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優しい衛兵と冷たい王女のようです 番外編 『暁の綾蝶』

20 ◆MgfCBKfMmo:2015/07/20(月) 13:30:10 ID:VABT4D4M0
「オオカミが」

 それだけわかれば、想像が正しいことを悟るのには十分だった。
 草原を見渡して手がかりを探そうとした。
 何でも良いから手がかりが欲しかった。草が折れている場所はないか。血で染まったところはないか。
 「オオカミさん」としか呼べないことが、ひどく頼りなく悲しく思えた。

 そのとき、獣の声が耳をつんざいた。人間の声とは明らかに違う濁りを帯びた叫びだ。クーは弾けるように森の中を駆けだした。
 日はすでに昇った。空の色は群青から青に代わり、木々の色は緑へと回帰しつつある。
 世界に色が戻る中、クーは腕を振るって、草木を踏みしめ、よろめきながらもひたすら走り続けた。

 もう一度、小さめの叫び声がしたとき、木々の隙間から人影が見えた。


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