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ξ゚⊿゚)ξツンちゃん夜を往くようです

541名も無きAAのようです:2016/04/17(日) 07:16:36 ID:voff0Dl60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 〜学校〜


( ´∀`)「出張終わり!」

( ´∀`)ゞ「でももう放課後! 解散! また明日!」


┗(^ω^)┛「やったお!」

('A`)「暇になったなあ」

 きわめて簡潔な終了宣言。教室はあっという間にざわめきで溢れ返った。


('A`)「これからどうする? 遊んで、……は、いかねぇか」

(^ω^)「そうだNE! はやく帰って寝たいお」

('A`)「だな。近々でかいことすんだろ、頑張れよな」

( ^ω^)「ツーーーン! 帰るおーー!」



( ^ω^)「……」   シ

             |

('A`).「……」      ン



.

542名も無きAAのようです:2016/04/17(日) 07:17:17 ID:voff0Dl60

( ^ω^)「おかしいお。ツンが居ないお」

( ´∀`)「魔王城さんなら早退しましたよ。聞いてないモナ?」


(^ω^)「いつ!?!?」

( ´∀`)「自習の時かな? 気分が優れないって言ってたモナ」

(^ω^)


(^ω^)「……ドクオ気付いてたお?」

(;'A`)「……そら気付いてたけど、ていうかなんでお前が気付いてねえんだよ」

(;'A`)「いちおう護衛役だろ? いや、じゃあ今あいつどこに……」

(^ω^)


(^ω^) ヤベッ

(゚A゚)

543名も無きAAのようです:2016/04/17(日) 07:17:57 ID:voff0Dl60


(;;^ω^)「ま、まあツンも強い子だお! 大丈ブイ!」


(^ω^)v ダイジョウブイ

(;゚A゚)


(;;^ω^)「……とりあえずツンの家に行くお。
       居なかったら、探しに行くお」


(; ´∀`)「居なかったよ。さっき出張帰りにお見舞いしてきたけど……」


( ^ω^)

(^ω^)


(^ω^) ウーワ


【interlude:out】
.

544名も無きAAのようです:2016/04/17(日) 07:19:20 ID:voff0Dl60


〜〜駅前 カラオケ屋〜〜


<アザッシァー


ξ゚⊿゚)ξ「あー歌った」 テクトコ

 適当に理由をつけて学校を抜け出してきた私、魔王城ツン。って今更かな? うふふ
 学校を出てから暇だったので三時間ほどカラオケにこもっていた。楽しかった。


从'ー'从「たのしかったね〜」

 そしてもちろん一人ではなかった。
 この子は渡辺ちゃん。数少ない、本当に数少ない私の女友達である。
 学校を抜ける時に誘ったら一緒に来てくれたのだが、多分本人には学校をサボった自覚はない。


ξ゚⊿゚)ξ「学校サボってよかったの?」

从'ー'从

从;'ー'从「何にも言わずに出てきちゃった!!」

 案の定であった。


ξ゚⊿゚)ξ「やれやれ。明日行ったらちゃんと謝るのよ」

从;'ー'从「ぶぇ、ぶぇぇ〜」

 彼女はいわゆるアホの子で、本当にヤバイと思っている時は死にかけのブブゼラみたいな声を出す。
 なので今日のサボりはヤバイ判定なのだろう。となれば少し、罪悪感も湧いてくる。

.

545名も無きAAのようです:2016/04/17(日) 07:20:46 ID:voff0Dl60


ξ゚⊿゚)ξ「なんか食べてから帰る? 奢っちゃうよ」

从*'ー'从「え、いいの!? わーい!」

ξ゚⊿゚)ξ「何がいいかな……。駅前だから何でもあるし、リクエストある?」

从*'ー'从「ヤキニク! 上カルビ!」

 即答だった。

 ただいま時刻は午後五時を回ったくらい。
 この時間から制服を着た女子高生二人が焼肉屋に入るというのも憚られ

ξ゚⊿゚)ξ「よし、行こう!」

 ない! ヤキニク最高! 私達はスキップした。

 しかしそろそろ帰宅ラッシュがどうこう。
 焼肉屋は駅の向こう側なので、このままだと人混みに飛び込むことになる。

 私はその場でスキップしながら周囲を見渡した。
 近道、近道……そうして探してみると、ちょうど近道になりそうな路地を発見。
 私は見つけた道を指差し、渡辺ちゃんに提案する。


ξ゚⊿゚)ξ「あそこの路地裏通ってく? きっと早いわよ」 スキップスキップ

从'ー'从「えっと……うん! よくわかんないからついてくね〜」 スキップスキップ

.

546名も無きAAのようです:2016/04/17(日) 07:21:33 ID:voff0Dl60


 とりあえず道も決まったので、私達はスキップでその路地裏に入っていった。
 大体の感覚で、なんとなく進んでいく。




 それから大体3分後、



ξ゚⊿゚)ξ「うーん」 スキップストップ


从'ー'从「どうしたの〜」 スキップストップ


ξ゚⊿゚)ξ「迷った」


从'ー'从


 迷った。



.

547名も無きAAのようです:2016/04/17(日) 07:22:37 ID:voff0Dl60



ξ゚⊿゚)ξ(……マズったな)


 ――というのも建前で、今の私達は実際ヤバイ。

 ここは既に勇者軍の結界内だった。

 しかも今回、その結界ですら何かが違う。



ξ゚⊿゚)ξ(結界の展開を察知できなかった。
       今までそんな事なかったのに。この結界、特別製か……)

ξ゚⊿゚)ξ(……敵の狙いは私だけでしょ。渡辺ちゃんとは離れた方が……)


从'ー'从「えっと、どうする〜? スマホで調べる〜?」

 思案を打ち切り、振り返る。
 きっと表情が険しくなっている。私は笑顔を作り、それを彼女に見せた。

ξ゚⊿゚)ξ「とりあえず前進あるのみでしょ!
      私はこのまま真っ直ぐ行くから、渡辺ちゃんは来た道を戻ってみて」

从'ー'从「うん! 分かったぁ〜」

 え? それだと私だけ焼肉屋に着かなくない? いやいや、もしこの道が近道なら後でケータイで呼ぶから大丈夫。
 というやりとりまで考えていたが、渡辺ちゃんはやはり致命的なアホのようだった。

 なんの疑問も抱かず、彼女は来た道をスキップで帰っていった。

ξ゚⊿゚)ξ(アホで助かったー)

.

548名も無きAAのようです:2016/04/17(日) 07:23:17 ID:voff0Dl60



ξ゚⊿゚)ξ「……さて」


 息を整え、全身に満ちる魔力に私の意思を通す。
 魔力は意思に反応し、意識をもって私の求めに応じる。

 仄かな閃光――私の首に、赤いマフラーが具現化する。


ξ゚⊿゚)ξ「行くわよ」

 私は自分の影を見下ろし、ゼノグラシアに声を掛けた。


(::::::::⊿)「……」

 影の中で揺らめく曖昧な存在。確かにあるのは鋭く光る片目だけ。
 これがゼノグラシアの待機状態。無愛想は相変わらずだった。

ξ゚⊿゚)ξ「敵は気配を消してる。魔族でもないから魔力探知もできない。
       目立つところに立って、向こうから出てくるのを待つ」

(::::::::⊿)「……愚行ダナ。的ニナルゾ」

ξ゚⊿゚)ξ「言ってなさい。移動する。迎撃任せたわよ」

(::::::::⊿)「……了解シタ」


.

549名も無きAAのようです:2016/04/17(日) 07:24:15 ID:voff0Dl60


 私はぐっと腰を落とし、腕を構えて目先を見据えた。
 走り出すタイミングは適当。心の中でカウントダウンを開始する。

ξ゚⊿゚)ξ「いち……に、さんッ」

 心の中で言うつもりが口に出ていた辺りは愛嬌。
 とにかく、走り出した私はさっさとトップスピードに入ることにした。

 ――肉体が風を切る。
 体表の熱は瞬く間に吹き飛び、空気の塊をかき分けて進む感覚がどんどん強くなっていく。

 たなびく赤マフラーが騒がしくバタバタと音を立てている。
 さすがに音を置き去りにはできないのでここら辺で加速を止める。というかこれが限界。

 これで助走は十分。路地の突き当たりも見えてきた。
 あとは適当にホップステップジャンプで空中に出るだけだ。


ξ゚⊿゚)ξ「よっ――」

 歩幅を大きく広げて軽く跳躍。ふわっ、と体が浮く感覚。

ξ゚⊿゚)ξ「ほっ――」

 着地と同時に地面を蹴る。跳躍は高度を増し、滞空は数秒に渡った。


ξ#゚⊿゚)ξ「せえ……」

 次で飛ぶ。
 タイミングを計り、私は最後の跳躍に向けて両足にぐっと力を込めた。

.

550名も無きAAのようです:2016/04/17(日) 07:25:18 ID:voff0Dl60



ξ#゚⊿゚)ξ「――のッ!」


 着地の瞬間、私は両足で地面を叩いた。
 体が一気に空に舞い上がる。数秒後、私は駅前のビル群を眼下に一望できる程の高さにまで到達していた。

 浮遊感が始まった。この感覚は束の間だ。私に体はすぐに落下し始める。
 私はくるっと体を翻し、着地できそうな建物に目星をつけた。

ξ゚⊿゚)ξ(あそこにしよう)

 今度は赤マフラーに魔力を込める。
 そもそもが魔力で出来たこのマフラーは、命じればその通りに動く私の手足でもあった。

 私は赤マフラーをぎゅっと握り締め、赤マフラーの尾で空中を叩いた。
 空気が弾ける乾いた音。途端、落下と加速が同時に始まった。

 目標の建物はあっと言う間だった。
 私は赤マフラーを先に着地させ、衝撃の大半をマフラーで受けきった。
 それからゆっくり安全に、私はその建物の屋上に降り立った。

.

551名も無きAAのようです:2016/04/17(日) 07:26:07 ID:voff0Dl60



ξ゚⊿゚)ξ「――さて」


 静止した夕日、わずかに紫がかった結界世界。

 ビル群に乱反射した夕日を浴びながら、私は――




(,,゚Д゚)



 ――視界の一端に、敵を見つけた。


.

552名も無きAAのようです:2016/04/17(日) 07:26:48 ID:voff0Dl60



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

                   第一戦 王座の九人・ギコ

                    VS 【欺帝審判】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


.

553名も無きAAのようです:2016/04/17(日) 07:33:05 ID:voff0Dl60

☆敵のステータス☆


≪ (,,゚Д゚) / 欺帝審判(フェイク・アンド・バニシングエクスカイザー) ≫


【本体名】 ギコ

【タイプ】 スタンド

【基本能力】 

[破壊力:C] [スピード:C] [射程距離:B]

[持続力:D] [精密動作性:C] [成長性:D]

A=かなり凄い B=けっこう凄い C=まぁまぁ良い
D=人並み    E=よわい     F=論外     S=最強


【概要】

真実と欺瞞を暗示する激化能力。発動するとジョジョ的スタンドが現れる。

スタンドで触れた物の 『真実』 を 『望んだ嘘』 と入れ替える能力がある。
硬い物は柔らかく、冷たい物は熱く、偽物を本物にしたりなどが可能。
あらゆる物質の性質を好きなように変化させられるが、代わりに持続力は低い(頑張っても10分)。
特に偽物を本物のするのはかなり疲れる。あんまり無理があると一瞬で能力が切れてしまう。

真実と嘘を入れ替える事は出来るが、その逆は出来ない。
なので、ギコには激化能力とは別に ≪真実を見極める目≫ というスキルがある。
滅多な事では騙されない鋭い観察能力がある。すごい!

そしてあくまで『入れ替える』なので、嘘と入れ替えた真実は、そのままスタンドの性質として活用できる。
硬い物を嘘と入れ替えた場合、スタンドはとても硬くなる。軽い物と嘘を入れ替えれば、スタンドは軽くなる。
しかも獲得した真実は能力発動中はずっと消えずに留まり、増えていく為、入れ替える度にどんどん強くなっていく。すごい!
一時的に敵の能力を奪うことも可能。


以上、なんだかとても頭を使いそうな激化能力であった。
彼の能力はブーンの能力と似通った部分も多く、もし彼が仲間になれば、きっとブーンの良い師匠になるだろう。

554名も無きAAのようです:2016/04/17(日) 07:33:46 ID:voff0Dl60


   ,、,,..._   
  ノ ・ ヽ   次回、戦闘! 頑張ります!
 / :::::   i   しっかり書き溜めるので一ヶ月はかかると思います!
/ :::::   ゙、   頑張ります! 頑張ります! 頑張ります! うおおおお!


.

555名も無きAAのようです:2016/04/17(日) 09:10:05 ID:F4Q2Qf6E0
何時の間にか奇妙な冒険になっとる

556名も無きAAのようです:2016/04/17(日) 11:42:23 ID:jToFjfoo0
乙!
相変わらず面白い

557名も無きAAのようです:2016/04/18(月) 13:18:45 ID:Tr.Cla/s0
おっ戦闘描写あるんけ?

558名も無きAAのようです:2016/04/27(水) 22:00:56 ID:2xBOw8eI0
おつ!!

559 ◆gFPbblEHlQ:2016/05/03(火) 00:45:50 ID:t2s5WCys0



 紫がかった夕焼けの結界世界、停滞しきった空気はぬるい。


 駅前ビル群の屋上で、私は男の姿をじっと見つめていた。
 男は数軒離れた屋上に立っていた。彼もこちらを睨んでいる。

 軽快な跳躍――男はひとつふたつと屋上を飛び移り、私と同じ場所まで来た。
 フェンスの内側、屋上の端と端。
 戦おうと思えば今すぐにでも始められるこの距離で、しかし男は身構えない。

 何か言いたげだ。そう思った矢先、男が口を開いた。


(,,゚Д゚)「戦う前に話がある」

ξ゚⊿゚)ξ「待った、その前に聞く。貴方はだれ?」

(,,゚Д゚)「……王座の九人、ギコ」

ξ゚⊿゚)ξ「……丁寧にありがとう。そっちの話を聞くわ」

 ――王座の九人。

 勇者軍最高戦力として選ばれた九人、男はその一人だという。
 この結界や徹底的な気配消しからして強敵だとは予想できていたけど、まさか四天王クラスがいきなり来るとはね……。

.

560名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 00:46:30 ID:t2s5WCys0


(,,゚Д゚)「まあ分かりやすく言う。今すぐ降伏しろ。
     色々と人体実験を受けるだろうが、しばらくは殺されないだろう」

ξ゚⊿゚)ξ「……生憎だけどお断りするわ。
      私の体、そんなに安くないの」

(,,゚Д゚)「なら話は終わりだ。俺が貴様を倒し、連れ帰る」

 淡白なやり取りが呆気なく終わる。

 途端、ギコの周囲に薄紫のオーラが立ち上った。
 それと同時に彼の体からなにかが剥離し、その姿を露にした。

 両手足に鎖付きの枷をはめられた白黒まだらの皇帝姿。
 朽ちかけの帝冠、外套は漆黒。
 十字架で口を塞いだ真白な仮面が、それの顔面を覆っている。

 この能力のAAは、作成技術不足により、ない。


(,,゚Д゚)「……欺帝審判。それが、俺の能力の名だ」

 傍らに現れた人型のそれはギコの激化能力・欺帝審判(フェイク・アンド・バニシングエクスカイザー)。
 そして、見ただけで十分に理解(わか)ってしまった。

 言いたくはない、認めたくはないが――


.

561名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 00:47:36 ID:t2s5WCys0


ξ;゚⊿゚)ξ(――今のゼノグラシアと互角、それ以上か)

 私は一歩後ずさり、ゼノグラシアを前に出した。
 影に潜ませ待機させている余裕は無い。魔力を供給し、彼を具現化する。

(::::::::⊿)「……難敵ダナ」

 やがて、人間の形をした闇の塊が私の前に現れた。
 ゼノグラシアは既に戦闘体勢をとっており、いやなんとも心強い。

ξ;゚⊿゚)ξ「……それでも倒してもらうわよ」

 具現化したゼノグラシアには常に魔力供給が必要になる。
 それも莫大な量の魔力。燃費が悪すぎるのだが、ところが私は魔王の末裔。
 こと魔力量に関しては他の追随を許さない。ゼノグラシアとはある意味、相性が良いのである。

ξ;-⊿-)ξ(最初から八割でいく。めいっぱい吸いなさい、ゼノグラシア……!)

 魔力を高める――私の周囲に、真紅色のオーラが立ち込める。
 十分な魔力量を貯蔵した後、私は赤マフラーの末端を魔力によって延長した。

 マフラーがするりと伸び、ゼノグラシアの首元に巻きつく。
 魔力で具現化した赤マフラーには魔力の供給ケーブルとしての役割がある。
 私達は接続された。そして私の『八割』の全力が、ゼノグラシアの中に注ぎ込まれていく。

.

562名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 00:48:23 ID:t2s5WCys0


 ――ゼノグラシアの姿が異変する。
 ただの影でしかなかったその姿には、次の瞬間、明確な実体があった。

 黒いマントを翻し、元気なうさみみをピンと立て、
 それは一つの命として地面に足をつける。


(メ._⊿)「……八割とは、ずいぶん豪勢だな」


ξ;゚⊿゚)ξ「そういう相手なの。ウサたんなら分かるでしょう」


(メ._⊿)「……我は三月兎。決してウサたんなどではない」

 ゼノグラシア・ウサたんモード! 彼はウサギさんになった。とても可愛い。
 私と一緒に赤マフラーを巻いているのもとても似合っていて可愛い。
 やはりこの赤マフラーは正解だった。

.

563名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 00:49:22 ID:t2s5WCys0

ξ#゚⊿゚)ξ「いいからやるわよ! 速攻あるのみ!」

ξ#゚⊿゚)ξ「あいつをブン殴りなさい! ゼノグラシア!!」

(メ._⊿)「……心得た」

 指示を受け、ゼノグラシア・三月兎モードが地面を蹴る。


(#,,゚Д゚)「ッ」

 三月兎が動いた。攻撃が来る。
 ギコはその一撃を欺帝審判で防御しようと思考したが、

 しかし、その思考が生まれた瞬間、もう既に

(メ._⊿) ストッ

(;,,゚Д゚)「――なッ!?」

 三月兎はギコの懐に着地し、ギュウと拳を握り締めていた。
 防御・反応がつけ入る隙はもう無い。

ξ゚⊿゚)ξ(初見殺し、成功!)

 三月兎はただシンプルに、全力を込めた拳でギコの腹を殴りブチ抜いた。
 グチ、という血肉を掻き分けた音が鳴る。

(;,, Д )「ぐ、うおォッ……!」

.

564名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 00:52:34 ID:t2s5WCys0


(;,, Д゚)「――――欺帝審判ッッッッ!!」

(メ._⊿)「!」

 しかし攻撃をくらった直後、すかさずギコが声を張り上げた。
 三月兎は咄嗟に一歩引き下がった。
 その一瞬あと、薄皮一枚を隔てたギリギリ寸前のところを、欺帝審判の左手が掠めていった。

ξ;゚⊿゚)ξ「気をつけて! その手、何かある!」


(;,, Д゚)「ただでは帰さん……!」

(メ._⊿)

 ギコは欺帝審判の背後に隠れて三月兎と対峙した。

 欺帝審判は三月兎を捕まえようと平手を振るってきた。
 だが、その攻撃速度は三月兎の目には殆ど止まって見えていた。
 三月兎は一回一回の攻撃を完全に見切った上で、余裕をもって回避することができた。

ξ;゚⊿゚)ξ「おいコラ! 一旦引いて!」

(メ._⊿) ピクッ

 しかし、私は三月兎を呼び止めた。
 三月兎の性格だとそろそろ反撃を仕掛けるに決まっている。
 それはまだ危険な行為だ。少なくとも、敵の手の内が分からない内は一撃離脱が望ましい。

(;メ._⊿)(……おいコラ?)

 何より、あの手の平による攻撃は明らかに物理ダメージ以外の何かを狙っている。
 敵は王座の九人。一手違いが命取りになりかねない――

.

565名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 00:53:31 ID:t2s5WCys0


 三月兎が敵を向いたまま後ろに跳躍。
 後退してきた三月兎は私の前に立ち、ふたたび悠然と身構えた。

 その間、欺帝審判はじっとしたまま三月兎を追っては来なかった。
 ギコもこちらの攻撃がよほど効いているのか、苦しそうに荒い呼吸を繰り返している。


ξ;゚⊿゚)ξ「……一撃は入った。次で致命傷を入れるわよ」

(メ._⊿)「心得た」

 ゼノグラシア・三月兎モードの全速力は時速300kmにも達する。
 予備動作ほぼナシ、ブレーキ要らずで行うこのダッシュは、常人の目には瞬間移動と大差ない。
 もっとも、現状私の全力8割を使っているのだから、これぐらいは出来てくれなければ困るが……。

 ――三月兎が軽く前傾した。突撃のタイミングを見計らっている。


(;,, Д)「……ッ!」

 その時、ギコの体が大きくよろめいた。
 明確な隙――三月兎は刹那を見切り、地を蹴った――!

.

566名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 00:56:10 ID:t2s5WCys0


ξ#゚⊿゚)ξ「決めろッッ!」

(メ._⊿)「――――ッ!!」

 三月兎は一瞬でギコとの距離を詰めた。
 完璧な位置につき、今度は手刀でギコの喉元を突きにいった。
 最悪ギコの首をも飛ばしかねないその一撃は、人間が認識できる容易く速度を超えていた。

(,, Д )「……なるほど」

(;メ._⊿)「ッ!?」

 ところが次の瞬間、三月兎の攻撃は欺帝審判の両手にガッシリと掴み取られていた。
 先程の攻防からは想定できない反応速度――私は、最悪を予感した。


(,, Д゚)「次はそのパワーを『入れ替える』」

 瞬間、欺帝審判の白黒まだら模様が反転した。


ξ;゚⊿゚)ξ(――あれが能力発動の合図か!)

 私は咄嗟に三月兎を引き戻そうと念じたが、


(;メ._⊿)(……手が離れん。敵にパワー負けしている)

 返ってきたのは絶対にありえない筈の言葉。
 ゼノグラシアの基本性能はぶっ飛んで強い。
 それを受け止め、ましてやパワーだけで動きを封じなんて余程じゃないとありえない。
 少なくとも、さっきの様子ではまったく考えられな――

.

567名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 00:58:29 ID:t2s5WCys0


(,,゚Д゚)「高みの見物はここまでだ」

 ――ギコの声が、右隣にあった。

ξ;゚⊿゚)ξ「ッ!?」バッ!

 脳内で火花が散る感覚。
 私は反射だけで声の方を見向き、両腕でできる限りの防御姿勢をとった。

(#,,゚Д゚)「ゴルァァァッッ!!」

 ギコの怒号と同時、私の耳に入ってきた音は二つ。
 「グチ」、「ボキ」――魔力で強化している筈の血肉が、ギコの拳に破壊された音だった。


ξ; ⊿ )ξ「い゙ッた……」

 今まで感じた事のない規模の痛みに意識が飛びそうになる。
 ぼやけた視界に、今度はギコの足が見えた。

(#,, Д゚)「死ねエッ!」 ズオアッ!!

ξ; ⊿ )ξ「ぐ――ッ!!」

 ギコの蹴り足が私の横腹を薙ぎ、空に打ち上げる。
 痛い、苦しい、クソ……ムカつく……!


ξ# ⊿゚)ξ(……やりやがったな……!)

 空高く蹴り飛ばされた私はビルの屋上を俯瞰する。
 落ちればひとたまりもない高さ。しかしこのまま落ちる気などトーゼン皆無。
 この程度は自力でも何とかできる。が、今は情報整理の為に敵と距離を取るべきだろう。

(#,,゚Д゚)

 ギコはまだ私を見上げ、反撃に警戒している。
 一方の三月兎は、欺帝審判の拘束に未だ手間取っていた。

.

568名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:01:30 ID:t2s5WCys0


ξ#゚⊿゚)ξ「――ったく! 世話の焼ける!」

 これだけ離れても私と三月兎は赤マフラーで繋がっている。
 私はマフラーを掴み、彼への供給魔力を“九割”に底上げした。

ξ#゚⊿゚)ξ「ゼノグラシア! 今すぐそれを振り払え!」

 私は落ちながら怒る。
 彼も私の怒りを察したのか、即座に行動に移った。


(;メ._⊿)「――心得た!」

 瞬間、三月兎はフワッとその場で跳躍。
 両足を揃えて欺帝審判に向け、その顔面に全力のウサギキックをブッ放した。
 この強力な一撃でも欺帝審判はびくともしなかったが、

(;,, Д゚)「ぐっ……!」

 ダメージのフィードバックがギコの集中力をそぎ落としていた。
 欺帝審判の握力が弱まったところで、三月兎はようやく拘束から抜け出てきた。

.

569名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:02:28 ID:t2s5WCys0

ξ#゚⊿゚)ξ「引っ張るわよ!!」 グイッ!

(;メ._⊿)「承知した!!」

 私は全力でマフラーを引っ張って三月兎を引き寄せる。
 ビヨーン!! という感じだった。

 空中で合流し、私は三月兎の背中に乗った。
 馬を扱うように踵でケツを叩き、指示を出す。


ξ;゚⊿゚)ξ「撤退して! フィールドを変える!
       あれが敵なら戦闘規模はそこまで大きくならない!」ゲシゲシ

(メ._⊿)「ならばどこに飛ぶ!」

ξ;゚⊿゚)ξ「イオンの立体駐車場! あそこで迎え撃つ!」

(メ._⊿)「イオン!? イオンだな! 心得た!」

 三月兎の足元に魔法陣が出現する。
 それは質量をもった足場となり、三月兎の両足を受け止めた。


ξ;゚⊿゚)ξ(ここじゃあ真っ向勝負しかないけど、イオンなら全力が出せる!)

 三月兎の体勢が沈む。
 私達は敵背を向け、イオンに向かって飛び出した。

.

570名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:03:34 ID:t2s5WCys0





(,, Д゚)「……退いたか……」

 ウサギキックをくらった顔面をおさえながら、ギコは飛び去っていくツンと三月兎を目で追っていた。


(,,゚Д゚)「……あのスピード、確かに入れ替えたはずなんだがな……。
     これだけのパワーとスピードでもまだ本気じゃあなかったとは、魔王だけある……」

(,,゚Д゚)「だが、これで向こうも力押しでは足を掬われると理解しただろう。
     ここから先は警戒を強めていこう。“真実”も二つ、手に入れた事だしな……」

 欺帝審判がギコの隣につく。

 先程の攻防、三月兎との接触時、欺帝審判は三月兎から『パワー』と『スピード』を奪取していた。
 その替わり三月兎には普通のパワースピードをくれてやったが、それでも十分な戦闘力を有していたのには驚いた。


(,,゚Д゚)(……そろそろ“嘘”の期限切れだ。
    次は向こうも俺の能力特性を察した上で、行動するだろう)

(,,゚Д゚)(もっとも、欺帝審判が得た真実に“期限”はない。
     貴様らから頂いたパワーとスピード、存分に使わせてもらうぞ――)

 ギコは欺帝審判を伴い、ツンの後を追いかけた。


.

571名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:05:46 ID:t2s5WCys0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


☆現在のステータス☆

≪ (,,゚Д゚) / 欺帝審判(フェイク・アンド・バニシングエクスカイザー) ≫

【基本能力】 
[破壊力:C→A] [スピード:C→S] [射程距離:B]
[持続力:D] [精密動作性:C] [成長性:D]

A=かなり凄い B=けっこう凄い C=まぁまぁ良い
D=人並み    E=よわい     F=論外     S=最強


【概要】
ツンの能力・ゼノグラシアからパワーとスピードを写し取った状態。
欺帝審判は基本能力が低いため、そこを補えるものを得られたのは大きい。
ギコにとって、これは最善の初手であった。イオンに続く。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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572名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:06:26 ID:t2s5WCys0







 ―――― イオン 立体駐車場 二階 ――――






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573名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:08:23 ID:t2s5WCys0



(メ._⊿)「落ち着いたか」

 どこぞから帰ってきた三月兎が穏やかに言った。
 喉が渇いたのでイオンの売り場からなんか適当に取って来い、と命令しておいたのだ。
 自分の能力なので気兼ねなくパシリに使えてすごく助かる。

 私は差し出されたトップバリュ濃縮還元オレンジジュース100%1L(参照:https://www.topvalu.net/items/detail/4901810582686/
 の飲み口にストローを突っ込んで、深呼吸のようにぐびぐび飲んだ。


ξ;゚⊿゚)ξ プヘッ

ξ;>⊿<)ξ「――〜〜〜ッッッアア〜〜〜〜! 生き返る!」


(メ._⊿)「……やはり九割は疲れるか」

ξ;゚⊿゚)ξ「ったりまえでしょ! ただでさえ未熟なんだから!」チュー
  つ臼

ξ;-⊿‐)ξ「……まあ今回は、敵が敵だから仕方ないけど……」

(メ._⊿)「……敵の『入れ替える能力』。どう戦う」

ξ;゚⊿゚)ξ「……正面からは絶対にナシ。ああいう手合は頭が良いのよ。
       パワーで勝っても策略でひっくり返される。お父さんもそう言ってたし」

ξ;゚⊿゚)ξ「これでも自分の性格は分かってるのよ。
       だからこそ、今は自分らしくない戦い方よね……」

(メ._⊿)「……待て、戻ったぞ。入れ替わっていたパワーとスピードが戻った」

 三月兎は手足の動作を確かめながらそう言った。
 入れ替える能力は時間制限付き、それも5分程度くらいという事か……。

 だったら気をつけていれば今後三月兎の性能を入れ替えられる事はないだろうが、
 それだとひとつ、まだ腑に落ちない事がある。

.

574名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:10:21 ID:t2s5WCys0


ξ;゚⊿゚)ξ「ギコとかいう奴、わざわざ自分で『入れ替える』と言ったわ。
       ヒントどころか答えになるような事を、王座の九人が言うと思う……?」

(メ._⊿)「……能力を知られても問題無いのかも知れん」

ξ;゚⊿゚)ξ「……入れ替えた時点で、目的を果たせたからかな。
       だったら向こうはパワーとスピードが元に戻ってない」

ξ;゚⊿゚)ξ「自分の8割のパワーと戦うのか……うわあ……」

 ギコの能力は“入れ替える能力”で間違いないだろう。
 だが、もしも彼の能力に“入れ替えたものを蓄積する”という性質があるなら、色々とマズい。

 長引かせたら確実に不利になる。本当にうわあという気持ちだった。
 早々に、しかもこれ以上敵が強くなる前に、確実に倒さなくちゃ……。

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575名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:13:24 ID:t2s5WCys0


(メ._⊿)「……全力を出すつもりか」

ξ; ゚⊿゚)ξ「……ここまで来たら九割も十割も一緒よ。
       半端なコトして負けるより、断然マシ!」

 断言すると、三月兎は眉間をすぼめて言った。

(メ._⊿)「奥の手が敵にバレるが、いいのか」

ξ;-⊿-)ξ「……王座の九人を倒せるなら五分五分よ。
       お父さん達もまだ控えてるんだし、ここで確実に倒すのが私の仕事」


(メ._⊿)「……なら、私は引っ込むとしよう」

ξ゚⊿゚)ξ「もういい! もどれ!」

(メ._⊿)「……ポケモン扱いするな」

 三月兎が踵を返し、マントを大きく翻した。
 その途端、三月兎は黒い霧に包み込まれて姿を消した。
 接続先を失った赤マフラーが、ぽすんとコ/ン/ク/リ/ー/ト※NGワードです!気をつけてください!※に落ちる。
                         ↑↑↑デンジャーデンジャーとても危険デンジャーデンジャー↑↑↑

ξ;-⊿-)ξ


ξ; ゚⊿゚)ξ(さて……。まずは、身を隠さなきゃ……)

 もうすぐギコもやってくる。
 身の安全を確保したら、次は全力で迎え撃つ……!

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576名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:14:04 ID:t2s5WCys0














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577名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:15:27 ID:t2s5WCys0

【interlude:5】




 イオンの立体駐車場、その一階に足を踏み入れる。
 ギコは、その一歩目でぐっと立ち止まった。


(,,゚Д゚)「……」


 ほぼ満車状態の駐車場は見通しがいいとは言えなかった。
 どこから来るか分からない、というのは十分に認識しておくべき要点だ。

 欺帝審判を前へ。
 盾にするようにして、さらに一歩踏み込む。


(,,゚Д゚)(……あれだけハッキリ垂れ流してた気配が無い。
     魔王城ツンの魔力量は桁違いだ。それを隠しきれるものなのか?)


(,,゚Д゚)(……分からんが、念には念を、警戒には警戒を重ねるとしよう……)


 ツンの魔力量は現魔王ロマネスクにも匹敵する。
 その気配を消したという事は、確実に何かがある。
 ギコは慎重に前進する。支柱の陰に身を隠し、安全を確認してから次の支柱へ。

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578名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:16:53 ID:t2s5WCys0


(,,゚Д゚)「……」


 二階へと続くスロープを前にして、ギコはようやくツンの魔力を感知した。
 頭上、二階には五人分。この階に至っては無数に魔王城ツンの気配があった。


 無数――それは、正しい認識だった。


ξ ⊿ )ξ


(,,゚Д゚)「……ただの分身、という訳でもなさそうだな」

 振り返り、背後に立っていた魔王城ツンを見て呟く。
 正真正銘、間違いなく、そこに居るのは本物の魔王城ツン。

 ギコは自身の感覚に絶対の自信を持っていた。
 真実と嘘を入れ替える能力――それを補完する副次的なスキルとして、彼は≪真実を見極める目≫を持っている。
 実際ギコは過去の戦闘においても分身などの誤魔化しに一切引っ掛からなかった。
 そういうものは確実に見破ってきた。その目、この感覚を疑う余地など微塵もない。


(,,゚Д゚)(気配は複数、実体は一つ。なのに複数人居ると確信できる)

(,,゚Д゚)(が、しかし目の前には一人だけ……どういう事だ)

 ギコは目だけで周囲を一瞥する。

(,,゚Д゚)(……魔王城ツンの気配がとりあえず十人分、俺を取り囲んでいる。
     その内、目に見えてるのは眼前の一人だけ。あとの九人は見えない……)

(,,゚Д゚)


(,,゚Д゚)(……とにかく、動いてみるか) スッ・・・

 ツンから写し取ったパワーとスピードは未だ健在。
 それを発揮し、欺帝審判が高速で飛び出した。
 狙うは実体を持つ魔王城ツン、その命――

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579名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:19:41 ID:t2s5WCys0


ξ ⊿゚)ξ ダッ!

 欺帝審判の攻撃を見てツンも動いた。
 入れ替える能力を回避しようと右へ跳躍――しかし、その速さは今の欺帝審判に遥かに及ばない。

ξ; ⊿ )ξ「――あ゙っ」

 瞬間、欺帝審判の手が魔王城ツンの首を掴んだ。
 欺帝審判の指先はそのまま彼女の喉を押し潰し、血肉を裂いて奥にねじ込まれていく。

(#,,゚Д゚)「死ね、魔王城ツ――」

 ――目の前で起こっている事は、本当に起こっている事だった。
 欺帝審判は、確かに本物の魔王城ツンを殺していた。

 事実、攻撃を受けている魔王城ツンはハッキリと明確な死を体感していた。
 あくまで本物の一個人として、魔王城ツンとして。



(,,゚Д゚)


 しかしこの時、ギコが視界の端に捉えていたのは、




ξ# ⊿゚)ξ


(;,,゚Д゚)「――なッ!?」


 たったいま殺したはずの、魔王城ツンその人であった。


.

580名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:21:59 ID:t2s5WCys0


 二人の『本物の魔王城ツン』が同時に実在している。
 ギコがその事実に思考を巡らせている余裕はなかった。

 もう一人のツンが助走をつけて跳び上がる。
 天井に着地し、天井を足場に更に加速して落下。
 ツンは空中で身を捩り、ギコに踵落としを見舞った。

(#,,゚Д゚)「欺帝審判ッ!」

 直撃の寸前、ギコとツンの間に欺帝審判が割り込んだ。
 血塗れの手で踵落としを受け止め、欺帝審判がツンの足を掴み取る。


(#,,゚Д゚)「驚かされたが、これも同じ事だ!」 ブオンッ!

 ギコが下に向かって片腕を振るう。
 欺帝審判はそれと同じ動きをし、ツンをkonクリートに叩きつけた。
 わずかにコン栗ートが陥没し、血の跡がべっとりとその場所を濡らす。

ξ; ⊿ )ξ「……ッ!」ジタバタ

 欺帝審判が再度ツンの足を持ち上げる。
 ツンは手足を振るって抵抗して見せるも、宙吊りの状態では大した意味を成さなかった。


(#,,゚Д゚)「やれッッ!」


 二人目のツンが殺される――その寸前、


ξ# ⊿゚)ξ

 死角から現れた三人目のツンが、欺帝審判の後頭部を拳で打ちぬいた。
 その威力は十二分。ギコは欺帝審判もろとも吹き飛ばされ、壁際の車に背中を打ちつけた。

.

581名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:23:01 ID:t2s5WCys0


(#,, Д゚)「――!」

 それも束の間、ギコの目が憤怒に染まる。
 欺帝審判は邪魔な車を力尽くで跳ね除け、二人の魔王城ツンに向かって疾走した。


ξ# ⊿゚)ξ

ξ; ⊿゚)ξ

 欺帝審判が二人のツンの前に立ちはだかる。
 殺し損ねた方は既に満身創痍。
 欺帝審判はそちらに狙いを定めて手刀を振り下ろした。

 瞬間、ばっちり無傷のツンが欺帝審判の脇をすり抜けてギコに迫った。
 もう一人の自分を完全に見捨てた選択――その間に、魔王城ツンが一人死んでいた。


(#,, Д゚)「来い……!」

 よろめきながら立ち上がるギコ。
 パワーとスピードは既に互角。
 ギコは拳を構えると同時、鋭く前にステップしてツンを迎え撃った。

 ――ビスッ!

(#,,゚Д゚)

ξ# ⊿゚)ξ

 ギコとツンの拳が交差し、互いの頬を切る。


(#,,゚Д゚)(欺帝審判が戻るまで時間を稼げば、俺の勝ちだ――)


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582名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:23:06 ID:YiKt4DC.0
こんな時間に
コ/ン/ク/リ/ー/トのくだりワロタ支援

583名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:23:40 ID:LYWKXuvY0
支援

584名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:24:48 ID:t2s5WCys0


 ――しかしそう確信した途端、ギコの横腹にはツンの拳が深くめり込んでいた。


(;,,゚Д゚)「……なッ……!?」

ξ# ⊿゚)ξ

 完璧な形で打ち込まれてしまったボディブローが鈍痛を滲ませる。
 ギコは僅かに後退し、殴られた所を手で抑えた。


(;,,゚Д゚)(……いま、確かに奴の右拳は俺の顔面を狙い、そして攻撃してきた……)

(;,,゚Д゚)(なのにその拳は俺の腹部を殴り、逆に頬の痛みはもうない……)

 ギコは自分の頬を指先でなぞったが、そこに先程の切り傷は存在しなかった。
 一度は確かに刻まれた傷跡が、現在は無いという事実。
 何かが起きたという確信を得るには、十分だった。


(;,, Д )(決して超スピードじゃあない。
      奴は絶対に俺の顔を狙っていた。それは間違いない……)

(;,, Д )(……顔を殴られたと思ったら、ボディブローを決められていた。
      二つの攻撃が同時に起こったのか? そして、片方だけが現実に残った……?)


 理解、推察が結論に近づく――


(;,, Д゚)「……貴様の能力、察しがついたぞ……」

ξ ⊿゚)ξ「……」

 ギコの言葉にも沈黙を守る魔王城ツン。
 彼女はすこし乱れてしまった赤マフラーを整えると、再びギコに立ち向かった。

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585名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:26:44 ID:t2s5WCys0


(;,,゚Д゚)「――可能性の同時実行、並行存在の同時実在!」


(;,,゚Д゚)「それが貴様の能力だなッ! 魔王城ツン!!」


 ギコは欺帝審判を引き戻してツンを殴り吹き飛ばした。
 しかしそのとき既に“並行存在のツン”に実在権は移っており、欺帝審判の迎撃は無駄打ちにされた。


(;,,゚Д゚)「化け物め……!」


ξ# ⊿゚)ξ「無駄だ」


 次の魔王城ツンが攻撃を仕掛けてきた。
 ギコは欺帝審判の手刀でそれを迎撃し、彼女の胴体を深々と斬り上げた。

 その一撃で魔王城ツンは確かに死んだ。
 だが、もうその瞬間には、次の魔王城ツンがギコの目の前に現れていた。


 あらゆる反応・対応を無に返し、常に完全無欠超最高の道筋を直進できるツンの能力。
 どれだけ先手を打とうが、この能力の前では全てが“手遅れ”。
 今のギコには、彼女の能力への対策が何一つとして存在しなかった……


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586名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:28:08 ID:t2s5WCys0

ξ# ⊿゚)ξ「――」

(;,,゚Д゚)「――ッ!」

 決着の一撃がギコを射程圏内に捉える。
 あと数歩の距離で睨み合う二人。身じろぐギコ、魔力を込めて拳を構えるツン。


ξ# ⊿゚)ξ「……この能力は、ジャンケン一回に対してグーチョキパーを同時に出すようなもの」

ξ# ⊿゚)ξ「発動した時点で、私の勝ちは決まっていた……!」


(;,,゚Д゚)「くそっ……くそオッッッ!!」

 瞬間、欺帝審判がツンの肩を掴んだ。
 欺帝審判は両手に全力を込め、二人を引き離そうと大きくのけぞった。

 それでツンは呆気なく引き離せた。
 ただし、もうその時点で、次のツンが目の前で身構えていたが……。

(;,,゚Д゚)「――だったら貴様の莫大な魔力そのものを!! ゼロと入れ替えるッ!!」

 さらに欺帝審判の両手がツンの頭を鷲掴みにする。
 しかし、だが、もうその時、既に、真紅を纏ったツンの拳がギコの顎を打ち抜いていた。

ξ# ⊿ )ξ

(;,, Д )「――あ、」

 ギコの意識が、一瞬どこかにちぎれ飛ぶ。


ξ# ⊿゚)ξ「――――!!」

 ヒュッ、と空気を切り裂く音。
 続く二撃目がギコの心臓を穿ったのは、その次の瞬間だった。


【interlude:out】
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587名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:30:23 ID:t2s5WCys0



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☆現在のステータス☆

≪ ξ ⊿゚)ξ / ゼノグラシア・ゲシュタルト ≫

【基本能力】
[破壊力:B] [スピード:B] [射程距離:D]
[持続力:C] [精密動作性:D] [成長性:-]

A=かなり凄い B=けっこう凄い C=まぁまぁ良い
D=人並み    E=よわい     F=論外     S=最強  


【概要】
ツンちゃんが魔力を全開にすると発動する彼女本来の能力。
影やウサギだったりしていた能力像はツンちゃんっぽくなり、本人とほぼ同じ存在になる。

能力は『可能性の同時実行』、『並行存在の同時実在』。本人いわくグーチョキパーを同時に出すような能力。
不要と判断された可能性は勝手に排除され、勝利の可能性だけが残って実行される。
Aのツンちゃんが倒されても、倒されなかったBのツンちゃんが敵を倒す。
もしそれが駄目でもCのツンちゃんが敵を倒し、それでも駄目ならDのツンちゃんが敵を倒す。

目的に対して全ての可能性を虱潰しにし、不都合な可能性は並行存在に押し付けてなかったことにする。
そういうことができる能力。これ以上の説明は難しく、とてもすごい

対策は発動させないこと。
発動されたら魔王直伝のゴリ押し物理パワーに殴り殺されて終了。慈悲はない。

もうひとつの対策は、無限の可能性からくる攻撃を回避しつつ本体を見つけること。
能力発動中、本体は仮死状態である。
そこをボコボコにするしかない。みんなで頑張ろう。


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588名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:30:26 ID:YiKt4DC.0
半端ない

589名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:31:03 ID:t2s5WCys0














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590名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:32:08 ID:t2s5WCys0



 血液の流れが加速した、ような錯覚で目が覚めた。

 仮死状態で冷えきっている体に、熱々の血が巡っていく。
 なんというか、ぞわぞわする……。
 生きている実感を取り戻すにはもう少し時間が掛かりそうだ。


ξ;-⊿-)ξ「……」


ξ;゚⊿゚)ξ「……とりあえず、勝ったか……」

 私は安堵して車のシートに背中を預けた。
 今は、もう少しだけこのシートの柔らかさに甘えていようと思う。
 むぎゅうという感じでシートが受け入れてくれたのでよかった。やったね。


ξ;゚⊿゚)ξ(……緊急事態とはいえ、人様の車をぶっ壊して侵入してしまったな……)

ξ;-⊿-)ξ(後始末はお父さんに頼もう。猫なで声でいけばやってくれるはず……)


ξ;-⊿゚)ξ「……」

 しかし、これ以上ゆっくりしている暇もなかった。

 ギコが動き始めていた。
 満身創痍なのか気配を消すことすら忘れ、覚束ない足取りでどこかに行こうとしている。
 最後の一撃には彼の内蔵を破壊したという手応えが十分にあった。
 だから死にかけなのは間違いないが、下手な事をされる前に片付けないと……。

 私は車を降り、体の調子を確かめる。
 手足は十分に感覚を取り戻した。頭も動く、体も大丈夫……。


ξ;゚⊿゚)ξ「……よし、行くか……」


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591名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:33:27 ID:t2s5WCys0




(;,, Д )「……ふー……」


 階下に続くスロープを降りたくらいで、ギコの息遣いが聞こえてきた。
 さっきまで私達が戦闘していた辺りには血の跡。
 支柱の陰をひとつずつ移りながら、私はその跡を追った。


(;,, Д )(……逃げ……ねえと……)


|はしら|⊿゚)ξ ジィ


(;,, Д )(……しぃを助ける……俺も、生き残る……)


|はしら|⊿゚)ξ ジィ


(;,, Д )(両方果たす……やく、そく…………)


 一歩、一歩と前進していくギコ。
 それも程なくして止まり、やがて意識を失ったギコはドサァという感じでその場に倒れこんだ。
 クソッ私も意識が朦朧としてきた。語彙力に限界を感じる……………


|はしら|⊿゚)ξ(……ギコのやつ、まだ息があるわね……)


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592名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:34:53 ID:t2s5WCys0


 陰を出て、ギコの傍らに立つ。

 かぼそい呼吸に支えられた彼の命は風前のなんとやら、あれだ灯火。
 このまま放置していれば簡単に死を迎えるだろう。


ξ゚⊿゚)ξ「……どう思う、ゼノグラシア」

 そう呟くと私の影が形を変え、ウサミミになった。


(::::::::⊿)「……『どう』、というのは、どういう意味だ」

ξ゚⊿゚)ξ「殺すかどうかっていう判断がね……。
      半端に生かすくらいなら殺せ、っていうのがお父さんの方針。
      殺すなら今すぐトドメを刺すべき、なんだけど……」

(::::::::⊿)「……こいつから情報を聞き出すつもりか?
      我々は王座の九人の一角を落としたんだ。今はそれで十分だろう……」


ξ゚⊿゚)ξ「……うーむ」


 ――さて、どうしたものか。


.

593名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:35:33 ID:t2s5WCys0




 1.この場でギコを殺す


 2.生かして情報を吐かせる



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594名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:36:43 ID:sBJ0Wh2A0
1

595名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:36:59 ID:t2s5WCys0


(^ω^)おしまい!また次回!('A`)

(^ω^)早くて二週間、遅くて来月くらいになります('A`)

(^ω^)最後の二択は5/3で締め切り('A`)

v(^ω^)同票でもダイジョウブイ('A`)v

596名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:39:52 ID:YiKt4DC.0

今日締め切りか

597名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:42:55 ID:5DtcU/Z20
乙、2番で

598名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 01:57:01 ID:CEuFlXQEO
2

599 ◆fBYzPFPBqs:2016/05/03(火) 02:04:37 ID:t2s5WCys0
一応酉キーで先の展開を確定させときますNE(^ω^)

600名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 02:08:49 ID:2f2QABN20
おつです
1

601名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 02:17:38 ID:oz2X77ds0
2

602名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 03:30:55 ID:YfCTRLE60


603名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 03:31:41 ID:9b72WF0Y0
乙乙、2かな

604名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 08:09:50 ID:eE3YcIO60
戦闘中律儀に「フェイクアンドバニシングエクスカイザー!」って叫ぶギコさんまじ男前

605名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 08:09:54 ID:909n3kaw0
なんか殺すとやばい気がするから2で

606名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 08:10:45 ID:eE3YcIO60
あ、1で

607名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 14:14:01 ID:qngmzIfwC
2

608名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 15:09:58 ID:Ue9HmX9U0
おつおtwo

609名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 15:24:56 ID:mip8GLCk0
1
奥の手を見られたからには殺すしかない
慈悲はない

610名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 17:14:56 ID:0lRG6B7I0
2

611名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 17:29:19 ID:8VfBm5e60
ブーンを強化したいから2

612名も無きAAのようです:2016/05/03(火) 18:44:56 ID:LR/eCig60
イオンなら全力出せるってふざけてるようでマジだった
選択は1で

613名も無きAAのようです:2016/05/04(水) 02:56:06 ID:RGfgeSQs0
2

614名も無きAAのようです:2016/05/04(水) 08:00:57 ID:UfMmZzgw0
悪ふざけしててもカッコいいところはちゃんとカッコいいなあ

615 ◆fBYzPFPBqs:2016/05/04(水) 12:23:49 ID:DOK9cWPI0
(^ω^)締め切り!('A`)
(^ω^)2で書いてきますNE!('A`)

616名も無きAAのようです:2016/05/04(水) 12:48:51 ID:fnFeqV3Q0
おっ生きた

617名も無きAAのようです:2016/05/04(水) 13:30:35 ID:YibG5OGk0
やったぜ

618 ◆fBYzPFPBqs:2016/06/21(火) 04:25:58 ID:gdPE2cPQ0
(^ω^)今夜投下('A`)
     ξ゚⊿゚)ξ

619名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 04:49:28 ID:1/ZiYArc0
おっおっ

620名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 10:02:59 ID:p7RD9Hdk0
キタコレェ

621名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 10:28:52 ID:OQav4f/g0
ktkr

622名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 22:11:02 ID:gdPE2cPQ0

【interlude:6】



ξ゚⊿゚)ξ「……ま、こいつの処遇は他の人に任せましょ」

(::::::::⊿)「……」

 私は、ギコを生かしておく事にした。

 ゼノグラシアは何か言いたげだったが、わざわざ言われなくともこれが危険な判断なのは分かっている。
 ギコは確固たる殺意をもって私の前に現れた。いま目を覚ませば、きっとまた殺し合いになる。

 だけど、それでもと思ってしまったのだ。
 この感情が慈悲か同情か定かではないが、とにかく私は今、なんというか……。


ξ゚⊿゚)ξ「……こいつ、思ってたより人間らしかった。
      勇者軍ってもっとキチガイまみれだと思ってたから、なんか……」

(::::::::⊿)「……」


ξ゚⊿゚)ξ「……なんか、私は、そこまでやる気にはなれない」


(::::::::⊿)「……さっさと結界を出よう。他の連中が心配している筈だ」

ξ゚⊿゚)ξ「……それもそうね」


ξ-⊿-)ξ「さっさと帰って寝よっと……」

 戦い、勝ちはしたが、どこか腑に落ちない。
 敵が敵らしくないという事に、私は思いのほか動揺してしまっていた――



.

623名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 22:13:01 ID:gdPE2cPQ0



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

                   第一戦 王座の九人・ギコ

                    VS 【欺帝審判】

                        勝利!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


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624名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 22:15:19 ID:gdPE2cPQ0




 ――カクン、と力が抜けた。


ξ゚⊿゚)ξ


 その感覚は右足から左足にも続き、私は抗う間もなく膝から崩れ落ちていた。

 私は咄嗟に眼下を一瞥する。

 視線の先に見えたのは、血飛沫にまみれたコ/ン/ク/リ/ー/トだった。


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625名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 22:17:41 ID:gdPE2cPQ0


ξ;゚⊿゚)ξ「……これは……」

 私の膝をなにかが貫いた。
 激痛は、それを自覚した直後にやってきた。

ξ; ⊿<)ξ「――い゙ッ!!」

 すっかり気が抜けていた、甘かった。
 本気で私を仕留めるつもりなら、敵が一人で来る訳がないのに――


ξ; ⊿゚)ξ(……完全に油断した……ッ!)

626名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 22:20:12 ID:gdPE2cPQ0


ξ; ⊿゚)ξ「――ゼノグラシアッ!!」

(メ._⊿)「……大丈夫か?」

 咄嗟にゼノグラシア・ウサたんモードを召喚し、私はぺたんと座り込んで体勢を維持した。
 もはや傷を見返す必要もない。私は三月兎の背後に隠れ、彼に命令を下した。


ξ;゚⊿゚)ξ「相手の武器は銃よ! この立体駐車場を狙える位置に敵が居る!」


 瞬間、三月兎の片手が空中を払った。
 それと同時に “チュイッ” という回転音が三月兎の手中で高鳴る。

(メ._⊿)「……的中だな……」

 三月兎の手から魔力を帯びた弾丸が二つ、転がり落ちた。
 この一瞬、どの判断が遅れても私は確実に命を落としていた。

 最悪の敵――そうだ、これが敵だ。
 これに比べればギコとの戦いはまさに王道だった。

ξ;゚⊿゚)ξ(……いや、そんな奴だから囮にされたのか……)


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627名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 22:20:55 ID:gdPE2cPQ0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



(´<_` )「……ふむ、これはもう無理だな」


 流石弟者はスコープ越しに魔王城ツンを見つめたまま、しかし呆気なく狙撃を諦めた。
 彼は耳元に装着した通信機を点け、淡白に呟く。


(´<_` )「仕留めよう」



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628名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 22:24:30 ID:gdPE2cPQ0



 三月兎にお姫様だっこで運ばせ、私は支柱の陰に身を隠した。

ξ;-⊿-)ξ「……ありがと」

(メ._⊿)「造作も無い。だが、問題は次だ……」

 これで敵の狙撃は防げるが、さて、次だ。
 カッツーン、カッツーンと厭味ったらしく一歩一歩靴底を鳴らしながら近付いてくる次の敵を、さてどうしたものか……。


ξ;-⊿-)ξ(……ゲシュタルトモード、こんなに早く攻略されるか……)

 あれは 『発動した時点での私』 が 『無限の可能性』 となって相手をゴリ押し圧倒する能力。
 よって両膝を破壊された今の状態で発動しても、あの能力は大して意味をなさないのだ。
 ゲシュタルトモードがタイマン最強なのは過言ではない事実だが、種が知れれば攻略は呆気ない。

ξ;-⊿-)ξ(……フィールドをここにした私のミスだ。
        敵に覗き見られ、情報を与えた……)


 さて、さて、さて……反省してれば現実逃避していられるが、そうもいかない。
 これでもかというほどハッキリ打ち鳴らされていた足音は、いつしか鳴り止んでいた。

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629名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 22:27:59 ID:gdPE2cPQ0




ξ;゚⊿゚)ξ


( ´_ゝ`)「――ギコみたいに名乗っておこうか」


 そう言って現れた男は海パン&アロハシャツの変態だった。
 私は一瞬 「いやいやなんでやねーんw」 と気前よくツッコミしたくなったが、膝の痛みがそれを打ち消す。


( ´_ゝ`)「王座の九人。流石兄弟の兄、流石兄者」


( ´_ゝ`)「強さは上から五番目だ。よろしくな」


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630名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 22:29:35 ID:gdPE2cPQ0



ξ;゚⊿゚)ξ


(メ._⊿)「……ツン、指示を」

 私の心境を察しているであろうに、三月兎はあえて私に指示を仰いだ。
 敵は王座の九人で五番目に強い男。それをこの状態で倒すのは――思考は、ここで打ち切った。


ξ;-⊿-)ξ「…………」


ξ;゚⊿゚)ξ「…………」



ξ;゚⊿゚)ξ「……足掻きましょう、最後まで」

(メ._⊿)「……倒さないのか? 別に、倒してしまっても構わんのだが」

ξ;゚ー゚)ξ「……あなた、冗談言えたのね」

 こんな時でも笑みが溢れる。
 だが、おかげで開き直れた。


ξ#゚⊿゚)ξ「……行くわよ、ゼノグラシア」

(メ._⊿)「……心得た」

【interlude:out】

631名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 22:30:22 ID:gdPE2cPQ0














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632名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 22:31:27 ID:gdPE2cPQ0




 ブーンは学校を飛び出し、街中を駆けずり回ってツンを探していた。
 学校中も、通学路も、途中のゲーセンも、駅の近くも、ツンの家もすべて隈なく探し尽くした。

 もちろんドクオに頼んで魔力を辿ってもらう事もした。
 だが、それでもツンの気配は一切感じ取れなかったのだ。
 最初こそヘラヘラ呑気にしていたブーンも、次第に顔色を変えて必死さを露わにしていく。

 ドクオ、ミセリ、貞子……頼れる相手には全員声をかけた。
 時刻はとうに午後十時を過ぎている。

 ツンはまだ、見つからなかった。


(; ゚ω゚)「ツーーーーーーーーン!!」

(; ゚ω゚)「どこだおーーーーーーッッッ!!」

 ブーンは近所迷惑も考えず、ひとけの収まった住宅街をひたすら走り回っていた。
 当然のように成果はゼロ。それでも、ブーンは徒労を続けるしかなかった。


 『――内藤君、駅前に来て』

 ふとブーンの脳内に声が響く。ミセリの声だった。


(; ^ω^)「見つかったのかお!?」

 『手掛かりだけ。とにかく来て』

(; ^ω^)「分かったお!!」 ダッ

 彼女の冷ややかな声色に気付かないまま、ブーンは駅に向かって走り出した。

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633名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 22:32:19 ID:gdPE2cPQ0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 駅から程近い路地裏。飲み屋が多いせいもあって、この時間でも人通りは多い。
 そんな中、ミセリ達は壁際で一人の少女を介抱していた。


从 ー 从 「……」

 渡辺は、何らかの魔術を受けて意識を失っていた。

 貞子いわく、彼女にかけられた魔術は心身操作。
 膨大な魔力によって施されたせいで強制力は絶大なものの、術式自体はとてもシンプルな作りだった。
 除去も容易らしく、その作業は一分と掛からず完了していた――――


.

634名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 22:34:06 ID:gdPE2cPQ0


ミセ*゚ー゚)リ「……この子、術者には何を命令されてたの?」

川д川 「細かい所は分からない。ただ、術式の中にはお嬢様の魔力痕があった。
      だから多分、命令は単純に “魔王城ツンを殺せ” だと思う」


ミセ*゚ー゚)リ「この子、確かお嬢様の友達よ。
      お嬢様の事だから、気付かずにやられてても不思議じゃない」

川д川 「……いや、術式起動の痕跡はなかった。この子は何もしてないよ。
      彼女は別の理由で気絶した。それはともかく、今はお嬢様の追跡が先決だ」

ミセ*゚ー゚)リ「その行き先は?」

 貞子はしばし沈黙し、その後、大きな溜め息を漏らした。

川д川 「……魔力を追うまでもない。
      お嬢様の魔力痕は、敵の本拠地に向かって続いている」

(;'A`)「そんな……!」

ミセ;*´ー`)リ「……問題は山積みね……」



(; ^ω^)「――遅れたおッ!!」

 暗く沈みかけた雰囲気に割り込むように、ブーンが路地裏に勢いよく駆け込んできた。
 足を止めたブーンは激しい呼吸を繰り返しながら、ミセリ達を見回して息を呑む。

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635名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 22:35:47 ID:gdPE2cPQ0


(; ^ω^)「……ツ、ツンは……?」


(;'A`)「……」

(; ^ω^)「……」


川д川 「……生死は分からないけど、敵に連れ去られたのは間違いない」

 わずらわしい沈黙を払うように貞子が言い切る。

 それに続いてミセリがブーンの目前に立ち塞がると、彼女はブーンを見下ろして言った。
 ブーンよりも背が高いミセリ!? 薄い本を予感するには十分すぎるワンシーンだった。


ミセ*゚ー゚)リ 「言っておくけど、必要以上に責任を感じる必要はないからね」

ミセ*゚ー゚)リ 「ドクオと内藤君はお嬢様の護衛役みたいなものだったけど、
       正直、お嬢様が負ける相手なら居ても居なくても同じだったから」

 語気は優しいが、ミセリの言葉は的確に事実を突いていた。
 アホ丸出しでも魔王の娘。単純な戦闘力において、ツンは二人を大きく引き離しているのだ。

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636名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 22:38:41 ID:gdPE2cPQ0



(; ^ω^)「……追いかけるなら僕も行きますお!!」


ミセ*゚ー゚)リ 「……追跡、どうする?」

 ミセリは貞子に問いかけた。

川д川 「……お嬢様が負けたなら、敵はかなり強いよ」


川д川 「それに、敵の行き先は彼らの本拠地だ。
      もしも敵が私達を察知すれば、当然その本拠地から応援が出てくる」

川д川 「応援が来るまでに追いつけなかった場合、追い詰められるのは私達だ」


(; ^ω^)「――それじゃあ、引き下がるって言うんですかお!?」

ミセ*゚ー゚)リ「……悔しいけど、お嬢様を取られた時点でチェックメイトなのよね。
       もう四の五の言ってる場合じゃない。魔王様が戻ったらすぐに打って出るしかない」

川д川 「内藤君、ここは引き下がるのが最善だ。
      私達の主力はあくまで魔王様。主力を欠いたまま動いても、全滅する」

(; ^ω^)


(; ^ω^)「……ロマネスクのおじさんも、お爺ちゃんも、どこ行ってるんだお……」

(; ^ω^)「こんな時に、よりによって、こんな……」


(; ^ω^)「……いちばん頼りたい時に限って……」

 明らかな責任転嫁と、なんの足しにもならない弱音。
 しかしそれを口に出さないというだけで、この場の全員、まったく同じ事を思っていた。

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637名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 22:40:05 ID:gdPE2cPQ0



(   )「――君達、すこしいいかな」


 誰もが言葉を失っていたその時、聞こえてきたのはやたら渋いオッサンの声。
 足元に差し込んだ謎の人影に、ブーンは咄嗟に振り返った。



(; ^ω^)「だッ! 誰だお!!」

ミセ*゚ー゚)リ「……待って内藤君。私が話す」

 ブーンを制止し、ミセリが前に出て話し始める。


ミセ*゚ー゚)リ「……その男、貴方が倒したのかしら」

(;,,-Д-)

 男に背負われている人物は王座の九人・ギコであった。


(   )「いや、何者かが気を失った彼ともう一人を連れ去ろうとしていた。
      私はそれを追いかけたのだが、一人しか取り返せなかった」

ミセ*゚ー゚)リ「……もう一人というのは、金髪の女の子だったりしないかしら」

(   )「ああ、その通りだ。そして少女は赤いマフラーを巻いていた。
     君達は少女と同じ気配がするのだが、君達は少女の友達で間違いないな?」

ミセ*゚ー゚)リ「……まぁ、そんな所ね」

.

638名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 22:41:35 ID:gdPE2cPQ0


 男はギコを壁際に座らせ、ミセリ達に背を向けてから言った。


(   )「彼を頼む。私はもう一度、あの少女を追いかけてくる」


(; ^ω^)ノシ 「あっ! なら僕も! 僕も行くお!」

(;'A`)「おい、さっき言われただろ! 頭を冷やせ!」

(; ^ω^)「うるせーお! 僕だって死ぬ気でやれば王座の九人くらい倒せるお!」


ミセ*゚ー゚)リ「……一応味方として数えるから、貴方の名前を聞かせてちょうだい」


(   )「……ふ、名乗るほどの者ではない」


 男はキザに微笑んで答え、腰の変身ベルトに専用のカセットを叩き込んだ。

 変身……変身!? 誰もがその唐突さに目を丸くした。なんたる急展開か!

.

639名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 22:43:51 ID:gdPE2cPQ0


 \ギュイイーン!!/ \ライドイン!!/ \サブレ!!/

 ニチアサめいた何かを彷彿とさせる音声!
 男は胸のところで腕を交差させ、叫んだ!

(   )「変身ッ!」

 男の姿が旋風に包まれる!


(;つA`)「こいつ、まさかッ!!」


(   )「……あえてその質問に答えるならば……」

 旋風が徐々に集束していく!

 やがて旋風の中から現れた男は、いつの間にかその姿を変えていた!





   ,、,,..._
  ノ ・ ヽ 「――通りすがりの、仮面サブレーだ!」
 / :::::   i 
/ :::::    ゙、


( ^ω^)!?

('A`)!?


 果たしてサブレは正義か悪か!!

 仮面のサブレの真意やいかに!!!!!

 つづく!!!!!!!!!!!!!!!!!!

.

640名も無きAAのようです:2016/06/21(火) 22:47:04 ID:5yhoYNPQ0
鳩サブレ!?
死んだはずじゃ!?


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