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月明かりのネコのようです

1名も無きAAのようです:2015/03/30(月) 22:50:23 ID:O305c2PI0
西暦でいう2250年を間近に控えた世界。



人類は今や、宇宙にその拠点を移していた。
ーーいや、移すことを余儀無くされていた。


地球の資源が枯渇し、また汚染により「使用不能」と判断されたのがおおよそ2100年。
そこから急ピッチで移住計画が始動し、人類が月に移ったのがその50年後だ。


残されたありったけの資源と材料、そして技術を使って作られた月の街。
地球の暮らしを知らない世代のみになってからも、人類はそこで生き延びていた。


そして今、月の地下に眠っていた良質な資源も、半分程が食いつぶされているというのが政府の試算だ。
その事実を先回しにし、目を背け、まだ人類は生きていた。

71名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 00:12:41 ID:4ImwKwic0

待つのは任せろ

72名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 00:18:29 ID:.l5C16M20
乙 
おもしろい

73名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 00:23:46 ID:LGvfkQDQ0
引き込まれた
乙、待ってる

74名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 00:36:28 ID:NatQvGdc0
読みやすいね
おもしろいし続き気になる乙!

75名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 02:18:16 ID:y4.e4vmk0
おつ
期待値高い

76名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 04:43:13 ID:BnGPU/Fw0
いいね!
薄汚れたダークさが良いかんじ

77名も無きAAのようです:2015/03/31(火) 08:06:51 ID:NatQvGdc0
しかしモララー達勇気あるな
いきなり友達切られて、そんなおっかないとこ二度と行きたくねぇよ

78名も無きAAのようです:2015/04/03(金) 10:24:37 ID:Gdnxffc20

いいSF

79名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:51:08 ID:0wAG8pQA0
『正義その1』


(,,゚Д゚)「えーーーっ、と。話をまとめますよ、鬱田さん」

中層。
警察署で、二人の男が書類を挟んで話している。
片方は警察官の根子ギコ。
もう片方は、鬱田と名乗るスラム出身の汚い男だった。

('A`)「はい」

(,,゚Д゚)「鬱田さんが夜、お仕事の帰りにVIP街のはずれを歩いていたところに通り魔が来たと」

(,,゚Д゚)「ナイフを持っていたのを見た鬱田さんは、咄嗟に腕で防御、と。顔は見てないんですね」

('A`)「はい、暗かったので」

(,,゚Д゚)「ナイフは見えたんですか」

('A`)「大きなナイフでしたし、少しの明かりに反射してましたから」

鬱田の腕を見る。
薄汚れた包帯が袖から見える。
傷自体は先程見せてもらったが、あの包帯で妙な菌が入らないかが心配になる。

80名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:51:51 ID:0wAG8pQA0
(,,゚Д゚)「顔じゃなくても、背格好の特徴とかは」

('A`)「え…髪が長かったです。身長は僕より高かったですけど、女性かもしれません」

(,,゚Д゚)「なるほど」

あまり参考にならない。
これまでに目撃されている通り魔と同一人物であることは分かったが、それまでだ。
あのスラムで、人物の断定には至らないだろう。

(,,゚Д゚)「とりあえず…これで結構です。また調査に伺うかもしれませんので、住所など聞いてもいいですか」

聞いた途端、鬱田は申し訳なさそうに言った。

(;'A`)「あー…住所ですか」

(,,゚Д゚)「?」

(;'A`)「ないです、住所」

スラム出身。
ありがちな話だ。

(,,゚Д゚)「あ、なるほど。じゃあ…そうですね、結構です」

81名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:52:36 ID:0wAG8pQA0
そのあと二、三の事柄を確認し、鬱田への質問は終わった。
鬱田を帰し、事前に集めていた情報と照らし合わせる。

(,,゚Д゚)「………」

やはり、思うことがある。
上司に報告しなければ、と思ったところで、ちょうど扉が開く。

ミ,,゚Д゚彡「おう」

男が入ってきた。
髭面で強面、という子供が泣きそうな面構えの男は彼の上司にあたる。

(,,゚Д゚)「あ、フサさん、例の通り魔でちょっと気になることが」

ミ;,゚Д゚彡「帰ってきて一発目にそれか…ちょっと茶だけでも飲ませろ」

フサが休憩とばかりに熱い茶を入れて座り込んだところに近づく。
机に資料を置くと、少し渋い顔をされた。

(,,゚Д゚)「四人目の最下層の人にも話を聞いたんですけど」

ミ,,゚Д゚彡「あー」

82名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:53:25 ID:0wAG8pQA0
(,,゚Д゚)「無差別通り魔の話、生きている被害者と目撃者に話を聞きましたが、犯人は共通の一人です」

(,,゚Д゚)「で、恐らくはスラムの住人です。目撃者もいますし、大学生の被害者がやられたのは普通は辿り着けないスラムの奥でした」

(,,゚Д゚)「ここまでは話しましたね」

ミ,,゚Д゚彡「おう。ただ『髪の長い恐らく女性のスラムの住人』なんてキリがない。髪に至っては切られたらそこまでだ」

ミ,,゚Д゚彡「…まだなんかあんのか?」

(,,゚Д゚)「前々から思っていたんですが、これは無差別ではないと思います」

ミ,,゚Д゚彡「…」

フサの表情は読めない。
返事もないので、話を続けることにした。

83名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:54:06 ID:0wAG8pQA0
(,,゚Д゚)「わざわざ上層、中層、下層、最下層に住む人々を一人づつ。そもそもここからおかしいんです」

(,,゚Д゚)「ただ無差別に人を殺したいのなら、人口の多い中層か犯行が見つかりづらい最下層に行くはずです」

(,,゚Д゚)「最下層の人を見つけ次第マークするような上層に行くこと自体が危険なのに、何故か犯人は行きました。で、殺したのが偶然にも政治家だった」

(,,゚Д゚)「明らかに不自然じゃないですか」

ミ,,゚Д゚彡「……」

(,,゚Д゚)「……政治家を殺したときの目撃者は一人いましたが、『執拗に切り刻んでいた』そうです」

(,,゚Д゚)「下層の被害者の傷跡は一つでした。最下層と中層の被害者に対しては殺意すら見えない!」

フサはまだ喋らない。
資料に目を落としてはいるが、読んでいる様子もない。
反応の無さに焦れ、ギコの口調も荒くなる。

84名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:55:06 ID:0wAG8pQA0

(,,゚Д゚)「こんなの、子供でも分かりますよ!」

(,,゚Д゚)「他の三件はカモフラージュです!本命は政治家一人!!どうせ対抗する別の政治家の仕業でしょうよ!!」

(,,゚Д゚)「なのに何で警察が大きく動かないんですか!!」

フサが大きな溜息をついた。
座り直して、ゆっくりと話し出す。

ミ,,゚Д゚彡「……」

ミ,,゚Д゚彡「……いや、な」

ミ,,゚Д゚彡「……今日は本部に行ってきたんだが」

ミ,,゚Д゚彡「それに関する捜査を打ち切れ、と言われた。テレビには只の無差別通り魔として公表したようだ」

(,,゚Д゚)

(,,゚Д゚)「え」

85名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:56:14 ID:0wAG8pQA0
驚いて間抜けな声が出た。
どういうことか知りたかったが、それを察したフサがまた話し出す。

ミ,,゚Д゚彡「金が動いたんだろ、どうせ」

(;,゚Д゚)「それって、政治家が金で揉み消したって事ですか!?」

ミ;,゚Д゚彡「そんなはっきり言うんじゃねぇよ」

ミ,,゚Д゚彡「……世の中、金だな」

(;,゚Д゚)「…………」

何を言っていいか分からなかった。
自分の調査全てをかき消されたこともさることながら、身近にそのような事が起こっているという事実が信じられなかった。

ミ,,゚Д゚彡「……言っておくが、お前一人で調べても無駄だ。テレビ局にも手は回してるだろうし、最悪クビだぞ」

(,,゚Д゚)「…フサさんは、それでいいんですか」

ミ,,゚Д゚彡「慣れた。生憎お前より色々経験してるんでな」

ミ,,゚Д゚彡「まあ、養う家族が居るんなら、逆らわないほうが得だ」

すぱりと言い切られた。
少し悲しげに聞こえたのは、気のせいだろうか。

86名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:57:23 ID:0wAG8pQA0

今日はもう帰れ、と言われたので、正直に帰宅することにした。

(,,゚Д゚)

あったことが理解できない訳ではなかった。

街のビルにある、大きなスクリーンがニュースを映し出す。
今は新技術の開発やら、芸能人の不倫やら、他愛もないことを映している。

あそこに、いずれ通り魔のニュースも映る。
犯人は依然捕まっておりません、で済むのだろうと思った。

ただぼうっとしながらバスに乗り、やがて家に帰り着いた。
ドアを開けると、料理の匂いが漂ってくる。

(,,゚Д゚)「ただいま」

(*゚ー゚)「おかえり!」

笑顔で出迎えてくれたのは、恋人のしぃだ。
まだ結婚はしていないが、数ヶ月前から同棲している。

(*゚ー゚)「今日はカレーだよー」

(,,゚Д゚)「おっ、嬉しいな」

少し気が楽になった。
理由は分からない。

87名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:58:32 ID:0wAG8pQA0
食卓を二人で囲む。
少し辛いカレーを食べていると、視線が気になった。
顔を上げると、しぃがじっとこちらを見ている。

(*゚ー゚)「何があったの、今日は?」

(,,゚Д゚)「……何もないぞ」

(*゚ー゚)「いーや、あるねっ」

しぃは視線を外さない。

内心で情けなくなった。
隠し事ができない性格は、昔から変えられていないようだ。
そこが好きだと言われたが、ギコ自身としては直したいところではある。

(,,゚Д゚)「こういうのは言っちゃいけないんだよ」

(*゚ー゚)「へえ…」

そのまま黙り込んでしまった。
申し訳ない気持ちになる。

(;,゚Д゚)「…」

(*゚ー゚)「…」

88名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 19:59:30 ID:0wAG8pQA0

(*゚ー゚)「何かあるんなら、相談乗りたいんだけどなぁ」

小さく呟かれた。
大きく心が揺れる。

(;,-Д-)「…………ああ、もう」

(;,゚Д゚)「話すよ」

(*゚ー゚)「ふふ」

頭を撫でられた。
恥ずかしい。

『相手』は、犯罪ひとつの真相を隠すような反則を行っている。
ならば、こちらも話すぐらいの反則を行ってもいいのかもしれない。

無理やりそう思うことにした。
ただ、ばれることはないだろうが、少し怖い。



(*゚ー゚)「あれだね、警察組織の闇ってヤツ。こう言っちゃ何だけど、仕方ないかも」

(,,゚Д゚)「覚悟はしてたんだがなあ」

当たり前だが、話すことで解決はしない。
しかし、心なしかすっきりした。

89名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 20:00:27 ID:0wAG8pQA0

(*゚ー゚)「そういえばね」

今度はしぃの話を聞く。
最近来る野良猫の話が熱いようで、今日もそれだった。

黒い毛並みの猫で、どこから来るのかも分からない。
ただやたらと人懐っこく、しぃも餌をやることがあるとか。

(,,゚Д゚)「俺は見たことないなあ」

(*゚ー゚)「だいたいお昼なんだよねー、ほんとかわいいの」

携帯の写真を見せられる。

猫だ。

(,,゚Д゚)「猫だな」

(;*゚ー゚)「わかってないなー」

(,,゚Д゚)「名前は?」

(*゚ー゚)「わかんない。野良だし」

(,,゚Д゚)「病気とかもらうなよ」

(*゚ー゚)「もらわないよー」

くだらない会話に力を貰い、明日も頑張ろうと思える。
我ながら単純だが、これでいいと思う。

90名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 20:01:15 ID:0wAG8pQA0
今日はここまで

勝手にギコとか出して大丈夫なのか、本来のプランにないぞ
でもこれが書き溜めなしの醍醐味だよね、きっとそうに違いない

91名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 20:51:08 ID:UIIzn.iM0

予定との脱線もブーン系の醍醐味だと思う
ぬこが今後どうなるか気になるぜ

92名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 21:08:56 ID:PfmqmLrA0
おつおつ
新キャラが出て来るとわくわくするもんだよな

93名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 22:15:53 ID:LE4oz7N.0

話の基盤がちょっとずつ出来てきてるな

94名も無きAAのようです:2015/04/06(月) 22:19:15 ID:mG9HFcWY0
おつ

95名も無きAAのようです:2015/04/08(水) 23:52:24 ID:.7T4o3yE0

『挑戦その2』


スラムに行って一週間。

(;・∀・)「ふーーむ……」

モララーが唸っている。
目の前には、部室の半分を埋め尽くす大きな機械。
ところどころ配線が剥き出しになり、ランプが明滅している。

モララーをはじめとする全員が困っている理由はそこではない。
スピーカーから断続的に出ている、ざざあ、という音にある。
その音しか出ていない。

(;´_ゝ`)「出力かな…」

(;・∀・)「月から出てるその辺のラジオとかを拾わないようにしたから、それは成功してるってことだけど……」

携帯にメッセージが入った。
部室棟の屋上にいるつーとショボンからだ。

『アンテナ問題ありません』

屋上には自作のアンテナを設置してある。
学校にばれたら撤去されるだろうが、誰も屋上に行かないことが幸いしてか今のところはばれていない。

96名も無きAAのようです:2015/04/08(水) 23:53:27 ID:.7T4o3yE0

(;・∀・)「パワーが足りない」

ζ(゚ー゚*;ζ「こんなに大きいのに、ですか?」

(;・∀・)「…地球は遠いな」

(゚、゚;トソン「こ、これ以上、機械増やすの?」

(;´_ゝ`)「そうなりますね」

全員が黙り込んだ。
もはや言わずとも分かることだが、場所が足りない。
これだけ大きな機械を置けて、かつ隠せそうところ。
今の部室では後者をクリアしていなかったが、今や前者も怪しくなってくる。

ζ(゚ー゚*;ζ「地球と交信って、どれだけの大きさが要るんでしょう…」

(;´_ゝ`)「やってるところがないんだよね…偉い人達は地球に人はいないって言ってるし」

(゚、゚;トソン「そもそも、あの、地球に通信機があるのか…って」

(;・∀・)「それなんだよなーーーーーーーーーーー……」

97名も無きAAのようです:2015/04/08(水) 23:54:52 ID:dWOWBBHc0

(;´_ゝ`)「いや、そこはあるものとして考えましょうよ」

(;・∀・)「ううーーん……確証がないのは怖い……」

話が行き詰まりかけ、モララーが菓子に手を伸ばした、その時だった。

小さく断続的に流れていた砂嵐の音が、揺れた。

全員が息を呑み、目が自然と機械に集中する。


「ーーーーーーーーーーーー…カ…ーーーーーー」

「ーーーー、、、ァーーーーーーーーーーーーー」

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

一様に呆気にとられていたが、すぐさまモララーが叫ぶ。

(;・∀・)「音量あげろ!!」

兄者がボリュームを捻ると、砂嵐の音は耳が痛くなる程に大きくなる。
隣の部室が苦情代わりに壁を殴るが、お構いなしに雑音を聞く。

98名も無きAAのようです:2015/04/08(水) 23:56:05 ID:dWOWBBHc0
(;・∀・)「……………………」

それからは、変化はなかった。
兄者がボリュームを下げていく。

ζ(゚ー゚*;ζ「今の………」

モララーがファイルをひっくり返し、中の資料を手に取る。
菓子の皿が床に落ちたが、モララーは気にも留めない。

(;・∀・)「月から出てる放送は全部弾いたよな?そうだよな!?」

(;´_ゝ`)「はい、何回もみんなで確認しましたよ!」

(;・∀・)「まさか、まさか…」

(゚、゚;トソン「え、え、じゃ、じゃあ、今のって」

ζ(゚ー゚*;ζ「あー、おかしが…」

ちょうどショボンとつーが帰ってきた。
ただならぬ部室の雰囲気に目を丸くしている。

(;´_ゝ`)「おまえら、アンテナに触れたか!?」

(;´・ω・`)「触れてません、えっと、なんですか…?」

(;*゚∀゚)「分からんけど決定的瞬間を逃したことは分かる」

99名も無きAAのようです:2015/04/08(水) 23:57:08 ID:dWOWBBHc0

(*・∀・)「決定的だ!!!!!」

モララーが両手を挙げて飛び跳ねる。
子供のように、感情のままに。

(*・∀・)「地球には、少なくとも電波を出す機械がある!!!!それも、月まで届く…おそらく、月と話すためのものが!!!!!」

(;*゚∀゚)「は!?」

(゚、゚;トソン「あの、ち、地球から、ちょっとだけ音が入ったの。多分ね」

(;´・ω・`)「え!?」

ζ(゚ー゚*;ζ「そんなにすごいんですか?」

(;´_ゝ`)「割とヤバい事ではある」

付いていけない部員を置き去りに、モララーは一人騒いでいた。

(*・∀・)「ついにだ!!!ついに見つけたーー!!!!!!」

(*・∀・)「もっと大きな場所が要る!!あと、ここからは電波制限法をぶっちぎることになるから…見つからないような!!そんな場所が要る!!!」

(*・∀・)「機械もだ!!部品!!もっと!!!!」

100名も無きAAのようです:2015/04/08(水) 23:58:43 ID:dWOWBBHc0

五分かけて騒ぎまわるモララーをどうにか全員でなだめ、これからの方針を考え直すことにした。
まず、場所が要る。

(*゚∀゚)「倉庫とかレンタルします?」

(;´_ゝ`)「うーん…すごい大規模な倉庫借りないといけないだろうから、金が…」

(;´・ω・`)「それに、見つかっちゃいそうですね」

( ・∀・)「場所…場所…………」

(;・∀・)「…」

(;・∀・)「スラム?」

(;*゚∀゚)「スラム…」

ζ(゚ー゚*;ζ「イメージ的に空き地自体はありそうですけどー…」

(;´_ゝ`)「もう行きたくない…」

(゚、゚;トソン「でも、そっ、そこ以外ないような…」

(;´・ω・`)「またあの人に相談してみます?行って…」

(;・∀・)「……だな」

101名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:00:16 ID:szvJOWe20



('A`)「置き場所?」

その日の午後、すぐにモララーと兄者がスラムへ向かった。

兄者は終始びくびくしている。
無理もないことだが。
何故かこの家にいた黒猫が足元に寄ってくるので、それを撫でてどうにか気を落ち着けている。

(;・∀・)「ないですかねー」

(;´_ゝ`)「…」

('A`)「あー…アレか、地球と通信だっけ、ついこの前の」

鬱田という男は椅子に座り、二人にも座るよう促した。
二人が慎重にソファにかける。
壊れそうに軋むのが不安だ。

('A`)「割と広いなー…」

考え込んでいる。
伝えた広さに見合う立地を、脳内のスラムの中で探しているのだろう。

102名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:01:24 ID:szvJOWe20

(;・∀・)「そもそも、そういうのって…いいんですか?」

('A`)「何が」

(;・∀・)「置いたり…」

('A`)「いいんじゃない?あのゴミ山が放置されてんだし」

(;・∀・)「あー…確かに」

(;'A`)「まあ、探しておくよ。多分見つかる。三日後にまた来てくれ、今日は帰りな」

(;´_ゝ`)「はい!帰ります!」

二人が立ち上がったところで、家のドアが開いた音がした。
黒猫が走って見に行き、すぐに帰ってきた。

ぺたぺたと裸足で歩く音で、ゆっくりと一人の人が入ってくる。
後ろのドクオの顔が少し曇ったが、二人は知る由もない。

103名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:02:42 ID:szvJOWe20

イ从゚ ー゚ノi、「?」


(;´_ゝ`)「あ……」


忘れもしない、あの女。
怖がりこそすれ、まさか遭うとはおもっていなかった。
遭いたくもなかった。



(;'A`)「あー…」

(;・∀・)「え、あ、あの、鬱田さん、あの人って…お知り合い…とか……?」

兄者の顔が恐怖に歪む。

(;´_ゝ`)「うっ、うわああああああああああああ!!!!!!!」

震える手で鞄を探り、包丁を取り出した。

(;´_ゝ`)「くく、来るな!ああ、えっと、さ、刺すぞ!」

イ从゚ ー゚ノi、「あー、あの時の!」

女はやっと思い出すことができたようで、少し笑った。
余裕がある。

104名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:04:02 ID:szvJOWe20

(;'A`)「えーっと…今は無害だから大丈夫だぞ」

(;´_ゝ`)「も、も、モララーさん!通報!!」

(;・∀・)「けっ、携帯つながんない……」

イ从゚ ー゚ノi、

イ从゚ ー゚ノi、「あの時はよくもやってくれたね」

(;´_ゝ`)「うわああああああ!!ごめんなさい!!!ごめんなさい!!!でも俺じゃないです!!!」

(;'A`)「怖がらせんな!めんどくさい!!」

イ从*゚ ー゚ノi、「ふふふっ」

狭い家の中が大混乱に陥る。

意外にも、女に殺意はない。
兄者を見て面白そうに笑う姿は、この前とは大違いだ。
そう観察するモララーは、兄者が真横で騒ぐために逆に冷静になれていた。

(;´_ゝ`)「たすけてダスト!!」

「にゃー」

(;・∀・)「鬱田さん、これは……」

(;'A`)「とりあえず座れ」

105名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:06:13 ID:szvJOWe20

十五分後。

通り魔と被害者が対面に座る、奇妙な絵面が出来上がった。
鬱田より、事のあらましを話された。

(;´_ゝ`)「………仕事?通り魔が?」

イ从゚ ー゚ノi、「そうだよ、細かいことは言えないけどね」

('A`)「話したくはなかったが…当たり前だが内密にしろよ。バレたらお前達を真っ先に疑うからな」

(;´_ゝ`)「犯罪じゃないですか…それで俺怪我したんですか…下手したら死んでたんですか……」

イ从゚ ー゚ノi、「殺す気ならもっと追ってた」

('A`)「そもそもここをどこだと思ってる」

( ・∀・)「兄者、この際順応しよう」

(;´_ゝ`)「何でお前平気なのぉ…」

( ・∀・)「なんか逆に」

('A`)「とにかく、俺たちのすることに口を出すな。お前らの使う場所を見つけてやる対価はそれだ」

(;´_ゝ`)「はい…」

今度こそ帰れ、と言われて二人で家を出る。
兄者は終始震えていた。

106名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:07:58 ID:szvJOWe20

鬱田の店を出る。
一応、道はもう覚えた。

(;´_ゝ`)「もう散々ですよ…」

( ・∀・)「これからもここに通うことになるんだぞ」

(;´_ゝ`)「えーーー…」

( ・∀・)「逆にあの女の人はもう安全ってことだろ?」

(;´_ゝ`)「そうですけどぉ………」

(;´_ゝ`)「モララーさんはそう言えますけど…俺にとってはトラウマもんなんですよ…」

話しながらいくつかの角を曲がる。
黒猫もついてきていた。

( ・∀・)「兄者は怖がりだなー、ダスト。俺はもう慣れたよ」

(;´_ゝ`)「もう来たくない…」

そうは言っても、また来る必要はあるのだが。
話をするうちに、だんだん兄者も落ち着いてきた。

107名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:09:14 ID:szvJOWe20

一つの角を曲がった時だった。
同じく向かいから曲がってきた男と、モララーがぶつかってしまった。

(;・∀・)「あ、すんません…」

(;,゚Д゚)「あ、こちらこそ申し訳な……あ」

(;´_ゝ`)「あ」

ミ,,゚Д゚彡「お?」

いつかの警察官だ。
兄者の通り魔事件を調べていた人だった。
が、もう一人は知らない。

(;´_ゝ`)「あ、根子さん…と、」

ミ,,゚Д゚彡「房田フサだ。誰だ?」

(,,゚Д゚)「えーっと、件の通り魔の被害者の方です」

ミ,,゚Д゚彡「あー」

( ・∀・)「犯人、捕まりそうですか」

(,,゚Д゚)「…捜査中だ」

108名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:09:57 ID:szvJOWe20

ミ,,゚Д゚彡「今はちょっとな、別件だ」

( ・∀・)「別件?」

(,,゚Д゚)「指名手配……とまではいかないが、呉島シャキンというやつを探している」

(;´_ゝ`)「知らないですね…」

ミ,,゚Д゚彡「この辺で目撃報告があったもんでな、見回りさ」

( ・∀・)「誰ですか、その人」

(,,゚Д゚)「テロリストだよ。月虎とかいう」

( ・∀・)「あーー、聞いたことあるような…でも知らないですね……」

( ・∀・)「じゃ、僕らこれで」

(,,゚Д゚)「待て」

(;・∀・)

(,,゚Д゚)「最近、お前らの大学からよく分からん電波が検出されてる」

(,,゚Д゚)「お前ら、どこ行ってた?何故こんなとこにいる?」

109名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:10:54 ID:szvJOWe20

(;・∀・)「…探検です」

(;´_ゝ`)「……」

ミ,,゚Д゚彡「…」

(,,゚Д゚)「…」

嫌な沈黙が流れた。
根子が横の、おそらくは上司に視線をやった。
こいつらどうしますか、といったところか。

房田は少し笑った。
その意図は分からない。

ミ,,゚Д゚彡「……」

ミ,,゚Д゚彡「…ま、いいだろ」

(,,゚Д゚)「いいんですか」

ミ,,゚Д゚彡「探検なら仕方ない」

(;・∀・)「あ、ありがとうございます…信じてくれて」

(;´_ゝ`)「なんで、そんな…」

兄者が聞くと、房田が顎をかきながら悩む。

ミ,,゚Д゚彡「そうだなあ」

110名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:11:36 ID:szvJOWe20

ミ,,゚Д゚彡「抵抗だな」

(;・∀・)「え?」

ミ,,゚Д゚彡「いや。あ、近いうちに大学に電波の調査に行く予定だぞ」

(;´_ゝ`)「え、え」

訳が分からない。
呆気にとられているうちに、二人はさっさと行ってしまった。

取り残されたモララー達は、ただ立ち尽くしていた。
何かから助けられたのかも、と気づいたのは、随分後の事だった。

111名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:12:19 ID:szvJOWe20
ミ,,゚Д゚彡「房田フサだ」

フサさん適当な苗字にしてごめんなさい
狐娘が可愛く見えてきたよ

今日はここまで

112名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:14:35 ID:YfwzYn6E0

なんか妙にかっこいいドクオだな

113名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:45:16 ID:22o9nhXY0
味方かなー?
おつ

114名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 00:59:34 ID:TBbG7Ebg0
おつ

115名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 01:37:17 ID:HNS8tj520
地球との交信、ロマンだな
好きだよ乙

116名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 07:48:52 ID:PU9T3sp20
乙!
「抵抗」ってのがいいなぁ。

117名も無きAAのようです:2015/04/09(木) 15:44:53 ID:4q7l.upg0

いいわぁ、面白いわぁ

118名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:11:55 ID:BPLGjDYU0

『スラムその3』


上層、その中でも一際大きな建物。
この地域の首相の仕事場だった。

今は深夜だが、建物の窓はところどころが明るい。
熱心なことだと思った。
音を立てないように駐車場に回る。

('A`)「……」

懐中電灯を持った警備員が三人見られた。
目当ての車がどこにあるかは、昼間に見つけてある。
手元の機械に小さく声を吹き込む。

('A`)「駐車場に着いた」

応えたのは、あの名前のない女。

『やっとか。こっちは準備できてる』

('A`)「やってくれ」

少し待つ。
綿密な計画と言うほど考えてある訳ではないが、自信はあった。

119名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:12:41 ID:BPLGjDYU0
『いくぞ!』

瞬間。
建物の灯りが全て消えた。
窓のものも、駐車場を照らしていた電灯も。
光源は警備員の持つ懐中電灯のみとなるが、そちらにも異変が訪れた。
光が慌ただしく振り回され、警備員達が『浮きかけている』。

女が行ったのは、送電塔の破壊だった。
破壊といっても制御室にある機械を叩き壊すだけなのだが。

(;'A`)「……」

これにより起きたことは、ドクオのいる辺りを含む上層五分の一ほどの停電。
停電の結果は、暗くなるだけでも、建物内の職員の夜勤が無駄になるだけでもない。

周辺の重力を司る重力制御装置も、無効になるのだ。

目当ての車に素早く近づき、軽くなったその後部をそっと持ち上げて角度を作る。
鞄の中から爆弾を取り出し、粘着テープで固定し、車を地面に戻す。

(;'A`)「一つ終わった」

『私はもう逃げてるぞ』

警備員が落ち着きを取り戻し始めている。
首相が使う可能性のある車は複数ある。
二つ目の車に近づいた。

120名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:14:27 ID:BPLGjDYU0



ふらふらとよろめいていた職員の首をナイフで突き刺し、そのまま横に投げ飛ばした。
これで五人目。

通信が入る。

『一つ終わった』

イ从゚ ー゚ノi、「私はもう逃げてるぞ」

上層の重力制御装置は、送電塔の真下にある。
ドクオのいる地域はほんの少し他の制御装置の影響を受けているが、ここは違う。
つまりこの送電塔が、今の地域で一番重力が弱いということになる。

ドクオと女は弱重力に慣れている。
スラム暮らしで廃材置き場を漁ることもあり、ある程度は対応できる。
上層の警備員との決定的な違いだ。

床に手を突き壁を蹴りながら階段まで向かう。
途中で何人かの邪魔な職員に切りつけたが、構いはしない。

イ从゚ ー゚ノi、「!」

正面から強い光で照らされた。

「と、止まれ!!」

眩しい光で分からないが、銃を構えているのだろう。
仕方がなしに、奪い取った銃を構える。

イ从゚ ー゚ノi、「……」

警備員と女が同時に発砲した。

121名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:15:12 ID:BPLGjDYU0

「が…ッ!!」

イ从゚ ー゚ノi、「よし」

警備員が倒れるが、女に怪我はない。
それもこれも、この状態に慣れているかどうかの差だった。

手早く銃を奪い、階段を降りる。
止めろ、だの、殺せ、だのといった怒号が上がる。
追いつけるとは思えない。

程なく、建物から出られた。

イ从゚ ー゚ノi、「…」

ナイフを使った為か、返り血がべっとりとついている。
荷物から大きなコートを出し、着込んだ。
ドクオに貰った上質なものらしいので、これを着ていれば返り血は見えないし、職務質問もされない。
血の匂いを嗅がれなければ、だが。

イ从゚ ー゚ノi、「こっちは大丈夫だ」

『上層の5番出口で合流するぞ』

何にせよ、問題なく作戦は成功。
送電塔で奪い取ったものを思い出しながら、悠々と帰路につく。

122名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:15:58 ID:BPLGjDYU0



翌朝、ドクオの家。
決行は明日だが、そちらには一人で行くので女からは荷物だけを受け取って別れた。
中身を確認する。

拳銃が三丁。
女に使わせてもいいが、大きな音がするものである為に使いどころには困る。

二回、ノックの音がした。
ドクオが扉を開ける。

(`・ω・´)「よろしいですか」

('A`)「…やっと、店の場所を覚えてくれたようで」

(`・ω・´)「明日のことについてです。爆弾の準備はよろしいですか」

('A`)「夜に終わらせてきた」

(`・ω・´)「爆弾が見つかる可能性は?」

('A`)「さあ。ただ見つかったら演説は延期だろう」

123名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:17:07 ID:BPLGjDYU0

(`・ω・´)「これは、銃を使うんですか」

シャキンの目の前、机の上には銃がある。
不思議だという顔をしている。

('A`)「使わない。仲間が持ってきた」

(`・ω・´)「いいお仲間だ。よければ買い取りましょうか」

('A`)「そうだな、二丁は買ってくれ。一つは残すが」

さて、と前置きをして、呉島が向き直る。
小さな通信機を取り出した。

(`・ω・´)「明日は合図を受けてから車を爆破して下さい。これを渡します」

('A`)「ああ」

(`・ω・´)「私達とて、すぐに目標を捕まえられる訳ではありません。警備隊に阻まれますし、ある程度は逃げられます」

(`・ω・´)「その逃げ道を奪うのが仕事だと思って下さい。演説がはじまってすぐに決行します」

('A`)「分かった」

124名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:17:50 ID:BPLGjDYU0

(`・ω・´)「……」

('A`)「…」

無言の時間が生まれた。
表情は読みづらい。

(`・ω・´)「気分が優れませんか」

('A`)「…」

(`・ω・´)「以前、爆破で人を殺してしまうかもしれない、と言いましたね。それですか」

('A`)「…」

ドクオは答えない。
呉島は肯定だと解釈したようだ。

(`・ω・´)「…やはり。殺人絡みの依頼は他に流していると聞きますから」

(`・ω・´)「……これはどうでしょう。あなたの仕事をここで終わりにするというのは」

('A`)「…は?」

呉島は少し笑った。

125名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:18:53 ID:BPLGjDYU0
(`・ω・´)「あとは、もう起爆装置を押すだけです。爆弾の設置だけとはいえ、あなた…いえ、あなた達には非常に助けられました」

(`・ω・´)「今日来たのは、それを持ちかける為でもありまして。報酬を少し減らして…と思っていましたが、銃があるならその方がいい」

呉島は続ける。
親切なようだが、ボタンを押す事と金を秤にかけた、一種の取引だった。

法で厳しく規制されている銃は、流通がかなり限られている。
武器として使うことは勿論、裏で必要とするところに売れば、相当な額がつく。
国の警備隊が持っているような精度の高い上質なものであれば、尚更だ。

(`・ω・´)「拳銃三丁を渡すか、爆破か。選んで下さい」

('A`)「…」

呉島の考えていることは分かる。
ドクオが爆破を躊躇ったことによる計画の破綻を恐れているのだろう。
あわよくば貴重な銃を受け取りたいのだろう。

しばし沈黙の時間が流れる。

126名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:20:45 ID:BPLGjDYU0
('A`)「…いや」

('A`)「爆破もやろう」

爆破もすることに決めた。

呉島の思惑通りになるのが癪だったのもある。
しかし、何より金の為だった。
呉島は小さくため息をついた。

(`・ω・´)「…なら、分かりました。当初の通りに、明日はお願いしますね」

('A`)「分かった」

(`・ω・´)「銃は今で大丈夫ですか?」

('A`)「そうだな、今買ってくれるんならその方がいい」

しばらくの値段のやり取りの後、銃二丁を売った。
今回のテロ支援の報酬の四分の一程の金額だが、充分な値段となった。

(`・ω・´)「それでは、私はこれで失礼しますが、ドクオさん」

('A`)「?」

(`・ω・´)「あなたがやろうとしていることは、立派な正義ですから」

(`・ω・´)「例えば…今、ニュースになっている無差別通り魔、あれも恐らく、裏での政治家同士の確執が原因でしょう。
そういったことをなくす為に私達が動くのです。それをお忘れなく」

('A`)「…ああ」

127名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:21:46 ID:BPLGjDYU0

呉島は去った。
残されたのは、大量の金。
合図に使うという機械。

('A`)「…」

それと、殺人を手助けすることによる罪悪感。

決行は明日。
よりリアルに感じられた。

鞄に大雑把に金を詰め、立ち上がった。
呉島の計画に正当性があろうがなかろうが、賢い計画であろうがなかろうが、どうでもよかった。

('A`)「…この金で、一つはクリアだ」

呟いた。

もとより、全て金の為にやっていた。
人が死のうが生きようが、どうでもいい。

どうでもいい、と思いたい。
思わなければ。

('A`)「…………」

スラムで生きるのに向いていないのかもしれない。
人を切り捨てなければ生きていけない。

危険な橋を渡って、普通の生活をする以上の金を手に入れるのなら、尚更。

128名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:23:18 ID:BPLGjDYU0

('A`)「…」

家を出る。
ドクオは上層に行く為の服に着替えていた。

視線を感じて家の方を振り返る。
いつの間にか、クーが立っていた。

川 ゚ -゚)「…本当にやるのか」

('A`)「……」

川 ゚ -゚)「私は…」

言葉を遮って歩きだす。
クーは着いてこない。

代わりにどこから現れたのか、黒猫が歩いてくる。
しかしただならぬ雰囲気を感じ取り、やがて引き返して朝靄の中に消えていった。

129名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:24:07 ID:BPLGjDYU0
ここまでっす

130名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:36:17 ID:3tr7AzfA0

無事テロが成功するの祈ってる

131名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:36:39 ID:ZRhYnieE0

どうなるんだ…

132名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 19:40:25 ID:ESiCCWt20
おつ

133名も無きAAのようです:2015/04/16(木) 23:58:35 ID:soqc8UMc0
おつ

134名も無きAAのようです:2015/04/30(木) 23:33:35 ID:NSjhEXvk0
待っているんだ
http://iup.2ch-library.com/i/i1426788-1430404365.jpg

135名も無きAAのようです:2015/05/01(金) 23:29:39 ID:qL1cOIiAO
海外小説の表紙みたい

136名も無きAAのようです:2015/05/02(土) 09:08:08 ID:WdEiwErA0
分かる
この作品のイメージとまるっきり一緒だった


137名も無きAAのようです:2015/05/03(日) 18:51:56 ID:oUUP7r7E0
>>134
見れないのは俺だけ?

138名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:30:54 ID:jFCv16tI0

『交差1』


最下層、朝。
早い時間だが、事務所のソファにはドクオが座っていた。
横には黒猫がいて、ドクオの飲むコーヒーを、何それ、とでも言いたげに見ている。

今日が、決行の日。
時間にはまだ早いが、そろそろ準備だ。
手始めに、廊下へのドアを開けた。

('A`)「……」

ドクオは顔を顰めた。
浮浪者が廊下で寝小便を垂れながら眠っていれば、そうもなろうものである。

('A`)「おい」

眠る頭を蹴り飛ばす。
唸り声がして、少ししてから立ち上がった。
大きく伸びをする。

イ从゚ ー゚ノi、「…あぁぁぁぁぁぁ…ふー…」

イ从゚ ー゚ノi、「……いい朝だ」

('A`)「死ね」

139名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:32:28 ID:jFCv16tI0

今回の作戦には、確実に実行する為に誰も連れて行かないつもりだった。

が、深夜になってこの女がやって来た。

偶然にも呉島と出会い、仕事を貰ったらしい。
曰く、警備員と増援の警察の排除のサポート。
ドクオよりも遥かに血生臭い、しかし報酬も高い仕事。

こうはなれないし、なりたくないと思った。
こっちは、この仕事だけでも一大決心なのに。

('A`)「その格好で中層行くのか」

イ从゚ ー゚ノi、「どうせ汚れるから」

今日の女の格好は、より一段と酷かった。
擦り切れたパーカーだったものは土色に汚れ、ズボンだったものの股の辺りは濡れて異臭を放っている。
スラムに慣れた黒猫すら、少し離れてドクオの後ろにいる程だ。
ドクオの蔑むような視線に気づいたようで、笑った。


イ从゚ ー゚ノi、「薬やって起きたら大体こうだろ、許せ。また綺麗なのを拾ってくるよ」

('A`)「薬やめろ」

イ从゚ ー゚ノi、「無理言うね」

('A`)「せめて俺の家で漏らすな」

イ从゚ ー゚ノi、「寝てる私に言ってくれよ。大じゃないだけいいだろ」

('A`)「そっちも何回かやってんだろ。もう薬回さねえぞ」

イ从゚ ー゚ノi、「掃除するって」

140名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:34:25 ID:jFCv16tI0

家を出る前に、持ち物の最終確認をする。
とはいえ、する事がする事だけにシンプルなものだ。

通信機。これで爆破命令を受ける。
爆破スイッチ。言わずもがな。
あと、護身用ナイフ。
こんなものだろうか。

女の持ち物は、さらに少ない。

イ从゚ ー゚ノi、「ナイフ。銃もあれば、一応」

('A`)「ほら。無駄弾撃つなよ」

武器、それだけだ。
互いに、金も何も持たない。
こんな浮浪者を連れて公共の交通機関は使えないし、使う気もない。

イ从゚ ー゚ノi、「腹減った」

('A`)「自分の糞でも食ってろ」

イ从゚ ー゚ノi、「根に持つね」

仕方がないのでパンを与えたところ、贅沢にも文句をつけてきた。

イ从゚ ー゚ノi、「腐ってる」

('A`)「お前なら食える」

イ从゚ ー゚ノi、「食えるけど」

141名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:35:58 ID:jFCv16tI0

女の食事の間は、猫を撫でていた。
心を落ち着ける。

('A`)「…」

クーは、いない。
どこかへ行っているのだろうか、少し前から姿が見えなかった。

好都合、という訳ではないが、それでもよかった。
人を殺しに行く姿など、見られたくない。

('A`)「よし」

覚悟を、決めた。
この仕事で、一つの大きな区切りがつく。

ドクオが立ち上がると、猫と女の視線が自然とそちらに向く。




('A`)「行くぞ、お前ら」

イ从゚ ー゚ノi、「おーう」

「にゃあ」




女が、また大きく伸びをした。

142名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:37:49 ID:jFCv16tI0

―――――――――

モララーが大きく伸びをした。

彼とトソンは、中層の街中を歩いている。
向かっているのは、電気系統の部品を扱っている店。
本来なら鬱田に通信のお披露目をする日だったが、何故か来れないらしい。

(;・∀・)「まーったく!ついてないよなぁ!こんな朝から…」

(゚、゚トソン「そ、そう言わないでよ」

(;・∀・)「せっかく出力上がると思ったのに…しかも機械の大きさすら変えずに…」

(;・∀・)「故障って!しかも発電機の簡単な故障!なーんか拍子抜けだなー…」

(゚、゚トソン「まぁまぁ」

(;・∀・)「結局鬱田さんも来れないみたいだし…せっかく上手くいってるのに、こう、勿体無いよなあ」

(;・∀・)「…」

(;・∀・)

(;・∀・)「ねえ」

(゚、゚トソン「?」

(;・∀・)「…本当に、上手くいくだろうか」

(゚、゚トソン「え?」

唐突に言うなり、モララーは黙り込む。
少しの間、無言で歩いた。
ただの無言ではなく、モララーが重ねるべき言葉を探している風だった。
トソンはそれを待つために黙っていた。

143名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:39:18 ID:jFCv16tI0

(;・∀・)「………わからない」

(゚、゚トソン

( ・∀・)「いつもはさ、できなかったら、なんて考えなかったけど、最近は君と同じ。考えるんだ」

(゚、゚;トソン「え、べ、別に私は」

( ・∀・)「知ってるよ。不安で仕方ないでしょ」

( ・∀・)「……、規模が大きくなってきたよね。これがダメなら、スラムを使うことになってる。…場所があれば」

( ・∀・)「これがダメなら、これ。それもダメなら、次はあれ。そうやってやってきたよな」

(゚、゚トソン「うん…」

( ・∀・)「はじめは、僕ら二人でラジオをいじくるだけのサークルだったのに。育ったもんだよ」

二人は、部に入った頃を思い出していた。
一応先輩はいて、「サークル」ではなく「部」である以上、それなりに前から設立されていた筈だった。
しかし、活動はほぼなし。
その先輩も、幽霊部員ならぬ幽霊部長だった。

二人だけで部に入って、ただやりたいことを漠然と語ったのを憶えている。
そして、言い出してからは早かった。
行動力こそが、モララーの最も大きな力だった。

144名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:40:07 ID:jFCv16tI0

( ・∀・)「今から買ったもので発電機を修理して、それでも足りなかったら?」

( ・∀・)「地球がもう、電波を飛ばすのを諦めていたら?」

( ・∀・)「信号をキャッチしたと思っていたけど、何かのノイズだったら?」

( ・∀・)「規模が大きくなる毎に、退路はなくなるんだ」

( ・∀・)「昔は、代替案も打開策もいくらでもあったのに、今や随分絞られてきた」

トソンが何かを言いかけたのを、目で制した。
強い目だとトソンは思った。

( ・∀・)「分かってるよ。勿論諦めはしないさ。『次の手』はある。今はある」

( ・∀・)「…でも、『さらにその次の手』を、僕はもう思いつかない」

( ・∀・)「……本当に、上手くいくだろうか。だから、僕は今、不安だ」

(゚、゚トソン「…」

145名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:41:39 ID:jFCv16tI0

(゚、゚トソン「…」

(゚、゚;トソン「……」

(゚、゚;トソン「あ」

( ・∀・)「?」

(゚、゚;トソン「えっと」

(;・∀・)「?」

(゚、゚;トソン「えーーーっと」

(;・∀・)「な、なに」

トソンは大きく息をついた。
はっきり意見を言うのも、長く話すのも苦手な彼女には、少し準備の時間が必要だった。

でも、話さなくてはならないとも分かっていた。
ここでしっかり自分の考えを言えなかったら、モララーは潰れてしまう、そんな気がしていた。

話す前から、話すことを心の中で大雑把に組み立てるだけで、胸が痛いほど緊張していた。
何かが喉に張り付き、何故か吐きそうだった。

(゚、゚;トソン「ちょっと、座りましょう。そ、そこのベンチに」

(;・∀・)「あ、うん」

146名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:42:38 ID:jFCv16tI0

(゚、゚;トソン「あの」

(゚、゚;トソン「あの、ですね」

(゚、゚;トソン「き、きみが入部した頃、こんなことになると思いましたか」

(;・∀・)「あの頃?そりゃ、思わなかったよ」

(゚、゚;トソン「後輩が、は、入るとは思ってましたか」

(;・∀・)「いや…それも期待してなかった」

(゚、゚;トソン「あ、おおきな機械を、作るかも、とは?」

(;・∀・)「それは思ってた…というか、いずれ、そうなるだろうと」

(゚、゚;トソン「…、そ、そうです。そうなんです」

(;・∀・)「?」

モララーは、まだ分かっていない。

当たり前だと思った。
まだ、何の中身も話せていない。
改めて、自分の話の出来なさに嫌気がさす。

147名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:44:38 ID:jFCv16tI0

(゚、゚;トソン「そうです。いつでも、そうだった」

(゚、゚;トソン「い、一寸先は、見えないんです」

モララーの目には、まだ疑問の色がある。
まだ、話さなくては。
半端では終えられない。

(゚、゚;トソン「今からスラムに機械を構えてどうなるか、なんて」

(゚、゚;トソン「わ、あ、分からなくて当たり前です」

(゚、゚;トソン「今から分かる事なんて、す、少なくて当たり前です。機械を修理してどうなるかも、分からないのに」

(゚、゚;トソン「見えない物を怖がって、不安にならないで下さい」

(゚、゚;トソン「きみが、きみが、モララーが怖がっていたら、私は」

( 、 ;トソン「私は、わ、私は、私はどう、どうしたらいいんですか……」

知らず涙が流れた。
もう話せないと思った。

確かに話したいことの中心は話したが、まだ、話したいことは山程ある。
ただ、もう嗚咽しか出てこなかった。
何も浮かばない、言葉が纏まらない。

こんな自分が情けない。
相手任せではいけないことは知っているが、何故かもう話せなかった。
モララーに頼りきりのこれまでだったのを悔いた。

148名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:46:08 ID:jFCv16tI0

しばし、二人は黙っていた。
街の雑音の中にあって、痛いほどの沈黙。

トソンが落ち着いてきた頃に、おずおずとモララーが話し出す。

(;・∀・)「なんか、ごめん…。大丈夫?」

(゚、゚;トソン「あ、だ、大丈夫です…すみません」

(;・∀・)「やーー…端から見たら痴話喧嘩だな、これは」

(゚、゚;トソン「で、ですね…ごめんなさい…」

( ・∀・)「僕は、もう大丈夫」

(゚、゚;トソン「あ…ほ、本当に?」

( ・∀・)「本当に。なんかスッキリした!」

( ・∀・)「ありがとうね、話聞いてくれて」

トソンは、彼が不安がる様子をあまり見たことがなかった。
いつも隠していたのかもしれない、と思った。

149名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:47:05 ID:jFCv16tI0

(゚、゚;トソン「…あの」

(゚、゚;トソン「えと」

(゚、゚;トソン「また、な、何かあったら話してください」

自分自身の会話の拙さにまた辟易する。
これでは何も伝わらない、と思った。

しかし、モララーは今度は大きく頷いてくれた。
大真面目に。

( ・∀・)「うん、よろしく」

今度は僕が泣くかもね、と冗談めいた調子で言う。

モララーがベンチから勢いよく立ち上がった。

( ・∀・)「なんか人が多いと思ってたが、アレか。あの放送塔?テレビ塔?で演説があるんだっけ?」

トソンも立ち上がり、テレビ塔を見た。
大きなモニターは、待機状態だ。

(゚、゚トソン「ま、まだ始まらないみたいですけど、人は集まってますし、多分そうです」

( ・∀・)「…いや、もう始まる感じかな?」

(゚、゚トソン「……?」

人々のざわめきが大きくなる。


モニターの画面が揺らいだ。

150名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:48:48 ID:jFCv16tI0

――――――

モニターが揺らいだ。
まだ画面はつかないが、群衆がざわめく。

(,,゚Д゚)「もうすぐじゃないすか?」

ミ,,゚Д゚彡「かもなあ」

(;,゚Д゚)「やる気出してくださいよ…」

ギコとフサは、警備に駆り出されていた。
二人はもちろん警察官であり、警備員ではない。

フサは今ひとつお気に召さないらしく、堂々と煙草を吸っている。

ミ,,゚Д゚彡「お偉いさんだか何だか知らないがよ、演説を何でここでやるんだよ。演説といえば駅だろ」

(,,゚Д゚)「仕方ないですよ。この規模ですから」

随分前に、首相は建物内に入っている。
ギコとフサは、その建物入り口付近の担当のうちの二人だった。

ミ,,゚Д゚彡「だいたいこんな事して、狙ってくださいと言ってるようなもんだ。このご時世に」

(,,゚Д゚)「三、四年前だかもありましたよね、テロ」

ミ,,゚Д゚彡「あー。あれは下層で、目的も組織も全く違ったがな」

151名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:50:20 ID:jFCv16tI0

ミ,,゚Д゚彡「早く終わってくれねえかな」

ざわつく人々をぼうっと見ながら、ギコも別の事を考えていた。
この前の揉み消された通り魔事件。
犯人は、十中八九、犯罪の温床スラムにいるだろう。
もう、本当に自分一人には手を出せない位置だ。
そのうち、こんな裏の根回しにも慣れてしまうのだろうか。
そう思うと少し悲しい。

(,,゚Д゚)「スラムがアレなんだよなー、そもそも…」

あんな場所があるからよくないのであって、首相がどうにかすべきだと思っていた。
それこそ支持率も上がるだろうに、とか。

ミ,,゚Д゚彡「なあ」

(;,゚Д゚)「あ、はい?」

唐突にフサが話しかけてきた。
少し驚いてしまった。

ミ,,゚Д゚彡「いや、この前のスラムにいた大学生」

(,,゚Д゚)「ああ、あの…」

ちょうどスラムのことを考えていたので、驚いた。

通り魔に遭った大学生達が、何故かスラムにいたことについてだろう。
怪しさ満点だ。

152名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:51:06 ID:jFCv16tI0

ミ,,゚Д゚彡「あいつらは、いいな。気に入った」

(;,゚Д゚)「は?」

ミ,,゚Д゚彡「夢があるだろ」

(;,゚Д゚)「犯罪の匂いしかしなくないですか?」

ミ,,゚Д゚彡「何してるかは知らないし、確かに罪かも知れないが、何というか」

フサが一度煙を吐く。

ミ,,゚Д゚彡「目的があって、危険を承知であんなところにいるんだ、って感じがする」

(,,゚Д゚)「…まあ、確かに」

ミ,,゚Д゚彡「ああいう若者は、好きだ」

(,,゚Д゚)「好きそうですね、フサさん特に」

ミ,,゚Д゚彡「ああ、好きだ。大人より、よほど真っ直ぐだ」

通り魔事件の揉み消しのことを言っているのだろうが、ギコは何も言わなかった。

153名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:52:08 ID:jFCv16tI0

ミ,,゚Д゚彡「奥さん元気か」

(;,゚Д゚)「話題コロコロ変えますね…。奥さんじゃないですよ」

ミ;,゚Д゚彡「暇なんだよ。…で、いつ結婚すんだよ」

(;,゚Д゚)「あやーーー…それは、まだ…早いかなーって…」

恋人、しぃの姿を思い浮かべる。
結婚という言葉は、確かにちらついてはきている。

しかし、踏ん切りがつかない。

(;,゚Д゚)「でもこう…なんというか」

ミ,,゚Д゚彡「なんだよ」

(;,゚Д゚)「……それよりフサさんどうなんすか」

ミ;,゚Д゚彡「イヤミか。俺はモテねえんだよ」

(;,゚Д゚)「そんなことないでしょー…」

ミ;,゚Д゚彡「あーもう…トイレ行ってくる」

(,,゚Д゚)「あ、はい」

154名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:52:51 ID:jFCv16tI0

(,,゚Д゚)

俄かに暇になる。

あの大学生達は、ギコも好きだった。
フサと同じような理由で。
やはり、夢を追う姿は、眩しく見えた。

夕飯時に、何度もしぃに話した覚えがある。

彼らは、何かに成功するだろうか。
何をしているかは知らないが、スラムまで使う以上、大掛かりなことをするのだろう。
部外者ながら、密かに楽しみだ。

(;,゚Д゚)「ふう…」

ざざ、と、頭上のスピーカーからノイズが走った。

(,,゚Д゚)「はじまったか。フサさん帰ってこないけど」

頭が、仕事用に切り替わる。
と言ってもただの警備だし、とりあえずは立っているだけだ。

首相の声がうるさいぐらいの音量で流れてくる。
これから一時間スピーカーの真下は、辛いかもしれない。

カレーが食べたい、と思った。

155名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:54:04 ID:jFCv16tI0

(,,゚Д゚)

遠くに帰ってくるフサの姿を見つけた、その矢先だった。



何故か、目の前が真っ白になった。




何故か、音が何も聞こえなくなった。




身体中から力が抜けた。どうしてか視界がぐるぐると回る。




気づけば、周りの人と一緒に地面に倒れていた。




だんだんと、音が帰ってくる。体は何故か痛くない。




まず聞こえたのは、悲鳴。次いで爆発音。




テロだ、と思ったところで、ギコの意識は闇に落ちた。

156名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 19:54:53 ID:jFCv16tI0
逃亡ぶっこいてました申し訳ねぇっす
あと頂いた絵は消えるまえにキッチリ見てアヘってました
あと1、2話で終わる予定です

157名も無きAAのようです:2015/11/25(水) 21:18:27 ID:e5cR.zrE0
来てたな、乙
次も楽しみにしてる

158名も無きAAのようです:2015/11/26(木) 13:05:25 ID:rcFaH/9Q0
おかえりなさい!!!

159名も無きAAのようです:2015/11/26(木) 14:16:41 ID:o4zITdt.0
乙!待ってたよー
大学生サイドもドクオサイドも気になるな

160名も無きAAのようです:2015/11/26(木) 18:40:45 ID:zJeuJZEgO
皆さん、オワコン社長をよろしくお願いします。気に入ったらチャンネル登録!!
http://www.youtube.com/watch?v=XJBsJBnlHRQ
http://www.youtube.com/watch?v=aSMLi2uOkvk
http://www.youtube.com/watch?v=cbwrnLKERpA
http://www.youtube.com/watch?v=gPevsHpSj-Y
http://www.youtube.com/watch?v=9ekKaVB5uHg
http://www.youtube.com/watch?v=cP0NAOzKQAE
http://www.youtube.com/watch?v=hekgfuTcX6o
http://www.youtube.com/watch?v=1uzYFjN7z5E

161名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 00:07:41 ID:H0LSJ.T20
内容忘れたから最初から読む

162名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 00:13:33 ID:MKc9orrU0
おっ!久しぶりだな!

163名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:22:26 ID:kGOiR2..0

『交差その2』


(;,゚Д゚)

一度目を閉じて、また目を開けただけの、短い時間だと思っていた。
現実はそうではなかった。
気を失っていたようだ。

スピーカーからは、がんがんと声が聞こえる。
聞き取れない。
それどころではない。

周りの状況を見る。

車が燃えている。
人が走り回っている。
人が倒れている。
武装した人が、建物内に入っていく。

動かなければ。

(;,゚Д゚)「……っ!!!」

ふらつきながら、どうにか立ち上がった。
身体中が引き裂かれるように痛い。

トランシーバーに手をかけたが、無駄だと分かった。
完全に壊れてしまっている。

考えなければ。
冷静にならなければ。
自分一人で。

164名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:23:30 ID:kGOiR2..0

(;,゚Д゚)

横に倒れている警備員を見る。

首を切られて、『殺されている』。
その横も同様だ。

(;,゚Д゚)「…なんだってんだ!?」

フサの姿を最後に見た地点は、車のすぐ横だった。
その車は、今やごうごうと燃え上がっている。

一瞬だけ見えた記憶だと、あの車が最初に爆発していた。

(;,゚Д゚)

生きているか、どこにいるか分からないフサよりも、目の前に沢山見えている人を助けるべきだ、と冷静に判断できた。

自分の体は、動かせる。
今は、それだけ分かれば、いい。

視界の端に、救急車が映った。

(;,゚Д゚)「あれか」

165名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:25:04 ID:kGOiR2..0

救急車に駆け寄り、中の救急隊員に声をかける。
隊員はギコの姿を見て少し驚いたようだった。
救急車の中でやっているのは、緊急的な止血のようだ。

(,,゚Д゚)「おい!!あんた!!」

(-@∀@)「警備員の方ですか?」

(,,゚Д゚)「そうだ!俺はどうすればいい!」

(-@∀@)「ここから一番近いのはビップ病院、次いでソウサク病院です。両方に連絡はついていますので、そこに怪我人を運び込んでください!往復する救急車では足りなければ、他の車でもなんでも構いません!」

(,,゚Д゚)「分かった!」

急な質問にも、しっかりと返してくれた。
目標が見えたのはありがたいことだ。
踵を返して、周りを見渡す。

酷い様子だ。

人々は悲鳴をあげるか倒れるか。
建物の中からは時折発砲音が聞こえる。
爆心地には、もはや目を向けることもできない。

(,,゚Д゚)

できることを、しなければ。

166名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:27:01 ID:kGOiR2..0

(;,゚Д゚)「あれは…?」

放送塔の、大きなモニターを見る。
見たことのある顔が大写しにされていた。

テロ組織の長。
指名手配犯。

(#,,゚Д゚)「クソが!!あいつらか!!」

怒りが沸き起こるが、それどころではないと思い直す。
とにかく、あそこに機動隊が入ったのは見た。
今の目的は、人命救助だ。

それからは、ただ走り回っていた。

一人を救急車に放り込み、二人目を運転してくれるという人の車に担ぎ入れる。
同じように三人目を助けようと思ったが、その人は既に死んでいた。

(;,゚Д゚)「………!」

厳しい話だが、死人を運んでいる余裕は、今はない。
断腸の思いでそこを離れた。
一人でも多く助ける必要がある、仕方ない、と自分に言い聞かせながら走った。

また数人助けたあたりで、急激な眩暈に襲われた。

改めて、自分の体を見る。

大火傷だ。
これまで気づかなかったのが不思議なほどの、恐ろしい出血だった。

167名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:28:06 ID:kGOiR2..0

(;,゚Д゚)「く、そ…」

出血を意識した瞬間、視界が大きく歪む。
体のバランスが崩れるのを感じる。
抗えずに、道路に倒れてしまった。

もう、体は一寸たりとも動かない。

強制的にテロリストの演説が聞こえてくる。
もはや繋がった言葉の意味は分からないが、耳がひとつの単語を拾った。

(;,゚Д゚)「何が…何が」

(#,,゚Д゚)「何が『平等』だ……」



彼の意識は、ここで再び途切れた。

168名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:29:09 ID:kGOiR2..0

――――――

(゚、゚;トソン「モララー!!モララー!!!だ、大丈夫ですか!!」

目の前の恐慌状態など、目に入らなかった。



(; ∀ )

モララーが、腹から血を流して倒れている。



原因など探っている暇ではないが、トソンにも、そしてモララーにも分からなかった。
二人は、放送塔を取り巻く群衆の、一番外側にいたのに。
真横のトソンは、せいぜい尻餅をつくだけで済んだのに。

(; ∀ )「が…げほっ…」

モララーが辛そうに咳をする。
口から血が吹き出た。

(゚、゚;トソン「あ、あ、あ、あ…う…」

対処法が分からない。
救急車が来てくれるとは思えない。
周りの人が助けてくれる見込みもない。

目が回る。
言葉も出ない。
何も分からない。

逃げ惑う群衆の中、二人は孤独だった。

169名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:30:33 ID:kGOiR2..0

(; ∀ )「…ごほっ!ごぼっ…」

モララーが辛そうなのだけは分かっていた。
それだけ分かってもどうしようもなかった。

(゚、゚;トソン「ど、ど、どうしたら…!も、モララー!!大丈夫ですか!?モララー!!!!」

間抜けな言葉だと思った。
大丈夫なわけがないのに、そう言うしかない自分に腹が立った。

左手でモララーの手を握り、右手で丸めた上着を傷口に押し当てている。
止血のつもりだった。
背中側から血だまりが広がってくるあたり、何かが貫通したのだと理解できた。
理解できても、どうしようもない。

何をすれば、どうしよう。
無意味な言葉だけが頭をぐるぐると回る。
何もできない。

涙が溢れた。
私は無力だ、と思った。

考えなければならないのに。
動かなければならないのに。
何もできない。

(;、; トソン「ああ…ううう…モララー…」

(; ∀ )「と… そ」

激しく咳き込みながら、モララーが何かを言おうとする。
聞くべきだと思った。
一言一句、漏らさず。

170名も無きAAのようです:2015/11/27(金) 22:31:46 ID:kGOiR2..0

(; ∀ )「け…げぼっ…ごっほ…ぁ…」

(;、; トソン「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…うぅぅぅ…ぅ…」

(; ∀ )「け、が…は、」

また咳き込む。
口からも、お腹からも、血は止まらない。

(; ∀ )「け が…は、……ない、かッ…?」

(;、; トソン「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

自分が不甲斐なかった。
この状態の彼に心配されるなんて。

(;、; トソン「だ、ぁ、誰か、だれかぁぁぁぁぁぁぁ…だれかぁぁぁぁぁ…」

助けを呼ぶことしかできない。
それも満足にできていない。

一緒にいたのに、肝心なときに助けられない。

(;、; トソン「まってよおぉぉぉぉぉぉぉぉ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

(;、; トソン「なんでぇぇぇぇぇぇぇ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」

泣くことしかできない。
誰も来ない。


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