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( ^ω^)優しい衛兵と冷たい王女のようですζ(゚ー゚*ζ
1
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 12:08:05 ID:xaL22uFs0
―――― 予告 ――――
.
521
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:16:21 ID:osgyY/P20
( ゚∀゚)「……」
そのうえで、考えを巡らせる。
ブーンが何をしているのか。
自分が何をしなければならないか。
それが、月の下で起きていたもう一つの物語だった。
522
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:17:32 ID:osgyY/P20
―― 第四話 おわり ――
―― 第五話へ続く ――
.
523
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:19:20 ID:osgyY/P20
―― コラム④ 主な登場人物、及び勢力紹介 ――
〜レジスタンス(勇者)〜
・( ・∀・) モララー(死去)…………勇者
・ノパ⊿゚) ヒート…………盗賊
・('A`) ドクオ…………戦士
・( ゚∀゚) ジョルジュ…………遊び人
・lw´‐ _‐ノv シュール…………料理人+発明家
・? 現在他国に赴いている
524
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:21:20 ID:osgyY/P20
〜ラスティア城(魔王)〜
・ζ(゚ー゚*ζ デレ…………王女
・(´・ω・`) ショボン…………国王
・( ´W`) シラヒーゲ…………政務官
・ミセ*゚ー゚)リ ミセリ…………M
・(゚、゚トソン トソン…………S
・( ФωФ) ロマネスク…………衛兵隊長
・|゚ノ ^∀^) レモナ…………貴族
・(-_-) ヒッキー…………レモナの息子+引きこもり
・? 他、衛兵全員
525
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 00:23:04 ID:amoF4Y2.0
ツン…
526
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:24:49 ID:osgyY/P20
〜魔人(モンスター)〜
・ξ゚⊿゚)ξ ツン…………旅人の娘+従者見習い
・从´ヮ`从ト ???…………迷子+詩人
・? 森とか山とかにたくさんいる
〜その他〜
・(;^ω^) ブーン…………衛兵見習い
全てのグループに縁がある
しかも優柔不断なくせに人を助けたがる
その結果、どんどん泥沼へとはまっていく
新しい登場人物はそのうち追加されるでしょう。
もちろん別の勢力へ移動することもあり得ます。
物語を三幕に分けるならば、今は第一幕、状況説明が終わった段階です。
次はもう少し書きためてから臨むので、時間をかけます。
それでは。
527
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 00:28:22 ID:LztZNF4EO
自分の仕える国が人間なのに魔王側ってのは不思議だな、とにかく続き気になる
528
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 03:23:39 ID:Exbs.TpMO
ω)おつん
529
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 05:35:49 ID:P0ZKPQhcO
そうか、('A`)はξ゚⊿゚)ξを見た時に感づいてたんだな
これで序章が終わっていよいよ本編か第二幕からに期待
/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚ ゚)ヽ) これなら訴訟されることは無いな
530
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 11:04:25 ID:cbxAt3dU0
耳ありツンが可愛い
乙
531
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 16:40:47 ID:NCaUm5oM0
ξ゚撿゚)ξの口をξ゚&.#8895;゚)ξ(&と#の間の.を抜いて)にしてくれるとありがたいです。。。
おつです
532
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 19:15:30 ID:osgyY/P20
>>531
そう見えてしまっているのでしょうか?
自分のパソコンからだと問題ない状態で見えるので、どうしたらいいかわからないんですが……
533
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 19:28:26 ID:aHChWRgQ0
2chmateでは
ξ゚撿゚)ξ←口が化ける
ξ゚⊿゚)ξ ( ξ゚&.#8895;゚)ξ から.を取った)←読める
534
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 19:39:27 ID:QtwptCaI0
投下しにくいだろうし気にしなくて良いよ
535
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 23:05:25 ID:N0S1unGI0
文字化けしたツンに慣れちゃって通常のツンに違和感があるw
乙
536
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 23:53:30 ID:j4s2L9jI0
ここまで一気に読んだ
設定がすごい深いし面白い
続き楽しみにしてるが、ブーンの性格が悪い方向に動きそうだな・・・
537
:
名も無きAAのようです
:2013/09/04(水) 09:07:51 ID:79RJ37O20
iPadのSafariでツンやヒートの口が文字化けしてたがSafariだけじゃなかったのか
>>535
みたいに文字化けしたツンとヒートに慣れたから正常なのみると違和感w
538
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/04(水) 23:47:21 ID:K5seVBKE0
―― 予告 ――
.
539
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/04(水) 23:48:12 ID:K5seVBKE0
10月25日
午後6時
ラスティア城下町中央広場
秋の日は短い。
先程まで赤みがかっていたと思ったら、今ではもう深い紫色。
やがてそれも黒く染められていく。星と月の灯りだけをまばらに残しながら。
中央広場に人々は集まっていた。
高台が設置されている。
昼間の内に、お城の従者と衛兵が協力して立てた豪勢なものだ。
そこに座っているのは貴族たちと来賓の方々であった。
(´・ω・`)「拡声器ちょうだい」
中央の一際大きな椅子に座っていたショボンが、従者に手を差し出していた。
その手のひらに、錘状の筒が渡される。
ただの筒に、魔人の不思議な力が施されたもの。
ショボンはその筒の細い方を口元に寄せ、話し始めた。
(´・ω・`)「新嘗祭を始めるよーーーー!!」
540
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/04(水) 23:49:01 ID:K5seVBKE0
声が大きくなり、広場中に広がっていく。
群衆は一同に声を張り上げる。
歓声がその場に響き渡る。拡声器よりもはるかに大きな声で。
ショボンはその様子を満足げに見降ろしていた。
ショボンにとって、この瞬間はとても楽しいものだった。
拡声器を外して、従者に返す。
それから客人の方を向いた。
(´・ω・`)「いよいよですな、国王様方」
主要な参加国は二つ。
マルティア国王、テーベ国王、及びその従者であった。
541
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/04(水) 23:51:41 ID:K5seVBKE0
―― 新嘗祭とラスティア城 ――
明日木曜日の午後9時から前半
明後日金曜日の午後9時から後半を投下します。
口とかいろいろ不都合あるかもしれませんが
このまま投下を続けることにします。ご理解ください。
それでは。
542
:
名も無きAAのようです
:2013/09/05(木) 00:24:58 ID:RXmSuLvgO
おいっ、今までと同じ製作ペースじゃねぇか
今回はペース落ちると思ってたのに、まあ続き早いのは歓迎するんだが
543
:
名も無きAAのようです
:2013/09/05(木) 02:40:43 ID:rbGkzx5IO
>>542
なんなんだお前は
544
:
名も無きAAのようです
:2013/09/05(木) 13:03:26 ID:/fCDTzio0
ひとまず1話だけ見たけど、ひらがなと漢字の分量が丁度良くて読みやすいね
見習いたいもんだ
545
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 20:10:12 ID:es9erg9o0
ちょっと用事入ったので、30分から1時間程度遅れます。
546
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:21:21 ID:es9erg9o0
9時半から投下します。
547
:
名も無きAAのようです
:2013/09/05(木) 21:25:55 ID:1/FI.9xg0
よしこい
548
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:30:12 ID:es9erg9o0
10月25日
午後6時
ラスティア城下町中央広場
秋の日は短い。
先程まで赤みがかっていたと思ったら、今ではもう深い紫色。
やがてそれも黒く染められていく。星と月の灯りだけをまばらに残しながら。
中央広場に人々は集まっていた。
高台が設置されている。
昼間の内に、お城の従者と衛兵が協力して立てた豪勢なものだ。
そこに座っているのは貴族たちと来賓の方々であった。
(´・ω・`)「拡声器ちょうだい」
中央の一際大きな椅子に座っていたショボンが、従者に手を差し出していた。
その手のひらに、錘状の筒が渡される。
ただの筒に、魔人の不思議な力が施されたもの。
ショボンはその筒の細い方を口元に寄せ、話し始めた。
(´・ω・`)「新嘗祭を始めるよーーーー!!」
549
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:32:03 ID:es9erg9o0
声が大きくなり、広場中に広がっていく。
群衆は一同に声を張り上げる。
歓声がその場に響き渡る。拡声器よりもはるかに大きな声で。
ショボンはその様子を満足げに見降ろしていた。
ショボンにとって、この瞬間はとても楽しいものだった。
拡声器を外して、従者に返す。
それから客人の方を向いた。
(´・ω・`)「いよいよですな、国王様方」
主要な参加国は二つ。
マルティア国王、テーベ国王、及びその従者であった。
☆ ☆ ☆
550
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:34:03 ID:es9erg9o0
―― 新嘗祭とラスティア城 ――
.
551
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:36:03 ID:es9erg9o0
1時間以上後
ラスティア城8階
王女の間の前
( ^ω^)「…………本当に僕一人で守っているお」
彼以外の警備はいない。
魔人や、彼らの仕掛けた罠によって、お城の上階は守られている。
ブーンが眺めているのは赤い絨毯の敷かれた廊下。
脇には数本のろうそくしかなく、等間隔ではあるものの、薄暗い。
その光景はブーンの寂寥感を増幅させていった。
王女はこんな寂しいところにいるのかと思い、身震いする。
確か以前よりも彼女は人々と触れ合うようになったと聞いていた。
でも、今現在も彼女はあまりイベントに参加しない。
町が賑やかな時、彼女はこの薄暗いお城の中。
どうしてこんなところに籠るのだろう。
もっと町の人と触れ合いたいとは思いたくないのか。
( ^ω^)「……あ、時間」
ブーンは廊下にかけられた時計を確認する。
約束の時刻まで、あと30分弱。
それまでに、彼は一旦お城を出て、北西の門に外側から向かわなければならないことになっていた。
552
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:38:03 ID:es9erg9o0
それが、お城にレジスタンスを迎え入れるための作戦の開始。
上手くいかなければ、その時点で終わってしまう。
結局、そこまで上手い方法が見つかったわけでもなかった。
ちょっとでも疑われたら終わってしまうかもしれない作戦。
だからなおのこと、細かいところで失敗してはならない。
ブーンは緊張を感じていた。
でも、その緊張を心地よいと感じていたのも事実だ。
彼は変わり始めていた。
引っ込み思案な性格だったのに、レジスタンスに入ってからはやたらと提案をしている。
その心境の変化の裏側には、どうにかしてモララーの無念を晴らしたいという思いがあった。
だけど、そのためには魔人と対立しなければならない。
そして魔人と対立できない理由が自分にはできてしまった。
正体を明かしたツンの姿が瞼の裏に浮かぶ。
長いこと友達として一緒に過ごしていた。それなのに全く気付いていなかった。
だからこそ、ショックは大きかった。
553
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:40:03 ID:es9erg9o0
ツンの意見は限界まで聞きいれる。
一方で自分はレジスタンス。
板挟みの中、彼はこの活動に参加するかどうか迷っていた。
でもここまで計画を練っていた以上、せめてこの潜入計画だけは成功させたい。
そこから先は考えていない。ひょっとしたらやめるかもしれない。
とりあえず今はこっち、という妥協。
いつまでも妥協が上手くいくとは限らないが、とにかく今は迷いを胸に潜めた。
だいたい、潜入作戦は魔人とは関係ない、モララーの遺品のためだ。
それは自分のためでもある。ツンを傷つけることにはならない。
だから、これくらい許してくれ。
ブーンは内心でそう訴えかけていた。誰に聞かれるわけでもない訴え。
人間一つか二つ隠し事はあるんだ。
全部を誰かに告白しなきゃならないってわけじゃない。
取捨選択して体面を繕っていく、それくらいいいはずさ。
その結論は開き直りとも言えたかもしれないが、、ブーンはそれ以上悩みたくなかった。
むしろ今この場で企んでいることがツンにばれないかという方を心配するべきと思おうとした。
554
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:42:03 ID:es9erg9o0
( ^ω^)「……はあ」
ひどく草臥れた溜息を一つ。
まるで老人になったみたいだと、心の隅で自分を評価する。
それから時間が過ぎた。
7時20分になる。
目を閉じて、軽く伸びをするブーン。
そろそろ動かなくては。
そう思い、王女の部屋の扉を振り向く。
( ^ω^)「王女様、相談したいことが」
ζ(゚ー゚*ζ「なあに?」
すぐに返答がくる。
それは確かにデレの声だった。
555
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:44:05 ID:es9erg9o0
( ^ω^)「少し階下に忘れ物をしてきたんですお。
取りに行ってもいいですかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「あら! そうなの?
……どれくらいで戻って来れる?」
( ^ω^)「えっと、お城も広いし、罠も避けて歩かなきゃなんで
20分以上かかってしまうかもしれないお」
ζ(゚ー゚*ζ「そんなに……まあ、でもしかたないわね。
構いませんよ。たぶんこのお城も無事でしょうし」
ブーンはほっと息をついた。
デレの顔色はわからないが、少なくとも許しはもらえた。
これから急いでレジスタンスのみんなの元へ向かおう。
( ^ω^)「……はいですお。
ありがとうございますお」
556
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:46:03 ID:es9erg9o0
見えもしないのに、頭を下げる。
足早に立ち去っていった。
罠の位置は事前に聞いていたので、注意をしながら進んでいかなければならない。
この情報も早いところ彼らに伝えなきゃならないと感じていた。
もう、廊下には誰もいない。
少なくとも人間は。
彼がいなくなった扉の内側には、しっかりとデレがいた。
彼女はそのとき、真剣な顔つきでいた。
ζ(゚ー゚*ζ「……行ったわね」
扉に寄せていた耳を離す。
その鋭い眼光は、まっすぐに窓を捉えていた。
557
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:48:01 ID:es9erg9o0
☆ ☆ ☆
7時半
ラスティア城北西門
この場所は通常、あまり使われない。
南側の坂の下にある城下町からは遠かったからだ。
門の回り自体も木々が生茂っており、見た目からして鬱屈としている。
そのためこの門は衛兵が非常時に使う門となっていた。
簡単に言ってしまえば、防衛は一番薄い。
新嘗祭の日に使うなんて思ってもいなかったから。
それこそが狙い目であった。
(√・A・)「ああ……なんで新嘗祭なのにこんなとこの門番やってなくちゃならなんだろう。
籤運が悪かったなあ、俺も花火見たかったなあ、ちくしょう」
ボヤいている警備の衛兵。
つまらなそうに石ころを蹴っている。
意識が低いのは明らかだ。
(√・A・)「……ん?」
その彼の目に、三人の人影が見えた。
558
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:50:00 ID:es9erg9o0
( ^ω^)「こんばんはですお」
集団のうち、先頭を歩いていたブーンが言う。
(√・A・)「やあ、こんな夜中に何の用だい?
見たところ君らは衛兵のようだけど……」
衛兵は三人の姿を眺める。
三人とも、衛兵の基本装備を纏っていた。
ブーンの後ろの二人は大きな筒を持っている。
( ^ω^)「実は国王の頼まれごとで、こっそりお城にはいらなきゃならないんですお」
(√・A・)「頼まれごとだって? なんだろう、それにどうしてこの門から?」
若干訝しみながら、衛兵が連続して質問する。
ブーンは大きく頷く。
( ^ω^)「見た方が早いですお」
そう言って、ブーンは後ろの二人に合図を出した。
二人は門の横に移動する。
そして筒に手をかけ、両脇に引いた。
それは筒ではなかった。
広げてみれば、それは巨大な平たい物体となる。
559
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:51:59 ID:es9erg9o0
それは門の外から内側へと広がった。
(*^ω^)「今日の記念の旗ですお!
これをお城に運ばなきゃならないんですお。
秘密のことなので、みんなには内緒、だから正門を通るわけにいかなかったんですお」
楽しそうに、ブーンが説明する。
衛兵はやや慌てていた。
(√;・A・)「お、おいおいこんなところで広げるなよ」
(;^ω^)「え? あ、すいませんでしたお!」
(√;・A・)「謝らなくてもいいけど、ほら入っていいから畳んで」
(;^ω^)「わかりましたお。おーい、もういいお」
二人の男が、少しずつ旗を丸め始める。
ややぎこちない動き。
はた目から見れば、大きな旗を扱うのに苦労しているだけのように見える。
衛兵は気付いていなかった。
その旗の後ろ側で、二人の女性がこそこそと門を通過していたことを。
その女性たちは内側にある物陰にさっさと隠れた。
衛兵はブーンと話しているため、気付かないまま。
560
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:54:17 ID:es9erg9o0
(√・A・)「はい、それじゃあね」
( ^ω^)「まかせましたお。
そういえばさっき道でちょっと不審な人を見かけましたお」
(√・A・)「なに、本当か!?」
( ^ω^)「ええ、なんだか挙動不審で。
少し歩いて見てきた方がいいかもしれませんお」
(√・A・)「そうか……ありがとう。
お祭り成功させてくれよな」
衛兵はそう言って、素直に道を進んでいった。
もちろん遠くまでいくわけでもなく、少し見回ったら帰ってくるのだろう。
でも、わずかな時間で十分だった。
( ^ω^)「よし、入るお」
そう、二人の男に言う。
( ゚∀゚)「旗はどうするんよ」
('A`)「隠しとけ」
旗を抱えていたのは、ドクオとジョルジュ。
561
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:56:02 ID:es9erg9o0
彼らはやがて、女性が潜んだ物陰へと歩いて行った。
ノパ⊿゚)「お見事」
lw´‐ _‐ノv「上手く言ったな」
物陰から、ヒートとシュール。
(;^ω^)「いい衛兵で助かりましたお」
軽く頭をかく。
( ^ω^)「さて、今のうちに入りましょうお。
そろそろ僕は持ち場に戻らなければなりませんお」
門まで走って向かい、その錠を開ける。
重たい鉄の扉が動き、中へと繋がる道が見えてくる。
最初の作戦が上手く運んだことを、ブーンは心の中で喜んでいた。
幸先は良い。
迷ったりすることもあった。でも今は、自分に運が向いている。
今はひとまずこの作戦のことを考えよう。
レジスタンスの仲間たちを、国王の部屋へ連れて行くんだ。
( ^ω^)「こっちですお。僕が誘導しますお」
ブーンが大きい手振りで招き入れる。
こうして潜入が始まった。
562
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:58:04 ID:es9erg9o0
('A`)「……ううむ」
入ってすぐに、ドクオが呻いた。
鼻を抓って見るからに嫌そうな顔をする。
(;^ω^)「どうしたんですかお?」
('A`)「いやな。大したことじゃないんだ。
前々から思っていたことなんだけど……」
ドクオの目線がお城中に向けられていく。
城の内壁、燭台、蝋燭、絨毯、飾りの鎧に部屋への扉
('A`)「このお城、なんだかすごく鼻にくるんだ。
それも年々強くなっていってる」
ノパ⊿゚)「魔人かい?
でも実際お城の中で働いている奴もいるんだし
多少は仕方ないんじゃない?」
('A`)「…………だといいんだけど」
そう言って、ドクオは首を振る。
気合を入れなおしたのだ。
563
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:00:00 ID:es9erg9o0
('A`)「ぐだぐだ言ってしまってすまない」
( ^ω^)「いや、仕方ないですお。
きっとそんな鼻があった方が役立ちますお。
罠とかを仕掛けるのも魔人ですし」
('A`)「そうか。ありがたい話だ。
先へと進もうか」
ドクオを先頭にして一行は進んでいく。
ラスティア城。
衛兵見習い程度では下の階しか行ったことこの無いお城。
貴族以外の誰も、その全景を見たものはないという。
☆ ☆ ☆
564
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:02:01 ID:es9erg9o0
潜入してからも、暫く大事は起きなかった。
魔人の罠といえども、場所がわかっていれば怖くはない。
( ^ω^)「あ、そこ」
例えば、とある廊下。
( ^ω^)「そのあたりの床板踏むと槍が落ちてきますお」
( ゚∀゚)「え、どこどこ?」
(;^ω^)「あ、歩くなって!」
足をちょいちょいと地面に触れていくジョルジュを、ブーンが取り押さえる。
つまらなそうにむくれるジョルジュを無視して、脇道を指した。
( ^ω^)「そっちが正しい道ですお」
こんな風にして、大抵の罠は回避することができた。
そうして、5階まで彼らは進んでいった。
565
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:04:00 ID:es9erg9o0
ラスティア城5階
この階の構造は特殊であった。
( ^ω^)「ここはちょっと説明しなきゃなりませんお。
僕も今日初めて知らされたんですけど、ここには5つの大部屋があるんですお。
それが階の四隅と中央にある部屋なんですお」
( ^ω^)「四隅の部屋には階段があって、それを登れば貴族の部屋に続くんですお。
そして中央にある一際大きな部屋が、お城の中心にある塔へと伸びる扉ですお。
国王の部屋と王女の部屋はその中央の塔の中にあるんですお」
('A`)「じゃあ、俺たちはその中央の塔を登る必要があるんだな。
ブーンも王女の部屋の警備に戻らなきゃいけないんだし、一緒にいけるんだろ?」
( ^ω^)「それが……ちょっと中が複雑でして
6階に辿りつくと分岐があるんですお。
王女の部屋へ行くなら左、国王の部屋へ行くなら右、だから6階より先にはお別れですお」
ノパ⊿゚)「じゃあ、そこから先の罠の場所はわからないよってことか」
(;^ω^)「そうなんですお。僕は王女の部屋へ行く罠しか聞かされていないんですお。
だからこれ以上は、ちょっと役には立てないかなと……」
( ゚∀゚)「いや、俺は一向に構わないぜ」
566
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:06:01 ID:es9erg9o0
ジョルジュが一層にやりと笑った。
( ゚∀゚)「避けてばっかりでつまんなかったからな。
やっぱり潜入するからには楽しくやらなきゃだからよ」
lw´‐ _‐ノv「ああ……不安だ」
シュールの呟きもまったく聞えていないようであった。
(;^ω^)「ま、まあみなさんなら無事だと信じていますお」
('A`)「俺の鼻もあるんだ。協力すればなんとかなるだろう」
ノパ⊿゚)「ブーンは早く王女のところへ行ってなよ、怪しまれたらいけないし」
( ^ω^)「それなら……みなさん頑張ってくださいお!」
一行は中央の部屋に向かい、扉を開いた。
部屋の中には、幅の広い螺旋階段の登り口が一つだけある。
人ならば軽く5、6人並ぶことができる広さだ。
赤い絨毯が敷かれており、奥の方は道の蛇行のために見ることはできない。
567
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:08:00 ID:es9erg9o0
螺旋階段の壁には蝋燭が飾られていた。
金属質の燭台の上で、炎が等間隔で揺らめいている。
雰囲気は暗い。
煌びやかな雰囲気のあった5階から下とは違う、薄暗い道。
( ゚∀゚)「なんでこんなに暗くするんだろーな」
( ^ω^)「お城は暮らすための場所ってわけじゃないからだお。
ずっと昔は、お城は戦争の拠点として使われていたんだお。生活よりも、攻め込まれないことの方が大事。
今は趣があるからってそのお城を再活用しているだけで、貴族や王族の部屋以外はそこまで気を使っていないんだお」
('A`)「戦争していた時代か……今じゃ想像もできないな」
ドクオが呟く。
おそらく彼は単純に考えたことを述べただろう。
常に今の自分たち人間の立場を考えている彼の発想。
その言葉を聞いて、ブーンはふと思いついたことがあった。
聞いてみたいことが生まれた。
568
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:10:01 ID:es9erg9o0
( ^ω^)「ドクオさんは……戦争についてはどう考えているんですかお?」
魔人が来て、世界が変わった。
一番変わったのは、大掛かりな戦争が無くなったことだ。
不思議な力を使えば、契約をした個人個人が戦争の大局を変更できる。
だから魔人を活用した戦争はできなくなり、人間同士の戦争も簡単に治めることができた。
それが魔人の功績だと称える人も多い。
安心して平和を享受する理由でもある。
その一方で、魔人に反対する人たちはその功績をどうとらえているのか。
魔人の有用性を無視するわけにはいかないんじゃないか。
質問の裏にあるのは、その疑問だ。
(;'A`)「…………」
返事がすぐにはこない。
いつもなら歯切れよく、一般論まで交えて演説してくれるのに、どうしたのだろう。
ブーンは小首を傾げる。
569
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:12:00 ID:es9erg9o0
それから考え直した。
ここはもっと率直に質問した方がいいんじゃないかと。
戦争が無くなったという、魔人の功罪についてどう考えているのかと。
口を開く。
( ^ω^)「それじゃ、戦争が無k――」
けれど、途中で切れてしまう。
返事があったのではない。
背筋に悪寒が走ったからだ。
誰かに強烈に睨まれたような感じ。
(;^ω^)「!?」
首を振り、あたりを見回す。
誰かに見つかったか? いや、そんなものはないはず。
この螺旋階段に、そんな隙間はないはず。
じゃあ、誰が自分を睨んだんだ。
570
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:14:08 ID:es9erg9o0
('A`)「? どうした」
ようやくドクオが言葉を返してくれた。
ただ、もうブーンにはそれに答える意識は無かった。
(;^ω^)「い、いえ……」
曖昧に答える。
確証があるわけじゃない。
睨まれたのが事実かどうかもブーンにはわかっていない。
視線を感じたというただの思い込みかもしれない。
気になるが、それにとらわれすぎても良くないだろうと考えた。
下手に場を擾乱させるべきじゃない。
ここまで上手くいっているんだから。
(;^ω^)「何でもないですお」
不思議そうに覗きこむドクオの顔に向けて、ブーンは小さく首を横に振った。
( ゚∀゚)「さ、6階についたぞ」
ブーンの後ろにいたジョルジュが言う。
571
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:16:00 ID:es9erg9o0
( ^ω^)「お、本当だお。良かったお」
ほっとする。
緊張から解放された気がした。
ノパ⊿゚)「先に上歩いてるんだから気付けよなー」
わずかばかりの笑い。
その隅で、ジョルジュが笑っていなかったことに、誰も気づいていなかった。
☆ ☆ ☆
572
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:17:58 ID:es9erg9o0
中央広場
開始からすでに時間は経過している。
噴水の周りで光が爆ぜる。
町の技術者たちによる盛大な出し物が行われようとしていた。
ショボンは台座から降りている。
歩み寄っていく先は来賓の席。
(´・ω・`)「楽しんでいただけていますかな」
来賓の席は二つあったはずだが、一人はいなくなっていた。
仕方なくもう一人の方へ話しかける。
その来賓の老体は、しょぼくれた口を釣り上げて笑い返した。
やけに綺麗な歯並びが覗かせる。
/ ,' 3「ああ、見ていて愉快ですぞ。ショボンくん」
ラスティア国王を君付けで呼べる人。
そんな人はこの世に一人しかいなかった。
ショボンもまた、微笑み返す。
(´・ω・`)「それは良かった。マルティア国王様」
573
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:20:02 ID:es9erg9o0
最後の言葉を聞きうけて、老体は「いやいや」と首を左右に振る。
/ ,' 3「この国いるときは、国王なんて称号はいらんぞ。
せめて名前で呼んでくれないかの。スカルチノフと」
ショボンは若干気まずそうな顔をして、それから言い直す。
(´・ω・`)「これは、失礼しました。スカルチノフ様」
/ ,' 3「様か……まあよい」
スカルチノフはショボンから目を離し、手元の果実に手を出した。
そのひとつを取り、口に運んで一気に齧る。普通の老人にはできない芸当だ。
飛沫が飛んでも、スカルチノフは一向に気にしない。
その歯が全て不思議な力による強化仕様だということは、ショボンももちろん知っていた。
たかが歯を強くするためにも力を使ってしまう。
魔人使役についての先進国、マルティアの国王そのものだった。
/ ,' 3「話は聞きいれてくれたかな」
果実を見たまま、スカルチノフは言う。
もちろんその言葉はショボンに向けられた言葉だ。
574
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:22:18 ID:es9erg9o0
(;´・ω・`)「…………さすがにそのような一大事、簡単に聞きいれるわけにはいきません」
ショボンは努めて慎重に言った。
スカルチノフは残念そうな顔をする。
/ ,' 3「君なら早々に決断してくれると思ったんじゃがの」
(´・ω・`)「すいません。こちらとしても、マルティア国に対する恩は深いのですが
なにせ自国の政治に関わることですから」
/ ,' 3「……人による政治がそんなに必要かの?」
(´・ω・`)「え?」
ショボンの疑問の声に答える前に、スカルチノフは溜息をついて、椅子の握りに肘をかける。
両の手を交差して、その上に顎を乗せた。口がぽかんと開く。
/ ,' 3「人は争うぞ」
短いフレーズ。
/ ,' 3「魔人が来る前、人は戦ってばっかりだった。
いや、むしろちょうど人々が国家レベルで結集しようとしていた頃に魔人が来た。
だから世界は踏みとどまることができたんじゃ」
575
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:24:06 ID:es9erg9o0
/ ,' 3「もしあのまま時が進んでいたら、世界は火の海になったじゃろうな」
さらりと恐ろしいことをいう。
ショボンはそのような世界を一瞬想像して、すぐにかき消した。
渋い顔をする。
(´・ω・`)「見てきたように言うんですね」
/ ,' 3「見ていた人たちの頃から受け継がれてきていた物語じゃからのう。
むしろ君たちの国にはこんな話はないのかな」
(´・ω・`)「あいにくできてまだ日が浅い国でして」
「ふん」とスカルチノフは鼻を鳴らす。
侮辱の色はあったが、ショボンは動揺することなく話を聞いていた。
見た目では、だが。
/ ,' 3「まあよい。
本当はわかっておるんじゃないかな、わしが何を言いたいか」
品定めするような目が、ショボンに向けられた。
ショボンは微かに目を泳がせる。
(´・ω・`)「……この国は僕の国ですよ」
/ ,' 3「本当かの?」
(´・ω・`)「もちろんですよ。何を言っているんですか」
576
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:26:02 ID:es9erg9o0
ショボンは目を閉じてせせら笑った。
スカルチノフからの視線は遮られる。
ショボンはすぐに身体を噴水の方へ向けた。
目が開き、出し物を見る。
街道の方から技術者たちのパレードが現れようとしていた。
(´・ω・`)「今はお祭りです。
町の誰も不安を感じていない。
それを破ろうものなら、それこそ争いなのではないですか?」
ショボンの腕が、城下町をなぞっていく。
なだらかな動き。
/ ,' 3「お前らしい考えよのう」
頬杖を突きながら、スカルチノフが評した。
ショボンは何かを言い返そうとするも、目の端に人影を捉えたために中断する。
577
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:28:01 ID:es9erg9o0
(´・ω・`)「レモナか」
|゚ノ ^∀^)「そうだよー、ショボンちゃん。
スカルチノフさんもこんばんはー」
軽々しい声。
ただ、今この場のショボンにとってはありがたいものであった。
重苦しかった空気が瓦解する。
(´・ω・`)「庶民とは会ってきたのかい?
いつもの君なら遊びまわっている頃だと思ったのだけど」
|゚ノ ^∀^)「うん、もう結構遊んだよ。
ただこうしてお客様ともちゃんとお話しないと!」
そう言って、レモナの目がスカルチノフに向く。
|゚ノ ^∀^)「そうでしょう?」
視線が交わされる。
ショボンからは、レモナの顔を窺い知ることは出来なかった。
578
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:30:05 ID:es9erg9o0
だから
|゚ノ ^∀゚)
/ ,゚ 3
彼女たちがただならぬ目でアイコンタクトを取っていたことも
当然今のショボンは知る由もなかった。
579
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:32:00 ID:es9erg9o0
|゚ノ ^∀^)「さてと、ショボンちゃん」
レモナはすぐに顔を上げた。
|゚ノ ^∀^)「テーベ国の女王様はどちら?」
(´・ω・`)「ああ、空いてるよね。どこいったんだろう」
/ ,' 3「あの若いのならきっと下に降りて遊んでおるよ」
スカルチノフはそう言って、あきれたような顔をする。
/ ,' 3「まったく、前々からそういうふらつきが好きなやつじゃな」
(´・ω・`)「ははは、そこが国民に好かれたところなのでしょう」
話が変わったため、ショボンは余裕を取り戻せた。
頬に残っていた冷や汗をこっそりと拭いながら、その場を後にする。
580
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:34:02 ID:es9erg9o0
広場から伸びる街道の上。
何故か黒い服の人だかりができていた。
それらは町の住民じゃない。
たった一人を護衛するために付けられたSPたちだ。
「おいおい、こんなに纏わりつかれたら見えねえだろ」
人だかりの中心で人が叫ぶ。
「ですが国王、あなたを守らなくては」
「平気だっつの! 俺が下手な野郎になんか負けるか!」
中心の人はそういって、腕を振るった。
「なんならお前ら全員のしてやってもいいんだぞ?
俺様のパレード観覧を邪魔した罪でなー、はっはっは」
物騒な物言いとは裏腹に、最後には陽気な笑い声が続いた。
581
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:36:01 ID:es9erg9o0
町の人たちもその異様さに戦いている。
避けられているので、黒服の集団の周りだけぽかりと浮いてしまっていた。
パレードの音が近づく。
作り物の人形の集団が、光を纏いながら街道を進んできていた。
どちらにしろ、このままでは黒服は邪魔だ。
「おら、早くどけよ迷惑だろ!」
中心の人が再び怒鳴る。
数人の溜息。
黒服の男たちが観念して、散り散りとなっていく。
まだらになった黒服の間で、ようやくその人物が明らかになった。
その人もまた、ちゃんとパレードが見えるようになったことで非常に喜んでいるようだ。
嬌声が響く。その声で、ようやくその人物が女性であると気付いた町民も多かった。
582
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:38:02 ID:es9erg9o0
「ははー、こりゃすげーわ!!
俺もほしいなー!!」
その人は街道の中央で諸手を挙げた。
勢いよく伸びた腕の先から、パレードの光にさらされていく。
だんだんと、その光が進む。
ついには顔が露わとなる。
从 ゚∀从「あいつも見てるかなー!!」
彼女の名はハイン。
口調と態度こそ男性そのものであったが
ラスティアの南西にあるテーベ国の、歴史上初めての女帝であった。
☆ ☆ ☆
583
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:40:02 ID:es9erg9o0
ラスティア城7階
国王の部屋へ続く道
ブーンとは6階で別れ、それぞれの道を進んでいた。
('A`)「待った」
先陣を切っていたドクオが、皆を静止させる。
('A`)「匂いがする」
( ゚∀゚)「なんだ、魔人か?」
('A`)「たぶん」
一同は前を向いた。
道が二つに分かれている。
直進すれば幅の広い道を通ることになる。
左に折れれば、やや狭い道。蝋燭の本数も少ない。
584
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:42:02 ID:es9erg9o0
('A`)「……前の道からは強い匂いだ。大きいものがある気がする。
左の道は、なんだか細々といろんな匂いがする」
ノパ⊿゚)「大きいと、細々……
それ以上はわからない?」
('A`)「匂いなんてそんなもんだ。
とにかくどっちにしろ、いいことは起こりそうもないな」
lw´- _-ノv「ましな方を選べってことか」
シュールが発言し、みんなの顔を伺った。
全員がそれぞれ、頭の中で比較をする。
( ゚∀゚)「大きい方だな」
ジョルジュが先に結論を出した。
( ゚∀゚)「道幅も広いし、明るい。
対処しやすいのはこっちだろうよ」
('A`)「うん、同感だ」
585
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:44:02 ID:es9erg9o0
ドクオは頷きつつも、鋭い目線を幅の広い道に向けた。
('A`)「ただ油断はできないぞ」
( ゚∀゚)「大丈夫だって!」
ジョルジュは胸を叩く。
( ゚∀゚)「何か出てきたにしても倒してやるよ!」
(;'A`)「おい、何言ってんだお前」
( ゚∀゚)「いやあ、なんかもううずうずしていたんだよね!」
ジョルジュの足がさっさと前へ進んでしまう。
急にそんな行動に走ったジョルジュの心境を、ドクオははかりかねた。
とにかく止めなきゃ何が起こるかわからない。
(;'A`)「ヒート、止めるぞ!」
ノパ⊿゚)「あいよ」
586
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:46:02 ID:es9erg9o0
ドクオが焦り、ヒートと共に走り出す。
ジョルジュとの距離は近い。すぐに捕まる。
そのはずだった。
カチッ
(;゚∀゚)「え」
ジョルジュはきょとんとして、それから足元を見る。
何の変哲もない絨毯。
それなのに、何か妙にはまった感触があった。
ノパ⊿゚)「どうした?」
止まってしまったジョルジュの袖を、ヒートが掴む。
そのすぐ後ろを走っていたドクオも止まる。
('A`)「何の音……!?」
その場にいた全員が動揺した。
壁も、床も、盛り上がったように見えた。
587
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:48:01 ID:es9erg9o0
でもすぐにそれが誤りだと気付く。
足元にあったものが急速に遠ざかる。
落とし穴だ。
(;゚∀゚)「ぬおお!!」
咄嗟にジョルジュがクロスボウを上に向けて発射する。
特製の、ロープつきの矢。
空中で放射線を描いたそれは、天井に突き刺さる。
周りにいた人同士がつかまりあった。
近くにいた人だけで。
588
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:50:02 ID:es9erg9o0
____________________
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589
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:52:02 ID:es9erg9o0
やや遠いところにいたシュールの声が遠ざかっていく。
(;゚∀゚)「シュール!!」
ジョルジュの叫びは残響となる。
なかなか鳴りやまない。よほど深い穴のように思える。
ロープはそのまま、慣性をもって道の反対側へ向かっていった。
ノパ⊿゚)「そおい!」
勢いのままに、ヒートはドクオを投げつける。
抜け落ちていない道の向こう側へ向けて。
そして自らも壁に向かい跳んでいく。
自分なら自力で向こう側へ渡れるという確証があったからだ。
足が接着すると、バネの装置が作動する。
脚力が増したことで可能となる距離の長い三角飛び。
ノパ⊿゚)「っと!」
着地と同時に足を回す。
衝撃が緩和される。
数メートル走ったところでようやく彼女は止まることができた。
590
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:54:01 ID:es9erg9o0
ノパ⊿゚)「ドクオ?」
(;'A`)「……ここだ」
床に転がりこみながらも、手を上げる彼の姿があった。
(;'A`)「うう、頭打った」
ノパ⊿゚)「悪かったよ。ジョルジュは?」
言いながら顔を上げる。
ロープは依然として天井に突き刺さったままだ。
だけど、今は誰もそこに垂れさがっていない。
( ゚∀゚)「ここだよー」
声がして、ヒートとジョルジュは穴の反対側を見た。
一同が進んできた方。
そこにジョルジュはいた。
591
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:56:02 ID:es9erg9o0
( ゚∀゚)「悪い、俺ちょっとシュール助けてくる!」
目があうと同時に彼は言う。
( ゚∀゚)「こうなったのも俺のせいだし、急がないと!」
(;'A`)「あ、おいお前待て!」
ドクオの言葉にも、まったく動じずに
ジョルジュはさっさと元来た道を引き返しに行ってしまった。
(;'A`)「なんか、あいつ変じゃなかったか?」
ノパ⊿゚)「変?」
ヒートはドクオの傍に歩み寄りつつも、首を傾げた。
(;'A`)「妙に軽率と言うか……
まるで自分から罠にかかっていったような」
592
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 22:58:01 ID:es9erg9o0
ノパ⊿゚)「んな、まさか」
ヒートは軽く笑い飛ばす。
ノパ⊿゚)「そんなことして何になるんだよ」
(;'A`)「うーん、そうか……」
疑問として浮かんだものの答えは出てこない。
ぽっかりと空いてしまった穴を見つめる。
('A`)「とりあえずはシュールが無事であることを祈ろう」
違和感を覚えつつも、ドクオは身体を起こした。
前に進むために。
☆ ☆ ☆
593
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:00:01 ID:es9erg9o0
8階
国王の部屋へ続く道
ノパ⊿゚)「ひゃー、ずいぶん上ったなー」
たまたま壁にあった窓を覗いて、ヒートが感嘆する。
ノパ⊿゚)「よお、ドクオ。見てみろって」
(;'A`)「いや……高いのあんまり好きじゃないんだよ」
ノパ⊿゚)「そうだっけ? 忘れてたわ」
(;'A`)「お前なあ……昔話したことあっただろ」
ノパ⊿゚)「あー、なんとなく覚えているかも。
懐かしいねえ」
そんなことを言いながら、ヒートは窓辺の縁に座りこむ。
横目で窓の下の景色を眺めていた。
594
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:02:03 ID:es9erg9o0
ノパ⊿゚)「休憩しようよ。今のところ誰もいないみたいだし」
ヒートが提案する。
ドクオは顔をむすっとさせ、それから溜息をついた。
('A`)「……まあ、一気に上ってきたからな。
少しだからな? そしたら上っていこう」
ドクオはヒートの向かい側の廊下に座る。
胡坐をかいてだ。
ノパ⊿゚)「なんでそこなの?」
('A`)「この姿勢が一番素早く反応できるんだよ」
受け答えを聞いて、ヒートが目を閉じ首を左右に振る。
ノハ-⊿-)「相変わらず固いなあ」
やれやれと、身振り手振りであらわした。
ドクオはなおも硬い表情のままだ。
595
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:04:03 ID:es9erg9o0
ノパ⊿゚)「なあ、ドクオ。
昔の話が出たからさ、思い浮かべただけなんだけど」
ヒートはそこまで言って、目を再び窓側に向けた。
あまりドクオの方を向きたくなかったのかもしれない。
ノパ⊿゚)「姉さんは今も元気かな」
途端に、ドクオが立ち上がる。
ヒートを見下ろす形。
('A`)「そんなこと話すために休憩したのか?」
口早に責め立てた。
ヒートは一瞬眉根を寄せて、上目づかいでドクオを見つめた。
ノパ⊿゚)「ここに来たのはたまたまだよ。たまたま窓縁があっただけ。
でもさ、ほら。レジスタンスも随分賑やかになったから、なんだか楽しくて」
ノパ⊿゚)「年下も増えたし、面倒を見てなきゃで
最近その手の話題出して無かったじゃん。いわゆるあたしたちの話」
596
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:06:03 ID:es9erg9o0
('A`)「出さなくてもいいだろ、別に」
素っ気なくドクオが切り返す。
ノパ⊿゚)「必要あるよ」
今度はヒートがむくれた。
じーっとドクオを見据える。
その視線に、不穏な気配をドクオは感じ、わずかに身動ぎした。
(;'A`)「なんだよ」
我慢できずに、ドクオから口をひらく。
ヒートは目をかえずにそれに応えた。
ノパ⊿゚)「さっきブーンに戦争の話振られたとき、内心どきっとしたんじゃないの?」
(;'A`)「え……」
言ってから、うっかりという表情をドクオは浮かべた。
それをごまかすように咳払いする。
597
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:08:04 ID:es9erg9o0
('A`)「別に……何も」
ノパ⊿゚)「そう? あたしはしたけどなー。
姉さん以外にもあんなこと言う人いるんだなってね」
ノパ⊿゚)「それでも何も感じなかったっていうなら、あんたやっぱり――」
(#'A`)「そんなわけあるか!」
荒げられた声。
またも、言ってから顔を呆然とさせる。
ノパ⊿゚)「あたしに怒られても困るんだけどな」
そう呟いてから、ヒートは縁から離れて立ちあがった。
気持ち良さそうに伸びをする。
ノパ⊿゚)9m「よっし、休憩終わり。
途中で疲れても自己責任だからな」
ヒートの指がドクオにびしっと向けられた。
598
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:10:05 ID:es9erg9o0
('A`)「……ああ」
歯切れの悪い返事だけが返ってくる。
それを受けて、あからさまにヒートは機嫌を悪くした。
ノハ#゚⊿゚)「なんだよもー、これくらいで落ち込んじゃって。
ブーンやジョルジュの前だといつもすかした態度なくせに!」
キレのある指摘がドクオに突きささる。
ドクオは目を見開いた。
(;'A`)「な、そ……そうか?」
ノハ#゚⊿゚)「一時期暗くなったのは仕方ないとして、今では変な方向に行っちゃってるわ。
まったくもう、姉さんが見てたらなんて言うかねえ」
(;'A`)「…………お前だからあいつの話は」
ノハ;゚⊿゚)「え? あ! ごめんごめん。
今のはその、ほんとただのうっかりだから!
ショック受けさせたりしたらごめん!」
599
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:12:03 ID:es9erg9o0
(;'A`)「ええ? いやいやそれくらいでショックなんか」
ノパ⊿゚)「だって狼狽してんじゃん」
(;'A`)「してねえって!」
ノパ⊿゚)「してますわーその流れてる汗が証拠ですわー」
(;'A`)「はあ? それは、その……」
ドクオは言い返そうとするも、何も思いつかなかった。
唸り声を出しながら、頭をごしごしとこする。
ノパ⊿゚)「やーい、なんもいえねーのかよー、かっこつけー」
ヒートは口を窄めてドクオを野次り続けていた。
600
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:14:03 ID:es9erg9o0
そうしていくうちに、彼の唸りが、だんだんと細切れになっていく。
肩を震わせ、口元が綻び、破顔する。
はっきりと笑い声と認識できるようになった頃には
向かいに立つヒートの顔にも笑みが毀れていた。
ドクオはその時思っていた。
自分がこうして笑うのはいつぶりだろうって。
二人の若者にとって、それは束の間の休息となった。
☆ ☆ ☆
601
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:16:04 ID:es9erg9o0
ラスティア城7階から8階の間
王女の部屋へ続く道
ブーンは王女の部屋に戻りつつあった。
早く戻らなくては、そう思って焦る。
実のところ、7時40分はとっくに過ぎていた。若干読みが甘かったのだ。
20分以内に戻らなければ王女が怪しむかもしれない。
だから走る。
螺旋階段を駆け上り、8階へ。
部屋へと続く廊下には何もいなかった。
誰かが通った痕跡もない。
外に出ているうちに誰かに侵入されたということはないようだ。
ひとまずほっとするブーン。
足取り確かに、王女の部屋の扉の前に辿りついた。
呼吸を整えるため、やや時間を置く。
それから咳ばらいをした。
( ^ω^)「王女、帰ってきましたお」
602
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:18:01 ID:es9erg9o0
返事はない。
ブーンは首を傾げた。
(;^ω^)「王女? あー、少し遅れたこと、怒ってますかお?」
怖かったが、それでも尋ねた。
もしも怒っていたら、素直に謝ろうと思い始める。
しかし、やはり静かなままだ。
胸の奥がざわついた。
まさか、何か起こったのか?
そしたら、なおさら自分の身分が危ない。
(;^ω^)「王女!?」
慌ててドアをノックする。
やはり反応はない。
ポケットの中を探り、スペアのキーと取り出した。
もしものときはこれで部屋に入ることになっていたのである。
603
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:20:05 ID:es9erg9o0
(;^ω^)「失礼しますお!」
言ってから、急いで鍵穴に差し込む。
金属のぶつかり合う音。焦っているせいか、なかなか回せない。
落ちつけと自分に必死で言い聞かせる。
もし王女の身に何かあれば、自分は即刻罪人となるかもしれない。
あの王女に固執する国王のことだ、それくらいやりかねない。
なんとか鍵が回転する。
かちゃりという音。
ノブを捻って、一気に押す。
(;^ω^)「王女!!」
言葉だけがすっ飛んでいく。
顔面に向かってくる風を感じた。
604
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:22:11 ID:es9erg9o0
ブーンは目を白黒させる。
風など、どうして感じるのだろう。
どこから吹いているのだろう。
答えは目の前にあった。
王女の机の前にある窓が開いていたのだ。
夜風がそこから入り込んできていた。
ブーンは首を回し、部屋を確認する。
広い部屋、大きな家具、たくさん詰まった本棚に、ふかふかそうなベッド。
そして、誰もいない。
王女さえも。
(;^ω^)「」
絶句。
そして窓へと駆け寄った。
605
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:24:00 ID:es9erg9o0
まさか飛び降りたんじゃないだろうか。
サックに手をかけて、下をのぞく。
( ^ω^)「!!」
何かが垂れさがっているのがわかった。
ロープだ。それが、真下にある部屋のバルコニーに続いている。
ここは8階だが、まさかすぐ下にそんな足場があるとは知らなかった。
ロープはかなり余裕がある長さだ。
バルコニーでそれはくるくると丸まっており
その先端で大きな袋を結びつけていた。
ロープがどこから伸びているのか気になり、目線を登らせる。
カーテンに隠れた留め具のところを通過し、部屋の中へ続いていく。
やがてそれは大きな本棚の下に向かっていった。
どうやらその本棚を重石にしているようだ。
例えば一旦本をどかして軽くし、ロープの上に置くとする。
それから本を詰めていけば立派な重石が出来上がる。
少女一人を支えることもできるはずだ。
606
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:26:05 ID:es9erg9o0
じゃあ留め具は……考えようとしたが、何故そこを通してあったのかはわからなかった。
むしろ留め具が壊れたりすれば危ない気もするのだが。
方向を固定したかったのだろうか。
バルコニーの方には袋があった。
きっとあの袋にはおもりが入っていたのだろう。
デレはそこへ向けて、ここを伝い、降りたに違いない。
それ以外に脱出経路はない。
ブーンは再び窓の下の光景を見て、それからがっくりと肩を落とした。
いなくなったことそれ自体もショックであったし
デレと話す機会がまた無くなってしまったこともショックであった。
607
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:28:02 ID:es9erg9o0
どうすればいいだろう。
デレを探すべきか? でもどこにいるかもわからない。
この部屋に留まっている理由もない。
ならば、レジスタンスに協力する? でもそれはもう戻れないことの証。
(;^ω^)「あああ、どうしよう」
窓から離れ、ふらふらと動いて、それから椅子に座った。
机の前の、おそらくデレが使っていたであろう椅子。
やけに小さい。
ブーンの方が背が高いからだろうか。
それにしても、小さすぎる。幼いころのままなのではないか。
ここに、彼女はずっと座っていたのだろうか。
その姿を想起してしまう。
608
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:30:07 ID:es9erg9o0
それと同時に、思いだしたことがあった。
何かあったら、部屋をくまなく探すように。
それはデレが言った言葉。
609
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:32:04 ID:es9erg9o0
何かあったら……
あれは、自分で何かをすると宣言していたのだろうか。
そうだとしたら、デレがいなくなった今の状況こそ
部屋をくまなく探す機会。
でも、くまなく探すと言ってもどこを。
そこでまた、閃きがあった。
さきほど、デレの脱出経路考えるときに引っかかった場所。
どうしてカーテンの留め具をロープが通っているのか。
ロープを辿る。
留め具の場所を見るため、カーテンを動かした。
カーテンに隠れたその奥に煌めくものがあった。
( ^ω^)「そうか……」
610
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:34:07 ID:es9erg9o0
デレはロープをここに通した。
それは、これを発見させるためだったんだと、ブーンは合点がつく。
ゆっくりと手を動かす。
カーテンの留め具にかかっていたのは、銀色の小さな鍵だった。
鍵穴を探すこと、数分。
やがて、それが机の下にある小さな棚のものだと判明した。
人の棚を探ることには若干の抵抗はあったものの
思わせぶりに鍵がある以上、それを使いたくなるは無理もない。
( ^ω^)「……ダメだったら、それまでだお」
震える手で、また鍵穴にさしこむ。
さっきも似たような状況だったことを思い出した。
でも、さっきほどは緊張していない。
これがデレの真意に繋がっていると思ったからだ。
そう思うと、恐怖よりもわくわくする気持ちの方が勝る。
611
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:36:05 ID:es9erg9o0
鍵がはまり、解錠される。
棚の取っ手を引く。思いのほかするすると動いた。
普段から使われているのだろうか。
出てきたのは、一冊の厚いノートだった。
『日記帳』と書いてある。
(;^ω^)「これは……」
さすがにまずいと最初は思った。
個人の日記帳を盗み見るのは、いささか倫理に反している。
迷っているうちに、日記帳の上に紙切れがあるのに気付いた。
それを手に取る。
日記を見るよりは罪悪感は薄い。
小さなメモ書きだ。
その場に座り、折られている紙を開く。
(;^ω^)「……!?」
612
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:38:04 ID:es9erg9o0
目を見開いた。
そこに書いてあるのが、まぎれもなく自分のことだったからだ。
『ブーンさんへ
これを持って、読んでください。
それと、余計な音は立てないでね。
デレより』
☆ ☆ ☆
613
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:40:05 ID:es9erg9o0
―― 第五話 前半 終わり ――
―― 第五話 後半へ続く ――
.
614
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 23:48:01 ID:es9erg9o0
今日はおしまい。
また明日。
615
:
名も無きAAのようです
:2013/09/06(金) 00:43:39 ID:GN9bRVE20
おつ、また明日が楽しみ
616
:
名も無きAAのようです
:2013/09/06(金) 03:03:32 ID:Rav1g4qUO
おい、いいところで……と思ったが明日ならいいか!
617
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 20:59:23 ID:.J/zgTc.0
第五話後半の始まりです。
618
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 21:00:17 ID:.J/zgTc.0
ラスティア城8階から9階までの間
すでに螺旋階段を何段も踏み進めてきていた。
お城の中央に聳える塔、その内部を着実に上っている。
いくら進んでも、ひたすらに赤い絨毯が現れてくる。
注意しなければ、自分が本当に進んでいるのかどうかもわからなくなってしまう。
ドクオはヒートの先を歩いていた。
この階段の最上階に国王の部屋があるはずなのだ。
そこへいけば、モララーの剣がある。
('A`)「!!」
突然、ドクオが息をのみ、ヒートの前に手を出した。
('A`)「止まれ」
ノパ⊿゚)「なんだ、魔人か?」
('A`)「ああ」
619
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 21:02:17 ID:.J/zgTc.0
ドクオはこのお城に入ってから、ずっと魔人の匂いを感じてきていた。
だけど、今彼の感じている匂いはこれまでよりもはっきりしたもの。
('A`)「どうやら、待ち伏せしていた奴がいるみたいだ」
ドクオの手が、腰の柄にかかる。
ノパ⊿゚)「先に言っておくと、魔人相手に大した戦闘はできないぞ」
そういうヒートの手には、既に小型のナイフが握られていた。
ノパ⊿゚)「必要最低限のことをしたら、さっさと上に行く」
('A`)「それでいい。長いは無用だ」
ドクオの剣が抜かれる。
暫く使っていなかった剣だが、しっかりと光沢を帯びている。
こういう道具の手入れは怠らないのが彼の信条だった。
その握り手に力が籠る。
周りの空気が変わったのを感じたからだ。
620
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 21:04:18 ID:.J/zgTc.0
「貴様ら、何者だ」
螺旋階段の奥から人の声がした。
('A`)「……わけあってな、国王の部屋にいかなくちゃならないんだ」
「それはできないな」
最初の声とは少し違う声色。
('A`)「二人か」
ドクオは剣を引き絞る。
「国王の部屋には俺の主君が用なのだ」
「誰も通すわけにはいかない」
強気な口調が階段に響く。
ドクオは舌打ちをする。
高低差のある場所では下にいる者の方が不利だからだ。
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