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(‘_L’)は命令が欲しいようです

613名も無きAAのようです:2015/11/01(日) 21:53:57 ID:yXXE1w160


悲鳴のような声をあげかけて、目をさました。


心臓が早鐘を打っている。どくどくとうるさく、それで夢のなかのできごとを払拭する。


(#゚;;-゚)「は、は、……」


今しがたまで、支配する声がそばにあった。おきが上がり、そんなものはないのだと確認する。


誰もいないはずだ。
でぃはひたすら、自由のはずだった。そばに伸びる手がないのに安心する。


落ち着きかけて、現状に気がついた。


ここは、どこだ。

.

614名も無きAAのようです:2015/11/01(日) 21:54:57 ID:yXXE1w160

散らかった室内。

布ばかりが積み重なっている。電灯もなく、あばら家といった風情だった。

人が生活する様式がまったくない。

板を張られたようなせまい壁が四方にあり、中心にでぃは寝ていた。

積まれた布を被り、子供が布団をかぶるように。


(#゚;;-゚)「ワタナベ……は?」


なにがあったのか、直前までの記憶は抜け落ちている。

襲われた直後、でぃは全体を知るまえに意識をなくした。
その後を知らない


恐る恐る、小屋から出ようと試みる。


取ってのあるドアのおかげで、閉じ込められているとは思わなかった。隔離部屋は、内側からは開かない。


ドア事態は簡単にひらいた。

.

615名も無きAAのようです:2015/11/01(日) 21:55:39 ID:yXXE1w160



(#゚;;-゚)「え、……」


しかし一歩踏み出すことはできない。


床がなかった。
天上の楼閣のように、その部屋は下界から上にある。


見下ろせば、高いところの風が顔に吹き、髪を乱した。


人差し指で摘まめそうなほど、下にある家々はちいさかった。車なんておもちゃのようだ。


足がすくんでしまい、でぃはへたりこんだ。
高いところは嫌いだ。もうドアを開ける勇気もない。


.

616名も無きAAのようです:2015/11/01(日) 22:01:41 ID:yXXE1w160








(A^ν^)「それで、結局どうするんですか?」


 ( ´_ゝ`)「そうさなー、とりあえず集合させて、そこを叩く。」


(A^ν^)「じゃあ向かうんですね」


 ( ´_ゝ`)「いんや。積み荷やらなにやら狙いつけられてるんのがわかってるんだからさ、馬鹿正直にそこに行く必要ないっしょ」


 ( ´_ゝ`)「かといって向こうから来るわけもないし。空は押さえてるから、逃げるんなら海だな」


(A^ν^)「幾人か向かわせますか?でもそのぶん、ここの警備が薄くなってしまいますが…」


 ( ´_ゝ`)「向かわせるっちゃ向かわせるけど、別に俺らじゃねーよ」


(A^ν^)「へ?」


 ( ´_ゝ`)「いるじゃん。こんなときに、都合のいいのが。そのためにお金払ってるんだし」



(A^ν^)「……!ああ」



.

617名も無きAAのようです:2015/11/01(日) 22:02:45 ID:yXXE1w160
一時停止。
まとめ終わったらまたきます

618名も無きAAのようです:2015/11/02(月) 20:14:03 ID:5nTiP99M0
おつ

619名も無きAAのようです:2015/11/02(月) 21:03:59 ID:dnzKaTuw0
やったああああ!待ってたら来てた!
これから読んでくる!

620名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:00:48 ID:Iajk2B0I0



ロマネスコ・アレクセーレフはこの国で傭兵団を率いている。
おおよそ治安の一定しない国特有の、力が法であり、秩序だった。
彼はロシアとメキシコのハーフであり、外見と同じように内部にも凍えた粛清を持っていた。傭兵団といえば聞こえはいいが、実際犯罪者の集団だ。

ただ金稼ぎと利権のためにとある会社と契約することもある。

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621名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:01:33 ID:Iajk2B0I0

生きていくためには金が必要だ。

そしてこの国ではユダヤのように、商人はまともに生きていけない。
傭兵と手を組み、互いに協定を結ぶことが前提になる。契約してさえいれば、襲われることはない。
それは観光客も含まれる。ツアー客でさえ、大手のパックに入っていないと、行方知らずは当然だった。
そのための自警団。
仕事を得るためには、仕事を作り出さないといけない。

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622名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:02:21 ID:Iajk2B0I0

そして彼らはもっとも実入りのいい仕事をつい最近見つけた。ビルが倒壊するほどの、大惨事。
被害はたいへんに大きかったが、この国の人間が受けた傷ではない。
みな冷静に、どれほどの儲けが出るかを考えた。株式は下がったはずだが、周辺地域の経済は活性化した。

混乱のさなか、めずらしく後手に回った企業の応対。傭兵団という兼業は、強盗に様変わりする。
たとえ登録されていない商品だろうと、分解して売却すれば金にはなる。
需要があり供給がある。

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623名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:03:02 ID:Iajk2B0I0

日常的に、そのような嗅覚が発達している者たち。束ねるためにも、ロマネスコは強面であり、タフガイであり、信頼されている。

彼らの傘下にいる限り、食いっぱぐれることはない。区域にもよるが、簡素な作りの銃も振る舞った。

銃を持てない者これに殺到した。
しかし、犯罪数が増えることはない。ある程度管理する社会のほうが、もめ事は少なかった。警察が機能していない以上、取り締まるのは彼らでもあるのだ。

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624名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:04:16 ID:Iajk2B0I0

この国は政治に混乱はないが、重要な役職をある一族に牛耳られている。

そのため国民が外貨を得るには、こういう事でなくば方法がない。正しくないと非難されるであろう行為だが、正しさだけでいえば企業が正義となる。

抑圧された国民たちは反乱を起こしてもよいはずだ。しかし国の多くが企業の技術に依存している現状。誰もが企業の顔色を伺うことに疑問を持たない。
撤退され不便になるのは、自分たちであるから。誰も難民にはなりたくはない。
国民は上手に飼い殺しにされていた。
飼われたくないのが、傭兵団だ。
立場上、自警団と呼んでもいい。
外資系に侵略されないがための。

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625名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:05:04 ID:Iajk2B0I0
そのためには法律が間違いであり、反抗することが正義だった。

そも、法とは強者のための、強者が制定したものである。


だからいつまでたっても、改正されない。

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626名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:14:44 ID:Iajk2B0I0







( ФωФ)「依頼かね」


 ( ´_ゝ`)「そーいうこと」


( ФωФ)「残党がまだ多い。我々がここを離れてしまうと、責めいる手数が増えるぞ。」


 ( ´_ゝ`)「べつにいいよ。突破されるわけじゃないし」


ロマネスコは傷のついた両眼で男を睨んだ。


( ФωФ)(……頭が悪そうなわけではないのに、このゆるさはなんだ)


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627名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:15:26 ID:Iajk2B0I0

ロマネスコは不機嫌な様子を隠さない。
彼にとってこの男は理解の範囲外にあった。


( ФωФ)「ならば早々に移動しよう。敵の予測の裏をかけば、襲撃もうまくいくだろう」


 ( ´_ゝ`)「ああ。でもべつに、強硬しなくてもいいからさ。威嚇行動になってればそれで」


( ФωФ)「叩かないのか?」


 ( ´_ゝ`)「だって一ヶ所に集めてからじゃないと漏らすし。面倒くさいじゃんちまちま削るの。」


( ФωФ)「そんな弱腰のうちでは侮られるぞ」


.

628名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:17:13 ID:Iajk2B0I0

奇妙な胸騒ぎと、まるで見透かされているような態度。


どこか気味が悪い。この男の言葉には真あがない。どれも正しく、間違っているような気がする。

しかし言葉だけでみれば、ただの不精者。富にあぐらをかいただけの、企業の坊主。

しかし、先ほどから、契約途中の話し合いのさなか、この男がよい位置に来ることは一度もなかった。


ふらふらと、適当に部屋のなかに入り、ソファーに座り。だされた酒を飲む。

その間スナイパーは男の急所に狙いをつけることができない。

身体を揺らしたり、首を傾げたり、ソファーの背中に座ったりと、自由に動き回っている。

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629名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:18:15 ID:Iajk2B0I0

ロマネスコは部下に窓のひさしを閉じさせた。
これを偶然と考えるほどおめでたくはない。頭のゆるそうな男だが、隙というものがなかった。
しかし意識しているわりに、こちらからの出したものに口をつけるのも不気味だ。
本当に警戒しているのか、わからない。それが気味が悪い。


承知のうえで行っているのか。ただただ。運のよいだけの男か。

いいや、そんなものが、司令官であるはずがない。ロマネスコは己の認識を改めた。なにかある。

あるからこそ、これほど自分たちにとって都合のいい展開になるはずがない。

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630名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:18:56 ID:Iajk2B0I0


( ФωФ)「作戦概要があれば伝えてくれ。仲間を消耗させたくはない」


 ( ´_ゝ`)「これといったことはないなー。でもスーツ着た奴は無駄に追いかけなくていいぜ」


( ФωФ)「なぜだ。あれが一番、目障りではないか」


 ( ´_ゝ`)「行動が読みやすい。近場にいるなら、問題が起きてるのは遠くのほうだ。」



( ФωФ)「というと」


 ( ´_ゝ`)「そのまんまだよ」



( ФωФ)「……」


.

631名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:19:41 ID:Iajk2B0I0

ロマネスコは黙る。

男もそれ以上口にしなかった。

パワーゲームを真似るつもりはなかったが、あれこれ口にすれば無知のようにも見られ、また相手に疑問を持たれる。
所有権を渡したまま素直に承諾したほうが疑いは少ない。
どれほど気がついているのか、さぐりを入れたかったが、それ以上は難しい。

駆け引きなのか、そうでないのか。
見分けるのが困難な時は乗ってはいけない。

632名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:20:23 ID:Iajk2B0I0


( ФωФ)「それだけか」


 ( ´_ゝ`)「うん」


( ФωФ)「では我々は仕事をしよう」


 ( ´_ゝ`)「……うん?」


( ФωФ)「我々が居なくなったぶん、負担が増えるだろうが、それで潰されるお前たちではないだろう。」


( ФωФ)「せいぜい足止めを踏ん張るのだな。勝手に死ぬのではないぞ。契約中なのだ。金がもらえん」


 ( ´_ゝ`)「あー、うん、まぁ」

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633名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:22:55 ID:Iajk2B0I0

協力体制。裏切りと罠。ロマネスコは腹芸が得意というわけでなく。

嘘を言わない代わりに真実も言わない。味方のふりをしているだけだ。

ただあまりに厳しい対応では、見限られるし信用されない。

実直で真面目な見方をされれば幸いだった。



( ФωФ)「少し警備のために残していくか?」


 ( ´_ゝ`)「いや、べつに……」


残念だ。警護と称して見張りをつけられたのに。
案じているふりをして、手を休めるようにと警告をする。
あわよくば、そのまま逃げ切れるかもしれない。

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634名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:23:54 ID:Iajk2B0I0



( ФωФ)「同じことを繰り返すが、撃退せよとは言わん。ただいまの現状で追撃するのは控えるんだな。

破れかぶれになった奴が特攻すれば、どんなに厳重でも死なない保証などない。ここの人間ほど、テロをやり慣れているものなどいないのだ」


 ( ´_ゝ`)「お、おう」


( ФωФ)「我々はいずれ革命軍となる。お前たちと連携しなくばならんのだ。その時まで生きていてとらわんと困るのでな」


あやふやな将来だが、目的は間違っていない。利権さえ得られれば、それで安泰。

ロマネスコが治める一体が、豊かであれさえすればよかった。

裏切りの裏切り。ドクオとの共闘が終われば、次はまた敵になるかもしれない。
そのときに背後を守る存在が必要だった。

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635名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:24:49 ID:Iajk2B0I0

ある程度まで信頼させる。

傭兵団の使い勝手のよさ。社会の裏の秩序を保っているのは、ロマネスコたちだという自信がある。


ロマネスコ・アレクセーレフはそういう男だ。
東西冷戦の時代のように。同盟と嘘と裏切りは、使い分けるためにある。












 ( ´_ゝ`)「……」


 ( ´_ゝ`)「え?フラグ?……」


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636名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:26:29 ID:Iajk2B0I0








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637名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:27:12 ID:Iajk2B0I0






('A`)「それでビビって逃げ帰ってきたわけかよ」


( ФωФ)「恐れてなどいない。ただ気味が悪かっただけだ」


('A`)「なにがだよ。飄々としたような奴なんだろ?扱い易そうじゃないか」



2台のトラックを、擦れ違うようにして挟む。二人は別の車両に乗って、窓から会話していた。

交通量の少ない、視界も限れる道路の脇に寄せる。通信手段は、この国では覗かれても文句は言えない。

厳重にカギをかけたとしても、製造元の管理は現在の敵だ。

うかつに受信されてはならない内容。確実な密談はいまだにアナログが有効だった。


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638名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:28:06 ID:Iajk2B0I0




( ФωФ)「あれは扱いやすいわけではないぞ。対面しなければ、あの気持ち悪さはわからん」


('A`)「どうだか。そっちはただの人間だろう?」


('A`)「こっちのほうが得体がしれねぇぜ」


( ФωФ)「しかし、扱いのほうは難しくなさそうだな」


('A`)「わからねぇよ。キレさせた時のこと考えるとな。爆発物なみの慎重さで対応してるが」


( ФωФ)「そうか。こちらの方は一応、手出しは控えるようにと苦言を刺しておいた」


('A`)「素直に聞いたか?」


( ФωФ)「恐らくは。ただ気づかれているのか、いないのかの判断がつかない。どれほど特攻しても、まるで被害がないというような顔をしている」


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639名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:28:48 ID:Iajk2B0I0



('A`)「なるほど。そいつはたしかに気味が悪い。どっちかわからないんだな?」


( ФωФ)「ああ。軍なら除隊じゃすまさない」



( ФωФ)「どちらでもいいとは、そういうことだろう」



('A`)「やつら、なにか企ててるんじゃないのか」


( ФωФ)「その様子も見られないから、気味が悪いのだ。ゲリラ戦に対して、防衛はするものの迎撃にこない」


( ФωФ)「俺が言うまえから、そのようなスタンスだった」


('A`)「ふぅん。そりゃ、おかしな話だ」


( ФωФ)「……」


('A`)「なんだよ?」


( ФωФ)「あの子どもたち、どうなった?」


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640名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:29:41 ID:Iajk2B0I0

ロマネスコが尋ねたのは、スラムから拾われてきた少年兵たちのことだ。

彼らの多くは仕事を得るために銃を持たされる。そして教育された。

ロマネスコは少年兵の存在を憂いたわけではない。

ただ彼らは、この国の人間である。
ロマネスコが収める地域での、将来は一員であったかもしれない存在だった。



('A`)「……生きてるのも、いる」


( ФωФ)「……見せしめか」


('A`)「冗談やめろ、って思わず笑っちまったぜ」


('A`)「まさか躊躇なく撃って来るたぁな思いもしなかった」



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641名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:30:37 ID:Iajk2B0I0

ドクオが乾いた笑みを浮かべる。

どこか自嘲めいていて、ロマネスコはそれでこの男を信用に足りると判断した。
何を惜しむかの価値観は似ていなければ協力はとれない。背中を預けることもできない。

そしてひとつのことに気がつく。




( ФωФ)「そこだ」



( ФωФ)「奴らには慈悲がない。容赦さえもない。我々を人だと、思ってすらないのだ。この国はもう我らの国ではない」


( ФωФ)「武器を持たされた子供を、衆人の目のまえで残酷に射殺した」


( ФωФ)「なのにこちらがわからの攻撃に、焦りが見られない。余裕がないからこそ、あそこまで配慮なくやれたのではないのか?事実、いまは誰もが我々を支持している。それもあの一斉射撃があってこそだ」


巨大な勢力と反乱。

弱者を踏みにじる様子は誰もの怒りと反発を招く。

大使館は沈黙しているが、表だっていないだけで、このやり方に賛成というわけではないはずだ。

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642名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:32:39 ID:Iajk2B0I0


( ФωФ)「矛盾している。なにか、なにがある。いまここで、我々を殲滅しないだけのなにかが」


口に出せばその考えはかちりとはまった。

不気味に沈黙し始めた、敵の様子にしっくりと来る。

ただそのなにか、が分からない。



('A`)「……潮時だな。最後のコンテナを運べたら、俺は引き上げる。この国からな」


('A`)「おまえも考えたほうがいい。まともな奴は、こんなところで生きられない」


( ФωФ)「……」


ロマネスコはしばし沈黙した。この男から愁傷な言葉を聞くことになるとは。



( ФωФ)「それは惜しまれていると、考えてもいいのか」


('A`)「そうだ」


('A`)「ここにゃなんたって、あるべきものがない」


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643名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:33:31 ID:Iajk2B0I0


('A`)「先進国のふりをしているのに、法律が機能してない」



( ФωФ)「ああ……独占禁止法、消費者法……」


('A`)「それだけじゃないさ」


ドクオはそこで初めて哀れみを見せた。諸外国から来た男の、偽りない同情。
この国の生まれでは、持ち得ない世界観。


生まれた時から、管理された肥溜めに生きる気分はどうだ?



('A`)「たぶん倫理観。豊かなのに、餓えることなんてないのに」


品物はある。作物も。輸入も頻繁で、国は、国だけは豊かだった。

ただ、下位のものが、それを入手する手だてがない。
奪うことでしか。

ドクオは当たり前のことを口にした。


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644名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:34:12 ID:Iajk2B0I0

('A`)「人が死ぬことが日課になっている」


( ФωФ)「外は違うのか」


('A`)「……少なくとも、意識はある」


( ФωФ)「意識?」


('A`)「犯罪という、意識がな」


('A`)「ここにはそれがない。」


('A`)「意識がないから、問題にさえならないだろう」


( ФωФ)「よくわからんな」


('A`)「まぁな。本当はどこかの、えらい学者さんが言うべきなんだろう」


('A`)「俺みたいなのがそう思うくらいに、この国は歪んでるんだ」



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645名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:35:05 ID:Iajk2B0I0

( ФωФ)「だから我々は戦っている。いずれ国を取り返すさ」


('A`)「……そうじゃないんだよなぁ。なんてーかさ、」


('A`)「救われたいとか、思ってないのが問題なんだよ



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646名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:38:04 ID:Iajk2B0I0






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647名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:39:48 ID:Iajk2B0I0





 ( ´_ゝ`)「そんで?」


( ´∀`)「なにがだ」


 ( ´_ゝ`)「話の続き。まだあるだろ。その重大なプロジェクトは、なぜ未完のまま放置されてたんだ?」


( ´∀`)「……なに、簡単なことさ。」


( ´∀`)「時間が足りなかったんだよ」


 ( ´_ゝ`)「そういや年数たつのを待ってたって言ってたな。なんでだ?」


 ( ´_ゝ`)「いくらでも、好きなように育てられただろうに」

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648名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:40:38 ID:Iajk2B0I0


試験管のなかのホムンクルス(人工生命)

生まれたての成人
設定され、カスタムされる身体。

年数を待つことなどない。ただ老化を促進させ、望みの姿で止めればいい。

命を弄ることに抵抗もなく。技術がありながらなぜ、行わなかったのか。

純粋な疑問を兄者が尋ねる。



( ´∀`)「まあ意識の違いだ。できるだけ自然に育つことを待っていたのだ。弄ればいろいろと噛み合わないこともある」


( ´∀`)「脳の作用や筋肉の発達、神経系の影響、成長ホルモンの過剰分泌。
メンテナンスが難しく、完全にコントロールできないのならば、やはり時間をかけてでも穏やかに進めたほうがいい」

( ´∀`)「なにせ、失敗はできないからな」


 ( ´_ゝ`)「なんで?」


間違えたのなら、やりなおせばいいのでは?


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649名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:41:24 ID:Iajk2B0I0

( ´∀`)「突然変異とは、進化だと思うか?」


 ( ´_ゝ`)「また講義?学説では、枝のように別れた可能性の一つ。ただ、それが大多数ではないかぎりに、一代のみの変種であることが前提だったような」


( ´∀`)「さすがに、よく知っている。ヒトノゲムを解析した遺伝子実験の果てに、わたしはたどり着いたのだ。」


( ´∀`)「種の起源とも言えるべきものにね」


 ( ´_ゝ`)「大袈裟な」


( ´∀`)「なにを言う。真面目に主張するさ。有性生殖を繰り返して進化してきた歴史を真っ向からひっくり返すほどの衝撃なのだぞ」


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650名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:42:11 ID:Iajk2B0I0



( ´∀`)「そも、
子を生むのが片方だけというのはじつに効率が悪いとは思わんかね?」


 ( ´_ゝ`)「男が妊娠する世界のほうが狂喜だろうがよ」


( ´∀`)「否定はしない。わたしもそう思う」


( ´∀`)「ただ少し考えてみてくれ。両性を持つ者がいたら、どうなのかと」


 ( ´_ゝ`)「両性具有、半陰陽?」


( ´∀`)「none、それは染色体に原因があるから母体のホルモンが影響する場合だ。



( ´∀`)「わたしのは違う」


( ´∀`)「哺乳類動物、ヒト科の、完全なる両性体だ」


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651名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:43:17 ID:Iajk2B0I0




 ( ´_ゝ`)「……逆に聞きたいんだけどさ」


 ( ´_ゝ`)「なんでそれがうまくいくと思ったの?」


( ´∀`)「固定概念を捨てることだ。むしろ。あらゆることに対して、うまくいく」


 ( ´_ゝ`)「生理的嫌悪は理性で抑えることはできないよ」


 ( ´_ゝ`)「第三の性別みたいなもんだろそれ」


( ´∀`)「いや、それの問題は克服ずみでもある」


( ´∀`)「ヒトに好かれる、というのは特別な才能でな。ごくまれに反発する者が居たとしても、大多数に受け入れられたならば、問題はないのだ」



( ´∀`)「悪魔的に、あれはそういうことが上手だった」

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652名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:44:34 ID:Iajk2B0I0


 ( ´_ゝ`)「ふぅん。そういや捜索すんのに具体的なこと聞いてなかったな」


 ( ´_ゝ`)「どんな奴なんだ?その成功例って」


( ´∀`)「外見ならばデータに残っているはずだ。サルベージできる。必要なのは特性か?」


 ( ´_ゝ`)「そうだな。メンタルと習性を教えてくれれば、それで範囲の特定ができるし」


( ´∀`)「ふむ……」


( ´∀`)「自らは動かずに、他人の手を使って行動する。好まれると言ったろう。そういうことに長けている」


 ( ´_ゝ`)「珍しいな。命令主体型じゃないのか」


( ´∀`)「蝶よ花よと育てあげたらな、いつの間にか人を利用することを覚えよった。逃げたのも、たらしこんだからだ」

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653名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:45:24 ID:Iajk2B0I0



( ´_ゝ`)「ああ。じゃあ潜伏先もすぐわかる。ここで居場所のない奴を匿うなんて、限られるしな」


( ´∀`)「いや。恐らく見つけるのは難しいな。たぶん庇われているはずだ」


 ( ´_ゝ`)「?愛人とかなら、新顔を検索することもできるけど」


( ´∀`)「そうではない。先も言ったが、あれは好かれるだけではないのだ。本人の特性ゆえか、そういう風に生まれたのか」


( ´∀`)「ひたすらに、ただ愛されるのだ」


( ´∀`)「愛しかたに、違いはあれどな」



 ( ´_ゝ`)「コミュニケーションレベルが高く、他人の支配がうまいってこと?」



( ´∀`)「そうだ。そしてそれは無自覚な献身に変わる」


.

654名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:46:05 ID:Iajk2B0I0




( ´∀`)「身代わりになってでも、庇ってやろうとする。あれを救うために」


 ( ´_ゝ`)「なんか精神病質者みたいだな。嘘がうまく、人に頼るのが得意で、自己中心的にしかものを考えられない」


( ´∀`)「それも、生き残るためだけにだ」


( ´∀`)「あれのために40年費やした。簡単に死なれては困る。」


 ( ´_ゝ`)「確かに、争いあってもその輪から外れていれば危険は少ない」


 ( ´_ゝ`)「しかし不思議だな。庇護される生き物に、自分からなったってこと?」


( ´∀`)「それも無意識に。そのように育ったのだ。どれほどわたしが歓喜したか、わかるだろう?」


( ´∀`)「この世で生物の頂点は人間だ。そのために、人間を攻略することとなった。これもまた進化なのだよ」


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655名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:46:56 ID:Iajk2B0I0




 ( ´_ゝ`)「外見的特徴に、特別なものは?平均的美格数値とか」


( ´∀`)「特にない。強いて言えば美形ということだが、そんなものありふれている」


 ( ´_ゝ`)「たしかに」


シリーズ、ナンバーズ、その他の人工的生命体。共通しているのは、平均的な造形があるということ。個性的な面というものは、あまりない。量産される人形たち。


( ´∀`)「昔は羽根を背中につけた愛玩生物が人気だったんだが、すぐに生産は中止になった。」


( ´∀`)「人気がいまひとつでな。鳥の習性をそっくり真似るうえに、感情表現が豊かではなかった。天使を眺めるのはいいが、懐かないということで廃棄になったんだ」


( ´∀`)「しかし耳としっぽをつけた別のシリーズを売り出したらこれが売れに売れた。やはり、犬や猫は歴史が長いぶん、人に懐きやすい」


.

656名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:48:17 ID:Iajk2B0I0




 ( ´_ゝ`)「そいつに耳やしっぽがあるのか?」


( ´∀`)「いいや」


 ( ´_ゝ`)「それなのに、好まれる」


( ´∀`)「そう。なぜか。独占もしくは支配、束縛、それから従順」


( ´∀`)「だれもが愛と呼ぶべきかもしれないことのように、ただ好まれるのだ」



 ( ´_ゝ`)「ふーん。じゃあさ、過去のケースを教えてくれよ。そこまで具体的ならなにかあるだろ?」


 ( ´_ゝ`)「うちんとこってさ、ギャングとマフィアの抗争とか多いんだけど、おかしな事件なんかは起こんないから探しやすいんだ」



死体と、犯人。

被害者と殺人者。犯人がいない、該当に値しない人物が犯人であることは滅多になく。
人が密集している地帯だからこそ、監視は多い。

人々は、事件を起こした犯人を知っている。知りながら生活している。

そこからたどれば、逃げた個体を探すのも容易だろう。

民衆に溶け込んだ手先は、いくらでもいる。


.

657名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:49:16 ID:Iajk2B0I0





( ´∀`)「……ふむ。しかしそこまで特殊なケースというものでもないが。参考になるかわからん」



( ´∀`)「研究員が一人死んでな」


( ´∀`)「調べた結果、他の個体に指示して殺させたことがわかった」


( ´∀`)「それだけだよ」



.

658名も無きAAのようです:2015/11/06(金) 23:57:31 ID:Iajk2B0I0











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659名も無きAAのようです:2015/11/07(土) 00:01:09 ID:4CVnIR9g0







(A^ν^)「……」

(A^ν^)「一止めが囮」

(A^ν^)「二度めも囮……」

(A^ν^)「じゃあ三度めは……?」

(A^ν^)「囮を使うなら、本命はどこなんだ……?」

(A^ν^)「あの人を足止めするのに、なぜわざわざ交通網を麻痺させる必要がある……」


(A^ν^)「考えなきゃ」

(A^ν^)「役に経たないと、意味がない」

(A^ν^)「生きている意味がないと、」





処分される




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660名も無きAAのようです:2015/11/07(土) 02:19:40 ID:J6HhtrFk0
支援

661名も無きAAのようです:2015/11/07(土) 14:32:24 ID:8X1zjZjc0


662名も無きAAのようです:2015/11/12(木) 18:37:05 ID:vvnmNgMYO
もののわかったスピーディーな会話好き

663名も無きAAのようです:2015/11/19(木) 03:28:03 ID:r3dbzxrw0
支援
めたくそ面白い

664名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 10:40:41 ID:tnyXgnDM0




主は来ませり
road is  come


主は来ませり
road is  come



主は
road is��


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665名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 10:41:52 ID:tnyXgnDM0


川*゚ー゚)



草木のなかで、彼女が笑っている。


背の高い鋭い先端の葉が生い茂り、彼女と自分の姿を隠す。

緑が青々と濃い。草の匂いが強い。

それは決して嫌いなものではなかった。

ひたすらに高い天井からはさんに
さんと太陽の光が降って、緑色がきらきらと輝く。



遺伝子操作によって景観のために育てられた大樹の下、体いっぱいに日光を受けるために彼女が手を広げた。

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666名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 10:42:37 ID:tnyXgnDM0

川*^ー^)



青い、碧い肌いっぱいに光を浴び、それは輪郭に沿って瞬いた。


鱗状のきめ細かな肌が美しい。

感嘆したつぶやきがこぼれる。

.

667名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 10:43:30 ID:tnyXgnDM0





「ねぇ、エヴァ……」



川*゚ー゚)「?それ、なあに」



「きみの名前」



川*゚ー゚)「あたし68だよ?」



「それは生体番号。正式ならthd068だよ。これはね、それとは別の名前」



「ぼくがでぃ、であるみたいに」



川*゚ー゚)「××××みたいな?」



「それは違う」



川*゚ー゚)「なんで?」



「きみはエヴァ。ちゃんと理由もある。ぼくみたいに変なのじゃない」


.

668名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 10:44:14 ID:tnyXgnDM0




川*゚ー゚)「えば?」



「エヴァ」



川*゚ー゚)「あたし、エヴァ?」



「そう。エヴァ、エヴァ。エヴァ」



川*゚ー゚)「なあに」



「とこしえの緑なんだって。きみにぴったりなのは、それしかないんだって思ったんだ」



Ever green 




だからその色が一番好き。




         
.

669名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 10:45:06 ID:tnyXgnDM0









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670名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 10:46:22 ID:tnyXgnDM0




“キャラバン”は停滞している。


銃器や食料、毛布や衣服。生活雑貨、歯ブラシと石鹸はどこに行っても需要がある。

それらをトラックの荷台に、人と同じように積めるだけ詰め込む。

それが現在の反抗勢力のアジト。

かつての遊牧民のように、移動をしながらその日を過ごす。


定住の地はない。

彼らはここで生まれ、どこにも行けなく、争うために生きている。

671名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 10:47:19 ID:tnyXgnDM0



国を離れたわけでないから、難民でもない。
与えられた土地を行き来していることが前提なので、国連の人為的差別の範囲にも入らない。

生まれながらのジプシー。

配給されるわずかな物品を待ち、しかしそれだけでは到底足りない。

ゆえに彼らは生きるため盗賊になる。ある側面で見ればテロリスト。

政府からは反抗勢力。国民たちからは愛すべき労働破綻者たち。

しかし彼らは、自分たちが何者であるかというこだわりがない。


ドクオにとって、それが最も奇妙であり、不気味で不可解なことだった。

迫害されている者たちは自己の潔白な主張をするものだ。


('A`)「倫理なく道徳もなく、しかし教育だけは浸透している。……バカなほうが管理しやすいだろうに……」

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672名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 10:48:11 ID:tnyXgnDM0

('A`)「先進国ゆえの怠慢か……いや、きっとそうじゃない」


('A`)「そのほうが都合がいいんだろう」


無知は染まる。簡単に。


しかし初めから色がついてさえいれば、後から上澄みを塗られても最初の染めが残っている。

苦々しい気分だ。

行こうと思えばどこにでもいけるはずなのに。それはドクオの信条でもあった。人が縛る自己意識というものは、人が作り上げた鎖である。
繋がれた意識もないままに。


('A`)「Joy to the world, the Lord is come!��
Let earth receive her King♪
Let every heart prepare Him room,��
And heaven and nature sing,��
And heaven and nature sing,��♪
And heaven, and heaven, and nature sing.





('A`)「road is  come♪……まさかもろびとこぞりてを知らない国があったとはね」


.

673名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 10:49:06 ID:tnyXgnDM0




世界で一番知られているはずの讃美歌、また書物。宗教は贅沢品だった。


信じてさえいれば救われる
たとえ地獄に落とされても。

けれどその事さえ



('A`)「……誰も知らない」





祈りの概念がのない世界



nobody knows



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674名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 10:50:07 ID:tnyXgnDM0


トラックがいくつも渋滞し、扉を解放させて品物を運ぶ。

路駐すると、そのまま店構えとなった。

物品の少ない街では物売りが直接人々に売りにくる。その商品を補給するのがドクオたちだ。

だから顔役でもあり、どこに行くにも不便はない。
顔馴染みが警備と警戒を兼ねている。気軽にドクオはストリートに出た。


似たような人々が、列を作って買い物に励んでいる。

隙間を縫うようにしてそこを通る。

警備の一人に小柄な影をみつけ、その姿に思わず声をかけた。


.

675名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 10:51:13 ID:tnyXgnDM0




('A`)「おい」


��(´・ω・`)��「あ、」



少年はぺこりと頭を下げた。
血に濡れた包帯は代えられてなく茶色い。

左肘から先がなかった。

反対の手でショルダーホルスターを持ち直し、ドクオに向かないように気をつけた。

張りつめるような雰囲気はないが、誤解があってはならない。


('A`)「……それ化膿してないか?」


��(´・ω・`)��「ううん。そんなことないよ。もう血も止まったんだ」


('A`)「だからって……もしかして止血した時のままかよ。それ」


��(´・ω・`)��「?」


('A`)「おま、ちょっとまってろ」



.

676名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 10:52:43 ID:tnyXgnDM0

人混みをかきわけるように進み、列の最初に並ぶ。

売り子に詰まれた箱を開けさせ、中からミネラルウォーターを取り出させた。

受けとると、少年の怪訝そうな顔に困惑が混じる。

ふたをあけ、子供の腕に注ごうとすると彼は慌てた。



(´・ω・`)「!そんな、勿体ないよ、水がこぼれちゃう!」


('A`)「当たり前だろ。こぼれるもんなんだよ水ってのは」


(´・ω・`)「でも、あっ!」


掴みあげ、千切れかけた包帯をほどいてから患部に注いで固まった血の塊にかけてやる。

細い腕の先端は、切断面から盛り上がり、むき出しの皮膚が赤くテラテラと光る。


薬によって麻痺させているから、痛みを感じていないだけだ。

この分だと神経も取り除かれているだろう。

わめくこともないが、しかしそれでは義手を操ることもできない。

おざなりに処置された結果だ


むっつりした顔で、ドクオは一本まるまる注ぎきり、ボトルを降る。


��.

677名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 10:54:10 ID:tnyXgnDM0

(´・ω・`)「……怒ってる?」


('A`)「なにが」


(´・ω・`)「怒ってる顔してる……」


('A`)「おまえにじゃない」


(´・ω・`)「ごめんなさい」


('A`)「だからおまえにじゃないって」


(´・ω・`)「でも、お水……」


('A`)「医療セット使うより安い。それとも注射がいいか?」


(:´・ω・`)イヤイヤ


('A`)「じゃぁ黙ってろ」


.

678名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 10:55:26 ID:tnyXgnDM0

新品のガーゼをポケットから取りだし慣れた手つきで巻いていく。

血の巡りを止めない程度のきつさで巻くと、洗いたての感触が気持ちいいのか、少年はない腕を動かしながら礼を言った。


(´・ω・`)「あのね……ちょっとすっきりした。ありがとう」


('A`)「……ああ。おまえいつ来たんだ?」


��(´・ω・`)「朝からいるよ」


('A`)「じゃあちょっと来い。俺んとこにいまおまえの姉さんいるから」


(´・ω・`)「ほんと!行く!ちょっと待ってて」


��いうと、飛び跳ねるようにして駆け出す。すぐ近くに駐屯している部隊長に許可をもらうためだ。

ドクオの名をだせば却下されるということはまずない。
彼は嬉しいそうに戻ってきた。


��(´・ω・`)「いいって!」

.

679名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 10:56:41 ID:tnyXgnDM0




この場所で女たちの仕事はひとつに限られる。

銃を持つのは男の仕事。

それを慰めるのは女の仕事。

かといって冷遇されるわけではない。むしろその優遇されていた。
守られ、貢がれ、あやされる。

逆に娼婦にさえなれない女たちは負け組だ。不器量と未発達な身体。

しかしそんな片鱗があるものは、生まれてすぐに棄てられる。




(´・ω・`)「お姉ちゃん!」


|゚ノ ^∀^)

.

680名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 10:58:18 ID:tnyXgnDM0



ベッドに横たわった女。

ドクオの住みかに専属契約している娼婦だ。いまは薬でバッドドリップ中。

1日の大半を夢を見ながら過ごしている。だからとても機嫌がいい。

売り上げの少なさに弟に当たり散らすことも減った。


(´・ω・`)「なんだかちっちゃくなった?」

('A`)「飯食わねぇんだよ」


その分薬を欲しがる。

合成麻薬を血中に流し込んだからか、顔色は青白く、肌は荒れ美貌はゆっくりと衰えていく。

もう街中に立つこともできない。

それでも彼女は幸せだろう。

口元は笑んでいる。

薄く開いた目は弟を映さない。

なにか別の、なにかを見て、幸せそうに笑っている。

少年も笑った。


(´・ω・`)「お姉ちゃん、機嫌いいみたい。大人しいけどずっとこんなだったらいいな」


力の入らない、くったりとした姉の手を持ち上げ、少年は彼女の膝に頭を乗せた。

かれが甘えることができるのは、もうこの家族しか残っていない。

.

681名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 10:59:51 ID:tnyXgnDM0


��('A`)「……おまえさ、姉ちゃんいなくなったらどうすんだ?」


(´・ω・`)「……いなくなるの?」


('A`)「もしだ。いなくなったら、どうする」


(´・ω・`)「……どうしよう。一緒に行く」


('A`)「どこに」


(´・ω・`)「うーん。わかんない。でもおんなじとこ」


少年は一応の戦闘訓練は受けており、銃の扱いも知っている。

生きていくための知恵はある。

それでもやはり、彼にとって姉の存在は絶対立った。

薬を買うために、少年兵として売り渡されたとしても。

.

682名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 11:00:58 ID:tnyXgnDM0




('A`)「違うとこ行ってみるか?腕なかったらやりにくいだろう」


(´・ω・`)「うん。でも足じゃなかったからよかった。走れなくなるとこだったもん」

��(´・ω・`)「違うところって?」


('A`)「例えば外とか」


(´・ω・`)「外?」


('A`)「この国の外。外国だ」

��(´・ω・`)「外ってなにがあるの?」


('A`)「戦争があるけど、ここよりゃましだな。内乱のほうが救えねぇ。ただ死ぬのが減る」


('A`)「EU連合の境界線にまでいけば、少なくとも人権は保証される」


(´・ω・`)「じんけん……?」


('A`)「銃で撃たれる確率が少なくなるってことだ」


(´・ω・`)「ほんと?」


('A`)「ああ。」


(´・ω・`)「うーん」



.

683名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 11:01:58 ID:tnyXgnDM0

(´・ω・`)「お姉ちゃんは?」


('A`)「姉さんも一緒だ」


(´・ω・`)「……」


(´・ω・`)「うーん……でも、いいや」


('A`)「……なんでだ?」


(´・ω・`)「だって外って銃持っちゃいけないんでしょ?」


('A`)「規定はうるさいが、所持は認められてる。ただ審査は必要だな」


��(´・ω・`)「しんさにはお金がかかるよね?」


('A`)「出してやるぞ、そんくらい」


��(´・ω・`)「でも撃つのに理由が必要なんだよ」


('A`)「そうだな」

.

684名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 11:03:25 ID:tnyXgnDM0

(´・ω・`)「なんだか窮屈だし。やっぱりいいや」


('A`)「銃は離せないか」

��(´・ω・`)「うん。これないとなんにもできないもん」


('A`)「……そうか」


��(´・ω・`)「でもさ、外の人たちってどうしてるの?」


('A`)「なにがだ」


��(´・ω・`)��「銃をあんまり使えないのって不便じゃないのかな」


('A`)「じゃないんだろ」


��(´・ω・`)「どうやって殺すの?ナイフ?それってとっても面倒なのにね」


('A`)「…………」



('A`)「殺さないんだよ」



口にした言葉はとても白々く聞こえた。


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685名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 11:05:25 ID:tnyXgnDM0











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686名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 11:06:12 ID:tnyXgnDM0






(゚、゚トソン「アレクセイ」


女が体を寄せて密着した。甘えるような仕草だったが、恋人にやるよりも家族のそれに近い。

出会ってまだ三年に満たないが心のほうは互いに熟成していた。



(゚、゚トソン「いつになったら、あたしたちは家に住めるのかしら」


( ФωФ)「もうじきだ」


傭兵の生活に定住はない。

呼ばれると移動する。追いかけると、また敵は逃げる。

常に一ヶ所に留まることが難しい。


住む場所は時に貧相で、時に豪勢だが女の望むものにはかけ離れていた。



(゚、゚トソン「毎日、同じところで寝起きしたいわ」


(゚、゚トソン「ホテルなんかいいから」


( ФωФ)「仕事があらかた片付いてからだな」

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687名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 11:07:07 ID:tnyXgnDM0





( ФωФ)「でなければ落ち着くこともできん。提携がうまくいけば、じきに土地を取り戻せる」


太くささくれた肌の指が、柔らかいものに触れるようにして女の顔を包んだ。

暖かみに女が目を細くする。

けれども不安げな表情は浮かない。



(゚、゚トソン「……協力ってあの男でしょ。信用できるの?外の人間じゃない」


(゚、゚トソン「うす気味わるい顔してる」


( ФωФ)「……たしかに信用は難しいが、信頼にはおける」


(゚、゚トソン「なあにそれ」

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688名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 11:08:15 ID:tnyXgnDM0

( ФωФ)「奴の性根がどのようかなんてのは知らんがな、奴の能力だけは買っているんだ」


女の長い髪をかき分け耳に口を寄せるとロマネスコは囁いた。


( ФωФ)「あの男は棺桶乗りだ」


( ФωФ)「それも重度の」


(゚、゚トソン「……なんなのそれ」


( ФωФ)「知らなくてもいい。だがそれが、あの男と組むに決めたひとつでもあった」


( ФωФ)「空を行く奴らというのは、たいがいみんなまともじゃない」



(゚、゚トソン「……なんだかよくわからないけど、役に立つんならそれでもいいわ」


(゚、゚トソン「取った場所は、私たちで使ってもいいのよね?」


( ФωФ)「ああ。一瞬の隙間を狙って入り込み、そこからバリケードを立てていく」


( ФωФ)「そうすればおいそれと手は出せん。この数を相手に、狙撃で片付けられるとは思わんからな」


( ФωФ)「……そして最初の非人道的行為の非難を避けるためにも、和解案を持ち込んでくるだろう。」


( ФωФ)「うまく流れに乗せるつもりだが、つかみようがないのだけが気がかりだ」


(゚、゚トソン「そう、きっとうまくいくわ。これまでもそうだったんだもの」


( ФωФ)「ああ。」


.

689名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 11:11:34 ID:tnyXgnDM0



(゚、゚トソン「……そういえばアレクセイ」


(゚、゚トソン「近頃町中で変な工事が行われているの」


(゚、゚トソン「それも計画のうち?」



( ФωФ)「工事………?」


( ФωФ)「それは一体どのような」


(゚、゚トソン「壁よ」


(゚、゚トソン「生活している周辺を囲むようにして大きな壁があるの」


(゚、゚トソン「なんのためかは、わからないけ
ど」


.

690名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 11:16:04 ID:2h5EJ0zM0








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691名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 11:17:16 ID:2h5EJ0zM0

バラバラと、鼓膜に響く轟音が聞こえる。


蜘蛛の子を散らすように、スラムの住民たちが姿を消した。

売り手たちは慌てて品物わ荷台に投げ込み避難しようと車内に戻る。

ドクオも空を仰いで警戒した。


偵察用のヘリでも、機関銃は備わっている。

撃ってきたらヘリに向かって走るつもりだった。




風圧の被弾する計算状、ヘリからの連射は遠くであるほど当たりやすい。

しかし真下は狙いがつけにくい。

人ほどの大きさならざ十分に見逃す。一つに固まって逃げる群衆と離れた遠い的。

生物的には孤立した獲物こそ狙われやすいが、この場合においては逆だった。
一度で、出来うる限り多くの獲物を。


それが人間の心理。

.

692名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 11:18:06 ID:2h5EJ0zM0





('A`)「もう巡回してやがる」


('A`)「あー、いい。それは置いてけ」


('A`)「同じのはもういくつか集めたからな」



指示に従い、売り子たちは緩和板に仕舞われた荷を持ってかけだす。

本当に大事なものだけを。身ひとつでというわけにはいかない。
命と同じだけの価値がある。

いまここで狙撃されても、抱えた荷物を落とすわけにはいかない。



ドクオは反転し、立ち止まった。
頭上のヘリに敵意は感じられない。

狙いを定められている、ということも感じられない。

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693名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 11:19:00 ID:2h5EJ0zM0

('A`)(部品は集めた。あとは精製している燃料の質をあげるだけだ)


ヘリは攻撃の気配がない。

しかし警戒を解くことはなく、下位の10人たちは一様に息をひそめ、遮蔽物に隠れた。

ドクオだけが、撃たないと確証を持って顔を出し様子をうかがう。


やがて一つのヘリの後ろから、いくつもの運搬機がやってくるのが見えた。
それにあたりをつける。

最初の偵察はこれのためだろう。


('A`)「……なんだってんだ、ありゃ」


プロペラの音が空に響きわたる。

背後にはいくつものコンテナと、剥き出しの鉄板のようなものを運ぶ飛行機が連なっている。

手を出せば、偵察用から攻撃が来ることは明白だった。


('A`)「………」

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694名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 11:19:49 ID:2h5EJ0zM0

ここに来て、反抗勢力に挑発するような運航。

しかしこれはそのためのものではない。金属のような物体は、どこまでも黒く日光を受けても反射さえしない。

物を作るには理由があり、製品を使うのには目的がある。


('A`)「……なにをしでかしやがる気だ」


低い声でうなる
ロマネスコの言った嫌な予感が胸に湧いた。


戦争において新しい情報というのはみなすべからく、不幸である。



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695名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 11:20:32 ID:2h5EJ0zM0








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696名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 11:21:25 ID:2h5EJ0zM0




(A^ν^)「……少ない」



(A^ν^)「やっぱりだ。強奪にあったコンテナのほとんどは回収できてる」


(A^ν^)「ぶちこんで、かき回したような惨状なのに、七割以上盗まれていない…」



(A^ν^)「どうしてだ。そして一体何のために、奴らはちょっかいかけてくるんだろう」



(A^ν^)「あんなにも死人をだしてるのに……」

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697名も無きAAのようです:2015/11/22(日) 11:25:26 ID:2h5EJ0zM0




兄者は死傷者数をとるに足らないものと見ているが、それは彼が彼であり、製造元の立場だから言えることだ。


ピラミッドの上からの考えでしかない


しかし見上げるものたちからすれば、信頼のできない指導者など、首を代えればいいだけのこと。

数こそが力であり暴力。


誰も死にたくない。

統率はあれど、管理されているわけではない。生きることに貪欲でそのために幼くから銃を持たされている。

そんな彼らが、死人を出してまで襲撃を続けることが解せない。


(A^ν^)「あるはずだ、目的が。
ちゃんとしたメリットが」


(A^ν^)「それを見つけなきゃ終わらない」


(A^ν^)「一網打尽になんてできない」



(A^ν^)「子供まで使ったのに、虐殺という名目があるのに、世論に訴えかけることも最低限しかしかないんだ。話題が大きくなれば、やりにくいことでもあるんだろうか……?」

.

698名も無きAAのようです:2015/11/23(月) 00:52:01 ID:AX413/eo0
この説明の少なさの心地よさですよ

699名も無きAAのようです:2015/11/23(月) 07:26:36 ID:6RBqH8P60
いつの間にこんなに進んでたのだ

700名も無きAAのようです:2015/12/24(木) 19:24:15 ID:G.aD6vsc0
面白すぎる
どんどん読ませてほしい

701名も無きAAのようです:2015/12/31(木) 01:13:28 ID:om3Yvxs60


ミ,, Д 彡




川*゚ー゚)



「ああ、エヴァ、エヴァ、なんてこと!」



川*゚ー゚)




「どうして、こんなこと……」




川*゚ー゚)「だめだった?」




「どうして?エヴァ」



川*゚ー゚)「だって触るんだもん」



「検査?少しじっとしていればすぐに終わるのに」




川*゚ー゚)「痛かったんだもん」


.

702名も無きAAのようです:2015/12/31(木) 01:14:10 ID:om3Yvxs60


「でも、エヴァ。だからってこれはダメだ。これじゃ、怒られる」



川*゚ー゚)「だって……」



「これじゃ、君が、ああエヴァなんてことを!」



川*゚ー゚)「痛いの嫌だったんだもん」



「触られるのが?」


川*゚ー゚)「うん。なんかね、足のほうに入れてくるから、すっごく痛いの」



川*゚ー゚)「嫌って言ったのにやめないの」


川*゚ー゚)「女だから、しょうがないならじっとしてなさいって」
.

703名も無きAAのようです:2015/12/31(木) 01:15:05 ID:om3Yvxs60


川*゚ー゚)「ほんとはでぃがやることだったんだよって」



川*゚ー゚)「でもでぃは“お役目”があるからできないんだって」



川*゚ー゚)「女を作ったのは男だから、なんだって」



川*゚ー゚)「痛いのや」



川*゚ー゚)「だめなの?」



川*゚ー゚)「お又痛いの、とっても痛かったの」



「エヴァ……」



なんてこと。なんてこと。


それなら、
僕がやらなきゃいけなかった
.

704名も無きAAのようです:2015/12/31(木) 01:15:48 ID:om3Yvxs60










.

705名も無きAAのようです:2015/12/31(木) 01:16:30 ID:om3Yvxs60


从'ー'从「ねえ」



声をかけられた。
振り向くとめずらしい相手が居る。


とっさに体が強ばる。
なにか危害を加えられるのかと怪しんだが、彼女にその気はないようだった。
しかし慎重に様子を伺う。



(`∠´)「どうした?乱交の受付でもするか?」


軽い口調で挑発したが、ワタナベは微笑んだままだ。


.

706名も無きAAのようです:2015/12/31(木) 01:17:12 ID:om3Yvxs60

うすく、愛想よく、品がいい。彼女の笑みには媚びがない。

だからそれなりに格を知っている顔役たちから好かれている。


見栄えのいい、上質な娼婦というものはどこからも重宝される。

こんなイかれた女でも、商売できた。

そんなワタナベが、自分に愛想を振る舞っている!面倒な事しか思い当たらなかった。
本来なら、お願いのまえに脅迫が来るはずだ。


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707名も無きAAのようです:2015/12/31(木) 01:17:54 ID:om3Yvxs60


(`∠´)「おいおい。このあいだとはえらい差があるな。俺になにか用なのか?」



从'ー'从「そう。頼みがあるの」



(`∠´)「無駄働きはしないし、前払いが条件だ」


从'ー'从「オッケーじゃあいま支払うね」


鞄に手を入れて、ワタナベがなにかを取り出す。

それを警戒しながら待った。

なにか。おかしい。


取り決めの交渉がない。

怪訝にワタナベをみるも、目があい、にっこりと笑う。

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708名も無きAAのようです:2015/12/31(木) 01:18:42 ID:om3Yvxs60


从'ー'从「はい。」


差し出されたのを受け取ろうと手を伸ばしかけて、固まった。視線はワタナベの手元から離せない。一気に心臓が冷えた。

狂った女だとは思っていたが、まさかここまでとは!



(`∠´)「おまえ……」


从'ー'从「ほら。前払いなんでしょ?さっさと取れよ」




彼女の手にあるのは、手のひらに乗っているのは信管の外れた手榴弾。

通称パイナップル。


爆発すればこの至近距離だ。

間違いなく即死する。

銃社会に慣れた者らしく、頭を覆って走りだすべきだった。


しかし相手がこの女では、それは意味がない。
背中に投げつけられる。もしくは追いかけてきて、この女と一緒に……
ぞっとする。

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709名も無きAAのようです:2015/12/31(木) 01:19:27 ID:om3Yvxs60

(`∠´)「どういうつもりだよ……」


威勢がいい声はでなかった。

ただ恐ろしい気分でワタナベを見返す。この女の気に入る返事をしようにも、まだなにも具合を聞いていないのだ。
取り扱いの簡単な女だった。いままでは。



从'ー'从「これ使ったことある?すごいよ。頭がきれいに半分吹き飛ぶの。爆弾ってさ、ちゃんと造ったらすごく上手に千切れるんだよね。こんなにちっちゃくっても」



(`∠´)「だから……、なんのっつもりだって!」��



从'ー'从「だまれ」


ぴたりと口を閉じた。手榴弾を持った手が、上下し、己の目前まで近づいたからだ。


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710名も無きAAのようです:2015/12/31(木) 01:20:15 ID:om3Yvxs60

ひっと後ずさりしそうになった。が、ワタナベは許さない。��

彼女はじつに娼婦らしく、自然に腕を絡めた。


はためにはどう見えているのか、想像してぞっとした。

客と娼婦の交渉途中。
誰も危険になど気づかない。



从'ー'从「なあほしいんだろ。これが支払いだ。受け取れよ」



(`∠´)「かんべんしろって…マジに…、俺にどうしてほしいんだよ……」


一縷の望みをかけて、そう聞いた。

殺すつもりならこんなやりとりなんてしないはずだ。

きっと。そうであってくれと強く願う。



从'ー'从「仕事をしてくれればいい。おまえの仕事だ。簡単だろ?」


(`∠´)「なにを……?」


从'ー'从「あの人がさらわれた」


(`∠´)「あの人って、あ、あの時の男か?」

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711名も無きAAのようです:2015/12/31(木) 01:21:00 ID:om3Yvxs60

ワタナベはうなずく。整った顔立ちが無機質になる。

その目の異様に澄んだ様子に、彼女の本気を見た。
NOはだめだ。適当なふりもだめだ。

使えないとわかった瞬間に、手元のこれが降ってくる。

距離を取らないと、安全な距離まで、離れないといけない。


面道ごとに巻き込まれるのも、信用されずに殺されるのもごめんだ。


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712名も無きAAのようです:2015/12/31(木) 01:21:45 ID:om3Yvxs60



(`∠´)「…わかった。調べてみるって。ただ時間が必要だからさ、少しまって」


从'ー'从「はやく」



(`∠´)「ああ。わかってるよ。でもこれって待つのが仕事だったりするからさ、連絡入ればすぐにこっちから伝えるし」



从'ー'从「はやく、はやく。あの人が壊されないうちに。汚されないうちに。手えだされないうちに。欠けないうちに、取り戻さないといけないの。」



(`∠´)「……な、わかってっからさ。とりあえず詳細おしえてくれよ。そんでいろいろ調べてさ、わかったらすぐおまえに」


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