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( ^ω^)文猫冒険季のようです

41名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:00:33 ID:I8WsSvkw0

(*゚∀゚)「……で、何だここは? 説明しろ」

<_プー゚)フ「へぇ、ここはえーと、遺跡? みたいな?」

(*゚∀゚)(みたいな?)

川 ゚ -゚)「ほう……それは興味深いな」

ミ,,゚Д゚彡「何があるんだ?」

<_プー゚)フ「それは流石にほら、行って、見てのお楽しみっしょ」



 と、更にこんなやり取りを経て、僕らは遺跡内部へと進んでいった。
先頭は相変わらず目を輝かせるフサと、恐れも知らずに突き進むギン。


 真ん中を、いつも通り不安そうに身を震わせるショボと、
これまた何故か落ち着かない様子で、周囲を見回すつーちゃん。


最後に僕とクーが並んでその後を追う形となった。

42名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:02:02 ID:I8WsSvkw0

 洞穴は想像していたよりもずっと深く、奥へ奥へ、
そして徐々にではあるが、下へ、下へ、地中へと向かっている。


 灯りは変わらず点々と続いているが、進んでいくうちに変化があった、
壁面にいくつもの穴ぼこがあって、灯りが消えている箇所が現れ、
気のせいか、更にはそんなライトの間隔が遠くなっているような。

ミ;゚Д゚彡「まだ続いてるのかー……どうなってんだ?」

(;´・ω・`)「……ね、ねえ、やっぱり、戻ろうよ」

(;*゚∀゚)「そ、そそ、そうだな! なんか危ねぇよな、ここ…!」


 同時に、不思議をとおりこして不気味なほどの静けさと、
背筋にくるような寒気、そこら中から感じる、奇妙な感覚。


イ从゚ ー゚ノi、「あっち……なにか、あるよ」

43名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:03:09 ID:I8WsSvkw0

ミ,,゚Д゚彡「ほう? なんだなんだ? 遺跡がついに――――」

言って、ギンが指差すのは幾度目かの曲がり角。
そこでふと、曲がった先にあるであろう光に影が落ちる。

ミ;゚Д゚彡「え、誰か居る…?」

イ从゚ ー゚ノi、フルフル

誰にでもなく問いかけた言葉に、ギンが首を横にふることで答えた。

 だがそこに落ちるのは、床から壁にむかって伸びる長い影だ、
柱の類にしては長さが足りない、影は途中で切れている。

どうみても、人の影だ。

それもこちらから見えない角の中央で、何をするでもなく、立ちすくんでいる。

一応呼びかけてはみるが、声がどこまでも反響するばかりで反応がない。


イ从゚ ー゚ノi、「いないよ……だれも」

やがて痺れを切らしたのか、ギンは一人その場所へと歩を進めた。

44名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:05:30 ID:I8WsSvkw0

ミ;゚Д゚彡「うわ、ちょちょちょ!!! 待った!」

(;*゚∀゚)「お、オイイイイイ!! てめーら早まるな!!」

(;´・ω・`)「わーーーっ!! 置いてかないで!!」

これまた綺麗な連鎖反応で、集団がうごいていく。
なんだか見ていて面白い構図だった。


イ从゚ ー゚ノi、「ほら…ね」

そして角までやってくると、その先を指してギンは笑った。
一方、追いついた第二陣はそろって青ざめた表情をヒクヒクさせる。


(* ∀ )「……………」

(´ ω `)「………………」

 そこには少女の言うとおり、人の姿は見当たらない、
そればかりか、先ほどまであったはずの影すら、そこには存在していなかった。

45名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:06:35 ID:I8WsSvkw0

ミ;゚Д゚彡「あっれ……おかしくね? なんで何も無いんだ?」

(;*゚∀゚)「ばっ、ばばばばば、ばかだナ!! 元から何も無かったロ!?」

(;´ ω `)ガチガチガチガチ

ミ,,゚∀゚彡「なんか怪しいなー、これは何かありそうだなー」

イ从゚ ー゚ノi、「うん、いこ」


そして更に奥へと、僕らは進んでいく。

道中はじょじょに口数も減り、同じテンポの足音が続いていたが、
よく耳をこらせば、たまに乱れていることがわかる。

具体的には、音が多い。

ふと見れば、僕らの正面、つーちゃんとショボの距離がどんどん近づいている。
というか、もうぴったりと寄りそいながら、歩き辛そうにしていた。

46名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:11:30 ID:I8WsSvkw0

あと、横の壁なんだけど、最初は何かへんな模様だと思ってたけど、
だんだん進むにつれ、これまら何かを象っているように見えてくる。

(´・ω;`)「こ、こここ、これっ………!?」

(;* ∀ )「ばきゃ言うんじゃネーヨ!!! んなわけネーだロ!!」


いやー……どうみても、人なんだよなぁ。


人の模様はそれぞれ、頭を抱えていたり、何かに手を伸ばしていたり。
あとさっきから妙な耳鳴りもしているし、そろそろあからさまになってきた。

下も妙なあなぼこが増えてきているし、ていうか、よく見るとこの先にはたくさん同じものが見える。
ついでに灯りの間隔はかなりの幅になっていて、もはや所々薄暗い。


壁を見れば、人の模様の合間にはいくつもの横穴が空いている。

47名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:12:22 ID:I8WsSvkw0

ミ,,゚Д゚彡「なんだこれ、蓋してあるぞ」

イ从゚ ー゚ノi、「うーん……こっちは、わかんない」

フサ達が気にしているのは、そんな地面に空いた穴ぼこの一つ。
蓋がされた中に、何かがあるようで、しゃがみこんで眺めている。


そしてそんな二人を、つーちゃんとショボが横切った。
もはや周りを気にする余裕もなくなってきているらしい。

ミ;゚Д゚彡「あれ? つーちゃん? 待ってよ、ここ何かあるんだって」

(;*゚∀゚)「アあ!? にゃ、ニャニがあるって!?」

イ从゚ ー゚ノi、「あっちにも、ある」

ミ,,゚Д゚彡「あ、ほんとだ、つーちゃんの足元にもなんかガラス張りの蓋が」

(;*゚∀゚)「…はっ、はっ、はあ!? 下…!?」

次いで、揃って下を向いたショボとつーちゃんが、全身の毛を逆立てて硬直した。
い、だか、ぴ、だかのか細い声が聞こえたような気がしたような。

48名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:13:23 ID:I8WsSvkw0

(li ∀ )「ぃ――――」

(li´ ω `)「―――――」

ミ;゚Д゚彡「おお? なんだ、何かあったの?」

ミ;゚Д゚彡「ねえ、つーちゃ―――」

言って、フサはつーの肩に手を置きつつ足元を見た。
ガラス張りの穴ぼこ、その奥に、ニンゲンと思わしき顔、目線が合った。



(*;∀;)「ギィヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
ミ, Д(#「んぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!???」



けど、フサがそれに驚くよりも先につーちゃんが、
絶叫しながら振り向きざま渾身の右ストレートをフサにぶち込んだ。


 同時にそんな叫びに呼応するように、壁の横穴から一斉にニンゲンの腕が生えた。
まるでサンゴの群れのような動きで、うねうねしている、うわ、気持ちわる。

49名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:15:00 ID:I8WsSvkw0

 そんな傍らでフサは、結構うしろの方に居た僕の付近まで吹き飛ばされ、
壁にちょっとしたクレーターを作りながらめり込み、ややあって膝から落ちる。

次いで、振動と衝撃によって崩れた岩の塊が、倒れこんだ後頭部を直撃した。


(;゚ω゚)「うわわわわ!!! ふ、フサーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 岩の下から真っ赤な液体が広がって、文字通り血の海を描いていく。
あわてて駆け寄ると、すぐさま岩をどける、ああっ、顔がめちゃくちゃだ。

ミ,#メメД゚メ)「死ぬわーーーーい!!」

 と思ったら、すぐさま勢いよく身を起こして抗議の声を上げる、
もはや頑丈とか治りが早いとか、そういう次元を超越していた。


 一方、加害者ことつーちゃんはその場を逃げ出し、なぜか奥へと駆けていく。
傍らではギンがオロオロと周囲を見回し、ショボはとうに意識を投げ出していた。


周囲はあいかわらず、腕がわきわきしていて、地面には顔が迫り出している。

50名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:17:16 ID:I8WsSvkw0

(;^ω^)「あーもうめちゃくちゃだお……」

と、ここでようやく押し黙って横を歩いていたクーが口を開いた。
けれど内容は、今のこのとんでもない状況ではなく、もっと前の事だった。

冷静すぐる。


川 ゚ -゚)「………エクスト、か?」

(;^ω^)「え? ………ああ、いや、でもそんなはずは……ない、だお?」

川 ゚ -゚)「……そう、だな、ああ、うん……」


交わしたのは、お互いに歯切れのわるい受け答え。

どうやら、ずっとあのファンキーを気にしていたようだ。

でもそうだ、無理もない。


ファンキーである以前に、彼の名には聞き覚えがある、どころか見知った名だ。

51名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:18:54 ID:I8WsSvkw0

そしてこの状況、精霊たちが暴れまわっているこの状況が相成って、
一人の、いや………一匹の、ボクらの旧友である巨体が思い出される。


しかし、だからこそ、そんなことはありえず、
訪ねれば早いのかも知れないが、それも出来ない相談だ。


なぜなら。







あなたはドラゴン、この大地に息づく精霊を統べる者ですか?






などと、万が一にでも、普通の人相手に口にはできないのだから。

52名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:22:17 ID:I8WsSvkw0

あれから更に長い道のりをへて、ついに僕らは出口へとたどり着いた、
そこは階段を登った先にあり、見れば小奇麗なそうしょくがなされた一室。


つい先ほどまで洞窟ホラーアドベンチャーだった分、なんだか一気に気が抜ける。

ふと見上げれば、天井から看板がぶらさがっており、出口はあちらと矢印、
色々あって疲弊しきった僕らはフラフラと扉を抜け、襲い掛かってきた日差しに目を細める。


横からは安堵の声がひびいてくるが、僕はまず思う、ファッキンホット、くそ暑い。



<_プー゚)フ「はーっははは、どうだい、怖かった?」

と、そんな僕らを笑顔でむかえるファンキーな姿があった。


( ^ω^)「それはもう……凄惨なまでに…」

ミ,メメメД゚メ)「ああ……死ぬかと思った……」

<_フ;゚ー゚)フ「え、ええー……? な、なんでそんな……」

53名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:24:35 ID:I8WsSvkw0

( ^ω^)「………」

ふと、クーと話したことを思い出す。

確かに、なんか似てるっていうか、そのものっていう気もするけど、
やはり今のこの、普通のヒトとして話す姿におかしな部分はない。

……思い過ごし、だろうか。


<_プー゚)フ「なんだい猫ちゃん、熱い視線だな、餌ならないぞ」

(;^ω^)「……あんた、ここがこういう場所だって知ってたお?」

<_プー゚)フ「まあね、いわゆるお化け屋敷? 面白かっただろ?」

(* ∀ )「コロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤル」

<_フ;゚ー゚)フ「おわっちょちょちょ、待って待って!」

<_フ;゚ー゚)フ「ただ脅かそうってんじゃないんだよ、話聞いてくれYO!」

ファンキーにうろたえながら、エクストは言葉をつづけた。
まず、僕らに声をかけたのは僕らが自分と同じだと思ったからだ、と。

54名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:28:48 ID:I8WsSvkw0

<_プー゚)フ「俺は冒険家でね、これまでも世界中のロマンを追いかけてきた」

だからわかるのだと。

身振り手振りがどこか、わざとらしいまでに大袈裟だが、
なんだかとても楽しそうに語る姿には、少しばかりの共感を得た。


<_プー゚)フ「んで、なんでこんなものがあるか、わかるか?」

ミ,,゚Д゚彡「あの洞窟か? 何でって……町おこし? てきな?」

<_プー゚)フ「いいや、それ以前、元になる話があったからさ」

(;*゚∀゚)「……あんな気色悪いもんがあったてか?」

<_プー゚)フ「そうじゃない、火の無いところに煙は立たないって言うだろ?
        だいたいオカルトめいた話にはさ、裏があるのさ、例えば――――」

<_プー゚)フ「表立って人を寄せ付けたくない、人目に触れさせたくない何かがある、とか」

 なるほど、言われてみればその通りかもしれない。
というよりも、身をもって、似たような事をした覚えがある。

55名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:29:36 ID:I8WsSvkw0

知人、ならぬ知竜にも似たような奴が居る。

 あれは実際には実に気さくで心優しいやつなのだが、
よく炎なんかを撒き散らしては、自分に近づくものを許さない。

焼き尽くす事しかできぬ彼が、何物をも傷つけることがないように。



と、ここまでは素晴らしい話なのだが、奴はやっぱりそれだと退屈なようで、
自分のこもる場所にはかならず、何かしらのお宝めいた伝説を妄言し、
それを狙ってやってきた者を追い返す、というのを行っている、底抜けのアホなのだ。


<_プー゚)フ「で、今回の場合……確かにある、幽霊屋敷と呼ばれてる場所なんだが」

一人と一匹が、その言葉にあからさまに嫌そうな顔をした。
けれど、また別の一人はもう、しっぽをぶん回す勢いで聞き入っている。

<_プー゚)フ「ここからちょいと離れた場所に、オサム公が住んでた家がある」

ミ,,゚Д゚彡「オサム公?」

<_プー゚)フ「ああ、大昔の大金持ちだった、って話なんだが……
        どうもその旦那、なにかとんでもないお宝を持っていたらしい」

56名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:31:13 ID:I8WsSvkw0

ミ,*゚Д゚彡「ほ、ほうほう、それでそれで……」

<_プー゚)フ「どうも金銀の類じゃなくてな、何かもっと、特別な物、なんだと」


それは。


<_プー゚)フ「富と名声、力、この世の全てを得た証とさえ呼ばれる宝の名を―――ワンピース!」

川 ゚ -゚)「おい」
(;´・ω・`)「怒られるよ!!」


<_プー゚)フ「あと聞く限りじゃあ、何でも夢を叶えてくれる不思議な八つの石、エイトスター」


<_プー゚)フ「オサム公はそれで海さえ操ったとかで、なんか化物扱いだったらしい、の、だ、が」

ミ;゚Д゚彡「海を操る……? あれ、でも…」

<_プー゚)フ「ああ、だが最近の見解はこうだ」


<_プー゚)フ「男はオム出身の魔法使い、そしてエイトスターの正体は精霊石の結晶、
       海を操ったってのも、精霊ウンディーネの力を以って行ったこと」

57名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:32:00 ID:I8WsSvkw0

ミ;゚Д゚彡「精霊石…! ああ、それは知ってるぞ、なんかすごいやつだ!」

果たしてすごいという事を知っているというのは、知っている内に入るのだろうか。
そんな反応を見たエクストは、しかしにやりと笑みを浮かべて言った。


<_プー゚)フ「ああ、やっぱ知ってるよな、あんたらからは、魔法の匂いがする」

特に、とエクストはクーを一瞥する。

元々人目を引く姿をしている彼女だが、その真意を理解できるものは少ない。
なぜならニンゲンとは、あの大陸でしかそう出会うことはないからだ、

ゆえに、行ってその目で見なければ、
この姿をもつものの多くが魔法使いであるなど、知る由もないのである。


<_プー゚)フ「というわけだ、どうだい、いっちょ…付き合ってみないか?」


こうして、ファンキー野朗が僕らに目をつけた理由を知り、
ついでにその目的さえも理解できた。


だからもう、僕等はそれを断る理由なんてもたなかった。

58名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:39:47 ID:I8WsSvkw0








さっそくながら、オサム公が住んでいたという屋敷へ向かって、その節のうちに出発。

海岸沿いに歩いていくと、遠い先に屋敷を見つけた、
まだあまりにも遠くて、よくわからない。

立派そうなのはかろうじて分かるのだが、ここにきて心配事が生まれた。


(;^ω^)(これ……明るいうちに着くのかお……?)


とまあ、そんな予感は的中し、屋敷の前へたどりつく頃には、
空はすっかりオレンジに染まり、割れて曇ったガラスには斜陽が映る。

枠だけになったいくつもの窓に、ひび割れた壁面と、それを伝う蔓。
夕焼けのおかげで、なんだかノスタルジックな雰囲気ではあるが、

それ以上に、既視感があった。

しかしそんな考えも、この類の建築物はやはり似るのだと、
技術的かつ現実的な思考がなかったことにした。

59名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:40:38 ID:I8WsSvkw0

<_プー゚)フ「どうだい、何かありそう?」

川 ゚ -゚)「………いや、特には」

<_プー゚)フ「精霊さんは居ないのか?」

川 ゚ -゚)「いや……というか、そもそも精霊はどこにでも存在するものだよ、
     この世界、身の回りにも、そして勿論この……お屋敷にも、だ」


そして各々、辺りと屋敷の中を調べることになった。

やはり、とくにショボは酷く怯えていたのだが、
荒れ果てた家の中は、たくさんの足跡と、かつての生活感があふれていて、
しばしの探索の間には、もう慣れてきた様子さえ見せた。

(;´・ω・`)「やっぱり何も無いよ、帰ろうよ」

まあ、しきりにそんな事ばかり言っていたけれど。

そうして軋む床を踏み、さらに探索していく。

大広間、階段、それぞれのお部屋。
しかし壊れた家具や、埃にまみれた布やらがあるばかりで、やはり何も無い。

60名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:41:35 ID:I8WsSvkw0

しばし目を閉じ、感覚を探ってみても、小さな、何の影響も持てない程度の力しか感じない。

まあ、そもそも精霊石なんていう、いわば大自然の力を封じ込めたような物、
あればとうに何かしらの影響をもって、発見できていそうなものである。


やはり、ここには何も無い。

そんな確信を得ながら、ふとクーを見つけた。

本を見ている。


と、見れば傍にはエクストの姿があった。

別に何も思うところはないのが、
何となく近寄っていくと、ちょうどクーが話を切り出した。


川 ゚ -゚)「……ひとつ聞きたい」

<_プー゚)フ「なんだい?」

61名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:42:26 ID:I8WsSvkw0

川 ゚ -゚)「ここにあるかもしれない物は精霊石、お前はちゃんと、本気でそう思っているのか?」

<_プー゚)フ「質問の意味がわからねえな……」


川 ゚ -゚)「……いや、いい、すまなかった、おかしな事を聞いた」

クーは、何か、とても難しそうな表情をしていた。

怒りとも、困惑とも取れる、どうにも気になって歩を早めると、
今度は廊下の奥から、みんなを呼ぶ声がした。フサだ。


向かうと、そこは倉庫のようだった。

乱雑に書物が置かれ、たくさん詰まれた箱はそれぞれ蓋があいている、
棚の奥を見れば、フサとつーちゃんが並んで僕らを待っていた。


ミ,,゚Д゚彡「見てこれ、じゃーん、かくしとびらー」

呆れ顔で肩をすくめるつーちゃんの横で、フサは楽しそうに足元を指す、
そこには言葉どおり、金属製のこれまた重そうな扉がある。

62名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 02:42:45 ID:CsQuZGFA0
文猫とかなっつwwwwwもう忘れちゃったよwwwww読み直してくるわ

63名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:13:14 ID:I8WsSvkw0

はて、よく見れば床の色がすこし違うような。


ややあって、おそるおそるショボがやってきて、
ついに地下扉の開放にとりかかった。

<_プー゚)フ「あらよっと」

ミ;゚Д゚彡「よっとと」

しかし、思いのほか苦戦することなく、扉はすんなりと開かれる。

角の金具なんかはさび付き、今もぽろぽろ欠片を落とすが、
わずかな金属音を立てるばかりで、開閉に問題はなさそうだ。

(*゚∀゚)「…………」

ミ;゚Д゚彡「……おお、な、なんか、ひんやりしてるな…」

<_プー゚)フ「暗いな……よし、ちょっと待ってな」

言うと、エクストは蝋燭を立てた台に慣れた手つきで半紙を巻いていく。
どこかで見た覚えがある形、たしか、提灯とかいう物だ。

64名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:14:13 ID:I8WsSvkw0

その間に僕は下を覗いてみる。
完全な暗闇が、広がっている。

輪郭まではなんとか見えるが、それ以上は難しそうだ。
僕としては行動に不便はないが、まあ明るいことは良いことだ。

あ、ちなみに自慢である、猫として。


先頭を買って出たのはエクストだった。

一人分がやっとの階段を順々に下っていくと、やがて開けた場所に出る。
とはいえ、横にちょっとは並べる程度のものではあるが。

どうやら通路らしい。

舗装された道に、天井にはライトの残骸らしきものが点々と並んでいる。
フサは上の点かないのかとぼやいていたが、僕はこのままの方がいいと感じていた。


ここに降り立ったとき、まず、強烈なまでの違和感と、背筋の凍るような既視感を得た。


違和感の正体は、この空間の異質さ、言い様のない感覚、何も無い、何も無いのだ。
気付けば、クーも緊張した面持ちで正面を見据え、ここにきて初めてギンが怯えるように僕へ寄り添った。

65名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:15:07 ID:I8WsSvkw0


そして既視感は、言うまでも無く、あのお化け屋敷の洞窟にひどく似ていて。


「さあ、行こう、ついておいで」


半身だけ向けたエクストが言う、僕にはそれが、ひどく恐ろしいものに感じられた。


川;゚ -゚)(……ホライゾン)

(;^ω^)(………わかってるお)

何もない、そう、どういうわけか、ここにはもはや精霊すら存在して居ない。
いや、無ではないが、それでも弱々しく、消え入りそうな気配しか感じないのだ。

そして進んでいくうちに、行けば行くほど、あの洞窟と酷似していく、
たくさんの横穴、たくさんの穴ぼこ、ただ違うのは、模様がもっと乱雑な、
なにかをぶちまけた様なシルエットであること、そして、


みぞなのだと思っていた横穴が、その実、反対側の広間へと繋がっているということ。

66名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:15:58 ID:I8WsSvkw0

皆は気付いているのか居ないのか、何事もないように進んでいく。

どれだけの間を歩いただろう、エクストはその間、
しきりに後ろを気にかけていた、段差に注意や、どこが濡れていて滑るやら、
気付けば、聞こえてくるのはそんな声ばかりになっていた。



そして、ついに開けた場所に出た。洞窟の出口だ。

先には砂浜が広がっており、見れば空はすっかり黒く、夜に染まっていた。
そんな星空と潮騒のなか、エクストはこちらをむきなおし、肩を落とす。


<_プー゚)フ「やれやれ……どうも、ただの非常口だったみたいだねぇ」

と、つーちゃんは一歩前に出ると、何を思ったかエクストへ向けて包丁を向けた。
対する本人は、怒るなよーなんて軽口を叩くが、さらにつーちゃんが続ける、


(*゚∀゚)「……そろそろ話してもらおうか、俺たちをこんなとこまで連れ出した理由をな」

67名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:16:58 ID:I8WsSvkw0

ミ;゚Д゚彡「へ?」

(;´・ω・`)「連れ出した?」

<_プー゚)フ「……ふむ」

(*゚∀゚)「お前、知ってたな? ここに何も無いこと、最初から」

<_プー゚)フ「どうしてそう思う? …ってのは野暮か、いつから思ってた?」


(*゚∀゚)「いつから、ってんなら、地下への入り口を見つけたとき……
    ありゃどう見たって、長いこと放置されてきた扉じゃねーよ」

(*゚∀゚)「んで、あとはまあ、洞穴に入ってからのお前、迷いが無さすぎだぜ、
    いくら一本道っていってもな、冒険家だってのならなおの事、警戒心がなさすぎた」


まるで、よく知った道であるように。

 そればかりか、視線や身振りでうしろを歩く者達の視線さえも誘導していた。
見せたいものと気づいてほしいものを、見せ付けるかのように。


<_プー゚)フ「やれやれ、君のような勘のよいつー族は嫌いだよ」

(*゚∀゚)「何を企んでんだ、内容によっては……」

68名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:18:45 ID:I8WsSvkw0

つーちゃんが殺気を込めて包丁を向け、月明かりがぼんやりと刃の輪郭をあらわにする。
だが、それとは対照的にエクストは両手をあげて、にやりと不敵に笑みを浮かべた。


緊張が走る、その場の誰もが動きをとめ、喉さえならす。
ひびくのは遠くまでつづく波の音ばかり。


しばしの間があって、月を背にしたエクストの影からついに言葉が放たれ、





<_プ∀゚)フ「あーーーっはっはっは、降参だよ降参、それじゃ、ネタばらしと行こうじゃないか!」


一気に毒気をぬかれ、僕らはいっせいに肩を落とした。

若干一名はなにがなんだか分からない様子で、一呼吸あって仕草だけ真似ている。

イ从゚ -゚ノi、「??」

ミ;゚Д゚彡「な、なんだって?」

<_プー゚)フ「ご明察のとおり、俺はここをよく知っているし、そもそもここはな、
       色んな奴がすでに調査を終えていて、今じゃ単純に忘れられただけの廃屋なんだよ」

69名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:19:43 ID:I8WsSvkw0

<_プー゚)フ「さて、それを踏まえたうえで聞こう」


エクストはもう一度笑い。


<_プ∀゚)フ「面白かっただろ?」


 してやったりと言わんばかりの笑顔のまま、僕らを一瞥した。

そう、つまりはそういう事なのだろう、最初から最後まで彼は、
はじめて会ったときに問いかけたあの言葉を。

理由なき旅を続ける僕らがめざす目的地。


 『なにか、おもしろい場所とかない?』


そんな他愛の無い話を、体現していたのだろう。

70名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:20:34 ID:I8WsSvkw0


川 ゚ー゚)「まあ、興味深い体験ではあったよ」

(*-∀-)「…そういう事かい」

イ从゚ -゚ノi、「どういう…こ…と?」

( ^ω^)「まあ……遊んでくれた、ってとこだお」

(;´・ω・`)「え?遊び? え? どういうことなの?」

( ^ω^)「お前にゃ言っとらんお」


 と、ここまで意外にも何の反応もしめさなかったフサが、
ひとしきりうーんと唸ったあと、ふと顔をあげた。

ミ;゚Д゚彡「じゃあ、全部つくり話だったのか? これだけの仕掛けがあるのに?」

<_プー゚)フ「いいや、話した事はぜんぶ本当の……いや、本当だった、かな」

ミ;゚Д゚彡「……今は違う、と?」

<_プー゚)フ「そう……その全てはね、人の好奇心というものが壊してしまったのさ」

71名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:21:43 ID:I8WsSvkw0

 本来の冒険者というものは元来、個人やグループがふらりと訪れ、
見て、触れて、共有することで楽しむものだ。

 無論なにかの謎があれば、解明することも楽しみの一つではある、
だが、それはどんな手を尽くしても行う、という事では無い。

何故なら彼らは知っているのだ、わからないものがあるからこそ、この世界は面白いのだと。


<_プー゚)フ「でもここは、まあ、金が絡んだせいもあるんだろうが、個人レベルじゃない調査が入った」


 たくさんの人が数節にかけて押し寄せ、徹底的なまでの探査活動が行われた。
そうして得られた結論は、この場には何も残されていない、だった。


<_プー゚)フ「決して悪いことじゃあない、近隣の不安はそれでまた一つ解消なんだからな」

<_プー゚)フ「でも、俺はそれを聞いて思ったよ……ああ、ここの魔法はもう、解けちまったんだなぁって」

(;^ω^)「魔法…?」

<_プー゚)フ「ああ、魔法さ、俺たちみたいな奴が求める、ロマンという名の魔法、
       効果はそこにあるかもしれない、っていう思い込み、あるいは願いでもいい」


<_プー゚)フ「それが解ければ、もうここに残る物は本当になにもない………忘れられていくだけ、俺はさ、それが悲しいって思った」

72名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:23:11 ID:I8WsSvkw0

ミ,,゚Д゚彡「それで、俺たちをだま―――」

言いかけて、フサもまた口角をあげて。

ミ,,゚∀゚彡「魔法をかけて、夢を見せようとした、か」

<_プー゚)フ「ご明察、なんせ羊ってのは夢を見せる生き物なんでね
       まあ、本当は最後にドロンしたかったんだけどな、いや失敗失敗」

<_プー゚)フ「でもしょうがない、だからもう一回聞くぜ、お前ら―――面白かったかい?」

ミ,,゚Д゚彡b「オフコース!」

( ^ω^)「僕も楽しかったお」

(*゚∀゚)「そうだな…ま、暇つぶしにはちょうどいいかね」

イ从゚ -゚ノi、「わたし……よく…わからない、けど」

イ从゚ヮノi「いろんなとこ、みる……たのしい」

 それぞれの返事に、エクストは満足げにうなづいた。
見上げれば夜はすっかり深まり、星の粒がくらい世界の隙間を埋める。
いつもは粘着質で好きじゃない潮風も、今はとても心地よく思えた。

73名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:24:58 ID:I8WsSvkw0

(;´・ω・`)「ぼ、僕は……怖かったよ……」

( ^ω^)「……」

(;´・ω・`)「ね、ねえ? 終わったなら、もう、帰ろう?」

と、そんな余韻も毎度のことながら糞猫が台無しにしてくれた。
このまま和気藹々と二次会てきな流れに行くと思ったのに。

(;^ω^)「といっても……もう遅いし」

(;´・ω・`)「こ、こここ、ここに泊まるとか言わないよね!? やだよ!!?」

(;^ω^)「何をそんなにびびってんだお? ここには何も無いって今」

(´;ω;`)「で、でも、でも!! みんな、何も感じないの!? なんか変だよここ!!」

よくよく見れば、ショボは毛が逆立ち、ひげもピンピンに跳ねていた。
どうやら本格的におびえきっている様だ、ここまでくると少し可哀想になってくる。

と、ここでようやく気づいた事がある。


(;^ω^)「お?」

74名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:25:48 ID:I8WsSvkw0

川 ゚ -゚)(うーむ……)

ミ,,゚Д゚彡「しょうがないな……街まで戻るか」

(*゚∀゚)「明るくなる前に戻れるのかねぇ」

ミ,,゚Д゚彡「というわけで、エクストさん、悪いけど街まで………ありゃ?」


さっきからクーが一人、難しい表情で考え込んでいる。
どうしたのかと訪ねるが上の空。

(;*゚∀゚)「……おい? 居なくね?」

ミ;゚Д゚彡「エクスト? おーい!! エクストーーーー!!」

(;^ω^)「……なんだお、律儀にドロンしてったのかお」


 また今更な、そう思いながら先ほどまで彼が居た場所を見る。
はて、足跡とか、その類のものがまったく見当たらない、これまた丁寧なことだ。


川 ゚ -゚)「……ところでエクストが最初に言った、お宝のほうは何て言ったかな」

75名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:27:04 ID:I8WsSvkw0

ばまた突拍子もないことを言い出した。
これもまた、困ったことにいつもの事なので、なんともなしに返事をする。

(*゚∀゚)「最初……たしか、ワンピース、だったか?」

川 ゚ -゚)「うん、そしてそれに対してショボ君が言ったことは覚えているかい?」

ミ,,゚Д゚彡「ああ、怒られるとかなんとか」

ショボがまた小さく肩を震わせた。
クーはそんな姿にやさしく、諭すように語りかける。

( ^ω^)「???」

川 ゚ -゚)「どうして怒られると思ったんだい?」

(;´・ω・`)「だ、だって、昔から言い伝えられてる、禁句の一つだって、使っちゃいけないって、会長に」

(*゚∀゚)「おい…なんの話だ?」

川 ゚ -゚)「…………私も、本で得た知識になるが」

76名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:27:54 ID:I8WsSvkw0

川 ゚ -゚)「……スターピース、と呼ばれる鉱物があった、それはとある地方でのみ掘り出される代物で、
     磨けば琥珀色に輝き、中心にはかならず星型の物体が混ざる、宝石類の一つとしてかつて高値で取引されていた」


川 ゚ -゚)「特に素晴らしいのはその手触りで、触るだけでもやみつきになると言われ、
     中の星の数が多ければ多いほど高品質として、交易品としても注目されていたが」


が、とクーはここで言葉を濁した。

僕らはそれがお宝の正体か、と勘ぐっていたが、
口にするなり、彼女は表情を強張らせ、続ける。

川 ゚ -゚)「……だとすると、だ、困るんだよ」

ミ,,゚Д゚彡「困る? お宝なのに?」

川 ゚ -゚)「うん、お宝はお宝でもね、非常によくないものだ」

77名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:29:22 ID:I8WsSvkw0


とある節に、それは発見された。

川 ゚ -゚)「その石は、火にくべられた時、大きくひび割れ、少量の煙を発生させた」

川 ゚ -゚)「そしてそれを吸い込んだ者は……起きながらにして夢を、幻覚を見るようになる」

イ从゚ -゚ノi、「ゆめを…みる……の?」

川 ゚ -゚)「そう、そして、それと同時に、激しい中毒症状におそわれ、
     定期的にその煙を吸わねば普通の生活もままならず、最後には必ず……」


川 ゚ -゚)「そんな事があって、当然だが普通の嗜好品としての価値は失われ、
     後の研究によって、星型の物は太古の植物性生物の化石であり、
     結晶自体がその生物の死骸がうみだした毒素、その物であると判明した」


川 ゚ -゚)「こうして、スターピースは極危険な存在であるとされ、言葉と共に取り扱い禁止の物となった、
     が、また別の価値がうまれ、更なる高価な値打ちをもって、一部で取引されるようになる」


(;*゚∀゚)「お、おい、ちょっと、待て………もし、それが本当にそれなら、財宝ってのは」

川 ゚ -゚)「ワンピースでも相当な値がついたらしいからね、エイトピースともなれば………」

78名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:31:21 ID:I8WsSvkw0

僕らはみな一様に言葉を失っていた。

ゆいいつ理解できていないのか、ギンだけが不思議そうに相槌を返した。
という事は、だ、そもそも。そもそもエクストが言った、大規模な調査っていうのも、


『何も無かった』ことを強調したその探査っていうのは、何を目的としていた?


薄ら寒いものを感じながら、僕らが出てきた洞窟を見る。
目をこらせば、出口付近の岩場、下のほうにはフジツボの殻。

潮が満ちれば、この辺りまでは海になるのだろうか、
あるいは、かつてはここまで海だったのか、わからない。


けれど、人里を離れた場所で、人の目につかないこの入り江で、
果たして、何がここを通っていたのだろうか。

79名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:32:53 ID:I8WsSvkw0

ふと、風が洞窟へむかって吹き込んでいく。
ひょう、ひょ、と小刻みな高音は、なんだか不気味な笑い声にも聞こえてくる。

考えているうちに、寒気が走り、気づけば背の毛が逆立っていた。
横を見ればショボはもう泡吹きそうになっている。気が紛れた。


( ^ω^)(……いつの世も、真に恐ろしきは人の業、かお)

ミ;゚Д゚彡(……エクスト、これも、魔法なのか?)

(;*゚∀゚)「さ、サー、もうオワリダろ! 帰るゼおまえラ!!」

川 ゚ -゚)「あ、あともう一つ」

(;*゚∀゚)「何だヨ!?」

川 ゚ -゚)「あのお化け屋敷と、ここの洞窟、なんだか似ていたけれど………」

途中から思っていたけれど、クー。

川 ー )「果たして、似ていただけなのかな、それとも……"再現"だったのかな?」

80名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:33:41 ID:I8WsSvkw0

(;* ∀ )「っっっ!??」

川 ∀ )「あのたくさんの横穴とか……なんだか、奥は広そうだったけど、ねえ? ナニガイタノカナ?」

(;* ∀ )「ひ、ぃ、g、ぃ」

イ从゚ -゚ノi、「あのなか? ええ…と……タクサン……ノ」

(*;∀;)「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
ミ;メメ Д 彡「ぎゃん!!」アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ

(´;ω;`)「ひぃぃぃぃぃぃぃぃゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

川 ゚∀゚)「はははははははははははははははは、げほっ、げほっ……難しいなこの笑い方……あはははははは!!!!」


……完全に、楽しんでるなぁ。

イ从゚ -゚ノi、「たくさんの………ねず…み、とか……」

( ^ω^)「うん……そうだおね」

こうして取り残された、僕とギン、あと何故かぶん殴られ砂浜に打ち上げれ、波に乗って揺れているフサ。
しばし走り去った影を眺めてから、やれやれとその姿を追いかけることにした。





ところで……。


さっき知らない笑い声が聞こえなかった?

81名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:38:01 ID:I8WsSvkw0
次でおわり、ではまた明日。

82名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 03:52:34 ID:JoOBXmmE0
連日連夜乙乙

83名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 11:59:25 ID:XQZ8.RnQ0
百物語の時期まだだよね?
こわかった・・・

84名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 15:03:53 ID:1uhpod2s0
ショボが頼もしくなる日は果たして来るのか
おつ

85名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 18:21:00 ID:xS7sYmzU0
面白くなってきたな

86名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 22:07:16 ID:I8WsSvkw0










早朝、僕はひとり宿を出た。



目的地はあの屋敷、できれば皆が起きる前に戻りたい、
僕は人目を避け、よくよく確認してから力を込める。


( ^ω^)「…変身!!」

色を持ち、物質に近しいまでの風が渦巻いて、その姿を大きく覆い、
次いで無数の羽根をばらまいて、大きな翼が展開される。

翼の内側には、これまた大きな青い竜が現れた、ええ、僕がですが何か?

87名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 22:08:08 ID:I8WsSvkw0

( ^ω^)『ぉ、るるる……』

この姿になってしまえば、もうヒトの言葉は話せない。
すぐさま背中の腕を大きく、強く羽ばたき、我が身を空へと放り投げる。

景色は本当に、一瞬で流れていく。

仮に地上から見られたとしても、誰もそれがあの猫だとは思わない。
仮に、それらがまったくの同じ名前であったとしても、知らなければ、わからない。


なあ、そうだろう?

誰かに問いかけながら、長い時間をかけ行って帰ってきたあの場所へと、
更なる加速を願い、こめるように、翼は空を殴りつける。

やがて、その海岸が見えた。

ばふん、と巨大な砂柱を巻き上げながら着地。
さて、とその姿を探せば、なんてことはない、目の前にあった。

広がる海と、その岩礁の一部に、明らかに色の違う箇所があるのだ。

88名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 22:09:25 ID:I8WsSvkw0

( ゚ω゚)『るお、グオオオオオオオオオン!!!!』

その場所へ向かって、僕が吼えるのとほぼ同時に、
巨大な岩の塊がうごめいて、白波を立てながら浮上していく。

やがて現れたのは、自らの半身をも覆い隠すほどの爪を二対もった、巨大な竜。

続けざまに対岸、陸地の僕へと向かって咆哮。
更にそれを青い竜が返すように雄叫ぶ。


轟々と、重なる雄叫びが大気を震わせた。


その様は怪獣大決戦。


この場に素人が居合わそうものならば、自らの死を覚悟することであろう。



というわけで、ここからは少し巻き戻してから僕らの言葉にて。



( ^ω^)ノシ「やっほーーーい!! エクスト! 僕が来ましたおーーーーん!!」

89名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 22:10:17 ID:I8WsSvkw0

<_プー゚)フ「んー? おー、やっと来たかー、おせーよー、危うく永き眠りにつくとこだ」

( ^ω^)「メンゴメンゴ」

( ^ω^)「で……なんであんな事したんだお?」

<_プー゚)フ「はて、なんの事やら……」

(;^ω^)「いや、とぼけられても困るお、てか、名前もそのまんまだし、隠す気あったのかお?」

<_プー゚)フ「そうかー? でもお前も最初わかんなかったろ?」

( ^ω^)「……まあ、確かに、はじめの方は、ただ同じなだけかとも思ったけれど…」

<_プー゚)フ「ちなみに、いつわかった?」

問われて、言葉、もとい鳴き声に詰まった。
なぜなら確信を得たのは、本当に最後の最後だったからだ。


それまでは割りと本気で、いわゆる他人の空似、偶然の一致とさえ思えてしまった。

90名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 22:11:41 ID:I8WsSvkw0

 何故なら、エクストは姿かたちはさておき、僕らと、人と、話をしていたのだ、
言葉を持たず、言葉を交わすことなどできない筈のボクらが、会話を交わした。

人ならざるものゆえに、言葉を持たないボクらが、だ。

 これは、文字通り死ぬ思いで身につけた身としたら、受け入れ難い話だ。
だからこそ、精々同じ名前、程度にしか気に留めることなく、考えることさえしなかった。

けれど、どうしても不自然な事があった。


( ^ω^)「……最後の、消えたとこ、だお」

<_プー゚)フ「あー、そこかー、やっぱりかー」

( ^ω^)「お、演出過剰すぎだお、僕らの耳鼻かいくぐり、足跡も作らず消え去るなんて、
       こんなもの、魔法、精霊使いの仕業いがいあり得るわけがないお」

<_プー゚)フ「うーん……いい感じによくない感じにできたと思ったんだけどなー、
       あれか、やっぱあの場では俺自身が海から出てきて、わ!とか叫んだほうがよかったか」

いや確かにそれはさぞかしホラーだけれども、それはもはやパニックホラーだ。
なんかその光景を見てみたいような気もするが、ひとまず置いておく。

91名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 22:12:40 ID:I8WsSvkw0

( ^ω^)「なんでお前そんなに暇なの」

<_プー゚)フ「近頃マジでする事無いんだよね、だからこう、色々と」

(;^ω^)「で、ちょっかいかけてきたのかお……にしても、どうやってあんな姿に…」

<_プー゚)フ「そりゃまあ……人形にさ、地脈ネットワークを介して俺の意識を乗っけてな?」

(;^ω^)「それで、人と話せるようになるって…?」

<_プー゚)フ「ああ、精霊介してならな」

(;^ω^)「え? うそ? そんなことできるの?」

<_プー゚)フ「え? 本当だけど? なんでできないんだよ?」


 何だか無性に泣きたくなった、このオメガ、枯れ果てたはずの涙が今一度なんたら。

 もっとも、これは特に永い季節を地上で、とくに人に触れる機会の多い地竜がゆえ、
そしてあの引き篭もり精霊が構築する、よくわからんネットワークによるものが大きい。

 だからボクにできないのは、しょうがない、しょうがないんだ。
恨み妬みがあふれそうになるのを堪え、なんとか気を取り直す。

92名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 22:13:30 ID:I8WsSvkw0

( ゚ω゚)(クソが!!!!!いっぺん死ね!!!!!!!!!)

<_プー゚)フ「ところで、さっきから隠れてチラ見してる子はお連れかい?」

言われて、ハッと見回すが、とくに人影は見当たらない。

ついでに言えば、ここに来るときから今の今まで、風たちにも違和感は無く、
首をかしげるボクを見かねてか、エクストは巨大な爪を振り上げ、
たぶん本人的にはごく軽くなんだろうけど、凄まじい勢いで振り下ろした。


結果は、爆発めいた音と、数度の縦揺れだ。

すると、少しだけ離れた場所で、かぼそい悲鳴があがる。
つづけて、よろけたまま尻餅をついたのは、狐耳の少女だった。


(;^ω^)「あれ、ギン? ついてきちゃったの?」

イ从゚ -゚ノi、「ん? あ…ちゃんと、ようすみた…よ」

 思わずそのまま話しかけてしまった、人の言葉にすると、ギャオース、みたいな。
しかしギンは物怖じもせず、誰彼構わず近づくな、と以前に言いつけた事を守ったと主張する。

心なしか、褒めろ、とでも言いたそうだ。

93名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 22:14:32 ID:I8WsSvkw0

<_プー゚)フ「ああ、谷の……ハルピュイアのお嬢ちゃんか」

イ从゚ ー゚ノi、「あなた、しってる……あーす、どらごん」

<_プー゚)フ「そうだよー、ところでなんでコスチュームプレイしてんの?」

( ^ω^)「プレイ言うなし」


そうして、今しばしの時をボクらは過ごした。

空を明るくしはじめた陽も、とうとうその姿を現して、
砂と、白波をまばゆいばかりに輝かせる。

 最初は興味津々なようすでボクらを眺めていたギンも、すぐに飽きたのか、
気付けばあたりをいったりきたり、たまに小さく羽ばたいては、
小鳥が飛び跳ねるように貝殻やら、海草やらを見つけては座り込んでいる。

そしてまた、くるりと反転。

陽に照らされて輝くのは、白金の奥、虹の翼。

キラキラと、輝きの中を少女は跳ねる、まるで踊っているようだ。

94名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 22:15:33 ID:I8WsSvkw0

ボクらはそれを微笑ましく見守るばかり。


それゆえ、気付かなかった。

崖の上、立ち並ぶ木々の合間から、海岸を覗き見る姿があったことに。



「……!?!? す……すげぇ!!」



こうしてこの地には。

ドラゴンたちが集う場所、とかいう新たな伝説が生まれる事になるのだが。


それはもう少し、先の話である。


さて、陽も上がってきたし、そろそろ戻らねばと別れをきりだし、
そういえば、と向けた背に首だけまわして問いかけた。


( ^ω^)「あ、もう一個忘れてたお」

95名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 22:16:25 ID:I8WsSvkw0

<_プー゚)フ「なんじゃらほい」

( ^ω^)「結局、ぜんぶお前が魔法……精霊を操って行ってたのかお?」

<_プー゚)フ「んー…どこまでを全部かは分からんが、そうだなぁ」

<_プー゚)フ「あっちの、最初の町の方は俺が仕込んでたよ」

具体的には、洞窟を掘って、あちこちの精霊を呼び集め、
あとは彼らの好き放題、やりたいように任せていた、とエクストは言った。

(;^ω^)「町の方、は? ……ん? ここは?」

<_プー゚)フ「ここ? ははー、バカだな、流石に目の前で使ったらバレちゃうだろ、
       だからあっちのはあらかじめ仕込んでおいたの!」

(;^ω^)「え?」

<_プー゚)フ「だから、こっち来てからは、何もしちゃいないよ」

(;^ω^)「………え?」

96名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 22:21:34 ID:I8WsSvkw0

<_プー゚)フ「んじゃ、行くぜ」

(;^ω^)「いやちょ―――」

( ^ω^)「……うい、風の向かったその果てで」

<_プー゚)フ「うむ、悠久に過ぎ行く地の果てで、また会おうぜオメガ」

言って、いや吠えてから、エクストは巨体を海中へと沈めていく。
いくつもの泡と白波が、これまたいくつもの渦巻きに吸い込まれ、消えていく。

振り向いた。

見れば、大きな洞窟の上、崖部分にはいくつもの穴が見える。
なにかの気配は、もうどこにもない。

結局なにもかもすっきり、とはいかなかった。

フサやクーたちには何て説明したものか、しばし思案するが、
まあいいか、とすぐに結論をつけた。



だって、空はあんなにも澄んでいる。

97名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 22:22:22 ID:I8WsSvkw0

これも一つのロマンであるならば、僕も奴にならってそれを守ることにしよう。


( ^ω^)「ギン、さあ帰ろう」

イ从゚ ー゚ノi、「うん」

問いかけた言葉は通じなくとも、ギンはそれを察したようで、
すぐさま二対の影が空のむこうへ羽ばたいていった。





だけど、僕自身にも魔法はしっかりとかかっているようで、それでも考えてしまう。





はて、いったいどこからどこまでが、誰かの仕業だったのだろう?









                                       続章 終

98名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 22:23:03 ID:I8WsSvkw0
終わったよ、乙

99名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 23:03:18 ID:oc0y4atY0
面白かった、乙

100名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 23:09:16 ID:JoOBXmmE0
乙でさぁ

101名も無きAAのようです:2014/07/26(土) 00:17:04 ID:CfCi44Z.0
乙、また文猫が読めるなんて思わなかったよ

102名も無きAAのようです:2014/07/26(土) 01:51:25 ID:S6FFVg6E0
終わりなんてさみしいこと言うなよ

103名も無きAAのようです:2014/07/26(土) 11:22:05 ID:dV35lpV20
結局どういうことなのかわからなかった


104名も無きAAのようです:2014/07/26(土) 22:14:20 ID:nhOQROhw0
おつ
異世界も書いてくれなきゃ…泣いちゃうぜ!!

105名も無きAAのようです:2014/08/14(木) 18:01:55 ID:T3zHZaPg0
とんでもなくひさしぶりだなぁ
やっぱりおもろいね乙

106名も無きAAのようです:2014/09/05(金) 23:32:05 ID:kAbOsx2UO
やっと前作読み終えた、今から読む

107 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:31:29 ID:5SUO60720
幾千の季節よりも遠い昔。


まずはじめに空を流れるモノがあった。
知恵を得た者は、いつしかそれらを総じて風と呼んだ。


風はやがて意思をもち、様々な姿かたちとなって世界をめぐる。
草原に波をつくっては生を営み、雲を流しては月夜の明るさを伝えた。

さらに幾度の夜があった、はるか昔の、忘却の彼方に微か残る記憶。

最初はただ、もっと先へ、もっと早く行きたいと、そう願っただけ。

だけど急かす心たちが翼を象り、欲する心たちが目を象り、求める心たちが腕を象り、

それらはいつしか集まって。












                    僕が生まれた。

108 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:32:19 ID:5SUO60720


                               ∧,,∧  
    lヽ lヽ     【文猫冒険季のようです 】  ('ミ゚Д゚,,彡
/l\( ^ω^)'l\                    ゞ,,  :ミ)
⌒'´ と   / ⌒                     ミ  ミ〜
 〜(_,),,,, ∪                        し`J



   


              続章  その2





            「 あと何度の音色 」

109 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:33:24 ID:5SUO60720




紅季をつげる赤い月がうっすらと、心なしか遠くなった青空のなかに見える午後のこと。

岩肌ばかりの山道から見えるのは、目下につづく山並みと、一面にひろがる森の森。


そんな森森しい森は、緑のなかに盛りだくさんの赤茶のまだら模様を浮かべ、
季節の移り変わりであることを森自身が主張する。

いわゆる紅葉。綺麗だという感想を抱くには、あまりにも見慣れてしまった景色のため、
出てくる感想はもはや、森であるということのみ、実に森であり、森であるように、森だった。


それに景色はよいが足場はわるい、落石だらけであまり生物の通らないこの道は川原にも似て、
うまく大き目の石をわたれば歩きやすいが、それができなきゃけつまづく。

現にここまで、同じ人物もとい猫が何度も足をとられていた。

そのたびに誰かしらが心配そうに声をかける、同じ猫として恥ずかしい限りである。

そんな僕らは待ち合わせ場所である、次の港をめざして山越えのまっさいちゅう。

110 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:34:24 ID:5SUO60720

……だったのだが。


そんな山脈の合間で、僕らは足を止めた。


何故なら、突如として現れた大きな影が、目の前に立ちはだかったからだ。
とつぜんの事にそれぞれ身構えると、その影は呼応するように翼を広げ咆哮。

大気が揺れる。

影はよく見れば陽炎を立ちのぼらせ、全身から赤熱の輝きを放っている。
踏みしめた大地は焦がされ煙をあげ、赤黒い存在感をさらに凶悪なものにしていく。

そして、巨体がまるで何かを伝えようとするが如く、再び吠えた。
(´;ω;`)「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!」
そしてうしろの方から負けないくらいの絶叫が聞こえた。


(;^ω^)「……いやジェクト、何言ってるかわからんって」

(;゚∀゚)o彡゜「グルルゥ…?」

そう、現れたのは炎の化身にして火を象る精霊たちの王、ヴォルケーノドラゴンのジョルジュ。
またの名を爆炎のジェクト、僕とおなじドラゴンにして顔なじみ、というか友達である。

111 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:35:59 ID:5SUO60720

イ从゚ -゚ノi、「ブーン、似てる…?」

ミ;゚Д゚彡「あー、確かに……改めてみると似てるかも」

(´;ω;`)「ひいっ、ひいいっ、ななな、何!?何でみんな平然としてるの!?!?」

イ从;゚ -゚ノi、「…? どうしたの?」

(´;ω;`)「ドラゴン! ドラゴンだよ!!!!??」

(;*゚∀゚)「落ち着け、いつも横に居るだろう」コワクナイ コワクナイ

イ从゚ -゚ノi、「コワイ……こわい………?」

川 ゚ -゚)「ん……とりあえず、おひさー、みたいな事言ってるな」

(つ^ω^)つ「ちょっと待ってお、変……身!」バッ バババッ

(*゚∀゚)「どうでもいいがポーズは取らないと駄目なのか?」

風はすぐに僕の全身を巻き、翼を広げればいくつもの羽根が舞う。
その先に、青い巨体がある、ええ、僕です。

112 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:37:43 ID:5SUO60720

こうして、二対の巨体が並び立った。

( ^ω^)『おひさ、どうしたんだお急に』ガオオオオ

( ゚∀゚)o彡゜『いやー見かけたから挨拶にさ』グルルルル


しかしよくよく見れば、先ほど狐耳の少女がいったように、その姿は対をなすようにも見える。
赤と青、色は違えど立ち上がったずんぐりトカゲのシルエットはよく似ている。

兄弟です、とか言っても、普通に信じられそう。

ともあれ、いつかの洞窟ぶりに出会った旧友に、それぞれ挨拶を交わした。

だが言葉が通じないため、会話のボールは主に消える魔球と化し、
すぐに諦めた僕以外はそこらで腰を下ろし、思い思いに休息を取ることにした。

113 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:38:40 ID:5SUO60720

その折、ふと赤竜は神妙な雰囲気で口、いや喉をならした。

( ゚∀゚)o彡゜『でも今回はずいぶん早くまた会えたなー、いつも中々会わないじゃん?』

( ^ω^)『そりゃお前がいっつも火口とか、地底とか、熱いか暗いとこ居るからだお』

( ゚∀゚)o彡゜『言ったらお前、むかーしから言ってるけどよ、お前が空の上に居すぎなんだよ』

( ゚∀゚)o彡゜『また怒るかもしれんが、あんな何も無いつまらんとこ、よく居られるぜ』

( ^ω^)『いや……まあ、あの頃は…』

それしか知らなかった、それだけが存在理由、そうすることが何よりも自然だったから。
生を受ける以前から、僕というものはそういうものだったから。

( ゚∀゚)o彡゜『ほう……なんだ、なんか、変わったな、お前』

( ^ω^)『わかっただけだお、色々な物事を知ることが、楽しい事だって』

( ゚∀゚)o彡゜『そうかそうか、我が友が幸福であるなら、そいつは喜ばしい事だよオメガ』

( ^ω^)『なんだ、気をつかわせてたのか、感謝するよジェクト』

( ゚∀゚)o彡゜『いいって』

114 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:39:51 ID:5SUO60720

そう、彼は遠い昔から、僕という存在の在り方についてよく問いた。
無心であった頃、それを煩わしく思って突っぱねてきたけれど、
ジョルジュはずっと前から知っていたのだろう、心のあり方という物を。

前記したとおり、彼とは友である。

というのも、この生命になるより前から、僕と彼は近しいものだったから。
炎は風をうみ、また風が炎を高めるように、その関係は当然の物で、
当たり前のように出会い、当たり前のように気を許した。

( ゚∀゚)o彡゜『……ところで、わからねーか?』

( ^ω^)『なにが?』

けれど、彼は僕よりもずっと先を歩いていた事が、今ならわかる。
こうして地上を這いずりまわって、『なあって』そこで出会うさま『見ろって』
ざまな『おいホライゾン』ものが『見ればわかるだろ!』あーーーもう。

(;^ω^)『だから何だってばお、てか今何言おうとしたか忘れちゃったじゃないかお!』

( ゚∀゚)o彡゜『俺の姿だよ! 更にパワーアップしたこの姿!』

115 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:41:25 ID:5SUO60720

そう、確かに以前会った時とは違う箇所がいくつかある。
背中や肩まわり、両足腕、至るところに石が張り付いていて、
それらが熱されているせいか、芯から赤熱が発光をともなって覗き見える。

(;^ω^)『……またマグマダイブしてきたのかお』

( ゚∀゚)o彡゜『ああそうだ! そしてどうだい、この鎧の……アーマージェクト様は、かっこいいだろう?」ギャギイ!

( ^ω^)『アッハイ』

( ゚∀゚)o彡゜『時代は爆破体制のある黒曜石と聞く、これによって俺の強さはさらなる磨きが…』

(;^ω^)『お前は何と戦ってるんだお……』

( ゚∀゚)o彡゜『何って、最近ぶっそうだしよ、人もいろいろ知恵つけてきてるし、ちゃんと備えないとな』

(;^ω^)『む、どういう意味だお?』

( ゚∀゚)o彡゜『ハンター、だっけか、俺らみたいなのを狩ってる連中が居るんだよ、知らねーのか?』

( ^ω^)『ああ……まあ、知ってるというか……』

116 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:42:19 ID:5SUO60720

顔見知りというか、一役買ってるというか。


そもそも今回向かっているのも、そのハンターであるツイールたちとの待ち合わせ場所だ。
というのも、今現在、あの人等の武器類のめんどうを見ているのがクーなので、
定期的にこうして待ち合わせては、めんてなんす、とやらを行っていた。


もちろん工房士の商売として、僕らの路銀のあての一つでもある。


ちなみに、これはツイールたちも最初は気付いていなかったのだが。

様々な獣以上の力をもった、人に害をなす存在に対抗するための武器であるそれらは、
これまた多様な精霊の力を宿しており、いわゆる魔科学の結晶ともいえる物だった。

とはいえ、今も禁忌とされるその技術、その多くは人の手によって造られたものではなく、
自然に宿り、特殊な力を得たものとして専用のルートを介して各地のハンターへ支給、および売買されている。

117 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:43:51 ID:5SUO60720

ヒートと言う娘が持っていた精霊石、あれもそういった獲物を探す過程で見つけたものらしく、
うまく力を制御できずにいた彼女にクーが手を貸した際、そういったものの説明を聞き、
以来、きちんとした報酬の上で、自分たちのほうもお願いしたい、という流れになった。

赤竜が言っている、知恵をつけたというのは、おそらくそういった武器のことなのだろう。

……なんとなく、言い出しづらい空気だった。

( ゚∀゚)o彡゜『知ってるというか?』

( ^ω^)『……いや、でもほら、確か連中は別に、なんでもかんでも殺してるんじゃなくて、
       あくまで人の生活をおびやかしたり、害をなすようなのを狩ってるだけで――――』

( ^ω^)『………』

( ^ω^)『……………そういえばお前、あの門番ごっこまだやってんのかお』

( ゚∀゚)o彡゜『ああ、したら通報されちまってなー、もう全力で夜逃げだよ参ったね』

(;^ω^)『自業自得……てか、よく今まで無事だったお』

( ゚∀゚)o彡゜『石くれ鉄くれならどうとでもなるんだがなぁ』

118 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:44:46 ID:5SUO60720

なんだか、このまま一緒に居るのはよくない気がしてきた。
思って、じゃあ先を急ぐからと別れをきりだした。


の、だが。


( ゚∀゚)o彡゜『どうせ暇だし、俺も途中までついてくわ』

(;^ω^)『くんな』

( ゚∀゚)o彡゜『かてーこと言うなって』

と聞く耳もたず、僕が猫にもどったあとも、うしろで唸りながらついてきて。
当初こそ、まだ居るんだけど的な空気だったが、それもすぐに順応をはじめ、



(*゚∀゚)「飯にすっか」

ミ,,゚Д゚彡「火おこさなきゃ」

( ゚∀゚)o彡゜『グルルル』

川 ゚ -゚)「任せろと言ってるぞ」

119 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:45:41 ID:5SUO60720


夜をまたぐ頃には、その存在に異を唱えるものはすでになく。


イ从゚ -゚ノi、「……くしゅっ」

(´・ω・`)「もう夜は冷えるね…」

ミ,,゚Д゚彡「焚き火もうちょっと強くしようか」

( ゚∀゚)o彡゜『GAROOOO』

川 ゚ -゚)「任せろと言っているぞ」


朝を迎えるころには、暖炉よりあたたかいジョルジュを中心に、
みなスヤスヤ寝息をたてているこの始末。


( ^ω^)(どうしよう………)

早くもこの時期にありがたい火の番として、
妙に家庭的なポジションに落ち着いてしまっている。

120 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:47:23 ID:5SUO60720

伝説に生きるドラゴンとしてそれでいいのかと問いたいものだが、
とりあえず、今はそれより今の目的とジョルジュの存在がよろしくない。

流石に町中までついてくる事はないだろうが、どっか行けとも言い辛い空気だ。

ふと目があった。

「いい朝だな」

とでも言いたげな、澄んだ瞳をしていた。




……言い辛い。

121 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:48:03 ID:5SUO60720






             ∧∧ 
            ミ*゚∀゚彡 <ソレカラ ドッタノ
             ミ,,,,,,,,,,ミ

           紅季 63節

122 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:49:03 ID:5SUO60720


あれから幾度か夜をこえた。

赤竜と皆の仲はよりいっそう深まっている。
あのショボが恐れるどころか、温かいと近づいていくほどだから相当だ。

当の本人もとい竜も、こんな暮らしも悪くねぇ、とか言い出す始末。

なんだかこのままドラマティックな展開になりそうだ。
公道や看板が見えてきたことが、それを予感させる。


ミ,,゚Д゚彡「そろそろ見えてくる頃だなー」

割と人の手がくわえられている、歩きやすい山道がてらフサが言う。
潮の匂いはすでに感じ始めている、ここにくるまでに遠目に海は見えていた。
この林道をこえる頃には、町の影も見えてくるころあいだった。

しかしジョルジュはまだついてきている。

123 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:49:54 ID:5SUO60720

ここまで人に出会わなかったのは奇跡に違いないが、さすがにそろそろ限界だ、
だからポーズ、との突っ込みを無視して僕は再びドラゴンの姿へ。

( ^ω^)『ジョルジュ、もう町が見える頃だお』

( ゚∀゚)o彡゜『そうだなー……でもちょっとだけ様子見くらいなら…』

(;^ω^)『やめれ』

( ゚∀゚)o彡゜『わかってるって、しかしいいよなぁ猫になれんのは、便利だよなぁ』

( ^ω^)『細切れになるお』

( ゚∀゚)o彡゜『そりゃ嫌だけどさー、ま、しゃーないな』

( ^ω^)『じゃあ……クー』

川 ゚ -゚)「む? ああ…皆、ジェクトがそろそろ別れるそうだぞ」

(*゚∀゚)「ああ、まあ、そうだな」

ミ,,゚Д゚彡「そっか…やっぱ行っちゃうのか…」

124 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:50:55 ID:5SUO60720


( ゚∀゚)o彡゜『んじゃ、この辺で待ってるとすっか』

(;^ω^)『え……い、いや、待たなくていいから、どっか行けお』

( ゚∀゚)o彡゜『心配すんなって、今回は何もしないで出てくんの待ってっからよ』


川 ゚ -゚)「案ずる事は無い、また出会えるときを待っている、と言っているな」

ミ,,゚Д゚彡「ジョルジュ……ああ、言葉はわからないけど、俺も同じ気持ちだから…!」

(´;ω;`)「い…いやだ、やだよ、お別れなんて…」

ミ;゚Д゚彡「ショボ?」

(´;ω;`)「僕だって、それくらいわかるんだ、生きる時間が違いすぎる存在との別れがどういうものか…!」

(´;ω;`)「もう会えないんだ! せっかく…せっかく仲良くなれたのに!!!」

ミ#゚Д゚彡「っっ………バッキャローー!!!」

(´;ω;`)「!?」

125 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:52:13 ID:5SUO60720



 (;^ω^)『だからそういう事じゃないお! その……長くなるし、ひ、人とも会うから』

 ( ゚∀゚)o彡゜『だから待ってるって、何節かかろうが昼寝でもしてりゃ一瞬だろ』



ミ#゚Д゚彡「仲間が、必ずまた会おうと言ってるんだ!! それを疑うのか!!」

川 ゚ -゚)「ああそうだ、彼もその時を待つと言っている」

(´;ω;`)「!!」


(;*゚∀゚)(なーんか変だな……)クイチガッテル ヨウナ

(*゚∀゚)「……ん?」

イ从゚ -゚ノi、「…別れ、かなしい……」

イ从゚ -゚ノi、「うれしく、ない事……」

(*゚∀゚)「…どうした?」

126 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:53:29 ID:5SUO60720

(;゚∀゚)o彡゜『なんだよー、なんでそんなに追い出したがるんだよー』

(;^ω^)『そうじゃなくて……ええっとぉ……あー』

( ^ω^)『わかったお、正直に話すお』

( ゚∀゚)o彡゜『ほう? なんだなんだ?』

( ^ω^)『…実は、僕らがこれから会う人って――――』


何だか傍らでドラマティックが始まっていた気がするが、ともかくしょうがないから全てを話す、
ところで、山間の側からいくつかの人影が現れ、片手をひらひらさせながら近づいてきた。

(*゚∀゚)「ツイールじゃねぇか、なんだ、お前も今到着か」

(*゚∀メ)「まあね、したらなんかでかいのが見えてね」

現れたのは、同郷のつー族が1人ツイール。
見れば大きな包丁を背負い、見知ったお供をひきつれている。

127 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:54:49 ID:5SUO60720

( ・∀・)「お疲れまです皆さん、元気そうで何より……」

(;・∀・)「てか、師匠!? やっぱり二体居ますよ!?」

(*゚∀メ)「そうだなー、でもほら、もう一匹猫が居たろ、ショボだっけ? あいつじゃね?」

(;・∀・)「流石にそれはないかと……」

ノハ;゚⊿゚)「……えーと、えーと……」

(*゚∀メ)「ほら、お前もちゃんとしな」

ノハ;゚⊿゚)「おう! ぁ…いや、はい…っ」

ノハ;゚⊿゚)「こ、こんにちわ! お、ひさしぶり……です!!」

川 ゚ -゚)「おやこんにちわ、あの子の調子はどうだい?」

ノハ;゚⊿゚)「ぇと、元気!! …です、おかげさま…? …です!」

ヒートは、自分の首輪につけられた赤い宝石に触れながら、
たどたどしい返事をした、ふと、石に小さな輝きが灯ったように見えた。

128 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:55:48 ID:5SUO60720

最後に会ったときに、次は礼儀を勉強させると言っていたから、その経過だろう、
まだまだ真っ当な会話には至らないようだが、あの頃と比べれば随分な進歩に見える。

そんな様子を微笑ましく眺めていると、ふと隣が固まっていることに気がついた。


(;゚∀゚)o彡゜『あ、あ、あ…………』


ツイールたちを見据えたまま、なんだか酷く動揺している。
まあ色々と武器もってるし、察したのだろう。


(;^ω^)『ジョルジュ? えーと、その、あの人らが、これから会う人で、そのー……』

( ;゚∀゚)o彡゜『アイエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!????』

(;゚∀゚)o彡゜『ハンター!!?? ハンターなんで!?!?』

(;^ω^)『落ち着けお! 大丈夫だから!!』

(;゚∀゚)o彡゜『逆鱗なんて迷信だって言ったじゃないですかあーーーーーー!!!!』

そんな動揺そのままに、ジョルジュはすぐさま翼をひろげ、
雄叫びをあげながら踵を返し、空へと羽ばたいた。

129 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:57:25 ID:5SUO60720

「グルルルオオオオオオオ!!!!!!」

(;´・ω・`)「あっ」

ミ,,゚Д゚彡ノシ「今のは分かる気がするよ……ああ、必ずまたどこかで!!」

(´;ω;`)「うう……さよなら、さよならぁーーーーー!!!!」

(*゚∀メ)「なぁんだ今の」

(*゚∀゚)「イイハナシカナー」

(;^ω^)『行っちゃった……』

それから挨拶もほどなくして、僕らは町へとやってきた。

港町とは言え、交易港とはほど遠く、それほど栄えたところではない。

ちょうど僕らの故郷、房津の港とどっこいどっこいな感じではあるものの、
代わりに規模としては中々のもので、およそ見える海岸部はすべて生活区域となっている。

とくに注視されるのは、海上にいくつも見えるブイや、木の板でつくられた橋など。

いわゆる漁場、および生簀などの養殖場と思われる。

130 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/09(日) 23:58:50 ID:5SUO60720

とはいえ、僕らがこれから目指すのはここから更に大陸を離れた地である、
なのでゆっくりと寝床を探す暇もなく、食料などの買出しをすると同時に、
次なる場所へとゆくための足を探し求め、船着場へと向かった。


(´・_ゝ・`)「ナツミ大陸か……直通の便はないから、どっかで乗り換えないといけないよ」

(*゚∀゚)「どう行くのがいいんだ?」

(´・_ゝ・`)「そうだなぁ、まあ普通に、カモガワ港までなら出てるから、
        そこからラグランジェ海域を越えて、ウォクス港を経由するのが一番かな」

(*゚∀メ)「じゃあまずはそこだな、いつ出せる?」

(´・_ゝ・`)「じきに仕分けも終わる頃だから、そろそろ搬入……まあ、すぐにでも」

(*゚∀゚)「わかった、どこに行けばいい?」

(´・_ゝ・`)「第三灯台前のところで、遠方行きの看板があるからそこへ」

(´・_ゝ・`)「赤い屋根のとこだから、すぐわかると思う」

(*゚∀メ)「あいよー、てことだ、用意はいいか?」

( ・∀・)「大丈夫です」

131 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/10(月) 00:00:06 ID:OwFB1Ddc0

ミ,,゚Д゚彡「やっと落ち着けそうだな」

(´・ω・`)「そうだね…歩き詰めだったし」

( ^ω^)「……?」


と、向かおうとしたところで、ふと気がついた事がある。


というかツイールたちと林道で出会ったころからそうなのだが、
何か変だ、むしろこういう時、一番目を離せない存在が妙におとなしい。

それは相変わらず狐耳を装着しているハーピー少女。

ふだんは誰彼かまわず着いていくし、油断するとどっかで迷子になってしまうのに、
何故かさっきから僕のうしろにくっついたまま、離れようとしない。


イ从゚ -゚ノi、「…………」

(;^ω^)「ギン…? どうかしたのかお?」

132 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/10(月) 00:00:53 ID:OwFB1Ddc0

イ从゚ ー゚ノi、「………どうして?」

(;^ω^)「いや、なんか……静かだな、と」

イ从゚ ー゚ノi、「ブーンが、言ったから」

(;^ω^)「僕が? 何を?」

イ从゚ ー゚ノi、「ここに来るまえ、はなれないように、って……」

言われてみればそうである、というか、もはやこれは定型文。
迷子になるなよ、という親心てきなあれで、町などを前にいつも言っていることだ。

ああつまり、言うことを聞いたのだと言っているのかこれは。


困惑した。

これは何て言えばいいのだろうか、偉いと褒めるべきなのか、いや褒めるのはいいんだけど、
しかしこれはこれで何と言うかまるで、命令してるというか、脅しているというか、
そんなニュアンスにも感じられてしまう、分からない、子供の気持ちがわからない。

133 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/10(月) 00:02:25 ID:OwFB1Ddc0

(;^ω^)「ぇーと、そう、偉いおギン、でも別にそんなぴったり張り付いてなくてもいいんだお?」

イ从゚ -゚ノi、「…うれしく、ない?」

どういう意味だお!?

口にはせずに内心叫んだ。
今のはいったいどういうことなのか、ますますもってわからない。

イ从゚ -゚ノi、「どうしたの?」

(;^ω^)「ど、どうもしないお……うん、大丈夫…大丈夫だお」

イ从゚ -゚ノi、「………」チガウ ノカナ

(;^ω^)「?」

と、ギンはうつむき何か囁くように言った。
けれど声はあまりに小さくて、聞き取ることができなかった。

134 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/10(月) 00:04:28 ID:OwFB1Ddc0

そして聞き返すよりも先に、遠くで僕らを呼ぶ声があった。

ミ,,゚Д゚彡「ブーン、なにやってんだー? はやく行こうぜ!」

( ^ω^)「あ、今行くおー!」


何はともあれ、立ち止まっていても仕方ない、まずは歩く道がある。
少女をうながし、僕は前を行く背中をおいかけることにした。

ふと見れば、ギンもちゃんとついて来ている。

いったいどうしたのだろうか、心配ではあるが、今はまた別の不安もあって、
船に乗り込んだ後も、それを追求することもなく、会話はべつの方向へ。

というのも今回、ツイールたちと合流した理由である。

ハンター稼業である彼…彼女ら? と旅を同じくする理由は一つ。

これから大きな狩りをおこなうための、その用意と、および応援である。

135 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/10(月) 00:05:19 ID:OwFB1Ddc0

先ほども話しにあった、目的地であるナツミ大陸。

なんとなく可愛らしい名とは裏腹に、元は七罪と呼ばれた曰く付きの場所で、
多くの災いがかつてこの地にあったとされる、恐ろしい大地だった。

そう、だった、と以前に山さんから教えられたことがる。


いわく、そう呼ばれていたのはもう遠い昔。


今はもう、ロマンを求めた冒険者たちが荒らしまわって…いや、開拓され、
特に何か恐ろしいハザード的なものはなく、人も普通に住んでいる。


現にそれを語った山さん自身も、何度か調査に出向いた事があるそうな。

だが、決して安全で平穏平和というわけではない。

136 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/10(月) 00:06:42 ID:OwFB1Ddc0

あまり人の手が入ってない場所が多いせいか、獣たちが多く、
そのほとんどが巨大化し、いわゆる太古のままの姿ってやつ。

そして今回。元々あぶない生物も多く生息しているらしいのだが、
特にやばい奴が現れたとか何とかで、調査もふくめて向かうという話を聞き、
ツイールたちも居るし、と逆にこの機会はチャンスであると、僕らも向かうことになった。


というわけで、今も僕らは船の上。

これからの打ち合わせや、ツイールたちの武器のメンテナンス等に忙しく、
今も甲板でぼんやりと景色を眺めているギンを気にはなりつつも、
目先のことを考えることで精一杯だった。

137 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/10(月) 00:10:20 ID:OwFB1Ddc0

                             








                               
             ∧∧ 
            ミ*゚∀゚彡 <ジャージブ ダマシー
             ミ,,,,,,,,,,ミ

           紅季 70節










                          .

138 ◆6Ugj38o7Xg:2014/11/10(月) 00:14:55 ID:OwFB1Ddc0
相変わらず短編なのにつづく状態、というわけで今日の分はここまで、またのちほど。

それと今回のは本編文猫冒険記で書かなかった諸々の伏線消化と、
書けなかった大事なぶぶんを書きたいがためのおはなしなので、たぶんこれ以上はネタなし。
だから文猫を書くのはこれで最後になると思うます、とかなんとか。

139名も無きAAのようです:2014/11/10(月) 00:38:11 ID:7JYWKcb60

何度も読み返した大好きな作品だけにまた書いてくれて嬉しい
前出た時はルガール、今回は爆破耐性の黒曜石に逆鱗とかこの龍ゲーム大好きだな

140名も無きAAのようです:2014/11/10(月) 01:16:40 ID:yO3oESb.0
ジョルジュが微笑ましいおつ


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