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('A`)ドクオは凄腕ハンターのようです
1
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 17:30:33 ID:z4hc9iRU0
('A`)
ウツタ・ドクオは、間違いなく最強のハンターであった。
数々の大魔法を使いこなし、剣捌きも並のものでは目で追うすらかなわないだろう。
頭脳も明晰で、体術も国一番と言われる。最近は錬金術に手を出し始めた。
所属する王国からは何度も表彰され、確か先月も国の危機を救った。
それでも尚、国の依頼のみを受ける正式な騎士ではなく、誰からの依頼も分け隔てなく受ける一般ハンターとして生きることを決めた謙虚さもあった。
彼は、今日も魔物と戦う。
53
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 00:55:47 ID:310ED62o0
笑える
54
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 02:34:49 ID:XjlZgjh60
乙
面白い
55
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 02:39:44 ID:eIkPW/Xw0
「しかしーーーーー 」とかの部分でダッシュ記号じゃなくて長音符使ってるのは何かこだわりがあるのか
56
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 18:42:12 ID:YiBrl3ME0
あると思う?
57
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 18:51:54 ID:Tbo71.xc0
――――――――――
↑ダッシュ記号
ーーーーーーーーーー
↑長音符。スマホだと大した違いは見られないが、PC表示だとカッコ悪く見える(らしい)
参考までにドゾー
余計なお世話ならゴメンネ
58
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 19:19:49 ID:sdfAWnQsO
ドクオ×ハンターは格好いいよね
59
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 22:07:32 ID:pVbaxZRo0
ドクオいい奴すぎる
60
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 23:07:13 ID:GMnzFzqA0
4.騎士
(;'A`)
凄腕ハンターのウツタ・ドクオは、困っていた。
彼は、NOと言えないタイプの人であった。
(,,゚Д゚)「な、いいじゃん。騎士団入ろうって。な?」
とりわけ、こういう人種は苦手であった。
(;'A`)「で、でもですね…」
誤解のないよう言うが、嫌いなのではない。
むしろそのコミュニケーション能力に溢れた爽やかな性格は、見習いたい。
自分にはないものを持っていると素直に思う。
しかし、苦手なのだ。
なんというか、押しの強い感じが。
夜8時に来るというのも、割と常軌を逸しているし。
(,,゚Д゚)「だって、ドクオさん。何度も言うが、騎士の方が色々待遇いいんだからさ!」
(;'A`)「いや、お金は…」
(,,゚Д゚)「いーっていーって!そんな聖人ぶらなくったってさー!別に咎めやしないって!」
苦手であった。
61
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 23:09:00 ID:GMnzFzqA0
彼は、騎士のギコ。
勧誘の仕事を当てられているらしく、週に一度は彼が来る。
彼が敬語ではないのはただ無礼だからではなく、ドクオがたまに仕事の愚痴を聞いているうち、仲良くなった(と思われている)からだった。
(;'A`)「やっぱ、一人の方が気楽っていうか…」
(,,゚Д゚)「実家通いのやつもいるぜ?宿舎にいるのは家が遠い奴だけだぞ」
(;'A`)「でも、街の皆さんの依頼も受けたいですし」
(,,゚Д゚)「街の依頼も騎士団に入ってくるぞ?」
(;'A`)「でも」
(,,゚Д゚)「いやホント、頼むよー。ドクオさん程の力の人なんていないんだから。先日もアレでしょ?火竜二体をサクッとでしょ?」
(;'A`)「あ、それはあんま思い出したくないんで…ちょっと諸事情で…」
これまではのらりくらりかわしてきたが、そろそろ騎士団も本腰を入れてドクオをスカウトしようとしている。
こんなことなら、力試しに街の武闘大会なんかに出るんじゃなかった、と思った。
しかし、あの時はまだハンター駆け出しで金がなく、賞金が欲しかった。
結果的に初出場で3位を獲ってしまい、以降騎士団にマークされるようになったのだが。
62
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 23:09:53 ID:GMnzFzqA0
(,,゚Д゚)「なー、頼むよー」
(;'A`)「でも、剣術ならジョルジュさんがいるじゃないですか。魔法ならペニサスさんとか」
(,,゚Д゚)「その両方を、その二人に次ぐか匹敵できるレベルで扱えるのがすごいんだって!ウチもドクオさんに憧れて魔法始めた剣士が何人いることかって話よ」
(;'A`)「でもぉ…」
(,,゚Д゚)「いやまー、分かるよ?ドクオさんみたいな性格の人って、騎士団の空気苦手そうだもん」
(;'A`)「そ、そうなんです…」
(,,゚Д゚)「でも、じきに慣れるって!!」
(;'A`)
一生分かり合えない。
改めて、強くそう思うのであった。
63
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 23:11:11 ID:GMnzFzqA0
(,,゚Д゚)「だって、ウチは保険も充実してんよ?例えばね…」
(;'A`)「あ…」
彼の目に何かが見えた。
騎士ギコの後ろに、人影。
(-@∀@)
店主…もとい、友達のアサピーだった。
ドクオの目が希望に輝く。
彼なら、この騎士を言いくるめて帰らせてくれる筈だ、と。
(-@∀@)「やあドクオ君。…どうしたの?彼は?」
(;'A`)「あ…」
(,,゚Д゚)「こんばんは!自分、騎士のネコ・ギコと言います!今日はですね、っていうか今日もですね、是非ともドクオさんを騎士団にスカウトしたく参りました!」
(-@∀@)「騎士…団…」
(,,゚Д゚)「はい!ドクオさん程の人なんてそういませんから!」
(-@∀@)
(-@∀@)「ア ソッスカ…が、頑張ってください…あ、じゃ、あの、自分急ぐんで…」ササッ…
('A`)
類は友を呼ぶ、という言葉を、彼はここまで強く実感したことはなかった。
64
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 23:13:49 ID:GMnzFzqA0
(,,゚Д゚)「行っちゃった…悪いことでも言ったかな…」
(;'A`)「いえ…」
最早、彼は絶望に包まれていた。
これからさらに激化していくであろう勧誘に、耐えられる気がしない。
それならいっそ騎士として就職し、その日のうちに退職届を叩きつけることはできないだろうかと考えた。
二秒なくして、無理だと思った。
間違いなく非現実的であった。
(,,゚Д゚)「ねー、ドクオさん!ほんと、ドクオさんのファンがウチに何人いるかって話よ!」
(;'A`)「そ、そんな…買い被りです…」
その時だった。
ノパ⊿゚)「ただいま戻りましたッ!!」
彼の通いのメイド、ヒートが現れた。
現れたというより、正確には帰ってきた。買い物から。
皿は割るわ花瓶は倒すわ料理はマズイわ、諸々の積み重ねで彼の中での扱いは、今や『何故かウチの家事に挑戦している可愛い子』であった。
まだ三日と経っていないが、既に家事への信用はゼロだった。
しかし、選択肢はない。
(;'A`)「あ…」
(,,゚Д゚)「あ、こんばんは!騎士のギコと言います!今日はですね…」
早速ギコが説明をしている。
どうなるかは分からないが、彼女に賭けるしかないようだ。
65
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 23:14:29 ID:ecRKf39Y0
あさぴーwwwww
66
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 23:15:06 ID:GMnzFzqA0
ノパ⊿゚)「ダメです!!!!」
結果として、ヒートは勝利の女神だった。
きっぱりと物事が言える、彼にはない力を持っていた。
この時初めて、ヒートを雇って正解だったと思った。
(;,゚Д゚)「えー!?」
ノパ⊿゚)「え、だってご主人様、フリーで行くって決めてるんですよね?」
(;'A`)「うん、まあ」
ノパ⊿゚)「じゃあダメです!!!!」
(;,゚Д゚)「えーーー……?」
ノパ⊿゚)「どうしてもって言うなら…」
(,,゚Д゚)「言うなら?」
ノパ⊿゚)「勝負して、勝ったら!」
(;,゚Д゚)「えぇぇ!?」
(;'A`)
その手があったか、と思った。
彼にはまず浮かばない、脳筋、いや、粗暴、でもなく、そう、積極的な発想。
やはり自分にはできないことができる人をパートナーにすべきなのだと、再認識した。
NOと言える人、最高。
67
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 23:16:01 ID:GMnzFzqA0
ノパ⊿゚)「じゃ、ご主人様!」
ノハ^⊿^)「バシッとお願いします!!」
(;'A`)「や…やります…?」
(;,゚Д゚)「……」
(;'A`)「…」
(;,゚Д゚)「『ファイア(;'A`)「『サイレント』」
(;,゚Д゚)「っでやぁぁ(;'A`)「『バインド』」
(;,゚Д゚)「…」
(;'A`)「…」
(;,゚Д゚)「すんません…無理っす…」
(;'A`)「あ、はい…」
68
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 23:17:01 ID:GMnzFzqA0
(;'A`)「じゃ、あの…今日は、これで…」
(;,゚Д゚)「スンマセン、失礼します…また来ます…」
(;'A`)「あ、来るんですね…」
ともあれ、騎士ギコは帰って行った。
ドクオ達も家に入る。
彼はこれから、騎士を撃退する毎にボーナスをやろうと決めた。
料理が出来なくたっていい。
NOと言えさえすればいい。
ノパ⊿゚)「じゃ、すぐ夕飯にしますね!!」
(;'A`)「うん…ありがとう…」
ノハ^⊿^)「いえ!いいんです!」
ノハ*゚⊿゚)「家事もできない、こんなメイドを雇ってもらったこと、本当に感謝してますから!ほんのお返しにもなりませんよ!」
69
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 23:18:00 ID:GMnzFzqA0
ノハ*^⊿^)
(;'A`)
『可愛いから雇ったけど、ここまで家事ができないとは知らなかったんだよ』とは、口が裂けても言えなかった。
しかしそれでも、その日の焦げた夕食は、普段よりも美味く思えた。
.
70
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 23:19:12 ID:GMnzFzqA0
―――とーーーをとりちがえて辞書登録してたことを今知った
割と恥ずかしい、いっそ殺せ
あと今回からは二日に一話とか投下できたらラッキーです
サービス期間は終わったのさ
71
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 23:26:42 ID:WvpQkIlo0
乙
次のサービス期間に期待
72
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 23:27:34 ID:c09FobJs0
乙
73
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 23:28:38 ID:ecRKf39Y0
乙乙
ひーにゃんマジ天使
74
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 23:38:18 ID:1uBdp5sQ0
俺はわりとアサピーのキャラも好きだわ
75
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 00:24:48 ID:5XgAx8ls0
「また来ます…」からの「あ、来るんですね…」がツボだった
乙
76
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 01:41:27 ID:pQIhP2rc0
おつおつ
勧誘からして騎士団入れないドクオェ…
77
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 01:43:06 ID:y8wUfFRQ0
こういうバトル物な設定でのほのぼのな話って好きだわ
期待してます
78
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 03:54:34 ID:arrxwdEA0
>>48
今ブーン系の目立つ層に臭い奴しかいないんだ、それでも存続の為に必要なんだ、察してやってくれ
79
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 07:45:05 ID:tg6D0t7M0
自己紹介してんじゃねーよ
80
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 14:40:16 ID:JBlbZwEk0
むしろそれは自演臭いわ
遠投はやっぱバレやすい
81
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 16:46:01 ID:sqe.Al1A0
それも自演臭いわ
82
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 18:08:09 ID:za/M7qN20
スレタイと設定で遠慮してたけど読んでみたら面白い
83
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 18:46:32 ID:RwSNsPyg0
5.レイス&はぐれなんたら
(;'A`)
深い森の中、凄腕ハンターと呼ばれるウツタ・ドクオは、選択を強いられていた。
目の前には、魔物。
今回の依頼の目標、レイスである。
布の塊のような幽霊のくせに、生意気にも畑を荒らすとの依頼だった。
彼を迷わせているのは、その横。
ドロドロとした、なんとも言えない銀色の魔物。
年に一回見られるか見られないかの、希少な魔物だった。
彼は選択を強いられていた。
今少しだけはじめている錬金術に、あの銀色の魔物の体が必要だった。
どうしても必要だった。
レイスも、倒さなくてはならない。
放って行っては逃げてしまうだろう。
しかし、今ここで銀色のこいつを逃したら、次会えるのはいつだろうか。
彼は、選択を強いられていた。
84
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 18:47:55 ID:RwSNsPyg0
(;'A`)
思えば、以前もこういうことがあった。
負け知らずのハンターが、未だ世間を知らぬ子供の頃であった。
お母さんがアイスを二つ買ってきてくれて、どっちか選んで食べていいと言ってくれた。
残りは明日だ、と。
彼には、選べなかった。
結果的に両方を一口ずつ交互に食べ進め、お腹を壊した事があった。
('A`)「人は、変わらないな…」
自分はあの頃のままだ、と独りごちた。
彼の人生の課題を体現するように、魔物たちはじっとこちらを見ている。
ここで、結論を出す必要がある。
あの時の、選べなかった自分の為にも。
あの時の手は使えない。
交互に攻撃すれば、両方逃してしまうだろう。
大魔法で両方を消し飛ばすことも考えたが、銀色のやつが消し飛んでは意味がない。
というかそもそも、銀色のやつには魔法が効かないのだ。
85
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 18:50:23 ID:RwSNsPyg0
('A`)「何にせよ、考える時間が必要だ」
刻一刻と変わりゆく戦闘の中で、そのような選択をするのは困難であった。
しかし時間を稼ごうにも、銀色のやつに魔法は効かない。
…が、しかし。
ドクオは考えた。
('A`)「この空間そのものを制圧してしまえば、それも関係ない…!」
集中を高める。
久しぶりの大魔法に、少しだけ緊張した。
(;'A`)「よし」
魔力を込めた腕で、目の前の空間に円を描く。
空中で光り輝くその奇跡は同じく円となり、彼の思念に合わせて紫色の魔法陣へと変化した。
(;'A`)「『滔々たる時の流れよ、揺蕩う我等とその理よ』」
(;'A`)「『今、我が名において命じる!』」
(;'A`)「『鎖を緩めろ!タイムストップ』!!」
魔法陣が溶けるように消え去った瞬間。
世界が、魔物達も含めて凍りついたように動かなくなった。
成功したようだ。
ドクオの周り、半径10メートルほどの空間の時間が止まった。
(;'A`)「ふー…」
相変わらず、詠唱は恥ずかしい。
86
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 18:51:25 ID:RwSNsPyg0
さて、考える時間はできた。
('A`)
仕事を取るか、私事を取るか。
ドクオは、これは大きな問題だと考えた。
『仕事と私、どっちが大事なの!?』という有名なセリフがある。
どちらかを立てればどちらかは成らない。
難しい問題だ。
例え自分が両方を大事にしていても、選ばなくてはならない。
さらに言えば、片方がより大事であっても、もう片方、然程大事ではない方を取らなくてはいけない場面も、往々にしてある。
レイスを倒せば、錬金術はうまくいかない。
銀色のやつを倒せば、任務は失敗。
片方は仕事、片方は趣味。
('A`)「この戦いは、全男性の悩みを背負う戦いも同然なのか」
凄腕ハンターのウツタ・ドクオには、妙なところで少々考えすぎる癖があった。
87
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 18:52:29 ID:RwSNsPyg0
('A`)
凍った世界で考える。
仮にレイス、仕事を取った場合。
先程の男女間に置き換えて考えると、『彼女より仕事を優先するつまらない奴』になってしまうのではないだろうか。
どうあれ、彼女の心が離れていってしまうことは必然的とも思えた。
ならば逆に、もう片方の魔物、趣味を取った場合は?
男女間に置き換えれば、『仕事より彼女を優先する不誠実な奴』になりかねない。
確かに、彼の住む国の経済は割と潤っている。
だがしかし、流石にそこまでは許されないだろう。
仕事を失ってまでご機嫌を取るものなのだろうか。
(;'A`)
女性などとロクに話したことがないドクオには、分からなかった。
最早、詰みの状態に思えた。
早急に王城の賢者に相談すべきだと思った。
いやしかし、と考え直す。
どこかにある筈だ。
どちらもそこそこ上手く取っていける、冴えた答えが。
88
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 18:53:09 ID:l6S0GzmY0
('A`)
長考すること、十五分。
覚悟は、決まった。
腕を一度振り、時間停止を解除する。
周りの世界が、再び動き出した。
ドクオは剣を構え直す。
魔物達も向き直る。
(#'A`)「ってやぁぁぁぁぁっ!!!!」
一瞬で速度上昇の呪文をかけ、もう一瞬で距離を詰め、無防備な体に剣を振り抜く。
彼が選んだのは――――――
.
89
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 18:53:58 ID:l6S0GzmY0
(#'A`)「らぁっ!!!!」
―――――レイス、仕事だった。
ドクオは、『お前が大事だから、お前を養うために好きでもねぇ仕事してんだよ!!』という究極の言葉で、この問題にけりをつけたのだ。
この答えが、今回のドクオの迷いに適用される訳ではないと気づくのは、少しだけ後の話である。
90
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 18:54:40 ID:RwSNsPyg0
('A`)「…よし」
やはり、銀色の魔物の姿はもう見えない。
しかし、ドクオは満足だった。
ドクオが斬ったのはレイスだけではない。
あの時の不甲斐ない自分の迷い。
ひいては全男性の迷いさえも、真っ二つに斬ったのだ。
レイス討伐の証を袋に入れ、彼は踵を返して歩き出した。
柔らかな森の木漏れ日が、彼を祝福しているように感じた。
大きな選択を終え、彼のレベルは確実に上がったのだ。
91
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 18:55:28 ID:RwSNsPyg0
(;'A`)「あ、あの、はぐれなんたらの体ってあります?」
( ^ω^)「ありますお」
―――銀色のやつの素材は、近所の魔法道具屋さんが持っていた。
頼んだら売ってもらえた。
.
92
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 18:56:39 ID:RwSNsPyg0
( ゚д゚)
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
\/ /
 ̄ ̄ ̄
( ゚д゚ ) <自演なんてしてない
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
\/ /
 ̄ ̄ ̄
93
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 18:57:32 ID:ptr5LEp20
タイムストップしてる間に両方殴ればいいんじゃないですかね……
94
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 18:59:41 ID:RwSNsPyg0
>>93
タ、タイムストップ中は敵の体が硬まってて殴れないっていうアレだから…
95
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 19:09:01 ID:J3ltwwtE0
魔法道具屋にすごいデジャブ
96
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 19:14:15 ID:tg6D0t7M0
魔法道具屋クッソwwwww
>>92
さっき言われてた自演は作者のことちゃうと思うで
自分のコメントにレス付けてたっていう意味だと思われ
乙でーす
97
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 20:48:50 ID:H1eTPJDI0
乙乙
98
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 21:06:32 ID:SeWWrMD.O
皆さん、オワコン社長をよろしくお願いします。気に入ったらチャンネル登録!!
http://www.youtube.com/watch?v=aSMLi2uOkvk
http://www.youtube.com/watch?v=cbwrnLKERpA
http://www.youtube.com/watch?v=gPevsHpSj-Y
http://www.youtube.com/watch?v=9ekKaVB5uHg
http://www.youtube.com/watch?v=cP0NAOzKQAE
http://www.youtube.com/watch?v=hekgfuTcX6o
http://www.youtube.com/watch?v=1uzYFjN7z5E
99
:
名も無きAAのようです
:2015/11/24(火) 23:47:39 ID:sB0pME9o0
えーもーなにこれめっちゃよいじゃん。
もっとくれ…
100
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 00:39:12 ID:rEntLBSM0
魔法道具屋の下りはパロディじゃね
101
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 10:54:33 ID:u92jQ9qc0
読みやすくてこの作品好きだわ
ここのアサピーなんだかかわいいな
102
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 19:56:26 ID:jFCv16tI0
6.お仕事
ノパ⊿゚)「ふんふふーん」
新入りメイドのヒートは、歩いていた。
今日も今日とて、楽しく仕事である。
主人であるドクオにも言っていないが、彼女の家は貧乏であった。
何でも、祖父だか曽祖父だかの借金が返しきれていないとか。
ヒートの上に三人の姉がいるが、それが理由か全員働きに出ている。
ついに私も家計の役に立つことができる、と意気込んでいた。
労働時間は7時から20時。
時間としては長いが、ドクオ家でのんびりする時間も長いので激務という訳ではない。
ノパ⊿゚)「おはようございます!!」
渡されていた合鍵を使い家に入る。
ノックなどは、特に要らないと言われていた。
そもそもこの時間、主人はまだ寝ている。
だから挨拶も必要ないのだが、そこは一応。
103
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 19:57:32 ID:YIj08ZrU0
ノパ⊿゚)「よし」
朝ご飯は、大抵がサンドイッチ。
具は毎日変えているが、たまに彼女の気まぐれで納豆ごはんにメニューが変わる。
納豆が苦手な主人ドクオはその気まぐれの発動を心底恐れているが、そんなこと彼女は知る由もない。
ちなみに、今日は納豆ご飯にしようと思った。
それだけではさすがに職務放棄なので、他に一、二品作る。
目玉焼きと焼きウインナーに決めた。
朝ご飯は、まだそれしか作れない。
フレンチトーストは、まだ練習中であった。
ノハ;゚⊿゚) ジュゥゥ…
ノハ;゚⊿゚)
ノハ;゚⊿゚) パッ!
…焦げていない。
黄身も割れていない。
ノハ*゚⊿゚)「おっしゃ!!」ガシャァン!!
皿は割れた。
104
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 19:58:15 ID:YIj08ZrU0
('A`)「お早う…」
ノパ⊿゚)「おはようございます!」
大抵、朝ご飯を作っている途中に主人は起きてくる。
やはりハンターたるもの、眠りは浅くなくてはならないのだろう。
たぶん、有事か何かに備えて。
実際は家に入るときの「おはようございます!!」で強制的に眠りから引きずり出され、
料理を作る物音や歓声で完全覚醒を余儀なくされているのだが、それも彼女は知る由もない。
('A`)「今日は…納豆ご飯?」
ノパ⊿゚)「と、目玉焼きとウインナーです!」
('A`)「…そう…」
ノパ⊿゚)「? 何か?」
('A`)「…いや、何も…」
ノパ⊿゚)「そうですか?」
('A`)「いただきます…」
主人の繊細な心情に、メイドが気づくのはいつになることか。
粗野なメイドに、主人がはっきりものを言えるのはいつになることか。
105
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 19:58:57 ID:YIj08ZrU0
ノパ⊿゚)「今日は仕事でしたよね?」
('A`)「うん。バジリスクだって。遠いから夜まで帰らないかも」
ノパ⊿゚)「バジリスクってアレですか。目ぇ見ちゃ駄目なやつ」
('A`)「そう。即石化、とかはないけど見続けると危ないんだ」
ノパ⊿゚)「へー…毒とか吐くんですか」
('A`)「吐きはしないけど、牙にあるから飛ばしてくる。なんかピュッて」
ノハ;゚⊿゚)「うへー」
('A`)「正面にいなきゃいいんだよ」
主人と食事のときに、魔物の話を聞くことが多かった。
まだ来て一週間程だが、「対策が分からない」と言われたことはない。
凄腕と呼ばれる訳である。
106
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 20:00:02 ID:YIj08ZrU0
('A`)「じゃあ、行ってくる」
ノパ⊿゚)「行ってらっしゃいませー」
借りた馬で発つ主人を見送り、家事に取り掛かる。
ノパ⊿゚)「おしっ!!」
彼女の信条は、日々成長、である。
どれだけ何ができなかろうが、三日前よりも今日、今日よりも三日後の方が少しでも上手くできるようにする。
そうやって生きようと思っていた。
それが反映されているのであろう、最近は皿洗いであまり皿を割らなくなったし、掃除で物を倒さなくなった。
はじめは日に6枚割っていた皿は、今や日に2枚にまで留めておけるようになった。
初日に蹴倒した観葉植物も、今や華麗に避けて箒がかけられる。
だから、主人の研究を止めない姿勢は好きだった。
人は皆、何かが一定までできるようになると、成長をそこで止めてしまう。
しかし主人は、仕事がなくても部屋に閉じこもって研究をすることが多い。
そんな主人の見えない姿は、他の人とは違って感ぜられた。
実際は人と会いたくないが為に、部屋で暇潰しに研究するなりフィギュアを眺めるなりしているだけなのだが、やはり知る由もないことである。
107
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 20:00:43 ID:YIj08ZrU0
ノパ⊿゚)「おわったー」
掃除が終われば、もう昼時だ。
今日は主人がいないので、散歩と買い物がてら、外に食べに出ることにした。
申し訳ないことに、その為の小遣いも給料とは別に貰っている。
しっかり仕事をしよう、と思った。
メイド服から外行きの服に着替え、しっかりと施錠して外に出る。
流石にメイド服では出られない。
ノパ⊿゚)「!!」
チーズの焼ける、香ばしい匂いが漂ってくる。
もとを辿ると、一軒のパン屋。
綺麗な店員さんが迎えてくれた。
ξ゚⊿゚)ξ「あら、いらっしゃい。ちょうど焼きたてよ」
ノハ*゚⊿゚)「焼きたて!」
昼ご飯は、とろけたチーズの載ったパンにした。
安いし、大きいし、何より美味しい。
できたてということもあり、すぐに食べ終わってしまった。
勢いでもう一つ食べてしまい、店を後にする。
ぜひともまた来ようと思った。
108
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 20:01:47 ID:YIj08ZrU0
またぶらぶらと歩き始める。
夕飯はどうしよう、とか考えながら。
ノパ⊿゚)「あ!」
大通りの掲示板で、よく知った顔を見つけた。
自分の仕事を斡旋してくれた、アサピーだ。
何かの紙束を持っている。
(-@∀@)「やあ、ヒート。久しぶりだね」
ノパ⊿゚)「お久しぶりですアサピーさん!」
(-@∀@)「元気だったかい?…と聞くまでもなく、元気だね。結構結構」
ノパ⊿゚)「はい!ここで何してたんですか?」
(-@∀@)「いやー、ビラ貼りだね。これがそう。メイドと執事しませんか、って。あと、スカウト」
掲示板を見ると、確かに広告が貼ってある。
『メイド・執事求む。経歴・年齢不問、まずは相談から。でも個人的にメイドは若い方がいい』
ノパ⊿゚)「…最後の一文が個性的ですね!」
(-@∀@)「正直に生きようと決めてるんだ」
109
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 20:02:35 ID:YIj08ZrU0
ノパ⊿゚)「スカウト、って?」
(-@∀@)「知らないっけ。君はお姉さんの紹介で入ったんだもんね。そうそう、クールさんはいいメイドだよ、相変わらずね」
ノパ⊿゚)「クー姉、あまり帰ってきませんから寂しいです」
(-@∀@)「ほぼ住み込みの形式だもんね。心中お察しするよ。…スカウトの話だったね、実践してみせよう」
言うなりアサピーは周りを見渡す。
手慣れているような口ぶりだ。
(-@∀@)「なんとなく、暇そうな人を探すんだ。このお昼時だからね」
やがて、カフェの方へ近づいていく。
外に備え付けられているテーブルでコーヒーを飲んでいる若い女性に目をつけたようだ。
ζ(゚ー゚*ζ
ノパ⊿゚)「あの人ですか?」
(-@∀@)「好みのタイプだから」
ノパ⊿゚)「正直っすね」
110
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 20:03:38 ID:YIj08ZrU0
(-@∀@)「こんにちは。今、お時間よろしいですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「え? はい、大丈夫です」
(-@∀@)「単刀直入に聞くんですけども、今、決まったお仕事とかってやってらっしゃいますか?」
ζ(゚ー゚*;ζ「いや、たまに家の仕事のお手伝いをしてるだけですけど」
(-@∀@)「あぁすみません、いきなり不躾に…。いやね、メイドに興味はありませんか、と聞きにきたんです。要はスカウトです、スカウト」
ζ(゚ー゚*;ζ「スカウト…」
(-@∀@)「いやー、見たところお綺麗ですし、引く手数多ですよー、きっと。いかがです?あ、これチラシなんですけどね、良ければ」
ζ(゚ー゚*ζ「………あ、なんか聞いたことあります、この事務所の名前」
(-@∀@)「この辺だとウチぐらいですから、こういうことやってるの」
ζ(゚ー゚*;ζ「いやでも、忙しいので毎日はちょっと…」
(-@∀@)「ああ、メイドっていうと毎日ってイメージですけどね、実際は週三か週二ぐらいで欲しいって方が割と………」
111
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 20:04:48 ID:YIj08ZrU0
ノパ⊿゚)「…どうでした?」
(-@∀@)「家の仕事がひと段落したら来るかも、って」
ノハ*゚⊿゚)「おー!スカウト成功!」
(-@∀@)「いやいや、来てくれるのはほんの一握りだよ。そんな世の中甘くないのさ」
ノパ⊿゚)「へー…でもアレですね、アサピーさんって喋るの上手いですよねー」
(-@∀@)「いやー…そうでもないよ。仕事のときはできるけど、これがプライベートになるとどうも、ね……ははっ……」
アサピーが暗くなってきたので、適当に切り上げて別れた。
仕事に戻らなくては。
ノパ⊿゚)「ふむ」
夕飯を考えながら買い物をする。
ノパ⊿゚)「今日は」
ノパ⊿゚)「オムライスにしてみよう!」
オムライスを作ったことは、まだないが。
なんとなく、出来る気がした。
112
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 20:05:30 ID:YIj08ZrU0
ノハ;゚⊿゚)「……」
そして、失敗した。
アサピーの言う通りだった。
世の中は甘くない。
(;'A`)「これ…何?」
ノハ;゚⊿゚)「あ、オムライスです」
主人が一口。
ヒートはじっと見守っている。
(;'A`)「卵、なくていいかも…その、チキンライスっていうか…」
ノハ;゚⊿゚)「…それは、チキンライスって扱いならいけるってことですか」
(;'A`)「…」
(;'A`)「ギリギリ滑り込みで…」
ノパ⊿゚)
(;'A`)「……アウトかな」
ノハ;゚⊿゚)「精進します…」
チキンライスも初めてだった。
頑張ろう。
113
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 20:06:21 ID:YIj08ZrU0
ノパ⊿゚)「ごちそうさまでした!」
('A`)「ごちそうさまでした」
夕飯を食べ終わって、皿を洗って片付けてしまえば、その日の仕事は全部終わり。
あとは帰って、自分の家の家事をして、眠る。
毎日こんな感じだが、今のところは楽しい。
まだまともに役に立てているかは分からないが、少しずつ役に立つようになれればいいと思う。
一歩ずつでいい。
('A`)「あ、ヒート?」
ノパ⊿゚)「はい!」
(;'A`)「これから仕事の時にさ、昼ご飯の弁当、作って欲しいんだけど…できる? 本当に簡単なやつでいいからさ」
ノパ⊿゚)
ノハ*゚⊿゚)
ノハ*^⊿^)「はい!!!!」
そう、こんな風に一歩ずつ。
114
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 20:07:02 ID:YIj08ZrU0
けふはここまで
115
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 20:10:21 ID:HJ6OGQLc0
乙!
ヒート可愛い。
116
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 20:12:27 ID:QJKWZtoE0
乙
117
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 20:14:32 ID:7yer7A720
いいねえ
118
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 20:15:57 ID:aIMvBgAw0
乙
ヒートかわいい……うちで働いてくれ……
119
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 20:41:07 ID:rYGXv0UU0
おつつ
120
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 22:30:35 ID:t1gBmq3g0
いろいろやって完結できないパターン
121
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 23:27:18 ID:7rRxy7pQ0
>>120
こいつ完結してほしくないんだろうからこんな事言ってる荒らしなんだぜ
以後俺含めスルー
122
:
名も無きAAのようです
:2015/11/25(水) 23:28:17 ID:mfHQpn6Y0
こういう日常系は本当に完結してほしくない
常に見ていたい
123
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 02:44:15 ID:KPfSZYJk0
こういうタイプは完結する位なら適当なタイミングで失踪してくれる方がありがたい
124
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 02:56:40 ID:gr0GEp2I0
俺はこういうタイプの作品でもなるべくならしっかり完結してほしいわ
125
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 03:27:40 ID:Fc6i93vE0
なんでもう終わりの話になってるの??
126
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:10:14 ID:jrQLXXF60
7.エビルスパイダー
(;'A`)
凄腕ハンターウツタ・ドクオは、今、覚悟を迫られていた。
事の起こりは三十分前。
ちょっと見た事のないキノコでも食べて、グルメ気取ってみようと思ったのが間違いであった。
食べたその瞬間から、一切の魔法が使えなくなってしまったのだ。
毒なら魔法で解毒しよう、とか軽く思っていたが、流石に予想外というものだった。
それだけなら、まだいい。
彼には国の騎士団長にも劣らぬ剣捌きがある。
その剣も、今しがた溶けた。
127
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:11:01 ID:jrQLXXF60
(;'A`)
前に見えるのはエビルスパイダーという魔物。
大きな蜘蛛だ。
この魔物、本来は巣を作るだけである。
無毒な魔物の筈だった。
それが、酸を吐いた。
咄嗟に剣で守ったが、剣は失う結果となってしまったのだ。
(;'A`)「新種かな…」
国の魔物調査委員に要報告だ、と頭の中に留めたが、まずは目の前。
彼は徒手空拳の武術においても、ナンバー1と言ってもよい実力を持っている。
攻撃手段を二つ失っても尚、負ける要素はなかった。
(;'A`)
蜘蛛が、苦手でなければ。
128
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:13:44 ID:jrQLXXF60
そう、彼は蜘蛛が苦手であった。
(;'A`)
昔のことだ―――
駆け出しの頃にまさにこのエビルスパイダーを相手取ったことがあった。
怖いもの知らずのハンタードクオは、魔物を二つに切り裂いた。
それが、間違いであった。
切り裂いたその断面、特に腹から数百数千の子蜘蛛(手のひらサイズ)がわらわらと飛び出し、波濤となって彼を襲ったのである。
ドクオは半狂乱に陥り、所構わず剣を振り、火炎を放ち、雷を落とし続けた。
しかし圧倒的な物量にはそれでも足らず、結果的に半径50メートルを消し飛ばす大爆発を引き起こし、事態を収束させた。
そのせいで、その山はそこだけ未だに岩肌である。
129
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:14:49 ID:jrQLXXF60
そんな彼が、素手での戦闘を強いられる結果となった。
平素であればこの魔物は、極大火炎魔法で灰と化すか、闇の魔法で存在ごと消し去るか。
どちらかであった。
それが、素手。
心中は察しても察しきれないというものである。
(;'A`)「何でキノコなんか食っちまったんだ…」
もともとこの魔物だと知らされていれば、そんな無謀は犯さなかった。
『なんか大きいやつがいた』というだけの依頼だったのである。
今日に限って、魔法符は切らしてしまっている。
これを慢心と言わずに何と言うのか。
彼はもう気を抜かない、見知らぬキノコなど食べないと、彼は固く誓った。
130
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:15:59 ID:jrQLXXF60
(;'A`)「…」
ともかく今は、素手でやらなければならない。
剣も、魔法も、ないのである。
しかし、考え無しでは行けない。
できたら一撃で、安全に仕留めたい。
溶毒を持っているが、分泌しているのは内臓であろう。
ならば胸でも、もちろん腹でもなく、一撃で頭を砕きたい。
もちろん、ドクオなら可能である。
一瞬で間合いに入り、毒を吐かれる前に頭に一撃を見舞い、離脱。
しかし、理論上可能でも実行できるかは、別である。
思考と実行は、違うのだ。
気合を高め、一瞬で、いや一瞬すら生温いほどの速度で、自らの触覚をも騙す速度で拳を打ち込む必要があった。
さもなくば、恐らくぬるりとした、じゅるっとした、生暖かくて臭い何かを、思う存分拳で感じることになる。
131
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:17:11 ID:jrQLXXF60
(;'A`)「っっ………」
(; A )「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!」
咆哮。
人体の限界を超えるための、自らの慢心を清算する為の。
かつてない叫びは、少し離れた彼の街にまで届いた。
それを聞き「新種の魔物だ」と勘違いした人が、ドクオ討伐依頼を書き始める程だった。
そして。
(;'A`)「!?」
気合十分のドクオは、何かに気づいた。
体に、変化が訪れている。
自らの体から、金色のオーラが迸っているのだ。
(;'A`)「まさか…」
(;'A`)「覚醒…!?」
そう、覚醒、であった。
ここにきて。いきなり。なんの前触れもなく。
このスペックの上、覚醒であった。
132
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:18:51 ID:jrQLXXF60
何が何だか分からないが、これがあれば蜘蛛に触れずに倒せる。
希望が見えた。
彼は蜘蛛に右腕を向けた。
勝利を確信した笑みが浮かんだ。
('A`)「ふふ…蜘蛛風情が、覚悟を決めな。終わりだ!」
('A`)「破ッッッ!!!!!」
('A`)
('A`) ?
何も起こらない。
エネルギー波とかが出る予定であった。
('A`)「なるほどな…。『破』じゃなかったか 」
('A`)「滅ッッッッッ!!!!!!!」
('A`)
('A`)「邪ッッッッッッ!!!!!!!!」
('A`)
('A`)「セイッッッッッッ!!!!!!!!!」
('A`)
('A`)「ほぉんッッッッッッッッ!!!!!!!!!」
ちなみに、ここまでの行動は、全て蜘蛛の攻撃を避けながらの動作である。
凄腕と呼ばれる所以である。
133
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:19:50 ID:jrQLXXF60
(; A )「…………」
かれこれ五分。
何も、起こらない。
間違いなく、二度目の慢心であった。
もう本当に、物理攻撃しか残されていない。
(; A )
(;'A`)
('A`)
覚悟を、決めた。
元はと言えば、自分の油断から生じた状況。
ケリを、つける時だ。
('A`)「行くぞ!!」
覚醒によって、身体能力は極限まで引き出されていた。
光にさえ届きそうな速さで、距離を詰める。
魔物がそれに気づく前に、脳天に一撃を―――――!!
134
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:20:48 ID:jrQLXXF60
(;'A`)「!?」
拳がヒットした瞬間、魔物が消え去った。
(;'A`)
否、違う。
そんな訳はない。
空を見る。
まとめて粉々になった蜘蛛と子蜘蛛の体が、今まさに天から降り注ごうとしていた。
魔物が内側から破裂したのだ、それがこのオーラの力だ、と理解できた頃には、遅かった。
纏っていたオーラは、もうない。
その一撃で、既に疲労困憊だった。
( A )
ドクオにはもう、立ち尽くすことしか――――――
135
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:21:36 ID:jrQLXXF60
この日の彼のお風呂は、普段より二時間長かった…。
.
136
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:22:21 ID:jrQLXXF60
えっ…?
そういえばこれって、どうやったら完結できるんだ…?
137
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:33:50 ID:Fc6i93vE0
蜘蛛テロやめろよ…………俺も苦手なんだよ…………
乙です、ドクオの凄腕っぷりと小市民っぷりが面白い
138
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:40:59 ID:GKifrQRU0
蜘蛛はマジでやめてよ……
139
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:45:03 ID:qMNhAD3.0
>>136
書くことなくなったら適当に50年くらいジャンプして孫に昔話をするじいさんオチでいいよ
140
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:50:39 ID:gr0GEp2I0
ドクオ討伐依頼わろた
141
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:51:16 ID:WMppDlqE0
乙乙
142
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 00:04:47 ID:H0LSJ.T20
面白いな
乙乙
143
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 07:21:41 ID:nwBF2RQ60
ここまでハイスペックとは…
144
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 18:00:17 ID:Otd0tVQY0
>>122-124
どの気持ちもわかる
>>136
ドクオをトラックに突っ込ませろ
145
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 22:10:55 ID:kGOiR2..0
8.賢者の石
(;'A`)
凄腕ハンターと呼ばれるウツタ・ドクオは、驚いていた。
彼は最近、錬金術に凝っていた。
普通の魔法とは違う仕組み、違う力のそれが面白くて、色々と練成しては楽しんでいた。
ふとした思いつきで、賢者の石を作ってしまうまでは。
(;'A`)「どうしよう…どうしよう…」
本物である。
これに触れた金属は、皆黄金に変わる。
焦りすぎてちょっと落としてしまった時に、ベルトのバックルが黄金に変わったので本物である。
握って少し念じると、石から液体が出てくる。
おそらくこれを飲むと不老不死になれるが、怖いので流しに捨てた。
タレ眉のホムンクルスのお方に怒られそうな気がした。
146
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 22:11:45 ID:kGOiR2..0
(;'A`)
さらに、目の前。
ノハ;゚⊿゚)
(;-@∀@)
目撃者がいるのである。
二人も。
(;-@∀@)「え…ちょっと、貸して」
(;'A`)「あ、う、うん…」
賢者の石を受け取ると、アサピーはズボンのチャックにそれを押し当てた。
彼の股間がまばゆく輝きはじめた。
(;'A`)「あの…いちおう凄いものだから、股間とかはちょっと…まずいかな、って」
(;-@∀@)「失礼…手近な金属がこれしかなくて…」
147
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 22:12:36 ID:kGOiR2..0
ノハ;゚⊿゚)「それって、売ったら高いんですか?」
(;'A`)「バカ高い…っていうか値段もつけられないとは思うけど…色んな国から刺客が沢山来ると思う…」
ノハ;゚⊿゚)「まずいっすね…」
売れない理由は、それだ。
賢者の石は、未だどこの国でも製造に成功していない。
また、製法も確立されていない。
売れば、そのルートを嗅ぎ付けられることは確実だった。
(;'A`)「ほぼ運でできたものだから捕まっても製法とか教えらんないし再現もできないし…」
ノハ;゚⊿゚)「なるほど」
(-@∀@)「しかし、上手く使いたいところだね」
(;'A`)「…えっ使うの?」
(-@∀@)「おかねほしい」
(;'A`)「あっ正直…」
148
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 22:13:59 ID:kGOiR2..0
ノハ;゚⊿゚)「なんとか、こう、国とかにバレずに…」
(;'A`)「第一、どこが賢者の石買える大金持ってるの」
ノハ;゚⊿゚)「…」
ノハ;゚⊿゚)「国?」
(;'A`)「いやいや」
(-@∀@)「石自体を売ることは考えなくていいんじゃない?」
ノハ;゚⊿゚)「でも…賢者の石ですよ?」
(;'A`)「だからでしょ」
突然、ヒートの動きが止まった。
何かに気づいたようだ。
おずおずと、話し出した。
ノハ;゚⊿゚)「…、ちょっといいですか」
(;'A`)「どうぞ」
ノハ;゚⊿゚)「今、すっごい犯罪のプラン練ってるっぽくてちょっとかっこいいです、私達」
(;'A`)「限りなく近いからね、その例え」
149
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 22:14:44 ID:kGOiR2..0
(-@∀@)「まあ、聞きたまえよ。君達」
今度はアサピーが話し出す。
メガネを指で押し上げ、インテリらしさを醸し出している。
ちょっとだけ期待できそうな気がした。
(-@∀@)「石自体は、確保しとけばいいんだよ。金を売ればいい」
(-@∀@)「鉄のものを手に入れて、金にする。それだけでいいんだ」
(-@∀@)「実家の蔵から遺産が見つかりまして、とか言えば自然だし、そこまで詮索されないだろう」
(-@∀@)「あとは、以下無限ループ。石さえあれば、ね」
(;'A`)「えっ待って…なんでそんな冷静になっちゃってんの…」
(-@∀@)「じゃ、スプーン借りるよ」
(;'A`)「自分ちのでやって!」
(-@∀@)「大丈夫大丈夫、倍にして返すよ」
(;'A`)「ダメな台詞!」
150
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 22:15:39 ID:kGOiR2..0
ドクオの制止もむなしく、アサピーは行ってしまった。
ドクオ家の金属食器を、根こそぎ金に換えて。
ノハ;゚⊿゚)「成功するんですかね…」
(;'A`)「…わからない」
ドクオが立ち上がったところ、ヒートが不思議そうな顔をした。
ドクオの股間を凝視している。
ノハ;゚⊿゚)「………?」
(*'A`)「あ、何…?」
ノハ;゚⊿゚)「……ご主人様、ベルト…?」
見ると、普段と同じベルト。
なんの変哲もない。
('A`)「…なんの変哲もない?」
ノハ;゚⊿゚)「一回、金に変わりましたよね?」
('A`)
('A`)「あれ?」
151
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 22:16:54 ID:kGOiR2..0
(;'A`)「あ、じゃあ、もしかして…」
(;'A`)「一定時間で元に戻る?」
ノハ;゚⊿゚)「はい」
(;'A`)「やっぱり賢者の石としては不完全だったのかも…」
ノハ;゚⊿゚)「じゃ、石からでてきたあの水は…」
(;'A`)「不老不死には、なれないのかな…多分…」
二人の間に、沈黙が流れた。
ノパ⊿゚)「…夜ご飯、作りますね」
(;'A`)「あ、うん…。今木の皿と木のスプーンしかないから、それで食べられるもので」
ノパ⊿゚)「頑張ります!」
152
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 22:17:42 ID:q2ey3gsw0
一瞬でも金に出来るって普通にすごくね……?
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