛でるみたいに、指先は、うんと、優しい】


41 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2018/07/04(水) 22:52:02 IBKicRNQ0
>>18-19
【観察する。こちらを挑発するような笑みも、信仰に基づいた怒りも、何も変わらない】
【ほんのわずかの間のやり取りだが、彼女がどれほどの狂信者であるのか。その彼女にとって現状がどれほど受け入れがたいものかはわかる】

泣いた……? あの傲慢な病魔が? それも、人間であるお前の前でかね?
それはまた……お前が何を言ったのかは知らないが、よくアレからそんな表情を引きずり出したものだ

【鈴音。あのたった一人の少女のために、これほどの事態が引き起こされ、いくつもの命が散華した】
【その上で、目論見を成し遂げたものは今のところはあの病魔一人。あの戦いに、果たして勝者などいたのか】

……データ。蛇教がかき集めたデータか? それとも、ここの連中に提供されたのかね?
(『黒幕』どもという可能性も……いや、彼奴等にそんなことをするメリットはないか)

自分たちの神を歪められ、奪われた。そして、お前ひとりがおめおめと生き残った
正気を保っていられるだけ天晴れだな。当に狂っているがゆえかもしれないが

……この期に及んで、まだ笑えるか。流石、その歳で蛇教幹部にのし上がっただけのことはある。大した度胸だ

【鈴音もウヌクアルハイの一部と扱われているとしたら、蛇教がそのデータを有していてもおかしくはないが】
【それでも、やはり『黒幕』を想起する。現状はあまりに混沌としすぎている】
【無論、表には出さない。潜入先で敵に弱みなど晒せない。より一層、重苦しく声のトーンを下げる。脅すように】


【肉を掴む慣れた感触も、今この時は単なる手段。それでもやはり、舌の上に広がる味は美味ではなく】

事実だ。この味、致死量を超える毒を受けたことがあるだろう? 肉の芯にまで苦みが染み付いている
汚いところで長く過ごした経験もありそうだな。一見して瑞々しいが、中身はまるで経年劣化を迎えているかのようだ

何より……予想はしていたが、散々弄ばれたな? 拭いようのない雄の臭気……一つまみで済ませていてよかったよ
こんなものをかぶりつきで食ったら、流石の私も吐いていた

【それでも屈せず、苦痛に耐えてなおも笑う彼女に対して、無傷の大男の方が苦虫を嚙み潰したような表情を作る】
【味もさることながら、やはり相対する彼女の精神性。情報を引き出すことは難しいかもしれない】

お前たちが邪教を見る時と同じ目で、我々はお前たちを見ているというだけの話だ
踏み絵を作ってまで弾圧するような気もないがね。蛮族だというのは正しいだろうな。私は自分の利にしか興味のない野蛮人だ

ほう、お前たちの神は輪廻そのもので正しい世界を作るために幾度も世界を飲み込むのだと、拷問にかけた信徒どもは教えてくれたのだが
気に入らなければ飲み下してやり直すような神が、祈るだけで私を救ってくれるのかね?
それとも、生まれ変わることが救いだというやつか?

ふ、ふ。今の、か。まだ残っているのかね? お前たちの神は。とっくに鈴音に呑まれて消えているんじゃあないのか?

【左手を狙った脅迫が有効だと見抜けば、そこにさらに神に唾する言葉すら重ねて】
【鋭いマゼンダの視線を、咀嚼するように三つ目で睨み返した】

――――再定義。要はあの儀式のやり直しかね
目的はわかったが、手段の方を聞いていないぞ。沈黙を貫く選択肢があると思っているのか?
それに……我らというからには、やはり協力者がいるのだな。そいつについても教えてもらおうか

ここの連中について知らないのは、信じよう。わざわざお前を生かして連れ帰るだけの曲者だからな
だいたいのところは察せる。なら、その構成員とやらがどんなやつだったか、そちらを聞こうか

それでも吐かないというなら、この左腕とは泣き別れだ
そうなってすらも拒むなら……〝とっておき〟をくれてやる

【言いながら、まだ血が滴る右腕を伸ばして。彼女が庇う左腕を掴もうとするだろう】
【彼女が僅か先の未来に辿る運命は当然知らず。汚れた脳裏に浮かぶのは、懐に仕込んだ切り札】
【スーツの胸から、気配がにじみ出る。何かが、脈動するかのような】


42 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/04(水) 23:06:38 o6XMS57s0
>>40

【はた、と。我に帰るように、アリアは顔を上げる。はらり横を向くなら、くしゃくしゃの白銀が少しばかり宙を躍る。】
【憂うように揺れていた睫毛が瞼ごと見開かれ、蒼く澄んだ隻眼が少女の姿を映した。天鵞絨に似て滑かなる淡藤色の髪。短く切り揃えられていたのが実に切なかった。】
【どれほと何に汚れても例え消さない傷痕に塗れたって、天稟なる白の膚、その下に通う静かなる血管の数々が幽かに茜さすのさえ愛おしくて、 ── 鼓動ごと、感じていたくなる。】



「 ──── ……………、 」「 …………ごめんなさい。」「すこし、頭が痛くて。」



【誰かに謝るような習慣は久しく忘れていた。 ─── 思い出させてくれたのは、他ならぬ、かえでだった。その鈴蘭の笑みが、今は何より大切だったから。】
【哀しそうに眉根を寄せ、力なく垂れる切れ長の双眸は、きっと彼女らしくはない姿。何処までも何時までも、苦悩し彷徨しているような、】
【だから自分の白いシャツに、かえでの甘い匂いが残るなら、其れは今の彼女にとっては数少ない縋りうる縁なのだろう。 ── だから寝惚けたまま、間の抜けた仕草をするかえでにも】
【困ったように微笑みかけるのだろう。自分の真横を摺り抜ける彼女の手を、片掌の中に握って受け止めながら。】



「 ……… 同じベッドで、眠っているのに。」「触れ合えないのは、寂しいわ。」



【 ── 今夜だって、十分すぎるくらい"触れ合った"筈なのに、そんな独白を零す。瞽のままに伸ばされた指を絡める。すべらかな肌理。摩擦係数のない温度感。】
【縋るように、しなだれかかるように、抱きつこうとする。やわらかな肢体を押し付けて、そのままベッドに押し倒してしまうように。ぎゅう、と指に力を込めた。】
【冷房の良く効いた部屋だった。だから何れくらい肌を重ねていたって、心地よい感覚を享受し続けることができた。暫くアリアは、押し黙っている。】


43 : 名無しさん :2018/07/04(水) 23:28:50 7.LrT6jc0
>>41

【――件の病魔。と言っても彼女はその種族までは知らないのだけれど、"彼女"の話には、彼女はきっと不快そうな顔をするんだろう、思い出すだけで、というような仕草】
【それはやり取りが如何であったかというよりも、行動の結果に怒っている。それはどうしようもない。ゆえに――すんとした吐息一つで、無視したなら】

……我らの下にあったデータです。ですが、強制捜査が入ったみたいですし、今頃は水の国の警察にでもあるのでは?
内容はいくらかは覚えていますが、全部じゃないです。私にとって"白神鈴音"は他の神々、ヤマタノオロチやケツァルコアトル、ナーガや、……。
とにかく、それらの神々と同じでありました。――そのように口にすることさえひどく不愉快ですが、ありていに言えば、原材料に過ぎない――はず、だった、

【不愉快はいっとう上塗りされる。どうやらこの少女はちょうどあの"二人"を嫌っているみたいだった。ぶつくさするみたいな声、それでも伝える】
【件の人物に対するデータは今はおそらく水の国の警察にあるだろうということ。彼らが宗教の中で、白神鈴音、という存在は、あくまで一つの蛇の神でしかなく】
【特にこの少女にとっては、他の蛇神たちと同格に過ぎない"原材料"の一つでしかなかったと。――あくまで彼女が信じているのはウヌクアルハイであった、偉大なる蛇の神】

【――あるいは、知らないからこそ、特に重大そうでもなく言うのだろう。"水の国警察"――それは、つまり、黒幕と直接つながっている、場所でもあったなら】

…………一人ではありません。蛇を信じる者が消えてしまうことはありえない。

【――――――どこか悲痛そうな声が答えるのだろう。ぎりぎりと歯を噛み締める、一人ではない、と、必死に言い聞かすような声、あるいは自分に向けて】
【居場所の崩壊と一人だけ生き残ること。――それは間違いなく少女のトラウマであった。いつか家族はみんな死んだ。そして今、蛇教までも、喪われてしまいそうになって】

あははっ、すごいですね、――――死なないために修行をしましたからね。最期の瞬間までウヌクアルハイ様にお仕えするために、生半可なことで死ねはしないのです。
でも、ひどいですね、十七歳に言う言葉じゃないです、――っ。

【ほんのわずかに蒼褪めていた。慣れているといっても苦痛は苦痛、まして、この状況が拍車をかける。――ほんの少しの冷や汗は前髪の中に隠しこんで】
【漏れる言葉は強がりではなくきっと本当に信じているから、強かった。――そして彼が思い浮かべた状況からして、少女は、すでに幾度とない"死ぬべき"を超えてきている】

/わけます!


44 : 名無しさん :2018/07/04(水) 23:29:14 7.LrT6jc0
>>41>>43

あなたの祈りが救うに値するものであればウヌクアルハイ様はあなたをお救いになられる、――我らは誤りました。果実を得てしまった。
だからといって開き直り生きる者たちはことさらに過ちであります、ウヌクアルハイ様が新たな宇宙をお創りになられるまで――人類はここで仕えねばならない。

――――――ッ、そんなことない、

【つらりと述べた言葉はよほど慣れているのをうかがわせた。声は甘く歌うようになって、であれば聖書を読み上げる様子にも似て。――――だからこそ、それが裂ける瞬間が痛々しい】

っ、……、ウヌクアルハイ様は神様であらせられる、であれば、……お判りでしょう。間違った認識を、淘汰する、……正しい認識、で、世界を満たす。
協力者、は、――――――――、ひッ、う、――――ッ、私の蛇を辱めてみろ、そうしたら、私は絶対に二度と話さない、――ッ、!

【ぎりぎりと歯を噛み割ってしまいそうだった。ひどく顔を歪めて怒る、とぎれとぎれの声はその感情の証明であった、――そうして伝える方法は、あるいは乱暴であり】
【けれど同時に嘘ではないときっと分かるんだろう、――あの日あの場に居合わせた、彼ならば。そのために取る手段は――きっと、この世界から、白神鈴音を排除することだから】
【――ぎゅうと左腕を抱きしめるように言葉を詰まらした、その瞬間を彼の手が掴み上げるのだろう。そうしたなら吐息が跳ねる、あまりにも鮮烈な目、睨みつけたのなら】
【張り裂けそうな声を叩きつけるはずだ、――"そう"したなら、何がどうあっても、二度と何も話さないと。何をしてでも――何をされても】
【ゆえに彼女は相手が再びその手を離すまで、本当に黙りこくる。ぎらぎらそれだけで弱気な人なら死んでしまいそうなくらいの殺意の目、ただまっすぐに刺し貫いて】

【――――スーツの中にある気配。腕を離せと求めた少女の指示を彼が聞くだけの義理はなくて、であれば、あるいは、"それ"に頼ることさえ、必要かもしれないんだけれど】
【それとも彼女の要求通りに腕を離すのなら、――、それは、また、振り出しだった。そうやって一つずつ聞き出すしかないと思わせる、一生懸命縋り付くように、必死ならば】
【けれどそれは眼前の明らかな恐怖である彼に向けてではなく。蛇を裏切ること。生き残ってしまったこと。もう二度と居場所を喪いたくない、――いろんな気持ち、交じり合って】


45 : 名無しさん :2018/07/04(水) 23:49:14 7.LrT6jc0
>>42

【――相手が"どうかしている"のは、とっくに分かりきっていた。あの日の夜の時点でそういう状態であるのはほぼ理解していた】
【それでも少女はその影響を解いてやることはなかった。分かったままで放っておいている、その代わりに、ときどき、うんとうんと、甘やかしてやる】
【仕返しというにはきっとあまりに拙かった。それに何より優しげであった。少し掘り返せばきっとどこかに優越感を抱いて、鯉や鳩に餌をばらまく気持ちに少し似て】

飲みすぎじゃないですか? お酒なんて百害あって一利なしですよ……、百薬の長ってあれ嘘だったんですよ――。
んん――もう、水飲んで来たらどうですか……。…………――、……。

【ふわふわ浮遊していた手を捕まえられたなら。少女の指先は一瞬びっくりしたみたいにしてから、けれどすぐにどうでもよくなったみたいに、脱力するのだろう】
【そうしながら紡ぐ声はなんだかもちもち、ふわふわ、もよもよ、――とにかくひどく不明瞭だった。とにかく酒のせいじゃないかと言ったなら、水でも飲んで来い、と促す】
【心配しているみたいな声はそれでいてその実ほんとに眠いからもっかい寝たい、って色でもあったのだけど。――そうして一瞬吐息が深くなる、目なんてとうに閉じきって】

――――――ふ、あ。――もぅ、さっき、いっぱいしたじゃないですか――、
私眠たいのに…………。

【すとんと眠りに落ちかけた瞬間に抱きしめられた。――そのせいかひどく気の抜けた声を出すんだろう、重たい瞼をなんとかわずかに持ち上げて、】
【一生懸命に抱き着いた背中をあやすみたいに、優しく撫ぜる。それでも至極快いのは良く冷えた室内の温度のおかげだろうか、頬寄せながら、囁けば】
【めいっぱいに抱き寄せるのだろう、夜中に怖い夢を見て泣いてしまった小さな子を慰めるみたいに。起きてない頭であやして、そのまま、寝かしつけようとするみたいに】
【ひどく手慣れていた、甘い声で囁いて、頭から背中までを一続きに何度も撫ぜる、そのまま眠ってしまえと唆すように。――けれどそれが大人に通用するか、といえば、どうだろう】

【――――それより少女を起こしてしまう方が、早いかもしれなかった。きっと嫌がるんだろうけれど、それでも、起こしてしまったら勝ちなんだから】


46 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/05(木) 00:31:44 Ty26k7V20
本スレ>>113 セアンさん宛

【金髪の男は立ち上がった。ぐったりと目を見開いたまま死んだ――いや、ロボットであるから元々生きているとも言えない】
【その人形の顔を撫でる。歩きながら、人形の腕を振ってみたり、見開いた眼を閉じてやったりと遊びながら語る】

そう。だが、それでいい。貴方は、信じた。答えは収束した。だが収束するまで人間とロボットは同一だった。重ね合わさっている。
私達の住まう世界は一つだ。…間違いない?間違いないと思うか?どうだろう?世界は一つか?証拠は?
我々の認識は、情報は、不確かだが力を持つ…。量子と同じ動きをしている。そうは思わないか?

必要なものだけあれば良い。プログラムも、人間も、世界も。

生憎、不確かな世界は私は望まない。“確かな未来”を私は望む。――諸君らは不確定要素なんだ。世界にとって。
多くの因果を持ち、収束し、崩壊する。情報の特異点。―――だから消えてもらいたい。

所詮はこれも時間稼ぎだよ。君を排除することは――能力を封じ込むことなどに重大な意味はない。
世界は絶えず、再構築されている。因果を維持するために絶えず、本のタイトルは書き換わっている。

世界は変わるんだ。望まなくても望んでいても。我々はその情報の一行でしか無いのだから。

【そういって、男は笑っていた。青い瞳の目を細め、優しげに人形の頬を撫でる。】


――――始めろ。


<了解。行動を開始>

【同じ姿のテクノドッグスたちは、会場に散らばった。そして、大型の直剣を携えた一人が駆け込んでくる!】
【周りのライフル兵は膝を立て射線に入ろうものなら撃ち方を始めるだろう。だが、まだ撃たないのはその射線上に】
【上官たる金髪の男が立っているからだろう。その男は攻撃しようという様子は見えない。微笑んでいた】


47 : 合歓 ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/05(木) 00:31:54 WMHqDivw0
>>39
一足でなれたら苦労はないって。
本をいっぱい読んで色々考えてるなら、その分早いだろうけどね。多分――
先は長いんだから息切れしない程度にしときなよ。

【"誰かが傷付くのはイヤ"、それが万人に向けられるなら、或いは無害なのだろう】
【親しい誰かにのみ向けられるのなら、子供染みたエゴイストになるのだろう】
【どちらにせよ、生物兵器には相応しくはない。――それが良いか悪いかは分からない】
【自身も半ば似たような境遇ではあるから。兵器とまで言えるほど、大層なものではないけれど】

【いずれにしても、ムッとした様子には、苦笑いしてしまう。背伸びしているのは、多分今もだから】


そのカエデさんに無理をするなって言うんだったら、お前も無理しない程度に頑張りなよ。
それで、近くで見張ってるのが一番だよ。きっと。


【そのカエデと言う人の性格は知らないので適当なことを言ったかも知れないが、姉妹である彼女が得心行ってるのだからそう的外れなことは言っていないに違いない】
【あんまり考えすぎないことも大人になるためのコツなのだと納得しておいた】
【何にせよ、幼女は極めてポジティブなようで、もう上手く行った時のことで頭がいっぱいのようだ】
【ひょっとしたらまた躓くかも知れないけど……それは、他の大人に任せよう】


天才――?いや、違うよ。
僕は、大人なだけだよ。

【少なくとも目の前で飴玉を頬張る彼女よりは】
【だから精々大人ぶるとしよう。子供の前ではそうする権利と義務があるとでも言うように】


48 : 名無しさん :2018/07/05(木) 00:42:18 7.LrT6jc0
>>47

えーっ、でもね、私ね、もっとね、大人になりたいわっ。
それでね、夜更かししてね、テレビを見るの! いろいろね、あるでしょ――でもね、眠たくなっちゃうから。
あとね、コーヒーとかね、飲むのよ! それでね――えーっと……。

【もちもち、とした声。どうあれ彼女は生物兵器としてはひどく未熟であった。――本当だろうか、そんなのは。まったく分からないのだけれど】
【もしもこの気持ちが全部破壊衝動へすり替わったなら。それはとんでもない災害に変貌してしまいそうでもあった、まっすぐさは時として凶器成りうるもので】
【鮮やかな笑顔が全部他者を貶め嘲笑う表情に変わってしまうなら――それはそのときはありえないとは言い切れない、だって、生まれそのものからそうあれと願われた】

分かった! じゃね、カエデがね、うーんと頑張ってたらね、その分ね、うんとね、遊ぶ!
ねえねえ、カエデはね、鬼ごっことか、するかな? 影鬼とかね、色鬼とか――、それともね、何がいいかなっ!
ネムお兄ちゃんはね、何の遊びが好きなの? おはじき?

【――とにかく。彼女自身は彼の言葉で何かを見つけ出して、それで頑張ろうと決めたみたいだった。それが正しいのかは、――わからないんだけど】
【時として悪意なく踏み抜きそうなタイプではあった。というか、多分、そういうタイプっぽかった。でもいろんな遊びを思い浮かべるときの笑顔は、限りなく善意で満ちて】
【それでいて尋ねて来る遊びがわりに渋い。誰か櫻の人間と親しいのかもしれない、――そういえば鈴音、というのも、櫻の名。であれば、そちらから聞いたのか】

――でもね! 大人のヒトってね、なんだってね、出来るでしょ、高いとこのボタンとかね、えいって押しちゃうし!
だからね、すごいの! お菓子の袋だってね、開けられるし……。自動販売機のね、お金のところに、届くし……。

【――――ぱーと向ける目はキラキラ眩い、彼の態度が義務感からくるものでれ、あるいはだからこそ、彼女からは彼がより一層の大人、すごい存在に見えてくる】
【そうしたなら――そのくせに伝えるすごさが大したことじゃない。というよりだいたい背の高さでどうにかなる。――でも、本当に、すごい、尊敬するみたいな目を、するから】


49 : 合歓 ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/05(木) 01:06:51 WMHqDivw0
>>48
それは大人じゃなくて、ただの"悪い子"じゃないのか。

【果たしてこの少女はブラックでコーヒーを飲めるのだろうか】
【目一杯砂糖を入れている様子しか思い浮かばない】
【その微笑ましい光景は、確かに生物兵器としての威厳は微塵も感じられないのだろうが】

【ただ、力を持っていると言うのは、それだけでも、人を刺激しかねないのは事実だった。彼女が、ナイショだと頑なに言い続けるように】
【水の国の魔制法など、その最たるものだろうから】
【だから、きっと、彼女もその大人になる過程で、いつ反転してもおかしくはない。今の状態こそが、むしろ不自然で有るのならば】

好きな遊び……僕のを聞いてどうするんだよ。
遊び……遊びか。
……。……。

何もないな、そう言えば。

【何もなかった。何故なら、いつも相方の一人遊びをぼんやりと、或いは片手間に眺めているだけだったからだ】
【概ねに置いて、二人以上で遊ぶ遊びと言うものに馴染みがない】
【いや、トリカゴの中で、遊んだことはあるのだが、それに対して好き嫌いを覚えた記憶はなかった】
【その頃の記憶を少し思い出して】

ケイドロ……とか?

【正義と悪がはっきり分かれている遊びだったから、幼い頃の情操教育の一環としてやらされたことが有る】
【別に好きだった訳ではないんだけれど、一番印象には残っていた】


50 : 名無しさん :2018/07/05(木) 01:13:21 7.LrT6jc0
>>49

――――えっ!? う、嘘よっ、悪い子じゃなくってね、"おとなのおねーさん"なのよっ!

【――そうでしょ?とでもいいたげな目が向くのだろう、けれど言葉は確かに限りなく悪ぶろうとする子供であった、ブラックコーヒーなんて飲めるはずない】
【ほぼ牛乳と砂糖と練乳で出来てるみたいな珈琲が精いっぱいなんだろうって思わせる。むしろコーヒー風味のホットミルクくらいがお似合いだった、それだって蜂蜜をたっぷり入れて】

……えー、そうなのっ? あのね、お兄ちゃんね、それじゃね、ダメよ!
めいっぱいね、遊ぶのっ! それでね、あのね、ご飯いーっぱい食べてね、いっぱい寝るのがね、イイコなんだよ!
でもね、ご本とか読むのでもね、いいんだよっ、だからね、ええーと――、……いっぱいなんかするの!

【えーって大きな声が弾けた、好きな遊びがないって聞いたならびっくりしてしまったみたいに、思わず言葉を投げてしまうのだけど】
【だけれどその途中で遊んだりするより本を読むのとかが好きだったのかもしれないとか思ったならばへたっぴな方向修正、結局、なんかすればいいやって言葉に落ちつ――】

………………?
あのね、あのねっ? けーどろってね、あのね、どろけーとね、違うの? わたしね、どろけーならね、したことあるよっ!

【――かなかった。きょとんとした目が瞬くなら、ねえねえって不思議そうな声が質問を手向ける、地域差だろうか、似てる名前、だけど、そんな呼び方は知らないって言うように】
【違う遊びなのかなって思った様子で尋ねるんだろう、――「ジャングルジムを牢屋にするとね、楽しいよ!」って、――それならやはり、同じ遊びの話は、きっとしているんだけど】


51 : 合歓 ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/05(木) 01:24:46 WMHqDivw0
>>50
……悪いことをするのが大人になるってことじゃないよ。
まぁ、良いんだけど。夜更かしすると背が伸びなくなるよ。

【今しがた自分で言ったことだった。良く寝るのが良い子であると】
【そして、そのコーヒー成分が何%入っているかも怪しい飲み物のように、名前がそうであれば中身もそうであるとは限らない】
【それはそれとして、こんな歳から睡眠不足では、発育不良もセットでついてくる。自販機に届かなくなるぞ、と脅したりもして】


い、いや、僕はもう大人だから、遊んでばかりはいられないんだ。
勉強も仕事もしないといけないから。

……後は、遊びじゃないけどお祈りも良くやってるよ。

【難しい顔をして見せた本は人並みに読んでいてはいても、熱心かどうかは定かではないのだが】
【ただ、そこそこに熱心な信仰――あくまでも自分なりに、と言う形では有るが――を持っているから】
【普通の宗教家のように教会に足蹴く通ったりはしないけれど、それでも祈りの言葉は多く唱えていた】


え。何か違うのかな?
ウチはみんなケイドロって呼んでたけど。


【地域の違いあるあるだった。後は単に、正義より悪が前に出ることを、組織の性質として許さなかったと言う理由なのだろう】
【実際、警察が勝つまで、その遊びは続けられたのだから】


あー……ジャングルジムを牢屋に……それはやった。


【ようやく共通項が有ったらしい。頷いていたのだが――はて、何の話の流れでこんなことになったんだったか。咳払い一つ】

と、とにかく、遊びはそのカエデさんを誘うと良いよ。
友達で姉妹なら、お互いの好きな遊びだって知ってるんだろ?


52 : 名無しさん :2018/07/05(木) 01:38:50 7.LrT6jc0
>>51

――――えー! やだ!
あっ――でもね、あのね、私ねっ、起きたときからね、背ね、伸びてないよっ! だからね、関係ないってね、思うなっ。
いっぱい寝たらね、身長ね、伸びるかな? 自販機のね、上のやつ! あのね、いーっつもね、届かないなー!ってね、思うんだけど――。

でもね、あのね、私ね、ぱたぱたって飛べるから! あんまりね、困らないの――なのっ。

【めっちゃ悲痛そうな声だった。かなり本気の声だっただろう、背が伸びなくなるよって言われて、――幼子はガーンって感じで、おっきな声を出す】
【だのにそのくせに直後に思い出すのだ、――そもそも目覚めて以降身長が伸びたことがない。そうだった、って感じに笑う、てへぺろ、みたいな顔をしたのなら】
【自販機の一番上も能力を使ったなら何の問題もなかった、――だから大丈夫だもんって言うふうな口ぶり、結局何にも解決してない、多分、さっきからこんなことばかり】
【だけれど子供相手ならそれでも別にいいのかもしれなかった、――だなんて言ったら子供に失礼かもしれないんだけど。少なくとも、この幼子にとっては、それで良さそうであり】

そうなの――? あのね、あのね、お祈りってね、何するのかなってね、私ね、思うな!
こうやってね、おててやってね、やるでしょ? 

【――そしてまた一つ気になる。お祈りの作法を聞きたがるのだ、けれど失礼ながらに当然というべきか、なにか物珍しいもの、みたいな態度であるのは否定できず】
【指を絡めて見せる、――あるいは怒られたって仕方がないかもしれなかった。だけれど同時に確かであるのは悪気がある、わけじゃなくて。だからこそ時としてややこしいんだけれど】

えーっ、聞いたことね、ないよっ、公園のね、お友達もね、違ったよっ? うそだあ――。
――あっでもね! ジャングルジムね、あのね、ぼーっとしてたらね、頭ゴンッってするでしょっ、うんとね、ビックリしてね――。

…………カエデね、一緒にね、してくれるかなっ? 公園のお友達もね、みんなでね、やるの!
UTのね、ヒトが来たらね、みんなもビックリするわっ! けーさつのヒトなんかよりね、うんとね、強くてね、すごいんだからっ。
だってね、私たちね、ケツァル・コアトルなんだよ――けーさつのヒトよりね、すごくってね、当然なの! 

【最初は信じなかった。それが、共通項が出て来れば、えーって感じで、かろうじて、ゆっくり、飲み込んでいく】
【ジャングルジムで頭ぶつけたとかほんとにどうでもよかった。ほんとになんでそういう話になったのか――ってところで彼が咳払いをして話題をすり替えるなら、彼女も、そのままついてくるんだろう】
【そして果たして本当にそうだった。子供同士の遊びに警察どころかガチの正義組織の人物が紛れ込んでくる。多分――子供たち、全員、淘汰されてしまいそう】
【いっとう得意げに笑う、――それにしても。昼の国ゆえに日差しは陰らず、けれど、時計を見たならそれなりの時間になっている頃合いだろうか。彼女は、まだ、気づかず】


53 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2018/07/05(木) 01:39:54 IBKicRNQ0
>>43-44
【きっとイルの態度などより、イルが教えに背いて蛇教を裏切ったことにこそ怒っているのだろう】
【眼前の少女がそういう存在だと、短いやり取りの間だけでもよくわかっていた】

水の国警察……!!
(強制捜査が入るのは不自然ではないが、よりによって水の国警察だと……? 彼奴等が蛇教の何かを持ち帰ったのか?)
(何より、彼奴等がすでに鈴音の現状を知っているとしたら……例の脅迫はとっくにご破算か……。たんぽぽの孤児らをどうすべきだ……)
(『黒幕』どものお膝元にあっては、現状の確認すら容易ではないぞ……)

……お前たちの神の化身の一つに過ぎない、そういう認識だったわけだ
世に存在するあらゆる蛇神と同じ、主神の鱗の一枚だと。それに乗っ取られたとあれば、憤懣やるかたないだろうな

【告げられた事実に、個人的な事情のために青ざめかける。水の国警察。己が現状の最大の敵と定める勢力の総本山】
【それが、蛇教のデータを。そして、鈴音のデータを。すでに敵が掴んでいる。足元がぐらつきそうな感覚を抑え込んで】
【脳裏で算盤を弾きつつ、カニバディールは足掻き続ける。今は、この眼前の少女のことだ】


ふ、ふ。神そのものの不滅はともかく、その信徒の不滅も無条件に信じるのは無理があると思うがね

普通なら命がいくつあっても足りないダメージが蓄積している。肉に関しては、私は詳しいんだ
お前を殺すには、頭を砕くか心臓を潰すかしないと無理そうだな。いや、それでも怪しいか

17歳の若さでその精神だ。気遣おうという気も失せる

【彼女の悲痛な訴えは、冷酷にも一顧だにしない。彼女の過去は知らず、彼女の内面も知らず】
【どこか、彼女自身が抱えるトラウマの匂いを嗅ぎつけはしても、それを気遣うことなどない】

【同時に、その信仰の深さを思い知る。たとえ苦痛に震えていても。この少女の強靭な精神はそう揺らがせるものではない】


それなら望みは薄そうだ。私は信心が薄いからな。祈ってみたところで、本気でないことは見抜かれるだろう
禁断の果実、原罪というやつかね? それを忘れて生きることそのものが大罪だと?
いかにもな発想だな。自分たちの教えの外にある全てを、敵とみなすためのものだ


正しい認識……淘汰。大方、蛇神が鈴音であると、そう認識している輩を駆逐しようといったところか?
それこそ、お前ひとりに出来るはずもない。鈴音はあれで有名人だからな。味方も多い

それは困ったな。お前の蛇の味見は済ませてから帰ろうと思っていたのだが
……そろそろ、こいつの出番か。あまり悠長にしていても仕方がないからな

【張りつめた信仰が引き裂かれる。その怒りと憎悪の隙間から垣間見える、彼女らの目的】
【認識の淘汰。知っている者の頭の中を掃除するなど出来ない。ならば丸ごと消すのが一番手っ取り早い】

【キッと見つめる鮮やかな瞳は、そのよく通る悲痛な声は、その言葉が嘘ではないと知らせてくる】
【しかし、だからといってこの沈黙を破るためにその手を離せば元の木阿弥。それも察していた】
【それそのものが凶器の如き視線を真っ向から受け止めながら、カニバディールは決断を下した】

【彼女の左腕を掴んだまま、懐に手を差し入れる。厳重に封をされたカプセルのような何か】
【その蓋を開けて、病室の灯りの下に晒されたそれは。ドス黒く明滅する、小さな〝キノコ〟であった】

私には無理でも……〝こいつ〟になら話せるはずだ。さあ里帰りしてやるがいい、お前の古巣にな――――!!

【言うが早いか、カニバディールは掴んだ左腕を思い切り引いてベッドの上に彼女の身体を倒そうとし】
【それが成功すれば、投げ出されたその左腕を。彼女の何より大切な蛇の入れ墨、その頭の部分を】
【情け容赦なく、指で毟り取ろうとするだろう。彼女の意識を絶望へと振り切らせるため】


【そして、間髪入れずに。その傷口にキノコを突き立てようとする。傷口に菌糸を潜り込ませようと蠢くキノコを】
【それが成った、その時には。彼女の意識は、ここではないところへ飛ぶはずだ】

/続きます


54 : アレクサンデル・タルコフ ◆ZJHYHqfRdU :2018/07/05(木) 01:40:36 IBKicRNQ0
>>43-44
【サーペント・カルト本部施設】

【その最奥の一角、祭壇をいただく大広間。彼らの最高神たる蛇神に、捧げ物をするための場所】
【信者はその場を "祭祀場" と呼んでいた。蛇の中枢部とも言える神秘的かつ神聖な場所】

【床に敷かれた赤いカーペットには蛇の鱗を模した模様が織り込まれ。並ぶ松明の灯りに照らし出される石壁には、這いまわる蛇のレリーフが幾重にも連なって彫られ】
【高い天井の頂点、広間へと差し込む光を毒々しい色合いに変えてしまうステンドグラスには、己の尾を咥える輪のような蛇が描かれていた】
【四方八方、広間のどこを見回したとしても目に飛び込んでくるいくつもの蛇、蛇、蛇】


【広間の突き当り、一番奥の壁の前にはさらに異様な物があった。その皮膚に蛇の入れ墨を隙間なく掘られた人間の腕】
【それが何本も、掌を上に向けた状態で組み合わされていた。恐らくは、生きた人間から切断してきたもの】

【その奇怪な腕の祭壇に、腕たちが掲げ持つかのように乗せられているのは、やはり蛇の紋様をあしらわれた黄金の盃】
【その盃の上には、一見するとクリスタルか何かで出来ているのかと思われる、巨大な半透明の大蛇の像が口を開けていた】
【大蛇像の長い身体は、まるでとぐろを巻くように広い部屋の壁に這っていた。半透明ゆえに、その内部が見える】

【大蛇像の中には、いくつもの〝死体〟が詰め込まれていた。いずれも、あまりに異様であった】
【まるで、一度ならず幾度も幾度も殺されたかのような。本来は一度きりの死を、無数に詰め込まれたような。そうとしか形容出来ないものであった】

【盃の前にはこの空間においてもさらに異様な人物が『浮かんで』いた】

【歳は壮年かと思われるその男には、四肢がなかった。耳も、鼻もなかった。両目は、縦長の瞳孔をかたどった、夜行性の蛇を思わせる義眼であった】
【義眼は怪しく発光し、男の姿をさらに不気味に照らし出す。四肢なき胴体を包むは赤い祭服。首から掛けられた帯には、またも蛇の模様】

【頭髪のない頭には、這いずる蛇のタトゥーが刻み込まれ、タトゥーの蛇の頭部が男の額にかかるような位置にある】
【松明の灯りに照らし出されるタトゥーは、今にも男の傷だらけの顔に這い降りようとしているかのようだった】

【そんなダルマのような男を空中に『浮かばせて』いるのは、男の両足の断面からにじみ出る、半透明の靄であった】
【空中に漂うように揺れる姿は、靄に乗っているようにも見え。似たような半透明の何かが男の両腕の断面からも伸びている】
【それすらも、蛇だった。両腕代わりに、半透明の蛇が生えていた。霧のように。靄のように。だが、その蛇が確かに実体を伴っていると主張するがごとく】
【男の腕の代わりとなって、その身を儀式用の杖に巻き付け、掲げさせていた】


【ムリフェン、蜜姫かえではきっと知っている。そこで行われていた儀式のことを。死体をいくつも集めて溶かして捧ぐ。それは、まさに甘露となって、甘く、甘く――蛇を、潤していく】
【何もかも、そう遠くはないがどうしようもなく過ぎ去りし日々の記憶。逆流した因果の途中】

【儀式が終われば、ダルマ男が振り返る。あの異形の笑顔で。あの柔らかな声で】


「――――ムリフェン殿。どうなさいました? お顔色が優れないご様子ですが」
「このところは、働きづめでいらっしゃましらからな……貴女の信仰の深さはよく存じ上げておりますが、それでも無理はいけません」
「貴女は私などと違って替えの効かない、教団になくてはならないお方です。来るべき儀式の日まで、どうかお身体を大切になさってください」

【それは恐らくはかえでの記憶であり、キノコの中に込められたダルマ男の記憶であり】
【同時にあの日、スクラップズがカタコンベの歪な墓標から回収してきたキノコの胞子、そこに宿った禁術の残滓によるものであった】

【カニバディールは、その禁術のみを利用し、四肢を潰される苦痛をもってかえでを責め立てようとした】
【それが浅知恵であったことは、今この時が証明している。因果の流れの中で叶ったのだろう、ムリフェンとマルフィクの再会という事実が】


55 : 名無しさん :2018/07/05(木) 02:22:26 7.LrT6jc0
>>53

【蒼褪めかける彼の様子。――その刹那をきっと少女は見ているのだろう、マゼンタの瞳が彼を向いていた、けれど、その思考までは辿れぬなら】
【何かあるということは推察しつつも――けれどそれをとっかかりに何かすることは、できない。そもそもそうされるべきは少女であって、彼ではない】

……当たり前です。ウヌクアルハイ様はすべての蛇を統べられる。
何より蛇には神性があります。プラナリアの神がどこかに居りますか? しかして蛇神というものは世界中に存在する。
ゆえに蛇を信じるものが消えることはありえません、――それはすなわちウヌクアルハイ様へ信仰を捧げるのに等しい、――、

――――――味方? じゃあなんでヒトがカミになるんですか? ――――ッ、

【けれど少なくない動揺を見て取ったなら、少女はどこか訝しむように目を細めるのだ。それは生き残る方法を模倣するのにも似るのだろうか】
【そのうえで言葉は連ねていく、――どうしようもない本能のようでもあった。そうしていないと現状に負けてしまいそうだと白状するかのよう、言葉を並べ】
【――そのうちに腕を掴まれたなら、温度は変わる。一触即発のような雰囲気、けれどその実、彼女が彼に敵う道理はなく、であれば、しゃあしゃあ言う子猫のよう】
【なら、あんまりに無力だった。――思惑通りに彼女はベッドに敷かれる。そうして一連のことが果たされる直前、――きっと彼は彼女の悲鳴を聞くのだろう】

【さながら無垢を力ずくに奪われる処女(おとめ)のような、――】

/わけますっ


56 : 名無しさん :2018/07/05(木) 02:22:40 7.LrT6jc0
>>53

――――っ、ア、

【――――そうして少女は全く違う場所で、もはや二度とありえない場所で、ありえない――もう会うことの出来ない、彼と、相対する】
【きっと少女は"いつもと同じ"白い服を着ていた。どんな服だって彼女は白色を好んだ、無垢であることを声高らかに宣言し続けるかのように】
【透き通るようなウィステリアの髪は腰までの長さ。マゼンタの瞳は変わらなくて、――でもきっとどこかで違うんだろう。だって、彼女は、未来を知っているから】

あ……、う、――ぇ、……なん、で、――、――、そんな、わけ、そんな――――はず、ない、……だって、……だって、

【見慣れた――そう、見慣れた場所。運び込んだ贄を彼に引き渡すところまでがだいたいの彼女の仕事であった、そのときどきで細部が変わることは、数あれど】
【思わず、という風に彼女は一つ彼から距離を取るのだろう、――ひどく混乱していた、あるいはどこか怯えた目をするのかもしれない、意識は連続しているなら】
【"これ"は攻撃なのかと勘繰る、だとしたらひどく悪趣味だと思った。――だから少女の脳は必死にこの光景を否定する、阻害しようとする、消えてしまえと願うのに】
【能力はちっとも発動してくれないから。――それが限りなく"あの日"ではないことを証明する。震える足音がこつ、と、もう一つ、彼から、距離を、取ったなら――】

【――――――――でも】

――――――マルフィク、さん、なんで……、――なん、で? なんで……、

【ふらふら揺らした頭の仕草で長い髪が揺れる、そのしぐさは、間違いなく"いつか"とは違っていた。あの日の彼女は――ああ、なんて、答えたんだっけ、昔のことすぎて】
【思えば一人だけ遠くまで来てしまった。たったこれぽちの時間が何もかも変えてしまうだなんて、――知っていたはずなのに。でも、まだ、どこかで、信じられなくて】
【指先が自身の頬を口元を隠すように顔を覆う、――その指先が涙に触れた、本人がそれを意識するよりずっとずっと早くに、うんと、たくさんの涙が、知らぬまに溢れたなら】
【スズランの声がひどく狼狽えたように震える――ならばきっと彼女はいろんな意味合いで尋ねていた、"この状況"を尋ねるようにも見えたし、あるいは、】
【居なくなってしまった人の写真に泣きながら語り掛ける声にも、きっと、似ているのだ。――そしてそれはきっと彼にも見覚えがあるのかもしれない、何年か前の話だったけど】

【――――蜜姫かえで、という人間が、初めて蛇教に訪れた日。あるいは、それより後の、いくらかの間】
【その少女は家族を喪ったのだと言う。自分は蛇に呪われているから、赦してもらいたいんだと言って、――けれど、普通の人間には、むごすぎる様々な行為を目の当たりにして】
【よく泣いていた。そしていつも神に祈っていた。その時に何度も何度も問うていたのだ、――どうしてみんな死んでしまったの、どうして一緒に連れて行ってくれなかったの、なんで――】

【――きっと、その時と、同じ顔と、声としていた。ならそれは、幹部の名を戴く"ムリフェン"にはありえてはいけない様相、単なる、蜜姫かえで、としての仕草であり】
【あるいは――全く同じなんだと思わせたなら、何かを察することも、出来るのかもしれなかった。けれどそれはあくまで空間から断絶された、一瞬の、奇跡であったなら】
【記録された行動と全く違う。だから限りないIFでしかなかった。パラパラ漫画に一つだけ書き加えられた落書きみたいに――でもそれは時として、何か意味を持つのだろう】


57 : 名無しさん :2018/07/05(木) 02:22:59 7.LrT6jc0
/すみませんっ、>>54もでした!


58 : 合歓 ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/05(木) 02:35:35 WMHqDivw0
>>52
伸びてないかー。それは何でだろうなー。
分からなかったらパパかママに聞いてみよう。

【決まり文句で誤魔化した】
【やはり子供に取って背丈の有無は、死活問題なのだろうか】
【しかし、やはりと言うか、身長が伸びていない?】
【それは生物兵器だからなのか、単に極端に寿命が長いのか、定かではないけれど】
【早寝早起きしても大人になるまでは長そうだ】


祈りは――……
神様と話すためにやるんだよ。
信じていないと、多分出来ないんだろうけど。


【そんな、当たり障りもない。ただ、少なくとも青年はそこだけは、誤魔化しではなく本音で口にしていたのだった】
【子供に取ってそんな楽しい話題ではないのだろう。だからすぐに話を変えて、無邪気に未来への展望を語る幼女の姿を、眺めている】
【不思議と、煙草を吸いたくなってきた。何でかは分からない、けれど】
【見ていられなくなったから、なのか】

【だから、丁度良かった。一区切りをつけるのに】


……頼んでみれば良いよ。
だから、ホラ。この国の空は明るいけど、もう遅い時間だし。
そろそろ帰りな。


59 : 名無しさん :2018/07/05(木) 02:45:47 7.LrT6jc0
>>58

【決まり文句に――きっと幼子は少しむくれるんだろう、そうして、「パパは居ないのよ!」とか言っている、確かにその通りではあった、彼女たちは生物兵器だから】
【製造したと言う意味のパパとかママなら本当は居るのかもしれないけれど――そうじゃない"親"は、"お母さん"だけであり。そしてそれで充分】
【――それに、きっと、このままなのだろう。いつか壊れてしまうその時まで、彼女たちはきっとこのままの姿で過ごす。あくまでヒトに擬態されたモノであるのなら】

【「そうなんだあ」とちいちゃな声。ふうんと呟いた、そうやって数度指を組み替え組み換え絡ませて、――やっぱりすぐに飽きちゃって】

――うんっ、そうするわ! ここからだとね、あのね、カエデに遊ぼって言ってもね、うんと遠いし!
ネムお兄ちゃんはね、おウチね、帰らないのっ? だってね、夜遅くなのよっ! いっぱい寝ないとね、身長ね、伸びないよ!

【――――促されたなら、すとん、と、それを受け入れる。であればやはり彼はこんな子供の扱いに慣れていたのだろう、一番、素直に聞くタイミングを見つければ】
【幼子は頷いて――ただそれは少し気になったみたいに、相手はどうするのか、と尋ねるのだろう。送っていくとか、言い出し、さすがにしないんだろうけれど――――】
【さっき自分が言われたことを言い返すのならどこかでちょっと気にはしているのかもしれなかった、――とはいえ、彼のことは"大人"と認識しているから】
【大人だから帰らないとか言われてしまったら、それまで。すっきり諦めて、しまうのだけども】


60 : 合歓 ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/05(木) 03:09:35 WMHqDivw0
>>59
【父親はいない、と言うのは概ね予想していたのだろう】
【だからと言ってそれを悲観しているでもなく。その"母親"のことを嫌っている風でもない】
【なら、それはそれで良いのだろう。きっと】

僕は……実は人を待ってるんだ。
だからもう少しここにいる。

【送って行こう、とまでは流石に言わなかった。ここまで飛んできたのだから、帰れず迷子なんて笑えないことには――】
【――ならないとは、言いきれないのだが、そこまで面倒は見れなかった】


……もし帰り道が分からなくなってたら、ここに戻ってくれば良いよ。


【UTにいるんだったら、風の国か?だったら帰り道は一緒なのだろうけど】
【それでも、同道して帰るつもりはないみたいだった】


【……何より、今は割と切実に一服したい】


じゃあ、気をつけてな、ファラエナ。
もしまた会ったら、どうなったのかだけ、教えて。


【またな、と言うようなことはなくて、また会えたら、と言う偶然に期待する言葉】
【それでもこの青年にしては妥協した別れの言葉だったのかも知れない】


61 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2018/07/05(木) 03:39:35 IBKicRNQ0
>>55
【眼前の臆病な異形は無論のこと、かえで自身も、かの病魔も暗躍するケバルライも、何もかも】
【この新世界においては、数多ある脅威の一つ。彼女が知らない『黒幕』もまた然り】
【この場にてそれが取り沙汰されることはなさそうであったが】

ふ、ふふ! プラナリアの神というのも面白そうじゃあないか
彼奴等、ちぎれた破片のそれぞれが再生して二匹に増えると、ちぎれる前の記憶を二匹ともが持っているという研究結果もあるくらいだ
神秘的という点においては、蛇にも負けていないと思うがね

蛇への畏怖が、そのままお前たちの神への信仰に繋がる……ああ確かにその通りだ。あの男が語った通りだよ

さて、その辺りの理屈は私にはわからない。だが、鈴音にはヒトとして紡いできた歴史がある。それだけだ

【言葉の端に、あの日のマルタでケバルライが言い放った勝利宣言、あの場に自身がいたことを示す気配を滲ませながら】
【彼女に見抜かれた動揺も、生きて使命を果たそうとする彼女のあがきも、全て脇に捨てて】
【行われる蛮行は、彼女に絶望をもたらす。そのはずであった。神は、無垢を貫く乙女を見放されはしなかった】

/続きます


62 : アレクサンデル・タルコフ ◆ZJHYHqfRdU :2018/07/05(木) 03:39:53 IBKicRNQ0
>>56
>>56
「……? 本当に、どうなさったのですムリフェン殿……。ひどく混乱なさっておられるように見えますが……」

【その身を覆う純白。蛇を信じる聖女の証。そう、〝いつも通りの〟光景だ】
【しかし、因果の中のマルフィクは訝しむ。どこか、違う。違和感以上には辿り着くことはないけれど】
【何故なら、今ここにいるこの司祭は禁術が起こした因果の逆流と、その対象がムリフェンであったがゆえの、奇跡の産物であるのだから】

【司祭にとっては、いつもの通り。ムリフェンが贄を調達してきて。〝来るべき儀式の日〟のための生贄と。今、蛇にこうして捧げるための贄とを】
【問題なく受け取って。配下のサーバントたちと共にそれを運んで。生贄を保管し。残った死体で儀式を遂行する】
【淀みなく、いつもの通り。正しい手順に則った儀式の遂行だ。だが、彼女はその中にあって異常であった】


【能力が動かないことも知らず。明らかな怯えと共に後退する彼女。司祭は首を傾げるばかり】

「なんで、とは……? いつもの通り、私はムリフェン殿より贄を受け取り、儀式を終えたところですよ。いったい何があったのですか、ムリフェン殿……」

「――――貴女が入信なされた日を思い出しますな。あの時も、貴女はそのようなお顔をしておられました」
「ただ純粋に赦しを請い、それゆえに誰よりも深い信仰への道をひた走ろうとしていた、あの頃と」

「私自身、ムリフェン殿のそれとは比べてはならないありふれた理由とは言え、家族を一挙に失った経験がありますものでな」
「今でも時折、思ってしまうことがありますよ。何故、私一人を置いて行ってしまったのかと」

「……お疲れでしょう、ムリフェン殿。今日の儀式の工程は全て終了しています。共に談話室で一息入れませんかな?」

【もし、彼女が未来を知らなかった頃。逆流などせずともあった日常の中にいたころに、何かの理由でこのように混乱していたとしても】
【きっと、このダルマ男は同じように語り掛けただろう。彼女がオフィウクスらしからぬ顔を晒したとしても。それを導こうとするかのように】
【聞くものを安心させるかのような、あの穏やかな声で】

【この状況が何なのか。かえでの疑問に答えるものはない。彼女の涙にも、司祭はただ柔らかく応対し、祭祀場の外へ誘おうとするのみ】
【そう、祭祀場の外だ。本来ならマルフィクに授けられた禁術は、司祭の心象風景たる祭祀場のみをその場に現出させるものであるはずなのに】
【禁術を持つもの同士が、片方は残滓とはいえキノコという媒体によって繋がれた結果か。あるいは、かえでの信仰心がもたらした神の奇跡か】

【きっと誰にもわからないだろう。因果とは異なる、彼女の行動に対しても咎めるような何かが起きることもなく】
【司祭の腕の断面から生えた半透明の蛇が祭祀場の扉を開く。その向こうには。彼女が慣れ親しんできた光景が広がっているはずだ。あの日々と同じままに】
【厳かな雰囲気を漂わせる内装も、少し薄暗い廊下も、行き交うサーバントたちでさえも】

【そして、靄に乗って滑るかのような動きで移動していく司祭も】
【これは夢ではない。単なる因果の逆流でもない。IFが連続していく。途絶えることのないまま、あの日々を映し出していく】

【後をついていけば、きっと談話室も同じ。いつだったか、彼女がカノッサ機関から来たという不心得者たちを発見した場所】
【能力で生み出した手でコーヒーなど入れて見せながら。司祭はかえでに相対そうとするだろう。懺悔を聞く聖職者のように】


63 : 名無しさん :2018/07/05(木) 13:20:45 7.LrT6jc0
>>60

そうなんだっ、じゃね、お兄ちゃんたらね、目印みたいねっ!
だってね、そのお約束のヒトとね、私がね、迷子になっちゃったらね、その時にね、戻って来るときのっ!

【あるいは――送っていくと言われたとして、きっと、彼女はそれを受け入れなかった。言葉にしないし態度は変わらない、けれど、どこかでそんな様子があったなら】
【であればなんだか素っ頓狂なことを言い出す、――目印みたいだなんて、人に対して言う言葉では、あんまりないのだけれども】
【それでもひどくにこにこ笑顔で言うんだろう――だから、まあ、きっと、頼れるとか、そういう意味合いに違いなく】

――うんっ、だからね、お兄ちゃんもね、またね! そしたらね、一緒に遊ぼうね――――。

【――相手が選ばなかった言葉。幼子はあんまりにまっすぐに手向けたなら、今度の時はいろんな遊びしたりしようと誘う、なんでもよかった、きっと楽しいから】
【だからいつかのことを思い浮かべて――きっとクリスマスイブの夜に靴下を吊るして眠るのと同じ表情をしていた、うんと楽しみで、待ちきれないのに、眠ってしまう温度感】
【ばいばいって手を振ったなら――ふさりと音もなく光の翼が再び顕現する、力強く羽ばたいたなら飛び上がるのだろう、天使には程遠いけれど、鳥くらいなら見紛うだろうか】
【けれどその実生物兵器であったなら。――誰もそんな風に思わないなら、撃ち落とさんと投げつけられる石は、今は、ないから】

/おつかれさまでした!


64 : 名無しさん :2018/07/05(木) 14:25:22 7.LrT6jc0
>>62

【――そして、きっと、この二人がこのように相対するのは、初めてではないのだろう。そのように優しい声、向けられるのは】
【相手が覚えているかは定かではない。その時の彼女はどうあれ数多いサーバントのうちの一人でしかなかった、けれど、ほんのきっかけから、その出来事は確かにあった】
【入信したばかりの信徒の信仰心を高めるために時々行われる、比較的簡単な儀式。それをするのに"彼"は間違いなく最適であった、数多の儀式を取り仕切る、という以上に】
【明らかなる異形の様相。それでいながら柔らかな物腰。けれど決して歪むことない信仰の篤さ。――それはこの惨たらしくも神聖な場において、ひどく尊く映るから】

【――――ああ思い出した。正しい現実で"同じ言葉"を掛けられた少女は、全く意にも介さなかった、そんな現実は存在しないとでもいう風に、あしらって】
【そしてそれが限りない本心でもあった。――だからやっぱり"今"の少女が限りない異分子であった。本来ならば存在してはいけないものが、混じりこんでしまったなら】
【けれど世界はそれを受け入れた、――いくつもの奇跡に似たものが積み重なって赦された邂逅。神様の思し召しである、――と思うことさえ忘れてしまいそうになって】

【ただ混乱したように見開いた目から落ちる涙で指先を濡らす、――それが精いっぱいであるかのように肩を震わすのなら】
【かろうじて小さく頷くことのみが彼女からの反応だった、それ以上はなく、それ以外はなく、だからこそ一生懸命なのを伝える、もはやこれを無下にはできるはずない】
【嘘かもしれない、攻撃かもしれない、――だけど、そうだとしても。振り切ってしまうすべだなんて最初から知らない。みたいに】

【やがてあり得るはずない邂逅はある得るはずない場所へたどり着く、――すなわち談話室へ。中には数人のサーバントでもいたのだろうか】
【けれどやってきたのが幹部二人とあれば、がたがたと椅子を鳴らして立ち上がる。もし彼が引き留めたんだとしても、その大部分は居なくなってしまうのだろう】

――――――――っ、……りがと、ござ、――っ、

【――さて。こんなふうに二人で向き合うのは初めてではない。けれど、限りなく久しぶりであった。彼女もまた幹部になってから、顔を合わせる機会は多かったのだけど】
【互いに忙しい状態であれば、長く話すことも、ほとんどなく。――いくらか交わす会話も事務的なもの、業務的なものが多かったはずであり】
【淹れてもらった珈琲を前に、少女はひどく震える涙声で礼を述べるんだろう、――本当は甘いのが好きなんだけれど、こんな気分の時に、それはあんまりに普通すぎるから】
【きゅうと小さな声で吐息を無理やりに飲みこんだなら、――そうして続けて珈琲にも口を付けようとするんだろう、因果の中であるなら、それが飲めるのかは、分からないのだけど】
【――――けれどあるいは神様だって"それくらい"は許してくれるかも、しれなかった。彼女はことごとく否定したけど、あの少女は、――わりに、大雑把で、優しい】


65 : 厳島の中 ◆zlCN2ONzFo :2018/07/05(木) 14:25:52 6.kk0qdE0
>>36>>38

「そうか、解った、君の口からちゃんとその人物の話が聞ける日を心待ちにしている」

【現状、話を一回聞いただけの接点の無い人物】
【だが、そこから話は進展するかもしれない、しないかもしれない】
【もし、夕月が話してくれる時が来たならば、それは夕月自身もこちらにもつがるにも何か変化がある時に他ならず】
【いい意味であるならば、その日が来ることを願いながら】

「まあ、近々こちらに来るだろう」
「話すよりも、見てみるのが解りやすい、悪い人物では決してないが、まあその、癖が強いと言うか、な……」

【夕月やつがる、あるいは他のUTメンバーや、あるいは子供達】
【特に子供達への影響等を考えたが、人格的にも実力的にも適任だろうと】
【厳島の言葉は、かなり濁しているが、その人物には実際会ってみれば解ると】
【それはまた、別のお話となるだろうが……】

「夕月、得たい情報は『オーウェル社とハルモ二―社』あるいは『特区』に関する事」
「『イル・ナイトウィッシュ、あるいは虚神に関する情報』」
「最近都市伝説として噂になっている『マスクドライダー』に関してだ」
「これらの事、全部だな夕月」
「つがるも聞いて欲しいが、先ほど述べた、欲する情報とその目的だが……」
「『オーウェル社』『ハルモ二―社』『特区』に関しては、先ほど説明した通り黒幕関係の情報だ」
「特に黒幕とつながる二社と特区に関しては、危険で闇も深い部分だが、同時に黒幕との貴重な接点であり尻尾だ、探れば相応の情報は手に入るだろう」
「『イル』『虚神』に関しては言わずもがな、だな、鈴音の所在が目的だ、チームMの為にも、また彼女自身の為にも、イル達を追う事が何より重要となりそうだ、その為の情報収集と言える」
「最後に『マスクドライダー』の件だが、此方はどうにも引っかかる事があってだな……」
「この世界において、虚神や蟲の魔族、我々海軍や水国陸軍、自警団や黒幕円卓以外に、どうにも暗躍している組織ないし個人が居るような気がするんだ」
「あくまで、私の感だが、その内の一人がマスクドライダー、もし暗躍している組織ないし個人を発見、接触できればこれは大きな収穫だ」
「これが、先ほど述べた情報収集項目の各目的だな、他に何か聞きたい事は在るか?」

【夕月に質問された、具体的に集めたい情報と、その情報の目的を話す】
【情報はもちろん噂話程度の物で良く、関係する様な事ならばどんな物でも構わないらしい】
【夕月には、自分の連絡先と住所を書いた紙を渡し】

「つがる?どうかしたのか?」

【何か物憂げなつがるの様子に、こう気になって声をかけて】
【つがるが出会ったその少年は、再び会う事はあるのだろうか……】

「つがる、いい点に気が付いた」
「そう、全員顔を隠している、だから警戒はし過ぎるに越したことは無い」
「最も、危ないと少しでも感じたならば、直ぐに逃げる事、それを臆病とは言わない」
「そして……調査以外ならば、人をちゃんと信じる判断できる眼を養う事、これは君が生きる上で大事な事だ」

【警告と、そして最後に不安定な様子のつがるに、そう心配半分の言葉を投げかけて】
【事実、何かあったのかもしれない、だが、それをもって人を疑い続ける道は歩んでは欲しくない、と】

「話は、以上だ、二人とも無事な姿を見ることが出来て良かった」
「私はこれで戻ろうと思う、たんぽぽの支援及びUTと子供達の防衛策は、後日あまり間を置かずに到着する様に手配しよう」

【二人の顔を交互に、その片目で見て】
【そして、幾分か表情を崩して、やがて二人が止める事が無ければ、そのままUTを出て】
【オートバイに跨り、帰って行くだろう】










【――混乱の時代や、嘘と暴力の螺旋が、どうか貴女の未来へと影落とさぬように……】


66 : 棕櫚 ◆D2zUq282Mc :2018/07/05(木) 15:16:40 JY1GydDk0
>>37

流石に強姦魔は厭だったか。まぁ許してくれや、冒涜者殿。女誑しって表現の方が良かったかね。
んで、ふと思ったんだがよ。オレ様、さっきから地雷原でタップダンスでもしてんのかねェ?だとしたら悪ィな。

つーか自分で言うかよ、魔女って。尤も、その風貌で今の所業を鑑みれば魔女って表現が当てはまるわ。
"神様より授かった生命、及びそいつにとっての大切なものを貶める冒涜者"って意味では割と的確な表現だ。白衣の魔女ってか。
魔女を名乗るなら三角帽子くらいは被ってくれよな。存外似合うかも知れねえよ?何より解りやすい。

だが、オイタが過ぎて"魔女に与える鉄槌"に則った鉄槌とか古典的な火炙りを喰らわねェ様にな、キヒヒッ。


【"もしかしてもう既に鉄槌が下されてたりしてんのかぁ?"と人の悪い笑みを浮かべて、肩を揺らしながら嗤う】
【目の前でケラケラ笑う女。愉快げに身体を揺らして笑う男。一方。悪い大人達とは対照的に苦悶に歪む少女"達"】
【そして冒涜者の保護者めいた言葉に、棕櫚は笑いが抑えられなかった――哄笑とでも言うべきか】


キヒヒッ、ヒッヒヒヒヒヒヒッ、ヒーヒヒヒヒヒヒッ…ッ!!や〜べッ、超ウケる…っ!
言うに事欠いて「姉妹喧嘩」かよ、ヒィヒィ、……ヒッヒッヒ、ヒャーハハハハハッ!!
冒涜者殿よう。ギャグが冴えてんなァ、オイ…!笑いすぎて腹筋が死んじまうぜェ……ッ!!


【やけに饒舌な棕櫚。身体を捩る程の笑いに身を委ねているその頃――「カリヤ」と「ルル」は嬲られていた】
【冒涜者の子供を躾ける様な指先がクイッっと動けば、それは「痛みを司る部位」を刺して、抜いて。激痛を齎す】


「ッァァあぁあああああああああっっ!!!い゛だぃい゛だぃい゛だぃい゛だぃぃぃいぃぃっっっっ!!!
 たすけて―――ッッ!!!パパぁああああっっ、ママぁああッッ、カリヤちゃぁああああああん!!
 "痛いのなんてやだああああああああ、ゆるしてよおおおお、おねがい、おねがい、おねがいだからああああああああああっ!!!"」


【ビクンっとカラダが仰け反って。けれど身体を束縛する拘束具は、「カリヤ」と「ルル」を逃さない】
【止まらぬ涙。止まぬ悲鳴。今日一番の絶叫。蝕む激痛は「カリヤ」と「ルル」の心身を壊していけど、痛みの度合いは大きく異なる】

【冒涜者が齎す痛みは、ふたりを襲えど。「カリヤ」の痛みより「ルル」の痛みの方が度合いが大きく。まるで「カリヤ」の身代わりの様相を呈して】
【"解剖"を行う前の棕櫚の言葉――心にも糧が要る。迫る脅威には取り込んだ人格を身代わりにする、と】
【その言葉通りになっているのだ。つまり、「カリヤ」は自身の痛みを「ルル」に押し付けている形である】


67 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/05(木) 15:46:53 Tg/39WpY0
>>45

【 ─── 至極、原始的な飴と鞭。だがそれでも、アリアの心を揺らがせるには最も効果的な遣り口だった。】
【自分は何者であるか。かの命題は、アリアが一度肉体を喪ってから、永遠に彼女を苦しめ続けている。辛うじて縋る記憶や自我さえも、弄ぶように書き換えられたなら】
【真面で居られる筈もない。自然、彼女自身の寄り立つ瀬も変わらざるを得ない。己れを愛してくれる誰か。己れを己れと感じさせてくれる誰か。 ─── 蜜姫かえで。】
【故に拒まれるのは死よりも許し難い苦痛だった。言葉と仕種に服従し、気紛れで優しいようで嗜虐を孕んだ振る舞いに翻弄されて、マゾヒズムも夜明けを知るというもの。】
【だから憂いに満ちた横顔は、かえでの側にいる幾許かの時間だけ、少しだけ安らかに緩んでいた。 ── どんな貴女でも、私にとっては幸福なの、と。】


「 ……… 喉なんて、乾いてないわ。」


【不定形の声音は自意識を絡め取るようでさえあった。右腕はかえでの肩を撫ぜつつ、左腕を胸元から横に回り、背中を抱き締める。歎息交えたささめきを零す。肌を重ねる。冷房に曝された体温が、少しずつ2人の平均値に近づく。】
【 ── 流し込んだルイ13世の所為ではなかった。肝腎膵その他代謝系の代替を担うケミカルプラントは、その気になれば数十秒で血中のアルコールとアセトアルデヒドを分解できる代物であったから。】
【強いて例えるなら幻肢痛に似ていた。あるはずのないものが、何時迄も知覚から離れてくれない。 ── あるいは、ないはずであるものを、あると思わずにいられない。】


【気怠い慰撫は、睡たげな声音は、確かに心安らぐものであったけれど、 ─── それでも矢張り、満ち足りてくれない。もっと焼け爛れるような感情が欲しい。或いは其れは自傷に似ていた。】
【 ──── 肩口に唇を寄せて、口を開く。ぁぐ、と、甘噛みする。血も出ず、肌も裂けないくらいに、ごくごく軽い力。けれど、歯型をつけようとする。そのまま、かえでの耳許で独白を綴るのなら、】



「 ……… 昼も夜もなく、愛し合おうって。」「まぐわいの中で、泥のように眠ろうって。」「目覚めた方から、求めてしまおう、って。」
「そう、私に言ってくれたのは」「かえで、でしょう ──── ?」「 ……… 寂しいわ。切ないわ。苦しいわ。ねえ御願い、」
「かえでが側に居てくれないと、私、どうしようもないの。」「 …… 自分が自分で無くなりそうなのが、怖いのよ。ねぇ、 ──── 。」



【ほとんど繰り言だった。冷たい声に熱がこもっていた。言ってもどうしようもないこと。頼ってもどうしようもないこと。愛されてもどうしようもないこと。それでも口にせずにはおれないこと。】
【 ─── 自分がつけた背中の傷痕を、まだ遺っているのなら、音もなくなぞろうとするのだろう。ふたりだけが知覚できる、肌の触れ合いとして。】


68 : 名無しさん :2018/07/05(木) 17:31:18 7.LrT6jc0
>>67

【ならばそれはどこかで猫の仕草にも似ていたのかもしれない、あくまで気まぐれに。どこまでも自分本位に。撫ぜる毛並みはきっとロシアンブルーの快さを湛えて】
【ひんやり冷たい足の裏を相手の体温で暖める。お腹が空いたときだけ呼びに来る。触れてほしいときだけ身体を擦りつけて、――まさかそのものそのままではないのだけれども】
【やりようとしてはひどく似通っていた。気が向いたなら/気が向いたから――それでも、彼女も外に出ていない。テレビは見なくて、本を読んで、それでも、満たせない気持ち】
【彼女は一日の中の大部分を信仰に捧げていた。その結果祈る時間がいくらか増えた。けれど一日はまだ長くって。――だから少女もまた時々どうしようもなく縋るんだろう】

…………じゃー、寝てくださいよう、私、眠いのは、だめだって……。

【むずがる声が若干の苛立ちを含み始めていた。――彼女の能力はひどく繊細であるからか、長い睡眠時間を必要とする。何より本人自身も、ひどい眠気を覚えるらしい】
【夜更かしするのに躊躇いはないけど、その分同じだけきちんと眠れないと嫌がるタイプであった、これだけ会話してなお、まだ、半分以上寝ているのがその証拠だろうか】
【むーむー言いながら背中をよしよしとさすり続けている、――その手付きだけが本当に姉か何かのようで、そして正しくいつか彼女は姉であったのだし、問題はない】

――――――ん、う、もぉっ――、……、

【結局は生々しく血も何もかも滴る粘膜みたいなずる剥けの傷口同士を擦り合わして何かを模倣する似ているのかもしれなかった、――甘噛みのしぐさに、身体を悶えたなら】

もう……、口説き文句ですよう、アリアさんが、ほしかったから――――、っ、んん、っ――、――。
ぁあ、もぉ――、――お水取って……、私は喉からからです……。

【そのまま耳元に顔を埋めこんで囁くんだろう、というか、ほとんど吐息だった。その距離でのみ唯一、言葉に似た発声を見つけ出せる】
【そうしてそのままの距離感で漏れるあくびが耳朶をひどくやわらかに撫でて、――その吐息の末端が、背中に残る傷に触れられた時に、わずかに震えるんだろう】
【――ひどく不満げな声が渦巻きながら漏れた、その背中を何度も撫ぜていた手は最後にぽんぽん、と、柔らかく叩いて。求めるのはただ透明な水であった、間違えても酒ではなく】

【であれば根負けしたのと等しかった。ただそのきっかけに最後に水くらいは飲みたいから――甘えるようにも聞こえる幼声が、相手にねだって】


69 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/05(木) 20:01:29 WMHqDivw0
>>65

やーっぱ全部やんなきゃいけないんじゃん! はー、まあいいけどさっ!
あのネ厳島さん、こーいうのは手当たり次第に何でもかんでも抱え込んでいっちゃダメ!
そうして潰れてしまったのが、誰かってこと――――――わからないなんて言わせないよ。

…………ンまあ要はうまーく分担しましょってコト。そこらへんの分け方はまた今度にするとして……
……マスクドライダー? なんだそれ、聞いたことない……

【つらつらと語列を並べていく厳島に、苦い顔して忠告する。潰れてしまった誰かっていうのは】
【――――間違いなく「白神鈴音」のことであるとすぐわかる、わからなくてもわからせる】
【もう誰も彼女の二の舞にはさせない、その気概だけは十分に見せつけて。提案するのは「分担」】
【誰がどの情報を重点的に集めていくか。そうして役割をはっきり決めていった方がきっと効率的だって】
【彼女はそう思ったらしいけど――まあそれは、次回の会合の際に決めればいいだろう】

ん。ありがとネ厳島さん。……お願いだから死なないで、あたしも絶対死なないから。
……さて、つがるん。取り残されたあたしたちは――まず後片付けの続きからやっちゃって。
それから――――一緒に料理の練習しようよ、レシピ見ながらさ。大丈夫、一緒なら、今度はケガしないよ!

【去り行く厳島には、ひとつ約束を残して。オートバイの音が聞こえなくなるまで見送ったなら】
【次はつがるに振り向いて。にぱっと笑って――――そんな提案。ひとりでやるのはもうやめにしようって】
【そういうことだった。手を伸ばす、握手を求める。握られればそのまま軽く引っ張って連れてくだろう、調理場まで】
【それから先――――少女二人がどれほど其処を荒らすかどうか。わからないけど、きっともう、怪我はしないんだろう】


//私からはここまでで!ながーいことありがとうございました!


70 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/05(木) 20:20:50 WMHqDivw0
>>66

帽子似合わないからヤダ。んでもって、鉄槌かぁ、鉄槌……
……本場の本格的な火炙りなら、ついこないだ受けてきたところだよ。
あれ超やばかった、熱いのもマジできついんだけどそれより、息ができなくなるのがさあ――――

【作業を止めないままの世間話。これもまた冗句にしてはつまらないと思わせる、くだらない話】
【……だけどそれは本当のことなのかもしれなかった。実際、本当。けれど現実味が全然ないから】
【まーたこの女は。ジョークのセンスが絶望的にねぇなあ、くらいの感想しか抱かせない、かもしれない】

…………え? うそ、今のはギャグのつもりじゃなかったよ?
だって言ってたじゃん、「ルル」ちゃん本人がさあ、わたし「カリヤ」の妹でーすって……
……んもうほんっと、あなたのツボってわからない! まあいいけどさっ!

【文句、言いながらも脳への探りは続けて。「ルル」がどんどん弱っていくのがよくわかる】
【ここらへんはまあ、説明を受けていたからわかるけど。けど、……ふとひとつ、疑問が湧いてくる】
【それでぴたっと指先が止まる、カリヤの耳から指を引き抜いたなら、糸も同じく全部抜けて行って】


――――ね、ミスタ。もうひとつアンケートしてもいい?
あのね、あなたは――――「イノチ」って平等なモノだと思う?

たとえばさ。あなたに、何よりも大切に想っている恋人がいたとして。もう一人、すっごく嫌いな人がいたとする。
その二人のうちどちらか一人、必ず選んで殺せって命令されたら――まあ普通は絶対、嫌いな人のほうを殺すじゃん?
……あ、命令に背いてどっちも殺さないっていうのはナシ! ……話戻すね。

それでさ、どっちを殺すか選べって言われて、嫌いな人のほうを躊躇いなく殺せるっていうのはさ、
――それは、嫌いな人より好きな人のイノチのほうが「大切」とか、「重い」とか。そう思ってるってことじゃない。
だからさ。イノチってもしかして平等なモノじゃないんじゃないかなあって。僕はそう思うんだけど――――


――――それでね。今ちょうど、最ッ低なクズ人間を一人、生きたまま「ストック」してるんだけど。
まず間違いなく「ルル」よりずっとずっと、ひどいことする人間――――そいつをカリヤちゃんに取り込ませて。
それで、その状態でカリヤちゃんを一回殺してみたらさあ、――――やっぱり「ルル」のほうが残ったりするのかなあ?


【「そーいうの気になっちゃった。ねえ、試してみてもいい?」】
【――――なおも童女の笑みを浮かべて。本当に子供がぱっと思いついたような、ばかげたこと】
【実際にやってみてもいいかって訊いてくるのだ、きらきら、輝く瞳を棕櫚に向けて】
【この女が猫だったら既に那由多ほどは死んでいる。それくらい興味があります、ってアピールするような表情】


71 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/05(木) 20:32:18 o6XMS57s0
>>68

【すべらかな足の裏が自分の両脚に絡むのが気持ちよくって、自分からも絡めていく。穴の空いたような感情の捌け口は結局のところ2人とも同じだったらしい。】
【別命あるまで待機。 ─── アリアに下された指示は其れだけだった。であれば、こう暑くては外に出る気なんて起きやしない。汗腺機能は廃されているし、外気温で熱暴走するほど半端な電脳ではないが、それでも。】
【或いは単に、かえでから離れたくないだけだったのかもしれない。本を読み、チェスの碁盤を弄り、陽の高いうちから酒に浸り、日々の隙間を埋めるように求めて、だから夜は特段に縋った。】

【 ─── 月明かりの下、子供のように愚図るかえでの姿さえ、いつしか愛しく思っている自分に気付いた。彼女にとっては不快だと解っていても、求める事を止められない。】
【大好きな子にわざと意地悪してしまうのと、少しだけ似ていた。 ─── それに、いつまで寝ていたとしても、決して咎めやしないのだ。】
【よおくクーラーの効いた部屋の中、わたしの肢体に甘く抱き締められたまま、昼過ぎになっても目覚めなければいい。そう、思ってしまうくらい、で。】
【其れでも背中を撫でてくれるのは嬉しかった。今の自分でなければ、すっかり甘えてしまうのだろうとも思った。 ── あやされるのも、悪くはなくて。けれど。】


「 ……… 非道いわ。」「すっかり本気にしてしまったじゃない。」「私だって、かえでが欲しくって ── けれど嘘なんて、一度もつかなかったのに。」


【彼女を震わせてしまうのは愉しい。甘噛みでも、傷咎めでも。理不尽な繰り言を耳元で囁き、ふうっ ……… と湿った呼吸を吹きかけて、然し自分もまた甘い欠伸に震えて。】
【全面降伏の交換条件は寝起きの冷たい水分。抱き締める片腕を名残惜しくも離し、上体を起こしてベッドサイドのテーブルに手を伸ばし、ちいさな冷蔵庫を開いて、ひんやりした風の流れが少しだけ。】
【手探りで掴むのは天然水のミニボトル。キャップを歯で押さえながら捻り、ぱきりと封を開けた。 ─── けれどアリアは、飲み口に自分で口をつけてしまう。】
【さりとて飲み干す訳でもないようだった。少しむくれたように頬膨らむまで口に含んで、ボトルはサイドテーブルに置いて、またもかえでへ倒れこむように、肌触れ合わせ】
【 ──── ウィステリアを包み、ともすれば押さえ込むような掌は、少しだけ冷たくて、張り付いた結露が淡い藤色を濡らした。なら、次に何をする気なのか、解るかも知れずに。】


                                     ──── 、すき



【 ─── そのまま、アリアは、唇を重ねようとする。呼吸を塞いで口を拡げて、舌を伸ばして伝わせて、流し込むのは少しばかりぬるくなった硬水。微かにとろりとしているのは、唾液と混ざっているからだろうか。】
【どこかで気付いて拒まれるなら、 ── きっと泣きそうな顔をしている。けれど拒まれなかったのなら、深く深く、戯ゃれるみたいに口付けて。寝起きの其れが不潔かもしれないなんて、考えもせずに。】
【ましてや、かえでが其れでいっとう不機嫌になったって構わなかった。今はお互い、ただ衝動をぶつけ合っているだけ。 ─── 絡めた手足が、肢体が、どうしようもなく体温と柔らかさを分かち合ってしまうから。】


72 : ◆XLNm0nfgzs :2018/07/05(木) 22:55:40 BRNVt/Aw0
>>65 >>69

【助っ人について言葉を濁す厳島にまた首を傾げる。癖が強い、となると逆に子供受けは良さそうな気がするのだが】

【厳島の依頼説明は続く。最終的な目的は黒幕の尻尾、それから鈴音の居場所】
【ふ、と気付いたように厳島が声を掛ける。するとつがるは目をパチリと瞬かせてからいつも通りの笑みを浮かべる】

……いえ、何でもないです
【いつもと同じ声色。でも内心では、彼がマスクドライダーの関係者ではないという事をちょっぴり祈っていて】
【──そうすれば、荒事には巻き込まれないだろうからって】

【それから危険人物達の詳細について触れられた際の思考を読まれ、また瞬き】
【この人にはやっぱり敵わないな、なんて内心苦笑して】
【警戒し過ぎるに越した事はないけど人を信頼する為の観察眼は磨け、と】
【告げられてまた頬を膨らます】
【もう、そればっかりなんだから、なんて反抗期の娘みたいに呟いて】

【そうして厳島を見送れば夕月がにぱっと笑いながら振り向いて】
【告げられたこれからの提案。そうして伸ばされた手】

……もーっ!普段は下拵えとかちゃんと出来るし!手とかもそんな切らないんだよ?寧ろ希なんだってば!
【ちょっぴり怒ったような、けれども可笑しいような声色で言って、その手を取って】
【なんかお姉ちゃんが増えたみたいだなぁ、なんて心の中で笑って】
【それから、時間が許すまで二人で料理の練習をして】
【連絡先の交換なんかもして、そうして】

【──またねって言って、今日はお別れ。なんだろう】




/絡みありがとうございました!


73 : 合歓 ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/05(木) 23:42:52 WMHqDivw0
>>63
……目印……目印か。
出来れば迷子にならないように。
僕だっていつまでもここで寝てる訳じゃ、ないからさ。


【そう言われて何を思ったのかは定かではない。青年は気だるげな様子で幼女を見送った】
【明け透けに見えるけど、それでも秘密にしていることは多いのだろう】
【ある意味で、組織対組織としてなら仲間同士――彼女個人の宿世は知らないけれど、根掘り葉掘り聞くようなことではないんだろう】


……あー……そう、機会が、有ったら。


【幼女の笑顔は無償のものだった。相手が害意を持っていなかったのなら、例えば青年のような目付きの悪い男にも向けられるような】
【それに対して正面から言葉を返すのは躊躇われたから、余り良くない大人が使うような言葉を、最後の挨拶にするのだった】
【来た時と同じように、翼を広げて飛び去って行く姿――改めて見てみると、天使と言うには少々落ち着きが無さ過ぎる】

【ひょっとしたら本当に戻って来るんじゃないだろうな、とは思いはしたものの――】
【我慢できずに、青年は煙草に火を灯した】
【余計に良い知れない倦怠感を感じながら。例えるなら、何だろう。数日カーテンを閉め切って引きこもっていたところで急に陽の光を浴びたような気分だった】

生物兵器、ねぇ……

【呟く。思うところは色々と有ったのだろうが、その思考が実を結ぶ前に、青年は身を起こして、今しがた現れた相手に向かって不機嫌そうな声を上げるのだった】


――遅いぞ、コマ。


// お疲れ様でした!


74 : 名無しさん :2018/07/05(木) 23:53:15 CZ8jzzXk0
>>71

【けれどそのやりようはかえって何かを予測することを嘲るようでもあった、昨日は通用した手法が今日は通用しない、昨日は通用しなかった手法が、今日は意味を持つ】
【少女らしい気まぐれは結局わがままを言い換えただけに過ぎなかった、昨日と今日と明日で何もかも同じはずないと言ってみるみたいに】
【いつまでも自分は自分だって声高らかに宣言してみせるように。――自分が自分であることを迷ったことがないと言い放った、あの時と、結局おんなじで】

――――好きじゃない人口説くほど尻軽じゃないですよ、――……眠いし……。

【ふわふわした声。多分あんまり物事を考えないでしゃべっている。だからこそ寝言みたいなトーン、責めない声が「うそつき……」とでも呟くんだろうか、ささめくように】
【時々重たくって仕方ないみたいに瞼が閉じれば透き通る藤色の睫毛がお行儀よく並ぶ、その向こう側の紅紫色を期待させて、けど、覆い隠してしまうのは】
【わざと手間取るように作られた下着のように焦らす、――相手が離れたのならベッドに沈んでしまうから。放っておいたらまた眠ってしまいそう】

【――――それをきっと相手は許してくれやしないんだけれど、】

――ん、ぅ、――――うぁっ――、ちょ、――――っ、っ、ふっ、ぇ――、けほっ、――あ゛っ、

【ただ強いて言うのなら、せめて起きてやろうとするみたいに目元をぐしぐしやっていた。長い吐息はため息であったのか単なる深呼吸であったのか、とにかく】
【途中で分断されるならわずかに眉間にしわを寄せる、――訝しむみたいに薄らと開けた目がもしかしたらうんと至近距離にてかち合うんだろうか、直後に見開かれ】
【わずかに抵抗の声が流し込まれる液体によって遮られる、――全く予期していなかったのだろう、一瞬当たり前に呼吸しようとしてしまった喉に液体が流れ込んだなら】
【きっと次の瞬間には苦し気に咳込んでいる。それならきっと口移しのほとんどはおそらく無意味になっているんだろう、気管に流れ込んだかベッドに染みたか、どちらでもいいけど】
【――確かなのは眠さと苦しさにぐちゃぐちゃになった目が睨んでくることだろうか、まだ少しえずくみたいな咳をして、ふーふー荒い息をする、きっと少し、涙目だった】


75 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/06(金) 00:10:34 WMHqDivw0
【――――某有名トークアプリ。ふたりきり、トークルーム】
【ときどきポンポンと、中身のない会話が続くだけの部屋だった】
【それ以外は――互いの自撮り写真を送り合って、ここはもっとこう加工すればいいとか】
【あるいはくだらないスタンプを無意味に連投したりとか。コスメの情報を共有するとか】
【至極どうでもいいことばかりに使われていただけの、ごく普通の、部屋だったのに】


「ミレーユさん」

「あなたが何でも屋さんやってるって聞いた」

「それで結構危ないこととかもやるって、噂も聞いた」


【ある日突然。絵文字の飾りも何もない、つめたい文字列が飛んでくるんだから】
【ミレーユは少しばかり面倒に思うだろうか。……数分置いて、その続きが飛んでくる】



「だったらあたしもあなたに依頼がある」

「戦闘のお稽古つけてほしいの。報酬的なヤツはちゃんと払うから」


「どうしてもこの手で殺してやりたいヤツがいる。あたしのことを、強くして」



【――――そこで一旦打ち止め。相手の返信を待つようにして――何も発言しなくなる】
【きっとこのまま、これに対する返答が来るまで。他のどんなことも、一切しゃべらなくなる】
【ちょっと上にスクロールすれば馬鹿らしいスタンプの応酬が続いていた、というのに】
【あんまりにも温度差がありすぎた、もしかしたらアカウント乗っ取られたんじゃないかって疑えるくらい】
【けれど彼女は、夕月は、本気でこれらを――自分の指でしっかり打っていた】
【大きなニュースがあった、数日後のことだった。凶悪なカルト教団が壊滅したという、そのあとのこと】


//御予約でーす


76 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/06(金) 01:07:38 Tg/39WpY0
>>74

【 ── きっと其れは、何よりアリアの羨む精神だった。毎夜のごとに心の色を変えてしまっても、自分が自分でいられることに、誇りに等しい自信を持って疑わない。】
【かえでの在り方と生き方を思い切り言葉で抉って、傷痕に愛情たっぷりのベークライトを注ぎ込んだ彼の日も、結局はそうだった。その内心を言葉で示しても、かえでは腑に落ちぬような顔をしていた。】
【けれど結局のところ、アリアには縋る神様なんて居やしない。少なくとも彼女にとり、其れはまやかしだった。いつかどこかで、信じ続ける自分に懐疑を抱いてしまうのが、目に見えていたから。】


「 ──── もう。」「零したら、駄目じゃない。」「折角、飲ませてあげたのに。」


【困ったように白い眉根を寄せて、けれど其の実自分のせいだって分かっている微笑だった。抱き起こしたかえでの背中を、うまくミルクを飲めない赤ちゃんみたいに、ぽんぽん撫でる。】
【銀のヴェールに包まれた冷たく美しい妍容は、然し今ばかりは優しげであった。独占するような慈愛に満ちていた。 ── きっと、母親の抱く感情に、似ていた。其れこそ瑞々しい唇から、子守唄でも歌いそうで。】
【背中に回した指先が無自覚に傷痕をなぞるのだろう。アリアのつけたものも。そうでないものも。そうしているのなら、猫のように気紛れなかえでの心を、ずっと留めておける気がして。】
【其れが儚く身勝手な独占欲の妄想であったとしても構わなかった。浮かぶ涙さえ味わっていたいのだから。貴女の都合なんてどうでもいいわ、と言いたげに。だから、】


【 ──── 睨まれるのも構わずに、荒い呼吸を自ら吸えることさえ嬉しくて、だから追い討ちのように、封をした冷たいペットボトルを、かえでの首筋に押し当てようとする。】



「可愛いわ。かえで。」「 ……… 嫌いになった?」「私のこと。」



【 ──── そしてまた、答えの分かりきっている問いを、その耳朶に向けて密めこうとするとするのだった。】
【頷かれても、いいえと首振られても、どっちでもよかった。どっちでも嬉しかったから。其れは勿論のこと、アリアがかえでに向けている、全幅の信頼があるのだけれど】
【 ── いっそここで嫌われてしまえば、なにか楽になるのかもしれない、って。きゅ、と、最早ウィステリアが隠すこともない背の傷痕に、爪ではなく指を立てながら。】


77 : 名無しさん :2018/07/06(金) 02:21:43 CZ8jzzXk0
>>76

【ひどくひどく咳込んだなら身体がわずかにのけぞる、きっとその隙間に手を差し入れられて、抱き起されたなら――、縋り付くかのよう、身体でも預けるだろうか】
【下手すれば吐き戻してしまいそうなまでの咳が重なるたびに苦し気にその指先がつかみ取る場所を探して相手のせなを彷徨う、けれどどこも捕まえられないなら】
【そのうちやがてわずかに爪を立てて無理やりに肉を捕まえる、――それでも爪は短く切られて丁寧に鑢掛けられているのだけれども】

――――げ、ほっ、ぅえ……、……。――。

【――そしたらいくらかの咳込みの後にようやく正常にほど近い息を吸えるようになるのだろう、相手のしぐさによって整えられて、それでも苦し気な呼吸だけ引き摺って】
【マゼンタ色の瞳は濡れたならばいっとう鮮やかに映えていた、溢れてしまった涙で頬まで濡らして、そのくせに、批難がましい視線がうんとギラギラぎらついて】
【震える吐息でそれでも身体いっぱいの酸素を摂取するかのように深く深く吸い込む、――それからはああ、と、投げやりに吐き出して。頭痛でもするみたいに、頭を揺らせば】
【問いかけにはじとりとした目つき。それならきっと答えは返らなかった、――ただ確かであったのは確実に目が覚めている、当然と言ったならそれは当然、なんだけれど】

【――――――ゆえに。少女はふっと思いついたみたいに顔を寄せるんだろう、口付けだってできてしまいそうな距離が、けれど、ふっと逸れれば】
【あ、と、開けられる口の仕草は唐突が過ぎた、滑らかな顎関節は少しだって軋む音もさせないで、可動域の限界まで、開いたのなら、】
【肩口なんてかわいらしいものじゃない。身を乗り出したなら白銀のヴェールの中に顔を埋めるようにして、その首の後ろのところ。それこそ犬同士/猫同士がするように】
【ぎゅう、っと、咬もうとするんだろう。そしてそれを許したなら甘噛み――にしては悪ふざけが過ぎていた。肉まで抉らずとも、皮のいくらかは裂いてしまいそうなほど】
【そうして満足するまで歯を沈めたのなら、傷口にちらりと舌を這わすんだろう、であれば自分が優位であると示す行為に相違なかった、微かな吐息だけ、後ろに残、】

――――ひッ、あ!? 〜〜〜っ、っっ、

【――けれどどうあれ、その瞬間に首筋に冷え切った水が添えられるのは、多分変わらない。空気を全部吐き出してしまいそうな声が漏れれば、ぴゃんと背中まで跳ね上がって】
【本当にびっくりしたみたいに足先がばたばたとベッドを蹴飛ばす、そのいくらかあとに――手を後ろに回したなら、ペットボトル、今度こそもらおうとするはずであり】
【すでにふさがった傷を窘められても気にしなかった。それより普通に水が飲みたかった。――ちょっと拗ねたみたいな気配。つんと澄ましたなら、どこか無視する、みたいに】
【抱き合うような距離で、けれど相手の身体を避けて、自分の欲求を満たそうとする。――けれど逃げたり拒絶する温度感でないことだけは、きっと、確かで】


78 : ミレーユ ◆1miRGmvwjU :2018/07/06(金) 12:57:47 o6XMS57s0
>>75


【 ─── 数分ほど後、既読が付く。】
【そこからまた数分の沈黙が続く。いつもなら、返信は30秒もしない内に飛んでくるのに。】
【然し其れは無視していると言うよりかは、 ── なにか、考えているような間だった。誤魔化すようなスタンプや顔文字は送られてこなかった。】


【10分ほどが経つ。すぽん、 ── 通知が届く。ごく冷淡な一語を皮切りに。】



「いいよ」



「お金はいらない」
「歳下から毟る趣味はないから」
「恩返しとでも思えばいい」「こないだの」


【そうして位置情報だけが添付される。地図アプリで開いてみれば、水の国。とある大都市の駅前にある、商業ビル内のネットカフェ。】
【「明後日」「0900」 ── ただ其れだけを続けて残し、後は何の返事もないだろう。深夜になれば、ほぼ毎日のようにチャットを飛ばしていた彼女、であったのに。】


【もしも夕月が指定の場所と日時の通り、ターミナル駅の東口、スクランブル交差点の向こう側に足を運んだのなら ── 。】
【 ─── 陽炎の元、彼/彼女は黒い日傘を差して、立ち尽くしているのだろう。白黒のゴシックロリータは、其の時ばかりは喪服に似ていた。】
【"依頼人"の姿を認めれば、そっと傘を畳む。露わになるのは白磁の微笑み。頬と口だけ、幽かにカーマインの赤み。けれど、 ── 青い瞳だけ、笑っていなかった。】


「 ─── さて。」「どういう風の吹き回しなのかは、」「まあ、聞かないでおくよ。」
「 ……… 其れに、何となく、察しも付く。」「キミが語りたければ、吝かではないけどね。」「ついておいで。」


【ごくごく何時も通りの調子で、一方的に彼女は語るだろう。そうして踵を返し、ビルの階段を降りていく。地下に向かって。 ── ネットカフェは3階にあった。】
【数十段段を降り、何度か踊り場で折り返しせば、地下の2階ほどに相当するだろうか。突然に、鋼鉄の扉が立ち塞ぐ。その前でミレーユは足を止めた。 ── そして、振り向きもせずに】




「ひとつ、質問だ。」「 ──── 夕月。今までに一度でも、誰かを殺したことはあるか?」



【 ─── いつもと同じ、甘く優しい声だった。けれど、なのに、不思議と何処までも冷たかった。肌もろくに晒さない格好で、ミレーユは汗すら滲ませていなかった。】
【どんな答えであれ返る言葉はない。認証デバイスにパスワードを入れ、細い指先を静かに押し付ければ、短いビープ音と共にロックは解除された。鋼の扉が、開いていく。】


79 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/06(金) 12:58:05 o6XMS57s0
>>77

【たとえ直截なる愛情の結果でなくとも、自分の身体に縋って委ねて抱き締めてくれるかえでのことが、アリアにとっては嬉しかった。 ── それくらいには、彼女もまた、熱に浮かされていた。】
【穢れない雪膚に触れるのなら、溶けゆくように指を沈めることができるだろう。だというのに手触りは羅紗の滑べらかさであった。円い爪先が立てられるのなら、其のまま心地よく飲み込んでしまうような。】
【紅い瞳が厳めしく眇められたとしたってアリアは変わらず微笑んでいた。抱き合ったまま、肌重ねているからこそ感じられるのは、荒い呼吸の度に膨縮を繰り返す胸許であった。】
【 ─── 言い知れない柔らかさが、愛しく歪み合い、肌理がしとりと隈なく擦れ合う感覚。否応なく増して、かと思えば収まり、けれど共に吐き出されるのは甘い呼吸。素面で居られる筈もなかった。】

【だから白夜の色をした髪に、埋まる鼻先を拒む道理もない。上品な香料の甘い匂いがするのだろう。女の綺麗な要因を片端から掻き集めたような。】
【 ─── その奥に牙が突き立てられるのは、自然なことであったのかもしれない。アイボリィの刃に、真白い羅紗が微かに裂けて、外皮の血肉を溢れさせる。甘く呻く声。躯体が、震える。】



「ふ、っあ、 ──── ぅ。」


【堪らずにアリアも爪を立てようとした。ごく浅く鋭く引っ掻いて、たとえ傷を残すとしても、一筋の紅い線が浮かび上がる程度の加減で。 ── 痛みと言うより、疼きの残る類いのもの。】
【付けられた歯型は間違いなく其の種の傷であって、多分に意趣返しだった。玩具を取り合う子供みたいだったけれど、籠められている感情は錯綜しきっている。】
【冷たいボトルは難なくかえでの手に渡るだろう。するりと身を離すのならば、アリアの笑顔は途端に哀しみを帯びて、瞬きに震えるのは涙さえ湛えていそうな白い睫。暫しの沈黙、 ── 淡い唇、訥々と語られる言葉。】



「 ……… たまには、私が悪戯したって、いいじゃない。」「だって、かえでが構ってくれないから、 ─── 寂しくって。」
「 …… 私だって、泣かないわけじゃ、ないよの?」「ねぇ、お願い、怒らないでよ、 ──── かえで。」



【やはり冷たい声が綴るのは繰り言だった。酩酊の距離感に似ていた。彼我の空間認識の喪失。通話先の相手とさえ、肌を触れ合わせずにはいられない。】
【けれど今のアリアは静かに俯いていた。手持ち無沙汰に伸ばした人差し指が、つぅ、とかえでの外腿をなぞろうとして、 ─── 申し分程度の上目遣いが、青い輝きを向けている、くらい。】


80 : 棕櫚 ◆D2zUq282Mc :2018/07/06(金) 17:31:17 JY1GydDk0
>>70

【冒涜者は何かを思いついたかのようにその手を止める。そして、脳内を犯し尽くす細糸も引き抜かれて】
【大粒の涙と鼻水でくしゃくしゃになった表情で、殺さないでと嗚咽交じりに懇願する「カリヤ」と「ルル」の目は虚ろ】
【"解剖"は終わった訳ではないが、小休止。その幕間に行われるのは「イノチ」に関する問答であった】


そりゃあそうさ。「イノチ」が平等だなんて話は、現実を知らねェ脳内お花畑のお馬鹿さんか共産主義者の夢想さ。

この世に一番二番三番と序列の付かないモノなど皆無だ。それは「イノチ」だって同じさ。
生まれてこの方、平等な「イノチ」など見た事も触れた事も無い。主観や状況一つで「イノチ」の重みなど容易く変わる。
生まれる事自体が罪とされる忌み子の「イノチ」と、生まれる事を祝福され寿がれる「イノチ」とでは全然意味合いが違う。

であるならば、「イノチ」は平等じゃねェさ。生まれた時点で差異が在って。生を通じてその差が変動するのだから。


【諧謔、嗜虐、暴虐、愉悦に歪んだ棕櫚の面持ちは何処かへ消え去り。いたく真剣な面持ちで、軽薄さを失った口調で紡ぐ言葉】
【"もし「イノチ」が平等であるならば。流刑地たる鬼哭の島で生まれ育ったオレや白桜は人の数に数えられてた筈なのだから"】
【身を以て知り、己が半生を以て痛感している。故に、冒涜者の物言いに同調して――"なあ、白桜"と喪った者の名を口にした】

【棕櫚の目は何処か遠く、憧憬に目を細めて。無自覚に亡くした者の名を口にするその姿は――先程の棕櫚とは別人の様だった】
【その姿は冒涜者にはどう映るのか。キャラじゃないとか、似合わないとかだろうか。或いはそれ以外の感想だろうか】


どうだろうなぁ……流石の俺もそれは試した事が無いんでな。それこそ推測でしかものを言えないが。
冒涜者殿の予想通り「ルル」が残るか、或いは「カリヤ」が死んだ瞬間に取り込んだ人格も道連れになるか。
もしかしたら「カリヤ」の人格を取り込む能力が機能しなくなるかもしれねえが、コレばっかりは賽を振らにゃ解らねえな。


【大人の女が見せる子供染みた好奇心と輝く双眸。遠い憧憬に目を遣っていた棕櫚の意識を引き戻すには十分で】
【先程まで冒涜者に見せ付けていた悪辣な笑みを取り戻して、再び愉悦に歪む―――"カカッ、アピールしなくても解る"と】
【そして告げる―――"面白そうだから是非ともヤってみようぜ。玩具は壊れるまで遊び尽くさねェとなァ…!"と】


81 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/06(金) 21:37:19 WMHqDivw0
>>78

【――――前後左右規則正しくもなく滅茶苦茶に荒れ狂う行き交う人々の波、スクランブル交差点】
【それをモーセのように割って出てくるでもなく、瞬間移動のようにぱっと現れるでもなく】
【ただただ普通に、人々の群れの中からにゅっと出てきた少女。有象無象に紛れるには十分な、ありふれた格好】

【黒いキャミソールの上にグレーの半袖パーカー。色褪せたデニムのホットパンツ】
【全体的に彩度を落としているのは気紛れだったんだろうか。痛々しいほど鮮やかな赤色の髪も、フードで隠して】
【化粧もほとんどしていないようだった。だけど唇だけ、あの日奢ってもらったルージュが曳かれていた】
【夏空にキラキラ弾ける花火とか、あるいはぱちぱち輝くサイダーの泡とか、そういうものを連想させる】
【繊細なラメの混じった、夏の限定色、大はしゃぎする少女の笑顔を彩るためのブルーピンク】
【……けれどそれを塗ってる彼女は、ちっとも笑ってなかった。じゃあなんで塗ってきたんだろう、わからないけど】

【それでも――――視線を下に落としてみれば。適当な白靴下には似合わない、真っ赤なロッキンホースの靴があるから】
【すぐにわかってしまう。彼女を表すいちばんの符号だった、どんな格好していても、その靴ばっかり履いている】
【その分厚い靴底の鳴らすかたい足音、迷うことなくミレーユに近付いて。微笑まれれば、「や」とだけ、挨拶】

【聞かないでおくって言ってくれたから何も言わなかった。無言のままついてって、――怪しい階段を下りていくのも】
【怯まない。むしろ慣れてるとでも言いたげな顔をして、こつ・こつ。一歩一歩、下へ向かっていく】


あるよ。それなり、たくさん、けっこうな数――――ニンゲンもそうじゃないモノも。
…………ああでも、「撃ち殺した」ことしかないな。だから引鉄を引く感覚しか、知らない。
ナイフで刺したりロープで絞めたりグーで殴ったりとか、そういう……「感触」の残るやり方では、したことない。


【質問に対する答えはそんなもの。けっこうな数というのはきっと、具体的な数を覚えてないほど殺してきたから】
【それも、あまりにも軽い指先の運動だけで終わってしまうやり方ばかりで。数を覚えていない要因、それもある】
【恐らく自分の意思でそうしたことがないんだと連想させるくらいには、ぼんやりした回答だった。そんな彼女がなんで、】
【……なんて思うほど、やさしいだろうか、ミレーユは。わからないけど――とにかく彼女はついて行く】

【この扉をくぐるものは、一切の、何を棄てなければいけなかったんだっけ。……思い出せなかった、有名な言葉】


82 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/06(金) 21:52:08 WMHqDivw0
>>80

【冒涜者はずっと黙っていた、棕櫚の永い永い独白の間】
【語る彼の横顔に、どれほどの感情が籠められているかを図ろうとしていたんだろうか】
【それもあるけど――――たぶん他のことも考えていた。何かを感じ取ろうとしていた】


………………そっか。じゃあ僕と考え方、同じだね。


【永い永い答えに対する返答にしては短すぎる。面倒臭くなって適当にそう返した、と取られるだろうか】
【けれど本当はそうじゃない。その一言だけに、冒涜者はありったけの感情を込めた】
【「共感」。シンパシー、……「ハクラ」と呼ばれた誰かのことを、冒涜者が知るはずもなかったが】
【きっとこの人も「そう」なんだと、直感で思った。それだけの話だった、――――】

【――――】

【「じゃ、やってみよっか」。軽い言葉で空気は切り替わって、冒涜者はまた別の部屋へ移動して】
【すぐに戻ってくる、乱雑に、膝を抱える姿勢で拘束した人物を台車に乗せて。ごろごろ言わせて持ってくる、シュール】
【その人物が誰かってこと、一目見ただけですぐわかるだろう。さっき言ってた「最ッ低なクズ人間」。いかにも粗暴そうな男】
【脱色してぱさぱさ痛んだ髪。それなりに鍛えられている身体。上品とは言えない服装――路地裏によくいるタイプのチンピラ】
【口枷の向こうでもごもご叫ばれているのも、恐らく絶対聞くに堪えない罵詈雑言なんだろうと、容易に想像がついてしまう】
【そんな、テンプレートに誂えたみたいな「クズ野郎」を、冒涜者は足蹴にして床に転がし。それからカリヤの拘束を解いて】

ほら、カリヤちゃん。新しい子……子ってガラじゃねえな。まあいいや、とにかく新しいの。
あなたの「糧」になれそうなヒトを連れてきたから――――遠慮なく「食べちゃって」。

【手にナイフを握らせて言う。何気なく紡ぐ言葉なのに、ひどい圧がかかっているのが感じ取れる】
【言うまでもなく「命令」だった。逆らったらさっきよりずっと痛いことしちゃうよ、って脅すみたいに、そして】
【「それにほら――――ミスタ・シュロも見てる」。……この場に居る「支配者」は、女ひとりだけじゃないってわからせて、笑う】


83 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/06(金) 22:19:44 o6XMS57s0
>>81


「結構。」「殺し方に、貴賤なんて無い。」


【 ── 意外だったろうか。しばらくの沈黙の後に、そうミレーユは答えた。】
【鋼鉄の扉が開いた先にあるのは地下のシューティング・レンジ(射撃場)である。四方数百mはあろうかという、コンクリートが打ち放しの殺風景な空間。微かなる硝煙の臭い】
【左手には幾つかの射座と人型の標的。実包と空薬莢が置きっ放しにしてあった。前方にはガンロッカー。右手には、所謂「キルハウス」と呼ばれる】
【室内戦闘の訓練を目的とした、木製の迷路が配されていた。 ── その迷路の中に、ミレーユは歩みを向ける。先っぽが少しカールした濡羽色の髪をひらめかせながら。】


「人殺しの経験がない奴を人殺しに育てるには大変な苦労が要る。」「多くの場合それは洗脳に程近い価値観の刷新が必要だからね。」「誰かを殺すと口にするのは、思いのほか簡単だ。」
「 ─── 凡ゆる軍の教練に於いて、過剰かつ理不尽なまでの厳格さがその第一義に置かれるのは、あくまで肉体的練度の向上は二の次であり、寧ろ精神の徹底した矯正を行うのが主たる目的だからだ。」
「自身が銃口を向ける相手が如何に無価値で唾棄すべき存在であるかを苦痛と共に叩き込む。手緩い日常に根差して築かれてきた一般庶民の世界観を塗り替え、戦場に相応しい立派な『死の司祭』として育て上げる。」
「もしもキミが『実は人殺しなんてしたことない』 ── なんて言い出したら、ボクは其処から始める必要があった。ま、それでもよかったんだけどね。」


「だから夕月。キミには資質がある。」「とりあえず今、それは誇るべきことだよ。」


【 ──── 迷路の中、ミレーユについていけば、数m四方ほどの小部屋に出るだろう。そこで初めて、彼女は首だけを振り向かせて、夕月に向かって微笑むのだった。】
【ひらりレースをはためかせ、片脚を軸にして一回転。黒髪が弧を描いて舞う。そのまま向き直って、 ── ゴスロリの下に隠れた2つのホルスターに、それぞれの手が伸びる。】


「さて、と。 ─── 『何』から教えてほしい?」「キミも確か、ボクと同じ二挺拳銃(トゥーハンド)、だったよね。」
「まあボクの場合、"能力"含めて色々と変則的ではあるから、そのまま伝えてもきっと役には立たないだろうし ── 。」
「であればCQBやCQC、つまり交戦距離およそ30m以内程度の各種戦闘技術を学びたい、ということではあると思うけれど。」
「 ── ひとくちにコンバット・シューティングと言っても、抜銃からフォロースルーまで、色々と意識すべき注意点はある。」

「一度に全部教えるのは大変だし、ボクはそれでも構わないが、まず何よりキミが覚えられない。」
「 ──── どうだろう。実戦形式の中で、すくに覚えられて役立つポイントだけ覚えていく、というのは。」
「それでいいなら今すぐ受けて立とう。殺すつもりで構わないから、かかってきてほしい。」


【暫し小難しく長ったらしい話の続きをするけれど、つまるところ最後には、「積もる話は模擬戦で教えよう」 ── そう、言っているらしかった。】
【 ─── 刹那、幽かにけれど確かに、冷たく空気が張り詰める。黒縁の眼鏡の奥、射抜くように投げられられた青い微笑。確かにそれは、殺気だった。】
【悠然と振る舞うような立ち姿は、然しいつだってクイックドローに備えていた。きっと夕月が頷くだけで、 ── ミレーユは、躊躇いなく"始める"のだろう。】


84 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/06(金) 22:42:38 WMHqDivw0
>>83

………………でも初めてだよ、こんなにひどく誰かを殺したいって思ったのは。
大好きなトモダチをこれ以上ないってくらいにバカにされたの。だから殺したいって思った、
――――ううん、違うな。「殺さなきゃいけない」って思ったの。

【「だから」で繋ぐにしてはあまりにもしょぼい理由だって。なんて青臭い義憤だろうかって】
【思うだろうか。でも夕月は大真面目にそう宣う。フードで隠した激情の色合いに似合った精神構造】
【至極単純であるからして、駒としては扱いやすく、……けれど一度染まってしまったらなかなか褪せない】
【そういった面倒臭さを持ち合わせていた。けれど今はそれがいいこと、なんだろう】

【辿り着いた小部屋。ミレーユが獲物に手を伸ばしたなら――夕月もそれに倣って。「マックス、カスパール」】
【誰かの名を呼ぶ、するとその両手に銃が現れる――――ミレーユのとは違って、マジカルな装備であるらしい】
【であればそこから撃ち出される弾だって、ロジカルさの欠片もないものだって、容易に想像がつくだろう】


ん。おっけーおっけー、あたしもそっちのがわかりやすい。
知ってるでしょ? あたし頭悪いもん、「実技」で教えてもらえた方が助かる――――なッ!


【紡ぐ言葉は至って普遍的なトーン。けれど動作はそれに倣わない、バネで弾かれたみたいに腕が持ち上げられ】
【銃口はまっすぐミレーユに向けて。そこから何の迷いもなく引鉄を一回だけ引いた、破裂音】
【よーいドン、の合図になっただろうか、それとも――それより先にミレーユが動いただろうか】

【射出された弾丸は想像通り、鉛ではない。謎のエネルギーを帯びて赤く輝く、いわゆる「魔弾」】
【それは中空に留まって、ぐにゃり輪郭を融かしてカタチを失う。そしてきらきら、小さくばらけて光り始めて】
【――――「針」になる。本数およそ十本ほど。1秒かかるかかからないかくらいの時間で、魔弾はそれに変化して】
【切っ先すべて、ミレーユに向けられ。一斉に発射される、狙いは広く大雑把に胴体、それとあと腕とか、とにかく上半身】
【刺さったところでそう痛くもないだろうけど。攻撃範囲が広い故に、回避するには少し苦労する。そんな――牽制のための一撃だった】
【それを裏付けるように、針の発射と同時にバックステップ。どうにも距離を取りたがっているようだった、けど】

【夕月の異能、自由に形状を変化させることのできる魔弾の射出。そんなもの、……だけどもう一つ何か隠してある】
【そう思わせる程度にはまだぜんぜん、「殺す気」じゃない。まだ少し余裕そうな顔をしてる――――】


【残弾――――右:4、左:5】


85 : 名無しさん :2018/07/06(金) 22:50:56 4X8BSN8s0
>>79

構わないんじゃなくって――――寝てるって言うんです。寝てる犬を起こす子供じゃあ、ないんだから――。
――あははっ、じゃあ、泣いてるとこが見てみたい……って言ったら、泣いてくれますか? それはそれですっごく見てみたいですけど――。

【受け取ったというにはあんまりに奪い取った温度感。そうして手に入れたペットボトルの水を、少女は感慨もなく飲んでいくんだろう】
【そうしたならその残りは最後の一口分か、あったとしても二口分ほど。もう要らないみたいに相手の手に握らせ直す、――物理的にも冷えた吐息がささめけば】
【起こされた未練はまだずるずる引きずられているみたいだった、まだどこか怨めしい目をしている、――ぴりぴり疼くような小さな背中の傷口を気にして、手を後ろへやったなら】
【出来立てのモツァレラチーズみたいに真っ白な胸元が腕に引っ張られて上向く、指先に血がついてこないのだけをやる気のない目で確認して】

【――その指先を、伸ばす。きっと血が付いていたって気にしないでやるはずだった、と、予感させる温度感で。そうしたなら相手の前髪、掌で以って退かそうとする】
【そうしてそのしぐさは"いつも"やる仕草でもあった。額同士を軽く合わせるときの前準備、であればそうしようとした瞬間にその後の行動までを予感させて、もちろん拒めるけれど】
【うんとうんと――うんと近い距離で、マリンブルーを覗き込もうとするんだろう、足に触れる指先は好きにさせていた、くしゃくしゃの掛布団だけわずかに取り残されていて】

明日起きるまで起こさないどいてくれたら、怒んないですよ――、――、それより。ね、私、アリアさんに、お願いしたいことがあって……。
――――私ね、行かなきゃならないところがあるんです。だけどね、私がそこに居たら、"ひどい勘違い"をされるかも、しれなくって――。
だからね、アリアさんに一緒に来てほしいんです。アリアさんが一緒に居てくれたなら――勘違いした人だって、きっと納得してくれます。
私一人だときっと信じてもらえないです。そんなの、私、悲しくって。……だからね、アリアさん――――、――。

【「おねがい」】

【甘い味付けのリップをたあぷり塗りつけたみたいに艶々する唇がささめいた、ならば吐き出される吐息は蜜みたいに甘やかで、何より言葉の紡ぎ方まで、蜜漬けで】
【きっとこの少女を食べたらさぞかし甘い。一口で糖尿病になって二口目で死んでしまいそうなくらいに。もとよりひどく近い距離感を、それでも、よじよじ、擦るように近づけば】
【相手の姿勢によってはその足の上に乗るかもしれないし、あるいは、足の間にすっぽり収まってみるかもしれないし。とにかくうんと近い距離を求めた、わがままする子犬みたいに】

【"どこ"に"何を"しにいくのかは、言わなかった。ただその場に彼女が居たら"ひどく疑われる"という言葉で察しは付くかもしれなかった、――おそらくは、と思わせ】
【では続く言葉からして――その時の彼女が"どちら側"に与するのかは、おそらく、相手側であるように思わせ。――本当かは、きっと、彼女にはあんまり関係なかったし】
【もっと言うなら限りなく嘘でしかなかった。少女の思考の中では"ケバルライ"から受けた言葉しか意味がなかった。ゆえに。けれど。――相手のことは必要だったから】
【それは言葉通りに自分がそこに居る理由に対する保険であり、戦力的な保険であり、――あるいは一緒に居たいと願ったあの日の言葉の証明、に似るのかもしれなくて】

【――だから、言葉には多すぎるくらいに嘘が含まれているんだけど、また同時に限りなく真実に満ち満ちてもいるんだろう】
【自腹で購入した映画のチケットをたまたまもらったからと嘘吐いて意中の人を誘ってみるみたいに――理由は嘘で/動機は別にあって/だけど、大好きだから】


86 : ミレーユ ◆1miRGmvwjU :2018/07/06(金) 23:14:14 o6XMS57s0
>>84

【真っ直ぐな感情をミレーユは否定も肯定もしなかった。誰かを殺すと言うのは簡単であり、 ── 同時に、十分な"素質"ある人間ならば】
【殺すと言った相手を、それこそ生理の朝に視線が合った、くらいの原因で殺す理由に足りてしまう。強いて心配なのは、逸るアドレナリンは命中精度を下げてしまう、くらいのもの。】



「よし。 ──── じゃあ、始めよう。」



【 ── 銃口を向けられた時点で、ミレーユは既に動き始めていた。ホルスターから引き抜かれ、】
【その片手ずつに握られるのは、夕月と同じリボルバー。けれど銃身の下には"刃"があった。鈍い銀色に煌めく切っ先。】
【そして抜銃と同時に彼女は"なにか"を投げていた。十全な動体視力があれば、それが小さな茶色い小包/勘が良ければ、それが「爆薬」であることが解るだろう。】
【 ─── 転瞬、炸裂音。数十グラム程度のプラスチック爆弾への遠隔点火と空中起爆。物理的干渉が可能であるなら、それを以って夕月の銃撃を打ち消そうとするだろう。】
【もっとも破片被害を与えられる外殻を持たない純粋な爆薬では、加害範囲はごく小さい。 ── むしろそれは、同時に煙幕も兼ねていた。】


「成る程射撃その物が異能である訳か。であれば、 ─── 。」


【であれば、距離を詰められたくないのも伺える。 ── 煙の彼方、前触れなく飛んでくるのは"刃"。ワイヤー付きのカランビット、数本と】
【先程と同じ小型爆弾が数個、大口径マグナム弾が3発の威嚇射撃。残響が耳に残るくらいの発射音。けれど視覚妨害を介しているから、下手に動かなければ当たらない。】
【しかし爆弾は夕月の背後、壁にべったりと張り付いて、 ── 数秒後に爆発する。下手に距離を取ろうとすれば、巻き込まれると思う、かもしれない。】

【 ─── 白煙の向こう側から、足音もなく何かが近付く。大気を押し退ける幽かな距離感と、後は"直観"でしか感じ得ない、ものではあった。されど。】


87 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/06(金) 23:33:59 WMHqDivw0
>>86

わ、っ、

【爆薬を視認することは出来ても、その中身が何であるかはわかっていなかった、から】
【大きな音がすればびっくりしてしまうのは仕方ないことだった。反射的に目を瞑る、たった一瞬】
【だけどその一瞬で、達人なら首を刎ね飛ばせるし、胸を撃ちぬける。そういうところだった、詰めが甘い、単純な弱点】
【放った十の針は爆風に負けず直進する――なんてことは当然なくて。ちりぢり風に乗ってばらばらになって――消える】

(…………なんだこれなんだこれなんだこれ、全部! なんだこれ、手数が、多すぎるっ)
(どれにどう対処すればいいのかわかんない、どれなら当たってよくて、どれを喰らっちゃいけないか、)
(わかんないっ全然っ――――) ――――ああもうっ、

【とりあえずこれ以上後ろに下がるのはまずい。けれど近付かれてもまずい。とりあえず、でそう判断したなら】
【刃と射撃は喰らったってしょうがないって思ったらしい。じり、と靴底を滑らせて、半歩だけ下がってから】
【今度は四発、左の銃から破裂音を鳴らした。ただ、煙がこの場にある限り狙いなんてつけられない――――だから】
【魔弾の行く先は夕月のいる地点の数歩前。おそらくミレーユの通る道になるだろう経路の、両脇】
【右と左に二発ずつ「設置」した。それらは先程と同じく、形状を変化させ、左右でそれぞれ一つずつに融合し】

【――――ミレーユがそのまま、夕月に向かって直進してきたなら。挟撃するように、左右、斜め下から突き上げるように】
【「槍」が伸びてくる。その刃先がミレーユの肉を穿つことはなくっても、先端をクロスさせて接近を拒否する】
【それで動きが止まってくれたなら、さらにもう一発、右から発砲するだろう。一発だけ、形状変化はせず、「頭」を狙って】


【残弾――右:3、左:1】


88 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/06(金) 23:54:35 o6XMS57s0
>>85

【それを構ってくれないと言うのだと、 ─── 今のアリアは本気でそう答えるのだろう。自分が呼んだら何時だって答えてほしいと、其れが正しい相依存の在り方だと】
【少なからぬ批難に満ちた視線を同じくらい批難の視線で睨み返していた。 ── 目尻に少しばかりの潤みを含ませて、もう少しでも邪険にされていたら、縋るように泣いていたのだろう。】



「 ─── かえでに、お願いされたのなら」「或いはもっと、意地悪されたのなら。」
「きっと泣いてしまうわ。わんわん涙を流して、貴女の胸に甘えながら。」



【だから冷たく憂うような返事さえも大真面目だった。 ── 一番始末に困る残量のペットボトルを突っ返されたのなら、自棄っぱちのように飲み干してしまう。間接キスとか、もう気にする間柄じゃない。】
【今ばかりは世界中の何より滑やかに感じられるかえでの指先が、 ── アリアの顔、その半面に覆い被さった白銀を、音もなく横に掻くことに、拒絶だって無い。】
【顕になるのは、何度となく目にしたであろうし、何度となく触れたであろう、醜い火傷の痕。不気味な桃色の爛れは、隆起し陥没し、趣味の悪い仮面のようでさえあり】
【対になるサファイアの瞳が宿っている筈の場所には、平行四辺形の黒い眼帯に一眼レフのカメラを埋め込んだような、人のかたちなんて無価値であると言いたげな義眼。】
【視覚制御システムが無意識下で光学素子をコントロールし、暗視レンズの焦点を合わせ、 ── 覗き込む紅色を映し、深紫の輝きがそこには宿る。】
【 ─── 重なり合う、額と額。あったかくて、少し固くって、けれど何より気持ちいい。もっと、何もかも、欲しくなってしまう距離感。だからこそ。】



             ぁ、っ。



【 ─── 無防備な耳元、添えられた唇、生っ白い温度の呼吸、どこまでも甘ったるい囁きが、聴覚系統を容易く擦り抜け、チタンの脳殻なんて全く無意味なように】
【甘く惚けた嬌声を漏らして、アリアは呻いた。ちろりと耳朶を掠められでもしていたら、きっと、其れだけで果ててしまっていたかもしれない。】
【衝動と共にぎゅうっと柔らかく抱き寄せるなら2人の距離はゼロに限りなく近付く。両太腿の間に、かえでの膝立ちをすっぽり収めて、それでも未だ足りない気がする。】
【 ─── そんな、地に足付かない不安の原因が、他ならぬかえでが阻む記憶と感情であると、今のアリアは解らないから。だから忘れてしまうようにかえでへと縋る。退廃の連鎖であると知らずに、或いは知りつつも。】



「 ─── 貴女の為なら、」「何だって出来る、って。」「言ったでしょう?」



【 ──── どこまても冷たくも、どこまでも湿った声で、返答は為された。ひしり抱き締める両腕、その片方の人差し指にて、かえでを疼かせる傷をなぞりながら。】


89 : ミレーユ ◆1miRGmvwjU :2018/07/07(土) 00:17:11 o6XMS57s0
>>87


【まさしく「手数」というのはミレーユの得意とする戦法だった。一つ一つは決して致命的なものではなくとも、その何れかに痛烈な一撃を紛れ込ませる】
【もしくは軽度な一撃を幾度となく食らわせて、蓄積の結果として相手を仕留める。―― アンフェアな戦法ではある。けれど殺しに貴賎はないと、彼女は既に口にしてもいて】




「ビビっても目は瞑らない。」「声、出さない。」
      「やられるよ。手練れなら。」



【 ── 槍の隙間、「滑り込む」ような超低空からの侵入を以って、故にコンマ1秒たりとも躊躇いに動きを止める事はなく、ミレーユは距離を詰めようとするだろう。】
【槍の一閃が頬を軽く掠めて、真一文字に紅い傷痕を作る。真白いファンデーションに滲んでいく。然しそれは夕月からは見えないのだろう。それでも】
【ぶわり、 ── 踏み込みの勢いに白煙が晴れる刹那、一瞬遅れて、視界の下より2発の銃撃。夕月の頭部めがけて、情け容赦ないダブルタップ。】
【勿論「一瞬」だけ遅れていたから、かわすのは至極容易だろう。けれどそれが牽制でありブラフであり、また彼女を追い詰める布石であると、 ──── 】
【気付かないのなら、蒼くギラつく眼光の顕現と同時に、鈍く光る銃剣の追撃が、夕月の首元に迫るだろう。】
【風を切る鋒が掠めるように狙うのは、頸動脈。どういう結果であれ、肌を裂くか裂かぬかの所で止まるには違いない、けれど。】


90 : 名無しさん :2018/07/07(土) 00:29:23 4X8BSN8s0
>>88

【――もし本当にそうやって口にしていたなら、きっと少女はどこか困った顔をしたんだろうと思わせた、それでも睨み合う視線に潤みを見つけたなら】
【唇の端っこを蕩かすような声をあげる、蕩け落ちてしまう猫を困ったように愛おしいように両手で掬い上げる瞬間みたいな温度感、どこか夢見るように、眼までもにじませ】

――――かわいそうなアリアさん。あんなに強くて。こんなに綺麗なのに。どうしてそんなに弱虫なんですか? 
なんにも怖くだなんてないのに。――ね。大好きですよ。愛してます。だからずうっと一緒に居ましょうね、――私の居るところに、ずうっと、ずっと――。

【ひどく至近距離で見つめ合う。人間の目にはこの距離はいくらも近すぎた、それでも十分であった。熱を確かめるみたいな距離感はそのまま、阻害の効きを確かめるように】
【それでいて他人の体内に流した阻害の効能を彼女はうまく探れない。個性とはそれだけ厄介であった、血管がどうとか、そういうのは、だいたい、一致しているんだけれど】
【脳はひどく繊細で。ましてその中に詰まっているものは人によって異なりすぎて。――ゆえに作用させ続けるには運が多分に絡む、日常的に確認してなお、不確かが過ぎる】
【だからこそ愛ばかりを重ねていく、――いつかほどけてしまった時に阻害の力なくとも揺らぎ転んで崩れ落ちてくるように、と、今のうちに、準備しておくみたいに】

【真っ白い肌同士が零距離まで縮められたなら吐息どころか鼓動までも伝わるんだろうか。あるいは深部体温まで伝わってしまいそうになって、膝立ちの足元、擦り合わせたなら】
【いくらかこちらの方が頭が上にあるんだろうか、それであるなら口付けするように口元を相手のつむじのあたりに寄せていた、ぎゅうっと抱き寄せられるままにして】
【愛情のあまり翼を捥いだ天使を愛でるような笑みで以って吐息でささめく、曰く好きだと、愛していると、――全く嘘ではないから、かえって、性質が悪いもの】

――――――――――うん、知ってます。

【――――ゆえにこそささめきの中の一番いいところだけを集めて詰め合わせたみたいな声が、賛美の歌声で奏でるみたいに手向けられる、墓前の花束よりも色鮮やかに】
【けれど花嫁のブーケトスにしては、あんまりに退廃的に。たとえるなら液体窒素に浸され花束のよう、ざあざあと冷たい湯気を滴らす花を、そうと、活けるみたいに】

"いいこ"にはご褒美をあげなくちゃ。ねえね、何がいいですか――? 日常にありふれたプレゼントじゃなくて。
上手にできたときのご褒美――アリアさんはね、どんなものが、ほしいですか? アリアさんのためならね、私――、

【色恋/色濃い笑みを予感させる声だった。チョコレートファウンテンみたいにいくらでも溢れる蜜の色合いで包もうとした、背中のひっかき傷を撫ぜられて、痛んでも】
【けれどその痛みまで甘さに溶け込んでしまったみたいに、よりいっとう声音の深みばかりが増していくんだろう、――きゅうっと抱きしめ返す腕の力は、ただひたすら、少女の範疇で】


91 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/07(土) 00:42:47 WMHqDivw0
>>89

――――ッ、

【今度は声を上げるヒマもなかった。相手の銃声が鳴ったと同時に仰け反る】
【反射のようなものだった。それでフードが脱げて、布地と髪の幾許かが鉛弾に抉られて、持っていかれて】
【けれど直撃は避けた。これで安心、……なんて思えるヒマもなく、当然】

【既にもう、此方が狙いを付けて発砲するより、相手に斬りつけられるのが早い間合いを取られてしまった】
【だったらもう「アレ」しかない。煌めく軌跡がまっすぐ自分の首を狙っている、それなら――渋い顔をして】


ああっもう、これ、奥の手だったのに――――もう出さなきゃダメ!?


【――――風切り音。下のほうから勢いよく伸びてくる――数本の、黒いリボンが立てる音だった】
【それはキリキリ捩れて細められ、ワイヤーほどの細さと強度を持って――刃の行く手を阻むのだ】
【がぎん、と硬い音。見ればそのリボンの出処は、夕月の「足首」であるとわかる】
【"Butterfly Swimmer"。それが夕月の、「もうひとつの異能」だった。足首から生えるリボンを操る能力】
【相当に便利なシロモノだから、本当にここぞと言うときだけ、とっておきの場面で使うつもりだったのに、って、むくれて】

【……そういうところもダメだった、殺し合いを舐めている。能ある鷹は爪を隠すというけれど】
【勿体ぶって爪を使わないまま死ぬんなら、能無しどころの話じゃない。持てるモノは出し惜しみしないのが、たぶん、正解?】

【仰け反った姿勢のまま、防御はリボンに任せて。苦し紛れの反撃、右のほうから2発発砲】
【たぶんまた頭を狙ったんだろうけど、滅茶苦茶な姿勢から放ったものだから。避けるのだって簡単だろう】
【とりあえずもっかい間合いを取り直したい。それだけを思っていた、とりあえず離れてほしいって意味で、とりあえず、攻撃】


【残弾――右:1、左:1】


92 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/07(土) 17:36:11 CF6Uao8o0
>>90

【例えどんな感情が理由にあったとしても、 ── かえでの笑顔は、それだけで歓びだった。微かに口角を吊り上げて、一瞥されるだけでも万感なる幸福だった。】
【身の上を憐れんでくれるなら尚のこと嬉しかった。肌寄せ切った距離感で、愛の言葉を囁かれるなら、外れない筈の箍さえ容易く外されてしまう気がした。】
【"そういうふうになっていた"。余計な感情と記憶を阻害されて、そうして新たに産まれた言い知れぬ不安の捌け口は、ただかえでとの相互的寵愛にだけ向けられていた。】
【事実、"良く効いていた"。かえでが慈母の視線を以って見守り続けているアリアの苦悶は、結局のところ一度たりとも光明を得ていない。自分が何を忘れているのかも思い出せずにいるよう。】
【或いは心の何処かで、意せずして願っているのかもしれなかった。かえで自身が、今ばかり溺れてもいいと思ったように。アリアもまた、今ばかりは溺れていたい、と。】

【 ─── 然し、どれほど愛玩され籠絡されたとしても。もしもかえでのかけた呪いが解けたのならば、きっとアリアは二度とかえでの願いを聞き入れられないのだろう。】
【彼女の生きる意味は愛情のみになかったから。胡蝶の夢と消えた世界で、ふたりきり愛だけを貪るような結末は、 ─── 紅い血潮が流れる限り、許せない。】
【だから髪房に触れられる唇は、この瞬間だけのモノであるかもしれなかった。次のプランクタイムとは、シンデレラの恐れてやまない12時であるかもしれない。】
【 ─── それでも愛情だけは本物だった。それこそ世界が溶けてなくなっても、この鼓動と体温と、囁く「好き」の言葉だけは、偽れないと信じていた。】


「 ─── ありがとう。」「ありがとう。かえで、 ──…… っ。」
「一緒に、 ── 居ましょう?」「ずっと、」「ずうっと。」「貴女と私が、願い続ける、限り。」


【さらり、 ─── 月魄に晒されて何よりもブランクに輝く銀髪は、もう冷たくなんてなかった。】
【ひしり、 ─── 細い両腕で縋りながら、かえでの胸許に額から鼻梁から頤まで、皆んな埋めてしまいつつ、上体を倒してまたも静かに体重をかける。】
【あるいは鼓動を聞きたがっていたのかもしれない。 ── あるいは、もっと直情的な心理状態を孕んでいたのかもしれない。あるいは、あるいは。】



   「 ─── 鞭がほしいの。」「躾のならない雌狼に。」「かえでの知ってる痛み、ずうっと、ぜんぶ。」「注いでほしいの。」
   「そうしたら、」「 ── 痛かったのと同じくらい、甘やかしてほしくって。」「甘えてほしくって。」「ねえ、 ─── 良い、でしょう?」



【胸元にちいさくキスを残して、柔肌なる双丘の隙間から、サファイア色の隻眼が見上げるのだろう。冷たくても、切迫の詰まったような、すっかり縋り切った声色で。】
【抱きしめる片手が、かえでの左手を取ろうとしていた。恋人結びに指を絡めて、伝えて欲しいのは、 ──── 「痛み」である、って。】
【かえでの知ってきた凡ゆる苦痛を分け与えてほしいのだと、そうアリアは懇願していた。どこまでも生々しく、痛ましく、絶え間なく、容赦なく。】


93 : ミレーユ ◆1miRGmvwjU :2018/07/07(土) 17:55:14 CF6Uao8o0
>>91

【然してやはり筋は良い、 ── ミレーユはそうも思っていた。予め弾頭は演習用のフランジブル弾に替えていたけれど、それでも驚嘆すべき反応速度。】
【音を聴いていたのか予備動作を見切っていたのか判然としなかったが、何れにせよ銃撃の回避は並大抵の反応速度で取れる行動ではない、のだから。】
【 ─── そして、本命打であった追撃の一閃まで、きっちり"防いで"きている。夕月の脚元より眼前へ、黒い一条が走るのなら、微かにミレーユは目を見開いた。】
【右手にて振ったダガーが阻まれる。彼女の膂力と刃の斬れ味ではどうにもならない硬度。ふ、と微かに笑い】


「 …… なるほど。」「まあ、出し惜しみしないのは良い傾向だ。」
「 ─── だけどね。今の状況なら、カウンターくらい狙っても良い。」

「詰められたからと言って ── 折角の不意打ちを防勢で終わらせるつもりかい?」「 ─── ビビってんなよ。」



【然し銃剣の鍔迫り合いはそのままに右手のトリガーを引いて数発を放つ。夕月に当たる射線ではなく、つまりは威嚇射撃だった。然し刹那でも、そちらに気を取られたのなら】
【格闘戦の距離である好機は決して逃さない。左手の銃剣、その刃の部分を痛烈に横薙ぎとして振り抜き ── 夕月の放とうとした右手よりの射撃が放たれる前、その銃身を「弾いて」、軌道を逸らそうとする。】
【真面に受ければ隙を晒すことになるだろう。握りが甘ければ拳銃を弾き飛ばされる事になるかもしれない。 ── そこには躊躇も恐怖もなかった。】


94 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/07(土) 20:44:36 WMHqDivw0
>>93

【すこしずつ分かってきたことがある。ミレーユは、攻撃のために攻撃を重ねてくる人だって】
【ミルフィーユだかミルクレープだかどっちだっていいけど、それらのように何層も重なった暴力、すべてに意味があって】
【けれど甘ったるいだけの菓子と違うのは。必ずその中に「本命」――スパイスよりも遥かに苛烈なそれを混ぜ込んでくること】
【何枚剥がして味わえばそこに行き着くのかってことを判断できなければ、ダメ。ショートケーキの苺みたいに】
【わかりやすいところにポンと置くなんて真似はしない人だ。ミレーユは――――それだけ、学習できた、けど】

――――――あッ、

【夕月は、ひどい邪道とはいえ銃を扱うヒトの端くれであったから。銃声にはなにより過敏に反応してしまう】
【林檎色の視線が、火を噴くミレーユの獲物の銃口の行く先を見て。――自分に向いてないと気付いた瞬間】
【しまった、みたいな顔をした。けれどもう遅かった、此方の銃口があらぬ所を向かされて、無意味に弾丸が消費される虚しい音が響く】
【打ち据えられる銃を握る手にびりびりっと衝撃が走った。顔を顰めて、けれど辛うじてすっぽぬかすことはない。だけどそれだけの話】
【右半身ががら空きになった。それならそこを刺そうが撃とうが何しようが、自由。簡単に殺してしまえる】
【十分なスペースを晒して――――しかし。防御のために使っていたリボンが、蠢き始めた】

【「しゅるるる、る」。ミレーユの右の獲物、刃を留めていたそれが唐突に、縮められる。そしたら刃は自由になるだろうが】
【その軌道の先にもう、夕月の身体はなかった。仰け反ってそのまま、後ろに下がっていたから――そして】
【縮められた黒いリボンが高速で、何かを編み上げていく。――蝶の翅のかたち、ならばそれを使ってナニするかも、だいたい予測がつくだろう】

【赤い靴の厚い底が地を蹴った。するとリボン造りの翅が羽搏いて――少女の身体は飛翔する】
【魔力の残滓を地上に残して――――前にも後ろにも動けないなら、じゃあ「上」へ。逃げることを選択したようだった】
【翅がある限り空中で無防備になることはない。少なくとも考えなしにそうしたわけじゃないとは思わせるけど、――――】

【――――距離を取れたならリロード。両手の銃に魔力を籠めると、赤色の輝きが走るから。次が来るって予測するには、十分すぎる、ヒント】


【残弾――右:5、左:5】


95 : ◆jw.vgDRcAc :2018/07/07(土) 23:04:27 bhvSXVo.0
>>973

【これが初めての経験だから、ピンと来ないのは仕方ない。これで気の利いたコメントが返ってくるなら、逆にびっくりだ。】
【素直な感想を言葉にして伝えてくれたならば、それだけで十分に嬉しいのが親心。その上はにかんだ笑顔まで添えられたなら】
【もう、それ以上何も求めるモノはない。にっこりと笑えば、その返答に不満はないのもあなたはきっと分かる筈で】

ふふっ、そう感じたのですね?それなら、それで十分です!
自分で選んだものを、ちゃんと肯定できる。それって、大切な事ですもの。
どこを気に入ったかを、ちゃんと言えるようになったら……もっと、素敵になれるかも?

【贔屓目が入っていることは否定しない。多分、余程おかしい物でない限り、どんな格好をしててもこんな風に言っているだろう。】
【でも、自分を肯定できるのは大切な事。それは、自信に繋がるのだから。もう少し経験して、色々自分で選ぶようになったら】
【きっと、どうイケてるか自信を持って説明できるようになるだろう。焦る必要など、ないのだ。】

【そして、娘に自分のものは買わないのかと問われれば。「そうですねぇ……」と、少しだけ考えを巡らせる。】
【元々は自分の物を買う予定はなく、娘の服だけ買って帰るつもりだった。しかし、せっかくこうやって一緒に買い物をしているのだから】
【これもいい機会かもしれない。お手本を見せてあげよう。ただし、あまり高い物は買わない方針で……】

よしっ、私も買っちゃいましょう!
ふふっ。せっかくだから、ベアとお揃いにしようかしら……なんて。

【「それじゃあ、行きましょうか!」と一言掛けて。あなたさえ良ければ、そのまま一緒に店内を回ろうとする。】
【手に取った服は、黒いタイトなジーンズと、ノースリーブの白いフリルカットソー。もしかしなくても、あなたとお揃い。】
【ただ、それだけで終わらない。彼女はさらに、レースの白いロングガウンを手に取って】
【「ちょっと待っててくださいな」と一言添えて、試着室へと消える。さて、どんな姿で出てくるか。】
【……もっとも、選んだ服は見ていただろうから、大体予想は付くだろうけれど。】


96 : セアン中身 :2018/07/08(日) 00:10:32 e7Qy.m/I0
>>46

【大振りの直剣を構えた兵士がこちらに駆け込んでくる。】
【セアンはその兵士に近付き兵士の一閃を受け止めて、右腕の義手で殴り飛ばす、】
【止めの一撃と言わんばかりに兵士の頭を掌内蔵のショットガンを打ち込んで頭を吹き飛ばす】

はっ!どうしたぁ?お前ん所の兵士はこんな物なのかー?
もしかして不良品だったりするのか?だったらご愁傷様ぁまぁ、でも廃品回収所に出す手間が省けたんじゃねーの?

【すぐさまに⦅dense Defilement⦆を創り出し、構える。】
【何故セアンが今すぐに走り出さないかと言うと、男の後ろにライフル兵が構えているためだ】

後ろの奴を何とかしてくれませんかねぇ??正直言うと物凄く邪魔なんだよ。
うっかりすると殺してしまうかもしれんからな、

でも流石に敵さんの本拠地でドンパチするのはチョットいただけねぇな、俺はどっかのパグロームとか言う狂人じゃねぇからな

引っ掻き回すだけ引っ掻き回してとっととトンズラするからよ。それまで付き合ってくれや、お兄さん?

【背後に店売りの武器と同じ様なスペックの武器を十個展開し、発射する】
【この攻撃で男は分からないが、周りの取り巻き兵士は片づけれるであろう】

/すいません。めっさ遅れました。
/今返信が来てることに気付いたんです。許してください(何でもするとは言ってない)


97 : 名無しさん :2018/07/08(日) 01:06:15 bdtZWILE0
>>92

【あまくあまくささめいたならば、その不確かで怯えたような隙間にどこまでも蜜をうずめていく、いっとう奥深くまで、取り返しつかない場所まで、浸すよう】
【けれどそれは結局めいっぱいに飾り立てられたこの舞台の上でのみ通用する魔法であった、針と針が重なりあったなら、そこに張り付く泡沫は潰されてしまうから】
【それならシンデレラだって真っ青になって逃げだすだろう、ならば"これ"は倒錯しすぎていた、けれどきっと二人の中では正しかったんだろう、時々混じりこむ嘘まで含めて】
【どうしようもないって分かりながら演じてみる、だのに限りなく本当でしかなくて。どうにかする方法は、それこそ、魚を陸にあげるような苦しみしか、生み出さない】

――――うん、ずうっと、一緒ですよ。ずうっと……、ずっと……。

【――だから、分かりきっていた。そんなずっとはきっとない。もしもあるとしたなら――それは彼女らのどちらかにとって、世界が亡ぶような出来事に等しい物事の後にしかないと】
【丸ごと全部の世界じゃなくて、一人一人が持つ、世界。誰もが持つ自分という神様が統治する世界。それが亡んでしまうような出来事、そうじゃないと、一緒はありえないって】
【――――少なくとも確かであるのは、蜜姫かえでという人間は居場所だと思った場所を喪うことを何よりも恐れる。自分ひとりが取り残されることほど、恐ろしいものはない】

【だから――だから蜜姫かえでは間違いなく蛇教のために助けてもらった命を使い果たそうとする。仕組みが分からずともクマンバチは飛べるみたいに、当たり前に】

【一緒に居たいと願えば願うほどにその意思を踏みにじって行かないといけない。どんな罪を負って生まれたなら強いられるのか、そんなの、きっと神様にさえ分からないなら】
【胸元に埋められる顔をぎゅうと抱き寄せる、――耳でも当てたなら。そうでなくとも相手の耳であれば聞き取るかもしれない、鼓動の音、血流の音、くぐもり反響する声】
【限りなく生きていた。そしてきっと相手の身体とおんなじ匂いがした。同じボディソープを使って、同じベッドで眠って、あまりに何度も肌を重ねたから】
【――けれどどうしようもない違いを証明するかのように、どこかで、ほんの少しだけ、違うんだろう。祈るような声はどこか切なさを帯びて、――永遠が存在しないことを知っている】

――――もう、しょうがないなぁ。そんなにかわいい顔されたら断れないです、――ねぇね、だからね、……もう一つだけ、"ご褒美"です。
ひとーつひとつ――数えながら教えてあげます。だからね、それが"どういう風に"痛いのか、ちゃんと、全部、答えて 

他の人はみんな"どうかしちゃう"んです。でも――アリアさんなら、出来ますよね?

【青色と紅色がぴたりと見つめ合う、一つ欠けた不完全さはけれど二人にはきっとよく似合って、だからそこに浮かぶ笑みもまた今この瞬間にはひどく似合うもの】
【強い人間が縋るように甘たるい声を出すのはどうしようもない愉悦を感じさせた、嗜虐趣味を煽って、そしてどこかで、それが崩れ落ちる瞬間を想像して、潤んでしまうから】
【嗜虐趣味と被虐趣味は表裏一体なのだという。証明だなんて必要ないだろう、浮かべた笑みはひどく薄いんだけれど、きっとどこまでも深く深く深いなら】

/分割でっ


98 : 名無しさん :2018/07/08(日) 01:06:26 bdtZWILE0
>>92

【――繋がれた指先を少女からもまた絡ませる。勝手に付け加え強いる課題、それさえも褒美の一つなんだって言ったなら、二重らせんさえ涙目になるほど、絡まり合って】
【与える痛みの一つ一つを相手なりの言葉で説明して見せろと微笑んで見せた、――そして相手の言葉を待つことなく、あんまりに自分勝手に"初めて"しまうから】

【擦り傷/切り傷/打撲/転んだ/ぶつけた/ひっかいた/筋肉痛/何か踏んだ/目に砂が入った/舌を噛んだ/突き指/棘が刺さった/それを抜き取る/喧嘩で弟におもちゃで打たれる、】
【犬に甘噛み/弟に噛まれる/悪いことをして親に打たれる/よそ見していて電柱にぶつかったり/紙で指先を切った時のムズムズする痛み/机の脚に小指をぶつけて、】
【ドアに指を挟む/シャーペンの先っぽを間違える/爪を引っかけて剥がれたかと思う/手を出した野良猫に引っ掛かれて/靴越しに刺さるくらいの石ころを踏んづけて、】
【左手の広範囲にひどく細やかな刺青を施す/赤く熱く熱を持った疼痛/皮膚の一部を剥ぐ/爪を剥がされて/自分よりも圧倒的に力の強い何かに押さえつけられる、】
【破瓜/押さえつけられた腕に強く強く食い込む指/注射/体の中が焼けるような/あるいは溶けるような/気を紛らわすのに繰り返す自傷/張り裂けるまで悲鳴を上げた喉、】
【手術痕の疼き/殴られる/蹴られる/注射/いろんな器具を繋がれるような/限りなく非人道的な/実験動物だってもうちょっと優しくしてもらえそうで/だけど赦されないなら、】
【麻酔無しの開腹手術/修行/または儀式/それが何度も繰り返されて/腹を撃ち抜かれる/骨をいくつかへし折られて/内臓も搾り上げられて/全身を穿たれ、】
【右足が爆ぜる/けして浅くない火傷/もはや痛みと等しい衝撃/――脳髄が焼き切れるような/そして溢れかえるのは/右腕を何かに押しつぶされて/突き立つ破片を抜き取る/機関銃に撃ち抜かれ、】
【刃物で指先を切り開いてしまったような/――――――――"正解"するまでどの痛みだって繰り返された。だから、それは、きっと、朝まで続く行為になって】

【――そうして朝が来たなら少女は眠ってしまうんだろう。今度こそ起こされたくないって言うみたいに、二人で抱きしめ合って、だからきっと】
【夜も昼もこの場所には関係なかった。白銀のヴェールは二人も隠しこむにはいくらか足りないけれど、それでもきっと、うんと肌を寄せあったなら、雨宿りくらいはできるはず】
【切り落としてしまった自分の髪をどこか惜しむみたいに、指にアリアの髪を巻き付けて――いつもいつだって寝顔がうんとあどけないのが、狡かった】

/おつかれさまでした、でしょうかっ! まだあったらイケますとはお伝えしておきますっ


99 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/08(日) 21:45:57 o6XMS57s0
>>97>>98


【感圧点が柔らかさを、聴覚素子が鼓動を、熱感神経が体温を教える。母の胸に縋るように抱き寄せられて、好き、好き、好き ── って、何度も囁く。背中に静かに爪を立てながら。】
【 ──── 空虚な気持ちを満たすように。どれだけ蜜を注がれても変わらなかった。どうしてかえでは自分のことを居場所にしてくれないんだろう。私のことを見てくれているのに、何処か遠くを観ているのだろう。】
【けれど見つめ合っているうちに全てどうでもよくなる気がした。「そう、自分に言い聞かせた」。愉悦と嗜虐に満ち満ちた、慈母なるかえでの微笑みが上塗りをしてくれた。】
【嬲られたい。屈服したい。残虐に弄ばれたい。それで自分が死んでしまったって構わない。 ──── 暗い昏い、なにかの裏返しだった。】




「 ────── 嬉しい。」「 ………… 嬉しいわ。」「かえで。」「好きよ。」「大好き。」「愛してるの。」
「教えて頂戴、」「 ── ぜんぶ。私、貴女のために、一緒懸命考える、から、っ ── 。」



【 ── そしてアリアは慟哭するのだろう。真白い顔を苦痛に歪ませて、赤子より絶望的に叫んで、青い瞳より絶えなく涙を流すのだろう。唇の端から粘度の薄い涎を零して、懸命に言葉を紡いで時に否定され、何度も何度でも、然しそれは痛み故のものではない。】
【なんて非道いのだろう。なんて惨いのだろう。 ─── どこまでもなにもかも、自罰的な痛みだった。かえでの心が哭く痛みまで伝わるように思えたのは、神経と脳幹の生み出した幻想だろうか。】
【それでいて何一つ報われていないのだ。純粋な祈祷と信仰が神に届いていたのなら其れでもよかったのかもしれない。然して彼女の救われたいという、居場所が欲しいという、藁にも縋るような切望は ── 】
【ただ彼女が純真であったが為にどこまでも空回りして、体のいい俗情と劣情の捌け口に利用されるばかり。 ─── そうして結局、神様は応えも助けも赦しも救いも与えずに、かえでを見殺しにするつもりだった。】
【あんまりじゃないか。あんまりに、あんまりじゃないか。彼女が何をしたと言うのだろう。少なくとも、どこかで道を違えるまで、 ─── きっと全ては純潔だった。なのに、なのに。】

【それでも、だからこそ、限りなく嬉しかった。ナノカーボンの生体組織に爪を突き立てるより、ずっと鮮明な感覚に思えた。実際のところ、義体と生身の五感は殆ど差異もないというのに。】
【何よりも、愛しいひとの痛みを知ることができたから。どれだけ彼女が苦悩して、苦悶して、苦諦してきたか、 ─── だから、脳の焼けるような激情の痛みに、誓う。】
【救ってあげる、 ─── なんて言い回しは、限りなく傲慢で独善なのだろう。然し、ただひとつ願うとすれば、これ以上もう痛みなんて知ってほしくなかった。】
【かえでを傷付けるのは自分だけでいい。自分だけでなければ許せない。許さない。許したくない。絶対に。 ── 或いは、アリアなりの逃げ道でもあったのだろう。】
【封じ損ねた記憶と意志が囁いた。例えかえでが神様だったとしても、かえでを幸せにさせない世界なんて、叩いて撃って潰して█して、塵も残さず壊してしまえ。】
【どんなにかえでが傷付いたって構わなかった。なにもかも壊すような傷痕なら、下らない世界で覚えた痛みなんて、きっと皆んな塗り潰してしまえる。 ─── そう、本気で思ってしまう、くらいに。】

【朝が来るまでにアリアは何度となく気を遣って、けれど暁光がふたりを照らす前に、カーテンは閉められてしまう。昼と夜の境目なんて、この世界には要らない。】
【それでも眠りだけは必要だった。シーツの中、互いに体一つで絡み合って抱き合って、けれど決して一つになる事はない。せめて白銀と薄藤の織り成す錦繍だけが、羽化を知らない出来損ないの蚕繭を担った。】

【 ──── だからきっと、アリアはまた、孤独に眼を覚ます。あどけない寝顔の白い首筋を絞め落としてしまわないように。】


100 : ミレーユ ◆1miRGmvwjU :2018/07/08(日) 21:46:14 o6XMS57s0
>>94

【 ─── ミレーユは、決して強力な異能の持ち主ではない。握る武器も、聖剣や魔銃といった特別なものではない。それだけを振るっていればいいという決定打に欠ける。】
【だからこその多重的な攻撃だった。当たれば相応に痛い牽制の中、強烈な一撃になりうるものを交えていく。尤も実戦においては、ばら撒き過ぎるのも隙に繋がるから】
【こと夕月に対しては一種の訓練でもあった。一斉に繰り出される攻撃を如何に対処していくかという判断力を磨かせる為の、言うなれば、特訓。】

【晒された隙は割合致命的だった。防御姿勢を取ることもなく曝された胸元。 ─── もしもミレーユが夕月と類似した、両手を使わずとも繰り出せる攻撃手段を持っていれば】
【そのまま内臓の集中する胴部を一突きにされていた、ことだろう。単純な後退で対処できるのは幸運だった。編み上がる翼に、ほぅ、と驚嘆したような声を漏らして】



「そういうこともできるわけ、か。」「存外キミはボクと似た戦い方をするらしい。」
「レンジの徹底もしっかりしている。」「 ─── 技術を伝えるのも楽そうだね。」「けど。」



【レースの裏に隠したスピードローダーで右手のリボルバーを数秒で再装填、またも鋼線を結び付けたカランビットを、数本だけ投げ付けて】
【然してそれは夕月の動きを制限する目的が強い。 ─── 微かに脚を曲げた転瞬、ミレーユは、「跳ねる」。ムーンサルト。5mの天井に易々と届き、そのまま足蹴にして夕月へと吶喊。青い瞳の残像。】
【リロードの隙を狙っていた。肉薄できたのなら、 ─── その右手には何も握られていない。開いた掌が掴もうとするのは、夕月の胸元。心臓を鷲掴みにするように】
【咄嗟に腕で防ぐことも出来るだろう。いずれにせよ若しもその掌に触られたのなら、見る間に"温度を奪われる"。ずっと掴まれ続けていたら、間違いなく、凍る温度。微かに、彼女の甘い匂いがした。】


101 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/08(日) 22:33:21 WMHqDivw0
>>100

…………っ、はやっ――――

【飛んでくる数本の刃、これもまた重ねられた層の――甘いところ、だと判断した】
【大袈裟な回避はしない。中空で身体を捻るように、踊るように――肌を掠めていく刃、赤を散らして】
【それから。曲芸じみて飛び回るミレーユの、青い瞳の残光を必死に追っていた。リロードまであと少し、というところで】

(――――つめたい。これ、最初に会ったときにされたやつだ……っ)

【掴まれる。夏向きの薄い生地を纏うだけの胸元――薄っぺらい感触を、ミレーユの手に伝える】
【そして思い出すのは初めての邂逅、のときのこと。あのときは頭を掴まれた、そして、どんどん冷たくなっていった】
【なら今回だって、このままだったら、凍らされる。一瞬で焦りが脳を支配する、けれど――――】

【右・左・右・左・右・左。両手の銃で交互に3回ずつ、計6発の弾丸を放つ。それはミレーユに向けたものではなくて】
【真上。天井に銃口を合わせて放たれたものだった、けれど、これは威嚇でもなんでもないってわかるだろう】
【もう、さんざ見せつけたから。銃弾の形状変化、それが彼女の異能であるなら――何かを狙っている】

……っ、逃さないんだからっ、――――――!

【それと同時に、翅の形に編まれたリボンを解いて。しゅるしゅる音を立てながら――ミレーユを、拘束しようと】
【蠢かせるのだ。今から放つ技、それが届く範囲から、逃がさないと言わんばかりに】
【けれどまだ胸元を掴まれたままだった。このまま凍り付くのが先か、夕月の術が完成するのが先か】
【――――頭上に放たれた弾丸はまた融合し、形を変え始めている。大きな何か、6発分の魔力で作るモノは、それなりに大きい】


【残弾――右:2、左:2】


102 : ミレーユ ◆1miRGmvwjU :2018/07/09(月) 17:45:50 M8ov3UcI0
>>101

【対してミレーユの細い指先はひどく冷たかった。指先だけではなかった。彼女の纏うゴシックロリータ、そのレースの先でさえ ─── 仄かな"冷気"を放っている。】
【打ち上げられる弾丸が阻まれることはない。絡み付くリボンさえも甘んじて受け入れる。むしろ"好都合"でさえあった。 ─── 白皙の唇、その端が微かに吊り上げる。】


【そうしてミレーユは、夕月の身体を凍らせる ──── どころか。精々、上半身が冷たくなり始めた辺りで、"手を離す"。】
【どちらが先にトドメを刺せるかという勝負であればミレーユは完敗していた。仮に彼女の片手だけで夕月の体を凍らせようとするなら、十数分は触れ続ける必要があった。】
【だから彼女は、最初からその土俵には上がっていなかった。青い瞳が冷たく輝く。つめたい柑橘の薫りは屹と香水だった。】



「 ─── "不正解"だ。」

「ただの人間である筈のボクが、容易く天井まで飛び上がれた時点で ── どこか、おかしいとは思わなかったかな。」
「ボクの能力は実のところ誰かを殺すには些か迂遠で面倒だ。低体温症を引き起こすにしても、1分くらい触り続ける必要がある。」
「では何故ボクが、先程までのような爆破や銃撃や剣戟に頼らず、わざわざ能力による肉弾戦を挑んできたか ── "きちんと"考えたかい? 夕月。」



【 ─── 途端、胸許が"重くなる"だろう。心臓に鉛塊が詰まったような、地へと惹かれる痛みと共に。ミレーユの手による冷却が、何処まで届いているかにも依るが】
【順当に触られていたのなら、ほぼ上体全てが凄まじい"重さ"に支配される。そしてそれは、ミレーユの奪った体温が元に戻る毎に"強く"なっていく。】
【或いは飛行に影響が出るかもしれない。それがミレーユの能力だった。"触れた物体から温度と重量を奪い、それが再び熱を得るなら自重を増加させる"。そんな、迂遠な力。】
【三次元機動における相手の機動力を削ぎ、支え切れなくなった身体につけ込んで、あわよくばそのままチェックメイトに持ち込む ── 自由を得た右手が、再びリボルバーを引き抜こう、として。】


103 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/09(月) 20:44:24 WMHqDivw0
>>102

【少女・夕月が選んだのは――――「肉を切らせて骨を断つ」。そういう捨て身の戦法だった】
【実際それは上手く行ったんだろう。遥か頭上に放った銃弾は、あまりにもわかりやすい形状に変化していた】
【断頭台の刃。それを、拘束したミレーユに落とそうとした。あんまりにも単純で、それでいて至極「やりやすい」】
【だけどそれにバツ印を付けられたなら、瞳が驚愕のカタチに、見開かれて――――――】


――――――う、あ゛ッ!!?


【急に息苦しくなる。階段を一歩踏み外したような姿勢になる、がくんと高度が数度下がって】
【黒いリボンの翅の動きが、羽搏きのていを為さなくなる。もがれたわけじゃないけれど、ばたばた、もがくように】
【そのまま空中に留まるすべを失って、ずるずる下に落ちていくんだから――ミレーユを縛るリボンも、ほどけて】
【そしたら落下してくる刃を回避するのだって、あまりにも容易なことになる。完全に自由になったんだから】

【それに対して、夕月は驚愕と焦りに思考を支配されているようだった。aの形に開いた唇、けれど何の音も零さずに】
【せめて勢いよく地面に打ち付けられないよう、着地の姿勢を整えるのに必死だった。溺れて沈んでゆく人の姿勢に似て】
【あるいは必死に崖を登ろうとする人の動きに似て。腕を上に伸ばして、もがいて、けれどそれじゃなんにもならない】

【――――そんな「的」、ミレーユにとっちゃ簡単に撃ち抜けるモノだろう。勝敗は完全に決まったようなものだった】
【けれど。赫色。鮮血の色合い。炎より熱い激情を燈す視線は――――逸らさない、最後まで。向けられる銃口に、まっすぐ】
【射貫くように、それだけで殺してやると言わんばかりの気概を保ったまま。……それがきっと、最後の抵抗のつもりなんだろう】


104 : ミレーユ ◆1miRGmvwjU :2018/07/09(月) 21:08:24 o6XMS57s0
>>103


「 ─── チェックだ。」「お疲れ様。」


【交錯する青い瞳はどこまでも冷たい視線だった。唇は微笑んでいた。けれど目だけがずっと笑っていなかった。 ─── こういう顔をして、ミレーユは人を殺すのだろう。】
【ごく淡々とした声音にて、向けられた銃口がトリガーを引いた。 ── 照星は、落ち行く夕月の脳天を限界まで掠めて、然し傷付ける事はなく。】
【そして打ちっ放しのコンクリートに叩き付けられる前、ミレーユは能力を解除する。胸締まるような重さを消し去りながら、すとん、と2人、降り立つのだろう。】



「 ……… 凄いね。」「"ボクの知り合い"でも、中々そういう目は見ないよ。」
「ほんとうに、殺意は本物なんだね。 ─── 訊かないと言った手前だけど、どんな事されたのか、気になるくらいだ。」


【そうして次に顔を上げる時きっとすっかりミレーユは笑っていた。何事もなかったように。心から感嘆したような、まったく本心の口ぶりで。】
【 ─── こつん、こつん。ローファーを鳴らして、ゆっくり歩み寄る。ごく諭すような穏やかな笑顔で、てし、と指先を夕月の額に当てようとした。】


「けれども、 ─── 焦ったらダメだよ。」「戦術的な行動までを反射に任せたらいけない。」「読まれてしまう。そのまま消極的に動いて、相手に乗せられたら御終いだ。」
「ボクとしても、キミには死んでほしくないからね。」「もっと、 ──── そうだね、クールに行こう。」「憎しみは、トドメの瞬間まで取っておけ。」


【「これは、まあ、おまじないだ。」 ──── もしも、払い除けられたりしなければ。ひんやり、ゆびさき。額より、思考のクールダウンを促すように。】


105 : タマキ ◆KP.vGoiAyM :2018/07/09(月) 21:19:06 Ty26k7V20
>>3

水の国って世界有数の先進国家の顔してるけど、意外と遅れてるのよね。
スローガンってのは短いほうが良いの。昔から…『平等』とか『自由』とか…少なくとも
50年は国家を運営できるぐらいは効果的。

それに彼処の労働者層は特に肉体なんて苦痛でしか無いもの。オーウェルがインフラだって
自社の労働者に『エルパソ』とかいうウェアラブルなVRデバイスのせいで―――
つまりはニーズに答えてるねっていいたいだけ。

【寒い国のあの赤い旗は何年も前になくなってしまったが彼らの作り上げたシステムは】
【企業だったり、教育だったりはたまた――あの時敵対していた国家が統治に組み込んでいた】

そういうのを考えるのがミステリィの基本じゃない?“本格“とか読まない?“社会派”の方が趣味?

【まあまあその話も置いといて、と笑い。】

そうやっていってほしかった癖にぃ。…ふぅん。欠陥品ってわけじゃないのね。どっかで買ってるなら…
大きな買い物なら目につくはずだけど。さすがは“ブラックマーケット”。何でも売れるって本当なのねぇ。

【写真はチラ見しただけで後は興味なさそうだった。「一昔前の流行ね」と感想をもらして】

ハイローミックスなんて流行ってた頃の名残ね。結局、ハイとベリーハイになって、コストの安い
無人機に置き換わっていった。…どっかの軍のお偉いさんが言ってたような…

…公安が買ったって。武力はそりゃほしいだろうけど…非効率。これ10台揃えるぐらいならEMP一発用意するね、私なら

【彼女は懐疑的だ。だが―――】

―――もとから売るつもりなんて無いなんてことは…


106 : 麻季音 ◆KP.vGoiAyM :2018/07/09(月) 21:20:58 Ty26k7V20
>>4

【時間と空間すら手に入れられない不自由な私達に運命は手に入れられるのだろうか】
【五次元的多様体として同位相にどれだけの世界が存在しているのだろうか】




――――――――タイム・マシン




【その名前には好奇心や恐怖や懐疑心がつきまとう。ウェルズが描いた未来を人々は様々に解釈した】
【それこそが、多世界の証明ではないだろうか。今ではそう思う。】

【本の中身は答えとは言いがたかった。まだ誕生すらしていない理論の応用。未知のもので作られた機械】
【わかる範疇のものだけでも難しい。20TeVのエネルギーを発生させるハドロン加速器は国家機関しか使えない】
【世界改変に関する理論はどうやら詩と小説と誰かの日記から導き出さなきゃならないようだし。もっとマシなものを持ってきてほしかった】
【どうせ、ノーパラドクスなら、関係ないでしょ?未来には配慮がないのか。その言葉が消された世界から来たのか】


【だけれども、出来なくはない。私はそう確信があった。理由?無い。だが結果は存在する】


【この世界は大いなる可能性に満ち溢れている。不可能を可能にするおかしな人達がたくさんいる。】



【ノー・パラドクス】



【その視点は彼らにとっては当たり前だ。だから、細かい理屈なんて彼らが、世界が補完する】
【今必要なのは私が方舟を作るという結果。そして、今を変える。何処かの今を】

【何を変えるべきか、それを探すのは難しい。ただでさえ世界は広いのに次元は我々の住む1とプラスn個存在しているのだから】
【だが、真実を見つけるのが本職を常識はずれの適役を、私は運良く知っている。】


――――探偵さん、今度は世界を探してもらえるかしら。


>>6
/取り敢えず作ります!
/どういうの作って欲しいかあるならば要点だけいただけたら麻季音ちゃんが頑張ってくれると思います


107 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/09(月) 21:49:35 WMHqDivw0
>>104

【着地する足音、四足分。それでようやく、この場に満ちる殺気は失せて――夕月はフードを被り直す】
【それからあーあ、と声を上げて。ぱっと両手をパーに広げれば、魔銃はきれいに消え失せた】

……さっき言ったもん、大好きなトモダチをこれ以上ないってくらいにバカにされた。
それだけのことだよ、……ばかみたい、って思う?

【目深に被ったフードの向こうから覗き上げる視線は少しだけしょぼくれていて。けれどきっと、負けたからじゃない】
【その理由があんまりにも幼稚すぎるからって、自覚しているからだった。自分でもなんでこんなに、と思っているんだろう】
【だけど絶対、さっきまで燃えていた視線の温度はウソじゃない。それくらい本気であるらしかった】

つめたっ! ……はあ、落ち着けって言われるの、いろんな人から言われてこれで三回目だよ。
なんだかネー、すぐ熱くなっちゃうんだよネ、抑えが利かないってゆーか。
……どーしたら直るもんかなあ。なんかコツとかある?

【額に翳されたおまじない。受け取って目を細めて――でも嫌そうな顔はしない、むしろその逆】
【「ありがと」なんて言って笑うのだ。死んでほしくないというのがウソかホントかは知らないけれど――言われて、嬉しかったから】
【そうしながら、溜息交じりに訊く。感情を制御するコツ、みたいなもの、あるんならどうか、って】


108 : TechnoDogs ◆KP.vGoiAyM :2018/07/09(月) 21:56:04 Ty26k7V20
>>96

【不用意に直剣を振り上げた兵士はその剣を叩き下ろすも有効打に至らず】
【殴り飛ばされ、間合いを取られてからは一瞬の出来事だった】
【ヘルメットに搭載された様々なコンピュータの破片と共に爆発し、血まみれのプラスティックの破片が】
【あたりに散らばった。だが、それにひるむような弱い犬はここには居ない】

非凡なる貴方には、我々の孤独はわからないだろう。百億の孤独を胸に、我々は共にあるのだ。
人類は一つになる。孤独を抱えたまま――孤独を最後の友人として。

【ライフル兵はあたりに展開した。扇状に散らばって、非凡な能力者に狙いを定めていた】

<能力だ>

<奴を止めろっっ!!>

【複数と1。1と複数。ライフル兵は展開される武器に声を上げた。そしてそれを阻止すべく牽制と言わんばかりに射撃を開始する】

【弾丸は発射された武器とすれ違ってセアンに向かって飛んでいくだろう。だが、後手に回った兵士は先にその飛来物の波に飲み込まれる】

<リフレクター展開>

<ラジャー、展開しろ>

【一人がPDAを操作すると、警備兵や金髪の男の前に緑色の薄く光るガラスのような半透明のモノが現れる。】
【それはキラキラと光っていて、波紋のようなものがゆらゆらとして、壁のように間に立ちふさがった】
【武器がそれらによって一部、弾かれる。だが、端のガラスの色が薄い部分に居た兵士はその防護壁の出力が足りなかったために】
【破られて、キラキラとした光を撒き散らしながら、血肉を舞い上げる】

【テクノドックスの警備兵共の会話は無機質で冷静だ。まるでロボットだが、血を飛び散らせ、死んでいく様子は生身そのものである】


109 : ゴトウ ◆1miRGmvwjU :2018/07/09(月) 21:59:40 o6XMS57s0
>>105

「清貧だねぇ。」「付け加えるなら、即物的財産へのルサンチマンとしての電子化ってところか。」
「 ─── 然し何れほど便利でも、画一化と並列化を施されたデバイスには統制と監視が付き物だ。うまく誘導されてるようにしか思えんがね。」


【大仰なる僭称を憚らない企業に関しては、そんな感想を零す。「生憎、実用書の方が好みでね。」 ─── その割に、衒学的な引用は、嫌いではないようだった。】


「こと軍人ってのは常に新しいオモチャを政治家に強請るもんだ。"戦闘機マフィア"の口車に乗せられん程度には、我が国の御歴々は賢いってことだろう。」
「引っかからないということは、売約済でするか ……… まぁ少なくとも、君の言う通りではあるな。警察組織が戦闘機、 ─── なんて、手に余りすぎる。色々と。」
「ジェームズ・ボンドじゃないんだ。対地攻撃ならヘリで十分だし、航空優勢を取らなきゃいけない状況は極めて限定的。」
「強いて考えるなら公安の予算を経由したカノッサのマネロンって所だろうが、その線でも牽強付会は否めない。」


【 ── 実際のところ、データ収集用のXプレーンと呼ばれても文句の言えないデザインだった。スタバッティだっても少し上手くやるだろう、と。】
【双発、クリップドデルタ、角度のついた垂直尾翼 ─── そんなシンプルな戦闘機が全盛なる現代に、挑み掛かったのが無茶だったのだろう。けれど。】


「 ─── 連中が、"自分のため"に何かしようってんなら、そうかもしれない。」「新楼市で成り上がった新興企業だ。黒い噂がないわけじゃない。」
「なりふり構わずカノッサあたりの手先になるって言うなら、あるいは自棄っぱちのテロでもやるつもりなら、 ──── 何か、有り得るかもしれない、ねえ。」


【無言のうち、焦茶色の横目で問いかける。「 ──── どこが怪しいと思う?」と、言葉にはせず。】


110 : ミレーユ ◆1miRGmvwjU :2018/07/09(月) 22:27:29 o6XMS57s0
>>107


「 ─── いいや。」「十分すぎる理由さ。」
「繰り返すが、人殺しに貴賎なんてない。」「本当に本当に殺したいと思ったなら其れだけで十分なのさ。」「理由なんて、後から幾らでも後付けできる。」

「それも含めて、キミは誇りに思っていい。」「 ─── 損得抜きにトモダチを大切にできるということは、人間として最高の美徳だ。」


【 ─── きっと、ミレーユなりの激励だったのだろう。そしてまた本心であったのだろう。白磁の歯をはにかませて、偽りない微笑みを投げかけた。】
【誰かを殺すのに、人の命を奪うのに、大仰な理由なんて要らない。書類上そう命じられたから、数ヶ月分の糊口をしのぐため。それくらいの、理由だけで】
【何度も自分が誰かを殺したことを、決してミレーユは教えない。だからこそ燃える瞳の真っ直ぐさは、羨むくらいで。】


「 ……… 場数を熟す、しかないかなぁ。」「狙いを定めるとか、トリガーを引くとか、 ── そういう単純化できる動きを反復練習して、意識せずとも行えるようになれば」
「自然と立ち回りや戦略といった単純化してはいけない動きに考えが回るようになる。トリガーハッピーを起こすのは新兵だけだ。」

「まあ、熱くなってるって思ったら ── さっきの冷たさ、思い出すといい。」「多少はマシになるだろう。」
「そしたら改めて、片目瞑ってよおく狙うんだ。」「それでもダメならもう片方も瞑れ。」「 ─── ボクが助けに来てやるから。」


【口先だけのアドバイスが何処まで役立つかは分からないけど、 ─── とりあえず、そう教えておいた。優しい礼節に応えるように。】
【そうしてまた冗談めかして語るのだ。ヤバくなったら助けてやるから、安心して殺されに行け ── なんて言い方は、少し、乱暴であったとしても。捻くれていても、やはり激励だった。】




「さて。 ─── つまり、全ては実戦あるのみ。」「次は徒手空拳だ。泣かせるつもりで、かかっておいで。」



【 ──── 結局、夜通しくらいの勢いで、ミレーユは"特訓"を続けさせるのだろう。近接格闘から射撃の技術まで、自身が12時間程度で教えられる事は、全て。】
【終電が無くなればネカフェを使っていけと言うだろうし、夕食の面倒も、寝床の用意さえ躊躇わない。それがきっと、彼/彼女なりの報恩であり ── 確かな友誼の証だった。】


/こんな感じでシメでいかがでしょう ── !


111 : タマキ ◆KP.vGoiAyM :2018/07/09(月) 22:34:42 Ty26k7V20
>>109

―――ワザワザ難しい言い方に変えるのって貴方の癖?直したほうがいいよ
上から下には、ほっといたって伝わりづらくなるんだから。実用書にビジネス書は含まれないみたい

【そうやって皮肉っぽいことをあっけらかんというのが彼女の癖なのか。まあ、ネチネチ言うより良いかもしれないが】
【ズバッと切り込むその性格と“能力”は彼女も『カミソリ』のようであった】


今更武力で何かを手に入れようなんてやり方、”らしくない”。ここまで上手にやってきたのに最後の最後は戦闘機?
独立国家でもつくるんなら今回のはお家騒動。上手にやれば国軍がまるまる手に入る。
カノッサこそ戦闘機なんて………

【彼女は、カバンを漁ってB5サイズのスケッチブックと鉛筆を取り出した。彼女は飽きたときの暇つぶしと何か考えをまとめる時】
【現実逃避したいときなど様々な場面で絵を描く。簡単なラフスケッチは精巧で、どことなく情緒もうまく閉じ込める】
【手は迷いなく動く。描いているのはなんてことのない、ドアの窓から見える外の景色。特に、いい景色でもない】


………私は憶測でモノを言うのは好きじゃない。なにかしらの情報と私の中の確信に基づく、推測なら別。
一通り、異動関連のあれこれが終わったら新櫻市に行くことにする。――あの諸行無常が繰り返される都市にね。

結局―――――戻ることになるのね。

【彼女は暫く黙って鉛筆を走らせていた。そして5分もすればそれをカウンターに投げて、ぬるくなったジョッキの底のビールを飲み干す】
【風景は朧気で、今の気持ちを表しているかのようだった。濃い直線、流れる人々――だが明るめのコントラスト】


怪しいなんて言い出したらキリがないもの。片っ端から調べてあげるから。覚悟しててね?


112 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/09(月) 22:43:00 WMHqDivw0
>>110

…………そっかな、そうかも。ミレーユさんに言われンなら、ちょっと自身出てき、――――
えっちょっと待って徒手空拳? まってそっちの心得はぜんっぜん無くて、つまりあたしド素人で、
ほんとのほんとに最初のほうから教えてもらわなきゃなんだけど待って待ってアアアーーーーーッッッ!!!

【ちょっとだけ目を輝かせていたのもほんの少しの間の話だった。実戦あるのみっていうのは納得できる、けど】
【そっちのほうは言葉の通りてんで素人だったから。ぎゃーぎゃー喚きながら教えてもらうんだろう、痛いとかキツいとか】
【文句ばっかり言うけれど。「無理」とだけは言わなかった、それだけは譲れない意地みたいなもので】

【――――終わったころには、くってり。精魂尽き果てた様相で、もしかしたら「歩けないからおんぶして」とか言い出すかも】
【それだけじゃなく、「疲れ切って動けないからここに泊めてって」とまで言う。ネカフェ、シート席にごろんと転がって】



――――――――さっそく熱い。ひやしてよ、ミレーユさん。



【当たり前のことみたいに言い始めるのだ。きっちり両目を瞑って――ミレーユが言ったこと、そのままに】
【ちょっと茶化すような言い方だった。唇は笑みの形、……ルージュのラメのきらめきがよく似合う形に、ようやくなった】


//おっけーです!長いことお付き合いいただきありがとうございました!!


113 : ◆9VoJCcNhSw :2018/07/09(月) 22:50:27 wn2rqSVw0
本スレ>>146


【男の話を聞く"円卓の王"は――ただ、静かなものだった】
【確かに邪魔なものは多い。それが意図的であれ、意図しないものであれ】
【自らの欲望、願望を達成する障壁となる存在はいくらでも存在する】
【またそれが他者の願望である、というのが悩みの種でもある】

【だから――「じゃあよろしくおねがいします」と、そう言うかといえば】
【やはり、違う。ジルベールは男の言葉を聞きながら】
【再び液晶パネルを操作する。『2500』、『Enter』、『即決落札』――文字列が踊る】

【そのやり取りを終え、ちょうど男が「手土産が―」と言い切った頃合い】



        それじゃあ、戦争を起こしてもらおうか。



【意地悪なニヤケ顔をしているわけでもない。表情は、至って"普通"だ】
【早朝に知り合いと出会った時、気だるそうに挨拶をするような】
【あるいは同じ食卓を囲んだ時に調味料を取ってくれというような】

【そんな"普通さ"だった。「出来るんだろう?」と、後を追うように言葉を重ね】


何も世界大戦を起こせ、なんて言わないさ。それは自分でやる。
要は……きっかけを作ってくれちゃ、それで良いんだ

どんな戦争も一発の凶弾から始まる。
勘違いか、偶然か、それとも意図したものかは別として…――
……その『一発』をアンタが起こせるというのなら
〝次の円卓〟にアンタを加えたって良い。それだけの価値があると、証明できるのなら。


【ゆらりと椅子から立ち上がる。180cmを超える身体は、薄暗闇では尚大きく見えて】
【かつん、と一歩、また一歩。男の背後へ回り込み】
【先程まで己と向き合い、交渉を仕掛けた彼の肩に背後から手を置く】

【――瞬間、走るのは悪寒。胃を180度回転させたような心地の悪さが身を包み】


……それが無理なら、アンタが出せる最上の手土産を教えてくれよ。
何だって良いさ、俺は"強欲"だからな……どうなんだ、"カミソリ"さん?


【言ってしまえば――それは詐欺師のやり取りに親しい物があった】
【水準を遥かに越えた要求を吹っ掛け、そこからハードルを俄に下げる】
【相手は「譲歩してくれた」と感じる。2つ目の要求すら、そもそも法外なものであるというのに】

【――もっとも、その感覚を覚えるかどうかは、男の"手"による】
【何処まで出来るのか、何処まで実際にやるのか。――返答を待つように、沈黙が周囲を包んでいた】

/すみません本当に長々とお待たせを……。
/次くらいからはもうちょっと早めに返せますので!


114 : ゴトウ ◆1miRGmvwjU :2018/07/09(月) 23:05:20 o6XMS57s0
>>111


「なあに結果として齟齬なく伝わっているなら結構なことじゃないか。」
「 ─── 理解して貰えると思っているから、さ。」「君の頭脳に対する信頼の証であるとでも思って貰えればいい。」


【切り込まれた所で、のらりくらりと言ってのける。ごく薄いカミソリの切っ先なんて、意図しなければ先ず指先に引っかかりやしないように。】
【なにせ昼行燈は上手く頭を下げるのが仕事なのだから。ある意味で良く慣れていた。矜持は通すところで通せばいい、と。】



「 ──── しかし案外、バカにならないもんだぜ。軍用機ってのはミサイル撃ったり爆弾落としたりするだけが能じゃない。」
「嘗てのミグ・ショックのように、な。ただ飛んでいるだけで、或いは見せ付けるだけで、ともすれば其処にあるだけで、」
「後は誰かの恐怖と焦燥が、何よりの武器になることさえある。 ……… ま、片手落ちであると言われれば、反論は出来んが。」



【対して、ゴトウは ──── 思い付いた事であれば、比較的つらつらと口にする類いの人間であった。】
【言語化というプロセスによって茫洋とした思考を整理する。丁度それは、タマキが思考を纏めようとする時、なにかをスケッチするのと同じように。】
【サワーの残りを一気に呷る。あまり手をつけていなかった冷やし中華が伸び切っていることに気付く。はあ、と溜息をひとつ。】



「把握した。」「 ─── セーフハウスの手配はしておこう。」「必要な肩書や経歴が出てきたら、連絡をくれ。」
「おれも探りを入れてみよう。 ……… 神様、公安、カノッサ。どれからガサ入れするか、悩ましい所だが、な。」


「期待しているよ、タマキ君。」「次に会う時は、お互いより良い報告を交わしたいものだね。」


115 : ◆DqFTH.xnGs :2018/07/09(月) 23:34:47 2bNqW3l20
【街中】

【昼の熱気が、まだネオンサインに纏わりついていた。夜になってもこの時期は暑いまま】
【なんなら昼間とはまた別の熱さが街に溢れる。夏というだけで浮かれる輩は多い】
【そんな夜は警察だって忙しい。非行少年の保護からホームレス殺人事件の調査まで】
【やることは山積みだった。魔能制限法やらサーペント・カルトやらで世間が騒ついているなら、尚更】


良い子はさっさとおうちに帰りましょーねぇ〜っ、と

(特区は良くも悪くも変わりなし、妙なカルトも大騒ぎの後はダンマリ、か…………)
(こう、変に静かになっちまった時は知らねぇうちに裏で何か起こってるっつぅのが相場だけど、よぉ)
(やっぱ……街中うろつくより警察署ん中入った方が効率はよかった、か…………?)


【婦警もまた、夜の街を巡回する者の一人だった。栗色の長い髪に黒い目】
【どこにでもいそうな普通の、真面目そうな婦警だった。ただ、公務員にしては】
【耳元に光る銀色のイヤリングや、左手薬指の赤い指輪────身を飾るものは多かったが】

【街角や路地裏、あるいは人通りがふと途切れた時。彼女に話しかけるタイミングは少なくない】
【話しかけられれば──公務員らしい柔和な笑みを浮かべ、「どうしましたか」などと返すのだ】

/レス間隔が3日〜1週間おきになるとは思いますがそれでもよろしければどなたかお願いします


116 : ゴトウ ◆1miRGmvwjU :2018/07/10(火) 00:10:26 o6XMS57s0
>>113

【 ── 遮られる言葉。刹那のうち、男の言葉が静止する。】
【けれど尋ね返すような無粋な真似はしなかった。その必要もなかった。意味深に笑うポーカーフェイス。一瞬の沈黙。然し、その後に。】


「 ─── ふ。」「ははは。」「っははははは ……… !!!」


【 ─── 片手で顔を覆いながら、大いに男は破顔した。心から楽しそうに、 ── 実に小悪党じみていて、それでいて小悪党では有り得なかった。】
【ひとしきり哄笑を吐き出せば、"肩に触れられたまま"男は立ち上がる。何かの絡繰があるのか、其れとも純粋な胆力ゆえか。きな臭い薄笑いのまま、向き直り】


「いやはや本当に噂通り、 ──── いや。"噂以上"のお人だ。」「最高ですよ、ジルさン。」
「ガキの頃から思ってたんですよ。」「歴史の教科書に載ってみたかったんです。顔写真付きで。」

「 ─── 仰る通り。」「歴史を変えるのは一発の凶弾です。」
「"戦争"結構。ならば起こしてみせましょう。」「シビリアン・コントロールなんてクソ喰らえだ。」
「世界を動かしてきたのは何時だって独裁者だった。そうでしょう?」



【全くの躊躇いなく壮語する。道徳や倫理、 ── 人道的陸戦条約なんて言葉は、きっと男の辞書には記されていない。】
【全ては度胸とハッタリの産物であるかもしれなかった。男の言葉は芝居掛かった演説じみていた。然し微かに嗄れた声音だけは、本物だった。】


「手始めに、」「 ─── 3枚に下ろしてしまいましょうか。貴方に引っ付いてる癖に、貴方を猜疑する政治屋。」「2人か3人ほど。」
「それを一先ずの手土産としましょう。 ── その次は、警察と公安だ。」

「 ── 相応しき者の手に凡ゆる主権を回復するのです。」「帝国主義の復活ですよ。」


/置きですし大丈夫です!!お付き合いありがとうございます!!のんびりよろしくお願いします!!


117 : アーディン=プラゴール ◆auPC5auEAk :2018/07/10(火) 16:27:14 ZCHlt7mo0
>>本スレ247

――――お節介だとは思うが、言わせてくれ。……自分で、自分の魂を悲しませていては、命は輝きようがないものだ……
その言葉は、「目を逸らしている者の答え」だ……そのうち、開き直る以外の選択肢を失い、自分の命の本質を、見失う事になるぞ――――
そうして生きていく事は……限定しない、広い意味での『正常』を、失う事になる
――――理解しているなら、それを想え。君の腹積もりは、その問いの前には意味をなさないんだ。
……魂を火にくべて、燃やすような生き方と言うなら、まだいい。だが、そんな擦り減らすような生き方は……俺みたいな、既に人生を半分過ぎた奴の、専売特許だぞ……?

【老婆心は、どうやら杞憂では終わらなかったらしい――――獣人は、思わずため息とともに、言葉に熱を込めてしまう】
【少女の言う通り「そんな答えは聞きたくなかった」もので、そして「問いに対する回答になっていない」ものだった】
【最後の最後まで足掻こうが、気を保とうが――――「どうしようもないもの」というのは、必ず訪れるものだ。それを獣人は、己の人生の中で、飽くほどに理解した】
【力を持つ者だからこそ――――人生において、そこへの態度表明は必要になる。それが彼の考えで。「自分には、そんなものなど無い」と言う少女の言葉は、危うく思われたのだ】

(……何か、見出したのか?)

【自分の言葉に触発されたらしい少女の様子を、獣人は少し意外そうに見つめていた】
【あくまで、思考と対策のとっかかり――――そうしたつもりでの言葉だったのだが、少女にとっては、そこに想像以上の意味を持っていたらしい】
【何を見出したのか――――獣人は、自分が訝し気な表情をしている事に、気づいていた】

――――最悪の次にマシ……だと?
一応聞いておくが……何を想起した? ――――人には、イドラと言うものがある……それが、勘違いでない事を、確かめる必要があるだろう……ましてや、相手はあの邪神たちだ……
君が、洞窟のイドラに陥っていない事を、俺は確かめなければならない。同じ敵を戴いている同志としてな……

【どんな対抗手段を見出したのか。それは獣人にとっても軽視できる問題ではなかった】
【もし、それが誤謬を含んでいたのなら――――サーペント・カルトの壊滅と引き換えに、信仰対象だった邪神が、現世に降臨してしまった事の、再来にもなりかねない】
【洞窟のイドラ――――個人的視野による誤謬――――が、その発見に存在しないかどうか、獣人は説明する事を、少女へと求めたのだ】


118 : ◆wEoK9CQdXQ :2018/07/10(火) 21:30:43 p444umMc0
>>117

私の命が好きに輝くとしたら、本当に平和が……束の間のものでも、訪れたそのときになるでしょうね。
……それまでは、耐えて挑み続けるだけの道程だということも覚悟の上で。
〝虚神〟やカノッサの様な巨きな脅威を、敵と見定めることを已めるつもりはない――――

間違えないで。私は、仕方がなくてそうしているという訳じゃない。
自分のものを勘定に入れたうえで、少しでもこの世界から嘆きを減らすために――――
そのために安らげる“誰か”がいる場所を、この命が終わるまで守り続けたい。

そうあることで、私は“生きられる”――――だから生きて進んでいる
なら敗れ去り、喪うことを受け容れるのは……ただの、生から逃避するだけの妥協でしょう?
戦いを望み、挑む限り――人は、どうしたって血を流してしまうものなんだから。

【自分が生きるということは、なにかを守ろうとすることで】
【だから無為の死を覚悟するということは、大切な人たちを諦めるということ。生きたいし、生きていてほしい。ならば、】
【死の瞬間の絶望は、諦めて喪う絶望よりは……こんなひとには、未だましなものなのかもしれない】
【喪う痛みを知るのなら、或いはその心境を想像できてしまうのかもしれないが】
【……それほどに誰かの“生”を願う心は、やはり危うさと隣り合わせでもあったのだろう】

【諌止を受け止め、けれど揺蕩わず。剣の少女は、惑いを己に許すことのないかの様に再び口を開く】
【たとえ心揺れても、誰にも知らせないのかもしれない】
【それが、知らず誰かを傷つけるかもしれなかったとして――封じ切れたなら傷など生じないとでも願うかの様に。】

世界規模での認識の歪曲を以て、〝虚神〟の死滅を世界に齎す――――

他者の認識に依存する存在であれば、この世界に逃げ場など存在しない――――
そう断言できるだけの一つの禍を核として、私の“最後の手”は組み上げている。

【言葉は迷い無く。けれど彼の危惧を尤もなものと考えるだけの理由はある様で】


119 : 名無しさん :2018/07/10(火) 21:31:02 p444umMc0
>>117
【その先に続く言葉が、その内奥を示すのだろう。舞台は、彼女の生まれ故郷たる櫻へとひととき移る】

……黒死剣という呪物が、かつて或る怪物を抑え込むために櫻の国で打ち出されたわ。
形状は五尺あまりの大太刀で。
数多の無念を吸った遺物たちを、少しでも馴染ませ、近づくひとを守るための拵の材料にしたんだとか。

そうするだけの理由があったの。性質は大きく分けて2つ……1つは、無形の存在を浸蝕し滅ぼす“審蝕”の理。
……そしてもう1つが。
あらゆる生と意志を、相食む闘争の傀儡と変えて滅ぼしあわせるという“矛凶”の理――――。

数多くの贄を礎として生まれ落ちた桁外れの呪いを、その構成要素自体を以て完全に滅ぼす――――
……その思惑は成功したと伝えられているけれど。
残った“黒死剣”そのものが、櫻を黄泉路に導きかねないほどの問題だった。
封印の施された天黎山での鎮めの儀式も、解放の刻を僅かに先送りにするだけの気休めにすぎなかったと聞いたわ。
“やがて幼い剣士を連れた巫女が、その命を犠牲に、それまでとは異なる意味という楔を黒死剣に施すまで”……――――。

……それが、今から十年と少し前の話。以来、波はあるけれど限界は未だ見えてもいない

【伝承と呼ぶには、差し迫った脅威としての色が濃すぎただろうか。過去として語られる物語は、避け得ぬ奈落への路を空ける様で】
【結末は、御霊信仰に似るも取り消すことのできぬ変化を伴ったものだった】
【どうしても滲む影は、当事者だからと想像するに難くなく。その先が、


……私のもともとの異能(ちから)は、櫻の刀刃との“存在としての融合”――――
そうして結び合ったのは……奇しくも、あの剣のかたちをした禍を抑え込むための番にあたる一振りだった。
だからこそ制御の術に思い当たる節はあるし、こんな事態にある今なら……“もう一振り”を、この身に取り込む覚悟も出来てはいるの。

……もう、言いたいことは分かるでしょう?
“矛凶”を、私という緩衝材を挟んだ上で。〝虚神〟の死を観測するというかたちでの、認識汚染を行う手段として実行する――――
ひとが関わるべきものですらない呪物を、そんな風に扱うのだから……私がああ言うのも、理解はできるわよね。

【本当に最後の手段になる――――その前提で紡ぐ言葉たち】
【力を引き出すことも、封じることも相性がいいと。自らの元の異能を明かした上で、あまりに数奇な因縁の導く答えを明かした】
【恐らくは大切な存在だったひとの遺した、最後の綱に願う様な心があるのかもしれなかったが――それは、彼には如何映ったのだろう】
【それ以外の手段を、必死に求めてもいるからこその周囲の光景で。その奥底にある感情を、果たして見出すものがあるのだろうか】


120 : ◆wEoK9CQdXQ :2018/07/10(火) 21:37:33 p444umMc0
/っと、入力漏れでした……ッ
>>119
【どうしても滲む影は、当事者だからと想像するに難くなく。その先が、

【どうしても滲む影は、当事者だからと想像するに難くなく。その先が、きっと滅びをも手段として見詰める“今”なのだ】


121 : アーディン=プラゴール ◆auPC5auEAk :2018/07/10(火) 22:16:09 ZCHlt7mo0
>>118-119

――――その若さで、そんな言葉を口にするか……良くそこまで達眼出来るものだと思うが、問題なのはその言葉の『奥行き』だな……
半端な理解で言っているなら、目を覚ませと渇を入れてやらなきゃいかんし、この言葉の、奥の奥まで捉えての上なら……綱渡りのようなその生き様、最後まで駆け抜けられる事を、祈ってやるぐらいしかできまい……
そこのところ、出来ればじっくりと見定めてみたいものだが……

【――――かつて、アナンタシェーシャとの戦いにおいて。因果を逆転させ損傷の蓄積を無かった事にした敵に対し、彼は一度その心を折り、自らを犠牲にする覚悟を固めかけた場面があった】
【その時――――互いを知れず、隣にいた少女はどうだっただろう。「絶望してやる理由などない」と、なおも闘志を衰えさせることはなかったのだ】
【あの時の2人の差異が、ここに象徴的に表れた、という事なのかもしれない。詠嘆のため息を吐きながら、獣人は言葉を返す】
【少女の口にする、その言葉の重みは、どれほどのものか。こればかりは即座にどうこうできるものではなく】

――――まあいい……せめてこれを持っていけ。唯人の身には、流石に癒しぐらいは必要だろう……

【腰に結わえた小袋の1つを解くと、獣人は少女へと、軽くそれを放った。コンディションを整えるために、せめてその身に役立てろ、と】
【中には――――目薬らしき小瓶が1つと、青い八面体の結晶体――――水の魔力が込められた、魔力の塊が1つ。そしてダークグリーンのビー玉のような球体が1つ、入っていた】
【獣人は何も言わないが――――恐らく、ピンとくるものがあるだろう。行商のオーガと、半陰陽の魔術師――――】

……滅ぼせないものを滅ぼす、その為の刃か……確かに、人の理を超えるものだ。そんなもの……魔海の中でも、相当に魔の扱いに長けた者たちにしか、まともには扱えないだろう……

――――ッ、それを、取り込むだと……?

【耳を傾けるは、少女の語る、呪わしい剣の過去。獣人も思わず顔を顰める。国を滅ぼす事も有り得る刃と言うが――――それは道理だろう】
【どんな呪いを打ち破るために、用意されたものかは知らないが――――「人を呪わば穴二つ」だ。持て余す事は、もはや必然とも言っていい】
【そしてそれを――――今一度、現れた邪神たちを滅ぼすために用いる。少女自身の異能を伴って――――そう聞かされて】

……確かに、認識そのものを捻じ曲げなければ、どうしようもない現状……問題は、その剣を以って解決できなくも、無いだろう……
どこぞの蛇に至っては、もはや認識の依り代を超えて、現世に降臨してしまったというからな……その魔剣を以って、存在ごと切り伏せてやるのは、確かに手だ……
そして、それ以外の邪神たちは……人の心を、意図的に捻じ曲げさせることで、無かった事にするか……なるほど……

【理には叶っている。獣人も、少女の考えには同調した。なるほど具体的な方策である――――自分の様に、ただ漫然と認識の限界と戦っているだけの人間とは違うようだ】
【――――自分の目から見ても、邪神たちに対する備えとして、『抜け』はない様に思われた。勿論、それ以前の問題として――――】

だが……それをやるなら……もうもちろんの事、君はその剣と一蓮托生だ……君も分かっているんだろうが……それをやれば、今度は君が討たれるべき災厄になる……
それさえも、覚悟の上なんだろう……それを「『手段』として考慮する」という事は――――

【1つだけの、そして大きな問題。もとより人身御供じみた封印で均衡を保っていた、そんな呪物に頼り、一体化するという事は――――危険極まりない行為だ】
【どうやら、彼女もそれは承知の上の様だが――――呪いを制御できなければそれまで。そして有効活用できたとしても、今度は少女自身が、封印されるべき存在となってしまう】
【邪神を討つ事を心に秘めた人間たちが、そんな暴走の可能性を持った存在を、そのまま放置するはずもない】
【そこのところを、恐らくすべて承知の上で、少女はそう言ったのだろう――――なるほど確かに、なるべく着手したくない、最後の手段と言えそうだ】


122 : ◆9VoJCcNhSw :2018/07/11(水) 07:01:41 wn2rqSVw0
>>116

【"肩に触れた"――その状態から男が、破顔して、立ち上がる】
【常人であれば、既に異変を察知して周囲から姿を消し】
【あるいは心臓の弱い老人などは片隅に転がっている】

【そのような能力の干渉を受けない、或いはそもそも受け付けていない】
【それもまた、ジルベールという人物の興味を引いたのだろう】

【黒い瞳を覗かせる瞼が僅かに細くなり、その肩に触れた手は離れ】


……結構だ。やり口はアンタに任せよう、だが目立つようにやってくれ
劇的に、流動的に、衝撃力を伴ってやってくれ。

分かるものには分かるように、分からないものでも気付けるように。
そろそろ安楽椅子に腰掛けて金を数えるのも飽きたことだし
世界に火を点けりゃ、数えるのも億劫な額が流れ込むからな。


だが、幾つか話して、そして聞いておくぞ。

まず俺は皇帝になりたいわけでも、世界を征服したいわけでもない
一度は俺を無価値を判断したこの世界を買い占めたい、それだけだ。
統治も、支配も、圧政も。俺は別に望んじゃいない、興味無いんでな。

次だ、が。……お前の名前と、目的が何か聞かせてもらおうか。
……言っておくが、適当な言葉で誤魔化そうとするなよ?
金なら金と言えば良い。俺を利用しようと言うつもりならそう言えば良い

現実として、今のお前は"口だけ"だからな。
行動が伴わない約束を俺は信用しない
金貸しとして、「必ず返す」と言ったやつの半数は「自分からは返さなかった」経験があるからだ。


【「言葉の意味は分かるだろ?」と、ジルベールはこれみよがしに腰に下げた青龍刀の柄に手を置いた】
【それは古典的な脅しだったが、それ故にストレートでシンプルな意味合いを含んでいる】

【――反面、一度信頼関係を構築すれば後の話はひどく簡単に済みそうではあった】
【その道筋は確実に残っていると示すように、周囲の黒い靄】
【そして心身へと圧を掛ける重苦しい空気は気付けば完全に消え去っていて】
【二人の間にあるのは僅かに数歩分の距離のみ。次の奴隷の競りも、何事も無かったかのように始まっていた】

/そういって頂けるとありがたいです……こちらこそよろしくです!


123 : ◆3inMmyYQUs :2018/07/11(水) 11:38:10 FGH.zC.k0
>>106

【────書物の中に鏤められた無数の砕けたピースが、】
【彼女の思考回路によって精緻に組み上げられ、ついにその一語へ集約された】


【口にして見れば何のことはない、ありふれた既成語】
【しかしその書物の中には、その単語はただの一語とて記述されてはいなかった】
【──あたかも、その概念と言葉がそっくり世界から削り取られてしまった場所で書かれたかのように】


【だが間違いなくそれは必要とされていた】
【次元を破壊せしめる不可視の災禍を乗り越えるための〈方舟〉が】
【全てが手遅れになってしまう前に。全ての真実が虚構の下に沈んでしまう前に】



【────かち。】


【分針が一つ未来を刻んだ】
【それは回路が正しいノードへ交接し、0を1へ切り替える際の駆動音にも似ていた】



【──────】
【────】
【──】



【地上の雨は上がっていた】
【重たい雲は散り散りになり、その合間から差す斜陽が、朧気な虹を宙空に描いている】


 『────最後の審判はもう目の前まで近づいています。
  今こそ、私たちには悔い改めが必要です。どうかあなたの為に祈らせてください────』


【街角の宣教師が、雨上がりの雑踏へ向けて救いを説いている】
【敬虔にして情熱を宿した面差しが、薄い水溜まりへ映り込む。それを誰かが踏み付け、そのまま歩き去っていく】


【路地の隅。まだ湿ったアスファルトの上へ段ボールを敷き、そこへ身を横たえる放浪者】
【今朝拾ってきた新聞紙を、毛布あるいは人目を遮るカーテンの代わりとして、身に掛ける】
【──『水国核技術中央研究機構、未知の粒子発見か』 紙面にはそんな記事が踊っているがその放浪者にとってはどうでもいい】



【凡庸な喧噪が拡がる、いつもの街の片隅】



  【「────────────────………………」】



【──それが『尾行』なのか、】
【あるいはたまたま長い間進行方向が同じだけなのか、】
【彼──その『探偵』にはそろそろ明確な判断が付く頃かもしれない】

【キャップを目深に被り、細身のジャージを纏う何者かが】
【彼から数m距離空けた後方で、先から纏わり付くように存在していた】


【──完全に撒いてしまうか、あるいは虚を突いて背後を取るか】
【その探偵の手腕ならばどちらもさほど難しくないということを、その何者かはまだ知らなかった】


124 : 補足 ◆3inMmyYQUs :2018/07/11(水) 11:38:49 FGH.zC.k0
>>106
/お返事見逃してました、無駄にお待たせして申し訳ない……!

/ホントですか、やったーあざます!
/地の文だと上手く表現できなかったのですが、大体こんな感じで認識していただけたら↓

/・並行世界の過去未来へ移動できるアイテム
/・恒常的、永続的に使えるものではなく、エネルギーとかあれこれの問題で行ける先や回数には限りがある

/それだけ組み込んでいただけたら、あとの外観とか機構とかの細かいところは全部麻季音ちゃんのセンスにお任せできたらなと。
/要は、今後イベントとかで他世界線を舞台にしたロールを展開できたらなと思っていまして、そのための下地なワケだす。
/めっちゃ勝手な無茶ぶりなのに応えてくれてありがとうございます、何かありましたら何でも申しつけてください……!


125 : ◆3inMmyYQUs :2018/07/11(水) 15:14:22 389XW4T20
>>115



『────うるッせえんだよタコがよお!!』



  『あんだテメエこらァ!!』

             『ぶッ殺すぞ!!』  

 『やってみろよクソが!!』


【通りの片隅。人集りの中から、怒号が飛び出した】
【日焼けした大柄で、脱色した金髪、派手な柄物のシャツ】
【チンピラとまでは言わないが、比較的威圧感のある男たちのグループだった】

【身内の喧嘩、だろうか】
【まだ酒が深く回るにはやや早い時間だったが】
【空気をびりびりと震わす程の恫喝は、明らかに本気の激情で満ちていた】

【通行人達も、何事か、と振り向いて目を留めるが】
【その今にも相手を食い千切りそうな剣呑さを見れば、迂闊に近づこうとする者はない】


【そこへ折良く、婦警がいたものだから】
【市民が一人、彼女へ寄って「止めてやってくださいよ」と、件のグループを指差した】


126 : ゴトウ ◆1miRGmvwjU :2018/07/11(水) 20:27:27 o6XMS57s0
>>122

【 ─── 実のところ、能力の干渉は受けていた。およそ筆舌に尽くし難い悪寒が後1秒でも続いていれば、男は敢えなく昼食のエッグサンドと再開していた。】
【「音波」を操る能力。それが、男の異能であった。であれば彼は少しばかりの「共振/強心」を試みた。他ならぬジルの言葉 ── その波長を用い、その増幅と指向を以って】
【蘇生処置のように自身の心臓を「強く打つ」。増加した血流量により、嫌悪感を誤魔化して意識を覚醒させる。詰まる所、一つの賭けだった。】
【そしてそれは成功した。血管の破裂という少なからず恐ろしい可能性を脳裏から振り払い、細まる双眸に胡散臭い笑顔を向け続けるのは、やはりポーカーフェイス。】


「 ……… 感謝の極み。」「是非とも派手に行きましょう。」「市中引き回しのち打首獄門、ですよ。」


【返されるジルベールの言葉には、無精髭の顎先で頷く。薄ら笑いが微かに真摯な色を帯びて、その口許が数秒だけ張り詰めた。】
【焦茶色の瞳が真っ直ぐに黒い瞳を見つめ返して、数秒の後、── 語り出す。落ち着いた声音で、滔々と。】



「 ──── 今、おれの"名前"と呼べるものを伝えるなら、後藤といいます。」「後藤椋持。 ……… 櫻の方に、縁があって。」
「貴方に近付いたのは、 ─── まあ無論、金のためではありますが。然しそうですね、……… もう一つ、挙げるとすれば」


「 ──── おれの、"平穏"のため。」


「買い占めた世界をどんな風に扱っても、貴方を咎める者はいない。」「だが全ての所有権が一度は貴方に移る以上、そこには必ず"秩序"が生まれる。」
「 ………おれは、そこに口を挟みたい。」「だから、貴方のお手伝いがしたい。」「今の息苦しい世の中より、小悪党にとって住み易い世界が欲しいんですよ。」




【 「それが、おれの全てです。」そんな言葉をもって、男 ─── 後藤は、口を閉じた。濁った瞳にどこか寂しげな光を宿らせるのは、然し本心の吐露に似ていた。】


127 : ミレーユ ◆1miRGmvwjU :2018/07/11(水) 21:09:02 o6XMS57s0
本スレ≫263


「 ……… 元本のデータは、色々あって消失しちゃっててね。」「幸いそいつの"目付役"が、電脳に外部記憶装置まで搭載した筋金入りの全身義体(サイボーグ)と来た。」
「だから実験記録は奴の視覚映像を出力した画像ファイルに保存してある。」「しかし最近どうも様子が変なんだ。」
「まさかとは思うが、奴の知覚系を経由している以上、改竄の余地がないわけじゃない。 ……… 一応は同僚だし、杞憂なら良いんだけど、ね。」


【「まあ、貴女が心配するようなことでもないよ。」 ─── そうとも、付け加える。実際のところ個人的な問題だった。そしてミレーユはこうも思い至る。】
【たぶん此の人と"隊長"は、会わせちゃいけない。誰かの心や身体を、倫理に反して弄ぶ人間を、"彼女"は誰よりも憎んでいる。談判破裂は待ったなし。】
【あるいは逆に、ブラスフェミア自身に思い当たる節もあるかもしれない。オムレツを自称する青年が、いつか出会った"機械仕掛けの女"。あまり、本筋と関わらぬ話ではあるけれど。】


「付け加えるなら魔術体系そのものも危険で不確実な代物だ。」「 ─── 蛇教の方で使われてた、パッケージ化された禁術。」「本来の形であれば、信仰を魔力に変え行使する、魔力の代わりに冒涜を要求する ……… そんな外法さ。」
「まあ少なくとも夕月の魔力自体は、虚神に由来する十全なものだ。ディスアセンブルして良いコードだけ掻い摘めば、あの子が使うことも不可能じゃない、だろうけれど ──── 。」

「 ……… 無事に使える保証も、使って無事でいられる保証も、ない。それでも構わないというのなら、今すぐにでもデータを寄越すことは、できる。」



【 ──── 少なくとも。ミレーユにとって、夕月は親友だった。悪縁だった。舎弟だった。放って置けないと思ってしまう程度には、妙な入れ込み方をしていた。】
【だから成る可くであれば、五体満足に生きていてほしい、という個人的な願望。しかし飽くまでその身を犠牲にした復讐を行うと言うのなら、止めはしないという信条。】
【少しばかり真摯な表情を俯かせ、陰を落とす。冷たい陰だった。はらり垂れ下がる黒髪の奥、丸眼鏡のレンズが光っていた。】


128 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/11(水) 21:19:29 Ty26k7V20
>>123

【麻季音はテーブルやいたるところに積み上げられた書物やファイルをどかし】
【ホワイトボードいっぱいの数式をすべて消し、壁に貼り付けたものも全部剥がした】
【全てを白紙に戻して一冊の本、それとペンだけの状態に戻すところから始めた】

【やり方はそれまで通り、分析し、解読し、計算し、実験し、再現性を求め、理論を構築する】
【まさかタイムマシンなんて酔狂に手を出すことになるとは思わなかった。だが研究者としてどんなものだろうと】
【…いや、誰もが皆、そんなSFじみたものを作りたくて、自分の中の疑問に答えを出したくて研究者になっているのだ】
【正直、今の私には世界も運命もどうだっていい。眼の前の疑問に答えを出したい。それだけだ】

【ともあれ、これは一人ではなしえないものだろう。それにタイムマシンなんてつくったらそれこそどれだけ危険か】
【ただ、関係者への連絡はあとにして今はこのパズルの入った箱を開けてしまいたい。早く、早く――――】


【――――探偵はその運命がまた新たなる不確定性に基づいて変化を遂げたことを知らない】
【だが知る必要もないのかもしれない。その運命すらもはや無意味となってしまうのだから】

【探偵はムダに高い背を丸めて歩き、サングラスで目線を隠し、黒のシャツを着て腕まくりをしていた。】
【腰のホルスターに差したリボルバー式拳銃。胸ポケットにはラクダの絵のシガレット】
【雨が上がり、蒸し暑くなってきた人混みの街を掻き分けながら、ゆっくりと歩いていた】

【尾行者からは彼の姿を探すのはさほど人混みでも難しくはないだろう。警戒している様子もない】
【ただ、何処へ向かうのか所在なく街を歩いているように思えるはずだ】

【段々と、人気のない裏通りへ、路地へ。焦らすように、彼は煙草を吸い始め、そしてまた路地へ―――】


―――――尾行ってのは複数人チームでやるもんだ。俺みたいな個人経営でも人を雇う。…“奴ら”じゃなさそうだ。

【彼は待っていた。煙草の煙とともに、リボルバーを握りしめて。人気のない路地裏。入り組んでいる】
【もし尾行に焦り、集中しすぎるあまりに道をしっかり確認するなんてことを疎かにしていたら――簡単には出られない】



/>>124
/委細承知のおけまるりんごジュースでございます
/未知の粒子という必殺ワードがあれば100人力です


129 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/11(水) 21:31:51 WMHqDivw0
>>127

【ふうん、と口にしながら、氷の融けて薄まったミルクティーを啜る。……空になる音】
【目付役とやらのことが少しは気にはなったけど――まあそこらへんは置いといていいかな、くらいの気持ち】
【様子が変、と言われてもさしたる反応はない、この女は「機械」方面には疎いから、それと】
【生きていても死んでいてもどっちでもいいが、とりあえず肉――にしか、良くも悪くも興味を持たない、だから】

【――――実際会ったことがある、なんてことにも気がつかなかった。蟲の蔓延るあの地下の戦場で】


…………蛇教からの拾い物ぉ? それほんとに大丈夫なの、……うーん。
まあ我儘ばっかり言ったって仕方ないよね、うん、欲しい。……しかしねえ、
あの子が蛇から果実を受け取る、ってのも――――なんだかひっどい皮肉だなあ。


【「あの子ね、僕の創った最初の女だから――――つまるところイヴなの。わりと大切にしてるつもり」】
【目を細めながら言う台詞が本当かどうかはわからないけど。けれど今死なれたら困るっていうのだけは、本当】
【それだけ確信させられる程度には、切羽詰まっているようだった。何だか最近嫌なことばかり起きている、し、】


…………じゃあそれ、いくら? 言い値で払うよ、……ああ、お金じゃなくてもいいよ。
何かしら僕が持ってるモノなら、出せる範囲で出す。それでいい?


【……そう考えながら言うのは、「対価として何を寄越せばいいか」という問いだった】
【ミレーユもきっと知っている。この女は金さえ払えば本当になんでもやる女であって、ならば価値観はそれに縛られていて】
【何かを貰うなら、此方からも何かを差し出さなければならない。それが彼女の中に根付いているルールだった、だから】
【さも当たり前のことのように言う。まるでフリマアプリの値段交渉みたいな軽々しさで。あまりにも重たいものを、買おうとしている】


130 : ◆wEoK9CQdXQ :2018/07/11(水) 21:32:30 DnS3DsRA0
>>121

世界がこんな事態になければ……ゆっくりと時を過ごすこともしてみたかったわね。
だけど……あまり、覚悟の程を見定められるのは好きじゃないの。
どれだけ大切なものを脅かされて来たのかと、そんなことを口にする心算なんてないけれど――――

【齢の割に、あまりに多くの試練を経験してきた。それは確かで、確信の礎はそこにある】
【けれど惑うことすら己に許さないのだから、直線的に過ぎる側面もまたあって。かたくなな部分も、覗いてしまっていたのだ】

これ、は……?

【放られた小袋を受け取れば、その感触から重みを確かめて。おおまかな使途こそ聞けど正体の知れぬその内容を、確かめようとした】
【そうして視界に現れるのは、どこか懐かしさ――そう呼んでしまいたくなる温かな既視感を覚える品々】
【蘇る思い出に滲む雰囲気は、闘争の化身とさえ思わす、ここまでの迷いのない苛烈さとは裏腹に】
【ふわりと薄桜色の花弁が開く様な、穏やかなひとときに咲く歓びを潤わす様で】
【渡された物品の提供者たちとの縁を、一つの波面の揺らす水面は確かに感じさせるだろうか】
【そして謝意を述べれば、なぜ彼が持っているのだろうと、興味深そうな視線を少しの間だけ置くだろう】
【かつての日常が今も大切な思い出だと、感じさせるには十分なはずで】

【けれど最後の手段の先を語る言葉は、覚悟を問う言葉を肯定する。厄災に、穢れた闇の現身にこそ成るのだと】

〝世界にあるべきじゃない何者か〟――そんなものが存在するとしたら、その極北に成り果てるでしょうね
そうなれば、私が確実に選ぶ道もまたある……

今も黒死剣が沈む地の底に自らを封じ込めて、かつての封印とともに檻を打つ。
言葉だけは交わせる時が来ることを願いながら、一滴たりとも呪いが外に出る事を許さずに……
ただの“部品”として、楔として、自分自身を定義しなおす。

……そして私がいなくて悲しむ人がいなくなった頃に、私自身として黒死剣を常世へと葬り去るわ。
偽りなく言葉にすれば、終わらせ方として一番救いがあるのはこんなところ。それが、難しいことは理解しているけれど……

【成り果てて機能を果たした時点で、次に排除されるのは己だろう。その危機の先にも、待つのは孤独と呪いとの戦い】
【どれだけ抉れて血を流そうと、残骸になろうと望みは捨てない。僅かでも、世に生まれる悲しみが小さくなる道を捜す】
【そんな道を、心底から希望と見做していることは、やはり彼の感情に何らかの影を落とすのかもしれなかったが】
【続く危うさと、いつか尽きる灯としてあることを同居させる言葉は――彼の確信に、そう違わぬものとなるのだろう】

……それでも、いざ私が禍として振る舞うか朽ちるかの場面になれば。
自分の何もかもを燃やし尽くして、今一度黒死剣を封じるか、“私”を構成するすべてを壊そうとするんだと思う――――
……私の大切なものの脅威になることよりは、たとえ自己満足でもその方が心安らげることも間違いない

アナンタシェーシャとのあの一戦では、腕が一度千切れ飛ぶことを前提に戦術を練って。
その通りに動けたからこそ、私は今五体満足でここにいる、と――……そう伝えれば、少しはこの言葉を信じてくれる?

【生存の理由が、生物としてのそれよりも“守る者”としてのものがあまりに強い。見えてくるのは、そんな部分だろうか】
【己が歪みを直視して、だからこそ択び取れる選択肢。先程語ってみせたそれは、問いと返答を経て確かな答えとなった】
【だからこそ、いっそうに。彼との邂逅に、大きな意味があったのだと、そう感じている様でもあった】


131 : ミレーユ ◆1miRGmvwjU :2018/07/11(水) 22:09:48 o6XMS57s0
>>129


「大丈夫じゃあないと思うよ。」「取扱注意、 ─── だ。」「まあ、魔術とか禁術とかにはそれなりに造詣もあるんだろう?」
「ボクは知識としてしか知らないから、どう使うかは任せるよ。」「 ……… ん。ちょっと待ってて。」


【言うなり、ミレーユは首筋に巻いたチョーカーの頸側から ─── "ケーブル"を引き出す。そのまま、有線回路でタブレットに直結させようとして】
【暫くすれば数百から千ページに亘るくらいの"実験記録"が、数分をかけて送り付けられることだろう。画像付きの、ごく淡々としたレポート。】
【酷い暴力や暴行に耐え続けたり、誰かを殺したり殺されかける実験を受ける、藤色の髪をした少女の写真、いくらでも。そこまで至れば、 ─── 連日の蛇教に関する報道で、もしかしたら目にしていたかもしれない。】
【とは言え少なくともその手のゴアとナンセンスはミレーユにとって慣れっこだった。そして恐らく、ブラスフェミアにとっては、彼女以上に。】


「天国に居られなくなっちゃう、のかなあ。 ……… 智慧の木の実みたいな眼と髪してるし、そのうち勝手に齧ってる気もするけど。」


【転送の最中、ぽつりと呟く。少しだけ皮肉っぽく、冗談めかして。 ──── この世が天国であるなんて、然し誰が思っているというのだろう。】
【データのコピーが終われば再びチョーカーに手を伸ばし、ボタンを押せばケーブルが巻き取られる。続く問いは、ミレーユにとっては想定外のようだった。】
【顔を上げて、丸く大きな青い瞳をぱちくりさせながら、豆鉄砲を食らった鳩のような顔。しばらくして、ようやく口を開いて、言葉を紡いで。】


「 ……… 。」「オフじゃ金は取らない主義なんだ。」「守秘義務違反も、対価が目当てでやった訳じゃない。」「けれどまあ、何か教えてくれるなら、吝かでもない。」
「 ──── そうだな。何がいいかなぁ。」「うーん、 ……… 。」



「不躾な質問、だけどさ。」「 ─── 貴女は、"何"から夕月を作った、のかな。」


132 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/11(水) 22:28:40 Ty26k7V20
>>114

ということはつまり、ゴトーさんは自分のことを頭がいいと思っているんだ?
ふーん、まあ、いいけど。…そういう人ほど、一度騙されたら抜け出せないよ
私にはそーいうのいいよ。ご機嫌がよろしいのが取り柄だし?

【彼女はスケッチブックをしまい込む。別にラフにあまり興味はない。見返すこともないのに】
【取っておいているスケッチブックは山ほどあるが、それは時間を掛けて作った油絵の作品も同じだ】


だったら尚の事。人は遠くの核ミサイルよりも目の前のナイフに怯えるものよ。
…まあ、それを見つけてくるのが仕事か。オーキードーキー働くとしますかぁ。

【彼女は勢いよく立ち上がり、お代をカウンターに叩きつけて、後藤の方を向いた】
【にっこり笑った屈託のない笑み。だが眼帯に隠れたその片眼が彼女のキャリアを証明する】


そう、ね。個人経営のブローカーってとこにしますか。グレーなラインの…それより役所の方に話しつけておいて
櫻の国のマフィア…ヤクザだっけ?そことは自分で話しつけておくから。知ってる?組長、娘に代替わりしたって。
歳も私とタメぐらいだって。…興味あるなら、会ってみて。

【桜の国の影響を少なからず受けているニューロンシティのかつての裏の顔役はヤクザが受け持っていた】
【今となっては極一部になっているが、窓口にはちょうどいいだろう。“富嶽会”名前だけなら一般人でも知っている】

じゃ、挨拶回りとか事務的なやつで2,3日はどうせ顔合わせるだろうけど、その後はスタンドアロンで動かしてもらうよ
ああ…そうだ。折角なら、武器でも用意してもらえたら嬉しいねぇ。ゴトーさん?

【「ということでよろしく〜」と、彼女は店を出ていくだろう。ひらひらと手を降って、人混みの中へ消えていく】
【もしかするとまたそのへんの店で飲んでいるのかもしれない。きっとTシャツ姿で官庁にも訪れるだろう】
【夕暮れの街に赤錆びた風が吹く。夏の訪れ。鉄風、鋭くなって】


/〆ということでよろしいでしょうか。お疲れ様でした
/返信中々できず申し訳ありませんでした。今後共よろしくおねがいします


133 : アーディン=プラゴール ◆auPC5auEAk :2018/07/11(水) 22:30:14 ZCHlt7mo0
>>130

……ふぅ、やれやれ……良く分かった。それが君の自然という事か……
そういう人間は、そうそう出会えるものじゃないが……いざ目にすると、こうも危なっかしく感じるものか……

【どこまでも淀みなく、そしてどことなく苛烈なその言葉を受けて、獣人は自嘲する様にため息をこぼした。結局、老婆心である事は変わらなかったらしい】
【彼女は、どこまでも自分の目的のために生きる人間で、その為には命さえ懸けてしまえるほどの人間なのだ】
【そうした人間と、いざ対面すると――――獣人も、自分の見聞はまだまだ視野が狭かったのだと、苦笑する事しかできなかったらしい】

(――――だが、どうやらそこまで破滅的と言う訳でもない様だ……こんな表情も、出来る様じゃないか――――ん?)
……なんだ、説明もしない内に……知っているのか、その荷物の事を……?

【袋の中身を検めた少女の、それまでとは趣を異にする柔らかい表情に、獣人の方も思わず目じりが下がる】
【だが――――ふと浮かんだ疑問があった。品物について、何も説明しない内に、彼女はそう――――『懐かしさ』に浸るような仕草を見せて】
【妙なところで縁があったものだと、彼も驚きを見せていた】

――――さっきも話した通り、俺は水の国の、とある酒場に籍を置いている。まぁ……そこで用心棒頭なんて、やくざな商売をやってるんだが……
昔からな……その酒場には、妙な連中が屯するんだよ……能力者の手合いが、6、7人も常連になってな……そいつらから、それぞれ、俺が個人で仕入れた品物だ……
――――どうやら『ザントマンの雫』については、説明不要らしいな……そっちのクリスタルは、水の魔力を、特に術式を織り込まずに結晶化したものだそうだ
胸に抱いているだけでも、案外に心を落ち着けてくれるものだが……そういうものが必要な状況になれば、魔力のリザーブとして適宜使えばいい
……そっちの『魔玉』については……流石に知らないだろうから、説明しておこう。そいつは魔力のかんしゃく玉の様なものだ。投げたりして叩き割って、使ってくれ
それは、『突風』の力を封じ込めてある品物だ……敵対者との距離の調整なんかに使えるだろう……それを作れる術師もいなくなってしまって、貴重になりつつある残りだ……

【獣人は、それぞれの品物の、本来の持ち主――――ヴォーダンとアルクとの関係を明かしながら、品物の説明をする】
【ビー玉――――『魔玉』のみは、彼女――――八攫には縁のない人間の品物で、少し踏み入った説明をして】
【敵をノックバックさせる、逆に自らに加速を稼ぐ、等の方法で使う事の出来る、使い捨てのマジックアイテムのようなものらしい】

――――やはり、呪わしきものに手を出そうとすれば、そんな行く末にならざるを得ないか……決して、ベターな選択肢じゃないな……
君に御しきれるとも限らなければ、君1人の道連れで済ませられるとも限らん……こればかりはな――――やはり、あくまで『最後の手段』だ……
そうならずに済むよう、考えるのが順序だな……その模索も、結局は限りなく険しい道になるのは、見え透いてるがね……

【語られる言葉に、獣人は渋面と共に、何度目かも分からないため息をこぼす。彼女の語る筋書きは、結局のところ、犠牲を避けられないもので】
【それどころか、失敗した時には――――今度こそ『彼女の腹積もりには関係なく』際限なく暴走してしまいかねない危険性も孕んでいるのだ】
【出来る限り、行使しないに越したことはない。これなら、その時その時で一か八か、邪神たちの神性の弱点を戦いながら模索する方が、マシに思えて】

――――「死の覚悟を以って事に当たり、達成して無事に帰る」か、まるでスパイか何かの模範のようなやり方だ……
まぁ、君の交友関係や人生観に、俺の立場から今、これ以上何かを言うのは、ただのお節介にしかならないだろうが……
――――人1人の魂、燃やし尽くすのは……我々が思う以上に大きなエネルギーとなる。人の限界を、あの邪神どもに見せつけてやると言うのには、違いないな
その生き様も、それだけで立派な武器だ……何かしら勝ち取るものはあるはずだと、俺はそう思うがな……

【覚悟のほど――――先ほど「じっくりと確かめねば、どうしようもない」と言っていたそれが、今鮮烈に、輝いて思えた】
【そう思わされたのなら、彼女の心根はやはり、それを第一義に考える事を、盲目的にではなく、自覚的に確信しているのだと――――】
【だが同時に。その鋭い生き様は、ただそれだけで邪神たちへの脅威となりうるはずだと、これは獣人の感想として、自然に口をついて溢れた――――生き様を、武器にしろ――――と】


134 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/11(水) 22:49:01 WMHqDivw0
>>131

取扱注意どころじゃないっぽいんだけどお、……わ、びっくりしたっ!
なんなの、あなたもヒトじゃないの、先に言っといてよびっくりするからさあ、僕こう見えて割と感性は凡人寄りなの!

【「ていうかちょっと待って、これ容量足りるかわかんない――」 ミレーユと直接繋がるタブレット、慌てて持ち上げて】
【既にほんのり熱くなっているからわあわあ喚く。手で煽いだり息をふーふー吹きかけたり、だいぶ、アナログ】
【冷却を試みているようだけど、絶対追いつかない。それでもなんとか収まりはするんだろう、情報】
【それをじっくり見るのはきっと、おうちに帰ってから。こんな場所で見て、誰かに覗かれたら――とも思うけど】
【……既に「彼女」は「見ている」んだろう。これだけ蛇の話をしているんだから――干渉してくるかどうかは別として】

……今んとこ追放するつもりはないけど。そうだねえ、この一件で要らない智慧を得てしまったら。
そしたらもう放してあげてもいいかな、あなた、欲しい? ……あっでももう先約が居るんだった。
意外にもあの子、人気者っぽくってさ。なんでだろうね、何がウケるんだろう……バカですぐ人になつくから?

【けら、とひとつ笑って。意外にも、手放しちゃっていいかもね、なんて言うけど――――】
【――――絶対そうはならないんだけどね、とも言っている、声には出さなかったが。そんな笑みをしているから】
【そんな表情を浮かべたまま。問いには素直に答えを返し始める、だってこれは対価だから、しっかりと】


…………ナニ、って言われてもなあ。お砂糖とスパイス! ……って言うのは冗談で、
本当に原材料は「人間」でしかないよ、それとあと――――あの子自身の「願い事」。

「死にたくない」って泣いてたから、僕がその願いを叶えてあげたの。それだけの話だよ、――――


【「本当に、それだけ。」 ――――言い残して冒涜者は去っていく、伝票は自分の分だけしか持ってかない】
【そこらへんはちゃっかりしていたけど、……空になったミルクティーのグラスの横、紙ナプキン】
【それにはちょっとしたキーワードが書いてあった。ちょっと悪知恵の芽生え始めた若者が、度胸試しに検索してみるタイプの】
【アングラ動画サイトに行き当たる、文字列。大手のサーチエンジンにかければ本当にすぐ出てきちゃう、――――】


//絡み自体はここらへんで〆、で大丈夫でしょうか、ひとまずおつかれさまです&ありがとうございました!
//次のレスで補足っぽいものを書いておきますがたぶん読まなくても大丈夫です。。。


135 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/11(水) 22:50:34 WMHqDivw0
>>131>>134

【――――検索結果から辿り着く一本の動画。わっかりやすく、スナッフフィルムというやつだった】
【それに出演しているのは、赤髪赤眼の少女――夕月に間違いない子だった、それが、それっぽい台に寝かされて】
【大の字の姿勢。首と胴体、両手首・足首、それからその根元をがっちり固定されて。素っ裸、だった】
【そんな状態にされて、ひどく泣き喚きながら「ごめんなさい」を繰り返している、ならば何かの制裁を受けているのだとも、わかる】

【そんな少女に最初に行われた仕打ちは、麻酔ナシの抜歯だった。曰く、舌を噛んで自殺するのを避けるため】
【一本抜かれるたびに喉を張り裂く勢いで泣き叫ぶ。溢れ出る血を歯科用の器具で吸い取って、抜いて、繰り返し】

【それから、四肢の根元にマジックでぐるりと線を曳かれる。その頃にはもう泣き声も嗄れていて、ぐったり】
【自身の身体に曳かれる線を、涙でぐちゃぐちゃになった目でぼうっと見ていて。たぶん理解して、絶望してしまった顔】
【これは目安として曳かれた「切り取り線」なんだって、わかっちゃった。だからといって何の抵抗もできなくて――――】



【(これ見よがしに取り出されるチェーンソー)】【(見せつけるみたいに少女の眼前でエンジンを吹かせて)】
【(少女は怯えているようだったけど、もう声も出せないようだった)】【(それでそのまま、――――――)】


【(右腕)】【(左腕)】【(右脚)】【(左脚)】【(順番に一本一本切断されてゆく)】
【(ごりごり。肉と骨を削る音)】【(とうに嗄れ切って久しかったはずの少女の悲鳴が復活する)】
【(彼女が意識をやるたびに、何かしらの処置が為される。止血、縫合、投薬、そうして)】
【(永く永く、続くようにさせられていた。苦痛が、苦痛を、―――――――――――――)】



【――――それだけ。少女一人の四肢を切断してゆくだけの、スナッフフィルムにしてはあまりにもつまらない代物】
【そういう趣味の人に見せれば「芸がなさすぎる」ってポイ捨てされる程度の、あまりにもありふれた、人が苦しんでるだけの映像】
【きっとミレーユだってこの程度のモノ見慣れているだろう。だからポップコーンでも、ポテチでも、何かつまみながら】
【他人事だと思って見てたっていい。他人のことなら。……だけどこれに映っているのは、間違いなく、あの少女だった、なら?】

【いま、「夕月」と呼ばれている少女は、こうやって死んでって。それからどうしてか、あの冒涜者に拾われて】
【もう一度人生を与えられたのだと。それだけ伝える、それだけの話、だけど】


【 あの子は、これで救われたって言えるんだろうか。少なくともミレーユと喋っているときは楽しそうにしてたけど―――― 】



//補足っぽいものここまでです。改めましてありがとうございました!


136 : ゴトウ ◆1miRGmvwjU :2018/07/11(水) 23:00:08 21ib/ad.0
>>132

「適正な自己評価なくして中間管理職はやっていけない。」「 ─── その代わり、部下からの諌言は聞き流しちゃいけない。」
「素直に感謝しておくよ。」「道に迷ったと思った時は、おれの背中にトゥエンティ・トゥでもブチ込んで欲しい。」

「それに、もう片方の目は良く見えるんだろう?  ……… ドラゴン・レディのように、上手く探してきてくれよ。」


【草臥れたような笑いをゴトウは投げ返す。鋭い双眸の目尻は少しばかり力無く、どこの人混みに居ても見分けのつかない顔をしていた。】
【然しあるいは、それがゴトウの武器であったのかもしれない。】

「御誂え向きの戸籍と経歴は用意しておこう。後は諸々の権限と隠蔽工作の準備、 ─── 現地の警察に賄賂でも包むかね。」
「あらま娘さんなのかい?」「大変だねェ、今のご時世カタギにも戻りにくかろうに ── 。」「 ……… 仁義で腹は膨らまんが、捜査資料なら或いは、かな。」


【指定暴力団、富嶽会。 大層な名前だった。今では看板に似つかわしくない衰退ぶり、だという。小耳には挟んでいた。】
【昨今では専ら"せこい"犯罪で末端が引っかかるばかりで、武力闘争も寡聞にして聞かず、 ── そんな状態ではあった、が。】
【情報のネットワークは健在であるかもしれない。土地に繋がりのある人間というのはいつであろうと良い協力者になってくれる。】


「無論おれにも異存はない。」「八課はそういう組織だ。課長と課員という立場も必要最低限のものでしかない。」
「 ──── 9mmのコンシールドじゃ頼りないだろう。サプ付きのSMG、1挺寄越しておく。職権の範囲で好きに使え。」

「またね、タマキ君。」「無事に帰ってきてくれたまえよ。」



【薄笑いがタマキを見送った。 ─── そのまま、脂汚れに煤けた天井を眺める。おれも飲み直すかな、なんて呟いた。】


/おつかれさまでした!!


137 : ◆3inMmyYQUs :2018/07/12(木) 14:56:52 qo/HyX5s0
>>128

【────そうして、】
【そこにあったものはいとも容易く白紙/ゼロへ戻される】
【かつて地上の全てを押し流した神の大洪水のように】

【今や取るに足らなくなった一切が、見えざるところへ等しく埋もれていく】

【積まれていた難解な書物も】
【乱雑に書き殴られた無数の数式も】


【誰が飲んだのか分からない、二つめのマグカップも】



【──────────────────】



【──探偵が向かう先々へ、その何者かは影のように付きまとった】
【段々と人気が少なくなるのも構わずに、焦らされるのも気長に待ち】

【やがて大通りの喧噪が遠くなり始めた頃、探偵が最後の路地を曲がって、】
【それを追いかけた先──目の前に居たものが後ろ姿ではなかった時、『彼女』は素っ頓狂な声を上げた】



  ────…………に゛ゃっ!?



【──少女、であった】
【一見すればすらりとして大人のようにも見えたが、】
【その面立ちは二十歳にはまだ一つか二つばかり足りなさそうな丸みを残していた】

【大手スポーツブランドが初夏に出したポップな新作ジャージにスパッツ】
【まるで都心部の自然公園を早朝にランニングして、その足でここまでやってきたかのよう】

【その緩く波打つショートの黒髪は、色気を醸そうとして施した美容の賜物というよりは、天然物特有の無造作さがあった】
【そして最後のダメ押しのように、ピンク色をしたオーバルフレームの眼鏡が、その仰天している表情を一層際立たせていた】


【何かの追っ手にしては酷く間の抜けた容貌の彼女が、探偵の前に姿を現したのだった】

【目が合った瞬間、「やっばぁ……」などと呟きつつ、】
【往生際悪く逃走でも図ろうとしたか、ちら、と後ろを振り返ったりするが、】
【自分が通ってきた道だというのにいつの間にか全く知らない異世界が広がっていたような顔をして】
【あまつさえ、それがあたかも目の前の男のせいだと言わんばかりに、怪訝な眼差しを彼に向けた】

【挙句、】


────わたしをこんなところへ連れ込んで、一体どういうつもりだにゃ!?


【詰った】
【銃相手にそれが何の用を成すのか分からないが、手刀の形にした両手をサッと素早く体前で構えて】


138 : ミレーユ ◆1miRGmvwjU :2018/07/12(木) 14:59:21 IIkXTD5Q0
>>134

【「失礼な ─── ネットとの脳直接続が出来る程度ってだけさ。」ちょっとだけ、むくれたような顔をして言い返した。その程度は人間の範疇であるらしい。】
【「 ……… まあ、ほっとけないよね。」「悪い人の手に渡ったらボクも困るし。」「話し相手がいなくなるのは、何時だって寂しいものだ。」ちょっとだけ、困ったような顔をして答える。真意なんて互いに知らせず。】
【 ── しかし返ってきた答えはややもすると意外でさえあるようだった。しばらく目を丸くして、噴出すような苦笑い。】



「 ─── ふうん。"優しい"んだね。」「いったい何を冒涜しているのやら。」
「ボクだったら見捨てちゃうかもなあ。」「あんまり人に優しく出来る自信、ないから、さ ……… 。」



【自分から絡んでおいて代金までたかる小汚さはなかった。だから去りゆく白く痩せこけた背中へと、「またね」なんて適当に、そうして机上のメッセージに気づく。】
【 ─── 何を思って、こんなキーワードを残すのか、ミレーユには今一に検討がつかなかった。】
【それでも調べるだけ調べておく。グロいの好きじゃないし持ち合わせのスマホ、なんとなく履歴の残らぬプライベートブラウジングで。誰に見られる事もないって分かりつつ】
【そして出てくる動画。再生数は3万と少し、 ── 高評価が100くらいに対して、低評価が500くらい付いている。けれどそれより先に、サムネイルに目を見開く。】

【有線のイヤホンを差し込んで、再生する。それこそ「検索してはいけない」なんてサイトを知ったばかりの子供のように。あの子、本気で泣くときはこんな声なんだって、どこか呑気に諒解しつつ】
【 ─── 然し腕の一本目が裁断されるあたりで、思わずブラウザバックに指が伸びそうになる。暫く彷徨って、円い爪先はシークバーに。けれど結局、スキップも倍速もせず、最後まで観た。】



【脳直で観なくて正解だった。こんな映像を視界いっぱいに見せつけられたら、物凄く気分が悪くなっていた。】
【然し所詮は映像ではあった。こんなのはそれこそ特撮で撮れる範疇のものだ。スプラッタムービーとしてもなまっちょろい。内心で呟く。】
【現実に誰かの死と向き合った時は、このぐらいでは済まない。人肉に特有の血腥さ、あるいは放置された死体の言い知れない腐敗臭、】
【無数の蠅が饐えた大気を乱されて飛び立つ音、黒洞々たる髑髏(されこうべ)の瞳を覗く不安、微かな鼓動さえも感じられないくらいに冷たくなった指先、】
【脳幹を外殻ごと吹き飛ばされる狙撃、短機関銃の斉射で踊るように血を噴いて崩れ落ちる人体、陣地機銃で仲良くひとつの挽肉になるツーマンセル、】
【アイアンサイト越しの銃殺刑、突き立てたナイフに踠くような筋収縮、其れがやがて弛緩する瞬間、手に残るのは自分の腕の中で誰かの死に行く感触。】


【(なんでこんな記憶を思い出しているんだろう。あの子の経験なんて半端なモノだって、自分に言い聞かせて溜飲を下げるため?)】


【 ─── ミレーユは"できそこない"の人間だった。冷たい凍土に生を得た人間だった。たとえ他人事でなくても、必要ならば幾らだって冷たくなれる人間だった。】
【それに、現に"彼女"は幸せそうだった。辛い記憶のひとつやふたつ、誰しも持ち合わせているというもの。】



       「 ………… 悪趣味だなぁ。」


【ぼそり、呟く。うざったい西日が白皙の頬を照らす。誰の何に当てつけた言葉なのかは聞かれたって教えてやらない。もう一品、チーズケーキでも頼もうかと思いながら】
【残っていた通知からよく知れたトークルームを呼び出す。 ─── 「つらい」と、一言だけ。何がつらいかは、決して言わないのだけど。】

/わたしからはこんなかんじで!!改めておつかれさまでした!!


139 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/12(木) 16:41:01 SYMnKlSo0
>>246


【── 真の目的、と彼は小さく反芻した。無論、彼とて考慮はしている】
【けれどもそれは、答えのない袋小路に似ていて。考えれば考える程に深みに嵌る】
【彼は少なくともそう認識していた。── 杞憂であると思ってしまいたいが為に】


其れが── ジャ=ロの真の目的が、奴という存在の延長線上に在るのなら、手立ては有る。
因果律を逆転させる、転回の思考法に近い。存在から逆算される目的ならば、今回の渡航が明らかにする。
奴という存在が 『どう』 認識され、 『どう』 管理されていたか、其れを知れば自ずと見えてくる

── だが同時に、私は其の例外に怯えている。つまり、奴の思考そのものが逸脱していた場合、
私には最早想像すらもつかない。行動と目的の乖離、そこに存在を加えた三つの点が多次元的に存在していたならば、
観測すら出来ない量子を私達はどう捉えるのか。……まして、その量子そのものに途方も無い力があったのなら


【続く言葉をゴーストライターは飲み込んだ。目の前のボスという存在に思考が及ぶ】
【恐らく彼ならば、墓を暴く冒涜者達の長であれば、其の神をも恐れぬ洞察力を以て理解しているのかもしれない】
【けれども、しかし、そうとするならば、まるで、──】




【────── 悪魔じみている】




【虚神の思考すらも読み解いてしまうのであれば、其れはもう本質的に人外の領域に思えて】
【寒気がした、当たり前の日常が音もなく崩れていく感覚に似ている】
【怪物と戦う者もまた、怪物である、と── 無意識が伝える】




──── それでも貴方は、ジャ=ロの真の目的に、心当たりがある、と


140 : 137 ◆3inMmyYQUs :2018/07/12(木) 19:17:37 qo/HyX5s0
>>137
/見直して気付きましたが、マキネティーナちゃんが出してくれたのはマグじゃなくてコーヒーカップでしたね。
/大したことではないといえばそうですが、一応脳内訂正しといていただけたら。


141 : ◆wEoK9CQdXQ :2018/07/12(木) 20:01:09 VX6UbAds0
>>133

……私は、そこまで危なっかしく思えるの?
これでも、ある程度は勝算を確保した上で口にした心算だったけれど――――……?

【不思議そうに――目を瞬かせてもおかしくない様子と口ぶりで。花舞う清流めいて澄み渡っていたその表情に、人間じみた綻びの温度があった】
【単に感性の違いなのかもしれなかったが。長閑でさえある数瞬は、少女と彼らとの関係を語る時間へと繋がって】

そのクリスタルと『ザントマンの雫』を、魔術師や行商人として提供できる人たちに覚えがあったの。

……私と彼らのどちらかが大変なときに、なぜか逢うことが多かったのは不思議だけれど。
今も――忘れられない日々を過ごした仲間。……また、会いたいものね。

【〝創世戦団〟との戦いで深く傷ついたとき。心震え、孤独のなかをあったとき。共に歩むべき仲間が、命さえ危ういほどの窮地にあったとき――】
【邂逅するのは、自分か魔術師が困難にあったときが多かったと、今では懐かしむことのできる記憶の数々】

【それだけに、穏やかに過ごせたひとときのことも。時にそこにいた、“提供者以外の仲間”のことも】
【柔らかな微笑みを織りなす思い出として、心を形作るかたちのない温もりに抱く様だった】

【ちくりと胸を刺す痛みは、青の魔術師との再会を為せたときにその意味を言葉にするもので】
【それは、その時にまた紡ぐ物語なのだ。今は純粋に、心の活力を春の息吹のよう、穏やかに増す少女の姿がそこにあった】

……やっぱり、2つはあの二人由来の品だったのね。

無事でいてくれたことがまず嬉しいわ。そして、こんな風に受け取ることのできるものがあることも――――
私が知らない“もう1人”とは、いつか知りあう機会もあるのかしらね?

【受け取った品々の説明を受ければ、微かに、けれど確かに表情を綻ばせて。程無くして、まるで背を押されたかのように、思考を巡らせた】
【回復の重要さについては言うまでもなく。対〝虚神〟を念頭に置く干渉手段の練磨に、多くの時を割く今の柊には】
【結果的にそれを早める『ザントマンの雫』は、直接的によい作用を及ぼすものだっただろう。効果は、かつて用いた際に実感するものがあった】

【『魔玉』。物理的な操作だけで操れる魔力は、少なくとも彼女には貴重なものだった】
【その即応性を利用するかたちになるだろうと、戦闘に重きを置いて試算する】

/続きますっ


142 : ◆wEoK9CQdXQ :2018/07/12(木) 20:02:09 VX6UbAds0
>>133

【……そして。クリスタルは魔力の中継点としても増幅器としても、単純な力の規模以上の意味があるだろう】
【かつて共に“停滞”の力に満ちた領域を作り上げたあの経験は、この魔力との親和性を確かに上げている――】
【歩んだ足跡が意味を紡ぐことを、この状況が証す様でもあった。そして、獣人の紡ぐ言葉やそこにある意図もまた】
【時の積み重ねた、確かな重みを帯びて響いた】

(……そう。本当なら、これは考えることすら必要に駆られなければするべきじゃない手段)
(それでも、“もしも喪わせることを許すなら”――――……この考えからは、どうにも……簡単には抜け出せそうもないわね――――。)

【最後の手段は、本当にそう位置付けるべきもので。獣人の言葉に首肯するさまは、危険を知ればこその同意を重々しくも示した】
【最後の最後には必ずそう選ぶからこそ、それ以外の手段を整えることも、その用意と並行して行う必要がある。そこに異論はなく】

【剣と術の両面からいっそうに鍛え上げ、“いざ実践する時の力と精度もろとも”――】
【戦いをこそ在る自己を、より適切な戦いの手段として変容させることさえ、より避けるべき数々の事態よりは選ぶだろうか】

【なぜだか既に心を決めてしまいそうになる感覚を、単なる悲観だと片付けようとして。少しだけ、上手く行かないことを自覚した】
【それでも、そんな“誰か”を助けようとするひとがこの世界には未だ残るから。不意に受け取った言葉が、灯にまた新たな熱を差し入れることだってある】

……生き様を、武器に――――

【何者なのかではなく、その上でどう生きるのか――その選択こそが力になるなら、選択を下し続けた少女の“生”は限りなく鋭利な武器となるだろうか】
【自然と呼吸は武の彩を増す。充実する気息、
【何でもないはずの日常から踏み止まる力を得るように、初めて逢った人物の言葉が焔に煌めく熱を増すこともある。その返礼は、

その視点からは、少し外れてしまうものかもしれないけれど。
どう在って、どんな関係のなかを生きているのか――――自分で決めたなにかであっても、居場所や歩む道から得るものでも。
他の誰かが得られないものは、必ずあるんだって私は思う――――

……それが、思いもかけない切り札や。
小さく、けれど限りなく深い穴を見つけることにも――――……繋がることは少なくないわ。
沢山の視点があるのなら、なおさら。替えの利かない“強さ”にさえなるんじゃないかしら。

【紡ぐのは、個々による自分自身の存在定義に立脚した手段。それが絶対的なものであっても、関係性からくる相対的なものでも】
【その“誰か”にしかできないことを、際立って重んじている様だった。それは柊の、他者への見方を一面として伝えるものではあって】
【彼が籍を置くという、能力者たちの集う酒場。そこに、彼ならではの意味はきっと強くある。自覚に、後押しを添えようとする様だった】

【同時に、今、秘かに抱く危惧を伝えたならば――――同じく〝虚神〟たちに挑もうとする彼から。そして、時に彼に支えられ、時にその力となるであろ人々から】
【手掛かりを得ることも、或いは出来るのだろうかと。ふと思い浮かべたことは、果たして誰を益するのだろう】
【混沌に転げ行く世界を護り抜かんとする数多の願いが――また一つ、状況に変化を生もうとしているのかもしれなかった】


143 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/12(木) 20:37:12 Ty26k7V20
>>137

【世界は書き換わる。常に再構成を続ける現在の連続】
【コーヒーカップはマグカップに置き換わる。観測者はそれに気がつくが】
【私を含めたこの世界では元々私が、UTの使われていないものを2つ持ってきた】
【ロゴの入ったマグカップだった。矛盾はない。そう、世界はまた別の未来へ羽ばたいた】
【バタフライ・エフェクトを残して】


【――――探偵は、吸い殻を足元に捨て、靴底でもみ消した】
【ため息にも似た、煙を吐き出して頭を掻いた。ブラブラと握ったリボルバーを弄びながら】

【むしろ、明確な敵であったほうが楽だったと、彼は思い始めていた。こういう、話の通じない】
【つまりは一般人を相手にするには一手間も二手間も多いからだ。仕事柄色んな人と合うことは多い】
【その経験で培ったカテゴライズによれば今この眼の前に居る女は“手のかかる”というラベリングをすることができる】

あーっと…………

【一周回って本当のプロフェッショナルはそういうふうな無警戒な役柄を演じることもあるだろう。実際に諜報員は】
【気さくで少し間抜けな人物を演じる。だがそれでもこの女は巧すぎる。つまりは、リアルだ】


それはこっちのセリフだ。付け回しやがって…おんなじところ2周したの気が付かなかったか?
…しょうがないから選ばせてやろう。ケーキ食べながらじっくり話をするのと、ここで銃撃戦をするの…どっちがいい
まあ……俺はどっちでもいいけど。…こいつのほうが時間は無駄にしなくて済みそうだ

【こいつとは勿論手にしたリボルバーだ。理由もなしにつけることもないだろう。ネタに飢えているところだ、多少なり】
【この女からも珈琲一杯分の情報は手に入るかもしれない】


/ノーパラドクスであります


144 : サリードの中身 ◆auPC5auEAk :2018/07/12(木) 22:32:29 ZCHlt7mo0
>>141-142

……一つ事だけに生きる人間と言うのはな、どうしてもそれに「縋って」生きている様に見えてしまうものだ
ましてやそれが、命の危険に関わる事なら猶更だ……破滅に酔うのではなく、真っ直ぐに見据えたうえで歩いて行ける……そんな人間、そうそういないものだぞ
それを悪い事と言うつもりはないが……そうして生きてる人間の中には、生きる手段と目的を、取り違えてしまう人間と言う奴が、決して少なくはないからな……

【勝算の多寡は、彼はあまり重視していなかったらしい。あくまでその生き様自体に、危なっかしさを感じたのだろう】
【まだ、彼女が順逆を取り違えている訳ではないらしい事を知り、とりあえずは安堵したようだが――――】

……なるほど。奴らと顔見知りだったのか……サリード=ヴァルマンウェ、ヴォーダン=ドグラ、シャッテン=シュティンゲル、レグルス=バーナルド、アルク=ワードナール……
知ってる名前が、いくつかあるようだな。みんな、俺の店の常連だ……そういう連中の、横の繋がりを仲介してやるのも、俺の仕事の一つだ
……暇が出来たら、君も顔を出しに来ると良い。会いたいと思うなら、割合すぐに会う事ができるはずだぞ……

【店の「変わった常連」の名を、一通り読み上げる獣人。恐らくは、聞き覚えのある名前も相当数あるだろう。みんなこの獣人の元にコネクションを持っているという】
【――――その迫力のある面体に違わず、どこか後ろ暗い雰囲気を見せる獣人だが。それでも今は、こうして穏やかな会話を交わしているのだ――――面体は別として】
【どこかお節介ながらも、面倒見のいい言動は、そうした彼の人となりが偲ばれるようでもあった】

――――残念ながら、もう行方不明になって7年は経つな。恐らく今はもう、生きてはいまい……
……人としての両腕を失って、唯一の仲間だった兄は、両足を失って再起不能、心の支えだった妹は、人としての身体を失って……それでなお、命を狙われ続けて、姿をくらませてしまった……
……まぁ、出会いの数だけ別れもある。そんなに珍しい事でもないさ

【『もう1人』の事を――――獣人は伝えるべきかわずかに躊躇ったが、そんな態度で取り繕っても無駄だろうと、ありのままの経緯を話す】
【なにやら、『魔玉』の製作者は、過酷な環境に置かれていた様で。獣人の表情にも、苦々しさが表われている――――救い切れなかったことの後悔を、背負っているのだろう】
【それももう、1つの思い出として、必要以上に重く取る事も無い、整理のついた事ではあるようだが――――】

――――或いはこうも考える。あの邪神たちは先ほども言った通り、質料と形相の実在物だ……
なら……そこを突く事さえ出来れば、特別な力など、必要ないのではないか、とな……無論、単純な力としても脅威だろうが……
実際、神性のランクだとか、様々な考慮すべき要素はあったとはいえ……たかだか能力者の数人で、神が殺せているのだ……
ウヌク……なんだったか、ウヌクアルハイ、だったか? ……奴だけは、特別に殺し方を考える必要はあるだろうが……他の邪神たちは、都度「死ななければ殺せる」……そう考えていいのではないか、とな……

――――そう、ウヌクアルハイ……「奴だけは、特別に…………殺し方を、考える必要がある。間違いなく、ただでは終わらないだろう」……

【神を殺す、確実な手段――――それを模索する中で、獣人がたどり着いたのは「敵の存在の根底を見極め、それを否定する」事だった】
【元より、情報屋としての裏の顔も持っているからこその発想とも言えたし、ある程度、そうした実在論に明るい所もあったからだろう】
【だが――――サーペント・カルトがついに顕現させた邪神は――――もう、そうした手段では済まない事だけは、間違いないようで】
【どうやれば殺せるか、どうやれば存在を抹消させられるか。そこは、彼も頭の痛い問題だったようだ――――そこに、何か苦々しい思いも、混じっているようだが――――】

/ちょっとだけ続きます


145 : サリードの中身 ◆auPC5auEAk :2018/07/12(木) 22:32:59 ZCHlt7mo0
>>141-142

――――ほう。つまり……俺の人脈でさえも、奴らに対する有効打になり得ると……そう思うと、そういう事か……?

【言葉は、更なる問いとなって返ってきた。自分が、邪神たち相手に、実力で劣る事は自覚していたが、それだけで戦力として見劣りするものでもないのではないか、と】
【先に挙げた名前たちには――――なるほど、頼りになる面々が揃っている。時に、その力を借りる事もあったが――――】

――――『魔』や『邪神』に精通しているとなれば、それこそヴォーダンやレグルス、アルク達になるだろうか……
奴らには奴らの問題もあるから、あまり深入りはさせたくなかったんだが……そうも言ってられないか
――――情報は、俺が何とかしよう……なら、対策は……奴らにこそ、練らせるべきか……?

【励ましの言葉をかけたつもりが、ふと考え込んでしまった。邪神たち相手に、今の時点での有効な対策を、仲間内で用意できるのではないか、と】
【――――実際を言えば、特にレグルスは、今それどころではないのだが。世界の方も十分「それどころではない」】
【他に抱えている『魔能制限法』関連の問題もあるが――――ここは少し、もう少し仲間たちを当てにしてみようか――――と】

――――俺は、君の事を誤解していたかもしれないな……一人、修羅の道を行く様な人間に見たが……どうやら、相応に仲間と呼べるものを、持っている様じゃないか……
地獄への道連れまでにするつもりはないんだろうが……それでも、誰かが人生のそばにいる事は、大事な事だ……

【安心したよ――――そう言いたげな微笑を浮かべながら、獣人は頷く】
【本当にのめり込んでいる人間からは、そんな「他人に向いた」言葉は出てこないものだ。彼女の目には、ちゃんと『人間』が映っているのだ――――と】


146 : ◆3inMmyYQUs :2018/07/12(木) 22:42:38 qo/HyX5s0
>>143


に、にしゅう……


【思わず低い呟きが漏れる】
【その愕然とした表情たるや故郷の惑星が滅んだことを知った宇宙飛行士さながらだった】
【そのまま呆然と探偵の言葉を聞いていれば話はますます物騒な方向へ転がっていくので】


──ま、待っ、待つにゃ!
丸腰の乙女にそんな立派なモノを向けるのは止すにゃ!

お、落ち着くにゃ、完全数を数えて気持ちを静めるにゃ、
6、28、496、8,128、33,550,336…………────


【急に弾かれたように慌てだし、何か意味不明なことを呟き始める】

【「──はちじゅうご億はっせんきゅうひゃくはちじゅうろく万きゅう千とんでごじゅうろく……」】

【五段目ぐらいで既に遠大な数になっているそれを淀みなく数えるが、】
【流石に相手の視線が怖くなったか、全て言い切るか言い切らないかのところで】
【ハッと思い出したように再び探偵へ眼差しを戻し、覚悟を決めたように生唾を飲むと――】


 ────ケーキが良ーいニャン☆


【言って。手刀を作っていた掌を、頭部へ持っていきぴょこぴょこと弄ばせた。ご丁寧に爪先も小さく跳ね上げて】
【猫がやりたいのかウサギがやりたいのか今いち判然としないが、とにかくその正体不明者は平和的交渉を望んだらしかった】


/ハッ……なるほど、お見事、恐れ入りました!


147 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/12(木) 23:01:58 Ty26k7V20
>>146

【はぁ〜〜っとサングラスの男は頭を抱えた。こんなにわかりやすい相手は久しぶりだ】
【最近はディープな世界にどっぷり浸かりすぎて、物分りの良すぎるやつばかりだったから】
【その高低差に耳キーンなるわと何処か遠くの世界のツッコミが因果を飛び越えてやってくる】

こいつなら引き金引くだけ、数えるのは1でいいんだけどね…

【それが凄いことなのかどうなのかわからないで、この眼の前の女が腹をくくるのを彼は大人しく待っていた】
【どうせ答えはわかりきっている。賭けてもいい。今日なら勝てる。だが彼は黙って待っていた】
【半ば呆れていたともいえるが、どれだけ待たせるんだ俺はあみんかというツッコミが世界線を凌駕していた】


【ということで、夜パフェ、夜スイーツなるものを看板に掲げるカフェ&バーとやらに2人は潜り込んだ】
【二十代半ばの女子が女子会なるものの最後に訪れたくなるようなお誂え向きの店構えだ】
【若さの全盛期たる女と見た目のせいで年齢プラス4ぐらいになった男。歳の差は完全に訳ありだが】
【気にしないという最強の結界がそういうもんという空気感を作り上げる。】

で?なにもん?

【着席して3秒で煙草に火をつけて、6秒でその質問を早速ぶつけてきた。丸いテーブルは向かい合わせの二人がけ】
【ちょっと明るさを落とした暖色系の店内。メニューのおすすめはチーズケーキとマンゴーのタルト。食べログの評価は3.8だ】


148 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/12(木) 23:39:26 WMHqDivw0
>>139
【ゴーストライターは饒舌に語る。否定する言葉を、自ら探すように】
【それは逃避にも似た感情の機微で有ったのだろう】
【虚神の思考など辿ったところで、人間には理解の及ばぬ話なのだと】
【緩やかに男は首を振った】


例え、ジャ=ロの正体を知ったとて、それは埒外の話なんだろうね。
彼の目的は或いは、同じ虚神でさえ、理解し得ないものなのかも知れない。


そうだね、でもヒントは描写されていた。
奴らは"我々"に宣戦布告をしたのだから。


【男は滔々と語る。その"我々"と言う言葉は、きっと、この組織のことでも、この世界の能力者達のことでもないのだと、思わせるように、それはまるで他人事のように聞こえる、枠組み】
【まるで、男の方が悪魔だと、そう語るような言葉は称賛か皮肉か】


そうだね――その思考を追うのならば、君の世界で最後に起こった、この世界で最初に起こった"何故"を辿ってみよう。
何故、彼らは満足しなかったのか。
君達の世界を滅ぼし、人間を滅ぼし、確かに虚ろの神として顕現せしめたのに、何故また"ふりだし"からやり直してまで、この基底現実にまで足を運んだのか。

ああ、でもそうだね。きっと多くの人間に取って、これは関係のない話だ。
もしも強いて関係が有るのだとしたら――それは君だけだろう。ゴーストライター。


【感情は篭っていなかった。いつものように、ただ事実をカードのように並べて、男は語る。目の前の顔のない男から、更なる疑問が有ればきっと応えようとするのだろうが】
【ふと、場違いな音が鳴った。それは男の電話だった】
【男は急速に、平凡でややうだつの上がらない声音へと移り、電話の声を聞く】


はい。……パグローム?
何か報告かい?
……は?蜜姫かえでと交戦した?殺すなって命令したよね!?
いや、殺さなかったとかそういう話じゃなくて。


【電話に向かって、情けない声が上がる】
【別段パグロームが特段聞き分けがないと言うことでもなく、この組織は結局社会不適合者の集まりで、組織の長たる男はそれに振り回されているのが常だった】


もう……分かったよ。それで他に報告が?
……ん?ゴーストライターに伝言?


【しばし、話込んでいるようだった。何度か話を頷きながら、やがて電話を切って】


話の途中だけど、パグロームから伝言が有るよ。
蜜姫かえでと――彼女を保護している外務八課について。


149 : アレクサンデル・タルコフ ◆ZJHYHqfRdU :2018/07/13(金) 15:42:22 IBKicRNQ0
>>64
【この司祭は、自身が出会ったサーバントのことは全て記憶している。因果が遡ったこの時も、それは変わりなく】
【生きて共に儀式へと向かう信徒も、殉教してウヌクアルハイ様と一つとなった信徒も等しく】
【ましてや、一信徒からこの若さでオフィウクスにまで上り詰めた彼女のことを、忘れていようはずもない】

【自身が執り行った儀式においても、彼女はひと際に篤い信仰心を示した】
【蛇に赦されたい。ただその一心が、そこにあった】
【そう、確かに彼女は司祭の言葉を受け流した。彼女にとっては蛇に赦しを得ること、教えに殉じることこそが本懐】

【そして現実においても、今この時の奇跡の狭間においても。同じように司祭は穏やかに微笑むのだ】
【今起きていることを知ってか知らずか、震えながら泣きながら頷く彼女を、控えめに促して施設内を進む】


【談話室から去っていくサーバントを見送る。引き留めはしない。お気を遣わせてすみません、などと声すらかけて】
【そうして、いつぶりかの。まだ司祭が存命だった頃、最後にこうしたのはいつだったか。同じテーブルで向かい合う】
【足元の靄が消え、四肢無き身体で器用にバランスをとって椅子に座る】

【彼女の好みをある程度は把握していたか、コーヒーは砂糖とミルクを入れてあった】
【神は許す。皮肉にも、かえでが憎んでやまないはずの、鈴の音の少女のやさしさが、その喉を潤す】


ムリフェン殿。貴女なくして、儀式の成功はあり得ません
儀式を取り仕切る身といたしましては、貴女の心身を無視するわけにはいかないのです

――――〝まだ、終わっていないのですから〟。そうでしょう?

【そこに、穏やかな笑顔はなかった。口元を引き結び、正面から彼女のマゼンタ色を見据える】
【因果の果て。かえでの存在。どこかの誰かの、大雑把なやさしさ。それらが、今この場の司祭に知らせていた】
【この時間が奇跡であることを】


150 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2018/07/13(金) 16:40:21 IBKicRNQ0
>>26
【流石の虚数渡りも、人の肉を口にする趣味はないだろうと肉屋は見ていたが、真実はいずこか】
【今は、この場に関わることではない。異形の肉屋の、意外な料理の腕もまた同様に】

場数を踏んだがゆえの感覚ということかね。カルト狩りで場数を踏むなどと、そうそう出来ることではないだろうな
ふ、ふ。全くだ。人間は自分に都合のいいものを信じたがるものではあるが、それにしても狂信者のそれは蒸気を逸しているよ

先輩、か。少なくとも、そちらの方が年齢は上のようだが
盗賊なのでね、忍び込む先を選んでいるようでは稼ぎにならない

……答え合わせ、か。そちらの方こそ大したものじゃあないかね。もう彼奴等について何か掴んでいるわけだ
ふっふふ!! 噂の蛇教のアイドルだ、時間があれば握手の一つも頼みたかったな。勿体ないことをした

……ああ、じつに〝元気〟だった。まだ何一つ、諦めてはいなかったよ

【マゼンタの色を思い返しながら、そう答える。あの目に秘められた、底なしの意志と信仰を】


表と裏、か。言い得て妙だ
そもそも人知の及ばぬ存在を神というのだろうに、こちらの見方を押し付けることが間違いだろうな

連中が求める神について個人的興味はあるが、確かにこの場のテーブルに乗せる話じゃあない


……これは一本取られたな。その通りだ。そもそも、自ら虚神などと名乗る連中だ
彼奴等をバカにしながら、私も知らず知らずのうちにその認識の檻に嵌っていたわけか

人知の及ばぬ存在を神という。己の目的のために行動し、そのために他者を陥れる彼奴等が、神であるものか
我々と同じ、ただの悪党だ
(そうだ……アーグさんの教えの通り。所詮は異教のハリボテだ)

【精神もまた、鍛えることが出来る。あるいは、変質させることが出来る】
【集合的無意識からの隔離。それはまさに、あの虚ろの神々に対抗する最大の武器の一つだろう】
【虚神を滅すためだけに作り出された、その恐るべき精神は肉屋の邪悪をも呼び起こす。その利己的な精神を】
【あんな奴らが神であるものか。そう言い捨てられる傲慢さを】

【同時に、今は亡き大司教に授かった歪んだひそやかな信仰心を】


出来るとも。彼奴等とて、その有象無象の一つに過ぎない。新世界にいくらでも湧いて出る羽虫だ
そして、過去に湧き出した自称神々は、揃って同じ末路を辿った。それが事実だ

ふむ……確かにあの大聖堂での戦いの時、ジャ=ロは実体化した。レッド・ヘリングと同じように
わからない、というだけで暴きさえすればやりようはある。そう言うことだな


死に至る道を舗装するといったところか? どうにも掴みどころのない話だが……
身近なモノが正体、か。神の皮を被った隣人。なるほど

それは愉快な話じゃあないか。自称・神の皮を引っぺがしてやるわけだ
レッド・ヘリングがスライムを囮に自分を覆い隠していた、建物もどきだったように

だが、彼奴のねぐらとなると……この空間に存在するのかね? それは


151 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/13(金) 20:57:51 v1BMtSGA0
>>148



【── それは、と彼は言葉を飲んだ。それこそ果てのない話であった】



【満足しなかったから、と思った。虚構現実を潰しても尚、彼らは満足せず、基底現実をも侵食する】
【けれども、言葉にはならない。── 喉元まで上がってきた言葉を飲み込んでしまう】
【そうじゃないと、心のどこかで誰かが笑う。自分の中の別の自分が言う様に】



     ・・・・
──── そうする必要が、あったから。



【ゴーストライターの呟きは聞こえただろうか。すぐ様次の言葉に思考が移った】
【パグローム、脳裏に浮かぶ虚数渡りの顔に僅かな思慕を寄せて】
【ああ、と呼応する言葉が先に出た。その意味を辿って】



── 私に伝言か、大丈夫。聞こうか


152 : パグローム ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/13(金) 21:54:37 WMHqDivw0
>>150
オマエが、こうして肉屋と悪党を兼ねるように、趣味と仕事が人生を愉しむコツだろ。
俺はそれがどっちも狩りだってだけの話さ。

【目の前の男にとって、果たしてどちらが本業でどちらが趣味なのか――或いはどちらも兼ねているのか】
【確かなのはどちらが本業でもおかしくないぐらいの腕は持ち合わせていると言うことだけだ】


ホウ……?
ソレハソレハ……一度俺もご挨拶に伺うとしようか。

【カニバディールの言葉に、男は珍しく静かな様子で返した】
【先のマルタでの結果を思えば、折れていてもおかしくはないと思っていたが、諦めていない、とは意外なことだ】
【しかもそれを引き出して来るとは】


悪党ってのは概ね情報屋を兼ねるモンだねェ。
マスコミが悪党だらけになるワケだ。

それにしても……ククッ、ひょっとしたら、ここの肉屋にでも並んでるんじゃないかとも思ったガネ。
あれだけ中身がグズグズになっていたら食指が動かなかったかい?


【恐らくカニバディールは彼女を殺してはいないだろう】
【確証を持って言った訳でもないのだが、もしそうだったのなら間違いなく店頭に飾っていただろうと、そんな予想が有ったからだ】


能力者の中すら、『異界の神』と戦うつもりのヤツが多い。
そう認識してたのなら、それは神狩りになる。連中の使うトリックの一つだ。
中々良く出来た仕組みだがねェ?

もっとも神すら殺せると言い切るような連中も多そうだから、一概に間違ってるたァ言わないが。


【眼前の男が抱えた微かな信仰心に気付くことはない】
【せっかく、悪党が二人揃っているのだから話はもっとシンプルに進めるべきだろう】


実体化の問題についちゃいくつか対策は有るが――塒に挑むのもその中の一つだ。
何だかんだ言って、ヤツの定義が出来なけりゃ、滅ぼし損ねる可能性は有るってこった。

レッドへリングと同じアプローチだが、元から禁書が出回ってた奴とは違い、ジャ=ロはその本質さえ分からない。
それを探ろうってハラなんだろうが――勿論、こちらの世界にゃ存在しねェ。

行き来させるのは俺が出来るんだが――虚構現実ってのは、自己存在の認知が明確にできてねぇと簡単に変質する。
行って戻ってきたら、身も心も全く別人に――ならまだしも、人間でさえなくなってる可能性も十分にある。

それを防ぐための施策をウチの組織が造った。
――安全な保証なんぞ毛ほどもないがねェ。

【ちなみに俺は留守番だ。と男は口にする。平然としていて、実働から外されたことは不満ではないらしい】


オマエはどうする?カニバディール。


【口調は軽い。無理に誘う意図が有る訳では無いようだ。行きたいなら連れて行く、と言う程度のニュアンスで】


153 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/13(金) 22:09:46 WMHqDivw0
>>151
【"そうする必要"とは一体何のために?】
【つまるところ、世界の終末すらも、あの男に取っては過程であり、手段に過ぎないと言うこと】
【"何のために?"】

辿り着くために。
もしくは帰るために?
奴らがどう認識しているのかは分からないけれど、"グランギニョル"を神話として、真に体現するには、それは必要なことなんだろう。

しかし、その軌道上にこの世界の滅亡が含まれている以上、どうあれここで仕留めなければならない。


――伝言を話そう。

蜜姫かえでとパグロームが交戦したらしい。
結果は、痛み分け――と言うか、まぁお互い深刻な被害はなかったようだよ。

【少なくとも、虚構現実の出発には支障はなさそうだと、まずは気になるであろうところを補足した】


蜜姫かえでは、未だに蛇への敬虔さを喪っておらず、白神鈴音の排除を目的としている。
ジャ=ロに取っての手駒の一つであることは、想像に難くないだろう。

――なのに、能力を封じられることもないまま、一人で、街中を歩いていた。


それは、外務八課が許可したのか?
君から聞いたゴトウと言う男はそこまで甘い判断をするとは思えなかったけれど。

勿論、それも何某かの作戦の一環だと、解釈できなくはない。
或いは、外務八課がジャ=ロの傀儡となっているとも想像できなくもない。


けれど、素直に考えるなら――内通者、或いは裏切者がいる可能性がある。


この情報をどう扱うかは君に任せる。
杞憂だとあしらうも良し、慎重に不安要素を排除するも良し、敢えて泳がせて事を確認するも良し、だ。

ただし、虚構現実の道行き――十分に用心して欲しい。


154 : ◆9VoJCcNhSw :2018/07/13(金) 22:27:14 wn2rqSVw0
>>95

【「もっと素敵になれるかも」――そう言われると、自然とやる気が出てくるのは何故だろうか】
【"素敵"という言葉に漠然とした興味を惹かれたから、かも知れないし】
【もっと言えばおしゃれというものに、少なからず目覚めたのかも知れない】
【反対に、敬愛する母親がそういうのだから、なんていう盲目的な物の可能性だってあったが】

【まあ、それはそれ。幼い子供の取っ掛かりとしては悪くない手応え】
【親の別な衣装も見てみたいと言い出すのを聞けば】
【その手応えが間違ったものではなかったとも分かるはずで】

【やがて手を引かれながら一緒に店内を歩いてみれば】
【さきほどまでは全部いっしょに見えていた衣服も、何かと違いが分かってくる】
【色使い、男女での衣服のデザインの差、「カワイイ」と「カッコイイ」】
【母が手に取った服を見て、自分の選んだものが後者であって、そして】


……はーはーうーえっ。


【自分が赤のリボンを選んだならば、母が選んだのは白のロングガウン】
【肌の露出が少し減って、淑やかながらも何処か闊達な印象が残りそうな】
【そんな姿が目に浮かぶようで。ふと思うのは、やはり「見てみたい」という気持ち】

【待ち切れない――そんなふうに、少しだけ寂しそうな、甘えるような】
【どうとも取れそうな少女の声で試着室の貴女を呼ぶのだった】


155 : ◆9VoJCcNhSw :2018/07/13(金) 22:27:37 wn2rqSVw0
>>126


分かった、もう結構だ。


【鍛え上げられた青龍刀が振り抜かれ、ゴトウの身体を両断する】

【――などという事をするほど、このジルベールという男は気が触れてもおらず】
【むしろ求めたところを隠すことなく――少なからず曝け出した眼の前の相手に】
【それこそ行為を示すようにニヤリと大きく笑んでみせて】

【敵意は無いと示すように両手を拡げ、当然そうなれば青龍刀の柄からは手も離れる】
【やがてクツクツと笑いながらその手は腰へと当てられて】
【困ったものだと言うように首を横に振りながらしばし俯く】


〝金〟も結構、〝平穏〟も結構。それを手に入れるために俺を利用するのも大歓迎だ
結果的に、それが俺の障害とならないのなら好きにすれば良い。
俺自身そうしてきたし、これからもそうするつもりだからな。

……アンタからは、俺と似たような"匂い"がする。
上手くやろうじゃないか。合理的に、功利的に…――改めてよろしく、後藤椋持。


     六罪王、そして"円卓"の王。俺が、ジルベール・デュボンだ


【差し出すのは右手。金貸し、合理性と信頼を尊ぶ男。路地裏の噂通りとも言えた】
【"王"という称号を煙たがりつつも、それから逃げもせず受け止めるだけの器量もある】
【少々荒くれの基質が残る事と――負の能力が、玉に瑕だったが】

【「さっきみたいなことはもうしないさ」と、手に触れても問題は無いことを口添える程度には気も利くらしく】
【事実、手に触れても先のような事は起こらない。暖かく、大きく、ゴツゴツとした掌の感触があるばかり】

【――応じるにせよ、そうでないにせよ。やがてその手も離したならば】
【周囲には俄に沈黙と喧騒が戻るだろう。元の世界に、帰ってきたような】
【人心地吐くような感覚。ジルベールは今しばらく、この人身売買の場に残るような様子を見せていた】


156 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/13(金) 22:35:42 v1BMtSGA0
>>153

【 『蜜姫かえで』 ゴーストライターは一人苦悩した。こうなる前にコンタクトを取っておきたかった】
【少なくともパグロームと交戦したという事は、敵対関係にあると考えて良い】
【── "外務八課" に対する不信感は、無かったとは言えない】


……悩みの種が増えたな、しかし、元より不安ばかりの旅ではある。
0が1になればそれは憂慮すべき事態だろう。けれども、最早不安など見渡す限りに広がっている。
私はもう迷わないよ、ボス。── 次会った時には、もしかしてら元の顔に、……

いや、── そこまで望まない。ただ一言、私の名前を、本当の名前を伝えたい。
ボスには世話になった、私がたった一人、この世界で頼れた相手だから
…………そんな相手に、名前も呼ばれないなんて、寂しすぎるじゃないか


【彼らしくない言葉だった。音律の中に哀愁があって、残った響きは何処までも切なく】
【自嘲気味に笑う、その取っ掛り。表情が見えないから、推察も出来ない】
【けれども、信頼だとか、信用だとか、近い言葉はその響きに残っている】


私は誇りに思う。虚数の海の中から、貴方と出会え、そして言葉を交わせた事を
旅路に先が無くとも、私の居た証左をこの世界に残せるのなら、悔いはない
── 明日私は逝く、願わくばその先に、未来があることを


【ゴーストライターの身体が透けていく、再び文字列へともどるように】
【伝える言葉があるなら、今のうちだろう】


157 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/13(金) 22:52:14 WMHqDivw0
>>156
【男は、顔の無い彼の言葉を最後まで聞いていた】
【それは終わりの見えた小説の文面を最後までなぞるのに似ている】
【或いは、別れの言葉でもあるようで】
【――不安が有るのか、覚悟を決めたのか。ないまぜとなった感情は虚空のような仮面に隠される】

【何もかもをフィクションとされてしまった世界の最中、フィクションの殻を纏って尚、男の前に姿を現した彼と】
【決して互いの全てを明かすような関係ではなかったけれど、そこには奇妙な信頼が結ばれていたのだろう】


【だからだろうか――柄にもなく、感傷的な言葉が出て来たのは】


――ああ、私も、それを楽しみにしているよ。
良い旅を。


【最後の挨拶も、どこまでも平凡なものでしかなかったけれど】
【名前を呼ぶことはなかった。次の呼ぶならば、彼がそう言ったように、本来の名で在るべきだろうから】
【――次に、呼ぶことが出来たならば】


……もう、良いよ。手間を取らせたね。


【男の言葉は、先程までいた外套の男へのものではなく、今までこの場所を隔離していてくれた相手へと向けて】
【停止したように静寂を保っていた、そのラウンジは、また慌ただしく動き始めた】
【男は珈琲を一口飲んだ。機械の入れたそれは苦味ばかりが目立つ、単調な味だった】


ああ、でも、きっとそれはとても難しいことなんだろう。
私と君が互いに名を呼ぶことができないのは、真逆であり、同じ理由なんだから。


【男は祈らない。神頼みは最も縁遠い言葉だった。彼の行動にはそれに相応しい結末が、きっと用意されているだろうから】


158 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/13(金) 23:17:26 v1BMtSGA0
>>157



【──『良い旅を』── か、】



【素敵な言葉だと思った。現実の締め括りには丁度いい。確かな世界から不確かな世界へ、詐りを以て憚りを託す】
【顔の無い男は微笑んだ。── 其れは微笑みの名残だったのかもしれない、或いは、】
【言葉はもう無く、次の瞬きの先には再び誰も居ない世界に満ちて】



【── 彼らは逝く、別の現実へと、進んでいくのだから】


/お疲れ様でした!


159 : 名無しさん :2018/07/13(金) 23:23:21 /WBGx7SM0
>>149

【けれど――あるいは、"それでもなお"、あの神はこの少女を救わなかった。小さな奇跡を繋ぎ合わせ、因果の中、彼の気遣いに喉を潤すことを赦しはしても】
【少なくとも少女自身は決して救われたと思っていないし、思えるような結果はどこにもなかった。だから惑ってしまった、そうして、きっと、一度立ち止まってしまった】
【小さな声で何度も謝ってしきりに涙を拭うのに涙はちいとも止まってくれやしないから、掌はすっかり濡れてしまって。コーヒーカップ、取り落としそうになるけれど】
【なんとか我慢して口をつける、――あったかかくて、甘かったから。それでまた泣いてしまうんだろう、ぎゅうと身体を小さく縮めて――】

【(――あるいは何か救ってあげられない理由があるみたいに。だからこそせめて、せめて、――せめて、と、何かを、必死になって祈るみたいに)】

――――――――――――――――――――私は、

【――思わず溢れ出てしまいそうな叫びを必死になって押しとどめた。まだ、終わっていない、――その言葉に過ちはない。過去でも未来でも、出来事は、終わってない】
【彼の知る世界ではまだ起こっていなくて。彼女の知る世界では、もう一度、やり直すから。ぎゅうと唇を噛む、見据えられる視線に、けれど、マゼンタは向けなくて】
【めいっぱいに涙を湛えた眼は、きっと彼の胸元のあたりを見ている。目も合わせられないと呻くみたいに。――膝にそろえた手は丁寧なんじゃなくて、ただ、怯えた様子で】

――――、私は、どうしたら、…………。

【結局、彼女は彼の言葉に答えなかった。というよりは――そうすることが出来なかった、ように見えて】
【呟く声はひどく小さくか細く惑ったもの、真っ暗闇の中で独り取り残されてしまったみたいに、遠くに見えていたはずの明かりすら、かき消されてしまったみたいに】
【であれば尋ねる声は――なんでもない、ただ、二人の人間としての質問にも似ていた。立場が違ったら親子とも呼べそうなくらいに年齢は違っていて、ゆえに自然であり異質でもある】

私は……、……その場に居ることが、出来なかった、そのために、そのためだけに、生きて来た、はずだった、なにもかも……なにも、かも、
それなのに――……正しいことだけしていたかった、なのに、なのに――っ、私は、――――だから、だから、ウヌクアルハイ様は、赦して、くださらなかったの……?

【――そして何より、この少女がこんなふうに惑うなど、あってはいけないことであるはずだった。叱責ではもはや足らぬ不敬のありさまが、涙を伴って溢れ出たなら】
【けれどどうしようもなく真摯なのだと伝えるのかもしれない、――――だっていくらかの間を空けて続く言葉は、その実態は、限りなく悲鳴に等しく、絶望的であるから】
【彼女は"何か"の結末を知っている。知っていて。ひどく悔いている。だからずっと泣いているんだろう。何かに――誰か、に、ひどい引け目を感じて。ゆえに怯えるんだろう】

【――――――彼女はひどく臆病だった。少なくともここに来た当時、彼女は限りなくごくありふれた少女であった。個性が如何と言う話でなく、あくまで一般人であった】
【個性の話をし出したら、それは、まあ、いくらかは変人気質だったとは言われてしまうだろうけど――それでも当たり前の感性を持ち合わせて、当たり前に生きてきていた】
【そうしてここにたどりついて――少女は臆病な自分を一生懸命に信仰で塗り重ねて補強した、救われたいから。赦されたいから。もう二度と喪いたくないから】
【そのためなら人体実験の様相を呈す"修行"にも耐えたし、実験用の小動物にさえ憐れまれるような"儀式"にも耐えた。そうやってここまで来た。"来てしまった"?】

【――きゅう、と、喉を鳴らすような吐息。こんなの言ってはいけないって分かっているに違いなかった。一生懸命押しとどめようとして、けど、駄目だった顔をしていた】
【ここが因果より断絶された空間だから、ではない、――きっと、これが本当の世界だったとしても、きっと、彼女はそれを我慢できなかった、と、思う】
【このやり取りを世界中の中で彼女以外の誰も知らないんだとしても、――――リセットボタンを押せばいいからってわざとふざけて選んでみる選択肢であるつもりは、ない】


160 : ゴトウ ◆1miRGmvwjU :2018/07/13(金) 23:27:52 o6XMS57s0
>>155

【 ─── 恐らく、"只では"死ななかった。そういう男だった。と言えども、ジルベールが道理と信義に適った選択をした以上、隠した爪が振るわれる事も無かった、が。】
【ともあれ、どこか安心したように後藤は息を吐いた。微かに無精髭を俯かせて、喉の奥を鳴らすように笑う。微かに嗄れた声だった。それでいてひどく落ち着いてもいた。】
【そうして再び顔を上げれば、矢張り後藤は笑っていた。胡散臭く、焦茶色の瞳を濁らせて、気怠く口角を吊り上げて。】



「有難うございます。いやはや、何と感謝の言葉を述べればよいか。 ……… 無論のこと、おれから貴方を阻むような真似は致しませんとも。」
「 ─── やあ、然し。」「似たような匂い、ですか。お褒めに預かり光栄です。 ……… おれも、貴方とは上手くやれる気がしています。ジルベールさン。」


        「どこにでもいる、ただの公務員ですが。」「 ……… 小悪党らしく、小狡く働かせて貰いますよ。」


【 ──── 流石は"王"の器であろう。後藤の本質はきっと見抜かれていた。即ち、 ── 極端なまでの合理主義者。自身の目的を達する為には一切を躊躇わない。時として反目する人間とさえ手を組み省みる事はない。】
【そしてどこか、何処までも軽薄そうな立ち居振る舞いを基礎の気質としながらも、決して踏み入らせぬ所があった。それが露わになるかどうかは、解らないけれど。】

【恭しくも力強く、差し出された手が握り返される。櫻国人らしく些か小さな、そしてやや骨張って、 ─── 然し、武器の握り方を知っている手だった。】
【あくまでジルベールが離そうとするまで握るのだろう。それでいてその瞬間が来るのなら、ごく自然にするりと指は抜けて、また笑っている。】


「さて、 ─── お約束とご信頼に答えられるよう、きりきり働かねばなりませんね。」
「丁度ウチの部下が一人、キナ臭い奴を見つけたんですよ。」「円卓の席に座っておきながら、貴方を快く思わない。忘恩の徒だ。」
「 ……… 先ずは、そいつを血祭りに上げますよ。」「まあ見ていてください。2週間以内に大きなニュースになります。」「貴方に従う者にとっては警告であり、そうでない者にとっては宣戦布告、ですよ。」


【 ──── 椅子の脇に置いていたアタッシュケースを手に取り、跳ねるように後藤は立ち上がる。ごく自然な口ぶりと微笑で、あまりに物々しい"予告"を添えて。】


「近いうち、またお会いしましょう。」「どうか御自愛ください。おれもそうしますから。」


【恭しくも、どこか戯けたような一礼を、深々と向けて ─── すれば、踵を返そうとするのだろう。】
【"音もない"足取りで、この会場から、この商談から立ち去ろうとする。それはきっと彼の作法であった。】


/だいぶワガママに無茶を重ねてしまいましたが、こんな感じでシメでいかがでしょうか…!


161 : ◆wEoK9CQdXQ :2018/07/14(土) 07:51:55 yFMznYO20
>>144-145

【“縋る”ことがあるとすれば、守れるなにかがまだ残ることだろうか】
【流血を愛することのできる性質であれば、彼の危惧した状態にもなり得たのかもしれない。むしろ忌みながら、それでもと、戦うことを欲し続けて】

【だからこそ。挙げられる名の数々は、過去から今を繋げ、そして未来を想わすのに十二分なものだったのだろう】

……そんなにも、沢山の人たちの憩う場で過ごしているのね。それを守る仕事……か
……ふふっ。その酒場で交わされてるやりとりが、今から楽しみになってくるわ。

八攫 柊。それが私の名前。
今名前が挙がったうちの何人かは――――きっとまだ覚えてくれていると思うわ。

【知る名前が出る度に瞳に光が躍って。穏やかな表情が、幾重にも咲いてはどこかあどけなさを残して感情を伝える】
【結べる絆の重みは、きっと計り知れぬほどにも大きく、失いがたい。再会の喜びは、彼らがこの名を覚えていたのなら、いや増すのだろうとまた、知らずのうち笑みが零れていた】
【ならば喪われたものの胸裏に残す風穴も、人の常として、相応に大きくて】
【表情に走る痛みは、他者の痛みを厭うゆえのものか。水晶のクラックが透けてみえるよう、澄んだ相貌に滲むものがあった】

……ごめんなさい。

ひどい集団は……いつになっても、蔓延り続けているものね……――――

【気休めの類を口にせず、言葉は、『魔玉』の提供者とその親族たちを追いやった者たちへの嫌悪を零して】
【聞くも痛ましい所業と、行先の知れぬその人物の、僅かでも救いのある“その先”を願うようだった】
【消えない後悔は、変えられないものに基づくものだから。無暗に触れることなく、胸中に刻み込みながら続く言葉に、温かな安堵の気配に応えて】

……弱点を見出し、それを突くことが肝要――けれど、死にさえしなければいつかは斃せる……――――。
長生きすると、脅かすのも安心させるのも上手くなるのかしら。
“安心される”ことが、こんなに人を落ち着かせる人はそういないと思う。

……私に、守りたいものがもしもなければ。もしかしたら、とっくに死んでいたのかもしれないわね――――

【楽観的だが、決して間違いじゃない言葉を受け取る。ウヌクアルハイにはこの瞬間には触れずに】
【年の功とでも呼ぶべき、彼の包容力に――己にさえ届く在り方に、柔らかに驚きを言葉にする】
【そして“誰かが人生の傍にいる”ことの大切さに同意して、生存という得難いものの連続に思いを馳せた】
【年若い者たちへの接し方は、きっと彼の生き方そのものだろう。ならば、戦う理由はそこにあるのかもしれない】
【少しの逡巡。覗く善性だとか他者を想い、戦う姿勢は、彼が間違いなく信頼できることの証と思えて】

【意を決した様に口を開けば、「少し、長い話を聞いてくれる?」と前置きし。ものの捉え方のレベルでの、邪神たちへの対抗策の可能性に触れるだろうか】


162 : ◆wEoK9CQdXQ :2018/07/14(土) 07:52:23 yFMznYO20
>>144-145

『財団職員へのオリエンテーション』――――

レッド・ヘリングの本体であったあの工場にあった、ひとつの資料を貴方は覚えている?
あの資料の中での虚神たちの命名法則に、その脅威と。
だからこその、打倒への道を仄めかすものがある様に私には思えたの。

第一に「脅威となる手段にして、欲望する事象」、第二に形相、第三に象る容(かたち)――――これらから奴らのオブジェクトクラスは成る。

……ただの仮説として聞いてほしいんだけれど、符合する部分もまた存在してしまうのよ。

“貪欲”さを以て信仰を喰らい続けた〝虚飾〟の非存在(ばけもの)――レッド・ヘリング。
現実を“拒絶”することで損傷を無化し、無謬であることに餓え続けた〝輪廻〟の蛇――アナンタシェーシャ。

レッド・ヘリングには餌食が逃げ出し、その欲望がただの餓えに
閉鎖環境の幻が、ただの消え行く影に変わることが致命的で――

ただの歪みきった工場のカリカチュアという、虚飾を取り去った真の姿を晒させることが、
天井を砕き、脱出口を開き……全てを白日の下に曝すその経過により達成された。あとには、貴方も見た通りの決着があった。

アナンタシェーシャは加害という行いを為し、その経過と帰結は、あの蛇が望んだ出来事を含んだからこそ拒絶されることはなく。
それを以て、〝輪廻〟の繰り返しが抑止された。
或いは如何なる罪をも許さないからこそ、自分の下す断罪を絶対とするほかなかったのかしら。……今は、確かめ様もないことだけれど。

……そうして対策を考えていった際に、どうにも行き詰まる名前がある。

【傍証は少なく、言葉はひたすらに言葉でしかない。けれど獣人が当初より求めようとした“武器”たる、無形の刃に僅かでも繋がるのなら】
【こんな言葉の群れにも紡ぐ意義はやはりあって――けれど思い描く“もしも”はその意義をこそ、新たな危惧に変えていた】


163 : ◆wEoK9CQdXQ :2018/07/14(土) 07:52:56 yFMznYO20
>>144-145

〝Bacikal(顕現する無神論の神)〟――虚構神グランギニョル。

その最たる脅威とは、あまりにも対策を練り難い〝顕現〟の法そのものである……――今の時点では、私はそう考えているわ。

……“虚構神”もまた、自らの形相が質量と結びついた際に力を得るはず。つまり、“神がいないことで顕れる”んじゃないかしら。
けれどそうして顕れた存在の形相――“神の不在”を打ち砕くためには、どんなものであれ“神”が必要になる。

私達の勝利を前提に顕現し、〝勝てた〟からこそ斃せない存在として君臨する怪物――
それを顕現させないためにこそ、虚神たちの維持と管理という手段を、かつてのINF財団はとろうとしたのかもしれない

……規模こそきっとまるで違うけれど。
そんな悪辣極まりない存在を、別口で知っているからこそ、こんなにも悪趣味な可能性を考えてしまうのかしらね――――……

【“顕現”自体が脅威である虚神たちにあって、敢えてその言葉を銘に加えることの意味。】
【それは、ケバルライ――ジャ=ロのように、〝実体としての依代との縁以外の、何らかの理〟によるものではあると柊は考えていた】
【そして無神論の理、〝破壊〟ではなく〝管理〟という手段、虚神たちにとっての神という無二の呼称――加えて彼女の知る悪辣な〝類例〟、】

【そうして仮想される神など、顕現自体が矛盾の極致だろう。それでも、そんな途方もない幻想の怪物たちを相手取るのだと識ればこそ、その対策までが思案されねばならず】

【……個別の対策を練るのでなく。およそ虚神という種が避け得ぬものとして持つ性質から、滅ぼす手段を求めようとしたのは】
【斯様な突破不能の形相までも排除する術を求めたのも、その一因ではあるのだろう】

【守り通すために、奪わせぬために。空回りしようと、きっと構わないと、果てなく力を尽くすからこそ、】


164 : ◆wEoK9CQdXQ :2018/07/14(土) 07:53:18 yFMznYO20
>>144-145
【手段は、その主要な一つたる闘争に限られるものではなかった】

単に考えすぎているのかもしれないし、単に〝虚神〟たちの最上位者としてあるだけなのかもしれない。
それでも虚神を滅ぼし尽くすことが、最後の引き鉄になる可能性を――頭の隅ぐらいには留めて置きたいと思うの。
斃すことなく無力化できるなら、そして、その状態を維持できるなら……

……必ずしも、戮し尽くすことだけが手段じゃない。それに
今の〝ウヌクアルハイ〟――――……白神鈴音の幻に向けた言葉を、嘘にしたつもりも私にはない……。あなたに、それを手伝えなんて言う気はないし言えはしないけれど。

【彼女を願う者があるから、その想いを汲む。それを意味する言葉を紡ぐ柊は、】
【彼の苦る思いの正体を、ジャ=ロの策が成されたこと程度にしか推測できていなかった】
【……ならば、〝ウヌクアルハイ〟の生存を許容し――望みさえする様な言葉は、そこに焼けた針のような刺激をも与え得るものだろうか。そして、】

……ごく近いうちに。
虚神たちによって滅ぼされた、或る世界に渡ろうとする動きがあるという噂を耳にしたわ

得られる限りの情報を持ち帰ることは勿論だけど、私には〝戦い方〟を模索する必要もある――――
辿り着けたならそのために、打てる限りの手で対策の築き方を考えてみるつもり。
……もしも、僅かな手掛かりでも得られたとしたなら。

そのときは――――その目利きの知見と。積み重ねた絆の導く、答えへと近づく力を貸してくれるかしら
私は――自分が何者になろうと、武の道を外れる選択肢であろうと――きっと、こんな風に手段としてあるはずだと思うから。

【無視できるものでない、けれど不完全な――補遺を要するかもしれない旅路の情報と】
【決意し、同時に――幻視される虚神たちとの闘争の果てを、今、〝変わろうとする運命〟にする】
【……絶対にとりたくない選択肢でも、きっと選べてしまう〝災いを断つ兇器〟。足を停めないからこそ、先が闇であろうと、躊躇うことは出来ず、許されなくて】
【〝ひとりで闇を歩もうとする自分を識るから、せめて己と、共闘おうとする彼らとにある勝算を、少しでも大きなものにしたい〟。】
【彼女なりのその努力のしかたは、応えてくれる誰かを絶対的に必要としていた】


165 : ◆wEoK9CQdXQ :2018/07/14(土) 07:55:04 yFMznYO20
/以上4レスです。長すぎ…でした…orz…ッ


166 : アーディン=プラゴール ◆auPC5auEAk :2018/07/14(土) 11:45:26 ZCHlt7mo0
>>161-164

……今の時代、酒は人生最後の逃げ道だからな……まぁ、奴らにとっては、そんなネガティブだけでは終わらない。少し意味の異なるものだが……
人の事を言えた義理じゃないが……変わり者は変わり者同士、通じ合うものがあるんだろうな……別々の繋がりだったはずが、すっかり意気投合してしまって……
――――八攫……八攫 柊、か……俺は、アーディン、アーディン=プラゴール……水の国の酒場『Crystal Labyrinth』の、用心棒頭だ……
或いは『仕置きの猫又』なんて響きの方が、通りがいいかもしれないが……改めて、よろしく頼む……

【今の時代、たとえ「いわゆる普通」に生きていても、何かに巻き込まれて命を落とす事は、もう珍しくもなんともない。人にとって日常とは、危険が罠として息を潜めているものになってしまっている】
【そんな時代だからこそ、酒を飲むというのは特別な意味を持つのだと、獣人――――アーディンはいいつつ、己の名を名乗る】
【『仕置きの猫又』――――水の国の一部地域で、非合法な行いを独自に自治している、任侠系ギャングの二つ名だが、それに聞き覚えはあるだろうか?】
【子供が絡む犯罪と、依存系薬物の絡む犯罪に対しては、残虐極まりない制裁を行い、ガラが悪いながらも「安心できる夜の街」を守っている、ギャンググループのヘッド――――それが彼らしい】

……もう、今じゃ価値のない、古い情報だ……1つだけ、彼女たちの事を教えてやるとだな……その「ひどい集団」は、その兄妹たちの、父親の手勢なんだ……そして奴らは、活動こそ低迷したが、まだ確実に存在している……
あいつらが生きてた事実、その断片だけでも良い……頭のどこかに、ひっかけておいてくれると、慰めになるだろう――――俺の勝手な願いだがな……

【八攫の心に、余計な負荷を与えるつもりはないのだが――――ふと、過去を悼む思いが、そんな付言を口にさせていた】
【3人の人間を追い詰め、そしておそらくは、この世から消し去ってしまった連中と言うのは――――何のことはない、それも家族の行いだったのだ――――と】
【そこに至るまでの、詳しい経緯――――『哲学者の卵』の破壊に、最も近づいていた人物の1人だった事や、かつて水の国の戦乱の1つの、大きな原因になった事は、伏せて――――】

――――物事を簡単に割り切るのが、上手くなるだけだ……悪い言い方をするなら、無感動になっていくというべきか……?
しかし……特に『奴ら』に対しては、本質に如何に迫れるかが肝要……そうでも考えなければ、やってられないという事だな
……無論、戦士として一人前であるという前提を置かなければ、そんな姿勢すらも、意味のないものになるだろうが……

【子供や若者に未来を――――確かに、彼はそんな信条を抱いて行動している。その事が、どうやら今も伝わったらしい】
【亀の甲より年の功とまでは、言うつもりはないのだが――――そもそもそれは、年寄りと知識が貴重だった時代の言葉だ――――それでも、積み上げてきた経験も、そこに盤石の重みを加えているようで】
【容易に命をくれてやる事も無い、そんな戦士たちの力の結集だからこそ、そうした言葉で鼓舞させることも出来るのだと、アーディンは考えていた】

【そして、そこから続く八攫の言葉を一通り、じっと黙考しながら耳に入れて――――】

――――――――迂闊だったな。俺としたことが……あの資料、まともに目を通さずに、しかもあの虚構の世界に置いてきてしまっていたよ……
そうか……今からして思い返してみれば、手掛かりの宝庫だったじゃないか、ッ……異様な状況に飲まれていたとはいえ、少しばかり、迂闊が過ぎた……!

【せめて、その内容を深く胸の内に刻み付けていれば良かったのだが――――今さらになって、アーディンは自分の、虚構の工場跡における行動を後悔する】
【八攫の語る内容すらも、既におぼろな記憶では、照合のさせようがなく。しかして、その語る内容は実に論旨が――――虚神達に対する、独特なルールに基づいて――――ハッキリしており】
【ただでさえ、あの時の行動はベターとは言い難かったことを自覚していた上に、その認識が被さり――――自分は一体何をやっていたのかと、自嘲を抑えきれなかった】

――――虚神たちの、全てを否定した先にこそ、顕現の可能性のある、虚神たちの長……だと…………?
なるほど、君の危惧している事は分かった……。確かにその可能性、容易ならない物がある……決して杞憂で済ませていいものじゃ、ないな……

【相変わらず――――その名前と手掛かり、そこに記憶は結び付かない。だが、やはりそれでもその言葉は明瞭で、語る内容は無視できない】
【顕現した事で、既に対処困難になる事が予想される最後の虚神。そして、管理を一義に考えていた、かつての失敗者たち――――傍証は、確かに揃っている】

/続きます


167 : アーディン=プラゴール ◆auPC5auEAk :2018/07/14(土) 11:45:41 ZCHlt7mo0
>>161-164

……今回の件とは、恐らく関係ないのだろうが、こんな神が語られている……『盗みの神』だ……
その伝承によると……別に信仰しなかろうが、祈りや供物を捧げなかろうが、ありがたがらなかろうが……『盗む』と言う行為を行えば、その神には信仰と同義の意味があるのだ、とな……
人が盗みを行う限り、全人類から忌み嫌われようが、かの神は信仰されているのだ、とな……――――それと同じ事、確かに言えるのかもしれん……

――――なら、対処は2つだ。「顕現させない事」、或いは「非実在の世界へと攻め入る事」だ…………
前者は、消極的な対処策に過ぎない……それに、それに失敗すれば、結局はお終いだ……だから、後者を選びたい――――ところなんだが…………
その手段も分からなければ、恐らくそれを実行すれば――――攻め入った人間は、己も実在を失い、この世界からは消え去ってしまう。つまりは、完全に片道切符な死の道になってしまうな……
力のほど、そしてその性質は分からないが……恐らく、その最上位の虚神、この世界に顕現された時点で、我々の負けは確定なのだろう……

【情報から帰納する結論としては、アーディンに言えるのはその2つの選択肢だった。どちらにしたって、現状においては難しい選択肢である事には変わらない】
【前者は、既に虚構が現実に攻勢をかけ始めている中では、頼りない防衛策でしかないし、後者は、成功すれば全ては解決だが、可能性の限りなく低い万歳特攻でしかない】
【確実に言える事は――――真正面から戦っても、他の虚神たち以上に、勝算の見えない相手である事――――八攫の言うとおりである】

――――1人だけ。1人だけ、俺は知っている……実在を消し去って、敵の世界に飛び込んで、死んで来いと言って……『応』と答えてくれるだろう奴を、な……
完全なる、奴らの世界のルールに飛び込んだうえで、勝たなければならない、そして死ななければならない――――現状で言えるのは、このくらいか……

【ふと、頭をかすめるものがあった。自らが難しいと否定した可能性――――試行だけでも命を落とすそれに、応じてくれる仲間がいる事を】
【無論、それにしたって今はまだ机上の空論の域を出ない。捕らぬ狸の皮算用は、このくらいに留めておくべきだろう――――頭の中に、可能性として描きはしても】

――――悪いが……これだけはハッキリと、言っておかなければならないな……
白神 鈴音が生きている事を、許容するつもりは、俺にはない。これは、シャッテンも、アルクも、そして……まだ名前を出してない、もう1人の仲間も、同じ事だ……!
個人的な私怨が混じっているのは承知の上で――――「人殺しの仲間をする事が、面白くてやめられない」のだそうだ……
……孤児たちの世話をしていた事は、俺も聞いた。そんな事をやってた奴が、人殺しに入れ込み、この世界を否定したがっている……あの子供たちの虐殺に、何も思わないのだそうだ……
――――その選択に「落とし前」をつけさせてやる必要がある。一人前の人間の、やらかした事としてな……ッ

――――目玉を抉り出し、指を切り落とし、舌をフックで貫いて、死ぬまで吊るし上げてやるところだ……だが、相手はもはや人間ではないのだろう。どうしてやるべきか……ッ?
……少なくとも、無力化して手元に置いておくと言うのなら、奴だけは『ナシ』だ……ッ

【白神 鈴音に、話が及んだ時――――アーディンは、苦々しげに言葉を返した。彼女自身に対する憎しみを――――それも、八攫と縁のある仲間たちとすら共有されたという憎しみを、口にして】
【――――アルクが、カルト宗教の傀儡神をやらされて、人間性を否定されていた過去は、覚えているだろう。命の輝きを、シャッテンが強く尊重していた事も、然りだ】
【そしてアーディンが、あの工場の光景に冷静さを失っていた事も――――だからこそ、それに味方する鈴音に対して「もう鈴音を許すつもりはない」と、彼らの一派は口を揃えるのかもしれない】

――――確かに、そんな噂は耳にしている。それに……俺も、何とかそこに噛んでみるつもりだ
勿論、協力はやぶさかじゃない。それに……『死人との約束』があるんだ……今回の一件、本来は無関係だったが、関わらずにはいられない……
今度こそ、有益な情報を持ち帰って見せよう……もし、生還して合流できるなら……力も、貸してやろう。忘れまいぞ、柊……

【鈴音に対する感情は別として、虚神たちへの対策は、確かに練らなければならないのだ。アーディンは確かに頷いた】
【――――思考法は、掴んでいるつもりだ。なら後は、情報、手掛かりさえあれば――――アーディンも、そこに命を懸ける覚悟は、既に固めている様だった】


168 : ユウトの人 ◆Heckemet8M :2018/07/14(土) 12:50:14 u1dxVMlM0
>>846

「そーゆーコト。正義とか悪とかより根っこにあるアレよね」

【無難な締め方に対して返すは、無難な……だが意味深にも聞こえるそれ】
【口調だけはやたらと(そして通常通り)軽いが、……邪禍の部下の中でもおそらく強い方の存在だ】
【下手に詮索した時の危険性を排除したのは、おそらく正解――だったのかも、しれない。】

「絵になるねえ、……確かに隠し撮りバンバンされちゃってるから、困るぜー」
『ノリノリで隠し撮り方向に笑顔向けてるのはどこのどいつだ』
「他人のコトは言えないと思いますよ〜、チェーザレちゃーん?」

「さすがにコーラと言う名の微炭酸醤油は罰ゲーム以外の用途が考えられないから止めろって言ったけど」
「言葉で止められる相手なら苦労しないよ、ホント。実際にはネタ購入と罰ゲーム用途購入で案外売れてるみたいだから困っちゃう」
「堅物っぽい雰囲気だけど冒険心有り余ってるからねー、仕方ないね」

【"だからイタズラのしがいがあるんだけど"、――なんて聞こえるか聞こえないかの声量で呟いて】

「人間文化に慣れてるってホントアドバンテージ。と言っても、俺たちが回収された世界も人間結構栄えてたケド」
「栄えてるから文化も一緒ってわけはトーゼン無いわけで」

【なんて、雑談をしている時の事件だった。腹筋を守るために、彼が動いたのは……】
【うーん、間違えたかな? なんて、加害者はドヤ顔でキラキラオーラを出しつつ現実逃避をしていて】
【一方のジュゼッペは相変わらずの手際の良さ。シャッター音は聞こえないが、】
【その雰囲気、そのオーラ、……間違いなく撮っている! しかも1枚や2枚ではない】

『ハサミ……ハサミですね、……確かあの棚の二段目辺りに……あったか? ジュゼッペ』
「アレは天然カニバサミボールペンだぜ」
『冷蔵庫だったか?』 「アレはササミ」

【あの棚――と指で示しているようだが、おそらく現在の状況では見えないだろう】
【顔は真面目だが色んな意味で混乱している様子なチェーザレを余所に、ハサミを探す彼】
【雑誌の袋とじを開けるためにどこかに置いていたはずだが――……】

「あったあった、……ってこれは……すきバサミか。何であんだ? ……こっちだな」
「カニバディール、持ってきたぜー」 「時間も迫ってるっぽいし、チェーザレちゃんのイタズラはサクッと切っちゃって」
『イタズラじゃあなくて事故だ事故……事故だ、事故』 「落ち着けチェーザレ、現実を見ろ」

【ハサミの持ち手の方をカニバディールの手か何かに触れさせて渡そうとするジュゼッペ】
【何故か回収してきたすきバサミ、それと普通の……ちょっと斬れ味が良い感じかもしれない普通のハサミ】
【その2本である。……これをどのようにして扱うかは相手次第。あまり大事にされている品でもない、普通の備品と思われる】


169 : ◆9VoJCcNhSw :2018/07/14(土) 13:49:44 wn2rqSVw0
>>160

【握った手を離すのに、特別な出来事は起きなかった】
【所詮は人間なのだ。何百年も生きながらえる化物でもなく】
【正体不明の怪物でもなく、純粋なる30かそこらの能力者でしかない】


――"戦争"の件、よろしく頼むぜ。


【自身に楯突くものを血祭りにあげる――それは当然】
【そういうように黙殺し、突きつける要求はただ一点だった】

【戦争。たやすく言うが、暗喩でも何でも無い、殺し合いを引き起こすということなのだろう】
【古今東西、戦争が起きれば民は疲弊し企業は隆盛するものである】
【金貸しとしては、困窮するものと、貸し付けるための金銭と】
【双方が手に入る夢のような話し――もしそれが、世界を巻き込めば】


【ゴトウがその場を後にする、その途中。白いスーツに身を包んだ男が近寄ってきて】
【静かに紙を一枚差し出すだろう。「あの人のものです」と、数字を指し示す】
【すなわちジルベールの連絡先――そして、男は彼の使者ということなのか】


「 老婆心ながら、深入りすべきではないと思いますよ。

             ……まあ、もう手遅れとは思いますが 」


【そう短く語って、白色が印象的なその男は姿を消した―――。】

/わがままだなんてとんでもない、むしろお付き合い頂き感謝です!
/ちょうどよい区切りだと思いますのでこれにてっ、長らくありがとうございましたー!


170 : パグローム ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/14(土) 15:34:58 KDzqm0o20
【男は腕を組んだまま、ホテルのパーティ会場に残っていた】
【その場に集まった者達と顔合わせもしていない】
【元より虚構現実の探索に然程乗り気でなかった男はこの配置に不満が有った訳でもないのだが、この場から離れられないのは些か手持ち無沙汰ではある】


パーティ会場らしく飯でも置いてってくれりゃアな。
相変わらず遊びのねェ男だ。

もっとも、二度とその真っ暗なツラ拝むことも無いかも知れんがな。


【男が同行しない理由は二つ有った】
【一つは、男が虚構現実への出入口そのものであるため、向こうで真っ先に死ぬ訳にはいかなかった】
【もう一つは……】


もしくたばるならせめて面白い土産でも遺して逝きな。
ついでに遺言くらいは聞いてやるからよォ。


【彼や彼等が帰れなかった場合……こちらは万が一と言うほど低い可能性でもない】
【餌だけ盗られて獲物に逃げられることが無いように、保険としての配置だった】

……チッ。こちとら退屈だってのに向こうは盛り上がってそうだな。
つまらねェ……


171 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/14(土) 17:23:15 a7UVxoAg0
【氷の国。廃墟街、廃教会、地下――――研究室】
【「冒涜者」はそこに居た。先日貰ったばかりのデータを見て、それを「あの子」にどう組みこもうって】
【思って。ぼーっと、マウスホイールをころころ回して――ふと。回転の向きを逆にした】
【下から上へ。現在から過去へ。遡る、「あの子」のデータ、今まで何をどう弄ってきたかの記録を】

【――――――見ていて。気付いてしまった、……確信に至ったわけではないけど】
【それでも、もしかしてって思う程度には十分すぎた、だから目を見開いて、口元を手で覆って】


………………シャーデンフロイデ。言うなれば、■■の■■は■の■っていう意味、だよね?
じゃあ「あの子」は、……夕月は、――――――極上の■たりえる存在ってこと、じゃん、

……………………………………やってくれたなあのクソ魔女。
もしかして最初から、これが――――目的だったとでも言うの…………?


【――――ひとりごとは陽のあたる地上までは届かない。ただただ極寒の国のつめたい空気に冷やされて】
【下へ下へ落っこちていくばかりだった。……そうしている間にもきっと誰かが■■を■て、■を■■んだろう】
【だって「あれ」は、よりにもよって、世界中に拡散されているんだから。じゃあもう、止めるすべはない】
【……どうかこの嫌な予感が、杞憂であってほしい。「冒涜者」のくせして、彼女は、心からそう願っていた】


//ソロールです、絡み不要です。間違ってたらはずかしいな!


172 : ◆DqFTH.xnGs :2018/07/14(土) 20:42:45 0RDHNNbA0
>>125

────────あ゛ぁん?


【彼女はタコである。名前はミラ。どこで生まれたかの見当ぐらいはつくが】
【何でも常日頃からクソがぁクソがぁと喚いていることだけは確かなのである】
【後から考えればこの時騒いでいたのはチンピラという人間中で一番獰悪な種族だったのだが】
【しかしこの時、「タコ」「クソが」などという罵声を聞いてしまったばっかりに】
【何だか頭がカーッとしてしまったのである。────だが市民に声をかけられれば】
【自分が今どんな見た目なのかということを漸く思い出す。そうだ】
【今自分は、ちょうど都合の良いことに婦警なんてものになっていたんだった】
【腰には銃をぶら下げている。何か本当にヤバいことになれば──警察が発砲したって、何ら不思議じゃあない】


『…………、……………………こほん』
『善良な市民からの頼みです。今すぐにでもどうにかしないといけませんね』

『いけませんよぉ〜、そこの派手な服を着たみなさん』
『喧嘩をするのでしたらもう少しお淑やかに。でないと逮捕しちゃいますよぉ〜』


【あらあらうふふ────間延びした口調で、『婦警』はチンピラ達に近付いていく】
【咄嗟に出て口調と声は、三つ編みメガネの某婦警に似たモノ。決して意図したわけではないが】
【婦警の真似事をしていると意識してしまった時、とある婦警の声形が浮かんできてしまうのはどうしようもなかった】


173 : ◆3inMmyYQUs :2018/07/15(日) 22:16:25 qo/HyX5s0
>>147


【────────】
【─────】
【──】


────にゃ? わたしは未来人。
あ、すいませーん、注文お願いしまーす。


【その素性は2秒で判明した】

【小洒落た夜のカフェバーに似付かわしいモザイクランプの灯りよりもなお輝いた表情をしたその少女は、】
【既にメニューを広げていて、ウィザード級ハッカーの如き眼差しで紙面に没頭している】


お兄さん探偵でしょう? 人と物捜し専門の。
だから捜して欲しいものがあるにゃ。

──このチーズケーキとマンゴーのタルトのスペシャル形而上セットと、
軌道エレベーターパフェに、ドップラーエフェクトシュークリーム、
それから四次元厚切りハニートースト……にバニラアイストッピングで。


【「とりあえずこれだけでいいかにゃ」】
【カロリーの隕石群を招来する呪文は淀みなく唱えられ、それを店員が伝票に書き綴る】
【少女はメニューを探偵の方へ向けて置いた】

【タイムワープと仕事の依頼とスイーツの注文が、】
【いつの間にか全て等価値でそのテーブルへ並んでいた】

【店員が、国家の存亡を賭けた総理の決断を待つ官房長官のような目で彼を見る】


174 : 名無しさん :2018/07/16(月) 15:26:04 ExKbu4l.0
>>173

―――――未来人?…未来人が何の用だ

【少なくとも未来人にまで付け狙われるようなない】
【ホントか嘘かを置いておいても未来人を自称する少女なんて予想外もいいとこだ】

【煙草をくゆらせながら、木製のチェアの背もたれに深くもたれ、じっと少女の様子を見る】

ああ…確かに、探すのは構わない。だが、今色々と仕事が溜まってるんだ。
それも、クソ厄介で、難しい奴がな。

【だが、断りはしない。その内容を聞くだけの価値はありそうだったからだ。飼い猫を探すのに】
【俺を付け回すような真似はしないだろう。飼い猫探しただったとしてもそれはシュレディンガーの机上で】
【可能性となって消えてしまった猫なはずだ。夏の扉に通じているなら、意味はある】

ああ、俺は…珈琲でいい。…ブラックホールなら出口がないとエントロピー的に…?…は?
知らねえよ、因果なんかどうだって。俺はブラックで飲みたいんだ。
だったらコイツに牛乳でも持って…ああそれならいいんだ…

【彼はメニューを見ることもせず、注文を済ませる。なんだか因果律がどうこうという言う店員を追い返した】
【そして未来人なる少女の方を向いて。話を進めることで注文したものが届くまでの時間を潰すことにする】

…で、何を探せ、と?


175 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/16(月) 19:50:16 o6XMS57s0
≫497

【大したことがない癖に輪廻の先まで追ってくるというのは不思議な言い分にも聞こえた。どこか、無性に腹立たしかった。 ─── 大したことがない癖に、かえでをずっと苦しめてきたなんて】
【そんな風に彼女を追い詰めていいのは自分だけだと、本気で女は思っていた。詰るのと諭すのと囁くのは全て愛するの同義語だった。】
【 ──── あるいは、自分なら幾らだって許すのに、という感情は憎々しかった。自分の方を向いてくれないあの子が、憎くて、苦しくて、けれど何より愛しい。】



「 ──── 白神鈴音。」「あの子は嫌っていたわ。」「わたしの神様は、あの女が混じったせいで歪められたんだ、って。」
「あんなどこにでもいる女が、わたしの神様であるはずがない、って。」「 ……… 」
「私も最初から関わってた訳じゃない。」「だから抜け落ちているところが、幾つかあるかもしれない、けれど、 ……… 。」

「 ……… 一月くらい前、あったでしょう?」「蛇教の大きな儀式があって、けれど結局は取り押さえられて、何人かの幹部が死んで、それでも蜜姫かえでは生き残った。」
「結果として儀式は半分くらい成功して、あの子の信じた神様は"受肉"した、らしいわ。どういう意味なのか、知らないけれど。 ─── だけどそれは、白神鈴音の神格を持っていて」
「だからあの子は、あの子の信じる神様を、もう一度呼ぼうとして、 ……… タチの悪いマエストロ気取りに誑かされて、どこかに行ってしまった。」


【相手がざらついた声音で笑うとしても、女は静かに言葉を綴るのみなのだろう。それでもその表情からは、憔悴しきったような色合いは失せていた。】
【 ────── 自分の無力さとか、情けなさとか、嫌悪感とか、手が付けられないくらい絡まった玉鬘の感情は、みんな一旦横に置いてしまう。】
【その上で少なくとも何かしらの決意をしていた。何か成し遂げようと青い隻眼が光を宿していた。悔いるのも、死ぬのも、とりあえず全て終わってからすればいい、から。】


「 ──── 其れが、白神鈴音と、もうひとつ?」 「へびさま、とか何とか、 ……… そんな風に呼ばれている、神かしら。」
「 ……… あなたは、 …… 。」「貴女は。あの子の神様に会って、何をするつもり、なの?」


【だから女も尋ね返すのだろう。利用されるならそれでも構わなかった。ただもう一度あの子と会って、あの子が憑かれているという呪いを解いてあげたかった。】
【あの子がカルトの幹部と知って、では復讐に殺してやろうという青臭い正義感の持ち主ではないとも、 ──── どこか笑うような距離感から、無意識で理解していた。】
【それ以外に方策もなかったから、躊躇いなく言葉を綴っていた。少しでも力になれればいい。少しでもあの子に近づければいい。それだけ。】


176 : 名無しさん :2018/07/16(月) 22:39:14 5D.hDJM20
>>175

【であれば――――それはひどく優しくない言い方だった。自分たちにとっては"大した"ヤツじゃない。けれど、ありふれた人間にとっては"大して"いる】
【見様の問題であった。後はそいつ――蛞蝓――が彼女を怨んでいる気持ちの総量の問題なんだろう。彼女じゃない彼女――あるいは彼――はよっぽどのことをしたらしい】
【それはこれだけ呪うことになった蛞蝓にとっても。これだけ護ることになった蛇にとっても。――蛙が関わって来ていたらもっと面倒だった半面、解決していたのに】

ふーん、"こんなの"どこにだって居たらすごいよ。まあそのあたりは――あたしも、よく知らないし。出戻りなの。最近のことはちーとも分かんない。
だからその辺はよく知らない。ていうか、感知も干渉もできない場所に引きこもられてたから。"あっち"からじゃないと繋がらなさそうだったし。
ただまあ、あの時に無理やりでも呼んでおけばよかったかもしれない。――ここまで面倒になるって、思ってなくて。思わないでしょ?

【相手の説明を聞いて、けれど"そいつ"が真面目に聞いてくれた、っていう感覚は、おそらくあんまりないんだろう】
【よく知らない――それが答えであった。おそらく大局の動きを全く無視して独自のやり方で動いていたんだと思わせた、だから"こいつ"は"変"だった】
【――まあそれについては。全身を隠して声まで隠して何もかも身を隠している時点で、そうなんだけれど。それだけの理由があるからには、変な風に動いても致し方ないだろう】
【そんなやつがふと気の抜けたような声を出した。――といっても音階はざりざりした機械であるから耳障りで。けど、たしかに、その温度感を宿していたなら】

へびさまのことまで知ってるの? ふうん……、……ちっちゃいでしょ? それに、あれはね、最終的には神の座を返上したの。
単なる魑魅魍魎になった。元からそれが相応しいくらいの神格だったし――川の神のまんまじゃ護ってあげられないって思った、みたい。
だから川の神としての神格を棄てて、ただシラカミリンネを護るための概念になった。――でも、シラカミリンネは"あれ"を神様だと信じていたから、神様なの。

――それが"へびさま"。――――あたし? あたしはねえ、なんだろ――、別に、もう、無理やりに関わる必要も、無いと言えば無いんだけど。

シラカミリンネを正しく神にする。思ってたのとは違うけど、信仰は集まったみたいだし――後はやり方を覚えてもらって。

――――"あたしたち"は別に"あれ"が世界を滅ぼしたって、なんだって、いいんだけど。
"あれ"が世界を滅ぼし損ねて人間に滅ぼされるのを見るのはちょっとね。
だから適当に神様のやりかたを覚えてもらって――、あとは、まあ。なんかなんとなく適当に。頭痛くなりそうだけど。

【三角座りに頬杖を突いたなら。"そいつ"は顎の下のところをちょんと手の甲に乗っける、場所が場所で恰好が恰好なら多分映えるんだろう。どんな顔かは分からぬけれど】
【ふうんと気の抜けた声。少し考えるみたいにしてから――あんまり気にしないことにしたみたいだった。相手はどれだけの情報を持っているんだろう、誰がそれを情報にしたのか】
【本当に知らないみたいだった――"こいつら"の情報源は少なくとも相手の情報源と全く異なる場所にある、らしい。やがて――自分の目的、問われたのなら、不明瞭になる】
【――そうしてやがて口にするんだろう。であれば目的は"相手"や"蜜姫かえで"と同じであるように思えた。……ただ、向かう先、それはどちら側に近いんだろう】

それが目的。あたしの飼い主様もね。そんで、あたししか動けそうにないからこうやってお使いを――なんだけど。
今も目が合ってるの。だから時間はあんまりないかな――。

【あの神が世界を滅ぼそうが構わない。けれど――それに失敗してあの神が誰かの手によって滅ぶのは見たくない。だなんてわがまますぎる理由、述べたなら?】
【目指す先はウヌクアルハイを善性の神に導こうとする相手らに近いのかもしれない。強いて言えば――という程度に収まるのかも、しれないけれど】


177 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/16(月) 23:22:40 o6XMS57s0
>>176


「 …………。 」「神様への語りかけ方は、私もよく分からないけれど。」「いなくなる前に呼んでおけば解決も早かったでしょうね。」「泣き言ではあるけれど。」


【 ──── 女は神に祈る類の人間ではない。自己の存在が自己の外側から定義されるのを嫌う。それでいて他者との関係を求めたがる。面倒な気質の人間だった。】
【ばさばさになって微かに茶褐色に染まった銀髪の先を手持ち無沙汰に指へ絡めていた。いつかの夜に、幼気な指先がそうしてくれたように。】


「押収した蛇教の資料に書いてあったわ。と言っても申し分程度だったわ。 ─── 土着伝承を調べてる何処かの学者が、論文の一節で軽く触れていただけ。」
「もう少しちゃんと探せば他にも出てきたかもしれないけど、私は神様に興味がなくて。あの子に関わりそうなところだけ、読もうとしたから。」


【ふうん、 ─── あまり興味は無さそうに、然し全く聞き流すかと言えばそうではないような声音で、その神については諒解していた。】
【自我のある神格とは便利なものだと思った。そうであれと願えば、そうなってしまう。きっと何にだってなれるのだろう。自分もそんな存在でありたかった。】
【神様のことが少しだけ羨ましかった。弱い自分は嫌いだった。愛しく思う人たちのことを1人とて失いたくなかった。泣き腫らした目元が、微かに哀愁を薫らせた。】



「 ─── 私は、」「蜜姫かえでが、私の許に帰ってきてくれて」「あの子と一緒に、"私の日々"を過ごせるなら、それでいい。」「それ以上のことは望まない。」
「世界に滅びてもらっては困るけれど、 ……… あまり我儘を言うつもりもない。」「白神鈴音を人間に戻したい、 ─── 少なくとも友達で居てほしい、なんて連中も居るみたい、だけどね。」


【だから対する女の目的も同じように自分勝手だった。いなくなってしまったあの子を取り戻したい。自分の知る"正しい幸福"を教えてあげたい。そうして側にいてあげたい。】
【 ─── 傲慢な動機であった。けれども決して、私的な欲望を宿しているわけではなかった。あの子の為に何かしてあげたいと、ただ、それだけを願っていた。】


「最後まで出来るか、あるいは途中までになるか、 ─── 分からないけれど、」「少なくともあの子の神様を、何かしらの形で"顕現"させる。」
「そこまでは協力できそうね。」「 ……… あまり時間が残されていないのは、私も同じこと、だから。」


「 ─── ひとつ、尋ねておこうかしらね。」「 ……… もしも貴女が白神鈴音に、"神様のやり方"を教えたとして。」
「その時、彼女はどうするのだと思う?」「呆れて全てを消し去ってみるか、はたまた現世に生きる咎人たちを見守る観測者になるか、」「 ─── もう一度、肉体を得て、この世界に戻ってくるか。」



【 ─── "あの子"に関わる問いはもうなかった。ゆえに続く疑問は、ごく個人的なものだった。それだけの力を手に入れて、その扱い方を知った嘗ての"人間"は、果たしてどんな選択をするのだろう、と。】


178 : 名無しさん :2018/07/17(火) 00:00:52 sJtwWda20
>>177

二礼二拍一礼。神社に書いてない? でも別に――起きてたら見るかもしれないし、寝てたら見ないだろうし。
悪かったのはあの子についてた神様を全部再定義のおまじないで剥がされて――それが全部蛇だったこと。
まあその前に"へびさま"は喰われちゃったけど。……そのおかげでコンタクトが取れる可能性が増えた、と思えば――特に悪くは、ないかな。

へえ、そうなの、――なんて論文? 見てみたいの。そこらへんで調べたら出て来る?
八百三十年前の蛇神に関する論文。気になるでしょ? 活動したのはおおよそ百年。その後は封印されて、――誰にも観測されなかった。
申し訳以上に書かれてたらびっくりしちゃうから別にいいよ。――ふうん、誰かに観測されてたんだ。

【――――よかった、と、きっと"そいつ"は呟くんだろう。ならば優しい音階であるのかもしれなかった、どこかで安心するみたいに、大事なものを抱き留めるように】
【であればきっと面の下で笑っているのかもしれなかった。――気のせいだと言いきってしまえばそうなってしまう温度感にて。何も見えないのは、それだけ想像の余地があるけれど】

――――あたしは別に、その目的、どうだっていいけどね。だけど――蛇が好きなんでしょ? じゃ、なんかに使えるかもね。あとは……。
白神鈴音、なんて名前の人間は今までの歴史の中で一瞬たりとも存在しない、って、言っておかなくちゃ。"それ"は神様の名前。人間の名前じゃないから。
友達にはまあなれるかもしれないけど――白神鈴音は人間だったことはない。だから"人間に戻す"のは不適切。

それとも人間らしく振舞っていた時でいいって言うなら、それは、自分がナニであるかもわからない、不安定な最中に戻す――――――。

【一瞬だけ黙り込むような気配があった。相手がどれだけその存在に入れ込んでるんだろうって思うみたいな間、母親、とか、恋人、とか言っていた気がするけれど】
【"これ"は確かにどちらでもないな、と、思ってしまいそうなほどの、様相だった。であればこの関係性は何と呼ぶにふさわしいんだろう――と、刹那、思考しかけたなら】
【けれど"こいつ"としてもあの少女は何らかの利用価値があるかもしれない、とのことで。――相手が取り戻したいならそれでいい、という感じであった、それを否定しない】
【――そうして一つ訂正する。そんな名前の人間はかつて一度だって、一秒だって、存在していたことがないから。それを願う限り、それは、叶うはずない願いであるから】

――――――――――――白神鈴音は人間の所業によって一人の人間がなにもかもぜんぶ祟って産まれた神だから。

【――――ふわり、と、"そいつ"はあまりに唐突に立ち上がるんだろう。ローブの裾をわずかにはためかせて、ふらり、と、さっきまで相手が居た場所に立つ】
【すなわち後少し踏み出せば落ち行く場所であった、そうしたなら――ゆるりと振り返る。やはり表情は伺えなかった。ただ鮮やかに彩られた狐面、相手へ向いて】

そしてその出来事のきっかけが間違いだったと聞かされてしまった。認識してしまった。"だから赦さない"。
そのときに全部の間違いが清算されてなかったら、世界を滅ぼすんじゃない? 

少なくとも――人間一人が祟り神に変質してしまうほどの"間違い"がそこにあったの。祟りの根源はそこにあるの。あとは簡単でしょ?
蛞蝓が憑いてるなら蛞蝓を落とせばいいよね。じゃ、――祟る理由がなくなったら、世界を滅ぼす理由だって、ないよね?

――――――"ウヌクアルハイ"の事情までは知らないや。だから、あたしの知る限りであるなら、ね。

【ゆえにぞっとするほどの無表情であった。ざりざり機械質の声はひどく冷たくて。伝えられるのはあくまで自分の知る限りのこと、そして、"状況は変わってしまった"】
【けれどそれは主格たる神に対する特攻だと"それ"は言い切っているんだろう。だからって何もかもが従うかは確約できない、そうやって、付け加えながら】


179 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/17(火) 00:32:45 o6XMS57s0
>>178

「 ……… あら。」「あれって本当に意味があるのね。」「まあそのあたりの畑は私の専門ではないから、あまり詳しく聞かないことにひておく。」
「少なくとも、その辺のデータベースで調べたくらいじゃ出てきそうになかった。」「電子化もされてない、 ─── ずっと昔、アマの考古学者が、1割の資料と1割の現地調査、残り8割は想像で書いたような」
「そういう風合の文章だったわ。 ……… けれど神様として、何かしらの形で存在が残っていたのなら、もしかしたら誰かが伝えていたのかもしれない、わね。」


【どういう関係なのだろう、 ──── 少しだけ、女は疑問に思った。神様同士の仲なんて、知ったことではないけれど】
【それでも嬉しく思うことがあるのなら、やはり何かしら大切に思っているのだろう。とはいえ詳しく問い詰める気もなかったから、もしも不意に聞けたのならいいな、程度の態度であって。】


「 ……… "使う"なんて言われると、不愉快ね。」「あの子は私のものよ。勝手に貴女に使わせたりなんてしない。」
「 ──── けれども、あの子が不幸にならない限りなら、なにかの目論見に組み込んでもいい。」「そうすることで、きっと亜の子は、 ……… 幸せに、なれるから。」


【強いて言うのならば ─── 宿世、なのだろう。それこそ前世から、呪いじみて出会うことも求めることも愛することも運命付けられているような】
【だからどんな感情だって打つけてしまいたくもあり、それが何よりの信頼と愛情の証であるのだろう。そう思っているのが世界中でこの女だけだとしても、紛れもなく彼女にとっては真実だった。】
【そうして白神鈴音の"定義"に耳を傾けるなら、少しだけはっとしたような顔をするのだ。自分が何者であるかも理解できていない、曖昧模糊たる夢幻の存在。】
【憂鬱な横顔は、自分と同じだ、 ──── とでも言いたげな色合いをしていた。それは勝手な自己投影であるのかもしれないけれど、やはり、嫌いにはなれない。】



「 ──── それ、私に伝えるのかしら?」「言っておくけれど、私は白神鈴音に会ったことなんてない。」「世界を呪って祟り神になれるくらいなら、 ……… まあ、仲良くはできそうだけど。」
「だから"間違い"とやらについては検討もつかない。」「誰かを罰したり殺したりして、その"間違い"が正されるのなら、力になれそうではあるけれど ──── 。」
「人々の信仰とか、神様同士の喧嘩とか、そういうのだったら御手挙げよ。 ……… そういうことだから、私意外にも伝えた方が良さそうな連中、いるんじゃないかしら?」



【少しばかりの苦笑い。自分は力になれそうもなかったから。 ─── それに白神鈴音は、随分と色々な"縁"のある生き方をしてきたと、聞いていたから】
【会ったこともない自分よりも、もっと色々に関わってきた"誰か"に伝えた方がいいんじゃないかって、そう言っていた。思い当たる節、ないわけでもなくて。】


180 : 名無しさん :2018/07/17(火) 01:20:14 sJtwWda20
>>179

【「――――ふうん。じゃあ、暇なうちに見つかるようなら、見てみようかな」】
【それが返事であった。けれどどこかで嬉しそうな気がした、疑問に思われてるなんてきっと気づいてないだろう、そして、知ってたとして、無視するんだろう】
【現実と調査によって導き出される八割の想像は神話にも似ているから。実際に神様がしてきたことだけでは彩りがなさすぎる、自叙伝を成立させるにはいくらかの脚色も必要で】
【ゆえにこそ、――気にしたのかもしれなかった。けれどきっとそいつはそれ以上言葉を続けないのだろう、あくまで本筋では、ないのなら――】

あっそう。――じゃあ、まあ、そのあたりは。あなたが考えてあげたら。あたしは知り合いじゃないもん。正直顔も知らないし――。
だけど――救ってやりたいなら蛞蝓を落としてやればいい。蛇に救われたいって願うんなら、蛇が救ってやればいいんでしょ?
シラカミリンネもウヌクアルハイも使わない方法が一つあるの、あるけど――、――現場の独断で強行に変革を進めちゃうの、今はまだ、止めておきたいから。

目論見も――正直未定だし。独断専行であたしが潰れたら怒られちゃうしね。飼い主の言うことを聞かなくっちゃあ、――――ってことにしておいてくれる?

【何か考えていることは、あるらしかった。であれば相手にとってはどんなふうに映るんだろう、目の前に吊るされる人参なのか、それとも、別の何かに見えるのか】
【けれどこの場で"こいつ"は動かない、と思わせた。――生易しい。けれど。とっておきに優しくはない。自分には自分のやることがあるから、と、一区切り】

ヒトでもなくて、ヘビでもなくて、カミでもない。白神鈴音は、産まれたときから、ずうっと――自分がナニであるのかを知らなかった。
それでもヒトに憧れてヒトのフリをしてきた。だけど――――状況が変わった。だから、おまじないをする必要があったの。箱を開けないでいられる魔法は終わっちゃったから。

どう、"こういうの"、好き?

【――揶揄うような抑揚が紡いだ、相手の移ろう表情を写し取ったなら、誰かの心中をあんまりにつらつらと"そいつ"は述べる、まるで、見て来たみたいに】
【全ての事象が重なり合った事象を維持するには観測してはいけなかった。観測しないと言う方法で、その状態は維持され続けていた。でも、そうでいられなくなった】
【だから箱を開けた。――――――そうして真っ先に事象を確認した存在はそれを"ヘビ"だと言ったから、白神鈴音は、ヘビ。ということになった】

――――だからね、白神鈴音に対処しても意味ないの。むしろ対処すべきなのは、それを産んだほう。
もうどこにも存在しない人間にすべての間違いは清算されたと納得させないといけない。

信仰も神様も関係ないの。――だーって、全部のきっかけは人間同士のやり取りだから。
相手も生きてるし。――――。伝えた方が良さそうな連中って言われても。あたし友達いないから分かんない。誰のとこに行けばいいの?

【びゅうと吹き上げた風がローブをいっとう大きく揺らした、表情は伺えなくて、棒立ちならば仕草もなくて、ゆえに、様々な感情まで覆い隠して】
【あるいは不可能に思えた。どこにも存在しない人間に働きかけろと言う。けれど不可能ではなかった、――それより出でた神がこの世界には遍く存在しているから】
【ゆえにその人間を納得させることが出来たら、世界中に拡がった神も納得するはずだから、と。そういう理屈だった。あくまで自信たっぷりに言い切るのは、性格であるのか】
【――そのくせに付け加えられる理由はひどく平凡であるのかもしれない、ただ人間同士のやり取りがきっかけであるのだと。ただ、どこか、淀むように言葉が濁れば】

【――――どこへ行けばいいのかと尋ねて来るのだ、それを必要とするのはどんな人物なのか、と。冗談めかして、けれど、冗談と言い切るには少し、真剣そうに】


181 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/17(火) 14:37:59 WMHqDivw0
【――――これは夢なんだってすぐにわからせてしまう。だってこれは、もう一月くらい前に見た光景】
【宗教都市マルタへ向かう車の中での話。そう、あの日、ウヌクアルハイ受肉の儀式の日の、戦場へ向かう前の話で】
【あなたと、この少年は同じ車に乗って移動していたんだった。幹部専用送迎車、後部座席は広くって】
【運転席との間には仕切りがついていて、ふたりきり、好きなだけ話ができる――そういう贅沢なものに乗れた、だって幹部だし】

――――――――……かえでさん、かえでさんってば! 聞いてる!?
なにもう、緊張してるの? らしくない……いや、逆にかえでさんらしいのかなあ。
今日は待ちに待った蛇神様の受肉の日だもんね、いっそう緊張しちゃってもおかしくないか――ふふ、ねえ。

【席に座っているあなたを訝しげな顔して覗き込んでくる、金髪碧眼の少年。生きていた、白磁の膚が、海色の瞳が】
【きちんときらめいて、表情を灯していた。だからこれは夢なんだと重ねてわからせようとしてくる、だって彼はもう】
【「殉教」してしまったと知らされていたのだから。ならばこれは夢で、……多少無茶苦茶なことをしてもいいと、思わせてしまうかも】

【彼はこのころにはすっかりもう、あなたのことを「ムリフェン」と呼ばなくなっていた】
【正確には、他のサーバントが居るところでは呼んでいたけど――こういうとき、二人きりのときは、ずっと「かえでさん」って】
【名前で呼ぶようになっていた。……なんでだったっけ、それももう、わからないんだけど。彼はくすくす、悪戯っぽく笑っていて】

…………いよいよだね。あのさ、前にさ――ボクがさあ、「蛇神様に会えると思うとワクワクしてる」って言ったらさ。
かえでさん、怒ったじゃない? でもね、ボク、ほんとに……ワクワクしちゃってるんだ。
だってやっと会えるんだよ? だからボク、やっと蛇神様にお礼が言えるんだ。楽しみで楽しみで仕方ないんだよ、
ねえかえでさん――――かえでさんはどういう気持ち? 蛇神様の御前に立てたら、まず、何て言いたい?

【期待にきらきら目を輝かせていたんだ。自分たちは絶対勝つってわかりきっているような表情、……それはきっと】
【少し前にあなたに言われたからだった。大丈夫だって、私たちは間違ってない、絶対に勝つって。他ならぬあなたに】
【言われたことを本気で、本気で信じているようだった――――現実はそうならなかったのに。だからこそ、と思うかもしれない】

【――――――――この少年は。あなたに、「うそつき」って、怨み言言いに来たのかも。とか、思ってしまうかも、しれない】


//予約のヤツひとつめです、ウリューのほうです!


182 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/17(火) 14:55:34 WMHqDivw0
【どこかの公園。うだるような暑さもちょっとばかし治まった頃合い、夕暮れ時】
【それでも暑いのは暑い。だから噴水のそばのベンチに彼は座っていた、透き通るような銀髪を橙に溶かして】
【反して肌は暗くなっていく空に融け込むように。褐色、その中に唐突に浮かび上がる明度の高い色彩がふたつ】
【黄色の虹彩がきょろり、きょろり、短い地点を何度か往復して――瞼が伏せられた。運動するの、疲れたらしい】

――――……っはあもおーっ、目ェ疲れた! 読書とかマジでおれの性にあわねーんだよなー、
だったらナニしたらいいかな、蛇の……ビデオ? 動画? そーいうのあるんかな。
なんかあんまグロくないヤツがいーんだけど……文字読むよっかマシかな、うーん……

【ぱすん、と音を立てて傍らに放り投げられる本。「よくわかる! へびの生態」】
【たぶんめっちゃ子供向け、……にしたって今時の子供を舐め腐っているのではないかというくらい、デフォルメ】
【そんな絵柄で描かれたヘビのイラストが、シャー! なんて台詞を言わされながらそれっぽいポーズをとっている表紙】
【専門家に見せれば「バカにしてるのか?」とキレられそう。そんな本を、彼は大真面目に読んでいたようだ、けど】

………………つかれた。夕月のうそつき、……会えないじゃん。鈴音ちゃん。

【それだけで疲れてしまったらしい。……というのは置いといて、ひどく寂しげな声を零した。背凭れに大きな背を乗せて】
【ぐーっと仰け反る。そして片手を目元に持ってきて――覆ってしまう。もう何もかも嫌になっちゃった、と言いたげな】
【そんな姿勢ではーっと大きく息を吐いて、手をどかす。空を見上げる卵焼き色の瞳は、途方に暮れたように】
【よく晴れた橙の空を眺めて――それ以上は何もしない。もう一回溜息、と共に肩を落としてしまう。がっくり】

【烏も飛んでいなかった。ちぎれた雲がいくつか浮かんでいるだけで、本当に何もない空。見渡しても何も面白いことはなく】
【だから、青年は姿勢を戻して、寂しそうに項垂れた。ご主人様が帰ってこなくてしょげてる大型犬めいて】
【放っておいたら三回目の溜息が零れるんだろう。そうしたら今度こそ、……何かを諦めて帰ってしまう。そういう雰囲気を、醸し出していた】


//予約のヤツふたつめです、オムレツです!


183 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/17(火) 18:36:20 Wfyx7KTk0
>>180

「 ──── 確かにあの子は、蛇に救われたいって願ってる。」「けれど元を辿れば何処かに居場所が欲しいのよ。」「貴女はここに居てもいいって言われたいの。」「それだけの女の子。」
「自分が犯したって思い込んでる、ありもしない罪に苛まれて」「ぜんぶ自分のせいだって思い込んでる。」「そうして自分を責めて苦しんでいれば、貴女はもう要らない子だなんて、きっと言われないと思ってる。」
「馬鹿な子よね。」「それでも、 ………… 何れにせよ、あの子の呪いを解いてあげないと、きっと何も始まらないわ。」
「だから、 ──── その方法だけでも、教えておいてくれないかしら。どうせその手の御業の類は、私では何もできないから。」


【差し当たって、食い付きはするらしかった。あの子に関わることなら何だってしてあげたいと願っているようだった。相手がまだ動いてくれないと分かっていながらも、】
【ひとまずは尋ねて、自分でやれることはやっておきたい。そういう声音だった。例え全てひっくり返って、何もかも無駄になるとしても。】


「少なくとも、嫌いじゃないわ。」「 ……… 時々、思うことがあるから。」「昔、ひどい怪我をしてね。その時から全身義体なの。」
「だからもしかしたら私、本当はとっくの昔に死んじゃってて ─── 、」「今を"私"だと思っている"私"は、単なるプログラムに還元し得る擬似意識なんじゃないか」
「いやそもそも、私なんて意識は最初から存在しなかったんじゃないか、全ては命令文と偽りの記憶が作り出した幻想なんじゃないか、って。」「 ……… よくわからないのよ。自分のことが。」

「誰かに縋っていたいの。関わっていたいの。頼られていたいの。」「殺し合う刹那、肌寄せる瞬刻、交わす殺意や愛情だけは、本物だって思えるから。」
「やっと自分は神様だって、自分のことを疑わずに済むようになったのに、 ─── もう一度、そんな苦悩に堕とし込んでしまう、なんて。 ……… 随分と残酷に聞こえるわ。」


【続いて身勝手に語られるのは女の来歴であった。しかし要約するなら至極もって簡単なことで、「自分も、自分のことをよく分かっていない」。だから少しだけ、いや少なからず、共感できるということ。】
【その物言いはやはり身勝手であった。女もまた、信じていれば何の疑いもなく死ねた一人の少女の人生を、良かれと思って歪めに歪めている。見方を変えるなら十分にすぎるくらい残酷で】
【それを分かっているのやら分かっていないのやら、 ──── いずれにせよ、けれど全ては、切ない善意と清らな欲望の産物のだろう。】


「白神鈴音に会いたいって連中、一緒にいてほしいって連中、戻ってきてほしいって連中、 ─── 何人か思い当たるわ。」
「 ……… 存在しない人間とやらに、どうやれば納得なんてさせられるのか、私には思い付かないけど」「力になれるなら、場合によっては手伝いましょう。それがきっと、あの子の幸せに繋がるから。」


【問われるなら何人かの名前を綴る。正義を標榜するどこかの組織の長だとか、同じ場所で給仕をやっていた女の子だとか、兎角"神様"になる前に親しかった人間の名前。】
【互いの目論見が妨げ合わぬ限りは力を貸そう、とも述べるのだろう。この女はどこか愚直であった。それでいて迂遠でもあった。】


184 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/17(火) 22:36:50 Ty26k7V20
【風の国―――昼過ぎのカフェテリア】

【初夏の陽気は陽気というお気楽な言葉で言い表せないほど暑く】
【この都市のヒートアイランド現象は更にそれを猛暑に変える。まだ風の国だったから】
【湿度も高くなくてこのあたりはマシだった。それでもこの暑さは外に出たくなくなる】
【一番熱くなる時間帯。冷房の効いたカフェテリアに逃げ込むのは自然の摂理ともいえる】


だああぁっっもうっ、なんでこんなに暑い中外に出なくちゃならないのよぉ…


【隅の席でテーブルにべしょ〜〜っと倒れ込んで溶け切っている少女。随分と小柄で、中学生と言ったところか】
【丸っこい髪型の黒髪、眼は丸く大きく。それでいて利発そうな雰囲気がある。服装は『E=mc 2 』と書かれたTシャツだ】
【だらしない格好でコーヒーフロートをつつく。そうしていたら】

『しかし、「実物を見てイメージを膨らましたい」と仰ったのは貴女です。初瀬麻季音。』

【向かいのテーブルから機械の如き抑揚のない女性が諭す。その女はこの暑さの中、ホットコーヒーを飲んでいる】
【長い銀髪、黒のシャツに真っ赤なミモレ丈のスカートを履いた女性。銀のまつげは気温を3度は下げてくれそうな気品だ】

でも結局あれじゃあね…やっぱりCERNかどっかがLHC貸してくれないかなぁ…そうしないと最初の一歩も進めないわ。
理論上、多層次元の特異点を解析することができるのだからあとは繋げればいいだけなんだけど…はぁ。
夢のタイムマシン…現実は厳しいわね。

【なんて話が嫌でも耳に入ってきざる負えない。店員が通す席がその隣なのだから仕方ないだろう】





【水の国―――ニューロンシティ、裏通り】

【昔は賑やかで…賑やかと言ってもちゃんと品の有ったこの街も今じゃ3Dのネオンで出来たストリッパーの広告が光っている】
【急激な人口増加でごった返す人波――――何処かで銃声と叫び声が今日も鳴り響く】

『クソッ、ヤクザだ!!逃げろッ!!』

【緑色にモヒカンを染め上げた痩せぎすの男が叫ぶ。そして構えたSMGの弾丸をあたりにばら撒いた】
【その銃口の先に居るのは、黒いセダンで乗り付けた、黒いスーツの小集団。刀に、拳銃。怯える様子もなく突っ込んでくる】

【モヒカンの周りに居た奴らも応戦し、一人は慌てて車に乗り込んで、エンジンをかける―――が――――】

――――そうはさせない。

【ビルの上から、車の上へ、ダンッッ!!!っと落ちる黒い影。銀の刃がルーフとドライバーのスタッズの付いたライダースを貫通して】
【フロントガラスが真っ赤に染まった。―――屋根の上には突き刺した刀をゆっくりと引き抜く女の姿】

【長い黒髪をなびかせて、切れ長な瞳は刃のよう、飾り気のない銀縁の眼鏡をかけた、スーツ姿の女性。襟に光る『四割菱』の金バッチ】

―――皆殺しよ。

【刀を振って血を払い、車の屋根の上で仁王立ち。向けられた銃口にメンチを切った】



/上か下選んで絡んでいただけたらですー


185 : 名無しさん :2018/07/17(火) 22:52:27 Z2L8qWYg0
>>181

【――――その日。"彼女"は赤い服を着ていた。きっと珍しいって思うだろう。彼女はだいたいいつでも白い服を着ていたなら】
【そうでなくてもそこまで鮮やかなのは、あまりなかっただろう。――深い赤色のワンピース。右手と右足には包帯を巻いていた、なんでも数日前に】
【"パグローム"と交戦したのだと言って――その時の負傷だと言って。アルジャーノンに無理やり治して――というか動ける程度までは治療してもらった、らしい】

【――本来ならばもっとずっと長い間ベッドで治療に専念するような傷。それでも彼女はそこに居た。当たり前だろう、そうしない自分なんてきっと不必要だと断ずるのなら】

――――――――――――――――っ、え、

【視界にあるのは、ありふれた車の速度で後ろに流れていく、景色であった。いつからそれを見ていたのかは記憶にない、今まさにそこにぱっと現れた気もしたし】
【けれどずうっと――長い間、そうやって見ていたような、気もする。――だから、ではないけれど、声を掛けられて覗き込んだ瞬間、彼女はひどく不可思議な声をする】
【まるでありえないものを見てしまったみたいな顔をするんだろう。――であれはそれは緊張ではなかった、それよりもずっとずっと、気の抜けた色合い、というか、】
【虚を突かれたような様相であって――――はく、と、吐息を詰まらす。見開かれたマゼンタ色が"彼"を見つめるんだろう。――覗き込まれた至近距離、吐息すら重なりそうなほど】

――――――――――、

【――だから、その瞬間に、少女は理解してしまう。"これ"は夢だって、気づいてしまう。目の前で"生きている"彼が――――脳が導き出した虚像であると、分かってしまう】
【せめてそうであってももう少しくらいは浸りたかった。――どうして、と、自分の脳を怨むなら、相手はどんなふうに思うんだろう。よっぽど、変な顔に違いない】
【鮮やかな両眼は下手すれば零れ落ちてしまいそうなほどに見開かれていた。瞬間接着剤で固められたみたいに唇は硬く結ばれて。――嗚呼、と、呻く声さえ出ない】

【――――――――だから。だから、その瞬間に、少女は何も答えられなかった。わくわくする気持ちに水どころか泥水を差すように、ただ、絶望的な沈黙だけが返って来る】
【けれど沈黙が長引けば長引くほどに、その内側から。自分自身から。どうしようもない気持ちが溢れ出て来る、喉が詰まるみたいな感覚がした、息の仕方を忘れるように】
【引き攣ったように蒼褪めた唇が、――――けれどかすかに小さく慄いた。「****」。言葉の形も音も手繰れぬほどの、ちいさな、ちいさな、――ちいさな、震えにも似て】


186 : 名無しさん :2018/07/17(火) 23:10:02 Z2L8qWYg0
>>182

【――――放り投げられた本はきっとどこか怨めしいような温度を纏うのだろう、シャーって言ってそれぽくカッコいいポーズのデフォルメも】
【斜めの位置から見たならちょっと恨みがましい。専門家が見たら眉を顰めるようでも、あるいは、子供たちにとっては、キラキラ憧れる要素、きっとあるなら】
【ああでも――それにしたって少しふざけすぎかもしれない。一瞬考えたらそうやって考え直すような本なんだろう、きっと。中身は見てないから、知らないけど――】

――――――本を投げちゃいけないって教わんなかった? あーあー、かわいそかわいそ。化けて出ちゃう。
夏だからぴったりかもしれないけど。本の幽霊って頭がカタそうね。本の虫もたいがい頭カタいけど――――。

【――ひょい、と、そのベンチの後ろから。手が伸びた。多分、手だった。ぞろぞろした黒いローブにめいっぱい隠しこまれていたから、腕かどうかさえさだかではないけど】
【拒まれることがなかったら上手に掴んで取り上げてしまうから、本当に手だったらしい。そうできたなら勝手にぱらぱらとめくるような音が続く、「ふーん」と気の抜けた声が】
【けれど――出来の悪いボイスチェンジャーに通したような、ざらざらした機械質の声が、呟いたなら。身を乗り出してくる、ベンチの後ろから】

【――――身体中をすっぽり覆うようなローブの人影。であれば身体つきは全くと言っていいほどうかがえず、その代わりに顔を見ようと、思ったとしても】
【そこには鮮やかな色で塗りつけられた狐面が。表情のすべてを覆い隠すべくはめ込まれているのだ、であれば、おそらくその第一印象は"よくて"不審者】
【"わるくて"――――めちゃくちゃやべえやつと思われて攻撃されかねないくらいの、"変なやつ"であった、なにせ"自分"というものを、全く、欠片も、見せてくれない】

だれかと待ち合わせ? すっぽかされちゃった?

【だけど――よほど悪い奴ではないと思わせるのかも、しれなかった。ベンチの背もたれに手をついて身を乗り出した"そいつ"は】
【それからどこか揶揄うような音階で――声はもちろん機械がざらざらしてて耳障り――そうやって尋ねるのだ、こんなところでそんな風にしてどうしたの、と、聞くみたいに】


187 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/17(火) 23:17:44 WMHqDivw0
>>185

…………え、ちょっと本当に大丈夫? 車酔い?
……そんなわけないか、あんな運転で酔わない人だもん、あはは――――

【訝しげな顔に戻って、さらに笑い顔に戻って。彼の調子はいたって良好であるらしかった】
【それでも心配はしているらしい。がちがちに固まってしまったかえでの顔をずーっと覗き込んで】
【……あるいはそれすら、かえでを追いこんでしまうだろうか。恨みがましい視線と錯覚、してしまったりして】

ねえってば、話聞いてた? かえでさん。……かえでさん?
……やっぱなんかおかしいよ、怪我がまだ後を引いてる? それとも体調不良?
それかほんとに……緊張、してるの? ねえかえでさん、……、……、

【やがてその表情は本格的な困惑の色に染まっていく。眉根を寄せて、覗き込むのを強くして】
【きゅっと引き締めた唇に、白絹の手袋に覆われた指を添えて。何かを考え込む姿勢】
【そうしてから数秒間。考えた末――ふっと何か思いついたように。席から半分立ち上がる】

……ね、運転手! 聞こえてる!? ムリフェン、なんだか調子が悪いみたい!
こんなんじゃまともに戦えやしないだろうし――引き返して! 本部!

……、……ってなわけでかえでさん。今回はおやすみしときなよ、
大丈夫、かえでさんの分もボクが「やる」から。
言っとくけどね、ボク戦闘だったらかえでさんよりずっと強い自信あるし――――

【まずは仕切りをこんこん叩いて。運転手に向かってそんな命令。それからくるりと振り返って】
【にっと笑って「そんなこと」言い出す、――かえでにはわかってるだろう、そんなことしたって無駄だって】
【だってかえでが穴を開けなくても彼は「死んだ」んだから。本当にそんなことしたって、意味がない】
【けれどこの日の彼はやたらと自信に満ち溢れているようだった。大丈夫、ボクらが負けるわけない――呪いのように】


188 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/17(火) 23:31:56 WMHqDivw0
>>186

【「……帰っか」の声とともに、ゆっくり顔を上げようとして。それで視線が合ってしまう】
【正確には「その人」の視線ではなくて、狐のお面の細い目の部分なんだけど――それだけでも十分】
【吃驚するには。うおっと声を上げて、がたんとベンチ全体を揺るがす程度には慌てふためいて。……座り直す】

……待ち合わせはしてねーけど、こーしてれば会えるって……おまじない? 都市伝説?
そーいうの聞いたから試してみてたけど、来てくんなかった。そんだけ。
だからすっぽかされたとかそーいうんではナイ、だろーけど、……

………………あんた誰?

【そうしてからちょっと不満げな表情、そして至極真っ当な問いかけ。というか「誰」どころの話じゃなくて】
【「何」と訊くほうが正しかったのかもしれない。だけどそこまで突っ込む気力がなかったらしい】
【はーっと溜息を吐けば、明確に疲労をアピールすることになる。そんな中、不審者の相手なんかしたくない】
【そんな雰囲気を醸し出して――じとっと、仰け反るみたいな姿勢のままで、狐の顔を覗き込むのだけど】

……、……、化けて出るとか出ないとか、なんかそーいう系? オカルト?
そーいうのに詳しかったりすんのあんた、……まあそれっぽい見た目してっけど。

じゃあさ、……神様に会う方法とか知ってる?

【ぶしつけにもそんな質問。藪から棒に。溺れる人が藁にもすがる、みたいに】
【彼は何としてでもそれを知りたがっているようだった。「神様に会う方法」――きっと放り投げられた本も、そのための】
【触媒だかなんだかに使っていたんだろうか。だとしても、こんなチャラついた若者がオカルトにハマるなんて】
【あんまり結びつかない点と点だった。だけれども、……狐のあなたは知っているんだろうか。彼が信じている神様は、ひとりだけってこと】


189 : 名無しさん :2018/07/17(火) 23:41:27 Z2L8qWYg0
>>183

――――じゃー、話はもっと簡単じゃない? "蛇"が救ってやるのと同時に、誰かが居場所を用意してやればいい。
そうしたら"それだけ"の気持ちは全部別の場所に向くと思わない? ――――方法? 方法、なんて、ねえ――、わざわざ言う必要、ある?

"蛇の形をしたそれなりの術士"を用意してあげる。それじゃダメそうなら早めに言ってくれる、"こっち"にも事情があるし――。

手伝いとかしたいって言われても別に何にもないし――、――あ、いや、その子。かえでちゃん? 確保しといてくんないと困る。
だから適当に捕まえてきておいて、――それか居る場所に呼んでくれる? 連絡先はぁ、ないから――、――おっきな声でね。よろしくね?

【――聞く限り、どうにもその人物は自罰的に不器用を塗り重ねた結果の抑鬱状態、その捌け口として宗教を選んだ、"わりかしヤバい人物"に思えてしまう、それこそ】
【"自分"が言うのもどーだか、と、思ったなら。"そいつ"はそのまんか簡単に言ってのけてしまうのだ、であれば他人事の温度感なんだろう、そのくせ、何かする力はありそうで】
【自分の都合/事情も兼ねて――スーパーにお醤油買いに行くから、なんか欲しいものあったらついでに買ってくるよ、みたいな、口ぶりをする】
【そうして相手の声音には――手伝ってもらうようなことはないと言いながらも、少し遅れて思い返す。そもそもその人間が居なければ、どうにもならないんだった】

【――――――けれど信用できるんだろうか。明らかに不審過ぎた。今まで喋ったことが全部全部口から出まかせでないという確証を持てるかどうかは、相手次第であり】

――――――あなたは、あなた自身を、……あー。ええと。名前何? まあ、いいや、――。
あなたはあなた自身を"あなた"だと認識している。だけどね、世界中の人間は"あなた"を"あなた"だと認めない。それどころか……。

"あなた"である"あなた"は要らない、と。みんなが寄ってたかって責め立てる。
そうでなければひそひそ言いながら遠巻きに見やって――。

【――やがて"そいつ"は摩天楼の崖っぷちに背中を向けたままでしゃがみ込むのだろう、また膝に頬杖をつくみたいにして、言葉を並べていく、そうしたら】
【それは――もしかしたら"だれか"の気持ちなのかもしれなかった。自分自身による認識を、他者が認めてくれない。それどころか、そうであるならば要らないと言い捨てられる】
【そうして現実に様々な言葉と行動で否定される。そして何も知らぬ有象無象の民にすら、恐ろしいものだと認識されていく。されている。それならば?】

【――――――"そう"なった全部のきっかけの一つや二つ。それくらい納得させてもらえなかったら、――ヒトに与して護ってやる義理なんてない、って、思ってしまうのかもしれない】

ふーん……誰も知らない。まあいいや、探してみる、――、あはははっ、そんなの、あたしだって知らない。
じゃ、しばらくは死なないどいてくれる。あたし、友達、居ないから――手伝ってくれる人っていうのも居なくって。

ほんとに手伝ってもらうかは別としてね――明日にはあたしはもう自由に動けないかもしれない。

【いくつかの名前を聞いたなら"そいつ"はいくらか思い返すような間を空けるんだろう。そうして"知らない"と言い切った。けれど覚えはしたんだろう】
【存在しない人間が出来事を納得する方法についてまで、あまりにあっさりと知らないと言い切ったなら。そもそも"それ"をするのは自分じゃない、とでも言いたげに】
【いたって簡単な言葉で相手の無事を願う。――願う、というよりか、お願いする、というか。そんな温度にて】

【――最後の呟きは、哀愁というほどは褪めていないけど。浮かべているとしたなら、どこか自嘲めく、涼し気な笑みなんだろうな、と、思わせて】


190 : 名無しさん :2018/07/18(水) 00:08:12 Z2L8qWYg0
>>187

【――――その瞬間に、"この出来事"は正しさから、逸れてしまった。夢であると思うしかなくなってしまった。そうならないためには、】
【彼女はきっとあの日と同じ風に――全く何もかも同じにするしかなかったのだろう。そしてそうしたなら、"もう一度"――彼の死を受け入れなければ、ならなかった】

【夕暮れの病院にて。その死をもう一度認識する。けれどそれはあんまりに救いがなかった。無限ループに囚われてしまう、抜け出すきっかけはどこにもなくて】
【だから――"これ"が救いと言ってしまうには、それでさえあんまりに救いからは遠かった、けれど。その時にきっと何か、変わってしまうなら】

――――――――――ッ、

【「――まって、」と、言いたかった声が、出なかった。身を乗り出すように運転手とコンタクトを取ろうとした彼を止める術、そんなの知らないみたいに、凍り付いたまま】
【やがて――ためらいがちに停車するんだろうか。運転手役のサーバントがきっと困った顔をして振り向いていた。それどころじゃないと思っている顔だった、でも、命令だから】
【ひどく困惑しきった顔を彼へ――サビクへ向けた。それから、少女へ、視線を向けた。――調子が悪いとされた少女こそ、"そういうこと"、誰よりうるさいって、知ってるように】
【そして事実そうであった。普段の彼女であれば絶対にそんなことはないからと言い張って、――事実がどうあれ、そんなの従わず、当然突っぱねて、終わる――"はずだった"】

――――ま、って、待って……、やだ。やだよ、じゃあ――、一緒に、もどって……。私、と、一緒に……もどって、よ、
やだ――、――っ、――かない、で、……、――――おねがい、お願い、だから、――行かないで、――……ッ、――ねぇッ、!

………………ごめん、ね、ごめんね――、ごめん、なさ、――ごめん、なさぃ、――っ、なんで、気づいて、……っ、ごめん、ね――、

【――――に、と、笑って振り返った彼は、けれど、――そこで見てしまうんだろう、その時に少女は、すでに、泣いてしまっていたから】
【そうして並べてく言葉は。――とうてい"彼女"が発するものだとは、思えなかった。あるいは信じたくないかもしれない、あの日、そうやって言い切った、くせに】
【一緒に戻ろう、と。行かないで、と。――泣いて願うのだろう、あるいは――伸ばした指先が彼の服をぎゅうと縋るみたいに掴もうとして、それを赦されるなら】
【ぎゅ――と、引き寄せ、抱きしめようとまでする。そうじゃないとどこかに行ってしまいそうだって怯えるみたいに。もしかしたら震えているのにだって、気づいて――――】

【――――――――きっとひどく困惑させるのだろう。あるいは怒らせるかもしれなかった。自信をへし折るのかもしれなかった】
【だけれど同時に少女が冗談でもふざけているのでもない、心底から、心の奥底から、そうやって、泣いて、懇願している、って、――伝わって、しまうんだろう】


191 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/18(水) 00:21:30 o6XMS57s0
>>189


「 ─── 騙し損ねた時が怖いわね。」「 ……… それに。」「理由はどうあれ、あの子は今では立派な狂信徒よ。それだけの力も与えられている。」
「そしてそれを利用されてもいる。」「 ─── 父親みたいに慕ってるのよ。あのマエストロ気取りを。」「だから彼奴を殺さなきゃいけない。そうしなかったら、 ─── 何度だって引き戻される。」
「けれどあの子にそんな事をしたら、 ……… きっと、私のことなんて、二度と振り向いてくれない。」「 ……… まあ、でも、覚えておく。万一にでもあの子を取り戻せたのなら、すぐに貴女を呼ぶことにする。」


【どうやら事態は相応に複雑であるようだった。"あの子"を誑かす誰かがいると。それは主教であるのかもしれず、けれど確かに信頼を得ているようで】
【しかし冷たい温度感でも当然であると女は思った。お互いに問題とするのは至極個人的な問題であり、延長線上で協力の余地があるからそうしているだけ。】
【電子回路を人工皮膚で覆い隠したヒトガタでしかない彼女は、神を信じることや人を呪うことに疎かった。なればこそ、ノイズ越しの声でしかない言葉に嘘はないと思うしかなかった。】
【 ──── そうしなければ、進める道も待たなかった。私はまだ、かえでに遣り残した事がある。そう思わなければ、今はもう、脳波の意味を見出せなくて。】



「 ──── 心中察するわ。私も、世界からは人間だと認められている。けれど私は、私のことを人間とは思えない。」
「もっとも私の場合、あくまでも自己認識の問題に終始しているから、あまり偉そうなことは言えないけれど、 ……… 。」

「辛かった、 ……… いいえ。今でも、辛いのでしょうね。」「世界を怨んでも仕方ないわ。"私もそうしたことがあるから"、よく分かるつもり。」



【そしてまた、"今"の白神鈴音には、ひどく同情してもいるようだった。自分が自分であると認められない煩悶。かくあれかしと面罵される苦悩。】
【 ──── "ひとでなし"の女も、世界を呪った事は一度や二度でなかった。まして彼女は単なる首輪のついた強化人間でしかなかったけれど、もしも其の時、力を得ていたら】
【きっと世界なんて滅ぼしていたに違いない。 ─── しかし、それでも今、女は"正義の味方"を鬻いでもいた。憎むべき世界を守ろうとしていた。】
【それは神様も同じ事で、逡巡から踏み出せずにいるのだろう。どんなに世界が憎くても、それでも自分を愛してくれる人がいるから。いてしまうから。】



「そうして頂戴。 ─── 何よ、急に弱気になって。」「貴女の方が心配になってきたわ。」
「少なくとも、 ……… かえでに会って、呪いを解いてあげるまで、私は、死なない。死ねない。死にたくない。」

「 ──── だから、貴女の名前を教えてくれる?」
「私はアリア。アリア・ケーニギン=デァナハト。」「いつだって力になるわ。あの子を助けるためならば。」



【 ────── いつのまにか涙は乾いていた。くしゃくしゃに汚れた顔を、ふっと微笑ませて、女は頤を上げた。悲しげな影の諦観を、どこか励ますように揶揄いながら。】
【青く深い隻眼が、夜に立ち並ぶ摩天楼の輝きを映していた。決意であった。それが何時まで続くかは問わずとしても、とかく消し得ぬ色をした。】


192 : 名無しさん :2018/07/18(水) 00:22:43 Z2L8qWYg0
>>188

……ふーん、枕の下に写真入れちゃう感じ? 誰かに会いたいならおまじないより普通に電話したら? 連絡先知らない?
それともなあに、意中の人とある日いきなりばったり逢えちゃう系のおまじない? 

…………――あたし? うーん、と、ねぇ、……"なん"だと思う?

【驚愕によって漏れた声をけれど"そいつ"はひどく涼し気に聞き流すのだろう。でも見た目はひどく暑そうだった。ぞろぞろって身体を隠しきるローブ、だなんて】
【まして黒色。完全に暑いだろう。けれど飄々とした感じは暑さ寒さになんて全く動じませんって言うような態度を見せつける、「それ呪いじゃない?」なんて冗談めかし】
【――そうして、誰何を受けたなら。言葉を濁すのだ、それで、"自分は何だと思う"なんて――きっと相手が一番知りたいことを、相手に、尋ねたなら】

オカルトはー、……まあ、ちょっとだけ。詳しいかはー、……うちの飼い主の方が詳しいかな? おまじないが専門の魔術師だもん。
だけど来ないよ。呼んでも来ない。来られない理由があるの、だからあたしが"来させられてて"。…………神様に会う方法?

そんなの神社でお参りするとか。そこらへんブラついてるときに捕まえるとか。

【じいと覗き込まれる狐面の顔。ひどく鮮やかで丁寧な塗装をされていた、けれど、それ以外のことは――"よく分からない"だろう】
【それは見えないからとかじゃなくて。物理的な問題ではなくて。もっと概念的に――"中身"を理解できないみたいな、感覚があるはずだ。認識阻害の魔術が重ねられているなら】
【物理的にも概念的にもこの存在は秘匿されている。そこからさらに念には念を入れて声音までも取り繕って。だけど――口ぶりから女だとは思わせる、かもしれなくて】
【オカルトの専門家を知ってるらしい――けれど絶対来ないとも付け加えておく。ついでに自分はその代理だとも。――藪から棒を蛇を一緒に取り出した、みたいな質問には】

【――けれど意外とすらっと答えてくれるんだろう。もし表情を伺えるのなら、多分、目を丸くしているような、温度感があった】
【そのくせ――神社はともかく、そこらへんブラついている、は、どうかと思えた。きっと彼だってそんなの試しているだろう、そして、きっと、ダメだったから】
【こんな場所でそんな風にしているに違いないのだ――なら揶揄っているのかもしれない。けれど機械越しとは言え、"そこまで"ふざけている気配は、あんまり、なくって】


193 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/18(水) 00:29:25 WMHqDivw0
>>190

【言ってから。これ絶対かえでさん聞かないよなあ、って思って。思ってたけどそうしてしまった】
【だってどう見ても戦えるような状態に見えないし。こうしたってしょうがないんだと】
【多少強引に言って聞かせなきゃダメだな、と思って、こほんと咳払いをひとつしたところで――――】

……え、何、どういうこと? ねえちょっと……本当にどうしたの、かえでさん!?
もしかして何か、ええと……精神攻撃とか受けたの? だからそんな「変なこと」言うの?
しっかりしてよかえでさん、ボクが戻るわけないでしょ、今日が何の日だか知ってるでしょ!?
絶対失敗できないから――――だから戦えないかえでさんは戻って、ボクは行くの! 当然のことでしょ、

………………ちょっと、ねえ、なんなのってば……本当にどうしたの、……かえでさん?
何を謝ってるの、ねえ……ああもう! 運転手! 近くの車にアルジャーノン乗ってるの、ない!?
居るんだったら連れてきてよ、ほんとムリフェンがおかしくなっちゃったんだよ、ねえ――――

【抱き締められてしまう。それで当然困惑して、……でも引き剥がそうとしなかった、今までと違って】
【明らかにおかしな状態をそうするほど冷たくもなれなかった、相手がかえでなら猶更。おろおろと視線を動かす】
【運転席。それから眼前のかえで。もう一度運転席。かえで――何度か往復したなら】
【はああ、と大きな溜息と共に。……ちょっとだけ嫌そうな手つき、それでも抱き締め返す、そして手を上に持ってって】
【かえでの美しい藤色の髪、毛並みに沿って撫でる。落ち着かせようとするために】

ねえかえでさん、どうしちゃったの、……パグロームに何かされた?
だったらボクがアイツ殺してきてあげるよ、だから、……泣き止んでよ、それから謝るのもやめて。
かえでさんは「何も悪いことしてない」でしょう、ねえってば、おかしいよ……わかったわかったから、
本部ついたら一緒にかえでさんの部屋までついてく。それで治まるまでは一緒に居るから、……

【観念したような声色。それで一度戻ってもいいとまで言う、そうしなきゃ治まりもつきそうにないし】
【溜息を吐きながらまた運転席に命令を出していた、「ムリフェンとサビク、一旦戻る。他のオフィウクスに伝えて」、――】


194 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/18(水) 00:46:21 WMHqDivw0
>>192

知らねーんだわ連絡先。だって神様、L■NEとかやってるかわかんねーし。
うんそう、これで会えるって聞いたからやってたんだけど……ぜんぜん会えなかった、デマ掴まされたわ畜生。

………………なんだろーね。櫻のあれ、ヨーカイとかいうやつ?

【当てずっぽう、投げやりな回答。それはもう疲れ切っているから、早めに意味のない会話を切り上げたいと】
【そういう感じの態度だった、あきらかに。仰け反る姿勢もしんどくなってきたらしい、背をまっすぐに戻して】

……飼い主とか、魔術師とか、なんかぜんぜんよくわかんねーことばっか言うんだもん。
ナニ? マジでヨーカイ? ……はー、マジでわかんねーんだわおれ、頭わりーんだからもーちょいわかりやすく喋って。

神社、神社……あんのかなあ、崇めてた宗教ブッ潰れたンだけど。
それか……ブラついてるモンなの? 神様って。じゃあ来てくれたっていいじゃん、……おれはめっちゃ呼んでんのに。

【言い方はもうひどく投げやりで、乱暴ですらあった。ちっとも理解の出来ない会話、イライラが募っていくらしい】
【「アーもうヤダヤダ!」 最終的にはそう言って、脚をばたつかせる始末。顔はひどく不機嫌そうに歪んで】
【何かを言いかけてやめてを繰り返し――は、と息を吐いた。もう埒が明かないとでも言いたげに、吐き出す、次の言葉】

…………じゃーその飼い主サンに訊いといてよ、「白神鈴音」はいま何処にいるのって。
おれが会いたい神様はそのコだけ。……その人も知らない神様だったってんならもう――お手上げだけどお。

【あまりにも単刀直入がすぎた。言った通りに頭がよくないんだろう、この青年、だから】
【もうまだるっこしい話はこれ以上無理、我慢できない――みたいな態度。ちょっとだけ棘っぽい声色でそう言ってから、また項垂れた】


195 : 名無しさん :2018/07/18(水) 00:50:24 Z2L8qWYg0
>>191

……ふーん、いろいろ大変なのね。救われたら信じる理由だってなくなるでしょ、って思ったんだけど。
まあいいや、知らない人だし。――あなたの方が詳しいんでしょ? じゃ、任せるから。

恋人候補で母親候補さん? ねえねえ、それってちょっとだけ無理なーい? まあでも――あたしたちは人間の気持ちを信じてるから。
だけど――だまくらかすんじゃないと、駄目なの? その口ぶりなら"もっと"できそうなのに。

【――対して至極単純に考えていただけらしい"そいつ"はあっさりと考えることを放棄する。よりいっそうその人柄を認識している相手に任せるのが、良いだろうと】
【その結果なんらかの助力を用意しておくというのは言ったから、それでいいだろうと言わんばかり。ぽいっとバトンは丸投げ、そのくせ、至極雑なエールは添える】
【結局相手はどちらを望むのだろう。ただどちらにせよ――だまくらかのを前提にしたり失敗するのに怯えたりするよりか、もっと強気でいたらいいのに、なんて、意味合い】

そう? 人間の言葉を操ってしゃべるなら、何はどうあれ、人間だと思うの。
まったく別の概念であれど、人間の言葉で以って喋くるなら、それは人間の概念が含まれてしまうでしょ? 
だからね、人間なんだよ。あたしも。あなたも。おんなじ風にあたしたちがイヌの言語をきちんと学んで理解してしゃべり合えたら、あたしたちのその部分はイヌと等しい。

言わない? どっかの言葉を使ってる時とどっかの言葉を使ってるときだと考え方とかなんだとか、ちょっと、違ったりするって。

――――だからそういう意味では人間だった。って。あたしは、思うんだけどな――。

だって、人間の形して、人間の言葉を使ってたら。十分じゃない? 一緒に話し合ってみたらどう? あたしより、あなたのほうが――。

【――であればそれもまたエールに近しいのかもしれなかった。そのくせひどい丸投げの口ぶりをしていた。たとえそれで相手を怒らせたって、しれっとしていそうな温度だった】
【そんな風に割り切って考えられたら多分楽なんだろう。だけれどその考え方はあんまりに乱暴すぎて、だから、"こんな風"に出来るやつは、大層大雑把に違いない】
【「分かり合えるかもね」って、虚空に語り掛けたなら】

あたしにはこの場所で名乗る名前はない。だから適当に呼んで、それか、なんとかしてどうしてでも呼びたいっていうなら……、ヒメとかどう?
植物だと小さいヤツをヒメなんとかって呼んだりするし。あたしは小さい**だから――ヒメ。

【――――相手の名前を受け取って、けれど、"そいつ"の名前は、けっしてかえってこない。名前はないのだという。少なくとも――この場にて扱える名は、存在しないと】
【けれど相手が"どう"だからとかではない、自分の都合であるらしかった。だから適当に呼んでと譲歩する、それで困ってしまうっていうなら、指定するのは単語一つ】
【"そいつ"はその呼び方の意味を知らなかった。"それ"だってほんの何回かのやりとりで使われただけだけど。――思い浮かばす人物は、いま、どこにいるんだろう】

【たしかであるのは――――この後相手が帰る罰署に、その少女は、ぜったいに、居ないことのみで】


196 : 名無しさん :2018/07/18(水) 01:23:57 Z2L8qWYg0
>>193

【――――そうしながら、けれど、ひどい吐き気を感じていた。頭の骨の中をじりじりと焼きつけられるみたいに、背徳と不敬とか自分を責める、夢だと分かりながら】
【明晰夢はそうだと気づいたなら自由に振る舞えるらしい。――嘘だと思った。そうして思い直した。"こんなこと"してしまえるくらいには自由だった。だから、不自由なのは】
【きっと限りなく自分自身であって。――けれどそれに苛まれてでも、行為を途中で止めることはきっとできそうにもなかった。だって、こんなに、縋り付いて】
【細い指先がめり込むみたいに力を込めて来る。抱きしめる――なんて優しい感じのものではなかった。なんかの動物が獲物を捕食する瞬間、みたいな、くらい、力を込めて来る】

【ぼろぼろ落ちる涙を拭うこともなくて。であれば、相手の服を濡らしてしまうかもしれなかった。抱きしめられた、ということは、きっと、拒絶されていないから】
【涙交じりの声が何度も何度も何度も謝り続けていた、きちんと聞いていたならいくつかの単語は聞き取れるかもしれない。****。****。***********――】
【――けれどそれは結局期待に過ぎなかった。どれだけ耳をすましたって涙声はどこまでも不明瞭で、言っていること、ちいとも、伝わらないなら】

【――――――彼に"命令"されたサーバントはやはりひどく狼狽えているみたいだった。けれど、自分よりうんと年下とは言えど、幹部を無視するわけにいかなくて】
【狭い道を無理やりに切り返して、元の道筋を走り出すんだろう。そうしたら――その帰り道でさえ少女はずっと泣いているに違いなかった。不明瞭な言葉だけ時折並べて】
【話しかけられたら時々反応はするんだろうけれど、それも支離滅裂で。それこそ錯乱しているとしか言いようがない様相、精神攻撃であったなら、最高の結果であるのだろう】
【幹部一人をこうして潰したうえに、もう一人動けなくする。――これが本当に攻撃なんだとしたら大層立派な戦果であった、けれど、現実は、】

ぁ――――ッ、ひ、ぅ、……、ひッ、――、ひっ、……、

【――そして数十分後。車は少女の錯乱以外なにの問題もなく本部へ帰還するんだろう、そうしたなら運転手のサーバントも手を貸してくれた、泣きじゃくる少女に肩を貸して】
【そうやって部屋に担いでいくんだけど――その間もきっと少女は彼の手を離したがらない。ぎゅ、う、と、強く強く握りしめてくるんだろう、離したくない、と、示したなら】
【部屋にまで届けてもらって。それでもまだ離してくれなくて。結局室内まで引きずりこむみたいに、連れ込んで――。――その室内は、きっと、ひどく、"普通"だった】

【広い間取りは幹部特有。その中にありふれた家具を並べて、スペースがいやに目立つのは、広すぎる部屋に対して、一人分の家具しかないから、なんだろう】
【その結果できた隙間にいろんな趣味のものが置かれている。多趣味というよりは貞操無し。なんだっていいからやっているみたいにジャンルもてんでバラバラの、趣味のアイテム】
【彼の部屋とは何もかもが違う。けれど。どこかで似通う気がした。部屋の中まではサーバントも入ってこない――泣きすぎて過呼吸みたいな吐息を繰り返したなら、相対するのは彼のみで】

【――――どうしよう、どうしよう、と、思考がどんどん抉れていった。夢だと分かっていても。ひどい吐き気と動悸がした、今すぐにでも消えてしまいたかった】
【熱い鉄板に乗せられた水滴がジリジリ震えながら小さくなっていくみたいな気持ちだったし、きっと本当にそんな状態なんだろう。泣きじゃくって、ひどく、動揺して】
【夢なのに。夢だから。――もう二度と逢えないって、分かっていたから――こそ。ぜんぶがぜんぶ溢れ出てしまった。パンドラの箱と同じ、違うのは、ひとつだけ】

【閉じてしまう蓋も一緒に吹っ飛んでどっかに飛んで行ってしまったこと――――――ぎゅうと縋り付く指先が、うんと、幼い迷い子みたいに、震えて】

【――室内には椅子とかふわふわ毛足のラグとかベッドとか、彼が座るのには不十分でも、彼女を座らすには十分すぎる程度にはスペースがあった、有り余っていた】
【彼の満足するレベルで洗浄されている場所は、多分、ない。だから立ったままでもきっと良かった。錯乱する少女だけ床に転がして、自分だけ、戻ってしまったって、きっと】


197 : 名無しさん :2018/07/18(水) 01:55:24 Z2L8qWYg0
>>194

ヨーカイ? ううん、魑魅魍魎の方。――そーう、そうなの、でもそんな本だと、どうかなぁ……。
――? "飼い主"も"魔術師"も、この辺の言葉でしょ? 間違えてた? ――この辺りでこんな喋るの、久しぶりなんだもん。

久しぶりに帰ってきたの。ずーっと遠いところに行ってたんだから。ブラついてるんじゃない? ずうっとお社の中じゃ退屈でしょ?

【きゃらきゃら笑うみたいな声がした。もちろん音声はノイズだらけの機械音。ふざけているって思わせた、何もかも相手のこと馬鹿にしているみたいで】
【そもそも生きているのかさえさだかではないようなやつだから。――けれどぱちくり瞬くような間、相手の言葉に考えるようにしたなら、返した言葉は、いくらか大人しく】
【単語を間違えてた?と聞き返してくるのだろう、――無意味な吐息を一つしたなら、まるで投げやりな音階だった。いらだつ仕草を見つめていたなら、他人事ぽい】

あたしたちの観測できない場所。だけどあっちからは自由に干渉できる場所。だから困ってるでしょ? 
あたしの飼い主"サマ"が取り上げた子だからね、知らないはずないでしょ? ――呼んでたから気になって来てあげたの。
それに――呼んでるのに来ないって言うのは、勘違い。今だって目はずっと合ってるでしょ? あなたがそれを認識できないだけ。

――白神鈴音の知り合いなの? じゃあちょっとお話しない? あたしなら――、"こんな本"より"蛇"のこと、もっとずーっと、詳しいけど?

【棘っぽい声音がきっとあんまりにまっすぐ向けられる。――けれど手ごたえはないんだろう、暖簾だってもうちょっと揺れてくれたりして楽しいのに、"こいつ"は、全く】
【けろりと当たり前みたいに言葉が返った。考えるような時間さえなく。ならばもしかしたら確信犯だったのかもしれない、――とさえ、思わせて】
【ベンチの背もたれに頬杖ついたならじっと狐面が彼を見ていた。――唯一覗き見ることの出来そうな瞳の色は、けれど、認識しても認識しても理解できない。特別な目でもなければ】
【その赤色と黒色の瞳を捉えることはできなくて――――ぱちりと瞬き一つ。指先でつまむように持っていた本をふら、ふら、と、揺らしたならば、後ろに放り投げる】

【――――ばそん、と、さっきより重たい音がした。言うまでもなく"こいつ"の方が力強く放り投げていた。「――どう?」と尋ねる声、共謀を誘う、犯人みたいに】


198 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/18(水) 20:08:51 WMHqDivw0
>>196

【狼狽える運転手のサーバントと同じくらいには少年も困り果てていた。本当によりによってこんな時に】
【幹部がいきなり二人も戻るなどと言い出しては、きっとケバルライやマルフィクあたりがひどく怒りだす】
【だから本当に、さっさとかえでをどうにかして自分だけでも早く戻らなきゃ。そうは思っていたけど――】
【――手をがっちり掴まれて。それを放す気にもなれなかった、――というか。最初からそうする気なんてなかったんだ】
【だって彼、かえでと居る時だけ、あの忌まわしい「反発」の異能を抑えていたんだから。いつからそうしていたかはわからない】

【(……あるいは。これが悪い夢だから、そういう設定になっていただけかもしれないけど――――)】

【本部に着いたらまずは付き添いのサーバントに命令を飛ばす。「スリッパ、あとなんか鎮静剤か睡眠薬みたいなの持ってきて」】
【部屋に引きずり込まれることは覚悟していた、それなら土足で踏み入るのは流石に悪いと思ったんだろう】
【後者は、一応頼んでおいたけど持ってきてもらえなかった。それを管理しているアルジャーノン、全員が出払っていたから】
【……本当に面倒臭い。そう言いたげな重い溜息を吐きつつも――部屋の前でハイヒールを脱いで、スリッパに履き替える】
【すると少年の身長は一気に13センチも低くなる、かえでより10センチほど小さくなって。ぺたぺた、ヒールじゃ立たない足音を鳴らしながら】


………………ほら、かえでさん。ベッドにでも寝ときなよ、……はあああなんで一人も残ってないのアルジャーノン。
要らないときばっかり顔出してくるくせに、……もうほんと、なんでこんな時に、……こんな時だから?

ねえかえでさん、……怖いの? 蛇神様に会うの。だってさ、かえでさんが蛇神様に会いたい理由……
……、……ゆるしてもらいたいから。だったんでしょ、それで本当に許してもらえるかわかんなくて、怖かったりする?

【部屋に踏み入り、強引にかえでをベッドに寝かせようとする。それが叶ったならちょっと悩んで――ポケットからハンカチを引っ張り出し】
【いつかかえでに貸したのと同じ、新品、一回限りの使い捨て。それをお尻の下にひいて、ベッドに腰掛けるだろう】
【そうしてから首を傾げて、瞼を伏せ――かえでがこんなになった理由を邪推し始める。長い睫毛が白磁の頬に影を落として】
【覗き込もうとしてくるその顔は、慈悲深い天使のようにも見えた。けれどこれは悪夢だから。かえでには、悍ましくも見えるだろうか】


199 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/18(水) 20:21:22 WMHqDivw0
>>197

コトバの意味はわかってもその繋ぎ方とか出してくるタイミングがイミわかんねーの!
……はあ、もーいーや。あんたがよくわかんないイキモノであることだけはわかった。

【馬鹿にされてる気はしていて、でもそれにいちいち噛み付く気力すら湧かない】
【側頭部をがりがり掻く、銀の毛並みがぐじゃぐじゃ散らかされて――夕日を乱反射させていた】
【彼の心のざわめきをそのまま形にしたみたいな様相だった。じっとり、卵色の瞳で睨み付けつつ】

………………勘違い? おれがあのコを……認識、できない?
じゃあおれどーすればいいの、おれもカミサマになればいい? ……ぜってー無理だけど。
だってボートクテキなイキモノ、ですらないナニカだもん、おれ……
そもそもカミサマだったあのコと今まで仲良くおしゃべりできてたのがキセキなのかもしれねーわ、

――――……だから、うん。あんたに訊きてえよ、……おしえてよ、話してよ、へびの神様のこと。

【前半は完全に愚痴だった。あるいは自嘲、自傷に近い言葉の羅列】
【こんな自分がどうしてあの「神様」と関われてたんだか、今となっては奇跡だとしか思えない。そう述べて】
【続く言葉は藁にもすがる勢いだった、急激にトーンが変わって、真剣みを帯びて――お願いし始める】
【なんでもするので教えてください。そう言ったわけではないけど、それくらいの勢いはあった。少なくとも】

【投げ捨てられた本を視線で追いかける、――表紙の蛇の顔を見た。そいつは左右違う色の目をしてなかった】
【だからもう興味を失くした。代わりに狐の面の目の辺りをじいっと見る――その向こうを見定めるスキルなんか当然ない】
【けれど確実に、あのバカにしたみたいな絵柄の蛇を見ているよりはずっと真剣な目をしてる。それだけは、はっきり伝えて】


200 : 名無しさん :2018/07/18(水) 20:58:32 CvR7z95c0
>>198

【ベッドをすすめられて――けれど彼女は横にはならないんだろう。腰かけるところまでは何とか押し付けられるはずだ、でも、寝てはくれなくて】
【自分は裸足を床に触れさせて――まだ手はぎゅうと勝手に彼のことを捕まえ続けているだろう。泣き疲れたようには見えないけれど涙は今はかすかに落ち着いて、】
【それでも乱れた呼吸が跳ね上がるみたいに繰り返されていた。であればいくらかは苦しいんだろう、真っ白の顔がぼんやりと赤かった、何度も何度も何度も肩を震わせ】

――――――――――――っ、ち、がっ、――――、

【過呼吸とその狭間の呼吸を繰り返していた。であればまっとうなはずもなく。けれどそうしているうちにも時間は進んでいた、これは夢だけど】
【だからきっとこの部屋――この夢を見ている"かみさま"がその瞬間に認識できる世界――以外の場所は扉の外にはなくて、だけど、それは限りなく彼にとって世界だった】
【――なんでだろう、と、思う。どうして。どうしてみんな。死んでしまったのに。もういないのに。過去から声を掛けて来る、まるで、お前のせいだって言われるよな気がして】
【ひどく強張って震えた声が何かを否定した。それはどうしてだったんだろう、何か別の理由があると訴えたいのか、赦してもらえない、なんて、――考えたくもないのか】
【確かであったのは。真っ赤になった顔が相手へ向いたこと、そうしてみてしまったなら、――喉を詰まらすみたいに、また、泣きだしてしまうこと】

――――っ、

【ゆえに。天使のまなざしを少女は真正面から受け止められない、もはやその顔を見てしまうことが何かきっかけであるように、繰り返し泣きだしてしまうから】
【かといって子供みたいにおっきな声で泣くでもない。中途半端に堪えようとして、だから余計にどうしようもなくなって、灰に埋めた火種のよう、何度も何度も、湧き上がる】
【――――どこかのタイミングで少女は手を伸ばすんだろう。そうして、赦してもらえるなら。受け入れてもらえるなら。抱きしめようとする、けれどさっきと少し違うのは】
【その胸元に頭を埋めるみたいにして、抱き着こうとするのだ。――まるで鼓動を確かめたいみたいに、ひどく甘えるみたいに、甘いシャンプーの香り、わずかにさせて】

――――――ね、ぇっ、ねえ! なんで。――なん、でっ、――んで、ねぇ……、――、なんでっ……、
――ッ、っっ、 。    。 なん、で、……、ねぇ。なんで、――ど、して? どぅ、して、……、――私、たち、間違って、ない、のに。
どー、して? なんで、みんな、――、――。間違いだって、言って、よぅ。――間違いだって、言って……。

ねえ……、ど、して、みんな、しんじゃったの? ――――どうして、つれていって、くれなかったの?

わたしをひとりにしないで…………。

【行動が叶っていたなら。少女は相手の胸元に頭を寄せるから、じゃり、と、髪の毛の擦れる音がするんだろう。ぎゅうと掴むみたいな指先、やはり、遠慮のない握力】
【それでも少女らしい力の範疇では、あるんだろう。――けれど痛いのにはきっと変わりがなかった、そうしてきっと逃がすつもりもなさそうだった。「ねぇ、」と小さな声】
【――漏れたなら、それを皮切りにして、言葉がずらずらっと溢れて来るんだろう。怯えるみたいにかたかた震えて。強張った声、それでも必死に紡いで】
【――――なんて文字とも取れぬ奇妙な声が悲鳴に似て漏れた。なら、きっと、嘘ではなかった。嘘を言っている温度ではなく、そしてまた、それはありえないことだった】

【であれば、きっと彼女は本当に本当に事実としてそうやって言っている。そうでなかったら――よっぽどの精神攻撃のたぐいを受けている】
【だけれど――彼からしたなら、彼女がどうかしているとしか、思えないんだろう。――だって自分は生きているんだから。少なくとも彼の認識している限り、そうである、はずだから】


201 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/18(水) 21:21:34 WMHqDivw0
>>200

【抱き付かれても拒まない。だって異能は切ってある。だから彼は、本当に困りきった顔をして】
【胸元にうずまる藤色の頭を見下ろすことしかできない。何度か口を開こうとして、やめて、繰り返し】
【かける言葉が見つからない様子だった。本当にどうしちゃったの、としか思えなくて、それで――】

…………ねえかえでさん、きっと悪い夢でも見たんじゃない?
どんな夢だか知らないけど……え、なに、みんな死ぬの? ……ほんっとひどい夢だなあ。
そんなワケないじゃん! このボクが死ぬわけないもん、だから、ね、それは夢。だから大丈夫。
これが現実だよ。だからほら……元気出して。かえでさんが見たのは悪夢、こっちが本当。現実なの。

【――――言うのはそんなことだった。天使のささやきなんかじゃなく、悪魔のいざない】
【「こっち」を現実だと認識してしまえと言ってくる、……あまりにもひどい、現在進行形の悪夢だ、こんなもの】
【白絹の手袋を嵌めた手が、迷ったように中空を泳いで――結局抱き締め返す姿勢に戻る。片方はかえでの背に置いて】
【もう片方は頭に載せて、ぽんぽんと。なだめるように軽く撫でて、きれいな流れを乱さないよう梳いて――繰り返し】

ね、かえでさん、大丈夫だから。お話しようよ、落ち着くまで。なんでもいいよ、かえでさんの好きな話題――
……困ったな、かえでさんの好きな話題ったって本当に蛇神様のことしか思い浮かばない。
なんか話したいこととかない? うーんと、テレビ……、流行の歌、映画、……アイドル?
えー、ボクそういうのぜんぜんわかんない……でもいいや、なんでもいいから話してよ。

【「そしたら気も紛れるかもしれないし……」 頭を撫でるのはやめないまま、紡ぐ言葉は選んで選んで、無難に】
【夢の中の彼はちゃんと生きてるから。鼓動だって聞こえてくるから――だからこそ、本気で早く戻らなきゃって思ってる】
【それで、これは本当にかえでの分まで頑張らなきゃ。なんて意志まで固めているんだからもう、どうしようもない】
【引き止めようとすればするほど「生きてる」彼はいち早く戦場に戻ろうとしてしまう。ひどい話だった、本当に】


202 : 名無しさん :2018/07/18(水) 21:23:00 CvR7z95c0
>>199

…………神様になりたいの? ふーん、じゃあ、信仰を集めなくちゃ。
冒涜的であることは神様になるのに関係ないの、生き物かどうかも、関係ないし――、"ナニカ"じゃダメなの? 聞いたことない。

――仲良くおしゃべりしてたの? じゃあ、いいじゃない。喧嘩別れしたよりかは、よっぽど、気まずくなさそうで。

【「よいしょ」と呟き声で、"そいつ"はベンチの後ろから出て来るんだろう。身長は――百七十ほどだろうか。相手に比べたらいくらも低くて】
【けれどあの少女より、少し、大きかった。こんな不審者と比べたならばあの少女は悲しむかもしれないけれど――どうだろう、それとも、少し困ったように笑うかもしれない】
【つらつらって並べる言葉は――けれど彼だって神様になれるという遠回しなエールみたい。神様になれと言うわけでは当然ないけれど、それはきっと不可能じゃないからと】
【伝えたなら――勝手に横のところ、座って来る。そうすれば案外華奢な身体つきをしていることを分からせるのかもしれなかった。簡単に言い切ってしまって、刹那】

だから。何が知りたいの? どうしてもって言うなら教えてあげる、――――"あれ"にはあたしも用事があるの。
その邪魔をしたりしないなら――、まあね、管理をしてやろうとかそういうつもりじゃないから。その辺は安心してくれる、ただ――、内容は言えない。
いろいろと未確定だから。あたしたちだってこんなことするの初めてだし。だけど――少しくらいは知りたいって、言うのなら。

――"うまく"いけば、白神鈴音を一つの存在として取り戻せるかもしれない。
――"うまく"いかなかったら、シラカミリンネは世界を滅ぼそうとした神として、人類に断罪される。

"あたしたち"はそうやって人類に排除される"あの子"を見たくないから。
だけど、そういうヤツを、正義だとかって言う人達は、赦さないでしょ? ――絶対に"排除"、するでしょ?

【そうしたならベンチに足を上げる。お行儀が悪かったけど、どちらにせよローブ越しだから、土足にはならなかった】
【膝に掌を重ねて敷くみたいにしたならそこに顎を乗せる。そうやって"そいつ"は彼へ視線を向けるんだろう、知りたいことが分からねば説明さえ出来ぬと言うように】
【目を細めるような言葉の温度感。けれど――その仕草は理解させない。ただかろうじてその言葉に敵対の温度はなかった、――彼がそれで信頼できるのかは、別として】

【――この世界に存在する正義の徒たちは、そんなふうな"概念"になった"彼女"を赦さないだろう、と、言い切って】
【そしてだからこそ自分たちは"その光景"を見たくないんだと、言う。――理由だなんてきっとそれだけだったんだろう、世界が無事かどうかは、気にしてないみたいな、口ぶりだった】


203 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/18(水) 21:39:00 WMHqDivw0
>>202

シンコーねえ。ならますますムリだわ、おれ性格超わりーから。
だいたい人から嫌われんの、だからやっぱムリ、おれがカミサマになるのは。

……まー、そーだけどさ。仲良くしてたからこそさあ……会えなくなるとさびしくなるじゃん。

【いっそ喧嘩別れして、もう顔も見たくないって思えたほうがマシだった】
【それかひどく嫌われたほうがまだあきらめもついた、そんな言い方をする。出てきた影が意外と大きかったので】
【うお、とか言ってびっくりするけど――隣に座られるのは別に構いやしない。そんな態度。脚をぶらぶらさせて】

言ってんじゃん、会い方だよ会い方――――、……いやちょっと待て待て待て。
取り戻せるって言った? うそマジで? やだもーーーーそれを最初に言えってば、それ知りてーよメチャクチャ!

…………おれだって見たくねえよそんなん、……鈴音ちゃんが、「悪い神様」として消されるの。

【白神鈴音が悪い神様になってしまえば、淘汰されるというのは理解していた。それが嫌だと言うのにも同意する】
【だから訊くのは「どうすれば“うまく”いくのか」のほうだった、今会いたいキモチは抑えることにしたらしい】
【跳ねるみたいに項垂れていたのを勢いよく起こして、……必死な顔、みじめなほどに。あるいは何かをぐっとこらえる顔】

…………正直もう諦めかけてたんだけどさ、鈴音ちゃん、本当にこの世界に戻って来れる?
それならおれは、鈴音ちゃんがどんなカタチしてたっていいよ……なんかニンゲンのカタチに拘るバカもいるけどさあ。
そいつはおれがどうにか言い聞かせて諦めさせるし。だから教えて、……どうしたらあのコ、戻ってきてくれるの。

【言いながら思い出していた、赤いバカの少女の姿は太い黒マジックでバッテンしておいて】
【冀う声色で訊ねた、そしたらきっとできる限りのこと――以上のことだってやるだろう、この男は。そんな予感を容易にさせる】


204 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/18(水) 21:53:12 o6XMS57s0
>>195

「"本物"に叶えてもらうの?」「 ─── 蛇の姿を借りるくらい、きっと訳無いとは思うけれど」
「救われたのなら、もっと救ってもらいたがるかもしれない。」「そこが本当に"居場所"だって、それに何の疑いもなくなってしまうのかもしれない。」
「私は、そこにつけ込んでいるだけだから。」「神様は自分を見てくれていないんじゃないか、 ───── そんな、あの子の疑いに。」


【きっとそれは最後の逡巡だったのだろう。ひどく珍しいことではあった。 ──── 叶うのなら、彼女自身が"神様"になりたいくらいだった。】
【そうしたら振り向いてくれそうな気がした。少しだけでもいいから力が欲しかった。本当なら、あの子の呪いを誰かに解かせることにさえ躊躇いがあった。自分が解いてあげたかったから。】
【今ばかりはどこまでも内向きだった。時間が解決してくれる類の鬱屈した感情であるのかどうかは ──── 誰にもわからないまま。】


「面白い認識論ね。人の言葉を喋るのなら人間である、と。」「 ─── ああけれど、強ち間違いでもないのかもしれない。」
「肉体ではなく精神までもが存在を規定するなら、精神を区切るのは言語であるのだから」「他のフォーマットによる定義を受け入れるなら、存在もまた変容し得る、」
「 ──── かも、しれない。」「とはいえそれなら、白神鈴音は自分のこと、"人間"って思わなきゃいけなくなるけれど。」


【まして肉体のない神である白神鈴音には、もっとも深く刺さりそうな切り札であるのかもしれなかった。自分の存在に関する思い込みを、説得してやれば良いのかもしれず】
【然しそれがどれだけ難しいことであるかは女自身が一番よく知っていた。何故ならば女は悩み続けていたから。 ─── 誰か他の人に、任せるしかないようにも思えて】



「 ──── そのコードには、先約がいるわ。」「けどもう、使われるかも分からない符丁だから。」
「ヒメ。 ─── 機会があれば、そう呼ばせてもらう。私は何も出来ないから、 ……… ちゃんと、助けに来て頂戴?」


【名乗らぬのであればそれでもよかった。名乗れない事情を詮索するつもりもなかった。ただ、"その"言葉には、返答までに少しビジーな処理の間があって】
【それでも結局はその名前で呼ぶことに同意する。既に諦めてしまっているようでもあった。然し衝動には抗えないままで、もう一度会いたくて、最期に何かしてあげたくて】
【祈りにも似ていた。誰に捧ぐものでもなく。あるいは追想であったのかもしれない。もう二度と会えないかもしれない誰かの匂い、髪の色、瞳の輝き、うつくしい顔立ち、柔肌の傷痕、愛おしい笑顔への。】


205 : 名無しさん :2018/07/18(水) 21:56:17 CvR7z95c0
>>201

【――――――――――――――本当にそうだったら良かったのに】
【無意味に叫びたくなった、本当にそうだったらどれだけ良かっただろう、と、そんな風に言う彼を、理不尽な言葉で苛んでしまいそうになって】
【開かれた唇が――けれど土壇場で怖気づいてしまったみたいに、何も言えない。きゅうと変な吐息の音だけさせて、】

――――――――うそだよ。

【――本当にこれが現実で。あれが悪い夢だったなら。今すぐあの場所へ向かいたかった、そうして、今度こそ、――今度こそ、"きちんと"果たしたくて】
【だけど。だけど――そうして目覚めてしまったなら、今度こそ、駄目になるって分かっていた。何もしたくなかった。多分もう"あの日"からずっと、迷い続けたなら】
【きっと足も手も何もかもぼろぼろになってしまっていて。だけど立ち止まることも戻ることも赦されなくて。乾いた喉を潤すための一滴さえ、神様は与えてくれなくて】
【だから"作った"居場所は、けれど、――*****の存在全部を踏みにじったものだったから、結局、そこを居場所としてしまうこと、絶対に出来ないって思ってしまって】

――――ねえ、やだ、やだよ、いかないで、――死なないで、おねがい、……、いかないで。……――そんな、声、しないで、
ずっと。ずっとここにいて、――……死なないで、ねぇ、――、ごめん、ね、ごめん、なさい、あのとき、――、気づいて、あげられなくて、
なのに。なのに、――護っても、あげられなかったの、私、――、自分のこと、ばっかり、で、――、――。……みんな、怒ってるの?

私、が、――私の、せいで、私が、……私が、あそこに、行けたなら、……――行けていた、なら、ウヌクアルハイ様だって、きっと、なのに、――、
――私の、私が、悪くて、私が……私が。私が――、もっと、もっと……――かったら、……そしたら、"こんなこと"ならなくて、――、だから、
ねぇ、……だから、? 私が、悪いの? 私が、悪くて……、――――わたし、が、私が。――私、は、

――――――――みんなと一緒にいたかった、だけなのに、

【――無難に選び出された言葉を少女は嫌がって否定するんだろう、彼の優しさを否定したなら、ひどく恩知らずであった。――ここまでついてきて、くれたのに】
【だのにそれを無視してもっとずっとここ居ろと強請るんだ、彼の固める決意も、その日を迎えるための決意も、これから果たそうとすることへの決意を、全部、踏みにじったなら】
【きっとそのことに対してだった。ひどく頭が痛んでぐらぐらした。どうしたいのか分からなかった、――だからきっとひどく否定されたかった、ひどく傷つけられたくて】
【こんな風に言ってしまう自分だなんて優しくしてほしくなかった。――だから欲しいのは最上級の否定だった、酸に浸されることすら生ぬるく感じてしまうほどに】

――ウヌクアルハイ様を正しい神様にお戻しするから。頑張るから。死んじゃってもいいの。頑張るから。……そしたら。みんな。帰ってきて――。
それが出来ないなら。私をみんなのところに連れて行ってよ。――、雨竜さん。ねえ。私のこと。殺してよ。死ねなかったの。殺してもらえなかったの。
なのに救ってくれないの。誰も助けてくれないの。――ひどいよ。ひどいよ、……ひどい、ねぇ、ひどい、よ、――――、――しにたい。

【であれば、きっと彼女はひどくひどく恐ろしい夢を見たんだろう。みんな死んでしまう夢。そうして――願った神すらも、"正しく"ならなかった、夢】
【背中をうんと丸めて相手に縋るのは子供の仕草と変わらなかった。やがてずるずるって落ちて、そのまま、膝枕、みたいになってしまうかも、しれないなら】
【呟くみたいに漏れ出る声、――"夢"ならもうどうでもよかった。ほんとのことだって言っちゃっていいやと思えた。そしてそれを罰してほしかった、一から十まで、全部】
【そうしたならそんな醜い自分だなんてきっと夢の中に置いて行ってしまえた。目覚めたら"正しく"振る舞えると信じたかった。だから。――だから、】


206 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/18(水) 22:09:21 WMHqDivw0
>>184

【からんからんからーん。鳴らされるのはカフェのドアベルだった】
【入ってくるなり「暑い!!!!こんな中で買い出しとかやってられっか!!!!!!」と叫ぶ声、うるさいのなんの】
【それで店員の案内すらろくに聞かずに勝手に歩いてきてどかっと席に座るんだから、相当マナーのなってないヤツだった、そいつは】

あーーーーつーーーーいーーーーーー暑い暑い暑い、おかしいでしょこんなの!
最高気温見たけどバッカじゃないのあれ!! インフルエンザのときの体温でしょあんなん、
気温とはまたべつのやつでしょあーーーーーもう、クリームソーダ!!!!!! 早く!!!!!!

【座ってもなおうるさい。騒音公害だと思ってその声のする方を見れば――体感温度が3度は上がりそうなくらい】
【全体的に赤色をしている小娘が座り込んでいるのだ。否、べちゃっとテーブルに上半身を突っ伏して――――】
【……流れ落ちる髪は赤色。ポニーテールにしてもなおまとまりがなく、ところどころ外ハネしていて】
【ぎーっと不機嫌そうに尖るツリ目も赤色。使っているマスカラは優秀だから、汗で滲みもしていなくて、まつげはキンキン】
【着ている服はてきとーなTシャツとホットパンツ、そこから下に視線を下げれば――さらに赤色の靴があった】
【すごい厚底。きちんと靴下を履かなきゃいけないやつ、……暑い暑い言うくらいならサンダルでも履けばいいのに、と思うかもしれない】

【そんな感じで聴覚的にも色彩的にもうるさい少女、……ひとつだけ、隣席の彼女らの気にかかるかもしれない部分があって】
【それは首に着けている黒のリボンチョーカーだった。その中心に、小粒の銀の鈴が結わえてあるんだけど】


【 ―――――― りん。 】


【――――きっと彼女らも聞いたことのある「声」でそれは鳴る。最近とんと聞こえなくなった音――「白神鈴音」の、声に似て】


207 : 名無しさん :2018/07/18(水) 22:19:51 CvR7z95c0
>>203

【――――たしかにきっと本当にそうだったんだろう。けれど少女と彼はそんな風に別れなかった、少なくとも、どこか未来に希望を残してしまった】
【一緒にたんぽぽをやってくれるか、と、彼女は聞いた。つまりその時点でいくらか戻れるような――あるいは戻りたいような気がしたに、違いなかったなら】
【けれどあれから物事は変わってしまって、彼女は世界中に概念として拡がってしまった。――そんなセンチメンタル察してくれない"そいつ"は「そうなの?」とだけ言って】

……そだっけ。じゃ、とりあえず、存在を蛇に書き換えてもらって…………。 ……? んん、いや、不確定だから。
方法って言うほどのことじゃないし。……それに、"それ"をするのは、少なくとも"あたしたち"じゃなくて。人間とかがすることだし。

"どこまで"知ってるの? "あれ"がどんなふうに産まれた神様か知ってる? 

【会う方法。"そいつ"がしれっと口にしたのははちゃめちゃな理屈であった、すなわち、蛇になれば会えるでしょ、って、あんまりに当たり前に言い切ってしまう】
【もし理由を尋ねていたなら「全部の蛇神が化身なんでしょ?」とか言って表情を伺うことが出来たなら、きっと、ひどく当たり前でしょって顔を見せたんだろうけれど】
【だから見えなくて良かったと思う。そして尋ねる必要もないだろう。――であればそいつは一度言葉を区切る、"うまく"いくかは、人間次第であると、言ってから】

【――――"どこまで"。そして、"どんなふうに"。尋ねた言葉の意味、きっと、彼ならすぐに分かってしまうんだろう】
【彼は確かにそれを知っていた。あの少女がこの世界の全部を祟る気持ちを抱いてしまった理由を、そこまで至る道筋を、きっと今でも鮮明に思い出せるから】
【いくつもの絶望が積み重なっていって折れてしまった少女を取り戻すための方法。――分からぬと言えば何かを説明してくれるつもりなのかも、しれなかったけど】

【そんな説明、必要ないだろう。――透明な器にいろんなもの煌びやかに積み重ねたなら、それはきっととっても素敵なパフェ、最後にさくらんぼでも乗せて、楽しいけど】
【彼女に与えられたのは透明な棺桶と、多種多様の絶望を鱗のように纏った無数の蛇であった。最後に乗っけてもらった概念は「間違い」という言葉で、ゆえに、壊れてしまった】
【かえして、って、泣きながら叫んでいた。間違いだったなら返して。間違いだったなら――なかったことにして。"あれ"から"いままで"全部の苦しみも哀しみのなにもかも!】

そ。じゃ、気が合うみたいね。――あたしもだいたいそんな感じだし。――本当に戻ってこられるかは、まあ、戻りたいって思えるか次第じゃない?

【――だからこそ、あんまりに簡単なことみたいに、あるいは他人事みたいに言う"そいつ"は、ひどく、ひどく、けがらわしいものに、思えるのかもしれない】
【彼は"少女"のそんな気持ちを全部全部、――本人の感情をそのまま流し込まれる、あるいは共有される、という乱暴な手段で以って、体感していたのだから】

【しいて擁護してやるとしたなら。――"そいつ"は彼が"そこまで"知っていると、知らなかった。ゆえに、説明をしてやる必要があると、思っていて――】


208 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/18(水) 22:23:01 WMHqDivw0
>>205

…………どうしてそんなこと言うの、かえでさん、ねえ、……どうして。

【否定されれば悲しそうな声を上げる。生きてるつもりの彼からすれば当然のことだったかもしれないが】
【きっとかえでにとっては責める声に聞こえるんだろう。認めてしまえ、こっちに逃げて来いって、地獄からの手招き】
【早く■■じゃえばいいのになんでそうしないの。それっぽいこと言って誤魔化すんじゃない。……そうも聞こえる、かもしれない】

……あのときって、どのとき? わかんない、……ボクわかんないよ。
死なないってば、ボクは死なないって……なんでそんなこと言うの? ボクが負けるとでも思ってるの?
負けないよ、ボクとっても強いんだから……それにかえでさん自身が言ったんでしょ、ボクらは絶対勝つんだって。

悪くないよ、なんにも悪くないから、……ねえかえでさんってば、しっかりしてよお……
こんなことってどんなこと? 何がどうなったら、かえでさんがこんなになってしまうっていうの、
ねえやめてよ、それ以上言わないで、やめて、やめてったら――――やめて!!

【ずるりと落ちていくかえでの頭、支えきれずに頼りなく細い少年の膝に落ちたなら。……その上から降ってくる】
【生暖かい水滴。生きている体温を伴った――――涙だった、長い睫毛を濡らして、つるりとした頬を伝って】
【ほどよく細まった顎からぽたぽた落ちてくる。少年もまた泣いていた、悲しいこと、言われたから】

冗談にしたってひどすぎるよっ、なんで、……ころして、とか! なんでボクにそんなこと言うの!
どうしてそんなこと言うの――――死にたいとかっ!! ダメだよ、かえでさんは、死んだらダメ、


――――――――ちゃんと生きられたんでしょう!? だったら幸せになってよ、ボク、それしか望んでないのに!!


【――――――言ってから。はっと口元を押さえる、……信じられないとでも言いたげな顔をしていた】
【こんなこと言うつもりなかったのに、みたいな顔。それから、どうして自分がこんなこと言ってるのかわからない、って顔】
【両方だった。「生きてる」はずの少年が、こんなこと言うはずはなくって――――だからこそ少年は驚愕しているようだった】
【自分は「生きてる」つもりだったから。こんなこと言うはずない、はずだったのに、出てしまった、死人としてのコトバが、】

【 ――――なによりもひどい、呪いの言葉が。出てしまったのだった 】


209 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/18(水) 22:41:25 WMHqDivw0
>>207

…………全部教えてもらった。鈴音ちゃん本人に。
「如月桜花」から「桜花鈴音」を経て「白神鈴音」に至るまで――今はそれですらないんだっけ?
まあ全部教えて、っていうか見せて――――でもねーや、……体験させてもらいました、ハイ。

【………………ものすっごく気まずそうに答える、「白神鈴音」という神様がどのようにして生まれたか】
【体験させてもらったのだというからすなわち、アレされたこととかソレしたこととか、全部】
【感触まで知ってしまったと言う、……ものすっっっっごく気まずい。心の底から、そんな顔して、答えるけど】

【――ゆえにわかってしまう。それを全部なかったことにすれば解決、ってこと――――そしてそれが無理なこと】
【彼は本当に冒涜的なイキモノですらないナニカでしかない、神様であるわけない、だからそんなこと出来やしない】
【出来たとして――辛かったね、って声かけるくらい? ……それで何になるんだって、内心、自分で自分を蹴っ飛ばした】

……戻りたいって思ってくれるかなあ。そう思ってくれればいいなって、いくつか約束、したんだけど、
…………おれなんかの約束ごときで戻ってきてくれるかなあ。わかんねえ、……ほんと、わかんねえんだよ……

【――――仮名:「オムレツ」は、実のところ殻で自分を守っているヒト――ではないけど、めんどくさいからそういうことにしておく――だった】
【なかば道化じみていつもへらへらして、それで時たま他人を傷つけるのは、他人を必要以上に寄せ付けないため】
【弱い弱い自分を隠して守るための殻だったのだ、それは。それにしたって不器用なやり方だと思われるだろうが】
【それでもそうするくらいしか方法が見つからなかったのだ。自分を守る方法が。だから、ひとたびそれに罅が入れば】
【ナカに入っている弱いヤツがどろり、出てくる――――兎角自分に自信がない。自分に価値がないと思っている】
【だから、「鈴音ちゃん」と交わした約束だって。こんなんじゃすぐ破られちゃうかもしれない、なんて弱音を吐くのだ】

【……そうしてまた項垂れてしまう。今度は両手で頭を抱えて――ちょっと長めの銀髪が、まっすぐ下に墜ちた】
【あんなに紅かった夕焼けの光はいつしか沈んで、もう何も光らなくなっていた。だからもう、何も、輝かない】


210 : 名無しさん :2018/07/18(水) 22:41:51 CvR7z95c0
>>204

あははは、まさか。だって嫌いなんでしょ? そんな奴の前に出て来るほど、神様、暇じゃないって。
信じないなら救えないし救わない。否定され続ける限り救いたいと思ったとしても救えない。だから最後は救わない、って、定める。
そうやって神様は自分を見ない人間から目を逸らす。――――だって、時間の、無駄でしょ?

【――それはあるいは絶望の宣言なのかもしれなかった。あれだけ救いを求めて縋る少女が、一番最初の理由にて"救われる"ことはない、と、言い切ってしまう】
【なぜなら今"ウヌクアルハイ"の表層にあるのは"シラカミリンネ"であり、それを否定されている限り、"あの神"は蜜姫かえでに干渉できない】
【救うためには蜜姫かえで本人の心をずたずたになるまで切り裂きあの少女に祈らせるか、――それとも全く別の蛇を用いて、儀式めいて形式上の形をとるしかない、と】
【そして蛇に救われたなら――あるいは主格である少女とも"和解"するかもしれない、と、思っていたんだけれど。それは先ほど女より否定されてしまったならば】

神様は――へびさまは、そうであれと願った。だから、白神鈴音は確かにヒトの身体を持っていた。
育てたし子供も産めた。だけど、――人間によって殺されてしまった。その瞬間に、白神鈴音は自分がヒトではないと認識してしまった。
ヒトであると認識するのは難しいかもね。だけどね、一つだけ、――これは誰かに聞かされたら二度と意味がなくなってしまう、おまじない。

――――自ら自分自身がヒトだと。もう心の底から信じられたなら、白神鈴音はヒトに戻れる。成長も何もかも取り戻せる。だって神様はそういう風に作ったから。
――――だけど人間はその出来事が間違いだったと言い切ってしまった。

【自分に対する思い込み。自分は引っ込み思案だって思っていたならそう振る舞ってしまうみたいな、あるいは誰しも持つ自分自身への信仰心、みたいなものなのかもしれない】
【ヒトであるという余地をあの少女はずっと持っていた。持ちながら、出来事より溢れた認識によって、自分を違うモノだと思い込んでしまった。そして、そうなった】
【ヒトでもヘビでもカミでもなかったのは彼女自身の心だった。強いて言えばヒトに惹かれていたからそう振る舞い続けた。けれど、壊れて、誰かに決めてもらう必要があった】

【――その結果が今の世界の状況であるのだけれど】

そう? じゃ、別に、なんだっていいんだけど。――それでいいなら、それでいいや。
助けに来てあげるからちゃんと信じておいてね。呼んだら来るって分かってるの、結構高度な信頼でしょ?

信じてなかったら何にも起こんないよ。だから、誰より、信じてて。

【相手が渋るなら、別に呼び方だなんて何でも良かった。自分を指しているよ分かればいいのだ、二人きりの場では「ねえ」と呼びかけることさえ通じるみたいに】
【であれど、適当に指定した呼び方が通ったなら、それも別に文句を言う理由にはならない。――ただ信じていてと言い添えておくのは。まるで"そいつ"自身が、】


211 : 名無しさん :2018/07/18(水) 23:13:26 CvR7z95c0
>>208

【――頭の中がぐじゃぐじゃになっていた、繋がり合った神経が全部全部こまぎりにされて、関係ない場所、全然違う場所に無理やり繋がれてしまったみたいに】
【ただひたすらに死にたかった。今この瞬間に死んでしまいたかった。そしたらみんなのところに行けるのに。みんなが夢で責めるから。なのに現実も優しくなくって】
【正しい神様を取り戻したい。――けれどそれはもはや贖罪に等しかった、死んでしまった彼らに対する。生き残ってしまった自分の罪を清算するための行為に似て】

【蛇に赦されたいと願っていた少女は、けれど、いつしか、彼らに赦しを乞うていた。――いるんだろう、それをきっと彼女自身は、認識できないなら】

――――――だって死んじゃったでしょう!? 死んだんだよ。死んじゃった……、死んじゃったんだよ、ねえ、――、負けちゃった、
マルフィクさんも、ポステリオルさんも、みんな、負けて、――死んじゃった、プリオル、と、ラサルハグェ、は、――私たちを、裏切って、
……ねぇ。もう。いない。居ないの、……、だれもいない、みんな、いなくなっちゃった、みんな……、……ウヌクアルハイ様さえも、――――、……。

…………もう嫌、嫌――、ねえ、かえってきて、そのためなら、私、なんでも、するのに、
私なんて赦されなくっていいの、――……戻って来て、おねがい、……、ねぇ……。

【溢れる言葉は張り裂けてしまいそうな喉から漏れ出て、ゆえに悲痛さえも通り越した絶望を孕んでいた、あなたはすでに死んでいるのだと、自分を護るために叫ぶなら】
【そんな言葉はやめてと懇願するのにきっと似ていた。でないとこれが現実だと信じてしまいそうで。そうして目覚める瞬間を受け入れる勇気だなんて、あるはずなくて】
【おなかのところに頭を押し付けたなら、――望むのは限りない禁忌であった、救われたい赦されたいよりも罪深い、齧ったならどこまでも堕ち行く運命を願って】
【――――けれど叶えてくれるはずの神様は歪んでしまった。歪められてしまった。だから。だから。もう。何もかも。なにもかも】

――――――――――――――――――――――――――――。

【――ぎゅうと腰元に抱き着いていた腕に力がこもって、けれど、それ以上、なんにも、なかった。何も言わなかった。呼吸の音すら、聞かせないなら】
【どんな顔をしているかは――分かるはずもないだろう。だけれどそれが歓喜ゆえにでないことなどきっとすぐに分かった。分からせて、しまうんだろうから】
【否定されたかった。全部の語彙を使い果たして存在を否定されたかった。鉋で心を削るみたいに何もかも何もかも抉られたかった。だから、それを、もらえなかったとき】
【醜い正しくない自分を肯定されてしまったときに、少女はきっと惑う。こうなるなら生きたくなかった。幸せになんか、――なれるはずない】

【――――――自己嫌悪が渦巻いてはじけてしまいそうだった。抱きしめてあげられなくて。護ってあげられなくて。――最期の願いすら、叶えて、あげられないなら、】


212 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/18(水) 23:28:29 WMHqDivw0
>>211

【――――観念したように。少年は、ゆっくり、手を降ろす。口元を覆っていたのをほどいて】
【それからするすると白絹の手袋、指先を引っ張る。両手とも。抜き取ってしまって――掌の素肌を晒す】
【そしてかえでの頭に触れる。両手で包み込むみたいに、――――生きてる彼がそんなことするはずないってわかるなら】
【もう証明してしまっているようなものだった。自分が本当はどうなっているか、わかってます、ってこと。彼は正しく理解していた】

……ちがくて。違うの、違うんだよかえでさん……赦されないのはボクのほうなの。
ボクね、……あなたにひどいことした。……とてもひどいこと、ねえ、聞いてくれる?
…………無理だって思ったらすぐ耳を塞いでね。そして、……目を覚まして。ボクのことなんか、忘れてね。

【紡ぎ始めるのはそんな言葉――謝りたいことがあるのはこっちのほうだって】
【そんなこと言うんだからきっと、これからとてつもなくひどいことを言うんだ、彼は。それを前もって忠告してくる】

【――――――――そうして、】


……、……あのね。ボクね、蛇神様に会ったら――「ありがとうございます」って言おうと思ってたの。
ボクは蛇神様に助けてもらった存在だから。大人にひどいことされて――――■■させられてたの、知ってる?
そうされて、果てに殺されそうになったの、助けてくれた。蛇神様。……その正体はね、

白神鈴音だと思ってた。だって――――白神鈴音も、人間に■■■されたことがあるって聞いたことあったから。
同じ目に遭ってるボクを見て、怒って、ひどいヤツにバチをあててくれたんだって、……そう思ってたの。

だから、――――だからね、ボクは白神鈴音に会うことを望んでた。彼女にお礼を言いたかった。つまり、
…………ボクも、かえでさんの信じてた神を、ウヌクアルハイ様を穢したひとりだったんだよ。
だから本当はかえでさんに殺されるべき存在だったの。ボクのほうが、……もっと早く死ぬべきだったんだよ。


【――――――言うのはそんなことだった。あんまりだった。この少年ですら、かえでにとって殺すべき対象だったんだと】
【今更になって謝ってくる。最悪だった。最低だった。その自覚は十二分にあるようで――彼はもう、かえでの目を見れなくなっていた】
【……かえでの頭を覆っていたてのひら、滑らせて、彼女の頬へ。包むように持ってきたなら、……こつんと額を合わせようとして】



だから殺して。かえでさん。ここで殺して、ボクを――――そしたらちょっとはマシになるかもしれないよ。


213 : 名無しさん :2018/07/18(水) 23:45:15 CvR7z95c0
>>209

………………え、嘘でしょ。

【ものすーごい気まずそうな彼の口ぶりに、けれどなぜか"そいつ"までもが気まずいような声、出すんだろう。機械質の声が、「マジで?」みたいなトーン、刻んだなら】
【多分二人で数十秒くらい黙りこくることになるだろうか。――ほんとになんでかはよく分かんなかった。ふうん、とでも、どこか馬鹿にするみたいに言いそうだったのに】

【――"あった"ことを"なかった"ことにするのは、うんと、うんと、難しい。それこそ、世界を丸ごとやり直すくらいじゃないと、きっとできなくて】
【人間が原罪を犯さなかった世界を願って何度も何度もやり直したアナンタシェーシャのように、――――――ああ、そしたら、もしかしたら、"この世界"さえ】
【ウヌクアルハイがやり直した何度目かの世界なのかもしれない。理論に基づかない仮説。だけれどだれも"そんなことない"って言い切ってしまえない、誰にも観測できない、可能性】

【だけれど。"あった"ことを、"あった"ままで、乗り越えさせることは、可能かもしれなかった。あの少女はきっと一人で乗り越えようとして、転んでしまったのなら?】

【――――――こほん、と、分かりやすい咳払い。"そいつ"がしたなら、無理やりに鈍重な気配、振り払うようにして】

……とにかく。戻って来るかどうかは、分かんない、……"そのとき"に、この世界が"あれ"にとって、納得いく形であったなら、きっと。
"そうじゃなかったら"――、多分、"あれ"は世界を滅ぼそうとする。……あくまであたしの知る限りの考え方をするならね。

アナンタシェーシャだっけ――"やりなおす"神様が、なかに、居るんでしょ? だから、多分――、

…………――――――あーもう、なに? 

【そもそも"納得"というのが不明瞭であった。どうなっていたら満足するのかなんてきっと誰にも分かんなかった、あるいは、少女自身にさえ、分からないことであるように思えた】
【そして彼も――あの少女の記憶を"体験"したなら、瞬間瞬間に刻まれた"彼女"の感情。なにもかもぐちゃぐちゃでわからなくってどうしたらいいのか知らなくて、助けてほしくて】
【絶望して絶望して絶望していった記憶を体感したなら。――何をどうとか言う特効薬、きっとないんだって分からせてしまう。そんなの、最後に、結果として分かるだけ】
【なにもかも全部集めて並べて――大丈夫だったら、正解。駄目だったら、不正解。そういう何もかもを賭けた二択問題、神様自身が仕掛けて来るんだから、うんとひどくて】

アリアって人もそうだけど。この世界の人間ってこんなだっけ? 人間じゃない身体してると"そう"なっちゃうわけ? 

【――そんなときだった。"そいつ"がそんな声を出すのは。ちょうど彼が頭を抱えて俯いてしまったくらいで――、なんだかトゲトゲした気配、纏ったなら】
【はーと至極失礼なため息を漏らす。――苦悩しているさまをまるで無視して、いくらかの人物に対していっぺんに失礼を重ねる、あるいは、"あの少女"に対しても】
【けれどそれは、――彼にとっては、また別の意味合いを持っていた。その名前を、彼はきっと、知っているんだから】


214 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/18(水) 23:59:52 WMHqDivw0
>>213

まじ。ちょっとした気持ちで「なんでこ〜なっちゃったのよ〜」って言ったらマジで、
あのコ全部見せてくれちゃって、ていうか体験させてくれちゃってさ……サービス精神旺盛すぎじゃね?
そこまでしてなんて、言ってなかったんだけど……まあ知れたからいーわ。

【「たぶんそこまで知れたの、おれだけなんでしょ」。……男によくある心理、特別扱いされたらちょっと気がデカくなる】
【そんな感じでちょっとだけ持ち直した――ように見えたのはたぶん錯覚。まだ、ずーんと頭を落としてたんだから】

……納得、ねえ。納得……できんのかな、なにすれば納得してくれんのかわっかんね。
辛かったこと苦しかったこと痛かったこと全部理解したのはたぶんおれだけだから、
そこを慰める……ってのはおれがやるとして……出来るかどーかは知らねーんだけど。

………………赤木怜司はどうすんだよ。あいつと仲直り、させるとか、するの?

【最初の時点からだいっっっぶ小声だったけど、……「その」人名を出すときは。本当に死にかけの蚊の鳴くような音量】
【「あのコ」が観測しているとするなら――なるべく聞き取られたくないと思ったのかもしれない。通用するかは知らないけど】
【彼が一番気にしているのはそこだったらしい。「桜花鈴音」が死んでしまった原因、「白神鈴音」の壊れてしまった原因】
【その「彼」はどうしたらいいのかって訊いて――――殺せって言われたらたぶん、無理って答える。どうしようもないへたれだから】

【――――そんな調子だったけど。ふと頭を上げる。抱えるのをやめにして、自分の力で持ち上げて――目をぱちくり】

…………はァ? なんでそこであーりんの名前出てくんの? 知り合い?
てゆーか「そう」なるってどゆこと、……ネガティブになるってこと? ……おれはともかくあーりんはねーよ、
だってあの女ヒトの金で容赦なく飯喰うし宿とるし挙句の果てには何も言わずに帰るような女だぜ、

【「……のちのち金は返してもらったけど」。言いつつ、言葉にするのは――妙ちきりんな綽名、それはきっと】
【それなりの仲であることを示唆させた。……いうて本当に一回会ってそれっきりだったんだけど、それきりの邂逅で、綽名を付ける程度には】


215 : 名無しさん :2018/07/19(木) 00:40:26 CvR7z95c0
>>212

【――――ぎゅうと強張ってしまった少女はそのまま何も言わなかった、ひどく静かだった。だから、きっと、吐息をすることを忘れてしまっていた】
【そしてそのまま何もかも使い切って消えてしまいたかった。――そんなのありえっこないって分かってた、分かっていたけれど、それ以上の方法は知らなくて】
【頭に触れられたなら、びぐり、と、――きっとひどく大きく身体が跳ねるんだろう。それでずいぶん久しぶりに吐息の音がした、「――ひ、」と、引き攣る声が漏れて】

…………、……ねえ、やめて、ひどいこと、いわないで、やだ、やだよ、……、優しくして、ねえ、私に、優しく、して、
ずっと一緒に……いて、ねえ、やだ、やだよ、やめて、やめて――、

【――もうなにもかもがちりぢりになっているみたいだった。思考では限りない罰を望むのに、けれど、言葉は限りない肯定を望む、もう意味も分からなくなって】
【ただ震えることだけが精いっぱいで。震えて泣きじゃくって、そんなの子供と変わらなかった。子供のほうが――もっと、なにか、出来そうなくらい、怯えてしまえば】
【必死になって懇願する、もう夢でもよかった、一緒に居られるなら。一緒に居たかった、――、だって、だって、弟、みたいに、思っていたから】
【年齢だってちょうどおんなじだった。彼は"弟"よりもうちょっと賢い感じで、ちょっとどころか、全く違ったんだけど。――前は、そんな風に思ってなかったのに】

【いつしかそうやって思ってしまっていた。そしてそれは彼が少女のことを名前で呼ぶようになったタイミングと、きっと、一緒だった】

………………………………――――――――、どうして、そんなこと、言うの?

【――――少女は耳を塞がなかった。塞げなかったのかもしれない、だって、その言葉は、あんまりに、――あんまりに、】
【素手にて包まれた頬はうんと濡れていた。だから本当に泣いていた。目のところも鼻のところもほっぺたも真っ赤にして、その顔を誘われたなら】
【素直に委ねて、――額同士がこつ、と、かすかな力で触れ合う。わらっていた。彼がそれを見ているか、分からないけど。そうして、指先が、そうと伸びて】

なんで……どうして……? そんなのおかしいよ――、おかしい。おかしい……、やっぱり、こんなの、夢だ、……雨竜さんがこんなこと言うはずない、
夢だもん。……ねえ、そうでしょ、夢だから……、――私が正しくないから。間違えたから。罰なんでしょ? 知ってるの、だって、そうじゃないと、
みんなが夢に出て来るはずなんてない。みんな死んじゃったんだから。……だから罰なんだ、"ほんとうの"ウヌクアルハイ様が怒ってるんだ。……正しくないから。
早く白神鈴音を追い出さなきゃ。はやくしないと。はやく……、じゃないと……。"ほんとう"のマルフィクさんにも、"ほんとう"の雨竜さんにも、……顔向けできない、

【――――――――――彼の首。ぎゅうと掴もうとするのだろう。そのまま年齢の差による体格差を利用してベッドに押し倒そうとする、全部の体重を使って】
【そのきっと細い首をそのまま折ってしまおうとするみたいに――ぎりぎり、と、指が震えるくらい、ほんとうに、ほんとうに、絞めあげようとする、まさしく殺すつもりで】

……私が正しくないことをしたから怒ってるんだ。私が、間違えてるから、みんな、みんな、……みんな、……。

【――だのに、呟く声と、表情は、そんなこと全くしていないみたいに空虚であるんだろう、身体と心が剥がれてしまったみたいに、震えるほど力強いのに、吐息はひどくかすかで】
【ただぼうと開いた瞳から涙だけがぼたぼた落ちていく、――――――なのに力はより一層増していくみたいで、どうしようもない」


216 : 名無しさん :2018/07/19(木) 01:10:08 CvR7z95c0
>>214

【――めっちゃ気まずい沈黙の中。「おれだけなんでしょ」――って彼が紡いだなら、"そいつ"は珍妙な呻きをあげる、といっても】
【ボイチェン越しみたいな声だからそうなってしまっただけであって、多分、本当は、――ひどく不明瞭な、「うーーーーん」とでもいうような、声だったんだろう】
【そうしてやがて観念したみたいな声をだす、「あたしより知ってるかもしれない」――――――その態度が、それが本当だと、きっと伝えるのなら】

"それ"は人間がやることでしょ? 神様だなんて関係なかった出来事なんだから、――人間同士がやらなきゃいけない。
少なくとも桜花鈴音は人間だった。……そういう風に神様が作った。人間みたいに生きていいって約束だったから。

だから――、あなたたちは、もはや世界中のどこにも存在しない人間と和解しなきゃならないわけ。

………………――それは嫌! ――……嫌。それに。無理だと思う。

【相手の態度が映ってしまったみたいに"そいつ"もまたベンチの背もたれに背中を預けるんだろう、相手が下向くのに対して、……こっちは上向きだった。物理的に】
【そうやって告げる条件は軽い口ぶりのわりに無理難題であるように思えた。存在しないものを持って来いと言った月の姫君みたいに、言い切ってしまって】
【けれど同時にそれがほぼ唯一の"うまく"いく方法。――いうなればたった一つの冴えたやり方、だと思っているんだろう。――あくまで"そいつ"は、だけれど】
【――ならば、その瞬間に爆ぜるみたいに溢れる言葉の意味は、何であるんだろう。ベンチに預けた背中を戻したなら、面が彼を向く、――まるで、睨みつけるみたいに】

……この前会ったけど。なあに、この世界のネガティブの基準ってそんな厳しいの? なんか三十回くらい死に損なったみたいな恰好で……いや、
"彼女"を誰かに寝取られたんだって言って。――で、その彼女が、蛇教の幹部? ……あたし、そのあたりはよく、分かんないんだけど――。

"そっち"とは協力するってことで話がついてるの。まあ、あたしも、不確定だから確約はできないって言ってあって……。

【ひどくナイーブな話であるらしかったけど、"そいつ"はあんまり頓着してやらなかった。であれど何かを言いかけて口を噤む程度の心遣いは、】
【――いや、割と、手遅れなのかもしれないけれど、そんな様子、少し見せたなら。とかく互いに思い浮かべる人物が"おなじ"であれば、何かあったのかもしれない】
【まして続く単語が問題であった。彼女――性別はこの際置いておくとして――が蛇教幹部とは関係者も関係者、世界が狭すぎる、って、思わせるかもしれないほどに】
【とりあえずその辺の関係性についてはよく分かんないけど、と、言葉を区切る。とかく確かであるのは自分とそのアリア、という人物が協力体制であること】

…………ところで、あーりんって顔してなかったと思うの。

【――――そのうえで、不確かな協力関係であること。主に"こいつ"の事情において、そうであると思わせて】


217 : ◆RqRnviRidE :2018/07/19(木) 13:04:38 l/SHZCa20
【昼、水の国──海水浴場近くの海岸】

【観光客でごった返す砂浜から少し離れたこの場所は、砂浜と磯のちょうど境目にあたる所であった】
【そこに人の気配はなく、潮風と波だけがひっきりなしに音をたて、遠くの雑音を掻き消している】

【天気は雲ひとつない晴天。青空の中、下界を焼かんばかりに熱くぎらつく太陽は、】
【やがて磯と波打ち際との間に横たわる、銀色の煌めきを照らし出すだろう】

【──骨張ったか細い肢体を晒し、ぐったりと俯せになっているのは、少女然とした子供だった】
【波に揉まれてばらばらと揺らめく銀色の髪は、体を飲み込む程に長く、絹糸のように艶やかできめ細かく】
【それはさながら砂浜に打ち上げられたクラゲのように、力なく体を横たえていた】

…………、……く、────ッぅ…………

【打ち付ける波を体に浴びながら、それは眉間に皺を寄せ、僅かに呻き声を上げるだろう】
【波音はその声を掻き消すかもしれないが、しかし、煌々と輝く銀髪はその存在を強く示した】

【太陽に負けず劣らず、ただひたすらに眩いばかりであったが──さて】


218 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/19(木) 16:53:54 OQHPV96o0
>>217

【── その可憐な少女は、彼女の興味を惹くには十分で】
【彼女はふらりと海岸へ足を運んだなら、その歩みを真っ直ぐ少女へと向けて】
【砂浜に吸い込まれる足音、何処か寂しげな潮の音色と共に】


あーっ!! しっかりしはって!! あーもぅ、こんな所で倒れはって……熱中症かぇ?
ほんま暑い日が続いてはったから……桜桃なんて、38℃超える日がつづいとうし……
あかんあかん、そんな事言うてはる場合やなくて──

お嬢はん大丈夫? 意識あらはる? あらはるんやったら、大きく頷いておくんなし
無理にはええで、無理やったら涼しいとこまでうちが運ばはるし


【染めたての茶色い長髪を、紅細工の簪でポニーテールに結って】
【紅いキャミソール状の半襦袢の上から、長い白羽織を着こなす】
【黒いニーソにブーツ、黒曜石色の瞳をした少女が声をかける】

【白木と黒木の鞘に包まれた太刀を二本、左の腰に添えている】
【彼女はぺちぺちと何度か少女の頬を叩いて】
【返事がなければよいしょと背負って、近くの木陰にまで運ぼうとするだろう】


219 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/19(木) 20:18:02 Ps7Us5KY0
>>210


「 ───……… 馬鹿な子。」「 ……… 本当に、馬鹿な子なのね。あの子。」「救われ得る微かな縁さえ、自分から鎖ざしてしまうというの?」
「 ……… であるなら、」「ますますもって、アレは殺さないといけない。」「いいえ、 ……… "消す"と呼ぶのが、正しい在り方なのかしら。」

「ケバルライだの、ジャ=ロだの、 ──── 妙な呼ばせ方をしているけれど」「どこまで行ってもペテン師でしかないわ。 ……… だから、私が、取り戻すの。」


【 ──── いずれの選択にせよ其れは必須のプロシージャだった。蜜姫かえでに取り憑いている、あの忌々しい優男を、二度と口も開けなくなるまで縊り殺す。】
【話はそれからだった。それが済めば、 ─── かえでを妨げる誰かは、もういない。すれば、後は自分があの子と向き合えば、何か変えられる可能性はあって】
【であるなら呪いを解いて居場所を与えてやることも能うのかもしれない。まして今、あの子にとってアリアは、きっと"死人"であったから。】



「まさしく神頼みね。」「 ……… 彼女の心に語りかけられる誰かが居るのなら、やはり不可能ではないのだろうけれど」
「そちらの線は、"そうしたい"人たちに任せようかしら。 ─── 神様も人間も、自分が納得して生きられるかどうかが、何より大切だと思うから。」


【だのに彼女はひどくかえでを傷付けてもいた。それは恐らく、本心ではあの子は納得していないと思ったが故のこと。自分が自分であれないことから目を逸らすのを、無意識の絶望と呼ぶように】
【白神鈴音が今の自己に納得できていないのなら、納得できるまで思惟と論議に耽ればいいと ─── 満足した神が不満足な人間に戻ることも、吝かではない筈で】



「どうあれ私に選択の余地はないわ。 ─── 貴女を信じなくては、私はまた立ち止まってしまう。それは御免なの。」
「信じているわ。世界中の誰よりも。」「 ──── だから、頼んだわよ。」「あの子のこと。」



【 ──── まるで衆目に身を晒す神様のようだな、と思った。けれど藁でも神でも縋りたくて、だってアリアはもう既に一度、にべもなく振り払われてしまっていたから。】


220 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/19(木) 20:19:46 WMHqDivw0
>>215

【やさしくして、と言われると、申し訳なさそうな顔をする。優しくしたいならそもそもこんな夢見せないんだ】
【そもそもなんだってこんな夢見せてまでかえでに会いに来たんだか、……少年にもよくわからなくなっていた】
【謝りたかった。そして、幸せになってねって言いたかった。そのどちらもがかえでを傷つけるってわかってたくせに】

【(…………恨んでる気はほんとうになかった。だって自分が死ぬのは仕方ないことだと思ってた、)】
【(生前あんなにひどいことをたくさんした。いろんな人に対して。……地獄に何遍落ちたって、足りないくらい、悪いことした)】
【(その罪をまた重ねようとしている。かわいそうな少女をさらにかわいそうにしている。自覚はあるのに――会いたかった)】

【何の抵抗もなく押し倒される。金の髪がシーツに散らばる。打ち付けられる背中、しかし体重が軽いので然程音は立てずに】
【細い首。かえでの両手で包んでも――指が余るくらいに細くって、アダムの林檎はまだ出ていない、こどもの咽だった】
【絞めやすいかたちをしていた。そして少年はなにも拒まない――――どころか、力の籠るかえでの手に、自身の手を添えて】

……、…………、………………、

【何も言わずにかえでを見ていた。海色の瞳にたくさん涙をためて――視線だけでなんとか、言葉を伝えようとしていた】
【ごめんなさい。ごめんなさい。赦さなくていい。ボクのことなんか早く忘れて、どうか、しあわせになって】
【どんどん色合いの悪くなってく唇は決して開かぬよう努力していた。何か余計なこと、言いそうになってしまうから】
【それでずうっと、見つめ続けるんだけど――――誤解されて、恨みがましい視線として、とられてしまうだろうか】

……………………、…………………………、

【やがて少年の生命が弱まってゆく。涙で塗れて重くなった睫毛を開いておくのがだるくなって、半分、瞼を閉じて】
【かたく結んでいた唇からも力が抜けて、半開きに。薄紅色の色彩もすでに真っ青に変わっていて――はく、と動き始める】
【この期に及んでまだ何か言おうとしているみたいだった。もう何も聞きたくないなら早く殺すしかない。早く殺した方がいい】

【(――――そしてまた、わからせてしまう。少年に二度目の死が訪れたなら、この夢も、終わってしまうこと)】


221 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/19(木) 20:37:16 WMHqDivw0
>>216

そ、か……まあそれがイイコトなのかワルイコトなのかはわかんねーけど、……まあいいや。
……もういない人間と和解せよ。ってか、……ちょっと前まで蛇と和解せよってみんなうるさかったくせに。

……………………。そっか。

【人間同士がやれっていうならおれはやんなくていいんじゃないかな。とかいう揚げ足取りは、しないことにした】
【あくまでこの件に関しては、自分は「ニンゲン」の側に立っていなきゃいけないということをなんとなく理解しつつ】
【……、……随分と自分のことみたいに嫌がるんだネ。そう思うだけ思って――言わなかった】
【地雷原タップダンスが趣味の彼にしては本当に珍しく。口を噤んで――「彼」のことに関してはこれ以上何も言わなくなる】

【(それがマナーだと思った。だって、ここまで完璧に何もかもを隠してまでわざわざ此処に来てくれているのに)】
【(引っぺがして中を見るのはあまりにも無礼が過ぎると思った。それで怒らせて、帰られてしまっては、どうしようもないし)】

三十回ィ? なにそれあーりんがジサツしよーとしてたってこと、マジか……、……あーそりゃあ、あー。
……彼女ってのはまあどうでもいいとして、えっ、そんな人とオツキアイしてたの? まじかよあーりん、どんだけ……

…………おれもその協力関係の中にいーれーてー、って言ったら、おこる? 女子限定だったりする?
あーりんがあーりんなのはおれの中で決まったことなの。だからあーりん……うん。

【あーりん呼びは撤回しない。たぶんアリア自身こころよく思ってるはずもないだろうが――とりあえずそのまま】
【「人間関係ごちゃごちゃし過ぎてない? そんで近っ、せまっ!!」 ……呻くように、愚痴りながらも】
【その輪の中に入れてくれないかってちゃっかりお願いしたりもするのだ。ネガティブなんだかポジティブなんだか、よくわかんない】


222 : ◆3inMmyYQUs :2018/07/19(木) 21:25:30 qo/HyX5s0
>>172(ミラ)


『──────!!』

      『────!!』

『────!!!』


【言い争いは続いていた】
【最早ほとんど言語としての用を成さず、獣が吠えるのと変わりなかったが】
【とはいえ、こうした諍いそれ自体は夜の繁華街ではさして珍しくもないだろう】

【見かねてやってきた警察官が仲裁に入り、大抵はものの数分で収められる】
【毎夜毎晩、どこかしらで起きているであろう些事に過ぎない──そのはずだった】


『────────ッッッ!!!!』


【一際大きな怒声が空気を劈いた】
【と同時に、何かが凄まじい勢いで潰れるような折れるような、生々しい音が響いた】
【男が一人、上体を激しく捻って倒れる。殴られたのだ。それも吹き飛び方からして一切の容赦無く】

【倒れた男の顔面は、ケチャップ塗れさながらだった】
【顎は外され、鼻骨はラムネ瓶のくびれのように曲がっている】

【が、異常はその殴られた哀れな男の方ではなく、むしろ殴った側の方にあった】

【拳を作っていた指のほぼ全てが、本来曲がるべきでない方向へ歪んでいた】
【曲がっているだけならばまだ良く、折れた骨が皮膚を突き破り外へ露出している箇所さえあった】
【だというのに、本人はそれに気が付いている様子もなく、まだ何か言語未満の大声を張り上げている】

【グループは、倒れた男を除いてまだ四人ばかりいた】
【それら全員が、婦警が近付いてくるのも構わず、怒声をぶつけ合い、そして】


 『────ッッ!!!』


【ごしゃッ──】
【再び、明らかに尋常でない力みを伴った拳を互いに叩き付け合い始めた】
【何かを発話しかける口が歪な拳に潰され、その場に飛び散っていたものが唾から血液に変わる】



【周囲の市民はそれを平然と眺めている】

【平然と、ただ平然と。朝の過密な通勤列車の中で携帯端末を眺めるときと同じ目で】
【誰一人、騒ぎ立てさえしなかった。ある者は暇つぶしのようにそれを眺めているし、ある者は一瞥だけして通り過ぎていく】

【婦警へ近付いていって声を掛けた市民──会社帰りだろうか、スーツ姿に手持ち鞄の男性──も、】
【とりあえずやるべきことはやったと、特に何の感慨も無さそうな表情で彼女から離れていくところだった】

【──が】

【その男はおもむろに振り向くと、鞄を振り上げた】


 『──────────…………』


【そしてそれを何の前口上も容赦も一切無く、婦警の頭部へ叩き付けようと振り下ろす】

【不意の暴力を働くその男の表情は、しかし何の張りも力みもなく、】
【ただ仕事帰りのくたびれと先の見えない終身雇用への茫漠とした不安だけがあった】


/【──何かが、起きていた】
/【しかしそれが何であるのかを語る者の姿はなかった。今はまだ】


223 : 名無しさん :2018/07/19(木) 22:32:00 DqXS7cUw0
>>219

【あるいは――――もう一つのみ救われる可能性があるとしたら、それは、あの神より、シラカミリンネという概念が消し去られる、ときなんだろう】
【そのときこそ少女は満足して救いを求めるのかもしれない。そしてそのときこそ――あの蛇神もまた少女に応えるのかもしれない。けれどそれは未来予報、不確定な希望であり】
【アンサンブル予報をしようにもデータなんて少なすぎた、――明日で待ってる誰かに聞いてしまうのは、そしてあんまりに、無感動すぎるから】

――――それは知らない。だからあたしは興味ない。あたしが興味あるのは、白神鈴音を"世界を終わらす概念"として破滅させないことだけだから。
世界が滅んだって別にどうだっていいの。そのうえで――あたしたちはあたしたちの個人的な事情によって動くだけ。

まあ、手伝ってほしかったら声かけてよ。その時にあたしが暇してるか分かんないけどね。これでも結構忙しいの、やることたくさんあって――。

【――あくまで"こいつ"にとって、"それ"は寄り道であった。"蜜姫かえで"という人間を救うことが工程の中に含まれていてもいなくても、困りもしないし関係なくて】
【そのうえで――けれど道筋にて拾い上げることが出来るなら、それは、利用できそうだという認識になる。だからか積極的とは言い難い温度感、でも、否定だけはしないはず】
【やることたくさん、とは、どれくらい本当なのか、分からなかった。けれど確かであるのは、――"こいつ"の存在は、ほんの明日にも掻き消えるかもしれない不確かであること】

そーね。そうしましょう。そうするしかないし。――多分ね。

【――――であればそれは本当にか細い糸であるのかもしれなかった、手繰るたびにふつふつとさらに小さな一本一本が引きちぎれていくみたいに】
【そうして最後にほんの幻みたいな一本を願う、神頼み。――神様自身に願うしかなかった、「どうか――」って声を上げるのは、そして、この場の二人ではどちらも足らず】

まあそれについては――任せておいて。あたしがきちんとそこに居合わせたなら。"あんな"程度の蛞蝓に、あたしが負けるわけないでしょ?
……じゃあ、そろそろいーい? 人違いだったみたいだし。まだなんかあるなら、どうしてもって言うなら聞いてあげたって、別にいいけど――。

【その癖に時々やけに自信たっぷりに振る舞うんだった。――時々ちょっとだけ子供っぽい。顔が見えていたなら、多分。どや顔でもしているんだろうって、思わせて】
【そうしたならそうやって切り出す。そろそろ時間もだいぶ経っただろうか、時計なんて持ってないから知らないけど。お月様が少しだけ、傾いた気がする】
【――けれど何かあるならばと尋ねるのは。ついさっきまで飛び降りようとしていた相手のこと気遣っているのかもしれなかった、ひどく分かりづらい気遣い、あるいは、それも勘違い】

【――――それでも何か言いつければきちんと聞いてくれそうな、気配はあった】


224 : 名無しさん :2018/07/19(木) 22:55:07 DqXS7cUw0
>>220

【――――ぎゅう、っ、と、体重の全部をその首に掛ける。ベッドが軋む音が嘘みたいにありふれた温度感で部屋の中に響いた、おかしなことなんてなんにもないみたいに】
【嫌だった。もう何もかも嫌になってしまいそうだった。なんで生きてるんだっけ、って、頭の中では他人事みたいに考えている、なんで生き残ってしまったんだっけ】
【あの時死にたかった。みんなと一緒に死にたかった。そうじゃなかったら、みんなで生きたかった。みんな生きていたなら、――――それで、よかった、なんて、思ってしまって】

…………ごめんね。ごめんね――、ごめんね。ごめんね……、……、助けてあげられ、なくて、……護って、あげられ、なくて、
ごめんね、ごめんなさい、ごめんなさい……――、……ゆるして、ゆるして……、ね、え、赦して、……、――――こんなおねえちゃんで、ごめんね、
……くるしかったよね? 熱かった、よね、――ねえ、ごめん、ね、助けてあげられなかった、……なんにも、できなくて、なにも、私、なにも、
なにも……、

【だからひどく思考回路は混線する、もはや今がいつで誰と相対しているのかさえも混ざってしまったならば、やがて紡がれる言葉の意味は、ただただ、自分のために似て】
【贖罪を願うくせに殺そうとする。そもそも相手は"違う"のに。ただただじっと目が合っている、涙ばっかり嘘みたいに落ちて、だから、夢の中にしたって、無秩序すぎた】
【――、少女は弟みたいに思っていた彼の死んでしまった理由を知らない。けれど少女は弟の死んでしまった理由は知っていた。繋がる思考は外から見れば異常たる様相だろうと】
【彼女の中ではきっと意味が通っていたんだろう。だから続く言葉は「――――雨竜、」と、ひどく、ひどく、本当の家族みたいな温度感で、彼へ、向けられて】

――――――――――――、

【――――――――、だから。だから、きっと、彼女にとっては、夢の中だって、家族殺しと同じ意味を、持っていた】
【いつかここではない異空間にて父を殺した。それが正しいと思ったから。そうして今夢の中で弟を殺す。――正しい、って、思わないと、生きていけそうにないから】
【であればいつかどこかで母までも殺すんだろうか。――そうしたならきっとそれが彼女の死ぬときなんだろう。そんな予感はけれど彼女の行為を止めるには足りないのなら】

【――ぎしり、と、指の骨すら軋んでしまいそうなほどの力を、込めて】


225 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/19(木) 23:04:06 o6XMS57s0
>>223


「 ─── ええ、そうね。」「私たちは、互いにスタンドアローン。」「ただその道筋で、協力し得るからしているだけ。」
「私も、あの子の命と天秤にかけろと言われるなら ─── 白神鈴音がどうなろうと、知ったことではない。」
「けれど助けられる範囲でなら助けましょう。それが互いに妨げ合わない限り。」

【アリアとてそれは同じであった。共感のし得る女神が一人いるならば、助けることに吝かではないけれど ─── それよりも、今は、もっと】
【大切にしたい"だれか"が居る。例えこの世界に、彼女の髪が宿す藤色が、もうどこにもありやしないとしても。】
【 ──── 無理はするなよ、という、迂遠な気遣いであるのかもしれなかった。けれど真相は、無感情な顔貌の裏にしか記されていないから】


「では私からは何も言わないわ。」「白神鈴音を知る人間についても、」「貴女を信じる心についても。」「言っても仕方のないこと、だから。」
「 ──── そうね。最後に、ひとつ、貴女に願うとするのなら。」

「もしも、あの子に。蜜姫かえでに、会うことがあれば。」「 ─── 狼は死んだ、と伝えて頂戴。」


【 ──── けれど、どうしてそんな台詞を言ったのか、アリア自身にも分からなかった。】
【とはいえ徐にアリアは立ち上がるのだろう。ふたたび歩き出して、いずれ摩天楼の淵に足をかけて、ゆらり、そのまま身体を傾け】
【されどそれは死の意志の現れであるはずがない。一っ時の別れを告げる横顔は、穏やかな微笑みに満ちている。 】
【そのままネオンの海に溶けていくのだろう。雲ひとつない夜空を照らしあげる煌めきの中へ、贖罪として身を焼くように、ビルの谷間を躍るように駆け抜けて。】

/こんな感じでシメでいかがでしょーかー!!


226 : 名無しさん :2018/07/19(木) 23:12:21 DqXS7cUw0
>>221

【――――"そいつ"は、きっと、ふいっと視線を逸らしてしまうんだろう。拗ねるみたいだった、表情は伺えなくて、――良かったのかもしれない】
【であれば思い浮かべた言葉は言わなくって正解だったし、その顔を確かめてしまおうとしなかったことも、正解だった。隠しているのだ、暴いていいことは、きっとない】
【けれどいつまでも秘密のままにしておけるとも、思わなかった。――――そして"そいつ"もまたそのつもりであった。ああでも、もし、もしも、――本当に奇跡が起こるなら】

【――人間たちが、もしも、全く考えもしなかったような奇跡、導くなら。いろんな可能性はきっとあるのだった、それくらい、"あの少女"はずっと、ここで生きてきたから】

言わないどいたげたのに。彼女をマエストロに寝取られたって。正直よく分かんないんだけど――、ケバルライ?とかなんとか。それ名前?
だから、そんなに仲良しなら、話でも聞いてあげたら? なんかしゃべってたら死ぬ気はなくなったみたいだけど。
人間じゃない同士で仲良く――、――べつに。どうでもいいけど。いいんじゃない? 好きにしたら…………。

【けろっとした温度感だった。さっきの言葉で濁した部分を的確に言い当てられてしまったから、悪びれるでもなく、むしろ相手をどこかで責めるみたいにして】
【そうして告げるは一つの名前、――そしてそれはあるいは彼も知るものであるのかもしれない。となれば、ひどく中央も中央、ド真ん中での出来事、世界が狭すぎて】
【そもそも真ん中に据え置かれた少女を探してここまで来た彼なんだから今更なのかもしれないけれど――――――それにしても、世界は、きっと、狭すぎるなら】

【――それがかえって、あの子が滅ぼしてしまいそうな世界の広さを理解させてしまう。いくつもの狭い世界を無数に滅ぼして、そうして、最後に、一つ、星を祟って呪うなら】
【それは蝶の羽ばたきよりも大胆に。――――そのきっかけがひどく狭い小さな世界での出来事であったから、笑いごとになんて、きっとできない】

ふーん……じゃ、あたしもあーりんて呼ぼうかな。ちょっと面白そうだし。

【――――狐面の表情が変わらないから、どこまで冗談なのかふざけているのかからかっているのか、全く分からせないのは、ちょっと、問題かもしれないんだけど】


227 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/19(木) 23:35:21 WMHqDivw0
>>224

【やがてそのうち、かえでの手に添えた手すら、ぱたりと落ちる。もうこれで死んでしまうって、わかる】
【震える唇。わなないて、……酸素を欲しがってそうしているのとは違うようだった。やっぱり何かを言おうとしている】
【けれどそれも握り潰されて、きれいな音にはならなかったけど。……だけど、確かに、音は出た。出てしまった】




………………………、ぁ、だ、きしめ、て、…………ぉねえ。ちゃ、……――――



【――――二回目の死のときですら言うことは同じだった。抱き締めてほしいって、ねだる、子供の声で】
【だけど一回目のときと違ったのは――対象だった。あのときは確かに母親を呼んで、泣いていたのに】

【 今度は。いるはずもないってわかってる「姉」に、ねだるみたいに、笑って。死んでった、破崎雨竜は 】


【――――――――朝焼けの音がする。そんな音世界に存在するわけないってわかるのに、確かにその音は響いて】
【終末のラッパに似た音。あるいは断頭台の刃が落とされる音。それかもっとシンプルに、目覚まし時計の鳴る音】
【なにかしら響いて――――「この夢はもう終わり!」って。かえでに伝えてくるだろう、――――――、――――】


228 : 名無しさん :2018/07/19(木) 23:39:49 DqXS7cUw0
>>225

【「そうね、どうしてもって言うなら、伝えといたげるわ――――」】
【――それが、"そいつ"の答えであった。そして相手はきっとその瞬間に"そいつ"を見失うんだろう、まるで、最初から居なかったみたいに、居なくなる】
【――――けれどその実、ようく見たなら転移の魔術式を使って、どこぞへ転移していったんだと気づかせた。――別に気づかぬとも、特に問題は、ないんだから】


【――――――――――――――――――午前四時十六分、アリアの持つ携帯端末に着信がある】
【画面に表示される発信先は――けれどひどく無機質な四文字、すなわち、"公衆電話"。鳴っていたのは、五つ、六つ、コールが重なる程度まで】
【たとえ電話に出たとしても誰も何もしゃべらない。性質の悪いいたずら電話のように、がちゃん、と、切られてしまうから】

【――――そうして二度と鳴ることはない。もしも何らかの方法で発信してきた公衆電話を特定したとしても、街中に古くからあるコンビニに取り残されたものであり】
【どこか何か意味を手繰らせるほど特別な要素は持たなかった。――けれど、もしも監視カメラまで確認することがあったとしたなら、"それ"は、確かに――――】

/おつかれさまでした!


229 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/19(木) 23:44:16 WMHqDivw0
>>226

【ぷいとそっぽを向かれるのも視界の端っこでの話だった。そのころには「彼女」をもう見ないようにしていた】
【自分のカンが当たっているなら。彼女は、……、……やっぱりやめよう。へたれた心がブレーキをかける】
【けれどいつかそのペルソナを剥がして、素顔で会ってくれることがあるとするなら。……こう声をかけようとも思うんだ】

【「おつかれさま。よく頑張ったよ、あんたは」。……そんな感じの、当り障りないこと】

けば……? ……なにそれ、蛇教用語? わっかんね……でもまー、ネトラレんのがイヤなのはよくわかるよ。
話聞きてーんだけどドコ居るんかわかんねーんだよね、その辺うろついてたら会える?
どっか居そうなとこ知ってる? あーりん。おれの予想だとなんかすっごいオシャレなバーとかビリヤードやるとことか……

【めちゃくちゃ言う割にはアリアのこと、カッコイイクール系女子だと思っているらしい。当たってるんだか微妙な線】
【とりあえずまた夜の街でも歩けば、会えるかな。とか思いつつ――ふは、と笑った。あーりん呼びの伝染】

おー、呼んだれ呼んだれ! ただしおれが言いだしたとか告げ口すんのナシね!
なんかあだ名で呼び合いっこするの、トモダチっぽくて面白いじゃん、……っぽいだけだけど。
つまんないのよりはマシじゃんね、おれのことはオムレツのオムちゃんって呼んでくれればいいケド――

【「――――そういやあんたのことはなんて呼んだらいい?」 今更過ぎる質問だった、それで帰ってきた名前には】
【またくだらない綽名を付けるのだろうって予想させた。トモダチっぽくて面白いから。つまんないよりマシだから】
【その程度の理由で彼は誰にでも綽名を付けるし――真名で呼ぶこと、あまりないんだ。あくまで「ごっこ」に過ぎないから】

【――――だからこそ。「鈴音ちゃん」ってきちんと読んでるあのコのことは――それなりに、そう、想っているのだとも感じさせる】


230 : 名無しさん :2018/07/19(木) 23:52:02 DqXS7cUw0
>>227

【―――― それから一分経った。二分くらいも多分経っただろう。三分、四分目はすっ飛ばして、五、六、七、面倒になって、次は、どれくらいだろう】
【だのに数え方によってはきっとまだ三秒だって経っていないように思えた、夢の中の時間間隔だなんてひどくあてにならなくて、だから、もう、何も信じたくない】

………………、

【――だからどうしようもなくって、抱きしめた。もう終わるって分かっている夢の中で、現実には叶うことなかった最期の一瞬を、自ら作り出した瞬間を、抱き留めて】
【けれど――人間は死ぬときに聴力が一番最後まで残るんだという。であれば、もしかしたなら、その瞬間。彼の耳元、「――ちりん、」と、小さな、鈴の音】
【やさしい鈴の音が話しかけて来る――、そしてきっとそれは、泣いている少女には届かない声。だって、彼女は、その鈴の音が嫌いで。信じなくて。消えてほしいって、願うから】

【――――――――だから、それは、"信じてくれた"人にのみ与えられる神様からのご褒美に似ているのかも、しれなくて、】

――――、

【――――午前三時八分。目を開けた少女は絶望的な声にて呻いた、ひどく汗をかいていた、喉の中身同士がこびりついてしまったみたいになって、】
【脳の中に混合が不十分なレジン液を流し込まれたような気分だった。最悪にも物足りない、今この場に核ミサイルの発射ボタンがあったなら、とりあえず指が攣るまで連打する】
【それで世界が滅んでしまったってどうでもよかったし、むしろ滅んでしまえって思ったに違いなかった、――見慣れないホテルの内装、何もかもが嫌になってしまったなら】
【気分転換を言い訳に勝手に抜け出す、そうして彷徨って、彷徨って、彷徨って、――――、】

【午前四時十七分。うんと重たい緑色した受話器を、投げるみたいにもとに戻して】

/おつかれさまでした!


231 : ◆RqRnviRidE :2018/07/19(木) 23:55:05 WezD0yBc0
>>218

【それは彼女がこちらへやって来る気配を感じ取ったらしく、重たげに首をもたげて薄く目を開く】
【覗く瞳は斑のない漆黒──霞む視界の中、その姿を見留めるべく、彼女の黒曜石と視線を交わして】

【意識はあるものの、どうやら朦朧としているのか、少女の呼び掛けには「あー」だか「ぐうー」だとか言葉にならない声で返答しながら】
【なされるがままぺちぺち頬を叩かれる。触れた頬はすっかり褪めきっているのが分かり、いっそ青くさえ見えるほど】

【そうして子供を背負えば、ざんぶと髪の毛から大量に海水が滴り落ちるだろう。場合によっては少女の服をひどく濡らしてしまいかねないくらいだ】
【そこに倒れ込んだというよりは、寧ろ何処から漂着したのではないかというほどに水を吸っていて、べったりと子供の肌に張り付いている】
【重さはというと、痩せ細った小柄な体に見合い、およそ20kg台前半といったところか】


【さて、背負われるまではぐったりしていた子供だったが、いざ人肌を感じてみると何処か感覚が冴えたらしい】
【恐らくそれは木陰に運ばれながら、体を預ける少女の背中で身動ぎをし、耳元でか細く呟くだろう】

か、ボク……髪、だめ──キミ、気を、つけ…………

【 髪。己の銀髪に気を付けよと、あるいは警告であったのか 】

【背負う際に触れていたとしても特に何も起こる訳ではなかったが、意識が平常に戻りつつある今、素肌に銀髪が触れたなら】
【少女は僅かばかり、皮膚にひりつくような痛みを感じるはずだ──そう、例えば、軽い火傷をしたときのような感じで。】


232 : ◆3inMmyYQUs :2018/07/19(木) 23:58:11 qo/HyX5s0
>>174


そうそう、はるばる時空を超えてやってきた未来人にゃ。
────って、え、驚かないのかにゃ!?


【少女の視線がメニューと探偵の間を瞬時に一往復半ほどした】
【要するに相手が驚かないことに驚いた】


……いや、え、ちょっと待つにゃ。
何食べて生きてたら突然現れた美少女未来人を見てそんな平然としていられるにゃ!?
優雅に煙草ぷかぷかさせている場合じゃないにゃ! ミライジンだよ!? 
世紀のビッグニュースにゃ! もっとこう、何か……あるでしょ!? 


【氏名不詳、住所不定、自称・未来人(長時間後ろから付き纏うなどした疑い)は喚いた】
【昂ぶるあまりか、安易で古典的な猫キャラ語尾は量子の揺らぎのように安定しない】

【少女は都心のど真ん中に原始猿人を見つけたような眼差しをして探偵をじっと見つめていたが】
【やがてそれを二、三度ぱちくりと瞬かせてから、「ま、まあ──」と仕切り直すように言った】


──ま、まあ、まあまあまあ良いにゃ。
今日はきっと疲れてただけにゃ、きっとそうにゃ。ね、探偵も大変にゃ。お疲れにゃー。

とりあえず──話が早いのは助かるにゃ。
どの道、早めに伝えないといけないことだからにゃ。


【真偽はさておき、追い返されないのを良いことに、少女は平然と話を進める】
【おもむろにメニューを脇へどかし、やや身を乗り出して、その大きな丸い黒瞳に探偵の姿を映した】

【間合いを測るような沈黙を数瞬、差し挟んだ後──少女は果たしてこう言った】


【「捜して欲しいのは、 ─────────」】






    ──────────『あなた』にゃ。





【──そうして探偵を見据える面差しは、はにかむようで、それでいて芯の通った真剣のものだった】


233 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/20(金) 00:09:27 ftfMPujo0
>>231

【彼女は思う、── その軽さに、在りし日の憧憬を思い出して】
【熱くなった目頭の温度。向日葵の様な澄んだ頬の彩り、微かな名残と共に】
【滴り落ちる大量の海水、これには流石の彼女もびっくりしてしまう】


ひゃっ……!! あーっ、びっくりしはるどす!! なんや、お嬢はん、いっぱい水あらはんなぁ
しっかし何処に入ってはるんやろ……あー、もぅ、びしょびしょやさかい……
まぁ、こない暑い日やったら、すぐに乾かはるんやろうけど


【水が濡らす彼女の体、白い羽織が透けて、その奥の柔肌を飴細工の様に映して見せた】
【それは溶けた硝子越しに見る結晶に似て、太陽を浴びてきらきらと輝く様に】
【濡れ髪が首筋に絡み付いて、かきあげる仕草が滑らかな頬のラインを溶かして】

【ポニーテールにした長い髪の毛、何度かふりながら、両手で持ってたくしあげるだろう】
【髪の毛から滴り落ちる水の音、瑞々しく肌の表面で跳ねて、煌めくプリズムのような色彩に】
【何度か手ぐしをして当座の応急処置、早くシャワー浴びたいなぁなんて思って】


あ、気づかはった!? 大丈夫どす? うち、めーっちゃ心配したんよ?
こんな所に一人でおるん? 親御はんとかとはぐれはったんかなぁ
なぁ、お嬢はん幾つやろ、自分の名前とか言えはる?

── え、なんて? 髪? 髪がどうしはっ──!! ひゃぁ!!


【背中におぶった状態で髪の毛が首筋について、その感触にびっくりしてしまう】
【思わず素っ頓狂な声を上げたら、予想外の響きに少し恥ずかしくなって】
【きゅう、と頬を赤く染めながら、そそくさと近くの木陰に貴女を寝転がせるだろう】


234 : 名無しさん :2018/07/20(金) 00:38:28 DqXS7cUw0
>>229

【――――――――――――――、認識できない程度の間】

……知らない。そのあたりはまだ調べてないの。調べてないし、それは、本筋じゃ、ないし。
それもしーらない。ビルの上とかじゃない? 今のところ遭遇率百パーセントだもん。つまり確実ってこと。
オシャレなバーなんて行ったことないし、ビリヤードなんかしたことない。あの棒ってどうなってるの? よく分かんない。

【相手の疑問に帰って来る言葉は――だけど全く以って不真面目だった。一つ目はまだ真面目だけど、知らべてないから知らない、と、ありふれた答えであり】
【二つ目については、――自分がそこで会ったという程度の話なのだあろう。だから遭遇率百パーセント。だって一回しか会ってないのだから、間違ってない】
【オシャレなバーもビリヤードもよく知らないし興味ない。あの棒の仕組みには少し興味あるけど、そもそもあの台に張られた緑の布の手触りは多分あんまり好きじゃないやつだ】
【――とかいろいろ考えていた。いなかったかもしれないけど。脳内でおこる手慰み、言葉で遊ぶみたいな温度感。そういう感じが相手にはあった、どこか、柔らかい】

他にそうやって呼んでる人が居なかったら、必然的にバレるんじゃないの? あの人見て「あーりん」なんてそうそう自然発生しないと思うの。
――それ、あだ名? 目が黄色いから? じゃああたしはテントウムシかな……。……アリアにはヒメって言ったからそれでいいんじゃない、わかりやすいでしょ?

【そうしたならしれっとした温度感。相手がちょっと"ばか"なのではと疑るみたいに。――ひとまず、あの人物を見て、どうしてもあだ名をつけろと強いられたなら】
【多分なんか二つ名みたいなあだ名になりそうだと思った。少なくとも、"あーりん"は出てこないと思ったのだ、――ゆえに。出どころなんてすぐ知れそう、と、紡いで】
【相手が名乗るものにはやはりというべきか真っ先に疑念がある。――こんな不審者がいくつも名を使い分けたら面倒だと言う自覚くらいは、あるらしくって】

【――そのくせ"ヒメ"っていうのも割とだいぶ"どうかと"思わせるような単語ではあった。顔が伺えないから、真意までは、よく分からないけれど】


235 : ◆RqRnviRidE :2018/07/20(金) 02:37:20 vZw8nhd20
>>233

【晴天の下、ずぶ濡れになりながら幼い子供を背負う少女は、さながら遊び疲れた妹を連れ帰る姉のよう】
【子供の方もなるべく少女に身を委ね、暖かな柔肌に縋るようにして身を縮めていた──けれど、】

【自分の髪のせいであんまりにも彼女が慌てるものだから、すっかり意識を取り戻して】
【とにかく髪を引き離すべく仰け反ろうとしながら、子供もまた慌てたように少女へ声を掛ける】

あ、あ……────!
いや、すまない、こんなつもりじゃなかったんだ……!

キミ、見せてごらん!

【木陰に横たえられるや否や、ばねのように子供は上体を起こしつつ勢いよく頭を振るだろう】
【そうして砂や水滴をある程度振り落としたなら、顔の両横の髪束をさながら『触手』のように動かし、】
【一方の髪束は少女のポニーテールを脇に寄せようとしつつ、もう一方は毛先が彼女の首筋を撫でようとする】

【今度は触れたとしてもひりつきはせず、逆に触れた箇所から痛みが引いていくはずだ。子供の異能の一端なのだろう】
【ただ、子供の髪は普通の頭髪よりも極めて細く、更にソフトタッチであるから、少しくすぐったいかもしれなくて】

ボクは大丈夫、そんなことよりキミのほうが心配だ……
大丈夫かい? ひどい痕にならなければ良いのだけど……

ああ、そういえばね、キミの質問のことだけども
親は来ていないよ。あんまり一緒に行動はしないんだ
なんてったって、今日ボクは一人でそこの高い崖から海を────

────崖、から………………海を?

【赤面する少女の瞳を、子供の黒々とした丸い目が至って真剣に覗き込む。彼女を心配していることには間違いないようで】
【それから子供は少女の質問にようやっと答え始めるのだが、空いている手で何処かを指差した途端、ふと不安げに辺りを眺める】

【一通り眺め終えた後、先程とはまた違う意味で、すーっと顔が青ざめていくのが目に見えて分かるだろう】

ねえ、キミ、…………ここって一体……何処だい……?
──ねえ、嘘でしょう、ボクの、……名、前って…………?

【──何故なら、子供の指差した先に崖など存在せず、あったとしても緩やかな丘陵のみで】
【ここがどこなのか所在地すらも分かっておらず、どうやら自分の名前ですらも迷子のようであった】
【子供は薄笑いを浮かべていたが、髪束は小刻みに微かに震え、不安な念を隠しきれずにいる】


236 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/20(金) 09:15:47 ftfMPujo0
>>567

【──── ボスの思考に関するプロセスは概ね正しい。リーイェンもまた、その結論に至る】
【風呂敷は畳まれなければならない、必然性のある終着点にこれ以上の割り振りは必要ないから】
【それはまた同時に、ダブルミーニングを意味するのか。── リーイェンは沈黙を返すだろう】


あたりめーです、情報処理と演算なら私に並ぶ存在なんていねーです
だから足りねー分はボスに任せるです。そういうのは私の仕事じゃねーですし
一々痛める様な心もねーので、やりやすいです


【結局の所、ここまでの話はリーイェンにとってもボスにとっても序曲に過ぎず】
【故に提示される情報もまた、本題に至るまでの前奏曲にしかならない】
【転調、響く黒鍵のシンフォニーが、妖しげなディミニッシュを拐かす】


話がはえーです、── 『公安』は優秀ですし、尚且つ理にかなう情報しかねーですから
観念みてーな頭でっかちな話は、元から蚊帳の外でごぜーます

だから、今から話す情報は 『全て』 事実になってます、よーく聞くがいいです。

"虚神" が初めて "基底現実" で観測されたのは、『表向き』には "レッド・ヘリング" の一件です。
『旧市街』にある "信仰の工場" ── 彼処で レッド・ヘリングとスナークが観測されたです。

しかし、スナークと── その依代となるイル=ナイトウィッシュは、それぞれ別の場所と時期に観測されてますです。

少なくとも『公安』のデータベース上では、スナークは[2015年]、イル=ナイトウィッシュは[2013年]に観測されてるです。


【画面上にリーイェンのアバターと別に『公安』のファイルが表示される。[2013年]と書かれたファイル】
【そこにはイル=ナイトウィッシュの顔写真が載っている。隠し撮りなのか、少しぼやけており】
【愛らしい表情の中に、歪む真紅の瞳。間違いなく "病魔" のそれであった】


[2013年] "D.R.U.G.S." というマフィア組織の引き起こしたテロ、"Der Tod und das Mä


237 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/20(金) 09:16:07 ftfMPujo0
>>567

【──── ボスの思考に関するプロセスは概ね正しい。リーイェンもまた、その結論に至る】
【風呂敷は畳まれなければならない、必然性のある終着点にこれ以上の割り振りは必要ないから】
【それはまた同時に、ダブルミーニングを意味するのか。── リーイェンは沈黙を返すだろう】


あたりめーです、情報処理と演算なら私に並ぶ存在なんていねーです
だから足りねー分はボスに任せるです。そういうのは私の仕事じゃねーですし
一々痛める様な心もねーので、やりやすいです


【結局の所、ここまでの話はリーイェンにとってもボスにとっても序曲に過ぎず】
【故に提示される情報もまた、本題に至るまでの前奏曲にしかならない】
【転調、響く黒鍵のシンフォニーが、妖しげなディミニッシュを拐かす】


話がはえーです、── 『公安』は優秀ですし、尚且つ理にかなう情報しかねーですから
観念みてーな頭でっかちな話は、元から蚊帳の外でごぜーます

だから、今から話す情報は 『全て』 事実になってます、よーく聞くがいいです。

"虚神" が初めて "基底現実" で観測されたのは、『表向き』には "レッド・ヘリング" の一件です。
『旧市街』にある "信仰の工場" ── 彼処で レッド・ヘリングとスナークが観測されたです。

しかし、スナークと── その依代となるイル=ナイトウィッシュは、それぞれ別の場所と時期に観測されてますです。

少なくとも『公安』のデータベース上では、スナークは[2015年]、イル=ナイトウィッシュは[2013年]に観測されてるです。


【画面上にリーイェンのアバターと別に『公安』のファイルが表示される。[2013年]と書かれたファイル】
【そこにはイル=ナイトウィッシュの顔写真が載っている。隠し撮りなのか、少しぼやけており】
【愛らしい表情の中に、歪む真紅の瞳。間違いなく "病魔" のそれであった】


[2013年] "D.R.U.G.S." というマフィア組織の引き起こしたテロ、"Der Tod und das Madchen"
この時流出した、世界最古の "病" ── "Amy Syndrome"
それを確保したのが、"病魔" イル=ナイトウィッシュでごぜーます。

『公安三課』は疑問に思ってました、こっちの面子も頭切れる奴が多いので、── ええ、合わない、と

"マフィア" と "病魔" ── 現実と幻想とが、あまりにも交錯し過ぎていますです。

その後 "D.R.U.G.S." の活動は急激に下火になりやがりました。少なくとも公の場では確認できねーです。
それもまた疑念を生み出しやがりました、世界最古の "病" がどうゆうものかは知らねーですけど
手に入れたにも関わらず使わねー道理はねーでしょう、ならば

──── 『使えなかった』と、考えるべきです。

最後のピースはこれでごぜーます、"D.R.U.G.S."── 首領、"Cypress"

             ・・・・・・・・・・・・
【── モニターに現れる "白いシャツに黒い長髪の男"】
【奇妙な一致であった。必然か、或いは故意か、── 何れにせよ】


"Cypress" の花言葉は "死" ──── そう、全ては仕組まれていたのです。


【画面の中の男は艶やかに笑う、耳障りなノイズを残して】


238 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/20(金) 09:29:14 ftfMPujo0
>>235

【── 少女はうねうねと棚引く髪の毛に、少し驚いた様な表情を見せて】
【きゅっと身を竦めたなら、羽織の袖を小さくぎゅっと握りしめる、寝床で幼子が毛布を被る様に】
【大きな目蓋を閉じて、貴方の行いに身を委ねる】


ふぇ……なんやろ──……触れられたとこから、痛みがひいていかはる……
んっ──……それに、っ……ゃっ! お嬢はんの髪の毛……えろぅ、細くて……ひっ
らっ──くすぐった…………ひっ


【擽ったそうに頬が綻ぶ、雪解けが春の訪れを告げる様に、白い柔肌に紅が差して】
【琥珀色の濡れ髪模様、滴り落ちる水滴が、水晶みたいに淡く輝く】
【少し落ち着いたなら乱れた髪を指先で整える。倭絵の一葉に似た、艶やかな仕草で】


──── 崖? 崖なんか、ちぃともあらへんけど……
わっわわ……!! どしはったん、いきなり、慌てはって──
あ、ぁ──……え、えーっと、どないしよ……!!


【少女は慌てる。明らかに目の前の貴方の様子がおかしい、まるで何かに気づいてしまったかの如く】
【あたふたとその場で右往左往、口元に手を当てる動作は深窓の令嬢にも近く】
【困った様に目尻がとろんと靡いて、ああ、もう、だなんて言ったりしてみたら】

【そのまま、ぎゅーっと、胸元に収めるように抱き締めようとするだろう】


兎に角、落ち着かはって欲しいどす──、慌てはったらええ結果なんかあらへんから
あはは、うちも仰山言われはったんよ。うちな、結構おドジやったから
なんでアンタはそない落ち着きがないんや、言わはってな──

此処は『水の国』どす、お嬢はんが知ってるとこと、違うん?


239 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/20(金) 12:13:09 o6XMS57s0

【極彩色の電光が夜を眠らせない。呪いに似ていた。消費社会という名の終わらない物語。ただ主演のカーテンコールを待つばかりの人形劇。】
【 ──── 真夏の路地裏は何時もにまして饐えた臭いと淀んだ熱量を孕んでいた。然し奥の知れない行く末の闇は、肌に触れれば悍ましい類の冷たさを与えるのだろう。】
【それに誘われるのなら、踏み込むのも吝かではないのかもしれない。破落戸も落伍者も狂人さえもが寝静まる夜、無秩序な建築の末に出来上がった九龍城の最奥へ。】

【 ──── 道はどんどんと狭くなっていく。ガラクタとトタン板と打ちっ放しのコンクリートで出来上がった、人一人がやっと通れるような隧道の向こう側】
【しかし藪から棒に開けた場所へ出る。小さな庭園くらいの、およそ夏とは思えないほど冷たい空間。眼前に坐しているのは、闇に沈む黒い洋館である。】
【厳密には白銀の瀟洒な外塗りであったのだが如何せん夜闇が濃すぎた。文字通りに。それこそ通り抜けてきた道々と較べても、その館は色濃すぎる暗闇に包まれていた。】
【中からは物音一つしない。灯の漏れる窓は一つとしてなかった。それ以前に全て締め切られていた。然し観音開きの玄関だけが、無作法に来客を待つかのように、 ─── ほんの幽かに、開いている。】
     


【 ──────── 声がする。扉の先。闇の向こう。縋るように、啜り哭くように、いつかの別れに似て。】




        ……… て

        …… す …… て

      …… すけて




           ──── たすけて





【分かるかもしれない。冱つる湖面に氷柱を投げ込むように、とぷん、とぷん、──── 冷たく澄み渡る女の声。それは紛れもなく"彼女"の声だった。】
【幽かに開いた扉は少しずつ閉まり行くように見えた。それは単なる風の動きでしかないのかもしれず、しかし此れを逃すのなら、もう、二度と、】

/予約のやつです!


240 : 名無しさん :2018/07/20(金) 12:32:59 SjkK3gZY0
>>239

【――――――――何を探しているのだったかが、少なくとも数刻前より、分からなくなっていた】
【いや、ううん、考えれば思い出せた。サーペント・カルト、その、残った人員を探していた。探していた、生き残ったサーバント、だって、人が足りないから】
【だから探していた。ずっと。たくさん歩いたのに。だけど見つからなくて。みんなどこにいるの、と、泣いてしまいそうな囁きを、だけど、なのに、誰も聞いてくれなくて】
【指先の感覚が不快でしかなかった。蛇だけそのままに腕なんて溶けてしまえばいいのにと思った。どうしてあんな夢ばかり見るの。それを誰にぶつけたらいいのか分からないなら】

…………――、

【必死になって神様に祈る。だけど聞いてくれてないに違いなかった。だって。今の神様は正しくないから。正しくない神様だから。救ってくれない。正しくないから。――】
【(――――――――神様だって、その手を伸ばしてあげることが、できなくって)】

…………………………。私のことは助けてくれないのに?

【白い服。どこかで交戦したのかもしれないならいくらかの血で染まる、右の肩に負傷があった。無理やりに処置した跡が痛々しく、そもそもそれさえマゼンタで覆っただけのもの】
【熱に支配された身体中を無理やり冷やしたならば全身が一度濡れたような気配がする、そしてそれさえいくらも乾くような時間を思い浮かばせたなら、くしゃん、と、乱れた髪先】
【一気に冷やされるなら結露してしまいそうだった。――そんなはずはないから錯覚に過ぎないんだけれど、それでも、まだどこかで湿っぽく熱っぽい身体、引きずりこまれるよう】
【背を向けて立ち去さるという選択肢も、きっと、あったはずだった。けれど選び取られることはなかった。――指先が扉に触れる、須臾の間、逡巡したなら】

【――――けれどその実、なんにも、考えてなんていなかった。ただ、――、ただ、"なにか"を待ちわびて】
【それが破滅でも地獄でも無限に続く痛苦でももはやよかった、――それを罰と思えたなら、こんな気持ちにも、整理がつくような気がして】


241 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/20(金) 13:00:03 o6XMS57s0
>>240

【踏み込むのなら其処は巨大な丸い広間である。絢爛な装飾と調度品に彩られたドーム状のホール。煌びやかに吊るされるシャンデリアには埃一つ積もっていない。】
【その真ん中に、女がいた。黒いネグリジェを纏っていた。大理石のフローリングへと、横坐りに長い両脚を素足に投げ出して、汚れ一つない白銀の髪を床地に散らして、俯いたまま座り込んでいた。】
【細く白い指先が何かを弄していた。床に投げ出されていたのは、タロットが5枚。女帝。魔術師。皇帝。 節制。 ──── そして、吊るされた男。】
【左手から右手にかけ、正位置にて真っ直ぐな横並びにされていた。一寸のズレも傾きもなかった。そうして一番左側のカードを、音もなく指先が持ち上げたのなら】



【 ──── 少女の背後。扉が閉まる。そして、二度と開かない。】
【女が頤を持ち上げる。歯車に油の足りない人形のように、ぎり、ぎり、ぎり。】
【ひどくぎこちなく顔を上げて、 ─── 銀髪に片目を隠し、無機質に見開かれた青い隻眼。彫像のような白皙の顔貌。】
【それは間違いなく彼女のよく知る人間だった。愛したはずの人間だった。死んだはずの人間だった。】



【肩にしか関節を持たない傀儡に似て、やはりぎこちなく、両の手が持ち上がる。"女帝"の一枚を、見せつけるように少女へ示し】
【白い指先がそれを破り捨てる。びり、びり、びり。紙吹雪のように床に散る。そうして唇が動いた。少女が目を外らせなかった、いつかの別れの刹那と、寸分違わず。】





        「█████。」





【ぼとり。音を立てて、その首が落ちる。硬い床へと、端正な顔立ちがひどく強かに打ち付けられる。】
【がこん。空虚な音が、ホールの高い天井に吸い込まれて、いつまでも響く。頭は無造作に転がる。もう唇は動かない。】
【首の断面から血は出なかった。何故ならそれは本当に人形であったから。黒洞々たる空っぽの暗闇、覗き込むなら広がっている。】



【 ────── 啜り哭く声は、まだ聞こえる。広間の奥、どこかへ繋がる小さな扉、その向こう。】


242 : 名無しさん :2018/07/20(金) 13:24:04 SjkK3gZY0
>>241

【――つかれた、と、思った。室内に踏み入って真っ先に思ったのはそれだった、眠たいのとも違って、ただ、ただ、ただ、どこまでも、気怠くて】
【身体じゅうが重たかった。ならなんで歩けているのか分からなかった。確かめれば能力の容量はほとんど残っていなかった。――だからか、と、他人事みたいに納得する】
【そうして相対するんだろう。何も言わなかった。観測する限り、表情さえも動かなかった。ただ当たり前に見やった、水面を少しも揺らさずに落ちること、不可能なはずなのに】

【――――少女の持つ異能の力はそれさえ"阻害"してしまうから。本当に便利な力であった、悲しむのも喜ぶのも苦しむのも何もかも、何もかも、要らないって言えるから】

……うるさいな。

【言い捨てる言葉に――けれど目立つ感情はなかった。寝不足の朝に喚く目覚まし時計に向けられるみたいな、声だった。だから眠りたかった、でも、眠ってしまったら】
【きっとまた誰かに責められるんだろう。夢の中でひどいことを言われるんだろう。だからもう眠りたくなかった。誰かに抱きしめてもらえたなら、眠れる気がして、だけど、】
【――カードの意味を彼女は知らない。多趣味であれど"そちら"にはあまり興味がなかった。信じているものがあるから、占う必要もなかったし、そういう要素は必要でなかった】
【ゆえに彼女が好んだのは指先にて行われる単純な手芸だとかの趣味。――なんにも考えずに没頭していられるようなものが好きだった、部屋にあったのは、そんなのばかりで】

――――――――、

【小さく唇が動く。けれど言葉と呼ぶには不明瞭すぎて、音というには原始的すぎて、だから、ただの、吐息に似て、でも、何かの意味を宿しすぎた】
【なのに形より辿ろうとするほどにも満たない。赤子がしゃべる喃語よりも意味はなく、そしてきっと、行為としての意味さえなく】

……どうしてみんなで私を虐めるの? 私だけ生きてるから? ……どうして私だけ生きてるの? どうして連れて行ってくれなかったの?

【――――はあ、と、深いため息が漏れる。落ちてしまった人形の首を見下ろした、マゼンタの瞳はすでに濁りきって、そこに居ることさえ不思議なほどなら】
【疲れてしまったみたいに、座りこむ。――床が冷たかったから、もうそのまま眠りたかった。だけれど嫌な夢を見るくらいなら眠りたくなかった。全部ちぐはぐになって、】
【だから、人形の首を抱き上げようとするんだろう。――あの夜写し取るみたいに、その豊かで柔らかな胸元にて。――――熱があった。人形にも分かるんだろうか、分からないけど】

【そうしてかろうじて立ち上がる。引きずるような足取りがもう一度聞こえて来る音を追いかけた、――なんらかの方法で"駄目"を伝えられないのなら】
【きっと彼女は抱きしめたものをそのままで行こうとするんだろう。破り散らされた紙片を踏みつけて。きれいに並べられたカードを散らして。それを気にすることなく】

【――であればきっと求めているのはやはり罰に違いなかった。それ以外に耐えられそうもなかった。だから――いつかの言葉は限りなく正しくて、だからこそ、(だからこそ)】


243 : ◆RqRnviRidE :2018/07/20(金) 13:35:22 vZw8nhd20
>>238

【綻んだ少女の顔、それを見てほっと胸を撫で下ろし、子供は触れていた髪束を引き戻すだろう】
【手を使わずに髪だけを器用にうねらせ、自分の背でくるくると捻りながら残りの水分を搾り取る】
【たっぷり含んだ海水が子供の白磁の肌を滑り落ちる。澄んだせせらぎの音はやがて、訪れた少女のはじめの足音のように砂浜に消えて】

【不安な目をした子供はどこか泣きそうなようにも見え、ぎゅうと抱き留められれば、きゅうと喉を鳴らす】
【少女に抱擁されることで落ち着いてきたらしく、時間が経つにつれて、体の震えは収まっていくだろう】

──あ、ありがとう……いや本当に、色々とすまない
気付いたら知らない場所だったから、ちょっと慌ててしまったみたいだ……

うん──そうだね、キミの言う通りだ。慌てたって何にも解決しやしないよね
んんと、ここは水の国で、でもボクは知らない場所で──
……ああ、ちょっと待っておくれよ、いま思い出すから──

【子供は緩くかぶりを振りながら、眉を八の字にして申し訳なさそうにしている】
【助けられたところを取り乱したこともあって、居た堪れない気持ちがあるのだろう】

【思い出すから、と言って子供は本当の幼子みたいに相手の胸にぽふっと顔を預けようとする】
【そうしながらも、己の髪を僅かに持ち上げて、相手の素肌に触れぬように配慮は怠らない】
【その行動は恐らく、朦朧とした意識の中で口走った「髪に気をつけて」とか、】
【不意に触れたときの痛みから、気を抜くと自分の髪で相手を傷付けてしまいかねない故のものだった】

【抱き留める体は長いこと水に晒されたためか、この炎天下にしてはひんやりと冷たく】
【痩せ細った肢体はとても蒼白く、直射日光に当てられればそれこそ焼け焦げてしまいそうなほど】

【──やがて、5分にも満たない頃に子供は顔を上げて少女の顔を見据え、口を開く】


────ダメだ、何も思い出せない……。

ボクがいま思い出せるのは、この髪がとっても危なくて、どうしてだか崖の上から海を眺めていたんだけど……
……だけどそれ以前のこととか、ボクが誰で何処から来たのか……──

【「──まったく思い出せないんだ。」 子供は少し泣きそうな顔をして、そう言った】
【どうしよう、だなんて不安そうに呟きながら俯き、髪束からぽたりぽたりと滴が落ちる】


244 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/20(金) 13:59:42 o6XMS57s0
>>242


【人形は答えない。何故ならそれは人形であるから。どれだけ少女が嘆いても、泣いても、悲観に暮れても。視線を合わせることさえしない。】
【だから何時かの夜にその光景が似通ったとしても、伝わるものは何もなかった。熱も、絶望も、綯交ぜの感情も、どれだけぶつけても何も帰ってきやしない。】
【それは無抵抗であるのとも同義だった。抱き上げられても人形は不服を述べない。綺麗に並べたカードを蹴散らされても、青い目を瞠いたまま黙っている。】


【 ───── けれど。立ち上がる刹那、誰かが。】


      「だったら殺してやろうか。」



【卑近な距離でそう囁く。深い憎悪と愛情を一緒にぶちまけるような声だった。冷たい声だった。アリアの声かもしれなかった。 ─── なのに、振り向いても、誰もいやしない。】
【殺してくれと頼んでも何が起こる訳でもない。であればそれは虚勢であったのかもしれず、あるいは幻聴であったのかもしれない。(本当に?)】

【扉の先に進むのならどこまでも回廊が続く。右手の壁は硝子張りの窓で、生ぬるい月白の残光が静かに差し込む。左手の壁には幾つもの扉が並び、その上に一つずつ番号が割り振られている。】
【101。102。103。 ──── 扉の前にひとつずつ、"部品"が落ちている。歯。手指。目玉。機械仕掛けの内臓。甘い匂いのするシャツ。品のいいジャケットに、黒いコート。】
【革靴。一足ずつ。髪の毛の束。新雪に似た白銀の色。長い脚。一本ずつ。胴体。生々しい液体に包まれた骨。金属製の頭蓋骨。 ─── 最後に、顔の皮。半分が焼け爛れた、真白い柔肌。】

【まだ回廊は続いていた。然してその先には何もなかった。ばらばらになったアリアのパーツは、"226"の番号が示された扉の前で、終わっていた。】
【 ─── その扉だけは、ごくあっさりと開くだろう。他の扉には鍵がかかっている。啜り哭く声は、その奥から聞こえた。扉の向こう側、けれど、同時に扉の"下側"。】


245 : 名無しさん :2018/07/20(金) 14:41:26 SjkK3gZY0
>>244

【ぎゅうと抱きしめた。――あの日のような気遣いはなかった。顔を胸元に押し付けるようにして、その白銀の髪を、縋るみたいに指が撫ぜる】
【たとえ人形だと分かっていても顔を見られたくなかった。チェストに座らせた人形の前で着替えをするのは気まずいのと同じ気持ちだった。だから】
【そのつむじに唇を寄せて何かを囁く、――きっと恨み言に違いなかった。ゆえに囁かれる瞬間、少女はぎしりと軋ませてしまいそうな力を、腕にこめて】

――――、

【――つい、と、その音に押し出されたみたいに、歩き出す。だから歩き出せたんだった、そうじゃなかったら、この場で、この人形と眠りたかったんだから】

【ゆるりと歩く足取りはひどくゆっくりとしたものだった。それはまるで美術館で絵を鑑賞するかのように。あるいはどこか、丁寧な愛撫のように】
【"ばらばら"なのがだれであるのかを考える必要はなかった。だからこそ怯えもしなかったし混乱もしなかったし錯乱もしなかった、分かってるから】
【ならばやはり罰なんだろう。夢――なのかもしれない。いつか父親を殺した空間みたいに。いつか弟を殺した空間みたいに。なら今度は誰を殺せばいいの、瞑すれば】

【――――意図せずふらついた足先に甘い匂いのシャツが絡まった。たっぷり一歩分引き摺ってから気が付いて、それで遅れて、拾い上げるんだろう】
【それを元あった場所に戻しに行く気力もなかった。――だから、いつかみたいに、抱きかかえた生首にかぶせてやった。甘い匂いが誰の匂いであるのかは忘れてしまって】
【今少女はまたしても違う匂いを纏っていた。ホテルに据え付けられたボディソープの香り。どこかに居るたびに匂いが違った、であればひどく不確かに思えて】
【だけどそれでもなおまだ少女はきっと自分は自分だって宣言したがるんだろう。――空っぽじゃない。そうやって言った瞬間の悲痛さが、きっと正解、なんだけど】

【(ここで母を殺してもいいやと思えたから。そうしたら、――そうしたら、もう二度とどんなことにも惑わないでいられる気がしたから)】

【かちゃん、と、小さな音。ドアノブに一度手をかけて、けれど取り損なう。拒まれるみたいに指先から逃げてしまったのを、少し遅れてやっと捕まえたら】
【ようやく鍵のかかっていない扉を開けるのだろう。思いもよらない救いなんかよりどこまでも絶望的な罰だけが欲しかった、だって今の世界に救いなんてないから】
【救ってくれるはずの神様が居ないんだから。――だから躊躇いはなかった。けれど仕草はひどく鈍くて、――】


246 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/20(金) 14:46:18 ftfMPujo0
>>243

【抱きとめる体、腕の中に宿る温もり。それは少し力を入れてしまえば砕けてしまいそうな儚さで】
【思わず彼女は頬を綻ばして、髪の毛を撫でようかなんて手を伸ばす】
【── 寸前で気付く。それでもって取り敢えず手持ち無沙汰に背中を撫でてみせる】


──── 思い出せへんのやったら、無理する必要なんてあらへんどす
多分な、今はお嬢はん疲れてはるんと思うんよ、崖からすってんころりん、落ちはって
それでもって、ぷかーってながれてはったんちゃうかな、ううん、多分そうどす

せやさかいに、身体も頭もへとへとやと思わはるんよ、うちもそういう時あるし
そういう時はな、お姉はんに任しとき。うちの胸で良かったらいくらでも貸すさかいに
ぎゅーっとお休みでもしてはったら、直ぐに思い出さはるよ


【かける言葉は優しくて、視線をあげてみたなら、白百合の様に楚々と微笑む姿があるだろう】
【夏空の下、陽光を一杯に浴びた柑橘の如く爽やかな微笑みで、滴る雫が眩しく煌めく】
【──── 異国情緒の言の葉を青々と広げながら、柔らかい言葉の切れ端を撫でる】


せやけどね、お嬢はんの髪の毛は── 中々曲者やなぁ
ある意味ほんまもんのくせっ毛やね、髪の毛自体はスラリとしてて綺麗やねんけど
ひょっとしたら能力やったりしはるん? 髪の毛が能力なんてハイカラどす


247 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/20(金) 15:26:37 o6XMS57s0
>>245


【どんな怨みを吐かれたって人形は人形だった。木で出来た骨格を微かにぎしりと軋ませて、呻きもしない。もう少し力を込めていれば、破断した材質が幹の色を晒していたが】
【どんな想いが込められていたって人形は人形だった。絶望的な決意もシャツの柔らかさも少女の違う匂いも感じ取れるはずがない。嗚呼然し、】
【 ──── あの女だって、ただ喋るだけの生き人形だったのだ。この首だけの傀儡と同じ、本当は貴女のことなんて、何も想っていなかったのかもしれないのに?】



【扉の先には、 ─── 螺旋階段が現れる。真白い壁と大理石の脚元に囲まれて、真っ直ぐな階段が20段ほど続き、そこで直角に方向を変え、また同じ階段が伸びて、それが延々と繰り返される。】
【明かり一つない階段だった。柵を兼ねる手すりは木製だった。構造上もちろん階段の底を覗き込むことも出来る筈ではあるが、たとえ闇に目が慣れたとしても、一周分の足場から先を見ることは出来なかった。】
【 ──── 啜り哭く声は階段の下から聞こえた。随分と下の方で泣いているらしかった。この闇の底まで歩いていけたのなら、辿り着くこともあるのだろうか。飛び降りたって許されるのかもしれない。】

【いずれにせよ階段を進むのであれば足音ばかりが響くのだろう。そうしてそれは涙ぐむ声に重なる。「たすけて」。「おねがい」。「おりてきて」。】
【然して少女が進むうち、その声にはもう一つ、言葉が増える。 ────「どうして」。尋ねていた。誰かに、何かを。それを明らかにする程、きっと"それ"は優しくない。】
【足音がまた響いていく。いつまでも。どこまでも。こつん。こつん。こつん。こつん。ぺたん。こつん。こつん。こつん。 ──── ぺたん。】






【何百段ほど降りたことだろう。曲がり角の白い壁に、何か刻んであった。闇の中、遠目では判然としない。足を止めて、近くに寄って、目を凝らす必要がある。】
【震える手で思い切り彫刻刀を振るったような、そんな雑な刻まれ方をしていた。けれど、それでも、しかし、そこには、】




               《あなた の うしろ に》




【 ──────── ぺたん。】


248 : 名無しさん :2018/07/20(金) 15:51:55 SjkK3gZY0
>>247

【――開け放たれた扉の向こうに、けれど、想像されるような空間はなかった。その代わりには階段だけ、灯すらもなく、であれば漆黒/桎梏の闇が満ち】
【普通の人間であれば恐れるはずであった。人間なくとも、夜目の効かない動物であれば嫌がるはずであった。そして人間は夜目の効かない動物であった、恐れるべきであった】
【だのに少女はふらりと歩むんだろう。――もう戻る気なんてないみたいに。どうせ戻れないと分かっているみたいに。だってこれは夢だから。――夢なんでしょう?】

【いつしか人形を抱く腕はずり落ちて。今となっては胎のあたりにあるんだろう、そこからさらに変な場所で引っ掛かったシャツが枝垂れて引きずられる、すりすりとした音】
【こつんこつんとした足音に紛れ込ます。ふとしたなら足を踏み外して落ちて行ってしまいそうだった。あるいは、気の緩みにて、身投げしそうな気になった】
【そうしなかったのはきっと物理的に両腕がふさがっていたからに違いないんだろう。ぼうとした思考回路はランナーズハイに似通う、もう夢だと疑えなかったし】
【自分の思考が正常である証明なんてできそうもなかった。――だからやることももう分かっていた。母親を殺せばいいんだと思った。薄く笑んで】



【――――――けれどそれはあくまでそういう気がした、という話であった。気持ちの持ちようと身体の実際は大きく違っていて、】
【すなわち身体の方はもうとっくの昔に限界を表明していた。それを無理やりねじ伏せて意識が身体を支配していた。何百段もの階段を下るほどは、元気ではない】
【ゆえに途中より少女は足を踏み外すことが多くなる。致命的に転ぶ、あるいは転げ落ちるということはないのだけど。声一つ上げずに身体を起こす、――――――、】

――――ひ。ぁっ、

【捉えたはずの手すりを指が拒否して。あるいは死のうとしたのかもしれなかった。あんまりに無意識に。起き上がりかけた不確かな姿勢が崩れ落ちる、虚空に躍り出て】
【――やがてずるずる、と、その一セットの一番下まで、少女は転げ落ちた。幸いであったのはそう長くない階段であったこと、不幸であったのは、その一番上から落ちたこと】
【――――許されるのならば少女は数分ほど微動だにしない。死んだはずもないけど。だって、*分後には身体を起こす、そしてそれは、奇しくも、刻まれた文字の直下であり】

【霞んだ目が、濁る視界が、けれど認識する。そうしてくぐもったような聴覚がとらえた、――――、】

アリアさん。怒ってるの? ここまで来てあげたのに。

【掠れた声が小さく呟いた、小さな子供がぬいぐるみに縋るみたいに人形の頭を抱きしめた、シャツはどこかに落としてきてしまったみたいで、気づいたらどこにもなくて】
【転げ落ちたときにぶつけたらしい足がじんじん痛んだ。だから阻害しようとして――やめた。冷たい麻酔の感覚の中では、それすら奇跡に等しい生の実感に似るから】
【振り返らなかった。少女はここに来てから一度も振り返らなかった。後に戻れる可能性を自分の中で排除するように。前に進むしか、知らないみたいに】

【――――***。小さく、呟くんだろう。そのくせ首を護るみたいに身体を丸めて抱きしめた、――だからもしも誰か居るのなら、その背中は、きっとひどく子供みたいに幼くて】


249 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/20(金) 16:29:07 o6XMS57s0
>>248




「 ──── いいえ。」




【闇の中から響く声は、ひどく冷たいのにひどく優しげだった。ぺたん、ぺたん、ぺたん ──── 御御足を直截に地面へ晒して、一段ずつ、一段ずつ、歩み寄って】
【きっと"彼女"は一糸纏わぬ姿に違いなかった。そっと彼女はかえでの隣に跪いて、静やかに大気が押されゆく感覚が存在を伝える。 ──── そうして】
【 ──── 両腕を広げて、彼女はかえでのことを、やさしく抱擁するのだろう。遮る布地など有りはしない。すべやかなる肌理が月餅のように、触れるかえでの肌すべてにしっとりと張り付いて】
【転げ落ちた時に打ったところを温かい手のひらが何度だって慰撫する。愛しい我が子を憐れむ手付きで、胸の間に藤色の呼吸を招き入れて、何よりも柔らかな肉体は、壊れてしまいそうな身体を甘美に執拗に包み込む。】


「痛かったでしょう。辛かったでしょう。苦しかったでしょう。」「けれどもう、 ─── 大丈夫。」
「愛してる。」「 ──── かえで。」「ずっとよ。」「ずうっと、 ……… 貴女の、側にいるから。」


【ひしりと腕に力が篭る。やさしいやさしい全肯定の囁き。アリアは一度だってこんな声を出したことはなかった。どんなにかえでへの愛情を向けても、その声音には決意に似たような意志があって】
【それは例えかえでがアリアの尊厳を踏み躙ったと信じていた日々であっても変わらなかった。 ──── けれど今の彼女は、それこそ何もかも受け入れてしまうような、そんな感情を開いた胸に宿していて、だから】



「ほんとうに、御免なさい。」「 ……… 今まで、たくさん貴女のことを傷付けて、迷わせて、苦しませてきてしまった。」「貴女はきっと間違った道を進んでるって。」
「けれど█████さんに言われてね、分かったの。私ね、 ──── かえでと一緒に居られるなら、それでいいって、気付いたの。」「貴女が笑顔で居てくれるなら、それを私が見えなくたって良くって。」
「だからね、」「 ………… だから。」「私、かえでのものになるわ。」「かえでが私のものでなくたっていいの。」「だって私、ほんとうにそうしたいって、思えたから ──── 。」



【 ────── 嘆願するみたいに続けるのだろう。痛いところ、苦しいところ、怪我したところ、ずっとずっと掌で撫でて癒そうとしながら。】


250 : 名無しさん :2018/07/20(金) 17:08:05 SjkK3gZY0
>>249

【そうして触れたなら。少女はきっと異常なる体温をしていた、今すぐに身体じゅうを適切に冷やしてやる必要があった、こんなに歩けるはずがなかった】
【それでも歩いてきてしまえたからこそ。――抱き留められる瞬間に、きっとその身体はそれこそ木彫りの人形みたいに強張っているんだろう、ただ腕の中にあるもの】
【それだけが本当だからって信じるみたいに。――だから、声が、抱きしめられて。撫ぜられて。そのたんびに緩んでいく、硬く閉ざした身体を緩ましたのなら】

【――震える吐息が漏れた。あの日よりほんの数日のみしか時間は経っていないはずなのにきっとひどく痩せてしまっていた。きっとろくに寝てないに違いなかった】
【雑にしか手当のされていない右肩の傷は何か鋭い先細りのものに貫かれたような傷跡だった。たった今したたかに打ち付けた足はすでに腫れ始めていた。何より熱が高くて】
【ほんの少し目を離しただけでひどいありさまだった。だからそうやって生きて来たし、致命的に間違えた過去の瞬間ですら、こうやって、たったの数日で狂ったんだと思わせた】

【――――もちろん相手にそんなことを思うだけのことが出来るなら、だったけど】

――――――、あぁ、もぉ、……、――。

【転げて身体を起こしただけの、姿勢。ひどく曖昧なものであるのだろう、抱き留められて、あんまりに当たり前に体重を預けて来るのは、不安定だったゆえになのか】
【肺の中にこびりついた空気をそぎ落として排出するみたいな吐息が漏れでる、根元を貫かれたせいかぎこちない指先がすとん、と、床に滑り落ち】
【蛇の刻まれた左の指先がかろうじてずうっと抱きしめてきた人形の生首を撫ぜたなら――】
【――その指先のすぐ隣に水玉模様が浮かぶ、一つが二つになって三つ四つ五つになるのに時間はかからず】

【弧の形から震える吐息が漏れた、――指先が床をわずかに彷徨う、自信の纏う布地を撫ぜて、潜って、やがて、その向こう側で触れる】
【触れたならためらいもなく引きずり出す。――"護身用"として渡されていた銃であった。まだ身に着けていた。だからあんまりに当たり前にセーフティを解除して、】
【きっと夏に食べるアイスキャンディの方がもうちょっと考えそうだった。知覚過敏とかいろいろ思い浮かびそうだった。――かつ、と、歯と銃身の触れ合う音、させるなら】

…………――――、

【"必要"な時間なんて、ほんの数秒にも満たないはずだった。けれどそこに至るまでの仕草はひどく緩慢であった、ゆえに、それは、ただ最後の抵抗に似て】
【――――聞きたくなかった。だから聞かずに済む方法を選ぼうとする。理由なんてたったのそれぽちで、だけれど、すぐそばにいる"誰か"にとって妨害はたやすく】
【なにせほとんど震えるような指先だから。――簡単に取り上げてしまえそうだったし、そうして実際そうできるはずであって、】


251 : ◆RqRnviRidE :2018/07/20(金) 18:54:38 vZw8nhd20
>>246

【向けられる花のような明るい笑み、柔らかな体温、潮風が運ぶ葉擦れの音──】
【それは消耗した体にはとても優しく感ぜられて、子供の顔から不安が溶けてゆく】

【撫でられる背中もまた骨張って小さなものだったが、どうやら傷ひとつなく体は大丈夫そうだ】
【……尚、量の多い長髪に隠れていたようだが、直接触れて気付くかもしれない、子供が衣服を身に纏っていないということに】

んんん、確かに知らぬ間に海辺だったから、ボクはそっから落っこちたのかもしれないなあ……

……とにもかくにも生きていて良かった、このままだったら塩漬けになるところだったよ。ありがとう
本当はね、もっとキミの言葉に甘えたいところだけど、ほら、キミにも大事な用事とかがあるだろう?
お陰で助けられたことだし、一休みもできたし……そうだね、これからゆっくり思い出すことにするよ

【子供も介抱されて元気が出てきたのだろう、にっこりと笑むその表情は年相応といった雰囲気を纏う】
【それから少女の腰に両腕を回したなら、御礼もかねて少し強めにぎゅっと短く抱き締めようとして】

──ボクの髪かい? んんと、そうだなあ、
これはね、とっても危ないものではあるんだけど……

能力であって、手足でもあって、それから“ボクたち”の誇りでもあるんだよ!
どうだい? 宝石みたいに綺麗だし、刃物のようにカッコいいでしょう!

【髪のことを問われると、さも嬉しげにすっくと立ち上がり、両サイドの髪束を胸の前で“腕組み”してみせる】
【急に立ち上がって大丈夫かと思われたが、先ほどとは打って変わって元気そうだから特に問題ない様子】
【さてこの触手の如き銀髪について、複数人居るような言葉から、どうやら何処かにそういう一族が存在しているようで】

──ねえ、ところでボクはキミの“それ”が気になるのだけど、
キミは戦士だったりするのかい? キミも能力持ちの人なの?

【話は変わり、子供が指で示した先は、少女が腰に提げる二振りの太刀であった】
【“それ”の正体は理解していないものの、得物であることは感づいているようだ】
【相手の返事を今か今かと待ちわびるように、子供の瞳は好奇心でいっぱいであった】


252 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/20(金) 19:49:38 .6bjUiDs0
>>251

【髪の毛越しに透けて見える素肌。どうやら気付いていなかった様で、目をまんまると広げて】
【慌てて彼女は一旦自分の羽織を広げて、貴女の体に毛布の様に引っ掛けようとする】
【一方の彼女はキャミソール然とした半襦袢だけの格好になって、それなりに露出が多くなる】

【──── 余談ではあるが、スレンダーな体躯ながらも女性的なスタイルであって、】
【水に濡れてぴったりと張り付くボディラインは、なかなかに扇情的であった】


…………はぁ、しっかりしたお嬢はんやね、うちびっくりしはったわ
うちがお嬢はんぐらいの歳やったら、そんな風にしっかり出来へんのに
よっぽど親御はんの教育が宜しかったんやろうね、──

せやけど笑わはったら年相応で可愛ええなぁ、つい持って帰りそうなるわ──


【最後の言葉はごにょごにょと、文末を濁して見せて】


ボク達って事は、お嬢はんのお友達にもそういう能力持ってはる人らがおるん?
うん、めちゃ綺麗やと思う、それに色々便利そうやねー
お嬢はん何処の生まれなんやろ、こっちの辺り?


【好奇心に染まる貴方の瞳、少しだけ驚いた後に表情を和らげて】



うん、そうどす。うちの大切な武器やし、────
戦士って言わはると少し擽ったいな。でも、戦う力は持ってはるよ
能力持ちってゆうんも正解、あはは、何でも当てはるなぁ

── そや、まだうち名前言ってへんかったね


文月、和泉 文月言います、──── お嬢はんは?


253 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/20(金) 20:58:48 o6XMS57s0
>>250

【触れ合う身体は柔らかくも、なぜかひんやりとして冷たいのだろう。こもりすぎてしまった少女の熱を皆な吸い取ってしまうように、重なる肌はいつまでも心地よく】
【少女の体温を少しずつ適正なものにしていく。強張っていた身体が緩み行くのなら、もっと緩んだって構わないと言いたげに、先っきまで力のこもっていた関節、】
【追い討ちをかけるように何度も優しく撫でて、傷を負った片方の肩も腫れ上がった片方の脚も、どうにもならないって分かっている筈なのに ──── 。】
【 ──── けれど夢の中であるとするなら、不思議と少しは癒えるように、思えるのかもしれない。痛いの飛んでいけ、わたしの所に飛んでこいって、願う母親のように。】


「 ──── ……………… 。」


【からだを預けるのならば、その分だけ彼女は受け止めてくれた。嗚咽を拭ってやることはせずに、ただただ、背中をそっと叩くように撫ぜて】
【吐き出される呼吸は皆な柔らかい胸の間に溜まって、しっとりと結露さえするようであった。泣くのならば泣けばよかった。きっと彼女はそう願っていた。】

【だから取り出される拳銃さえも彼女は止めようとしない。止めようと思えばいつだって止められる筈なのに、 ─── 少女の、かえでの、望むままにさせて】
【けれども銃口がかえで自身に向くのなら、そっと銃身を掌で包んで、優しくも力強くその方向を変えさせようとするのだろう。そしてまた、もう歩けそうにもないくらいぼろぼろの脚元を憐れむみたいに】
【彼女はかえでを抱き上げて、自身の両脚の上に座らせようとする。余りにも高すぎる身長の差も、座った上でそうするのなら、目線の並ぶ程度には無くなるようであり】
【だから彼女は、かえでと額を重ねようとするのだろう。いつか自分がそうされたみたいに。闇の中、甘い呼吸と鼓動と体温と感情、みんな分かち合ってしまうように。】



「 ───── だめよ。」「貴女が為すべきは ─── こっち、でしょう?」



【不凋の花を糖蜜に、たっぷりと浸して浸して浸して、そして静かに凍り付かせてしまったような声音で、 ─── 彼女は、そう、告げて】
【銃を握る手を自身の掌で包みながら、白銀の銃口を押し当てようとする。彼女の顎の裏だった。一度引き金を引いたなら、きっと機械の人形だって、殺せてしまう位置で】


254 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/20(金) 21:29:36 Ty26k7V20
>>206

【何気ない真っ昼間の一日。休日も平日も関係のないメリハリのない二人には特別な日でもない】
【急激に舞い降りた使命に追われ、ほんの少し前のことも記憶の奥の奥へとすぐに押し込まれてしまうぐらい目まぐるしく】

【ドアベルは不定期になっているのでいちいち気にしない。ドア側が向かっている席に着いている長い銀髪の女性は】
【ちらりとその音に反応して目をやったが、特段気にすることもなく、テーブルに突っ伏した少女に至っては身じろぎもしない】

【だが2人は同時に少女に目をやる――――その『声』に反応して】

――――鈴音…さん。

【ふたりとも同じものを想起していた。銀髪の女性は静かに表情も変えず、首だけそちらを向ける程度だったが】
【対象的に少女は飛び起きて、眼を丸くして……その名前を呟いた】

でも……あれ…なんでいまそう思ったのかしら。

【そう、その場にはその彼女は居るわけでもなく、似た声を話す人もいない。居るのは全く真逆のような少女がいただけで】


『鈴の音だからでしょうか。ですが、私はそれ以外の要素が含まれていると思われます』

【冷静に解説する銀髪の女性の声も耳に入らない。少女の手から、柄の長いスプーンが滑り落ちて、テーブルの足元で跳ねた】


/すみません。置きといえど遅くなってしまいまして…数日はコンスタントにお返しできるとかと思いますので


255 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/20(金) 21:30:03 Ty26k7V20
>>232


ああ……いや……色々とね。経験すると…それぐらいじゃ……弱いな。
眼の前にほら……タイムマシンが落ちてきた…とかだったらまだ、な。

【もっと話しのスケールがでかい、未来とか猫キャラとかそれを通り越した(例えば神とか)】
【そういう関連や色々と巻き込まれてきたので余計な耐性がついたのか、物分りが良くなったのか】
【全部諦めてどうでもよくなったか。まあどれにしろ、自称未来人じゃ】

そういうもんかってなるんだよ。……それに、驚こうがどうしようが煙草は良いだろ。
未来人1人や2人、居るぐらいじゃ意外と世の中もこんなもんだよ。ナナジュウ何億と居るんだから

【その理屈はおかしいんだが本人はそれで納得しているようだ。なんとも言わず、タバコを吸っているだけだ】

「捜して欲しいのは、 ─────────」

……もったいぶるなよ。

「 ──────────『あなた』にゃ。」

…・・は?…俺?


【さすがのこの男も少しは驚いていた。タバコを持つ手がとまり、数秒フリーズしていた】

…・・俺が俺を探すことで、君が未来から来た理由とどう関係するんだ?
今、俺はここに居る。もう一人いるのか、もう一人いるところに行くのか…

【探偵はまたしても余計なリアクションはとらない。もはや自分で自分を探すことについては疑問は特にないのだ】
【まあ珍しいものを探せと言われたから多少は驚いたが…】

…あ、先に言っとくけどさ、ニュアンスとかヒントとか、意味深なことだけ言うのはやめてくれよ
最近そんなのばっかで………はぁ、余計に頭使ってしんどいんだ。甘いモン食えばよかった。


256 : 名無しさん :2018/07/20(金) 21:32:01 SjkK3gZY0
>>253

【ひんやりと冷たい身体に抱き留められるのはひどく心地よかった、意味ないって分かってても熱さましのシートは気持ちいいし、指を鳴らすと何か気が済む】
【きっとそういう行為に似ていた。おかしなくらいに高くなった体温をみんなみんな押し付けてしまうんだろう、子供がおいしいところだけ食べて、後は母親にあげるみたいに】
【アイスクリームのコーンは端っこだけ齧って嫌になる。イチゴの下の方は要らない。指でこねくりまわすだけ回していらなくなったちぎれるグミ菓子に、】
【ぶどうだけつまんで食べたぶどうパン。ピザのみみ。パフェの上のミント。買ってもらったはいいけど飽きてしまったイチゴオレのブリックジュース】

【――触れられるたびに、痛かった。だから夢じゃないって分かっていた。だけどそういう気になりたいだけだったのかもしれないけど】
【だけどだからきっと多分おそらく笑っていた。どこまでも絶望的に。嗜虐も被虐も関係なくって。どんな感情も関係なくて。筋肉が強張った結果成り立つ形であったなら】
【こんなに鮮やかなマゼンタ色なのに流れてだす涙がただひたすらに透明なのがおかしかった。もっとザクロジュースみたいな色であっておかしくないはずだった、】

【(――――夢であることに賭ける。こんな夢見たくなかった。だから強制的に醒ます。そうじゃないとこんな夢、――本当にずっと居座ってしまいそう)】

――――、っ、あ、

【だから咥え込んだ銃口が醒ましてくれるはずだった。こんな悪夢から。指先が引き金を引こうとする瞬間に、――けれど、おもちゃを取られてしまうみたいに】
【取り上げられたならわずかに透明の唾液が糸引いた、困ったように振れるマゼンタの瞳と指先が無理やりに捻じ曲げられた銃口の先を追いかけた、ためらいがちな身じろぎを】
【その瞬間に抱き上げられて。――すでに足に力なんて入っていなかった、だからやる気のない蛙みたいにみょんと足が置き去りにされて、引きずられて、膝の上】
【額を合わせられても視線はきっと合わなかった、それどころか焦点さえ合っていなかった。呆と開けられた瞳が迷い子のようにふらりふらり揺れて、】

……………………――――――、嫌だ。

【――緩く落とされる帳みたいに、瞼が落ちる。きっとその瞬間にわずかな力さえも抜けきって、飽きられたマリオネットみたい、身体はなにもかも預けられて】
【きちんと支えていなければそのままずるりと崩れ落ちてしまいそうだった、というよりも、崩れ落ちるんだろう。とっくに限界だなんて、超えていたなら】
【安心したのかもしれなかった。こんな場所なのに。それとも本当に無理になってしまったのかもしれない。あるいは"そう"しろと強いられることから逃げ出すのにも似て】

【だけど――そのあとのことなんて考えているはずもなかった。その結果に命までもが自分の手から離れて誰かに委ねられること、考えているはずがなくって】
【あるいはそれでよかったのかもしれないんだけれど。――とかく少女はその腕の中にて沈黙する。安全装置が解除されたままの銃は――包まれた腕ごと、まだ、そこに】


257 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/20(金) 22:05:18 o6XMS57s0
>>256


「 …………… そう。」


【少女が嫌だと言うのなら、彼女は拒みも咎めもしないのだろう。仮病のずる休みをする娘へと、全て分かって答える母親のように。何もかも受け入れていた。】
【糸が切れたように彼女の肢体へと身を委ねるのなら、大切に抱えていた人形の首はごろりと床に転がって、ごとん、ごとん、階段の下に落ちていく。】
【そして何処かで止まるのだろう。踊り場であるのかも知れず、一番下まで落ち切ってしまったのかも知れず、けれど確かなのは、きっと少女が取りに行ける位置には、もうない。】
【瞼を閉じるなら深く深く抱き締める。どんな枕よりも柔らかく心地いい胸元で包み込んで、もう決して零れ落ちぬようしっかりと抱き留め、もう一度だけ安全装置はかけ直す。だってかえでが怪我したらいけないから。】



【 ──── 啜り哭く声は消えたわけではなかった。かえって近付いてさえいた。階段の下から、昇り来る足音。こつん、こつん、こつん。】
【綴られて響く言葉は恨み言であった。さ」ど暗い愛情の表れでもあった。すぐ数段下でそれはなにかを拾い上げて、少女が眼を向けるとすれば、そこにいる。】
【あの日別れた時とそっくりそのまま同じ姿をしていた。傷だらけで血まみれの身体、ぼろぼろに折れた指、泣き腫らすような絶望に満ちた表情。 ─── ほとんど脚を縺れさせるように、かえでへと、縋りつこうとするのだろう。】



「 ─── かえで、」「かえで。」「かえで。」「たすけて。」「お願い。」「どうして、 ──── 。」
「私のこと、 ──── 嫌い?」「ねえ、」「 ……… ねえ。」「お願い、」「私のこと、見て欲しいの」「だって貴女の側にいたくて、」「貴女のことが大好きで。」
「どうして私の元から、」「 ──── いなくなってしまったの?」「辛いわ。」「苦しいわ。」「どんなに私が貴女を想っても、」「 ─── 貴女はあの男を見て、あの男を求めて」
「ねえどうして私を見てくれないの、」「ねえどうして私は何だって赦してあげたいのに、」「ねえ、ねえ、ねえ ──── っ。」



【 ──── 彼女は何も言わない。ただ優しくかえでを抱き締め続けるだけ。それは哀しい愛情を吐き出し続ける。全く同じ柔らかい肢体に挟まれるなら、幽けき血の匂い。けれどそれさえ甘ったるかった。】


258 : 名無しさん :2018/07/20(金) 22:47:32 PYq7bHtM0
本スレ>>556

【会話が成り立っているとは言い難い反応。まるでただ言葉を返しているだけの様で】
【洗脳――であるとすれば、もっと扱いやすい様に行うのが常だろう。記憶喪失であったとしても、反応が異質】
【数度の遣り取りの中で自分の事を覚えて居ないのは大凡予想していた事だ。だが、月を――彼にとって大切な其れを忘れている事は予想外の事】
【忘れている、とは適切では無いか。まるでそれ自体を認識出来て居ない様な素振り】
【彼ならば忘れていたとしても何かの拍子に空を見上げれば自然と映る其れに心奪われそうであるが、今現在この状況であると言う事は……】


「ボクは通りすがりのシスターだよ。まぁ、キミの“昔の事”を少し知っている程度のね

――キミは心臓の位置は分かるんでしょ?指だって何処にあるか分かる
それなのに、それと同じ位に必要なモノの場所が分からないなんて……ボクにはどうも変な話だと思うけど
キミは自分にとって大切な物を無くした以前に、キミ自身を無くしてる様にしか見えないよ
昔のダグラスにとって必要だったモノだとしても、今のキミにはもう必要が無くなったモノ。だから、本当は見えているのに気付けない
どれだけ大切な物だって、他人から見ればどうでも良い事だってあるんだからさ」

【また、ノイズ。それは何かの能力の影響か、若しくは部分的に認識阻害でも行われているのか】
【このまま帰ってしまっても良いのだろう。実際の所、世間を騒がせた男が亡者の様に彷徨っているとなれば世界も多少平和になるというものだ】
【――否。本当にそうだろうか。これが人為的に行われたのだとすれば、更なる被害が生じる事も分かりきった事】
【この状態では聞き出す事も着たい出来ないだろう。支離滅裂にも思える言葉を繋げていくのも難しいが、部分的に情報を拾う事は出来る】
【何よりも、苛々とする。この状態でも容易に殺せるとは思わないが、傷を負わせる程度は出来そうな距離】
【手を伸ばした先は銃――では、無く。男のコートの襟首だった。もしも掴めたのならば、差し伸べられる手も無視して同じ目線の高さになる様引き寄せる事だろう】
【まるで言葉が耳を通らない様な男に対して言い聞かせるかのように。】


「……オメラス?聞いた事も無い場所だけど、其処には誰か居るのかな
其処はこうして周りを照らしてる〝■〟はあるのかい?――大体、さ。其処に捜し物がありそうなら、何で態々こんな場所を歩いてたのか知りたいけど
まるで元々誰かを其処に招待するのが目的でした……って」

【全てを忘れたかの様に見えていた彼が、嫌にハッキリと〝オメラス〟とやらの存在だけは認識している】
【行くとは言わず、行かないとも言わず。何よりその誘いは不自然すぎるのだ】
【然れど、その場所が何らかの鍵を握っているのは確かだろう。解決の糸口になるかは分からないけれど】
【ベイゼやケミッシュ辺りならば何か知っているか……いや、だとすれば何らかの動きを見せているだろうからその可能性も薄く見える】
【――ならば、この男に聞くしか無い。場合によってはこのまま戦闘か、その場所へと訪れるか】
【其処にまた別な誰かが居るのならば、或いはその価値もあるのだろう】


259 : ◆RqRnviRidE :2018/07/20(金) 22:48:48 vZw8nhd20
>>252

【ふわり、子供は彼女の羽織を肩に掛けられて、はて──とキョトンとした顔を窺わせる】
【どこか蠱惑的な相手のシルエットを、頭の先から足元まで眺めたなら、「ああ!」と一つ合点がいったようで】

なるほどそういうことか! 服、服だね……ふふっ
すまない、驚かせてしまったね。ボクとしてはこれが普通だったから……
でも、ほら、大丈夫。 ね、見ていてごらんよ。

【どうやら服を着ないのが主流だったらしい。一糸纏わぬその姿でいても、全く赤面をすることはなく寧ろ笑って】
【羽織を両手で広げながら、お互いの間で間仕切りのようにし、それから約数秒。子供の姿を相手から隠したなら】
【「じゃーん」なんて言いながら、子供は真似るように、少女の肩に羽織を被せて返そうとするだろう】

【そこに現れたのは、身体が露にならぬよう、サテン地のような光沢のあるレオタード状の衣服で身を包む子供の姿だった】
【さながら早着替えのイリュージョンのような光景だったが、髪の量が結構減っている──意外と何でも出来るのかもしれない】

へへ、よせやい照れるなあ。
そんなキミこそ若いのに気丈夫そうで──ん? 何か言ったかい?

……んんん、まあいいや。
そうだね、ボクのこれは一族全員が持ってて、……確か持ってるはずなんだけれど
いや……、すまないまだ全部思い出せなくて。 水辺のあたりだけれど、多分この辺ではないなあ……

【褒められて悪い気はしない、恥ずかしがって肩を竦め、はぐらかされた言葉はそっと潮風に流して】
【けれど、まだここへ来た経緯などが思い出せなくて、子供はちょっとばつが悪そうにした】

ああ、やっぱり!
整えられてて強そうな棒だと思ったんだ。
ふふん、それも武器なんだねえ……

和泉 文月────文月か。 んん、いい名前だ。
ボクはねえ、ええと…………、──、────

【太刀を棒だと言う辺り、少し世間知らずなところもあるようで。けれど戦う力はやはり持っているのだと、一人納得する】
【そうして少女──文月が名乗れば、子供はう────んと頭を捻り長考するだろう。まだ思い出せないことは多いらしく】

────……うーん……、名前が無いと不便だろうなあ。
そうだな、……ちょっと何か、ボクのことを呼んでみてよ文月。

ボクは、キミの呼んだ名を名乗ろう。

【「ボクがボクのことを思い出すまで」──そんな無茶振りをしながら、子供は悪戯っぽく笑みを湛えた】


260 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/20(金) 22:56:37 WMHqDivw0
>>237
"願いを叶える少女"――正しく虚構でなければ許されない存在だ。
となれば、パグロームの予想通り、"白神鈴音を消し去る"なんてことは、最初から目算には無かったと言うことか。

【或いはそれは半分だけ正しくない。今の在り方を望んでいないのは間違いないだろうから】
【そして、スナーク……いや、イル=ナイトウィッシュと決裂したのも、その違いなのだろう】


2013年と2015年か……


【男は、目線で何かを追う。それは背後から忍び寄る何かを確かめるのに似ている動作だった】
【少しばかりおっかなびっくりと、米神を数度指先で叩いて】


なるほど……
2013年。"D.R.U.G.S."の首領、"Cypress"は能力者達に追い詰められ、イル=ナイトウィッシュの介入によってその場を去った。世界最古の病とやらも、イルの手で修復され、持ち去られた訳だ。
2015年。スナーク狩りの最中、スナークと思われていた青年はニセモノであり――これもまた尻切れトンボに終わっている。なるほど、最後の一言は見事に原作をなぞっている。ブージャムだったのか、ブーツ磨きの男だったのかは、定かではないけれど。

この二つの案件が、レッド・ヘリングの一件と――現状に帰結していると言う訳だ。


【男は椅子に座って頬杖をつきながら、過去に有った事件の粗筋をなぞった】
【知っていた、と言う風情ではなく。新たな情報を整理するように思索を巡らせている様子が見受けられる】


Cypress=ジャ=ロだったかは分からないが、少なくとも彼の影響下には有ったと言うことか。
そして5年前――或いはもっと以前から虎視眈々と、侵略の機会を伺っていた。


【少女の齎した情報を、口の中で吟味する。なるほど分かり易い帰結だが、"摘まみ残し"はないだろうか?】


261 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/20(金) 23:18:35 ftfMPujo0
>>259

【──── 目の前で広がるイリュージョン、彼女はおおと感嘆の声を上げて】
【ぱちぱちぱち。拍手は響く鈴蘭の音律、百合の雌蕊に似た可憐な指先が重なる】
【羽織を纏ったなら元の和装の少女と、対称的にレオタードを纏う貴方が居るのだろう】


わーっ、びっくりしはりました。こんな風にもならはるんやね
めちゃ便利どす。その応用性を少しうちにも分けて欲しいな、なんて────あぁ、いや
一族の皆はんが持ってはるん! それはまた凄い人らやわ

せやけど、全員がそんな感じやったら、確かに服とかもいらへんなぁ
羨ましい限りどす、こう、少し食べすぎてお気に入りの服が入らへん、とか
そういう悩みとかとは無縁そうで──── なぁ、ええなぁ


【少し遠い目をして、変な風に笑ってみせる。影の指した横顔は、俯き加減の向日葵を想起させ】
【──── 名前、と聞いて彼女は言葉に詰まった。困ったから、とは違って、もっと】
【そう、もっと──── 心ここに在らずといった、言葉が近い】




──── "瑠璃" ──── 、とか、どうかな……
お嬢はんのな、元気な様子とか、結晶みたいに綺麗な髪見てはったら、
なんかな、そんな言葉が出てきたんよ────

瑠璃ってゆうのは、うちの地元でよく使われてる色やの
めーっちゃ綺麗で澄んだ蒼い色、とっても、綺麗な色してはって
…………どうやろうか




【躊躇いがちの言葉の装束、笑ってみせるその姿に僅かな痛々しさがあった】
【──── それは妹の名前だから。今はもう、死んでしまった、大切な】


262 : 名無しさん :2018/07/20(金) 23:30:02 SjkK3gZY0
>>257

【目を閉じたなら――――けれど、ごく、ごく、わずかに、意識は残っていた。それは最後の安全装置に似ていた、無意識に刻み込まれた、修正のように】
【ほとんどの容量を使いきるような能力の行使の最中で意識を取り落とせなかったのは不幸だったのかもしれない、そうまでして生きる必要がどこにあるのかもわからず】
【であれば祈るしかなかった。神様に祈るしかないから、意識の底の底を突き抜けた一番奥でかすかに祈る、――――けれど呼ぶ名は、やはり、蛇の名であり】

【――ふ、と、漏れ出るような吐息は臨終の場に漏れ出る二十一グラムにもきっと似ていた。だから冷たい胸元に顔を埋める、男の八割くらいは多分、羨むと思う】
【瞼さえ重たいなら胸元に埋まれば窒息さえしてしまいそうだった、――――そうして実際に、ふ、と、刹那吐息が途切れる。思い出したように首をかしげて、わずかに吸い込む】
【甘い匂い。だからひどく安心した。生まれたての赤子みたいに無意識にて笑む。何か落ちていってしまった気がしたけど――なんだっけ、と、数十秒は考え込んで、】
【それでようやく思い出す。「――――嗚呼」、と、小さく呻いたなら、薄らと眼を開けるんだろう。そうして起き上がろうとする、だから】
【転がしてしまったのを取りに行こうとしたんだと言葉ではなく伝えるみたいだった。腕がほんのわずかに突っ張って重たい身体を起こそうとする、――できないけど】

【――――そうして揺らいだ視線が、けれど、見出してしまった。だから息が詰まった、現実にはありえないはずの光景を見て】
【ホットケーキの上のバターみたいにぐずりと蕩けるばかりだった身体にわずかに力が入る、――小さな吐息の音が、気づかず食べてしまったパフェのミントみたいにざらついて】

だれ……? ――っ、だれ、……、……ァ、――――っ、

【向けたのはきっと悲痛な声であった。あの瞬間に聞かないことを選んだ言葉を並べられている気がして、しかしそうだとしても照らし合わせる記憶がなく】
【ぎゅうと抱きしめられる、――けれどきっと強張っていた。なら怯えていたのかもしれない。そのくせにひどく今更だった、ずっとおかしな場所だったのに】
【なのに相手の姿にどこまでも安堵してしまったんだった。――濁った思考回路でさえ分かりやすい異常の光景に、ばちばちと、本能が危険を知らせて】

【危険信号が線香花火より鮮烈に鮮やかに瞬いて鳴り響く、――――もしもそれが彼女を殺そうとしての行為であったなら、間違いなく、すでに死んでいた】

【油断した(本当に?)】
【どうにかしないといけない(本当に?)】
【この状況からひとまずであれ脱さないといけない(本当に?)】
【少しだけでも休めたのだからまだ動けるはずだった(本当に?)】

【――だけど、このまま死ねるなら、もういいかな、って、思ってしまいそうになって、】
【――だけど、だけど、だけど、だけど、――――――、】

――っ、あ。ゃ、……、――ゃだ、――ッ、だ、……、 ひ、 あ、――っ、ぃ、あ、っ、嫌、――、いや。いや、っ……、
嫌……――や、だ、いや、 、 。 ぁ、や、――、っ、ッ、いぁ、あう、――、ぁ、あ。あ、……、――っっ、!

【使い切った思考回路がブチブチと引きちぎられていく音が聞こえた気がした、きっとそれは幻覚なんだけど、幻聴なんだけど何にも分からなくなる】
【まず"******"が二人目の前にいる、というので、思考のほとんどは使い切ってしまったのに。よりによってその姿が"あの日"最後の光景であったなら、】
【掛けられる言葉の温度が。抱きしめられる温度が。甘い香りが。全部全部が劇物になって脳髄の奥まで犯される、強姦魔だってもうちょっと優しくしてくれると思えるほどに】

――――っ、いや、いや、――いやっ、……、――なんでっ、なんで、なんで、ぇ、――、やめて、――っ、やめてよぉ、やめて、
ああぁあ、あ、う、――ああああ、ぁっ、

【――投げ出した腕が。けれどもう一度だけ銃を取った、とっさに自身の頭に押し付ける、それのみで発砲が妨げられてしまいそうなほどに、強く、強く、めり込ますよう】
【であればきっとひどく錯乱していた。引き金を引けない理由にさえ思い至らないみたいだった。――だから、さっき、安全装置をかけ直していなかったら、きっと、死んでいた】
【だから血と脳みそと脳漿といくらかの皮膚と骨片を撒き散らす代わりに少女は泣くのだろう、――全部に絶望したみたいな声をして。だって、】

【――――そんな風に優しく抱きしめられたかった子は、たしかに、どこかに、居たんだから】


263 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/20(金) 23:37:49 ftfMPujo0
>>260


【──── ボスの認識は概ね正しい。そこまでは、『公安』の面子もまた辿り着いた帰結】
【違う点があるとすれば、『公安』の面子は"虚神"を知らない。それ故に、"Cypress"とイルの現状には着かない】
【故に今、最も正しく現状を認識しているのは、この場を除いて無いだろう】


──── これはまだ、裏付けがとれてねーです、噂半分で聞いて欲しいです。
ボス、"アナンタシェーシャ"の報告書は読んだです? 『INF-003』と、報告書の記述です。
妙だと思わねーですか? 『INF-005』── "ジャ=ロ" よりも神格のたけー蛇が

どうして、こうも簡単に能力者に倒されてしまったか。


【それもまた、報告書に考察があった。── イルは白神 鈴音の『へびさま』を媒体にアナンタシェーシャを顕現させた】
【リーイェンがアナンタシェーシャを引き合いに出したのはこの点であろう、顕現の為の媒体】
【──── ならば、スナークもジャ=ロもまた、何かを媒体にして顕現しているのではないか】


"Der Tod und das Madchen" の事件当時、イルも "Cypress" もただの病魔と人間だったです。

次にインシデント"スナーク狩り"にて、恐らくブージャムを誑かしたのは本物のスナークでごぜーます、
この時点で疑問になるのは、この"スナーク狩り"に於けるスナークがイルとイコールで結ばれるかです

けれども、このインシデントに於いては、イルの代名詞である "Killers Like Candy" ── 病の能力は使われてねーです。

だからこそ、イルとスナークがイコールで結ばれる様になったのは、それより後でごぜーます。



そして、一件だけ、その要件をクリアする可能性が浮上したです。



【画面が切り替わる、──── 無表情の男の写真が、そこにはあった】



『水の国警察公安部特別調停官』── "嵯峨野 鳴海"




そして、彼が懇意にしている製薬会社 <harmony/group>




その社内ネットワークにて、主任研究員"魔女"が報告してるです。



"病魔"と"人間"に、付け加えられた"スナーク"の名前





"イル=ナイトウィッシュ"と"スナーク"を結びつけたのは、間違いなくこの一派でごぜーます。


264 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/21(土) 00:13:10 WMHqDivw0
>>263
【そう、過去の案件を紐解いてみれば、なるほどと納得は行くものの、粗を探すことはいくらでもできる】

例えば――Cypressの能力は老いを操るものだった。
老いも死に繋がるからと言ってしまえば、まぁこじつけられないこともないが、アレがジャ=ロだったのなら、もっと違う戦い方をしただろう。
そして、『スナーク狩り』に記されたスナークは野心家ではあれど、人畜無害の獣だ。"病魔"と言う特性は無い。
それを持っていたのはイルの方だ。


先のサーペント・カルトとの一件でジャ=ロ自身が言っていたよ。
スナークについては、強力な力を持っていれど、対抗神話無しでも戦うことが出来ると。
それは、イルと言う媒体に憑依していたからに他ならないだろう。


【もっとも、それでイルを殺したところで、スナークを真の意味で滅ぼせるのかは定かではない】
【シャーデンフロイデも、一度は傷を負った後、虚構現実へと逃げ果せたのだから】


【話は続く――虚神と言う、曖昧な世界の存在達から、より現実的なこの世界の存在へと】



嵯峨野 鳴海――<harmony/plan>の提唱者か。
虚神の"召喚"は彼らがきっかけとなって発生した。
恐らくスナーク以外にも呼び水を持ち合わせていたのだろうが。
だが、制御出来ているようには見えないな。

この状況さえ掌の上だと言うのなら――大した劇作家だとは思うけれどね。


【皮肉の言葉と共に、追及を止める。今の議題はそこではない】


スナークについては、概ね間違いはないだろう。
だが、ジャ=ロもそうだと。君はそう見ていると言うことかな?


【Cypressの肉体を媒体にしているのであれば、確かに親和性は高いだろう】
【だが、スナークと同じ理屈で顕現している、と考えるにはいくつかピースが不自然な気がする】
【イルが主導権を握っているスナークとは異なり、ジャ=ロの場合はほとんど乗っ取られたに等しい有様であったから】


265 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/21(土) 00:29:26 ftfMPujo0
>>264

【──── 例えば、ジャ=ロは"死"であり、シャーデンフロイデは"感情"である】
【それに対してスナークは"不条理"──単純な神格の差も、そこにはあるのだろう】
【リーイェンはボスの見解に肯定を返しながら、話を先に進める】


ジャ=ロの存在はまたイレギュラーでごぜーます、スナークと比べると、あまりにも存在が濃いです。
ならこうは考えられねーですか? イルがスナークの主格に居るのは、その"現実性"がイルの方がたけーという理論です。
イルは"病魔"でごぜーます、医学が進歩しても尚、根絶できてねー病という存在です

それに対してスナークはナンセンス詩のみでしか記述できねー"不条理"の存在
どちらが私達の現実にとって重要かと言えば、無論前者でごぜーます、
だからこそ、イルはスナークを乗っ取り主格を握ったです。嵯峨野の思惑を超えて

ジャ=ロに関しても同じ事が言えるとしたなら、考えられるのは二つでごぜーます。

ジャ=ロの"現実性"があまりにもたけーか、"Cypress"の"現実性"があまりにも低かったかです

之は机上の空論でごぜーますが、世界最古の病、"Amy Syndrome"
──── 之を本当に、"Cypress"は制御出来たのでしょうか
或いは、世界最古の病とは、──── 即ち、"死" そのものという可能性です


まぁ、この辺りは想像に過ぎねーですが、……それにです



【リーイェンは続ける、話は一旦過ぎ去った嵯峨野の元へと舞い戻る】


スナークに関しては嵯峨野達が作り出した、或いは、呼び出したかして顕現し、制御を離れたとみていいです

けれども、ログにはまたこんな記述も残っていたです。


『シャーデンフロイデ』と『ロールシャッハ』の遺伝子について、です


【新たに登場する二つの神格、一つはまだ記憶に新しい感情の神】
【しかしもう一方は情報が少ない、『INF-006』の名前そのものであった】
【そして、遺伝子、とリーイェンは言い放った。虚神の遺伝子とは】


266 : ◆RqRnviRidE :2018/07/21(土) 00:33:01 vZw8nhd20
>>261

【どこか影の差して悲痛さを帯びる文月の顔を、子供の瞳が心配そうに覗き込む】
【何に起因するものか分からずに掛ける言葉も見つからず、ただ、じとりと熱を帯びる潮風が二人の頬を撫でていく】

【一瞬訪れた静寂が、遠くの人々の喧騒を運んできて、かえってなんだか物悲しくなってしまって】
【だからこそ子供は文月の呼ぶ名を聞いて、にっこり笑顔で一つ、うんと大きく頷くだろう】

────うん! “瑠璃”、──瑠璃だな。 良い響きだね。
澄んだ綺麗な蒼と言えば、ほら、例えばあの空だとか、この海だとかの色だろう。
世界を抱く素敵な色じゃないか。 気に入ったよ!

今日からボクは瑠璃だ。 ありがとう、文月。

【少女が悲哀の色を滲ませる理由は推し量ることができなかったけれど、お互いにとって忘れ得ぬ色彩であることはきっと間違いなく】
【瑠璃、という名を授かって、それを気に入って何度も繰り返し、「助けてくれたのがキミで良かった」と子供は無邪気に笑う】
【キミが助けてくれたから──なんて言葉は、子供にとっては相手への感謝でしかなかったが、──少女にとっては一体どうだったのだろう】


【さて、と一息ついたなら、子供──瑠璃は髪束で文月の頬をそっと撫でようとしながら】

キミのお陰で大分元気になったよ。 ありがとうね。
そろそろ自分探しも兼ねて発とうと思うのだけれど、
──ねえ、文月、キミは大丈夫かい?

【そろそろお別れということを告げつつ、彼女をいたわるようにそう問うた】


267 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/21(土) 00:47:42 ftfMPujo0
>>266

【──── 面影が重なった。こんな風にあの子は笑っていたかなんて】
【いいや知らない、きっと、今までも。だから、これからも、あの子のこんな顔なんて】
【覚えているのは、何時も悲しげで、儚げで、それでいて】




【──── 眠った様な死に顔だけ、だったから】




どういたしまして、気に入ってくれはったなら、嬉しいどす。


…………なぁ、お嬢はん。…………ううん、瑠璃。
うちは大丈夫どす、こう見えてもちゃんと鍛えてはるし、仕事も順調やさかいに
たまに実家のお母はんがうるさいぐらいやね、何時嫁に行くんやって口酸っぱくて

それと、それとな、──── あ…………




【彼女は喋りすぎてしまう。思わず、踏み込みすぎた勇み足を咎めるみたいに】
【虚空に伸ばした手を一度戻して、それでも構わずもう一度伸ばした】
【伸びた手は貴方の頬に向かって、一筋の流線形を描いた】




──── お姉はん、って呼んでくれはらへん?




【考えるより先に言葉が口から零れた。去りゆく前の最期のお願いに似ていた】
【そしてフラッシュバックする光景。それもまた、無音で重なっていく】
【二つの影が一つの弧を描いて、やがて重なり、また消えていく作用に近い】


268 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/21(土) 00:53:54 WMHqDivw0
>>265
【机上の空論――それは確かにそうなのだろう】
【聞いてみれば筋が通っていると言うだけで、実際のところどうだったのかはそれこそ、彼らに聞く他ない】
【しかし、今の状況判断にはそれで十分だ】

"死"の現実性は強過ぎる。
それを意識しない生物はこの世にいないだろうからね。

【ただ、やはり少し気にはなっていた】
【最初の言葉だ。ジャ=ロは死を意識する全てに遍く死を与える存在なのだとしたら】
【彼の能力は僅かにその規範を外していたのだから】


Cypressではなく――彼に罹った"Amy Syndrome"の方が、ジャ=ロの媒体だったのだとしたら。
私の疑問も少しは穴埋め出来るかも知れないけれど。


【今はログの続きが気になった。今まで然程、この事件に顔を出さなかった――しかし存在だけは確認されている、虚神。ロールシャッハ】


虚神の遺伝子……か。


【それを言葉通りの意味として受け取るのは困難で有っただろう】
【虚実に存在し得る虚神達の存在から最もかけ離れた単語だったからだ】
【故に何かの比喩で有る可能性もあるが――】


その実体が何なのか、私如きには読み切れないが――

先程の君の言葉を借りるのならば、手に入れたのならば、使わない道理はないだろう。
その遺伝子――既に何らかの形で利用されている、と見るべきだろうね。


269 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/21(土) 01:08:59 ftfMPujo0
>>268

【──── 仮定の重なりが縺れた時点でジャ=ロに関しては打ち止めだろう】
【少なくとも、ジャ=ロという存在の出立に"Cypress"が関わりを持つ】
【恐らくはその仮定のみが真実に近い筈であった】


確認出来る限りだと、『夕月』って女の脚に"シャーデンフロイデ"の
『ミィ』って子どもの遺伝子に"ロールシャッハ"が使われてるです
嵯峨野が利用したのは恐らく、スナークのものと合わせてこの三例だけでごぜーます

……私の疑問は此処です。嵯峨野は一体何処からこの遺伝子なるものを手に入れたか。

遺伝子工学は<harmony/group>の得意とする分野でごぜーます、仮にですが
"虚神"に遺伝子が存在するとすれば、それはあまりにも出来すぎてるです

現実はもっと不条理にあるべきと、私は思いますです


【リーイェンの言葉は明確に、否という意思を示していた】
【それならば遺伝子とは何かの隠語であると捉えるべきであろうか、或いは別の】
【────、そう、別の何かをカモフラージュする為の道理に】


<hymn>という言葉が、スナークの話題が出てきた時に頻出していたです。
<hymn>──或いは、<hymn値>としても用いられる値でごぜーます
またの名を"遺伝的現実値"── その対象が、理論的にどれだけ遺伝されているかを図る値でごぜーます

例えばクローンは全く同一の遺伝子を持つ為1でごぜーます、
能書きはボスには必要無いです、必要なのは結論です

<hymn>はより高い値を示すものへと、低い値を示すものが希釈されていくです。
私達の所有物がまさにそうです、最初は私達に馴染まない服や物でも
使い続けていけばいくほどに、私たちの一部になっていくです

──── "虚神" の遺伝子とは、読んで時の如く、この高い<hymn>を持つ媒体ではないでしょうか

『INF財団』の報告書や、禁書、── 件の"Amy syndrome"

これらが現実を侵食した結果として、"虚神" が顕現を果たすと、こうは考えられねーです?


270 : ◆RqRnviRidE :2018/07/21(土) 01:48:09 vZw8nhd20
>>267

【抑えきれないものを抑えようとしてか、大丈夫と言いながら少し文月の口数が多くなったのを】
【瑠璃は聞き留め、儚げに微笑を湛えるだろう、だけどそれは確かにそこに在る笑顔で幻想ではなく】
【泡のように掻き消えることもなければ手を伸ばして掴むことができる、目の前の子供はそんな距離感に居て】

んん、そう、それなら安心したよ。
きっと母上も心配なんだろう、なんてったってキミは──

【何度か躊躇いがちに伸ばされた少女の手を、子供は拒むことなく受け入れる】
【蒼白な肌は通常の人としての紅を持たず、いっそ死化粧めいているほどであったが】
【それでもやはり現世と常世の者とで違っていたのは、触れたその頬に体温を孕んでいること】

【目の前の子供は瞬きをし、息をして、言葉を発し、意識を持って確かにそこに生きている】
【──否、貴女のお陰で生きることができたのだ。手を差し伸べなければ、きっと泡沫と化していたはずだったから】

【それから、少女のこぼした『お願い』を聞き、そう呼んでほしいのなら──と】

んん、──ええよ。


   ──── お姉ちゃん。


【桜桃弁だっただろうか、少女の独特の強い訛りが少しばかり言葉の端に混ざりながら】
【一瞬、風も喧騒も波音すらも、何もかもが凪いで時が止まったかのような空間の中で】
【銀色の長い髪をした“瑠璃”が辿々しく、文月をそう呼ぶのであった】


271 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/21(土) 02:00:23 WMHqDivw0
>>269
【リーイェンが押し並べる事実の数々を上から眺め、情報を取りまとめる】
【蓋を開けてみれば彼らは顕れるべくして顕れたと言うことになる】


夕月――……マルタの時にヴェロニカが会った少女か。
そう言えば、切り札が有るようなことを言っていたけれど。


【ただ、スナークとはまた在り方が異なるように思える】
【第一シャーデンフロイデは夕月と言う少女とは別に存在していた】
【ロールシャッハについても同様の報告を受けている】
【……話の腰を折るのも何だ。ここについての考察は後日にしよう】


財団の報告書や、禁書については、分かる。
あれほど彼らに由来するものは無いだろうからね。
しかし、Amy syndromeに関しては少し話が異なるように思えるね。

【最古の病がイコール死で有ると言う考察は的外れではないけれど】
【死を想起するような代物は、新世界には掃いて捨てるほど存在している】

死に連なると言う理由だけで、<hymn>値が高くなるのだとしたら、いくらでも媒体は存在していただろう。
その中で、件の最古の病だけが特別な理由が在るのかな?

ジャ=ロほどの虚神の媒体となり得るような、理由が。


272 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/21(土) 02:02:28 ftfMPujo0
>>270


【──── 生きている他人に、死んだ妹の名前を着せるだなんて、悪趣味にも程があった】


【けれども、時に人は愚かと思いながら、その轍を踏んでしまう。── だからこそ、】


【白露の素肌に描かれる微笑み。可憐な横顔に、いつかの貴女を思い浮かべる】
【その心の運びは憐れで無惨、救いの無い結末を迎えた抒情詩の決裂】
【しかし、それで良かった。想いを託すのに、貴方はあまりにも、純粋であったから】





────っ…………あ────



【言葉が出なかった。── それは、涙を堪える仕草に似て、】
【唇の端を噛む、嗚咽が喉元にまで上がってきて、何度か深呼吸をして飲み込む】
【悟られる事はしたくなかった。その名の意味を、貴方ならきっと、なんとなく分かってしまうだろうから】


【──── だから、お別れぐらいは笑顔でしたかった】



っ……あ、ありが──── とう、おおきに、な……


瑠璃みたいな可愛ええ子に、お姉はんなんて言われたら照れてしまうどす────、せやから、せやからね


…………見んといて。今少し、見られたら、────



【彼女は顔を伏せる、────耐え切れずに両手で覆う】
【言葉にせずとも伝わるだろう、その心の所作を、拠り所のない旋風に似て】
【暫し、彼女は静謐を好む、── 別れの合図には十分なのかもしれない】


273 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/21(土) 02:14:42 ftfMPujo0
>>271

【── リーイェンのアバターが嘆息する、……様に見える仕草をする】
【意外と表情も作り込まれている様で、僅かな変容がそこにはあった】
【しかし、基本的に仏頂面は変わらない。彼女と好んで会話が出来るのは、大体ボスぐらいのものだ】


<hymn>の特異性の一つに、時間の作用があるのです。
さっきも言った様に、<hymn>は高い方へと作用するです、それはつまり
高い<hymn>を持つ物体が長く存在すればするほど、その濃度は高まっていくと考えられるです

"ジャ=ロ"全てとは言わねーです、けれども、能力者にやられ満身創痍だった
"Cypress"を希釈するには十分な程に高かった、とは考えられるです。
そこから"ジャ=ロ"が、自身の<hymn>を高める為に、死に連なる諸々を吸収し始める。

──── 空白の五年間を埋めるには、十分な期間と考えられるです。


【リーイェンはボスの疑問に補足を付け加えるだろう。この結論はリーイェンが導き出したものではない】
【寧ろ彼女の作用は整理に近い。人の身にあまる情報量を可能な限り提供する】
【── それを正当性を保った理論に組み上げたのは、正しくボスの手腕であった】


──── ボス、私達はここまで<hymn>という言葉を使ってきたです。
けれどもこの言葉は、一般的な言葉ではねーです。比較的新しく生まれた言葉です。
遺伝子工学の分野に於いて、最近漸く定義付けられた<hymn>


之を発見し実用化したのが、件の嵯峨野 鳴海その人にごぜーます。


【──── それは一つの示唆に他ならない】



この"基底現実"に於いて、最も正しく"虚神"を認識しているのは




──── 嵯峨野 鳴海かも、しれねーです。


274 : ◆RqRnviRidE :2018/07/21(土) 02:34:23 vZw8nhd20
>>272

【──ごうと強い風が吹きすさんで、葉擦れが揺らめき、波の砕ける音と喧騒を再び運んでくるだろう】
【子供に対しては追風となってしまい、乱れ髪が視界を狭め、そこに一瞬だけ体を丸める少女の姿を見る】

【それは多くを語らない。表情を窺わせず、ペースは乱さず、向かい風になるように少女へ背を向ける】

うん……、じゃあ、ボクはそろそろ行くよ。
──ねえ、また会えるよね。 また会おうよ、ね。

それじゃあね。 ……また。

【名残惜しくもそれだけを言い残して、子供は真っ直ぐその場を去っていくだろう】
【滾る陽炎の向こう、灼熱の陽光の下、銀色だけが棚引く軌跡をそこに残して──。】


/お疲れ様でした!!!ありがとうございます!!


275 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/21(土) 02:35:53 ftfMPujo0
>>274
/お疲れ様でした! 夜遅くまでありがとうございます!


276 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/21(土) 02:54:30 WMHqDivw0
>>273
【ふむ、と男はリーイェンの語る言葉に頷く】
【決して好意的とは言えない彼女の対応にも気を悪くした風でもない】
【元より矜持とは無縁の男だったから】


"嵯峨野鳴海"――


【その名をサクリレイジは知ってはいたが、特別に重要視していたとは言い難い】
【遺伝子工学と言う分野が、虚神と言う概念と余りにそぐわなかったから、到達し得なかったと言うのが実情だろう】


虚神の力を一部とは言え、他に流用できるほどの知識と技術を持ち合わせて置きながら、世界の滅亡に等しい現在の事態を招き入れ――
そして今に至るまで表立って動いていない。

何とも、気に入らない話だ。
ああ、別に彼らに表立って虚神と対立して欲しいと言うことではないよ。


【Cypressとジャ=ロの関連性。そして顕現したと言う事態を、彼らは予測しているのだろうか?】
【しているにせよ、していないにせよ、これだけの数の虚神が一か所に跋扈している現状に気付いていない訳はないだろう】


虚神の遺伝子を組み上げたのは、<harmony/protocol>の流用なのかは分からないが
彼の理想とジャ=ロの齎す破滅が同道だとはとても思えないけれど。


ならば、何故彼は今も尚、沈黙している?


【マルタでの一件――先日の虚構現実への渡航】
【それらに介入、或いは監視したとて不思議ではないだろう。何人か怪しい人物が混じっていたことは、否定できないが】


277 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/21(土) 13:00:13 ftfMPujo0
>>276

【──── リーイェンが落としたのは小さな一葉、起こりうるのは微かな波紋】
【けれども、それで十分であった。ボスの思考に嵯峨野 鳴海という存在を付け加える】
【推理のピースは元来洗練されるべきである、それと真逆の働きをするが】

【『墓荒らし』の報いにはきっと、これぐらいが丁度良い】



──── 『沈黙』が答えなのです。それは断定でいいです。



嵯峨野 鳴海が理想とする世界、──── 苦しみも恐怖もない調和の取れた世界
それを是とするのなら、ジャ=ロの行いは真逆を行っているです。
ならば、考えられる可能性は二点でごぜーます。


"嵯峨野 鳴海" 自身が変化してしまっている可能性、と
──── "ここまで全て" 奴の想定通りという可能性、と



【変化、とリーイェンは言い放つ。深淵の喩えが正に相応しいだろう】
【"Cypress"がジャ=ロに塗り替えられた様に、イルとスナークが混在している様に】
【──── 嵯峨野もまた、深く深淵へと脚を踏み込み過ぎたのなら?】



ここから先は最早推理とは言えねーです。情報が足りなさ過ぎる現状、妄想でしかねーです。
私が示したのは一つのピースでごぜーます、端的に言えば『公安』の嵯峨野が怪しいというだけの話です。

──── そこからどうすべきかは、ボスに託されているのです


278 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/21(土) 13:53:20 XbMvD3zM0
>>277
【男もまた暫し沈黙する】
【最早語るまでもないことだが、サクリレイジは決して正義の味方ではなく、秩序の味方でもない】
【構成員達が皆、バラバラの理由でこの組織に属しているように、男もまた所以有ってINFオブジェクトを排除しようとしているのだ】
【故に、嵯峨野がディストピアを目指そうと、世界の終末を目指そうと、それがこの世界の人間によって成されるのならば一切の興味はなかった】
【だが、この男がそのためにこの世界にINFオブジェクトを持ち込み続けると言うのならば……】

ジャ=ロに出し抜かれて打つ手無し……と言う選択肢を提示しなかっただけで、君達の嵯峨野への評価は分かるものだ。

そして君が、兼務としてでもこの組織にやって来たのも、どちらかと言うなら、そちらに目を向かせることが目的だったと言うことか。

【そう、今の時点でこれ以上の憶測は意味が有るまい】
【ジャ=ロを打倒せしめたところで終わりではないと言う事実】
【いや、それは男に取っても、望むところでは有った】
【ここまで喧嘩を売られた以上、ジャ=
ロを倒したくらいで終わりにしてやるつもりは、最初からないのだから】

嵯峨野と <harmony/group>、こちらにも目を向けるとしよう。
まずは彼等の過去の足跡からね。


279 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/21(土) 14:15:07 ftfMPujo0
>>278

【──── 『公安』と『サクリレイジ』とのミッシングリンク、ボスの目論見は正しい】
【故にリーイェンは沈黙を貫く。答えが是である事は言わずもがなであったから、】
【逆説的に、何故嵯峨野の名前が出たかという答えも、そこに含まれていた】


そう言われると思っていたです、データは既に転送済でごぜーます。


【名前が出るや否や、<harmony/group>の概要がボスの端末へと転送される】
【主な名前は二つ、社長である"フランツ=フェアブレッヒェン"と、主任研究員の"魔女"】
【──── ここに嵯峨野を含めた三項が、<harmony/group>の中核であった】


嵯峨野の主張に関しては、データログが残ってるでごぜーます。カンファレンスの記録と、
ハッキングして手に入った音声メモ──、こっちは『提言』って形で纏めたです。
<harmony>の名の通り、嵯峨野が調和というキーワードに則ってるのは間違いねーです


【『嵯峨野 鳴海の提言』という形で纏まったデータを再び提示する、ボスならば容易に察しがつくだろう】


だとすれば、"虚神"を顕現させたのが調和という目的の下にあるとして、
その調和とは一体どの種族にとっての調和になるのでしょうか。

『人間』か『虚神』か、或いは、──── 『自分』


その答え如何によっては、嵯峨野は『人類』の敵であり、かつ────
『虚神』の敵となりうる可能性も、あるのではごぜーませんか?


280 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/21(土) 14:34:23 o6XMS57s0
>>262


「 ──── どうして?」「 ……… 怖がらなくってもいいの。」「どうして?」「だって"皆な"貴女が愛しいだけなの。」「ねえどうして、答えてよ」「ちっとも怒ってないのよ。」「私それだけでいいのに。」
「大好きなのよ貴女のことが。」「こんなにも愛しているのに。」「だから、ただ甘えていればいいの。」「どうして呼んでくれないの?」「全ては貴女への愛情の発露。」


【拒まれるのであれば、どこまでも悲痛な涙を流して"其れ"は嘆く。初めは縋り付くように、 ─── やがて酷い執心のように。広げた両腕が抱き締めるのだろう】
【もう二度と離さない ──── そう言いたげに。だから握られた銃にそっと掌を重ねるのだろうし、その銃口は躊躇いもなく自身の腹に向けさせるのだろう】
【拾い上げていたのは"人形"の首であった。ずっと少女が大切に抱えていた無表情の顔貌を、も一度少女の腕の中に収めてあげて、そうして自分が抱きしめることで、もう落とさないように。】
【対して"彼女"はずっと穏やかに微笑んでいた。苦しむ少女をただ抱き拉いで、流れる涙を指先にそっと拭って、泣き止むまで背中を撫ぜてやって】
【あるいは気付くかもしれない。彼女の肌は冷たかった。それの肌は熱かった。であれば今も苦しんでいるのかもしれない、独り消え逝く世界に取り残された、あの女は。】

【 ─── きっと、解ってやっているのだろう。少女が蛇から離れられないこと、赦して認めてもらうまで仕様のないこと、けれど愛しく思う人がいること、】
【その想いを受け入れるのは背信と疑わないこと、だから目を背けなければいけないこと、それでも優しく愛してほしいこと、ここにいていいんだって感じたいこと。】
【全て全て織り込んだ上での、神様からの罰であるのかもしれなかった。であれば殺すしかないのかもしれない。赦してもらうには忠誠を示し直すしかないのかもしれない。 ─── 本当に?】


「貴女はもう十分に戦ったわ。」「あの男は労いもしないくせに」「もう頑張らなくたっていいの。もう苦しまなくたっていいの。」「どうしてそんなに一途なの?」「 ─── きっと神様も許してくれる。」
「私あなたが必要なのよ」「だから守ってあげる。貴女のこと。」「ねえお願い愛してるって言って」「私がずうっと守ってあげる。そうね、神様のくれたご褒美として。」「名前を呼んで」「だから、呼んで?」



        「あいしてる。」
「かえで。」「わたしの、███。」




【 ───── 泣き噦る少女に、彼女は額を重ねて、じいっと見つめて囁いた。それは涙に湿る唇を真っ赤になった耳元に寄せて、絞り出すようにひそめいた。】
【その口許の動きを少女は何度となく思い出したかも知れず、もしもそうならば答え合わせに他ならないのだろう。あの刹那、呪詛を吐き出した口先が、何を少女に告げたのか】
【であれば殺すしかないのかもしれない。死ぬことが許されないと、神様が呪っているのなら殺すしかない。けれど身を委ねるという選択を、少女は未だ悔いていないのだろうか?】


281 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/21(土) 17:18:20 WMHqDivw0
>>234

ンだよケッコー何でも知ってますみてーな顔して出てきたワリに知らねーこと多いんじゃん!
ビルの上ぇ? 高いトコ好きなんだあーりん、へええ。おれが前会ったのは路地裏だったけどお、
……おれも知らん。てかビリヤードやったことねーや、ダーツならあるんだけど……

【変な方向に逸れていく話も別に気にすることなく。放っておけばどんどん、大気圏外まで突破しそう】
【そんな勢い。話したいことを好きなだけ話すのが性分であったから――引き留めておくなら今のうち】
【だけどそういう雰囲気は向こうからも感じられたから。しばしの間、そういうどうでもいい話が、続いちゃうんだろう】

…………あっそれもそーだわ。えーでも、アリアだからあーりん……他の人も使わねーかな?
わかりやすい綽名だと思うんだけど。おれだけオンリーワン? 寂しいわあ……

てんとう虫。……フーン。ヒメちゃんね、……ひーちゃん。おっけー。何のヒメなのかはわかんねーけど……

【てんとう虫って言われて、それがどんな色かを思い出していた。……赤と黒。ああやっぱりそういうことなの?】
【そうも思ったけど、やっぱり言わない。マナーは守る。つけた綽名も控え目なものだった、ひーちゃん】
【ヒメだって言うなら誰かしら何かしらに奉られているんだろうか、とも思ったけど……それも違反になるんだろうか】


282 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/21(土) 17:25:13 WMHqDivw0
>>254

【赤い少女はしばらくテーブルに突っ伏してそのつめたさを楽しんでいるようだったけど――】
【――ふと。二人分の視線を浴びていることに気付いたなら、よろりと起き上がる】
【その際に鳴った鈴の音、ちりりん。……やっぱり「あの少女」の声色によく似ているから】


………………あんたたち今、鈴音っつった?
だったら知り合い、…………もしかして、「チームM」ってやつ……の人たち?


【きつい印象を与えるまでのツリ目。まん丸くして、二人を見つめて】
【少女の指先はチョーカーの鈴に伸びた。そしてまた「ちりん」、見せつける――じゃなくて聞かせるように】
【わざとちょっと弄んだ。これにここまで喰いつくんなら、――――、だと思って】

【……二人は、耳に挟んだことあったろうか。鈴音がUTの施設で行っていた活動】
【「たんぽぽ」。行くあてのない孤児に無償で食事を振る舞う、ボランティア。しかしそれは鈴音がいなくなると同時に】
【休止状態になっていて――――けれどそれが、いつの間にか再開された。でもまだ鈴音は帰ってきていなくて】
【「代わり」の人間が出入りしていると、誰かが言っていた。それは二人いて、ひとりは月白色の少女であったなら】

【――――もう一人は、「飲食業をナメ腐ってるみたいな厚底靴をいつも履いてる、バカっぽい赤い女」。だというけれど】


283 : ◆RqRnviRidE :2018/07/21(土) 20:24:16 vZw8nhd20
【夕刻──水の国、郊外】

【住宅が所狭しと立ち並び、街の中央を整備された太い水路が貫いている。流れる水は一点の曇りもなく涼しげで】
【山際からは傾きかけた夕陽が顔を覗かせ、辺り一体を眩いばかりのオレンジ色に染め上げている】

【その街角に建つ、ある雑居ビルの屋上では、少女が一人、フェンスを越えた先の縁に腰掛けていた】

────イザベラがまた酷い喧嘩してるの?

【マリンブルーのロングヘア、ターコイズブルーの瞳――碧海を思わせる風采の、中性的な面立ちの少女】
【褪せた紺色のマキシワンピに身を包み、鍔の広い純白のキャペリンハットを目深に被っている】

【伸ばした右手の先には、薄青に発光する『伝書鳩』のような鳥が一羽止まっており】
【少女はそれから何か情報を受け取り、はあ……と小さくため息をついていた】

【ターコイズの瞳がさも面倒そうに遠くを眺めた後、しばらくして、よいしょとその場に立ち上がる】
【吹き抜ける風と共に、右手の伝書鳩は形を崩し、星の如くささやかな煌めきとなり、風に溶けていく】

全く……本当に仕方のない子なの

【はあ、とため息をまた一つ。少女は僅かな逡巡もなく、“空中に一歩足を踏み出す”────】


【──所変わって、その雑居ビルの付近の大通り】
【路地から一人子供が顔を覗かせて、人通りの多い様子をせわしなく首を動かして眺めていた】

…………んん、自分探し、と言ってもなあ。
能力があって、それがボクらの共通で、でもルーツが分からないんじゃ探しようがない……か

【骨張ったか細い肢体を、サテン地のような光沢のあるレオタード状の衣服で包んだ、漆黒の瞳の少女然とした子供】
【地面を引き摺るほどに長い銀髪は、絹糸のように艶やかできめ細かく、癖とほつれのないストレートが特徴だった】

【困ったなあ……、なんて呟きながら、子供はくしゃくしゃと後頭部を掻いている】
【そうしながらも腹の虫がキューっと悲しげに鳴いて、それはがっくり肩を落とし】
【揺らめく銀の髪が、夕陽を跳ね返して一瞬、刃物のようにぎらつく輝くだろう】


284 : リゼ ◆D2zUq282Mc :2018/07/21(土) 21:03:46 JY1GydDk0
>>283

やっ、はろー。こんな所で迷子かい。難儀だねぇ。


【その子供に気さくに声を掛けたのは、好奇心からだろうか】
【多数の人が行き交う通りで一人佇み、首を振るその姿が目に留まったから】
【その少女の容姿や仕草がリゼと言う女の目に留まる程には可愛いと思えたから】


さてはて。お困りのように見えるけど、もし良かったら手助けしても良いよ。
困ってる時はお互いさまって言うしさ。あっ、もしかしてお節介かなっ?


【路地から顔を覗かせる子供の前に現れたのは、リゼと言う名の女】
【腰まであるブロンドの美しい髪とワインレッドのキャスケット帽に整った顔立ち】
【七分丈のオフショルダーに七分丈のインディゴブルーのジーンズにスニーカーという身形が特徴的だった】

【幼さを滲ませる人懐っこい笑みを湛えながらリゼは手を差し伸べる】
【――"さぁ出ておいでよ、まいごのまいごのこいぬちゃん"と言わんばかりに】


285 : ◆RqRnviRidE :2018/07/21(土) 21:43:15 vZw8nhd20
>>284

【金髪の少女に声を掛けられた子供は、漆黒の目を真ん丸にして差し伸べられた手を見遣る】
【それから子供はにっこりと嬉しそうに笑って路地から身体を出し、挨拶代わりと手──】

【──ではなく、顔のサイドの“髪束”を一房、触手のように動かして相手の手をとろうとするだろう】
【手の感覚が鋭敏なら、少しだけ細い針を刺したような感じがあるかもしれないが、それ以上のことはなく】

……やあ、また親切なお姉さんに会った! ボクはラッキーだなあ。
んん、そうだね、仰せのとおり困ってるんだ。
ちょっとばかりキミの手を貸してくれるかい。

【口調はともかく、手助けしてくれるのだと聞いて素直に喜ぶ姿は、年相応に幼く見えるだろう】
【そつきてきょろきょろ顔を動かし、余ったもう一房の髪束でぐるぐる鳴くお腹を抑えながら】

実はね、……いや、恥ずかしい話なんだけれど、
とっても腹ペコでね。何か食べさせておくれよ。

【子供はちょっとばつの悪そうにそう言って、はにかむだろう】
【見つめた先の通りにはいくつか飲食店が立ち並ぶ。が、何処に入っていいのか分からない様子で】

もしボクの空腹を満たしてくれるのなら、
そうだね、キミのお願いをひとつ引き受けよう。
……どうかな。

【ちょっとした交換条件も提示しつつ、子供は小首を傾げ、少女の返事を待っている】


286 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/21(土) 22:08:02 WMHqDivw0
>>279
【なるほど、現実として存在している組織――<harmony/group>への対応は、言うまでもなく公安の分野だ】
【しかし、その調査の過程で、発見した虚神へのアプローチと対策に対して行き詰まり、こうして協調を持ち掛けてと言うのが凡その流れと言うことだろう】


加えて、この準備の良さ――この会話の最初の段より、こちら側に思考を誘導されていたと言うことか。
流石は、"騙し絵の女"……油断ならない。


【出て来る情報の閲覧――嵯峨野に関する記録】
【感じるのは、嫌悪。それは人間に対してか、世界に対してか――とかく、嫌悪が先立ち、それ故に世界を潔癖に仕立て上げようとする意志】
【或いは、それも歪な人類愛の産物なのかも知れないが】
【それでもジャ=ロによる滅びは、彼の理想とは程遠いはずだ】


魔制法と言い――……新世界の住人はほとほとディストピアがお好みらしい。


【当人達が聞けば、互いに一緒にするなと怒りそうな発言ではある】
【だが、嵯峨野が仮に変質したとして、或いは、虚神達を何かに利用しようとしているとして、何を繋がりとして彼らにたどり着いた?】


これは純粋な疑問なんだけれど……何故虚神と言うのは、人間に対して敵対的なモノばかり生まれるのだろうね。


【それは一般人としての視点だ。厳密に区分けするならば必ずしも悪意ばかりとは言えないのだろうが】
【基底の人類から見てみれば、連中の行動は一様にして人類に対しての"敵"だ】

【先のシャーデンフロイデなど、嵯峨野にとって許容し難い感情と言えるだろう】


愚鈍、拒絶、無感動、残酷、醜悪、色欲、貪欲、不安定――そして物質主義と、無神論。
いくらかの差異はあるものの、この"提言"で嵯峨野が排除しようとしている罪の因子とやらと似ている。


だから、嵯峨野がその思想を180度変えたのでもない限り、虚神は"敵"で良いのだろうね。
或いは、人類が彼の理想通りの進化を遂げるのであれば――最早そこには虚神の入り込む隙間などないのだから。


【嵯峨野本人はむしろ人類の味方のつもりなのかも知れない】
【彼のプランは基底人類に取っては迷惑でしかないのだとしても、本来の目的は人類の救済に有るのだとしたら、そこを履き違えれば行動を見誤る】


ありがとう、過去のルーツについては分かったよ。
それで、直近の嵯峨野の行動については何かわかるかい?
虚神に絡まないことでも構わない。或いは、ここに載っている、"フランツ"や"魔女"の動きでも。


287 : リゼ ◆D2zUq282Mc :2018/07/21(土) 22:09:48 JY1GydDk0
>>285

【差し出した手。それに答えるのは手――では無くて。一房の束ねられた髪】
【奇妙な光景に目を見開いて、ほんの一瞬だけ生じた違和感で顔を僅かに顰めて】
【けれど、それ以上の違和感は無くて。リゼの手は一房の髪束を握手を交わした】


んー良いよっ!このリゼちゃんが手助けしてしんぜよう…っ!


【歳相応の幼い子供の笑みに応えるのは、童女の様なリゼの満面の笑み】
【リゼは自身の平坦な胸を叩いて――まるで"あてにお任せあれっ!"と主張するよう】


腹ペコねえ、それは死活問題だあ…こりゃタイヘンだ……!
こんなに綺麗な銀色の髪の子供がお腹を空かせてるなんて捨て置けないよぉ……


【目の前の子供の無邪気な喜び。手の代わりにお腹を抑える髪束】
【それを周囲を行き交う人々に見られるのは拙いと思って、子供に覆い被さるように歩み寄る】
【水の国では能力者という存在は廃絶される気運にあったから、謂わば防衛行動の一種である】


まぁ、交換条件なんて出さなくても良いよ。これはあての単なる気紛れなんだし、ねっ。
んで、何処に行こっか?キミの好きな食べ物とか在れば言って欲しいなっ
出来るだけ希望に沿うようにするからさ。無いならあてが勝手に決めちゃうよー


【子供が何を食べたいか。それを伝えたならばリゼは子供の手を握り、そこへと歩みを進めるだろう】


288 : 名無しさん :2018/07/21(土) 23:11:48 zNPJpq8g0
>>280

【――――蜜姫かえではひどく怖がりで臆病な人間である。きっと、そんなの、気づかれているんだけれど】
【かといって、いわゆるホラー。グロやゴアやスプラッタで構成された映像に怯えることはない、ゲームでいきなり窓からゾンビが侵入してきても平然と撃ち抜けるし】
【"蛇のためにやれ"と言われたらお地蔵さんを足蹴にすることもきっとできるだろう。まだ足取りの覚束ない子供が縁石の上を駆け抜けても――ああ、いや、それは怖いか】

【――とにかく。蜜姫かえでは臆病ものであった、ならば何が怖いのか、と言えば、もっと概念的な話になる】
【この世界のどこにも自分の居場所はないんじゃないか、と、思ってしまう気持ちを自分だけでは絶対に否定できない】
【仲がいいと思ってしまった人に嫌われることだってきっと耐えられない。だからあらかじめ変わった人として振る舞う、あとから失望されないように】
【誰にも必要とされないことも怖くて仕方がなかった、――要らない、って言われてしまったら、きっとその瞬間から、自分の部屋を出られなくなってしまうし】
【だからいつもいつだってどこかに"居たい"。自分は自分だなんて嘘っぱちだった、そうやって性を隠して強さを叫んで生きてきたんだった、何もかもが怖くて仕方ないから】
【一人で平気だって顔して。だけど独りだなんて耐えられなくて。だから求められたくてただそれだけのために何度だって命なんて賭してしまう、そういう人間だって】

【とっくにバレてるんだろうから、こんな目に遭うに違いなかった。求められることはあんまりに甘美すぎて逃げられなくなってしまう、食虫植物に囚われたみたいに】
【ならモウセンゴケに囚われた虫はどの段階で後悔するんだろう――――、考えてもきっと、意味はないけど】

【多分、甘い甘い粘液に包まれて自分の腕や足が解け落ちても。後悔しないんだと思った。――でないとあんまりに救いがなくって、かわいそう】
【(でしょう?)】

――――――いや、いやぁ……、嫌あああぁ、――、ウヌクアルハイ様、――――いや。いやぁああ、……。

【もう一度人形の首を抱かされて。けれどタコじゃないなら落ち着くはずもなかった。余計に錯乱してしまって、抱きしめられる中、それでも必死に、自分を護ろうとする】
【ぎゅうと頭を抱えて耳を塞ぐ。聞きたくないって態度が表明する、けれど多分聞き入れられることはなくて、誘導された銃口はけれど銃弾を吐き出すことはなくて】
【――――だって。何よりも何よりも強い呪いの言葉はすでに撃ち込まれていた。だから殺せなかった。殺せるはずなかった。だって。だって、】

【(「けれど私を殺すのなら、誰も貴女に微笑むことはないわ。もう、二度と。」 )】

【――――――――――そんなの耐えられないから。理由はただのそれだけで。少女にとっては、本当に、本当に、十分すぎるくらいで】
【殺せない。だからって愛してるとも言えない。名前なんて呼べない。何もできなかった。なにも。なにひとつ。だから死んでしまいたかった、なのに赦されなくて】


289 : ◆RqRnviRidE :2018/07/21(土) 23:38:48 vZw8nhd20
>>287

【自信に満ちたその姿を微笑ましく思ってか、子供はくすくすと慎ましく笑みを溢し】
【うん、きっと悪い人じゃないんだろう、と納得したように一つ頷いて】

キミ、リゼと言うのかい? んん、良い名前だね。
ボクはね、“瑠璃”と言うんだ。 綺麗だろう?
空と海のような澄んだ蒼色のことだそうだよ。

【子供──“瑠璃”と名乗るそれは自慢気に名乗るだろう。尤も、子供自身には瑠璃色の彩りは無かったのだけれど──】
【銀髪も褒められて満更でもない様子。握手した方の髪束を小刻みにうねらせてみせる。何だか変な感じだ】

そうなんだよ。 空腹って髪の艶にも関わるから死活問題なんだ。
だってほら、お腹が空いたら萎びちゃうだろう、……

…………、……? どうかしたかい?

【けれど不自然に動く子供の髪の様子を、通行人は訝しげに流し目で見ながら通り過ぎていく】
【そんな目線と、自分を周囲から覆い隠そうとするかのようなリゼの行動を見て、瑠璃は不思議そうに首を傾げる──】
【──嗚呼、どうやら能力者に対する現状認識を、それは全く知らないようであった。世の中の出来事に疎いのだろう】

本当かい? ……いや、すまないね。どうもありがとう、リゼ。
そうだなあ、特にこれと言って無いんだけれど……

……たとえば、キミの金糸の髪に似た何かとかないかな。
ちょっと気になるよね。どんな味がするか、とか。

【手を取られれば子供は要望を伝えるだろう。少女の金髪に似た食べ物はないか──と】
【後から付け加えた言葉は、おどけたように冗談めかして言った様子だったが、どうにも彼女の髪は魅力的に映ったらしい】
【骨張ったひんやりとしたが、彼女の手を握り、連れてゆかれるままに着いていくだろう】


290 : ◆RqRnviRidE :2018/07/21(土) 23:48:04 vZw8nhd20
>>289
/最後の一文「骨張ったひんやりとした手が、��」ですね、失礼しました!


291 : 名無しさん :2018/07/21(土) 23:51:03 zNPJpq8g0
>>281

…………そんなわけないじゃん。人のことなんだと思ってるの? それとも適当なこと、知ってる顔して言っていいなら、やるけど――。
そんなバカみたいに言わなくたっていいのに。路地裏+屋上で命知らずの馬鹿ってこと? ひどい――――、――ダーツもない。

【※いってない】
【別にそれは件の"人物"のことを馬鹿にしているわけじゃあないんだろう、ないんだけど、結果として、そう取られたとしておかしくはなかった】
【だのに――というより、ゆえに。"そいつ"は相手のことをひどく責めるみたいな声を出す、――ぎゃりぎゃりした機械音だけど、そういうニュアンスはきちんと伝えてくるんだから】
【予想されたみたいにくだらない話は結構好きみたいだった。だけどビリヤードもダーツもしたことない。多分ボウリングとかもしたことなさそうだったなら】

そもそも勝手にあだ名付けたら縊られそうな顔してた。
……ヒメはヒメでしょ? なんか小さい植物とか、ヒメなんとかって……――、ヒメモンステラとか、ヒメキンギョソウとか。ヒメオドリコソウに、ヒメジョオン。

あたしは小さい**だから――、お姫様の方だとでも思った? ふーん、ま、別に、いいけど。

【けろっとした言葉の感じ。だから絶対ほかにだれもあーりんだなんて呼んでいないって言い切るんだろう、"こいつ"からあの人物の印象。わりと、どぎつい】
【それは投身自殺しそうな現場に居合わせてしまったからなのだろうか、それとも"こいつ"は誰だってそういう風に見るんだろうか。――どちら、なのかは、分からないけど】
【次いだ言葉はどこか訝るようなものなのだろう、――ひとつだけ違った名前が紛れ込んでいた。ならきっとわざとだった。冗談なんだけど、微妙に分かりづらくボケたなら】
【――別に"姫"の方でもいいんだけど、と、言って、】

でもそれだとアリアが嫌がるみたいだったから。誰かをそうやって呼んでるんだって言って。
あたしその辺分かんないからさあ、聞いてみてくれない? ――協力するんでしょ、あたしのことはほっといてくれていいから。
……あたしのことは頭数にはあんまり入れないで、あんまり変に動くと"飼い主"に怒られるから。

【であれど口頭にて言葉は変わらない。つまり"姫"は駄目だけど"ヒメ"ならいいよって、――分かりづらい言葉を並べる、結局は最後に丸投げるんだけれど】
【つまるところ自分は手伝う気があるけれどそこまで頼りにされると困る、という話だった。こっちにはこちらの事情があるから――"人間"たちは勝手に動いて、と】
【そのうえで交差することがあれば、手伝うでしょう。――――そういう話をしているに違いなかった。だからあるいは冷たげだと、思わせて――】


292 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/22(日) 00:23:34 o6XMS57s0
>>288


「 ──── 分かってるのね。」「神様は貴女を助けてくれないって。」「だから離れられないのね。」「求めてくれる人から。」「そして信じられないのね。」「自分がどういう人間であるか。」



【「二つ」はもう何も喋らなかった。ひたすらにかえでを抱きしめていた。であれば口を開いたのは、 ─── 少女の胸元にいる、人形の首。】
【確かにそれはアリアの声で喋っていた。けれど明白にアリアではなかった。人形の口が胡桃を割るように大きく開いて、けたりけたりと笑う。】
【そうしてそいつは冷たい声の言葉を紡ぐ。どこまでも身勝手に、的外れに、知ったような顔をして、然し追い詰められた少女には突き刺さる投刃を研ぎながら。】



「その理屈で貴方は殺したんだ。」「貴方の神を殺した。」「貴方の同胞を殺した。」「貴方の母を殺した。」「だって貴方は見捨てたじゃないか。」
「都合のいい答えが欲しいだけなのだろう?」「罰して欲しかったから理不尽な教義に身を捧げた。下衆な実験と劣情の捌け口だって分かってた癖に。」
「求めて欲しかったから神を信じた。それで願いが叶わなければ抱いてくれる女に甘えた。」「だから貴方の神は死んだ。」「それでも思い通りに愛してくれなかったから素知らぬ顔で神を求め直した。」
「都合の悪い物はみんな踏み躙って塗り替えた。」「それで罪の意識に耐えられなくなったら、また神に縋った。」「自分が滅茶苦茶にした物からは目を背け、挙句の果てに見殺しにした!」
「だから今それを見せつけられて死のうとしてるんだ。自分じゃ殺せないから死のうとしてるんだ。結局、貴方が選んだのは都合のいい事を言う人形の方だった。」



【少女の"視界"に誰かが入り込む。 ─── 目を閉じても開いても同じ光景が見える。真っ白い背景の中、倒れ臥す一人の女。コートを着た銀髪の女。】
【あの日の最後、取り残された女の末路に違いなかった。少しずつ体が溶けていく。黒い布地が塵に変わり、手足から輪郭が無くなって、きっと余程に痛いのだろう】
【硫酸に漬けられた人体はこんな風になってしまうのだと思わせた。手脚が関節から腑分(ふや)けてバラバラになり、絶叫に背筋を仰け反らせ舌を出し真白い喉を晒す。】
【けれど消えゆく世界には大気さえも残っていないのだ。 ─── そのうち、女は上体だけになる。叫ぶ気力さえ失って、ただ痙攣するだけになる。】
【最期に断末魔のようにじたばたと胴を振るけれど両腕も残っていない。やがて、ごとんと首が落ちて、顔が溶けて、歯と骨と目玉と脳の破片が散らばって】
【 ──── 青い瞳だけがずっと残っていた。けれどそれも何れは消えるまで、ずっと少女の方を見つめていた。そうしてまた同じ映像が繰り返される。何度でも、何度でも、何度でも。】



「貴方の態度が端的に示しているよ。蜜姫かえで。貴方の本質を。」
「 ──── 誰かさンの言った通りだ。貴方は空虚なんだ。自分を信じられないんだ。自分を信じられないから自分の居場所を信じられないんだ。」
「自分を信じられない奴は他人を信じられる訳がないんだ。そんな奴に誰が居場所なんてやるもんか。貴方が居場所だって思っていた場所は皆んな誰かの掌の上だ。」
「貴方だけ気付いていないんだ。ただ楽にしてくれるなら誰だっていいんだ。だから自分で手を汚さない。そんなの皆んな見抜いているんだ。恩義も忠義も関係ない。」


「ここで苦しみ続けるがいい。」「死ぬことなんて許さない。」「自分の愚かさを悔やみ続ければいい。」
「貴方は貴方の神を殺した。」「そして貴方を求める人も殺した。」「だったらもう貴方は決して許されないし救われないんだ。」「自分だけ楽になるのは、生ぬるいだろう?」



【たとえ視界を奪われても残りの感覚は残っていた。 ─── 無数の手が少女の全身に絡みつく。灼けつくように熱い。全身に焼きごてを押し付けるように。】
【抗わなければ何処かに引き摺り込まれていく。気付けば少女を抱き締める二つさえもが酷い熱を帯びていた。きっと全ては偽りだった。だってこれは夢であり現実だから。】


293 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/22(日) 00:24:36 WMHqDivw0
>>291

え、なんかそんなすげーカッコしてっからそれなりにすげーヒト……じゃないモノだと思ってた。
バカとは言ってねーし、バカとは……命知らず、ってゆーか……すぐ死にそうって気はするかも。
路地裏で会ったときもすげーケガしてたの、あーりん。……ケガすんのが趣味なんかな?

【そんな趣味あるわけないだろうと思うけど――実際のところは知らない。アリアが自傷してたってことを知ってるんなら】
【それもまあそうなのかもとか思わせちゃう、かもしれなかった。本当に実際のところなんて、こいつにも、相手にもわからないのに】
【「じゃーこんどどっちもできるトコ行こうよ、ビリヤード、ダーツ、……ボウリングとかカラオケとかもできるとこ」】
【「すげーヒト」だと言うわりには簡単に、そーいうとこに今度行こうよって軽々言っちゃう。そういう人種だった、彼は】

えー? おれは縊られなかったよ、……いや殴られたかも。思い出せねー。
……そーいうヒメ? お姫様のほうかと思った。小さいから、ヒメ、ふうん……。

……、……ははあなるほど、あーりんには「お姫様」がいるってワケ? かな?
で、それがなんだっけ……蛇教の幹部の女の子ってか。フーン、あーりんの趣味よくわっかんね!
えっ数に入れちゃダメなの、じゃあ具体的に何してくれるの、どんな手伝い方してくれんの……

…………時々出てきてアドバイスとかしてくれたらうれしーんだけどナ。おれ、頭わりーし。

【言いたい放題、あーりんのこと。それが収まってきたなら――ちょっと困ったような顔をする】
【どこまで手伝ってくれて、どこまで放っておかれるのか。そこら辺もーちょっとわかりやすくしてくんないかな、って】
【せめてなんか、ヘルプボタン押したら出てきてくれるくらいのことはしてくれたら、嬉しいんだけど。そうお願いするような】
【小首を傾げる。図体ばっかりデカいくせに、ぶりっ子してるみたいでちょっとムカつく、って思うかもしれない】
【すごく頑張って形容するなら、人懐こい大型犬が強請ってくるみたいな、そういう動作で――ヒメを見つめた。ちょっとサービスして、みたいな】


294 : 名無しさん :2018/07/22(日) 02:16:43 zNPJpq8g0
>>293

……なにそれ。このした、櫻の着物だけど? 見せらんないけど――――、別に。いんじゃない、趣味でも。
それどこ? ……別に、どこでもいいけど。じゃ、"ぜんぶ"終わったらね。その時でいいでしょ? ――ぜーんぶ終わった、その時。

【失礼な、って感じの物の言い方だった。わずかに腕を持ち上げるんだけれど、それでも伺えないほどに布地は長くって、そして、見せるつもりなんてなさそうだった】
【だから無理に引っぺがしたりしたら、やっぱりだめなんだろうと分からせる。――それにしても着物だなんて着てなさそうな口ぶりなんだけれど。あるいは冗談、みたいに】
【結局この場に居ない人物については何も分からなかった。だから適当に流して終わる。――本人には多分言わない方がいいだろう。怒られそう、な気がしたから】
【――そうして"そいつ"は尋ねるんだった、そういういろいろある場所。ふーんと呟いたなら、あんまりに軽い言葉で約束する、全部終わったらね、と、】

【――――――見せない面の裏側でかすかに笑んだ。声音にその温度は載せない。だから気取らせないままで】

そーいうヒメ。分かりやすい偽名でいいでしょ? "お姫様"について悩んでるみたいだったから。あなた慣れてそうだもん、アドバイスしてあげたら?
――あたしは飼い主サマのお使いだから。そっちが優先。"こういうの"は寄り道だし。だけど――、寄り道もたまにはね。

さっきも言ったでしょ、あたしたちは世界なんて別にどうでもいいんだけど――"そう"しようとして、その結果、人間に滅ぼされる"あれ"は見たくないの。
だからタイミングを見計らうって名目で――、――だから、タイミングだって思ったら、あたしは"やる"から。

…………アドバイスって何? 暇だったら出てきてあげてもいいけど。

【ひどい話だった。なんだか女の子の扱い方とか慣れてそうだから、アドバイスしてあげたら、なんて、多分あんまり何にも考えていない言葉だった】
【そうしたならわずかにベンチに背中を預ける、――あんまりに不審者な身なりのくせして結構普通に寄り掛かる。それがなんだか余計に異質に見せて、】
【目的がある。けれどその時期は特別に決まっていない。タイミングについては任されている。――ゆえに、なるだけ、自分たちに都合のいい結果を導くために、動くこともある】
【そしてそれがきっと今なんだった。――だから、"こいつ"の判断次第で、こいつは頼れない状態になる。あるいは、そうでなくとも、事情が動く可能性も小さくないなら】

【――暇だったらという判断方法は、たぶん、あんまりない。ないんだけど――強いて言うなら、「どうしてもって時に呼んで」ってことだけは、言うんだろう】


295 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/22(日) 12:11:50 Ty26k7V20
>>282

いや…あの、その…えっと…わわわ…

【丸っこい少女は手をワタワタさせて、丸い目を更に丸くして見てわかるぐらい焦って何を言おうか困っていたが】

「そうです。私達は、鈴音さんに大変お世話になっていたものです。彼女は初瀬麻季音。私はゾーイです。」

【銀髪の女性はためらいも迷いもなく、その抑揚のない特殊な話し方で冷静に返事を返した】

【その横で麻季音は冷静なゾーイの顔を見て「なんでそんな冷静なのよ」といった顔をしたり、赤い女の方をむいて】
【「一体この人がどういう関連が」と不思議がる顔をしたり、「とりあえず落ち着こう」と飲み物を飲んだりとワタワタ】
【何を考えているかわかりやすいぐらいに動き回って】

「貴女は誰ですか?」

【そんな麻季音を無視して単刀直入、シンプルな質問を投げかけた。】


296 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/22(日) 13:47:49 WMHqDivw0
>>294

この下に着物着るの? ぜったいあっつくね? ……そーいうのも感じない系?
えーなんかそういうトコあんだよ、何センターって言うのか忘れたけど、んーじゃあ、全部終わったら……
……いやそれなんかスゲーヤな言い方、フラグってやつぽくない? フラグ。

【ヒメの言う「ぜんぶ」がどこからどこまで、なのかはっきりわからないけど。ちょっと嫌な予感を残す言い方】
【であるような気がするなら――うげ、みたいな顔をして。そーいうのやめようぜ、とか言いつつも】
【――――なんだかんだでコイツもちょっと笑っていた。その日が来たらいいって思うのは、本当のこと】

わかりやすいと言えばそーだけどお、……慣れてるように見える? そりゃよかった。
現実にはひとりの女のコ相手にここまでワタワタ醜態晒してますけどお。アドバイスしてやりますう慣れてますからあ。

……タイミングってのがよくわかんねーんだよな。とりあえずおれが死にそうになったら来てくれりゃ、それでいっけど。
アドバイス……なんかこう、そこは右に! とか、左! とか。あとそっち行っちゃダメ! みたいな?

【慣れてると言われると拗ねてしまう。会いたい女の子に会えなくて寂しいとか言ってるようなヤツが】
【本当に慣れてると思いますか? とでも聞き出しそうな雰囲気。それもそっぽ向いて、しないようにするけど】
【欲しがるアドバイスはなんだかカーナビめいてヘンな喩え方だった、そういうの下手くそなんだろう】
【だけどヒメ、カーナビみたいに四六時中一緒に居てくれないというなら。それも「しょうがないか」と言って、しゅんと項垂れるんだろう】


297 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/22(日) 13:55:10 WMHqDivw0
>>295

マキネ、は聞いたことある――――ゾーイはないな。
あたしは夕月。鈴音の……トモダチ、たぶん。そーいうことで、
鈴音がやってた「たんぽぽ」の代打とかやってる。よろしく、……

【自己紹介は簡潔に。わたわたしている麻希音はなかば無視しちゃって、ゾーイに視線を合わせ】
【「これは鈴音からのもらいもの」。言いながらもう一度鈴を鳴らす、相槌を打つようにちりんと鳴って】
【それから――――少しの沈黙。探るような気配感。実際夕月と名乗った少女はそうしていた、】


……………………おっけー、じゃああたしからも質問。
あんたたち、「今の鈴音」がどこで何してるか……「どこまで」知ってる?

【そして訊ねる。鈴音の現状、「どこまで」知っているか、なんて。まるで夕月は全部知ってるとでも言いたげに】
【けれどそれは、案外本当のことなのかもしれない。さっきまでさんざん煩かった声色は、潜められて】
【他の誰かに聞かれないよう努めて、ボリュームを落とすのだから。……やおら席から立ち上がったなら】

【ずずず。誰に何のことわりも入れずに、二人のテーブルと自分のテーブル、くっつけようとするだろう】
【そしたら四人掛けテーブル、三人占領状態が出来上がり。……ここに割って入ろうなんて思う人は】
【少なくともあんまりいなくなるだろう。たぶん、きっと。】


298 : ◆DqFTH.xnGs :2018/07/22(日) 16:10:45 .YU1DbrY0
>>222

【(早く黙って指示に従えや、チンピラども)──それが正直な本音だった】
【こういう輩は何だかんだで“制服”に従う。彼らも臭い飯は食べたくなかろう】
【────そんな思い込みがどこかにあった。油断とも言える。制服を着ていることへの慢心とも】


……………………、…………………………………………は?


【その一瞬、目の前の光景を視覚/認識/知覚することを脳が拒絶した】
【夢か幻か。あるいは熱気が見せた蜃気楼──浮つき始めた感覚を、今度は現実が拒みにくる】
【惨劇とすら呼べない異質が、望んでもいないのに展開されていた。(は?え、…………あぁ?)】
【リアルを覚え始めた小学生がおふざけで創り出した、無駄にスプラッタな演劇のようだった】
【唐突に始まった奇妙。恐怖のパレードにすら加われない、だがその一端を担う変質──に思えた】

【(な、────何が、どうなって)似た光景を、テレビ画面の中で見たことがあった】
【それは平日午後のロードショー。蕩けた化物がヒトを襲い、噛み、被害者の肉が同じように蕩け腐る】
【ゾンビ、と総称されるクリーチャーの特集。脳のリミッターが外れたゾンビは】
【自らの肉体の損傷を省みることなく、エネルギー補給のために新鮮な肉を求める】

【(────ッ、…………ク、ソ)かつて観た映像と現実が交錯する。混乱と不安の瀑布に飲まれ】
【ろくすっぽ言葉が浮かびやしない。ざり、と後ろに足が進む。その瞬間】
【わっと腹底から恐怖が湧き上がってきた。まるで無重力だ。宇宙は自分の中にあるなんて】
【そんなポエムを詠んでいる場合じゃあない。喉はからから。後ろに向けた一歩は】
【地面を踏みしめた瞬間からカタカタと震え出していた。(何が、…………何が、何が)】

【どうすれば良いのか判らなかった。助けを求めるように周囲を見て──】
【──また、恐怖で体が浮き上がりそうになる。(…………ッッ、なん、…………な、な)】
【この異常な光景を、市民は見ていた。ただ見ていた。悲鳴をあげることもせず。逃げることもせず】
【それが何よりの異質であるのに──誰もそれを指摘しない。ともすれば狂ったのは】
【まさか自分なのではと錯覚してしまうくらいの平穏が、べっとりと貼り付けられていた】

【(…………っ、は、…………っっ!クソ……クソ、クソ────!お────)】
【──堪らず、近くにいた奴に声をかけようとした。誰でも良かった】
【自分の知っていた現実の、ほんの一欠片──怯える顔でもいい。悲鳴の始まりでもいい】
【この場から逃げようとするポーズでも、緊急の電話をかける仕草でも──なんでも良かった】
【兎に角自分は正常で、ここだけが異常なのだとそう思いたかった。そう思えるだけの何かが欲しかった】

【その時。振り上げられた鞄が見えた。ぼんやりとした目がこっちを見ていた】
【ちょうど声をかけようとした男だった。何度目かの浮遊感。平穏なんてクソ食らえ】
【選択肢は何だ。髪に擬態した触腕で受け止める。──違う、と本能が叫んだ。予感めいた確信】
【このままならこの男は鞄や腕ごと、こっちの頭を破壊してくる。なら、銃は】
【銃を掴む。撃つ。手を吹っ飛ばせば──吹っ飛ばせば?違う。ダメだ。きっとそれだけではダメだ】
【ゾンビは脳だか随を破壊しなければ機能は停止しない。どのゾンビ映画にも共通したセオリー】
【だったら頭を撃てば────(あぁクソ!間に合わ、…………っ!!)】

【身を捩り、蹌踉めくように鞄を避ける。中に入っているのは明日の会議資料だろうか】
【そんなものはどうでもよかった。鞄がこの後どういう運命を辿るのかも、どうでもいい】
【大事なのは自分自身だった。まずは安全を確保しなければ。────振り返ることなく】
【婦警はその場から全力で逃げ出した。邪魔が入らなければ、手近な路地裏へ駆け込むだろう】
【少しでもいい。時間が欲しかった。落ち着くための時間と、現状を誰かに伝える猶予が】


299 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/22(日) 18:05:12 Ty26k7V20
>>297

「夕月さんですね。改めまして、どうぞ宜しくおねがいします」

【コンピュータでプログラムされた通りといった感じの丁寧なお辞儀をするゾーイ】
【麻季音はまだ混乱しているのか、まあ置いていっても大した問題はなさそうだ】

それは……

【夕月の質問に今度はフリーズする麻季音。目が泳ぐ。うつむいたりしてどう言うべきか悩んでいる様子】
【だがゾーイは真っ直ぐな目でためらいなく簡潔に述べた】

「…初めから、話していただければ幸いです。我々も初めはある程度の情報を断片的に得ていましたが
情報提供者である探偵、チンザノ=ロッソという人物からの連絡が滞っており、且つ我々もプロジェクトに追われており
独自に調査するほどの余裕が無いのが現状です。かろうじて知りうるのはカルトが壊滅したという事ぐらいです。
その前後の詳細は知り得ていません。」

「何分、私は“黒幕”に潜入中。初瀬麻季音はタイムマシンを研究しているのですから。」

…ちょっと!何、言って―――!!

「初瀬麻季音。ここは、腹を割って話すべきと思います。」

【そんなやりとりをして、麻季音は溜息とともに向き直った。どうやら落ち着きはとりもどしたようだ】


300 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/22(日) 18:41:59 WMHqDivw0
>>299

【ゾーイとも、麻希音とも真正面から向き合って。「初めから話してくれ」と言われれば】
【本当に初めから話し始める。何せ、ふたりが直ぐに自身の事情を打ち明けてくれたのだから――頷いて】
【……話し始める。白神鈴音と初めて会ったときのこと。彼女がまだ自身を神と認識していなかったころ】
【そのころに出会って、ちょっと話して、ちょっと仲良くなった。それだけの話、が、……数年後に】
【大きく大きく歪みだす。……そういうことを、話し始めるのだから、とてもとても長くなる】

……、……あたし今、いろいろあって、……ちょっと助けてほしいなって思ってたことがあって。
でもそれを打ち明けたのは別の人だった。ミラさんっていう人……あんたたちが「M」なら、知ってる人だよネ。
ミラさんもまた、いつ死んだっておかしくないような人だから……言ったんだって、鈴音に。
「あたしがどうにかなったら代わりに夕月のこと助けてやってくれ」って。鈴音はそれを――すぐ承諾しちゃった。

そのあと。鈴音に、ほんとうに、いろいろなことがあって――心がぽっきり折れちゃって。
そんな時に出会った「イル」っていうヤツに連れてかれて、……ついてって、って言ったほうが正しいのかな。
それで「旧市街」に行っちゃって、行方不明ってことになった。それはたぶんあんたらも知ってるのかな。
知らなくてもいいけど――とにかくあたしと鈴音は、そこで……「旧市街」で再会したの。

…………鈴音、すごく泣いてた。あたしを見ただけで、……あたしが「ここから出て行こう」って言っただけで。
ひどく怯えて泣き喚いて、それで、……それなのに! あたしのこと助けるっていう約束、……まだ覚えてたんだ。
もう子供みたいにぐちゃぐちゃ泣き喚くしかできなくなるくらいまで追い込まれてたのに、……そんなことだけ忘れてなくて。

【ここで一旦、小休止。ひどく悔しげな顔をして、……唇を噛んで、それでも。もう一度顔を上げて話し始める】

……そのときは連れて帰れなかった。鈴音。どうしてもここから出たくないって泣くから、……でも、
今思えばあのとき無理矢理にでも連れ出せばよかったんだ、っ、……、ごめん、この話は、……どうでもいいや。

それで今。あたしがあそこから連れ出さなかったから――鈴音は今どうなってるかって言われたら。
――――神様になっちゃった。……いや、もともと、神様だったんだけど……それを自覚してしまって、
もうニンゲンの世界に紛れることはできなくなっちゃった。そういうことになった、理由――は、知ってる?

……情報提供者がいるんだっけネ。その人から聞いたことない?
「虚神」とかいうキーワード。それの仲間に、……鈴音、…………なっちゃったんだよう。

【――ここでまた、休止。長く話し続けて疲れたんだろう、……頭を抱えて溜息を吐く。そのころにようやく届く、クリームソーダ】


301 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/22(日) 20:44:26 Ty26k7V20
>>300

【夕月につられて、初瀬麻季音もうつむいて話を聞いていた】
【理由も、その重さもぜんぜん違うのかもしれないけど鈴音に関して、同種の感情を抱いていたからだ】

「ミラ・クラァケ、さん、は私の友人でもあります。」

…私も、鈴音さんに助けてもらってた。だけどそんなにいっぱいいっぱいだって知らなかったし
そんなことになって…助けてあげたいけど…私には何も…
……私は、能力者でも何でもなくて、こういう時どうして良いかもわからなくて…

【想いは募る、が夕月ほどに語れることが無いことが悲しかったし、悔しかった。】
【其処から先も、冷静に進行はゾーイが受け持つ】

「サーペント・カルトについての概要は存じております。虚神についても。しかし、白神鈴音に関しては知り得ておりません。
肉体と、魂。―――結局の所、白神鈴音は何なのですか。それによって意味合いは変わっていきます。
元の白神鈴音と何が違うのか……世界にとってそれは悪なのですか?」

「探偵も、それを話しません。あえて隠しているのか、知りえないのかわかりかねますが。彼もまた白神鈴音とはただならぬ因縁のある人物ですので
それに…あまり芳しくはないようですね。状況は。」

【ホットコーヒーをすするのもリマインダーに登録してあるかのように定期的に定量飲みつづけるゾーイ】

「―――美味しそうですね。それ。初めてみました。」

【そして、クリームソーダに興味を示す。無表情に少しだけ目を輝かせ】
【そしてそれを止めるように】

―――ちょっと…!…ごめんなさい。これ、ロボットなのよ。アンドロイドっていうか…だからちょっと…

「アンドロイドではなくヒューマノイドです。これを訂正するのは125回目ですよ。」


302 : リゼ ◆D2zUq282Mc :2018/07/22(日) 20:48:17 JY1GydDk0
>>289

【瑠璃と名乗る子供は怪訝な表情を浮かべていた。その事からリゼは察する】
【"瑠璃ちゃんはこの国においての能力者を取り巻く事情を知らないのだ"、と】
【そして冗談めいた要求に、やや面食らった表情を浮かべてから――取り繕う】


お礼はいらないよ。……とっ、取り敢えずここから離れよっか!
ほら、唯でさえ外は暑いし。何よりあては人込みが好きじゃないしさ。
冷房の効いたファミレス辺りにでも駆け込むよー、れっつ、ごー!


【瑠璃のひんやりした手をぎゅっと握り締めて、足早に路地を後にして】
【目的地に向かう道すがら考える。リゼの髪に似た食べ物が何か、を。そんな事考えた事が無くて】
【直に答えなど出てこない。先ずは目的地であるファミレスに着いてから考える事にした】

【目的地であるファミレス――ガ●トやらサイ●リアみたいな店――まではそう遠くなく】
【けれど動けば汗をかく程度には暑くて、半ば条件反射的に"あ゛ー、あっつー"と愚痴を漏らす】


さてさて、到着到着って、ねっ!あぁー涼しー。生き返るねー。
(あー、あての髪の味なんて考えた事もねーよー。……けど、甘甘なスイーツに決まってるよね)


【"あてだってオンナンコなんだし"――テーブル席に腰掛けながらリゼは思う】
【けれど空腹の相手にデザートだけで腹を満たせなど無理な話で。取り敢えず、メニュー表に手を伸ばす】
【メニュー表に載った料理の写真を見せて、"さぁさぁ、何でも選んでちょーだいなっ!"と声を弾ませる】
【瑠璃とリゼ。傍から見れば二人の無邪気な子供が居るようにしか見えない。尤も、リゼは成人なのだが】


303 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/22(日) 21:30:41 WMHqDivw0
>>301

そ。じゃあ世界ってけっこう狭いんだネ……ゾーイさん。
……どうしたらいいかわかんないのはあたしも同じ、マキネちゃん。
みんなそうなんだよ、みんな、鈴音が頑張りすぎて折れそうになってたの気付かなかったし、
だからってどう助けてやればいいのかはっきりわかってやれなかったのも……みんな、同じ。

【だからそんなに重く受け止めないで――というのは無茶な話だろう、けど】
【ならばこれから「みんなで」やればいい、ということだけはわかって。……わかるのに】
【肝心の鈴音が帰って来れないなら。……重苦しく項垂れた顔を上げて、ゾーイに向けて】

……何って言われたら。鈴音は「蛇」の「神」だよ、……もともと最初からそうだったんだって。
でもそれに気付かないで、それでも自分が人間じゃないってことだけはわかってて、
ずっと自分が何なのかわからなくて……でも人間でいたくって、がんばってた、女の子。

今は――――「サーペント・カルト」で得た「信仰」を吸って、……途轍もない神様になっちゃったみたい。
あたしたちが「蛇」のことを畏れると、鈴音はそこに顕れる。……ってカラクリらしいんだけど、
ぶっちゃけあたしにはよくわかんなくて……、……けど確かなのは、「実体」がないってことだけ。

【クリームソーダのアイスをがすがす、親の仇みたいにスプーンで抉りながら――きょとり】
【ゾーイの「正体」を聞かされたなら、ぱち、と目を丸めて――それからふっと笑った、ちょっと疲れ混じりに】

……なあんだ、そう。あたし別にそーいうの気にしないよ、……あたしもニンゲンじゃないし。
もしかしてその「チームM」ってさ、……ニンゲンなの、マキネちゃんだけだったりする?

【「ミラさんだってそうだしさ――――」 言いながら、やっと一口バニラを食べた。きいんとする。】


304 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/22(日) 21:55:34 Ty26k7V20
>>303

だから…せめてわたしにできることをしようと思ってた。でもそれって
本当に、合ってるのかなって思うの。私のしようとしていることは…
結果的に鈴音さんを救うことになる。…でもそれは結果的になの。
本当にすべきことは直接、この手で手を取ってあげるべきなんじゃないかって…

【研究に没頭することよりも探してそとを歩くほうが正しいのではないかとずっと引っかかっていた】
【でもそれも――理性が合理的でないと笑う。何が正しいのかはもはや自分ではわからない】

「そう、それがわたしにはわからないのです。――人は、何をもってして人というのでしょう。
もし白神鈴音が神となり、世界を滅ぼすならば、止めねばなりません。カルトが白神鈴音を利用しているのなら同じく
救い出さねばなりません。実体を失ったならば取り戻さねばなりません。ですが…神であることは何ら問題ないとは私は思います」

【抽象的な言い回しになるのはアンドロイドを持ってしてもその質問を正しく言語化することが出来ないからだ】
【その胸の支えのような言葉は麻季音がもう少しわかりやすくする】

人は考える葦である。…パスカルの有名な言葉ね。きっと知ってるとは思うけど。懐疑論を突き詰めに突き詰め懐疑論すら懐疑したパスカルは
人が人たらしめているものを見つけるまですべての要素を削ぎ落とした。…最後に残ったのはそれについてを“考えている”という行為だけ。
…これだけはシッカリ否定させてもらうわ。貴女も、ミラさんも、鈴音さんも、ゾーイも人間よ。
見た目?能力?神?…そんなことで人じゃないと嗤うのは考えもしない“人間もどき”の言葉よ。

鈴音さんには帰ってきてもらう。――――やり直すの。


305 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/22(日) 22:23:49 WMHqDivw0
>>304

……きっとそれも正解なんだと思う。だけど鈴音はネ、……なんもかんも誰も彼も、
手伝わなきゃ、助けてあげなきゃって思ってた。だからたぶん、一番必要なのは
「そんなことないよ」って。「むしろ私たちのほうが、助けてあげるから」って伝えること。……だと思う。

【「合ってるかどーかは知らないけどさ……」 アイスをぱくつきながら、ちょっとだけ笑う】
【ちょっとずつ落ち着いてきたらしい。それで答えるのは、要は「みんながみんなで助け合いましょう」】
【……そういうことだった。そしてそれは麻希音にもかけてやれる言葉、かもしれない】
【少なくとも夕月は、麻希音に何か「手伝って」とか「助けて」って言われたら、承諾する。それくらいの気持ちを、既に抱いていた】

人は、……なにをもってして。……、ゾーイさんの言ってること、全部間違いじゃないって思う。けど、
…………あたしネ、ちょっとだけ、思ってることがあるの。鈴音をもし、ニンゲンに戻してやれることができるなら
そうしてあげたいって……そうも思ってたりするんだ、だって、……聞いちゃったんだもん。
鈴音が、「返して」って言ってたこと、……「人間に戻りたい」って泣いてたの、聞いちゃったから……

【もにゃもにゃ。言いづらそうに、そんなことを言って――鈴音が神であり続けることが、ちょっと嫌、みたいな】
【無茶苦茶なことを言っている自覚はあるようで、顔はめちゃくちゃ渋い表情――だったけど】
【麻希音の言葉に顔を上げる。ぽかんと口を開く。……そして、】

……、……、……やだ、マキネちゃんてば……おっとこまえ。あたしが人間……はは、思ったことすらなかったや。
そうだネ、戻ってきてもらうのは、絶対。そうしなきゃいけない、そのためならあたし、何でもする――

【「………………ありがとう」。めっちゃ小声で、最後にそう付け足すのだった】


306 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/22(日) 22:45:50 Ty26k7V20
>>305

鈴音さんに…私が最後に言った言葉は――――

―――貴女を護る。

だから、それを護り通したいの。

【あんなにわたわたしていた彼女の目はまっすぐで、何処までも見通していそうだった】
【自分が随分と御大層な事を言っていることには気づいて恥ずかしそうに】

ま、まあ…それは言葉の…その場のノリというか…それに1人じゃ出来ないし
その…まあ……ごほん。

「なら、戻すだけです。嫌がるなら助けるだけです。あとは、やり方だけです」

【MチームだかチームMだかが“黒幕”と対抗する組織であることは知っているだろうつまり】
【虚神と戦いつつも黒幕も打倒しなければならない。そんな二面作戦をくぐり抜ける方法は―――】

今この状況を打開する方法は――非常に難しいと思う。何故なら、手遅れなのよ。多くのことが既に行われてしまっていること
我々に介入するのは出来なくはないけど簡単ではない。だけど――――過去をやり直せば、未来を変えることができるんじゃない?

―――私の切り札はタイムマシン。それで全てを元通りにする。


307 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/22(日) 22:56:19 WMHqDivw0
>>306

…………そか、強いんだネ、マキネちゃんは。

【護る、だなんて。逆に守られようとしていた自分なんかと比べると――――】
【……情けないな、なんて思ったけど口には出さなかった。自戒のつもり。次はあたしもそう言おうって】
【内心でちゃっかり決意したり。そうしながら――バニラアイスが片付いて、ようやくソーダを飲み始める】

そう、やり方、……やり方が問題だよネー。あたしもそこが、……、
……………………た、た、タイムマシン……?

【ちうちう呑気に緑色を吸い上げていた口元が――またしてもぽかんと開かれた。すごく間抜けな形に】
【タイムマシン、聞いたことがない単語ってわけもなく、どういうものかというのも何となくは理解しているつもりだけど】
【……実際に、作るの? マジで? みたいな顔。ほんとに。信じられない、という表情、100%】

……、そ、そりゃあいい考えだと思うけど……ほんとにできるの? ……、
――――いや、そんな言い方するのは失礼だネ、ごめん。「やらなきゃいけない」んだ。

それで? あたしはそれの手伝いとして――――何すればいいのかな?

【――――――――――。】

【……この少女、夕月。なんだかすっごい当たり前のように、麻希音に協力するつもり、っていうか有無を言わさず、する気だ】
【そしてそのつもりで、もう動き始めている。今この瞬間から。……言われればなんだってやるだろう、出来ないことだって】
【無理してでもやるつもり。それくらいの決意の籠った色合い――めらめら燃える焔色の瞳が、じっと麻希音を見つめていた】


308 : 名無しさん :2018/07/22(日) 23:00:45 nlFmqx6A0
>>292

【――――きっとその瞬間に少女は悲鳴をあげた。真っ白の喉が壊れてしまいそうな声を上げて、それにてかろうじて心を護る、弾けてしまわぬように、と】
【もう嫌だと叫んだ、暴れようとしたって茹だった身体は思い通りに動かなくって、この場をどうにかできると思えるほどの能力はもはや手繰れず、絶望に浸されたなら】
【震える腕と足が"ふたつ"を拒むように押しやろうとした、――けれど決して殴るとか蹴飛ばすとかいう仕草ではなかった。それはもうそうできないほどであるのか、】
【それとも――この後に及んでそれが出来ないって喚いているだけなのか。それはきっと誰にも判断できなくて、そしてきっと、少女自身にさえ分かっていなくて】

【何度も何度も何度も何度も神に祈った、そのたんびに無視された。そうして罰みたいにひどい言葉を受けた。助けてって求めているのに。聞いてくれやしない】
【その言葉が聞き取りづらくなるなら喉が張り裂けたって別によかった。――だなんて思考できるだけの余裕が残っているはずなかった、だから、それは、生存本能に似て】
【嫌/やめて/おねがい/――――――、あんまりに絶望的な声が繰り返されるんだろう。けれど声を阻害することもできない、それだけの余力が残ってないから】
【耳を塞いで目をぎゅうと閉じるのに逃げ場がなくて混乱する、かといって目を開けたところで逃げ道はなかった。追い込まれた小魚より滑稽に惑うなら】

やめて……やめて、――っ、やめてよ――っ、! っ、――、やめて……、――、ねぇ。ねぇ――、
――――――ねぇ。なんで……、――なんでッ、……、ねえぇ、ッ! ――――――――――――――――だって誰も助けてくれないのに。

……ひどい、よ、――――ひどい、私、――私、は、空っぽ、じゃない、ちがうの――、違う、ちがうのに、

【打ち震える声が――やがて乱暴に叩きつけられる。視界などすでに埋め尽くされていた、だから自分がどこを見ているのかもわからなくて、ただ、ただ、突き付けられる】
【だけれど少女は一度"彼女"に縋ろうとしたのかもしれなかった。助けてって言ってしまえる気がしたのかもしれなかった。そのくせ現実には何も言えなくて、投げ捨ててしまった】
【小さな吐息の音一つ、――その瞬間に何かが変わる。生命維持にほとんど回していた容量を抉じ開ける、――それはひどくひどく遠回しな自殺に似ていた、だって脳はすでに煮えている】
【――こらえきれない体調不良が噴出したのなら少女の身体は大きくぐらつくんだろう、冷たい身体に抱き留められるのはひどく快かったんだけれど、】

どうしてたすけてくれないの…………――、?

【物理的に死ねないのなら、自らの異能で以って死のうとする。それも、意識的に死ぬのではなくて、命を維持することを放棄して、死のうとする、だなんて】
【だからひどく弱虫だった。結局******――だいすきな人は殺せない。殺したくない。父を殺しても弟を殺しても、母には何か特別な意味があるような気、してしまうなら】
【"これら"が本当にあの人であるとは今更思わなかった。それでも。それでも躊躇ってしまうくらいには。――もうきっと取り返しのつかないところまで、来てしまって】

【――だけど、だからと言って、本当に助けてやる義理なんて、多分誰にもないし、世界は、世間は、この少女がそんな風に救われること、誰も赦してやくれないんだろう】
【誰からも何からもほんの小さな救いさえ受け取らずに苦しんで涙の中で死んでいくのを望まれるんだろう、だから、――放っておけば、きっと、それが、叶った】
【なにせ"あの日"死んでしまっておかしくなかった。そして彼女はそれを望んでいた。だから。今からだって。――(本当に?)】

【だから――――抱き留められながらにその身体はぐたりと脱力する、呆とした目からそれでも涙を流して、その裏側では、きっと、何度目かの死を見せつけられている】
【ちいさな子供みたいな声だった。そして不安になるといつも漏らす声でもあった。それこそ母親に縋りつくみたいに。二度とない安堵を手繰る、みたいに】


309 : ◆RqRnviRidE :2018/07/22(日) 23:16:32 cbmy0cl20
>>302

【なされるがままに瑠璃はリゼに手を引かれ、未だ見ぬ目的地へと向かうだろう】
【夕暮れの風が金と銀の糸をしっとりと撫でていく。人波を縫うようにして靡く髪は、流星の尾のように煌めいて】
【少女の毛先が時折頬を撫でる度、子供は擽ったそうに目を細め、どこか楽しげに笑むのだった】

【──さて、所変わってファミレスへ。街中なら何処でも見るようなよくあるチェーン店、人の出入りはそこそこといったところで】
【冷房が効く店内は、茹だるような暑さの外とは打って変わって少々ばかり肌寒いほど。じっとり湿った汗だってすぐに引いていく】
【あっつう、と溢す少女の傍らで、子供はぷるりと身震いをひとつ。……もしかして寒い?】

んんん! まるで空っ風浴びてるみたいだ。
でも、ここできっと食べられるんだよね。 ねえ、リゼ。

【瑠璃は期待に満ちた顔をリゼへと向けるだろう。はぐらかされたこと? ……多分、半分くらい察してる】
【兎にも角にも流れで相手の向かい側の席に腰掛け、そうだなあ、なんて呟きながらメニュー表を眺め──】

──あ! ねえ見て! リゼ! これなんかどうかな!
ボクこれがいいなあ。 こがね色がそっくりだと思うのだけれど。

【瑠璃は幼子のようにはしゃぎながら、両足をパタパタ、髪束でペシペシとメニュー表の写真を指し示す】
【メニュー表の最後のほうのページ。普通ならデザートだとか、アルコールだとか載っているような終わりのほう】
【それはもうニッコニコで上機嫌に、その毛先が指し示していたのは、】



【 ──── “ラーメン”……!! 】

【甘々なスイーツの対極にあるようなそれを、瑠璃は選んだのである。なんてったって完全にフィーリングだ】
【因みにメニュー名は「超極細黄金醤油らーめん」、繊細な喉ごしのストレート麺が絶品──とのこと】

【余談だが、そのすぐ隣のページにはモンブランがあったりして。けれど完全にアウトオブ眼中なのであった】


310 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/22(日) 23:21:19 Ty26k7V20
>>307

気持ちぐらい強くないと…私は何も戦えないから。科学は根気よ。

【なぁんてね。と笑う。】

「初瀬麻季音は17歳でありながら国立大学工科研究所 応用電子機械知能研究 博士課程 兼 研究員です。
それは一般的にレアなケースであります。平易な言葉を使うならば“天才少女”と表現することが出来ます。」 

…ちょ!!そういう言い方やめてって言ったでしょ!…もうっ

【ゾーイはいつの間にか夕月真似して同じものを注文していてそれを、パクパクと一定間隔で食べつつ】
【その合間に口を挟む。そもそも麻季音は17歳にまず見えないほど小さいのだがそれは置いておいて】
【他にも科学雑誌に論文が掲載されたり取材を受けたりと絵に描いたような天才エピソードが解説される】

…まあ、いいわ。細かい話は今回は省略させてもらうけど…探偵から貰った虚神のデータ、それと黒幕に関する
資料から…オーウェルや国立研究所の資料ね。…そこから時空間移動に関する着想を得たの。

【それについては間違いではないのだが研究を始めた理由が「未来人が作れと資料を置いてったから」とは言えない】
【いくら色んなことの起きるこの世界でもそんな理由がすんなり受け入れられるほどアナーキーには出来ていないのだから】

……タイムマシンといっても正確には平行世界に移動する感じね。因果というものは何処をどういじればいいってものでも無いから
必ず、ハッピーエンドに未来を変えれるとは言えない…けど、どう?…いや、まあ最初は私も半信半疑だったけど。

【やればやるほど理屈は通っていく。つまりは可能だった。タイムトラベルは。…理論上は】

「大型ハドロン衝突型加速器通称、LHCがこの研究には必須なのですが。現在、それらは国家レベルの研究機関しか保有していません。」

しかもそれを動かすにはフルーソ一帯一ヶ月分の電力を発電できる設備とかも必要。………――――

【皆の考えていることは一緒だろうか】

―――――どうしよう…


311 : 名無しさん :2018/07/22(日) 23:21:39 nlFmqx6A0
>>296

感じるけど――、こんだけ魔術式重ねたら一緒だもん。ちょっと冷房かけたって、変わんないの。
……ふうん、そういうのがあるんだ。知らなかっ……、あ、奢り? 奢りがいいなぁ。ねーぇ、奢ってくれるよね?

他の子も誘って行こうね? 友達だって居るでしょ? ――みんなでさあ。ね?

【うげぇと苦い顔。されても同時なかった、動じていたとしても顔は見えないし機械の声だしで分かりづらいことこの上ないのだけれど】
【暑いかどうかは割と快適らしい。理屈としてはすでにごちゃごちゃしているのでもう少しくらいごちゃごちゃしてても気にならない、とのことで】
【それなら案外――案外、でもないのかもしれないけど、まあ、とにかく。大雑把な性質であるらしかった、「日焼けもしないし」と付け加える。露出度零ですから】

【――そしたらなんだか勝手なことを言っている。彼の奢りにて行くことが確定してしまったみたいな雰囲気だった。まして……ほかのひとも、なんて、】
【友達も誘っちゃえなんて勝手に言っている。くすくす笑うようなひどいノイズを鳴らして――、だけれど、だからこそ、あるいは、そのかすかな気配を、予感させる】

【(だから頑張って、と、応援してやるみたいな、そういう温度――気のせいかも、しれないんだけれど)】

まー、ほら。説得力がありそうじゃない? 説得力って大事でしょ? ――ほら、説得力。すごいありそう。
超ありそうだから。――ね、ほら、元気出して? アリア困ってるみたいだったよ? 助けてあげたら恩だって売れるでしょ、なんか強そうだったし――。

――それに、あたしが出来ることだって限られてるし。あたしみたいなのに頼るより、人間同士でやった方がいいと思わない? 

【相手がどこか拗ねたような声を出したのならきっと慰めタイム――ほんとに?――が始まるんだろう、「慣れてそう」なことに「説得力」があっても、】
【つまりそれはあんまり褒めていない気もするのだけど――助ける=恩が売れると言うのもどうかと思わせた。強そうだし損はないでしょ、って、言うような様子見せたなら】
【――その癖に、次の瞬間には、自分はやはり不確かだから。可能な限り頼らずにやれと言いだすんだった、――そうしてまた人間同士、という言葉を重ねていくから】
【そういうやりかたでやるって決めているみたいだった。――あるいは、全く気にしてないみたいだった。だって"こいつ"はあの少女のことも人間に当てはめているみたいだったから】

死にそうになる予定があるの? ――――まあ、呼んでくれたら、多分、聞いてるから。
助けに来るって信じてて。"あたしのところに聞こえるまで"。

【――――――だったら、それは、まるで、"それこそ"、神様みたいな、理屈だった】


312 : ◆XLNm0nfgzs :2018/07/22(日) 23:27:00 BRNVt/Aw0

【とある繁華街】

【輝くネオンサインにキャッチの呼び声、時折大音量で聞こえてくる流行りの音楽やアーケードゲームの音声】
【着飾った女が楽しげな面持ちで通る傍らで灰色のスーツに身を包んだ男が電柱に向かってくだを巻いていたり】

【そんな空間に突如響いた柄の悪そうな怒号】
【見れば派手なシャツに身を包んだ無精髭が一人の少女に絡んでいて】
【まあ、そういう如何にもといった輩が誰かに因縁をつけるなんて事象は此処等では日常茶飯事なので人々は全くといって良い程気にしてないのだが】

「おいコラクソガキャァ!テメェ何処に目ェつけて歩いとんじゃあボゲェ!」

……は?知らないし、お前が勝手にぶつかってきてんじゃん

「ァんだとこのクソガキ目上に対しての態度がなってねぇなァゴルァア?」

……ッるっさいな
こっちはめっちゃ気ィ立ってんですけど?

【柄の悪そうなチンピラを金色の瞳でぎろりと睨み付ける少女】
【生成色の大きめのキャスケットにそこからのぞく月白色の髪。灰色のシャツワンピースに身を包んでいて】


……それとも何?おっさんが私の八つ当たりに付き合ってくれるっての?
【ふは、と少女は鼻で笑って】


いーよ?だったら本気で殺ってやるから
【泣いて謝っても許してやんないから、と少女が呟いた瞬間に彼女の周囲にヒヤリとした空気が漂う】

【そうして次の瞬間、少女の両脇に直径10cmはあろうかという太さの氷柱が二本現れて】
【その鋭い切っ先をチンピラに向ける】

「ま、待て……嘘だろ!?」
【チンピラの顔は一気に青くなり】

【誰かが、能力者だ!と叫ぶ】

【辺りは騒然となるが少女は不快そうに眉をひそめただけで】

【その氷柱をチンピラに向けて飛ばそうとする】


313 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/22(日) 23:30:44 WMHqDivw0
>>310

フーン17……17!? ウソでしょあたしとタメだよそれは!
はわ、……なんだかよくわかんないけどすごい子だってことはわかった。わかるだけわかった。

【目をぐるんぐるんさせながらゾーイの説明を聞いているこいつは、ならばオツムの作りは残念だと】
【そう教えるみたいに。口にする言葉もあんまりにもバカっぽくて、それならば続く麻希音の言葉だって】
【「はえ……」とか「ほわ……」みたいな。相槌にもなってない謎言語を発しながら聞くだけ聞いて】
【……まず絶対に理解はできていない。ふーんそうなんだって口だけで言ってる、けれど】

【タイムマシンを作るためには途方もなく途方もない設備が必要だってこと。それだけ、理解できたのは――】


――――――――……え、……えんた、……円卓のお金とか借りらんないのかな?


【――その上で出てくるアイデアなんてその程度しかなかった。いずれ敵になる「円卓」に借りる、だなんて】
【無茶苦茶がすぎる発想だった。そも、お金だけで用意できる設備なのかもわからないし、……だけど、】

【 ――――何故この少女・夕月は、「円卓」なんて単語知っているんだろう。ここまで首を突っ込んでるから? 】


314 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/22(日) 23:40:03 WMHqDivw0
>>311

えっじゃあめっちゃ暑いってこと? ネッチューショーには気を付けなよ。ちゃんと水分とって……
……えっまって奢り? なんでそーなんの? おれが言いだしっぺだから? そんなんあんまりじゃんよ〜、

…………そーネ。まああーりん誘うのは確定で――あとおれ、バカの妹とかいるけど。そいつも連れてこうか。

【心配そうな顔したり慌てた顔したり表情変化が忙しい、だけど、最終的にへらっと笑う形に収まったのは】
【きっとヒメが「そういう」話をしてくれたからだった。しょぼくれた感じはだいぶとれて、にこにこ、楽しいことだけ考える】
【そういうときの表情。戻しながら言ってるけど――たぶんその手の場所にはあーりん来てくれない気もする。気がする、だけ】

説得力あるよーに見える? マジ? おれが? それはちょっと、……なんか励ましてくれてる感はありがたいけど、
ちょっと無理があるのでは……うん、まあ、困ってるあーりんを助けるのはやぶさかではない。
あと恩売れるってのもなんかイイなってのもわかる。おれなんか近々やべー目に遭いそうな気がするもん、なんか知らんけど。

……人間同士、人間同士、ね。まーそうね、人間同士のいざこざが原因で始まったことだったもん……

【せっかく慰めてもらえてるのになんか相手の心配し始めてる。たぶん殴っていいタイプのやつ】
【アリアに対する認識だってかなりけっこう酷いものだった、保険をかけておこうというのだから。アリアにも殴られていい】
【だけど最後に――言葉を重ねられたなら。そればっかりはしょうがないか、と諦めたみたいに、笑って】

…………言ったネ? じゃあぜってー呼ぶから、助けてひーちゃんって、叫ぶから。
「信じる」よ、……それが力になるんでしょ? たぶんだけど。

【その笑みを穏やかに整えながら――言うのは相手の正体がなんとなくわかった、みたいな、音色】


315 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/22(日) 23:47:32 Ty26k7V20
>>313

えっ?!ほんと?!…そっか。あんまり同世代と会ったこと無いから…
いや、別に…嬉しいとかそんなんじゃなくて…おっさんとか年上ばっかりだから
新鮮だなーって思っただけで…

【麻季音はなんかブツブツ言っているが、それもちょっとニヤニヤしていて】
【若くして天才と囃され、大学に特例で入り、飛び級してしまった彼女は同世代の知り合いは少ない】
【だからちょっとというか相当、嬉しかった。それは顔に思いっきり書いてある。わかりやすいぐらいに】


「なるほど。それは盲点でした。」

でも黒幕が同じ研究をしているんだから抑えられているんじゃ…

「黒幕の影響力は限定的です。施設はオーウェルかその他の企業のを流用しているか他国のを―――」

【その言葉を皮切りに2人はああでもこうでも話し始めたが、はたと気がついた】

…あれ?夕月さんって…鈴音さんから何処までお話聞いてるのかしら。

【もはやこの少女が察しが良いことは明白だろう。横にはアンドロイドまでいる。嘘発見器よりセキュリティは厳しそうだが】


316 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/23(月) 00:02:07 o6XMS57s0
>>308



「どこまでも愚かだね。」「そんな遣り口で、まだ貴方は死ねると思っているのか?」
「物理的デバイスの有無に意味はない。」「なぜならわたしがそうであるからだ。」「なら貴方には都合がいい。」
「一足先に見せてあげよう。」「塵の世界。」「きっと貴方のような人間は、一番気に入るだろうから、 ──── 。」


【けたけたけたと"そいつ"は嘲笑った。例え頭を自前で吹き飛ばしても無意味なんだろうって思わせた。 ──── お望み通りに、と皮肉をもって告げるように】
【全身に纏わり付いた腕の数々が少しずつかえでを締め上げていく。灼けつく指先が口の中にまで突っ込まれる。全身を生ぬるい溶鉱炉に漬けるような残虐な殺し方。】
【 ─── 然し最期の言葉尻、"そいつ"は微かに何かを疑った。忌々しそうに嘆息した。そして、ゆえに、だからこそ。】


        【銃声が響く。】
        【聞き慣れた音。】
        【世界の焼ける刻。】
        【無慈悲な夜の女王。】
        【"彼女"の奏でる独唱。】


【 ──── かえでの体を支えていた、何もかもが消えてなくなる。映されていた何度目かの死も同じように。代わりに現れるのは、どこまでも続く真っ白な地平線。】
【いっとう真白い影がかえでの体を抱きとめていた。その赤い瞳がその生涯で一度も映したことのない存在だった。ただ顔の右眼辺りに、青く穏やかな光だけが宿っていて】
【間違いなく容貌は彼女の想う誰かではなかった。然しどこまでも優しく其れはかえでの身体を抱き締めるのだろう。跪いて、涙でも流しそうな顔をして。目鼻さえ無いのに】
【 ──── ひんやりと冷たかった。なのに温かかった。いつの日か触れた35度の体温がそこにはあった。其れが彼女の本質だった。狼の鉄仮面の下、覆い隠した矛盾に苦悩して、だから誰かの温もりが欲しくて。】



「 ──── ごめんね。」「今まで、上手に"見えなく"て。」「許してくれなくてもいい。」「けれどもう、約束よ。」
「私が助けるから。」「かえでのこと。」「 ─── お願い今の一瞬だけでいいの。」「だから、」



        「信じて。」




【 ──── 神様と呼ぶには卑近に過ぎた。恋人と呼ぶには高尚に過ぎた。母親と呼ぶには恐懼に過ぎた。だからこそ"そこ"に居るのだろう。】
【どこまでも切実に其れは囁いた。 ─── これもまた幻想であるのかもしれない。誰も少女を助けようなんて思っていないのかもしれない。】
【だから頷くかそうしないかは全て少女に委ねられていた。そしてまた、どちらかの答えを示さない限り、その瞬間はいつまでだって続いた。】


317 : 名無しさん :2018/07/23(月) 00:08:14 nlFmqx6A0
>>314

暑くないよ? 暑いの苦手だもん。すーっごく涼しくなるようにしてる――。これでも術師だもん。てんで駄目だけど――……、
――――奢ってくれないの? 言い出しっぺなのに――? ――――……はい、決まりね? 奢り!
あたしねぇ、パフェとか食べたいなぁ、パフェある? カラオケってパフェあるよね? じゃあ、それとー。

【――多分表情が見えていたらうんとかわいい声と顔して上目遣い!って感じの態度だろう。けれど現実にそこに居るのは黒づくめで狐面の不審者、だったなら】
【それでもめいっぱいにおねだり――なってない――していた、やがて相手が折れればどこか嬉しそう、というか、してやったり、というか、そういう態度をして】
【カラオケならいろいろあるよねって言ってパフェとかなんだとか言っている。――「カラオケとか行ったことないもん」、小さな呟き声。ころころ笑うノイズがうるさい】

情けは人の為ならずって言うでしょ、だからね、恩なんて売って歩けばいいの、そうでしょ?
だーかーらー、――まあ、頑張って。あなたたちの世界なんだから。やばい目に遭うかは知んないけど、さあ。

――――そーね。それでいい。あたしとこの世界にはほとんど縁がないの。だから本気じゃないと聞こえないかもね。

【人間同士。目の前の彼も、件の"彼女"も、あの少女も、ぜーんぶ、人間。そうやってひっくるめるのは大雑把ですらない、乱暴なのかもしれない】
【だけれど少なくともあの少女は喜びそうだった。喜ぶというよりか、――安堵しそうだった。そうだと思わせた。だからきっと悪くない、――悪すぎはしないと思いたくて】
【正体を気取られようと態度は変わらない――聞いてもきっと答えてくれないんだけど、それでも、推察する自由くらいはあるだろう、でないと、あんまりに、意地悪だから】
【――くすりと笑うような吐息。だけれどひどい耳障りなノイズの音。だからと言って、もしも"そう"だったとして、本人がそうやって言うのは、少し、情緒がなさすぎる気もした】

【――――――だけれど。こんな不審者なんだし、それはかえって、"それっぽい"のかも、しれないけれど――】


318 : ◆9VoJCcNhSw :2018/07/23(月) 00:51:42 wn2rqSVw0
>>258

【襟首を掴まれる。そのまま引き寄せようと思えば、それは容易で】
【線の細い身体は上背があろうと意外なほどに軽くもあり】
【なによりその軽さは、不健康さと糸で吊られた人形のような感触を残し】


……さあ、どうだろう。居るかも知れないし、居ないのかも。
オメラスはね、とてもいい所なんだ。皆が幸せで、そうでなきゃならない場所だから。
皆がそこで暮せば、不幸せな思いをする人なんていないから。
だから、そうだね。だから招待したんだ、君のことを。


【「其処はこうして周りを照らしてる〝■〟はあるのかい?」】
【その一言に対しては、最早耳に届いた様子もなく言葉が続いた】

【当然のごとく、言語は前後の一貫性が無い。洗脳された廃人にも似る反応】
【論理的な会話を好むのであれば、尚更苛立ちは募ることだろう】
【かつての悠然とした、奥深くも煌めきの在った頃を知るのなら尚更だ】

【では、どうするか。殴るか、撃つか、或いは放って帰るだろうか】
【――その選択肢を取る前に。その男は襟首を掴む彼女の手首に静かに触れて】


        
           〝じゃあ、行こうか〟
 


【修道女との会話には、何らかの明確な答えを一つも残さぬまま】
【"世界は歪む"。僅かな目眩と、胃を引っ繰り返したような不快感】

【なにより魔術に長けた者であれば、より純度の高い術式が――"世界を構築していく"のが、分かるだろう】
【それは塗り替えるのでもなければ、認識の改変でもなく、固有結界でもない】
【神に愛されたが故の強大な能力そのものが世界として展開される、それが答えだ】



【気付けば、修道女はある街の通りに立っている】

【街は道が綺麗に掃き清められ、石畳は前時代的ながらも何処か懐かしく】
【街灯はガス式だろうか。明かりこそ弱かったが、どこか温かい】
【立ち並ぶ建物は西洋――東欧系の様式であったが、これには明かりが灯っていなかった】
【夜だ。真夏の路地裏であったはずだったが、この街には雪がちらつくほどに寒かった】
【夜空には満天の星々。しかしそこに主のように居座るはずの〝■〟は姿が無く】

【前に進めば、街の中心部へ。どの家にも火は無く、扉も固く閉じられて】
【けれど街灯に誘われるように歩いてゆけば、一軒の家屋にたどり着くことが出来るだろう】
【その家は他と代わり映えしない――強いて言えば、何処か造形が細かいようにも思えたが】
【白い外壁の家屋は立派で、裕福さを感じさせるには十分な重厚な扉にドアノッカーが付いていた】

【或いは街へと向かわず、その道を背後へと向かうなら】
【町並みはすぐに無くなって、荒野が広がっている】
【あるのは高山、そして氷河。――ただ、山の一角には明かりが灯っていた】


【どちらにせよ、その世界には〝音楽〟が流れていた】
【ピアノを中心とした組曲。温かく優しいようで、何処か物寂しい】
【戦火に見舞われた街にでも似合いそうな、そういう曲が何処からともなく聞こえていた】


319 : 名無しさん :2018/07/23(月) 01:00:46 nlFmqx6A0
>>316

【茹だった脳はもうなんにも考えさせてもくれなかった。意識を何度も何度も取り落としそうになって、そのたびに、弱虫がわずかに抵抗する】
【だからごく微かな最低限のレベルで意識を保っていた。それなら結局自殺も出来そうになかった。でも多分そのうち死ぬって思わせた。いつか、間違いなく】
【ゆえに死因はくだらない躊躇いでありそれでしかない。もう感覚もほとんどないから。どうでもよかった。けれど詰め込まれた指の隙間から、かすかに、】

――――――――――――――……だれなの、

【――最期にそれだけは知りたいから、というみたいに。尋ねた、尋ねて、けれど、それを聞き取ることは、きっと、できないから】

【――――――、もしも誰かがこの少女の本質を見通すことがあったとして。であればその"誰か"が見るのは、きっと、擦り切れた砂細工のようであるのだろう】
【もはや呪う概念に成り果てた蛞蝓の歯舌にて存在を何度も何度も何度も磨り減らされ、ざらざらにぼやけて、そしてきっと、護ろうと同じく概念に果てた力は弱すぎて】
【だから護りきれているなんて到底言えなかったし、ゆえに少女も"それこそ"悪なのだと認識していた。今もしているに違いなかった。だから赦しを乞うのに】
【蛇は最初から少女を怨んでなんかなかった。――まっしろの世界でかすかに目が開く。死んだあとにしては平穏が過ぎた、だって誰かに抱きとめられている】

……………………――――、
――――いっぱい、いっぱい、やさしく、して……、…………。

【――――たすけて、とは、言えなかった。それを言ってしまったら終わりだった。そうしたら今までの何もかも、なにもかも――、だめになってしまうから】
【助けてほしいのに。助けてって言ってしまうのは背徳で。だけど独りじゃどうしようもなくて。怖いから。誰かに居てほしいけど。だけど。でも。塗り重ねていく】
【どうしようもなくたって生きるしかない。だからめいっぱいに罰を選んで歩いてきた。そうしてようやく安堵できた。頑張ってるから。頑張ったから。大丈夫だ、って】
【けれど同時に救われることはありえないような考え方だった。だってどれだけ頑張ったって、救われないでいないと、頑張る理由もなくなってしまうし】
【頑張る理由がなくなったらどうしたらいいんだろう。――――、ああ、だから、"あのとき"言われた言葉。全部が全部。本当だったんだ】

【――だけど、同時に、突っぱねてしまうことも、出来ない。救われたいのは本当だった。だけど救われたら終わりなのも本当だった。あどけない声が、ためらって】
【やがて漏らすのはいつかと同じであるのだろう――それがめいっぱいであるように。そして同時にそれが一番欲しいんだっていうみたいに】

【(だって本当に欲しい救いの形は神様が"はい"って手渡してくれるようなものじゃなくて、)】
【(それよりむしろ、いっとう暑い季節に、母親が一つのアイスを真ん中で半分こして、そのかたわれを"はい"って手渡してくれる時の、温度に似ていて)】
【(*****が**に**からって、*に*も**に****)】
【(――それを知らないだけだった。あるいは忘れてしまっただけだった。助けてって言うことさえできないくらい、手遅れだったけど)】


320 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/23(月) 02:17:22 F1R3rKtM0
>>319


【白い影は答えなかった。そんな問いは分かり切っているだろうと言うのかもしれない。ともすれば答えられないだけかもしれなかつた。 ─── あるいは、】
【少女がその答えをみずから見出す瞬間を待っているのかもしれなかった。であれば其の答えは今に解せる筈のないものだった。だから、きっと。】



          ──── 貴女の望んでくれる限り。




【白い影には十分だった。いつかに聞いた、その告解だけで。】
【すべて夢は醒めてゆく。真っ白い世界に鮮やかな色がついていく。】
【 ──── 少女を抱き締める腕もまた彩られた。夜明けの光を蓄える新雪のような肌色。暁日を浴びる銀世界のような長髪。】
【██と███えない███だからこそ███は█じ██を█ってくれるって信じていた。赤い瞳を上向けるのなら、██は、きっと、】





【 ──── 目を覚ますのならそこは広間である。巨大なドーム状のホール、その中央。長い間だれからも見向きもされていなかったシャンデリアには埃が積もっていた。】
【起き上がるのなら人形なんて居ない。回廊に繋がる扉は壊れて開かない。強かに打ち付けた筈の脚も痛まない。観音開きの大扉だけが明け透けに開いて、夜明けの冷たい風が吹き込むことを許していた。】

【ただ少女の足元には幾ばくかのタロットが散らばっていた。破れてなんかいなかった。左手から見て、5枚が正位置に並んでいた。】
【女帝(Empress)。魔術師(Magician)。皇帝(Emperor)。節制(Temparance)。吊るされた男(Hangedman)。 ──── だからそれは、真理(EMETH)。】
【幻影の中で破り捨てられた女帝は、即ち少女の見せられたものは悉く破滅(METH)の幻であることを暗喩していた。夢のお告げは皆な偽証だった。ただ一つ、あの白い影の言葉を除いて。】

【然してそんな言葉遊びはかえでにとって意味を持たないのかもしれない。あるいは"それ"だけで十分だった。裏返しになった女帝のカードに、何か記されていた。】
【何かの引用と思しき英文であった。だが内容よりも先に、 ──── "彼女"の書いた文字を見たことがあるなら解るだろう。その字は間違いなく、アリアの手で記された物。】



〔There is not love of life without despair about life.〕 ──── 己れに絶望した人間だけが、己れを愛せる。
〔I'll wait for you in Limbus, neither Heaven nor Hell.〕 ──── 辺獄にて待つ。天国でも地獄でもなく。



【 ──── きっと彼女は生きていた。そして少女を待ち続けていた。ゆえに死ぬなと願っていた。"あのとき"、全てを賭して少女の命を護ったように。】
【そこから先の命は全て少女に委ねられる。それこそ死んだって許されるに違いない。いつか骸を見つけた憐れな人形が、ただ絶望に哭きながら崩れ落ちるだけ。】
【世界の振りかざす、自由という名の正当なるディストピアは、きっと少女を押し潰そうとするのだけれど、 ─── 隣に、だれか影のあることを知るのなら、或いは。】


321 : 名無しさん :2018/07/23(月) 19:01:17 iiuKx7jU0
>>320

【ひどく真っ白な場所だと思った。だから自分なんていない方がいいと思った、いますぐにでもどこかに消えてしまいたいような気になって、】
【だけれどうんと寒い冬の朝の布団よりも快いなら離れられる来もしなかった。ならばこんな出来事どんなふうに赦しを乞えばいいのだろう、】
【どうしたら赦してもらえるのか今となっては何もわからないしわかれなくて、だから一生懸命なのにみんながひどい言葉でなじるのだから、】

………………、――――、――、おこってる?

【――だからそれは引け目なのかもしれなかった。ひどいことをしたって分かっているのかもしれなかった。なにもかも踏みにじってここまで来たくせに】
【大好きな人に対しては気づいてしまうのかもしれなかった。ならほんとはずっと気づかないでいたのかもしれなかった。だからやっぱり蛇の神様は彼女を赦してくださらないんだと思う】
【ひどく小さな幼声が消えゆく世界に逆らうように手向けられた、それでもきっと花嫁が投げる花束よりも色あせて、とはいえ仏前にやるものよりは華やかで、だから、】
【子供が一生懸命貯めたお小遣いにて購入した花束にきっと似ていた。花びらの一枚さえも決して折れてしまわぬようにと持ち帰ってきた色合い、皐月の日はまだ遠いけれど】

【――――――――だから少女は一人で目を覚ますんだろう。埃っぽい室内にて目を開ける、漏れ出る吐息が触れたなら、床に積もる土埃がわずかに揺らいで】
【小さく呻いたなら喉がいがいがした。埃でも吸い込んだのかもしれない。それより気怠かった。――疲れ果てて眠ってしまったのかもしれなかった。生きてることすら奇跡みたいに】
【わずかに身じろぎした足先で何かが地面とこすれる気配があって、手を伸ばす。――やがて触れるのはカードであった、けれど、やっぱり、その意味は知らないから】
【それに足で蹴飛ばしてしまった時に順番も乱してしまったみたいだった。ぼんやりとした目が、ゆるりと撫でて――やがて、筆跡を、見つけ出すなら】

――――。

【はたり、と、瞬き一つ。呆とした表情はあんまり変わらなかった。ただ一つ、口角のところがわずかに緩んだような気配のみ、させて】
【――今までの努力が実りつつあるとか。必要なものはすべて揃っているとか。相手を受け入れろとか。足りない何かを求める必要はないだとか】
【――――そんな"意味合い"はきっと彼女には必要ないんだろう。カードの意味より数字の意味より大事なものがあるのなら、】

【けれど――――――今はそれよりも少しだけ眠りたい気分だった。それで死んでしまってもいいかなと思えた。だから、一つ、賭けをする】
【もう一度目覚めることがあったなら、】【(そのときは)】

/たびたびお待たせしてしまってすみませんでしたっ、おつかれさまでした!


322 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/23(月) 19:39:03 WMHqDivw0
>>315

……じゃああたしのこと夕月って呼び捨てで呼んでもいいよ。
そっか、テキトーな綽名で呼んでくれてもいい。……トモダチになろうよ、マッキー。ゾーイさんも。

【――――ふ、と零れるように笑った頃には。夕月は既に麻希音のことを綽名で呼んでいて】
【それがはじまりの合図なのかもしれなかった。友達になるための、……そんな合図必要なのかどうか】
【わかりはしないけれど。きっとこれから先、気軽に呼んでくれても、快く返事をしてくれるだろう】

【……それも少しの間だけ。二人が疑問に気付いたなら、ぐ、と喉のつまるような音を鳴らして、】


…………あ、あたし、……円卓の人間だから。……性格は円卓に属してる人間の、「所有物」。
だからそのあたりの事情も、ちょっとは、わかってる……の。

【正直に話してしまう。だって麻希音もゾーイも腹を割って話してくれたんだから】
【自分だけ隠し事するのはフェアじゃないと思った。だから口にして――視線は合わさず、落としてしまう】
【さっきの長い話で言っていた「助けてほしいことがあった」というのも、きっとそのことだったんだろう】
【それくらいは予感させるけど。……そんなことで助けてほしいなんて言ってる場合じゃないって、言ってしまうんだろう】
【夕月は今のところ、何より誰より鈴音のことを最優先させているんだから。……それが通じるかどうかはべつとして】


323 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/23(月) 19:46:35 WMHqDivw0
>>317

………………あーはいはい奢り奢り! パフェたぶんありますぅー!
あとなんかハニトーとかそーいうのもあると思いますぅー、好きなだけ頼んで下さーい、
……ほんともう、好きにすれば。なんもかんも全部終わったなら、それくらいは許してやってもいーよ……

【呆れたようにぽーいと両手を投げ出すような仕草、しながらも彼は少しだけ笑っていた】
【ほんの少しだけだけど。きらめく未来の欠片を見つけられたなら――それだけで十分だって】
【本当にそれだけで十分だとすら思えた。たとえそれが叶わなくても、……というのは、言わなかったけど】

【(彼の本質、そのに。「あきらめ」に思考を支配されている、……最近はそれも少し和らいでいたんだが)】

ン、…………わかった。できるだけ、……できる以上に頑張ってあげるから。
ひーちゃんちゃんと見ててネ、そんで、上手くできたら褒めて。褒められたら伸びる子だから、おれ。

わかった、じゃあ約束――――おれは助けてほしいときにひーちゃん呼ぶから、
ひーちゃんもなんか助けてほしいことあったら、呼んで。……ニンゲンの力でいいなら貸してやるから。

【子供っぽい言葉をいくつも連ねながら、差し出すのは小指。ぴんと立てて、アンテナみたく、何かを受け取ろうと】
【それにヒメのやつも絡めてくれって言外におねがいしていた。……答えてくれなくたっていいけど、だって】
【これは「人間」がやる約束の仕草であったなら。そうでないモノがやったって、意味はないのかもしれない、けど】


324 : 名無しさん :2018/07/23(月) 20:07:33 iiuKx7jU0
>>323

――やったあ。甘いの大好き。バニラアイス乗っけてもいい? だって、ああいうのって、アイスとかだいたい、別料金で――。
それと生クリームと。ミントは要らないからあげるね。果物のソースかけてもらって。そしたら――。

【未来に残す約束。それはいつかを一緒に迎えようねって誓いに似て、だから、夢物語じゃない。その意味合いはきっと生きるためのおまじないだった】
【こんなに入り組んだ状況の中で。誰しも何かしらの事情を抱えている中で。それでも"いつか""一緒に"と願うのなら。――思い出すかもしれない、あの少女とだって、した】
【きっとあの少女だって覚えているだろう。本当の名前を教えてもらうこと。一緒にたんぽぽをやってくれること。ならいまさら約束事の一つ二つくらい、一緒だろう】
【――"こいつ"のほうがいろいろ分かっていてやっていそうな感じは、したけれど。課金で追加できるアイスを四つくらいは足しそうだったから】

ふーん? じゃあ、褒める練習、しておかないと。辞書とか読んでおくね。花鳥風月みたいな感じの……。語彙力な感じの……。

【褒められたら伸びる子だから、と。言われたなら一瞬ぱちりと瞬くみたいな間があった。そしたらなにそれって言うみたいな仕草、笑うみたいにして】
【だけれど馬鹿にする温度では、けしてない。だから辞書とか読んでお勉強しておくっていうのは冗談めかしていたけど、――というかこの時点で語彙がない】
【――――その反面で。多分その時には自分はいないけれど。とは、言わなかった。そんな言葉で折ってしまう意味はないだろう、だから、――冗談めかして】

ニンゲンの力で"いいなら"――って。ニンゲンの力"が"いいのに。
あたしたちにはできないこと、いっぱいできるでしょ? ――――、もう、しょうがないなぁ。どーしてもっていうなら……。

【それはちょっとした言葉遊びなのかもしれない。だけどどこまでも本気だった。立てられる指には一瞬だけ、迷うような間があるけれど】
【そろりと腕を持ち上げる、――よいしょと布地をたくし上げたなら、真っ白な、指先。ちらりと覗かすのだろう。けれどほんの一瞬だけ。指切りをする、間だけ】
【ひどく華奢だった。そしてどこかでちょっと子供ぽい造形の指だった。爪はすらと細長くて。体温はちょっと冷たくて――】


325 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/23(月) 20:21:50 WMHqDivw0
>>324

おーおートッピング全乗せでいーよもう。それくらいパーってやんなきゃウソだもん。……めっちゃ頑張るんだから。
ミントってあれ喰うモンなの? ただの飾りだと思っていつもよけてたけど……おれベリーよりマンゴーのソースが好き。

【いつしか話はトッピングどうしようみたいな感じになっていた。ならばもう、「打ち上げ」に行くのは確定事項で】
【……ふっと思い出していた。あのコとだってこんな風に、出来るかすらもわからない約束、した】
【そういうのはやらない主義だったのに、いつからこうなっちゃったのかなあとか考えて。ふっと観念したみたいに】
【また笑った。決していやそうな顔ではなかった――きっといくらトッピングを積まれても、こうして笑って見せるだろう】

花鳥風月ってソレ褒めるときに使うコトバ? そーいうんじゃなくってフツーに、
よくがんばったねーえらいねーくらいでイイのに。……、……。

…………そう、ニンゲン「が」いいんだ。そーいうのは考えたことなかったな、だって、
カミサマって何でもできると思ってたから。……人間のできること全部、できるもんだと思ってた。

【褒める言葉。それくらいでいいって言ってから――「それくらい」を望んでいたコがどこかにいたんだってこと、今更気付いて】
【少しだけ口を閉じるけど。続くヒメの言葉にまたちょっとだけ笑う、……できないことあったんだって、わかって、笑うなら】
【「どーしてもだよ」。お願い事をする、これがきっと人間にしかできないことのひとつなんだろう】

――――ゆび・きっ・た。はいじゃあこれで約束完了、……じゃ、おれ、頑張ってあーりん探しに行く。

【絡めた指が離れたら、投げ捨てて久しかった本を律儀に拾い上げて――出て行こうとするだろう、公園】
【それから行く先はきっと夜の街だった。冷たい月の色合いが生える彼女を探しに行くって言いだして】
【止めないならそのまま。ばいばい、腕を大きく振って――背中を向けることだろう】


326 : 名無しさん :2018/07/23(月) 20:47:17 iiuKx7jU0
>>325

たべないの? 農家の人が作ってるのに? ……まあ、あたしも、好きじゃないけど……。
裏側がざらざらしてなければもう少し食べやすいんだけど――あたしは、ベリーがいいな。それか、チョコとか……。
チョコバナナのやつとか、あるかな? ――いろんな味があるお店。探しておいてね。

【そしてなぜだか急に責めるみたいな目をするんだった。いや。目は見えなかったけれど。そういう感じの声をした、農家の人が作っているのに、って】
【なら"こいつ"は頑張って食べているのかもしれないと思わせる、味については――まあ好き好きだろう。チョコもいいなぁとか、そしたらバナナが、とか言い出しちゃうなら】
【最終的にはそういう味がいろいろあるお店を選んでおいて、と、宿題にする。もちろん彼の。――――観念したみたいな笑みには「それでよろしい」というよな、態度】

――――違うっけ。まあ、いいでしょ? パフェだっていろいろな具が載ってた方が楽しいじゃない。
フルーツとクリームとアイスでしょ、それからコーンフレークに、ゼリーに、なんか……あと何入れるっけ? あとはー、……。
チーズケーキ? ――ねえ、ケーキが刺さってるパフェって食べたことある? 邪魔じゃないのかな、どうやって食べるの? お皿に降ろすの?

――そう、人間"が"いいの。あははは、――神様なんて何にもできないの。信じてもらわないとね。信じてもらえるなら、まあ、頑張るけど。

【つまりはどうせならいろんな言葉で褒めちぎってやろうって意味合いに違いなかった。なら意外と几帳面なのかもしれない、大雑把なくせに、細部はこだわるタイプ】
【ほんとうにどうでもいいことをしゃべっていたんだけれど――相手の言葉に、ふ、と、微かな吐息。神様だなんて名乗った覚えはなかったけど】
【別にどうでもよかったから――指摘なんてしなかった。その代わりにちょっとだけベンチを軋ませる、身体を起こして、ゆびきりげんまん】

うん。行ってらっしゃい。

【――終えれば、"そいつ"は相手を引き留めない。むしろ年長者や親がやるみたいに彼のことを見送ろうとするのだ、きっと、どこか慈愛に似る温度感を抱きしめて】
【手でも振るかもしれなかった。指を出すようにしていたなら、その仕草につられて、そろり、――と、真っ白な手が、手首のところまで、見えてしまう】
【ひらひらと振る仕草は彼が居なくなるまで続けている。――――だけれど、彼が見えなくなったなら、はたん、と、足音もなく、立ち上がる、――そうしたら】

――――――これくらいじゃ"まだ"確信は持たれないみたいね。よかった。

【真っ白の指先を再びローブの中にしまい込む――――ぷつん、と、その姿が消える。転移の魔術式だった。だから、その行き先は誰も知らなくて、誰にも、知られることなくて】

/おつかれさまでした!


327 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/23(月) 22:09:27 o6XMS57s0


【終わらない夜。短針が12時を回る。シンデレラなんてこの街にはいなかった。だから目に映るうつくしいものは、皆な本物に違いなかった。】
【ブレイクショットの音が響く。セットされたカラーボールがポケットテーブルの上に飛び散って、行き場のない感情に似て転がり回る。そうして、止まる。】


【水国某所、とある大都市。騒がしい大通りから外れた、路地裏の奥にある場末の酒場。悪い微睡みのように明滅するネオンの看板から、地下行きの階段が伸びていた。 】
【古めかしい木造りのドアを開けるなら直ぐにカウンターが現れるのだろう。不愛想なバーテンがありがちにグラスを磨いていた。客の姿は余り多くなかった。】
【陰翳を消さぬ程度に照らす幾つかの室内灯は暖色だった。ニス塗りのチーク材が演出する内装はいかにも長酒をするのに似つかわしい空間だった。】
【 ─── 店の奥には化粧室へ繋がるドアと、わざとらしい位にライトアップされたビリヤード台があった。尤も人の少ない店だったから、そう多くが囲んでいる訳でもなく】
【今しがた対戦を終えたふたりの人影が他愛もない話をして、 ─── 一人は明日に響くからと言って去っていった。そうして、もう一人だけが残った。立ち尽くしていた。】



「 ────── …………… 。」


【爪先で立つのなら、燻されたような天井を掠めそうなくらいだった。長身痩躯の女だった。それなりに空調が効いているとは言え、夏場に着るとは思えない外套を纏っていた】
【腰にまで伸びる銀髪は、穏やかな光を浴びて暖炉の前に翳すように煌めいていた。顔の半面を隠していた。雪像のように端整な横顔は儚げであった。長い睫毛が愁いを帯びて震えた。】
【テーブルの縁に置いたショットグラスには、ジョニーウォーカーのブルーラベルが注がれていた。悲哀ゆえにロックに違いなかった。呷るならば真白い喉が晒された。】
【 ──── 誰かを待っているような顔をしていた。ビリヤードを一人で遊ぶゲームとは思っていないらしかった。けれど幾ら待っても望む誰かは来ないって、自分の中で分かっている顔でもあった。】


/よやくのやつです!


328 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/23(月) 22:25:41 WMHqDivw0
>>327

えーうそー? ビリヤードっておれケッコー偏見もって言ったコトだったんだけどおー。
マジでいるじゃん、……あはは、あーりん超似合う。思ってたとーりだ。

【新たなる来訪者――ドアを開けて歩み寄って来るなり遠慮のえの字もない声でへらへら笑うなら】
【聞き覚えがあるはずだった。前に会ったときだってこの男はこういう声で笑っていた】
【そして当たり前と言わんばかり、パーソナルスペースの侵害。立ち尽くすアリアのすぐそばまで来て】

【――――彼女の望む赤紫の色合いじゃない。代わりに、人を馬鹿にしくさったみたいな、嘘みたいに黄色い瞳】
【それで下からじいっと見上げてくる、楽しげに細めながら。口元だってゆるゆる融けるみたいに】
【何がそんなに可笑しいんだと訊かれれば、返す言葉は「また会えてうれしいから」。それだけ、なんてわかりやすい】

あーりん、あーりん。久しぶり! おれのこと覚えてる?
覚えてないなら思い出して、覚えてるんならお話しよ――――おれ、「ヒメちゃん」に会ったよ。
……ああ、あーりんの「お姫様」じゃなくて。「ヒメ」のほうのこと、……って言ったら、わかる?

【「こんこん」。右手、人差し指と小指だけ立てて、あとは伸ばして開けたり閉めたり】
【手遊びで作るキツネの形。にぱっと笑う顔の真横で動かしてから――ぱっとパーに開いて、ひらひら振って】
【動作だけでも小うるさい男だった。だけど追い払うにはちょっと、気にかかる言葉ばかり、残すから】

――――――作戦会議しようよ。会いたいオンナノコにもう一回会うための……お互いに。

【そうして誰にも聞こえない音量で、内緒話を始めようって誘ってくる。マナーのマの字もない、無遠慮なお誘いだった】
【きっとエスコートは期待できない。けれど何かしら――アリアが欲しがる情報を持ってるかもしれない。そう、予感させて】


329 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/23(月) 22:49:10 o6XMS57s0
>>328


「 ──── あら。久しぶりね。」「 ……… いまいち、話が掴めないけれど。」
「貴方みたいな人間のこと、忘れられるほど便利な頭はしてないわ。」「 ─── それで、」

【それで、何の用。 ─── そう訊ねようとしたらしき瞬間に、言葉が止まる。幾ばくか複雑な感情が青い隻眼に宿る。】
【向き直るのなら、白銀の長髪が冷たい大気をひらりと繊切りにした。相変わらずの距離感に、少しばかり鬱陶しそうな顔をするも】
【にべもなく追い払うだけの気力は残っていないらしかった。以前の横顔に宿っていた怜悧さと冷酷さは何方も随分と色褪せて、代わりに儚さばかりが目立っていた。】


「 ……… "会えた"のね。ふうん。」「 ………… はあ。どこまで話してくれたのかしらね。」
「あるいはどこまで訊ねたのかしら。」「 ──── 手前の事情に口を挟まれて、余り良い気分はしない、のだけれど。」


【ひとつの語句に女の眉が動いた。あからさまに触れられたくない概念であるらしかった。相手の人柄ゆえに許していた。】
【深く深く溜め息を吐いて、も一度ショットグラスを呷って飲み干す。からん、と氷の崩れる音がした。】
【そうして暫くの沈黙は、御誂え向きの蓄音機から流れる誰かのピアノソロが取り持ってくれた。数十秒の思案の後、彼女は顔を上げた。】



「 ……… まあ、私も方策があるわけでもない。」「 ─── 助け船、出してくれるなら乗ってもいい。」
「ただし文句は無しにしましょう。お互いが、お互いに、ね。」



【それは遠回しな承諾であり、藁をも縋るような薄っぺらい信頼でもあった。「ビリヤードは分かる?」 ─── 首を横に振られるなら、カウンターに移るのだろう。】
【怪訝そうな顔をするバーテンに注文を投げかける。「ビトウィーン・ザ・シーツを、ふたつ。」ふッ、と横顔で笑った。呆れるように、希うように。】


330 : リゼ ◆D2zUq282Mc :2018/07/23(月) 22:56:06 JY1GydDk0
>>309

そうだねぇ、外とは比較になんない位に快適な場所だからねー。
―――……ってちゃん瑠璃は寒がり?あても上着が無いから今はこれで勘弁してネ。

【気遣いの心算だろう。リゼは自身が被っていたワインレッドのキャスケット帽を瑠璃の頭に被せようとする】
【リゼが被っていてもブカブカなその帽子を被れば多少なりとも風除けにはなるだろうと思って】


きっと美味しく食べられると思うよー。(……多分)
(……よっぽどあての髪が気に入ったのかなー。それはそれで嬉しいけどネ)

【自分の髪を何かの料理に見立てられるのはやや複雑であったが】
【機嫌よく無邪気にはしゃぐ瑠璃の姿を瞳に映せば、そんな事なんてどうでも良くなって】
【瑠璃につられてリゼも混じり気の無い笑みを浮かべて、合わせてはしゃぐのであった】


へぇ…!見つけたんだ!あてにも見せて見せてっ!
ちゃん瑠璃が何を示すのか興味あるよー、どれどれ見してみー?

【"果たしてどんなスイーツかなー、無難にモンブランかな?"などと言う幻想は打ち砕かれる】
【瑠璃の毛先が示したのはスイーツではなく、ラーメン。そう――ラーメン。晴天の霹靂である】
【リゼの表情が固まる。予想もしてなかったラーメンこそが自身の髪の味だと示されて意識が遠退きそう】


…ラーメン、らーめん。……そっかぁ、あての髪はしょうゆ味のラーメンかあ。
―――……ただ繊細なのはあってるから良し。うん、他にも頼んじゃいなよ。

【モンブランのページを指差して、"これもどうだい?あての髪に似てるだろう"とさりげなく無言の主張】
【どうやらリゼは譲らない。にこやかな表情とは裏腹にモンブランの写真をを指差す力はとても強い】


331 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/23(月) 23:08:03 WMHqDivw0
>>329

えー? なんか寝取られたとかそこら辺まで教えてもらった。
大丈夫大丈夫おれもそんな感じだからさー、……いや別にコイビトそーされたわけじゃないんだけど。

【あまりにも無遠慮かつ無配慮。前会ったときから何も変わってないし、変えようとする気概も見られない】
【それなら一発殴ってやってもいいくらいにはもう、失礼が極まっていた。怒ったようなそぶりを見せれば】
【ごめんごめーん、とか、すっごい適当に謝るけど。はたして本心かどうかはわからないんだから――やっぱり殴っといた方がいい】

助け船って言われてもナー。なんか出せるモンあるかどーかって言われれば……まあ、微妙。
ぶっちゃけおれ、ひーちゃんに「利害が一致するなら一緒に頑張れば?」って言われただけだし。
そもそも一致してるのかも、わかんないし……あーりんは「お姫様」を連れ戻したいって思ってンだよね?

おれが連れ戻したいと思ってんのは「白神鈴音」だけど。そこんとこどう、あーりん的にジャマになる?

【当然のように「わかんない」と言って首を横に振る。であればカウンターに座って、頬杖をついて】
【訊くのはそんなことだったから――早くも座礁した、とか思っちゃうだろうか。何せアリアの「お姫様」は】
【その子のこと、とても嫌っていた……はずだから。でもお互いに文句はなしって約束したなら】
【なんとか話を合わせなくちゃ、いけないような気もするんだろう。……本当に、お互いに】

…………まーいいや。おれ、虚神関係は「妹」からしか話聞けてないし。
なんか詳しいこと教えてよ、逆におれが教えられるのは――白神鈴音、鈴音ちゃんのことくらいかな。
あのコがどーしてカミサマになったのかって話。そんくらい、あとは……妹から聞いた話をちょっと教えられる、くらい?

【「こんなちゃんとしたトコでお酒飲むのわりと初めてかも」。言いながら、ちょっとだけ頭を前に傾けて――首を傾げる】
【男にしてはちょっと長めの銀髪が垂れさがって、けれどテーブルにはギリギリつかない。それくらいの、距離感】


332 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/23(月) 23:41:27 o6XMS57s0
>>331


「 ─── どういう伝わり方してるのかしら。」「 ……… 別に、構わないけれど。」


【寝取られた ─── という表現は言い当て妙であった。ただ間違いなく癪に触る類の言い回しでもあった。あまり心中は穏やかでない顔をしていた。】
【拳の一発でどうにかなる性格ではないように思えた。であれば殴っても仕方がないのと同義だった。そういう感情はもっと別の機会に取って置きたかった。】


「私が取り戻したいのは、あの子 ─── かえでだけよ。」「かえでを抱き締められるのなら、それだけで構わない。」
「だから白神鈴音については、 ……… けれど、身の上は聞いている。自分のことが分からなくて、だから人間だと思いたかった、そういう神様だって。」
「同情できない訳じゃないわ。何も考えなくていいなら、目の前にいたら手を貸すでしょう。だけど、それ以上のことは期待しないで頂戴。」


【同じようにカウンター席へ腰掛けて、滔々と言葉を紡ぐ。独白に近いものだった。ブランデーとラムの入り混じるカクテルは直ぐに届いた。】
【一口に飲み干して、 ─── 然し存外に答えは柔和であった。白神鈴音の身の上には、案じるものがあるとさえ言っていた。】
【それでも"あの子"を語る声音には、どこか夢見を彷徨うような、恍惚としたような、そんな色合いが含まれている。愛してもいるし、入れ込み過ぎているけれど、】
【その価値観を盲目的に支える訳ではない。そういう距離感の恋慕であり、故にこそ消せない愛情でもあった。】


「何処ぞの神様に誑かされた、 ─── そんな話は小耳に挟んでるわ。」「神様ってのは碌なのがいないわね。会う連中のどいつもこいつも性格悪くって嫌になる。」

「 ──── 今、貴方と私で共通の敵になりそうなのは」「ジャ=ロって名前の腐れた外道よ。」「貴方とはまた違った顔の優男。」
「そいつは神になった白神鈴音を"利用"して、この世界を滅ぼそうとしている。」「その神格を消し去るという手段を含め、ね。」
「その手駒にかえでを誑かして使っている。この間はそれで出し抜かれて、奪われて、弄ばれた。」「だから私はアイツを許さない。絶対に。」


【肩口から垂れる白銀の髪はテーブルをしっとりと撫ぜる。横顔に宿る青い瞳に、 ─── 恐らくは殺意が宿っていた。オムレツを名乗る青年が、恐らく見た事のない類の色。】
【そしてまた吐き捨てるように語っていた。ひどい憎悪が篭っていた。その方向が自己嫌悪に繋がっていたのなら、確かに数十回は死に損なってもおかしくなかった。】


「 ……… 資料には、死の神だとか書いてあったわ。」「死という概念そのものである、とか。」「まったく生意気よね。」
「人間が己れの生死を操れるだなんて思い上がりのエゴに過ぎない、 ─── なんて御高説も賜ったわ。殺してやりたいでしょう?」


【 ──── せめて自身の感情を収めるためだろうか、冗談めかして笑いかける。同時にまた促してもいた。貴方の知ることを教えて頂戴、と。】


333 : ◆RqRnviRidE :2018/07/24(火) 00:16:37 cbmy0cl20
>>330

【ぽす、とキャスケット帽を被せられる瑠璃。思いの外サイズが大きかったのか、目が半分隠れるほどで】
【庇を人差し指で持ち上げれば顔を綻ばせて、へえと感嘆の声を漏らすだろう】

へえ──こりゃいいね! 気に入ったよ、ありがとう。
太陽も眩しくないし、何より防寒にもなりそうだ。

んん、なんというか、外の湿気の多いほうが体に馴染むんだよね。
ほら、ボクってこんなだろう? 冷えるとそれこそ相乗効果……みたいな感じで。

【それから御礼と言わんばかりに、瑠璃はリゼの片手を両手でふんわりと包むように握ろうとする】
【表で手を引き連れてゆく時よりも、その掌は温もりが薄れ、ひんやりと金属のように冷たくなっている】
【冷え性、と言うには少々違和感のある程度だ。本人は冷たいだろう?と至って元気そうに笑むのだけれど】

【さて、あろうことかラーメンである。拉麺……。いくら黄金色の糸と似ていたとはいえ──ちょっとあんまりにも、である】
【少女の指先が白くなるだろうくらいに強めに示されたモンブランを見て、子供は「これもいいなあ」なんて暢気なものだ】

【でも少しだけ、か細くふーっとため息をついたと思えば、】

…………ボクねえ、さっき好きなものは特にない、なんて言っちゃったけど。
ほんとうは好きなものって、なにひとつ覚えちゃいないんだよね。

だからね、やっぱり、キミのオススメの“これ”にするよ。
こっちのも気になるけど、こっちのがキミに似てるみたい。

【なんだかちょっぴり物悲しげにそう呟いて、注文をモンブランへと切り替えるだろう】
【そうして話題を逸らすように、瑠璃は「キミはあるかい、なにか好きなもの……」とリゼに問い掛ける】


334 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/24(火) 11:27:51 K3wNM74g0
>>152
【会話の最中……カニバディールの返事を待つ合間に、ふと男の電話が鳴った】
【こんな男でも真っ当に電話には出るらしい。着信元を確認して、至極嫌そうな顔をすると、失敬、とだけ言って出た】

おい、今取り込み中なんだがなァ……

は?中止?ふざけんじゃねェよ、テメェがやれっつったんだろうが。
来なかっただァ?そいつはどういう……チッ、言うだけ言って切りやがった。


【酷く不機嫌そうにスマホを斬っていたが……ついで届いたメールに視線を細めた】

……悪いなァ、カニバディール。
オマエを虚構現実に連れていく訳にはいかなくなった。

その代わりと言っちゃなんだが土産物が出来た。
向こうで定義されてたジャ=ロの正体だ。

【男はそう言ってスマホに届いたメールを見せる】
【送信日時は7/19。二人が会話している6/27の約"3週間後"だ】


335 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/24(火) 11:31:07 XbnAsyOw0
>>286

【────、リーイェンの思考の内容までは分からないが、大凡ボスの予想通りであろう】
【騙し絵は二心の景色を映し出す。其れはきっと、貴方にも公安にもそうなって】
【結局の所、リーイェン達『公安』の落としどころは、虚構ではなく基底の現実にあるという帰結】


褒め言葉として受け取っておきますです。虚構の中で飛んだり跳ねたりしても仕方ねーです。
あたまのかてー上の人間にとっては、わかりやすい明確な流れが求められるのなら
────、悦んで生け贄として、現実を差し出すのでしょうね


【言葉を簡潔に纏めながら、ボスの疑問へと思考が映る】
【本質的な問いであった。世界に残る数多の神々と比べ、"虚神" は、皆が皆人類に敵意を向ける】
【リーイェンのアバターが思考中で固まった。無限の演算の中で、答えを見つけ出す行いに近い】


──── "虚神" は皆、人間の中から生まれたとされてるです。

知恵を拒絶し原罪を憎む、原初の蛇 "アナンタシェーシャ"
死を操るという人間の過ちによって生まれた "ジャ=ロ"
醜い感情そのものである "シャーデンフロイデ"
貪欲という欲望の化身 "レッド・ヘリング"
不条理な病を忌避し、病魔という形で蔑視した "スナーク"

残りの連中はわからねーですが、大方その過程にちけーのでしょう
ならば、その存在の過程から、人間を憎む事は往々にして理解できるです


【それらの全ては、人間が目を背ける過ちや、触れられたくない傷に近い】
【────同族嫌悪と取ることは難しい話ではない、けれども】




【────より簡潔な帰結が、そこに隠されている可能性もまた、あった】


……不気味なぐれーに内情はわからねーです、沈黙を保ってるです
『公安三課』の潜入工作員に内情を調べさせてるですが、成果はねーです


【或いはリーイェンが交渉をボスに持ってきたのは、此方が本題であろうか】


336 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/24(火) 19:58:02 WMHqDivw0
>>332

【だいたい最初に会ったときと変わらない調子でふんふん言いながら話を聞き続けていたけど――】
【アリアが、「かえで」のことを語る際には。一言も口を挟まなかったし、もしかすると息すら潜めて】
【おまけに瞬きの回数すら必要最低限に抑えていた、かもしれない。それくらいには真面目に聞いていた】
【普段なら絶対口にできないだろう上質な酒の入ったグラスには、手も付けていなかった。……それで、】

……わーったわーった、鈴音ちゃんタスケテーっていうのは期待しない。
でもこっちも同じだかんね、「かえで」ちゃんさんをタスケテーって言われても……まああんま期待しないで、
出来る限りなんとか手伝いたいとは思うけど。……お互いね、いちばん大切なコを優先することに、しよ。

【言うのはそんなことだった。交換条件を出すだけの話、それも至極単純に】
【お互い助け合うのは出来る限りのところまで。もし、互いの「いちばん」を助けるために、他を切り捨てる必要があるなら】
【「そう」しちゃっても仕方ないって、……それで恨みっこナシということに、しましょう。半ば諦めるみたいな口調でそう言って】

誑かされたっつーかあ、……もともと精神的にギリッギリだったの、いろーんなコトに追い詰められて。
そこをちょろっと突っつかれたとか、あるいは一滴だけシロップを垂らしてあげたとか。
そんだけのハナシだから……まあ、おれらも悪かったってワケだよ、鈴音ちゃんのコトに関しては。

じゃーろ。……えっいまおれさり気なくイケメンって褒められた? 褒めてくれた? わーウレシー、……や、冗談冗談。
…………はーん、鈴音ちゃんを「利用」してるのはそいつなワケね。じゃー問答無用で殺すヤツだわ。
あっはは、あーりん超キレてんじゃん、……まあそりゃキレるわな。キレないワケねーもん。

【誑かされた――という点にはちょっとだけ訂正を入れる。周りに居た人たちが助けなかったのも悪かった、って、】
【……きっとそれは、「かえで」に関することでも――ちょっとはひっかかったりするだろうか。それはさておいて】
【愚痴、のレベルをとうに超えて怨嗟に燃えるアリアの言葉には、同調を添える。慣れているようだった、女の愚痴に付き合うのは】
【それで、殺したいかどうかを訊かれればあっさり頷く。そのへんの倫理観は、この男もマトモとは言えないんだろう】


んー。あーりんが知らなくて、逆におれが知ってるコトってなんだろな……鈴音ちゃんのこと以外だと……
あーりんが会ったことない虚神って、どれ? 「レッド・ヘリング」、「アナンタシェーシャ」、……「スナーク」。
おれが情報持ってんのはこの三体くらいかな、……前の二体はもう死んでるからあんまり参考になんないだろーけど。

【話題変わって、彼が持つ情報の話。三体の虚神の情報――今後に活かせるものがあるとするなら】
【まだ生きている「スナーク」――「イル・ナイトウィッシュ」のことになるだろうか。……そうしながらようやく、グラスに手をつけた】


337 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/24(火) 20:31:59 o6XMS57s0
>>336


【 ──── 「それ」で構わないという顔だった。そこを誰かに頼るほどアリアは軟弱な気質をしていなかった。】
【加えて言うのなら、"あの子"を救うのは自分でなければならないと、 ─── 思い上がりにさえ近しい、然し截然たる決意もあった。察し取って貰えるのは幸運だった。】
【あくまでも踏み込めない場所を弁えてくれていることにアリアは感謝していた。だから彼女も同じように、少なくともそこに関しては、安い感情を示さないと決めた。】


「一瞬の揺らぎが幾つも重なって、取り返しのつかない崩壊が来る。」「誰しもそういう経験、ない訳ではないし ─── 。」
「 ──── かえでも、そういう子だったから。よく分かるつもりよ。」「だから今は、これからの事を考えるしかない。」


【 ──── 寂しそうに呟く。「タバコ、いいかしら?」許されるのなら、コートの裏側に手を伸ばすのだろう。携帯灰皿と、ジッポライターと、赤白の一箱。白い手が握る。】
【色の薄い、けれど潤いに満ちた唇が咥える。火種を手のひらで覆う。淡い光が顔貌を照らし上げる。溜息に似て、ふッと紫煙を吹かす。】


「理解が早くて助かるわ。 ……… ただ奴は、"死"そのものであるからして」「殺そうと思って殺せる類の存在ではないの。そこがまた癪に触る。」
「だから銀の弾丸は用意しておく必要があるわ。」「 ─── といっても、その伝(つて)がある訳でもないのよね。悔しいけれど。」


【受け皿へと灰を落とす。幾ばくかの自嘲が入った笑いだった。シガレットを支える指先の爪は円やかながらも長かった。】
【褒めているのかと聞かれれば否定も肯定もしなかった。故にそれはYESの意味だった。 ─── 妙な所で気遣いのなっている男。そう、思ったに違いない。】
【同意が得られるのは幸いだった。踏み潰されても残り火は燃え続けるのだろう。そうしていつか、全てを炎で飲み込むのだろう。】


「 ……… 何れも、名前くらいは聞いてる。」「逆に言うなら、何れも会ったことはない。」
「最後の名前は、うちの同僚が何か言ってたわね。」「ずいぶんと恨みを買ってるんですって?  ─── ほんとうに碌な神様がいない。呆れるわ。」


【やはり続きを促すのだろう。ともすればそこにはヒントがあるかもしれなかった。互いの敵を誅するため、互いの願を成就するため。もう一度、烟りを吸う。】


338 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/24(火) 20:55:56 WMHqDivw0
>>337

【この男、人の踏み込んじゃいけないところ――地雷原で踊り狂うシュミがあったりしたんだけど、今日ばっかりはそれは封印】
【真面目な話だったから。そして、男にとっても踏み荒らされたくない場所があったから。だから今夜は何もかも】
【何もかもを「交換」するばかりの日になるんだろう、……別にそれでも、構わないけど。ちょっと寂しいとか思わなかったり、なんだり】

そーね、これから……ひとまずこれから一番最初にするべきは、「じゃーろ」を殺すことだとして。
虚神にはそれぞれ「対抗神話」っていう、なんだろ、弱点が書いてあるオハナシがあるってことは知ってる?
それを探すトコロから始めないとかな……「じゃーろ」にそれがあるのかは、知らないケド。

【煙草についてはなんにも言わない、ていうか彼だってよく吸うし。……けれど彼のほうは今日はそういう気分ではないらしい】
【代わりにようやく、一口、酒を唇に浸して――――「やべえいつも安酒しか飲んでないから美味しさがよくわかんね」】
【そういう、間の抜けたことを言うんだけど。それでもちびちび飲んでいく、どうせだからって言わんばかりに】

そーそ。「スナーク」――――「イル・ナイトウィッシュ」、鈴音ちゃんを誘拐したハンニン。
うちのバカな妹がメチャクチャキレててさあ、たぶんあーりんが「じゃーろ」にキレてるレベルと同じくらい。
そんでそいつは、虚神であると同時に「病魔」って存在でもあるんだって。なんか、どっかで「混ぜられた」らしんだけど――

…………おれ、それがヘンだなーって思うんだよネ。だって混ぜる必要なくない?
虚神ってだけでじゅーぶんヤバい存在なのに、なんでわざわざ他の存在を混ぜたんだろ、そう思わない?
そのせいで弱点増えるかもしれねーのに、……逆に、虚神としての弱点潰すためにそーしたのかもしんねーけど。

【ぽつりと口にする疑問。あんまりオツムの出来のよろしくない彼でも「そう」思ってしまった、不審な点】
【「どっか」で「混ぜた」なんてあまりにも抽象的な言い方するから、まずはそこを疑問に思うかもしれないけど】
【とにかく男にとってはそこが一番不思議に思うことだったらしい。「おれみたいな、余り物処理のためってわけじゃないだろうし」、――】


339 : ◆3inMmyYQUs :2018/07/24(火) 21:19:33 qo/HyX5s0
>>255

【探偵がぼやいている間、少女は何か深い穴の底を覗くような眼でじっと彼を見つめていた】



(────────…………これが本当に “あの” 《チンザノ・ロッソ》なの──?)



【紫煙が二人の間を揺蕩って、束の間色を変えた少女の眼差しをどこか曖昧なものにする】
【何か意味ありげな間と視線はほんの一瞬のことであり、少女はまた悪戯を企む猫のような表情に戻る】


【「顔色悪いにゃー」「祟り神でも拝んできたみたいにゃ」「まあ『男はつらいよ』って古くから言うにゃ」「お疲れにゃー」】

【──『そんなの』とか『余計に頭使ってしんどい』とかの内容を当然少女は知らないようだが】
【むしろ知らないからこその気楽さで、取って付けたような慰めの言葉をいくつかぽんぽんと放ると──『先に言われた』通り、少し長い話を始める】


────まあ順を追って話すにゃ。

まずわたしが “未来から来た” というのは “多分” 本当にゃ。
──なんで“多分”かと言うと、わたしには『この時代のものではない記憶』があって、だけどそれ以外のことはさっぱり覚えていないからだにゃ。


【事も無げに言った少女は、ぽん、と両手の平を前に差し出し『お手上げ』に似たポーズを取る】
【自称・未来人の根拠たるものはその『記憶』のみであり、他の物的証拠は何も無いという】
【──また何か探偵の頭を痛めそうな気配が漂い始めるが、少女は構わず言葉を続け】


──今はXXX年でしょう?
でもわたしの中にある記憶は、全部ZZZ年以降のものなのにゃ。


【──以降、便宜上この現在を『A.D.2Q18』、少女が元いたという時間軸を『A.D.2Q36』とするが──】


──『2Q36』年にわたしは『あること』をするために、過去へスリップしようとした。──そこまでは覚えてるにゃ。
でもそれが正しい手順だったのか、そうじゃないのか、そもそも『スリップ』はどういう仕組みで起こるのか、
まして元の時間軸にはどうやって戻ればいいのか────今のわたしには全然分からないのにゃ。


【つまりは半分彷徨い人のようなもの。どこから来てどうやって帰ればいいのか分からない】
【だと言うものの、それを語る少女の面差しに暗いものは無く】


──もちろん分かってるにゃ。
他に何も証拠が無い以上、わたしの頭がパー☆な可能性もあるにゃ。

……だからもし、わたしが本当に『そう』だと感じたら、いつでも摘まみ出せばいい。


でもとりあえず、わたしはわたしの正気を諦めていないにゃ。
──わたしは『やるべきこと』のためにこの『2Q18』年を目指した。それだけはハッキリ覚えているから────


【そうして話はようやく本題へ】
【『やるべきこと』──少女が過去へ飛ばなければならなかった理由、『俺』が『俺』を捜さなければならない理由──を話し始める、そのはずだったのだが】


【「────だにゃ」】


【丁度そんなところでウェイターがやってきて】
【彼らが先ほど注文したものを、テーブル上に並べ始めた】

【どこか虚を突かれた形になって、少女の話はそこで一旦区切られる】
【彼女の目がちらりと探偵を見る。この突拍子もない話をそれでも聞いてくれそうかどうか、受容できるだけの余裕はあるのか、そんなことを測るかのように】


340 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/24(火) 21:30:14 o6XMS57s0
>>338



「 ─── 貴方に渡すべきものかは、分からないけれど。」「少し前に私は、"私たち"は、奴らの棲まう虚構現実へと足を運んだ。」
「どうやら向こうの世界では、奴らを捕らえて封じ込めようとする連中がいたみたいでね。」
「 ……… 犠牲は払う事になったけれど、それでも奴の"収容手順"に関する書類は手に入れた。」
「必要ならば共有しましょうか。何か良い策も導き出せるかもしれない。」


【 ──── "それ"を手に入れる為に犠牲があったというのは、言わずとも済む話ではあった。然し、言わずにはおれなかった。】
【アリア自身が救えなかったという理由。それだけ重みのある文字列であるという事実。その情報が欠落した模倣子にはしたくなかった。】
【頷くのならばアリアはその首筋から外部接続用のLANケーブルを引き摺り出す。携帯端末か何かに伝送するのだろう。】
【 ──── 血文字によって綴られた、"INF-005"なる存在の報告書。視覚素子のキャッシュデータから直接に記録したもの。】


「ふうん、 ─── 妹さんなのね。ウチの馬鹿な同僚が入れ込んでるとは聞いてたけど。」

「 ……… "そうしなければならなかったから"。」「常識的に考えるのならば、ね。」
「奴らは親和性を以って顕現する。」「私たちの世界に関わるには、自身と程近い存在を選ばなければならない。」
「その憑代に幾ばくかの脆弱性や不全性があるとして、甘受せざるを得ない ─── そんな所、かしら。」
「であれば彼らにとって、次の目的とは恐らく"より完全な"存在になること。」「更なる強力な認識を得て、化け物としての正しい姿を再現する。私だったら、そうするわ。」


【対してアリアはそのような回答を示した。混ざったのではなく、混ざってしまった。存在として現れるのに必要だったから、仕方なくそうしたのだ、と。】
【 ─── シガレットの火を灰皿に押し付けて揉み消す。「アップル・ジンジャー、あるかしら?」そうして、もう一杯をオーダーするのだろう。】


「 ……… けれど、何故かしらね。」「奴らが何故、かつて棲んでいた世界からこちらの世界に踏み込んできたのかは、まだ分からないでもない。」
「短絡的に過ぎるけれど、より強大な力が欲しかったからと説明できる。 ……… 然し、では何故、ジャ=ロやスナークは、"自らに認識を集めようとしない"?」
「何故わざわざウヌクアルハイや白神鈴音を操っている。彼らも虚ろの神であるなら、自らのミームで人々を汚染することは難しくなかった筈なのに。」


341 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/24(火) 21:55:15 WMHqDivw0
>>340

……おれが使えなくても、おれの「妹」か――「創造主」とかがたぶん使うよ。
貰っとく、……犠牲ねえ。なんもかんも、そーいうのばっかり必要だって言ってくるから――ヤんなっちゃう。

【手持ちのスマホは容量が心配だった、ならば使うのは「仕事用」のタブレット】
【それで情報を受け取りながら――目を細めて渋い顔。なにやら思い当たる節でもあるらしい】
【「ありがと、大変な旅だったんだネ」。受け取り終わる頃合いに小さな声で言うだろう、いたわり】

……、……その同僚サン? シュミ悪くない、大丈夫? あんなんに入れ込んでも
マジでなんの得もないし――後々めんどいことになると思うし。やめといたほうがいいって伝えといて。

そうする必要、……、……依代に選ぶにしてはあんまりにも自我が強すぎるヤツだと、思う。
「イル」に関してはおれはそう感じたけど……そーいう「ココロ」が強いほうが、逆に強くなったりすんのかねえ。
完全な「スナーク」。あるいは「イル・ナイトウィッシュ」って、なんなんだろう……ビョーキ、不条理、
…………不治の病的な? どうしようもない方法で感染しまくって、それでいて治せない、死に至る病。

【「妹」に関してはそんなことを言う。軽い調子で言うタイプの「やめとけ」ではない、そんなトーン】
【残してから、スナークあるいはイルの考察に戻って――出したのはありきたりな思い付き】
【ヒトの力ではどうあっても防げない病。特効薬の作れない病気、……それってどんなものだろう、】
【(……「ココロ」に作用するもの? だとしたら治せないのも薬が作れないのも納得できるけど)】

あー、ん、……そー言われればそーだなあ。なんで鈴音ちゃんをダシにしてんだろう、……、
……って思ったらまあそりゃアレだわな、単純に、「鈴音ちゃんがいろーんな人に愛されてるから」。
そーいうことじゃねーのかな、って、思うけど。少なくともこの世界では、あいつらより鈴音ちゃんのが、知名度高いし。

【対して、アリアの疑問に対する回答――それもまたありきたりな思い付き】
【白神鈴音は、この世界に馴染みすぎている。外からやってきた神話なんかよりずっとずっと根深く――それだけのこと、だけど】


342 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/24(火) 22:49:55 o6XMS57s0
>>341

【余計な言葉は要らないようだった。言わずとも彼は理解してくれた。 ─── どこか安堵するようにアリアは頬を緩める。人前で彼女が笑うのは、本来ひどく珍しい事だった】
【彼が2枚目であるのは外面に限った話ではないのだろう。誰に向けられる感情であるかはともかく、他者への労わりや慈しみを知っていた。それをアリアは明白に理解していた】


「言って聞くような性格の奴じゃないわ。 ─── 女装が趣味で、この暑いのに常にゴスロリ着てるようなオカマよ?」
「おまけにメンタル脆いし、いつも強がってるくせにすぐ頼りたがるし、 ……… 相性、かえって良いんじゃないかしら。」


【「そいつ」に関して話すのならば彼女は苦笑いで痛罵した。 ─── それなり以上に親しい距離感の人間であるらしかった。どことなく、腐れ縁を思わせた。】
【話題が戻るのであれば暫し考え込んだような顔をする。再びカウンターに配されるロングカクテルに唇を濡らす。幾ばくかの沈黙の後、おもむろに口を開いて】


「世界と自己に対する絶望こそが、死に至る病の正体である、 ─── そんな風にも言うわね。」
「自らが絶望していることに気付けない。神の存在を認識できない。神からの救いを受け入れられない。」
「尤も、自己の有り様を認識に由来する虚神とは、それらの先にある諦観を克服できる存在に他ならない。 ……… 超人ね。」

「人間の不完全性そのものを"病"と斬って捨てるなら、"それ"はまさしく、自分ではどうにもならない不条理すべて。」
「すなわち自分は理由なく人間という不出来な存在に産まれ、生き、そして死ぬ。そういう絶望への"自覚"である ──── かもしれない。想像だけれど、ね。」


【自己が不完全な生き物であると気付いてしまう。神の配剤で人間に産まれてきてしまったことに絶望する。 ─── きっとその推論は、多分に女の自意識を投影していた。】
【容易く死に、都合の悪いものからは目を逸らし、自意識も記憶も愛も何もかも疑わしく改竄可能である脆い存在。そう目の前に突き付けられた時、感じてしまう不条理。】


「 ─── 確かにそうかもしれない。」「しかし引っかかるのは、それなりに知られているという条件ね。それは他の"憑代"を使った彼らも同じだった訳でしょう?」
「イル=ナイトウィッシュやケバルライに存在せず、白神鈴音に存在するもの。 ……… たとえば、内在する神格。」
「そういうものが目的であったのかしらね。 ─── 単に"使いやすいから"白神鈴音を使っているとは、余り思えない。」


【 ──── そしてまた、彼の弁については納得しつつも、単純に"都合がよかった"からではないのではないか、と問いかける。】
【アナンダシェーシャを、ウヌクアルハイを、白神鈴音を取り込まなければいけなかった理由。それがどこかに有るのではないか、 ─── そう彼女は考えている、ようで。】


343 : ◆3inMmyYQUs :2018/07/24(火) 22:53:53 qo/HyX5s0
>>298(ミラ)

【──ぶンッ】

【単なる一市民が日用品から出す音にしてはあまりに凶悪な風切り音だった】
【婦警の頭部を目掛けて振り下ろされた鞄は虚空を叩き、血飛沫の代わりに、遠心力に耐えられなかった中身がそこへぶちまけられた】

【仕事の予定だけがびっしり書き込まれた手帳、使い古しの筆記具、胃薬の潰れた空箱、骨の一本折れた折り畳み傘、飲みかけのペットボトル】
【地面に散らばったそれらを、市民の男はぼんやりと見て、溜息を吐いた。──また面倒なことになった、どうして自分ばっかり──そんな心中を顔面に滲ませて】


『──────………………』


【男は逃げ去った婦警を一瞥だにせず、静かに地面へ屈み込んで自身の荷物を拾い始めた】
【どこかから飛んできた血塗れの歯がそこへ転げてくるが、彼はそれを気にも留めない】
【ただただ憂鬱そうに、あるいは腹立たしそうに、どちらも入り交じった表情で黙々と拾い集める】

【淡々と続ける男が手帳へ手を伸ばしたとき、ふと、それを先に拾い上げた人物がいた】


「────大丈夫ですか〜?」


【男が見上げると、そこには婦警がいた。先ほど声を掛けた者とはまた別の婦警が】
【大きな丸眼鏡に三つ編みのお下げ。いつそこに現れたのか、気の抜けたような柔和な笑みをして、悠然と佇んでいた】

【ああ、どうもありがとうございます、と男は立ち上がりながら言った】
【差し出された手帳を受け取って、それを鞄へしまい込もうとしたとき】

【急にその腕の軌道が変わって、】


「────あいたっ」


【──すぱンッ】
【小気味良い音と共に、手帳が婦警の頭を打ち据えていた】


「──??」

「え、なんですか? ──あいたっ」


【──すぱンッ】
【再び同じ音が響いた。今度は婦警の横面を強かに叩いていた】
【あまりに強く叩きすぎて、手帳が男の手から離れて吹き飛ぶが、そうなれば続けざまに鞄を振り上げて、それを振り下ろす】

【「あいたっ」「?」「ちょっと」「?」「ダメですよ」「??」「いたっ」】

【笑みと疑問符を同時に浮かべた婦警の顔が強制的に上下する】
【男は何故か鞄で叩き続けるのを止めないし、婦警も何故かそれを避けようとしない】


 「?」   「?」

     「?」

 「?」    「?」


【そうして、憂鬱な顔をして人を鞄で殴り続ける男と、それを甘んじて受ける謎の婦警という光景がそこにしばらく続いた】



【────────────────────────────】


/という幕間を挟んで↓が本編です。


344 : ◆3inMmyYQUs :2018/07/24(火) 22:55:40 qo/HyX5s0
>>298(ミラ)

【そこから少し離れた、路地裏】



「────あぁ、こんなところに。
 やれやれ、無駄に歩かせないでくださいよ。
 そんなに駄々を捏ねたって詮無いなのは分かってるでしょう、〈伯爵〉の命令は絶対なんですから」



────────……………………



【丁度二人の男が、出くわしたところだった】
【一人は、墨色の着流しに黒いハットを被った和洋折衷な装いの若い男。『やれやれ』と口にした方である】
【先に記してしまうなら、彼の名は円城という。その声音は怠惰で、口内で飴を転がすその表情は無気力に満ちている】

【さながら吹き溜まりを体現したような風体の彼が声を掛けたのは、】
【これまた黒ずくめの、寡黙な、世の全てを毛嫌いしているような陰鬱たる青年だった】

【男性にしてはやや長い暗褐色の髪は、のたくる蛇のように波打っている】
【闇に溶け込むような、漆黒色をした立て襟のマント。仕立てはかなり上質なものだと窺える】
【冷たい切れ長の眼が、忌々しげに円城を睨み据えていた】


「──そんな眼をしたって駄目です。もう逃げ場は無いんですから。
 それに、そんな不用意に出歩いていると、怖い〈婦警〉とばったり出くわすとも知れませんよ。

 丁度ほら、こんな具合に転がり込んできたりして──────ってうわ出た」


【その気配が飛び込んできたとき、円城は即座に袂から回転式拳銃を取り出して彼女へ向けた】
【────それが『ミラ・クラァケ』だとは知らずに】


345 : リゼ ◆D2zUq282Mc :2018/07/24(火) 23:22:58 JY1GydDk0
>>333

気に入ってもらえてよかった良かったー!
なんならその帽子、あげてもいいけど……どうする?瑠璃ちゃん
って…うひゃあっ!冷たっ!……けどひんやりしてて良いかも。

【キャスケット帽はお気に召したみたい。リゼの表情は緩やかに綻んで――移ろう】
【リゼの片手を包む瑠璃のひんやりとした両手がそうさせた。単なる冷たさではない冷たさ】
【目を見開いて半ば驚いた様な声を上げながら、瑠璃の表情につられて柔和な笑みを浮かべた】


―――……好きなものを何一つ覚えてない、かぁ。だったら話は簡単だよ。
今から好きなものを作っちゃえば良いのさ。だから、ラーメンもモンブランも頼んじゃえっ!
その他には、そーだなー。フライドポテトの盛り合わせも頼んじゃおう!ドリンクバーもオマケでっ!
じゃんじゃん頼もうっ!興味を惹くものがあったらその都度頼もう!後先は考えずにさ!

【逸らされた話題と自身への問いかけを一つに纏めて、リゼは楽観的な声色で言葉を紡ぐ】
【"気になるんなら何でも試さなきゃ損、損っ!"とキャッキャとした雰囲気で締めくくって】
【春風の様な爽やかでニコニコとした笑みと共に瑠璃を見つめる。――"しんみりした空気はこれまで"】

【やがてリゼはテーブル備え付けの呼び出しボタンを押し、オーダーを取りに来た店員に】
【子供のように明るく弾んだ声で料理を注文する。その後、注文された料理が所狭しと並べられるだろう】


346 : ◆RqRnviRidE :2018/07/25(水) 00:40:05 MrgTZF/U0
>>345

【キャスケット帽を譲ってくれると聞いて、瑠璃は銀髪に負けんばかりに目をきらきら輝かせるだろう】
【お気に入りのドレスを召したみたいにころころと笑うその表情は、どう見たって普通の幼子のようで】

やあ、いいのかい! 嬉しいなあ。 ありがとう。
お姉ちゃんからは名前を貰って、リゼからはコレを貰って。
“ほつれ髪も縁の結び目”──とはよく言ったもんだよねえ。

……さ、お返しだよ、リゼ。
ボクからは何もあげられないけれど、
ボクの手にはトゲが無いから、大丈夫、存分に触るといいよ。

【感慨深そうにうんうんと頷きながら、ふと口にしたのは聞きなれない言い回しだ】
【瑠璃は横髪の毛先同士をくるくると絡ませる。なるほの、ほつれた髪同士を縁の結び目と表しているらしく】
【それで瑠璃は少しだけ身を乗り出し、叶えばリゼの頬だとか首筋だとかを冷たい手で撫でるだろう】

んん、ふふ、なるほど……無いのを嘆くより、何でも楽しんだもの勝ちだよねえ。
うん、そしたらそうだね、そうしよう。 それならボクはこれと、それと──それから──

【爛漫とした少女の様子を見て、子供は納得したように首肯をひとつ。悩みなんてどこへやら、メニューをまたあれやこれやと指差して】
【それから──結局。少女二人が食べるには、少々多いくらいのメニューが運ばれてくるだろう】
【フライドポテトのような軽食からハンバーグといったメインディッシュ、あるいはパフェなど、種々様々】

【それでも瑠璃は──── はて、一体どこにそんな容量があったのか。】
【きっとリゼが食べきれなかったとしても、時間を掛けてペロリと平らげてしまうのだった】


347 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/25(水) 01:17:10 WMHqDivw0
>>335
無論――"棲み分け"は大事なことだ。
虚構と現実の区別がつかなくなるなどと言うことは有ってはならないからね。

【皮肉か、或いは自嘲のように口にする。公安の目的が示されれば、動きが取り易い】
【サクリレイジは、目的を妨げられない程度の根回しはしてあれど、基本的に強権を行使する組織ではない】
【社会的な立場を築き上げている巨大組織の内情を知るために出来ることは限られていた】
【もしも、嵯峨野に対して行動を起こすなら、基底現実で融通を利かせるための組織の協力は必要になる】

【だが、INFオブジェクトの対策については――或いは、INF財団と同じ末路さえ、想像出来てしまう】
【彼女の言うところの"頭の固い連中"の掌の上に有るならば】

【その折衷を取るために差し出されたのが、電子生命である彼女と言う訳だ】
【公安三課自体が、異端児であるとは言え――よくもまぁこんな訳の分からない集団に交渉人を――しかも"組織に所属させる"という形で寄越したものだ】


残りの虚神については大きな動きを見せていないな。
一応、他の構成員に監視させてはいるが――


【肩を竦めて見せる。大した収穫は見られないらしい】


ジャ=ロの願いは報告書を見る限りはジャ=ロ独自のもの。
奴が他の虚神を扇動したのでないのならば、奴らには奴らなりの目的が有ると言う事だろう
土台、ロクなモノでは無いのだろうがね。


【並べられる虚神達の名前。やはりと言うか、どれもこれも悪辣な形容詞をつけられている】
【人の心から生まれたからこそだ、と言われるならば一応は納得できなくもない】
【どう綺麗事を並べたところで、事、集団においては感情は悪しきモノの方が同調し易く、強くなり易いのだから】
【しかし――それは筋が通っていると言うだけで、本質と呼ぶには少々こじつけめいている】


……奴らはそう生まれるべくして生まれた、と言う気もするけれどね。
グランギニョル――残酷と悪辣の作劇の名が最高神として記録されているのだから。


"We could never compete with Buchenwald. Before the war, everyone believed that what happened on stage was purely imaginary; now we know that these things--and worse--are possible"


生まれはただの指人形に過ぎなかった存在が、虚構の悪意を纏って、人々を熱狂させ――
やがては現実の悪意によって、輝きを剥がされ、虚構の淵へと追いやられて行った。
はは、まるで復讐のようだね。

"観客"は、またグランギニョルを求めているのだと。


【珍しく。男は笑っているように見えた。いや、珍しくはない。男は平凡な人格の持ち主なのだから、笑いもすれば怒りもするだろう、きっと】


冗談さ。話の腰を折ったね。
要は、藪をつつく際に、協調行動を取ろうと?
情報収集は君達の分野だと思っていたけれど――私達に、期待することでも有るのかな?


348 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/25(水) 13:13:21 S/DUh6T.0
>>347

【── リーイェンの反応は肯定を示す。ジャ=ロの目論見が虚神の相似形に無いことは明らかで】
【また同時にスナークこと、イルの目論見も、虚神の範疇から離れていく】
【神話体系は往々にして、善悪の二元論では終止しないというが】


──── そんな顔もするのですね、まるでただの人間の様に見えるです。


【リーイェンは仏頂面で言い放つ、その言葉の真意は辿れずとも】
【グランギニョルの引用は言い得て妙でもあった。復讐── 悪辣が人間に対する行い】
【或いは、その生みの親に対する、──── 】



例えば相手が ただの殺せる相手なら私達の手で十分です。銃火器も能力も腐る程ありますです
ですが、奴らはややもすれば、殺す事すらできねー相手なのです

巨大な本体を虚飾で覆い隠し、明かさない限り無敵の化け物や
自分が望む未来になるまで、時間を繰り返す蛇
人間に対して底知れぬ敵意をむき出しにする病魔もいれば、
世界線を変動させ、世界を大きく再構築する蝶

挙句の果てには現実を滅ぼした、死という概念、──── 生半可な人間では太刀打ちできねーです

だからこそ蛇の道は蛇、毒を以て毒を制す。サクリレイジの力が必要なのです

そこにどんな利害や企みがあったとしても


"世界を救う" その一点で私たちは協力できるはずです


349 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/25(水) 19:50:14 bcqfd4jY0
>>348
私はただの人間だとも。
人間らしく無力であり、無知でもある。
謙遜ではなく、それは事実なんだ。

でも私自身はただの人間であっても、この新世界はそうであることを許容されていない。
だから奴等と戦うことが出来るし、そう義務付けられている。
……あるいは君と同じだとも、リーイェン。
君が"思う我"を認知していたとしても、世界は君を人間と認知していないように。

【また御託が長いと怒られてしまうだろうか】
【かつて一世を風靡したグランギニョル劇。それはある時期を境に急速に衰退していった】
【それは当時流行りだした映画の影響や度重なる悪趣味のマンネリ化が原因だったと言われているが……男の見解は少し異なる】
【たった今引用した、グランギニョルの幕を引いた男の言葉こそが真実なのだと】


人間は"虚構であれば"どんな悲劇も、残酷も、病気や死でさえも娯楽として飲み込める。

だけどそれが"現実に起こり得る"と知った時に人々は恐怖し、熱狂から醒めたんだ。

彼の言葉は、虚構の悪意が現実の悪意に塗り潰され、追いやられてしまったとも……虚構の悪意が現実へと侵食して来た結果だとも取れる。
正に今起こっているように。

【リーイェンの最後の言葉を聞いた後、男は微妙な表情になった】
【不機嫌と言うよりも、やや頼りない風貌に似合った困り顔だ】

……公安三課との協調は吝かではない。
ただ一つの誤解に二つの訂正をしておきたい。

個々の思想こそ、それぞれだけれど、組織としてのサクリレイジはこの世界からINFオブジェクトを消し去ること"だけ"が目的だ。
勿論信用しないのは自由だけれど、そこには利害も企みもないよ。

そして同時に……世界を救うことにも興味はない。
我々は、例え世界が死に絶えたとしても、奴等をこの現実から排除することを第一の目的とする。

リーイェン。
君も借宿とは言えサクリレイジの一員になったのならば。
そして公安三課として私達を"使う"つもりならば、そこは認識しておいて欲しい。

今後も上手くやっていくためにもね。


350 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/25(水) 20:13:11 WMHqDivw0
>>342

女装、オカ、……? …………?? ??? …………????? えっおれの妹そんな人となかよしなの?
あぁーあ、ン……じゃあこれはガチめなヤツの「忠告」ね、ソッチが夕月に入れ込むぶんには――まあいいけど。
――――夕月をソッチに懐かせないコト。その人のこと、「スキにさせないようにすること」……そんだけ気を付けて。

【「……まあその調子じゃあもう手遅れかもしんねーけどさ」。諦観を滲ませた顔色でそんなことを言う】
【やけに低い声色だった。であるなら、本気で言っているらしかった。夕月に、そのヒトを好きになるような】
【「感情」を持たせるな、と言うけれど――彼の言う通りもう十分に手遅れだろう。それくらいには、懐いてるから】

【戻ってくる話題。アリアの語る言葉は、彼にはちょっとばかし難しかったのか――首を傾げてしまって】

……ニンゲンが、自分が不完全であることを自覚することが――――ビョウキなの?
でもひーちゃん、ヒメちゃん言ってたよ……カミサマにはできないことが、ニンゲンにはできることもあるって。
だからそれはカミサマにも言えることなんじゃない? 絶望までするかどうかは知らないけどお。

【そうしながらあっけらかんと口を開く、ぺらぺら喋り出すのは共通の知人の話。ヒメを名乗る隠者のこと】
【彼女がそう言っていたから。だから虚神だって実はそうなんじゃない、みたいな――至極軽々としたことば】
【諦観を克服できる存在って、わざわざアリアが言ってるのに。聞いてるんだか聞いてないんだか】
【それでもきっと、やつらにだって出来ないことはあるはずだって、呑気にそう思っているらしい。グラスを置いたら氷が鳴って】

や、や、知られてるっていうか……そう、イルとか「じゃーろ」になくて、鈴音ちゃんにあるモノっつったらさ、
やっぱ「他人から向けられる善の感情」くらいしかないんじゃない? って思うんだけどお。
「病」も「死」も、「怖がられる」しかないじゃない。でも鈴音ちゃんはそうじゃない、……みんなに「愛」されてるよ、間違いなく。
だからやっぱそこらへんじゃねーのかなあって、思うけど……それをどう利用してどうしようとしてたのかは、わっかんない。

【――珍しく首を横に振った。単純な知名度だけの問題じゃなくって、そこに向けられる「感情の質」】
【それに何かしら、彼らが好むような薫があったんじゃないかって。そう思った、とても、単純な考えで――】


351 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/25(水) 21:49:27 Ty26k7V20
>>322

夕月……友達かぁ…。

【その言葉を麻季音は頭の中で反芻する。長いことどころかほんのごく僅かでしか身の回りには聞かない】
【つまりは友達が少なくて、でも寂しいわけでもなかったはずだけど…そう思っていただけなんだろう】
【だけれど…こんな、黒幕だとか色々なことに巻き込まれてからその言葉が、身近になった気がしていた】
【でもそんなことを言うのはなんだか不謹慎な感じがして…黙っている。でも、友達…】

「いいですね。私は友達をつくることが好きです。ですが、初瀬麻季音は未だ友だちになってくれません。」

【しょんぼり。と口でわざわざいうゾーイ。表情は無表情。コミカルさとシリアスが合わさってシュールにしかならない】

…あんたは助手よっ助手。

【そうして、夕月の口から放たれるカミングアウトの銃弾。夕月の気持ちはわからないが大小それなりの覚悟を持ってしてだろう】
【2人はポカンとして…………しばらくしてから】

…それはラッキーね。ミラさんに話すのもいいけど、どうせ頼むんなら。

「やりましたね。初瀬麻季音。黒幕との緒戦はこの作戦にしましょう。」

あのね。さっきの話のタイムマシン。あれを作るために円卓にちょっと――国を動かしてもらいたいのよ。

【それから麻季音は解説を始める。タイムマシンの開発には街一個ぐらいサイズのある大型ハドロン衝突型加速器なるものが必要で】
【それは水の国の水国核技術中央研究機構が所有している。それを使うには政府の後押しが必須であるということ】
【同時に“黒幕”も同様の研究を進めている為、強硬策に出ないと奪われる可能性があるということ】

オーウェル社なんかが出資に動き出している。黒幕派の政治家は…表向きは採算が取れないから民営化してしまおうって
本当は研究を独占するためね。……円卓の名は伊達じゃないとこを見せてもらいたものね。
それにいまやろうとしていることが黒幕にバレたら……消されるわ。“過去ごと”ね。


352 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/25(水) 21:52:46 o6XMS57s0
>>350

【 ──── 真剣な言葉の忠告だった。あっけらかんとした軽薄さを胸とする彼が、そういう話し方をするということの意味を、彼女とて分からない訳ではない。】
【「伝える努力はしておくわ。」そうとだけ言っておく。然し恐らくは、口先どころか手を出しても理解される人種ではない。だからやはり、諦めたように。】
【尻拭いくらいはしてやってもいいかな、 ──── そういう横顔をしていた。少なくとも、冷酷になるのなら手慣れたことだったから。】


「自己の欠陥を自覚している人間は多くないわ。」「幼さ、弱さ、未熟さ、それらを乗り越えた上でもどうにもならない不可能性 ─── あらゆる無力さ。」
「そんなものと向き合って生きていたら誰だって嫌になるわ。だから多くの人間はそこから目を逸らす。 ……… そうしない人間は、まずもって狂人と呼ばれる。」

「でも、そうね。 ……… シャーデンフロイデは、愛することを理解できなかった。」「レッド・ヘリング、アナンタシェーシャ、 ─── ジャ=ロ、ウヌクアルハイ。」
「彼らもまた、"何か"が欠落していた、或いは今もしているのかもしれない。だって彼らは虚ろの神。」「 ─── もしそうならば、皮肉な物よね。」
「認識によって如何様にも姿を変えられる筈の彼らは、認識に依存するが故に認識以上の存在には成り得ない。」「超えられる筈なのに、自分には出来ない事と諦めてしまう。」

「ほとんどの人間は自分が望んでいることを喜んで信じる。または多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない ……… 。そして、それは人間から産まれた神も同じこと。」
「けれど、シーザーを理解する為にシーザーである必要はないわ。私たちだからこそ、彼らの理解できないものを突き付けられる可能性は、きっと有る。」


【自己完結的な内省をもって、アリアは滔々と空想を紡ぐ。虚神は人の心から産まれる存在であった。 ─── ならば、人心の欠陥も引き継がれて然るべきであり】
【その"足りない何か"を見せつけてやることが、或いは教えてやることが、彼らを斃す上で必要なことだと。然し、どうやって?】


「 ──── 好意。善心。愛情。そういうものは矢張り、基本として恐怖からは対極にある存在、よね。」
「ウヌクアルハイとは、白神鈴音である ─── そう定義された。 ……… 恐懼の象徴であり、異界の神でしかないジャ=ロが、その安穏を心より祷れる筈もない。」
「そしてまた、奴は死なない。死ねない。死そのものであるのならば、自己へ向ける害意さえも己れの糧となるしかない ……… 。」


【そしてまた独白は続く。 ─── きっと彼女は仇敵の話をしていた。だのに何処か、その貌は寂しげだった。"なにか"が彼女にそうさせていた。】
【アップルジンジャーで唇を濡らす。あまい林檎と糖蜜の味わいが、ごく爽やかに炭酸と生姜と酒精にて洗われる。っは、と溜め息を漏らす。】


「 ……… 色々と、辻褄の合わない推理、ではあるけれど。」
「案外、」「 ─── "もう一度、誰かに会いたい"だけなのかも、しれないわね。」


【それが"誰"なのかは語らなかった。ただ、 ─── 伝送した報告書を読むのなら、それが"誰"なのか、分かるのかもしれない。】
【であれども畢竟、やるべきことは変わらなかった。その決意も、変わらなかった。それに全ては空想の産物であったから。】


353 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/25(水) 21:53:25 o6XMS57s0
≫633


【 ──── 実際のところ、幾分か恐ろしい気はした。妖狐の飼い主は、幽玄な青白い肌、素性の知れぬ女性。】
【狐鍋にしていたら腹を下すだけでは済まなかったかもしれない。何せ相手は、単に王権を握った人間には見えなかった。】
【横暴な気紛れを振り翳されるよりも余程恐るべき制裁が飛んで来うることに疑いはない。 ─── それでも、笑顔のまま、言葉は続ける。】
【現れた若い妖狐に対しては、思ってたより美人じゃないか ─── みたいな一瞥を遣って、けれど動けないのであれば、特に何かを急かすこともなく。】


「身に余る光栄ですよ。 ……… 食うモノは自分でどうにかしましょう。そこまで面倒を見て貰うのも忍びない。」
「宿はお借りするかもしれませんがね。 ─── なにせ、ほら、それなりに"長い"お話になりそうですし。」

「 ─── 最近、よく見聞きするんですよね。あの手の何考えてるんだか分からんイカれ野郎。」
「オレの上司も似たような女に出くわしたって聞くし」「この間なんてオレ自身も、腹から顔まで掻っ捌いて尚ヘラヘラしてる男に大怪我させられた。」
「全くイヤんなりますよ。キレる17歳でしたっけ?」「丁度彼らは今このくらいの歳じゃないですか。おっかないですよねェ。」

「共通するのは、どいつもこいつも夢ん中さまよってるみたいに妙な譫言吐いてるってとこ。"公安"だの、"箱の中身"だの、"オメラス"だの ─── 。」
「 ─── なんなんでしょうねえ、こいつら。」「"詳しいこと"、ご存知だったり、しません?」


【暗に、男はこうも言っていた。詳しくないことなら知っている。妖狐と、その記憶にある男との関係性も、何となく予想できる。】
【であれば確証や情報が欲しいと告げていた。藪の中を漕いでいくように、闇の深層/真相へと踏み込んで、なにかを掴むための。 】
【興味本位であるようには見えなかった。やや低い声音がした。 ─── もっとも、このような幽栖の地に棲まう女性が、世俗の事情に詳しいかは解らないのだけれど。】


354 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/25(水) 21:59:59 Ty26k7V20
>>339

【探偵は目ざとく、じいっと見られていることに気がつく。だが、大したことは言わない】

………見ても面白いもんじゃないよ。それとも、未来でも見えるか?

【様々なことに巻き込まれて、理解も体も付いてこない歳になってしまったがそれでも時間は進む】
【それについていくしかない。だから、黙ってこの話も先へ進めるために彼は煙草を吸っている】

いや…まあ、そのへんはいい。
そのタイムスリップは…足でも滑らせたのかな。

【この一言はまあ多分無視されるし、本人も流れていく言葉を追っかけない。話を続けよう】


だから、前置きはいいって言っただろ。いかれた奴が喋ってようと、ニャーニャー言ってようと、そんなもんは付加価値だ。
ネクタイを締めたヤツの話だけ信じるような真似はくだらない。この世界は全体論だ。パズルのピースに意味はない。
パズルのピースはそれ以上の意味を持たない。白だろうが黒だろうが角だろうが…角は意味あるか…まあ、だから。
何の絵が書いてあるかが重要なんだ。――さあ、一通り、甘いものを食べたら続きを。

【だけれど、決して急かさない。時間は有限だが、目の前のスイーツを食べる時間より価値のある時間はあるか?】


355 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/25(水) 22:22:38 WMHqDivw0
>>351

……あたしみたいなバカが友達なのは不満? なあんて、ふふ……
えーっゾーイさん助手なの? 助手兼友達ってことにすりゃいーじゃん。
そしたらあたしたち三人トモダチ、どう、なんだか楽しくない?

……そんなこと言ってる場合じゃないのはわかってるけど。

【惑う麻希音を茶化すみたいに言葉を重ねて、けらけら、面白そうに笑うけど】
【それもすぐ潜めてしまった。本当に今、そんなことしてる場合じゃない、わかってるけど】
【……それでもちょっとくらい楽しいことはしたかった。メロンソーダ、ぶくぶく吹き鳴らしながら】

…………え、あれ、ラッキーなの? な、ならいいけど……
国、……国かあ。そう言えば円卓の「王様」も国とかなんとか言ってたネ、
だから動かすことはきっと、不可能じゃないけど――あたしの言葉が、通じるかどうか……

【――ストローを放す。鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔、それから……表情が、曇る】
【夕月は円卓の中でも最下層、ヒエラルキーの一番下にいるような子、だったから】
【一番上に居る「王様」に声を届けることができるかすら、わからない……けど】

【(ミラ・クラァケ。共通の知り合いである彼女が、「王妃」であることまでは、まだ知らず)】

……オーウェル、それも聞いたことある名前だ。……そんなヤバいんだ、
――――えっちょっと待って、過去ごと消されるってどゆこと!? 黒幕もタイムマシン持ってるってこと!?


356 : ◆9VoJCcNhSw :2018/07/25(水) 22:26:40 wn2rqSVw0
>>353

【「好きな部屋に泊まっていくといい」――城の主は、あくまで好意的だ】
【ジークの話を聞く姿も楽しげだった。軽妙な口調の四方山話が耳に心地よい】
【そんな様子で口元を緩めている。だが、敢えて〝雑談〟に応える事はなかった】

【まるで本質はそこではないというように、最後の言葉を待つように】
【そして問いかけが成されれば、白皙の女性は待っていたと言うように口を開く】


――〝詳しいこと〟なら、妾は知らん。

無論、この狐……クズノハが知り得る事であれば、既知ではある。
公安、円卓と黒幕。虚神。理想郷へ誘う万能の芸術家。
或いは世に謳われるサーペント・カルト、特区、権謀術数の数々。

その何れが汝にとっての〝詳しいこと〟なのかを、妾は知らない。
そして、妾の目となり耳となるこの妖狐が知り得る以上の事も望んではいない。

ただ、知っている…――興味を持って調べているのは、〝円卓〟の――その王である、哀れな獣の事くらいか。


【YESともNOとも付かない、けれど否定的ではない受容的な回答だった】
【己の知る範囲を示し、更に深みを求めるのであれば来るが良い】

【だが関心事は他にある。そしてそれは――、……会話は単調ではあるが】
【やはりこういったやり取りが好きなのか。綾津妃の瞳は半ばほどまで開いていた】
【もっとも、視線の先はあくまでジークの足元に留まっており】
【僅かばかり、レーザー光でも向けられたような熱さを感じるかも知れなかったが】

【そこに、異能の気配は無かった。そして黙る――さあ語れと、急かすように沈黙した】


357 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/25(水) 22:41:33 WMHqDivw0
>>352

【忠告が終われば雰囲気は元通り、へらっとした空気感に戻るんだから、そんなに重要なことではなかったのかも】
【――と錯覚させるか、あるいはその逆か。雰囲気を180度変えてまで「それ」を伝えようとした意味、――――】
【それももう置いておこうって雰囲気になった。ようやくグラスが空になる。次の一杯は、頼まなかった】

欠落を見せつけることで倒せるカミサマってのもなんかヘンな話だよね、……神様っぽくなくて。
じゃあ「不条理」や「死」の理解できないモノってなんだろー、……え、マジでわかんね。
それこそアレかな、ひーちゃんの言ってた……「人間にあって、神様にないもの」。
……何かを信じて祈るココロとか? あはは、脈絡なさすぎてマジ意味わかんねー、この話ナシナシ!

【この男はずっとそうだった。アリアの言葉を自分の好きなカタチに噛み砕いて、飲み込んで】
【味の感想だけ好き放題、一方的に伝えておしまい。あるいは乱暴な価値観の押し付けにしかすぎないけど】
【それがパズルのピースになるのなら。もしかしたら、のレベルだけど――そんな感じで会話は進み】

【……きっと何よりも憎んでいるはずのモノを語っているときのアリアの横顔。見つめて、目を細めてから】

………………も一度会いたい、って、思うの、ネー。それっておれたちと、……。

【それ以上は言わなかった。言えなかった。「絶対殺してやろうね!」って決意した相手に、それを抱いちゃならない】
【だのにそう思ってしまった、……ギリギリ言葉にするのは止められたけど。決意をここで鈍らせるわけにはいかない、から】
【……この日彼は、初めて煙草を口に咥えた。何のことわりも入れずに、マナー違反。そうでもしなきゃやってられなかった】
【心の底からの渋面を晒しながら、タールがキツいばっかりの、やっすいヤツ。唇に乗せてから――あ、と。間抜けな声を上げて】

やべ、火ィ忘れた。あーりん貸して、この一本だけだから、さきっちょだけだから……
アッすいません冗談です。普通に火ィ貸してください。セクハラして誠に申し訳ございませんでした。

【先端をぴこぴこしながら種火をねだる。下卑た冗談は口にした瞬間謝っちゃうから――殴られるのは、回避できるだろうか】


358 : 名無しさん :2018/07/25(水) 22:50:48 PYq7bHtM0
>>318
【引き寄せる力に逆らう気が無い。そもそも、逆らうと言う選択肢すら頭の中には無いのだろうか】
【人の形をした別な存在。生きている、とは言い表しがたい思考の全てを捨てて漂って居る様な男】
【――それでも、幸せという概念は知っているらしい。尤も、それを理解して居るのかは分からない。言葉は分かっていても、その中身までを分かっているとは――……】

「皆が幸せ?人の幸せなんてそれぞれなのに、ハッキリとそう言えるなんて逆によっぽど酷そうな場所だね。まるでキミにとっての幸せを押しつけてくる場所みたい
……随分と都合の良い解釈してるっぽいけどさ。前のキミも子供より利己的だったけど、今のキミはそれ以上に酷くなってるみたいだ

――悪いけど、ボクにとっての幸せだとかはキミじゃ想像も出来ない事だよ。特に、今のキミじゃあね
ま、それでもよくよく考えてみれば招待されるのも悪くは無いかな。キミにとって幸せな場所、壊しちゃえばそんな場所に無理矢理招待される人達も減って幸せになるだろうし」

【言葉で情報を引き出すことは出来ず。一度放り捨てて宗教都市に情報を渡すなり、教会や自警団等と連携を取ればより対応も行いやすいだろうが】
【それまでにどの様な被害が出るか想像も付かず――何より、その術式によって溜息を吐くのだ】
【咄嗟に腕を切り落として離れるかとも考えたが、それが出来た所で答えが得られる訳でも無い。逆に遠のいていくだけだ】
【言葉のニュアンスからして強制的な転移とも考えたが、其れ等とも異なる感覚】
【別な場所に飛ばされるだけならばまだ帰り方も沢山考えつくが、今回は骨が折れそうだ……そんな感想を抱きながら】
【最後の瞬間には嫌みったらしく皮肉を言ってはみたけれど、今の彼に通じる事も無いだろう。きっと、ただの音として通り過ぎるだけの事だ】



【カツン、と踵が石畳を叩く。ザリッ、と靴底で擦る音が響く】
【先程までは暑さを感じていた肌も、今やこの寒さに対して張って居て。周りを見ればその景色】
【大きく異なる場所、と言うよりも時代が異なった場所に飛ばされたように思える。――否、別な世界と言ってしまった方が正しいのだろうか】
【まるで映画のBGMの如く聞こえる曲は、この世界に来た瞬間から流れていたからこそ気付くのに僅かな時間を要して】

「全く、最近は落ち着いてのんびり出来るかな何て思ってた所に元六罪王サマが心神喪失っぽくフラフラしてるんだから困り物だよねー……
何処かのミュージカルみたくこの曲で歌いながら町を歩けとか言われればそれはそれで困るけどさ
月も知らない名前も知らないなんて犬のお巡りさんも困って――……ん?」

【とは言え、今までの事もある。慌てふためく様な女でも無ければ泣いて許しを乞うような可愛げも無い】
【少なくともこの石畳は本物だろうと推測しつつ空を見上げれば、違和感。夜空は好きだが、写真に撮ったりスケッチしたり注意深く眺める事は無いからこそ最初は違和感に気付かず】
【――それから、少しして。ああ、何て小さな声で呟くのだ。不自然な原因は、■が不在である事。丁度、彼にとって其れが無かったのと同じ様に“この世界”にはまるで存在しない様に思える。だとすれば――……】
【何であれ、憶測に過ぎない。実際に探って確かめなければ解決の方法も無く、誰かが同じ様に“招待”されているのだとすれば場合によっては助け出さねばなるまい】
【もし見つかったとしても、既に手遅れな可能性も否めないが――その時はその時だ。通り名の通りの役割を担ってやるのも良い】


「ま、そうは言ってもコレだけの町なのに人が居ない所か……まるで映画のセットみたいにただ在るだけって感じだよね
――――……さと、と。どうしようかな……」

【細部まで細かく、と表して良いのかは分からないが少なくとも張りぼてに見える周りの家よりは現実味のある一軒】
【丁度、人が自分の家だけは詳しく覚えて居るかの様で、引っ掛かりを覚える所だ】
【此処に至る以前に振り返った際に見えた高山―道を辿っていないので灯りは見えなかったが―も気にはなる。然れど、此処を終えてから飛んで行ければそのまま行くのも良い】
【住人が居れば、聞いてみるのも良い。まともならば、だが】
【他の家と同じ様に無遠慮にドアを開こうとする、が。その“引っ掛かり”がさせたのだろう、そのノッカーで数度叩いて】


359 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/25(水) 23:05:27 o6XMS57s0
>>356


「 ─── 生憎ながら、オレは"神様"の方の担当じゃあないもんでしてね。」「そっちは一先ず置いておきましょう。無論ながらオレから語るのは、吝かではありませんが。」


【そういった態度であるのならば男もそれで構わないようだった。 ─── 灰色の瞳を宿した双眸を、微かに細める。】
【かつて男は交渉屋であった。口八丁で耳心地いい言葉を語るのが彼の仕事であった。その中に幾ばくかの真実を含ませながら。】


「ジルベールさん。」「 ─── "円卓"の王様。上司が世話になってると聞きますし、今のとこはオレも世話になってます。」
「だから"黒幕"なんて言われてる連中はオレの敵ですし、水国の公安なんかに探り入れたりもしてるんですが、まるきり坊主だ。」
「 ……… それに。これはウチの信条ですが、面倒事は『銃と圧力』で解決するのが一番だと考える組織です。」
「もしも其処の狐さんが、誰か"潰して"ほしい人間を知ってるなら、我々も手を貸すのに吝かではないと思ってます。」
「どうでしょう。彼女、居ますかね?」「 ─── "殺してやりたい誰か"。いや、助けたい誰かでも、いいんですけどね。」


【そしてまた男は迂遠にものごとを述するのを好んだ。思うがままに語っているようでいて、なにか思わせぶりな言い回しでもあり】
【然し少なくとも提案だけは事実であった。幾つかの政治上の不穏分子を排除したいのであれば、恐らく"彼ら"に躊躇いはない。】
【「軍事演習の誤爆か何かで、まるまる特区を吹っ飛ばしたいとか。 ──── なんて。」冗談粧してはいた。しては、いた。】


「 ──── それに。"彼"のことを、"獣"と呼ぶのは初耳だ。"呪い"でしょうか?」
「あんまり自慢できた趣味じゃありませんが、他人の昔話を聞くのは好きなタイプなんですよ。」
「どうでしょう。もしも差し支えないのなら、オレにひとつ、聞かせてはくださいませんかね?」


360 : リゼ ◆D2zUq282Mc :2018/07/25(水) 23:14:22 JY1GydDk0
>>346

―――……?なんのこっちゃ、初めて聞く言葉だねー。
"ほつれ髪も縁の結び目"だなんて聞いた事無いや。
けど何となく意味が解ったかも。縁結びかぁ、言われてみれば納得だよー。

ふんふむ、いいものを――って、うひゃあっ!?ちべたぃ…!

【聞き慣れない言葉に首を傾げながらも、瑠璃の喜ぶ姿に微笑を浮かべて】
【瑠璃の銀色の髪――その毛先同士の絡まる光景を前に目を見開き感嘆していた】

【そんな折、瑠璃の手がリゼの頬から首筋を伝って。思わずびくっと身体が揺れる】
【水が滴るように、緩やかに撫ぜられて。だけど不思議と嫌じゃない。けど、くすぐったい】
【金色と銀色が触れ合うその光景は幼く、そして混じり気の無い純心だけで構成されていた】

そうそう。"楽しんだ者勝ち"だよ。辛気臭く項垂れてたら何もおもんないし。
何より勿体無い。そんなの死んでるのといーっしょ、さ。だからじゃんじゃん頼んで――

【"って、あれ?頼みすぎじゃね?あては大食いの人じゃないんだよー!"】
【口をパクパクさせて、両腕をぶんぶん振りながら身振り手振りを伴いながら慌てふためく】
【けどソレは杞憂で終わり、瑠璃の底知れない胃袋に改めて口をパクパクさせて瞠目していた】

……すっごいネ、瑠璃ちゃん。そこまでお腹空いてたんだねー…
あてなんてフライドポテトでお腹いっぱいだったのに、まるで小宇宙みたいな胃袋だよー…
(――…おサイフの中身、足りるかな?まっ、イイか。最悪の場合グラヴィス呼べば良いや)

【カルピスをストローで飲みながら、瑠璃の無尽蔵の食欲を目の当たりにした感想を口にした後】
【ふとした疑問が湧いて出てきた――あんな路地で何を探していたんだろう、と】

ねぇねぇ。ちゃん瑠璃はさぁ、あんな路地で何か探しものでもあったのかい?
空腹も落ち着いた頃だし、あても一寸ばかり興味あるんだー。

【好奇心の絡んだ緑翠の双眸は瑠璃を見つめて、組んだ手に顎を乗せながら問いかけるのであった】


361 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/25(水) 23:24:57 o6XMS57s0
>>357

【女としては全くそれで構わなかった。脳だけを残した機械人形のニューロンネットワークはとっくに支離滅裂なもので、紡がれる言葉は何れもが意味深かつ難解であって】
【好きなように受け取ってくれればいいと、そちらのほうが考えも纏まるだろうと、そのくらいに思っていた。だから殆どが独り言の様相を呈していた。】
【 ─── それでも、続きそうになった言葉の意味を、彼女は考えざるを得ないのだろう。おれたちと同じ。もしも其れが世界の真実なら、なんと残酷で悪辣なのだろう。】
【だとしても代わりはなかった。私たちはお互いに、自分の大切なものを守る為ならば、他人のそれを踏み躙る覚悟ができている。それだけの話に過ぎなかった。】

【でも、笑い話になるのならそれでよかった。時刻は2時を回っていた。遠くのFM放送が時報を告げた。 ── 生暖かく冷たい空気を、一絡げにぬくめてしまうような】
【そんなオムレツの一言に、 ──── きっと、アリアは吹き出したような声を出す。初めて見せる類の笑いだった。】


「 ……… 馬鹿ね。」「想い人が居るって分かってる相手に、そういうこと言えるの?」
「鈴音ちゃんに嫌われても知らないわよ。」「 ─── ふふ。」


【呆れたような、それでいて楽しげな笑いだった。言うなり彼女もまた一本を口に咥えて、 ─── けれどライターは、アリアの口許に火を灯す。】
【巻紙の燻るまま、徐にカウンターへと身を乗り出す。右側に乗り出す。木造りの椅子から腰を浮かせて、肘で不安定な体を支える。】
【そうして彼との距離が詰まる。真白い端正な鼻梁、色薄くも瑞々しい唇、ほのかに甘い香りで半面を覆う白銀の髪、怜悧ながらも優しげな青い隻眼。皆な、目の前に迫って】


「ほら。 ─── こっち、向きなさい。」


【 ──── 拒まれないのなら、熾火の宿る先端を、そっと彼の煙草へと重ねようとする。シガレット・キス。】
【呼吸を一つ。彼女の匂いがした。吸って、吐く。白い喉が蠢く。酸素を与えられた火種が、ちり、と幽けき音を立てる。】
【いつだって遠くを見るような青く深い瞳に、淡い燈(ともしび)の光が映る。 ─── いずれ火が移るのであれば、離れてしまうに過ぎぬのだけれど。】


362 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/25(水) 23:43:04 WMHqDivw0
>>361

【この男は腕時計をしていない。だから時報が時刻を告げたなら、「げ、もうそんな時間?」】
【「置いてきた妹がぶーたれながら寝ちゃってるかも……」とか言う。実際そう。赤い髪の少女は両の頬を膨らまして】
【暗い部屋で寝っ転がって、それでもスマホの液晶だけ光らせて。「帰ってこない」「クソ」「誰って、おにーちゃん」】
【「居るってこと教えてなかったっけ?」「どーせ適当な女引っ掛けて朝帰りするんだ」「サイテーの男だわ」】
【……そういう類のマシンガン・愚痴トークを、アリアの「同僚」に浴びせかけている。それも眠くなったら、終わるんだけど】

【――――そうして過ぎ行く夜のことを知らないなら。男はアリアの手にするライターに、期待の視線を寄せていて】
【けれどそれに、そっぽを向かれるんなら。あれ、とか声を出すけど――――「じり、」】


……………………あーりんだって、想い人が居るくせに他の男にこんなことすんの?


【……ふは、と笑った口から紫煙が漏れる。「うわきものって怒られても知らないわよっ」――アリアの口調を、真似て】
【きちんと灯った煙草を吸って――はは、とまた笑った。一旦咥えていたものを摘まみ上げて、口から離し】
【もう片方の手、ひとさしゆびを立てて――にっと歯を見せて笑う口の前に持ってきた。ナイショ、のポーズ】
【今夜だけだ。きっと今だけ。お互いに想い人がいるのにこんなことするのは、……この瞬間だけの共犯関係】
【それ以上は望まないし望んじゃいけない。ギリギリの境界線で、危なっかしく踊る夜を――彼は楽しんでいたようだけど、さて、あなたは?】

――――……ン、そんじゃあありがと。情報。おれからはあんまりユーエキなもの、あげらんなかったけど……
これから先、なんかあったら呼んでよ。カラダが丈夫なコトだけが取り柄でーす、ってなワケで。

【吸い終わったら。灰皿にぐりぐり残骸を押し付けつつ――連絡先。プライベートなやつ、そういえば教えてなかったなって思って】


363 : アリア ◆1miRGmvwjU :2018/07/26(木) 00:13:50 j6KZT0OY0
>>362

【 ──── なれば物憂げな顔をしたゴシック・ロリータの男は、すぐに既読を付けるのだろう。「ん」「だれ?」「はつみみ」「うわぁ」「そりゃひどいや」。】
【平仮名ばかりの返信はきっと"彼女"を守るヴェールだった。最近は良く眠れていないのだから、きっと相手が眠くなるまで付き合うのだろう。】
【兎もあれそれは別の誰かの夜であった。同じ夜を過ごすとしても、その色合いは移す虹彩の輝きごとに違う。神様だってそうに違いなかった。だから、アリアは、嗤って。】


「このくらいなら、遊びの内にも入らないわ。」「 ─── あの子なら、解ってくれるもの。」


【 ──── 至極、愉しげな表情を浮かべるのだろう。しぃ、と細い指先を唇に当てて、けれど知ったら怒るだろうから、これは2人だけの内緒。】
【手を取り踊るのは刹那の喜びに似るけれど、それでも彼女が唄えるのは、独唱(アリア)でしかなかったから。】


「私こそ、 ─── 殆ど、独り言になってしまったけれど。」「ありがとう、オム。」
「言われなくたって呼んであげる。 ……… 誰も誘ってくれない披露宴ほど、悲しいものはないから。」


【言うなり彼女は思い出すのだろう。オムレツという料理の語源。色々とある内のひとつが、不意に記憶野から蘇る。羅語の或る単語より来ているという説。】
【Omnis.その意味する所は ─── "総て"。何もかもを含み、受け入れる完全性。そんな大仰で広量なこころが、目の前の男に備わっているとは思えなくとも】
【せめて愛した人くらいは、腕の中に抱き留めておけるのだろう。そう願わずにはおれなかった。自分の為に。彼の為に。誰かの為に。別れる細長い背中に、願いをかけて】



【 ──── だからきっと、彼女はいずれ、たった独りでビリヤードを始める。待ち人は来らず。空っぽのラックをボールで埋めていく。】
【集められた全てをブレイクショットが吹き飛ばす。行き場のない感情のように飛び散る手球を、せめてポケットに落としてやりたくて。】

/おつかれさまでした!!


364 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/26(木) 00:25:17 WMHqDivw0
>>363

…………ものわかりのいいコがコイビトでよかったねえ。ま、お幸せに。

【それ本気で言ってんの? って思いはしたけど言わなかった。ただ、失笑混じりの表情だけ浮かべて】
【ありがとうと言われたなら「いーよ別に」って返す。本当に殆ど有益なことなんて言えなかったんだから】
【多少の負い目は感じていたんだけど――笑ってくれたならそれでいいって思えた。スマホ、ポケットに戻したなら】

ヒローエンってアレ? 教会でやるヤツ? ……じゃーあれだ、おれそれは欠席。
教会入れないの、……ボートクテキなイキモノだから。だから呼ぶなら二次会からにして、
そーいうときはもーちょっとランク低いお店にしといてよ。お高い酒ってなんか、飲んだ気にならねーし……

【何事もなかったかのように背中を向けて、手だけひらひらさせて帰っちゃう。煙草越しのキスも、忘れたみたいに】
【実際忘れてしまうんだろう。だって今夜だけの話だから。今度会うときはまたへらへら笑って】
【当たり前みたいにパーソナルスペースを侵害して。地雷だっていくつか踏んでいくだろう、軽やかなステップで】


【――――――そうして別れて帰った先、ビジホ。スマホを握り締めたまま寝こけている妹に、布団、かけてやって】
【シャワーも浴びずに寝てしまった。柄にもなく頭を使い過ぎて疲れた気がしたから。起きたらまた、……誰かを探す日々が始まる】


//おつかれさまでした、ありがとうございました!


365 : ◆9VoJCcNhSw :2018/07/26(木) 00:41:11 wn2rqSVw0
>>358

【ザリッ、と靴底で擦った路面、石畳。それらは間違いなく本物だった】
【映画のセットのようなチープさも、形だけの虚ろであるような響きもない】
【触れれば指先が土汚れで黒ずみ、掛ければ耳障りの良い音が鳴る――そういう、間違いのないもの】

【無から有を生ずる能力の持ち主ともなれば、その極地は〝世界の創造〟なのだろうか】
【もしそこまで、かの人物が至っていたとすれば。空恐ろしくもあり、そして反対に】
【〝それは神の領域である〟とも思うことだろう。故に有り得ない――どう結論付けるかは、修道女次第だが】

【それとも、合理的な貴女であれば結論はまず置いておくのだろうか。ともあれ、道は広い】

【通行人――なし。いや、時折幽霊か、白黒フィルムの残像のように人影は見える】
【ハンチング帽を被った新聞売りの少年。花に水を撒く老婆、見回りに出る二人組の憲兵】
【時代はやや古い。少なくとも〝現代的〟ではなくて、けれど産業革命よりは後だろうか】

【それは間違いなく〝いつか〟〝どこか〟の〝誰か〟であり。そして恐らくは、世界の主の記憶の産物であるようで】
【で、あるとするならば。修道女が扉を叩いた家屋は、恐らく――、――扉は静かに優しく、開くだろう】



〝■■■■■、お客さんよ。出てもらえる――?〟

               
               〝―――今日の晩御飯はなんだい、■■■■?〟

 〝明日は■■■さんの家に遊びに行くんだ。クイズを出してくれるんだよ〟


               〝■■■■■、宿題はやったのか?〟


 〝後でやるよ、それより今夜は■が綺麗なんだから〟



【セットされていた音声テープが再生されるような、まちまちな会話の断片が流れ込む】
【仲の良い夫婦、そしてその子供。暖かな家庭が容易に想像出来る明るいキッチンに】
【父のそれであろうか、多くの蔵書を備えた黴臭くも心地よい書斎】

【二階へ、そして天井裏へと通ずる階段。地下へと通じる背の低い扉】
【何れに向かうにしても、そこは平和だった。モデルハウスのように生活感が無いわけでもなく】
【かと言って物で溢れかえっているわけでもない。映画のワンシーンのような〝幸せでありふれた家庭〟だった】

【そして、誰もそこには居なかった。湯気立つコーヒーカップや、洗い物に水を流し続ける蛇口は在ったが】
【それも映画のようだった。よく出来た作り物――そう思えてしまうくらいに、本当によく出来た空間だった】

【――気配は、二箇所からして在った。一つは地下、一つは屋根裏。どちらも扉に鍵は掛かっていなかった】


366 : ◆9VoJCcNhSw :2018/07/26(木) 00:42:50 wn2rqSVw0
>>359


〝殺してやりたい誰か〟……ことこの妖狐に関しては、居ないだろうな。
千秋を過ごした化生ともなれば、まあそう殺すなどという感情を持つものでもない。

……だが、その雇い主であるジルベール・デュボン。あれには、多いようだ。
婦警、曽根上ミチカ。公安三課、鵺。さる任侠、霧崎舞衣。
虚神が一、シャーデンフロイデ。計劃者、ロジェクト。

そして、ジルベールという男を無価値と断じたこの世界そのものを。
殺す、潰すというよりは…――圧倒したいそうだ。このクズノハが、聞いた限りでは。


【並ぶ名前は不穏な者が多かった。そもそも、憎悪を抱く相手が多すぎる】
【虚神であろうが六罪王であろうが、そして路地裏で出会った女性ですら殺意の対象足り得る】
【となれば――「特区をまるごと吹き飛ばす」辺りは、きっと冗談にもならないのだろう】
【何故なら笑い話ではなく事実だから。個人相手にこれほどの思いを抱くなら、吹き飛ばしたくない、はずがない】

【――だが幸いにして、綾津妃は綾津妃であって、クズノハはクズノハであった】
【ジルベール・デュボンは此処には居ない。そして城の主とその子飼いの妖狐は〝彼の忠実な手札〟ではない】


【「さて」と区切りを入れる。「それを語るには、しばし妾の自分語りをせねばなるまい」――最後の話題への返答だった】
【この場に居ない者の話を聞きたいなど、あまりいい趣味とは言えないだろう】
【だが話したがりなのだ、この城の主は。そして滔々と語りだす――あまり長くない、綾津妃という存在の話】


【本来、彼女は数千年の昔に死んでいる。しかしその理不尽な死に際する憎しみが】
【彼女を〝呪い〟そのものという存在として定義し直してしまった】
【或いは〝祟り〟とも呼ばれる"綾津妃"は、しかし存在の根幹にある人のあらゆる負の感情に流される事無く】
【この草原の居留地で、世の人々が抱える負のエネルギーを受け止め続けて、生きている】

【クズノハという妖狐は、すなわちその"分霊"であり】
【櫻の国における〝お稲荷さん〟に相当する、まさしく〝祟る狐〟であるという】

【「――ジルベールという男も、妾のそれに準ずる呪いの異能を持って生まれた」】


それは偶然だった。人が生まれ、其の者が異能を持ち、その異能が偶々"呪い"という概念であった。
当然、親しい存在に気付いた妾は様子を見た。「人を呪わば穴二つ」と云うように
呪いを操るということは、呪いに苛まれるということでもあるからな。

妾のように、存在そのものが特殊であるならばともかく――人の子など、すぐ"反動"で死ぬはずだった。
流入する他人の負の感情に精神を殺され、身を蝕まれて死ぬはずだった。


【しかし彼は生きた。殺した相手、すれ違った相手、或いは殺人現場の残留思念】
【およそ人から生ずる負の感情を一切吸い上げ、能力を強めていきながら】
【同時に心身を犯される。体内で何千の虫が常に囀るような狂気に蝕まれている】

【それが強大な力を持った故の宿業。逃れ得ぬ、〝呪う者〟こそ〝呪われる〟という死の定め】


……だが、未だに死なん。幾つかの精神的な異常を来しながらも生きている。
それは奴が、最早真っ当な人ではなく、〝獣〟であるからだと妾は推測していてな
或いはまた別な呪いでも掛かっているのか…――生憎と、会ったことがないので知らないが。


密かに。妾は恐れている。奴が溜め込んだ怨念が放たれればどうなるのかと。
〝呪い〟というのは抽象的で、目にも見えんがな…――呪われてみるか?


【「と、そう言われて"是非お願いします"と答える者は居るまい?」】

【此処まで語って、綾津妃は口を閉じた。喋りすぎた、とも思ったのかも知れない】
【其れは後悔ではなく、疲れによるもの。別にジルベールという男に肩入れする理由もなく】
【知る事実を隠す理由もない。ただ〝獣と呼んだ理由〟を話すには――大分、時間が掛かった】


/ジブンガタリドンゲキサムマシマシノロイカラメ、一丁上がりましたが大半切ってもらって構いませんので!


367 : ◆RqRnviRidE :2018/07/26(木) 01:24:56 vZw8nhd20
>>360

ふふん、良い言葉だろう。
縁だったり、定めだったりっていうのは全部“髪”から始まって、“髪”で終わるものなんだ。
──って、ボクたちのところじゃ、代々そうやって教えられてきたんだよ。 髪は命、ってね。

でも誰の言葉だったかなあ。

【瑠璃はうーんと小首を捻るも、すぐに思い出そうとするのを諦めて。指先をするりと彼女の頬から離していく】
【掌に残る体温を名残惜しげにしつつ、髪束で器用にフォークを扱いながら残りのデザートに取り掛かっていて】

項垂れるにしても、何かしら見つけてやるって気概がなくっちゃね。
んん、元気出たよ。 ご飯も美味しいし。

……え、そうなのかい。 寧ろリゼがあんまり食べないなあと思っていたのだけれど。
ボクんとこの大人なんて、コレの倍くらい……食べてたはず……。 確かそう。

【食欲に関しては、それが普通なのだという感覚だったらしい。リゼの少食さは却って不安だった様子である】
【育ってきた環境の違いだろうか、それにしても体の小柄さからは到底想像し得ない食欲の旺盛さで】

【それから──問い掛けられた言葉に。デザートにフォークを入れる直前で手を止め、子供は口角を上げてニヤリ。「興味あるかい? ……」と呟けば】

ボクね、“自分探し”してるんだよ。

【おどけたように、冗談混じりでそう答える。……こんな幼い子供が“自分探し”?】

この国の浜辺に打ち上げられてたんだけれどね。
それより前のこととか、自分のこととか、何にも覚えちゃいないのさ。
それこそ“好きなものすら何ひとつ”、ね。

それで路地裏とかフラフラしてたってわけ……
……まあ、何にも見つかんないよねえ。

【困ったように肩を竦めて、そのように続けるだろう。端的に言えば“記憶喪失”らしい。故に、先程は路地裏を彷徨っていたのだと】
【ただ、さほど落ち込んでいる様子ではない。ちょっぴり不安を覗かせはしたが、リゼの激励もあってのことだろう】

【分かることと言えば、「ボクたち」という言葉から子供と似たような──例えば銀色の髪とか──人物が他に複数居ることや、】
【多湿を好んだり常人離れした食欲があったりすること……くらいだろうか。記憶が無いことも相俟って、どこか浮世離れしたような印象だった】

ね、興味ないかい、リゼ?
実はボクのルーツが、──とんでもないバケモノだったりして。

【「──なんてね。」瑠璃は冗談めかしてリゼに微笑みかける──】


368 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/26(木) 14:47:50 8vT9pp6w0
>>349

【その心の作用は追憶に近い。心身的なシナプスの中に、どんな演算が含まれていたかは分からずとも】
【人間に関する講釈。──── それを妄執と取るか、真実と取るかは彼女に委ねられるが】
【存外悪い心持ちではなかった。排除よりは心地よい】


──── それをさしてグランギニョルの神話と呼ぶのでしたら、グランギニョルな神話とも言えるのでしょーね
でも結局は、グランギニョルの名を借りて、やってる事は大なり小なり歴史に違わないです。

人間は自分の想像の中で、何処までも優しくなるし、何処までも残酷になるのです
逆説的に言えば、この世界も虚構の世界も、私達の想像を出た事象は起こらなくて

結局の所、全ての帰結は各々の人間によるものなのでしょうね


【誤解、と彼は言った。──── 現実的に虚構を殺める手段を持って尚、誤った認識と伝える様に】


──── 何とも異質な話です。私じゃなけりゃ憤慨の一つもするですよ
そういう役割であるのなら、兎や角も言わねーです、互いにビジネスライクが丁度いいですし
この現実から排除する。── わかりやすい落とし所です



……取り敢えず私の方でエージェントを使って、『嵯峨野 鳴海』を調べるです。
力が借りてーってなったらまた連絡するです、それで大丈夫でごぜーます?


369 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/26(木) 18:11:28 j6KZT0OY0
>>366


【「フムン。 ─── 虚神の方は、この間に死んだとか聞きますね。」「いやしかし敵の多いお方だ。今度にでも持ちかけてみましょう。」返答は、茶飲話の距離感である。】
【男も少なからず真っ当な善人ではなかった。一人二人と言わずとも、誰かを殺す必要があるなら躊躇わず"そう"できる。そんな人間だった。】
【とはいえ今は、その時ではない。目の前にいる人 ── であるかはさておき ── は、互いに誰を殺そうと願うわけでもない。なら、そこまで。】
【ただ言い添えるならば、「まあ困ったらいつでも呼んでください。そこの狐さんも、勿論、ね。」 ─── 頼もしいかは、さておいて。】

【であれば彼女と狐に纏わる逸話については、あくまで静かに首肯しながら、確かに耳を傾けるのだろう。】
【 ─── 食わなくて良かったと思っていた。表向きは穏やかに笑いつつも。間違いなく、腹下しでは済まなかった。】
【魔術や呪術にとんと疎い男でもそれくらいは分かった。 ─── ならば、ジルベールの身の上を聞くならば、微かに眉を動かして】


「 ──── 公正世界仮説は正しかった訳ですね。」「少なくとも呪いの領分において、誰かに悪を為した人間には、必ずの報いがあると。」
「そしてそれを一身に背負い続けているのが、他ならぬジルベールさんである。 ……… 成る程。そいつぁ確かに、"王の器"だ。」

「然しシェリーの雲雀は、自己嫌悪に溺れたりしない。」「自意識を考えることに疎い獣であれば、他者からの悪意という高文脈な意思には鈍感であれる。」
「もっと単純に考えるなら、人間であることを止めた強靭な肉体と純化された精神で、自己に向かう呪いの意思を律し続けている ─── そんな所、でしょうかね。」


【然し随分な皮肉であった。彼の方は既に狂王であらせられると、何より理屈屋の老人たちに聞かせたのなら、如何様な顔をするのだろうか?】
【ともあれ続く言葉には噴出すように苦笑する。勘弁してください、と言いたげな顔をしていた。】


「ご遠慮させていただきますよ。肩に塩振ったくらいじゃ解けてくれなさそうだ。」「 ─── ウチには"そういう"人間がいないから、銃口向けてどうにかなるモノじゃない奴が出てきた時、苦労するわけですが。」
「そこの狐さんだって、本当ならスカウトしたいくらいでは有りますが ─── まあ、それはそれ、として。」


「 ………… もしも。もしも、ですが。ジルさんがぽっくり逝かれたりしたら。」
                「どんなこと、起こるんでしょうね?」


【 ────── けれど最後の問いにおいて、灰色の瞳は細められていた。直ぐに答えが来なくても構わなかった。幾ばくかの沈黙の後に紡いだ言葉であったから。】

/頭をひねって楽しくお返事させていただきました!こちらこそ長くなっちゃいましたので、あれでしたら適当な所でいい感じにしていただければ!


370 : リゼ ◆D2zUq282Mc :2018/07/26(木) 23:12:09 JY1GydDk0
>>367

【瑠璃が語るのは瑠璃自身の事。加えてその背景にあるもの】
【髪を神聖視している生き物達が居る。そしてその一つとして瑠璃が数えられていた】
【価値観も食欲も身形も能力も。それらは人とは乖離していて、けれど振る舞いは普通の子供だった】

ふぅん…"自分探し"かあ。自分を探すだなんて考えた事もないや。
それに"自分"なんてものはそこら辺に落ちてるもんじゃ無いし、難しいハナシだよねー。

【己が何者であるのか解らぬ不安。それは模糊な自分であると言う事】
【誰でもない。何でもない。――否、人には無い奇妙な存在。人に数えられない生き物】
【自在に動かせる髪など人は持ち合わせていない。持っているならば、それは能力者や怪異の類】
【けれどリゼは一線を引く事無く、一歩引き下がる事もせず。物怖じする事無く、ずいっと踏み込む】

これより以前の事とか自分の事を何も覚えてないなら、それはそれで良いじゃんか。
真っ白な白紙みたいなものだよ。そこに何を書くかはキミ次第。何色で染めてもイイからさ。

それに"僕たち"って言葉を口にしたって事はちゃん瑠璃のルーツに至る手がかりがあるって事じゃん。
仮にちゃん瑠璃が言うように想像を凌駕するバケモノだったとしても、さ。それは何の問題も無いんだ。
ちゃん瑠璃はバケモノだとしても色眼鏡でキミを見る事は無いよ。ちゃん瑠璃はちゃん瑠璃なんだからさ。

【リゼは滔々と言葉を紡ぐ。瑠璃が普通ではない事は僅かな遣り取りで察していたから】
【何よりリゼ自身も"普通"では無い生き物。水の国で排斥される側の生き物だったから】
【そして単なる興味。瑠璃と言う子供に興味を持って。一緒に食事をして楽しいと思える子だったから】


それに、ひとりで探し物を探すのは限界があると思うよ。だからさ――ひとりより、ふたり。
何だったらあても手伝おうか?というより勝手に手伝っちゃうよー。

【ニコリ、と表情を綻ばせて。瑠璃の髪に手を伸ばす。――どうやら手を握って欲しいようである】


371 : ミレーユ ◆1miRGmvwjU :2018/07/26(木) 23:56:03 o6XMS57s0


【某月某日、午前4時44分。某動画配信サービスの、とても有名なアカウント。業務用の冷蔵庫に入ってみたり、コンビニのおでんを素手で突いたり、アニメコンサートの限定チケットをこれ見よがしに燃やしてみたり】
【兎角その手の態とらしく露悪的な真似をして、炎上商法で有名になった一つのチャンネル。 ──── それが突然、深夜に配信を始める。普段なら最低限、SNSで予告してからやり始めるのに。】

【とはいえ矢張りそれなりに人気チャンネルだったから、ぽつぽつ人は集まりはじめる。そして或る一点を超えた時点で、それは爆発的に拡散する。「なにか、マジでヤバいことをしているらしい」。】
【開始から10分程度で来場者数は3000人を超える。 ─── 再生するのなら、コンクリートが打ちっ放しの地下室が、やたら高画質で映されている。そしてその中央で、だれかが笑っている。】
【女らしき誰かだった。この暑いのに、肌一つ見せないゴシック・ロリータ。腰まで伸びる濡羽色の黒髪は微かに先端でカールして、動くたびにぴょこぴょこ揺れる。画面越しに甘ったるい匂いがした。】
【黒いミニハットを被っていた。血の気のない白い肌をしていた。ピエロを真似たメイクだった。厚塗りの上からでも端整で愛らしい顔立ちと分かった。凡そ無邪気に満面に笑んでいた。 ─── 白いグローブをつけた両手に、一振りずつマチェットを握っていた。】

【配信が始まると同時に、彼女は思い切りカメラに近寄って、 ──── 青い瞳でウインクする。その後ろには、大きなテーブル。チェーンソーとか、ミキサーとか、無理やり何かを流し込むための漏斗。】
【簡単に人を詰められそうなドラム缶、警告塗装の巨大なガスボンベ、据え置き式のコンクリートミキサー、手足の枷がついた巨大な手術台、目出し帽をつけたガタイのいい黒服の男たち。 】

【 ─── そして、頭陀袋を被せられ、手足を縛られ、跪かされた全裸の男女が、幾人か。】


「 ─────── AMIGO!!」「我が登録者数50万人のファッキン・フリークの諸君、元気かなッ。」
「毎度おなじみ、阿野仁桝夜の漸進的残虐公開チャンネル!  ─── え? 知らないって? やだなァとぼけないでよォ。」


「さァて。今回ボクが"バラして"いくのは ─── ふふ。まァこのチャンネルを見てるような筋金入りのナードなら、知ってるよね、この動画?」


【言うなり彼女はテーブルからタブレットを取って、ひとつの動画を再生する。 ─── 赤い髪をした女の子が、ひどいことされながら解体されていく、残虐なムービー。】
【知って"いた"人も多いはずだった。何せそれはつい先日、だれかの手によって消去されていた。ビデオを再生しながら、大袈裟なくらいの身振り手振りと抑揚で、彼女は語る。】


「20██年にLI████AKにアップロードされたクソほど出来の悪いスナッフムービー!」「画質はジャギジャギ、演出はありきたり、何より幼気な女の子をこんな目に遭わせるなんて可哀想!」
「そういうわけで公開から足掛け8年、"科学"カテゴリじゃダントツブッチで低評価爆撃を喰らい続けてた訳だけど、 ─── ついには此ないだ削除されちゃった。」
「しかもページ跡地には攻性防壁入りのウイルスが仕込まれてた!」「公安の非公開セクションから派遣された政府肝煎りのハッカーの仕業だとか、最近いろんなところでウワサの"正義の婦警"がやったとか、」
「果てはUFOや国際能力者資本なんかまで引き合いに出され、フォーティアンや陰謀論者にとっては格好の飯の種になった訳だけど、結局のところ真相は闇から闇 ──── 。」



「だからね。」「今夜は当時を知る関係者の皆々様を集めて、かの事件の真相に迫り──── 」
「 ──── そしてボクはそれを聞いた上で、然るべき"判決"を下そう、って思ってます。」


【そこで、 ──── 急に、声は冷たくなる。ゾッとするくらい人殺しの目をしていた。それだけで数十人分、視聴者数が減った。けれど来場者数の増加は止まらない。】
【だって次の刹那にはもう、彼女は底抜けに明るい声で、底抜けに明るい笑顔で、配信を続けていたから。ひらり身を翻すなら、息を呑むほど綺麗な黒髪が、弧を描いて。】


「じゃあカメラ回しまーす、3・2・1 ──── はぁい、スタート!」


【 ──── 男たちが、"その人たち"の頭ごと頭陀袋を蹴って、目隠しを吹き飛ばす。備え付けのカメラが顔ぶれをズームインする。陽気な声の残響が、いつまでも地下室に響いた。】



/よやくのやつです!


372 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/27(金) 00:05:26 WMHqDivw0
>>368
【彼女のそれは興味深い見解であった】
【神であれ、結局は人間の想像力の範疇から外に出ることはない】
【それはINFオブジェクトであれ、例外ではなく……】
【なれば、結句、人間の想像力によってまた葬られることも有るのだろう】
【今まで滅ぼされてきた虚神達と同じように】


そうかな?こちらの方が断然使い易いだろう。
"世界の救済"ほど、曖昧で人によって意味のぶれる言葉はないからね。


【ともすれば、その嵯峨野すら、目的は世界の救済かも知れないのだから】
【サクリレイジはともすれば人間社会では悪としか思えない行為も遂行する】
【故に治安維持組織と、建前ででも同じ思想を持っているなどと、考えない方が良いだろう】
【彼女の言う通り、短期的な目的だけを見据えるビジネスライクな関係がお互いに動きやすいはずだ】


そうだね。彼がINFオブジェクトをこちらの世界に招き入れる技術を持っているのならば我々としても看過できない。
彼らが、その力を流用して、戦力としている可能性も十分に考えられる。
その時は――私達も力を使わせて貰おう。虚構を殺すための力を。


【話は、それで一段落ついたのだろう】
【彼女はその後の雑談に付き合うような"人間"ではないだろうと】
【その沈黙は、他に話すことが有るかどうかの確認に似ていた】


373 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/27(金) 00:13:38 jezLXi3I0
>>372

【──── リーイェンは話す事を終えたとアクセスを遮断する準備をする】
【余程多くのセキュリティチェックを被せているのだろう、それは女性がする帰り支度にも似て】
【玄関口でさよならのキスをするみたいに、彼女はふと言葉を投げ掛ける】


そーいえば、これは大した情報でもねーですが、
情報収集がてら<harmony/group>のネットワークに潜っていたら
膨大な遺伝子やら、虚神やらの資料の中に変な動画があったです

画質の荒い見れたもんでもねー動画でしたけど、──── まぁ、二重の意味でですが
その動画の質と、中身と、──── タチの悪いスナッフムービーでしたし
気になったのは、それを<嵯峨野 鳴海>が集めてた、っていう事実です


【嵯峨野も人の子である以上、そういう動画に対して興味が無いとは言わないだろう】
【けれども、調和の取れた世界という御題目を唱える救世主としては】
【些か詰めの甘い、泣き所にもなりうるポイントであるかもしれない】


ひでー動画だったのは間違いねーです、年端も行かない女の子を寄って集って虐め殺す内容でした
まぁ、こんな所です、──── 邪魔したですね


【反応が無ければリーイェンもまた、騙し絵の彼方に去っていくのだろう】


374 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/07/27(金) 00:22:28 WMHqDivw0
>>373
【"騙し絵の女"は借宿から去るための準備を開始した。チェックアウトの早いホテルの帰り際にも似たような、微かな慌ただしまで再現してみせる】
【一見して無意味とも思えるほどの"人間臭さ"。それがどんな意図での仕草なのか、読み取ることは出来ないけれど】

ほう。

【リーイェンが帰り際に掛けた言葉に返したのはたった一言だったが】
【その声色から恐らくは彼女の想像よりも興味を惹かれた様子を知れるだろう】

【無論、虚神を殺すためにしか存在しないこの男が】
【同時に当たり障りのない平凡な感性しか持ち得ないこの男が】
【"性質の悪いスナッフムービー"に必要以上の興味を持つとは考えにくい】


【ならばその興味はどこに向かっているのか――】
【彼女が支度を終え、電子の海へと帰るまでに、それが語られることはないだろう】


【代わりと言ってはなんだが、男はその会話の後にまた電話を掛けた。その内容は――描写の外での出来事】


// お疲れ様でした!


375 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/27(金) 00:30:51 2Fb1A54.0
>>374
/長時間お疲れ様でした!


376 : ◆RqRnviRidE :2018/07/27(金) 08:42:56 QgcD3Ai60
>>370

【存在の肯定と許容の言の葉が、優しい音色で紡がれる。身寄りのない孤独と不安を打ち消してくれる】
【ささめく金糸がいたずらに躍る様は陽光の波に、毒の如く滲む愁訴を浚っていく清爽さは、きっと旋風のそれとよく似ていた】

【過去を失い自分を忘れ、辛うじて残滓が曖昧な存在を繋ぎ止める。人ではないかもなんて、懸念もあった】
【けれど、少女の眩いばかりの彩りがそれさえも色濃く塗り潰し、白紙のキャンバスに華やぎを添える】

そう、だね。 ……うん、きっとそうだ。
バケモノだろうと何だろうとボクはボクだし、
なんてったって、少しだけ覚えてることだってある。

希望を持たなくちゃ。
キミのように前を見て、直向きに、……たまには寄り道しながら、真っ直ぐに。 ね。

【瑠璃は目深に被っていたキャスケット帽の庇を上げ、黒瑪瑙の瞳を細めてリゼに笑いかけた】
【悩んでたって仕方がないのだ。とにかく今は自分らしく、歩む道がなければ作っていけばいい】
【リゼのポジティブシンキングは、子供にとっても拠り所となる。在るがままに在ってもよいのだ、と】

ん……ふふ、きっと否と言っても、
キミはボクの手を引いてくれるんだろうね。

──うん、おねがい。 ボクを見つけてよ。

【瑠璃はそう言って、祈るように。リゼへお願い事をする】

【そうして伸ばされた手、髪束が僅かに逡巡を覗かせ、すぐに少女の手を握り返さない】
【毛先に指先が触れたなら、一瞬、軽い火傷をした時のような、ひりつく痛みを覚えるはずだ】

【出会った当初に瑠璃から“手”を差し出した時、感ぜられたであろう皮膚の違和感が何倍にも増幅されたようなそれは】
【恐らく瑠璃自身によって幾らかコントロール出来るものであったが、気の緩みが引き起こしたものであったのだろう】
【故に、無意識に相手を傷付けまいと子供は躊躇いを見せたのだ】

こっちのほうがいいよ。

【瑠璃は、はにかみながら、差し伸べられた手を己の手で握り返し、触れられた髪束は相手の髪へと伸ばされる】
【それが叶えば、髪よりも細く、きめ細やかな銀髪を、相手のしなやかな金髪の毛先に絡めようとするだろう】


377 : セリーナ・ザ・"キッド" ◆/iCzTYjx0Y :2018/07/27(金) 16:29:09 lp4TKcVo0
前スレ>364

【なんだか随分と可愛い反応をするものだなあ、と―――落ち着いてから思い返せばそんな風にも見える、ヴァルターの狼狽ぷり。】
【慌ててしゃがみこんだ彼を見ているうちに、ある程度羞恥心に熱された身体が冷めてくるのを感じた。まあ、彼も男性なのだし―――……。】
【セリーナは自分の恥ずかしさと申し訳なさ以上に、どこか遠い存在だった彼に対しての親近感を覚え始める。こういうやり取りも、もはや久しく感じる】


……もう世間的には、そう若く見られないけれど。ありがとうミスター、……ちょっと嬉しかったよ。
無事に出れたらもう少し楽しませてあげても良いんだけど―――なんて、アタシみたいのが言うと色々問題、あるかな。


【悪戯ぽく「ふふふ」、と笑ってそれまでの冷静さ、及びブランルへの怒りを交えた静かな心を取り戻す。】
【少しは彼女らしくもなってきたものだが、続く彼の言葉には意表を突かれたようで。ヒーローを志した人間だったという、その言葉に。】
【機械越しで彼の表情がどうなっているのか、決定的な所こそ分からないが、なんとなくそうなのだろうと思えたのは―――彼はきっと、遠い目でどこかを見ているはずだ。】


……そう、かもね。


【きっと、"いつか"の記憶を辿り、そうしてセリーナに説いているのだろう。残酷ではあるが、同時に忘れてはいけない事を。】
【ヒーローを、英雄を理解できるのは同じ英雄と、そして強いて言えば"敵"の存在だけである―――と。確かにその通りだ、無辜の人々よりも】
【近い立場に立つ仲間の方が、彼女を理解できるだろう。だが、それは同時に"拒絶"を生む結果にもなり得るだろう。今の彼女を、真に理解してしまったら。】


……うん。きっとみんな言うだろうね。UTを作ったのは正しい、ここは必要な組織だ―――って。
けどそれは、各々の"居場所"になれるよう私が造ったのだから当然。必要とする者が集まればこそ……

 ……でも。貴方が立ち止まってしまったように、"強引なやり方"で道を切り開いた"つもり"になっていたアタシにも
その限界が来ているって事に、ようやっと気づいたんだ。現実に脚をつけてヒーローを全うする、なんていうのは―――……。



【こつ、こつ、こつ。】

【こつ、こつ、こつ―――。】


……。お喋りは此処までみたい。早く行って、今の情報を―――持ち帰って。


【セリーナの空虚な言葉が紡がれようとするのを阻害する様に。二人の耳元に入ってくるのは、"誰か"の足音だ。】
【鋭い視線で牢の向こうを睨みつけるセリーナは既に、これからさらに加えられるであろう"暴虐"に耐えるべく覚悟を決めた表情。】
【何かメッセージがあるか、と聞かれれば、口元をふっと緩ませて一言いい残すだろう。なんとも彼女らしい、強気で悪戯なメッセージを―――。】


……差し入れなら、アルコールより可愛い下着を御願い。此処を出る時、裸じゃ流石に恥ずかしいでしょ?


【―――こつ、こつ。靴の音が迫る―――――。】


378 : キング ◆/iCzTYjx0Y :2018/07/27(金) 16:29:54 lp4TKcVo0
前スレ>609

【能力者まみれのビックリ家族―――そう間違っている表現でもなかろう。】
【厳密には人間でない為、"能力者"でこそないが―――全員がそれに匹敵、ないし超越する力の持ち主。】
【血の繋がりがある人物は居ないものの、彼の故郷には力を貸してくれるであろう"魔物"達が犇めいている―――代償は、ありそうだが。】

【だがここで、そこまで彼も、そして彼女も濁していた互いの情報がそれぞれ"合致"する。】
【彼の不思議な実家、その実家近くに囚われているという"誰か"、元六罪王で"ダグラスの前のチート娘"―――。】
【三つの情報が重なった時、二人は逃れられない運命の最中に居る事を自覚するだろう。そう、もはや頼れる者は、"あの異形"、のみ。】


―――、御察しの通り。そうだよ、まあキミ程"勘"の良さそうな娘ならなんとなく嗅ぎつけちゃいたかもしれないが。
オレは魔族の出身だ。とはいっても、純粋な悪魔じゃあねえし、……混血ってのともちょいと事情が違うんだが。まあ、なんだ。

"混じり物"の、"紛い物"―――くらいに思ってくれ。面倒くせえ立場なのさ、けどお陰様で魔界じゃそれなりに顔も広い。
"こっち"と"あっち"を行き来するのもお手のもんさ、"パスポート"はいつもハンコで一杯ってタイプだ。

問題は―――あのお茶目なデカパイ・デビル・ガールちゃんが捕まってる城、アレの持ち主が……
オレの所属してる"派閥"……まあ、魔界じゃ最大勢力の軍勢なんだが、そことどういう関係か、って所だな。

正直な話、魔界ってのは混沌としててよ。あっちこっち城主が居て領土持っててお互い牽制し合ってるなんてのは茶飯事だ。
オレの派閥に属してる、ないし好意的な考え方の持ち主なら問題はねえんだが―――まあその、アレだ。最大勢力ともなるとな、"嫌われる"事も多い。

キミだって、ロクに見てもいないのに国営放送がヘコヘコニコニコしながら受信料徴収しに来たら嫌な顔で迎えるだろ?
それと同じさ。役所仕事ってのはどうしても嫌な目で見られがちでね。オレも一か月前にゲロマズイサンドイッチをぶつけられたばかりだ。……さておき。

正攻法で、それこそ城の門ノックしてごめんくださいお宅のリリアちゃんをお借りしたいのですがと持ちかけるか、
或いはこっそり忍び込んでバレねえうちに"拝借"してから事が済んだらまたバレねえ内に城に戻す様な"裏の手"でいくか―――。

立場上、そこの判断がちょっとばかしハードなのは間違いねえ。
だから―――、えーっと、うーん……、……。


【事情は複雑、という程でもないが単純でもない様で。キングは唸りながらワインを喉へと流し込んだ。】
【曰く、彼は魔界の所属。その中でも大きな派閥に身を置いているが、それ故に立ち回りには気を使う必要がある、と。】
【キングは息を深く吐きながら思いを巡らせ、考えを走らせ、たっぷり悩んでからふと、何か気が付いたようにこんなことを言った。】


――――……なぁ。アナちゃん?
ヘコヘコ頭下げて懇願するオレと、かっこよく忍び込んで囚われのお姫様救出するオレ、どっちが見たい?


【にや、と笑う―――さて。この選択、吉と出るか、"凶"と出るか。】


379 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/27(金) 21:18:44 WMHqDivw0
>>371

【湧き立つコメント欄。「オッサンの裸とか既にグロいんだけど」「通報しますた」「後ろwwww不穏すぎwwwww」】
【「やばいよこれ絶対BANされるでしょ」「ちょっと待てここまでやるなんて聞いてない」「ていうか誰?メイク怖」】
【……みんなまだ呑気にやいのやいの騒いでて。他人事だから。画面の向こうで起こる、関係ない出来事だから】

【(――――あの少女の惨殺動画だってそんな軽い気持ちで再生され続けていたんだろう。きっと、絶対)】

【――――それはともかく、撮影が行われている現場。蹴り飛ばされた人々はめいめいに悲鳴をあげて】
【やっと自由になった視界を、どうにかこうにか使いこなそうと。周囲にきょろきょろ視線を遣って】
【……その結果得られた情報が「こんなもの」しかなかったんだから、また、煩い悲鳴をあげるばかりだった】

【最初はみんな、黒服か、ゴスロリの女に喰ってかかる。お前ら一体なんなんだって】
【それもまともに聞いてくれないと悟るなら――今度は仲間割れを起こす。仲間ってわけでもなかったんだけど】

【「あんたなんかしたんじゃないの!?」「知るかよ、お前以外の誰も見たことがねえ顔だよ!!」】
【「なんなんだよここ、ふざッけんじゃねえぞ!!」「畜生誰の巻き添え喰らっちまったってんだよ俺は!!」】

【――――こいつらもまだ、呑気にやいのやいの騒いでて。しかしその中のひとり――一番年を食っていそうな男が】
【女に向かって怒号を上げる。それもまあ――テンプレートに誂えたみたいな台詞を、唾と一緒に吐きかけるみたいに】


………………クソ、クソ、クソ!! おい貴様ッ、俺を誰だと思ってる!?
解るだろう■国の■■院に属する議員だってことくらい! テレビじゃそれなり有名人だ!!
そんな俺に、貴様、こんなことをしてタダで済むと――――おい聞いてるのか!?
クソ、ここから出られたら絶対に■して■して■してやる、覚悟しておけよ――――


【……そんな感じ。ちなみにゴスロリの彼女のこと、女だと思ってるらしいから。吐かれる罵言もまた、下品なもので】


380 : ████ ◆1miRGmvwjU :2018/07/27(金) 22:08:32 o6XMS57s0
>>379

【 ─── "そいつ"は視界の右半分を脳直でネットに繋いでいた。配信されているサイトに自分でアクセスして、映像と流れるコメントを眺めていた。】
【まるでシリアルキラーが犯行現場に戻ってきてしまうように ─── けれど、その内心はもっと、それこそ二度と解けない凍土の其れに似ていた。】

【 ─── だから、わいのわいの揉める"被告人"の連中に対しては、苦虫を噛み潰したような笑顔をもって応じる。くるりと向き直って、歩み寄る。黒服の一人が別のアングルからその光景を映す。】
【唐突にそいつは拳銃を取り出した。ブラックスターなんて渾名で呼ばれる、ごく安くて粗悪な銃。安全装置さえ付いてないそれを、 ─── 天井に向けて発砲した。何発も。】
【どうやら空砲らしかった。けれど弾頭がない分、火薬はたっぷり詰めてあるらしい。およそ拳銃から放たれるとは思えない発射炎と発射音。暫くの間、メインカメラが耳鳴りのように呻く。】


「はいストーップ!」「うるっさいなァどいつもこいつも雁首揃えてごたごた騒いじゃってさぁ ─── 。」
「いい?」「今はボクが喋ってるの。」「キミたちはボクが喋ってほしいときに喋ればいいの。」
「これでも解ってくんないなら余程お電話が遠いようだと判断して次は耳の穴増やすから。OK?」


【ごく軽薄に笑ったまま、そいつは次のマガジンを込める。スライドを引いて、チャンバーに弾を入れて、 ─── 「おおっとぉ!」】
【笑顔のまま態とらしく取り落とせば、容易くそれは暴発する。銃口はどこに向かうのやら、少なくとも"連中"のうち誰か、それも致命傷にならない部位を、的確に撃ち抜く。】
【そしてそんなことは気にも留めず、地面からリフティングするような調子で、そいつは足蹴にした拳銃を手に取るのだろう。にこにこ、にこにこ、笑いながら。】

【 ──── 一番うるさく騒いでいた中年か壮年の男に、そいつは歩み寄るのだろう。そして、しゃがみ込んで、顔を突き合わせて】
【脂ぎった首筋にマチェットを添えて、微かに皮膚へと食い込ませ、じんわり赤い血を滲ませながら。あと少し力を入れれば、あっさり殺される。そう思わせる。】
【けれどシャンプーと香水の甘い匂いがした。矢張り笑顔だった。ささめく言葉は2人だけしか聞こえないように、 ─── 秘め事の距離感にも似て、けれどもっと残酷で】


「あは、 ─── 口先だけで生きてきたようなカシコい方が、ここまで来てまーだ分かんないかな。」「もちろんボクはキミが誰だか知ってる。"だから"だよ。」
「 ──── キミは"切られた"の。分かるでしょ?」「"王様"に対して、ずいぶん反抗的だったそうじゃない。」「これはその見せしめも"兼ねてる"訳だ。理解できたかな?」


【 ─── 言うだけ言ったら立ち上がる。並べられた連中の目の前、ちょうど真ん中、皆んなから見える位置。】
【黒服は何をされても動じなかった。同じ体格、同じ所作、淡々と職務をこなす姿はまるで機械みたいだった。】
【3カメに映像が写って、連中の顔をアップで一人ずつ写していく。"そいつ"が語る胡散臭い三文芝居、一緒に声録しながら。】


「さぁて注目注目!」「改めて皆々様、この度は夜分遅くに御足労どうも。」「先に言っておくがボクはキミたち全員に用がある。」
「返答と対応次第じゃあ返してやらないこともない。だからどうか安心してボクの話を聞いて欲しいなァ。」

「まずは!」「この子のことについて、一人ずつ答えてもらいまーす。覚えてるかな? 覚えてるよね」!「 ─── 忘れてたら思い出すまで何だってやるから」


【言うなりそいつはマチェットとマイクを一緒に突き付けて、連中に一人ずつ"インタビュー"していく。さっき手ずから説明した、"赤髪の少女"のことについて。】


381 : 名無しさん :2018/07/27(金) 23:11:12 qj2r7iic0
【街中――――夕暮れ】
【ひどく穏やかな時間だった。夏にしては少しだけ過ごしやすい、けれど確かに夏を感じさせる一日が終わりゆく頃合い、どこかでセミが鳴いていた】
【普段ならば門限がどうとうるさい両親も、こんなにいい日なら、ほんの少しだけ、友達とどこかで遊んでおいて。と。優しく声を掛けたくなるような、その日は】
【けれどきっと"彼"にとっては穏やかでもなんでもないのだろう。――世界はそういうものだった、誰かにとっては穏やかであっても、誰かにとっては地獄であり】

【だから時として誰かが零れ落ちていく、――だけど、そういう風に、成り立ってきたから】

【――とかく、彼はその場にいた。川沿いであった、煉瓦敷きの地面と、川を見下ろすように接地されたいくつかのベンチ。大きな木が木陰を作って】
【昼間ならば過ごしやすさを演出してくれるのだろうと思わせて。川のせせらぎと遠い蝉の声を子守歌に、散歩中らしい老婆と老犬が二人してうつらうつらとしていた】
【そこへ楽しげな声が混じりこむ。――この辺りの学校に通うのだろう、少女ら。お揃いの制服は涼しそうなセーラー服、なんらかの部活帰り、さらに寄り道してきた雰囲気】
【なにせそのうちの一人は食べさしのクレープを齧りながら歩いていた――聞こえてくる話題は本当に特別なものなんて何もない、ありふれた、ごく、ありふれた】

――――――――…… あっ、

【四人の集団はきっと人生で一番楽しい瞬間を謳歌して。けれど気づくことがあるとすれば、主に喋くっているのは三人、もう一人は、一番後ろにちょんとついて】
【けれど仲間外れにされているわけではない。話を聞いて楽しそうに破顔する瞬間もあれば、時々会話に混じることもあって。――けれど、ある瞬間に、】

【(それは"彼"とすれ違う時だろうか。それとも、"彼"に気づく瞬間だろうか。とにかく、その瞬間に、小さな声が漏れたことは、確かであったなら)】

【――――見覚えのない少女であるはずだった。特筆するような特徴というものもほとんどない。通学時間の電車に乗れば、たぶん、四人くらいは見つけられそうで】
【真っ白のセーラー服がまぶしかった。紺色の襟に、赤色のリボン。きちっとプリーツの整ったスカート。白いソックスに。学校指定のローファー。スクールバッグ】

【――"少女"がふっと立ち止まる。いくらか進んだのちに気づいた少女たちが振り向いて「カエー?」「どしたの?」などと、いくつかの言葉を並べ】
【――そしたまた"少女"が見やる先の"彼"に気づいたなら、「えっ何? カレシ?」だなんて声もする。――。――そんな声を、カエ、なんて呼ばれた少女は、ふるふる頭を揺らして】
【――ぱたん、と、小さく駆け出しかけた足が、けれど止まる。「――――先に行ってて」と紡いだ声に、少女らはいろいろ言いながらも、けれど、やがて居なくなるんだろう】

―――――――――――――――――――――――――――――――――― オムレツさん。

【――――やがて一人残った少女が、どこかはにかむような、寂しげな、儚げな、――とにかく、複雑な表情を浮かべて、鞄を背負い直すのだろう】
【川からぬるい風が上がってきて少女の無特徴な毛先を揺らす、――ああ、でも、けれど、どこか囁くような吐息の使い方は、どうしてか、鈴の音を連想させて】

/よやくのやつです!


382 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/27(金) 23:11:17 WMHqDivw0
>>380

【轟く銃声、余韻が後引くころには煩かった「被告人」どもも、流石に静まり返っていて】
【ネット上に流れるコメントも似たようなものだった。「え、あれ本物?」「冗談じゃないの」「マジでやばいんじゃないの」】
【誰も彼もがそれを「現実」だと認識し始めた。そうしたら、空気が、がらりと変わる――それこそ真冬の山奥に裸でほっぽり出されたみたいに】

【暴発した銃、弾丸が抉ったのはこの場にただ一人だけいる女の――手だか、足だか。ギャッと高い悲鳴が、響いて】

…………なんだと、……ジルベール、ジルベールの手先だというのか貴様ァ!
反抗的だと? ふざけるな、あんな若造に従ってやっていたのだって奇跡みたいなモンだった、
六罪王だかなんだか知らないが――――――待て、「兼ねてる」? それはどういう――――

【それを背景に行われる内緒話、の、距離感。それでも男はなおも怒りを絶やさず――けれど】
【最後の一言で表情を変える。その意味を説明するよう求めたところで、……突きつけられるマイク】
【添えられた写真に写っている少女の姿を見た瞬間、男は、顔色を変えて――憤怒の表情だった】
【あれだけの制裁を加えてもなお足りぬほどに彼女のことを恨んでいたらしい。だって、】

――――――――……忘れるものかこのクソガキ! ちょっと喉奥まで突っ込んでやっただけで、
反抗的な目で睨み上げてきて、この俺を――――挙句の果てに噛みやがったんだ、■■■を!!
完治するまでどれほどの時間と金がかかったと思ってやがるこの■■■■、■■■――――

【――――そんな間抜けな理由があったから。だからこの男は、あの子を、あんなにしたんだって、言う】

【(そのほかの面々。恐怖のどん底に陥ってはじめて、連帯感というものが生まれたらしき夫婦――「■■■?」 ……少女の本名)】
【(少しだけ髪や肌の質がいい男。「そこの夫婦から■■くらいで買った、あいつか……?」 ……値段らしき数字を答え)】
【(ちょっとだけ体格のいい男。「■■様に命じられて、……いやでも、四肢を切っただけで、殺しては……」 ……この期に及んで言い訳)】
【(そして一番若くてチャラそうな男。「誰だよ、知らねえよこんな女……どっかで買った娼婦か?」 ……忘れてる。なら「何だって」やるべきだ)】


383 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/27(金) 23:22:18 WMHqDivw0
>>381

【歩いていた。ただなんとなく、歩いていて。すれ違う人々の顔なんていちいち見ているはずもなく】
【だったらそれは全部風景だった。何事もなく流れていくだけの風景、……眺めているだけでも気が落ち着かない】
【だって「妹」があんなことになってしまって。その友達らしき少女も泣かせてしまって。気分は、どん底だった】
【「あのコを助けるためなら何だってやろう」って、硬く約束したはずの、同種を。……失ってしまったも同義だった】

【――――だから、あ、とか声をかけられたって。耳に入るはずなかった、なかったはずなのに】

………………、……え?

【それでも。流石に名を呼ばれれば立ち止まる。偽名だけど。……偽名に使うにしても妙な単語を選んだつもりだった】
【だったらその名を知っている人はごく少数に限られるはずだった。絶対、こんな普遍的な風景からは】
【聞こえてくるはずのない言葉のはずだった。よくて、「今晩のおかずはなーに?」って訊ねる子供に母親が返すときくらい】
【……、……だって思ってた。それくらい、変な名前を使い続けている自信が、あったから――――】

―――――――――――――――――――――――――――――――――― 鈴音ちゃん?

【少女のすがたをもう一度見た。痛々しいまでに鮮やかな赤も、何もかも呑み込んでしまいそうな黒も】
【光のすべてを反射する白もないなら。彼女じゃないってすぐわかるはずなのに、……その問いが、出てしまった】
【同時に思い出す。彼女は今、世界中のどこにもいなくて、……どこにでも居る。気付いた瞬間ぞっと何かが肌を撫ぜた、気がして】

【末期色の瞳が最大限まで見開かれて少女を見ていた。それ以外のモノを見つめられなくなってしまったみたいに、――――】


384 : ████ ◆1miRGmvwjU :2018/07/28(土) 00:31:26 o6XMS57s0
>>382


【 ─── 彼からの質問には答えない。もしも言葉にするならば、だって答えてやる義務なんてないんだ ── って、そいつは口では言うだろうけれど】
【本心としてはきっと違った。だって。〈わざわざ答えなくたって、今から分かることなんだから〉。その端正な横顔は、この世のものとは思えないくらい、冷たくて。】

【 ────── 故に、言い訳ですらない、いっそ清々しいくらいの下らない動機も、笑顔のまま受け止める。他の連中にも同じように。うん、よく言えたね、って。】
【ありがとう、とさえ口にするんだろう。頷きながら、そいつは各人の言い分を聞き遂げる。一人ずつ、一人ずつ。納得したように。 ──── けれど。】
【全員を真っ直ぐに覗き込む、眇められた青い瞳だけは、微塵も笑っていなかった。嗜虐でもない。憤慨でもない。忿怒でもない。なにか、もっと、おぞましい感情。】
【きっと最後の一人はその瞳の意味を理解できなかったに違いない。ぱっと写真を指の間から落とす。残酷な未来を予告するように。】
【ごく穏やかな口調でそいつは言葉を綴る。有無は言わせない。言ったら殺す。殺される。 ──── だってマチェットの切っ先が、彼の口の中に、突っ込まれる。】


「ふうん。そういうこと、言っちゃう。」「キミは嘘をついてるね。 ── キミは覚えてる筈だ。だって態々"動画"まで撮ったんだから。」
「 ─── まあいい。頭の悪いキミでも思い出せるよう手伝ってあげよう。すぐ嘘をつく舌先は、今は切り落とさないでおいてあげよう。けれど。」


【喉に突き刺さりそうで突き刺さらない、 ──── どこまでもギリギリの位置だった。黒服の一人が歩み寄ってきて、タブレットを彼の眼前に突き付ける。】
【動画が再生される。ベッドに倒されて泣き噦る女の子を、携帯か何かで撮っているらしい。やはり画質は荒い。げらげら下品な笑いを響かせて、それは、そいつは ─── 。】


【 ──── マチェットが右に振り抜かれる。男の頬肉と奥歯の数本を、歯肉ごと綺麗に吹っ飛ばす。】
【タブレットの液晶に真っ赤な血が飛び散る。ぼたぼた音を立ててコンクリートの床に血溜まりができる。動脈を切るわけではないから、それで死にやしないけれど。死ねやしないけれど。】



「どうかな? ん? 思い出したかな。」「思い出したよね。」「思い出せるよね。」
「さぁ貴方はこの子に何をしたかな?」「説明してごらん。貴方の言葉で。」「 ─── じゃなけりゃ、次はどこを剥いでほしい?」



【返り血がついたって構わなかった。変わらない笑顔のまま、そいつはもう一度だけ問いかける。間違いなく次はなかった。】
【 ─── ちゃんと答えられたら、やはり「うん。ありがとう。」愛らしい顔をにっこり笑わせて、労うのだろう。】
【メインカメラに近寄って、 ─── 笑顔のままそいつは演説する。大げさな身振り手振りと、大げさな言い回しで。】


「 ……… と。まあ。」「皆んな、まだちゃんと見てるかな?」「見てるよね。見なきゃ許さない。」「こいつらは、件のムービーに関わったクズどもです。」
「遊ぶ金欲しさに少女を売り払ったどうしようもない親。」「そうと知っていて少女を買った娼館の主人。」「面白半分で羽目撮りを全世界に公開したプレイボーイ気取り。」
「 ──── どこまでも下らない理由で、あのムービーを撮った腐った政治家。」「やれと言われたからやった思考停止のチンピラども。」

「こいつらは一人たりとて反省も刑罰も考えちゃいない。」「ムカつくかな?」「ムカつくよね。」「"不条理"だねえ世界って!」
「だからボクが然るべき措置を取る。」「だってさ、なんでかってさ、 ─── 生きてたって仕方ないじゃん?」「こんな連中。あはは」

「でもねだけどねこの国は法治国家なんだ。」「シビリアン・コントロールが成立してるとは言い難くも、ボクも多少はそれに従いたいと思う。」
「 ─── 3分やる。あの子に謝る言葉を考えろ。ちゃんと謝れたら許してやる。」「謝れなかったら、殺す。」


【言葉尻はどこまでも顰められて、それでいて冷酷だった。手近なテーブルの上にあったキッチンタイマーをセットする。】
【そうしてそいつは手術台の縁に腰掛けているのだろう。ハイソックスの両脚を、ぶらぶら、手持ち無沙汰に揺らしながら。】


385 : ████ ◆1miRGmvwjU :2018/07/28(土) 00:38:09 o6XMS57s0
>>384
/また書き忘れてる、、、これつけたしといて下さい!!
/【そしてタイマーがぴこぴこ鳴ったら、そいつはまた一人ずつ、"インタビュー"するのだろう。今度は逆方向から、 ─── 政治家の男が最後になるように。】


386 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/28(土) 00:50:42 WMHqDivw0
>>384

【もが、と間抜けな声が出た。刃が男の口に突っ込まれる。そしたら周囲がしんと静まり返って】
【――――そうじゃない、凍り付いた。この女は「本気」で「やる」つもりなんだって理解した、……今更】
【だからといって何かできるわけでもなく、言えるわけでもなく。……さっきまで威勢の良かった男でさえ、口を噤んでいた】

――――あ、……ガ、……ぁあ゛ああァああア゛ッ!!?

【男は動画を見せられて、ようやく思い出したようだった。けれどこの男、「常習犯」だったから】
【買った女との行為を撮って、それをばら撒くのが、日常茶飯事。であるなら――「■■■」だって日常の一部にしかすぎなかった】
【だから名前も覚えちゃいなかった。けれどここまで痛めつけられたなら、もう、言うしかなくなって】
【「■■■■してるところを動画に撮ってばら撒きました」。それだけ伝えるのにも苦労した――口を、引き裂かれたんだから】

【「見てなきゃ許さない」――――女がそう言うころには、もう、コメント欄は凍り付いていた】
【「通報」の二文字だけがやたらと踊っているけど――無駄なことだろう。それくらいで止まるものとは思えない】
【そんな中で誰かが言っていた。ひとことだけ。「たしかに可哀想かもしれないけどさあ、」】


「――――なんでよ! なんで私たちばっかり!? 世界には■■■よりもっと惨めに、可哀想に死んだ子なんて、
 いくらでもいるじゃない!! ■■■だけ特別可哀想だったわけじゃないじゃない……それともアンタ!
 いちいちこんなことやってんの!? 可哀想な子を探しては、虐めた人間を殺して――――そんなの!
 アンタが殺したいからそうしてるだけなんじゃないの、ふざけんじゃないわよ、私たちを巻き込まないで頂戴!!」


【めいめい女の言葉に従って何か謝ろうとしていた中で――――女が、叫んでしまった。先の銃の暴発で怪我をした】
【■■■の母親だった。母親だったのに――可哀想な我が子に対する謝罪の言葉は、ないらしい】
【それどころか、女のやっていることが、おかしいって。そんな「当たり前」のことを言う――――こんな局面で。】

【――――他の男たちは、それを見て、顔を真っ青にしていた。余計なことしやがって、みたいな表情――――】


387 : 名無しさん :2018/07/28(土) 01:02:36 qj2r7iic0
>>383

【――――そこに居るのは限りなく"違う"少女であった。こんな少女を彼は知らない、会ったはずもない。話したことはもちろんないし、名前を知られるはずもないだろう】
【だからそれは限りなく別人であるはずだった。――"本来であれば"。そして今はその本来から外れてしまっていた。件の神は解き放たれていた、世界中に、広く、拡がって】
【ゆえにこそ、――――、】

【(――そんな、神様が。世界を滅ぼしうる力を持つような神様が。その力を使って、ただ、ただ、ありふれた生活に紛れ込むこと、しているだなんて)】

……………………――――――――、

【"それ"は頑なに禁じられている一人遊びに耽るようなものだった、自分にはほんの欠片もなかった"日常"、――いまならば、覗き見ることが出来ると気づいてしまって】
【ほんの短い間だけ身体を借りる、――かしてもらう。ああ、違う、それはあくまで彼女の都合であったなら。厳密には無理繰りに"奪って"いる。そのうち返しているだけ】
【であれば限りなく知らないはずである少女は――全く滞りもなく、彼の言葉に、視線を返す。悪びれるでもなく、開き直るでもなく、――だって、自分は、】

雪代花映ちゃん。……テレビのニュースで"蛇"のことを知ったの。だから……。……。

【ユキシロカエ。おそらくは"この少女"の名前なのだろう。わずかに視線が逸れた、――色違いじゃない。声音だって、鈴の音じゃない。だのに。】
【どこかで鈴の音を幻聴させるようなしゃべり方だった。――――――"だから身体を乗っ取った"。つまり少女はそうやって言っていた、奪い取った身体をわずかに身じろぎさせて】

――――わたしのこと、こわい?

【――今の少女は、蛇に向けられる気持ちを感じ取る。それこそがウヌクアルハイの存在する理屈であったなら。けれどそこに顕れたのは少女であった、"願われたから"】
【距離は、まだ、遠かった。逃げ出そうと思えば逃げ出してしまえそうだった。それをきっと少女はどこまで逃げたって感知するんだけれど、無視してくれそうな、温度があった】
【けれどそれはきっと出来ないんだろう、――――彼をじっと見つめる目は不思議なことなんてなんにもないありふれた色合い、だけど、どこか、寂しげに瞬いて】

【"変に"平凡な温度だった。その癖どこかで気まずかった。昔の恋人に会ってしまうのと似ているのかもしれなかった。――ああでもそんな考え方は現実逃避に他ならない】
【現実に目の前にいるのは"****"であると確信させた。けれど、それは、いつかともに朝食を食べた少女でも、いつか旧市街にてまみえた少女でも、なくて】
【蛇の胎の中でであった時とも、夢の中で会った時とも、また違う。――――今度こそ本当に本当の、】

【――"これ"は世界を滅ぼしかねない神だと、狐面の"あいつ"は言っていた。"いつか"、"そのときに"、"この世界が納得いくものじゃなかったら"――】
【――"いま"はそうではないらしかった。ただそれだけが唯一救いに似ていて――(ほんとうに?)】


388 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/28(土) 01:15:00 WMHqDivw0
>>387

……………………そうなの。カエちゃん、……って言うの、ふうん……

【返す言葉は鸚鵡のよう。まだ理解が追い付いていないようだった、俯けば長めの前髪が落っこちて】
【黄色の瞳をいくらか隠す。けれどその色が銀色であるなら――透かした先に、まだ、見える】
【混乱の様相を灯す視線。カエを見て、それからちょっと外れて、惑うように風景を見て、……戻ってくる】
【……この子を何と呼ぶべきか、未だ、迷っているようだった。「神様」のことに関しては、踏んじゃいけない地雷が、多すぎる】

【怖いか、って、訊かれたら。また少し迷う。……「日常」を享受したがっていたのは知っていたけど】
【その途中でどうして自分が呼び止められたのか、まではわからない。本当に、ぱっと見かけたから声をかけただけ】
【――なのかも、しれないけど。そうじゃなかったらって思う、なら、――――自分の返答次第で世界が滅ぶ】


……、……。いいや、……ずっと逢いたかったよ。ひさしぶり。


【考えて考えて考え抜いた末――――答えたのは「本音」だった、バカみたいな絵柄の本なんか読んでまで】
【逢いたかったのは本当だった。だから無意識に「ヒメ」を呼んでいたし、頼れる「アリア」を探して夜の街を練り歩いた】
【その努力の結晶が、きれいなきれいなカタチを得た――かと言われれば、首を傾げるが。それでも逢いたかったのは、本当】

……鈴音ちゃんって呼んでいい? ……いや、そう呼びたいな。鈴音ちゃん。
「またね」って言ってたの、覚えててくれた? だから会いに来てくれたのカナ、……なあんて。

【あの夢で逢ったときの彼女じゃないってなんとなくわかっていた。わかっていたのに――縋りつくみたいに、訊ねる】


389 : ████ ◆1miRGmvwjU :2018/07/28(土) 01:40:00 tXz1gm0.0
>>386


【きっとそいつは、 ─── そのコメントを目で追っていた。自分のやっていること全て、生放送の視神経に投影したまま。たしかに可哀想だけれど。けれど。けれど。】
【 ─── ぴたり、脚を揺らすのをやめた。だらんと下に垂れ下がる。だって1人ばかり叫んだ奴がいた。激安の殿堂で産まれたような安っぽいキンキン声で喚いていた。】
【青い目線が冷ややかにその女を睨んだ。視線だけで誰かを殺せてしまいそうな顔をしていた。 ──── けれど、そいつはきっと、突然に噴き出すのだろう。】
【年頃の女の子みたいな屈託のない声で、お腹を押さえながら、ちょっと下品だって分かってても、それでも笑うのをやめられない。そういう様子で、一頻り笑った、あと。】


「 ──── やあやあ。思ってた通りのことを言ってくれるなぁ、ふふ。」


【すとん、 ─── 手術台から降りて、ゆっくり歩き始める。強張った顔をした連中の周りをゆったり歩いて、やはり大げさな身振り手振りで、自分の演説に酔うように。(あるいは、自分へ言い聞かせるように。)】



「言ったろ。事実、世界は不条理なんだ。キミたちが証明したように。」「ボクの目に付いた。言い知れず目障りだった。それ以上の大層な理由、いる?」
「キミたちは不条理にも███を追い込んで殺した。それが世界のルールだと認識していた。違うかな? 違わないよね。」
「だったらボクが同じ論理でキミたちを追い込んで殺しても文句は言えないはずだ。ボクはキミたちを不条理に殺す。それだけ。」

「まあ、碌に人生計画もないのにセックスしてガキ作って持て余しちゃった挙句こんなとこにいるバカのキミでも分かるように言うと、さ。 」「 ──── 交通事故みたいなモノだからさ、諦めてよ。ねえ?」
「しかも暴走ダンプカーの前で土下座して謝るという選択肢がキミたちには残されてるんだ。それを考えたら寧ろ破格、だいぶ良心的じゃない?」「ボクのやってること。」


【 ──── およそ滅茶苦茶な言い分だった。確かにこれは間違いなく復讐だった。けれどそいつは、これは飽くまでも不幸な事故と同種類のもの】
【誰にでも降りかかる可能性のある恐怖でしかないって語るのだ。 ─── けれど反駁なんて無意味だった。だって、最初から論理なんて有りはしないのだ。】

【ぱん、ぱん、ぱん。マイクを握ったまま手を叩く。なにかを知らせるために。】


「さあて、そろそろ3分経つよ!」「漏らすもん漏らした?」「神様にお祈りは?」「お部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする準備はオーケー?」
「謝罪に求める要件はひとつだけ!」「ちゃんとそれを理解できていたら、どんなクズな言い分でも見逃してやる。」「はい5秒前、4・3・2・1・ ──── ゼロ!」


【ぴぴぴぴぴぴぴぴぴ。100円のキッチンタイマーがキッチンで鳴らすのと同じ音を立てる。けれどここはキッチンじゃなかった。 ─── 投げつけられたマチェットで、可哀想な電子音を断末魔に、それは沈黙した。】
【だったら今度こそ尋ねていくのだろう。にっこり変わらない笑顔で、けれど目許だけは絶対に笑わなくって、 ─── 最後に聞くのは、政治家の男。全ての判決は、全ての言い分を聞いてから、下すらしかった。】


390 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/28(土) 01:57:26 WMHqDivw0
>>389

【睨まれた女は一瞬だけびくりと震えたが――睨み返してやった、それは女特有の意地だったろうか】
【男たちはおろおろとその睨み合いを眺めるしかできなくて。ひどく滑稽なシーンになったんだろう】
【けれど――――彼女がけらけら笑うなら。不気味だって思う、あまりにも自然に。そして怖い、とも思う】

「事故? 事故ですって――――ふざけんな、アンタがやってるのは、――――――」

【なおも言い返そうとした女の声を遮るように。タイマーが鳴り響く。そうしたら全員が慌てふためく、ばかみたいに】
【「すみませんでした」「悪いことをしました」「ごめんなさい、■■■に謝ります」「もう二度とあんなことはしません」】
【小学校の道徳の教科書ですら鼻で笑って突っ返す、みたいな謝罪が輪唱みたいに鳴り響く】
【とりあえず謝ればいいとでも思っているようだった。本当に、ばかみたい。けれどみんな最後には】
【「殺さないでください」って、謝罪じゃなくて、懇願に変わるなら。――――見逃されないんだろう、絶対に】

【そして最後。男は、ぎりぎり奥歯を噛み締めていて――エナメルを摺りつぶすみたいに】
【この期に及んでまだ、憎悪を絶やしていないとわかる顔だった。だったらもう殺すしかないんだけど、】


………………あのガキを。……、甚振って殺して、それを晒したこと。……申し訳、ありませんでした、


【――――これもまたテンプレートに誂えたみたいな回答だった。自分がやったことをそのまま述べるだけ述べて】
【それに取ってつけたようなごめんなさいを添えて。……そんなもの、きっと彼女は、望んでいない】


391 : 名無しさん :2018/07/28(土) 02:35:10 qj2r7iic0
>>388

【――――ふうん、と、悩み抜く中で漏れたような声に、少女は、カエは、――あるいはその中に居る"彼女"は、一瞬ひどく曖昧な顔をする】
【空虚にもきっと似ていた。けれど何にも考えてないようにも見えた。顔はあの少女に比べていくらか大人びていた、肌は綺麗に透き通る白さで、丁寧なのが知れる】
【スクールバッグには有名なキャラクタのちっちゃいぬいぐるみのキーホルダーが付けられていた。だから"何もかもがあの少女が泣いて憧れた日常だった"】

【――そしてあの少女があの少女のままでは決して手に入れることのできない日常でもあった。あの少女にこのような平穏はなかった。――ただの一秒さえも】

――――――……よかった。

【その問いかけの結果で世界を滅ぼす気はなかった。けれど――限り泣く少女は安堵の顔をしたんだろう、その目元をわずかに綻ばすようにして】
【ちりんちりん、と、自転車のベルの音。――少しして、"カエ"が着る制服と同じ学校の制服を着た男子生徒が、失礼にも二人の間をチャリンコで走り抜けていく】
【けれどそんなのあんまり見えなかったみたいに、……だけどそのくせ次はないようにしたいみたいに、少女は一つ空いたベンチへ相手を誘うんだろう】

――わたしね、覚えてるよ、お名前、教えてもらうの、それから、"たんぽぽ"。それに。

【もし彼が付き合ってくれるなら、少女はそこによいしょって座る。見た目は全く違うから、ふとした時に別人だと感じさせた。だのに、ふとした時に、少女だと感じさせる】
【相手の言葉に嬉しげだった。その名前で呼んでほしいみたいだった。だからやっぱりこの少女の中身は彼女だった、――元の人格がどうしているか、は、分からないけど】

わたしのこといっぱい呼んで考えてくれてたの――ずっと、ずっと、ずーっと、見てた。

【くすくすと小さく喉を鳴らすみたいに笑う。――ありふれた色の瞳がじっと彼を見ていた、そうしたら、たぶん、その目はあんまり笑っていないなら】
【何かが違うように見えるのか身体が違うせいなのか。それともやっぱり、――たくさんの蛇と混ぜ込まれた少女は変質してしまったのか。けれど、記憶は地続きなら】

"外に出る方法"、教えてもらったの、だけど、イルちゃんが、身体を探してくれるって――――……。
――――でも、見てみたかったの。みんなが持ってる――"ふつう"。えと、それで……。

【外に出る方法――というのが、これだろう。他人の身体を乗っ取る方法を教わって。だけど身体を持ってきてくれるって言うから、じいと、待っていた】
【だけれど退屈だった。――誰もおしゃべりとかしてくれなくて。前みたいに祈ってくれる声も聞こえなくて。その代わりに、みんなが、みんなで、怖い神様だと言う】
【その認識にくるまれたなら少女という人格としては悲しかった。――だから別のことをしていた、それが、"これ"】

【――そんなつもりなかったのにおもちゃを壊してしまった子犬みたいな目をした、いいこで待っていないって伺うような目をして、けれど、】

【その言葉は同時に一つの出来事を伝えても居た。――"イル"が。この少女の本来の身体を探しているのだと言うのだ、そして、彼は、その在り処を知っているなら】
【どうしようって思わせるかもしれなかった。――けれど同時に。今のシラカミリンネが主導権を握る神に、白神鈴音そのものの身体を与えようとするのなら】
【それはあの病魔が白神鈴音という存在を取り戻したいと願っているみたいに見せるかも、――しれなくて?】


392 : ████ ◆1miRGmvwjU :2018/07/28(土) 02:47:10 tXz1gm0.0
>>390


【 ──── そんな出来の悪い謝罪であっても、ちっともそいつは怒らなかった。うんうん、よく考えたね、って言うみたいに、にこにこ笑っていた。】
【もしかしたら、 ─── 甘い予感も走るかもしれない。自分はたまたま"満たせて"いたのかもしれない。拙い言い分でも許してくれるのかもしれない。】
【いいや拙く謝ることこそが大切だったのかもしれない。そうに違いない。重要だったのは言葉の長さではなく、いかに気持ちを込めて謝ったか、 ─── そうに違いない、なんて】


【もしも思うのであれば、どうしようもない愚か者だった。だって、そいつは】
【 ────── 絶対に許されそうにもない、政治家の男がなにか"言おうとした"途端、遮りながら、こう告げる。】


        「0点だ。」


【 ────── 銃口を頬に押し付ける。そしてトリガーを引く。発射炎が皮膚を焼き、眉毛と髪に燃え移る。頬の肉が端から吹き飛んで、上下の歯が纏めてへし折られる。】
【ごく作業的に逆側の頬にも同じことをする。これは"再現"なんだって理解するかもしれない。 ──── ███と呼ばれた少女が、かつて一番最初にされたことの。】
【そうして数秒ほどで"其れ"が終わるなら、B級ホラーのクリーチャーより悍ましい顔が出来上がっていた。それでも脳幹と動静脈と脊髄は外していた。だから、死ねなかった】


「いや、さ。」「別に内容に文句なんてないんだ。どうせ口先じゃ何とだって言える。」
「でもさァ。あのさァ。 ──── "なんで、ボクの前で謝るわけ"?」


【ひどく冷たい目と声をして、淡々と彼女は"隣"に映る。淡々と喋りながら、淡々と両頬を吹き飛ばしていく。1人ずつ、1人ずつ。】
【暴れるならば黒服が取り押さえる。何より彼女の手が頭を鷲掴みにする。ばんッ。ばんッ。パンチ穴でも開けていくみたいに、作業的に。だから、誰も、逃れられない。】


「最低限。最低限だ。最低限たとえ形式上だけでも、ごめんなさいを言って謝罪を示すのであれば ──── 謝るべきは、ボクに対してじゃないだろ。」
「ねェ政治家さんとかさ。キミは頭を下げることの軽さをよく分かってる筈だよね。会見でカメラ越しに謝罪をされて許す奴がどこにいる?」
「他の皆んなだってそうだ。」「どんなに酷い職場だって本当に謝る時は顔を合わせて謝る。メールや人伝てや書類だけで済ませるなんて論外中の論外!」
「███に謝る?」「笑わせるなよ。本当にそうしたかったのなら、ボクにあの子を呼んでくださいと頼めばよかったんだ。」
「 ─── そしたら喜んで、ボクは彼女を連れてきたよ。キミたちをここに連れてきたように。1人くらい、出てくるかなぁって思ってたんだけどなぁ。」
「そのくらいボクならできるかもしれないって、そんな想像力もなかったんだ。 ─── 本当に、バカしか居ないんだね。」


【 ─── そうして、全員分の頬と奥歯を吹き飛ばしたら、大きくそいつは溜息を吐くんだろう。もういらない、とばかりに、弾の切れた拳銃を投げ捨てる。】
【そしてまた冷たく嘲笑っていた。キミたちは十分に助かるチャンスがあったのに。ごく簡単な条件を提示していたのに。 ──── それに気づかず、自分で自分の首を締めた。哀れだね、愚かだね、って】


「分かるかな。キミたちがやったことは、そもそも謝罪という行為としてすら成立していないんだ。」
「それにキミたちはどこまでも無自覚で無知だった。やっぱりキミたちは生きるに値しない。というかボクが手を下さずとも勝手に死にそうだ。 ──── それは腹立たしい」

「 ──── だから、ボクが、ここで、殺す。」「どこまでも惨めに。どこまでも惨たらしく。」


【そう言って、 ──── テーブルの上にある、マチェットとチェーンソーを手に取る。軽々しく片手でそれぞれ握る。鼻歌交じりに、だれかに、近づく。】


393 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/28(土) 02:52:50 WMHqDivw0
>>391

【――――これで満足したんだろうかって思う。確かにあのとき聞いたから。学校行って、友達作って】
【カラオケとか行ってクレープ食べて、そういうのがしたかって泣いていたのを知っていたから】
【……それが叶って幸せそう、って顔をしているとは、あんまり思わなかった。でも少なくとも、楽しそうには見える】

ああうん、……名前、そーいやそうだった。でもアレはまだダメだよ、「たんぽぽ」に帰ってきてからの話。
……見ててくれたんだ、なのにおれ、気付けなくってごめんネ……見てるだけなのって、退屈だった?

【抗うことなくベンチに座る。断る理由もなにもない。それで、……名前についてはまだ教えないよ、って、諭す】
【それから。ずーっと見てたって言われたら少しだけ恥ずかしそうにして――その様はきみの目にどう映ったの、って】
【面白可笑しいものを見るような気持ちになれたかって。訊いてみるけど、……面白かったよって言われればたぶん、へこむ】

……外に出る。あー、蛇がどうちゃらってヤツ……人に乗り移るとかそーいうのもできるの。
それでどう、出てみて。面白かった? 「ふつう」の生活。……、……そ、「イルちゃん」。

【ぽつぽつと無難な言葉を選んで会話しながら。……イルの名前が出ると、少しだけ身を硬くする】
【だって他の人に丸投げしてしまった。そこにあの病魔が攻め込んでくるなら、……よくない、と思う】
【けれど、……その身体を取り戻したとき。白神鈴音は元に戻るのかって、……考えて、】

……………………鈴音ちゃんはさ、「イルちゃん」抜きにしたら、どーいう身体が欲しいとか。
考えたことある? 今まで通りのあの、小さく……はねーか。細い躰。戻りたいって思うの?
戻ったら、そしたら、……またたんぽぽする気はある? ……あんネ、今、夕月はちょっとお休み中なんだけどさ……

【訊くのはそんなことだった。イルが探す身体以外に、……鈴音本人が、欲しいと思うような身体はないのかって】
【それで「今まで通りの身体がいい」って言うなら。それでまた、たんぽぽをしてくれるのかって。……こないだとは逆】
【そんな感じの質問、の最後に――少しだけ不穏な現状を伝えるよう、滲ませて。……視線はずっと斜め下を向いていた】


394 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/28(土) 03:06:36 WMHqDivw0
>>392

【――――――男からは悲鳴すら上がらなかった。上げようとした口元が吹っ飛ばされたから】
【代わりに周りの人々が悲鳴をあげる。同じことをされたくないって言うように、……本当にばかみたいに】
【それが全員に施されていくなら、絶叫の輪唱が煩いのなんの。――――だけど「あの子」が上げていた悲鳴に、よく似ていた】
【大凡人の咽から出されるとは思えないような音がぎんぎん響く。けれどそれも次第に、呻き声に、デクレッシェンド】
【……ちょっとずつ弱っていくのもまた「あの子」のときみたいで、――不快になるかもしれなかった】

【政治家の男が情けなくも涙を溜めた眼で女を見ていた。非難、あるいは抗議するような目付き】
【「だってあのガキはもう死んでいるんだろう、だからここに連れて来れるわけなんてないだろう!」】
【そう言いたいようだった、けれど口元を吹っ飛ばされているなら、ひどく濁音交じりの音だけになって】

――――――――――――――――ッ、――――――――――!!!

【誰かがチェーンソーを見て悲鳴をあげていた。それも音にはなっていなかった】
【さっきまで威勢よく反抗していた女――■■■の母親ですらもう、大粒の涙をぼろぼろ零して】
【懇願するようなポーズをしていたけど――ひどく滑稽な画にしかならないんだろう】

【(だけどあの子はこんなポーズを取ることさえ許してもらえなかった。ならばこいつらは、よほど恵まれているはずだ)】


【――――画面の向こう側。最初に冷やかしていたギャラリーはとっくのとうに退場しただろうが】
【新しい「客」も何人か。やってきていた、何処をどうしてやれ、とか、もっと派手にこうしろ、とか】
【……「そういう」趣味の人だった。きっと「あの子」のスナッフくらいじゃピクリとも反応しないくらいの、根っからの、悪趣味な人たち】
【そいつらが代わってやいのやいの騒いでいた。「つまんねえことすんなよ、ド派手に行け、ド派手に」――――】


395 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/28(土) 08:56:51 Ty26k7V20
>>355

えぅぇっ?!いっ、いやそんなんじゃなくて!あの…その…なんといいますか…

【そんなんじゃないけど…なんてブツブツいいながら顔も耳も真っ赤にしていた】
【代わりにゾーイが話してしまう。対象的に無表情の抑揚のない話し方で】

「私は助手だと思っていません。困っている人を助けるのは倫理的に見ても当然ですから。…友人が増えることは大変嬉しいことだと思います。
三人で居ることが楽しいのですか?三人で友達という関係を維持するのが楽しいのでしょうか
楽しいというものの汎用性を感じ取るにはまだ難しいです。」

あ、あの…ゴホン。それで…まあ、その…円卓はまあ、その上手いこと働きかけることにするわ。
「クラァケさんにも、私からメールします。友達なので。」
どちらにせよ…夕月…にも助けてもらうことにはなるだろうから。その…お願いね。

【麻季音はなんだか名前を呼び捨てにするのは慣れていないのか、歯がゆそうに嫌いなものでも食べるかのように言葉を紡いで】
【どうも恥ずかしさを隠すときにしかめっ面になったりぎこちなくなるのが彼女の癖のようだ。あまり良い印象は与えないが】
【すぐ赤くなったりと見た目でわかりやすいのは素直で良いのかもしれない】

そもそも…なんと説明していいのやら…黒幕がいま研究しているのか持っているのか…とにかく、今この世界はこのままにしていると
黒幕が勝つことが運命づけられているの。タイムマシンなんて凄いもの独り占めするんだからね。
それに対抗するには独占させないことと相手より早く開発すること。――――取り返しのつかなかった過去を変えれる。

ただでも、選択しなおせるだけ。必ず今より幸せな未来になるとは限らない――未来は誰のものでもないから。


396 : リゼ ◆D2zUq282Mc :2018/07/28(土) 12:08:30 JY1GydDk0
>>376

勿論さ、あてに任せてよ…!何せ、あては――"旋風の用心棒"のリゼ。
キミが見つけてと願うなら、キミの願う終着点まで着いて来てあげる!

道中の身に降る火の粉はあてが振り払うし、降り掛かる災禍もあてが薙ぎ払うっ!
瑠璃ちゃんは笑顔がイチバン!心に影を落とすモンはあてが吹き飛ばしたげる。

――だから、あてはキミを、瑠璃ちゃんを見つけて見せるよ。

【瑠璃の紡ぐ祈りの言葉とそこに絡んだ願いと想い】
【リゼの言葉はそれらを一まとめに鷲掴みする程に力強く】
【帽子の庇で隠れた黒瑪瑙の瞳に重ねるのは、真っ直ぐで無雑な緑翠の瞳】
【言葉以上にリゼの双眸は物語る――"その祈り、確かに受け取ったよ"と】

――…っ!?あっつ…っ!

【雲ひとつ無い蒼天の様な澄んだ笑みを浮かていたが、それが僅かに曇る】

【瑠璃の毛先とリゼの指先が触れたのだ。先程よりも強い違和感】
【ちくちくした痛みではなく、ひりひりする痛みから手を引っ込めたら――】
【瑠璃の伸ばした手と屈託の無い笑みがあった。それに応えて、引っ込めた手を伸ばす】

そうだネー、手と手同士の方があても良かったりー。
それに髪同士が絡まるのって何だかくすぐったい。なんだろーね、こそばゆい。

【浮かべた笑みは絡まる金と銀の毛先の戯れによって更に柔らかく崩れて】
【けれど、嫌ではなかった。寧ろ心地よいとさえ思えて、くすっと笑い声を零した】


397 : ◆9VoJCcNhSw :2018/07/28(土) 13:21:46 wn2rqSVw0
>>369


「呪い」とは、言ってしまえは具現化する人間の悪感情だ。
他者に害を成すほどに強く念じられた憎悪、それを呪いという
魔術や能力とは違い、誰でも行使出来る「力」であると言えるだろう

だが誰でも出来るからこそ、その代償は大きいものだ。
ただ一度、誰かを呪う場合でも墓穴は二つ掘らねばならない。
人を呪い殺すということは、すなわち自らも代償に死ぬということだから。

……それが道理、世の摂理である。にも関わらず、鈍感であるが故にそれを感じない、とすれば。
まさしく其れは…――〝獣の王〟とでも、呼ぶべきものなのだろうな。


【その能力を持ち、生きている時点で既にかの男は人間ではない】
【そんな仮説が打ち立てられる。無論、その答え合わせをしてくれる者はおらず】
【言葉は広い玉座の間に霧散するが、何処か冗談とも思えない響きがあって】


……呪いは、生きた人が意識的に行うものだ。
では其れを抱えた者が死ぬとどうなるか…――当然、怨念の強さにも、寄るが。

一般に、その手の呪いは〝祟り〟へと本質を変える。
天変地異を引き起こし、それも一度や二度で収まることはないだろう
祟りの大本にある怒りや無念を鎮める為に、神として祀り、贄を捧げる必要がある。

フフ……あの強欲な男だ、金でも捧げてやれば黙りそうだがな?


【最後の問い。その答えは、きっと一度くらいは綾津妃も考えたことがあったのだろう】
【"呪い"より更に強力な"祟り"への?化。怪物から神への昇華。――冗談にしては、質が悪い】

【しかし、それから続けて綾津妃はこう語った】
【「呪いには種別がある。人の縁を切るもの、健康を害すもの、死に至らしめるもの」】
【「そして運命を妨げるもの。――死という安寧から、その個体を切り離してしまうこともある」】

【「―――あの男が身にまとう呪いの本質とはなんなのか、甚だ気になる所だな?」】


【語らい終えれば、外は既に薄暗く。周囲四方、見渡す限りの草原は夕焼けに染まっていた】
【燎原の火、という言葉を思い起こさせるような鮮烈な自然の美しさは】

【しかしすぐにも、星と月以外に明かりの無い真っ暗な闇が訪れる事を感じさせた】
【「宿の準備とするか」と綾津妃が声を掛け――頷いたならば、後は早い】
【床に伸びたままだった妖狐に命ずると、気怠そうに其の者は立ち上がり】
【城内の一室、恐らくは来賓用と思われる部屋へと案内する】

【幸いにして此処は外観と違い、草が生い茂るような事もなく】
【石造りがやや肌寒かったが、絨毯も暖炉も、柔らかな羽毛のベッドも用意されていて】

【食事は――数時間してから、同じく妖狐が。クズノハ、という彼女が盆を手に姿を見せて】
【よく味付けされた鶏肉や、野草の天麩羅、それからお浸しであったり】
【随分と家庭的な和食が並び、好むならと銘のない米酒も出されるだろう】
【何れにせよその待遇はしっかりとしたものであり】
【また食事を下げに来た折には、クズノハからは手短ながらもお礼を伝える言葉もあって】

【付け加えるように、「明日の日の出と共に馬車が来る」とも伝えて、部屋には彼唯一人】
【後をどうするかは彼次第だった。早々にベッドで休むのもよいだろう】

【或いは、静まり返った城内を散策するのも、咎められては居なかったが】
【――どちらにせよ、刻限は数時間。朝焼けが草原を焦がす、その時までとなるだろう】

/ありがたやありがたや……!では私からもこんな感じで、選択肢はお任せいたします!


398 : ◆DqFTH.xnGs :2018/07/28(土) 15:28:27 zvgmcaHc0
>>343-344

【は、と荒く息を吐く。どうやら奇妙な静寂と喧騒は追ってこないようだ。ありがたいことに】
【逃げ込んだ先にはよく見慣れた光景が広がっていた。銃と2人組。きっとこの後騒ぎでも起きるんだろう】
【銃声と悲鳴。あるいは罵声だの恨み節だのが聞こえるに違いない。さっきの光景と比べれば】
【なんて平和的で素晴らしい光景だろう!それにしても、こいつらなんて格好をしてやがる】
【伯爵だの何だの。まるで吸血鬼の国際会議にでもいそうな────(…………っは、…………クソ!)】
【(ま、待て待て待て待て!ちょ…………な、なんだって────あぁ!クソが!!)】


────クソッッ!銃向ける先が違うってぇんだ!!


【腰元の銃を抜いて円城に向ける。警察採用規格ではなく、とある探偵から貰った自動拳銃だった】
【真面目そうな婦警の顔は、今や苦々しく歪みきっていた。──ぐるりと目の色が変わる。形さえも】
【それは真円の目だった。金色の魔物めいた目。栗色だった髪は、禍々しい赤の触腕と化す】
【──大人の腕ほどもある、9の触腕だった。7つと2つ。いつぞや引き千切られた1つの触腕が】
【再生エラーを起こして2股に、不恰好に生えきっていた。──目の端に映った触腕を見て】
【“戻し過ぎた”と思う。婦警でないことを示すためには、赤髪のヒトの姿でもよかった】
【気が動転していたし、はっきり言えば冷静ではなかった。ち、と舌打ち。一難去って何とやら】


その口ぶりからすりゃ、婦警は敵ってか!?
安心するかどうかは知らねぇが、見ての通りあたしは婦警じゃねぇよ!よかったな!!
っつぅかむしろあたしも婦警なんてもんは大ッッ嫌いだ!クソくらえってな!

ぎゃ、は────まぁ、てめぇらみたいなカッコした連中なら…………
婦警のラブコールを受けたって、不思議じゃあねぇけど、よぉ────!


(あぁ、もう今日は何がどうなっていやがる!とりあえずジルに電話して…………)
(いやその前にこいつらどぉにかしねぇと……クソ!!あの根暗っぽいのが加勢して…………)
(くれ…………てもいいがあいつはあいつで何なんだ!敵なのか味方なのかも────ッッ!!)


【彼女もまた、円城のことを知らないが故の混乱だった。──銃を向けられたから、相手は敵】
【そんな単純な図式が成り立ち始める。引き金に指がかかる。脅しのための銃じゃなかった】
【──少しだけ、マントの男に視線を向けた。どうすればいいのか、僅かな迷いがあった】
【この場における味方が欲しかった。直前に妙なモノを見ていたから、尚更】


399 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/28(土) 16:26:04 WMHqDivw0
>>395

……あっはは、ジョーダンだってば! ふふ、えーとねえ、三人ってゆーか
トモダチって多ければ多いほど楽しくなるって思うんだよネ。
ひとりよりふたり、ふたりよりさーんにん、みたいな……よくわかんないかな。

うんっ、任せて――――ブチ抜くのと撃ち落とすのだけは得意だから!

【夕月、と呼び捨てで呼ばれて嬉しそうに笑った。しかめっ面だって全然気にしないで】
【その後の麻希音の表情の変化を見て、また楽しげに笑うのだった】
【ソーダの泡がぱちぱち弾けるのと同じみたいに。軽々と。……任せて、なんて言うけれど】

……、……このままだと、黒幕が……。そっか、そんくらいヤバい相手なんだ……
じゃあ早い者勝ち、競争ってわけネ。おっけーおっけー理屈はわかった。 【←あんまわかってない】
選択し直せるだけかあ、……でも。

このまま一択、選ぶことすらできないよりはずっとマシってことだよネ?
じゃあやんなきゃ、だ。どうあってもあたしたちは勝たなきゃ――世界のために、鈴音のために。

【勝ったとして幸せになれるわけじゃない――と言われても。今のままよりはずっとマシなんだろう】
【そういうふうに解釈した夕月は、決意を固めたように頷く。それから、ポケットからスマホを取り出し】

そったらまずはまあ――連絡先でも交換しとこうよ、お互い、何かあったらすぐ呼べるように!
あ、そうだアレアレ……指輪はもうミラさんからもらってるから心配しないで。だからいつでも、

【「この話に関係ないことでも。好きなときに好きに連絡とり合おうよ、――トモダチなんだから!」】
【言って、自身のアドレス情報が載ったQRコードでもなんでも差し出すだろう。「指輪」を添えて見せながら、――――】


400 : ████ ◆1miRGmvwjU :2018/07/28(土) 17:06:12 o6XMS57s0
>>394


「 ──── うるさいな。」


【ぼそり、 ─── そいつは吐き捨てる。ここにいる誰かに対して。ここにいない誰かに対して。あるいは。】


「マァいいや。 ……… いい御身分だよねえ。███は手足だって縛られてた。碌な命乞いをすることもできなかったんだ。」
「ん? だったらせめて良い声で鳴けよ。」「声帯は潰してないんだからさ、叫ぶくらいはできるだろ?」


【誰に構うこともなくそいつは淡々と呟く。マチェットをゴスロリに差して、わざとらしくエンジンチェーンソーを唸らせながら、 ─── 】
【けれどそれはまだ示威行為であったのか、黒服に手渡してしまう。代わりに受け取るのはマーカーとペンチ、 ─── そして、ハンディバーナー。】
【青白い炎を盛らせながら近付いていく。凍土のように冷たい笑顔は炎がすぐそばにあっても一雫も溶けやしなかった。順番は、さっきと同じ。政治家が最後。】


【 ─── 今度は。一人ずつ、手足の根元に赤いマーカーで線を引く。鼻歌交じりにペンチで歯を砕いたり抜いたりする。███がされたのと全く同じように。これは矢張り復讐なんだって、言わずとも理解させる。】
【 ……… 然しその後、そいつは「髪の毛を焼いていく」。頭を鷲掴みにして、炎の先っぽでなぞって、すれば焦げ臭いにおいが蔓延する。暴れるならば黒服が押さえつける。】


「うん。それで思ったんだけどさ、 ─── 多分キミたちは、どうしようもない御馬鹿サン達だから、こういうことになってしまうんだろうな。」
「もう今生では手の施しようがないけどさあ。だったら来世、ちょっとでも頭がよくなるように生まれてくるよう努力するのが、六道輪廻への貢献ってものじゃない?」


【それでも満遍なくムラなく、肌までしっかり焼けるように。下拵えでもするように。だからそれはウェルダンに似て、黒焦げになってじくじく血の滲む丸出しの頭皮に】
【眉の少し上から始まって、そこにもまた、赤いマーカーを引く。ぐるりと頭を一周、戴冠するように。ついでに筆圧で出来たての傷跡を抉って、揮発性の塗料は良く沁みた。】
【すべて変わらず、一人ずつ、同じことをしていく。 ─── 最後にいっとう楽しそうな顔をして、ひどい顔になった政治家の男に、微笑みかけて。】



「ねえ政治家さん。」「"猿脳" ─── って料理、知ってる?」
「猿の皮膚と頭蓋だけを削ぎ落としてさ、中にある脳みそを味付けして啜るんだ。」「これが中々おいしいらしくて、さ。」
「しかもインポの治療になるって言うの。」「折角"アナタ"みたいなハイソな人を招待したんだから、もてなしの料理くらいは必要、だよね ──── ?」



【くすくす息を漏らして、 ─── 全員の頭を上手に焼き上げたら、そいつは改めてチェーンソーを受け取って、頭に引いた赤いラインに添えていく。肉と骨「だけが」、切り刻まれる。】
【「ほらほら動くと死んじゃうよー?」 押さえつけるのは矢張り黒服で、人間離れした連中の膂力が首根っこさえ掴むなら、比喩としても事実としても万力じみて】
【 ──── およそたっぷりと時間をかけて、そいつは文字通り、「頭の中身を割って見る」のだ。淡い白色のそれには良く血管が通っていて、それでいて血塗れだった。】
【切り取った「覆い」については、ばきッ、と適当なところで割ってスプーン代わりにする。つまりその切っ先で、アイスか何かを賞味するように、そいつは、何度も。】



「 ─── ほら。ちゃんと口を開けろ。」「でなけりゃ流し込む。いいな?」



【開頭手術の知識はあった。どこを傷付ければ殺さずに頭を弄れるか知っていた。 ─── 白い脂肪のたっぷり乗ったスプーン。赤いソースが惜しげもなくかかっていて】
【食器ごと其れを、さっき拡張されたばかりの口の中へと突っ込む。まずはしっかり舌の上で味合わせて、頃合いを見て食べやすく粉々に砕いて、全部余さず食わせてやる。】
【顎を掴んで、上向かせて、雛鳥に餌をやる親鳥のように無理やり飲み込ませる。 ─── 勢い余って顎を握り潰してしまう。それでも、吐き戻すような真似は、許さなくて】


401 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/28(土) 17:45:38 WMHqDivw0
>>400

【チェーンソーが出てきた瞬間、この場に居る全員が身を強張らせる。辛うじてできていた息を呑む】
【本当に、■■■がやられたことを再現されてしまう。そう思っていた――「その程度」にしか思っていなかった】
【けれど次にバーナーが出てきたのを見れば、全員が疑問に思う。「……そんなこと、したっけ?」みたいな】

【マーカーで線を曳かれて、歯をペンチでどうこうされるところまでは「まだ」理解できたらしい】
【できたと言えども与えられる苦痛が和らぐことなんてありえないので――またギャアギャアと喚いて】
【■■■より元気が有り余ってる。そんな悲鳴だった。あの子は早々に全部絶望してしまって――泣いていた、そして】
【全部あきらめていた。もう自分は助からないんだって。……けれどこいつらは、まだ叫ぶ余裕が、あるのなら?】

【――――――――けれど、】

【誰が叫んだ悲鳴かはわからない。というか全員そう叫んだのかもしれない。「あつい」ってそんな、当たり前のこと】
【毛先に火がついた瞬間からそう喚いていた。しかし頭皮に熱が到達した瞬間、悲鳴は言葉のていを成さなくなる】
【おおよそ人間の喉から鳴るとは思えないような声で全員が泣き叫んでいた。よく焼けた皮膚はじゅくじゅくしていて】
【柔らかいはずのペン先でなぞられるだけで捲れ上がったことだろう。……上手く線、曳けただろうか】

【けれど問題はそこじゃなかった。「そんなところ」を「そうした」覚えなんてなかったから、あの子に】
【だから全員が慌てふためいて、陸に打ち上げられた魚めいてバタバタ暴れては黒服に押さえつけられて――】

【(チェーンソーが頭に当たる音)】【(絶叫)】【(皮膚はすぐに裂けるから)】【(だから骨の削れる音ばかり響く)】
【(絶叫)】【(誰かが失神したらしい)】【(失禁もしたらしい?)】【(けれどそれも無理矢理起こされるだろうか)】
【(――――――――――――――――――――――――――――だってあの子もそうされてた。苦痛が、長引くように)】


…………………………ン゛、グ、ぅ……ッ、ぶェっ、あ゛――――ッ、


【無理矢理流し込まれるゼリー状のそれ、当然皆吐き戻そうとして。けれど無理矢理流し込まれて――嚥下の音が響く】
【砕ける顎に対するリアクションをする元気はもうなくなっているらしい。それでも――全員、人間の顔をしていなかった】
【苦痛と恐怖に塗れた、これ以上ないってほどに間抜け面を晒して。……この点だけは「あの子」より、面白かったんだろう】
【だってあの子は顔だけは傷つけられなかったから。……甚振られたあともなお、見せしめにされる役割があったから】


402 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/28(土) 17:47:05 o6XMS57s0
>>397

「 ……… 哲学的ゾンビみたいな話だ。」「オレと同じように生きてて、オレと同じように人間らしく振舞うというのに」
「そこには人にあるべき意識がない。」「 ……… なればこそ獣、なんでしょう。」「度し難い話だ。」


【 ──── ぽつり、と呟く。互いに返答など求めぬように、それでも何処か宙に浮くような響きばかり耳に残って。】


「そんでもって、」「 ─── また"神"か。」「軽いノリで神様になるのが最近のビジネスシーンの流行りなんでしょうかね。」
「金どころか世界を丸ごと捧げないと落ち着いてくれなさそうだ。案外、御隠れ遊ばされるのが一番の近道じゃないかなんて、思わずにはいられませんね ─── 。」

「 ……… あるいは。」「死にたくないと心から願うことも、見方を変えれば、ひとつの呪いみたいなものかもしれない。」


【 ─── 多くの選択を過った末、ひとつの神になってしまった少女の話を、ここのところ彼は聞き及んでいた。】
【どこか感傷的な声を漏らすのだろう。死にたくないという生存本能だけは、きっと獣だって持ち合わせている筈だから】
【けれども何かを想うような声音は、それこそこの世の物とは思えない他そ彼時の夕暮れに宛てられたものかもしれなかった、が。】


【もてなされるのであれば彼はごく丁重に礼を言うのだろう。招かれた客として好意は違わずに受け取っておく。】
【 ─── 取っていた宿のそれよりも、余程上等に違いない個室に少しばかり気後れしないでもなかったが、折角であるし堂々と。】
【携帯端末は圏外であろうと思えば、数時間は本を読んで過ごす。それが終われば銃のオーバーホールで時間を潰し】
【 ……… 流石に料理まで出てきた時は、黄泉竃食ひなんて異国の逸話も思い出した、けれど。折角であるし、折角であるし。】
【綺麗に平らげてしまうのだろう。「まァ、やることやっただけ、さ。」 ─── 妖狐へ返すのは、謙遜のような、気まずさのような。】
【然し夜半になっても瞼は上手く降りてくれなかった。仮眠をとりすぎた代償であったのかもしれない。ベッドで一人、天井を仰ぎ】


        「 ─── 眠れねえな。」


【 ──── 身体を動かしてくるか、程度の気持ちが半分。どうせだから見て回るか、という好奇心が半分。一応、腰に拳銃は差したまま】
【差し当たっては城内を彷徨ってみることにするのだろう。ふらふらと、行くあてもなく。夜景も綺麗そうだよな、なんて思い】


403 : ████ ◆1miRGmvwjU :2018/07/28(土) 18:39:15 o6XMS57s0
>>401


「 ──── うん!」「お口にあったようで何より。」「やぁ手抜き料理でゴメーンネ。なにせあんまり得意じゃなくって。」


【そうしてやはり、そいつは軽薄に笑っているんだろう。返り血ですっかり真っ赤に彩られた両頬を思い切り緩ませて。】
【 ──── 続く言葉はどこまでも演説じみていた。チェーンソーを片手でぶらぶらさせつつ、手持ち無沙汰に弄ぶ。】
【今度は手術台から、 ─── 手引きのノコギリを持ち出すのだろう。木材を切るのに使うような、少し錆びついた、あからさまに斬れ味の悪そうなやつ。】


「さて、と。さてと。」「キミたち。」「 ─── キミたちがこういう目に遭ってしまうのは、キミたちが愚かであるから、というのもそうだけど」
「キミたちには要らないモノがあんまりにも多すぎるんだよね。持て余すモノ。必要ないモノ。だからボクが、貰ってあげる。」
「そしたらキミたちも多少は真人間になれるかもしれない。 ─── 特別に、もっかいチャンスをあげる。」

「全部終わるまで生きてたら、キミたちのこと、許してやるよ。 ……… せいぜい気張ることだね。」


【 ─── 聞き取れているのなら、それはせめてもの希望になるのかもしれない。"全部、終わるまで"生きていたら、許してやると】
【拷問で何より大切なのは、死ぬほど辛い刑罰を与えてやることじゃない。殺してしまったら意味がない。望みを失うことは覚悟と同義、何も聞き出せやしない。】
【あの動画が芸のないものとして扱われたのは、 ─── 早々に███が絶望してしまったのもあった。希望と絶望の境界線で、醜くもがく行為にこそ意義がある。】


「ねえ███の御両親さん。」「民族衛生学って知ってる?」「まあ、すごく乱暴に誤解を恐れず言っちゃえば ─── 」
「"出来損ないの人間は社会に貢献しないので殺しましょう!"って考え方なんだけど、さ。キミたちのやったこと、振り返ってみてよ」


【そいつが最初に選んだのは横並びの男女だった。言い聞かせるような声音で、 ─── けれども添えられたノコギリの刃は】
【初めから理解なんて望んでいなかった。赤く引かれたマーカーに沿って、ごり、ごり、ごり、ごり。皮と、血管と、筋肉と、骨髄。】
【手頃なところで、ぼきんッ、と力付くに折ってしまうんだろう。ごり、ごり、ごり、ごり。右腕、右足、左腕、左足。 ─── けれども失血死はしない。傷口が、何の力か"凍りつく"から】


「キミたちはキミたちの下らない性欲の捌け口として、報われない可哀想な女の子を一人この世界に産み落としてしまったんだ。」
「『60.000 RM kostet dieser Erbkranke die Volksgemeinschaft auf Lebenszeit.』 ─── 。」
「そんな酷いことをボクはあの子に言ったりしない。けれどあの子は、キミたちを親に持つべきじゃなかったんだ。」
「もっと幸せで優しくて裕福で温かくて、 ─── 罷り違っても、遊ぶ金欲しさに手前ェの子供を性的搾取へ売っ払うような親じゃなくて。」
「分かるかな。キミたちには親である資格はないんだ。子供を抱く腕も子供と歩む脚もキミたちには不適格なものなんだよね。」



「 ─── だったら、さ。」「"それ"も、」「"いらないよね"?」



【最後の一本を切り落としても、 ─── 然し、それだけじゃ、"終わらない"。マチェットを、腰から引き抜く。黒服が、そばにミキサーの容器を置く。】
【女の方は、 ─── 臍の上あたりから、蟻の門渡りまで、ごっそりと。男の方は、垂れ下がっている部分、全て丸ごと。それでも2つとも綺麗に、標本のように。】
【にこにこ笑いながら、そいつは"いらないもの"を切り取ってしまうのだろう。程よく血を出しつつ、ぽっかりと真っ赤な穴を開けて。摘出した部位は、ミキサーに入れて、スイッチを入れて。】


404 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/28(土) 19:00:04 WMHqDivw0
>>403

【誰も彼も最早意識が遠のいていた。投薬とかされてないなら、もうじきに、死んでしまうだろう】
【けれど誰かが呻き声を上げた。「許してやる」のワードだけなんとか聞き取れたらしい】
【……本当にばかみたいだった。脳味噌まで晒されて、それで生きてられるなんて、本気で思っているらしい】

【最初に選ばれた男女。きっとこいつらも我が子の最期を見て笑っていた】
【「生まれたときからバカな子だったもんなあ。客に反抗するほどバカとは思ってなかったけど」】
【「まあバカにはお似合いの最期になったみたいで、よかったじゃない。見てよこのバカみたいな顔!」】
【憐れむ気持ちのひとかけらとて持っていなかった。だって彼らにとって■■■は、金蔓でしかなかったから】

【そんな二人――――女の声を聞いているのかいないのか。視線は既に朦朧としたものになっていて】
【けれど鋸を見ればまたもがき始める程度の元気はあった。本当に無駄に、生命力は、高くて】
【――――いっそ害虫を思わせるくらいに。無駄にまだ生き続けていた、(あの子はあんなになって死んだのに!)】


――――――――ん゛ンぅヴうう、ギぅううッ、…………ア゛――――!!? ッ!!!


【切り取られていく手足。鋸の前後運動に合わせて小刻みな悲鳴が上がって、……一本折れるたびに失神する】
【けれどそれでも起こされるんだろう。気を失っている間に全部終わらせる、なんてことは、絶対させてくれない】
【四肢の全部を失って、やっと終わったんだと思っている――ような顔。けれどまだ続きがあるって言うなら】
【また悲鳴をあげる。暴れようとする。あの子ができなかったことをいくらでもやっていく――――それで、】

【――――■■■を創った「部位」が取り除かれるところまで。気を失うことも許されないまま】
【全部全部見せつけられていた。その際にあげた悲鳴なんてもう、今まで通り聞くに堪えない大音量の濁音ばかり】
【それでも、「それ」がミキサーに詰められたときには声を失った。二人同時に。スイッチが入ったなら――――】
【ばかみたいに赤黒いどろどろが出来上がるんだろう。それを呆然と見ていることしかできなかった、二人とも】


405 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/28(土) 19:06:39 Ty26k7V20
>>399

うん…そう…ね。

「たまには外に出るほうがいいって言ったじゃないですか。初瀬麻季音。」

いや、それはまあ…そうかもしんない。

【ゾーイに諭されるのは不満なのかちょっと言い訳がましかったが最終的には折れ、素直に肯定する】
【こんな日は幸せだ。でも、怖かった。こんな幸福が訪れた後は決まって辛いことがあるから】
【出会った人、みんな何処かに行ってしまった。これ以上、悲しい思いはしたくなかった】
【ただ勿論…誰ひとり諦めていない。また会う為に今日も――――】


―――理論は出来ているの。あとは実験して、実際に組み上げるだけ。
…そう、私はもっと幸せな世界にしたいの。それができるかもしれないならやるしかないじゃない?

【なんども繰り返す決意。「やり直せる」それだけが今の唯一の救い】
【皆を救いたい。この知ってしまった世界の裏側を全部白日のもとにさらしてやりたい。例え】

―――例え、この出会いがなかったことになってしまう選択をしても。やらなくちゃ。

【言ってから、何早速縁起でもないこと言っている自分がちょっと嫌になった。先ばかり見て、現実主義なのは時として良くない】

「グループ作りましょう。世の中の女性は友人とそうやって居るという情報を得たので実践してみたいです。
私はアイカメラで読み取れます。ロボットですから。ふふん。」

【ゾーイは自身の高性能さを自慢する。空気の読めないアンドロイドはこういうときには助かると麻季音は思った】
【QRコードか何か差し出した瞬間、麻季音がまだスマホを探しているときにはもうゾーイからはメールなりなんなりが届くはずだ】
【眼の前の話し方と一緒の硬いんだか砕けているのかわからずらい入り混じった独特の文章で】

【麻季音からはきっと連絡が来るのは次の日だ。短く、「昨日はありがとう。」とだけ。その文章を考えるのには3時間以上要したのだが】

【今日はきっと、この暑さが落ち着くまでは一時の当たり前の日常を続けるのだろう。時間が止まればいいのに。アインシュタインは残酷だ】


/〆ます!!長いことお付き合いありがとうございました。また機会あれば宜しくおねがいします!お疲れ様でした


406 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/28(土) 19:39:30 WMHqDivw0
>>405

【――麻希音のその不安を現実のものとさせないように頑張るつもりだった。頑張って、頑張って】
【誰一人として損ねたくないから。だから絶対折れないようにって、思ってた、(のに)】

うんうん、やるしかない! やろうよ絶対、あたし、すっごい頑張って手伝うからさっ。

……、……じゃあ、この出会いがなかったことになったとしても。そしたらさ、
また会おうよ。そんでまた最初から、初めましてからやって、そんでまた友達になろう。
たとえ何回やり直すことになったとしても――そのたびまた友達になればいいんだよ、だから、ネ。

【「安心してよ。あたしは絶対マッキーのこと、いやがらないから」 ……笑いながら言って】
【何回でも何回でも出会って、それで友達になろうって。約束するみたいに】
【彼女にはそれくらいしかできないから。せめて、それくらいはやりたいって思ったのだ】

あ、すごーい! じゃあグループ名どうする? 夕月と麻希音とゾーイだから、ええと……

【そうして。呑気にグループ名みたいなのを考え始めるのだ。最初は名前からどうにか捻りだそうとして】
【それが無理だって思ったら無難に「タイムマシンにお願い」とか、その程度の当たり障りない名前にしちゃう】
【きっとしばらくはそこで呑気な会話でも繰り広げられるんだろうか。発言率は断トツで夕月が多くて、……だけど、】



【数日後。「あたしの名前ってなんだっけ?」というメッセージが彼女から送信されたなら。――時間が、止まってしまう】


//はーい!ありがとうございました!


407 : ◆RqRnviRidE :2018/07/28(土) 19:51:35 vZw8nhd20
>>396

ふふふ、“旋風の用心棒”か。 心強いな。
そしたらきっと、いつだって順風だろうからね。

【視線が交錯する。互いの瞳には一点の曇りもなく、そこには光る意志が宿る】
【リゼの小柄な体には底知れぬ胆力を秘めているのだろう、それこそ旋風を巻き起こすほどの】
【順風となり悲運を吹き浚う様は、その名の通り何者にとっても用心棒たりうるのであろう】

【握る手にもう片方の手を添えて、髪先の触れた彼女の指を撫でる瑠璃は申し訳なさそうな顔をして】

……すまないね。 大丈夫かい、リゼ?
気を抜くといつもああなんだ。 ……痛い思いをさせたね。

巧くやればすごく便利なんだけれど。
ほら、こんな感じで……。

【コントロール出来ない痛みを嘆くようにそう言って、けれど他し事はさておきと絡めた髪を何やら操り】
【為すがままにされているのなら、リゼは自分の髪が手繰られながら結われていくことに気付くだろうか】

【瑠璃は、こわれものを扱うように繊細な手──髪捌きでリゼの髪結いをしつつ】
【後頭部の髪がぞわりと蠢き、もう片方の髪束の中からきらりと光る何かを取り出した】

被り物をくれたからね。 ボクからもお裾分け。
お姉ちゃんの髪留めを真似てみたんだけれど、……どうかな?

【それは子供の髪と同じ色をした銀の玉簪であった。一本軸はおよそ15cmほどの長さでやや太く】
【デザインはシンプルながら、小振りの玉が艶やかに煌めき、派手すぎず地味すぎない華を添える】

【……余談ではあるが、この簪を取り出す直前。】
【「ブチ!」と何か千切れるような音が短く、断続的に鳴り、周囲の不審そうな注目を少しの間集めたとか】


408 : ████ ◆1miRGmvwjU :2018/07/28(土) 19:56:20 o6XMS57s0
>>404


【赤黒くてどろどろでぐちゃぐちゃになったそれを、 ─── 造作もなくテーブルの上に置いておく。まるで"それ"で、まだ何かしようとするみたいに。】
【ともあれ一先ずは満足したみたいだから、そいつは2人の前から立ち去ろうとするのだろう。冷たく青い視線が捕まえるのは、一番端っこにいる男。一番最初に歯を飛ばされた彼。】
【 ──── もしかしたらこれで助かるかもしれないって、そんな淡い希望も抱かせるかもしれなかった。そのくらいしか希望を抱けないようにそいつは仕掛けていたから。】


「 ──── 次は、キミだ。」

「気持ちいいことは好き?」「何もできないって解ってる女の子を嬲り物にするのは楽しい?」「そうするにしたって金で買うしかない自分の惨めさを自覚したこと、ある?」


【やはり同じように、 ─── 8本分の血肉が挟まって、幾分か斬れ味の悪くなったノコギリで、手足をバラしていく。指から刻まなかったのはせめてもの慈悲なのだろうか、】
【 ─── いいや、きっとそんなことはない。単に、そのくらいの痛みじゃ生ぬるい。それだけの、理由。】


「でもイヤだよね?」「苦しいことされながら死ぬのはイヤだよね?」「どうせ死ぬなら気持ちいいことして死にたいよね?」
「 ─── ボクはね、うふふ。」「とおっても優しいから、キミの願いを叶えてあげる。」「でも、ただ、知ってほしいんだ。」
「押さえつけられて犯されるのってさ」「すごく怖くて悔しくて苦しいんだよ?」「 ─── それを、学んでほしくって。」


【けれど途端にそいつは甘く囁くのだろう。耳元に唇を寄せて、心を震わすようなリップノイズ。そっと背中を抱きしめて、肌を寄せて、血の香りの向こう、香水のにおい。】
【彼が今まで抱いてきたどんな女よりも、ある意味で蠱惑的に、魅惑的に、幻惑的に。ちゅ、 ─── 焦げかけた耳朶にくちづけを落とす。口紅の温もりが残る。】

【あるいはそれは死の宣告に等しかった。当人がそうと気付かないだけで。だから彼は突き倒される。俯せにされる。 ─── そいつが、黒服から受け取るのは】
【そいつの背丈ほどもあって、腕ほどに太い鋒を持つ、馬鹿みたいに巨大な工事用の穿孔機。ぎゅいいいいいん、と、まるで無機質な唸りを上げて、それを、差し向けて。】


「後ろ、向けよ。」「 ──── 望み通りにしてやるんだから、感謝してよね。」


【 ───── だから躊躇いなく、そいつは彼の背中を踏み付けて、排泄腔に穿孔機の先端を突き立てるんだろう。そこしかないから。飽き飽きするくらいの量の血肉が飛び散って、】
【直腸までを滅茶苦茶に引っ掻き回す。当然ながら前立腺も、その先にある汚物も。 ─── ある意味で見かねた黒服が、彼の首筋に注射器を突き立てる。劇薬の類。】
【糞袋同然の彼の内臓を挽肉に仕立て上げたところで、そいつはビール瓶を受け取って、見るも無残な血が大げさな破瓜のように滴るそこに、思いっきり、蹴り込んで】
【すっかり収まってしまったら、 ─── 腹の上から踏み付けて、叩き割る。それでもまだ死ねなくて、死ねないようにしていて、でもまあ、死んだって構わなかった。】


409 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/28(土) 20:13:58 WMHqDivw0
>>408

【次って言われて、彼はビビっているようだった。この中では一番パンピー気質だったから】
【きっとあの子の死に様だって知らなかった。だって適当な日に適当に買った女のひとりにすぎなかったから】
【だから最初に「こんな女知らない」なんて言ったんだ。本当に、彼にとって女は消費物でしたかなかった】

【問われながら手足を切断されてゆく、それであげる悲鳴も特に面白いものでもないんだから】
【「ギャラリー」が早々に文句のコメントを上げ始めていた。「さっきと一緒かよ」「ワンパ」とか】
【好き放題言いまくる。……けれど、女が、今までと違ったアクションを起こそうとしたなら。それも鎮まって】

【抱き締められると男はびくりと戦慄いた。脂汗に塗れた肌に、全身鳥肌が立った】
【けれど愚直に反応した。ばかだから。バカだからあんなことするんだ、泣いてるあの子を犯す映像を、ばら撒くなんて】

【突き飛ばされるとくぐもった悲鳴をあげて。びちゃり、先程割り開かれたところから何かしら液体が零れ落ちる】
【機械音には気づいていた。けれど振り返る勇気がなかった。がぐがぐと、崩れ切った顎が滑稽に震えていて】


――――――――ぁあ゛ァああ、あ゛――――ッ、あ゛――――――ッ!!?


【ナカからぐちゃぐちゃに壊されていく感触。それってどんな感じがしただろう、――きっと、気持ち良くはない、絶対】
【外から見ても立派な挽肉になったそこに、おまけと言わんばかりに突っ込まれるビール瓶。……実は彼も、したことあった】
【あの子にではないけど。他の女に。太いほうじゃなくて細いほうからだったけど、突っ込んで】
【やっぱりそれを撮って、げらげら笑いながら。これまたばら撒いていたんだった。本当に因果応報ってやつだった】
【けれどさすがに――蹴り砕く、なんてことまではしなかった。そうされた男はびくんとひとつ大きく痙攣して】
【……口から細かい泡を吹き零しながら、意識をやっていた。そのまま、これから起きることができるかどうかは、知らない】


410 : ████ ◆1miRGmvwjU :2018/07/28(土) 21:07:55 o6XMS57s0
>>409

【動かなくなったのなら興味なんてもう無かった。十分苦しんだろう、 ─── そんなことは、あの子が決めるべきこと、だったけれども】
【それで死ぬなら死ぬで構わなかった。そのくらいの認識だった。死なないのなら死なないで、こいつは絶対に誰一人として、許そうとはしないのだろうが。】

【ともあれ次にそいつが近付くのは娼館の主人だった。今もそれを経営しているかは知らなかった。ついでに言うなら残った連中の顔は皆んな似たような醜さ加減だった。】
【チェーンソーと、バーナーと、彼の頭蓋。 ─── ここからはもう、ノコギリは使わないつもりらしい。】


「やぁお待たせお待たせ。ふふ。」「あの子を労わることよりも、私腹を肥やす方が大切だった?」


【 ─── 手脚を落とすのは最早あたりまえのことらしかった。なら、そいつにとって大切なのは、"その後"どうやって苦しめてやるか、であって】
【チェーンソーのエンジン音が容赦なく響いて、彼の両手両足は泣き別れた。あまり血は出なかった。ぐちゃぐちゃの切断面ばかり残った。やはりそいつは笑っていた。】


「ただ、ボクもキミに同情しない訳じゃあない。」「経営の為に、仕方なく ─── そういう一面があったかもしれない。」
「家族、いたっけ?」「ボクそこまで調べてないんだ。」「まあ、どっちだっていいんだけど、さ。」

「だってキミがあの子を買っていい理由にはならない。そうだよね?」「そんなにお金、欲しかった?」「欲しかったんだよね。」
「だからあの子を酷い待遇で、文字通り扱き使ったんだよね。」「冷や飯食わせて碌に休ませずに奴隷同然に扱ったんだよね。」


【 ─── ばきッ。彼の頭蓋を、そいつは素手でへし折る。丁度よく、ひどく斬れ味の鈍いナイフのように、してしまう。】
【そっと首筋に突き立てるのだろう。 ─── ずるり。ずるり。骨の刃で、少しずつ肌を削って行く。彼に残された肌は全て。目玉だけは残しておく。】
【そいつの足元には、皮と脂肪と筋肉が、落ちていく。 ─── ちなみに先ほどから配信映像は、直接そいつの視界と繋がっていた。そういう意味でも、きっと、人間じゃない】


「なら、あの子に詫びるには。キミがそうして溜め込んだ悪銭、ぜんぶ、 ─── 吐き出さないと、いけないよね?」
「ヒュパティアの最期は知ってる?」「キミはあんな高貴な女性とは比べられないけど。」「でも贅肉を剥ぐには、一番よくできた遣り方だと思うんだ。」
「 ─── 安心しなって。失血死したりしないから。」「お金が貰えれば非道なことも我慢できるんでしょう?」「代わりにキミの大切なお金と、一緒にいさせてあげるから、さ。」


【そうやって晒された惨めで汚い傷跡には、 ─── 黒服から受け取ったアルミの硬貨の束、バラして無数に押し付けて行く。そこを、バーナーで炙る。】
【絶望的なくらいに融けて、焼けて、肌に張り付いてしまうんだろう。 ─── 最後には両眼もそれで覆ってしまう。急激な加熱の果てには、眼球が水分ごと沸騰する。】
【結局のところ出来上がるのは、頭のおかしい前衛芸術みたいな雰囲気の、鈍い銀色に輝くトルソの胸像。震えるように上下する胸元、溶け残った硬貨の原型が、辛うじて見出せて】


411 : ◆9VoJCcNhSw :2018/07/28(土) 21:11:08 wn2rqSVw0
>>378

【魔界の事情、というのをアナスタシア――ベイゼはあまり知らない】
【リリアという半魔と関わったことで、存在くらいは知ったのだが】
【"向こう"の住人と話すような機会など無かったし】
【知りたいとも思わなかった。何せ、「ああいう奴らが住んでいる世界」など空恐ろしいだけだから】


……ンな所に出入り自由、それも能力もお墨付きってのは分かった。
けどよ……俺も悪魔だの何だのは詳しくねえが…――〝マモン〟ってのは、大物なんじゃねえか?


【〝マモン〟――リリアが現在幽閉されている城の、領地の主の名前であった】

【キリスト教的には富を象徴する大悪魔。七大悪魔に数えられることもある】
【その実態としては、魔界の辺境に広大な領土を構えつつも、何もしない】
【しかし隠然たる勢力を誇り、金銭という人の欲望と切っても切れない存在を司っている】
【外見は様々だが、主として白銀の体毛を纏った狒々、それも頭部のみ白骨化した姿であることが多く】

【そして力があるからこそ、魔族鏖殺を企てたリリアという存在を幽閉するにふさわしいと認められたわけであり】
【認められたからには、逃がすことは面子を損なう最大の侮辱であり】
【それを果たして許すのかと言われれば――許さないだろう。それも、絶対に――】


……死にに行くようなもんだと思うけどな、俺は。
でもまあ、そうだよな。ヒーローってのは、カッコイイもんだろ?


【――――――――――――――――――――――――――】



【――〝魔界〟】

【永久に雪降るその土地に、巨大な凍てついた城は存在していた】
【本丸とでもいうべき一際大きな建物を囲うような、幾つかの尖塔】
【その一つ、その最上部にのみ、暖炉の明かりが灯っていた】
【雪がこびり付いた窓から覗き込めば、そこには一人の少女が居た】

【年の頃は10代半ばに差し掛かるくらい。クリクリとカールした髪はろくに切っても貰えないのか】
【足元、地面を擦る程に長く伸びて。それに隠れて見えづらいが】
【顔の左半分には罪人であることを強調するようにタトゥーが刻まれ】

【そして最も特徴的な瞳――円を何重にも重ねたような独特な眼球は】
【じっとテーブルの上の羊皮紙に向けられていた。手にしているのは、インクが飛び散るペンが一本】

【〝魔術書を永遠に写本し続ける〟という刑罰の、まさに最中らしかった】
【部屋は暖炉とベッドと本棚があるだけの、少女にしては物寂しい内装で】
【扉には強い魔術が掛かっているのか、開くような気配もない】

【出ることも出来ず、元の姿――あどけない、というには色々と成長していたが】
【かつて世間を騒がせた艶熟した姿とは違う青々しい出で立ちで】
【暖炉があっても冷えるのか、纏った毛布の中で震えながら――ふと、休憩を入れるようにペンを止めた】

/わーい、おかえりなさい!


412 : ◆D2zUq282Mc :2018/07/28(土) 21:37:46 L/BKDPMg0
>>407

【ひりひり痛む指先を包み込む瑠璃の手は丁度良いくらいにひんやりしていて】
【火傷のようなしつこい痛みが和らいで。それよりもリゼの視線は結われていく自身の髪へと向けられる】

わぁわぁ……!すっごぉーい!髪で髪を結うなんて何だか素敵だよー!
髪を結うなんて久方ぶり。ついで言うなら結われるのは初めてかもー。

【銀色に結われていく金色は器用に形を整えられて、みるみる内に完成形へと近づいていき】
【お裾分けと言う言葉を耳にしたリゼは、ぱあっと微笑んで。"えっ、いいのっ!?"と喜びの色を滲ませるのであった】

あての金色に、銀色の簪ねえ。すっごく嬉しいかなって思う…!何だか幻想的じゃん。
あての髪から離れてく時の残り香みたいでさ。うん、ありがとうっ!瑠璃ちゃんの簪大事にするよ。えへへー。

【緩みきった表情。簪をさすのなんて生まれて初めての事だから、容姿相応にテンションが高くなっていく】
【ただ野放しで喜んでいた訳ではなく、断続的に千切れる音を周囲が聞き取っていた故の懐疑と怪訝が絡んだ視線を察して】
【ファミレスから自身の住み家へと場所を変えるべきかなと考える。けれど今は大事になっていないからそこまで急くこともない】
【簪と言う名の華を添えられて完成した自身の髪を瑠璃と共に楽しむのであった】


413 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/28(土) 21:38:56 WMHqDivw0
>>410

【この男がまともに口が利けたならこう反論したことだろう、「娼館やってるヤツなんてみんなそんなもんだ」って】
【だからなんだという話。女にとって特別な存在であった「あの子」が、こいつに苦しめられたことには変わりない】
【それだけが不変の事実であるのなら。こいつも惨めに殺してやるしかないんだろう、あの子以上に】

【手足の切断というのはもうルーチンワークのようなものなんだって、ギャラリーはようやく理解したらしい】
【だから「次は何をするんだ」という期待のコメントで湧き上がっていた。少なくとももう誰も文句は言ってない】
【それくらいには、女の手腕をみんな認めていた。あの子の死に様で満足しなかった人々が、彼女に称賛を送っている】

【――――だから。頭蓋が素手で割られたとき、コメント欄は華々しく赤い文字が咲き誇った】
【弾幕めいてわあわあ煩いから、もう無視しちゃった方がいいのかもしれない。それはさておき】
【それをされている男のほうは――された時点でもう気をやってしまった。それもまた、起こされるなら、呻き声が漏れて】


…………………………………………………………ウ、ゥ、……ア゛ぁあ…………


【リアクションも薄かった。けれど短くなった手足がじたばたもがくなら、芋虫がそうしているのによく似ていて】
【死ぬほど滑稽だった。ぢりぢり焼かれる音の合間から断続的に弱弱しい呻き声だけが挿し込まれて、けれど死ねない】
【ただ自分の姿が異形のナニカに成り果てていくのを見せつけられていた。涙でも流しただろうか。けれどそれも】
【じゅわ、と音を立てて蒸発していくだけなんだろう。そして、それも出来なくなってしまう、両目も融けた硬貨に覆われたなら】
【もう何も見えなくなっていたはずなのに。何故か見えていた。その理由まではわからなかった。視界をジャックされてるなんて】
【つゆほどにも思っていなかったから――――悪い夢でも見ているんだと、妄想する。それしかできなくなって――】
【……そいつも動かなくなる。コメント欄は相変わらず熱狂していて、「次はどっちだ」と、急かしているようだった】


414 : ◆RqRnviRidE :2018/07/28(土) 22:17:56 vZw8nhd20
>>412

【一通り束ねた髪の毛に簪をゆっくりと差し込んでいく。髪束を何度か巻きつつ、しっかりと固定したなら】
【出来上がるのは高い位置で纏めたハーフアップ。流れるロングヘアがフェミニンさを一層醸し出すだろう】

【喜色満面のリゼの笑みを見て、瑠璃もはにかむように微笑を湛える】

喜んでくれて何よりだよ、リゼ。
似合うと思うよ。 髪が綺麗だから彩りにひとつ、ね。

【リゼの金糸に寄り添う銀の針、代わりに瑠璃の銀糸はその手と共にするりと彼女から離れてゆく】
【それから最後に残ったデザートをもぐもぐ食べつつ、「その髪留め、カンザシって言うのかあ」なんて暢気に一言】

あ……そうだ、その簪のことなんだけれど。
さっきみたいに痛くないから安心してね。

あとはボクたちの髪って、魔力を通しやすいんだよね。
だから万が一何かあった時に、簪が役に立つかも……、……

【どうやら差し上げた簪は、瑠璃の髪から出来ているらしく──感触は殆ど樹脂に近いものであったが──何か能力の媒体に出来るかもしれない、と】
【そこまで言うと、唐突に瑠璃は「あっ」と短く発して立ち上がるだろう。空になった皿にフォークが落ち、からんと乾いた音を立てる】

なんだか、──何かを思い出しそう、すごく急ぎで大事なこと。
……でも、なんだっけな──大事なことなんだ、多分──とても。

【逸る気持ちが顔を覗かせる。何かは分からないが、何か急ぎで成し遂げなければならないらしい】
【周囲の怪訝そうな顔はともかく、こちらの子供のほうが先に大事なことになりそうだった】


415 : ◆9VoJCcNhSw :2018/07/28(土) 22:34:36 wn2rqSVw0
>>402

【夜の城内は至って静かだ。開放的な作りであるためか】
【心地よい夜風が吹き込み、早くも秋を感じさせる虫の鳴き声がそれに乗る】

【城を歩く中で、幾つかの場所にたどり着くことだろう】

【まず、明かりの漏れる部屋が幾つか――1つは妖狐が割烹着姿で食器を洗っていて】
【その後姿は揺れる尻尾といい、鼻歌と言い、見ていて面白いものなのは間違いないが】
【気付かれたらシバかれそうなのは間違いない。はてさて、そこに突っ込むか】

【また別な明かりの漏れる部屋――これは綾津妃の私室であろうか】
【扉は閉じていたが、硝子の小窓から青白い光が漏れていた】
【覗き込めば椅子に腰掛け、本を膝に置いて読書に耽っている様子だった】

【それから明るいのは、玉座の間。広い空間の奥はパルテノン神殿のようになっており】
【外からの月光が直接入るために明るく、そして涼しい。ただ――何かあるとは言い辛く】

【或いは地下へと続く階段。暗く、ひんやりとした空気が立ち上ってくる】
【しかしながらこういう城にありがちな拷問室や地下牢――というわけではないのだろう】
【血や腐食した肉の生臭さはなく、ただ舗装されていない土の香りがしていた】


【他にも書斎や、ボロボロの客間、固く錠前が掛けられた扉などもあったが】
【いっそ、城の外に出てみるのも良いだろう。生憎と草原が広がるばかりだが】
【月光は美しく、風は心地よい。その風が、虫の音色以外のものを運んでくるかも知れなかった】


416 : ████ ◆1miRGmvwjU :2018/07/28(土) 23:07:45 o6XMS57s0
>>413

【 ─── どっちをやるかなんて分かりきっていた。どう足掻いたって、それの"最期"は"最後"にしたかった。しなきゃいけなかった。】
【いい加減に目がくらくらしてきたけれど脳直接続はやめない。それは自分がこういうことをする以上、向き合わなきゃいけないものだった。そう思っていた。】
【足取りはごく軽い。 ─── テーブルの上から、割と大きな電動の精肉機を手に取る。骨ごと割ってしまえる強力なやつ。肉を突っ込めば、突っ込んだ分だけ挽肉になる類。】


「ふふーふ。」「キミはアレの実行犯、だよね?」「どうしてこんなことするんだよ、って思うよね。」「うんうん、わかるよ。」
「だって仕事でやっただけだもんね?」「やれと言われたからやった。」「 ───── まァでも、選ぶべきではあったよね。」


【 ─── 赤いマーカーに沿って、けれどそいつは今度ばかりは、その皮だけを剥いでいった。しかも、手脚には手を出さずに。であればそいつが"やる"のは、胴体であり】
【丁度ひとの皮膚で作ったシャツみたいに、男の肌を綺麗に剥ぎ取っていく。終わったら、興味なさげにポイっと放り捨てる。黒服がキャッチして、さっきのミキサーに入れた。スイッチを押した。】
【 ─── それは一種の見せしめであり、これからすることの説明でもあった。マチェットをもう一本、腰から引き抜いて、露わになったままの男の脳みそ、少し抉る。】

【男の直ぐそばに、電動の精肉機が置かれる。大きな取り込み口のやつ。男の手脚を突っ込んでも、難なく呑み込んでくれそうなやつ。】


「そういう稼業をするならさ。」「誰かにこうやって、仕返しされるリスクとか、 ─── 織り込み済みじゃなきゃ、いけない。」
「つまり覚悟とオツムが足りなかったってことさ。 ……… 中途半端なガタイも、中途半端な脳みそも、手を汚すには必要ない。よね?」


「 ─── 10秒ごとに脳みそを貰うよ。3分以内に自分の手足、自分で全て根元まで、挽き肉に変えろ。」


【 ─── どこまでも冷たい声で命じるなら、それは始まる。ひとすくい。ひとすくい。ひとすくい。どんどん男の脳みそは目減りしていく。痛覚こそないけれど、どこまでも嫌な振動が伝わる。】
【命令に従えば大切なオツムを守れるかもしれなかった。ただ自動的に処理してくれる訳ではないから、自分から挽き刃の間に腕を押し付けていく必要があって】
【 ──── それでも、相手がどんなにうまくやっても、到底3分じゃどうにもならなかった。どうにもならなかったら残りはそいつが勝手に押し付けてしまうし、脳みそは生命維持に必要な部分だけが残される。】
【その内自分で手脚を動かすこともできなくなるかもしれない。 ─── マチェットの切っ先が奪っていった脳髄は、まるでパンの計量みたいに、全てミキサーに放り込まれて】


417 : 名無しさん :2018/07/28(土) 23:38:02 qj2r7iic0
>>393

【――楽しそうだった。確かに、さっき、この少女はひどく楽しげに笑っていたのだ。けれど、一番後ろを歩いていた、それがなんだか少女らしかった】
【雪代花映、という人間がどういう性格をしていたかは知らないけれど――それでもああして一緒に行動出来ていたのだから、それなりに、似通う人物であったのかもしれない】

……そっか。…………、ねえ、――、……ううん、……、……。

【やがてベンチに座る。さらさらした水の音。頭上で木の葉がしゃらしゃら鳴いて。木漏れ日が落ちて来る。だから、ひどく、――平穏であった、限りなく】
【だけれど彼のすぐ隣に座っているのは少女でありながら世界を滅ぼしうる概念であり、――そして"ヒメ"によって、条件が満ちねば確実にそうすると推測されていた】
【ぽつんと小さな声が呟く。残念そうな色合いだったかもしれない。その実でどこか無感情なのかもしれなかった。――だけれど何かを聞こうとして、けれど、ためらってしまって】

【――――あるいは。彼が知っていたなら。教えてあげるといいかもしれなかった。もしそこまで、思い至ることが出来たら、だけれど】
【たんぽぽに関わった子供たちはまだ生きているよって。――何もかも投げ出して逃げてしまった少女は、それをひどく引け目に感じていたから】
【それ以外のことでもいいかもしれなかった。彼女が放っておいてしまったいろんなこと。きっと考えているより悪くなっていないよって、――ああ、でも、】
【彼女は本当に何もかもを放っていってしまったから。それはしたらいけないことだった。人を待たせているのに居なくなるだなんて、ルール違反も、いいところだから】

…………面白かった。お父さんも、お母さんも、もし、生きてたら、……――"こう"だったかも、しれない、って、思ったの。
わたしね、――"こう"なれていたなら、――でも、これは、わたしのじゃない。わたしは……神様だから。

【だからそれはきっと本心だった。――おもしろかった。けれどその言葉は間違いなのかもしれなかった。――愉快、なんて顔は、きっと、してなかったから】
【であればその意味合いは"興味深い"とか、そっちのほうに近いのだろう。膝に乗せたスクールバッグを手持無沙汰に弄る、――ぬいぐるみのキーホルダーは少しけばけばして】
【――お父さんもお母さんも生きていたら、という前提は、つまり、桜花鈴音が生まれることさえなかった世界を意味して、それはすなわち、神へ至る間違いのすべて存在しない世界】

【けれど至ってしまった。父母はとうに死んだし如月桜花も死んだ。桜花鈴音もいつか死に。その祟りを糧に芽吹いた神は、けれど、自分のほんとうのかたちさえ知らず】
【それはいつまでも陣痛の起こらない出産に似ていた。何もかもが無理だった。限界なんてとうに超えていた。けれど子供はいつまでたっても生まれようとしなかった】
【ゆえに大きく歪んでいった。自分が生まれようとしない赤子であることも知らず現実から目を逸らし続けた。――その胎を裂いたのは、病魔だった】

【だから――その赤子は人の世界という胎から追い出されてしまった。そうして神の世界に産み落とされた。それでもこうして現るのは、?】

"たんぽぽ"――やりたい。セリーナを、助けて、……黒幕を潰す、でしょ。――――円卓だって。

でも、

――――――――――――――――みんなは、きれいなわたししか、要らないの? 

【そうやって生まれた神様は、けれど、胎の中にいろんなものを置き去りにしてきてしまった。身体も縁も何もかも。だからこうやって探すのかもしれない、だけど、】

――わたしの"全部"を間違いだったって言うだけで終わりにする世界を、わたしが「きらい」って言うのは、赦されないの?
――わたしはずっと怖かったのに、――わたしがみんなを怖がらすのは、どうして、だめなの? 

"たんぽぽ"はやりたい、――セリーナも助けたい、"だって今のわたしにもセリーナが見つけられないから"。黒幕も、円卓も、いらない、――でも

【あるいは初めて言えたのかもしれなかった。もう神様だから。やろうと思えば世界を滅ぼしてしまえる気がするから。そうして、また、やり直せる気もするのなら】
【あるいは隣に座るのが彼だからかもしれなかった。――彼は白神鈴音って神様が生まれるまでの経緯を全部知っている。分かってくれる。"どれだけ苦しかったか"】

【――身体のことには触れなかった。もしかしたらわからないのかもしれなかった。だって――ずっと、ずっと、大嫌いだったから】
【けれどそうやって嫌いだった身体になったことさえ間違いだった。それを許す世界を赦せないことは罪であるかのように、――みんなが否定する】
【だからきっと悲しげな顔をしていた。理不尽だって泣きだしてしまいそうな目をしていた。自分ばかり損をしているって、訴えるような、――】


418 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/28(土) 23:40:42 WMHqDivw0
>>416

【手足の切断――が行われなかったから。コメントには一斉に疑問の声が上がる】
【「おいどうした」「この期に及んで」「やらねーのかよ」 ……やったらやったでワンパだって叩くくせに】
【所詮彼らもギャラリーだった。他人事としてしか見ていない。彼らはそうして、あの子のこと、「つまんない死に方だな」ってバカにした】

【ここに集められた人々の中でいちばん体格の良かった男。よたよた起き上がって、それでも】
【脳をちょっと抉られたら「ヴぁ、」だかなんだかよくわからない声を上げる。鼻水と涎を垂らして、……きたない】
【それでも何とか説明を聞き取ろうとしていた。死にたくなかったから。……こんなになってもまだ、死にたくないと思っている】

――――――、――――――、ッ、――――――――――、

【言われた通りに精肉機に手を突っ込もうとする。しかし指先が巻き込まれた時点で激痛に耐えられなくなって】
【引っ込める。そうすると脳味噌を抉られる。それが嫌だからまた突っ込んで、痛いから引っ込めて、抉られて】
【阿呆らしいルーチンワークだった。結局男は片方の腕を、肘の辺りまでなんとか突っ込んで、挽肉に変えた時点で】
【脳の半分くらいを削られて、なんにも考えられなくなって――べしゃりと倒れ込む。いろんな液体を撒き散らしながら】
【コンクリートの床を盛大に汚していた。本当に汚い終わり方をした。…………そしたら、最後に、残された、彼】

……………………………………………………………………、

【政治家。たぶんメインディッシュとして取っとかれたんだろう男。そいつは、目の焦点が合っていなかった、すでに】
【あるいは合わせようとしていないのだろうか。目の前の光景を直視したくなくて、そんなことしたって無駄なのに】
【けれど最早「助けてください」とか「殺さないでください」って言えるだけの元気もないようだった。恐怖にすべてを支配されていた】
【――――だけどまだ生きてる。生きてるなら、殺せる。どれだけ非道いやり方ででもやってやれる――――】


419 : 名無しさん :2018/07/28(土) 23:50:22 6orO8Dn.0
本スレ>>689

【薄暗い活気に溢れる街に里帰り――この時点で嫌な予感がする】
【勝手にボロを出した青年に無表情だった顔が固まった】
【問いかけた理由などただの興味本位、適当な理由をでっち上げられてたら完全に騙されていただろう】
【少年は自分のチョロさに頭を抱えたくなった】

知らない人にはついていくな、と言うから

【だからさようなら、と足を人の声が多い方へ向けて己の持ち物である剣へ手を伸ばす】
【人通りが多い場所からはそう離れてはいないのだ、そこが安全かはともかくとして】
【ちなみに剣を盗まれる心配はしていない】
【幻想の剣<イマジナリーブレード>とも呼べるそれは、持ち主以外が手にしようとしてもすり抜けるだろうから】

【……だが、少年は青年から視線をそらしてしまった】
【不意を打つなら今だろう、少なくとも一手は先んじれる筈だ】

/本当に不意打ちしたら逆に不意を突かれるかも
//一応こちらにも置いておきます、本スレの>>717にもあります


420 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/28(土) 23:55:18 o6XMS57s0
>>415

【 ─── ひとまず、身体を動かすという所期の目的は達成されそうだった。時折伸びをしながら、欠伸をこぼして、足音が遠くまで響く。どこまでも広い城だった。】
【ただ夜風はあまりに心地良すぎて眠気を奪っていきそうなのが問題だった。それならばいっそ、眠らないという選択肢も首を擡げてくる、が。】

【 ……… 歩いている内に、明かりの灯った入り口を見つける。音を立てぬ摺り足で歩み寄って、ちらり、垣間見てみれば】
【成る程そこに居たのはクズノハなる妖狐だった。こんな夜分の遅くまで良く頑張るものだな、なんて、思いつつも】
【 ──── めちゃくちゃ尻尾が揺れているのは気になった。楽しいのだろうか。鼻歌も聞こえる。楽しいのだろう。】
【歳相応の貫禄は、 ─── たぶん、付き合いが短いから、感じにくいだけなのだろう。少なくとも今のところは、そう思っていた。】

【だから彼はそこに突っ込むことにした。 ─── いじってやろうという意地悪な気持ちを、ごく自然な邂逅に偽って】



「よう。こんばんは、おつかれさん。」「 ─── 傷はもう、大丈夫なのか?」



【まったく不意打ちとして声をかける。へらへら笑って、ひらひら手を振る。 ─── それに、仕事の話、したくないでもなかった。】


421 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/29(日) 00:00:58 WMHqDivw0
>>417

【斜め下に落としていた視線を上げる。痛ましいものを見る目でカエを見て、……それで、逸らせなくなる】
【何を言えば安心してくれるのかよくわからなかった。たんぽぽの子供のことも、教えて、それでどうなるかって】
【無事だって聞かせれば安心して、そのまま戻って来てくれなくなるかも。……なんて、卑怯なことも考えた】

…………そっか。「桜花」ちゃんだったらこうなれたかもしれない、って、……思ったんだ。
面白かったんなら、ま、いいけど……、……そうネ。「白神鈴音」ちゃんじゃ、ないもんネ。

【「如月桜花」としてのイフを楽しめたんなら、少しだけでも、よかったねって思う。それは決して偽りじゃない】
【けれど「白神鈴音」としてそれを得られなかったことを悔やむなら――それにかける言葉は、見つからない】
【目を細める。眉がハの字になる。ぐったりしたような表情。……困り果てていた、何を、どう言ってやればよいのか】
【なんにもなんにもわからなかった。つらかった。けれど目の前の彼女のほうがもっとつらいってことは、わかっているなら】

【――――「きれいなわたししか要らないの?」 そう言われると、胃の中に氷塊を投げ込まれた気分になった】

【だってあの、アナンタシェーシャの体内で。自分が言った、「そんな鈴音ちゃんなら求めてない」って】
【今もそれは、じわじわとだけど、想っていることだった。「きれいなわたし」っていうのが、具体的にどういう存在を示すのか】
【わからないけど。「きたない鈴音」が居たとして、それが世界を滅ぼす悪神であるというなら――見たくないのが本音だった】

【――――――――相変わらず、何を言えばわからない。けれど、だったら。ひとつだけ、言いたいことだけ言おうと思った】

……………………鈴音ちゃんはさ、自分のこと間違いだって、いうけど。じゃあ「正しい鈴音ちゃん」ってどんな子?
おれ、それがわからない。世界をきらいで、怖がらせたくて、みんな消えちゃえって願ってるのが、正しい鈴音ちゃん?

【「だったらおれはそんな鈴音ちゃんいらない」って。またアナンタシェーシャのときと同じこと言い出すかもしれない】
【そんな不安を与えそうな問いをした。けれど。…………同じ轍を踏みたくなかった。一旦言葉を止めて、ぎゅっと唇を結ぶ】
【からからに乾いていたのを舌で湿らせて、なにか、決意するように。実際決意したようだった。本音を言おうって】


おれは、……正直おれは、鈴音ちゃんがどうあるのが正しいのかわからない。間違いなのかもわからない。
だから、だから………………全部好きだよ。おれは。わかんないもん。どれが正しいのかなんてわかんねえ。

だからおれは、――――ヤサカは。全部好きになるよ。間違いごとひっくるめて全部愛してる、――――白神鈴音を。


【――――――――、】

【ひどく震えた声色だった。あんまりにも格好がつかない言葉だった。なにもかもわからないなら、なにもかも好きになるって】
【宣言した、……ヤサカっていうのは。きっと彼の「本名」だった、…………約束、破った。帰ってくるまでダメって言ったのに】
【破ってまでも言いたいことだった、らしい。無意識のうちの名乗りだったけど、……それが彼の名前だって、彼女は、気付くだろうか】


422 : 名無しさん :2018/07/29(日) 00:02:53 qj2r7iic0
【街中――――路地裏】
【ひどい雨の夜だった、ニュースが言うには台風が近づいてきているのだという、それなら、ありふれたチンピラどもは屋内に集まっているに違いなく】
【そうでない訳ありの人間も、この豪雨の中ではすっかりと姿を見かけなかった。であれば家のないような人々もどこへやら、きっとどこかで雨宿りをしていて】

【なら――こんな中でも居るやつは、とっておきに、とっておきの、どうかしているやつだって分からせるのだろう】

――――……、……。……、

【どこかの建物に繋がっていく室外機の影――そこに誰かが居た。あるいは誰か通りさえすれば、それを見つけるのは、きっと容易かった】
【けれどもしかしたら死体と見紛うかもしれなかった、――それくらいに動かなかったし、本当に生きている人間であるのか、ひどく視認しづらかったから】
【なぜなら真っ黒のうんと大きな傘を深々被るみたいにして地面に座っていたから。――体育すわりの要領で畳まれた足先と、わずかに、身体付きが見えるのみの"人間"】
【縁取りの入った白のサーキュラースカートと、真っ白い脚。つま先のところには女物の靴がはめ込まれていたから、女なのだろう、とは、思わせたけれど――】

……「     」、

【――雨の音はもはやざあざあなんて生易しいものでない、だいたいの音はかき消す音量であったから、ゆえに、その囁き声はきっと誰にも届かない】
【畳まれていながらも脱力したようにくたりと斜めっていた足が、――けれどあるタイミングで、ぎゅう、と、傘の内側にしまい込まれていく、膝を抱える指先が、ちらりと】
【もしその瞬間に誰か居合わせたなら生きていると気づかせるのだろう、――、すっかりぐしゃぐしゃに濡れたスカートの布地が、ひどく痛々しかったけれど】

/せっかくなので使いまわしてみたりというやつですっ


423 : 名無しさん :2018/07/29(日) 00:10:02 PYq7bHtM0
>>365
【〝■〟の無い空。人、と言うよりも嘗ての幻影にも見える存在。確立された世界とは異なり、彼の精神世界に入り込んだようにも思える】
【――此処が何であれ、だ。する事は変わらない】
【今必要な事を行っていれば勝手に道が造られる。コレまでだって同じ事。現状を愉しむ程の余裕は無いが、絶望する程の心の弱さも無い】

【扉が開く最中、腰に提げていた双銃へと手が伸ばされる。状況によって
はそのまま引き抜くつもりではあったが――】
【其処から流れ出たのは声だけ。丁度、昔の暮らしを模した博物館の一室に入ったら、当時の会話が再生されるかの様な】
【手を銃から遠ざける代わりとしてドアを軽く押し、中へと入れば視線を巡らせ】


「何処かの船じゃ乗組員が生活感を残したまま一瞬の間に居なくなった、なんて事もあったみたいだけど……こんな感じだったのかな
……何が起きても不思議じゃ無い場所だから仕方ないと言えばそれまでだろうけどさ
話のノイズも酷いし……――幸せな世界、ね。コレがもしダグラスの家の再現なら、人並みの幸せな生活は送ってたみたいだけど
それとも……お月様の次に大事だったから、必然的にコッチになったのかな」

【流れ出ている水は本物だろうか。このコーヒーだって、味も香りも――】
【住んでいた家族が一瞬で蒸発したかの様な光景。ふと、彼が譫言の様に言っていた〝オメラス〟への言葉が思い出される】
【みんなが幸せになれる世界、だったか。何と無く、〝以前の彼〟はこの様な一般的な幸せとはまた別なベクトルとして幸福を捉えて居た様に見えたが――】
【そんな事を考えつつ家を探索していると、地下へと続く扉の前で立ち止まり】


「――考えても仕方ない、か。大体にして、ダグラスってばあんな状態になる前からよく分からない性格だったし
ふらっと六罪王なったりするし、そもそもオトモダチの団長サマはこの状況を理解してるかも分からないけど
まぁ……今はコッチに集中してないといけない、か」

【その先から感じ取れる気配。人の其れか、獣の其れか。或いは、もっと別な何かであろうか】
【それが何であったとしても、〝この世界〟で初めて気配らしい気配を察知出来たのだ】
【当然自分にとって都合の良い存在、とは思わないが探らなければそれすらも分からない】
【仮に連れて来られた人物だとしても、思えばこの世界から逃げ出す手立てもまだ――……】


「全く……路地裏の見回りの筈が気付いたらこんな場所に居るんだから困ったモンだよね……
さて、と。この世界の地下室には何が隠されてるのかな、っと」

【手を延ばした双銃に魔力を込めれば、其れは二振りの短刀となって】
【逆手に持ちつつ足音を殺して地下へと続くその道を辿っていく事だろう】
【既に気付かれている可能性も否めないが、其の時は何時も通りその場の流れに任せる。それだけだ】


424 : ◆9VoJCcNhSw :2018/07/29(日) 00:23:48 wn2rqSVw0
>>420

【ビクンッ!と尻尾が三本揃って真上を向いて、動きを止めた】
【ざあ、と水道から流れる水の音だけが暫く静寂を支配して】
【それを(何とも慣れた様子で)しっかり止めてから】
【ギ、ギ、ギ、と油を差しそびれた機械のように振り返る】


え、あ、いえ……ええと、どうも……。……こほん。


【見られた――それには勘付いたのだろう。しかし妖狐は狼狽えない】
【わざとらしいくらいの咳払いが、言ってしまえば精神的なスイッチなのか】

【そこでしっかりと間を区切って、割烹着の被りを手に取り】
【向かって左側が亜麻色、右側が新緑色という毛並み――髪色や、耳の毛色を露わにする】
【改めて向かい合えば、それが術か何かで作られたものだからなのだろう】
【目鼻立ちは整っていて、案外和装というのが似合っており】


ふぅ…――ええまあ、傷はなんとか。
綾津妃さんの近くにいれば自然と治りが早くなるものでして。

……改めて、お昼の事はありがとうございました。
生憎と何処かのお鶴ちゃんのようにお仕掛け女房もしませんし
毎日家の前に食べ物を持っていったりもしませんが
何かお力になれることがあれば……まあ、聞ける範囲でお礼を、ということで。


【この復帰力はさすがという所か。言葉は時々冗長で、軽口も多いが】
【しっかりと頭を下げてのお礼もして、その申し出もして】
【良く出来すぎた大和撫子の如く――更には空気も読んで、なのか】

【じっとジークを見つめて、言葉を待つ】
【「こんな夜中に、まさかただのお散歩じゃないでしょう」】
【そういうように尻尾が揺れて、耳がぴょこんと跳ねた】


425 : ◆9VoJCcNhSw :2018/07/29(日) 00:51:13 wn2rqSVw0
>>425

【流れ出る水は、触れれば手が濡れ、冷やされる】
【放置されたコーヒーは、口をつければほろ苦さと温かさが広がっていく】
【いずれも本物、いずれも実物。虚構の世界でありながらも】
【見る、触れる物質は何れも驚くほどに成功なのだった】

【もしも机上の新聞に目をやれば――文字は、読めないかも知れないが】
【戦争に関する記事が載っていた。地図と、線で明示された一区画】
【それを訳せる者が見ればこう書いてある。〝ドイツ、ラインラント進駐!―諸国は静観―〟】


【―――――――――】

【――――――】


【―――】


【路地裏へ、進んだなら。まず1分とせずに気付くのはその〝深さ〟だろう】
【一階分ではない。二階、三階、十階、三十階。地下へ地下へと道は伸びる】
【まるで限定的な空間魔術が掛かっているようだった。しかも光景は、何も変わらない】

【湿っぽく、蜘蛛が巣を作り、天井が低い地下への階段】
【戻るのならば早いほうがいい――だが五十階を過ぎれば、もう戻れない】
【下り続けるしか無いだろう。しかしてそれもまた、終わりはあるもので】

【〝気配〟を信じ、下りきったなら。それが何時間後のことかは、分からないが】
【土の床と、埃を被った農機具と、無骨すぎる鉄の檻が1つ】


〝……………………………、……………………?〟


【そしてそこに、気配の正体があった。それは一人の少女だった】

【髪は所謂プラチナブロンド。歳の頃は20手前で、すっとした目鼻立ちをしている】
【衣服は時代錯誤なものだった。パルラ、或いはヒマティオンと呼ばれる外套型の布をまとい】
【肩を隠すようにヴェールを羽織る。そして頭には花冠を戴き、その装飾に孔雀の羽が綺羅びやか】

【体型は慎ましやかで、何処かの彫像に息を吹き込んだかのように"綺麗"だった】
【そんな彼女は不思議そうに、はじめて自分以外の存在を見たかのように】
【或いは言葉を忘れたように修道女の姿を見つめた。その瞳は、優しい黄金色をしていた】

【――部屋に、他には何もない。この深い地下、外への出窓も何もなく】
【見張りも、罠も無いようだった。ただ、檻の鍵は固く閉ざされていた。――物理的にのみ、だが】


426 : 名無しさん :2018/07/29(日) 02:51:32 qj2r7iic0
>>421

【蝉の声がする。隣のベンチでうつらうつらしていたおばあちゃんが、はっと起きて、それからまだ寝ぼけている犬を引き連れて、家に帰っていく】
【夕焼けが少しずつ夜に変わり始めていた。けれどその境界線は見えなかった。見ようとしてもたくさんの建物が邪魔をした、人間と神様の境界線より隠されて】
【黄昏時。――――本当に目の前に居るのは白神鈴音の人格だって確信できるんだろうか。それが人間みたいに振る舞うだけのウヌクアルハイでないという保証は?】

……いっぱい頑張ったの。頑張ったよ。でもなんにもよくならなかった。"わたし"はいっぱい頑張ったのに。
間違えたのはわたしじゃない。――――、だけどわたしはいい子じゃない。みんなみたいにすごくない。ずっと隠してたのに。

――――ずるい。ずるいよ。わたしにはなにもないのに。そういう"ふり"してただけなのに。頑張ってたのに。ないって分かったらほんとに要らないんだ。
間違えたのはわたしじゃないのに。なのにどうしてわたしを怒るの。間違った人はそのままで。――わたしがヒトじゃないから?

わたしだってヒトだった。

【いっぱい頑張った。いろんなこと。頑張ったつもりだった。前を見て一生懸命に走ってきた。つもり。ほんとは、ずっと、逃げて来ただけだった】
【前を見ていたのは後ろを見たくなかったから。走っていたのはそうじゃないと追いつかれてしまうから。見ないふりしてきた現実は、けれど、いつしか致死量を超えて】
【身体の中の毒がさいごに病気になって現れるみたいに――転んじゃったなら、もうおしまい。追いつかれて。食いつくされる。食いつくされた。なにもかも】

【――自分が神様だって知らずに居続けた白神鈴音は、祟り神だった。人間のぜんぶを怨んで妬んで祟った、神様だった】
【だから――なんてことは、ない。彼にならきっと伝わってしまう。少女によって共有された記憶、――特筆するようなことではないような、ちいさな、記憶の欠片】
【誰かに何かを譲りながら(それは本当は自分のものなのに)と、思っている記憶。だけれどそれを言い出せず、誰も居なくなるまで待って、そうして、最後には何もなかった時の思い出】
【めいっぱいに虚ろで飾って生きて来た。その裏側でずっと妬んできた。たまに手に入れた幸せも、――丁寧に一つずつ、一つずつ、摘み取られてきたのなら】

【きっと"それ"が「きたない鈴音」だった。ほんとうはちっともすごくない。無理して強がって。優しいふりして。ほんとはずっと小さくて。それでも。何かを諦めきれなくて】

/分割でっ


427 : 名無しさん :2018/07/29(日) 02:51:45 qj2r7iic0
>>421>>426

――――――――――……、――……、どうしてわたしは怖い神様なの? 

【震える声を全部聞いていた。乾いた唇を潤してあげる方法は分からなかった。神様なのに。口付けてあげたなら潤うのだろうか、と思った】
【けれど違う身体だと気づいてしまった。それなら、何の方法も思いつかなかった。――だからそれが少しだけ惜しくなる、震えた声を、ただ、抱きしめてあげたくて】
【身体がないって意味を初めて理解した。あの時抱き合えたのは同じ存在だからに過ぎなかった。――――、イルと交わせた口付けを、彼とは交わせないのなら】

……自分が嫌いだって思ったら、わたしは、消えちゃうんだって。イルちゃんが言ったの。――イルちゃんに、笑ってほしいの。
だから、考えないの。楽しくないよ。面白くないよ。今だってみんなに怖がられてるの。分かるの。みんなわたしなんか嫌いなんだ。
"いいこと"しないわたしなんて要らないんだ。そうじゃないと意味ないんだ。……。
……――わたしが居なくなったらイルちゃんが泣いちゃうから。それだけ。

…………分かんないよ。どうしたらいいの。――教えてよ。白神鈴音(わたし)の作り方を知ってるなら。
どうして神様でもいいよって言ってくれなかったの? ――あの時にそうやって言ってほしかったのに。

【全部ひっくるめて、全部、好きになる。愛してる。――掠れる告白に、少女は、――カエ、は、とうて今までの一生で浮かべたことないような顔を、した】
【けれどそれは白神鈴音ならば何度も何度も浮かべて来たような表情に違いなかった。愛してるの言葉を受け取れなかった。けれど、突っぱねることもできなくて】
【それなら教えてよって尋ねた。神様なのに知らないことがあるみたいだった。そうして漏れる言葉は、――けれど限りない恨み言だった、もうどうしようもないのに】

怖くない神様になれたなら、そしたら、だれも、わたしのこと、虐めない? 怖くない場所へ、行けるの?

【――けれど全く希望のない恨み言かと言えば、きっと、違った。少しだけ。――眼前の神を見て、そうして、その神に期待することがあるのなら、】
【"いつか"みたいに彼女は叶えてくれようとするのかもしれなかった。だって。神様だから。――だけれどそれは世界中に遍く恐怖の神としての認識を塗り替える奇跡と同義で】
【すなわち"それ"は人間にしかできない、神様に起こせない奇跡に違いないこと、】

【不安そうな顔をしていた。――生まれたての神様だからだろうか。それとも、あの少女を軸に成り立つ神格だからだろうか。ひどく、――】
【――――それは到底世界を滅ぼしうる神様にだなんて、見えなくて。だけど、それでもなお、間違いを赦すことができないって、繰り返していたから】


428 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/29(日) 16:18:31 WMHqDivw0
>>426-427

【言葉を受け取ってもらえなくて悲しいという気持ちはもちろんあったけど、それと同時に】
【まあそりゃそうだろうなあ、というあきらめの気持ちもあった。だって知っていた。何から何まで教えてもらったから】
【こんな風に「好きだよ」とか「ずっと一緒だよ」とか言ってくれた相手が、彼女の前からどんどんいなくなっていったこと】
【それでいて、自分がずっと彼女と一緒にいられる確約もないのだから。それくらいには危ないことに首を突っ込みすぎた】
【……言うタイミング、完全に間違えたなと思う。あるいは、こんなこと言うタイミングなんて永遠に訪れないんだろうな、とも】

…………頑張ったのは知ってるよ。知ってる、だって教えてくれた……
なんにもよくならなかった、ワケ、ないじゃん。それだけは絶対ウソだよ。ねえ、わかってよ。
現におれだって夕月だってだいぶ、鈴音ちゃんのせいで、変われたよ……確実に、いい方向に。

【からからに乾いた声で、なんとかかんとか彼女の言葉を否定――というか、いいほうに肯定したがるけど】
【ここまで呪縛にとらわれた彼女にはたして届くもんだか。わからない、けど、言わずにはいられない。だって本当のことだった】
【何かあるとすぐ鬱になってぴいぴい泣く「妹」も、ギリギリのとこまで踏ん張れるまで成長した。……結局、折れたんだけど】
【それに自分だって。何もかも諦めようとしてたのを、まだ何かやれるはずだって。願えるようになった、……それも折れそうになってるけど】
【喋れば喋るほど、彼女のこと傷つけてしまうような気がした。でも黙っているのはダメだと思って――声が、震える】

【せめてなにか、抱き締めてやりたいとか思ったけど。この子が雪代花映である以上、そういうのは無駄なんだって、わかってしまって】

……そんなに、イルちゃんのこと、好き? ……そーだよネ、「はじめて」鈴音ちゃんのこと助けてくれた子だもん。
好きにならないワケないもんね。…………なんで、

【なんでおれじゃないの、という言葉はギリギリ呑み込めた。大人だもん。大人だから、■■だから、我慢しなきゃいけない】
【そういうふうに教え込まれて「生きていた」。その価値観は未だ彼の中に根付いていて――それはまあ、どうでもいいことだけど】
【どうしたらいいのって訊かれて、――もっかいヒトのこと好きになれ、というのはあまりにも酷な話だと思って、言えなくて】
【だってヒトによって絶望させられた女の子にそんなこと。言えるはずがなくて――――ああ、でも、】

…………そうだネ。怖くない神様――すくなくとも、世界、ぜんぶぶっ壊れちゃえ、とか言わない神様になるんだったら。
すくなくともおれは……安心するけど。でももうそれもヤダ、って言うんだったら――それでもいいよ、
全部ひっくるめて好きになるって言ったのはおれだし。…………、鈴音ちゃんは、どんな神様に、なりたい?

【善神になろうが悪神になろうがどっちでもいい、それでも愛してるって言ったのは自分だった。だからもう望まなかった】
【ただ、ちょっとだけ「こうだったらいいな」くらいの希望は、混ぜていた。いつしか朝食を共にしたときに話していたこと】
【思い出していた。子供が好きって、「自分の名前を呼んでくれるひとが居ない場所」を作りたくないって言っていたこと】
【それをほんのちょっぴりでも思い出してくれたらいいなって、――――願っていた、無意識に。何もかも諦めていたはずの、自分が】


429 : ████ ◆1miRGmvwjU :2018/07/29(日) 16:36:04 o6XMS57s0
>>418


【心の底から見下すような顔をして、そいつは舌打ちした。情けない奴、とでも言いたげに。残った手脚は、ノコギリよりも余程よく斬れるマチェットでお別れさせた。】
【 ─── 向き直る表情は、もう微塵も笑っていない。仮面をかぶることさえやめた、血塗れのピエロ。ごく穏やかな足取りで、"彼"に歩み寄る。】


「なんだよ。」「喋れないのは分かってるけどさ、」「 ─── 呻くとかさ、鳴くとかさ、喚くとかさ、」
「そういうこと、してくれないかな?」「 ……… だって、あの子が報われないんだ。」「███が、報われないんだ。」


【しゃがみこんで、ごく作業的にそいつは彼の爪を剥いでいった。一枚ずつ。ノコギリで。手も足も。強引に、無理矢理に、根刮ぎに。爪と肉の間に刃を食い込ませて。】
【それが終わったらペンチを持ち出して、手足の指を一本ずつ潰していく。爪切りでもするみたいに。根元までぐちゃぐちゃにしてから、無造作にもぎ取る。】
【 ─── ずっとそいつは語りかけていた。聞けるはずがないって分かってるのに。言葉にする事そのものが、意味のある行為とでも言うように。】


「ごめんなさい、もうしません、すみませんでした、」「 ─── そのくらい、どうにか言ってみてよ。」
「他の人にもそうしてきたでしょ?」「どうにもならないこと、どうにかしてみろって言ってきたんでしょ?」
「だからキミには簡単な条件をたくさん提示してあげる。一つでもクリアできたら許してやる。」「VIPだもんね。」「自分だけ特別にしてほしいもんね?」


「まず、さ。謝る言葉、一回でもボクが聞き取れたら、許してやるから。」「 ──── 言えよ。言ってみろよ。早く。」


【 ─── 絶対にできないって分かっていた。少なくとも、もしも何かの奇跡が起きたとしても、そいつが"聞き取る"筈がないって、どんな馬鹿だって分かった。】
【だから作業は恙無く続く。黒服が、真っ赤に熱した金属製の長靴をそばに置く。素手で触っていなかった。 ─── 男の両脚に、それを、履かせた。】


「ねえ、 ─── 喉の奥にさ。汚ならしいものを突っ込まれた経験、ある?」「キミにはなさそうだよね。」「泥水なんて啜らなくとも親御さんがレール敷いてくれたもんね。」
「車の運転も秘書に任せきり。ね。だから太るんだよ?」「健康に良くない。自分の脚で歩いてみるって経験、してみようよ。」


【 "ここまで、自分で歩いてこられたら、許してやるから。ね?" ほんの数m先。男のために用意された手術台にそいつは腰掛けて、手招きした。黒服が無理矢理彼を立たせた。】
【滅茶苦茶に熱かった。魔術的処理であるのか、何かの加熱機構が内蔵されているのか、或いは単なる錯覚か ─── いずれにせよ、骨まで焼ける温度に、間違いなくて】
【一歩踏み出さなくても、踏み出したら余計に、脚の肉が焼けてグズグズに溶けて焦げ付く感覚を理解させる。途中で歩けなくなったら黒服が蹴飛ばしてでも立ち上がらせる。 】
【 ─── 時間の制限はなかった。ただ男の脚が先に溶けてしまったらゲームオーバーだった。そうしてそいつは間違いなく、"そうなる"ように仕組んでいた。】


430 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/29(日) 16:52:26 o6XMS57s0
>>424

【何を考えてるか、尻尾に出るタイプなんだな。 ……… 男はそう判断した。そういう性分でこういう稼業をやっていけるものなのだな、と思った。】
【あまりに牧歌的な仕草とあまりに家庭的な立姿は、それこそ田舎の茶屋で看板娘を営んでいるのが似合いそう、ではあったけれど ──── 。】
【 ─── 丁寧に一礼をされるなら、彼もまた軽く会釈する。灰色の瞳。静かに笑っていた。言葉を促されるなら、滑るように語り出す。"仕事"の話を。】


「 ─── 最初は、実際ただの散歩ではあったんだが、」「あんたと会ったし、今はそうでなくてもいいかな、とは思っている。」

「昼間に聞けたのはジルさんの事ばかりだったからな。」「 ─── オレの方でも色々と調べてはいるんだが、如何せん連中、なかやか尻尾を掴ませないだろう?」
「ウチはまあ、ズボンに拳銃を突っ込んだ外交屋でね。」「そういうわけで公安は商売敵だ。」「連中のスキャンダルってのは、ある意味で素晴らしい飯の種になる。」


【詰まる所それは、対外活動を主とする半軍事的な諜報組織であった。聞くだけでキナ臭い素性だった。事実こう話す割に、男は所属を名乗らなかった。】
【 ─── あるいは、名乗れないのかもしれない。それだけ微妙な性質であるということ。汚い仕事もするということ。】


「どうだろう。理由の如何は問わずとも、あんたも"円卓"についているなら、 ─── 協力なり、情報交換なり、してみないか?」


【 ─── 静かに男は笑っていた。目元は笑っていなかった。断る事も出来るだろうし、それを男は許すだろう。それでも共犯に耽るなら、恐らくは、穏やかでは済まない。】


431 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/29(日) 17:01:51 WMHqDivw0
>>429

【手足の指先から丁寧に損壊されていくのも、理解できているのかできていないのか。おそらく後者】
【うう、とかああ、とか呻く声くらいはあげただろうが――聞き取ってはもらえないんだろう】
【兎角反応は鈍々しいものになっていた。もう精神が完全に壊れてる。……あの子は、最後まで、泣かされていたのに?】

【ぐずぐずになった脚に「それ」を履かされればまた呻いた。けれどもうそれも、反射みたいなものであって】
【コイツの口からは二度と意味ある言葉は出てこないんだって思わせた。口八丁で生きてきた男の末路だった】
【一歩踏み締めるごとにじゅうじゅう焼ける音がする。画面越しにその臭いだって伝わってきそうだった――誰かがコメントする】
【「ここまでやる?」 ……根っからの悪趣味野郎も、流石に、ヒき始めていたらしい。現にコメント数は、かなり減ってしまっていて】

……………………………………、……………………………………、

【痴呆のよう、促されるままに歩いて、倒れ込みそうになったら蹴飛ばされて、また歩いて、蹴飛ばされて】
【それを三度ほど繰り返したところで、再度倒れ込んだ男はどれだけ蹴られても、立ち上がれなくなった】
【つまりそれでゲームオーバーなんだろう。それでも生きている男の瞳は、どこか遠く呆と眺めていた】
【絶望でも悲観でもなんでもなくて。もうそこには感情すらなかった。完全に心が壊れていたから。けど、】

【――――――あの子は最期の最期まで泣いていた。痛そうにしていた。怖がっていた。苦しそうだった】
【懇願していた。絶望していた。それでいて――――悔しんでいた。生まれてから今までずっと何もいいことなかったって】
【そう思って、悲しくて悲しくて、このまま死ぬのがひどく悔しくて泣いていた。最期まで心を持たされたまま終わらされて、】


【(――――――――そのせいで「あの女」に目をつけられた。何から何まで可哀想な子だった。……本当に?)】


432 : ◆RqRnviRidE :2018/07/29(日) 17:14:32 vZw8nhd20
>>422

【──降り頻る大雨の中、カツン、コツンと硬質な音が混ざる】
【それは一定のリズムを伴って、誰かの踞るそこへと近付いてくる】
【どうやら足音らしい。こんは雨中を彷徨く、どうかしているやつが居るようで】

【やがてそれは、傘で身を隠すようにしている女の前に現れ、立ち止まるだろう。人影は一つだけ】
【傘、悪天候、決して良好とは言えない視界の中で、泥に汚れた“馬の蹄”が女の目に付くだろうか】


もしも────し!!
生きてますかあ!!

【甲高く間延びした女の声が相手を呼び掛ける。豪雨にも負けぬような大きな声で】
【抵抗されなければ“それ”は、相手の傘を傾けるように持ち上げて、その姿を視認しようとするだろう】

【青紫の長髪の毛先だけをリボンで纏めた、黄色の双眸を持つ長身の女】
【丈の短い華美なドレスが、メリハリのあるグラマーな身体を包み込み】
【片手には、柄が螺旋状に捻れた身の丈ほどのハルバードを携えている】

【胸元を大きく露出し、馨しい香水の匂いと妖艶な雰囲気を身に纏うが】
【ドレスの裾からすらりと伸びるのはヒトでなくーーウマの両脚だった】

──あは! 濡れ鼠ちゃんたら生きてるみたいねん
ねえねえ、こんなトコでどーしたの?
水浴びするならいいトコ教えよっかあ?

【そいつは屈み込んで、にこにこ笑みながら場違いにも程があるテンションで女に問い掛けるだろう】
【そこに在る女の脚が僅かに身動いだのを流し目に、その顔をよく眺めんと迂闊にも女の頬へ触れようとする】

【彼女は傘も差さずに降り注ぐ雨を一身に受け、ずぶ濡れて髪が顔に張り付くほどで】
【毛先や衣服からは絶えず水が滴り落ち、けれどそれさえも気に留めず、目の前の存在にただ興味を抱いていた】


433 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/29(日) 20:50:12 o6XMS57s0
>>431


【手術台に座っている間、そいつはミキサーをもてあそんでいた。 ─── ███を作ったモノと、███を痛め付けた男の脳ミソと、それに、もう一つ。】
【死んだ目をした養鶏場のニワトリに無理矢理エサをやるための、ごく太い給餌器具。だったらそいつが今から何をするのか、誰だって分かるんだろう。】
【 ─── けれどそいつは、どうしてか、笑ってなかった。それどころか悔しそうだった。こんな凄惨な復讐をして、自分の憎んだ人間の尊厳と精神を完膚なきまでに磨り潰したというのに。なぜ?】


「 ─── くそッ。」「くそッ。」「くそッ。くそッ。くそッ。」「くそッ!」
「情けないな。鳴けよ。喚けよ。叫べよッ!」「お前、 ─── それで、許されると思ってるのかよ。」
「███は、 ─── 最後まで泣いてたんだぞ。死にたくないって、このまま死ぬなんて嫌だって、泣いてたんだ。」
「お前は、お前が痛めつけた子どもよりも軟弱なくせに、███を嬲ったのか。 ─── ふざけんなよ。ふざけんな。そんなのってないだろ!?」


【可愛らしいローファーの裏をずかずか鳴らして、そいつは倒れ込んだ男へ詰め寄る。 ─── 股座を引っ掴んで、汚ならしいモノに爪を立てて捥ぎ取る。肉の塊を給餌器具にねじ込む。】
【およそ女が浮かべるべきではないくらいに悍ましく表情を歪ませて、給餌チューブの先端、思い切り男の口に突っ込む。いつか███がされたように。】
【そして流し込む。無慈悲なモーター音は、もうこうなってしまったら、かえって慈悲に満ち溢れてるくらいだった。窒息したって構わなかった。全部、全部、喉の奥深くに流し込んだら】
【そしたら男には噛み返す力なんて有りはしないんだろう。だから、思い切り腹を蹴って、吹っ飛ばす。滑稽な彫像になったままの、誰かに打つかる。】


「 ─── 死ねッ」「死ねッ」「死ね、」「死ね、」「死ね!」
「死ねよ、死ねッ」「じゃあせめて死ね!」「あの子のために、」「███のために、死ねよ!」


【そうして、 ─── 初めてそいつは、マイクが音を割れてしまうくらい、声を荒げながら怒鳴るんだろう。醜く歯茎を晒して、癲癇でも起こしたように喚き散らして】
【残ってた連中、何人まだ生きてるのか知らないけれど、容赦なく蹴り飛ばして部屋の隅に集める。剥き出しになった脳は、それだけで崩れてしまうかもしれないけれど】


「お前らには!」「悔やみながら死ぬ事もできないのか!?」「自分のやった事、」「どれだけそれであの子が傷ついたか、」「苦しんだか、」「惨たらしく死んだか、」
「それを懺悔しながら死ぬ事もできないのか!?」「不能者どもが!!」「死ねッ!!」「死ねッ!!!」「死ねよッ!!!!」   「 ────── 死ねッ!!!!!」


【 ───── きっと、本当はもっと、そいつは"やる"つもりだったんだろう。だって、まだ使ってない劇薬のボンベや調理器具なんかが、テーブルの上には転がっていたから】
【けれどもう意味のないことになってしまった。"あの子と同じ、そしてそれ以上の苦しみ"を与えるのがそいつの目的だった。でも何より大切なモノが欠けてしまった】
【███は、夕月は、最期まで気を持っていたんだから。泣いて、叫んで、許して、助けて、死にたくない、 ─── 喉が枯れてもそう言っていた。だからこそきっと、彼女の"創り主"に拾ってもらえた】
【当たり前に期待したボクがバカだった。こいつらにそんな精神はないんだ。嫌なことからは目を背けて、呆気なく壊れて、現実から目を逸らす。ただ今はそれが許せなくて】
【 ──── 何度だって蹴る。蹴る。蹴り続ける。死ね、死ね、死ね ── か細い喉がそれこそ張り裂けるまで、枯れてしまうまで、自分の脚先が痛んで、なんだかよくわからない何かの塊になったって、構わずに】


434 : ◆9VoJCcNhSw :2018/07/29(日) 21:05:24 wn2rqSVw0
>>430

【「ふむふむ」――聞いているのかいないのか、妖狐はきゅっと蛇口を捻り】
【しばし時間を取りそうな彼との会話に応ずる姿勢を見せた】
【『協力なり、情報交換なり――』―――にこり、とクズノハは笑って】


構いませんよ?ですが、どうも前提条件を履き違えていらっしゃるようで。
……ジークさん、あなた私がどういう立場の存在であるか分かってます?


【ふとテーブルに歩み寄る。まな板を置くと、その上に手を翳す】
【すると出来上がるのは〝氷のケーキ〟だ。能力によって作り出したもの、だろう】
【形状は普通のワンホールタイプ。ただし蝋燭の代わりに幾つかの彫像が置かれている】

【中央に"山羊頭"――獣の王を表すものだろうか、何処か悪魔的でもある】
【周囲を囲うものに"触手"、"白衣"、"麦わら"などの特徴が見て取れて】
【その中にまた、狐耳が特徴的な物もある。それに指先を置くと、瞳をジークに向け】


カノッサ機関、UNITED TRIGGERを始めとした"組織"というものは
あくまで人と人の会合、結社でしか有りません。

ですけどジークさん、〝円卓〟はそんな可愛いものじゃないんです。

政治家、各公的機関の官僚、大企業の名を被った資本家。
細かく言えば軍や警察にも幅が効き、公安すらも食らう一大システムなわけですよ。
あらゆる裏金が流入し、お互いがお互いを監視することで成り立つ〝既得権益〟そのものです。

だから、何もしなくていいんです。世界征服も、能力者の根絶も、神様の崇拝も、平和な世界を作ることも。
〝円卓〟はそんな事をする気もないし、しなくていい。その時点で、既に〝集団〟としての格が違う、と。

……ジルベール・デュボンという人は、そんなシステムの舵を幸か不幸か握ってしまった。
数多くの権力者たちが漠然と作り上げたシステムに『指向性を持たせた』んです。
水の国に限って言えば、及ぶ権力の範囲は国家元首より広く深いのでしょう。


そういう存在が雇った、言うなれば直属の部下から話を聞こうっていうんですから。
……名前も組織も目的も。ロクに明かさないままだなんて、虫がいいんじゃありません?


【――そこまで語るクズノハは、いっそ優しいのかも知れなかった】

【世の中には相手を疑った時点で銃の引き金を引くような輩もいる】
【怪しいと感じた時点で、拷問にかけようとする者も居る】

【そんな中で敢えて丁寧に状況を説明し、重ねて機会を与え、対話に応じる姿勢を見せる】
【それは間違いなく温情と呼べるものだろう。或いはそれこそ〝お礼〟なのかも知れないが】
【ともあれ――クズノハは笑って首を傾げた。その笑いは、幸い本当に"笑っている"ものだった】


435 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/29(日) 21:17:31 WMHqDivw0
>>433

【ごぼごぼごぼごぼ流し込まれる音がする。ミキサーにかけられた血肉が勢いよく、喉奥に、流し込まれて】
【それで男は白目を剥いた。たぶん詰まったんだろう。口からも鼻からも何かしら逆流させて、ごぼっと】
【蹴られたらいろいろ撒き散らしながら地面に叩き付けられて、動かなくなった。……本当に呆気なかった】

【それから始まる、今までのモノとはおよそ違った乱雑な暴力。悲鳴みたいな声を上げて女が叫ぶなら】
【画面の向こう側、コメント欄はもう静まり返っていた。誰も何も、冷やかしすらしなくなる。そのくせ来場者数は減ってない】
【それから画面のこちら側――も、静まり返っていた。たぶんもう全員死んだ。それで、一塊の肉にでもなってくだろうか】
【その様を、手伝っていた黒服たちはどういう心境で見てたんだろう。たぶんみんな同じことを思ってる】

【――――――――「こいつは何をここまで怒ってるんだ?」 …………他人事だから。そう思う】


【――――――、――――、――、そうしているうち。もう誰も何も言わなくなっていたコメント欄に】
【ぴこん。ひとつだけ言葉が流れてくる。赤色の装飾もなければ、サイズを大きくしてアピールする心もない】
【飾りっけのないコメントだった。……彼女はまだ、それを見れるだろうか。脳の負担的な意味でも、精神的な意味でも】


「やりすぎ」 「いや」 「焚きつけたのは僕なんだけどさ」 「流石にはしゃぎすぎ」

「ていうかそろそろ帰ってきて」 「緊急事態」 「やばい」 「“こんなこと”してる場合じゃない」


【……コメントに、読み上げ機能がついていたなら。きっとそれは女の声、掠れ気味のアルトボイスで再生されたんだろう】
【あの喫茶店で。あの子を創ったのは僕だよって笑ってた、――女のコメントだってわかるはず。精神的に、余裕があるなら】



「あの子がやられた。折れた。慰めに来てやってよ」


436 : リゼ ◆D2zUq282Mc :2018/07/29(日) 22:16:21 AjuH3L.A0
>>414

えっへっへ、綺麗なだけじゃなくて能力の触媒にもなるんだねー。
こりゃ頼もしいやー。瑠璃ちゃんが側にいるような気分になるねっ。

【今までにした事のない髪型に銀色に煌めく簪に表情を綻ばせていたその折】
【ガタンっと立ち上がる瑠璃に視線を向けていた。何やらただ事ではない。そんな予感がした】
【綻んだ表情は一転して、やや険しいものになり。緩んだ視線はやや鋭く尖る】


―――どうしたの?瑠璃ちゃん。
何か思い出せそうなのかい?無理に思い出さなくても良いんだ。
急いて思い出そうとしても良い事なんてないから、落ち着いてよ。


【嫌な予感がする。現在進行形でリゼの直感が警鐘を甲高く鳴らし続けている】
【これ以上、周囲の嫌疑と懐疑に瑠璃を晒すのはマズい気がして。財布から万札を一枚置いて】
【切羽詰まった表情で"おつりは要らないよっ!"――と言い残して瑠璃を外に連れ出そうとして】
【手を思いっきり繋ごうとした。もし手を繋いだのであれば、リゼは瑠璃の手を引っ張りながら外へと出るだろう】


437 : リゼ ◆D2zUq282Mc :2018/07/29(日) 22:30:42 AjuH3L.A0
// >>436は取り消しでお願いします。

>>414

えっへっへ、綺麗なだけじゃなくて能力の触媒にもなるんだねー。
こりゃ頼もしいやー。瑠璃ちゃんが側にいるような気分になるねっ。

【今までにした事のない髪型に銀色に煌めく簪に表情を綻ばせていたその折】
【ガタンっと立ち上がる瑠璃に視線を向けていた。何やらただ事ではない。そんな予感がした】
【綻んだ表情は一転して、やや険しいものになり。緩んだ視線はやや鋭く尖る】


―――どうしたの?瑠璃ちゃん。
何か思い出せそうなのかい?無理に思い出さなくても良いんだ。
急いて思い出そうとしても良い事なんてないから、落ち着いてよ。


【嫌な予感がする。現在進行形でリゼの直感が警鐘を甲高く鳴らし続けている】
【これ以上、周囲の嫌疑と懐疑に瑠璃を晒すのはマズい気がして。財布から万札を一枚置いて】
【切羽詰まった表情で"おつりは要らないよっ!"――と言い残して瑠璃を外に連れ出そうとして】
【手を思いっきり繋ごうとした。もし手を繋いだのであれば、リゼは瑠璃の手を引っ張りながら外へと出るだろう】

(兎にも角にもただ事ならない雰囲気だよ・・・。こういう時って大概碌な結果には繋がらない)
(そして瑠璃ちゃんに何かあった場合、あんな衆目に晒されてたら余計碌な事にならないよ・・・っ!)


【瑠璃を衆目から引きはがそうとするリゼの表情や声色は険しくて。先ほどまでの少女然としたリゼから】
【"旋風の用心棒"である時のリゼへと切り替わっていた。――付け入る甘さの消え去った用心棒へと】


438 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/29(日) 22:41:14 o6XMS57s0
>>434

【彼の態度は無謀や無知の産物であるのか。 ─── 或いは、絶対的な自信の産物である、のか。少なくともそいつは交渉人だった。】
【決裂と合意の間に立ち尽くし、爪先立ちで舞踏を楽しむ侠気者/狂気者。だから己れの手札は限界まで晒さない。それが利であると知っているから。】
【同じようにやはりジークは笑っていた。それが彼の対談に際する態度であると感じさせる、のだろうか。或いは。】


「 ─── 言ってくれるねえ。」「なら、非礼は詫びよう。」「何処の馬の骨とも知れぬチンピラ紛いが、"対等"な立場で話そうだなんて言うのは、許し難い話だよな。」

「だが ─── 実際のところ。そう言う割にあんたらは今、事実として手をこまねいている。 ……… 違うかな。」
「磨耗し変質し死滅しうる人間という存在を構成要件の大部分に置く以上、半永久的な社会システムというものは存在しない。」
「まして骨格そのものを暗黙の了解でしかない相互監視に委ねるのなら尚の事だ。だから"機密だって流出する"。」


【 ──── "それ"は、全てハッタリに過ぎないのかもしれなかった。実際のところ煙に巻くような迂遠な言い回しであった。】
【それでも構わずそいつは続けるのだろう。淀みなくすらすらと、予め練習した長台詞であるように。なにかを組み立てて行くように。】


「"何もしなくてもいい"時期は既に終わっている。聖杯に永遠の繁栄を約束された筈の"円卓"は、もう"何かしなくちゃいけない"段階に踏み込んでいる。」
「裏社会のフィクサーに徹していた筈の老人たちが、昨今に至って遮二無二な活動を見せているのは、まさしくその裏付けに他ならない。オレは、そう判断しているが。」

「 ……… 後藤という男を知っているかな。」「知らないなら知らないでも構わないが。」「オレの上司はあの男でね。」
「詰まる所"オレたち"はジルさんの握る銃倉に込められ、撃ち抜く相手を探してやまない実包であり鉄砲玉だ。」
「相手までの距離、移動速度、風向き、湿度、 ─── うまく誰かを狙い撃つには、"そういうもの"の詳細が必要になってくる。」

「アンタが別に何も困ってないってんならそれでいいが」「少なくともアンタは"向こう側"に顔が割れてる。」
「次も死なずに逃げ果せられる自信はあるかい。」「攻撃は最大の防御 ─── よく言ったもんじゃないかとは、思わないか?」


【「こうである」「こうしよう」 ─── 決して彼はその手の提案はしなかった。まともに会話を成立させるのならば、そこは相手が言う結果になる。】
【ましてやそれは一歩彼が踏み違えていれば威しとも受け止められうる言葉だった。きっと全ては相手に委ねられていて、然し同時にそうでないとも言えた。】


439 : ◆RqRnviRidE :2018/07/29(日) 22:55:28 vZw8nhd20
>>437

あっ…………!!

【リゼが瑠璃の手を繋いで外へ連れ出す一瞬、ぐん、と反発を感じられただろうか】
【瑠璃に目を遣ればひどく不安そうな顔をして、石になってしまったかのように動かずに居て】
【けれどそれも束の間、無理矢理にでも引っ張っていったならファミレスから退散することになる】

【あんなに橙色をしていた空はすっかり暮れ、表通りは外灯がちらほらと点き始めている】
【賑わっていた人波は疎らになり、代わりに星々がそれを埋めるように空に瞬いている】
【静けさを引き連れてきた夜は、本来歓迎されぬ側である少女らの存在を人目に付きにくいよう隠してくれた】

【──ところで瑠璃はというと、大人しくある程度離れた場所へ連れられてきたかと思うと】
【幼子が駄々を捏ねるかのよう、また先程のようにその場に留まり、】


────……い、やだ!!

【リゼの手を振り払おうとするだろう。今までの雰囲気からは到底想像し得ない明確な拒絶で】
【それはさながら、トラウマを抱える者のフラッシュバックを想起させるようだった】

【振り払えようがそうでなかろうが、瑠璃はハッとしたように黒い目を真ん丸にするだろう】
【その目がリゼを捉え、己を懐疑の目から護ろうとしてくれた行為であることに気付いて】

──ご、ごめん……すまないね、違うんだ、──リゼ、
ボクは助けなくちゃ、確かそう……思い出せそう、だけど、──

【「──だけど、何を?」】

【子供はばつの悪そうに顔をまっ赤にして俯き、傾いたワインレッドのキャスケット帽が頭を深く覆う】
【抱える不安と少女への罪悪感からか、その足は今にでも逃げ出しそうだった】


440 : 名無しさん :2018/07/29(日) 23:03:52 LzaKC2dQ0
>>428

【――いつかの少女は、長いこと、誰にも名前を呼んでもらえない世界を生きていた。厳密には――いっぴきの蛇だけが、その名前を、呼んでくれていたけれど】
【だけど人間の誰もが彼女を呼びやしなかった。生まれてから四年といくらかが経つまで、彼女は。その名前を呼んでもらうことがなかった。そうして、】
【はじめて少女を呼んだ人間は。はじめて愛してるって囁いた人間は。――"誰か"のために少女を殺した。その"誰か"は何度も少女らを殺してやるって、言っていた】

【――そうしてまた愛してるって囁いた人間も、居なくなった。もう大丈夫だって思えていた。きらきらのドレスを、桜吹雪のヴェールを思いだしたら、なんでも頑張れるって】
【見通す限り黄金に色付いた銀杏並木の景色。めいっぱい違う自分になれると思えた。弱虫な自分なんて変えちゃえると思えるくらいにたくさんの思い出は、その瞬間に色あせて】
【だから髪だって切ったんだった。もう二度と後ろ髪惹かれないで済むように。その時に人間らしい幸せなんて諦めたんだった。"もうなれない"って、必死に思い込んで】

【――――また居なくなるんでしょう?】
【とは、けれど、言わなかった。言わないままで、けれど、褪めている温度がどうしようもなく物語っていた。だのに、心底嬉しくないわけでは、当然、ない】
【だけれどもう諦めたことだから。しかしそれは嘘だった。少女はいつか病魔にうなずいたのだから。できないはずなかった。――なら、男の人が怖い、のかもしれなくて】

……じゃあ、どうして、夕月ちゃんはお休みなの。

【自分はなんにもしてないって信じている目をしていた。なんにもできてない。――いつか、も、言っていた。自分のしていることは、すごくないって】
【他の人にだって言っていた。できることをしているだけだって。できることがこれだった、だけだって。自分に自信なんてなかった、――あるはずなかった、だって】
【そのたんびにいじわるな世界が小さな芽を丁寧に丁寧に摘み取っていったから。それに――本当に"してた"なら、こんな風にならなかったはずだ、って、自分を責めるよう】

――――――ううん、わたしを、殺してくれたの。

人間じゃないって気づいてるのに。知らないふりして。わかんないふりして。人間がいいって。わがままして。
そういう"わたし"を、終わらせてくれたの。……わたしが"なに"かを教えてくれたの。"だから"。

……イルちゃんのことは、きらい? どうして? 

【それは致命的なトドメだった、人間の世界に縋りつこうとして、だけれど決してそうじゃなくって、そんな、誰かを、殺してくれた】
【それを助けというのなら、まさしく助けであるのだろう。だけれど――よく言うような"助け"がなかったわけでは、けっしてない、大好きな人はたくさんいた】
【――だからこそ、でもあった。少女がずっと求めていたのは乱暴であっても未練から断たれることだったのかもしれない、叶わぬ出来事に引きずられるよりも】

【傷口に癒着してしまったガーゼを思い切り引っぺがすのにもきっと似ていた、いつかやらなくちゃいけなくて。だけどいつまでも怖くて。そういう、"儀式"】

…………じゃあ。わたしが。我慢したらいい? "こんな気持ち"全部我慢して。
ごめんねって言われたらどれだけ嫌だったことでもいいよって言わなくちゃいけない? そうじゃなかったら、その子は、うんと心が狭い子なの?
間違いだったって言われたなら、そうだったんだって言わないといけない? 何年も前のことを気にしていたらいけない? 

気にしてないよって言って笑っていないといけない? そうできないわたしは……要らない?

【――――きっと少女はひどく困ってしまったような顔をする。全部ひっくるめて、愛してる。そうだとしても、やはり、望まれるのは、"きれいなわたし"】
【安心するって言葉を彼女はその方がいいって受け取った。受け取ってしまった。――世界が滅ぶ危機は、ひどく、ひどく、くだらなくて。だからこそ、嫌な現実味を帯びていたなら】

――――――――神様でもいいよって、言ってほしかったのに。

【"どんな"かは、言わなかった。言えなかったのかもしれない、思いついてないのかもしれないし、あるいは、もっと、――認識に縋るものだから、どうしようもないのかもしれない】
【それでもなお小さな願望があるとしたなら、――それはきっと世界を全部蹂躙しつくしたいと願う神の言葉ではなかった。それより、ずっと、ありふれた】


441 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/29(日) 23:24:37 WMHqDivw0
>>440

【どうして夕月がここにいないのか、訊かれると、喉を詰めるような音を鳴らして】
【それでも彼女は鈴音のために頑張れたんだって言いたかった、けれど、結果が「こう」であるなら】
【本当に何も言えなくなる。……もう死にたいって思った、好きな女の子一人幸せにしてやれない自分が、何より嫌で】
【それでも本当に、変われたんだって言いたくて、――――唇が戦慄いていた。相変わらず、渇いていて】

…………ころ、し、………………。
殺してもらえたのが…………嬉しかったの? …………そっか。……それが、嬉しかったんだ。

………………ごめん、おれも夕月も、イルのことは好きになれねえよ。
鈴音ちゃん、以外にも、好きな人いっぱいいるから、おれたち……その人たちをみんなバカにして殺すってんなら。
好きにはなれない。こればっかりは、――――ごめん。おれはまだ、……人間のことが好きだから。

【その言葉は、あまりにも酷なことばだった。この男はまだ人間のことが好きだと言って、ならば】
【鈴音が人間が好きじゃないって言いきってるのと同義だった。きっとそうなんだと思い込んでる】
【未練も何もなくしてしまったんだと思っていて――だから、壁は破れないんだと。思ってしまった】

【もう何もかもわからなくなってくる。心がつらい。今すぐここから逃げ出したい。全身がそう叫んでいるのに、】

…………………………しなくていいよ、しなくていい!
誰のことももう好きにならなくていい! 誰のことも赦さなくていい! 平気な顔して笑わなくていい!
ほしいもの、誰かに譲らなくていい! 好きなもの好きなだけ取ってっていい! ……いいからさあっ、

――――――神様でも人間でもなんでもいいよ、そんなんじゃなくて、もっと別の他のイキモノになっちゃってもいい。
犬でも猫でもウサギでもパンダでもなんでも、どんな形になったっておれは鈴音ちゃんのこと好きになるよ、だから、

………………………………………………かえってきてよ、………………、神様でも、そうじゃなくても、もういいよ……

【逃げ出せない。代わりにまた、涙を堪えきれなくなった。みっともない。ださい。恥ずかしい。そう思うのに】
【ぼろぼろ零れて止まらなくて、それを拭おうともしないで。ああ、と嘆息するような呻きが漏れる】
【結局のところお願いするのはそれだけだった。またこの世界に帰ってきてほしいって――願いながら首を垂れて、頭を、両手で抱えた】


442 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/29(日) 23:33:19 o6XMS57s0
>>435

【そいつが、 ─── ミレーユ・ミスゲシュタルト=ストレーンが、漸く少しばかりの理性を取り戻した頃には。その顔はもう殆ど、名前通りの"ばけもの"のそれになっていて】
【だからその脚元もひどいものだった。元が何だか判然としない数人分の肉の塊が、そこにはあった。それにどうやら、親指の骨が折れているらしかった】
【けれど痛みはもう感じない。ぎり、と歯軋りする。もう全ては失敗に終わっていて、それでもまだやるべきことがあって、ならそれは██の後に大きく溜息をつく瞬間に似て】
【手頃な肉塊を掴み取って、そいつはカメラによく見えるよう、壁になにかを記すのだろう。 ───── 《RT》。そう、でかでかと、真っ赤な血文字で。】

【最後に肉塊を全部スコップか何かでドラム缶の中に詰める。そこに回しておいた生コンを注ぎ込む。「固まったら、適当な路地裏に捨てとけ。」黒服に命じる。】
【 ───── そうしたら、カメラへと向き直るのだろう。ひどい顔をしていた。ピエロのメイクなんてすっかり落ちて、血塗れで、けれどその上から涙が溢れてきて。】
【震える手で抜いた拳銃で、ばんッ、とカメラを撃ち抜く。途端に映像は全部ホワイトノイズへと変わって、放送枠の残り全て、同じ砂嵐が続く。】


【でもコメントは見られた。なんとかまだ、そのくらいの気力とか、精神とか、その手のわけのわからない衝動は残されていた。】
【流れてくる文字列をぼうと目で追うけれど、 ─── どこかではっと目を見開く。「 ─── あなたは、」徐に呟く。そして、理解する。してしまう。】


        「 ……… う、ぇ」


【 ─── そうしたら酷く戸惑ったような顔をして、何もかも放り出して駆け出すのだろう。地下室を飛び出すのだろう。戸惑う黒服どもが色々と後片付けをするのだろう。】
【後のつかない盗難車のエンジンをかけて、血塗れの手でカーナビの目的地を設定して、そいつは氷の国に向かう。自分の生まれ故郷。あの子の生まれ故郷。 】
【もしかして自分があんなことをしたから、 ─── そんな後悔まで胸をよぎった。夜明に追い詰められるみたいに、朝日に追い立てられるみたいに、信号なんて皆んな無視して】


443 : ◆D2zUq282Mc :2018/07/29(日) 23:41:06 AjuH3L.A0
>>439

【手を引っ張る感触は決して軽やかなものじゃなくて。むしろその逆】
【リゼの手は、瑠璃の反発を確かに感じ取っていたけれど――そんなの無視して強引に店を飛び出る】

【店を飛び出せば夕暮れを通り越して星空煌めく夜空へと顔色を変えていて】
【夕焼けから夜空への変化と瑠璃の異常を重ねて、リゼの胸中には不安が渦巻いていく】
【そんな不安をかき消すべく夜の街路を走り抜けようとしている時に、明確な拒絶がリゼを襲う】


―――っ!?
(助けなちゃ…?何を?――思い出せそうだとしても、今は思い出させるべきなのかな?)
(いいや、思い出させるべきじゃない。今の瑠璃ちゃんは取り乱してるから)

【明確な拒絶に目を見開き、たじろいで。けれど直ぐに後悔を滲ませた瑠璃の瞳を捉える】
【悪いことをして叱られる子供のような振る舞いの瑠璃は今にも逃げ出しそうで】
【目深く被ったキャスケット帽は、瞳に映る罪悪感を隠すように見えて――リゼは再び手を伸ばす】
【そして、瑠璃の手を握ろうとする。今度は強く、強く、より強く。ぎゅっと握りしめようとする】


あては瑠理ちゃんが何を思い出しそうなのかはわからない。
何が故に拒絶をしたのかもわからない。けれど、さ――言ったろう?

――あては"旋風の用心棒"。瑠理ちゃんの願う場所に辿り着くまで見捨てないって。

だから、あてはキミの手を離さない。瑠理ちゃんが拒んだって離さない。
だから、逃げ出さないでよ。あてはキミを拒まないから、落ち着こ。ねっ?。


【目深く被ったキャスケット帽を射貫くように真摯な眼差しを向けるリゼ】
【励ますように。子供をあやすように。凜とした声で言葉を連ねるのであった】


444 : 名無しさん :2018/07/29(日) 23:43:03 LzaKC2dQ0
>>432

【どれくらいの時間ここでこうしているのか、もはやその感覚は失せていた。ただずっと雨の中を歩いていた、"みんな"を探していた】
【だけれど誰も答えてくれなかったから疲れてしまって、ならこれは休憩だった。――もはや雨と呼ぶには生ぬるすぎる豪雨のなか座り込むほどには、消耗していたなら】
【――――そう、この日は、朝からわりに強い雨が降っていた。それにしたって"いま"は少しひどすぎるみたいだったけど。雷が鳴っていないことが幸運であるかのように】

――――――、うるさいな。生きてるし聞こえてますよ。

【――であれば、きっと真っ先に相手が見ることになるのは、ひどく鮮やかな色の――けれど憔悴しきったような――瞳、であったのだろう】

【真っ黒い傘の中身は果たして少女であった、大人と子供の中間地点。限りない奇跡に似る一瞬の煌めきの最中にあるなら、さながら全ての針が揃う時計盤の瞬間みたいに】
【薄く透き通るような色合いのウィステリアの髪はそれでも湿らずにきちん、と、した様子。冴えるみたいに白い肌は、身体が冷えてしまっているのか、どこか蒼く見え】
【けれどその中でもいっとうはっきりしたマゼンタ色の瞳が睨むみたいに相手を見据えていた、――なら意外と元気だって思わせる、かも、しれなくて】

【どうやらその服はワンピースらしかった。上から下まで真っ白で、ただ、その裾に紺色のラインを曳いて。セーラー襟。たっぷり豊かな胸元の下で切り替えて】
【ひらっと広がるはず/べきの裾は、――けれど泥水に濁っている。ならば素足の白いのだけが汚泥より咲く蓮の花みたいに美しかった、頬張れば甘いに違いない、と錯覚させるほど】

水浴びが必要な感じに見えますか? ――湯浴びなら吝かではないですが。こんなトコでナニカしてるように見えますか? 水浴びというか水浸りですかね。
……触らないでください。川魚は人肌で火傷するので。

【――なのにその表情は樹氷の様相よりも冷たく映える、薄く笑う笑みはきっと嘲るみたいな色をしていた、煽るみたいな言葉の並べ方は、】
【それくらいに余裕がない顕れでもあるのかもしれない。しかして怪我をしているようには見えなかった。おそらく病気でもないだろう。それなら、】
【よっぽど"何か"事情があるのかもしれない、と、思わせて。――ひどく濡れた手に触れられる、身体はやはり冷えていて、それで、少しだけ、甘い香りがした】
【少女のみが纏うことを許されるほんの一瞬の最上級のフラグランス。その香りを纏うなら限りなく聖女であるように振る舞って】

【――――しかし相手がテレビやニュースなどをよく見る性質であるのなら、"こいつ"がだれであるのか、きっと、すぐに分かるだろう】
【一月ほど前に壊滅した蛇を崇めるカルト。その幹部。そこに居る少女は紛れもない同一人物であった、――蜜姫かえで。あるいはムリフェン】
【生死不明/行方不明の幹部。――特徴的な髪色に瞳の色はもちろん、その左手に刻まれた、いっとう鮮やかで生きているかと思うほどに精巧な蛇の入れ墨が、際立って目立ち】

【――そして今は膝と身体の隙間に左手/蛇を抱いている。ようく見たならその指先/口元に一つ何かを大事そうに持っていた、どうやらカード、と思わせて】
【そうしてよく見たならきっとそれはタロットカードだった。――そちらに触れようとしたなら、きっと、この少女はひどく怒り狂う。そういう気配だけが、した】


445 : エーリカ ◆D2zUq282Mc :2018/07/29(日) 23:43:36 AjuH3L.A0
【水の国 CHAIN GANGというBARにて】
【重苦しい扉を開いた先には薄暗い照明に自己主張の控えめな内装の狭い空間が現れるだろう】

【CHAIN GANGという名のBARにいる客は疎ら。カウンターに座るのは草臥れた中年男。その男から少し離れて座るのは】
【左耳に開けたトランプ柄のピアスを開けて、両腕に包帯を巻いたエーリカと言う名の金髪の女性であった】
【エーリカは一人酒を呷る。呷り続けていた。何杯も、何杯も、何杯も酒を自身に流し続けていた】


―――・・・・・・幾ら飲んでも酔えないや。
カノッサ。黒幕。円卓。虚構現実にジャ=ロ――色々ありすぎて笑いの一つも出ない。
まるで悪い冗談だよ。――すでに酔っ払ってるから、もう酔えないってか。


【グラスの氷をカランっ、と乾いた音を立てて鳴らして、自嘲気味に言葉を吐いた】
【エーリカの表情はどこか疲れていて。目には隈が出来るほどに顔色がよろしくない】
【酒を呷っているのは、一時でも自身を取り巻く現状に目を背ける為。思考放棄に走るため】
【やや自暴自棄ぎみに酒を呷り続けるエーリカ。自分の身体を痛めつける様な飲み方は酷く異質であった】


//置きレスになります&土曜日までは1日1レスしか返せませんがよろしければ是非…


446 : ◆9VoJCcNhSw :2018/07/29(日) 23:48:03 wn2rqSVw0
>>438

【ジークの微笑、返す言葉。その淀みの無さは宛ら研ぎ上げた短刀のようでもある】
【しかしそれを向けられても尚――いやむしろ、妖狐の余裕は透けて見えるようだった】
【〝円卓〟というシステムの欠陥。現状、そして展望。聞き届けるや、抑えるように手を翳し】


……まあ、まあ。ジークさんの言うこと、分からないでもないですよ?
確かに〝円卓〟は動くべき時に来ていて、そうしなければ崩壊するでしょう。
そして私もまた、今回のようなことがあった以上は「困っていない」とは言い切れない。

ですが……一つ一つ、順を追ってお話させて頂ければ。


【そもそもジルベール・デュボンには、現行の円卓を存続させる気が無い】
【老人たちの寄り合い等、むしろ自ら潰してやる。そう明確に宣言すらしている】

【その上で、彼は〝世界規模の円卓〟を新たに構築しようとしている】
【最初から自分の息が掛かった、水の国単体とは比にならない巨大な権益システム】
【「そして既に動き始めている」とも、クズノハは続けて語って】


その後藤さん、私も会ったことは御座います。まあ、こちらの"姿"は違いましたけれど。
……ジルベールさん、その時に〝大戦を起こせ〟と仰っていたと思います。

そして先日……これはあちらの行動にも支障が出ますからお話出来ませんが
某国の"外交官"とも交渉済みです。既に世界大戦の引き金には、指が掛かっているわけですよ。
壊すならば水の国に限らず、是非大きく。無能なフィクサーは全て排除すればいい。
戦争という実力行使の世界に於いて生き残る、本物だけを席に加えれば良い。

……これ全部、あの王様の考えです。今の円卓の問題、ぜーんぶ解決すると思いません?


【そもそも既得権益に固執しない――それが現"円卓"を構成する老人たちと、ジルベールの違いだった】
【国の1つなどあくまで足がかりでしかない、元手として活用できれば崩壊してくれようと構わない】
【だって、円卓を仕切るのに苦労なんてしていないんだから。降って湧いたような偶然、使える限り使い潰そうが痛くも痒くも無いのだから】


その上で、あなた方が排除すべきは〝黒幕〟と〝虚神〟でしょうねえ。
「世界を作り変える」とか、「世界を壊す」とか……

……そんな事されたら、そもそも〝円卓〟どころじゃありませんし?
それに嫌なんですよねえ、押し付けがましいのって。
ほら、見ての通り私って自由奔放が性分ですから。……まあ、それは半分冗談としても


私がしてやられたのは、黒幕側の化物でしたから。
あの外見と能力、〝ダグラス・マックスウッド〟のそれと随分似通っていましたし
そういう大物が付いているとなると…――貴方がたのお仕事も、大変そうですが。


【〝ダグラス・マックスウッド〟――かつてのカノッサ機関・六罪王】
【線の細い芸術家然とした男性。能力は「想像の産物を現実に引きずり出す」というもの】
【有名な所業の1つに、街に能力で作り出した"月"を落とした――なんてものもあり】


……で、あなた。私とジルベールさん、どっちと交渉したいんです?


【最後の一言は、大きな意味で致命的なものだった】
【自分と話しているのか。自分を介してジルベールに伝えてほしいのか】
【それとも――、それを単刀直入に尋ねてしまう辺りは、未だ友好的な証でもあった】


447 : ◆RqRnviRidE :2018/07/30(月) 00:10:57 vZw8nhd20
>>443

【今度は抵抗なんてせず、逃げ出そうともせず、その手をしっかりと握り締められる。相手がリゼだって理解っているから】
【けれどその顔は俯かせたまま、彼女と視線を合わせようとしなかった。きっと引け目が表情に色濃く表れていたから】

その…………連れてゆかれるのが、……たぶん、怖かったんだと思う……。
ごめんよ、リゼ。 ボクのほうが、覚悟が足りなかったみたいだ。

今だってこうして、キミは旋風(かぜ)の中心に居て……
夜の彼方にボクのかなしみを吹き飛ばそうとしてくれているのに。
なにも知らないボクに寄り添ってくれているのに……。

【瑠璃はぽつりと呟く。感情を圧し殺したように静かなトーンで、これ以上取り乱さぬように】
【それから、ゆるりとかぶりを振った。だけどそれは、単なる拒絶ではなくて】

だからさ、ボクに少しだけ……思い出す時間をおくれよ。
──逃げるんじゃなくて、立ち向かうために。 ね。

【庇の下からちらりとだけ瞳を窺わせた。不安の色はあったものの、その手をぎゅっと握り返して】
【少女の可憐な、しかし力強い声音が子供に勇気をあたえる。だから少しだけ時間をおくれとお願いするのだった】


448 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/30(月) 00:11:02 WMHqDivw0
>>442

【氷の国。廃墟街。廃教会前――――冒涜者がお迎えに来たのはそこまで。車を降りるミレーユを見るなり】
【「えっちょっと待ってシャワー浴びたり着替えたりもしてないの、……ううん、まあいいや」とか言いながら】
【……ちょっとだけ逡巡しつつも中へ案内する。讃美歌の一節をオルガンで弾くことによって開く地下室への扉】
【開けて、最低限の鍵だけ使って中を移動していって――――これで隠れ家ばれちゃったなあ。とか、思いつつも】

【――――この子は外に出せないんだから仕方ない。とか、あきらめちゃった。鍵を開く】


………………………………………………、


【部屋の中にはあの子が、夕月が「転がっていた」。手足を取り上げられて、「だるま」の状態】
【着ているのはパーカー一枚だけ、その上から毛布をぐるぐる巻きにして。……そしたらなんだか、ぬいぐるみみたいだった】
【サイズ感的にも、ふわふわの感触も。抱っこするのに適した玩具みたいな感じに、なっちゃってる】
【それで――――なんにも言わない。瞼は全部開くのが億劫だと思っているのか、半目状態、視線はぼんやりしていて】
【けれどミレーユがやってきたのを見ると、まつげを持ち上げて其方を見る。……けれど、何にも、言わないから】

「あーね、断っとくけど、暴れられたら困るからこうしたの。この子、手足があると異能使えちゃうから……
 それで、ええっと……どこから話そうかな。ていうか話聞けるくらいの余裕ある? だいじょうぶ?
 とりあえず僕としてはえーっとね……血とかその他もろもろのにおいがヤベーから、まずは着替えてほしいんだけど。
 なんか適当な服用意してくる、けど…………えっと、ほんとに、大丈夫かな……」

【冒涜者はなにやらずっと言っている。けれどその間、夕月はずうっとミレーユを見上げて、見つめている】
【縋りつくような目だった。怖い夢を見たから一緒に寝てってねだる子供に似た表情。それで、ずーっと、見ている】
【ミレーユのこと認識できているのかいまいちよく分からない。けれどじっと見ていると言うことは――怖がっては、いないんだろう】


449 : エーリカ ◆D2zUq282Mc :2018/07/30(月) 00:27:30 AjuH3L.A0
>>447

【瑠璃の懺悔にも似た独白を黙って聞き入るリゼ】
【依然として目を合わせてはくれないけれど、拒絶の意思は無くて】
【瑠璃の言葉の終わりまで、リゼは瑠璃を見つめ続ける】


―――……なるほど、ねえ。キミが、依頼人が、それを望むなら。

あてはキミの意思を尊重する。キミが立ち向かうのに必要な時間をあげる。
だから――あては待ってる。待ち続けるよ。立ち向かう決意を固めたキミをさ。


【リゼの言葉は拒絶でも否定でもなく、容認】
【リゼの行動は拒絶でも否定でもなく、抱擁】

【ぎゅっと握りしめた手は瑠璃の手から離れて、代わりに瑠璃の身体をぎゅっと抱きしめる】
【"キミの行く末に幸あれ"といわんばかりにぎゅっと抱きしめる抱擁は力強く、鼓舞する】
【そして抱擁に言葉を添える――"何があっても、あてはキミの味方だから"と優しく囁いて】


450 : リゼ ◆D2zUq282Mc :2018/07/30(月) 00:28:27 AjuH3L.A0
//名前みす…


451 : 名無しさん :2018/07/30(月) 00:32:19 PYq7bHtM0
>>425
【机上の其れへと視線を落とせば、より強い違和感を抱く】
【作られた存在であるが故に、魔術のみならず様々な事にそれなりに精通はして居るつもりだった。当然、世界の語学等に関しても】
【それでも、一片も読むことが出来ない文字の羅列。――呪術用の媒介とも違うようだが】
【何と書かれて居るにしても読めなければ仕方ない……が。少なくともまた異なった世界が彼に関係している事は情報として仕入れる事が出来た】
【――地図を見ながらコーヒーの匂いを嗅いだ後に一口。なる程、存外に良く出来た場所の様だ、と】



【ジメっとした不快な長い階段。時折引っ掛かる蜘蛛の巣。さて、それだけの深度に向かって歩き続けていれば当然途中で今の大凡の位置を考えるのも止めてしまう】
【時折悪態を吐きながらも警戒は緩めず。――だが、これ程までの深い地下室は有り得ない事は直ぐに理解出来よう】
【まるで深層心理へと潜り込んでいくような感覚。深く深くに隠された場所へと向かって行くかのような】
【……時間ならばたっぷりとある。進んで何も無かったならば同じ時間を掛けてまた戻れば良いだけだ。戻れるならば、だが】


「幾ら何でも長すぎるって……こんなに長いならエレベーターかエスカレーターでも用意してて欲しいよね……
と言うかさ。こんなに深く作るなんてよっぽど大事なモノでも――……へっ?」

【何度目の悪態か分からない。溜息混じりに階段を下りていれば、やっと気配が近付いた事を理解して言葉が止まる】
【短刀を改めて握り直し、最後の一段に足を着けると同時に鋭く視線を向ける。……も、其れは直ぐに拍子抜けした表情へと変わる事だろう】
【魔物か何かでも居るのか思えばそんな事も無く。檻と農機具と。その片方に人が一人居るだけ】
【――綺麗な子だ。まるで昔に語られた月の女神を模したかのような身形】

【助けを求めるでも、敵意を剥き出しにするでも、怯えるでも無く】
【さて、どうしたものか。長い間暗く狭い檻に閉じ込められれば理性を失う事もあるらしいが、その少女は少なからず今はまともに見える】
【ポリポリと頬を掻きながら視線を合わせる事数秒。町の人々の様に影では無く、しっかりと実体の伴う姿。思えば、この世界で初めて会うまともな存在】
【閉じ込められていると言って良いのか、閉じこもっていると言えば良いのか。そのどちらであっても、先ずは聞かねば分かるまい、と】


「……こんばんは。んー、それともさっきまでは一応夜みたいだったから……おはよう、なのかな
まぁ、そんな事はどっちだって良いかな。キミ、そんな狭い場所に入ってて苦しくならない?

――良かったら、出るお手伝いをしてあげよっか」

【そもそも言葉が通じるか、何て先程の新聞の事を思いだして。丁度鍵の位置を指先で軽く叩きながらのジェスチャー混じりに訊ね、小首を傾げて】
【どれ程に頑強な牢であるかは不明だが――……仮に頷くなりしたならば、手にしていた短刀に魔力を込めて格子を破壊せんと振るう事だろう】


452 : 名無しさん :2018/07/30(月) 01:03:17 smh2z7gk0
>>445

―――やぁやぁお姉さん、こんなとこでベロンベロンになってると悪い奴らに狙われまっせ?
まぁまぁ、私としてもその方が都合が良いこともあるわけだが………グフフ

【と、酒に溺れているエーリカに向けてどこからともなく軽薄な声が聞こえてくるだろう。】
【ついさっき来店したばかりの客のようだ、アイスブルーのアシメヘアに同じくアイスブルーの瞳。】
【アロハシャツに短パン、サングラスとバカンスにでも来ているかのような格好の少女だ、顔にはいやらしい笑顔が張り付いている。】
【その少女は相手の許可も得ずにそのまま隣に座ろうとするだろう。】

まぁ…飲んで忘れるのもたまにはいいさ、私酒飲んだ事ないけど。。
ああ、申し遅れたね私はコニーって言うんだ。私でよければ色々とお話聞いちゃうよぉー?

例えば―――さっき呟いていたような〝色々〟についても、ね?

【「まぁプライベートな話でも全然OKなんだけどさー!あ、マスター私はサイダー頂戴。」】
【とやたらおやじ臭く笑いながらずかずかと話しかけてくる。割と鬱陶しい。しかもどうみても未成年である。】
【―――だが、どこか〝訳知り〟な様子でもあった。さて、エーリカはあしらうのか、どうなのか。】

//私も1日1レスぐらいですがよろしければ!


453 : 名無しさん :2018/07/30(月) 01:19:57 LzaKC2dQ0
>>441

――――――――――――わたしだって、

【ちいさな、声だった。彼が、夕月が、そして多分人間みんなが、あの病魔を嫌うんだろう、みんながみんな、病気を受け入れたくないみたいに】
【誰だってきっと病気になりたくなかった。明日のマラソン大会に出たくないからって誰がほんとにインフルエンザで四十一度なんて出したいと願うのか】
【その気持ちを知りながら、なのに少女はきっとひどく悲しそうな顔をする。――自分のことを不完全だと、そうして人間を恵まれて、と言った時の彼女の顔、知っているなら】

【――――人間のことは嫌いで好き。好きだけど嫌いだった。――少なくとも、いまのまんまで、うやむやにできる気はしなかったし、したくなかった】
【それは"こう"なったから初めて言えたことだった。逆説的には、世界を滅ぼしうるような力を手に入れなければ、言えないほど、ずうっとひた隠しにしてきた気持ちだった】
【"こんな気持ち"全部我慢していたんだと思わせるのかもしれない、そうやって思いながら、それでもまだ、ずうっと、頑張って笑っていたのかもしれない、でも、】
【たしかに楽しそうだった。何もかも辛くて仕方ない顔。いつかは確実にしていた。けれど。――だからって何にもないわけじゃ、決してない、あるはずない】

【――わたしだって。その呟きに言葉の意味合いを手繰ろうとすれば、きっと、簡単に分かってしまうから】

――だけど、

【ふ、と、視線が伏せられる。それから少女はひどくぼうとした顔をする、――それから少しして、は、と、した様子。ぱちぱち瞬きして、きょろきょろして】

「――――……え、ちょっと。え? 何ですか? ……誰? え?」

【今まで喋っていたのとおんなじ声がひどく困惑したみたいな声をする。吐息の使い方が違っていた。訝るみたいに彼を見ていた。だけど、それは重要じゃない】
【それより大事なことは一つだけ。――そう、と、"なにか"が彼に触れようとしていた。そしてそれは決して物質的なものじゃなかった。もっと。心の奥底。撫ぜるみたいに】
【けれどその後ろのところから優しく抱き着くみたいに。――鈴の音の声が、その耳元で、囁く、】

"そんな"わたし、みんなは要らないって……言うのでしょう?

/長くなっちゃったので……


454 : 名無しさん :2018/07/30(月) 01:20:13 LzaKC2dQ0
>>441>>453

【――――もしもその感覚を受け入れていたなら、"すとん"と、オチる。それは貧血を起こした瞬間に似て、けれど、きっと、身体は限りなく健康なまま】
【心とか魂とかそういうものだけが"オトされる"。――それをもし、もしも。受け入れるなら。全部受け入れるなら。次に見るのは、きっと、心象世界】

【彼の中にある心の世界。に。蛇の神様が干渉してきたような、世界。きっとそんな場所なのだろう、そこは、そして、】

"いいよ"って言って、戻ったとして、そしたら、みんなは、わたしのこと、前みたいにしてくれる?
いい子じゃないわたしでもいいよって? ……神様でも、いいよって? イルちゃんが好きでも。イルちゃんに、笑っていてほしくっても。

――それでも、いいよ、って?

【――真っ白の肌に、色違いの瞳。右側が赤くって、左側が、黒くって。あどけない顔が、どこか寂し気に笑っていた、そんなわけないでしょ?って、分かっている、みたいに】
【短く切られていたはずの黒髪は"あの日"から腰を超す程度まで伸びていた。その髪がまるでオパールみたいにつやつや煌めいて、キューティクルよりも、色鮮やかで】
【くしゃくしゃした桜色のソフトチュールを重ねたようなワンピース。魚の尾っぽみたいに後ろが長くて、まーっしろな足は素足、ぺたん、て、足音までしそうなほど】
【淡く光る桜色のヴェールをかぶっていた。その端っこは桜吹雪が舞うみたいにちりちりと曖昧な形をしていて。焼けただれた心みたいに真っ赤なきらきらが、冠のように】
【蛇のお姫様。あるいは蛇の花嫁。――そういうみたいな服装。目の前に居るのは確かに"彼女"だった】

【――――それは身体を乗っ取るための行動だった。そうして彼の身体に入り込もうとした。叶ったなら、けれど、彼の身体を勝手に使ったりは、しない】
【その代わりに――"ほんとう"の自分でお話しようと、思ったらしかった。――さっきから何度も何度も尋ねるばかりだった。まるで、彼の心、執拗に責めるみたいに】
【「本当に?」って。「そんなはずないでしょ?」って。「それはあなたの気のせいなんだよ」って。――決して言葉にしない。でも。そうやって、聞くみたいに】

ヤサカさんは。特別なんだよ。あなたのこと――すごくね、大切、って、思ってる。

【愛している、って、言葉は受け取れないけれど。そんな風な言葉はどれだけ狡いんだろう、それに非道かった。本当に。本当に。いじわるだった】
【もしこの空間まで彼が付き合ってくれるなら、――少女はうんと近くで彼を見上げるのだ。彼よりうんと小さな背丈。めいっぱいに細くて。折れてしまいそうで】
【――ヤマタノオロチを倒すなら酒を使う。メドゥーサを倒すなら鏡の盾を使う。そういうものだった。"彼"は。全部知ってるから。すなわち、神としての彼女を倒しうる】

【ウヌクアルハイに対抗神話はない。全部の蛇の寄せ集めだから。けれど。主格を握る少女の対抗神話は、ぜったい、どこかにあるなら?】
【――彼だけだった。ヤサカだけだった。全部知っているのは。少女を神として殺す方法も、少女を人として呼び戻す方法も、この世界中で、彼だけが、】


455 : ◆RqRnviRidE :2018/07/30(月) 01:24:44 vZw8nhd20
>>444

【──ひどく馴れ馴れしいこの女は決して世間に明るくなかった。】
【稀に通りを歩けば、家電量販店に有りがちな薄型テレビのサンプルに映る映像を流し目に見るだけで】
【目の前の少女のことだって、「なんだかどこかで見たことがあるような気がする」くらいの認識だった】
【まさか世間を賑わせ混沌に陥れた、あの蛇教の構成員……しかも幹部だなんて。こいつは夢にも思わなかったのだ】

あっ、……よかったあ、起きてたのね。
一瞬死んでるのかと思っちゃったもん!
こんなに白くってこんなに冷えちゃって──おにんぎょさんみたい。

【だからこそ、なのか。マゼンタの瞳に睥睨され、尚且つ棘のような言葉を並べ立てられても、女はどこ吹く風とたじろぎも身動ぎもせず】
【品定めするみたいに手の甲で、手のひらで、指先で──途中で拒絶されるかもしれないが──白皙の肌を撫ぜて堪能したなら】

もーそんな怒んないでよお、ジョークよジョーク!
どー見たって濡れ鼠じゃん何してたか知んないけどさあ
とにかく溺死しちゃうわよ溺死! ほらほら雨宿りしよっ、ねっ?

ほら立って立って、もし立てないんだったら霊香ちゃんがおんぶだってだっこだってしたげるからさあ

【レイカ、とはこの女の名前なのだろう。とかくずぶ濡れの彼女を、これ以上雨晒しにならない場所へ連れて行こうと】
【頬に触れた手を改めて少女へと差し出そうとする。そこで初めて、左手の精緻な蛇の刺青に、咥える一枚に気付き】
【女の瞳が細められ、へえーっと感嘆の声を溢した。あまりの精巧さに、さながら命を宿しているように見えたから】

すんごくキレイな蛇ちゃんだあ。 かんわいー……
ね、お魚は触ったり湯浴みしたら火傷しちゃうかもしれないケド、
蛇ちゃんはどうなのかな? やっぱ火傷しちゃったりするのかなあ

【差し出した手の人差し指が刺青をなぞろうとする。尾の先から口の先まで。誂えた好奇心のままに、指先が蛇の口許のタブーに触れようとする】
【がらがら蛇のごとく触れてくれるなと威嚇されたって構いやしなかった。畏怖だとか恐怖の念は、微塵にも抱いていなかった】
【世俗の輪から外れたこの女は、組織がどうとか関係なく、目の前の少女をただ単純に好奇の対象としか見ていなかった。それだけのことだった】
【窺える限りでは女に敵意なんてない。でも一人で楽しそうににこにこしていて、何がそんなに愉しいのか、うす気味悪かった】


456 : ◆D2zUq282Mc :2018/07/30(月) 01:29:02 AjuH3L.A0
>>452

【勢いよく度数の高いカクテルを飲み干した後に"マスター、……ブラッディメアリー"と告げて】
【酔いたいのに酔えない悪夢のような一時に毒づくように吐き捨てたその瞬間――新たなる異質が現れる】


――酔ってる方が都合が良いって、アンタそのものが悪い奴じゃないか。
それにさ、未成年のくせにバーに来るんじゃない、帰れよ。


【ずけずけとエーリカの隣に座るコニーなる少女。悪意の張り付いた笑みに眉をひそめ】
【コニーに顔を向けぬままにとげとげしい言葉を投げかける――図々しいガキンチョめ、と】

【明らかな未成年のオーダーはノンアルコールのもので。それならば断る道理も追い出す理由も無いから】
【BAR CHAIN GANGの店長である赤髪の大男は、仏頂面でサイダーの瓶とコップをコニーに差し出した】
【どうやら未成年だからと言って即座に追い出す気は無いようだ。けれどオイタが過ぎればその限りでは無い】


好奇心は猫を殺す。つまりそういう事だよ。アンタが首を突っ込もうとしてる事は。
それにさ見ず知らずのアンタに"色々"を離す道理も理屈も無い。――鬱陶しいんだよ。


【"訳知り"な様子のコニーを突き放す言葉。何となく嫌な予感がしたから余計にキツく当たる】
【そして言葉の最期に――"単なるガキンチョ風情が公安の私に馴れ馴れしいんだよ"と締めくくる】
【うかつな言葉。自暴自棄故の安易な言葉。自身の身分を無警戒に口にして、付け入る隙を自分で作っていた】


457 : ◆RqRnviRidE :2018/07/30(月) 01:40:41 vZw8nhd20
>>449

【瑠璃は無言で頷いた。やがて、リゼの両腕が優しくその肢体を包み込む】
【待ってくれる、待ち続けてくれる。居場所を与えてくれてどんなに勇気が出たか】
【言葉には表さない、表せないほどの感情を、想いを。瑠璃も行動で示すのだ】

【抱き留められて、銀の髪が両脇から抱きしめ返す。それは子供の、その仲間らの最大の愛情表現で】
【リゼから貰ったその言葉をしっかりと受け止めて。抱く銀のかいなに、ギュウと力を込めた】


…………ありがとう。 時が来たら、
きっとまた、キミを求めて風を探すよ。

【そう言って瑠璃はリゼを解放するだろう。 その顔には偽りない元のあどけない笑顔が宿っている】
【時間にして分にも満たない抱擁だったと思う。けれどその時間は、きっと子供にとっては充分すぎるほどのもので】


458 : ◆D2zUq282Mc :2018/07/30(月) 01:58:35 AjuH3L.A0
>>457

【抱擁を交わし合う二人。リゼは両腕で、瑠璃は銀色の髪で抱きしめて】
【言葉は無くても良い。触れ合う暖かさで秘めた想いを交わすのにはそれで十分だった】

【銀と金。交差する二色の触れあいは直ぐに終わるけれど。それは決して不快だったからでは無くて】
【けれどどこか名残惜しげに複雑な表情を浮かべるのであった】

やっぱり瑠理ちゃんは笑ってる方が似合ってるよ。
―――……ガンバってね。あても応援してる。
もし、さ。挫けそうになって心が壊れそうになったら――あてを頼って欲しいなー、なんて。


【瑠璃のあどけない笑みに照れくさい笑みを返すリゼ】
【バツが悪いのか、頭を掻いて誤魔化すのであったが――それでも瑠璃の行く末を案じていた】
【リゼの言葉はその証拠。一度依頼を請け負ったからでもあり、一個人としての心配でもあった】


459 : 名無しさん :2018/07/30(月) 02:21:35 LzaKC2dQ0
>>455

…………――死んでたら、あなたなんかより先に狼が来ますよ。きっとです。だから――……、
――――っう、触るな、と、言ったはずですが……――ッ、

【ひどく鮮やかな色だのに、だけれど、限りなく冥い色をしているんだろう。ぞろぞろした死に魅入られかけている人間の、目をしていた】
【すなわちふっとした瞬間にふっと死ねてしまいそうな目だった。どこかに服でも買いに行こうかなと駅に赴いて、そのまま、そんな気もなく電車に飛び込んでしまいそうだった】
【――そしてそうだったなら狼が嗅ぎ付けてくるから、と、そんな言葉は相手に理解させる気もないのだろう。べたべた触られるなら、ひどく不快そうな目をして】
【その手を払おうとするのだけれど。――左手にきちんと持ったカードはよほど大事であるらしい。右手だけでぎゅうって引っぺがそうとしてくる、なら、相手の右手はフリーなまま】

【ゆえにある程度自由に振れることが出来るだろう。――きちんと手入れされた肌はひどくすべらかであった、ぎゅうと目を閉じて身体を背けようとする、ひどく嫌がって】
【下半身の濡れ鼠に対して上半身はある程度きちんと乾いている。それでも水を吸い上げた服にくるまれた身体はやはり冷たくて――きっと、かすかに、震えていた】

――要らないです。放っておいてください。邪魔しないでください。……休憩しているだけなので。

【おんぶもだっこも必要ない。なんなら雨宿りさえ必要なかった。――傘はあるから十分だと言いたげだった、まったく十分ではない、状態にて】
【真っ黒い傘をぎゅっと引き寄せて相手との縁を遮断しようとした、――けれどそのしぐさは完遂されない。それより前に、相手が、蛇に気づき、声を漏らすから】

…………、――――――――っ、あ、

【そうしたなら――少女は、きっと、あまりに、あんまりに、簡単に、表情を変えるんだった。相手を嫌がってひどく険しかった表情が】
【その瞬間ふっと緩む。――それどこかいくらか嬉し気であったかもしれない、ぱちりと丸くした目が、じっと、じっと、――じっと、相手を見つめるまま】
【霊香と名乗った相手の行為を赦す。さながら生娘が初めての夜を相手にすべて委ねるみたいに、――そうして、相手の指先が、禁忌に触れれば】
【はじめて、声を上げる。けれど、――相手がしようと思えば、取り上げることも出来るはずだった。女帝のカード。そうして誰かの筆跡が残されていた、】

【〔There is not love of life without despair about life.〕 ──── 己れに絶望した人間だけが、己れを愛せる】
【〔I'll wait for you in Limbus, neither Heaven nor Hell.〕 ──── 辺獄にて待つ。天国でも地獄でもなく】

【――きっと、誰かにもらったものだった。だからこそ大事に大事に抱えていたに違いなかった。きっと、傘のなかで、ずっと、見ていたのだと思う】
【けれど、――取り上げることがなかったなら、そこまでは読み取れないだろうか。――もしひょい、と、取り上げていたなら。強張るような一瞬の間、けど、読み取るには十分な間】
【そののちに、奪い取ろうとするに違いなかった。――取られなかったなら、ぎゅうと強張った身体のまま。けど、まだ、じっと、相手のこと、見ているに違いないから】

【――――その蛇についてだと表情がやらかくなるみたいだった。好ましいみたいだった。けれど、そこに持ったカードは、また違った特別な意味合いを持つらしい】
【――――どちらにせよ少女はきっと肉体的にも精神的にも参っていた。そこまで含めて好奇に値するなら、――もっといろいろ揶揄ったって、きっと、楽しくなるから】


460 : ◆RqRnviRidE :2018/07/30(月) 02:49:45 vZw8nhd20
>>458

んん、なんだか照れるなあ……。
もちろん。 用心棒に依頼したんだもの、最後までやり遂げなくっちゃ。

リゼだって……もし何か満たされないことがあったなら、
ボクもキミのお願いを引き受けるよ。 ね。 そうしようよ。

【きっとそれは交換条件じゃなくて、お願いだった。 依頼人として、一個人として、そして──友人として】
【彼女も心を宿す人なのだから、助けられるばかりじゃない、ボクも助けてあげたいんだって伝えたかったのだ】

【──そうして、それから】

……じゃあ。ボクはもう発つよ。 また会おうね。
ご飯ごちそうさま。 被り物もありがとう。

今晩は風を頼りに進んでいくよ。
夜道に気を付けて。 ……じゃあね。

【別れの言葉も手短に、瑠璃はリゼの隣を横切って去り行くのだろう】
【歩む方向は追い風で、靡く銀髪が星の輝きを受けて残像を残していく】
【その背に最早躊躇いは無かった。金の旋風が、子供の追い風となってくれるから】

/長期間ありがとうございます!お疲れ様でした!


461 : ◆RqRnviRidE :2018/07/30(月) 04:06:08 vZw8nhd20
>>459

【憔悴が交じるほの暗い瞳を覗き混んだ。女に何が視える訳でもない。でも目を離したらその瞬間に死んでしまいそう──直感的にそう思って】
【不快そうにされながら手を払われ、拒絶されてなお執拗に触れてくるのだろう。そのかたちを確認するみたいに】
【柔肌の上をつるりと濡れた指先が滑る。触れるなと言われたら禁忌にだって触れたくなるのが女の性だったから】

ふうん、狼だって。 ……こんな街中で狼なんか来るかしらん。
まーでもばりばり食い荒らされるのってなんかヤじゃないー?
死んじゃってて分かんないって言ってもさあ、折角の美貌が台無しじゃん!

だったら蛇ちゃんみたいのに丸飲みされたほうがいいわよねえ。 ぱくっと。

【ともすれば女は言葉を額面通りに捉えがちだった。更に言うなら無知極まりなく、思い付いた言葉を垂れ流すだけ】
【肌に触れていた方の手の指を揃え、パクパクと蛇の頭を模したように動かしてみせる。全く何の真似だろうか】
【それで、女はその動作を繰り返しながら、アテレコするみたいに】

いーやダメダメ放っておけませんから邪魔しちゃうわあ。 休憩したいなら尚更よお?
いくら夏だからって、ねえ。 スカートびしょびしょじゃ却って休まらないし、何より寒いでしょー?

【そう言って「人が居ないトコなら取って置きの場所があるわよお」なんて宣って、】
【一転、ころりと表情を緩めた少女と視線が交錯する。見留められて少し沈黙、ちょっとばかり手が止まる】
【少女が牙を剥くようにしていたのが唐突にその雰囲気を和らげて、面食らってしまったのだろう】

【けれどそれも束の間のこと、好奇心は抑えられずタロットカードがその手に取られる】
【女帝の絵面、書き記された文章──女はそれらを眺めてんん……、と低く唸るだろう】
【悔しいことに女は文字が読めない。言葉にこそしないが、気になるのになんて書いてあるのか解らなかったのだ】
【少女の知るところではないだろうが、女が眉間に皺を寄せるところから、理解ができないことは理解することができるだろうか】

【──だから、】

ううん、しょうがないにゃあ……。
もーちょっと見せてもらっちゃおっかな!

【だから取り返される直前に、女の指がピンク色の靄を纏い、カードの表面を撫でようとする。成功の如何に関わらずカードは少女の手の内へ戻るだろう】
【指先が触れたなら、そこに宿る“記憶”を何か読み取ろうとするのだった。靄を媒介して記憶を読むのは、女の異能の一端であって】
【触れるのはたった一瞬、故にそんなに多くの情報は読み取れない。けれど取り返す時に指先が触れ合ってしまえば、あるいは少女の記憶も】
【そうなればきっと、頭のなかを探られるような感覚を得るかもしれなかった】

【ただ、それが強いプロテクトや意思で守られているのなら話は別で。】
【弱っている少女が如何様になるのかは、その時の運命次第だった】


462 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/30(月) 14:17:51 SoSuQiSQ0
>>751

【大笑いする正義の姿を少女はニコニコとしながら見ているだろう。時折そーだそーだ、なんてまくし立てて】
【それでいて、くしゃっと頬をほころばせたなら、年相応の可憐な笑顔がそこに残る】
【良いバランスであった、初めて出会ったなんて思えないくらいに、重なる呼吸は二人静に】


いやーっ、スカッとしましたね! 特にあのせいちゃんの啖呵っ!
すべて俺が掃除してやるっ! だなんてかっくいーっ! 鵺ちゃんの乙女心ずっきゅんですしっ
せいちゃんが男の子だったら鵺ちゃん本気で求婚してましたよ! 鵺ちゃんの様な美少女のお墨付きです

でもぅ、だとすればだとすると、よけーに彼氏さんがいないの気になりますね
警察学校とか野郎の巣窟じゃないですか、その中でせいちゃんが居たらもう激ヤバです
争奪戦に始まり果ては決闘まで、心が安らぐ時なんてありやしないです!


【ちょこんとテラス席に腰掛けて早速カフェオレを注文、めちゃくちゃ甘くしてもらって】
【届くやいなやちゅーっと半分ぐらいまで勢いよく飲む。ぷはっと小さく息を吐いて】
【んーっと両目を閉じて余韻に浸っている、とても幸せそうな表情で】


しっかしまぁ、せいちゃん公安の事ちょくちょく言ってますけど、
もしかして公安部志望だったりするんですか? んま、エリートコース
だとしたら鵺ちゃんは是非に是非に、せいちゃんと懇ろな関係を作り上げ

行く行くは社会を牛耳るせいちゃんの懐刀として、北に南に東に西に
縦横無尽の得手不得手、とはずがたりの旅を悠々自適に続けるのでしょう
そして愛の放浪の果て、運命の人と添い遂げるのです


【方頬に手をついて、もう片方でストローをくるくる。しかしまぁよく喋る娘で】
【黙っていれば清楚なお嬢様然とした格好。ゴスロリの服装は何処か人形じみて】
【──── 妙に警察の中身に詳しい事も、些か不可思議な印象を与えようか】


463 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/30(月) 14:29:01 o6XMS57s0
>>446


「歪んだパズルは一度リセットするべきだ。」「 ……… そういうことだろう?。」
「確かに合理的だ。茫洋でありながら巨大になりすぎた関係性。得られる利益は酷く希釈される。だったら卓なんて引っくり返して、誰かにぶつけるのが賢明でもある。」
「その過程で邪魔な連中は皆んな磨り潰してしまう。残った中で、忠誠心と胆力のあるヤツだけを引き込んで、造り直す。 ─── その手段が"戦争"って訳、だろう。」

「ウチもそれは理解しているつもりだ。」「 ─── この間、割と大きくニュースになっただろう?」
「水国の国会議員とその他数名が、インターネットの生放送配信で惨殺された ─── ってヤツ。」「伝わってるかもしれないが、ウチの馬鹿の仕業。」
「過程はどうあれ、取るべき態度を取ってなかった老醜を1人ばかり見せしめにしたのさ。 ……… "次はお前だ"。そういう宣戦布告の一段目、としてな。」


【鷹揚として頷きながらジークは言葉を返すのだろう。 ─── 世界を買うのであれば、一国の経済を支配するだけでは片手落ちというもの。】
【ならば今ある体制を維持する必要もない。搾れるだけ搾って使い捨てればいい。"彼ら"はきっと、それを理解しているからこそ】
【上納金を渋りすぎた、面と向かわずともジルを"若造"と呼び捨てた、そういう気質の狸を一匹ばかり酷い遣り方で縊り殺した。】
【 ─── 今も捜査は続いているが、現場に残された〔RT〕のそれは、下っ端の刑事からすれば何かのイニシャルでしかない。そしてそうでない老人たちからすれば、事件を迷宮入りさせるのに十分なサインだった。】


「心から同意するよ。ウチの課長も概ね同じ動機だ。」「 ─── 虚神の方はアリアって女が担当してる。尤も、この間ずいぶん痛手を被ったらしいが。」
「ひとつ解せないのは、 ─── ダグラスはなぜ、今更になって表舞台に舞い戻ってきたか、だな。 ……… 黒幕側から、何らかのアプローチでもあったのかね。」


【「まァ荒事と諜報がオレらの仕事だから。」割り振られたのだから、できませんでしたでは終わらせない。彼らは間違いなくそういう集団だった。】
【なぜダグラスらしき人物が再び姿を現したのか、どうして黒幕に手を貸しているのか、必要ならばどうすれば殺せるか ─── それらを調べるのも、彼らの仕事、であり。】


「ジルさんの方は課長に一任していてね。」「 ─── オレは専ら実働だ。」
「"あらゆる作戦行動において上意下達の円滑性はこれを第一義とする"。」「現場単位での協力関係が築けていないと、組織はいざという時にうまく動けない。」

「オレがアンタに話を持ちかけた理由は、その一点にある。」
「 ……… 寝首をかき合うような関係性じゃないんだ。いつまでも猜疑に二の足を踏めるタイミングは過ぎてるだろうし、な。」


【 ──── それを隙と呼ぶのであれば、ジークは躊躇いなく踏み込むのだろう。少なくとも彼はひとつ、白々しいくらいの嘘を纏っていた、けれど。】


464 : 名無しさん :2018/07/30(月) 15:04:21 qWL5U2PQ0
>>461

【――制止を振り切りそれでも触れるなら、少女はわずかに怯えるみたいに身を硬くもするのだろう、いやに鈍い反応だった、どこか自暴自棄にも似て】
【真っ白の肌は冷たいだけでよく手入れされているのに。柔らかい頬にはにきびの痕ひとつさえありはしないのに。まるで全身傷だらけであるかのように、振る舞うなら】

――来ますよ。来ます。絶対に。そしてきっと泣くんです。世界でいっとう自分が可哀想って顔をして。被害者みたいな顔をして。
分かってるからいいんです。……。ほんとの狼ですか? 居ないと思いますよ。オオカミ犬とかなら居るかもしれないですけど。
本物の狼が闊歩してる社会は嫌です。全人類オオカミ少年みたいになっちゃうじゃないですか。狼がそこらへんに居たら。

【ぐむ、と、むきになるみたいな口ぶりの意味はなんなのだろう、――だからよっぽど何かの気持ちがそこにあるらしい、言い切ってから】
【もしや相手は本当の狼、イヌ科のあいつ、わおわおいうほう、の話をしているのではないかと思い至る、――くしゃ、と、透き通る色の毛先を乱して】
【はぁとため息一つ、――そんな社会は末期だって言いのけるのだ、それにしたって適当なことばっか言う子であるみたいだった、どうでもいいお話が好きなタイプと見え】

…………そうですね。狼に噛まれる前に、蛇に呑まれてしまいたかったです。私たちはそのためだけに頑張って、きたのに。

【――――だけれど時々ひどく冥い目をするのだ。すでに狼に襲われてしまったんだって言うみたいに。真っ赤なべべは染料じゃなくて、血染めの様相】
【だったらどこにも救いのない赤ずきんの童話を語るみたいに。――であれば蛇に丸ごと呑まれていたなら、無垢のまま逝けたのに、と、何かを怨むみたいに】

【ほんの一瞬、見つめ合うような視線の交錯。蛇に好意的な言葉を示した相手に緩んだ刹那は、けれど、次の瞬間に弾かれるみたいに指先を伸ばして、】

――――ッ、っ、返して! 返してよ――っ、

【それはちょうど相手が文字に対して眉をひそめた瞬間、ピンク色の靄ごと指先がカードに触れようとした、瞬間】
【きっとひどく少女は怯えた目をする。なにより大事なぬいぐるみを取り上げられた瞬間の幼子みたいな目。絶望的な声は悲鳴にも似通って、】
【咄嗟に取り返そうとしてお尻を持ち上げたならぴたぴた、と、泥水が滴る。泥染めの裾がぺりと肌に張り付いて、真っ黒い傘が、ぱそん、と、地面に転がって】
【――ざあと降る雨に少女は曝される。けれどそれでもいいみたいに――ならば、その指先の意味を勘違いしたのかもしれなかった。壊されてしまう、と、思ったのかもしれない】

【カードの持つ記憶を彼女は知らない。それを感知したことはない。ゆえに――あるいは、もしかしたら、それを記した人物の残滓は、残るのかもしれないけれど】
【それよりも。カードを取り返そうとした少女は、相手の手ごと包み込むみたいに腕を伸ばす。――ゆえに、きっと、その瞬間に、触れてしまうから】

【 ――――であれば、相手は少女の記憶を一瞬のみ垣間見るのだろう。降りやまぬ雨に犯されるダムの水面みたいに、溢れてしまいそうな、気持ちの濁流】
【 好きと愛してるのがただ乱暴に交じり合って、そのさなかに触れたい、触れられたい、そういう欲求が隠しようもなくうずもれる、つんと突いたら張り裂けそうなほど】
【 けれど決してそれは外に向かう情動ではなかった。内側をどこまでも抉り取っていくみたいな、ゆえにこそ底知れぬ仄暗い欲望にも似ていたなら】
【 被虐と嗜虐がないまぜの情愛。あるいは愛執。抱きたいし抱かれたいしだからこそ殺したいし殺されたい欲求、そしてそれが相手に伝わる、というのなら、】

【――泣きそうな目をして取り返したカードを胸元に抱く仕草にも何らかの意味を見いだせるのかもしれない。――ほんの数秒のことだのに、すっかり、濡れてしまった】
【どこか雨宿りできる場所を相手が知っているっていうのなら。半ば無理やりでも腕でも引いたなら、意外と、抵抗せずについてくるような、気配はするのだろう】


465 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/30(月) 15:12:56 o6XMS57s0
>>448

【挨拶ひとつ寄越さなかった。凄惨な表情をしていた。視線は別のどこかを見ていた。鍵が開くのを待たされるなら、急かすように足先で床を叩いた。】
【ブラスフェミアのことは、 ─── およそ意識の範疇にないらしい。ここが隠れ家であるということも。地下室の扉が開く瞬間だけが、大切だったのなら。】


「 ──── 夕月、っ」


【 ───── 眼前に示された"彼女"の姿に、表情に、視線に、ひッ、とそいつは息を呑んだ。つい数時間前、よほど非道な事をしてきたばかりだというのに。】
【一歩ずつ、一歩ずつ、 ─── 熱に浮かされた夢遊病患者に似て、けれどやがて何処かで走り出す。名前を呼んで、何度も呼んで、静止なんて聞きやせずに。】


「夕月、」「夕月っ」「夕月。」「夕月!」


【まだ腰に差していたマチェットで血塗れのゴスロリぜんぶ斬り裂いて、邪魔なもの全て捨て置いて、黒いショーツを残すだけの姿になって】
【その道筋に赤黒い足跡をぺたぺた残して、そいつは夕月に駆け寄る。すぐ隣、崩折れるように跪いて、膝が擦り切れるのも構わない。】
【乾いた血に汚れたままの両腕で抱きしめる。おぞましい匂いがするのだろう。血と、骨と、肉と、脳と、汚物と、 ─── 兎角、この世の絶望、みんな集めて煮込んだ様な】
【然るに色々なものが際立って、今更ながら"そいつ"は所詮"そいつ"であると思わせる。真白い皮膚を布地で覆う理由は、コンシーラーに委ねたいモノが多すぎるから。】
【膚だけが柔らかい胸元の硬さ。優しくもどこか筋張った腕。抱き返せる手脚がなかったのは幸いであったかもしれない。 ─── 丸みのない骨格まで解ってしまうから。】

【それでも。ファンデーションとゴスロリに、自分の見られたくない所を8割ほど隠さなければ生きていけない筈のそいつが、】
【事ここに至っては全て全て曝け出して、泣きながら縋り付いているのが、あらゆる本質の表れであるのかもしれなかった。】
【 ─── 血染めの顔を涙で洗って、そいつは繰り言を綴るのだろう。絶望的な笑顔を浮かべながら、自分に言い聞かせるみたいに。青い瞳さえ真っ当な色をしていなかった】


「大丈夫だよ、」「ボクが来たから。」「なにも怖くないから、」「なにも怖い思いなんて、させないから」

「あのね、」「あのね、」「あのね。」「ボク、やってきたよ」
「キミにひどいことした連中」「キミを殺した連中」「キミを嘲笑った連中」「みんなみんな殺してきたから」
「いちばん痛め付けて殺してやったから」「生まれてきたことを後悔させてやったから」「 ─── キミがした辛い思いを何倍にも何倍にもして味合わせてやったから」


【ひしり抱き締めて溢れる衝動を、ひどい大嘘を交えて語り続ける。それが誰かを傷つけるかもしれないって、見たくないものを見せるかもしれないって、思いもせずに。】
【 ──── あるいは理解していたのかもしれない。どっちが慰めているのか分からなかった。だってそうじゃないと、あんまりに報われなくて。】


        「だからもうなんにも怖くないんだ。」「なんにも悲しむことないんだ。」「なんにも悔やむことないんだ。」「ねぇそうだろ、ねぇそうだよな、夕月」
                        「夕月」「夕月」「夕月 ぃ っ、 ──── っっっ 。」        「 ………… 夕月。」


466 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/30(月) 15:55:30 o6XMS57s0
≫767

【「ふふ。じゃあボクは、"寒い国から帰ってきたスパイ"ってところかな。」「 ─── 今度、ブラック・ルシアンを奢るよ。」そいつは実に、よく喋った。】
【黒いシガレットを灰皿に押し付ける。タバコだって手脚や眼口と同じようなものだった。自己を構成する外的要因のひとつ。】


「それならそれで結構結構。」「何も茶飲み仲間を増やしに来た訳じゃないし、ボクの不始末にアナタを付き合わせる事もしない。」
「アナタの不始末なら勝手に首を突っ込んで、恩を売るくらいはするかもしれないけれど ─── それはそれ、これはこれ。」


【そしてまた、ごくあっさりと告げる。上手く行ったら儲け物、 ─── 甘い声が告げるのは、そのくらいの比重。】
【ならここで消しておく、という訳ではないらしい。ここで消されるような相手ではないと分かっていての事かもしれなかったけど】
【しかし続く名前には些か驚いたようだった。そんなところまで噛ませてもらっていいの、と言いたげに。】


「初瀬ちゃん?」「 ─── それは、まあ、気になってはいたけれど。」「でも、口利きしてくれるんだ。ありがと。」
「あの子と話すなら、この三馬鹿も連れて行こう。名前を聞かせたら食い付いてくれそうだ。 ……… 深い意味がある訳じゃないけど」


【だから快諾に違いなかった。転がってきたチャンスを逃すつもりはないらしい。そしてまた、そいつ風に言うのであれば】
【 ─── ひとつ、男は語った。なら今度は、ひとつ男が問うても、そいつは喜んで答えるのだろう。】


467 : ◆D2zUq282Mc :2018/07/30(月) 20:12:37 /gi.Jrsw0
>>460

それ、イイね。是非にそうしようよ。
瑠璃ちゃんがあてのお願いを引き受けるって構図。楽しみに待ってるね。

【童女が見せる幼い笑みを口元に浮かべて】
【期待と喜びで緩む目元は言葉の確かさを後押しして】
【瑠璃の立ち去る後ろ姿を見届けるのであった】


達者でねーっ!瑠璃ちゃーんっ!
キミから貰った簪は大切にするから、どうかあてのキャスケット帽も大切にしてねっ。

また会いたくなったらさー、暫くはこの国にいるからー。あては変わらず待ってるよー!


【瑠璃の背中を押す言葉を送りながら、手をブンブンと振って送り出す】
【そうして子供の姿が見えなくなったなら、リゼも立ち去る。矮小な体で堂々と風を切りながら、帰路につく】

/長時間の絡みありがとうございました!そしてお疲れ様でしたー


468 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/30(月) 20:17:12 WMHqDivw0
>>453>>454

【ずっと俯いて泣き続けていた。続けていた――けど。ふと疑問形の声を投げられたなら】
【ぴしりと固まって其方を見る。鈴音が居ないって一瞬で気付く。雪代花映が、困ったような顔をしている】
【それに気付いて、きょろ、と辺りを見渡そうとして――――すとんと落ちた。拒もうと思う暇すらなかった】

【そして――――見てしまう。神様として完成してしまった「白神鈴音」の姿】
【とってもきれいだって思うのに。かわいいなって思うのに。それが自分のための衣装でないなら】
【何の感慨も抱けない。ただ、きれいなものをきれいだと思うだけ。それで終わってしまって――ああ、と】
【また嘆息する。頭を抱える。もう限界だった。今すぐ死んでしまいたかった。なのにそれも許されない、】
【……あるいは自分で許せない。どこまでもどこまでも愚かな男だった、「おれがなんとかしなくちゃ」って】
【そういう意識に囚われて、呪われて、三十五年。ずっとずっと■■の顔して生きてきた、その殻に】
【満遍なく罅が入っていく音がする。呻き声が止められない。苦しい。水なんて一滴もないのに、溺れるみたいな感覚】

……………………だって、だって、そんなこと言ってたら。
世界が鈴音ちゃんを「敵」だと認識しちゃうじゃん、鈴音ちゃんのこと嫌いになっちゃうじゃん、
そしたらもうおれ一人じゃどうしようもなくなっちゃうじゃん!! 誰も味方になってくれなくなるじゃん、
………………、…………、……わかんねえ、わっかんねえよ、もう………………

【見下ろしていた、けれど、膝をつく。耐えきれなくなって。そしたら少女の二色は、男のつむじを見下ろせるんだろう】
【可哀想なくらいに震えていた。……まだ、かわいそうだって思える心があるなら。そうでなければ】
【あんまりにも惨めに。おろかに震えているように見えるんだろう――実際、この男は、ひどい愚者だった】
【粉々に砕けた殻の向こう側から出てきた男、ヤサカは。きっと世界一愚かな愚者だ、そして、孵らない鳥だ】

…………………………………………どうしてそんなこと言うの?
やめてよそーいうの、……誤解するじゃん。おれなんかがまだなんか出来ちゃうかも、とかさあ。
そーいうこと期待しちゃうじゃん、そんな言い方されたら、さあ…………だからもう、やめてよ、やめて……

――――――いっそおれのこと、もう大嫌いだって言ってよ。顔も見たくないって。死んじゃえって。…………、

【自身がそんなに重要な、大切な存在だって思えない。ひどくひどい自己嫌悪に塗れた男だった、ヤサカは】
【だから鈴音にそんなこと言われても信じられないって言う。だからいっそ、突き放して、それか殺してくれって】
【そんなお願い事すら言うんだから――――叶えてくれるんだろうか。神様は。こんな愚かな、願いでも】


469 : 名無しさん :2018/07/30(月) 21:50:55 qWL5U2PQ0
>>468

【――色違いの瞳がわずかに細められる、だけれどそれは睫毛を下へ向ける程度の表情の変化で、限りなく慈しむように、けれど、憐れむように、そうして、悲しむように】
【冠みたいに戴く赤い煌めきは不定形であった、少女が動くとわずかに揺れて、付いて来られなかった粒子が、きらきらって、光りながら、零れ落ちていく】
【そうしてやがてくずおれ膝をついた彼を見下ろしていた、――――俯いていたのなら、ぺたん、と、真っ白な素足が、その視界に、映り込んで】

――――――そっか。

【――――そう、と、その指先が彼に触れようとする。晒されたつむじを戯れに触れるみたいに、それから、彼のこと、何度も、何度も、撫でようとするはずで】
【その指先はきっと優しかった。怖いことなんて言いそうにない温度をしていた。けれど鈴の音そのものはきっと生ぬるい温度をしていた。冷めたカレーみたいに】
【味わいはそう大して変わらずとも、大事な嬉しさみたいなものは必ずどこかで目減りしていた。何かが減っていた。――そのあとに、すとん、と、彼女もまた膝をつく】

【それで、彼のこと、抱きしめようとするんだろう。ひどく平坦な胸元にその頭を抱き留めるみたいにして。怖い夢を見たと泣く子を抱きしめる母親みたいに、】

やっぱりきれいじゃないわたしなんてみんな要らないんだ。

【ふわ、と、その胸元がかすかに動く。呼吸するみたいに。けれどまねごとに違いなかった。ここは彼の心の中で、彼女は身体さえない神様で】
【抱き留められているのならきっと表情は見えない。見なくてよかったかもしれない。どんな顔をしているか。――見えない方が、悍ましく感じられて】
【ほんとうは笑っているのかもしれなかった。それとも悲しそうにしているのかもしれなかった。でも答えなんて分からなかった。(もしほんとうに視線を上げていたなら、)】

――ヤサカさんが頑張ってくれてたの、わたしね、見てたよ。聞いてたよ。だからね。いっぱい頑張ったってね、知ってるの。――いまも分かるから。
……。泣かないで。ヤサカさんが泣いているのね、自分のことみたいに悲しいの。だってあなたの中にはわたしが居るの。"わたし"の材料が、みんな、あるから。

【――蛇の感触ではなかった。すべらかな素肌が優しく彼のことを抱き留めていた。だから錯覚させるみたいに、体温すらそこにはあった】
【その耳元で囁くみたいに少女は身体を傾げる、ささめいた鈴の音はひどく不思議な楽器みたいな音を奏でた、かすかなリップノイズが、脳髄を羽根が撫ぜるみたいに】
【いろいろなものが交じり合った彼の中には蛇さえも紛れ込んでいるんだって伝える、あの記憶を共有した時点で、彼には、色濃く、"彼女"が刻み込まれて】

/続!


470 : 名無しさん :2018/07/30(月) 21:51:13 qWL5U2PQ0
>>468>>469

【それでもいいよって言ってほしかった。きたない自分を押しとどめる。神様になったから、――もうそんな我慢はしなくっていいと、思ったのに】

――――ヤサカさんじゃないとだめなの。ヤサカさんが特別なの。ねぇ。ねぇ――、世界中でヤサカさんだけ。わたしのね。特別なんだよ。
"わたしの記憶"を見ても分かってくれない人はいっぱい居たの。そうでしょ? "へびさま"の中に居たのはわたしだけだったの。なのに。
ヤサカさんとおんなじものを見たのに。分かってくれない。わたしのことを消そうとする。助けてくれようと――しない人達。

――お名前教えてくれてね、ありがとう。わたしの味方でいてくれて。
できるよ。ねぇ。ありがとう、――――だいすき。

【おれがなんとかしなくちゃ。きっとそうやって走ってきて、転んでしまったんだろう。だったらきっとおんなじだった。――わたしが、なんとか、しなくちゃ】
【だけれどなにもできなかった。何にも良くならなかった。彼はそれでもいいことはあったって言ってくれるけど、信じられなかった。だってあんまりに絶望的だから】
【だからもしかしたらちょっとだけ似ていたのかもしれない。だからここまでついてきてくれて、泣いてくれるのかもしれない、だから、】

わたしね――――このまま消えちゃうのは、嫌。

【――――――――それは限りなく狡いやり方だった。味方になってほしいってお願いだった。今までも、これからも、あるいは、今まで以上に】
【できないって気持ちを優しく撫ぜるみたいに声を紡ぐ、やがてお尻を地面につけて彼より小さな背丈で座ろうとする、その肩口に顔を埋めるみたいにしようとして】
【降りた指先が緩やかにけれど強引に指まで絡めて手を繋ごうとした、そうやってささやく。耳朶に口付けるほどの距離感にて、「一緒に、たんぽぽ、するでしょ?」――】

【――その指先はほんの最近に触れたものと、きっと、ほとんど、同じだった。指切りをしたのとおんなじ小指をしていた。おんなじ温度をしていた。何かを示すように】
【そうしてもう片方の指先は彼の首筋にそっと触れる、つう、と、撫ぜる。――「"これ"だってわたしが外してあげるから」――ささやきはひどく甘やかであったなら】


471 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/30(月) 22:12:16 WMHqDivw0
>>469-470

【彼女に優しくされるたびに死んでしまいたくなる気持ちが強くなる。こんな情けない、みじめな、って】
【思い続けてつらくて潰れてしまいそう。現にもう潰れかけてたから、震える声で】
【「ひーちゃ、……たすけ、」 ……誰かを呼ぼうとしていた。助かろうとしていた。自分だけ】

【抱き締められると身体が強張った。彼女より大きい身体なのに。情けない。情けない。死んでしまいたい】
【それなのに大好きって言われて喜んでしまう浅ましい心が許せない。許せない。死んでしまいたい】
【呪いが彼の身体を蝕んでいく。食い破っていく。そうして残るものってなんだろう、わからない、けれど】

【―――――――――――けれど。指先が「そこ」に触れられたなら】


………………………………………………、……、あのね、……それだけはダメ。
たんぽぽやるって約束は守る。それは絶対。一緒にやるよ、ヤサカとして、……だけど、

ヤサカとして解かなきゃダメ。これは、こればっかりは。じゃなきゃ――――救われない子がひとりいる。


【……、指先を撫でる手をそっと取ろうとする。それが叶ったなら、少しずつ離していって――】
【ふるふるって首を横に振る。涙はまだ流れていたから、飛沫が撒き散らされる。そしたらなんだかイヌみたい】
【俯いたままそうしていたけど――――ふ、と、顔を上げた。そればっかりは、自分でやらなきゃダメなんだって】


こちらこそありがとう。おれのこと、……大切だって言ってくれて。でもわかった、おれ、
……おれ自身がおれのこと、鈴音ちゃんが大切だって思ってくれる存在になれたって信じられるまでは。
鈴音ちゃんのこと救おうだなんて、思っちゃいけないんだ。そーいうことなんだって、いま、わかった。

……………………だからさ、また、それまで。待っててくれる?


【けれど小指のむすびめは解かない。この期に及んでまだ、約束事、増やそうとしているみたいだった。なんて愚かな、】


472 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/07/30(月) 23:09:56 smh2z7gk0
>>456

な、なぜ私が未成年かつちょっとダークなレディだと分かった………!?まさかテレパスなの?
ありがとマスター、やっぱ暑苦しい時期はサイダーに限りますなぁ。

【とげとげしい言葉に対して驚いたような表情でのけ反りながら本気なのかふざけているのか分からない事を言う】
【というか恐らくふざけている。素面なのに。そして差し出されたサイダーをビールみたいにコップに注ぎがぶ飲みする。幸いゲップは出ない】
【一通りサイダーを飲むとまるで同級生に話しかけるかのようにエーリカに笑いかける。】

―――へぇ。〝公安〟かあ。
いやいやまさかね、公安警察ともあろうものがあって数秒のガキんちょに名乗らないよね。

ただ、もし本当なら力になれるかも………実は私も情報を集めている。こういうもんでして

【そういいながらコニーは懐から名刺を差し出す。そこには〝氷の国外務省/三等書記官〟と書かれている。単なる子供の悪戯か?】
【だがこのコニー・オブライエンと名乗る少女は、さきほどとは打って変わってどこか冷たい微笑を浮かべながら見つめてくる。】

【「今なら2杯はおごっちゃうよ♪」と念押しでウインクしながら首をかしげる。やっぱり鬱陶しい。】


473 : 真諦院 ◆rZ1XhuyZ7I :2018/07/30(月) 23:29:48 smh2z7gk0
>>462

ハハッそうだろ?今の若者は黙ってばっかりだ。だから腐った大人に利用される。でも弱さは罪じゃない
だから私が代わりに声を上げる。隣人達の代わりに、困っている同胞の代わりに。

そうか、そう言ってもらえると嬉しいよ。俺の両親も俺が男に生まれて欲しかったから。
まぁ、家の事情とかあってな。中々青春を謳歌とはいかないさ。特に〝例の法案〟の話が出てから学校も騒がしくなった。

【カフェオレを幸せそうに飲む鵺に微笑みながら、どこか寂し気な表情をする。】
【男を授かりたかった古い家柄。よくある話だ、正義が男装をするのも男のような名前を付けられたのも察しがつくだろう。】
【抹茶ラテを飲みながら語る〝法案〟―――昨今の話題の法案といえば一つしかなかった。】

いや、俺が目指してるのはもっと上。〝警視総監〟だ。
俺が警視総監になってもっと世の中を良くしたい。この名に恥じない自分になりたい。逆境にある家を救いたい。
そんな気持ちで警察学校に入ったんだ。とはいえこれからの流れ、〝能力者〟に出世は難しいかもな。

あ、いや悪いなこんな話………まぁ何にせよ鵺といると楽しいからこれからも仲良くしたいな。
運命の相手探しを手伝えるかは分からないけど。

―――それで、さっきは流されたけど君は〝何者〟だ?通りすがりのお喋り少女、ではないんだろ?

【現在、水の国では〝能力者〟への風当たりは強い。それは世界全体へと広がりつつある。】
【それはきっと、正義がいるコミュニティにも及んでいるのだろう。最初どこか荒れているように見えたのもそれが原因なのかもしれない。】
【「公安は嫌いだ」と、最後のボソリと呟いた。】

【そして今度は目の前にいるゴスロリ少女へと視線を向ける、〝普通〟ではないというのはさすがに感じていた。】
【問い詰めた事をごまかすように再び抹茶ラテへと口を付ける。あまり減っている様子はない。】


474 : 名無しさん :2018/07/30(月) 23:50:42 qWL5U2PQ0
>>471

【ぎゅう、と、その指さきはきっとひどく優しくて。後ほんの少し違ったら、今度こそ、彼を自分の場所へ取り込んで、逃がさないつもりのように思えた】
【――いつか、は、少女が自らの意思で彼が元の場所に戻れるようにと手を離した。――けれど今は確かにその手を硬く繋いで、どこまでも、引きずりこもうとした】
【――――刹那であった、彼が呼んだ名前に、少女はひどく不可解そうな顔をする。どうして自分に祈ってくれないの、みたいな、顔をしたのなら】

……………………――――、?

【そっと離される手を少女はきっとぱちくりした目で見ていた。そうして一瞬遅れてひどく不安そうな顔をした。"こんなこと"しておいて、】
【否定される気なんてなかった、みたいな顔をした。だから多分泣きそうな顔をしていた。――世界中を滅ぼす力さえあるのに、絶対的に、助けてあげられるのに】
【救われない子がいるならその子だって救っちゃえるはずなのに。信じてくれるなら。信じてくれさえすれば。「なんで、」って、小さな声、微かに漏れて】

           、

【――――指切りげんまんのポーズ。けれど少女の腕からは力がすっかり抜けていた、ぐたん、って、ほどけてしまいそうになって】
【何かを言おうとした唇がかすかに揺れる、――――その瞬間に、空間に、張り裂けんばかりの鈴の音。響くんだろう。転瞬、あるいは彼にのしかかる、ひどい重圧】
【精神の世界に他者よりの介入を受け入れることは本来であればそれほどの異常事態であった、であれば眼前の"少女"は蚊が血を吸うみたいに、忍び込んだだけに過ぎず】
【ひたん、と、冷たく冴えるような温度感にて。一瞬の無音、ごずり、と、こすれ合う音がして。――少女がぺたんと座っていたところから、生え出る】
【大きな大きな桜の木だった。「――ふぁ、やっ――、」なんて奇妙に気の抜けた悲鳴に似た声は、おそらく少女のものだったのだろう。ざらざらした枝に、その姿は隠されて】

/ながいので!


475 : 名無しさん :2018/07/30(月) 23:50:58 qWL5U2PQ0
>>471>>474

「――――――聞いてない! ちょっと待ってよ、何してるの!?」

【――じゃざりと掠れ切った機械の声が、響く。その向こう側で"少女"を捉えた枝がばちりと音を立てて、ばちり、ばちり、ばちり、ばぎり、少しずつ、壊れる音がする】
【そうして目を向ければ――"それ"は確かに彼が助けを求めた人物であった。真っ黒のぞろぞろしたローブ。狐の面。ひどく焦っているみたいな挙動をする、ぐと彼の腕を掴んで】
【そのまま引きずるみたいに強い力で引く。起こそうとする。――そしてそれはきっとこの精神の世界から彼を引き摺り出そうとしているに違いなかった。乱暴でも、】
【神に曝された空間にとどめておくよりマシだろうと判断して。――神を追い出すための装備は持ち合わせなかった、まして、ここで神をどうにかする手段も、なかった】

【――――であれば、"そいつ"にとっても、彼を護る必要があったに違いない。自分すら持たぬデータを持っている人物。この世界の人間。この時代に生きるもの】
【――――"外れた"自分より優先されるべきもの。そもそも自分は"喰われる"ためにここに居る。――ゆえに、全てが繰り上がっても、いい】

―――――――――――――――――――――――――― だあれ? ――?  、? ああ。"わかった"。

【ばぎんっ。そんな音で、桜の木――嘘みたいに枝が入り組んだ中より、少女の白磁の腕が生え出て来る。ごり、と、濁る音が、張り巡らされた封魔の魔術を浸食して】
【いくらか遅れて顔を出す。そうして"ヒメ"を視認する。まばたき二つ分の空虚。――笑んだ。少女は確かに。ずるりと這い出る。最後の最後を、】
【自分の這い出た穴の淵をぎゅって持ったなら、ふわりと飛び降りて足から着地する。フィッシュテールのスカートが数秒遅れに接地して、】

「――しま、ッ、」

【彼を助け起こそうとした一瞬。ゆえに過ちなんかはなかった。どこまでも必要な時間だった。だけど"ヒメ"が小さいけれどひどく焦った声を出すものだから】
【彼はどんなふうに思うのだろう。――けれど気持ちに浸っているだけの余韻など存在しない。蹴り飛ばされる。"外の世界へ"。やはり暴力的に。慎ましやかなどなく、】
【それを受け入れたなら彼の心は現実の世界まで戻されるのだろう。――、一時的に精神へ少なくない混乱を残すかもしれない方法ではあったが、やはり、"仕方ない"】

【(見つかった)(ごめん)(早すぎる)(もう助けられないかもしれない)(可能な限り維持するけど)(アリアにも伝えて)(――蜜姫かえで、助けられないかもしれない)】

【――もしそうして現実に戻ったなら。彼の心の中に、そんな、言葉。残されているのだろう。あるいは刻み付けられている。――どうせ、すぐ、消えるんだけど】
【であれば間違いなく"ヒメ"からのメッセージだった。――ベンチの隣に、もう、雪代花映は居ない。鈴の音も、どこからも、聞こえなかった】

【だけれど、「本当に?」と、疑うのなら】

【(――――――――まってる)】

【――ちりん、と、鈴の音。頭の中に響いて。だってもう強い縁があるから。おんなじものを持っているから。離れられないから。(離さない、から)】

/わーおつかれさまでした!


476 : ◆3inMmyYQUs :2018/07/31(火) 05:55:46 qo/HyX5s0
>>354


──────………………──えっ?


【『未来でも見えるか』──】
【探偵が何気なく零したその一言が、少女の何かを揺さぶった】
【丸くなった眼をしばたたいて、まるで何か図星を突かれた人間の表情をしたが】

【「──いや、別に、何でもないにゃ。白髪かと思ったけど気のせいにゃー」】
【と、すぐに当たり障りのないことを言いながら笑みを作って、一度視線を逸らした】



【────────────────】


 【「────『チンザノ・ロッソ』?」】

 【「そういう通り名だ。本名じゃないだろう。】
 【 ──この街に残った『最後の探偵』だよ」】

 【「その人なら、探せるの?」】

 【「……ま、腕に関しちゃ間違いは無いだろうさ。ただ、──】

 【「──どこに行けば会える?」】

 【「話を最後まで聞け。】
 【 ──『チンザノ・ロッソ』という探偵は“依頼人とは一切会わずに”仕事をする。】
 【 こんな時勢だ、『赤紙』を警戒していりゃ当然と言えば当然かもしれないが、やつは特に徹底している。】
 【 誰もあいつの姿を見たことがないんだ。依頼の受付から完了まで、全てとあるバーでの暗号でやりとりされる」】

 【「………………」】

 【「……そもそも、『チンザノ・ロッソ』という名前自体、二十年ほど前から伝わってるものだ。】
 【 今のやつが二十年前にいたっていう男と同一人物なのか、それとも何か名前を受け継いだだけの別人なのか、】
 【 その辺りすらはっきりしない。だから、あんたの捜してる伝説通りの〈シーカー〉かどうかは保証しないよ。】

 【 ──それでも良いってんなら、カネ相応の水先案内ぐらいはしてやれるがね。どうする、『お嬢さん』?」】


【────────────────】


【スイーツを食べてから話すか、話してからスイーツを食べるか、】
【少女は少し考えあぐねていたが、探偵の言葉を聞いて、迷わず前者を選ぶことにした】


────さすが、話が分かるニャ☆


【そうして、やけに堆く盛られたパフェにスプーンを差し込むと、】
【いくつか瞬きした後にはもう容器の中は完全なEmptyと化している】

【食べている間は一気に口数が少なくなるが、その表情からして成層圏を突破する至福であったことは間違いなさそうだった】

【「────ズバリ」】
【タルトの一切れにフォークを刺しながら、やがて少女は言う】


──ズバリ言っちゃえば、『2Q36年』のあなたが、この『2Q18年』に来てるかもしれない、ってことにゃ。


【それが事の本題だった】
【まるで突拍子もないことを、しかし少女は事も無げに語り】


わたしは『2Q36年』にいる『チンザノ・ロッソ』っていう探偵を追って、ここまで来たにゃ。
でもそれがおにーさんと同じ人なのか、そもそも本当に来てるかどうかもまだ分からないのにゃ。

だからそれ全部含めて、捜して欲しいのにゃ。


【そうして、いよいよもって話が量子的な揺らぎと因果崩壊の様相を呈してくる】
【少女が捜しているのは『未来のチンザノ・ロッソ』であり、それは現在に存在しているかどうか、そして探偵自身と同一かどうかすら定かでないという】
【唐突に降って湧いたこの奇々怪々な依頼。近頃頭を痛めてばかりの探偵にとっては、さして受けなければならない義理もないだろうが──】

【しばらく捜していなかったらそれでいい、とも少女は付け加え、】

【「もちろん、お礼はするニャ☆」】
【最後にそう言って、新たにスプーンで掬ったバニラアイスを探偵の口元へ差し出した】



/これは要するにあれです、
/ロール後、数日後か数週間後かいつでもいいので、もし良ければ『未来のチンザノ・ロッソ』氏が居たor居なかったをそれとなく示していただければ、
/それに応じて何やかやしようかなというあれです。要は世界線分岐を委ねます的な感じです。


477 : ◆3inMmyYQUs :2018/07/31(火) 05:57:02 qo/HyX5s0
>>398

【──ぴたり、と互いの銃口が睨み合う】

【刹那で張り詰める空気。円城の指も既に引き金にあった】
【しかしそれに力が加わるより先に、片眉の方がつり上がった】

「……んん?」

【ミラの異様な変質を前にして、しかし驚愕というよりは何か物珍しいものをまじまじと観察するような眼差しをした】

 ────…………?

【対して最も分かりやすい反応を露わにしたのは、マントの青年だった】
【彼女の変貌を見るや、そこに沸き起こった生理的な嫌悪を隠そうともせずに顔をひどく顰めた】

【しかしその忌むような視線は一方で、どこか深い熱を帯びていた】
【堪らなく悍ましいが、しかしその奥に見え隠れするものから眼を離すことが出来ないかのような──】

【そうしてほんの数呼吸ばかり、沈黙が満ちることだろう】
【──が、そこで、険しい目つきでミラを見据えたままだった青年がおもむろに歩き出し、彼女に近付き始める】

【その刺々しい表情からして、銃を持つ彼女を決して警戒していない訳ではないのだろうが、】
【しかしそれにしてはあまりに大胆に、不用心とも取れるほど力みの無い歩みで数歩接近をすれば】
【立ち止まり、その双眸を僅かばかり細めて】


──……こいつ、ぼくの〈詩〉が聞こえてない。


【そう言って、また怪訝な眼差しでじっと見つめた】

【ううん、と青年の後ろの方で円城が唸る】
【彼もまたミラの姿を眺めていたが、彼女の態度や口ぶりを聞いて、何か得心するものがあったのか、】


「……どうやらあなたも『訳知り』って顔ですね」


【存外あっさりと撃鉄を戻し、それを袂にしまいこんだ】
【解けた緊張の呆気なさに思うところあってか、青年がちらりと視線を背後にやる】


 撃たないのか。

「銃の免許、まだ持ってないんですよ」


【「言ってませんでしたかね」と付け加える円城に、】
【そういうことじゃないだろう、と青年は抗議するような眼を向けるが、円城はどこ吹く風で】


「──何にしてもこんなところで騒ぐのは利口じゃないですよ。
 ここじゃいつ『婦警』が『巡回』に現れてもおかしくない」


【「そういうことなので、ここは見逃してもらえると」】
【鼻から一つ嘆息すると、やれやれ、などと呟いて「帰りますよ」と言う】
【そうしてミラとはそれ以上関わり合いになることを避けるかのような態度を醸すのだが】

【それに不満たっぷりな青年が、憤りの籠もった声をぶつける】


おい、円城、勝手に決めるな。
それに婦警、婦警って──さっきから一体何のことだ。


【青年は険しい表情のまま、ミラと円城を交互に見やる】
【面識の無いはずの彼らの間に、しかし共通の符丁のように用いられる『婦警』という単語】
【青年はまだそれに纏わる事情を知らないようで、一人蚊帳の外にいることが我慢ならないようだった】

【それを聞いた円城はまたぞろ呆れたように小さく嘆息して、青年の方へ顔を向ける】


それは、話すと長く────


【しかしそこまで言いかけたとき】
【円城が表情が一変、硬質な色を宿し】


────はなりそうにないですね。


【場の空気が、先とはまた別種の緊張を帯びた】


/確定で話進めちゃってる感じになってしまっていますが、何かあれば普通に割り込んでいただいて大丈夫ですので。
/そして半端ですが分けます↓


478 : ◆3inMmyYQUs :2018/07/31(火) 05:59:10 qo/HyX5s0
>>398

【円城の視線の先──即ち、ミラの背後、十数m先にそれはいた】


『──────あれえ。みんなお揃いですね〜。何のお話ですか?』


【一人の女性警官の姿。大きな丸眼鏡、三つ編みのお下げ】
【世の全てが好ましく思えてならないとでもいうような底抜けの柔和な笑みをして】
【あたかも最初からそこにいたかのような佇まいで、後ろ手を組んで立ち、三人の姿を瞳に捕捉していた】


/というところでカメラをお返しします。


479 : ◆RqRnviRidE :2018/07/31(火) 19:01:16 vZw8nhd20
>>464

【女はそこまで言われて、少女の語る狼が獣のほうではないことを悟る。まあそれは、多分、“なんとなく”の範疇に過ぎないけれど】
【この子が臥したならあるいはこんな女より敏く先にその匂いを嗅ぎ付けて、きっと嘆くように偽りの遠吠えを上げながら、】
【最後はめらめら燃えるようなまっ赤な口腔を晒しでもしながら、ばりばりと骨の髄までその身を喰ってしまうんだろうか──なんて】
【そんな光景を頭に思い描けば、げえ、と心底嫌そうな顔をする。どちらかというとこいつは捕食される側の者だし、哀れまれるのは嫌いだったから】
【けれど“狼”が姿を潜ませるのもそれはそれで何だかつまんない気がして。どちらにせよ「そんなのやだあ」なんて一言、暢気なものだった】

んーーーー、なんかよく分かんないけどお……何て言うかあ、そうねえ……、
アナタは喰らわれたいほど蛇ちゃんが好きなのに、アナタを誑かす悪うーい狼ちゃんが居たりして?
それで逃げ回ってるんだか何だかんだで、……でも、疲れちゃってこんなトコで縮こまってたのかしら。

【愛憎の話なんだろうかとも思ってしまう。追いつ追われつの何かなんだと。大した愛憎劇なんて、こいつはこれっぽっちも知らなかったけれど】
【少女の端正な面立ちもその肌も、ずぶ濡れてなお目立った手負いでないようなら、鮮烈な色彩でありながら暗雲を宿すマゼンタの瞳が語るように】
【疲弊しきったようなその雰囲気が顕すように。その狼は少女の内側を食い荒らしてしまったのやもしれないと、そう感じて】

えッ、ちょっともぉ、ちゃんと返すからあ、
そんなに慌てなくっても、────あ゛、── ──ッッ!!

【結果的に女の指先はカードを撫でることが出来なかった。】
【ばねに弾かれるようにして少女が飛び込んできたから、屈んでいた彼女は相手を抱き留めるようにしながら尻餅をつく】
【そうして代わりに少女に触れる。カードは手を離れ、少女の想いが読み取られることになる。──短く悲鳴を上げて沈黙する】
【一瞬全身が脱力し、小脇に抱えていた得物が離れ、がらんと音を立てて路上に倒れる。あとは雨音だけが続く】

【記憶を見る能力が、相手の意思の強さによって判る程度が変わるなら、対象となるそれが弾け飛ばんばかりの質量と熱量を持つ場合】
【それこそ際限なく、一番強い意思や感情が情報の激流となって霊香の中に流れ込んでくるのだ。沛然と降り頻るこの雨のごとく】

【女は大蛇に絞められ引き摺り込まれるように、感情の奔流に晒される。一切の思考を塗り潰して身に受ける、何も考えさせられないほどおかされていく】
【「好き」「愛してる」「触って」「■めて」 「食らって」「──して」「──」「  」──そんな言葉が聴こえるよう、それはきっと呪詛にも似て】
【意味こそ知ってはいても内包する感情の全てを到底理解することはできず、奈落に堕ちていく感覚を覚えたなら女は不意にうつむけた顔を横に背けた】

【びちゃびちゃと別な水音が混じった。見れば女は鼻から血を流して肩で息をしていた。情報がオーバーフローして身体に負荷を掛けたのだろう】
【流血が滴って水溜まりに溶けて薄まっていく。それでも女は青い顔をしながら黄色い目を細めて口角を上げ、奇妙に笑みを湛えて】

……うふ。 ねえ、いっぱい好きなの? これが、ヒトの好きって、愛してるって心なの……うふふ、ステキ。
ねえ、ねえ、アナタ、喰らわれたいほど大好きなのは、蛇なの、それとも狼なの、──どっちなの?

【女帝を抱きすくめる少女を横目で見て、女は血を片手で拭いながら問い掛ける】
【くだらない質問だと一蹴してもいい。女は純粋に気になっただけ、それだけのことだ】
【捻れに捻れて、いっそ真っ直ぐすぎるくらいの固執をヒトの好意と愛だと知る。ステキね、と繰り返して】

はああ────、疲れちゃったあ、もうクタクタあ……
んーでもねえ、いいコト教えてくれたし御礼にいいトコ連れてっちゃう、イヤって言っても連れてっちゃお
えーどこかってえ? すんごいキレーで雨にも濡れないけど、だあーれも来なそうな夢の場所かなー

【それから女は一人問答をしながら相手の返事の有無を問わず、少女の手を引いて立たそうとするだろう】
【まあ、無理して立たなくても良いんだろう、どこへ行くでもなくそいつは「バークド!来てー?」なんて何処へともなく大声で呼び掛けるのだから】
【少し待っていれば遠くからバイクのエンジン音が聴こえてくる。路地裏のもっと奥の方から、雨音を掻き分けて近付いてくる】


480 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/31(火) 19:35:40 WTt6Jz4w0
>>473

【それは夕凪に佇む白鷺に似て、白波の様な素肌の水面に降り頻る落陽の如く】
【思わず彼女は正義の姿に見蕩れる。憂いを帯びた彼女の姿は、切り取ってしまいたい衝動に駆られる程】
【そうですね、なんて一音節置いて、紡ぐソプラノに微かな柵を託す】


すんばらしいと思いますよ! 鵺ちゃんも常々そう思ってたりしますしっ
今の殿方も淑女も、慎ましいと言えば聞こえが良いですけど! その実はもう、全然借りてきた猫もびっくりです

──── 家の事情は大変ですねっ、由緒ただしー生まれだったら、人生イージーモードかと思いきや

でもでも、鵺ちゃんはそんな中でも自分の夢を持って、そこに向かって頑張ってるせいちゃん、凄いと思います!
警視総監なんでしょう!? せいちゃんみたいなすってきーな人が上に立つの、鵺ちゃん大歓迎です!
応援してますよ! ぶいぶいっ、まぁ、鵺ちゃんに出来るのは応援だけ、なんですけど


【微笑みは柑橘の香りを靡かせて、弾ける飛沫の名残に、微かな泡沫を差し出して】
【そこに裏も表もなく、彼女はただ純粋に、心の底から夢を持ち突き進む正義を応援したいと】
【片眉をぴょこんと上げる。小動物の如く、大きな瞳をまん丸に開いて】


あらま、鵺ちゃんは鵺ちゃんですよ。通りすがりの"お喋り美少女"です。
きっと、せいちゃんにとってはそれでいいんだと思います、だって、そうじゃなきゃやですもん。
例え鵺ちゃんがどんな人であっても、せいちゃんと鵺ちゃんの関係、変わっちゃうのやですから。

だから、このままが一番ですよ。鵺ちゃん、心の底から応援してるんです
せいちゃんの様な人が、一番偉くなったら、──── 『警察』も『公安』も変わります、し

だから今は思う存分吐き出してください! なんで公安嫌いなんですか? セクハラされたとか!?


【片目を閉じてウィンク、伸ばした一本指を口元に当てて、悪戯っ子の微笑み】
【何処か女優めいた仕草。少し背伸びした少女の横顔は、新鮮な色気を少しばかり隠し味に示して】
【続く言葉はもう既にティーンの慕情、興味の二文字を横に添えて】


481 : エーリカ ◆D2zUq282Mc :2018/07/31(火) 19:47:20 JY1GydDk0
>>472

【おどけた口調なのは明白で。故あってサイダーを勢い良く飲み干したコニーに睥睨を向ける】
【この睥睨を以てして、エーリカの瞳は初めてコニーの顔を映すのだった。やはり子供に見える】
【"ガキンチョの戯れに付き合う気分じゃないんだ"――睥睨を向けたエーリカの顔はそう告げるが】

―――……?

【コニーの口にした言葉と名刺によって不機嫌な表情はなりを潜める事となる】

【懐から差し出された名刺に書かれていたのは少女の身分】
【"氷の国外務省/三等書記官"――…名刺程度ならば誰でも作れるし、身分を偽れる】
【名刺に印字された文字の羅列程度ならば一笑に付していただろうが】

(……明らかに質の違う表情。兎にも角にも只者じゃない。
 ああ迂闊だった。感情に振り回されて身分を口にするなんてさ。)

【後先考えぬ行動による後悔をおくびにも出さず。けれど怪訝な表情を浮かべて】
【コニーのコロコロ移ろう表情と、真偽の程が定かではない言葉に警戒心を働かせる】
【それが証拠にコニーに自身の表情を見せぬように顔を背けて言葉を継ぐのであった】

ふぅん。わっかんないよ。分不相応にさ、ゴタイソウな身分を名乗るガキに対してなら。
出会って数秒でうざったいと思うガキに対して名乗る馬鹿はいるかもしれない。

でさ、私が公安だとして。アンタがそのペラい紙通りの身分だとして。
氷の国のガキが何の情報を集めているんだい?遠く離れたこの水の国で。
先ずはそれをお聞かせ願おうじゃないか、ハナシはそれからだよ。

【"まぁそれはそれとして。奢ってくれるってんなら遠慮なく"】
【そう告げてエーリカは店長である赤髪の大男にオーダーを告げた。その後に出てくるのは】
【ブジーキャットと言うノンアルコールのカクテル。エーリカとコニーの二人分が提供されるだろう】


482 : ◆S6ROLCWdjI :2018/07/31(火) 20:19:32 WMHqDivw0
>>474-475

【また約束事を増やして。事態を先延ばしにして。それでもここで飲み込まれるよりはマシだと思った】
【そう思わないとやってられなかった。とにかくここから逃げ出したかった、だってここに居続けたら】
【蕩かされてしまう、心の髄まで。そればっかりはいやだった――本当に、すきって、言ってほしいなら】

【――――次の瞬間。幾重にも鳴り響くアラームめいて振動する鈴の音、これは警告音であるって】
【はっきりわかった。眼を見開く。「…………ひーちゃん?」 疑念を、確信に変えたなら】
【あ、と声を上げた。ほどかれる小指。囚われる「白神鈴音」。そのすべてを把握してしまう、――やらかした、って】

……………………ひーちゃ、ひーちゃん! ごめんっ、おれ、……ごめん!!

【腕を強く引かれたなら、自分でも慌てて起き上がる。そして彼女と一緒に逃げようと思った、……けど、】
【……蹴り飛ばされる。瞬間に、反射的に謝ってしまった。自分のせいでヒメが「やばく」なった】
【否が応でもわかってしまう。けれど自分じゃなんにもできない。またおれのせいで――というのは、後回しにして】
【どうにかこうにか思考を正常に保とうとする。正常に、正常に、正常に、正常に、正常に――――――】

【――――――戻れた時には呆けた顔でベンチの上。最初に聞いたヒメの声、ああと嘆息しながら受け取って】
【まずは「あーりん」に連絡入れなきゃ、と思って、焦ってスマホを取り出そうとする。取り出そうとして、】


……………………………………だからそうやって、期待させるようなこと…………ああもうっ!!


【……、聞いてしまったから。だからもう彼は逃げられない、逃げない。きちんと孵れる雛となるまで】


//おつかれさまでした、ありがとうございました!


483 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/31(火) 20:20:03 Ty26k7V20
>>466

俺のやり方は賢くはない、アンタラみたいな組織じみて動いたほうがプロフェッショナルってものだ。だがな、そんなつまらねえやり方で
手に入るヤワな未来を俺は望んじゃいない。――全てのハッピーエンドを俺は信じてる。例え俺のラストがバニシング・ポイントに消えてくような事になっても
それ以外は後味の悪い結果にはさせない。…今のところは、な。明日には君に逢いたくてTELしてるかもしれない。

【挑発ともとれる言葉を吐いたのには一種の信用があるからだ。相手は外務省の何の理由を持った回し者の組織かはわからないがいい意味でニュートラルだ】
【水の国の立場と国益に関連しないならどの物事に対してもある意味、フラットな立場にあると思ったからだ。きっと彼らはまた接触してくる。ならこちらのスタンスも開示しておけば】
【余計な交渉事を次からはしなくてすむだろう。】

初瀬麻季音は常にイレギュラーな立場だったがもう一歩、こちらは動く。詳しいことは俺も知らん。だが、ここでしくじったら“奴ら”には誰も勝てなくなる。
もし、君らに彼女ほどの頭脳を持つメンバーが居るなら別だ。だが、そうでないなら、協力しろ。

【ペンをよこせ。とその場の誰かに言う。誰でも良い、手を出したのだから誰かが渡せばいい。そして、胸ポケットから取り出した自身の名刺――といっても名前も何もなく】
【あるのは“目の赤い鷹のイラスト”それだけだ。そこに走り書きしたのはメールアドレス。初瀬麻季音かそれにつながるもののアドレスだ。】

ネットも電話も奴らに監視されてる。言うまでもないが、気をつけて接触しろよ。麻季音が死んだら『未来も失う』ことになる。
もはやこれはお役所のお家騒動でも、国家の派閥闘争の域もとっくに超えてる。

【はやり、彼の見ている景色と、これまで掴んだ情報で描く全体像にギャップがあるということはわかるだろう】
【にわかに信じがたい話が続く。だが、それを信じるほか手はないかもしれない。】


484 : ◆KP.vGoiAyM :2018/07/31(火) 20:44:11 Ty26k7V20
>>476

【彼は煙草をくわえ、何気なく店内の空気をかき回すファンを眺めた。宙に浮かぶ色々なイメージ】
【彼の目は良く視える。だが未来まで見通せたことはない。視えるのはいつも死線か破線。運命すらわからず】
【ただ、綱渡りのように、その視えた線が何処かにつながっていると信じては手繰り寄せることしか出来ない】
【さながら、蜘蛛の糸だ。罪人はその一本の糸に全身を委ねることしか出来ないのだ】

……ようやく…ディディールが見えてきた。

【「2Q36年か」と呟いて、想像する。なんとなくの年齢を足せばだいたい50ちょいぐらいになっているはずだ】
【俳優で50っつたら…なんてぼんやり考えながら話を聞いたり聞いていなかったり】

…なんで俺がタイムスリップしてくる必要があるんだ…ああ、つまり。その未来の俺も未だにブラブラしてるってことか
オーラィ、やっぱり聞くもんじゃねえな。…仕方ないんだけどさ。

……俺じゃない可能性もあるってことか。するとつまり…それだともっとややこしく…いや。そうでもない
もし俺であるなら、俺とは会いたくないはずだ。だが、名前を使うぐらいなら俺と接触してくる可能性がデカイ。
どっちにしろ何にしろ…何しに来たかって言うとこだ。

【それは彼にはまだわからないが、後々はっきりする。この時代、この年は“タイムマシン元年”になるかもしれないのだから】
【彼にとって、また別の“チンザノ・ロッソ”にとって戻ってくる理由はいくらでもあるだろう。それは、まだわからないが】

とにかく…引き受けよう。俺のことは俺が解決しないとな。

【どうしたものか…といった具合に頭をかいて。ニヤリと笑った】


/よくわかりませんが取り敢えず未来のロッソなりなんなりを出せば愉快痛快寿ストーリーというわけですね了解致しました。


485 : 名無しさん :2018/07/31(火) 20:52:39 jtTXvWjk0
>>479

【――――「私だって、」、と、小さな声が震えた。呻くみたいな声が呟いた。けれど相手の思い浮かべた光景の凄惨さを分かるはずもないなら】
【自分の事情に則って"自分だって嫌だ"、と、表明したのだろう。――その正しい意味合いまでは手繰らせない、ただ、ひどく、ひどく、悲し気な目をして】

――違う。違います。私は……、私は。みんなを探して……。……逃げて、なんて、――居ません、だって、私は。
…………私は。殺せるから。あんな"わんちゃん"怖くないです。から。……だって、私は正しいのに――。

【ぎゅうと唇を噛みしめるのだろう、俯いたなら前髪を伝った雨が顔に垂れて、やがて、涙のように頬を濡らす】
【それが本当に涙じゃないという保証はきっとどこにもないのだけれど、おそらくは必要でもすらないだろう。その表情と声音で以って、感情は表現できるなら】
【まるで自分に言い聞かすみたいな声だった、――もうすっかりと食い荒らされた身体の中に気づかず蛹を作ろうとする、あおむしのしぐさに似て】
【ほんとは空っぽかもしれない身体を抱きしめて嘆く、自分がきれいだと衆目の前にて宣言する聖女みたいに、――けれどあんまりにも無様だから、笑えてしまいそう】

――――――――――――……。

【噛み締めた唇はきっと柔らかな少女の肌の弾力を以てしても限界を訴えていた、エナメル質に張り裂けてしまう瞬間の耳に届かぬ悲鳴を、その色合いで表して】
【ぎゅうっと胸に抱えたタロットカードは今の一瞬で濡れてしまっていた。それでもきっと上等だから、すぐにぼろぼろになってしまったりは、しないのだろうけど――】
【――頭を覗かれる感覚は言いようのない不快感を齎し、けれど、それが相手にどのような影響を与えるのかまでは、察することができなかったなら】

――え。――ぁ……、……なに……、――っ。っ、――。
やめ、――っ、そんなのっ――、……そんなの、決まってます、だって、私は。――……そのために、生きて、

【へたくそなタックルは相手を物理的に押して倒してしまった、それにいくらか遅れて気づいたらしかった。ぼたり、と、垂れる違った水の音に】
【視界をよぎった鮮やかな色合いに。少女はマゼンタの瞳を見開いて相手のことを見上げる、――ひ、と、微かに吐息を詰まらすような、声がした】
【――そして同時にそれは状況への驚きと、その瞬間に浮かべられた笑みの色合いに対する反応であった、――きっとどこかで恐怖の表情に、似ているのだろう】

――――いいコト、って、何を。私は。何も……。――――――――うあッ、

【であれば、少女の抵抗はほんのわずかではあったが、弱まる。怖気づいてしまったみたいな色がかすかにある。あるいは、その、甘い香りに中てられてしまったみたいに】
【手を引かれたなら――いくらか引きずるような温度感のあとに、ようやく立ち上がるのだろう。そうすれば今度こそよく目立つ、――やっぱり彼女はひどく震えている、らしかった】


486 : ◆1miRGmvwjU :2018/07/31(火) 21:39:48 o6XMS57s0
>>483


【「なあに?  ─── 言っとくけど、ボクはテリー・レノックスほど優しくないからね。」「キミがいなくて悲しむ人の顔、ボクは幾つも知ってるんだから。」それはそいつなりの励ましであったのか。】
【ともあれ、男の予想は中っていた。設立理念からして、内外のしがらみに囚われない攻性の組織。ある意味で公正に判決を下す無慈悲な裁判官たち。】
【故にしてある意味で腹芸は不要だった。表面上だけ、どこまでもビジネスな関係性。それを保てるのがある意味で最も健康的だった。】


「命令されるのは癪に触るが ─── 忠告として、甘んじて受け取っておくよ。」「彼女を潰させはしない。」
「 ─── でも、そうだな。会わせてみたい女の子なら、いる。ボクもまだ会ったことないけど」
「超ウィザード級のハッカーで爆破工学の専門家、らしい。協力したら、なにか大きいこと、できるかもしれないね。」


【 ─── はいどうぞ、とミレーユがボールペンを渡す。安いくせに気取った雑貨屋で売ってるような、わざとらしくチョコバーを象ったやつ。】
【男の手に握られるにはあんまりにも不恰好ではあったけど、 ─── それでも構わないのなら、赤い鷹を象った名刺を貰って】
【そこに記されている連絡先を視覚データから補助電脳に記録しておく。そして、後生大事に懐にしまって。】


「 ……… 任せておいて。電子戦と攻性防御はウチの本領だ。」「 ─── 指一本触れさせない。」
「まとめて月まで吹っ飛ばしてやるさ。無慈悲な女王の巻戻しみたいに、ね。」


【 ──── 掴んでいた黒い情報を引きずり出すと、更に沈んだ情報が連なってくる。さながらヘドロを漁るように】
【それでもそいつらは気丈だった。弾の当たる相手なら誰だって殺せる連中だった。だから、こんな問いかけさえ。】


「 ──── だいぶ話が逸れちゃったな。ふふ、オジサマの話術のおかげ?」
「一応、本題も話しておこう。」「ボクらとしては十分すぎる情報を貰えたから、まあ、答えなくてもいいんだけど、さ」

「 ……… "黒幕"の、中で。」「潰すべき個人って、だれか、いる?」


【声音は冷たく。凍土のように。けれど笑むまま。単刀直入に。】


487 : 真諦院 ◆rZ1XhuyZ7I :2018/07/31(火) 21:43:34 smh2z7gk0
>>480

まぁ、声を上げても実行力がなければただの騒音でしかない。だから俺は強くなりたいんだ。
家の事は生まれた星の定めさ、別につらくもなんともないよ。

―――ははっ、ありがとう。鵺はいい人だな、俺も鵺に何かあったら力になるよ必ず。
鵺には、夢はあるのか?

【「運命の相手と添い遂げる以外でな」と苦笑交じりに問いかける。】
【面と向かって応援すると言われたのが気恥ずかしかったのか学帽を一層深めに被り直しながらコップに口を付ける。】
【真っすぐに自分を応援してくれる相手。それは彼女の年齢だからこそ非常に重要だった。】

そうかい、まぁこれ以上は詮索はしないよ。今まで話して良く分かったし。
―――君は〝優しい人〟だ。俺は人を見る目はあるつもりだから間違いない、胸を張っていいぞ?(どや顔)


そ、れは―――。

………殺されたんだ、家族を。〝公安〟に。いや―――〝死ぬことを選ばされた〟

【バタバタと噴水に驚いたハトが飛び去って行く。正義の俯いた顔には暗い影が落ちていた。カランとコップの中の氷が滑る。】
【〝公安〟は情報操作、そして抹消が得意だ。その過程で無茶をする場合もあるだからこれは〝良くある話〟だった。】
【だが正義という少女にとっては何よりも大きな事であり、そして彼女の運命を左右することでもあった。】
【日はもう落ちようとしていた―――。】


488 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/31(火) 22:02:39 WTt6Jz4w0
>>487

【宵闇が顔を出す火点し頃の風情。夕闇が滲む、筆洗の中身に似た渾沌が空を包む】
【白絹の頬に色が透けたなら、響く色合いは友禅染より鮮やかに、儚き彩を写込めた】
【夢、と聞かれて少しだけ、悩んだ様な切ない様な曖昧な表情をしてみせた】


んー……そうですね、『世界平和』が一番です
誰もが皆、笑って暮らせる、そんな世界が一番だと思っています。
今までもそうでした、例え上手くいかなかったとしても、私にとって悔いはなくて

──── だからこそです、この世界もまた、平和であるのが一番です
せいちゃんは、平和を守る使者になるのです。それはつまり、鵺ちゃんの夢を支えるのです
ですから! 鵺ちゃんは心の底から、せいちゃんの成功を願ってますよ


【ぱっと両手を伸ばす。姫袖から零れる、手袋に包まれた、小さな小さな紅葉の様な掌】
【それでぎゅっと、貴方の手を包み込むようにして握ろうとする、にぎにぎと、何度か柔らかい感触】
【──── 少しだけ曖昧に笑ってみせた。泣いてるようにも、見えそうな】


んまっ、胸はないんですけどっ、ひょっとしてせいちゃん、わざと言ってます!?


──── ごめんなさい、それは……お気の毒、で。

……ん、ぅ……私、こんな時なんて言えば、よく分からなくて……えっと、その
──── すいません、軽々しく聞いちゃって、気、悪くしちゃいましたよね?

…………それでもせいちゃんは、警察という組織を目指すんです、か?


【その言葉を聞いて息を呑んで、声のトーンが落ちた。振り絞る声は悲鳴に近い】


489 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/07/31(火) 22:07:12 smh2z7gk0
>>481

【警戒し顔を背けるエーリカに対し、自分の唇を舐めながら笑う。アイスブルーの瞳はそれこそ氷のようにするどい】
【カウンターにひじをついて、とてもだらしない恰好をしながらエーリカの顔をのぞき込もうとするだろう。】

いや、相応の立場なんだよ〝私〟は。特に氷の国は実力主義なんでね。

いやさ、水の国の外務省に知り合いがいてね。まぁわりと〝暗い方〟もかじってる人でさ。
色々とお伺いするわけですよそちらの国を取り巻く状況をね。さらに今は〝特区〟やら〝法案〟やらで大騒ぎ。
能力者は世界中にいる。そりゃ警戒しない方がおかしいでしょ。

んで、このプリチー外交官のコニーちゃんが視察に派遣されてるワケさ。見極めるためにね。
〝水の国〟という国と今後とも〝良い関係〟でいられるかどうかって。
―――今は〝虚神〟なんていう化け物も出てきている。思っているほど世界情勢は危ういぜい?

【へらへらと笑いながらも非常に物騒極まりない話をしてくる。虚実入り混じった話だ裏もある】
【だが大筋は真実であり、コニー自身も〝外交官〟としてそれなりの働きをしていることも見て取れた。】
【「ほいじゃカンパーイ!」そして差し出されたカクテルを掲げる。エーリカが応じようと応じまいとそのまま飲むだろう】

―――だから〝2勢力〟に関しても情報交換できると思うけどね。まぁ嫌なら全然かまいませ〜ん
それならそれでプライベートなガールズトークでもしよ♡

【ぶりっこみたいにもじもじしながらそんな事を言う。鬱陶しさを通り越して気持ち悪い。】
【〝2勢力〟という単語は、それを追うものには興味を引くかもしれないが誘っているようにも感じるだろう。】
【手放しで信用するのはいろんな意味で危険である。】


490 : 真諦院 ◆rZ1XhuyZ7I :2018/07/31(火) 22:46:07 smh2z7gk0
>>488


〝世界平和〟―――やっぱり鵺は優しいな。俺もその夢を応援したい。
ますは隣の人から、近くの人から、少しずつでいいから助けていこう。それを続ければきっと世界は良くなるさ。

………なんだか照れ臭いな。二人分の夢を背負ってるんだ辛気臭い顔はしてられないな!

【鵺の夢だという〝世界平和〟。それを正義は愛おしそうにうなずきながら聞いてはにかむ。】
【小さなところから善い行いを、その志はちっぽけながらも強い芯が感じられた。】
【この正義という少女は、年相応の幼さもありながらどこか〝強さ〟も持ち合わせているのかもしれなかった。】

ごめんな、いいんだよ。〝過去〟に戻る方法なんて少なくとも俺にはないから。
だから前を抜いて1日を全力で戦い抜くしかない。ちょっと不貞腐れてたけど鵺のおかげで前を向けたよ。

夢は変わらないさ―――お父様がそうだったように、私も強い警官になるんだ。

【包まれている手を握り返しながら、どこか弱弱しさも感じさせながらも笑う。】
【―――図らずとも〝失った家族〟が誰なのかも判明した。求められただけじゃなく父の姿を追うからこその男装なのかもしれない。】
【言い終わるころには鵺の手を力強く包み込み返しているだろう。少し痛いかも】


【気が付くだろうか―――少なくとも正義は気が付いていない。】
【公園の木々の中、方角は不明だがどこからか視線を感じるだろう。じっと見つめるような監視するようなそんな視線が。】
【暗くなりあたりの人気も大分少なくなってきていた。】


491 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/07/31(火) 22:54:22 WTt6Jz4w0
>>490

【──── 握り返される手。布地越しの温もりに、鵺は心までも温められる様な気がして】
【頬に滲む紅潮の色、同性であっても照れてしまう様な眩しさが、正義にはあった】
【途中で少し痛くなって、痛いですよなんて照れ隠しに笑ってしまうぐらいに】


あはは、鵺ちゃんも、明るいせいちゃんの顔の方が好きですよ。可愛くて、カッコよくて、とっても真っ直ぐです
何だかお天道様みたいにきらきらーってしてて、いつのまにか鵺ちゃんは、じーっと見てしまうのです
でも、本物のお天道様と違って、見つめていても目が痛くならない辺り、せいちゃんの方がいいですね!

──── お父様。そうですか、せいちゃんは、お父様の事を尊敬されてるのですね!
ね、ね、どんなお父様だったんですか!? きっと、せいちゃんの父上なので、それはもうとびきりのイケメンで
スーツをぴしーっと着こなして、キリッと鋭い眼光のイケイケ警官だったんですよね!!


【彼女もまた、暗い表情を長くは続けない。──── 微笑むその様子は、暗闇とは無縁で】
【しかし、雲間に陽射しが隠れる様に、鵺の表情が変化する。向けられる視線に気づいたみたいに】
【正義と外とを見比べる。やはり、何処からか視線を感じて────】


……ねぇね、せいちゃんって、やっぱりモテるんじゃないですか?
警察学校とかゴリラの巣窟でしょう? 一人称がゴリラ、二人称がゴリラ、三人称があのゴリラで通じるって聞きますし
そんな中せいちゃんみたいな可憐なクールビューティはゴリラの檻の中にバナナを投げ込むような真似ですから

こう、ストーカーとか、そういうの、あったりしませんか?


492 : ◆RqRnviRidE :2018/07/31(火) 23:15:39 vZw8nhd20
>>485

へーえ、みんなを探して……って、え、うそ、ホントはめちゃめちゃびびってんじゃないのー?
結局さー、霊香ちゃんのしょーもない妄想かもだけどさあ。
だれかを探して、雨ん中駆けずり回って、体冷やしてこんなに震えてるでしょ?
それってやっぱとっても寂しかったからだし、ひとりって怖いからだと思うのよねえ。

【興味深げに相槌を打ちながら女は懐疑の念を素直に打ち明け、さも同情するようにそう言って頷く】
【女が此度の接触で得たのは好意による執着だけで、相手の素性も事情も知る由もないから、】
【自前のいい加減さも相俟って、頓馬な女は自分の経験則から語っているのだろう】

わたしだってパパとママが死んだときにさあ……、
魔海ん中駆けずり回って、知らない子たちを怖い怖いって言いながらさ、
それでもいつか見つかるもんだって思って、朝から晩まで──あ、やばい泣きそ。

【ずぶ濡れになってまでナニカを探し回っていたであろう少女の様子を昔の自分と重ね、憐憫の念でも沸いたのか己の境遇を少しだけ】
【けれど、昔々あるところに、から始まるみたいに、さながら寝る前の子供に読み聞かせをするような感じ──まるで他人事のような調子で】
【おおよしよし、なんて言いながら軽くハグをしようとして、少女の頭を撫でようとするのだろう。まあ先のことがある、拒絶されたって構いやしない】

怖くないんなら、殺せるんだったら、とりあえず先んじて全部ぶっ殺しちゃえばいいのにい。 狼だってなんだって。
だって逃げてなくって、でも殺さないのって、それってどうしてだかきっと、後ろめたいんじゃん……多分だけど。

ま、蛇ちゃん一筋だってゆーのはお手手見て解るけどねえ。
だってそこだけ生き生きしてるみたいだもん。

【やるならやってしまえと鼓舞するように唆すんだろう。野次馬のように囃し立てるばかりで何ら役立ちはしないだろうけど】
【おぞましいものを見るかのような目線を向けられたとき、霊香は「なあに」と言って、しかし明らかに機嫌を損ねたりするようなことはない】
【それ以上にヒトの心に触れ、怪訝そうにしている少女の一端に触れられたことを悦ばしく思っているから】
【対照的に女とのテンションが天と地の差くらいある少女にとっては、ただ快くなく気味の悪いものでしかなかっただろうが】

【──それから女は暗がりから響いてくるエンジン音に手を振るのだろう。自分はこちらだと合図をする】
【そっちからは、ぐえ、ぐわと間抜けな音がする。……声? それは鳥の鳴き声のようだった】

【やがて彼女らの眼前にやってくるのは確かにバイクだった、──が、無人な上にそいつには鳥の頭と翼がついていた】
【ベースはバイクだがそこに鳥が無理矢理継ぎ足されたか生やされたようになっていて、合の子というにはあまりにも】
【バークド、という名前らしい。昔飼っていた“ペット”が置いてったものなんだそうだ】

わっ、やっぱめっちゃ寒いんじゃない、しょーがないなあ
ほらほら霊香ちゃんのパパとママの体温あげるからっ大人しくしててよう?

【女はバイク鳥の座面に横向きに座り、少女をその後ろに座らせようとしながらひどく震える彼女を見て】
【さすがに哀れに思ったらしく、相手の腕を掴む指先からピンクの靄が立ち上る。芳しい甘い香りが一層強くなる】

【けれど今度は記憶を読みとる力ではなく、記憶の再現をして知覚させる力の行使だった】
【抵抗されなければ、全身がじわじわと人肌の温もりに包まれたような感覚に陥るだろう。せめて震えが止まるようにと】
【しかしながらあくまでもそれは体感的な幻覚の力で。錯覚させるだけで根本的な解決には至らないことを明記しておく】


493 : 名無しさん :2018/07/31(火) 23:50:52 jtTXvWjk0
>>492

【――――マゼンタの瞳が見開かれる。相手の言葉がひどく刺さってしまったみたいに。ふるふる、と、視線が小さく振れた、それはまるで、図星を突かれたみたいに】
【「ホントはめちゃめちゃびびってんじゃないの」「とっても寂しかったからだし」「ひとりって怖いから」――、きゅう、と、喉の奥が勝手に狭まって、呼吸がひずむ】

――そんな、わけ。ないです。……私たちは正しいのだから。そんな風に、怯える必要だなんて……。
ちが――っ、違い、ます! 適当なことを、言わないで――っ、  え、

【であれば――もう我慢ならないみたいに少女はぐうと相手のこと。タロットを大事に抱きしめていない手、右手にて、押しやろうとするのだろう】
【ひどく近い距離だった。ならばそれは明確な拒絶を表すのに違いがなくて。――だのに、荒げられた語尾が不自然に萎れる、表情をひどい驚愕に染め上げたら】
【――それはまるで自分もそうだと言うような表情に見えるのだろう。そうしているうちに抱きしめられる。頭を撫でられて。震える吐息が相手の胸元で漏れた、まばたき一つ】

――――――――、 。

【きっと明確に雨でない軌跡で、雫が一つ落ちた。――それを隠したいみたいに、抱きしめてくれたのをいいことに、相手に頭を預けるんだろう。ひどく、甘えるみたいに】
【甘い匂いがした。――そうしたら誰かを思い浮かばせた。母親がそんな香水をつけていた覚えは全くないのに、なぜだか、母親を、――あるいはそれに近しい人を】
【――――ひどく大人しくなってしまった。保護されたばかりの迷子みたいにぎゅうと唇を噛んで。だから――怖かった。寂しくて。一人ぼっちで。それを証明して】

だって……、……だって。――――後ろめたく、なんか、……ない、です。後ろめたい、ことなんて……。
――――……当たり前、ですよ、だって。私は。そのために。生きて……。いっぱい頑張って、来たのに……。――、それなのに、

だから――やり直さないといけないのに。……。……? 鳥……? ……――、

【後ろめたくない。怖くない。寂しくない。――そうやって彼女は相手の連ねる様々な気持ちを否定していた、だのに、全部きっと、図星に違いない】
【どれも本当に違うのであれば全く違った行動をしているはずだった。――こんなに冷え切ってなお未練がましく地べたで"休憩"だなんて、するはずなく】
【であればひどく遠回しな自傷行為であったのかもしれない――と思わせて。くしゃりと濡れそぼってぽたぽた雫の落ちる髪がわずかに揺れる程度に首を揺らした、】
【――何かに裏切られたに違いなかった。ぐちゃぐちゃに冥い目を何度か瞬かす。こぼれてしまいそうな涙をこらえるみたいに――でも、それが、丸くなる】

【――――向こうからやって来る謎の物体。有機物なのか無機物なのかもわからなくって。呼んでくるなら意識があるんだろうか、――、とにかく】
【座るように促されれば、さっきまでの抵抗に比べて、割合大人しく従うのだろう。震えていることを指摘されればそんなはずない、とでも言うみたいに、首を揺らして】

パパとママ、て、――――、っ、――あ、……、――や、だ、やだっ――、やめて。……やめて、ください、――やめて、
"これ"。やめて……おねがい……。――――お願い、だから……。――――ひ、あ、――――っ。

【体感する幻覚の体温。初めはどこか怪訝そうな……というか、何を、というような声をあげた少女は、その直後、その瞬間に、理解することになる】
【きっとぎゅうと身体をこわばらせるに違いなかった。そうしたらまた怯えたみたいな声を出す、めいっぱいに眼を見開いて、吐息を何度も詰まらせて、懇願するのだろう】
【恐怖していた。限りなく。――だけれどそれはいわゆる"恐ろしい"とは程遠くも見えた、むしろ、対極を予感させる。――安心してしまいそうだから、やめてほしい】

【――その温かさで折れてしまいそうだと言っているに違いなかった。それなら"こういう"体温を知っているに違いなかった。ゆえに、】
【――ひとりぼっちでこんな場所で震えている現状を理解してしまえない。一生懸命に眼を閉じて抗おうとする、相手が"やめてくれるまで"】
【――だからこそ、余計に、その温かさが心のひび割れた場所に流れ込むみたいだった。水あめに傷跡を撫ぜられるみたいだった。じりじり痛んで、でも、限りなく、】


494 : ◆RqRnviRidE :2018/08/01(水) 01:01:20 vZw8nhd20
>>493

【したたかな口調とは裏腹にすっかり大人しくなってしまった少女を、女は本当に日常の所作であるかのように馴れた手つきで軽く抱きしめ】
【宥めるように頭を撫でてやり、ぽんぽんと軽く背中を叩いてやったりするのだろう。ずぶ濡れでひどく不恰好になってしまったけれど】
【それも数分には満たない間のこと。抱擁から解放した少女の濡れた眼を見詰めて、果たして溢れたものに気付いたかどうかは定かではなく──】

【──女にとって両親の温もりは最上の幸せのひとつだったに違いない。だからお裾分けにとお節介で彼女に分け与えたのだろう】
【それ故に、少女が頑なに目を瞑り、何をそんなに怯えているのか女にはとても想像し得なかった。……それでも、】
【それでも、明確に拒まれて懇願されてなお女は手を離さなかった。 振りほどくことがなければ、そのまま体温を想起させ続けるのだ】

ええ、やめてほしいのー? やだなあ、甘んじて受け入れちゃえばいいのにぃ。
蛇ちゃんだってカチコチだったら動けないでしょ、それとおんなじだって思っちゃえばいいの。

──そんでさ、今日のトコは一旦忘れちゃいましょうよ。 いっぱい頑張ったんなら、休んじゃお、ね!
疲れてたって見つかるもんも見つかんないだろーしさあ、そんなんだと子犬ちゃん一匹追い払えないかもだし。

【それは激励の言葉とは程遠く、一瞬でも休んでしまえばいいなんて、とてもじゃないが無責任な言葉を掛けるのだろう】
【ひどくマイペースだった。ある意味この上ないプラス思考の持ち主でもあったから、どんなに拒絶されたって悔やむことはしない】
【だからこそ、実力行使で追い払われない限りは身を引くこともない。女の好奇か、あるいは命が尽きるまでは、執拗に、限りなく】

【「──さあ、行って、バークド。いつもの通り、あそこまで」】
【女はバイク鳥に命ずるだろう。空いた手はある一定の方向を指し示す】
【見えないだろうが、鳥は物凄く顔を顰めて“ゲッ”と一鳴き──とっても嫌そうだ】

【それはさておき、少女の返事を待つや否や、バイク鳥は命令通りに助走を付けて飛翔を開始する】
【玉のような雨粒を受けながら大きな翼を展開し、宙にその身を浮かばせる──乗り心地は、まずまずといったところ】
【少し遅れて、転がっていたハルバードが浮き上がり、彼女らに並走するように着いてくるだろう】

【女が指し示したのは、暗雲立ち込める、空】
【鳥は薄い雲間を目掛けて翔ぶ。昇れば昇るほど雨風は強まるばかり】
【きっと目を固く瞑らざるを得ないだろう。女も落っこちないようにと、少女の腰を片腕でしっかり抱き留めようとして──】

────ほら、ねえ、目を開けて?

【────迸り、さんざめく雨を一身に受けたなら、しばらくしてそれがふと凪のように静まるはずだ】
【目を開けたなら、眼下には分厚い雨雲の海。頭上には一面の星空、月は真円に近い形をして空に浮かぶ】
【風は強かった。そこは凍えてしまいかねない寒さで、けれど幻覚に身を委ねているのならきっと差し支えなく】

ほら、だあれも来ない夢の場所……すんごいキレーでしょ? お気に入りの場所なの。

【女は秘密を共有するみたいに、徒っぽくひそやかに、少女へと笑いかける】


495 : 名無しさん :2018/08/01(水) 01:32:47 jtTXvWjk0
>>494

【――――ひどく小さな声が震えながら、何度も何度も拒絶していた。嫌だ、やめて、お願い、――そういう言葉を、幾重にも幾重にも重ねて】
【言葉の間に原始的に拙い感情を挟んでいったなら出来上がるのはきっと感情のミルフィーユ、食べようとしたってばらばらにほどけてしまう、脆さを示す】
【だからだれも綺麗に食べるなんてできやしないのだろう。あるいは少女本人にすら。けれど確かであったのは】

【――その温かさを実力行使に手振り払う勇気は、彼女に、ない】

【いっぱい頑張ったのだから休んでしまおう。その言葉がひどく甘やかだった。けれどそうしたら二度とベッドから出られなくなってしまう、って、予感がしていた】
【だからここで振り払わなければいけないって分かっていた。分かっていながら。できなかった。――どれだけ頑張ってもこの先どこにもない温もりに、包まれて】
【気づけば本当に泣いてしまっていた。豪雨の中でさえ一目でわかるほどの大粒の涙がぼろぼろと落ちていく、「――――ママ、」小さな声が、雨音を揺らせば】
【「――ママぁ、……」、――それを地上に置き去りにする。次の瞬間にはきっとバイクは飛び上がっているんだろう、映画とかに出てきそうな光景だった。だから、】

【(「――アリアさん、」と、小さな呟き。それは、きっと、相手にのみ聞こえる音律、先ほど見せつけた感情の端っこと同じ色合い、覗かせて)】

【――――ぎゅうっと目を閉じる。それが礼儀であるみたいに。あるいは――その温もりの幻覚に、ほんとうの感覚を重ねたいみたいに、相手に、身体を委ね】
【小さな子が母親に縋るみたいに――ただその暴力的な雨と絶望的な温かさに耐えている。どれくらいの時間がかかるのだろう、やがて、言葉に促されるまで】
【ぎしって固まってしまったみたいに、少女はおとなしくしているんだった。あるいは促されても数秒ほどは。身体でも叩けば気づくのだろう、そして、目を、――】

――――――――――――――――――――――――あ、

【――ぱちり、と、見開く。マゼンタ色の瞳が涙できらきらって光っていた、星空の鮮やかさを映し込んだように、一級品の櫻の菓子みたいに】
【溢れていた涙の一つが強い風にさらわれていく。――次の涙は出てこなかった、ひどくびっくりしたみたいに、まなこはあたりの光景に縫い付けられるから】
【旧いカーペットみたいにごわごわした真っ黒い雨雲。何年もかけた集めたお祭りで取った贋物の宝石を床に散らしたみたいな星空に。天蓋に空いた穴みたいな、真円の月】
【寒さに蒼褪めた顔が確かに笑うんだろう、なにか昔の楽しい思い出を想起したみたいに。無垢な子供みたいに。――否、無垢な子供そのままの、鮮やかさ】

【――――まだ小さかった頃、うんと真冬の夜に、流星群が来るんだと言って、みんなで、星を見にいった】
【――――宇宙まで見通すみたいに色鮮やかにぽっかり空いた夜空に満点の星。たくさんの流れ星。けれど、寒くなってしまって】
【――――お父さんが着ているコートの中にすっぽりと入れてもらった。そうしたらいつまでだって見ていられる気がした。いつまで、だって――】

きれい………………。

【――甘やかで冷たげなスズランの声音があんまりに安堵したように解けるんだろう、それだったなら、気づけば、震えさえも止まって】
【――けれどそれは冷えすぎてしまったのに違いなかった。少女の異能であれば、体温の低下を防ぐことも出来た。――けれど、幻覚の暖かさが、感情を鈍らせて】
【――だのにきっと限りなく幸福そうな顔をしているのだろう、から】


496 : ◆RqRnviRidE :2018/08/01(水) 02:36:31 vZw8nhd20
>>495

【普段なら女は手元にあるのがティースプーンだろうとお構いなしにデザートに手を付けるんだろう、けれど】
【添えられたソースが彼女の手をためらわす、バラバラに食い散らかすのではなくて、自然とほどけていくのを眺めるだけで】
【(“アリアさん”って、ねえ、だあれ? あなたにとってのなあに? もしかして、────) ──疑問だって、今は飲み込んだ】

【あんなに雨を降らせていた雲も今では粛々と足許に広がるばかりで、天上にはただ静かに星々が煌めいている】
【遠退いた喧騒は聞こえるはずもなく、狼だって嗅ぎ付けることもできなければ翔んでこられることもない】
【影を追いさえしなければ、この世界は今だけはたった二人だけ──まるで夢に入り込んでしまったかのよう】
【いかに多様な鎖に雁字搦めにされていようと、眼前の光景は、包む体温は、想起される記憶は、想いは、】
【どこかの組織の幹部なんて大層なものじゃなく、至ってふつうの、一人の少女だけのものであることには違いなく】

ね、きれいでしょう。 来てよかったでしょ? 泣いてるのもいーけど、笑ってるほうが可愛いわよぉ
でねー、パパとママよく言ってたのー、アスタ……星に車を繋ぐくらいの高尚な願いを持ちなさいって
でもこんなん見るとさ、ぜーんぶどうでもよくなっちゃうわよねえ。 だってこんなにステキなんだもん。

…………ちょっとは元気でたかにゃあ?

【女はまた楽しそうに笑っているのだろう。少女の初めての笑顔を見て、手放しで喜んでいて】
【お気に入りの場所をお気に召してくれたのが、誰かと共有できたのが嬉しくて。……だって、ひとりはやっぱり詰まらないから】
【それで、女は改まって少女に向き合うのだろう。真ん丸の黄色い瞳が月明かりを受け、煌々と光を宿す】

霊香。 わたしね、霊香・アステリスク、っていうの。
アスタ族って知ってるかなあ? バイコーンっていうお馬の中の、更にちっちゃい部族なんだけど。
まっ別に知らなくてもいいわ無名もいートコだし、覚えといてくれたら。

アナタのお名前は、なんていうの?

【女は名乗り、少女の名を問う。そうしながら腰に添えていた手で、相手の頬を撫でようとする】
【髪が張り付いているならそれを脇に避けようとして。女の纏う甘い香りが再び鼻腔を擽るだろう】
【それはアロマフレグランスのよう、ごく自然でしつこくなく、緊張を弛緩させるような匂い】
【疲労した体、沸き上がる幸福──それを享受する少女が香りを抵抗なく受け入れたのなら、きっと多少は癒しとなるはずだろうか】


497 : 名無しさん :2018/08/01(水) 03:37:45 jtTXvWjk0
>>496

【あんなに無慈悲で冷たかった雨を見下ろす、見上げた煌めきはどこまでもどこまでも広くて、天井の真円はあんまりに、明るくて】
【見渡せば向こう側のその向こう側まで、見えた。あるいは雨雲の途切れる先まで燃えるのかもしれなかった。止まない雨はない、とか、明けない夜はない、とか】
【そんな言葉じゃもはや物足りなかった。――だからこそ、この光景がただのありふれた少女に突き刺さる、いつかの、限りない平穏の記憶と共に】

――――ぅん、――っ、きれい……、きれい、です、すごく、
こんなの、みたことない、……。パパとママが、……爽太が生きてたときも、

……冬の流星群を見に行くの、いつも、……、だけど、みんなが死んじゃった前の年は、曇ってて、

【――――ぎゅうとタロットカードを握りしめる。濡れてしまったカードがわずかにたわんで、その端っこが、わずかにほどけていた】
【それでもなにか大事な気持ちを噛み締めるみたいに。間違ってもどこかに飛ばしてしまわないように。――もう片っ方の手は口元を隠すみたいに、顔へ添えて】
【ぼろぼろ出て来る涙をもう放っておいていた。ぽつぽつと語るのはいつかのことであるのだろう、本当にいつかの、ちいさな、ちいさな、思い出】
【だからこそきっと口にすることに意味があった、――最期の年に、みんなで見ることができなかったから。未練だったのかもしれない。それから、一度も、見に行かなかった】

【――時期が違う、とか、そういうのは関係なかった。本当は他人の温もりなんだけれど、それでも確かに両親のぬくもりに抱き留められて、そうして、寒さが和らいで】
【見上げる星空に意味があった。――だからきっと一つの未練を霊香が解消させてくれたのに等しかった、見つめられたなら、今度は、睨みつけない】

……かえで。蜜姫、かえで――、……ん、う、――――、

【少なくとも何かから解放されたときの顔をしていた。ひどく安堵していた。――それはきっとひどく小さなものであるのだろう、がんじがらめの鎖から抜け出すことは叶わずとも】
【けれどたった一つだって何かから解放されただけで、こんなに笑う。それはやはり恐怖と寂しさの裏返しに近かった、張り裂ける瞬間の機械が軋む音に似て】
【雨に濡れていた髪はなんだか勝手に乾いてしまっていたけど。その前髪をどかされるなら、それをあんまりに素直に受け入れて、――ふありと甘い香り、くるまれる】

【――あんまり夜更かしをしない子だったから。星を見ている途中に眠たくなってしまう。それで、帰りの車で眠るんだった、弟と二人、大きめの毛布にくるまって】
【――そうして家についたなら、起こされるけど、無視をする。ほんのちょっとの根競べ。勝負に勝ったら、――ベッドまで、抱っこで運んでもらえるから】
【――それがたまらなく嬉しくて。途中でくすくすって笑ってしまって、いつもばれてしまう。それでも結局、ベッドまで運んでもらうのが、毎年の恒例】

――、あのね、

【――――だから、眠たかった。きっと相手が掴まえていてくれるって信じていた、ベッドまで運んでくれた、父や母みたいに】
【身体を委ねて微睡むように目を閉じる。――、かすかな幼声がなにかお願いするときの、声をしていたなら】

霊香さん、もしも、――もしも。アリアさん、て、人に、会ったら――、――、

【――、】

――――――――ああ、でも。ううん。……やっぱり、大丈夫です。だから、――ありがとう、ございます。
……私は。私たちは。……私たちの正しい神様を取り戻す。だから。……――。――だから、きっと、一緒には行って、くれない、ですよね。

【それは大好きな人へのラブレターを友人に託そうとする少女の顔にきっと似ていた、好きな人以外に向けることない表情と声が、けれど、――】
【寂しげに綻ぶのだろう、自嘲するように。どちらも諦められず、けれど、決して両立しえないもの選ぶことを強いられるみたいに】
【きっと少女はその人と一緒に星を見に行きたかった。そしてそれはきっと特別な意味を持っていた、】

――――だから、アリア、って人に、会ったら、

【「私は死んだって、伝えてください」】

【――――諦められない。だって叶えるために父をもう一度殺した。弟と等しい人物をもう一度殺した。本来、自分が関わることのなかった死を、】
【蜜姫かえでという人間に落ち度のない死を。別の方法でやり直す。自分の罪に塗り替えていく。父と弟を殺したなら、あと一人だけ】
【母親の死を自らの手で繰り返したなら、――。それはきっと呪いだった。そうしたら。そうしたなら。何にも惑わない自分に慣れる気がして。だけど。怖いから。したくないから】

【ほんとうの気持ちを飲み込んで、少女はそう相手に頼むんだろう。アリアという人間にであったなら、蜜姫かえでという人間の死を、伝えてほしい――って】


498 : ◆RqRnviRidE :2018/08/01(水) 13:43:07 MrgTZF/U0
>>497

【言葉で紡がれるのはきっと後悔の滲む未練の記憶だったんだろう、霊香はうんうんと頷きながら傾聴する】
【月明かりが夜を抱き、星の瞬きはどこまでも優しい。暴力が犇めき合う下界とは全く違っていた。そこはただ静かだった】

【涙と共にほどけていく感情を浚うようにいっそう風が強く吹く。青紫の髪が、ドレスがはためいて靡き、けれど甘い香りだけは纏わりつくようで】
【霊香の手が少女の──かえでの人形然として整った顔を撫でてやるのだろう、慈しむように、愛でるようにして】
【それこそきっと、眠りに堕ちる我が子をかいなに抱いて撫でてやるように、触れた指使いは蕩けそうなほど優しく】
【それから、すべらかな頬を伝って身体を辿り、両腕が少女のを抱き留め身体を支えてやるのだろう】

(──、──“アリアさん”、また、)

【恋慕い思い馳せるような声色を聴いたなら、先ほど不意に溢された名前と一致することを思い出す】
【彼女の心の一端に触れたときの、激しい奔流のような感情を否応なく想起させる、──】

──ああ、きっと好きなのよねえ。
だってそれこそ、痛いくらいに食べられたいほど……。

【蛇の道を進んだって、そうせざるを得なくたって、その想いが簡単に変わるわけがないもの】
【どうしようもない沈痛さを孕んだその色を黄眼が見詰め、懇願を聞き入れて霊香は、はあと震えるように溜息を一つ】
【口許がゆるりと弧を描く。かえでに笑い掛ける。これが返事と短く言葉を返す……】


  「 “ いいよ/いやよ ” 」】


【返答は確かな響きを持たなかった。或いはどちらにも聴こえたかもしれなかったし、聴こえなかったかもしれない】
【微睡む少女の遠ざかる意識の中、それは恐らく聴こえぬように、重なる響きを以て、明確に捉えられぬように。】

──さあ、もうおねむの時間でしょう、かえでちゃん。
──我が愛し仔、どうぞゆっくりお休み、夢から夢へと渡っておゆき。

──Good night, mare.
(よい悪夢を)

【────そこからきっと急速に意識が遠退いていくだろう。何の効果か、包む香りと体温か、冷えた体と疲労のせいか】
【少女の耳許で女が優しく囁く。眠りに堕ちてく我が子に語り掛けるように。子守唄を紡ぐように、ゆっくりと静かに】
【やがてはその声も、感触も、においも全てなにもかも。意識の果ての、そのまた向こうへ、】




【( 暗転 )】




【街中────路地裏】
【ひどい雨の夜だった、ニュースが言うには台風が近づいてきているのだという。】

【少女が目を覚ましたなら、休憩をしていた時と全く同じ体勢で。黒々とした大きな傘を被るようにして、室外機の傍に居ることだろう】
【他には誰もいない。見渡しても気配すらない。普段うろめく世俗の輪から外れた奴等すら、こんな日は外を出歩かない】


【 ────────果たしてあれは、夢、──だったのか? 】


【カツン、コツンと雨音の中、硬質な足音が響く。そうしてそれから、それっきり。】
【いくら耳を澄まそうとも聴こえてくるのは、さんざめく激しい雨音だけで】
【けれど始めと違ったのは、明らかに違和感があったのは、──】

【──芳しいほどの甘い香りと、冷えた体にはそぐわない温もりが包むことだけ。たったそれだけだった。】


/お疲れ様でした!!ありがとうございます!


499 : エーリカ ◆D2zUq282Mc :2018/08/01(水) 20:09:33 JY1GydDk0
>>489

【隣に座る少女をちらっと目を見遣れば、氷を連想させる瞳がそこにあった】
【"――…品定めのつもりか"エーリカの目は気怠げで、同時に冷ややかに】
【蛇に丸呑みされる贄になど成りたくはない。依然として佇まいに警戒を滲ませる】


そりゃその通りだ。例え全体の数%だとしても、この世界にゃ能力者は腐るほどいる。
しかも人の身で社会全体に脅威を与えられるんだから、警戒しないほうが無理がある。

んでもって世界情勢が危うい――だなんて言葉は釈迦に説法。私は身を以て思い知ってる。
木乃伊取りが木乃伊にならない事を祈るんだね。安易に藪を突かない事だね。

この国は、人の思惑に由来する脅威と人の感情に由来するカミサマ達が滅茶苦茶に混ざった箱庭なんだ。
物見遊山で遠巻きから見て物語るアンタに言われなくても十分に理解してるさ。"コニー三等書記官"
難儀なモンだね。同情するよ。こんな火薬庫に視察で派遣されて見極めろだなんて。で、見極めは出来そうかい?


【厭に饒舌だな、と内心で苦笑する。コニーに紡ぐ言葉は夢見がちな子供の夢想では無い】
【清濁併せた大人のそれであり、幼さを見せ付けているのは油断を誘うための処世術か】
【兎にも角にも。物騒な言葉を口にしていながらも微塵も恐れが無いのは――実力者だからだろう】

【揚げられたグラス。エーリカはそれに応じる事にした。ニ度、コニーと向き合って】
【ちんっ、と音を鳴らして乾杯に応じるのであった。この行為は少女を一外交官と看做しての事】
【けれど決して友好の証ではない。その所作は政治家同士の表面的な握手に似ていた】


コニー三等書記官―――……アンタの言う"2勢力"が何を指してるのかは知らない。
認識の齟齬が生じたまま情報交換した所でお互いに何の特にもならない。時間の無駄だ。
アンタの言う"2勢力が"何なのかを口にしてご覧よ。情報交換か歳相応の馬鹿げた小話になるかはそれ如何だ。


【大方察しは付く。"黒幕"と"円卓"――この国を舞台に暗躍する勢力たち。自身は前者側である故に】
【そしてエーリカはコニーがどちら側か把握してない故に。牽制染みた言葉で様子を見るのであった】


500 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/08/01(水) 20:18:22 WMHqDivw0
【"8/1"――それはどこの国なのか。夏を感じさせない冷え切った空気。視界一杯に立ち並ぶ巨大な本棚の最中】
【申し訳程度に並べられた長机の前に、男はただ一人座っていた】
【他に人の気配はない。偶々来ていないと言う風でもなく、周辺一帯に何もいないかのように、開いた窓から鳥の囀りさえ聞こえなかった】
【男はそこで本を読むでもなく、マナーの悪い来館者のように、携帯端末を覗いている】

【相変わらず買った当時のまま、換算としたホーム画面】
【ロクにアプリも入っていないそれは、セキュリティを掛ける方が馬鹿らしいとばかりの味気無さ】
【――まるで、この男のようだった】


【それでも男は、携帯端末の番号を叩く。それは別にどこに繋がっている訳でもなく】
【ただ、こちらから"彼女"を呼ぶ際の約束事のような番号だった】


リーイェン。ゴトウとの会談の報告ログ、興味深く拝見したよ。
ゴーストライターからも彼は切れ者だと、聞かされていたが――


【大したものだ、と語る。だが、その声音には些か覇気が足りないように見えた】
【どれほど奮って見せたところで頼りなさを隠せないような男の様子は、いつもよりも更に】
【それでも、わざわざ、滅多にしない男からのコールをした以上、話す内容は、次のインシデントの話に相違ないのだろう】


――確認したいことが出来たし、サクリレイジとしての今後の方針も定めなければならないだろう。
こちらからも人員は出さなければならないだろうからね。
少し、話をしないか?


【女性を誘うには、全く持って趣が足りない。黴臭い本棚の中で、つい先日話した彼女との邂逅を求めた】


// 予約の奴です!


501 : 名無しさん :2018/08/01(水) 21:56:58 NvWga9pI0
>>498

【――――神様はこんなところに居るのかな、と、思った。それとも、自分が信じるのは蛇の神様だから、そんなことはないんだろうか】
【けれど例えばこんな光景の中。ごわごわした黒い雲の上を。誰かが歩いていたって。――おかしくはない気がした、そんな光景なら、許せる気がして】

【――顔に触れるなら、少女は目を伏せるんだろう。いっとう気持ちいいところを撫ぜてもらった猫みたいにやがて眼を閉じてしまって】
【そうしたなら――もう抗えなかった。抗う意識さえなくなってしまった。ゆるりと意識の先っぽが夢の水面に足先を浸す、そしたらずるりと滑り落ちてしまいそうで】
【だから――その不明瞭な答えを、彼女が聞いていたかも釈然としなかった。ゆえに、聞き分けていたのかはことさら分からないだろう。ただ、おそらくは、】
【上手に聞いているはずもないなと思わせた。――――眠りに落ちるときに音だなんてするはずないけれど、あるとしたならぽちゃんと水音、王冠を紡ぐ、みたいに】

【――――――――、】

【どうどうとした雨の音。旧式の室外機の音さえ聞こえないほどの喧しさに、いつか少女はわずかに眉を顰める】
【「――んん、」と、小さな呻き声が。やがて肺の中の淀んだ空気を押し出す吐息に変わって。そうして――――、あれ、と、小さく紡ぐ】

私………………。

【――ひどく優しい夢を見た気がする。甘い香りと暖かさ。膝に身体を埋めるようにして、ひとつ、柔らかな深呼吸をしたなら】

…………――、おんなじ匂いがする。

【夢の中と】

/おつかれさまでした!


502 : ◆3inMmyYQUs :2018/08/01(水) 22:17:22 qo/HyX5s0
>>484

──そういうことだにゃ。
とにかく調べられることは何でも調べて欲しいにゃ。

【言いながら、片手で作ったOKサインの穴を覗く仕草】
【そのまま身を軽く乗り出すと、探偵の顔をじっと見つめて】


わたし、シヲリ。
これからよろしくにゃ、探偵さん。


【僅かに無垢さの残る笑みを深め、そう名乗った】

【──そういう次第で、この奇妙な依頼は探偵の事件簿に加わる】
【それがどのような筋書きを描くのか、探偵の良く見える眼にも、未来から来たという少女にも、まだ知れぬことだが】


【そうして話が一段落ついたところで、彼女は肩の力をすとんと落とし、背もたれに寄りかかる】

──良かったにゃー、これで心置きなくメインを食べられるにゃ。
すいませーん、注文お願いしまーす☆

【いつの間にか全てに空になっていたスイーツの山々】
【それらはまだ前菜に過ぎなかったらしく、店員を呼び止めると】

追加でこのドップラーエフェクトシュークリームと、
大型ハドロン式アップルパイ、反重力焼きプリン、
と、──面倒だからこのページ全部くださいにゃ。

【「あ、コーヒーのお代わりいるかにゃ?」】
【思い出したように彼を見やった少女の顔には、】
【破滅的カロリーの第二波を招来することへ対する良心の呵責は微塵も存在しない】

【最初の注文でツッコまれなかったのだ、もはや二度目こそ何を躊躇う必要があろう】
【ほどなく運ばれてくる糖分の大星団を、少女は至福の表情をして一切合切平らげていくだろう】

【──いつの間にかラストオーダーも近く】
【そのうち店員がやってきて、伝票のバインダーを恭しく置く】

【彼の全方位を見回す瞳ならば、コンマの後ろにゼロが三つばかり連なっていたのが見えたかもしれない】
【とても景気の良い数字だ。もしそれが家賃なら、水の国のダウンタウンでもそれほど悪くない部屋に住める】


【──勘の良い探偵ならばそこで気付くだろうか】
【その意味深な数字は、この事件に隠されたもう一つの『謎』を克明に浮かび上がらせる】


【──その会計は、誰が払うのか】



────幸せだにゃ〜、来てよかったにゃ、2Q18年。


503 : ◆3inMmyYQUs :2018/08/01(水) 22:21:37 qo/HyX5s0
>>484
/イエスでございます。ご負担にならなければ、ですが。
/ご本人でも、別人でも、探したけどいなかったでも、一切お任せいたしますです。
/2Q36年@別世界線の資料を後ほどおまけでお付けしますので、もし気が向けばご覧いただければと思います。


504 : 真諦院 ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/01(水) 23:10:40 smh2z7gk0
>>491

ハハッ、なんだそれ。まぁそういってもらえると嬉しいよまずは明るく元気じゃないとな。
鵺もなんだか危なっかしいように見えてなんというか、包容力あるよな。

ああ―――お父様は真諦院家には婿としてきたんだが、とても立派で聡明な方だった
俺にも厳しく、優しく人の道そして異能を持って生まれた能力者の在り方を教えてくれた。
仕事の事はあまり詳しくは話してくださらなかったが、きっと世のために働いていたんだと思う。

【「写真、みるか?」と言うとどこか嬉しそうにポケットからスマートフォンを取り出す。】
【そしてデータフォルダに入っていた写真を見せる。赤子の正義を抱いた男性が笑ってる。清潔感のある短髪に堀の深い顔をした男性だった。】
【後に訪れる悲劇を感じさせないような幸せそうな家族の写真だった。】

【―――周囲に視線を向ける鵺に対して不思議そうに首を傾げる。迂闊なものである。】

いやいやないない。それこそ俺もメスゴリラみたいに扱われてるしな。
何より格闘術の訓練で大分男子共はぶちのめしてしまっているからそんな恐れ多いやつはいないよ。

ストーカーなんてもってのほかさ。

【モテないという話なのになぜか自慢げである。学生の中ではそれなりに秀でた実力を持っているのは確かなようだ。】
【鵺の心配もどこ吹く風、両手をあげて笑っている。】

【そうこうしているうちに視線と気配はまるで煙のように消え去っているだろう。】
【キョロキョロとあたりを見回す鵺に対し「暗くなってきたし、もういこうか?」と見当はずれな気を遣う。】


505 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/01(水) 23:29:49 smh2z7gk0
>>499

(迂闊かと思ったけど、意外と固いな―――。)

へ〜、その口ぶりだとかなりの修羅場をくぐってるみたいっすね。
まぁ〝公安〟に所属してるのが本当なら妥当か。

仰る通り、ちょっと後悔してるよ。世の中どの国も色々な闇は抱えてるもんだけどさ
この国の闇は〝異常〟だね。さすが世界有数の発展国だけはある。
正直見極めるなんて滅相もない、〝底が見えない〟―――蛇が出るかと思ったら魔王が出てきた感じ。

【そんな事を言いながらグラスをカラカラと揺らす。苦笑と共に放たれる言葉は真実のようにも感じられる】
【尤も、外部の人間であるコニーですらこのような言い方をするのだから内部にいるエーリカの苦労は言うまでもないだろう】
【知ってか知らずか、「ジャンジャン飲もうよ〜」と急かすように言ってくる。】

だからそんな火薬庫の中心、〝公安〟に所属してるなんて尊敬するよ。魔境でしょあの組織。
まぁ酒に溺れるのも分かる気がするわ〜。酒飲んだ事ないけど。

【そんな事を言いながら笑みを向けると、そのまま身を乗り出してエーリカの耳元へ近づくだろう。】
【もし抵抗されなければそのまま耳元で囁く「〝黒幕〟と〝円卓〟。でしょ?」】
【囁いたあとはどこか小悪魔的な笑みを浮かべながらぐだっとカウンターに顔をつける。】

それと―――この国の〝外務省〟にはちっと特殊な人たちもいるみたいだね。

【「それは知ってる?」とグラスに残ったノンアルコールカクテルを飲み干しながら言う。】
【心なしか顔は赤い、なんでこいつちょっと酔っぱらっているんだ。】
【相手の牽制に対し、率直に答える。どちら側かは分からない。そもそも外側の人間だどちらでもないかもしれない。】
【そして水の国〝外務省〟。それこそコニーの肩書が真実ならよく相手にするだろう組織について語る。〝特殊な人たち〟と。】
【「マスター!もっときついのちょうだい☆」と大きめの声を出す。ノンアルコールにキツイとかあるのか】


506 : 名無しさん :2018/08/01(水) 23:49:27 NvWga9pI0
【――――ひゅう、と、か細いけれど鋭く吸い込んだ吐息が、喉に、詰まる】
【であれば続くのは内臓丸ごと吐き出してしまいそうな咳――喉の粘膜が引きずり出されてしまいそうなくらいに苦しげな、】
【ぐうう、と、ひどく濁った呻き声が漏れるから。――そこに誰かが居ると知らせるには十分すぎた、けれど、"こんな場所"で、それに釣られるものは、誰なのだろう】

【――昼間の熱気など抜けきる気さえないような、路地裏の深部。迷路みたいに入り組んだ道筋は毛細血管を思わせて、ならば、街ごと生きている気がする】
【それならばこの熱気と湿度は生き物の胎の中に居るからなのかもしれなかった。――――だなんていうのは、ただの、思考遊戯なのだけど】

……げ、ほっ、――――う、ぇ、――っ、ア、……ん、ぅ、――――ッ、

【であればそこには人影が一つあった。薄汚い壁に身体を委ねていた、――あるいはそうでなければ倒れこんでしまうかのように、真っ白の肌を壁に擦り付け】
【苦しいのを堪えるようならぎゅうっと閉じられた眼からは大粒の涙が落ちていく、だけど悲しくって泣くわけじゃないのなら、一つ、二つ、――三つめは落ちなくて】
【ひどく咳込んでびくびく慄くような腹部を抱いて抑え込んだなら無理やりに吐息と、それから、唾液を呑み込む。――その足元にはいくらかの水玉模様、吐いた、わけではない】
【それでもどこかねばついた唾液が一つ糸を引いて落ちていった、――また一つ、呻いて】

【透き通るような藤色の髪。白磁よりも鮮やかに白い肌。――そして世界で一番美しい宝石、それこそ所有する人間をすべて不幸にする宝石のように煌めいた、紅紫色の瞳】
【例によって白い服を着ていた。せめて何かから身を護るみたいに。せめて何かを表明するみたいに。――真っ白な足を惜しげもなくさらけ出して、だけど、蹲る】
【そうしたらふっくら豊かな胸元がぎゅうと身体に抑えられてひずむ、ひゅうとした吐息を抑え込むみたいに、左手が、その喉に触れたなら】
【まるで生きているかのように精巧な蛇の入れ墨がそこにあった。――――そうして、そんな人間はこの世に二人と居なかった。居たらたまらなかった。"だから"】

――――つ、ぅ、……。

【――やがて少女は、そんなにも吐きたいなら吐けばいいって言って聞かすみたいに、指でも突っ込もうとするんだろう、】
【そうだとしても出るようなものは何もないから、余計に苦しいばかりなのだけど――あるいは何かに追い立てられるみたいに、必死な目をして】

/予約のやつです……


507 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/02(木) 00:36:15 wPVmNhnU0
>>506


【コンクリートジャングルを包み込む狂騒的な熱帯夜。ライフルの一つでも構えれば、それは直ぐにでも立派な密林航行に早変わりする筈だった。】
【それでも誰もそんなことはしない。肚の中に収まってしまった獲物はただ蕩けるのを待つしかない。ただ狼狽えていればいい。】

【 ──── 路地裏の奥から現れるのは、人影だった。ひどい熱量に包まれた世界の中にあって、それは顔以外の肌を晒していなかった。】
【真っ黒いゴシック・ロリータに全身を隠して、幽けき指先さえも絹のグローブに覆い隠し、その顔貌は雪融けに似て瑞々しく儚い乙女の白皙。】
【然してそれは凍り付いていた。朝陽に晒されて溶け行く1秒だけを切り取ったような表情。冷たく、そして温かく、故に全ては偽りの仮面。】
【ローファーの足音をゆったりと響かせて少女へと近付く。眼鏡の奥に光る、青い双眸。真一文字に結ばれた唇。震える手で彫り出した仮面のように、笑っていなかった。】


「 ──────………………。 」「 ………… いい気なもんだよね。」


【少女の側に立って、そいつは呟く。ごく冷ややかな囀りだった。 ─── 男に媚びることを知っている声だった。それでいて今はただ冷たかった。】
【ごく自然に懐から引き抜かれるマチェーテ。ぎらり煌くその切っ先、 ─── 青い瞳の輝きを宿すそれが、少女の首筋へと突き付けられる。】



「大丈夫、じゃないよね。」「 ────── だったら、さぁ。死んだら、死ねたら、楽になると思う?」



【問い掛ける。抑揚を抑えてこそいたけれど、 ──── 隠せない忿怒が渦巻いていた。だから、少女が一つ頷くのなら、そいつはきっと】
【 ──── されど実のところ、絶対に傷一つ付けたりはしないのだろう。そういう呪いにかかっていた。詰まる所は八つ当たりに等しかった。】


508 : 名無しさん :2018/08/02(木) 01:38:12 NvWga9pI0
>>507

【――――え゛ほ、と、また、濁った咳をする。そこまでしても何も吐き出せなかった、かえるみたいに胃まで吐けたら良かったのに】
【だから早々に諦める。唾液にぬめった指先は適当に壁にでも擦り付けておく、別に何の意味もなかった。儀式みたいなものだったなら】
【指についた謎のコケをもう一度壁でこそげる。――わずかに呻いた、めまいがする。頭が痛かった。軽度の熱中症、と思わせる症状は、けれど、】

【――この少女がここ数日、あるいは、"あの日"以降、ずうと蛇念を垂れ流し、世界を塗りつけるようにひたすら歩き回っていることを知っていれば、また、別の予感をさせて】

【眩暈でちかちかする目の焦点を必死に合わせる。それは相手が少女の横に佇んで少し後、ちょうど、首筋に鋭い刃を添えられた、頃であり】
【焦点のわずかにぶれた視線が相手を見やるのだろう、――であれば。彼女はいくらも遅れて差し向けられる得物を認識するのだ。けれど、それを、殺意とは思わなかった】
【本当に殺す気であったなら――わざわざこんなふうにする必要はない。あるいはそうやってやると悦ぶ変質者、という可能性も、否定はしきれないけど】

さあ――――、死ねたことが、ないです、から……。

【――それでも。すらりと真っ白な指先がその切っ先を掴んで逸らそうとするのだろう、当然生身ではなかった、その指先に、薄く薄く、阻害の魔力を纏わせて】
【ゆえに刃はおそらく肌まで届かない。――あるいは特殊な得物であったなら白磁器の指先を深く深く致命的なほどに抉るのだろう。その程度の力は、こもっていたから】
【しかしそうだとしても少女は苦痛の声を上げなかった。溢れる血も最低限だった。――相手はその理屈をすぐにたどれる。ただ、それは、あくまでIfの道筋ゆえに】

――――――――誰、ですか? 私、今、忙しいん、ですけど……。……八つ当たりだとか、お礼参りなら、別の場所でやっていただけないですか――?

【ぼうとした目が相手を見上げて。そうして尋ねた、――忙しいようにはあんまり見えなかった、苦しげでは、あったけど】
【そして何より八つ当たりはともかくお礼参りともなれば彼女宛の要件に違いなかった、――ふざけているのではなく。けして辿れぬ相手の意味を、せめて解すべく】
【――そしてそれでなお敵意を感じるようなことがあれば、おそらく、その時こそ殺そうとするのだろう。――――そういう予感がした、あるいは】

【そうなったときこそ"彼女"の八つ当たりが始まるんだとも思わせて】


509 : エーリカ ◆D2zUq282Mc :2018/08/02(木) 12:56:27 JY1GydDk0
>>505

【少女の言葉に耳を傾けていれば、共感できる言葉が散見していて】
【それが故にエーリカの口は多少だが軽くなる。"――ほんとだよ、そも底なんてとうの昔に突き破られてる"】
【外部の人間が軽く触れただけで"底なしの闇"と評される程に水の国の闇は際限が無い】


別に、いつも酒に溺れてる訳じゃない。……まぁ魔境なのも、今現在酒に溺れてるのも否定しないケド。
公安なんて尊敬する程のモンじゃないよ。正義を謳って行う事が自分達の思惑にそぐわない奴らの"お掃除"
お掃除係としてじゃ無くても公安に身を置いてれば、外も身内も何考えてるか解んない宇宙人たちに囲まれてる気分さ。

……それにジャンジャン飲もうと言うのなら元からその心算。だからそんなに急くんじゃないよ。
それに三等書記官殿の奢りなんだろう?血税から捻出されるお給料で飲む酒は格別に美味しいだろーねー。

――それは置いといて。アンタ、どんな闇を垣間見て、触れたんだい。取りあえずご愁傷様とだけ。
……"魔王(サタン)"だなんて尋常じゃあない。私が生まれ育った国に"魔王"が居るなんて身の毛もよだつ気分さ。


【"そんなのに遭遇したら酔いが醒めるよ"――とややおどけて見せて少女が"魔王"と評するモノの正体を探る】
【酒の酩酊効果からか?エーリカの目は少しとろん、として。付け入る隙をちらほらと曝け出しているその折――】

【男女の密会の様な所作で、睦み言を口にする様に妖しく耳打ちされれば――身体をびくっと震わせる】
【虚を突くような囁きと、その内容がそうさせた。つまり、エーリカが"黒幕"や"円卓"に関係する人物だと察する事が出来るかも知れない】
【突然の出来事に"わわっ"っと軽く狼狽した後に、視界に取られられるのは少女の歳相応の悪戯めいた笑み】


――…?それは初耳。"外務省"にはとんと疎くてね。一応公務員だけど何分、管轄外。
都合のよいお言葉が湯水の様に湧き出る回る官僚サマには"殆ど"縁が無いんでね。
(――国に都合の悪い官僚を殺す時にしか関わんないからだけど)

もし気分が良いならそこら辺"唄って"みせてよ――って顔赤いよ、酔っ払ってんの?

【にやり、と薄く妖しい笑みを口元に浮かべるも直ぐに少女を案ずる表情に変わる――恐らく、これが素のエーリカ】
【"……あまり大声出さないで欲しいんだけど"と小言をチクリ。けれど頼むものは頼むのであって】
【少女が問いに答える頃には、ヴァージン・メアリーと呼ばれるノンアルコールカクテルが二人に提供されるだろう】


510 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/08/02(木) 13:24:11 SoSuQiSQ0
>>500

【──── 無粋な手際であった。円舞曲を誘うのには微塵たりとも適していない、殺し文句の一つも足りない】
【けれども彼女は来るのだろう。左右に大きく揺れる、振り子の作用に似ていた。やがて辿り着く収束の如く】
【少女は貴方のホームに脚を運ぶ。手馴れた足取りであった。通い慣れた通学路を、ゆっくりと歩く姿に近い】

【或いは平日の昼下がり。早退した帰り道に、鈍行列車から眺める青々とした木漏れ日の風情の様に】


──── 組織の一員にしておくには、"キレすぎる" 印象を受けたです。フリーの探偵やらジャーナリストで居た方が余程大成したでしょう。
古今東西、ありとあらゆる文献が彼の様な存在を "傑物" と表現し、その須らくが悲劇的な最期を迎えてるのでごぜーます。

懐刀は少々なまくらであった方が使い勝手が良いのです、特に組織という枠組みに当て嵌めるなら、余程そうなのでしょう。
まぁ、それは貴方にも言えた事でごぜーますけども。組織の長という立場を考慮したなら、些か幸運かもしれません。


【モニターに表示される銀髪の少女。リーイェンの言葉は、相変わらず慇懃無礼で、それでいてゴトウの総評を簡潔に表す】
【交渉した相手をここ迄賞賛するなど珍しい。きっとボスはそう思う筈だ。現に彼女の中でゴトウの評価はかなり上に位置する。】
【──── そこに肩を並べるのは、『公安三課』の頭脳、百家 羅山。そして、『公安三課』を率いる課長】

【加えて、目の前で相対する『サクリレイジ』のボスぐらいであった】


しかしまぁ、ゴトウの端末と比べると殺風景な中身です。セキュリティも何も無いじゃねーですか。鍵のかけ方は教えたでしょうに。
それにまた作業中のファイル消したでしょう、幾ら物覚えが良いからって万が一を考えるべきです。
その様子だと、口説き文句の一つぐらいも覚えてないのでしょう、ゴトウの爪の垢を煎じて飲ませてやりてーです。

──── お小言はここまでにしましょう、後でzipに纏めて送るです。
サクリレイジの今後について、話し合うのでしょう?


511 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/08/02(木) 13:38:37 SoSuQiSQ0
>>504

【ええーっ!! 見ます見ます、だなんてぴょこぴょこ、猫耳(エア)がふさふささくさく】
【がっとテーブルに乗り出して、じーっと食い入るようにスマホの画面を見つめる】
【きゃーっ! だなんて桃色の声、黄色い声援を着色料で塗りたくった様なパステルカラー】


わーっ!!! なんて素敵なおじさまなんですか!!?? 鵺ちゃんのぬえぬえレーダーがばっちしー反応しちゃいますよ!!
ダンディズムが爆発して此処がグラウンド・ゼロですよ!! そりゃせいちゃんも憧れるってもんです!!

てゆーか、せいちゃんの美形っぷりはお父様譲りなんですねー、エウレカエウレカ!
しっかし、美形と美形が結婚して美形が生まれるプラスのサイクルは羨ましすぎてマジアヴァロンです。
鵺ちゃんも次があったら、クールビューティなお姉様に生まれたいものです


【席にちょこんとついてはぁーと大きなため息、最早言葉が乱れ過ぎている様子で】
【消える気配に勘違いかななんて思うけど、その所以を辿るに、それは不安に近く】
【──── 暫し考え込む様相を見せて、悟られないように笑った】


んまっ、可愛くって力持ち! せいちゃんは万能なんですね!
えーっ嘘ですよ、嘘! 鵺ちゃんが男の人でしたら放っておかないですよ、求婚ロード一直線です

そうですね、すっかり暗くなっちゃいましたし、親御さんも心配してますよ


【そう言って彼女はいつもの様に笑う、表情の切り替えは巧みであった】


512 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/02(木) 19:17:22 o6XMS57s0
>>508


【ありふれた軍用の山刀であった。少女の指先が刃の先を退けるなら、更に抑え込む力が加わる訳でもない。そいつもまた、それを了承していた。】
【炯々たる青い瞳は月夜に翳す蒼玉だった。それでいて自己鍛造するような熱量を帯びていた。白磁と呼ぶのに相応しい歯が忌々しく軋む。】
【濡羽色の黒髪、レースの端をひらめかせる立ち姿、あざやかに膨らみある唇、シャンプーと香水の織り成す人為の柑橘香、 ─── 花に喩えるには神経毒が過ぎていた。】


「 ────………… まさか。」「そんなことしたら、ボクが殺されちゃう。」
「ただ、そんなことしたって何も吐き出せやしないんだ。」「なら死んじゃった方がいいんじゃないか、 ─── そう思っただけ。」


【黒い布地の下に隠した革鞘に冷たい切っ先を収める。なればこれ以上の害意を加える積りはないらしい。もう一歩、歩み寄る。】
【閨所に誘うような声がささめく。そういう色調をしていた。それでも紡がれるのは遠回しな嘲笑。色付く頬を潔白そうに緩ませて】
【 ───── だというのに、肩を貸そうとするのだろう。長い黒髪に鼻先を埋ずもれさせるように。ゴシックの生地は魅惑的なくらい冷たかった。】


「どうせ、帰れる場所なんてないんだろ?」「 ……… 一晩くらいは寝かせてやるよ。」
「嫌だってんなら本当に殺す。」「眩しいくらい真っ白な首を刎ねてやる。」「したらキスマークを付けてやるのさ。」


【訳の分からないことを言っていた。ずっと彼女は意味の通らぬことを言っていた。よほど情緒が不安定であるに違いなかった。】
【 ─── どこまでも薄笑いのような声音は然しどこまでも真剣でもあった。少女が拒むなら始まるのは殺し合いに間違いない。】
【そして此奴はそれを厭わない。刃に肉を断ち割って、弾丸に内臓を侵徹させ、どちらかが死ぬまで続けるに違いなかった。 ─── 狼のように。】


513 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/08/02(木) 21:17:39 WMHqDivw0
>>510
切れ過ぎるのが剣なら重宝されるけれど、髭剃りが切れ過ぎたら逆に怖い。
だからと言って切れないのも困りものなんだけどね。


【ゴトウの評価に対して、男は余り上手くない例え話を返した】
【出る杭は打たれると評した方は良かっただろうか】
【とは言え、サクリレイジは言うの及ばず、外務八課も公安三課も例外なく、曲者揃いの組織だ】
【それをまとめる人間が凡愚では、話にならないだろう】


【と言いつつも、この男は切れ者と呼ぶには些か頼りない印象を受けるのだが】


君がそこまでの評価を出すと言うのは珍しい。
同じ立場の人間としては少し妬けてしまうものだね。
思えばゴーストライターもゴトウには入れ込んでいた。

初対面でそこまで入り込めると言うのもスキルの一つなのかも知れないな。


【話は戻った。ゴトウとの会話ログを受けての、今後の話だ】


ロールシャッハ、か。
虚神の遺伝子なんてものをを上手く扱えたのは、彼自身が虚神だったから。
――なるほど、筋は通る。


【嵯峨野=ロールシャッハであった事実は、別段驚くに値しない】
【前回の話の中でも、嵯峨野自身が虚神である可能性は示されていたのだから、当然予測して然るべき結論の一つだった】
【しかし、彼の目的となると、ここは推論を重ねなければ理解はできないだろう】


嵯峨野――ロールシャッハが何を目的としているのか。
そこを推測するには、嵯峨野とロールシャッハが今どうなっているのかを考える必要が有るね。


【そう言って男は片手を持ち上げて、まずは人差し指を立てて見せた】


可能性その1。嵯峨野は最初からロールシャッハであり、何の事情でこちらに来たのかは知らないが虚神に関する案件は全て彼が仕組んだことだった。
……だが、この可能性は余り高くないかな。
先に君に貰った嵯峨野のログを見る限り、あの!"提言"には嵯峨野の人間性を感じた。
あの時点で虚神だったとは考えにくいから。


【次いで、男は中指を持ち上げる。ピースサインのような手の形】


可能性その2。嵯峨野は虚神の深淵を覗き込む内に、その存在に恐怖し――それを触媒としてロールシャッハに乗っ取られている。
まぁ……これが最も妥当な可能性だろう。


【恐らく、嵯峨野の正体を知った者達も似たような想像をしているのではないだろうか】
【彼のINF財団と同じように、虚神達を利用したつもりで、いつの間にか後戻り出来なくなってしまった愚かな人間の末路】


【男は指は二本だけ立っている。不自然な形だろう。たった二例を挙げるのに指を立てる必要などないのだから】


あと二つ――仮定が有るのだけれど。
その前に、君に聞いておきたいことがある。
ああ、真実を調べてくれって意味じゃないんだ。ただ君の――"公安三課のリーイェン"としての私見を聞きたい。


【0と1の世界に住まう彼女に"私見"を尋ねるのは愚かなことだろうか】
【だが、そうでなくては意味がない。先入観は目を曇らせると言うが、今聞きたいのは、正にその先入観だったのだから】


514 : ◆9VoJCcNhSw :2018/08/02(木) 21:33:06 wn2rqSVw0
>>451

【地下の様子をもう少し詳しく記せば――黒い檻の中には椅子がある】
【木目の、温かい感触の椅子。女性はそこに座っていて】
【他には何もない。例えば楽器とか、手枷とか、食器だとか】

【まるで置物――"オブジェクト"としてそこに存在しているような無機質さ】
【或いはそれらが必要ない存在なのかも知れなかったが――】


「?? ??? ??????? ??????―― ?? ????? ????? ??――?」

                       「――っ、ぁ」


【最初に耳に届くのは理解不能な言語だった。しかし、すぐにそれは】
【「しまった」というようなニュアンスの、吐息混じりの言葉に変わる】

【相手の――つまり修道女の話す言葉を聞いての、その反応だった】
【そして暫し、黄金色の瞳が相手を見つめる。困ったように眉根が寄って】
【「苦しくならない?」と聞かれれば、かすれるような声で】


           「くるしい。」


【と、そう答えるのだった。少し辿々しいが、意味のある言葉】
【声色も澄んだもので、月夜の草原ででも唄えばさぞ画になるだろう】

【――その言葉をきっかけに修道女が短刀を振るえば】
【檻自体は単なる鉄製だったのだろう。その格子は容易に破壊できる】
【ただ、壊した瞬間に全身に静電気が流れるような感覚があるだろう】

【そして続くように響く"ドンッ!"という地鳴り。パラパラと塵が天井から落ちてくる】
【その塵が女性――少女と大人の中間だから、そう呼ぶが――彼女には触れることなく】
【まるで"無重力"であるかのように、周囲をふわふわと浮いて、ある程度離れると落ちていく】

【そんな光景を見せつつも、女性は中々檻から出ようとしない】
【出て良いのか迷っている。そういう反応なのは間違いなく、けれど同時に視線は修道女へと向く】
【「出てみたい」のか、「出して欲しい」のかは分からないが。少なからず、期待と羨望を自由な修道女へ向けて、待っていた――受け身なのが、玉に瑕だった】


515 : ◆9VoJCcNhSw :2018/08/02(木) 21:33:18 wn2rqSVw0
>>463


ええ、頭がよろしいようで大変結構です。
それから先日のニュースの件も、ジルベールさん含めて確認済みですよ

……まあ、最もあの大先生に「ジルベール」という符号を口にさせたのは
ハッキリ言って失敗だったと、私はそう思いますが。
なにせ、今まで表社会への露出を極限してきたわけですし……
こーんなに知名度の低い六罪王、まず居ないなんてレベルだったわけで。


【「そういう意味では、ちょっぴり失敗だったかも知れませんが」】
【「概ね、やり口には満足していたみたいですよ」】

【――確かに、ジルベール・デュボンという名前は未だ一般的ではない】
【それを誰でも耳に出来る情報資料とさせてしまった、それは落ち度である】
【が、しかし。聞くものが聞けば、確かに脅しとなる内容でもあった】
【〝ああはなりたくない〟――そう思わせる事ができたなら、100点だ】


……まっ、それはそれ。虚神にしろ、ダグラスなんていう前時代的なお化けにしろ
ジルベールさんとのやり取りも含めて、専門家さんにおまかせしましょ。
私はあくまで情報収集が主たる任務ですからねえ


しかしまあ、良いでしょう。結局、事件は現場で起きるわけです。
その現場で動く者同士、"仲良くやりましょう"というのは理解出来る話。
強固で強大な世界に挑もうっていうんですから、足引っ張り合ってる暇無いですし?

……で、どうやってそれを約束します?"契約"でしたら私、得意ですよ。
〝指切りげんまん〟とかご存知ですかねえ、櫻の方じゃメジャーなんですけど。

ふふ……それとも、覚書でも用意しましょうか。
ジルベールさんって元々お金貸しですし、信頼行為としては十分かと
まあ、ちょっぴり"効力"のある文言にさせて頂きますけれど……♪


【仲良くしましょう、じゃあそうしましょう。――と、素直に行かないのが厭らしかった】
【契約、覚書。協力するにしても、物理的な保証が欲しい】

【何もおかしい話ではなかった。ただあまりにも"しっかりし過ぎている"】
【この妖狐しかり、金貸しあがりの"王"然り。「勿論、応じてくれますよね?」】
【――なにせ、相手の方から振ってきた話なのだから。にこりと、妖狐は笑っていた】


516 : ◆KP.vGoiAyM :2018/08/02(木) 21:58:09 Ty26k7V20
>>486

…俺は悲しみに耐えられるようなガラじゃない。悲しまれるならそんなに幸せなことはないぜ。俺みたいなもんには。

命令?…そんな甘いモンじゃねえ、これは脅しだ。世界や未来や運命に銃口を突きつけて、そうするしかアンタも俺もない。
それに……あの娘は単なる賢いガキだ。オレたちのようなしょうもない事につきあわせたくない。
よくわかんねぇしさ。そのコンピュータとかそのへんのこと。…向いてねぇことはその筋に任せた方が良いしね。

【彼は対象的に携帯電話も電話機能しか使いこなせないような人間だ。スマートフォンなら電話を取ることも出来ない】
【それでも1人でブラブラと世界の真相を探って歩く。根底にあるもの…真実は普遍的なものだと信じて】

黒幕…か。ハハッ、えらいことを聞くね。

【彼は笑って、特にはばかる様子もなく答えるがきっと満足の行く回答ではないだろう】

それがわかれば苦労しない。きっと、アンタラの捜査線に上がってる人物も俺も掴んでる。誰を倒せば?
わかってたら、しょうもないチンケな賛同者を潰しに行ったりしない。徒労だ。だけど、一歩ずつやるしか無いんだ
…探偵だからね。すべてが終わるまで目についたものは全て潰す。

【それしかない。笑ってくれと自嘲して。敵はあまりにも多かった。重要な相手は強大すぎるし行方不明で名前しかわからない】
【だからといってそれ以外はあまりにも多くて。困難はその足取りよりも多く増え続け―――だが、戦うしか手段を知らない】
【全く絶望しかないまま、希望をずっと探し続けるその心境は一体どういうものなんだろうか】
【サングラスの奥の目は何処か遠くを見つめたまま、彼の答えは孤独と形容できるだろう】


517 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/02(木) 22:04:10 o6XMS57s0
>>515

【「そこも含めて"アイツ"は馬鹿な奴で ─── どうか、今ばかりはお目溢し願うよ。」申し訳なさそうな薄笑い。】
【最初から口を塞いでおくなり喉を潰しておくなり迂闊な事を口走らせぬ手段は幾らでもあった。そうしなかったのは、何となれば】
【実行者の個人的復讐が偶然に職務上の公開処刑という形を取ったからに過ぎなかった。とは言え斯様な些事は、この場の2人にとっては無関係なこと。】


「オレは殆ど生身だし、殺し合いは本分じゃなくてね。 ……… ウチにも"そっち"のプロフェッショナルは居るから」
「一先ずはそっちに任せておいて、何か有益な情報があれば伝えることにしよう。お互い、上手くやろうじゃないの。」


【だからやはり、その会話も横に置いておく。 ──── 続けるのは、今のふたりにとって重要な会話であって。】


「ご理解とご快諾をいただけて嬉しいよ。」「腹を割って忌憚なく色々と話せる誰かってのは、一人いるだけで有難いもんだ。特にこういう仕事では。」
「勿論、口約束で済ませようと言うつもりはない。」「親しき仲にも礼儀あり、ってもんだ。最低限の節度は必要だからな。」
「拳骨万回、針千本飲ます ─── 櫻の方には縁があってね。尤もオレのいた業界じゃ、"指切り"ってのはケジメの事だったが」

「 ──── 契約結構。」「アンタみたいに、艶で高貴な人と交わす約束なんて破れっこない。」
「破れっこないなら約束を躊躇う必要もない。 ……… 血判って訳でもないだろう。"どういう"遣り方にする?」


【 ─── ある意味で肝が据わっていた。やはりジークは笑っていた。それでも一つ、白々しい嘘をついていた。】
【この男は必要であれば誰の寝首を掻くのも躊躇わない人間であった。 ─── 広げられた彼の指が10本無事に揃っているのは、何もその誠実さに所以する訳ではなく】
【自分の指を落とそうとする人間の、然し首を先に落としてきたからに他ならない。無謀であるのか、蛮勇であるのか、自信であるのか。】


518 : ◆DqFTH.xnGs :2018/08/02(木) 22:04:41 Vjn6/NLU0
>>477-478

【は、とまた息が粗くなる。青年のしようとしていることが理解出来なかった。(こいつ)】
【(…………銃が、怖くないのか)──引き金に指がかかって尚、撃てなかったのは】
【こちらに歩み寄ってくる青年が、あまりに不用心が過ぎたからだった。スリットのような黒目が】
【じいと青年を見返す。彼が何を考えているのか。それを推し量る術を彼女は持たなかったが】


詩────?…………はぁん、なるほどな。あたしにもちったぁ分かってきたぜ
てめぇのその、詩とやらのせいだな?表の連中がおかしくなっちまってんのは

妙ちきりんな技術を持ってやがんのは黒幕連中だけじゃねぇって────…………


【──“その声”が聴こえた途端。ミラの表情が恐怖に染まった。強張り、引き攣り、ひゅうと喉が鳴った】
【だが数秒も満たないうちに、表情は変わる。様々な感情がそこにはあった。怒り。憎しみ。怨み】
【或いは、仄昏い悦びさえもあった。円城の緊張も、青年の苛立ちも彼女には関係がなかった】

【引き金に指をかけたまま、後ろを振り向く。誰がそこにいるかなんて聞くまでもなかったし】
【見るまでもなかった。三つ編みを視界に捉えるのと、引き金を引くのはほぼ同時だった】
【──撃ち尽くすだろう。弾倉に込められている全てを。何発入っていたか。8か9だった気がする】
【雑破な狙いではあったが、確実に相手を傷つけられるようにと胴体に向けて放たれた弾丸群】
【とにかく、撃つ。撃って撃って────かち、かちと空っぽの証が聞こえるまで、撃つ】


519 : ◆KP.vGoiAyM :2018/08/02(木) 22:19:24 Ty26k7V20
>>502

ま……・・やってみるよ

【煙草に火をつけて、考える。もう一人の自分。一体何をしに来たのか、何処に居るのか】
【未来はどうなっているのか。…少なくとも戻ってくるぐらいだからどうしようもない世界なのかもしれない】

オーラィ…探偵っつてもまともなもん探したことはないね。今んとこ見つけたのはさらなるトラブルぐらいだ
今回も…似たような結果になりそうだが…そうならないことを願うか

【薄く伸びた煙を吐き出して、悩みと共にまとめて天井のファンがかき消してしまうことを願う】
【だが悩みは実際には、タールと共に肺に張り付いて。クソッタレ、勝手に未来から来てるなら俺に一言言えってんだ】

―――おかわりはもらうよ

【もらうけど…あえてその先は言わない。謎なんて言うレベルもんじゃない。こんなの答えみたいなもんだ】
【全ての問題がこれぐらいイージーだった良いのに。メニューに有るものが中々いい値段することは知っていた】
【そしてそれを頼んだらどうなることも。そして本当に未来から来てたのなら『36年製造』のコインはこの時代で使えるのだろうか】
【それはタイムパラドックスには残念ながらならない。あるのは通貨偽造という重罪だ】

まあ、暇つぶしにもう少し聞かせてくれ。未来のことを。未来の俺が…俺か誰かが何故来てるかはいい
アンタはなんで“チンザノ・ロッソ”を追う?…未来はどうなった。なんとなく、見当はつくが
つーかそんな20年そこらで誰でも彼でもタイムワープできるようになってんのか?

それと、もう一つ。この時代で未来人を受け入れるような気の利いたホテルがあるのかも教えてもらいたいね


520 : 名無しさん :2018/08/02(木) 22:20:27 tM8UB5hg0
>>512

【――――、一か月と少し前に切り落とされた髪は、わずかに伸び出していた。そうしたならまた伸ばす気であると思わせた、綺麗に整えてあるけれど】
【短いままで維持しようってつもりはあんまりないらしかった。だから――好きなのだと予感させた。前の長さに戻るには、きっと、たくさんの時間が必要で】
【であればその時には全部が終わってるのかもしれなかった。あるいは誰かの命が終わっているのかもしれなかった。髪なんて二度と伸びなくなるのかもしれなかった、でも、】

…………。そうですか。じゃあ、いいです。……――死ぬつもりだなんて、ない……ですよ。
死なない練習はいくらだってしてきましたし、――まだ、やることが、ありますから……。

【淡い藤色はたやすく鮮烈すぎるほどの紅紫色を透かして見せた、どこかぼうっとした声はやはり不調を示すのだろう、ただ――話していくらか気は紛れたらしい】
【それならば一時的な体調不良なのかもしれなかった、――スズランみたいに甘くて涼しげな声。声量を抑えて吐息が増えてどこか低いなら、枕元に囁くのに似て】
【――まるで自分の知り合いと知り合いみたいな口ぶりをする、と思った。少なくとも自分の知り合いではない。あからさまに蛇教に関連する自分を殺して殺される、とは】
【――――よほど奇妙な言葉であると思えて、けれど、あるいはだからこそ、考えるのをやめる。何か好ましくない言葉を吐き出してしまいそうで。だから、】

【ただどこまでも死に焦がれてしまったみたいに冥い視線を向けて瞬く、――、やることがある。それのみが生きる理由だって、言うみたいに】
【ゆえに肩を貸されたときに少女はきっと不可解な様子で眉を顰める、甘い声で嘲られてもどうとも感じなかった、きっと互いに迷い子ならば】
【――そうされて/そうして、何か見つかるのなら安いくらいなのかもしれなかった。――だから、少女の身体は、きっと、同意の上にて委ねられるのだろう】

【甘い匂いがする。少女のみが纏うことを許される奇跡みたいな自然の香水。甘くてどこか酸いのに、シャンプーのあまたるい人工の香料、互いにそんな香を纏うなら】
【へたっぴで初心な青年なんて百人は卒倒してそのまま九十八人は心臓発作とかで殺してしまえそうだった。立ち上がった足元は、けれど、けだるいようにわずか引き摺り】
【細い身体はそう重たくはない。けれどよほど軽くもない。その豊かな胸元が、よほど不自然じゃない程度には柔らかで、――凍えるみたいにかすかに震える吐息の意味は】

――――……ううん、ありますよ、。私の、帰るところ……。私の、――私の、居る場所。小さくなって、しまったけど。
だから……取り戻すの、取り戻さないと……。みんながそれを待ってるの……。だから……。

私を殺すのはあなたじゃない……。

【――どうせ、と、紡がれる声に、けれど少女は頷かない。帰る場所はあると返した、――そして本当に、きっと、あるんだろう】
【だからこの少女はこんな場所で苦しげにえずいて呻いていたのに違いなかった。――うんと近くなった距離にてささめかれる声は、どこか、熱を帯びて】
【夢を語るようでもあった。けれど限りなく脅迫観念に追い込まれている人間のようでもあった。――小さな呟き。それにしても遠慮なく体重を委ねているなら】
【そもそも戦闘できるような状況ではないのかもしれなかった。だから適当なことを言っているのかもしれなかった。だけど、きっと、あるいは、――でも、】

【きっと相手には分かってしまうんだろう。この少女が誰に殺されてしまいたいのか。あるいはその時に誰を、まかりまちがって殺してしまいたいのか】


521 : ◆9VoJCcNhSw :2018/08/02(木) 22:52:56 wn2rqSVw0
>>517


おや、ご存知でしたか。それに必要性もご理解頂けるようでなにより♪
艷で高貴というお言葉も此処は素直に受け止めさせて頂くとして……
……では早速契約と参りましょうか。いえなに、遣り方ならお任せを。


【ふっ、と手を振るや、そこに現れるのは和紙で出来た二枚のヒトガタ】
【所謂"式神"というものだろうか。それをジークに一枚手渡して】


これは契約を互いの身に刻むもの。言うなれば血判状や手形のようなものでしょうか
条件を刻み、対価を記して体内に取り込むことで絶対的な契約となります。

……と、言った所で分かりづらいのは私も重々承知の上。
言うなれば互いの首に爆弾を掛けて、そのスイッチを条件付きのオートモードにしておくようなものでして。


【何処から取り出したのか、絵筆――ではなく便利な筆ペンを持つと】
【式神の頭に相当する箇所へ、耳と目、そして口を簡素に描いていく】
【なんだかてるてる坊主のようでもあったが、今度はジークへペンを差し出し】


条件は、今回であれば〝相互に相手を裏切らない〟とでもしておきましょうか?
そしてその条件――契約を破った際には、相応の対価を払いましょう。
私達は互いに誰かの目となり、耳となり、口となるもの。……であれば、その3つを対価としましょう。

見えず、聞こえず、語れず。ともなれば、私達の信頼など塵に同じ。
そうならないためにも絶対に約束は守る――あぁ、"裏切り"の定義がどうだとか
そんな七面倒な事は仰らないで下さいな。例え御本人が無自覚であっても
客観的に見て裏切りに相当すると"判断"されれば、結果は一緒ですから。


【式神――3つの器官を書き加えられた和紙へと、未だ指に残る傷から血を一滴】
【じわりじわりと染み込んでいくのを眺めながら、小さく小さく折りたたみ】
【小指の爪ほどのサイズにまで折り畳めば、ス、と机上を彼の方に押し置いて】


……既に術は掛かっています。私と同じように、対価と血を刻んで下さいな
そして良ければ、飲み込んで下さいな。……何も悪いことばかりじゃございません。
お互いの位置が近ければ近いほど、その身は熱を持つでしょう。固い盟約を交わした〝盟友〟として。……ね?


【単なる口約束では済まさない――其れは当然としても、やりすぎにも思える契約だった】
【裏切れば伝令や斥候としての命を絶たれる。それも、無意識であってもとまでなれば】
【例え洗脳だろうが催眠だろうが、どう在っても助け合う関係にある必要がある】

【重すぎる〝血の契約〟だった。だが、妖狐は切れ長の目でジークを見据えて微笑んでいる】
【式神に自らの差し出す代償を記し、血を染み込ませて折りたたむ】
【相互に準備ができれば、機を合わせて飲み下すのだろう、が――応ずるかどうかは、当然ながらジーク次第ではあった】


522 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/02(木) 23:44:14 smh2z7gk0
>>509

―――まぁ、誰かが汚れなきゃ現状維持もままならないのが今の世界だからね。
まさしく四面楚歌ってね、やっぱり大した人だねオネーサン。

そうそう!今飲んでるのは氷の国の皆さんの税金で賄わえてる!心して飲もう!

〝魔王〟は〝魔王〟だよ。この国の怪物が厄介なのは単純な武力ではない〝力〟があるからさ
武力だけならウチの国も軍事産業が盛んだからそれなりにやれるけど、ここまで策謀に秀でた怪物達はそうは見ない。

【探りを入れてくる相手に対して、あくまでも〝魔王〟という表現しかしない。】
【それは比喩なのか、それとも特定の個人の事なのかは分からない。】
【どちらにせよコニーは〝水の国〟の内部を脅威と取れているのは間違いない。それは外交上危険な状況でもあった】

【耳打ちに驚く相手を面白そうに眺める。それはどこか好意的な視線だった。】

(悪いねジーク、〝切り売り〟させてもらうよ。)

まぁようはこの国の外務省には〝極秘部隊〟が存在するって事さ。
超法規的な力も持つ秘密機関―――特性上〝公安〟にとってはジョーカーになりうる。
けど立ち回り方によっては………まぁあとは自分で考えて探ってよ、〝公安〟なんでしょ?

【あくまで端的な情報だ、なぜならその組織とコニーは協力関係にあるから。】
【だが今後の情勢によっては〝水の国外務省所属〟の執行機関は氷の国としては邪魔になる恐れがある。】
【それを鑑みた上で情報を流した。エーリカの反応を伺いたい思惑もあった。】

【最後の言葉はどこか煽るような口調と表情だが、すぐに「酔ってらいよ?」とにんまりと笑う】
【そして新しく出された〝ヴァージン・メアリー〟を口へ運ぶ。】


523 : 真諦院 ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/02(木) 23:53:52 smh2z7gk0
>>511

―――ぬえぬえレーダーって何?
というか意味不明な言語になっているが大丈夫か?というかそんなキャラだったか?

【早口で乱れる言葉の嵐に若干引きながらも冷静に突っ込みを返す。】
【自分や自分の肉親が褒められて悪い気はしないのだろう、口元には小さく笑みが浮かんでいる。】
【やはり何も気が付いていない、未熟。それは今のこの国で正義を貫くには致命的だった。】

ハハハ、俺も男だったら鵺みたいな花嫁が欲しいな。なんてな。
良ければ送っていくよ、家はこのあたりなのか?まぁ遠くても全然かまわないんだがな。

【「ちなみに俺は寮だから、あ、ちゃんと一人部屋だぞ?」】
【と苦笑しながら立ち上がり、手早く会計を済ませて止めてあったバイクに跨るだろう。】
【そして鵺にヘルメットを手渡そうとしながら問いかける。どこか名残惜しさも感じさせる表情だ】


524 : エーリカ ◆D2zUq282Mc :2018/08/03(金) 14:49:52 JY1GydDk0
>>522

(―――……酒に酔わせて聞き出す事も出来るけれど。相手は他所の国の書記官、ましてや未成年。
 得られるかも知れない成果につり合わないリスク。これ以上の情報は得られないか)


【若年にして書記官の肩書きと力を得ている少女。そんな人物をして看過出来ない程の力を持った"魔王"】
【少女の口ぶりから読み取れるのは、"魔王"と評するに値する者達がこの国に巣食っていると言う事】
【そして黒幕か円卓か。コニーが接触した人物――"魔王"と評した者がどちら側なのかが問題であった】

(果たしてその魔王サマ達は、何処に居るのかな。 どちらにせよコイツがこの国を危険視している事には違いない
 ――あーあ、酒飲んでるのにいつの間にか意識が仕事モードに切り替わってら。笑ける)


……超法規的な秘密機関、か。――全く、官僚の爺ィ共の頭蓋を叩き割って頭の中を見たくなる。
管轄だとか手続きとかをさ。小姑の如く細かく決められて、そんな狭い枠組みの中で四苦八苦してるのが馬鹿らしくなるよ。

ああ全く以て厄介だよ。そんな奴らに介入された日には血も涙も出なくなる。ヴぁー、ってなる。
けれども、降り掛かる火の粉を呆然として受け入れる程に為す術が無い訳でもないよ。書記官サン。

まぁ外務省謹製の超法規的な組織ともなれば、その矛先は"公安"だけじゃなくて諸外国にも向けられるだろうね。
「お国の為にならない」のであれば、国内外問わずでしょーね。目に見える抑止力よりも性質が悪いよ、ソレ。

【外務省直属の超法規的な"極秘部隊"とその存在を作ったであろう官僚、音頭を取った見知らぬ人物への毒吐き】
【自身が公安所属であるが故の言葉。自身が所属する公安五課も法に背いた行動を取れるが、流石に法を超えた手段は取れない】

【シニカルに歪む目付き。吐き出した"毒"の後に湧き上がる不平を鎮めるように"ヴァージン・メアリー"を一気に飲み干した後】
【少女の酔っ払いの装いに対して、"まだまだ飲み足んないよ、もっと飲むんだろう?"と人の悪い笑みを口元に浮かべた】
【それが証拠にエーリカは"ブラッディ・メアリー"を二人分注文していた――"メアリーはキッツいから精々酔わないようにね"と付け加えて】

【けれど少女に提供されるのは先程と同じ"ヴァージン・メアリー"である。店主である大男は未成年に酒を出すつもりが無い様であり】
【静かに、そして厭世的な表情はそのままにエーリカを睨むのであった――"バカな真似をするんじゃない"と】


525 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/03(金) 21:40:39 o6XMS57s0
>>516

【「 ……… ま、お墓に5000弗紙幣くらいは、供えといてあげるよ。」やはりそれは、酷く遠回しな励ましに違いなかった。】
【そいつは酷い皮肉家であり冷笑家なのだろう。冷たい仮面を被っているのだろう。だから時折その唇からは、白く煙った呼吸が漏れるのであった。】


「 ─── ウチの課長みたいなこと言うんだから。」「戦うべき人間だけが戦えばいい。ボクもそう思う。」
「戦うべきでない人間が戦わされて酷い目に遭ってきた試しをボクだって幾つも知ってる。 ……… だから、ボクたちは」
「ただ銃口であり続けるだけだよ。守るべき人々を守り抜く、 ─── 許されているのは、そのための力だ。」


【信頼と呼ぶには打算的な関係性に過ぎるが、 ─── 世話になる以上、迷惑はかけない。暗にそいつは、そう誓っていた。】
【単なる政治屋の手先ではないのかもしれなかった。曲がりなりにも正義感を持ち合わせていた。正しいか間違っているかは別として。】
【真白い顔貌に浮かんでいるのは年頃の乙女の微笑みであった。蜜の声音は甘くて苦い。青い瞳は清々しくも透き通っていた。】


「 ……… そりゃそうか。昔ながらに脚で探すって訳ね ─── ふふ、刑事みたいだ。」
「だけどアナタの嗅覚は本物だ。少なくともウチはそう見込んでいる。点と点を結び付ける能力がある。」
「 ─── 組織として、どこまで役立てるかは分からない。けれど、伝えられる情報は出来るだけ伝えておくよ。」


「ボクの連絡先だ。何かあれば、何でも聞いてほしい。」「 ─── どこで下ろすのが都合いいかな?」


【手渡されるのは、 ─── まったく真白い名刺。民間軍事会社を名乗る、言葉にしない嘘に塗り固められた経歴。】
【それでも彼女の名前と私的な連絡先だけは本物だった。ミレーユ・ミスゲシュタルト=ストレーン。それが、そいつの名前。環状道路は既に降りて、セダンは都市部の公道を宛もなく走っていた】


526 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/03(金) 22:56:49 o6XMS57s0
>>520

【切り落とされた髪のことをそいつは詳しく知らなかった。ただ記憶にはあった。一時期の同僚が寂しそうに零していた。長い方が似合っていたと。誰が似合うとは伝えずに。】
【長い長い濡羽色は絶えなき光輝を宿していた。微かにカールした先端は雄の汚らしい所を擽るのに適した形をしていた。オーガニックと呼ぶような甘いシャンプーの匂い。】
【整えられた真っ直ぐな眉端が微かにひくついた。少女の言葉に応じたようでもあった。耳許に閨所の囁きを与えられて感じるほど、もう子供ではなかった。】
【少女がたっぷりと身を委ねるゴシックロリータの布地は恐ろしく滑らかで冷たかった。奥に秘めたる飾らぬ肌地も同じように心地いいのだろう。 ─── ただ】
【細部の身体付きや膚の下にある骨格は間違いなく女のものではなかった。なればこそ奇妙な"ひとでなし"に違いなかった。彼女の知る誰かと全く同じように。】



「 ─── キミのこと、ずうっと待ってる誰かのことは差し置いて、か?」



【責めるように溢す一言。吐き捨てるように紡がれる一葉。書損じとして破られる類の嘆きに違いなかった。そう分かっているに違いなかった。】
【然し青い呼吸を止められない。理由を問うなら腹立たしさが為なのか、 ─── 自身が背に負う、誰かのよく知った温もりと柔らかさは、確かに爛れた肌を擦り合わせるに相応しいと思ってしまったのか。】



「死ななかったら救われて楽になれる。」「死んだら解放されて楽になれる。」
「最高の二択だよな。我儘で手前勝手なガキ。こんなのに惚れる奴がいるとして、そいつの気が知れないよ。」
「話してるだけでムカついてくるな、 ─── 少しは期待してたが、呆れた話だね。何もかんも遅すぎるっての。」
「世の中には自分の居場所があっても帰れない奴だっているんだぜ。そういうのにさぁ、申し訳ないとかさぁ、思わないのかね本当、理解に苦しむよ実に、 ───── 。」



【花蕊に似て艶めく唇はネオンの輝きを映していた。そこから溢れる乙女の甘いささめきは然し繰言に過ぎなかった。鼻で笑いながらも何処かで内心を持て余していた。】
【所詮は投影に過ぎなかった。単に立場が似ているだけの他人への八つ当たりであった。貴女はなんて恵まれているんでしょう。だから憐憫をくれてやれだなんて言わずとも】
【 ─── 或いは故にこそ、たちが悪かった。遠回しな陰口と本質を同じくしていた。横顔、透き通るような桃色の頬、どうしようもない欠落を薄笑いで誤魔化すように。】




「 ───……… キミが待ち望んでる誰かさんは、」「キミを楽になんかしないよ。分かってるだろうけど。」
「だったら聞くよ赤頭巾。──── キミが行こうとしているのは、」「針の道かな?」「ピンの道かな?」



【だから夢見る少女の理想も明日もブチ壊してやるのが相応しかった。さもなくばブチ壊されてみたいとも思っていた。意味深な暗喩に込められた他な心は虚無に近い。】
【 ──── 馬鹿にしているようで、馬鹿にしてくれと頼んでもいた。ともあれローファーが行くのは路地裏の奥である。仄暗い闇の一番深い場所。】


527 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/03(金) 23:28:30 o6XMS57s0
>>521


【ふン ─── とジークは、満足げに息を漏らした。そっと顎先を揺らして頷く。】
【確かに重い代償に違いはなかった。だが少なくとも、彼が見たことのない代償ではなかった。不始末のけじめとして、耳を落とす/喉を潰す/目玉を抉る。】
【身体ひとつ捨てれば済む話であれば良心的な対価であった。少なくとも、交渉屋としては。 ─── 自身の"異能"と関わり深いものであったのは偶然だろうか、とも思いつつ】


「 ────………… 然るにオレたちは、ある意味において一心同体って訳だ。」「全く上等、恐悦至極。」
「 …… 然し、一つ訊ねておきはするが、 ─── もしもアンタが、この手の契約を"破棄"するような力を持っているとするなら」
「どうか抜け駆けなんてのは止してくれよ。何せ半生ほどは義理と人情だけで口に糊してきたんだ。 ……… 御容赦願うぜ。」


【 ─── 然しそこだけは釘を刺す。契約の主導権を握られていることは自覚しつつも、幾らでも嘘なぞ吐けると理解しつつも】
【目耳口を描き、懐から取り出したナイフに指先を傷付け、赤い血を垂らし、 ─── ごく小さく折り畳んで】
【そうして凡そ躊躇いなく紙片を飲み下すのだろう。程なくすれば、互いの距離を意味する熱量に、彼は微かに呻くのだろうか。】


             「 ……… ッ。」


「 ─── くく。確かに、悪いことばかりじゃないだろうな。」「アンタがオレを殺せるなら、オレもアンタを殺せることになる。」
「主従って訳じゃあないだろう?」「 ─── 何れにせよ、これからは色々と気の置けぬ付き合いをお願いするよ。 ……… お互い、"裏切り"のないように。」


【それでも、 ─── 顔を上げるのなら、穏やかに笑っていた。灰色の深い瞳が、妖狐の細められた双眸を見返していた。】


528 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2018/08/04(土) 01:43:21 IBKicRNQ0
>>168
【軽い言葉に、重々しい頷きで返す。彼らにも己の知らない歩んできた道のりがある。それだけの話だ】
【正義よりも悪よりも、その根に抱える何か。彼らのそれが何なのか、気にならないといえば嘘になるが】
【少なくとも、この場における自分の立場と引き換えにするほどのことではないだろうと判断する】

ふ、ふ。隠し撮りのつもりがお二人にカメラ目線を向けられたとなると、その相手も寿命が縮んだだろうな

事実として需要があるなら、止め辛いのも仕方ないか
私と別れた後も、早速店を開けてどこかへ旅立たれていたようだが……
彼の冒険譚も面白いものが揃っていそうだ

【後半のつぶやきは聞きつけたが、特に突っ込むことはない】
【文字通りの悪魔の悪戯など、迂闊に触れて良い領域ではないのだ】


それは当然だな。世界が違えば、何もかも違う
同じ世界ですら、少し空間を越えた先でまるで違うものが広がっているのだから
一つの世界の文化に精通するというだけでも、相応の時間との労力は必要であったことだろう

【己が追い求める力の行きつく先は、いずれ異世界すら盗賊仕事のターゲットとする。そのような大それた考えすら抱いていた】
【それを嘲笑うかのように、神のいない悪魔の世界で、悪党に罰を下したのは偶然という名の神だった】
【もっともらしい頷きが相当量の髪の中に埋もれて。チェーザレのキラキラオーラも、ジュゼッペの悪ふざけオーラも、髪を隔てて感じ取りつつ】
【ただ棒立ちで、己の運命の前に身を晒す他はなかった】

(漫才コンビの素養もありそうだな、この二人は……。天然カニバサミボールペンって何だ……)

【視界が完全に暗闇に閉ざされているので、二人のやり取りは声でしか聞こえない】
【間接的に雑誌の袋とじに救われたとは知る由もなく、手渡された二本の救い主を握り込む】

ありがたい、助かるよジュセッペさん
自己なのはよく理解しているとも、チェーザレさん。そう気になさらずに

【言いながら、すきバサミと普通のハサミを交互に使って増えすぎた髪を片付けていく】
【無理やりに重たい髪を持ち上げて視界を一時確保し、部屋のどこかにゴミ箱があればそこに移動してから】
【当然、素人なのでただ切り落とすばかり。数分後には、顔面は見えるものの全体的に長さがちぐはぐな珍妙な髪形の肉屋が完成する】

よし……これでどうにか大丈夫だ。いや、お騒がせした
名残惜しいが、そろそろお暇しようかと思う。恐らくは、半分以上は時間が過ぎているだろうからな

【至極真面目な顔でそういうカニバディールは、髪型とのアンバランスでやはり滑稽であった】


529 : 名無しさん :2018/08/04(土) 01:50:47 FvGovUsA0
>>526

【――――蛇教が現役であったときから彼女はずうっと、身繕いだけは欠かしていなかった】
【殺すつもりにしか見えない"実験"を"修行"と言い換えられ押し付けられても。何度死にかけようとも、どんなときだって、彼女は自分をきれいにしてきたなら】
【それはまたある意味での信仰なのかもしれなかった、――たとえば真夏にゴシック・ロリータを着るような。自分自身を信じるための、儀式みたいに】

…………――、

【ふつ、と、微かな吐息。それは相手の言葉に反応してだったろうか、それとも、何かに気づいたみたいに】
【あるいはどちらもであった、――これは男だ、と、微かに思って。だけど同時にほとんどどうでもよかった。下手に虚弱で取り落とされるよりは、ずっと】
【そしてまた同時に"誰"のことを話しているんだかを考えてもいて、そうして、気づいてしまいたくないから、なんにも、全く別のことを考えても、いるんだろう】
【――つまりひどくぼうっとしているのに等しかった。ちりぢりになった思考回路が曖昧に揺蕩っていた。あるいは、書き損じを破り捨てること、慈悲にて赦すのに似るのか】

――申し訳ない。

……どうして、ですか? 可哀想だと――思うことも、ありません。
正しいことをしていれば、……神様は、見ていて、くださるの、"楽になる"ために私たちは励むのではなくって……。

…………さっきから、誰のことを話しているんですか。せっかく、伝言を――頼んだのに……。

【ぽつり、と、呟く声がした。なら、それは謝罪なのかもしれなかった。――そんなはず、なかった。四分休符を一つ挟んで続く言葉は、ひどく、ぼやけて】
【そう思う方法を忘れてしまっているみたいだった。――きっと分からぬはずない感情だった、だけど、もう、磨り潰されて、摩耗しきって、思い出せないのだと思えたなら】
【あるいはそう振る舞っているだけなのかもしれないけれど。――だって悲痛に掠れる声で紡ぐのだ、一度"失敗"している彼女はきっと立ち止まれなかった、そうじゃないと、】
【自分のしてきたこと全部に押しつぶされてしまうんだろうから。正しいって言葉は強すぎる麻薬と同じもの、時として、限りなく痛みを消してくれる】
【だから飲み干すしかなかった。どんなにつらくても頑張るしかなかった。正しいから。――正しいから。これが正しいから。ほかは全部、間違えているから、って】
【そして間違いなく自分が恵まれているとは思っていなかった。誰かにくれてやるほどのものを持ち合わせているだなんて思っていなかった、】

【――――ゆえにこそ続く声はきっとひどく悲しげであるのだろう。それかどこか絶望したみたいな声だった。委ねた身体の腕にきゅうと力がこもる、――だから】

あなたは私の狼じゃない。

【縫い針も、留め針も、選ばない。――きっと厳密には違った、"彼"の言葉で選ぶつもりがなかった、だって、その配役は、違うから】
【けれど彼女は楽な道を選ばないとも、思わせた。そうしているうちに狼は先回りして、大事なものを壊してしまうって、きっと、知っていた】
【そうしたなら大事なものの残骸を食わせられて。無垢色の服を自らの手で脱ぎ捨て燃やすことを強いられて。そうして。そして。朝まで赦されないことを、分かっていた】

【狼は赤ずきんが寄り道して眠っている間に先回りして待っていた。そうして、少女の中にあった大事なものを、粉々に砕いてしまって】
【そうしてひどい言葉で傷つける。より一層を自分で曝け出せというみたいな言葉を選ぶ。そうして燃やされた感情がどれだけ泣いても、眠ることさえ赦さなくて】
【――馬鹿にしなかった。その代わりに、取り合おうとも、してなかった。ただそれでも奇妙な甘たるい声をしていた、微かに嘲るように、それでいて、慈しむように】

可哀想に――死にたいんですか? 殺してあげましょうか? 真っ白な首を刎ねて――そしたら、キスしてあげましょうか?

【――――あるいはずるずるに剥けた生身の心を擦りつけて、その痛みで自分を保とうとするみたいに。あるいはささやかな八つ当たり。言われてばかりは気に食わない】
【それとも似たものを感じたのかもしれなかった。だから言ってしまっていいと思ったのかもしれなかった。――揶揄うみたいな、リップノイズと吐息が、ささめいて】


530 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/04(土) 01:56:29 smh2z7gk0
>>524

おや意外や意外。てっきり公安さんもかなり無茶なやり方かと思ったよ。
とはいえ、それなりに〝打つ手〟はあるようで安心したよ。

―――仰る通り、私にとっても目の上のタンコブになる可能性はなくはない。
だから期待してるよオネーサン。ね?

【カウンターに肘をつきながら不敵に笑う。公安として貰えればコニーにとっては僥倖だった】
【〝外務八課〟とはすでにパイプラインはある、エーリカが外務八課を突っつけばエーリカの素性も手に収める確率があがる。】
【とはいえそううまくいくとも思っていない。どこか適当に、だが念を押すようにアイスブルーの瞳で見つめた。】

まとめるとどの国も権力者に振り回されるのは同じって事だね〜。程度は違えど
まぁ悲しき宿命を背負った公務員同士また飲もうよ〝オネーサン〟

………今日は〝これぐらい〟がいいんじゃない?

【なぜか勝手に話をまとめながら大きく伸びをする。】
【そして勝手に同族のように扱いながら新しく出されたヴァージン・メアリーを口にする。】
【―――〝これぐらい〟。お互い素性を完全に明かしていないのは明らかである。その上で此度は切り上げようとする】
【これ以上踏み込めば互いに火傷をする、という配慮もあるのだろう。】
【「マスターもそろそろ怒りそうだしね〜」とマスターに向けてウィンクする。】


531 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2018/08/04(土) 02:26:08 IBKicRNQ0
>>152
ふっふふふ!! なるほど……やりたいこととやるべきことが一致しているとは、羨ましい限りだ

【軽口をたたきつつ、お互いに送る観察の視線は無遠慮なままなのだろう】
【異形の男にとっては、確かに悪党も肉屋も生き方であり、生業であり、生き甲斐でもある】
【両方を兼ねているのは、パグロームと一致を見るのかもしれない】


ああ、きっと退屈しない時間が過ごせるだろう
折れてはいないが……相当派手に〝曲がって〟はいるからな。ある意味では、カルト時代以上に

【肉屋の方の声音は重々しかった。脳裏に蘇る病室の記憶。今なお、狂気と信仰を秘めた彼女の、ウィステリアとマゼンタは焼き付いている】
【結果的には自分の行動が、それを引きずり出してしまったともいえる。表情は苦々しかった】

悪事をやっていれば、それだけ醜聞が耳に入るからな
そして醜聞こそが最も食いつきのいい餌だ。ただの善人では、報道業界は務まらないことだろう

ああ……乗り込んだ時はそうしてやろうかとも思ったのだがね
どのみち、殺すことは叶わなかったが……それ以上にお前の言う通り、全く食指が動かなかったよ

サーバントどもの味のひどさからして、嫌な予感はしていたが……。あの女の肉は、悪食な私の舌ですら拒絶したくなる不味さだった
〝修行〟で摂取したのだろう毒の苦みに、あの年齢で幾度も悪環境に身を置いたかのような経年劣化の如きエグみ……

何より……お前ならよく知っているだろうな? カルトに性交は付き物だ。あの雄の臭気……危うく吐くところだった
あんなものを店先に並べるほど、私は肉屋として落ちぶれてはいない

【パグロームの予想はほぼ当たっていたが、一つだけ外れていた。仮に彼女の命を奪っても、異形はその死肉を扱いはしなかっただろう】
【意外なほど感情を表に出して見せるカニバディールの顔は、今度は苦々しいものに変わっていた】
【「あれほどの上等な肉が、カルト修行のおかげで台無しだ。勿体ない」などと、愚痴っぽく呟く】


戦う前から術中に嵌める……フン。私のような盗賊がやるならいざ知らず、神を名乗るにしては随分と姑息な手口だ
確かによく出来た仕組みだよ。レッド・ヘリングの工場で見た、彼奴等が元居た世界の連中が残した資料なども
向こうの財団とやらが、彼奴等の罠にかけられた軌跡でもあったといったところかね

ふ、ふ。そうだな。私にも、そう言ってのけそうな者に心当たりはあるよ

【そう、物事はシンプルな方がいい。悪党が面を突き合わせるならなおさらだ】
【だから、その内側の信仰は見せない。パグロームが腹の底全てを見せないのと同じように】

敵の姿もわからなければ、対策の打ちようもない。当然だな
神と恐れるのは愚の骨頂だが、こちらの領域にまで引きずり込むには定義づけは必要となるわけだ

そうだろうな。自分の弱点足り得るものを、わざわざ次元を超えて持ち込む馬鹿などいまい
ふむ……相当に強固な自我があって、なお危険ということかね
虚構現実とはよく言ったものだ。そこを行き来させられるというだけで、お前も規格外だろうがな

まあ元々私は人というには異形に過ぎるが……それでも別人に変質するなど御免だ
だが、対抗策がすでにあるなら……安全の保証など、私に言わせれば世界のどこにもない
彼奴等を潰すのに必要だというのなら――――

【飄々とした彼の態度にも構わず。是の答えを返そうとした時。店内に着信音が反響した】

>>334
【律儀に一言言って電話に応対するその様だけを見れば、一端の社会人にも見えそうだ】
【が、やはり闇の住人だ。そこで成される会話は、発する気配はこんなにもドス黒いのに、同時にこんなにもあっけなく行われる】

……何やら状況が変わったようだな。相手が相手だ、何が起きても不思議ではないが……

土産――――何? そのジャ=ロの正体を探りにこれから……いや。そうか
こちらの理が通用しない場所となれば、〝時空が少しばかり前後しても〟おかしいことはないな

【彼がかざすスマホの画面を一瞥して、異形は頷いて見せる。未来からのメッセージ、すなわち虚構からのメッセージを】


となると……少なくとも、目的の一つは達せられたわけだ。楽観視できるとも思えないがね

【先の不穏な連絡と併せて、異形の表情は険しいままである。己が手をこまねいている間に、あらゆることが進行しているような感覚を覚えながら】


532 : アレクサンデル・タルコフ ◆ZJHYHqfRdU :2018/08/04(土) 03:24:11 IBKicRNQ0
>>159
【そう、救いはなかった。少なくとも、彼女にとっての救いは。あの少女は、意図してそうしたのか。〝神〟の御心を知る術などない】
【ただ蛇の赦しを請うた少女が、ここに迷っているという事実が因果の流れにぽっかりと空いた、この穴の中に浮かんでいるばかりだ】

【それを知ってか知らずか、それでも因果の中の司祭はただ穏やかに彼女に相対する】
【そのとめどない涙も、繰り返される謝罪も、ただ共にその場にあることで受け止めながら】
【四肢がないにしては、入れたコーヒーは悪くない味だろう。その温もりが、彼女の救いには程遠いとは知りながら】
【司祭もまた、神でありながら祈っているのかもしれない少女と同じように、そうすることしか出来なかったのかもしれない】


【彼女は蛇に赦されなかった。信じたものは達せられず。同志たちはもはや亡い】
【だというのに、終わってはいない。なんと残酷なことだろう】
【鈴の音の神は応えてくれない。虚神たちは答えはしない。下へと落ちていく視線に、零れていく涙に、その救われなさに】

――――ムリフェン殿……

【司祭の声音にもまた、僅かに悲痛な色が混じる。ともに狂信に身を捧げた司祭が、その身の上に同情などと】
【第三者が知れば、怒りと嘲りをぶつけただろうか。しかし、たとえ神が忘れても司祭自身が忘れはしない】
【この異形のダルマ男は、やはり狂信の徒なのだと】

【今や暗闇の中で孤独に苛まれるただ一人の少女に。因果の渦から外れた、もはやカルトも虚神もある意味では関わりのないこの場所で】
【自然かつ異質に、彼女の前に座るこの壮年の男が、狂ったカルトの司祭であったことが、果たして彼女にとって幸か不幸か】
【まともな人間なら、きっと不幸と即答するだろう。後の彼女と浅からぬ縁を結ぶことになる、サイボーグの女性だったとしてもそう言うだろう】

【しかしここはまともな場所にあらず。現世にあらず。狂った司祭の夢の跡なり】


……貴女は、そこにいることが出来なかった。ならばそれは、我々も……いえ。私も、同じなのでしょう
私は知っていますよ、ムリフェン殿。貴女がまだサーペント・カルトに来たばかりの頃、失礼ながら貴女はまだ普通の少女でした

しかしながら、貴女は数々の修業を、儀式を乗り越えてオフィウクスにまでなった。何故そこまで出来たのか
貴女は誰よりも敬虔で、誰よりも真摯に、ウヌクアルハイ様のお赦しを求めておられました

私のように職務のためではなく。サビク殿のように選ばれたがゆえにでもなく。誰よりも救いを求めて
ムリフェン殿……そんな貴女が、そのために誰よりもウヌクアルハイ様のためにあった貴女が
儀式の……そう。〝儀式の失敗〟の責を、負わされる道理などありましょうか

儀式が破れたということは。それすなわち、儀式を取り仕切る役目たる私の咎が誰よりも重くて然るべきでしょう

【この時ばかりは、司祭もまた不敬の罪を彼女と共に犯した。司祭たる者が、儀式に失敗し、それを認めるなどと】
【しかし、そうせずにはいられなかった。彼女の知る結末を察したから。その上で、彼女がきっとただ一人残されたことを察したから】
【その上で。この司祭が狂っていたから。この少女を地獄から解放しようと尽力する善人でもなく、彼女を愛し抜こうと誓ったサイボーグでもなく】
【カルトの教えと共にその生涯を使い果たした、狂った司祭だったから。このダルマ男は押すのだ。取り残された彼女の背を、更なる闇に】

/続きます


533 : アレクサンデル・タルコフ ◆ZJHYHqfRdU :2018/08/04(土) 03:24:24 IBKicRNQ0
>>159
【彼女に咎がないとは言わない。彼女がすでに背負い込んでいるとわかっているからだ】
【オフィウクスにあるまじき溢れ出た言動を責め立てもしない。彼女が根は臆病だとわかっていたからだ】
【その上で、司祭は〝勇気づける〟かのように言うのだ。死人でありながら、残された彼女に。怯えた少女に言うのだ】

許されざるは、私です。私がすでに、因果の渦から堕ちたのならば。そして、留まっているのがムリフェン殿しかいないのならば
己が成すべき職務を、貴女に託すしかない。願うしかない。そのような私こそ、許されざる者です

ムリフェン殿……失うということは、全てが無に帰した時。その時、初めて失われるのです
貴女はまだ失ってはおられない。ウヌクアルハイ様が貴女をお赦しにならなかったのではありません
私の失態が、そして儀式の神聖を侵した者たちが、そうさせたのです
貴女はまだ、終わっていない。喪っていない。赦される資格をなくしたわけではないのです

【言いながら、右手の蛇を掲げる。その中に淡く光る何かを差し出す】


ムリフェン殿。どうか。どうか――――

【それに触れることは。後戻りが出来なくなると言うことだ。彼女に、更なる重荷を背負わせるということだ】
【司祭はそれをやるだろう。この男は狂っているからだ。少女はどうだろう? 彼女がまだ、己の意志で狂っているのなら】
【それに触れるかもしれない。因果の蛇を過去に未来に伸ばし、因果を拾い集めて凝縮したそれを】
【すなわち、あの日マルタで起きた出来事の彼女が知らなかった記憶と。司祭の持つ禁術の継承を。かえでに〝押し付ける〟ことになる】


534 : 名無しさん :2018/08/04(土) 04:03:06 FvGovUsA0
>>532

【――――ひぐ、と、吐息が詰まる。感情が固形になって喉に詰まってしまったみたいな声をしていた、仕草は必死にそれを吐き出すようにも、飲み下すようにも似て】
【だからそれが苦しくって泣いているのかもしれなかった。――呼ばれる声の悲痛さに悲鳴をあげたくなる、気づかないでほしかった、なにも、何もかも】
【けれどそれが赦されないことは分かっていた。それでもなお、奇跡のような一瞬を、"こうして"使うことに罪悪感がないではなかった、もっと、――もっと、】

【大丈夫です、と。私がすべてやり直すから、と。言えたなら。どれだけ良かっただろう、そんなにも強い子だったなら――それだけ、良かったか】

――――私、は。私はっ……。勝てなかっ、――っ、なのに……。死ぬこと、も――、できなく、っ、て、
生き残るのがあなたであればよかった。……贄は慣れた人間ならっ……、集められるの、に。でも。儀式は。あなたにしか。
どうして……どうして――、――っ、私は、すごくない! すごくない、です、なにも……私は……。

――あの人を殺すことさえ、出来なかった、……できるって、信じてた、本当に、そのときに、なったなら――っ、
出来るって、……ううん、しないといけない、だから、――できる、出来る、て――、なのにっ、……なのに、なのに!
そうしたら。そしたら。誰も私に微笑まないなんて。そんなの。……どうでも。よかった。……よかったです。よかった、のに。
"こう"なるより、ずっと、よかったのに……――ウヌクアルハイ様が、みんなが、居たら……。

【相手が察したのを、少女もまた察する。だからいくらも遅れて、言葉を紡いでいくんだろう。勝てなかった。死ねなかった。――すなわち、何も、成らなかった】
【儀式の成功はなく、そして、死ぬこともなく。おそらく救われたのだろう。敵として相対した人間に。誰か一人生き残るのが運命だったなら、それは、彼であるべきだった】
【両手にて顔を覆い隠して泣く。もはや視線も向けられなかった。つまるところ浅からぬ縁になってしまった人間を殺せなかった、という、懺悔なのだろう】
【――まして、その言葉に惑ってしまったのだと言って。そうして殺せなかったのだと思わせた、誰にも微笑んでもらえない世界を、少女は、恐れてしまったのだと】

――――――――違う、ちがいます、……ちがうの、わたし……。私が。私が、正しいことを、出来ていたなら、……。

【そして彼女には引け目があった。そういう個人的な感情に乱されたこと。惑ってしまったこと。その結果自分だけが生き残り、そして、儀式はついえた】
【それが誰かにとって成功であったかは興味がなかった。――彼女にとって失敗だった。それのみで充分だった。小さな子供みたいに、どうして、って、呟くばかりで】
【――――ぎゅうと身体を縮めて嘆く。そうやって世界から逃避する。だからこれは悪夢だった。罰に違いなかった。罰だと言ってほしかった。……なのに、】

――――――――――――――――――――あ、

【――指の隙間からひどく潤んだマゼンタが彼を見るのだろう。見開かれた目の視線がかずか振れる、"その"意味が、深淵さえ語りつくせぬと理解して】
【けれど。同時にまた紡がれる言葉は甘美であった。まだやれることがあるなら。できることがあるなら。蛇のために、仕えられるというのなら。それは――それは、】
【終わってない。喪ってない。まだやり直せる。それらの言葉が考えだなんて容易く焼き切った、救いよりも罰が欲しかった。ただひたすら無慈悲でないと安堵できなかった】
【だから仮に救われてしまっては困ったのかもしれない。その先の行き先を喪ってしまうから。だから――ゆえに、今日で一番、安心したように、笑ったのだろう】

【――――左手を。あんまりに色鮮やかな蛇が刻まれた指先を。伸ばすのだろう。右手はまだ顔にあって、そうして、引き攣ったように笑う口元を隠している、】
【ひどく怯えた目をしていた。だのに口元は何より喜悦に染まっていた。指先が震えていたのは恐怖ゆえなのか、それとも、悦びのあまりなのか。きっと判断はつかなくて】
【だから、きっと、触れる。蛇より蛇が因果を受け取る。――それがどんなけの事実を齎そうと、それがきっと少女には必要な出来事だから】


535 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/08/04(土) 10:54:19 S/DUh6T.0
>>513

【──── リーイェンの心中は複雑であった。ロールシャッハと嵯峨野の関連性を示唆しておきながら、打ったのは後手】
【ある種それは避けられない宿命の様なもので、高らかに吹かれたファンファーレに近い】
【それでも尚、煮えくり返る腸に似た感情を持ってもいるのだろうか】


可能性その1に関しては、『限りなく除外』しても良い可能性だと思いますです。
提言の人間性に関しても同意です、あの冷徹な口振りからは、人間らしい矜恃が確認できます。
選民思想に代表されるエリートのエゴイズム、隠すつもりも無いでしょうね、自己の単位を人間の枠組みより上に置いているです

だからこそあの時点でロールシャッハであったなら、それは正しく人間性の敗北にごぜーます。恐怖が『人間』を理解する、それは即ち人類の知性に対する反抗にちげーねぇです。

──── それに、グランギニョルの役割を任せるには、嵯峨野一人では役者不足です。全て彼が仕組んだなんて、陳腐すぎるでしょう?


【それでも尚、確実に無いと言い切らないのがリーイェンの矜恃であり、同時に落とし切れない贅肉に近い】
【1と0の境目に無限にも近い試行を重ね、その結果に所以する感情に似た憐れみを持つのだろうか】
【それはある種の反芻の如く、挙句に見える虚数解をも、時として正に感じてしまう帰結】


可能その2はある程度の筋が通っていますです。『恐怖』を触媒とするというのは、これまでの『ジャ=ロ』の例から想定できます。

けれども、──── ええ、『けれども』 私にとっての私見は少し異なりますです。

そもそも、嵯峨野が『恐怖』を触媒としたのであれば、その原因は『虚神』に寄与するのでしょうけど、
しかし、一体どうして、唯の "調停官" たる嵯峨野が『虚神』について知り得たのでございますか。

深淵を覗くには、その深淵を知らなければならねーです。深淵の渡し守である "サクリレイジ" ならば、兎も角、────


【リーイェンの言葉が止まった。オーバーアクセスに挙動が遅くなる所作に近い、暫し彼女は無表情のまま思考を繰り返す】
【或いはそれは、無限にも近しき静謐であった。白百合から零れる夜露が、湖へと代わるのを待つ程の永劫】





 【そうしてその帰結に、彼女は一つの源泉を導き出す】




──── 嵯峨野だけじゃねーです、私達、──── いえ、正
確にはボス、貴方は、『いつから』虚神を認識していたです?
古い文献や、資料もありますです。 "サクリレイジ" の活動が、遥か前から行われてきたのは 『草の国』のインシデントからも証明できますです。


私が聞きてーのはそうじゃないです。もっと単純で、もっと素朴な疑問です。私達の認識は、何処を原初として存在し得たのか、────




─────── いえ、そもそも、私達の認識すr──────z________




<WARNING><WARNING><WARNING><WARNING><WARNING><WARNING>

<Emotion-in-Text Markup Language:version= 1.2 : encoding=EMO-590378?>
<!DPCTYPE etml PUBLIC : -//WENC//DTD ETML 1.2 transitional//EN>
<etml:lang=ja>


</ERROR>


<invalid access>



<DESTROY>
<Rebuild>
<Until>
<God> // God = imaginary
<Shows>





──── それで、残りの二つはどうなってるのですか?



【けれども、其れは一瞬であった。その合間に静寂はなく、不自然な会話の流れは釈明され、リーイェンは返事を待つ】
【そこに何があったか、誰も認識できない。そう合ってしかるべきであった】


【──── 貴方を除いて】


536 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/08/04(土) 11:02:48 S/DUh6T.0
>>523

【鵺はぴょこぴょこと後をついて行き (会計はまかせました)ヘルメットをすぽっと被りながら、言葉を返す】


んまっ、そんな風にしてからかうのダメですよ! ほんとに貰っちゃいますよ?
せいちゃんを旦那様に鵺ちゃんはお嫁さんに、良妻賢母で御付き合いして差し上げますが故にっ
なーんて思うだけは勝手なんですけどねっ、そこばかりは少し勿体なさを感じますですけど!

そーですね、『水の国』のフルーソ駅に送ってくださったら助かるのですっ
流石に鵺ちゃんのお家まで送ってもらうのは悪いですしっ!
あんまりおそくなったら、寮とかも門限あるでしょう?


【何度か言われても強硬にいやですーと言うだろう。結構家を知られるのが嫌なのかも知れない】
【交渉が成立したならちょこんと後部座席に座ってゆらゆらと送られていくはずだ】


/こんなところでしょうか! お疲れ様でした!


537 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/08/04(土) 12:17:11 WMHqDivw0
>>535
ゴトウについては、こちらでも手を打っておいた。
私の能力はある種のインチキでね。
ただ、インチキなだけで"出来ることがない"

それを活かせると言うのなら、それは私でも、私の認識範囲に存在するサクリレイジでもなく、この世界の人間に他ならない。


【独り言のように付け加えた。或いは、それはリーイェン以外の誰かに言っているようでも有って】
【話はロールシャッハに戻る。リーイェンの言は当然の疑問だ】
【最初からロールシャッハでなかったのだとしたら、嵯峨野はどうやって虚神を知ったのか?】
【先の会話に出た<hymn>値、これは明らかに人間が扱うための概念だった】
【リーイェンの予想の通り、これが虚神への触媒の指標となっていたのだとしたら、嵯峨野はロールシャッハとなる前に虚神の遺伝子とやらを扱っていたことになる】


【思索している間に、リーイェンの声は神妙なものになっていた】
【彼女には感情が有る。人間として思考できる。それが0と1が生み出した錯覚だとしても、"観測"としてはそうあるべきだ。故に――】


──────────────────────────────────────


【彼女には人間と同等の扱いがなされる】


【"権限不足"だ。リーイェン】
【まだ虚神と言う存在がこの世界に表立つ遥か以前から、サクリレイジが対INFオブジェクトのための活動を開始していた"矛盾"】
【そこから派生した推理は、成り立たない。それは因果が途切れており、破損した現実なのだから】
【"その先"を想像し、突き詰めようとすれば、こうなる】


【――ああ、しかしこれは面白いな】
【私の扱うものとは"文法"が異なるが、意味は見て取れる】
【深く読み解けば、或いは虚神達を理解する一助にもなろうが――】
【それを現実で語るほどの権限は彼にも与えられていない】


──────────────────────────────────────



【不自然な空白などコンマ1秒とて存在しなかった】
【しかし、男は思考するように数秒沈黙しただろう】
【そこに違和感を感じる第三者も存在し得ないから】


ふむ――私の聞きたかった答えは、今君がほとんど言ってしまったのだけど。
それでも一応、声に出して聞いておこうか。


――嵯峨野鳴海は。
或いは彼一人では、不足だと言うのならば、公安三課が対峙して来た<harmony/group>は。


"その程度の器なのか?"


【男の表情は、淡白なもので、語る言葉は些か挑発的だった】
【ロールシャッハがどの程度の神格なのか定かではないが、シャーデンフロイデやジャ=ロと肩を並べるならば、それは恐るべき侵略者であるだろう】
【高々調停官の一人、遺伝子研究所の一つなど、容易く飲み下してしまうほどに】
【だから、嵯峨野が虚神を知り得た発端についてはともかく、嵯峨野がロールシャッハについて乗っ取られている事実にはかなりの確度が有る】

【だが、それでも尚、男はこの愚問を続けた】


虚神を知った以上は、INF財団の末路まで知っていたはずだ。
自分達なら制御できると高を括ってあっさりと飲み込まれ、自身の理想さえ、都合良く書き換えられてしまう。


嵯峨野が、君が語るようにその程度の男であるのならば、この二つ以外の推論は必要ない。
ロールシャッハの目的について検討する方が有意義だろう。


だが、かつての君は、"嵯峨野がこの基底現実で最も正しく虚神を認識している"と語った。
その理由は"嵯峨野自身が虚神だったから"

それで、君は納得行っているのかい?


【今度は、"行き過ぎる"ことはないだろう】
【男はそもそも、ロールシャッハの話をしていない。話題にしているのは嵯峨野鳴海と言う個人についてだった】
【彼女が、首肯すれば、この話はここで終わり、再び虚神の対策に戻るのだろうが】


538 : パグローム ◆KWGiwP6EW2 :2018/08/04(土) 13:03:01 WMHqDivw0
>>531
【――カニバディールに対して、インシデント"巡礼の年"についての情報を共有した――】


ウチのボスは偶にこういうことをやる。
理屈は良く分からんが、過去を変える、みたいな大層な真似ができるワケじゃあなさそうだ。
起こったことは変えられないんだとよ。

何にしてもジャ=ロ君の正体はこれではっきりとしたんだから、無駄に骨を折ることはねェさ。


【とは言ったところで、報告書を読む限りでは弱点らしい弱点の目星はつかない。レッドへリングやシャーデンフロイデには明確に弱点が有ったようだが】


期待できるもんじゃアないね。
大体、財団の報告書の後追いで、奴らを何とかできるんだったら向こうの現実滅んでねーだろ。

こいつを見る限り、滅ぼしたのはジャ=ロ一匹がやったことなんだろうが。
っつーか、こっちの"願いを叶える少女"とやらの方がヤバくね?

ジャ=ロは結局、こいつを殺したんだか何なんだか良く分からんが、最後のゴアイサツを見る限りじゃあ、こっちに来ててもおかしくはなさそうだ。
こいつが蛇神様なんてオチはねェだろうなァ?


【そう言えば、件の白神鈴音はある意味で不死の存在なんだとか。雑に読んだ報告書で読んだことが有る】
【符号が揃い過ぎてて逆に気に入らない結論では有るのだが】


っつーワケでェ……残念だが、俺が行ってもあの女は殺せねェようだな。
奴さん、次のインシデントでも顔を出して来るようだからな。

散々死に掛けたお陰で死なない術だけはきっちり心得てるってことだなァ?
あんなに折れ曲がってこの世に何の未練があるのやら。
つくづく宗教ってのは"度し難い"。

痛みに耐えろ、恐怖に耐えろ、空腹に耐えろ――なんのかんのと我慢させまくる、自然の摂理からは対極に位置する存在だ。


その結果、肉屋のお墨付きが貰えるくらい、不味くなるってんじゃよォ
ダメじゃねェか、ちゃんと食物連鎖のサイクルを守らないと、クヒヒッ!


あァ、でも良いか。
実はボスからアレを殺すなって言われてるんだが、"死なない"ことは確定してるんだから、俺は何も遠慮する必要ないってことだ。
それはそれで、やり甲斐もある。


――さて、何だかしらけちまったな。
悪巧みなら悪党に任せるのが一番だと思ったんだが。

【勧誘と言う目的を失った以上、ここに来た理由はほぼなくなってしまった】
【ジャ=ロの情報も共有したのだから、長居する必要はないだろう】
【皿の蛇料理もほぼ無くなっている】


あァ、その資料ビビりそうな奴には見せるなよ。
増えたら増えるだけ、ジャ=ロ君の思う壺のようだからな。


せっかく早目に情報が仕入れられたんだ。
上手い具合に料理してくれ。得意だろ?本業なら。


539 : エーリカ ◆D2zUq282Mc :2018/08/04(土) 16:47:37 JY1GydDk0
>>530

……期待には沿わないから期待するだけ無駄だよ、無ー駄、無駄。
期待するなら他のヤツにしなよ。私に期待したってアンタに齎せるものは、たかが知れてる。

【とは言えど。外務省の極秘部隊は気がかりだ。先ず、それが黒幕なのか円卓なのか】
【その両者で無いとしても超法規的な組織ならば、公安と極秘組織が衝突する未来もありうる】

【故に野放しにはしない。コニーの思惑に沿って、エーリカは齎された情報の真偽を確かめる】
【取り付く島の無い言葉をぶっきらぼうな口調で紡げど、コニーに重ねる視線の意味合いは異なる】

何処に行こうが人間に力関係なんてもんがある限り。振り回されるのは仕方ないさ。
公務員に限らず組織に属してりゃ誰だって力の有る奴に振り回されるのは避けられない。

そうだね、今日は"これぐらい"にしとこうか。コニー三等書記官サン。
異国の市民から吸い上げた血税で飲んだ酒は、また一味違って悪くなかった。

【いつの間にか主導権を握られた様な振る舞いに、顔色を微かに曇らせて】
【けれど停戦を申し出る言葉は僥倖だった。何分、腹の探りあいは不得手】
【若年でありながら書記官を務める少女には適わない気がしたから。尤も、殺し合いならば話は別だが】

【横目で少女を見遣れば、その先にあったのはバーの店長の仏頂面。流石に先の注文は拙かったか】
【だが雰囲気を醸し出すだけに留まるのは幸か不幸か。――確かに"これぐらい"なのだろう】


540 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/04(土) 21:18:16 o6XMS57s0
>>529

【であれば、"誰か"は何も信じられなかったのだろう。神も、立姿も、装束も、 ─── 信じていたのは、生か死か。それでいて自分の命さえ疑っていた。】
【だから傷付けることを喜んだ。だから命を奪うことに陶酔した。だから痛みと苦しみを受けて倒錯した。そして、蜜姫かえでは清々しいくらいに全てを満たしてくれた。】
【ともあれ反駁に"彼"は笑った。鼻で笑っていた。大嘘吐きだと断じて憚らないのだろう。 ─── 傷付くことが貴女の快楽なんだろうと。】


【故にして。続く少女の答えに、きっと彼は満足する。確かめたいけれど、確かめたくなかったモノを、確かに覗き込んでいた。カーマインレッドの唇を緩めた。】


「 ──── "そう伝えて"おこう。」

「だけどね。アイツは、キミみたいな生っちょろい覚悟で生きてる人間じゃない。」
「どんな絶望も罪咎も苦痛も、 ─── 丸ごと肩代わりして、背負って、それでも愛してやるって、憚らず言い放つような奴だ。」
「ボクには分かるよ。アイツだって立派な獣だった。血溜まりの中でしか生きられない手負いの獣。 ─── そういう所が好きだったのにさ。気付いたらコレだもんな。」


【やはり続く言葉は繰言だった。寂しそうに笑っていた。おもいで話の語調であった。それでいてボクはキミより"誰か"のことを良く知っていると言いたげだった。】
【互いに互いの言葉へ与することはないのだろう。ただ上っ面を聴きながら嘲笑うだけ。理解にも諒解にも程遠いまま。それが一番であったのかもしれない。】


「だが、驢馬が旅に出た所で駿馬になって帰ってくる訳じゃない。」「人の皮を被って人と隣合わせで生きる狼だって同じことだ。」
「然らばとっとと御終いにすればいいのさ。得てして童話ってのは残酷だ。 ─── 人と関わりを持った獣の物語には必ず不幸な結末が訪れる。ボクには、解る。」

「アイツはキミを幸せにしたりしない。誰かを愛するのも誰かを狩るのも同じことなのさ。」
「追い込んで、脚を潰して、肌を裂き、牙にかけ、激情のまま貪ることしか知らない。そういう奴だ。」
「 ──── 絶対にキミは"殺される"。キミが望もうと、望むまいと、どんな形であれ。 ……… だったら、首だけは洗っておけよ。もう、逃れられやしない。」


【断頭台へ歩み行く死刑囚を憐れむような言葉だった。それでいて、既に"そうされた"ことがあるような言い分であった。 ─── なれば思わせるのかもしれない】
【彼もまた狼の牙に生殺しの目に遭ったことがあるのだと。幾ばくかの失望と諦念と、然るに、少しばかりの嫉妬もあるのだろうか。だが、そんな事は空想に過ぎぬかも知れず】
【 ──── 確かな事実としては絶望ばかり膨れ上がるのだろう。狼はいずれ嗅ぎつけてくるに違いなかった。少女の柔い肌に牙を立てて心まで抉るに違いなかった。つまり彼は治らぬ生疵を覗き込んで北叟笑んでいた】


「 ……… キミみたいな半端者とは違うのさ。」「死なせたくない子ならいるよ。」「殺してやりたい奴も。」
「優しい優しい娘さん、 ─── 手伝ってくれるとでも言ってくれるのかな?」「蛇に絞め殺されるなんて願い下げる死に方だね。」
「キミの敵でもあるのに違いはないが、キミの敵であるボクに手を貸す理由もない。違うかな?」


【そしてまた爛れた疵口を重ね合うのに似ているのだろう。艶めいて冷たい声は殺意に満ちていて、 ─── それでいてどこか自嘲と諦観を隠していた。】
【深い深い路地裏の闇、とあるビルの裏口にて彼は立ち止まる。電子錠をアンロックすれば、非常階段のすぐ隣、荷物搬入口のエレベーターに乗り】
【 ─── どこかの廊下、関係者以外立入禁止と記された扉を躊躇いもなく開けるなら、そこは彼のセーフハウスなのだろう。ありがちなワンルームマンションの一室に近い。】
【「先ずシャワー浴びて。汚いし。」憚りもなく言ってのける。私室の見えぬ玄関口でさえ、化粧品とか、香水とか、石鹸とかシャンプーとか諸々の甘ったるい匂いがした。】

【 ────── ただ、パンプスだのローファーだのニーハイブーツだの、どうにもあざとい靴が並ぶ玄関には】
【しかし靴箱の上に一足だけ、他の靴よりも幾分かサイズの小さい、バレリーナの履くような真っ赤なハイヒール。上質な磨き布を下に敷き、後生大事に置かれていた。】


541 : 名無しさん :2018/08/04(土) 22:24:58 co6voZSk0
>>540

【傷つくことは分かりやすかった。罰であり慰めに似ていた。それに――本当に本当に辛かったら、彼女はそれを感じずにいられたから】
【だから目をそむけたくなるような修行にも耐えられた。半ば能力の限界を探るための好奇心に付き合わされるみたいな修行にも、ずっと耐えてきた】
【だから生きていたしだから歪んだしだからここに居る――逃げ出すこともなく死ぬこともなかったのがきっと不幸だった。それに耐えられてしまう身体だったことが】

………………、……――――――私だって、そうじゃない。

【いくらかの沈黙が横たわった。歩調によってだけれど、三つ四つ、多くて五つくらいは数えられるかもしれない程度、彼女は、黙っていた】
【であれば伝えておくという言葉に黙りこくったに違いなかった、それならばきっとひどく不確かな顔をしているのに、違いない】
【それはきっとボトルメールを流す気持ちに似ていたんだろう。到底言えるはずない言葉は、けれど、届かないって信じているから、書き記せても】
【確実に暮らしているって知ってる住所に送り付ける手紙ならいくらか内容は推敲されるしすべきだろう。――眼前の彼は確実に届く手段だった、だから、】

【いろんな不満をひっくるめる声が、そうやって言い返す。――それぽちで言葉はまた途切れて、】
【伝えられるあんまりな絶望に、その代わりにぎゅうと腕に力を籠めるのだろう。ともすれば泣き出してしまいそうだった。その意味までは、よく分からずとも】
【幸せになりたいのかもしれなかった。だけれど確実であるのはそんなの赦されるような人生ではなかった。溺れる頭を水面に足で沈められるような死に方が、きっと、似合っていた】
【そのくせきっとほんとは一番夢物語みたいに幸せに死にたいに違いなかった。たとえば大好きな人の腕の中で眠るように死にたいだなんて、思っているに、違いないから】

【(――自分を助けてくれようとする暖かさを母親と間違う、あるいはそうあってほしいと願うくらいには、彼女は"そう"であり、)】

…………、蛇は、狼なんかよりずっと綺麗に殺すんですよ。息を吐く瞬間に、絞めるだけで、――嘘みたいな力なんて必要もなくて。
さあ、――――分からないです。誰も、何も、教えてくれないんだから……。

【――それでもちょっとくらいは気に障るところがあったのかもしれなかった、ぐちゃぐちゃって噛み噛み殺すようなのとは、違うからって】
【幸せになりたいのとおんなじくらい自分はそんな風に死にたいに違いないくせに――もっとずっと美しいから、と。――声音を辿るなら、きっと、微かに笑んでいた】
【吐息交じりの笑み。であればどこか自嘲めいた響きを孕んで――続く言葉へのグラデーションの最中だったのかもしれない、呆とした声が、限りなく、ほどけていったなら】

【――――、「汚く、ないですよ」。きっと悲しそうな顔をしたのだろう、芋虫から大事に育てた蛹より羽化したのがよく分からない蛾だったときのような、顔】
【それでも促されれば従わないわけでもないし、――それでもわずかにふらつく足でもたもた靴を脱いでいたなら、きっと、赤い靴にも気づく。――話題には、しない】
【髪が長かった頃に比べて全部が済むのだってうんと早い。髪が短くていいことなんて、すぐ乾くのと、安上がりなくらいだった。それ以上に、長い髪が、好きだった】
【あるいはそんな長い髪をきれいに維持している自分が好きだったのかもしれない。それも信仰の一つなんだろう。自分を好きでいるための、理由】

【ともかく――ボディーソープもシャンプーもトリートメントも借りるなら同じような匂いにはなるんだろうか。誰かの空間に混じりこむ異分子が、溶け込むように】
【ただもともとの服を着るなら無意味かもしれないけど。よっぽどサイズが大きい服とかでないと男物は入りそうになかった、遊びのない服に入れるには、その胸元は柔らかすぎて】


542 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/04(土) 23:24:09 o6XMS57s0
>>541

【幸いなことに彼は随分と凝り性であるらしかった。 ─── レースのブラジャー、シースルーのショーツ、甘い色合いから大人びた風合のものまで】
【豊かな胸元の膨らみはパッドのお陰だったらしい。クローゼットには詰まる所いろんな服があった。簡素なシャツからビジネススーツまで、ことロリィタには御熱らしく】
【スイートもクラシカルもゴシックも替えを含めて同じモノが何着も揃っていた。 ─── 無論ながら普段着に困ることもない。何を選んだとして、咎める事はないのだろう。】
【然して男の着る服は一着もなかった。左様な生き方は古着回収の日に捨ててしまったに違いなかった。甘ったるい煙草の匂いが、少しだけ、染み付いていた。】


「 ─── ゴハン、食べる?」「食べないならそれでいい。」「でも生憎で悪いけど飲み物は炭酸水しかない。」
「ベッドも一つしかない。」「 ………… ま、掛けるものくらいは貸すから、ソファで寝てくれ。」


【そうして身形を多少なりとも整えて彼の部屋に入るなら、そこはリビングだった。調度品は皆んな出来るだけ淡いピンクと白だけで織り成したような色合い。】
【如何にもメンヘラ御用達のアルバム群がCDラックには並んでいて、ゲームセンターで取ってきたらしい人形がそこら中に置いてあって、真白いドレッサーは引出しが半開き】
【 ─── 然し、低いテーブルの上には銃弾が散らばっていた。無造作にナイフやライフルが飾られていた。ゴミ箱を少しでも覗くなら、赤褐色に汚れたティッシュで一杯。】
【ビッグシルエットのTシャツだけを着て、彼はキッチンに立っていた。パスタを茹でていた。その横ではオリーブオイルで和えた何かを炒めていた。】
【欲しいのならば炭酸水のボトルを投げて寄越す。暫く待つのなら、2枚の真っ白い皿に盛られたペペロンチーノ、2人分を持ってくるだろう。ご丁寧にパセリまで散らしてあった】
【忌憚なく述べれば、そのままSNSに上げるだけでバズりそうな出来だった。 ─── クッションに座り込めば、冷蔵庫から酒を取り出す。スミノフアイスのグレープフレーバー。】


「飲むかい。そんなキツくない奴だけど」「 ─── あと、煙草吸ってもいいかな。」


【青い瞳で彼はそう尋ねる。自分の部屋だというのに。ともあれ食べるものは食べるのだろう。少女が食べないというのなら、そのままラップして冷蔵してしまう。】

【机の上、写真立てが一つあった。一枚の古い集合写真が収まっていた。どこかの軍の基地、なにかの格納庫の前で撮ったもの。軍服を着て3列に並んだ、数十人の兵士たち。】
【 ─── その最前列。やたらに背の高い銀髪の女と、幾分も背の低い黒髪の美青年が、肩を組んで笑っていた。想い出の中の"彼女"は、どこか有るべき居場所を知るように、穏やかに笑っていた。】
【自棄っぱちのようにして、既に彼は数本のボトルを開けていた。昔話をするには十分な酔いの回り具合に違いなかった。然れど、想い出は想い出のままだからこそ、美しいのかもしれず。】


543 : 名無しさん :2018/08/05(日) 00:05:01 co6voZSk0
>>542

【そういった服を全く着ないではなかった、けれど"そこまで"本格的なものは、そう着ない。着るとしてそれこそ"姫"みたいな恰好、より一層、重篤な方の】
【ゆえに何か求めて開けたクローゼットに少女はわずかに口を噤む、――がちゃがちゃと感慨なく、けれど皺にしないように漁るときには、すでに、高そうだな、とか思っている】
【適当に見つけたシャツを羽織ってボタンを留めようとする。まだ虫を捕まえてないハエトリソウみたいにボタンとボタンの間が開いたから、勝手に戻した、一応綺麗にかけて】
【――そもそも"外じゃない"室内できちんとした服を着るという感覚があんまりにあんまりだった。本音を言えばもっとどうでもいい服が欲しかった。だから、】

【――――だからそれはほんのいくらかの反発心に似ているんだろう、拗ねた思春期みたいな顔をしていた、やがて姿を現すなら】
【くすんだミント色のワンピース。いくらか胸元に余裕を持たすためでもデザイン性を重視した編み上げにウェストはリボンで結わえて】
【ぷわりと拡がる裾は、手首のところできゅと絞られる、カフスのボタンはアンティークの古びた象牙の色合い、淵にあしらうレースも紅茶染めの質感】
【そろいのヘッドドレスも勝手に拝借する。ただそのくせ相手を気遣ったか彼女が嫌だったみたいにルール違反の素足をしていた、多分、下着とかも借りてない】
【あとは。まあ。おっきな胸元を収めようと思えば編み上げだのが都合が良かったというのも大きいのだろう。――ただ、すごいつんとした顔、してきたなら】
【藤色の薄い色合いはともかくとして、紅紫色の鮮やかさがちょっと目立ちすぎているみたいだった。――だなんて言ったら、もう少し、怒りそうな気がして】

【(いや、多分、怒っていないのだと思う。――ほんのちょっとの対抗心なのだと思わせた。何について、なのかは、よく分からないけど)】

…………食べます。でもそんなにたくさん要らないです。水道水でいいですよ。なんで誰も彼も単なる水をくれないんですか? ……いいですけど。
――別に、床でいいですよ。あと私もそういう恰好が良かったです。言ってくれたらよかったのに。

【甘い匂いの部屋に混じりこむ調理の匂いはなんだか不思議なものを感じさせた、オリーブオイルの風合いに目を細めたなら、別に、食べぬ理由も特にない】
【いくらかの毒物になら耐える自信もあった。――とは言い訳だったかもしれないけど。それでもたくさんはいらない。麺が茹だるなら水道は生きてますよね、と、】
【問いかけながらも別にながってくるペットボトルは上手に受け取る。炭酸印象を投げる無神経さにまではもう興味がなかった。寝床に拘りもなかった、だから、】
【強いて言うならそうやって自分はさっさと脱ぐなら教えてほしかったのに、と、――特に意味ない文句を漏らすんだろう、よく分からない気持ちが行き先を喪って】

……私、未成年ですよ。遵法意識はないんですか? ……煙草は、どうぞ。

【――あるいは。彼の知る限り彼女は何度か酒や薬によって朦朧とした状態で実験に付き合わされたことがある。そうして、その時の結果は、さんざんだった】
【意図した通りに能力を使えなくなるから、結果として暴走に等しかった。自分自身に影響させようとして死にかけたのはまだよくて、他者を誤り殺しかけたこともある】
【実際に下戸ではあるのだけど、――それにしたって嫌そうな顔だった。煙草については別にどうでもいいって顔をする、だから、吸いたければ吸えばいい】

【だから文句があるとしたらこの窮屈な服を脱ぎたいとか、それくらいなんだろう。――出されたものにはきちんと手を付ける。行儀は、悪くない】
【そのくせ感慨がある風でもなくぱくぱく食べて、――自分はしれっと食べ終えるのだろう。そうすれば、きっと、いつか、写真にも気づいて――――――、――、】

――――、やっぱり、一本、ください。

【なぜかひどく泣きたくなった、目のところがつんと痛くなって、だから、つらい】
【ならばこれもまたやけっぱちなんだろう、――未成年に酒を手渡す勇気があるなら、そうすればいい、だれもきっと、それを咎めはしないから】


544 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/05(日) 01:07:30 40SgIGRs0
>>543

【少女の姿を認めた彼は少なからず驚いていた。それなりに気に入っていた服だった。いつかのデートの時に着た服だった。誰かに褒めてもらった服だった。】
【「 ─── 水道水でも飲めるタイプなんだ。神経質そうだから、ボトルじゃないとダメかと思った。」その割に投げて寄越したのは遣り場のない感情の発露だろう。】
【少女と揃ってパスタを巻いた。たかだか5%じゃ今時大学1年生でも酔いやしない。だから何本だってボトルを空けて、 ─── そのうちに強い酒も持ち出すのだろう】


「ウチの部隊はとんとそういうのに縁がなくってね。」「 ………… ほら。酔えないなら幾らでも飲めばいいさ。」
「その服、 ───── やるよ。」「要らないってんなら無理にとは言わないけど」「出来れば着てやってほしい。ボクはもう、着ない服だから。」


【スミノフアイスのボトルを一本ばかり寄越す。ごく甘酸っぱいレモンジュースのようだった。その奥にほんの少しだけ、アルコールの味がして】
【対して彼はそのうちに牛乳パックを一本取り出して、 ──── パックの中にカルーアを注いで、ストローを突っ込んで飲み始める。およそ相応しい飲み方ではなかった。】
【酒精を好む割に酒豪という訳ではないようだった。真白い頬まで赤くなっていた。減るたびにブラウンのリキュールを注いで飲む。故に度数は加速度的に高まるから。】


「 ──── なんだか、昔話がしたくなってきたよ。どうしてだろうね。」
「ボクも歳だな。何やってんだか自分でも意味がわからない。」「ああ、くそッ、 ……… 。」
「聞きたいかい。 ……… 聞きたくないよね。」「だったら後で聞かせてやる。ボクは意地悪だから。 ……… ちくしょう。」


【 ──── なれば、それは貰い泣きに違いなかった。綺麗に整えた涙袋を真っ赤に腫らしたって誰にも見咎められやしないから。ぶつぶつ真っ赤な唇が呟く。】
【いつの間にかチョコレートクラッカーを取り出して齧っていた。間にクリームの挟まった、飛び切りに甘いもの。牛乳パックの中に突っ込んで、浸して、口にして】



「 ……… ねえ。」「ボクには解らない。」「なんでキミは、アイツのこと、 ─── アイツに、食べられたいって、思ったの?」

「キミには信じられる神様がいるじゃないか。」「虚ろの神様ってのはどいつもこいつも、ボクやアイツなんかじゃ及びもつかないくらい強くってさ。」
「だったらキミのことだって救ってくれるに違いないだろ。」「いいよなあ。例え仲間を奪われたとしたって、神様の奇蹟さえ待ち望んで、取り戻せばいいだけなんだから。」
「それに現世の救いがなくとも、殉教者の彼岸では皆んなが待ってくれているんだろ?」「 ─── 羨ましいよ。ボクは、もうきっと、夕月と会えやしないから、 ……… 。」


【ほとんど独り言の様相を呈していた。なれども誰かが聞くことを求めているに違いなかった。その内に膝を抱えてしまうのだろう、 ──── 爪先は足の先まで円く】
【シャツの下から伸びる真っ白く細い両脚。体育座りに折っていた。微かに骨張っているも、女のそれと見ても疑いない輪郭だった。故にどこか、ひどく弱気で】


545 : ◆9VoJCcNhSw :2018/08/05(日) 01:20:26 wn2rqSVw0
>>527

【目の前でジークが紙片を飲み込む。ソレに合わせて自分も飲み下す】
【不思議と喉に引っかかるような感覚も、鉄さびの味もすることはなく】
【体内に溶けるように消えていって――やがて感じるのは、身体の熱】

【『お互いの位置が近ければ近いほど、その身は熱を持つでしょう。固い盟約を交わした〝盟友〟として』】

【その熱で汗をかくことはない。言うなれば"心が温かい"というような感覚か】
【目に見えないそれは、しかし確かに契約が成立したことを示し】
【同時に、妖狐の表情は微笑ながら――その目は細く、露骨に相手を見定めていた】


……私が契約の根本を握っているのを承知の上で
わざわざ乗ってきてくださったのは素直に称賛致しましょうか。

そして。その上で、今結んだモノが貴方の不利になるものではないとお約束しますよ
重い対価を賭けた対等な関係、双方の信頼を裏付けする契約だと。
まあ…――何はともあれ、仲良く致しましょうね?


【微笑から、明確な笑顔へ。掘り出し物を上手く買い抜けたような表情をすると】
【す、と手を差し出す。それが握手という原始的な信頼構築の行為であると、すぐ分かることだろう】
【その手は人肌相応に柔らかく、温かくて。応じてくれたなら――暫しの後に、手を離し】

【それからは以前のように何処か一線引いた態度は鳴りを潜め】
【『お腹減ってません?ちょっとした小料理くらいならご用意出来ますよ』――だとか】
【『スマホ持ってます?ここ圏外ですけど、後で連絡先交換しましょ』――だとか】

【思う以上にグイグイ来る――もとい、信頼を寄せるような態度を見せる】
【情報を聞き出すのなら今か。と言っても、既に大分話した後だ】

【改めて城内を回るか、部屋へ戻るか。ある意味、最も重要な目的は達成された以上は】
【あとはジークの判断次第。夜は更けて、虫も眠ったのか外はひどく静かだった】


546 : 名無しさん :2018/08/05(日) 01:50:09 co6voZSk0
>>544

【「綺麗な床までなら飲みますよ」――ぽつと言い返した言葉の意味を、けれど、彼ならきっと分かるんだろう」】
【いつかの"修行"。不衛生すぎる部屋に一ヶ月近く幽閉。実質としては始末されたサーバントの死体を積み上げた部屋。言い訳としては、】
【たとえば蓮が泥より出でるから美しい話をするみたいに。同じ理屈だった。つまりそこで綺麗に咲けと言いつけられたのだった】
【食事は最低限。ゆえに一日一回。その時に、望むなら本のような娯楽を与える、というのが、かろうじて良心的だった。――そうやって言うしか、なかった】
【二十*日目に少女は本の代わりにコップ一杯の水を要求した。その時にはすでに今までもらった本は枕にされていた】
【数時間ほどの話し合いのもと、本当にただのコップ一杯の水が許可される。――けれど彼女は零してしまったんだった、おぼつかない指先は、入れ物ごと零してしまって】

【――その数時間後に完全に能力による生命維持状態に陥ったと判断されたので、修行はその時点で終了された。床に溢れた水は、手つかずのままだった】

……――どうか、してます、ほんとに……。……本当に。
酔いますよ――すぐに。残った分、飲んでください。そしたら能力使えないので。……護ってください。誰よりも……。

【結局、炭酸のボトルに手を付けてなかった。それなら割ればよかったのかもしれない、だけれどそんな気にも、なれないなら】
【すぐに酔うのを予告しながら蓋を開けるんだから性質が悪かった。それからちらりと冗談みたいに少しだけ、舐めるにも足りないくらい、口に含む】
【柑橘の味とアルコールの味。だから眉をひそめた。それからもう一口――さっきより、飲む気の角度。それでも、冗談みたいにちんまりと、少しだけ】
【――すでに酔ってしまったみたいに弱気な声を出すんだろう。そんなはずなかった。だから、――だから、どうしようもなく、血の滴る生傷みたいで】

なら――そんなに、飲まなければいいんです。絡み酒ですか? ……、……――。

【つんとした痛みのままで堪えた自分に対して、相手が泣きだしてしまえば。少女はどこか迷惑そうな目をする、けちをつけるような目、けれど、続く言葉には】
【聞きたいけれど、聞きたくない。ひどく不明瞭な気持ちになって押し黙るのだろう、――だから、お酒を一口。それでもまだちいとも減ってないものだから】

………………――――、ウヌクアルハイ様は。……ずっと信じてた、私たちを、――見て、くださらなかった、
私たちは……ずっと、ずうと、待ってた、のに。そのために。そのためだけに……。――だのに、なのに、ウヌクアルハイ様は。
別のところに、行っちゃった、……。ウヌクアルハイ様は。あんなふうな。女なはずない……。そんなはずない……。私たちの、神様が……あんな……――。

……なのに。あの人が助けたんだ。なのに助けてくれない。なのに……、……。…………、みんなに。会いたい。

【尋ねられて――いや、本当は、そんなつもり、ないのかもしれないけれど。疑問形の言葉に少女は伏していた目線をわずかに上げた、だから、また酒を一口】
【傾けたならとぽん、と、気の抜けた音がする。恨み節に近かった。――ずっと信じてた神様に裏切られて。それでも信じてた、取り戻したいのに】
【そうやって思えば思うほど、心が軋んだ、いつかの呪いは掛かりすぎていた。また泣きたくなって短い髪の毛をかきあげる、頭を抱える、ような――】

/長かったので……


547 : 名無しさん :2018/08/05(日) 01:50:26 co6voZSk0
>>544>>546

――――だから。死んだって、伝えて、欲しかったのに。……――、……知ってますよ。そしたら。絶対探されるって。分かってますよ。……。
でも。でも……だって――、そうしたら諦めてくれるかなって。諦められるかなって。……だって、そうじゃないと、――、私、は、
正しくいないといけない、正しくないといけない、――あのファイルを持ってかれるって思ってなかった。"あれ"がなかったら。負けなかったのに。あれさえ。あれさえ……。

あの人が死ぬ前に死にたい。

【――それが、誰かに委ねた伝言だったんだろう。死んだことになってしまえば終わるかと祈って。そんなはずないって分かりながら、】
【自分を自分らしくしようとすればどうしたってそうしなくてはいけなかった。――だからせめて痛まぬ方法で終わればよかった、そして、あるいは、】
【相対したくないのかもしれなかった。きっと許してもらえないって信じてるから。あのカードだってきっと何かの間違いだった。――だけど縋らずにいられないから】
【"あのファイル"が何を指しているかは考えるまでもなかった。その出来事がなければ勝てていた。そこまで計算していた、赤い服と記憶の阻害。それでできるって信じてた】

――――――――――――――――ひどいよ。どうしてあんなこと、言うの……? ――ひどい、ひどい……、――っ。
どうして? そんなはずない、……そんなはず、ない、だって、そうしたら、私は、正しく、出来るんだから、
そうしたら――私、は、必要だから……。誰も笑ってくれない、なんて、――そんな、はず、ない……。

【結局それで勝てなかった少女は敗北して、それ以上に心まで執拗に折られたんだろう、だから何を言われたのかも推測出来た】
【さっきは我慢した涙が押し留められなくなったなら、――こちらもまた膝を抱えるんだろう。割とひどい光景だった、生傷ばっかりむき出しにして】
【彼の一口にも満たないような酒で酔い始めているみたいだった。――くすん、と、鼻を鳴らして、また飲むから。このままだと致命的に酔いそうだった、でも、】
【そうじゃないと――きっとその昔話にだって、耐えられそうも、ない】


548 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/05(日) 02:04:46 fU1K4J7.0
>>545

【 ─── 思っていた感覚より、幾分か違うものだった。血に毒される感覚というか、堪えようもない身体の疼きとでも言おうか、その手の熱量を彼は想像していた】
【幾ばくか優しい温もりに一先ずは安堵の溜め息を吐き出す。彼がここにいること、それ自体が裏切りと見做されるような訳ではないらしく】
【細められた視線には、 ─── 微かに気圧されたように、見えるかもしれない。然し、見ようによってはそれは、同質の感情と呼ぶことも出来て】


「お褒めに預かり光栄。」「 ─── 仁義を通して生きていくには、腹に据えた度胸ってもんが必要でね。」
「実に有難い約束だ。だったらオレも存分に活用させて貰おう。何せ、そのくらいしかオレには能がない。」
「ま、 ─── 今のところ口先だけでは有るが、ともあれオレを信頼してくれて嬉しいよ。目も耳も口も、よく利く方だと自負しているんでね。」



「 ─── これからも、宜しく頼むぜ。」「クズノハさん。」



【ごく柔らかい掌を握り返すのは些か強張った手指であった。武器をよく握る人間の手だった。それでいて、やはり彼女と同じ温度を持ち得ていた。】
【 ──── 親しくされるのであれば同等に親しくするのだろう。朝食と呼んで差し使えないような夜食を何かしら求め、連絡先の交換も躊躇わず】
【差し出す名刺は然し堅気の人間のそれとは程遠い。その所属はPMCを標榜するも、公的な所在地も連絡先もなく】
【ただ彼の名前と、彼の個人的な連絡先だけが記されていた。 ─── 無論の事、問い詰めるなら聞き出すことも出来るのだろうが】
【それでもジークはそれ以上なにかを尋ねることはなかった。必要なことは全て聞いていた。なれば次に会う時に、言葉を交わせば良い。】

【 ──── そうして彼は、夜明けの前に共に部屋へと戻るのだろう。申し分程度の仮眠を取るために。程なく来たる夜明けを待つために。】
【それでも迎えの馬車においてはたっぷりと眠りこけるに違いなかった。交渉人としての精神的休養であったのかもしれず、然し真実は、彼の見る夢だけが知っている。】


/こんな感じでシメでいかがでしょうか!!


549 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/05(日) 03:02:06 fU1K4J7.0
>>546>>547

【彼は彼女に惚れ込んでいる訳でもなかったから、ファイルの中身にさしたる興味もなかった。それでも一応は目を通していて、なればこそ憐憫も理解できた。】
【護ってほしい。誰よりも。 ─── こんな女に、そんな顔でそんな台詞を吐かれて、素面でいられる奴が居るわけなかった。だから直観で理解してしまう。】
【アイツはこういう所に惚れ込んでしまったんだろうって。自分には絶対に真似できなかった。幾ら目指したとしても。だって哀れな過去なんかなくて、憐れまれるだけの悲しさもなくて】


「 ──── んだよッ」「そんなもん」「お前の信じたい神様なんて」
「苦しめられて痛めつけられて殺されたなら、ようやく許してくれる神様なんて」「 ──── 最初から居なかったって、だけだろうが。バカかよ。」


【思い切り非道い侮辱だった。 ──── お前の信じた神様なんて最初からいなかったんだって、それはお前が信じたかっただけなんだって、きっと誰かと同じ台詞】
【然れども皮肉なことに彼女が信じたのは虚ろの神であり、信仰する者の望むがままに姿を変える万能の器であるはずだった。】
【 ──── なれば、やはり最初から、祈りなんて誰にも届いていなかったことの表れなのだろう。そこまで彼は言わず】
【もしも逆上するのなら同じように酷い忿怒と八つ当たりで押し切ろうとするのだろう。全て繰り言の域を出ず、だからこそ、吐き出さずにはいられず。】


「お前は知らないだろうけどなぁ、ッ」「 ─── アイツ、向こうに行ってから、オレに毎晩通話してきてたんだよ」
「かえでに会いたいって、」「かえでを抱きしめてあげたいって、」「かえで死んじゃってるかもしれないって、」
「私のせいで死んでたらどうしようって、」「私がちゃんと守ってやればよかったって!」
「なんならログ見せてやろうか、」「 ─── 引くくらいキモい惚気方してんだぜ、アイツはよお」「羨ましいよホントに。くそッ。あんな顔するんだぜ、あのアマが!」


【 ─── 顔を真っ赤にして、およそ憚りなく涙を流しながら、2人分のコップに注がれるのは飴色のウイスキー。】
【ばんッと机の上に叩きつけて、胡乱な青い瞳で睨んで、否応無しに飲めと示すのだろう。炭酸で割る手もあるとして、然し彼は清々しいくらいに呷るから】


「いいじゃんかよ、 ─── 待ってくれてんだからさあ!」「ずっとアイツはお前に笑ってんだよ、笑いたいんだよ、側でお前の笑顔が見たいだけなんだよ」
「誰も笑わない?」「大嘘もいいとこさ!」「だってアイツだけはお前に優しく笑ってくれる。絶対に。」「アイツが死ぬ訳ないだろ?」「お節介も大概にしろ!」
「生首になっても生きてるような全身義体のメスゴリラがよお、お前より先に死ぬと思うかよ!」「全部オレが保証してやるよ。信じられないなら殺してくれ。」


【少女に渡したはずの炭酸さえ分捕って飲み始めるのだろう。口の渇きを癒すために。チェイサーとして、それは幾ばくかの役割を果たした、らしく】
【 ──── 続く言葉は些か落ち着いたような語調に変わるのだろう。昔話だった。ひっく、と時折しゃくり上げるのは、酔い故か、なみだ故か】


550 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/05(日) 03:02:27 fU1K4J7.0

「 ……… 軍にいた頃、アイツと付き合ってたんだ。」「滅茶苦茶に無愛想な奴でさ。そりゃ美人だとは思ったけど。それなりに仲良くなって、付き合っても変わんなくて。」
「けれどね、ボクが女の子の格好、初めてしてみた時」「それでアイツとデートした時、お前が今着てる服着てった時、」
「 ─── やっと一言、可愛いって言ってくれたんだよ。この気持ち分かるか? 分かんねえよなあ!」

「だのにアイツと違って大好きな人も守れないんだオレは」「大好きなんだよ███が」「クソッ、クソックソッ」
「お前と違って帰る場所のある奴を」「オレがただ頑張れば救える奴を」「オレは守れなかったんだよ、」
「笑えよ、笑ってくれよ、 ──── 畜生、ちくしょう、ちくしょう ……… ッッッ。」

「いいじゃないかよ愛されてるんだから、お前にはそれで十分じゃないか」「神様が救わなくたってアイツが救ってくれるよ。」
「お前が苦しめてきた人間の分も」「お前が見殺しにしたと思ってる仲間の分も」「お前が呪われてるって思ってる分の罪も」
「アイツが背負わない訳ないだろうが!!」「いい気なもんだよなクソッ、」「何が不満なんだよ、ボクには分かんねえよ、今すぐにでも愛して救って貰える人間が馬鹿な真似してんのがよ、 ──── 。」


【 ──── ウイスキーを飲み干したのは響いたのか、安い缶チューハイを開け始める。ぼろぼろ大粒の涙を流して、膝を抱えて泣いていた。】
【嫉妬と、絶望と、諦念と、郷愁。あんまりに一遍に襲ってきた感情を、彼はどうしようもなく持て余しているらしかった。だから手足の先まで真っ赤になっていて】
【それでもアイシャドウがぐちゃぐちゃになった目元で、少女の着ているワンピースを睨み付けるのだろう。そんなものに頼らなくても、愛してもらえたなんて】
【愛する者を奪われて取り返せない後悔と悲嘆と絶望を思い知っているからこそ、彼は誰かの名前を呼んで慟哭し、その感情をそのまま少女にぶつけているに違いない。「 ─── 会いたいよ、夕月、夕月、夕月っ、 ……… 。」膝の間に、涙と一緒にこぼす、声。】


551 : 名無しさん :2018/08/05(日) 03:04:46 PYq7bHtM0
>>514
【耳を通っていく言葉の中で、単語の一つも聞き取れる事は無かった。目の前の彼女は連れて来られたのか、或いは元より“此処の住人”なのだろうか】
【――言葉からして、何と無く後者の様な気もするけれど】
【さて、どうしたモノか。言葉が通じなければ事情を聞くことも難しい。かといって、このまま檻の中に閉じ込めて上に戻るのもバツが悪い】
【そんな事を考えて居れば、辿々しくもしっかりと問いに対する答えが紡がれて。――それなら、行う事は決まっている】


【身体に走った僅かな痛み。何か術でも掛けられていたか、と警戒するも其れらしき反応は無い。ただ一つ、この地下まで響く地鳴りを抜けば……だが】
【何であれ、今この瞬間に脅威が出現する訳では無いならば、先ずは囚われの女性を先決……と見遣れば】
【「へぇー……」なんて声を漏らす事だろう。異能、と呼んで良いのか分からないが少なくとも常人と異なる力を持っている事だけは確からしい】
【万が一が起きたとしてもある程度は一人で逃げる事は出来る……だろうか】

【兎にも角にも、檻から出てくるのを待っていたのだが中々に其れは実行されず】
【若しかすれば、今まではこの檻の中が彼女にとっての世界だったのだろうか。まだ会って数分と経たないが故に、それは分からないけれど】
【ただ、まるで小動物の様な印象を受ける。意思はあっても、それを現す事とが出来ない引っ込み思案のようにも】

「――ほら。一人で出るのが怖いなら、ボクの手を貸してあげるからさ
大丈夫。急に手を離す何て意地悪はしないよ。何かして欲しいなら、取り敢えず言ってくれれば良いし……だから、ね?」

【――安心して頼ってよ。そんな言葉と共に、微笑みながら手を差しのばすのだろう】
【その意図を汲んで手を重ねるならば、引っ張る事も無く優しく誘導するかの様にそのまま檻の外へと緩やかに誘う筈だ】
【何事も無く檻の外へと出ることが出来たのなら、不安に陥る事が無ければそっと手を離して。離す事が無ければ、そのままにしてやって】


【其れ等が無事に済めば、改めて彼女の姿を見遣る。この世界自体にも言える事だが、時代錯誤。否、此処では自分こそが異質なのだろうか】
【異世界の文字に、言葉。そして目の前の彼女。きっと其れはダグラスに関係のある事なのだろう。然れど、その内容までは分からない】
【一気に解く事が出来れば何も苦労はしないで済む。だが、現実はそう甘くは無い。一つ一つを終えていくために先ずは――】

「改めて、初めまして……だね。ボクの事はグリースって呼んで欲しいかな。まぁ……見ての通り、ただのシスターだよ
キミの名前も教えて欲しいな?それと……キミは何時から“コレ”の中に居たのかな?」

【彼女が何者であるのかを知る必要があった。――とは言え】
【“こちらの言葉で”流暢に話す事が得意では無さそうに思えたから、小首を傾げながら訊ねたのは単純な事だ】
【彼女の名と、その檻に居た大凡の期間。先ずはそれだけ聞ければ十分】
【不安があるとすれば、もしも地下に至るまでに使った階段が変わっていなかった場合。その時は――……】


552 : 名無しさん :2018/08/05(日) 09:34:52 co6voZSk0
>>549>>550

【――――ぐす、と、伝った透明の雫が顎のところでぱらりと解ける、そうして借りた布地に水玉模様を作って、真っ白な膝を抱いたなら】
【きれいに治っているけれど、それでもよく見たらその右側には傷跡の気配を感じさせるんだろう、――布地を指先が手繰るみたいにぎゅうと掴んだ、瞬間】

――――ッ! そんなはず、ないよ! ウヌクアルハイ様、居るもん、――、ッ、変な女が混ざっちゃっただけ!
――だからっ、だから、――、あの女を消さなきゃ。……早く追い出さなくちゃ。私たちの神様を辱めたんだっ、……――っ、ア、あああぁあ――・

【スズラン色の声が、けれど張り裂ける寸前まで強められて、叩きつけられる。それでもまるで子供みたいな言葉の選び方、癇癪を起こす子供みたいにして】
【目元にたんまり大きな涙粒をこさえたなら――、きゅううと喉の奥が狭まるような声から続けて、声まであげて泣いてしまう。神様が居ないなんて、信じたくないから】
【――あるいは。彼女は知らないのかもしれなかった。彼が知るようなことのほとんども知らないのかもしれなかった。能力者たちの持っている情報から、隔絶されて】
【そればっかりを聞かされたのかもしれなかった。――ただ一つ、あの神の行動を今握っている少女をひどく怨んでいるのだけは確実であり】

【――――だからこそ、かもしれなかった。吐き捨てるみたいな言葉に少女は押し黙る、鮮やかなマゼンタの瞳をわずかに見開いて、】
【次いで机に叩きつけられ揺れる飴色水面に遠慮なく眉を顰める。――全く飲めないなら詳しくはないけれど、おおよそどれくらいの度数かは、ていうか、】
【ウィスキーが強い酒であるくらいは下戸の未成年だって知っているだろう、それにしたって下戸だって判明している未成年というのも、割と、すでに、どうかと――ただ】

――――――――――ッ、じゃあ、見せてよ。見せて、……ください。見せて――、そんなはず、ない、……、そんなの。
あんな顔した人が怒ってないだなんて。……嘘だよ、うそだ……。――だって私がひどいことしたんだ。
大好きなのに………………。

【睨まれる意味くらいは、すぐに察する。できるわけないって分かっていた。それでも――何かの意地だったのかもしれない、だから、】
【コップを手に取って口元へ添える、――数秒ほど躊躇うような間があってから、自棄みたいに口付けるのだろう。それでも彼のに比べたら、ずうと、お淑やかな量】
【喉を焼くみたいなアルコールの味とウィスキー特有のいろんな味。とりあえず思ったのは、ジュースみたいな味の方が好きだとそんな現実的なもの、――えほ、と、咳をする】
【――結局半分以上というよりもほとんど残っているコップを指先で押すみたいに彼の方へ戻す。もう要らないの意思表示。――その代わりに、見せろ、と、求めるのだろう】
【だからひどかった。相手の気持ちなんてあんまり考えてなさそうだった。それよりも自分の信じる絶望が大事に違いなかった。だから自傷するみたいに、欲しがって】


553 : 名無しさん :2018/08/05(日) 09:35:06 co6voZSk0
……私と居るとみんな死んじゃうんだ。パパとママだって。弟だって。だから……。だから。なのに。"みんな"も、死んじゃった。
ウヌクアルハイ様だってあんなになっちゃった。マルフィクさんも。……雨竜も死んじゃった。みんな……。私といたから死んじゃった……。
じゃあアリアさんだって死んじゃうんだ。私が正しくなかったから……。――――っ、もう、やだよ、なんで……。嫌だから。頑張ったのに……。

――――そうじゃないとおかしいでしょう!? おかしいんだよ、おかしいの……、アリアさんだけ死なないなんて、おかしいよ……。

【真っ白な顔が一度に赤くなる、それを恥じるみたいに少女は抱えた膝に顔を伏せるんだろう。その隙間から漏れる言葉が少しずつ、酒に浸されていったなら】
【きっと甘ったるさだけがよく目立つ。そしてだからきっと蜜割にしたウィスキーみたいな吐息をしているに違いなかった、――あんまりに絶望的な声をするんだろう】
【だとすれば"それ"が全部のきっかけだと伝えていた。自分のせいで誰かが死ぬんだと信じてしまっているみたいだった。だから蛇を信じて、でも、】
【全部の結果は自分自身に施す呪いを強めただけに過ぎなかった。――ひぐ、と、涙の声。信じられない。けれど。限りなく信じたくて】

わかんないよッ、――――!

――ずるい。ずるいよ。なんで……? ずるい、こんなの、――私にはこんな顔してくれないのに! ――ッ、
こんな顔してくれない! ――っっ、私なんかじゃ駄目なんだ、それでいつか殺しちゃうんだ。……、パパも爽太だって殺したんだ。だから……。
ママだけ生きてるなんておかしいよ。

【そんな気持ち分からない。誰かを護れなかった気持ちもわからない。███と言う人間を知らない。あるいは夕月かもしれないけど、それもまた知らない】
【そうしてそんな気持ちを慰めてやる言葉もまた知らなかった。だから睨まれても顔は伏せたままだった、かろうじて膝を抱えているから縦であるだけ、みたいに】

――――――ひどいことばっかり言うの。だから仕返ししただけなのに、そしたら悲しそうにするの。
……ずるいよ。ひどいよ。あんなに強いのに。綺麗なのに。あれだけ強かったら。私だって全部、護れたかもしれないのに……。

【――だから、本当は、もっと前から言葉は判別しづらいぐらいにふらふら揺れていた、泣き声混じりであるならより一層だろう、お互いに酔っているなら余計に】
【ゆえにきっと続く言葉は聞き取らなくていいに違いなかった。「――***たい」。酔っ払って不明瞭な言葉の群れの中で、より一層どうかしている、呟き】


554 : 真諦院 ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/05(日) 13:46:56 smh2z7gk0
>>536

ハハハ、本当に面白い奴だな。
まぁ君ならきっと良い相手がすぐに見つかるさ、だからあんまり他人にチャラチャラついていくなよ?

フルーソ駅だな、分かったここからすぐ近くだ。
まぁ門限は確かにあるが、色々と抜け道があってな?ふふ、それはまた今度話そう。
とにかく今日は会えて良かった。できればまたお茶をしよう。

【家を教えたがらない鵺を「まぁ女の子だしな」という捉え方をして】
【フルーソ駅まで別れを惜しむようにゆっくりとしたスピードで送っていくだろう。】
【別れ際、また会う約束を取り付けるように微笑みながら見送る。】


【―――もし〝公安〟のデータベースにアクセスできるのなら、その家柄もあり彼女の父親の件は簡単にヒットするだろう】
【とある捜査官がこの国の警察機構上層部と政界の闇の一端に触れていまい、告発しようとしたため公安によって〝処理〟されたと】
【本当によくある事件だった、但し先程の話で出なかった情報が一つだけある。それはその捜査官も〝公安〟だという事だ。】
【〝公安〟は家族にすら素性を明かさない。その結果、彼女は公安に所属する父の死によって公安を恨んでいるという事になるのだ。】

【歪―――結局のところ、この国の闇に間接的に触れるものはその歪さに巻き込まれてしまう。】
【真諦院正義。彼女の進む道の先は―――。】

//ありがとうございました!


555 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/08/05(日) 13:47:26 qSRJlh960
>>537

【合間に挟む述懐を電子に辿る術は無く、一時すらも絶え間無い閃光の如き刹那へと果てる】
【唯物と観念の結末としては些か物足りないかもしれないが、ボスにとっては丁度良い余興だろう】
【──── 兎も角、リーイェンは "愚問" の内容を浚う】


<harmony/group>という組織と、嵯峨野という男について、──── 現状の評価は決して高くはねーです。
製薬会社には他にもレヴォルツィオーンや、更に大規模なカルテルとしての《円卓》
そして何より、嵯峨野すらも恐らくは手先の一つでしかねー、《黒幕》なる一派が備えているからです。

技術力や軍事力で言えば、サクリレイジや外務八課に及ぶ所でもねーです。嵯峨野自身も評価としては
『優秀ではあるものの、傑物ではない』とされているです。


【──── しかし、】


演算だけで決まるのであれば、世界はもう私のものになってますです。この世界には無限の例外があります。
その最たる例が "虚神" ──── 演算に組み込まれねーイマジナリーなオブジェクト
それ故に私はこう答えましょう


『その事実は絶対的に正しく、破滅的に間違っている』


【リーイェンは続けるだろう、感情を映さない表情のまま】


嵯峨野 鳴海は "虚神" です。──── その事実は確定しました、記述された事実が揺らぐ事はないです。
けれども、それは嵯峨野が "虚神を正しく認識している" 理由にはなり得ないのです。
我々が我々自身を全て知りえないのと同じく、"虚神" であるという事は、"虚神" を全て知りえる理由にならない


【まぁ、私は例外ですが、──── なんて合間に挟み】


私は<harmony/group>の社内ネットワークをハッキングし、嵯峨野の会話ログを見ましたです。
そこから出した結論が、"正しく認識している" という発言の大きな元となっているです。
そしてそれは揺るがない、──── ならば、つまり


嵯峨野には何か《明かされていない真実》がありますです。そしてそれこそが、嵯峨野とロールシャッハを繋げるミッシングリンクであり、


──── 辿り着く深淵の、一歩になるかもしれねーです。


【リーイェンはここで自説を打ち切った。返事を待つだろう】


556 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/05(日) 13:59:47 smh2z7gk0
>>539

なんだよー、そんな謙遜しないでよーぶーぶー。
まぁそうだね………人間は集団でしか生きられない。結局はしがらみの中でしか生きられないわけだ。

【わざとらしく拗ねて顔を背ける。本当に大根演技なのかどうかは分からないが。】
【そして続く言葉は10代の少女のそれとは思えないどこか達観めいたものだった】
【この年齢でこのポジションにいる。それはコニーの歩んできた人生が普通でないことを示していた。】

でしょ?吸血鬼になるのも悪くないと思っちゃう。
まぁ何か〝困ったこと〟があったらその名刺の連絡先使ってよ。

その時は―――名前ぐらい知りたいケド。

【そういうとコニーはふらつきもせず椅子から立ち上がり、エーリカが最初に飲んでいた分もまとめて】
【宣言通り会計しようとするだろう「マスター、カードって使えます?」とブラックカードを指の間で挟みながら問いかける】
【カードが使えなければクレジットで、ギリギリ財布の中身は足りるようなので払うだろう。】

【そして、ヒラヒラと手を振りながら振り向きもせずに店から出ていくだろう。】
【最後に見える口元は、どこか歪に笑っているように見えた。】

//こんなところでしょうか!ありがとうございました!


557 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/08/05(日) 14:48:56 WMHqDivw0
>>555
【リーイェンの回答は、また二元論に区分けされるものではなかった】
【嵯峨野と<harmony/group>は、あくまでもこの新世界に取って、厄介な組織の一つでしかなく――】
【虚神を手玉に取れるような器ではなかった。そのような結論となりそうなところでは有ったが】

【それでもまだ彼には謎があるらしい】
【脚本家の傀儡となり、舞台から引きずり降ろされて尚】


【この虚神に纏わる戦いの中では、個々の能力者の戦闘力に大きな意味はなかった】
【必要なのは知恵と理解、そして情報だ】

【嵯峨野自身の能力とは別に、この情報面においては、大きなアドバンテージを持っていた】
【能力者達よりも――ともすれば虚神自身よりも】


【男は三本目の指を立てる】


可能性その3。

嵯峨野とロールシャッハは何らかの形で共存している。
混ざり合っているのか、棲み分けているのか。

ジャ=ロとCypressのケースは、ジャ=ロの一方的な侵略であり、その目的意識もジャ=ロ個人のものだろう。
アレとは異なり、ロールシャッハの目指す目的もまた、嵯峨野と同じく『調和』であると言う可能性。


【リーイェンの返事を待たず、四本目の指も立てる】

可能性その4。

ロールシャッハは嵯峨野と<harmony/group>を乗っ取っているつもりで――
その実、嵯峨野の――或いはそれに連なる誰かの思惑にはまっていると言う可能性。


どちらの可能性においても、"イル"と"スナーク"は、そのための試作だった――と言うことになるのかな。
虚神に支配されないまま、ヒトの肉体に同居させるのが可能なのかどうかの。


【嵯峨野はどこで虚神に関する情報を仕入れたのか】
【何故、虚神の遺伝子を解析したり、虚神の中では下級であるとはいえ、スナークをイルに憑依させ、イルの自我を残すと言う試みに成功したのか】
【その所以が判明していない以上、<harmony/group>がロールシャッハに敗北したと判断するのは早計であると思っていた】


ああ、それを実際に作業したのは"魔女"の方なんだっけ?
彼女も、嵯峨野がロールシャッハになったことに気付いていないことはないと思うけれど。


558 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/08/05(日) 16:23:47 qSRJlh960
>>557

【──── しかし、とリーイェンは内心思う。それは恐らくボスも危惧している事であろうが】
【知恵と理解、情報を総動員しても尚、そこに暴力を必要とする可能性の事であった】
【故にボスはリーイェンや笑う男に『外務八課』への交渉を任せたのだろう、スタンドアローンな暴力に】

【嵯峨野が仮に、虚神であって尚、その深い理解があったのならば】

【虚に現を重ねる可能性も、多分にあった】


その3に関してはフィフティフィフティでごぜーます。有るとは断言できねーですが、無いとも言い切れないです。
この場合ロールシャッハの目的意識に疑問が残るです、『恐怖』と『調和』の関係性は見えてこねーですし
ロールシャッハが表舞台に上がったのが最近な以上、情報不足としておいて良いです。


【有り得ないとは言い切らないのがリーイェンらしかった。或いはその1に近い感想かもしれないが】


──── 突拍子もねー意見ですね。一体全体、何処からそんなアイデアが湧いてくるんです?
だとすれば、私達は嵯峨野 鳴海という存在の思惑の中にいるんでしょうね
或いはそこに繋がる────


【­


559 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/08/05(日) 16:29:34 qSRJlh960
>>558

【リーイェンは敢えてそこで言葉を切った。想起していた内容をボスに伝えるには時期尚早と思った】
【けれども、ボスならば既に『知っている』嵯峨野が属す、公安の巨大な陰謀。その裏に巣食う《黒幕》について】
【グランギニョルそのものが、《黒幕》による大きな流れの一つに過ぎない可能性も多分にあった】


そうですね、魔女は嵯峨野=ロールシャッハという事に気付いているです。いえ、寧ろ、ロールシャッハが居たからこそ魔女は生まれたのです。

魔女の正体は "INFオブジェクト" です。《人身御供》を拠り所にした、狂気と恐怖が生み出した過ちの産物。
密教や民間信仰の中に突如として湧き上がる惨劇、その代弁者こそが彼女の正体でごぜーます。

それ故に魔女なのでしょう。魔女狩り自体が伝染病や飢饉に対する生け贄の側面を多分に持っていますから。

ロールシャッハは "INFオブジェクト" を生み出しました。況や虚神を作り出すことも可能かもしれねーです。
ジャ=ロがウヌクアルハイを作り上げたように、ロールシャッハは新たなシャーデンフロイデを作り上げようとしています。


560 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/05(日) 18:41:42 o6XMS57s0
>>552>>553



「 ─── 嘘なんてつくかよ。」「 ……… なんなら会わせてやろうか。今だって呼んだら飛んでくるさ。キミを見つけたって伝えたらな!」


【負けず劣らずに喉の張り裂けん勢いで怒鳴っていた。 ─── 少しずつ声が枯れてきていた。だから酒と水で潤す。それでも誤魔化しにしかならなくて】
【やたらにファンシーなカバーのついたスマートフォンを机の上に叩きつけるのだろう。ごく私的な関係でしかないチャットログを見せつける。】
【 ─── ふたりが離れ離れになった幾日か後の日付。アリアらしき相手が何度も何度もメッセージを送りつけてきていた。テキストでも、音声でも、何度も】
【「かえでに会いたい」「かえでを助けてあげたい」「あの子は蛇に呪われてなんていない」「ずっと彼女は助けられていたのに」「せめて呪いを解いてあげたい」「 ─── 蛞蝓が悪かったの」】
【「振り向かれなくたっていい」「愛してもらえなくってもいい」「あの子に本当のことを知ってほしくて」「それまで死ねないの」「死にたくないの」】
【 ─── 時折混じるボイスメッセージを聞くなら、間違いなくアリアのそれであった。酷く酷く、泣き噦っていた。何度だって少女の名前を呼ぶのだろう。大好きだから。】
【突っ返されたウイスキーは炭酸水をぶち込んで飲み干した。急性アルコール中毒になりそうな勢いだった。それでも、世界を麻痺させなくては、やっていけなくて。】


「思い上がるのも大概にしろよ。」「 ──── お前に、アイツは殺せない。」「何があったって殺されない。」「そんなヤワな奴じゃないんだ。」
「ボクには解るんだよ。お前なんかよりずっと長く付き合ってんだよ!」「 ─── なのにアイツは嬉しそうなんだ」「お前のこと話す瞬間が何より幸せそうなんだよ ……… 。」

「非道い事だって言いたくなるさ。」「 ─── こんな清々しいくらいの馬鹿と親しくして、引っ叩いてやらない方が残酷ってもんだ。」
「 ……… 守りたいなら ─── 守ってもらえばいいだろ。」「アイツは、守るよ。」「少なくとも、お前が二度と苦しい想いをしないよう、必ず守ってくれるって。」
「ボクみたいなのとは違うんだ」「 ─── アイツは強くて、それでいて、弱いから。」「支えてやってくれよ、お願いだから、 ……… 。」


【 ─── 甘い蜜に溢れた少女の声音は、誰かを惑わす魔性の言葉でありながら、同時に隠した彼女の幼さでもあったのだろう。】
【自分を呪ってしまった人間の救い方を彼は知らなかった。まして本物の呪いの解き方など知るはずもなかった。きっと助けられるのは誰かだけだって、解っていて】
【ゆえにこそ言葉は少しずつ懇願の体裁を取り始めていた。 ─── 自身の境遇を重ね合わせてもいた。救われない恋人がどれだけ苦しいか、えずくように、吐き出すように】


「お前だって解ってんだろ。大切な誰かを守りたくて、護れなくて、奪われること、 ─── どれだけ辛いか。どれだけ苦しいか!」「神様に縋らなきゃ生きていけないくらいだったんだろ!?」
「ボクやアイツには縋る教義なんて何もないんだ。大好きな人が何より大切なんだ。なあ、本当にキミがアイツのこと好きなら、せめて幸せにしてやってくれよ。」
「なあ、 ─── 蜜姫かえで。お前にはそれができるんだ。今すこしボクがアイツを呼べば、アイツは世界で一番幸せな女になれるんだ。ボクには出来ない事なんだ、 ………。」


【それでも語調は少しずつ弱々しくなっていく。ぼろぼろと涙を零しながら、自分のシャツが染みだらけになっていくのも構わなかった。また一本、酒のボトルを空けて】
【 ─── 徐に携帯端末へと手を伸ばして、「いいよな?」「 ……… なあ、いいよな。」泣き腫らした青い瞳を向けて、尋ねるのだろう。"なに"がいいのかは、問わずとも】


561 : エーリカ ◆D2zUq282Mc :2018/08/05(日) 18:54:26 JY1GydDk0
>>556

"その時"が来なくても名前くらいは教えてあげる。
タダ酒を振舞って貰う身としてはソレくらいの便宜は図ってやるよ。

――私は水の国の公安所属、エーリカ。エーリカ=ファーレンハイト。
名刺なんてご大層なものは無いけど、三等書記官サンからすれば私の名前だけ在ればで十分でしょ?


【コニーが店から出て行く瞬間。エーリカは自身の名を口にする】
【決して親愛の情だとか、交友関係の証だとかではなくて。ある種の撒き餌】
【コニーがエーリカの素性を調べたとしても、行き着く先は社会的な死者であると言う事実】

【故に己が名を口にした――"素性を探るのならご自由に。但し、困難だろうけどね"と内心で呟いて】
【所詮エーリカは黒幕側の為の捨石でしかない。命を一つ捨てて、思うままに埒を開ければそれで良いのだ】

【仮に"極秘部隊"が黒幕に仇為す存在なのであれば――その時は切り捨てるまで】

【エーリカはコニーの歪んだ口元に滲ませた笑みを見ることは無かったけど】
【何となくそんな顔をしている気がした。――油断ならない存在だとして、記憶に留める事にした】

//お疲れ様でした!絡み感謝いたしますっ


562 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/08/05(日) 19:19:40 WMHqDivw0
>>558
【リーイェンの考える通り、ここで机上の空論を重ねたところで、最終的には何らかの物理的な力は必要になる】
【外務八課に頼ったのもその一環――更に今回に限って言えば、敵は嵯峨野の人間としての立場を利用し、戦力を投じる可能性もある】
【人間の相手に人間を重ねる――どちらが傷付いても虚神達に取っては旨味になる、いやらしくも効果的な手段】

『恐怖』と『調和』――確かにそこに関連性は見えない。
しかし、ロールシャッハとシャーデンフロイデの間にも、明確な相互関係が見えないと思うんだ。


【先の"夕月"の動画の一件を見ればわかる通り――シャーデンフロイデとは、自身が優位な状況になるほどに発生するものだ】
【報告書でも、シャーデンフロイデの"嫁ぎ先"は独裁者などの優越者が多かったらしい】
【恐怖は抱けば抱くほどに、シャーデンフロイデの感情を抑制してしまう】
【勿論、独裁者が恐怖政治を行えば、人民は恐怖を覚えるものだが――どうにも違和感が有る】
【恐怖を与えるだけならば、シャーデンフロイデを主役に沿える必要性がないからだ】


【ならば、『調和』と『シャーデンフロイデ』の間には――?一見して真逆と言って良い要素】
【しかし、真逆であるからこそ意味を持つ可能性もある】


やれやれ、情報が足りないね。目先のことの方に着目してみようか。

虚構世界でのシャーデンフロイデは能力者達の明確な敵だった。
だからこそ手玉に取れたと言っても良い。
だが、今回は"夕月"が対象――わざわざ助けに行くような人間は、夕月と親しい人間だと思って良いだろう。

仮に夕月をシャーデンフロイデに仕立て上げ、戦わざるを得ない状況になったとして、シャーデンフロイデの能力は活かせるだろうか?
ましてや、シャーデンフロイデの能力のロジックや弱点が明かされている現状で。


【それでも意味は有るはずだった。単純に利用するならば万能の力を持つウヌクアルハイを奪った方が効果的だ】
【そうではなく、シャーデンフロイデを新たに用意する、その意味が】


サクリレイジの発祥は"魔女狩り"だった。
まだ魔女狩りと言う言葉が生まれる以前から、それを行うための秘密裏な粛清者として存在していた。
規模の大小は時代によって違うのだけれどね。


まぁ、概ねは歴史の解釈通りの魔女狩りだったけれど、本物の魔女を討伐したことも少なくはない。


【"それはINFオブジェクトの発生を防ぐための活動の一環だった"】
【その関連付けを行ったため、サクリレイジはその発祥の時点から――組織自体が歴史から消え去る瞬間まで、この男が長に収まり続けている】
【虚神以外のINFオブジェクトの排除もまた、男の目的であるのだ】


その"魔女"も――私達の目標の一つと言うことになるのだろう。
この世界にINFオブジェクトを留め置く訳にはいかないからね。


563 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/08/05(日) 19:55:38 qSRJlh960
>>562

【ボスの言葉にリーイェンは頷く。ロールシャッハの持つ万能性、それに反して道理に合わない結末もある】
【相互関係が無いのはそれ故か、或いは────】


私達がまだ知らない情報もありますです、そこの辺りは難しいでしょう。
更にいえば、──── ロールシャッハという存在は未だに明確になっていない点が多いです。


【そして会話は次のフェイズに移行する、リーイェンは推論を重ねる】


例えば解釈の違いなのかもしれねーですね。シャーデンフロイデの力の根源こそが《シャーデンフロイデ》であり、
その能力の作用は《極夜蝶》というその存在と、《感情》の帰結であるという可能性です。
つまり、シャーデンフロイデの世界線移動の能力は、あの形態のシャーデンフロイデ特有のものであり

夕月が開花した場合のシャーデンフロイデは、その力の源は同じであっても、作用がちげーかもしれません。

けれども、共通項として、シャーデンフロイデの因果は大きく影響する筈です。
世界線の移動ならばまだ何とかなります、しかし、────
世界の否定、──── 現実改変、それらに繋がる可能性もあります


【リーイェンの解釈を述べる。それなりに筋の通ったロジックであろうか】


間違いねーです。研究の手腕は兎も角、存在としては遥か格下ですから
それ故に打てる手立ても相応にあるでしょう


【そう言ってリーイェンは再び尋ねるだろう、他に伝えることはあるかと】


564 : 名無しさん :2018/08/05(日) 22:20:30 YUB4MZKw0
>>560

――――、ッ、やめてよ! やめて……やめてよ。……だって。一緒に行けないのに。ひどいことしたのに。
マルフィクさんの分も頑張らないといけないんだ。雨竜のために本当のウヌクアルハイ様を取り戻さないと、……、だって。
そうじゃない私なんて要らないんだ。ケバルライさんだって。正しくない私なんて嫌いなんだ、……。

………………――――、だって誰も居ない。探してるのに。みんなどこにいるの? どうして、いないの?
……パグロームを殺さなきゃ。じゃないとサーバントが殺されちゃう。……。みんな死んじゃう……。……。

【ひっくり返った声が行為を拒絶した、呼ばないでほしいって喚いていた、そうだとしても一緒に行けない、物理的にも、気持ち的にも、できないって、絶望的な声が表明する】
【そうやって惑う自分なんて要らないし欲しくなかった。正しくあれって思っていたしそうすればみんなが認めてくれるから良かった。怖いものなんて、何にもなかった】
【だから自分は自分だって言えたんだった。だから正しくないといけなかった。任された職務を全うしなければいけなかった。悪夢で弟を縊り殺したから、白神鈴音は信じない】
【結局自ら付いていった場所さえ疑ってるに違いなかった。だから多分居場所なんてもうどこにもなかった、あるいは、どうしようもなくなってしまって】
【――迷子になってしまったと気づいてしまった瞬間の子供みたいな声だった、残党を探してうろつき回って、それでも、見つけられなくて】
【――――叩きつけられた音でようやく泣きじゃくる目元を膝を抱える腕の向こう側から少しだけ出す、睨み合うような、一瞬の間】

【それでようやく少女は相手の携帯を手に取るんだろう、それで、――――、途中で投げ返した。理解できない/したくない言葉があったから、理由はそれだけで】
【けれどいくつかの音声を聞いてしまった後ならもう疑えないに違いない、――だからいっとう絶望的な声で泣きじゃくる、「――なにそれ、」小さな、声が喉に詰まりそうで】

……アリアさんのこと、すきなの?

【だからじりじりって喉がわずかに痛むようになるくらいの間、少女はわあわあ喚いてばっかりに違いかなかった、不明瞭な言葉だけ喚き散らして、意味はなくて】
【そのうち体育すわりも辛くなってきたのか机に勝手に突っ伏すんだろう、まるくなった猫背の背中を何度も何度も震わして、――だけど、ある瞬間に、】
【ぽつ、と、尋ねるんだって。多分泣き疲れたんだろうって思わせた。それでもわなわな震える声だった、――そうだって答えたとしても、譲る気はない、声をしていた】

――――――、どうして、アリアさんはあんなに怖がりなの? ……かわいいのに。きれいで……。つよくて。声だって。綺麗で……。あったかくて。
撫ぜ乍ら非道いことをいうの。……綺麗で。きれいなのに。かわいくて……。おっぱい大きいし、……。……いい匂いだってするのに。なのに……。…………。
かなしそうな顔が一番かわいいの。……だから好きなの。ずっとあんな顔をしてたらいいのに。だのに首を絞めて笑うんだ、……、寝てるだけで怒るの。
おっきいわんちゃんみたい。ゴールデンレトリーバーみたい。おっきいのに。……。五時間くらい待てだけさせたいの。だって、そしたら、きっと、可愛くて……。
なのに無理やりスるのが好きなの。それを人のせいにするんだ。……。痛いのが好きなのにいっぱい泣いて。――。かわいい。好き。すき……。
殺したい、……殺されたっていいのに。あの時殺してほしかったのに。……。

【あひる座りでお尻をぺったり床に付けたなら、伏せた顔、もう伺わすこともなく、ただ、ただ、紡ぐ言葉は、けれどありふれたものからは剥離していた】
【どれだけ好きかって言えば言うほどに何かがおかしい。だけれど彼女はきっと本気に違いなかった。酔っ払った脳がどれだけ正確かはさておいても】
【顔を隠すみたいに組んだ腕の中に顔を埋めこんでいたならやっぱり声は不明瞭。ぐだぐだ絡むみたいな声だからもっと聞き取れない。だけど、】

……やめてって言ったら、やめてくれるの?

【縋るみたいな声――それはきっと、それだけはきっと、明瞭に、聞こえて】


565 : ◆9VoJCcNhSw :2018/08/06(月) 00:47:28 wn2rqSVw0
>>548

【握手まで交わせば、少なからず積まれた信頼は1つの形として成就する】
【契った約束も軽くはない。となれば、ひとまず心を許すには足りていて】

【後のやり取りは友好的に。名刺に於いては、何かを問い詰めることもなかった】
【というのも、自分も似たような物は持ち歩いていて】
【式神を一枚呼び出せば、其処には『クズノハ』という達筆な名と】
【その横に電話番号、メールアドレス、アプリのフレンドコードやら】
【今どき其処までするかと思われるような現代慣れした"名刺"になっていて】


【――やがて翌朝、からからと車輪を回して現れた幌馬車に乗り込めば】
【眠りこける彼の膝に、元の狐姿で平然と乗って自身も眠る】
【朝の風は、昼間のそれと違って冷涼で、心地よくて。きっとぐっすり眠れるだろう】


  【幌馬車の脇を、凄まじい速度で駆け抜ける黒のメガクルーザーは】
  【その風景と静かな空気を、僅かに10秒ほど打ち破って姿を消した】
  【向かう先は、馬車の来る元。古城へ向かって、その人工物は走っていった】


【数時間後。ジークが目を覚ませば、彼が居るのは風の国の片田舎】
【気付けば妖狐の姿は其処になく、感じていただろう身の熱さも今は失せて】
【しかし電波が戻った携帯には、確かに友人申請が一件――この一日でよく見知った名前で、入っていた】

/はーいっ、ではこんな感じで!お付き合い頂きありがとうございましたーっ!


566 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/06(月) 01:31:23 YU/dLBJ20
>>564

【投げ返されるスマートフォンを片手で受け取る。聞こえよがしに舌打ちして、忌々しげに何か口の中で呟いていた。今いちばん会いたかったのは彼なのかもしれなかった。】
【信じてきた居場所がなくなってしまう辛さは彼もアリアもよく知っているつもりだった。それでも、だから何を理解できるという訳もない。どこまで行っても所詮は他人で】
【 ───── 暫く互いに、言葉にならない言葉を虚空へ送っているのだろう。平行線だった。然れども、不意を打つような問い掛けには、真っ赤な青い目元をぱちくりさせて】
【ふッ、と噴出すように笑う。そうして昔話の続きが始まるのだろう。相手が聞こうと聞くまいと、構うことではなかった。】


「 ……… 好き、だったよ。昔はね。今でも嫌いじゃない。」「 ─── 数年はうまく付き合ったよ。軍にいた頃の話さ」
「けれどボクが軍をやめて、フリーの情報屋になってからは会う事も減った。半年もしたら、お互い会えなくなってた」
「 ……… バカな夢を見てたのさ。アイツは全身義体だ。誰かに飼われていない限り生きていくことも儘ならない。 」
「 ─── なのに。アイツの元を去る時、付いてきてくれるかも、とか。甘いこと考えたんだ。愛してるんだから、きっと叶う夢だって。 ……… そんな訳、ないのにな。」

「思えば守られるのは性に合わなかった。今は守りたい子がいるんだ。今はその子が一番大切なんだ。 ……… 今更、アイツに未練なんて、ないけどさ」
「それでもさあ。このボクが3年かけても真面に振り向いてくれなかったアイツが、お前みたいなクソ女に出会って少しで入れ込んでるってのが」
「 ─── ましてお前は判断一つで、アイツをボクが、オレが愛してたより、ずっとずっと幸せにしてやれるはずなのに。そうしないお前が、無性にムカつくんだよ。クソッ ……… 。」


【結局のところ動機は嫉妬だった。自分があれだけ愛して、それでも10分の1も伝わったか怪しいアリアへの想い。それを蜜姫かえでは余さず伝えられていたし、のみならず何倍にも膨れて送り返されていた。】
【それが只管ねたましかった。こんなに愛らしくて危なっかしくて護ってやりたくなる少女であると理解させられたら尚の事であった。だから続く呪うような惚気には、どこか理解を示すように笑って】


「 ─── あは。変わってないんだな。」「ボクもよく笑いながら首を絞められた。 ……… 呼吸ができなくなった所でキスするんだろ? ゾクゾクしたよ。」「ベッドの上でアイツに勝てた試し、なかったなあ。」
「傷付けるのも口付けるのも同じこと、 ─── 口癖みたいだったよ。」「結局の所、恋愛という文脈の上で行われるなら、許されざる行為を信頼と慕情が可能にするという本質に変わりはない、って。」

「きっとキミと同じさ。大げさな理由に托言けて、ごく個人的な問題と向き合えていないだけ。 ─── ボクも同じだった。幾ばくか理由は小さかったけど」
「だから惹かれ合ったんだ。アイツは心の欠けた奴しか愛せない。パズルのピースを嵌めるみたいに、同じ欠け方をした奴につけ込むしか、人を愛する方法を知らない ……… 。」


【消えゆくような言葉尻。 ─── 縋るような言葉が本当に腹立たしかった。そんな声を出してほしいのは自分に宛ててじゃない。「 …………███んな。」ぽつり、零して】
【また携帯を投げて寄越すのだろう。アリアと思しき番号に、ワンタッチで繋がる画面。明るく光るダイヤルボタンが忌々しいくらいに光っていて】


「 ─── 会いたいんだろ。会いたくないの。」「いいじゃないか。明日の朝のキミには、酒って悪魔に辱められたと弁明すればいい。」「もうこれきりで二度と会えなかったら、一生後悔するぜ。ボクらが何と戦ってるかくらい知ってるだろ。」
「 ………ボクは別に、この部屋が修羅場になってもいい。」「2人きりにしてやってもいい。キミかアイツの血と臓物で、この部屋がぐちゃぐちゃになっても構うことはない。 ……… 好きにしろよ。今のキミを見たら、アイツ、喋れないくらい大泣きするから。」


【 ──── それでも結局、会いたくないと言うのなら、彼は無理強いなんて出来なかった。だってアリアが愛しているのは彼女だったから】


567 : ◆9VoJCcNhSw :2018/08/06(月) 01:57:01 wn2rqSVw0
>>551

【差し出された手を、女性は躊躇いながらも静かに取った】
【その手は、凡そ「生まれてから箸以上に重い物を持ったことがない」だとか】
【そういう表現が本当に似合う――と、自然と思える程に柔らかで、嫋やかで】

【そして同時に、檻から一歩彼女が足を踏み出せば】
【ジリッ――と視界が滲む。頭蓋に微弱な電流が走るような感覚】
【もう一歩――ジリッ。次第にその刺激は減りゆくものの】
【まるで檻の外に居ることそのものが、この世界に於いては不和であるかのような】
【或いは、その存在の在り方に世界が合わせるような感覚が、残り】


「グ、リー、ス。……グリー、ス。私の、名前は……、……」


【喉を鳴らすことすら今までに機会がなかった、そういう辿々しさで言葉を復唱する】
【そして自身の名前はと聞かれれば――ふるふると、首を横に振る】
【「分からない」か「思い出せない」か、それとも「ない」のかはともかく】
【自らの名前という、あって当然であろうものを口にすることは出来ず】


「今日、で……ちょうど、に、まん……〝29980〟の日を、かぞえた」


【――グリースが下りてきた階段は、足を運べば普通のそれに変わっていた】
【僅かに2mも上昇すれば扉があって、容易に地上へと上がれることだろう】


【けれど女性を連れて外へ出たなら、其処には先程までの平和な家庭は既になく】
【家屋は破壊され、周囲の壁だったものは黒く焦げて、火の粉が強い風に巻かれていて】

【周囲、暗い夜の街は尽く似たような事になっていた】
【違うのは一部の高級な石造りの教会くらいなものであり】
【それすらも、上空から降り注ぐ火球によって――今しがた、ステンドグラスが砕けた所】


「―――――――――、 ――あ――れ―――――。」


【その破壊の原因を、女性は示した。教会の奥、暗い夜空を指さしている】
【いや――目を凝らせば、違う。夜空に溶け込むような黒い岩石が、動いていた】

【それは巨大なゴーレムで。巨大すぎるが故に、何処までの高さがあって、どれくらいの距離に居るのかが分からない】
【少なくとも以前彼女が戦った"鬼"や"機兵"などとは、比較にならない大きさだった】
【そしてその頭部にあたる位置には、燃え盛る火炎で1つ目が描かれていた】

【『全てを破壊する赤目の巨人』――其れは、やがてグリースを発見すると】
【およそ小山ほどもある拳を振りかぶって、本能的な恐怖を生起する圧を持って】
【"殴り潰そう"とする、だろう。感じる魔力は膨大すぎて、弱点などを探すというのは――まず、無駄に思えた】


568 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/08/06(月) 02:07:29 WMHqDivw0
>>563
そうだね。そもそもロールシャッハの出典であろう、ロールシャッハテストは、特別恐怖症の診断に使われるようなものじゃない。
事例としてない訳ではないけれど、アレ自体はあくまでも、思考過程や思考能力を分析するための手法だ。

財団がそれと奴を関連付けた以上は、奴の能力と関連性が有りそうなものだけど――ジャ=ロの名前には大きな意味は無かったから拘り過ぎるのもね。

【恐怖を媒体にすると言うのはジャ=ロ以上に範囲が広過ぎる】
【あらゆる種類の恐怖が対象に当たると言うので有れば、ほとんど全人類が該当し得るものだ】
【他にも何か条件付けが有るのか……しかし今になってロールシャッハの報告書を探すのは困難】
【当然、ロールシャッハ自身もそれを発見されないように警戒しているのだろうから】


シャーデンフロイデの性質を引き継ぎながらも、違う発現の仕方をする可能性か。
確かに、二番煎じを仕掛けることが効果的とは思えないな。

ましてや人類の歴史と共に育ち続けた虚構現実のシャーデンフロイデと同等の力が出せるかも分からない。


【反面、虚構現実でのシャーデンフロイデの力は、あくまでも虚構現実の範囲に留まっていた。それをこの基底現実でやろうと言うのだから】
【改変の能力の影響は未知数かつ深刻なものになるだろう】
【夕月と言う少女――その人格に覚えはないが、あれだけの体験をした人間で有るのならば、どう転んでもおかしくはないが】

【彼女が現実を書き換えながらも逃げ込む場所が有るとすれば――それは、かつてのシャーデンフロイデが齎したような"恐怖"の世界か】
【――それとも負の感情など向けられることもない"調和"の世界か】


ロールシャッハの討伐には引き続き"笑う男"を派遣しておこう。
パグロームは……さて……どちらもシャーデンフロイデとは相性が悪そうだ。

夕月の奪還は、親しい友人達にお任せして、ロールシャッハを狙いに行きたいところだけど。


【独り言のような様相。つまりこの辺りで話は終わりと言うことらしい】
【だが、彼女が帰り支度を始めるならば、帰り際に男は独り言の延長として語りかけて来る】
【議論し過ぎる気はない。考え過ぎればまた"手"が入りそうだったから】


電子生命である君は、プログラムによって構築された0と1の存在だ。
なのに君はまるでヒトのように話し、思考し、感情を見せる。

0と1によって世界を構築することは可能なんだ。
同時に――世界を0と1にデコンパイルすることも、また可能と言うことだ。
虚神達の持つ力は、この世界に対する、"データ改竄"――クラッカーのようなものだと認識している。

だから私は、彼らを排除しなければならない。
無力なこの身だが――私も出来る手は打つとしよう。


今回は外務八課を頼ったが――
次は君達にも力を貸して欲しい。


569 : 名無しさん :2018/08/06(月) 02:19:29 YUB4MZKw0
>>566

【頭をぎゅうと抱え込むみたいにして喚いていた、目にした文字列がよほど理解できないに違いなかったし、多分、素面だったらすでに死んでたんだろう】
【酒に酔っていてなおこれだけ錯乱する文字列だった、何を言っているのか分からなかった、だから質の悪い嘘だと思いたかった、だのに、声は限りなく本当で】
【どんな顔して泣いているのか見たかった。きっとすごくかわいいんだと思った。だから出来の悪い聖母みたいに抱きしめてあげたかった、今すぐだって、したいのに】
【――会ってしまったら本当に駄目になってしまうと予感しているから。そしたらなんにもできなくなる。二つの出来事のはざまに堕ちて消えたい】

【――――しゃくりあげる声だけ聞かせていた、透き通るような藤色の髪の、そのつむじだけ見せつけて。だからきっと聞いていた、涙を繰り返しながら】
【知らない昔の話を聞くのは背徳感とよく似ていた、いけないって分かりながらやってしまう出来事にきっと似ていた、"彼女"とうまくやる方法なんて、よく知らなかった】
【いっつもいっつも乱雑なシーソーみたいなやり取りばっかりだった、だからうんと大好きだった、"うまく"やるだけなら、多分、この少女はもっとうまく出来た】

…………私のことなんか考えてくれてないんだ。私は。私は、……しないと、いけない、のに、――誰もっ、だれも、私は、

【だから未練がましく自分の言葉を述べるしかない、引き攣る声はきっと彼を批難もしていた、判断一つだって、それは、人生を全部否定するよな出来事なのに】
【もうどうしようもないのに。誰より自分が助けてほしいのに、と、ただ泣いて叫ぶみたいな声をしていた、そのくせ、たったの一度だって助けて、って求めはしない】
【結局"なにか"を解決しない限り、どれだけの力で引き摺り戻しても意味ないんだと思わせるのかもしれなかった、――――喉が渇いた気がして、】
【だけどアルコール飲料しかなくって諦めて酒を飲む。最初にもらった瓶。まだほとんど残っていた。頭の中がひどかった、洗濯機に間違って放り込まれたみたいで】
【少しでも身体を起こせばおもちゃみたいにふらふらする、――だからきっとひどく真っ赤だった、その中でもマゼンタの瞳はいっとうよく映えるのだけど】

……………………――――聞きたくない。

【少し遅れて、ごん、と、机に伏した。きっとひどい顔をしているに違いなかった、――嫉妬してしまいそうで、ううん、きっと、すでにしているから】
【彼は自分の知らない表情を見たことがあるのかと思うと妬ましかった、自分の方が優れていると思うところをただただあげつらねて勝ち誇りたかった、子供みたいに】
【だけれど子供じゃないから我慢する。――もしそうしていたとして、多分めちゃくちゃ不明瞭でほとんど聞き取れないんだろうから、だから、しなくって、多分よかったはず】


570 : 名無しさん :2018/08/06(月) 02:19:49 YUB4MZKw0
会いたい。……――、会いたくない。死んじゃえばいい。私の知らない場所で、死んじゃえば、いいんだ……。
そうしたら私は一生ばかみたいに生きてられるのに。どこにもいないって知らないままで生きたい。……。アリアさんだって。
私が死んだって知らないまま生きたらいい。私はもうどこにもいないのに生きてたらいい。……。ばかみたいに生きてたらいいんだ。だから……。
――、会いたい、会いたい。……会いたいよぉ、……。――――ひどいよ。こんなの……。なんで……。

【――あるいは。いつか彼女が四時十六分に鳴らした番号と同じであるなら、今度こそ絶望するのかもしらなかった、心のなんとかダイヤルとかであってほしくて】
【机に大いに身体を委ねたままで身体を小さくちぢ込める、――だから多分そのうち投げつけられた携帯を道連れに机の下に消えていくんだろう、そういう気分だった】
【服も髪もくしゃくしゃになってもよかった、なんか変な跡がほっぺたにでもついて可愛くなくなればいいのにと思った、そうでなくても、泣きすぎた自覚はあるけど】

……――――、つかれた。

【だからしばらく――おそらく十分とかそれくらい。あるいはそれ以上。彼女はそのまま沈黙しているに違いなかった。もし確認することがあれば、】
【床と片手で携帯を支えるみたいにして、眩しいのをきっとじっと見ているんだった。押したら何かが確実に変わるボタンだった、そうして、そうなったら、】
【今居る場所には二度と戻れない一方通行だって分かっていた。ゆえにこそ絶望的な声が上がる、ここが駅で三十秒後に快速が通過するなら三十三秒先では死んでいそうな】
【――――床の上を滑らすみたいにして、携帯が返却されてくる。しかも割と思い切りだった、少なくとも人の所有物にするような勢いではなかった、けれど本質はそこでなく】

【画面に表示されているのは発信中の文字。そのくせ自分でやる気はないみたいだった。だから最悪ピンボールみたいにどっか飛んで行っても、別に、どうでもよかった】
【それで画面が割れたって自分のじゃないって言い張るつもりに違いなかった。――そのころにはもう床で身体を丸めて籠城のポーズをしているんだろう、だんごむしみたいに】


571 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/08/06(月) 13:28:33 tLD8ERWA0
>>568

【──── 良い切り口であった。ボスの提示した違和感に対してリーイェンは足掛かりを見つける、そこから思考を延長させて】
【 "虚神" 達が翳す名前、その実を端的に示したシャーデンフロイデと違い、ジャ=ロは何方かと言えば識別名に近い】
【故に勘繰りすぎという指摘も間違いではないが、──── それでもリーイェンには十分であった】


もう一つ手掛かりがあったです。『財団職員へのオリエンテーション』──── ロールシャッハに纏わる "禁書"
《偽書 Psychosocial》例の如く手掛かりはタイトルだけですが、心理社会学的な内容である事は間違いねーです。
それならば、ロールシャッハにとって「恐怖とは側面でしかない」のではないでしょうか。

心理と思考と、そこにロールシャッハの拠り所があるとすれば
──── 存外、想像よりも遥かにスケールの大きい存在であるかもしれねーです。


【荒療治でしかない、とリーイェンはロールシャッハの試みを切り捨てるだろう。それ程までに強引であった】
【ジャ=ロの手腕とは大きく違う、信奉者を増やしカルト教団までをも率いた《死》に対し】
【《恐怖》は何処までも理不尽に、無辜の少女を付け狙う】


──── 私達、と言うと『公安三課』になりますか。課員の一部を動かす事は構わねーですが


ボスならば分かるでしょう、『公安』という組織体系と "虚神" という神話体系とは、非常に相性が悪いです。
優秀な人間達を最適解で動かし続ける公安にとって、認識を食らう虚神は天敵になりうるのです。
公安のやり方はある種、インシデントをより正しく認識し続ける試みにちけーですから。

石橋を叩いて渡る組織に対し、石橋そのものが牙を向けてきたなら一溜りもねーです。

『三課』はスタンドアローンとして存在している分、小回りが効きますが、私達の "ブレイン" は、公安内部の敵に躍起です。
《黒幕》が実を侵食し、《虚神》が虚を侵食する。サクリレイジに匹敵する力が私達から出せるとは思いませんが、

──── それでも私達の力が必要でごぜーますか?


【リーイェンの見せる思考も感情も、全ては手に入る情報の産物でしかなく、それは空想には及ばない】
【彼女の思考は地続きであって、飛躍する為の翼を持たないのだから】
【問いかけは答えを期待していない、それは問いかけとしては不十分だろう】


572 : ◆jw.vgDRcAc :2018/08/06(月) 22:25:45 bhvSXVo.0
>>154

【やはり、体験してみなければ分からないことだってある。百聞は一見に如かずとはよく言ったもので】
【実際に目で見て手で触れた体験は、記憶にも残りやすい。だからこそ、何事もまずはさせてみるのだ。】
【それに、やってみればこそ興味を持つかもしれない。今回だって、こうやって興味を示してくれた。】
【そうやって、彼女の世界がどんどんと広がっていってくれたのなら……それは自分にとって、何よりも嬉しい。】

【自分はいまだ、カーテンの中。外から待ちきれないと言わんばかりの娘の声がする。さて、早く着替えを済まさなくては。】
【選んだ物をそれぞれ身に付けて、最後にガウンを羽織れば――――カーテンに手をかけ、開いて。】

じゃん。……ふふ、どう?ベアとお揃いですよー……♪

【試着室から出て、くるり、一回転。貴女の前で、着こなしを見せるように。心なしか、楽しげに。】
【実はこうやって娘と服を選んだり着たりするの、夢だった。父親は息子とキャッチボールしたいと思うらしいが、似たような物だろうか。】

【さて、着こなしの方はというと。基本的には貴女と同じ、モノトーンのパンツルック。普段スカートでいることが多いから、新鮮かもしれない。】
【普段の女性的な姿から一転、どこかクールな印象を齎すだろう。しかし、羽織ったレースのガウンのお陰で、ボーイッシュになり過ぎない。】
【レースのガウンの下から、腕の素肌が覗く。露出は減っているのに、隙間から見える肌がかえって大人な印象を与えて】
【「貴女の母親」から「大人の女性」に早変わり、なんて。普段と全然違う母親の姿を、娘はどう感じてくれるだろうか。】
【腰に手を当ててみたり、後ろを向いてから振り返ってみたり。色々ポーズを取ってみながら、貴女に見せる。】
【……やっぱり、楽しいのだろう。どこかうきうきしてるみたいで、表情もいつにも増して軽やかだ。】


573 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/06(月) 22:43:21 o6XMS57s0
>>569>>570

【彼にとっては悉くがどうだってよかった。どうしてボクがキミのことなんて考えなくちゃいけないんだ、 ─── そう言いたいに違いなかった。】
【忌々しくもまた酒瓶を呷る。助けてやる義理は申し分程度のもの。腐れ縁のよしみ。それ以上の高尚さはない。責めるような顔をされて却って腹立たしく】
【なれば妬かれてしまうのも理解できなかった。彼女の欲しいものは皆んな彼女が手にしていた。自分の持っているものは皆んな彼女が持っているに違いなかった。】
【然し彼もやはり大人ではあった。少なくとも成人はしていた。 ─── だから、好きにさせてやることにした。幾らでも悩めばいい。それを許すくらいしかやれる事はない】
【それ以上は愛し合う二人の領分に違いなかった。 ──── だったら自分だって嫉妬した。他人の家、他人の部屋、家主の側でこいつらは肌を重ねるのも躊躇わないだろう】
【遣り切れない感情を紫煙に処理しようとする。シガレットを取り出す。飛び切り甘い香料を使った黒い煙草。安物のライターで火を付ければ、最悪のアロマに早変わりした】

【そうして、 ─── 副流煙の中に分針が霞む頃、漸く携帯は帰ってきた。ひとのものをここまで乱暴に扱う無神経さにはもう拘泥しなかった。】
【溜息。液晶に視線をやる。青い目を細めて、舌打ちする。ガラスの灰皿に灰を落として、心底軽蔑するように吐き捨てる。】


「 ……… 卑怯だな、キミは。」


【それでも、 ─── 彼は裏切れないのだろう。机の上に携帯を置く。スピーカーホンのボタンを押す。コール音が響いて、誰かが出る。「 ……… なに?」】
【間違いなくアリアの声だった。掠れた白い魂を絞って壁に塗り付けるような、今にも死んでしまいそうな声だった。続く返事は聞こえよがしだった。なにもかも。】



「 ──── おい。」「生きてる?」「それならいいんだ。」「今すぐウチに来てくれないかな。」
「泣かせるじゃないかガラテイア。」「あんたの姫様が何もかんも濡らして待ってるぜ。会ってくれよ、クソッタレ。」



【 ───── 電話口の彼女は息を呑んだ。「待って、かえ ─── 。」音の割れた叫び。誰かの名前を呼ぶ前、真っ赤な指先が通話を切ってやったのは、せめてもの慈悲。】
【そうしたら彼もまた煙草の火を消して、口紅のついた吸殻を灰皿に躙って、少女そっくりに膝を抱えるのだろう。「 ……… 夕月。」誰かの名前を、やはり呟いて。】
【十数分しないうちに鍵さえかかっていない玄関口が開かれる。廊下を駆け寄ってくる誰かの足音。 ─── ドアノブががちゃがちゃ乱雑に回されて、飛び込んでくるのは、きっと】


574 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/08/06(月) 22:55:14 WMHqDivw0
>>571
Psychosocial――心理的社会か。
なるほど、それならば、嵯峨野の求める"調和"との相性は悪くない。
頭についている偽書の文字も気にはなるけれど。


【社会心理学の中には"公正世界仮説"や"ミルグラム実験"、"基本的帰属錯誤"のような概念が存在する】
【それらはある意味で、人間の中に存在する認知エラーとも呼ぶべき概念も多いが――】
【故に偽書と呼ばれるべきものである可能性も、また存在しているのだ】


【それらの現象を支配するのならば、或いは人間社会を支配することさえ、可能かも知れない】
【そうともなれば、益々にシャーデンフロイデに拘る理由は不透明になるのだが】
【社会心理学――人間の持つ偽りの認知――現実世界の書き換え――そして"恐怖"】
【ならば――】


かつて君は嵯峨野が虚神の敵である可能性を示唆したが。
ロールシャッハがジャ=ロと敵対している可能性は高い。

夕月を利用する試みは、ジャ=ロとウヌクアルハイに抗する意味を持つことも十分に考えられる。
シャーデンフロイデを抹消させると同時に、ジャ=ロは実存を取り戻し――ロールシャッハは動かざるを得なかった。

だとすれば存外に、これは急ごしらえの策なのかも知れないな。


【場合によっては"夕月"をウヌクアルハイへの対抗神話として仕立て上げようとしていることも――】
【だとするならば、このインシデントにもジャ=ロが手を出してくる可能性は有る】
【彼女をどう扱うべきか――少ない情報の中で見極めなければならない】
【シャーデンフロイデの二の轍を踏む訳にはいかないのだから】


――必要だとも。
君達三課だけに限った話じゃない。
この世界に住まう以上、誰もが虚神とは相入れず、その圧倒的な力に手玉に取られることになるだろう。

だが、レッドへリング、アナンタシェーシャ、シャーデンフロイデ……今まで虚神を殺して来たのは全てこの世界に実を持つ能力者達だった。

私はね、リーイェン。
"能力者"と"虚神"は――その根源を同じくしていると考えている。
故に、虚神を屠れるのも、また能力者達に他ならない。


【問いかけを成していない彼女の言葉に返すのは、また答えとしての形を持っていなかった】
【突如としてこの世界に姿を顕し、驚異の存在である虚神達に抗うために都合良く"存在していた"組織。ご都合主義の銀の銃弾、サクリレイジ】
【だが、銃弾は所詮銃弾。虚神がただ撃ち殺して終わるだけの存在であるのならば、これほど楽な話はないだろう】
【この世界のために戦う意志を持つ者達は、確実に必要なのだ】

【持ち得る手の全てを尽くすために】


575 : 名無しさん :2018/08/06(月) 23:06:55 iOnIfOG60
>>573

【ひどい沈黙だった、彼が言葉を発さなければ沈黙だけがそこにあって、そうして、発したとしても、返事はあるはずもなかった】
【副流煙のたなびくのにもしも小さな小さな音があったとしたら、それさえも聞き取れてしまいそうなほどに静かで。だから彼女は眠ってしまったみたいにも思えて】
【そのくせ本当に時々なんもかんも分からなくなった幼子みたいに不明瞭な声をあげて愚図るに違いない。なら酔いつぶれて寝てくれたほうが、よっぽどマシに違いない】

【――だから、ホッケーのパックと勘違いしたみたいにすっ飛んでくる携帯電話の行き先をきっと彼女は見てなかった、もう嫌だって心中喚いているに違いなくて】
【ただでさえ床で丸めた身体が、スピーカーにされたことで聞こえたコール音にもっとちぢ込められる。もう嫌だ、って、叫びたい気持ちを我慢しているに違いなくて】
【ゆえに、繋がった瞬間に、小さく小さく呟いた。電話に乗るはずない声量だった。けれど、その場に居合わす彼には届きうる声量だった、】

…………私の時は出てくれなかったのに。

【小さく低い怨嗟の声。もし表情を確かめる他人が居たとしたならひどく嫉妬した表情を見るんだろう、ぎりぎりって歯噛みするような表情は、けど、腕に隠され】
【どうしようもない何かが身体の中のどこかでじりじりって燃えて破裂してしまいそうだった、だからきっと誰かを好きになるなんて、初めてなんだろう】
【いつかの初恋は青春の色合い、思い出の中で舞う桜吹雪と同じもの、――こんな表情はもっと生々しい現実の好意以外に、決してどこにも現れやしないから】

――、死にたい。やだよ、もう……。……。殺してよ……。アリアさんが来る前に殺してよ。……。
会いたくない、――会いたくない。…………っ、やだぁ――、――来ないで、……殺して……。――――、

【――ひぐり、と、また、涙声がして。そうして少女は泣き出してしまうんだろう、だからまた絶望的な声をしていた、世界中で一番自分が可哀想だって声を、していた】
【だから本当に卑怯なんだった――相手のせいに仕立て上げているに違いなかった、自分が出来ないことをしてくれてありがとうだなんて口が裂けても、言うはずない】
【そうして殺してくれとまで懇願する。だのに本当に殺したら末代まで祟りそうな声だった。だから感情なんて全部ばらばらになって、その都度一番上だけが見えるみたいで】
【死んでしまいそうなくらいに会いたいのに、殺されてもいいくらい会いたくない。そんなわがままを並べ立てたら、――きっと、時間は進展なく過ぎてゆく】

【――――――――だからせめて最後の抵抗みたいに、床でだんごむしみたいに丸まったまんま、貝みたいに口を噤むに、違いなくて】


576 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/08/06(月) 23:17:50 pXaVyLjA0
>>574

【リーイェンは確かに頷くだろう。ボスの仮説、そこに際してリーイェンの結論は近かった】
【夕月の脚へと移植されていたシャーデンフロイデ、時間軸的にはかなり前であったが】
【──── ロールシャッハにとって、何か思惑外の事でもあったのだろうか】


まぁ、ジャ=ロがシャーデンフロイデをも利用するだなんて、読めなかったとするのが妥当な線ですね。
だからこそロールシャッハはかつて仕込んでいたプロットを活用し、夕月という存在を利用する
──── 悪くはねー筋書きです。後付けかどうかも疑わしいくらいに

御高説どーもです。私は能力者なんて荒唐無稽な存在じゃねーので、とやかくは言えねぇですが
虚神なんて常識外れの存在にとって誤算だったのは、この現実もまた、常識外れの連中の巣窟だったって事です。



──── グランギニョルな神話に対抗できるのは、グランギニョルな存在だけ……


【リーイェンの言葉が止まった、思考に入るロードは、ボスに予感めいたものを伝えるのだろうか】


素朴な疑問ですが、"虚構現実" に能力者は居なかったんですかね
だとすれば、多少は能力という側面から対抗できたのでしょうが……


577 : ◆3inMmyYQUs :2018/08/06(月) 23:26:34 qo/HyX5s0
>>518

────………………

「……なかなか察しが良いですね。
 もっともこんなご時世じゃ、それが良いものなのかどうか──」

【青年の零したただの一言から事態の核を呆気なく看破され、二人は揃ってミラを見る目の色を変えた】
【円城は飄々とした表情の裏で、およそミラの素性についていくつか察しをつけ始めていた】
【対してマントの青年はそこまでの深慮は無く、何か怪訝そうに、あるいは不機嫌そうに顔をやや顰めた】

【二人とも、彼女について掛けたい言葉が喉元まで出掛かっていた】
【しかしそれを野暮な闖入者の声と、怒濤の如く乱発された銃声らが一挙に掻き消した】


【連なり轟いた火薬の炸裂音と硝煙の臭気が、場の空気を全て塗り替える】
【一切が硬質の緊張の只中に包まれた──そのはずであった。ただ一つを除いて】


 『────────………………』


【婦警は銃撃の前後と一切の変わりなく、そこに平然と佇んでいた】
【まるでその者にとっては何も起きなかったかのごとく。依然として緩やかな笑みを湛え、小首を傾げさえした】

【婦警の身へ風穴を開けるべく放たれた弾丸群は、その期待を外れ、周囲の地面や建物の壁へと着弾していた】
【一発も。ただの一発も、その本懐を遂げることなく、吐き捨てられたガムと同じ無価値さでそこらへ弾痕をへばりつかせたのみだった】
【ミラの狙いが甘かったのではない。むしろそれは乱暴に放たれたにも関わらず、ほとんどが婦警の胴体中心を捉えうる精度を備えていた】

【しかしその弾道は婦警の至近に差し掛かると急激にねじ曲げられ、逸れていった──強力な念動力の力場がそれを成した】


 『──あ〜、あ〜。ひどい顔ですねえ。
  ごめんなさい、そんなになってしまうまで、『治療』に来られなくて。
  これでもずっと捜してたんですよ。あなたは特に、苦しそうでしたから────』


【す、と婦警の片手が揺らめく】
【その手の先に握られた鋭利な何かが街灯の光を受けぎらりと瞬いた】
【──針。何か透明な筒の先に鋭利な針が見える。冷静に注視すれば、それが『注射器』だと分かる】


「──言動とコスチュームが一致していない。イカレてますよあれは。
 私ら逃げますけど、あなたどうします? あれと“旧交を温めたい”ようなら、邪魔はしませんけど」


────おい何だあれは、あれが〈婦警〉なのか?
なんでこっちに来るんだ、おい、なんであんなに笑ってるんだ? おい、円城──


【「五月蠅いですね坊ちゃんは」と円城に一蹴され後ろ襟を掴まれた青年は無理矢理後方へ引きずられる】
【そうしている間に、婦警はいやに平然とした足取りで三人の──視線はミラだけを据えているが──方へ接近しつつあった】


【その不可解な注射針の先端を揺らめかせながら】
【一歩、また一歩、互いの空白を徐々に圧迫せしめ】
【いつの間にか眼だけが大きく見開かれた無機質な瞳が、その瞳孔の中心にミラ・クラァケを映している】

【その場から一切動かず、その針を受け入れることが当然なのだというような眼差しが、執拗にミラを射貫く。射貫き続けている】


578 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/08/06(月) 23:37:18 WMHqDivw0
>>576
【リーイェンは能力者ではない。電子生命体である彼女はあくまでもロジックによって、この世界のルールに則って事物を為している】
【――男に言わせれば彼女の存在も立派に能力者と呼べるものであると認識しているが】
【水掛け論だろう。敢えて口に出すような話ではなかった】


【ロールシャッハの目論見がもしも"後付け"ではなかったのだとしたら、その目的は極夜蝶のシャーデンフロイデでは達成できなかったと言うことになる】
【あのシャーデンフロイデは如何にも利用するには不向きだろう。制御するための何らかの施策が必要なのだとしたら――それこそが夕月と言う少女であったのか】
【今となっては無意味な仮説だが、元はシャーデンフロイデの制御弁として用意されていたのかも知れない】


【そんな最中発された疑問は――】


ゴーストライターの能力はこちらに来てから発現したものだろう。
ならば虚構世界に能力者はいなかった?

――いや、いるじゃないか。
正に、報告書にその存在が載っている。

"願いを叶える少女"が。
"世界線を変える女"が。

"INFオブジェクト"こそが、虚構現実での"能力者"だった――そう仮定はできないか?


579 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/06(月) 23:44:04 o6XMS57s0
>>575



「 ……… ヤだよ。」「殺したらボクが殺される。」


【もはや殆ど自嘲じみていた。誰に殺されるかは言わなかった。 ─── 多分、両方に殺される。蛇に祟られながら撃ち殺されるに違いなかった。】
【どうにでもなればいいと言いたげだった。錯覚して錯綜して錯乱しきったどろどろの劣情が描く血みどろのストーリーライン、何処に向かおうと後は野となれ山となれ】
【2人仲良く膝座りに興じているのだろう。 ─── ばんッ、と壊れるほど乱暴に叩きつけられた扉を、誰も止められない。】



        「 ──── かえで」



【だから、彼女は立ち尽くしていた。昏く深く蒼い瞳を張り裂けんほどに見開いていた。影に似た巨躯は膝から崩れ落ちてしまいそうだった。】
【自動人形の頬に涙が伝う。なにかを堪えて噤まれた色薄い唇は、いとしい人との口付けを待ち望んでやまない。言葉を紡ぐのも煩わしげであって】
【声も姿も幻のように儚かった。それでいて確かにそこにいた。一歩ずつ、 ─── 一歩ずつ、蹌踉めくように近付いて、しなだれかかるように頽れて】



「かえで」「かえでっ」「 ─── かえで!」



【 ─── あたたかい外套の中、布地越しのぬくもり、どこまでも甘やかな肢体をもって、きっと彼女はかえでを抱き締めようとするのだろう。】
【肌を重ねる。呼吸を分かちあう。首筋に頬を寄せる。だれかの着ていたワンピースに涙を零す。背中に指を回して、強く握り締める。意味を成さない繰り言が、続く。】



「ごめんなさい」「 ─── ごめんなさい」
「でもね、」「でもね、」「 ……… お願い」

「好き」「すきなの」「好きよ」「大好き」「好き、っ」「愛してるから」
「もう離さない」「離したくない」「いやよ」「好きよ」「ずっと側にいて」
「愛させて」「大好きなの」「お願い、」「私ね、」「私」「貴女の全てになるから、」「好き、っ ──── 。」



        「あいしてる。」



【なればこそ何れ視線も重なる。真っ赤に泣きはらした青い瞳。焼け爛れた傷跡。涙を知らない機械の隻眼。世界で一番澄み渡った氷から掘り出したような端正な顔を、】
【くしゃくしゃの絶望に歪ませて、怒りと悔しさと悲しさと何より"愛しさ"、皆んな綯い交ぜになった顔立ちは、 ──── 怨むように、かえでと視線を重ねて、そして】
【深く唇を奪おうとするのだろう。薄藤色の髪に掌を添えて、己れと顔を合わせようとするのだろう。固められた関節を解いて、カーペットの上に押し倒そうとするのだろう。】
【全て届かなかった言葉の答え合わせに違いなかった。押さえ込んだ切ない衝動の埋め合わせに違いなかった。然るに、もう一つ重ねるべきは、なんだ。】


580 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/08/06(月) 23:56:39 pXaVyLjA0
>>578

【──── リーイェンの返事が止まった。その言葉は本質に近かった、否、本質そのものであった】


……有り得ない話ではないです、寧ろ、そうであったならば筋が通りますです。
ゴーストライターの能力の因子は、かつて虚構現実にいた頃からあったのでしょうか、それは "INF財団" という組織のエージェントであったから。

だとすれば、──── "虚構現実" とは、正しく我々の現実と殆ど相違ない現実なのでしょう、か。

いえ、或いは、──── そう、或いは……


【リーイェンは息を呑む、その答えは口に出すべきではない事実に思ってしまえた】
【けれども止まらなかった。加速のつきすぎた自転車が、坂道を転げ落ちるに似て】


──── "虚こそが実である" ──── 私にはそうも思えてしまうのです。


何れにせよ、そこから先は私達には分からねー話です。
ロールシャッハに対する認識も固まりました、会合はこんな所でしょうか


【リーイェンは議論を打ち切る。その討議は、長く続けられるべきではなかったから】


581 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/08/07(火) 00:12:31 WMHqDivw0
>>580
【先程男は語った。"虚神"と"能力者"は根源を同じくするものだと】
【その解答がこれなのだとしたら】


分からない、かな?
"虚こそが実である"

――的を得ている。全くそうだと私も考えているよ。

君はこう考えたことはないかな。
虚構現実では、INFオブジェクトはINF財団の管理下に有った。

それは世界と言う視点から見れば、INFオブジェクトと言う世界への脅威を綱渡りのように抑え込んでいた、と見えるだろう。


だが、INFオブジェクトから見れば――?
INF-005の告発文が、その答えを示している。

監禁され、人権を認められず、世界を成り立たせる材料として利用されるモルモット。
それが結果だ。


そこで話はこちらの現実に戻る。


【男の言葉は既にリーイェンに向けられていなかった】
【それはどこの、誰に話していることなのか】


もしも、このまま魔制法をはじめとする能力者迫害の傾向が突き詰められたのなら――十年後、百年後――この世界は───





【そこで、言葉は途切れる。男は口を噤んだ】
【熱し過ぎたエンジンに冷水でも浴びせられたように、くたびれた表情へと戻り、視線をリーイェンに向ける】
【喋り過ぎたことを詫びるような色がそこに有った】

そうだね。
まずはロールシャッハの思惑を潰すことだ。
ジャ=ロにも警戒しなければならないが――

保険も一つ掛けた。
いつまでも手玉に取られたままではいられないだろう。


【前向きな――しかしどこかお茶を濁すような言葉で締め括られて。会合は終わりを告げる】
【後はリーイェンが何を語ろうとも返事を返すことはないだろう】


582 : 名無しさん :2018/08/07(火) 00:16:03 iOnIfOG60
>>579

【ばんッ、と、ひどく鋭い音。沈黙ばっかりの室内の中でいっとうよく目立つんだろう、呼ばれる名前を、けれど拒絶するように、身体を硬くする】
【もうどうしたらいいかなんてわかってないに違いない、違いないから、ただひたすら子供みたいにぎゅうと身体を硬くする、そしてそれは何度も呼ばれても変わらず、】
【抱きしめられてもまだまだ頑なだった。あるいは抱きしめられたからこそ頑なだった――絶望的なため息が漏れる、「だからいやだったのに」、小さな声】

【――怒られた方がよっぽどマシだった。ひどい言葉で罵倒されたらどれだけ良かったか。そうしたなら全部諦められた、分かったふうな顔で終わらせられた】
【けれど抱きしめられ呼吸すら交じり合う距離感にて体温を分かち合って、その背中に指の一つ一つまでを感じて、それで、それで、何度も、呼ばれていくなら】
【頭の中が致命的なエラーを吐き出し続けていた、だから消えたかった、消えてしまいたかった。なにもかも嫌だって喚き散らしたくなって】
【そのくせどうしようもない衝動ばっかりが湧き上がってきてどうしようもなくって、だから、抱きしめたいのを。ただ、"ムリフェン"が必死に押しとどめる】
【だから負けたんだ。だからこうなったんだ。だから。だから。お前のせいだ。お前のせい――。だからみんな死んだ。だからみんな死ぬ。だから。だから。――だから、】

【――――――彼と同じシャンプーの香りがした。彼の吸った煙草の匂いがその髪にしみ込んでいた。呼気から酒のにおいがした、真っ白の肌はすでに真っ赤になって】
【――――やがて秘所を暴かれるみたいに引き摺り出された顔は、だから、きっと、恐怖に打ち震えているんだろう。泣きそうな目で唇を、ぎゅうっと噛みしめ、堪える】
【――そうじゃないと正しくない何かを言ってしまいそうな自分を必死にこらえる、であれば呼吸すら忘れて/詰まらせて、このまま死んでしまいたい】

――――――――――――――――――っ、あ、

【深く深く唇を奪われて。マゼンタの瞳がわずかに見開かれる、そしてきっと世界で一番きれいな青色を見つめていた、生まれて初めて青空を見る、地底の奴隷みたいに】
【酔いにひどくぼうっとした目が、けれどその一瞬確かに見蕩れているのだろう。だからきっと口付けだって酒の味がした。――ゆえに、作法通りに、目を閉じる】
【やがて背中が床に触れてもしばらくはそうしているに違いなかった、――これが夢でここが悪夢だって、信じ込んでいるかのように】

【――――だけど、】

…………――――いきて、る、

【その頭を抱き寄せるみたいに腕を回すのだろう、叶うならそのまま抱きしめて、目を閉じたまま、確かめるみたいに、触れようとする】
【後頭部を撫ぜて、背中に触れて。盲目の人間が初めて感じるものを確かめるみたいに、ひどく拙く、けれど興味深いように、時としてひどく慈しむように、】
【彼女自身が納得するまでそれは続くんだろう。そうして納得したならようやく目を開けるんだった、――鮮やかなマゼンタ色を涙で艶めかせて、見つめるなら】

生きてる、……、アリアさん、いきて、――、ひっ、――ぅ、あ、――ッ、あ、ぁ。――――!

【――長い睫毛が色濃い感情に打ち震えた、樹氷に宿る朝露が震えて滴るみたいに、やがて、ぼろぼろと涙が溢れだして】
【子供みたいな声をあげて泣くんだろう、――それはきっと迷子がようやく親を見つけたときの声に似るのかもしれない、生きてる、って、当たり前のこと、重ねるなら】
【知ってるはずだった。少なくとも彼に会って知ったはずだった。それなのに信じてないみたいだった。こうやって確かめるまで、分かっていないみたいだった】

――ぁりあさん、――、アリアさんっ、すきっ、ッ。――すき。すきっ、すき……。

【――――だから別の人間みたいな顔をしているに違いなかった、彼からしたらきっと馬鹿らしくなるくらい、しあわせそうだった】
【真っ赤な顔はきっと今ではどんな理屈か知らないけれど最愛の人に出会えた喜びにて高揚する色合いにすり替えられているに違いなかったし】
【涙の色合いだっておんなじはずなのに、きっと口に含んだらどんな甘露より甘く甘く蕩けているに違いなかったし】
【押し倒されてはだけたスカートから覗く真っ白な足が絡む先を探す朝顔の蔓より艶めかしく揺らいだ、そうして、両腕はとっくに見つけて、絡んでいた】
【身体じゅうをめいっぱいに満たしている感情がすっかりと入れ替えられてしまっていたから、――だから、やっぱり、誰かを好きになるのは初めてだったんだと、思わせて】


583 : 名無しさん :2018/08/07(火) 00:16:20 PYq7bHtM0
>>567
【争いを知らない事が、その手からも伝わる様だった】
【其れは良い事なのか悪い事なのか判断は誰にも出来ない。ただ、この修道女に取っては――】
【きっと、良い事だ。別に戦う事が悪い訳では無い。それでも、知らないならば其れに越した事は無い】

「――……うーん、そっか。かと言って、ずっと名無しじゃボクとしても困るし……よし
それじゃ、取り敢えずはキミの名前はルーナでどうかな?
前に読んだ神話の中で、とある女神の名前として出ててね。丁度、此処に来た切っ掛けもそれに関係しては居る訳だけど……」

【ノイズ、ともまた違った感覚。或いは直接干渉してくるかのようにも思える】
【丁度格子を破壊した時と、彼女が其処から出た時。ならば、原因を突き止めるのは容易いことだ】
【だが、押し戻す様な事はせず。名を言えないとなれば、代わりとして扱う名を提案するのだろう。何時か読んだ書物にあった、月の女神の名】
【それで頷きでもすれば、満足した様に「なら、決まりだね」なんて笑って見せて】


「殆ど3万日、か……良くそんな長い間居る事が出来たもんだ
ボクだったら1週間も居れば嫌になっちゃいそう

――ま、何だって良いさ。折角外に出られるんだから、少しずつ楽しい事でも覚えてれば良いんじゃ無いかな」

【約82年間。殆どの人間ならばとっくに牢の中で廃人になっている】
【いや、或いは元々外の世界を知らずに居れば何も変わらない日々が過ぎるだけなのだろうか。もしくは、人外ならば】
【彼女が純粋な人間である事は極めて薄い気がする。其れだけの期間檻の中に居て発狂しなかった事もそうだが、元々の檻の内部自体が――】
【それよりも。仮にコレがダグラスの精神世界だとして、彼女が1から数えて経過している日数が異常なのだ】
【……そんな事を考えながら、扉を開いたならば。熱風が頬を撫で過ぎ、思わず顔を顰める】



「何処が“幸せ”な場所なんだか……ボクからすれば完全に情緒不安定の人の其れなんだけど
……ん、どうかした?こんな状態だしあんまりよそ見してると…………あれ?

――――って!!ちょ、っと!!ああもう、何でこうデッカイのばっかりに縁があるのかなァ!?」

【まるで戦渦に巻き込まれたかのような光景。地響きの原因はコレか、と降り注いだ火球を見ていたのだが】
【彼女が指した方向を見ると、思わず目を見開く。規格外、とはこんな時に使うのだろう】
【今まで多くの怪物だと戦う事は多かったが、流石に山と戦った事は未だ嘗て無い。敵意を持って襲い掛かってくるなんてもっての他】
【弾丸を数発放った所でアレは気付きもしないだろう。人間と対峙してしまった小さな羽虫の様な気分】

【振りかざした拳を見た時には女性を抱き抱えようとして、それが叶ったならば背に翼を生やしてその拳を避けるべく飛翔】
【――それが出来たならば、先ずは少しでも距離を稼ごうと更に速度を上げるのだろう】
【たった数度の羽ばたきで最高速度に達する事は出来る、が。人を抱えた状態。更に相手があの大きさともなれば……】
【此処の地理も無い。故に、先ず目指すのは少しでも巨人の視界から外れそうな場所ではあるけれど】


584 : 院長中身 ◆zO7JlnSovk :2018/08/07(火) 00:22:09 pXaVyLjA0
>>581

【──── リーイェンは呆然とする。脳内の処理をボスの創意が上回ったと言ってもいい】
【報告書の中で黒塗りにされていた "年代" ──── それが西暦かどうかも分からないが】
【 "それは五桁であった" ──── 西暦であったと仮定するならば、それは遥か未来】



【そんな筈が無い、けれども、そうであれば辻褄が合う】






【──── 何故 "虚神" 達がこの世界を滅ぼそうとしているのか。何故、彼らは虚構現実を滅ぼしただけで満足しないの、か】





【 "シャーデンフロイデ" は能力者達を "親" と表現した、それならば────】





【──── リーイェンは目の前の男を見る、まるで、得体の知れないモノでも見るように】




…………分かったです。また何かあれば、報告しますです。




【逃げる様に、彼女は連絡を打ち切る。その中身に不安を残して】



/こんな所でしょうか! 長時間お疲れ様でした!


585 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/07(火) 01:18:01 DQwKy/J.0
>>582


【触れるなら溶けてしまいそうな銀色の髪からは変わらないシャンプーの香りがした。情事の後に何度だって嗅いだマールボロの匂いが染み付いていた。】
【一雫だけ纏うような香水からは狂おしいくらいに女の匂いがした。それでいて、 ─── 隠せない硝煙と血腥さは、然し何より、消し得ぬ意志の象徴で】
【かそけき腕に抱き寄せられて、本当に幸せそうに笑うのだろう。誰もが知る怜悧なる横顔からは凡そ掛け離れていた。写真の中で笑う彼女を、泣きじゃくらせたなら瓜二つ。】
【張ち切れてしまいそうな程に震える胸元の膨らみが抱き合う事で歪み合って、ひしゃげ合って、足りないものを充していくような感情に全ての衝動が犯されて】



「 ──── かえで」「かえで。」「かえで、」「 ……… かえで。」
「私ね、」「 ……… いるから」「貴女のそばにいるから」「だから、何も怖くないの」



【然るに、何度だってキスをするのだろう。蜜柑の二房のように柔らかい唇を、深く深く重ねて、ねばらかな舌先を伸ばして、お互いに引き摺り込み合うような口食み】
【ざらついた粘膜で愛情の神経を直接に舐り上げて、舌伝いに流し込む多幸感を蕩かした甘い唾液に溺れさせて、あふれた分が少女の白い喉筋を濡らして】
【肌も言葉も愛おしさも重ねては麻薬じみた相依存に等しい。少なくとも女はもう蜜姫かえでから離れられなかった。離れたくなかった。離れてほしくなかった。】
【 ─── 呼吸ができなくなるまで口付けるのだろう。そうしてまた荒い息を漏らす唇を塞ぐのだろう。垂れる銀色の糸が頬に張り付くのも啜り上げて】
【透き通る青い瞳からは大粒の涙が溢れ続けて、林檎のように泣き腫らした目許から少女の頬に落ちて、2人分の潮っぱい感情さえも甘くて、だからアリアは舌を伸ばして】
【涙さえも舐め取ろうとするに違いなかった。 ─── 肌を這ったところから、充血した眼球まで、熱い粘膜を重ねて上塗りして】
【狼が獲物を喰らうというのはこういうことに違いなかった。それでいて余りに耽美で、蠱惑的で、狂おしいくらいの愛情に満ちていて、ゆえに。】


「辛いこと、」「怖いこと、」「嫌なこと、」「 ─── 見たくないこと」「全部、私が」「背負ってあげるから」
「貴女は何も悪くないの」「ここにいていいのよ」「だからお願い、」「ただ私のそばで幸せでいて」「涙を流すなら、私のためだけに、泣いて、 ─── 。」




「だから、かえで。」「 ……… お願い。」「貴女の為に、 ……… 声を上げて。」「私に、向かって」

       「 ──── "助けて"って、言って。」

「私の名前を呼ばなくってもいい。」「一度だけでも。それが最後でも。」「 ……… そうしたら、私、わたし、 ─── 。」



【 ──── 「なんだって、できるから。」白銀と薄藤の織り成す綴織、2人だけのヴェールに包まれた中。ひそめく声が、絞り出すように、嘆願する。】
【青い瞳が泣いていた。それでいて微笑んでいた。それがどういう意味を持つのか、アリアはきっと理解していた。顎先から垂れるひとしずくが、かえでの口許に、落ちて】


586 : 名無しさん :2018/08/07(火) 02:04:36 iOnIfOG60
>>585

【すらりと細い指先が白銀を分け入るように伸ばされてその頭を抱きしめた、何度も何度もしゃくりあげて、声にならない声が歓喜に咽ぶから】
【彼の指先は世界で一番幸せな女を二人生み出してしまったみたいだった、だから、そんな呼び方はきっと不適切で。なら、きっと、】
【世界で一番幸せな二人を作ってしまったことに相違ないんだろう。――ぐらぐらに酔った脳はただ喜ぶ以外の感情を忘れてしまったみたいで、だから、彼のことさえ】
【大好きな人を前にしたなら忘れてしまったらしかった。甘い甘い蜜漬けの声がいつか彼が愛した女を呼んでいた、そしてその蜜はきっとその女のものだった】
【だのに最後にとろむ一滴までくれてやるつもりはないに違いなかった。投げ出された足が口付けされてわずかに暴れた、――がたんっ、と、机の脚を蹴ってしまっても】

【――もうそんなことさえ気にならないみたいに。机の上、結局全部飲み切っていない彼女の分の瓶が、がちゃん、と、倒れて、中身が溢れて】

――っ、あ。ぁ、――は、ぅ、――――っ、あ、――――ひ、っ。っっ。

【マゼンタの色合いが溶け出てしまいそうなくらいの涙が頬を伝って落ちていく、くしゃくしゃになった短い髪を湿らせて、いくつかが、細かな束になるほどまで】
【机の下に潜り込んだ脚の膝を立てたならがたんっ、と、また、今度は机を蹴り上げる。だから多分また酒瓶が倒れる。こぼれた酒が、床に、ばたばた、と、落ちていく】
【口蓋を撫ぜられるたんびに呼吸が震えた、荒くなる吐息を塞がれるたびに鼓動が荒くなって。だから脳内麻薬をそのまま口の中に流し込まれているのに、似ているんだろう】
【限りなく苦しそうに幸せそうだった。頬を瞳までも舐められても相手を抱き留めるように回した腕は逃げなかった、それどころか、よりいっそうを強請るように、抱き寄せて】

【だけれど――――あるいは、だからこそ】

…………出来ない。……――できない、よぉ、そんなの……、っ、――できない……っ。――できないよ!
好き――、すき。すきなの。……大好き。でも。――でも、でも……、――――だって、私は、――、――っ、やだよ、やだ――、
――――だってっっ、――、だって。できない。……。――だって。じゃないとアリアさんだって。死んじゃう。死んじゃうんだ。……、だって。
ゆるしてくれないから――、みんなだって、――っ、んじゃった、のにっ、だからっ――、――。――――しなないで……。

私と居たら*んじゃうんだ。私と居たら**になるんだ。私と****みんな*******んだ、私******************、
**************。*****************。*************。*********――――、

【またしても色合いはがらりと変わってしまう。ひどく怯えた目が相手のこと、見つめていた。白銀に遮られたなら、外の世界が怖いと怯えて泣きだしてしまう】
【曰くそんなことはできないらしい。なぜと問われれば、そんなことをしたら相手は死んでしまうから、らしい。赦してもらえなかったから、"みんな"も死んでしまったんだから】
【このままじゃアリアも死んでしまうって信じているに違いなかった。だからさっきあんなに喜んだのに違いなかった。――生きているなら死んでしまうかもしれないって】
【唇に落ちた一滴はけれどどこまでもしょっぱくて悲しくなる。好きと思えば思うほどに生きていてほしかった。だのにそうするには相反することをしなければならなくて】
【焦がれる感情に縋りたい自分を護るには蛇に祈るしかなくて。けれど不足を案ずれば焦がれる感情さえ切り捨てて進まねばならなくて。目指す高みはもはや高すぎるのに】

【――ならば神から舞い降り救おうとすることすら、彼女は拒否してしまう。それを受け入れるのはもうできないことだった、それをしたら、きっと、死んでしまう】
【蛇に赦されるための高みへ至るために父を殺した。赦せぬ少女を信じた弟を悪夢と信じて殺した。けれど溶鉱炉に似た地獄に囚われても、母を殺せなかったから】

【死なないでと懇願する。そうすると一緒に居られない。助けてって言うのは蛇への裏切りだった。だから赦してもらえない。だから相手は死んじゃうんだ】
【いろんな感情が溢れだしたなら言葉はついに絡まり合うように不明瞭になって何もわからない。ただ確かであるのはひたすらに自分を呪っていた、今すぐ死ねばいいって思っていた】


587 : 名無しさん :2018/08/07(火) 02:22:36 iOnIfOG60
>>585

【すらりと細い指先が白銀を分け入るように伸ばされてその頭を抱きしめた、何度も何度もしゃくりあげて、声にならない声が歓喜に咽ぶから】
【彼の指先は世界で一番幸せな女を二人生み出してしまったみたいだった、だから、そんな呼び方はきっと不適切で。なら、きっと、】
【世界で一番幸せな二人を作ってしまったことに相違ないんだろう。――ぐらぐらに酔った脳はただ喜ぶ以外の感情を忘れてしまったみたいで、だから、彼のことさえ】
【大好きな人を前にしたなら忘れてしまったらしかった。甘い甘い蜜漬けの声がいつか彼が愛した女を呼んでいた、そしてその蜜はきっとその女のものだった】
【だのに最後にとろむ一滴までくれてやるつもりはないに違いなかった。投げ出された足が口付けされてわずかに暴れた、――がたんっ、と、机の脚を蹴ってしまっても】

【――もうそんなことさえ気にならないみたいに。机の上、結局全部飲み切っていない彼女の分の瓶が、がちゃん、と、倒れて、中身が溢れて】

――っ、あ。ぁ、――は、ぅ、――――っ、あ、――――ひ、っ。っっ。

【マゼンタの色合いが溶け出てしまいそうなくらいの涙が頬を伝って落ちていく、くしゃくしゃになった短い髪を湿らせて、いくつかが、細かな束になるほどまで】
【机の下に潜り込んだ脚の膝を立てたならがたんっ、と、また、今度は机を蹴り上げる。だから多分また酒瓶が倒れる。こぼれた酒が、床に、ばたばた、と、落ちていく】
【口蓋を撫ぜられるたんびに呼吸が震えた、荒くなる吐息を塞がれるたびに鼓動が荒くなって。だから脳内麻薬をそのまま口の中に流し込まれているのに、似ているんだろう】
【限りなく苦しそうに幸せそうだった。頬を瞳までも舐められても相手を抱き留めるように回した腕は逃げなかった、それどころか、よりいっそうを強請るように、抱き寄せて】

【だけれど――――あるいは、だからこそ】

…………出来ない。……――できない、よぉ、そんなの……、っ、――できない……っ。――できないよ!
好き――、すき。すきなの。……大好き。でも。――でも、でも……、――――だって、私は、――、――っ、やだよ、やだ――、
――――だってっっ、――、だって。できない。……。――だって。じゃないとアリアさんだって。死んじゃう。死んじゃうんだ。……、だって。
ゆるしてくれないから――、みんなだって、――っ、んじゃった、のにっ、だからっ――、――。

私と居たら*んじゃうんだ。私と居たら**になるんだ。私と****みんな*******んだ、私******************、
**************。*****************。*************。*********――――、――――しなないで……。

【またしても色合いはがらりと変わってしまう。ひどく怯えた目が相手のこと、見つめていた。白銀に遮られたなら、外の世界が怖いと怯えて泣きだしてしまう】
【曰くそんなことはできないらしい。なぜと問われれば、そんなことをしたら相手は死んでしまうから、らしい。赦してもらえなかったから、"みんな"も死んでしまったんだから】
【このままじゃアリアも死んでしまうって信じているに違いなかった。だからさっきあんなに喜んだのに違いなかった。――生きているなら死んでしまうかもしれないって】
【唇に落ちた一滴はけれどどこまでもしょっぱくて悲しくなる。好きと思えば思うほどに生きていてほしかった。だのにそうするには相反することをしなければならなくて】
【焦がれる感情に縋りたい自分を護るには蛇に祈るしかなくて。けれど不足を案ずれば焦がれる感情さえ切り捨てて進まねばならなくて。目指す高みはもはや高すぎるのに】

【――ならば神から舞い降り救おうとすることすら、彼女は拒否してしまう。それを受け入れるのはもうできないことだった、それをしたら、きっと、死んでしまう】
【蛇に赦されるための高みへ至るために父を殺した。赦せぬ少女を信じた弟を悪夢と信じて殺した。けれど溶鉱炉に似た地獄に囚われても、母を殺せなかったから】

【死なないでと懇願する。そうすると一緒に居られない。助けてって言うのは蛇への裏切りだった。だから赦してもらえない。だから相手は死んじゃうんだ】
【いろんな感情が溢れだしたなら言葉はついに絡まり合うように不明瞭になって何もわからない。ただ確かであるのはひたすらに自分を呪っていた、今すぐ死ねばいいって思っていた】

/ごめんなさい、修正版ですっ


588 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/07(火) 03:12:42 DQwKy/J.0
>>586>>587


【どうしようもなく怯えてしまう紅紫の瞳を、 ─── ひしりとアリアは抱き締めるのだろう。マシュマロと呼ぶにも柔らかで豊かに過ぎる胸元へ】
【動悸に震える背中をそっと掌が撫ぜる。愛娘をあやす手付きでいて、それでいて恋人を愛でるそれでもあった。甘い匂いがした。香水のにおい。石鹸のにおい。】
【暴れる両の足には自らの脚を絡めてしまう。搦め捕ってしまう。ひどく肉感的で、それでいてしなやかだった。 ─── かえでの全身を包んであげたかったに違いない。】
【泣き止ますように滔々と甘い言葉を語るのだろう。真っ赤な耳朶に唇を寄せて、湿った呼吸を吐きかけながら、静かに言葉を選んで、ささめく。】



「 ……… 貴女のせいじゃないわ。」「貴女は何も悪くないの。」「ねえ、 ─── お願い。私の話、聞いてくれる?」
「 ──── 心当たりがあるの。」「貴女の大切な人も、仲間も、神様も、 ─── 皆んな殺して歪めてしまった、貴女に憑き纏っている、"よくないもの"の話。」

「私ね、 ─── 一生懸命、探したのよ。」「かえでに幸せになってほしくって、」「かえでに辛い思いをしてほしくなくって」
「そうして教えてもらったわ。貴女の神様は、最初から貴女を呪ってなんかいなかったって。」「 ……… だから、赦してって祈っても、答えてくれなかったんだって。」
「狐の御面を被った"だれか"。 ──── 知ってる?」「 ……… 知らないかしら。まあ、いいわ。」

「案外、神様の御使だったのかもしれないわね。 ……… だから、私は大丈夫。その人、 ……… 人ではないと、思うけれど」
「おまじないをかけてもらったの。私が貴女を守れるように、よくないものに殺されないように、って。 ─── 貴女の側にいるために。」
「けれど、よくないものは祓わないといけないの。貴女は何も悪くないのに、そいつが、蛞蝓が、勝手にすべて歪めてしまうから ──── 。」


【 ──── そうしてアリアは"真実"を語るのだろう。幾ばくかの脚色を添えた上で、静かに。そうするしか方策がなかった。信じてもらえなくとも仕方がなかった。】
【その呪いを解いてやるまではアリアは死ねなかった。真実を全て伝えてやらなくては、たとえ機械の身体であっても、およそ死に切れなくて】



「貴女は幸せにならなくてはいけないわ。」「貴女は私が幸せにする。」「 ─── ねえ、今だけでも、信じて。」
「 ─── 殺してあげるわ。」「貴女を幸せにしないものは、全て。」「お願い。わたしは死なないから。だから、死なないで、かえで ─── 。」



【 ──── なれば斯様な告白もするのだろう。貴女の邪魔をするものは全て殺す。人も、神も、怨霊も、感情も運命も人生も。全て狼の牙にかけて、喰いちぎってやると】
【望み通り彼女は少女を"殺す"に違いなかった。ムリフェンも蜜姫かえでも躊躇わずに"殺す"のだろう。"貴女"が幸せになれない世界なんて皆んな壊してしまうのだろう】
【そうして熱い灰が立ち込めるばかりの中、ひとりアリアだけが手を差し伸べるに違いなかった。だって殺せないのだから。貴女を生かす為に全てを殺すのだから】


589 : 名無しさん :2018/08/07(火) 17:55:33 iOnIfOG60
>>588

【そうして抱き寄せられたなら、背中を撫ぜられるなら、足を絡められるのなら、少女はそれですっかりと身体ばかりは相手に委ねてしまうんだろう】
【けれどその内心。酒に揺らされた勢いに任せて怯えて泣きじゃくる心はきっとそのままだった、それさえも溶かしてしまうには、信じた時間が長すぎて】
【だのに大好きだからほんのわずかにその涙を収めるのだろう、背中に食い込ますような指先は爪の長さまで感じさせる遠慮のなさで、いつもみたいに、短くそろえられている】
【――――耳元にささめかれて、恥じらうようにわずかに身動ぎした、呼吸のたびに大好きな人の匂いに肺の奥まで浸されて、だから、気持ちなんてとっくに制御できなくて】

――――――――っ、やめて、ぇ……。

【ふらふらと頭を揺らすんだろう、微かな拒絶はけれどどうしようもなくその柔らかな胸元に甘える子供のしぐさにしか見えなくて、致命的に矛盾する】
【話を聞かないわけがなかった。けれど聞いたとてそれを受け入れられるかどうかは別であった。だから彼女はひどい言葉を聞かされたように身体をびくびくと震わして】

――怒って、よ――っ、怒って……っ、――っ、嫌いって言ってよっ、しらない! ――そんなのっ、そんなの、知らな……、
嘘だよ。うそ……。そんなの知らない――、しらないっ、――! しらない、しらないっ、やめて……。
――――アリアさん……。そんなの、知らないよ……。――っ、何をいってるの? わかんないっ――、――!

【いやいやをしながら、だのに、余計に縋り付く。本当に怒ったなら、嫌いと言い捨てたなら、そのまま絶望してしまうに違いなかった。だけれども、】
【そうでもされないとそれはそれで全く違った気持ちが弾けてしまいそうでどうしようもないんだろうと思わせた、逃げ出すつもりはなくて、だけど、逃げ出したくて】
【伝えられる真実はそれでいて耳当たりのいい形に装飾されていた。だから余計に拒めなかった、どこまでも安堵してしまいそうで、死にたくなる】
【なればひどく拙く甘えるよな声でその名前を呼ぶのがめいっぱいであるかのように。名も知らぬ星を指差してあの星がきれいだと二人共有してみたいみたいに】
【だからきっと無条件には受け入れられないに違いなかった。今まで生きて来た分に真摯であろうとすればするほど。あるいは、自分の行為が無価値だと信じたくないなら】

――――アリアさん、しなない? ほんとうに……? どうして――? なんで。……蛞蝓――……? 何を、
やだっ――、いや、だ、――っ、ろして、よ、! 死にたい……、きらいって言って……、――、好き。すき……、ありあさん……、

【全部の価値観がいっぺんに矛盾したならそれこそ世界がひっくり返るような混乱をもたらすんだろう、それそのものが全部を灰燼に帰すだけの絶望の前座に似て】
【それでいて"この程度"で済んでいるなら間違いなく素面じゃない証明だった、酒と甘い煙草と香水と、なにもかも、何もかもに中てられたなら、縋りたくなって】
【自分に憑いた何かをきっかけにして自らに施した呪いが最後の一歩を踏み出すのを拒もうとする。自分がそこに居たら必ず誰かを不幸にすると信じたなら】
【あるいは蛇へ向けられるものよりも強く強く信じているのかもしれなかった。それがあるから蛇に祈るんだから。それさえも"こう"なってしまったんだから】

【蜜姫かえでがそこに居るからって別に誰も不幸にならない。――そんな当たり前のこと、けれど、彼女はとっくに忘れてしまっているから】


590 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/07(火) 21:09:33 o6XMS57s0
>>589


【外套のカシミヤに円い爪先が突き立てられて、悦びの極致に打ち震える刹那が永遠に続くのだから、 ─── アリアは酷く蕩けた顔をしているに違いなかった】
【震える少女の逡巡を抑え込むように強く強く抱き拉ぐ。幾らでも甘えさせてやる。頬擦る柔らかさ。鼓膜蕩かす甘い声。願うなら乳房さえ咥えさせてやるに違いなかった】
【その代わりに甘い匂いと甘やかな胸にて犯し尽くしていく。逃れられぬ抱擁は優しい陵辱に似ていた。宥めるように脊髄をなぞり上げるのは、心に指を入れるに等しく】


「 ………… ええ。」「死なないわ。」「かえでが想ってくれる限り、私はずっと、貴女の側にいる。」
「だって貴女は何も悪くない。 ──── 悪くないのよ。」「大好きだもの、愛してるもの、 ………。」


【なにも否定する事はなかった。今の少女へ慈悲の一撃と成りうるのは、いつの日か捧げたような酷薄な言葉に違いなかった。そう成りうる言葉を幾らでも彼女は思いつく筈で】
【然し湿った呼吸に添えて囁かれるのは嬌声と共に震え上がるような甘言ばかりだった。きっと女の嗜虐趣味を少女は知っている。 ─── だから、けれど、或いは。】


「かえで。 ─── 貴女はね」「誰かを不幸せになんてしないの。まして空っぽなんかじゃないの。 ……… 貴女はね」
「こうして私が愛する為に、 ─── 産まれて、頑張って、生きてきたのよ。 ……… もしも何処かで貴女が躊躇っていたら、今の貴女は、ここにはいないもの」
「だから死んだら嫌よ。生きているだけでいいの。側にいるだけでいいの。貴女を苦しめる呪いがあるなら、 ─── 私が全部、背負って、祓って、幸せにしてあげるから。」


【永遠に続く優しい言葉。それこそ邪教の教義じみていた。貴女が味わってきた痛苦、煩悶、絶望。貴女が犯してきた錯誤、尊厳、罪咎。貴女が殺してきた友輩、父親、愛弟。】
【 ──── 全て、貴女を創り上げるのに必要だった代物。大切な人に愛される為の過程。故にもう何もしなくてもいいし、何が不幸になることもない。そんな酷い言い分。】
【けれど確かに全肯定に違いなかった。少しでも心を明け渡すなら引き摺り込もうとするのだろう。二度と離しやしないのだろう。酷く傲慢で冷酷だった。だからこそ。】
【 ──── 何度だって最後の一歩を踏み出させようとする。この言葉を受け入れてもらえなくても。手負いの獲物を追い回し、死ぬまで喰らいつく狼のように】
【然してそのやり方は牙を用いない。崖っぷちに立ち尽くして膝を震わせ、それでも必死で踏み止まる少女の背を、執拗に、残忍に、然し代え難い愛情に満ち満ちて】
【慈母のように広げた両手で突き飛ばそうとするのだろうし、 ─── ともすれば、そのまま抱き締めて、無理心中に身を投げることさえも厭わなかった。いや寧ろきっと、彼女はそれを望んでいた。】



「ねえお願い、かえで。」「私はね、死なないわ。今までも、これからも。だって貴女を愛する為に生まれてきたから」
            「 ──── だからね。」「生きて、愛して、縋って、信じて。 ………私のために。」



【 ──── そうしてアリアは、かえでを抱き上げようとするのだろう。産湯を拭う母のように。涙に濡れて/けれど蕩けた青く冷たい隻眼。目尻の端まで丸く垂らして】
【色素の薄い唇はリップノイズと共に緩む。真白い肌が切ない熱を帯びていた。額と額を重ね合わせて、それを理解させる。 なれば、くちさきだって】
【ふたりの織り成すヴェールの中、きっと少女が頷くまで繰り返すのだろう。甘い言葉を繰り返すのだろう。突き出す両手を繰り返すのだろう。 ─── そして一度でも頷けば】
【今宵は何処までも優しくしてくれるに違いなかった。それでいて蜘蛛の巣に絡め取るように二度と離してくれないに違いなかった。身も心も啜り尽くされるに違いなかった】
【 ──── 誰かが部屋から出ていく。投げやりにドアが閉まる。明かりが消える。月明かりだけが差し込む部屋の中、白銀と紺碧だけが、真実のように輝いていた】


591 : ◆KP.vGoiAyM :2018/08/07(火) 22:17:08 Ty26k7V20
>>525

いらねぇよ。煙草とビールにしてくれ。あとは自分でなんとかする。

【あの世でも自力でどうにかしようとするのはつまりはあの世なんて信じていないからで】
【どうせ対して今と変わんないだろという死生観なのか諦観なのか…】

ハッ―――銃口がそんなべらべら喋るもんかよ。
諦めろ、オレたちはクソッタレの人間でそれ以上にも以下にもなれないんだ。

【彼は鼻で笑った。どうせ人間。それもクソッタレな。それは投げやりな冷笑に聞こえるかもしれない】
【でもこれは彼なりの賛美で、されど人間。クソッタレだからこそ素晴らしい。そういう意味も含まれているのだが】
【如何せんそれを伝えるには言葉も態度も足りない】

デカが足をケチるようになったから、俺にも仕事が回ってくるってことさ。
ま……そう言ってくれる分、使える足になるさ。

何処におろしてくれてもいい。何処だろうと―――俺の街だ。

【渡された名刺に一瞥して、煙草と同じ胸ポケットに入れる。そして、窓ガラスを軽く指でトントンと叩いた】

其処のバーガーチェーンの前でいい、腹が減ったから。
…エビのやつ美味いんだよ。なんか…エビのやつ…。ああでも、いくら持ってたかな。まあ、いいや。降ろしてくれ。

【そんな風に、適当に降りる場所を決める。安全圏へ脱したといってもさっきまで命がけだったというのに】
【流石というべきかもはやイカれてるのか――イカれてるからこそ成立しているのか――わからないが…】


592 : 名無しさん :2018/08/07(火) 22:24:43 eJ/2IOVs0
>>590

【上等の布地に指先が埋まって――けれどきっと一度指先を滑らすのだろう。それが酔いのせいなのか気持ちのせいか分からずとも】
【たしかなのは少女が二度目を嫌がったみたいに今度こそ爪を立てることのみで、そしてきっとその事実だけで十分だった、大好きなんだから】
【背骨を撫ぜあげられればくすぐったさにわずかに背中が反る、ならば心をかき混ぜる指はねとりと瀞む愛情に絡まれるんだと予感させて、】

――――――――――っ、

【だから少女は何も言わなかった。あるいは言えなかった。あんまりに柔らかな乳房に顔を埋めてしゃべるなら、ふっと、吐息を詰まらしてしまいそうで】
【それなら赤子みたいに生殺与奪のすべてを委ねてしまいたかった、食事も排泄も何もかも委ねて、泣き声で全ての出来事を汲んでほしくって、大人になんてなりたくない】
【一生このままで居たいと思ってしまいそうなほどに絶望的すぎた、二度と自分の脚で立てなくなってもそれでいいと思えてしまいそうなくらいに、愛おしすぎて】
【快と不快しか知らぬのが赤子であるならそれよりも単純に相手への情動に耽っているに違いなかった、いっそその胎に入れてほしいかのように、抱きしめ縋るから】

【あんまりに無垢な感情は愛情だなんていうにはきっと暴力的すぎるけど。――だから決して果たせぬ情動をせめて晴らさんと、その胸元で、何遍も感情を吐き出して】
【柔らかな胸元を押しとどめている布地が擦り切れてしまいそうなくらいに名前と好きとを繰り返していた。くぐもって聞こえない声はありふれた生活音に似るけど】
【右も左も前も後ろも分からなくなった情事の最中みたいに荒い吐息の熱と湿っぽさが布越しに心臓まで届いてほしいと願っている/呪っているみたいに】

【――そうしてやがて抱き起されるなら、わずかに呻くのだろう。まだ眠っていたかったと愚図るみたいに。それで、体重の全部を相手に委ねる】
【そういう意味では酔いも深刻だった。気づけばひどくぼーっとした目をしていた。致命的なくらいに頭は回っていなくて、だから、だからこそ】
【普通であれば到底受け入れないと思われる言葉もひどく魅力的に聞こえて。拒むだけの思考力を持ち合わせなくて。蛞蝓、という単語さえまともに取らない】
【それよりも何よりもただ甘言に蕩かされてどうしようもない感情の溢れるのを抑えることができなくて。額同士が触れ合う、何度目かもわからぬキスをして】

――――――――――……、        ?

【――――唇だけがかすかに問いかけた、声はひどく朧気で聞き取れるほどではなかった、わずかに漏れ出る吐息だけが、言葉の気配を感じさせて】
【ありふれた人間であれば聞き取れるはずもなかった。けれど聞こえずとも相手には理解できるのかもしれなかった。あるいは無粋に唇を読み取れるのかもしれなかった】

【(ここにいていいの?)】

【だけれど確かだったのは寝入る瞬間の子供が自分を寝かしつける母親の掌を、ふかふかのベッドを、くたびれたテディベアを、寝室を、疑わないみたいに】
【ひどく安堵した表情をしているんだろう。――いつか傷を手当してほしいと求めたときの顔。いつかアリアを置き去りに、彼へ付いていった時の顔】
【だからどうしようもない予感もまた付きまとう。――この少女は"彼"と出会ってしまったらまた"どうか"してしまうんだろうこと。まだ、終わりにはきっと、早すぎること】


593 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/07(火) 22:40:12 o6XMS57s0
>>591

【「 ─── 言ってくれるなあ。」困り果てたように頬を緩める白面は然し、罷り違っても愛想笑いではない。】
【であれば彼の意するところは確かに伝わっているに違いなかった。それが分からない程そいつは愚かではなかった。】
【防弾仕様でさえない窓硝子を叩く指先に、 ─── 運転手の男が軽く頷く。ブレーキを踏み、ギアを入れ直し、少しずつ速度は落ちていった】

【座り方の都合、一旦そいつは先に車から降りた。見送りの意味もあるのだろう。あるいは寄越すのは餞別の言葉か。】


「ボクはライスバーガーの方が好きかなぁ。」「序でに言うならオニオンフライの方がもっと好きだし、 ……… ま、いいや。」
「それじゃあ依頼料は前金で。ひとつ貸しとは言わないから ─── よろしく頼むね、ロッソさん?」


【 ─── 別れ際の挨拶としては至極もって適当なものだった。ゴスロリの下から取り出して、ぴんッ、と弾かれた硬貨が1枚。】
【そのまま男の胸ポケットに落ちるのだろう。殆ど曲芸師も同然だった。然し良く見ていれば、レースに隠したそいつの指先は】
【女のものにしては幾ばくか筋張っていたし、歩き方も何処となく女らしいように振舞っているようでもあり、】
【然し疑念があったとして、問い掛ける前にセダンは再び夕暮れの街へと走り去っているのだろう。 ─── 答え合せは次に会う時に、と言わんばかりに】

/こんな感じでシメでいかがでしょーかー!


594 : エーリカ ◆D2zUq282Mc :2018/08/07(火) 22:44:29 JY1GydDk0
【その日、水の国全域で雨が降り頻っていた】

【一様にして重苦しい曇天であり、隙間一つ無い雨模様だった】
【不便が多いその天気ではあるが、数少ない利点があった。それは音を紛らせる事と――】


許しを請う心算はない―――……精々、地獄で呪詛の言葉でも唱えてるんだね。
殺しが私ら公安の仕事なんだから存分に恨んで欲しいよ、ねぇ"黒幕"に仇名す議員先生サン。


【血のような非日常の匂いが掻き消される事である】
【雨模様の路地裏に転がる死体を見下ろし、疲れた表情を浮かべて独りごちる】
【倦怠に起因する黒い翳が目元を覆い、吐き捨てる言葉には芯が無くて弱弱しい】

【前髪の一部を黒く染めた金髪に、左耳に開けたトランプのマークを模したピアスが印象的で】
【動きやすい簡素な服装の上に返り血を浴びたフードつきの雨合羽が特徴的な女性であった】
【その女性、公安五課――別名:特別対策室所属のエーリカ=ファーレンハイトその人である】

【返り血を浴びた雨合羽も、右手に握られた血の滴るナイフも雨水にて流されて消え行く】
【エーリカはくるっと身体を翻して。死体を一顧だにせずその場を離れようとするが――
 その先に待ち受けているのは一体何だろうか?敵か、味方か、あるいはそれ以外の何かか】


595 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/07(火) 23:39:35 o6XMS57s0
>>592


【白いシャツの胸元は、 ─── すっかり濡れてしまっているのだろう。涙と懇願と湿った声に。だから間違いなく、かえでの願いは達せられていたに違いなかった】
【女もまた呪われてしまっていた。もう蜜姫かえでから離れられなかった。時計の短針が少し傾くまでは、ただ彼女を助けられたなら、自分を見てくれなくても構わないと】
【悲愴な決意を括って逢いに来たというのに。 ─── 今となっては、その総てが自分に向けられていなくては、許せなくなっていた。見つめ合う青い瞳の中に、】
【静かに宿るのは執着と呼ぶも悍ましい情念。復讐の炎は地獄のように我が心に燃えていた。なれば、この世界でただ一人、彼女にしか聞こえない問い掛けにも微笑んで】


「 ………… ここにいなきゃ、だめなのよ。」


【 ───── あってはならない衝動が、薄藤色の下に潜り込む。うなじに立てられ、音もなく引っ掻く爪先が、ごく甘美に肌を裂く。白夜のような疼きを残した。】
【この瞬間が行き場を失った愛情と酒精に麻痺した幻覚と絶望的な朝焼けしか持たぬ世界から練り上げられた物果無さなら、自ら発条を巻く機械にとって終端抵抗は絶望的で】
【なればこそ。せめて2人だけのポインタ変数、世界の楔となる澪標だけでも打ち込まねばならなかった。 ──── アリアは、そう信じていた。白い喉から絞り出す言葉が、もう偽証だと知りつつも。】




     「大好きよ」「愛してるわ」「ずっと一緒よ」「 ─── かえで。」




【そうしてまたアリアは唇を塞ぐ。返ってくる言葉を恐れていた。一刹那たりとて、湿った愛情に塗り潰さないままの答えを聞きたくなかった。】
【柔らかに絡み合う蔦楓の根元、 ─── 擽るような人差し指は、そっと内腿を這い上がる。閉じたカーテンより薄明さえ追い出し、もう誤魔化せない渇きを満たすために。】









「 ──── Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen, Tod und Verzweiflung flammet um mich her ……… 」
「Fühlt nicht durch dich Sarastro Todesschmerzen, So bist du meine Tochter nimmermehr ………… 」


【幾度目を瞑るのだろう。幾度目を啓くのだろう。 ──── 眠る愛娘を抱き留めたまま、夜の女王が紡ぐのは、優しくも穏やかに変調したコロラトゥーラ。】
【子守歌と呼ぶには余りにも惨い歌詞をしていた。けれど腕の中で眠り続ける少女は、それを解する筈もなかった。だから女は高らかに唄う。ザラストロを殺せ、と。】
【 ──── 腕の中の愛娘が目覚めるなら、アリアは母に似て微笑むのだろう。そうしていっそ忌々しい家主の視線をよそに、かえでを自らの巣に連れ帰ろうとする。ひとときの安寧に過ぎぬと知りながら】


596 : 名無しさん :2018/08/08(水) 00:48:47 eJ/2IOVs0
>>595

【すんすんとしゃくりあげる気配だけがこびりついていた。けれど涙はとっくに止まっていた、あるいは涸れ果ててしまったみたいに】
【そのくせまだ泣いてるみたいな顔をして笑うんだろう――柔らかな唇をほころばせて。その眦をとろかせて。地獄絵図から掬い/救い上げられる瞬間の顔をして】
【だからこそあんまりに絶望的だった。まだ彼女は蛇から離れられないに違いないなら。――あるいは一つ希望でもあった、思考の鈍りきった今だからこそ】
【そんなときに紡ぐ言葉だからこそ、自ら課して負った呪いをほどいてやることが出来たなら、――きっとそのときは、ほんとうに、ほんとうに、"そう"できるって、期待させて】

…………――、そっ、か、……。

【――けれど、あの狐面はどこに行ってしまったんだろう。あれに頼れるのかはもはや分からなかった、そもそも、あれは最初から頼れるものだったのか】
【嵐の夜に嬲られる木々の葉みたいに惑う少女を繋ぎ止めるためにはあんまりにも不確かな光明、明けぬ夜と止まぬ雨の中に閉ざされて、今にも消え果てしまいそうな蝋燭に似て】

【――――ゆえに、相手の言葉を大事に大事に抱き留めるみたいにささめく少女の表情が、ひどく不吉なものを暗喩するように、見えてしまう】

――ん、――あッ、っ、つ、ぅ、……っ。――もぉ、……っ、あ、――――――――っ、

【そうして肌を裂かれたなら鈍い反応、びくりと身体が強張って、それから、ゆっくりと、爪先から逃れようとする。身をよじるようなら、最期の抵抗に似て】
【そのくせきっとちいとも抵抗なんてしていない儀式のような仕草でしかないんだろう。それでもどこか批難がましく眉をひそめた、――ひどくやわらかな表情で】
【終えるのならば抱き寄せる。そうして耳元で囁くに違いなかった。「――だいすき」。「ずっと、――」――、少なくともこの瞬間の彼女は無垢にそれを願うなら】
【撫ぜられる感覚に吐息が綻ぶように震えるんだろう、――今更過ぎって、それから、理解した。さっきの音はドアの閉まる音だったんだ、と。だから、】



【――――――抱き留められたまま眠る少女は、けれど、いつからか起きていた。それをきっと相手は気づいていた。彼女だって、誤魔化せると思ってないはずだった】
【そのくせに眠っているふりをしていた。もしかしたらこれは夢だって信じたいのかもしれなかった。昨日のことをあんまり覚えていないのかもしれなかった。だから】
【きっと一生懸命に考え込んでいるに違いなかった。その証拠に時々眉を顰めるんだった。そのくせにすぐに気づいて安らかな寝顔を偽装するんだろう、だけれども、】
【その吐息はめいっぱいに真似したとしても眠っている人間のものとはかすかに違っていた。だからずっと歌ってればいいと思った、声が全部涸れるまで待とうかと、】
【そうしたなら何にも言われないで済むはずだからと投げやりな思考回路。――――けれど何かを阻害して逃げおおせようと言う気持ちには、なぜだか、なれなくって】
【ゆえにもう少しだけそうしていることにする。誰かに気を使ったわけではないと思う。誰かに気を遣うならさっさと起きるべきとも言えるのかもしれないけれども、】


最悪……………………。


【――――だって、多分、あんまりに、あんまりな、空気をしている、はずだから】


【(――だから結局諦めて目を開けて一発目の声が、酒を飲んだ記憶の次、知らない男が隣で寝ている朝、みたいな声になるのは、仕方がないのかもしれない)】


597 : ◆DqFTH.xnGs :2018/08/08(水) 00:51:21 ajq1ioYU0
>>577

【(マジかよ…………)かちん、かちん、かちん──空撃ちを3度聞き、思わず笑いが溢れる】
【銃では殺せない。生半可な異能ですら相手の命を絶てそうにないことが、はっきりと分かってしまった】
【不意打ち──警察署で会った時は確かに銃弾は婦警に達した。ならば不意打ちが有効なのか】
【──少なくとも、今は不意打ちなど不可能だ。真正面切って対峙している、今は】


ぎゃ、は────おい、おいおいおい…………、マジかよ
てめぇみてぇなキチガイ婦警にストーカーされるなんざ、こっちからごめんだぜ曽根上よぉ
いやほんと。謝られる筋合いねぇっつぅか、…………────ッッ!!


【婦警の手元に、ギラつく何かを見た。それが何なのか──認識した途端、わあっと全身が粟立った】
【頭に『帽子』を乗せられたシーンがフラッシュバックする。とうに治っているはずの無数の傷痕が】
【じくじくと痛む。記憶が薄れていく感覚。目の前を埋め尽くす虹色の閃光。炸裂する不協和音】
【──全てが強烈過ぎる、悪夢のような記憶だった。怯えるように、9の触腕が震えていた】

【あの針に捉われてしまえば何が起こるか。想像なんてしたくない。どうせ碌でもない事だ】
【(────っ、クソ…………がぁっ!ビビって、んじゃ…………!!)脚が恐怖で、動かない】
【表で見た異変よりも、目の前に迫り来る婦警の方が遥かに恐ろしかった。腹の底から】
【ぞわぞわと悍ましさが込み上げてくる。本能が相手の存在を忌避していた】
【アレを受け入れるだなんて反吐が出る。気持ちが悪すぎて胸が焼ききれそうだ】


  【 だから彼女は 】  【 その、ドス黒いモノを 】  【 吐き 】  【 出した 】


【────ばしゅッッ!! 婦警の顔面に向け、暗黒色が文字通り“吐き出される”】
【墨だった。目眩しのための。少しでもいい。あの気味の悪い視線を断ちたかった】


…………くッッッそ!!!!!!ふざけんなテメェら!あたしを置いてくんじゃねぇ!!

────────連れて────────行け────────────ッッ!!!


【動きが鈍い脚を地面から引き剥がす。振り返りながら、長い触腕を円城達に向け精一杯伸ばし】
【この場からの逃避を試みる。賭け、でもあった。円城達に転移やらの逃走手段があるのかどうか】
【仮にあったとして──この触腕を掴んでくれるのか。分の悪い賭けではあったが】
【今は彼らに縋るしか道はないと、直感がそう言っていた。独りで婦警に対峙するのは、自殺行為だ】


598 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/08(水) 01:46:40 Kgrk3Zv20
>>596

【ベッドの上、ふわふわの羽毛布団に包まれて、2人は抱きしめ合ったまま眠っていた。 ──── スーツも外套もアリアは脱いでしまっていた。】
【任せてはいけない勢いに放り捨てられたままのフォーマルな衣装は、ごくファンシーな内装の中に散らばっていた。ただ空調ばかり効いていたから、シャツだけ羽織って】
【いとしいひとが目覚めていると知りながら、目覚めたくないのであれば、いつまでも背中を撫でていた。時折、寂しげに藤色の髪へ指を絡めて、巻いてみたり】
【あんまりな空気をまるで彼女は感じていないようだった。 ──── だから目覚めても微笑んでいた。慈母のように。青い瞳は、白い頬は、昨夜と変わらず緩んだままで】


        「おはよう、かえで。」


【故に紅紫色と紺碧色が交錯するなら、 ─── 至極ためらわず、目覚めの挨拶を捧ぐのだろう。カーテンは開いていた。ビル街から射し込む清らな朝日を、いまだ2人を包む白銀の髪が湛えていた。】
【剰え、 ─── ごくスキンシップのように、唇を交そうとするのだろう。拒まれるなら泣きそうな顔をする。何も知らない雀が、窓の外で囀っていた。】


「 ───── その台詞」「ボクが一番、言うべきだと思うんだけどさ。」「 ……… クソが。2人仲良く月まで吹っ飛ばしてやりたい気分だ。あァマジで腹が立つ。」
「やることやったんだから散らかしたモノ全部片付けてけよ。」「言っとくがボクん家は居酒屋でもなければラブホでもないんだからな。100歩譲って金は取らないでおくが、せめてシーツくらい整えてけよ色ボケ2人。」


【少女の声を聞き次第、 ──── キッチンからは非難がましい怨嗟が捲し立てられる。濃ゆい隈を忌々しげな三白眼の下に浮かべた、黒髪の家主だった】
【嫌味ったらしい口撃はしかし嫌味というには直接に過ぎた。月まで連れて行って欲しかったのは何より彼に違いなかった。なのに手元ではフライパンを躍らせて】
【片手間にキリマンジャロベースのフレンチブレンドを淹れていた。そして少女の隣、上体だけ起こしたまま、アリアはマールボロに火を付けて ─── きっと嗅ぎ慣れた匂い】
【なれば余計に飛び切り苦い珈琲の香りがした。意地でも普通の水は飲ませてやらない積りらしかった。テーブルの上は既に片付けられていた。酒瓶の代わりに、マフィンの幾つか乗った平皿と、コーヒーカップが2人分】


「腐れ縁のよしみだ。メシ食ってシャワー浴びたら出てけ」「今すぐ出てけと言わない寛大なボクに末代まで感謝しろ。 ──── どこにでも行っちまえ。」


【 ─── ごく投げやりに吐き捨てられる言葉。フライパンとドリップポットを夫々の手に持って、忌々しげな顔のまま彼はエッグベネディクトを盛り付ける。】
【ベーコンとフライドエッグを乗せて、バターソースをとろりと掛けた、やたらに見栄えのいいもの。食べたら多分、見た目通りにとても美味しい。】
【そしてドリンクはホットのブラックコーヒー以外を許されない。一口飲むだけで眠気も惚気も二日酔いも吹っ飛ぶような苦さ。それでいて、「全部飲まないと殺す」とか言ってくるに違いなかった】
【手を付けるかは少女に委ねられるだろうし、ブレックファストを共にするかもアリアは少女に委ねるのだろう。 ─── コーヒーの香りばかり、実に高踏的だった。】


599 : 名無しさん :2018/08/08(水) 02:19:08 eJ/2IOVs0
>>598

【腫れぼったい目の感覚。泣きすぎたせいなのか目のところがちりちりと痛んで不愉快だった、短い髪だって、うんとくしゃくしゃになって】
【ならばどんな意味でも寝るにはあまり適さぬような落ち着いた色合いのロリィタもきっと脱いでしまっている。皺になっていても顔色一つ変えないんだろうけれど】
【着るものがないなら昨日シャワーを借りたときに脱いだもともとの服でも着るだろうか。そうでなければアリアの外套でも勝手に羽織るんだろう、それとも】
【別に全裸でさえなければ下着姿くらいで恥じらう性格もしていないのだけど。――全裸はさすがに落ち着かなかった。それだけの理由】

………………おはようございます。

【だからきっとひどく仏頂面だった。色の薄い瞳を至極眩しそうに朝日に細めて、そのまま、ついと視線を逸らす。冷たい声を取り繕って】
【ゆえに口付けは拒む。額のところをぐっと掌で押すようにして。そうやって泣きそうな顔を作り出す、見事に思った通りに完成するなら、どこか満足気に目を細め】
【それからご褒美みたいに口付けようとするんだろう――だからそういう顔をする相手がよっぽど好きらしかった。昨日体育すわりで何度も吐き出し続けた、程度には】

【――その裏側で二日酔いを能力で抑え込んでいた。頭が痛い気がしけどすぐに分からなくなった。そのまま全部消してしまいたい衝動は、決してないとは言い切れなくて】

……――――――っ、は、あ……。……私、飲めないって、言いましたよ。……。それに始めたのはアリアさん――、

【あるいは嫌味たらしい口撃への反撃だったのかもしれない。たっぷり深い口付け、わずかに残る唾液の余韻が朝日で嫌味ッたらしくキラキラ宝石みたいに】
【何もかも自分のせいじゃないって言いだすんだった。そもそもこの少女が全部のきっかけなんだけど、そんなこと、自分のせいじゃないって言い張るのなら】
【うんざりするみたいな仕草で目元をこする。誰のせいだって言いたくなるような。そのくせそんな仕草が良く似合っていた。――でも大きなため息を吐いて】

アリアさん飲んで…………。最近の家は水道から水が出ないんですね。カフェラテもパスタもコーヒーも水以外でどうにかなるようで……。
――普通のお水ください。じゃないともう一発おっぱじめますよ。

【昨日はあんなにぴいぴい喚いてたくせにいい気なものだった。ホットのブラックコーヒー、眺めたなら、そのまま、ベルトコンベアみたいに、アリアの方へズラす】
【ぶちぶち愚痴を並べだすのはいろんな気まずさとか苛立ちとか複雑な感情の発露に違いなかった、とにかく喉は乾いているみたいで、それから、おなかも空いているらしい】
【だから作ってもらった食事を食べる気はある。あるけど。――それにしたってやっぱりひどい話だった。やけっぱちも極めたなら十七歳から出てきてほしくない言葉ばかり】
【甘い部屋の香りも煙草のにおいも珈琲の匂いも食べ物の匂いも全部混ざったならぶっ倒れたいくらい情報過多だった。だのに自分からふとアリアの香りがして、(うれしい)】


600 : 名無しさん :2018/08/08(水) 12:35:00 z0YEX0VM0
>>594
へエ。何ぞ入り組んだ道に迷い込ンじまったとは思ったが
まさか仏様を拝む事になるたァ思いもしなかった。持ち合わせてりゃ香の一つでも上げてやったンだが

【音を噛み潰す雨音の中でも、その声は不思議とよく通った】
【立ち去らんとするエーリカの背後、それこそ死体の傍らに。唐傘片手に、人間が一人そこに立っている】
【白装束に草鞋という質素な姿は、様々な要素――ピアスや金髪、そして返り血で染まった雨合羽――で彩られたエーリカとは対照的】
【目を引く点があるとするならば。隠す素振りさえなく、腰にぶら下げた日本刀ぐらいのものか】

今日は生憎の……いや“絶好の”雨模様だね
ちょいとばかし時間をもらって良いかい。何、五分もあれば済む

【幽鬼のような出で立ちに反し、随分に軽い口調で話す。エーリカからの返事を待たず、それは続けた】

久方ぶりに町へ下ったんだが、随分妙な人相書を見てね
人殺しは良いんだが、そいつは“手品や奇術の類を操る”ンだと。しかも「普通の人間じゃ敵わねぇから、御用のために“同じような連中”の協力を仰いでる」と来た
滅茶苦茶な内容だったのに、誰もあの人相書を不思議とは思っちゃいねぇ。……一体全体どういうこった?

【表情と声に混じるは一抹の困惑】
【普通の人間にはない“能力がある者”。それが世界には実在しているという周知を自分一人が知らない……“迷い込んでしまった”という混乱】
【そんな混乱を目の前のエーリカに伝える。何故質問の対象として、通行人ではなくエーリカを選んだのか。それは依然不明瞭ではあるが】
【――雨はまだ、止みそうにない】


601 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/08(水) 19:55:02 o6XMS57s0
>>599

【であればアリアは少女の望む通り、仕種を見せるに違いなかった。眉根を悲しそうに寄せて、蒼い瞳を即製の涙に潤ませ、然し意地悪に眇められる紅色の意味を解すれば】
【ごく幸せそうに口付けを貪り合う。 ─── 煙草と、酒精と、██と、兎に角どこか苦くて、それでいて絶望的なくらいに甘ったるい接吻だった。】
【ベーコンエッグの薫りがしなければ、も一度このまま身体を重ねているに違いなかった。お互いの口に溜まったもの、濯いで2人で分かち合う。喉に一筋、よだれが垂れる。】
【ふっくらとした唇同士、名残惜しげに離れるなら、別れのキスさえ口許に落とす。「 ─── かわいい。」魂さえ犯すような声音で、かえでだけに聞こえる距離で、囁いた。】

【兎も角いずれ身を起こすのだろう。細く長くしなやかなアリアの手脚は惜しげもなく投げ出されて、2人揃って気怠げにベッドから降りて、 ─── ごく自然に手を繋ぎ】
【恋人結びに絡めた後、食卓につくのだろう。全くもって熱く苦いコーヒーを事もなげに啜り、「マウスウォッシュ、ない?」「 ……… 別にいいけど。」】
【口紅の付いたシガレットは半ば程まで燃え尽きていたから、灰皿に押し付けて火を消す。昨夜に少女を抱いた指先で、今朝はナイフとフォークを手に取る。】


「 ─── はあ? ざけんな。」「子供舌かよ。」「舐めた真似しやがって。」
「やっぱ後で飲みたいって言っても淹れてやらないからな。」「一発でも二発でも勝手に盛ってればいいがウチでやるな。」


【そして言うなり彼は、炭酸水のボトルをシンクに持っていったかと思えば、 ─── 自棄っぱちのように、しゃかしゃかしゃかしゃか、振り始めて】
【ぽんッ、と小気味いい音と共に蓋を開けるのだろう。じょわじょわじょわじょわ、溢れ出る泡々の硬水。そうして半分くらい容量の減ったビショ濡れのボトルを】
【きっちり蓋を締め直して、またも投げて寄越すのだろう。 ──── 確かに、ただの水になっていた。それがせめて家主としての威厳であるに違いなかった。】

【いずれにせよエッグベネディクトは美味だった。熱く蕩ける卵黄をバターソースに混ぜ合わせ、白身とベーコンとマフィンの生地とに濡らして、口に運んで】
【食事の時であっても余り表情を変えないアリアが、 「 ──── 美味しい。」ごく嬉しそうに頬を緩めて零すくらいには、かえでの口にも合う筈で。】
【決して量は多くなかったから、少なくともアリアは直ぐに食べ終えてしまう。押し付けられたコーヒーを見るなら、困った子ね、と言いたげに苦笑して、けれど飲み干して】


602 : 名無しさん :2018/08/08(水) 20:24:56 teS9HnLg0
>>601

【だからきっといろんな感情がちぐはぐなのに違いなかった。悪戯ぽく笑った目を伏せたのは真正面から揶揄うのが恥ずかしいから、かもしれなくて】
【それならばきっと目も合うのだろう。青色と紅色が交錯して、――そうしてきっとその青色の中に映り込む自身の紅色とも、かち合う。ゆえに、意識的に逸らさない】
【どうしたらいいのか分からないらしかった。確かなのはまだきっと蛇を信じていた。というより――どこかで、一回、素面の時に説明した方が良さそうだった】

――――っ。

【――思考しながらの口付け。気が済めばゆるりと離れる刹那に、ふと囁かれたなら。一瞬吐息が詰まる。今度こそ目が逸れる。ふつりと押し黙って、】
【けれどその指先は受け入れるのだろう。わざと焦らすみたいに様子を伺った指先は三十秒ほど待たせてから、彼女の方からも、きゅう、と、柔らかく握られる】
【きっと掌の大きさだってうんと違うなら、子供の掌みたいに包み込めてしまうのかもしれなかった。身長のわりに、思ったよりか、小さな掌をしている子だから】
【だなんて、】

飲まないです。紅茶派なので。

【とはいえ態度はかわいらしくないんだろう、というよりもきっと温度差がすごかった。彼に向けるのと彼女に向けるので、きっと、うんと違いすぎて】
【なんでか知らないけれど八つ当たりしているに違いないんだろう、――倒れかかっているところを助けられた人間の態度とはあんまり思えない、つんと振る舞うなら】
【あるいはもしかしたらよっぽどアリアに"いろいろ"されてきたっていう証明でもあるのかもしれない。――彼に振る舞っているのが彼女の本当なのかもしれない、なんて】
【だからどこかで絶対叶わないって分かっている気配だけがしていた、――投げつけられた元炭酸水のボトルは、けれど、取り落とすんだろう】
【言い訳を聞くとしたなら濡れていて手が滑ったって言うはずだった。聞かねばそのまま何事もなかった顔をする、――ありがとうございますって礼も、ないわけではない】

…………。……。あの。私。名前知らないんですけど。

【そうしてつんつんしながらついた食卓で、――ひどく今更ながら少女はそんなことを口に出すんだろう、彼の名前、まだ知らないんですけど、と、わずかに批難がましい】
【そのくせあちらからは名前がバレていた。それどころか初めに会った時から気づかれていたと思うとなんだか悔しくて。だから頬っぺたが少しだけ拗ねていて】
【だけども、見ていたなら分かるに違いなかった。――アリアがおいしいって言って笑ったのを見て拗ねているらしかった。簡単に言うのなら、嫉妬している、と】
【――それでもお腹は空いていたから、いくらも遅れて食べ始めるんだろう。手を合わせやしないけれどいただきます、小さな声で、ささめいて】

【食べ出したらもうちょっとだけ不機嫌そうな顔をするんだから分かりやすかった。翻訳したならおいしいって言っているのに相違なかった。だから子供ぽい】
【というよりもこの場においては間違いなく子供なんだけど。――ひとまず変に恥じらうこともないなら昨日とおんなじでぱくぱく食べていく、早食いでこそないけれど】
【食べ終えてしまえば珈琲もない。元炭酸水も喉の渇きから飲み干してしまって。ごちそうさまも言ってしまえば――手持無沙汰そうに前髪でも弄るんだろうか】


603 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/08(水) 22:06:32 o6XMS57s0
>>602

【 ─── 幾ら恋慕に身を窶していたとしても、狼の本質は狼であった。追う事、殺す事、貪る事しか知らない獣。彼の語った通り、幾ら人の皮を被ってもそれは変わらず】
【であれば愛の言葉をつつやく一時においてさえ彼女は"そう"であるに違いなかった。虚構じみた平穏な朝が虚構らしく消えるなら、悲しく笑いながら銃口を向けるのだろう】
【誰しも本性の変え難き事をアリアは良く知っていた。ともすれば一生そのままであるのかも知れず、 ─── それでも最早、殺せる気はしなかった。】
【なれば掌は柔らかく大きかった。あっさりとかえでの手指を包み込んで、絡め取る。母親のそれに似ていた。お互い、凡そ何度も他人を殺してきた手ではなかった。】

【台所の彼は自分の食べる分を用意していないらしい。 ─── お湯を注ぐだけで食べられるカレーライスに生卵を入れて、コーヒーと一緒に流し込む。】
【極めて不機嫌そうな顔をしていた。特にかえでへ向けられるそれは酷いものだった。それをアリアは理解し難そうな面構えであったから尚更であった。】
【なぜ嫉妬されなきゃいけないのか、嫉妬してるのはこっちなんだけど、 ─── そういう態度を隠そうともしない。美味いなら素直に美味いって言えよ、とは呟かないけど】
【 ─── けれど何処かで、ようやく何かを理解する。濃いクマの浮かぶ双眸の下、へッと噴き出すように嘲笑うのだろう。ごく皮肉めかした言葉を、名乗りの口上と共に。】



        「 ────── よっぽど尻に敷かれてきたんだね。」「ご愁傷様。」

「ミレーユ・ミスゲシュタルト=ストレーン。」「ミレーユでいい。」「ミスもミスタも要らない。」
「できれば二度とボクの事を呼ぶことがないよう祈ってるよ。」「 ……… 誰かを拾っても良い事なんて有りやしない。」


【対してアリアの視線は冷ややかだった。お互い冷ややかな視線を投げる事については慣れているらしかった。関係を尋ねられるのなら、「腐れ縁よ/さ」躊躇わず答えるような】
【だから矢張り態度は変わり過ぎていて、「 ─── かえでも、今度」「私の為に、なにか作ってくれる?」半熟の黄身よりもずっと蕩けた笑顔で、そう問うのだろう。】
【食べ終えたならシャワーを浴びて出てけ、 ─── そう命じられてはいた。然して声音のそれは、例えばお風呂に入るなら何時まで居ても構わない、というような】
【そういう甘ったれた距離感でもあった。ともあれアリアは手を繋ぎ直して、一緒にお湯を浴びましょうと誘うのだろう。恐らく彼女は一人で入りたがると分かっていながら】


604 : 名無しさん :2018/08/08(水) 23:02:14 teS9HnLg0
>>603

【そしてまた少女もそれを理解しているのだろう。あるいは分からされたと言うべきだろうか。犬同士が首筋に噛みつき合うみたいにして、彼女は負けたから】
【だからへたんって垂れてしまった尻尾を一生懸命に隠しているに違いなかった。ゆえに全部が夢の中の景色みたいに崩れ落ちたときに、また殺し合うんだろう】
【月のように常に一面しか見せぬ人物であればよかった。どちらかのみに見蕩れただけであればどれだけ良かっただろう。けれど彼女はきっと間違いなくどちらも好きだった】

【――目に見えている虚構だった。すぐにまた変質する現実だと分かっていた。蛇を裏切りたいわけじゃない、けれど、限りなく少女は相手が好きであり】
【けれど決して受け入れ合わない概念であるのなら、二つの自分のどちらかが死ぬまで――あるいは殺されるまで、出来事は積み重なるんだろう、そうして、】
【"どちらか"生き残った自分が、死んでいった自分と、その自分が積み上げてきたもの全部を自分の言葉で否定しないといけないんだろう。――それが、分かるから】
【繋いだ指先をもっと絡めようとする。それでほどけなくなってしまえばよかった。そうしたら銃だって撃てなくなるのに】

………………。

【うんと色鮮やかな紅紫色がじろりと彼を睨んでいた、その仕草の全部を睨んでいるみたいだった、お互いに不可視のとげとげを投げつけ合うみたいに】
【それでいてきっとお互いにアリアにはそのとげとげのほとんどを向けないんだろう、――少なくとも少女はそうだった。だから余計に目立ちすぎて】
【こんな態度を大好きと呼ぶのかもしれないけれど、それにしてはいくらも不健全であるみたいに思えた。殺されかけて――助けられて。何回、やったんだろう】

……ミレーユさん。徹夜でもしたんですか? 夜通し飲んでたとか? 体に悪いですよう、――。…………敷かれてないです。

【――――嘲笑う温度感には彼女もまた笑みを以てして応える。ひどい隈だって指摘しているに違いなかった、"聞き耳立てていたとか?"だなんて口に出しやしないけど】
【間違いなく口にした言葉に違った意味を含ましていた。もし彼に何か言われても気にしない顔をしていた。アリアに咎められたなら、――きっとしょんぼりする】
【良い事なんて、という言葉には。――きっと拾われても良い事がない、なんて、言うような目を返すんだろう。二つの意味で。だって、あの日がなければ、】

【――きっと彼女は今も正しくムリフェンでいられた、はずなんだから】

【(そうしたら――全部うまく行っていたはずだ、なんて、根拠のない不満を抱いて。そのくせ、相手を好きと思う気持ち、手放したくはなくて)】

【「――私、料理、あんまりしませんよ」】
【拗ねた態度で答えるんだろう、だからこそ嫉妬したのかもしれなかった。全く作れないわけじゃない、むしろ、レシピを見たりすれば、映えるものは作れるのだけど】
【もっと日常的な――冷蔵庫にあるものでそこそこのものを作る、みたいな料理は不慣れで。昨日と併せて考えれば、彼が日常的に料理をしていそうなの、分かってしまうなら】
【少女がアリアの家に居る間はほとんど食べる専だったことだろう。例えば蛇教時代の食生活を聞いていたとして、「アルジャーノンが作ってくれたり」とか、答えていただろうか】
【ほかには「サーバントに作らせたり」「コンビニとか」――ということで少女は最低限しか料理ができなかった、やらせたとして、ヤバいものは出てこないけど――】

【――――――――――――「いいですよ」】

【――そんな答えは、珍しいよりも初めてだった。一度だけ一緒に入浴したときは相手に身体がなかった。そうでないとき、彼女は、いつも一人で入りたがった】
【ひとりぼっちの時間が必ずどこかでほしいみたいだった。そしていつも湯船で膝を抱えて黙りこくっているんだった。それでも、今日は、ひどく珍しい】
【彼に見せつけたいわけじゃない。と。思う。――だってそれにしては、いくらか、寂しげな目をしている、気がしたから】


605 : エーリカ ◆D2zUq282Mc :2018/08/08(水) 23:02:34 JY1GydDk0
>>600

【雨は降り頻る。止む気配は無い。ざぁざぁと雨脚は徐々に強まって】
【けれど、そんな雨模様でも紛らす事の出来ない白色が背後に在った】
【雨音の下に居て尚、紛れる事のない異邦人の声色にエーリカの足は止まり、振り返る】


アンタ――…櫻の国の人間かい?この世間知らずのストレンジャーめ。
こんな殺人者に問うなんて見当違いもいいとこ。
アンタの疑問なら、そこらを歩いてる一般市民にでも聞くんだね。

それに、さ。仏様を拝む暇があるとでも思ってるなら――御目出度いね、その頭。
自分が仏様とやらになる心配でもしなよ。物騒な現場に実行犯が居残ってんだし。
それに"手品や奇術"とやら。見せてあげても良いけど、その先の保障なんてしないから。


【一仕事終えた直後の疲労感に浸る暇も無く、新たな来訪者によってエーリカの神経は尖る】

【"――あんたが何者であれ、現場を見られたからには殺す"】
【そう物語る鋭い眼光と共に手に握られたナイフを向ける】

【けれど眼前の人物の"混乱"が偽りに思えない故に、頭の片隅には出てきた疑問を留めておく】
【"皮肉でもなんでもなく、こいつは文字通り異邦人(ストレンジャー)なのか"、と】


606 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/08(水) 23:46:34 o6XMS57s0
>>604

【 ─── いずれ劣らぬ惚気具合であった。どこまでも、なにもかも。"アイツ"がこんな距離感で生きている様子は、どう足掻いても彼には理解できないようで】
【話を聞かされていない訳ではなかった。殺し合って、その後は決まって連れ帰って、甲斐甲斐しく看病して。訳の分からないエピソードを何度となく。】
【「あァ飲んでたさ。 ─── いいアテが壁向こうから聞こえてきたから、ヤケ酒のネタに困りはしなかった。」故に、続く言葉の温度感は、皮肉なのか自嘲なのか判然とせず】
【その間でアリアは苦笑しているのだろう。彼の有り様も少女の有り様も歪めてしまった張本人でありながら。「 ──── だから、作ってほしいのよ。」】
【意地悪な問い掛けのように聞こえて、単に彼女の手料理が食べたいだけに違いなかった。更に踏み込んで言うなら、誰かの為に何かを作る幸せ、教えたかったのかも知れず】


     「 ……… あら。本当?」


【であればアリアは驚いたような顔をする。そうして見開いた双眸が捉える彼女の寂しげな表情を理解する。故にこそ続いて何かを問いかけることもなく】
【仏頂面で煙草を吸うミレーユを残して、2人揃って立ち上がるのだろう。 ─── 繋いだ手を離さずに、あるいは求めるなら抱き締めるようにして、さえ】
【そうして脱衣所に入っても脱ぐものは決して多くなかった。下着ひとつ纏っていないのにシャツだけは羽織っていた。だからあっさりと袖から引き抜いて】
【改めて露わになるのは耽美な裸体である。朝日を浴びる新雪に似た色合いの肌。涙も嬌声も皆な受け止める豊かな双丘。色素の薄い消えてしまいそうなボディライン】
【微かに筋の浮き出る肉体美、長く半身を占める引き締まった両脚。淡い桜色の爪先まで円やかだった。見上げるような魁偉でありながら、そうでなくては彼女でなかった。】



        「シャワーがいい?」「 ─── それとも、お風呂にする?」



【 ──── するり、背に回る細い両腕。絡め取るようにかえでと肌寄せて、そっと耳打ちするのだろう。柔らかい抱擁は何処までだって沈んで行けるに違いなかった。】
【紅色の瞳に宿る寂しさを解らぬほど彼女は愚かでなかった。その躯体は自動人形のそれであると言っても、彼女はどこまでも、人間であると信じていたから。】


607 : 名無しさん :2018/08/09(木) 00:16:12 oEwO42bw0
>>606

【だからやっぱりお互いに威嚇しあうみたいな温度なんだろう。そのくせだあれも狼には敵わないんだろう。だから、狼が立ち上がるまでの、期間限定】
【そしてまた皮肉ぽく言われる言葉にも大して動じない、あるいは恥じらうみたいに真っ白な頬を赤く染めたりなんてしたら、きっと、かわいらしかったのかもしれないけれど】
【そんな風に初心な少女がこの場に居るわけもないんだから、そんな返答は期待しないのがいいに違いなくて。意地悪に聞こえる言葉には、じとりと、伏し目を向ける、】
【「……そのうちに」。そして逸らす。呟いた声が示す"いつか"が本当に来るのかはきっと分からなかった、――次こそ、どちらか、死ぬかもしれないのなら】

【――――大人しく脱衣所へ向かうんだろう。そうしたら昨日脱いだ服が適当な場所に置いてあるはずだった、あるいは、】
【知らない間に彼に動かされていたら場所が変わっているかもしれないけど。――そしたらきっと何かに気づかれている。畳んだ服の間に隠すみたいな、なにか】
【どこかで濡れたのか端っこがかすかに浮いてしまったタロットカードと一丁の銃。とかく"いろんな意味で"そのままなら、――エッチな本に対する母親、みたいなこと、してないなら】
【服の中に隠して置いて置いたから、多分、気づかれない。そうじゃなかったら、――あるいは、だけれども、】

…………お風呂が、いいです、

【彼女もまた大した恰好をしてなかった。ゆえにほんの数秒でほんの僅かも隠さずに全部の肌を見せるんだろう、色素の薄い身体付き】
【しゃんと伸びた背筋を抱き留めるように長かった髪はすっかりと切り落とされてしまっていたから、理由を聞いても「ストーカーにやられた」としか、教えてくれない】
【今更何を恥じらうでもないなら胸元も下腹部も隠さないままで抱き留められるんだろう、――ふにりと互いに豊かなひずんで、けど、身長差を考えれば】
【あるいは顔を埋めこむような形かもしれなかった。だからきっとそのまま溶けてしまいたい、溶かすのではなくて、――そうして一滴の雪解け水になってしまいたい】

アリアさん、……、……。――。

【――であればぽつりと漏れる声はどんな意味合いをしているように聞こえるのだろう、叱られる前の子供にも似るような顔をして】
【きっと少なくない引け目を感じているらしかった。他人が居るからわざとそっちにかまけて見せつけるみたいにして振る舞っているに過ぎなかった。だから、】
【ふたりきりになってしまって――目を閉じたならその胸元に顔を完全にうずめてしまう。だって分かっていた。このままずっと一緒にはいられないって】

【――――――ケバルライはまた自分にコンタクトを取ろうとしてくるから。それが分かっているから。だのにどうしたらいいのか、分かっていないから】


608 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/09(木) 01:06:59 H39Bp4eo0
>>607

【顔も見たくないような人間の脱いだものを漁るほどミレーユは趣味の良い人間ではなかった。だから脱がれた衣服は全てそのままであり、 ─── けれど】
【不自然に盛り上がった布地に何か隠されている事をアリアは直ぐに見抜く。軍属時代、室内戦にて設置されたIEDを処理する為に磨いた直感だった】
【手を出す事はしなかった。隠したいものがあるなら、殊更それを漁るつもりにはなれなかった。抱擁のまま、薄藤色の髪を愛でる。「伸ばした方が似合うわ」小さく呟いて。】

【 ───── そうして呟かれる言葉の意味も、アリアは解してしまうのだろう。知り過ぎていた。何もかも。知った上でどうにもできなかった。なら、せめて。】


「 ……… かえで。」「 ──── つらい?」


【母親のように呼び掛ける。しゃくりあげても構わなかった。やわらかい手のひらで、背中を何度も撫で下ろす。貴女はここにいて良いのよと、深く胸間に埋ずもれさせる。】
【 ─── 憎むべきザラストロは彼女をまた誑かしに来るのだと理解していた。銃を取る準備は出来ていた。己れでは守れない事も、今は呪いを断てない事も、痛いくらい理解していた。】
【ゆえに背中に爪を立てる。とうに棄てた筈のはらわたが狂おしい絶叫を上げていた。一緒に数えてくれるかしら。貴女に付けた、私の歯型。銃創。爪痕。】



「 ……… 何度だって、助けに行くわ。」「何度だって、殺してあげる。」「何度だって、愛したいの。」

「だから、せめて。私が"ひと"でいられる間に、行きなさい。」「そうでなければ、ふたり離れ行く悲しみに、また牙を立てずには居られないから。」
「お願い。必ず生きていて。この世界のどこかにいればいい。 ──── そうしたら私、貴女をどこまでも探し出して、追いかけて、殺しに行くわ。」



【それが精一杯の懇願に違いなかった。 ──── 細い腕がそっと緩んで、少女を抱擁から解放するのだろう。酷い顔をしていた。紺碧の瞳から涙が溢れぬのは奇跡だった。】
【あの日の別れに似ていた。それでいてきっとずっと慈愛に満ちていた。今ここで別れてしまうしかなかつた。シャワーも浴びずに背を向けるしかなかった。】
【同じ湯浴みに湿った肌を重ねたら、もう、彼女はひとでいられなくなる。狂ったように少女へ縋り付いて、奪おうとするもの全てに銃口という牙を向ける。】
【けれどそんな離別は誰も幸せにしないって解っていた。故に、そうするしかなかった。そうするしかないって、言い聞かせていた。かえでに。自分に。】
【 ──── 折り畳まれた真白い服を掴み取って、投げ付けようとする。そしてそこで気付く。隠されていたモノの正体。ふ、と頬を緩めて、然して】


「 ………… 持っていて、くれたのね。」


【次の瞬刻にアリアは息を飲んでいた。 ─── 微かに紙地の浮いた、女帝を示すタロットカードを、彼女の視覚素子は認識していた。そうして漸く、いっぱいに貯めていた涙を、零した。】
【もう彼女は振り向かない。嗚咽の呼吸を堪えていた。きっと顔を見せたくなかった。震える指先が後ろ向きに銃とカードを差し出すのだろう。されど最後に問うなら、ひとつだけ、答えてくれるのかも知れず】


609 : 名無しさん :2018/08/09(木) 01:54:31 oEwO42bw0
>>608

……そう、ですね、……。知ってます。――長い方が、似合うって。……。伸ばしていたのに、ずっと……。
だから切るときは自分で決めたかったのに、……。……………………。

【髪を撫ぜられて、少女はぽつんと声を返すんだろう。ずっと意識的に伸ばしていたんだと言う。だからこそあんなにきれいに長かったんだと証明して】
【何か願をかけていたのかもしれなかった。きっとそんなはずはないけれど。だけれどせっかく伸ばしたのだから切り取る瞬間くらい、自分の意思で定めたかった】
【叶わなかった出来事に未練がましい声をあげていたのが、――名前を呼ばれて、黙りこくる。真っ白な胸元に埋められて、小さく頷いた気がした、気のせいかもしれない】

ストーカーじゃあ、ないんだから……――、

【であればきっと呟く声は安堵の色合いをしているに違いなかった。かすかに笑っているような気配がした、そんなの願望だって言い捨ててしまえそうでも】
【それらの宣誓はきっと彼女にとって現世への道しるべであるのだろう、きっとどこからでも見える光明、それどこか自ら駆け寄ってくる、確信がある】
【ならば一つ賭けをしたっていいかもしれなかった。ついでかもしれなかった。あるいは相手ばっかりに誓わせるのが不平等だと、思い至ったかのように】
【真っ白い服と、カードと、銃と。少女の持ち物はそれだけだった。だから相手のことがきっと限りなく好きだった。ゆえに解き放たれても、まだそこに留まり続け】
【背中を向けて嗚咽を堪えてもまだそこに居た。――服を着ている気配があるでもなく、ならば。――――ぎゅう、と、その背中から、抱きしめるのだろう】
【そうしたら背伸びして背中にキスをする。つま先立ちのまま、なるだけ耳元に唇を寄せる、囁こうとする、叶わずとも、それでもよくって】

…………アリアさん。あのね――、……次に会うときの私は、きっと、弱いです、……。――だって、そうじゃないと、……、行かれないから、だから。……。
だから、……。

【――きっとその言葉の意味も伝わるのだろう。いつか見えた日と同じだった。今立ち去るために能力を使う。戻らぬために、使い続ける。だから、】
【だからそのときにきっと少女は強くない。つま先立ちの身体がかすかに震えていた。言葉を詰まらせる。ひどくためらっているような、怯えるような気配が続いて】
【何度もつばを飲んでいた。ぎゅうと抱きしめた指先がその腹部にきれいに十個、三日月みたいな爪の痕を付けるに違いなかった。それくらいの、間を重ね】

………………、アリアさん。なんでもいいの。決めてください、……、目印を、そうしたら、私、思い出すから。
約束します、……。……。――。――っ。……っ、――。――……、っ、っっ、やくそく、っ、――する、から、っ、――!

――、そうしたら、――――、……。っ、――アリアさんのこと、せかいじゅうでいちばんしんじて、みるから……。

【やがて声まで震えだす。よほど思いつめているらしかった。ひどく恐ろしいことを言い出してしまうような気配があって、だから、互いに顔を見せないほうがよかった】
【求めたのは一つの符丁。その意味合いは阻害した記憶の開放。もしいつかの場で相手がそれを口にしたなら、――少女はその時に誰より相手を信じてみるって、約束する】
【だから怯えていたんだった。彼女が言えるはずない言葉だった。だけれど震える背中に堪えられる吐息に、背を向けてしまうことができなくて】

【――そうしてまた一つの選択肢を相手に委ねるんだった。相手がそれを口にしなければ、彼女はきっと思い出さない。蛇でなく狼に祈ることを、しない】
【あるいはそれこそ正しい道筋なのかもしれなかった。だけれどこれがめいっぱいに愛する人への恩返しであるかのように、やがて彼女はそのせなに涙の雫を伝わせ】
【嫌だと言われたら死にたかった。かといってそうでなくとも死にたいに違いなかった。――がたがた震える指先がひどく子供みたいで、自分から出た言葉があんまりに醜悪すぎて】


610 : 名無しさん :2018/08/09(木) 09:02:00 z0YEX0VM0
>>605

世間知らずか、随分耳に痛い事を言うじゃねェの
然しサクラ? 桜がどうかしたのかね
……まぁ良い、こいつァ手前さんに聞くより他を当たるとしよう

【疑問は尽きぬ様子であるが、エーリカのささくれ立った様子を見て、その疑問については一旦保留】
【エーリカの言う通り、彼女以外に問うたところで答えの変わる問いでもあるまい。元より、問うたのは“大切な問”のついでに過ぎない】
【故に、訊くより先に疑問の答えが示されて思わず眼を細める。まるで己へ向けられた殺意さえ愛でるように】

お目出度い? 嗚呼、これ以上に目出度い事なんザありゃしねぇ
手前さんの口ぶりからすれば、どうも己の考えた通りで間違いなさそうだ
この仏サマ――“手前さんがやった”ンだな? そして“手前さんも使える”ンだな?

【愚問。何せ、エーリカの口からは既に答えが現れている】
【実行犯と言った。手品を見せてやっても良いと言った。あえて言うなら“確認”、けれど白装束からすれば大切な質問だった】
【エーリカはこれに肯くか、それとも敢えて否とするか。あるいは応じるのも莫迦らしいか】
【如何に応じようが、こちらの反応はもう決まっている。きっと、空手である右の掌を刀の柄に掛けて】

我こそは≪権兵衛≫。得物は無銘、流派は我流
……始末するッてぇなら歓迎だ。来なよ

【簡素に名乗りを上げて、エーリカの反応を待つのだろう】
【質問の相手にエーリカをわざわざ選んだ理由等、“始末されるため”以外には有り得なかった】


611 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/09(木) 20:30:24 o6XMS57s0
>>609

【ひどく広い背中であるようで、 ─── その実、ひどく華奢な背中でもあった。抱き締めるまでは消えてしまいそうに映るような。然して肌寄せれば、確かにそこにあった。】
【真白い肌に唇寄せるなら肺腑だけが震えた。かえでだけに解らせる距離。堪える涙にもう意味はないのだ。この訣別はもう、それくらいの熱量で妨げられはしない。】
【 ─── 背の高い少女の爪先立ちで、辛うじて耳朶には届くのだろう。故にこそ伝えられる言葉の意味も解するのだろう。沈黙に押し潰されるように爪を立てる痛みも甘んじて受け入れるのだろう。】
【それでも矢張り涙を流す行為そのものに意味は残っていた。だから爪を立てる指先に、白く大きく柔らかな手のひらが、宥めるようにそっと重ねられて、そして】



「 ─── かえで。」「覚えていて。」

        「私ね、 ……… かえでのこと、」    「 ……… 必ず、"助ける"わ。」「だから、 ……… だから。」

          「 …………… だから、私からも。もう一つだけ、お願いがあるの。」



【タロットと銃を握らせて、 ─── 精一杯の、もう一歩先。躊躇う喉を叱咤して、震えるにあらず奮い立ち、そっとかえでの手を取る。泣き腫らした紅色の目元へと、導く】
【かえでへの慈悲に違いなかった。かえでが決して口に出来ない言葉を選んでいた。アリアの使命たる言葉を選んでいた。アリアが願ってやまない衝動に違いなかった。】
【然しそれでいて、今ばかりは目を閉じていてという懇願の意味さえも持っていた。 ──── そうしたら顔を合わせずとも、別れの挨拶くらいは叶うから。例えそれが、恋慕に依存した薄氷の仮面だとしても。】



「合言葉を交わしましょう。」「わたしたちだけの、」
「2人だけの、大切な秘密。 ……… 。」「 ……… 聞いて、くれる?」



【脱衣所の湿った空気の中、長い銀髪がひらめいて、ゆっくりと向き直る。脚だけは震えずに立っていた。 ─── 爪先立ちのまま、かえでを再び、腕の中に抱き留める。】
【藤色の奥、うなじに掌を当てる。最後の欲望の現れだった。/隠しようのない傷痕の裏側、柔らかな腰を抱き上げる。最期の切望を重ねる間、貴女は何もしなくていいの。】
【かえでと同じように耳元へ口添えて、だが静かに独白するのだろう。悲しみを堪えるように/悲しみなんて必要なかった。だって、私たち、また必ず逢えるから。】



「ずうっと昔の話。身体と一緒に名前も捨てたの。」「 ─── 私には、要らないものだと思っていたから」
「けれど、 ……… 情けない話ね。今になって、かえでにだけ、教えてあげたくて ──── ねぇ。覚えていなくてもいいの。」「私の、わたしの」「本当の名前は、ね」



        「████。」



【故にアリアはそれを教えて、直ぐに口付けるのだろう。 ─── 貴女の頤を上向けて、私の頤は下向けて。目を瞑ったまま。互いに貪るように。けれど分かち合うように。】
【息苦しくなるまで交わす、息が止まってしまいそうになるまで交わす、別れの接吻。こんなに深いキスは、また会えると分かっていなかったら出来やしなかった。】
【少なくとも彼女はそう信じていた。 ──── 今生の別れなんかじゃない。だってこんなに幸せな時間が、もう二度とやって来ないだなんて、あんまりに、あんまりに。】

【 ─── そうして、沈める所/潜れる所まで溺れて(愛して)いくような時間は、いつか終わってしまう。その時こそアリアは、優しい抱擁を解くのだろう。】
【もう何も言うことはなかった。相手が何か言うとも思っていなかった。別れの言葉なんて要らない。さよならだけが人生だ。それでも彼女は、これが離別になるだなんて、信じていなかったから。】


612 : 名無しさん :2018/08/09(木) 21:43:44 oEwO42bw0
>>611

【精一杯に大人ぶるような爪先が、けれど致命的に震えていた。蛇を信じている自分からは出ようもないはずの言葉を吐き出してしまって、ゆえに、恐怖する】
【真っ白な背中に縋りついてかろうじて生きているに違いなかった。だから、これは、彼女のための言葉でもあった。覚えているままで生きていられる気なんて、しなくて】
【だから思い出にきちんと鍵をかける。一人ぼっちの間に不貞をしないように。世界で一つだけの鍵はアリアが持っていたらいい。自分の手元には要らないんだから】
【そしてもしも開けるのなら、――そのときは、世界中で誰よりも護ってみせて、ほしくって】

うん、――、うん。うん……。

【だからこれがめいっぱいでせいいっぱい。助けてはまだ言えなくて、けれどただ蛇に祈っていれば気の済んだ頃は終わってしまって、夢と現のはざまにあって】
【どちらもが彼女を揺さぶるならきっとほんの少し前だって、見えていないんだった。だのに今までを捨ててはしまえないんだった。"してきたこと"が赦さないから】
【どんな方法だって終わらせないといけないに違いなかった。――"納得"しないといけないんだと思わせた、なにかのかたちで。それを探すみたいに、抱き縋るんだけれど】
【ここにはまだ足りないから。――それでもきっと相手に手を伸ばそうとしていた、しているに違いなかった、だって、そうじゃないと、あんまりにも】

【(誰もが報われないから)】

【――自身の手を目元に誘導されて。それで少女はおとなしく従うんだろう。目を閉じる、それならそのまま暗闇に沈んでしまいそうなくらいに、不安になって】
【――どこかに落ちていってしまうと信じてしまう寸前に抱き留められる。抱き上げられて、爪先がふっと床から離れて、たったそれだけの距離でも、落ちたくない】
【――ほんの一センチだって落とされたらパリパリに砕けて割れてしまうって予感がしたし、させるのだろう。だからめいっぱいに身体を委ねた、落とさないで、って、祈りながら】

――――――――――――っ、あ、

【定められる合言葉。伝えられる過去のことに、少女は刹那、紅紫色の瞳を見開くのだろう。ぱっと色鮮やかな花が咲くかのように、しかしてその瞬間に口付けられて】
【驚いたのかもしれなかった。どうしてなのかはきっと彼女もよく分かっていなかった。昔のことを知りたかったのかもしれない、相手のこと、大好きだから、】
【ゆえに、見開いた瞳はまたゆるりと閉ざされる。そうしていくらかの間二人で溺れるんだろう、縋るべき藁はきっと我先に逃げ出した、だから、自分たちでやるしかない】
【――だから、だから、もう一度、会いたい。そうでないと二人ともきっと溺れて、しまうんだから】

【――――やがて再び解き放たれた少女は、ついと視線を逸らすんだろう。片足ずつショーツを通す、それからブラジャーを付ける、前傾姿勢にわずかに胸元を流して】
【カップの中に柔らかな胸元を収めていく。終えればやがて後ろ手に三つのホックを留める。わずかに捲れたサイドベルトを指先に直して、ストラップも調整して】
【真っ白なワンピースをストンと被る――頭越しに背中のチャック上げるなら、袖のないデザイン。あるいは服より白いかもしれない腋を見せつけるよう】
【最後にそちらのストラップも留めて――――だから、大した時間はかからなかった。よく手入れされた髪は指先で整えるだけでみられる程度になってしまうから】

――――、*****。

【だからどうしようもなく物足りない気持ちを埋め合わすためだったのかもしれない。せめてもっと手間のかかる服を着ていればよかった。――ああそういえば、】
【――とにかく少女は脱衣所から出る間際に、ひどく不明瞭に何かを口にする。表情はそれ以上に苦しげだった。だからきっと死にたいに違いなかった、だからこそ】
【少女は誰かを裏切る。あるいは誰もを裏切る。神も相手も自分さえも裏切るのかもしれなかった。――――】

【――――――今日の記憶を全部封印すると決めたから。だから。もしも。思い出すことがあったなら。それは。そのときは。助けてもらえたって、ことだから】

【(***、****?)】


613 : 名無しさん :2018/08/09(木) 22:23:59 oEwO42bw0
>>612
/ワンピースのはホックですね!ストラップじゃないです!失礼しましたっ


614 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/09(木) 22:24:11 o6XMS57s0
>>612


【 ─── しっとりと濡れた口許は拭わなかった。今すぐにでも膝を抱えたくなる衝動を堪えて、背を向ける。言い聞かせるように深呼吸を試みる。】
【そうしてシャワールームに踏み込む瞬間、聴覚素子が何かしらの言語波長を探知する。雲耀のひととき、動きを止めた。だからきっと、彼女もまた、呟いた。】
【それは別れの言葉なんかじゃなかった。もっと本質的で感傷的で衝動的だった。「 ……… █████。」だってきっと、その言葉を一度、女は聞いていたから。】


【結局のところ女は浴槽を潤ませた。ごく早朝に入って、昼過ぎになって漸く出てきた。ただ湯を浴びただけにしては濡れすぎてしまっていた。】
【要らないものは皆んなバスタオルに拭い去ってしまう。ごく飾り気のない下着を纏う。シャツを羽織る。スラックスに脚を通す。コートは、着ない。】
【リビングからはフレンチトーストのにおいがした。それにシャワーは浴びていなかった。当たり前のように吸い寄せられて、部屋に入れば憐れむような呆れるような/然し理解するような目線。】
【ファンシーなマットの上で長い長い脚を抱えて、ランチになんて手をつけないのだろう。盛り付けが終われば彼だって膝を抱えた。見るも鮮やかな黄色いトーストから湯気ばかり上がって行く。そうして、やおらに】


「 ─── 終わった?」「 ……… 終わったように、見える?」
「シャワー、浴びてかなかったもんね。」「だからって、もう拾わないでいいわ。私のやるべき事。」
「じゃあ貸しが一つだ。返してくれるよね。」「 ──── 特段、気が進む訳ではないけれど。腐れ縁のよしみ、よ。」


【どちらともなく遣り取りは続いた。どこまでも遠いようでどこまでも近くて、なら空を仰ぐのと同じ距離感だった。窓から差し込る陽光に手を翳す。】
【真っ赤に流れる血潮は忌々しいものであった。人殺しの手で誰かを愛する事に今更躊躇ったりしない。けれど誰かを護るために彼女は人殺しになった。泣きたくないからひとでなしに身を窶した。】
【 ──── それが総て無意味だったとは、決して、誰にも言わせない。言葉を交わす彼だって同じ事だった。自分の生きてきた在り方が、無意味だったなんて言わせない。だから。】




「 ………… 終わらせなきゃいけないの。」「 ………… 奇遇だね。ボクもだ。」
「後悔、してる?」「まさか。やるべき事を、やるだけだよ。」「 ……… これが、私たちの罪だものね。」

「だったら今だけは祈ろう。そして皆んな殺してやるんだ。」「 ─── あの子を、幸せにしない世界なんて。」




【我々の神々も我々の希望も、最早ただ科学的なものとしか考えられなくなってしまった以上、どうして我々の愛もまた同じく科学的に考えてはならぬでしょうか?】

/こんな感じでシメでいかがでしょうか!!


615 : 名無しさん :2018/08/09(木) 23:26:47 oEwO42bw0
>>614

【――――そうして、扉が閉まる。だからそれはほんの刹那にありえたかもしれない可能性、アニメーションのほんの一枚のセルでのみ回収される伏線】
【だけれどその目なら捉えられるのかもしれなかった。ゆえに記す意味があるに違いなかった。――きっと少女にも届いたのだろう、だから、笑っていた】
【一面の雪原に絶望して歩く人間に天使が花を降らせてくれたなら、きっとこんな顔をした――まっしろの顔をそれでも限りなくほころばせていた、その余韻を残して】

【軽い足音はやがてまっすぐに家を出ていく。思い出しながらも、借りた服は回収していかなかった。いつかと同じ手では、きっと、芸がないから】
【だから今度もまたきっと白い服にて見えるんだろう。その方が溢るる血潮だってきっとよく映えた。魅せつけて濡らせるに違いなかった。だからそうしたい】
【委ねていったのは一つの鍵だけ。それも目には見えないもの。錠前は大事に抱き留めているから。――――だから、だから、いつか、男にされるよりも乱暴に、暴かれたい】
【それでいてきっと乙女みたいに無垢を貫きたいに違いなかった。だけれどどれだけ白い服に身を包んでも処女には戻れないなら、どこか仄暗い悦びを宿すのに似て】

――――――――、あれ? ……、ああ、もう、またですか、もぉ――、……。はあ、……あれ、

【――どこかの路地裏。ふっと止まった足音に付随するのはわずかに気の抜けた声、疑問形の響きが揺らぐ、不可解そうな顔が、けれど一瞬で何かに思い至って】
【ひどく深いため息を吐く。きっと呆れたみたいな色をしていた。誰に向けて、かは、ひどく不明瞭に違いない、だから頭に触れていた指先で、髪をぐしゃりと乱すんだろう】
【そうしたらきっと何かに気づく。紅紫色の瞳をかすかに見開いて。――、だからいろいろと理解する。分かってしまう。分かるからこそ絶望と希望がないまぜになる、でも、】

……、アリアさんの匂いがする。

【確かであるのは、口元を覆うみたいに両手で隠した少女の表情はきっとひどく和らいでいた。だから涙だって一つ落ちるんだろう。――だって、会いたい】
【会っていたことさえ忘れてしまったから。だけど限りなく一緒にいた証拠だけがそこにあるから。そうして記憶の中に埋め込まれた、ブラックボックス】
【開けてしまうことはいくらでも出来た。けれどあえてそうしないことにした。一緒に刻まれていた想いがどこか強いるようにそうしようと思わせる、だって】

――――――████、

【――意味も辿れぬ誰かの名前。それをもう一度聞くまで、決して思い出すなと、過去の自分が言っているから】

/おつかれさまでした!


616 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/09(木) 23:51:19 smh2z7gk0
【水の国・首都フルーソ・中央駅】

【水の国の首都フルーソのほぼ中心地に存在するその駅は、水の国全域のみならず】
【他国へとつながる列車も運行している国際ターミナルでもある。】
【そのため昼夜問わず多くの人でごった返している。そんな場所の片隅にあるカフェ】
【若者やイケイケのビジネスマンに人気のチェーン店だ。ここでノートPCを叩いているだけでそれなりに様になる。】
【当然非常に込み合っている店内、ではなくカフェの目の前にあるベンチに座る人物がいる】

いや〜水の国と鉄の国を行ったり来たり。たまに報告に氷の国へ戻ったり。
水の国にくれば変な輩に襲われたり、鉄の国に外交官としていけばセールスマンの行列。

このままじゃあコニーちゃん夏休みもロクにありませんよ。
能力者を規制する前にまずこの過酷な労働環境をなんとかしてほしいもんですわ。

【アイスブルーのアシメヘアに同じく涼し気なアイスブルーの瞳をした少女】
【服装はアロハシャツに短パン、そしてサングラスとどうみてもバカンス中にしか見えないがどうも仕事が大変らしい】
【誰に言うでもなくぶつぶつと呟きながらボストンバックを枕のようにしながら項垂れている】
【目の前のカフェで買ったフラペチーノのストローを力なく咥えながらぼ〜っと行き交う人を眺めている。】
【(本当に忙しいのか?)という疑問はさておき、共有のベンチでだらけているのは目を引くし、何より邪魔くさい】
【鉄の国行きの列車が到着するまでまだ数時間あった―――】


617 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/09(木) 23:53:43 smh2z7gk0
【水の国・首都フルーソ・中央駅】

【水の国の首都フルーソのほぼ中心地に存在するその駅は、水の国全域のみならず】
【他国へとつながる列車も運行している国際ターミナルでもある。】
【そのため昼夜問わず多くの人でごった返している。そんな場所の片隅にあるカフェ】
【若者やイケイケのビジネスマンに人気のチェーン店だ。ここでノートPCを叩いているだけでそれなりに様になる。】
【当然非常に込み合っている店内、ではなくカフェの目の前にあるベンチに座る人物がいる】

いや〜水の国と鉄の国を行ったり来たり。たまに報告に氷の国へ戻ったり。
水の国にくれば変な輩に襲われたり、鉄の国に外交官としていけばセールスマンの行列。

このままじゃあコニーちゃん夏休みもロクにありませんよ。
能力者を規制する前にまずこの過酷な労働環境をなんとかしてほしいもんですわ。

【アイスブルーのアシメヘアに同じく涼し気なアイスブルーの瞳をした少女】
【服装はアロハシャツに短パン、そしてサングラスとどうみてもバカンス中にしか見えないがどうも仕事が大変らしい】
【誰に言うでもなくぶつぶつと呟きながらボストンバックを枕のようにしながら項垂れている】
【目の前のカフェで買ったフラペチーノのストローを力なく咥えながらぼ〜っと行き交う人を眺めている。】
【(本当に忙しいのか?)という疑問はさておき、共有のベンチでだらけているのは目を引くし、何より邪魔くさい】
【鉄の国行きの列車が到着するまでまだ数時間あった―――】


618 : エーリカ ◆D2zUq282Mc :2018/08/10(金) 00:07:21 JY1GydDk0
>>610

……解りきった事を聞くのは止めて貰いたいね。
どうせアンタの中で答えは出てるんだろ。

だから――語るに及ばず。答え合わせは死んでから好きなだけやってくれ。

【"語るに及ばず"――取り付く島のない言葉を以て、権兵衛の言葉に首を縦に振り】
【肯きの意味を込めた言葉を、冷淡に吐き捨てて。眼光はきっ、とより鋭く尖らせた】

権兵衛。名無しの権兵衛か。だったら墓に名前は要らないね。
良かった、墓を立ててやる手間が省ける。――じゃあ、死のうか。

【雨足は弱まるところを知らず、何時しか雷鳴がごろごろと轟き始めていた】
【すると雷の鳴き声は、一瞬だけ光って。その後に遅れて轟音が鳴り響く】

【それが、開戦の号砲だった】

【ばしゃばしゃと水を跳ねさせ疾走しながら彼我の距離を詰めていく】
【その最中に、握っていたナイフを権兵衛へと投げ付ける。狙いはアバウトで、精度が低い】
【そんな投擲であれば、少しでも戦い慣れている者にとって避けるのは容易いだろう】

【だがそれは飽くまで様子見。そして権兵衛の言う"手品"がこの瞬間にお披露目される】
【何も握られていない手。そこに、知らぬ間に握られるのは刃物。それもマチェットと呼ばれるナイフ】
【それが突如として現れたのである。武器など幾らでもあるといわんばかりであった】


619 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/10(金) 00:42:34 o6XMS57s0
>>617



【 ─── ホームに溢れんばかりの人混みの中、不意に悲鳴が上がる。】



【最初はごく軽いどよめき。次いで事態の深刻性を認識する絶叫。やがて生じ始めるのは取り返しのつかない混迷。】
【取り囲む野次馬の押す人波、我先に逃げようとする目撃者の引く人波。ベンチに座る誰かの脚すら薙ぎ払わんばかりに。】
【そうして遠目を凝らすなら、 ─── それは白昼堂々たる暗殺の現場である事に、気付くかもしれない。囲う人々、その垣根の中】
【一人の男が倒れていた。ビジネスマンらしき背格好をしたホワイト・カラー。然して首から上、血染めと共に泣き別れていた。】
【唖然とした絶命の表情からして、辻斬りの賜物であると予想させた。 ──── であれば、人波を悠然と歩き去る人影、ふたつ。】

【黒い外套を着た一人。酷暑にあって汗一つかかないスーツ姿。長く煌びやかな銀髪を腰までたなびかせた、異様に背の高い女。】
【その青い瞳は深く昏い色合いをしていた。長く伸ばした髪で顔の右半分を隠していた。およそ堅気の人間には見えぬ魁偉。】
【もう一人は着物の女。櫻あたりからの旅人であろうか、地味な藍染には返り血も目立たぬに違いない。艶やかな黒髪をお河童に切り揃えて、白皙に笑顔を貼り付かせて】
【ごく小柄な背中に何かを負っていた。弓か薙刀か、とかく身の丈ほどある長物を隠していた。とは言えど、居合に斬り結べるような持ち運び方ではない。】


【 ──── どちらかが、あの惨劇を創出したに違いなかった。そう思うなら声をかけるのも良いかもしれない。さもなくば、】


/今日はすぐ落ちちゃうかもですが!


620 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/10(金) 01:22:13 smh2z7gk0
>>619

【突如湧き上がる叫び声にビクッと体を震わせると、そのまま視線は自然と声がきた方角へと向かう】
【そしてその方角から逃げ惑う人々に気圧され、ベンチの上に体育座りしながら目を凝らす。】
【絶命したビジネスマン、そしてその場から去る目立つ二人の人物。少女は残ったフラペチーノを吸い上げる。】

はぁ〜あ、あれが過労死かビジネスマンは大変だなぁ………。まぁ違うだろうけど。
やれやれだなぁ、恐いなぁ、なんか私憑かれちゃってるのかな。それともこの国がイカれてるのか。

まぁ何にせよ―――ヘイ、そこの着物のお姉さ〜ん!
この大騒ぎの中、その恰好は職質されちゃうよ?ちょっとこっちに来た方がいいよーん。

【プラスチックのカップをゴミ箱に投げ捨てると小走りで着物の女性へと声をかける。】
【理由は特にない、あるとすれば〝笑顔〟だから。自分も含めて常に笑っているような人間はロクでもない気がするから。】
【とはいえ単純にその姿に興味があったのもある。一方で長身の女性は横目で見送る。こっちはこっちで嫌な予感がした。】
【そして追いつけば馴れ馴れしく肩に手を回して物陰へと誘導しようとするだろう。】

//私も今日はこのレスが最後になります!


621 : 名無しさん :2018/08/10(金) 09:31:45 z0YEX0VM0
>>618

【肯定の言葉を聞いて、こちらもそれに良しと頷く。次に響く雷鳴が戦の火蓋を切って落とした】
【ただこちらとの距離を詰めているに過ぎないのに、水を巻き上げてやって来るエーリカの様は豪雨そのものを引き裂いているかのような迫力がある】
【やがて飛んできたのは先刻まで手にしていたナイフの投擲一閃。照準は大まか、あくまでこちらの出方を伺うためのものか】

応ともさ。己はくたばるンなら戦場でと決めている、随分楽で良いだろう?
手前さんの方も……そうだな。もし手元が狂ッちまったらどうした方が良い?

【飛来するナイフを眺めて浮かべるは、そんなくだらない台詞。目撃者を始末するような身分であれば、墓はいらないか。なんて】
【転瞬、やや身を屈めると同時に権兵衛はその場から消失。その場には、足元の水溜りへ蓮の葉めいた大きな波紋だけが痕跡として残った】
【必然として、エーリカのナイフも権兵衛の残像を掠めるに留まる。次に聞く声の行方はきっと頭上】


――成程、手品だ。奇怪千万、奇天烈極まる
手前さん、“仕舞ってた”わけじゃ無ェな。その鉈は今この場で“創った”ろう

【驚嘆と好奇を殺しきれない声で】
【跳躍してナイフを躱した権兵衛の身体は空中高くへ。地上から数メートルを優に越す高さ、それは彼がエーリカたちとは異なる形で只人ならぬ事の暗示】
【次いで、瞬きするほどの時間を以って刀を抜き、落下の勢いを載せ剣戟をエーリカへ。これで一巡、一先ずの小手調べは互いに済ませた形になる】


622 : ◆9VoJCcNhSw :2018/08/10(金) 18:17:49 wn2rqSVw0
>>572


おぉ……!お揃い……だけど、母上の方が大人っぽいっつーか……!


【改めて見た母親の姿は、普段の優しく綺麗な印象とはまた違い】
【どこか活発で、しかし子供らしさなんて微塵もない】
【「お洒落」なんて言葉が自然と出てくるような着こなしに】
【それこそ、少年がヒーローに憧れるような目線でその姿に見入る】
【――興味の持ち方がまだ子供らしいのは、どうしようもないのだろうが】


「随分と楽しそうだな。母娘で揃いの洋服を、というのは微笑ましいものだが……
 ……私も観客として混ぜてもらってもいいか?」


【横から割り入る、低い声。誰か――と問うほどの事もないだろう】
【貴女なら、恐らく聞き間違えることなど無いであろうし】

【――声の方を向けば、小ざっぱりとした格好の男性が立っている】
【グレーのスラックスに、飾り気のない半袖のシャツ】
【唯一のアクセサリーといえば左手の薬指に光るリングくらいなものであり】
【男性としては長い黒髪は、後頭部で1つに束ねてある】

【何より、平均よりも高い背と、鍛え上げられた厚い身体と】
【そんな特徴があれば誰か、というのはよくよく分かるはずで】
【娘の隣に立ち、頭を撫でながら。快活な妻の姿を見て、小さく笑みを覗かせた】


623 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/10(金) 20:56:06 o6XMS57s0
>>617


「 ──── そういうこと、しますか?」


【すべらかな濃紺に指がかかる刹那、 ─── ごく穏やかな調子で、和装の女は呟くだろう。ぐるり首だけを横に回し、】
【向き直る身体の動きで着物の裡から何か閃く。鋭利で明白な殺意。それを感じ取ることができたならば、】
【 ─── 左手逆手、どろりとして血に濡れた短刀が、少女の首筋を狙おうとするのも解せるだろうか。一歩退くだけでも躱せるような、紙一重の一撃であった。】


        「ちッ」「 ──── 全員動くな!」


【どうあれ其れを目敏く見抜いたのか、 ─── 銀髪の偉丈婦が叫ぶ。この手の勧告を叫び慣れている声だった。】
【黒い外套の下から引き抜かれるのは自動拳銃。ふたたび群衆が悲鳴を上げて射線を開く。零コンマ数秒の間に定められる照準。引き絞られるトリガー。】
【続くのは躊躇わぬ発砲。火球のごとき発射炎は尋常なハンドガンのそれではない。狙うのは和装の女、その胴体。されど数センチずれていたなら、少女にも十全に命中し得た】
【 ─── 誰が誰を殺そうとしているのか、判然としないかもしれない。然れども一つ確かなのは、殺意が向けられているということに違いない。であれば?】


624 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/10(金) 20:56:30 o6XMS57s0
/>>623>>620です、すみません、、、!


625 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/10(金) 22:16:58 PMzGIUuA0
>>623

ウッソだろオイッ!!あっぶな!
(やべ〜、こりゃ私〝当たり〟を引いちゃいましたかぁ?)

―――まぁまぁここは穏便に………いきましょッッてぇはぁい!!?

【穏やかな調子で答える和装の女に背筋に冷たいものが走る。これはヤバい。】
【そんな感覚に晒されたのもつかの間、鋭利な短刀それも今さっき人を殺めたと思われるものが迫る】
【咄嗟に首を捻って回避するが、一歩遅く頬を掠る。白い肌に一筋の血が流れ落ちる。】
【汗を流しながら苦笑いで語り掛けつつ右手をボストンバックの中へ入れようとした矢先―――銀髪の女が叫ぶ】
【不意を突かれ変な叫び声をあげながら両手を頭上に掲げ、ボストンバックは床へと落ちる。突如発砲。】

オイオイオイオイッ!もうわけわからんての!こういう時は―――全員制圧!

【和装の女に弾丸が放たれると叫びながら一歩飛び引き、そのまま即判断しボストンバックを銀髪の女へ蹴りつける】
【ボストンバックは強打者に打たれたボールのようにすさまじい勢いで銀髪の女に向かうだろう。狙いは銃を持つ手だ】
【ボストンバックの中にはスタンバトンやらサプレッサー付きのハンドガンやら大分物騒なものが入っている。】
【勢いは凄まじいが直線軌道、距離もあるので回避は可能だろう。】


【そして少女はボストンバックを蹴り上げた勢いをそのままに腰を捻り、今度は和装の女の方向へと右足を蹴りだす。】
【バシュッ!という音と共に放たれるのは〝空気の塊〟。和装の女の顔面をめがけて放たれるそれは不可視かつ直撃すればかなりの衝撃だ】
【ただし、こちらも直線である。さらに和装の女が空気の流れを読める程の使い手なら―――話は別だ。】

【二つの攻撃を放った少女はそのままさらに一歩下がる。二人の出方、特に和装の女に注意を払っている。】


626 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/10(金) 23:08:19 o6XMS57s0
>>625


「802より08、現場にて状況109が進行中。現場を全面封鎖、民間人を退避させ ──── な、ッ」
「馬鹿、 ……… 私は敵じゃない、ッ!」「く、ッ。」


【不意を突かれたように外套の女は隻眼を見開き、その一撃を真面に貰う。辛うじて銃は取り落とさずとも、踏み止まるのに数秒のよろめき。】
【 ──── 対して和装の女は何かを見切っていた。消えるように身を屈める。黒曜の髪がきらりと陽光を映して煌めく。それは刹那の一太刀に似る。】
【空気弾は背負う布袋を掠めて、其れが隠していたものを剥ぎ取った。 ─── 2振りの得物。少女ならそれを理解するだろうか】
【1振りは漆塗りの鞘に収まった打刀。1振りは軍用の突撃小銃 ─── 護拳に至るまで伸びる長大な刃を着剣した、抜身の銃槍。】


「 ……… ま、丁度いいですね。」「アレを殺って終わりじゃ退屈でしたし。」
「ねェそこの御二方、 ──── ちょっとばかし"付き合って"貰えます?」


【屈んだ勢いのまま、和装の女は少女の懐へと飛び込もうとする。狼狽える人混みを薙ぎ払って。その両の手は徒手空拳にて、然し】
【そうして肉薄に成功したのなら、 ──── 向かい側のホームに飛び込んでくるのは、当駅通過の快速特急。】
【 ─── 刹那のうち、少女の首根を引っ掴みつ、和装の女は疾走する列車の天井部に"飛び移ろう"とするだろう。】
【架線のない第三軌条方式であったのがせめてもの幸いであった。そうして首尾よく無賃乗車に成功したなら、然してあっさり女は掴む手を離す】
【なれば列車の天井に脚を降ろすことになるだろう。 ──── 通過列車であった以上、その速度に衰えはない。頬を撫ぜる烈風。】
【ごく現代的な灰色の街並みが凄まじい勢いで後方に吹き飛び続けていく。女は自らの得物に手を掛けていた。であれば、つまり。】


627 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/11(土) 00:45:27 smh2z7gk0
>>626

だったら〝味方〟って名札を下げてくださいよーっと!
(今の通信、〝公安〟か?いやこの大暴れっぷりはもしかすると―――。)

【ボストンバックが命中し、よろめく銀髪の女性に軽口を叩きつつ情報を整理する】
【空気の弾丸をよける和装の女、その背にある二振りの得物にしたうちをしつつ身構える】

やっぱりアレをやったのはアンタか、どこの刺客さんだい?こんな大騒ぎさせちゃってさ
いーぜ、かかってきな…って早ッ!?グガッ―――!

【和装の女の発言で、先程の凄惨な現場の犯人は確定させる。】
【そして挑発的な女の発言に挑発で返しながらステップを踏むが、和装の女は想像以上に速い。】
【簡単に首根っこを掴まれ、無賃乗車に便乗させれる。ゴンッ!と大きな音を立てて列車の屋根を転がる】
【少女はそのままゴロゴロと転がり、和装の女の間合いから逃れる。】
【そして唾を吐きだしながらゆっくりと立ち上がる。ずれ落ちたサングラスからは冷たいアイスブルーの瞳が睨みつけている】

―――調子にのんなよ、クソアマ………!

(とか啖呵きってるけど、かなり状況はヤバいね。)
(この速度じゃ〝サーキット〟は張れないし、〝玩具〟もさっき蹴り飛ばしたバックの中だし。)
(まずは情報を集めるしかない―――私の〝弾丸〟をさっき避けた方法は?。)

(①軸足や足の角度で射線を推測した②直感によって偶然避けた③何らかの異能や技術で空気弾の流れを読んだ④その他の理由)

(―――まずは限定していくしかないね。)


【武装もなければ少女にとって相性の悪い環境。そして未知数の相手―――どうみても劣勢だ。】
【だが劣勢の中でこそ冷静にあるべき、少女はそうやって生き抜いてきた。】
【口はいつにもましてぶっきらぼうで攻撃的だが、脳内では相手の分析をハイスピードで行っている。】

【そして一歩踏み出すと、先程と同じ要領で右足を宙に蹴りだす。また同じ軌道の空気弾、狙いは顔面―――なのだが】
【今度は和装の女の顔面に到達する寸前に〝曲がる〟のだ。曲がった先は得物に手をかけるどちらかの手である。】
【少女は〝曲がる空気弾〟を放つと、戦闘態勢を取りつつ距離はそのままを保つだろう。】


628 : エーリカ ◆D2zUq282Mc :2018/08/11(土) 01:09:38 JY1GydDk0
>>621

私の心配なんて要らないよ。元より死人同然なんだから。
手元が狂おうが知ったこっちゃない。どうするかなんて勝手に決めな。

【突き放すような"口撃"。お互い言葉の応酬など瑣末な事にしか思っていない故の軽口】
【命の遣り取りの場面で口にする言葉ではない。そんな遣り取りだった】


―――……!?消えたッ?(何処に?)
(――上だって!?)全く、規格外の跳躍力だね…っ!

【エーリカの視界が捉えるのは、権兵衛が跳躍した後の水溜りが波打つ波紋】
【故に投擲したナイフは空を裂いたまま。権兵衛へと辿り着かなかったのだ】
【ナイフはやがて勢いを失い、ぱしゃっ、と音を立てて地べたへと落下する】

【"何処に消えた"と警戒していれば、遥か高い頭上から降り掛かる声によって空を見上げる】
【人間離れした跳躍。知らぬ間に抜かれた刀。それに因って為される行動は容易に想像出来て】


私が手品師なら、アンタは雑技団だ。にしても派手に魅せてくれるじゃないか。

そのお礼に一つ応えてやる。アンタの言葉通りだよ。ただ――ちゃちな仕掛けを見破った程度で満足しないでくれ。
"その先"は未だ全然見せてないんだ。好奇心が猫を殺すに至るまで付き合えるなら付き合ってみなよ。

【驚嘆と好奇が絡みつく言葉に対して、苦虫を噛み潰したような表情を覗かせた】
【"一筋縄ではいかない相手である"と察して。思うのは"手強いな"と言う油断を覗かせない感情】

【頭上高くからの強襲に対して、投げナイフを3本ほど召還。それを以て迎撃を試みようとしたが】
【即座に却下。たかがナイフ数本で対処出来る筈もない。鋭く、重い剣戟に耐えられる筈も無い】

【そこでエーリカは召還したナイフ3本を投げ捨てる。そして水飛沫を伴いにダッ、と鋭く前方へと駆け抜けて】
【まともに喰らえば絶命するであろう剣戟から逃れるのであった。そうなれば、両者は再び相対する事となる】

【ともなれば。エーリカは先手を取るべく権兵衛との距離を詰めながら、先程捨てた3本のナイフを遠隔操作】
【前方からはエーリカが、後方からは遠隔操作にて権兵衛の背後から飛来するナイフ。挟撃する形となるだろう】


629 : ◆9VoJCcNhSw :2018/08/11(土) 02:57:17 wn2rqSVw0
>>583

【〝ルーナ〟という名を付けられれば、女性は静かに頷いた】
【女神の名前――それを選択したのは恐らく、正しいのだろう】

【修道女の読みどおり、ルーナという女性からは人間味が感じられない】
【言葉が通じないにしても、もっとおどおどしたり、不安がったり】
【或いは気が強ければボディランゲージで意思疎通を図りそうなものだが】
【言うなれば、彼女は人形。担がれた神輿のような存在にも感じられる程に、意志が希薄で】

【だからこそ気の長くなる時も、淡々とその日にちを数えて、覚えていられるのだろう】

【これが現実ではなく、『創造を司る能力者が創り出した内面世界』であるからこそ】
【だからそこに居る。そこに在るべき存在として、彼女は時を過ごしたのだろう】
【問題は意思の疎通に時間が掛かることだったが――閑話休題】


【巨大な石の怪物が放った拳は、凄まじい音を立てて街の一角を圧壊させた】
【既の所で抱えられたルーナは借りてきた猫のように大人しくしていたが】
【ふと瞳を閉じ、抱えられた腕に手を触れる――すると、修道女の身体が軽くなる】
【それこそ重力から解放されたかのように、軽々と空を舞うことが出来るはずで】

     
       〝No harm overtakes the righteous,
but the wicked have their fill of trouble. 〟

       〝正しき者に災禍なく、邪なる者に苦難あり〟


……箴言にそうあると云うが、其れは嘘ではないかな?


【その声は石の巨人、その頂点から響いていた。まるで耳元で囁くように聞こえるのは】
【恐らくその存在が、この世界そのものに干渉できる者だと示しているかのようであり】
【実際、そこには〝居た〟。目を凝らせば、確かに人影が見て取れた】

【――しかしそれに応える理由はない。巨大なゴーレムは、ゆらりと拳を引いていた】
【その間に、速度を増して舞い上がれば離脱することは出来るだろう】
【街が潰れた今、最も近くに存在する"逃げ場"は荒れ地、そして高山――当初に光を見た、あの場所か】

【もっともっと遠くまで飛べば、或いは違う街や世界が広がっているのかも知れなかったが】


630 : 名無しさん :2018/08/11(土) 12:09:29 z0YEX0VM0
>>628

はァ、死人かい! そいつァ楽な人生だ。さいならこの期に及んで墓石は要らんってぇ道理だな
そンなら心置きなく……手前さんと“やり合える”

【凶悪に笑いながら、風を切って天から一閃。着地と同時に波を打つように水が跳ねて、刃の威力を物語る】
【空中で手放したらしい傘が落ちてきたのはそれから一拍置いてのこと。傘布に雨露が溜まる様は、杯に酒が注がれるのによく似ていた】
【“流石に躱すか”。呟いて、権兵衛が首だけで振り向く。エーリカのそれと交わされた眼が弧を描き】
【そのまま刀を振り落ろした姿勢から建て直し、エーリカへ追撃を加えようとするが】

なぁに、見世物になるような芸じゃ無い
ただ生まれつき、飛んだり跳ねたりするのはちょいと覚えが――!?

【あと一歩踏み込めば刃の射程、背後から風を切る音を聞いたのはそんな時】
【咄嗟に振り返ると、顔の傍を“捨てられたはずの”ナイフが通り過ぎていった。刃にかかった右耳が裂けて、血が噴出すのを感じる】
【戸惑う暇さえ許さず、残りの二本が肉薄。止むを得ずエーリカへ向けて振るいかけていた一撃の軌道を修正、飛んできた二本のナイフを一薙ぎに打ち落とす】

【背後からの奇襲を退けてエーリカへ向き直れば、最早迎撃は叶わぬと刀を逆手に防御の態勢】
【辛うじてエーリカの鹹め手を耳の一つで済ませたのである。今無理に攻撃に転じるのは得策ではない、攻撃を往なし切ってから反撃に転じるなり間合いを取って仕切り直すのがベター】
【後手に回らざるを得ない――それの何たる愉快な事か】

あっはっは! 成程、一度仰天させて終わりってンじゃ二流よな!
こりゃ一杯喰わされた。面白いじゃないの手前さんの手品――良いぜ、最期まで見せてくんなァ!


631 : ◆wEoK9CQdXQ :2018/08/11(土) 14:27:59 BpkC9xjk0
/4レスに分けますっ

>>166-167

【誘われれば、ふわりと仄かに緩む表情。闘争の日々に、憩える場所が――――それも仲間の姿がある場所があることは、本人が想像していた以上に安らぎを生むもので】
【けれど薄皮一枚隔てた先には、悍ましく絆を踏み躙るものたちの存在がある。既に奪われたものの物語。   】

……“奪われる”ものじゃなく、“奪う”者として直に脅威になる……か――――。

今のこの世界は、家族が傷になることも、きっと少ないとさえ言えない有り様だけど……
……そこまで容赦なんてものが、欠片もない関係が在ったのね。
忘れないわ……忘れていいなんて、思えも……しない――――

【悼む想いと、斯様な理不尽をこそ滅却したいとさえ感じる胸の奥の烈しさと。何れもが、顔も知れぬ者たちの物語を強く心へと投射していた】
【“個”としての彼らを知ることができないから、関係からだけ憶え、刻んで】

虚構世界への侵攻――――存在を失う前提で、最悪を避けるために、勝算さえも越えて挑む――――
……本当に、途方もない覚悟を持つ人ね。

まるでその人が犠牲になることを……その人自身は厭わないみたいに聞こえたわ。
私の“終わり”も、傍から見ればきっと同じ。手段にしてしまえるものだけど……
考え続けることは、だからこそ必要になるのかもしれないわね――――

【自分の命さえ賭して脅威に対抗する者。聞けば、瞳に浮かぶ色は、少しの憂いと、どこか共感じみた感情のそれだった】
【自分以外の想いを通じてしか、自分の滅びを厭えない。けれど――変えられずとも、受け止めて生きてやることはできて】
【そんな者にとっても、アーディンの言葉は金言だろう。真実を求めながら、考え続けながら】
【かたちなき闇を相手取るため、武威のみに留まらず、思索においても全力を尽くすことはまさに至当だっただろう】


632 : ◆wEoK9CQdXQ :2018/08/11(土) 14:28:27 BpkC9xjk0
>>166-167

……生還した先で、財団の遺したあの文書の、写しの様なものを渡すわ。
繰り返しになってしまうけど、貴方たちこそが活かせるものだと思ってる……――――

【新たに得た情報から、即座に思考の筋道を組み上げ、恐らくは再びあれを目にすれば“使う”用意を、アーディンが――己が内に完成させたと思えた】
【未知であることの脅威を深く知り、対処法を追求する精妙な思考は、練達という言葉でも足りぬほどで】
【そんな彼が、理性より、或る種の信念とさえ呼べる感情を優先して滾らす憎悪――】
【微かに息を呑む気配は、アウトローの流儀に対する、柊の生来の感性を示してはいた】

【嬲ることが出来てしまう時点で、相対的に対象は弱者だろう。その痛苦を肯定することに――柊は少なからぬ抵抗を覚える様で】
【葛藤は、やがて静謐な言葉に繋がる】

……過ちを犯さない人間なんて、どこかの世界に在り得るのかしら。
本当に、彼女がそんな言葉を吐いたなら
……憎むのも、忌むのも当然だと思う。あんなものを愉しむことができる人間を、許せないと思うのも当たり前だけれど――――

あの工場を作り上げたイル=ナイトウィッシュ当人はともかく――白神鈴音は、本当にそう罰されなければならないほどのなにかをしたの?
ただ“共にある”ことを望んで。そんな相手の手で、自我の在り様さえもが作り変えられて。
けれどアナンタシェーシャの滅びを以て、〝虚神〟に抗う人々が、起こるはずだったその先の惨劇を止めてくれた……――――。

それがあの湖の結末だと思うからこそ、あの戦いの残した可能性の意味を、私は……まだ、なくしてしまいたくない。
……私よりずっと、“その先”を願う人たちもいることだし。それに

罪を犯し損ねた人たちまで……連座で死ぬまで嬲りたいと思うなら、ただ憎しみの奴隷になるのと、きっとなにも変わらなくなってしまう……――――。
……用心棒のルールからすれば、いかにも甘く思えるかもしれないけど。
力だけで成り立つ訳じゃない場所のルールにも――時には、見るべきものがあっていいと思うの。

【或いはシンプルな力押しの断罪が、何より効を奏することはあって。それでも人の理を以て、あの日の勝利を、よりよい未来に繋げたい、と】
【断罪ではなく、少しでも世の嘆きを減らすこと。重視したい部分の差異は、そのまま、立ち位置の違いだった】


633 : ◆wEoK9CQdXQ :2018/08/11(土) 14:28:47 BpkC9xjk0
>>166-167

【続く言葉は、その上で共有できるなにかを思うもの。言わば、共闘者への、使い道の自由な“道具”の提供だった】

……問題は、アナンタシェーシャの一件の先で、彼女が新たな〝虚神〟として存在を歪められたうえに、再び膨大な力を持つに至ってしまったこと――――
この一点にこそ、白神鈴音の扱いはともかく……今の世界における、脅威としての彼女はあるんだと私は思う。

だから、〝無力化〟を考えたかったの――――……ただ嘆きを生みたくないだけじゃない、それが最悪の結末を避けることに繋がるはずだから。

……それに、本当に最低の考えだと思うけれど
その先に待つのが裁きでも、歪みからの解放でも――
決定的な瞬間が訪れるまでは、共に足掻ける人の数は、選択肢を絞るより確実に増すわ。

どちらの結末が訪れるとしても――――前提として、虚神ウヌクアルハイは誰かの意志での制御か、抑止が可能な存在になることが必要になる……――――
そしてその“誰か”の候補として、〝元の白神鈴音〟を考えることができるって意味もある

【言葉の上で、可能性としては肯定して。事実、一切止めようとすることもなく】
【“他者を肯定し、決定的な喪失に抗う”という原初的な願いが――まるで競るかの様に、減速を強いずに、個々が最大の力を発揮する事を求めていた】
【目を逸らさずに。隠すことすらせず。それでもなお、より大きくなる勝算を理由に加えるのは、甘言と呼べてしまうものだったのかもしれない】

【年齢からは想像もつかない思慮ではあった。けれどその根本は、語り口こそが示すのだろう】
【〝死力を尽くしてなお届かないことがある〟――ならば、“殺すこと”を絶対の前提とすることは、勝算を減じてしまう害のほうが大きい、と】
【単一の意志で統率された特化型の戦力は、心など無い機械の様に。やはり目的に振り切れて、他者の心情を慮りきれていない】
【……その自覚があるからこそ。紡がれる言葉は、正義や道理を意味することはなく】

……こういう理屈で、私は私の戦い方を譲るつもりはないけど。
これは、あくまで私の戦い方に過ぎないのも分かってる。……答えは――――共有できるものであることの方がきっと稀だから。


634 : ◆wEoK9CQdXQ :2018/08/11(土) 14:29:06 BpkC9xjk0
>>166-167

それぞれの戦い方が、それぞれの強さと意味を以て。願う未来へと近づいて、守りたいものを守ろうとすればいい
……今の私はもう、その成れの果てみたいなものだとしても。

そうして共に戦ったことで守れたものも、六罪王と戦い抜いた、その共闘の記憶も――――今でも私の宝物よ
……貴方たちとも、そんななにかを守りきりたい。そう思うから……今はただ、“ありがとう”と――共闘への感謝だけ言葉にさせて。

必ず生きて帰りましょう――――常に願い通りの結末が得られるなんてことはなくても――
そうあろうと足掻くことに、意味があるのを疑うつもりもないわ。

【闘争に適応するための進歩は凄絶で。彼らが殺すより先に、自分や、救い出そうとする者たちが決着をつけると謳い上げる様でさえある】
【……そんな彼女だからこそ。対峙する以外のやり方で共にあれる人々や……抱ける共感は、“人”であれる理由とさえ呼べた】

【それを共有するから。人の世を守るためのこの戦いにて】

【穏やかな日々と、子供たちが健やかに在れる未来を守るため、邪しきものの拷問をも辞さないアウトローと――】
【心震えさす誰かをも守るため、どこまでも自身と敵対者を刻む異端者は】
【視点に違いがあろうとも、目的を同じくする限り、全霊を尽くしてあれると柊は考えている様だった】

【かつて革命を謳った六罪王を、命の輝きを守らんとした戦友とともに打倒したあの戦いのように。】
【そのひとりの言葉が激突を避け、最後まで共に挑む戦いの礎を築いたように――未来へ進み続ける強さは、自らが変わりゆくことをどこかで肯定して】

【その後幾らかの言葉を交わしたなら、この日の邂逅はひとときの別れに到るだろう】
【そして両者が向かった虚構現実は、幾度もの世界線を渡った先の結末へと到達する】
【アーディンが持ち帰った情報の重要さは、対・虚神を志す者すべてにとって、限りなく重要なものだった】

【そして血染めの剣士もまた、出航の地へと再び帰還し。虚神シャーデンフロイデとの戦闘で負った手傷から、近隣の病院に搬送された】
【死して然るべき重傷と、まだ斃れられないという意志で動かす異能とが鬩ぎ合い。ひとまず、命を繋ぐという現状を許す】
【近年の能力者狩りへの配慮からか、入院者の名は明かされず。だがアーディンの情報収集力を以てすれば、当該の施設を割り出すことも叶うだろうか】

【あの闘争と探索と喪失の日に、それでも得たなにかがあるのなら――互いに齎すことのできるものもまた、存在して】
【けれど再会が此処に成るかは未知数。世界の混迷はあまりにも大きく。明日の命すら、確かだと言えるものはきっと、いない……――――。】
【……生存の誓いを確かめあうのは。だからこそ、大きな喜びともなり得るのだろう】


635 : エーリカ ◆D2zUq282Mc :2018/08/11(土) 14:36:11 JY1GydDk0
>>630

【雷鳴が轟いてからの攻防は、社会的な死者と死に急ぐ様相の生者による舞のよう】

【命の遣り取りに対して臆する事無く気味の悪い笑みを零す権兵衛と】
【雑念を振り払い、白装束を血染めの紅白にせんと専心するエーリカ】

【いずれにせよ両者の振るう刃のその性質は一様にして同一。命を寄越せと静かに鈍く光る】
【現に今も権兵衛の血肉を食もうとして、彼の背後から3つの凶刃が無機質に襲い掛かり】
【1本は右耳を裂けど、残りの2本は本懐を果たす事無く撃墜されたばかり】

(ちっ、掠り傷程度で済ませるか。楽には終わらせてくれないね、ホントに)
(しかも一振りでナイフを打ち落とすとか、益々以て厄介な奴。――手加減なんてできない)

【挟撃が失敗に終われど、エーリカはその歩みと動作を止めない】
【刃のように研ぎ澄ました意思と動作によって、マチェットを横薙ぎに振るう】

【雨を、音を、空気を。そして命を切り裂かんと鋭く振るわれた刃は、権兵衛には届かない】
【がぎぃん、刃と刃が刃鳴り散らした。それ即ち――状況が鍔迫り合いへと移行した事を示す】
【エーリカと権兵衛。両者は肉薄して。ぎりぎりと刃同士の膠着が展開されていた】


ぐぅ…!余裕ぶりやがって。気色悪いその面構え、いつまでも保つと思うなよ…ッ!


【"手品の最期まで見せる気なんてない。そも、お前に私の手品の最期は見れない"】
【鬼気迫る。そんな表情を浮かべて自身の望む展開を手繰り寄せるように次の一手を繰り出す】
【鍔迫り合いによる均衡を保ったまま、権兵衛の左膝目掛けて蹴りを放った。機動力を殺ぐ心算なのだろう】


636 : 名無しさん :2018/08/11(土) 16:26:55 z0YEX0VM0
>>635

気を落としなさんなって。今のはあと少しで“死にそう”だったじゃあないの!
耳も千切れちまったしな

【一般的な感覚から遥かにズレた賛辞。この間も無残に裂けた耳から血が滴り続けていたが、それに気を留めるような様子はもうどこにもなかった】
【権兵衛とて余裕を持ってこの問答を行っているわけではない。それでも、この刹那に酔っているのが傍目から判る】
【云うまでもなく、楽しんでいた。お互いの生命を天秤に掛けて、どちらに傾くか知れぬ戦の行方を、童のような無邪気さで】

【そのまま刃が激突。権兵衛の首はそこにあるのに、エーリカのマチェットは絶望的に届かず】

失敬。ツラ構えは生まれつきでねェ、戦になると笑いが止まらねぇ
治してェのは山々なんだが、生憎首が落ちる以外にゃ治る見込みが見つからンのよ

【柄を逆手に握り、もう片手で峯を支えるように。刀でマチェットを受け留める】
【密着した二人の顔は、片や喜色満面、片や鬼哭啾啾。同じ戦でもそこに抱く感情は全く違う、対照的と云っても良い】
【端的に言えば、それは“生き様”だった。彼らの“戦い”に対する姿勢、その象徴に他ならず】

……それより手前さん、数手ばかし拝見した程度だが、刃物捌きは大したもんだ
手品一辺倒じゃないのも退屈しなくって良い。良いんだが――

【一つ呼吸をすると同時に、両腕に力を籠めて押し返す】
【権兵衛自身は目前の好敵手に“異能を用いた搦め手の欠如”という不利こそあるが、今は鍔迫り合いという純粋な身体能力を用いた競争】
【成らば勝機はあると見たらしい。自らの膂力であれば、相手の姿勢を逆に崩すには十分だと】

――力勝負なら、仕掛けるなら相手を選ばなくッちゃアな!

【成功したならば、お見舞いせんと放つは左手での殴打。そのまま刀で一本を取れれば良いのだが、流石にその余裕は無いだろうと踏んで】
【仮に彼の膂力を以ってなおエーリカを崩すに到らねば、逆にこちらが退くまで。刃を押した反作用で後方に跳び、間接を狙った一撃を躱そうと動くだろう】


637 : ◆3inMmyYQUs :2018/08/11(土) 19:52:57 qo/HyX5s0
>>519

【──ぴたり、と】
【間断なく口へカスタードを搬入していた手が止まった】

【黒目がちな丸い瞳が上目で彼を見る。口を開けたまま、スプーンをその前で停止させて】
【その運び掛けの一口を、話す前に食べてしまうかそれとも、と視線が一瞬迷いを見せるが、彼女はそれをそっと置くことを選んだ】

【それからぽつりと、零すように話し出す】

【「……わたしが《チンザノ・ロッソ》を追うのは──」】


……わたしが《チンザノ・ロッソ》を追うのは、
ただ──『ありがとう』って言いたいからだにゃ。


【『ありがとう』──】
【僅かな感情の温もりを込められたそれが、何に対してのものなのか、現在の彼には伝わろうはずはなかった】
【しかし少女はそれ以上詳細を継ごうとはせず、ただほんの少しばかり眼差しを和らげて、テーブルの一点を見つめるだけだった】


──まあ、他にもいくつか用件はあるけどにゃ。
コマゴマしたのがたくさんだからにゃ、それはまた追々──、

──未来はどうなったか、か……──さすが、探偵さんは知りたがるにゃ。

……でもごめんなさいだにゃ、未来の──
──少なくともわたしの記憶にある未来の世界──については、まだ話せないにゃ。

わたしにもその、色々あるにゃ。
女の子の秘密にゃ、察して欲しいにゃ。
でも大丈夫だにゃー、時が来ればちゃんと話せ────── 【 “ズきリ” 】


【────────────】


     「──終わらないから、戦争なんだろうが──」

   [カニバディール]
 「《人喰い菌》に罹って死んだよ」

          「──『王国』に行くの?──」

 「──お父さんは、きっと今でもどこかで、誰かを助けてる──」

        「──〈方舟〉──」

「──遡ったところで、今いる現在が変わる訳じゃない。
 痛みも、悲しみも、消えないまま──それどころか、同じ傷をもう一度味わうことになるかもしれない」

 「──それでも、跳ぶ──」

            「──お前は誰だ?──」

「──識別子、《CINZANO ROSSO》──」


【────────────】



────いッ……たっッ…………────



【そのときだった】
【少女は突如と悲痛な程に顔を歪めた】
【かと思えば、がたんッ、と大きな音を立てて椅子から転げ落ちる】

【周囲がにわかに騒然とし、客や店員の目がそこへ集う】

【──床へ蹲った彼女はその華奢な背中を微細に震わせながら、】
【まるで身体を重機で捻り絞られているかのような苦悶の声を上げて】
【痛みの根源はそこにあるのか、頭を自身で握り潰そうかという程に強く抱えていた】

【演技で出来るような範疇は遙かに超えていた】
【声を掛けたとしてもまともな応答はない。眼を強く閉ざしながら、荒い息で喘ぐばかり】
【もし近付いて触れてみたならば、脈は激しく暴れ、顔はひどい熱を持っていることが分かるだろう】

【原因は傍目には全く不明だった】
【ただとにかく言えるのは、彼女には今すぐ介抱と安静、──そして恐らくはその後の安全も含めて──が必要だった】
【この身元証明も誰かの連絡先も無い少女がそれを受けられるかは、今はひとえに探偵の手だけに掛かっていた】


638 : ◆3inMmyYQUs :2018/08/11(土) 19:56:22 qo/HyX5s0
>>637
/おまけ:世界線√β-26D-X-430’8§1231-2Q36 略称『√β2』資料
/ttps://www.evernote.com/l/AknaUt7TazdPc5PqD_VwQUeVA-c1Lir-XqM

/『2Q36年』ってどんなところ? というのを纏めてあります。
/もしよければ、未来ロッソさんが登場するのか否かを決めるのにご参考にしていただければと思います。
/何かありましたらまたいつでも呼びつけてください。大変長らくお待たせしてすみませんでした。。


639 : 1/3 ◆3inMmyYQUs :2018/08/11(土) 19:57:42 qo/HyX5s0
>>597

【さて男二人の決断は早かった】
【彼らは婦警の接近を認めるや銃の柄へも手を掛けず、三十六計何とやらとばかりに遁走を始める】
【事態を飲めていなかったはずの『坊ちゃん』こと黒外套の青年も、】
【婦警の帯びる異様の圧とそれがもたらした物理現象の捻れを見れば流石に何か悟ったらしく、不承不承ながらも円城と足並みを並べていた】


……随分躊躇いが無いな。──おい、『あいつ』は良いのか。

「去り際が肝心ですよ、人間は。
 特に女性の元を去るときは、決して振り返らないこ──────」【ぐェ、と潰れた声】


【そのとき、着物で器用に走る円城の身が大きく仰け反った】
【勢いよく伸ばされたミラの触腕が、偶然か必然か、円城の首元に絡まったのだった】
【急停止した円城に気付き、青年も足を止める。その奇妙な捕食シーンじみた構図を一瞥し、一言、】


……“まだ別れたくない”そうだぞ。

「ぐッ……」


【絡まった触腕と身の間に何とか腕を滑り込ませ、かろうじて息をする円城】
【──婦警がミラへ迫り、ミラが円城へ追いすがる。そうした閉じない三角関係の一辺を青年は冷めた眼で見やっていたが、】
【そういえば肝心の『もう一辺』はどうなったかと思い──追ってくる気配が無かったが──、後方をちらと振り返る】


『──あれえ、前が、前が……真っ暗ですよ、あれ、あれ』


【そこにもあまり美的とは言い難い光景が広がっていたので青年はまたぞろ顔を顰めた】
【ミラの吐き出した墨に念力の壁は作用しなかったらしく、婦警はその黒色液を顔面へまともに被っていた】
【正常な人間であれば──百歩譲って妖怪であろうと魔物であろうと──そこで足を止めるなり狼狽えるなりするだろうところを、】
【婦警はそのどちらもせず、視界を奪われながらもなお緩慢な歩みを続け、何かへ追いすがるように腕が前方の虚空をまさぐっていた】

【今や濡れた漆黒に覆われた唇がもぞもぞと蠢いて某か呟く様は、もはや真っ当な知性生物というよりは蟲類の蠕動にも近く】
【しかし──不運だったのは婦警が眼鏡を掛けていたこと。それは墨液から瞳そのものを守る防護壁として機能し】
【──やがて顔を左右上下へ振っているうちに、墨の滑り気ゆえか、掛けていた眼鏡がずり落ちて】

【「──あ」と婦警の呟きが漏れる】


  『見ぃ付けました〜』


【無機質な妄執に満ちた視線、今度は裸眼のそれが、再び彼らを捉えた】
【てらてらと暗黒にぬめり輝く顔面が、心底幸福そうな笑みを形作る】
【と同時に、在らぬ方を向いていた身が、さながら戦車が砲身を回転させるかのごとく、彼らの方へ振り向いた】

【──が、】


────────………………


【──青年はそれで狼狽も動揺もしなかった】
【彼の冷たい眼差しはただ静かに見据えていた。──婦警の背後で、トランクケースを振り上げる市民の姿を】

/↓


640 : 2/3 ◆3inMmyYQUs :2018/08/11(土) 19:58:26 qo/HyX5s0
>>597

【──がンっ、と痛烈な音が炸裂する】
【一切の加減を含まず振り下ろされたトランクが、婦警の後頭部を叩き据えた】
【その身が大きく前へつんのめる。が、倒れはせず、かろうじて踏みとどまりつつ、振り返る】

【──その先に在ったものを見て、婦警は身の動きを止めた】


 【「………………」】
               【「………………」】
    【「……………………」】
                          【「………………」】
            【「……………………」】
【「………………」】
                     【「………………」】

     
【多数の市民達が大挙していた】
【スーツ、作業用つなぎ、OL風、路上ミュージシャン、浮浪者】
【手には銘々、アタッシュケースやバールや傘やギターケースや鉄パイプや】
【各々の立場で手に出来る武器──既に血に塗れたものもある──を握りしめ】

【ネオンの看板群を背に、仄暗い無数の瞳が全て〈婦警〉を見据えていた】

【途端、何か彼らにだけ見えている信号が青へ変わったかのように、一斉に歩み出す】
【そして無警戒に彼らを眺める婦警へ群がり、──ぶンっ──各々が一撃を──ぐシャり──加え始めた】
【婦警の姿はその人波の中へ瞬く間に飲み込まれ──何か柔らかいものや硬いものを叩き潰す音だけがそこへ響く】

【悲鳴は無い】
【時折、群がる市民達の間から、婦警のものと思しき腕──在らぬ方へ曲がっている──が飛び出てくる】
【それも程なく人海の中へ押し込められるが、再び迫り出てきて、やはり押し込められ、を繰り返す】

【圧殺しそうでもある一方、しかし何かの間違いで抜け出てきそうでもあり──】
【そうした不気味な拮抗の中、青年はミラと円城をそれぞれ一瞥して言った】


……こんなのに追われていたのか、あんた。気の毒に。──おい、円城、まだか。


「はい、はい……ゲホっ……お二人とも時間稼ぎをどうも。
 じゃあ『まともな』三人は仲良く退散することにしますよ。

 ──悪いですね、沼男、いや沼女さんですか、この扉は三人用なんです」


【────〔門の創造〕】

【呼吸を整えた円城は、す、と片手の平を前方に翳した】
【と同時に、ぼそりと呪文らしきもの──非人間的、非神聖的、何かを冒涜するような響きすら滲んだ謎の言語による──を唱えると、】
【目の前の空間へ光の筋が走り、それは丁度ドアのごとき長方形を描いた。次いですぐさまその内部がオーロラ色の光と共に歪み始め】

【次の刹那、その歪んだ光が一際強く瞬き──ミラを含めた三人を包む】


【──周囲の雑音が溶けるように遠のき──】

【──妙な浮遊感が身体の全体を包み──】

【──肉体から霊魂が抜け出るような──】

【──それが遙か彼方へ引っ張られるような──】


【感じ方はそれぞれだが、兎に角、そこではないどこかへ転移していく感覚が訪れるだろう】


【──────────】
【──────】
【────】
【──】

/↓


641 : 3/3 ◆3inMmyYQUs :2018/08/11(土) 20:00:28 qo/HyX5s0





「────靴は脱いでくださいよ。うちは櫻式なので。
 

 ………………聞こえてますか? もしもし?」



【その感覚は夢から覚めたときのものにも似ているかもしれない】
【あのどろりと纏わり付くような狂騒は今や霧消し、しんとした分厚い静寂と平静が彼らを包んでいた】

【もし魔術的な転移に伴う感覚の揺らぎに耐性があったのなら、】
【目の前に移るそこが『玄関』であることを認識できるだろう】

【ただし、広い。サッカーの一チームを招いても、全員の靴を横一列に整列させられそうである】
【床は、土足で踏むことに大変な罪悪を覚えかねないほどに磨き抜かれた艶が隅々まで満ちていた】
【奥へ続く廊下の内壁は、一部に幾何学的な凹凸を備え、それが天井から差す暖色の照明によってモダンアートじみた陰影を醸していた】

【美術館か博物館のエントランスにも見紛いかねない。だがそこは確かにどこかのマンションのようだった】
【それも並ならぬ一部の富裕層のみが住まう高級の物件、ただの玄関でさえ妥協のない品格で充ち満ちていた】

【そうした中を、一足先に框を上がっていた円城が、彼らの方を向いてごく当然のように立っていた】
【もし傍らを見やったなら、先の青年が酔い潰れたかのようにそこへへたり込んでいる】
【ミラもそれと仲の良い有様となっているか、あるいは平然としているか、どちらにせよ円城は軽く嘆息し、】


「吐くならトイレでお願いしますよ。上がって左手のドアです」

────おェ…………


【にべもなく言い放つが、まあ兎に角上がって下さい、と彼らへ言葉を向けながら一人廊下の奥へ踵を返していく】


【奥で彼らを出迎えることになるリビングは、これまた単身者には有り余って毒になりかねない程の広さを備えている】
【ドアから入って正面の壁一面の硝子戸、その向こうに拡がる煌びやかな夜景が、その間取りを実際の面積よりも果てしなく広く見せていた】
【彼処に配されたデザイン性の高いブランド家具のほとんどはモノトーンで統一され、そのシックさと高級感が成す厚いベールで、住居にあるべき一切の人間的生活感が覆い隠されている──そんな空間だった】

【──遙かな向こうに、水の国の名所と名高いアクエリアスブリッジが都心の夜景の中でも一際煌々たる輝きを放っていた】


「適当に座っててください。
 ──ああ、やれやれ。参ったな、何も買ってない。
 水か醤油しか無い。どっちが良いですか? 水ですか、ああ、はい、はい」


【広々としたカウンターキッチンの奥へ入り、何か冷蔵庫の中をまさぐりつつ、ほとんど独り言のような声を背中越しに掛ける】
【それから程なく、どこかの白い山脈が誇らしげにラベリングされたミネラルウォーターのボトルをいくつか持ってきて、ガラストップのテーブル上へ置き】
【そのままソファ──L字型に配され、シングルベッドというものを馬鹿にするかのような広さをした──に腰を沈め、ボトルを開けて口を付け、悠々と寛ぎ始める】

【その傍らから青年が、未だ名前すら明らかならぬ彼が、のそりのそりとやってきて、しめやかにソファの一角へ崩れる】
【ただでさえ陰気な顔を更に青ざめさせ、一言も発さぬまま水のボトルをちびちびやっていた】


【動乱から一転。嘘のような静寂】
【はあ、とか、ふう、とか彼らの口からめいめい弛緩した溜息が漏れて】
【円城はぼんやり天井を、青年は項垂れて床を、それぞれ眺めていた】

【男二人は揃って呆け、放っておけばしばらくそうしている】
【必然、ミラが何か口を開けば自然と全員の意識がそこへ向くような状況であった】


/大変長々とすみません、適当に拾いたいところだけかいつまんでいただければ結構ですので。
/どうもお待たせいたしました。


642 : 名無しさん :2018/08/11(土) 22:02:50 RtxRE75M0
【路地裏――――その深部】
【うだるような、というよりも蒸しあげるような暑さと湿度が満ち満ちていた、地面にたまる薄汚い水たまりは、夕立の気配だけ残して】
【そのくせそれを見上げればビルの明かりによって薄められた星空が敷き詰められていて、ならば、それ以上の雨は予感させない】
【――ならば、ぱちゃん、と、小さな水の音は誰かの足音であるのだろう。そうして誰かが覗き見るのなら、そこにはやはり、人影が一つある】

――――、

【――――透き通るように薄いウィステリア色の髪は肩も撫でぬ長さ、かえって鮮やかさを錯覚するほどに白い肌に、いっとう鮮烈なマゼンタの瞳が映えて】
【真っ白なワンピースは前面にボタンのついたもの、腰のところをリボンでぎゅうと絞って、だから、ふくらと豊かな胸元と、その腰の細さがよく目立つのだろう】
【やはりつくりものみたいに白い脚は惜しげもなくさらけ出されて。その足元はかかとの高くないサンダル。それでも平均よりいくらも高い背をしたなら】
【けれど大人とは思わせないだろう。それは限りなく少女だった。しかして子供とも思わせぬ刹那をきれいに切り出して】
【そのくせに明らかに異質であるのは、こちらも惜しげなくさらけ出した両腕――その左手に、指先までそろえて伸ばしたなら生すら錯覚しそうなほどに、精巧な、蛇の入れ墨】

【――であれば"残党"であるのは間違いがなかった。それどこか報道に目を通していたなら、行方不明/生死不明とされていた幹部であるとすらわかるのかもしれなくて】

……、――。

【――――――そうして、そうだと分かる距離まで近づくのなら、"それ"にも気づくんだろう。その腕に何かを抱き留めていた、だからか、白い服も汚れていた】
【ぬいぐるみ程度の大きさの、何かぐしゃぐしゃした汚らしいもの。だのに腕を服を汚す色は赤色で。かすかに生臭さまでもがあった、だけれどきっと"彼女"ではなく】
【ならば気づくのかもしれない。抱き留めた腕からこぼれてぶらぶら揺れているのはきっと尻尾だった。――おそらくは猫の死骸、少女はそれを抱いていて】

【――特別に悲しげではなくて、ただ楽しげでもなかった。あるいはそれを見止める"誰か"が居たとしたなら、もしもその誰かが知っていたなら】
【向かう先の方角に、ちょっとした空き地――みたいな、場所があって。立ち入り禁止ではあるけれど、子供たちが入って遊ぶような場所がある】
【そこなら埋めてやれると思っているのかもしれなくて――けれど薄藤の髪に紅紫色の瞳。それから鮮やかな蛇の入れ墨は、あんまりに目立つ、特徴だった】

/使いまわしのやつですがっ


643 : ◆9VoJCcNhSw :2018/08/11(土) 23:25:15 wn2rqSVw0
本スレ>>46


プログラムを組んだピアノ・コンサートというものは
『最初からそれを目的とした観客』と『ピアノを生業とするプロ』がいて成り立つものだ。

しかし、私は『プロ』ではない。なにせ、得意なのは作曲の方だからな
そしてなにより、コンサートに於いて最も重要な観客だが
元より私のピアノを聞こうと街へ繰り出した者が、一人でも居ると思うかな?


【居るはずがない。結論付けるその口調は、何処か達観したようなモノ】
【帽子を足したって大した身長でもないような少女だったが】
【やはりその点も普通ではなかった。――そして、〝父〟へと話が及べば】


父君はオメラスの出身ではない。半ばよりその輩となったのだ。
そして私と父君の間に思い出は無い。理由は……フフ、秘密だぞ?

〝A secret makes a woman woman.〟――そういう言葉もあるのだろう?
……だがそうだな、私の父君はとても才覚に溢れた方で、芸術家だ。
幼少より美を愛し、また愛されていた。能力に恵まれ、しかし機会に恵まれなかった。
消して不遇ではなかったが、持て余していた。

――――その折に"遭った"のだと、そう云っていたよ?


【誰に、だろうか。アンドレア、と名乗る少女の言葉には】
【明らかに意図的な情報の欠陥があった。『父の名』『オメラスの話』『出会った相手』】
【これが純真無垢な少女であればともかく、だったが】


先程お伝えしたように、私は〝クリエイター〟……『"想像/創造"』する者。
チラシの千枚や二千枚程度は妙でもなんでもないのだな。
なにせ、そう。妙なのは私の方だから。

……さぁ。野外音楽堂に来るのは、初めてかな。
エスコートしよう、ミセス…――?


【野外音楽堂。簡素なベンチが半円状に広がり、広いとは言えないステージがある】
【ライトはついていた。まばらにだが人が居て――50人弱、だろうか】
【特徴的な少女の姿を覚えていたからだろう、にわかに観衆たちはざわめいた】

【だがそれを気にすることもなく、手を引く彼女の名を尋ねながらステージへ向かう】
【ピアノなど置かれていないその場所までは、あと僅かに30歩の位置だった】


644 : エーリカ ◆zqsKQfmTy2 :2018/08/12(日) 00:33:36 JY1GydDk0
>>636

くっ、ぐおおっ…!?

【一呼吸置いたならば、均衡が破られる。硝子玉を地面へ投げ付けたら割れるのと同じように】
【強烈な力押しにエーリカの体勢が崩されて。蹴り抜く筈だった足ごと後方へと追いやられる】
【それだけに留まらず、体勢を崩し後ろへと倒れ込みかねない展開となる】


――ちッ、抜かったっ!!


【鍔迫り合いに破れ、左手での殴打がエーリカを襲う。隙を晒してしまい、防御に転じる事を余儀なくされて】
【武器を手放し両腕で殴打を防ぐも、防御に使った腕に鈍い痛みが走り、身体は吹き飛ばされそうになる】

【後方へと倒れる前に、バク転する様な要領でくるりと身を翻して地面に手を付いて着地した】
【ずざざっ、と音を伴いながら滑って転びそうになるのを踏み止まった。その動作、まるで軽業師の如く】


(くそっ、折角相手の刃圏の向こう側まで潜り込めたのに――仕切りなおしか)


【分が悪い。権兵衛ほどの猛者相手に機動力の一つでも殺げなかったのは拙い】
【正面きっての戦いは間違いなく相手に軍配が上がる。けれど能力を用いて翻弄するならば未だ勝負になる】


……その上から目線、癇に障るよ。それに命の遣り取りの何が楽しいのさ?
私には全然解らない。命の遣り取りに喜びを見出すなんて狂気の沙汰だろう。

【そう吐き捨てるや否やエーリカは両手に五本のナイフを召還してそれを権兵衛の頭上高くに放り投げ】
【それらは降り頻る雨と共に権兵衛へと降り注ぐ。乱雑に操作している為に、無差別な軌道を描く】


645 : アレクサンデル・タルコフ ◆ZJHYHqfRdU :2018/08/12(日) 01:56:49 IBKicRNQ0
>>534
【赦し。彼女が求めてやまなかったもの。それがために、彼女が赦されなかったものはあまりに多すぎた】
【ならば、今この瞬間。たとえ奇跡の狭間であろうと、彼女が強くあれなかったことを責める道理などあろうものか】
【少なくとも、その点については司祭の思考は真っ当であった。たとえそれが、救いがたい狂気の裏返しであっても】

【言葉に詰まる彼女の、感情が堰を切るのを司祭はただ静かに聞いた。あふれ出す自らの無念に蓋をしながら】


いいえ……いいえ、ムリフェン殿。私の位階などは所詮、職務として許されたものに過ぎません
確かに儀式は破れ、貴女は取り残されてしまったのかもしれない。しかし、貴女の信仰の強さは唯一無二のものです

貴女は儀式の前に立ちふさがった誰かを殺せなかった。確かにそれは、オフィウクスとしては悲しい事実かもしれません
ですが、それでも。貴女は我々を忘れずにいてくださっている

貴女が、それほど恐れた世界から救い出してくれたその〝誰か〟の温もりの中にあって、なお
ウヌクアルハイ様を。オフィウクスを。サーバントたちを。我々を、まだその心の中に置いてくださっている。〝そうなのでしょう?〟


【一見すれば、仲間への信頼。だが、それは脅迫に等しいと言えよう】
【ようやく、冷たい鉄の混じった身体に無限の愛と温もりを宿して、包み込んでくれる相手を見つけた少女に】
【自分たちを、信仰心を、忘れないでいると信じている。臆面もなくそう告げたのだ。その言葉そのものが、絡みつく蛇の如き呪い】
【やっと彼女が手にした、〝誰かが微笑んでくれる世界〟を侵すように】

……正しいことを出来なかったのは、我々全員です。しかしながら、まだやり直せるはずです。「何度でもやり直せる」のです
儀式は、正しい手順に基づいて執行すれば、それが〝何度目〟であろうと必ず、完遂されるのです

【ならばこれが、彼女の求める罰になり得るのだろうか。彼女が個人的感情に乱されたのなら。そのために一人取り残されたのなら】
【何度でもやり直せる。多くの場合、人の希望を示すその言葉が、こうも違うものになるのか】
【司祭は課したのだ。何度でも完遂するまで試み続けよと。己を苛む幼い少女に、己の重責を背負わせるが如き悪行】

ムリフェン殿……貴女が、成すべき職務を。どうか

【潤むマゼンタに、不気味に発光する義眼が合わさる。穏やかに、そして無慈悲に】
【彼女が罰に笑えば、それを課す司祭もまた微笑むのだ。蛇が自らの牙に捕えられ、ゆっくりと毒に侵されていく獲物をそう見るように】

【彼女の左手の蛇に、司祭の光る蛇が接続する。恐怖と喜悦をない交ぜにした彼女の測りがたい感情を前にして】
【司祭もまた、喜びと悲しみが入り混じった表情を見せる。彼女のそれとは違って分かりやすく、職務を引き継げる喜びと、自身がそれを成せなかった悲しみに過ぎなかったのだが】


【――――そうして、彼女の脳裏が彩られる。あの日、マルタを染めた多くの血、それが秘める物語の記憶に】

【蛇教徒たちと、その敵たちが街の至る所で戦う。それぞれの思いと、それぞれの信念を持って】
【されど、彼女の目に映るのはその内面ではなく、ただ事実のみだ。これは記憶の再現に過ぎないのだから】

/続きます


646 : アレクサンデル・タルコフ ◆ZJHYHqfRdU :2018/08/12(日) 01:58:50 IBKicRNQ0
>>534
【ロボットに乗った白衣の女性と、憎むべきパグロームがラサルハグェとの罵りに満ちた応酬の末、彼女を退ける】


【異教の聖女が彼女も知るだろうサーバント、ドープを〝救いだし〟彼は永遠に蛇の下を去った】


【妖艶なる狙撃手、後に虚神の一柱となる女性との死闘の末、サーバントの一人エーリカもまた、偽りの蛇の信徒の姿を捨てた】


【錬金術師と相対するプリオルは、激闘の末に掻き消え、ムリフェンも関わる新たな事件まで雌伏の時を過ごす】


【神域の女剣士と刃を交えたサーバント、チドリ・コジマ。彼女さえも、エーリカ同様に偽りの蛇の皮を脱ぎ捨てて、その場を後にする】


【長く教団に献身してきたツァルエルまでもが、櫻の軍人との戦いに敗北し、その信仰がとうに色あせていたことを吐露する】


【異端審問官、ミサ=ソレムニス。死霊を束ねる女学生と、喋る犬を連れたヒーロー。自らが拷問を受ける覚悟さえ示したミサを看破し、彼らは進んでいった】



【そして、彼女と共にあった者らは。彼ら、彼女らはこの世から落ちて逝った。因果の渦の底へと】


【〝……えでちゃ……〟】
【アルジャーノン。彼女の秘をムリフェンは知っていたのだろうか。その答えが是でも否でも結末は変わらない】

【自身もまた、あまりにも悲痛な運命に翻弄されていく少女は、この時己の意志で戦い、引き金を引いた】
【最期に呟かれたその名が、今この因果の中にいる少女の為のものだと、誰が知り得ただろうか】


【〝そん、な……仏よ、ウヌクアルハイさま……〟〝救済、を……〟】
【ポステリオル。カルトの切込み役として、蛇への信仰以外のあらゆる戒めを破る者として】
【会いはせずとも彼女もその名を知っていただろう男。彼はその名に恥じず、勇敢に戦い、それでも及ばず】

【恐るべき手腕を有する猫の男と、兵器として産み落とされた少女の手で、許容も慈悲もなく滅ぼされた】
【鋭い棘に串刺しにされて。最期に彼が漏らした言葉は、未だ救われぬ彼女にはどう聞こえたのだろう】


【〝バカな……愛などと……!! 私の職務が……そんなものに……!!〟】
【マルフィク。今、眼前にいる男。職務を果たすべき司祭は、それがために手段を選ばず、かつての伝手を頼った】
【それがカルトと敵対すると知らず。あの三つ目の異形に。取引によって手に入れた混沌のキノコは、司祭が職責を全うするまでその身を守るはずだった】

【対するは探偵。赤い目とダーティな空気を纏ったタフな男。司祭と互角以上に渡り合った彼に、司祭は己が禁術をもって対抗する】
【それを、異形の裏切りが破った。菌糸に纏わりつかれる様は、蛇に絡みつかれたように】
【隙だらけの身体に放たれた愛の弾丸は、司祭を内側から焼いた。頼りなく倒れた身体をキノコが包み込む】



【〝……………………おねがい、…………抱き締めて…………――――。〟】
【ああ、そして。あるいはその声こそが、最も悲痛に彼女の中に残るだろうか。サビク。彼女と共にあった少年】
【傲慢さの影に隠れた、年相応の素顔。ありふれた、それでいてあまりにも叶わなかった願いを最期に口にして】
【そんな彼を。汚れ無き純潔であったはずの彼を。その異形どもは蹂躙したのだ。数の暴力。聞くに堪えぬ罵詈雑言。汚らわしき卑劣】

【ピアスだらけの男はサビクが最も忌避する汚れを投げつけた。痩せこけた男は彼の細い首に針を刺した】
【二つ頭の異形どもは、泥と砂を彼に叩きつけた。そして。最も忌むべき三つ目の肉屋が、汚らわしい刃で彼の命を奪い】

【 「おたくの扱うお肉に、金髪碧眼のキレイな子が居るって聞いたんだけど。僕、それがほしいなあ」 】
【「……商談なら、大歓迎だ。いくらでこいつを買ってくれる?」】

【その死さえも踏みにじるように。彼の遺体は、冒涜者に売り払われた】

/続きます


647 : アレクサンデル・タルコフ ◆ZJHYHqfRdU :2018/08/12(日) 01:59:06 IBKicRNQ0
>>534

【その後、大聖堂にて全てが結実し。儀式は終わる。彼女の望みとは程遠い形で】
【後は知っての通り。全ての記憶を再生し終えれば、再び対面に司祭を見るだろう。いつもとは違う、口を引き結び無念に嘆くその顔を】

ムリフェン殿……どうか。どうか、我らの。我らの、無念を……悲願を。どうか……

【語り掛ける声は悲痛に。彼女に絡みつこうとする。彼女の得た温もりを侵そうとする】


【こうして、刻み付けられた記憶は。病室で異形の肉屋に襲われてから、ずっと後になって】
【彼女があの尊い温もりをやっと手に入れた後になって、蘇ることになるだろう。奇しくも、温もりを与えた女性の真名が、彼女の記憶の奥底に眠ったように】

【その瞬間から、彼女は真に禁術を受け継ぎ、それを行使できるようになるだろう。あの懐かしの祭祀場へと、彼女と彼女の敵を誘う力を】
【そこに立つのは四肢のある司祭の幻影。意志のない影だが、それは彼女の命ずるがままに動き、敵対者に襲い掛かる】
【幻影の司祭に捕われれば、その四肢を極限の苦痛と共に消されていく体験を、敵対者へと送るのだ。後に、赤い少女が虚ろな神の一柱にそうされたように】

【司祭はこうして呪いを残した。それが、ただ一人この世に残された蛇の信徒にどう影響していくのか。それは彼女自身にしかわかるまい】


648 : 名無しさん :2018/08/12(日) 02:36:38 z0YEX0VM0
>>644

首を落としてやりたかったが、流石にその隙は無ぇってか

【刀を順手に持ち直すと峯を肩に掛け、したりと微笑む。残念と充足の入り混じった奇妙な面持ち】
【権兵衛の戦に技は無い。……実を言えば“無い事も無い”のだが、切れば勝敗の決するような代物である。必然、温存せざるを得ない】
【ならば誇るは力。手の多さや品揃えではなく真っ向から叩き潰すしかない。却って言うなら“単純な力比べならこちらが負ける道理はない”】

……驕っていると? 今そう言ったかい?
嗚呼その通りだ、驕るともよ! 己も棒振りの端くれ、戦に捧げた人生だ
手前さんも人間なら「譲れない一つ」ってェのがあるんじゃないのかい。己にとっちゃ、こいつがそういう事なのさ

【抜き身の刀を眺めて語る。氷刃には曇天の空から雨粒まで、色んな景色が綺麗に写りこんで】
【その中には当然、此度戦を繰り広げる両者の姿もあった。片面に権兵衛の、もう片面にエーリカの眼差しが反射】
【ここで初めて、権兵衛の声色は熱の入ったものからやや低く落ち着いたものへ。眩いものを見るように眼を細め、続ける】

――戦の中でないとなァんにも感じない。「死」が間際に迫らねぇと、自分が息をしてるのさえ忘レちまう

【雨粒が一つ、視界を過ぎるほどの数瞬。刀を眺める双眸が虚ろに】
【それはつまり――エーリカが“社会的に”死んでいるならば、この剣客は“心が”死んでいた】
【零した言葉に偽りが無いとしたら、生命の遣り取りに限って彼の心臓を動かす余地が残る。讃えるでもなく蔑むでもなく客観的に、彼はそういう“破綻者”だった】

【だがそこまで】
【雨粒が落下すればやはり不適な笑みを浮かべ、エーリカへの追撃に向かう。それを妨げんと雨に混ざって降り注ぐは計五本のナイフ】
【軌道は出鱈目で、だからこそ厄介。さっきのように一刀両断とはいかず、個別に対処する必要がある】
【一本、刀で撃墜。二本、続けて柄で叩き辛うじて落とす。三本、身を翻して回避。四本、蜻蛉を切って紙一重で躱す】
【然し、タイミングもランダムであるが故に僅か見誤った。蜻蛉を切った先に五本目のナイフは飛来】

…………ぐッ!

【躊躇なく左掌を盾に、ナイフを受け止める。半ばまで刺さったナイフは肉と骨に阻まれて停止】
【激痛から僅かに呻き声を漏らすも、被弾によってバランスを崩した状態から何とか切り返して着地。右手に握った柄でナイフの刃を叩くようにして傷口から抜くが、今度は詮を失って大量の血が噴出す】
【痛打と言っても差し支えなかった。耳への負傷もある、だんだん出血量が無視できない領域となってくるだろう。左手で刀が扱い辛くなったのも手痛い】

……ッく、ふっ。手前さんはどうなんだ? 聞くまいと思っちゃいたが気になってきた
さっき随分つまらなさそうな顔だったじゃあないの。今だってそうだ、一体何が気に喰わんのかね?

【ある程度まで接近すると、突如“何か”をエーリカへ蹴飛ばした。――先刻まで権兵衛の使っていた傘だ】
【間髪入れず傘越しに放つは一筋の逆手突き。つまり今しがた放った傘は目晦まし、および刺突の対処を遅らせるためのフェイント】
【手負いながらも攻め手を緩めぬ権兵衛であったが、腹の中では使わなくなって久しい“切り札”の存在を意識し始めていた】


649 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2018/08/12(日) 04:35:42 IBKicRNQ0
>>538
【さしもの異形も、このあまりに大きなインシデントをかみ砕くにはしばしの時間を要した】
【ただでさえ見知った顔が多く参加し、あの婦警までもが関わっている事態。これに近づく勇気は、言われずとも出なかった】

……お前たちのボスは、私の想像の埒外の存在らしいな
過去を改変するとまではいかずとも、私の目には十分な驚異に映るよ……

起こったことが変えられるなら、今回の件もどれほど楽だったろうかね……
そちらの戦死者には、哀悼の意などは必要ないのだろうな? そういう仕事をしているのなら

ああ、今回に関してはお言葉に甘えておこう。無駄なことはなるべく避けたいのは私も同じだ

【後に更なる虚神たちの恐るべきを思い知らされる戦いが起きることまでは知らず】
【この時、異形はただ眼前に示された脅威に目を奪われた】


だろうな。彼奴等に潰された者たちと同じことをやって、解決できるはずもない

ジャ=ロ……ケバルライとも名乗っていたか。マルタで見た時から得体のしれない相手ではあったが
ヤバさに関しては、どれもこれもに当てはまりそうだが、確かにこれはまた……

さあて、少なくともこいつは己の目的を一つ果たしたようだからな。この件に関わるなら、避けては通れないだろう

【自分の知らないところで進んでいく事態。未知こそは恐怖の源泉だ】
【背筋の怖気をパグロームに悟られぬよう努めながら、異形は情報を飲み下していく】


らしいな……このような形でそれを知ることになるとは、何とも奇妙なことだが

ふ、ふ。蛇はしぶとい。忌々しいほどにな
全くだ。どうしようもないよ、狂信というやつは。より良い生を歌いながら、やっていることは愚行でしかない

ああ、肉屋としても許しがたいことだよ。あれでは獣も食えるかどうか
あるべきサイクルから逸れた者は、あれほど歪になるのだな


ふ、ふふ!! なるほど、それはそれで面白そうだ。いつか時間が会ったら、どれだけ派手に暴れたかまた聞かせて欲しいものだな
ああ、どうにも想定外の事態だ……悪巧み以前にいろいろと事態が動き過ぎたな

【思いのほか、綺麗に出した料理を平らげてくれたことに満足げな笑みを浮かべつつ】
【弛緩していく空気に、異形は最後の〝雑談〟を差し込むだろう】

わかった。管理は厳重にしておこう。これ以上、彼奴に利を与えたくはない
無論だとも。それが出来なければ、店をたたまなければならなくなる。せいぜい、上手くやって見せるさ

……さて。返礼になるかはわからないが、最後に土産話を持って行かないかね?

/続きます


650 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2018/08/12(日) 04:36:33 IBKicRNQ0
>>538
【重々しく言うと、異形は振り返って一度店の奥へと消え。少しして、何かを抱えて戻ってきた】
【厳重に封をされたカプセル。貼られたラベルには、彼にも覚えのあるだろう名が記されていた。〝アレクサンデル・タルコフ〟と】

お前のことだ、蛇教の司祭〝マルフィク〟とも恐らくは刃を交えた経験があるだろう?
彼奴の腹の中を見たかね? 内側に菌糸を張り巡らせた……実はあれを売り渡したのは、私なんだ

彼奴とは『泥の街』に居た頃の馴染みでね。蛇教で成り上がっていたとは知らず、敵対の前に売りつけてしまっていた
その損害は、マルタの件でキノコに彼奴を妨害させることで回収してやったのだが。その時、彼奴の死骸から採集したキノコがこれだ

【カプセルをカウンターの上に慎重に置くと、カニバディールはパグロームに向き直る】

これには、司祭の持っていた禁術の力が詰まっている。私はあの女に、ムリフェンにこれを使って彼奴の精神を拷問にかけるつもりでいた
結果は……見てもらったほうが早いな。もし興味と時間があるなら、鑑賞していってくれ

【肉屋は慣れた手つきで、カプセルにコードを繋ぎ、スイッチを入れた。微弱な電流がキノコを刺激し、詰め込まれた記憶を呼び起こす】
【そこからは、キノコが知った真実を。このキノコが力を発揮した現場、すなわり都市マルタと、ムリフェンを収容していた病室での出来事が】
【鮮明な映像となって、肉屋の壁に映し出されることとなる】


【マルタでの戦い。パグロームやカニバディール自身も含めた、死闘の数々。あるいは蛇の下を去り、あるいは敗北しこの世から落ちていく蛇教徒たち】

【続いては、蛇の少女と彼女を愛したある女との秘め事。まだ二人の間柄が今より殺伐としていた時の。病室での語らいとプロポーズ】

【出歯亀気分を味わった後は、かのジャ=ロがムリフェンの下を訪れる瞬間。今よりもっと前に撒かれていた種】
【〝── 信じる者は救われる、貴女に神の加護が、あらん事を〟。ジャ=ロの言葉はどこまでも欺瞞で、同時に狡猾な伏線であった】

【そして、問題の時。異形の肉屋が蛇の姿で訪問し、悪趣味なジョークと共に尋問を始め】
【毟り取って植え付けたキノコが、その力を発揮する。残された司祭の呪いが、因果を逆流させる】
【病室で起きた出来事が、キノコの中に情報として納められた代わりに。ムリフェンの精神の中に、爆弾が仕掛けられる】

【マルフィク。パグロームが彼の中で完成しているとまで称した信仰は、死してなお揺るがず】
【ただ一人生き残り、新たに得た温もりと生きていこうとする少女に、最悪の呪いを植え付けた】
【彼女が新たな生を踏み出す、その時に発動し。無念を訴える司祭が、彼女に己の禁術を授けたのだ】


――――アレクサンデルの奴にしてやられたよ。奪うつもりが、くれてやってしまった

【自嘲を顔に浮かべながら、肉屋はそう言った】


651 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/12(日) 09:54:17 smh2z7gk0
>>642

【―――コッっという音と共に、少女の背後に人の気配が現れるだろう。現れる瞬間までは一切の気配はなかった】
【それは、白い外套を頭までスッポリと被っていた。外套からはみ出たミントグリーンのおさげがユラユラと揺れている。】
【じ。と銀色の瞳は目の前の少女を見つめる。それの背は蛇の刺青の少女と同等かそれ以下のものである。】
【それは少女に歩み寄る。ガチャガチャと外套の中で金属のぶつかる音がする。】

―――埋葬したいのか?それならば着いてくるといい。

【特に親し気でもなく、けれど突き放すわけでもなく、刺青に言及するわけでもなく。】
【それは淡々と端的に声をかけると、そのまま少女の脇を通って件の広場へと案内しようとするだろう】
【―――、着いていくのも着いていかないも自由だ。〝それ以外〟を行おうとも―――自由だ。】


652 : @mail ◆DqFTH.xnGs :2018/08/12(日) 10:22:56 FfY6ngRQ0
>>643
【なるほど、と彼女は頷いた。確かにこういう形式でのコンサートであれば】
【アンドレアの言うことは尤もだと思えた。──(評価してほしい、か…………)】
【(…………あるいは、“聴かせる”ために自分が出向いたか。“OMERAS”…………ん、)考えすぎとも思えなかった】
【父親とのエピソードがないというのも、また妙な話だったが──違和感ではなく不信を覚えるほどに】
【アンドレアの話ぶりには妙な点が多すぎた。だからこそ彼女は、アンドレアに着いていったのだが】


“遭った”ってぇのはまた妙な言い回しだな、アンドレア?
まるで幽霊とか宇宙人とかにでも出くわしたかのような言い方じゃねぇか

ンにしても……そうか、クリエイターっつぅのは──ははん、なるほど
だいぶあんたのカラクリが見えてきたぜ?チラシの件はそれで納得だ
いきなりふらっと野外でピアノコンサートが出来る理由もな

あぁ、…………ミセス?ミセス…………ん────


【名を問われてから答えるまでに、僅かに時間が空いた。本名を名乗るのは躊躇われた】
【オリジナルの偽名の類は持ち合わせていない。本名以外を名乗る時は、誰かの姿を借りている時だったから】
【咄嗟に考える。本名ではない名前。初瀬──婦警が関わっていれば厄介だ。一瞬でバレる】
【白神もそういった意味じゃ使えない。曽根上なんて論外すぎる】
【デュポ────…………いや、絶対ダメだ。何より恥ずかさで耐えらんねぇ。早く答えねぇと──】


      ────…………ミフネ


【繋がれていない方の手で、密かに携帯端末を弄る。メール作成なんて、この数ヶ月で飽きるほどやった】
【短い文面なら、画面を見ずに作り上げることだって可能だった】

  【『アンドレア。黒い軍帽、マントに手袋、銀の目。少女。ピアノ、コンサート』】
  【『“クリエイター”、創り出す能力?創造する者と。オメラスと関係か』】

【キーワードだけ打ち込まれた簡素な文面だった。宛先は──“M”に送ろうとして、やめる】
【行方不明の鈴音と夕月。彼女たちに送っても意味をなさないし、余計な人間に情報を知られる危険があった】
【考えた末、宛先ボックスに入れたアドレスは3つ。知る必要のあるやつだけが知ればいい、だったか】

【宛先:ジルベール・デュポン。カニバディール。ロッソ】
【──送信。薬指の指輪が、赤い煌めきを電子の海に流す】
【30歩分の距離は、数行のメールで消費された。客席に、と言われれば】
【そのまま手頃なベンチに腰を下ろすのだろう。耳栓持って来ればよかった、と思い苦笑い】


653 : 名無しさん :2018/08/12(日) 16:00:57 ExKbu4l.0
>>593

【男は手を軽くひらりと動かしてそれを挨拶代わりに席を立った。片手を無造作にポケットに突っ込んで】

そんなメニューあんのか。知らねぇなあんま良く見ないから…
……また安く、買われたもんだ。まあ、やるだけやってんだよ。…ずっとな

【投げられた硬貨に身じろぎ一つしない。まるで何処に収まるか読めていたように。彼は視えていた】
【だが、それでも見えない物が多すぎるそして…此処から先は】

さあ、もう一度始めよう。

【車を見届けもせず歩き始めた。また歩き始めるんだ】

/短いですがこれにて!!お疲れ様でした!!


654 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/12(日) 16:12:59 o6XMS57s0
>>627

【直線軌道に放たれた空気弾に対して ──── 女は再度、軽く身をよじる事で躱そうとした、が】
【急角度の方向転換までは読み切っていなかったらしい。小銃を握る片腕を強かに打ち付け、取り落としかけるも】
【然して張り付いた笑顔は変わらなかった。 ─── それでも多少なりは効いたらしい。ごく本心から感嘆していた。】
【動体視力と反射神経、そして"殺気"を読む遣り取りに慣れているのは違いない。されど裏を返せば、それ以外は生身の人間に過ぎぬということ、だろうか。】


「 ───……… へェ、こいつ曲がりもするんですか。芸が細かいなァ」


【薄い唇が言葉を紡ぐ。 酷暑の大気は吹き抜ける痛烈な向い風と双鋒の怜悧な輝きに掻き消されていた。人殺しの気配であった。】
【ごく奇妙な構えをしていた。 ─── 右手に太刀を、左手に着剣された小銃を、それぞれに握る二刀流。】
【この路線に関する多少の知識があれば、当分はトンネルと縁のない直線陸橋を走り続ける事が察せられる。而るに、】
【生き残るには斬り結ばなければならない。一対一で、この女と?  ──── そんなことはない。】

【 ──── 背後から銃声。されど少女には何も当たらない。女の脚元を掠める。威嚇射撃であった。それを見抜いていたらしい】
【振り向けば、 ─── 先程見た、銀髪の女が立っている。少女の側に駆け寄って、投げて寄越すはボストンバッグ。少女の持っていたもの。】


「 ─── と。」「よかった、 ──── まだ生きてるわね。」
「使いなさい。貴女の荷物でしょう?」「 ……… 尻拭いくらいはしてあげるわ。」


【和装の女は特に驚いた様子もない。笑っている。最初からこうする腹積もりだったらしい。「あんまり待たせないで欲しいんですけどねェ」】
【銀髪の女は名乗りもしない。ともあれ屋根の幅は、何とか2人が共闘するのに足りる長さである。「 ─── まあ、死なないことね。」】


/めっちゃお待たせしてごめんなさい、、、お返事はいつでも!


655 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/12(日) 18:53:07 WMHqDivw0
【氷の国:廃墟街:廃教会――――地下】
【……この場所、すっかり割れてしまった。どっかに拠点を移し替えるべきかなあ】
【「冒涜者」はそう思考する。けれど結局そうはしないんだろう――だってここは、】
【■■■■から■までずっと■■■てきた場所だったから。そう簡単には捨てられない、捨てたくない】

【――――そういう感情の話は置いておいて。冒涜者と、その被造物たる赤髪の少女、それと】
【あとひとり、「お客様」がその場所に辿り着いたなら。この場の主たる冒涜者、低身痩躯の女は言う】
【「…………治療は必要?」 ……客である「ミレーユ」の状態を見て、率直に、そう口にしたのだった】

【是非と言われたんなら普通にしてやる。間違っても「冒涜的」なやり方で悪戯したりはしないだろうし】
【要らないって言われたら。……溜息交じりに、治療器具を一通り持ってきてやって。だったら自分でやれと言う】
【その程度には、彼/彼女の怪我の状態を心配していたのだった。どちらにせよ、そうこうしている間に】
【銀髪褐色、黄色い瞳の青年がひょっこり何処からか現れて。赤髪の少女を抱きかかえて連れてゆく――】
【――――「心配しなくても。ベッドに寝かせに行ってやるだけだよ」と言って。言葉の通りに彼女を寝かせに行って】

【――――――少女は丸一日と、あと半日くらいは泥のように眠り続ける。その間、ミレーユは「客間」に案内されるか】
【それか――少女のそばに居たいと申し出るなら。青年が少女の寝室まで案内して、それから椅子と毛布でも持ってくるだろう】
【……彼女のベッドの横に置かれたサイドテーブルには、いろんなものが置いてあった。主にアクセサリーのたぐい】
【銀の鈴を通した、黒いリボンのチョーカー。赤色の魔石のついた指輪。薄桃色に輝く結晶――これはつい最近貰ったもの、そして】

【年季の入り方を伺わせる、しかし手入れの行き届いた銀のネックレス。……彼女が選ぶにしては、上品すぎるデザインで】
【ならばこれは誰かからの貰い物であって、それを相当大事にしていることだけが、わかるだろう。……本当に、それだけ】


………………………………………………、


【落とされ続けていた瞼、縁取る赤いまつげが震えて、目覚めを示すとき。ミレーユは思い出すだろうか、冒涜者の忠言】
【「まだ、『恐怖』と『諦念』の呪いは解けてないからね。……気を付けて接して。それで、出来るんなら――解いてやってよ」】
【言って、……冒涜者も、黄色い瞳の青年も。少女と彼/彼女の邪魔をしないため、何処かへ行っていた。完全にふたりきり、密室】


//予約のやつです……。


656 : 名無しさん :2018/08/12(日) 19:22:09 lHOWPiyk0
>>651

【――――コツ、とした足音に。少女はふっと足を止めるのだろう、そうして振り返るんだろう。睨んではいなかった、けれど、表情はごく薄い】
【そうして相手の姿を確かめるんだろう、信頼していない目つきだった。上から下まで――といっても、さすがにそこまで不躾ではないのだけれど】
【白い外套――その中に一目でわかるような得物のシルエットでもあればもういくらか冷たい目をするのだろう。銀色の瞳を見やる紅紫色は、こちらも曖昧な距離感】
【金属の音には気付いているんだろう。けれど明確に得物でさえなければいいらしかった。あるいはそうだったとしても、いきなり攻撃されぬのであれば、良いらしい】

……――そうですね。何かに啄まれても可哀想なので。

【ゆえにやはり敵対的ではないのだろう。おそらくはお互いに。だから少女は狭い道で相手に先を行くことを許す、わずかに身体を動かして】
【すれ違うならやはり一瞬腐敗臭に変わりつつある生臭さを感じるのだろうか。それほどの距離で見やることがあれば、"それ"はやはり――その亡骸であり】
【立ち止まったことでぶらりと垂れた尻尾に気づいたのか、大した感慨もなしにその尾っぽも腕の中に抱き留めたなら、胸元に新たな血の跡がつく】

綺麗なんです。どこもなくなっていなくて。

【――そうして歩み出すなら、どこかのタイミングで少女はそんな風に呟くのだろう。話しかけたにしては冷ややかな温度だった、独り言に似て】
【だけれどすれ違いざまでも確認していたなら、到底綺麗とは言い難い状態だった。――であればそう思った理由はどこも欠損していない、すなわち食われてもいない】
【ゆえに遠回しではあるが人間に殺された子だと言っているのだと思わせた。たとえそうだとしても、怒るでも批難がましいでも、なかったのは確かだけれど】


657 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/12(日) 20:59:54 smh2z7gk0
>>654

(―――ッチ、浅いか。)
(見た感じ①と③を合わせたようなものか、単純に高い技量によるモノ。一番厄介だな)

そいつはどーも、そちらもまるで動物みたいな感性をお持ちのようで。

【内心舌打ちをしながらも作り笑い、減らず口だけはなくならない。自分自身を奮い立たせるかのように】
【そして二つの本来同時に使用しない得物を構える相手を前に呼吸を整え態勢を整える。アロハシャツは強風に煽られてバタバタと揺れている。】
【そこに響くのは一発の銃声、咄嗟にコニーは振り返る。先程の銀髪の女性が自分のボストンバックを投げ渡してくる。】
【顔に浮かぶのは困惑と驚きが混じったような表情、そのあとどこか不満そうな顔。】

―――まぁ、ギリギリね。
荷物どーも、あとさっきは悪かったね状況が整理しきれていなくてさー。こんな事なら〝クロセル〟持ってくればよかった。

一旦は目的が同じって事なのかな?てか〝アイツ〟がなんだか知ってる?

【荷物の例と、それを相手にぶつけた謝罪をするが表情は拗ねた子供のようだった。】
【ともあれ敵意はない。それだけ目の前の刺客が恐ろしいと思っているのだろうし、銀髪の女性をある程度信用したようにも見える】
【相手が名乗らないのでこちらも名乗らず「アタシが前に出る」と一歩足を踏み出す。】

どおおおおおおおぉぉぉりゃッ!

【そして受け取ったボストンバックの中から、50cmほどの黒いスタンバトンを二本取り出すとバックを脇に投げる。】
【両手にスタンバトンを構えると和装の女目掛けて駆け出し、跳躍。何もない虚空へとドロップキックを放つだろう。】
【ドンッ!という音と共に放たれるのは〝空気の壁〟。先程の〝空気の弾丸〟ではなく人一人分ほどの〝面〟が和装の女へと迫るだろう。】
【ただこれは相手の動きを止めるためのものに過ぎない。コニーはすぐさま着地するともう一度駆け出し右手のスタンロッドを相手の右肩へと叩きつけようとするだろう】
【電流を帯びたそれはまともに受ければ昏倒する可能性もあるし、武器越しに受けてもある程度の電流は喰らうかもしれなかった。】


658 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/12(日) 21:16:41 smh2z7gk0
>>656

そうだな。このような場所では感染病の温床にもなりかねない。
―――だからあまり色々と触らぬ方が善い。後々後悔する羽目になるぞ。

【通り過ぎる際、外套の内側が少し目に入るだろう。中には儀礼用のの短剣が何本か刺さっている】
【あくまで儀礼用、殺傷を目的としたものではないようだった。ただ刃物は刃物である使い方次第だ。】
【生臭さに顔をしかめる事はないが、横目で尻尾を腕に収める少女を見て淡々とした口調で忠告する。】
【言った後に余計なことを口走ったと思ったのか、少し口を開いたままにした後歩みを早める】

弱きものは自身より明確な弱きものを見た時全てを支配できると思う。実際はそんな事はないがな。
支配できると思ったらどこまでも残酷になれる。確かにある意味でもその子は〝綺麗〟だな。

―――しかし、〝意外〟だな。

【独り言のように放たれた言葉に独り言のよう言葉を紡いで返す。二人のそれは会話と呼ぶには足りないものが多すぎた。】
【そして白い外套のソレは少女の刺青をじっと見ながら若干強めの言葉で「意外」と口にする。】
【それは刺青の少女の身分を考えれば確かにそうだった。このような場所にいるのも、その行動も。】
【少なくとも刺青の少女の内面の深い部分や素性を知らない外套のソレからしてみればだが。】

【―――妙な空気になったところで広場に到着するだろう。幸い今は誰もいないようだった。黄色いKEEP OUTと書かれたテープが揺れている】


659 : 名無しさん :2018/08/12(日) 21:52:44 lHOWPiyk0
>>658

感染症で私は殺せませんよ。……そうですね、簡単に言うのなら、怖くないです。
恐ろしくないのですから――後悔することも、ないでしょう。ただ、まあ、この服くらいは処分しないと駄目でしょうが――。

【――こしゃこしゃの毛並み。野良猫だったのだろう、元はきっとテ・オレ色の毛並みは、路地裏の泥や雨に塗りつけられた色をして、もとより汚い】
【ましてそれに自身の血までもがこびりついてすでにどす黒く変貌っているなら。それはやはり誰もが忌避すべきやまいの源に相違なかった、けれど少女は臆さない】
【理由を述べるならその言葉通りなんだろう。感染症などおそるるに足らず、と。それがそんな自信であるのかは不明瞭だけれども】

【考えようによっては――まったく無謀でもないんだろう。だってどうあれ世界を賑わせたカルト団体の幹部であるのだ、並の少女であるはずは、ない】

――くだらない行いです。私たちが信ずるのは蛇ですが、動物は時として人間なんかよりもよほど恐ろしい。
意外……ですか? 蛇を信じていたら猫を埋めてはいけないという道理でもあるのでしょうか。――――それとも、

――――サーペント・カルト。そのような集団に属するような人間が、何人もの人間を"殺して"きたような私が。
道端で死んでいる猫を憐れみ埋めてやろうと思うことが、意外だとおっしゃるのでしょうか? であれば心外です、動物は好きですよ。昔犬だって飼ってました。

【冷たげな声。無感動に似て、けれど決してそうではない。だからってどんな感情を宿しているのかは一見ひどく分かりづらく、そうしてまた、不明瞭が過ぎた】
【おそらく彼女自身でさえ分かっていないように思わすのかもしれない、――"あれ"かれ一月以上は経っている。そして"そこ"から一月以上、彼女は静かに過ごしすぎていた】
【世間に大々的に発見されることもなく。暗躍の最中かと疑るのに、死した猫を抱く温度はあんまりに生ぬるく。開けた場に出るなら、短い髪がざあっと揺らいで、】

【――きっとひどく自嘲めく声が続くのだ。確かめるのならあるいは繊月よりも冥い笑みを見つけ出すのかもしれない、そのくせに、言葉の選択は意図的すぎた】
【分かっていてありふれた人間が言いそうな言葉を選んでいる。向ける瞳はいっとう鮮やかな紅玉みたいな色をしたまま、けれど、ひどく褪めきって】

【――――――広場、というよりは空き地であった。昔何かを建てようとしたけれど頓挫したらしい。今では誰の土地であるのかさえはっきりとしない】
【幸いにも土はたくさんあった。こんな場所ならもしかしたら人間も四人くらいは埋まっていたとしておかしくなさそうだった。――だから、】

――何か。ないですか? こう、地面を抉れそうなもの。金属とかで出来てて……そうですね、持ち手がいい感じのやつとか。

【――あるいは意外という言葉に対しての仕返しであるのかもしれなかった。儀礼用の短剣を、――シャベルとして用いろ、だなんて、言っているに、違いなくて】
【であればひどく物怖じしない性質なのかもしれない、――ともすれば失礼も飛び越えて、その場に相手が攻撃の意思を表したとして、おかしくない一言であるのなら?】


660 : ◆9VoJCcNhSw :2018/08/12(日) 21:56:00 wn2rqSVw0
>>652


さて、――私はそこまで言ったつもりはないのだが。
幽霊や宇宙人以外にも、様々な者がこの世界には存在する。そうだろう?
……貴方にも、〝遭った〟経験くらいはあるのでは?ミセス・ミフネ――?


【襟を立てたマントのせいで、目元以外の顔は見えないが】
【見えたとすれば、恐らくはおかしげに笑っているのだろう】

【そういう言葉遊びをしていた。だが、或いは何かを知っていて敢えてそう演じているのか】
【そんな思わせぶりな行動が多すぎて、判別するだけで苦労する】
【しかし、知ってか知らずか。少女は「ミフネ」を最前列の席へ案内すると】

【メールを送っているのには気付いていないのか、静かに壇上へ向かい】



【少女は恭しく一礼をする。その間も軍帽は脱がず、片手で抑えたままだった】
【挨拶。淡々と、しかし澄んだよく通る声で前口上を述べていく】


【――着席。なかったはずの椅子と、そしてグランド・ピアノがそこにあった】
【鍵盤を弾く。音を確かめるのではなく、そのまま一曲弾き始める】
【真夏の夜であったが、その曲は温かく柔らかで、春日の差す窓辺を自然と思わせる演奏で】
【たっぷり7分掛けて、まずその曲――『二つのアラベスク 第1番』を引き上げて】


 【From:ジルベール・デュボン】
 【To:ミラ・クラァケ】
 【件名:(入力されていません)】
 【『今何処だ?そのガキ、この間ブラスフェミアの事を襲った奴だ。』】
 【 機関車だの旅客機だのを路地裏にぶっ込んでくるような奴だと聞いてる。』】
 【 前の六罪王、ダグラスって奴に能力が似てるって話だが』】


――さて、聴衆諸兄。改めて、今宵は私のコンサートへようこそ。
日頃ピアノの音に触れる機会はあるかな。コンサートへ行く習慣は?
無いのなら結構、今宵私が芸術の豊かさというものを、その一端をお教えしよう。

さあ、ではチラシを裏返して…――リクエストの例が、そこにある。
なにか引いて欲しい曲はあるかな。……あぁ、ミセス・ミフネ。携帯は電源を切ってくれるかな。


【少女は二曲目の注文を取り始めた。自分はそこそこ弾ける、と示してからの二曲目】
【チラシの裏には、なるほど確かに幾つかの名曲がその名を並べていて】
【一番下には『雰囲気での演奏依頼も可能』と書いてあった。即興も出来る、のだろう】

【最初は、皆戸惑っているのか――或いは恥ずかしいのか、誰も手を挙げず】
【故に、もしこれを弾いてみろ、と注文をつければそれが採用されることだろう】
【そうでなければやがて誰かが別な注文をつけるのみ、だったが】

【――言葉の最後に、メールの受信音なり、バイブなりに気付いたのか、注意を一度して】
【その直後にもう一度だけ携帯が震えるだろう。見るか見ないかは、彼女次第だったが】


 【From:ジルベール・デュボン】
 【To:ミラ・クラァケ】
 【件名:(入力されていません)】
 【『お前まさか、コンサートとかいうのに参加してないだろうな?』】


【ザ、ザ――と。一瞬だけ、静かで清らかなこの空間の空気が、揺らいだ気がした】


661 : エーリカ ◆zqsKQfmTy2 :2018/08/12(日) 22:29:27 JY1GydDk0
>>648

「死」と隣り合わせじゃないと生を実感できない不感症め。
そう言う人種は長生き出来ない。……いいや元より長生きなど望んじゃない、か。

「死」に触れなきゃ呼吸してるかどうか解らないなら、とっとと死んじまえ。
死んでるように生きてる奴には丁度良いだろ。この――破綻者め。

【無差別に降り注いだ刃の一つ。それが権兵衛にとって無視出来ない痛手を負わせた】
【ダメージレースという観点で見れば、自身の方が圧倒的に有利。である筈なのに】
【エーリカの胸中は穏やかではない。ささくれた表情以上に荒んで、荒ぶっていた】

【"何故切り合いを、殺し合いを楽しめる?そして何故笑う――不愉快だ"】
【荒む心の理由――「死」と隣り合わせる愉しみと喜びが己が内に在る事を否定したかったから】
【在るべき本当――「死」に触れる事で昏い喜びを見出しソレを良しとする自分を認めたくないから】

【故にエーリカは権兵衛を否定するしか無いのだ。それを受け入れたが最期】
【目を背けていた過去を直視せざるを得なくなるから。今までの自分を壊す事になるから】

何が気に食わないかって?そりゃ単純明快。アンタの存在そのものが気に喰わない。
この言葉が嘘だと思うなら――無理くり組み伏せて聞き出すんだねッ!

【問いに対する答えは嘘では無い。だが"本当"には触れていない】
【権兵衛はその不自然を察する事が出来るかも知れない――本音と表情がチグハグなエーリカを】
【その問いに答える間に、両者は再び距離を詰めていく。その過程でエーリカの視界は傘で遮られる】

……ッッ!!随分とコスい手を使うじゃないか。
戦場には卑怯なんて言葉が無いって知っての事かい?なら――その姑息ごと切り捨てて…ッ!?

【遮られる視界。傘にて隠匿されるのは、権兵衛の刺突。目晦ましによってエーリカの対処は一手遅れて】
【"拙いッ!"と本能が叫んだ頃には遅かった。権兵衛の逆手突きがエーリカの脇腹を貫いていた】

ぐふッ……!!―――ぐっ、ぁああああああああッッッ!!!

【苦悶の表情に歪むエーリカ。じわっと腹部から血が滲んで。更に口からは吐血していて】
【自身を苛む痛みに慟哭めいた叫びを響かせながら。それでも後退はしない――地獄の淵を綱渡る】
【刀の刺さった箇所に力を込めながら、左手にマチェットを召還してそれを力任せに横薙ぎに振るう】
【鍔迫り合いの時と似たような距離感。であるならば、この刃は届く。――エーリカの昏い笑みはそう確信していた】


662 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/12(日) 22:35:39 smh2z7gk0
>>659

成程。確かにそうだな、浮世を逸脱した者にはいらぬ世話だったようだ。
確かに動物達の無垢さは時に脅威となる。だがそれだけだ、ただの脅威に過ぎない。
―――人という種の業、欲、感情………それらより生まれるモノに比べれば可愛げのあるものだよ。

嗚呼、そう言っている。悪童が時折見せる気まぐれな優しさのようだとな。
ただまぁ―――本質的に道理を外れた者はそうした矛盾を持った存在である事が多いのも確かだな。

【「私も動物は好きだ」とコンクリートのように無機質な表情で同調する。今宵初めてかもしれない。】
【自嘲気味に笑う刺青の少女、〝サーペントカルト〟という所属が確定した少女。外套のソレは目を細めながら見つめる。】
【同情か、憐憫か、嘲りか―――ソレの感情もまたおぼろげだった。】

―――。埋葬用なら私の手で十分だ。

【刺青の少女の言葉に一拍だけ間を空けた後、丁度よさそうな場所に跪いてなんとそのまま手を使って穴を掘り始めた。】
【これから何をするにもまずは弔いを、という事だろうか。それにしても急だった。白い外套が土で汚れていく。】
【それはまるで動物のようにも見える、そんな手際。そして刺青の少女には無防備な背中が晒されるだろう。】


663 : ◆DqFTH.xnGs :2018/08/12(日) 22:43:09 J.BniiiQ0
>>660

【「ロボットの友達はいるぜ」──冗談のようにそう答えた。それで問答は終わり】
【アンドレアへの得体の知れなさをひしひしと感じながら、客席最前列へと陣取った】
【直後。ブ、と携帯が騒ぐ。返信早すぎだろ、と思うが──少しありがたかったのも事実だ】


  【『襲った?んじゃオメラスってぇのは伊達や酔狂じゃなく、あたしらの知るオメラスってぇことかな』】
  【『今は街外れの野外音楽堂。お嬢ちゃん、ご機嫌でなんか曲弾いてやがる』】
  【『なんつったかな。この曲、聞き覚えはあるんだがよ。…………で』】
  【『こいつ、案外ダグラスのガキかもな。父君は芸術家で、何かに“遭って”オメロスに行ったんだと』】
  【『能力が遺伝するかは知らねーが。もしそうなら、黒幕には六罪王2人か。やべぇな』】


あぁ、悪ぃ悪ぃ…………ダチからのメールってよ、なんかタイミング悪ぃよな
せっかくのコンサートなのに邪魔しちまってすまねぇな

お詫びと言っちゃなんだが────リクエスト、いいか?
聞き覚えのある曲っつぅのもコンサートらしくていいんだが…………どっちかってぇとあんたの曲が聴きてぇ
あんた自身を、っつぅのも…………なんだ。音楽に関しちゃ素人でよ。どう言っていいかわかんねぇんだ
なんだぁ、その。あんたっぽい曲を弾いてもらう、っつぅのは──出来るか、アンドレア?


  【  『何かあったら、頼むわ』  】


【最後に送られてきたメッセージを見て、短い文面を追加する。それらを纏めて返信した後は】
【電源ボタンを数秒押す。──メールも電話も、これで届かない状態になる】
【録音なんかも考えはしたが…………もしそれがバレて飛行機を落とされでもしたらたまったものじゃない】
【こういう時に大事なのは2つだった。ひとつ、相手のルールに従うこと。ひとつ、味方を信じること】


664 : ◆DqFTH.xnGs :2018/08/12(日) 22:44:30 J.BniiiQ0
>>639-641

【────た、たん。トイレにしっかりと鍵をかけ、くらくらする頭で彼女はメールを打っていた】
【送り先はジルベール・デュポン。メールを送るのは、状況報告と保険を兼ねていた】


『よぉ。今、円城ってやつの家に来てる。豪華なマンションって感じだ』
『転移かなんかで来たから、場所まではよく分かんねぇけどよ。んで、ちょっと気になることが』

『街の連中、多分一部だとは思うが様子がおかしくなってやがる。死んでねぇゾンビ、って感じだ』
『加減なしの殴り合い。ボコボコなんてもんじゃねぇ。殴った方の手から骨が出てやがったりとかよ』
『おまけに、目の前でそんな殺し合いが起きても一般市民が平然としてやがる』
『ちらりとも見ずにな。写真撮る野次馬とかもいやしねぇ。特区とはまた違ったおかしさだったぜ』

『そんで、どうにも円城のツレがこの異変の原因っぽくてよ。これから話を聞きに行く』
『円城は櫻っぽい格好に黒い帽子。ツレの方は吸血鬼っぽい根暗そうな感じだ』
『黒いマントにうねうねの髪。こいつの詩とやらが街の連中をおかしくさせたっぽいぜ』
『ただ、曽根上とは敵対してるっぽいから黒幕一派ってぇわけじゃなさそうだ』
『おかしくなった街の連中が曽根上のことタコ殴りにしてたのも……ちょっと気になるし』
『そのあたりのことも聞いとかないとな。今はここまで。愛してるぜ』


【最後の1節を書いては消し、消しては書いてを繰り返し──結局そのまま、送信ボタンを押す】

【転移術による転移に多少の体制があって助かった。もしこれが初めてなら、間違いなく】
【玄関でへばっている彼と同じ醜態を晒すことになっていただろう。…………尤も】
【青年を差し置いてこのトイレに来る際。思いきりフラついた挙句、ヘタリ込む青年を】
【割としっかり蹴っ飛ばしてしまったのは────あれはきっと、悲しい事故だった】

/ディバイディング・タコさん発動です↓


665 : ◆DqFTH.xnGs :2018/08/12(日) 22:45:28 J.BniiiQ0
>>639-641

(いやしかし────曽根上が来たのはマジでビビったぜ)
(墨が多少効いて助かった、っつうか…………伊達メガネかな、ありゃ)


【顔を洗い、姿を亜人からヒト型に戻す。酷い夜だ。まだ日付すら変わっていないというのに】
【トイレを出てリビングに向かうまでの間に、さっきまでの出来事を振り返る】
【曽根上は生きているだろうか。最後に見えたのは、歪に曲がった腕だった】
【足元に目を落とす。赤い靴下を履いた自分の足。──生きているだろうな、と自答する】
【死体を確認するまでは安心するな。映画の中のセオリーを現実に持ち出すことになるなんて】
【は、と苦々しい笑みが溢れるが、強ち間違いとも思えなかった】


(それにしても…………なんつぅ家だよ。蕁麻疹出そうだぜ)


【リビングに入ってからは、呆れたように家具を見ていた。普段住んでいるところは裏カジノの】
【それも仮眠室のような場所。そこと比べればあまりに住む世界が違いすぎて】
【すごいとかいう感想が出る前に呆れてしまう。「どーも」と一言加えてボトルの水を数口飲んだ後は】
【窓の外に視線を移す。なんとか、ブリッジだったか。冬になると毎年毎年テレビや雑誌が】
【喧しいほどに特集しているのは覚えている。(水の国にはまだいる、ってことか…………)】
【適当な光のちらつきを追いかけながら、ふっと肩の力を抜いた。しばしの休息というやつだ】


……………………、………………んで、よ。あんたら、結局なんなんだ?
円卓か────それ以外か。どっちにしろ、黒幕の敵ってぇ感じはするけどよ

あー…………あぁ、おう。そんなに注目すんなって。赤くなっちまうだろ
あたしのことはまぁ…………ミラとか、クラァケさんとか、好きなように呼べばいい


【──数分の沈黙の後、ミラはようやく口を開く。意識を向けられれば困ったように笑った】
【聞きたいことは色々とあったが、最初に出てきた問いは随分と抽象的なもの】
【それほどまでに、彼らのことがよく分かっていなかったのだ。ちなみに】
【首を絞めたり蹴躓いたことへの謝罪はなし。忘れているのか、悪いとも思っていないのか】


666 : 名無しさん :2018/08/12(日) 22:54:20 lHOWPiyk0
>>662

【ざあと吹いた風が少女の薄藤色を靡かす。一瞬表情が隠されて、だけれど、いっとう鮮やかな瞳は、髪越しですら鮮烈に映えていて】
【それでもやはり敵意ではなかった。ひどく曖昧な色をしていた。であればどこかで絶望の色にすら似ているのかもしれない、――少なくとも、元気溌剌ではない】

――――――あれ、冗談だったんですけど。

失礼な方ですね。私たちの行為は単なる殺人行為に非ず、――いっしょくたにされて快いはずもなくて。
彼らは私たちよりも"先に"、ウヌクアルハイ様と一つになる権利を得た、――選ばれた方々ですよ、まあ、この世では死するかもしれませんが――。
その向こう側にてウヌクアルハイ様と共に永劫を過ごすの、……。――それはとても素晴らしいこと、なんですよ?

【ゆえにこそ薄ぺらい笑みでしゃべるのだろう。少女はあっさりと冗談だったと翻す、そうして相手を非難する、――肯定されたことが深いである、ようでありながら】
【けれど迷子の幼子が必死に教わったはずの道を繰り返しているみたいな温度感でもまたあるのだろう。だからひどく曖昧な顔をしていた、――どこか泣いてしまいそうな】
【相手もまた把握しているだろう。少女が"残党"である意味。ならばその時に死んでしまいたかったのかもしれない。――とまでは、辿らせない。今はまだ】

……ワンちゃんみたいですね。せっかくの真っ白い布が、泣いてますよ?

【――鮮やかな瞳がわずかに丸くなる。それから小さな吐息。ふっと笑うような余韻だけを感じさせたなら、少女は相手へそんな声でも、投げかけるんだろうか】
【スズランめいた甘やかで涼やかな声――そうしながら数歩を歩く。自分の真っ白い服が腐りかけの血で汚れているのは気にしていないみたいだった、だから、すぐ横へ立って】
【すとん――としゃがみ込むのだろう。膝のところに死骸を、零れ落ちてしまわないように乗せてやって。蛇の刻まれた左手で、そうと支えてやって】
【生臭く腐臭のする血にまみれた手を少女もまた伸ばすんだろう、――相手の真似をするにはずうっとお淑やかだったが。彼女もまた素手にて、地面を抉ろうとする】


667 : 名無しさん :2018/08/12(日) 22:57:15 lHOWPiyk0
>>645-647

【彼の言葉は少女の引け目と哀しみとをひどく優しく抱き留めるようでいて、そうして、ひどく無慈悲に締めあげるのにも、きっと似ていた】
【誰かを殺せなかった。それどころか。その人間に微笑まれたかった。けれどその温かさの中で――それでも蛇を忘れていないのでしょう、と、】
【そんなのは当たり前だった。忘れるはずがなかった。忘れられるはずなかった。だから、だから泣きじゃくりながら頑張ってきた――というのは未来のお話】

【だってそれを彼女が"思い出す"のは未来のお話なんだから、未来のことを記すのが、きっと、正しくって】

【――ある日に少女はふっと違和感を覚える。"忘れたことを覚えている"ブラックボックスじみた記憶の他に、どこかで、忘れたことさえ忘れている記憶がある】
【そうとしか言えない状態に気づく。忘れたことを覚えている記憶、――意味も手繰れぬ単語を鍵に思い出せと過去の自分に言いつけられている記憶だけでは、理解出きぬほど】
【能力の容量を喰っている領域があった。そうやって気づき発見するまでにも数日ほどの時間を要した。――それほどまでに彼女は自分の記憶を封印してしまっていたから】

【――――それほどまでに、その記憶は、儀式の失敗という事実を突きつけられ、ひどい言葉で心をアイスクリームみたいに抉られた直後の少女には、あまりにも】
【ゆえに少女の無意識はもはや考えるよりも先に、それを死に匹敵する危機として、自らの脳内で処理してしまった。すなわち、忘れたことさえも、忘れてしまう方法にて】
【これまで気づかなかったのは、少女がその間に大規模な戦闘を行わなかったからだった。それでいて気づいてしまったのは、明らかに違和感があったからだった】
【奇しくもとある記憶を封じ込めたことを覚えている必要に駆られて、引きずり上げられるような形で露見したんだった、――あるいは、してしまったというべき絶望の温度をして】

【「ムリフェン殿……どうか。どうか、我らの。我らの、無念を……悲願を。どうか……」】

【――いつか見た/見せられた、夢/悪夢、その内容を彼女が思い出すのは、どこかのホテルの一室だった、一人で寝るには大きなベッド、一人で寝転んで】
【眼にかぶせるようにしていた腕のせいで表情は伺えなかった。――というのは誤りであった、目元が見えぬとも十分すぎるほどに表情は見えていた】
【自らの力で歯を割り砕いてしまいそうなほどに、噛み締める。それはこれらの記憶を封じていた自分に対してか、それとも、意味も辿れぬ約束をした自分に対してか】

【自らがどんな約束をしたのかさえ、彼女は知らなかった。だけれど――予感はあった。であればこれは――、きっと、正しくない自分を消すための、過去よりの、】
【ウヌクアルハイを裏切ろうとしているに違いない自分を正しい道筋に戻すための――正しくない自分を消してしまうための。そのための"なにか"】
【であればやはり呪いなのかもしれなかった。だのに間違いなく未来へ目を向けようとした蜜姫かえでの脚をつかみ取ったのは過去に君臨するムリフェンであり】
【そんなことは赦されないって何人ものサーバントを"教育"してきたみたいに。自分自身さえもを赦さない。なら。それなら】

/↓


668 : 名無しさん :2018/08/12(日) 22:57:47 lHOWPiyk0
>>645-647>>667

【――――――――――――――――――(そこから先はまだどこにも記されていない未来だから)】

――――――――っ、あたり、まえ、……です、だって、――。――私、は、――、"ここ"。は。私の……、……。私の、居場所、だから……。
為すべき、職務を、……、――もちろんです、あのとき"正しく"なかった、私には、そうして励むしか、ありえなくて……。……。

その悲願もまた、…………私のものでも、あるの、だから……――。

【――ぎりぎりと歯を割り砕いてしまいそうに噛み締める、そのせいか、あるいは流れ込んだ記憶のせいか、ひどく頭が痛かった、だからぎゅうと抱え込み】
【かろうじて絞り出すかのような声を漏らす――それらは"ここ"から少し後の彼女が生きるために封印してしまった記憶だった、けれど、この瞬間の彼女は確かに相対して】
【あるいは彼の前だったから、堪えられたのかもしれなかった。――だけれど確かなのはひどく、ひどく、――、ひどく、】

【――――そして夢はきっと終わるのだろう。あるいは彼女がひどく苦しんだからかもしれなかった。それとも単に、奇跡に似た均衡が崩れる瞬間だっただけ、なのかもしれない】
【あるいは唯一救いたりえたのは、その奇跡が崩れる寸前に、彼女はその言葉を確かに彼へ伝えるんだろう。彼より引き継いだものを、彼女は、全部受け入れるって、誓う】
【"ここ"が居場所だから。"正しく"なかった自分の、これが、贖罪だから。その悲願もまた自分のものである。――だから、だから、と、】

【それでもとにかく、認識は世界へ戻る。その時、悪党たる彼はどうしているのだろうか。それとも、ほんのわずかな時間でしかなかったのだろうか】
【あれほどのすべてが彼にとっては瞬き一つにも満たない一瞬の出来事だったのかもしれない。――次に目を開ける彼女は混乱しきった目をしていた。だけれど、】

――――――――――――――――――――――――――――――――……、

【――きっと何か嫌な予感をさせた。それは遠出の日に新幹線に乗ってから家の鍵をかけたか不安になるような一瞬、錯覚のような、ひとひらの予感】
【だけれどそれを研ぎ澄ましてきたからこそ彼はずうと裏に生きてこられたのだろう。――――ぱちぱちした瞬きいくつかで彼女はきっと覚醒してしまうから】

/こういったかたちで大丈夫そうでしょうか……!?


669 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/12(日) 23:21:26 smh2z7gk0
>>666

―――は、信仰の押し付けとはやはり邪教は邪教だな。
貴様らが如何にして異端の偽神を崇めようが興味はないが、それを他者に強要するな。
幸せ、だのなんだの言っているが結局は貴様らが悦楽に浸るための殺人だろうが………!
身勝手な神には身勝手な信徒、は、お似合いだな。

【刺青の少女の言葉に語気を強めて早口で言葉を吐き出す。怒りに満ちた銀色の瞳が震えている。】
【泣いてしまいそうな刺青の少女の顔は見ることなく、ただ自分が掘り進める地面に向けて言葉をぶつけている。】
【穴掘りと同様に、突拍子もなく感じるかもしれない。】

【そして「ワンちゃんみたい」と言われると、夕日も差し込んでいないのにその頬は紅に染まっていく。】
【どこか我に返ったようにも見える表情の後、奥歯をぐっと噛みしめるだろう。】
【横にしゃがみ込む刺青の少女には一瞬視線を向けるだけ、ある程度堀り終われば立ち上がって一歩引くだろう。】

―――こんなものだろう。

―――よ―――救―――え―――

【刺青の少女に埋葬するように促すと、自分は一歩下がった位置で再び跪いて胸の前で手を組んで何やらぶつぶつと呟いている。】
【薄汚れた手と服以外を見ればそれは絵画のようにも見える。】
【穴を見てみれば猫を一匹埋葬するには十分な穴が空いている。深さ的に野犬に掘り起こされる事もないだろう。】


670 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/12(日) 23:43:10 o6XMS57s0
>>655

【 ──── 全身の各所に程度の浅い熱傷。右足全体にそれよりも深い熱傷。気道からの内出血。その他、細々とした擦過傷。幾ばくか炎症を起こした喉の粘膜。】
【彼の負った怪我は大凡その程度だった。特に片脚の火傷が酷かった。ほとんど彼は躄るようにして歩いて、 ─── それでも尚、どこかに腰掛けたのなら、動けなくなる。】
【傷の手当てを申し出られたのなら、泣き腫らした目元を丸く見開いて、青く澄み渡った瞳で見つめるのだろう。鳩が豆鉄砲を食ったような顔だった。暫くは気後れして、然し】
【結局は治してもらうように願う。 ─── 幸いながら、火傷と彼の能力は相性が良かった。十分なくらいの応急処置が為されていた。真白い脚に傷痕が残る事も無いだろう】

【そうして夕月が寝床に連れて行かれようとするなら、酷く不安そうな顔をする。けれど返される言葉は当然であって、なぜ気付かなかったのだろうと、翻って少し恥じて】
【然してやはり彼は少女の隣に居ることを望んだ。ベッドサイドの椅子に腰掛けて、眠る少女の手を両の掌に包む。ぬくもりと柔らかさと鼓動を共有する。】
【 ─── かつて住んでいたと雖も、底冷えする氷国の寒さは堪えた。毛布を膝に抱えて、それでも一睡もしなかった。したくなかった。できなかった。】
【その内、手持ち無沙汰になるのなら ──── テーブルの上にある小物を、手に取ってみたりするのだろう。まじまじと見つめて、そっと元に戻して、然し】
【銀のネックレスだけは、少しだけ眇めた目で見つめて、やり切れなさそうな表情をした。きっと嫉妬だった。あるいは羨望だった。本人はそれに無自覚だった。】

【翌日の昼頃、 ─── ごく背の高い、不愛想な銀髪の女が、廃教会を訪れる。ミレーユの知り合いを名乗る彼女は、アタッシュケースを片手にぶら下げていて】
【誰かと会い次第、その中身を手渡して帰っていく。目に眩しいほど真っ赤な、ロッキンホース・バレリーナを、一足だけ。「彼に渡してあげて頂戴」そうとだけ、言い残し】
【ならテーブルには新たな小物が加わるのだろうか。 ──── 違った。だって彼は世界で何より大切なものを見出したように、膝の上で毛布にくるみ、抱え続けたから。】

【ならば目覚めはいつになるのだろう。ずっと彼は手を繋ぎ続けていた。眠り姫を囲う小人よりも忠誠と愛情を知っていた。だから ─── 目瞬く刹那には、息を飲む】
【穏やかな呼吸が乱れるのは2人とも変わらない。病葉の幽けく甘く白き喉は引き攣って、それが余りに労しいから、少女の頬をそっと自らの掌で包み込む。】
【繋いだ手と手はそのままに彼はしなだれるのだろう。少女の視界を覆うように泣き出しそうな彼の顔があった。見開かれて青く澄む瞳と、色褪せた唇が、恐れるように問いかける。】


   「 ───………… シグレ?」


【喉の奥からやっと絞り出すような、ひどく掠れた声だった。 ─── 今ばかりは彼は男であると分かった。顔の輪郭は細くとも、この瞬間キスを交わすのなら、】
【口紅の跡なんて残らないと思わせるし、いつもは透き通るような頬には少しばかり雀斑が認められて、切り揃えられた前髪の足並みがほんの微かに乱れている。】
【 ──── それでも、いっぱいに湛えた涙が堰を弾けさせて、鳴咽と共に少女の肌を濡らす熱さは、本物の"おとめ"の其れだった。握る指先を、絡めたがって。頬包む手で、抱き締めて】

【「 ──── 約束したんだ。ボクが解いてやるんだ。あの子の呪い、ぜんぶ。」それがどんな意味を持つのか、分かっていても彼は言った。】


671 : 名無しさん :2018/08/12(日) 23:44:18 lHOWPiyk0
>>669

【――――――、猫を抱いていなかったなら、きっと、その時、彼女はひどく怒ったのだろう。そう思わすような、気配だけがあった】
【だけれど猫だなんてしょせんは"それぽち"であるはずだった。凄惨な出来事に幾度となく関わってきた少女が躊躇うほどの理由になるとは、思えない】
【それならば。先ほどからの曖昧な温度――どうしようもなくなって、ただかろうじて縋り付いているような――が原因なのかも、しれなかった。彼女はきっと、】
【もう心なんて折れてしまっていると思わせる、――だからといって誰かにただ助けてと叫んでみるには、もう手遅れすぎて、だからこそ、】

――――いいえ? どうしてそのようなことがありましょうか、私たちだって心苦しいのです、だけど……、言葉で尽くして伝わらぬのなら。
時として手を上げることも必要ですよね? あるいは、体験していただくことで分かっていただけることだってありますから。
人間というのはどうしても考えてしまう生き物ですから。そのくせ、考えるだけでは判断しきれぬこともある、獣としての時代を忘れ去るにはまだ早いのです。

あはははっ、偽神――ですか、やはり分からぬのですね、"ただしい"ウヌクアルハイ様は、こんな、――こんなじゃ、なくて、ないのに……。

【――結局彼女が掘り返す土なんて数センチにも満たないんだろう。だからほとんどが相手の功績であった。視線を向けもしなかった、興味がないみたいに】
【けれどそうやって見せる横顔はひどく儚げで今にも消えてしまいそうな気がした。しかして水面に沈めたアクリルの彫像にも似ていた、何かをそこに隠しこみ】
【ぎりと噛む歯だけが鮮烈な感情をしていた。――そのくせ目だけはきっとひどく悲し気で。マゼンタの瞳はあるいは泣きはらした色にも似ていて、】

……………………次は、ロシアンブルーか色の薄い三毛にお着替えしてきたらいいです。まあ、別に、何の色でも柄でも、いいですけど……。
…………。犬でもいいかしんないです。おっきな犬がいいです。猫と犬ってどっちが徳が高いんですかね。どっちも一緒ですかね……。

【だから相手が掘ってくれた穴に、少女はくちゃくちゃの猫を収めるのだろう。膝立ちに腕を伸ばして、それで、猫の頭を最後に撫ぜてやったらば】
【――きっとひどく優し気な声をしていた。猫は生まれ変わるときに別の毛皮に着替えて来るんだと言う。だからきっとその話をしていた】
【――――そうしてそのくせ至極個人的な好みの話をしていた。だから飼ってやる気なのかもしれなかった。人間によって死した猫に投げかけるにおそらくは足る声音にて】

【――ゆえにこそその温度感がまた違和感として目立つ。それで埋めてしまうなら、きっと後に残るのは腐った血に汚れた少女と、土汚れの少女なんだろう】
【お互いに白い服装が汚れてしまっているのが共通点だった。そのくせ、おそらくきっと分かり合えないのを察しあっていて。――第一声は、相手に譲られる】


672 : 名無しさん :2018/08/12(日) 23:56:55 z0YEX0VM0
>>661

そうさ、己は長生きなんざ望んじゃいない
いや、長生き自体は結構だがね――。“細く長い人生”なんて、そりゃ生きていたッてしょうがないじゃあないの
そんなのはそれこそ、死んでいるのと一緒だ。だから心配しなさんな。“手前さんに殺される時は綺麗サッパリ死んでやるよ”

【もうその表情に先刻のような虚ろさはない。不適で穏やかで、そこに由来する逆説的な狂気を存分に含んで】
【刺突をエーリカの脇腹へ突き入れると、強烈な手応えが手元に伝わる。エーリカの絶叫が奇襲の成功を証明して、思わず口角が歪む】
【然し、相手もその程度で納まる器では無い、窮地を布石に、痛恨を逆転に。繰り出されるは被弾直後の密着状態である事を利用したマチェットによる反撃】
【――その刹那に権兵衛は見る。エーリカの昏い笑みを。その瞳に宿る“此方への嘲笑以外の何か”を】

嗚呼、そういう事か

【何かを悟ったような、初めての笑み】
【次の瞬間、権兵衛が行ったのはあろうことか両手を用いたマチェットの把握。超人的な反射神経を絶対条件に、生命を賭して行われる神業】
【右手は掌、左手は拳の形を取り――左手の負傷によって若干の変形はあるが、それは“白刃取り”として広く認知される絶技に他ならなかった】
【勿論、負傷から左手に力は入らず、掌を土台とした打突によって一瞬攻撃を停止させる程度が限界――然し権兵衛もまた、その隙を逃すような凡夫では無い】

理由も無く出し惜しみするのは相手に失礼ッてぇモンだろう
折良く己ァ我流だ。使えるモン使った所で文句を言うような輩も良ねェ

【一瞬の隙を利用して放つは膝蹴り、それも突き刺さったままの刀の柄を狙う。狙いは明白、刃を深く突き入れてダメージを増大させる事、及びマチェットの射程から離脱する事】
【成功したならば、手の届かなくなる前にエーリカの身体から刀を引き抜くだろう】


――手前さん、恐いのかい。己が、いや。“手前さん自身”が


673 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/13(月) 00:03:53 o6XMS57s0
>>657


「言われちゃうなァ。嬉しいよな、嬉しくないよな。」「 ─── いいですけどォ。」


【びゅうびゅうと吹き荒れる追い風さえも面白いと言いたげだった。お河童に切りそろえた黒髪が肩口で激しく舞う。】
【対して銀髪の女は無表情だった。自動人形のように端整な横顔は、夏の日差しに翳していたら溶けてしまうようで】


「 ──── 誤射くらいは珍しくもないわ。」「好きにやりなさい。私もそうする。」
「カノッサお抱えの殺し屋よ。"番号付き"。」「最初は折を見て潰す予定だったけど ─── 部外者が巻き込まれるなら、話は別ね。」


【そして拗ねたような少女の態度は歯牙にも掛けない様子であった。それがまた少女の神経を逆撫でするだろうか、ともあれ】
【 ──── 斬られたあのサラリーマンは"部外者"ではないということだろうか。存外に泳がせていたのかもしれない。】
【であれば彼女もまた胸を張って掲げるような"正義"を携えてはいないのだろう。 ─── 前衛を務めるのなら、制止はせず】

【迫る空気の壁に回避の余地はない。 ─── ぐ、と力を込めて踏み止まるなら、生まれるのはほんの僅かな隙である。】
【されどそれだけで十分に違いなかった。笑う女の肩をめがけて振り下ろされた電磁警棒は、直撃にこそ至らなかったものの】
【左手による横薙ぎに弾く防御を強いて、その一瞬の接触にて電撃を与える。 ─── なれば本命、右手の一太刀も出遅れ】
【そこに背後から外套の女が銃撃し、刃へ直に弾丸を当てることで、少女へ向かう追撃を制止する。 ─── そんな即席の連携でも】
【確かに目の前の剣客を追い詰めていた。和装の裾をひらめかせ、堪らずに後ろへ飛んで距離を取る。それでもなお、笑って。】


「私を信じてくれるなら、 ─── ここから退く事もできるけれど。」「どうしたいかしら、お嬢さん?」


【 ──── 対して、少女から付かず離れずの距離を維持する外套の女は、後ろからそう問いかける。頷くことも拒むこともできたが、果たして】


674 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/13(月) 00:11:51 WMHqDivw0
>>670

【震えるまつげ、一度開いて――けれどもう何も見たくないと言わんばかりに閉じる。けれど、】
【頬を叩く水滴の感覚がするなら。しぶしぶ、みたいな感じで、ぐうと瞼をこじ開ける】
【その先にあるのはいつもと変わらぬ林檎色のまなこだった。くるりと丸まって、それでぼうと、眼前を見やって】

……………………、……ミレーユさん? …………あれ、
なんであたしの「名前」知ってるの…………? おしえたっけ、…………覚えてない、
…………シグでいいよ。愛称。そう呼ばれてたの………………、…………、

また泣いてるの? ………………あたしちゃんと帰ってきたのに。

【こまった人ね。そうとでも言いたげに――――けれど唇は笑みの形になれないで、そのまま】
【額を擦り付けようとするだろう。すり、すり、と二回・三回。前髪どうしを混ぜ合わせるみたいに擦らせたなら】
【絡まる指先をほどく術はなかった。だから力なくも、きゅ、と触れるだけ。それで十分だったんだろうか】

…………………………ミレーユさん、ね、……ここはどこ?
もう怖い人いない? 頭がぼうっとする、…………、さむくない? 寒いなら入ってもいいよ。

【そう言って少女は、シングルベッドの上、身体をわずかに動かして、ヒト一人なんとか入るくらいのスペースを作り】
【そこに入ってもいいよ、なんて言う――けど。実際は添寝してほしいってことを素直に言えないだけだった】
【一人で寝るのは怖いから。もっと触れられていたいって思う。そうしたらなんとなく、怖いのが、和らぐ気がして】

ミレーユさん。……ミレーユさん、………………ね、何かお話して、怖くない話……。
起きてたら怖いこととか痛いことばっかり思い出しちゃうから。また寝たいけど……眠くなくなっちゃった、
だからお話、して……。たのしいお話、……神様とかそういうの、出てこない、ハッピーなやつ…………。

【そうして強請るのは、おばけが怖くて眠れないからって言う子供がするのと何ら変わらないワガママ】
【添寝してくれるならその胸に寄り添うようにして。してくれないなら、握る手にほんの少しの力を籠めて】
【リクエストは――――とにかく「神様」が出てこない、幸せな御伽噺。望んだなら、またぼうっと目を細める】


675 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/13(月) 00:56:18 o6XMS57s0
>>674

【紅い瞳の中に青い瞳が映り込んで一つになる。涙に霞んだ瑞々しい合せ鏡。二色の光輝が産むのは、三途の河に降り注ぐ恩寵の雨に似ていた。】
【深い紫紺の虹彩は見つめているなら何処までだって沈んでいけそうだった。 ─── 沈めたのならどんなに素晴らしいと思った。外道も恐怖も神様も手を伸ばせない、深い深い水底まで、ふたりきりで。】


「 ───………… シグ。」「シグ、」「シグ。」
「だって、」「 ──── だって」「だって。」「 ……… キミが、今、ここにいるから、 ……… 。」


【「だって、あんなに非道いこと、されていたじゃないか」 ─── 本当ならそう言いたいに違いなかった。それでも、唇を噛む】
【彼が眠れなかった理由の一つがそれだった。瞼を閉じずとも何度だって追想した。凄惨な現実から目を背けたくなかった。】
【せめて確かめるように何度も名前を呼ぶ。天鵞絨のように滑らかな額が擦れ合うのが気持ち良くて、 ─── 少しだけ頬を綻ばせ】
【返す力で握り締められるのが何よりも嬉しかった。彼女はここにいる。ボクはここにいる。自分たちの意思を胸にして。】


「 ──── 大丈夫だよ。」「大丈夫。」「怖いものなんて何もないから」「みんなみんな、怖くなくしてきたから。」
「 ……… ありがとう。」「優しい子だなあ、シグは、ほんとに、 ──── 。」「 ……… 好きだよ。大好きだ、 ……… 。」


【酷い噓をついていた。 ─── 少女が何よりも恐れたものは、今も尚のうのうと生きている。彼には殺せなかった。】
【故にこそ己れの無力さを思い知っていた。あれだけ啖呵を切って、ボクが助けてやると言ったのに。なのに。】
【 ─── もしも少女の呪いが解けたのなら、再びあの醜悪なる神は、彼女を冒涜しようとするのだろう。それが、怖くて】
【それでも、だから、今だけは。 ─── 彼は少女の望む所を理解した。ローファーを脱いで、包帯を巻いたままの片脚から】
【次いで真白いストッキングに隠したもう片方をベッドに乗せて、最後に腰を下ろしたのなら、きしりとスプリングが鳴いて】
【すれば誰よりも近く彼は少女と肌を合わせるのだろう。両肩の上から腕を回して、甘えるように縋り付いて、】
【細い脚先も絡め合って、そうしたら一つになれる気がして、 ─── 見つめ合ったまま、青い瞳は、蕩けるように笑う。】


「 ……… じゃあ、どうかな?」「とっておきの昔話。」「誰にも話したことがないんだ。」
「面白いかは解らないけれど、 ……幸せな結末は保証するよ。」「ずうっとずうっと、幸せな話だから。」
「題名は、 ──── そうさな。」「"あいすることを知るために旅立った男"なんてところに、しておこうか。」


【「聞きたいかい?」 ─── 恋人を甘やかすような声で、乾いた心にひとしずく染み渡るような囁きで、そっと耳打ちする。】
【つまらない物語かもしれなかった。何せその結末を少女は既に知っている。であればきっと、語り出しだけが大切だった。】


676 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/13(月) 01:13:10 smh2z7gk0
>>671

―――それは本心か?私は過去の貴様は知らないが、少なくとも今の貴様は目の前にいる
今私の目の前にいる者の感情は随分と芯が不安定なようだが。

分かるものか、神を騙る虚像もそれに縋る者の気持ちも。
だがそれは貴様も同じだろう、ウヌクアルハイ様とやらを信じない我々の存在が不思議なんじゃないか。

【祈りのような動作を終えるとパンパンと手を叩いて土を落とすが、その程度では完全に落ちるわけもない】
【語気は相変わらず強い、全否定とまでは行っていないが二人の少女の間には完全なる境界があった。】
【蛇の少女の悲し気な横顔を銀色の瞳は刺すように見つめている。】

さあ、人間にとって都合が善いのは犬の方じゃないか?それこそ調教次第で飼い主を神のように扱うぞ
―――ただ、全ての犬がそういう類と錯覚するのは命取りだがな。

【まるで蛇の少女などいないかのように土を元あった場所に戻し、猫の死骸を埋めていく。】
【その手はまるで土を撫でるように穏やかなものだった。そして埋め終えれば再び蛇の少女が一歩、二歩と離れる。】
【そして振り向けば―――そこにあるのは明確な敵意であった。】

さて―――〝どうする〟?
正直言って、〝目の前〟でというのは忍びない気持ちがある。ただこのまま捨て置くほど日和ってはいない。
選択の時間ぐらいはくれてやる。尤も今はそれすら判断がつかないやもしれないがな。

【先程埋葬した猫が埋まる場所へ視線を向けて、眉をひそめてから再び蛇の少女を見る。】
【蛇の少女の素性、それは明確でありこのまま放置する事が出来ないのは自明であった。特に外套の少女にとっては】
【だが今までのやりとりの中で見えた〝揺れ〟。それが善い方向性になりうるかもしれないという感覚もあった】
【それを待とうとするだけ十分外套の少女は甘いのだが、ともかくボールは投げ返された。尤も既に外套の少女の身体は緊張感に満ちている】
【―――先程と何も変わらないのに、まるで嵐の前のような空気の重たさが辺りを包む。】


677 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/13(月) 01:15:32 WMHqDivw0
>>675

………………、すきって? あたしのこと? ……あたしも好きだよ、ミレーユさんのこと。

【ラブかライクかは言わなかった。けれどそれはきっと嘘じゃない。好きでも無い人なんかベッドに招かない】
【生前、「そういうこと」ばっかりやらされていたから。そこらへんはきっと何より慎重にしていたはずで】
【だのにミレーユにはそれを許すんなら。……あるいは、「そういうこと」する人だと認識していないから、そうするのか】
【後者かもしれなかった。だってミレーユは、同性の友達――みたいなものだと思ってた、から】

【ベッドの中はあたたかかった。少女の体温で温められていた。死人なのに体温はあるらしい】
【であるならこの少女は、なんとも冒涜的な――バケモノだった。生きてもいないし死んでもいない】
【それでいて神様にもなれなかった。何者にもなれなかった彼女を、「なにか」として定義してやる役割は】
【きっとミレーユが一番適任だった。冒涜者にでもやらせたらきっと、一生駒として動かされる運命しか与えられなかったろう】

………………つめたい。ミレーユさん、そこにある毛布、被ってなかったの?
だめだよ、風邪ひくよ……、…………こうすればあったかい? ……ていうかあたし、ちゃんとあったかいかな。

【身体をひっつける。手を伸ばしてミレーユの両頬を包み込むように触ってみる。「……ちょっと肌荒れした?」とか言って】
【抱き締めあったら少しだけ落ち着いたみたいに息を吐く。足が絡まりそうになるなら、せめて包帯を巻いているほうには】
【なるべく触れないようにと、もぞもぞ動くだろうけど――きっとあんまり意味がない。一人用ベッドに二人が入るなら】
【逃げるスペースなんてどこにもない。ぎちぎちに箱詰めされたみたいになって――――けれどそれが心地よい】

愛すること、知るため、……旅立つ、…………しらないお話。
うん、聞きたい…………なんでもいいから聞いていたいの。ねえ、……怖くなく、して…………

【ミレーユの胸の中、ぎゅうと彼の服の布地を握り締めて――耳に程近いところで喋られると、くすぐったそうに身を捩る】
【弱いらしい。「お話するのはいいけど、そこでは、やめて……」 言ってみるけど、聞いてくれるかどうか】
【きっとそのまま喋るのを始められても、突っぱねたりはしないだろう。そんな気力、残ってないから】


678 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/13(月) 01:37:47 smh2z7gk0
>>673

―――ッチ、よりによってカノッサかよ………!それと、部外者と考えるのは早計じゃない?
(しかし一枚岩でないにしろ、カノッサのナンバーズと深くやりあうのはまずいか?)
(〝王様〟が情報伝達を怠るとは思えないが、仮に傘下のナンバーズであれば私に利はない。)
(もう片方だった場合は貴重な情報源にもなるが―――〝こっちの女〟も素性が知れない。)

【大きな舌打ちを放ちながら思考を巡らせる。もはや自身の感情を出す余裕もない。】
【連携により相手の出鼻は挫いたが、少女の追撃はなく和装の女の間合いから距離を取るように下がる。】

信じるかどうかはまだ保留だけど、このまま変に配慮して戦うのは利がないね。
かといって決めてかかったとして無事で済ませられるかどうかも微妙、というか難しそうだ。

諸々鑑みるとここは引いた方が良さげだけど、なんかいい方法あんの?
そろそろ列車の乗客も乗員も騒動に気づいてそうな頃合いだけども

【ため息を吐きながらポリポリと頭をかく、思っていた以上にこの少女用心深いようだ】
【そして状況を総合的に見たうえで撤退の方向性を示す、その上で銀髪の女性の言葉に耳を傾ける。】
【とはいっても、悠長に作戦会議を許す相手でもなさそうだが―――】


679 : 名無しさん :2018/08/13(月) 01:50:35 lHOWPiyk0
>>676

……ええ、もちろん。…………――。そんなはずはありませんよ、そう見えるのであれば、……。
それはあなたのその瞳こそが空虚に濁っている証拠ではないでしょうか、――私が、不安定に見えますか? ……あははは、
そんなはずないですよぉ、――、――……そうですね、全く分からないです……。

【宣言するように軽やかな声が、けれど詰まった。続く言葉に動揺したような間と振れがあって、ならば、浮かべる勝気な表情もわずかに陰るのだろう】
【しかして強気であるのまでは削り取れずに――けれど限りなく不安定を証明するかのように、問いかけて、笑う。――それこそ空虚な仕草であった、自傷行為に似て】
【そうして最後に笑い飛ばすような吐息で閉ざす。――かすかに震えている気がした。気のせいかもしれなかった。刺すような瞳を見返すなら、嘲るように、憐れむように】

――――――そうですね、"知って"ます。まあ、ちょっと、睡眠不足になりましたけど……。
……ああ、でも、あれは狼でした。だから……そうですね……。うちの犬はそこそこ馬鹿だったので。……ああ、いや、ちがくて、

【――そうした仕草が、けれど、乱れる。きっとその瞬間に彼女は一番表情を乱した、悲しいような苦しいような辛いような、とかく鮮やかに感情を揺らして】
【灰の中にて燃え続けた百年物の埋め火があったとして、きっとそんな風に目を焼くのだろう。そういう鮮烈さがあった、灰すらどろどろに溶かす生々しい激情、それなら】
【そんな目はきっと大好きな誰かのことを話す瞬間にしかありえない。だからきっとありふれた四つ足の犬の話をしてなかった。――やがて自分でも気づくんだろう】
【だからいっとうばかばかしいみたいに自嘲する。ぐしゃりと前髪をかき上げたなら腐汁がべたりと少女の真っ白な顔に意図せず塗りつけられて】

どうする、ですか。そうですね。どうしましょうか……。私はあの猫を埋めてやりたかっただけです、……では、駄目ですか?
――そうですね、"駄目だと思います"。……。であれば、私にもやらねばならぬことがありますから。――正しいウヌクアルハイ様を取り戻す、

私の理由などそれ以外は必要がなくて。――お名前くらい名乗られたら如何ですか? どうせ私の名前など、知っておられるのでしょうから。

【――――ならば、きっと、少女は一瞬意味を解さなかったかのように、一度瞬くのだろう。はたりとした瞬き、長い睫毛がひらりと翻るように】
【そうやって伝えるのはおそらく本当のことだった。彼女はあの猫をどこかに埋めてやりたいだけだった。それだけのつもりだった。少なくとも、相手と出会う少し前からは】
【あの猫の死骸を見つけて抱き上げてからはそのつもりでしかなかった。ゆえに相手と出会ってからの少女はそれにしか興味がなかった。言葉の不穏さは現実と剥離したように】
【それほどまでに彼女は一瞬あんまりにぼんやりした目をするから。――それでもきっとそれでは駄目なのだろうと察する、ならば、ここでどうにかなる気はない】

【――ならば、やはり、"そうする"しかないのだろう。相手が名乗るのならそれで行為が始まるに違いなかった。目の前で、というのを、彼女は頓着しないようだったから】
【くす、と、小さく笑う。唇の端のみをわずかに釣り上げるようにして。――嵐の訪なう気配になど気付かぬかのように、少女然とした色合い】


680 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/13(月) 01:51:29 YUv7yeQE0
>>677

【 ─── であれば彼もまた答えないのだろう。答えられないのかもしれなかった。ミシン糸の最後がどうにも縺れてしまうように】
【彼女の過去を調べるのは難しい話ではなかった。だから"ああいうこと"だって出来た。だから、 ─── 同情したのかどうかは、やはり、分からない。】
【少なくとも彼にとって、放っておけないと思ったのは事実だった。最初は本当にそれだけだった。ケリの付かない人生ゆえに、当て所なく彷徨うというのなら、】
【自分がその助けになればいい。そのくらいの友誼を感じていた。──── けれど、どうしてだろう。とろんと甘えるようなシグレの笑顔が、今はどうしようもなく、鼓動を揺さぶる。】

【であれば温もりに身を委ねる。 ─── 冒涜であるとは思わなかった。彼のかつて愛した女も、とうに死んだ筈の身体は、ひどく甘く柔らかく温かかった。】
【そういうものに惹かれる性分であったのかもしれない。彼だって、ばけものを名乗るくらいには、ばけものの端くれであった。ならば、やはり】
【自分と似通った他者、致命的な欠落のある存在でなければ、その隣に居続ける事は出来ないのだろう。 ─── 然して、同じ欠け方をしたジグソーパズルは、絶対に噛み合わないのだから】

【「あったかいよ。 ─── 世界でいちばん、あったかい。」臆面もなくそんな台詞を言えてしまう自分に驚く。重なる肌と織地。ゴスロリなんて脱いでしまえばよかった】
【抱き返されるのなら、やはり彼は男の骨格をしていた。 ─── それでも、前に抱き締めたよりは幾ばくか、どこか丸みと柔らかさを得ているようであり】
【なれば恋慕の作用であるのかもしれなかった。擽ったそうな仕種で、湿った息を吐かれたのなら、もっと求めてしまいたくなるのだから。】


「 ……… だあめ。やめない。」「擽ったい方が、眠くなるだろう?」
「 ──── 怖いところなんて、ひとつもないから」「だから、大丈夫。 ……… ね。」


【ぽんぽん、 ─── 背中を撫ぜる。するり、 ─── 頭を撫ぜる。真っ赤な髪の毛に手櫛を通して、梳いていく。】
【何よりも愛しい子供を寝かしつける優しい母親のように。 ──── 或いは姉かもしれなかった。或いは兄かもしれなかった。或いは、或いは。そうして、物語は、始まる】


「むかーし、むかし、 ……… あるところに。とても寒い国のどこかに。ひとりの男の子が産まれました。」
「男の子はすくすくと育ちましたが、しかし白雪のようになよやかで、それでいて大層な恥ずかしがりやでした。」
「 ……… そんな彼の大好きなことは、お面をかぶることでした。」「お面をかぶって町を出歩くと、ひ弱と笑われる自分でも、不思議とおどけていられるのです。」
「いろんなお面が好きでした。勇者のお面。ピエロのお面。お化けのお面。」「 ──── その中でも、彼の一番のお気に入りは、愛らしい女の子のお面でした。 ……… 。」


681 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/13(月) 02:10:50 WMHqDivw0
>>680

【あったかい、って言われればちょっと安堵したみたいに笑う。ほんのちょっとだけ。ぎこちないやり方で】
【ぎくしゃくしながらも、頬を撫ぜて――ぬくもったなら離す。そうして手のやり場に困って――ミレーユの胸元へ】
【両手揃えて、添えてみた。ふくらんでいる。けれど本物の感触はしないから――ああそういえばこの人は、】
【「男の人」なんだったって。今更気付く、……けれど何故か、怖くない。(「そういうこと」しないと思ってるから?)】

やだ、……やめてったら。くすぐったいの、…………ふっ、ふふ……もうっ。
逆に眠れなくなっちゃうよ、笑っちゃうから、……んん、ん…………

【耳元でささめく声。撫でられる手。それらひとつひとつに、擽ったそうに身を捩って――笑っちゃう】
【恐怖の呪縛は、このベッドの上でだけ、緩められているようだった。だけどここから一歩でも外に出たら】
【すぐにしゃがみ込んで、頭を抱えて泣き始めてしまいそう。そんな予感を抱かせて、――――、】

…………おとこのこ、なのに? おんなのこの仮面が好きなんだ。……、
どうしてかな。…………かわいいって言われるの、好きだったのかな。……それで?

【もぞもぞ。布団の中で体温が蠢く、ミレーユの身体、もうどこにも冷たいところがないかどうか、探すみたいに】
【見つけ次第手ごろな部位をひっつけて温めようとする。十分温もれば、離す。その繰り返しで、彼をくまなく温めながら】
【話の続きをねだる。相変わらずくすぐったいって訴えながら、笑いながら、でも引き剥がそうとはしない】

【……全然眠くなれそうになかった。逆にどんどん目がさめてゆく。話の続きが、気になるから】


682 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/13(月) 02:17:58 YUv7yeQE0
>>678

「所期の目標にないものは全てイレギュラーであり部外者よ。」「貴女を巻き込むつもりはなかった。」
「 ─── それでも込み入った話がしたいなら、後で気が済むまでしてあげる。」「できそうな相手とも思っているし、ね。」


【功名心にせよ個人的な戦意にせよ、少女が追撃を試みようとするならば、女はそれに従う積りであるらしい。 ─── 翻せば】
【少女が退却を図るのであれば女はそれを支援する。如何なる理由があっても。そしてまた2対1という状況は、】
【戦闘行為の主導権が彼女ら2人に委ねられていることの証左でもあった。笑う女の心中が穏やかであるかどうかは察しかねる】


「結構。」「 ─── 私の能力だけを信じてくれればいい。」
「 ──── こうするのよ。」「しっかり掴まってなさい。」


【意思表示があるならば決定は早かった。 ─── 外套の裏から取り出されるのは、閃光手榴弾。】
【ピンを抜き、時限信管を起動し、投擲と同時にまたも少女の首根は引っ掴まれる。尤も先程よりは幾ばくか優しいもので】
【腰にまで手を回して抱き上げているのだから一種のお姫様抱っこであった。 ─── そのまま、走る電車から、地上数十mの陸橋の上から】
【躊躇いなく女は"飛び降りる"。逆転する天地。マイナス方向へのG。凄まじい重力加速度。然して何処かで自由落下は途絶して、橋の支柱を彼女は足蹴にし】
【そこからは早いものだった。戦闘機の曲技飛行も斯くやというデタラメな機動で、摩天楼の外壁を足場にした凡そ無茶苦茶な三角飛びを繰り返し、】
【 ─── 気付けばどこかのビルの屋上に降り立っている。そっと少女を地面におろして、素知らぬ顔をするのだろう。およそ人間業ではなかった。汗ひとつかいていなかった。】


683 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/13(月) 02:52:13 YUv7yeQE0
>>681

【 ─── その笑顔に全て報われるような気がした。今の彼が縋ることのできる、一筋の希望であったろうか。】
【少女が望むのならどんなことだって構わなかった。頬を包む優しい温もりに、また涙が出そうになる。胸元を撫ぜるのなら、つくりものでゴメンねと】
【少しだけ申し訳なさそうな顔をする。 ─── 甘えてほしかった。自分が女のからだをしていないことを、ほんの少しだけ、悔やみそうになる】
【ならば自然と過る疑念と恐怖も、然して向き合う準備は出来ていた。物語は続く。輪郭のない感情に、後戻りできないストーリーを与えていく。】


「 ─── きっと、大好きだったんだろうね。かわいいって、言ってもらうこと。」
「だから男の子は、旅に出ました。たくさんのお面を持ち合わせて、でも一番のお気に入りは、カバンの底に。」
「もっといろいろな人に、いろいろなことを言われてみたかったのです。 ─── きれい。すてき。かわいい。おもしろい。かっこいい。」
「とても上手にお面を被る男の子は、旅行く先々で、望めばどんなことだって言ってもらえました。男の子は大層それに満足しました、が」


【全身をぬくめてくれる優しさと心地よさ。どうしようもなく離したくないと願う。 ─── 耳元に囁く彼の顔を、横眼で見つめるとするのなら】
【ひどくひどく憂いを帯びて、寂しげで、それでも笑っていた。どうしてやればいいのか解らない。だからこそ、解るようにならなければいけない。】
【 ──── 真っ赤な髪を、白い指先に絡めてみたりも、するのだろう。或いは少女の背中を摩る。何も怖いことはなかった。彼の腕の中にいる限り。】


「 ─── ひとつだけ。誰からも言ってもらえなかったことが、ありました。」
「"あいしてる"。」「 ……… だから男の子には、それが分かりませんでした。」「どうすれば愛してもらえるのか、ちっともわからなかったのです。」
「どんなお面を被っても、どんなかっこいい言葉を考えても、どんなかわいい仕草を見せても、どんなおもしろい振舞をしても。誰も彼を、あいしてると言ってくれません」
「そうして彼は気付いたのです。最初からボクは、あいしてるって言ってほしくて、旅に出たに違いない。一度でいいから、あいしてるって、言われてみたいものだなあ。 ─── そんな時、でした。」


684 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/13(月) 03:06:55 WMHqDivw0
>>683

【ごめんって言われたらきょとんとして。「別に、いやじゃないよ」って返して、少しだけおろおろするような顔】
【それでまた手の行先を探して――今度は背中に回してみる。肩幅、意外とあるんだなって思って】
【そうしたら距離がまた近くなった。何かしらがかすめ合うくらいに顔が近くなって、でも、嫌じゃないって思う】
【きれいな顔してる人だって改めて思った。だから、……前みたいにもう泣いてほしくないって、思う、心の底から】

………………うん。いろいろ言ってもらえるの、たのしそう。上手だったんだね。
でも、………………そっか、そういうこと言われたかったんだ。そうなんだ、…………、

【うすうす感づいてはいた。この物語が誰のものであるかってこと、すぐ考えればわかる、誰でも】
【けれどその先はわからない。愛してる、の五文字だけを得たくて、何処へ向かっていったんだろうって】
【ぼんやりと思考する。髪を弄ばれながら、身体に触れられながら、けれどもちっとも嫌じゃない、それだけ思って】
【続きが早く聞きたいって言いたげに――上目遣い。ぱちぱちと瞬きするたび、まつげが、純粋に揺れる】
【それはきっと、怖くて震えるのとは全然違う動き方だった。だってなんにも怖くない。――背中に回す腕に、ちょっと力を籠めて】

そんなとき…………誰に会ったの? あたしの知ってる人かな、……いや、知らないか。
だってこれ、物語だもんね。知ってるはずないもん……ね、ね、続き。はやくはやく、

【どこもかしこも温かくなった。はずなのに、少女の手足は未だ定位置を見つけられないと言わんばかりに】
【ミレーユの身体のいろんなところを這っていた。……それこそくすぐったい、だろうか。だったらこれは】
【仕返しのつもりなんだろうか。耳元でずっと喋られてることに対する。……きっとそうではないんだけど】


685 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/13(月) 04:02:43 YUv7yeQE0
>>684

【「 ……… ありがとう。」うろたえさせてしまうのを詫びたくて、けれどそうしたら、なんだか悲しい気持ちにさせてしまうようで】
【抱き留め合うのなら、 ─── やっぱり女の子なんだな、と、理解する。華奢で、それでいて柔らかい、相反する甘やかさを宿した身体つき。】
【そうして縮まる距離が、彼の鼓動を教えてくれた。 ─── 少女の心臓は高鳴るものなのだろうか。たとえ、そうでなくとも。】


「 ─── 男の子は、ひとりの女の子に出会いました。まぶしいくらいの赤い靴を履いた女の子でした。」
「この子なら、"あいしてる"がどういう意味なのか、教えてくれるかもしれない。」「 ─── 愛することが分からない男の子は、女の子に尋ねてみることにしました。」

「"ねえ御嬢さん。あいしてるってどういうことか、教えてくれる?"」
「"あたしも分からないの。あいしてるってどういうことか、教えてくださる?"」
「"それはおかしな話だよ。だってボクには分からない。教えられる筈がないよ。"」
「"でも周りの皆んなは知っているわ。誰からも教わっていないのに。あんな幸せな顔ができたら、どんなにいいことか。"」


【だから彼は滔々と物語を紡いでいく。 ─── 誰の物語であるのかを、彼は言おうとしなかった。誰と出会ったのかを、彼は答えようとしなかった。】
【静かな笑息を漏らすのなら深く深く抱き締める。息苦しくなってしまったら悲しいけれど、その紅く深い瞳が悲しみに曇る瞬間なんて、もう見たくない。】
【ずっとこの時間が続けばいいと思った。ずっとこの物語を綴っていけたらいいと願った。けれどそれは叶わないから、それは自分の決意に残った最後の躊躇いだから】


「"ふむん。そうだ。ボクは物真似がとくいなんだ。今だって、お面を上手にかぶっているだろう?"」
「"とっても上手にかぶっているわ。女の子かと思ったくらい。"」
「"ふたりで皆んなの真似をしてみよう。もしかすると、あいしてるっていうのは、そうすれば自然にわかるのかもしれない。"」
「"まあ、それはいい考えね。けれど何を真似ればいいのかしら?"」「"それがボクにも分からない。なにかいい考えはあるかな?"」
「"ふむん。そうだ。あたし、踊りがとくいなの。今だって、踊れる靴を履いているでしょう?"」
「"とっても素敵に似合っているね。この辺りの人は皆んな踊りがすきだと聞くよ。"」
「"ふたりで一緒に踊りましょう。そうして最後にキスをするの。もしかすると、あいしてるっていうのは、そうすれば自然にわかるのかもしれない。"」

「 ─── うなずいた2人は、とても楽しく舞い踊ったあと、最後にくちづけを交わしました。そうしてすぐに、口を揃えて叫びました。」


「"ああ、はじめてわかった。あいしてるって、こういうことだったのか"。」


「それからのふたりは、何度もそばで"あいしてる"と伝え合い続けて、いつまでもいつまでも、しあわせに暮らしましたとさ。 ─── お終い。」


【 ──── だから、奇妙な物語は、そこで幕切れる。耳元に添えていた唇が、頤が、そっと動く。両肩に垂れる濡羽色の黒髪が、少女の首筋を擽った】
【ふたたび彼は/ミレーユは/エーノは、少女/夕月/シグレと見つめ合うのだろう。 ─── ごく穏やかに微笑んでいた。それでいて青い瞳には、どこか決意を宿していた。「おもしろかった?」そう、尋ねて。】


686 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/13(月) 04:29:24 WMHqDivw0
>>685

――――――――――――――、

【深く抱きしめると、意外とその身が小さいんだってこと、気付かせてしまうだろうか】
【いつも7.5センチのヒールで武装して、それでやっと彼より数センチだけ低い、程度に収まっていた立ち姿も】
【裸足で寝っ転がされるなら。10センチと少しばかり差が出来てしまう。158センチ、それが彼女の本来の身長】

【とくとくと胸が鳴っていた。どっちの鼓動なのかよくわからなくなるくらい密着してしまっていて】
【はあ、と息が深くなる。苦しいからじゃない。ではないのに何故か胸が詰まる。けれどちっとも苦しくない】
【きっと未知の感覚だった。こんなに誰かと密着したのははじめてだった。恥ずかしいとか、今更、思ってしまった?】

【――――――――きっとそれは、違っていて】


………………、よく、わかんなかった。

【感想を訊かれれば――――実に率直にそう答えてしまう。だってなんでそれで、愛してるって、こういうことなんだって】
【「ふたり」がそう言ったのか、わからないでいた。……あるいはわかってしまうのが怖い、だなんて思ってしまったのか】
【――彼女はまだ、恐怖に呪縛されているなら。解き放つためのアクションがきっとなにか、必要になるんだって、思わせる】

…………わかんない、愛してるって、どういうこと? わかんない、…………、
ねえミレーユさん、…………ミレーユさんはどうして、あたしにここまで気をかけてくれたの?
かわいそうだったから? ……違うよね、この世界にはあたしなんかよりもっとかわいそうな子がたくさんいるもん。

ねえ。なんで、ミレーユさんは――――星の数ほどいるかわいそうな子の中から、あたしを選び出してくれたの?

【見つめ合う視線、赤色が、どこまでも不思議を訴えるよう、純粋に、澄んでいた。質問はもう、物語に対するものではなくて】
【彼/ミレーユ/エーノ自身に問いかける形になっていた。いつの間にか少女/夕月/シグレは、物語の中の女の子になっていて】
【だけど間違いなく此処に、現実に居る女の子として、男の子の腕の中に在った。確かな輪郭が、そこに詰まった血肉が、命が】
【嘘偽りなく此処に居るって主張してくる。それでいて、物語の筋がわからないって言う。だったらきちんと混ぜてやるべきだった】
【キラキラ輝くばかりの物語と、血肉で築いてきた現実とを。結び付けて――――ほんとうのことに、してやるのが、きっと】


687 : エーリカ ◆zqsKQfmTy2 :2018/08/13(月) 10:27:31 JY1GydDk0
>>672

【歪を悟られた事。それに由来する権兵衛の笑みなど歯牙にもかけない――筈だった】
【刃が迫るこの状況下での白刃取り。権兵衛の超絶技巧がそれを許さなかった】
【一瞬だけ刃が動きを止めて。彼の笑みを直視せざるを得ない時間が生まれていた】


―――……何、勝手に納得してんのさ。納得される謂れも道理も無いだろう?


【エーリカは瞠目していたのか。それとも仄暗い微笑を浮かべていたのか】
【自身の刃は届かず、反対に権兵衛の目論見は現実のものとして実現される】
【権兵衛に晒す僅かな隙。けれど予断を許さぬ攻防において十分すぎる時間】

【故に、後手に回る。否、後手にも回れない。身体を貫く刀の柄に膝蹴りが入れられ】
【深く深く、柄まで刺さるように突き入れられて。権兵衛がエーリカの刃圏から離れる事を許し】
【最終的には深く刺さった刀を引き抜かれて。脇腹からの勢いある出血を強いられる】


―――ぐぁ、ぁああああッッッッ…!ごふっ……!

……何、言ってやがる。何で……私が私自身を……恐れなきゃいけないんだ?
ったく、死にたがりの世迷言は理解出来ないな……。


【傷口を手で押さえながら膝を付いて、息も絶え絶え。そして指摘されるのは、己が内に隠した本当】
【その言葉を否定するように、鋭い目で睨む。だがその輝きは何処へやら。その眼光、まるで鈍ら】
【戦意は喪失していないけれど、己が不利は自覚して。状況を打開する一手を探る時間を稼ぐのだった】


688 : 名無しさん :2018/08/13(月) 16:36:12 PYq7bHtM0
>>629
【拳での一撃を貰えばそれだけで終わり。更には飛び散る瓦礫にも注意しなければならない】
【一人であるならば或いはその瓦礫も狙い撃つなりして落とす事も出来たのであろうが――と。そんな事を考えて居る最中に腕に触れられる感覚】
【途端に身体が軽くなる。それは人一人を抱えているにも関わらず、自在に身体を動かせるかのようで】
【これで少なからず逃げる事に於いては対等以上になった。――戦えずとも、先ずは逃げられれば其れで良い】

いや、助かるよ――……色々とさ。とは言っても、まだまだピンチなのは変わりそうに無いけど、っと
少し、スピード上げるからね。落ちる事は無いだろうけど、まぁ……安心して目を瞑っててよ
無事に帰れたら何か美味しい物でも食べよっか。……って、そもそもキミは此処から出られるのかな……ボクも出る方法はまだ分からないけど……

【人間らしさの無い彼女に何か喜びを教えるとすれば、何が良いか。遊ぶ楽しさでも無いだろうし、生きる喜びとやらも違う気がする】
【それなら、単純に何か美味しい物。……当然、それは彼女が外の世界でも存在できるなら。否、そもそもこの世界から出る事が出来るのならば】
【檻に閉じ込められていた。この世界にとって不要であるならば、存在すらしない筈だ。其れを態々狭いながらも檻という頑強なモノに、更には地下深くに閉じ込めるとなれば】

【飛来してきた礫の一つを器用に足で蹴落として、宙で身を翻し】
【更なる加速。拳を避けるには十分……十分過ぎる程の速度。2撃、3撃と続いたとして単純な軌道であるならば容易く避ける事が可能な程ではあり】
【尚且つ、狙いを定めさせないように直線で逃げる事はせず。さて、だからとずっと避け続けるのも難しい。これから何処へ向かうか――なんて考えて居る際に新たな声が響き】


……急に声が聞こえたと思えば何を言って居るんだか。正しき者だとか邪なる者だとか、そんなのは相手の見方によって全然違うでしょ
何が正しい何が悪いなんて世の中じゃ明確に決まって居ないんだからさ。結局は良いも悪いも全部勝手な主観だよ
……そんな事より、キミがこの暴れん坊を操ってるならさっさとお座りさせてくれると助かるんだけどね。後で後悔する事になっても知らないよ?

【丁度ゴーレムの胸部に位置する程にまで上昇した頃だろうか。そんな言葉を聞けば毒づく様に吐き捨てて】
【微かに見える人影。攻撃に向かうか――いや、現状得策では無い。それならば、先ずはルーナを安全な場所に匿ってから考えるべき、と】
【ふと辺りを見れば、最初に見た高山。街も破壊された今、目指すは其処か。】
【それに山であれば人工物とは異なり、攻撃されても多少は持つだろう……と。光の見えていた位置に大凡の目星を付ければ急降下を行い】
【何事も無ければ、その速度もあって直ぐに着地出来るであろうが――】


689 : ◆3inMmyYQUs :2018/08/13(月) 17:04:50 qo/HyX5s0
>>664-665

【青年は頭の中で鉄球が跳ね回っているような頭痛に声なく喘ぎながら、】
【懸命に意識を保って、ずりずりと這い寄るように手洗いを目指そうとしていた。──が】

がッ……

【何かまた頭痛とは異なる衝撃が後頭部へ迸った】
【──蹴飛ばされたのだ、と理解した頃には、その犯人は既に手洗い所の中へ消えていた】
【唐突に降りかかった悲劇的な鈍痛と無念に対し、朦朧とする彼が出来たのはただ「うぅ」とか細い呻き声を上げてそこへ蹲ることだけだった】


【────────】


【ミラが口を開いたとき、彼らは揃ってその眼差しを彼女へ据えた】
【円城は空気でも見るような目で、青年は何故か恨みがましさを湛えた目で】

【二人揃うと、その人相にははっきりとした対照があった】
【顔の造形を調味料に喩え分類するという近年の習俗の作法に倣って言うならば、】
【円城は櫻國人らしい塩顔で、ただし言動と佇まいがひどく淡々と飄々としているせいか、】
【塩なのに塩分50%カットという、何か肝心な個性を失ってしまったような、名状しがたい趣が滲んでいた】

【対して青年はソース顔──とはいえ色白なのだが──掘りは深く鼻筋は通り、切れ長の双眸がそこに鋭利な冷ややかさを加えている】
【あの舞台役者じみた大仰なマントは既に脱いでその辺に放り出していた】
【中で着ていたのは仕立ての良い黒いシャツとスラックス。どこかのハイブランドものだろう】

【円城が二十代半ばだとするなら、青年はまだ微かに十代の面影を残していた】
【どちらもまだ若造の齢であるにも関わらず、潤沢な富の匂いを生来の体臭のように帯びていた】


【先に口を開いたのは円城の方だった】


「──真っ先に『その名前』が出てくるということは、
 やはりだいぶ『知りすぎてる』方の人ですね、あなた。

 ミラ……ミラ、クラァケさん。
 それじゃあ、『あれ』に付け狙われるのも道理です。

 ──あなたには隠しても仕方なさそうなので明かしてしまいますけど、
 お察しの通り、私たちは〈黒幕〉の競合他社のようなもの──いわゆる〈円卓〉というやつです」


【その淀みない語りはしかし何かの書類に書かれた事項を確認するために読み上げているような、淡々としたものだった】
【着物のずれを直しながら、懐手をして】

「私は、円城、と呼んでください。
 そっちの彼は────」

【円城が青年の方へ目をやる。彼はそれに目を合わせなかったし、引き継いで名乗ることもなく黙っていた】


「────『ハムレット』
 そう、『ハムレット』。今はそういう名前ということにしといてください」


【円城がそう告げると、青年は軽く舌打ちをした】
【まるでその名が忌々しいものであるかのように】


【そうして所属と名を──やや意味深なものであれ──明かしたところでも、円城は終始笑みを作らなかった】
【大気中の窒素でも眺めるような芯のない瞳の中に、ただミラの姿だけを映し続けていた】

【「ところで──」】

【すると再びその口が動いて、会話の切れ間へ差し込むように言った】




「ところで、
 銃の弾は込め直しましたか」




/↓


690 : ◆3inMmyYQUs :2018/08/13(月) 17:08:02 qo/HyX5s0
>>664-665


【──ヴウ……ン……】

【某かの電化製品、恐らくは冷蔵庫であろう、が低く振動する音】
【平時であれば誰の気にも留まらないはずの音が、唐突の静謐の中で際立って響いた】


「──別に助けた訳じゃないんですよ。


 あまり見られたくないものを見られたので、
 そのまま野放しにしておく訳にもいかなくて。

 だから“色々処理”するのに都合の良い場所まで来てもらっただけなのですが──」


【ベルトコンベアーに乗った食肉の質を確かめる管理責任者のような眼差しがミラを見ていた】
【和装特有の懐手。その闇のうちへ隠された手は、今何を掴んでいるのか】


【「──撃つなら『一発』だけにしたいんです。ご近所迷惑ですから」】


【(かちり)】
【何かの硬質な金属ばねを起こす音が、その懐から漏れ出た】


「──ああ。今から弾を込めるのは無しですよ。
 すみませんが先に質問させてください。ミラ・クラァケさん」


「そこまで事を知っておきながら、無事に生き延び、かと言ってナンバーズのようでもない、
 わざわざ〈婦警〉の格好までして、何かを探るように街をうろつくのは一体、『何』の────」


【円城の瞳が、ちらと動く。その視線はミラの左手薬指を捉えていた】


「──いえ、『誰』のためなんですか?」


【その薄い眼窩に据わった眼はどこまでも平坦であった】
【目つきも声色も変えず、凄んだりする様子もなかった】
【ただ惰性でテレビを眺めるような眼であり、しかしそれ故にいつでも『電源を切り』かねない佇まいがミラの前にあった】


【──『ハムレット』たる青年は組んだ手を膝の上へ置き、冷厳な顔でどこか遠くの一点を見つめている】
【彼女がここで生きるべきか死ぬべきか、それはこちらにとっての問題ではない、とでも告げるような氷点下の無言を湛えて】



【──唐突なこの尋問に対して、しかし彼女が主導権を握り返す手が無い訳ではないだろう】
【触腕で叩き据えるなり、青年を人質に取るなり。──もっとも、】
【二対一。見知らぬ家、超高層階。そうした状況下でもなお、そうする勇気と利益を見いだせれば、だが】


691 : 名無しさん :2018/08/13(月) 18:26:55 z0YEX0VM0
>>687

世迷言なもんか。何か妙だと思っていたがようやく理解った
なんだ、手前さんも己と一緒じゃないか

【戦況は再び適当な間合いに。手元に帰って来た刀は血に彩られ、けれど直ぐに雨で洗い流されていく】
【今や二人の足元は自己の負傷と返り血でどす黒い赤に染まっている。水溜りに滲んで揺蕩う紅は二人の生命の結晶】
【砂時計が刻を刻むように、氷が溶けて消えてしまうように】

斬る事か、斬られる事か――あるいはその両方か
本能は“死は快楽である”と理解している。他方、理性は“死は禁忌である”と理解している
だから手前さんは、本能の方を押し込めて自分の世界観を守ろうと。……そういう事じゃあないのかい

【微笑みを湛えて語る様は子羊に教えを説く聖者のようで、然し日常における小さな発見を大仰に語る童のようでもある】
【これはエーリカへの宣告のつもりなのか、はたまた何も考えていないのか】
【二人の視線が交わる。依然弧を描く権兵衛のそれに対して、エーリカの眼に輝きは最早無い】

武士道は死狂ひなり。認めなよ――手前さんはもう“死狂イ”なのさ

【左手を鞘に引っ掛けて、右手で納刀。一体何を思ったのか、不意に権兵衛が刃を鞘へ納める】
【奇妙なのは、それが闘争の中止を告げるものではないという事。納刀してからも権兵衛は腰を低く落とし、刀の柄から手を離さないでいるから】
【――つまりは、居合の姿勢。此処まで構えらしいものを取ってこなかった権兵衛が取った、唯一の構え】

【策を講じるだけの時間を欲したエーリカからすれば、ここで攻め手が止まった事自体は僥倖かもしれない】
【然しお互いの刃が届かぬような間合いでなお居合の態勢を取った事はどう受け取るか】


692 : ◆DqFTH.xnGs :2018/08/13(月) 18:35:55 lwQQgHPs0
>>689-690

【改めて2人の姿を見る。随分と対称的な2人だったが──なるほど。普段相手にしているカジノ客……】
【彼らと同等、あるいはそれ以上の金の匂いがした。もっとも自分はディーラー。商売人じゃあない】
【ここで商談をするつもりは毛頭なく──人相で言えば、ハムレットと呼ばれた方が好みだった】
【感情を表に出さないことの不気味さは、婦警のせいで十分身に染みている。円城という彼からは】
【その婦警と似たようなものを感じたのだ。ニコニコ笑いがない分、円城の方がマシに思えたが】

【硬く乾いた音が響く。は、とミラの笑みも同時に乾く】
【その音が何を意味しているのか。知らないわけではなかった】
【「じゃあ、今度からはそうさせてもらうわ」──生きていられたら、の話だが】


(こいつらは円卓────なら、少しは生き延びる“目”はあるってぇことか)
(だが…………確実にここから出れるかってぇ言われりゃ、正直微妙なトコだぜ)

(おまけに“見られたくないものを見られた”、か────はン)
(ジルの名前出しちまえば、口封じのためにヤられかねねぇし…………)
(──迂闊にジルのこと喋っちまったら、ジルにも危険が及ぶかもしれねぇ、って感じか。クソが)
(詩のことと円城の名前…………ジルに報告しといて正解かもしんねぇな)
(無駄死にっつぅのは最悪の展開だから、よぉ────)


誰、誰…………誰、か。随分と難しい質問だが────
黒幕連中にムカついてんのはあんたらだけじゃあねぇってのが答えだ

目立ちすぎなんだよ、黒幕連中は。あんたらみてぇに静かに蠢いてりゃいいものを、よ
特区だのなんだのって悪目立ちしてやがる。そりゃ、敵が増えるのも道理ってぇやつだ
あたしは婦警のやつに恨みがあるから、あいつをぶっ殺す為に動いてる
他の連中だって、自分らの理由のために黒幕潰しを企んでやがる

──あたしが今もこうして生き延びていられんのは、よぉ
そういう“レジスタンス”みてぇな連中のおかげさ


【ちゃぽんとペットボトルを揺らしながら、窓の更に側へと寄る。地上は遥か遠く】
【足元にすら、夜景とも呼べる煌めきがあった。闇に輝く、無数の光。高すぎだ、と小さく呟き】


んで…………詩、っつったか。ハムレット
冥途の土産にはしたくねぇが、少し教えちゃくれねぇか────ありゃ一体、なんなんだ

あんな、人が無差別におかしくなっちまうようなモンで黒幕が潰せるワケでもなし
おまけにあの連中、あたしや曽根上をわざわざ狙って────…………

…………、……………………狙って?


【思い返せば、彼らは“共喰い”をしていなかった。揃いも揃って曽根上の身体に寄ってたかり】
【出来る限りの暴行を加えていた。──ゾンビは生者の肉しか食わない。それもまたセオリー】
【考え込むように、窓に額を当てる。ひんやりとした冷たさがクールダウンを促してくる】
【──丁度、2人には背を向ける姿勢だった。腰ほどもある長い赤髪が、後ろ姿の半分をも占めていた】


693 : ◆RqRnviRidE :2018/08/13(月) 19:22:51 vZw8nhd20
【水の国──夕刻】
【シンボルとなる中央の噴水に子供達が集う。その周囲では親が各々談笑し、平和な風景を形作る】
【子供らの目線は噴水の前に立つ、ある存在に釘付けになっている。正確には、そのトスジャグリングの一挙一動に】
【空中に浮くジャグリングナイフの数は9とか10ほど、宙で回転する度にそれは夕陽を受けて鈍くぎらつく】

……よ! ほっ! ホラ、ホラ、たの、楽しいでしょ、凄いでしょぉ!
んん、んでぇ、もいっこ……つつ、追加しちゃう、……ヨっと!!

【注目の的になっているそいつは、ボイスチェンジャーを通したかのような愛らしく高い声をしていて】
【足元に散らばるジャグリングナイフを一つ、足の爪に引っ掛けて頭上へと高く放り上げる。取り落とすことなくトスの輪へと加え】

ねーえーみンなぁ! オイラぁ、ま、だまだ投げられそう、だよぉ!
ホラ、ホラ、そ、──そこなキミ、手持ちの何か、ヨヨ、寄越してご覧よ!
ここ、こん中に、放ーり込むだけで、いい、いーからさぁ!

【ぎこちない口調とは裏腹に、ジャグリングを続けながら軽快なステップを踏み、そいつは顔ごと辺りを見渡して】
【視線を向けた誰かをご指名、トスしている物の中に何でもいいから何かを投げ入れてくれとお願いをする】
【そいつの足元には、いくつ使うつもりなのだろうかナイフがまだ転がっていて、それを投げ入れるのもアリだろう】

【大道芸を披露するのは、マゼンタの体とシアンの瞳が特徴的な、デフォルメされたデザインの『ジャガーの着ぐるみ』】
【2.3m程の身長で、腰に太さの異なる黒のベルトを二つ重ねて巻き、不気味な笑顔を浮かべている】
【太い方のベルトには、名前だろうか「Zampach Juggernaut」とポップな字体で刻まれており】
【白い腹には、中央がハートマークとなった、ブドウのような果物のイラストが描かれていた】


694 : 名無しさん :2018/08/13(月) 19:39:07 ExKbu4l.0
>>637

…俺が…?

【ずっと自分の未来の話をされていてなんとも言えないむず痒さを感じていたがさらにその言葉には】
【違和感を感じて…未来の自分の手柄を過去で前借りしてるような気分でもあり、何かが決定づけられているようでもあり】
【一体、未来のチンザノ・ロッソはいかなるような存在になってしまっているんだろう。想像し難かった】
【なぜならば今までのチンザノ・ロッソはそんな褒められたもんじゃない。少なくとも自分が知っているチンザノ・ロッソは――】

―――……なら、"俺”に聞くことにしよう。俺なら多分、気にせず何でも喋っちまうことだろうから。
今日のことさえ良ければいいんだよ俺なんて――――………ッッ!!

【倒れる椅子、床の上に転がって、苦痛の表情を浮かべる彼女】

おい……っっ!しっかりしろ…!

【がたんと椅子を揺らして立ち上がり、彼女のもとへ駆け寄った。しゃがみこみ、抱えあげて、声を掛ける】

どういうことだ…発作か何かか?…クソっ!

【今はその原因だとかを考えている余裕はない。彼は店員におしぼりを頼み、それを彼女の額に当てる】
【何の意味があるかはわからないが今できることはそれぐらいだ。抱えたまま、ポケットから携帯電話を取り出す】
【何処かの番号をプッシュし、相手が出るのを待った】

……俺だ。わかるだろ?頼みがある。……そうだ。今から言うところに車を一台、それと"ホテル”をとってくれ
医者は呼べるか?…いいや、外科じゃない。とにかく何でもいい。急いでくれ…"ゴーストマン”。

【それから、店員から詳細な住所を聞き、それを伝えると電話を切った】

心配するな。今迎えが来る…何も考えるな。――――全部、うまくいく。

【だがこの5分間は少女を抱きかかえて、頭をなでてやるしかできない】
【ぎこちない店内を落ち着かせるために、適当な文句を並べて、ポケットの中の金を置いていくしかできない】

【電話から五分きっかりに店に若い長髪のアロハシャツでハーフパンツのサンダル履きの男が入ってくる。】

『車を頼んだのはアンタか?用意できてるぜ――――』

【そうして彼は少女を抱えあげると、店員にかるく挨拶をしてドライバーが用意した車に乗り込むだろう】
【ドライバーも雇われた人間で事情を聞こうともしない。プロフェッショナルだ。ただ目的地まで最適に送り届けるだけ】
【その場所はこの街でもそこそこ歴史のある立派なホテルだ。何も起きなければ、車は搬入口につけられる】
【そして、待っていたベルボーイがルーム508のカードキーを渡してくれることだろう】

/>>638
なんと!大助かりの資料ありがとうございます!!ぜひとも活用させていただきたいと思います!!


695 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/13(月) 23:03:11 kQ81MPqQ0
>>686

【そばに寄る少女の躯体は存外に小さなもので、 ──── それが余計に華奢な儚さを理解させる。このまま四肢に抱き留めていれば、包み込んでしまえるように思えた】
【ゆえに鼓動は重なって、共鳴して、高ぶっていく。ふたりだけの距離感で、肺腑の一番おくそこに溜まった吐息を共有する。せなに回した指先に、縋るように力を込めて】
【然してそれは衝動を抑える為ではなかった。もっと無垢で純粋で迂遠な感情が伝染していく。そして何処かの1秒で、揃えた素足は踏み越えてしまうのだと悟る。】



     「 ─────── そうだよね。やっぱり。」


【 ──── 分からない、と言われたのなら、自分も分からない、と答えた。困ったような乙女の笑い。甘酸く恋する糖蜜の滴る声と吐息。】
【澄み渡る紅色の双眸が当然の疑問を投げかけるのなら、もう迷わない。青い瞳が覗き込んで、例え向かうのが煉獄の奥底として、飛び込んで息絶えても憚りはしない。】
【御伽噺に終わりを添えなければならないのなら、 ─── 夢の続きは目覚めの先にあればいい。慈しむような幽けき指先が、ぬくもりに潤った掌が、そっと少女の頬を包んで】
【ゆえにこそ彼は額を重ねる。みずみずしい唇が、甘く優しく言葉を紡ぐ。誰も知らない物語の書き出しを、微笑みと共に。】


「 …………… 言ったろ?」「一番、最初に。」

 「キミは、 ─── とっても賢くて、可愛くて、素直な子なんだ。ボクの友達でいてくれたんだ。」
 「ボクの繰り言も聞いてくれて、夜遅くの電話にも付き合ってくれて、どうしようもない時は頼ってくれて、」
 「 ……… そしたら、いつの間にか、隠し事なんて出来なくなってた。」「ボクにとって何より大切な人だって、思えるようになったんだ。」

 「そんなキミが、辛く苦しい思いをしていたら、 ─── 幸せにしてやらなきゃ、ボクはボクでいられなくなる。
  「だってボクは正義の味方なんだから。」「キミがいなきゃダメなんだ。キミを幸せにしなきゃダメなんだ。キミと幸せにならなきゃダメなんだ。 ……… だから。」


【 ──── 途中で、何度も彼は泣き出しそうになるのだろう。嗚咽に言葉を詰まらすのだろう。息を呑みそれでも情念を吐き出すのだろう。だって、愛しているから。】
【もう片方の手が、少女の手を取る。王子が姫を誘うようにしたかったのに、どうしたって縋るように指を絡めてしまうけれど、今はそれでよかった。それだけでよかった。】



       「 ─── だから、シグレ。」「ボクと一緒に、踊ってくれるかい?」



【何より微かに女性的な丸みを帯びて真白い、端正な童顔のはにかみは、屹と天使だって恋をするだろう。 ──── そして、きっと彼にとって、少女は天使だったから。】


696 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/13(月) 23:28:37 WMHqDivw0
>>695

―――――――――、

【一緒に踊る、その言葉の意味がわかってしまった。わかってしまって――胸が苦しくなる】
【のどがきゅうと悲鳴をあげた。笑顔がきれいすぎてびっくりしちゃう。キスしたいって、一瞬、本気で思っちゃった】
【でもまだ――――ダメだって、自身を縛り付けるものがいましめてくる。ならばその言葉に返すのは、】

…………あ、たしは、……あたしじゃダメだよ、だって、……ミレーユさんは、あたしのこと、
どこからどこまで知ってる? ……、きっと全部知ってくれてるのかな。だったら、わかるでしょ?

あたし、人間じゃないよ。永遠にこの姿から成長しないの、……ミレーユさんがもっと大人になっても。
ずっとこのまま。だから――――子供とかもつくれないし、それから、……たくさん、いろんなことが、不便になるよ。
だからね、…………あの、えっと、……ミレーユさんはもっと、違う人と、しあわせになれるよ。

あたし、は、………………ミレーユさんのこと、幸せにしてあげられないよ。だから、

【――――震える音階で紡ぐ、ひとつひとつを諦めさせてゆくような言葉。はたしてそんなもの通じるだろうか】
【けれど言葉にはひとつも嘘を混ぜなかった。成長できないのも本当、子供を作れないのも本当】
【然して、ミレーユのことを幸せにしてやれない。ミレーユはもっと他の違う人と幸せになれる】
【その、あきらめに取りつかれた言葉だけは、――――本当に? って問い返されたなら。きっと詰まってしまう】

【こんなにまっすぐ見つめられているんだから。本当のことしか言えなくなってしまいそう。けれど】

……………………、あたしばっかり幸せにしてもらうのは、きっと、不公平だから――だめだよ、
きっとミレーユさんは、あたしと踊っても、……幸せになれないよ。ねえ、……そうでしょ?

【諦念に囚われたココロが未練がましく言い続ける。私はあなたを幸せにできない。だからだめ】
【言ってしまえば――――ぽろ、と涙を零してしまうんだった。下を向く。あおい瞳を、直視できなくなって】
【……胸に縋りついて泣き始めてしまうんだろう。苦しいから。嬉しいのに。応えてやれないと思ってて、(……本当に?)】


697 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/13(月) 23:48:05 smh2z7gk0
>>679

―――そうか、なればそう思っていればいい。その方が〝楽〟だ。
どうした?飼っていた犬の話もロクに出来ないほどに声を震わせて、まだ〝夢〟心地か?

【声を震わせ、表情が乱れる蛇の少女から視線は逸らさない。だが外套の少女の瞳もどこか悲しそうに揺れている】
【訴えかけるように言葉を重ねるが、所詮は先程出会ったばかりの間柄だ芯までは響くまい。】
【諦めたように息を吐くと、纏っている外套に手をかけるだろう。】

駄目ではない。駄目ではないさ。―――だがこれは〝別問題〟なんだよ。
結局互いの答えは決まっている、結論ありきの平行線は意味はない。残念だがな。

―――先程も言ったが、私は貴様の〝今まで〟など知らない。
知っているのは目の前にある〝異端〟とそこに立つ相手だけだ。〝今〟の貴様は何者なんだ―――?

私は、〝教会〟。これだけ言えばもう分かるだろう?
私は、貴様を狩るためにここにきた〝異端狩り〟―――名は〝銀〟のアンゼリカ。

【そう言うと纏っていた外套を脱ぎ捨てる、その下にあるのは純白の修道着。】
【〝教会〟―――かつては世界を席巻した一大宗教。だが内部の腐敗や混迷する世界の中で徐々に力を失った勢力】
【だが、この〝銀のアンゼリカ〟のように未だ異端となる存在を狩り続けている者は多い。】

【そしてもう一点、外套を脱ぎ捨てたアンゼリカの頭部に目が行くだろう。】
【ミントグリーンの髪とそこにあるのは〝耳〟。それもまるで犬のような〝動物の耳〟である。すなわちこの少女は】
【そこへ思考を向かわせる前に、アンゼリカは大きく両手を広げる。そして広げた腕の周囲に爆発的に魔力が集約される。】

対象を異端と認定。抹消せよ―――神造聖装〝滅罪の銀腕/イノセンツ・アガートラム〟ッ!!!

【ドゴンッ!名を告げると同時に、アンゼリカへ〝銀色の雷〟が落ちる。立ち込める砂塵、その中から現れるもの】
【―――それは巨大な腕だった。アンゼリカの両腕、そこに身の丈を超えるほどの巨大な銀色の籠手、否パワードアームが装着されている】
【アンゼリカはその巨大な右腕を蛇の少女へと向ける、直後。掌から蛇の少女目掛けて衝撃波が放たれる】
【防御もせず直撃すればダメージは勿論かなりの距離を吹き飛ばされてしまうほどの勢いであるが、軌道自体は単純だった。】


698 : エーリカ ◆zqsKQfmTy2 :2018/08/14(火) 00:02:05 JY1GydDk0
>>691

【止めろ、止めろ。それ以上は口にするな。―――……口にしないで】
【死に対して昏い愉しみを見出しているなどと、死に触れて生を実感できるなどと】
【そんなの。そんなの私じゃない――違う、違う、……違う?】


――…認めるもんか。誰が……アンタと同類だって?
笑えない冗句、だ。……彼岸と此岸は違う。私とアンタだって…違う、違うんだよ。

死が……快楽な訳がないだろうが。そんな事を口にするのは、狂人だって相場が決まってる。
だから、死狂い等と呼んでくれるなよ……。死にたがり風情が、…知った風な口を――利くなッ!

【口では否定すれど。快楽を死に見出す自分は否定しきれない】
【無邪気な幼子が蜻蛉の羽を毟って眺めるような快楽。団子虫を丸めて靴底で踏み潰す悦楽】
【死に触れる昏い愉しみ、喜び、スリルが。それらを良しとする感情が自分の中にあるのがおぞましい】

【故に認めたくない。けれど、強く否定できなくて口調は弱弱しく、吹けば消し飛ぶ程の繕い】
【嫌悪するには己は死に狂って。享受するには己は半端者で。揺らぐ表情は彼の言葉が正鵠を射た証拠に他ならない】


               ヘルエッジ・オーバーフラッド
         ―――Hell Edge Over Flood―――


【問答が終われば、権兵衛はこの戦闘を通じて初めて構えらしき構えを取っていた】
【距離が離れた場所での居合いという構え。しかし刃圏に入らぬ位置でのそれに圧力を感じて】
【それはまるで銃口を突きつけられるような圧力――必殺の切り札に思えてならなかった】

【ソレに対してエーリカも鬼札(ジョーカー)を引く。自身がひた隠しにした本当ごと権兵衛を必殺する為に】
【零れる血液。溢れる感情。それらに紛れて魔力がエーリカの周囲を漂い、やがて無数の刃へと姿を変えて】
【権兵衛の白装束を紅染めせんとして牙を向く。抜かれる前に殺す。放たれた無数の刃にはそんな決意が篭っていた】

【けれど放たれた無数の刃は何処か精密さに欠けて、どこか単調な動きを見せていた。猛者である権兵衛ならば――】


699 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/14(火) 00:02:15 smh2z7gk0
>>682

あーそうですかい。な〜んかやり辛い相手だなァ。
まぁお話なら喜んで、私も荒事よりそっちの方が好きだからね。

でもどうやって―――わひゃあ!!?

【こちらの調子に合わせてくるような銀髪の女性の態度にバツが悪そうに口を尖らせる。】
【苦手なタイプだった、いつもは自分が相手に合わせる質だから。ただまぁ悪い気もしなかった。】
【意思を伝えたあと銀髪の女性へと問いかけるように顔を向けた瞬間、持ち上げられる。変な声がまた出る】

【そしてその後に起こる事についてはただ「あわわわわわわ」と壊れた玩具のように声を出すだけだ。】
【気が付けばビルの屋上へ着地、そっと地面に下ろされれば銀髪の女性へと詰め寄るだろう】

〜〜〜あのさッ!こういうのはやる前に言うのが礼儀ってもんじゃないか!?
せめて「しっかり捕まってろよ可愛い子ちゃん」とかそういう気の利いたセリフは言えんのかね!?

ハァ、これだからこの国は嫌なんだ。万国ビックリショーか〜〜〜い!

【癇癪を起した子供のようにぎゃーぎゃーと喚き散らす。非常にやかましい。】
【そのあとひとしきり騒げばハァハァと肩を揺らして息を吐く。銀髪の女性とはえらい違いだ。】
【ともあれ少し落ち着いたようで「で、あいつは追ってこないのかね?てかあんたは結局何者?」】
【などとまくしたてるように問いかけるだろう。やはり騒がしい。】

【―――晴天だったが、二人がいるビルから少し離れたところに〝銀色の雷〟が落ちた。ただこの世界においてはよくある光景だ】


700 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/14(火) 00:06:55 kQ81MPqQ0
>>696


「 ──────……………… 。」


           「 …………… ううん。」


【永遠に等しい静謐と沈黙の先、 ──── 残酷にも、少女の言葉は否定される。静かに横へ振られた首から、さらりとした黒髪が、少女の頬を撫ぜて】
【縋る涙を人差し指に拭い、そっと彼は己が爪先に口付けるのだろう。「 ─── だってこんなにも、キミの涙は塩っぱいから。」くす、と笑って】
【 ──── けれども、頤を上げるのならば、上げずとも静かに抱き上げて、彼/ミレーユ/エーノは言葉を綴る。また視線を重ねて、然し悲しそうに縋る顔をして、青い瞳から溢れるのは、涙。】


「 ─── だったら」「その呪いだって、ボクが解いてみせる。」「それだけじゃない。キミが望んでくれるなら、人間なんて止めたっていい!」
「ボクにはキミしかいないんだ。 ─── シグレとじゃなきゃ、しあわせになれないんだ!」「大切な人を見捨てたら、ボクは一生しあわせになんてなれやしない!」


【告解の中に混ざるのは激情。 ─── 濡羽色の細やかさを振り乱して、ぽろぽろと雨垂れのような雫は染み渡って、】
【少女が諦めさせた/諦めようとした言葉を、ひとつひとつ、否定していく。彼の青い瞳に映すのなら、紅い瞳から溢れる涙は、少女の諦観に沈んだ切望に見えたから。】


「けれど、」「 ……… けれど」「けれど ──── 」「キミが幸せでいてくれたら、それだけでボクは幸せになれるんだ。」
「キミに愛してもらえたら、キミを愛することができたら、」「それだけで、 ……… それだけで」「それだけで、いいんだ。」「だから、」「 ……… だから」

「お願い、シグレ。」「 ──── 愛してるって、言ってくれ。」


【 ──── だから最後にはそう告げるのだろう。ひとつの線を踏み越えて、後戻りのできない世界に歩みを進める。その彼方で待っている笑顔を、彼は信じているから。】


701 : 名無しさん :2018/08/14(火) 00:33:08 lHOWPiyk0
>>697

…………犬は飼ってました。だけどアリアさんとは別なの……。

【――吐息が震える、漏れる言葉はやはり不明瞭であり不確実だった、何の話をしているのかが分からない。まるで悪夢に魘されるみたいに】
【ぐしゃと乱した毛先に、並の人間であれば一舐めしただけで死ねそうな汁が纏わる。薄い藤色の髪同士を綴るようにねばこくまとめて、瞳の紅色にかぶさる】
【だからふらふら触れるような視線がよく目立った。どうかしている人間の目だった、ひどいストレスに曝され続けているような――今もまさに、そうであるかのような】
【やがて指先は口元を隠すように添えられるのだろう。であればよりいっそうひどく不安定な目つきだけがうろうろと這いずって、どうしようもない】

そうですか、――、異端。ですか? ですけど、それは、単に主流ではないだけではないでしょうか……。
三大宗教の一つがもともと私たちだったなら。それを異端という人間など居ないでしょう、――、"あれら"に祈るのと、何が違うのでしょう、
私たちはずっと信じていたのに……。辱められたんだ。穢されたんだ。……なのに、なのにあいつらが被害者ぶる、――ッ、どうして、

――ッあいつらが私たちの神様を穢したんだ、その尻拭いをさせられているんだ、――ッ、なのに、なのに……ッ、ッッ、なのに!
誰も居ない――、サーバントの一人も……、ッ、――っ、ううん、わかってます、分かってるんです、"そんなの"ありえないから。

そうですね……、……あらかたパグロームに殺られたかと、思ってましたけど……。

【そうした指先もその内落ちていく。柔らかそうな胸元を撫ぜてから、すとん、と、そのままおろされて】
【俯いたなら前髪がそろりと顔を隠す。あるいは涙すら落としてしまいそうな顔をしていた。異端と断じられたから? ――きっと、その前から】
【やがて声に隠しようない怒りが混じりこんでも。それでも泣き出してしまいそうな瞬間はいつま続いて、ゆえに、そのうちに相手に向けられる瞳は、至極鮮やかに】

――――――――銀色のワンちゃんって、結構、居るんですかね? 

【――怒りながら泣いてしまいそうな表情から、一瞬、怒りだけが剥落する。であれば残るのは涙を湛えた瞳と、脱力したような笑み】
【けっきょく涙は落ちていかなかった。その代わりにというわけでもないけれど銀色した雷が落ちて――、ざあと砂塵の晴れるときに、きっと少女も"変貌っている"】
【とはいえ姿が変わったとかではない。その間に彼女はきっと切り替えるんだった。いろんなものを切り捨てる。――能力を使う必要もない、だって、"できるから"】

【(そうだって信じてここまで来たから)】

/長くなってしまいましたので……


702 : 名無しさん :2018/08/14(火) 00:33:25 lHOWPiyk0
>>697>>701

【――――――びしり、と、虚空が冱つるような音がして。であれば次の瞬間、少女と攻撃のすきまに、色鮮やかなマゼンタ色の障壁が構築されるのだろう】
【少女は初撃を受け止め切ることを選んだ、――それはあるいは何か意地にも似ているのかもしれない。いっとう映えるマゼンタ色は、それそのものが阻害の寓意であり】
【阻害という概念そのものを色鮮やかに溶かして使役する異能。――ゆえに防御性能は高かった。しかしてびしりと走る亀裂、数秒後に、ばきり、と、割れ散るのなら】

――自分たちこそ主流であるかのように嘯き、他を異端と断じ排して回る集団。よっぽど思いあがっていないと出来ない芸当です、見習わないとですね――?

【嘲るような声音に同調するかのように――空中に散らされた欠片。そのいっとう尖った切っ先が、くるり、と、相手へ差し向けられて】
【それはさながら硝子片の雨に似ていた、違うのは上からでなく真横からの軌跡であることと。――鮮やかなマゼンタの欠片を身に受ければ、その傷口が、微かに、しびれる】
【ならば麻酔薬の作用にも似ているのかもしれなかった。――とはいえ、割れ砕けた残滓であるなら、全体的な数は多くとも脅威たる刃物になりうるものはそもそも少なく】
【撃ちだす速度はわりに早くともやはり直線的。だから、――――あるいは、それが本命でないと、気取らせて】

【――そろ、と、音もなく。少女にごく近い虚空よりマゼンタ色のリボンが幾条も沸き上がっていた、その先端を鋭く尖らせたもの、あるいはそうでないもの】
【どちらも数えれば両手で足りる。割合もまた半々であった。少女のかざした指先の仕草、指揮者に促された音符たちのように、躍り出たなら相手へ向かって虚空を駆けるのだろう】

【そうして、あるいは、気づくだろうか。先端の鋭い方はまるでその命ごと乱雑に切り刻みたいかのように、胴や頭や、わりに致命的な部位を狙い】
【先端が鋭く尖っていない方は、――まるでそのまま相手を絡め取ろうとするかのように、腕や足や、その動きを制御するような部位を狙う】
【――だけれど、それもまた軌道は素直であった、撃ち出した後に制御も出来ないのだろう。であれば一度避けてしまえば、ただの無意味なものになり】
【――――あるいは、破壊することも叶うだろう。先ほどの障壁よりも薄ぺらで速度を重視したものなら、同じだけの強度は出せるはずなく、きっと、たやすい】


703 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/14(火) 00:36:58 WMHqDivw0
>>700

【――――、聞いてしまった。抱き上げられて、目を見てしまった。そうしたらもう、逸らせない】
【見開いた眼からぼろぼろ涙が出てくる。ひとことひとこと、全部うれしい。だのに】
【生きていることそのものが呪いみたいな存在だった。だからきっと解けるはずがない、あきらめてよって、言いたかったのに】

【それだけで本当に幸せになれるっていうんなら。その言葉が嘘じゃないって約束してくれるなら、】



――――――――……やだ。

だって不公平じゃない、……ミレーユさん、あたしのこと、……ほんとの名前で呼ぶくせに。
「ミレーユ」って本名じゃないんでしょ、どうせ。……なのに教えてくれないの?
そんなのずるい、あたしばっかり、きちんとした名前で呼ばれて、愛してるって言われて、
あたしには――――あなたの名前、呼ばせてくれないの? ずるいじゃん、そんなの、


【――返す言葉は駄々っ子じみて幼稚だった。そっちばっかり本名で呼んでくるのは不公平だって】
【言うから。言うなら――――それならば】


あなたの名前をおしえてよ。そしたらちゃんと――――ほんとうに、愛してるって、言えるから、…………、


【「本当のこと」を全部教えてくれって言う。それならやっと、こっちだって、本当のことが言えるから】
【境界線の上に素足を乗せて。踏み込む準備なら出来てる、あとはあなたに教えてもらうだけ――――】


704 : 名無しさん :2018/08/14(火) 00:59:55 z0YEX0VM0
>>698

手前さんは――いや、良い。ここから先は、手前さん自身の問題さな

【権兵衛が刃を納めてから数拍ほどの時間。時が止まったかのように、風が凪いだ】
【先に動いたエーリカが、激昂と共に放ったのは刃の嵐。先走った数本の刃が傍らを通り過ぎたが、成程、その数本が既に銃弾のような鋭さ】
【質も量もこれまでより格段に上、どの攻撃よりも明白に“死”を意識させる必殺の力。それを理解すれば理解するほど――権兵衛の口角は吊り上ってしまう】

【嗚呼、死ぬ。あれに巻き込まれれば死ぬ、八つ裂きにされて死ぬ。滅多刺しにされて死ぬ。故に、生命の懸かったこの数瞬はきっと至福――権兵衛だけでなく、エーリカにとっても】

実を言うと、己も一つ“手品”が使えてね。使いどころが難しいもんで、今まで使わずにいたんだが
生憎、お互いに時間が無い。このまま続けると、勝った方も手当てより先にくたばっちまうだろうからな

【権兵衛に極端な負傷は無い。だが出血していた時間はエーリカよりずっと長く、近接戦闘を軸としていたが故に運動量も激しく】
【あたかも余裕があるかの如く饒舌に語ってはいたが、その実、権兵衛の意識には霞がかかりつつあった】
【だがお互いに疲弊した今なら十二分に命中の見込みはある。そう踏んだから構えて見せたのか、自らの唯一にして最高の『技』を今放たんと】

【やがて、刃が雪崩を打って権兵衛へ迫り――時が、再び動き出す】


――――――――


【正しく“一瞬”の出来事。次の刹那には、権兵衛はもう刀を振り抜いている】
【同時、巻き起こるは刃状の衝撃波。それそのものは単なる力場故に形は無いが、知覚自体は可能であろう――あまりの威力故に生じる“大気の歪み”という形によって】
【音を置き去りに戦場を駆け抜け、全てを断ち切る無の刃。それは権兵衛に迫る刃の群れを両断するに飽き足らず、そのまま本体であるエーリカをも呑み込まんと】
【刃が壁になって威力は削がれてこそいたが、決着には十分だろう。問題は当たるかどうかだが……】

――ぐゥッ……!?

【そして権兵衛の一撃が強力無比とはいえ、エーリカの“切札”が持つ質量はあまりに膨大】
【今の一撃で全て弾き落とすにはあまりにも無理があった。必然、いくつかの“斬り漏らし”が権兵衛の肉体を穿つ】
【おまけに、刃たちが貫いた部位は権兵衛の“脚”や“右腕”も含まれていた。……打つ手はもう無い、今の権兵衛に出来るのはただ、事の成り行きを見守るだけ】
【結果は如何に】


705 : アンゼリカ ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/14(火) 01:36:32 smh2z7gk0
>>701>>702

違うな、主流だとかそんな事は関係ない。単純に貴様は、貴様らは道理に反する。
―――方法論の問題なんだよ、それがあまりにも〝外れている〟からだ。
何度でも言おう、いい加減下らぬ〝夢〟から醒めろ。その〝夢〟に実体はない。

集団ではない、あくまで私個人の道理に基づいて貴様を〝狩る〟

【対して銀色は落ち着いていた、蛇がそうであるように既に〝切り替え〟は終わっていたのだ。】
【あとは目の前の〝異端〟を刈り取る装置となるだけ、ただそこには幾分かの人間性が残っている。】
【飛び込んでくる残滓には両腕を体の前でくっつけるようにして受ける、何しろ身の丈、幅を超える腕だ盾にもなりうる】
【いくつか、特に脚部周辺にすり抜けた残滓が掠り一瞬声を漏らすがそれだけに止める。痺れを振りほどくように足を踏み出す。】

―――ッふ!

【続けて放たれるのはマゼンダの波、それに対してアンゼリカは正面から右の銀腕で殴りつける。】
【またもすり抜けたいくつかはアンゼリカを刻む、鋭いものは肩を裂き、絡めとるものは脚の自由を奪う。】
【ただそれでも銀色は止まろうとしなかった、強引にそのままの勢いで蛇の少女を殴りつけようとするだろう】
【再三書いてはいるが、二人の少女の身の丈大の腕だ当然その拳も巨大である。故に直撃すれば危険。】
【ただ、放たれたマゼンダのリボンが絡みついた事によって動きは軽やかとは言い難い。回避は可能だろう。】

【鋭いリボンによって切り裂かれたアンゼリカの左肩から見える肌、そこには〝銀色〟に光る紋様が浮かび上がっている。】


706 : エーリカ ◆zqsKQfmTy2 :2018/08/14(火) 01:53:19 JY1GydDk0
>>704

【両者の必殺による正面衝突――それは刃鳴り散る空虚に血塗られた道】
【地獄の淵から溢れ出す刃は、清廉にして洗練された刃と鎬を削りあう】
【圧倒的な数の暴力に対するは、究極までに突き詰めた一振り。一対多の喰らい合いの様相】


―――ハッ、ハハハッ、アハハハハッ!
最初から苦悶に歪んだ面を……してりゃあ良かったんだ。

私は今、生きてる。あんただって、……そうだろうよ。
私の齎す死じゃ不満かい?でも、…文句は言わせない。
満腹になっても、たんと喰らっておくれよ。ねぇ、死にたがり。


【出血と魔力の枯渇がエーリカの意識を朦朧とさせて、理性に隠した本当を曝け出す】
【口元を半月に裂いて笑う。詰まる所、同類――ずっと何かを大義名分にして隠してきた】
【昏い愉しみに身を委ねるのは何と気持ちが良いのだろうか――羽化登仙とはこの事か】

【刃の幾つかは権兵衛の肉に突き刺さるものの、究極の一に過半数は切り捨てられて】
【有象無象の多数を切り抜けて、切り払って、切り開いた先には満身創痍のエーリカの姿】

【ふらりと立ち上がり、後方へ退きながらエーリカはマチェットを召還。その柄を逆手に握り防御の体勢を取る】
【迫る不可視の刃。防御を行わねば間違いなく絶命に至る。それ故の行動であったが――それさえも貫かれる】
【マチェットは容易く両断され、その刃はエーリカの胴体に到達する。袈裟懸けに斬られたような創傷が刻まれる】

―――……ちく、しょ…う。

【どばっと溢れ出す血液は、水溜りを鮮血に染めて。ぱしゃり、と水飛沫を立てて倒れ込む】
【曇天に咲くのは血染めの花。鮮血で彩られた花。エーリカの意識は加速度的に深い闇の底へと叩き落される】


707 : 名無しさん :2018/08/14(火) 10:17:56 z0YEX0VM0
>>706

――――く、くくく。嗚呼、不満だとも。そんな“迷った刃”じゃァ死んでやれない。死んでも死に切れない
もし手前さんに迷いが無けりゃア、刀を抜くよりずっと先に己は往生してたろうに。何を日和ってるンだか

【装束は大よそが紅に染まるも、所々に白地を残し。それはつまり権兵衛の未だ健在を意味していて】
【腕の痛みで取り落としそうな刀を、歯を食いしばって持ち上げて。そして、重い、重い刃を辛うじて鞘に納める】
【それで漸く、琴と涼しげな音を立てて。此度の戦を終えた刃は暫しの眠りに着いた。――かくして、勝敗は決した】
【刀を杖代わりに、よろよろと立ち上がる。最早意識は朦朧として遠退く一方であったが、激闘を制したという事実と死の淵からの生還という奇跡。言葉に尽くしがたい充足感があった】
【“嗚呼、愉しかった”――溜息に代わり、そんな言葉が口を突いて出る権兵衛は――嗚呼、正に“死狂イ”なのだろう】

【がさりと、何か音がした。振り向くと、青ざめた顔で女が一人こちらを見ている。仰天の余り傘を取り落として、権兵衛が聞いたのはその音らしい】
【異音の正体を探りに来たのか、それとも単に迷い込んだのか。何せ戦の途中なら暫し面倒であったが――今遭遇したのは、むしろ調度良い】

医者を呼んでおきな。早くしないと手遅れになるぜ

【そのまま壁に凭れ掛かり、身体を引きずるようにして権兵衛はこの場を去る。――エーリカに止めを刺す事はなく】
【権兵衛の目的はあくまで果し合い。相手の生命は保証しないが、死なずに済むならそれで良い。増して彼女のような好敵手は希少、打算で語るならば“殺すのは惜しい”というもの】
【エーリカがこのまま死ぬとは考えていない。なれば、彼女はいつか自分を殺しに来るだろうか。そんな期待を胸に秘めて】

【そしてエーリカは――やって来た女性が戸惑いながらも救急に連絡をした。やがて救急隊が駆け付け、応急処置と搬送が行われるだろう】
【病院が戦場から近くにあったのも幸いし、そのまま事が順調に運べば治療は間に合うはずだ。――あれだけ烈しかった雨は、いつの間にか止んでいた】



【「人斬り白装束、路地裏で議員死体」】
【それから翌日、新聞に踊る見出しだけを眺めて。町のどこかで誰かが呟いた】

しくじった、名前を聞いておけば良かったな
まァ良いさ。手前さんが“答え”を見つけた頃、また聞きに行くとしよう

【――――――TO BE CONTINUED……】

/一先ずこちらからはこれで以上で。毎度返信が遅くなってしまい大変申し訳ありませんでした……
/大変楽しませていただきました、お疲れ様でした!


708 : 名無しさん :2018/08/14(火) 12:04:29 lHOWPiyk0
>>705

【――――ぞろり、と、吐き出し打ち出したマゼンタの行方を、少女は確かめてわずかに目を細める。巨大な腕――おそらく盾としても攻撃としても優秀、そして】
【当然ながらきっと相手も躊躇わぬタイプであり、何より慣れているのだろう。やはり切っ先はいくらかの小さな傷をつけるにとどまり、リボンもまた、その大部分を砕かれる】
【残ったわずかないくつかが切り裂き絡んで――けれど変わらぬ仕草に。だのに少女は一瞬動かなかった、まるでそれを見すぎていたみたいに、"ぼうっとしていた"、?】

ん、ぅ――――っ、!

【――ゆえに、回避らしい行動はなかった。腕で頭を庇い、先と同じように張り巡らしたマゼンタ色で致命的な衝撃のみを殺して、――それをきっかけに、後ろへ大きく跳躍する】
【躱すより動くよりも大きな距離を開けるのだろうか。けれどそれはあんまりに、――あんまりに偶然の産物に見えるのだろう、初めからそれを狙ったにしては、あまりにも】
【だけれど距離は距離であった、数メートルを一度に作り上げたのなら、――それでもかすかにふらつく。直撃を免れただけであった、あんまりに咄嗟の仕草であって】

――、っ、ははっ、あははは、――夢。ですか? 夢……? ――ふふ、もう、ほんとに……、羨ましいです。
正義の方々って、いいですよね――、他人様の"夢"をそうやって潰していたら褒められるんですよね? 

【ならば両腕がじんじんと痛んだ、強く打ち付けた痛み。離した距離にて少女は幽かに笑う、――くすくすと喉の奥を鳴らすような笑い声を空気が伝えるのなら】
【それこそ空虚の空洞の中に響くようにでも聞こえるんだろうか、――切り替えてなお滲む色合いは、少女がそれだけ染め上げられてしまっている証拠なのだろう、絶望に似た色】
【必死に自分を保とうとすればするほどぐらぐら揺れる、遊びも終盤を迎えるジェンガの様相そのものに違いなかった、かろうじて。最低限のみで。自分を立たせて】

――――――――っ、

【――――だからきっと負けられなかった。少なくともそう思っている気配があった。す、と、両の腕、抱き上げてもらうのを期待する子供みたいに伸ばしたなら】
【それを目印にしたみたいに、しゃんと空気を裂く音階、再び射出されるのはマゼンタのリボン群、けれど動かねば当たらぬ、相手の左右を抜けてゆく軌跡であり】
【ゆえにまた目論見があるのも分からせるよう、ならばわずかに踏み込む足先、きっ、と相手を見据える瞳が鮮やかに映えて――、はたりと瞬き一つ、重ねれば】

【――指先の仕草にて、弾かれるように撃ち出されるマゼンタ色。ボールみたいなまあるい形、大きさだってサッカーボールほどで、けれど】
【傷口に痺れをたしかに覚えた相手であるのなら――それでいて"本命"はリボンに比べ鈍重であった、それまでにリボンの流れを断ち切ることさえ可能であり】
【もしも本命を喰らうとしても攻撃というよりは、その全身に麻酔薬の作用にも似る"阻害"をまとわりつかせてやろうというもの、――――あるいは、】

【相手の動きを制限する行為はまたこちらの行為も制限された。相手を逃がさぬために自分も動けなかったから】
【まっすぐの射線は誰より彼女によって形作られ。――"それ"より早く動くことが出来たなら、少女にあるいくらかの無防備な時間、捉えることさえ、きっと】


709 : ◆RqRnviRidE :2018/08/14(火) 13:26:58 l/SHZCa20
>>693
/今日一日はこちらのでお待ちしております


710 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/14(火) 13:34:45 kQ81MPqQ0
>>699

【詰め寄るならば、 ─── やはり篦棒に背の高い女だった。目測で2mに届くか届かないかといったところ。】
【距離が縮まれば否応なく冷たい碧眼の睥睨を受ける。いや当人は決して特段の害意など抱いてはいないのだろうが、】
【 ─── 人殺しに特有の酷薄な眼光は、例え無感情な顔であっても殺意に満ちていた。胸元の高さで騒がれても、およそ片手で遇らうように。】


   「 ───── 私の"可愛い子"は、貴女じゃないもの。」


【真顔でそんなことも言ってのける。 ─── そういう気障な台詞を吐く相手は、もう決まっているらしかった。】
【言外に呆れているようでもあった。どうせお前も堅気ではないのだろう、このくらいで震えていてどうするつもりだ、なんて。】
【であるが故に、 ─── 彼方に見える銀色の雷も、「あら珍しい」なんて、一言で済ませてしまって】


「一先ずは追ってこないでしょう。その後は知らないわ。見知らぬ誰かの尻拭いなど趣味ではないの。」
「 ─── 他人に名前を尋ねるなら、先ずは自分から名乗るのが礼儀でなくて?」「"アレ"を潰すように命じられただけよ。"正義の味方"らしく、ね。」


【薄情だと言われるのなら、首を突っ込んだのは貴女でしょう ─── と、にべもなく斬って捨てるに違いなかった。】
【そうしてまた、例え礼儀に則って少女が名乗ったとしても、こいつは名乗りそうになかった。どことなく無作法で無情だった】
【なれば最後に零した素性は申し分程度の節度であるのだろうか。 ─── 随分と冷酷なヒーローもいたものだった】


711 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/14(火) 14:12:35 kQ81MPqQ0
>>703

【拒む言葉の温度を、 ──── 彼は理解していた。そのくらいには誰かの心に指を入れる温度を知っていた。】
【だから少しだけ申し訳なさそうに、けれど心底うれしそうに微笑むのだろう。それが一つの証明に違いなかった。】
【どんな我儘でも、苦難でも、理不尽でも、不条理でも、 ──── 一緒にいたら、きっと、必ず、乗り越えられるから。】


「 ……… そうだね。」「そうだ。」「ごめんね。」「ずるかったよ、ボクは。」
「ボクの名前、 ──── 教えてなかったもんね。」「バレちゃってたか。ほんとにキミは、賢い子だなぁ、 ……… 。」


【ふ、 ──── 息を吸う。ひたり、上向いてくれた茜差す頬を、もう一度だけ掌で包む。青い視線と赤い視線が重なって、涙はいつか、温もりだけに変わるのだろうか】
【高鳴る心音はきっと恋慕のみならず、緊張ゆえのものでもあった。彼にとって、ほんとうに誰かを愛しく思うのは、目の前で笑ってくれる少女が初めてに違いなかった。】



「エーノ。」「エーノ・ザイツェフ=ユーティライネン。」「 ─── それが、ボクの本当の名前。」
「つづりは、イー・アイ・エヌ・オー。」「 ……… あんまり格好のいい名前じゃないだろう?」「だから、好きになれなくて。」

「でもね、 ─── キミが名乗ってくれるなら」「なんだかボクも、好きになれそうな気がするんだ。」「 ……… だから。」



【 ──── 故にこそ勢い余った告白だってしてしまうのだろう。然して何処までも真摯であった。それを真実にするだけの覚悟を持ち合わせていた。】
【互いの足先を重ねて、底知れぬ甘い深海に溺れ行く瞬間が今であった。やわらかな言葉を囁く瑞々しい唇は、既に少女の湿った呼吸に重なっていて、であれば】


712 : エーリカ ◆zqsKQfmTy2 :2018/08/14(火) 14:30:32 6IlD6zzI0
>>707

【目が覚めたとき、視界に広がるのは見慣れた天井。ああこれは病院のそれだ】

【ただそれに気付くのには少々時間を労していた。理由は主に3つ程あった】
【刀傷による出血多量に魔力の枯渇、忌むべき本当を看過されて揺さぶられた心】
【……完敗である。けれど心と身体が気怠くて。虚ろな視線を漂わせる事が精一杯だった】


―――……ぁ、ぐっ、づぁ、……ッ
………悔しい。……手心を、加えられるなんて…っ。


【徐々に鮮明になっていくのは此処に至るまでの経緯。ふつふつと湧き上がるのは自身を苛む衝動】
【怒りだとか、否定だとか。もし身体の自由が利くならば自分の身体を痛めつける程のもの】

【ふと首を横に動かせば、パイプ椅子に座る一人の女性と目線がかち合った】
【その女性は、エーリカから見て上司に当たる人物。公安五課/特別対策室 の室長補佐・沙羅=ブラッドベリ】

「あら、目が覚めたのね。ファーレンハイト。ああ、とても酷い有様だこと。
 社会のための死人であろうものがメッ/滅するべき悪い子に敗れるなんて。
 この体たらくじゃ"良い子"になれないわね。貴女でなければ"悪い子"として処分を下してる所」

【"けれど任務は果たしているから今回は不慮の事故として処理するわ"と言う言葉で締め括って】
【品定めをするかのような怜悧な視線をエーリカに贈りながら、抑揚の無い口調で言葉を紡いでいた】


……申し訳ございません、室長補佐。今後は……このような事が無いようにします。
(―――…何が"良い子"だ。私がそう呼ばれるのを嫌ってるのを知ってやがる癖に)

【何はともあれエーリカは生きながらえた。けれどこれから自身の抱える歪みと向き合わざるを得なかった】

//こちらこそ返信が遅れてしまい申し訳ございませんでしたっ!
//何はともあれ絡み感謝です。此方も楽しませていただきました!


713 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/14(火) 14:31:19 WMHqDivw0
>>711

――――――――エーノさん? エーノさん、……ううん、かっこいい。
ギラギラ尖りすぎてなくて、でも丸っこすぎもしなくて……いい名前。

それ言うならあたしだってあんまり自分の名前好きじゃないよ、……櫻の人? って勘違いされるの。
ぜんぜんそーいうワケじゃないんだけどさ……あ、そういえばつづりは教えてなかったかな。
「Segulah」で、シグレ。……あたしもよくわかってないんだけど、なんでこれで「シグレ」って読めるんだろう?

【頬に流れた涙はいつしかぴかぴか光る軌跡になっていて、それが笑みの形に、ゆるむ】
【本名の教え合いっこ。なればそれは、秘密の共有に似ていて、またひとつ距離が近くなった気がした】
【……実際。物理的にも距離が近くなっていた、少女が布団の中でもぞりと動いて。爪先で敷布団を蹴り】
【頭の位置をちょっと高くした。そしたら、相手を逃がさないように。エーノの頬を両手で包んで、】


【(そんなことしなくてもきっと彼は逃げないのに。でもまだ少し、怖かったから)】

【(ゆっくりと目を閉じる。エーノもそうしてくれるだろうか。……どっちだっていいけど、こっちからは、見えなくなるし)】

【(――――くちづけようとする。前に交わした、掠める程度の浅さじゃなくて、3秒間くらいくっつけて離さないやつ)】

【(だけどそこから先、もっと深くまでするのはまだ――恥ずかしかったらしい。この時にはもう、何も怖くなかったから)】


【――――それが終わって、離れたら。それでも至近距離にて、ようやく彼女は言うんだろう。せがまれたセリフ】



エーノさん、…………あいしてる。大好き。………………、すき。



【でもこんなセリフきっと台本には書いてなかった。ならきっと、彼女は演技なんか忘れきった素の表情で、笑うんだろう】


714 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/14(火) 15:24:18 dgFNFHCQ0
>>713

【隠した名前を褒めて貰えるなら、「ほんと?」 ─── ひどく嬉しそうに笑うのだろう。きっと褒めてくれると知っていて、それでもこういう風に浮かべたい笑いだった。】
【分かち合うのは、ふたりだけの秘密。静かに首肯して、「シグレ、 ─── Segulah、 ……… やっぱり、好きだ。」確かめるように、何度だって、口にする。】
【然るに、もっとずっと重なっていくに違いなかった。ボクの秘密。キミの秘密。しぃと唇に指添えて、囁くたびに重みは増して、離れられない/離れたくない軛に変わっていく】
【ベッドの中でするキスも悪くないな、って思った。"彼女"はいつも立ったまま、抱き上げるようにして唇を貪るのが好きだった。昏い支配と被虐の快感は癖になったけど、】

【 ──── やっぱりキミと交わすなら、ほの甘く優しい口付けがいい。赤い瞳が涙に曇る瞬間は、もう見たくなかったから。】
【世界で一番やわらかい手のひらが、熱を持った頬っぺたを包み込んでくれる。背中に回した片腕を、ひしり、縋るように抱き締める。何も怖くなんてないから】


        「 ────………… 。」


【長い睫毛が降り行くのなら、それは瞑目に変わる。青い瞳は瞼の裏に隠す。キミの顔を、も少し見つめていたかったけれど】
【きっとそれでよかった。 ─── 情事に慣れていなかった。どこかでなにか間違えて、前歯をぶつけてしまいそうな気がした。】
【重ねるだけでとろけてしまいそうな唇ふたつ。互いの温度と感触だけで輪郭を定義する。キミの在り様をボクが決めるのならば、明日の朝はもっと深く交わして、その時は】



     「 ………… シグレ。」「愛してる。」「 ……… 大好きだ。ずっと、ずっと、 ────………… 。」



【だから彼も、同じように笑った。御伽噺には無い台詞を呟く。ならばこれは終幕なんかじゃなくて、長く幸せな物語の始まりに違いなかった。】
【眠くなるまで睦み合うのだろう。互いの体温を分かち合うのだろう。同じ言葉を伝え合うのだろう。すれば次に目覚めるのは、いつの事になるのだろうか。】
【いつだって許されるに違いなかった。いつか教会にて祈る日が来ても、天使様が連れていってくれるのは、離別の彼岸なんかじゃない。故に、】


【 ────── おんなじ枕元に眠るのは、いとしいひとの幸せな寝顔と、一揃えの赤い靴。】



/こんな感じでシメでいかがでしょうかー!


715 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/14(火) 15:52:25 WMHqDivw0
>>714

【冒涜的なる廃教会の地下室で行われた口吻なんて、きっと幸せな誓いのキスには程遠い】
【ならば次にやるときは、もっとマシな場所でやらなきゃいけない。それはきっとどこでもよかった】
【エーノの家でもいいし。どこかしら二人きりになれる密室に遊びに行った時でもいいし】
【それかもっと大胆にやるなら街中、表通りからちょっと外れた人気のない場所でもいい。そうとも思えた】

【――――――ただ、少女がずっと今のままなら。正しい教会には入れない、死人は祝福されないのだから】

【唇が離れたとたんに、どちらからともなく飛び出してくる言葉の嵐。幸せが過ぎて溺れてしまいそうだけど】
【掴めるものが藁なんかよりずっとずっとしっかりとした、確かなものであるのなら。乱流に呑まれたって怖くない】
【沈むことさえ怖くない。また口付けをして、酸素を与え合えばいいんだから――浮かれた脳ミソはそんなことしか考えない】


………………………………ずっと、いっしょにいてね。


【そんな中ならこんなことだって言えるのだ。舞い上がって絶頂、いくらでも口を滑らせてしまえるなら】
【迂闊なこと言ったって塞いでもらえる安心感もあった。だからいくらでも、何回でも、スキって言える、キスしてって言える】
【言ってるうちに眠くなったって今度は怖くなかった、なにも、だって一緒に居てくれるって約束してくれたから】



【(――――――二人が眠ってしまったちょっと後。「……どう?」「……寝てる。二人いっしょに」)】
【(「あ゛ァ? 此処はラブホじゃねえンだぞ」「そーいう気配はないし大丈夫っしょ。寝かせとこ、起きたら煩そうだし」)】
【(「煩くするならすぐ叩き出してやる。……はあーあ、“こんなところ”で“こんなこと”するなんて、どうかしてるよ」)】

【(…………こっそり部屋を覗いた「創造主」と「兄」がそんな会話をして――――ぱたん。静かに扉を閉じて、……起こさなかった)】


//長いことありがとうございました……!おつかれさまでした!


716 : ◆3inMmyYQUs :2018/08/14(火) 15:53:46 qo/HyX5s0
>>637


──────…………っ、…………はっ……ぁ……──────


【少女は瞼をきつく閉じながら、過呼吸寸前の熱い息を吐くばかりであった】
【しかし沸騰する意識の中に届いてくる僅かな温もりを感じてか、それへただただ縋るように】
【煙草の濃い薫りがする探偵の服をぎゅうと絞るようにしがみついていた】



【騒然とする店内を後にし、弾かれるように走り出した車が、】
【テールランプの残光を曳いて夜のビル街の谷間を縫うように疾駆する】
【走馬灯のように後方へ過ぎ去っていく車窓の光景】
【──その合間に差し込むように、少女の口から譫言のような何かが零れた】


────はつ……──せ…………──きね…………、──ぶない────


【(はつせまきねがあぶない)】

【──果たして本当にそう言ったのかは判然としない】
【探偵の脳が都合良く知っている名称に変換しただけかもしれない】
【いずれにせよ何にせよ、今の少女に真っ当な返答は不可能であり、】
【事の全容もまた窓の外の光景と同じく遙か後方へ押し流されていく】

【謎の全てを運び、車がホテル前に到着する】
【待機していたベルボーイがルームキーを差し出した──丁度そのときだった】


【──ぎゃりぎゃりぎゃり、と】
【荒々しくタイヤを地へ摩擦させながら、一台の車が彼らの後方から現れ搬入口へ乗り付けた】
【黒塗りの高級セダン。その車体が完全に停止しきるか否かの時に後部座席の扉が左右両方開いて】
【三人ばかりの男達が吐き出された。スーツに黒トレンチ、同色のハット。手にはサプレッサー付き拳銃】

【かつ、かつ、かつ、かつ──】
【無遠慮に歩む彼らは視線と銃口を真っ直ぐ探偵たちに向けて、躊躇いなく引き金を引いた。一発、二発、幾度も幾度も】

【銃弾の飛礫が彼らへ殺到する】
【流れ弾が車の板金へ、ガラスへ、そしてベルボーイにも】
【何かが削れ、弾かれ、穿たれ、無機物と有機物の別を問わない様々が弾け飛んだ】
【暴力的な怒濤の騒擾が、唐突に、そして一瞬で場の空気を戦場のそれに塗り替えた】


【尾行の気配は無かった】
【彼らは全く別経路で乗り付けたのだ】
【──まるで時間と場所を未来予知でもしていたかのように】


717 : ◆3inMmyYQUs :2018/08/14(火) 16:03:13 qo/HyX5s0
/安価>>694でした、失礼しばした。


718 : 名無しさん :2018/08/14(火) 17:24:50 ExKbu4l.0
>>716

【探偵は雇われの"ホイールマン”――裏稼業相手に運転主役をやるものをこう呼ぶ――に任せ】
【頭の中で次の行動を考えながら、ただすがる少女を抱きしめていた】

【とにかくまずはホテルに入る。アシがつくこともないし時間は稼げる――医者を呼べば多少マシになるはずだ――】

………初瀬…麻季音

【やはりそうか。と納得する。陰謀、オーウェルと麻季音と黒幕と円卓と――タイムトラベル。奴らの目的はこれだったんだ】
【なぜこの時代なのか。それはこの時代にタイムマシンが発明されるから。事の始まりだからこの少女もロッソもこの時代に来たんだ】
【麻季音には護衛を付けている。ゾーイならどんな相手だって簡単に――――】

――――ああっ、クソッ!!

【全部全部都合が良すぎた。頭が回る、置いてきた無視してきた違和感がピースとなってこのパズルの上に散らばった。全部ピースなんだ】
【意味のないものなんてない。この世界は意思を持ったもので全体論なんだ。文字に意味はない。言葉になって、文になって本になって意味を持つ】
【麻季音の安否が気になったが携帯を取り出している余裕はない。――オーウェルも待ってたんだ。最初からこの時を】
【フルフェイス事件もフォルケン博士の死もアンドロイドも、ソラリスも―――】

【車は搬入口につけられる。ベルボーイがドアを開け、案内する。探偵は少女を担いでそれについていく――】

【だが、探偵の目はセダンを捉えた。強盗、殺し屋の経験がそれが刺客であると瞬時に察する】

『―――ヤベェぞ!!』

【いの一番に声を上げたのはホイールマンだった。ポケットから護身用の銃身の短い拳銃を取り出す】

――逃げろっ!!

【――探偵は投げ飛ばすようにシヲリをドアの中、ホテルへと無理やり押し込んだ。だからリボルバーを抜くのが遅れた】
【背後に向けられた銃口を探偵は―――視えていた】

【サプレッサーのついた弾丸は空虚な音をたてる。ガラスが割れる音、跳弾する甲高い音はいつものように喧しい】
【ホイールマンは自分が引き金を引くより先にその車体とともに撃ち抜かれた。鮮血が車内に飛び散って、力の抜けた頭がクラクションを鳴らし続けた】
【ベルボーイは何事かと振り返ったときに撃ち抜かれた。だが、致命傷に至らずかすり傷だ。業務用の巨大なトラッシュボックスに身を隠した】
【そして探偵は――――】


―――――ガァッハッッ!!!

【視えていた。だが、反撃よりも回避よりもシヲリを屋内へ投げ込んで、ドアを閉じることを選んだ。】
【結果――――数発の弾丸が彼の体を貫き、そのショックでその場に倒れ込んだ】

……クソッタレ。

【それでも身を翻し、腰のリボルバーを抜いた。ショックが抜けきらず照準が定まらない。】
【だが此処は俺が抑えるしかない。追手を始末しても次が来るかもしれない。それまで俺が守るしかない】

【眼が奴らをとらえる。オーウェルか?公安か?それとも別のなにかか?未来から…どうだっていい】
【今は息を整えて、確実に撃ち抜く。―――撃ち鳴らせ】


719 : 1/3 ◆3inMmyYQUs :2018/08/14(火) 21:27:05 qo/HyX5s0
>>692


「……………なるほど」


【円城はその曖昧模糊とした視線を一時も外さぬまま、ミラの答えを余さず耳に捉えた】
【そうしてから口にした言葉はただの一言、儀礼の締めのように零したそれだけだった】

【一呼吸、二呼吸、】
【沈黙が空気の帳を両端から引っ張るように引き締める】

【青年、『ハムレット』の口がその最中をやおら動き、言葉を発した】


────── “ なるほど ” ?

何が一体 “ なるほど ” なんだ。
お前の空っぽな心が何を全く納得できたというんだ、円城。

……お前らは一体、何を探り合ってるんだ──────


【彼は瞑目して俯き、その吐き出す息を微細に震わせていた】


【「────うんざりだ」】


【──すると、ぽつり】
【地の底の怨念さえもう少しまともな音の響かせ方をしただろう】
【それほどまでに陰鬱と、低く濁った呟きが彼の口から滲み出た】


…………うんざりだ、うんざりだ、もううんざりだ…………


──────ぁぁぁァぁぁァあアあアああ゛ア゛あ゛ア゛ア゛あ゛ア゛!!!!!



【その狂乱は突如として始まった】
【『ハムレット』は立ち上がりと同時にガラスのテーブルを両手で掬い上げて端へ投げつけ】
【それが壁へ叩き付けられ割れ、砕け、痛烈な大音声を響かせる中、続けてソファの一つを持ち上げると】
【何の躊躇いもなくそれをミラの隣に位置するガラス戸へ向けて、体重と腕力を限りを尽くして投擲した】

【──耳を聾するような破裂音】
【曇り一つ無かったガラス壁が爆ぜるように砕け散り、その鋭利なる破片をそこへぶちまけた】
【風穴というにはあまりに刺々しく穿たれたその間隙から、ビル風がバルコニーを経て室内へ雪崩れ込む】


【青年の振り乱れた髪が、強風によって更に嬲られ、さながら修羅の様相を帯びる】
【今や眼だけで肉を食い千切らんばかりの獣の眼差しが移ろい、まず円城──依然として平然とソファに座す──の元へ据えられた】


──何がお前をそこまで用心深くさせるのか知らないが、
この女のお陰でようやくこの鈍い頭にも察しが付いた、
丁度良い、全てを暴くこの口を止めてくれるなよ、

手を出せ、銃を置け、
さもないとお前のうすのろ口が開く前に僕はここから跳んでやる、
お前らの薄汚れた目の届かない地獄の底の底まで二秒も掛かるまい、
それともここで首でも掻き切るか、それも良い、
この呪われた血はどこでぶちまけられようと変わりなく醜い花を咲かせるだろう、
そうだ、初めからそうすべきだった、こんな穢れた力!! ……ぁぁアあア忌々しい、忌々しい、忌々────!!!


【その連綿たる呪詛は臓腑を絞り上げたような低く震える声で紡がれた】
【血走った眼はそれ以上無い程に見開かれ、片手は自身の額を握り潰さんばかりに掴んでいた】

【円城はそれでも依然として表情を変えることはなかったが、抵抗することなく、】
【懐からそっと回転式拳銃を差し出すと共に、緊張も気迫も無い声で宥めにかかる、が】


「──落ち着きなさいな。『ハムレット』」


落ち着け? 落ち着けだと?
どの口が言えるんだこの気狂いの道化が!! 

お前らのように賢者のふりをして物静かに狂うぐらいなら、
いっそ狂気の皮を被って浅ましく叫んでいた方がどれほどましか!


── “ 教えて欲しい ” ? ああいいとも、聞かせてやるさ。
いくら隣人に分け与えても有り余る呪いの土産だ、持て余してしようがない!


【慟哭であり絶叫であり咆吼であった】
【喉の裂けんばかりの気迫と共に叫び散らし、円城の拳銃を奪い取ると、】
【ぎら、と刃物を閃かせる様にも似た眼差しがようやくミラへ移った】



/↓


720 : 2/3 ◆3inMmyYQUs :2018/08/14(火) 21:27:49 qo/HyX5s0
>>692

【飢えた狗のような震える吐息と共に『ハムレット』が彼女を見つめる】
【彼女の身へ丸太の杭を打ちこむかのような重たい視線、】
【しかしその奥には母を捜す孤児のそれと良く似た悲痛な揺らぎがあった】

【「──聞いて呆れろ」】


──聞いて呆れろ、『戦争』だ、『戦争』を起こそうとしてるんだ、こいつらは。

それも大義のために自らが戦場に立つ訳じゃない、
ただ『国』と『国』を互いに貪り食わせ、それをもって『商売』にするなどと嘯く、
異国で流される夥しい血がやつらには『金』に見えるらしい、これを気狂いと呼べなければ一体何が狂気だ!!

あまつさえ──あまつさえ、〈王〉だ!


〈王〉、〈王〉、〈王〉──、 〈円卓の王〉──!!


やつらは掻き集めた血塗れの金をその〈王〉などという狂った肩書きの輩へ捧げようと本気で考えている、
一体どこの三流悪魔が書いた筋書きだ、それを読むのはどんな白痴だ、演じるのはどんな狂人どもだ!!!


だが……だが何より許せないのは、いや、本当に許せないのはただの一つだ、
僕を、この僕を、この馬鹿げた『戦争』の道具に遣おうとしている、それが何よりも悍ましい憎しみの元だ!!


──お前も見ただろう、あの平然と暴力の染みついた市民たちを、
僕の紡ぐ〈詩〉がそうさせたんだ、僕の練り上げた言葉、文法、音響が、
聞いた者の脳髄を麻薬のように刺激し、理性の底に眠った性を目覚めさせる、
つまり『暴力』を、『異物排他』の『本能』を、そこに悦びを覚える人間本来の『獣性』を!!

穢らわしいのは悍ましいのは僕の脳髄もまた侵されているからだ、〈詩〉に、『虐殺のソネット』に!
この脳幹に刻まれた呪わしい韻律が、僕に〈詩〉を書けと、唄を詠えと駆り立てる、
衆民が殺し合う様を見る度に抗いがたい情欲の炎を燃え上がらせる、下腹部を疼かせる、
お前に分かるか、理性が獣欲に跪かねばならないこの屈辱が、自身が自身を強姦するこの悍ましさが!!!

聞け、聞け、その眼がまともなら逸らすな、
神が僕に命じたことなら受け入れもしただろう、悪魔なら祓いようもあったろう、
だが違う、この血生臭い呪いを掛けたのは、人間、それも替えの利かないただ一人、
口にするのも憚られるが、ただ一人、この血を分けた父、親、……許されて良いものかそんなことが!!

この悍ましき父はもう死んだ、だが亡霊となって今もこの血肉に棲み着き、僕へ命じる、
〈円卓〉を永久にあらしめよ、〈王〉に仕えよ、詠え、詠え、血の欲に塗れよと、
今にもそこに顕れ僕を苛む、──ぁ゛ア゛ほら、そこに、なあ、見えるか、眼はあるか、見ろ、その眼がまともならそこを見ろ!!

一緒に問うてくれ、答えろ、我が父、醜い、妖術師、呪わしき『吟遊詩人』、
何故僕を『能力者』なんかにしやがった、見るにも聞くにも悍ましい『異能憑き』に!!
何故無垢の子供に『虐殺の情欲』を植え付けやがった、何を血迷ったか『実の親』が!!

くそ、逃げるか、待て、消えるな、くそ、クソ、ぁぁぁァぁぁァあアあアああ゛ア゛あ゛ア゛ア゛あ゛ア゛!!!


──────アア、ぁあ、あ、あ────
────本当に 全く どいつも こいつも 狂ってやがる ──獣だ、人の面をした獣ばかりだ────!!!!




【──そこで、彼の言はぱたりと途絶えた】
【取り憑いていた何かが霧消したかのように、強張っていた身体の芯が抜け】

【俯き、それから再び面を上げたとき、】
【そこにあったのは幽鬼のような蒼い陰に満ちた面差しだった】
【深く落ち窪んだ眼窩の奥に、しかし爛々とした鈍光を湛えた瞳が縋り付くようにミラを見ていた】

【「なあ……────」】


/↓


721 : 3/3 ◆3inMmyYQUs :2018/08/14(火) 21:28:38 qo/HyX5s0
>>692


なあ……、
……あんたは『正気』だろう……、そうだよな…………



だったら今何をするべきか分かるだろ、

こいつらもいずれ世界を狂わせる、
生かしておいちゃいけないやつだ、

ここでこいつを殺して一緒に出よう。


……さあ、銃を取ってくれ、
あんたが撃ち、僕が刺す、それで自由だ、──さあ


【ゆらり、と蜃気楼じみた腕が拳銃を差し出した】
【同時に、腰の後ろへ忍ばせていたナイフを抜いた】
【その良く磨かれた酷薄な刃の表面に、『ハムレット』の歪んだ横顔が映る】



【──青年は知らなかった】
【今、彼が縋り付いている目の前の美しい女こそが、】
【自身の忌避する〈円卓の王〉の妃となるべき者であることは】

【自身の憎む〈円卓〉の面々が大きな供物を捧げようとしている、】
【その〈王〉こそが、ここにいるミラ・クラァケが愛する男その人に他ならない、などとは】


【信じていた】
【彼女がこの悪党の巣を滅ぼせる、真の善人、『レジスタンス』、真っ当な『正義』だと】


722 : 4/3(補足) ◆3inMmyYQUs :2018/08/14(火) 21:29:21 qo/HyX5s0
>>692
/あの、毎度、長々と、読みづらかったらごめんなさい。
/例の如くお返事は適当にかいつまんでいただいて、他の後回しで構いませんので。

/追伸:
/〈円卓〉の現況についてがんばって何とか全部詰め込もうとしたのですがやっぱり無理があったので、
/以下にジルさんと円城とのロールログをあらすじ付きで載せておきます、
/ここをさらさらっとちょめちょめしていただければ、キャラはともかく中の人向けの情報は大体全部揃いますので。
/情報量が多くて申し訳ねーです。ご負担にならない程度に遊んでください。

/【円城、〈王〉に進言する 《獣ノ聖餐・序》】
/ttps://www.evernote.com/l/AkneA2qsosxPyoIbtF8DbLVhPFiFTTkrToY


723 : ◆9VoJCcNhSw :2018/08/14(火) 22:38:48 wn2rqSVw0
>>663

【他ならぬ彼女のリクエスト。メールのことなど忘れたように、コクリと頷くと】
【少女はピアノの前に座るより先に舞台袖へ向かって、音楽堂の電気を消した】
【暗い劇場。誰も話さず、僅かに遠くの街灯が人々の顔を薄っぺらく照らしていて】


――聴衆諸兄には、是非とも目を閉じてお聞き頂きたい。

では、ミセス・ミフネのリクエストに応じて――『わたしのためのプレリュード』を。


【ぴり、と静電気が生じるような違和感。先の空気の震えに似たようなもの】

【演奏は、極めてスローテンポな高いキーで始められた】
【物悲しい音色。それは破壊された石造りの街に、深々と雪が降り注ぎ】
【瓦礫がしっとりと水気を帯びて、誰も居ない廃墟を訪問者が歩くような気配】
【そんな一場面を、知らずと網膜に映すような深みが確かにあって】

【――音楽堂に、雪が降る。先程まで蒸すような熱帯夜であったはずなのに】
【――ひやりと冷えて、はらはらと雪が降る。瞳を開けば、確かに世界の異変に気付くだろう】
【――周囲には見慣れた町並みは見当たらない。渦を巻くような、白雪の壁が劇場の内と外とを隔絶していて】


【途中、一転してキーが低くなる。鍵盤を打つ指が重く激しく、弾丸でも放つように強くなる】
【吹き荒れる暴風。衝撃、或いは慟哭。心中を掻き毟るような荒い音調でピアノを引き抜いて】
【その音量も、音圧も、ただのグランド・ピアノで叩き出せるようなものではない】
【肌がビリビリと痺れるような、強烈な音の暴力が観客を打ち】

【――音楽堂の上。泥の塊のような〝怪物〟が、爬虫類のように張り付いて、観衆を睥睨していた】
【――其れは風雪にまぎれて、瞳だけがギラギラと光って見え】
【――もしも瞳を開くものがあれば、灯台の光を一身に当てるがごとくそちらを睨むだろう】

【転調は、続いて穏やかに。激しく打ち鳴らすようだったテンポは穏やかさを取り戻し】
【静かな、けれど狂気を孕んだようなリズムが続く。音楽性自体は、悪くない】

【――それは音楽のイメージに似る。石畳だったはずの音楽堂に、膝丈ほどの草原が現れて】
【――火が点る。燎原に放たれた火炎は、舞台一面を真っ赤に赤く焦がしてゆく】
【――しかし瞳を閉じていたものならば、その炎に巻かれることはない。冷えた身体があたたまる、その程度】
【――ならば、あの〝怪物〟は警告なのかも知れなかった。無視をして瞳を開いて居たのなら】
【――炎は間違いなく、人一人を焼き焦がすだろう。その炎を以て、燃え尽きるのを待つように】


【ピアノの旋律は8分と21秒をもって、最も低い音で、締めくくられる事となるだろう】


724 : アーディン=プラゴール ◆auPC5auEAk :2018/08/14(火) 22:42:59 ZCHlt7mo0
>>631-634

――――あの一件は、頭の痛い思いがしたよ。胸も痛んだ……そして、果てない怒りが、な……――――だが、正直を言えば、一番に大きかったのは『恐怖』かもしれん……
虚神どもは別として……あれほど『絶対者』と言う言葉の似あう敵を相手取った事は、無かった……

【ポツリと、アーディンは『らしくない』言葉を口にする。いや――――アナンタシェーシャを前に、絶望に沈みかけた彼の姿を考えれば、理解するからこその諦念、というべきか】
【――――無理からぬ事だったのだ。その兄妹たちが闇に消えたのも、それだけ強大な存在を敵に回してしまったからで】
【その先には、家族としての、宿命づけられた哀しい定めがあったのだ。だが、それはもう、余談と言うにも遠い昔話である】

いや、違うな……覚悟を持っているんじゃない、死にたがっているんだ……『あいつ』はもう、この世界に絶望しきっている……ずっと前からな
それを、俺たちは止めてしまった。無思慮に「死ぬな」などと言ってのけて……あいつは素直な奴だ、心折れながら、何年も時間を過ごして――――もう、ボロボロに心が擦り切れてしまったんだ……
――――何年振りかで会って、後悔したよ……「あの時、死なせてやればよかった」とな……奴は今、死に場所を探している。無意味な死を疎み、意味のある死を求め、その為だけに生きている……
だから……奴が、助力を求めてきた時に、俺は言ったんだ「全てが解決したら、お前には死んでもらう」と……そうしたら、あいつは受け入れた……――――そう言う事だ……

【八攫の言葉に、アーディンは辛そうな表情で顔を背けながら、訂正を入れる――――その人物は、恐れを知らない訳でも、強い正義感を持っている訳でも、覚悟を決めている訳でもない】
【――――ただ、生きるという事に絶望しきっているのだ、と。既にもう、「死ね」と言われて「死ぬ」と答えているのだと】
【恐らくは、以前に自殺を試みた事でもあるのだろう。それをアーディンは止めてみせて――――その人物は、むしろ救われない心を抱えて、徹底的に傷ついてしまった】
【――――その一件もまた、アーディンに後悔を、そして現在進行形の慙愧をもたらしているのだろう】

――――ッ、本当か……! 助かる、是非とも頼もう。……世話になってしまう様だ、この借りは必ず返そう
金でも、道具でも……人手でも。何でもいい、俺に出来る事があれば、言ってくれ……可能な限り、報いらせてもらう……!

【思いがけない申し出に、アーディンはハッキリと表情を覚めさせた。今後に渡る、強力な材料となるに違いない】
【ここが彼の評判の故、なのかもしれないが――――この借りに報いたいと、明確に協力の姿勢を表明する。それなりの立場で鳴らしている、ギャングの一員にも関わらず――――】
【この応報を見れば、彼の任侠ギャングとしての人柄は、伺えるというものだろう】

【――――だが、それでも彼は基本的に、後ろ暗い世界を生きる人間である事に、違いはない様だった】

――――――――あのアナンタシェーシャの一件。あの時、奴の体内に鈴音はいた……覚えているか、あの時……奴の体内に入り込んだ幾人かがいたのを
そのうちの1人が……俺の仲間なんだ。だから、あの場で起こった事は、聞いている――――残念ながら、相応に信頼のおける情報として――――鈴音はもう本質的に、奴らの方に近いだろうと思われる……

言ってしまえばもう、それだけで十分なのだ……萌芽は既に、イルの奴よりも前、何かがあったらしい……イルの奴は恐らく、唆しはしたのだろうが、本質的に『尊厳』に手をかけるような事は、していないんだろう……
――――鈴音の抜け殻を前にしての、奴の嘆きを覚えているか? 仲間は、そんな嘆きすら、ただのポーズに過ぎないと唾棄していたが……今思うと、俺はそうとも言い切れないと考える
――――仮に『道具』が壊れたとて、苛立ったり悔しがったりはしても、嘆きはしないだろう……殊に奴は、あれだけ傲岸不遜な邪神だ――――アレは、本気の同胞意識を抱いている表れじゃないか……?

この仮説が正しければ……本質的な部分で、その魂の尊厳を以って、鈴音はこの世界を否定した――――それだけで十分だ。血の代償を求めるに、それ以上に理由は必要ない。少なくとも、俺のルールではな
そして――――「力を以ってこの世界を手に掛けようとする奴に、力を以って反抗する」……この枠の中にあって、それ以外のルールなど必要ない……!

【物事を、単純に割り切る――――先に八攫をなだめて見せたその手腕が、今度は八攫との意見の相違に現れた】
【今は、世界を勝ち取るか否かの戦いの中にあって。そこで「斟酌しがたい理由を以って敵に回った」以上、もはや殲滅に容赦は必要ないと、あっさりと言ってのけた】

/続きます


725 : アーディン=プラゴール ◆auPC5auEAk :2018/08/14(火) 22:43:46 ZCHlt7mo0
>>631-634

……無論、君の言う通りだ。我々が真に憎んでいるのは、イルの方で……奴をこそ、いの一番に血祭に上げねばならないのは、間違いない……
だが……ここからは、君の言う通りだ。白神 鈴音と、ウヌクアルハイはイコールであり、そして……愛が、あるんだそうだ。白神 鈴音とイル=ナイトウィッシュは、ニアリーイコールだ……
例の『仲間』が、さんざ忌々しげに罵っていたよ……如何にも悪魔らしい倒錯だがな、どうも鈴音とイルとは「できている」らしい……

――――となれば……奴らこそ、一蓮托生。制御も抑止も非現実的、よしんばそれをやろうとすれば、イルの奴をも一緒に抱える事になる……
……個人的感情を抜きにしても、賢い方法とは思えんぞ……――――もはや、『元の白神 鈴音』などと言う、幻想に酔うのは止した方がいい……

【八攫の言葉は、確かに分からなくはない。本来の怒りの矛先がずれている事、手段として、最悪の事態を招かないために必要な可能性が高い事――――全て、傍証の揃った事実だ】
【だが――――先のイルの嘆きの件と合わせて、アーディンはどうやら、鈴音とイルとの間に、既に分かちがたい絆が――――しかも、洗脳の類でなく――――生まれている事を指摘する】
【そこにもう、鈴音を取り戻すという類の、希望は存在しないのだと――――更に、その結論に至った理由として、己の過去を、補足する】

――――先の一件の兄妹な、妹は人の肉体を失ったと、そう言っただろう……その先、妹は敵である家族の手に墜ち、怪物と化して、そして兄と姉に襲い掛かった……躊躇した姉は、右腕を切り落とされたんだ……
……不確かな希望など、知れずどこかで砕け散っているものなんだ。そこに縋るのは……止めておけ――――これは、年長者としての助言だ……

【それ以上、触れるつもりはなかった、先の3人兄妹の顛末――――敵の手に墜ち、その手先と化した妹の手によって、姉は消えない痛手をその身に刻まれる事になった――――】
【希望に縋った結果が、破滅――――それは、決して絵空事ではないのだと。それが腕ならまだ可愛いものだ。それが世界なら――――アーディンは、とてもそこに縋る気にはなれなかった】
【何かを守るためには、何かを捨てる必要がある――――それに、後ろ髪を引かれるか引かれないかの違いでしかないのだと。少なくともアーディンにとっては、『鈴音』は、そうではなかったのだろう】

――――――――だが、そうだな。君の言う通りだと思う。まさにそれだ……答えまでを共有するのは、存外に難しいものだ……今以って、俺も痛感させられているよ、別口でな……
俺たちも、ただ同じモノを守ろうとしている仲間である事、そこには違いないはずだ……今はただ、この事で議論をしているだけ、無駄だろう……あの邪神たち、その総体を敵であるという事の方が、優先されるべきだ……
――――俺からも、「ありがとう」と言わせてくれ……おかげで俺も、守りたいものを守れるんだ……――――そこは、同じはずだ……

【だが――――例え『白神 鈴音』を巡る意見の対立を見たところで、それは大事の前の小事に過ぎない。大事なのは、『虚神たち』から世界を守る事、その為に命がけで戦う事ができ、そして信頼できる仲間と見做せることだ】
【アーディンもまた、八攫に頭を下げる。許せないものを、許さないために。守りたいものを、守るために。その力を合わせる事ができるのは、この危機に瀕した世界にあって、どれだけ大きな価値があるのだろうと】
【だからこそ――――彼もまた、その力の及ぶ限りに、敵と戦う事ができるのだ】



【――――かくして、この夜の邂逅は終わりを告げる。そして戦いは、シャーデンフロイデとの激戦を経た、少し先の未来へと移行して】
【1度だけ、病床に付していた八攫の元に、差出人不明のメッセージが届くだろう――――「傷が癒えたら、『CL』に顔を出せ」と――――『Crystal Labyrinth』への誘いだ】

【――――かくてその2週間後、2人は再び相まみえることになる――――水の国 『Crystal Labyrinth』】

――――済まない。よく来てくれた……互いに、『あの世界』から無事に帰り着く事ができて、良かったよ……!
……今日はもう店としての営業は閉じた。マスターに無理を聞いてもらってな、完全にプライベートの仲間だけの集まりだ……

【昼のバーに、客はいない。いるとすれば、アーディンと、八攫と――――恐らくは、アーディンの声の懸かった、何者か、だけなのだろう】

/すみません、移行した時系列を、8月初頭あたりにイメージして設定してしまいましたが、大丈夫でしょうか?


726 : アンゼリカ ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/14(火) 23:42:42 smh2z7gk0
>>708

〝正義〟などではない、これは私の〝道〟だ………。

(―――なん、だこの違和感は。この少女は今まで相対してきた〝異端〟とは違う)
(在り方も、そしてきっと〝質〟も。だめだ、飲まれるな。それこそ私の道はそこでなくなる)

【離れた距離、少し遠くに見える蛇の少女の発する言葉、まるで少女自体の実像すら歪んで見えるような虚無】
【一瞬アンゼリカは脚をふらつかせる。それは痺れのせいではなかった。】
【確かに目の前にいる少女は〝単なる異端〟ではない、もっと大きな格を持っている。だがそれをアンゼリカは知らない。知り得ない】
【先述した通り、〝教会〟はその力を失っている。さすればその情報力も低下しているのは明らか】
【故に、世界を飲み込みかねない〝虚構の神々〟の侵攻へ出遅れた。否まだ〝知ってすらいない〟】
【ただの悪魔崇拝のカルト教団がのさばっている、という認識のもとここまでたどり着いたに過ぎない。】
【目の前の少女が崇める存在の強大さも、それが顕現している事も、少女の周囲の人間の尽力も分かりはしない】
【アンゼリカが感じた違和感は直感的なもの、但し致命的な〝認識〟遅れでもあった。】

【一瞬の意識のブレ、そのタイミングでマゼンダのリボン群が迫り逃げ道を塞がれる】

―――ッグ!!しゃら………くさい!

【丸いマゼンダを塊を再び巨大な両腕をクロスさせるようにして受けるが、突如全身を〝阻害〟の力が襲う】
【がくんと、地面に片膝をついて苦しそうに声を零すが右腕だけはなんとか上げて相手に向けて銀色の魔力波を放つ。】
【初撃の衝撃波と同じ類、少し威力が増している攻撃。ただし〝阻害〟もあって狙いは甘い、そのまま立っていても右肩に当たる程度だろう】


727 : ◆9VoJCcNhSw :2018/08/14(火) 23:44:23 wn2rqSVw0
>>688


『――ほう。その格好をしておきながら、聖書の一節を切り捨てるのか?
 それは神に仕える君が、まるで正しくないかのようではないか。
 或いは、神が定めるものなど絶対ではないとでも言うのかね――フフ。』


【人影は、遠すぎて誰とも見分けがつかない。ただ、その態度は尊大で】
【修道女からすれば鼻持ちならないタイプの相手だと、このやり取りでわかっただろう】

【恐らくはゴーレムを操っているのも件の相手。しかし踵を返して高山へ飛べば】
【人が羽虫を無視するように、大した感慨も無さそうに見逃した】
【故に、グリースは容易に光が漏れた場所へたどり着くことが出来るだろう】

【其処は岩に囲まれた平地。外界からは、よほど目当てをつけてこないと入れない場所】
【そして、洞窟。やや広く、緩い坂になった上への道と、階段状の下への道があって】


……グリー、ス。ねえ、……"下"は、ダメよ……?


【それまで同様もせずに静かにしていたルーナが、口を開く】
【それも――グリースの衣服の裾を掴むように、寄り添いながら】

【光が漏れ出ていたのは、上へ行く道だろう。見るからに別な広場へつながっていそうだ】
【しかし、下へ行く道は違う。この高山、山中へ続く道に逃げ場があるとは思えない】
【それこそ別な山の中腹に出る抜け道、かも知れなかったが――雰囲気が、良くない】
【垂れ流しの重油のような、絡みつく圧気。好ましくない気配が露骨に其処からは溢れていた】

【ただ――其処を調べたい。或いは件のゴーレムに要件がある、ということであれば】
【この広場は間違いなく安全圏だ。ルーナ――はっきり言って、今の状況ではお荷物な彼女を置いて行ってもいいだろう】

【何をどう選ぶにしろ、グリースの自由だ。少なくとも、この世界の出口はまだ見つかっておらず】
【突破口になりそうなのはゴーレムか、目の前の洞窟か。人形のような"女神"の処遇や結末も分からない】
【此処が彼女の推理どおりの世界であれば――最も重要な物の一つ、ではあるのだろうが】


728 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/14(火) 23:52:48 smh2z7gk0
>>710

―――いきなり惚気ないでよ。なんだか知らないけどさ。
(いや〜苦手なタイプだ、いろんな意味で。ただまぁ興味は出てきたよ。)

私はコニー・オブライエン。氷の国の外務省三等書記官だよ、訳あってこの国で動いている。

【視線を向けられればばつが悪そうに視線を逸らして一歩二歩と後退していくだろう。】
【そして逆に名を聞かれればフルネームで自己紹介をする。勿論片方の肩書だけではあるが】
【銀髪の女性からしてみればある程度の推測は容易だろう。】

それで―――〝正義の味方〟さん。色々と質問したいんだけどいいかな?
まずは1つ、潰すように狙ってたならあのカノッサの刺客のある程度の素性は分かるんでしょ?教えてよ

そしてもう1つ、その刺客さんにまんまと殺れたあの哀れなオッサンは何者なのか―――。

【「まぁ答えてくれないならいいけどさ!」と頭の上で腕を組んで不貞腐れたように言い放つ。】
【コニー自身が自覚しているように苦手なタイプであった。どこか所在なさげに視線が泳いでいるのが見て取れた】


729 : ◆DqFTH.xnGs :2018/08/14(火) 23:57:16 lhRCoaFg0
>>723

(ん────────)


【違和感が肌を掠めた。思えば、先ほども似たような感覚があった】
【気のせいだろうとさっきは思えたが──何か、ただの偶然ではなさそうな…………】

【──アンドレアの言葉に従い閉じた目は、すぐに開かれることとなる】
【静かな旋律の中、『ミフネ』は確かに雪景色を周囲に見た。荒れ狂う嵐も、その中に潜む“怪物”も】


(これ、は────────)


【あまりの光景に、呼吸を忘れていた。それほどまでに、何もかもが凄まじかった】
【大気を震わせる音圧も、心情を顕現させるチカラも、──曲そのものも】
【真の芸術は解釈を必要としない──解釈という行為そのものが、眼前の光景を穢す予感さえあって】

【────ついそのまま、我を忘れて目を開きっぱなしにするところだった】
【雪嵐の中の獣に睨まれ…………慌てて、目を閉じる。後は暗闇の中、草原と炎の幻影が】
【少し冷えた体を撫でていく。この感覚は、偽物なんかではないのだろうと】
【確信のようなものがあった。目を開ければ、真っ赤な景色が広がっているのだろうが】
【『目を閉じてお聞き頂きたい』──その言葉に意味があるのだろう。結局、】
【彼女が目を開いたのは、雪の中我を忘れた、ほんの僅かな間だけだった】


【────音が、終わる。曲が、締めくくられる】
【9分6秒目で、ようやく彼女は目を開けた。深く深く、呼吸をする。そこからまた】
【暫し息という行為を忘れ。ぱん、と手を打ち鳴らすのは、さらに十何秒間も過ぎた頃だった】


730 : ◆DqFTH.xnGs :2018/08/15(水) 00:11:27 lhRCoaFg0
>>719-721

【円城の呟きに、少し肩の力が抜けた。どうも、即座に弾が飛んでくるということは──】


────────!?


【直後。衝撃が真横をすり抜けていった。1テンポ遅れて、今度は外から嵐が吹き込んでくる】
【ばたばたと揺れる髪。何が起きたか把握しきれず、金色の目がめいっぱいに見開かれる】
【背後で響く絶叫と呪詛の渦。目の前のガラスは破壊の余波で白くひび割れ、夜闇を上塗りしていた】
【────恐る恐る、振り返る。其処に溢れる恨言は、悲痛な叫びは、揺らぐ視線は】


(……………………あぁ。クソ────そんな目で、あたしを見んなよ)


【自己否定の眼差し。自己嫌悪の叫び。周りを呪い、自分を呪い、全てを嫌悪する目の色】
【──身に覚えがあった。何度もその目を見てきた。その度に──何も、出来なかった】
【白神鈴音。御船千里。夕月。“ハムレット”と似たような目をしたかつての彼らに】
【自分は何をしてやれただろうか。──何も、と自答する。皆、どこかに行ってしまった】
【ひとりは人為らざる世界に。ひとりは彼岸の果てに。ひとりは──それすら、知らない】

【ミラ・クラァケは青年の言葉を静に聞いていた。ひゅうひゅうと夜の風が真横から吹き込んでも】
【それを気にすることなく。ただ、彼の言葉を一言たりとも漏らさずに聞いていた】
【──きっと、彼女の表情は悼ましそうに歪んでいた。彼の不幸がまだ続くのは、よく分かっていたから】


…………、……………………なぁ
────あんたはあたしのこと、どう見える?


【ゆるりと、女の姿が変わる。この変化を見るのは、今宵2度目か】
【赤髪金眼の女の姿から、頭部に触腕を蠢かせる亜人の姿へ。そうすることに、躊躇いはなかった】
【何か悪い企みでもするかのように、亜人の口元がにやりと歪んだ】

/↓↓↓


731 : ◆DqFTH.xnGs :2018/08/15(水) 00:12:01 lhRCoaFg0
>>719-721

────侵略者。化け物。人で無し
あたしを示す名前ってぇのは、それこそ人の数だけある
あんたは、よぉ…………あんたはあたしをどう呼ぶ?悲劇の王子様、よぉ

…………ハ。まぁ結局、あんたがあたしをどう呼ぼうと、あたしっつぅモンが変わるわけじゃねぇ
こんなナリでも、どんだけ化け物扱いされようとも、あたしはあたしの好きなように生きる
映画は見るし、美味いもんは食うし、仕事もちゃーんとして、アホみたいに笑う

なぁ、…………自由って、いい言葉だよな。やりたいようにやって、好きに笑って
────けど、よ。そんな辛気臭い顔で“自由”って言葉使うのは、どうなんだろな


   ところでよ、悲劇の王子様────紐なしバンジーって、したことあるか?


【差し出された腕を、触腕で絡みとる。それが叶えば】
【背後に空いた大穴へ──青年ごと、身を躍らせることだろう】

【────落ちて、行くのだろうか。深い深い夜の闇の中に】
【ならば青年を守るように、ミラは巨大な触腕数本を彼に巻きつかせる】
【赤くグロテスクな色合いの触腕はしかし。今は夜の色をしていた】
【柔らかく昏い青が、深黒に混じる。さらにその中に有る、星のような煌めき】
【──“夜景”に擬態しているのだと、彼は気付くだろうか。上から見た景色そのままを】
【彼女は肌の色に映し出していた。触腕だけではない。顔や四肢の全てが、夜に侵食されていた】

【落ちている時間は、僅か数秒にも満たなかっただろう。ぐん、と今度は引っ張り上げられる感覚】
【見れば、彼に絡んでいない触腕群がマンションの壁面に張り付いていた。──無数の吸盤によるものだ】
【触腕は器用に蠢き、やがて彼らを静かな路地裏へと導くのだろう】

【だが全ては、理論値に過ぎない。理想論とも言える】
【何かひとつ──蝶の羽ばたきだけで崩れ得る、繊細な均衡の上に広がる未来だった】

/いつも丁寧にありがとうございます!お中元に高級マダコを送らせていただきますね!


732 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/15(水) 00:36:50 Q.QR2jdc0
>>728


「 ─── あら、外交屋さん?」「ふうん。 ……… だったら、恩を売っておいて損はないかしら。」


【意味深な笑いを女は浮かべた。 ─── 親愛というよりは、狼が獲物を品定めするような風合いのそれ。】
【然るに女の素性もまた幾ばくか察し得るのだろう。女もまた少女の素性を察しているようだった。】
【 ─── いずれにしても彼女は少しばかり饒舌になるのだろう。機密と呼んで語らない情報も、程度が低ければ教えてくれるように見えた。無論のこと、対価を前提に。】


「 ………カノッサ機関ナンバーズ序列99番、通称"斬馘官女"こと ─── ヒフミ・ツモイ。」「ああ、漢字は解る?」
「百千万億 一二三、と書くそうよ。 ……… どうせ偽名でしょうけど、妙な名前をしているわよね。」
「国籍推定櫻国。女性。年齢10代後半から20代前半。」「同国の陸幕直轄特殊作戦群に所属していたとの未確認情報あり。」
「反社会的組織として有名なカノッサの中においても、特に汚れ仕事や後片付けを担う殺し屋。」
「この手の例に漏れず、命の遣り取りを好む戦闘狂の享楽殺人者 ──── まぁ凡そ、こんな所かしらね。」

「お六の彼は公安部の高官さん。何をやらかしたのか知らないけれど、どこぞの国に亡命を求めている最中だったそうよ。」
「上手くいけば色々と手繰れそうだったし、殺られるとして都合が悪いことはなかったから、差し当たり泳がせていたのだけど」
「 ………随分とあっさり、食い付かれたわね。足跡の始末も見るからに不慣れでしたし、まあ、当然と言えば当然かしら。」
「ともあれ斯くして尊い犠牲の元、あの辻斬りを引き摺り出すことに成功し ─── そこで出てきたのが貴女、って訳。」


【手元のライターでマールボロを吹かしながら、 ─── 淡々と女は語る。あの殺し屋の簡単な経歴、殺されてしまった哀れな誰かについて。】
【青い瞳は幾らか非難がましい目線で見ていた。余計なちょっかいを出さなければ仕留められていたものを、と言いたげに。それでも結局は人命を選んだのだから、慈悲というのはあるのだろうけど】


733 : 名無しさん :2018/08/15(水) 00:55:40 qzfUt38U0
>>726

【――ああでもそれは致命的な周回遅れかもしれないけれど、こと、彼女に対しては、きっとあまり関係がないのだろう】
【だって彼女の信じている神様はそこに居ながら"違う"から。今ある神は、けれど、彼女にとって許しがたいものだった、決して信じられないものだった】
【それに対して祈ることはいままでの全部を否定するのに等しかった。それがたとえ本当に救ってくれえる概念だとしても――真っ赤な鉄靴を履いて踊るより絶望的でも】

【だからもしも相手が彼女に何か感じるとしたなら、――それは今にもふっと電車に飛び込んでしまえそうなほどの希死念慮なんだろう、きっと彼女は死んでしまいたい】

――――――――――っあ、

【――――くす、と、笑みが漏れた。冥い色合い、それは原初的な快楽、他者を傷つけて悦ぶ動物の本能に似て、】
【麻酔薬に似る阻害の作用はそう長続きはしないもの、だとしても戦闘の最中であればほんの刹那の出来事であれ意味はある、動かない獲物など恐れるはずもない】
【あとはどうとでも殺せばよかった。それで終わる――そうしたら相手らこそ異端だと宣言すればよかった、それで、"本当になるから"】

【そんな風に考えた思考が、けれど、――次の刹那に、鮮烈な衝撃と痛みとで塗りつけられる。一瞬鋭く漏れた吐息は、けれど、鋭さのあまり声にならず】
【リコーダーの唾を抜くより無意味な音を鳴らす――右肩を大きく揺さぶられたなら少女の身体はあっけなく地面に叩きつけられるみたいに、倒れこむのだろう】
【投げ出される足があんまりに無防備だった。ぱちりと瞬く瞳があんまりに無垢を湛えて、であれば、右肩に添えられる指先は、きっと、まだ意味も理解してない】
【――おそらく、折れてはいない。だけれど動かすには絶望的な程度には、痛むようだった。すぐに顔には痛苦が浮いて、――ゆえに】

【ばらり――と、二人と外界を隔てていたリボンの壁もほどけて消えるんだろう。――刹那の間、瞬き一つ分にも満たない瞬間が、翻れば】

――――――――、ふ、ふふ、そうですね――、先ほど、言いましたよね? 信じていただけないなら、時として、――、
――であれば、あなたも"感じたら"いいです、――、私の知っている限りの"痛み"。ウヌクアルハイ様が伝えてくださるから、――――――ね?

【左手のみで崩れた体制を立て直す、投げ出した足はそのままだから、めくれ上がった裾から下着までも見えるのかもしれなかった、けれどそれに興味はなくて】
【ふらりと左の手が持ち上げられる、――そうしたなら、出来の良すぎるCG映像みたいに、ぞろりと、"剥離"する】
【そうして現実に浮かび上がるなら――――ぐわ、と、大きく牙を剥きながら、相手に跳びかかるのだろう。しかして噛まれても現実としての傷はつかない、ならば】

【作用は全く別であった。多種多様の痛み。生きる中で日常にあり得る痛みから、拷問に等しい痛み、内臓が焼けるような毒の痛み、麻酔なしで胎を抉じ開けるような痛みから】
【全身を串刺しにされる痛み。右足がはじけ飛ぶような痛み。右腕が何かに潰されたような痛み。――それから、それから、右肩が折れかかるような、痛み】
【言葉通りならそれらが彼女の感じたことのある痛みらしかった。それでいて全てではないのだろうと予感させた、――けれど、それは、あくまで、直線的な攻撃】

【相手に阻害の力がよほど残っていて、すぐに動けないでもなければ――見てから回避することが十分に叶う速度であった、だけれども】
【脳神経にあんまりに鮮烈な痛みを焼き付けようとする一手。受ければあんまりに無慈悲に。けれどきっと限りない善意で。押し付けられる、それらの痛苦】

【――ひどく痛む右手に、左手の動きは制限されて。彼女はまだ座り込んでいたから、再びの明確な隙でも、あったのだけど】


734 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/15(水) 01:03:52 smh2z7gk0
>>732

そーだよぉ、まぁこの国にきてからほとんど逃げ回ってるだけだけど………。
売りな売りなー私はそういう所は義理堅いからね。

ハハ―――たいそうなお名前だこって、あの面もそうだけどおよそ人間には思えないね。

【乾いた笑みを浮かべながらトントンとこめかみを叩き、目の前の女性を見つめる。】
【「随分とおしゃべりだな」と、相手に聞こえない程度の声量で呟くと考えるように視線を下げる。】
【非難の眼を向けられれば観念したように両手を上げてため息を吐く。】

悪かったって悪かった!ちょっと魔が差して首突っ込んだけど私も後悔してるよ。
―――それと、さっきは助かったよ。どうもありがとう〝正義の味方〟さん。

しかし〝公安〟の人間だったとはね、あの人。―――〝どちら側〟だと思う?それとも三つ目?
なんのこったよって事はないでしょ?その口ぶりからして公安ではないんだろうけど、事情は知ってるよね?
むしろ私より詳しいか、ともかく無駄な駆け引きはするつもりはないよ。さっきの礼もあるし交換できるものはする。
アンタが〝どちら〟かだとしてもね。

【潔く非を認めると、若干恥ずかしそうに礼を言う。その後に続く言葉は若干嫌味っぽい口調だが。】
【そしてより自身の素性を相手に悟られる事も厭わず、〝公安〟の深部の事情へと話を移していく。】
【アイスブルーの瞳はいくらか腹をくくったような鋭いものになっていた。】


735 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/15(水) 01:39:31 Q.QR2jdc0
>>734


「有り難い言葉として頂戴しておくわ。」「 ─── 売れる恩として"喋ってあげてる"んだから、よく聞いておきなさい。」


【 ──── どうやら"聞こえて"いたらしい。全くもってひどく威圧的な女だった。自身の優位は当然のものと言いたげだった】
【それでも刺したのは釘だけであり、それ以上の制裁を加える事はないようだった。なればこそ、少女の問いにも答える。】


「 ……………。」「 "ウチ"としては、公安なんて居ないに越した事はないわ。」「共食いの相手ですもの。」
「それは勿論、共同作戦を張ることもあるけれど」「 ─── "反社会的勢力"との癒着があるなんて、見逃し難い腐敗でしょう?」

「だから有用そうな弱味は握っていきたい。 ……… 聞くに値する情報とか、ないかしらね。ないのなら構わないのだけれど。」
「氷山の一角を切り崩せば、次の切り口も見えてくるというものだから。」「 ……… 或いは、貴女は"何をしたいのか"でも、構わないけれど。」


【 ─── 或いは、類似した言説を聞いたことがあるかもしれない。ともあれ女は何かしらの情報を求めていた。】
【芋づる式に引き摺り出せていけそうな、蔓延る闇の尻尾。或いはそれを追う少女自身の目的。外患誘致の一言で発砲しそうな顔をしていた】


736 : アンゼリカ ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/15(水) 01:40:31 smh2z7gk0
>>733

―――ち。

【銀色の魔力波が肩に直撃し、吹き飛ぶ相手を見ながら忌々し気に舌打ちをする。】
【額には油汗がにじみ出ており、表情も不快感に包まれている。それは内側からも外側からもくる感覚だった。】
【若干阻害の作用が残る体を無理やり起こしながら息を整えて追撃を放とうとした矢先―――。】

―――何を………
ッッ!??ガアアアアアアアアアアアアッ―――!!!
(なんだこれは?今何が起きている!?私はどうなっている!?いや、〝これ〟は私なのか―――。)

【首筋にソレが噛みつく。直後に訪れるのは〝痛み〟。一瞬にして意識を自己の認識すらも削り取る苦痛の波。たまらず崩れ落ちる】
【アンゼリカも感じた事のある痛み、アンゼリカは感じた事のない痛み、それらが混ざり合い内部から思考を溶かしていく。】【痛い】
【なぜだ、こんな筈ではなかった。こんな事になるはずではなかった。そうだ、私がこんな事になるなんて。】【苦しい】
【―――。最初に見つけたとき、別に蛇の刺青なんて気にならなかった。】【辛い】
【一緒だった、私もくしゃくしゃになった猫の死骸をみて(埋葬してやりたい)そう思っただけだったんだ。】【もう止めたい】
【けど、〝蛇/ソレ〟を見つけてしまえばどうしようもなかった。それが私の道だったから。無理やりにでもそうするしかなかったから】【嫌だ】
【結局自分も何かに委ねているだけだ、ずっとそうだった、檻の中から外を眺めていた時から〝アレ〟に手を差し伸べられた時から】
【そうだ―――〝アレ〟だ。今の私の道の先は〝アレ〟が………〝緋色〟が………あ、あ】

【フラッシュバックするのは数年前の事、全てが緋色に染まった光景、痛み、そして―――〝悪魔〟。】


ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ―――ッ!

【それは偶然だったのか、それとも意図的に行ったのか、分からない。だがアンゼリカは両腕の掌から銀色の魔力を地面に向けて放つ】
【そうして無理やり身体全体を空中へと吹き飛ばす―――車に跳ねられたかのようにクルクルと回転する、が】
【なんとその状態から体を捩じり、蛇の少女の方へと向けてそして落下するだろう。】
【空中だというのにいつの間にか体勢は整えられ右腕のパワードアームは後ろへと引かれている。そして落下の衝撃も合わせてそれを―――】
【それを―――蛇の少女へと振り下ろす。この高さ、この質量、それは相手を砕けた柘榴にするのに十分だった。】

【ドゴンッ!―――大きな音が鳴る。】【拳は確かに振り下ろされた、しかし】
【それは蛇の少女に対してではなく、その目の前にある地面に向けてだった。巨大なクレーターが出来上がり蛇の少女にも風圧が行くだろう】
【ただ、想定されていた狙いとは全く違っていた。アンゼリカの銀色の瞳が蛇の少女へと向けられる。大粒の涙が今にも零れ落ちそうだった。】
【まるで独り言のようにアンゼリカは口を開ける。】

………たいのは―――痛いのは、嫌だよ?

【それは誰に向けてかは分からない。ただ蛇の少女の目の前には無防備な〝相手〟が拳を地面に突き刺し立っていた。】


737 : ◆9VoJCcNhSw :2018/08/15(水) 01:41:59 wn2rqSVw0
>>729

【実を言えば、コレは卑怯な音楽だった。なにせ、音とは耳で聞くものだ】
【どんなコンサートでも、どんな大音楽家でも、映像や生の質感で勝負はしない】
【言ってしまえば、邪道。しかしこれもまた一つの芸術と考えれば、その質は高かった】

【曲が終わって瞳を開けば、其処には燃えた草原も、積もった雪も、怪物も無い】
【――ただ。他に居た何人かの聴衆のうち、一部は姿が見えなかった】
【――居たはずの場所には、焦げた後。それも演出なのかと思えたが、跡形も無く】


先の曲は、まだ荒削りだ。今後も改稿を重ねる事だろう
だが今日、この演奏においては最も完成された状態だった。
私が如何なる存在であると自己分析をしているか、伝わったなら良いのだが…――あぁ、ありがとう。


【軍帽を抑えて頭を下げる。瞳しか見えない、相も変わらずの肌が覗かない格好だったが】
【何処か感じられるのは〝嬉しい〟という感情で。要は、この少女は"承認欲求の怪物"なのだった】

【――さて。この一曲を境に、リクエストは自然と増えることとなった】
【――名曲の演奏。それから即興でのリクエストもやはり多く】
【――例えば国を連想しての演奏だとか。キーワードを元に、というのもあった】

【終わってみれば、演奏した曲は長短合わせて21曲。成功、といえるものだろう】
【途中で豹変することもなければ、誰かを危険な目に合わせる事もない】
【やがて深夜に差し掛かるからと演奏を止め、礼を述べて、それでコンサートは終わりだった】


―――あぁ。待ち給え、ミセス・ミフネ。

貴女には感想を聞きたいのだ。私のピアノ・コンサート……率直な感想を聞かせてもらいたい。


【音楽堂の電気が落ちる。人はまばらに街へと散っていき、残るのはこの二人だけ】
【足早に立ち去ろうとしても、少女は最初から狙いを付けていたように歩み寄って】
【その手を握って、止めるだろう。聞かなければ気が済まない――そういう、様子だった】


738 : 名無しさん :2018/08/15(水) 01:57:20 qzfUt38U0
>>736

【――撃ち出される魔力の煌めきに相手の身体が空中に躍り出る、そうすれば、相手の首筋に咬みついた蛇もまた振り払われるのだろう。いつしか少女の腕に戻り】
【――きっと、しまった、なんて、思っていた。その行動を彼女は予想していなかった、あらかたの人間ならこれで動けなくなると信じていた、だって、】
【――誰より彼女が体験した痛みであるから。こんなのよほどじゃないと耐えられないって理解していた。そうだって信じていた、信じたかったから】
【――マゼンタの瞳が見開かれるんだろう、小さな吐息が漏れた、漏れて――、次いでぎゅうと眼をつぶる、身体をわずかに硬くしたなら】

【――――衝撃が地面越しに伝わって来る。音と、それから、風とも届いて。ちりとわずかに空中を走るのはマゼンタの煌めき、薄ぺらの障壁が、けれど、】
【すべて彼女を護れるまでは、張り巡らされていなかった。だから――それがもしも彼女に命中していたなら、それで、熟れたトマトよりも、あっけないって、伝えて】

…………、――、どうして、ですか? こんなにも、――こんなにも、分かりやすいのに、

【真っ白の脚がわずかに身体に引き寄せられる。真っ白な顔が、気づけば、ただ無垢な子供のよう、相手の言葉を理解できなかったかのように、不思議がり】
【すなわち相手へ尋ねるのだろう。痛いのは嫌だって言葉が、――分からないと答える、"痛みは分かりやすいのに"と続ける理由は、やはり全うなものではなく】
【あるいはそれ以外のものでは何かを納得できないのかもしれなかった。――――それでもきっと彼女は刹那、死にたがっているふうでも、死ぬのを怖がったのなら】

【――――振るえるはずの力は、けれど、その瞬間に振るわれることはない。痛む肩を蛇の腕にてきっと無意識で撫でさする、――親が子供にするみたいな、仕草だった】


739 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/15(水) 01:59:43 smh2z7gk0
>>735

(―――地獄耳。)
成程ね、まぁ正義の味方サンの立場はなんとな〜くだけど分かったよ。
どうだかね今の世の中ある程度の力を持っている企業、個人、団体それらはどっかしらで〝暗部〟と繋がっている。
それが力を持ったから〝闇〟が這い寄ってきたのか、〝闇〟の力を使って成り上がったのかは知らないけどね。

【「それを仕方ないというつもりはないけど」と付け加えながら肩を竦める】
【確かに規模が大きければ大きいモノほどそうした〝反社会的勢力〟との繋がりを持ってる事はある】
【それがある種のバランスを取っている場合もある。ただしこの〝水の国〟においていえば〝闇〟はあまりにも大きすぎた。】

―――〝CHAIN GANG〟っていうBARに〝公安〟の人間がいた。あの様子だとよく行ってるみたい。
名前はエーリカって言ってたかな。間違いなく何らかの〝暗部〟に身を寄せてる様子だったよ。あと酒をよく飲む。

私?ああ私のしたい事なんて簡単だよ。
〝現状維持〟………今が今であり続けられるように尽くす。ただそれだけの目的だよ幻滅した?

【齎すのは公安所属の人間と思われるものの情報。BARの住所も加えて丁寧に教えるだろう。】
【―――種は既に撒いていた。あとはどう事が運ぶかを見定めるだけ。】

【そして、コニーが話す〝目的〟。それはあまりにも単純で、それでいて〝難しい事〟であった。】


740 : アンゼリカ ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/15(水) 02:15:21 smh2z7gk0
>>738

―――ッ。なら、そんなずっと悲しそうな顔はするな。
君の痛みは、きっと誰かの悲しみだから………だからもう自分を許してやってくれ。

【蛇の少女に問いかけられると、我に返ったように眼を見開き勢いよく背を向ける。】
【応える声は随分と優しくなっていた、その言葉はまるで自分に言い聞かせるようにも感じられる言葉だった】
【それが蛇の少女にとって正しい答えなのかは分からなかった、ただ口からいつしか零れ落ちていた。】
【ずるずると重たそうな体を引きずりながら、アンゼリカは離れていくだろう。いつしか両腕のパワードアームも霧のように消えていく。】
【戦意がなくなったわけでも、相手を見逃すわけでもなかった。ただあまりにも乱れ過ぎた。整理が必要だった。】
【次にまみえた時に、躊躇なく狩れるようにとそう言い聞かせながら。】

また会おうその時までその命は預ける―――、、、。

【名を言おうとして、結局相手の名前を知らない事に気が付き所在なさげに唾を飲み込む。】
【ミントグリーンの髪を揺らしながら、頭部の犬の耳は力なく垂れ身体も路地裏の壁へともたれながら歩き続ける。】
【声をかけなければ結局そのまま路地裏の闇へと消えていくだろう。】


741 : 名無しさん :2018/08/15(水) 02:30:55 qzfUt38U0
>>740

――――――悲しくなんて、ないですよ、私は、……悲しそうでも、なくて。そんなはず――ないです。
だって私はウヌクアルハイ様を信じているのに――、悲しそうだなんて、そんなことは、ありえなくって……。

私を赦してくれるのは、ウヌクアルハイ様だけだから…………――。

【背中を向ける仕草に、彼女もまたいくらか遅れて、視線を逸らすのだろう。それはどこか気まずいような刹那、買う気のない試食の爪楊枝を捨てる瞬間のような】
【痛む肩を何度も何度も自身で慰めていることそれそのものが悲し気だと言われたらきっと言い返すこともできないから、――そうしてもらえるのは、きっと、助かって】
【やはり相手の言葉が理解できないようだった、――優しげな声音に、けれど、否定を重ね行く。パンケーキなら楽しそうでも、それはあんまりに絶望的すぎるようであったなら】
【――自分で自分を赦す方法を知らないのかもしれなかった、だなんて、今更過ぎるけど】

……かえで、です。……蜜姫かえで。知ってると、思ったんですけど……。

【そうして背中に投げかけられるのがきっと彼女の名前だった。――であれば調べれば身分もはっきりするだろう、"幹部の生き残り"】
【――それならばやはり未来までも見逃しておくわけにはいかないのだろう、しかして何か光明を探そうと、するのならば】

【――――彼女が名乗ったのは、限りなく、個人としての名前であったから】

【(――――ついでに。阻害の力は、もういくらかすれば完全に抜けるだろう。けれど抜けたところで舞い戻ったとしても、そこに彼女は、もう、いないから)】

/おつかれさまでしたっ


742 : ◆RqRnviRidE :2018/08/15(水) 16:42:25 vZw8nhd20
【水の国──シャッター通り。人気もすっかり失われ、寂れた商店街の一角に、そいつは居た】
【3、4つほどの大型のナイフをリズミカルに放り投げ、トスジャグリングをしているのは──】

んんん��? あ、あんまり集まんない、ネェ!
スス、ステージを、間違っちゃった、かナァ?

【マゼンタの体とシアンの瞳が特徴的な、デフォルメされたデザインの『ジャガーの着ぐるみ』】
【2.3m程の身長で、腰に太さの異なる黒のベルトを二つ重ねて巻き、不気味な笑顔を浮かべている】
【太い方のベルトには、名前だろうか「Zampach Juggernaut」とポップな字体で刻まれており】
【白い腹には、中央がハートマークとなった、ブドウのような果物のイラストが描かれていた】

【そいつの周りには貧しい身なりをした子供が数人集まって、その光景を物珍しそうに眺めている】

まぁ、マァいっかぁ! キキ、キミたちとぉ、しばらく遊べそうだもんネェ
ホラ、ホラ、よぉーーーーく、見ててご覧、……ヨッと!

【着ぐるみはぎこちない口調で小さな観客へと呼び掛け、足元に散らばっているジャグリングナイフを一つ、爪先で上へと放り上げる】
【ナイフは勢いよく回転しながら頭上高くまで飛び、頂点まで達すると、風を切りながら落下──】
【──正確には、山なりに子供たちの方へ、鋭い切っ先を向けて落ちて行く。】

【わあっと声が上がる、歓声などではなくそれは悲鳴に似て、子供たちは逃げ遅れそうになる】
【着ぐるみは大して慌てた様子はなく、放り上げたナイフ目指して大きく一歩を踏み出す──】


【その付近の、背の低い寂れた商業ビルの屋上の縁にて。その光景を体操座りで、つまらなさそうな顔で眺めているのは】
【マリンブルーのロングヘア、ターコイズブルーの瞳──碧海を思わせる風采の、中性的な面立ちの少女】
【褪せた紺色のマキシワンピに身を包み、鍔の広い純白のキャペリンハットを目深に被っている】

楽しそうで何よりなの……ふぁ。 平和ね……

【少女は眼下の光景を眺めながら、暢気に小さく欠伸をひとつ──片手で滲んだ涙を拭う】
【どうやら、着ぐるみのパフォーマンスが危険行為に及びそうなことを察していないらしい】
【重力に任せて落ちていくナイフの行く先を見詰めつつ、両足を伸ばし、空中でパタパタと揺らして──】


743 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/15(水) 17:11:46 onJ4XCzs0
>>739

「それを言われると立つ瀬がないわね。斯く言う私も、あまり胸を張って語れる後ろ楯を持つ訳じゃない。」
「ならば外患誘致まがいの真似をする理由も、 ─── そういう所にあるのかしらね?」「まあ、構わないのだけれど。」


【わざとらしく示されたヒントは、 ─── 女なりの手心であるのだろうか。であれば、導ける答えもあるだろう】
【「エーリカ。 ……… エーリカ。ふうん。」その名前には聞き覚えがあるらしい。「私も好きよ。仲良くなれる気がするわ。」】
【打算的な冷笑から紡がれる言葉はかえって脅迫性を持ち合わせてもいた。然して、少女の目指す所については】


「いいえ。寧ろ見上げた根性。 ──── 変わらない事は、時として変わる事よりも困難を伴う。」
「どんな個人にせよ集団にせよ、多かれ少なかれ他者に依拠して存続していく以上、当然の帰結ではあるのだけど」
「 ─── 事実として、恒久の平穏を約束されていた筈の"彼ら"でさえ、今まさしく改革の決断を迫られている。」


「コニーさん、と言ったかしら。」「 ─── では然し、私からも問うてみましょう。」
「貴女の視点において、 ─── 貴女の守るべき"今"とは、どのように見えているのかしら?」


【 ─── そこではじめて、女は感心したような顔を見せる。あるいは納得であるのかもしれない。その上で、改めて問い質すのは】
【貴女にとって"変えてはならないもの"とは、一体なんであるのか。 ─── 換言すれば、お前は世界をどう見ているのか、という観念的な言葉。】
【少なくとも少女の見立て通り、言葉を綴るとなれば女は饒舌な類の人間だった。リップサービスの域を超えていた。】


744 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/15(水) 17:34:58 WMHqDivw0
>>742

――――危ないっ!

【ひゅん、と風切り音。中空を切って進むそれを見るならば――赤いナイフのようなものであるとわかる】
【それが突如、少し離れたところから飛来して。着ぐるみの投げたナイフにぶつかりに行こうと】
【そしてその軌道を変えようと。……誰かがそう試みたのだと言うこと、わかるだろう。現に後方から、声が上がった】

【着ぐるみか、少女か。どちらか、あるいは両者ともにその主を見ようとするのなら。目に入るのは】
【この暑い中で、指先まできっちり隠すような長いローブ――おまけにフードまでばっちり、目深に被って】
【徹底的に日差しを避けるような恰好をした、……背丈と声色から推測するに、青年。そんな人物を見るだろう】

そのナイフが本物か偽物か、はたまたその投げ方がパフォーマンスの一環であるのかは知らないが、
……あまりにも危険がすぎるだろう! そうまでして、客の気を引きたいのかい!?

【そんなのよくないよ、と言わんばかりに声を張るそいつは。暑苦しいほどに正義感たっぷりに生きているようだった】
【けれど、ローブの隙間からちらちら零れるなまっちろい肌には、一滴の汗の珠すら浮かんでいないこと】
【長い袖の出口、手の辺りからぽたぽたと血液を零しているのに、それを地面に落とすことなく、中空に留まらせていること】
【なにより、深く被ったフードの向こうから時折覗く、翡翠色の瞳には――みなぎる魔力の輝きが灯っていること】

【――――それらの要素が「こいつ」を「人でなし」だと教え込ませてくる。だったらこいつは、本当に、正義の味方なんだろうか】
【その辺の判断は、着ぐるみと、少女と。二人に委ねられることだろうけど――――】


745 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2018/08/15(水) 17:46:11 IBKicRNQ0
>>667-668
【そう、未来だ。彼女の未来。蛇に呪われて、平凡な生活を失って、その後に手にした狂った日常も失って】
【その後になお、残ってしまった彼女の未来。そこにすら、蛇の毒は忍び寄る】

【そう、当たり前のことだ。彼女は蛇の第一の使徒なのだから。誰よりも篤い信仰心を秘めているのだから】
【それはきっと、狼の温もりと引き比べても、まだ同等に強く】

【その記憶を封じていたのは、司祭の意志か。それとも彼女の防衛本能か。その両方か】
【いずれにせよ、彼女がその記憶を封じられ。それが解放されるその瞬間は、間違いなく彼女のものだ】
【肉屋にも司祭にも、狼にすらも知られない、彼女だけの一瞬だ】
【それは、蛇の血のように冷たくて、惨たらしい瞬間であったのだろう】

【過去が彼女の人生を収穫しにやってくる。その先の未来は、まだわからないなら。今語るべきは、呪いが植え付けられた時のことだろう】


……ムリフェン殿。感謝いたします。心より、感謝申し上げます……!!
私にとっても、サビク殿にとっても、ポステリオル殿にとっても、アルジャーノン殿にとっても、多くのサーバントたちにとっても
かけがえのない居場所でした。我々の、ウヌクアルハイ様のために在る我々の、聖域でした

お願いいたします、ムリフェン殿……どうか、お願いいたします……

【それが、司祭が最後に放った言葉となる。彼女の噛み締められた歯が震えていることを、その声が震えていることを】
【目にしていながら、司祭は〝託す〟。身勝手な狂信に従って】

【そのただ一つ確かなことを、司祭は認識していたのかどうか。それはわからない。ここは因果の流れの中に空いた、一時の狭間なのだから】
【蛇たちの故郷、その光景がぐにゃりと崩れていく。因果の流れが正常に戻ったのがこのタイミングであったことの理由は、ウヌクアルハイだけが知っているのだろう】
【司祭もまた、確かにその言葉を受け取り、そして返す。光る義眼から、とうに流れなくなっていたはずの涙を流しながら】

【そう、かえでも含めた全員の居場所、全員の悲願。今も我々は貴女と共にあるのだと】
【言葉の上では美しく。しかし蛇のように絡みつき。呪いという名の最後の縁を、二人の蛇教徒は繋いで】
【彼女は戻ってきた。元の病室。キノコを植え付けられた瞬間から、僅かの時間が経っていた】

【混乱しきったその目が最初に見るのは。恐怖と怒りに呻き叫ぶ、異形の姿であるだろう】


ア――――――アレクサンデルウウウウゥゥゥゥゥッ……!! ゲホッガッガアアァアア!!!
き、きさ……貴様ああああああガハッガアァ――――!!!

【毟り取られたはずの手の入れ墨は、傷跡一つ残さずきれいに回復しているだろう】
【植え付けられたはずのキノコは、持ち主であったはずの異形に抗い。その菌糸を蛇のように伸ばして】
【カニバディールの首をギリギリと締め上げていた。菌糸を両手でつかみ、必死で抗うその三つ目に、瞬きを終えた彼女が映った】


―――――――!!!

【その瞬間、異形は悟った。この男の主観では、キノコをかえでに植え付けた瞬間。意識が白く吹き飛び】
【彼女と司祭が語らうのを、遠くから眺めさせられているような状態にあった。のたうち、もがき、それでも因果の流れに干渉など出来ず】

【戻った時には、アレクサンデルの残骸に過ぎないと思っていたキノコに襲われ。そして。眼前の少女】
【臆病な悪党の勘は告げていた。これは、まずい。良くないことが起こる。とても、良くないことが】

【背筋に走る悪寒はしかし、異形を逃走に向かわせない。首に巻き付いた菌糸が、そして眼前のただ一人の少女の放つ気配が】
【異形の両足を病室の床に釘付けにしていた。錯覚のようなほんのひと時、それで危機を察するには十分だった】

【だが、逃走を封じられた今では、それは拷問に等しかった。まさに、その瞬間。異形は蛇に睨まれた蛙であった】

/ありがとうございます、こちらもこのような形で平気でしょうか?


746 : アンゼリカ ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/15(水) 17:58:37 smh2z7gk0
>>741

―――かえで、かえでか………いい名前、なのにな。
駄目だ………こんな、こんな無様な姿ではこんな迷いを抱えていては…〝聖痕〟を背負う資格はない。

【しばらく路地裏の壁に体を預けながら歩いたあと、ぽつりぽつりと独り言をつぶやく。】
【アンゼリカが抱えているものもまた葛藤と苦しみだった。二人が次にまみえるとしたら………その時はきっと。】
【人通りの多い道路へと出ることができればそこでアンゼリカの意識はシャットダウンした。】

//お疲れ様でした!


747 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/15(水) 18:31:59 smh2z7gk0
>>743

まぁ、〝大義名分〟が付いてればいいんじぁあない?どんな後ろ盾があってもね
良薬とは苦いモノ―――尤も世間の皆々様はその苦い部分すら知ることはないのだけどね

【「それがより国民の危機管理意識を削いでいく」―――眼を細めてどこかうんざりした調子で言う】
【「それは良かった、是非行ってみてくださいな」脅迫めいた冷笑に嫌味を込めて返答する。】

まー酷いもんなんじゃない今の世の中は。便利さを追い求めすぎた結果思考力を失った人々
あらゆるものに対して100%の結果しか求めなくなった息苦しさ、多少のストレスすら許容できなくなった人の弱さ余裕のなさ。
多様性多様性なんざ言ってはいるが、行き過ぎた配慮の結果が〝魔制法〟だなんてふざけた法律だ。

―――ただ、〝今〟を作るのは〝名もなき人々〟なんだよ。
どれだけ愚かだろうが、どれだけちっぽけだろうが、どれだけ浅はかだろうが―――〝守るべき〟なんだ。
今この世界で生を得て、そして政府に所属している以上私は〝全力を尽くす〟

自国の繁栄と平穏のためなら悪魔だろうが神だろうが手を組むし、道を阻むなら容赦はしない。
それが私の定められた………いや、〝選んだ〟生き方なんだよ。

【「これで答えになっているかな?」アイスブルーの冷たい瞳がまるで睨みつけるように相手を見つめるだろう】
【さきほどまでの軽薄さの奥に潜んでいた感情。10代の少女にしてはあまりにも悲痛な決意にも見えた】
【その結果が彼女にどう降りかかろうとも―――構わないとでも言うように】


748 : ◆RqRnviRidE :2018/08/15(水) 19:08:02 vZw8nhd20
>>744

【投げられたジャグリングナイフが最前列で逃げ遅れた子供の頭上へと迫る。そこへ歩み寄ってきた着ぐるみの手が伸ばされ、】
【トスの輪へ加わるが早いか、真っ直ぐに飛来した赤いナイフが的確にブレードの腹を捉えて弾き飛ばし、その軌道を反らした】

【カ────ン、と軽い金属音を鳴らしてナイフが着地、幸い誰も怪我していない様子で】
【固まっていた子供が涙目で辺りを見渡した後、喉を引きつらせながらワンテンポ遅れて走り去っていく】

……ぬわ!? な、な、な、な、何!? ──ぁ痛だッッ!!

【着ぐるみは中空を掴み、間抜けな声を出して顔から転倒するだろう。危険に過ぎるパフォーマンスは中断され】
【その周りに投げられていたナイフが落下していく。着ぐるみの上にも落ちるが、しかし刺さらない。フェイクらしい】
【観客は既に四方へ散り散りとなり、その場に残るのは倒れた着ぐるみと、現れたローブの人物と。其処から動かない少女の三名のみ】

────ううううぅぅ、ダダ、だって、だってサァぁ……
スス、スリル満点なショーの方が、おお客サンも、ヨヨ、喜ぶだモン!
ジェットコースターとか、フフフリーフォールとかもおんなじじゃん、オイラだってあ安全は保証してるヨォ
そ、それが大道芸人ってモンだろぉ、ななななのにキミが正義のヒーローよろしく邪魔してきちゃってサァ……!

【投げ掛けられたヒーロー染みた言葉には、駄々を捏ねるように抗議の言葉を返す】
【よっぽどパフォーマンスの成功に自信を持っていたのだろう、機械音声のような愛らしく高い声音で恨み言を連ねつつ】
【着ぐるみは起き上がってローブの青年を見る。先程浮かべていた笑顔とは打って変わって、“泣き顔”をそこに貼り付けながら】
【ぐらぐらぎこちない動きで立ち上がり、おいおい大泣きするように両手で大袈裟に泣く仕草を見せるだろう】

──ア。 キミ……

【──だが、それも束の間のこと】
【まじまじと相手の姿を眺めていた着ぐるみは、気付いたように短く声を上げれば顔を俯けて両手で覆い隠す】
【全身をすっぽり覆い隠すような怪しげな身形、落ちぬ血液に燃え滾る魔力……ああ、もしかして、】

──も、もももしかしてェ、オイラと“ヒーローショー”、やりたいんだネェ!?
アハハハっ、いいよ、いいヨォ! オイラ大歓迎、またお客サン呼ばなくっちゃァ、ネ!!

アーででも、まずサァ、リハーサル要るよネェ。

【もしかして、同類かも──という考えに何故だか至るのだった】
【戯けた考えを披露すると共に、着ぐるみは笑いながら俯けた顔をパッと上げてみせると、当初のように“笑顔”が浮かぶ】
【純粋に着ぐるみの行為を止めに来たのであろう青年を、あろうことか共演者という辺り、余程ふざけているのか】
【そうでなくとも短時間でテンションの激しい移ろいを見せる様は、どうしたって懐疑的にならざるを得ないだろう】

【そうして着ぐるみは「ちょっと待ってて!」なんて言いながら、辺りに散らばったジャグリングナイフを暢気に拾い始める】
【観客を危険に晒す行為を危険であると微塵にも思わないこいつは、頭の何処かのネジが何本か外れているに違いなく、】
【実際、敵意を露にしている青年にも背を向けるくらいだから、「ただの変人」だけでは済まされないことを予感させるだろう──】


749 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/15(水) 20:11:59 WMHqDivw0
>>748

【刺さらないナイフの様を見て、しまった、余計なことをしてしまったか、と一瞬思えども】
【けれどパフォーマンスが「やりすぎ」だと思ったことには変わりない。――思考を、切り替えて】
【ローブの人物は散り散りに逃げてゆく客の間を縫ってずかずかと歩みを進める、着ぐるみのほうへ】

スリルを求めるとはいえやりすぎだ、実際君だって見ていたろう、観客の表情! 悲鳴!
本気で怖がっていたんだぞ!? それでもまだ、それをパフォーマンスって言えるのかい、君は――
僕はそう思わないけど! 徹頭徹尾客を笑顔でいさせてやることが、芸人というものだと、……、

【小言めいて自論を押し付けてゆく。けれど、着ぐるみの「表情」が代わるや否や】
【「なにもそこまで……」なんて言い始める。多分、気が弱い。大袈裟な身振りで泣かれるならなおさら】
【フードで隠れていない口元が困ったみたいに「あ」か「え」の形になっていた。――その向こう側、】
【上と下とに二本ずつ、計四本。ニンゲンの犬歯にしては鋭利に尖りすぎている――「牙」が生えていて】
【それがきらりと、一瞬だけ夏日を受けて輝いた。見えただろうか。……一瞬だけのことだったけど】

…………え? ヒーローショウ? えっいや、そんなつもりは……り、リハーサル!?
違うよ断じて違う、決して僕はそのようなつもりは……ねえちょっと、聞いているのかい!?

【そのまま。着ぐるみとの距離が詰められたなら、慌てたようにもふもふの「肩」あたりに手を伸ばすだろう】
【叶うならそのままぐいっと引き上げて、動作を止めて此方を向かせるように】
【……ローブの下にあったのは細い腕だが、やたらに力が強い。これも彼を「ひとでなし」だと思わせるには】
【十分すぎる材料になるだろう。しかして彼はずっと慌てたまま、とにかく着ぐるみの奇行を、止めようとして】

【――――何も警戒してなかった。空いている手に魔術を練り上げておくとか、運動するための姿勢を作っておくだとか】
【そういうの、一切なしに。着ぐるみに触れようとするのだろう。……あるいは、無くても大丈夫、だなんて油断してたのか】


750 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/15(水) 21:11:13 onJ4XCzs0
>>747

【ごく冷徹な視線が交錯する。 ─── 女は表情も変えず、口も挟まず、人形のように少女の言葉を聞いていた。】
【 ──── 然して、ふッ、と頬を緩めるのだろう。穏やかな微笑だった。同意はせずとも、理解はした。そういう表情に違いなかった。】
【そしてまた、一定の敬意を表するのと同等の感情を示していた。故に続く言葉が些か皮肉めいているのも、彼女なりの親愛なのだろう。】

「 ─── 大した愛国主義者ね。」「けれど、半端なリアリストやニヒリストよりは好感が持てるかしら。」
「衆愚の産物と切って捨てるには、この世界は余りに美しいものですから。 ……… 幻想のように、ね。」

「気に入ったわ。 ─── 同胞とは思わないけれど、手を貸さぬことも選ばない。」
「アリア。アリア・ケーニギン=デァナハト。 ……… いつでも連絡しなさい。仕事の話なら聞いてやってもいい。」

【アリアと名乗った女は、 ─── 一枚の名刺を差し出す。いつかどこかの軽薄な男が渡したものと、同じ所属を示していた。】
【公的な所在地も連絡先もない。あるのは課員個人の連絡先と、その名前のみ。成るほど確かに彼女は正義の味方と名乗った。】
【であれば此の国を舞台裏から牛耳る黒子たちに与するのは奇妙な話であると思うかもしれず、 ─── 然し問われたとして、そこまでは彼女も答えぬのだろう。】


「ここから帰る宛はある?」「 ─── ないのなら、送っていくけれど。」


【 ─── 微かに口紅のついた吸い殻は、携帯灰皿に収めておく。"送る"と言っても凡そ尋常な遣り方であるはずがなかった。】


751 : ◆RqRnviRidE :2018/08/15(水) 21:29:18 vZw8nhd20
>>749

えぇぇ、だぁってオイラんトコの団長言ってたヨォ?
ニニ、ニコニコさせるのも、ハラハラさせるのも全身全霊でやれってサァ!
目いっぱいドキドキさせるのが≪象徴(シンボル)≫たるオイラの役目だからって……
……も、モチロン、お客サンも共演者サンも死なせたりするのはご法度! だけどネ!

ゥうむむ、きき、キミったら根っからのイイ子ちゃんなんだネェ……オカタイってよく言われるデショ?

【自分の言動が相手に困惑を抱かせているなんて露知らず、腰に両手を当て、さも得意気に胸を張ってみせる】
【観客にスリルを通り越して恐怖を与えているのも、着ぐるみにしてみればパフォーマンスの一環らしい】
【何処かの劇団にでも所属しているのか、“団長”とやらのアドバイスを鵜呑みにしている節があるようで】
【笑顔を絶やすまいとするのがローブの人物の信条であるのならば、腑に落ちない点も多いかもしれない】

【何というか、相手の恐怖心を煽ることを「楽しませること」と勘違いしているのかもしれない……けれど】
【そいつの得意気な言動からして、自らの請け負う仕事を誇り高いものであると認識していることには違いなく】

そそ、そうだヨォ、ヒーローショーって一人じゃ務まんないからネェ!
キミが、て手伝ってくれたらオイラう嬉しいナァって思うヨォ。

……しかもしかも、しかもサァ、オイラぁ見ての通り“ジャガー”デショ
キミは、その“牙”、オイラんとこの団長に似てて、オオカミか何かか──

【動揺する相手の素振りに対して、こちらは至って悠長にナイフを拾い続ける。人でないことに気付いてはいても、近付かれるのを厭わない】
【ナイフについては取り落としたものと、元々置いていたものを併せるとおよそ14本。片腕に13本を抱え、先程放り上げて落とした残り1本】
【拾い上げようとした時に肩に手を置かれる。触り心地はもふもふごわごわ、よく見ると全体的にうっすら汚れて、年季が入っている様子で】
【振り向かされようと抵抗する様子はない。ぐるりと振り向き、着ぐるみの感情の宿らない笑顔が迫る。色の剥げたシアンの瞳が見詰め、そして】


──獣同士の闘いッて感じで、興奮するよ、……ネェ!!


【ナイフを拾い上げようとしていた腕を横方向へ真っ直ぐに伸ばし、体を旋回させ青年へ勢いよく叩きつけようとする】
【裏拳あるいはラリアットに似た打撃、動作は大振りで見切るのは容易いが、マトモに食らえば威力は決して低くない】
【当たれば僥倖と狙いは定めていないものの、一瞬の気の緩みがどのように作用するだろうか──】


752 : ◆DqFTH.xnGs :2018/08/15(水) 21:48:57 gYN.30m60
>>737

【幻覚、というにはあまりにも鮮明な景色だった。感銘を態度で示し、また十数秒】
【ふと──周りを見渡す。居るはずのものが居ない、違和感。それと焦げ跡】
【灼かれたのか。あの時感じた焔に。──だが、それを口にするには憚られた】
【演出だと言われればそうか、としか答えられないし、何より】

【本当に人が燃えてしまっていたのなら──その光景を目前にしておいて】
【こうも平然と、且つ純粋に賞賛のみを求める少女の異常性が、薄ら寒く思えたのだ】


【しかしその後の演奏会はこれまた奇妙なほどに平穏だった。プレリュードの直後の】
【あの違和感こそが妙なものだったのだと思えてしまう程に】
【やがて──演奏会は終わり、客はひとりふたりと消え始める。決して意図したわけではないが】
【音楽堂の電気が落ち、残る客が自分で最後という時になって漸く席からふらりと立ち上がり】


────ん?ぎゃ、は…………おいおいおい、感想つったって、あたしみてぇな素人でいいのかよ?
感想聞きてぇんなら、もっと他の客が…………って、あぁ。みんな帰っちまったか

感想、感想ねぇ────。────素直に、よかったと思うぜ?
なんつぅか…………あぁ、うん。正直、ありゃ金が取れるレベルだ
こうやって無料で開くのはちょいと勿体ねぇっつぅか…………あぁ、でも
野外でやるのは、正解かもな。あの2曲めの演出、ありゃ部屋ん中より野外の方がグッとくる

今日のは──音楽がさっぱりなあたしが言うのもなんだけど、よぉ…………
あんたにしか創り出せねぇ芸術、だと感じたぜ?
あぁ────本当に、よかった。よかった、としか言えないのはどうかと自分でも思うけど、よ


…………。…………な。あんたみてぇなのが、オメラスってぇとこには山ほどいんのか?
オメラス、って…………結局、────何、なんだ


【感想を求められれば、素直に答える。相手に感じた怖さは、隠しはするものの】
【それでも彼女の芸術が素晴らしいと思ったことは、事実だった。例え仮に】
【目の前の少女が、直後に殺意を向けてこようとも──この音楽堂で感じた、「良い」という思いは】
【『ミフネ』の中では覆ることが決してないのだろう。『ミフネ』は、そういう性格の女だった】

【だからこそ──最後の、無粋とも思える問いを紡ぐことだって出来た】
【アンドレアの卓越した芸術のセンスと、アンドレアがオメラスの住人であること】
【そのふたつは、彼女の中ではまったく別の問題として扱われていた】


753 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/15(水) 22:10:43 WMHqDivw0
>>751

む、お堅いとは確かに言われるけど、それにしたってだね……

【フードの下でむっと唇が引き締められる気配がした。否定はしなかった、それどころか】
【さらに小言を重ねようとする辺り、お堅い――というか激烈に頑固。そう思わせるだろうけど】
【振り向かれると、陰っているはずの顔の上半分、翡翠色の瞳がかがやいた】
【驚いたのだろう。それに合わせて魔力が反応したらしい、きらりとまん丸く、光を帯びて】

【きっと造り物のシアンの瞳とは永遠に交わらないんだろう。そんな予感を与えてから、】

――――――――うわっ!?

【悲鳴をあげた。振りぬかれる腕、油断した身体はそれを容易く受け止めてしまった】
【――けれど。ただで受けてやるほど甘くもなかったらしい、咄嗟に身体を逸らすようにして】
【その勢いを弱めた――けど。ローブの下の体躯はひどく細くなよっちかった、だから】
【容易に吹っ飛んでしまう。何処かしら壁にでもぶつかるだろうか、そうしたら、けほ、とひとつ咳を零して】


…………、……いいや違うね、僕は、獣じゃないんだ。残念ながらね――――


【――――ぼとり。何かの落とされる音。すでに血を零していた方とは逆の手、袖口より】
【「黒革の手袋」を脱いで地面に捨てた音だった。勢いよく相手のもとに叩き付けたわけではないから】
【決闘を申し込んだ、という意味ではないんだろうけど。それでもよろり、立ち上がり】
【フードの下で、翡翠色がまた光った。きらり。言葉の通り、獲物を見定めた獣のそれとは違った色合いで】


754 : 名無しさん :2018/08/15(水) 23:14:28 371X6jp60
>>745

【あの時に死ねたなら――それはそれだけよかっただろう。殺し損ねた相手に助けられることなく、ひどい言葉で嬲られることもなく】
【何より最もくだらない理由で躊躇ってしまったという苦しみを負うこともなかった。――"彼女"を殺したら、二度と、誰も、笑ってくれないだなんて】
【本当にどうでもよかった。どうでもいいはずだった。だのに。だのに――と呪いを塗り重ねるなら、後戻りはできなくて、だけれど、その先は見えなくて】

【――それならば、やはり、彼女は少しずつ少しずつ、変わりつつあったんだろう。変わってしまいつつあったんだろう】
【ムリフェンなら空っぽだと言われて惑うはずもなかった。けれど蜜姫かえではそれで惑ってしまった。嘆けば嘆くほどに心がむき出しになって、(くるしい)】

――――――、

【――――――ぱちり、と、瞬きが重なる。であればそれは必然だった、眼前で苦しむ彼を見やる、――そうして、きっと、理解する】
【この光景の意味。彼の叫ぶ名前に。あぁとぼんやりした安堵は心が停止した作用に似る、――くるしさを誤魔化すかのように、きっと少女は、かすかに笑うのだろう】
【であれば――少女はふわりと立ちあがる。ひたひたと監獄にも似る無機質の床を裸足の足音にて彩って、やがて彼の傍らに立つのだろう。――身長百六十五センチが、見上げて】

――――――――――――――――――――――――――この腕で雨竜を殺したの?

【あるいは、その指先が、菌糸を両の手でつかむ、彼の腕に触れるのかもしれなかった。真っ白な右手ではない、鮮やかな蛇――山楝蛇――が刻まれた、左の手】
【能力は封じられている。だから何も出来ないはずだった。"だけれども"、その瞬間にかすかに聞こえる音――ぱちり、と、魔力が爆ぜるような、音階が】
【ぱちり、ぱちり、ぱち、ぱちっ、――ばち、ばち、ばぢ、っ、ばぢり! とまでも鳴きだして。であれば特筆するまでもない、――少しずつ、強まっていくのなら】

【――能力を封じられながらも、能力か、あるいはそれに準ずるものを繰ろうとしているのに違いない、と、きっと理解をさせるんだろうか】
【――しかしてカルト教団の幹部。その人物にあてがわれていたのは呪いの作用にも近しいほど強いもの、ならば、そんなに簡単に、"どうにか"なるはずが】
【――だけれどそれはもしかしたら思い込みや期待に過ぎないのかもしれなかった。だって現実に音はばぢりばぢりと狂暴に鼓膜を揺らすようになって】
【――そうしてマゼンタの瞳は間違いなく、その封印すら、突き破って――相手を殺そうとしてる、色合いをしていた。(それなら?)】

【それでも、まだ、突き抜けない。――それでも紙一重を感じさせた。もしかしたらって思わすだけの、――殺意が、間違いなく、そこにあったから】


755 : ◆RqRnviRidE :2018/08/15(水) 23:22:57 vZw8nhd20
>>753

【着ぐるみは振り抜いた腕の勢いそのままに、躍るようにステップを踏んで受け身をとった相手へと向き直る】
【両手を口許に当て、上体を左右にふらふら揺らして、くすくすと笑う動作を見せる。そうしながら】
【──かちかちかち。片腕に抱いたナイフが“円形に折れ曲がり”、腕輪のようにその腕に纏わりつくのが見えるだろうか】
【それはローブの青年の黒革の手袋が落とされるのとほぼ同時、開戦の合図として舞台の幕が切って落とされるかのように】

……あはっ、アハハハハっ、キミったらイイ体捌きだネェ! すごいすごい!
そそ、そうこなくっちゃネ! リハーサル前は準備運動しなくっちゃぁ大怪我しちゃうヨォ

【表情は変わらずも、喜悦満面といった様子をありありと感じさせるように着ぐるみは笑い声を上げる】
【奇妙な様子はそれだけでなく、今からおっ始められるのを準備運動だと言ってまた嗤う──やっぱりエンターテイナーとしては普通じゃない】
【やがて腰に巻いてあった太い方のベルトに手を添えると、中から何かを抜き出していく。それはずらりと引き出されれば金属めいた輝きを孕んで】

けけ、獣じゃないなら、キミは一体全体何かナァ!? どう見たってカタギじゃなさそーだ、けど!
改造ニンゲン? ヒーロー? ベイビーフェース? そ、それともまさかのトレーター/裏切り者……?
き、キミの世界における役割は、何なんだい? 共演するなら是非是非知りたいナァ……このオイラに!

【問い掛けを続けながら着ぐるみがベルトから抜き出したのは、“片刃のノコギリ”であった】
【長剣のように長く、先端が鋭く尖っている……が、あくまで見掛けだけ。刃は柔らかく折れ曲がっていて、さながら一尺の布のよう】
【それでも夏日を受けて金属質の輝きを宿すなら、それは嫌でも「金属」に他ならないことを明確に表していて】
【翡翠色の煌めきとは正反対の、どこか嫌な予感を含んだぎらつきを放っていた】


そんなオイラは“ジャンパフ・ジャガナート”、劇団『コルーヴァ』のマスコットさ!
きき気散じのジャンピーって呼ばれてんだァ、イカしてるでしょぉ以後よろしくネッ……と!!


【着ぐるみはジャンピーと名乗り、返答を聞くが早いか真っ直ぐに相手のもとへと駆け出すだろう】
【そうしながらもノコギリを構えており、間合いに入ることを許されたらば鞭の如く袈裟に振り抜かんとする】

【狙いは血液を流す方の肩。走行も攻撃も、いずれも大振りで軌道は読みやすい】
【ただし打撃と同様にその力は凄まじく、痩躯への直撃は免れたいところであろうか】
【更にノコギリは布っぺらのようであってその刃は正常に機能しているらしく、皮膚なら容易に割いてしまえるほどの切れ味を持っていた】


756 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/15(水) 23:53:25 WMHqDivw0
>>755

…………ずいぶん恐ろしいマスコットも居たもんだ。

【かふ、ともう一つ咳を零しながら。投げ捨てた手袋の向こう側、素の掌に、鋭い爪を食いこませる】
【それは彼にとっての儀式のようなものだった。自身の血を体外に流し、かたちを変え、刃と成す】
【けれどそれは――傷つけるためのものに在らず。ごく短い、けれども鋭い爪のように、両の手10の指にそれを纏わせたなら】
【体勢をごく低く保つ。四つ足の獣――とは行かずとも、地面をその血爪で舐めるように、――「がりっ」。】


そう、ジャンピー君。僕は切添エレインって言うんだ、どうぞよろしく
それはそうと足元には気を付けたまえよ、――――そらそこに、


【地面に刻まれるは「×」のカタチ。その跡は魔力を帯びて、一度だけ赤黒く発光して――――ならば】
【「そこを踏み締めてはならない」と感づかせるだろうか。とてつもなく嫌な予感だけ残すのだから。しかし】
【着ぐるみがそこを踏み締めようと、そうでなかろうと。「自分でそうしてしまう」のだ、脚先、上等な革靴の】
【踵でそこを軽く、かるーく突っついたなら。――――――――――――――――――― (轟音)】


――――――――「落とし穴」を作ったから、ねえッ!


【――――崩落する。本当に落とし穴が出来たかのように、ぼこん、と。地面が下へと崩れ落ちるのだ】
【なればこの青年の能力は。「×」印をつけた地点に、何かしらの変化を与えるものと推測されるだろう】
【……できようが、できまいが。無策に青年に近付こうとしていたなら――崩落に巻き込まれる、きっと】
【そこから跳躍して外に出る身体能力が、はたして着ぐるみにあるかどうか。……あったとして、】
【きっと青年は待ち構えているんだろう。穴から出てきた瞬間、迎撃せしめんと。落ちたなら、の話だけど】


757 : ◆RqRnviRidE :2018/08/16(木) 00:24:49 vZw8nhd20
>>756

【ジャンピーは酷く愚直であった。故に青年──エレインが眼前に十字を刻んでも、走行の進路を変えようとはしなかった】
【やがて痕跡が発光するのを目視する。そこまでは反応した、反応することが出来た。ある種の獣の勘のようなものが働いた】
【術式の発動に併せて、着ぐるみは崩落の手前で片足に力を込めて跳躍する。構えていた鋸を振り抜く直前のことである】
【轟音を掠めるように高く跳び、崩落の上を越えゆく様は『Jumpy』の愛称に恥じぬほどの飛翔であったことだろう。そして────】



やややばばばばばば!! ウワーッ!!



【 ──────────そして、彼は墜ちた。穴に。 】

【飛び越えようとしたところ、崩落の際の土煙によって距離を見誤っていた為だった】
【助走があったとは言え、結果として跳躍力が足らずカートゥーンよろしく空中に静止したのち、落下したのである】
【──否、落ちねばなるまい、だってこれは紛うことなき落とし穴なのだ。】

【けれどタダでは終わらない。完全に落下するその手前、ジャンピーはノコギリをエレインに向けて振り下ろしていた】
【振り下ろすと同時に刃がピンと真っ直ぐに伸ばされたのが見えただろうか。或いは土煙に紛れたかも分からないが、】
【先端が衣服等に引っ掛かれば御の字である。そうなれば着ぐるみはその怪力をもって、蟻地獄のように獲物を引きずり込もうとするだろう】


758 : 名無しさん :2018/08/16(木) 00:38:05 PYq7bHtM0
>>727
【――はぁ、と溜息が漏れた。まるで何処かの誰かを思い出すような言葉だ】
【尤も、彼は信仰心から。この声の主は……どちらかと言えば、皮肉寄りの言葉にしか聞こえないが】
【何であれ、見逃されたと知れば今度はまた異なった……安堵の溜息を漏らすのだろう。軽くなったとは言え、一人抱えて避け続けるのは困難】
【機を見て何かしらの行動を取らねばならない、と考えて居たのだから】


……さて。無事に逃げた……と言うか、離れる事が出来たのは良いんだけどさ。結局此処に何かがある、という訳でも無さそうだね
なら、ずっと休んでる訳には行かないんだけど――……ん?ルーナ、どうかした?

【目的地に着いたのは良いが、誰が居る訳でも無く何かがある訳でも無く。一度休むのには丁度良いが、それで状況が好転するも思いがたい】
【ならば先ずはどう行動するか考えるのが先、と今の状況を脳内で整理しようとした所に裾を掴まれる感覚】
【意外、とはこの事だろう。今まで意思らしい意思を見せなかったルーナがダメだ、と言う事が】
【何の事かと気配を手繰れば――なる程、確かに良くは無い。然れど、良くない場所にこそ切っ掛けがある事が多いのも確かだ】
【行けば何かしらの状況変化を望める様な気もするが――事態が好転する、とも限らず】


キミがダメだ、と言うならきっと凄く不味い所なんだろうね
――ボクも今は余り無茶したく無いし……うん。よし、コッチの方に行こっか
それじゃ、そうと決まれば出発。――歩けそう?無理ならおんぶしていってあげるけど

【あの檻に長い間居た彼女が其処はダメだと言う。違和感、それと同時に此処の住人であるからこそ分かる何かがあるのだろうという納得もある】
【何よりも意思が希薄に思えた彼女が引き留めるようなら、余程なのだろう】
【まだ完全に理解出来て居ないこの世界。ならば、以前から此処に居たルーナの言葉に素直に従うのが吉……とでも考えたか】
【それに、一人で残して置いて行くのにも少しばかり不安がある。かといって危険な場所に連れて行った所で守り切れるとも断言出来ない】

【つい先程まで居た街は破壊されてしまった事だし、まだ別な何かが居る可能性とて否めず――或いは、戻って来られるかも】
【“上”へ行く事を拒む事が無いのならば、手を引いてゆるりと向かおうとするのだろう】
【新たな場所に出るのなら、それで良い。それに、先程のゴーレムの上に居た人物とルーナと……少なくとも、実体を持つ者が居ると知れたのだから】


759 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/16(木) 00:57:38 WMHqDivw0
>>757

やあこりゃ見事に落ちてくれた、ッ、――――――!!

【落とすところまでは完璧に上手く行った。けれどその先――「なにかされる」のは想定外だったようで】
【ローブなんてひらひらしたもの、いくらでもどこでも何でも引っ掛けやすいものだ】
【引きずり込まれる、あまりにも簡単に。ただでさえ細い体躯だ、そうするのは容易いことだろう】
【それもあったがもう一つ――ローブを破くわけにはいかないという意地もあった。だって彼は「ひとでなし」で、】
【日光を浴びればそれはもう、ひどくひどい目に遭ってしまうんだから。破かないよう、自分から飛び込んでいくようにして】

【――――なれば。次に傷を刻もうとするのは、鋸の刃にだった。がりがり、と二回線を曳こうとして】
【それが刻まれればきっとその刃だって、地面と同じく、脆く崩れるようになるだろう。けれど】
【はたしてそれは、急ごしらえの血の刃程度で傷つけられるものだったろうか。実際、鉄ほどの強度があるなら】
【引っかき傷ひとつすら付けられないんだけど。……それでも彼は、刃の破壊。それを次の手に、選んだ】

………………ああもうっ、せめて陽が落ちてくれれば、もう少し――――!!

【半ば悲鳴をあげながら、がりがりがりがり、×印を描こうとし続ける彼。――ずっとそうだった。不自然なまでに】
【最初は地面。それから敵の武器――そういうものばっかりに狙いを定め続けて】
【ジャンピー自身には傷をつけないようにしているんだった。それが彼の美徳であり、】
【同時にどうしようもない弱点でもあった。……人を傷つけるのがきらい。正義の味方であろうとするくせに】
【致命的なまでに臆病なのが、どうしようもなかった。それを悟らせてしまうだろうか、それとも――】


760 : 名無しさん :2018/08/16(木) 01:50:37 PYq7bHtM0
本スレ>>305

【――少女が意思を取り戻したとき、新たな玩具を見付けた子供の様な純粋な笑みを零す】
【純粋に予想外の出来事だったのだろう。だが、悲しむべき事では無く……喜ぶべき事。何せ、風前の灯火にも思えた者が牙を剥いてくるのだから】
【結局の所、目論見通り辺り一面――教会その物を破壊する事に成功する事だろう】
【少なからず、逃げ道は作ることは出来たし……これだけの轟音が響くのだ。聞き付けた自警団等の組織が駆けつけてくれるのも時間の問題だろう】

【悪魔は、と言えば。冷静になれたのならば破壊が行われる最中、自身に飛んでくるミサイルを“朽ちさせていた”所を見る事が出来ていただろうか】
【砂にでもするかの様にして、辺りが破壊されていく様子と音を愉しみ】
【一面が瓦礫と化した頃、既に悪魔の姿は無く――代わりに、一人の少年の姿】
【腰に提げるのは櫻の刀。少し丈余りにも見える和装に、歯の短い下駄。感じられるのは先程の噎せ返る様な瘴気とも異なり……妖気、だろうか】
【額に生える角は純粋な人間では無い事を知るには十分で】


「――急に呼び出されたと思えば、面白そうなヤツが居るからとか訳の分からない事を言われるし……
おい、お前。よく事情は分からないけど――……一応、アイツに手出しするヤツは止める様に言われてるから……悪く思うなよ」

【きっと何処かであの悪魔は眺めて居るのだろう。変わらぬ笑みを浮かべたまま】
【然れど、悪魔を探す為に少年から視線を外すのは悪手だ。何せ、少女の反応を伺う前に間合いを詰めてくるのだから】
【下駄だというのに歯の音一つ立てずに、まるで一瞬の間に数メートル移動するかのように。縮地、と呼ばれる其れの極地】
【魔術にしてみれば短距離転移と変わりの無い。更にはその勢いを保ったまま、少女の脚を目掛けて刀を振るうのだ】

【その刀が少女の身を斬ろうと避けられようと、更に続けて勢いを殺す事無く横っ腹を蹴り抜かんと回し蹴りが放たれて】
【一見少女の様に華奢に見える体格ではあるが……想像以上に、その蹴りは重いのだ】
【まるで土木用の木槌で強く打つかの様な、外見からは想像出来ない程の威力はある】
【――だが。先程の悪魔と異なり、悪意や殺意の類が無い事に気付く事が出来るだろうか】


761 : ◆RqRnviRidE :2018/08/16(木) 02:09:41 vZw8nhd20
>>759

【青年を引きずり込んだ先には原色の獣が待ち構えていた。瓦礫の中、薄汚れながらも毒々しさが異彩を放つ】
【引き込む鋸の刃には簡単に手を触れられるだろうが、──きっと刻印することは困難となるであろう】
【先程の布ような状態とは打って変わって“硬い”のだ。何かしらの異能らしい。無論、掻き続けば描くことは可能だろうけれど】
【空腹の猛獣がそのような猶予を与えるかと言えば、恐らくその答えは間違いなく──】

ぁああ、エリーったら! ええ、え獲物はそっちじゃないよネェ!? いくッ、いくら準備運動だからって!!
そっちはノコ! ジャンピーはオイラ! そ、それなのにクロスばっか、描いてサァ……!!
そそ、それ以上、イイィ悪戯描きするんならぁオイラだっておお怒っちゃうかもしれないヨォ!?

【エレインが防戦一方であることに対して、もどかしい感情が言葉に顕れる。吃音が激しさを増し、徐々に表情が“笑顔”から“怒り”へと変わっていく】
【眉間に皺が寄り、鋭い牙を剥き始める。デフォルメされた顔に似つかわしくないほど歪められたその顔は、最早害獣と言っても差し支えないほど】
【彼が傷付けることを怖れているのは完全に察することが出来なかったから、ただもどかしい感情として表層にあらわれてしまう】

【膝を屈めて跳躍する準備をしながら、ジャンピーは空いている方の腕でエレインの手を握ろうとし。十字の描画を阻止しようとする】
【どうやら自制が効かないらしく、握力も相当なもの。すぐにへし折られることはないだろうが、】
【そのまま万力の如く握り締め続けられるのであれば、痩躯には相応のダメージが残る可能性がある】
【また、着ぐるみの指先には鋭い爪も生えている。あるいは食い込んで出血することもあるかもしれなかった】

【しかし、握られたとしても片腕のみ。ジャンピーのもう片方の手は鋸を握っていて、両足とも跳躍の準備をしている】
【ならば自由度が高いのはきっとエレインの方であった。穴の中とは言え、身軽であるなら地の利も得ている筈だ】
【そして思い出すべきだろう、外側の触り心地は至って“ふつうの着ぐるみ”であったことを】
【人を傷付けることを恐れるならば、鋸のように“人でない部分”を削いでしまえば良いのだ】


762 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2018/08/16(木) 02:39:43 IBKicRNQ0
>>754
【あまりにありふれていて、とても切実な理由。誰かに笑って欲しかった】
【蛇教の教えを受けたムリフェンは、それを下らない願いと断ずるのだろう。だが、蜜姫かえではそうではなかった】

【己が二つに裂かれるような、矛盾した苦しみ。彼女以外でそれを知ることが出来るとすれば、当事者たる狼くらいだろうが】
【彼女は、今この時ここにはいない。いるのは、司祭の報復を受けて無様に叫ぶ肉屋だけだ】


【目が、合う。瞬きを終えた彼女と、視線がかち合う】
【彼女の口元が吊り上がれば。異形の口元は食いしばられる】

【近寄ってくる静かな足音は、まるで処刑人のそれに思えた。自分より遥かに低い彼女の身体が、途方もない大蛇に見えた】
【蛇は鎌首をもたげ。口を開き。呪詛と共に猛毒を吐き出そうとする】

あ……ぐぅお、ああ、あ――――――――!!!

【漏れ出る恐怖の叫びは、長く続かなかった。それが、かえでに雄弁に伝えるだろう】
【まさに今、彼女の左手の蛇が捉えるこの汚らわしい腕こそが、尊きサビクの命を奪い去ったのだと】

【音が聞こえる。蛇の呪詛を込めた、戦慄の音階が。感じる気配は魔力。彼女をその歳で幹部にまで上り詰めさせた信仰に裏打ちされた力】
【呼応するように、菌糸も光る。あたかも、司祭が聖女の儀式を手助けしているかのように】
【カニバディールの脳裏に、アレクサンデルの残骸から抜き取った、禁術についての情報がよぎる。蛇教幹部にのみ許された、虚ろな神の力】

【静かな殺意は、封印すらも破ろうとする。己の中の生存本能が、肉屋を必死に動かそうとする】
【逃げろ。逃げろ。足を動かせ。必死に叫ぶ自分自身が教えてくれていた。封印に期待など出来ないと】
【今まさに、己の魂を根底から揺さぶっている、この凶暴な音をこそ恐れるべきだ】
【今まさに、己を射抜いているマゼンタの視線、この抜き身の殺意をこそ恐れるべきだ】

【命が落ちるか否かの瀬戸際。ようやく、本能が身体を突き動かした】


あ、あああ……がああああああああああああああああああ!!!

【カニバディールは必死の形相でかえでの手を振り払おうとし。菌糸に締め付けられたまま、病室の入口へと走らんとする】
【逃げろ。走れ。すぐに立ち去れ。カニバディールの脳信号はそれだけを命じ続ける】
【肉体はそれに忠実に従う。己を締め上げるキノコもろとも、肉の中に閉じ込めるようにして変形し】
【侵入してきた時のような、細長い蛇の紛い物の姿になって、天井裏へと飛び込もうとする】

【今、この時かえでの殺意が届くのは難しいかもしれない。だが、いつの日か。蛇の牙は、きっと己に突き立つ】
【そんな恐怖を抱えながら、カニバディールはこの時、ただ逃げる以外には出来なかった】
【今まで受けた殺意のどれよりも、純粋で鋭い殺意から】


763 : ◆3inMmyYQUs :2018/08/16(木) 09:51:34 qo/HyX5s0
>>718

──────っ……、く…………────

【ドアの中へ投げ入れられた少女は勢いのまま床を転げ、】
【何が起きたのか曖昧模糊とする思考の中、表情を歪める】

【それまで傍らにあった温もりが、何かに奪い取られたように消え去ったことに気付き、】
【ぐらつく意識と視界の中、眼を開ければ、閉じられるドアとその向こうに探偵の背が見えた】


(──あ………────────────)




【(コートの裾)】【(閉じられる扉)】【(煙の臭い)】
【(十字架)】 【(埋葬)】 【(墓標)】 【(兎)】


【──その一瞬の視界が、】
【そこではないどこかの光景と重なった】
【揺らぐ、ぶれる、歪む、脳裏の映像────】



【────だめだ、と】

【混迷する記憶の中を貫いて、直感が告げた】
【彼を行かせてはならない。何か恐ろしい、取り返しのつかないことが起きてしまいそうで──】

【理由や説明は後回し、今はとにかく、逃げて、】
【生き延びて、そうしなければ────そう伝えたかったのだが、】
【少女の身は、意識は、呪わしいほどにまともに動きはしなかった】

【加えて──】
【いつからか、何か生気を蝕むような寒気が全身を這い回っていた】


【──ごほッ、と咳き込む】
【何かを吐き出したが、それが何なのか、少女はしばらく理解できなかった】

【夥しい鮮血が、そこには広がっていた】


【──────────】


/↑上は適当に読み流していただいて↓


764 : ◆3inMmyYQUs :2018/08/16(木) 09:52:15 qo/HyX5s0
>>718

【探偵の眼前は既に血の戦場と化していた】

【謎の黒い刺客たちは銃撃の手を一切緩めることは無かった】
【押し殺された虚ろな銃声は、一切の慈悲の欠如をそのまま表しており、】
【そこから連綿と吐き出される銃弾が、唐突な雷雨のごとくコンクリートの中を跳ね回った】

【倒れた探偵へ向けて、『完全な始末』を遂行すべく刺客の一人が再び銃口を向ける】
【が、その腕は在らぬ方へ跳ね上がり、鮮血が舞う、くぐもった悲鳴と共にその場に崩れた】
【探偵が抗い放った銃弾が寸分狂いなくその刺客の身を貫いたのだった】

【が、それを見た他の二人は即座に車や柱の陰に潜み、】
【いくつか銃弾をやり過ごしてから、再び身を迫り出して発砲する】

【──撃ち鳴らされる、銃撃の応酬。命の獲り合い】

【二対一。分が悪いはずだった】
【だが、狙いの精度、間隙を突く直観、一発の弾に込められた意志、】
【その全てにおいて刺客よりも探偵が上回っていた】

【必然、先に命へ届いたのは探偵の銃弾】
【──狙いの研ぎ澄まされた一発が、刺客の身を一人、次の呼吸でまた一人、撃ち抜いた】
【被弾の衝撃のまま崩れるように倒れた刺客、そしてそれは二度と起き上がることはなかった】


【僅かばかり、硝煙を含んだ静寂が漂う】


【そのときだった、刺客を運んできた黒塗りのセダンが、急激にアクセルを吹かし】
【後輪を地に激しくこすりつけながら車体をターンさせ、探偵から遠ざかっていく】

【逃げるかに思われた】
【しかしそれは数十mばかり行くと、再び向きを反転させ、彼の方を向いた】


【──不気味な沈黙を湛えて停止する車体】
【──アクセルが数度空踏みされ、獣の唸りのような荒々しい排気音を響かせる】
【煌々たるヘッドライトが一直線で探偵を照射する。──途端、】


【爆発的に加速を加えられたタイヤが、ぎゃりぎゃりと激しく地を切りつけながら、車体を発進させた】


【ごう──、と】
【彼我の間にある空気を蹴散らし】
【漆黒の車体が──疑いようもなく完全な殺意の塊と化したそれが──迫る】

【銃弾には及ぶべくもない速度】
【しかし小さな鉛玉には成しえない、重厚な暴力の圧】

【迫る】

【彼我の距離が、空気が、握り潰されるように縮められる】
【探偵と、その背に庇うものをまとめて叩き潰そうとして】

【迫る】



(────逃、げ、……────っッッ──────!!)



【声無き叫び】
【肉薄するハイビームが、探偵の顔を煌々たる光で覆い──────】


765 : 名無しさん :2018/08/16(木) 12:06:00 ExKbu4l.0
>>763 >>764

【こういうとき、嫌な予感がしていたとかまあそういうこと言うのが通例ってもんかも知れないが】
【生憎、切羽詰まってる時はそんな先のことなんて考えもしないんだ】

【刺客の遠慮の利いた不躾な弾丸と違って、彼の二丁拳銃は激しく吠えるように弾丸を撃ち鳴らした】
【闇夜を斬り裂く銃弾は明日を切り開く―――そう信じていた】

―――――ぐっ…クソッッタレ…

【奴らは器用に身を隠すが、こっちは撃たれてまともに立ち上がるのも厳しい。銃撃の合間にドアの横の壁にもたれつつ】
【なんとか立ち上がるも、また銃弾が掠めて、自分の血が飛び散ったのを自分で見えちまった】

【だが、此処を退くわけにはいかない。―――依頼人を護るのも仕事のうちだからな】

【最後の銃弾が撃ち放たれて、水を打ったように静まり返る。耳には銃撃の音がこびり付いている】
【体が熱かった。特に熱いのは撃たれたところだろう。痛みに変わる前になんとかしなくては―――】


……しつこい野郎だな。こんな奴、相手によ…

【猛るエンジン、ヘッドライトに照らされて、殺意と暴力が容赦なく浴びせられる。】
【それをみて、かろうじて生き延びていたベルボーイはついに逃げ出した。誰も追うものは居ないだろう】
【少なくともこの場にいるものよりは長生きはできる】

【避けるのは間に合わない。車がハンドルを切って跳ね飛ばすぐらいの余裕はこの場所にある。】
【それにそんなに俊敏に動ける余裕は残っちゃいない。そもそも、そんなこと考えちゃいない】

――――来いよ。

【血の混じったツバを吐き捨てて、一歩前へ出てドアの前に立っている。血を流しながら、リボルバーを構える。】

【逃げるなんて、そんな器用なことできるかよ。俺は、サンダンス・キッドと同じように前に向かって撃ちまくるしかできない】
【今日までのすべてのクソッタレの世界を切り拓くのはこのリボルバーだ。人はそんな馬鹿野郎をこう呼んだ――――】

―――――REVOLVER JUNKIES

【俺は撃ちまくった。ありったけの弾丸を血と意志で作られたそれを】

【狙うはタイヤ。だが…フロントバンパーが邪魔で確実にタイヤを撃ち抜けるかどうかわからない。そしてエンジン。何発かぶち込んだところで】
【ぶっ壊れたとしてもその加速を完全に止めることはできないだろう。爆発するまで打ち込む時間はない。そしてフロントガラス】
【防弾でなけりゃ運転手をやれる。だがそれで車の軌道が変わるかは祈るしかない――どーでもいい。撃ちまくってあとは知らねえ】

【せめて、ひとりぐらいは護って死にたい。俺の命と引き替えれるなら安いもんだ】


766 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/16(木) 16:30:26 WMHqDivw0
>>761

ち、ッ――――――

【傷を付けられないことを悟ると、舌打ちをひとつ零して刃から手を離す】
【傷を付けなきゃ始められない。そんな面倒な異能だった、それを煩わしく思っての舌打ちだったのか】
【それとも――此方の意図を全く汲んでくれないジャンピーに対する苛立ちだったのか。定かではないけど】

【掴まれる腕。きっとジャンピーの掌で握るなら、指が余るほどに細かった――ぎり、と軋む音と】
【ぐっと呻く声とが同時に上がる。爪だって食い込んで、血が溢れる。……でも、それでよかった】
【彼にとって「血液」は「体の一部」。自由に動かせる部位のひとつであった、そういう、種族であったから――】

………………おいおい、芸人がそんな怖い顔するもんじゃあないよッ!

【――――「きゅるり」。ジャンピーの爪が食い破った腕の傷から流れ出る血液が、「形を変える」】
【ごく細い糸のよう。五本ほど。……しかしそれに触れられるならわかるだろう、その質感が】
【かたい。ワイヤーのように。それがジャンピーの、彼を握るままの腕にしゅるり、巻き付こうとするなら】
【そこから「布」の部分だけを切り取ってしまおうと。細い細い風切り音を立てて蠢かんとするだろう】

【そしてそれが成功したなら、着ぐるみの腕の部分だけ切り取ることができたなら。握られた腕、振りかぶって】
【ジャンピーの「中身」だけ吹っ飛ばそうとするだろう。……細い体躯から出るとは思えぬ馬鹿力だった】
【ならばこいつはやっぱり人間ではないと悟らせる。陽の光を嫌う格好、四本の牙、血液との親和性】

【――――――それらも含めて鑑みるなら。「吸血鬼」だ、こいつは。ならば弱点だってとても有名なものであって――】


767 : ◆9VoJCcNhSw :2018/08/16(木) 19:55:50 wn2rqSVw0
>>752


そうか。      ……、……そうか。


【感想を求めた割に、反応は薄いものだった。少女、という年頃の割には】
【やはり喜悦であるとか、隠しきれない歓びのようなものが見えてこない】
【ただ軍帽のつばを手で抑えて、軽く頭を下げるばかりだった】

【もっとも、その仕草は確かに『黒幕』だとか――澱んだ関係を無視した】
【観客と芸術家という、明確でシンプルな関係性におけるものだったと言えるだろう】

【そして続く質問。〝オメラスとは結局なんなのか〟と問われれば】
【真っ直ぐに銀色の瞳を向けて、『本当に知りたいのか』と無言で問い返す】
【もっとも――知りたいはずだ。でなければ質問などしない。返事が無くとも、口を開き】


       〝オメラス〟とは〝理想郷〟だよ、"ミセス"。


――そこでは誰しもが幸せでなければならない。幸せであることは義務である、故にみな幸せである。
――称賛を受けるべき人は称賛され、不平等な扱いを受けるものはすべて平等に扱われる。
――醜悪な考えは排斥され、自分本位の考えは抹消され、誰しもが誰かの幸福を祈っている。

……私は単なる住人の一人に過ぎない。
思い出して欲しい。今、あなたの隣人は、誰しもあなたに似ていただろうか。
そうではないはず。十人十色…――しかし"差"を作らない理想のセカイが、〝オメラス〟である。


【『私からはそうとしか言えない。だが、もっと知りたいというのなら――』】


あなたも、私たちの隣人になるべきだ。己を偽ることなど止めて、今にでも。
……この手は、いつでもあなたを誘う準備が出来ているが?


【――手を、差し出した。鍵盤を弾く時でも外さなかった手袋を、ついに外して】
【その手は白く、細い。指輪でもはめれば映えそうな、造形物のような綺麗な手だった】
【取るも取らないも――無論、自由。マフィアの取引のように、もう一方の手に拳銃が握られている訳でもないのだから】


768 : ◆9VoJCcNhSw :2018/08/16(木) 20:52:40 wn2rqSVw0
>>758

【コッチの方に、と上へ行く道を選んだならば、ルーナはこくこくと首を縦に振る】
【よほど下への道が嫌なのだろう。――言うなれば何かの"シンボル"のような彼女が】
【そこまでして拒絶するものとは何なのか、とも思えるが】

【――歩けるかと問われれば、グリースに寄り添うようにしながらだが】
【これもまた首を縦に振って共に歩き出す。外の世界を知らないからか】
【一歩一歩、地面の感触を確かめるような遅々とした歩みではあったが――】


『そちらから来ないからと来てみれば、夜の高山で散歩か?
 ……それとも、いざ引きずり込まれてみれば行く宛がない、か。
 "父君"に深く関わったのは、相当な悪手だったのではないかな、グリース・イムリンパルス……?』


【洞窟の上り坂はさほどの距離もない。登りきって穴を抜ければ】
【そこには先程のような、周囲を岩に囲まれた庭園のような場所になっていて】

【足元には砂利に混じって雑草が生い茂り、奥に数本のやせ細った木が生えている】
【ちょっとした湧き水でもあるのか、小さな泉などもあり】
【どこか、休息所じみた場所。更に奥には古い石造りの遺跡のようなものも入り口を見せており】
【またなにより、見上げた星空が綺麗だった。やはり、というか――"月"は、なかったが】


【その場所に足を踏み入れるなりかかった声は、先程ゴーレムの上に居た人物のそれと同じ】
【広場を囲う岩壁の上に腰掛けるその人物は、少女。ちょうどグリースの隣に居るルーナと同じような背丈】

【しかし、それ以外は――銀の瞳をしていることしか分からない】
【黒い軍帽を目深に被り、黒いマントの襟を立てて口元を隠し、黒い手袋で肌の露出を局限しているからだ】
【この世界に立ち入って、初めてとも言えるはっきりとした意志を持つ存在――狂言回し、というところか】

【履いたブーツのかかとを岩壁に当てて、こつん、こつんと遊びながら、其れは二人を見下ろしていた】


769 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/16(木) 22:25:12 smh2z7gk0
>>750

私は私が楽しく生きたいだけだけ、でもその為には周囲が楽しく生きられる環境にしないとね
―――そりゃどうも、笑えるとは思ってなかったよ。
まぁ、少しは理解を示してくれるようで私も良かった。

【「気に入った」と言われてたとえそれがお世辞だろうと少し恥ずかし気に視線をそらしながら答える】
【渡された名刺をみて少し顔を顰めてからやっぱりなといった様子でため息を吐き出す。】
【そして「そういえば渡してなかった」と言いながら自分の〝外交官〟としての名刺を差し出すだろう】

よろしく、アリア姐さん。おたくのジークさんにもお世話になった事あるから宜しく言ってね。
アンタ達に―――いつか〝頼み事〟をする時が来るかもしれないから。

いや、少しやる事ができたから大丈夫。ここで別れよう。
あの恐い刺客がきてもなんとか逃げおおせるよ、自分の尻は自分で………でしょ?

【勝手に姐さん呼びをしながらアリアの同僚であるとある人物の名を言う。どうも借りを作ってばかりだ】
【そして、いつか来る未来を想像し少し含みを持った言い方で笑いかける。】

【送りの誘いには両手を上げて苦笑しながら断る。この邂逅を経て何か思う所があったのだろうか】
【「他、何か情報交換いるかな?まぁメールとかくれてもいいけど」とウィンクする。最初の軽薄な様子に戻りつつあった】


770 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/16(木) 22:39:15 o6XMS57s0
>>760

【 ─── 耳栓をしていなかった事を後悔する。近接信管が一斉に炸裂して、あらゆる虐殺の痕跡ごと神聖なる場を吹き飛ばす。】
【やはり仕留められていなかった。 ─── 力量の差を思い知る。敵わないとは解っていても、あれだけの火力を一挙に投射したというのに、傷一つ付いていない。】
【然して攻勢の手を緩めるつもりはなかった。みすみす殺される心持ちをしていなかった。呼び起こされた有るはずのない記憶は、冷徹さと冷酷さを少女に与えていた。】
【 ─── だからこそ、新たに現れた人影に敵意を向ける事も躊躇わない。懐から新たに取り出した鉄球を、問答無用に投げ付けようとする、も】


        「ッ、あ」


【少なくとも、 ─── 今の少女は、正しく単なる少女に過ぎない。その身に釣り合わぬ破壊的な異能を宿しているのみで】
【雲耀の鍔迫り合いに生死を見出す戦陣を味わってことはなかった。瞬き一つの間に彼我の距離を詰められたのなら、】
【ほとんど反射で身を逸らし、初撃の一閃を躱すことができたのは幸運の産物である。 ─── 故にして】


「 ─── かふッ」


【横腹に繰り出された蹴りを真っ当に受けて、鈍痛と呼ぶには余りに深く突き刺さった一撃に甘んじて、断末魔の手前に似た吐息を漏らす。】
【そのまま瓦礫の中に吹き飛ばされるのだろう。燻んだ金髪を宙に振り乱して、したたかに華奢な肢体を打ち付ける。 ─── 俯せになったまま、動かない】
【微かに震える指先を動かすものの、もはや手の打ちようがないのは明白であった。然るに、彼女の処遇は少年に委ねられるのみなのであろう ─── 。】


771 : 名無しさん :2018/08/16(木) 23:49:34 PYq7bHtM0
>>768
【道中考えるのは、この場所の存在する理由。彼は全員が幸せな場所だ、と言って居たが】
【さて――街を破壊する巨人。実体を持たないような住民達。異世界の文字。どれが幸せに通じるのだろう】
【無意味に親しげに話し掛けて来る隣人。必要以上に注がれる愛情。そう言った物とは異なった幸福……何とも言い難いが】
【そんな中で聞こえた言葉に脚を止めて。先回りされたか――否。来てみれば、なんて言葉からそれとはまた違った表現が適切か】

「いや、ごめんね?キミがそんな寂しがりだとは思わなくてさ
それにしても……引き摺り込まれた、なんてキミも嫌な表現するんだから。招待されたんだよ?キミのお父さんとやらに
嗚呼……それとも、引き摺り込む、何て言い方が似合うくらいに一般世間にとっては良くない場所なのかな。それならボクも納得するけど
――だけど、意外だね。ボクが知る限り、彼は結婚して居なかったと思うし……女遊びが好きなタイプでも無い気と思ってたよ」

【父君。話の流れからして、ダグラスの事だろうか。子供は居なかった様な気がするが――“作った”とすれば驚かない】
【何も男女の交わりだけで新しい存在が生まれる訳では無い上に、彼が新しく誰かを作ったのだとしたら――……】
【兎にも角にも面倒なタイプである事に変わりは無さそうだ。ルーナを自身の背に移動させる様に誘導すれば、見上げて】

【どうするべきか。このまま遺跡に向かうのも良いだろうが、それを行うにはリスクが大きい】
【それに、いつの間にか居る少女の事だ。此処で逃げてもまた急に現れるのがオチだろう】
【――気になる事もある。素直に答えるか否かは分からないけれど】

「ボクも正直困ってた所なんだよ。求めても無いのに厄介事に巻き込まれるのが多い質みたいでさ……
父君……何て言ってるけど、それはダグラスの事かな。彼に関わるのが悪手、ねぇ……
――まぁ、確かにそれもそうだね。その所為で此処に居る訳だからさ

オメラスは良い場所だ〜なんて譫言みたいに言って居た割には、ボクからすれば何処が良いんだかさっぱり分からないし
……所で。そんなボクの名前を知ってるキミは誰かな?態々そんな丁寧に挨拶してくれるって事は、ボクに何かご用?
キミの言う通り、月の無い場所でのんびりルーナとお散歩してたんだけど」

【少女が何者かは分からないが、ゴーレムの件からするに友好的では無さそうだ】
【だが急に攻撃を加えてくる事も無いのだから、先ずは様子を見るかと問うた言葉】
【其れはこの世界についてを訊ねている様でもあり。同時に、少女の存在を問う様でもあり】


772 : 名無しさん :2018/08/16(木) 23:50:16 PYq7bHtM0
>>770
【脚に感じる感触。骨を折らぬよう、臓器を破裂させぬ様と加減を行っては居るが――“生身の少女”相手ならば十分以上の破壊力】
【瓦礫に身体を打ち付ける様子を見て、刀を落とす事無く数秒、十数秒――数分。動く事が無い、と知れば】
【得物を鞘に収め、ゆっくりと近付くのだろう。……指先の動きを見て、安堵とも取れる溜息を吐き】

「……別に殺したりする訳じゃ無いから、暴れたりするなよ。運び辛くなっても困るからな
連れて来い、とも言われてないし……お前は巻き込まれただけなんだろ?
――僕も似た様な物ではあるけど」

【ぶっきらぼうに言い放つと、痛みに支配される少女を軽々と担ぎ上げようとして】
【それが出来たならば、そのまま歩き始めるのだろう。あの悪魔の下――では無く、表通りに通じる道へと】
【少年の言う様に暴れさえしなければそう時間が掛からずに着くだろうし、気遣いか否か担がれている時も余り揺れだとかが起きる事も無く】
【表通りとの丁度境目に少女を静かに降ろしてやれば、壁に背を掛けさせてやり】

「……ほら。コレでも飲めば少しは痛みもマシになるから
――……その、悪かったな。もっと加減してやれば良かった」

【懐から取りだしたのは小さな瓶。其れの蓋を開け、丸薬を取り出すと少女の口内に入れようとするのだろう】
【非常に苦い、が。飲み込めば、確かに痛み等は良くなる筈だ。戦闘時の様に激しく動けずとも、自身の脚で歩く事が出来る程度には】
【だが、信じられないからと吐き出してしまっても良い。そうしたって、咎める事は無いのだから】

【其れ等が終われば、バツの悪そうに視線を外しながら謝罪するのだろう】
【「アイツがまだ居たから」――なんて理由は続けず。きっと、妖怪でありながら外見相応の年齢。素直にはなれない】
【何か声を掛けようとするも、言葉が出ず。そのまま踵を返し、再び元々教会の在った場所へと向かおうとして】
【――そのまま今宵の奇妙な出会いの幕を閉じるのも良い。或いは、“隙”のあるその背を狙っても】


773 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/17(金) 00:09:16 o6XMS57s0
>>772

【暫しの間、 ─── 少女は真面に動けずにいるのだろう。それでも自分が何をされたのかは理解できていた。】
【"身の程を弁えぬことをした"。だから"制止を食らった"。冷たく冴えた皮質なれば、それくらいは理解できた】
【それでも酷く手荒い止め方であったから、恨み言の一つでも吐こうと、彼のことを睨みつけるのだろうけど ─── 】
【 ─── それも、ひどくしおらしく、力無い眼光へと変わって。伏せがちな瞼に、悲しげに揺れる睫毛。】


「 ─── ゔぇっ、」「けほ」「 ─── けほ、ッ」
「 ………… ごめん、なさい。」「 …………… ありがとう。助けて、くれて」


【咳き込みながら、 ─── 謝罪と礼は述べるのだろう。未だ残る苦しみに綺麗な顔を歪ませて、幾分も悲しげに。】
【苦々しい丸薬を飲まされたのなら尚のことむせ返る。それでも善意ゆえの処置だと理解していた。不平は言わなかった】
【それでも表通りに預けられた頃には漸く一人で立てるようにはなっていた。と言っても壁伝いに手をついて、辛うじて。】

【 ──── であれば彼からの謝罪には、ごく申し訳なさそうな表情をするのだろう。自分の所為で余計な手間をかけさせた、と】
【それでも去りゆく背中にかけなければいけない声があった。 ──── 力の足りぬ、青臭い未熟な戦士であっても、決意だけは失ってはならなかったから。】


「 ──……… 待って。」「アレは、 ……… "なに"。」「人じゃないのは、解った、けど」
「最後にそれだけ、 ……… 教えて、ほしい。」「 ………… お願い、してもいい、かな。」


【どこか切望するような途切れ途切れの悲しい声に、 ─── 答えてやる義務はない。答えてやらない理由は、あるのかもしれないけれど】


774 : ◆9VoJCcNhSw :2018/08/17(金) 01:11:54 wn2rqSVw0
>>771


『さて、何処から答えたものかな。貴女は聡明な人らしい
 父君の記憶にもそうあるし、今の会話でも大分……掴めたとも。

 ……で、あれば。答えずとも予想が付いている部分と
 そもそも想像に上がらない部分と、分かれてくるのでは?
 だが大前提として……"父君"とはまさしく、貴女の云うその人に違いはないのだな』


【少女、とは言い難い、明らかに成熟した精神性と話し方】
【その意志――我の強さは、人形のように感情が希薄なルーナとは対照的だ】
【対照的、といえば。黄金色と白銀色と。時代錯誤な衣装と、近現代的な衣装と――。】


『……それともう一つ、まずはっきりさせておくべきことがあるようだ。
 〝ここはオメラスではない〟という事実を、伝えておくべきだろう?

 おおよそ推量は出来ているのでは?此処は〝ダグラスという画家の精神世界だ〟と
 良いとも、外れではない。此処は記憶と精神性の入り混じった、虚構の世界。
 創造を司る力によって創られた、"極小範囲の平行世界"だよ、グリース・イムリンパルス。

 なぜ、知っているのか。……私という存在が、父君の能力そのものだから、だと言えば理解は出来るだろうか。
 ……私の名はアンドレア・ザ・〝クリエイター〟。意思持つ異能、被造物にして創造主…――君なら、理解は追いつくだろう?』


【風変わりな自己紹介にしては、随分と毒気のある身分だった】
【能力が意思を持つ。仰々しくも"創造主"を名乗る。だが、ようやく呼び名が分かった】
【少女――アンドレアは、自身の前に階段を作り、一歩ずつグリースと同じ高さまで降りていき】
【目元ばかりが強調された衣装のまま、若干見上げる形で彼女と向き合い】


『最後に答えておくべき質問としては…――私から君に用はない、という所だな。
 強いて言えば、父君の誘いとはいえ、その内面を荒らす存在には消えてもらいたい所ではある、が……
 ……散歩をしたければ、好きなだけ。だが忠告しよう、その娘を連れ出すのは"危険"だぞ?』


【その娘。紛れもなく、其れはルーナと名付けられた月女神のような少女のことだった】
【話を聞いて理解しているのか、そうでないのかは分からないが】
【グリースの背後に隠れて、服にギュッとしがみついて。きょろきょろと二人を見上げていた】


775 : 名無しさん :2018/08/17(金) 01:13:24 bziW9UBo0
>>762

【けれど――――彼女は結局自力にて、その封印から逃れることはできなかった。"今"はもちろん、"未来"さえも】
【であればそれはやはり杞憂に過ぎなかった――というのはすべて通り過ぎた後から見たときの話であるのだろう。その瞬間の彼女は"そう"するつもりだった】
【そうして彼を無惨な亡骸にするつもりであったし、そうできる状況になったならためらうはずはなかったし、だって仇なのだ、弟とも呼べるような"彼"の】
【さらには狂気の中にありながらも――あるいはそれだからこそ、誰より慈愛に満ちた振る舞いをする"彼"の仇とも呼べる、人間を】

【――否。それだけではなかった、それだけであるはずがなかった。彼女が誰より信じている"蛇"を侮蔑した行いを、忘れるはずも、ないのなら】
【考えることすら不要なのかもしれない、と、思わせる。――つまりは、ムリフェン/蜜姫かえでは、眼前にて呻くカニバディールを、絶対に、赦さないのだから】

――――――――――、ふぁ、ッ、――ッ、あ!

【――――鮮やかなマゼンタ色の瞳が、みしみしと音すらしそうなほどに見開かれていた。向けられる殺意は鋭く無垢で、ゆえに何より暴力的な温度を宿して】
【彼の腕に触れた指先が――もはや異能も介さぬままで、ぎしり、と、肉を抉ろうとするかのように力を籠めようとするのだろう、その爪のはざま、餓えた獣が潜むみたいに】
【せめてその肉をこそげようとする。その程度の痛みでは誰の何にも釣り合わぬと分かりながらも。せめて――せめて。今それしか出来ない自分をひどく歯がゆく思うかのよう】
【ぎりぎりと歯を噛み締めて睨みつける――けれど、その腕が振り払われれば。どうしようもない体格差のせいもあって、彼女は、冷たい床に倒れこむのだろう】

【であれば、彼の逃走を妨げる要素は――少なくとも彼女からは、出てこない。少女が身体を起こす前に、彼は、それよりも早くダクトへと潜り込めるはずであって】
【彼を今この瞬間まで悪党として生き残らせてきた、それもあるいは彼の持つ異能であるのかもしれなかった。生存本能、だなんて言葉すら、きっと生ぬるい】
【ゆえに彼は逃走を果たすのだろう。異能も神様より賜った奇跡すらも下らぬ腕輪一つで封じ込められた彼女に彼を捉えられる道理など、一つもなかったならば】

――ッ、―――――― クソッ、クソ、が! ――ッ、殺してやる――、殺してやる! 

【――きっと彼が聞くのはそんな声で在るのだろう。スズランの声音はあんまりに容易く張り裂けて、であれば、ひどく憎悪だけをただただ垂れ流し】
【いつか再びまみえるときがあったなら。――その時を予感させながら、けれど今宵は、それ以上の恐ろしいことの一つもなく、ただ、ただ、去ってゆけるのだろう】


776 : ◆RqRnviRidE :2018/08/17(金) 02:23:06 vZw8nhd20
>>766

【腕を掴む手にじりじりと力が籠められていく。とらえる爪先が皮膚を裂き、肉に食い込み、ソフトボアの掌を赤く染めるのだろう】
【重力に逆らう流血、赤いナイフの存在、着ぐるみの血が昇った頭では察することも叶わず。罠に囚われていることも知らずに唯、牙を剥く】
【釣り上がった眦と剥き出される歯牙はおよそマスコットのそれではなく、ヴィランと呼ぶには理性が足りず、しかし獣と称するには痴れている】
【幼稚で原始的な怒りを表するならきっとこんな顔をしている。愛らしい貌をしておきながら睥睨を湛える、滾るような極彩色の感情】

──ゥう、ううっっ、うるさい、ナァッ……! だだだって、だってサあぁっ、しょうがないだろ!?
オイラぁおおぉ怒ってんのはっ、キミがヨソ見ばっかして本気で遊んでくれないからじゃん──

【彼が傷付けることを恐れ、闘争を遠ざけようとしていることなど露知らず。傷付けぬことをまるで咎めるかのように、傷付けねば始まらないことを唆すように】
【捉えた青年を離すまいと着ぐるみはよりいっそう拳に力を込める。華奢な骨がキリキリ軋むんだろう。既に霞網に雁字搦めにされているともいざ知らず】
【そうして、それから──躍る血糸が着ぐるみの、掴むその手を絡めとる。嗚呼、それはあんまりにも簡単に!】

────アッ! ちょちょ、ちょっと、エリーっ、
イ、いいい、ぃい痛いよそれはァっ──!

【ジャンピーは慌てて咄嗟に腕を引き抜こうとするが、遥かに遅い。寧ろそうすることによって、生地の断裂を早めることになる】
【よく見る余裕があれば表面のボアが一本一本針のように指先から硬化していく様子が窺えたが、それも単なる悪足掻きに過ぎず】
【ぎちりぎちりと食い込む血糸は鉄線の如く。繊維を千切り、布を引き裂き、ウレタンを刻み、やがては芯まで断ってしまえば】
【切断された腕だけが其処に残され、秘められた怪力によって着ぐるみの体が吹き飛ばされる。あまりにも容易く、あまりにも“軽すぎるくらいに”】

【ブチリと最後の繊維が断ち切れる音がする。血も涙も何もない、B級スプラッタにも遠く及ばない寸劇──】


【────と、相成る筈だった。】


────ガはッッ、ァッ!!

【ジャンピーは落とし穴の縁に背中を強かに打ち付ける。肺の中の空気が一気に吐き出され、鋸を持つ手が地上に投げ出される。がらん、と金属音】
【ガワを切断された腕はぶらりと力なく項垂れ、〝粘性のある赤黒い軌跡〟を──切断面から流れるままに、中空へと描いていた。】

【エレインが精緻な血液操作を可能とするなら、その手応えは間違いなく『着ぐるみ』という表皮だけを切り落としていたことが判った筈だ】
【それを考慮した上で、着ぐるみの腕の切断面はどちらも“中身”に値する部位が見受けられない。更に彼の『痛い』という感覚──となれば話は早いだろうか】

【掴む腕の一部と、着ぐるみの腕との切断面からは赤黒い液体が噴き出し、穴の中に噎せ返るような赤錆びたにおいと消毒液のような芳香が充満する】
【場合によっては青年がそれを浴びることもあるかもしれない。特に残った腕からは滾々と溢れてくる。触れればどろどろとして生温くて、生きているみたいに】

【着ぐるみは吸血鬼に対抗する術を持たなかった。十字架も、銀の杭も、陽光も、あるいは抗う方法と知識さえも】
【故に、代わりと言っては何だが、その身にたっぷりと蓄えていた。目の前の彼を始めとした、あらゆる生命の糧たりうるものを────】


【 ────────── “血”を。 】


【鋸の刃が天上の情景を映し込む。コットンピンクの雲が燃える空を柔らかく染め上げる。日がそろそろ傾き始めた頃合いらしかった。】


777 : 名無しさん :2018/08/17(金) 02:48:05 bziW9UBo0
【――――それはひどく深夜の時刻であった、草木も寝こけて寝言を漏らす、ならば虫の音風の音は世界の立てる寝息のように】
【だったらきっとどこか遠くから聞こえる電車の音は世界の鼓動に相違ないはずであった、だから"それ"は世界に紛れ込む唯一の違和感】
【あんまり音質の良くない警察無線。今宵は平和な夜であるらしい、何か大きな出来事を予感させる言葉は無いに等しく、それでもちらほらと犯罪の気配】
【しかしてそれでもそれらは違和感たり得なかった、――――だって限りなく常と変わりないから。だのに、混じりこむ瞬間に、何の特別な演出なんて、あるはずない】

【(「アリアさん」)】

【――AM2時48分。ざぁざぁとノイズの音が弾けて、突如に割って入ったのは、明確に少女の声音だった。澄んで瑞々しい声音が、一つ、混じりこんで】
【紡がれたのは何の意味も隠さぬ誰かを呼ぶだけの声。それを聞き取った誰かに問いかけられても応えずに、再び、あるいは三度、同じ名を呼ぶのなら】
【いよいよもって異常として判断されるのだろう。であれば後は早かった。やがて――よりも早く、数人、およびいくつかのグループと連絡がつかないことが判明し、】
【とすれば"犯人"がどこにいるかもすぐに分かるというもの。あるいは少女の声――となれば、それが"誰"なのかも。あるいは声音のみで判断することさえ、あるいは出来て】

【――――その場所は蛇教本部であった、十数分ほど前よりただ"誰か"の名前を呼ぶだけの少女は、声音から、生死行方ともに不明の"幹部"であると判断され】
【一ヶ月といくらかの時間。まだ手薄にするには早すぎて、だけれど、時刻のせいだったろうか。その場にいたはずの全員と連絡がつかない。"まさか"少女一人に、】
【――だなんて言っている間に、あるいは対能力者用の人員をかき集めている間に、時間は過ぎゆくのだろう。であれば――"それ"より早く向かうことも、きっと、出来た】

【(「ねえ、アリアさん、はやくきて」)】

【(――それに何より"そいつ"は"彼女"を求めていた。だから他の誰を送り込もうと意味なんて無いに違いなかった。無意味な負傷者を増やすだけだと一部に理解させるのかもしれない)】
【(ならば最初から動くのはごくごく最小限の人員で充分なのかも、しれなかった。――割り込むのはただひたすら少女の声だけ。馬鹿げたみたいに――時々空虚な笑い声が響いて)】


778 : 名無しさん :2018/08/17(金) 02:48:28 bziW9UBo0
…………アリアさん、遅いよ。

【――――――――祭祀場】

【蛇教本部にいくつもある儀式のための部屋の中でも、いっとう立派に作られた場所だった、至る場所に無数に蛇のモチーフをあしらったなら】
【足元の絨毯は蛇の鱗模様。石壁には這いずり回る蛇の模様が。天井の頂点には自身の尾を咥える蛇をあしらったステンドグラスが輝いて】
【見渡す部屋の一番奥には、祭壇――蛇の入れ墨をあしらった人間たちの腕、腕、腕を並べて、その上に据えられているのは蛇の模様をあしらった黄金の盃】
【そうしてその盃の上には透き通る蛇が――これは部屋中の壁を這うくらいに大きな――口を開いて。――"本来はその姿であるはずだった"】

【――けれど現状は違うのだろう。誰もが留守にした間に、いくつかの物は容易く捜査の名目で破壊され、剥ぎ取られ、かつての様相は過去の物、すっかりと喪われ】
【であれば"彼女"だけがいつかに取り残されてしまった、みたいにも見えるのかもしれなかった。そうしてきっとそうだった。彼女はまだそこに囚われたまま】
【どこにも行けなくなって――だから、"だから"】

【――――透き通るウィステリアの髪に、マゼンタの瞳。真っ白な肌は日焼けとは無縁の代物、誰しも羨む雪のような白さを、左手以外の全部に湛えたら】
【真っ白のワンピース。かかとの低いサンダルに。それ以外の装飾物は何もなかった、ただ、その手元に、武骨な無線機と**をぶら下げて、】
【ごくかすかにノイズと誰かのしゃべる音がしていた。だから音量をひどく下げているのだと気づかせる、――――そもそも誰と話し合う気もあるはずなかった】

【ゆえに、】

【たったこれぽちの時間で、きっと少女はひどく衰弱して見えた。真っ白な肌は、白い以上にどこか顔色が悪くて、どこか疲れ切ったような、そんな、様子を見せたら】
【寂しげな――あるいはもうどうしようもなくなって、そうするしかなくなったかのような、笑みを。浮かべているんだろう、あんまりに、絶望しきったような】

【だからきっとその意味も手繰らせる。左手には無線機をぶら下げていた。ならば右手には、いつかの日に彼女に持たされた、拳銃が握られて】
【もうとっくにいつだって死ねる状態で待ちわびていた。だから。――"だから"、これは、きっと、どうしようもなくくだらない、】

……アリアさんが居たらウヌクアルハイ様は私のことを救ってくれやしないんだ、……、だから。だったら。もう。私は。……。

【――ひとりで死ぬのは怖いから。ただのそれだけ。それでもせめて、最期までお話だけはしたい気がしたから】
【本当にぎりぎりまで銃口はただ床を向いていた。――だのに話したいことは"くだらない"ことばっかりで、だから、もう、】

【よく分かっていて偉かった。自分は一度目に死ねなければ無意識でも反射的でも能力を使って生き延びてしまうだろうと理解しているらしかった。だから、】
【ただぶらりと腕ごとおろしていた銃口を咥えて実際撃つまでに何秒くらいを必要とするのかはよく分からないけれど、――確かなのは、躊躇うってほどは、遅くない】

/お引越しです……!


779 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/17(金) 16:39:34 WMHqDivw0
>>776

――――――――え、

【びちゃり、頬を打つ液体の感触に目を丸くした。翡翠色がまたひとつ煌めいて】
【その奥底で――――「ちかり」。燃え盛る炎のような赤色が、一瞬だけ明滅した。警告を示すランプに似て】
【一回きりの瞬き。けれどそれだけでよかった――――それを「糧」だと認識するには、十分すぎた】

【布と綿を糸を切った感触しか残らないはずだった。だけど眼前の獣は、確かに、生きていて】
【それを知ってしまったらもう、エレインの脳内は焦燥に塗れて、それだけになって、息が、荒くなってしまう】
【本能がばちばち燃えて爆ぜてゆく音が鳴る。錯覚。……「拙い」と思った。それだけ思考する余裕は「まだ」あった】


………………す、まなかったね、ジャンピー……でも、こ、これに懲りたらっ、
危険なパフォーマンスはやめにすることだ――――――でないと、


【「ヒトの声に釣られたバケモノがやってきて、君を喰ってしまうよ。」】

【――――それだけ。言って、あろうことか踵を返して穴から出ていこうとする。ローブの裾が大きく翻る】
【そのまま瓦礫を蹴り飛ばして何度か跳躍し、上へ、上へ――――まるで「逃げよう」とするかのように】
【優勢であったのは彼のほうだったのに。何故かひどく焦ったような動作でそうするのだから】
【……獣である彼には、「舐められている」という印象を与えてしまうんだろうか。実際そうだ、とどめをさせる獲物を前に】
【それを放置して、余裕綽々に(実際はそうではないけど、)去って行く後姿を見せつけるなど。あまりにも傲慢な】
【「ヒト」がやるような行為だった。……実際、彼は、「ヒト」でありたなんて願っていた。なんて知る由もないだろうけど】

【とにかく。エレインは背中を向けて此処から慌てて去って行こうとする――いくらでも捕まえられそうな、ローブの裾を、ひらひらさせながら】


780 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/17(金) 21:32:51 o6XMS57s0
>>777>>778




《 ──── ヒヨク04より本部。エリア021、B27地区にて402が進行中。当該空域を全面的に封鎖せよ。繰り返す ──── 》




【摩天楼の岳麓にて輝ける生温かい宵闇を、特殊回線の短距離通信を、喧しいばかりで理解のない警光灯を ─── 紅いテールライトが切り裂いていく。】
【夜の光芒を宿した黒いスポーツカーが、甲高いスキールと共にバリケードテープに迫って止まった。未だ輻射熱を残すコンクリートに降り立つのは、一人の女。】
【漆黒の魁偉。車高の低いクーペの座席に収めるには窮屈に過ぎる手脚を、スーツとコートに収めて汗一筋流さない。腰にまで伸びる白銀の髪は大気さえ凍らせるようだった。】
【 ─── 指揮車より向かってきた壮年の現場責任者を、青い隻眼が一瞥する。「状況は?」冷たい声は名乗ることさえしない。躊躇いがちな溜息と共に、彼は回答した。】


『52分前、警邏中だった1班・2班からの定時連絡が途絶。のち16分後、増援として投入された3班が応答せず。』
『所轄の警官9名の生死不明。20分前にサービスライフル装備の機動隊計2個小隊ならびQRFにて現場を封鎖。』
『向こうからの動きがなければ、3分後に突入の予定。 ────── それで、だ。アンタはどうしたいんだ。』

「 ─── これはウチのヤマね。悪いけれど、お引き取り願えるかしら?」
『 …………… ふン。脅しやがって。最初から他にあるまい。』「賢明ね。」
『くそったれ。背中撃たれないように気ィ付けな。』「 ─── ご親切にどうも。」


【それだけ告げて彼女はバリケードの向こう側へと歩いていく。 ─── 狼狽える機動隊員をにべもなく肩で退ける。視線さえくれてやることはなかった。】
【施錠された仄暗い裏口を片手で抉じ開けて、暗闇の中に背姿を溶かしていく。憤りに突かれて追おうとした何人かの若い刑事を、壮年の男が掣肘した。】


『 ……… 納得のいく説明もないのに! どうして指揮権を譲るんですか!』『同僚がやられてるんです。殺されたかもしれない。何故こんな真似を!?』
『喧嘩を売る相手はよく見ておけよ。八課のサイボーグ女だ。 ───……… "人狼"。"首斬人形"。"弔砲の魔女"。"白銀のシリウス"。"無慈悲な夜の女王"。』
『あんな死神と関わってちゃ、命が幾らあっても足りねえ。 余所行きの殺し屋が、どういう風の吹き回しか知らんが ─── メンツを潰して人命が助かるなら安いもんさ。』


【ひどく忌々しげに彼は吐き捨てた。『撤収するぞ。封鎖中の部隊も全て退かせろ。 ……… 俺たちに出来るのは、精々ヤツがドジを踏んじまうのを祈ることくらいだ。』】
【 ─── であれば封鎖線は取り除かれ、物々しいアサルトスーツの男達は装甲車へ乗り直し、安い自棄酒が夜更けまで誰かの喉を焼くのだろう。然してそんな些事は、彼女"たち"にとって無意味だった。】


//↑ここまで読み飛ばしてください!


781 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/17(金) 21:33:04 o6XMS57s0


【饐えて澱んだ暗闇の中、 ─── 足音ばかりが矢鱈に響く。隠した義眼のサーモグラフィーを起動させる。一度だけ、いつの日か、見たことのある通路だった。】
【呼ぶ声に誘われて辿るのであれば、その中途にて幾人かの警官を見つけた。倒れ込んで動かなかった。微かな血の匂いはしたが、生命反応は残っていた。】
【 ─── 聴覚素子の指向性に導かれるままに歩く内、豪奢な回廊に出る。なれば理解できた。泣く声が何処で泣いているのか。何処で泣いているのか。何時から泣いているのか。否、最初から全て解っていた。】

【故にして祭祀場の両扉は開く。重々しく蝶番を軋ませて、物言わぬ革靴の足音と共に高い天井まで響き渡る。ステンドグラスから射し込む冷たい月光が、照らす。】
【燦然として輝くのは霜雪の色をした御髪である。掠れる銀色の筆先にて、闇の中にそっと塗り付けたような ─── だのに黒い脚先が歩むたび、鼓動にも似て儚く躍る。】
【それに比して尚も顔貌は幽玄であり耽美であった。透き通る白い膚は暗闇のヴェールに覆われていた。色薄くも潤いに満ちた唇が、わずかに俯いたまま悲しそうに笑う。】
【両の手には夫々に拳銃が握られていた。銀色の銃身は異様なまでに長く、そして冷たく輝いていた ─── 然し少女を真っ直ぐに見据える、クラインブルーの隻眼が宿す温度には、及ばなかった。】


「御免なさいね。 ─── たかだか540馬力じゃあ、貴女に呼び付けられるには力不足みたい。」


【冷然として瑞々しい声だった。真夏の逢瀬には不似合いであった。 ─── だから、安全装置を下ろす音が、響く。】
【握った銃のスライドを引く。薬室に弾を込めて撃鉄を起こす。シングルアクションの銃爪は、幽けき首を締めるよりも余程たやすい力で誰かを殺せた。】
【 ─── それでも彼女は銃を下げたままだった。在りし日の面影さえ亡くした祭壇へ登っていくのだろう。一歩ずつ少女へと近寄っていくのだろう。幾度となく手傷を負わせた獲物を、ついに追い詰める狼のように。】
【であれば紡がれる言葉は剥かれた白い牙であった。藪の中を踏み締める爪であった。噛み折った脚を震えさせる唸りであった。 ─── 数秒あるなら、十分に過ぎた。自害の片手を撃ち抜くためには。】



「怖い?」
「死んでしまうのは。」
「自分で自分の命を絶つのは。」
「救われない逝き方を選ぶのは。」



【問い掛けながら近付くなら、 ─── やがて彼女は銃を懐に仕舞って、空いた手で少女の腰を抱き寄せるのだろう。黒い外套と白いヴェールの中、穏やかな/疼くような温もりと柔らかさに、少女を囚えてしまうのだろう】
【抱擁の両腕は蜘蛛糸のように絡み付いて、しっとりと少女の全身を慰撫する。汚い衝動を煽り立てる類の手付きではなかった。泣きじゃくる我が子をあやす其れに似た/にしては余りに執拗であった。】
【幼い耳朶にそっと湿った呼吸を与えて、 ──── 未だ銃を握る手に、そっと掌を重ねるのだろう。然して取り上げようとはせずに、支えるように銃爪へ指添えて、扱い方を教えるように。】


「 ──── 抱き締めていてあげる。」「銃爪も私が引いてあげる。」「事切れる最期の呼吸まで与えてあげる。」
「なんにも怖くないのよ。」「 ─── だから全て聞かせて頂戴。」「かえでのおはなし。」

                                 だって、愛してるから。


【確かに女は約束を守ろうとしていた。 ──── きっとアリアは、少女を殺そうとしていた。それは少女を生かすのと同義であった。"甘き死よ、来たれ"。慈愛に満ちた青い瞳が、少女の 識らぬ闇の中、昏く輝く。】


782 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/17(金) 22:20:49 Dnp9kjSw0
>>769


「 ─── あら、彼を知ってるのね。」「伊達男でしょう。あれでも相応に頼れるのだけど、ね。」
「内容如何にて引き受けましょう。 ──── ウチを雇う報酬は高く付くわよ。心しておきなさい?」


【知っている男の名前を聞いて、 ─── 納得したようにアリアは笑った。受け取った名刺の意味は理解していた。】
【何れ手を組むというのなら、また別の名刺を渡されることになるのだろう。或いはそんなものは存在していないのかもしれないが】
【ともあれ冗談めかすような口振りは間違いなく好感の産物であった。 ─── 少なくとも給与に関しては、真実を語っていた。】


「拭えないなら拭いに行ってやってもいいわ。貸しであるなら幾ら作っても損はしないし、 ─── ね。」
「また会いましょう、コニー三等書記官。」「次に会う時も、五体満足でいてくれることを祈ってるわ ──── 。」


【敬称をもって呼ばれるのであれば悪い気はしないようだった。言外の意味を持たせた遣り取りができる相手は大切にせねばならない。】
【謹んで辞退されるのならば、 ─── それを気に病むこともないのだろう。ひらりと挙げた片手を振り、踵の返し際に青い流し目を寄越して】
【 ─── そのままフェンスをひらりと飛び越え、ビルの外壁を足掛かりとして、遠い陽炎の照る摩天楼に消えていく。】
【およそ真っ当な人間の立ち去り方ではなかった。それでも微かに残されたのは、煙草の臭いと、 ─── 甘い香水のかおり。】


/ほんっと遅くなってしまってごめんなさい…こんなカタチでシメでいかがでしょう…?


783 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/08/17(金) 22:47:57 smh2z7gk0
>>782

まぁ、頼れるのは分かってるよ一時とはいえ肩を並べた訳だしね。
―――ハハハ、うちの国の国民の血税なんでそこは勉強して頂きたいところだけどね………まぁ無理でしょうけど

【冗談めかしたアリアにコニーも少し皮肉交じりで話す、ともあれある程度の信頼関係は築けたという事か】
【いずれどのように再開するかは分からないが、友好的ではいたい。そんな感情が見て取れる。】

こいつは頼もしいね、まぁ私もこんなガキだけどプロなんでね。そこはプライドも多少はある。
そっちは五体満足な姿しか想像できないけど、まぁ私もやるだけやっていくさ〜んじゃね。

【フェンスを飛び越えていくアリアを見送り、「ひえーやっぱり断ってよかった」と胸を撫でおろす】
【そしてどこか憂いを帯びた目で摩天楼たちを眺めると自身も踵を返す。】
【ポケットからスマートフォンを取りだせば、どこかへと電話を掛けながらビルを後にした。】

//とんでもないです、絡んで頂きありがとうございました!


784 : 名無しさん :2018/08/17(金) 22:48:59 Mh5IzVkw0
>>780-781

【来るって分かっていた。来ないはずがないって知っていた。だから誰も殺さなかった。"そのこと"に、意味は、なかったから】
【であれば限りなく異常な状態を作り出せたらそれでよかった。自動販売機にコインを入れるように、そうしてボタンを押しこむように、そうすれば】
【必ず来てくれるって信じていたから。――だから少女はきちんと閉じた扉が再び開かれたときに、誰にも見せないままで、口元をわずかに綻ばせていた】

【――であれば"これ"は少女の心象風景の写しなのかもしれなかった。そんなはずなくここは現実で、けれど、いつかの信仰の残骸だけを並べ立てた、醜悪な博覧会のよう】
【きっと彼女もこんな気持ちをしているのに違いなかった。ただ高い天井の果てにあるステンドグラスだけが、誰の手も届かなかったみたいに、きれいなまま】
【ゆえに少女の捨てがたい/捨てることのできない気持ちの寓意であるかのように煌めいて、――透き通る藤色も冷たい銀色もおんなじ光で染め上げるんだろう、蛇越しの光源にて】

【――――であれば、彼女を構成する色合いの中でいっとう鮮やかなマゼンタ色がひどく不確かな感情を宿すのだろうか、】
【――激情しているようにも見えたし安堵しているようにも、見えたなら――刹那の逡巡の後に彼女もまた銃口を降ろす、(だから本当は死ぬつもりなんて、――なんて)】

…………――、こわいよ、でも、そうじゃないとウヌクアルハイ様は救ってくださらないんだ、……、だって、***********……。
ここなら*******さまだってみていて***んだ、だから***********……、*******ウヌクアルハイ様だって私を***れる……。
*****きっと私のことだって***くださる……、こん**はそうでもないと***もらえ****――。

【――ごつ、ん、と。もはや不要になった無線機が地面に投げ捨てるよりも消極的に落とされる、それをきっかけにしたように漏れる声は、ひどくふらついて】
【涙と自分自身への呪いですでに涸れ果てたような声をしているに違いなかった、微かにふらつく視線は、相手を何度も通り過ぎて、合わせるのを恐れるのに似るならば】
【悪夢に魘されるみたいに不明瞭な言葉ばかりを並べ立てるのだろう、そうしてそれはきっと遺言の色合いをしていた、どうしてここで死にたいのか、死にたかったのか】
【ほんの数日にしてはひどく衰弱していた。だからまた何かあったんだと思わせた。突発的な感情の沸騰はいつかの病院にも似て、――だから?】

【抱き留められるまで少女は無抵抗であった、抱き留められてくぐもる声は余計に不明瞭へ化けるのならもはや紡がれる言葉に意味はなく、】
【強いて辿るのならやっぱり死にたい理由でも述べているんだろうと思わせた、】

【"ここで死ねばきっとウヌクアルハイ様も見ていてくださるから"】

/↓


785 : 名無しさん :2018/08/17(金) 22:49:22 Mh5IzVkw0
>>784

【"そうしたら、きっと、――"】

みんな死んじゃった……みんな、みんな……。なのに忘れてたんだ、忘れていようと****、*は******忘**しまおうとしたんだ、
マルフィクさんに言われたことも*****んだ、私は……、……なのに"あんな"約束、***********************************。
――もういい。ばかみたい。ばかみたい。ばかみたい……、なにをしたら****もう分か***よ、**いやだ、もう、いやだ……――、

【撫ぜられるのも何もかもされるがままだった、引き金に指先を添えられても。耳朶に囁かれても。まったく、そんなの、意に介さぬように】
【ただ呪詛に似る言葉を吐き出しては並べてゆくばかりなのだろう、であればいっとう不気味な魔女のやる店屋よりも陰鬱がすぎた、品ぞろえは全部絶望色して】
【そのくせこうなるって分かっていてやっているに違いなかったから、――それはきっと誰にも理解されぬ情動なのだろう、彼女が決して同情されてはいけないように】
【時として理解されてはいけない気持ちもあるのだから。――彼女と結わえた契りを"あんな"と言い捨てるのならば、思い出してしまったのかもしれなかった。約束を反故にしても】

――――――――ねえ、今じゃないなら、ウヌクアルハイ様はいつ私を救ってくださるの……?

【――部屋中ぐちゃぐちゃにかき乱して探し物をするよりも無惨な様相、空き巣だって呆れて回れ右する心を剥き出しにて曝け出すなら】
【一生懸命に何かを探したに違いなかった。だのにきっと見つからないんだった。あるいは探し物が何だったかすら分からなくなったのかもしれなかった、確かなのは】
【あれからそう時間は経っていないのに彼女はひどく痩せてしまっていたし、不潔ではないけれど、透き通る藤色の髪もどこか色あせたように見せた、ひどく悲しげで】
【段ボールの中の捨て猫。誰にも抱き上げられなかった最後の一匹があげるとしたならきっとこんな声なのだろう――と、思わせるような、幼声が、震えて】


786 : 名無しさん :2018/08/18(土) 02:49:54 PYq7bHtM0
>>773
【礼をされる事に慣れていないのだろう。その言葉を向けられれば、赤面した顔を隠すようにそっぽを向いて】
【別に、僕が勝手にした事だから。それだけを呟けば、立ち去ろうとするも――止める声】
【なる程、聞きたい事は分かった。背を向けたまま、暫く答えは返って来ず】

【……言いたくない、のでは無く迷っているのだろう。きっと、この少年自身“アレ”が何かは正確には分かっていないのだ】
【否、分かっていたとしても其れをどう表すのが適切であるのかが分からない】
【少女が問うているのは、悪魔であるかどうか――そんなモノでは無いだろうから】

「アイツは……アリスは、悪夢だ。人間にとって嫌なモノで、昔から在る……僕から言わせれば、質の悪い祟り
見るな、触れるな、語るな。そんな傍迷惑なヤツ。勝手に祟って、弄んで――……」

【或いは、災害。……少女の求めていた答えかは分からない。少なからず、“この少年の答え”なのだから】
【悪夢、と言う答えは実際間違いでは無いのだけれど。ナイトメア――其れは人との関わりが深く、苦しめる存在】
【それが実体を持った悪魔になったのだとすれば――……】

「兎に角、今日の事は忘れろ。覚えてたって何も良い事なんて無いからな
……帰り道は分かるんだろ?……じゃあ、気を付けて」

【そんな言葉だけ残し、今度は止まる事無く歩いて姿を消して】
【もし、少女が少年の言葉に反して今宵の出来事を引き摺って居るのだとすれば。数日間幻覚や悪夢に悩まされる事もあるだろうか】
【まるで過去の出来事を抉り出すような、正しく悪夢の様な】
【――それだって、数日の内にきっぱりと治まるのだが】

/この様な感じでしょうか!お相手、有り難う御座いましたっ!


787 : 名無しさん :2018/08/18(土) 02:51:30 PYq7bHtM0
>>774

「いやいや、自称創造主サマにそうやって褒めて貰えるのはとっても嬉しいよ。――ホントに
記憶と精神性の混じった世界?……どう見ても彼は記憶が無かった様だし、精神状態だって不安定だった気がするけど……

――それとも、そうだからこそこんなに“グチャグチャ”なのかな。統一性も無いし、気付けば辺り一面は火の海だったもんね
ま、オメラスなんて場所じゃ無いなら色々と納得も出来るよ。こんなにコロコロ変わる場所が理想郷なら堪ったモノじゃ無いし……強引な彼にしては、住民も少なすぎる」

【対照的、と言えば。自由である前方の少女に対し、閉じ込められていた後方のルーナ】
【捕らわれていた彼女が守られているなら、罠やそもそも破壊できない格子。或いは門番が居ても良いようなモノ】
【然れど、深い場所にありながらもたった牢の一つだけ。大事なモノでありながら忘れていたのか、或いはまた別なのか】


「アンドレア・ザ・クリエイターさんね。はいはい……長いし、アンで良いよね
キミと彼がただの親子以上に親しい間なのは分かったよ。なら、道理でボクの名前を知っている訳だ
――いや。アンがボクの事を知っていて、ダグラスが知らないのも変な話だね

彼はボクの事を知らなかった。大の仲良しだった団長サマも、自分の名前も――いや、コレに関しては聞き取れてすらいなかったかな
でも、キミはこうして“ダグラス”の名前を聞き取れてる。まるでキミに全部記憶が持ってかれている様にさ
……実際の所は分からないけど。意思をもって自立した異能なら、彼自身の記憶が無くなっててもキミのが無くなる訳じゃ無いだろうし」

【仰々しい名乗りを呆れ顔で聞き流し、剰え長いからと勝手に呼び名を付け】
【少女の名が分かった事。そして、ダグラスとの関係性が分かった事。――違和感を覚える】
【貴女の云うその人に違いはない。彼の名を聞き取れた、という事だろうか。いや、それだけで無い。ハッキリと“言えている”】
【ルーナの閉じ込められていた家に最初に入った時に流れた会話。その中ですら、一つの個人名も出て来なかったのに】
【どれだけ彼の記憶と繋がっているのかは分からない。意思を持っていた異能が、ダグラスが不安定になった所でより存在が強くなったのか】


「それにしても、嫌になっちゃうなぁ……ボクが荒らしているんじゃ無いよ?キミが……ゴーレムが荒らしてるんだ。物理的には、だけど
もっと別な意味で言っているなら、勝手にこんな場所に連れてきたダグラスに文句を言って欲しいかな
ボクだって来たくて来た訳じゃ無いんだからさ

――それに、彼と“ココ”が繋がってるなら分かるでしょ。ボクにそんな抽象的な危険を伝えたって分からないって
今まで危険すぎる危険を体験したわけだし……アンの言うそれが、どの程度なのかもボクには分からない
……所でルーナ。この人の事は知ってるのかな」

【“ココ”と言った時には自身の頭を人差し指でトントン、と叩くのだろう。仮にダグラスの記憶を持っているならば、この死神の人となりは大凡理解出来るだろう、と】
【ルーナを連れ出す事が危険との言葉には、薄々理解している節もあった】
【これだけ連れ回した所で、奪還者が現れる訳でも無い。若しくはアンドレア達にとって危険で在るならば、こうして悠長に話をせず襲いかかっても可笑しくは無い】
【ならば。その危険とやらは、自身に向けられた言葉であろうと。――だが、それで止まる事はせず】

【服を握る背後の少女に視線を向けて問うたのはアンドレアについてだ。彼女がルーナについて何かを知っているのならば、逆にルーナの方は――】
【自分の背後に素直に隠れる辺り、親しい間柄だった……なんて事は無さそうだけれど】


788 : ◆RqRnviRidE :2018/08/18(土) 07:43:44 xpQRfGeA0
>>779

【喪った腕のその先からは、粘ついた暗紅色の血が夥しく溢れ出て留まるところを知らない】
【繋がっていた腕は、エレインのすぐ近くでトカゲの尻尾切りさながらに暫し奇妙に蠢いて】
【切断面からでらでらと糸を引きながら、互いの足許にはあっという間に血溜まりが拡がっていく】
【穴底に溜まるヘドロの如く異臭が立ち込める。鼻を突き嗅覚を擽れば、錯覚を引き起こしてしまうのだろうか】

【 ──それとも呼び起こされるのは、本当に熾烈なまでの『錯覚』だったのだろうか? 】


────ま、まま、待ってヨゥ、ねえッ、エリー……ィた、……痛いよォ
ネェ、まだ、まだオイラ遊び足んないよ、どドコに行くの、ねえったら──!

【ジャンピーはそう言って去ろうとするエレインを呼び止めようとするのだろう】
【バランスを大きく狂わせた体のせいで、立ち上がろうとして派手に転倒する。すってんと間抜けな音がしそうだった。……血に塗れてさえいなければ】
【青年の忠告めいた言葉に対しても懲りた様子がなければ、果たして釣られた着ぐるみは罠に首を括られた無様な獲物のようでもあった】
【彼としてはかっ喰らう気満々だったのだから、喰らわれようとしたところに背を向けられるのは、きっと生殺しに近いものがあって】

【さも痛みに喘ぐように呼吸を荒げ、ダメージが残りながらも上体を無理矢理起こし、鋸を握らない方の腕が裾を捕まえようと伸ばされる】
【けれど、掠めることさえなく。落とされた手にはどうしたって彼を引き留めることができない、流れ出す血だってただそこから湧き出るだけなら】
【腕を振りかぶった勢いで散ずる滴が、執念深く喰らい付くように青年のローブへ赤い痕跡をいくらか残そうとするだろう。ただ、それだけ】

【それだけだった。軽業師のような俊敏さを持たぬ着ぐるみは這いずりながら、その場から逃走を図る青年の背を見送ることしかできない】
【もし、着ぐるみの方へちらりとでも一瞥くれてやることがあるのであれば。そいつはまた、大仰な“哀”の表情を張り付けていることだろう】
【それで、結局相手が逃げ果せるまでは、ジャンピーはそれきり微動だにしなかった。アクターが脱ぎ去ってしまったかのように、ぴくりとも】

【──明朝、辺りを一陣の風が吹き抜ける。淀んだ空気を渫っていく冷涼な風が、シャッター通りを駆け抜けていく】
【そうしてひとしきり吹く頃には血溜まりも、臭いも、獣の姿も。或いは観覧していた青い少女さえも、すっかりその場から失せてしまう】
【人気の無くなった一帯には、しかし崩落した穴と血痕とが色濃く残り──人でなしらの邂逅を、否が応でも予感させるものとなっただろう】
【血腥いヒーローショウの予行演習は演者の沈黙を以て一旦幕が下ろされる。次に相見える時喰らわれるのは獣か鬼か、それとも────】


/長時間ありがとうございました! お疲れ様です!!


789 : 1/3 ◆3inMmyYQUs :2018/08/18(土) 08:47:43 qo/HyX5s0
>>765(ロッソ)

【一個の殺意の塊となって真正面から突進する車体──】

【刺客が扱うのに相応しく防弾加工の施された鈑金は、生半可な銃弾では容易に通さない】
【事実、探偵の生命と精神が凝縮した弾丸でさえ、車体の曲面に当たったものは無慈悲に弾かれていく】

【──が】

【ばンッ──と、】
【そのとき、破裂音と共にバンパーの一部が弾け飛ぶ】
【それは紛れもなく探偵が放ち続けていた弾丸の一つが成した事象】

【──いくら防弾仕様とはいえ、今や車体はエンジンの限りを尽くして疾駆している】
【その十分すぎる速度の乗った物体へ、大きさでは比べるべくもないとはいえ弾丸のような超速度の飛翔体が“真正面から”衝突すれば】
【必然、相対的な速度は倍加され──装甲を穿つのに十分な威力をそこに生み出した】


【──探偵は逃げず動かず、“真正面から”相対していた】
【それが功を奏した。無謀が、死中に活を切り拓いた】


【一撃目を皮切りに、破裂音が連続する】
【ボンネットに、バンパーに、弾丸が牙と化して喰らい付き、そして爆ぜる】
【前輪が一つバーストし、車体が傾く。幾重にもひび割れたフロントガラスの内側で、鮮紅がぱっと弾ける】

【内奥へねじ込まれた弾丸が電気回路を焼き切った】
【操作系統の不全となった車体がそれ以上の加速を断たれ、】
【不揃いな車輪が、ドアへ真っ直ぐに飛び込まんとする軌道を僅かに歪める──微かだが、しかし確実に】


【──それが】
【そこまでが、《チンザノ・ロッソ》という探偵に出来た全てだった】


【車体それ自体は止まらない。止まりようがない】

【既に手遅れなほど加速の乗った数トンの金属塊は、】
【あるいは刺客の目論見通り、運転手の絶命した後でさえ、殺意を継続させる】

【ドアをぶち抜きその奥にあるものまで押し潰すほどでは今やなくなったにせよ、】
【その車体の進路上には依然として探偵の身があり、それを轢き潰すか圧し砕くかするには十分すぎる質量だった】



【──既に一線は過ぎていた】
【急に気を変えて飛び退けばまだかろうじて生き残れる望みのあるラインは、とっくに】


【──車体の震動】
【伴う地響き】
【全開の排気音】
【硝煙、血の臭気】
【鈑金の光沢──】


【全てが眼前にあった】
【生々しく、死の息吹を彼の膚に吹きかけていた】


【時は止まらない】
【叫びは届かない】

【全てが定められた通りに進み】


【(そして)】



【 ───────  “    ッ怒轟ッッ    ”   ────── 】



【──耳を覆いたくなるような衝撃音が、空気を劈いた】



/↓


790 : 2/3 ◆3inMmyYQUs :2018/08/18(土) 08:49:25 qo/HyX5s0
>>765


【────暴力的な質量をもって激突されたその躯体は、】
【ひしゃげ、吹き飛び、転がり、壁に叩き付けられ、内容物をぶちまけた】



【たった今までその内部を流れていた熱い液体が、流れ出て、地面に無惨な染みを広げていく】



【──凄惨な静謐】



【──誰が見ても、それがもう二度と動くことはないと知れた】
【完全で残酷な沈黙だった。あの無謀な勇気に満ちた音響が聞けることは、二度と無い】






















【────あの『エンジン音』も】
【────あの『クラクション』も】




【それほどまでに、『刺客の車』は惨たらしい大破の仕方をしていた】
【だが無理もないことだった】


【──セダンの数倍の重量を備えた、この古めかしい『スクールバス』から、】
【ほとんど最高速でもって『真横から激突』されれば──このような有様も至極当然と言えた】


【──ぎギ……と、】
【そのとき、ひしゃげたバスの運転席、歪んで立て付けの悪くなったドアが】
【内側から何者かによって押され──やがてばきり、と、半ば叩き壊すようにして平然と開かれた】




 『──久しぶりだなあ、〈探偵〉──
  ──いや、こっちじゃ『初めまして』か』




/↓↓


791 : 3/3 ◆3inMmyYQUs :2018/08/18(土) 08:52:38 qo/HyX5s0
>>765


【のそりと、大柄の人影が姿を現した】

【──黒革のライダースジャケット、後ろへ撫でつけた黒髪。壮年の男】
【どこか眠たげに緩い瞳、しかし髭面の口元は粘質ににやついていた】
【ベルトのバックルには『25』の数字。胸元には『返り血のペイントが施されたスマイルマーク』の缶バッジ──それらが何を示す符号なのかは全く不明だったが】

【その奇妙な男──あれだけの衝撃と共に追突したにも関わらず傷一つない──】
【は探偵を見下ろすや、何か愉快げに笑みを深めて、かつり、かつり、とステップを降りる】

【その手には武器──いや、それは武器というにはあまりに粗悪すぎた】
【曲がった鉄パイプと廃材を束ねて溶接し、有刺鉄線を巻き付ければこんな具合になるだろうか】
【その重厚な鉄塊を、ぶん、と手首の力だけで軽々しく一度振り回し】


【ちょうどそのときに、倒れていた刺客の一人──最初に撃たれた者──が、】
【震える腕で銃口を探偵へ向けようとしたが──『グしゃり』、と、男がその腕を踏みつけた】
【男の微笑が一層深まり、仄暗い嗜虐の愉悦を隠そうともせず滲ませた】

【視線が、悶える刺客から探偵へと移る。そして言った】


 『────〈栞〉はどこだ?』


【瞳がすうと細まり、目尻に皺が寄る】


『安心しろ、『助け』に来たんだ、俺たちは〈救済者〉だからなあ。

 ──おっと、余計なことは考えず急いだ方がいい。
 理由は二つ、いいか、二つだ。『理解』しろ』


『──ひとつめは、急がないとお前の『依頼人』はここで死ぬ。『病』でな。
 そうなると、俺たちはお前を生かしてはおけなくなる、悲しいことになあ──

 そしてもうひとつは、俺は小便を我慢している。
 あんまり勿体ぶるとお前の顔が便器になる──ハ、ハ、ハ、ハ──』


【「──Do you understand? (『理解』したか?)」】

【ぶン──と鉄塊を振り上げ、肩に担ぐ】
【生徒の回答を待つ教師のような眼差しが、じっと彼を見下ろした】


【──何が、何故、どのようにして起こっているのか、】
【詳細な説明を探偵に加える者はその場にはなかった】

【ただ言えるのは、この〈救済者〉と名乗る男が間一髪のところで刺客の車を跳ね飛ばし、】
【彼の命を──少なくとも致命的な重傷からは──救い出したのは確かな事実であったということ】
【そして、この明らかに善良ならぬ人相の男の言を信じるなら、──少女の命は既に風前の灯火であるということ】

【信じるか否かも、従うか否かも、全ては探偵に託されていた】
【──暗中の謎が明らかになるか、希望ある未来へ舵を取れるか、それらもまた同様に】


/お待たせしました、長々とすみません。
/お返事は適当に端折っていただいて結構ですので。


792 : ◆KP.vGoiAyM :2018/08/18(土) 12:57:49 Ty26k7V20
>>789

【俺は二丁拳銃の腕を真っ直ぐ前に突き出して何度も何度も撃ちまくっていた】
【俺の代わりに銃口が叫んだ。言葉にならない思いは幾多の意味を重ねて】
【薬莢の代わりに俺の体から血が滴る。足元のアスファルト。どす黒くライトを反射する】
【踏みしめる俺の10ホールのブーツと銃声からパンク・ロックが聴こえたような気がした】

【ジョー・ストラマーの言葉がよぎる】


<月に手を伸ばせ、たとえ届かなくても>


【予想より弾丸は攻撃を与えることに成功した。襲撃用にしたってこれだけのスピード出すような車は】
【精々、9mm弾を貫通させない程度の防弾だろう。舐めんな。俺の意志は44よりも過激だ】
【だが――こいつの挙動を完全に止めるにはロケットランチャーぐらいの意志を持ってこなきゃならなかったみたいだ】
【それぐらいしっかりしたもんを持ってたら…こんな仕事しちゃいないよ】

【探偵は最後まで目をそらすこと無く、撃ちまくった。少しでも護りきれる可能性を上げるために避けるなんて考えもしなかった】
【どうせ俺の命なんてあってないようなものなんだから。それでもほんの一瞬、目の裏に浮かび上がった残像―――】

【愛した人の残像が浮かび上がった。】
【危機的な状況になると時間がスロゥに見えて、いろんな記憶が浮かび上がるって言うが…俺の能力がそんなもんだから】
【まあ、珍しくもないんだけど。こんなどうしようもなくなってから現世に未練を残すような真似をするために余計な時間を延長されても】
【くそったれ。苦しくなるだけじゃないか。そんで――俺の人生、それだけか。他の奴らには悪いけど―そうみたいだな】

【それでも―――構わずに、歯を食いしばって撃ち抜いた。この瞬間のために】


世界は、終わらせない――――――


793 : ◆KP.vGoiAyM :2018/08/18(土) 12:58:03 Ty26k7V20
>>790 >>791


【―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】


【――――――――――――――――――――――――――】


【――――――――――――――――――――】


【―――――――――――】


【――――――】


【世界が全て静止したような静けさだった。だが、落ち着いてくると遠くでストリートの喧騒がうっすら聴こえた】
【眼の前のスロゥな空間で見えていたのは一瞬の出来事だった】
【最後に、「I LOVE YOU」と言い残すより早く。】

【圧倒的な質量の黄色いバイオレンスの塊が片付けてしまった。】
【アクション映画によく出てくるそいつはやっぱり最強らしい。だが、今の俺にそんなジョークを言える余裕もなく】


―――――クソッタレ、またか。


【荒い息を無理やり整えてから、なんとか言葉を口にした。】
【現れたのがもう少しスマートな――例えば、美女とか――だったら一安心したところだったが】
【なんせ、イカれた山賊みたいな奴が現れたんだから『またか』ともいいたくなるしかも――】

 『────〈栞〉はどこだ?』

【こいつは"知って”やがる。何処の立場かわからないが知ってる――】
【そして――あの目つき、雰囲気、それにやり口も乱暴だが、プロには変わらない】
【ここでやりあって、手負いの俺がシヲリを抱えて逃げ切るのは難しい】


――救済なんて言葉は…聞き飽きた。意味はクソッタレだって事も知ってるぜ。
………理解するのが仕事だ。一つだけ教えろ

【こいつに殺されなくてもすぐにでも死ねそうだったが。意地を張る。男っていうのはそういうもんだ】

シヲリを助けるにはどうすりゃいい。

【言葉を待たずにドアに向かった。足元がもつれてドアにぶつかった。ノブを回そうとすると手についた血で滑ったそれでも――】

―――シヲリ…生きてるか?


794 : ◆DqFTH.xnGs :2018/08/18(土) 18:16:36 2ExcMfjk0
>>767

【思いの外薄い反応に、眉尻が下がる。あまり良い感想ではなかったのだろうか】
【自分のこの感銘を、うまく伝えることが出来なかったのだろうか】
【──続く言葉すら、紡ぐことが出来ず。そのまま、意識は“オメラス”へと移された】

【差し出された手を見る。そして、アンドレアの銀の瞳を見返す】
【──『ミフネ』の金色の目は。銀色の理想郷とは、相入れないと語っていた】


────綺麗すぎる、っつうのも考えもんだな
少なくとも…………あたしはそう思うぜ

…………その場所は──“オメラス”はあんたにとっちゃ理想なんだろうな
でも……あたしは、綺麗で害虫のいねぇ温室よりも、汚ねぇ泥の中の自由が好きだ

それに…………。…………自分を偽る、っつぅのが悪ぃことなら、なおさらあたしは“オメラス”と合わねぇよ
あたしからそういうの取っちまったら、なんつぅの?……あたしじゃねぇ、って感じするし


悪ぃな、アンドレア────あんたの演奏は、すげぇ好きだけどよ


【手を握る。だが、それは決して理想郷を受け入れるための行為ではなく】
【むしろその逆の行いだった。黒幕や円卓、婦警との因縁。そのようなものを】
【全て抜きにしたところで──きっと、自分は“オメラス”に居るなんてありえない】
【心の底から、そう思っていた。もしもアンドレアが、何もアクションを起こさなければ】
【続けて、こう言うのだろう。「最後に1曲、またなんでもいいから弾いてくれないか」と】


795 : ◆3inMmyYQUs :2018/08/18(土) 18:33:08 qo/HyX5s0
>>730


──────…………っ、──…………?


【女の姿が変じたとき、『ハムレット』はハッと呼吸を止めて眼を見開いた】
【人ならざる、それこそ化生の姿。しかしそれが恐ろしいのではない、嫌悪するのではない、】
【ただその行動が、言葉が、青年にはまったく不可解なものとして思われ、そのためにただ身を竦ませて後退った】


──何を……、何を言って…………──────っ!!?


【ぞろりと、彼の今まで味わったことのない感触が腕へ這う】
【その悪寒が膚を粟立たせたと思った次の瞬間には、彼の身は並ならぬ力で宙空へ引っ張り上げられていた】

【視界が乱れ、揺れ、反転し、巨人の唸りのような風の摩擦音が耳朶をしばらく嬲った】
【──落ちているのだ、とはその最中にはまったく自覚が追いつかなかった】
【ただ都会の薄い夜空が急激に彼方へ吹き飛んでいくという幻想じみた光景だけが鮮烈に網膜へ焼き付いて──────】







「────やれやれ。
 勝手に開けるのはいいですけど、閉めていってくださいよ」


【──束の間に起きたその一連を、円城は一切止めようとせずに見送った】
【過激に散乱した室内で、一人呆然と佇む。二人の飛び出ていったガラス戸の向こうをぼんやりと見つめ、小さく嘆息した】



【────────】
【────】
【──】




【──路地裏の地面へ静かに降り立ったとき、】
【青年は思い出したようにふらついて、思い切り咳き込んだ】
【肩で息をしながら、地面の存在と、遙か上方に見えるタワーマンションを交互に見比べ、】
【本当にあんなところから降りてきたのかと、信じられないように何度も視線を往復させていた】


────あんた、……げほッ……『正気』じゃないな、──
……なんだって……一体、こんなこと……────────


【ミラが彼の身を解放していたとしても、】
【しばらくは未だ身体中を這い回る触腕の感触に嫌悪して身をさすっているだろう】
【昂ぶる呼吸の最中、生唾をごくりと飲んで──何か大人を信用しきれぬひもじい孤児のような眼でミラを睨んだ】


796 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/18(土) 21:05:57 WMHqDivw0
>>788

【逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ。全身がそう訴えていた、そうしなければ】
【「バケモノ」が目を覚ましてしまう。……それだけは、何としてでも、避けたかった】
【ばたばたとローブの裾が慌てふためくみたいに暴れるなら、それは混乱しきった鳥の羽搏きにも似て】
【上手く空を泳げずにいた。それでも何度か瓦礫の破片を蹴りつけて、上へ上へと、逃げ切ったなら】

――――――ごめんよ、僕はもう、君とは、遊べない………………

【最後に一回だけ振り向いた翡翠色が、間違いなく「かなしい」顔をした着ぐるみに焦点を合わせて】
【投げた言葉は謝罪だった。ショウはもう、開けない。幕は閉じ切って、次に開くときが来るのなら】
【それはもうお芝居ではなくなってしまうんだと気づいてしまった。ならば自分は、ヒーローになれない】
【理解して――――理解したく、なかった。苦虫を食い潰したような顔をして、エレインは、去って行く】


【――――――そうして走り続けて、走り続けて、日が落ちて、路地裏。ぜえぜえと息も上がって】
【足が棒のようになった感覚を覚えたころにようやく彼は逃げるのをやめる。乱暴にフードに手をかけて】
【血染めのローブを自棄っぱちに脱ぎ捨てる。地面に叩き付ける。そうして、はあ、と息を吐いたら】


………………………………着ぐるみの「血」なんて初めて味わうな。……変な味。


【頬にこびりついたままのジャンピーの血を、指先にて拭い取って。舌で清める――というよりは】
【「潤す」。たった微量であれども。……狩って得た血液は、忌々しいほどに、…………おいしかった。】


//おつかれさまでした!ありがとうございました!


797 : リゼ ◆zqsKQfmTy2 :2018/08/18(土) 21:42:00 3.Nv8SPc0
【夏日にしては涼しくて。夏が過ぎ去ったと錯覚するような水の国の夜】

……あー、久しぶりに凹んだ。ベコンベコンだよ。これって…サービス業における『3つの不幸』ってやつかな。

一つ目ー、お客サンからのクレーム。
二つ目ー、あてが店のグラスを破損させたこと
三つ目ー、……何だろ、今日より前の『何か』

【くくっ、これじゃ三つの不幸じゃないじゃん……などと苦笑混じりに締めくくって、ため息一つ】

【水の国の街から少し離したところにある公園のベンチに腰掛けて夜空を仰いでいる少女がいた】
【腰まであるブロンドの美しい髪を銀色の簪で結わえて】
【整った顔立ちに緑翠の瞳と人懐っこい笑みを湛えているのが特徴的な少女・リゼであった】
【普段とは違い黒のズボンに、白いシャツ、黒のベストにワインレッドの蝶ネクタイという身形だった】

グラヴィスのヤロー…『仕事に打ち込めない状態でカウンターに立たれても迷惑だ、今日は帰れ』って。
そりゃ確かにそーだろーけど…図星だからすっごいムカつくんだよなー、あーっ!

……その理由はわかってんだよ。だけどあての中で折り合いが付かねーんだから質が悪い。


【夜の公園にリゼの叫びが木霊する。それは闇夜のまにまに溶けて消え入って。残されるのは家出少女みたいに途方にくれる少女の姿】
【どうやらミスを重ねて、それを見かねたグラヴィスなる人物に『早退』を命じられた事と迷いを見抜かれた事でご機嫌斜めなようだ】


798 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/18(土) 23:31:26 Dnp9kjSw0
>>784>>785

【何処まで行っても宿世だった。呪縛であった。互いの背中に幾度となく爪を突き立て、首筋に残した歯型の青黒い歪みを指でなぞり合わずにはいられない。】
【繰り返し屡述し冗長的に再定義し焼け付くまでにフォーマットして、それでもアンダーフローした内心の機微が、やがて首を擡げてオーバーフローに引き合わせてしまう。】
【どうしてこうなっているのか、機械仕掛けの追想を辿っても理解できない。慈悲。殺意。慕情。欲望。執心。 ───── 愛情。この関係の表現形は幾らでも存在し得た。】
【だから畢竟、総ては後から付け足した理由でしかない。貴女に惹かれているだけ。会いたいだけ。抱き締めていたいだけ。愛していたいだけ。最早それが信仰に近しい事は何という皮肉であったろう。それでも。】
【天上から差し込む色めいた月光が、抱き留める少女には永劫に見えることのない微笑みへと、うつくしく翳るヴェールを授けていた。 ─── 艶めく唇が、血の色を思わせぬ白い喉が、音もなく蠢いて】


「 ────……………。 」「ほんとうに、優しい子ね。」「かえでは。」


【聞き遂げられることのない詠嘆と熱い呼吸と一つの意志が、柔らかい胸許に堕ちていく。総て総て、アリアは受け止めるのだろう。背筋を探る抱擁と共に】
【どこまでも言葉を吐き出せばいいと願っていた。叶わないことを知りながらも願っていた。何度だって背中をさすってやる。愛しい乳飲み子が上手に息を漏らせるように。】
【痩せこけた手脚は抱き締める程に、手の付けようがない宿痾を理解させた。だったら殺してしまうしかなかった。狼はそういう遣り口しか知らなかった。 ─── 故にして、彼岸へと懇願するような問いが、あるのなら】



「 ……………… 教えてほしいの?」「 ─── そうよね。」
「その為に貴女は、一生懸命に頑張ってきたんですもの。」


「 ……… でも、」「もう、いいのよ。」



【誰にも気取られぬ死神のように、白い掌で腰を抱き上げて、 ─── 膝を折るように仕向けるのだろう。微かに宙へと浮くのだろうか。であればアリアも膝を折る。】
【顔を上げようとするなら縛り付けるように抱き締めるのだろう。甘い呼吸に溺れていればよかった。そのまま息絶えてしまえばいい。今は貴女の番だから。では、次は?】



       「だって貴女の神様は、」「 ───── 貴女を、救ったりしない。」



【 ───── ひそめいて微笑む。耳朶の奥から滑り込んで絡み付いて、皮質も延髄も脳漿まで悉く犯し尽くしてしまうような、指を捩じ込むに似て冷たく焼ける甘さ。蕩ける組織が残っているかは、解らないまま。】
【なのに我が子を寝かし付ける色合いの声音だった。首だって締めてしまいたいの。気道だって塞いでしまいたいの。止まる鼓動を聴いていたいの。貴女の総てが欲しくて、要らない】


799 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/18(土) 23:45:11 Dnp9kjSw0
本スレ≫338


「あは、 ─── 自分の元を去っていった女が、いつまでも昔の男を想ってるだなんて、本気で考えてるの?」「のぼせ上がりも甚だしいわね、酔っ払い。」
「 ──── けれど、遅くない。悪くないわ。」「だったら今だけは、楽しみましょう?」


【二連の打撃は空を切る。 ─── 防がれる手筈であった。少なくとも並の人間が見切れる速度で繰り出してはいなかった。】
【ふッ、と女は笑う。畢竟彼女は狂人である。命の遣り取りに身を晒して初めて、自身の朧げな輪郭を確かめられる憐れな走狗/痩躯である。】
【なれば殺意は十分であった。それを楽しむ為に煽り立てる言葉をかけた訳ではなかったが、楽しむのも悪くはないと思った故の笑いだった。】

【 ─── 弧を描く光条が迫る。受け止められるつもりで放った攻撃を躱された。であれば彼女に応する策はなく、右脚部への打撃を甘んじて受け入れた。】
【痛烈な打撃が骨格まで伝わって神経を痺れさせ、脊髄から脳幹へと退廃的な論理回路が開放される。ボールジョイントの軋む激痛。白い鈍麻。これでこそ肉弾。であれば、】


「 ………… く、ふッ。」「手痛いわね。」「 ──── けれど。」


【行き交う打撃の応酬は舞踏に似て、然して純粋なる暴力の丁々発止。透き通る色合いの頬が法悦に緩む。スーツの下、瞬刻、仙骨と大腿筋が捻り上げられて】
【凝縮された反発力を雲耀のうちに解放する。 ──── 繰り出されるのは、右脚からのハイキック。狙うのは屈む男の顎先、矢張り躊躇わず頭部へと】
【同時に左手、旋棍の持ち手を逆様に回し、長柄の先端を射突する目掛けるは男の背中、内臓の集中する腹部へと、畳み掛ける苛烈な連撃を狙って。】


800 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/18(土) 23:58:52 Dnp9kjSw0
>>786


「 ──── アリス。」「悪夢。」「 ……… 祟り。」
「 ……… よく、解らないや。」「ごめん。聞いておいて、答えてもらったのに」

【茫洋に少女は頷くのだろう。そして申し訳なさそうに笑うのだろう。 ─── 自分の目に見えるものしか少女は信じられなかった】
【然して少女は見てしまってもいた。あってはならないものを。知ってはならないものを。であれば信じなければならなかった。】
【 ─── 去りゆく背中は、何も止められずに見送るのだろう。情けなかった。俯いたまま散らばるくすんだ金髪が忌々しくて】


「 ……… ごめん。」「忘れられない、かもしれない。」「だって、 ─── だって」
「 ─── 僕は、正義の味方、だから。」


【 ───── それでも最後に呟く言葉は、彼女自身にしか届かない。】
【そんな決意を嘲笑うように、 ──── 少女は夢魔へ魘される。胃の底が逆さまになるような噎せ返る絶望に身を浸して、】
【おぞましいほど鮮明に脳裡へ浮かぶ火の海と血の匂いは、然して少女の知るものではなかった。であれば、であれば、であれば】


/お疲れさまでした&ありがとうございました!


801 : 名無しさん :2018/08/19(日) 00:04:31 WOPEUtaQ0
>>798

【であれば、少女より手向けられる感情もまた不確かでたくさんの色を散らすようで、それでいてひとまとめの花束よりも、ずうと、生々しい】
【子孫を残すための部位を切り取りかき集め綺麗な紙でリボンで包んだ物体よりもきっとどこまでも咽ッ返るような生のにおいをかき集めたのなら、その温かさに頬寄せて】
【一つ一つ花を選んで引きずり出すたんびに違う感情を示すのは至極当然なことであった、だって、花の一つ一つに与えられた言葉があるから、そうしたら】
【花束だなんて最初からたくさんの言葉と気持ちと意味の寄せ集めだった、それを一つ一つばらしていくのはひどく無粋に等しく、だけれど、限りなく背徳的で】
【――だから探そうとしてしまうのかもしれなかった。そのどこかに納得できる何かがあるような気がして。曖昧な占いとおんなじ、どんな言葉すら当てはまる気がしてしまうのに】

【やさしくなんかない。訴えるように少女はその胸元で首を揺らすのだろう。優しくなんてない、なかった、そんなの自分が一番知っている】
【本当に優しい人は心の中に汚さの一片もないのだと思う。そんなのは嘘だと分かっているけど。それを信じたかったし、それなら自分は優しくなくって】
【抱き上げられたなら――わずかに吐息を詰まらす。ひどく怯えるかのように身体をぎゅっと相手へ寄せるのだろう、(落とさないで)、と、祈る心までも透かすみたいに】
【銃を握ったままの右手はそのままで、――空っぽの左手が相手へ縋り付くのだろう。そうしてそれはきっとアリアの次の言葉を理解しているみたいに、すでに、震え】

――――――――――――――――――――、やめて、よ……。

【だから内臓までぜんぶ全部を自分の手で引き摺り出さなきゃいけないみたいに悲しい声を出す、身体をぎゅうと強張らせて、だのに、逃げ出す地面がどこにもない】
【首根っこを掴んで吊るされた猫みたいにぷらんと垂れた爪先が慄いて触れる先を探して、だのに見つけられなくて、だから、もう、逃げられなくて】
【――いくらか遅れて、右手に握っていた銃まで取り落としてしまうんだろう。どんな音がしたって良かった、心がへし折れるときの音より、きっと、耳当たりも良いのなら】

やめて……、やめて――――、やだ、――いやだよ、嫌……。――――、しんじて、るの、でも、できないの、ねぇ、
――みんな、みんな、しんじゃった、私のせいだ、……、私の、わたしのせいで、みんなが……、なのに、……――できない、頑張れな、――、

【あるいは悪阻よりも救いがなかった、口から出るはずないものを吐きだそうとしてえずくのに似て、けれど出そうとしているのは形さえない感情のひとかけらで】
【最期に抱き留めていたかったものを奪い取られそうなら、どんな子供より悲痛な声を漏らす、――取らないで、壊さないで、(殺さないで)、そうやって懇願するのだろう】
【"みんな"が死んだことなんてずっと知っていたはずだった。だのに今の彼女はそれにひどく執心していた、あるいは取り憑かれてしまったみたいに、繰り返していた】
【――――ならば、"みんな"の死について、なにかを、忘れていたらしかった。それを思い出してしまったらしかった。ゆえにこそ、心までぐしゃりと潰れてしまったみたいで】

 ねえっ……――、信じてる私を、好きって、言ってよ……。お願い――、アリアさん……。

【それでもひどく震える声が最期の慈悲を乞う、――きっと、両腕いっぱいの花束よりも、たくさんの感情を詰め込んで、捧げるなら】
【跪いたなら間違いなくプロポーズと等しいに違いなかった、だけれど現実は首吊り死体よりも無惨な亡骸、ふらりと浮いた爪先から落ちる影だけ、実在を示して】


802 : ◆DqFTH.xnGs :2018/08/19(日) 00:09:02 bZmi3Qw.0
>>795

【路地裏に降り立つ。周囲を警戒し──追っ手がいないことを確認すれば】
【青年を解き放つ。ついでに肌の色も、本来の薄紅色へと戻す。再び、異形の蠢きを目にするだろうか】


はっ────、正気だの正気じゃねぇだの、どっちだってぇ話だな
ま、あたしはあたしがどう見えてようとどぉでもいいんだけど、よ


【もう一度周囲を見渡す。人通りの少ない路地の一画に、薄ぼんやりとした灯があった】
【『100マネー。うまい・やすい・冷えてる!ルーレット777でもう1本!』】
【チープな味を売りにしている飲料の自動販売機だった】


で…………何で、何で、ねぇ…………いや、そんな深い理由はねぇ、っつうかさ


【先ほど高層マンションの上から落ちてきたとは思えないほどの呑気な足取りで自販機の前へ】
【少し悩み、適当なボタンを2回押す。静まり返った路地裏に、可愛げのある電子音声がルーレットの開始を告げ】
【その結果を聞くより先に、青年の元へと戻ってくる。「どっちがいい」】
【半笑いで青年に差し出される飲料の色は、毒々しい紫と蛍光イエロー。どちらも、炭酸入りと太字で誇張されたパッケージ】
【どっちを選ぶにしたって、ミラは彼に選ばれなかった方を開けて数口飲むのだ】


なぁんか────ムカついたんだよな、あんたの状況に、よ


【──子供っぽい甘味料や香料の味が嫌という程する飲み物だった。おまけに後から炭酸が】
【うんざりするほど押し寄せる。クセになる、というより中毒になる味。だが】
【一定数のファンがいそうな──どちらの飲料も、そんな感じだった】


あんたみてぇに辛気臭ぇツラして、追い詰められた感じになって「これで自由だ」って言われても、よぉ

なんつぅの?それって本当に自由かよ、って思ったんだよな


自由、ってぇのはよ──もうちょっと、楽しそうに語るもんじゃねぇのかよ
あいつをぶっ殺そうぜ、いいなそうしようぜアッハッハ…………自由のために誰かを殺すんなら、よぉ
それくらいは笑いながら語ってもいいくらいだ

なんか、こう。さっきのあんたはマジに真剣だったんだと思うぜ?
そのくらい追い詰められてて…………本気、だったんだと思う
でも…………あん時、あんたからは、自由になることへの“希望”だとか、“悦び”っつぅのが感じられなかったんだ
そりゃ違ぇだろ、って思ったんだよな。それに────
自由になることへのイメージとか、そういうのちゃんとしてねぇと、結局元のモクアミっつぅか?
世の中だとか自分に絶望しながら戦う、っつうのはなんか、ダメだろ。こう、さぁ


…………んあー、悪ぃ。なんか、うまく言えねぇわ


ともかく、なんか違うだろって思ったんだよ。あん時はよぉ
それに…………あのままだと円城の野郎、あんたの世間やら自分への恨み辛みとか、利用しそうだったし、よ
なんか────そういうの、見てらんねぇっつぅか


【炭酸で喉を刺激する。冷えて清楚な味のミネラルウォーターよりも】
【こういう味の方が、好みだと思った。──無味無臭は、自分らしくない】


ま、あんたをここまで連れてきたのはそんな感じ
だから…………うん。まぁ、あたしはあんたが思うような正義漢ってぇやつじゃねぇよ

どっちかってぇと、今のあたしは円城のお仲間に近いし、よ
あーあ!流石にこりゃ、後で怒られちまうかな。ま、いっか、ぎゃはっ!!


【『気に入らない』──言うならばそんな刹那的な感情で、このミラという亜人は】
【あの摩天楼が如き高層マンションから飛び降りたのだ。正気か、正気でないか】
【街の住人に聞けば、アンケートの結果など火を見るよりも明らか。だというのに】
【こいつはべたべたのジュースを飲みながら、ぎゃははと品なくさも愉快そうに、笑っていた】


803 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/19(日) 00:58:54 Dnp9kjSw0
>>801


「 ………… かえでは、」「赦せないだけなのよね。」「優しいっていうのは、そういう事だから、 きっと ──── 。」
「だから。どんなかえでも、大好き。」「どんな貴女も愛していたいの。」「どんな時でも、どんな場所でも、どんな姿でも」
「でも、 ………それでも」「やっぱり、」「私に向かって笑ってくれる貴女が、いちばん大好きだから、 ──── 。」


【縋るような指先を絡め取って、当たり前のように恋人結びに仕立て上げてしまう。然して現実はもっと執心と愛情に満ちていて、非道い言葉だって幾らでも並べる】
【ある意味でそれは少女の想いを踏み躙るに違いなかった。どんな貴女も好き?  ──── ふざけていた。正しい答えは誰だって分かった。今の貴女だけが好きって言ってほしいに決まっていた】
【そう知っていてそうしなかった。であるに一層のこと残酷だった。少女がその答えを望む理由さえも解っているに違いなかった。そうしなければならなかったから。大切なひとを喪った自責から逃れられずにいるから】
【 ─── 然して続く告白は、いっそ信じる貴女なんて大嫌いと言ってのけていた方が、きっとまだ幾ばくか救いがあった。何度だって囁くのだろう。チタンの骨格に絡め取って、一緒にどこまでも沈んでいきたいの。】



        「 ──── だからね、」
        「一緒に背負っていってあげる。」

    「 ……… 外せない枷があるのなら、神様が外してくれないなら、自分で外せやしないのなら、」
    「せめて私にも背負わせてほしいの。 ……… 貴女の罪も貴女の呪いも、自分のことを赦せない貴女のすべても」
    「 ──── この命が終わるまで背負っていってもいい。貴女の苦しみを、一人で抱え込ませたりなんて、したくないから」
    「そうして2人で探しましょう?」「私たちの罪と枷を、きっと赦してくれる誰かを、 ─── 叶うまで、いつまでも。」


【抱き留める腕は既に少女の痩躯を締め上げるようであり、四肢の自由も魂の潔白さも奪ってしまえば、最後に呼吸さえも奪おうとするに違いなかった。】
【されど狼は牙にかけようとしなかった。 ──── そのまま呑み込んでしまいたがっていた。尖ったまま錆び付いた金属の欠けらを、少女がずっと大切に抱えていたそれを、胎の奥深く/孕んでしまうように】
【探す必要など無いと解っていた。歩く脚先さえ必要でなかった。ただそれは遣り場のない愛情の行き先として指のように絡めてしまえばよかった。最初から知っていた。知らないふりをし続けていた。】


  「それにね、 ─── 私もね、かえでがいなかったら、もう、生きることに意味なんてないの。」
  「だから、 ……… お願い。」「私の心を埋めて頂戴。」「私を安らかに眠らせて頂戴。」「私と怨みを晴らして頂戴。」「私のことを、 ──── 」


   「 ──── "助けて"。かえで。」



【故にこそ最期の告白は、隠し持った貞操帯の鍵に他ならぬだろう。例えどこかの悪辣な淫魔にそんなもの壊されていたとしても、彼女/アリア/████は、それを信じて願うしかなかった。】
【いつのまにか彼女の方から縋っていた。抱き締めたまま縋っていた。最初からそうだった。そうでないふりをし続けていた。疵口を何度だって重ね合わせて、】
【何度も何度も痛みに苦しみながらも愛しく思わずにはいられないのは、(どうしようもなく欠けてしまったモノ同士、ひとつになりたいから)】


804 : 名無しさん :2018/08/19(日) 01:48:33 WOPEUtaQ0
>>803

【ひどく拙い声が何度も何度も懇願するように繰り返すのだろう、すなわち「いや」と「やめて」をクロワッサンよりミルフィーユより厳重に重ねて】
【ブレックファストにもティータイムにも重たすぎた。食べてしまったら三日三晩は寝込んで最後に死に至るような感情を生クリームになぞらえて、塗りつけるから】
【そうして最後にチョコスプレーでもアラザンでも真っ赤なベトベトしたサクランボでも添えたらよかった。上等な下地も全部無粋な甘さで犯してしまえと叫ぶみたいに】
【甘い甘い蜜漬けもこうなってしまったらどうしようもなかった。言葉のたんびに何かを抉られてぼたぼたって剥落し滴る感情は月経痛よりどこかを痛ませ】

【――だからいつしか泣いていた。何より欲しいはずのものを目の前にして、だけれどそれは猛毒入りだって知っているから。だのに、もう、空腹で死んでしまいそう】
【食べたら二度と戻れないって分かっていた。だけれど欲しくってたまらなかった。――今すぐその心臓を貫いたなら、手に入るのだろうか、なんて、思ってしまうほど】
【そうしたらきっと毒も消えるって分かっていた。殺してしまうだけで毒は消えるって分かってた。ヒガンバナだって飢饉の最中なら食べるみたいに、ああ、でも、だけれども、】

【(そうやってそこで猛毒だって分かりながら咲き誇る花の美しさに、うんざりするほど毒抜きしたでんぷんの粉がどれだけ叶うの?)】

――――――いや、……、いや、 嫌。いやだよ……。いや。――やめて、よ、ぉ……、――やだよ、――っ、アリア、さん、
やめて……。ねえ……。――嘘だよ。"あんなの"。うそだったのっ。だから。……勘違いだよ――、ねえ、……そうだよね? そうだよ……。
私にそんな意味なんてないよ。……。――空っぽなの、弱虫で、狡くて、――っ、だからっ、――だから、約束だって、守れないんだ、っ――、
ねえっ……――私ね、覚えてるよ、――忘れたのに思い出したの――、そしたら、わかんなく、なっちゃった、――ねえ、こんな私に、

【ゆえに二歳児と思春期の合わせ技みたいにただひたすら否定を重ねた少女は、アリアが致命的なことを言う瞬間まで、ずうとそれを繰り返すのだろう】
【しかしてやがて相手が紡ぐ言葉が"それ"であったなら。――自分が何度も何度も拒否してきた単語であるのなら。もはや何度目かも分からぬ言葉を、口にして】
【いつか口にした言葉など全部嘘だったと白状する。一度だって立ち止まったらそれでお終いの運命、そうして彼女は立ち止まってしまったから、すなわち終わってしまった】
【旧いパソコンとよく似ていた、電源が入っている限りは動くけれど、電源を落としたら二度と立ち上がらない。連ねる言葉はひどく、彼女の口から出そうになくとも】

そんなの、できない…………。

【――きっとこちらが"本当"だった。圧倒的に優れた/そうであれと願われるものに縋る理由なんて、ただ、ただ、ちいちゃな自分から目を逸らしたくって】
【救ってほしいって言うのは本当だけれど限りなく嘘に近かった。――ほんとはみんなと一緒に居たかった。なんて、ふざけた話、今更、どこの誰なら聞いてくれるんだろう】
【世界中できっと一人だけだった。そして少女はそのたった一人に抱きしめられていた。それこそまるで神様が誂えてくれたみたいに、ぴったり似合うドレスみたいに、】
【ならば差し出される鍵さえ硝子の靴なのかもしれなかった。きっと形だなんて何でもよかった、二つで一つの物、欠けたもの、差し出して、受け入れて、一つになるなら】

ずるいよ、ずるい、わたしに、私には、あんなの、あんな顔、してくれないのに、なのに、なのにっ――、なのに、い、
――いっしょにいたかっただけなのにっ、だって、そうじゃないと、だめなのに、だから、なのに、あんな顔、――、ねえっ、
わらってよ。私に……。……でも。でも、すきなの、泣きそうな顔。泣いてる顔。だから。だから、…………っ、だからっ、

【あるいは意味も分からぬのかもしれなかった。あの写真の表情をいつだって見られる彼に嫉妬しているに違いなかった、だのに、私が悪いって顔をするから】
【一緒に居たいから。あのままでは叶わないから。施した阻害は、――けれど限りなく歪んだ情欲と限りない引け目しか遺さなかった。だから立ち去ったのに、】
【それさえもそのままでいられないんだ。であれば自己嫌悪も行き過ぎてそのまま消えたかった。言葉はただ散り散りに乱れて、だから、だから、】
【――いきおいあまるみたいに、言葉が出て来る、いやいやを繰り返すなら、ただ子供みたいだった。――自分は強くなんてないから、】

たすけてよ――――――――。

【だから、】


805 : パグローム ◆KWGiwP6EW2 :2018/08/19(日) 13:10:23 WMHqDivw0
>>649 >>650
なァに、虚神どもに比べりゃ大人しいもんさ。
このシャーデンフロイデなんぞ、正にその過去改編能力じゃねェか。

とは言え、奴さんの視点じゃ話は随分先に進んでそうだ。
こっちの知らん内に手遅れなんて話になったら洒落にならんね。

必要有るのかァ?
先走って敵を連れ込んだ挙句に、利用されてくたばっただけだろうがよォ。
無駄死にだったら指さして嗤ってたところだね。クヒヒヒッ

【仲間の死に対してもこの男に感慨らしいものはない。そういう男だ】
【さりとて、虚構現実でのジャ=ロやり口は気に入ったものでもない。笑っていたのは、数瞬の話で、仏頂面へと戻る】


少なくともこの報告書で、虚神どもの出鱈目具合は分かる。
ジャ=ロは死の化身だから死にません、みたいなチートモードでも驚きはしねェなあ。

【そもそも、"死の概念"を知らない少女の願いから生まれたのだとすれば、同等に自身が死の束縛から逃れていてもおかしくはない】
【他の虚神達の例に漏れず、これもまた、向こう側のルールに沿って戦わなければ、剣や銃の攻撃で死に至ることはないのは間違いないだろう】

そもそもあのヤロウ何でこんな回りくどい真似をするのやら。
死の化身とか言う大層な存在なら世界を滅ぼすなんざ自分でやれよって思わねェか?
蛇の宗教がどんだけ恐怖信仰をバラ撒こうが死への恐怖に勝るとは思えんがなァ。


【恐らく、ある程度でも虚神の事情を知っていれば一度は思うことだろう。何故ジャ=ロはウヌクアルハイと言う蛇の神を使ってことを狙っているのか】
【当然その疑問が出る訳もないのだが、男は肩を竦める】


だが、こう考えよう。
"やらない"ってこたァ、"出来ない"ってことだ。
アナタンターシャだってインシデントの資料を見る限りじゃ厄介な敵だったみてェだが、それでも虚構現実での前評判に比べりゃただのモンスターだったようにな。


【それはあたかも見世物小屋の前口上に似ている】
【世紀の大発見のような口上を謳ったとして、その裏には超えられない現実を虚飾するためのあらゆる努力が隠されているものだ】

【と、本題が一区切りついてしまうと、後は帰り支度の合間の世間話となる】


マルフィク――あー……アレか。蛇神教の化け物司祭。


【カニバディールの予想に反して、男はその名を思い出すのに時間を要したようだった】
【恐らくはマルフィクの印象が薄かったと言う話ではなく、この男は誰にでもそうなのだ】
【男の他者に関する記憶は外付けのハードディスクのようなもので、どれだけ縁が深くとも、結び付けないと思い出せない】


そりゃア余計な真似をしてくれたもんだ。
あのキノコが無けりゃキレイさっぱりこの世から消してやれたってのによォ。
聞けば別の奴に殺られちまったようじゃねェか。
――消し損ねた。


【マルフィク――アレクサンドル・タルコフが逃げ果せたことで、男は能力を蛇神教――何より、スナークやジャ=ロに知られ、苦戦を強いられたのだが】
【そんなことよりも尚、彼を自身の手で消し去ってしまえなかったことが腹立たしいらしい】
【憮然とした様子で、彼の示す"遺産"に視線を寄せた】

// 続きます!


806 : パグローム ◆KWGiwP6EW2 :2018/08/19(日) 13:10:35 WMHqDivw0
>>649 >>650
【暇をしているとも言えないが足早に去るほど時間がない訳でもない】
【帰りかけた足を止めて、彼の出して来た鑑賞会に視線を向けた】


ホウ――これはこれは。
イイね、この世のゴミ共が綺麗に掃除されていくってのは、慈善事業の記録テープかこりゃよォ。


【文字通りの出歯亀気分だった】
【蛇神に纏わる様々な死の記録――自分が手を下していないことに不満はあれど、それでも邪教徒達が死に堕ちて行く姿は満更でもないらしく】
【拍手でもしそうな態度で腕を組んで口元を歪めていた】

【そしてその後に始まる、幹部である"ムリフェン"を巡る様々な暗躍――こちらについては、"プリンだと思って食べたら卵豆腐だった"みたいな顔で眺めている】


蛇神教の幹部と邪神と外務八課のねーちゃんで三角関係ってか。
ジャ=ロの方は恋愛沙汰ってより、完全に宗教詐欺って感じなのが笑い所かねェ。


【手口としては実にそれらしい。弱っている、この世に引け目の有る人間に甘言を弄する様は実に堂に入っている】
【もっとも相手が元々信仰に染まっていた人間ならば難易度は退屈な程だったろう】

【そして最後には、目の前の男カニバディールとの対話と――仕掛けられたマルフィクの最期の罠】



ク、ヒヒヒヒッ
やっぱあの女殺しといた方が良いんじゃアねェか?
外務八課があの女を匿ってる理由が色ボケした部下の恋路を応援してるとかだったら、この世の終わりだぜェ?


【蛇神教も崩壊した今となっては、彼女の存在に重要な意味が有るとは思えない】
【何となれば、役割を終えてマルタで退場していてもおかしくはなかっただろう】
【だと言うのに、今も尚生き延びて、この件に関わる様々な人物の目を集めている事実】

【パグロームからしてみれば、いつ爆発するか分からない爆弾を互いに放り込み合っているようにしか見えなかった】


全くくたばったってのに次から次へと。
俺が殺ってりゃあ、化けて出る余地なんざ与えねェってのによォ


【記録を見終わった後は、結局不機嫌な様子に戻っていた。忸怩たる思いを抱いているらしいカニバディールを一瞥して】


さァて、ここの会話もそろそろ終いだ。
俺はもう行くぜ。物語の先端に追いつかねェとなァ?

オマエもその馬鹿でかい図体じゃ動くのも難儀だろうが……

クヒヒッ……してやられたままで済ますのは性に合わないだろう?
悪党なんだからなァ

【そう言って、男は蛇料理の代金を払って、店の出口へと向かう】
【呼び止められることがなければそのまま去って行くだろう】


807 : ◆9VoJCcNhSw :2018/08/19(日) 17:42:19 wn2rqSVw0
>>787


『表面上は無いものであっても、人の深層には必ず固着した記憶が存在する。
 ……例えば、幼少期に味わった苦痛や、災禍は、特に。
 そして其れは知らずの内に、こういった内面世界を織り成す根幹となる……

 ――宛ら、"ルール"のように。……"此処"の私は、それを忠実に執行するだけだ
 招いたのであれ入り込んだのであれ、オートメーション化された"私"は異物を排除する。

 現実世界の父君はその記憶を一時的に喪失"したと思っている"が
 実際はしっかりと…――意識下の何処かには、存在している。
 私はそれを共有し、故にあなたの言う齟齬が発生している。……説明は、十分だな?』


【〝記憶〟――表面上覚えていないが、その内面の何処かに埋もれているモノ】
【それをアンドレアはコピーし、一方で表面上の人格はそれを忘れているだけ】

【確かに、筋が通らないでもない。『此処の私』という辺りも】
【あくまで異能が意志を持ったと思えば、こと大本の精神世界に居てもおかしくもない】
【淡々と、ただ会話を楽しむように。自らの存在を認めてもらうように、説明を重ね】


…………知らな、ぃ、……?

『そう、知らないだろうな。"ルーナ"などという名前を付けているようだが
 父君の熱意と異能が生み出した亜神が、私を知るはずもない。

 ……さて、その者を連れ出す危険は2つ。
 一つはこの世界の均衡が崩れること、もう一つは現実世界に"月"を司る神を引きずり出す事。
 今更、父君にとっての"月"が何かを説明する必要はないと思うが……
 それがこのセカイから完全に消える事と、世へ出る事。他にも、いくらでもリスクは見つかりそうなものだが』


『――だが、いいとも。好きにしたまえ、グリース・イムリンパルス。
 私はこの無辺の世界を彷徨う者に、ただ事実を伝えに来ただけのことだからな』


【ルーナはアンドレアを知らず、アンドレアはルーナを知っている】
【それもおそらく、この世界の主よりも。そしてわざわざ此処に姿を見せたのは】
【あくまで事実の伝達のため――それだけ言うと、言葉を切った】
【気障に軍帽のつばを掴んで、目深に被り直しながら】

【――ルーナは、といえば動かない。動けない、という方が正しいのだろう】
【どうしたら良いのか分からないし、どうにも出来ないのかも知れない】
【が、眼の前で話されている内容を理解しているのかしてないのか】
【向ける視線の先はグリースへ、というのが増えて、その瞳はやはり不安げだった】


808 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/08/19(日) 20:44:20 ZCHlt7mo0
>>799

――――うるっせぇってんだよ……もうあいつの心は、魂は、どこにもいないんだ……この世界のどこにも居ないんだ、んな事は分かってる!
だからぶっ殺してやるって言ってんだ! あいつを洗脳しやがった奴も、あいつを邪神に仕立て上げやがった奴も!!
のぼせ上がりだろうが何だろうが、知った事か――――俺がそうするって言ったらそうするんだ、誰が何と言おうとなぁッ!!

【つい先ほどまで酒気に呻いて泣き震えていたそれとは、同一人物と思えないほどに、偉丈夫の身体には力と殺意が充満していた】
【期せずして、この立ち合いが、彼の中で折り合いをつけさせ、切り替えさせたのだろう。苦い感情に洗われる必要があったはずの心は、もはや萎れてはいなかった】
【その瞳に宿るのは、ただ――――かつて親しかった『エカチェリーナ』への、惜別の殺意。そして彼女を歪めた存在達に対する、憎悪の殺意】
【そして、今まさに眼前で侮蔑と挑発とを向けてくる女に対する、かろうじて希釈された嫌悪の殺意だけだった】

(チッ、これで折れてくれりゃあ良かったが、流石にそう簡単には――――けどよ、これでこいつのアジリティはある程度――――ッ!?)

【振るった棍が、女の足を打ち据える。やはり動きにブレがあったためか、その力は満足いくものではなかった】
【とは言え、足に痛手を与えた事は事実である。トンファーをメインウェポンに使うインファイターであるならば、足を痛めつけさせたのは先々において有利だと内心ほくそえみ】
【――――直後、そうした認識を改めさせられる、即座の反撃が飛んでくる。半ば無理やりに姿勢を低くしていた以上、その迅速な反撃には、対処の仕様がなく】

ぐぁああッ!?

【蹴り飛ばされる顎。そして長棒部分を活用した、トンファーによる打突。クリーンヒットした男は吹き飛ばされ、ザリザリと地面を転がる】
【かろうじて、転がる勢いのまま立ち上がり、再び根を構え直したが――――】

ぐっ…………、ッ――――おおおぉぉぉッッ!!

【一瞬、視界が揺らいだ。脳へとダメージが入ってしまったのかもしれない。わずかに、必要以上に前傾が深くなる。ダメージによるふらつきが表れた格好だ】
【だが、それでも――――偉丈夫は呻きを強引にかみ殺すと、裂帛の叫びと共に前へとステップする】
【前方への跳躍とも表現できるような、疾風の如き大股の4歩を踏むと、下から掬い上げるように、女の首元へとアッパー気味の棍を振るった】

【――――だが、その瞬間の踏み込みは、最適解よりも浅いものだった。無論、その感覚は個々の体躯によって異なるものだが、偉丈夫と女は、上背ではほぼ同格である】
【或いは、その一撃が見た目よりも浅いものである事に、気づくかもしれないが――――】


809 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/19(日) 21:09:16 Dnp9kjSw0
>>804

【とうに彼女は喰べてしまっていた。待てと言われて待てるだけの躾を狼に望めやしなかった。パティシエールが丹精込めて飾り上げた劇毒の甘味を、テーブルマナーも何もなく残酷に食い散らかしていた。】
【なれば既に魅せられていた。なまあたたかい血汁滴る柔らかな内臓だけでは最早満たされない。人魚の膚を噛み千切っても未だ足りない。八百年が過ぎたとしても、一度気付いてしまった叡智の原罪に赦しは請えず】
【 ──── 然るに全てを擲ってでも求めるしかなかった。救ってあげたいと信じていたのに、何時の間にか救われたいと願っていた。自分が自分である為に必要なのは、白砂のように手で解ける薄藤色、】
【重ねれば溶けていくような淡い膚、いつまでだって抱きとめていたい柔らかな肢体、か弱くて優しくて気丈で愛おしくて仕方のない笑顔。 ──── 果たして何を咎められる事があろうか。】
【どうしようもない歎きは皆んな胸の奥に吐き出してほしかった。幾らだって泣いてほしかった。幾らだって苦しんでほしかった。幾らだって迷ってほしかった。そうすれば、一緒に歩いていけるような気がしたから】
【お互い一人では立ち上がれないなら、誰かに肩を預けるしかなかった。なのに広い広い世界の中、人間は一人しか居なかった。であればどこかで惨めに跪いて倒れる運命に違いなかった。 ──── なのに。】
【少女がいた。初めて彼女は生きてる誰かを見つけた。そう思った。自分がなくした自分の片割れ。ずっと欲しかった/もっと探していた(きっと忘れたふりをしていた) 自分のかけらが、そこにいたから。】

【 ──── 掬い上げる≒救い上げるように、アリアの腕がかえでを抱くのだろう。泣きじゃくって赤く腫らした頬を上向かせるのだろう。切に望み続けていた言の葉を、聞かせてくれたから。】
【笑っていた。有るべき居場所を漸く見つけられたように、けれど嬉しさに涙を零して、穏やかに笑っていた。儚く物憂げな淡い彩色を皆んな慈悲と恋慕と愛情に塗りつぶした白皙が、笑っていた。】
【きっと少女の望み続けていた表情だった。もっともアリアはずっとそんな顔をしているつもりだった。けれど共に歩いていけないと諦めていたから、上部だけの安寧は分かりやすい欺瞞に過ぎなかったのだろう。】
【でも今日でお終い。信じてくれるなら。求めてくれるなら。愛してくれるなら。殺すことしか知らない狼でも、誰かを求める冒涜が、貴女に赦されるのなら。 ─── くしゃくしゃの顔に頬寄せて、貴女だけに聞こえる聖言で、囁やくのは】



       ───── ありがとう。



【 ──── であれば、幾度目かも解らぬまま深く唇を重ねようとするのは、儚いマゼンタの少女がせめて絞り出した問いへの、何よりも雄弁な回答だった。】
【何処かのひずみから射し込む無彩色の月光が、白銀と薄藤のヴェールに隠された秘め事に情念の温度を与えていた。 ─── 湿った粘膜と軟体と口液を貪り合う音が、幽けく曇る声と共に、祭祀場に響くのだろう。】
【当て所なく啜る。何処までも飲ませる。そうして互いの想いを全て分かち合う。どこまでも終わらなかった。息苦しくなっても、天上の満月が傾いても、宵闇の輝きさえ何処か遠くに消えてしまっても。】
【温もりと柔らかさの中に少女を囚えて/少女に囚えられて、 ──── ふたりの体温が全く同じになるまで終わる訳がなかった。優しく微笑む青い瞳は、夜露の冷たさに濡つて尚、少女をずっと見つめていた。】


810 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/19(日) 21:43:05 Dnp9kjSw0
>>808


「 ───………… 馬鹿な男。」「己れに理なしと開き直ってしまうのは、さぞ心地いい事でしょうね?」
「気概だけは認めましょう。 ……… 尤も、それだけの傲慢な意志があるのなら、人一人を救うのに何の苦労が有るのかしら。」


【退廃と悲愴に満ちた決意であった。 ──── それでも女は意に介す事もなく笑っていた。月さえも玲瓏に射抜く青を兆した隻眼が、殺意の視線と交錯する。】
【その瞳には凡そ男が愚かに見えるようであった。手前勝手な欲望を旧い女に打つけようとして、それでいて何処までも救われない道を選ぼうとする。】
【ただ独善であるなら構わなかった。ただ不幸を選ぶなら構わなかった。それが双つ重なっている事が、この女にとっては赦し難い罪咎であった。】

【刹那に重なる蹴撃と打撃のクリーンヒット。外皮と筋肉こと骨格の砕ける寸前まで叩き揺らす感覚。これぞ骨肉相食む闘争。脂ぎって純粋な運動エネルギーの報復。】
【然して女も無傷ではなかった。全身義体の生きた人形(サイボーグ)でも、 ─── あれだけの痛打を真面に貰って、平然としていられる道理はない。】
【どれ程に痛覚の遮断を重ねたとしても、現実として損傷した肉体が再生する訳ではない。未だ伝達系に残る麻痺と挫滅した組織の虚無感。だのに、女は頬を緩ませて】


「 ───………… 其んな情けない呻きじゃあ、殺せないわ。」「私も、あの子も。」


【 ──── 肉迫する咆哮を、されど女は紙一重にて見切る。致命的な打撃圏へ入るには、踏込みが数インチばかり足りない。】
【男の判断は正しかった。生体組織に脳だけを残した極めてタフなサイボーグを戦闘不能へ追い込むには、脳震盪による失神を引き起こすのが最も手早い。】
【だがそれは女も弱点として自覚する所であった。 ──── 振り上げられる棍の先端を、女は横薙ぎに振り払うトンファーにて、"弾こう"とするだろう。】
【もしも手緩い振るい方をしていたのなら、男の体勢を崩すには十分すぎる威勢であった。晒された隙に対して容赦のない打ち込みが放たれることは明白であった。】
【されど、 ──── そうでなければ重なる金属質ふたつ、ある種において鍔迫り合いの様相を呈するだろうか。すれば、膂力と技量の拮抗に持ち込む事も可能であろう】


811 : 名無しさん :2018/08/19(日) 22:40:59 7aDx6K9M0
>>809

【ならばきっと机の上は凄惨さえも通り過ぎていっそ清々しいのだろう。毒菓子も花言葉も何もかも一緒くたに食べ散らかしてしまったのなら】
【うんざりしそうなくらいの心の重さは情事の翌朝のけだるさにもきっと似て。だからもうすこしだけ、未練がましく、机についていたって】
【それにそうしていたらもしかしたら冷蔵庫の残りでも出て来るかもしれないんだから。そうして出てきたのは最後の最後のいっとう上等なモノ、】
【あるいはそれこそメインディッシュであるのかもしれなかった。それでいて、胸焼けするようなどぎつい甘未のあとでないと映えぬ味をしていた、きっとだけれど】
【これを真っ先に出されていたらそんなの陳腐だって言ってとびきりの上客だって怒って帰ってしまうのに違いないんだから。だから。だから――――、】

――――あのね、あのねっ……。私の、こと、……たすけて、アリア、さん、……それで、それで――それで、
世界中で、誰より、護ってほしいの。一番最初に助けに来て、それで……。――っ、そしたら、ぎゅうって、抱きしめて……。
それで。それでね、そうしたら……。いっぱい、すきって。言って……。私のこと大好きだっていつも教えてほしいの、それで……――――ん、

【――顔を、視線を誘導されて。大人しく従うのだろう、そうして見やる先に。あの瞬間からずっと見てみたいと願っていた表情がすぐそこにあったなら】
【いっとう鮮やかに澄んだマゼンタの色合いがわずかに見開かれて。慈悲と恋慕と愛情――すなわち相手の表情を写し取ったかのような色合いにて表情を綻ばすのだろう】
【だのにそのくせ口付けは嫌がるんだった。顔をわずかに逸らすみたいにして逃げ惑う。ならばそのさなかに紡ぎゆくのは甘やかな言葉の羅列、――我儘が過ぎるけど】
【そうでもないと自分で自分を納得させてやれないのかもしれなくて。宝物箱から一つ一つ宝物を出して見せてくれる幼子みたいに、保育園の木の下語らう未来予想図みたいに】
【だからいつまでもそんな風に並べていようとして――だけれど最後には捕まってしまうんだろう。それでも相手の口中に直接吐き出す言の葉、そのかたちを辿ってみるなら】

【(あいしてる)】

【なればこそ唇の契りは深く長くなるのだろうし、なるべきであった。そしてそれであれば少女の視線はいつか遥か天井にある蛇の形を撫ぜることだって、あるはずで】
【マゼンタの瞳があんまりに明確に蛇を見つめて――けれどきっと次の刹那には彼女の青色を見つめているのに違いなかった、その美しい青に、紅紫を映しこんだなら】
【世界のどこにもない新しい色合いをこの場に生み出してしまおうとするみたいに。子を孕めない情動を拙く果たすかのように、指先を絡めて、】

【(それでも全く見限ることはきっとまだ出来ない。それはどうしたって思わせた。ただ――、ただ。何より大好きな人を信じてみたいと、この瞬間、あんまりに、思ったから)】
【(この言葉を引き摺り出すまでにかかった時間が彩る少女の顔は、――ほんとうにしあわせそうなんだと、そうやって記すしか、ありえなくって)】


812 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/20(月) 00:59:17 2U2nUkzk0
>>811

【この笑顔を見る為だけに自分は生きて来たのだと理解する。 ─── だいすきなひとの顔をもっと見つめようと開く瞼は、涙に濡れた睫毛を儚げに揺らして、然して存在論よりもずっと確かに生きていた。】
【甘い言葉を紡ぎたがるのを分かっていて、戯れるように追いかけ回す。擽ったそうな貴女が、抱きとめる自分の腕の中、高鳴る鼓動と共に身をよじるのが愛おしい。何れ媚びるように唇を塞がせてくれるなら、】
【 ─── 蠢く熱い呼吸を交わす中、何度も何度も何度も吐き出し合うのだろう。「あいしてる。」「あいしてる。」「あいしてる。」「あいしてる。」時折それは、唾液に濡れた唇の端から、不完全に漏れて】
【腰を抱き締めて抱き上げ、ひしりと指先を絡め合って離さないのは、姫君に忠を尽くす聖騎士のそれであった。 ─── 茫洋たる視線は、何処か夢見心地の作用であると、そう納得して。何より今は見つめ合うから。】

【静謐なる深海から、互いの唾液を呑む音だけを頼りに、いずれ浮かび上がるのだろう。青い瞳には海よりも塩っぱい涙と愛情が満ちていた。 ─── 唇同士から垂れる銀糸を、千切れる前に甘く口付けて、啜り取って】
【相対距離は虚数を示すに違いなかった。やわらかな肢体をふたりで重ねて、しっとりと歪めあって、密着する肌の温度感と潤いと柔らかさは麻薬的だった。それでも更に抱き締めるから/なのに恋人結びは解かずに】


「 ……… ずっと、」「ずっと」「護り抜くわ。 ……… かえでのこと。」「なんにも怖いことなんてないの。 ─── 私の腕の中に、居るんですから。」
「好きよ。」「 ……… 好き。」「大好き。」「好きなの。」「好き、」「好き。」「好きで好きで、」「 ───……… ずうっと、大好き。」「愛してる、 ……… 。」


【なればこそ其れは最後の約束になるのだろうと思わせるのか。錯綜した迂遠な距離感を乗り越えた先、もう破られることのない誓いであると、少なくとも女は信じていた。】
【唾液のひとすじ垂れた少女の首筋へ、唇を寄せる。髪でも服でも隠せない位置に吸い付けるのはキスマーク。貴女は私のもの。そういう徴し。であれば、私は貴女のものって、刻んでほしいに違いなく】


「ねえ、 ─── 。」「ねえ。」「 ……… 覚えてる?」「ふたりだけの、合言葉。」
「も一度ね、」「 ─── も一度、伝えたいの。」「もう、忘れないように。」


【 ──── 唇の先が膚を染めるとき、白銀の天蚕糸が少女の頬を擽るのだろう。嗅ぎ慣れた香りの中に、されど不可知の刹那、どこか垢抜けた蜜の香りは、なにゆえに?】


       ……── 〝はじめまして、こんにちは。もしかして、迷子さん?〟 ──……
               ……── 〝わたしもはぐれてしまったの。ね、一緒に探しましょう?〟 ──……
   ……── 〝あら大変、お膝から血が出ているわ。転んでしまわれたの?〟 ──……
                     ……── 〝うふふっ。ちゃんときれいにしたら、ばんそうこうも貼ったげますから。〟 ──……
  ……── 〝ねえねえ、藤色の迷子さん。あなたのお名前、伺ってもよろしい?〟 ──……
               ……── 〝わたしにもね、お母様とお父様から賜った、素敵な名前があるのです。〟 ──……
     ……── 〝ちょっぴり長くてむつかしいから、まだあなたには、覚えられないかもしれないけれど。〟──……

                   …………──── 〝 わたしのなまえは 〟 ────…………



            「リーリエ。」「リーリエ・クラウディウス=ハインライン・フォン=シュネーグレッヒェン。」



【セピアさえもぼやけてしまった誰そ彼の追憶。】【その時だって誰かを抱き上げた彼女が、両の掌に握っていた。】【一輪の白百合と、一輪の待雪草。】



「 ……… それが、私の、わたしの、」「誰も知らない、ほんとうの名前。」
「かえでとわたしだけが知っている、ふたりだけの合言葉。」「 ─── だから、ね」

「呼んでほしいの。つらいとき。こわいとき。おそろしいとき。」「声に出さなくたっていい。」「 ─── けれど、叫んだっていいの。」「わたしの名前。」
「そうしたら、 ─── いつだってわたし、助けに来るから。」「世界で一番たいせつな貴女のこと、護ってあげられるから、 ……… 。」


【いつしかアリアはまた泣いていた。夢か現かも定かではない何時かの日に、そも少女は誰かと会っていたのだろうか。単なる錯覚と切って捨てることもできるのだろう。】
【だが彼女もまたそうしてきたに違いなかった。蜜姫かえでが/リーリエ・シュネーグレッヒェンが、燃え落ちる我が家を見ながら死んでいったように。 ─── 続く誓いの言葉だけは、今そこにある真実に、他ならず】


813 : 名無しさん :2018/08/20(月) 02:33:50 7aDx6K9M0
>>812

【であればきっとそれは子犬がじゃれ合う温度にも似るのかもしれなかった。拙い鬼ごっこ、それでいて最後にはお腹を見せて、ころころって絡まり合うように】
【だから吐息だって擽ったげでどこかで悪戯ぽい。かすかに浮かぶ笑みは、――きっと赤子が微睡みの中で浮かべるような色合いをしていた、ひどく、無垢なもの】
【母親の腕の中に怖いものだなんて一つだってないって信じているときの温度をしているに違いなかった。怖いのはその母親に落とされることだけ、なら】
【――そんなはずはないって信じられたから。だからもう怖いものなんて何もなかったしどこにもなかった。何にもないはずだった、だから】

【――――――甘い吐息が漏れ出る、砂糖粒がわたあめにほどけるよりも煌びやかな口付けの残滓までもを喰まれるのなら、少女に敵う道理はなく】
【ぎゅうと抱きしめ合って身体をめいっぱいに押し付け合うならやはり服だなんて邪魔でしかないと気づかせた、だから動物は服だなんて着ないんだと思う】
【そんな風になってしまったのがいつかの罪ならきっとこのもどかしさこそが罰に等しくて。もっと触れていたかった、その胸元に埋まるのが好きだった】
【真っ白の間に顔を寄せるのが好きだった、鼓動を探すように片方の耳を谷底に触れさせて乳房に口付けるのが好きだった、だから今だってきっとそうしたくって】
【糖蜜でこさえた深海よりようやく息継ぎの顔を上げるなら、――きっとマゼンタ色はひどくぼおっとしているんだろう、甘い/荒い/けれど限りなく柔い吐息が繰り返され】

――――――、アリアさん、あのね、私ね……、――、

【――やがて上を相手の首筋に回すのだろう、ぎゅうっと繋いだ手ではない方。そうしたならかすかに身体を持ち上げる、その耳朶に唇を寄せて、】
【湿気てしまったわたあめみたいに甘たるく吐息が擽るのだろう。あるいは上手に食べられなくって、ちりちりって、唾液の粒がわたあめの中に落ち込んでいくときみたいに】
【そういう間を/けれどそんなのほんの一瞬で/躊躇いと呼ぶにはあまりに愛撫に似ていたなら、――こつ、と、その側頭部に、額を、優しくぶつける、髪の毛同士を擦りつければ】

――お星さまを、見に行きたいの、冬の、流星群。パパと、ママと、……みんなで、見たの。だから……だから、
頬っぺたが痛いくらいに寒くて……、息が真っ白になって。ココアを買ってもらうの、缶のココア。だけど結局いつも飲まなくって……。
だってお星さまを見てる方が楽しいの……、パパのコートに入れてもらって……。音がするくらいの流れ星が見られたら、その年は、とっても、嬉しくて……。

――――――――――――――――――だから、それまでだっていいの、私を、護って……。

【それはきっと大事な人とだけ共有したい大事な思い出なんだと分からせるようだった、ささめき声はリップノイズ混じりにしても不明瞭すぎるほど、甘くぼやけて】
【心の中に大事に抱き留めていた思い出。きっと何があっても誰にも触れさせなかった部分。――それを一緒に見たかった、そうして今はまだ夏であった、だから】
【護ってもらわねば叶わないってきっと理解してしまっていた。そうじゃなかったら、――――未来は不確かでも、きっと確かなのは、"それだけはありえないから"】

【――だから約束は増やしておく。いつかの自分が忘れてしまおうとしたって、いくつもいくつもの約束にはきっと難儀するだろうから】
【こんな気持ちを棄ててしまおうとする自分への嫌がらせ。そうしてそれはきっと紙一重だと知っていた。ならばせめて眉でも顰めたらいい、――こんなに好きなのに】
【未来にあり得るかもしれない自分への苛立ちはやがて相手の首筋に顔を埋めさせる、――下から見上げたら見える位置だった。いっとう大きな背をした愛しい貴女へ】
【決して自分では見ることの出来ない場所に。けれど貴女よりも小さな背をした誰かであればよく見える場所に。魅せつける場所に。――内出血をひとつ、こさえたなら】


814 : 名無しさん :2018/08/20(月) 02:34:08 7aDx6K9M0



【――――――いつかの日は、けれど、あまりに幼い記憶であった。藤色は変わらずとも、紅紫色は変わらずとも、けれど、変わらぬのは】
【三つ子の魂だなんて言葉もあるくらいであったなら、或いは名残はどこかにあるのかもしれない。それを見出す瞬間があるとしたなら、きっと】

もぅ、――、強そう、……。

【――告げられる真名に一瞬だけぱちりと瞬くような表情。それがきっとおんなじだった。いつかは"むつかしい"のを必死に真似しようとして、結局うまくできなくて】
【そうして今は、――はじめて彼女はその名前を上手に繰り返せるのだろう、囁く声音が、歌うように。その名前を優しく撫ぜるように紡ぐ、だって愛しい人の名前なら】
【きっと表情はひどく嬉しげなもの、長い睫毛は間違っても下を向くなんてありえなくて。だからこそ何もかもが、――何もかもが、これでよかったって、思ってしまいそう】

…………じゃあ。いまは。私……、わたし、ね、つらくも、こわくも、おそろしくも、ないの、……。だからね、アリアさん……。
アリアさんが助けてくれなかったら、私、それより先に自分で死にます――。

【ならば。今は辛いも怖いも恐ろしいも、この場所にはなかった。大好きな人に抱きしめられて。たくさんのキスをして。大好きだって、ささめかれて】
【であれば幸せでないはずがない。ずっと待ちわびた瞬間なのだから、――しあわせだからと但し書きして初めに聞いた名前で相手を呼ぶ、ふわと眦を蕩かすように笑えば】
【――あるいは違和感を覚えるのかもしれなかった。殺すも殺したいも死にたいも殺してと紡いできたのも、彼女は"そう"、その言葉を使ってはこなかったから】
【――――脅すみたいな温度感。けれど文脈によほどおかしなことはなかった。ただの面倒くさい女みたいな口ぶりだった。だけれど?】


815 : ◆zO7JlnSovk :2018/08/20(月) 08:54:54 Q4BPmwJQ0
本スレ>>433

【現実とは斯くに曖昧で、且つ、斯くに現実的だ、とロールシャッハは思う】
【真っ直ぐに相対する二人の男性達は、その実決定的に現実性を欠いている】
【然れども、その意味合いを何処かに委ねるほど曖昧に生きてはいなかった】


より本質的な事を言うのであれば、勝つ必要も無いわけだ──── キミならば、理解しているだろうけどね
結局の所、僕達とキミ達に於いて繰り返されている闘争は、互いの生存権の確立といった俗世間的なものではなく
どちらかと言えば、互いの存在のどちらがより現実的かを論じているに過ぎない

端的に言えば、僕達の存在の内、どちらがより優れた理論かを論じているに過ぎず
その実、現実的な実現可能性も、論理的な後付も必要としない訳さ
言っている意味が分かるだろう? 僕達は無限の論戦の上に存在しているのだから


【曖昧に謳う言葉の意味、拐かす調べだけれども、その実意味を持っている様で】
【ボスならばその大体の意味を解せるだろう、恐らく、この現実に於いてボスだけが】
【彼と私達とが見ている景色について、共有できるのだから】


ジャ=ロは一面的にはその子を管理下に置いている、けれどもそれは、あくまで一面だ
少し矛盾しているかもしれないけど、多面的に解釈した場合、ジャ=ロにとっての泣き所になりうる
僕の推測が正しければ、ジャ=ロにとって "蜜姫かえで" は両方に転んだのかもしれない

──── けれども、此処まで彼が結論を先延ばしにしたのなら、それはもう決したと言って良い
あり得る可能性の一つを、関わりの中で失ったとするのなら──── 残念だろうけどね


【ロールシャッハの思考法は異質であった、それ故にその正当性を辿るのは難しい】
【溜息代わりの逡巡を重ねたなら、ボスの思い当たりに耳を傾ける】


──── さぁ、どうだろうね、解釈の余地を残していたとして、そこは観測者の判断に委ねよう
けれども、確かに付け入る隙はあったのさ、"Der Tod und das Madchen"

──── "死と乙女" だなんて誰が付けたのやら、存外に小賢しいみたいだ

多元的に解釈しようか、"死に至る病" を "病魔" の立場から演繹した場合
それは即ち、彼女の存在が "死に到達しうる病" として再定義する事を意味する

その場合必要なのは、彼女にとっての "絶望" だ、──── 具体的には言わずもがな

次に、額面通り "ジャ=ロにとって死に至る病" として解釈したなら
ジャ=ロにとっての "絶望" を突きつける必要がある、まぁ彼奴にそんな風情があるかは分からないけど
此方は不確定性原理の泥中から出ない、実現的な可能性は──── 五分五分かな

最後に、──── "僕達にとっての死に至る病" として解釈する場合

それは即ち、僕達が認識している自己というものの喪失に他ならない、キルケゴールの言葉を借りるならね
より厳密に言えば、僕とキミ以外の、全てのニンゲン達の自己が損なわれる事が、彼らにとっての絶望であり
それを認知した時、──── 脚本家が脚本を破り捨てる様に、現実を改変できるだろう

──── この場合に於いても大事なのは "絶望" さ、そこにいる観測者が絶望することで突破口は生まれる


【そこまで続けてロールシャッハは、真っ直ぐにボスへと視線を向けた、ひどく抽象的な表現であったが】
【それで十分説明したと言いたげな表情でもあった】


816 : ◆RqRnviRidE :2018/08/20(月) 12:47:00 vZw8nhd20
【風の国──峡谷、下流部。扇状地には幾つもの小型の風力発電機が規則正しく立ち並んでいた】
【吹き下ろす強い風が国特有の魔力を運び、一種のパワースポットとして観光客を呼び寄せているという】
【天気は快晴、気温は高いが湿度は低く。今日もまた設けられた展望台に多くの人間が訪れていた】

【その真下には池のような水溜まりがあった。清流が流れ込むそこは一点の濁りなく透き通っていて】
【その中を魚と一緒に泳ぐ青色の人影を窺わせる──やがて水面に浮かび上がってきたのは】

──────っはあ! 気持ちいいの!

【マリンブルーのロングヘア、ターコイズブルーの瞳――碧海を思わせる風采の、中性的な面立ちの少女】
【濡れ髪を顔に張り付けて、一糸纏わぬ身体を水に曝しながら、気持ち良さそうに目を細めている】
【池の脇には、紺色のワンピースと、鍔広の真っ白なキャペリンハット、グラディエーターサンダルが木に引っ掛けてあった】
【風になんとか耐えながら留まっている衣類からは水が滴っていて、どうやら洗濯後らしいことが窺える】

【展望台からはちょうど死角になる場所ではあったものの、少女は濃厚な“魔力”の気配を纏い、清風と共に流れて溶けていく】
【また、水音に混じって布がバタバタとはためく音が混じる。敏い者であれば違和感に気付くことができるかもしれなかった】


【所変わって、水の国──酒場前。組合の集会所としても利用されているここには、表の出入口前に掲示板が設置されていて】
【ギルド向けの依頼だとか求人といった掲示物が乱雑に貼り付けられており、誰でも自由に閲覧できるようになっていた】
【内容としては、『害獣駆除の依頼』だとか『お仕事ください』だとか、あるいは各国の(日数のかなり経過した)ちょっとした情報であったり】
【果てには『異能者なんて消えちまえ』『ヒトデナシ!!』とかいう、ヘイトスピーチめいた落書きまでもが残されており、一種の無法地帯になっていた】

【……とは言え、真っ昼間である。人通りは疎らで掲示物を読み漁る者がごった返しているわけでは当然なく】
【スーツを着た厳めしい顔の男や、放浪者のような身なりの者など、およそ堅気とは呼びがたい者が数名集まるだけで】
【その中でも特に異彩を放っていたのは──痩身矮躯の子供の姿であった】

──うーん、やっぱり無いかあ。
なんとなく察していたけれど、絵だけじゃあ限界だね……。
文字が読めれば何てことはないんだろうけれど……困ったなあ。

【骨張ったか細い肢体を、サテン地のような光沢のあるレオタード状の衣服で包んだ、漆黒の瞳の少女然とした子供】
【地面を引き摺るほどに長い銀髪は、絹糸のように艶やかできめ細かく、癖とほつれのないストレートが特徴だった】
【頭には、サイズの大きなワインレッドのキャスケット帽をすっぽりと被っている】

【子供は掲示物を眺めながら、腕組みをして困っている様子だった。何かを探しているらしいが、見つめているのは絵や写真ばかり】
【しかも、そのどれもが異形、害獣、化物等の駆除に関する案件で、解決未解決に拘わらずとっくの昔に終わっていそうなものしかない】
【そうして子供は重なっている掲示物を捲るだろう。遥か高い位置にある紙を──『顔横の髪』を触手のように蠢かせて。何ら警戒も抱かぬ様子で──】


817 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/08/20(月) 13:57:53 wrA4ALig0
>>815
【男は自らの口元を指で撫でて、ロールシャッハの言葉を聞いていた】
【生存競争と言うのであれば、言わば世界線同士の争いなのだろう】
【男の本質的な目的にも一致している。"INFオブジェクトを世界から排除する"と言った本来の理由と】

自らの足元を掬いかねないのにどちらに転ぶか分からないから手元に置いておこうと言うのは不確実な話だな。
……そうなっても対処出来るようにしたのか。
もっと悪趣味な使い方を考えているかも知れない。

……あるいは自身がそうであるが故の、ジャ=ロの思考の癖とも言えるね。
ある一面だけを認知し続けさせれば、それが真実に成り得ると言うのは。


【故に、ロールシャッハ同様人間を見誤ることも有り得るのだろう】
【もしかしたら、語り得ないことなのだとしても……その"不死の少女"についてさえも】

【前段は終わり、続いて、死に至る病についての具体的な概要に話は移る】
【男は表情を変えないまま一通りの話を聞いて】

なるほど。

【一言呟く。何か物憂げに思案するようでもあって】
【どう言葉にすべきか迷っているようでもあった】

なるほど……ロールシャッハ。

【男はもう一度呟く。そこでようやく顔を上げて、意を決したようだった】


話が分かりにくい。


【これで十分説明したと言わんばかりのロールシャッハに遂に突っ込むのだった】

私も分かりにくいけど多分、誰が聞いても分かりにくい。
それともわざと分かりにくく言っているのかな?

【先から気になっていることでは有るが、ロールシャッハは男の口に出さないことについて言及している】
【心を読んでいる?それは違う。ならば分かりにくいと感じた男の所感を先んじて理解したはずだ。ならば読んでいるのは"地の文"だろう】


【本来なら、小難しく口先で語る必要はない。そうだろう、ロールシャッハ?】

まあ、能力者達と話す時はもう少し分かりやすく喋ることだね。
仮にも"彼等の味方"を称するのならば。

……話を続けようか。
"絶望"が、虚神を殺す。
いや、そうなるようにスナークを再定義すると言うことかい?
あのスナークがそう易々と利用されるかな?


818 : ◆zO7JlnSovk :2018/08/20(月) 17:04:45 Q4BPmwJQ0
>>817

【──── きょとん、とロールシャッハはその双眸を大きく見開いた、寸刻、その言葉の意味を図りかねて】
【やがて堰を切った様に笑い出す、芝居がかったその所作は、銀幕のスターのそれに近い】
【ひとしきり声を上げて笑い終えたなら、再びソファに深く身をもたれさせて】


──── ああ、その通りだよ。全く以て、キミの言うとおりだ
僕の言葉は "わかりにくい" ────、当然だよ、"観測者" と "個人" とを分けてないのだから
けれども道理には従うべきさ、舞台の上でコメディアンは真剣に演じるからこそ笑いを生むことができる


【キミと同じさ、とロールシャッハは付け加える、彼もまた "第四の壁" を認知している】
【彼の読む "精神" とは、そのものつまり、観測者たる我々の精神に他ならず】
【彼はその情報から逆算して、演者たる "能力者達" の精神をも読み取るのだろう】

【彼にとって "恐怖" の具現化とは、私達にとっての "恐怖" の具現化であり】
【演者にとってのそれが同一化するからこそ、彼は恐怖の体現者としてあれる】
【言ってしまえば、彼の存在そのものが、観測者である我々にとってのインクのシミなのだから】


それを口に出してしまうのは無粋だろう、されど演者は観客と踊る────
僕の認知はキミの認知に他ならず、僕達は同位体としてこの世界に存在しているのだから
補足説明をしようか、先程の "絶望" の例の最後の話について


【──── 仮に、僕とキミ以外の "能力者達" が、自分達の自己というものが、観測者によって作られていると認識したなら】
【それこそまさに絶望に他ならない、自分の考えている全てが、作り出された設定に過ぎないと理解することは】
【けれども "僕達" はそれを口に出す事は出来ない、それはあまりにも陳腐な寸劇に過ぎないのだから】

【故に彼は示唆するに終わった、この "絶望" こそが、真の、キルケゴールの定義する絶望であるが為に】

【彼がそれを仄めかしたのは、せめてもの暗喩であった。限りなく少ない可能性であっても、出鱈目に届きうる為の】
【つまり、観測者である我々が絶望することに、このグランギニョルな催しの突破口があるのだと】
【しかして、それはあまりにも非現実的であると、ロールシャッハも認めざるを得なかった】


──── 利用するのさ、それが "僕達" にできる冴えたやり方だろう?


スナークはニンゲンどころか僕の言うことも聞きやしないだろう、僕に願い事はするのにね
けれども、方法は違えど目的として "ジャ=ロを消滅させたい" という方向性は変わりない

スナークを "絶望" させたなら、彼女の持つ "病" はジャ=ロに届きうる可能性を持つ
だからこそ僕達が目指すのは、その帰結で良い訳さ、彼女を "絶望" させる

続けて話そう、その方法論について、──── 大体目星は付いていると思うけど、
彼女の執着は "ウヌクアルハイ" の主格に於ける "白神 鈴音" へのものだ
逆に彼女は、藁をも縋る想いで、その可能性にかけているとしたら

──── 彼女の目の前で、"ウヌクアルハイ" を殺してしまえば良い


819 : ◆3inMmyYQUs :2018/08/20(月) 19:30:38 GQoYu22s0
>>892


────自由……


【ミラが口にしたその言葉を、青年は咀嚼し直すように小さく呟いた】
【冷たい紫色の缶をじっと握ったまま、遠い水平線を臨むようにミラの姿をしばらく黙して見つめていた】

【粗野に笑って缶ジュースを煽る彼女の姿は、決して品が良いとは言い難かった】
【幼い頃から資産家たちの社交界の中で生きてきた彼にとっては尚更そう映った】
【ましてや、彼女は異形。得体の知れない深海生物の如き触腕を蠢かせる姿は今思っても膚が粟立つ】

【──だというのに】
【彼はその眼を彼女から逸らすことが出来なかった】
【その金色の瞳に、無垢な横顔に、笑む唇に。吸い込まれそうな錯覚を抱いていた】


【美しい、と思った】
【今までに見たどの人間よりも】


【そして同時に】

【 “ ドろり ” ──と】

【青年の腹底から何か青黒いものが湧き上がった】
【それは底の見えぬ深淵の仄暗さに満ちていた一方で、】
【頭の芯をほんの一時赤熱させるような、獣臭い昂ぶりも伴っていた】


(──────…………嗚呼、)


【──歪めてしまいたい、と思った】

【自由で、奔放で、優しさすら帯びた言葉を紡ぐ今の彼女からは想像も付かぬほど、】
【顔を上気させ、素肌に血を浴びて、虐殺の悦楽によがる浅ましい姿を見たいと思った】


【は、ァ──と、生々しい熱を帯びた吐息が漏れた】

【その舌が無意識に蠢いた】
【聞いた者の脳髄を侵す〈詩〉を、この間近でミラへ浴びせてしまおうと身が動き始めていた】


【「──────…………、────────ぁ」】


【──だが、しかし】
【不意にミラと眼が合った──少なくとも青年にはそう感じられた──刹那、】
【その眼差しが電撃のごとく彼の心身を劈いて、はッ、と一瞬呼吸を詰まらせた】


【急激に脳髄の昂ぶりが氷点下まで冷え切って、】
【今、自分が何をしようとしていたかを自覚した】


【──獣欲、獣欲、獣欲】
【今し方美しいと、尊いと思えたものさえ、次の息では平然と貪り喰らおうとしている──】
【思えば思うほど許し難く、逃れようのない悍ましさが彼の胸中を食い破って、全身の膚を這い回った】

【『ハムレット』は思わず苦悶の呟きを漏らし、反射的にミラから一歩後退った】



──────ふざけるな、



/↓


820 : ◆3inMmyYQUs :2018/08/20(月) 19:31:43 GQoYu22s0
>>802

【ぐしゃり。持っていた炭酸飲料の缶が一際強く握り締められ、へこんだ】


────ふざけるな、ふざけるな、
同情か、同情したつもりなのか、この僕に──

──笑わせるな、笑わせるなよ────『化け物』のくせに──!!


【ぶン、と腕を振るい、中身の入ったジュース缶を思い切り横壁へ叩き付けた】
【ぶしゅ、と不細工な音がして、中身の液体が泡立ちながら漏れ出ていく】

【吐息を震わせ、揺らぐ瞳がミラを映す】
【──眼の奥が熱い。頭蓋の中がぐらぐらと掻き乱れていく】
【最早どこまでが芝居なのか、彼自身には分からなくなっていた】


──『正義』じゃないなどと嘯きながら、
まるで甘ったるいこと言いやがって、
それも擬態のつもりか、笑わせる、

【(助けてくれ)】

分かったような口を利きやがって、
お前にいったい僕の、人間の何が分かる、

【(犯してやる)】

──もうじき何処も彼処も戦場になる、
民は暴力を求め始める、血に飢え始める、
狂気と正気が入れ替わるだろう、誰が望むと望まないに関わらず、

あんたもじきに、自分が言っていた言葉を忘れるようになる、
擬態の上っ面が剥がれて、その化け物面に相応しい獣の欲に溺れるさ、

【(君は美しい/なんて醜い)】


──誰が、誰が化け物なんかに誑かされるか、

自分の居場所ぐらい、自分で見つけられる、
自由だ、僕はもう自由なんだ、邪魔はさせない、
誰にも、そう、誰にも────くク、ふ、ふ、ハ、は、ッははハはハはははは──────!!!


【彼の喉が裂けんばかりに震え、絶叫した】
【絶叫しながら、傍らのゴミ袋が積まれた山を引き裂き崩し、道へぶちまけ、】
【木箱の山を蹴り倒し、叩き付け、残骸に変え、ミラと自身を隔てる一線と成した】

【その顔が泣いているのか笑っているのか、彼自身にはもう分からなかった】
【どちらでもあったし、どちらでもなかった】

【彼が幽鬼のようなのか、幽鬼が彼のようなのか、】
【背を湾曲させ、熱い息を弾ませて、乱れた髪が表情を覆う】
【路地奥へ拡がる深い闇を背後に、異様にぎらつく瞳だけが浮かび上がって、ミラを見据えていた】

【そのまま一歩二歩、緩慢に後退ると──急に振り向いて、一目散に駆け出した】

【追わなければ、その身も足音も闇の奥へとそのまま溶けていくだろう】
【何かの振り切れた狂笑の残響だけを、そこに残して】


821 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/08/20(月) 21:10:21 WMHqDivw0
>>818
【ロールシャッハの言葉はなるほど、少しばかり行き過ぎていた】
【故に男は沈黙を返答とする】
【これ以上、この話題を続けるべきではない】
【そのための制約であり、本来ここでロールシャッハと男が語り合うことは、在ってはならないことなのだから】
【理解は及ぶ――恐らく、彼の言の通り、見えているものは同じなのだと考えるべきである】

【しかし、多くの制約に雁字搦めにされている男とは異なり、ロールシャッハは新世界において活動している】
【視点が同じなのだとしても、その存在はまた別のところに在るのだ】
【なれば、"殺される"ことも時にはあるのだろう。彼の存在を正しく理解されたのであれば】

【それでも尚、本来は天敵であるはずの、男の元にこうして姿を見せたことは――】
【慢心か。或いは覚悟の果てかは、定かではないけれど】


【ロールシャッハの示唆に対しても、男は口を噤んだままだ】
【非現実的である点には男も同意するところでは在るし――】
【何より、主役達の埒外のところでつく決着など、面白くも何ともないのだから】



【話は戻る――より現実に即した方法論に】

ジャ=ロも大概に敵を作ったものだ。
人間ばかりではなく、虚神達からも総出で殺しに掛かられているとは。

それでも尚、現状は彼のワンサイドゲームとなっていると言うのは、奴を称賛すべき点かも知れないけどね。


"ウヌクアルハイ" を殺す、か――

先の件を蒸し返すようだけど――何故、新世界よりの末尾で生贄を殺されかけた時、ジャ=ロはあんなにも取り乱したのだろうね。
サーペント・カルトの試みなど、高々数年、数十年の施策だ。
互いに永遠の時を過ごせる存在ならば、もう百年、もう千年掛けて同じことをしたのだとしても、問題はないだろう?

つまり、あの時のジャ=ロの試みの中に、残りのどれ程に時を賭けたとしても再び用意することの出来ない要素が有ったと言うことだ。


822 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/08/20(月) 21:36:05 ZCHlt7mo0
>>810

知った風な口きいてんじゃねぇ……! 理があればこそ、俺はこうしなきゃならねぇんだよッ!
てめぇ……世界の道理が違うって事が、どれだけ恐ろしい事か、まだ全然分かってねぇんだろ!?

――――万が一にでも、可能性があったなら……俺は成し遂げて見せたんだ、絶対に……!
その為の術式だって、やっとの思いで組み上げたんだ……行使の為の仕込みも、もうすぐ完成するはずだったんだ…………ッ
せめて……せめて、『カチューシャ』に留まってさえいれば、あの色ボケ女を掻き消して、元のソニアに戻しても、やれたんだ……ッ!
それも、もう……万に一つも可能性なんて、残っちゃいねぇ!! だから殺して救いをくれてやらなきゃならねぇんだよ!! だからせめて最後に俺がやらなきゃならねぇんだよ!!

――――それが心地良い訳あるかッ、この無責任の糞馬鹿野郎がぁッ!!

【その剛毅な体格、そして先ほどからの棒術のこなし。そこに意識を取られ過ぎると、或いは見過ごしてしまう事実かもしれない】
【だが、この偉丈夫は、本来『魔術師』なのだ。『救い』の為の思考など、とっくに考えていた。そして考え尽くしていた】
【――――乱暴に一言で言ってしまえば、魔術とは「世界の理に干渉する手段」である。しかし、それもまた世界の枠組みの中にあるものに過ぎない】
【その枠から外れた者には、もう理という名のルールは通用しない。「この世界のどんな手段を用いたって、『復元』という高度な操作は成立しない」と、結論せざるをえなかったのだ】
【ならば――――せめて『否定』し『消滅』させてやるしかない。偉丈夫は、彼なりに知識と経験、そして意志を以って組み上げた、そんなロジックの元に身を置いていた】

【――――故にこそ、その結論の救われなさに、己を責め抜き、涙の反吐を吐き散らし、時間をかけて納得させていたのだろう】
【それを外から嘲笑う女に、男は怒りを滾らせる。何が気に入らなかろうが、死ぬ気で選んだ、選ばされた道を、一笑に付しているのだから――――】



(この程度……ッ、なんてことあるか! 想定済みだったじゃねぇか、この程度の苦境は――――!)

【顎への一撃は、確かに脳をシェイクし、その神経を悉く苛んでいた。感覚神経は痛みを律義に受容し、運動神経は機能障害を起こし、全身が脱力感に包まれる】
【――――だからどうした、と、男は瞳を怒らせる。カチューシャと対峙したあの日以来――――私生活のほとんどを犠牲にして、地獄の鍛錬と探求を続けてきた】
【その意志と経験が、即座に男に制動をかける。ここで折れるくらいなら、初めから何もしていない、と】

(――――――――ッ、来た、かかったな……ッ!!)
――――ッづぁりゃああぁぁぁッ!!

【横殴りに弾かれる、下から上への一撃――――これは、男にとって狙い通りの、最高の筋書きだった】
【踏み込みが浅かったのは、目測を誤ったからではない。その一撃が『布石』であったからである】
【横合いに弾かれる棍。当然に体もそれに付随して弾かれる――――偉丈夫は、その勢いをそのまま加速させた。踏みとどまるのではなく、そのまま体を回転させて】

【軸足だけを残し、重心は勢いに乗せて。その場で一回転した男の身体は、再び女へと向かう。その手の棍で、再度の打突を繰り出しながら】
【回転の勢いを乗せた棍は、当然ながらに慣性を伴い、高い威力を誇る。更に、弧を描きながらの点の一撃は、軌道も読みにくくなるだろう】
【そうして抉り込むような一撃を、女の腹部目がけて放つ。ややもすれば内蔵破裂の危険すらある一撃を、躊躇なく――――彼女がサイボーグである事は、露知らず】
【それでも、強烈な一撃である事に変わりはない。空気を歪める様な、中低音の如き風切り音が、響く――――】


823 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/20(月) 21:44:54 Dnp9kjSw0
>>813>>814

【分かち合う荒い呼吸。見つめ合う距離感。 ─── 心震える吐息と共に囁かれるのは、決して忘れられない追憶。貴女にだけ全てを許す聖痕が頸に刻まれたのなら、もう、忘れられなくて】
【増えてゆく約束に少女が込める意味も理解できた。女にそれを咎める権利はなかった。だからこそ背中に指を添えて、そのまま鼓動に指を絡められたら、どんなに素晴らしいかと願ってしまう。】
【 ──── 隠してきたものを自ら晒して慈しまれるのならば、笑顔だってほんとうのものだって解っていた。だから女も笑っていた。探し続けてきた自分の居場所は、此処にあるのだと理解していた。だから】



「 ───………… 悲しい事を、言わないで。」「 …………… 私も、悲しくなってしまうの。」


「ずうっと護るわ。」「ずうっと、助けるの。」「次の冬も、」「その次の冬も」「その次も」「次も」「ずっと、ずうっと、ふたりで ……… 。」
「一緒に観ましょう?」「 ─── いろんな想い出を、そっと愛でたいの。」「かえでと一緒に。」「そうしたら、私」「わたし、 ──── 。」


【其れ迄なんて嫌だった。】【死んでしまうなんて嫌だった。】【やっとふたり≒ひとりになったのに、もう別れてしまうのは嫌だった。】【だから紡ぐのは、優しい呪い】
【もう戻れないと解っていた。もう喪ってしまったと解っていた。もう取り戻せないと解っていた。なのにお互い、過去の郷愁を手放してしまえないのは】
【それが楔であることの何よりの証明なのだろう。決着を付けなければ進んでいけないことの他ならぬ証左なのだろう。 ─── 深い抱擁に少女を収めて、震える鼓動に閉じ込めるのが、何度目かだけ解らなかった。】




「 ………… そろそろ、」「お家に帰りましょう、か?」


【 ─── そしていつか、彼女は囁く。我が子をやさしく連れ帰る母親の声音で/大切な姫君を城まで護り行く騎士の声音で/やっと見つけた片割れに言い聞かす二重人格者の声音で/想い人を我が家に迎え入れる女の声音で。】
【然して少なくとも体面上の姿勢は、御姫様抱っこのそれだった。痩せこけてしまった少女の体重は、かつて負うにも苦労はしなかったのだから、そのまま宙へと浮いてしまうようでもあり】
【それでいて抱き留める肢体の確かさと穏やかな笑顔だけが否応なく実在性を規定していた。ただ護られるのであれば不安も恐怖も絶望も有り得ぬに違いない。 ─── それでも、それでも、それでも】

【いずれにせよ、2人は祭祀場を後にするのだろうか。思い入れのある何処かに寄りたいと願うなら、躊躇わず女は受け入れるのだろう。そうでないというのなら】
【哀れな警官たちの目覚めぬ内に、 ─── 急速に色彩を取り戻し始めた、薄青い熱量の街並みへ身を浸す。黒いクーペの助手席に、しっかと少女を座らせるのだろう。】
【すれば紅いテールランプは夜影の残滓を切り裂いていく。行き先は、終わらない夜。 何処かのタワーマンション。2021号室。ひとつだけのベッド、カーテンを締め切った部屋に、違いなかった】


824 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/20(月) 22:36:23 Dnp9kjSw0
>>822


    「 ────…………ッ 」


【振り払った片腕には然して打撃の痿疾が足りなかった。 ──── 男の狙う所を理解した時には全て遅い。】
【鈍く風を切る回転打撃が真っ向から胴を抉る。堪えられぬ生ぬるい呼気が絞られるように吐き出される。かは、と】
【 ─── それでも未だ、女は立っていた。微かに姿勢を低く構え踏み止まっていた。そも打撃の感覚さえ"真っ当な"ものでない。】
【なにかの軋む音がした。肋骨のあるべき場所に金属質の抵抗があった。 ─── 振り乱された白銀の髪が、隠した半面を顕にする】


      ( ……… 何本か折れた、か)


【絹地のような白肌とは凡そ対照的な、醜く焼け爛れた火傷の痕。対になる青い瞳が収まっているべき場所に坐するのは、無機質な複眼の光学素子。】
【金色の輝きが細められる。数値化できない憎しみを定義して、忌々しげに言葉を吐き出す。彼女もまた、"ひとでなし"だから。】


「 ………ええそうね道理は違うわ。 ─── 然してならば、希望もあるでしょう。」
「貴方の見る世界が行き詰るとして、彼女の見る世界が行き詰る訳ではない。」
「出鱈目な神様の道理さえも解さずに、出鱈目な神様を如何とするのかしら?」「 ……… とんだ御笑い種ね。」


【腹部より真っ向から受け止めた棍を、 ─── いなし損ねたトンファーを棄てた片手が、掴もうとする。】


    「"貴方は彼女を何も知らない"。」「 ──── 神様を殺したいのなら、神様の道理を解することよ。」
    「でなければ、 ─── 全て失うぞ、魔術師。」「友も愛憎も復讐の機も。」


【 ─── 鋒を引き揚げるのが遅れたのなら、揮われるのは尋常ならざる膂力。深く踏み込まれた瀝青の地面が、岩のような悲鳴を上げて罅割れる。】
【"男ごと"横薙ぎに振り回し、手離して、ベンチの角へと叩き付けようとしていた。凡そ真っ当な人間の戦い方ではなかった。余りにも粗雑な殺意に満ちていた。】


825 : 名無しさん :2018/08/20(月) 22:40:45 4DlW68cw0
>>823

【だけれど、それはきっとまた確信でもあった。"それまで"護ってもらえたなら、その日を超えることが出来たなら、】
【そうしたら――そしたらきっと彼女は"目覚める"ことが出来るのだと思わせた。だってここは悪夢の中だった、母も父も弟も犬までも死んで、独り取り残された夢】
【それは悪夢なのだと言い聞かすために身を浸していた場所すらも夢中夢に過ぎなかった。ならば今度こそ目覚めたかった、――独りじゃないって思いたくて】
【だのに自分と居たら誰しも不幸になるんだと、死んでしまうんだと思い込んでしまったなら、――その呪いを溶かしきるには、まだ少し、足りないと理解させる】

【それは決してアリアの気持ちが足りないんじゃなくて。――それですぐに割り切れる子だったなら、そもそもこんな場所まで、来てしまわなかったのだろうから】
【進んでしまっただけ戻るのに時間がかかるのは道理であった、やってしまっただけやったことが惜しくなるのもまた然り。だから、これは、儀式にも似て】
【倒錯しきった間柄であるのなら、それだけ複雑な手順が必要なのも仕方ないのかもしれなかった。二人っきりの世界で迷子になって、地図はあてにならなくて、だけども】
【いくつも重ねた約束がいつかきっと道標になってくれるって信じたかった。なれば今は離れてしまわないでと他人事のように祈り手を繋ぐのが、最も尊いのだろう】

――――――――――――ううん、無理やり、連れて行って……。

【泣いてしまいそうなの、と、ささめいて。少女は相手の首筋に顔を埋めるのだろう、口付けるでも行儀よく並んだ歯型を刻むでもなくて、ただ、縋り付くように】
【白銀のヴェールで世界が見えなくなってしまうように。――思い入れだなんて尋ねられたらきっと動けなくなってしまうんだった、この場所は、今でも、大好きだから】
【そのくせに持ち出したいものは何にもなかった。自分の部屋にそれだけの価値があると思えるものは決してなくって。誰かがそこに居た証を持ちだすには、遠慮がちすぎて】
【ならば全部は左手の蛇だけで事足りた。――ゆえに少女はただただ悪い狼がするみたいに、ただ、ただ、有無を言わさずに連れ去ってほしい、と、乞うのだろう】
【――そうしたらそれはきっと彼女にとって救いの一つなんだった。自分の脚でここを出るのは辛すぎて。言い訳がほしかった、――けれど、一緒に行きたかったなら】

……アリアさん。私ね。誰も殺さなかったんです。アリアさんが来てくれるって、分かっていたから…………。

【――――褒めて、って、ねだるみたいに。首筋に頬を寄せて囁くのだろう。だからそれは答え合わせだった、――もしも、アリアの到着が、三分遅れていたとして】
【そうしたらそこに出来上がっていたのは間違いなく屍の山であるのに違いなかった。もしもそうだったなら、少女はきっと二度と人間の世界に戻ろうとは、しなかった】
【だからやっぱり死ぬ気なんてなかったんだろう。各方面に多大なる迷惑をかけて二桁に近い怪我人を出して、ただ、大好きな人を、信じようとしただけだった】

【――だから、きっと、"無理やり"連れ去られる、その時に。少女は小さな声を上げる、思い入れも未練も置いてくって決めたけど、けれど、】
【――――――だのに、聞き返したとしても、何も答えやしないんだった。ふるふると首を揺らしてなんでもないって答えるに違いなかった、だって、】

【(やばくなったら使えと言って渡された銃だった。だから、もう、ここに置いて行ってもいいと思った。だって。護ってくれるのだから。助けて、くれるのだから)】

【ゆえに、――少女はそれ以降何一つ拒まないだろう。だって抵抗できないぐらいに、無理繰り、連れ去られてゆくんだから】
【"そういうこと"にしているんだから。――神様とやる相撲ときっとおんなじだった、時としてデキレースだなんて呼んでしまいたくなるのは人間の性でも】
【やがて据え置かれた車の中で寝息を立ててしまう少女を見たならどうでもよくなってしまうのかもしれなかった、――いつもとおんなじ、寝顔ばかりがいやにあどけなくて】
【食べていないならあまり寝てもいないのかもしれなかった、と、思わせて――ゆえに到底連れ去られるお姫様の様相では、決してないのだけれども】


826 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/20(月) 23:19:11 Dnp9kjSw0
>>825

【 ──── 女もまた、悪夢の中を彷徨う哀れな少女に過ぎなかった。想い人の事は誰よりも良く解っていた。】
【機械の体である事を言い訳に/自分が生きてしまったことを認められず/それらしい存在論で武装して/今日までずっと、自分を認められずにいた。】
【だから願っていたい約束は女にもあった。 ─── 然してそれを口にしてしまうには、女は無力すぎた。マスケットの銃口を向けられたプレートアーマーが全く無価値な様に】
【ずっと護ると約束して、それでいて守れないかもしれないと、心のどこかで思ってしまっていた。故にこそ今からまた約束してしまうのは、この子を喪ってしまった時を思えば、余りに辛いことで】
【それでも道標があると信じずにはいられなかった。 ──── だから"今夜"も求めるのだろう。カーテンを締め切った真っ暗な部屋で、ふたりだけの闇の中で、刻み合うように。】


「 ────………… 偉いわね。」「かえでは、とっても。」
「世界でいちばん偉くて、優しくて、素敵な、わたしの自慢の子 ──── 。」


【解り切っていた事さえ今気付いたかのように褒めてやる。 ─── 無理矢理に連れていってほしいと願われたら、拒む理由なんてあるわけがなくて】
【なればこそ尋ねる事はしなかった。尋ねられたら言葉に詰まる感情を理解していた。それに始末を付けたいのなら今でなくとも良かった。付けられないのなら墓まで持っていけばいい。】
【であれば何処かに行ってしまった45口径の行く先については、ずっと後に気付く事になるのだろう。それでもきっと構いやしなかった。銃の扱い方なんて知った所で幸せになんかなれない。】
【 ──── ずっと、そう思っていた。けれど大切な人を護れるのなら、引き絞る銃爪にも意味があるのかもしれない。初めて自分を認めてやれるのかもしれない。この十数年間は夢ではないと認められるかもしれない。】
【夜明けを走る黒いランチア・ストラトスの、然し運転はごく丁寧だった。 ──── その表情まで、守りたかったから。屹と隠せない感情が現れているのだろうと思わせた。少女の本質はそれであるのだと思わせた。】
【マンションの地下駐車場に車を停めて、開いたドアから起こさないように抱き上げて、エレベーターに乗る足取りさえも夢心地で、されどこれは夢ではなくて】

【 ──── 2021号室のオートロックを解除する頃には、もう夜明けは程近いのだろう。それでも夜が欲しかった。人狼は、夜でなくては生きられないから。】
【誰もいない部屋に踏み込んで、空調の効いた冷たい室温に身を晒して、ベッドに少女をそっと寝かせて、 ─── そうすれば、お風呂を沸かしてやるのだろう。きっと疲れているのだろうから。】
【ご飯の準備もしてやるのだろう。きっとお腹を空かせているから。脱いだ洋服を洗ってやるのだろう、きっと良い匂いが好きな子だから。けれども、しかして、わたしの名前を呼んでくれるなら、いつだって。】


827 : ◆DqFTH.xnGs :2018/08/20(月) 23:46:35 qj/0gaqk0
>>819

【────じじ。自動販売機の灯りに惹かれて、羽虫が喚いていた。その音が聞こえる程に】
【僅かな間、沈黙があった。「どうした」──そう言おうとして】
【鈍い言葉が、投げつけられた。化け物。化け物。────化け物】


【時が止まったようだった】
【なにかを告げようとした口が、そのまま固まっていた】
【『化け物か、そうか』──金の目が、そう言っているようだった】
【或いは、光の加減がそう見せていただけかもしれない】


────ぎゃは。化け物にだって、情くらいはあるさ

…………ったく。どいつも、こいつも──見てくればっか見やがる

変わんねぇだろ…………ヒトも、バケモノも、カミだって

やりたいこともある。したくねぇことだってあるし──
好きなヤツがいりゃ、気にくわねぇ、ぶっ殺してぇヤツだっている
そういうのに……“ガワ”なんて関係ねぇと思うんだけど、よぉ…………ッッ!?


【ざン────ゴミが、木片が辺りにブチまけられる】
【踏み出そうとした一歩が、躊躇われた。だがそれも一瞬だった】
【ち、と舌打ち。ぐしゃり──足元に投げ出されたゴミを、ゆっくりと踏み潰す】

【赤い靴下が汚れていく。そういえばあのマンションに、靴を忘れてきた】
【魔法はいつかの12時で解けてしまうのだろうか。(は──解けると、いいなッ!)】


いいか…………いいかクソガキ!!てめぇの魔法を解くのも、解かねぇのも────

全部はてめぇ次第だ!!魔法なのか呪いなのかはしらねぇが…………!!

待つだけじゃ、魔法使いはやってこねぇぞ!!お伽話の世界じゃねぇんだ!!

てめぇが────全部、全部…………あぁ、クッッッソ!!!


【走り出す。駆け出す青年を追って】
【散らばった生ゴミや空き缶を蹴り飛ばす。崩れた木箱で腕を強かに打つ】
【ぬるりとした小分けの袋を踏み付け、滑った。ずだんと無様に転ぶ】
【それでも目だけは、青年を追いかけていた】
【あの捨て子のような表情の彼を平気で捨て置けるほど、彼女は薄情にはなりきれていなかった】


────風ッッ!!風の国に行けッッッッ!!!

ユナイテッド・トリガーだ!!そこにいる探偵を頼れ!!ロッソだ!!!
くたびれたボロい見た目の探偵だが信用できる!!

探偵がいなきゃ──ゾーイってヤツに聞け!!
あたしの紹介だっていや、ぜってぇ通る!!

クソガキ────いいか、ひとりになるんじゃねぇぞ!
自由ってぇのは…………誰かがいてこそのモンだからよ────ッッ!!


【この叫びは届くのだろうか。届いたとして】
【青年が受け入れてくれるかは、もうミラには分からなかった】
【だが──多分、あの探偵の元に青年が辿り着けば】
【今より幾分かは安心できた。なんといっても、彼は愛とか自由だとかの信者なのだから】

【やがて──青年の置いていった狂い笑いが風に溶けて消える】
【そうなってなお、ミラは転んだ姿勢のままだった。ごろりと、仰向けになる】
【コンクリートジャングルの隙間から見える夜空は、呆気ないほどに真っ暗だった】
【「あーあ、クソ」半笑いで携帯端末を取り出す。人助けは趣味じゃないが、最近は】
【しょっちゅうこんなことをしている気がする。痛い目を見るまでがセットで】
【「ま、いいんだけどよ」──そう呟いて、メールを打ち始めるのだ。『よう、ロッソ。元気か』】


/こんな感じですかね。長い間お疲れ様でした、ありがとうございましたー!


828 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/08/20(月) 23:53:54 ZCHlt7mo0
>>824

(決まっ――――ッ!? なんだ……!?)

【放った突きは、完全に敵の身体を捉えた。胴にこれだけのクリーンヒットが入れば、勝負は決まったようなものだ】
【尋常ならば、これだけの一撃が決まれば、もう戦闘態勢を維持できるはずもない――――だが、違和感が彼の神経を粟立たせた】
【跳ね返ってきたのは、肉を打ち据えたとは到底思えない、重い感触。まるで、鉄筋にでも打ち付けた様な震えが、棍を通じて返ってくる】
【そんな鎧じみたものを、身に纏っている様には見えないのだが――――振り乱された髪の奥、それを目の当たりにしてようやく、彼は事情を了解する】

っ、てめぇも……サイボーグ……!?

【眼窩に据えられた、複眼状のカメラ。そして既に古いものと見て取れる、爛れ切った火傷の痕。先ほどの手ごたえと相まって、偉丈夫はそれをようやく知る】
【どういった事情があったものかは知らないが、女は生身の人間ではない。人工的に強化を施された存在なのだ、と】

っ、しま――――――――ッ

【一瞬、動きが止まっていた――――違和感は、その原因を知る事を強制してくる。それを放置していてば、致命的な敗因へと昇華する事があるからだ】
【相手の正体を知り、ならばこのままダウンするまで連撃を加えようと、更なる力を籠めようとした。だが、一瞬の隙が、この場面における明暗を分けた形となる】
【棍を、掴まれる。このまま相手に確保させる訳にはいかないと、引き戻そうとして――――振るわれるのは、男の身体ごと吹き飛ばす力】
【棍と合わせれば100㎏近い重量を振り回し、放り投げる。相手がサイボーグである事を知らなければ、現実離れした光景としか思えない、木っ端の様に吹き飛ばされる姿】

ぐっ――――――――――――――――ッッ!!

【バキッと、確かに骨の砕ける音がした。ベンチに叩きつけられた男の身体が、ズルズルと地面に頽れる】
【本当に極まった苦痛を受けた時には、絶息し、悲鳴などほとんど口にできない――――男の右肩が、曲がってはならない方向に曲がっていた】
【骨格を折りたたむように、肩が胸の正面近くにまで折れ曲がる。体内にも、派手な破壊が響いているのだろう。目から、鼻から、口から、ダラダラと血があふれ出る】
【地面に崩れ落ちたまま、ギクン、ギクンと身体が痙攣する。もはや、男の状態は危険域とすら言える、重篤な一撃となったのだろう】

ご、ぶッ……げっはァッ!! っ……空虚な、概念遊びに、付き合うつもりは……ねぇ……ッ、知ったような口で、いい加減な事ばかり、抜かしやがって…………ッ、っ……
……命が惜しくないなら、来いよ……その空っぽな、口を塞いで……ッ……殺してでも邪魔ぁさせねぇからよ――――――――!!

【吐き気が、胃液と血液の混合物を、偉丈夫の口からまき散らさせる。ヨロヨロと立ち上がるその姿は、もはや幽鬼と大差ない】
【無事だった左手で、かろうじて棍を保持しながら――――血の涙を流す瞳で、真っ直ぐに女を睨みつける】
【もはや、重心バランスの釣り合う棍の中央部分を、片手で持つしかない。そして重量バランスを釣り合わせるという事は、スイングの勢いを作れないという事で】
【もはや武器としての棍の扱いは、破綻したと言って良いだろう。それでいて、偉丈夫の、血に濁った瞳は、未だに殺意を手放してはいなかった】

【――――この期に及んで、彼我の戦力差と被害の状況を理解した上で、男はなおも『本気』だった。魔術に手段を切り替える事も、諦めに身を委ねる事もせずに――――】


829 : 名無しさん :2018/08/21(火) 00:03:40 PYq7bHtM0
>>807
「結局は彼も完全には忘れて無い、って事か――……ったく、本当にややこしい事ばかり引き起こすんだから
だからと言って、それを呼び戻すのも一苦労しそうだ。キミがまた共有するなり、思い出させるなりしてくれれば楽なんだけど

――そんな事が出来るなら、とっくにしているだろうしね。それか、そうしちゃうと都合が悪いのかな
直ぐに思い出させる事が出来るか分からないし、そもそも思い出すのかも分からないから何だって良いけどさ」

【元がまだ残って居るからこそ、アンドレアもダグラスの記憶を共有できている。分からない話では無い】
【とは言え、亡者の様な“父君”をそのままにしているのか、アンドレアにもどうにも出来ないのか】
【答えは分からないが、そう重要な事では無い――と割り切って】

【それよりも、続く言葉に対しては興味深そうに聞いていた】
【連れ出す、と言う事は恐らくは現実世界へと連れて行ける事。但し、最初にルーナと会った際にもしも彼にとって“月”であったらという懸念】
【仮に外の世界へ連れ出せたとしたら、ダグラスに何らかの影響はあるだろうと考えては居たが。アンドレアの言葉からして、少なからず何らかの影響を受ける事は確か】
【――だからと言って、それで考えが大きく変わる事も無く】

「表面上だけでも何でも、もう忘れられちゃってるんだ。別に、また思い出す方法があるなら良いけど
……この世界の均衡か何か分からないけど、ルーナが月なら太陽でもあるのかな?
キミの言う均衡とやらがこの世界だけの話なら、ボクには関係の無い話さ

――それに、誘拐していく訳じゃ無い。幾らボクだってそんなに悪人じゃ無いつもりだよ
ルーナが外を見たいというなら連れて行ってあげるし、ココが良いと言うならそのままにしておく
何がどうなるか何て、実際にやってみなきゃ分からない事なんだからね」

【何が起きるのか、それはこの修道女には分からない事。だから、なる様になれ――と】
【自暴自棄にも思えるが、結局は何時も通り】
【背に居る女性の不安げな視線に気付くと、頭をぽんぽんと二度三度適当に撫でてやり】
【――大体の事は理解出来た。だが、最後に一つだけ残っている事がある】
【このまま散歩を続けても良いのだが……この世界から出る方法も理解して居なければ、延々と続けるハメになる】

「……大まかな事は分かったけど、此処から帰りたくなったらどうすれば良いのさ
ずっとダグラスの精神世界に居るって言うのも気持ち悪くなってきそうだから、出られる方法くらいは知っておきたいけど

――此処に来られたんだから、出る事だって出来るでしょ?」

【故に、話すか否かは別として問うたのは此処から出る手段の事だろう】
【もしも答えが無いのならば、ルーナの手を引いてそのまま進もうとして】


830 : 名無しさん :2018/08/21(火) 00:04:42 4DlW68cw0
>>826

【――世界で一番大好きな人に褒めてもらったなら。少女はひどく幼く笑うんだった。けれどもその表情は相手に見えない位置ゆえに、その予感だけをさせて】
【ならばきっとひどく和らいでいるって確信させるようでもあった、――相手の服の布地をきゅうと掴む指先は不安からではなく、ただ、大好きなのだから】
【相手の歩幅のたびにぴこぴこ揺れる脱力しきった爪先がその証拠に違いなかった。だからやっぱり無理やりなんて温度じゃなくって、だのに/だけど/そうじゃないといけない】

【だからやっぱりその道中で眠ってしまうのは限りなく自然なのだろう。背もたれに身体をめいっぱい委ねて、シートベルトが豊かな胸元を無遠慮に分断して】
【それでもちょっとだけお尻が滑ってしまったみたいに頭の位置がこぶし一つくらいは本来そうある位置より低くって、投げ出した足は真っ白で、放っておかれた両手は無抵抗で】
【瞳の鮮やかさが透けてしまいそうに白い瞼は――丁寧さへのご褒美みたいに、途中で開かれることはないのだろう。であれば信号待ちの時にでも眺めていたらよかった】
【やわやわと繰り返される深い吐息。いつかを思い出すことがあるのなら、少女は、相手と初めて会った時に、その前で眠らなかった。――起きるまで、はさておいて】
【殺されかけて初めて寝顔を見せたんだった。それだって傷が持つ熱と痛みに呻いて魘されるようなものだった。いくつか出会いを重ねて、そして、いまは】
【――――相手の運転する車ですやすやと寝息を立てているんだから、変というしかないのだろう、運命を決める神様が居たとして、そしたらそいつは、多分、泥酔している】

【(ならば神様だなんてほっておいていいに違いなかった。だって酔っ払いの妄言に付き合ってやるほど、生きてる人間はあっという間に、命を走り抜けるんだから)】

【そしてやがて目覚めるなら、――少女はアリアの用意したお湯を浴びて、アリアの用意したご飯を食べて、そうして洗ってもらった服を、着るのだろう】
【けれど/ゆえに/だからこそ、――その違和感はどうしてもひどく浮きだって見えた。目覚めた少女は、ふとした時に、変わらぬ語調で、声音で、表情で、ふと死を過ぎらす】
【見咎められることがあるならより顕著だった。――彼女自身はその言動に違和感を感じていなかった。自覚もないようだった。そうして、また、ふとした時に】

【――――――――「死にます」、って、口にして】

【――けれどそれは心が不安定なのかもしれなかった。きちんと正しい手順を踏み切らないままで、連れ去られてしまったから、辛いのかもしれなかった】
【何より本当にそうであるかのようなふるまいもするのだろう。夜中にふとぱちりと目を開けてしまって、小さく声を押し殺して泣くことだって、きっとあるなら】
【ふと何もない誰もいないベッドサイドに"誰か"見えたみたいに振り返ったり、少しだけ開いたドアをわざわざ立ち上がってまで閉じに行ったり、そういう行動があったなら】
【"いつか"の写しなのかもしれなかった。不安がってアリアに追いすがる。一人になる場面を怖がる。――だから何が怖いのかは、きっと、すぐに分かるんだろうし】
【彼女が繰り返して自覚なく繰り返す言葉を思い返すのなら、――きっと同じ名前を思い浮かべることが出来る。だって私たち、なんだって、知っているんだから】

【ケバルライ/ジャ=ロ。――今までの彼女はそんな振る舞いをしなかった。この数日の間に彼女に"何か"あったのはすぐに分かることだった。ゆえに、】

…………――――――。

【窓際にてふっと足を止めた少女が高い高い高い場所より地面を見下ろすその意味を、早く辿らないと、約束なんてあっさりと反故になるんだって、予感させて】

/おつかれさまでした……でしょうかっ


831 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/21(火) 00:21:54 Dnp9kjSw0
>>828


「 ─── 私が、貴方よりも彼らを知悉しているは、紛れもない事実よ。」
「あの子と貴方がどういう関係だったかは知らないけれど、 ─── 貴方の愛した女が、もはや"あの子"ではないと、そう思うなら」


【あくまで冷然と女は告げた。 ─── 致命の一撃を叩き込んだことさえ意にも介していないようだった。人殺しの目だった。】
【然して最早、殺意はないようだった。友人を侮辱された事に対する落とし前は一先ず付けてしまえたから。】
【 ─── もう一つの旋棍を投げ捨てる右手が、端的な態度の現れだった。白い唇が紡ぐのは、忠言にしか成り得ない。】


「であれば"あの子"を殺すには、虚ろの神の道理というものを知る必要がある。」「 ……… 違うかしら。」
「断言しましょう貴方は敗れるわ。」「虚ろの神に敗れるわ。」「無為に無様に無情に敗れるわ。」「私も敗れたのですから。」

「 ──── 大切なひとを冒涜され、蹂躙され、相棒を殺す片棒まで担がされ、世界を亡ぼすよう仕向けられ」
「その果てに復讐と訣別の機会さえも奪われて、塵芥のように散らされるならば、 ──── 余りにもそれは無念でしょう?」


【突き付けるのはアジテーション。機械人形の本懐。端的な事実だけを然し扇情的な文法で列挙する論理回路。】
【神の道理を知らぬお前が、どうして神に勝てる筈があろうか。 ─── 事ここに至っては、もはや男が"あの子"を如何しようが、女の与り知らぬ所である。】
【ただ憐れみと自己嫌悪を共に添えて警句を綴っていた。それは自分自身に言い聞かせているようでもあった。彼女もまた神に抗するちっぽけな現世の塵であったから。】


「ほんとうに貴方が、あの子に慈悲を与えたいと願うなら」「 ─── 私の話を聞け、魔術師。"お前の願いを達する為に"。」


【然るに、それは最後の警告なのだろう。 ──── これで聞き入れぬのであれば、それ以上は無意味であるに違いなかった。男にとっても、女にとっても。】


832 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/21(火) 00:54:29 Dnp9kjSw0
>>830

【どこまでも女は甲斐甲斐しかった。 ─── それこそ一人娘を溺愛する母親の姿に似ていた。少女が何の気苦労もないように、と。】
【テレビはずっと電源を落とされていた。だから少女には無関係な事実であったろうけれど、報道番組は暫く特番に浮いていた。】
【「蛇教幹部 残党1名が射殺」 ──── 少女の末路は、世間にはそのように伝えられたらしい。何もしていない筈の警官は、どこか誇らしげに自身の手柄を語っていた。】
【少女は再び死んでしまったに違いなかった。アリアは彼女を殺したに違いなかった。それで全てが終わる筈に違いなかった。そう思いたかった。然して現実は無情である。】


「 ………… 死んだら、いやよ。」


【それが単なる郷愁の残渣でないと気付いた時、 ──── 縋るようにアリアは少女を抱き締めるのだろう。だって、彼女には殺せないから。殺したくないから。】
【日毎に大気が淀むうち、いずれ少女を部屋に閉じ込めてしまうのだろう。締め切った扉にも窓にも何もかもに鍵をかけて、ついには少女に手錠までかけてしまうだろうか。】
【 ──── であれば、離れられなくなるのだろう。ずっと側にいるようになる。日がな少女をベッドの上で抱き締めるようになる。一瞬たりとも視線を離さなくなる。】
【然るに求める時間が増えるのだろう。自分だけを見てほしいから。ひどく執拗な行為は夜も朝もなく続く。失神さえも許さずに、暗い感情を皆んな掻き出してしまうように、けれどそんな事は叶わないって分かっていて】
【だから漸く意識を手放せた少女の隣、 ─── 鬱々とした横顔で、自身の得物をオーバーホールする。薬室に弾を込めて、スライドを引いて、照星の先、こんなもので殺せやしないと分かっていても狙うのは】





      「 ───── 殺してやる。」





【 ──── 地獄の復讐が我が心に煮え繰りかえる。死と絶望が我が身を焼き尽くす。お前がザラストロに死の苦しみを与えないならば、そうお前は最早私の娘ではない。そんな事は、言えないから】


/おつかれさまでした&ありがとうございました!


833 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/21(火) 01:35:29 A..KoQTI0
>>816


【 ──── 銃声が、一発。池の直ぐ側、木立の中より。】


【鳥の群れが深緑から一斉に飛び立っていく。悲鳴は響かなかった。誰かに当たった訳ではないのだろうか。】
【それでも暫くすれば、梢を吹き抜ける涼やかな風が安寧を運んできて ─── 然してそれを引き裂くように、再び銃声が響く。】
【3発。4発。5発。金属質の擦れ合う音。「 ……… よし。」満足げな呟き。がさごそ、がさごそ、近くの茂みが揺れる。】

【 ─── ひょこり。顔を見せるのは、1人の若い少女。木漏れ日のヴェールに翳る端正な顔は、どこか誇らしそうに頬緩めていて】
【くすんだ金髪を隠す野球帽を、華奢な手指の先で少しばかり直す。割合に本格的なトレッキングスタイル。それでも足元はスニーカーであり】
【そして背中には、─── 少女にしてはやや高い背丈と比べても尚、持て余してしまうような長さのライフル。ニス塗りにした胡桃のフレームが、上品な艶を醸し出していた。】

【おもむろに少女は前を見る。 ──── 視線は合うのだろうか。そうなれば一瞬だけ彼女は沈黙する。青く澄んだ両目をこれでもかと見開いて、暫しの膠着。そして】



      「 ────………… うわあぁあぁっ!?」


【 ──── およそ誰かが居るだなんて、思い付きもしなかった、らしい。凛としているであろう声が素っ頓狂に喚く。腰を抜かしてへたり込む。】
【ついでに両手も上げてしまう。言われる前にホールドアップ。 ──── 差し当たり、敵意はないようだけれども】

/よろしければ!


834 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/21(火) 01:35:38 WMHqDivw0
【――――――起きた途端、少女は“冒涜者”に「じゃ、あんがと。またね」とだけ言い残して、教会を出た。】

【なんだその無礼さは、死力を尽くして助けてやったと言うのに。そう言いたげな顔を――していなかった、冒涜者は】
【平気なのかって訊かれたら「いつものことだし。あの子僕のことめっちゃ嫌いなんだよね」とか返して、適当に手を振って、おわかれ】
【慣れたとかそういう問題じゃないくらい、呼吸するみたいに当たり前。そういう態度をとられるの。そういう間柄らしい、彼女らは】
【それで少女は、別れの挨拶もそこそこに。自分の荷物を纏めてさっさと極寒の国を出ていくんだった、そして、また】
【当たり前みたいにエーノに訊く。「おうち、どこ? 居候させてもらってもいい?」 ――嫌って言われないのわかってて、訊いてくる】

【――――――、】

【エーノの家に着いてからの少女の状態は、お世辞にもいいものとは言えなかった。後遺症ばかり引き摺って】
【ふとした瞬間怖いと言って泣き始める。痛いと言って蹲る。過呼吸を起こす。眠れば魘される。そんなことばっかり】
【そんな感じだから四六時中エーノにべったりくっついて、ぐずぐず泣いているんだろう。下手したら寝るときはおろか、】
【お風呂に入るのも一人じゃ怖いとか言い出しそうな空気を纏っていた。実際言い出すにはまだ恥じらう気持ちがあったらしくて】
【なんとか我慢していたけど――それでも、「絶対そこに居てね」とか言って、脱衣所の外で待たせるとか、やらせる】
【とにかくやりたい放題やっていた。けれどこれくらいで済んだのは奇跡だったのかもしれない。……それくらい、死んでたから】

【――――――、】

【……風呂上がり。赤い髪はドライヤーのかけ方が中途半端で、微妙に湿っていた。こういうことするから髪が傷むのに】
【そういう細かいところ、気にしない性質らしかった。そんな感じで服装もめちゃくちゃ適当、オーバーサイズのTシャツと】
【ホットパンツ履いたらそれで終わり。たぶん下着は下だけ、上は着けなくても構わないようなサイズ感だったし】
【とりあえずそんな恰好で、行う作業は――荷物の整理。持ってきたものたちをひとつひとつ手に取って確認して、】

……………………。

【――――――アクセサリー類をまとめたポーチに手が伸びた時点で、その動きが止まった。それを持ち上げれば】
【中で硬いもの同士がかちゃかちゃ擦れ合う音がした。それなりにたくさん詰まっていた。彼女の思い出たち】
【それで――――ぐう、と喉を鳴らして。俯いてしまうのだった、それから渋々とファスナーに、指をかけて、中身を出そうとして】


//よやくのやつです


835 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/21(火) 02:08:47 A..KoQTI0
>>834

【然るに少女の背中を追うのは当然の成り行きであった。「 ─── この度は、本当にありがとう。お世話になった。何かあったら、絶対に力になるから。」】
【別れの挨拶はごく丁寧である。濡羽色の頭を深々と下げて、 ─── 何処かの誰かに届けさせた御礼の品、ダージリンのリキュールを一瓶、置いて行く。】
【少女と創造主の関係について深く踏み込む事はなかった。今すぐに知る必要はなかった。であれば、あっさりとした別れの挨拶も一瞥するのみで】
【荷物を纏め終えれば、教会の側に停めさせておいた深緑の旧いポルシェ、その助手席に少女を乗せる。口にして望まれるよりも先に。そのくらいはできた。】
【「水の国。あのネカフェ、住み込みでやってんだ。」 ──── アクセルを踏めば、水平対向エンジンが静かに唸り始める。降り積もった雪をワイパーが拭っていく。】
【2人きりのドライブと呼ぶにはきっと口数は少なかった。甘い煙草の匂いがした。アウトバーンに乗ってしまえば国境を越えるのに時間はかからなかった。であれば、然るに】


        「 …………… ッ。」


【 ──── 淡いピンクとホワイトだけで織り成したような部屋の中、何度も彼は酷い顔をするのだろう。】
【「大丈夫」「怖くないから」「ここにいるから」「ね、」「ほら」「大好きだから、 ──── 。」 ─── 何度も囁いて、手を繋いで、抱き締めて、撫でさすって、】
【注げるだけの愛情を注いでやるに違いなかった。そうして静かに殺意を燃やしていた。夜になれば、寝静まれば、音もなくベッドを抜け出して】
【月光に冷たい横顔を晒して、ホラー映画の殺人鬼みたいにマチェーテとバイヨネットを磨いていた。玲瓏な刃に青い瞳を映していた。或いは、】
【夢の中で銃声を何発も何発も聞くかもしれなかった。 ─── そうして迎えた次の朝でも、変わらず彼は笑っていたけれど、決まって消せない硝煙のにおいがした。】

【ともあれ、そんな風にして数日が過ぎた頃。 ─── 恐らくは深夜。彼はソファに寝転がって、当て所ない視線を天井に向けながら、ちびちびお酒を飲んでいて】
【やはり彼も家の中ではラフな服装をするらしかった。くすんだミント色のワンピース。カフスもボタンも締めず、ゆえに手首の裾もごく緩く】
【幾ら真白い手脚であっても、晒した肌色の多さは骨格の露出と同義であった。 ─── チューハイで錠剤を流し込む。最近飲み始めた、女性ホルモンの薬、らしい。】



「 …………… ん。」「手伝おうか?」



【 ──── そうして、不意にシグレへと向けた青く丸い視線が、そのままに続けて言葉を投げかけるのだろう。ひょこりとソファから起き上がり、】
【なにも纏わない素足をぺたぺた鳴らしてやってくる。側に寄って覗き込むなら、黒髪から揺れる甘ったるいシャンプーの匂い、部屋の甘さすら掻き消して】


836 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/21(火) 02:27:39 WMHqDivw0
>>835

【声をかけられたらびくっと肩を震わせて。でもここにいるのは彼しかいないってわかってるなら】
【次の瞬間安堵しきったみたいに深く息を吐いて、ゆっくり振り向くのだった。……そうして、】
【――――思いっっっきり顔を顰めてみたりする。揺れる彼の黒髪、一房掬い取ったなら、すん、と嗅いでみて】

……………………なんでエーノさんってこんないいにおいするの? おかしくない?
あたしも同じシャンプー使い始めたはずなのに、ぜったいあたしよりいいにおいするじゃん。
なんか香水使ってんの? ずるくない? ………………はあ、まあ、いいや。

【憎まれ口叩いてみる。けど嗅ぐのはやめない。吸っていると落ち着く香り。きっとどんなクスリよりよく効いてくれる】
【何度か深呼吸して、満足したらぱっと離す。さらっと逃げるみたいに落ちていくのが恨めしい】
【なんでこんなに綺麗なんだろう、この人。……そんなこと考える余裕があるなら、きっとまだ、泣いたりはしない】

んー、……手伝ってもらうほどの、量はないけど。見る? もらいものばっかり詰まったポーチ。
そーいやあたし、エーノさんに知り合いとかの話したことなかった……よね? たぶん。
いっつも「おにーちゃん」か「あの女」の話しかしてなかった気がするんだよなー、……もったいない。

【視線をポーチに戻し、ファスナーを引っ張る。中にあるものが蛍光灯の光を吸って、反射し始める】
【それらをひとつひとつ手に取って、床に並べていく。氷の国の地下室、サイドテーブルに置いてあったものたち】
【チョーカー。指輪。結晶。あと髪留めとそれと――――「しゃり」、砂の擦れるような音を鳴らして】
【最後に引っ張り出されたのは銀のネックレスだった。トップについているのは、櫻の国の意匠を施した】
【カレイドスコープ。万華鏡。赤い石が散りばめられてきらきら光る小さな小さなそれを、ぶら下げたなら】

…………………………。

【目を細めて黙り込んでしまうのだった。こいつだけちょっと特別品、らしい。……現に、磨き布まできちんと持ってきて】


837 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/21(火) 02:52:01 A..KoQTI0
>>836

【 ─── 震える両肩を見逃す筈がない。怯えさせてしまった。内心でひどく自己嫌悪。約束の一つも守れていない。】
【だから満面に戸惑うような色合いを浮かべて、 ─── 責めるような表情に振り向かれたのなら、彼もびくっと肩を震わせ】
【けれど髪束を手に取られるなら、寄せた眉の理由が思っていたモノとは違うと解って、一先ずは安堵の息を吐く。自分の香りで楽になるなら、断髪だって厭わなかった。】


「 ─── えっ。うーん。タバコ吸ってるから、かなあ。や、シグレもすごく、いい匂いするんだけどさ、 ……… 。」
「 ………… よかったら、使ってみる?」「なんだって好きにしていいんだよ。ここはキミの家なんだから。」


【他愛もない言葉の距離感に含ませるのは口下手な愛情。 ─── されっぱなしは、ちょっと悔しい。だから仕返し、ちょっとだけ】
【絹地を丸めたように細くてすべやかな両腕を、するりとシグレの両肩から回して、後ろから密着する。あすなろ抱き。】
【ワンピースの下に隠された肢体は矢張り骨ばっていたけれど、 ─── 以前よりも微かに柔らかく感じられる、かもしれず】


「もちろん見たいさ。」「聞きたい聞きたい。」「ぜーんぶ知りたい。」
「や、もちろんそれは、シグレが話したいとこだけで、 ……… いいんだけど、さ。」


【ごく甘えるような声は疑いようもなく年頃の乙女のそれだった。男を騙してしまうことを知ってか知らずか覚え始めた頃合いの色】
【頬摺りさえも寄せながら、 ─── 思い出の品を一緒に眺めていくのだろう。本当はキスしようと思ったけれど、まだそれは、なんだか躊躇われて】
【 ──── そうして最後にネックレスを手に取って、ごく神妙な面持ちで眺めるなら、彼もまた黙り込んでしまう。青い瞳と赤い瞳が、銀色の中に映り込む。】


「 ………… ね。それ、誰からもらったの?」


【口にしてから、迂闊な問いだったと少しばかり後悔する。 ─── 相手が話してくれるまで待っているべきだった。綸言汗の如し。汗なんて長らくかいてない、気がするけど】


838 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/21(火) 03:10:53 WMHqDivw0
>>837

タバコ、…………吸ったことないけど。おいしい? いっつも甘い匂いしてるよね、味あるの?
…………、……なんかやわくなった? えーやめてよ、あたしよりイイ身体になったら、泣くからね……

【密着すればきっとこの間ベッドの中でくっついたときより、境界線が、薄い。お互い薄着しているからか】
【肌の質感も温度も段違いにわからせる。そしたらやっぱり――お粗末だってわからせてしまうのだ】
【女として最低限の脂肪はついていても、それだけ。それすら追い越されちゃったら悲しむからね、なんて】
【じとっと睨みながら脅すみたいに言うのだった。半分くらい冗談、もう半分本気。……背中に重心をずらして】
【彼の鎖骨の辺りに後頭部をすりすり擦り付けてみたりする。ちょっとだけ湿った、癖の強い髪が、こすれる】

【頬擦りされたらくすぐったいって言うけど撥ね退けたりはしない。それくらいには好きだったから】
【彼女が猫だったならきっと喉がエンジン音みたいな勢いでゴロゴロ鳴っていた。それくらい、大好き】
【けど――――件のネックレスを出しっぱなしにしたままそうするのは、ちょっと、ためらいがあったらしい】

【「――――覗いてみる?」 しゃりっと音を立てて手渡そうとする、万華鏡、覗き込めばくるくる変わる模様ばかりが映って】

んー、………………むかーし知り合ったおにいさん。
ちょっとした賞金稼ぎができる闘技場的なところ行ったとき、共闘してくれて、
そっからちょっとだけ……本当にちょっとだけ。仲良くなって、それで、………………、

【くれたの。そこで一旦話を打ち切ってしまって、……なんかすごくいたたまれない気持ちに、なってしまう】
【浮気とかそういうつもりではなかったはず、だけど。だけど? ……まだあんまり気持ちに整理がついてないのが本音だった】
【ちょっと困ったみたいな顔して、仰け反る形で彼の青い目を見ようとする。怒ってるかなって心配するみたいな表情】
【そこから先、どういう話をすればいいか――迷ってるみたいだった。彼女自身、気持ちに名前を付けられていないようで】
【数秒の沈黙のあと。「…………えと、」とか「あの」とか、惑うような言葉ばっかり出てくる。引きずりだそうとすればいくらでもできそうだった】


839 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/08/21(火) 12:34:50 ZCHlt7mo0
>>831

…………!?
なんのつもりだよ、てめぇ……結局、何が言いてぇんだ……ッ?
てめぇは何が言いたいんだよ、何がしたいんだよ!? ――――ハッキリ言うが、てめぇの考えてる事が、さっぱり分からねぇ……!

【キレた獣の目をしながらも、男は何のつもりかと疑念の表情を浮かべていた。放り棄てられたトンファーを、瞬間、目で追って】
【続く言葉に、男は思わず、女自身そのものについて問いを叩きつけた。先ほどから、何も真意が見えてこない】
【捩れた体の痛苦も、意識の外に放り出して、ただ男は女を睨みつける。ともすれば、支離滅裂とすら言いたくなる――――それが男の理解だった】

――――あの糞どもの道理なら、俺だって触れてる……!
『アナンタシェーシャ』も『シャーデンフロイデ』も、その性質も顛末も、仲間から既に聞いたよ……どうせくたばった雑魚の情報には過ぎねぇが……
――――それだけの大口を叩いたからには、掴んでるんだろうな、他でもない『エカチェリーナ』に関する情報をよ……!

【――――男は、虚神達との戦いにおける当事者ではない。だが――――当事者に、連なる者がいて。既に大まかな情報は掴んでいると自負していた】
【彼奴等の性質を理解し、殺害に至るまっでのメソッド(方法論)――――独特の見識を求められるそれを、既に掴んでいるのだろう】
【ただ、それは基底に過ぎず。具体的な方法論は個別のものを用意しなければならない――――当事者でなくとも、認識は既に、そこまでたどり着いていた】

【――――だからこそ、今真に必要になるのは『エカチェリーナ』に関する情報。その性質の理解である】

――――聞くだけは聞いてやる……話してみろよ
何度でも言ってやるが……あいつに始末をつけてやるのは、俺の仕事だ――――何か、思う事があるんだろ……!?

【ようやく構えを解いて、しかしその棍はなおも手放さずに。偉丈夫は女の言葉に意識を向ける】
【今の彼の行動方針は、ハッキリと1つだけ――――『エカチェリーナを殺す』、ただそれだけだった。そこに繋がる何らかの道筋があるのなら、探らない手はない】
【女の真意は分からないが、何か、有益な情報がそこから聞き出せるなら、話を聞く価値はある】

【――――今回の戦闘と言う荒療治。知れず男は、1つの救いを女から得ていた】
【もうその心は、悲しみに慰められる事を、必要としていなかった――――少々過激な形でだが、渇を入れられた形となっていたのだ】
【変わらずドロドロと出血し、折れ曲がった肩すら放置して――――まだ警戒は解かず、力を攻撃のために温存したがっている――――男は、女の言葉を待つ】


840 : ◆zO7JlnSovk :2018/08/21(火) 12:38:41 oNSBpB/I0
>>821

【──── なればこそ、この出会いも問答も、幕間に溶ける束の間のエチュード】
【それ故に此処で話された内容は形而上学的禁句であり、語ることを許されないト書きに近い】
【だからこそロールシャッハは此処に来た、疑問を氷解し、新たな演目に映るため】

【言うなれば狂言回しの役割に似て、紡ぐ言葉に幾つかの違和を残したまま】


それだけ彼奴の存在が異質という事さ、出すぎた杭は打たれる、なんて重々承知だろう?
自分一柱だけで現実を左右できる能力を持ったなら、多分に想像が付く
けれども、──── それでも彼奴の行動が何処か陳腐な役割論に則っているのは

──── 彼もまた、脚本家でありながら、演者であることの証左かも知れないね


【少しだけ声のトーンが変わった、一瞬の出来事であったが】
【続くボスの言葉にロールシャッハは興味深く注視してみせる、咀嚼する様に言葉を考え】
【軽く顎に手を置く、その仕草はどこか真剣味を帯びて】


なるほど──── それは僕としては考慮していない事実だ、よくそんな所に目が行くね
確かに、とも思うよ、言われてみれば彼奴にとって、もう一度再構築するのは容易なのだから
なら、あの場に於いてどうしようもなく置き換えの出来ない要素────


【ロールシャッハの言葉が止まった、雷鳴に打たれたかの如く、唐突に】
【絞り出すかのように次の言葉を紡ぐ、それは歓喜に近く、そして────】
【震えている様にも見えた、恐怖の体現者をも、恐怖させるかの様に】


──── 可能性は二点あるよ、そのどちらにしても、とんでもない話だけど


一つ目はジャ=ロにとって "蜜姫かえで" が掛け替えのない存在であった場合、つまりは重要な要素として
まあ此処は他の信者に関しても言えることだけど、ニンゲンという枠組みで考えたなら
一番取り替えの利かない要素として考えるのなら、その辺りが妥当だろうね

つまりジャ=ロの目論見に於いて、当時信者として居た面々の誰かが必須であって
此処で儀式が頓挫してしまったなら、再び彼らを用意することが出来なくなるという事さ

今現在も、ジャ=ロが企みを続けているという点から見て、蜜姫かえでという可能性が高いけど


【──── そして】


もう一つは "スナーク" ──── "誰よりも白神 鈴音を願っている彼女" が必要であった場合

スナークとジャ=ロは本来非常に仲が悪い、一時的にでも手を組んでいたのは、互いに利用価値があったから
スナークにとってそれは "白神 鈴音" に他ならない、もし、"新世界より" での儀式が失敗していたなら
再び長い時間をかけてスナークは石を積み直すだろうか?


【イル=ナイトウィッシュという病魔は非常に子供じみている、僅かな期間であれば我慢が出来ようが】
【再び永劫に近い時を重ねるという点には、中々結びつかないだろう】


──── 結論を言おうか、もし "ジャ=ロがスナークの試みをも看破していた場合"
"ウヌクアルハイの主格を白神 鈴音が握る事"──── すらも、想定内であったとなる


841 : ◆RqRnviRidE :2018/08/21(火) 14:22:34 l/SHZCa20
>>833

【耳を劈くような銃声が何処からか鳴り響く。峡谷の間を反響し、やがて水と風との音に掻き消される】
【少女はびくりと肩を跳ねさせた。仰向きで泳いでいたのを立ち泳ぎへと移行し、怪訝そうな目付きで音の出所を見遣る】
【やがて見留めていれば、更に発砲音が続く。乾いた音は空気を裂き、直上の展望台に不穏などよめきを齎して】
【そうして、観光客の人足が急速に遠退いていく気配がする。とにもかくにも、危険な予感を察知して、離れていく】

──────…………、……。

【それから現れた少女と、互いにばっちり目が合う、どうしたって合ってしまう。】
【交錯した視線は逸れることなくかち合って、数秒の沈黙がその場を支配するなら】
【相手の頓狂な叫び声に先程よりも大きく肩を震わせて、ひっ、と息を呑む声が漏れるだろう】

ちょ、ちょっと! ねぇ……落ち着いてなの、私は捕って喰ったりはしないのよ?
……それよりあなた、どなたなの? こんなとこ、滅多に人は来ないのに……──

【こちらとしても警戒はあれど敵意はないのだと宥めるようにそう言うだろう、穴場とは言え何も怪異では無いのだからと】
【ちゃぷ、と水面を波立たせて岸辺へと泳いでへたり込む少女に近付くが、しかし水中からは出てこない】
【澄明な水が素肌を隠さぬのなら、それは恥じらいなどでは決してなく、警戒心の現れだと判るだろうか】


──……もしかしてあなた、人外狩りのハンターなの?


【次いで目を遣るのは彼女の背から覗くライフルの銃身であった。あるいは的外れやもしれない問い掛けを投げ掛ける】
【得物と身形から察するに、どうやら相手が狩人であろうことには想像に難くなかった、──が】
【それにしたって狩猟対象が『人外』と限定的に予想する辺り、きっとこの少女も“対象”の例外ではないというのが明白であった】

【警戒は解かない。故に青髪の少女の背後に海色の魔力が集中してゆく。時折零れる煌めきは白昼の星々のようであったものの】
【「少しでも危害を加えようものなら」──と、毒性生物の警戒色さながらに目映いぎらつきを放っていた】

/申し訳ないです、お時間いただきました。宜しくお願いします!


842 : ◆3inMmyYQUs :2018/08/21(火) 17:09:42 GQoYu22s0
>>793

【男は、口角をゆっくりと吊り上げた】
【その瞳中には、血濡れでなお勇壮に立つ探偵の姿が深く映り込んでいた】


『──いいぞ、良いガッツだ。
 お前はやっぱりそうでなくちゃいけない。

 だが──その質問はナンセンスだな。
 何故なら、『助ける』のはお前の役割(ロール)じゃないからだ。────

 ────“ソネーウェ”?』


【男は探偵へ向けていた視線をドアの方へと移した】
【すると、そのドアの奥から何か気の抜けた声が響いた】


「────ああ、いました、いました〜」


【その声は、探偵にある一つの姿を想起させるのに十分なはずであった】
【ひとりでにノブが回り、ドアがゆっくりと開かれたとき──果たしてその想像は現実と合致するだろう】

【──〈婦警〉がいた】
【かつて見(まみ)えたとき通りの、緩やかで慈しみに満ちたような笑みを貼り付けて】
【しかしその装いは警官ではなく──純白の、看護師に相当するものを身につけていた】


【その傍らで、少女・シヲリが宙に浮遊していた】
【否、〈婦警〉の力で“浮遊させられていた”という方が正しいだろう、】
【『病』によるものか、少女の表情は依然として熱っぽい苦悶に歪み、】
【床で倒れていたのを、何か見えない腕で下から抱き上げられているような体勢だった】

【ドアが開かれたのに気付くと、少女はひどく重たげに顔を動かし】
【今にも閉ざされかけてふるふると震える眼の端に、探偵の姿を見た】

【か細い息をする合間に、その唇が僅かに開いて何かを言おうとしたが、】
【こふ、と無情な咳に打ち消されて、何も形になることはなかった】


【探偵の眼前に現れたその構図は、ありふれた奇術のショウのようだった】
【宙の少女を挟んで、奥側に術師のごとく〈婦警〉が立ち、探偵の位置は観客のそれに相当した】

【今から何が行われるのかは、〈婦警〉の手元だけが語っていた】
【──『注射器』が、その手には握られていた】


『──おっと、余計な真似はするなよ。
 そこから先はお前のステージじゃない』


【再び、男の低い声が探偵を刺す】


『こっちを向け、探偵。

 今、お前がチェリーのように眼をぎらつかせて見なきゃならないのは、
 女じゃない、この俺だ──残念ながらな』
 

【ハ、ハ、ハ──と、】
【遠くの雷雲が唸るような低い嗄れの混じった笑いと共に、】
【男はざり、ざり、とブーツで地を擦りながら、探偵の元へと歩み寄る】

【やがてその鬼のような巨漢の影が、ぞろりと探偵を呑めば】
【その足をぴたりと止めて──そのにやついた髭面の口を開き、言った】


『──銃を置け。跪け。

 ──抵抗するのも口からクソを垂れるのも自由だが、
 ここにいる誰もお前のみっともないところは望んでいないし、
 俺もあまりショッキングな映像は作りたくない』


【低い声が静かに言い切る】
【眠たげに緩く、しかし完全に据わりきった瞳が、探偵を直線で見据えていた】
【その視線が、迂遠な言い回しが、意味深な間が、全てがただ一つのことを告げていた】

【従え、と】


843 : ◆KP.vGoiAyM :2018/08/21(火) 19:58:11 Ty26k7V20
>>842


【血濡れでこじ開けたドアの先はクソッタレな状況がまだ続いていた。せめてノックでもすりゃ変わっただろうか】


――――テメェら……"何処から来やがった”。

【叫んでやりたかったが、思うように声が出なかった。出るのは脂汗と血だ。歯を噛み締めて、立っているしかできない】
【だがそれでも、まだこの探偵をみて死に体のどうしようもないやつと見限るには早いだろう。その威圧する気合だけは失っていなかった】


………テメェらが決めることじゃねえ。俺の仕事/ロールも、ステージもな


【探偵は動かなかった。動じなかった。振り返りもしない、リボルバーを握りしめる手に力がこもる】

――その必要はねえ、視えてる。見たくもねえアンタのツラがな。探偵の目ってのを甘く見るなよ

【跪けと言われても微動だにしない。命令されて動じるようなやつは探偵には向いてないし、なろうともしないだろう】
【そこで従うようなやつはチンザノ・ロッソじゃない。俺の役割/ロールは――――ロックンロールに決まってんだろ】
【ステージから降りてたまるか。未来だのなんだのを人の手に委ねるつもりはない。――どうせこいつはそれをできない】


アンタ、自分で言ったじゃねえか。俺を殺せない。シヲリがいるうちは。わかってるんだろ?
―――俺が、ロッソだってことをな。


【俺を刺客から(結果論として)救った時点で俺の価値をわかっているはずだ。次の手段は暴力か?その鉄塊で殴りつけるか?】

俺を殺して、シヲリを奪うなら―――やってみろよ。


【ギラついた言葉―――彼は笑っていた】


844 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/21(火) 21:39:57 Dnp9kjSw0
>>838

【「お金ばっか飛ぶし良いことないよ。 ─── 甘くて煙たい味がするだけ。」実際、止め時とも思っていた。だって自分はともかく、パートナーが出来てしまったから。】
【続く言葉にはまさかと笑って誤魔化す。たかだか一週間と少しで効果が出てくる筈もないのだけれど、鏡で見る自分の裸体、少しばかり丸みを帯びてきたようにも思える。】
【 ─── ともあれ、やはり、シグレの全てが好きだった。ぎゅうと抱き締めた時、そこにいるって感じさせる身体性。自分もまた、ここにいると信じられるから。】
【脅されたなら尚のこと好きになる。マーキングのような仕草も甘んじて受け入れる。白い首筋に幾筋かの潤いと輝きを得る。キミがときめくようなボクになりたい。】

【すべすべの頬肌を重ねるのは言い知れぬ多幸感。単純に心地いい感覚なのが一つ。大好きな人にじゃれつく時間が二つ。優しい承認欲求が満ちてゆく三つ。】
【 ─── 自分の迂闊さを恨むなら、そんな感情も曇ってしまうのだけれど、一先ず怒ってないことに安堵する。「もちろん、見せて見せて。」だから子供っぽく強請る。】
【そっと手に取り、片目を瞑って蛍光灯に翳した。 ─── 指先で回すのなら、極彩色に華やぐ煌めきが、ここではない何処かに連れていってくれそう。】

【だから昔の想い出を聞かせてくれたのなら、どことなく納得した。やっぱり聞くべきじゃあなかったな。幾ばくかの自己嫌悪。けれど悲しい顔はキミまで悲しませてしまう】
【かと言ってぱあっと笑うこともできない。 ─── 頤を上げて瞳を覗かれたのなら、困ったような苦笑が精一杯だった。紅色の中に映り込む自分の情けなさったらない。】
【揃って困ったような顔。吹き出しても許し合える距離感には違いない。なのに次の言葉さえも同じように悩んでしまう。ゆえに、また、迂闊な言葉。今度は、意を決して。】


「 ────………… すきだったの?」


【見上げられるまま、苦笑いのまま、わりあい真面目な声音で尋ねる。どんな答えだってボクは構わないよ。そう伝えるような優しさを添えて。】
【"いい友達だったんだね"。 ─── そう言えば彼女は頷いてくれる気がした。愛しているのが貴女じゃなかったら、そうしていたに違いなかった。】
【だけど今ばかりは変てこな矜持が許してくれなかった。そういう聞き方をしなくちゃいけない気がした。晒したらひりひりするようなものを、晒さなきゃいけない気がした。】


845 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/21(火) 21:52:54 Dnp9kjSw0
>>839


「ただ憐憫を投げかけているだけよ。」「次いでに言うなら、貴方の態度が余りに腹立たしいから殴ってやっただけ。」
「下らない倫理観もさもしい打算も持ち合わせちゃいないわ。」「 ─── 救済にせよ復讐にせよ、それが無碍に終わることが許せないに過ぎない。」


【然るにやはり獣のような女だった。本能と衝動に従えるなら何だってやれる女に違いなかった。 ──── 真意なんて最初から何処にもないのだ。】
【迂遠で大仰な台詞回しに反して、彼女は全て本心を吐き出していた。ただ余りにそれは理性の制約を無視していた。機械の体であるにしてはオペレーティング・システムがファジーに過ぎる。】


「 ──── 解っているのに、あんな戯言を述べていたの?」「 ……… いよいよもって呆れるわ。まあ、いい。」


【然るに女はいよいよ殺意を収めて、男の望む言葉を語っていくのだろう。 ─── 無論ながら彼の理解度については、彼女は推測したに過ぎず】
【であれば幾ばくかの重複も混じるというものだろうか。そしてまた抽象性を多分に含んだ物言いであった。それでもその論理については、断片的にでも辿れるだろうか】


「彼女の手を引いて策を弄しているのは別の神よ。 ─── ロールシャッハと名乗る、優男。"恐怖"をその本質とする虚神。」
「彼が虚神たるエカチェリーナに与えたのは、"絶頂"という本質。 ……… あらゆる物に最盛の瞬間を与える能力。」
「その力をもって彼は世界に"調和"を産もうとしている。然してエカチェリーナが与えられるのは、飽くまでも刹那の栄華に過ぎず」
「故に彼は何かしらの更なる力を加えて、終わることのない調和を作り上げようとしている。 ……… 理解しているかしら。」

「彼女の異能は強力よ。凡ゆる物に最も素晴らしい瞬間を与えられる。 ─── それだけじゃない。」
「ひとたび絶頂を与えられたモノが、再び栄えることは決して無いわ。適当な機に最盛を迎えさせてやれば、後は衰え行く相手を嬲りものにするだけでいい。」
「加えてロールシャッハは自らの策謀を実現する為、死力を尽くして彼女を守ろうとするでしょう。 ……… 策も理解もなくして、貴方は絶対に勝てない。」


【その力の如何に強大なるかを、女は苦杯と共に刻み込まれていた。 ──── 干戈を交えるとなれば、彼ら彼女らがその異能を忌憚なく揮ってくることに疑いはない。】
【幾つかの虚神と交戦してきた女の出した結論はそれだった。明確な解法を探らなければ、少なくとも単なる執心に突き動かされるだけでは、打ち負かせる敵でない。】

【然して女はそこで言葉を止めない。 ──── あるいは小問を一つ選ぶように。あるいは仮説を提示するように。投げかけるのは、彼の答えを求める言葉。】


「さてここで幾つかの疑問が生じてくるわ。」「 ─── 奴らの道理とは、本当に正しいものなのかしら?」
「恐怖を本質とする筈のロールシャッハが、なぜ一見して自らの存在と相反する調和を求めているのか。」
「もしも彼の目論見通りにシャーデンフロイデの再臨が叶った時、本来であればそれだけでも"調和"を作り上げうる極夜蝶と共に、"彼女"の果たす役割とは何だったのか。」
「 ………… そもそも彼は、 ─── 何故に"彼女"を依り代に選んだのかしらね?」「単なる一つの正義組織において、狙撃手の役割を担っていたに過ぎぬ彼女を。」


846 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/21(火) 22:17:29 Dnp9kjSw0
>>841


【然るに両者揃って腰を抜かすに違いないのだろう。互いの驚嘆にさえ怯えるような遭遇戦であった。ジャングルクルーズと呼ぶには余りに間抜けである。】
【眼前の少女が主張する言葉は数秒の遅延をもって半解されたようだった。鷹揚に頷けば、両の肩より垂らした金色の髪、静かな陽射しに鈍く輝く。】


「 ──── こんなところ。」「というか、ここ、どこ ……… ?」


【その抜けた口ぶりを信じるならば、 ──── どうやら道に迷っていたらしい。ふッと首を上げ、そこが展望台の真下であることを認識すれば「えッ」】
【見る間に真白い肌を青褪めさせていく。誰がどう見たって発砲許可を得られる私有地ではなかった。ハンターであるなら密猟者に違いなかった。】
【然して小賢しい密猟者がこのような人の多い場所を選ぶ筈もなかった。第一に目撃者なぞ消してしまうのが手っ取り早かった。間の抜けるにも程という物がある。現に、】



「 ………… 僕、」「そんなに悪そうな顔、してる ………… ?」



【 ──── 人外狩りと疑われた少女は、相当にショックを受けたらしい。はぁぁぁぁ、と深く漏らすは青息吐息、笑えば愛嬌のありそうな容貌を台無しにして】
【遂には膝を抱えて座り込んでしまう。全くもって無防備な格好を晒していた。弾道兵器の斯く発達したる現代において、仮にも狩人がこれ程に無防備な姿を見せるだろうか。】
【次いでにぎゅう、とお腹が鳴った。歳頃の乙女には堪え難い屈辱であった。羞恥に一瞬だけ顔を上げる。然してすぐに下ろしてしまう。 ─── 屈辱さえも無意味だった。】
【相対する少女が何かしらの警戒態勢にあることなど及びも付いていない様子だった。穏やかな清流と木々のさざめきが少しずつ再来する。カッコウの囀り、彼方より。】


847 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/21(火) 22:35:44 WMHqDivw0
>>844

【唇がすこしだけ尖った。「なんか誤魔化してない?」みたいな視線。けど、それを持続させるのは数秒間】
【はあ、と息を吐いて、それからちょっと困ったみたいに笑う。顔がいいから許しちゃう。……少女は面食いであった】

…………ほんとにだよ? あたしより可愛くならないで――ってのはもう遅いか。

【いいなあ、って言いながらネックレスを手渡して、ハンズフリーになったなら、代わりに触ろうとするもの。たったひとつ】
【彼のすべすべの頬だけ。ばんざいするみたいに上に手を伸ばして、両手で包み込むように触れたら】
【顔のパーツひとつひとつ確認するように触れていく。髪の下をくぐっておでこ。瞼。鼻筋を通って、唇まで】
【ぜんぶのパーツが完璧な形で完璧な位置に配置されているのを感じてしまう。さらに全部手触りがいいとまでくれば】
【ちょっとした嫉妬みたいな、謎の気持ちが渦巻いてしまう。スキな人、だけど、……きれいすぎて複雑、みたいな】

【そのまま手を下に滑らして、首筋まで到達したらするりと抱き締めるみたいに、腕を交差させて】
【変な姿勢。だけど咎める人なんていやしないから――笑っちゃう。お互い変な顔してたから】

んん、…………、…………正直、よくわかんない。
……あのねえ、全っ然優しい人じゃなかった! 意地悪な人だった! エーノさんと全然違う!
いっつもあたしのことからかってゲラゲラ笑ってた人なの、あたしいっつも怒ってた……気がする。
……、……でも別にヤじゃなくてさあ。むしろ楽しいなって思ってたの。ヘンだよね、……うん。
楽しかった。お別れするときはいつもまた会えたらいいなあって思ってた、

――――――――こういうのも「スキ」って言うのかな?

【続く独白、きっとそれは彼女にとっては未知なるもので、複雑すぎる感情だったから扱いに困ってた】
【……みたいな言い方をする。きっと当たり前のことなんだろう、17年間生きてたころはそんなことする余裕なかったし】
【そこから続く「夕月」としての人生の中でもきっと初めてのことだった。だからなんにも分からないって言う、けれど】
【今の「スキな人」にする質問にしては少し意地悪が過ぎただろうか。でも本当に、わからないんだから、許してほしい】

【――――――少女・シグレの、死後の初恋は、きっとエーノが相手じゃなかったってこと。わかってないんだ】


848 : ◆3inMmyYQUs :2018/08/21(火) 22:59:19 GQoYu22s0
>>843

【──男の笑みが、すう、と霧消した】
【代わりに何かを値踏みするように、瞳がゆっくりと細められた】



『────そうか、お前は──
  ...
 そっちの《チンザノ・ロッソ》か──────』



【不可解なものを見たように、しかしどこか得心したように】
【男は眉根を寄せ、探偵を見据えたまま意味深に何度か頷いていた】


【そのとき、シヲリがいくつか強く咳き込んでから、】
【身を捩って探偵の方へ顔を向け、全身から絞り出すような声を放った】

【「──ちがう…………」】


────ちがう………っ、
やつらが……、あなたを……ころせない、のは──────────


【何かを伝えようとした声は途中で小さな悲鳴によって断たれる】
【その華奢な身が見えざる力によって強制的に元の姿勢へ戻された】


「──駄目ですよお、動いたら。危ないですからね〜」


【その顔が一層苦痛に歪められるのも、〈婦警〉は一切意に介さぬ様子で】
【念動力によって少女の身を宙に縛り付けたまま、彼女の腕の裾を捲り始めた】

【仮に探偵が推し進められるそれらを止めようと何らかの介入を試みようとしても】
【二人の周囲に張り巡らされた透明の壁──強固な念力の防護壁がそれを拒むだろう】
【実際そのことを顕示するかのように、彼女らの周囲だけ濃い陽炎の揺らめきに包まれていた】


【再び、男の口角が緩慢に吊り上がった】


『────なるほどなあ。
 これも〈特異点〉のルールという訳だ。
 『セレンディピティ』──まったく、素敵な偶然だ──』


【く、く、く、と喉を低く鳴らして男は笑った】
【その独り言が何を意味しているものなのか、それが語られる気配は全く無く】
【ただ今一度、その据わった眼差しが──今度は心なしか愉快げに──探偵へ向けられた】


『──……そうだ、俺たちはお前を殺さないし、殺したくない。
 お前は二、三度殺したくらいじゃ、死にそうにないからなあ──

 ──そう、お前は、
 お前だけは、もう『死ぬ資格』が無い。

 だから俺たちは、代わりにお前へこう言うんだ──────』



【────「始めから終わりまで、さようなら」】

   ........
【「お前はいなかった ────────と」】



【 “ ────〈CERN〉 ” 】

【そのとき、男は確かにそう呟いた】
【──途端、男の頭上でぱちりと電荷が弾け、】
【次の刹那、高低様々な音波が入り乱れるような異音と共に、何か暗黒色の塊がそこに出現した】

【ばちり、ぱちり、と輪郭に微細な電流の瞬くそれは、】
【まるで空間に開けられた穴──ワームホール──のようであった】

【それが一体何を成すのか、それ自体に何か力があるのか、】
【あるいはどこか別の場所へ通じているものなのか、】
【一切語る者のないまま、塊はじわりと空間の歪みを伴って肥大し──】


【それを視界の端に映したシヲリは、途端、凍り付いたように眼を見開き、】
【あらん限りの余力を尽くして激しく身を捩り、何かを発しようと、伝えようとしていた】
【もう自分の命を擲っても良いと言わんばかりに、目尻に熱い涙をにじませ、もがくが、】
【しかしその全てが、不可視の念力に圧殺されて何も音になることはなかった】



【──丁度そんな最中に、それは訪れた】



/↓すみません続きますが少し時間空きます、もうしばらくお待ち下さい……


849 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/08/21(火) 23:09:25 ZCHlt7mo0
>>845

……っ、憐憫とか、腹立たしいで……こんな殺し技を、使うかよ……肩で済んだのは、偶然だぞ……ッ
背骨とか、頸椎とか逝ってたら……その瞬間にお陀仏だぜ――――まして、俺が魔術師じゃなかったら……利き腕が、不随になるところだってんだ……ッ

【ガンガンと脳を突き上げる激痛に呻きながら、偉丈夫は毒づいてみせた。折れ曲がった肩に、頭の痛い思いを感じる】
【偉丈夫は、一応即死さえしなければ、先の突きの一撃なり、今の障害覚悟の負傷なり、元通りにするだけの力があった】
【だからこその、魔力の温存という意味もあったが――――この口ぶりでは、女の方にそうした『予定』があったとも思い難い】
【自分以上に、素直にキレていただけなのではないかと――――口に出さねど、男はそこまで疑念を重ねていた】

……どこが戯言だよ。全き真理だぜ……――――それともお前ら、毎回毎回分析と確実な勝算でも胸に抱いて、そんな悠長な真似して戦ってたのかよ……ッ?
――――とてもそうは思えねぇがな……だからこそ、今までがもう充分に「卒倒するほどの奇跡」なんだぜ……
アルクも……中央放送局で死んだ相棒も、同じ事だ……「こんな戦いに、喪失のない決着などあり得ない。だから自分の死も、ある意味必然だった」って、言ってたさ……
結局、運命の貧乏くじを引いちまったんだろ……同じ事だ……失敗の可能性を受け入れ、乗り越えて、俺たちは戦わなきゃならねぇんだよ……!

【分かっていたからこそ――――男は自分の言葉を翻そうとしない。そもそも、今までの『対虚神』の戦果は、全て防戦かつ出たとこ勝負に過ぎなかった】
【悠長に事を構えている余裕など、もはや人類側には存在しない。直接の知識は無くとも、魔術師としての常識感覚を以って――――戦うしかなかったのだ、と】
【――――死んだ相棒共々、今までの戦果が、むしろ出来過ぎであったと思うくらいである。虚神相手の戦いは、どこまでも「死を覚悟の上で」挑まなければならないのである】

――――――――……………………――――簡単な事じゃねぇか

【そして――――男は黙して女の言葉に耳を傾ける。ようやく、左手に構えた棍の持ち手も楽にして】
【折れ曲がった肩を邪魔そうにしながら――――痛みで、無暗に動かせないのだろう――――女の言葉を頭に収め、知っている事、知らなかった事を整理、統合し――――】
【ふと瞑目し、次に目を開いた男は、事も無げに言ってのけた】

『恐怖』――――『fear』の語源は、本来『危険』と同一のものなんだ。要するに、『恐怖』とは危険を予測するための本能的反応だ……
『恐怖』は『未知』から生まれる……なんで『未知』が恐ろしいのかと言えば、それが「『危険』な可能性があるから」だ……
……死にたくねぇって思うから『恐怖』なんだよ……死を真っ直ぐ見据える奴は、恐怖なんか持たねぇんだ……『命への執心を捨てる』事、それが一番の対抗策だ……!
――――『絶頂』のメカニズムの方は、むしろ簡単じゃねぇか……そんな相手と戦うってんなら、奴に自分自身を『絶頂』に導かせればいい……!
後は萎れて衰えて、そうして弱っていくだけだ……そこを突けば、むしろ他の虚神連中よりも、楽にカタが付くだろうよ……上手く導いて、凌ぎきれればな……!

――――やり方の方向性が分かれば、後は実践するだけだろ? それが出来るのか、なんてのは……お前が俺に聞く事じゃ、ねぇよな……!?

【情報を一通り精査し、男は現時点での回答を口にする。『恐怖』には『捨身』を、『絶頂』には『誘導』を用いろ、と】
【具体的な策ではない。だが、方向性さえ分かれば、そこに専心し、突いていけばよい――――これまでだって、そうして勝利を掴んできたはずだ、と】
【敵の本質を形骸化する事――――何よりも、虚神たちと戦うには、それを第一に考えなければならない】

/続きます


850 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/08/21(火) 23:09:49 ZCHlt7mo0
>>845

――――シャーデンフロイデ、な……死んだ奴の代わりを、わざわざ用意するか……さてな、流石に奴らの考えてる事なんざ、知らねぇよ……
しかし――――『恐怖』と『絶頂』、『加虐の快楽』……この3つによる『調和』、な……

【その先、その奥の真意を問われると、男も言葉に込める力が小さくなる。本来、そんなに頭を回すタイプではないのだ】
【まして、正直な事を言ってしまえば、『エカチェリーナ』以外の虚神に対する興味は、それほど強くはない】

――――なんか知らんが……この3つとも、『死』という概念に真っ向から食い違ってるって事ぐらいだな、俺から言えるのは……!
『恐怖』が生じるのは、生から死への状態変化……死んだ奴は、もう恐怖など抱かない……!
『絶頂』も然りだ……死とは、数値がゼロになる事……そこに変化も生まれなきゃ、最高の瞬間も訪れない……!
『加虐』も同じ……死んで破滅してく奴を見るのは楽しかろうが、死んだ犬を蹴っ飛ばしたって面白くはねぇ……!
――――まるっきり、俺たちの『オヤジ』が虚構現実の世界から持ち帰った情報にある……『ジャ=ロ』とかいう虚神と、対立してる概念だという事だ……!

【男は、己の中にある情報を、最大限に活用して、1つの仮説を打ち立てて見せた】
【『恐怖』が求め、要求する、『絶頂』と『加虐』の助力。その理由は――――『死』に対する対抗にあるのではないか、と】
【虚神同士での、対立でも――――そこに存在するのかもしれない】

――――可能性は、他にもいくつかあるだろうよ……シャーデンフロイデには、世界線移動とかいう、でたらめな力があったんだろ?
……本質じゃなくて、そっちの力を借りたいだけだった、なんて事あるんじゃねぇか? 一瞬の『絶頂』を、永遠に引き延ばすための世界線移動とかよ……
それと、調和と恐怖は、別に相反したりはしねぇよ……皆が一様に恐怖に慄く世界……固まって、動けなるだろうぜ。その静寂は、恐怖による調和の究極形だろうが……!

――――奴らの道理が正しいかどうか、そこを論じる事は、正直無意味だと思うぜ?
……奴らの世界……『虚構現実』じゃ、間違いなく実行力を持った正しい道理だったんだろう……だが、世界が異なれば道理も変わる……
――――それを、自分たち好みに替えちまおうとしてるんじゃねぇか……!? クロをシロと言い張るのは、人間のお偉いさまだって、よくやらかす事じゃねぇか……!

【いくつか、本気で頭を回したとは言い難い回答も紛れるが――――男は、それぞれに思うところを仮説として述べていった】
【元より――――最終的には推察でしかない。その中に正解があったとて、それを確かめるのは、殺し合いの「最後の最後」にしかできない事だ】
【今はただ、より腑に落ちる答えを、いくつか候補として用意しておくことしかできない――――】

――――知らねぇよ。何でソニアをそんな風にしちまったかなんてよ……!
元より異世界人らしいってのが、虚神どもの性に合ったって事かも知れねぇし、知れず奴らの『カギ』でも握ってしまったのかもしれねぇ……!
恐怖ってのが、正しい道理を崩壊させる事での、単なる演出効果だって事すら考えられる。それこそ、これに関しては「なんで」って聞いたって、仕方のねぇ事だ……!

――――けど、そうか――――『ロールシャッハ』…………そいつが、ソニアを……『エカチェリーナ』に……!
……殺さなきゃならねぇ、もう1つの片割れ…………そいつが、そうだったか……!

【最期の疑問――――何故にエカチェリーナの媒体として、ソニアは選ばれたのか。それについては、追及しても詮無き事だと、男は早々に匙を投げた】
【大事なのは――――『エカチェリーナ』と共に『ロールシャッハ』もまた、絶対に殺さなければならない相手だという、その認識だけだと言わんばかりに】


851 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/21(火) 23:23:36 Dnp9kjSw0
>>847

【 ──── 明日にでもちゃんとバストを測るべきだな、と思った。彼には幾分かずぼらな所があった。】
【だから個人輸入の錠剤だってアルコールと一緒にオーバードーズ。他人がキチンと見ていなければ気を配れないがある。】
【そんな自分でも好きになってくれたのが、少女を好きになった理由のひとつ、なのかもしれない。悪縁は思わぬところで役立つ。】

【「ほんとほんと。」ともあれ口先では約束する。 ─── 今だってシグレの方が可愛いよ、と言おうとしたのは黙っておく。】
【歯が浮き上がって月まで飛んでいきそうな台詞を言える度胸がなかった。だから徐な両手が、自分の頬を包むのには】
【ふぇっとか言って素っ頓狂な声を漏らした。 ─── およそ男の目鼻立ちではなかった。程よい広さの額。血潮さえ透き通りそうな白い瞼。長い睫毛に大きくて円い両眼。】
【一筋に通った小さな鼻梁。恋人に向ける理想の笑顔を寸分違わず記憶した頬。口紅を帯びずとも穏やかに茜さす、断ち割った蜜柑の二房のように瑞々しい唇。】
【離れていく指先へと寂しげにそっと張り付く真白い雪膚。首筋に回る指先を、わたしにも構ってと濡羽色のささめきが擽る。線が細いのに、やわらかい。】
【抱き締めてくれるのなら、 ─── 膝をついて、しなやかな両の脚を惜しげもなく投げ出して、愛しい人の隣で横坐り。そうして続く昔話にも、一緒になって笑った。】


「 ──── あは、」「アリアみたいだ。」「わかるわかる。」
「いるよねえ、そういうひと。」「ボクも引っかかっちゃった事があってさ。」
「ボクは仲良くしたいのに死ぬほど無愛想で全然構ってくれないんだ。」「一生懸命可愛くなっても無しのつぶて。」
「なのに不思議と嫌いになれなくて、それどころか振り向いてもらおうとムキになっちゃって、結局 ─── 。」


【 ─── きっとそれは、シグレの知らない名前。テーブルの上や、或いはドレッサーの側、ともすれば何所かの引き出しの中】
【一緒に暮らす中で、幾つかの写真を見つけたかもしれない。なよやかな程に線の細い黒髪の青年と、ごく背の高い銀髪の女性が、親しげに肩を並べて笑っている構図。】
【何のことはない、 ─── "彼"もまた、はっきりと別れた訳ではなかった。今や部屋着となったワンピースは、大切な人が初めて可愛らしさを褒めてくれた時の、思い出の品】


「 ……… だから、さぞかし人誑しだったんだね。」「そのひと。」
「 ──── そうだね。スキになるのも、きっと、無理ないよ。」「ボクたちだって、最初はそうだったろう?」


【であれば饒舌になるのも、昔話をしてくれそうな気取らない笑顔を示すのも、青い瞳が懐かしそうに/寂しそうに輝くのも、当然の道理というものだろうか。】
【それが少女の初恋であるということくらいは分かった。それでいて彼女は無自覚だった。なれば意地悪な問いに対して、小悪魔の囁きで応えてやるのも容易なことだった。】
【だのにそうしなかったのは極めて純粋な理由だった。大好きな人に見つめられて、嘘はつけない。 ─── それだけの話。気恥ずかしげにはにかむのは、どこか不慣れだった】


852 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/21(火) 23:48:42 WMHqDivw0
>>851

……………………顔がいいな。ずるい。なんでも許しちゃいそうになる…………

【率直すぎる感想。述べて彼女は腕を解く、隣に座ってくれるなら、こてっとその肩に頭を乗せて】
【上目遣いでじっと見上げる彼の顔、やっぱきれいだなって思って、んー。と唸りながら逸らす】
【……ネックレスは磨き布の上に置いて。しゃらしゃらとチェーンを丁寧に、絡まないようにとぐろを巻かせたなら】
【布を二つ折り、四つ折り。隠すみたいに――大事に仕舞いこむ。ぽん、と指先でそれを撫でて】
【目を細めてまたポーチに戻しちゃった。ファスナーを閉める。したら、彼に向き直って】

アリア? …………エーノさんの好きだった人? ふーん、どこにでもそーいう人いるんだ。
…………不思議だねえ、なんで嫌いになれないんだろう。意地悪なのに。なんでだろうって、
ずーっとずーっと思ってたよ、…………それで今わかっちゃったな。

スキだったからなんだ。……そっか、そーいうことかあ。今の今までわかんなかった。
あたし、好きだったんだな、…………こーたかさんのことが。そっかあ。

【ふ、と鼻から抜けるみたいな笑い声を上げて。思い出を仕舞いこんだポーチから手を離した】
【そしたら今度は前に腕を伸ばす。「ぎゅーして」。喪失した感情の埋め合わせを求めて、体温を要求する】
【――――知らなかったなんて言うけど、知るのが怖かっただけなのかもしれない。だからずっと目を逸らし続けて】
【その先にあなたがいたので目移りしちゃいました、なんて、あまりに不埒な言い訳だった。怒られちゃうかな、とか思う】
【誰に。「こーたかさん」とやらに、……それともエーノに。どっちにもそうされそうだな、とか、思って】

…………んん。最初? どーだったっけ、……酒癖の悪さを披露されたのはめっちゃ覚えてるけど。
あれマジで怖かったから、もうお酒飲みすぎるのやめてよお。なんかすでに冷蔵庫いっぱい入ってるけどさあ。

………………、……お酒の勢いでヘンなことして、次の日それを覚えてないとかされたら、泣くからね?

【ヘンなことってなんだろう。言わないけど――――とにかくお酒の勢いが嫌なだけであって、】
【「されること」自体は別にいいらしい。恨めしい音色で呟いたら――ちょっと俯く、前髪が垂れて、……耳が赤くなってる】


853 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/22(水) 00:17:13 Dnp9kjSw0
>>852

【褒めてもらう度に嬉しかった。 ─── 嬉しくない訳がなかった。可愛い自分には自信を持ってきた。だから、尚の事。】
【湿った髪先が肩口に委ねられる感覚に天まで昇ってしまいそう。おんなじ感覚を電車で隣に座った見知らぬ女に与えられたらキレていた。でも、キミはシグレだから。】
【しとりと濡れた上目遣いが青い視線と重なれば息さえ止まってしまいそう。いや多分、止まった。飲みこんだ息を露わにしないだけ。ただただ今は、しあわせ。】

【ゆえにこそ御強請りなんて断れないし断りたくない。 ─── 真ッ正面から抱き返す。背中に指をやって、真っ赤な髪を指先に弄びながら】
【漏れるような吐息が首筋を擽る感覚。嬉しくって仕方ない。ぎゅうっと深く抱きとめるのは、だって、大好きだから。オンナじゃない身体を晒したって構わない。】
【そうしたらボクも同じように、話したことのない昔話を語っていける気がした。ボクだって、アリアにもシグレにも、怒られたくない。ない胸だとしても張っていたい。】



「 ……… 覚えてないの?」「無理もないか。」「ほら、 ─── ルージュ取り合ったじゃん。」「オカマって言われて割と傷ついたんだぜ。」
「あの日ばっかりは飲み過ぎちゃうのも仕方がなかったんだ。シグレがひどいこと言うから。ボクはなんにも悪くない。」


     「 ─── だから、」「安心して。」「 ……… その時は、ボクの言葉に酔ってもらうから。」



【 ──── けれど月どころか、アポロ11号の再突入体がスイング・バイして金星まで吹っ飛んでいきそうな台詞を吐いた時、内心では濡羽色の先まで真っ赤に染まっていた。】
【どうしてこんな今どき3流ドラマの口説き文句でさえ聞かないような台詞を言えるのか自分でも分からなかった。こっそり能力を使って頬を冷やし、顔に出さぬが精一杯。】
【さっき飲んだチューハイのせいかもしれなかった。自分の言葉で酔っ払っているせいかもしれなかった。勢い余って饒舌になってしまったせいかもしれなかった。】
【然し思っていたより直ぐに、分かりきった答えは見つかった。 ─── スキだからなんだ。スキだから、こんなこと/あんなこと/どんなことだって、言える/痴れる/出来るんだ。】


854 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/22(水) 00:44:42 WMHqDivw0
>>853

あー、んんう…………? 言ったっけ、……言ったな、それで殺されかけたの覚えてる。
ごめんってば、もう言わない言わない……………………、んん、ん?

【言ったか言ってないかを思い出したら次に頭を物理的に冷やされたのを思い出す、なつかしい】
【そういや最初はそんなんだったっけ、紐をするする辿っていくみたいに連続して、あるいは】
【雑ーに仕舞われた思い出の抽斗をかたっぱしから開けて漁っていくようにして。いろいろ想起している、さなか】
【抱き締められる腕の中。なんかよくわかんないこと言われたな、って気分になる。顔を上げる、したら、】


…………………………ぷぁ、……っははははは! うっそ、何ソレ!?
もう酔ってんじゃん! ダメだよもう、今日はこれ以上飲んじゃダメだからね!
あっはは、ちょ、今のっ………………ははは、ふうっ……なあにそれ、ふっははは、…………、

【――――思いっきり笑った。最悪。でも多分、ここに来てから一番勢いよく笑っていて、きっと】
【恐怖のきの字も思い出せないくらい油断していた。だったらきっと「アレ」に付け込まれる隙は無い。だったら、】
【もっといくらでも、もっともっと油断できちゃう。だから次の行動はすぐとれた、抱き締められる姿勢から】
【さらに上体を前のめり。彼の肩の上に顎を乗せて、ふっと息を吹きかける。さらさらの黒髪を吐息でどかして】
【狙いはその向こうにある、かたちの良い耳。……そこまで冷やせてるだろうか。忘れてるんならきっと】
【「真っ赤だよ」とか茶化して。だけど――――愛おしい速度で距離を、限界まで詰めたなら】


  【 「しんぱいしなくっても、もうすでにベロンベロンだよ」 】


【あなたの耳に唇が掠めるくらいの距離で。悪戯っぽく囁いたら――――ぱく、と一回だけ、耳朶を甘噛み】
【そしたらぱっと逃げるみたいに顔を離して、にっと笑って見せるんだった。きんきんにツってることを気にしている目尻が】
【とろけるようにじんわり滲んでいた。薄紅色を纏って。……さっき言った言葉を、証明するみたいに】


  【 (それくらいすき、あなたが。とっくの昔に酔ってるの) 】


【――――もう手遅れなくらいにこいつも痴れ者だ。だったらもう、なんだって出来ちゃうし許しちゃう】


855 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/08/22(水) 01:52:23 WMHqDivw0
>>840
【それは苛烈に過ぎていく時間の中で一寸置いて行かれかのように静かな時間で有っただろう】
【男とサクリレイジは紛れもなく、あまねく虚神の敵ではあるが】
【だからと言って、この男に"何か"が出来る訳でもない】
【一種の茶番染みた弛緩した空気が流れることは否めない】

【だから恐らく、この二人が対面でこうして会話することなどこれっきりとなるのだろうから】


自身に役を与える脚本家と言うのであれば、君もまた似たようなものだと思うけれどね。
遺憾ながら私は、台本を書く才能も、役者となる才能もない。
せめても善き読者でありたいとは思うが――さて、それもどうか。


【ロールシャッハが示唆した二つの内容について吟味する】
【男の仕草はどこか事務的だ】
【機械的と言うのではなく、感情がくたびれたような姿でもある。だから、然して感慨も湧いていないのかと誤解されがちでは在るのだが】
【その実、深い思索に潜ることに、ただ本当にくたびれているだけなのかも知れない】


【――"蜜姫かえで"について】
【未だにジャ=ロが子飼いにしていることからも何らかの役割を持たせようとしているのは伺える】
【だがあの場において最重要だったにしては、ジャ=ロの扱いは幾分に雑だ】


彼女がマルタの戦いを生き残ったのは、結果論に過ぎない。
元々死ににくい能力者では有るが、その時の敵対者が、儀式の阻止と言う目的を放棄してまで蘇生に尽力し、それでも五分の賭けだったはずだ。
そして、その後においても、死地になりかねない戦闘を何度も見過ごしている。

彼女が何らかのピースになるとして、それはジャ=ロにとって取り返しのつかないものかな?


【そして、"スナーク"――イル=ナイトウィッシュについて】
【確かに彼女は短気であり、ジャ=ロの画策にいつまでも乗っていたとは思えない】
【しかし、同時に"白神鈴音"を神として顕現させることには、スナークの申し子らしく尋常ではない執着を見せていた】
【仮に、サーペント・カルトの試みが失敗していたのなら彼女は白神鈴音の存在を諦めたのだろうか?】


――視点を変えてみよう。彼の発言で腑に落ちない点はもう一つある。


【男は指を鳴らす。再び声が再生される。先程議題となった点の一歩後だ】


> ……!!!! 分かっているのか、その行いが……白神 鈴音を取り戻す手段を、永遠に失うことになる、と


【男は自身の米神を人差し指で叩く】


――何故、永遠に失う?
白神鈴音は不滅の魂を持った少女だ。
ここで失敗したとしても再び何らかの形でサルベージする方法が有ったとして不思議ではない。

ウヌクアルハイとしてあの場で定義できなければ、彼女はどうなったと言うんだい?


――少し話は逸れるが、ジャ=ロの報告書を見た人間の内、何人かはこの推論が頭を過ったのではないかな?
白神鈴音こそが、INF-005-1――"Neo"の行き着いた先なのではないかと。

【盲目の娘が、関係者と思しき不審な人物から聞き出した会話。白神鈴音はこの世界の因果から切り離されているのだと言う事実】
【それが"そのもの"でなかったのだとしても。彼女を触媒にして具現化させることが出来るのではないかと】
【それくらいに、件の"不死の少女"と白神鈴音には類似点が多かったから】
【だとすれば――ロールシャッハが今語った、スナークの試みを想定していたことにも、繋がることになる】


不滅の少女と、万能の神――この二つを掛け合わせることこそが、ジャ=ロにとって重要なのだとしたら。


856 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/22(水) 19:56:26 Dnp9kjSw0
>>849>>850


「 ……… だからこそ、よ。」「この作劇の結末は、不確実であるからこそ如何様な結果をも描き得るわ。」「奴の目論見を一先ずは打ち砕けたのもそれがため。」
「神の語る脚本に乗せられぬ事ね。その時に私たちは自ら未来を決めてしまうことになる。奴らを認識するのと同じように。 ─── 所詮彼らは、"神"を僭称しているだけなのだから」


【であれば女の反駁は同じ論点から行われた。凍り付いたピトー管がダッチロールに揺れるような前後不覚を征くのであれば、どのような希望も絶望も存在し得ると】
【されど他ならぬ彼らの筋書きによって、我々は自ら絶望を選ばされてきたのだ、とも。ごく婉曲した物言いであった。目的性からして分かり合えぬし、分かり合う気もないと言いたげだった。】


「とはいえ筋としてはどれも悪くない推論ね。 ……… 奴は確かに、"人類の為"に調和を齎すと壮語していた。」
「手前勝手な狭匙を焼くのがロールシャッハの目的なら、病魔さンとあの外道の目的は、ごく個人的な目標を達すること、かしら」
「 ……… 付け加えるなら、"あの子"の人格性は、貴方の知るそれとは大きく変容していたのでしょうけれど」
「単なるマクガフィンとは呼び難い自我を有していたわ。 ……… 或いは、彼女にもまた、"別の目的"があるのかもしれない。」


【だが互いの推論は凡その一致と諒解を得た。虚ろの神への刃の向け方についても、かえって新しい知見を得たような顔をしていた。】
【ごく長い白銀の髪を、青白い手指が弄する。両の指先を絡めて手を組む。思惟に耽っているサインのようだった。愁うような横顔が、「然して、」 ─── 言葉を続ける】


「死とは確かに恐怖の一因よ。 ……… けれど、時として世界には、死さえも懇願してしまうような恐怖が存在している。」「夕月と呼ばれた少女が与えられたものは正しくそうだった。 」
「貴方がどこまであの子への執念を抱いているのか知らないけれど、 ─── その観点から見た脆弱性へ、最も近い位置に貴方は立っているわ。 ………… 自分の覚悟を過信しないこと、ね。」

「彼らは多く人間の心理を熟知しており、加えて徹底して合理的よ」「 ─── 少なくとも、彼らの目的を達するに際しては。」
「今は見当もつかずとも、必ず理由は見出せるでしょう。僅かでもそれを見落せば、私たちは再び過ちを繰り返すことになる。」
「 ──── それでも私も、あの男は殺してやらねばならない。」「そこから先の貴方がどうするかに、最早あまり興味は持てないけれど、幾らかは用立つに吝かでないわ。」


【要らぬ忠言として響くに違いなかった。何を躊躇うことがある、乃公は躊躇わずに殺せる ─── 男の身であれば、誰であろうと斯く言うに違いなかった。それでも】
【狡猾な通暁と知性をもってして、彼らは策を弄するのだろう。あくまで決意と覚悟をもって臨むかの男を/女を/人類種を、冒涜の陥穽に落とし込むために。】
【然るに相互監視と表面的な協力は必要なことだった。 ─── ごく冷たく平たい声で、悲願を叶える事を手伝ってやってもいいと、女は言った。】


857 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/22(水) 20:47:19 Dnp9kjSw0
>>854

【あまい沈黙。キミの鼓動と呼吸を感じる。呪いがなんだというんだろう。キミは生きてる。世界中で誰よりも美しく生きてる。ボクが絶対に保証してやる。】
【 ─── そこまで浮かれたセリフは、今は、言わないけれど。何時だって言える心の準備があった。だから呆気にとられたような一瞬の沈黙も、限りなくバカに解釈して】
【もしかしてこんなクッサい言い回しが大好きなのかな、惚れ直させちゃったかな、そうだったら嬉しいな、 ─── 加速度的に広がる、オプティミズムの極致みたいな妄想は】
【ビッグ・クランチも陳謝する勢いで、集束して臨界して粉砕される。にまっ、と噴き出すキミの笑顔。自分のバカさ加減を把握した時には、もう遅い。】


「 ──── わ、」「わわ、」「わッわッ笑うなよおッ!?」「ボクだって一瞬懸命考えたのに、ぃ ……… ひ、ぁっ。」


【あんまりに無慈悲な笑いだった。堰き止めていた恥ずかしさが大決壊。我が後に洪水来たれ。反跳爆弾よろしく身悶えしたかった。けれど抱き締められていたんだから】
【溢れ出て止まらない恥ずかしさ(=嬉しさ)に、瞬く間に赤面してぎゃーすか喚き立てる。けれど肩口の顎先ひとつで抑え込まれるなら、キミの呼吸が濡羽色を吹き抜けて】
【 ─── ぞくっ。腕の中で震える。鼓膜まで真っ赤に違いなかった。頭の中が真っ白な多幸感に塗り潰される。女の子に扱われてしまうのは慣れていない。】
【ささめかれる言葉は意味を理解できなくても死んでしまいそうだった。数秒遅れて意味を理解したらいよいよもって破滅的だった。そしてクードグレースな甘噛みで、ボクは、完膚なきまでにトドメを刺される。】


「 ………… ばか。」「ばか、」「シグレのばかぁ、 ………… 。」


【 ─── 泥酔も良いところな酔い方をしたキミの紅い瞳を見つめるのは、目尻まで涙に潤んで上目遣いなボクの青い瞳。抱擁の中、はあぁ、と湿った呼吸を絞り出す。】
【ほのかに濡れた耳元が、不意にひんやりとして身を縮こめる。手籠めにされる生娘みたいな声しか出ない。(だったら)何だってしてほしかった。何だってしてあげたかった。】
【それでもボクは救いようもなくバカらしい。聞かなくても分かる幸せな疑問が口をついて出そうになる。でも、それを問うのは、もっと酔い痴れてからがいい。】


「 ───………… ボクだって、」「怒ったら、怖いんだからね?」


【だから今のところは怒っているということにした。 ─── 見つめ合う涙目のまま、ふるんと切なげに震えてしまう唇を尖らせて、キミの背中を肩を抱き締めて】
【ふッと刹那に瞼を落とす。あってもなくても変わらないような距離を殺す。「██。」幽かに漏れる呼吸の中、すべて塞いで奪う前に、きちんとボクは呟けたかな?】
【そうでなくたって今は怒っていた。 ─── だから伝わらなくても構わなかった。湿ったものが絡み合う音/伝えなくたって分かっていた。だってこんなに蕩けるようなキスは、"スキ"じゃなかったら、出来やしないから】


858 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/08/22(水) 21:45:17 ZCHlt7mo0
>>856

……当然だ、奴らは皆殺しだ。その事に……何の不都合があるよ……ッ!
俺は……自分の運命を『神』だとかいう連中に、預けちまった覚えはねぇ……殺すと言ったら、殺すんだ……!
俺にとっての『神』ってのは、『俺自身』しか居ねぇんだよ……!
――――「事を謀るは人に有り。事を成すは天に有り。終に長蛇を逸せり」ってな……最終結果を決めるのは、結局神すら超えた、世界そのものの、選択なんだよ……!

【奴らは神を僭称している存在に過ぎない、という理解は、男の方でも女と共通する感覚だったのだろう】
【だからこそ、全力で以って強大な敵にでも、襲い掛かる気概は萎えさせない。だが、その結果の吉凶までは、人の手の及ぶ領域ではない――――無論、神にも】
【虚神達が超常の存在であろうが、自分たちに対して、絶対的な優越性を持っている訳ではないというのは、既にこれまでの経過が証明している】
【その理解がある限り――――男の『復讐』と『知古の悲劇への、幕引きの試行』は、止まる事は無いのだろう。その決意は、その魂の内に、固かった】

……ハッ、てめぇの為を「人類の為」と言い張る……自分に自信のねぇ馬鹿が良くやる『過度の一般化』って奴だな……!
どうせ頭に『てめぇに都合の良い様に』って一文を、後からくっつけるんだろうぜ……!
……病魔、な……スナーク、だったか、それともイル=ナイトウィッシュとか言ったか? ……俺の仲間は、そっちにやたら執心してたな……仲間の仇、とか何とか……
――――マジに奴ら、一枚岩じゃねぇって事か……? ……まぁ、まさかな……『人類に味方する虚神』なんてのが、現れる筈もねぇか……あの傲慢ちき共じゃ……!

【虚神達の中に存在する綱引き。それを示唆する内容に――――そして、新たな虚神の名の認識に、男もふと考えこむ】
【彼らが求める、この世界の変容の最終形は、実はビジョンの統一を見ていない可能性がある。ならば――――虚神同士での相克という事も、有り得るのだろうか?】
【尤も――――人間など羽虫も同様と言う態度を共通させている神格が、虚神達である。そこに、前向きな希望を見出せるかと言えば、微妙なところかもしれないが】

――――あぁ、そうだよ……あいつは本来……儚くて、純真で、淡かったんだ……――――あんな、糞みたいな毒婦じゃなかった……!
――――っ、ふぅ……。――――だが、期待薄だ……明確に、ロールシャッハの野郎と、組んでやがったんだろ? ……不倶戴天の敵である可能性は、非常に高い……

【かつての『あの子』――――その言葉に触発され、男は再び悲壮な表情と言葉を吐露しそうになる。それを寸でのところで、深呼吸と共に切り替えて】
【既に明確な協力体制に入っている以上、エカチェリーナとロールシャッハは、かなり強固な連携関係にあるのだろうと、男は頭を振った】

俺が言うのは僭越だろうが……死を懇願するのは、正確には『恐怖』じゃねぇ……『忌避』、或いは『イド』と言うべきだ……奴の求める事としちゃ、同じなのかもしれねぇが……

――――あぁ、言いたい事は分からねぇじゃねぇ。けど……俺にはもう、他にやり様もねぇんだ……! 足元掬われる事……それすら、覚悟の内に含めなきゃならねぇんだ!
考える事は、放棄しちゃならねぇ……それも、分かってるつもりだ。思考こそ……奴らの喉笛を噛み千切る為の。最大の武器なんだからな……!

【己の執心を、敵に付け込まれる可能性。それは十分にあり得るだろう。この入れ込み様は、敵からすれば格好の『狙い目』だ】
【それを分かった上で、猶――――男は、もう止まる事は出来ないのだ。引き絞られた、その1本のラインこそが、彼にとっての戦力であり、原動力なのだから】
【――――とは言え、めくらめっぽう我武者羅に、というのは愚策だというのは、男にも分かっている事だった。要はバランスの問題である】

――――なら、奴の命は俺たちで山分けと行こうじゃねぇか……! そっちにも、譲れない想いってのはあるんだろ?
『誰』を舐め腐ったのか……精々思い知らせてやる……! エカチェリーナとの決着を邪魔しないんであれば、俺も必要以上の邪魔はしねぇよ……!

【ロールシャッハを巡る決着と、緩い形での対『虚神』戦線での協力体制――――そこに、男は簡単な条件を付けて、手を組んでもいいと答えた】
【互いに、殺したい相手を――――殺さなければならない相手を――――確実にその手で殺すために】


859 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/22(水) 22:21:11 WMHqDivw0
>>857

【数十秒間はずっと笑ってた。ときどき咳き込むくらいの勢いでずっと、「だって」とか言って】
【目尻に涙すら浮かばせて。ひぃ、と苦しげな息すら漏らす。完全に、爆笑していた。それにガソリン注ぐみたいに】
【真っ赤になって喚かれるものだから、それはさらにひどくなる。腹筋が引き攣れて死んじゃうかと思うくらい】
【大きな口を開けてげらげら笑っていた。たのしそうに。でもうれしそうに。…………笑って、】

――――――――――――録音しとけばよかった、はぁ、ふふっ、

【しまいにはそんなこと言う。……真っ赤なウソ、録音なんかしなくても、ばっちり鼓膜に焼き付けられた】
【きっと二度と忘れない。たぶん死ぬまでネタにする。そのたびこうして馬鹿笑いするだろうし】
【そのたびこうやって怒られるんだろうなって思うと――また笑いが込み上げてくる。だけどそれは、】


  【 「こわい。何されちゃうの?」 】


【粘膜質なキスで塞がれるなら音にならない。代わりになるのはぐちゃ、とかじゅる、とか、ロマンチックのかけらもない音だけ】
【ぴったり合わさらない、お行儀の悪いふたりの口の端から唾液がこぼれて垂れていく。顎を伝って、ぽたり】
【ついには輪郭の外まで落っこちちゃう。……これはまずいんじゃないかなって思う。だって服汚れちゃうし】
【(あたしの服はどうでもいいけどエーノさんの服は綺麗でかわいいやつだし汚しちゃいけないんじゃない?) ――思うだけ】
【抱き締められたら逃げられないんだから。どうしようもない。互いの服に点々と水玉模様が出来てしまって】
【だから彼女は、必死になっていた。こく、と時折嚥下の音を鳴らして。ぐちゃぐちゃに混ぜられた唾液を必死に飲んでいた】
【だってそうしなきゃもっと汚れちゃうから仕方ない。仕方ないんだからどうしようもない。しょうがないんだよ本当に、】

【(………………めちゃくちゃ甘い味がする気がしたからもっと飲みたいって思ったのはたぶん、錯覚。)】


…………………………………………ふは、っ

【いつごろ解放されるんだろうか。そもそも解放してくれるだろうか。わからないけど、とにかく、自由になったら】
【髪と目とあんまり変わらないような色合いをした顔が晒されるんだろう。息もぜいぜい上がっていて】
【顎はもう見るも無残、でろでろになっていた。たぶん瞳も同じくらいにぐちゃぐちゃに濡れている、そしたら】
【「ちょっと待って」って言って抱き締める腕を解こうとする。たぶん手の甲かなんかで拭おうとしたんだろう。だけど】
【怒られてるならきっとそんなの許されないんだろう。これだけ人をバカにしたんだから、それ相応の報いは、受けなきゃダメだ】


860 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/22(水) 22:50:50 Dnp9kjSw0
>>858

「 ─── 見上げた根性ね。」「貴方の認識は嫌いじゃあないわ。お互いに最後まで、その手の姿勢は保つことにしましょう。」
「同和は出来ずとも、助力は掠め取れるやもしれない。少なくともロールシャッハは、ジャ=ロを潰す為に先日の事件を画策した。」
「そしてまた、理解なんてものは概ね願望に基づく代物よ。相互的なら尚の事 ──── 蜜月とは、別れ易さの揶揄でもある。」
「それを信ずるにせよ、有るかも分からぬ僅かな思想の違いが、致命の訣別に繋がる可能性を祈るしかない訳だけれど ……… ね。」


【一頻り男の言葉を聞き終えてから、 ─── 静かな肯定と止揚を、女は付加していった。虚ろの神の強大さは彼女もまた身をもって知るところであった。】
【そればかりを頼みには出来ずとも、反目の見える仲であるならば、使わぬ手はないのだろう。少なくとも女は、死人の手さえ使えるのならば使う類の人種であった。】


「生憎とユングもフロイトも好きにはなれないの。ミルグラムもロールシャッハも宗教の類にしか見えなくて、 ─── 信じているのは、カリギュラだけよ。」
「マッドマン・セオリーに従っていきましょう。復讐という神格を持たぬ彼らに、それが如何に不合理で不条理であるかを、血の代償で教え込んでやるの。」
「私から伝えられるのは忠告のみよ。 ……… 貴方の内心は解らない。自分の感情には自分で決着を付けるがいいわ。」

「 ─── 血に狂った狼とて、他人の猟場に踏み込む愚行は犯さない。」「好きにするがいい。私もそうする。」
「けれど、"彼"の吸う息の根を止めるのは私の役割でないわ。 ……… 阻むのであれば、貴方も"きっと"同じよ。」
「背中を預けるつもりはないけれど、貸してやるくらいなら出来るかしらね。 ─── お互いに。」


【果たして潮の引くように、女は感情へと土足で踏み込むことを止めるのだろう。然るにやはり男へぶつけたのは、手心のない単なる激情に過ぎぬのかもしれなかった。】
【ふッと息を漏らすように笑うのだろう。人形と呼ぶには余りにも自然な破顔であった。 ─── 続く言葉は間違いなく流暢に嘘をついていた。やはり彼女は、真っ当な機械ではないのだろう。】


「怪我の具合は如何かしら。 ─── 死なない程度に加減はしたけれど、処置が必要なら出来る限りは与えてあげられるわ。」
「私はアリア。 ……… 夜の女王のアリア。名乗るべき名前はあるかしら、魔術師。」


861 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/22(水) 23:20:23 Dnp9kjSw0
>>859

【とにかく必死になって口付けをした。 ─── どうしてアリアはあんなに上手だったのか信じられない。伸ばしたものを交わらせていれば気持ちいいんじゃないの?】
【手探りならぬ舌探り。一生懸命に試してみる。頬、上唇、歯茎、前歯裏、とりあえず絡めてみよう、一緒に唇でも食んでみたらどうだろう、あっ前歯がぶつかっちゃった】
【角度や方向を変える度、そうでなくても兎に角なにかする度、生温かい唾液が口の間から溢れていく。ねっとりしていた。熱かった。なのに口から出るなり冷え込んで】
【お互いの顎先をどろどろに濡らしていく。 ……… ふと視線を遣れば、膚で感じている以上に酷い汚れ方をしている。やばいかもしれない。というか、やばい。】
【それでも互いにやめられない。ボクでもキミでも、ぐいッと突き放してしまったら其れだけで終わるに違いないのに。よくないよこれ、早くやめようよう、】
【 ─── 自分からやり出したくせに内心ではそう言っていた。それなのに内心では別のことを思っていた。ぼたっ、と音を立てて、シグレの服まで濡らしてしまう。】
【だから必死で啜った。そうしたら啜られる。 ─── びくっ、と震える。したら即座に同んなじ気持ちを味わってもらいたい衝動が湧き上がる、から。】


【(ファーストキスと同義だった。さっき2人で食べたハーゲンダッツの味が残っていた。そうに違いなかった。 ─── そう思わなければ、だって、収まりが付かない。)】



        「 ………… ぁ、ふ。」


【すれば何れは息が上がってしまう。 ─── 呼吸さえも忘れて必死だった。肩で息をする。互いの鎖骨ほど、濡羽色と真紅が混ざり合い、しっとり濡れてへばり付いていた。】
【恐ろしいくらいに顔が熱かった。顔面で得意料理のエッグベネディクトを焼ける自信があった。それでも見つめ合っているから、キミとボクの赤さ加減/蕩け加減、否応無く理解させられて】
【 ─── ボクが待ったら、キミは何をするんだろう。拭ってしまうなら、そんなの勿体ない。そういう感情が脳裏をよぎるから、抱き締める腕の力は弱められなくて】
【いつかの恋人にされたみたいに、或いはキミにとっては生傷を慰めるみたいに。目を瞑って、濡れたままの口先で、首筋から顎先まで、啜り上げる。(やっぱり、甘い。けど)】


       「 ──────…………… こわい?」


【 ──── ボクからやってしまったのに、今更すぎた。だって散々にキミは酷い事をされてきた。その愛おしい無垢な体に、汚い欲望をぶつけられてきた。】
【そんな奴らと同じになりたくない。そんな奴らと同じだって思ってほしくない。怯える目でボクを見ないでほしい。(なのにどうしようもなく愛してほしい。)】
【だのに聞くべきでない問いであり察するべき問いであるということをボクは理解していなかった。青い瞳の上目遣いがどういう作用を齎すか俯瞰視できていなかった。どこまでも最低な男だ。だってボクは男じゃない。】


862 : レグルス=バーナルド ◆auPC5auEAk :2018/08/22(水) 23:44:47 ZCHlt7mo0
>>860

……俺が信用するのは、有形力だけなんでな……神だからとか、偉いからとか、そういうのは俺にとっちゃ理由にならねぇんだ……!
神だから、人の生殺与奪の権を持つというなら、人としての力でそれを奪い返してやる……! そして神は……隙間に葬られる。人の手の及ばない暗がりにな……!

【かつて――――男はお上の理不尽の故に、全てを奪われた事があった。だからこそ、なのだろう。男にはアナーキズムの気がある】
【そんな彼の反骨精神は、元より因縁など無くても、虚神達の存在を気に入るはずも無かったのだ】

……ま、二虎競食から漁夫を利を得る事も、考えておいて損はないってか……確かにそりゃそうだ
奴らがボンクラ揃いであれば、一番ありがたいが……それでなくても、その一枚岩じゃないところに、付け入るスキはあるってか……?

【ロールシャッハとジャ=ロ。強大な2つの敵の間に見える不和――――確かに、まともに当たれば勝ち目は薄い敵として、そこは重要なウィークポイントたり得る】
【可能性としては、未知数としか言い様がないだろう。だが、それが自分たちの未来を拓く事に繋がるなら、確かに使わない手はない】
【――――こういう時、あの相棒ならよりスマートにその展開を導けただろうに、と、つい思考が死人を頼りそうになる】

――――へぇ、随分とがっちり、自分のルールを作ってるみたいじゃねぇか……ま、俺もそこには賛成するけどよ
合理性だけで、人間が図れるかよ……怒りという最大のエネルギーが、人間にとり、如何に不合理で、そして強力なのか……あんたの言う通り、叩きつけてやるよ……!

【自らの信を、こうもすっぱりと割り切るのは、珍しいタイプの人間の様に思う。ある種のハードボイルドの雰囲気すら、女から漂ってくるようだった】
【そしてその言葉は、まるで自分の心情を斟酌する様なものだった。血の代償――――不合理に求めるそれこそが、正に合理性を超越した最大の力なのだ、と】

……心配すんな、そこにも覚悟はできたよ……もう、ソニアは死んだも同然。今の『残骸』には、未練や憐憫は残さねぇ……

【先ほどの揺れを指摘していると、分かったのだろう。キッパリと男は宣言する。ソニアに未練を残さず、ただ敵として『エカチェリーナ』を討つ、と】
【実際――――まだ覚悟完了しているとは、言い難い所がある。だが、少なくとも、戦場で躊躇などの為に致命的な事態を起こす、という可能性は低そうだった】
【それだけの目的意識の強さを、既に男は養っていたのだ】

…………? まぁ良いさ……何となくわかった…………

【――――「"彼"の吸う息の根を止めるのは私の役割でない」「阻むのであれば、貴方も"きっと"同じ」――――何の事かとわずかに首をひねり】
【やがて、朧気ながらに理解した。どうやら――――『女』以上にロールシャッハを許せないと思っている誰かがいるのだろう、と】

っ、確かに……いい加減、鬱陶しいな――――――――ッ、ぐあああぁぁぁぁッッ!!
……っぐ……バルオー(命)・ログ(浸食)・ミル(慈愛)・ラン(レベル5)――――『マジックヒール』……ッ

【方の傷の具合に触れられて。一目くれて苦笑すると、男は左手の棍を地面に突き立て、手放す。そして空いた左手で――――折れ曲がった右肩を、強引に戻した】
【押し込まれ、よじりを強制的に戻される苦痛に、偉丈夫は流石に叫びをあげる――――と言うより、耐えるための叫びなのだろう】
【そうして、道を開くかの如く肩を元の位置に押し込むと、左手で自分の右肩をぐっと握りしめ、スペルを口にした】
【まばゆいピンク色の光が、肩を抑える左手の平から外へと溢れ、それが収まると――――グリグリと右肩を回す男の姿があった。どうやら、右腕は機能を回復したらしい】

……見ての通りだ。こんな傷に負けない体を、この4ヵ月、追及し続けてきた……俺は、レグルス、レグルス=バーナルドだ……

【今度は右手で、突き立てた棍を地面から抜き放ちながら、応える偉丈夫――――レグルス。ひたむきに、悲運の仲間の運命を清算しようとしている男の姿だった――――】
【女――――アリアの心配も、少なくとも傷に関しては、杞憂だった。同時に、魔術と棒術を同時に修めているその姿も、彼本来の、力強さを感じさせるだろう――――】


863 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/22(水) 23:45:24 WMHqDivw0
>>861

【かちかち鳴り響く音は何だったんだろう。前歯のぶつかる音? それとも何かの警告音?】
【どっちだってよかった、啜るのに必死になりすぎて。勢いよくミルクにがっつく餓死寸前の猫みたいに】
【ぴちゃぴちゃ音を鳴らした分だけ飲んでいく。最後の一口を呑み終えて、解放されたら、解放されたのに】

………………ぅ、んぁ、……くすぐったいっ…………

【垂れ落ちたぶんを啜り上げられると、ナニカが背骨を駆け上っていく感覚がした、ぞくぞくって】
【そしたら震える。押し殺したみたいな悲鳴があがる。あられもない吐息が零れる。触れられた箇所、ぜんぶ熱くなる】
【けどやっぱり嫌じゃないなら、続く問いにもぼうっとしてしまって。なんて言われたのかを数瞬考え込んだら】

いま、さら………………こわくないよ、……逆上せてるんだもん。

【唾液でてらてら光る唇が笑みの形になった、無意識。怖いわけなかった。だってあなたと一緒に居るのに】
【なんにも怖くないから大丈夫って言ってくれたのはあなたのほうじゃない。だから大丈夫、怖くない、心の底から想う】
【むしろもっと深いところまで来てほしかった。おそらく他人に対してこんな欲望抱いたのは初めてのことだった】
【あばかれたい。ひらかれたい。その先、奥の奥まで入り込んできてほしい。そこに一生消えない痕を残してほしい】
【きっとそれを「欲情」って言うんだろう、ということまではよくわからなかった。は、ともう一つ、大きく息して】


  【 「怒ってるんじゃなかったの?」 】


【――――挑発するみたいに。ここまで来てビビってるのはそっちのほうなんじゃないの、って、余裕綽々】
【怒ってるんなら最後までオシオキしてほしいし、そうじゃないならやさしくしてほしい。どっちだって、わりと、構わない】
【それくらいには何でもかんでも許しちゃえる気がしたから。最後の一線、立ち入り禁止の部分まで踏み込まれたって】
【許しちゃうから。だからこっちに来てほしい、――――それで一生抜け出せなくなってしまえ。恐ろしい呪いを願いながら】
【また両腕を伸ばした。今度はぎゅーして、じゃなくて、だっこして。それで「丁度いい」場所まで連れてって、ほしかった】


864 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/08/23(木) 00:08:39 WMHqDivw0
本スレ >>434
君に倣ってキルケゴールを例に挙げるならば、"沈黙のヨハネス"を気取っているのかも知れないな。
不条理はスナークの象徴たる領域だと言うのに株を奪ったものだ。

【盲目的に神に従うことで、倫理や道徳すら放棄する姿に信仰を見出されたアブラハムのように】
【その盲信と妄信を試したと言うのだろうか】
【男は苦笑いを示した。キルケゴールは神の意志を否定した人物だ。それを神を称する者が語ると言うのは何とも皮肉が効いている】

まぁ、それでも分かった。
ジャ=ロの性格――ここは敢えて"人格"と呼ぼうか。
"人格"は最適解だけで成立するものではない。一種の運命論を好むような要素が見えることは否定はしないよ。
平たく言えばロマンチストと言うことかな。

ならば、ジャ=ロが神を気取って与えた試しを乗り越えた折、やはり何かの役割を与えるつもりなのだろう。
それが、必須と成り得るかどうかはまだ、分からないけれど、席を空けて待っているのだろうさ。


【ここまでの準備を整えたあの男であれば、急な配役を差し込むことも造作もあるまい。より物語を悲劇的に彩るためには、最適な人材ではあるのだから】


さて、ジャ=ロがそこまでの台本を用意できる器であるか――その手腕は君の方が詳しいのではないかな?
先程の表情を見る限り、立場はともかく、"馴染み"では有るように見えたからね。


だが、逆に問いたいところだね。
彼がスナークの試みを利用するつもりでなかったのなら、何故ジャ=ロは彼女をサーペント・カルトに迎えたのだと思う?

スナークは君も言ったように短気であり、白神鈴音に執着する点においてジャ=ロとは対立している。
その上、ウヌクアルハイと言う蛇の神自体には、何ら興味がなかった。


むしろ儀式の成立において、危険因子とも言える彼女を、ジャ=ロは自ら招き入れたのならば――その目的など限られていると思うけれどね。


【男の推論はパズルを組み立てる絵柄を手繰る行為にも似ていた。頭を然程使う話でもない】
【それはピースが組み上げられるかを思索する、気の長い行為だった】
【一つが組み上がったと思えば、また一つ惑うように、中々に手応え感じているようでもあって】


その推論が通るとすれば、ジャ=ロは別に世界を滅ぼす必要はないのだけどね。
しかし、ジャ=ロは世界を滅ぼそうとしている。
理由については――多過ぎて絞り切れない、と言った具合だ。


【男はそこで、ふと、思い出したように喉で笑った】
【至極愉快そうに、くつくつと】


実に、面白い話じゃないか。
今正に世界を滅ぼそうとしている悪辣の化身が――死を象徴し、かつての世界を滅ぼした"残酷"の名を冠する遺伝子の集合体が。

これより先に能力者達が迎える現実を、"不幸"だと言ってのけた。

彼は或いは、僕や君よりも余程人間らしいのかも知れないよ。


【一頻り、一人で笑った後、男は話の軌道を戻す。少々余談が過ぎた】


理由は分からないが、これらの推論を下敷きにすると、ウヌクアルハイと白神鈴音を使った試みは失敗すればジャ=ロに取って簡単にやり直せるものではないらしい。
"ウヌクアルハイを殺す"と言ったね?

万能の神として認識され、今では不滅の少女の魂を宿したモノを、どうやって殺すと言うんだい?


865 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/23(木) 01:07:14 8WuC2k1.0
>>863

【啜り上げる唇の隙間から微かに舌先の離れる刹那、 ─── 末梢神経の奥底から、キミが慄然とするのを感じた。漏れ出た悲鳴が鼓膜に絡みついて焼けついて離れない。】
【ぞくっ、とした。そうしてボクも、解ってしまった。肚の奥底も奥底、堪えられない粘液質と電解質が、カルーアと一緒にステアされて熱反応に沸騰する感覚】
【オンナの顔をしたってアイツは狼みたいなものだった。だったらボクだって狼になっていい。隠してるキタナイ漿液なんざ全てリビドーにブチ撒けてしまえと初めて思った。分析心理学のかけた枷が外れる音がした。】


「 ………… よかった。」


【だからキミの笑顔がペルソナの産物なんかじゃないって一瞬で分かった。自分の卑怯な問いが卑怯な答えを生まなかった事への感謝は、神様になんて宛ててやらない】
【キミに呪ってもらえるなら、ボクは喜んで墓荒らしになろう。ファラオのマスクはもう要らない。非破壊検査ができるほど、ボクは口も手先も器用じゃない。】
【 ──── まして嗤うように誘(いざな)われたなら、ボクだって黙っちゃいられないんだ。困ったような笑顔で返して、けれど今から、ボクは優しくて残酷なことをする。】



「 ────── 一言、多いんだから。」



【腰と背中に手を回す。ぐいッと力を入れて、お姫様だっこ。アリアが昔よくやってくれた。ボクにだって出来ない訳じゃない。】
【塞がった手の代わりに、壁に身体を擦り付けて電気を消す。ふッと部屋中に暗闇が降り積もる。サイドテーブルのランプだけが淡い暖色に光り、まるで別の世界に誘うよう】
【折れそうに軽いキミの身体を、ふわふわのベッドに下ろしてやる。ストラディバリウスを仕舞うとしたってこんなに丁寧にしてやれない。キミは世界で一人だけだから】
【 ─── そうしたら、夏物なのに羽毛感たっぷりなシーツの上に、自分の膝を乗せる。ワンピースのリボンを解いて、一思いに膚を晒して、ベッドサイドに脱ぎ捨てる。】
【清々しいくらいに純白と純潔を主張するランジェリーは、けれどボクの地肌の色には叶わないって自負している。膝立ちのまま、見せつけるように両腕を上げて】
【知ってた?  ─── 首から下、ボクの体には産毛しか生えてないんだ。ほんとだよ。ほんとだってば。だって、今からキミに、教えてあげる。】


    「 ……… シグレ。」


【糸の切れた人形のよう、 ─── すとん。キミの体へ、しなだれかかる。キスに湿った声色にて、そっと名前を呼ぶ。しっとり濡れたシャツの裾へ、指をかける。】
【ベッドランプさえ消してしまったら、カーテンの隙間から射し込む、淡いネオンの輝きだけがボクたちの世界を照らす。けれど、何んにも怖くないんだ。秘密にするような花園なんて知らないけれど】
【ボクはここにいる。キミはここにいる。重なる互いの体温と膚と柔らかさと温もりと鼓動と滴る粘らかさと闇に輝く瞳の潤いと唇のてらつきと何度だって呼び合う囁きが、必要なことは全て教えてくれるから。だから】



        あいしてる。



【ボクは、ただ、キミに】【████を誓う練習をする。】【この夜が明けなければいいと、荒げた呼吸の中に願いながら。】


866 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/23(木) 01:34:52 WMHqDivw0
>>865

【本当に怖くなんてなかった。だって今更。膜の破れた日付なんて覚えてないし、何回「こういうこと」したかも】
【覚えてない。なんにも。覆い被さってきた男の顔ひとっつも覚えてやる気もなかったし、何をされたかもあんまり覚えてない】
【ただ痛かったのと、そのあとは圧迫感と異物感しか感じたことなかったし。だから思い出に残すようなものなんてなにもない】
【――だからこれがきっと「はじめて」。そういう意味で、緊張はしてたけど怖いはずなんてなかった、だってあなただもん】

【背中がやわらかいベッドに付けられて。暗転する室内、吐息と衣擦れの音だけやたら大きく響く気がした】
【うすぼんやりとした明かりの中で見えるあなたの姿にやっぱりちょっと混乱しちゃう。だってあんなにきれいな顔してるのに】
【男の人なんだもん。たぶん明るい中で見てたらもっと混乱した。慣れる日は、……来るんだろうか、わかんないけど】

………………は、ぁ、う、

【――――、――いつももっと煩いのに。いざ始まると、彼女は押し殺したような声しかあげようとしなかった】
【戸惑っているようだった。こんな触られ方したことないって顔してた。あるいはこんな感覚知らないって顔】
【「はじめて」だから当たり前なんだけど。何かされるたびびっくりしたように腰が逃げて、きゅうと眉根が寄って、】
【そんなだから、やっぱり怖いのかとかやめようかとか、訊かれるんだろうか。……だけど彼女の答えはひとつだけ】
【数秒間沈黙して俯いたあと――――「やめないで、もっとして」。潤み切った上目遣いを添えて、強請ってくる】

【――――――――、】

【揺らされるたび鼻にかかったか細い泣き声を上げる。悲しいことなんてぜんぜんないのに。不思議で不思議で仕方ない】
【名前を呼ばれるたび、愛してるって言われるたび、なんとか応答しようとするのに上手く呂律が回らない。困っちゃう】
【でもひとつだけ、……焼き切れそうな脳回路がちかちか、スパークして爆ぜる直前。どうしても言いたいことがひとつだけあって】
【それだけはぜったい言葉にしようと思っていた。ぎゅうっと腕であなたの首を捕まえる。脚でも、あなたの細い腰を捕まえる。そしたら】
【めちゃくちゃ頑張ってなんとか上体を起こして、さっきしたみたいに耳元、ささやく、――――あるいは泣き言みたいな音色で】


                                   だしちゃっていいよ。


【「どうせ赤ちゃんできないし、」(…………どうせだから一番奥に痕を残していってほしいの。)】

【………………言ったらこれ、怒られちゃうかなあ。そう思ったのは、視界が真っ白になってく錯覚の向こう側で、ぼんやりとだけ】


867 : 1/4 ◆3inMmyYQUs :2018/08/23(木) 11:49:52 GQoYu22s0
>>848の続き)



【────────────俺がそこに乗り込んだとき、】

【目の前にはまったくクソッタレなセットが出来上がっていた】
【どうやら一番出遅れたらしい。くそ、もっとタフで馬力の利いたバイクをかっぱらってくるんだった】
【ピアース・ブロスナン(あれも『五代目』だったな)がサイゴンでぶっ飛ばしてたBMWのボクサーみたいなやつをよ】


【──既にスクラップにされている一台目、】
【──鼻の潰れたダックスフントみたいな二台目、】
【と来れば、俺のこいつで三台目ってところか】

【オーケイ、『前座』は十分なようだな】

【──どころか、もう『前奏』は始まっちまっているらしい】
【あの汚ねえオヤジのケツよりも真っ先に、アンタのキレた笑みの端が見えたのさ】

【イカれてるぜまったく──そいつが『マスター盤/Origin』のジャケットってわけだ】

【既に刻まれ始めているビートに合わせて、】
【挨拶代わりのガンファイアを二拍ばかり叩き込んでやった】
【映画みたいに上手く当たりゃしないが、44口径のボイスはヤツらのケツ穴を縮めるには十分だろう】


【────「待たせたな」、】
【なんて言うのは俺じゃない、アンタの方だ】


【俺は──いや、『俺たち』はずっと待ち焦がれていたんだ】
【コピーやカヴァーじゃねえ生音源、ハートをブルつかす本気(マジ)の一発を】

【────『本物』の “ロックンロール” を】




【だからこうして交わっちまった、未来も過去もブチ抜いて】
【難しい理屈は分からねえが、本気で歌えば壁なんか簡単に壊れちまうってことだ】
【少しばかり色気の足りないステージだが、野外なんてこんなもんだろう、さあ撃ち鳴らせ】




【 始めようぜ──────『ウッドストック』 】



/↓↓


868 : 2/4 ◆3inMmyYQUs :2018/08/23(木) 11:50:48 GQoYu22s0
>>843

【──探偵の目ならば真っ先に捉えただろう】

【そのとき、搬入口の入り口へ、一台のバイクがタイヤで地を切りつけながら滑り込んだ】

【膝が接地するほど車体を傾けて、鋼のじゃじゃ馬を駆るその人物は──】
【これまでここに現れたどの闖入者よりも奇妙な装いとして映るに違いなかった】


【──季節外れのトレンチコートが裾をはためかせ──(暑くないのか?)──】
【──くたびれたボルサリーノハットを片手で押さえながら──(バイクなのに何故被った?)──】
【──聖母を象った銀のネックレスが首元に揺れる──(一度でも教会で真面目に祈ったことはあるのだろうか?)──】


【冷静に観察する眼があるなら、どこか板に付かない奇妙なちぐはぐさがあったが】
【しかしまるでそれが何かの礼装であるかのように、ある種の熱意すら滲ませて纏う者であった】


【──アクセルが捻り込まれ、タイヤが白煙と共に甲高い叫びを上げる】
【急コーナリングに際して傾いていた車体が起き上がり、探偵たちの居る方へ直線で突進する】
【途中、その片手に握られていた銀のリボルバーが、鉄塊の男へ向けて二発ほど火を噴いた】

【ただし着弾したのはそれぞれ地面のアスファルトと、スクールバスの側面】
【突如と訪れたその疾駆音と銃声によって、鉄塊の男の視線と意識がバイクの方へ向く】

【構わず突進するライダー、その目元はハットの鍔に隠されていたが】
【ただ口元は不敵に笑み、そして僅かな刹那にこう呟く動きを見せた】



【「始めようぜ──────『ウッドストック』」】



【奇妙が再び起きた】
【謎のライダーの後方で、いくつか蜃気楼が立ち上るような揺らめきが起こり】
【それら空間の波紋の奥から、また新たな人影が──それも次々と、大挙して現れた】


【── 一人、また一人、そしてまた一人、と】

【──人数にしてざっと十、いや二十近くを数えるだろうか、】
【姿も背丈も年齢も──あるいは性別さえも──異なる謎の集団であった】

【多種多様な彼らの中にしかし唯一、共通点と言えるものがあった】

【──ある者はトレンチコートを、ある者はボルサリーノハットを、】
【またある者はラクダ印のパッケージのタバコを取り出して咥え、】
【またある者は二丁のリボルバーに銀の聖母のネックレスを身につけて】
【──中にはそのうちのどれもない、ヒッピーのような装いの者たちもいたが──】

【要するに、“似て”いた──部分、部分で──《チンザノ・ロッソ》に】

【彼らが意図してそうしているのか、あるいは単なる偶然なのか、】
【それはまったく判然とはしなかったが──】


【とにかくその出現と同時に、場は一気に合戦の様相を帯びた】
【軍勢はみな一様に昂揚と使命感の光を瞳に宿し、そして吠え猛った】
【銃声、鬨の声、排気音──打ち震える空気の中、全てのシーンが一斉に動き出す】


/↓↓↓


869 : 3/4 ◆3inMmyYQUs :2018/08/23(木) 11:52:10 GQoYu22s0
>>843

【《チンザノ・ロッソ》の軍団はめいめいその手の銃砲を撃ち鳴らす】
【銃弾の雨あられの中、鉄塊の男は舌打ちしてバスの陰へ身を隠した】
【突っ込んできていたバイクは急ハンドル、後輪を滑らせながらUターンし】

【同時にバスの中から破落戸の風情をした手下たちが大勢吐き出された】
【それぞれの手に持った突撃銃を軍団へ向けて震わせる】
【鈑金が爆ぜ、ガラスが弾け、薬莢と血漿が飛び散る。ライダーが叫んだ】


〈──聞こえるかよ、リボルバー・ジャンキー!──〉
〈──詳しいことを考えてる暇はねえ、感じろ!──〉

〈──汚ねえオヤジの世話ぁこっちに任せろ──〉

〈──あんたは『ボンド・ガール』を──!〉


『おいおい……
 今さら『海賊版』どもに用はないぞ────

 ──急げ、ソネーウェ、下校の時間だ』


「はいは〜い、今終わりますよお」


【暗黒のワームホールはそのままに、鉄塊の男が銃撃の嵐の中へ平然と躍り出る】
【さながら休日のバッティングセンターに現れた元プロ打者のように、悠然と鉄塊を構えると、】
【ぶン、と横一文字にフルスイング──その歪な鉄塊が、あろうことか銃弾のいくつかを叩き据え、そして“打ち返し”た】
【まるで馬鹿げて、しかし無慈悲に跳ね返った弾丸が軍勢の何人かを貫き、その場に崩れさせた】


〈──嘘だろ、おい、漫画か! ちくしょう、怯むな!──〉
〈──雑魚を減らせ! デカブツは俺が引きつける!──〉

〈───撃て、撃て、撃ち鳴らせ────!〉

〈──ビビって『俺たちの名前』に泥塗るんじゃあねえぞ! ──ハイヨー! シルバー──!!〉



/↓↓↓↓


870 : 4/4 ◆3inMmyYQUs :2018/08/23(木) 11:53:08 GQoYu22s0
>>843

【一方──探偵にとって注視すべきはこちらだが──ドアの中では、】
【〈婦警〉の手が既に少女の腕を固く押さえ込み、もう片方の手に持った注射器の針を肌に添えていた】
【丸眼鏡の奥に据わった瞳が、他の何に動じることもなく凝然と少女の姿を映していた】


「──もう大丈夫ですよ。
 戦わなくていいんです、苦しまなくていいんです。
 わたしたちが全部全部、無くしてみせますからね──戦争も、病気も」


【まるですぐ傍らの狂騒が存在していないかのように、】
【その二人の周囲だけが絶対的な静謐に包まれていた】

【宙空に横たわる少女は、今や風前の灯火のごとく意識を朦朧とさせ】
【それでもたった一つの柱へ縋り付くように、探偵の姿を眼の端に映していた】


【少女は見た──彼が屈さずに立っていたことを】
【最早視界はぼやけていてどんな表情までかは分からなかったが】
【まだ、そこに立っている──確かにわたしを見ている。たった一つのその小さな事実が、】
【他のどんな言葉よりも強固に、少女の意識を崖っぷちにしがみつかせていた】


(──────────………………ぁ、)


【────近いような遠くの方で、遠くのような近いところで、】
【何か、勇ましい鬨の声が聞こえた。魂そのものを削って張り上げているような】

【その銃声のリズムと、雄叫びの反響は、混濁する意識の中へ一つの旋律として届いた】
【胸を打つビート、身体の芯を揺さぶるラウド──それはいつかどこかで聞いたミュージックによく似ていた】

【────紛れもない、『ロックンロール』だった】



【──その瞬間、注射器の針が膚に食い込んだ】
【〈婦警〉の手によって無慈悲に、中の薬液が押し込められていた】

【少女の身がびくりと跳ねて、瞳孔が収縮し、掠れた悲鳴が上がった】



【──が】


「────あいてゃっ!?」


【少女の悲鳴以上に調子の高い声が上がった】

【──針が刺し込まれたその僅かな一瞬、】
【少女は残った体力の全てを燃やし尽くして身を捻り、〈婦警〉の腕へ、がぶりと噛みついたのだった】

【その渾身の不意打ちに〈婦警〉の身が跳ねたと同時、】
【彼女らを覆っていた念力のドームが消えて、シヲリの身も糸が切れたように地へ落ちる】



【それは本当に一瞬の隙】
【二度とは起こらないであろう最後のライヴ】

【壁に穿たれた一発の弾痕のように小さいその突破口を、】
【この刹那で全てこじ開けて、未来まで繋げなければならなかった】

【──探偵の身が、心が、まだ弾丸を絶やしていないのなら】


871 : ◆zO7JlnSovk :2018/08/23(木) 20:47:57 X3rE.Hpo0
>>864

【──── 沈黙は肯定に似ていた、ならばその所以は辿るべき道筋の如く】


さぁどうだろうね、馴染みであるかは分からないけど、少なくとも似たもの同士とは思うよ
僕も彼奴も同じ舞台を演出する立場を好む、その正しさは謀らずとも
ただまぁ幾分か、彼奴の方が芝居がかっているという点では、キミの言うとおりだろうね


【続く問いに関しては確信があるのだろう、唇の端をつり上げて笑う】


──── "白神 鈴音を主格に添える為" だろう? 知ってて言わせるだなんて、随分人遣いの荒い事で
ヒトデナシには十分な配役かもしれないけどね、此処に関しては僕の推察は揺るがない
スナークの描いたビジョンを、ジャ=ロは看破しつつ、それを看過せしめたのだと答えようか


【ロールシャッハは少し、虚を突かれた様な表情を見せた、笑う男の姿に────】
【それは正しく異様であった、異形ではないその姿に、微かな戸惑いを見せつつも】
【言葉を辿るその道筋に恐れはなく、ただあるがままにも思えた】


──── 何処までも脚本家を気取る姿は、些か気に入らないけどね
奇しくもキミの言ったとおりだ、ジャ=ロは何処か運命的な企みを好む
それはまるで、少女が夢見る様なお伽噺の様な迷妄であったとしても


【一呼吸を置いた、ロールシャッハは脚を組み直す。載せた掌に熱が籠もる】
【前髪から透ける双眸が真っ直ぐに貴方を捉えるだろう、それは再認識させる様に】
【曰く──── 自分が何者で、貴方が何者であるかをはっきりさせる為に】


分かってないなぁ、サクリレイジの長ともあろう存在が、僕達を最も正しく認識しているのは "キミ" だろう?
それとも、知ってて敢えて言ったのなら、──── まんまと僕は策に嵌った訳だけど

僕は "虚神" なんだ、僕の手元にある恐怖は、即ち現実の恐怖に他ならず
例えそれが万物の神であろうが、不滅の少女であろうが、そこに等しく価値なんてないよ

その点で言えば僕の力はジャ=ロやスナークなんか目じゃないのさ、近寄る事さえ許さないから


【ロールシャッハは改めて自身の能力について記してみせる、それはある種の驕りに近い】
【ボスならば推察出来るはずだ、ロールシャッハが何故ジャ=ロを目の敵にしているか、さえも】
【──── 結局の所、その精神に恐怖が存在しない点こそが、大きな理由なのだろう】


故に "恐怖" を煽らなければいけない、その方法論については詳しくは述べないけど
少なくとも、誰よりも白神 鈴音を信じ、それを失う事に恐怖する存在がいれば────

──── 僕は神様だって、殺してみせるよ


872 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/23(木) 21:00:55 Dnp9kjSw0
>>862

【ごく小さく女は首肯した。 ─── 他人に伝える仕草ではなかった。憂いを帯びた顔立ちは極めて内省的な一面を有していた。】
【「我々の同胞にも"それ"を狙っている者がいるわ。 ……… 貴方も、考えておいて損はない。」憎むべき神を殺したいのならば。その面において、彼女は合理主義者であり】
【そしてまた自身に対する敬虔な原理主義者でもあった。時として冷酷な裁決を躊躇いなく下せるのは、機械の体であるが故なのだろうか? ─── 否。】
【やはりそれは男と同じ、ひとつの覚悟の産物であるのだろう。己れの友誼と矜持を何よりも重んじて貫徹する。そうでなければ、誰が殺しなど鬻げるものか。】


「 ─── 素のままの身体で、良くやるものね。 ……… その神経、嫌いじゃないわ。」
「レグルス。 ……… 覚えておくわ。その顔も、その声も。」「その行く先が違わぬ間は、力となりましょう。」


【そうしてまた、 ─── 聞くも震えるような呻きと引き換えに自身の傷を癒した男の姿から、彼女は決して目を背けなかった。】
【無感情な顔貌に感嘆の色を浮かべていた。あれほどの挫滅を瞬息にして消し去ってしまう姿は、いっそ非人間的さえであった。】
【であるのに彼を内裡から突き動かしている感情はごく人間的なものに違いなかった。ふッと息を漏らすように、女は淡い色彩の頬を緩ませた。そうして、】


「せめて志の半ばに倒れぬ事ね。 ─── 貴方だけの選択であるのなら、貴方の遺志を継げる者は、世界のどこにも居やしないわ。」
「さようなら、魔術師。」「 ……… きっと貴方に、義足は似合わないでしょうから。」


【 ─── そう言い残して、ひらりと片の掌を振れば、女は"跳んで"行くのだろう。コンクリートの地面を踏み割って飛び上がり】
【街灯の上を足掛かりとして、摩天楼の光に溶けてゆく。凡そ真っ当な人間の脚力では有り得なかった。何故ならば、きっと彼女は"ひとでなし"であり ─── だからこそ。】

/こんな感じでシメでいかがでしょうか…!


873 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/08/23(木) 21:14:14 ZCHlt7mo0
【――――水の国 海岸】

ぅ、うぅっ! ――――っく、ぁ、う――――ッ!

【ラベンダー色の肩ほどまで伸びた髪で、赤と青のまるで死人の様な冷たいオッドアイを持ち、体表に紋様の様な、仄かな光を放つ金色のラインが走っている】
【白いワンピースの上から、明らかに身の丈に合っていないボロボロのコートを着込んだ、10歳くらいの少女が】
【眼下に海を臨む断崖の前で、蹲る様にして忍び泣いている】

【暗い海は、全てを飲み込んでしまう様な不吉な気配を湛えており、荒々しく波が崖へと打ち寄せ、そして砕けていく】
【その潮騒の響きは、崖の上へも十分に届いていて、少女の泣き声とコントラストを表していた】

【その身からは、尋常ならざる量の魔力が感じ取れるかもしれない】

ぅ、ぐっ――――ご、ごめんなさい――――こんな、無力で、役立たずで、ん、ぇっ――――ごめん、なさい――――ッ

【号泣、と言っていいのかもしれない。声を震わせて、涙を流して、ただ後悔と、誰も聞きとめない謝罪の言葉を織り交ぜて、少女は泣いていた】

【その崖の先端――――誰も気にも留めないそこに、こんもりと大きな岩が鎮座していて】
【そしてその岩には、こう彫り込まれていた――――『アルク=ワードナール ここよりの海で眠る』――――】


874 : ◆zO7JlnSovk :2018/08/23(木) 21:27:45 X3rE.Hpo0
>>873

【──── 微かな足音だけを響かせて、彼女はその場に現れる】


こんな所で子供の泣き声が聞こえると思いましたら……そういう訳だったのですね
知らぬ御仁とはいえ、亡くなった方を思う気持ちに、私も微かな覚えがありますわ
失礼でなければご一緒させていただいても宜しいでしょうか、可憐なお嬢様


【紫苑混じりのプラチナブロンドの長髪を、シニヨンでセミロングの長さにまで纏めて】
【胸元の膨らんだ、袖の無い白のハピットシャツの上から、素肌を透けさせる黒のレースのカーディガンを羽織る】
【シャツのフリルの上には黒いリボンタイを垂らして、ミニ丈のフレアスカートから黒いストッキングを覗かせる】

【紫苑色の双眸に理知的な眼鏡を掛けた姿は、瀟洒な貴婦人を思わせるだろうか】
【両手を包む白い手袋、袖口から覗く素肌の白と溶け合う様に、そして────】


【貴方ならば見覚えがあるかもしれない、彩る紫苑の面影を────】


875 : レグルス=バーナルド ◆auPC5auEAk :2018/08/23(木) 21:32:58 ZCHlt7mo0
>>872

(……誰にくれてやる訳にもいかねぇ……ソニアは、あいつを――――そう『救う』のは、俺の役目だ……エカチェリーナを殺すのは、俺の役目だ……!
 ――――そうだよな、アルク……)

【アリアの、小さく頷く様をみながら、レグルスも内心に、自らの想いに馳せていた】
【――――ソニアは、もういない。何度も口にしているそれを、もう1度胸中に反芻させる。何度も己に言い聞かせて、そうして覚悟を強固に固めていって】
【そうやって――――エカチェリーナに対する殺意の『元手』とする。悲しみに身を浸すのは、今日で終わりだ――――ここからは、復讐と終焉を考えなければならない】

――――お前の言う通りだったんだよ。いい気になって、俺を、俺の人生を見下す奴は許せねぇ……だからこその、この力だ……!
……だからこそ、こんな風に折れた程度で、止まってやるわけにもいかねぇんだ……マジに、腕がもげても、俺は許せねぇ敵は許さねぇぞ……!

【涙にくれ、酒に浸っていた彼の姿は、あくまで一時的なものに過ぎない。そこを通り過ぎれば、レグルスは強く張り詰めた意志の持ち主だった】
【力を持ち、常に高みに至る事を目指す――――その過程で、自分を阻むものは許さない】
【――――彼の人生を散々に踏みにじる形になった、虚神達に対する怒りもまた、然りである】

おぅ、俺の方も、忘れはしねぇぞ……お前こそ、くたばるんじゃねぇぞ!
奴らを許せないって思うんなら、その魂のある限りに、許すんじゃねぇぞ! ……これ以上、何も奪わせるな――――!

【別れの言葉に、自分もそれを返しながら、レグルスはふと、最後に一言を付け足す】
【――――アリアの身体。それが真っ当な人間のそれではない事に、ふと思いを馳せたのだ】
【自ら望んで、あんな体になる変人は、そう多くはないはずだ。自分の知ってる「もう1人のサイボーグ」も、そうらしかった。だからこそ彼女もまた、かつて「奪われた」のだろう】
【そうした敵が、再び世界に牙をむいている――――だからこそ、己自身さえも、敵に奪わせてはならないぞ、と――――】

――――待ってろ、アルク、ソニア――――俺は、必ず奴らの首を、お前らに捧げて、慰めとしてやるからよ――――!

【ふと視線を落とすと、足元には先ほど、アリアに差し出されたウィスキーの瓶。いつの間にか、足元に転がっていたらしい】
【かろうじて残っていた最後の一服を豪快に喉に落とし込むと。真っ直ぐに視線を上げて、レグルスは歩き始めた】

【――――もう、希望など追いはしない。ただアルクとソニアの「敵討ち」――――それだけを胸に秘めて】

/はい、お疲れ様でしたー!


876 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/08/23(木) 21:41:28 ZCHlt7mo0
>>874

うぅっぐ――――ぅ――――わ、私のせいで――――ッ!?

【ただひたすらに、涙を流し、己の後悔と慙愧の念を吐き出そうとしていた少女】
【しずしずと、背後に近寄る足音に気づくのは、いささか遅れて――――声を掛けられて初めて、ハッと顔を上げた】

ッッ――――あ、あなたは――――!?
わ、私のは、違います――――私のせいで、この人は、死んでしまったんです――――私が、迂闊だったせいで――――!

【ボロボロのコートと共に身を起こして、少女は真っ直ぐに現れた女性と相対する】
【共に弔ってくれるという、その言葉に戸惑いつつも――――少女は、己の引け目を口にしてしまっていた】
【――――ここに葬られた死者は、自分のせいで死んだのだ、と――――そして、そこから先は言葉にはしなかったが――――だからこそ、自分だけの弔いなのだ、と】

(――――っ、あ――――あれ――――ッ?)

【涙をぬぐい、フルフルと頭を振って、真っ直ぐに相手を見据えた時――――少女は微かに、それまでとは趣の異なる戸惑いを見せた】
【何か――――知人の面影を感じた様な気がしたのだ。その印象は遠いが、なぜか――――妙に想起される、そんな印象がそこにあった】


877 : ◆zO7JlnSovk :2018/08/23(木) 21:56:55 X3rE.Hpo0
>>876

【──── 彼女はゆっくりと歩く、まるで時の流れを感じさせないほどに悠然と】
【そしてそれは姫君の戯れに似ていた、一面に咲く花畑を前に、身を預ける様相に似て】
【ただひらりひらりと胡蝶の如く、白波を薙ぐ作用に近くて】


私には分かりませんわ、貴女様に何があったのか、この御仁が如何にして亡くなったのか
けれども、確かに言える事があるとすれば、死者に何かを委ねるのは生者の驕りですわ
或いは時として、そう──── 自分のせいで誰かが死んでしまったなんて思うのは


【そう言って彼女はほほえみかける、両手で自分を抱くようにして歩きながら】
【今にも消えてしまいな程に儚い一瞬、舌先に溶けてしまう白雪の名残みたいに】
【一つ、瞬きを重ねて、その奥にある寸刻を辿って見せた】


──── つかぬ事をお聞きしますが、この御仁は貴方様にとって、どの様な方だったのでしょう
親しい人だったのは間違いありませんわ、私がお聞きしたいのは、貴方様から見た人となりです

その方の辿った歴史を、自分の視点から客体化する──── そんな堅苦しい言い方になってしまいますが
時には人が、歴史を記す者になるのですわ


【どこか謳うような口ぶりで、彼女はそう言ってみせる】


878 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/08/23(木) 22:13:39 ZCHlt7mo0
>>877

――――深手を負われた時、無理にでも――――撤退させれば良かったんです――――ッ
私の判断ミスで、むざむざ――――死なせてしまいました。死ぬなら、私の方だったのに――――ッ

【負い目があるのだろう。少女は俯くように顔を背けながら、絞り出すような声を発する】
【――――幼い外見に似合わず、というべきか。あるいはその身に宿す魔力に相応というべきか――――少女は、この死者と共に、戦場に立っていたという】
【恐らくは、その戦いの帰結として、この慰霊碑の人物は死んでしまったのだろう。そこに「自分のせいで」という、自責の念が絡んでいるのだ】

ッ?
――――――――それが、良く――――分からないんです。私は、この人とは、そんなに親しかった訳じゃ、ありませんから――――
――――私は、とある人の下で、ある事件を追いかけています。その人は、色んな人との繋がりがあって――――
たまたま、火急の戦いが起こった時に、私とこの人が、一緒に戦いに出る事になったんです――――でも、それ以前にも、1度命を、救われたことがありました――――ッ

【親しい人だったのは間違いない――――それがそうとも限らないと、少女は戸惑うように前提を否定する】
【実際には、偶然に命を救われ、偶然の縁で1度だけ轡を並べ、そしてその1度の戦いで先立たれてしまった。そんなに繋がりの薄いパートナーに過ぎなかったのだ】

――――この人は――――熱い感情を持ってるけれど、いつも考える事を優先して、冷静に行動する人だったと思います――――
鋭くて、時々、少し冷淡な事がありましたが――――それでも、自分の想いを通して、救える人は救おうって、いつも、頑張ってました――――
――――この人は、本来のパートナーがいて、いつもあの人たちは一緒に戦ってた――――だから、私が無事に帰してあげなきゃいけなかったのに――――!

【その少ない邂逅の中で得た印象を、少女は訥々と語っていく。善人か悪人かと言われれば、どちらかと言えば善人の側だったのだろう】

【――――先ほどからの少女の慟哭に、少し奇妙な点がある事に、気づくかもしれない。「でなければならない」という文脈が、妙に多かった――――】

/すみません、始まったばかりですが、やはり今日はそろそろ……ここからは置き進行でお願いします、申し訳ないです


879 : ◆zO7JlnSovk :2018/08/23(木) 22:46:20 X3rE.Hpo0
>>878

【弦楽師が調弦を済ませる様に、彼女は一つ一つ糸を手繰っていく、その結び目を探して】
【うつむく少女の横顔、その色合いが何処までも痛々しく見えてしまうから】
【かける言葉を少しずつ彩りをつけて、そのグラデーションを鮮やかに】


──── それは違いますわ、この国に死ぬべき存在なんていませんもの
"判断ミス" と仰いましたね、その全てに死の責任が至ほどのミスがあるのでしょうか
私は全てを知りませんわ、だからこそ、類推するしかないのですが


【それ故にその前提を見誤ってしまった、けれども──── 言葉に迷いはなく】
【薄紅色の艶やかな口元、零れる一音一音が粉雪のように降り積もって】
【その高ぶる心の熱に焼かれて、少しずつ溶けていくのだろう】


──── 成程、惜しい御仁を亡くされたのですね
私は……貴女様のお話を聞いて、──── こうも思うのです
貴女様は、その御仁の死の責を、あまりにも背負おうとしすぎている、と────


【事実の様に思えた、目の前の少女は道理を無視してでも、その責を自らに委ねようと】
【或いは其れは燃えさかる炎に焼かれて消えてしまいたいと思っているように】
【全ての責をそこに残して、欠片さえも残さず燃え尽きようとしてしまう様に】


確かに貴女様に責任の一端はあったのかもしれませんわ、けれども、誰もかもを救えないのと同様に────
────誰かの死もまた、責任を誰かに委ねることなんて出来ないのです

それはやはり、どこまでも生者の驕りでしかなく、そして────


────生者の特権にもまた、成りうるのです


【彼女は貴女の側を抜けて、その墓標へと向い──── 白い手袋を外す】
【そして墓標に触れるだろう、静かにその双眸を閉じて、そう、まるで】
【そこに刻まれた記憶を読み取るかの如く】


/了解です!


880 : ◆KP.vGoiAyM :2018/08/23(木) 22:59:56 Ty26k7V20
>>848

【探偵は嫌な予感がした。状況が一変したような。悪い方向に転がりだした時】
【同じ感覚がよくある。自分だけが世の中の歯車に噛み合っていないような――そんなとき決まって悪い状況にシフトする】


………”俺じゃない”チンザノ・ロッソか。


【おいおい、そんな急に撤回されても困るぜ。だが、そんな頼みを聞き入れてくれるような相手じゃないだろう】
【彼は知らない。彼らにとって親殺しはノーパラドクスであることを。理屈よりも直感がそれを教えてくれる】

【粗野な山賊のような男を縛る枷は無くなった。交渉のカードは無い。次のブラインドに耐えるポケットのコインも】
【ドロップはできない。降りたら――死ぬ。】


偶然?セレンディピティ?…勝手に知りやがって。


【運命ってものを俺は信じてきた。だが、それは俺にとって抗うべき相手だった。決められた何かは、全部嫌いだ】
【だが、ここまで俺を追い詰めたのは運命を簡易化したもんらしい。】


【そして、現れたワームホールを見て戦慄した。視界が揺らいで見えたのは時空間の歪みのせいかもしれないが】
【もしかするとそれは恐怖というのかもしれない。探偵はそれが何なのかはわからなかった。だが、それもまた良くないものであると】
【俺を終わらせる、破滅へと向かわせる運命のピリオドのようなものだということは直感でわかった】

【あの男の笑い方は知っている。勝ち誇った、醜い笑み。何度も見てきた。だから俺は――まだ考えていた】

【どの瞬間で、何を撃ち抜くかを。何度だって言ってやる。世界は終わらせない―――】


881 : ◆KP.vGoiAyM :2018/08/23(木) 23:00:12 Ty26k7V20
>>867 >>868

【そんな覚悟も、流石に予想できない結果で裏切られることになる】

【俺が思ってた一言は「ふざけんなよ」ってことだ。安いコメディみたいな展開。失笑以外に笑えない】
【そりゃ、俺も『さらば青春の光』を観て、ネイキッドのバイクに跨ったし、ポール・ウェラーにあこがれてラバーソウルの】
【ブーツにモッズのスーツを着たもんだが、それをやられるってのはなんだか……やっぱ、笑えるな。】

【弾け飛ぶリボルバーの2カウント。パンクロックぐらい単純なビートだが、縦ノリするには丁度いい】
【ラモーンズより直線的な電撃バップが全てをひっくり返す。やっぱ、ロックってのはこうでなくっちゃな】
【カヴァーでもコピーでも、そいつがハートを込めたなら全てがオリジナルだ】

【ロックンロールイズネヴァーデッド】

【誰かが拳を振り上げるたびにロックは生まれる。】


【”チンザノ・ロッソ”がバイク越しに銃撃をかまして、探偵は眼を丸くしたが、次の瞬間には自分がまだステージの上に居て】
【次の曲の歌い出しを待っているミック・ジャガーだと気がついた】

【いいや、ここがウッドストックなら明け方の出番を待っているジミー・ヘンドリックスか?ぐちゃぐちゃの農場のど真ん中で】
【ファズに埋もれたギターの音を響かせようってとこか?俺の”VOODOO CHILD"いいや、アホみたいにモッシュの好きなキッズ共】


―――好きなだけ踊れ。


【ライダーの声が聞こえる。俺はそれに答える】


…ボンド・ガールなんてベタなこと俺は、言わねえよ


【クソ暑いのにトレンチも着ねえ、煙草は赤マルだ。ブーツは8ホールじゃねえ。それに銃はオートマティック派だ】
【バイクの趣味は良いぜ。だが、正解はスティーブ・マックイーンが大脱走で乗ってたトライアンフ】

【だがな、お前がそれをクールだと思ってんならそれでいい。ニヤリと笑って夜の街を歩けば。お前のもんだ】


882 : ◆KP.vGoiAyM :2018/08/23(木) 23:00:33 Ty26k7V20
>>869 >>870

―――――シヲリッッ!!


【俺は叫んだ。眼はまだ、霞んでも大事なもんは視えていた。―――好機を】

【弾け飛ぶようにリボルバーを構えた。今更外しはしない。あの女――あの女を撃ち抜く】
【この何ヶ月、この女の頭を撃ち抜くチャンスを探していただろう。まさかこんな風に"転がって”来るとはな】

【ロールし続けろ、役割を演じ続けろ。酔狂に。そうすれば、いつかは本物だ】

【俺はチンザノ・ロッソだ。】

未来へ帰るんだな――――

【構えたリボルバーを誰よりも意志を込めて、愛を込めて、熱いハートを持って撃ち鳴らした】
【背後では、命がけのライブが繰り広げられる中、弾丸は真っ直ぐ、その腐った運命を切り裂くために】

【そして探偵は飛び出した。血だらけの中、少女を救うために】
【その一歩が、その伸ばした手が未来へ通じてる気がして】


883 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/24(金) 00:25:38 Dnp9kjSw0
>>866

【ちゃんとゴム付けとかなきゃな。彼女だもんな。それが礼儀ってものだよな。 ─── そう思ってたのに、時と血の流れというのは残酷だ。】
【股座の熱り立つ感覚を自覚するのは何時ぶりだったろう。甘く痺れる腹の下や真っ白に震え上がる背筋にはまだ覚えがあった。それらは女の子らしい仕草だったから。】
【いつ頃からか、情欲から自分を切り離してきた。特に男としての衝動は、努めて内心にさえ生じないようにしてきた。だって、なんだか、いやらしい事に思えたんだ。】
【アリアに抱かれる時だってそうだった。いつだってリードされていた。ボクはオモチャにされているも同然だった。それが一番きもちいい距離感だって疑わなかった。】
                                              【なのに。】【なのに。】【 ─── なのに。】【(だから。)】


「 ──── ぅ。」


【ボクの下で蕩けた顔を強張らせるキミの、あんまりな生娘具合に息を呑む。きれいだった。月明かりが照らす生白い首筋も、しとどに濡れた唇も、真っ赤なまま蕩けてしまった瞳も】
【 ──── のしかかって優しく体重をかけ、そうしたらもうダメだった。恥ずかしい話そこで動けなくなった。情けないことになってしまいそうで】
【少なくとも明白だったのは絶対にこの子は死人なんかじゃないって確信だった。息絶えた人間の胎が、こんなに熱く蕩けて蠢いている筈がない。】
【自分の恐ろしさを誤魔化すように問いかける。「 ─── いたくない?」そうしたらキミは酷薄にも上目遣いでボクを見てきた。そんなのって、ないじゃないか。】

【だから後は訳も分からず動いた。それこそ獣みたいに貪った。「シグレ。」「しぐれ。」「すき ─── 」「だいすき。」「あいしてる。」】
【狼ってほど上品じゃない。野犬とか、狐とか、ハイエナとか、そういうのの類。 ─── それでも少し、自分に嫌気がさしていた。なのにキミは抱き締めてくれる。】
【起きられるようにキミの背中を抱き上げた。爪だって立ててほしかった。細い脚も腕も絡み付けば蜘蛛に喰われる羽虫の気分。死んでしまいそうなキミの呼吸が近づき ──── 。】
【そして言葉が続いたら、この胸が裂けてしまいそうな気がした。 ──── やっぱり、ああ、だめだ。ばけものとしての最後の箍が、外れてしまった。】



            「 …………─── 、ぁう、っっっ、 ………… 。」



【( …………… 孕んでほしい。ボクとの、こども。)】【出来損ないのカクテルを瀉出する刹那、】【脳幹からウェルニッケ野まで一遍に焼け焦げる1フレーム、】【人生で初めて、そんなことを思った。】
【怒りたかった。もっとキミのからだを大切にしてほしかった。ほんとはボクなんかがキミを穢しちゃいけないんだ。(でも自分から願ってしまったんだから救い様がないんだ)】

【だからせめて"おしおき"は続けることにした。 ─── 体力には自信があった。余韻を感じるには未だ早い。呼吸はどこまでも荒いまま、酸素を求める様に唇を塞ぐ。】
【それが終わったら後は止まらなかった。跨らせたり、抱き上げたり、後ろから手首を掴んだり、とにかく考えうる限りどんな幸せな行為だってしてやる。執拗に。】
【 ───── だから全てが終わるのは、それこそ夜明けになってからなんだろう。呼吸と鼓動と汗だくの身体を重ね合わせて、互いの境界なんて分からなくて、このまま一つになってしまえばよかった。】


884 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/24(金) 01:01:10 WMHqDivw0
>>883

【絶対にナニカが植わることのない胎の底が満たされる感覚がした。ぽかぽかする。あったかい】
【その熱を受けたとき、少女は確実に、恍惚とした笑みを浮かべていた。愛おしげに目を細めて】
【ふあ、と薄く唇を開いて、世界一幸せ、の気持ちを込めた息を吐く。そしたら全部終わると思った】
【だからもう一度ぎゅーして、キスして、ってお願いしようとした。結果的にそれは叶えてもらえたけど】

…………っあ、うそ、っ、………………まだ、ぁ?

【続く行為には間違いなく困惑の色合いを浮かべた。そんなことまでお願いしてない、って言いたげに】
【それでも抵抗が出来なかった。好きだから。愛してるから。いっぱいしてくれてうれしい。……でも疲れちゃう】
【きゃんきゃん鳴く元気があったのは多分最初の2回くらいまでだった。そのあとは、でろでろに融かされた飴みたいに】
【くたくたになった身体をひたすら揺さぶられる。声質はいつしか間延びしたものに変わっていた。それが、】
【高くなったり震えたり、きゅうと詰まったりして、明確な言葉なんて一言も発せなくなるまで、蕩かされて】

【――――――、】

【――――朝チュンって言葉は知っていた。でもそれってアラーム代わりに聞くものじゃなかったかなあ】
【少なくとも「真っ最中」に聞くものじゃないってことは知ってる、はずだったのに。……おかしいなあ、おかしいよ】
【そんなことを、ぐでんぐでんになった脳ミソで考えていた。人間、追い詰められすぎると逆に思考が冴えわたる】
【そういう経験をしたのはたぶんこれで二回目。でも一回目みたいな悲壮感はないなら、はあ、と大きく吐くのと一緒に】

…………………………………………むり、も、ぉ無理、ほんとに……ね、もう、終わろうよお…………

【ギブアップ宣言。たぶんこれが一回目じゃなかった。少なくとも夜のうちに何度か申し出て、そのたび却下された言葉】
【それをまた口にする、今度こそは本当に無理だって思ったから。……でもずっとそう思ってたはずなのに】
【いろんなところを手足問わずの指先でぎゅうぎゅう握り締めたシーツは見るも無残にぐっちゃぐちゃ、ていうかその前に】
【やばい液体で汚れてるからまずは洗濯しなきゃ。それ以前にシャワー浴びたい。……でももう本当に指一本動かせない】
【カーテンの隙間から射し込んでくる朝日を受けても、身体が上手く起きてくれない。ていうか寝てないし。だから】
【からからになった喉から出る掠れた声で、身体の隅から隅まで上気しきった肌で、骨の髄まで蕩かされた身体で】
【潤んだ、というか泣き腫らしたみたいな目で。懇願するように訴えるのが精一杯だった、……もうおなかいっぱい、って】


885 : ◆RqRnviRidE :2018/08/24(金) 02:05:21 vZw8nhd20
>>846

【差し向かう相手が警戒のケも窺わせなければ、見る見る内に萎縮してゆき、終には丸まってしまうのだから──緊張の糸がぷつり】
【臨戦態勢であった少女は思わず拍子抜けしてしまう。それを表すように、濃度を増した魔力はたちまち雲散霧消してゆくだろう】
【発砲音が放たれた上、来訪者の滅多にない隠れ場での邂逅であったから、現れたエトランゼに対する警戒は已むを得ぬところではあったが】
【それにしたってこの状況、不用心にも体を抱えて落胆する少女に対して、次第に居た堪れない気持ちの方が強くなる】

ううん、ごめんなさい、違うなの……違うのよ!
悪そうな顔とかじゃなくって、きっと私の勘違いなの。
人でなしばっかり狙う『密猟者/カラス』が居るって聞いたことがあったから……

……あなたは違うのよね? もしかして、迷子なの?
ここなら〝エルジオ〟からそう離れてないから、連れてってあげることも出来るのよ。

【両手をひらひらと忙しなく揺り動かしながら、己の思い違いだったとひどく慌てたようにして詫びつつ】
【縁に両肘を掛け、なるべく近付くように身を乗り出して再度問い掛けるだろう。願わくば互いに敵対せぬようにと期待も込めて】
【それから素直な親切心からだろう、道案内の提案をして「ほら、あっちの方よ」と首都の方向を指で指し示す。……視線が向かうかはさて置き】

【そうして可愛らしい腹の虫の鳴き声を聞き留めれば、ぱちくり目を瞬かせて僅かに思考を巡らせ】
【童顔に薄く、しかし何処か悪戯っぽい微笑を湛える。何となく良いことを思い付いたかのような表情】

…………ねぇ、あなた、お腹空いてるなの?
もし良かったら、……いまからごはんにする?

【少女は小首を傾げて問うた。内容だけなら何の変哲もない、至って平穏な内容の発案であった】
【されど、見回せど見渡せど、彼女の持ち物としては干してある濡れた召し物だけしかなくて】
【風力発電と景勝地としての機能しかないこの一帯には、当然飯屋の一つもある筈がなく──】
【ともかく返事を待つのだろう。水の中に体を浸して、穏やかな漣を受けながらただ静かに、息をひそめて】


886 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/08/24(金) 21:33:46 ZCHlt7mo0
>>879

――――「人が死ぬ」よりは、「道具が壊れる」だけで済む方が、よっぽどマシじゃないですか――――ッ
所詮、私は人間じゃないんですから、全き人の代わりに、私が死んでいた方が、どれだけ救いがあったか――――ッ!

【精神的に、余裕がなかったという事か。少女は、普段ならそう簡単に口にする事はない、己の核心を、あっさりと口外していた】
【――――自分は人間ではない。だから人間の代わりに死ぬくらいで良かった。それが自分が生きて、守るべき人間が死んだ――――それが、最大の後悔なのだろう】

――――私は『兵器』です――――戦って、勝って、守って、そして死んでいく存在です――――
それが――――『アルターリ』じゃ何百万の内の1人も救えないでッ、リーダーの行方すら知れなくてッ、一緒に戦う仲間すら守り切れないでッ!!
戦えず、勝てず、守れず――――そんな『兵器』に、なんの意味もない――――ッ!
せめて、意味のある死に場所を探したい。それだけなのに――――こんなに、生き恥を重ねて、私は――――何をやってるのかって――――ッッ

【『兵器』である事に、崩れかかった己のアイデンティティを掛けている少女――――それにとって、昨今の敗戦は、痛恨事の連続だった】
【悪しき企みに手が掛かったはずなのに、まんまと数百万の犠牲者を生み出させてしまい、立て続けに仲間を失ってしまう】
【戦う事が全てなのに、自分の戦いは何も実を結ばない。こんなにやりきれない事はなかった。他者を悼むのと同様に、自分に対する情けなさが、無尽蔵に湧き上がる】

――――それは違います

【凛とした女性の否定の言葉に――――少女もまた、涙に塗れた顔を向けて、首を横に振る】

力を持つって事は、責任を負うって事です――――私は、そうあるべく――――そう、生まれたんですから、戦って、成果を出す、責任があるんです――――
守れたはずの人を守れなかった事は、私の責任なんです――――それを否定しまったら、その時こそ私は『無為』に――――生きてる意味が、何もなくなっちゃう――――ッ
役立たずの兵器なんて、ゴミ以下の危険物でしかないんですから――――ッ!!

【「大いなる力には、大いなる責任が伴う」――――少女の言いたい事は、この一言に尽きた。そして、人間ならぬ『兵器』である己もまた、それであると】
【戦いを忌避するなど、あってはならないし、敵の損害は最大化しなければならないし、味方の損害は最小化しなければならない】
【それが出来ないなら――――そんな兵器など、完全に無価値な愚物でしかないのだ――――と】

――――ッ、生者の、特権――――?

【だが、その一言には、少女も引っかかるものを感じたようだった。「生者の特権」――――自己嫌悪も、自己否定も、生きているからこその行為だ】
【自分のやっている事は、みだりに命の特権を、振りかざすようなものだとでもいうのだろうか――――】

【――――当然の事ながら、墓標は真新しい。ほとんど真っ新に等しく、そこに込められたものも、少なく、そして純真なのだろう】
【――――誰かの懺悔、誰かの沈痛、誰かの激情。そうしたものを孕んで、墓標はそこに鎮座している】
【そして、弔われた本人は、もうそこにはいない。まさに「ここよりの海」――――眼前に広がる海に、散骨されているのである】


887 : ◆UYdM4POjBM :2018/08/24(金) 22:41:42 XqQAhkbc0
【風の国・とある草原にて】

【久方ぶりに冷たい風が吹く月夜。草原に透き通るような女性の歌が響く―――】

ttps://www.youtube.com/watch?v=bldyRH_XrOM


【歌っていたのは三日月の髪飾りで結われた黒のポニーテールの髪型の上に白いフリルのヘッドドレス】
【アンテナのような機材が取り付けられた耳。アクリルで覆われた無機質なカメラアイの瞳】
【白いフリルとエプロンに飾られ、銀色のカフスボタンが袖に付いたロングスカートの黒い侍女服】
【幼い子供のように小柄な背丈の少女は夜空を仰ぎ、月を眺めながら……熱を込めて歌声を風に乗せていた】


……心を研ぎ澄ます時はこうして彼女の歌を聞くのが一番いいな。大きな戦いを控えているときはなおの事だ


【草原に横たわり侍女の歌を聞いているのは、黒い短髪を若干しゃれた状態に整髪料で整えた、自身満々の顔つきとは裏腹に若干年若い印象を与える顔立ち】
【新品同様の真っ白な白衣に身をまとい、その下には白地に薄い青色ストライプのブラウスに真っ黒なスラックスをはいている】
【右耳にはインカム型の機械、右手にはマニピュレーター、そしてその首には髑髏模様が際立つ奇妙なデザインのネクタイを首に絞めている男だった】

【歌に耳を傾けながら彼は懐に手をやり、しまっていたアイテムを取り出す】
【何かの機械の拡張パーツのようだった。風車が中心に搭載されその横には『赤』と『青』に半分ずつ塗られた丸いハンドルが取り付けられていた】
【寝転がりながらその機械を上に掲げてその男……ジンジャー・ユースロットは思考する】


(……さて、とうとう『本命』、要の装備は完成したが……果たして『コイツ』を本当に使ってしまっていいものだろうか
本当に『神』を相手にする戦いであるならばこれ以上の装備は存在しないだろうが……その結果秘め事が『露呈』するリスクも大きくなるだろうしな
なにより神を名乗っているからって頭から神性を宿す存在であると決めてかかるのは危険だ……明日あたり『星の国』に立ち寄ってもう一つくらいとっておきを用意しておくか……?)



「―――……ジュニアハカセ?どういたしました?」

……!ああ、すまない……久々にいい歌を聞かせてもらったよ、ありがとう


【こちらをのぞき込んでくる侍女にたいして心配ないと手を振りながら、上体を起こして腰を草にかけたままジンジャーは息を大きく吸い】
【一秒ごとに少しずつ、ゆっくりと吐息を吐き出す。精神をフラットに保つために。明日からもまた戦いは待っているのだ】


888 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/24(金) 23:21:53 Y9S7HET60
>>884

【 ─── 羽目を外した夜更かしのせいで徹夜してしまった時の、眼の奥から肩にかけてが不明瞭に温かい感覚に苛まれていた。いい加減に、ボクも、疲れていた。】
【██の度に積み重なる倦怠感を欲情と劣情と愛情でどうにか誤魔化してきたが、それも限界に近い。ふだん理性に回している分の精神的リミッターは悉くがVmax。】
【ブッ壊れてバックファイアを噴き出す寸前の過給機みたいな心音と呼吸は最高で最悪なエキゾースト・ノートを奏でていて、今すぐにだってボアスコープ片手にオーバーホールが必要だった。 ……… だから】
【きっとボクもお揃いで世界一幸せな男/女の顔をしているんだろう。誰かに媚びる為のニュートラルな笑い方さえも出来なくなって、頬も瞳も目尻も口の端も蕩っとろ。】
【キミ以外に見られたら地の果てまで追いかけ回して縊り殺してやるに違いなかった。けれど、こんな痴態を晒せるのはキミだけだ。こんな痴態が見られるのはボクだけだ。】

【何とか知死期に残った力で、 ─── ボクたちを匿ってくれていた、優しい桃色のカーテンを開く。待ってましたと言わんばかりに射し込む太陽光に、一糸纏わぬ躯体を晒す】
【そうしたらキミが思っていたよりもずうっと茹で上がって出来上がって居ることに気付いて、それだけでボクは元気になった。 ……… だってこんな顔、見るのは初めて。】
【今回はこれくらいで勘弁してやることにした。 ──── 同時に、ちょっとした暗い情念。"次はもっと"なんて、キミにお願いしたら、怒られちゃうかな?】


「 …………… 、」「 ───………… かわいいなあ、シグレは。」


【シーツどころかマットにまで色々と染み込んでそうなのは今は忘れる。 ─── "終わる"感触にまで身が震えた。それで力尽きる。とすん、とキミの隣に身を投げ出す。】
【汗だくの白皙を重ね合って、シャワー浴びなきゃな ……… とか思いつつ、しとどに濡れた紅髪の奥、耳元にキスして囁くのは何度目か知らない情念の告白。「だいすき。」】
【 ─── 23年間、おなかの中に溜め込んできたものを、ぜんぶ吐き出せた気がした。だって、キミは、ボクの愛する人だから。隠したいものだって、何も躊躇わず晒せる。】


「 ………… ねえね、 ─── お水、ほしい?」


【寝転がったまま、ベッドサイドの小さな冷蔵庫に手を伸ばして、 ─── 取り出す天然水。ぴとっ、とキミの茹で上がった首筋にひっつけてみる。】
【ようやく少し頭も回るようになってきた。思い付くのは、ちょっとしたイジワル。ボトルはボクの手に握られたまま、勝手に開けて自分だけ先に飲んでしまう。交換条件。】


889 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/24(金) 23:47:48 Y9S7HET60
>>885


「 ……… いいんだ。」「ボクが悪いんだ。」「地図もコンパスもあるのに気付いたら射場から出てるような方向音痴なんだから。」
「流石にここからなら帰り道も分かるよ。 ……… 先に職質されなきゃ、だけど。」「はああ、 ……… ホント、僕って、馬鹿だ ……… 。」


【 ─── 然るに彼女は、やはり迷子であったらしい。遭難者にならなかったのが幸いであった。そもトレッキングにしては些か軽装であった。】
【であれば敵意など何処にもなかった。目の前の少女が何故にこのような僻地で憩っているのかについてさえ及びもついていないようだった。】
【人らしきものが目の前にいるから、差し当たり会話している。畢竟、相手が人でなくてもよかった。ただ交わす言葉を傷心の慰めとするのが精一杯に違いなかった。】

【帰路を指差す少女の指に、 ─── ようやく彼女は顔を上げる。改めて間近で見るのならば、ごく若い女だった。贔屓目に見て、やや少女よりも歳上。】
【乙女らしい微笑みに不慣れそうな顔だった。かと言って快活な笑顔とも縁薄げだった。色褪せた金色の髪からも真白い膚からも、甘い匂いはしなかった。】
【促されるまま何となく首を回して、 ─── 然してその眼は何も捉えていない。立ち上がる気力も失われているらしい。であれば空腹も道理だったろう。】
【然して、おどけるような微笑みに気恥ずかしさを示す程度には、まだ余力も残しているようだった。唇を曲げ、何か言おうとして、言い淀む。そして、】



「 ──── 生魚とかは、食べられないよ?」


【続く言葉は、 ─── やはり何処か間が抜けていた。相手のことを野生の熊か何かと誤謬している節があった。】
【バックパックに携帯食料さえ無い訳ではなかった。それでも彼女が、少女の言葉に甘んじる形となったのは】
【この余りに思わぬ邂逅に対する個人的な負い目と恩義もあるのだろうか。 ─── ともあれ、彼女は待っている。やはり膝を抱えたまま、然し背嚢は降ろして、コッヘルとバーナーを取り出しつつ】


890 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/25(土) 00:00:15 WMHqDivw0
>>888

…………………………ほめて誤魔化そうったってそうはいかない。

【茹で上がった頬がぷうと膨れた。ころ、と寝返りを打って横向き。……そういうちょっとした動作、】
【するたびに足の間からじわっと零れてくる感覚に、ぞわっとする。でも嫌じゃない。いっぱいくれたから】
【零れちゃうのも勿体ないなあとかちょっとだけ思った、……ちょっとだけ。焼けつくような朝日に目を晦ませて】

【耳はイヤってゆうべ何回も言ったのに。言ったのにまたキスされる、背筋が震える、……イヤじゃないけど】
【どこもかしこも神経むき出しにされたような、敏感になりきった体には毒だった。んぅ、と呻いて、渋い顔】
【それでも大好きって言われるなら。「……あたしも」、返すしかなくなっちゃう。嘘はつけないから】

みず、…………水欲しい、………………つめたい! もおっ、…………くれないの?
ちょうだい、のど、痛いの、からからして…………ねえってば! もう、なんで一人で飲んじゃうの……

【ひやり押し付けられるのも、先に飲まれてしまうのもイヤだった。だからひどく拗ねた顔】
【鉛みたいに重たくなった体をなんとか動かして、手を伸ばしてボトルをひったくろうとして】
【それでもこの手に掴ませてくれない。ひどい。意地悪。(でも好き)。……また頬を膨らまして】

………………何したらそれくれるの? 言っとくけどもう、からだ、動かないからね……。
あとお水だけじゃなくて、シャワーも、したい……。でも足腰立たないから、つれてって……。

【じとっと睨みつける。目尻から頬にかけては未だ真っ赤に染まったまま。迫力も何もないニラミだった】
【でも怒ってること伝えなきゃ、また調子に乗られちゃう。そしたらまた、――、……考えるだけで頭がゆだる】
【出会いのはじめても、こういう「はじめて」も、ひっどいことになっちゃったな。とか、思って】
【……そういうのは全部置いておくことにして。とりあえずは水が欲しかった、だけど、媚びる必要なんてどこにもない】
【だから頼み方もひどく横暴っぽく聞こえる音色で。でもべつに横暴じゃないと思う、だって、いじめられたのはこっちだし】


891 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/25(土) 00:38:04 Y9S7HET60
>>890

【やだなァ本心だよ、 ─── そう言おうかとも思ったけど、やめた。だって本当に半分くらいは、思わずキミが可愛くて、口にしてしまった呟きだったから。】
【にしたってボクだって耳は弱いのに何度もされたし、全くもっておあいこ様だと思う。だいいち、耳になんかしてる時のキミの反応がいけない。】
【 ──── それに、そんな分かり切った(けれど何より大切な)返事をされたら、ボクだって図に乗るに決まってるじゃないか。甘い言い訳は幾らでも心に浮かぶ。キミはそれを許してくれる。】

【だから愛らしくむくれてジタバタするキミの仕草はいつまでも見ていたかった。すっとろい動きは手首を掴ませるに留める。じぃっと睨み付けられたのなら】
【くすくす笑い返すのは小悪魔チックに。サキュバスにだって今のボクは負けない。人を誑かして揶揄うことを知ってる、(けれど大好きだから意地悪しちゃう)そんな顔。】
【あんまりやりすぎると怒られちゃう気がするけど、もう少し、楽しんでいたい。 ─── けれどやっぱり、キミは賢い。交換条件。言わなくても悟られてしまう。】
【そしたらボクも調子が崩れて急にしおらしくなってしまうのだろう。まるで告白の直前みたいに。俯いて、なのにかぁっと頭に血が上って、思考回路が真っ白になる。】


「 ─── あのね、」「 ……… あの、ね。」
「 ……… シグレの名前を知った時から、思ってたんだ。」「 ─── ずっと、ずうっと」


【だって事実、告白だった。事後テンションと徹夜テンションの合わせ技。言うなら今っきゃないと思ってた。指先つんつん、言葉尻は躊躇いがちに、ボトルを手に取ったまま】
【 ─── もう幾らキミにだって分捕れる位置になってた。けれど上目遣いに潤んだ青い瞳で、どうか最後まで聞いてほしいなって、訴える。】


「ボクが、キミと同じ、 ……… 姓を、ユーティライネンを、名乗ってくれたら」
「それってどんなに、素敵だろうな、って。 ……… だから、えっとその、えっと、」


【過熱する心音。】【呂律が回らないんじゃない。ニューロンがもうダメになってる。】【次の言葉が出てこない。難しいことを伝える訳じゃないのに。】【 ─── 性急、すぎた?】

               「 ──── ゴメンやっぱ今のなしっ!!」


【 ──── 気付いたらボクはそう喚いていた。最後まで聞いてほしいって言っておきながら最後まで言えない情けなさ。キャップを速攻で開けて残りを全部口に含み】
【キミを押し倒して唇を奪うなら、返事の可能性さえも塞ぐなら、お望みのものは口移しで飲ませようとするんだろう。いつか恋人にされたみたいに。】
【けれどボクは馬鹿だから気付いてなかった。 ──── さっき自分でしたみたいに、視線でだって返事はできるのだ。幸か不幸か瞼はぎゅっと閉じていた。(けれど、次に開けた瞬間には?)】


892 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/25(土) 00:58:21 WMHqDivw0
>>891

【いつまでたってもボトルに手が届かないから早々にあきらめちゃう。意地悪な顔で笑われると、むっとしちゃうけど】
【その笑顔がまた可愛いんだから、……許しちゃう。何でもかんでもそうしちゃう。顔がいいから、だけじゃなくて】
【――――好きなんだもん。だからゆうべのことだってもう許しちゃった、でも次はない、たぶん、……たぶん】

【続く、言葉。いきなり勢いが失速するもんだからびっくりしちゃって、訝し気に眉根を寄せて】
【何を言い出すのかって思った。名前がどうって。そこから先も何言ってるんだかよくわかんないから】
【んんん、と唸って続きを引き摺りだそうとして。でもその必要がなかったなら――――、目を丸くする】

………………………………、つまりそれって、プ………………もがっ!?

【つまりはそういうことなんでしょうって言おうとした口を塞がれた。そしてそこに勢いよく水を流し込まれたなら】
【二階から落ちてくる目薬よりも寝ている最中耳に流し込まれる水よりも、なにものよりも混乱を及ぼして】
【こぽ、と。溺れるみたいな音を立てて、口に流し込まれた水を慌てて嚥下しようとして――むせた。】
【気道に入って苦しくて、思わず胸板を叩く。……なんかやわくなってる、本当に怪しい。そういうことはどうでもよくて】
【口を離してくれたならげーっほげっほ、思いっきり咳き込む。数十秒間たっぷりそうして、……ゆっくり、顔を上げたら】

……………………けほっ、…………昨日からさあ、どうしちゃったのエーノさん、……げほっ、ふ、
――――あっははははは! おかしいよ、ねえ、それ…………プロポーズみたいじゃん、けひゅっ、
幾らなんでも急すぎるってば、っははは、けふ、…………けほ、……っこん、……あはは。

【――――また笑っちゃった。だっておかしいんだもん。タイミング。昨日からずっとなんかおかしいよ、あなた】
【咳に交えて笑い声を零して、お腹に力が入っちゃったら、また足の間からとろっと昨夜の残滓が流れてきて】
【…………それにきゅんとしてしまったあたしもおかしい。本当におかしくなっちゃった。そう、想って、】


  【 「――――――じゃあ今度、指輪買いに行こうよ。そこからはじめよう」 】


【あなたの左手にそっと自分の手を重ねる。くすりゆび、爪先からつっと撫でてって、――根元をやさしく擦ってやる】
【それでもって微笑むんだった、…………世界一幸せな女の子の顔して。細まった目には、ゆるやかな潤みが混じっていた】

【(さすがに疲れたから、今日は買いに行けないけど。ネットとかでデザインを見るだけならきっと、いくらだって、楽しい)】


893 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/25(土) 01:28:06 7ezs0Ll.0
>>892

【ああああああ言われちゃったバレてたそりゃバレるよなでもワンチャンすっとぼけてくれるんじゃないかとか淡い期待もあったよ畜生バカ馬鹿ボクのバカ ─── ッッッ。】
【なんでこのタイミングで言っちゃったんだという最もな後悔とこのタイミングで言うしかなかったろというどう考えても無理のある自己弁護が内心で交錯して止まらない。】
【奪った唇はやっぱり柔らかくてふにふにで女の子の味がして、ボクなんかじゃ及びもつかない領域にあるような気がして、(だけどキミはそこに踏み入ることも許してくれるんだから)】
【ろくに口移しも飲ませてやれず、むせ返ってるキミの姿に一瞬だけ罪悪感が産まれるけれど、 ─── 思いっきり笑ってることに遅まきながら気付くのなら、もうボクだって真っ赤になる所なんて残ってないのに。】


「うぅぅぅぅ、」「 ──── だって」「 ………… だって、ぇ」「 ……… 言いたくなっちゃったんだよぅ、 ………… 。」
「ばか、」「ばかぁっ」「シグレのばかぁ、っ」「本気なんだぞっ、」「 ─── 人の恋心を弄ぶなんて、サイテーだっ、 ……… ばかぁ ……… 。」


【めっちゃゲラゲラ笑われて死にそうになる。こんなことより余程はずかしい行為を昨日の夜までしてたのに。両手で顔を覆ってさめざめ泣いてる。両耳は、真っ赤。】
【 ─── きっと、おかしくて当たり前だった。どんなに親しくなった人でも見せてこなかった仮面の下を、躊躇いもなく開けっぴろげにしている。こうして掌で顔を隠したって何の意味もあるわけなかった。】
【余所行きのデキるミレーユさんは飽くまで男なんかじゃなかったから、 ─── 結局のところ、エーノさんはこういう男なのだ。でも、キミはそれさえ引っ括めて、愛してくれるって知ってるから。】


    「 ………… 。 いちばん高いやつ、買っちゃうんだからね。」


【絹地を折る/織るように左手を重ねてくれるのなら、 ─── やっぱり顔を隠す掌は、あっさり取れてしまうんだろう。一緒になって、ボクもキミの薬指を、いつくしんで】
【そうして右手も降ろしてしまうのだ。やっぱり真っ赤になった顔でも。えへ、と真っ白な歯を見せて、はにかむ。ボクがプレゼントするって心に決めておきつつ。】
【ぎゅう、と矢っ張り抱き締めて、一晩分の余韻を味わって、 ─── そうしたら、シャワールームに連れていくんだろう。何が何でもお姫様抱っこしてやるって決めていた】


894 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/25(土) 01:46:03 WMHqDivw0
>>893

もてあそぶぅ? ゆうべあたしのこと、さんッッッざん弄んでくれたのだあーれだ。
…………だからそのお返しだよ。これで全部チャラにしたげるから、

【「次はもうちょっとやさしくして、身体がもたないから」。笑って、抱き締められる、それが何よりうれしい】
【まったいらな胸でもちょっとやわくなった胸でもあたしよりでかくなっちゃった胸でもなんでもいい。あなたなら】
【全部ひっくるめて愛しちゃう。抱きしめ返す。すうと深呼吸したら――あんなに汗かいたのに甘い匂いがまだするの、ずるい】

んふふ、…………ごめんってば。でもマジで急すぎない? って思った、これはほんと。
わりとびっくりしたんだからね? あたしたちまだ、お付き合い始めたばっかりだし、
…………ゆうべがはじめてだったんだし。もーちょっとゆっくりでもよくない?
いやそれじゃ待てないのかなァエーノくんは。……ふふ、せっかちだもんね。

あのね、………………青い石のついてるやつがいいな。サファイア? ラピスラズリ?
そーいうのがいい、…………エーノさんの色、いつも身体につけてたいの。だからね、

【あなたは赤い石がついたやつ、着けててよ。……そこまでは言わなかったけど、恥ずかしいから】
【でも何となく察してほしかった。おたがいの色を肌身離さず持ち歩いていたかった。そうしたらきっと、】
【これから先どこで何してても、何があったって、なんにも怖くなくなると思うから。だから、あなたが、欲しい】
【触れられた薬指がまだほんのり温かかった。きっと気のせいじゃない。しあわせに疼く指を、そーっと胸板に乗せて】

………………あがったらネットでデザイン見ようね。だから、……お風呂の中でヘンなことしないで。

【逆上せちゃったらそれもできなくなるから。変なことを危惧しつつ、なんの抵抗もなくだっこされて。――しあわせ。】


895 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/25(土) 02:36:50 7ezs0Ll.0
>>894

【「 ……… かんがえておく。」言い返せない。そして言えない。次はもっとしようとか思ってたことなんて。次に加減ができるかどうか分からないことなんて。】
【せめて疲れてしまったキミのこと、柔らかい胸で包んで眠らせてあげたいと願うから、 ──── おっぱい、早く大きくならないかなあ。不埒なことも考える。】
【キミの呼吸が胸許をくすぐる。きもちいい。何をしても愛敬があるのは実にずるいと思う。その呼吸も、鼓動も、キミの生きてる証がぜんぶ、欲しい。】


「待てる訳ないじゃんかッ、」「 ─── 寂しがらせたくないよ。」「 ……… シグレは、一番幸せにならないと、だから」
「 ……… もぉ。ばか。ばかぁ。」「仕方ないだろ、 ……… シグレしか、もう、見えないんだから、 ………。」


【ちょっと小馬鹿にした感じで言われちゃうと悔しい反面、 ──── なんだか興奮する気がしないでもない。マゾなのかボクは?】
【せっかちって言われるのはキミじゃなかったらマジギレものだったけれど事実そうだし反論できない。我ながら本当にホントーに情けない。】
【異性交流の経験値では大差で負けている気がする。いやたぶん間違いなくそうだ。 ……… アリアに色々教えてもらえばよかったなぁ、とか、今さら後悔しつつも(嬉しい)】


「 ……… それなら、」「 ─── 天然物の、カラーダイヤなんかもいいな。」
「色がイチバン大切だ。」「 ……… ボクたちの目で選んで、」「一番、似てる奴にしよう。」


【 ─── そこまで言い切られなくたって、流石にボクでも分かった。キミの望み。直ぐ様それはボクの望みにもなる。】
【片時も離れずキミを感じていたい。ボクの片割れ。護るべきもの。愛していたい誰か。ふと薬指を見る時に、つけた指輪の感触を意識する度に、キミを想いたい。】
【首筋に回した左手の薬指に、 ─── 汗に髪束のできた紅色を、そっと絡める。くるくる巻いて、ほどけて、そうしたらまた、温もりを帯び続ける。】


「あは、」「 ─── そこまで盛っちゃいないよ。」「 ……… 朝ごはん食べながら、一緒に探そう。」

        約束だよ。シグレ。


【約束は守るものだ。ボクの欲望を先んじさせる訳がない。キミの幸せがボクの幸せ。少しばかり行儀が悪くても、きっと食べ終わるまで、待てない。】
【ふたりでシャワーを浴びて、湯船に浸かって、洗いっこまでしちゃうだろうか。多分するんだろう。バカだから。ボクもキミも。世界で一番。】
【もちろん髪は抜かりなくケアする。 「ヘアオイル、使ってみる?」──── お風呂上がりには、しっかり水気を拭き取って、丁寧にドライヤー。】
【2人でベーコンエッグを食べて、「結婚指輪」と検索するまで。もう紅色は生乾きにしないって、約束させるから。(そうしたら、いつか、きっと ─── 。)】


/こんな感じでシメでいかがでしょうか…!


896 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/25(土) 02:58:19 WMHqDivw0
>>895

………………ほんとせっかち。さびしくないよ、だってずっと一緒にいてくれるんでしょ?
あはは、…………かわいいな、エーノさんは。好き。そんなセリフさらっと吐いちゃうところも、
意地悪なところも、めんどくさいところも…………ぜーんぶまるっと好きになれるの、きっと、

世界できっとあたし一人だけだよ。だから、――――――会えてよかった、あなたに。

【…………、つられてちょっと恥ずかしいセリフ、言っちゃう。そして何より傲慢な言葉、吐き散らかして】
【あなたのこと全部好きになれるのはきっとあたしだけ。なら、あたしのこと全部好きになれるのもきっと】
【あなただけでいい。かちっとピースの噛み合う出来損ない同士なんて、絶対に代わりが利かないなら】

【――――――、】

【お風呂の中。明るいところで裸体を見るとやっぱり混乱する、世界一可愛い顔した女の身体に、ついてるから】
【無意識に首をひねってしまう。だけどそのうち慣れるんだろう、そしたら髪だって、今よりもっと綺麗になる】
【そしてヘアオイルを共有するなら、おんなじ匂いを重ねて使うはずなのに。やっぱりあなたのほうが、】
【いいにおいがする気がするんだからひどいなって思う。(でも多分それはベタ惚れ補正がかかってるだけとも言う)】

……………………えっ待ってめっちゃ高い。こんなにするもんなの、……エンゲージリングって。

【上がったあと。しっかり乾かしてくれた髪を散らしながら、むむ、と液晶を覗き込む。ゼロの数を数えて】
【うげー、みたいな顔するけど――――きっとあなたは笑ってるんでしょう? これくらいなんてことないって言って】
【お金持ってるのアピールしてくるんだ。やっぱ性格わるいなって思う。けど、そこまでひっくるめて好きなんだから】


【――――――――――――――――――――――――――――あたしだってあなたしか見えてない。】



//ヨシ!です!ながーいことお付き合いいただきありがとうございました!!


897 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/25(土) 23:23:38 Y9S7HET60
>>797


「 ─── あら。」


【夜陰の輝きから静かな呟きが漏れる。驚嘆の色を含んでいた。女の声だった。幼い声だった。 ─── 歩み来るのは、1人の少女。】
【闇に溶ける色合いの黒髪をボブカットに切り揃え、どこか錯誤したクラシカルロリータ。萌黄色のドレスワンピースに身を纏い】
【真っ白なハイソックスに細い両脚を包んで、 ─── 黒いパンプスの踏む脚先は、舗装された道をごく規則的に靴底で叩いて歩み行く。】
【ごく小さな背丈であった。少女の肩か、ともすれば胸ほどまでしかなかった。然して紡がれる言葉の色は、あまりに幼子のそれを逸していた。】


「 ……… 嵯峨野の所に殴り込んだ時にいた子かしら。」「こんばんは。 ─── 随分と萎れているようだけれど。」


【およそ少女の見知らぬ顔に違いなかった。だというのに何の遠慮もなく少女の隣に座り込むのだろう。】
【ベンチの下まで脚が届いていなかった。 ─── 手持ち無沙汰に両の爪先をぶらつかせ、無感情な童顔がリゼを見上げた。硝子細工のような青い瞳。】


898 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/08/25(土) 23:51:45 6IlD6zzI0
>>897

【停滞し淀んだ空気を吹き飛ばす様な凛とした声色に意識が傾く】

【自分よりも小さい身形と幼い声で紡がれているとは思えない雰囲気】
【気怠げに見下ろす形でちらりと見遣る。そしてリゼは瞠目する事になる】
【瞬きは一度だけに留まらず何度でも。それに加えて目も擦る――けれどその姿は変わらない】
【心と身体がチグハグに映る少女が自身の横に腰掛けたのは錯覚ではなく現実であるらしい】


ん、あぁ、こんばんはー、だね。おじょーちゃん。
萎れてるってゴアイサツだな。……って思ったけどやっぱりそう見えるかな、見えるよねぇ…。

(―――……あれ?"嵯峨野"?殴り込み?あん時ってあてより小さい奴居なかったと思うけど)


【笑みを浮かべれど、目は笑っていない。精々翳りを含んだ笑みを口元に宿すに留まる】
【そして浮かんだ疑問に因ってその薄い笑みも引っ込んで。怪訝な表情へと変わっていく】


おじょーちゃん……どっかで会ったっけ?
その口ぶりだとさ、あてと面識があるみたいに聞こえるんだけど。

【記憶を振り返っても隣にいる少女の姿は見当たらない。んんー、と唸りながら首を横に傾ける】
【……やはり出てこない。果たして隣に座った少女は何者なのだろうか?】


899 : ◆XLNm0nfgzs :2018/08/26(日) 00:06:24 BRNVt/Aw0

【街中のとある通り】

【穏やかな昼下がり。昼食の時間はとうに昔、人々が夕食の支度の為に買い物に出る時間まではまだ少し早い。そんな時間帯】

【通りを大きな紙袋が歩いていた】
【否、紙袋に手足が生えたような生物が歩いているというべきか】


オモイヨォ……アツイヨォ……マエガミエナイヨォ……ウゥ……
【何だかぶつぶつと呟きながら人でいえば腹の辺りを両腕で抱え込みヨボヨボと覚束ない足取りで歩く大きな紙袋】
【物凄く危なっかしい】
【まあ実際のところ紙袋が歩くなんて奇っ怪な事象はないだろうから恐らくは大きい紙袋を抱えた誰かなのだろうが】
【それにしても物凄く危なっかしい】

アァ……ワタシコノクキョウヲノリコエタラヒトノカネデ「二種のお茶のパンケーキ櫻スペシャル(¥1460)」タベルンダァ……ウフフヴッッ!!?
【何やら遠い目をしてそうな声で呟いた瞬間案の定盛大にすっ転ぶ大きな紙袋】

【べちっという音をたてて転ぶ本体と横倒しになる紙袋。その向こうからは当然というか人間の姿が出てきて】

【とにかく白っぽい少女、だった。月白色の肩まで伸ばした髪に白い半袖のTシャツと紺色のスカート】
【金色の目が困惑したように瞬かれて】

【道に転がった紙袋からは玉葱が数個ほど転がっていってしまっていて】
【紙袋の上には横倒しになってしまった事で大きめの生成色のキャスケットがいい感じにちょこんと乗っかっている】

【それを見た瞬間少女の目が見開かれる】
【マジでかー……なんて顔だけ上げて地面に伏せた状態でげんなりした表情を浮かべ呟く彼女の頭には】

【髪の色と同じ色をした猫の耳が生えていて】


900 : ◆zO7JlnSovk :2018/08/26(日) 13:35:33 VT7/pGdE0
>>886

【苛烈な言葉を紡ぐ少女であった、言葉の端々から彼女が辿ってきた道筋を伺える】
【その険しさが彼女を作り上げたのだろうか、或いはもっと根源からこうであったのか】
【──── 紫苑色の彼女は、しとりと目を伏せる、馳せるには想いが貴すぎて】


ええ、生者の特権です、自己否定も自己憐憫も同じく生者の付けた後付に過ぎないのですわ
私は貴女様が "兵器" だなんて思いませんの、兵器に心などがあって?
だとすればこの世界から争いなんて無くなりますわ、誰もが皆、その重さには耐えられないのです

生きている者だけが苦しむ、生きている者だけが悩む、──── 果たしてそうでしょうか
死者は現の事情など考えなくても良いと、誰が決めたのでしょう、天国にだって悩みはあるのですわ
死んだら終わりだなんて、死者の驕りですこと、──── "貴方様もきっと、そうなのでしょう"


【少女の触れた墓標、指先から熱い感触が登ってくるように、びくんと小さく揺れて】
【唇の端を噛み締める、冷や水を浴びせられたかの如く、内股加減の両脚が震える】
【大きく吐き出す吐息、艶音混じりに声を靡かせて、しとやかに貴女へと向き直る】

【──── それはまるで儀式の様であった、墓標から何かを読み取ったかの如く】


ではもう一度貴女様に問いかけましょう、貴女様がすべき事は、何処にあって?
立ち止まる時を私は拒みません、振り返る時も私は受け入れましょう
しかし、永劫の時を足踏みする命は、果たして生きてるといえるのでしょうか?

今この国は病んでおります、内側からも外側からも、病は既に奥深くまで浸食して

私はこの国と民とを守らねばなりません、けれども私の持つ力はほんの僅かですの
故に集めなければ成らず、束ねなければならないのです
貴女様が如何なる存在か、私には強くは言えませんが────

──── "Justice" の為に戦う行いに、不可能などありませんわ


901 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/08/26(日) 20:37:10 ZCHlt7mo0
>>900

――――そうですよ、だから私は、心なんて捨てたいんです――――
『人間』として、生きてしまった――――今は、後悔しています――――ッ
たった1年――――たった1年だけでした。こんな事を、考えないで済んだのは――――全くの『人間ごっこ』を、してられたのは――――ッ!

【心を持つ兵器など存在しない。女性の言う通りだろう。少女も、正にその一点で、その人生の始末をつけられずに、ずっと苦しんでいる様だった】
【恐らく――――かつてはこんな冷え切った性情でも無かったのだろう。ある時には、逆に今以上に魂を凍り付けせていたのだろう】
【自分自身に、そして周囲の環境に、振り回されて、抗い切れずに――――心と言うべきものはもう、ボロボロになっていた】

――――何を、言ってるんです――――?
死は、ゼロになる事じゃないとでも、言うんですか――――? 私の見てきた『死』は、みんなゼロでした――――
――――もし、死が終わりじゃないんだったら、この人は――――死んだ後も、苦しみ続ける事になる――――最期を、後悔なく閉じれたと、そう言っていたのに――――

【忌むべきものを確かめる様に、少女はゆっくりと墓標へと視線を向ける。もし、死が終わりでないのだとしたら――――葬られた人物の望む『最期』は、存在しない事になる】
【「滅びの時を、絶望を抱かずに迎えられた」――――だからこそ、と最期にそう言っていた件の人物もまた、生者の驕りに過ぎなかったのだろうか】
【だとしたら――――彼の言葉を借りれば、この世界の絶望は、永遠に救いえないものとなってしまう】

――――人になら、魂の帰るべき場所というものは、あるのかもしれません――――私には、望むべくもないですが――――

【死を、最期の救いと見做す人間も、決して少なくはない。それもまた、生者の驕りなのだろうか】
【何故、そんな思想が生まれるかと言えば、魂は、死を静寂と受け取る事ができるからだろうと、そういう事ができる】
【だからこそ、死を冒涜する行為は、忌まわしく、許しがたい行為なのだ――――死ねば、ただ消えていくだけ。そう信じている『兵器』の少女は、ふと思いを馳せる】

(ッ、何を――――?)

【墓標に触れて、何か乱れた呼吸――――何事かと、少女は思わず女性を凝視する。そこに、何があったのか――――知るのは、女性だけだ】

すべき、事――――――――分かっています。私は――――『敵』を、殲滅する。ただ、それだけです――――
もう、誰から許されなくても――――私は、私の定めた想いに、最後まで殉じます――――もう、それしか私にはできません――――
――――停滞する事は、私も――――私を、許しません――――ッ

【――――少女の身体を走る、金色の光のラインが、より一層強く輝きを放つ。涙でグシャグシャになった顔を、それでも少女はハッキリと上げた】
【確かに、悲しみに暮れている事は、自分のするべき事ではない。戦わないのなら、もう後は、無為に消えるか――――それだけなのだ】

ッ――――――――Justiceの為の、戦い――――ッ?
――――失礼ですけど――――あなたは、一体何者なんですか――――?

【ふと、琴線に触れる言葉が出てきて、少女は戦慄する。女性の言葉の文脈は、どういう意図で『Justice』という言葉を選んだのか】
【故に、問わずにはいられなかった。どこか、遠いはずなのに懐かしさを感じさせる風貌。そしてJusticeというキーワード】
【そして先ほどの、自分に負けず劣らずの、独特の死生観を説く言葉――――これは一体、どういう事なのか、と】


902 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/26(日) 20:50:26 WMHqDivw0
>>899

【ころころ、転がっていく玉葱。白い少女の視線がそれを追いかけていくのなら】
【目に入ってしまうんだろう。痛々しいくらい、人をバカにしてるみたいな勢いで真っ赤な】
【バカしか履かないみたいな「赤い靴」。……もうそれだけで答え合わせしちゃってるようなものだった】
【「そいつ」が誰かってことくらい。すぐわかっちゃうんだろう、少女、つがるには――――だって】

………………、つがるん、玉葱へいきなの?
ネコチャンなのに。……それは偏見がすぎるかな。へへ。

【靴にぶつかったそれを拾い上げる指先。右も左も使うなら、見慣れない装飾品がひかっているのが見える】
【左手薬指に指輪。きれいな青色の石がついてる、結構な値段のしそうなもの――ならそれは、】
【「そいつ」には到底買えやしないものだってわかるなら。貰い物だってことわからせちゃうんだろうか】

【(だったら相当バカにしてる、と思わせるかもしれない。だって、あんなに心配かけたのに)】
【(その間にへらへら指輪のプレゼントを受けてたなんて。本当に馬鹿げてる、だから、怒ってやるべきだ)】

大丈夫? ……………………ひさしぶり。ネ、……ちゃんと来たよ、あたし。

【「ちゃんとあやまりにきたよ」。……靴とか指輪から視線を離して、上へ辿っていくなら】
【曖昧な笑顔を浮かべる「そいつ」がいるんだった。赤い瞳、赤い髪。いなくなる前と何ら変わらぬ色彩の】
【――――――「夕月」だった。眉尻の下がった、困り笑顔を披露して、……拾った玉葱を差し出す】


903 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/26(日) 20:59:01 Y9S7HET60
>>898

【疑わしげな視線を受けて、少女はごく機械的な挙措で目を見開いた。カメラのように瞳孔が微かに見開かれる。】
【そうして、 ─── 暫し自身の掌をじつと眺めて、ごく人間的な仕草で吹き出した。だが、吐息は漏れない。そも彼女は、"呼吸をしていない"。】

「 ─── この身体のことね。それなりに馴染んでいたから、忘れてたわ。」「少し、"本体"が離れられなくて。」
「衛星経由のデコイボディよ。 ……… 同国内だと、そこまでタイムラグも大きくないし、操作もしやすいの。」

【そうして開いた掌を相手の眼前に突き出す。 ─── 五指の関節に露出しているのは、ごく人形的なボールジョイント。】
【「とは言っても民生品の義体を少し弄っただけだから、戦闘となると心許ないのだけれど。」ドレスの懐から垣間見えるのは、小型の自動拳銃であった。】
【やはり口調はひどく大人びていた。ジャケットの内裡に手を伸ばして、 ─── そんなものは無いと途中で気付く。煙草を吸おうとしたらしい。苦笑していた。】


「アリア、 ─── と言えば、解るかしら?」「まあ解らなくてもいいわ。やたらに背の高い銀髪の女がいたでしょう。」
「情報収集になればと思って、まずは手近な場所をふらついていたのだけれど ……… 知っている顔が見えたから、声をかけたの。」


【「どうかしら。 ─── こう見えても諜報屋なの。情報交換と洒落込まない?」見上げる少女の青い瞳が、微かに眇められる。】


904 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/08/26(日) 21:31:32 6IlD6zzI0
>>903

【突き出された掌に血は通っていないらしい。無機質な人形を形作る部品の数々がそれを物語る】
【言われてみれば、隣に腰掛けているのに息遣いが聞こえない。彼女の視線も機械的なそれで何処か寒々しい】
【機械仕掛けの人形。けれど血の通った人間の仕草が機械人形を通じて透けて見えたから、それが少し可笑しかった】


……ええーっ!?あての隣に座ってるチビッ子の正体がめっちゃ背ェ高い銀髪のおねーさんだって!?
………科学の力ってすげー、って驚嘆しちゃう。お人形みたいな可愛らしい格好はおねーさんの趣味かな?

つーか、おじょーちゃんなんて呼んだら駄目だー。アリアのおねーさんって呼ぼうかな。


【改めて目を見開いて、童女めいた容姿に相応しく幼い驚きを叫びとして表現した後】
【今度は口元だけでなく、顔全体で柔らかい笑みを浮かべて。怪訝な表情は何処吹く風か】
【ころころと表情が移ろいでいくのは、リゼ自身の気質であろう。間違っても当て付けの類では無い】


へぇ…諜報屋ねえ。見かけによらないねぇ。てっきり血も涙も無いターミネーターだと思ってた。

まぁ、情報交換ってのは構わないけど。場所は変えたいかな。ここだと落ち着かないし、暑いし。
それに、あてには密談するにうってつけの場所に心当たりがあってね。
その場所の名前は【CHAIN GANG】ってバーなんだけど、知ってるかな?


【その場所はリゼの根城であり職場。そして先程早退を命じられて追い出された場所】
【従業員として追い出されたなら、今度は客として転がり込んでやろうという算段だった】


905 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/26(日) 21:47:29 Y9S7HET60
>>904


【であれば青い義眼のカメラ越しに少女を見ている女もまた、幾ばくかその態度を柔和にさせたに違いなかった。】
【気丈な子供は嫌いでなかった。愛らしいものは尚のこと嫌いでなかった。屈託のない態度に心を晒すのも悪くはない。】
【 ─── 今の"自分"が何をしているのかを思えば、それも幾らか後ろめたくはあるとしても。ともあれそれは必要なのだから。】


「生身の体がないと、 ─── こういう時に便利なものよ。」「このボディだって脳直通信で動かしている訳だし」
「たまたま規格が合っていたのを選んだだけよ。 ……… けれど、そうね。何とでも呼んでくれたらいいわ。」


【ベンチから滑り降りて、ぶらつかせていた両脚を地に付ける。そうして、ひらりと体を回して向き直る。】
【微かに笑っていた。確かにぎこちなくはあった。ただそれは与えられた仮面が完全でないに過ぎぬ違和感に違いなかった。】
【その姿は作り物であるに違いなく、それでいて確かな人間性を宿している。 ─── ひらめく黒髪の一束さえ、マリオネットを手繰る天蚕糸の演ずるに似て】


「 ─── 本体の方には、血も涙もきちんと通ってるわよ。流すかどうかは別として、ね」
「名前だけは聞いていない訳じゃないわ。 ……… 連れていって下さる?」


【そうして彼女は喜んで願うのだろう。「ただ申し訳ないけれど、この体で飲み食いはできないの。 ……… ご容赦願うわ。」そう、申し訳なさげに付け加えて】


906 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/08/26(日) 22:24:17 6IlD6zzI0
>>905

【作り物の人型に宿る人間性。血の通らぬ表情に違和感を覚えながらも、不思議と嫌ではない】
【違和感を覚えるのはその表情が人ではないから。着地する際の動きだけ見れば人の様に見えるけれど】
【何はともあれ"その人"は笑っているのだから。人形越しの彼女の後ろめたさまでは解らない。知らなくていい】


生身の身体が無いと、ってアリアおねーさん。……マジモンのターミネーターかな?
或いは"さいぼーぐ"って奴?……まぁいいか。おねーさん自身が血も涙もあるって言うんだから。

仮におねーさんが生身の人間だろうと機械仕掛けでもさ。あっ、これ以上は追求しないでおくね。


【この渡世。何があっても不思議では無い。誰が言ったか――ありえない。なんて事はありえない】
【故に人形越しのアリアに対して申し訳なさそうな表情を浮かべて。両手を合わせて"ごめんネ"と謝辞を表す】
【その後「おっけー、おっけー。飲み食いは要求しないから気にしないで」と気遣いを見せて、人形の手を取る】

【そうしたら、彼女の手を握ったリゼはBAR CHAIN GANGまで歩みを進めるのであった】
【夜の街を歩く二人組の子供。傍から見ればそんな風に映るだろう。……歩みを進める事、約30分ほど】
【やがて辿り着くのは目的地たるCHAIN GANGなるBAR。重苦しい扉を開ければ、仕事帰りの勤め人達の姿と店長たる赤髪の大男】

【赤髪の大男・グラヴィスはリゼを睨み、「どういう了見だ。帰れと言っただろ」と口を尖らせるも】
【リゼは不機嫌な表情と刺々しい声色で「チャムリーズだよ、チャムリーズ。コレなら文句は無いだろ」と告げて、グラヴィスを黙らせる】
【その後は、勝手知ったる何とやら。カウンターから遠く離れたテーブル席に腰掛けるのであった】


907 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/26(日) 22:39:41 Y9S7HET60
>>906


「そ。 ─── まァそのお陰で、強く在るには不便していないのだから、文句を言えた筋合いじゃないのだけれど。」
「好きに接してくれればいいわ。少し邪険に扱われて、傷つくような心ではないから。」「そんな柔な鍛え方はしていないから。」


【淡々とした声であった。 ─── 真実として、女は何も思っていないに違いなかった。余りに慣れてしまったこと。】
【或いは誇りでさえあるのだろう。向けられる深謝の言葉には、ふッと頬を緩めて意志を伝える。】
【手を取られるならば拒むことはない。それが尤もらしい姿であった。ただ上向きに手を繋ぐ感覚は、 ─── 久しく忘れていた】

【そして少女の姿ふたつ、夜の煌めきへと足を踏み込むのならば、さしもの客引きも声をかけるに躊躇うのだろう。】
【文句ひとつ言わず付いて行く。 ─── 店長らしき剛毅な偉丈夫には一瞥だけを遣って、軽く会釈して】
【テーブル席に座るにも飛び乗るような有様ではあり、やはり足先は届いていなかった。それでも背凭れに軽く身を委ねる程度には気後れのない様子だった】
【「水も要らないわ。」 ─── であれば、少女のオーダーを待つだろうか。言葉通りに、彼女は何も頼まなかった。そして】


「 ─── それで。」「貴女、どういう経緯で"あそこ"に居たの?」
「義憤であるというのならば、それだけの話ではあるけれど。 ……… そも、どこまで"知っている"?」


【切り出されるのは、 ─── ごく直接的な話題。ひとたび心に決めたのなら、余計な修辞を嫌うらしい。硝子色の青い瞳が、真っ直ぐに少女を見つめていた。】


908 : ◆XLNm0nfgzs :2018/08/26(日) 23:05:52 BRNVt/Aw0
>>902

【転がっていく玉葱。少女はそっちには目もくれないでじーっと紙袋に乗っかったキャスケットの方を見ていた】
【だって、こんなの死活問題だった】
【こんな猫の耳を生やした人間、普通の人が見たらきっと大変な事になる。いつだったかみたいに化け物を見る目を向けられる】
【だから必死に考えていた。見えてなかったけど人はいるのか?早いところ起き上がって取れるならキャスケットを取ってそれからひとまず路地に身を隠して、それから……って】

【だから、気付いたのは声をかけられた時で】

もう、こないだも言ったけど半分は人だから大丈夫だしそもそももう半分もただの猫じゃなくて化け猫だから──

……ふぇ?
【それでもまだ思考は変な所にいってたからいつだったかと同じような返事をしかけて、そうしてようやく気付く】
【気の抜けた声をあげて慌てて視線を更に先に向ければそこにあるのは『彼女』のトレードマークで】

【素早く体を起こしかけて膝をついた四つん這いみたいな体勢になってもう一回見たならばやっぱり、最近姿を消していた友達で】
【良かった、全然変わんない。無事だったんだって安心したのも束の間】
【自分が転がしてしまったらしき野菜を手にする指に目がいって】
【思わず、へたん、とアヒル座りになってしまう】

【薬指にはめられた指輪。その装飾品の意味は知っていたし強く印象に残ってた。こっちは鉄漿じゃなくってこういうのなんだなって】
【それがどれだけの値段の物なのか知らないから貰い物だとかは気付かなかったけど、でもそこにそれがある意味を知っているだけでなんとなく"そんな人"と"そんな事"があったんだ、って事は分かって】

【差し出された玉葱も、相手の言葉も分からないかのように、今にも泣きそうな顔になってしまって】

じょーきょーに、よっては、ぱんけーきだけ、じゃ……たんないかも……しんないっ
【先日の貴女へのメールの返信。『パンケーキ奢ってくれたらチャラにするから』みたいな事が書かれていた気がしたけれども、それにあわせるみたいにぽつん、と言って】


909 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/08/26(日) 23:11:44 6IlD6zzI0
>>907

【二人がテーブル席に腰掛けてからの展開はとても早かった】
【刃物を連想させる様な鋭い切り口の言葉と無機質な青色に息をはっと飲まざるを得なかった】
【ごくり、と唾を飲み込んで。腹を括る。曖昧な言葉などばっさりと切り捨てられるだろう】


――…どういう経緯。どういう経緯ねえ。簡単に説明するとブラスフェミアの関係者経由で
<harmony/group>に拉致された子を助け出して欲しいって頼まれたから。

だから、あては"旋風の用心棒"として、ブラスフェミアの協力者としてあの場に馳せ参じただけの事。
知ってる事なんてそれぐらいだよ。「身内を拉致されて神様にされそうだから奪還してきて、絶対に」ってだけ。


【真っ直ぐな青色に重ねるのは、緑翠の瞳。逃げも隠れもしない。お望みどおり"唄って"やろう、と】
【そう言わんばかりの真っ直ぐな瞳をぶつけるのであった。ただ、依頼人たるオムレツの名前は告げない】

あの一連の騒動であてが"知ってる"事は(大体)話した。これ以上は何も知らない。
それに当初は"義憤"じゃなくて単なる"依頼"でしか無かったんだけど。

無かったけど……あのスプラッターな映像とサガノナルミ、いやロールシャッハか。
あれの所為で今では義憤に駆られてる。多分あの場で喚き散らしてたあての姿を見てるから解るかもしんないけど。

情報交換というなら今度はおねーさんの番だね。ロールシャッハとそれを取り巻く周辺の事はあてより把握してんじゃない?

【「―――そこらへん詳しく話してくれると嬉しいな」、とリゼは強請る。お互い遠慮などしないつもりなのだろう】


910 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/26(日) 23:39:23 WMHqDivw0
>>908

……………………うん。じゃあドリンクもつけちゃう、簡単なジュースとかじゃなくて、
アイスとか生クリームとかフルーツとかたんまり乗ってるヤツ……だったら、
……さいしょっからパフェ頼んだ方がいいかなあ。はは、パンケーキとパフェ、……、

【「胃もたれしちゃいそう」。厚底を鳴らして近付いて、しゃがみ込んだなら。紙袋を正しい向きに直して】
【バランスよく玉葱を乗っけていく。その前に、キャスケットをひょいと摘み上げたら、つがるの頭に乗せる】
【そうして首を傾げて――覗き込むみたいに笑うのだ、……やっぱり眉尻は下がったままだけど】

…………、…………つくろっか? パンケーキ。あのネ、あたし最近ぜんっぜん料理してなかったから、
きっと腕がなまっちゃった。だからリハビリがてら、あのキッチンで焼くの。それに好きなだけ、
……トッピング、好きなもの、リクエストしていいよ。全部あたしのお金で買ってくから。

【 ――――――――だからさ、 】


――――――――もどってもいい? たんぽぽ。


【今にも泣き出しそうな顔したのはこっちも同じ。声も、懇願するみたいな弱気の音色】
【ほとんど何も言わずに逃げちゃって、約束破っちゃったけど、戻ってもいいかって。そう訊くなら、】
【つがるが返す言葉がどうあれ――――続く言葉は、「ほんとに、ごめんね」。……目を細めたら】
【街のど真ん中なのに、ほろり、涙が零れてしまった。ひとつぶだけ。こういうところがズルかった】


911 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/26(日) 23:39:42 Y9S7HET60
>>909


「 ─── ふうん。」「"彼"、貴女にも頼み事をしていたのね。 ……… 成る程。」


【射返すような視線はまさしく女の好む所であった。 ─── 合点が行ったように、くすりと笑う。凡そ少女の笑い方ではなかった】
【冒涜者と呼ばれる女に関わり深い人間は、夕月を除けば1人しかいなかった。彼女もまた、彼と関わりある人間であった】


「概ね動機は私と同じね。 ─── 大切な人たちを、嘲弄され侮辱されたの。だから、絶対に許さない。」


【冱つる声音に宿る情念もまた尋常のものではなかった。 ─── 凡そ躊躇いなく他人を殺してきたのだろうと、後ろ暗い人間ならば誰にだって分かった。】
【合理性の化身のような容貌をして、存外ながらも仁義や道理に篤い人間であるらしい。少女の言葉には、ふむ、と微かな思惟を示し、そうして】


「 ……… 良いわ。味方が多いに越したことはない。今は見返りは求めずとも、話しておきましょう。」


【 ─── 一先ずは、語るに値する対手である。そう、女は判断したらしい。両掌を膝に置いたまま、ひとたび唇の開くなら、淀みなく言葉を紡いでいく。】


「察しはついているかもしれないけれど、奴らの正体は人間ではない。」「 ……… "虚神"と呼ばれる、別の世界から侵略してきた化け物ども。」
「私も随分と苦杯を飲まされたわ。」「知っているでしょう ─── 数ヶ月前の、カルト騒ぎ。アレにも奴等が噛んでいた。今回の事件との関連は薄いのだけれど。」
「ともあれロールシャッハと名乗るあの男は、この世界に"調和"を齎すと標榜し、その為に夕月を利用しようとした。」「然してそれは成功を見ず、」
「 ──── 今ばかり、奴らは姿を眩ませて、次なる魔手を練り上げようとしている。 ……… こんな所、かしら。」


【「何か質問があればどうぞ。」 ─── まずもって荒唐無稽であった。顔色一つ変えずにそれだけのことを言ってのけていた。やはり彼女もまた、真っ当な精神ではない。】


912 : ◆XLNm0nfgzs :2018/08/27(月) 00:33:18 BRNVt/Aw0
>>910

【やっとこさ吐き出せた言葉。本当はパンケーキにいっぱいいっぱいおまけつけて奢ってよ、なんてたかるつもりじゃないのに】
【ぽすんと乗せられたキャスケット。相手に顔が見られないようにぎゅうっと両手で両端を掴んで頭を押し込んで】
【それでも顔を覗き込まれたならぽろぽろと泣いてしまっているんだろう】

【パンケーキ、作ってあげるよ、とか、だからたんぽぽに戻っても良いかな?なんて相手は言うけれども返ってくるのはきっと押し殺したような嗚咽だけで】

【手作りのパンケーキなんか要らなかった。だって、奢って欲しかったお店はいつか夕月ちゃんと、叶うなら鈴音ちゃんも一緒に、三人で行きたいかなって思ってた所だったから】

【何があったのか聞くのが恐ろしいと思った。何か大変な出来事があって、それで自分を見失いそうになって、だからあんなメールを送ったしたんぽぽを休む羽目になったのかなっていうのは何となく分かっていた】

【本当は約束なんて破る気が無かったんだって事、最初っから判ってる筈だったのだ。けれどもよりにもよって文面が「私って誰だっけ」なんて夢の中で泣いていた姉のように慕っていた友人みたいな物だったから】
【夕月ちゃんも何処かに消えて戻れなくなっちゃうんじゃないかって、怖くて。だからついあんな酷い事を書いちゃったのに、必死に謝られて】

【──謝らなきゃいけないのは、自分の方だったのに】

【だから贖罪の気持ちで頑張ろうって思った。夕月ちゃんが帰ってくるまで一人で頑張ってたんぽぽを切り盛りしようって】

【必死だったのに】

【少しの間だったけど行方知れずだった友人の左手の薬指にはめられた指輪。幸せの象徴】

【本当は何も大変な事なんか無かったんじゃないかって、ただ子供達の世話をするのが嫌になっただけなんじゃないかって】
【本当に自分にたんぽぽを押し付けて自分は新しい家族と仲睦まじく笑っていただけなんじゃないかって】
【こっちが誰かに八つ当たりするくらい苦しんでいたのも必死でたんぽぽを頑張ろうとしていたのも知らないでずっと何処かで笑っていたんじゃないかって】
【自分は今世界一滑稽で無様で馬鹿なんじゃないかって】
【そんな疑いを抱いてしまって】

【聞こえてくる、ごめんね、なんて震えた声】

【言葉を発せられない】

【今言葉を発してしまったら、きっと凄く凄く酷い事、言ってしまいそうだったから】


913 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/27(月) 00:54:38 WMHqDivw0
>>912

【――――なんとなく、わかってた。というかわからなくっちゃ駄目だった、だって】
【トークルームに残されたあの四文字が今でも網膜にこびりついて離れてくれないから】
【「うそつき」って。言われて、……返す言葉もなかった。誘拐されてたのは本当だったとして】
【そのあと、怖いとか何とか言って引き籠ってたこと。その間めためたに甘やかされていたこと】
【全部に負い目を感じるなら――――こいつはほんとに、何も言えなくなる】

……………………………………………………、

【街中。無言。お互い涙を流してしゃがみ込んだままなら、それはもう目立って目立って仕方ないから】
【まだ少しだけしか泣いていない、自分のほうが次のアクションを起こさなきゃって思った。立ち上がって】
【紙袋を片手で抱っこ。そうしたらもう片手でつがるの手を取ろうとして、叶うならそのまま軽く引っ張る】
【立ち上がって一緒に歩いてくれるなら。ふたりは無言で、たんぽぽまで歩いていくんだろうけど】
【振り払われちゃうかもしれなかった。それならそれで、こいつは帰っていくんだろうけど、……悲しげな顔して】

【それとも。ついて来てくれたとして、やっぱり何処かで歩みを止めてしまう。……UTの施設内に続くドアの前】
【そこで靴音を鳴らすのを止めて、もう一度訊く、「……入っていい?」って。勝手に踏み入る勇気はまだなかった】
【嘘つきだったから。弱虫だったから。負い目があったから――つがるに許してもらえないと、】
【ドアノブに手をかけることすら出来なさそうだった。ましてや指輪の嵌った幸福な指先なんて】
【この場所に触れていいのかすらわからない。だから、…………でも。もう一度言葉を続けて】

…………、……うそはついてないよ。まだ友達でいたいって、……それは絶対に本当。

【すべてを拒絶されたとしてこれだけは伝えたかった。許されるなら、許されなくても、まだ友情を抱いていたい】
【そんな卑怯なこと言う唇はきっと誰かに甘やかしてもらって、世界で一番甘いモノの味を知っている色合いをしていた】
【それを許せるって、つがるが言ってくれるなら。……ようやっと戻るんだろう、一歩だけ、ドアをくぐって】


914 : ◆XLNm0nfgzs :2018/08/27(月) 12:05:13 BRNVt/Aw0
>>913

【ごめんね、なんて言葉に何も返せないでただひたすらキャスケットの端を掴んで泣きじゃくって】
【それでどちらも黙ってしまったものだからもう何もかもが怖くなってしまって】
【どうしているのだろう、どんな顔しているのだろうと帽子から手を離しておずおずと相手の顔をうかがえば帽子から離れかけた手を取られて】
【立ち上がらされて、そのまま歩き出す。振り払おうなんてしなくて】
【道中、相手から言葉なんてないし此方もまだ口を開くのが怖くて何も言えないからただひたすら無言で。何故だかまた泣けてきて】

【そうしてたどり着いたUTの入り口の前】
【入って良い?なんて尋ねられて】

……こ、ど、も、が……き、ら、い、に、な、て、な、い、な、ら……
【凄く途切れ途切れ。子供が嫌いになってないんなら良いと思うよ、なんてニュアンスの言葉を返して】
【(そうやって一文字ずつ区切らなきゃ、たんぽぽに来る子供達を盾にしなきゃ酷い事口走るんじゃないかって、怖かったから)】

【けれどもまだドアノブにかけられない手。言葉が更に続いて】

──わたしだって、ともだちでいたいよ……

【それに返されるような言葉。一つ口にしてしまえば言葉は自然と溢れてきてしまって】

……私だって……っ、本当は夕月ちゃんと友達でいたいよ!
本当に謝んなきゃいけないの、私の方だよ!夕月ちゃんに酷い事いっぱい言っちゃって……謝られたから上から目線でパンケーキ奢ってくれたらなんて変な事言って!
だからって頑張ったんだよ!?帰ってくるまで一人でたんぽぽ切り盛りしようって思ってたんだよ!?
それなのに夕月ちゃん一人だけ幸せになっちゃって……酷いよ……酷いよ酷いよ酷いよ酷いよッ!
夕月ちゃんがいなくなった時どれだけ怖かったか分かる!?分かんないよね!?お母さんみたいに死んじゃったらどうしようって思って!厳島さんみたいに一生消えない深い傷を負わされてたらどうしようって思って!鈴音ちゃんみたく何処か行っちゃって会えない存在になっちゃうんじゃないかって思って!
……でも私がうそつきなんて書いちゃったから例え無事でももう戻ってくる気も無くしたんじゃないかって怖くもなって!
それなのに……それなのに夕月ちゃんは誰かに愛されて幸せに笑ってたなんて……その前に何かがあったのかもしれないけどそれでも……!
……なんなの……そんなの私がただの馬鹿みたいじゃん!無様で惨めで滑稽で道化みたいじゃん!
バカバカバカッ!夕月ちゃんのバカッ!
夕月ちゃん、なんか……夕月ちゃんなんか────

【そこまで言いかけてハッとする。自分は今何を言おうとしてるんだろうって。そんな事本当は思ってないのにって】

違う……違うの……私、そんな事……私……っ
【ゆるゆると首を横に振る。頭がうまく回らない。此処に来るまでに止まっていた筈の涙がまた溢れてきて】


915 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/27(月) 14:43:25 WMHqDivw0
>>914

【「子供が嫌いになってないなら」。言われたら少し苦笑してしまった、そんなわけないじゃんって】
【それがイヤでほっぽり出したんだと思われたんならちょっと心外だな、とか思ったりして。だけど】
【ドアノブにかけられない手はそのままだらんと垂れ下がって。指輪は忌々しくもキラキラ輝くなら】

……、…………、………………、

【つがるの慟哭だって立ち尽くして全部聞き終えてしまう。きゅっと唇を噛み締める音、響きはしないけど】
【それでもこいつは悲しげな顔をしていた。ひどいことした自覚はあったから、だから】
【違うって言って首を横に振るつがるを見て――自分も同じように少しだけ、首を振った】

…………、半分? くらい違ってて、……半分くらいあってるよ。
幸せになったのは本当。こんなあたしでもいいって言ってくれる人ができたの、
その人にいっぱい幸せにしてもらえるようになったのは――――本当。

でもそれまでに、……鈴音みたいなことになりかけてたのも本当。
もう二度と逢えなくなりかけたのも本当、……助けてもらえたから、なんとかなったけど。
それで…………本気で死んじゃいたいって思ってたのも、本当。

【それから出てくるのは、ひどい言い訳だった。ましてや頭のほうにそんな報告を付け加えるんなら】
【もっと明るい雰囲気のときにそうしたかったって。恋人ができたのって言って、笑って、それで】
【おめでとうって笑って返してくれるときに――そういう「お友達」の距離感のときに言いたかった】
【でもそんな淡い願望さえ砕いたのが自分なら、なんもかんも、仕方ないって、思って】

【それでも、】

………………それでも、つがるんと鈴音と一緒にたんぽぽやりたくて、
ここに帰ってきちゃったのだって本当だよ。

【――――――――ようやく指先が、ドアノブに触れた。】


916 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/27(月) 21:40:34 6fWpxBvw0
>>887

【さり、 ─── 下生えの合間を掻き分けるのは、誰かの足音。身を浸せる夜闇の合間から現れるのは、幼い少女。】
【青年と侍女の姿を捉えぬまま、およそ無防備に横顔を晒していた。月と星空を仰いでいた。どこか彼方に呼びかけるように、その青い双眸を眇めていた。】
【ごく小柄だった。晩夏の青空に焼き付いてしまいそうな真白いワンピース。そこから溢れる朧げな素足は、湿った雌蕊に似て瑞々しく透き通り】
【夜さえも統べるような黒いストラップサンダルに爪先までを包んでいた。 ─── 一陣の風が、ボブカットの黒髪を揺らす。呟くのは、月明かりに映えるハスキー。】


「 ……… 流星群には、まだ早すぎた、か。」


【漏らした独り言は、誰に届くともなく消えゆく。 ─── しかし或いは、彼らが聞くのかもしれなかった。】
【何故ならば漸く少女は気付いた。ひらりとワンピースの端をひらめかせて向き直る。つくりものに似た端整な顔。】
【然し事実として彼女は人工物であるようにも見え得た。ひらりひらりと振られる指先、その関節は球体のもの。】


「 ─── 珍しいわね。」「こんな所に、誰かが来るなんて。」
「聞き惚れてしまいそうな独唱(アリア)だったわ。 ……… ありがとう。」


【しゃなりしゃなりと足取りは軽やかに、然し年頃の少女とは思えぬような口ぶりにて、 ─── 少女は彼らへ歩み寄るだろう。】
【許されるのならば、直ぐ傍に座り込むのかもしれない。それにしても疑わしい容貌と挙措であった。少なくとも、真っ当な少女ではないに違いなかった。】

/まだ見ていらっしゃれば!


917 : ◆XLNm0nfgzs :2018/08/27(月) 22:50:42 BRNVt/Aw0
>>915

【ぼやけた視界に映った相手の顔。とても悲しそうで、なんだか胸が締め付けられるみたいで】
【その後に続いたのは彼女の告白。本当に誰かとしあわせになって、けれどもその前に鈴音のような事になっていて、もう二度と会えなくなるかもしれなかったって】

……そう、だったんだ

なんだ、そうだったんだ

私、はじめから怒る資格なんかなかったんだ……
夕月ちゃんが辛い目に遭ったのに助けにも行かないで腐ってて……それで……
【ひどいこと、いっぱいいって、って両の拳をぎゅっと握り締めて】

なんだ……私ってば本当に馬鹿なんじゃん……
そんなの、もう……

友達でいる資格すらないんじゃん、私

だって、助けに行かないなんて友達じゃないもん

【ぐしぐし、と拳で涙を雑に拭う】
【精一杯笑おうとしているんだろう。泣き笑いのような引きつった顔をして】

……おめでと、夕月ちゃん
その人にいっぱいしあわせにしてもらうんだよ?

【そう言って踵を返して駆け出そうとして】
【それでももし呼び止めたのなら反応して立ち止まるのだろうけど】


918 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/08/27(月) 22:56:06 6IlD6zzI0
>>911

【"ブラスフェミアの関係者"――彼女たちを知る者ならば容易に察しのつく言葉】
【素直にブラスフェミアに依頼されたから、と言い回せば良かったのだ。安易な言葉を選んだ自分を責める】
【それが証拠にリゼの真剣な顔色に少しばかりの翳りを見せるが、それも直ぐに鳴りを潜める】


(へぇ、存外情に篤い人なのかね。アリアのおねーさん。確かにこれは血も涙も流れてるわ)


【人形越しの彼女の言葉が偽りには思えなくて。歯に衣着せぬ物言いもそれを裏付ける】
【故に現時点ではアリアの言葉を信じる事にした。腹を割って話せばきっと通じる人にも思えたから】

【そして自分の事を味方だと認識しているのは有り難い事だった。何せ自分よりも多分に情報を持っていて】
【虚神を取り巻く状況も十分に把握している。アリアは情報力と言う観点において何十歩も自身の先に居る】

【それでも。流れるように放たれた言葉に素直に肯く事は出来ない。何せ想像の遥か斜め上の内容だから】
【加えて、眼前の人形越しから垣間見えるマトモではない心の在り方も後押ししていたのだろう】


……確かに"彼"も言ってたっけな。事の起こりがカルトの騒ぎからだって。
あの時は俄かに信じがたいと思ってたんだけど、ロールシャッハの言動に触れて痛感したよ。
アイツは確かに人間の形をしてる。人間と同じ様な感情を持ってる。

けど……何だろうね、根本から違う生き物に感じた。

【ともすれば"虚神"とか"バケモノ"という言葉は納得できる表現だ】
【だが解らない事は山ほどある。ロールシャッハの言葉。"INF財団"。"エカチェリーナ"。"対抗神話"】
【湧き上がる疑問は滔々と。言葉と言う形に嵌めて伝わる疑問は尽きる事が無い】


ロールシャッハの言う"調和"が何なのか想像もつかない。
夕月ちゃんみたいな可愛い子にあんな事をして平然としてる奴の齎す"調和"なんて
きっと碌なモンじゃねーんだろうけど。だからこそ……疑問だらけ。

何から聞けばいいかも、わっかんねー。お手上げってしたいぐらい。
だから単刀直入に聞くなら――"虚神"についてかな。

あいつらってどれだけ存在してるんだろうね。そして皆一様にロールシャッハみたいな最終目的を持ってんのかな?

【故に問うのは、敵が何者かである事。そしてその目的。自身が"虚神"の事を知らなさ過ぎるからこその問い】
【その問いを投げかけた直後、一人の女性がCHAIN GANGに足を踏み入れる――包帯だらけの金髪の女性】
【アリアならばその女性の顔に見覚えがあるだろう――その女性の名はエーリカ=ファーレンハイト。彼女もまた"虚神"を知る者】


919 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/27(月) 23:21:36 6fWpxBvw0
>>918

【事実アリアは論理的な人間だった。 ─── 合理的であるかどうかは横に置いても、決めた目的の為なら手段を選ばない。】
【であるが故に物言わぬ狂気でもあった。少女に協力するのを躊躇わないのも、そこに理由があるのだろう。】
【 ─── 使えるものならば、何であろうと使う。硝子球に似た青い瞳は、少女の返答を聞いて尚も震える事はない。】

「ええ、 ─── 彼らの口にする物語など、一つとして碌なものではないわ。だから、潰す。」
「 ……… 私の知る限りでは、十柱。そのうち既に、三つは討ち果たされている。」「それでいて、多くは老獪で狡猾。」
「手段と目的を取り違える愚かな連中でないことは確かよ。 ……… "何か"をする為に、奴らは私たちの現実へと現れた。」
「加えて言うならば、その目的は奴らそれぞれにとって違う可能性も大きい。だから余計、難儀でもあるのだけど ──── 。」


【淀みない回答は客観視されたもの。 ──── 疑念が明確な形を取れないのも道理だった。であればそれに形を与えるのがふさわしかろう。】
【一先ずは脚元から固める答えを与えた。「何か」が目的に違いはない。そしてまた、一丸となってはいないが故に】
【その対応には別々のリソースを割かねばならない。 ……… そこで、人形は言葉を止める。無機質な青いカメラアイが、微かに収縮して、見出すのは】

「 ……… あら。あの子は、 ──── エーリカ、と言ったかしら。」「彼女とは虚神の征伐の際に共闘した。」
「貴女、親しいのかしら。 ……… であれば、共に卓を囲むに、吝かではないのだけれど。」


920 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2018/08/27(月) 23:30:48 IBKicRNQ0
>>775
【その後、彼女の封印が解けていないと知ったとしても、この悪党はこの判断を後悔などしなかっただろう】
【他者を食らい、己の命を留めることに執着するこの男にとって、それは間違いなく信じられる予感だった】
【すなわち、死の。自身を仇と憎む、膨大な憎悪に裏打ちされた殺意の気配の】

【彼女の仲間たちの命を奪い、彼女の信じる神を踏みにじった。その怒りを、誰が否定するだろうか】
【異形の肉屋は、ある少女の恨みを買った。この悪漢の汚らわしい半生の中では、ありふれた出来事だったけれど】
【それでも、どちらかが死ぬまでは。いや、死んだ後までも拭い切れない因縁となる、そう予感させた】


ッッッづああぁ!!! ぐぅ、お、のれ……おのれええぇぇぇ……!!!

【カニバディールもまた、音が鳴るほどに牙を噛み締めていた。蛇の瞳の如く散大した彼女の目に射抜かれながら】
【その腕が、逃れようもなく彼女の爪に捕われる。異形の肉が、蛇の憤怒に削ぎ落される】
【能力も禁術も介さない、ただ抜き身の獣性の如き攻撃が、削った肉は確かにわずかな量だった】

【しかし、司祭の最後の置き土産か。その血肉を通して、彼女の脳裏には流れ込むはずだ】
【盗賊団スクラップズ。その実態はカニバディールという怪物を全員で構成する群体。その一人一人が異形の細胞】
【配下たちとカニバディール、誰か一人でも生きていればそこから再生する。しかし、その核たるカニバディール自身を】
【スクラップズ全員を合わせた肉の総量だけ、破壊し続けること。そうすれば、その命に届き得る】

【この異形を殺したければ、諦めることなく殺し続けるべし。その事実が、彼女の知るところとなるだろう】


ぐ、ぅ……舐めるな……!! 貴様ごときに……殺されてたまるかっ……!!!

【それを知ってか知らずか、カニバディールはそれを捨て台詞にダクトの中へと逃げ込んでいくだろう】
【この時、異形を生かしたのは、ただ異形自身の生き汚さと運のみ。それを強烈に自覚しながら】
【内から湧き出る恐怖を抑え込んで、スズランの声音を尻目に異形は逃げ去っていく】

【願わくば、あの蛇が自分の知らないどこかで消えてしまえばいい。そんなことを考えながら】
【やがてその因縁が未来のどこに結実するのか、まだ知る者はいないだろう】

/こんなところで締めでよろしいでしょうか? 長期間、ありがとうございました!!


921 : ◆zO7JlnSovk :2018/08/27(月) 23:30:53 tgRB3A1E0
>>901

【何処までも悲痛な叫びに聞こえた、紡ぐ言葉の一筋一筋が、尖った飴細工の様に鮮烈で】
【同時にそれは冷たく降り積もる、心の中の芥雪、必死に隠しても零れ出る罪の色めいて】
【而して受け入れるその二律背反にこそ、少女の持つ哀しき定めがついて回るのだろう】


見解の相違ですわ、死者も生者も、互いの苦しみを互いの物差しでは測れないのです
死者には死者の喜びがあり、死者の苦しみがある、──── ならばこそ、それを推し量る事こそが無為ですの
そして、残された生者のすべき事は、死者の想いを汲み取り先に進む事では無くて?

その心に生かし続ける試みこそが、生者に残された特権であり、託された襷の行く先ですわ
少なくとも私はそう思っています、今此処に立っている場所が、数多の屍の上にあるものだとすれば
私はその先に広がる無限の世界を切り開く、糧にでもなりましょう


【彼女は自分自身を抱きかかえる、まるで演劇の一幕の如く、薄く伸びた宵月がその頬を照らし上げると】
【張り裂けん程の拍手に迎え入れられた、一つの女神を想起させる様に、その柔肌は光沢を持った倭文】
【微笑んでみせるその横顔には、気まぐれに神が作った調和が詰め込まれていた】


『水の国』最高議会所属の議員が一人、──── 名をイスラフィールと申しますわ

──── お分かりでしょう、この世界に於いて最も繁栄している『水の国』
しかしてそれは泡沫の繁栄に過ぎず、その立場も尚危うい状況にあるのです

だからこそ私は今一度 "Justice" を取り戻さなければならないのですわ、例えそれが穢れてしまったとしても

その名に込められた意思を、想いを、蔑ろになどできないのですから
数多の願いを胸に、散っていった、去っていった人々の為にも、そして


──── And Justice For All (万人の為の正義を)


【海風が背後から吹き抜けた、真っ直ぐに相対する彼女は紫苑色の髪を軽く手で押さえて】
【それは正しく恣意的であった、けれども徹底的に示唆するだけにとどまっていた】
【彼女は目の前の貴女へと問いかける、──── そして誘っているのであった、力を貸して欲しいと】


922 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/27(月) 23:31:46 WMHqDivw0
>>917

…………たすけてくれてたじゃん。ここ、たんぽぽ。ずっと守ってくれてたじゃん。
迎えに行くのが、戦いに行くのだけが助けじゃないもん。
……きっとつがるんが居てくれなかったら、今ここ、もう潰れちゃってるよ。

【来てはくれなかったけど。でも、帰る場所を守ってくれてた。それだけで十分すぎて】
【おつりがくるほどだよって、首を振る。横に。だからなんにも怒っていない】
【だから引き攣ったみたいなへたくそな笑顔を向けられれば、――つらくなる】

待っ、…………っ、…………待ってったら!
違うよ、だめ、あたし確かにその人に幸せにはしてもらえるんだろうけど!

ダメなんだよ! 誰一人とて損ねてたら! だったらあたしは幸せじゃない!
鈴音だってつがるんだって一人でも欠けたら幸せになれないの!
だってあたし、ずっと、…………友達いっぱいほしいって思ってたもん、
だから、…………待ってよお、あたしは、……つがるんとまだ友達でいたいんだってば!

【だから、叫ぶみたいにして。……意を決したみたいにドアノブを捻る、がちゃりと音を立てて】
【扉を開く。電気のついてない薄暗い室内。誰も居なくて、でも、今までつがるが守っていてくれた場所】
【そこに一歩だけ足を踏み入れて。でも一人だけじゃ嫌だって言って――――、】

――――――――おこってないよ、だから、……また一緒に帰ろうよ、それで、

【「また鈴音を待っていようよ」。……ここで、今ここに居ない彼女の名前を出すのは、卑怯だと思った、けど】


923 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/08/27(月) 23:54:09 6IlD6zzI0
>>919

……なるほど。確かにそれは厄介。それぞれに思惑があって一概に同じ対処が出来ないと。
皆が同じ向きでないのならロールシャッハの言葉も肯ける。"恐怖の体現者"が"死"を嫌う道理も納得だね。

って事はさ、"虚神"同士での相打ちとか……持ち込めないのかな?虚神同士が敵対関係にあるのなら
あて達が"そういう風"に誘導して共食いしてもらうとか。――…まぁそれは絵空事かな。
それが出来るなら、<harmony/group>襲撃を指揮したおにーさんとか冒涜者がとうの昔に図面を引いてるよねー。


【アリアの淀みない言葉は腑に落ちた。目的は違えど、"何か"をする為に現実世界へと進行し侵食する存在】
【そして皆が"自分の世界/理屈"を持っている。衝突こそすれど、確固たる意志を持つ存在を一個人の思惑で導くのは】
【困難であろう。一般人が木の棒で猛獣を倒せと言っている様なもの。夢想の類、絵空事。絵に書いた餅である】

【そんな折、人形が言葉を止めた。人形の視線の先を手繰れば、見慣れた金髪の女性の姿があった】
【名前はそう、エーリカ。大酒飲みの常連である。親しいとまでは行かないけれど彼女とは面識がある】
【そんな彼女が虚神の征伐を行って生き延びているのだから、是非に卓を囲みたいと思ったら――】

そうだねー、あの人とは親しいよ。だからおねーさんの提案飲んじゃおっかな。

やあやあ、ちゃんエリちゃんエリ。こんな所で会うなんて奇遇だねっ、折角だから一緒に飲もっ?ねっ。
「……リゼ。制服着て酒飲んでるなんて仕事はどうしたのさ。……まぁ、気心知れる子と飲むのは構わないけどさ」

【リゼがエーリカの手を取って、ぐいぐいと引っ張っていけば。行き着く先は先程のテーブル席】
【機械仕掛けの人形にエーリカは怪訝な表情を浮かべて、"未成年をバーに入れるんじゃないよ"と毒づく】
【けれど、リゼはそんなの無視して。テーブル席に腰掛けるように強引に促して、結局座らせる】


924 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/08/27(月) 23:58:05 6IlD6zzI0
//文章の修正をば…
 【名前はそう、エーリカ。大酒飲みの常連である。親しいとまでは行かないけれど彼女とは面識がある】
→【名前はそう、エーリカ。大酒飲みの常連である。彼女と顔を合わせる度に話が弾む位には親しい関係である】


925 : ◆XLNm0nfgzs :2018/08/28(火) 00:07:34 BRNVt/Aw0
>>922

【待って、という相手の言葉。不意に立ち止まって、つんのめって転びそうになって、また耐えて、そうしたら】

だって……だって!
あれだけ騒いでたのに私マルタにも行けなかったよ!?だから友達思いの振りが上手いだけだって、良い御身分だって……"彼奴"言ってたもん!
それと同じだもん!
夕月ちゃんの事馬鹿にするような事言われて憎いって思った!でも結局夕月ちゃんが大変な目に遭った時助けに行かなかった!
待ってるだけじゃ駄目なんだ!戻ってきた時にお帰りってだけじゃ駄目なんだ!
そんなの全然友達じゃないんだ!

だから夕月ちゃんとも鈴音ちゃんとも友達でいる資格全然ないんだ!

【また、涙声で叫ぶ】
【彼奴、とは誰の事だろうか?予想がつくか否かは分からないが、きっとそいつに何か言われて、存外気にしていたのかもしれなくて】

……要らないじゃん……待ってるだけで役立たずな私なんか要らないじゃん!
肝心な時にそこにいられない役立たずなんか必要ないじゃん!
お母さんだって助けらんなかった……最期の時側にいなかった!いたら猟師から助けられたかもしんなかったのに!
【不意に口走った言葉は、母を助けられなかった、というもの】
【そういえば何故つがるが此処にいるのか聞いた事はなかったかもしれない。親はどうしたのか、なんて事も】

……怒ってなくたって……私が許せないんだもん……
銀ヶ峰つがるの事、私が許せないんだもん……


926 : 名無しさん :2018/08/28(火) 00:29:25 UUCgWAAM0
>>920

【ならば――いくらも進めば、きっと少女の声は聞こえなくなるのだろう。けれどそれまでには間違いなく聞こえて来るのだ、絶望的な怨嗟の声】
【やがて言葉が不明瞭になっても、その声だけはきっとしばらくの間聞こえて来る。それもやがて幻聴のようにぼやけて、そうして、そして――最後に聞こえなくなる】
【であればその時にはきっともう出口さえもほど近いのだろう。――そうして外に出るのなら、外は皮肉なくらいにきっと風が爽やかだった、全てを意に介さず】

【誰かの嘆きも哀しみも何もかも、何もかも全部、無視して。叶わなかった誰かの願いも、或いは叶った誰かの目論見も、その残滓も、未来予想図も、無視したのなら】
【きっとその空の色を誰かも見ていた、――"誰かたち"の目を借りて見ているのに違いなかった。もしかしたらそれさえも希望/願望であるのかもしれないけれど】
【いつか星を見て/そうしてまた星を見た、"あの少女"は、いまどこか、遠い場所に行ってしまって。――だけれど、約束はきちんとそこに、待ちわびる】

【――――彼女自身さえも「わからない」と言いながら委ねたお願い事。赤い硝子の髪飾り。きっとあの真っ黒な髪によく似合う、似合うって、思いたかった】
【だってだからこそ願ったのだと思いたい。――――――それらの出来事はやはり未来の出来事、だから、そんなに、記すようなことはなくって】

【――後から病院を見上げたとしても、やはり、あの部屋は外から見える位置にはなかった。厳重に厳重にしまい込まれた小箱のお部屋、開けてみたらば、中身を晒して】
【確定したはずの事象は、――けれどすぐに揺らいでいた。再びに観測しようとしたとして、その時すでに、"蜜姫かえで"はそこには居ないから】

/おつかれさまでした!ありがとうございました!


927 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/28(火) 00:32:22 6fWpxBvw0
>>923


「 ─── うちの"課長"は、それを狙っているようね。」「いずれかを殺すまでならば、虚神と手を組む事さえ躊躇わないみたい。」
「何か奴らと繋がりのある筋から、手繰っていけたら良いのだけれど、 ─── "丁度よさそう"ね。」


【幾らか企みを含んだ微笑みで、 ─── ひらりひらりとアリアは手を振った。少女の笑顔に探り合う含意が篭るのは、凡そ不気味である】
【「こう見えても成人よ。」手指を織り成す機械的な関節を眼前に見せるなら、 ───── あるいはそれは、意趣返しであったのかもしれない。】


「こんばんは、 ─── 元"サーバント"の、エーリカさん。」「それとも"公安"の捜査官、と呼んだ方がいいかしら。」
「こうして直接に話すのは、初めてのことだったかしらね?」「 ……… 詰めるつもりはないわ。虚構世界の件では、色々と世話にもなった。」


【全くもって単刀直入にその人形は切り込んだ。 ─── 遠慮や躊躇というものがなかった。変わらずに頬を緩めていた。】
【であれば何処までが真実であるのかも計りかねるのだろうか。然して恐らく、少なくとも今は害意を持っていなかった。"今は"。】


「公安としても、虚神は厄介な連中でしょう。 ……… 潰したいのなら、今ばかりは貴女に手を貸してもいいわ。」
「それに、例え仮の素性だとして ─── 嘗ての"信徒"としても、いくつか聞いておきたいことは、あるもの。」


【すれば語調は加速度的に商談の色合いを増していく。 ─── 私からもくれてやる。お前からも寄越せ。そう、言外に告げる笑顔】


928 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/28(火) 00:39:03 WMHqDivw0
>>925

【迎えにきてくれなくたって、ずっと留守の番をしていてくれた。こいつにとってはそれでよくても】
【つがるにとってよくないんだったら――何も言えることはなくなる。だけど、吐いた言葉に嘘はない】
【もう一度友達になりたい。もう一回きちんとやり直したい。それだけはどうしても嘘にできない、なら】

…………役立たずなもんか、言ったでしょ、つがるんが待っててくれたから、
今こうしてたんぽぽ、残ってるんじゃん。待っててくれる人がいるから、あたし帰ろうって!
そう思えたんだよ、思えたのに――――、……そんなこと、言わないでよお……。

…………、……おかあさん。そっか、つがるん、は……、……でも。でも違うよ、
あたしはちゃんと帰ってきたでしょう、つがるんに会いたいがためにここまで帰ってこれた。
だから、…………、…………。……、そんなに、許せないなんて、思うの?

【必死に引き留めようとして言葉を選んで、そのどれもがしっくりこないような気がして、焦る】
【なんとか自分で自分を許してもらいたいって思った。それで仲直りして、このドアを一緒にくぐりたくて】
【それだけの感情で動いていた。けれど、つがるにとって一番重い罪悪感が蘇る瞬間を垣間見れば】
【声がどんどん小さくなる。デクレッシェンド。困ったように、言葉の間に沈黙が挟まるようになる】

じゃあ、……じゃあつがるんは、どうしたい。自分のこと許せないなら――どうするの、
今度誰かに何かあったとき、その人のもとへすぐに駆けつけられる自分になりたい?
それで敵をやっつけられる自分になりたい? 誰かを守れるようになりたい?

そんなこと、……無理してしなくってもいいんだよ。あたしや鈴音の、帰るべき場所として、
銀ヶ峰つがるとしてきちんとそこに在ってくれれば、…………あたしそれで十分だと、思うのに。

【それで。最終的には問いかけるんだった。どうすれば自分を許せるのか教えてくれって】
【あるいはその答えが定まっていないなら、今ここで決めてしまえと。――傲慢にもそう言うんだった】


929 : ◆XLNm0nfgzs :2018/08/28(火) 01:29:37 BRNVt/Aw0
>>928

でも……でも……!そんなの能力なくたって出来るし……何より彼奴がそんなじゃ駄目なんだ!
貴女ってば何も出来やしないじゃないですかって嗤うに決まってる!
あの女が嗤うに違いないんだ!
こんな友達ぶった女を友達に持った貴女のお友達が可哀想ですねって!
だから私がちゃんとしなきゃ駄目なのに……出来なかったから……もう要らないんだ……

夕月ちゃんは……帰ってきた、けど……

私は……大切な人達が知らない所で傷付くのはもう嫌だ……強くなりたい……助けたい……
でも分かんない……そんなの自分を許せるかどうかの問題じゃなくてそうなれたらって自分であって……どうやったら今の自分を許せるかなんて分かんない……

帰るべき場所で十分なんて……そんなの……あの女にとっては役立たず同然なんだ……ただただまた悔しくさせられるだけで……それだったらいっそそんな御大層な御身分なんて……

【ない方が、良いんだ、って呟く】
【そろそろ誰に何て言われたのか分かりかけてくるのかもしれない】
【けれどもそんな事、前は言ってなかったからともすれば】
【また何か、『彼女』とあったんじゃないかって】


930 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/28(火) 01:41:39 WMHqDivw0
>>929

…………あの女って、前に言ってた、蛇教のやつ?

【心当たりを呟く。未だに顔も名前もろくに知らない「その女」のこと、だけど】
【つがるがここまで憎む相手だってことは知っていた。そいつにだけは負けたくないと思う気持ちは】
【……イヤってほどよくわかる。自分にだってそういうヤツがいる。でも、だからって】

そーやって、……悔しがってたらもっとソイツの思う壺なんじゃないかなあ。
胸を張ってていいんだよ、つがるんは。だってソイツが何をどれだけ言おうったって、
当事者であるあたしがそれでいいって言ってんだから……、……って理屈じゃ、ダメか。

【ダメだよね。現にあたしはそんなこと言われたって許せる気がしないし。ちょっと苦笑いして】
【女同士の憎み合いってなんでこうも面倒なことにしかならないんだろうって。自覚しつつも、呆れてしまう】
【どうしても一緒にくぐりたかったドア、ちょっとだけ迷って、……一瞬だけ中に入っちゃう。それで】
【紙袋をどっかに置いて来たらさっと戻ってくる。それで、つがるの肩に手を伸ばそうとして】

ねー、……ね、つがるん。あんたに身分ないと困るよ。だってまだ鈴音、……帰ってきてくれそうにないし。
それにあたしだってまだ、……本当はちょっとまだ、不安材料が残ってんの。だからさ、
つがるんが居てくれないと本当に困っちゃうよ。だからそんなこと言わないでよ。

……言ってやろうよソイツに。あたしはあたしの為すべきことをやってるだけだって。
たんぽぽを守る超重要任務を遂行してるだけだって。それがどんなにすごいことか、
わかんないからソイツ、そんなことが言えるんだよ。……ねえ。

【「大丈夫だよ、一緒にもどろうよ」。拒絶されないならそのまま肩を抱いて、……強引に中に引き入れようとしちゃう】
【ちょっとどころか大分卑怯な手段を使ってきた。物理的交渉。でもこんなところで立ち話もなんだと思ったのも、本当だし】


931 : ◆XLNm0nfgzs :2018/08/28(火) 02:06:04 BRNVt/Aw0
>>930

【もしかして、というようにあげられた名前。相手はこくん、と頷いて】

……うん、ムリフェン。ミツキカエデって本名らしいけど……前にニュースで見た

……そりゃ、悔しがってるだけじゃ駄目っていうのは分かるけど……悔しがって泣くくらいなら笑って生きてやれってのは此方来てからの信条だけど……信条だけど……っ
【それでも何か駄目なの、笑えないの、と続いた言葉。またぼろぼろ涙が溢れて拭う】

【そうしているうちに厚底靴の足音が室内に入っていって】
【もう呆れられちゃったよね、でもこれで良いんだよね、なんて思っていたら】
【ぽん、と触れられた肩。尻尾を踏まれた猫みたいな(実際猫みたいなものではあるのだが)声をあげて】

ぇ、う……鈴音ちゃんが帰ってこないのはまだ分かるとして夕月ちゃんにもまだ危険があるって……
もっと頼りになる人とか……助けてくれた人達の中には……?

で、でもそんな重要任務って程でもなく……えぇっ!?
夕月ちゃん!?夕月ちゃんってば!ねぇ!ちょっと!
【戸惑っている隙にずりずりと店内に連れてかれる。あ、Tシャツちょっと汚れてた、転んだ時のかなー、なんて現実逃避しかけもして】


932 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/28(火) 02:24:55 WMHqDivw0
>>931

みつき? ミツキ、カエデ……その人もう死んだんじゃなかったの?
ニュースでやってた。ケーサツに撃ち殺されたんだって、確かそんな感じ。
……だからもう、たぶん、ソイツに構ってやらなくってもいいんだよ。だからさっ、

【遠慮せず中にお入んなさい。ずりずり引き摺るみたいに半ば無理矢理室内に連れ込んだなら】
【さっとドアを閉じて電気をつける。……いなくなる前と特に変わったところはないって安堵する】
【だったら前みたいに、一緒のテーブルに座ろうとするんだろう。それが当然のことであると、思い込んで】

【座ったら。数瞬考え込むような素振りを見せて――――ゆっくり、喋り始める】

あのね、あたしね…………ユーカイされてたの、ヤバいところに。前厳島さんも言ってたっけ、
<harmony>。あそこが一番ヤバいところだった。そこに因縁があって攫われてたんだけど……
助けてもらえたからここに居るんだけどね。まだ、「実行犯」が生きてる。あいつが生きてる限りは、
……、……あたしがこれから先ずっと大丈夫だってハッキリとは言えない。そんな感じ、……、

【――どうして行方不明になっていたのか。それをまず伝えて、それから、すべてはまだ解決していないって】
【語るとき、……明確に怯えたような表情をしていた。無理もないことなのかもしれないけど】
【それにしたってちょっと、度を超したような怯え方をする。テーブルの上でぎゅうと手を握って、それが震えていた】

………………だから。重要任務だよ、ねえつがるん、あのね……
この指輪くれた人ね、……すごい人だよ。その他にもあたしのこと助けてくれるって人、何人かいてくれるの。

でも、その人たちにはできないことがあるんだよ。……ここを守ること。それだけのこと。
みんな鈴音のレシピ知らないもん。それに何処に何があるかも知らないし、子供たちのことだって知らない。
あたしとつがるんにしかできないことだよ。だから超、重要なの――わかるでしょ? だからさ、

【「守っててよ。これからも、……いやあたしも守れるようできる限り努力はするけど」。言って笑う顔には、なんだか覇気がなかった】


933 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2018/08/28(火) 03:02:42 IBKicRNQ0
>>805-806
それについては同意見だな。この自称・神々に比べれば、たいていの存在は奥ゆかしいと言えるだろう
そうらしいな。世界線……無数の可能性から、自身に都合のいいものを選び取る、か。全くふざけた力だよ

違いない。連中の物語ばかりが進行していくのを、指をくわえてみているなど御免だ

ふ、ふ。想像通りの反応で安心したよ。無駄死にでないのなら、こちらとしても特にコメントはない
だが、ジャ=ロにこけにされたのも事実だろう? 腹は立っているはずだ。お互いにな

【カニバディールとて、自身も悪漢として幾人もの悪党を目にしてきた以上、パグロームの反応にとやかくは言わない】
【ただ、敵への不愉快さだけをそれぞれに抱えて、膨らませていく】

そういうこともあり得るな。死など、連中にとっては道具の一つか
彼奴等のルールに従ってやり合わねばならんのは癪だが、致し方あるまい

【そう、彼らは虚ろであろうと神の名を関する怪物たち。自分たちが縛られる死の概念すら超越する存在たちだ】
【それを相手取るなら、まともな手段では勝ち目はない。こちらも、理性と狂気をもって当たらねばならないだろう】


それについては、私も疑問に思っていた。手口が迂遠すぎるとな
それもお前の言う通りである可能性は高い。それが出来る力があればとっくにやっているだろう

あるいは、力そのものを持っていても、それをこの世界で振るう手段がないに過ぎないのかもしれないが……
出来ないのなら同じことだ。すでに彼奴等のうち数体は消えてなくなっている。それが事実なのだからな

案外、彼奴等の実態も名前の通りに虚ろなのかもしれん

【全ては推測の域を出ないが、それでも絶望に下を向くほど殊勝であるはずもない】
【だからこそ、この二人は方向性は違えど、正気とは程遠い世界で今日まで生き延びて来たのだから】


そうだ、その化け物司祭だよ。あの欠損した見た目を目にして、思い出すのに時間がかかるとは
どうやら記憶力の方に関しては、外付けレベルらしいな

【パグロームの様子には苦笑して見せる。四肢も目もなく、満身創痍のマルフィクの姿を直接見て、それでもこの反応とは】
【恐らくは、ここを去った後には自分の顔も彼の頭の中からはハードディスクに入れられる形で消えていることだろう】
【悪党としては、その方が都合がよくはあるが】


ああ全く、返す言葉もないよ
お前の手で直接この世から蹴り落とす機会を失わせてしまったことは、私としても遺憾だ
せめて、死に顔くらいはこの機会に拝んでおくといい

【あくまで自らの手で死をもたらすことを是とするパグロームの様子に、底知れぬものを改めて感じながら】
【異形は司祭の残り香から、映像を再生する。蛇教の崩壊と、新たな驚異の降臨の記録を】

私としても、生涯で数少ない慈善事業の体験になったよ
世間からすれば、彼奴等も私も大して変わりない危険人物だろうがな

【マルタでの戦いは彼のお気に召したようだが、後に続く顛末はそうではないらしい】
【そこに関しても異形とは一致を見るだろう。カニバディールにとっては、病室での屈辱の記憶でもある】

一昔前のトレンディードラマのような構図だな。視聴率は取れそうにないがね
笑えるのはそこくらいだろうな。ただ一人残ったあの女が、未だに残骸になった教団の教えに翻弄されているわけだ

【言いながら、カニバディールは笑ってはいない。その後に続くのは、己の失態の記録だからだ】

/続きます


934 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2018/08/28(火) 03:03:02 IBKicRNQ0
>>805-806
……そういう世も末な事態もあり得なくはないから、この世界は恐ろしいよ
あれほどの事件を起こした女を、仮にも正義の看板を掲げた連中が、色恋沙汰で懐に入れるということすらも

この爆弾キャッチボールがどう転ぶのか、関わりのない部外者だったなら野次馬根性で済んでいたのだがな

【何の因果か蛇の聖女は生き延び、今なお動き続けている。パグロームの不機嫌も最もだろう】
【彼からすれば、愚者の群れが余計なことをしでかしているとしか思うまい。事実そうでもある】
【それが、彼の嫌うところのカルトに纏わる爆弾だとすればなおのことだ】
【彼ならば、確かにもっとうまくやったことだろう。だが、自分には自分のやり方がある。異形もまた、視線を返す】

ああ、そうだな。こちらも、そろそろ閉店時間だ
お前は私と違って足が速そうだからな。追いつくのもそう先ではあるまい

……私の方は、ご指摘の通り鈍重だが……無論、やられっぱなしは性に合わない

【暗く重苦しい声は、確かな悪意と意志を宿して、店内に不吉に反響した】


――――ご来店、ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております

【代金を受け取ると、異形は優雅に一礼してパグロームを見送るだろう】
【全ては暗闇の中の会話。この場で交わった微かな因縁は、今は他の誰にも知られることはない】

【数日の後には、店は引き払われていた。臆病な悪党は、定期的に移転を繰り返す】
【もぬけの殻になった店内には、もはや静寂と闇だけがあった】

/これで締めで大丈夫でしょうか? 長期間ありがとうございました!!


935 : ◆XLNm0nfgzs :2018/08/28(火) 03:03:32 BRNVt/Aw0
>>932

【その人死んだんじゃなかった?と言われれば「ぇあれ!?」なんて声をあげながら携帯端末を引っ張り出してちょっとネットに繋いで】

あれぇ……ほんとだぁ……
【夕月ちゃんいなくなる前だもんなぁ遭ったの……なんて呟きながらもずーりずーり引っ張られてって】

【前みたいに同じテーブル、ちょこんと座らされて】
【所在なさげに辺りを見回していたら相手が口を開いて、慌ててそちらに顔を戻す】


〈harmony/group〉……確かそんな名前、だったっけ……因縁、があって……?
何でそんな所と……それに前は──
【関係があるなんて、と言いかけて止める。きっと触れて欲しくないんだろうって気付いて】

実行犯……そんな奴がまだ……だからまだ不安材料があるって……
【真剣な表情で俯く。その目に夕月の震える手が映って】

【だからこその重要任務。夕月を助けてくれる人はたくさんいるけれども彼ら(もしくは彼女ら)の武に長けた手ではたんぽぽを本当の意味で守る事は出来ないから】
【だから全てが終わるまでは貴女がって、弱々しく笑って】

……うん、分かった
分かったよ、そういう事なら私、やるよ
【それは確かに超重要任務だ、って笑って】

あー……でもあの人は?夕月ちゃんの……家族?例の彼氏さん?何か……こう……秋の銀杏の木みたいな男の人……色合い的な意味で……
夕月ちゃんがいなくなった辺りにUTに来たんだけど……


936 : ◆RqRnviRidE :2018/08/28(火) 03:25:09 vZw8nhd20
>>889

【自嘲めいたその言葉に、少女は眉を八の字に寄せるだろう、表情に些か困惑の色を滲ませる】
【でもそれは相手への悪感情などではなく、心遣りに適う言葉を多く持ち合わせていない戸惑いからだった】
【顔を上げた彼女と再び視線が交わされる。纏う物憂げな雰囲気に、少しうつむき加減になりながら】

んぅ、そうなの……でもね、あなたが狩人じゃなくって、帰り道も分かるならちょっと安心したのよ。
たぶん周りが見えなくなるくらい夢中だったのね、きっとそうなの。 心は地図とコンパスじゃ辿れないもの。

……疲れてるならね、そこの流れで喉を潤すといいなの。
ここの水は凄く身体に良いんだから。 立ち所に元気になっちゃうかも。

【「……なんてね。」なんて冗談めかして言いつつ、両手で水を一掬いし相手へ見えやすいように差し伸べる】

【水は陽光を反射してちらちら眩しく煌めいていたが、一点の曇りなく、透明度は非常に高い様子であった】
【吹き抜ける風に池の水面は常に波立っていたものの、それを差し置いてなお水底が視認できそうなほど】
【空の群青を透かすようにどこまでも青色に染まる情景は、正しく秘境と言っても過言ではなさそうだった】

あら、お魚は苦手なの? 私も生より焼いた方が好きかなあ……
……あっ、でも今から“獲る”のは、どちらかというとお肉に近いかも、なの。

ここね、実は“ヌシ”が居るのよ。……弾はある?
ううん、無くても構わないの、“ヌシ”の気を引いてくれるだけでもいいから。

【そうして好みについて大真面目な顔で返答する辺りは、きっと年相応に根が素直だからだろう】
【準備を始める少女へと率直に問い掛けながら、彼女は岸からゆっくりと離れ始める。徐々に池の中央へと近付いていく】
【曰く、「ちょっと手伝ってほしくって──」とのこと。単独では成功したことの無い漁に挑むのだということらしく、】
【成功した暁には報酬として、食糧やその他諸々が得られるようであった。──ともかく、】


それじゃあ、──お願いね!


【気が逸ったのか、相手の返事を待たずして少女は身を翻し、水中へと潜っていくだろう】
【とぷんと音を残し、見る間に進んでいく様は魚さながらの身のこなしで無駄がなく、速い】
【それからすぐに浮上はしてこず、視線を四方へ遣り。池に浸かっていた木の陰へとその姿を隠す】

【人の気配が失せ、水と風だけが穏やかに流れていく。硝煙の臭いもとうに掻き消され、青葉が薫り、奏でる葉擦れは涼やかにささめく】
【清流の遥か向こうから微かに瀑声が聴こえる。時折小魚が跳ね、小鳥が歌うこの瞬間は、刹那だとしてもきっとどんな世界より長閑だった】
【──やがて訪れるモノの、ただならぬ予感だけを残して】


937 : ラベンダァイス ◆auPC5auEAk :2018/08/28(火) 13:24:54 ZCHlt7mo0
>>921

――――死者の、ルール――――それは――――ッ

【どういう事なのか。そう言葉を続けようとして、躊躇いが尾を引いて消えていく。たった今「推し量る事こそ無為」だと、言われたばかりなのだ】
【そこにはもう、峻別された線が引かれてあるだけで、その向こう側を窺い知る事は出来ない。それが彼女の言葉の真意なのだ】

誰かの死を、この世界で無為にしない事――――それだけしか、私たちにはできない――――そう、言いたいんですね
でも――――そうしたら――――この人の想いは、汲めません。少なくとも、私には――――
私に――――掬える、想いなんて――――――――ッ

【死者たちが、この世から旅立った存在というのであれば、自分たちは確かに、彼らの残したものを継いでいかなければならない】
【だが――――少女は再び、沈痛に顔を俯かせる。少なくとも、自分にはもう、それは出来そうもないと、察せられたのだ】

【――――ここに葬られた人物が残したものは、既に2人の人間に、渡された後だった――――長らく苦楽を共にした相棒と、命と引き換えに救いだした知人とに】
【そうしてその人は、自分の人生に決着をつけて――――それが、望んだものかどうかはともかく――――死んでいったのだ】
【それを想うと――――自分は、件の人物の生にも死にも、無力だったのだと思わされる――――それを割り切るのは、彼女には優しい作業ではなかった】

【同時に、もう1人の死者を思い出す――――自分の全てと言ってよかった、たった一人の『家族』の事を】
【彼は――――最高の死に場所を求め、同時に仲間たちの恩義に報いるためにと、その命を燃やしていた】
【しかしてその果てに――――悪意が、彼の全てを踏みにじり、そして全てを道連れに消え去ってしまった――――もう、どこにも行きつかない結末】

【――――仲間達との間の、例えようもない距離感が、改めてそこに見出されて。人は、結局己の命を、己の力で生きるしかないのだと、そう理解する】
【だからこそ、悪戯に心の重荷と捉える必要も無いのだ――――女性は、そう言いたいのだろう。ただ、それを感覚として見出すのは、まだ少女には遠かったのだ】

――――ッ、最高議会議員――――!?
そ、そんな――――そんな人が、どうしてここに――――ッ?

【女性――――イスラフィールの名乗りに、それまでの憂慮に沈んでいた少女も、驚きと共に顔を上げた】
【気まぐれに声をかけてきたとしか思わなかった彼女は――――この国の行く末に、大きな責任を背負っている、そんな人間たちの1人だったのだ。驚くのも無理はない】
【どこか、芸術作品の様に月光に映えるその姿に見とれながら、続く言葉に意識を向ける。先までの葛藤を押し流した空白は、その情報に飢えていた】

――――――――私に、出来る事はありますか――――? 戦うだけが私の全て――――そんな私を、未来の為にと、道を示してくれますか――――?

【闇をかき乱すように、少女の身体に宿ったもう1つの光源から、輝きが放散される。イスラフィールは求めているのだ。危機を突破するための戦力を――――】

――――元、水の国『Justice』準メンバー、今は風の国『UNITED TRIGGER』正規メンバー――――ケツァル・コアトル=ラベンダァイス=カエデ=キャニドップです――――
あなたは何を『敵』と見据えますか――――それを聞かせてください――――!

【手元に、『ワンド』のW-PHONEを取り出して翳しながら――――それこそ『UT』としての身分証明書だ――――己も名を名乗る少女――――ラベンダァイス】
【「ラベンダーと呼んでください」と付言しつつ、彼女は更にイスラフィールの言葉を問う。彼女の目指す正義は、何を自分に求めるのか、と】


938 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/28(火) 21:27:37 WMHqDivw0
>>935

そーそ、もう死んだヒトのことなんか考えない! 今生きてる人のことを考えなきゃ、っと、

【椅子を引き摺ったり買い物袋をとりあえず仕舞ったり。してからまた掛け直して】
【「ミツキカエデ」のことはもうそれで終いにしようって言い出す、……なんにも知らないで】
【こんだけ言っておいて実は生きてました、なんて知ったらつがるはやっぱり怒るだろうか、】
【……そんな考えを起こす気もない。ニュースの裏を勘ぐるような性分でもないから】


…………んん、もう、……ヘタに隠し事するのもこのさいヤメにしよっか。
あのね、……あたし、ヒトじゃない。もっと別のイキモノ? で、……誰かの所有物。
だからいろんなところに出たり入ったりしてんの、……わりといろんなところに因縁あるよ。

【……触れられたくないのは本当だけど、いつまでも避けていることはできないと思った、だから】
【ちょっとずつバラしていく。だって友達だし。全部曝け出さなければいけないとは思わないけれど】
【それでも――隠しっぱなしにするのはズルだと思った。こっちから友達に戻りたいって言ったんだから】

【少しばかりは真面目に、つとめて話そうと思っていた――――けども】

そーいうことだから、……そう。そこらへん超重要だかんね、頼んだよつがr

……………………いやそれはない。ないないないないない。
それはネー兄!! 兄、血は繋がってないけど兄だから次ぜったい誤解しないで
アレが彼氏は死んでもヤだから!!! …………ごめんごめんちょっと焦っちゃった。

【いちょう、って言われて少し考え込んでから。……ものすごい勢いで首を横に振るんだった】
【それまでの流れを一気に吹っ飛ばすくらいの勢いで。それくらい、ソレを彼氏扱いされるのはイヤらしい】


939 : ◆XLNm0nfgzs :2018/08/28(火) 23:13:31 BRNVt/Aw0
>>938

死んだ人の事じゃなく生きてる人の事を考えて……かぁ……

……うん、そうだね!もう彼奴の事は終わりにしよう!下手に引き摺ってたら「噂してましたかぁ〜?噂してましたねぇ〜?」みたいな感じに化けて出そうだし……
【だらーんと手を前にぶらぶらさせてお化けのポーズをして、それからあはは、と笑う】
【一瞬、でも警察に射殺、かぁ……なんて思案して】
【そういえば警察ってクロじゃなかったっけ?あれ?じゃあガセかも?なんて思考にも至ったものの】

(……まあもし仮に黒幕に捕縛されてるにせよ"あの"黒幕だしなぁ……だとしたら案外えげつない末路辿らされてそうだからいっか……)
【妙な結論に至ったようだ】
【何というか時として考えすぎるのも考え物、というべきか】

【そうして続くのは夕月の身の上話。人ではなくて他の何かだって、それでもって何者かの所有物。だから色々な所に因縁がある、と】

そっか……だから〈harmony 〉と因縁が……

……うん、話してくれてありがとう
ごめんね?辛いだろうにそんな話させちゃって……

だからこそ、だよね……私だって頑張らなきゃ、だね!

【うん、と決意を新たにしかける……のだが】

え、ちょっと夕月ちゃん!?そんなブンブン頭振らなくても!
お兄さん!お兄さんね!
いやちょっと彼氏って言われて否定したくなるのも分からなくないでもないけど!人の姿してんのにめっさ私の嫌いな生き物の雰囲気のようなの放ってたけど!クゥーンって!クゥーンって感じの!
【夕月が自分の会った青年との関係について思い切り否定するので此方も一瞬でシリアスな雰囲気を崩壊させてしまうのだった】


940 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/08/28(火) 23:37:31 6IlD6zzI0
>>927

【リゼに引っ張られ、エーリカは機械人形と対面するように座り、リゼもそれに続いて座る】
【すると鋭利な刃物の様な無遠慮な言葉が飛んできた――それを邪険な態度と言葉で振り払う】


「随分と傲慢な物言いだな、機械人形。最初見た時は誰だか察しが付かなかったけど今は見当が付く」
「アンタはジャ=ロの報告書絡みでさ共闘したあの銀髪だろ。虚構世界が崩壊する間際に喚いてたのを覚えてる」

「かえで、かえでって年甲斐も無く喚いてさ。とりあえず素性と明かした上で言葉と態度はきちんと選べよ、色ボケ女」

【"なんだったら今この場でアンタの痴態をで再現してやろうか?"と敵意を含ませた目線を言葉に添える】
【歯に衣着せぬ物言いが琴線に触れたのだろう。一触即発――そんな気配を察したリゼが無理に割り込む】


ちゃんエリっ、どうしたんだよ?まだ飲んでも無いのに悪酔いの絡み酒染みた真似なんて駄目だよぅ!
アリアのおねーさんだって悪気があっての物言いじゃなんだし、ねっ?だからもちっと穏便にいこーよ。

知り合い同士が殺しあうトコなんて見たくないし。何より仲間同士の争いなんて不毛じゃないかよ。

【わぁわぁわぁ。ばたばたばた。慌てふためいてその場を取り成そうとするリゼの姿にエーリカは我に返り】
【ふう、と一息ついて。ばつが悪そうにガシガシと頭を掻いて、顔を背けながら謝罪の言葉を口にするのだった】


「――…申し訳ない。"今は"アンタと遣り合う気は無いんだ。ただ最近血の気が多くて、思わず攻撃的になってしまった。
 ………だからさ、アンタの質問は出来る限りで答える。嘘偽り無く、私が知ってる範囲でだけど」

【再度、アリアと面を合わせて。今度は悪態をつく事も無く、顔を背けずに。ただ真っ直ぐ見据えていた】
【笑顔の人形(アリア)。険しい面持ちの人間(エーリカ)。人形と人間の遣り取りに立ち会うリゼは黙っていた】


941 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/29(水) 00:22:07 WMHqDivw0
>>939

【おばけのポーズにけらけら笑う。「そうそうそーいう調子」、それでちょっと、此方も調子が戻ったみたいに】
【続く話で沈ませてしまったなら、ちょっとだけ申し訳なさげにするんだけど。……下げていた目線を戻して】

んーん、いつかは話さなきゃいけないことだったし。今でよかったんだよ多分、タイミング。
だってもう一回やり直させてくれるんだもん、なるべくなら隠し事、していきたくないし……。

…………いやいやごめん、アレだけはちょっとイヤすぎたから、あたしもムキになりすぎた……。
それにしても、くーんって何。……イヌってこと? そんな可愛げあるかなあアイツ。
……、……そっか、アイツが代わりに来てたんだ。……あとでお礼言っとかなきゃな。

【振り乱した髪を整えつつ。「……アイツ、元気そうにしてた?」とか聞いて、……結局は突き放せないらしい】
【兄である以上、何もかもが嫌いってまでにはなれないみたい。ただ少し複雑そうな関係性を垣間見せて】
【何話してたっけ。思い返して――だいたいの話は片付いちゃったんじゃないかなって気付いたら】

ん。それで――――そうだった、あたし、最近ずっと料理してないから!
絶対腕が鈍ってるからもっかい練習したいって言おうと思ってたんだった、……つがるんはどう?
なんかしら上達した? もう厳島さんにカレー教わっちゃった? あたしもちゃんとレシピ聞かなきゃな、
…………というか一人じゃきつかったよね。ほんとごめん、……こっからはまた、戻ってくるから、

【「…………キッチン。入っていいよね?」 最後の確認をするみたいに。ここに来たときと同じみたいに】
【再び踏み入ることを許してくれるかどうか、恐る恐る訊くんだった。もうほとんど和解してるっていうのに】
【ヘンなところでビビる。……苦笑を誘うだろうか。けどたぶん、こいつにとっては、わりと本気】


942 : ◆XLNm0nfgzs :2018/08/29(水) 00:53:08 BRNVt/Aw0
>>941

いつかは話さなきゃ、かぁ……まあそうだよね、いつまでも隠してるって訳にはいかないもんね
じゃないと自分が知らないうちにそれを知ってる他人にばらされる時とかあるもんね……
【こないだの鈴音ちゃんと黒幕の因縁の話然りね……と苦笑を浮かべて】

……いっ……やだもー!せっかく言わないようにしてたのにぃー!
かわいげ……っていうか何かしょんぼり顔してたんだよねお兄さん……
というか会ったのちょうど最初のメール来てすぐくらいだったからこう……相手の顔見るなり私泣いて飛び出しちゃってってさぁー……お兄さんには悪い事したなぁ……
【会ったら私が謝ってたって言っておいてね?なんてまた苦笑して】

【そうして料理の練習しようと思ってたんだ、なんて相手が言ったのなら】

お、良いよー!やろうやろう!
そうじゃなくても夕月ちゃんこれから頑張らなきゃいけなくなるからねー、たんぽぽの事だけじゃなくて恋人さんの胃袋を掴む為にも、ね?
【にししっ、なんてからかうように笑って】
【何かしら上達した?なんて聞かれれば、どうだろうなー……なんてちょっと遠い目をする】

カレー……あー!そういえばまだ厳島さんから聞いてなかった!
……ははっ、本当だよー!忙しいし皆「鈴音お姉ちゃんとユッキーはー?」なーんて聞いてきてさ!

……うん、だから、ね

【入ってもいいんだよ、此処は夕月ちゃんの場所でもあるんだから】
【そう言ってぽんと肩を叩いて】


943 : ◆UYdM4POjBM :2018/08/29(水) 16:04:05 XqQAhkbc0
>>916

【小さな足音と、微かな呟き―――白衣の男と侍女はその気配にすぐ気が付く】
【どうやら"観客"はこの場にもう一人いたらしい。地面に座り込んでいた白衣の男は手を降りながら歩み寄る少女を迎え入れる】
【傍らの小さな侍女はかしゃん、と鋼のブーツの音を鳴らすと、スカートを摘んで一礼を返すことだろう】


やあこんばんは、お嬢さん
お褒めの言葉感謝する。たまにコンサートなどにも足を運ぶが……心を落ち着けるならばジャンクちゃんに歌ってもらった方がやはりいい
主として鼻が高いね。さあ称賛されてるぞジャンクちゃん、胸を張りなさい。イェー!とか叫んでもいいぞ

「いえジュニアハカセ、夜分遅くに騒がしくは致しませんデスヨー……
なんだか初めてお会いする方に褒められるのはなかなかに気恥ずかしい所なのデスヨー……ご称讃痛み入ります」


【ジャンクちゃん、と呼ばれた侍女は一礼を終えるとやや照れ臭そうに頬をかきながら呟く】
【その表情も、しぐさも極めて自然だ―――まるで本物の人間のように】
【傍に座り込む少女に対し、白衣の男、ジンジャーは会話を続けることだろう】


流星群と言ったね?そんなものが見られる時期なのか……まったく注目していなかった
近頃まで忙しかったからなあ。レディたちとのデートのお誘いすら断るくらいでね……
君はそれを見に来たのかね?

「たまには星を眺めるのもよろしいかもしれませんね
天体観測のご用意くらいならば我々でもどうにかできるとは思うのデスヨー
あまり星に願いを捧げる事もございませんが……願ってもきりがないし、叶うのは自力で叶えられる物ばかりでございますし……」


【それでも、とジャンクちゃんは空を仰ぎ星を眺め始める】
【たとえ迷信でも、空想であっても叶ってほしい願いを捧げるくらいの事はしてみてもいい、と思う事はざらにある】
【それを無駄だとは二人とも思いはしない。それだけ、多くの人の願いを見てきた】


944 : ◆jw.vgDRcAc :2018/08/29(水) 21:08:24 bALHdM7E0
>>622

【大人っぽい、と言われると、嬉しい気分になる。だって、大人っぽさを大いに意識したチョイスだったから】
【狙いがばっちり当たったと言った所なわけで……ぱあっと、笑顔を見せて。嬉しそうな姿を隠そうともしない。】
【無理に大人を装うよりも、自然体でいたほうがきっといいだろうな、って思うのだ。母親であるけれど、自分らしく。】
【たまに、ちゃんと自分は母親になれているのだろうかと思うこともあるけれど……利口な娘に助けられて、きっと何とか出来ている。】

あら、いらしていたのですね?ふふっ……どうです?たまにはこういう格好も良いかなって。
貴方もお揃いにします?ベアと親子なのは貴方もでしょう?なんて。

【……横から聞こえる、耳馴染みのある声。もう誰かと確認せずとも分かる、声の主は自分の伴侶。】
【突然声をかけられたというのに、驚く素振りも見せない。それだけ、傍に居るという事が当然になっているのだろう。】
【勿論、それは飽きたとか慣れたとかそういう類のものではないというのは、嬉しそうな微笑みで分かるはず。】

年頃の女の子なのに、ローブだけじゃ味気がありませんもの……お洒落も覚えさせてあげようと思って。
この服、ベアが自分で選んだのですよ。初めてにしては、とても上手でしょう?
ほら、ベアの初めてのお洒落なんですから……感想、伝えてあげてくださいな!

【……それから、当然娘の服装にも言及する。娘が自分で選んだ初めての服、夫の父親としての感想はどうだろうか?】
【質実剛健、あまり飾り気のない人であるという事は自分もよく知っているが……きっと、気の利いたことを言ってくれるはず!】
【それで娘が喜んで、さらにやる気を出してくれたなら……なんて、母親は目論んでいるのだった。】


945 : アルク=ワードナール ◆auPC5auEAk :2018/08/29(水) 21:35:20 ZCHlt7mo0
【――――時はさかのぼり、8月12日。それが深夜か未明か、それとも黎明の時か、それは分からない】
【ただ分かっている事。それは、その邂逅が、完全に余人を交えない、当事者たちだけの密か事であったという事】
【そして――――1つの、永遠の別れが、そこで起こってしまった事。それだけである】



【――――その時を、『彼女』はどう過ごしていたのだろうか。恐らくは、普段と何も変わる事のない、自分の日常を過ごしていたのだろう】
【或いは、枕元に立つ事になったのかもしれないし、或いは、遅くまで小さな明かりで読書をしていたところに邪魔をしたのかもしれない】
【ただ、『彼女』が1人でいる、そのタイミングを見計らうかの様に、その出来事は起こった】

――――き――――えて、か――――マリ――――エー――――アさん――――
――――リア――――え――――――――聞こえているか、マリアさん……!

【不意に、『彼女』――――マリア・シャリエールを呼ぶ声が、聞こえてくる】
【初めは朧に、しかし程なくハッキリと。その声の主すらも思い当たるほどに、明瞭にその声は聞こえてくるだろう】

【――――ほぼ同時に、どこからともなく、ピンク色の光の球が、フワフワとマリアの前に浮遊してきて】
【空間に滲み込むように光が拡散すると、ボンヤリと像を結ぶ、霊体の様な姿の、1人の人間の形を結んだ】

【コートをしっかりと着込み、魔術師である事を如実に表すハットを被った】
【手には、頭部に石が嵌めこまれて先端を鋭く尖らされている、細い金属製の杖を握り締めている】
【ボブカットと、幼さを残しながらも憂いを帯びた様な瞳をした、身長160cm前後の中性的な青年】

【薄ぼんやりとしたオーラの様な幽体であるが――――その姿は、アルク=ワードナール】
【既に久しいと言える人物の姿が、形なき姿で、マリアの前に姿を現したのである】

――――こんな時に、突然の訪問、申し訳ない……ただ、あまり時間がないんです、どうか、手前の言葉を聞いて下さい……!

【正対して、アルクはまず真っ直ぐにマリアへと頭を下げて、己の非礼を詫びる。】
【だが、彼にも事情があったのだ。こうした非礼を承知で、迅速にマリアへと摂食をしなければならなかった事情が――――】

……手前は今、魔術でこの分体を作って、あなたに話しかけている
――――言いにくい事なんだが、手前は……戦場で不覚を取って、死んでしまった。あなたに話しかけられるのも、この霊体を構成する魔力が、霧散するまでの間だけ……
……どうか、手前の話を聞いてください。これは、手前にとって……本当に、最期の行動なのです――――!

【――――魔術で作られた、アルクの写し身。彼は、気まずそうに、だがハッキリと口にした――――アルク=ワードナールの死を】
【恐らく、最期に何かを伝え、そして託すために――――アルクは最後の力を振り絞って、この霊体を形成し、マリアの下へと飛ばしたのだろう】
【――――会話という、双方向的なコミュニケーションは、とりあえず可能な様だが――――事態は、あまりにも突然すぎたかもしれない】

/では、マリアの方よろしくお願いしますー!


946 : ◆S6ROLCWdjI :2018/08/29(水) 22:07:55 WMHqDivw0
>>942

そ、ね……。どーしようもなくなってからバレるより、……そっちのが、いいもん。

【鈴音のことを思い出すと、心に影がさす。もう完全に救う手立てのなくなった気のする彼女のこと】
【つがるにも話すべきか、迷って――結局言わなかった。だって人間としての彼女を求めていたのは】
【自分だけだったから。……それが潰えたって、別に帰ってこないってわけでも、なかろうし】

……んん? イヌ、嫌いなの? そんなに? あーうん、ごめんごめん……
しょんぼりかぁ……それはまあ、悪いことしちゃったかな。うん。伝えとく。

え、ん、う…………まあそうかも。たぶん今んとこあたしより相手のが料理上手いし……。
そっか、……子供たち、あたしのことちゃんと覚えててくれたんだ。じゃあ……がんばらないと。

ってなワケでがんばらないとだネ。ありがとつがるん、

【「――――――――――――ほんとに、ありがと」。ずっと強張っていたような顔を、ようやく綻ばせて】
【夕月は一歩踏み出す、厨房に足を踏み入れる。相変わらずの厚底靴で。そうしたら、やっと】
【しっかりした声色で「ただいま」って言えるんだった。帰ってこれた。いくつかある、自分の場所へ】

【――――――――――やっぱり鈴音もここに連れてきたい。その決意を、再度、固めながら】


//妙な切りどころですがここらへんが丁度いいですかね!? まだ続けられもしますが!


947 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/29(水) 22:51:25 6fWpxBvw0
>>940


「その前に名乗る相手も選ぶべきだと考えているの。敬意の無駄遣いというのも避けたいものだし、 ……… それに」
「酔えぬ物も持たぬ力に何の意味があるというのかしら。 ─── この身体でも、40口径の風穴を開けるに不足はないのよ?」


【当然の摂理として向けられる嘲罵を、 ─── しかし人形は笑顔のまま聞き遂げる。それでいて穏やかな口調で切り返すのは】
【およそ幼気な表情に似付かわしくない応酬であった。ドレスワンピースの懐には幾ばくかの膨らみが残っていた】
【 ─── 他者を殺めるに足る凶器であることは誰であろうと解るに違いなかった。それでも、人形がそれを抜かなかったのは】


「御免なさいね。 ─── 商談相手への挨拶は、どうにも昔から苦手で。礼を失したことは、謝っておくわ。」


【ごく真っ当な少女からの忠言があったからに違いなかった。 ─── 出もしない嘆息に似て、人形は伏し目に肩を竦めた】
【あと5秒でもリゼの仲介が遅れていれば、 ─── 恐らく躊躇いなく、女は銃を抜いていた。その程度には、見境がなかった。】
【彼女にとって、侮辱を許せぬ領域を踏み抜かれるのは我慢のならぬことであった。とはいえ一先ずは刃を収めた"今"、それは詮無きこと。】


「先に私から売った喧嘩よ。 ……… 買おうとするのは、当然のこと。」
「だから"今"は横に置きましょう。 ─── そうね。かえでのことを知ってるのなら、話は早いかしら。」

「 ……… ロールシャッハは御存知?」「貴女も体制側の人間ですし、先日の<harmony/group>本社事故について、真相は掴んでいるでしょうけれど」
「我々は奴を潰すのに、ジャ=ロの協力を得ても悪くないと考えている。 ─── 蛇教と繋がりがあり、かつ安定した精神状態にある人間というのは、多くなくて」

「故に貴女を通じて、何かしらのコンタクトが取れないかと考えているのだけれど。 ─── それが難しければ、蛇教における彼の人となりなど、教えて貰いたいかしらね。」


948 : ◆XLNm0nfgzs :2018/08/29(水) 23:06:34 BRNVt/Aw0
>>946

【自分の言葉に表情を少し曇らせた相手。もしかして鈴音の事に触れたのがいけなかったのだろうか?なんて勘繰って】
【まあ鈴音ちゃん、まだ帰ってきてないしそもそもどうすれば帰ってくるかの手立てもまだ分かってないしなぁ……なんて勝手に相手の顔が曇った理由をつけて】

うん……まあ……種族に刻まれたDHAとでもいうんでしょーか……?犬とか狼とかもー駄目!
【あー、怖っ!なんて身震いする。どうでも良いがDHAではなくDNAである】

【そうして夕月の恋人の方が料理は上手いと聞くとふーん、なんて妙にニヤニヤして】

【そうして、夕月がようやく強張った表情から解かれて厨房に足を踏み出したのを見ると自分も一歩踏み出す】

【それから、相手の言葉に今日会ってからやっとはじめて本当の笑顔を見せて】

……うん、おかえり!夕月ちゃん!
【そう返すのだった】


【──と、まあここで終われば良い話なんだろうが】

しかし、まぁ夕月ちゃんに恋人?というか婚約者かぁー……
ねぇねぇ!どんな人!?写真とかある!?
あー……ちょっと悲しくなってきた何この置いてかれてる感じ……でもそうだよ故郷じゃ私くらいの年齢で結婚してる子とかいたじゃん……はぁー……
……夕月ちゃん知り合いにかっこいい妖怪男児とかいない?
【直後にそういう事を言ってきたりなんかして、ちょっぴり感動が台無しというかなんというか】
【まあ、そんなこんなでたんぽぽにまたいつもの日常?が戻ってきたのだった……恐らく、だが】



/いい感じなのでこの辺りで!
/絡みありがとうございました!


949 : @mail ◆DqFTH.xnGs :2018/08/30(木) 22:30:08 BG55vW1.0
【────たん。たたん。公園のベンチに座って、メールを打つ】
【文字を打つたびに、彼女の指に嵌る赤い魔石がぼんやりと光を帯びた】


【To:ロッソ】
【From:ミラ・クラァケ】

『よぉ、元気か探偵。こっちはぼちぼち』

『ちょっとあんたに頼みがある。人探しっつぅか、人の保護っつぅか』
『もし“ハムレット”を名乗るやつがあんたのとこに来たら、相談に乗ってやってほしい』
『時代錯誤なマントの、吸血鬼みてぇなスタイルのお坊ちゃんだ』
『思春期で不安定なガキンチョだが、見かけたら面倒みといてくれ』
『なんならUTで給仕でもさせときゃいい。事情は坊ちゃんから直接聞いてくれ』


【To:ジルベール】
【From:ミラ・クラァケ】

『よ。こないだの、街の連中が変だって話な』
『あれ納得したわ。あんたが噛んでたんだな』
『つぅか戦争起こしたいんだって?そういう話もぽろっと聞いたぜ』
『そういう話あるんならあたしにも言えよな!』
『気ぃつかってんのか何なのか知らねぇけど、仲間はずれはごめんだぞ!』


【To:夕月】
【From:ミラ・クラァケ】

『おかえり、それとおめでとさん』
『もうあんま路地裏ふらふらすんじゃねーぞ。幸せにな』
『今度飯でも行こう。パンケーキのうまい店、知ってんだ』


【公園のベンチで座っている女は、一通りメールを打ち終わると】
【特に読み直すことなくそれを送信する。返信なんてそう早く来るものでもないだろう】
【適当にいくつかのアプリの更新を確かめた後は、流れ作業のように画面を暗くする】

【──ミン、とどこか遠くで蝉が鳴いていた。暑苦しい音色じゃなく】
【涼しさを運んで来るタイプの鳴き声だ。暑い夏も、もうそろそろ終わる気配がした】


950 : イスラフィール ◆zO7JlnSovk :2018/08/30(木) 22:46:18 3FKM1U4s0
>>937

【彼女は心中で其れを察していたのだろうか、その心の深奥までは明らかにならずとも】
【揺れ動く少女の心持ちをはかれない程、耄碌したつもりもなかったから────】
【だから、彼女は静謐を保った、──── その想いの働き、それそのものが心だと】


此処は私達の国ですわ、為政者が国を見て回る行いにどうして理由がいりましょう
人伝いに窺い知る世界に興味などございませんわ、私は私の見た光景しか信じませんもの
だからこそ、貴女様とも会えたのです、それは偶然などではなく、必然の作用で御座います

ラベンダー様、──── そう、『UNITED TRIGGER』の方でしたのね

でしたら私にもう一度力を下さいませ、貴女様の力を私は今必要としているのです
正義の名の下に居た貴女様ならば分かるでしょう、私が今求める力の意味を
それを行う心の意味など、最早十分に────


【手を伸ばす、近づく二人の距離感は、そっと伸ばした掌が重なるぐらいに距離に】
【深い紫苑色であった、キャンパス一杯に広げたその色は、形にならなくても十分に芸術で】
【息を呑む漠然とした美の結晶、万人が求めてやまない究極に近い色合いであった】


──── 『水の国』の内部そのものですわ、今この国に巣くう、巨悪の存在で御座います
時にそれは "野党" の力を借り、"魔制法" や "特区" といった陰謀を動かしております
しかし、その実態はあまりにも大きいのです、大小様々な人員が、その謀りに協力してるのです

──────── そして、何より──── "櫻"


【イスラフィールはその言葉をかき消すように口元に軽く手を当て、何度か頭を振る】
【そうして、ラベンダァイスの質問に対する答えとするだろう、それはすなわち "黒幕" 】
【水の国の政治家という立場だからこそ、見える景色もあるのだろうか】


951 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/31(金) 00:02:08 6fWpxBvw0
>>936

【急転直下に鬱々とする彼女の感情は、 ─── 然し割合に移ろいやすいものであるようだった。そういう気質だった。或いは無理もないのかもしれない。】
【ごく若い少女だった。背負う長銃はまずもって不釣り合いであった。銃爪を引くのに慣れているとは思い難い指先をしていた。であれば、】
【 ─── 差し伸べられる一掬いに、そのまま口を付けるのは、幾らか躊躇いがあったらしい。清廉さを疑う必要はなかった。青空まで泣かせてしまうように涼やかだった。】
【無碍に断れるような愛想のなさも持ち合わせていなかった。 ─── 結局のところ、彼女の掌に溜まった清らかさを、自分の手で包んで飲むのだろう。「 ……… ん。」幾分か暗かった瞳が、彩度を取り戻して。】


「やぁ、むしろ魚は好きなんだけど ─── 肉でも好きだけど。」
「生きてる奴、そのまま一尾丸かじりするのとかは、難しいかも、みたいな ……… ん?」


【であれば幾らか英気を取り戻した少女は、幾らか軽口さえも返すようだった。だが、幾らか穏やかでないような単語を聞き取るのならば】
【幾らか不安げに眉根を寄せるも、 ─── 幾らか恩義も感じていたから、幾らか止めるには気が引けるようだった。南無三。幾らか、そんな感情もあったに違いない】


「 ……… それって、獲っても大丈夫なヤツなのかな ─── ま、いっか。」


【最も大きな疑念だけを零して、それさえも些事と流してしまった。 ─── ライフルを降ろす。ポケットから実包を取り出す。】
【ふと視線を上げてみれば笑ってしまいそうなほどに透明な世界だった。吸い込むような青空。翠嵐の遠景。萌葱色の木漏れ日。座り込む岩場からは苔と清水の香り。】
【沢登りをするにしても現実味を失って足を滑らせてしまいそうだった。聞こえてやまないせせらぎが、少女を辛うじてここに留めていた。ゆえに、彼女は、笑う。】


      「 ─── こういうのも、偶には悪くない。」


【水底へ向かう、曰く"人外"なる少女の背を見送ってから、ライフルに弾を込める。ボルトを引いて薬室に送るのは、338口径の曳光弾。】
【イヤーマフを被り、ふッと息を吐いて座ったまま射撃姿勢に移るなら、 ─── スコープの先、水面の向こう側、手頃な木から連なる枝に狙いを定めて】
【そっとトリガーを引けば、 ─── 炸裂音。弾頭の底部に遅燃性の燃焼材を装填した特殊弾は、真っ直ぐな白い光条を水面に描き、剪定のように枝を撃ち落とす。】
【なにかのいきものを囃し立てるには十分だった。ボルトを引いて、薬莢を抜く。少女に当たってしまわないよう、新しい弾は込めない。】


952 : ◆1miRGmvwjU :2018/08/31(金) 00:42:10 6fWpxBvw0
>>943


「 ………… 同輩として、羨ましいわ。私は、そこまで上手くは歌えないから。」
「こんばんは。 ─── 貴方のような腕のいい人に創って貰えるのなら、どんなオートマタも冥利に尽きるでしょうね?」


【軽い会釈と一礼をもって少女は応じた。そうして幽かに色薄い頬を緩めた。人形のような顔立ちをしていた。 ─── 事実として少女は人形だった。】
【直ぐ傍に坐すのであれば殊更にそれを理解させるだろうか。空を仰いで澄み渡る青い双眸は、然し仄かな涙にも濡れていない。青白い首筋に露わなるは球体の関節。】
【それでも仕草は人間のそれに等しかった。ただ肉体だけが機械のそれだった。魂だけ吹き込まれた自動人形のようでさえあった。 ─── 2人のそばで、滔々と、言葉を綴る】


「 ……… 本当なら。星空なんて、眺める気質ではないのだけれどね。」
「前に嘘をつかれたことがあるの。それきり、お星様なんて信じていなかったけど」
「 ──── 一緒に観たいと、どうしても強請られてしまって。だから、下調べに来ただけよ。」


【誰に嘘をつかれたのか。誰に強請られたのか。仔細を彼女は語ろうとしなかった。気難しい人形であるに違いなかった。】
【なれば暫しの沈黙が続くのかもしれない。返答あれば鷹揚な首肯にて返すのかもしれない。 ─── それでも】
【黒い空を仰いだまま、草叢のさざめく音に聴覚素子を委ねながら、彼女は押し黙っているのだろう。そうして、】


        「 ───── 斃すのかしら?」「虚ろの神を。」



【 ──── ぽつり、と零す言の葉は、どこまでも隠した符丁の意味合いであった。一陣の風が、夜闇にも溶けない黒髪を揺らす】


953 : ◆RqRnviRidE :2018/08/31(金) 01:27:10 7Mm5W0tY0
>>951

【──乾いた音が空気を裂く。刹那、風が止み凪が訪れ るそこは、まるで異空間へ孤独に切り離されてしまったかのよう】
【やがて寸分の狂いもなく射られた枝が撃ち落とされる。はらり、ひらりと青葉が散って、水面に幾重もの波紋を描く】
【真円のさざめきが重なり、広がり、岸まで伝い、跳ね返って薄まり消えて行くのを繰り返す。目に見えなくなるまで何度も】

【何度も、何度も──どのくらい時間が経っただろうか。さほど長い時間ではなく、しかし少女が息継ぎに上がってくる様子は無い】
【紺碧を写し取ったような髪の一束さえも窺わせないなら、きっと悪い予感さえ覗かせた。透明な水底の泥濘すら濁りはしなかったけれど】
【そうしてまた一葉が水面へと触れ、細波が立つ。戻ってきた風が池を、木々を、頬を撫でていく。少女にとっては、向かい風となる向きで】

【風はやがて水面を震わせ更に波立たせた。ぎらつく陽光が反射してちらつき、目映く煌めいて】
【それが段々徐々に揺らめきを増していく────否、どうやら風の悪戯のせいだけではなさそうだ】
【ざわざわと何かが蠢き水面を掠める、そうだ、それは恐らく影であるのだろう。銀色の影が視界を過り、────】


【 ────── 迫る。視認の猶予を許すことなく。間髪を入れずに、“そいつ”は現れる。】


【それはまず、頭上高くまで跳ねた。太陽を背に逆光が姿を眩ますが、目測でもおよそ4、5メートルほど】
【身体を覆うのは銀色の大ぶりの鱗である。鏡面のごとく光を反射するそれは単純な鎧としてだけではなく、カムフラージュにも用いられたであろう輝きを放ち】
【そして、厳めしい顔に備えられた、長い両顎と鋭利な牙が特徴だった。顎は大きく開かれ、規則正しく並んだ歯列と燃えるような色の口腔を目の当たりにするだろう】

【──その姿は正しく“ヌシ”であった。こんな小さな池には釣り合わぬ、海竜と呼んでも差し支えないほどの大物だった】
【その後を追っていた青い少女はというと、ヌシの太い尾を両手で掴み、空中に引き揚げられていた。目一杯に息を吸い込むと】


こいつがヌシなの──喰われないで!


【そう呼び掛けるだろう。イヤーマフを目に留める余裕が恐らく無かったのだろう、とにかく声を張り】
【間もなく少女は尾の力強い一振りでヌシから引き離され、ぎゃっという短い悲鳴を上げて水面へと強かに肢体を打ち付ける】
【その勢いを殺すことなく、ヌシは大口を開けながら、銃を手にする少女へ喰らい付かんと肉薄する────……】


954 : ◆jw.vgDRcAc :2018/08/31(金) 15:11:11 bALHdM7E0
>>945

【その時、自分はソファでくつろいでいた。好きな本でも読んで、あとは眠気に誘われたら寝るだけ……そんな時間。】
【子供たちは既に寝付き、夫は仕事で今日は家に帰って来ない。ゆえにこそ生まれた、ほんの少しの一人きりの時間。】
【妻として、母として、日々を家族と暮らしている自分にとって、完全に一人の時間というのは案外貴重なもので】
【すべき家事も全て終え、あとは就寝までの時間をのんびり自由に過ごすだけ……のはずだった。しかし】

――――!
(何者―――!?)

【その来訪は突然だった。鍵は閉めている。子供たちは寝ている。この空間には自分一人しかいない、はずなのに】
【声が聞こえる。最初は何が起こっているのやら、事態が呑み込めなかった。パニックとはいかずとも、少なからず驚き】
【それから、辺りを見回して……気づく。そこに、人型とも言い切れない何かがぼんやりと居るという事に。】
【しかも、ソレは自分の名前を知っている。これは、どういう事だ……思わず、身構える。しかし】
【その声の主が耳馴染みのある声であるということに気づくのにも、そう時間は掛からなかった。】

―――アルク、さん?

【おそらくその想像は正しい。知己であると知って、彼女はようやく警戒を解く。……しかし、なぜ突然?】
【その疑問を解く答えは、彼の言葉そのものにあった。―――それは、あまりに突然の知らせだった。】

な、っ……――――!

【絶句した。それは、突然受け止めるにはあまりに重すぎる知らせだった。―――死んだ、だと。まさか、そんな。】
【しかし、彼がこんな大掛かりな嘘や冗談を吐くような人ではないという事は、他ならぬ自分が一番よく知っている。】
【正直、事態は飲み込め切れていない。死への悲しみ、驚きを受け止めるには、あまりにも突然すぎたから。】

待って、待ってください……死んだ……?貴方が……?
―――っ、嘘では、ないのですね……?

【けれど、一先ず心を落ち着かせる。正確には全く落ち着いてなどいないけれど……とりあえず、頭を鎮める。】
【もしその言葉が本当なのならば、話を聞かねば。こうまでして伝えたかったことを、伝えそびれさせるわけにはいかない。】

……聞きましょう。
死を悼む暇さえ、今は惜しい……。

【断腸の思いであることは、明らかに見て取れる。それでも、向き合わねばならない。彼のラストメッセージに。】
【悲痛な面持ちで、しかし俯かず前を向いて。今にも沈んでしまいそうな心を、懸命に押しとどめながら。】

//はい、こちらこそよろしくお願いします!


955 : ラベンダァイス ◆auPC5auEAk :2018/08/31(金) 23:06:41 ZCHlt7mo0
>>950

(結局――――私は、どうしたらいいのか分からない――――私にできる事は、徹頭徹尾、戦う事だけなんだ――――)

【ざわめく胸中を抑えようとする様に、ラベンダーは己の胸に手を当てる。命のビートは、今も彼女を兵器として生かしめていた】
【しかし、結局納得のいく答えは出てきそうも無かった。ただ、彼らに報いるためには、戦う事――――それしか、見出せる道は無かったのだ】

そう――――あるべきです。でも、そんな当たり前の事が、決して簡単じゃないのが、今の『政治』って奴なんでしょう――――
だから、驚いたんです――――そんな、地道で、見過ごされがちな、それでも大事な基本を――――しっかり実践してる人がいたなんて――――

【イスラフィールの言葉は尤もだ。それぞれの担当する『社会』の問題を解決し、現状を改善していく事が、為政者の仕事である】
【彼らの向き合うべき問題は、正に自身で触れる事で、理解し、把握しなければならない――――だが、社会が高度化するにつれ、それは難しい事となり】
【それどころか、その役目を全うする事を、最初から放棄する為政者と言うのも、決して珍しい存在ではない】
【そんな真摯な人間が目の前に現れた事に、ラベンダーは率直な驚きを表明したのだろう】

――――私の私見です。私見ですが――――『正義』とは、未来のためにあるものだと思います――――
未来を切り開くための力――――それが必要なんだと、私は理解しました――――

【近づき、伸ばされる手。それを握手の求めと解釈したラベンダーは、そっとその手を握り返す】
【凛とした信念が、まるで形に現れているかのような美しさだ。死人の様に虚ろな赤と青のオッドアイでさえ、まるで見とれるようにイスラフィールを見つめ続ける】
【――――そして、一体なぜ、こうも懐かしい感慨を刺激されるのだろうと。そんな不思議をも感じながら】

――――ッ、やはり、そうでしたか――――『噂』には聞いていましたが、やはり彼らは、叩かねばならない敵、なんですね――――
大きな脅威だというのは、重々承知しています――――私も、この力を制限されてしまったら、もう正義など口にでもできない、非力な存在でしかありません――――

――――しかし、一体どうやって戦えばいいんでしょう――――?
誰か、特定の「糸を引く人物」がいて、それを殺せば解決する――――そう言う問題なんですか――――?
――――世論を抱き込まれてしまっては、政治の上では何もできないのは分かります。ただ清いだけの手段で、これを解決しようとも、思っていません――――

【イスラフィールの見出す『敵』は、ラベンダーにとっても同じく『敵』として見据えられた存在だった。ラベンダーは力強く頷く】
【あくまで「『噂』に聞いた」とお茶を濁しながら――――その実、全く事細かかつ緻密な『噂』なのだが――――正義の力が必要とされる理由も、理解した】
【ただ、同時に――――ラベンダーはイスラフィールに疑問をむける。槍を向ける方向は分かった。だが、具体的な『点』は、見いだせているのか、と】
【曖昧模糊とした集団の呼称でしかない『黒幕』――――いざ、戦いとなった時、一体誰と戦えばよいのか】
【――――既に独自に動き始めていたラベンダーも、そこで戸惑いの網に、絡まっているのだろう】

(――――――――ッ、ん――――?)

【ふと一瞬、イスラフィールの言葉が乱れた事に、ラベンダーは気づき、訝しげな表情を浮かべる】
【だが、会話の流れの中で、その微かな異常は、流されて行ってしまっていた】


956 : アルク=ワードナール ◆auPC5auEAk :2018/08/31(金) 23:07:08 ZCHlt7mo0
>>954

……重ね重ね、申し訳ないです。こんな時間に……――――あなたもそろそろ、床に就く頃合いだったのでしょう……

【先ほどまでくつろいでいたらしい、マリアの佇まいを目の当たりにして、アルクの霊はもう1度頭を下げる】
【――――自分の訪問が、あらゆる意味で『無礼』である事を、既に十分に自覚していたのだろう】

……手前自身だって、嘘でありさえすれば、良かったと思います……。でも、残念ながら……
……昨日、昼頃に――――水の国の『中央放送局』に、電波ジャックの犯行予告が送られて……それを阻止するためのメンバーとして、手前は参戦しました……
実は……『UT』の『たんぽぽ』で、給食の振る舞いをしていた『夕月』という子が、行方不明になっていたのを探していて、その手掛かりを得るために……

【まずは、自分の先ほどまでの行動――――死に至るまでの経緯を、説明しようとするのだろう】
【恐らくは、マリアにとっても聞き覚えのある言葉、そして人名が、そこには関係している。アルクは、仲間の為に戦う事を、この時もしていたのだろう】

そこで、電波ジャックの主犯は、夕月を……概略のみに留めますが、彼女を『邪神』へと仕立て上げようとして、その手筈として、電波ジャックを目論んだようでした……
手前は、その手勢との戦いで、不覚をとって、銃弾を浴びてしまい……何とか、夕月は救いだせたのですが……――――もう1つ、奴らは隠し玉を持っていた……

【アルクは、マリアがどの程度『虚神』達に関係しているかを、まるで知らない。それを考慮してか、本当に概略のみで通りが分かりやすい様に、言葉を選択する】
【だが、もしもマリアに『虚神』達の知識があるならば、その『邪神』が何を意味するか、すぐに斟酌できるだろう】

――――マリアさん……ソニアを、ご存知ですよね。レグルスの奴の――――いつの間にか、心惹かれていた女性……
そして、何らかの悪に洗脳を施され『カチューシャ』と名乗って、水の国で複数回のテロ行為を行ってしまい……――――敵は、彼女を更に手に掛けた……ッ
……ソニアは、邪神『エカチェリーナ』と化して、我々人類の敵と、なってしまいました――――アレで、手前は気持ちが切れてしまった様で、その結果……――――

【そしてアルクの言葉を結ぶのは、マリアも面識があっただろうソニアの、虚神の一員と化してしまった、最悪の経緯】
【それを目の当たりにした絶望――――それが、満身創痍のアルクの精神を追い詰め、死に至らしめたのだと――――】

――――マリアさん。伝えたい事は、3つあります……どうか、最後まで時間が保ってくれると良いんですが……

まず1つ……我々は、とある邪神たちと……今回の電波ジャックにも噛んでいた、邪神たちと、近頃は戦闘を繰り返していました……
先の夕月も、奴らの力で邪神へと変貌させられそうになっていたのを、救い出せたのですが……ソニアはもう、完全に覚醒してしまい、どうしようもなくなってしまいました……
きっとソニア……いや『エカチェリーナ』は、カチューシャとしての力を超えて、大勢の人間たちを犠牲にして、力を振るうでしょう……
更にもう1人……『たんぽぽ』の白神 鈴音――――多分、マリアさんはこちらもご存知でしょう。あれも、既に邪神の一員として、覚醒してしまっています……
正直を言えば……手前と鈴音とは、5年前に1度、忌まわしい因縁がありました……出来る事なら、この手で屠りたいとも思っていましたが、もう詮無き事です……

――――どうか、今の生活を守りながら、出来る限りで構いません――――あの邪神たちの力から、人を守ってもらいたいのです……
奴らと戦い、殺すのは……既に、レグルスや、他の仲間達……それに、様々な戦士たちが、立ち上がっています……その背中を、守ってやってもらいたいのです……

【これまでの話を前提として、アルクはマリアに1つ目の要請「虚神達からの、人々の守護」を伝える】
【既に、レッド・ヘリングの一件、そして今回の電波ジャック未遂の様に、表に出ている事件だけでも、多くの被害が発生している】
【それに立ち向かう事は、相応の人間たちが行うから――――そこへのサポートを、マリアにお願いしたい、と】
【既に虚神として覚醒してしまった面々とも、自分たちは殺し合いをしなければならない。だからこそ、生きてる仲間達には助力が必要なのだ、と――――】


957 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/01(土) 10:10:48 CXFQ4Nvg0
【水の国・首都フルーソ・大図書館】

【水の国の首都にいくつか存在する巨大図書館、古文書から最近のゴシップ誌まで様々な書物が保管されている】
【その一角、艶やかな光沢を放つ長机の隅っこの席を三席分ほど陣取っている人物がいる。】
【周囲には最近の各社新聞や水の国の歴史についての書物。とりわけ警察機構に関するものが目立つ。】

いや〜イスラフィールもお仕事ばっかであんまり会う暇なさそうだし。
かといってこの国で友達もいないしでひ〜ま〜だ〜な〜。まぁ、だからこうして記録を見れるんだけどね。

さてさて、色々と物騒な雰囲気は漂ってるけどイマイチ〝脚色〟っぽい構成なんだよねぇ。

【周囲の迷惑をお構いなしに新聞を大胆に広げて姿勢を崩して眺めているその人物】
【ストライプの入った赤いスーツに同じ柄のソフト帽、銀色の長髪に赤い瞳といった目立つ風貌の女性である。】
【ソフト帽を外して指でくるくると回しながら、誰に言うでもなくボケっとしたまま独り言をつぶやいている。やはり迷惑だ】


958 : ◆RqRnviRidE :2018/09/01(土) 21:14:10 7Mm5W0tY0
>>957


────……あっ。


【──と、唐突に声がするだろう。何かに気付いたような子供の短い声が、赤スーツの女性の後方から】
【次いで、ばさばさと本を取り落とした音が続く。落下音から察するに、分厚い冊子が4、5冊とか、その辺り】
【そちらに目を遣れば、幸いにも折れ目なく畳まれて落ちた本の中に立ち尽くす子供が、ぽつねんとひとり】

【骨張ったか細い肢体を、サテン地のような光沢のあるレオタード状の衣服で包んだ、漆黒の瞳の少女然とした子供】
【地面を引き摺るほどに長い銀髪は、絹糸のように艶やかできめ細かく、癖とほつれのないストレートが特徴だった】
【頭には、サイズの大きなワインレッドのキャスケット帽をすっぽりと被っている】

【恐らく女性と子供とは視線が合うことだろう。子供は数秒の間物言わず、ただ呆けたように立ち尽くして相手を見つめ】
【それから、ハッとしたように目を瞬かせ、「しまった……!」と呟いて本を拾い始める──“髪”を触手のように動かして】
【異色極まりないその光景に、来館者の一部は眉をひそめ、怪訝そうな目を向ける。このご時世だからこそ仕方のないことであった、が】
【問題は子供が何一つ気にしてなさそうなところ──だろうか。とにかく、所作について引け目を感じてはいなさそうだった】


959 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/01(土) 23:41:44 xUOutbJM0
>>953

【であればそこは狩人の領域だった。深く吐き出した呼吸が世界に向けてシャッターを切る。飛ぶ矢は飛ばず。然して撃ち出されたのは真鍮に被覆された弾丸である。】
【水面に広がる同心円のさざめく振動さえも今の少女には聞き取り得た。緊張に加速する鼓動と裏腹に、銃把を握る指先は恐ろしいほど冷たかった】
【小々波に屈折する陽光が青い瞳の奥に突き刺さった。 ─── 風速、東より2.1m/s。弾頭回転の安定には微かな遅延が生じるだろう。それを勘案する程の精密狙撃になるか】
【それは未だ分からなかった。それでも彼女は水底から戻らない。人外を自称する幼気さが、果たして易々と獲物を狩り損ねるかどうかも、判じかねていたが】

【思惟に気を揉むまでもなく答えは示される。 ─── 流体を打ち揺るがして、脚元から突き上げるような震動。白い熱量が背筋を支配する感覚。】
【生半な狩人であるとしても少女は理解した。だが反応は幾らか遅れた。ならば身体が動いたのは、その魁偉/怪異が姿を現してからだった。】


「 ──── な、ッ」


【瞠視する。空を仰ぐ。銀色の彗星。尾を引くのは透き通った清流の残光。昼には不似合いだった。だから息を呑んだ。 ─── これが相手だなんて、聞いていない。】
【あの鱗はなんだ。あの牙はなんだ。あの躰はなんだ。少なくとも魚類の区分からは逸脱しているに違いなかった。成るほど独りで狩れる対手ではない】
【然るに彼女は人外を名乗っていた。ゆえにその獲物もまた不文律からの逸脱を前提とせねばならなかった。魚釣りとは訳が違うことを少女は暢気にも理解していなかった。】
【だが不思議と安請け合いを後悔する感覚はなかった。 ─── きっとそれは、高揚。ふうッと過熱した呼気を肚の底から吐き出す。銃口と碧眼の3ツ、炯々として捉えるならば】


「 ………─── ッッ、大丈夫か!?」


【握り込んだ親指を押してボルトを戻す。弾頭を薬室に入れる。 ─── スコープを覗き込む一瞬さえ許されない。トリガーを引く。鼓動。振動。反動。もう一度、発砲音。】
【限界まで引きつけて放たれた錐形なる超音速の飛翔体は、ただ直線的な弾道をもって清流の主へと猛進する。その無防備な口内を撃ち抜かんとして、それが叶わずとも】
【 ─── がり、と少女は奥歯を噛む。すれば転瞬その弾頭は"炸裂"するだろう。そうして回避の手遅れになる寸前、代償のように身を跳ねさせて咬撃を躱し】
【然し受け身は能わずに、石の河原へと転がり打たれる。か細い喉からは幾ばくか悲痛なうめき声。それでも口から突いて出るのは、協働者を案ずる言】


960 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/02(日) 18:17:42 smh2z7gk0
>>958

―――ん?

【唐突な声と、その後に続く本の落下音。スーツ姿の女性は横目でその音がした場所へと視線を向ける】
【そしてその音の主である子供を確認。その目立つ風貌を上から下へと無表情のまま見て眼を細める】
【唖然とした顔の子供が眼をそらせば女性は立ち上がる。】

やあやあどうしたんだいお子ちゃま。こんなにたくさん本を抱えてさー私と同じく調べもの?
いや〜こんなに資料がたくさんある場所だと大変だよね〜。

―――それに、〝ソレ〟面白いね。

【つかつかと子供へと歩み寄れば笑顔を浮かべて書籍名や表紙を見ながら本を拾うのを手伝おうとするだろう。】
【そして、微笑を浮かべながら触手のように動く髪の毛を眺めそれとは対照的に動かない自分の銀髪を摘まんで苦笑する。】


961 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/02(日) 23:09:00 smh2z7gk0
本スレ>>520

―――ここ、いいかな?

【ふと、女性に向けて声が掛けられるだろう。その方向を見ればひとりの人物が空いたばかりの席を指差している】
【右側の髪だけ少し長いアイスブルーのアシンメトリーに同じくアイスブルーの瞳をした身長160cm程の少女である】
【アロハシャツに短パン、頭にはサングラスといかにも軽薄そうな雰囲気を醸し出している。】

いやぁなんというか凄い街ですよね、人も物もなんかギラギラしてて………。
どうにもこうにも息苦しい気がしないでもないですけどね、そう思いませんかオネーサン

【「Orwell社とやらは凄いんですねぇ」と付け足しながらわざとらしく困ったような顔をしながら肩を竦める】
【手には夜市で買ったと思われるタピオカミルクティーが握られている。女性が許可すればすぐに向かいの席へと座るだろう。】


962 : ◆KP.vGoiAyM :2018/09/02(日) 23:43:00 Nq9ALE2Y0
>>961

うぅえ?あっ、あ〜もちろんもちろん!!

【魔女っ鼻の女はニコニコ笑顔で快諾する。目の前のテーブル(ひっくり返したビールケースにベニヤ板をのっけただけだが)の上の】
【空き瓶だとか謎の串物だとかプラの器に入った謎の麺類をなんとなく片付けて、さあどうぞとニコニコと笑う】

まぁ〜ねぇ…でも、都会なんてこんなもんじゃない?濃度の問題よ濃度の。
着飾って欲望をひた隠すのなんて金持ちの趣味みたいなもんだよ。
ここはそんな余裕もないトコなのさ。必死でもないけど生きるには欲望をさらけ出すしかない

それはそれとしてぇ。あなた観光でしょ!?そんなカッコなかなか居ないし?
あ、それとも何か買い物?ここは何でも買えるからねえ…大体パチモンだけど。

そうそう、なら一つアドヴァイスするとね、夜市の買い物のポイントはね。「よく焼いてるかどうか」
これがねーおなか壊さないポイント。子供が買い食いしてるとこはオッケー。

【女はニコニコと、それでいてアッパーなテンションで矢継ぎ早に話した。】
【随分と詳しそうだ。まあ、こんな通り沿いで我が物顔で座っているんだからそこそこ勝手も知っているんだろう】


<――――18歳未満の夜間の外出は条例によって…>

「サワダ・サワードリンクはスプラッシュ泡刺激をあなたは受けます!」

『新規アップデート実施!今なら倍率――――』

【目も耳も情報過多な街だ。少しでも意識を向けるとあふれていて、重要なものは一つもない】
【いや、誰かにとっては重要なのかもしれない。取捨するにしても母数はあまりにも多すぎた】


963 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/02(日) 23:52:58 6IlD6zzI0
>>947

【互いに矛を収めたのは単にリゼの理性的な行動によって毒気が削がれたから】
【仮にアリアが銃を抜いたなら、同じタイミングでエーリカは鋭利な刃を向けていた】

【"喧嘩"こそ免れたが剣呑な空気は微かに燻っていた。張り詰めた表情はその残り香か】
【リゼは両者を取り巻く事情を把握していないが、最悪の状況も念頭において聞き役に徹する】


「当然知ってる…仮にも嵯峨野鳴海は公安の調停官。公安にも虚神が居るなんて厄介な話だ。
 にしてもあの襲撃を"事故"として処理出来るとは何処の勢力が関与してんだろうか。
 私のような公安は調停官である嵯峨野の息の掛かった<harmony/group>には手を出せない。
 ともすれば浮かび上がるのは――外務省お抱えの"極秘組織"あたりかね。」

【事の真相は知っている。だからこその"口撃"。ちくりと肌を刺すような言葉】

「ハッ、冗談は休み休み言えよ。ロールシャッハを潰すって事は公安を敵視してるアンタ達にだけ都合の良い話じゃないか。
 商談と言うなら此方側にも何かしらの利をおくれよ。例えば、アンタ達の素性。或いはロールシャッハが何を糧にした虚神なのかをさ」
 
「まぁ私らの利害関係抜きにジャ=ロへの接触を試みたいと言うのは私も一緒。だが、奴に接触する意図があるならより相応しい適任が居るだろ」

【怜悧さと鋭利さを伴った瞳をアリアに向ける――"正気か、コイツ。よりにもよってジャ=ロと手を組むだと?"】
【喉元までせり上がった言葉を無理矢理飲み込んだが、目は口ほどに物を言う。隠し事は下手なようだ】
【加えてあの場に居た虚神はロールシャッハだけではない事。かつて抱擁を交わした狙撃手もまた虚神だという事も知らない事も露呈していた】

「"ミツキカエデ"――ジャ=ロと接触を図るというなら蛇の幹部サマだったコイツ以上の適任は居ないと思うんだが。
 ミツキカエデを選ばないのはアンタの私情か或いはそれ以上の適任を私と見込んでの事かい?どちらにせよ良い気はしない。
 まぁ―――仮にジャ=ロと接触したとしよう。何を餌に奴の協力を得ようとするのか、そこら辺を聞かせてくれないかい」

【"アンタらの思惑に乗るか反るか。それ如何では立場の垣根を越えて乗ってやる"――言葉に絡むのは疑念と傲慢、そして警戒】


964 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/02(日) 23:56:29 smh2z7gk0
>>962

【「どもども」と女性に快諾されれば笑顔で向かいの席に座り、足を組んでストローを咥える。】

まぁ確かに、他と違って少しばかり色があふれているだけ、か。
観光、買い物………う〜ん、どちらかと言えば観光かな?うん観光だね観光。

ハハハ、なるほどね〜まぁ焼いてる鉄板も最後いつ洗ったんだってやつもあるけど、火を通してるだけマシか
しかしオネーサン詳しいね、ここでの暮らし結構長い感じ?

【アッパー気味で話しかけてくる女性に若干苦笑しながらも受け応えていく。どうにも含みのある言い方だが観光のようだ】
【そして勝手に詳しそうな女性に興味が湧いたのか、タピオカをストローでつっつきながら問いかける。】
【年齢は十代ほどだが、どこか大人びた雰囲気を目の前の少女は放っている。】

―――私はコニー、オネーサンのお名前は?

【雑踏や広告といった周囲のノイズに飲まれながらも、良くとおる声でコニーと名乗る少女は自己紹介する】
【そしてにっこりと笑いながら握手を求めてくるだろう。】


965 : ◆KP.vGoiAyM :2018/09/03(月) 00:25:21 Nq9ALE2Y0
>>964

【目の前の女はニコニコとして、目は好奇心とアルコールで輝いている】
【なぜならば、酒のつまみに最も最適なのは他人の話なのだ。会話が一番酒が進む】
【食べ物のつまみと一緒で、珍しものほど上等だ。観光客なら、楽しめそうだと身を乗り出す】

スマホのゲームに出てくるうざったい広告だって、それを気にしないのも慣れちゃうでしょ
そんな感じかな。

おなか壊すよりいいでしょ?”こっち”の街でまともな医者はロクにいないんだから。
クスリだって安くないし。その飲み物だって、幾らだった?そんなカッコじゃ吹っ掛けられるよぉ?
フフフ、別に物価は安くないんだよね。何でも売れるから。――観光で来るとこじゃないね。

【顔を向けた先には、ビルの壁のビジョンが新型のVRデバイスの広告を流している】
【その下でホログラムの馬が駆け抜けて――スマホのCMだ。中華料理屋の宣伝と被っている】
【含みのある言い方だった。その街の暗部を覗いているようなここにあらずの目で――】

私?私は……タマキ。スガ・タマキってのがフルネームでよく知り合いにはクダマキーって呼ばれるの
こうやってね、お酒飲んでずーっと喋ってるから。まぁーた、管巻いてるってね。

【よろしくねーと握手に応じて。ずっとニコニコと笑っている】


そんなに長くはないけどー出歩くのは好きだし。仕事なの。警備会社ってやつ?
ビルとかの警備。ほら、治安あんまよくないから、私みたいな民間と契約してるトコ多いの。
警察は足りないし、テクノドックスなんかの企業お抱えのパラミリタリは自分らの関係するとこしか守らないし。


966 : ◆RqRnviRidE :2018/09/03(月) 01:28:33 7Mm5W0tY0
>>959

【──それは確かに少女ひとりでは狩り得ぬような巨体であった。一目で窺い知れる程度には、そいつは獰猛であった】
【空中へ躍り出た体は留まることを知らない。躱すこともなければ落下の速度さえ落とさない。流線形の突撃する様は撃ち放たれた砲弾にも似て】

【故に。弾丸は、寸分違うことなく海竜の口内から上顎を貫き、──ドタマをぶち抜くことになる。】

【頭部さえ隙間なく包む鱗鎧が却って仇となった。弾は体外へと貫くことなく脳天に留まり、ほぼ同時に炸裂の衝撃を食らう】
【木っ端微塵となった金属の破片が、無惨にも脳内を引っ掻き回すのだろう。喉の奥から咆哮が放たれ、空気を震わせながら】
【少女の傍らを過り、岸へと落下する。ずどん──と重々しい音を立てて着地し、赤黒い血に塗れてそこらを激しくのた打ち回る】
【それが小魚であったのならまだ可愛いものだろう。けれど今、相対するは巨竜である。 可愛げだなんてとんでもない】

【一方、投げ掛けられた言葉に呼応するよう、波打つ水際からぬらりと白い右手が現れる。次いで岸辺に掛けられ、少女が上がってくる】
【随分と息を切らしていた。幽霊のように青髪を垂らして俯き、肩で呼吸をしながら、大量に水を飲んだようで時折小さく咳き込んでいる】
【素肌には背を中心に、広い範囲で紫斑が拡がっていた。紫を通り越して黒くさえなっていた。着水時の衝撃で生じた内出血だろう】

【そのような状態であっても、少女は髪の隙間から、もがく獲物をその目で捉えて離さなかった。】
【片手に海色の魔力が集中し、水面を撫でて飛沫を飛ばす。一転、水は紐状に収束し、地面を這い、やがて海竜の体へ纏わりつくと】
【胴を何周かしたところで更にもう一段階形を変え、目の粗い網となって全身を包み込む。獲物の動きを拘束しようとしているようだ】
【網が徐々に太くなってゆくのは、少女が己の身体と魔力を介して水を送り込んでいる為だった。保有する魔力はどうやら尋常でない量らしく】

──……ありがとう、私は大丈夫なの。
あなたは大丈夫……? 怪我は、ない?

【呼吸がいくらか落ち着いた頃に、空いた片手で髪を掻き分け、彼女に薄く微笑み掛けるだろう】
【偶然か、或いは人外である故か、見た目ほど大きなダメージを負っているようではなさそうだった】
【とかく、魔力を消耗しながら応答するだけの元気は残っている様子である。どうやら大丈夫そうだ】


967 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/03(月) 01:39:57 smh2z7gk0
>>965
なるほどねぇ、住めば都ってやつとも同じなのかな?
―――嗚呼どおりで…なんかここでしか手に入らない良いやつを使ってるからなんとかいって首都の二倍ぐらいの値段だったよ
その割には、味は首都と大して変わらない下手すれば落ちるぐらいの感じだけどね。

〝こっち〟はと言うと………つまりはそういう事かな、まぁ繁栄の陰にはってやつだね。
そうだね、〝普通〟の観光には適してないカモ。

【タマキの言葉を聞いて納得したようにタピオカミルクティーの容器を揺らす、ぶよぶよしたタピオカが中で跳ねている。】
【そしてタマキの視線の先を眼を細め無言で追う、それから再びタマキへと視線を戻す。】
【どこか品定めするかのような視線。アイスブルーの涼し気な瞳は一層冷たい印象を与えた。】

タマキね、よろしく!
へぇ〜警備会社か〜まさか〝PMC/民間軍事会社〟だったりするのかな?

―――〝テクノドックス〟ってそこかしこで歩いている如何にもな風貌の連中の事だよね?
なんかみんな避けてるみたいだけれど、あいつらそんなヤバい集団なワケ?

【握手を終え、席に戻るとそんな事を身を乗り出して問いかける。大声で大っぴらに言わないだけの認識はあるようだ】
【視線はたまに周囲へと素早く向けられる。不自然にならない程度の頻度だが堅気らしい仕草とは言えないものであった。】


968 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/09/03(月) 01:40:39 WMHqDivw0
>>871
同じ脚本家でも君とはまた趣が違うと言うことだね。
読む側としては作風に幅がある方が好ましいのだけれど。

【過去の話については一段落ついたのだろう】
【先程の落ち着きのない笑いが終われば男はまたくたびれた仕草へと戻った】

これは随分と買いかぶられたものだ。
正しく認識しているかどうかは定かではない。

けれど、自分に都合良く解釈はしているよ。
そういう者でなければ彼らを殺すには至れないのだからね。


白神鈴音とウヌクアルハイ――
どの道、ウヌクアルハイは殺さなければならない。
計画にアテはないこともないのだが……君と同じ轍は踏むまいよ。
人の心は複雑だ。
彼の白痴の神で有れば尚更のこと。

【どうでも良い話ではあるが"白痴の神"とは随分な言い草では有るなと男は思った】
【踊らされているだけの人形のように語るにしては、彼の少女の心の在り方は数奇に尽きると言うのに】

【ロールシャッハの語る言葉にはどこか澱みが有る。それを"虚神らしくない"と語るには、少々ばかり最近の神達は人間臭過ぎることだろう】
【どこか無機物染みた"エカチェリーナ"の在り方が模範的であると思うほどに】
【だからこそ、興味を覚える――余計なことまで口にしてしまったとしても詮の無いことだろう】


――なるほど、大した自信だ。
神殺しとして定義された私だが、その自信ばかりはどうしても抱くことが出来なくてね。

幾多の手段を模索して来たのだが今一つ、決定的なものを得られていない。


【男は少しばかり難しい顔をして告げた】
【ロールシャッハの示す策は、実際のところ現実性の高いものでは在るのだろう】
【虚神は虚神同士で食い合わせるのが、最も適切な話ではあるのだから】
【――だが、なるほど、彼は人の心の機微には疎いと見える】
【その点においてはジャ=ロを妬ましく思ったとしても仕方あるまい】


また少し話が逸れてしまうのだが。
先のインシデントで見せた擬似対抗神話――アレは良い出来だったろう?
この基底現実において、虚神の存在し得る世界線でならば、信仰を元に似たようなものが創れないかと思ってね。
私には脚本家の才は無いから筋書きの創り方には苦労したが――中々形にはなっていただろう?

……少し君の真似事をしてみるが。
君はこう思ってはいないかな?

虚神達を形作るルールを利用して別の虚構を創り上げる――その発想と技術は見事なもの。
――だが、対抗神話に対する"理解"が浅い。
この程度ならば、虚神に対抗し得る戦力にはならないと。


969 : ◆RqRnviRidE :2018/09/03(月) 02:13:32 7Mm5W0tY0
>>960

【女性が近付いてくる様子に、子供はワンテンポ遅れて反応し再度「あ、」と小さく声を上げ】
【細腕と髪で書物を抱えて、相手へと向き直るだろう。本が一回り大きく見える程度の痩身矮躯である】
【声を掛けられれば童顔はにっこりと笑みを湛える。──どこか期待に満ちた色を浮かばせて】

──やあ、すまないね。 ボクとしたことが取り乱してしまったみたいだ、……ありがとう。
そうだね、調べものというか……“自分探し”かな。 とはいえ、文字が読めないから絵で探すしかないのだけれど。
でも“シショさん”に聞いたら、こうやって調べたいもの適当に見繕ってくれたんだよ。 ここはすごいねえ。

【そう返して少々苦笑いを織り混ぜる。図書館で調べるにはそぐわないようなワードはあったものの、】
【識字力が無いという言葉通り、その腕に抱えるのは、絵や写真の多く載せられた図鑑が殆どであった】
【女性の拾い上げたものを含め、「海洋生物」「クラゲの生態」「しょくしゅのかいぶつ」「水にまつわる民俗学」──など、水棲生物に関しての内容が多く】
【調べたいものが見つかるかもしれない、なんて期待感を抱いている様子だった。 その通り声は少し弾んでいて】

──────あぁ、そんなことより!
もしかして、……もしかしてなんだけれど。
その銀の長い髪、まさか、ボクの“お仲間”だったりして…………。

…………って、んん、そうか。 やっぱり違うよね。 そう簡単に見つからないかあ。
“コレ”はねえ、面白いだろう? ボクたちの能力と手足と、それから誇りの髪の毛さ。 自慢なんだ。

【子供は顔の横の髪で、女性の銀髪を指し示しながら。期待をたっぷり込めてそう問い掛けるだろう】
【しかしながら、微動だにしない髪を摘まむ様子を見ればすぐに撤回し、やや落胆したように肩を落とす】
【どうやら同族を探すために図書館を訪れ、偶然よく似た銀の長髪を目に留めて立ち止まったらしい。結果勘違いだった、という訳だ】

【それから蠢く髪の毛に興味を抱かれると、子供は誇らしげに笑みを浮かべ、ぐにゃぐにゃ髪の毛を動かして見せる】
【異能とはいえ些か珍妙な光景であった。頭髪だけ別の生き物が憑いているかのようだったから】

【そうして子供は長机に本を置き、興味深げに相手の眺めていた資料や新聞を覗き込もうとする。……それまでは良かったのだが、】
【覗き込んだとしても僅かに眉をひそめ、神妙な面持ちで「なんだか難しそうなもの読んでるね……」という感想を零すだろう】
【素直というかなんというか、幼子らしいと言えばらしい実直な感想であったことだろう】


970 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/04(火) 00:51:22 smh2z7gk0
>>969

【相手が顔を上げれば、その痩せ細い身体を眺めて女性は「ふむ」と顎に手を当てながら微妙な顔をする。】
【そして微笑みかけられればにっこりと笑みを返して、相手の身長まで屈みこむ。】

いやいや構わないよ、〝おませさん〟。その年で自分探しだなんてノンノンだね〜。
〝記録〟は所詮記録でしかない。君が何者かを探すには自分で物語を紡ぐしかないんだよっていきなり説教臭いかな………。
―――まぁ図書館には情報は集まっているからねぇ。

【ぽりぽりと頬をかきながら相手を興味深そうに眺める、口元には修道女のような微笑みが浮かんでいる】
【そして相手が持っていた本の表紙やタイトルを見れば、眼を細めて何か考えるような間が生まれる。】
【そこに予想だにしない質問を浴びせられれば「はへ?」と気の抜けた返事を返した】

う、う〜んどうだろう。銀髪の人間なんて腐るほどいるだろうしねぇ………今のところはお仲間ではないかも。
でもまぁ、君は運がいいよ私と出会った事はね。

いいねぇいいねぇ〜でもさっきのお話からすると、その能力も含めてあまり自分の事が分かってないという事かな?
もしよかったら力になるよ、私は〝マリアベル〟!実は私も探し物をしにきたのさ。

【相手が自分の呼んでいた書物や新聞に興味を示せば横目でそれを見つめてそう答える。】
【尤も、図書館にくる人々は大体は何か調べものをしに来ているものだが………。】
【「君の名前は?」触手のように揺れ動く髪の毛を興味深そうに眺めながら、マリアベルと名乗った女性は問いかけた。】


971 : ◆zO7JlnSovk :2018/09/04(火) 09:04:11 rMJIo4mo0
>>955

【貴方の言葉に少しだけ照れくさそうに微笑む、微かに傾いた横顔に憂いの情景を見せて】
【浮世離れした美貌に混じる人間味が、かえってその調和を増す作用は、補色の関係性に似ていた】
【穢れ無き白の中に紛れ込んだ紅の風情は、淡やかな櫻を思わせる】


それは違いますわ、私以外にも沢山、そう、本当に沢山の方々が実践しています
けれども得てして、善とは見えにくい物に御座います、我々はどうしても仄かな幸せを見過ごしてしまうのですから
だからこそ、私は貴女様にそう言っていただけるのが嬉しいのですわ、見つけてくださって、ありがとう──── なんて

素敵な意見ですわ、正義を未来へと続く道筋に置くことは、私にとってもすんなりと受け入れられます
正しき行いが、正しき義を生み出し、そしてそれは正しき未来へと続いていく、自然な帰結を思わせて
ならば、私達の使命とは "未来を守る事" に他ならないでしょう


【そして彼女は、続く核心へと手を伸ばすのだろうか】


私達の相対すべき "敵" は非常に狡猾です、野党を抱き込んだ動きは単純ながら強力です
しかし、政界での戦いならば此方にも十分分がありますわ、後始末はお任せくださいまし
世論に関しても私に当てがありますの、けれども────

──── このプロットを考えた主、その主を倒す事は、私の力ではきっと難しいですわ
それ以外の事ならば可能性はあります、しかし、ただの力比べとなると、私では到底及びません
それ故に、探しているのです──── その為の、矛を


972 : ◆zO7JlnSovk :2018/09/04(火) 09:26:36 rMJIo4mo0
>>968

【実に奇妙な話であった、自分達を消滅させる為の機関と斯うして彼らは言葉を酌み交わす】
【それはある種の寓話であり、とっておきの喜劇に過ぎず、或いはまとまりのない散文詩の様で】
【けれども何処か独自の決まり事に沿っているかの如く、私達だけの文法を持っているみたいに】


──── ちょっとした禅問答だけどさ、僕はずっと不思議で仕方ないんだよね

キミ達は心と精神を別物として考えている節がある、けれども僕に言わせてみればそこに差異なんて無い
より正確に言えば心なんて存在していない、ニンゲンに存在しているのは外世界である身体と、内世界である精神だけだから
夢も無意識も恐怖も、それら全てが精神の作用であって、そこに心だなんて曖昧模糊としたものが存在する余地なんてないよ

先のインシデントもそうさ、僕の試みは "過去の恐怖を再現する" ──── まぁ多少の脚色はあったけどね

理論上は最善手に他ならなかった、恐怖と向き合い打ち勝つ事が精神の一番の成長でしょう?
けれどもニンゲン達は、まるで悪鬼羅刹の如く僕を非難し、刃を向けた──── まるで心の問題とでも言いたげに


【表情は軽く見えた、食後のティータイム、息継ぎついでに交わされる言葉の様に見えて】
【その実彼の本質を表している様であった、そう、ボスが推察した様に────】
【人の心の機敏に疎い、否──── そもそも心など解していないのだろう】

【──── 口角がつり上がる、何処か子供じみた残酷な笑みの様に】


良い着眼点だよ、本当に良いところに目を付けたね、そう、僕にも出来たんだからキミ達に出来ない道理は無い
あはは、それはまた買い被りとも言えるし、正しく理解できているとも言えるね、言葉を付け足そうか
"この程度でも" 僕達に対抗する術になりうるし、 "この程度では" 僕達に対抗する術になりえない

キミ達は自分達の信仰が、認識が、どれほどの力を持っているのかを理解できていない、まぁ、キミ単体は別だろうけど
その自覚があるかないかが、僕達とキミ達との根源にして、最大の差異となってると僕は言い切ろうか

"この基底現実" に於いて、僕達は信仰が時として神と形容されるほどの力を生み出すことを示した

──── それは小さな蝶の羽ばたきで、生み出す風の大きさは観測されなければ把握できない
だから僕は次のインシデントでそれを示そうと思う、脚本家は "一つ" でいいという事を示すために

対抗神話とはそれ単体が重要ではなく、その仕組みそのものがミーマチックに洗練されている
『財団』も良く考えるものだね、──── まぁそんなものは置いておこう、先のインシデントだっけ

疑似対抗神話の発想は素晴らしいよ、でも、その素晴らしい発想が逆に徒となっている
正しく物事を示す必要性は時として喪失する、それを疑似であると認識している限り、それは偽りの伝説に過ぎないのだから


【──── そういって彼は、目を細めて】


盲目の娘は象の脚に触れた、彼女はそれを逞しい一本の木だと思いこんだ、安心して眠れる場所だと
彼女の世界ではそれが全てなのさ、誰も訂正する必要もない、世界は認識に従うのだから
やがて象は娘を踏み殺す、脚にまとわりつく蠅を追っ払う様に

斯うして少女は "木に踏み殺される" ──── 実に寓話的で、神話的だろう?


973 : ラベンダァイス ◆auPC5auEAk :2018/09/04(火) 16:00:41 ZCHlt7mo0
>>971

――――善は見えにくく、悪は見えやすい、ですか――――まるで、私たちの事を、言っているみたいです――――
だからこそ、なんでしょうか――――私もなんだか、あなたと会えたという事実に、少しだけホッとしました――――

【眼鏡と長髪が月光に映えるその姿に、温かみのある笑みが感じられる。そんなイスラフィールの姿に、ラベンダーもわずかに表情を緩める】
【1つの汚点が、多くの美点を覆いつくしてしまう――――政治の世界がそれだというのなら、自分たち異能者を取り巻く環境も、それである】
【イスラフィールが、自分の行いに美徳を見出されたのが嬉しいというのなら――――そこに相通じるモノを感じたラベンダーもまた、心に慰めを得ていたのだ】

【――――力がある。ただそれだけで、自分たち異能者は白眼視される。そんな世相が、ここ半年で一気に醸成されてしまった】
【普段意識はしていなくても、やはり苦々しいものを感じていたのだろう――――1つの失態で、姿を隠さざるを得なかった『リーダー』の事も思い出していた】

――――「人の未来を無視した正義」は、もう「人の為の正義」じゃ、ありませんからね――――
だからこそ、私は人の未来のために、戦わなきゃいけない――――徹底的に――――
私の『マスター』も、仲間たちも――――みんな、それを望んでいるはずだから――――

【『正義』の意味を――――自身でさえ何気なく口にしたその言葉を、改めて自分の中で受け止めて、反芻してみる】
【その一言に込められる思いは様々だろう。そして、何を込めるのかも、個々人によって千差万別――――本来、そんな曖昧な言葉だ】
【ならば、ラベンダーは『未来』を想う。敵を殺し、敵の未来を断つ事は、仲間の未来を守る事】
【だからこそ――――「未来の為」、その一言を念頭に置いて、自分たちは正義を執行しなければならない――――と】

――――『有形力』そして『実行力』――――そういう事ですね――――
――――それこそ、私が適任と言えば、そうなるんでしょうか――――こうして私たちが会えたのも、何かの巡り合わせかもしれないですね――――
任せてください――――明確な、形ある力なら、ここにある――――ッ、ネオ――――『ベルセルク・フォース』――――!

【政治の世界における攻防、そこには当てがある。だが、実戦における打倒、その方法をこそ探している――――イスラフィールのその言葉に、ラベンダーは小さく頷く】
【そして、正に自分との相補関係が成立するのではないかと、提案するかの様に――――ラベンダーは、『兵器』としての己の力を、その場で解放して見せた】

【ラベンダー色の装甲の様な表面に覆われた、太く、寸胴な体型の人型】
【ごつい大きな手を備えた腕には、左右にそれぞれ3枚ずつ、円盤状の刃が備えつけられている】
【機械的な頭部も相まって、まるでSF作品に出てくる宇宙服か潜水服の様な、人型のロボットの様な機械的な姿をしている】

【そこにいるのはもはや、どこか虚ろな少女などではなかった。明確な破壊の力を身に纏った、『戦士』であり『兵器』――――】

――――この身に『矛』の役割を求められるなら、私は力になりましょう――――その為にこそ、私は『兵器』として生きているんです――――!
所詮、これも『異能』ですから――――奴らの異能封じの力を浴びてしまえば、無力と化します。それでも、絶対にただで終わりはしません――――ッ
成果を残せばこその『兵器』――――「どんな戦いでも」、私は私の役を成して見せます――――!

【本来の力を解放する――――そんな些細なスイッチですら、仲間の死に沈んでいた感情を奮起させるのに、役立ったのだろう】
【先ほどまでよりも、言葉に力が籠もり、ラベンダーはハッキリと宣言する。『兵器』として、同じ敵を戴き、そして戦おうと】
【恒常的な戦力としてでも、捨て駒としてでも――――役を見出せるのなら、共に『黒幕』と戦うつもりはある、と――――】


974 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/09/05(水) 00:13:10 WMHqDivw0
>>972
言いたいことは分からなくもないさ。
スワンプマンや哲学的ゾンビを始め、"魂"の存在を探るような思考実験は枚挙に暇がない。
心など、脳が生み出したロジックに過ぎない――君はそう言いたい訳だ。


【つまるところ彼の先のインシデントでのやり口はマウスの実験と然して変わらない】
【こういう舞台を用意すればこのように反応するはずだと】
【精神作用のロジックで形作った台本――】


なるほど。君の理屈は大局的な視点においては正しい。
しかし、そこには"倫理"が抜けている。
早い話が、ハラスメントだったと言うことさ。この世界に生きる者への。


【ロールシャッハの疑問は些か不可解ではある】
【彼の理屈はある種の正論では有るが同時に暴論でもある】
【能力者達の反応は全く難しい理屈などではない】
【少しばかりでも人の理屈を解するならば容易にたどり着く結論のはずだ】
【だが、彼はそれを理解できないと言う】
【虚神と言えど――曲がりなりにも嵯峨野と言う社会的立場を持ち、組織の中に存在していた彼が】


さて、事実として信仰に神を産む力なんてものが有るのかはともかく、少なくともこの基底現実においては、"そういうこと"になっている。
だから郷に従った――いや、この場合は業に従ったと言う方が適切かな。


【話題は変わった。饒舌に語る彼の言葉に男は視線を細める】
【言葉とは裏腹に、そこに見えるのは明確なる、自信】
【虚構神話――グランギニョル。その骨組みを掌握していると言う、バックボーンがそうさせるのか】
【故にこそ、彼はサクリレイジもこの男も、自らの台本の上で踊らせることが出来ると信じているのだろう】
【無知な盲目の娘の結末を苦笑いで迎えるように】


――そうとも限らないさ。

【珍しいことか。今まで概ねに置いてロールシャッハに同調し、その道理に流されていた男はここで否と告げた】
【それは単なる反骨の意志ではなく、明確な根拠を伴った確信が含まれていた】


"贋造英雄"は試作品であり、ある種の失敗作でも有った。
ギンプレーンは偶さか親和性の高かった竜と言う神性に肖って、フランツ氏に対して能力を発動させたが――本来、擬似対抗神話そんな便利に扱えるものではないんだ。

レッドへリングを仕留めた"オッカムの剃刀"のように。
それはある虚神に対して有効である程にその汎用性は狭められていくのだから。

そういう意味では、アレはどちらかと言えば"擬似虚構神話"と呼ぶべき存在。
君の言う通り、偽りの英雄さ。


だが、それを土台にすることで、残りの『三つ』を完成に仕立てることが出来た。


【饒舌だった。それこそ珍しいことだろう。酩酊でもしているかのように、男は言葉を浮かばせる】
【そこには悪戯が含まれていた。その他愛ない言葉の裏に気付くのか、気付かないのか、あるいは惚けるのか――ロールシャッハを試すような響きも有って】


975 : イスラフィール ◆zO7JlnSovk :2018/09/05(水) 14:31:41 VaR/723U0
>>973

【同意を示す様に緩やかな微笑みを携える、慈愛を形に示すのならばその表情を指して】
【心地よい静謐は茶の道に似て、彼女の作り出す無音は、平穏を雄弁に語るのだろうか】
【光沢に満ちた髪の慕情、雪月花を体現してみせるその彩りに、調和という言葉すら物足りない】


全く以てその通りですわ、志を同じにする御仁がいるのは私としても心強いです
お話を聞く限り貴女様以外にも気高き意思と、強き力を持つ方もいらっしゃって
それならば私はこの邂逅を深く喜びましょう、世界に正義を取り戻す日として


【返す言葉も早々に、ラベンダーは自身の力を誇示してみせる、強き戦士と儚き兵器を両立させた】
【彼女はそれを眩き者でも見るように眺めた、それは同時に微かな寂しさを横顔に孕んでいて】
【歓喜と同時に何処か、深い悲哀を感じさせる彩りであったのだろうか】


────…… 素晴らしいお力ですこと、ですが、こうも思ってしまうのです
貴女様にこの様な、過酷な使命を押しつけてしまう私自身の無力さに関してですわ
きっと私は "命じなければ成りません" ──── 貴女様の力を活用するために

時に其れは貴女様の身を傷つけるでしょう、時として、軽くない傷を負わせるかもしれません

私は……割り切ったつもりですわ、貴女様のお力を借りるという事の意味を
けれども、けれども──── それを是としない思いがあるのもまた、事実です

ラベンダー様、お許し下さいませ、私は、私の欲望の為に貴女様を使うのです


【彼女はそう言い放った、静寂の中に落ちた、一つの水滴を思わせる────】
【無垢の凪に広がる波紋は、琥珀色の水面を響き渡り、それはやがて心へと広がって】
【嗚呼、と嘆く声に似ていた、墓前で跪く未亡人の様に】


976 : ロールシャッハ ◆zO7JlnSovk :2018/09/05(水) 14:49:08 VaR/723U0
>>974

【ボスの指摘に仰々しく肩を竦めてみせる、脚本に従っているかの如く大げさな仕草で】
【不協めいた音律であったが、装飾音は音階の中に溶けていた、それは確かに厳格な決まり事】
【けれども平均律には程遠い、作り出した音の波は何処か不安定な関係を見せていた】

【──── 笑みが歪む、形容するのであれば其れは残酷な微笑みに近い】

【ボスの見せた確かな反証、舞台の上で役者が起こすエチュードを脚本家は如何に理解するのだろう】
【それを即興劇の一環として見守るのか、厳粛に筋書きを辿らせるのか】
【而して彼は笑うばかりであった、一つ一つの言葉を確かめる様に辿り】


──── あはは、いいね、そうこなくっちゃ、中々どうしてキミ達も考えるね
"完成に仕立てる" と表現するその言葉は良いよ、僕好みの表現で、そう言い切るキミは僕好みの相手さ
今のところ僕にはその手腕を類推する事しかできない、それを述べるには幾つもの "仮定" が必要になる

けれども、推論と推定の上に重なった理論は只の想像に過ぎず、或いはそして、創造する手がかりともなる

故に僕は沈黙を保とう、ロールしているキャラクターが、プレイヤーの手を離れて動き出す
それを喜ばないライターが果たしているだろうか、自我を持ったキャラクターは多分に魅力的だしね
お手並み拝見といった感じかな、僕に向けるのか、彼に向けるのか、彼女に向けるのかは知らないけど────


【でもね、とロールシャッハは付け加える、とらえ方によっては、それはある種の負け惜しみにも聞こえるだろうか】
【けれども彼にとって、それは加えなければならない注釈であった、不文律に従うための最後のピースに近く】
【真っ正面から男を見据える、その仕草に──── 微かな笑みも存在せず】


覚えておくと良いよ、対抗神話にせよ "疑似" 対抗神話にせよ──── 虚構神話にせよ
認識に値する神話とは、信仰に値する神話とは、然るべき論理の制約の中に在るべきなのさ
"機械仕掛けの神" なんて興が削がれるだけだ、その一点に関しては僕達も財団も変わらない

君がその舞台に立つ事を僕は歓迎しよう、けれども同時に僕は君を試さなければならない

それは信じるに値する神話なのだろうか、或いは一笑に付す寓話でしかないのだろうか
君が君自身を信じるように、僕が僕自身を "盲目的に" 信じるように、たった一つのやり方を鵜呑みにするように
生み出された話は世界に精査される、その帰結に不思議も未知も存在しえないのだから


【そう言ってロールシャッハは立ち上がった、足下から伸びる影が徐々に彼の身体を覆っていく】
【言うべき用は済んだとでも言いたげに、やや抽象的な恣意だけ残して、打ち切ろうとでも言うのか】
【──── 伝えるべき事が在れば聞くだろう、それぐらいの時間ならば残っている】


977 : ラベンダァイス ◆auPC5auEAk :2018/09/05(水) 21:12:40 ZCHlt7mo0
>>975

――――でも、それが「未来の保証」となる訳では、ありません――――それは、覚えておかないと――――

【1度は深く頷き、それでもラベンダーはどこかやりきれない様子で、その場に拵えられた墓標を見やる】
【気高い意志と、強い力を持った仲間達――――そうした言葉で語れるはずの人物が1人、正にここで永遠の眠りについているのだ】
【元来、戦いとは水物であり、そして生モノなのだ――――何がきっかけで、決定的な破綻をきたすか、分かったものではない】
【――――自分たちの力とて、絶対的なものではない。それを忘れないでくれ――――恐らく、言葉にせずにラベンダーが発したメッセージは、そうしたものだったのだろう】

私こそ――――生物兵器『ケツァル・コアトル』、その最後の生き残りの1人です
この力は、確かに――――敵を討ち、仲間を守り、道を開く――――その為にある力です――――ッ

【自らの姿を、どこか割り切れないものを抱えた様な、複雑な表情で見つめるイスラフィールに、ラベンダーは細やかな付言を足す】
【生物兵器『ケツァル・コアトル』――――誰が、どのような目的で製作したのかも明らかにならないまま、全てが闇に消えてしまった、幻の力】
【その、最後の継承者の1人が、今この場にいる、ケツァル・コアトル=ラベンダァイス=カエデ=キャニドップなのだ、と】

――――――――何を今さらですよ

【懺悔に近い、イスラフィールの言葉。その全てを受けとめ、胸中で咀嚼すると、ラベンダーは傍へと歩み寄る。ガシン、ガシンと、機械的な足音を響かせながら】
【どこか、苦笑している様な空気が感じられるかもしれない。恐らく、装甲の下の本心では、本当に苦笑しているのだろう。そっとその腕を、イスラフィールの肩に宛がって】

――――先に、言ったじゃないですか。私は『兵器』――――戦い、役を成し、そして死んでいく存在なんだって――――
この身体が砕け散ろうとも、引き裂かれようとも――――それが、戦いの結果だっていうなら、私は本望です
まして――――自分の望んだ戦いに、最期まで身を置く事ができたら、何も後悔はありません――――

【調和の上に成立している、その繊細な麗しさを震わせるイスラフィールを、宥め、慰めようとしているラベンダー】
【その肩をそっと支える腕は――――人間ではない。その姿を見つめる瞳は――――人間ではない。死を厭わないその言葉は――――人間ではない】
【人間でないものとして、ラベンダーは眼前の、1人の人間の嘆きを、それでも――――放ってはおけなかったのだ】

同じ敵を見ている限りに――――私だって、私だって――――欲望のために、戦うんです
戦ってる間は、意味もなく泣きたくなったりしない。過去の事を思い出して、唇を噛み締めたくなったりしない。兵器である限り、嫌な事を全部忘れていられる――――
――――だから私は戦うんです。たまたま、私は善い人たちと縁が深かっただけなんです。私自身は、ただ――――自分の為に戦い、傷ついてるだけに過ぎません――――

【偽らざる本心が、言葉となって表れた。どう敵を殺そう、どう迫りくる死をやり過ごそう――――それを考えている間は、望ましい忘我に身を置いていられる】
【かつて、全てを失って、寄る辺なく彷徨っていた時があった。その時――――本心から「戦いがあればそれでいい」とすら思っていた】
【――――なんとなれば、カノッサ機関の門を叩く事、それさえも、実行しかねない事さえあったのだ】
【結局、彼女の戦いも、その結果も――――彼女が『兵器』として望んだ事に過ぎない。そこに、イスラフィールが負い目を感じる必要など、無いのだと――――】


978 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/09/06(木) 00:54:50 WMHqDivw0
>>976
【ロールシャッハの言葉を、男は暫し黙って聞いていた】
【今まで再三に渡って自らを無力だと語り――それは韜晦でも何でもなく事実ではあるのだが】
【リーイェンに対しても、あくまでも虚神を殺すのは基底現実の能力者の役目だと示唆し】
【狂言回しに徹してきた男が、唐突に見せた強気――その不自然の意図は描写の内にはないのだろうが】

【何にせよこの話題はロールシャッハにとって不本意なものだろう】
【虚神への打開策を――自らの手口を語るのは結句、彼の台本には乗るつもりはないと言う意志に他ならないのだから】


それは私にとって何より根強い制約だとも。
擬似対抗神話は、通常、それ単体で虚神を滅ぼし得るような仕様には"出来ない"。
理由を語るのはそれこそ野暮に過ぎると言うものだがね。

だが、それでも、使い方次第では銀の銃弾にも成ることも有るさ。

……もし、その機会が在るならば彼女に向けたモノが最も適切だとは思っていたが……困ったことに使い手がいない。
サクリレイジには、どちらの彼女にも因縁の深い人物がいないからね。
つまらない演目にはしたくはない。

【肩を竦める。男の言にはどこか下手な芝居が掛かっているようでもあって。彼には役者の才も無いのだと思わせるだろう】
【ロールシャッハの言葉に含まれるのは負け惜しみ?苛立ち?……そうではない】
【これは矜持だ。脚本家を名乗る者として、素人の用意した筋書きを吟味するための】
【つまらない展開に筋書きを譲るつもりはないと言う、、彼なりの宣言だろう】


【だから意趣返しとも言うべきか、彼の帰り際に一つ"敵らしい"ことを言うことにした】


答えは……出ているじゃないか、ロールシャッハ。
何故、先のインシデントは失敗したのか。
何故、能力者達は尽く君のプランを否定したのか。

心を蔑ろにした君の台本を……世界は認めなかったからさ。


【ジャ=ロの描く台本は――人の心を取り込み、操ることに長けていた】
【故にそれは常に最善の選択肢とは限らないが――それでいて、今に至るまで能力者達を出し抜いて来た"巧さ"が有った】
【果たして――ロールシャッハの次なる筋書きはジャ=ロのそれを超えることが出来るだろうか?】

【恐らくは、そのインシデントそのものは無関係とは行かないのだろうが】
【虚神二人の諍いはどこか他人事のように目に映っているのだった】


【立ち去る彼に、別れの挨拶を掛けることはないだろう】
【いずれまた相対する身だ】
【だが、しかし――こうして彼と直接言葉を交わす機会は、恐らくはもうないのだろうと、男はぼんやりと考えていた】


979 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/06(木) 19:16:48 TPHrBtM20
>>963


「あら、耳聡いこと。」「 ─── 貴女にまで高名が聴こえているようで、何よりね。」

「嵯峨野は既に"貴方たち"から離反しているわ。然るべき粛清を与える行為そのものが、即ち貴女たちの利となりうる状況にある。」
「まして"貴女"は明白な成果を上げられずにいるのですから。 ……… "貴女たち"の御歴々は、どれだけ待ってくれるのかしらね?」


【眉一つ動かすことなく平坦な口調で人形は切り返した。迂遠な当てつけの応酬。足元を見るならば爪先に蹴飛ばしてやることにさえ躊躇いはなかった。】
【「成果の出ない工作処理に従事し続けている諜報員へ、いつまでも予算が割かれる訳もないでしょうに ─── 。」言外の意としては、そのようなところ。】
【そしてまた人一倍に感情を匿すなら、微かな機微にはかえって聡い女でさえあった。ふん ─── と静かに首肯して、綴る言葉は、訥々と。】


「安定した精神状態 ─── と付言した理由を、少しは慮って貰いたいものね。あの子は既に、媒介者としては機能しない。」
「後者の問いに対する回答としては、何のことはないわ。 ……… 彼らもまた、"潰し合おうとしている"。それだけのこと。」

「スナーク。ジャ=ロ。ロールシャッハ並びにエカチェリーナ。白神鈴音を巡った、まあ、有り体に言えば三角関係かしら ─── 。」
「その中でジャ=ロは、その特質上極めて有利な位置にある。だのに目障りなロールシャッハを、奴は未だに潰せていない。」「そこに、我々が付け入る余地がある ……… まあ、そんな所かしら。」

「私とて、 ─── 腹に据えかねぬ訳ではない。今すぐにでもジャ=ロを殺せないのなら、穏やかでない念を忘れられない。けれど一応は合理主義者のつもりなの。」
「仲も良いのでしょう?」「尋ねてみたら如何かしら。」「老婆心ながら忠告するなら、私の口から語らせる対価を、斯様な場所で払うべきではないと思うのだけれど。」


【そこで一度は言葉を切る。伏し目がちな笑いはポーカーフェイスのそれだった。 ─── 確かに人形のそれに近かった。だがその向こう側に笑うのは確かに人間だった。】
【青い一瞥をリゼへと向けるなら、それが答えとなるのだろう。知りたくなければ尋ねなくてよい。だが知りたいのならば尋ねればいい。あくまで人形もまた高踏であった。】


980 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/06(木) 20:35:27 WMHqDivw0
【路地裏、どっかの一角】
【安っぽいケムリのにおいに満ちていた。とにかくニコチンとタールを詰め込めるだけ詰め込んだみたいな】
【一番安値で手っ取り早く脳ミソをバカにできるにおいがしていた。タバコ。このところ規制は厳しくなる一方だから】
【許されたスペース以外で吸うことは禁止されていたはずだけど。こんな場所でそんなこと言うほうがあるいは】
【よっぽどバカなんじゃないかって思わせる、みたいに――――ケムリの隙間に鉄錆の香】

………………あーんン、聞いてる、きーてるってば。それでおれに何が言いたいの?
ノロケんならミア相手にやってくれよ、アイツそーいう話ダイスキじゃん。なんでおれに言うの?
は? ノロケじゃなくてマジメな相談? どこが? おめーさっきッからおれに何て言い続けてるか
ちゃんと理解してる? じゃー復唱してやろーか? ……うっせーな耳かっぽじってよく聞いとけ、

「カレシがあたしよりかわいいし美人なの本当につらい」。
これのどこがマジメな相談なのか教えてほしーんだけどナ。あーうっせうっせ、もう付き合ってらんねー、
もーヤダ切るヨバイバイじゃーネ、………………死ね。

【それを纏いながら、暗がりから歩いてくる男が一人。長身の、まだ若そうな青年のみため】
【夜に融けてなくなりそうな褐色肌に、明度の高い銀髪とまっきいろの瞳ががよく映える。そんなカラーリング、】
【――――履いている安っぽそうなスニーカー、ロールアップして踝を晒す色褪せたジーンズに、点々と赤色】
【そこだけがいやに攻撃度の高い色合いをしていた。そしてわからせてしまう、「そんなもの」を浴びても】
【平然としていられるだけの人間性であるということ。一目見ただけで否応なしに理解させる、そんな状況】

【彼はスマホで誰かと喋っていた。イライラしている声色だった。尻尾には死ねとか物騒な言葉つけたけど】
【たぶん言い慣れた挨拶程度のニュアンスで放ったものなんだと思わせるくらいには軽々しい会話だった。それを】
【ぺっと1タップで全部終わらせてしまう。終わりにしたら、液晶の光を消して、ポケットに仕舞って】

……………………………………あっもう死んでたわ。おれもアイツも。……でも死んでくれねーかなあ。

【ぽろっと唇から取り落とした煙草、放物線を描いてアスファルトとキスしたそいつを、踏み躙ってぐちゃぐちゃに】
【腹が立っているのを紛らわせるみたいな動作。でも明らかにマナー違反だし――それ以前に、赤い錆の色が、不穏】


981 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/06(木) 21:25:50 TPHrBtM20
>>966


【節々に痛む身体と少しばかり霞んだ視界が漸く鮮明さを取り戻していく。即ち焦点は明瞭に、痛覚は鮮明に。舌を噛んでいた。口内に錆びた鉄とアンモニアの味が滲む。】
【それでも遠く眩んだ聴覚でさえくぐもった炸裂音を聞き取っていた。徹甲榴弾と化した200グレインは軟組織内において文字通りに爆発的なエネルギーを放散し】
【爆圧によって骨肉が弾けて潰れる嫌な音を続けて聞くのなら、 ─── 悲痛な咆哮はイヤーマフ越しにさえ鼓膜に突き刺さる。身悶えしながら少女は派手に咳き込んだ】
【ならば断末魔の悶絶に巻き込まれぬよう身を転がしておくのが精一杯のことであった。 辛うじて開けた片目で瞥見するなら、後は自分の仕事ではないらしい、ようだし。】

【 ───── ゆえに、この些か危険と暴力性に満ちた狩猟を提案した少女と、改めて顔を突き合わせるならば】
【金髪の少女は文句の一つでも言いたげな顔をしているのだろうが、 ─── その背へ一様に広がる打撲の痕を認めるならば、非情にはなりきれない。】
【「 ……… 本当に、大丈夫なんだろうね。」あくまで痩せ我慢でないのだろうねと釘を刺すなら、然しそれ以上のことは問わぬのだろう。そうして、返ってくる問いに大しては】


「 ─── 寿命が縮んだ気がする。」


【はあ、 ─── 呆れるような憂いに白い嘆息を吐き出して、然して愛嬌のごく薄そうな顔貌をごく穏やかに笑わせながら、そう答えるのだろう。】
【ボクじゃなかったらどうするつもりだったんだ。そんな嫌味の一つを飲み込んだのは、恐らくは相手への信頼を見出したがため。自分にせよ、彼女にせよ。】


「 ………… それで。」「こいつ、食べるの?」


【ともあれ、 ─── 少女の強かな魔力が哀れな海竜を抑え込むのならば、やはり金髪の彼女は感嘆したように頷いているが】
【まだ対手が息絶えぬのならば、彼女は改めてライフルを構えるのだろう。悶える必要のないように、今度こそ脳天を撃ち抜くだろう。無為な苦痛を与える趣味はなかった。】
【然し解体にも難儀の多そうな巨躯であった。「僕、今はサバイバルナイフくらいしか、持ってないんだけどな ─── 。」ちらり、と横目。】


982 : ◆UYdM4POjBM :2018/09/06(木) 21:59:18 XqQAhkbc0
>>952

【ジンジャーの目は一目みただけで見通した。目の前にいる少女が人の身ではなく……機械の体を持った人形であった事を】
【そして内心驚愕した。全身パーツの一つ一つの精密なライン、強度、なにより……こうしてこちらに話しかけながら見せるそのしぐさの一つ一つのなめらかさ】
【あまりにも"人"らしい。自然すぎる。まるで人間のように―――こうもジャンクちゃんと匹敵するほどに人に近い存在がいるとは】

【ジンジャーは彼女を見て一度だけある不安を感じたが、すぐににこやかに言葉を返す】


(……まさかとは思うが、『こちら』と"同じ"なんて事はないだろうな……?)

喝采痛み入るよ。共に彼女を造った親父も草葉の陰で喜んでる事だろう
……実際そうした自動人形を造るノウハウがあるからこそ思うのだが……君もずいぶんと腕の立つ者に組まれたようだね
おっと、自己紹介が遅れた。私はジンジャー・ユースロット。冒険家であり……科学者である者だ

「この方の側近を務めております……自動人形"ジャンクちゃん"と申します。以後お見知りおきを。
……しかし、星でございますか……ジュニアハカセも満天の星空の下で横たわりながら歌を聞きたいと言い出したりしますし
そのねだられた方、というのはずいぶん風情をわかっている方のようデスヨー……もしかするとそちらが、貴方の制作者に当たる方で?」

ゆっくりプラネタリウムを眺めるのもいいがやはり星空が鮮明に見える日は実物を見るに限る
9月の中頃となると夏の大三角と秋の大四角が共演したりしているのを肉眼でも捉えられるしなぁ……まあ、戦いの前に英気を養うのにうってつけさ


【にこり、と横の少女に笑いかける。突如言葉にした虚ろの神という言葉を前にしても彼は動じない】
【す、と立ち上がり少女に向き合いながら彼は堂々と答えるだろう】


―――……もちろんさ。必要であるならば跡形もなく息の根を止めるとも
そうしなければ悲しむ女性が数多くいるというのならばね。……幸いにも我々にはそれができる"力"と"技"が備わっている
不可能な事柄でもない。相手は神であろうとね。

……それよりも、その言葉をこの場で出したという事は……この一件の関係者と考えてよろしいのかな?


【横に並ぶジンジャーとジャンクちゃん。突如現れた人形の少女は……虚神の一件に関係する者の使者だろうか】
【ついに関係者と接触した。直に情報を得られることが出来る好機。二人とも、内心喜びを隠せずにいた】


983 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/06(木) 23:06:07 TPHrBtM20
>>982


「あら、 ─── 嬉しくなるわね。民生品の義体を自前でカスタムしたの。」「主要関節の制御ソフトを移植するのに、随分と難儀したけれど ……… 。」
「 ……… ジンジャー。それに、ジャンク ……… ちゃん?」「ふふ。面白い名前。とても我楽多には見えないというのに。 ─── ともあれ。」
「私はアリア。 ──── アリア・ケーニギン=デァナハト。」「 ……… 以後、宜しく願うわ。」


【息を漏らすような上品さで人形は笑った。口許に白い手指を添えていた。優しく頬の緩むのは顔筋の所作であるに違いなかった。だが人形はやはり人形である。】
【名乗られるのならば同じだけの礼節を持って名乗り返す。「 ……… 残念だけど、"あの子"はそんなに、機械弄りは得意でなくて。」苦笑いにさえクオリアが宿っていた。】
【感傷的な笑顔だった。誰かを思い出すための笑顔だった。ここではないどこかに、青い瞳の焦点を合わせる機能さえ実装されているらしい。】
【であれば、 ─── 暫し、笑顔の視線が交錯した。剣呑なものではなかった。それでいて幾らか互いを値踏むような温度感があった。それでも矢張り敵意はなかった。】


「ええ。」「 ……… 奴らとは、少なからぬ回数の干戈を交えてきた。」


【細い唇が微かに動いて、言葉少なに先ず肯定を紡いだ。後は早かった。流れ出るように言葉を続けて、正答を求めるようでありながら独白のそれに似て】
【徐に立ち上がってくるりと身を廻し、ひらりとドレスの裾を舞わせるのなら、己が背に手を回して尋ねるのだろう。悪戯好きの少女のように】


「正義の味方と名乗るには、荒い遣り口に慣れすぎているけれど ─── 」「そうね。 ……… 個人的な、恨みもあるわ。」
「私を信じてくれるのならば、どうか聞かせてくれるかしら。」「どんな方策を以ってして、貴方たちは奴らに報いるつもりなの?」


984 : 名無しさん :2018/09/06(木) 23:36:04 Y8PWJCFU0
>>980

【――――ことり、と、足音がした】
【それはひどく小さな音であるのだろう、街中であれば当たり前に紛れてしまうほどで、けれど、この場であったならよく目立つ】
【何より"その赤色"を纏っていられるほどの人物が、誰かと行合う際に気を向けないだなんてきっとなかったから、――――あるいはこんな世界だからそれも"ありえる"のだけれど】

【相手の向かおうとしていた先より現るのは一人の女だった、背はそう高くなくって、百五十五センチ、より、小さなメモリ十個分、一センチ低い身長をして】
【高くないかかとの靴であるならば、上げ底も控えめに。靴の分を含めたとしてもそう大して身長ではなく。ならばどこか猫みたいな気配の、彼女】

【――黒猫と同じ色合いをした髪は短く内側に巻いたボブヘア、同じ色合いをした長い睫毛で縁取る瞳はまるで宝石みたいに色鮮やかな、青りんご色】
【肌は透き通るように、――というにもいくらも不健康さを感じさせるほどに白いのを、顔だけは甘やかなメイクで誤魔化していた。それでも隠せないのはキツい顔立ち】
【いやに華奢な首筋にはきちりとした付け襟に、けれどふくらと豊かな胸元は惜しげもなく、――というほどでもないけれど、いくらか胸元があいたワンピース、これもまた黒】
【真っ白な素足はそれでいてその実ごく薄いストッキングで覆い隠したなら、足元はかかとの低いパンプス、――華奢な手の指先、透明なマニキュアだけを塗り付けているのが目立って】

――――――――、

【――――――――"彼女"はどこかへ急いでいるようだった。だけれどきっと目的地なんてどこにもないんだと思わせるに違いなかった】
【あてのない悲しみに心を砕かれてしまう瞬間のような目をしていたから、――ひどく憔悴した目をしているんだろう、であれば、余計に、宝石色がぎらめいて】
【ほんの一息の間に、彼女は彼とすれ違う形でどこかへ向かおうとするんだった。――、だけれど、ほんの一瞬。彼女は足取りを停めるのだろう、何か、気づいたみたいに】

…………、

【――きっとその瞬間、彼女の瞳は彼の足元、点々とこびりついた赤色に、魅入られるかのように向けられていた。まあるい目を、いくらか見開くほどに】
【それでいて、――こびりついた磁石を冷蔵庫から離すかのような温度感で、視線は逸らされる。ほんの数秒の出来事だった――もし何か追及しても、はぐらかす温度感】

【後に纏うのはごくごく甘い香水の香り、――"まっとう"な仕事をしているとは到底思えぬ女だった、であれば、幾分迂闊に思わすのかもしれない、慣れているはずなのに】
【そんな風に身にまとうものに鮮やかな赤色を飾ってみる人間なんてよく見るはずだのに。――なれば苛立ちの最中にある彼にとって、いくらか、"理由"になるのかもしれない】


985 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/07(金) 13:20:23 6IlD6zzI0
>>979

(嵯峨野鳴海は黒幕側に数えられない存在になった。だから私も手出しが出来る、か。けど―――)

【立場を鑑みる事無く刃を振るう事、敵対組織の機械人形(アリア)に手を貸す事も吝かでは無いけれど――】

(―――……癇に障る言葉を並べ立てやがって。自分の醜態は棚に上げてガツンと"口撃"か)
(確かに私は蛇教潜入以降、明白な成果は出していない。コイツの嫌味も痛い所を突いてきてる――うざったい)

【目の前の人形を壊したところで何の意味も無い。暖簾に腕押し、水面に映る月に投げる石と同じく無意味】
【それにこの場で刃傷沙汰を起こせば、隣に座るリゼやバーの店長であるグラヴィスも黙ってはいまい】
【正鵠を射た言葉に翳る顔色。そこから滲む敵意は凍てる眼光と共に。言葉での斬り合いを依然として続ける】


「クソアホロボット越しの臆病者のご高説、痛み入りますよっと。……好き勝手暴れ回った挙句に
 正義面してる"極秘組織"に属するお方のありがたいお言葉を拝聴できるなんてね。ああ!今日は良い夜だねぇ!
 ……だけど余計なお世話だし、上から目線の態度がムカつくんだよ。精々明日は我が身にならないように――」


【"祈るんだね"、と悪態をつく言葉を遮るのは、またしてもリゼの振る舞い】
【二人の立場上、険悪な空気が漂うのは止む無しなのか――否、虚神を妥当するのに足並みを揃えなくてどうするのか】


ちゃんエリッ!ストップ、ストップ!今日のちゃんエリはどうして喧嘩腰なのさ?
これじゃ情報交換も協力も出来やしないじゃん!あてが居なかったら喧嘩別れじゃ済んでないよ!

後、アリアのおねーさんもあんまり煽らないでおくれよ。立場上二人が敵対するのは何となく解るけどさ。
今はそんな事をしてる場合じゃない。……いたいけな少女に惨い事をする奴を野放しにしておけないじゃんか。

【声を荒げて仲裁を試みる。エーリカもアリアも一筋縄ではいかない人たちだと理解しているから尚の事】
【次諍いが生じそうになったなら――リゼも黙っていない。実力行使で止めるのだろう。腕でエーリカを静止して代わりにリゼが問う】

アリアのおねーさんたちの目的。それは、先ずロールシャッハとエカチェリーナという一角を崩す。後にジャ=ロも含めた虚神達を打倒する。
……埒を開けようと思うとさ。ちゃんエリがジャ=ロとやらに接触してそいつと協力関係を結ぶ所まで持ってく必要がある。

だからさ、一先ずはあての顔に免じてアリアのおねーさんの質問に答えて欲しいし要求も呑んで欲しい。
現状ジャ=ロの事を知ってるのも接触できるのもちゃんエリだけなんだし、ね?
それに――ロールシャッハに付き従うエカチェリーナと呼ばれてる虚神はちゃんエリとも無関係じゃない。

【"リゼは何と言った?エカチェリーナなる虚神が私と関係があるだと?…そんな奴は知らない。心当たりも無い"】
【"それを知りたいなら――…?】【"――そして、最終的にジャ=ロを殺せるのであるならば…?"】

「〜〜〜ッッ!!……解ったよ、とりあえずアンタの口から語られる対価も立場上の敵対も今は"横"に置くとする。
 ―――……とりあえず一息つきたい。酒の一つでも頼ませてもらう。
 ……腸煮えくり返る様な事が立て続けに舞い込んでるんだ。強い酒ごと飲み込まないとやってらんないよ」

【その言葉の後に何処からとも無く出てきたのはストレートグラスに注がれたウイスキー】
【それを勢い良く喉に流し込み一気飲み。この行為が意味するのは"アリアの要求を飲んでやる"――そんな意思表示だった】


986 : ◆RqRnviRidE :2018/09/07(金) 22:27:50 wQ3BqsBE0
>>970

やあ、奇遇だなあ! ボクの友達もおんなじようなことを言っていたよ。 良いこと言うじゃない。
その子はねえ、ボクのこれから先は白紙に似ていて、思うままに何色でも染めてもいいんだって。
キミみたいに綺麗な髪をしていたよ。 リゼっていうんだ、金糸の髪の美しい子でね。

【相手との視線が近づけば一層にっこりと笑んで、「キミもきっと仲良くなれるよ」と一言付け加える】
【観察するような目線だって特に気を悪くした様子はない。不相応な、ませた口調も弾むように愉しげで】
【本を置いて椅子に腰掛けながらも、肩を竦めつつおどけてみせるのだろう、きっとその姿は何処までも子供らしい】

それにしたって、ふふ、ませてるだって。 ……そうかもしれないね。
自分探しと言ってもね、過去と未来の点と点を繋げられればと思って来てみたんだ。
物語を紡ぐためにも、まずは造詣を深めねばね。 ……なんちゃって。

銀髪ってところに僅かな希望を懸けてみたんだけれど……うん、そんなトントン拍子にはいかないよね。
逆に言ってしまえば、それだけたくさんチャンスが転がってるってことだよねえ。どうやらボクはラッキーみたいだ。

【「──期待していいんだね?」 声をワントーン下げて問いながら、徒っぽくニヤリと笑みを浮かべる】
【仲間ではないことに一瞬落胆を見せたものの、立ち直りが早い辺りは子供のプラス思考が窺えるだろう】
【そうして女性──マリアベルにそう訊かれれば、子供はうんうんと大きく頷いて強く肯定を示し】

ありがとう、マリアベルか。 うん、良い名前だね。
ご明察、実はそうなんだよ。 ちょっと記憶が迷子でね──だから“自分探し”なんだ。

ボクはね、瑠璃──“瑠璃”と言うんだ。
空と海のような澄んだ蒼色の名前……綺麗だろう?
探し物があるならボクも探そう、キミの助けになれるなら。

【子供──瑠璃は名乗り、握手を求める。素手……ではなく、顔横の髪の一房を手のようにして彼女に差し出す】
【触れれば感じられるのが、普通の毛髪よりも、猫っ毛よりも随分と細く、柔らかく、きめ細やかで癖の一つも無いということ】
【或いは滑らかな絹糸に包まれているような感覚にさえ陥るだろう、明らかに人間の髪質のそれではなく】
【瑠璃の言う通り、自慢の髪の毛であり銀髪の者を仲間だとするなら、そういう一族が存在するのだと推測された】


987 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/08(土) 00:34:07 WMHqDivw0
>>984

【耳はそれなりによかった。それなりのものを混ぜられているから。――気だるげな黄色い視線が音のほうを見やり】
【眠くもないのに重たく感じる瞼を半分、その上に被せて。次いで其方を見ようとする首の動きも、スロウリィ】
【ひどく面倒臭いものを見てしまったような顔をした。それでも、それを逸らそうとしなかったのはたぶんサガのせい】
【何かしらおかしな人を放っておけない。上手くさばくこともできないくせに。……そういう性分の人間だったから、】

…………どうしたのオネーサン、こんなとこ居たら、あぶないヨ。

【これもまた、ひどくだるそうな声色で。それでもへらへら笑う形に歪む唇から、声をかける】
【その相手、みどりの彼女のこと。迷子になった手負いの獣――というほど物騒な感じはしないと思った、けど】
【ひとりの人間に飼われ続ける愛された愛玩動物、という感じもしないなと同時に思った。それはなんでだったろう】
【たぶん直感。きれいに整えられた身なり、それならもとは「こんなとこ」にいるような人種ではないのかと思って】
【けれど彼女の鋭利な瞳の輝きを見て、そうでもないんじゃないかなあとも思わせる。……回答は、まとまらない】

どうしたの? 迷子? ここらへん入り組んでるもんネ、しゃーないしゃーない。
よければ表通りまでの道案内してあげてもいーけど、……どう? それとも、

【「用事あんの? ここらへんで」。――――、】

【つとめて人の良さそうな笑顔を浮かべることを意識して。親切な人の仮面を被って近寄ってくる】
【纏う香はそのまま、布地に染み付いた赤色だってそのまま。隠すこともなく一歩一歩、距離を詰めようとしてくるなら】
【「標的」にされたと勘違いさせるのかもしれない。けれど彼にはそんなつもり、毛頭ない、……つもりだった】
【すべては彼女に託される。拒むのも、逃げるのも、それともなんとなく喋り返してみるのも。なんだって自由で】
【そしたら彼だって自由にやり返すんだろうという気配が見えていた。少なくとも今は、見知らぬ女性に身勝手な】
【苛立ちをぶつけるようなことはしないだろう、とも思わせるけど。……疲弊しているのはお互い様だった、なら】


988 : 名無しさん :2018/09/08(土) 01:13:39 nWcmFFY60
>>987

【そうして一瞬をその足元にへばりつかせた彼女は、けれど次の一瞬にはすでに通りすがろうとしている。であれば当然次の一瞬にはひとつ分の足音が紡がれ】
【だから次の一瞬には足取りを止めている。きっと手負いの獣の目をしていた。もっというなら、手負いの上にひどく餓えた獣の目。鮮やかすぎる緑色は目に優しくない】
【ひどく切羽詰まった目はけだるさと対極的にあるようでありながら、その根源は同じものであるのに相違なかった。どうしようもない何かに急き立てられる目、絶望の色】

【――掛けられる声に、まず初めに返されたのは無言であった。下がり切った口角の角度はちぎれて垂れさがる電線よりも攻撃性を秘め、けれど尻尾を膨らます猫よりも繊細に】
【真っ白の肌は変わらぬくせにひどく褪めたように見えるのかもしれない、――ぎらつく青りんご色のまなざしが彼のたまご色を刺し射貫くように手向けられたなら】

……あら、お子様扱い。残念ですけれど、これでも二十四ですの、馬鹿にしないで、くださる――――?

【際どく殺意と紙一重の視線はそのままで、けれど彼女はやがて笑んで見せるのだろう。きっときれいな笑みをしていた、どんな感情も無視して笑う技術を持っていて】
【あるいはその言葉を嘘だとも思うのかもしれない。彼女はどうあっても成人しているようには見えなかった、――きれいな化粧を鑑みてもなお、成人していない気がする】
【だけれど慣れているのだろうとも思わせて――くすりとかすかな吐息。瞳のあんまりに鋭い色合いを見つめながらなら、嘲るようにすら思わせかねない、整ったかたち】

――――用事がなくては出歩いてはいけないかしら?

【彼を見上げる視線はひどくひどく鋭いのに、だのにきっとどこかに空虚さを孕むに違いなかった、――ともすればここで死んでしまってもいいと言い放ってしまいそうな、】
【ひどく深い疲労を湛えるのなら、それでも寸でのところで言葉を飲み込む。「――"用事"がある方は羨ましいですわ」なんて、血しぶきを指して言ってしまいそうになったなら】
【だけれどきっとその温度感はどうしたって拭いきれないのだろう。暗喩するように、あるいは余韻だけを残すように。――やけっぱちの温度に似ていた、だからこそ】

なら――"お仕事"ですから、ご安心なさって、この辺りの道は、それなりに把握しておりますから。

【――そうして詰められる距離にも、特別な反応は見せなかった。けれど。触れ合えるほどの距離まで近づこうとすることがあったなら、】
【あるいは感じ取るのはあんまりに明確な拒絶と敵意で縁取ったキャンバス一面に塗りつけられた殺意なんだろう、人馴れしていない野良猫がこちらをにらみつけるように】
【あと一ミリだって近づけば状況が大きく変わってしまうのを予感させるように。――それでいて隠しきれぬのは不器用さ、上手なくせに、下手すぎて】

――――――――――――――ひどい顔。具合でも悪いのじゃなくて?

【目を細めたならばにこりと笑う、――それにしたって物怖じをしない女だった。背丈で大きく劣る異性に対して、こうした態度を崩さないままであったなら】
【けれど何か得物を持ち歩いている様子もない。隠し持っているにしては、ミニ丈のワンピースはあんまりに短すぎて。ならば――能力者か、と、予感もさせる】
【――八つ当たりに似る言葉。けれど探そうと思えばきっとどこかにどこまでも不器用なくせに"そう"したがるサガを透かす色合い、しかして、そうしてやる義理はどこにもなくて】


989 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/08(土) 01:35:56 WMHqDivw0
>>988

……オンナの人のトシってまーじで見た目じゃわかんねーわ。
なあんかそーいうの聞いてウッソだーとか言うの前にもあった気がする……、……24ねえ、24。
ならおれの3つ下だ。おれ永遠の27歳だから。これホントのヤツだよ?

【一瞬だけ表情が平淡に均された、凪の海のように静まり返ってから。またすぐに笑みの形に戻り】
【そんなゆるい童顔の笑顔で、告げる数字は外見より5つくらいは上のもの。こいつもそう、人のことは言えない】
【本当にどうでもいいことを言うならば、さらにそれに8つ足した数字が正しいんだけど。本当にどうでもいいから、言わない】

こんなトコでお仕事したって、ロクな「客」いないと思うんだけどナ。
おれもさっき「アイス」か「チョコ」か知らねーけどキメてパキパキになったおっさんに絡まれたんだわ。
それか、……そーいうどーしようもない人を専門にお仕事する人なん?

【曰く、薬中に絡まれたんだと。だからちょっとそいつと「遊んで」、赤い染みもそうやって出来たんだろうと推測させる】
【彼にとっては、正当防衛の名を借りた暴力――憂さ晴らし、のサンドバッグに成り得るロクデナシ。そういう類の人種が】
【おまえにとっての客なのかって。訊いてくる、なかばバカにするような言い方だけど、たぶんそこまで考えて言ってない】
【彼は思ったことをそのまま口にするだけの単純な生き物だから。だからこそ――ヒトの神経を逆撫でするのが、得意】

……そんっなひでー顔してたかなあ。自覚なかったけど。
おれ最近ストレスで胃がいてーのよ、うん、だからまあ――誰かとお話して気晴らししてーなあとは思ってるけど、

【「今晩どう?」とでも続きそうな軽薄な言葉の群れ、ならばストレスがどうとか言ってるのも、だいぶ信憑性が薄い】
【けれど纏うオーラに苛立ちの色が隠せていないなら、胃の状態がどうなってるかは置いといて――ここ最近、】
【つまらないことばっかり起きててうんざりしてる。そうも予感させるには十分で、それならそれを晴らさせてほしい】
【そういうことを言いたげな顔をして、へらへら笑っていた。……「客」にするには、そんなに金は持ってなさそうと、思わせてしまうけど】


990 : 名無しさん :2018/09/08(土) 02:04:56 nWcmFFY60
>>989

…………あら、そうなんですか。

【凪いで笑む幼げな顔に、けれど彼女はひどく平坦で冷たげな声を返すのだろう。――彼に比べて造形も冷たい女だった、見てくれだけなら少女のようだのに】
【この冷たさを少女だなんてきっと誰も言いたくはなくって。そうして返す言葉は不明瞭だった、年齢詐称人間についてなのか、彼の年齢についてなのか】
【だけれども、もし彼が彼女の心の中を覗き見ることが出来たのならば、そこに思い浮かべられているのはきっと色違いの瞳の色をした、あどけない顔の、――】

いいえ、……そのような人を客に取ったところで。女に使うお金を持ってやいませんわ、言葉だって通じないですのに。
そんな客は物事を知らない小娘が取ればよくってよ、――――。

【くすりとまた小さく女は笑う、人懐こいような形をしているだけで中身は決して人に慣れぬ猫の素振りであった、事実彼女はずっと腕を組むようにして】
【明らかに相手のことを信頼していなかった。だのにこうして会話を続けているのは、――あるいは彼女もまたどうしようもないストレスの捌け口を相手に定めているかのように】
【そういった"どーしようもない人間"を彼女は客に取らない。――理由もまた簡単だった、そのための金を持ち合わせていないし、言葉がまともに通用しないから】
【"そんなの"は前後も左右もよく分からないような小娘が扱えばいいとまで言い捨ててしまう、――だけれどその温度感はやさぐれた色をしているに違いない】

では心療内科に行かれたらよろしいのではなくて? 素人相手では欲しい薬も出てこないかと思いますけれど。……。
お酒のいくらかくらいは奢っていただけるのかしら、残念ですけれど、そんなにめいっぱい安い女ではありませんの。お分かりでしょうけれど――。
――それともきちんと払っていただけるの? それなら一晩ぐらいはお付き合いしてさしあげても、よろしくてよ?

【――ならばひどく冷たいのかもしれなかった。相手がやってくれたのよりもずっと現実的な話をしだすから。話を聞くなら、その場をこさえるくらいはしてくれるのか、と】
【そうでなくってきちんと"買う"つもりなら――――、それは、そのときは、きっと今よりもずっとかわいらしく笑ってくれるんだろうとは、思わせるけど】


991 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/08(土) 02:42:53 WMHqDivw0
>>990

【お互いイライラしてるんだなあと、わかったのはそれだけ。じゃなきゃこんなこと言わないって自分でもわかるし】
【こんなこと言われる筋合いもないんだよなって思えるし。何に苛ついてるのかって訊かれたら、たぶんきっと】
【お互いに「世界のすべてに苛ついてるんだ」なんて世迷言、言い出しそうな気配があった。だから踏み込むのも面倒で】

ふーんじゃああんたはいろいろ物知りなの。ここらへん慣れてるってさっき言ってたもんネ。
じゃあなんでこんなトコ居たんだろーネ、「そういう」類のニンゲンしかいないのに。
客引きしてたんじゃないんだったら――――なんか探しものでもしてた?

【「手伝ってやろーか」。半分くらい冗談、四分の一本気、もう四分の一きまぐれ。そんなニュアンスで言ってから】
【けれどその問いに対してはいそうです、と答えたなら、きちんと手伝ってくれそうな気配は見せていた】
【ざりざりと靴底を地面に擦り付けて鳴らしながらも、決して敵意とか害意とかは見せようとしないのだから、あるいは】
【それが不審に見えるのかもしれない。だって明確に誰かを傷つけてきた痕跡があるのに、無駄に親切心見せようだなんて】

なんかそーいうトコ行ってもテキトーなクスリしかくれないって聞いたことある。だから行かない。
お酒もネーここらへんだとあんまいいトコ知らないんだよなあ。昼のごはんならそれなりだけど、……、

…………そーだネー。相場いくらくらい? おれちゃんとしたお店にしか行かないから、ビョーキとか怖いし。
個人でやってる人がどれくらいすんのか知らねーんだわ。払える額ならわりとちゃんと払っても、いーけど……

【だけど――意外にも乗り気で値段交渉に入り始めるのだから。そも真っ当な人間であるとは思わせないんだろう】
【ホ別で2か3くらいかナーとか思ってる。ような顔してる。遊び慣れてはいるようだった、けれど、目元はあまり笑っていなくて】
【だったらこれは自棄っぱちか何かで金と精神を浪費しようとしているだけにすぎないとも思わせた。乗るも乗らぬも自由だけど】
【ただ、彼はひどく遣る瀬無さげな顔をしていた。目を細めて、目の前の女の瞳を見る。緑色。何か思うところでもあったのか】
【ぐうと喉の奥を詰まらせるような、けれど聞こえるかもわからない幽かな音。鳴らしたなら――この会話は、あるいはこの邂逅は】
【自慰か自傷かのどっちかでしかないと、理解させるには十分だろうか。それも金銭交渉で済ませるなら、どうでもいいことになる】


992 : 名無しさん :2018/09/08(土) 10:06:32 nWcmFFY60
>>991

【そうしてきっと本当にその通りなのだろう。様々なことが思い通りにならなくて、あるいはそうして思い通りにならないのが自分であるのなら、まだいいのに】
【他人、それもなまじっか大事に思う人が、その人の考えも何もかもひっくるめて"思い通り"にならない。――二人にとってその理由の一部が同じであることは、】
【知らないし変に突いたり掘り返したりもしないから。ともすれば泣いてしまいそうな目をしていた、だのにある瞬間に自棄を極めてどこかから飛び降りてしまいそうで】
【――だのにそのストレスを、目の前にいると言う以外なんにも知らない他人にぶつけて晴らしているんだった、これもまたきっと、お互いに】

さあ、――ですけれど、"こんなトコ"にも、酔っ払ってない方はいらっしゃるの、表に出ては行けない方なのは、そうでしょうけれど。
…………探し物、だなんて。なんにも探してやいませんわ、こんな場所に何が落ちているって言うのかしら。

【どちらにせよ全うな客を取っているとは思えなかった。クスリに酔っていないけれど、表に出ていくこともままならぬ人間たち。こんな場所じゃないと生きていかれない人】
【それがきっと彼女の商売相手なんだった、――どこにも所属してない女たちの中でも、彼女があんまりに自ら孤立していこうとして、誰とも仲直しようとしないから】
【縄張りみたいなものをどんどん追いやられて、本当に危険なエリア近くまで押し出されてしまったってこと、相手はきっと知らないし、知らなくたっていいけれど】

【――――――その刹那にきっと瞳に何かの感情を映し出すのだ、だから何かを探しているに違いなかった、だのに、何を探しているのかは、分かってないに違いなくて】
【こんな気持ちになっている理由かもしれなかった。それを解決するための何かかもしれなかった。確かであるのは、――見つかってやいないことだけ】

――それならドラッグストアで半分だけの優しさでも買い求めたら如何。あら、いいトコも悪いトコも、チェーンしかご存知でないかと、……。
それにどこぞのクソ店舗なんかよりは、よっぽど自己管理しているつもりですけれど――、護ってくれる黒服も居やしませんから。

【だから、と、甘やかな色合いに塗られた唇がためらいなく漏らす数字は、だからきっと彼の思い浮かべたよりずっと高かった、にこりと笑んで】
【本気なのか吹っ掛けているのかが全く分からない表情であるのに違いない、――その癖に冗談だとかは言ってくれなくて、ただ仄暗い目をするばかりなら】
【彼女はだいたいいつでもそうだった、だって何より"男が嫌い"なら、どんなときでも勝手に自分の都合で上乗せしてくる、だのにこんな仕事、辞めることはけしてなくって】
【――ゆえに彼女にとってこれは自傷行為以外の何物でもなかった。それでいて自分を変に安くしないのだけが、唯一、自分で自分を認めるためのプライドのよう振る舞うのだから】


993 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/08(土) 11:23:10 smh2z7gk0
>>986

それはそれは、その友達も随分とお節介なタイプなんだねえ。
リゼちゃんか………是非今度紹介してもらいたいな!とても良い〝物語〟を紡いでいそうだ。

―――へぇ、過去と未来をね。確かに読書は一生の宝っていうし知識はいくらあっても問題ないからね
まぁ世界は広いからね〝内〟にも〝外〟にも、可能性は広がっているよ。

【微笑みながら瑠璃が話す友人について興味を示す。おどけた様子の瑠璃に対してはクスクスと笑いながら眼を細める】
【そして仕草は子供っぽさを残しながらどこか達観にも似た感覚を持っている瑠璃の言動に、納得したようにうなずきながら返答する】
【握手を求められれば一瞬驚きながらも手のような髪の一房をしっかりと握り返す。】

よろしく瑠璃!しかしそうか、記憶がね………ちなみに〝いつから〟迷子なんだい?
私の探し物についてはちょっと特殊なんだよね、今この国で話題の〝魔制法〟って知っているかな?

―――それにつながる話なんだけどあまりこの国で〝髪〟を動かさない方がいいかもよ、場所によってはね

【記憶を失っているという瑠璃に優しい雰囲気で質問しながら、自身の探し物については困ったように顔を顰める】
【マリアベルが読んでいる新聞なども大きな見出しは大体その〝魔制法〟とやらについてだ。瑠璃がそれを知っているかはまた別だが】
【そして触れてさらに増す瑠璃の髪の異質な雰囲気にくぎを刺すように、少し小声で忠告した。】


994 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/08(土) 20:34:59 WMHqDivw0
>>992

そう? じゃーアレだ、「探しもの」を探してた系じゃない?
とにかくなんでもいーから何かしらして気を紛らわせたい的な? そんな感じの目ェしてた。

【違う? と訊いて、笑みながら首を傾げる。人一倍人懐こいでっかい犬がするみたいな仕草】
【だけどするのがこんな、人間の、イイ歳した男であるなら。べつに可愛くもなんともないんだろうし】
【そうしながら口にする言葉だってまた、遠慮をしない音域から発せられるものだった】
【恐らく彼女が探られたくないところに手を突っ込もうとしてくる。噛まれるってわかってて。それなら正しく】
【この問答は自傷でしかなかった。不毛でしかなかった。……お互いそんな感じだから、おあいこになるんだろうか】

ドラッグストアはもう行った〜けど優しさだけじゃおさまらないモノってあるじゃん、あはは。
やっぱヒトの体温? ぬくもり? が欲しいわけじゃん、さびしいのは、すぐ溶けてなくなる薬じゃ治してもらえないワケ。

だから、だけど………………ええ〜ウッソぉ、高すぎない? 高級店でもそうそう聞かない値段じゃん。
そんなにヨくしてくれるワケ? ええ〜そんでもな〜、今の手持ちでもギリギリ払えるっちゃ払える、かな……
…………あ、ギリあった。あったけどこれ払ったら「ほかの」金が出せなくなっちゃう、まじで、ギリッギリ。

【金額を聞いたら素でいやそうな顔をする。たぶんオブラートに包んで隠す文化が、彼の中には、ない】
【それでも尻ポケットから財布を取り出して、お札のポケットを確認して――「し、ご、ろく……」――けっこう持ってた】
【本当にそれでギリギリ足りる数字を数えたら、それで終いになる。払ってしまったらごはん代とか宿代とか、】
【そういうのが払えなくなっちゃうって。困ったみたいな顔して言う。それでもまけてくれないか、って交渉しないのは】
【きっとこいつにとっては本気じゃなかったんだって思わせる。その割には、本気で困った顔をして。なれば、】
【――――「さびしい」のだけは本当だったんだと。そうともわからせて、……だからどうするって話にも、ならないだろうけど】

【……、……ふいに。男は財布から、入っていたお札の全部を抜き取って。扇の形に手の中で並べる、枚数がすぐわかるよう】
【それでそれを自分の頭上――190センチを超える身長からさらに上になるのだから、2メートルくらいの高さ。そこまで持ってって】
【ひらひら。振ってみるんだった、まるで猫じゃらしでもそうするみたいに。目の前の彼女のこと、ばかにしてるみたいに、】

………………でもこれがオネーサンの「一晩」の値段ってことだったら、べつにきれいなベッドの上とか行かなくても、イイ?
この夜を買うだけ。んで、お話してもらうだけ。だからべつに一緒に寝たりとかはしなくて、――このお金あげちゃう。
オネーサンがそれでいいなら買わせて、ひとりぼっちの夜。どう? 悪い話でもないと思うけど。
おれはさびしいのを紛らわしてもらえてウレシイ、オネーサンはぼーっとおれの話聞いてるだけで懐があったかくなっちゃう。

【「ネ、けっこーよくない?」 ――本当にばかにしているのかもしれなかった。現に表情はゆるい笑みの形に変えられて】
【ひらひら揺れる紙幣の先端、2メートルの高さで泳ぐみたいに。――そうするなら、胴とか足元とかはがら空きになるから】
【腹が立つなら殴るなり蹴るなり踏みつけるなりしたってよさそうな雰囲気はあった。だってこいつは、かまってほしいだけだから】
【きっとそうされても怒らない。そう予感させた。至極楽しそうにそうしているんだから――本当に、腹立たしいとだけ思わせるだろうか】


995 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/08(土) 22:37:19 hEXW.LLA0
>>985

【 ─── 人形にとり、剥き出しの悪意をぶつけ合うのは痛苦でなかった。寧ろその手の小競り合いを好むきらいがあった。要言するなら、大人げがなかった。】
【そうしてまた尊大でもあった。これが御破算になるのであれば仕方のない事であるとさえ考えていた。 ─── 故に、穏やかな笑顔のまま、再び何か口にしようとして】
【そこで至極もっともな制止が入ったのは恐らく彼女にとって幸いであったろう。表情の変わらずとも、恐らくその内心はまずもって穏やかならない】


「 ……… そうね。反目するとしても、貴女たちに恨み事はない。」「私からも慎んで、不必要な面罵は避けておきましょうか。」
「私としても個人的な感情で、知人の復讐を妨げるようのは不本意だから。 ─── 今ばかりは、仲良くやりましょう。」


【果たして何度その言葉を繰り返したろうか。 ─── ともあれ今度こそは幾分か真っ当であった。斯様な議論の到達点で愚図つくのは女の望むところでなかった】
【次こそは多少の皮肉を吐かれたとて、余計な面罵は慎むのだろう。対手が暫しの整理と休息を求めるというなら、その通りに余計な口出しはせずにいた】
【そうしてまた人形も思弁していた。微かに首を下に傾げて、 ─── 思い当たったように顔を上げる。尋ねる言葉は独り言の音階に似ていた。】


「 ──── ねえ。」「貴女も"あの子"と ……… カチューシャと、親しいの?」「 ……… ふうん。」
「それなら或いは、其方からの協力も仰げるやもしれぬ、かしら。」「潰す順番は考えた方が良さそうね。」

「ともあれ実務的な協力を築くのとして、 ─── 私から言い渋っているようでは、疑り深くなるのも当然でしょう。」
「先払いの信頼として、話せる事は話しておきましょうか。こちらが持っている情報と、リゼのそれとは、余り相違はないでしょうから ──── 。」


【「非礼の詫びよ。 ─── 必要であるなら、何でも聞いて頂戴。」敬意と呼ぶには些か実利的に過ぎる口調で、人形はそう伝えるのだろう。やはりごく傲慢な女だった】


996 : 名無しさん :2018/09/08(土) 23:02:56 OIRyncqA0
>>994

――――――あら、そう見えまして?

【――くすりと彼女はまた笑うんだろう。ならばひどく矛盾した口ぶりだった、ゆえにこそ、深く根差すストレスの一端をわずかに覗かすのだろうから】
【口元は百点満点にオマケまで付けたくなるような笑みをして、――しかしてその目は絶対零度のように冷えているのだから、相手の態度とは真逆の色合い】
【誰にも触られたくない野良猫の目をしているんだった。だからきっと対極的で。それでもまだ噛みついてはこない、――威嚇、くらいはしているのかもしれないけれど】

"安く"済ませたいのなら、そこらへんの女でも引っ掛けたら、如何? それこそ病気だの持っているかも、しれませんけれど。
変に執着されて後から刺されても、わたくしには関係がありませんし――、

【嫌な顔。それにはこちらもまた睨みつけるような目を向けるのだ、――それでいて、値切る言葉がなかったのは幸いだった、もしもそうされていたなら】
【きっと彼女はそれが一番嫌いだった。"だれか"への気持ちを除いて考えるなら、それがきっと一番いやなことだと思えた、――まるで自分の命ごと値切られるみたいで】
【やりたくなくてもそうしてきたものがこれだから。――どうしようもなく複雑な感情同士が絡まり合ってもはやどうともできないのなら、嫌いなくせに/執着しつくして】

【――金がないならどうしようもないと言い捨ててしまう間際に、けれど彼が、その中身を。彼女にとってはうんと高い位置まで、掲げてしまうなら】
【刹那に彼女はよく分からないって顔をするのだろう。きょとん、というには可愛げがないけど。一瞬、そのおっきな眼をぱちくり瞬かせて、――――――、】

――――――――は。馬鹿にしてらっしゃるの? お金がないのはそちらの都合ではなくて。結構も何も――、"よくない"ですわ。
あなたに買われないからと困るほど切り詰めた生活だなんてしていませんの、気に食わない客に買われないで済むのは個人のいいところですわね。

【――――――ならばひどく不条理でもあった、どうしようもなく複雑さがこびりついてしまったなら、べっ甲飴を作った後の温度計みたい、どうしようもなくなって】
【そして実際は砂糖なんかじゃあないから、もっとどうしようもない。一つの存在に絡まり合った感情はあんまりにあんまりに、マントルまで貫くボーリン作業より難しい】
【あからさまに相手のことを気に食わない客だと言い捨てたなら、――はあとあからさまなため息をした、であれば、伏し目はやがてにらみつける目線に移り変わり】

――どうぞ、"ちゃんとしたお店"に行かれてくださいな、そんな恰好では、通報されるかもしれませんけれど。
わたくしはそんなに暇ではなくって。あなたに手伝っていただく必要もありませんの、"幼馴染"を探しているだけですから。
あなたのような方が知っているとも思えませんもの、だって――とてもいい子ですもの。

【――ふい、と、それで相手から目線を逸らすのだ。流し目の視線、冷たげな角度から放つなら、こちらはもう相手に用事がないから、という温度をして】
【ならば馬鹿にされたのもあって、拙い仕返しもするんだろう、――相手に手伝ってもらうことだなんてない。さっきの言葉を引き摺り出しながら、なぜかって】
【探しているのはとってもいい子だから。こんな場所で血しぶきを浴びている相手が知っているはずだなんてない子だから。――ひどく冥い目、嘲るように笑うなら】

――――――――――それに、"あの子"は、正義のところに居たのだから。

【――――だけれどそればかりは、まるで大事な宝物を抱き留めるみたいな声を、しているのだろう。暖かいものを大事に大事に抱きしめているときの、だから、】
【その"だれか"はきっと彼女にとってひどく大切な人で。正義側の人間らしい。だけれどこうやって探すのだから、どこかに行ってしまったに違いなかった、――】
【そうして何か知っているのかもしれなかった。――だからこんな目をするのかもしれなかった。"こんな"目は、きっと、簡単には、できないんだから】


997 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/08(土) 23:26:03 WMHqDivw0
>>996

ははっ、きびしーの。つーかやっぱ探しものしてんじゃん。
ものってゆーか、ヒトか。ふーんそう……

【ぱ、とお札を掴んでいた手を開く。上空より降り注ぐ紙片はけれど、紙吹雪のように軽々しくないから】
【それなりの重さを孕んでひら、ひら、横に何度かスライドして。それから静かに地面に墜ちていく】
【何を考えてるんだかは知らないが。男はそれを拾おうとしなかった、それで、まだへらへら笑っていて】

【――――上手いこと引き摺りだせた気がして、そこそこの満足度があった。だから続く言葉も至極機嫌よさげに】

へえー。イイ子を探すのにこんなトコロうろつくの? ホントにその子、イイ子なの?
それかなんか――やべーやつらに誘拐されたとか? そんならまあおかしかないけど。

でもまあ、正義のところにいたのにそんなコトなってんの。不思議だネー。
なんでそのお仲間タチは誰も助けてくんないんだろうネ。ハクジョーだなー。それかもしかして、

【「つよーい正義のミカタたちでさえ手の届かない場所に連れてかれちゃったの?」 ――――、】

【またしてもバカにしてるみたいな声色。それでも何かを探るように。浮かべる表情は相も変わらず】
【正義のミカタたちですら助けられないなら、こんな場末で客を取るような娼婦に何ができるってんだろう】
【――そうとでも言いたげな響きをしていた。地にばら撒かれたお札を一枚、赤にて汚れたスニーカーで踏み躙って】

…………ねえオネーサン。あんた自分でも薄々気付いてんじゃないの?
自分がどんだけ頑張ったって「その子」に会えることはもうないんだって。思わない? だっておかしーじゃん。
仮にも正義側に属してたってんならきっともう仲間たちに助けてもらえてるはずじゃん。それを、
そーやってひとりぽっちで歩き回って探したってどーしようもないじゃん。わかってる?
……や、わかっててやってんのかな。そうでもしてなきゃいられない的な? 何もしないでいるのが苦痛でしかない?

【おんなじように、踏み躙る。目の前の小柄な彼女を、そして、彼女を通して、自分さえも。――――、】
【――すべてが自分に帰ってくるブーメランとして投げられた、鋭利なカミソリみたいな言葉の群れだった】
【そうやって自分を切り裂いていないともうやっていられなかった。罰されたかった。何もできない自分に嫌気がさしていて】
【いっそどこかで消えてなくなりたいって思ってるのは。シンパシーに成り得るんだろうか、……あまりにも不毛だけど】


998 : 名無しさん :2018/09/08(土) 23:53:48 OIRyncqA0
>>997

【――ひらりと舞い散る紙幣に、けれどまた彼女も何の反応を示さない。何せそれは自分のものではなかったし、たとえそうだったと、しても】
【そんな風に与えられるものに飛びつくほど餓えていなかった。餓えていたとしても嫌だった。であれば、それに見向く理由だなんて、万に一つさえもなく】
【ならば汚らしい地面にでも落ちていくのだろう。せめて雨後でないのだけが救いだった、彼にとってもでも彼女にとってでもなくて――紙幣を読み取る機械孝行】

――――――ッ、あなたに"あの子"の、――私たちの何が分かるんです、――、分かったような口をきかないで、くださる、
"あの子"よりも優しい誰かがこの世界にどれだけいると言うの、――、……まあ、そうですね、あなたみたいな方には、想像もつかないかしら、……。――。

【ぎりと歯噛みする音がする、なればそれは間違いない地雷であって、その癖に、何もかもがむき出しになっているに違いなかった、必死に隠した土だなんて剥ぎ取られてしまって】
【だからよっぽどだれかのことが大好きだった。その癖にきっと何一つ力になれなかったに違いなかった。今だって何もできていないのに違いなかった。だからこんな顔を、】
【であればそれはきっと信仰にさえ近しい距離感、何より近いくせに、誰より相手のことなど考えやしない温度感、その優しさにただ与えられるばかりだった奴の言い草】
【――――そのくせ/それでいて/だからこそ、絶望的なくらいに、自分が無力だって思い知ってしまっているのだろう。それでも何も出来ないって、認めたくはなくて】

【言葉の裏側に秘められた意味も、きっと、気づいてしまっている。だからこそ、】

――――――――――――うるさい。

【爛々とした目はもはや暴力的なまでに鮮やかだった、――事実きらりと感じられるのは魔力の気配、瞳の色とおんなじ、鮮やかな青りんご色のまたたき】
【というにはあんまりに鮮烈が過ぎて、――黙れと求める声は、だけれど、或いは可哀想なくらいに図星の色合いをしていた。何か出来る気がしなかった、何も出来ないって分かってた】
【それでも何かしていないとどうにかなってしまいそうで。部屋にこもるばかりの日々にどうにかなりかけて。だから出てきて。だのにどうしようもないのなら】
【きっと何もかも詰んでしまっていた。なのにそれを誰かに助けてなんて言えない性格をしているんだった、――向けるのは明確な殺意、もう少しで刃に変わる、刹那に】

【「音々ちゃん、ごめんね、最近お仕事がすっごく忙しくって」「電話とか、出られそうにないの」「なんだか悪いから」「用事があったらメールにしてほしいな」】
【「それもきっとあんまり返してあげられないけど」「ちゃんと見てるから」「だから」――――、今になって思えば、全部、ぜんぶ、分かるのに、あの時、すでに、】
【"あの子"は巻き込まれていて。だのに巻き込んでしまわないようにって気にしていたに違いなかった。巻き込んでほしかったのに。頼ってほしかったのに。そうしたら、】
【なんだってしてあげたのに。そうしたら"こう"ならなかったかもしれないのに。最後に会ったのはいつだったろうか。うんと昔の気がした。あの声がまた聞きたくなって、】

――あなたに鈴音さんの何が分かるの、私が助けてあげなくちゃ…………。

【――であればきっと隠していたのだろう、言うつもりなんてないに違いなくて、だのに、ふっと漏れてしまう、ひどく悲しくなって、どうしようもなくて】
【ぎらぎらにらみつける瞳から鮮烈さがあふれ出したなら、つと真っ白な頬を落ちていく。そうしてそれがひどくひどく不快であるかのように眉を顰める、口元を手で覆い隠しても】
【不快さの根源がそこでないなら当然"涙"は止まるはずもなくって、――ひ、と、小さくひきつる吐息が聞こえるのだろう、その気持ちがどこか彼とおんなじだなんて、気づくはずもなくて】


999 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/09(日) 00:18:47 WMHqDivw0
>>998

………………………………そう、「鈴音ちゃん」。あんたの探し人って鈴音ちゃんだったの。
おれも知ってるよ、その子のこと、……最初はUTの酒場で会った。次は「旧市街」で会った。
その次は――――この世界のどこでもないところで二回ほど。お呼ばれしたから会ってきた。

【何がわかるって言われて、それには答えなかった。全部教えてもらったよって言ったところで】
【信じてもらえる気は毛ほどもしなかった。だから言わない。途轍もなく卑怯なやり方で、隠す】
【それから笑うのをやめて、目を細めて――ばちり煌めく魔力の残光が眩しいと言わんばかりに】

――――助けるって具体的に何すんの? あの子が困ってること全部解決してやんの?
だったら猶更ムリじゃん、だってもう、あの子、鈴音ちゃん――困ってなんかねーんだもん。
困るも、悲しいも、全部通り越して怒ってんだよ。恨んでんだよ、自分のこと助けてくれなかった世界、全部。

だからもうあんたにもおれにも、「助けてあげらんない」。できることはもう――受け入れることだけなんだって。
鈴音ちゃんが世界に害為す悪いカミサマになること。そのお仲間と一緒にいること。
そのせいで、それこそ味方だったはずの「正義」にあの子が嫌われても、それ以前に世界のすべてに疎まれるようになっても。

それでも――――――おれたちだけは受け入れなきゃいけないんだって。それ、あんた耐えられる?
おれにはぶっちゃけムリなんだけど。…………ねえ、それでもあんた、なんかできると思ってる?

【それでも刃は投げ続けた。そのたび自分も切り刻んだ。曰く、その子が世界中から疎まれる存在になったとして】
【疎まれる理由がはっきり理解できるとして。それでも受け入れなきゃいけないって言われて、おまえにそれができるのかって】
【試すように訊いてみる、……だけどこの女なら、あるいは出来てしまうのかもとすら思えた。だってここまで信じてるなら】
【きっと「あの子」が悪神に成り果てたとて信心を捧げ続けることができるのだろうと。理解できる、――身内に「そういうの」がいるから】

【妄信あるいは崇拝。友情、恋慕、愛情、そんなレベルのきもちをすべて通り越した先にある果ての感情】
【――――この女はそれを持ってる気もする。自分にはない強い感情。ならば神たる「あの子」に、愛されるには十分だろうか】
【そう思うと遣る瀬無くなった。おれもこんな風になれれば愛してもらえるのかなあ。……浮かぶ世迷言を、また、踏み躙るノイズ音で消して】


1000 : 名無しさん :2018/09/09(日) 00:38:46 OIRyncqA0
>>999

【――彼の言葉に、彼女は涙に濡れた眼を見開くのだろう。彼が"あの子"を知っていたというのも、そうなのだけど】
【それよりも――それよりも。この世界のどこでもないところ。そこにお呼ばれして会ったと言う言葉が、本当に、本当に本当に本当に、――ほんとうに】

【(うらやましくて、)】

――――――――――――――――――――――、

【だからきっと彼女は笑っていた。何万回も練習してきた。どんな気持ちの時にだって笑っている練習。だから笑うのだけは上手にできた、いつだって、今だって】
【そのくせに/だからこそひどく空虚な笑みの色合い、首のもげたオオイヌノフグリの花の方が、まだ、よっぽどきれいだって、神様も言うんだろう】
【あんまりに鮮やかな色をした眼からはただずうっと涙だけが落ちて、なのに口元ばかりはひどく整った笑みを浮かべて、】

――――そう、怒ってるの、あの子は……。

【泥酔してやった福笑いみたい。泣きながら笑って、笑いながら泣いて、だのに感情は全く別の色合いを示す、――ひどく安堵したような、声を出すのなら】
【あるいは壊れてしまったって思わすのかもしれなかった。それほどまでに何もかもが違う色合いをしていた。細める瞳が、――だけれど今度こそ明確に優しく笑む】
【掌越しにかすかに覗く口元も気づけばひどく優しい色合いをしていた。乳児が上手に呑み込んでしまった空気を吐き出せたのを確かめる母親のような、慈母の模造品/贋物でも】

やっと、怒れたの――?

【自分の中にある虚無感も、無力感も、いっとき全部塗りつぶしてしまうほどの、安堵。尋ねられた言葉には返さなかった、――そんな必要、ないみたいに】
【だからきっとその瞬間に、堪えられるかどうかも、何か出来るかどうかも、きっと、どうでもよくなってしまったのかもしれない。助けてあげられなかったこと、すらも】

【――――ならばそれは"受け入れる"ってこと、そのものなのかもしれなかった。彼女はあの少女の世界を滅ぼしかねない怒りを安堵で以って受け入れた、あるいは、】
【その気持ちで以って受け入れる気があるってことを表明するのに等しくて。――だけれど、もしかしたら、そんな気持ち、彼なら分かってくれるだろうか、もし、もしも、】
【いつかなぞった彼女の記憶を。そうして少しずつ疲れていく少女を外側から見ている誰かが居たとして。――ごくごく過去の思い出、怖い、怖い、孤児院の思い出】

【黒い髪に鮮やかな青りんご色の瞳の、女の子。――たしかに"こいつ"は、少女の記憶のいつかに、居たんだから】


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