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( ^ω^)千年の夢のようです
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9/24(水) 夕方より投下します
よろしくお願いします
前スレ
>( ^ω^)千年の夢のようです
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1401648478/
まとめサイト様(以下敬称略)
>ブンツンドー
http://buntsundo.web.fc2.com/long/sennen_yume/top.html
>グレーゾーン
http://boonzone.web.fc2.com/dream_of_1000_years.htm
作品フィールドマップ(簡易)
http://imefix.info/20140922/321215/rare.jpeg
http://imefix.info/20140922/321216/rare.jpeg
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乙でした
-
※千年の夢 年表※
------------------------------
-900年 ***********
→信仰の概念がうまれる
( ∵)は偶像生命体として同時に生誕。
-400年 ***********
→結婚(結魂)制度のはじまり
-350年 ***********
【ふたごじま】→魔導力の蔓延
-312年 ***********
【銷魂流虫アサウルス】→前半
→ "隕鉄" が世界に初めて存在する
-220年 ***********
【銷魂流虫アサウルス】→後半
【傷痕留蟲アサウルス】☆was added!
→騎兵槍と黒い槍が融合
-210年 ***********
→大陸内戦争勃発。
【帰ってきてね】→前半
-200年 ***********
【帰ってきてね】→後半
【死して屍拾うもの】
→ "赤い森の惨劇"
-195年 ***********
→大陸内戦争終了。
【はじめてのデザート】
-190年 ***********
【その価値を決めるのは貴方】
-180年 ***********
【老女の願い】→復興活動スタート
-
-150年 ***********
【老女の願い】→荒れ地に集落が出来る
→川 ゚ -゚) が二代目( ´∀`)に指輪依頼
-140年 ***********
【老女の願い】→老女は間もなく死亡
→指輪の暴走を美しい湖に封印。
-130年 ***********
【人形達のパレード】
【此処路にある】
→(´・ω・`)( ゚∀゚)川 ゚ -゚) 邂逅☆was added!
→二代目( ´∀`)死亡時期
-120年代 ***********
【命の矛盾】
-100年代 ***********
【繋がれた自由】
【遺されたもの】
→偽りの湖の封印が解かれる
【時の放浪者】
-40年代 ***********
【老女の願い】→集落→町になる
00年代 ***********
【老女の願い】→( ^ω^)が
官僚プギャー、炭鉱夫ギコに再会
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★作中マップ
大陸戦争前
http://imefix.info/20140924/251211/rare.jpeg
大陸戦争後
http://imefix.info/20140924/251212/rare.jpeg
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乙です ('A`)神出鬼没だな
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大量投下おつ!!!!
クー記憶喪失なのかよとかこっからでぃ持ち直すのすげぇとか
なんかいろいろあるけどすげえおつ!ブーンさん強いっすね
ハイン気になるなードクオはもともと歪んでたのかこれから歪むのか
面白かったよ!
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乙
過去未来が入り乱れて面白い
気になる要素がどんどん出てくるな
次回も楽しみにしてる
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読む度謎が増えてくおつ
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>>150に追加
>>132
>ーー だが初対面ではない→×
ーー 初対面ではない→○
推敲がきちんと出来てないのが恥ずかしい…
台風接近による頭の悪さということで御容赦願いたいほどに
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そしていつも読レスありがとうございます
前スレを励みや支援で埋めてくれた方にも感謝します
今度から投下は晴天時のみにします
雨日は、推敲も投下もガタガタになってしまったので…
投下日時変更の際は当スレに書きますね
次回は幕間、または ('A`) のお話になります
よろしくお願いします
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乙
ハインも気になるしドクオも気になる
話が投下される度に読み返すのおもしれ
黒い槍を3代目モナーが直そうとしてたけど大丈夫なのかな…
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面白かった!でも携帯で読むとツンの口が化けてるんだよぅ…
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皆さんいつも読レスありがとうございます
a ξ゚⊿゚)ξ
b ξ゚⊿゚)ξ
c ξ゚⊿゚)ξ
>>162
上記の三種ツンで文字化けしていないのってありますか?
前スレの途中まではaで書いていたのに
最近文字化け表示するようになって…
同じく困っています
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自分はないな
2chMate 0.8.6/KYOCERA/KYY24/4.4.2/LR
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これ読んでロスオデ買ったよ!楽しくプレイさせて貰ってるぜ!
iPhoneでBB2Cを使って見てるんだが、bだけが反映されないだけで文字化けはない
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>>163
iPhone(BB2Cっていうアプリ)だけど、aとcはちゃんとなってる。bだけ化けてる。
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なるほど、私は
2chMate 0.8.6/PANASONIC/102P/2.3.5/LR
の環境でいつも投下の際、aが化けはじめる→cに変えるけど次の投下で化ける→今回bでやりました
上のはbしかきちんと見れてませんが、単にしたらばの気紛れなのかな…
>>162さんもcで見れるなら、今後cで通してみます
>>165
おおー嬉しいw
好きな千年の夢が見つかった時は是非教えてください
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>>162ですがaとcは大丈夫ですのぅ。環境によって見えたり化けたりとややこしいですなぁ…
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やっと追いついた
不死者たちの戦闘の凄まじさに興奮した
アサウルス戦は映像で見たい熱さがある
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昔 むかし ちいさな山のなかで
村の者が 誰も近付かないやうな
浅くて深ぁい 森のなかに
ひとりの若い山人が すんでおりました
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その山人は 樹をきり 獣をかり
川みずをのんでは ねとこにつく
村の者も だぁれも 山人と
ろくに口も ききゃあしません
くるひも くるひも 山人はひとり……
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なにせ山人を おとなは みていません
はてさて
在るのに居ないとは これ異かに
村のこどもが 胆をためそうと
山にたちいると 顔をみたといいます
ですが おとなが覗きにいくと
どこを歩いても いつ歩いても
切りたおされた樹ぃや
獣をめしたあとが のこるばかり
ときに村をあらす 妖怪のほねばかり
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おお、きてる!支援
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はじめこそ これはたたりだ
いやさ 山のかみのいたずらだ と
うわさしていた村のひとびとも
《かみさまが獣をよく喰ふまいよ》
といふ誰かのことばに うなずいて
てっきり村の者たちは
山人がてまえかってに すみついたんだ
……そう思ふことにしたそうな
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おとなの心配をよそに 子はあつまり
山人のところへ あそびにいくといふ
《山人あめたべた》 《山人にくとった》
《山人うたぅた》
どうやら害はなかろうと おとなも
《あぶないことはするでないよ》
と声かけるに とどまっておりました
-
そんなある日 村のかわ上のほうがくで
おおきな おおきな おぉーきな
太陽をさえぎるほど おおきな太陽が
よるをひき連れて 山にふってきます
空をさいて 山をにじり 海をあらします
おとなは残った子らをひっぱって
《もうだめだぁ このよはおわりだあ》
はばからず 泣いて
ただ ただ うずくまっていました
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( ^ω^)千年の夢のようです
- 東方不死 -
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美しいものには棘がある。
華は寒暖から身を防ぐために棘を持ち、
明確な敵意をもったものに対して、その棘を剥き出しにする。
だが、それは人が後世に作りあげた空想だ。
本来の目的は違う。
己の力だけでは成長できないその華は、
寄り添った別の花に棘を巻き付けながら、利己的に生き永らえるためその棘を持つのだ。
巻き付かれた花は傷付き倒れ、
それを糧にして華はより強く、大きくなる。
<ヽ`∀´>
今日も一人、
そんな華の前にのこのこと現れた。
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<ヽ`∀´> 「…御師が言っていたのはここニダね」
背中に巨大な太極図…陰陽印を背負うのは
大柄だが、見た目より柔らかな物腰の男。
辺りを支配する月と宵闇。
肌寒い秋夜に都合の良い厚手の和装。
口の広がった袖を、胸元に絡ませながら
正面に見据えるのは…古くより現存する湖。
<ヽ`∀´> 「見た目は綺麗な湖ニダが…」
-
約10年 ──。
この湖が大陸の闇と囁かれ始めてから
それだけの月日が流れていた。
数多の白魔導士が原因を調査してきたが
未だ解明と解決には至らない。
底深くにある何か…。
その存在が年々、力を増しては
解呪に挑む者の精神を崩壊させるケースも珍しくない。
観光地として身を休める旅人の憩いの場は
過去に "美しい湖" として名を馳せていた。
今では、その外観から似つかわしくない
曰く付きの場所として、人々から
── "偽りの湖" と呼ばれている。
-
<ヽ`∀´> 「こうも広いと、ウリだけの力でなんとかできるような結界は張り切れないニダ」
呟きながら、男…ニダーは
風のない湖の周りを一周しながらも、ある方角に集中させるように短かな鉄串を立てていく。
歩いてはざくり、歩いてはざくり、と……
男の何気無い動作は、大地の点穴を的確に刺していった。
峨嵋刺と呼ばれるその串は、両端が鋭く研ぎ澄まされた、東方に伝わる隠し武器の一つ。
島国のお伽噺話では頻繁に目にする鬼……
そして女性が心に秘め持つ鬼の角…
その角をモチーフとして製造された、文字通りの "暗鬼" 。
<ヽ`∀´> 「解呪ではなく、まずは惡氣点をずらして端に寄せてみよう。
攻か、防か……御師には攻であれと教わってはいるニダが」
-
ニダーは峨嵋刺で構築した場から離れると、
月を見上げ、影を見下ろした。
師から伝授されし風水術。
星や天地に備わる魔導力を借りることの出来る東方の魔法を、彼は行使する。
計り終えた立ち位置の上、
風も吹かないのに背中の太極図がなびいた。
<ヽ`∀´> 「北東鬼門に穴は開けた。
どれだけ強大な穢れなのか…ウリも確かめてみるニダ」
静かな湖畔に風が舞う……
大きくなるざわめきは歪な水面が起こす波。
波長どころか基の性質のまったく異なる二つの魔導力は、ぶつかり合わず、
湖を型どる蒼を湾曲させながら割った。
<ヽ`∀´> 「…」
だが……それだけだ。
-
鬼門に流れゆく穢れは水と油のように。
彼の魔法と交わらないまま重心を傾けて、いまだ水面を制圧している。
ニダーは湖の底を覗いてみるが、さしたる発見もなく、次の動向を迫られた。
<ヽ`∀´> 「…重いけど、激しくはない。
まさか何もないはずは無いが …」
<ヽ`∀´> 「……ニダ」
そして己が感じ取ったものを優先する。
だがそこには、
誰が、いつ、湖に何をしたのか……
解呪の詳細は引き継がれていない。
それを取りまとめる国という機関はあれど、
現在はその機能を著しく停止している。
<ヽ`∀´> 「【デスペル】!」
それがニダーの仇となった。
せめて流れを寄せず、最初から解呪の魔法を放っていれば……
反動で押し寄せる穢れた津波が、その身に降りかかることもなかった。
-
── 眼前、鼻先。
<ヽ;゚∀゚> 「イ、イゴムォーーっ?!」
迫る手のひらの影。 うねる亡者の腕。
人ひとりを事も無げに握り潰せるほどの巨大さは、その圧力だけでニダーを後退らせた。
瀬戸際で接触を防いだのは両手に添えた双峨嵋刺。
加えて皮肉にも ──
今も継続する、鬼門点穴による引き寄せがなければ間に合わなかっただろう。
<ヽ;゚∀゚> 「ぐっ……ぎぎ!」
【デスペル】は風水魔法ではない。
彼の魔導力に吸い寄せられた湖の穢れは
目の前にぶら下げられた魔導力を【ドレイン】すべく、ニダーもろとも握り潰そうとする。
嵐吹き荒ぶかのように揺れる水面が、湖の体裁を保たなくなりつつある。
<ヽ; >∀゚> 「〜〜っ! こんなの聞いてないニダ!!」
ニダーの魔導力が光の粒となって湖の中に吸い込まれ、溶けていく。
偽っているのは見た目だけではない…
内包する穢れも、
秘める禍々しさも、
湖はもはや一介の人間が手を出せるような代物ではなくなっていた。
命を危機に晒されて始めて気が付く彼の思惑、そして自惚れた我が心。
-
『ニダー、俺達には時間がない。
お前なら間違いないからこそ頼む』
『何でも良い……人や獣を吸い込むという
魔の湖からその秘密を暴いて、収穫があれば持って帰ってきてくれ』
師の言葉が脳裏によぎる。
あの時、浮かんだ疑問を口にしていれば今頃どうなっただろう。
不出来な弟子と罵られながら過ごした修行時代を思い出し、反骨精神を奮い起たせる。
<ヽ;゚∀´> 「……ぐぎぎ」
ニダーも、この湖のことをまったく知らなかったわけではない。
周辺の生態系が緩慢ながら崩されてきたことくらいなら、大陸の行く先々で耳にしていた。
しかし彼の生まれる以前から、
果敢な戦士として…そして風水の使い手として活躍してきた師からの懇願が、
まだ若いニダーの心にどこか驕りを付けた。
<ヽ;゚∀´> 「…?!」
その時、湖の水面に浮かび上がる固形物。
── まだ闇を秘めているのかと、膠着状態ながら警戒を強める。
カチカチと震える双峨嵋刺を持つ腕の中、ぼんやりと考えるニダーではあったが
一方で冷静な思考が、固形物の正体を見極めようと努めていた。
時にそれは生死を分かつ "未練、執着" とも呼ばれるのかもしれない。
<ヽ;゚∀´> 「……あれは」
脳の処理速度だけが加速した世界で、捉えた輪郭が告げる見知った正体。
人の形。 その方角、南西裏鬼門。
-
一度発動した魔導力は継続してその効果を発揮しない。
少しずつデスペルの効力が薄まると共に、
亡者の腕が興味を失い、ニダーへの強襲は力を失っていく。
反して手伝うように、
継続して穢れを吸い寄せる風水魔法が、亡者の芯を向こう側へと引きずり込む。
<ヽ;゚∀´> 「っオ!」
ニダーは好機とみるや一歩下がると同時、素早く腕を振り上げた。
袖口から飛び出す複数本の峨嵋刺が、
その固形物の横をすり抜け ──巻く。
<ヽ;゚∀゚> ( 間に合えっ!)
人がいるとなれば放っておけなかった ──そこに師の言葉など関係ない。
そのまま勢いを殺さず、ニダーは更に大きく飛び退いた。
キリキリと袖先で鳴る音は、嘶く亡者の声にかき消える。
転がり離れる身体が砂を絡めて汚れていく。
受け身をとる余裕もなかった。
ひたすらに…、その場から逃れる。
── ォォン… ── ォォン…
── オ オ ン …
あとに残るは
耳にこびりついた呻き声だけ…。
-
やがて鎮まりかえった偽りの湖…。
<??;゚∀゚> 「ハアーッ、ハアーッ…」
自由を取り戻した身体とは対照的に、心は得たいの知れぬ何かに縛られる。
ニダーは恐ろしかった。
これは単純な死の恐怖とは違う。
道半ばの魂を…自分という個を吸い取る、ただそれだけのために存在する亡者が……
手のひらの影が己を食むかのように
ばっくりと開かれていたのを、目の当りにしたあの瞬間が。
口内に溜まった唾液を呑み込もうとして…
しかし拒絶を表した喉頭によって反流し、無様に咳き込んでしまう。
-
<ヽ;`∀´> 、「けほっ…げほっ……」
何の目的かは知らないが…もし元凶がどこかにいるならば責任を取らせたい。
赤の他人がこんなものに関わるべきではなかった…と、ニダーはそう胸中で毒づいた。
こんなところに送り出した師への憤りも少なからずあるが。
<ヽ`∀´> 「── はぁ」
しばしの間、彼は片膝をつき、荒れた呼吸が整い終わると顔をあげた。
辿る視線は、袖口から繋がる炭素鋼に巻き付く人間。
結わく峨嵋刺が尾となり、回収を為したのだが……
<ヽ;`∀´> 「…何ニダ?」
炭素鋼に食い込む腕がピクピクと、筋肉の収縮を伝え抗う。
── 生きている。
あの穢れた湖に沈んでいたはずなのに?
ニダーは恐る恐る、うつ伏せているその人間の顔を覗き込んだ。
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「…ふひ、ひ」( ∀`)
砂に埋まるべたべたの横顔から、
邪に尖る奥歯を見せつけて
"ポイズン" は嘲った。
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------------
〜now roading〜
('A`)
HP / F >> C
strength / D
vitality / A
agility / A
MP / C
magic power / B
magic speed / C
magic registence / A
------------
-
ギュルギュルと響く機械音…。
末端のネジ一本からエンジンに至るまで。
街道を走る小型電動貨車が、土埃を舞わせながら木々をすり抜け駆けて往く。
固い土を踏みつけるたびに沈む車体。
しかし中にある運転座席や、後部荷台を思うほど揺らすことはなかった。
大陸戦争にも利用された運搬車ではあるが、その全てを廃棄されることは少ない。
むしろ堂々と現存しながら、この時代の人々の暮らしに役立てられている。
('A`)「…」
<ヽ`∀´> 「……」
広い荷台にはたった二人。
砂を払い切り、汚れの目立たなくなった服の上から、白く襟の立った上着を羽織ったニダー。
背中の太極図は一回り大きく見えるが表情は俯き、暗い。
そして乾きつつあるもののボロボロの黒い防弾衣に、炭素鋼と峨嵋刺で両腕ごと縛られたポイズン。
空を仰ぐ視線、口許は貼り付けたような薄ら笑い。
一見真逆に見える彼らに共通しているのは、濁った瞳。
-
('A`)「…なぁ?」
沈黙が支配する空間で、先に口を開いたのはポイズンだ。
当然ながら…なんとなく気まずいなどといったくだらない理由からではない。
('A`)「いい加減なにか喋れよ。 お前の名前でもなんでもいいから」
ふひひ、と洩らしながら命令口調でニダーに声をかける。
興味があるなどというくだらない理由からでもない。
<ヽ`∀´> 「…ニダー」
('A`)「よぉ〜やく喋ったか。 なにセンチしてんだか」
<ヽ`∀´> 「君には関係ないニダよ」
それだけ答えてニダーはまた俯く。
窓はなく、四隅に備えられた仄かな光源だけが、閉鎖的な荷台の二人をじっと見下ろしていた。
-
('A`)「……」
('A`)「ふひ」
ポイズンは笑う。
自分の状況にさして頓着せず、なぜ緊縛されているのかも、この電動貨車の行き先にも興味がない。
ただ直感だけ。
この後はお愉しみな出来事がきっとあると。
無為自然に過ごしていれば、いつも自分の元には愉快な奴が現れる。
自分はそういう世界にいるのだ。
この腐れた脳みそを使うのはその時で良い。
策士は策に溺れる。
臆病者は想い出に縛られる。
弱者は起きてもいないことを不安がる。
……なんと揃いも揃って馬鹿ばかり。
そんな愚かしいことは一切する理由がない。
死なばもろとも消えてゆくのだから。
── たとえ不死であろうと。
久し振りの揺れに車酔いしたわけでもないだろうが、ポイズンはどこか鬱陶しげに壁に寄り掛かると、冷えた感触がこめかみから伝えられる。
それは彼にとって思いのほか心地好かった。
( A` )「……タバコある? ひひっ」
-
<ヽ`∀´> 「…ここは火気厳禁ニダ」
( A` )「ぁーそー」
「ツマンネ」と吐き捨てるポイズンの横顔を見て、ニダーは少しだけ探りをいれた。
<ヽ`∀´> 「なんで湖の中にいたニダ?」
('A`)「君には関係ないズラよ」
<ヽ#`∀´> 「…」
('A`)「怒んなよ、ジョーダンじょーだん」
('A`)「まあ寒中水泳ってやつだ」
垂れ下がった目尻でヘラヘラとしたその調子は、何か隠しているようにも見える。
そんなポイズンを凝視して、一言──
<ヽ`∀´> 「… "長寿の法" 」
('A`)「はあ?」
<ヽ`∀´>「……いや、なんでもないニダ」
…どうやら投げ掛けた単語はかすりもしなかったらしい。
ポイズンの表情は微動だにしなかった。
その後は少しだけ雑談を試みるも、さしたる情報すら得られそうもないまま時間は過ぎていく。
<ヽ`∀´> 「……」
どうしたものかと、ニダーの思考は貨車の外へと浮かんで、そのまま消えてしまった……。
-
数日後、電動貨車から降ろされた山中のとある屋形の前。
「お帰りなさいませ、ニダー殿」
出迎えた剣士達は一様に脇差しを携え、先に歩くニダーを一瞥すると道を開ける。
葉を少なくした大木の下にはその場に不釣り合いな些か仰々しい機械類が置かれているものの、ポイズンの関心は別のところにあった。
('A`)「…サクラか」ボソッ
<ヽ`∀´> 「こっちに来るニダよ」
ニダーにそう誘われるも、二本の足をすぐには動かさない。
辺りを囲む剣士から刀の柄で背中を押され、やっと身体を揺らして歩きだした。
両腕は解放されなかった。
屋形内を回り込むように続く長廊下から見えるのは、やはり庭先に咲くサクラの花…。
天道虫が非力な羽を休めている。
<ヽ`∀´> 「サクラを知ってるニダね」
('A`)「……?」
('A`)「なんだ、そりゃあ」
今度はキョトンとした顔でニダーの顔を見返す。
ポイズンの反応の違いに対して、訝し気に首を捻りながらもニダーはそれ以上話し掛けなかった。
-
「ご苦労だったな、ニダー」
長廊下の角を曲がると、新たに続く直線の中腹で、白い髭を蓄えた背の高い老人が腕を組んでいるのが見える。
<ヽ`∀´> 「御師様、戻りました」
( `"ハ´) 「応。 収穫物は…そいつか」
('A`)「ぉ〜コイツがお前の言ってた師匠ってやつか」
(`"ハ´ ) ギロリ
── その老人。
かつてこの地域を取りまとめていたバルケン公を成敗し、その後の安寧を作り直すに貢献した一人。
<ヽ`∀´> 「ニダ……あの、御師さ ──」
( `"ハ´) 「3つ目に入れ、彼がお待ちアル。
2、1、1、1、5」
<ヽ`∀´> 「……」
言い切り顎をしゃくると、それきりシナーは無表情のまま廊下の柱に寄り掛かった。
齢にして90を超えたシナーから、孫ほどに歳の離れた弟子であるニダーの会話はそれで終わる。
…労いの言葉はない。
身を案ずる様子もない。
ポイズンを収穫物と言ってのけたことに対する、ニダーの疑問もかき消される。
眼をつむり、弟子の顔を見るまでもなく、シナーはじっとして動かない。
-
しえん
-
廊下に面した襖部屋を開け進んでいく。
('A`)「おめーバカにされてんじゃあねえか。 あ?」
<ヽ`∀´> 「……」
ニダーは応えない。
ただ無造作に襖を引き、ポイズンを先に進ませてから自分が入るという動作を繰り返す。
('A`)「…ぁ、図星だったか? ごめんなぁ、ふひひ!」
♪〜 ('A`)「弟子なんだろ、いつかは師匠なんて越えるもんだぜ」
ポイズンは流暢に言葉を続ける。
ニダーはそんな彼を相手にしない。
('A`)「少なくとも俺には師弟愛だのどーだのは感じなかったけどな」
<ヽ`∀´> 「…もうすぐ着くニダ」
('A`)「……。 ふひひ」
('A`)「…殺しちゃえよ」
-
何度も明け開いた襖の向こう…
物理法則に沿わない方角へと続く廊下の先に、垂れ幕で区切られた大部屋が鎮座する。
ニダーが「失礼します」と一声かけると、張りのない、短い返事が咳き込む音に混じって返ってきた。
(-@"∀@) 「ご苦労だったねえ」
<ヽ`∀´> 「ご気分はいかがニダ?」
(-@"∀@) 「良くは、ない」
ごっぷごっぷと、耳障りに痰の絡む濁音が広間に響く。
シワだらけの老人…アサピーはしばらくの間、喋ることもできず生理現象と争っている。
(-@"ц@) 「ぐぅ〜、ごけぇッ!」
(-@"∀@) 「…ぺっ! ……ぅー…。」
('A`)「…」
('A`)「ジジイ、うるせえぞ」
<ヽ;`∀´> 「こら! 控えるニダよ!」
(-@"∀@) 「よい…。 ングッ 私ですら同じ思いなのだからな」
若々しかった過去の姿は無く…
もはや墓の前にたつ骨と皮の残骸は、ポイズンの言葉にも動じる様子はない。
-
(-@"∀@) 「……君が、湖から引き揚げられた者か」
(-@"ц@)',: 「そうか…聞いた通り ──ゴッホ!」
(;'A`)「きったねえーなあ〜」
(-@"∀@) 「……ぐっぐっぐ…」
眼鏡の奥から鋭い眼光が射す。
隠さず咽が鳴った。
── ついに求めていたものを目の前にしたかのように。
(-@"∀@) 「ニダー、君はもう下がってよい」
<ヽ`∀´> 「…は」
(-@"∀@) 「シナー、連れていきなさい」
('A`) ハ ´) 「応」
いつのまにか、ポイズンの背後には老戦士シナーの姿。
ド
ス
ッ
!
直後、後頭部に貫く痛みが走る。
──尺半ばまで刺さった峨嵋刺。
そこでポイズンの意識はぶっつりと ──…… ..
-
-
《山人、どこや?》
(推奨BGM:A Return, Indeed... (Piano) )
http://www.youtube.com/watch?v=jPT4hh9BesE&sns=em
-
----------
《山人ー!》やまひとー
《相手せいー!》
あいてせいー
……静かな森の山に響き渡るのは、まだ澄んだ…誰かを呼ぶ声。
キンキンと高い音波が山の空気と起伏に反射し、無遠慮に木霊する。
風の弱い日はいつもこうだった。
島国であるこの土地には湿気が多く、僅かな冷涼を求めて日陰に身を潜める習慣がある。
だが彼が住み着いてからというもの。
もののついでと言わんばかりに、飽きもせず彼を捜し回る遊戯が流行ってしまったらしい。
歳を取ればくだらないことも、幼な子にとってみれば新鮮で好奇心を満たす、悦ばしい日々の出来事なのだろう。
-
《山人ー!》 や
まひと
《どこじゃー?》ど
こ
じ
ゃ
彼を求め、見えぬ手は鳴り止まない。
この遊戯は男を見つけるまで続けられる。
島国には四季があり、人が万年過ごしやすい環境とはお世辞にもいえない。
変化に耐えきれず身体に異変をきたす者や、不幸に見舞われ、一年を憂鬱に思い起こさせる時季が必ずやって来ることを嘆く者も在る。
風暖かく、
しかし大陸から病を運んでくる春。
陽強く、
しかし恵みをより引き立たせる夏。
想い猛り、
しかし決して叶えることのない秋。
白雪舞う、
しかし魂を誘っては永遠をよぶ冬。
-
彼が此処に辿り着いたのは遥か遠い冬。
今でも目をつむれば、白い結晶が溶けて赤く染まるような…傷付き疲れ果てた身体を引き摺っていたことを思い出す。
その時、山の麓の童に姿を見られたのが運のつきだった。
いくら施しを拒絶しても言葉は通じず、まるで自分勝手に振る舞う年端もいかぬ童たちは、彼の面倒を見る代わりにあることをねだった。
《山人、うたうとぅてくれ》
この島国では唄に特別な想いを注ぐという。
── 悦びも、哀しみも。
── 怒りも、愉しみも。
言霊を詠んではころころと、目まぐるしく表情を取り替えていく。 それはまるでこの島の四季のようだと…根負けした彼は思った。
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《きゃはは》ゃはは
《へたくそ!》たくそ!
《真面目にやってえ》ってえ
彼には唄の才能がなく、なんど月を見送っても、いくら陽が暮れようとも、みなの好奇心を満足させることは出来なかった。
そのたびに『もうやめだ』と彼が言っても、童たちの大合唱によって拒否を遮られる。
彼には注ぐ心がないのだと、みなが言う。
彼も否定しなかった。
注ぐものがなければ唄は吟えないのなら、きっと己れはそうなのだと。 だからもう諦めろと。
《山人げんきだせ》
差し出されたのは一粒の飴…。
"白い花" と呼ばれたそれを、男は戸惑いながらも受け取った。 だが検討違いの慰めに、
『己れは何も落ち込んじゃあいない』と否定する。
《さぁさ 山人あいてせい》てせい
-
ある日のこと、童の一人が尋ねた。
《山人はなにがすきだ?》
…好きなものなんてない。
《愉しいことすきか?》
…愉しいことなんてない。
《嬉しいことすきか?》
……嬉しいと、思ったことがない。
《怒ったりするのか?》
怒るほど誰かに期待しちゃあいない……。
《そんなの哀しくないか》
……。 そんな風に考えたこともないな。
-
彼は自分に嘘はつかなかった。
長い月日のなか他人を欺くのは、正体を隠し、退屈を紛らわせるためだったが、自分自身を偽ったところでなんの意味もない。
無駄なことは好きだが、無意味なことには無関心。 そうやって長い間、気の遠くなるほど間延びした命を淡々と享受した。
この島国に来た理由を忘却し、ひたすらに生きる無意味さを、退屈しのぎによってまた忘却する……。
いつしか彼はその存在意義をも深淵に沈ませ、宙ぶらりと世界を漂うようになってしまった。
長い時間を生き過ぎた。 人が人としてもつべき心は…もう渇き切ったのではないか。
風が吹けばカサカサと崩れてしまう。
水を与えても吸い込む前にむせて吐き出してしまう。
土に還したくても周りと交ざり合うことが出来ない。
ならばいっそのこと燃やしてしまえばいい。
いたずらに摩擦を起こし、生命が命足るに必要不可欠な酸素という名の魂の血路を奪い、時には彼自身も火種の泥を被ってゆく。
-
《山人おるかー》るかー
《山人うたつくってきたぞぅ》ぞぅ
……今日もまた、山のなかに。 麓に住む童たちが彼を捜し回る声がする。
《山人もこれならうたえるな》
《山人はてがかかるな》
不死でも腹は減る。 男はやはり退屈しのぎに頭を割った獣のにくをたべながら、遠くて近いその音に、ただ静かに聞き耳をたてた…。
《山人みぃつけたー》
つけたー
-
-
----------
《ヒタ… ヒタ…》
('A`)「…」
《ヒタ… ヒタ…》
ポイズンが目覚めると途端に、すえた匂いが湿り気を帯びて鼻をつく。
体機能が動き始め、ただでさえ細い瞼を更に薄めて開いた。
《ヒタ… ヒタ…》
── 四角い部屋だった。
暗く、飾り気どころか生活感もない…いや、目が慣れてくると、そこはむしろ人がおおよそ生活出来ないような空間であることが分かってくる。
《ヒタ… ヒタ…》
冷えた人工石の感触が背中一面に広がる。
窓は一つもなく、天井は低い。
真っ暗闇にならないのはいたるところに生えた苔のおかげか……だが、それも淡く弱々しい。
どこからか水の滴る音がすると、悪ふざけのように幾度となく反響した。
耳の奥から脳に向けて潜り込んでくる不快感が、ますます時間隔を狂わせる。
《ヒタ… ヒタ…》
-
('A`)「…チッ」
《ヒタ… ヒタ…》
身を起こそうとしたが動かない。
両腕両足に枷が嵌められ、床の蝶番へとリングによって繋がれている。
《ヒタ… ヒタ…》
('A`)
《ヒタ… ヒタ…》
('A`)「…」
《ヒタ… ヒタ…》
ポイズンは聴覚を研ぎ澄ませた。
……しかし水滴の反響によって邪魔されるのか、部屋の外の音を拾うことができない。
床に耳をつけても地響きすらない。
…その違和感。
《ヒタ… ヒタ…》
('A`)「…臭ぇなあ」
ポイズンは耳がいい。
自分に聴こえないならば、ここはどこか離れた場所にあるのだろうと推測する。
たとえば…
上下階層もなく、左右区域もないような。
生物の通る空洞も、川や水の通る道すらも ──
('A`)「水」
-
はたと違和感の正体を掴み掛ける。
建築物は必ず大地からはじまり各々を接触させている。
地下室であろうと屋上であろうと。
土から台が立ち、台は骨を組み、骨は肉をつけ、肉は皮を纏う。
そのいずれにも音は波長振動として伝わるものだ…伝わる面が大きければ大きいほど
防音対策による間接材や壁の厚みは、集中するポイズンの聴覚には意味をなさない。
('A`)「……なんで水が滴ってんだ?」
さながら雲から放たれる孤独の雨粒のようだった。
空に見放され、辿り着く先で瞬く間にその存在を消していくように。
ぶつ切りの訪れと終わりに、ポイズンの勘はよく働いた。
-
跡絶える部屋の音…
2、1、1、1、5…
突如出現したシナー…
('A`)「…」
理屈は必要ない。 結果だけで充分だ。
ここは "空間が切り離される" ──。
数字は恐らくあの襖を開けた順番だろう。
その分け断たれた空間にもやがて来訪者がやってくる。
ギギイイと重苦しい錆音の隙間から、明るい空気と光源が入り込んだ。
ポイズンの片眼が反射的に閉じられる。
残り開く眼には…膝下まで隠す長いコート。
( <●><●>) 「……お目覚めですか?」
('A`)「てめーか」
あの時、偽りの湖へと共に沈んだ土塊。
後光射す佇まい…その身影から浮き上がる眼闇は、もともと特徴深かった黒を一層濃くしている気がする。
なによりも…纏う魔導力が土塊らしくない。
研究場でポイズンが身に付けた、本物のワカッテマスと同等同質か ──それ以上に感じられた。
-
('A`)「なんでここにいるんだあ?」
( <●><●>) 「…」
無言。
出入り口はいつのまにか閉められていた。
小さな段差を歩く時も、こちらに向かってくる時も、滑るようにワカッテマスは移動する。
コートの裾から見える硬そうなロングノーズブーツさえ無音を奏でた。
その不気味さが…かつて土塊だったワカッテマスの変化を薄々ながら明瞭に、ポイズンの勘を刺激する。
( <●><●>) 「……偽りの湖ではお世話になりました」
('A`)「…」
( <●><●>) 「水の都は貴方……ではないことはわかってます。
ですから不問としますよ」
('A`)「……都??」
( <●><●>) 「憶えていませんか?」
( <▲><●>) 「…貴方のそれ… "虫喰い" ですね」
-
('A`)
('A`)「…ぁ……?」
ポイズンにしては珍しく、演技でなく言い淀んだ。
( <▲><●>) 「…フフ」
なぜ目の前で自分を見下ろすワカッテマスが、それを知っているのか? ……と。
ポイズンは死ぬと記憶が途切れる。
途切れ方は様々であり、直前のことは憶えていても、それ以前のことを穴が開くように忘れる状態を彼は "虫喰い" と呼んだ。
だが誰かに教えるようなことは有り得ない。 そこに記憶の有無はまったく関係ない。
そもそもポイズンの中でしか定義付けしていないのだから。
( <●><●>) 「まあいいでしょう。
さっそく、戴きますよ」
('A`)「? 何を《ズ
ボ ッ !》
言葉を待たず、ワカッテマスの腕が振るわれる。
…素早い動きだった。
ポイズンが不意に銃斧を構え、トリガーを弾くのと同じくらいに。
(; 'A`)、"; 「── がはっ!!」
-
喉から込み上げてきた衝動に打ち克てず、天井に向けて血液をぶちまける。
…ポイズンが思うよりその量は多く、だが考えていたよりは飛ばなかったらしい。
痛みは耳鳴りを鷲掴んで遅れてやってきた。
О" ( <●><●>)
щ 「……まず一つ」
手鞠のように弄ぶのは優越感か。
ワカッテマスの手の中には小さく紅い臓器。
病的に痩せた指の一本一本から、研いだナイフのような鋭利な爪が主張している。
( <●><●>) 「…二つめ」
ポイズンがなにかを言う前に、次の手が皮膚を貫いて、先と似た大きさの内蔵を引き千切った。
耳の奥でブチブA ゚)
(。Aチ
ブ
チィッ ──と、
視界明滅暗転不協和音
ハ シ ヲ成ス。
-
( <●><●>) 「私はね。 これまで私が受けた仕打ちをどうしてももっと多くの人間に返さなくてはならないのです」
( <▲><●>) 「……そのためならば、今までのことはお互い水に流そうではありませんか」
( <▲><●>) 「この臓器から、私がもっと素直な貴方を創って差し上げます。
気に入らなければそれこそ何体でもね」
( <▲><●>) 「貴方はずっとここに居れば良いのです。
そして…時々は他の貴方が何をしているのかくらいは観せてあげますよ」
( <▲><●>) 「……聞いていますか?」
( A )
── ポイズンからの返事はない。
穴を開けた腹部から、止まず溢れる紅血が床を染めていくのみ…。
だらしなく開けた口の動きから、辛うじて息はあるらしいことがわかる。
( <●><●>) 「ふむ。
では、もう一つくらい……」
(;<●><▼>) 「── グッ?!」
-
言いかけて ──ワカッテマスは表情を変えると、足早にポイズンから距離をとった。
閉まりゆく扉の狭間に消えていくのは【キール】という言葉、赤黒い魔導力が彼に浸透していく音、そして
ブスブス…
…気泡とも呼べない散乱体が弾ける音。
周囲の景色が変質し始めた。
苔ブスブス…が灼ける。
腕や脚を拘束する枷がみるみる錆びていく。
その場に残されたポイズンのブスブス…身体から発される猛毒のせいだった。
無味無臭…密室に充満する天然の害毒が、瀕死の身体を奮起させるよう暴散する。
ブスブス…
沈んでいく身体が、床すらも腐食させ溶かしていることを示す。
ブスブス…
( A )ブスブス…
ブスブス…一度飛び散った毒……
その行き先は、
( A`)
ブスブス…
発生源に取り込まれ、その傷を癒した。
----------
-
《パタン》
<ヽ`∀´> 「…ワカ殿、どうしたニダ?
顔色があまりよく ──」
( ∩ <●>;) ))
「……ご心配なく。 なんでも、ありません」
<ヽ`∀´> 「お…」
屋形の内廊下ですれ違い、そのまま離れてゆく。
急ぎ足で走り去っていくワカッテマスを見送りながらも、ニダーは廊下を曲がって行き止まり…
その先の唯一ある扉へと足を踏み入れた。
ギイィ <ヽ`∀´>つ|
入口すぐの小さな段差は上がり框。
天井からぶら下がる垂れ紐を引くと、かちかち点滅した後ではあるが、頼りがいのある橙の明かりが隅々まで照らした。
なんともなし、ぐるりと視界を泳がせる。
そこは壁一面に画かれた太極図や人体図、古今の東方武具の尺図、妖怪絵馬の写しなどがひしめいている。
元はといえばバルケン時代、身内で茶会を行うために用意された広間だった。
アサピーの代には豪華な家財や壁紙を取り外し、いつしか戦術研究室となり、いまや風水師の彼らだけが使っている。
ニダーは慣れた動作で、今度は壁紐を引っ張ると換気扇が回り始めた。
片隅にまとめてある掃除用具から箒と塵取りを手にして、若き風水師は雑務に励む。
確実なる違和感を残したまま…。
-
ワカッテマスが同じ屋形内で過ごすようになってから5年…。
ニダーを取り巻く環境はいつの間にか、大なり小なり居心地の悪さを拭えない。
<ヽ`∀´> 「……」ザッザッ
師であるシナーは
老いを感じさせないほどに肉体的…とりわけ生殖機能に衰えを見せない好色だ。
平均寿命の長い東方出身者としても逸脱した現役の戦士であり、見た目もせいぜい還暦ほどにしか見えない。
屋形に住まう下女を手籠めにし、孕ませたことも数多くあったという。
ニダーは彼の十数人目の息子であり──嫡子でもある。
兄弟はみな先に死んだ。
<ヽ`∀´> 「…」ザッザッ
アサピーは年老いてなお先見の明を持ち、領地をこれまで公平無私に治めてきた。
…そう聞いている。
だが近年はどうだろうか?
修行の一環で立ち寄った村では、奉公人を寄越せとの通達に脅迫めいたものを感じることがあるのだ、と…
困り果てた村長に秘の相談を持ちかけられたこともある。
<ヽ`∀´> …ザッ…
<ヽ`∀´>
…この部屋には誰も立ち寄った形跡がない。
ニダーは掃除を終えて部屋を出る。
ガチャリと錠の落ちる音を背中に受け、部屋をあとにした。
塵取りにしまった埃からも明らかだが…なにより。
先のワカッテマスは、
どこから出てきたのだろう。
-
( `"ハ´) 「…」
イ从゚ ー゚ノi、 「…」
夜の帳は下り、屋形の内にて各々は食事をとる。
膳に乗せられた品数は多い。
主に山菜や川魚を素材とし、いずれも煮る、焼く、漬けるなど簡素な調理を施されたものばかりだ。
だが決して質素ではない。
<ヽ`∀´> 「遅くなりました」
( `"ハ´) 「構わん。 座るアル」
遅れて現れた弟子に、シナーが文句一つ言うことはなかった。
彼が求めるのは栄養摂取という目的の達成であり、必要な人間が揃った場で食を召すという習慣の順守である。
ニダーは師を正面とする下座に着くと一礼し、食事を用意してくれた奉公人…きつねにも謝意を示す。
シナーが料理に箸を付けてから、彼も続いて汁物に手を伸ばした。
イ从゚ ー゚ノi、 「…」
きつねはそれに加わらない。
ただ部屋の隅で用を言い渡されるのを、頭を垂れ、指先を揃えて待つ。
着物越しに覗く圧し饅頭のような谷間が、裸樹のように枯れた室内に薄紅花を添える。
-
( `"ハ´) 「客人はいつも通りアサピーのところか?」
イ从゚ ー゚ノi、 「そう存じております」
( `"ハ´) 「他に収穫物はなかったのか?」
<ヽ`∀´> 「……あれ一つニダ」
ニダーは答えながら、右手の人さし指と中指を交差させるように立てる。
( `"ハ´) 「そうだったな、すでに聞いたんだったか」
白湯を啜り、白身魚の骨ごと箸で切り口に運ぶ。
程好くホロホロと煮込まれたおかげで口の中を傷付けることもない。
<ヽ`∀´> 「御師……」
( `"ハ´) 「ご苦労だったな、ニダー。
お前は私の誇りだ」
( `"ハ´) 「……アサピーもワカッテマスも喜んだだろう」
<ヽ`∀´> 「…ありがとうございます」
( `"ハ´) 「なにか言いたそうだな?」
-
ニダーに向けて発されるのは、シナーからの明確な不快感。
── 俺のやることに何か間違いがあるか?
眼でそう言い、
シナーもまた人さし指と中指を交差させる。
( `"ハ´) 「しばらくはお前にもやらせることはない。
大人しく屋形のなかで風水の腕を磨け」
( `"ハ´) 「また新しい発見があれば見てやろう。
俺もまだまだ現役アルよ」
人さし指をトントンッとこめかみに当てながら、シナーはニヤリと笑う。
それは彼がニダーの稽古をつけている時にもよく見せる顔だ。
( `"ハ´) 「俺はこのあとアサピーのところに往くが…
おい、きつね」
イ从゚ ー゚ノi、 「はい」
( `"ハ´) 「お前はニダーの世話をしろ」
イ从゚ ー゚ノi、 「わかりました」
きつねは顔を上げぬまま、より深く辞儀。
奉公人は世話をするのが大前提だ。
あえて言葉にされるということは、奉公人にとっての『世話』とは一つの意味しかない。
( `"ハ´) 「今日の食事は終わりだ」
-
----------
(-@"∀@)" ガツガツっ ガツガツっ
( <●><●>) 「…お味はいかがでしょう?」
(-@"∀@) 「んぁ〜?
…不味いに決まって、っっ」
(-@"ц@).'; 「── ごっふ!」
( <●><●>) 「ですが我慢しなくては。
こぼした分はともかく…」
アサピーの私室…となった場所。
かつてここで命を落としたバルケン公が、主に使用していた広間である。
あの頃のバルケンより更に歳を召した息子は、偽りの湖の話が耳に届くたび、日々ある思いを強くしていた。
(-@"д@)、「ぜぇ〜… ぐフッグフッ! ぜぇ〜… 」
(; -@"∀@) 「………わか、てる」
( <▲><▲>) 「もっと味わってください?
……待ちわびた食材なのですから」
-
(; -@" ム@) ムングムング…
次の一口は吐き出さなかった。
一切調理されずに剥き身で差し出された "それ" は、冷めやらぬ血と粘膜でベタついており、老いた彼にとって飲み込むことも困難…。
ブチッ
ある程度まではナイフで切断したものの、
『手を加えるほどに鮮度と効果が薄れてしまう』というワカッテマスの言葉に取り憑かれた。
ブチッ
だから…噛み砕くしかない。
ブチッ
( <●><●>) 「…さすがは名君としてこの地域を治めているアサピー殿。
やると決めたらやり遂げる気概を感じます」
( <▲><●>) 「長生きするべきです、アナタは」
(; -@" ム@) ムングムング…
…ブチッ
-
グチュ
ニッチャ…
ング
ア モッ
-
ワカッテマスはそんなアサピーを見つめながら、白く細い手で口許を覆う。
指先が隠すのは吐き気ではない。
…嘲笑み。
-
∠ ▲ ゝ < ▲ ゝ
-
ニダーがポイズンを助けたのと同じく、
数年前シナーに引き揚げられたのがワカッテマスだった。
土塊である彼が時を経て風滅せず、今日まで生きているのは湖の力が関係している。
(-@"Д@) 「──ガハッ! けへっ、ぺっ」
( <●><●>) 「……まだお訊きしていませんでしたね。
なぜそうまでして貴方は、命永らえようというのですか?」
(-@"∀@) 「…はぁ、ングッ ──…ぷは」
(-@"∀@) 「…」
( <●><●>) 「いえ、失言でしたか。
私なぞ一介の調査員に過ぎません…聞き流して頂いても」
ワカッテマスの被る仮面はとある亡国の研究家。
穢れの解呪を試みたシナーをも欺き、湖から得た記憶によってそれを為す。
(-@"∀@) 「ただ純粋に、もっと生きたい…ではいけぬか?」
-
バルケンの支配がアサピーの統括へと替わってから70年…
領地内の生活水準は飛躍的に向上した。
なにも税を抑えるといったような短絡的な政りを行ったわけではない。
バルケンが肥やしたものを返還した後、領民がこれまで通り納める年貢に見合う報酬を適切に払ったに過ぎない。
アサピーの元に残る財産は必要最低限。
だが彼にとってはそれでも良かった。
いたずらに発展を求めなくとも、人は生きていけるのだ。
土地の整備にかかる範囲や費用すらも、彼は独断でなく必ず人々に相談することで反発を抑えた。
民主主義は密告を防ぎ、個人の責任を霧のなかに隠す。
なにより日常の振る舞いが、横暴な老バルケン公に比べ寛容で庶民的だった。
人々は彼の統治を喜んだ。
──近年までは。
(-@"∀@) 「怖いのだよ。
それを、誰かに任せてしまえば…また……」
( <●><●>) 「…」
そうして名君による統括は過去の話となりつつある。
とどのつまり彼は実権を握り続けたいのだ…と、生まれ変わったワカッテマスは思っている。
-
(-@"∀∩) 「……いや、私は何を言っているのか。
ほっほっ、忘れてくれ」
( <●><●>) 「私には政り事のことなど計り知れませんのでご安心を。
愚痴くらいならば聞けますがね」
( <●><●>) 「……ところで御老公、折り入って頼みが」
ワカッテマスの表情は変わらない。
── というよりも、今のアサピーにはそれが見破れない。
(-@"∀@) 「……またか?」
( <●><●>) 「どうしても人手が必要でありまして。
もしお借りできるなら、また新たな食事も献上できます」
(-@"∀@) 「…」
( <●><●>) 「作業は引き続いて山中に潜む "害虫駆除" と、私の研究所への輸送のみをお願いするつもりです」
その言葉に嘘はなかった。
だが、作業に充てられた人々は、その日を境に当たり前の日常を過ごせなくなることが確定するだろう。
-
──"害虫" 。
その言葉に、
アサピーとワカッテマスが捉えるものは
大きく異なっていることを
誰が知るだろうか……。
-
------------
〜now roading〜
( `"ハ´)
HP / D
strength / C
vitality / C
agility / C
MP / G
magic power / D
magic speed / C
magic registence / C
------------
-
《山人、どこや?》
今日もまた童達が山を登る。
唄の吟えない男のために、切り倒された樹の合間を縫うように、よたよた、よろよろ、歩き続ける。
しかし、その日はどうやら勝手が違う。
野が燃え丘が燻る中に放り出されている。 童の顔は酷く強張り黒ずんで……声は枯れていた。
-
《なあ山人ー》山人ー
《助けてくれぇ》くれぇ
がらがらと割れる音は、辺りを包む轟炎のせいだろうか。
……自分が思うように出せない悲鳴。
蕾にも似た唇には無数の線がはしり、ひとたび綴じれば独自の意思をもつかのように吸い付いて離れない。
潰された咽はまるで老婆のように、その童の姿がなければ、棄てられた姥が生涯最後の助けを呼ぶ声と思われても致し方ない。
熱波が山全体を囲う。 村に燃え移るのも時間の問題だった。
《山人、たのむ》のむ
-
当の男といえば…唯々座り込んでいる。
まだ生きた切り株の上で胡座をかき、斧を担いでいるだけ。 銃の引き金を弄ぶだけ。
『ここまで来れたらな』…大きな影の元、無理難題を呟く。
上を向けば黒き太陽の腹がよく見えた。
《おとうがしんだ》しんだ
《おかあもおらん》おらん
はぐれ童ら。 逃げた先で何を想う?
すがるもの亡き弱者の嘆きは必ずしも叶わない。
《山人ー、はよ逃げよ》
幼子よ…。 何を以て其れにすがる?
…塞がっていなければ、両の腕が男の耳を潰したやも知れぬ。
-
いつか見た夢は落日。
いま或る現もどうせ落日であろう。
ならば……まなこの先に映る幻はどうだ。
息をきらせるまだ小さな楼閣。
《山人おった》
── とんだ愚図に懐かれたものだと嘆息して止まない。
ここに童達の未來なぞ在りはしないのに、ついぞこんな山奥まで…嗚呼、草鞋もどこへやったのか。
齬 呀 嗚 嗚 嗚 嗚……
虫が獣の真似事をするな。
騒がずとも聴こえるとも。 聴こえるとも。
大きな虫は唾をはき、液にまみれた童の輪郭をむなしくも塗り替えてしまった。
童影は虚闇となり、音にならぬ咆哮を真似て叫び始める。
かつての童。
四つん這いのそれはもはや人に非ず。
-
なるべくして成った現実は、男の感傷を雀の涙ほどももたらさない。
だのに何故こうもがたがたと腕が揺れるのか、と…ふと思いはしたが、それは男の思い違いであった。
尖兵と化した蟻童に向ける銃は、曇りなく真っ直ぐと伸びている。
《 !》
発砲音は無い……、男には聴こえなかった。
引き金を弾いたその瞬間だけ、切り取られた世界のなかで時間が進んだ。
引き金を弾く、引き金を弾く、引き金を……
切り取り線が元に戻されると、どこに潜んでいたのか烏がばさっばさっと数羽…焔の海から仄暗い天空へと放たれる。
かつて童であったものたちは動きを止め、最後の最後までなにかを囁いた。
《 》
-
『…── そうか』
男は童と過ごした時のなかで初めて笑った。
だが、その笑みを見せる相手はもういない。 …居ればこう洩らしただろう。
《山人、愉しそう》愉しそう
引き金は軽かった。 道連れた命も軽かった。 足手纏いがいなくなって我が身も軽くなった。
童の遺言はたしかにこの耳に届く。
男の心も、幾分軽くなったものだ。
『さあ、これで思う存分
あの化け物と闘える』
そして、また笑う。
-
-
(-A`)「……んぁ?」
うたた寝していたポイズンが目を覚ますと。
( <●><●>)('A` ; )「うおっ」
──視界一杯。
瞳孔を大きく開き、不死を弄ぶ不気味な呪術師と目が合った。
ゆっくりその身を離され気付いたことだが、その手のなかに白く、黄ばんだ棒切れを握っている。
('A`)「なんだそら?」
( <●><●>) 「…」
軽い調子で声をかけはしたが返事は沈黙…。
ワカッテマスの腕が血で濡れていることを確認し、自身の身体を見やれば胸部に穴が開いていた。
今日の傷は腕を無理矢理捩じ込んだような跡…。
('A`)「…あぁ〜」
幾日も続いたこの確認作業に、ポイズンは飽き始めている。
どうやら睡眠中も臓器を抜き取る拷問もどきは続けられていたが、もはや夢からの覚醒に至らなくなったらしい。
( <●><●>) 「…貴方、痛覚が無くなってしまったのですか?」
('A`)「さあてねえ? ひひひ」
( <▼><●>) 「…」
('A`)「…ズイブンと表情豊かになったじゃねえか」
-
この余裕はどこから来るのか…互いの立場が交代しつつある。
負傷しその都度、毒素を撒き散らしていたはずのポイズンは、今やその素振りすら見せない。
拡げた傷口からじくじくと血が滴る。
なのに痛みも訴えず眠りこけた。
不死の肩書きに偽りなき、生きたオブジェ。
('A`)「それ俺の肋骨だろ? 意外となげえんだなぁ」
( <●><●>) 「……これで私が何をしてるのか…知りたくはありませんか?」
('A`)「いやー全然」
他人に興味はない。
( <●><●>) 「……そうですか」
( <●><●>) 「残念です。
そろそろ私もここから御暇させて頂こうかと思っていたので、土産話にでも…と考えたのですがね」
-
呪術師の第一目的はすでに達成されている。
ワカッテマスがここに残っていたのは当初その精度を上げるためであり、
ポイズンが現れたことで発生した第二の目的は所詮 ″ついで″ だ。
('A`)「俺がすんなり逃がすと思うか?」
( <●><●>) 「思う思わないでなく、
逃 げ ま す 。
私は貴方と争うために生を受けたわけではない」
('A`)「ふひひ。 まっ、そりゃそ〜〜だ」
ポイズンはふらりと立ち上がり、凝り固まった間接各所を意識して可動させる。
…枷などとうに外していた。
錆び切って崩壊した残骸は、ぼろりと砂になり、床に散った。
ポイズンの毒が、鉄も、魔導リングすらも腐蝕させる程に効果を増している。
その事実にワカッテマスが気付いていたのかはわからない。
しかしその反応は却々に早い。
呪術師はすでに跳び退いていた。
('A`)「逃がさねえよ…ひ、ひひ」
あっという間に出入り口の扉を締めた呪術師の後を、ポイズンはゆったりと追い詰める。
慌てることはない。
いずれは追い付く。
-
----------
── アサピーの広間。
寝酒を誘う老師が、老公人の横で片膝を立てながら升酒を揺らす。
喉をならすのは彼一人。
(-@"∀@) 「…気分は優れてはいるんだがね…。
飲み交わすにはまだ辛いよ」
( `"ハ´) 「気にするな」
日課…とまではいかずとも。
シナーがこうしてアサピーの元でじっと酒を飲むのは、幾度となく繰り返されてきた習慣だった。
バルケン公の没日から数十年……
人生の大半を二人は常に、共に歩んだ。
アサピーは常に村々を想い領地を治め、
シナーは彼を手助けて報酬を得る。
世間の評判は他の領地に比べ、すこぶる良いものだったといえる。
人々は強く騙し合うこともなく、
大きな反乱も起こさず、
比較的穏やかな日々を享受しながら…
こうしている今も順調に、歴史は世代を引き継ごうとしている。
そんな文字通りの平和を作り上げたのは他ならぬ、アサピーの無利無欲、理想思想。
そしてシナーの頑固な自制心と行動力が合わさったことによる、たゆまぬ努力の結果といえよう。
-
( `"ハ´) 「…」
(-@"∀@) 「お互い歳はとったけど…君は恐ろしく若々しいな」
(-@"∀@) 「……羨ましいよ」
うつむき加減なシナーの顔を、アサピーは遠くを見るかのような表情で迎え入れる。
だからこの行為には気付いていない。
眼球を動かさず、しかし鍛えられたシナーの視野は、抜け目なく部屋の四隅を観察していた。
( `"ハ´) 「身体なぞ、努力と鍛練で手に入れるものアルよ」
シナーが捉えるのは、天井端に4巣構える鳥の棲みか。
自然界には有り得ない…すべてが同じ形をしている。
(-@"∀@) 「相変わらずだねえ」
(-@"ц@)."∴ 「けほっ! けほっ!」
_,
(-@"∀@) 「……私は、いまになって父の気持ちがわかる気がする」
アサピーの日常において、奉公人が傍らに立つことを昔から許さなかった。
出来ることは自分でやる、というのが彼の方策であり、人手が必要なとき以外、奉公人を呼びつけることはなかった。
どんな雑用も自分で済ませたかった。
老バルケンとは違うのだ、と。
-
( `"ハ´) 「お前は今まで必死にこの領地を守ってきた。
バルケンのジジイの代わりとなり、自分の価値よりも、限りなく大勢の価値を守ってきた」
シナーは升に口づけて、一呼吸置く。
( `"ハ´) 「俺には到底無理なことアル」
(-@"∀@) 「…単なる結果じゃあないか」
その大勢とやらに入れなかった者を、あえて見て見ぬふりをしてきたこともある。
外枠の上に立ち、治める立場となって、アサピーがはじめて分かったこと…。
それは善悪が個に依存する以上、
誰の目にも明かな平和や公平などというものは、存在しなかったということだ。
(-@"∀@) 「過程があって、今がある」
( `ハ´) 「もちろんそうだ」
飢えが発生しないよう
食料を貯蔵する倉を造らせた。
……盗みを働くものがいた。
賊に襲われても身を守れるよう
警隊を組み、すべての村に派遣した。
……その警隊が略奪を起こした。
意見、希望が聞けるよう
村々で定例の進言会を開催させた。
……やがて誰もが真意を隠しだす。
(-@"∀@) 「私だけが多くを望んでも。
私だけがいくら手を差しのべても。
……それを受けとる人が居なければならなかったんだ…」
-
若かりし頃であれば貫けた信念。
だが満ち満ちた身体に、誰しもいずれ来たる不自由という名の枷が嵌められるたび、心は弱くなっていく。
( `"ハ´) 「俺ならそんなくだらん輩なんぞ放っておくがね」
(-@"∀@) 「父を…バルケンを討った時点で決めていたんだよ。
私は彼のようにはなるまいと」
(-@"∀@) 「なのに……」
白無垢の心と触れ合っているつもりが、なにかを成し遂げんとする己の色が交ざっていく感触…。
それは意図せぬ染色を引き起こす。
従うのは楽なものだ。
誰かの創り歩いた道をついていけば良い。
…アサピーが、バルケンの後釜を継いだ頃のように。
(-@"∀@) 「いまの僕は…、どうなった」
……名君の最後が得てして悲哀に見舞われるのは、自らの道を創り出す過程において、常に孤独という闇に立たされるからだろうか。
( `"ハ´) 「背負いすぎアル、お前は」
たとえサラリーが目的だったとしても、
隣には長年の相棒…片腕として寄り添う者が在っただけでも、バルケンとは違う。
── だが、それだけだ。
-
やはり己も独裁者の一人だった。
( -@"∀ )
人の行動には必ず伴ってしまうその概念が、
年月の果てに淀みない魂すらも蝕む。
善悪とは形のない毒のようなものだ。
彼の価値は、理性という殻を溶かし、確実に変質してしまった。
人が生きる以上、
時の流れから避けることはできない。
( `ハ´) 「アサピーよ」
(-@″∀@) 「……わかっているさ」
_,
(-@″∀@) 「だがそれでも」
( `ハ´) 「もうワカッテマスに協力するのはやめろ」
使いもしない奉公人を集い、ワカッテマスの元に出した。
その後、人々がどうなったのかは分からない。
……アサピーは、分からないままなのだ。
「私は生きるよ、シナー」
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<ヽ`∀´> 「ワカッテマス殿がどこにいるか知らないニダか?」
「某が見たのは三日ほど前ですが…」
「お出掛けになって以降は、まだ戻られていないかと」
残り僅かなサクラ咲く玄関口でのやり取り。
見張りの剣士から帰ってきた答えは肩透かしたものだった。
客人として迎えられたワカッテマス。
住み着いてからずっと、屋形から離れることなく過ごしていた。
とはいえ、シナーの張った無限回廊によって、屋形内ですれ違うことは滅多にない。
だがアサピーに聞いても、奉公人に聞き回っても、ようとして所在が知れない…。
こうして見張りから聞いたのが最後となった。
<ヽ`∀´> 「…分かったニダ…ありがとう」
ざわめく心中。
── これほど早いとは予想外だった。
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