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しりとりスレ 第四章

408名無しの厨二能力者:2013/07/14(日) 21:40:08 ID:LhCpFFAI0
誰もが『彼』の勝利を確信した。

しかし次の瞬間、飛び散ったのは『彼』の血肉であった。
醜悪な魔獣が突然土竜のように地面から飛び出し、『彼』の身体を紙切れのように引き裂いたのだ。
凶悪に捻じ曲がったその爪にこびり付いた『彼』の肉片を見て、仲間の一人は竦み上がり、一人は固唾を呑み、一人はただただ青ざめるばかりだった。
だが、立ち尽くしているのは全員同じだ。次に動いた者があの魔獣の餌食になる。そう思うと、全員指の一本さえも動かせなかった。魔獣も、彼の死体に齧り付くのに夢中だ。
狂気的な状況だった。無言でただ仲間が食われる様を見つめるだけの人間達と、嬉しそうに肉塊を貪る魔獣。そこには、魔獣が死体を咀嚼する粘っこい音だけが響いていた。

そのうち、魔獣が地面に転がった『彼』の頭部に目を付ける。魔獣がゆっくりと愛しげにそれを噛み潰すと、メリメリと鈍い音を立てながら少しずつ楕円型にひしゃげてゆき、やがて薄桃色の脳がドロリと零れた。
その光景に耐え切れず、一人の女が嘔吐した。その音に反応して魔獣が顔を上げて女の方を見る。残る二人は女を見捨てて逃げ出した。
女がえずきながら逃げ出した二人の方を向くと、そこにはもう二人の姿は無い。
代わりにあるのは何人分かも分からなくなったようなバラバラの屍骸と、何十匹もの魔獣だった。

女は、視界に映った魔獣たちが、毛むくじゃらの醜悪な顔に身の毛もよだつような笑みを浮かべていることに気付いた。
そしてその瞬間に理解した。…これは罠だったのだ。初めから我々に勝利など無かった。我々は此処へ誘い込まれていたのだ。
あまりの口惜しさに涙が溢れ出す。歯を食いしばり、内腿を抓り上げても涙は止まらない。

――私は、戦士として気高く毅然と死ぬことさえ出来ないのか。




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