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優しい衛兵と冷たい王女のようです 番外編 『暁の綾蝶』

13 ◆MgfCBKfMmo:2015/07/20(月) 13:23:10 ID:VABT4D4M0
 その魔人に名前は無かった。
 生まれ落ちたときから集落を離れ、一人で生きてきたらしい。
 耳の形や大きな口、尖った牙は狼によく似ていた。そのために、クーは彼のことをオオカミと呼ぶことにした。

 出会ったのは、村の外れにあった崖の下だ。オオカミの足は真っ赤に染まっていた。
 猟師に見つかって散弾銃を撃ち込まれ、逃げているうちに崖から転落した。
 それが、彼が後に話してくれた経緯だった。

 オオカミを見たクーはすぐに彼に駆け寄り、肩を支えて河原まで運んだ。
 傷口を濯ぎ、乾いたタオルで拭き、傷口に効く軟膏を塗った。痛みに暴れそうになるオオカミを宥めもした。

「なぜ私を助けた」

 歩けるようにまで回復したオオカミに、そう尋ねられた。
 何故助けたのか自分でもわからないでいた。傷ついたオオカミを見たときに、ただできるだけのことをしてあげたいと思った。
 でもそれだけで理由というのはあまりにさみしい。わざわざ口に出すのも気恥ずかしい。
 クーは曖昧に笑い、それきりにした。


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