したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

優しい衛兵と冷たい王女のようです 番外編 『暁の綾蝶』

16 ◆MgfCBKfMmo:2015/07/20(月) 13:26:12 ID:VABT4D4M0
 村を離れてすでに十数キロは歩いた。人里離れた森の中、歩みは遅いが、クーの気分は軽い。
 村のことやドクオのことを思い返せば絶対に重くなってしまうから、なるべく思い出さないように心配りしている。

 オオカミも優しくしてくれる。
 介抱されたことに恩義を感じているのだろうか。言葉は少ないが、魚や獣を捕らえては、処理をしてクーにわけてくれている。
 クーもまたそれを静かに受け取り、粛々と食べた。

 お腹が膨れるほどの量ではない。食欲はつねに胃の中でもだえている。しかし何かを食べてさえいれば、動くことはできる。
 村というコミュニティを離れてみて、そんな単純なことに気づいた。
 一人じゃとても気づけなかっただろう。

 だからクーは、オオカミと一緒に歩いている時間を満喫していた。
 自分はオオカミを支えてあげている。オオカミもまたクーを支えてくれている。
 そんな役割分担が確固としてある今は、生きてきた中で一番充足しているとさえ思っていた。
 たとえ二人の間に、ほとんど会話がなかったとしても、大した問題とは思わなかった。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板