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1
:
名も無きAAのようです
:2014/06/18(水) 03:42:46 ID:5JotI9w60
遅いです。初心です。長い目でみててください
671
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:47:19 ID:tnyXgnDM0
国を離れたわけでないから、難民でもない。
与えられた土地を行き来していることが前提なので、国連の人為的差別の範囲にも入らない。
生まれながらのジプシー。
配給されるわずかな物品を待ち、しかしそれだけでは到底足りない。
ゆえに彼らは生きるため盗賊になる。ある側面で見ればテロリスト。
政府からは反抗勢力。国民たちからは愛すべき労働破綻者たち。
しかし彼らは、自分たちが何者であるかというこだわりがない。
ドクオにとって、それが最も奇妙であり、不気味で不可解なことだった。
迫害されている者たちは自己の潔白な主張をするものだ。
('A`)「倫理なく道徳もなく、しかし教育だけは浸透している。……バカなほうが管理しやすいだろうに……」
.
672
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:48:11 ID:tnyXgnDM0
('A`)「先進国ゆえの怠慢か……いや、きっとそうじゃない」
('A`)「そのほうが都合がいいんだろう」
無知は染まる。簡単に。
しかし初めから色がついてさえいれば、後から上澄みを塗られても最初の染めが残っている。
苦々しい気分だ。
行こうと思えばどこにでもいけるはずなのに。それはドクオの信条でもあった。人が縛る自己意識というものは、人が作り上げた鎖である。
繋がれた意識もないままに。
('A`)「Joy to the world, the Lord is come!��
Let earth receive her King♪
Let every heart prepare Him room,��
And heaven and nature sing,��
And heaven and nature sing,��♪
And heaven, and heaven, and nature sing.
」
('A`)「road is come♪……まさかもろびとこぞりてを知らない国があったとはね」
.
673
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:49:06 ID:tnyXgnDM0
世界で一番知られているはずの讃美歌、また書物。宗教は贅沢品だった。
信じてさえいれば救われる
たとえ地獄に落とされても。
けれどその事さえ
('A`)「……誰も知らない」
祈りの概念がのない世界
nobody knows
.
674
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:50:07 ID:tnyXgnDM0
トラックがいくつも渋滞し、扉を解放させて品物を運ぶ。
路駐すると、そのまま店構えとなった。
物品の少ない街では物売りが直接人々に売りにくる。その商品を補給するのがドクオたちだ。
だから顔役でもあり、どこに行くにも不便はない。
顔馴染みが警備と警戒を兼ねている。気軽にドクオはストリートに出た。
似たような人々が、列を作って買い物に励んでいる。
隙間を縫うようにしてそこを通る。
警備の一人に小柄な影をみつけ、その姿に思わず声をかけた。
.
675
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:51:13 ID:tnyXgnDM0
('A`)「おい」
��(´・ω・`)��「あ、」
少年はぺこりと頭を下げた。
血に濡れた包帯は代えられてなく茶色い。
左肘から先がなかった。
反対の手でショルダーホルスターを持ち直し、ドクオに向かないように気をつけた。
張りつめるような雰囲気はないが、誤解があってはならない。
('A`)「……それ化膿してないか?」
��(´・ω・`)��「ううん。そんなことないよ。もう血も止まったんだ」
('A`)「だからって……もしかして止血した時のままかよ。それ」
��(´・ω・`)��「?」
('A`)「おま、ちょっとまってろ」
.
676
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:52:43 ID:tnyXgnDM0
人混みをかきわけるように進み、列の最初に並ぶ。
売り子に詰まれた箱を開けさせ、中からミネラルウォーターを取り出させた。
受けとると、少年の怪訝そうな顔に困惑が混じる。
ふたをあけ、子供の腕に注ごうとすると彼は慌てた。
(´・ω・`)「!そんな、勿体ないよ、水がこぼれちゃう!」
('A`)「当たり前だろ。こぼれるもんなんだよ水ってのは」
(´・ω・`)「でも、あっ!」
掴みあげ、千切れかけた包帯をほどいてから患部に注いで固まった血の塊にかけてやる。
細い腕の先端は、切断面から盛り上がり、むき出しの皮膚が赤くテラテラと光る。
薬によって麻痺させているから、痛みを感じていないだけだ。
この分だと神経も取り除かれているだろう。
わめくこともないが、しかしそれでは義手を操ることもできない。
おざなりに処置された結果だ
むっつりした顔で、ドクオは一本まるまる注ぎきり、ボトルを降る。
��.
677
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:54:10 ID:tnyXgnDM0
(´・ω・`)「……怒ってる?」
('A`)「なにが」
(´・ω・`)「怒ってる顔してる……」
('A`)「おまえにじゃない」
(´・ω・`)「ごめんなさい」
('A`)「だからおまえにじゃないって」
(´・ω・`)「でも、お水……」
('A`)「医療セット使うより安い。それとも注射がいいか?」
(:´・ω・`)イヤイヤ
('A`)「じゃぁ黙ってろ」
.
678
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:55:26 ID:tnyXgnDM0
新品のガーゼをポケットから取りだし慣れた手つきで巻いていく。
血の巡りを止めない程度のきつさで巻くと、洗いたての感触が気持ちいいのか、少年はない腕を動かしながら礼を言った。
(´・ω・`)「あのね……ちょっとすっきりした。ありがとう」
('A`)「……ああ。おまえいつ来たんだ?」
��(´・ω・`)「朝からいるよ」
('A`)「じゃあちょっと来い。俺んとこにいまおまえの姉さんいるから」
(´・ω・`)「ほんと!行く!ちょっと待ってて」
��いうと、飛び跳ねるようにして駆け出す。すぐ近くに駐屯している部隊長に許可をもらうためだ。
ドクオの名をだせば却下されるということはまずない。
彼は嬉しいそうに戻ってきた。
��(´・ω・`)「いいって!」
.
679
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:56:41 ID:tnyXgnDM0
この場所で女たちの仕事はひとつに限られる。
銃を持つのは男の仕事。
それを慰めるのは女の仕事。
かといって冷遇されるわけではない。むしろその優遇されていた。
守られ、貢がれ、あやされる。
逆に娼婦にさえなれない女たちは負け組だ。不器量と未発達な身体。
しかしそんな片鱗があるものは、生まれてすぐに棄てられる。
(´・ω・`)「お姉ちゃん!」
|゚ノ ^∀^)
.
680
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:58:18 ID:tnyXgnDM0
ベッドに横たわった女。
ドクオの住みかに専属契約している娼婦だ。いまは薬でバッドドリップ中。
1日の大半を夢を見ながら過ごしている。だからとても機嫌がいい。
売り上げの少なさに弟に当たり散らすことも減った。
(´・ω・`)「なんだかちっちゃくなった?」
('A`)「飯食わねぇんだよ」
その分薬を欲しがる。
合成麻薬を血中に流し込んだからか、顔色は青白く、肌は荒れ美貌はゆっくりと衰えていく。
もう街中に立つこともできない。
それでも彼女は幸せだろう。
口元は笑んでいる。
薄く開いた目は弟を映さない。
なにか別の、なにかを見て、幸せそうに笑っている。
少年も笑った。
(´・ω・`)「お姉ちゃん、機嫌いいみたい。大人しいけどずっとこんなだったらいいな」
力の入らない、くったりとした姉の手を持ち上げ、少年は彼女の膝に頭を乗せた。
かれが甘えることができるのは、もうこの家族しか残っていない。
.
681
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 10:59:51 ID:tnyXgnDM0
��('A`)「……おまえさ、姉ちゃんいなくなったらどうすんだ?」
(´・ω・`)「……いなくなるの?」
('A`)「もしだ。いなくなったら、どうする」
(´・ω・`)「……どうしよう。一緒に行く」
('A`)「どこに」
(´・ω・`)「うーん。わかんない。でもおんなじとこ」
少年は一応の戦闘訓練は受けており、銃の扱いも知っている。
生きていくための知恵はある。
それでもやはり、彼にとって姉の存在は絶対立った。
薬を買うために、少年兵として売り渡されたとしても。
.
682
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:00:58 ID:tnyXgnDM0
('A`)「違うとこ行ってみるか?腕なかったらやりにくいだろう」
(´・ω・`)「うん。でも足じゃなかったからよかった。走れなくなるとこだったもん」
��(´・ω・`)「違うところって?」
('A`)「例えば外とか」
(´・ω・`)「外?」
('A`)「この国の外。外国だ」
��(´・ω・`)「外ってなにがあるの?」
('A`)「戦争があるけど、ここよりゃましだな。内乱のほうが救えねぇ。ただ死ぬのが減る」
('A`)「EU連合の境界線にまでいけば、少なくとも人権は保証される」
(´・ω・`)「じんけん……?」
('A`)「銃で撃たれる確率が少なくなるってことだ」
(´・ω・`)「ほんと?」
('A`)「ああ。」
(´・ω・`)「うーん」
.
683
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:01:58 ID:tnyXgnDM0
(´・ω・`)「お姉ちゃんは?」
('A`)「姉さんも一緒だ」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「うーん……でも、いいや」
('A`)「……なんでだ?」
(´・ω・`)「だって外って銃持っちゃいけないんでしょ?」
('A`)「規定はうるさいが、所持は認められてる。ただ審査は必要だな」
��(´・ω・`)「しんさにはお金がかかるよね?」
('A`)「出してやるぞ、そんくらい」
��(´・ω・`)「でも撃つのに理由が必要なんだよ」
('A`)「そうだな」
.
684
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:03:25 ID:tnyXgnDM0
(´・ω・`)「なんだか窮屈だし。やっぱりいいや」
('A`)「銃は離せないか」
��(´・ω・`)「うん。これないとなんにもできないもん」
('A`)「……そうか」
��(´・ω・`)「でもさ、外の人たちってどうしてるの?」
('A`)「なにがだ」
��(´・ω・`)��「銃をあんまり使えないのって不便じゃないのかな」
('A`)「じゃないんだろ」
��(´・ω・`)「どうやって殺すの?ナイフ?それってとっても面倒なのにね」
('A`)「…………」
('A`)「殺さないんだよ」
口にした言葉はとても白々く聞こえた。
.
685
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:05:25 ID:tnyXgnDM0
.
686
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:06:12 ID:tnyXgnDM0
(゚、゚トソン「アレクセイ」
女が体を寄せて密着した。甘えるような仕草だったが、恋人にやるよりも家族のそれに近い。
出会ってまだ三年に満たないが心のほうは互いに熟成していた。
(゚、゚トソン「いつになったら、あたしたちは家に住めるのかしら」
( ФωФ)「もうじきだ」
傭兵の生活に定住はない。
呼ばれると移動する。追いかけると、また敵は逃げる。
常に一ヶ所に留まることが難しい。
住む場所は時に貧相で、時に豪勢だが女の望むものにはかけ離れていた。
(゚、゚トソン「毎日、同じところで寝起きしたいわ」
(゚、゚トソン「ホテルなんかいいから」
( ФωФ)「仕事があらかた片付いてからだな」
.
687
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:07:07 ID:tnyXgnDM0
( ФωФ)「でなければ落ち着くこともできん。提携がうまくいけば、じきに土地を取り戻せる」
太くささくれた肌の指が、柔らかいものに触れるようにして女の顔を包んだ。
暖かみに女が目を細くする。
けれども不安げな表情は浮かない。
(゚、゚トソン「……協力ってあの男でしょ。信用できるの?外の人間じゃない」
(゚、゚トソン「うす気味わるい顔してる」
( ФωФ)「……たしかに信用は難しいが、信頼にはおける」
(゚、゚トソン「なあにそれ」
.
688
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:08:15 ID:tnyXgnDM0
( ФωФ)「奴の性根がどのようかなんてのは知らんがな、奴の能力だけは買っているんだ」
女の長い髪をかき分け耳に口を寄せるとロマネスコは囁いた。
( ФωФ)「あの男は棺桶乗りだ」
( ФωФ)「それも重度の」
(゚、゚トソン「……なんなのそれ」
( ФωФ)「知らなくてもいい。だがそれが、あの男と組むに決めたひとつでもあった」
( ФωФ)「空を行く奴らというのは、たいがいみんなまともじゃない」
(゚、゚トソン「……なんだかよくわからないけど、役に立つんならそれでもいいわ」
(゚、゚トソン「取った場所は、私たちで使ってもいいのよね?」
( ФωФ)「ああ。一瞬の隙間を狙って入り込み、そこからバリケードを立てていく」
( ФωФ)「そうすればおいそれと手は出せん。この数を相手に、狙撃で片付けられるとは思わんからな」
( ФωФ)「……そして最初の非人道的行為の非難を避けるためにも、和解案を持ち込んでくるだろう。」
( ФωФ)「うまく流れに乗せるつもりだが、つかみようがないのだけが気がかりだ」
(゚、゚トソン「そう、きっとうまくいくわ。これまでもそうだったんだもの」
( ФωФ)「ああ。」
.
689
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:11:34 ID:tnyXgnDM0
(゚、゚トソン「……そういえばアレクセイ」
(゚、゚トソン「近頃町中で変な工事が行われているの」
(゚、゚トソン「それも計画のうち?」
( ФωФ)「工事………?」
( ФωФ)「それは一体どのような」
(゚、゚トソン「壁よ」
(゚、゚トソン「生活している周辺を囲むようにして大きな壁があるの」
(゚、゚トソン「なんのためかは、わからないけ
ど」
.
690
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:16:04 ID:2h5EJ0zM0
.
691
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:17:16 ID:2h5EJ0zM0
バラバラと、鼓膜に響く轟音が聞こえる。
蜘蛛の子を散らすように、スラムの住民たちが姿を消した。
売り手たちは慌てて品物わ荷台に投げ込み避難しようと車内に戻る。
ドクオも空を仰いで警戒した。
偵察用のヘリでも、機関銃は備わっている。
撃ってきたらヘリに向かって走るつもりだった。
風圧の被弾する計算状、ヘリからの連射は遠くであるほど当たりやすい。
しかし真下は狙いがつけにくい。
人ほどの大きさならざ十分に見逃す。一つに固まって逃げる群衆と離れた遠い的。
生物的には孤立した獲物こそ狙われやすいが、この場合においては逆だった。
一度で、出来うる限り多くの獲物を。
それが人間の心理。
.
692
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:18:06 ID:2h5EJ0zM0
('A`)「もう巡回してやがる」
('A`)「あー、いい。それは置いてけ」
('A`)「同じのはもういくつか集めたからな」
指示に従い、売り子たちは緩和板に仕舞われた荷を持ってかけだす。
本当に大事なものだけを。身ひとつでというわけにはいかない。
命と同じだけの価値がある。
いまここで狙撃されても、抱えた荷物を落とすわけにはいかない。
ドクオは反転し、立ち止まった。
頭上のヘリに敵意は感じられない。
狙いを定められている、ということも感じられない。
.
693
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:19:00 ID:2h5EJ0zM0
('A`)(部品は集めた。あとは精製している燃料の質をあげるだけだ)
ヘリは攻撃の気配がない。
しかし警戒を解くことはなく、下位の10人たちは一様に息をひそめ、遮蔽物に隠れた。
ドクオだけが、撃たないと確証を持って顔を出し様子をうかがう。
やがて一つのヘリの後ろから、いくつもの運搬機がやってくるのが見えた。
それにあたりをつける。
最初の偵察はこれのためだろう。
('A`)「……なんだってんだ、ありゃ」
プロペラの音が空に響きわたる。
背後にはいくつものコンテナと、剥き出しの鉄板のようなものを運ぶ飛行機が連なっている。
手を出せば、偵察用から攻撃が来ることは明白だった。
('A`)「………」
.
694
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:19:49 ID:2h5EJ0zM0
ここに来て、反抗勢力に挑発するような運航。
しかしこれはそのためのものではない。金属のような物体は、どこまでも黒く日光を受けても反射さえしない。
物を作るには理由があり、製品を使うのには目的がある。
('A`)「……なにをしでかしやがる気だ」
低い声でうなる
ロマネスコの言った嫌な予感が胸に湧いた。
戦争において新しい情報というのはみなすべからく、不幸である。
.
695
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:20:32 ID:2h5EJ0zM0
.
696
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:21:25 ID:2h5EJ0zM0
(A^ν^)「……少ない」
(A^ν^)「やっぱりだ。強奪にあったコンテナのほとんどは回収できてる」
(A^ν^)「ぶちこんで、かき回したような惨状なのに、七割以上盗まれていない…」
(A^ν^)「どうしてだ。そして一体何のために、奴らはちょっかいかけてくるんだろう」
(A^ν^)「あんなにも死人をだしてるのに……」
.
697
:
名も無きAAのようです
:2015/11/22(日) 11:25:26 ID:2h5EJ0zM0
兄者は死傷者数をとるに足らないものと見ているが、それは彼が彼であり、製造元の立場だから言えることだ。
ピラミッドの上からの考えでしかない
しかし見上げるものたちからすれば、信頼のできない指導者など、首を代えればいいだけのこと。
数こそが力であり暴力。
誰も死にたくない。
統率はあれど、管理されているわけではない。生きることに貪欲でそのために幼くから銃を持たされている。
そんな彼らが、死人を出してまで襲撃を続けることが解せない。
(A^ν^)「あるはずだ、目的が。
ちゃんとしたメリットが」
(A^ν^)「それを見つけなきゃ終わらない」
(A^ν^)「一網打尽になんてできない」
(A^ν^)「子供まで使ったのに、虐殺という名目があるのに、世論に訴えかけることも最低限しかしかないんだ。話題が大きくなれば、やりにくいことでもあるんだろうか……?」
.
698
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 00:52:01 ID:AX413/eo0
この説明の少なさの心地よさですよ
699
:
名も無きAAのようです
:2015/11/23(月) 07:26:36 ID:6RBqH8P60
いつの間にこんなに進んでたのだ
700
:
名も無きAAのようです
:2015/12/24(木) 19:24:15 ID:G.aD6vsc0
面白すぎる
どんどん読ませてほしい
701
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:13:28 ID:om3Yvxs60
ミ,, Д 彡
川*゚ー゚)
「ああ、エヴァ、エヴァ、なんてこと!」
川*゚ー゚)
「どうして、こんなこと……」
川*゚ー゚)「だめだった?」
「どうして?エヴァ」
川*゚ー゚)「だって触るんだもん」
「検査?少しじっとしていればすぐに終わるのに」
川*゚ー゚)「痛かったんだもん」
.
702
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:14:10 ID:om3Yvxs60
「でも、エヴァ。だからってこれはダメだ。これじゃ、怒られる」
川*゚ー゚)「だって……」
「これじゃ、君が、ああエヴァなんてことを!」
川*゚ー゚)「痛いの嫌だったんだもん」
「触られるのが?」
川*゚ー゚)「うん。なんかね、足のほうに入れてくるから、すっごく痛いの」
川*゚ー゚)「嫌って言ったのにやめないの」
川*゚ー゚)「女だから、しょうがないならじっとしてなさいって」
.
703
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:15:05 ID:om3Yvxs60
川*゚ー゚)「ほんとはでぃがやることだったんだよって」
川*゚ー゚)「でもでぃは“お役目”があるからできないんだって」
川*゚ー゚)「女を作ったのは男だから、なんだって」
川*゚ー゚)「痛いのや」
川*゚ー゚)「だめなの?」
川*゚ー゚)「お又痛いの、とっても痛かったの」
「エヴァ……」
なんてこと。なんてこと。
それなら、
僕がやらなきゃいけなかった
.
704
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:15:48 ID:om3Yvxs60
.
705
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:16:30 ID:om3Yvxs60
从'ー'从「ねえ」
声をかけられた。
振り向くとめずらしい相手が居る。
とっさに体が強ばる。
なにか危害を加えられるのかと怪しんだが、彼女にその気はないようだった。
しかし慎重に様子を伺う。
(`∠´)「どうした?乱交の受付でもするか?」
軽い口調で挑発したが、ワタナベは微笑んだままだ。
.
706
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:17:12 ID:om3Yvxs60
うすく、愛想よく、品がいい。彼女の笑みには媚びがない。
だからそれなりに格を知っている顔役たちから好かれている。
見栄えのいい、上質な娼婦というものはどこからも重宝される。
こんなイかれた女でも、商売できた。
そんなワタナベが、自分に愛想を振る舞っている!面倒な事しか思い当たらなかった。
本来なら、お願いのまえに脅迫が来るはずだ。
.
707
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:17:54 ID:om3Yvxs60
(`∠´)「おいおい。このあいだとはえらい差があるな。俺になにか用なのか?」
从'ー'从「そう。頼みがあるの」
(`∠´)「無駄働きはしないし、前払いが条件だ」
从'ー'从「オッケーじゃあいま支払うね」
鞄に手を入れて、ワタナベがなにかを取り出す。
それを警戒しながら待った。
なにか。おかしい。
取り決めの交渉がない。
怪訝にワタナベをみるも、目があい、にっこりと笑う。
.
708
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:18:42 ID:om3Yvxs60
从'ー'从「はい。」
差し出されたのを受け取ろうと手を伸ばしかけて、固まった。視線はワタナベの手元から離せない。一気に心臓が冷えた。
狂った女だとは思っていたが、まさかここまでとは!
(`∠´)「おまえ……」
从'ー'从「ほら。前払いなんでしょ?さっさと取れよ」
彼女の手にあるのは、手のひらに乗っているのは信管の外れた手榴弾。
通称パイナップル。
爆発すればこの至近距離だ。
間違いなく即死する。
銃社会に慣れた者らしく、頭を覆って走りだすべきだった。
しかし相手がこの女では、それは意味がない。
背中に投げつけられる。もしくは追いかけてきて、この女と一緒に……
ぞっとする。
.
709
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:19:27 ID:om3Yvxs60
(`∠´)「どういうつもりだよ……」
威勢がいい声はでなかった。
ただ恐ろしい気分でワタナベを見返す。この女の気に入る返事をしようにも、まだなにも具合を聞いていないのだ。
取り扱いの簡単な女だった。いままでは。
从'ー'从「これ使ったことある?すごいよ。頭がきれいに半分吹き飛ぶの。爆弾ってさ、ちゃんと造ったらすごく上手に千切れるんだよね。こんなにちっちゃくっても」
(`∠´)「だから……、なんのっつもりだって!」��
从'ー'从「だまれ」
ぴたりと口を閉じた。手榴弾を持った手が、上下し、己の目前まで近づいたからだ。
.
710
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:20:15 ID:om3Yvxs60
ひっと後ずさりしそうになった。が、ワタナベは許さない。��
彼女はじつに娼婦らしく、自然に腕を絡めた。
はためにはどう見えているのか、想像してぞっとした。
客と娼婦の交渉途中。
誰も危険になど気づかない。
从'ー'从「なあほしいんだろ。これが支払いだ。受け取れよ」
(`∠´)「かんべんしろって…マジに…、俺にどうしてほしいんだよ……」
一縷の望みをかけて、そう聞いた。
殺すつもりならこんなやりとりなんてしないはずだ。
きっと。そうであってくれと強く願う。
从'ー'从「仕事をしてくれればいい。おまえの仕事だ。簡単だろ?」
(`∠´)「なにを……?」
从'ー'从「あの人がさらわれた」
(`∠´)「あの人って、あ、あの時の男か?」
.
711
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:21:00 ID:om3Yvxs60
ワタナベはうなずく。整った顔立ちが無機質になる。
その目の異様に澄んだ様子に、彼女の本気を見た。
NOはだめだ。適当なふりもだめだ。
使えないとわかった瞬間に、手元のこれが降ってくる。
距離を取らないと、安全な距離まで、離れないといけない。
面道ごとに巻き込まれるのも、信用されずに殺されるのもごめんだ。
.
712
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:21:45 ID:om3Yvxs60
(`∠´)「…わかった。調べてみるって。ただ時間が必要だからさ、少しまって」
从'ー'从「はやく」
(`∠´)「ああ。わかってるよ。でもこれって待つのが仕事だったりするからさ、連絡入ればすぐにこっちから伝えるし」
从'ー'从「はやく、はやく。あの人が壊されないうちに。汚されないうちに。手えだされないうちに。欠けないうちに、取り戻さないといけないの。」
(`∠´)「……な、わかってっからさ。とりあえず詳細おしえてくれよ。そんでいろいろ調べてさ、わかったらすぐおまえに」
.
713
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:22:27 ID:om3Yvxs60
爪のながい指先が、首の肉を掴む。
手榴弾ごと首を締められて、一瞬で恐怖に陥った。
鉄とプラスチックの堅い感触。
なお悪いことに、こいつは粗悪品だった。見た目だけのシロモノ。
いつ爆発するか、本人にもわからない。爆弾の利点は痛みを感じるまえに天国へいくことだ。それが本当かは、誰も知らない。
いままさに、死にそうな恐怖に直面している。
手榴弾もこわいが、いつ爆発させるかわからない女のほうがこわいに決まっている。
.
714
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:23:28 ID:om3Yvxs60
从'ー'从「ねえ、あたしなんでもいいの。あの人が戻ってくるんならなんでもいいし、あの人が戻らなかったら、おまえでもいいの。
だっておまえが見つけられなかったってことだもんね」
从'ー'从「いいのよ。戻ってさえすればいいの。でも戻らなかったら。
あたしのあたしのあの人がもど、もどらなかったら、壊すのはおまえでも、いいの」
.
715
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:24:12 ID:om3Yvxs60
絶叫したかった。
しかし喉からはかすれたような呼吸音しかでなかった。
あしらうのは絶対に無理だ。
この女から逃げるにはこの国から離れないといけない。
でなければ蛇よりも執念深い、
狂った思考のこの女の怒りが、一心に自分に向くことになるのだろう。
そう悟った。
.
716
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:25:01 ID:om3Yvxs60
.
717
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:25:48 ID:om3Yvxs60
円卓を囲むのは かわいそうな駒鳥で
【Who killed u n owen】
.
718
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:26:29 ID:om3Yvxs60
布地の厚い毛布、片隅に散らばるのはミネラルウォーターと包装された携帯食。
見慣れない印字された包みをこわごわと開く、すると焼き菓子に似ているようなクッキー生地の食べ物が出てきた。一口かじってみる。
甘みがわずかにあり、味は菓子のようだ。悪くない。
ただ、やたらと口のなかが乾く。
そのための水なのかもしれない。
(#゚;;-゚)「……」
.
719
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:27:23 ID:om3Yvxs60
部屋のなかはうす暗い。
電気がいっさいなく、窓から差し込む光だけが朝を知らせてくれる。
わずかに開ける硝子戸からのぞき込むと、真下の風景がちらりと見える。
おもちゃ箱のような景色。つまめそうなほどの、建物の群。
どうしようもなく、でぃは高所に居るのだった。
わけのわからない誰かに、わけのわからない場所に閉じ込められている。
でぃは拉致した者の顔を見ていない。予想しようにも鎧のような装備に包まれている。
.
720
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:28:06 ID:om3Yvxs60
わけのわからないなにか、は日をあけてたびたび高所の部屋に来た。
しかしたいてい、でぃが気配に気づくとすっといなくなる。
出入り口のない部屋で、外壁をつたって上り下りしているのだ。尋常でない能力だ。��
まともな人間には思えない。
(#゚;;-゚)「きみは、誰?」
夕暮れの明るさがきえていく時間帯。
電気のない室内はすぐに暗闇に染まる。
影のようにして、その時間にこっそりと伺いにくるのももうなれた。
相変わらず得たいのしれない者に対する警戒はあったが、いっこうに近寄ってこないので、それも薄くなりつつある。
.
721
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:28:56 ID:om3Yvxs60
食事を運ばれ、衣類を渡される。
この部屋は小さいながら、浴室も備わっていた。
与えられるものに不足はしていない。
ただどうして、という悩みだけが尽きない。
(#゚;;-゚)「……つれもどしに来たんじゃないの?」��
研究所の手のものではないのか。
そんな意味の言葉、あっさりと無視された。影は答えない。
ただじっと、うす暗がりに佇んでいる。��
姿を確認すると即座に部屋から逃げていたのに、ここのところ、でぃが話しかけるととどまってくれるようにはなった。
ただ正体も、目的も、なにもかもが不明すぎて、でぃは戸惑う。
要求がない。
それではなにを求められているのか、でぃにはわからない。
.
722
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:29:39 ID:om3Yvxs60
(#゚;;-゚)「……ワタナベが心配だ。彼女のところにもどりたい」
でぃがいない今、なにをするのかわからないから。
自暴自棄になって、危険なことに首を突っ込んでいないか気になる。
それにせっかく得た協力者を失いたくなかった。
柔らかく、帰せと訴えるも、影は微動だにしない。
硬質なスーツのまま、顔の位置にあるカメラレンズがじっとでぃに向いていた。
(#゚;;-゚)「……なにか言ってよ」
ぽつり、そう不満をこぼす。
この侵入者が訪れるまで、娯楽らしいものもなく、ずっとひとりきり。
.
723
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:30:25 ID:om3Yvxs60
退屈は緊張をむしばむ。
怪力で、不気味で、物言わぬ不審者でも、ひとり狭い部屋に取り残されているよりはいい。
でぃが言うと、スーツの頭部がゆれた。
シュー……
(#゚;;-゚)「……え?」
.
724
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:31:11 ID:om3Yvxs60
呼吸音だった。肺を絞ったような。
かすれたような、息をするときの。
吸った息が、漏れたような音。��
は虫類独特の。
そんな呼吸をするのは1人しか知らなかった。
(#゚;;-゚)「…………エヴァ?」
.
725
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:31:53 ID:om3Yvxs60
.
726
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:32:53 ID:om3Yvxs60
.
727
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:33:35 ID:om3Yvxs60
(A^ν^)「ちょっといいですか?」
( ´_ゝ`)「んー?」
(A^ν^)「…なにをしようとしてるんです?」
(A^ν^)「截断まえの金属板ばかり、前線に送ってるようですけど」
( ´_ゝ`)「ああ、場所の特定がむずくってさ、どっちがメインかわかんないからとりあえずバンバン持ってったんだよ」
( ´_ゝ`)「数キロ県内にたくさんあれば、移動もやすいし」
.
728
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:34:35 ID:om3Yvxs60
(A^ν^)「はぁ……えと、それはなんのために?」
( ´_ゝ`)「制圧のためでしょ」
(A^ν^)「???」
(A^ν^)「えーっと…」
(A^ν^)「不特定多数の人海戦術をやられるから、そのために多くの物量で攻める、ってことでいいんですか?」
( ´_ゝ`)「うん」
(A^ν^)「しかしなんだってあんな物を?」
(A^ν^)「硬くて燃えなくて、貫通しなくて電気を通さなくて、それだけじゃないですか」
( ´_ゝ`)「うん」
(A^ν^)「たしかに構造状、うちの技術でしか分解できないシロモノですが、そんな物が役に?」
( ´_ゝ`)「うん」
.
729
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:35:22 ID:om3Yvxs60
(A^ν^)「」
( ´_ゝ`)「想像つかない?」
(A^ν^)「いいえ!つきます。たぶんついてます」
(A^ν^)「ただ……規模が大きすぎて…」
(A^ν^)「範囲、すごく広いじゃないですか」
( ´_ゝ`)「そう?」
( ´_ゝ`)「でもま、しょーがないね」
( ´_ゝ`)「あんまし減らしたくなかったんだけどさ。いいかげん終わらしたいし」
(A^ν^)「都合よくいきますかね」
( ´_ゝ`)「たぶん」
.
730
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:36:04 ID:om3Yvxs60
( ´_ゝ`)「うまくいかなくても、まあいいよ」
(A^ν^)「……いつも思うんですけど、どうしてそうなげやりなんですか?」
( ´_ゝ`)「ん?」
( ´_ゝ`)「……え、俺?」
(A^ν^)コクコク
( ´_ゝ`)「投げやりってやる気ないってことだろ。俺めっちゃやってるじゃん」
(A^ν^)「なんか熱心じゃないですよね。そういう時に使うんですよ、投げやりって」
( ´_ゝ`)「えー……」
( ´_ゝ`)「俺ちゃんとしてるけどなぁ」
( ´_ゝ`)「逆に熱心てなによ?」
(A^ν^)「それは……もっとこう、確実に、とか執念をもったかんじの……」
.
731
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:37:05 ID:om3Yvxs60
( ´_ゝ`)「だから確実性えらんでるじゃん」
( ´_ゝ`)「囲いあったら、逃げらんないでしょ?」
(A^ν^)「そうなんですけど、そうなんですけど……なんか違うというか……」
( ´_ゝ`)「えーなによ?」
( ´_ゝ`)「気になるわー」
(A^ν^)「……んー、たぶんですけど。あれですね」
ああそっか。興味がないだけなんだ。
( ´_ゝ`)「?」
(A^ν^)「……地図みてきます。次どこからあらわれるのかわからないので」
( ´_ゝ`)「港でしょ」
.
732
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:38:19 ID:om3Yvxs60
(A^ν^)「それを、絶対だって言えるように確かめてみます」
( ´_ゝ`)「オッケーグーグル!」
(A^ν^)「…………」
(A^ν^)「では……」
( ´_ゝ`)「失望してんの?」
(A^ν^)「……いいえ」
頑張りには意味がない。
熱意も、わずかな情も意味がない。
(A^ν^)「わたしにはあとどれくらい時間が残されていますか?」
( ´_ゝ`)「こんどのこれ、解決するまで」
(A^ν^)「それはよかった」
なにもかも執着のなさそうな人相手に、思い悩んでは時間がもったいない。
(A^ν^)「どっちかっていうと、」
(A^ν^)「絶望ですかね」
結果しか、意味がない。
.
733
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:39:07 ID:om3Yvxs60
絶望に至る病
.
734
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:40:01 ID:om3Yvxs60
施設の壁はぶ厚い。
柱は最上階から地下まで貫通しており、少しの地震程度で壁や骨組みはびくともしない。
火災があっても消火剤がまかれ、すぐに鎮火する。
そのさい、空気の供給も止まる仕様になっている。
中の生き物への配慮ではもちろんなく、施設内の重要な記録を守るためだけの設計だった。
職員用の個室もそうだ。
壁は厚く、防音で冷たい。
逃げだそうとするすべての個体たちをふせぐように。
.
735
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:40:43 ID:om3Yvxs60
響く足音も、誰かの悲鳴も聞こえない。大型の機材を使うときだけ地面が振動する。
それらはたいてい冷たくなった個体を処分する時に使われた。
火葬はきちんと焼くと時間がかかる。燃料もかかる。
だから大型の機材でプレスされた。
そんな場所だったから、職員のプライベートはもちろん、仕事のためにも防音管理はきちんとされていた。
施設内は清潔で、掃除が行き届き、快適だ。
残酷な光景も、工場のような作業で行われているとそう思えなくなる。
家畜の解体をできるだけクリーンに行えるように。
そんなマニュアルもあっただろう。
死はひとしく、実験対には平等だった。当たり前すぎて、なにが起こっているのか理解しないうちに済まされる。
実験対の知性は低い。
彼らにそれは必要がないものだった。
.
736
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:41:26 ID:om3Yvxs60
でぃは幸運だった。
ひとつのプロジェクトのために作られた。��
それは長期で、確実性で、結果をなにより期待されるものだった。��
だからそれまで生きるために、人並みの知性があった。��
“母胎があまりに愚鈍では、子にもそれが遺伝してしまうからな”
正確な意味は理解していないが、そう言った職員のことを覚えている。
他の個体とは違う。
しかし違うからといって、恵まれていることにはならない。
.
737
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:42:17 ID:om3Yvxs60
そのときでぃは、人に会わずに施設内を移動していた。
成長するに従って、職員たちの態度があからさまになってくることに辟易していた。
でぃは他の個体とはべつに、検証中の個体のために愛玩物だった。
気が向けば可愛がる程度の、無責任な愛情。
そして��自分がどの立場にいるのかも知らない。
ならば都合よく暮らすためには、気に入られるしかない。��
道ばたですり寄ってくる猫のような愛想のよさ。��
無機質で媚びることがない、敵意に満ちた個体たちよりも好まれるのは当然だろう。
.
738
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:43:03 ID:om3Yvxs60
そのなかででぃは呼吸し、顔色を伺い、なにも知らない、無知な子のようにふるまった。
女には腕のなかで甘え、男にはひざのうえに乗った。
そうすれば内緒だよ、と多少の融通をきかせてくれる。
ほんのわずかな特権。
余った菓子を振る舞われたり、就寝する寝室を居心地のよい部屋に変えてくれたり。
なかでもでぃがもっとも重要視したのは情報だった。
記録媒体には載っていない、職員の人間性。
それから処分されやすい個体の特徴。研究の余地があれば、まだ生かされる。
雑用のためだけに生きている実験対だっている。
手に入れた情報の鮮度は短い。
くだらないものでも、すぐに身近なものと共有するべきだ
.
739
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:43:57 ID:om3Yvxs60
でないとすれ違いに悲劇が起きる。
伝えたところで、遅すぎたりする。
職員のプライベートな個室と、実験室や大広間。
そんなところを覗けば、施設はいくつも自由に行き来する場所がある。
でぃは友人のところに向かっていた。
��
日光浴を楽しむ、青い肌の少女。
木々のそばであれば嬉しそうにする。
だからいつも通り植物のところにいると思ったのに中央の植物園に姿はなかった。
高いところが好きだから、木に上っているのかも思ったが、見上げても木漏れ日のなかにはいない。
.
740
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:48:43 ID:om3Yvxs60
でぃは首をかしげ、また思いつくところに移動する。��
水場にはいなかった。
砂場にも、草木が繁茂するべつの植木にもいなかった。
同じ場所に縄張りをつくるエヴァは基本、居心地のいい場所を変えない。
いやな予感がした。
それはたいてい、取り返しがつかないものだ。
「エヴァ……?」
走り、探しまわる。
怯えながら処分場にも顔を出したが、使われた跡はなく、それに安堵する。
しかし見つからない。
どこに行ったのか。
歩き続ければどれほど広い場所でも終わりがくる。
でぃが考えに考え、最後についたのはひとりの男の部屋だった。
.
741
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:49:50 ID:om3Yvxs60
「……」
近づきたくはない。
けれど個体数の管理はこの男がしている。でぃには冷たくとも。
仕事ならばきちんと対応してくれるはずだ。
そう、思いこもうとした。
大丈夫、なぜならここの廊下にはカメラがつけられている。
なにかあれば、そこまで逃げればいい。
いくら危ない男でも、カメラのまででぃになにかすることはないはずだ。
ーーーはずだ。
それとも。それともあの男がエヴァを連れ込んでいたならどうしよう。
エヴァは知性がひくい。
いやなことでも、納得すると我慢してしまう。
成長し、肉つきのよくなったでぃをみるようにして、体はしっかりと成熟しているエヴァに、欲望をたぎらせていたらーーー?
.
742
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:50:37 ID:om3Yvxs60
そっと指で、ドアに触れた。冷たい金属のひやりとした感触。
体温を感知して、扉は両開きにあいた。
部屋にはふたりがいた。
備え付けのベッドのうえ。
壁にくっついている机のかげから、上半身が見える。
川*゚ー゚)
そして彼女がいた。
しかし男もいた。
.
743
:
名も無きAAのようです
:2015/12/31(木) 01:53:28 ID:om3Yvxs60
虐げられている、という恐ろしい予想は裏切られた。��
エヴァはこちらをむくと、「でぃ!」無邪気に笑んだ。
それから汚れた顔を袖でぬぐう。
「なにしてるの……?」
ひかりの加減だろうか。
廊下によくある青みのある光でなく、部屋の灯りはオレンジに近い。
赤黒い、色がもっと黒く見える。
エヴァは濡れていた。
大量に、湿ったわけなく被ったようにして濡れている。嗅いだことのある臭い。
乾くと、茶色く変色したりする、赤。
男の首はネジ切れていて、皮一枚でかろうじてつながっている。
だらん、とベッドの下にぶら下がってきいる。
虐待したのは彼女だった。
.
744
:
名も無きAAのようです
:2016/01/02(土) 01:02:59 ID:EfL14mGQ0
乙!
745
:
名も無きAAのようです
:2016/01/04(月) 23:25:19 ID:nzkftehI0
おつ
746
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:49:34 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「ずっと思っていたことだよ。
どうして人類は管理されてはいけないのか」
( ´∀`)「およそこの地上にて、誰のものでもない場所が存在するかね?
国、土地、空、地下、水、空気、はたわ宗教という概念。民族間の価値観。これほどまでに共有しているというのに。
絶滅動物は美しく尊いものでなければ保護されない。
草木を守るために共存する醜い虫たちは見向きもされない。人類が興味がないからだ」
.
747
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:50:23 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「生物には優劣がある。
当然のことだ。しかし最上位に人間が立ち、下位はそれ以外。
なるべく減ることがないようにという、最低限の意識しかない。
まるでリサイクルマークのようではないか。
あればそれなりに分別にだすが、なければ行動にうつすことなどまずやらない。そうした危機感もなく、いまどこでどのような動植物が死に耐えているのか、知ることもない。
知ろうとも思わない。」
( ´∀`)「当然だ。人間には人間の営みがある。他の生物だって自分たちの生存が第一なのだ。
いったいどうして自分たちのことをないがしろにしてまで他を気にしなければならないのだね。」
.
748
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:51:12 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「本能に忠実になれればじつにしあわせだ。人は人らしく生きている。このうえなく正常な世界の理。
ただそこに科学はない。
傲慢な繁殖だけがある。
増えすぎたゆえの、淘汰が必要になるくらいの」
( ´∀`)「人間が発展し、この星の支配者となることが人類観点からみてこのうえない功績だとして、それらを管理、支配することは」
( ´∀`)「さらなる偉大さにつながるのではないか?」
( ´∀`)「管理できないからこそ争うのだ。秩序がないから殺しあうのだ。
互いにゆずりあう精神が培われないから、自己中心な損を嫌い、奪うことでしか幸福を信じられないのだ」
( ´∀`)「人が少なければ、そのぶん敬うことが増える」
.
749
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:51:54 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「実際にクローズド・サークルを行ってみればわかる。
食物の心配さえなければ、人が減るのは恐怖でしかない。
そんな状態で誰が殺し合いなどしたいものか。乱すもの、脅かすものこそ一番最初に排除されるだろう」
( ´∀`)「倫理があり、教育があり、思想を共有し、豊かさを分かち合う。奪い合うからこそ、争うのだ。しかし分かち合うには、いまの人は多すぎる。」
(A^ν^)「だからプロジェクトを?」
.
750
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:52:35 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「ああ。教育ない人間など人ではないよ。ただの獣だ。知性ある獣など、害獣いがいのなにものでもない。環境を破壊し、貴重な生物の循環を止める。絶滅寸前の動植物などめずらしくもない。
そしてその危機に気づきもしない。
不足になってからでは、意味がないのだ。
足下が割れそうなときには身動きなどできないだろう?」
(A^ν^)「なるほど」
( ´∀`)「人類の歴史など、殺戮の繰り返しだ。それは人も動物もかわらん。
生態系に破壊を促すだけ、人類のほうがよほど害悪ではあるがな」
(A^ν^)「あなたは原理主義者ですか?」
( ´∀`)「そうだ。極論を言っていると自分でも判っている。」
( ´∀`)「しかし長年の考えをまとめると、どうしてもこうなるのだ。」
.
751
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:53:24 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「わたしは人類を愛している」
「だから破滅するまえに、どうにかしてやりたいと思ってる」
.
752
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:54:16 ID:DincLnGo0
(A^ν^)「破滅?せいぜいが殺し合い程度では?」
( ´∀`)「戦争だよ」
( ´∀`)「近いうちに必ず起きる」
( ´∀`)「そしてそれだけはどうしても回避できない」
( ´∀`)「歴史的に、国が大量虐殺を繰り返すのはどうしてだと思う?」
(A^ν^)「粛清ですね」
(A^ν^)「権力を握るための」
( ´∀`)「その通りだ。それは邪魔なものを排除するために。自分たちが、生き残るために。」
( ´∀`)「邪悪であれば、あるほどに生存が増す」
.
753
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:54:59 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「生き残る確立が高くなる。
人を蹴落とすのは本能なのだ。
しかし当然、それだけではいけない」
( ´∀`)「わたしはね、性善説を信じてもいるんだ」
( ´∀`)「誰かを思いやるのは美しい。暖かい。喜ばしい。」
( ´∀`)「家族や身内を愛するのが種を残すことの本能かもしれない。だが全くの他人を、なにの思惑ないままに愛するのは違うだろう?」
(A^ν^)「そうですね」
.
754
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:55:42 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「今の時代、愛するのにも理由が必要なのだ。男女、結婚相手、愛玩物。自分に有効なものか、そうでないものか」
( ´∀`)「その枠を取り払うためには、やはり現人類は多すぎる」
( ´∀`)「生きる数が限られてしまえば、人は争わざるを得ないのだ」
(A^ν^)「理由はそれだけでしょうか」
( ´∀`)「なに?」
(A^ν^)「この都市は恵まれています。電気も水もない農村よりもはるかに。教育も、最低限行き届いている。」
(A^ν^)「それなのに、まだ抵抗するのはなぜでしょう」
.
755
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:56:25 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「利権ほしさだろう。元は彼らの土地と考えているのさ。もう取り上げられているのに」
(A^ν^)「ええ。でもそれならそれで、おこぼれをもらっていればいい」
(A^ν^)「こちらだって援助はしている。微量ですが。」
(A^ν^)「命をかけてまで、抵抗する意味がわからない」
( ´∀`)「聖戦と考えているなかもしれんな」
( ´∀`)「大義があれば、人はなんだってできるものだ」
(A^ν^)「そんな戦士のようにも思えません。やる事といったら子供を盾にして時間を稼ぐような奴等です」
.
756
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 01:57:07 ID:DincLnGo0
( ´∀`)「ふむ。ならば、もっと単純なものかもしれない」
( ´∀`)「争いなど、いつの世も原因はひとつだ」
(A^ν^)
( ´∀`)「足りないから、奪うのだ」
( ´∀`)「彼らの求めるものとは、そもそもなんなのだ?」
.
757
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:01:31 ID:DincLnGo0
.
758
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:02:16 ID:DincLnGo0
壁は順調に組み立てられている。
黒色の金属板はしっとりと輝くこともなく、ただ暗い暗い墨のように黒い。
30キロほど間隔をあけ、貧民区域を囲うようにして、高く長い。
まるで巨人がいまにも顔をだすようではないか、と誰かが言った。
それほど異様な高さだった。
遠くの山を見るようにして壁が景色のなかにある。
道路や家々を遮断しながら。
距離を詰め、丸く全体を囲っていく。
人々はその工事の目的を知らない。
邪魔でありながらも、隙間から通行できるからだ。それに文句をつけても、止めさせることなどできない。
.
759
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:03:20 ID:DincLnGo0
(`∠´)「やばいな」
ビル屋上からその景色を眺める。
20階数ほどある建物だが、壁の高さにはかなわない。
雲に届くのでは、そう錯覚するほどだった。
(`∠´)「まじで…やばい」
企業がこれほど大がかりなことをするなんて、しかし予想はつく。しびれを切らして手っ取り早く片付ける魂胆だろう。
倫理も道徳もなく。
.
760
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:04:05 ID:DincLnGo0
(`∠´)「あの男、こんなかから探さないと行けないのかよ……」
砂のなかに落ちた一粒を、掻き分けろというようなものだ。その一粒は金色の。
埋もれているから、見つからない。
逃げたい。逃げようか。優秀な脳みそがそう訴えかける。関係ないものに巻き込まれるのなど、クソ食らえ。
渡辺から逃げればいいだけの話。
もしくは殺されなければいい話。
(`∠´)「駄目だ……」
もしも、捕まったら。
渡辺のやり方は、よく知っている。
日頃彼女を怒らせても被害に合わなかったのは、渡辺がそこまで自分のに興味がなかったからだ。しかし今は違う。
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761
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:04:49 ID:DincLnGo0
ある意味で、とても頼りにされている。それを裏切るのは、自殺と同じ。それも酷い死にかたをするだけだ。
性器を切り落とされ、数時間ほど生かされていた男の末路を思い返す。
渡辺はそういう女だ。
どうすれば死なずにできるだけ苦しむのか、やり方を知っている。
自己流で。
(`∠´)「ちくしょー……」
せいぜい壁が、できあがるまえに。
あの男を見つけなくてはいけない。
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762
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:05:44 ID:DincLnGo0
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763
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:06:34 ID:DincLnGo0
男の体が、ベッドから半分ずり落ちている。
奇妙にねじれた頭が床について、顔は真後ろを向いている。
目が合わないことだけが救いだった。
エヴァは上手に首を締めたのだろう。
器用に、窒息させてから首をちぎった。
点々と、果実をつぶした時のように。
圧迫された瞬間、水が吹き出たようにして、血が跳ねたのだった
横たわった体。物体になりさがる、元人間。
となりにはエヴァが笑っている。��
いやなことから解放されて、嬉しそうに。
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764
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:07:29 ID:DincLnGo0
「どうして?」
川*゚ー゚)「だって、痛いことするんだもん」
実験だったら、検査だったら。��
エヴァはこんなことをしなかった。
男を殺さなかったはずだ。
聞き分けの悪い子は、いつもお仕置きされる。反抗するも、それに怯え、渋りながらも言うことを聞いていた。
職員たちの威圧感にも負けて。��
けれどここは密室で、男とふたりきりだった。
男以外の目がない。
大勢の職員から、たったひとりの男と対立するだけになる。
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765
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:08:17 ID:DincLnGo0
だからエヴァは反抗した。
聞き分けなかった。男に怒った。
ひとりよりも、大勢のほうが怖いに決まっている。
エヴァには保身がない。
それからを思考することができない。空間把握能力も低く、概念がどういう意味なのか、考えることができない。
知識が高ければ高いほど、実験動物は危険なものになるからだ。
単純でおとなしく、聞き分けることができる。��
飼育が簡単で、手間もかからない。��
でも、だからこそ。
そのあとを想像することができない。
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766
:
名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:09:06 ID:DincLnGo0
「痛いことをされたの?」��
川*゚ー゚)「うん」��
「足をひらけって……言われたの?」��
川*゚ー゚)「掴まれたの」
息が、つまる思いで聞いた。
「……痛いのを、××られたの?」��
川*゚ー゚)「うん」
でぃはベッドに乗り上げると、男のずり落ち掛けている体を蹴った。
死体はだらん、とはずみに床に転がる。��
表情ない顔で、それを見下ろした。
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767
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名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:09:57 ID:DincLnGo0
「じゃあ、ぼくのせいだね」
川*゚ー゚)「なんで?」
「こいつはぼくとしたがってた」
だから代わりが必要になった。
求めるからこそ、嫌悪となってより執着された。
手をだしてはいけないジレンマと、職員の権限にストレスを感じていたはずだ。代替え品にてすませようとする。
危機を感じていた。
だからでぃは逃げていたのに。
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768
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名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:10:40 ID:DincLnGo0
川*゚ー゚)「だめ、あれ痛いの。でぃ柔らかいから、だめ」
「……エヴァも痛かったでしょ」
川*゚ー゚)「うん」
「だからね、ぼくも痛い」
川*゚ー゚)「されたの?」
「ううん。そうじゃないんだ……」
「でも、痛い」
まっすぐな、澄んだ目が見つめてくる。
ひどい、気持ちが悪くなることをされたのに、彼女はどこまでも清らかだった。
こうなってもまだ、でぃのことを心配してくれる。
身代わりにされたというのに。
男に刺されたのに。
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769
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名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:11:22 ID:DincLnGo0
「痛いんだ」
呟くと、彼女が腕を延ばし、でぃをつかむと引き寄せた。
握力の強い手は、金属の手すりを簡単に折り曲げる。骨ごと肉を引きちぎる。��
けれど警戒も、危険も感じられない。
ひやりと変温動物のように冷たい肌をしていた。優しい力で抱きしめられる。
この手がでぃを傷つけるはずがない。
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770
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名も無きAAのようです
:2016/01/08(金) 02:12:04 ID:DincLnGo0
川*゚ー゚)「まだ痛い?」
ゆらゆら、抱かれながら揺れる。
子供をあやすようにして。
座りながら、一定のリズムで穏やかに横に揺れる。寝付きの悪い子に眠りを誘うような仕草。
慰める動作というものを、エヴァはこれ以外に知らない。
数えもしないほどまえに、泣く彼女はこうやって誰かに慰められた。
それを教えたのは誰だっただろう。
でぃかもしれない。
もういない優しかった個体かもしれない。
川*゚ー゚)「ねえ痛い?」
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