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優しい衛兵と冷たい王女のようです 番外編 『暁の綾蝶』

21 ◆MgfCBKfMmo:2015/07/20(月) 13:31:10 ID:VABT4D4M0
「待って!」

 躍り出た場所は岩場だった。前のめりに倒れそうになるのをこらえ、諸手をあげて相手を見据えた。
 二人いた。一人はオオカミで、岩に背をもたれて座り込んでいる。
 もう一人は知らない男。クーと同じくらいの歳の若者で、右手には剣。その切っ先は血を浴びていた。
 ひるんだクーは一瞬固まったが、オオカミがうめく声をきき、呪縛が解けたように彼の元へとかけつけた。

「オオカミさん」

 胸から脇腹にかけて深い傷がある。流れ続けている血はまだまだ止まりそうに見えない。
 オオカミは音を発していた。答えようとしているのだろう。しかしどの音も文字を刻むことはない。
 呼吸をするのも辛そうで、震える吐息がクーの耳にかかる。今まで受けてきたどれよりも熱く、弱々しい吐息だった。


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