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( ・∀・)たちは「」を謳歌するようです

1名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:37:06 ID:L.s74Y3o0
この話は以下の短編とつながっています。全ての話に相関があります。

ただし、この話だけを読んでも成立する読み切り短編でもあります。

数年ぶりで設定や伏線を忘れている可能性がありますが、ご容赦を。

短編3話を予定していますが2話しか書けていません。

boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/sing/sing.htm

2名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:38:02 ID:L.s74Y3o0
 




( ・∀・)「まずは季節外れのクリスマスの出来事から!」

3名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:38:46 ID:L.s74Y3o0
 
( ・∀・)たちはクリスマス・イブを謳歌するようです

 - 開始前発表 -

◎すてーじ◎
ショボン邸

◆仕掛け人◆
  _
( ゚∀゚) ( ・∀・)( ФωФ)
(´・ω・`) ('A`)
lw´‐ _‐ノv 川 ゚ -゚) (*゚∀゚)

◇ターゲット◇
( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ

>れでぃ?

4名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:39:29 ID:L.s74Y3o0
 
( ・∀・)「くーりすますが こ・と・し・もやぁってくるー♪」

lw´‐ _‐ノv「リア充の亡骸を引き裂くように♪」
  _
( ゚∀゚)「お前らどんな歌うたってんだ」 

( ・∀・)「リア充を爆破したい」

lw´‐ _‐ノv「わかる」
  _
( ゚∀゚)「うるせえリア充ども、ここに非リアがいるんだぞ」

lw´‐ _‐ノv「黙れ小僧! リア充がリア充の爆発を祈って何が悪い!」
  _
( ゚∀゚)「それ文字通り自爆するんじゃねえかな?」

5名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:40:10 ID:L.s74Y3o0
 
( ・∀・)「ふむ。わかってないなジョルジュ君。例えば砂漠に三人の人間がいるとする」
  _
( ゚∀゚)「おう」

( ・∀・)「一人は無尽蔵のコーラを、一人は無尽蔵のお茶を、一人は飲み物を持っていないとする」
  _
( ゚∀゚)「やべえ、なんかもうその時点で言いたいことがだいたいわかった」

( ・∀・)「飲み物を持ってない奴は、飲み物持ってる奴は円形脱毛症をこじらせてで死ね! と思うだろう」
  _
( ゚∀゚)「色々思うところはあるが、まず円形脱毛症で死ぬかな?」

( ・∀・)「だが、コーラを持ってる奴もこう思うのではなかろうか?」

lw´‐ _‐ノv「お茶うらやましい。お茶持ってる奴らは蚊に刺されすぎて失血多量で死ね、と――」
  _
( ゚∀゚)「どう考えてもそれは単なる贅沢だし、お茶持ってる奴もコーラ飲みたいだろうし、後者の死に方はちょっと凄惨すぎる」

6名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:40:58 ID:L.s74Y3o0
 
( ・∀・)「というわけで、今回の犠牲者はこちらになります」

lw´‐ _‐ノvつ「写真」

「( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ 」
  _
( ゚∀゚)「やっぱりか。えっと前のサークル内スマブラ大会最下位の罰ゲーム?」

( ・∀・)「うん。敗け抜け戦で最後残ったの二人だったからね」
  _
( ゚∀゚)「そりゃ、皆で寄ってたかって二人だけ狙い撃ちしたからな」

\ガチャッ!/

(´・ω・`) 「ただいまー」

lw´‐ _‐ノv「「おかえりー」」(・∀・ )

(´・ω・`) 「なんで家主が帰宅したらすでに他人がたむろしてるの?」
  _
( ゚∀゚)「いつものことだろ? つーは?」

(´・ω・`) 「まあ、モラのバイクで気づいてたけどさ。つーちゃんは買い物してからくるって、ドクオとクーさん連れてスーパー行ってる」

( ・∀・)「ん? じゃあロマは?」

(´・ω・`) 「バイトだったような?」

7名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:41:53 ID:L.s74Y3o0
 
( ・∀・)「これないのはしゃーない。本日の議題はあのバカップルたちです」

(´・ω・`) 「そっとしといてあげようよ」

( ・∀・)「いや、別にサークルの参加率低いのは付き合い始めだし、咎めてるわけじゃないよ」

(´・ω・`) 「そうなの?」

lw´‐ _‐ノv「というか、今日もデートでいないのは逆に好都合」

( ・∀・)「というわけで今配りました冊子をご覧ください」
  _
( ゚∀゚)「毎度毎度、準備いいなお前」

(´・ω・`) 「え……うわぁ……マジでこれやるの?」

lw´‐ _‐ノv「今日もデートでいないのは逆に好都合、と言ったでしょう?」

( ・∀・)「とにかく練習時間がないから、各自ソロで練習していただいて、前日リハで通し練習かな。俺が既にサンプル撮影済ませてあるよ」
  _
( ゚∀゚)「しかもこれ実行日イブかよ」

( ・∀・)「僕らからのクリスマスプレゼントです」

(´・ω・`) 「こんなプレゼント割とマジで嫌だな……」

8名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:42:44 ID:L.s74Y3o0
 
(*゚∀゚) 「ただいまー」

川 ゚ -゚)「野郎ども華が帰ったぞ」

lw´‐ _‐ノv「ドクダミ?」

川 ゚ -゚)「妹よ、胸の駄肉をミンチにされたいのか?」

lw´‐ _‐ノv「姉ちゃんよ、持たざる者の嫉妬は見苦しいぞ?」

(*゚∀゚) 「さみー! おコタ空いてねえ!!」
  _
( ゚∀゚)「ハイよこっち座れ。俺とモラはベッドいくから」

(´・ω・`) 「僕のベッドなんだけどな?」

('A`)「おら酒だぞ鍋だぞ野郎ども、一人1000円徴収じゃあ」

( ・∀・)「やべ、冊子一枚足りねえや。後で印刷するからどっくんはジョルジョルの借りて」

('A`)「ういさー」

(´・ω・`) 「女の子はお酒あんまり飲まないし、500円でいいよー」

( ・∀・)「差額はどっくんが払うよー」

('A`)「やめてマジで払うことになるから!」

9名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:43:37 ID:L.s74Y3o0
 
( ・∀・)「さて、議題に戻ります」
  _
(* ゚∀゚)「うぇーい」

(´・ω・`) 「この筋肉、酔うの早すぎない?」

(*゚∀゚) 「つーちゃんぬぐぞー!」
  _
(* ゚∀゚)「なっ!? バッ!!」

( ・∀・)「ジョルジョル叫ばない、近所迷惑でしょう」

(*゚∀゚) 「ジャージの中はーででーん! ジャージだー!」

(´・ω・`) 「どうせそんなオチなんだから」

('A`)「ロマもブーンもオカン役がいねえから収拾つかねえな」

( ・∀・)「企画書は目を通したー?」

川 ゚ -゚)「なにこれすげえたのしそう」

( ・∀・)「だしょだしょ?」

10名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:44:20 ID:L.s74Y3o0
 
('A`)「でもこれデート中に監視必要じゃね?」

(´・ω・`) 「確かに、友人のデートを覗き見はいい趣味じゃないね」

( ・∀・)「なめるな。既に奴に発信器はつけておいた。基本的に移動中の監視だけだ」

lw´‐ _‐ノv「ちなみに私が作った」
  _
( ゚∀゚)「このカップルこえー!」

川 ゚ -゚)「じゃあ、最初はある程度の距離を取りつつストークして」

(´・ω・`) 「ルートを予測して何度かポイント絞って前を通過したら迎撃、失敗したら別ポイント。かな」

( ・∀・)「……最終防衛ポイントはここだ。映画館の駐車場有料だし車でデートはないと思う。そして二人は実家住みだ

川 ゚ -゚)「確かに、それで電車を使うなら必ずここを通過する」

(*゚∀゚) 「うわぁ、ここって……」

(´・ω・`) 「モラが常識を覚えたみたいでなによりだよ」
  _
( ゚∀゚)「なにここ? ドンキの前? なぜ最終防衛地点?」

11名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:45:00 ID:L.s74Y3o0
 
( ・∀・)「この先はピンクなお城の乱立地域だ。ここを通過されれば俺たちに勝機はない」

('A`)「あー、それは正直聞きたくない言葉だった」

川 ゚ -゚)「寒空の下、友人がギシアンしてるの待って、その帰りを襲うとか悪趣味にもほどがあるな」

( ・∀・)「というか、友人がギシアンしてるだろう夜に、朝まで野外で待ってるのは色々人間的なものをなくしそうで嫌だ」

lw´‐ _‐ノv「モララーさん。話進めましょう」

( ・∀・)「はい。まあ、人気がないところでないと難しいので、ポイントは自然と絞られるんだな」
  _
( ゚∀゚)「あ、地図のデータスマホに移すから待って」

(*゚∀゚) 「ん? ここは? 単なる路地っぽいけど?」

(´・ω・`) 「それは映画館を出て最寄のゲーセンへの近道だね。二人ともゲーマーだから通る可能性は高いよ」

(*゚∀゚) 「こんなとこ、映画館あった?」

(´・ω・`) 「え、その前にクリスマスにゲーセンデートって……」

川 ゚ -゚)「てか質問。これVIP駅周辺に絞ってるけど、都内とか行かれたらどうするん?」

('A`)「そもそもあいつらが映画を観るか? 普段、家でクラッキングアプリ作ってるような女と、キーピッキング対策の対策を練ってるアホだぞ?」

( ・∀・)「ぬかりはない。既に二人が興味をそそられそうな映画のチケットを渡してある」

(´・ω・`) 「流石すぎてキモい」

12名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:45:42 ID:L.s74Y3o0
 
 - 数時間後 -

( ・∀・)「さて、細部の詰めはこんな感じかね?」

(´・ω・`) 「うん。そろそろ皆酔って覚えてなさそうだ」

川 ゚ -゚)「車で来てよかった。こんな楽しそうな企画、酔ってられるか」

('A`)「くー! 乳なしクー!」

川 ゚ -゚)「うるせえドクオ、ちんこ活け造るぞ」
  _
( ゚∀゚)「てめぇ、俺の酒が飲めねえってのか!?」

(*゚∀゚) 「ジョルジョル、ぬいぐるみに酒飲まさないでもったいない」

(´・ω・`) 「僕のハリネズミが!」

lw´‐ _‐ノv「モラさーん! カレー味のワインがねー。むにゃむにゃ」

( ・∀・)「もう夜が明けるし、死屍累々だし、御開きにするかな」

(´・ω・`) 「ハリネズミ洗わないとだしね。うい、ロマには俺が伝えとくわ」

( ・∀・)「頼んだー」

(´・ω・`) 「しかし、あんな餌で上手くいくかね? イブの夜に映画なんて、作為的すぎて見え見えの罠だと思うけど……」

( ・∀・)「あれだから上手くいくんだよ。それに映画だからな、ツンが食いつく」

(´・ω・`) 「? どっちかというと、ブーン好みの映画じゃない?」

( ・∀・)「だからだよ」

13名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:46:46 ID:L.s74Y3o0
 
 後日、モララーが渡したチケットは一組のカップルに疑念を与えていた。

(;^ω^)「単なる勘だけど、これは罠だお」

ξ;゚⊿゚)ξ「……アンタが言うなら、そうでしょうね」

 あの男がただの親切心でチケットを渡すはずがない。
 否、正確には「単なる親切である可能性」を残すため、基本的に彼は色々と世話を焼いてくれる。
 であるからこそ、余計に厄介である。このチケットがただの親切なのか、罠に誘うための餌なのかがわからない。

( ^ω^)「怪しい要素はただ一つ。日付がクリスマスイブであることだお」

 しかし、対するこの白豚は、見た目に反して野生的な勘と理知的な推理力に優れていた。
 その両者を持って、彼はこれが罠であると推定していた。
 
( ^ω^)「元々渡された時の理由は尤もらしいものだったお」

 モララーはチケットを渡す際
 「シューと共に観に行く予定だったが、急遽予定が入ったため勿体ないから譲ろう」
 という説明をした。一見、違和感のない理由である。

ξ゚⊿゚)ξ「モララーとシューの2人が外せない用事って、だいたいサークル絡みなのよね」

( ^ω^)「でも、僕らはこの日にサークルの用事があるなんて知らないお」

ξ゚⊿゚)ξ「つまり、私用。イブに? 映画デート以外で? シューにべた惚れなモララーが、そんなスケジュールを組む?」

( ^ω^)「まあ、可能性はないわけじゃないお。でも、臭うお」

14名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:47:54 ID:L.s74Y3o0
 
( ^ω^)「でも……」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ、これは……」

 そうこれは罠である可能性を示唆している。であるならば、映画にいかなければそれで済む話だ。
 だが、目の前にぶら下げられた餌。その強烈な魅力が事態を複雑にしていた。
 このチケットがただの映画であれば、彼らもこの罠に釣られようなどとは思わないだろう。

( ^ω^)「「サンタ VS. 火星人」は、やべえお……」

 機械で印字された黒い文字は、アメリカでカルト的人気を誇るドB級モノクロクソ映画のタイトルが記されていた。
 日本劇場未公開映画であるこの映画を、何故クリスマスイブなどに上映するのか? その疑問は尽きない。
 確かなことは、この映画館が相当奇特な経営を行っていることと、この機会を逃せば次はないことだ。

ξ゚⊿゚)ξ「……」

 一方ツンは全く別のことを考えていた。

 2か月ほど前から付き合い始めたこの男とは中学からの幼馴染に近い関係であり、その性格を彼女はよく知っている。
 中高大とエスカレーター式の学校で知り合った5人組であり、その大学には進学せずに工業系の大学へと進学を決めた。
 女が3人もいるグループでは珍しく高校で技術研究部を発足したメンバーであり、全員が機械いじりやプログラミングが好きな奇特な連中だった。

( ^ω^)「おっ?」

 だから、ツンはよく知っていた。この白豚は、ちょっと奥手すぎるのだ。

15名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:48:46 ID:L.s74Y3o0
 
ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、ブーン?」

( ^ω^)「おっ? なんだお?」

ξ゚⊿゚)ξ「これを逃したら、アンタさ。ずっと映画とか誘ってくれないんじゃない?」

(;^ω^) 「そ、そんなことないお!」

 必死に否定する彼の顔には、冷や汗が浮かんでいる。
 否定しつつも、あながち否めないようなそんな顔だ。

ξ゚⊿゚)ξ「どうだか…… 前のデート、どこ行ったか覚えてる?」

( ^ω^)「秋月にPIC買いに行ったお! 帰りのケバブ旨かったですお!」

ξ゚⊿゚)ξ「別にさ、そういうデートも嫌じゃないのよ?」

(;^ω^) 「ケバブダメかお?」

 おずおずと見当違いなことをいう彼を、可愛いと思う。それは惚れた弱みという奴だろう。
 いつもなら、つい許してしまうが、今日はそういうわけにもいかない。

ξ゚⊿゚)ξ「いやそうじゃなくて。なんていうか、別に嫌じゃないけど、デートとは違くない?」

 そう告げるツンの顔はやや赤い。ブーンを奥手であると断じた彼女だが、それは本人にも言えた。
 お互いが奥手だからこそ、この期を逃せばデートらしいデートができる機会など、早々巡ってはこないだろう。
 故に、勇気を振り絞って続きを告げる。

ξ////)ξ「ね。行こうよ映画」

 この勇気までもが、モララーの計算通りとは知らずに――

16名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:49:35 ID:L.s74Y3o0
 
 - 開始直前発表 -

◎すてーじ◎
VIP駅周辺

◆仕掛け人◆
  _
( ゚∀゚) ( ・∀・)( ФωФ)
(´・ω・`) ('A`)
lw´‐ _‐ノv 川 ゚ -゚) (*゚∀゚)

◇ターゲット◇
( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ

>れでぃ?

>げっとれでぃ! ふぁい!

17名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:50:17 ID:L.s74Y3o0
 
( ・∀・)『こちらアルファワン。こちらアルファワン。目標を捕捉。二人が映画館から出るぞ。オーヴァー』

川 ゚ -゚)「こちらHQ。アルファワン了解。相手はこの手のことに関しては化け物だ。気を抜くなよ」

(*゚∀゚) 『こちらベータツー。ポイントH3へ到着。予想外に人が多い。ポイントH2への移動を申請』

川 ゚ -゚)「こちらHQ。ベータツーの申請を却下する。休日の昼前だぞ、どこ行っても人は多い。人ごみに紛れろ」

 クリスマス・イブの朝11時。彼らは普段とは性格の違う服をまとって、無線機を服の中に隠しながら定位置についていた。
 例えばつーは普段ボーイッシュでややパンク寄りなパンツルックを好む。
 しかし、今日はグレーと濃紺のダッフル生地のトレンチコートを羽織り、下からは白いひざ下丈のフリルスカートが覗いている。
 もちろん、ポシェットには無線機を入れ、肩掛けの内側に這わせたイヤホンはニット帽と髪で隠してあった。

(*゚∀゚) 『ちぇー。この格好、足がスースーして嫌なんだよ。ベータツー了解』

 彼らはA班B班の2グループ3人ずつに分かれ、余った2人は車で指示を送りつつ待機している。
 A班の3人でバラバラに追跡し、その動向から向かう先を予測してB班が先回り、捕捉を確認したら、次はA班が先回り待ち伏せを行う。
 移動先をある程度縛り滞在時間が見込めるポイント、例えば飲食店やショッピングモールなどは事前にマークしてあり、そこに到達次第、車に集合する手筈となっていた。
  _
( ゚∀゚)『こちらベータワン。H4にてスピーカー準備完了。つー、もうちょい右。こっちから顔見えてんぞ』

(*゚∀゚) 『あ、ごめん。ベータツー了解』

18名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:51:09 ID:L.s74Y3o0
 
lw´‐ _‐ノv『こちらアルファスリー。二人の動向は? ポイントH1を通過する?』

( ・∀・)『こちらアルファワン。ダメだ。当てが外れた。アリスとナタージャはポイントS3方面へ移動中。待機部隊は移動開始を通達。カラオケかもな』

 アリスとナタージャとは、ターゲットに割り振られた符号だ。アリスがツンを、ナタージャがブーンを意味している。
 自分の名前というのは雑踏の中で聞いても敏感に反応してしまうものだ。
 あえて全く関係のない名前を使うことで、声を聞かれた場合の万が一を防ぐ目的がある。

('A`)「待て。映画12時からだろ? 二人とも不生だから、飯食ってないんじゃないか?」

川 ゚ -゚)「可能性は高いな。アルファスリーはカラオケへ先回りせよ。アルファツーは飲食店のありそうな方面へ」

( ФωФ)『こちらアルファツー。この方面で飲食店は多いである。二人が比較的行きそうなガスト脇の小道で待機する。アルファワン。雑踏に撒かれるなよ?』

( ・∀・)『誰に言ってやがる。アルファワン了解』

 スマホで開いた地図には様々なポイントを入力してあった。
 それらをお互いに読み上げながら、緻密に連携を取り合っていく。
 発信器はついているが、せいぜい20m以内に接近すると音が鳴る程度の代物で、このような雑踏で見失えば再捕捉は非常に難しい。

( ・∀・)『お、ビンゴ! アルファワンから各位。アルファツーのヤマが当たった!』

( ФωФ)『こちらアルファツー。ガスト内にて目標を発見。我輩が張るである、各自休憩を――』

 こうして、人知れず戦いが幕を開ける。

19名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:51:51 ID:L.s74Y3o0
 
 しかし、彼らのストーキングは難航していた。

( ^ω^)「噂に違わぬ酷さだったおwww」

ξ゚⊿゚)ξ「なんであんな映画作っちゃったのwwww」

 二人のなにやら楽し気な声を後目に、指示が忙しく飛び交う。

( ・∀・)『アルファワンから各位! 横断歩道で目標をロスト! スマン計算違いだ。奴らこのショッピングモール歩いて抜ける気だ』

(*゚∀゚) 『まずくない? ここ出口多いよ!?』

川 ゚ -゚)「慌てるな! 駅に一番近いのは誰だ?」

( ФωФ)『こちらアルファスリー! 我輩が駅側を抑えるである!』

川 ゚ -゚)「任せたチェリーボーイ! 各員、各出口を2つ間隔で抑えて発信器で通過を確認せよ。視認は必要ない。繰り返す――」
( ・∀・)『待った! 出口2つ目通過! ちょっと早い、勘付かれたか?』

(´・ω・`)『こちらベータスリー。4つ目についた。こっちは通過しないぞ? 遅れたか?』

( ・∀・)『いや待て、こちらアルファワン。僅かに反応がある』

(*゚∀゚) 『たぶん、3つ目出口のクレープ屋だよ! 各員ステイ! 不審な行動はとらないように!』

 と、いうようなトラブルを幾つか迎えつつも尾行に気づかれることはなく、静かな戦いは続いた。
 しかし、事前に設定したトラップポイントを通過されることもなく、ついに最終局面。迎えたくなかった場所への移動を確認する。

(´・ω・`)『こちらベータスリー。目標は9番ホームへ向かった。快速を見送ったことを確認。各駅しか止まらないのはピンクのお城方面だ』

川 ゚ -゚)「こちらHQ。ベータスリー了解。そのまま電車に乗り、尾行を続行せよ。こちらはすでに向かっている。現地で落ち合おう」

20名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:52:47 ID:L.s74Y3o0
 
(*^ω^)「あ、あのツンさん……そのですね……」

ξ*゚⊿゚)ξ「バカ。変に緊張しないで、私が恥ずかしくなるから」

 時刻は夜の7時。楽しかった時間はあっという間に過ぎていき、既に空は暗く、小さな星が瞬いている。
 なんだ、やってみればリア充らしいデートもできるんだ。そう思えるほど単純に、彼らはそこに向かっていた。
 この辺にそういったホテル街があると知っていた彼は、誰かに聞いたおすすめのホテルを思い出していた。

 看板や名前が奇抜で受け付けは狭く、さらに駅近くでありながらほぼ最低ラインの価格という一見地雷臭を漂わせるそのラブホテル。
 しかし、部屋はアジアンテイストな落ち着いた雰囲気の内装で、築年数の割に壁紙も新しく古さは感じさせない。
 また、それ以上に備品類はよく手入れされており、しかも、大きなスクリーンでビデオが見れるため、部屋に入れば快適、なのだとか。

 どう二人ともラブホテルに行くのは初めてである。行っても善し悪しはわからないだろう。
 なのでブーンもそのアドバイスに従うつもりであった。
 
 そこに彼らのトラップが待ち受ける。


 異変に対して、最初に気が付いたのは、ブーンだった。

21名も無きAAのようです:2015/05/07(木) 00:53:36 ID:L.s74Y3o0
 
 野生的な勘を頼りに違和感を覚えた方へ目線を向ける。
 なんてことはない、公園とドン・キホーテの駐車場に挟まれた、車通りの乏しい路上。
 そこで談笑する二組の男女に見覚えはない。ここからでは顔は見えないし、女性の髪形や服装にも覚えがない。
 足元には少々大き目のバッグ。どこかで見おぼえがあるが、どこで見たかは思い出せない。

 いや、バッグではない。それ以外の何か、何かの違和感がある。

( ^ω^)「……ウィッグ?」

 一瞬の間を開けて、彼はポツリとつぶやいた。女性の髪にエクステが使われているのだ。
 なんとなく、不慣れな印象を受け、それが髪形に違和感を与えていたのだろう。
 頭の中でウィッグを外した状態をイメージしていく。その時にもまた、なにか、引っ掛かるものがある。
 どこかで会ったことがあるような……?

ξ゚⊿゚)ξ「え?」

( ^ω^)「は?」

 その引っ掛かる何かに気が付く直前。彼らは唐突な音楽に足を止めた。

 ドン・キホーテから既に20mほどは進んでいる。
 ここからはラブホテル街まで少々距離があり特に店舗などもないため、急に街灯も減ってあたりは薄暗い。
 いや、明るい場所から急激に暗い場所へ移動したため、実際の暗さ以上に闇は深く見える。

 その闇の中で、般若心経が鳴り響いていた。


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