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優しい衛兵と冷たい王女のようです 番外編 『暁の綾蝶』
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:
◆MgfCBKfMmo
:2015/07/20(月) 13:15:17 ID:VABT4D4M0
クーの歩みは遅々としていた。疲れたら木陰に座り、のどが渇いたら川の水を飲み、お
なかがすいたら果実を囓った。
それでも満たされなければ、魔人に頼んで野生の動物を仕留めてもらった。
弱っているとはいえ、彼には大きな鋭い爪があり、クーよりも遙かに狩猟の腕に長けて
いたし、人の身体も知っているためか肉の下処理にも慣れていた。
クーが休んでいるさなか、森の中をさんざん走って、ウサギやシカ、イノシシなどを捕
まえてきてくれた。
そのような場合はクーだって奮発し、川の水や山菜をふんだんに使って水炊きを作って
あげた。
とはいえ、狩りが常に好調とは限らない。時間がたつにつれて空振りも多くなった。
大量の血液や体液を浴びている上に、歩みも遅いものだから、野生の動物たちに恐れら
れる格好の的になっていた。
飢えは確実にクーと魔人の身体を蝕んだ。
動ける距離が短くなった。木々の隙間から見える池まで歩こうと決めていたのに半ばで
あきらめることもあった。
足がだんだん持ち上がらなくなり、息も続きにくくなった。
休みも増えていく。魔人はまだ体力があるため、餌をとってきてくれるが、それを満足
に食べる体力すら衰えつつあった。
肉だけでは足りなかった。果実で潤しても限界があった。クーの胃は穀物を欲した。米
でも麦でも粟でも稗でもかまわないから、腹を満たすものを食べたい。
クーの願いが実行に移されることはなかった。穀物は農業が育てるものであり、つまり
は社会の産物である。社会から隔絶された人間にそれを得る資格はない。
一度食べてしまえば二度とその味わいを忘れることはできないというのに。
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