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( ^ω^)優しい衛兵と冷たい王女のようですζ(゚ー゚*ζ
1
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 12:08:05 ID:xaL22uFs0
―――― 予告 ――――
.
713
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:15:26 ID:eEgCKf9U0
(´・ω・`)「なんだいデレ。今忙しいんだよ」
素っ気ない態度でかわされてしまう。
ζ(゚ー゚*ζ「そうなの……そんなに大変?」
(´・ω・`)「ああ、人事面でいろいろ忙しくてね」
ζ(゚ー゚*ζ「そのことで少し話したいことが」
(´・ω・`)「悪いが、人事については僕にまかせてくれ」
あまりにもきっぱりと断られ、デレも口をつぐんでしまう。
父が何を考えているのかわからなくない。
一時は良くなったと思ったのに。
以前抱いていた苛立ちを、デレはこの頃からまた抱き始めた。
714
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:16:25 ID:eEgCKf9U0
10月26日
|゚ノ ^∀^)「デレちゃんこんにちは〜」
ショボンの従妹、レモナが子どもを連れてきた。
彼女のように、お城に入ってくる貴族は近頃増えていた。
ショボンの気が変わったところに付け込んだのだろうとデレは推測した。
ζ(゚ー゚*ζ「ええ、レモナさんこんにちは」
|゚ノ ^∀^)「ずっと昔に会ったのよ? 覚えてるかしら」
ζ(゚ー゚*ζ「微かには……」
|゚ノ ^∀^)「私の息子とも一緒に遊んだりして、ああ懐かしいわあ」
その時はたまたま、彼女の息子であるヒッキーとは会わなかった。
715
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:17:24 ID:eEgCKf9U0
|゚ノ ^∀^)「ショボンちゃん、お城の手伝いならしてあげるからね」
(´・ω・`)「ああ、レモナは文章が得意なんだっけ」
|゚ノ ^∀^)「ええ、任せて!」
そういって、彼女は強く腕を握る。
とても明るい人だと、傍から見ていたデレも思った。
でも、どうせこのお城の居心地がいいからきただけの人なんだ。
他の人と同じように。
そう思うと、どうしても素直に接することができなくなった。
716
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:18:27 ID:eEgCKf9U0
11月1日
ミセ*゚ー゚)リ「こんにちは! あたらしいメイドです! ミセリといいます!」
王女の部屋にやたらと黄色い声を出す女性がやってきた。
どうも新しい専属のメイドとして連れてこられたらしい。
確かに、ひそかに次は自分と近い年齢のメイドがいいなとぼやいたこともある。
でもまさかこんなに若そうな人がくるとは。
デレは困惑しつつも、ミセリと握手を交わした。
ミセ*゚ー゚)リ「頑張りますので!」
にっこりと笑う彼女を見て、デレもまた微笑んだ。
ここ最近少しだけ不安があったので、
その朗らかなメイドの存在はデレにとってありがたいものだった。
717
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:19:29 ID:eEgCKf9U0
11月9日
久しぶりにショボンが王女の部屋の扉を叩いた。
デレが招き入れると、見たことのある衛兵が入ってきた。
( ФωФ)「衛兵隊長のロマネスクです」
猫目の男性は深々と頭を下げた。
人間にしては鋭すぎる目に、デレは若干たじろいだ。
(´・ω・`)「デレ、彼を君の護衛役にしたいんだ。
今後、外交が増えると危険も増す。そんなときは誰かに守ってもらわなきゃならない」
( ФωФ)「私からも頼れる人に呼びかけます」
ロマネスクはそう言って胸を叩いた。
( ФωФ)「衛兵見習いにもなかなか骨のある奴がいますゆえ、必ずお役に立ちましょうぞ」
衛兵見習い。
ふっと思い浮かんだのは、あの新年会で出会った若い男性だった。
718
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:20:26 ID:eEgCKf9U0
11月15日
この日は夜が騒がしかった。
お城に働きに来た魔人の中に悪い魔人がいたらしい。
そんな風の噂が流れてきた。
ζ(゚ー゚*ζ「悪い魔人……」
不穏な気持ちが湧きあがった。
このお城はどんどん魔人を受け入れている。
その魔人が全員良い人とは限らない。
ひょっとしたら人間のことを見下している魔人だっているかもしれない。
そういう人が現れるのは、とっても怖いことだ。
なかなか寝付けずに、その怖さばかりを考えていた。
719
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:21:26 ID:eEgCKf9U0
11月16日
ζ(゚ー゚*ζ「昨日の魔人はどうなりましたの?」
朝目覚めて、ミセリと出会いがしらにそう質問した。
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
ζ(゚ー゚*ζ「ほら、お城にいた悪い魔人っていう」
ミセ*゚ー゚)リ「なんのことですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「……え?」
その後、お城中の人々に聞いて回った。
昨日の魔人はどうなったのか。
ミセリだけが知らない、という可能性だってある。
でも、誰一人としてまともに答えを教えてくれる者はいなかった。
720
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:22:29 ID:eEgCKf9U0
教育係にその話をして、こっぴどく怒られたのち
デレはようやく自分の不安が正しいことを悟った。
魔人の噂をもみけしてしまうなんて。
それほど魔人を守ろうとする人が多いのだろうか。
きっと、同じ魔人は守ろうとするのだろう。
じゃあ、人間に話を聞いてみないと。
あれ
誰が人間なんだっけ。
721
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:23:26 ID:eEgCKf9U0
11月17日
お城中を駆け回った。
この前よりもはるかに真剣に。
たったひと月しかたっていない。
それなのに、もうお城の中は様変わりしていた。
ζ(゚ー゚*;ζ「なんで……みんな代わっているの」
かつて働いていた人たちの姿が見えない。
この数日でそんなにも激しい人事があったのか。
どうしてそんなことを。
少しずつ、人間だけが狙い撃ちされて、追い出されていたのか。
722
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:24:30 ID:eEgCKf9U0
ミセ*゚ー゚)リ「王女様!」
ミセリの声が聞えても、デレは部屋の扉を開けようとしなかった。
ミセ*゚ー゚)リ「どうして開けてくれないのですか!」
ζ(゚ー゚*;ζ「一人にしてちょうだい!」
ドアノブの握りしめて、叫ぶように懇願した。
ミセリも最初のうちは扉を必死に叩いていた。
困ります、出てきてください、御病気ですか。お悩みですか。
やがて、その声も静まっていった。
ミセリはどこかへ向かったようだ。
ほっとして、デレは扉の前でしゃがみこむ。
723
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:25:27 ID:eEgCKf9U0
「どうしたんだい?」
その声を聞いたのは久しぶりだった。
ζ(゚ー゚*ζ「あなたは……」
724
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:26:26 ID:eEgCKf9U0
「ずいぶん荒れているようだけど」
内容だけ見れば心配してくれているようだった。
でも、その声の軽さはどうやっても拭いきれていなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「……お父様に何を言ったの?」
相手の姿が見えないので、しかたなく天井を睨んだ。
「お城で魔人が働けるように。最初にもいったじゃないか」
ζ(゚ー゚*;ζ「でも、まさかみんなが入れ替わっちゃうなんて」
そこで、甲高い笑い声が響いた。
「そうだよ、ようやく気付いたんだね」
嬉しそうな口元が目に浮かぶようであった。
「でも僕は嘘をついていないよ。
何人働かせるかなんて言ってないもの」
725
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:27:25 ID:eEgCKf9U0
ζ(゚ー゚*;ζ「お父様がこの話をしたがらないの」
笑い声を無視して、デレは続ける。
ζ(゚ー゚*;ζ「いったい何を吹き込んだの」
「そんなことお前に教える義理はないよ」
ζ(゚ー゚#ζ「どうしてよ!」
思わず声を荒げる。
「僕らは契約以上のことはしないんだ。
まあ、個人の考え方次第だけど。とりあえず僕はそのルールに従ってるよね」
ζ(゚ー゚#ζ「ルールって……」
「でも……そうだな。言った方が面白いかもしれない」
声は小さく、「なるほど」とか、「うん」とか呟いていた。
726
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:28:24 ID:eEgCKf9U0
「じゃあ特別にルール違反して、教えてあげるよ」
愉快そうに、声は言う。
「とはいっても、簡単なことだけどね。
僕がいつでも娘の傍にいるって、言っただけ。
それでもし僕の要求を拒んだら……後はわかるでしょ?」
ζ(゚ー゚*;ζ「あ、あなたは……」
恐ろしい考えが、頭の中で渦巻きだした。
ζ(゚ー゚*;ζ「まさか私を人質にして、こんなことを」
「非常に俗っぽい言い方で気に食わないけど、うん、そういうことだよ。
君の命なんて簡単に奪えるからね。
契約している以上、僕は君の居場所がわかるから」
デレは息を吐いて、胸を手で押さえた。
心臓の拍動が伝わってくる。
なんとかしてそれを抑え込もうとする。
この魔人は自分を煽ってくる。
これにのせられちゃだめだ。
727
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:29:25 ID:eEgCKf9U0
落ちついてから、デレは話し始めた。
ζ(゚ー゚*ζ「あなたは私の願い事を利用したんですね」
「酷い言い方だなあ」
声が茶化してくる。
ζ(゚ー゚*ζ「お城に侵入するために」
「あのさ、君だって僕を利用して外に出ようとしたんだ。
他の魔人は何もしないけど、願い事に対価を求めたっていいだろ?
むしろそれが自然なことじゃないか」
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、契約を破棄します」
魔人との契約は破棄すれば無くなる。
そうすれば、魔人はもう願い事をかなえる義務もなくなる。
そう考えて、提案した。
答えはない。
何も音のない時間が流れる。
728
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:30:26 ID:eEgCKf9U0
最初に、鼻で笑う音がした。
明らかに、あの声の主のもの。
それから、弾けるような笑い声。
これまで聞いたどの甲高い声よりも耳障りなものが、デレの頭の中で暴れまわった。
思わず耳を抑える。
いくらか音は和らいだ。
それでも音量が大きすぎるのか、消しきれない。
ζ(゚ー゚#ζ「なんなんですか!」
必死で喉を震わせた。
ζ(゚ー゚#ζ「何がおかしいんですか! 言って御覧なさいよ!」
「やあ、ごめんごめん」
息切れをしながら、声が謝ってくる。
729
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:31:25 ID:eEgCKf9U0
「あまりにも世間知らずなんだなと思ってさ」
ζ(゚ー゚#ζ「……」
歯を噛みしめて、言い返したくなるのを堪えていた。
「契約を破棄するためには、僕の頭に触れていなくちゃならないんだよ」
声が淡々と述べる。
デレはそれを聞いて、唖然とする。
ζ(゚ー゚*;ζ「そんな……私はあなたが誰なのかも知らないのに」
力が抜け、目の前がぼやけてくる。
それが涙だと気付いて、デレは急いで顔を手で覆った。
こんな姿、絶対に見せたくない。
そう思ったから。
730
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:32:25 ID:eEgCKf9U0
でもどうしたらいいんだろう。
デレは必死に思考を巡らせた。
姿の見えない相手との契約を破棄するなんて。
ζ(゚ー゚*ζ「あれ」
そこでふと、気付いたことがあった。
首を上げて、口を開く。
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、じゃあ契約するときは?」
湧いてきた疑問。
それと同時に見えてくる希望。
ζ(゚ー゚*ζ「あなた、本当に私と契約したの?」
契約しなければ不思議な力は使えない。
それなのに、この魔人は不思議な力を使って自分に話しかけてきていた。
ζ(゚ー゚*ζ「もしそうなら、どうしてあなたは最初からその力を使えたの?」
731
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:33:25 ID:eEgCKf9U0
言葉が次々と出てくる。
自分の予測に乗っかって、質問を浴びせかける。
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、答えてみてよ!」
もしまだ契約していないとしたら
自分は声から逃げることができるんじゃないか。
「いや」
含み笑いもなく、声が言う。
思えばこの魔人の真剣な声を初めて聞いた。
「君とはちゃんと契約しているよ。
でも、そうだね。もっと正確に言えば、あの部屋のときに君と契約したんじゃないよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……え?」
732
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:34:26 ID:eEgCKf9U0
「僕は君と、もっと前に会っていたんだよ」
「一度、強い願いを持って魔人と触れればいいんだ。それが契約成立の方法。
君はずっと外に出たいと思っていたんでしょ? だから、僕に触れたときにちゃんと契約した」
「そこからずっと君のことを見ていたんだけど、なかなか本心がわからなくてね。
この前部屋で呟いたのを聞いて、ようやく外に出たいんだってことがはっきりとわかった」
「だから僕は出てきたんだ。この力を使って」
希望が消え、新しい疑問に変わる。
すでに会っていた?
いったいいつ?
ζ(゚ー゚*;ζ「あ、あなたなんて知らない!」
首を思いっきり左右に振る。
この声を断ち切りたくて。
733
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:35:25 ID:eEgCKf9U0
再び天井を睨みつける。
さっきよりもずっと強い目で。
ζ(゚ー゚*;ζ「そ、そうよ、どうせそれもはったりなんでしょ!」
興奮を抑えきれず、声色にありありと乗せる。
ζ(゚ー゚*;ζ「どうせ私を殺せるっていうのもはったりでしょう!
そうやって言っておけば父を脅せるから、だからあなたは――」
言葉は続かなかった。
不意に心臓が跳ね上がり、動作を中断せざるを得なくなった。
呼吸ができない。
理由はわからなかった。
口元を抑えて、デレはその場に膝をついた。
なおも気持ちの悪い感触が、腹の底から湧き出てくる。
苦しくて目も開けていられない。
734
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:36:24 ID:eEgCKf9U0
「わかった?」
声がする。
同時に、胸への圧迫感が消えた。
ウソみたいに苦しみも無くなる。
舌を出して、なんとか呼吸を整えようとした。
答えられる状況じゃない。
胸の鼓動はいまだ速い。
あのまま苦しみが続けば、どうなっていたことか。
わからない。だからこそ恐ろしかった。
「というわけで僕は君を殺せるのです」
嫌に勝ち誇った声が聞えてくる。
735
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:37:24 ID:eEgCKf9U0
ζ(゚ー゚*;ζ「……私に、こんなことするなんて……」
歯を食いしばって吐き気を我慢する。
なんとか絞り出した言葉。
ζ(゚ー゚*;ζ「こんなこと、絶対許さないから」
心臓が落ち着いてくる。
意識して深呼吸をして、言葉を重ねていく。
ζ(゚ー゚#ζ「私はこの国の王女なのよ。
こんな悪いこと、いずれは誰かに見つかって、あなたは」
「君らが本当に、王や王女だって言えるのかな」
声もまた、言い返してくる。
「言っておくけど、僕はそのうち国王だって簡単に殺せるようになるよ。
そうなれば君らは完全に僕の手のひらの上。
そんな状況で果たして君らは王族と呼べるのかな」
736
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:38:24 ID:eEgCKf9U0
ζ(゚ー゚*;ζ「…………」
答えられなかった。
でも、決して彼女は諦めたわけではなかった。
その目の光はまだ失われていなかった。
ζ(゚ー゚*;ζ「見てなさい」
静かにそう告げる。
もう声は何も言ってこなかった。
笑い声さえもない。
聞えなかったのかもしれない。
デレは机へと向かった。
いつも使っていた日記帳。
そこに今日の出来事を書きくわえた。
☆ ☆ ☆
737
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:39:26 ID:eEgCKf9U0
305年 11月17日
私はこの声の主を、『魔王』と呼ぶことにしました。
いずれ必ず倒すべき存在として。
.
738
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:40:24 ID:eEgCKf9U0
☆ ☆ ☆
12月23日
メティス城
デレとショボンはこのラスティアよりはるか西にあるこの国のクリスマスパーティに招待されていた。
国内に巨大な河川と、魔人の住処を抱える国。
人々の生活には余裕が見られる。魔人との調和と言う観点ではマルティアをも凌ぐ国だ。
メティス城にて、パーティが行われていた。
大人たちはお酒を飲み、場の空気がのぼせていく。
その会場の隅で、デレは縮こまっていた。
先程から、こっそりと声に話しかけていた。
でも何も返って来ない。
思えばいつも部屋の中でしか彼と話していない。
739
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:41:26 ID:eEgCKf9U0
もしかしたら、新しい場所では彼の声は届かないのかも。
そう思って、即席の計画を作り立てた。
メティス国に逃亡する計画。
きっと父、そしてラスティアの人々は驚くだろう。
自分の王女という身分は、それだけ人の感心を引き寄せる性質がある。
忌々しいことなのだけど。
そして逃げた後、このメティスの北にあるエウロパの森へ向かう。
世界有数の魔人の住処。
そこへいけば、悪い魔人を退治してくれる魔人だっているかもしれない。
魔王を倒す方法がわかるかもしれない。
以前、魔王に脅された王女は、口に出さないまま
心の内側でで逞しく刃向う術を考えていたのである。
740
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:42:28 ID:eEgCKf9U0
パーティ会場を見まわした。
( ФωФ)
まず、衛兵隊長が目に入った。
貴族の血も含まれているという彼。
もしそれが本当なら、魔人である可能性は低い。
ということは魔王の仲間とは言い切れない。
ただ、あの猫のような目はどうにも気に入らなかった。
ひょっとしたら、猫型の魔人が自分を騙しているのかもしれないと、デレは警戒していた。
次に、視線を移す。
ミセ*゚ー゚)リ(゚、゚トソン
従者が二人ほど見えた
トソンがミセリを引きずって、部屋の外に連れ出している。
また何かしたのだろうか。
彼女たちのうち、ミセリは確実に後から来た人だ。
よって魔人である可能性が高い。
たとえ見た目が間抜けそうでも気を抜いちゃいけない。
ただ、そのために魔王である可能性は低いだろう。
彼女と会う前にデレは魔王と会っていたのだから。
横に居る女性はトソンという。
従者のリーダーらしいが、以前に会ったことはない。
だいたい従者も激しく入れ替わっていた。
だから彼女が後から来た人だと、みんな知らないだけかもしれない。
今のところは怪しいという段階だ。
741
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:43:26 ID:eEgCKf9U0
|゚ノ ^∀^)(-_-)
次に見たのが、このちぐはぐな親子。
彼女たちもまた部屋の外へと出るところだった。
レモナがショボンの従妹というのはどうやら本当らしい。
さすがに従妹の顔を忘れるようなショボンではないだろう。
ただ、その横に居る暗い彼。
その顔は全く見覚えが無かった。
それに、ほとんどしゃべっていない。
声がわからない。これは相当怪しいのではないか。
デレはそう思って、警戒のレベルを高めていた。
( ´W`)
他にも大臣たちが何人か見られる。
彼らとて後から来た人たちだ。
魔人である可能性はもちろん高いと言える。
(´・ω・`)
最後に見たのが、父親。
魔人ではない。もちろん魔王でもない。
脅されているだけの男。
742
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:44:40 ID:eEgCKf9U0
そして
最後
一人、見たことのある青年が混ざっていた。
( ・∀・)
彼は、ロマネスクが連れてきたらしい。
骨のある若者だと言って。
そういう話に目が無いショボンは、喜んでこの若者、モララーを連れてくる許可をだした。
実際成績はトップで、来年にはもう衛兵になるのではないかと噂されていた。
いや、そのような噂はどうでもよかった。
デレはその顔を見たことがあった。
もう一年近く前、まだ魔王の声を聞く前に、彼女は新年会で彼の姿を見た。
わずかに心が躍る。
声には出さないけど、自然と見てしまう。
そんな華やかさを彼は持っていた。
ζ(゚ー゚*ζ「いけないわ」
首を振って、思考を止める。
何もモララーを見るためにここまで来たわけじゃないのだ。
ちゃんと自分がやるべきことをしなければ。
743
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:45:27 ID:eEgCKf9U0
時刻は夜の8時
ζ(゚ー゚*ζ「すみません、少しお部屋に忘れ物を」
そういって宴会場を抜け出した。
温和なメティス国の人が相手だからこそ、こんなに簡単な嘘が通じたのだろう。
すれ違う人々も、頭を下げればもう追求は無し。
外へでて、大きな三日月を見上げ、デレは一人ほくそ笑んだ。
自分の計画が滞りなく進むことに。
ζ(゚ー゚*ζ「さてと」
移動手段は考えていた。
あの白馬。
もちろん今回の外交にも連れてきている。
貴重な移動手段を、何の疑問も持たれずに連れてこれる。
デレにとっては幸運な状況だ。
あの白馬の寂しがりやな性格があってこそ、この計画は進められるのだ。
744
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:46:25 ID:eEgCKf9U0
白馬は現在、メティス城の厩舎に留められている。
そこへ向けて、進んでいく。
いくら温和な人々といっても、夜に厩舎にすたすたと歩いていけば怪しまれてしまうだろう。
だから、他の人には見つからないように、慎重に。
ζ(゚ー゚*ζ「?」
厩舎の傍で人の声を聞いた。
誰かいるのだろうか。
こっそりと、入口を覗きこむ。
真っ黒な二つの影。
体格からして大柄な男のように見えた。
こんなときになんだろう、とデレは心の内で恨み事を吐く。
その人影えおゆっくりと観察し、その頭を見たとき
ζ(゚ー゚*ζ「!」
耳があるのが確認できた。
745
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:47:29 ID:eEgCKf9U0
魔人がこんなところにいるのだろうか。
さすがに計画どころじゃないとデレは思った。
仮にも王女の白馬のいる厩舎、そんなところでこそこそと謀をする魔人。
どう考えても友好的な存在ではないだろう。
だから踵を返して引き返そうとした。
「誰だ!」
声をかけられて、咄嗟にデレは横に跳んだ。
草むらへ。
ほとんど反射的な動きだった。
勢いのままにしゃがみこむ。
心臓が早鐘を打つ。
草の陰から、厩舎の入口を眺める。
鋭い爪が見えた。
月明かりの下で、艶めかしく輝いている。
746
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:48:33 ID:eEgCKf9U0
デレは目を閉じた。
顔を下げて、腕の内側へと入れる。
「誰だ?」
また一つの声。
さきほどの魔人の声だろう。
「おい」
誰かに呼びかけているようにも思える。
もしかして自分になのだろうか。
もう見つかってる? だとしたら……
混濁する思考の隅で、空気を切り裂く音を聞いた。
叫び声がいくつかあがる。
何が起きているのかはわからなかった。
いくつかそれが続き、やがて静かになる。
747
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:49:39 ID:eEgCKf9U0
危機が去ったのだろうか。
恐る恐る、顔を上げた。
( ・∀・)「行ったか……」
先ほどとは別の意味で、言葉を失った。
宴会場に居たはずの彼が、どうして?
ζ(゚ー゚*ζ「あ、あの……」
立ち上がりざまに声をかけた。
( ・∀・)「あ、よかった」
青年は心底ほっとしたような表情になる。
( ・∀・)「いえね、あなたが宴会場を出ていくのが見えて、
帰って来ないものですから心配になって探し回っていたんです。
あなたを警護するという目的でここに来て連れてこられましたし」
748
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:50:24 ID:eEgCKf9U0
ζ(゚ー゚*ζ「探すって言ったって……どうやって」
( ・∀・)「だって、あなたこの国に来たの初めてでしょう?
知っている人も全員宴会場にいるわけだし、それで他に行くとしたら白馬のところかなと」
事もなげに、青年は言ってのける。
デレはぼーっとして、その顔立ちを見ていた。
(;・∀・)「あの、何かついてます?」
モララーが自分の顔をぺたぺたと触りだす。
それでようやくデレは目を瞬いた。
ζ(゚ー゚*;ζ「え、いや、そんなつもりじゃ!」
顔と手を勢いよく振る。
そのあと、モララーに連れられて、デレは父のもとへと向かった。
749
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:51:25 ID:eEgCKf9U0
宴会はまだ続いていた。
( ・∀・)「国王、ちょっと」
その隅で、彼はショボンを呼び出した。
(´・ω・`)「えっと、君は……」
( ・∀・)「モララーです。衛兵見習いですが、このたびロマネスクさんの推薦でこちらにきました。
王女の護衛をするためにです」
(´・ω・`)「ああ、そうだった! 御苦労さまだね。
それで、何かあったのかい?」
( ・∀・)「実は先程、王女が魔人に襲われました」
(;´・ω・`)「「なんだって!?」
途端に大きな声を出すショボン。
宴会場の賑わいが、一瞬静まる。
(;´・ω・`)「あ、ああいや、何でもないですよみなさん。
宴会を続けてください」
慌てふためきながらも、ショボンは手振りを交えて皆にそう伝えた。
止んでしまった話声が、徐々にまた始まっていく。
750
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:52:32 ID:eEgCKf9U0
(;´・ω・`)「続けてくれ」
今度は声を潜めて、ショボンはモララーに言った。
( ・∀・)「王女は少し休憩したくて宴会場の外に出たんです。
そこで怪しい男に声を掛けられ、逃げようとしたところを襲われました。
私がそこを助けました」
淡々とモララーが説明するも、その内容は事実とは異なっていた。
(;´・ω・`)「本当かい、デレ」
困惑した表情で、ショボンが確認してくる。
ζ(゚ー゚*ζ「えっと」
正しく言うべきなのか、判断に困っていた。
ふと、モララーと目があう。
彼はデレを直視して、ゆっくりと頷いた。
751
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:53:20 ID:eEgCKf9U0
ζ(゚ー゚*;ζ「間違いありません」
嘘をつくことにした。
自分が厩舎に赴いたことも何も言わず。
(´・ω・`)「ふむむ……そうか」
ショボンは唸った。
それから顔を再びモララーに向ける。
(´・ω・`)「ありがとう、モララーくん。
君はデレの命を救ってくれた。このことはいずれ、君への褒賞としよう」
(*・∀・)「本当ですか?」
モララーは目を輝かせて言う。
(´・ω・`)「もちろんだとも。君が望むものならなんだってやろう。
私が最も大事にしているデレのために尽くしてくれたのだから」
(*・∀・)「謹んで考えさせていただきます」
にやりと笑って、彼は頭を下げた。
752
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:54:21 ID:eEgCKf9U0
(´・ω・`)「怖い思いをさせてすまなかった、デレ」
ショボンは悲しそうな顔で、デレを見つめた。
(´・ω・`)「この件はあとでメティス国王に相談しておこう。
せっかくのパーティでこんな目にあわせてしまうなんて」
ζ(゚ー゚*ζ「いえ、いいんですお父様」
首を軽く振る。
ζ(゚ー゚*ζ「ちゃんとこうして優秀な衛兵見習いさんに守ってもらったのだし
何も問題はなかったのですから、いいんです。
宴会だってまだまだ楽しめますわ」
思いのほかすらすらと、デレの口からショボンを慰める言葉が出てきた。
デレ自身がそれに驚いていた。
(´・ω・`)「そうか……ありがとう、デレ。
この件は外交にも響くだろう。大事にならなくてよかった。
もしそんなことになれば、騒ぎが広まって国が荒れただろう」
さらりと恐ろしいことを述べる。
753
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:55:21 ID:eEgCKf9U0
ζ(゚ー゚*;ζ「……」
デレはショボンの言葉に答えず、ただ冷や汗を流していた。
(´・ω・`)「私はメティス国王に話してくるよ」
ショボンがその場を後にする。
宴会の向こう側へ。
後に残ったのは、デレとモララーだけ。
ζ(゚ー゚*;ζ「……良かった」
ショボンの背中を見ながら、デレは思わず呟いた。
もし自分が計画通りに行動していたらどうなっていたのだろうとふと思ってしまい、ぞっとする。
国は乱れ、国民も混乱し、きっとショボンだって今以上に忙しくなったはずだ。
自分がいなくなって、騒ぎが広まったらどうなっていただろう。
ショボンの心労はますます酷いものになっていたに違いない。
そうならなくて良かった、その思いが、思わず口をついてでてきたのだ。
754
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:56:25 ID:eEgCKf9U0
誰にもばれていないことを、ひそかに喜んでいた。
だけど、それは思い込みだった。
( ・∀・)「良かったですね」
いつの間にかデレの横に立っていたモララーが言う。
( ・∀・)「逃げ出そうとしたことがばれなくて」
ζ(゚ー゚*;ζ「え!?」
耳を疑った。
冷や汗を引っ込めるように、首を小さく振る。
ζ(゚ー゚*ζ「な、なんのことだか」
( ・∀・)「だって、あんな夜中に厩舎にいくなんて、それしかないでしょう?」
またもあっけらかんとした口調。
デレは呆然として、それから慌てて首を振る。
ζ(゚ー゚*;ζ「あの……誰にも言わないでくださる?」
755
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:57:22 ID:eEgCKf9U0
( ・∀・)「まあ、いろいろおありなんでしょうね」
モララーはそう言って、笑ってくれた。
( ・∀・)「もちろん、誰にも言うつもりはありません。
私はただ、あなたを護衛する任を果たしただけですから」
そういって、ごく自然なしぐさで、彼は身をかがめた。
その手がデレの腕に伸び、その手の甲に唇を合わせようとする。
ζ(゚ー゚*;ζ「!」
身を強張らせ、ついその腕を振り払ってしまう。
(;・∀・)「あ、ちょっとキザ過ぎましたかね? すいません」
頭をかいて、おどけた表情でモララーは言う。
( ・∀・)「あれ、王女? お酒でも飲みました? 顔が」
756
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:58:21 ID:eEgCKf9U0
ζ(////ζ「飲んでません!」
やや叫び気味に言い、デレはその場を後にした。
モララーを残して。
後ろに残されたモララーは、ただ肩をすくめるばかり。
頬の火照りを感じながら、デレは微かな光を感じていた。
あの聡明さならば、もしかしたら
魔王に対抗できるのではないか。
この胸に抱く淡い心を抜きにしても、試してみる価値はあるのではないか。
それが、王女デレと勇者モララーの出会いだった。
757
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:59:41 ID:eEgCKf9U0
―― 第六話 前半 終わり ――
―― 後半へ続く ――
.
758
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 22:00:22 ID:eEgCKf9U0
今日はおしまい。
また明日。
759
:
名も無きAAのようです
:2013/09/12(木) 22:21:50 ID:5X/2wQhw0
乙
760
:
名も無きAAのようです
:2013/09/13(金) 02:34:31 ID:Fy0LKOgQO
ζ(゚ー゚*ζは敵なのか味方なのか、過去編では味方っぽいけど
761
:
名も無きAAのようです
:2013/09/13(金) 18:59:12 ID:2tbziXDo0
乙
待ってるぞ
762
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 20:57:42 ID:.nLUMdgE0
そろそろですかね。9時からいきます
763
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:00:02 ID:.nLUMdgE0
306年 1月5日
この日は講堂に行くようにと言われました。
お父様がお触れを出したからです。
それは、モララーさんを衛兵とするとの内容でした。
先日私を助けてくれたことに、お父様がいたく感激したからです。
とはいえ、仮入隊というものらしく
モララーさんはまだしばらくあの寄宿舎で暮らすようですが。
私はお父様の隣で、彼の顔を伺っていました。
彼は努めて冷静に、お父様の言葉を受け止めているようでした。
こうして、彼は私の護衛の任に着くことを認められたのです。
不安渦巻くこのお城で、彼の存在は唯一の安心。
なんと嬉しいことなのでしょうか。
思わずあの講堂で彼に駆け寄りたかったくらい
私の心は踊っておりました。
764
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:00:59 ID:.nLUMdgE0
306年 1月10日
なんと、モララーさんが外防衛とやらに行ってしまわれました。
新人の衛兵に対する洗礼だそうです。
まだ正式じゃないのだから、そっとしておけばいいのに。
いったいあの人はどこまで私を焦らすというのでしょうか。
本当に心苦しい。
ですが負けてばかりもいられません。
幸いなことに、ひと月もすれば帰ってくるそうです。
ここは耐え忍んで、ちゃんと笑顔であの人を迎えられるようにしておかなければ。
ああ、本当に、待ち遠しい。
・
・
・
☆ ☆ ☆
765
:
名も無きAAのようです
:2013/09/13(金) 21:01:20 ID:w2CjkoeI0
わーい!待ってた!
766
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:01:58 ID:.nLUMdgE0
( ^ω^)「…………」
( ^ω^)「ここから日付が連続するお」
( ^ω^)「会いたいとばっかり……」
( ^ω^)「よほどモララー先輩の存在が大きかったんだおね」
☆ ☆ ☆
767
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:02:58 ID:.nLUMdgE0
・
・
・
306年 2月7日
モララーさんが外防衛から帰ってまいりました。
ようやくです。
私はこの日が来るのを待ちわびておりました。
立派な馬に乗って門をくぐりぬけてくる彼の姿。
その姿を見たときの感動を、私はどう表現したらいいものかわかりません。
私はもう、この胸の高鳴りが何のためによるものなのか、理解しております。
きっとお父様にばれたら大騒ぎになるでしょう。
たとえそうなったとしても、私の気持ちは揺るがないでしょうが。
・
・
・
☆ ☆ ☆
768
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:04:00 ID:.nLUMdgE0
デレとモララーが出会って、数か月が経過した頃。
世界情勢に暗雲が立ち込め始めた。
北のマルティア国や西のテーベ国でも、怪しい動きが見られていた。
ラスティア国はその二国と海と砂漠に挟まれた場所なので
その乱れの影響で世界のニュースも届きにくくなっていった。
そんな中、ショボンはますます忙しく働いていたし
デレもその空気は感じていた。
大変な父親を見て辛そうだなとは思っていた。
でも、それを申し訳ないと思いながらも、
デレは隙を見てモララーと出会っていた。
仕事の合間、護衛としての連絡の際
会っていないときでさえも、モララーのことを考えていた。
そうすることで、お城に抱いていた不安が薄れたのだ。
769
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:04:59 ID:.nLUMdgE0
魔王のこともモララーに話した。
部屋にいると聞えてくる声の話。
最初のうち、デレは魔王が人間には感知できない方法でデレのことを監視しているものだと思っていた。
だから、いつでもデレを逃がさないなどと言えるのだと。
それを、モララーは否定した。
( ・∀・)「魔人といったって、なんでもできるわけではない。
彼らの能力は一つの願い事につき一つです。それは契約した時に決まります」
( ・∀・)「その力は魔人の潜在能力で決まりますし、第一現実に起こりうる現象でなければなりません。
声はまだしも、唐突に人間の命を奪える力があるとは思えない」
( ・∀・)「いつも使っているのがその声の力だというなら
あなたを襲った頭痛や吐き気もその応用なのではないですか?」
770
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:05:59 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*ζ「……不思議な力について詳しいんですね」
( ・∀・)「昔親を魔人に襲われましてね。それで奴らについてはいろいろ調べたんです」
( ・∀・)「それに契約相手であるあなたを殺したらもう力が使えなくなりますよね?
そんなデメリットがあるのにあなたを攻撃する意味はありません」
( ・∀・)「それなのに攻撃してきたのは。
ただあなたを脅したいだけだったのではないでしょうか」
ζ(゚ー゚*;ζ「確かに……」
魔王ならばありえる、とデレも納得した。
( ・∀・)「一つ実験をしてみましょう。
魔王の能力の限界を探る実験です。
これから言うとおりにしてください」
771
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:06:59 ID:.nLUMdgE0
それから、モララーの提案通りにある実験をした。
王女の部屋にて。
ζ(゚ー゚*ζ「魔王さーん」
天井へ向けて呼びかける。
「おや、どうしたんだい、そっちからなんて」
いつものように、やや遅れてからの返事。
ζ(゚ー゚*ζ「魔王さんのばーか」
「…………はあ?」
ζ(゚ー゚*ζ「なんだか急に腹が立ったのよ」
「だからってなんで急にそんなこと」
772
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:08:00 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*ζ「だって、いっつも私のこと馬鹿にしてくるからむかついちゃって」
「だって事実じゃないか」
こうして煽ってくるのもいつも通り。
ζ(゚ー゚*ζ「もう嫌なの! やめて!」
なるべく声を荒げている様を演じた。
自分が本当に怒っていると思ってくれるように。
「はあ……あのねえ、何度も言ったけど。君のことなんていつでも殺せるの。
ほら、今でもこんなふうに――」
最後の言葉を聞き切る前に、デレは扉の方へと走り出していた。
心臓が跳ねる。
これもいつも通り。
そこで、扉を開く。
「あ!」
驚きの声が聞えてくる。
773
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:09:00 ID:.nLUMdgE0
それを無視して、外へ。
廊下にて、デレは立ち止まった。
自分の拍動を確認する。
何も以上は見られない。
声だってもう聞えてこない。
ζ(゚ー゚*ζ「魔王さーん」
逸る気持ちを抑えて呼びかけてみる。
返事はない。
ζ(゚ー゚*ζ「ばーか」
再び罵倒してみるも、やはり返ってくる言葉は無かった。
いつもならすぐに反応して、攻撃してくるのに。
774
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:09:59 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*ζ「……本当なんだ」
デレは笑みを浮かべて、そう呟いた。
モララーさんの予想通りだった。
魔王の声はデレの部屋の中でしか聞えてこない。
そしてあの攻撃もまた、デレの部屋の中だけでしか行えない。
能力を発揮できる場所が限定されているのだ。
ζ(゚ー゚*ζ「ただーいま!」
今度は元気よく言いながら、デレは自分の部屋に戻った。
すぐに舌打ちが聞こえてくる。
ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの? ちょっと外にいる人に用があったんだけど
どうしてすぐのお話やめちゃったの?」
目を細めながらデレは言った。
775
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:11:01 ID:.nLUMdgE0
「へえ……誰か来てたの」
ζ(゚ー゚*ζ「見えなかったの?」
「!! …………ああ、見逃しちゃってた」
言葉の前に空白があった。
それがはっきりわかったから、デレはますます笑みをこぼした。
ζ(゚ー゚*ζ「魔王さん、急に馬鹿にしちゃってごめんね〜」
軽やかにいいつつ、自分の席へ向かう。
ζ(゚ー゚*ζ「これからは仲良くしましょ!」
「あ、ああ……」
躊躇いがちの返事。
それっきり、声は聞えなかった。
776
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:11:58 ID:.nLUMdgE0
デレは声を出さず、ただその場で手足をばたばたさせた。
とにかく嬉しくて仕方なかった。
この煩わしい魔王を出し抜くことができたのだから。
デレは急いで紙にペンを走らせた。
魔王に対する実験結果を書くために。
魔王はおそらく声、つまりは音の能力を持っている。
ゆえに目は見えない。だから紙に何かを書いていてもばれやしない。
部屋を出てしまえば魔王の声も届かない。
だから、この部屋を避けてモララーと話せば問題ない。
あの身体を襲ってくる攻撃も音を応用したもの。
モララーはすでに、その攻撃についてひとつの仮説を立てていた。
いまだに人間の科学力が残っているテーベでの噂話。
長いこと稼働している機械の傍に立っていると、急な頭痛や吐き気に襲われるとのこと。
その原因は、機械が発している微弱な音の振動だと言われている。
攻撃をしてくる最中に部屋を出たら、攻撃はやんだ。
そのことから察するに、この攻撃は微弱な音波を応用したものに過ぎないのだろう。
黙々と紙に事物を書き込んでいく。
モララーに言われた通りに。
777
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:12:59 ID:.nLUMdgE0
ミセ*゚ー゚)リ「王女様!」
突如として扉が叩かれる。
ミセリの声が聞えてきた。
ミセ*゚ー゚)リ「ちょっとご用があるのですが!」
思わず舌打ちしてしまう。
なんて間の悪い従者だろう。
ζ(゚ー゚*ζ「ごめん、もう少しまって!」
この紙を隠さなければ、そう思った。
ミセリは魔人である可能性が高いのだから、魔王と繋がっているかもしれない。
もしかしたらこの突然の訪問も、自分を邪魔しに来たのかも。
机、そして棚を見回す。
ζ(゚ー゚*ζ「あ」
見つけたのは、使っていない鍵つきの棚。
何かしらの重要な物を入れる場所だが、いまだに使ったことはなかった。
778
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:13:58 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*ζ「ここへ……」
デレは鍵を取り出しそれを引き出す。
埃もなにもかぶっていない綺麗な空間。
そこへ紙を押し込める。
ζ(゚ー゚*ζ「あ、そうだ」
デレが次に見たのは、自分の日記帳。
あそこにはモララーのことが書いてある。
もしミセリがこれをみたら、魔王に告げ口してしまうかも。
そう思って、デレはその日記もまた棚に押し込んだ。
ミセ*゚ー゚)リ「王女様!」
ζ(゚ー゚*ζ「いきますよー」
デレは確かに鍵を回し、城をかけた。
そしてその鍵を、重たいカーテンの一番奥にある留め具にかけた。
以後、その鍵つき棚はデレの日記と秘密の手紙の隠れる専用の空間となった。
779
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:15:00 ID:.nLUMdgE0
数時間後
( ・∀・)「そうか、当たってましたか……」
お城のとある物陰にて、デレはモララーに実験の結果を伝えた。
ζ(゚ー゚*ζ「はい!」
デレは目を輝かせて言う。
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとうございます、何から何まで」
デレは深々と頭を下げ、謝辞を述べる。
モララーは手を前に出して首を横に振った。
( ・∀・)「まだ魔王の特徴がわかっただけです。
正体についてはわからないまま」
ζ(゚ー゚*ζ「でも、探してくれるんでしょう?」
(*・∀・)「それは、もちろん!」
モララーは力強く胸を叩いた。
(*・∀・)「そうしてあなたを護衛するのが私の役目ですし」
780
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:16:00 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*ζ「……嬉しい」
そう呟くと同時に、デレは頭をモララーの胸板に寄せた。
(;・∀・)「ちょ、ちょっと王女!」
慌ててモララーが手をあげ、デレの肩を押そうとする。
ζ(゚ー゚*ζ「やめて!」
急いでデレは叫んだ。
モララーの動きが止まる。
ζ(゚ー゚*ζ「……こうさせて」
今度は小さな、静かな声。
モララーの溜息が、その頭にかかった。
(;・∀・)「やれやれ、こんな姿、国王に見つかったらえらい目にあいそうだ」
そうぼやいて、ゆっくりと身を後進させていく。
建物の壁に寄り掛かった。
781
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:16:59 ID:.nLUMdgE0
モララーの手がデレの肩から離れる。
一旦空中で止まり、それからデレの背中へと回った。
デレはその感触が伝わるのをひたすらに待っていた。
その瞳が潤みだして、彼女は思わず目を閉じる。
また自分は泣こうとしている。
前にも涙を堪えたことがあったなと、そのとき思った。
でも、もうそれがいつなのかも思いだせなかった。
やがて今はもう泣いてもいいのだと気付き、感情を堰き止めるのをやめた。
涙も、声もそのまま
何も隠さずに
自然にそのような行いをするのは久しぶりだった。
デレの思考がまっさらになっていった。
ただ温かな感触だけを感じて。
☆ ☆ ☆
782
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:18:00 ID:.nLUMdgE0
魔王の能力が判明した後、デレは国王に手紙を見せた。
(;´・ω・`)「…………」
国王の部屋で、彼は冷や汗を流しながらそれを読んでいた。
後日、デレとショボンはお城の外にて向かい合い、状況を理解し合った。
ζ(゚ー゚*ζ『それじゃ、やっぱりお父様は私を人質に脅されていたのですね』
(´・ω・`)『ああ、そうだ』
声を聞かれるのを防ぐために、筆談で会話した。
ζ(゚ー゚*ζ『それじゃ、これでもう大丈夫だとわかったでしょう。
私はあのお城から出ていきます。そうすればもう魔王に襲われることもない。
お父様だってあいつを追い出すことができますよね?』
文章を見せたところ、ショボンは残念そうに頭を垂れた。
783
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:18:59 ID:.nLUMdgE0
(´・ω・`)『残念ながら、すでに時間が経ち過ぎている』
ζ(゚ー゚*;ζ「?」
首を傾げ、デレはショボンの言葉の続きを待った。
(´・ω・`)『最近、世界のニュースが届かないとは思わなかったかね?』
ようやく返ってきた言葉が質問であり、いまいち要領を得なかったため、デレは訝しんだ。
ただ、ニュースが届かないことは事実であったので、首を縦に振った。
(´・ω・`)『実はね、この国の北にあるマルティア国と、西にあるテーベ国の雲行きが怪しいからなんだ』
(´・ω・`)『魔人の力を利用することに長けたマルティアと、人間の力を今だ信じてやまないテーベは
その根本から対立するところの多い国だった。だから、近いうちに折衝があるのではと噂されてもいる。
その間に位置するこの国が、内政で動揺したらどうなるか』
(´・ω・`)『基盤の弱まっているこの国に、両国の軍隊が押し寄せてくるだろう。
ただ戦争用の地力を強めるために、ラスティアの国民はその土地を追われてしまう。
そうならないためには、毅然とした態度を示し続けなければならない』
(´・ω・`)『だから、大規模な混乱を見せる行為は政治的に良くないことなんだ。
君がお城を出ていくことも、そのひとつ。隠し通せることではないんだよ』
784
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:19:59 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*;ζ『そんな!』
デレは文字と、身振り手振りで自分の衝撃を表した。
ζ(゚ー゚*;ζ『そうでしたら、お部屋を移るのはどうですか』
(´・ω・`)『いや、そうしたら魔王に、君が何を知ったのかばれてしまう。
あのお城はすでに魔王の手下で満ちている。その場所で魔王と明白に対立してしまうわけにはいかない』
ζ(゚ー゚#ζ『それじゃ、私はこれからもずっとあそこで鳥籠の鳥を演じてなければならないんですか!!』
父親に詰め寄って、デレは睨みつけた。
ショボンは引きつりながらもペンを動かした。
(;´・ω・`)『どうしても、ということになれば逃げるんだ。
ぎりぎりまで、国民に迷惑をかけるわけにいかない。どうかわかってくれ』
懇願するショボン。
そんな姿を見ても、デレの憤りはなかなか収まらなかった。
それでも、まだ刃向うことはできる。
モララーという希望があったからこそ、まだデレは自分の感情を抑え込めることができた。
785
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:20:59 ID:.nLUMdgE0
それから日々が流れていった。
魔王の正体は掴めないまま、1年以上の歳月が流れた。
デレは14歳になり、前よりも遥かに逞しくなった。
以前はただ魔王の存在に怯えていた。
だけど最近は魔王も何もしてこない。
そもそも面と向かって対立しなければ、無害な存在だった。
第一、今はモララーという存在ができた。
信頼できる人。自分が心の内を曝け出せる人。
閉塞感を感じる環境でも、彼がいることで心に余裕を持つことができた。
彼に会うこと自体が楽しみになっていったから。
残念ながら魔王の正体は掴めないままだったが
デレは次第に問題の解決に焦らなくなった。
変わり映えは無くとも、それは幸せな日々に変わりなかった。
だから、こっそりとなのだけど
この何事もない日々がずっと続いてほしいとも思っていた。
そうは上手くいかないだろうと、心の隅ではデレも理解していたのだけど。
☆ ☆ ☆
786
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:21:59 ID:.nLUMdgE0
307年 10月5日
(´・ω・`)「デレ、話があるんだ」
国王の部屋に呼び出されたのは、夕方のことだった。
こんな風に仕事の時間に、自分にかまってもらえるのは久しぶりだったので
デレは意気揚々と部屋の扉を潜った。
(´・ω・`)「ある衛兵さんとこっそり会っているよね?」
唐突に彼の名前が出てきて、デレはきょとんとしてしまう。
ζ(゚ー゚*;ζ「……え」
(;´・ω・`)「いやね、デレがこそこそ物陰に行っているのが見えたから。
つい追っちゃって、さ」
うっかりしていたのは事実だ。
彼と会うことに関しては魔王に見つからないように、とばかり気にしていた。
だから、実の父親に見破られる時がくるかもしれないということを、考えていなかった。
787
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:22:59 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*;ζ「な、何してるの!?」
(;´・ω・`)「そりゃあ僕らのお城なんだ。気になるじゃないか。
だいたい君だって年頃の女の子なんだし、もしかしたらって」
ζ(゚ー゚#ζ「勝手なことしないで!」
鋭い目を国王に向ける。
ショボンはやや動揺したようだが、すぐに居住まいを正した。
(´・ω・`)「デレ、頼むから静かに話を聞いてくれ。
それ以上あの人に会っていたら、危険なことになるかもしれない」
その言葉を受けて、デレは目を瞬かせる。
ζ(゚ー゚*;ζ「な、何を言ってらっしゃるの?」
(´・ω・`)『いいか、良く聞いてくれ』
紙を持って、ショボンがすぐに文字を記入する。
(´・ω・`)『魔王の声はたまにこの部屋でも聞えてくる。だから筆談に移る』
788
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:23:59 ID:.nLUMdgE0
(´・ω・`)『衛兵さん、はっきり書けば、モララーが君のために努力してくれていることはもうわかった。
そこでただ君らが親密な関係になるだけなら、僕だって邪魔しようとはしない』
(´・ω・`)『でもここには魔人がいるんだ。
現に僕だって、お城で働く魔人からこの話を聞いた。ただの世間話としてだが』
(´・ω・`)『今はただのかわいい噂程度で通っている。
しかしそのうち君らが話している内容までばれてしまうかもしれない』
(´・ω・`)『魔王に仇名す人だとばれてしまう前に、彼と会うことを控えなければ』
ζ(゚ー゚*ζ『……さっぱり理解できません』
デレは口を真一文字に結んで文字を見せつけた。
ζ(゚ー゚*ζ『どうしてそんな危険があると断定できるんですか。
あの人と会ってもうすでに1年半以上が過ぎています。
その間何も起きていないのに、どうして今になって』
789
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:24:57 ID:.nLUMdgE0
(´・ω・`)『最近、魔王の声の届く範囲が広がっているからだ。
この国王の部屋以外にも、声の聞える場所が表れ始めている』
その情報は、デレの全く知らないものだった。
ζ(゚ー゚*;ζ『どうしてそんなことに?』
(´・ω・`)『おそらく……能力を使う場所として
最初にインプットしてあったのがこの私の部屋と、君の部屋だったんだろう。
だけどこのお城に粘着するうちに構造を覚え、声の伝わる範囲を拡大させてきたのではないかな』
(´・ω・`)『とにかく、油断していれば君もモララーも危なくなる。
まだ狙われていない今のうちに手を引くんだ』
ζ(゚ー゚*ζ「そんなの……」
デレはもう、紙の上にペンを動かす気力さえなくなっていた。
ζ(゚ー゚#ζ「そんなの聞きいれられるわけないでしょう!!」
叫んで、部屋を飛び出した。
魔王に聞かれようが知ったことじゃないと彼女は思った。
790
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:25:58 ID:.nLUMdgE0
辿りついたのは、いつかモララーに抱擁してもらった、あの建物の陰。
そこでただひたすら、デレは泣き続けた。
人目の届かない場所だが、それでもなお声を潜めて。
こんなの馬鹿げていると彼女は思った。
身体は自由なのに、思うままに行動できない制約があるなんて。
ただ会いたい人に会うことすらできないなんて。
妥協していた気持ちがなくなっていく。
心の内で、魔王に対する怒りが再び湧いてきていた。
必ずあの声の正体を突きとめてやる。
自分の手で、その息の根を止めてやりたい。
そんな凶暴な思いさえ抱くようになっていた。
791
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:26:56 ID:.nLUMdgE0
307年 12月27日
デレが15歳になって、暫くした頃。
モララーに通達が出された。
二度目の遠征、しかも今度は8カ月という長丁場だった。
出発の前の日、デレはショボンに許しを請うた。
どうかモララーに合わせてくれと。
ショボンは仕方ないといった表情で、二人に特別の部屋を用意した。
元々倉庫だった場所を整理した空間。
もちろん魔王の声が聞えたことも無かったし、普通の労働者だってめったに寄りつかない場所だった。
(´・ω・`)『それじゃ……僕が定期的にこの外を巡回しておくから』
デレとモララーをその部屋に入れたのち、ショボンは外に出て扉を閉めた。
鍵のしまる音。
もう中からしか開けることはできない。
792
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:27:55 ID:.nLUMdgE0
( ・∀・)『さて、と』
先に紙を見せたのはモララーだった。
( ・∀・)『遠くに行くことになっちゃったみたいです』
手短に書いて、モララーはぎこちなく笑った。
デレの方はというと、首を曲げて俯くばかり。
どうにも言葉が思い浮かばなかった。
( ・∀・)『……私はこのままお城には帰らない方が安全なんでしょうね』
不意に、モララーが自分の考えを書き始めた。
わずかばかり首を持ち上げて、デレはその文字を虚ろな目で追った。
( ・∀・)『このまま遠くへ行ったまま、帰ることを拒否すれば
私はあなたに会わなくて済む。そうすれば魔王に目をつけられることもない』
( ・∀・)『たとえ私が戻らなくても、あなたと国王は亡命するという手段がある。
国民のためになかなか使えない手段でしょうが、魔王の手から逃れるために最終的にはそうせざるを得ない。
テーベを越えてメティスにでも行けばもっと安全でしょう』
793
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:28:55 ID:.nLUMdgE0
( ・∀・)『私が戻ってくる意味なんてない。
そう思ってしまうのですが、デレ様はどうお考えでしょうか』
文字が途切れる。
デレはゆっくりと首を上げ、モララーを見た。
彼は静かにその言葉に対する答えを待っているようであった。
モララーが言うことは理解できたし、実際にそう思うこともデレにはあった。
合理的には正しい選択なのだろう。
このまま国の滅ぶのを見ながら、生き延びるという選択肢。
でも、どうしてか身体が言うことを聞かなかった。
デレは首を左右に動かす。
794
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:29:55 ID:.nLUMdgE0
ζ( ー *ζ「……帰ってきてほしいです」
ζ( ー *ζ「ちゃんとお城に帰ってきて、また私とこうして会ってほしいんです」
ペンを握れず、震える声でそう伝えた。
亡命したらもう会えなくなるかもしれない。
たったそれだけの事柄が、彼女を縛り付けていた。
( ・∀・)『……わかりました』
モララーはそう書いて、壁に寄り掛かった。
( ・∀・)『私はいつか必ずここに戻ってきます。
それで、そのときには必ずあなたを救います。奴を倒すために』
デレは、はっとする。
モララーははっきりと魔王と立ち向かう意思を示した。
自分の言葉のせいで。
795
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:30:55 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*;ζ「あ、あの…………」
口を開いて言葉を探した。
彼を思いとどめる言葉を。
ζ(゚ー゚*;ζ「……どうかさっきのこと、忘れてくれませんか」
ζ(゚ー゚*;ζ「この際私が嘘を言っていると疑ってしまってもいいです。
ほら、ここが魔王に聞かれているかもしれないのだし」
ζ( ー *;ζ「……私が本当のことを言っている保証なんて、どこにもないんですから」
ずっと自分に嘘をついてきていたからこそ、その発想が生まれた。
この場で口にすることができた。
自分は本当のことなど言っていないと、彼に思われたかった。
そうすれば彼は生きていられる。
合理的な選択できる。
796
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:31:56 ID:.nLUMdgE0
自分はいろんなものが欠けていたんだ。
デレは目を閉じて、思い返した。
母が死んだその日から、父によってお城に閉じ込められた。
そこで社交性を捨てた。
外に出たいという思いだけを募らせ、父への恨みを重ねてしまった。
そこを魔王に付け込まれた。
今、その結果として一見すると外に出られている。
でも、その実監視されている。
能力がわかっても、行動の制約があることに変わりはない。
何よりも、魔王に聞かれないためにと言葉を奪われてしまっている。
そのことがとても辛い。
自分の意見を伝えるのに、どうしたらいいのかわからない。
伝えない方がいいのかもしれない。
信じるなと言ってしまえば、どれほど楽か。
関係など断ち切ってしまえば、傷つくことなど何もないのだから。
797
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:32:55 ID:.nLUMdgE0
目を閉じているために、視界は真っ暗。
何も見えない。
自分の思考と同じ世界。
そんな世界の中で
いつかと同じ、温かさを感じた。
モララーの大きな手のひらを背中に感じ
彼の身体が寄るのを感じた。
デレの身が強張る。
でも怖くはなかった。
たとえ何も見えなくとも、何を言わなくとも構わない。
そう思えたからこそ、全てを受け入れられた。
デレの僅かな喘ぎ声が掻き消されたときにはすでに
言葉すら必要ではなくなっていた。
☆ ☆ ☆
798
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:33:55 ID:.nLUMdgE0
(;^ω^)「…………」
(;^ω^)「ここから先を読むのは、人として……」
( ^ω^) ペラペラ
( ^ω^)「……ん?」
( ゚ω゚)
(゚ω゚ )=( ゚ω゚)
(;^ω^) フゥ
( ^ω^)「もう少し、こう、流し読みで……」
☆ ☆ ☆
799
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:34:55 ID:.nLUMdgE0
308年 8月26日
モララーが帰還した。
そしてすぐに、デレと会った。
( ・∀・)「考えはあります」
こっそりと、モララーはデレにそう告げた。
( ・∀・)「この8カ月、私は状況を整理していました。
もうほとんど確証に近い考えを抱いています。
あなたにも協力していただきたい」
心強い言葉。
( ・∀・)「隙ができたらまた連絡します」
そのときはそれっきり、会話は終了した。
800
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:35:56 ID:.nLUMdgE0
308年 9月1日
ラスティア国、南の山にて事件が起こった。
テーベ国からの商人の死体が発見されたのである。
その死体は衛兵によって処理されたため、詳しい事情は国民には知らされなかった。
しかし、噂はすぐに広まった。
その人物の足取りから察するに、彼はラスティア城へと向かっていた。
しかしその人がいったい何をしようとしていたのかはわかっていない。
全てはラスティア城の衛兵により持ち去られてしまったからだ。
その商人の持ち物は、きっとお城にとって都合の悪いものだったのだろうというのが
噂話のだいたいの締め言葉となっていた。
801
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:36:56 ID:.nLUMdgE0
308年 9月13日
国王が2週間の外交に出かけた。
マルティア城に赴く、比較的規模の大きな外交であった。
前々から話し合いは続いており、その内実はデレにも知らされていなかった。
ただ、状況から察するに、テーベとも関係する事柄だろうと思われた。
最近では世界のニュースは届いてきていない。
不穏がラスティアの周囲を取り囲んでいた。
ニュースを見ることができない国民は、その状況を知る由もなかったが。
外交は戦争を避けるために行われる。
しかしそれが叶わない場合は、国民を守るために行われる。
なるべく被害を減らすために。
デレは、すでに後者の段階に至っていることを肌で感じていた。
モララーが彼女に手紙を送ったのは、その日の晩であった。
802
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:37:57 ID:.nLUMdgE0
手紙の内容を見る。
ζ(゚ー゚*ζ「これは……」
小さな言葉が口を突いて出てくる。
これくらいなら魔王に聞かれることはない。
その程度の加減はすでにできるようになっていた。
そこに書いてあった文字を見て、彼女は目を見開いた。
モララーの淡々とした字が目に映る。
『 作戦はすぐ行いましょう。
国王のいない間に、魔王を特定します。
あなたには、ある演技をしてもらいたいのです。 』
まさかこんなにすぐに動き出すとは思わなかった。
だからこその驚き。
そして、目はさらに下方へと移る。
何を演じたらいいのか、それが書いてあった。
803
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:38:57 ID:.nLUMdgE0
『 ・
・
・
まずは講堂にて
冷たい王女を演じてください。
・
・
・ 』
☆ ☆ ☆
804
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:39:55 ID:.nLUMdgE0
9月20日
南の山へ赴く前日
デレとモララー、そしてロマネスクは衛兵訓練場の近くで会合した。
どうしてロマネスクがいるのだろうとデレは不思議に思った。
だけどそれを聞く前に、もっと伺っておきたいことがある。
ζ(゚ー゚*ζ『言われた通りに演じることができていたでしょうか』
文字を見せつつ、デレは不安そうに首を傾げた。
モララーは微笑み、それからあらかじめ用意してあったメモを見せてくれた。
( ・∀・)『完璧です。これで、明日は大丈夫』
デレは安堵のため息をつく。
それからまたペンを動かし、次の言葉を綴った。
ζ(゚ー゚*ζ『それで、計画とはどのようなものなのでしょう』
真剣な視線が交錯する。
805
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:40:55 ID:.nLUMdgE0
( ・∀・)『魔王であると思われる人を連れていきます』
それから、モララーはその人物の名前を述べた。
デレは息をのむ。
ζ(゚ー゚*;ζ『そんな、まさか』
( ・∀・)『あくまでも推測です。
ただ、もしそうだとすると、あなたは国家レベルの陰謀に巻き込まれたということになりますね』
( ・∀・)『とにかくその人を連れて、我々は城下町の脱出を図ります』
脱出、という文字がデレの両眼に映る。亡命するのだろうか。
目を見開くデレ。モララーの続きを待つ。
( ・∀・)『もしその人が魔王でないならば、あなたは逃げることができます。
私が最も信頼する二人の衛兵と、このロマネスクがひっそりと護衛していますから』
モララーの指がロマネスクに向けられた。
ロマネスクは小さな咳払いをする。
( ФωФ)『恐れ多くも、王女様、私も尽力いたします。
それに私には信頼できる双子の魔人もついておりますゆえ、必ずお役にたちましょう』
魔人という言葉を見て、デレは微かに怯える。
ロマネスクは首を振って、その疑いを晴らそうとした。
( ФωФ)『大丈夫、彼らは私の地元からついてきている弟子のようなもの。
このモララーでさえ彼らのことは認めております。正しい心を持った魔人であると』
その言葉を見て、モララーは鼻で笑い、頷いた。
806
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:41:56 ID:.nLUMdgE0
( ・∀・)『私はこそこそ暗躍する魔人が嫌いなだけなんですよ。
とはいえ昔のトラウマから、魔人に対する疑いを完全には拭いきれていない。
それが私の弱さでもありますが』
そこまで書いて、モララーは首を横に振る。
こんな話を続けてもしかたない、といった様子だ。
( ・∀・)『話を戻しましょう。
もしその人物が魔王ならば、きっと私たちを襲ってきます』
( ・∀・)『ただし、あなたを直接襲うということはありません。
そんなことをすれば不思議な力を失うことになってしまいますから』
( ・∀・)『ですから、必ず他の魔人を利用しての攻撃を仕掛けてくるはずなのです。
もしわずかでも怪しい動きがあれば、私はそれを証拠として、その人物が魔王であると断定します』
( ・∀・)『そこから先は流れのまま、私は魔人と対決します。
そして私が勝ったとしても、あるいは負けたとしても、
最後には、この計画は私と言う不穏分子を消すためのものであった、と言い張ってください』
( ・∀・)『そうすれば魔王は、この旅路が逃亡のためのものでなかったと納得するでしょう。
あとは隙をついて、その人を倒せばいい。あなたは解放される』
807
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:42:55 ID:.nLUMdgE0
( ФωФ)『厄介事を消すために、私の連れの魔人が連れ添いの衛兵を眠らせます。
双子の弟の方がその能力を持ってますゆえ、できることなのです』
( ФωФ)『重要なのはその衛兵たちにそのような事件があったと理解させることです。
噂が広まれば魔王の行動は制約される。そうなると勝手にあなたを外へ出そうとはしなくなる。
あなたが外に行くことで生じる面倒な事態、正体がばれる危険をなくそうとするわけです』
( ФωФ)『魔王は外からの視線に意識を向け始め、隙が生じるでしょう。
そのときこそが、お城の内部にいる我々が奴を倒すチャンスとなるのです』
( ・∀・)『これが私の考えた計画です。
ご理解をいただけたでしょうか』
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
デレは考えた。
今、一気に見させられた計画は、確かに良くできている。
でもどうにも腑に落ちない点が一つ。
それを、ゆっくりと紙に書き出していく。
808
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:43:55 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*ζ『もし、その人物が魔王で、あなたが負けたらどうなってしまうのでしょう』
疑問を書き述べる。
モララーは腰に手を据えて息を吐き、それから一気にペンを走らせた。
翻る手。
デレの目に映る文字。
( ・∀・)『私はあなたを逃亡させようとしている悪者なのですから
魔王の側も躍起になって私を襲ってくるでしょう』
( ・∀・)『おそらくは、致命傷以上の傷を負わされます。
最悪の場合はその場で殺されてしまうかもしれません』
モララーは何事でもないというように、すらすらとペンを動かした。
そこから先へと話を進めるべく。
だけど、その動きは止められてしまう。
懐には見慣れた黄金の髪が見えた。
愛おしく弧を描いたそれらが、左右に振られる。
静かな、言葉も出せない否定。
809
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:44:55 ID:.nLUMdgE0
デレは彼の胸に顔をうずめた。
そのまま二度と動きたくないと思った。
目を合わせれば最後、彼が遠くへ行ってしまう気がしたからだ。
この場を離れれば、もう二度と彼は自分を抱擁しないだろう。
彼女はひたすら、その背中に彼の手が触れるのを待った。
彼と出会ってからいつも、彼女が涙するたびに現れてくれる温もり。
悩みを打ち明けた時も、遠征行きが決定した時も
それは優しく彼女を迎えてくれた。
だから今回も来てくれる。
この涙を止めるために。
いつだって来てくれたのだから。
そんな期待を抱くようになっていた。
810
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:45:55 ID:.nLUMdgE0
モララーの吐く息が、彼女の頂きにかかった。
空気が頭をなでる。
( ∀ )「ロマネスク」
モララーの声がする。
顔色はうかがえないものの、それは確かに彼の声だった。
彼女がずっと聴きたかったもの。
( ФωФ)「しゃべっていいのか?」
ロマネスクが怪訝そうに言う。
モララーは肩をすくめた。
( ∀ )「少しくらいなら問題ないだろ。
魔王だって、こんな衛兵だけが使う場所の隅っこのところまで
聞いてもしかたないだろうしな」
相変わらずの落ちついた口調。
彼女はその一字一句から安心を掬い取っていた。
( ∀ )「こいつを連れ出してくれ」
そんな健気な行いに、彼の言葉が止めを刺した。
811
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:46:54 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*;ζ「!?」
顔を一息に上げ、彼の顔を伺おうとする。
だけどその前に肩に力がかかり、足がよろめいた。
モララーが彼女を突き飛ばしたのだ。
デレの腕が宙をばたつく。
その腕の一端を、ロマネスクはしっかり握りしめた。
( ФωФ)「また明日、な」
ロマネスクはそうモララーに呼びかけた。
彼からの返事はない。
デレの目の前で、モララーは背をむけていた。
顔色も何も伺えない。
何も知ることはできない。
デレは困惑した。
なぜ自分は見捨てられてしまったのか。
どうして彼の手のひらは自分の背中を包み込もうとしなかったのか。
812
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:47:56 ID:.nLUMdgE0
崖を墜落する心持だった。
目の前に岩壁がある。
モララーの姿は崖の上。
何も見えないし聞えない。
手を伸ばしても届かない。
ただ下へ下へと落ちていくだけ。
誰も自分を救ってはくれない。
そんな暗い予想が一挙に彼女を包み込む。
どんな鳥籠よりも怖い暗闇。
背筋を駆け巡る悪寒が、彼女の喉を震わせた。
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