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('A`)は撃鉄のようです
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__ ,、
く_;:::ハ /::ヘ
(_厂 ヒコ
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<_フ− )フ「……やっぱりか」
(゜д゜@ 「……何がだい?」
<_フー )フ「……超能力、消えてら」
エクストは先程から超能力を発動しようとしていた。
しかし天井に吊るされた裸電球に変化はない。電球は十分に光り続けていた。
<_フー )フ「……しばらく世話になるよ。一人で頑張る時間が要るみたいだ」
<_フー )フ「早くドクオの後を追っかけねえとな……」
(゜д゜@ 「……エクスト、あんたの脚は……」
<_プー゚)フ「分かってる。分かった上で言ってるんだ」
笑顔を取り戻したエクストは、涙を滲ませた目でおばちゃんを見た。
次いで自分の両脚の付け根をポンと叩き、
<_プー゚)フ「脚がなくても、俺はドクオを追っていくよ」
<_プー゚)フ「今度こそ、歩くような速さで……」
完全に消し飛ばされた両脚に思いを馳せながら、そう言って笑った。
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
( ゚д゚ )「……」
('A`)「……」
互いに互いを探して歩き、夜になってやっと巡り合った二人。
見た目は揃ってボロボロで、かたや視力を喪失し、かたや返り血で真っ赤に染まっている。
ドクオにとって唯一の救いは、見るに耐えない今の姿を誰にも見られない事だった。
( ゚д゚ )「……目をやられた。何も見えん。腕も上手く動かん」
('A`)「……次は武器の補充だ。バーボンまでちょっと遠いけど、歩けるよな」
( ゚д゚ )「肩貸せ。それか手をつなげ」
(;'A`)「肩貸すよ……」
傷だらけの二人は肩を組み、レムナントの荒野を歩き出した。
( ゚д゚ )「……色々あったみたいだな」
('A`)「……」
( ゚д゚ )「俺もだ。正直、今は自分に自信がない……」
('A`)「……歩こうぜ。今は、話せる気分じゃないんだ……」
沈黙だけが二人を繋ぎ止めたまま、夜は、段々と更けていく。
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1〜15話 >>2
第十六話 仲間を求めて >>6-24
第十七話 Waste Land >>33-71
第十八話 限りある世界 >>89-134
次回の投下は来年を予定しています
オマケは投下予告の時に
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乙。
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おつおつ
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クソっリアルタイムで支援しようと思ってたのに出来なかった
乙!!!!!
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乙!
ほんと面白い!
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ら、らいねん?
読み返せるne!
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ライバル戦は熱いね おつ
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デミタスつっええな
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能力バトルもの
好き
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今週投下
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待ってました!!!!!
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ドクオのしぶとい生き様や熱い展開大好き
期待してます
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こいやぁ!投下こいやぁ!!!
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除夜の鐘を聞きながら全裸待機
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≪1≫
「お嬢さん、あんたも変な人だぜ」
店に居るたった一人の客を相手に、酒場・バーボンの経営者である大男はそう言った。
綺麗に磨いたグラスにワインを注ぎ、それをカウンター席の女性に差し出す。
ミセ*゚ー゚)リ「ありがとう。そういう貴方は……普通の人みたいね」
優しく笑い、彼女は大男からグラスを受け取った。
ふくよかな下唇にグラスの縁を乗せ、口の中へワインを送っていく。
大した味ではなかったが、彼女は処世術に基づき、満足そうな表情を作って見せた。
「こんな店をやってるから堅気に見えたか? これでも、こないだまで牢屋の中だったんだぜ?」
ミセ*゚ー゚)リ「あら、どうして」
「向こう側に歯向かったんだ。言いたかないが、ザマァないって奴だ」
ミセ*゚ー゚)リ「……どうして、その牢屋を出られたんです?」
聞かれると、大男はニヤリと頬を弛ませた。
「つえぇ奴が出てきたのさ。まさか看守長までブッ倒すとは思わなかったけどな」
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( A )「オウッフ……」
その時、スウィングドアが軋みながら開き、一人の男がフラつきながら店に入ってきた。
途端、男は糸が切れたように床に落ち、そのまま微動だにせず沈黙した。
「……ドクオか……?」
大男は訝しげに眉間をすぼませ、ドクオらしきそれに近づいた。
それは不細工なドクオだった。
大男は床に倒れたドクオをひっくり返し、彼の頬を叩いた。
「おい、ドクオ! お前ドクオだろ!?」
(゚A゚) ※連戦、長距離移動から来る疲労困憊、筋肉痛
それから程なくして、更にもう一人が店に入ってきた。
大男が顔を上げると、ちょうど二人目の男が床に落ちていく所だった。
( ゙゚Д゙゚)「カッハァ……」
( ゙゚Д゙゚) ※毒物による体調不良、貧血、しかも目が見えない
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揃いも揃ってズタボロの二人を見回し、大男は参ったと言わんばかりに頭をかいた。
「……どういうこったよ……」
ミセ*゚ー゚)リ「……大変そうね」
騒々しくなった背後をよそに、彼女は静かにグラスを揺らした。
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
目的地の酒場に到着したドクオとミルナは、その日を丸々休日とした。
二人のズタボロっぷりを見かねた大男もそれを認め、しばらく店に居付いていいと言ってくれた。
武器は地下倉庫にたっぷり用意してあるらしく、ダディとの待ち合わせにもまだ時間がある。
ドクオは今日からの数日間を休息に当て、万全の体制を作るために使おうと考えた。
ミルナもそれに賛成しており、二人のちょっとした旅はこれで呆気なく終わった事になる。
('A`)「……」
ドクオは店先の岩に座り、ぼんやりと空を眺めていた。
微弱な風を全身で感じ取りながら、雲の動きを目で追い続ける。
たまに足元を変な虫が通り過ぎていく。そいつに息を吹きかけて遊んだりもする。
大きな欠伸もするし、かゆい所があれば即ポリポリしていく。
('A`)「……ハァ」
ドクオはそんな動作をして思考を誤魔化し続けていたが、
彼は自分がエクストの両脚を千切り、消し炭に変えてしまった現実を受け止めきれずにいた。
能力者同士が戦うのは銃と銃を向け合うのとなんら変わりない。
どちらかが“その気”になれば、その時点から戦いは現実の殺し合いに発展する。
死んだ方が負けという現実が始まれば、超能力は単なる人殺しの道具になってしまう。
エクストとの戦いを経てそれを実感したドクオは、感情に任せて拳を振るった事を深く後悔していた。
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-
「なんだよ、死人みてぇなツラしやがって」
店から出てきた大男はそう言い、ドクオが座る岩の隣に来た。
('A`)「死んだように生きてりゃこうなる」
「……器用だな、俺には出来ねぇ」
大男は肩を竦めて言い返すと、ドクオに新しいシャツを放り投げた。
それは白い半袖シャツだったが、今ドクオが着ている返り血まみれのシャツよりは幾分か上等だった。
ドクオは大男に礼を言い、さっさと服を着替えた。
「あの男、目が見えてないな」
('A`)「らしい」
「かたや視力無し、かたや血塗れか……」
大男は肩を落として言った。
「ま、俺には関係無いから事情は聞かん。だが、この店に厄介な客が来るのは御免だぜ」
('A`)「……来ないと思う」
「……どうしてそう思う?」
('A`)「あっちは制圧作戦の為に戦力を集めてるんだ。
それをわざわざ分散するような真似はしないだろ」
「……確かに。お前意外と冷静だな」
('A`)「自分でもビックリだよ」
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ドクオは呆然としたまま、大きな間を置いてから尋ねた。
('A`)「なあ、あんた、人殺しの経験はあるか?」
「……そういう奴じゃなきゃ監獄には入ってねえ」
そう答えると、大男は地面に腰を下ろした。
「変な事を聞くんだな。お前、ここがどういう場所か知ってんのか?」
('A`)「掃き溜めだろ」
「……違いねえが、それは向こう側の人間のセリフだな。
ここは人殺しも強盗もある、ただの無法地帯だ。金と力がありゃ不自由は無い、そんな場所だ。
目に見える自然は確かに綺麗に見えるが、その上に生きる俺達はゴミクズの極み。そうだろ?」
('A`)「……そうだな。忘れてた」
('A`)「……俺はそういう人間だったな」
「……そう意味深な事を言われても分かんねぇぞ。喋るんなら分かりやすく、だ」
ドクオは困ったように両手をあげた大男を見て微笑み、すぐに表情を戻した。
('A`)「親友だった奴がいるんだ」
ドクオは、躊躇いなく先日のことを口走った。
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-
('A`)「昨日、そいつの両脚を俺が潰した。
服の返り血はそいつの血だ」
('A`)「……初めて人を殺そうと思った。だから少し思い詰めてたんだ」
('A`)「でもまぁ、それも開き直れた。今はメシを食いたい」
「……メシか? そいつぁ分かりやすっ――」
その時、大男の言葉を遮って大きな物音が轟いた。店の中からだった。
二人は一瞬目配せし、すぐに立ち上がって駆け出した。
.
-
≪2≫
店内では、ミルナと一人の女性が相対していた。
ミルナは拳を固めて立ち上がっており、女性の方は椅子に掛けたまま落ち着いている。
二人の間にあったテーブルは粉々に粉砕されており、今はもう跡形も無い。
テーブルを破壊した際の余波なのか、周囲のテーブルも方々に吹き飛んでいた。
ミセ*゚ー゚)リ「……激しいのが好きなの?」
(#゚д゚ )「……黙れクソ女。この場で殺すぞ」」
女性はグラスに残ったワインを飲み干し、グラスを空中にそっと置いた。
本来なら重力に従って床に落ちるはずのグラスは、そのまま空中に静止して落ちなかった。
ミセ*゚ー゚)リ「私は利口な生き方を提案しただけ。
目的の為なら人殺しだって厭わない、そういう生き方をね」
(#゚д゚ )「それはお前みたいな根っからの悪人の生き方だ。
俺は俺自身の正義を捻じ曲げてまで、自分の為に生きようとは思わない」
ミセ*゚ー゚)リ「だったらこう言えば貴方は悩むのかしら。
その生き方でどれだけの人を救い、一方でどれだけの人を苦しめ、殺してきたの?」
ミルナは、何も言い返せなかった。
彼女は口元に手を当てて小さく笑い、ミルナを上目遣いで見つめた。
.
-
ミセ*゚ー゚)リ「長生きしててもお子様なのね。
今時、そういう人は沢山居るけれど」
( ゚д゚ )「……お前も同類だろうが」
精一杯の反抗心を言葉にして吐き出す。
しかし彼女は物ともせず、ミルナの台詞を否定した。
ミセ*゚ー゚)リ「私は大人よ? ちゃんとした大人の女性。
少なくとも貴方ほど他人に依存してないし、自立してるの」
( ゚д゚ )「孤立の間違いだ」
ミセ*゚ー゚)リ「それでも構わないわ。何か問題ある?」
彼女は言い切った。
ミセ*゚ー゚)リ「私は私一人で私の為に生きている。
楽しい事、嬉しい事の為に生きている。私はね、これで幸せなの」
ミセ*゚ー゚)リ「楽しい事の内容に問題があるとか言わないでよ?
これは単なる個人的な人生観なんだから。世の中のアレコレなんか知らないわ」
(#゚д゚ )「そんな勝手――ッ!」
ミセ*゚ー゚)リ「――間違ってるってね、よく言われてたわ」
ミセリは口元に人差し指を立て、静かに呟いた。
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ミセ*゚ー゚)リ「でもね、そう言って私を否定した人達は、誰も私に戦いを挑まなかったわ」
ミセ*゚ー゚)リ「私が悪いと思うなら殺しに来ればいい。裁けばいい。
大なり小なり超能力者が居るんだから、大勢で私を嬲り殺せばいいと思った」
ミセ*゚ー゚)リ「しかし彼らはそうしなかった。私はしばらくして気付いたわ。
彼らはね、私を利用して自分の立ち位置をアピールしたかったのよ」
ミセ*゚ー゚)リ「正義と悪の構図がね、欲しかっただけなの」
ミセ*゚ー゚)リ「彼らはね、『悪に立ち向かう正義の僕私』を演出して、利益を上げようとしたの」
そこまでを言い、彼女はカウンターに置きっ放しだったワインボトルに視線を送った。
するとボトルは宙に浮かび、彼女が空中に置いたグラスに近づいてワインを注いだ。
彼女はグラスを持ってワインを煽り、口を開いた。
ミセ*゚ー゚)リ「話が逸れたけど、私が言いたい事は一つだけ」
ミセ*゚ー゚)リ「ミルナさん、貴方は元の世界に帰りたいんでしょう?
その為に必要なものは準備出来ているわ。足りないものは、あと貴方だけ」
( ゚д゚ )「……目的が手段を正当化する。大義名分があれば、大悪党も正義の味方だ」
ミセリは背筋を正して言った。
ミセ*゚ー゚)リ「……そうね。私達という集団は完全完璧な『黒』よ。
およそ悪と言うに相応しい、そんな悪者達の集まりだわ」
ミセ*゚ー゚)リ「しかしそんな黒でさえ、tanasinnの前では純白のように光り輝く。
それを知らない貴方ではないでしょう?」
ミセ*゚ー゚)リ「それに……別に初めてって訳でもないんでしょう?
tanasinnを倒す為に他人を使い捨てるなんて、今までの世界ではよくやってたらしいけど?」
ミセ*゚ー゚)リ「言っておくけど、あなた、私なんかよりよっぽど多くの人を殺してるんだからね?」
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( ゚д゚ )「……俺は……」
ミセリの問い掛けは、ミルナにとっては古傷を抉られるようなものであった。
仲間を集め、力を蓄え、決戦に挑み、すべてを失う。
そんな経験を何度もしている内に鈍化していった心ですら、後ろめたい自覚はあったのだ。
tanasinnに勝てる見込みなど無い筈なのに、俺達なら勝てると嘘を吐いて味方を鼓舞する。
心からミルナを信用し、彼の宿命に怒りと同情を覚えるような仲間達ですら、
世界が変わればミルナは彼らの存在を忘れ、次の世界に適応していく。
ただ心臓を動かして生きているだけだった。
それだけで、他人という存在の価値がどんどん下がっていく気がした。
命の価値が分からなくなった。やがて、仲間が死んだ所で何も思わなくなった。
( ゚д゚ )「俺は……」
――結局のところ、ミルナは他人を利用し、その場凌ぎをしていたに過ぎなかった。
思考を停止し、『仲間達との友情演劇』の為に同じ事を繰り返していたに過ぎない。
精神の安寧を欲するあまり、彼は目的を見失って一時の安らぎを追ってしまっていた。
tanasinnを倒して元の世界を取り戻すという、大義名分と言っても余りある正義の言い分が、
その重荷が、彼という人間を少しずつ現実から遠ざけていったのだ。
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ミセ*゚ー゚)リ「ずばり、自信がないんでしょ」
彼女はミルナを指差し、にんまりと笑った。
ミセ*゚ー゚)リ「あの仲間達と過ごした時間は紛い物だったのか?
俺は本当にあいつらを信用していたのか?
一般人を死地に送り込むような真似をしたのに、俺はまだ正しさを語れるのか……」
席を立ち、彼女はミルナから離れていった。
そうして少し距離を取ると、彼女はくるりと体を翻してミルナを見直した。
ミセ*゚ー゚)リ「……考える時間は山ほどあったでしょう?
もう答えは出てるんじゃないかしら。どうであれ、何であれ」
やがて、彼女の背後に暗闇よりも黒いものが渦巻き始めた。
彼女はミルナと目を合わせたまま、黒い渦の中に一歩踏み入った。
黒い渦は、少しずつ彼女の体を包んでいく。
ミセ*゚ー゚)リ「人生には数多くの決着が必要である。
前に進む為ではなく、過去を過去に留めておく為に」
ミセ*゚ー゚)リ「私の名言よ。今思いついたの。良ければ覚えておいて」
黒い渦は彼女の全身を飲み込むと、ふわっと周囲に霧散して消滅した。
次の瞬間には、彼女はもう、どこにも存在していなかった。
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≪3≫
(;'A`)「どんだけ派手にすっ転んだんだよ……」
テーブルと椅子がめちゃくちゃに吹き飛んだ店内を掃除しながら、ドクオはミルナを一瞥する。
ミルナは椅子に座り、光を失った目でどこか遠くを眺めていた。
( ゚д゚ )「仕方ないだろ。そういう事もある」
('A`)「……お前の目、もう見えないままなのかな」
( ゚д゚ )「……直そうと思えば直せる。しかし面倒だからな、自然に治るのを待つ」
(;'A`)「自然に治るなら、まあいいんだけどさ……」
ドクオはミルナの前に椅子を置き、そこに腰を下ろした。
('A`)「これから先も一緒に来るなら荒事だってあるんだぜ、大丈夫かよ」
( ゚д゚ )「……分からん。俺の中にあった自信は、ここ数日でかなり粉々だ」
('A`)「……そういやリハビリとか言ってたよな。どうする?」
( ゚д゚ )「……分からん」
ミルナは同じことを繰り返してドクオをあしらい、目をそらした。
歯切れの悪い言葉が連続したせいか、場の空気がずんと重くなる。
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( ゚д゚ )「……そういえば、お前も故郷で何かあったんだろ?
血の臭いくらいは分かる。お前こそ大丈夫なのか」
('A`)「……大丈夫だよ。ちょっと現実見ただけだ」
('A`)「気分は悪いけど、仕方ねえと思ってる。
自分がどういう人間だったかやっと思い出した……そんだけ」
( ゚д゚ )「……なあ、ドクオ」
ミルナは音を頼りにドクオの方を向いた。
( ゚д゚ )「お前には、何をしてでも帰りたい場所があるか?」
('A`)「……ある。今もその場所を目指してる」
( ゚д゚ )「……そうか。俺は今でも道に迷っている。
帰る場所も分からないまま、ずっとだ」
互いに目をそらしたまま、二人はしばらく口を閉ざした。
その最中、二人は沈黙しながら真逆の事を考えていた。
('A`)(帰れるなんて思ってねえ。これはただの夢だ、分かってる……)
( ゚д゚ )(tanasinnさえ倒せれば可能性はあるが、その為には……俺はまた……)
一人は夢が夢であると自覚し、一人は自分の夢を信じようとしていた。
それは、この二人の決別を意味していた。
.
-
( ゚д゚ )「……なあ、ドクオ」
( ゚д゚ )「……俺は元の世界に帰りたい。帰って何がしたいって訳じゃない。
どうせ死ぬなら、見慣れたあの世で死にたいんだ」
('A`)「……帰る手段は」
( ゚д゚ )「……ある」
('A`)「……じゃあやればいい。お前の好きにすればいい。
俺は知ったこっちゃないからな、無責任にそう言うぜ」
ドクオは表情を曇らせ、さらに続けた。
('A`)「例えそれで、自分自身の正しさを踏み躙ってもだ。
人に恨まれたって、責められたって成し遂げたい事があるなら、それはもう 『なる』 しかないんだ」
( ゚д゚ )「……なる? 何にだ?」
('A`)「悪者にだよ。そう呼ばれる覚悟をして、間違った事をするしかない。
間違った事をしないとどうしようもない人間なら、もう諦めてやるしかねぇんだ」
ドクオは嘲笑し、さらに付け加えた。
('A`)「……俺は悪者だ。社会の正しさの手には負えねえ、社会不適合者のゴミクズだ。
俺はもう、それでいいって決めた。これで結構気が楽だ」
.
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(;゚д゚ )「それはっ……!」
途端、ミルナは声を張り上げた。
(;゚д゚ )「それはただの身勝手じゃないのか!?
悪者になるしかないって……そんなの……」
狼狽した彼とは反対に、ドクオは冷たい表情のまま答える。
('A`)「身勝手だろうな。でも 『だから何だ、それがどうした』 だ。
俺は元々こんな世界は大ッ嫌いでな、今更誰に何言われようが知らねぇんだ」
('A`)「俺は女一人を取り返せればそれでいい。他の全部は、もういいんだ」
('A`)「……俺はそういう身勝手な開き直り方をした。
そりゃあ何をするにしたって、最低限の常識は守るけどな」
(;゚д゚ )(……俺には分からない。お前は、そんな簡単に他人を切り捨てられるのか?)
ドクオを否定するその言葉は、思った直後に自分に跳ね返ってきた。
過去の行いを思い返せば、ミルナはドクオよりよっぽど多くの悪事をこなしてきた。
より多くの他人を切り捨ててきた。より多くの現実から目をそらしてきた。
人を責められるほど俺は上等な人間じゃない。
そう思えば思うだけ、ミルナは『正義』としての自分の考えを肯定できなくなっていった。
結果を伴わない綺麗事は世迷言だ。
そんな事は分かっていた。分かっていたからこそ、彼は現実を直視することができなかった。
思い描いた綺麗事とは真逆の、罪悪と失敗だけが積み上げられた今という現実を。
.
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改めて外に出てきた今、ミルナは選択をしなければならない。
それは至極単純な話、戦うか戦わないかの二択である。
tanasinnと関わり、もうこの世界と無関係ではいられない彼は、このどちらかを選ぶ義務がある。
もちろん義務を放棄して死ぬのも一つだ。
荒巻に頼めば彼は快くミルナを殺し、かくしてミルナは全ての義務から解放されるだろう。
だが、それでは駄目だとミルナは思う。
( ゚д゚ )(……死ねば楽になるなんて、それこそ一番最初に考えた)
( ゚д゚ )(死ぬのは別にいい。ただ、何も成し遂げられないまま死ぬのは――)
('A`)「――おい、大丈夫か?」
ドクオに声を掛けられると、ミルナはハッとして顔を上げた。
駆け巡った考えが急停止し、彼はドクオの存在を思い出す。
('A`)「……さっき聞いたんだけどさ、地下の武器庫を寝床にしていいって。
雑用はやっとくから休めよ。顔色悪いぜ」
( ゚д゚ )「……」
( ゚д゚ )「……すまん。先に寝る。
だがそういうお前も万全じゃないんだ、早めに切り上げろよ」
(;'A`)「お前が散らかしたんだろうがッ」
そう言ってミルナが席を立つと、彼の目の代わりをするべく、ドクオも腰を上げた。
ドクオはミルナの手を取り、彼を地下に案内していく。
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('∀`)「野郎の手なんか握りたくないんだが?」
( ゚д゚ )「……」
(;'∀`)「……」
おかしな雰囲気を打開するために放ったドクオのボケは全く意味をなさなかった(実際面白くなかった)
変な汗を拭い、喉を鳴らして仕切りなおす。
(;'A`)「明日、お前用の杖でも作ろうぜ。武器にも出来るしな。便利だろ?」
沈黙を誤魔化し、ドクオはぺらぺらと話し始めた。
手を握るという行為によって、ミルナが自分の心を覗き見ている事にも気付かず。
( ゚д゚ )「……心が決まった。もう、大丈夫だ……」
('A`)「……?」
ミルナは独り言のように言い、ドクオはそれを聞き流した。
.
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レムナントでの諸用を終えた後、ミセリはメシウマ側に移って都内観光を楽しんでいた。
彼女は数多くの店に入り、目に付いたものを一つ残らず買っていった。
荷物は超能力で浮遊させればいいので、彼女の買い物は留まる所を知らなかった。
ミセ;*゚ー゚)リ(……さすがに買い過ぎたか)
荷物の積みあがり具合がそこらへんのビルを超えようとして、ようやく気付く。
彼女は仲間からコピーした瞬間移動能力を発動し、荷物をすべて本拠地にすっ飛ばした。
それと同時に携帯電話が鳴り響く。ミセリは携帯電話を耳に当てた。
「嫌がらせか何かか?」
開口一番の言葉には、明確な怒りが込められていた。
ミセ*゚ー゚)リ「こんにちは。何が?」
「空から女物の服やアクセサリー、家具家電が山のように降ってきたぞ。
つーか何が悲しくて無駄毛処理機を複数買ってんだよお前、アルパカでも飼ってんのか」
ミセ*゚ー゚)リ「……送り先間違えました。ごめんなさい。あと買ったもの見るな」
ミセリも怒った。アルパカは飼っていない。つまりそういう事だった。
「次からは普通に宅配を使え。この量だとダンボール幾つだ?」
ミセ*゚ー゚)リ「それこそ宅配業者への嫌がらせだわ。
荷物は適当に部屋に突っ込んどいて。次は気をつけるから」
ミセリは反省せずに言い、そこで会話を区切った。
.
-
歩道の端っこに寄ってから、彼女は本題を語った。
ささやかな監視の目がこちらを向いている。
彼女は監視に対して手を振って応えた。
ミセ*゚ー゚)リ「仕事は終わったわ。一応それなりに煽っておいたけど」
「……それなりか」
電話の相手は不安そうな声色で繰り返した。
ミセ*゚ー゚)リ「あら? 仕事のパートナーが信用できない?」
「人心についてはお前の方が専門だ。お前が駄目なら適役は居ない」
ミセ*゚ー゚)リ「大丈夫よ。たとえ数万年数億年生きていようが、人は切欠一つでコロッと変わるわ」
ミセリはゆっくりと、それこそ子供相手に話すように言った。
ミセ*゚ー゚)リ「どこかの先生も、あっという間に変わってしまった事だしね」
「……ぐうの音も出やしねぇ。そうだな、確かに人は変わる」
ミセ*゚ー゚)リ「あのミルナとかいう男、今なら貴方でも圧勝出来るほど弱いわ。
だからこそ彼は変わる。『弱い』という事は、いつか必ず『強くなる』という事なの」
.
-
「……よく分からん、お前の哲学は」
相手の反応は溜め息交じりだった。
「とにかく仕事は終わりだ。さっさと荷物片付けに帰って来い」
ミセ*゚ー゚)リ「ええ、買い物が終わったら帰るわ。あと夕飯、お願い出来ない?」
「うちは当番制で、今日はお前の番。
遅れたら新品のパンツが食卓に並ぶからな。まず黒のひらひらを並べる」
ミセ;*゚ー゚)リ「ちょっと見ないでよ!」
相手は一方的に通話を切った。
ミセリは携帯電話を睨んで「どうしてこうなった」と何度も考え、やがて薄緑のスカートを翻して歩き出した。
とにかく食卓にパンツが並ぶのだけは阻止したいので、彼女は即座に帰る準備に取り掛かった。
ミセ*゚ー゚)リ(……ミルナより、あの子の方が将来有望だったかな)
ミセ*゚ー゚)リ(いつか彼が強くなったら、また会いに――)
ミセ;*゚ー゚)リ「――あれはッ!」
そう思った矢先、彼女は手近にあった宝石店に目を奪われ、そこに駆け寄っていった。
彼女はその後の数時間をもショッピングに使い、メシウマという街をエンジョイしたのだった。
食卓には黒のひらひらパンツと脱毛器具が並んだ。
.
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第十九話 「ドクオは泥を見た。ミルナは星を見た」
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≪4≫
――ミルナは星を見上げていた。
( ゚д゚ )「……綺麗なもんだな、どの世界でも」
真夜中、夜風を浴びながら、一人。
光を取り戻したミルナは、右手に掴んだ大男の亡骸から目を逸らすように、満天を見続けた。
大男の肉体は黒い霧に変換され、ミルナの右腕に巻きついていく。
やがて大男の全身が霧になって消え失せると、ミルナはようやく自分の右手を見下ろす事が出来た。
.
-
( ゚д゚ )「…………」
言葉を失ったまま、ミルナはしばらくその場に留まった。
人を殺したという罪悪感すら抱けない自分を、彼は冷ややかに自嘲する。
( ゚д゚ )「……こんなもんだったな、人殺しなんて……」
ドクオが居てくれて、何かを取り戻せる気がしていた。
しかしそれも気のせいだった。今のミルナに、そんな気持ちは微塵も無かった。
自分の中に戻りつつあった何かを、ひっそりと、胸のうちで絞め殺す。
こみ上げる感情は途端に息絶え、感情の波もやがて治まった。
ミルナは振り返り、店に帰っていった。
彼が立ち去った後には、大男が居たという痕跡は何一つ残らなかった――
.
-
('(゚∀゚;∩「……あの人、ヤバイんだよ……」
――遠くの岩陰で事の一部始終を見ていたなおるよは、そう囁き、静かに望遠鏡を下ろした。
.
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1〜15話 >>2
第十六話 仲間を求めて >>6-24
第十七話 Waste Land >>33-71
第十八話 限りある世界 >>89-134
第十九話 ドクオは泥を見た。ミルナは星を見た >>149-173
4〜8月頃まで逃亡します
恐らく今年中に完結出来る可能性が高い予感を感じるので、
年内完結への準備期間と思ってもらえるとGJ部です
頑張って最終回ぐらいまで書き溜めてきます!待て次回!m9(^ω^)('A`)(´・ω・`)9m
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乙!
楽しみにしときます
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おつおつ
ゆっくり待つ
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乙乙! 気長に待ってる
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まだ中盤入ったばかりと思ってたけどもう完結見えてるのか
待ってるおつ
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50話くらいまであるとか言ってなかったっけ
これは休載明ければ怒涛の連投の予感
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乙乙ー
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ドクオとギコの喧嘩以来久々に見たらスクライドやっててワロタ
まだ追い付いてないからこれから楽しみますわ
しかしドクオの「衝撃のー」後の台詞が気になる
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そらもうファーストブリット
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逃亡したか…(スットボケー
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おもしろい
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年内完結は無理です諦めました(^ω^)
6月から再開します よろしくお願いします
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(^ω^)おっ
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終わらせてくれるなら自分のペースで頼んだ
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好きな作品
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うっひょう待ってるぜ
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おいもう6月になったぞ
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今夜投下
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おう
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マジでもう6月だった
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≪1≫
('A`)(……久し振りにまともに寝たな)
酒場・バーボンに来てから一夜が明けた。
ドクオは快晴の空を仰ぎ、大きく体を反り返らせた。
('A`)「しっかし、あの野郎はどこ行ったんだろうな?」
体をほぐしながら、ドクオはミルナに話しかけた。
('A`)「買い出しに行くにしたって、行き先くらい教えろってんだよ」
( ゚д゚ )「おかげでタダ働きしなくて済むんだ。気にするな」
('A`)「……まぁそうだけどさ」
( ゚д゚ )「お喋りは後だ。念願の特訓だぞ、さっさと準備しろ」
ミルナはそう言い、店から持ってきた大型の懐中電灯を点けた。
二人は距離をとってそれぞれ超能力を発動し、静かに拳を構えた。
('A`)「とりあえず軽くな。ラジオ体操気分でやろうぜ」
( ゚д゚ )「分かった。いつでも来い」
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第二十話 「説明をする回」
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半分の力も出さず、二人はしばらく小競り合いを続けた。
それは、互いに相手の癖を観察する為だった。
自覚のない癖を相手に見つけてもらい、それを後で確認し合うのはとても良いと思う。
衣服が汗を吸い、冷たさを覚えるようになった頃合で、二人は一旦動きを止めた。
(;'A`)「どうだった?」
( ゚д゚ )「とりあえず……左腕に意識を割きすぎだな。
動きが強張って攻撃を読み易くなってる」
(;'A`)「……マジか。4月末だと思ったら6月だった時くらい驚いたぜ」
( ゚д゚ )「全体のキレは良いが、なんだろうな……。
簡単に言ってしまえば、超能力に慣れてないんだろうな」
(;'A`)「……だよなぁ」
ドクオは苦笑いを浮かべ、肩を落とした。
(;'A`)「これ、装甲の分だけ重くなるんだよなぁ。
使用者は重さを感じない的なのを期待してたんだけど……」
( ゚д゚ )「そう都合良くは出来てない。
だが重さについては対策がある。一回能力解いて、少しずつ光を吸収してみろ」
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言われた通り、ドクオはゆっくりと超能力を発動しなおした。
( ゚д゚ )「俺の場合、装甲の厚さ重さは発動時の集中力次第だ。
お前の場合なら、きっと取り込んだ光の量でそれが決まるはずだ」
( ゚д゚ )「能力を使う時は光の量を考えろ。丁度良い加減を探っていけ」
('A`)「なるほど。分かった」
( ゚д゚ )「まずは拳だけで具現化してみろ。
適当なグローブを想像すれば上手くいくだろう」
(;'A`)「素人相手に無理言うなよ……」
じわじわと光を吸収しながら、拳だけに意識を集中する。
拳に淡い光が灯り、やや遅れて装甲が具現化し始める。
(;'A`)「……けっこう辛いな……」
( ゚д゚ )「わざと呼吸を止めてるようなもんだからな。慣れるまでは仕方ない」
しばらくして拳が装甲に覆われきったところで、ドクオは光の吸収を打ち切った。
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(;'A`)「まぁ……こんなもん……?」
ドクオは拳を凝視し、装甲がしっかり具現化できているかを確かめた。
指の一本一本を動かした時には不自由もなく、重量もかなり削減出来ていた。
(;゚д゚ )「一発かよ。ふざけんな、もっと苦労しろ」
ミルナは4月末から6月にタイムスリップした時くらい驚いた。
(;'A`)「……いや、これ強度がまったく駄目だ」
しかしドクオは言い返し、地面に向かって左拳を打ちつけた。
拳の装甲は、たったそれだけの衝撃で砕けてボロボロになってしまった。
軽量化には十分成功していたが、これではとても武器防具にはなりえない。
(;'A`)「……まだまだ」
( ゚д゚ )「……これはもう体で覚えるしかない。
加減も、お前なりの落とし所を見つけるんだな」
ミルナは体裁を整え、先輩面して言った。
(;'A`)「あいよ……他に直すとこあったか?」
( ゚д゚ )「ない」
ミルナは断言した。
( ゚д゚ )「俺はお前みたいに修行とかした訳じゃないからな。
諸々の動きはお前の方が完成度高いぞ。だから言える事はない」
(;'A`)「……まぁ、そりゃそうだ」
( ゚д゚ )「俺だって素人だ。アドバイスにも限界がある」
(;'A`)「……じゃあ相談。まず撃鉄の使い方、教えてくれよ」
ドクオはマグナムブロウを再発動し、装甲と撃鉄を肉体に具現化した。
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( ゚д゚ )「コイツの使い方ねぇ……」
ミルナは腕を組み、自身の背中にある撃鉄を一瞥した。
( ゚д゚ )「おい、今までどんな風に使ってきた?」」
('A`)「爆発ッ! って感じで撃鉄落として、なんか凄いパワー出てる」
(;゚д゚ )「アホっぽい扱い! ……とりあえず手本をやってやる」
ミルナは近場の岩を指差し、ドクオと一緒に岩に近づいた。
( ゚д゚ )「今のお前は、燃料が切れるまでエンジンを掛け続けるような使い方をしてる筈だ。
確かにそれなら見栄えは良いが、肝心な時に燃料切れになる事もある」
(;'A`)「……肝心な時にな……」
( ゚д゚ )「いいか、マグナムブロウはその名のとおり銃をモチーフにしている。
扱いも銃と同じようにすれば、ある程度は節約が効く」
('A`)「……?」
( ゚д゚ )「……こうやるんだ。見てろ」
いまいち理解出来ずにいたドクオを一歩下がらせ、ミルナは岩に右手の平を当てた。
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('A`)ノ 「じゃあ次の質問」
そう言って踵を返し、ミルナに背中を向ける。
ドクオは先日現れた二つ目の撃鉄を見ながら言った。
('A`)「こないだ新しいのが出てきた。コレがなんか変なんだよ」
( ゚д゚ )「……何が変なんだ?」
('A`)「なんか、しっくりき過ぎてて、逆に変……って感じ」
ドクオはたどたどしく、曖昧な答えを返した。
しかし返答としてはそれで十分だったらしく、ミルナはドクオのクソみたいな返事に文句を言わなかった。
( ゚д゚ )「……こいつは……」
ミルナは大きく息を吐き、腰に手を当てて深慮した。
今、彼の心中には 『tanasinn』 という言葉が色濃く浮かび上がっていた。
( ゚д゚ )「……お前自身、それをどう思ってる?」
('A`)「一回使った切りだから、あんま何も思ってないけど……」
( ゚д゚ )「……分かった。なら、もう二度と使わない方が良い」
ミルナは一瞬口ごもってから、俯いてその理由を口にした。
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( ゚д゚ )「微弱にだがtanasinnを感じる。俺のが影響しちまったな……」
('A`)「……使うなって、なんか不都合あるのか?
お前はバカみたいに使ってるけど」
( ゚д゚ )「普通の人間に耐え切れるとは思えないんだ。
特にお前、精神脆いだろ? tanasinnに全部支配されるぞ」
( ゚д゚ )「つーか今バカって言った?」
(;'A`)「そんな事より具体的に話してくれよ」
一瞬前に具体性皆無のクソみたいな返事をした男はそう言った。
( ゚д゚ )「……最終的に俺と同じなるか、存在そのものがtanasinnに呑み込まれる。
強過ぎる力を扱うなら、それを制するだけの精神が必要なんだよ」
( ゚д゚ )「少しずつ慣らして使うなら問題ないだろうが、一個目の撃鉄と同じような使い方は絶対にするな。
もしそんな使い方をすれば、tanasinnはお前の全てを燃料にして暴れ回るぞ」
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('A`)「……そっか。分かった、使わないようにする」
( ゚д゚ )「……」
ドクオはやけに素直に頷いた。
その様子から彼の本心を察したミルナは、はっきりと言葉にして釘を刺した。
( ゚д゚ )「出来れば取り除きたいんだが……お前嫌がるだろ」
('A`)「うん。弱くなって堪るかよ」
( ゚д゚ )「……だがまぁ、お前がヤバくなったら問答無用で取り上げる。
それを使うならタイミングは選んでくれ。せめて、俺が居る時だ」
('A`)「……分かってる」
ドクオは体を構え直し、ミルナを煽るように拳を振った。
('A`)「時間が惜しい。さっさと続きやろうぜ」
( ゚д゚ )「……お望みどおりに」
再開の合図として拳を突き合わせると、二人は拳を飛ばし合った。
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≪2≫
('A`)「――で、そろそろ聞かせてくれよ」
酒場に戻って一杯酌み交わそうと準備している二人。
何を聞かれているかは想像出来たが、ミルナは一度とぼけて見せた。
( ゚д゚ )「何をだ?」
('A`)「なんで目が見えるようになったんだよ。ま〜た例のヤツか?」
( ゚д゚ )
(;゚д゚ )「……そっちか。荒巻の話だと思ったぞ」
(;'A`)「……やっぱそれで」
(;゚д゚ )「聞きたがって癖に忘れてたのか……」
ミルナは呆れて半笑いを浮かべ、席に着いた。
ふと、脳裏で「上手く誤魔化せた」と考える。
( ゚д゚ )「まあ話すのは別にいいが、とりあえず飲み物とツマミだ。
長話になる。多めに頼むぞ」
('A`)「あいよっ」
気前の良い返事をした後、ドクオは注文の品を腕一杯に抱えてテーブルに戻ってきた。
これで、長々と駄弁る準備は整った。
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( ゚д゚ )「……そうだな。じゃあ、まずはこないだの続きから」
(;'A`)「その辺は全部要約してくれ!」
ドクオは咄嗟に片手を突き出してミルナを止めた。
また同じように意味不明な事を話されては話が進まない。
(;'A`)「まず、確認」
ゆっくり、はっきりと言い、ドクオは一つずつミルナに質問を投げかけた。
(;'A`)「まず、別世界があるんだな?
その世界で、お前はクーと知り合いだったと」
( ゚д゚ )「より正確に言うなら仕事仲間だった。
そんで別世界は確かにあるが、俺が生きた世界はもう無い」
(;'A`)「……え、無いの?」
( ゚д゚ )「無い。まだあるかも知れないが、小数点の遥か先にある可能性だ。
その可能性でさえも裏付けは無い。だからほぼ『無』だ」
(;'A`)「……帰れないじゃん」
( ゚д゚ )「……そうでもない。可能性は、確かに残ってるんだ」
ミルナはジュースの入ったジョッキを覗き込んだ。
( ゚д゚ )「まぁ、可能性として見るには余りにも希薄だがな……」
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( ゚д゚ )「……決めたんだ。俺は元の世界に帰る。
あの監獄を出た時にはまだ迷っていたが、もう決めた」
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('A`)「……でもよ、実際できんの?」
ドクオは椅子にふんぞり返って言った。
(;゚д゚ )「お前ムカつくなぁ……」
('A`)「なんだっけ。あれだ、tanasinn。要はあれだろ?」
(;゚д゚ )「適当に言いやがって……けど、その通りだよ」
( ゚д゚ )「あれを倒すなり何なりすれば、とりあえず道は開けるそうだ。
俺もよくは分からんが、全部あれを倒してからだと思ってる」
('A`)「ふぅーん……」
(;-д- )「……分かったよ他人事だろ、さっさと何でも聞きやがれ」
世が世なら確実に友達0人であろうドクオの反応をスルーし、ミルナはテーブルの菓子に手を伸ばした。
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('A`)「それで、荒巻はなんでアイツを連れてったんだ?」
姿勢を正し、次の質問を口にする。
それは荒巻と素直クール、ミルナの三人の関係を知る第一歩となる質問だった。
( ゚д゚ )「そうだな……求める結果は違うが、俺と荒巻の目的は同じだ」
('A`)「……たなしん?」
( ゚д゚ )「そうだ。荒巻もあれと戦いたがってる」
('A`)「じゃあ、戦う為にクーが必要なのか?」
その一言は、事の核心に触れていた。
( ゚д゚ )「……あいつが鍵になってる」
('A`)「……カギ」
( ゚д゚ )「……」
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('A`)「……荒巻もお前も、あいつを殺すのか?」
ミルナは、真実を察したドクオから大きく目をそらした。
( ゚д゚ )「……tanasinnが目覚める条件は三つ。
偶発的に起きるか、鍵の意思で起こされるか、鍵となる人物が死ぬか」
( ゚д゚ )「あいつの死は確かに引き金にはなる。
だが、俺も荒巻もそれはしないだろう」
('A`)「……」
視線を戻すとドクオを目が合った。
ミルナはまた目を逸らし、無言で聞き返してきたドクオに返事をする。
( ゚д゚ )「tanasinnと戦いたがってるヤツがもう一人居るんだ。
現状、荒巻だけじゃそいつを抑え込めない。少なくとも、俺と組まない限りは……」
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('A`)「そいつが居る限り、荒巻はクーに手を出さないのか?」
( ゚д゚ )「……荒巻の事だ。今もあいつから力を奪い続けていると思う。
じゃなきゃ 『もう一人』 にも対抗出来ないし、tanasinnにも歯が立たない」
('A`)「……奪い切ったらどうなる」
( ゚д゚ )「準備完了だ。『もう一人』よりも強くなって、俺も不要になる。
邪魔者を排除して、tanasinnとの戦いに全力を注ぐだろう」
('A`)「……時間は、あとどれぐらい残ってる」
( ゚д゚ )「……あいつが荒巻の所に行ってからしばらく経つだろう。
この先一年は無いと思う」
重苦しい沈黙が二人の肩にのしかかった。
しかし、残された時間の短さにドクオは大して驚いていなかった。
以前の彼なら即座に荒巻を倒しに行こうとしていたが、今の彼は冷静さを保ったままだった。
俺が冷たくなったのか、あるいは大人になったのか……。
ドクオはふと考えたが、明確な答えを出さないまま、やがて口を開いた。
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('A`)「荒巻もお前も、tanasinnを倒したい。
倒して元の世界に帰りたい。その為にはあいつの意思か、死が必要」
淡々と、挙げられた事柄だけを羅列する。
('A`)「そんで、 『もう一人』 には荒巻もお前も勝てない。
俺がクーを助けたいなら、そいつに頼るしか無いわけだ……」
( ゚д゚ )「――駄目だ」
素直クールを無事に救い出す方法として言ったそれを、ミルナはすぐに否定した。
( ゚д゚ )「……そいつは昔の仲間なんだ。俺がこの問題に巻き込んじまった。
あいつの命は俺が絶つ。絶対に、俺が殺さなきゃならない」
( ゚д゚ )「……俺はお前まで殺したくない。あっちにつくのはやめてくれ」
('A`)「……知らねぇ」
ドクオは吐き捨てるように言って俯いた。
('A`)「俺はクーを助けたいだけなんだ。
本当にもう、俺はそれだけで生きてる……」
('A`)「あいつが死ぬなら、そこから先、俺の存在に意味は無いんだ。
死ぬ理由ばっかりが頭を埋め尽くして、いつか呆気なく死んで終わりだ……」
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( ゚д゚ )「……」
('A`)「……」
(;゚д゚ )「……ったく、分かったよ!」
重い空気に耐え切れなくなったミルナが、その空気を壊すような大声を張り上げた。
ドクオは若干引いた。なんだこいつと思った。
('A`)「……なにが?」
(;゚д゚ )「クールを助けるのに手ぇ貸してやる。
一緒に荒巻を倒せばいんだろ? だから暗いのはよしてくれ」
( ゚д゚ )「ただしだ。俺が『もう一人』とやりあう時にはお前が手を貸せ」
( ゚д゚ )「だからさっさと俺ぐらい強くなってくれ。
でないと荒巻とも『もう一人』とも戦ってられん。足手纏いは要らんぞ」
,_
('A`)「……俺とお前で出来んの?」
( ゚д゚ )「出来なきゃ素直クールは助けられん。
お前が『もう一人』の仲間になるのも嫌だし、最善の折半案だと思うが」
ドクオは少し逡巡してから、ジュースと菓子をそれぞれ口に運んで答えた。
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('A`)「……俺もお前とは敵対したくない。そうするのが一番だな、うん」
( ゚д゚ )「だろ? お互い、リハビリと特訓を頑張ろうな」
(;'A`)「……つーか、やっぱり時間ねえわ」
特訓にかける時間と、素直クールに残された時間。
それらを考えた時、ドクオの胸中に焦燥が湧き上がった。
ドクオは立ち上がり、壁際にまとめておいた荷物の方へと歩いていった。
ミルナもその行動の意図を察し、席を立つ。
( ゚д゚ )「もう出発か? 次はどこに行くんだ」
('A`)「クソワロタっていう街だ。ここで一番デカイ、中心の街。
待ち合わせにはちょっと早いけど行く。先に行って、やれる事をやるんだ」
('A`)「立ち止まって色々考えるのは今じゃなくていい。
悪い癖だ。つい時間を無駄にしちまった……」
バッグを背負い、酒場をぐるりと一望する。
('A`)「あの大男には悪いけど、店の車を借りて武器を運ぼう。
今日中にクソワロタに行くぞ。荷物運び手伝ってくれ」
( ゚д゚ )「……」
ドクオがそう言って振り返った時、ミルナは自身の右腕を見つめていた。
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('A`)「……どした?」
( ゚д゚ )「……いや、何でもない。さっさと準備しよう」
ドクオを追い越し、ミルナは地下の武器庫に降りていく。
('A`)「……」
その時、ドクオは、彼の背中がやけに遠くにあるような錯覚を覚えていた。
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俺も驚いた
支援
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≪3≫
メシウマ側に最近出来た観光名所。
全長1000メートルという頭が悪そうな規模の建物、ステーション・タワー。
その最上階に設けられた素晴らしい絶景の眺めの光景の景色の展望室フロア空間。
超能力者だけで構成された二つの集団、カンパニーと特課の一同は今、そこに集まっていた。
/ ,' 3 「――――」
全員の視線は荒巻スカルチノフに向けられていた。
tanasinn、ミルナ、素直クール、『もう一人』。
それぞれの思惑と目的、関係性を、彼はミルナよりも冷静に皆に伝えていた。
ミルナが話していない事も含めて、tanasinnにまつわる全てを、包み隠さずに。
/ ,' 3 「……まあ、とにかく」
荒巻は大体を話し終えると、気の抜けた一言で説明を区切った。
/ ,' 3 「正直なところ、今回は完全に私の戦いだ。
君らには戦う理由が無い。参加すれば然るべき報酬を出すが、降りた所で咎めはせん」
/ ,' 3 「説明の中で出てきた『もう一人』。
この戦いは、その人物とミルナを接触させない為の戦いなのだ」
最後に投げやりに「まあ、好きにしたまえ」と言って、荒巻は口を噤んで皆に背を向けた。
カンパニーと特課の面々は、事の大きさに唖然としたまま、展望室を後にした。
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皆はデミタスの提案で適当な休憩室に入り、荒巻の話について意見を交わす事にした。
ツンとモナーがお茶を沸かしている間に、皆は意見交換を始めた。
_
( ゚∀゚)「ダメださっぱり意味が分からなかった」
(´・_ゝ・`)「……俺とシャキンは少し前からこの話を知ってた。
素直クールをここの地下に入れたのは俺達だ。ある程度、信用していい」
カンパニーのバカ筆頭・ジョルジュ長岡を完全無視し、デミタスはそれぞれに視線を送った。
( ´_ゝ`)「俺は乗るぞ。信じるとかは置いといてだ」
壁際で一人、深刻そうな表情で佇んでいた流石兄者がはっきりと告げる。
普段は常に余裕たっぷりな自分を演出している彼が、今は明らかに余裕を無くしていた。
目付きも鋭く、殺気に近い気配を発している。
( ´_ゝ`)「横堀には俺が伝えておく。あいつまだメンテ中だからな」
そう言い残し、彼は一番に休憩室を出て行った。
結論が出たからというよりは、早く一人になりたいが為の行動だった。
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ξ゚⊿゚)ξ「私も乗るわ」
彼女は一人一人にお茶を配ってから、けだるそうに席にかけた。
ξ゚⊿゚)ξ「あの荒巻さんが人の為に戦おうとしてるんだから、手助けするわよ」
*(;‘‘)*「私もやります。ミルナっていう人と、『もう一人』が接触したら大変ですもんね……」
ツンの意見に賛同し、ヘリカル沢近が不安そうに呟く。
ヘリカルはゆっくりとお茶をすすった。しかし熱くて舌を火傷した。ちゃんと冷めてから飲もう。
_
( ゚∀゚)「えっ大変なの?」
( ´∀`)「荒巻さん、『もう一人』がミルナと組んだら大変だって言ってたモナ。
tanasinnがどうこうの前に、人類皆殺しだって」
(´・_ゝ・`)「ああ、モナーさんの言うとおりだ」
モナーの言葉を後押しするため、デミタスがすかさず開口した。
(´・_ゝ・`)「もしもミルナが 『元の世界に帰りたい』 と願うなら」
(´・_ゝ・`)「それはつまり、他人を殺して自分の力に変換するっていう事だ」
(´・_ゝ・`)「だから絶対に阻止しなきゃいけないんだよ。
あの男にそう思わせちまう人間は、誰一人として近付けちゃならん」
(´・_ゝ・`)「……言い方は悪いが、ミルナには諦め続けてもらうしかない。
俺達の世界が平穏無事にあり続ける為に、元の世界には帰れねえってな」
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( ゚∀゚)「な、なんてこった……」
バカは満場一致で完全無視されていた。
.
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((( )))
( ´Д`)「しかし、ですよ」
1さんは飲める温度になったお茶を一口飲んでから言った。
ヘリカルは彼を見習い、そっと湯のみに口をつけてまた火傷した。
((( )))
( ´Д`)「敵は荒巻さん以上で、しかも相当の実力者を味方にしていると言いました。
それを現状、この面子で打倒するのは難しいかと……」
(´・_ゝ・`)「……で?」
((( )))
( ´Д`)「……八頭身の奴がもうじき来ます。
戦力の補強になるかと思い、念のため呼んでおきました」
(´・_ゝ・`)「……やってくれた。ありがとう」
八頭身は1さんの古い知り合いの剣士で、カンパニーきっての隠し玉である。
それを最高のタイミングで呼んでくれた1さんに、デミタスは後で飴をあげる事にした(とても美味しい)
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(`・ω・´)「これで一応、全員が戦闘に加わる事になったか」
全員が意向を示すまで黙っていたシャキンが、改めてそう言って皆の意思を確かめた。
しかし最早聞くまでも無く、全員確かな戦意を目の奥に秘めていた。
ξ゚⊿゚)ξ「……とりあえず実家に電話してくる。必要でしょ?」
(´・_ゝ・`)「頼む。1さんは八頭身を迎えに行ってくれ」
((( )))
( ´Д`)「分かりました。ついでにカーチャンさんの様子も見てきます」
(´・_ゝ・`)「カーチャンにも一応今日の事を話して、返事を聞いといてくれ。
彼女が居ると居ないじゃ空気が違う」
デミタスの言いつけを聞き入れた1さんは、足早に休憩室を出て行った。
_
( ゚∀゚)「……やるぜ、俺は」
(´・_ゝ・`)「黙れ。お前なにも理解してないだろ」
_
( ゚∀゚)「ああ、マジでさっぱりだ……お前ら何者だよ……」
(´・_ゝ・`)「とにかくお前はいつも通りでいい。
自由だ。好きにしろ」
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( ゚∀゚)
_
( ゚∀゚)「よし、わかった」
この話題において、彼は初めて何かを分かる事ができた。
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デミタスは振り返り、モナーに話し掛けた。
(´・_ゝ・`)「特課の動きは横堀に一任しておきます。
用があれば言ってください。善処します」
デミタスは私用の連絡先を書いたメモをテーブルに置き、1さんに続いて部屋を出ようとした。
( ´∀`)「どちらへ?」
(´・_ゝ・`)「俺は荒巻の土下座巡りについていきます。
モナーさんが現状の最大戦力だ。留守を頼みます」
(; ´∀`)(……土下座巡り?)
デミタスが部屋を出る寸前、モナーは「分かったモナ」と言って彼を見送った。
お茶を飲み干し、モナーはヘリカルと一緒に席を立った。
ヘリカルはお茶に恐怖していたのでお茶を残した。情けない。
( ´∀`)「それじゃあ特課に帰るモナ。
アサピーに言って、色々準備するモナ」
*(;‘‘)*「そうでづね……」
特課、カンパニーを含むメンバーで最年少のヘリカル沢近。
舌を火傷したこと以外、彼女に気後れした様子は無い。
(`・ω・´)(無駄な心配だったな)
彼女を心配していたシャキンも、舌の火傷以外に心配する事は無いと察して彼女を認めた。
お茶で火傷する猫舌ではあるが、彼女も列記とした荒巻の部下なのだ。
(`・ω・´)「俺の連絡先も後で送ります。何かあれば」
( ´∀`)「モナ。感謝するモナ」
モナーとヘリカルが一礼し、部屋を出て行く。
丁度その時、ツンの電話が終わった。
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ξ゚⊿゚)ξ「――うん。じゃあ妹を言いくるめておいて」
ツンはそれを最後に通話を切った。
携帯電話をしまい、溜め息を一つ。
(`・ω・´)「……駄目だったか?」
ξ;-⊿-)ξ「いえ、久し振りにパパと話したから疲れただけ。
基本様子見だけど、いざとなったら力を貸すってさ」
(`・ω・´)「あの人が来てくれるなら大分心強い。
たしか荒巻の土下座リストにも名前があったしな」
ξ;゚⊿゚)ξ「あの人に土下座なんて、私なら死んでも嫌だわ……」
ぐてぇ〜とテーブルに崩れてから、ツンは呆然と呟いた。
ξ゚⊿゚)ξ「……ドクオとかいう奴、今はミルナと一緒なんでしょ?」
(`・ω・´)「デミタスからそう聞いたが。それがどうした?」
ξ゚⊿゚)ξ「……別に。なんか、敵になりそうだなぁ〜って思っただけ」
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(`・ω・´)「それはまた、別の問題だ」
シャキンの一言がツンの杞憂を一蹴する。
彼は立ち上がって窓辺に歩み寄り、外を一望した。
(`・ω・´)「今は明確な敵である『もう一人』の進行を止めるのが先だろう。
ドクオもミルナも、まだ敵になると決まった訳じゃないんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「……だといいんけどね。ドクオとかいう人、かなり危ないから」
(`・ω・´)「……根拠は?」
振り返って尋ねると、ツンは悪ぶれず答えた。
ξ゚⊿゚)ξ「雰囲気が犯罪者っぽいから」
(;`・ω・´)「……」
否定も肯定も出来ないまま、シャキンは彼女の答えを聞き流した。
_
( ゚∀゚)「……うし、帰って寝るか!」
ジョルジュは帰って寝た。
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≪4≫
/ ,' 3 「皆、案外乗り気になるものだな」
デミタスを連れてステーション・タワーを出発し、街を歩く荒巻。
行き交う人々の間をすいすいと進みながら、二人は街の図書館に向かっていた。
(´・_ゝ・`)「何がです?」
/ ,' 3 「tanasinnがどうこうの話だ。
正直、痴呆を疑われて終わりだと思っておった」
/ ,' 3 「長い人生だが、この事を初めて他人に喋った。
久し振りに緊張したわ……」
(´・_ゝ・`)「……聞きますけど、本当に彼らを戦わせるんですか」
/ ,' 3 「当然だ。……敬語は好かん、適当にしろ」
(´・_ゝ・`)「……1さん、八頭身、モナーは及第点だが他は駄目だ。
無駄死にするだけだぞ」
デミタスは普段通りの口調に切り替えた。
/ ,' 3 「なぁ〜にが及第点じゃ。お前だって使い物にならんわ、たわけ」
.
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/ ,' 3 「……所詮、特課もカンパニーも前座の露払いに過ぎん。
向こうもそれを分かっておる。虐殺は起こらん」
/ ,' 3 「誰も死なせはせんよ。それだけは約束する」
“守る”という約束――。
荒巻がそんな事を口走ったのを、デミタスは一瞬信じられなかった。
(´・_ゝ・`)「……なあ」
(´・_ゝ・`)「あんた、なんで戦うんだ。何の為に……」
これまで人間味というものを微塵も見せてこなかった荒巻が、今は少しだけ人間らしく見える。
不意に口に出した一言は、ようやく人間味を見せた彼への率直な疑問だった。
/ ,' 3 「……ワシの余生を脅かすものを排除する。ただそれだけだ」
/ ,' 3 「ワシは、それ以外の理由で力を揮ったことはない」
(´・_ゝ・`)「……好戦家だと思ってたぞ。
素直クールを奪取したのも、tanasinnと確実に戦う為かと……」
/ ,' 3 「あれを閉じ込めたのは確実に 『もう一人』 と戦う為だ。
tanasinnは……なんかもういい。アレはマジでつまらんぞ」
荒巻は振り返って言い、げんなりした表情をデミタスに見せた。
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/ ,' 3 「何度か戦ったが、なんというか……何も無いのだ。
空気相手に腕を振るような、得る物も失う物もない、無意味な戦いだった」
(´・_ゝ・`)「なんでまた、そんなのと何度も」
/ ,' 3 「そりゃあ……義務感とかあるだろう?
一時はアレを倒して元の世界に〜などと考えておったな……義務感で」
/ ,' 3 「ま、戦う理由が義務感しかないと気付いてからは全くだ。
普通に生きて、世界が変われば次の世界を生きて、楽しくやっておる」
あっけらかんに言い、荒巻は軽快に笑った。
(´・_ゝ・`)「……元の世界に執着とか無いのか?」
デミタスが更に問い掛けると、荒巻はまた振り返ってきょとんとした顔で答えた。
/ ,' 3 「ないない。そもそも、元の世界での孤独死が拗れてこんな身体になったのだ。
今更戻っても良い事なんか何も無いわい」
(;´・_ゝ・`)「どんな拗れ方だよ……」
/ ,' 3 「これも一つの人生だ。ワシの命に終わりは無いが、それもまた良かろうて」
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二人は人混みを抜け、図書館に続く小さな並木道に入った。
人通りが大きく減ったことで、デミタスはようやく荒巻の横に並ぶ事が出来た。
(´・_ゝ・`)「なぁ、なんで俺らや特課のメンバーを集めた?
あんたならもっと凄い味方を揃えられたはずだ」
そう問い掛けた時、荒巻は空を見上げていた。
周囲の木々の青葉が風になびき、日差しを受けて光り輝く。
/ ,' 3 「特別であることに意味を見出さなくなった。それだけだ」
/ ,' 3 「唯一無二も、絶対無敵も、なにも要らん。
自由に動けるだけの地位は獲得するが、ワシはな、ただ生きていたいのだ」
(´・_ゝ・`)「……憧れてるのか? 普通とか、当然に」
/ ,' 3 「……憧れ?」
荒巻は4月末が6月になっていた時のように驚き、デミタスの言葉を繰り返した。
/ ,' 3 「……まあ、そう言うのならそうなのだろう」
/ ,' 3 「自分の人生に自分以外の誰かが居る。
たったそれだけの願望を満たす為に、ワシは今も生きておるのかも知れん」
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並木道の終わりが見えてきた。
デミタスはこの会話の締め括りに、荒巻にこんな事を訊ねた。
(´・_ゝ・`)「あんたの人生には、今でも誰も居ないのか?」
荒巻は、この並木道に風が吹き抜けると同時に口を開いた。
多くのしわを刻んだその顔に、ささやかな陰りを見せながら。
/ ,' 3 「誰もが先に行ってしまう。不老不死はそこが厄介だ」
/ ,' 3 「負け惜しみを込めて答えるならば、今は誰も居ない……という所かの」
それは、永遠にも等しい孤独を享受した男の、精一杯の弱音だった。
/ ,' 3 「――さて、ここが土下座巡りの第一弾だ。気張ってゆくぞ」
(´・_ゝ・`)「俺はあんたの土下座写真を撮るだけ。絶対しないからな」
/ ,' 3 「その余裕、最後まで保ってくれよ」
都内最大の国立図書館を前に一言交わした二人は、
軽く目配せしてから図書館の玄関を押し開けた。
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≪5≫
ドクオ達、レムナントの面々。
荒巻達、メシウマ側の面々。
レムナント制圧作戦のもと、間もなく激突するかに思われていた二つの勢力。
しかし荒巻達の敵はレムナントの人間ではなく、『もう一人』と呼称された第三者であった。
結果的に三つになった勢力を、とても分かりやすい図にすると以下のようになる。
攻撃!
→→→ 迎撃!
(?) (荒巻)←←←(ドクオ)
←←←
迎撃!
瞬間、この分かりやすい図のおかげで誰もが現状を把握した。
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荒巻がでっち上げた架空の制圧作戦の目的。
それは、レムナント側の人間にも戦う準備をしてもらう為だった。
もし自分達が倒され、壁を突破された場合、頼れるのは内側に居る人間だけだ。
先日崩壊したレムナント監獄も、実はその場合を想定して用意された施設だったのだ。
あそこが死ぬほど甘ったれた好待遇だったのも、
壁の内側に強力な超能力者を多数留めておく為の作戦だった。
しかし荒巻にとって監獄の崩壊は大した問題ではなかった。
むしろあの一件は作戦の存在を広める良い起爆剤になり、好都合だったと言える。
戦いの準備も着々とぬるぽ進んでいるようだし、その点について荒巻に不安はなかった。
問題は、ミルナが再び超能力を発動した事だった。
彼は最近まで監獄の奥深くで引きこもりニートをやっていた。
それが再起した今、ミルナには一つの選択をしてもらう必要があった。
自分につくか、『もう一人』につくか。
シャキンが受け取った伝言では時間をくれという事だったが、そう長くは待っていられない。
『もう一人』はすぐにでもミルナを勧誘しに来るし、実際もうミセリが勧誘に来ている。
ミルナは荒巻と同じくtanasinnの片鱗を手にした男である。
二人に大した実力差はなく、ミルナの意向次第では戦況が大きく傾く。
荒巻にとって一番良い展開はミルナがどちらにもつかず、傍観者で居てくれる事だった。
今はまだ、しかしそう遠くない内に、ミルナは結論を出して動き始めるだろう。
そして荒巻は、彼がどのような結論を出しても対応出来るだけの戦力を集めようとしていた――
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――メシウマ、国立図書館。
荒巻とデミタスが吹き抜け三階建てのメインホールに立ち入った瞬間、
文字通りそのままの意味で、時間が止まった。
/ ,' 3 「……いやあ、手厚い出迎えだのう」
荒巻は立ち止まり、館内を一望した。
(;´・_ゝ・`)「……」
時間の停止と同時に周囲の人間はピタリと動かなくなり、じっと観察していても、彼らは微動だにしなかった。
この現象を受け止めるのに多少の時間を要したデミタスは、駆け足で荒巻の傍に戻って言った。
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(;´・_ゝ・`)「時間が止まったのか?」
/ ,' 3 「その通りだ。理解が遅いな」
誰だって脈絡なく時間が止まれば驚く。
(;´・_ゝ・`)「いや、でも、せいぜい数秒じゃないのか?」
/ ,' 3 「まあな。ワシはせいぜい三日が限界だが、ここに居る彼なら際限無く止められると思うぞ」
/ ,' 3 「それより、余り離れるなよ。お前の時間も止まってしまうからの」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「……よし、分かった」
デミタスは思考停止することで平静を取り戻した。
荒巻の後ろに付き添い、図書館の奥へと進んでいく。
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「――何の用だ? 荒巻スカルチノフ」
その時、二人の頭上に声が現れた。
デミタスは咄嗟に顔を上げ、二階、三階、天井までもを一気に見回した。
ふと、荒巻がデミタスの方を振り返った。
デミタスは意味が分からず、じっと荒巻を見返す。
/ ,' 3 「……」
(´・_ゝ・`)「……?」
/ ,' 3 「……それはウチの部下だ。イタズラせんでくれ」
荒巻が、デミタスの背後を見ながら溜め息を漏らす。
デミタスは察して振り返ったが、そこに人の姿は無い。
(;´・_ゝ・`)「……なんだ、誰か居るのか?」
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( ・∀・)「――お前、ずいぶん貧弱なのを連れてきたな。
伊達酔狂も程々にしておけ。いつか身を滅ぼすぞ?」
視線を前に戻した時、その男は荒巻の隣に立っていた。
男は荒巻に対してかなり不遜な物言いをしていたが、荒巻にそれを咎めるつもりは無さそうだった。
男は荒巻の肩をポンと叩き、不敵に笑んだ。
( ・∀・)「もう一度聞いてやろう。何の用だ?」
男は、こちらの目的を分かった上であえて質問していた。
彼の口振りからそれを悟ったデミタスは、荒巻共々悪趣味な奴らだなと二人を貶した。
/ ,' 3 「前にも話した事があるだろう。『顔付き』、あの連中が来る」
図書館に住まう男・モララー。彼を皮切りに、荒巻の土下座巡りが始まった。
この荒巻土下座探訪録は、今後の番外編で書かれる可能性が少なからずあるのだった――
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