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('A`)は異世界で戦うようです

425:2014/07/11(金) 22:33:52 ID:MuFWsT2w0

彼が口にした言葉は簡単なことだ。子供でもすぐに分かるどこまでもシンプルな台詞。けれどその奥底にある意味まではその時の彼女には知る由もなかっただけの話。

だから、彼女はそれ以上言及することはできなかった。

そんな中でも、他の子供達は当然教会の取り壊しには反対だったし、何がなんでも自分達の家を守ろうと口々に言っていた。だが、しぃは神父の言葉を聞いたときに仕方がないんだ、と諦めていた。

本当は壊されたくない。自分の二つ目の家と、家族を。

あの日の後悔はいまだしぃの心を縛っている。それでも、この教会に来たことで自分の心は少しずつ温かさに満ち溢れていったのだ。

その温かさを教えてくれたのは、共に歩んでくれた沢山の兄弟と、血の繋がりはなくとも家族とは何かを教えてくれた神父に他ならない。

そして、神父が教会の取り壊しを認めてしまった時点で子供であるしぃたちには何もできないのだ。

自分達は無力で、世間を知らない。知っているのは世界がどれだけ残酷に出来ているか、それだけのこと。

それでも、そうだとしてもしぃはその時にもっと考えて、考えて考えて考えて行動しなくてはならなかったのだろう。結果を見れば、自分達の身柄は騎士団が預かってくれたことでなんとか生きていくことができた。最低限、いやそれ以上の生活を今日までしてこれたのだから。

無知だった子供達は世界について理解を深め、自分達に出来ることが何かを知った。自分達のような悲しみに彩られた人生を送らないように誰かを救う力を与えられた。

だが、しぃを含め教会で身を寄せあって生きてきた毎日の中にあったものはもうどこにも見当たらない。

子供達の頭を撫でてくれた荒れた肌の大きな手も、名前を呼んでくれた野太い声も、誰よりも優しかったあの人はもう戻らない。

あの時には分からなかった何もかもが、成長し騎士となった彼女の深い部分で次第に重みを増していく。

出来たはずのこと、しなくてはならなかったこと、その分別がつくようになった今になってようやく、彼女は気付いてしまった。

これは自分が背負うべき業なのだと。きっかけはとても些細で、特別なことなどないありふれた過去の一つにすぎない。


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