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( ^ω^)優しい衛兵と冷たい王女のようですζ(゚ー゚*ζ

473 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:28:00 ID:X94qherQ0
まさかいきなり国王に接見できるとは思わなかった。
だから、いささか緊張もしている。

(√`ー´)「お前は2階の会議室に連れて行く。
 先程まで客人たちが来ていたのだが、すでにお帰りとなった。
 国王はその場に残ってお前の帰りを待っていたのだ」

( ^ω^)「そんなことまで……」

(√`ー´)「それに、国王だけではないぞ」

( ^ω^)「え?」

どういうことですか、と聞こうと思ったときに、衛兵は歩みをとめた。
観音開きの扉がある。会議室の入口だ。

ブーンは口を閉じた。
どうせ扉が開いたときにわかる、そう思ったからだ。

扉が開かれる。
中の光景が明らかになった。

474 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:29:00 ID:X94qherQ0
(´・ω・`)「やあ! 君がブーンくんだね!」

途端に、目の前で大御所が手を振ってきた。
不意打ちだったので、面を食らってしまう。

(;^ω^)「あ、はいですお……」

おずおずと頭を下げる。

ショボンは大きな声で笑って返してきた。

(´・ω・`)「硬くならなくてもいいよ、僕は君を称えたいんだ。
 君、報告書をこっちに」

ショボンが衛兵を指さした。
衛兵はすぐに歩んでいき、報告書をショボンに渡す。

その間に、声をかけられた。

475 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:30:01 ID:X94qherQ0
「お久しぶりね」

ちょうど、扉の陰に隠れた場所からだ。
誰かがいるのだとわかり、ブーンは慌てて扉を閉めようとする。

(;^ω^)「あっと、気付かなくてすいませんですお」

見えてもいない相手にぺこぺこと頭を下げる。

だけど、その姿が見えてきたとき
頭を動かしている余裕すら、ブーンには無くなっていた。

(;^ω^)「あ……」

ζ(゚ー゚*ζ「もう2カ月ぶりかしら」

デレがわずかに首を傾けて、微笑んでくる。

ブーンは顔を引きつらせた。

記憶がフラッシュバックする。

476 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:31:01 ID:X94qherQ0
南の山の事件。

モララーのこと。

その首の前でしゃがみこむデレ。

お城に近づいて、また会える機会はあるだろうかと思ったこともある。
まだ彼女のことを疑いきれていなかったから。

でも、こうして実際に目の前にすると
身体は硬直する以外の反応を示さなかった。

受け入れるわけでも無く、拒否するわけでもない。
じっと相手の出方を伺ってしまう、待ちの姿勢。

ζ(゚ー゚*ζ「……モララーさんのことかしら」

(;^ω^)「え」

477 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:32:00 ID:X94qherQ0
いきなりその名前が出てきて、ブーンの神経が緊張する。

その目の前で、デレは首を左右に振った。

ζ(゚ー゚*ζ「あれから一度もお会いできなかったけど
 きっとあなたもショックを受けたと思うの。でも、今は緊張しないで。
 ここでは魔人も何もいないし、安心してね」

そういって、デレははにかんで見せた。
どうやらブーンがあの日のことを思い出して怖がっていると思ったらしい。

ああ、そうか。彼女は僕が起きていたことを知らないんだ。

ようやくそのことに思い至り、ブーンは急いで体面と取り繕う。

(;^ω^)「あ、ありがとうですお。
 そう言ってもらえると安心できますお」

ブーンは頭をさすって、俯き加減になって頷いた。

ζ(゚ー゚*ζ「そう? 良かった。
 お父様はあなたのことを呼んでるの。こっちにきてね」

デレはブーンを手招きする。
その目はブーンの目線とぴったり一致していた。

478 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:33:00 ID:X94qherQ0
その瞳を、ブーンも見つめ返す。

妙な気がした。
恐怖とはまた違う。

デレの和らいだ目線の奥に、とても真剣なものを感じた。
笑っているのに、目は真剣。
そんなことってあるだろうか。

いったいどうしたらそんな顔になるんだろう。

その妙な引っかかりは、一瞬だけで終わった。
デレが国王の方を向いてしまったからだ。

( ^ω^)「あ、いきますお!」

デレの後をついていく。

ちょうど国王も報告書を読み終わったらしく、顔をあげていた。
衛兵に帰るように指示している。

479 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:34:00 ID:X94qherQ0
衛兵が外に出る。
扉も閉まる。

(´・ω・`)「驚いたよ」

まずそう言われた。

(´・ω・`)「君はデレを助けようとしたんだね」

デレを狙う魔人を追い払った。
そういう意味では、助けたともいえるかもしれない。

( ^ω^)「そうですお」

ブーンが言うと、ショボンは大きく頷いてくれる。

(´・ω・`)「ありがとう。
 なんだか君を見ていると、モララーくんを思い出すようだよ」

またあの人の名前だ。
そういえば、モララーがデレ王女を助けた話を聞いたことがあった。
あの人が昇進した理由でもある。

480 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:35:00 ID:X94qherQ0
(´・ω・`)「君には恩ができたようだ」

ショボンが身振り手振りで、ことの大きさをアピールする。

(´・ω・`)「どうだい、君の望むものならできる限りあげるよ。
 この国でもっとも権力のある私なら、大抵のものをそろえることができるだろう。
 なんなら衛兵にしてあげてもいいくらいだ」

(;^ω^)「い、いいんですかお?」

(´・ω・`)「いいんだとも。君はそれだけのことをしてくれたんだ。
 私にとって、命よりも大事なデレのことを守ってくれたのだから」

ブーンは顔を俯かせた。
しばらくの間沈黙する。
顔に冷や汗を浮かばせて。

その間、ショボンもデレも、静かにブーンに注目していた。

( ^ω^)「……ひとつだけ、希望があるんですお」

(´・ω・`)「なんだい? 衛兵になるかい」

( ^ω^)「いえ、それじゃなくて……あの」

481 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:36:01 ID:X94qherQ0
ブーンは慎重に、言葉を切る。
ちらっとだけ、デレの方を見て、それからショボンの方を向く。

( ^ω^)「新嘗祭の日、僕をデレ王女の監視役にしてほしいんですお」

比較的すらすらと、ブーンは言ってのけた。

その場がしんと静まり返る。
嫌な沈黙だ。

ブーンはじっとショボンの顔を見た。
ショボンの方は小さく頷いて、「ほうほう」とだけ言っている。

デレの方はわからない。
ショボンの方を見るので精いっぱいだったからだ。

もしこれで、怒ったような顔をしていたら
自分は今度こそデレに近寄れなくなるだろう
そんな恐怖が心の奥にあるのも確かなことだった。

(´・ω・`)「ふうむ、そうしたい気持ちはなんだね」

質問が帰ってくる。
ブーンの心臓が拍動を速めた。

(;^ω^)「……今回の魔人はまた現れる可能性が高いですお。
 それに、新嘗祭はお城の衛兵のうちのかなりの人数を国王や他国の来賓のために使わなくちゃなりませんお。
 だからお城の警備が手薄になってしまいますお。そこをしっかり守っていきたいんですお」

482 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:37:01 ID:X94qherQ0
やや早口気味に、ブーンは理由を述べた。

ショボンは手の甲を口につけて、「ううむ」と唸る。

(´・ω・`)「こういうときの王女の警備にはいつも人間を使わず、魔人で済ませていたのだが……
 人間に監視させるとどうもデレが嫌がるものでね」

ブーンの頭が白くなっていく。
もしデレが嫌がるのであれば、きっとブーンの要望は通してもらえない。

(´・ω・`)「だから、デレの意見も聞きたいんだけど」

ショボンが目線をブーンからデレへと移していく。
ブーンはそれを追わず、ただ下を向いていた。

ブーンの拳が握られる。
緊張のためだ。

483 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:38:00 ID:X94qherQ0
彼女の判断に全てがかかっている。





どうか、上手くいってくれ。





せっかくここまで計画どおりなのだから。





     ☆     ☆     ☆

484 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:39:00 ID:X94qherQ0
少し時間を遡る。

新嘗祭1週間前のこの日、朝の9時

酒場『三匹のカエル』開店前

この日まで、レジスタンスはずっと作戦を練っていた。

あのモララーの剣を取り戻すため、いかにしてお城に忍び込むか。

お城の警備兵は各門に4人。
それに、一旦見つかってしまえば警戒を強められてしまう。
もし強化されればもう入ることはできなくなってしまうだろう。

だから、警備兵を一挙に出し抜く方法が要る。
その方法は、どうするか。

(;^ω^)「思いつきましたお!」

お店に入ってきたばかりのブーンが勢いよく手を挙げる。

昨晩から集まっていたレジスタンスのメンバーの目が光る。
ブーンに視線が集中した。

485 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:40:11 ID:X94qherQ0
すでにブーンの座学の成績が優秀であることは知れ渡っていた。
それに、ヒートと追いかけっこをしたときから、彼の閃きが役立つことも分かってきた。

だから、自然とみんなの期待が高まっている。

ブーンはそれを感じながら、話した。

(;^ω^)「外からじゃどうやっても限界があるんですお。
 衛兵といっても簡単に倒せるわけでもないんですお。
 だから、内側に仲間を仕込んでおくんですお」

('A`)「仲間?」

( ^ω^)「そうですお。まず、ドクオさんはまだ衛兵の服が残ってますおね?」

('A`)「ああ」

( ^ω^)「それと、ジョルジュも」

( ゚∀゚)「え? あー……たぶん……」

それを聞いて、ブーンは一回深く頷く。

( ^ω^)「5人中3人が衛兵のふりをできる。
 これは活用するべきですお」

486 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:41:00 ID:X94qherQ0
( ^ω^)「その方法は後で教えるとして、前段階で僕が国王から信頼されていることが必要ですお。
 国王に信頼される人間になれば、衛兵だって無視できなくなる。隙を突くチャンスが生まれる」

ノパ⊿゚)「簡単に言うけど、信頼なんてそう簡単にしてもらえるの?」

( ^ω^)「ひとつだけ、知っているんですお。
 あの国王にとって最も大切なもの、それは王女ですお。
 僕らの手で力を合わせて狂言を設定するんですお、王女を狙う魔人が現れたという振りをして」

( ^ω^)「それで、その魔人を僕が追い払うんですお。
 上手くいけば、僕は国王に感謝され、取り入ることができるんですお。
 これが今朝、僕の思いついた作戦ですお」

('A`)「なるほど、モララーが衛兵になった理由を利用するというわけか。
 王女を助けて国王に認められ、それで昇格できたという」

( ^ω^)「着想はそこですお」

ブーンはそう言って、次にシュールの方を向いた。

(;^ω^)「シュールさん、次に国王が会議を開くときがいつかわかりますかお?
 たぶんお客さんがいるときならデレ王女も会議に参加しているから
 彼女を狙って襲ってきたという設定に説得力が増すんですお」

lw´‐ _‐ノv「今日」

シュールが即答する。さすがの情報力だ。

487 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:42:00 ID:X94qherQ0
と、同時に彼女はにやりと笑う。

lw´‐ _‐ノv「今日、やっちゃおう」

(;^ω^)「え、ほんとですかお? 準備とか」

( ゚∀゚)「大丈夫だって。聞いてみた感じだと問題はなさそうだった」

ジョルジュが組んでいた腕を解いて、上に伸ばす。

( ゚∀゚)「そうと決まれば今から準備だ!」

それから、細かい点は準備をしつつ決めていった。
時間が無いのだから、面倒なことはしない。

魔人のように見える衣装を即座にシュールが作り
逃げ足の速いヒートが魔人っぽい演技を練習する。

ドクオとジョルジュが話し合い、決行場所を決める。
南東の門、そこに客の荷物が集中している。

まずその荷物を狙い、捨て台詞で王女を狙うと吐く。
そうすれば客も帰るだろうし、国王も心配する。

488 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:43:00 ID:X94qherQ0
お店は閉められたまま
その中ではみんなが騒がしく準備を進めていった。

そろそろお店の運営はあぶなくならないのかな、とも思うくらいに。

ブーンはその間、思った。

これが上手くいけば、僕は王女を救うために頑張ったことになる。
それだけの功績が残れば、ツンだって納得してくれるんじゃないか。
あの猜疑の瞳を僕に向けてくるのをやめてくれるのではないか。

そうなれば、自分としては助かる。
一石二鳥だ。
レジスタンスのためにもなり、自分のためにもなるのだから。

と、そこまで考えたとき、別の目的も頭に浮かんだ。

デレのことだ。

お城に忍び込めば会えるかもしれない、その真意を知ることができるかもしれない
そう思っていたことは確かだ。

もしうまく付け入る隙があれば、なるべくデレに近づける方法を選ぼう。
もしもそんな選択ができればだけど。

この件に関しては、さすがにブーンも希望的観測しかもっていなかった。

489 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:44:04 ID:X94qherQ0
夜7時半

ラスティア城 南東門前

建物の建物の隙間に、人影が二人分

.ワ''""''フ
ノパ⊿゚)「よし、誰もいないな」

( ^ω^)「……ものすっごいふわふわしてますお」

.ワ''""''フ
ノパ⊿゚)「動物なら問題ないさ。ほら、やるぞ」

南東の門の前の通りに踊りでる。
門までは100メートルほどの距離だ。

(;^ω^)「うわあああああああ!!」

できるだけの情けない声を、ブーンは張り上げた。
門の傍でじっとしていた衛兵が身構え始める。

.ワ''""''フ
ノパ⊿゚)「お城襲っちゃうぞおらあああああああ!!」

さらに大きな声が響く。
周りの住民にもきっと聞えただろう。

490 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:44:59 ID:X94qherQ0
「な、なんだ、どうした!」

門番の慌てる声がする。姿もわずかだが見える。
ブーンはそれを確認してから、木刀を構える。

(;^ω^)「くらえお!!」

振りかざした木刀は、正しく空を切る。
それでもヒートは迫真の演技で負傷したように見せてくれた。

そのやり取りがもう二回ほど起きた。

これ以上やれば衛兵がこちらに飛んできてしまうかもしれない。

.ワ''""''フ
ノパ⊿゚)「くそお、次は王女を狙ってやるから覚えとけ!」

指をびしっとお城に向けたのち、ヒートは全力疾走で町を駆けていく。
衛兵だってちゃんとは見えないだろうに、凝った演技をしてくれる。
その後ろ姿はもはや魔人そのものであり、
あの本気の走りにはとても追い付けないとブーンは思った。

(√`△´)「お、おい君、大丈夫か!?」

ちょうどよく、衛兵が駆け寄ってきてくれた。

これで、上手くいった。
ブーンはそう安堵し、なるべく顔に恐怖の表情を浮かべて衛兵に向かい合った。

491 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:46:04 ID:X94qherQ0
(;^ω^)「お、追い払いましたお!!」

興奮しているからこそ、できる演技だ。
緊張はする、でもそれを超えて
自分の作戦が成功する昂揚感を、ブーンは確かに感じていた。

それからは流れに身を任せた。
衛兵が質問してきて、ブーンはあらかじめ用意してきた設定を語る。
そして、客人を狙い、王女の命を狙う魔人像が出来上がったときに、国王に呼び出された。

これで国王に取り入れる。
もうその時点で作戦は終わったようなものであり、あとは適当に流していればよかったのだ。
彼からの信頼は得られたのだから。

それゆえに、会議室に入ってからデレと直接出会うことになったのは完全に誤算だった。

まさかこんなところで、こんなときに、再会することになるなんて。



     ☆     ☆     ☆

492 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:47:12 ID:X94qherQ0
デレの傍になるべくいられるようにする。
部屋の中に当の本人がいるものの、このチャンスを逃したくはなかった。

とはいえこの打診は、上手くいけばいいという程度のものだ。
もしダメでも、作戦に支障はない。

門番をしている衛兵になれるだけの身分にはすでになったはずだ。
国王から注目されるという当初の任務は果たしたのだから。

でも、もし上手くいくなら、王女の傍にいたい。

そして彼女の真意を知りたい。

レジスタンスの目的を超えて
自分の興味から、ブーンはそう願っていた。

(´・ω・`)「……デレ?」

ショボンが答えを催促している。

ブーンは顔を少しだけ動かす。
怖い怖いとも言っていられない。

いい加減に、デレの方を見ようとした。

493 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:48:00 ID:X94qherQ0
ζ(゚ー゚*ζ「いいですよ」

言うときは、あっさり。

まるでさっきまでの沈黙が、何でもなかったとでもいうように。

ブーンはようやくデレの方をはっきりと向いた。

彼女は相変わらず柔らかい目をブーンに向けてくれていた。

ζ(゚ー゚*ζ「彼はね、あのモララーさんの大切な後輩だったのよ」

デレが父親に説明する。
国王が息をのむ音がはっきりと聞えた。

(´・ω・`)「なんだって、あのモララーくんの!
 それを早く言いなさいよ!」

ショボンがはしゃいで、椅子を叩いた。
ブーンはそれを、目を丸くしてみた。
入れ込んでいるとは聞いていたものの、ここまで極端に反応が変わるとは。

(´・ω・`)「それに、デレも彼が警備することを認めるんだね。
 だとしたら、僕はもう言うことはないよ」

494 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:49:00 ID:X94qherQ0
ショボンはもう考え込む顔をやめてくれた。

ブーンはほっとする。

ここまで上手くいっていいのかと思い、溜息が洩れそうになる。

( ^ω^)「あ、ありがとうございますお!!」

勢いよく、頭を下げた。
国王に向け、その後、デレにも下げる。

心のうちでは、その間に何回ものガッツポーズをしていた。
明日にでも手紙を出してレジスタンスのみんなに報告しなければ。

新嘗祭までになんとかあと一度でも休暇を取り、作戦を練らないと。
大まかには考えているものの、まだまだ詰めが甘い。
みんなと準備する必要もある。

あの剣を取り戻すための、大掛かりな潜入奪還作戦を。


     ☆     ☆     ☆

495 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:50:01 ID:X94qherQ0
ζ(゚ー゚*ζ「詳しいことは後でお知らせするって」

デレがそういってくれたのは、会議室を出た廊下だ。

国王は大臣の部屋に向かって行ってしまった。
明日にでも再び会議を開くらしい。
ただ、今度はデレを参加させないでの会議になりそうではあった。

ζ(゚ー゚*ζ「といっても、お部屋の前にいればいいからね」

デレがそう付け加える。
どこからどう見ても普通の少女だった。

( ^ω^)「はいですお。精一杯努力しますお」

定型的なセリフ。

ここで唐突に、デレの真意など聞いても上手くいかないだろう。
なんとか、そのチャンスは彼女の監視をしているときに見つけなればならないはずだ。

だから、この場は静かに去り、寄宿舎へ帰ればいい。
ブーンは逸る気持ちを抑えた。

496 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:51:01 ID:X94qherQ0
二人はゆっくり歩んでいく。

見た目が完全に普通の少女だからといって、100%信用できるわけではないだろう。

でも、少なくともブーンの前にいる少女は今
単純に、ブーンにどんな言葉をかけていいか悩んでいるだけのようにみえた。

疑ってばかりもいられない。
自分だってぼろが出ないようにしなければ。

自分はあのとき眠っていたことになっている。
デレを疑う気持ちがあるなどと、デレに思わせてはいけないのだ。

階段を降りていき、1階へ。

まっすぐに歩めば、玄関。
南東の門に一番近い場所。

ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、ブーンさん」

デレが声をかけてくる。

( ^ω^)「なんだお?」

497 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:52:02 ID:X94qherQ0
ブーンが返事をしても、デレが続きを話すまでに時間がかかった。

ζ(゚ー゚*ζ「……何かあったら、ちゃんとくまなく探してね」

それをいうと、デレはすぐに扉に手をかけた。

ζ(゚ー゚*ζ「さ、早く行って!」

妙に、急かす。

( ^ω^)「はいですお! おやすみなさいですお」

疑問はあるものの、言われた通りに早く出る。
それから振り向いて別れのあいさつをしようとしたときには、既に扉は閉められてしまっていた。

中途半端に前に出た手が、固まってしまう。

( ^ω^)「……?」

首を傾けながら、しかたなく、寄宿舎へと歩んでいった。



     ☆     ☆     ☆

498 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:53:22 ID:X94qherQ0
寄宿舎F棟 玄関前

入ろうとした。
そのときだった。

腕を引っ張られたのは。

( ^ω^)「!?」

慌てている暇も無かった。
少しバランスを崩していたら、一気に脇に連れていかれた。

(;^ω^)「だ、誰だお!」

思わず叫ぶ。

目の前にいる人の背は低い。
大きい髪型が見えている。

よく、見たことがある。

499 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:54:04 ID:X94qherQ0
やや欠け始めた月が、その人の姿を映し出す。

(;^ω^)「……ツン」

小さく、名前を呼ぶ。

彼女の黄金色の髪が、月光により青白く輝いて見えた。

彼女は振り向きもせず、ぐんぐんと足を進めていく。

若干ふらついたため、ブーンは寄宿舎の窓にぶつかった。

(;^ω^)「あいたっ」

大きな音が出る。
ツンにだって聞えたはずだ。

それでもお構いなし。
ツンはまったく振り返ろうとしない。

毅然とした歩みが続く。

500 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:54:59 ID:X94qherQ0
そのまま、寄宿舎を通り過ぎ、林の中へ。

いつの日か、ジョルジュを追って入った場所へ。

( ^ω^)「……どうしたんだお」

言いながらも、予想はついていた。

突然知り合いをこんなところに、無言で連れてくるなんて普通じゃない。

絶対に良くないことが起きようとしている。
そんな不穏な予感だ。

やがて、開けた場所に辿りついた。

ツンの手が離れる。
その手が、今度は彼女のポケットに進んだ。

501 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:56:04 ID:X94qherQ0
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン」

名前を呼んだのち、振り向く。
その腕がポケットから抜かれる。

一枚の紙が、ブーンの前につきつけられる。

三匹のカエルのマーク

そしてレジスタンスの文字

それは、いつの日かパフォーマンスの際に彼らが配布したものであった。

まさか、こんなにも堂々とヒントがあるとは。
油断していたと言うほかなかった。

502 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:57:14 ID:X94qherQ0
ξ゚⊿゚)ξ「……言い訳してみてよ」

ツンが突き刺してくる。
口調からして、端から信じる気もないことがわかる。

(;^ω^)「……」

何も思いつかない。
彼女の目を見ればわかる。
何を言っても無駄なことくらい。

ξ゚⊿゚)ξ「ねえ」

一歩、ツンが詰め寄ってくる。
ブーンは片足を引いた。

こつっと、背中に感触がある。
木だ。
場所からして、追い詰められていたのか。

503 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:57:59 ID:X94qherQ0
(;^ω^)「……遊んでいた、じゃだめかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「うん。今度は私も納得できないからね」

相変わらず、答えが素早い。

( ^ω^)「……わかったお」

溜息の塊が、口から押し出される。
目を泳がせるも、猛烈な引力を感じる。
ツンの青い目に引き寄せられてしまう。

まったくもって、見ていたくない目なのに。

( ^ω^)「観念するお。
 僕はレジスタンスに参加していたお」

正直に言おう。
何を言ってもばれるなら、真実を言った方がいい。

504 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/01(日) 23:59:00 ID:X94qherQ0
(;^ω^)「でも、これは別に国王に刃向おうって気持ちじゃないお。
 実はモララーさんもレジスタンスに協力していたんだお。
 あの人への恩義もあるし、それで初めはあの人の後を追っかけている形で近づいたんだお」

(;^ω^)「それに……それにあそこは魔人と立ち向かえるお。
 モララーさんを追いこんだのも奴らだお。
 もしちゃんとした戦い方を学べば、必ずや国王や王女を守ることにも繋がるお」

(;^ω^)「僕は、立場上微妙な立ち位置かもしれないお。
 でも何かを守りたいって気持ちでは変わってないお。
 そこはどうか、信じてほしいんだお」

そう言って、頭を下げる。

ξ゚⊿゚)ξ「やめてよ」

瞬時に、切られた。

ξ゚⊿゚)ξ「あたしにそんなかたっくるしいことやめて」

505 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:00:05 ID:osgyY/P20
ブーンは汗を感じた。
自分の頬を伝う。

ツンの顔をゆっくりと見上げた。

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン……」

彼女は、怒っていなかった。

ただ、悲しそうな顔をしている。

ξ゚⊿゚)ξ「誤解しているよ。
 あたしは別に、ブーンが国に刃向うなんて、思っていないもの。
 そんなことする人じゃないし」

その声は、酷く痛々しく聞えた。

( ^ω^)「……それじゃ、誤解って、なんだお?」

今度はブーンがツンを見つめる。

506 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:01:02 ID:osgyY/P20
ξ゚⊿゚)ξ「……レジスタンスの目的は?」

いきなりの質問だった。

( ^ω^)「魔人に反対すること、かお」

ξ゚⊿゚)ξ「うん、あたしもそう思っている」

なんでこんなことを聞いたんだろう。
その疑問は浮かぶものの、ここはツンの言葉を待った方がいい気がした。

ξ゚⊿゚)ξ「あたしはね、違うの。
 国家よりももっと別のことで、ブーンを危惧していたの」

そう言って、ツンはブーンから離れる。

開けた場所の真ん中へ。

ちょうど月明かりの下に、彼女はいた。

507 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:02:01 ID:osgyY/P20
彼女はその場でくるっとまわる。
その姿をブーンに見せている。

( ^ω^)「……ツン?」

胸の奥がざわついた。
直感が警戒信号を告げている。

これ以上、ここにいたら逃げられなくなる
なぜだかそう感じた。
何から逃げているのかもわからないのに。

ξ゚⊿゚)ξ「見ててね」

彼女はそれだけ言って

その場に立ち尽くした。

ブーンの目の前で。

508 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:03:09 ID:osgyY/P20
彼女は大きく息を吸う。

瞬きしている、そのうちに

彼女の髪よりもはるかに大きい影が、目の前に現れていた。






/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ) 「驚いた?」

斜めに伸び、先が垂れている。
月光に彩られた、ウサギの耳だ。

509 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:04:02 ID:osgyY/P20
( ^ω^)「…………なんの冗談だお」




ぽつりと言う。

笑うこともできない。

こんなときに、さすがにこれは趣味が悪すぎる。

そう思った。




でも、そんなわずかのブーンの希望は

ツンの憂いを帯びた瞳を見たことにより、書き消えてしまった。

510 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:05:00 ID:osgyY/P20

/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「……言ってなかったこと、たくさんあるの」

彼女は月を見上げた。
大きな耳の隙間から伸びる、小さな腕。

/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「たとえば、私はね、魔人の村から人間の町に出てきた家族の中で育ったの。
凄く、冒険が好きな親でね、いっつも世界を見て回りたいって言っていた。
暮らしていた町の人たちも優しい人でね。一緒に言葉とかも教えてくれたの」

/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「人間にはわからないだろうけど、私たちが言葉を覚えるのは大変なの。
 口語なら、町にいれば勝手に覚えてくる。でも書き言葉は上手くいかない。
 そもそも私たちには無い文化だから、覚えられない魔人もたくさんいるのよ」

/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「でもね、私はあの地球儀みたいに、結構頑張って文字の練習した。
 おかげですっごい汚い字になっちゃってるけどね。
 そんな意味であの地球儀は思い出があったのよ」

511 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:06:03 ID:osgyY/P20
ツンは腕を降ろした。
耳が揺れる。
確かにそれは実体だった。

今度はブーンに近づいてくる。

一歩ずつ、着実に。

/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「そんなこともあって、人間の風習をもっと知りたいと思った。
 だから身分を偽ってこの寄宿舎に入った。
 人間らしい習慣を学んじゃえば、どうってことない。溶け込むのは簡単よ」

/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「耳さえしまっちゃえば変わらないんだもの。
 私、髪も大きめだったから、ちょっと盛り上がっちゃってもごまかせたし。
 契約さえしていなければ、ただちょっと身体が頑丈な人に見える」

足が止まる。
すでにブーンとの距離は詰められていた。
普通に会話する距離よりも、やや狭く。

512 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:07:00 ID:osgyY/P20

/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「そんなわけで、うん。ごめんね。
 今までずっと騙してた。それは申し訳ないと思う」

/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「でも、ね、これならわかるでしょ?
 私がレジスタンスに入ってほしくないって言っていたわけ」

そういって、彼女は目を伏せる。

/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「確かに人間にとって脅威になる魔人もいるわ。
 それは事実、隠しようが無いことだもの。ううん、隠す方が良くない。
 だけどオープンにしていたって、偏見はつきまとう」

/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「でも、そんな世間の中でも
 私たちみたいに人間に溶け込もうとしている魔人は結構いる。
 社会に興味があって、人間と一緒に暮らしたいって思っている魔人たちが」

そこで言葉を切った。

顔を上げ、瞳がブーンに向けられる。
そこにあるのは猜疑じゃない。
期待を込めた瞳であった。

513 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:08:00 ID:osgyY/P20

/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「どうか、魔人をいっぺんに敵だってみなさないで欲しいの。
 それが、私の言いたかったこと。
 こんな場所まで連れてきちゃったけど、ね」

/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「ブーン……?」

そこで彼女は微笑んだ。
酷く歪んで見えた。

それは、彼女自身がぎこちなく笑っていたせいでもあったし
ブーン自身の主観の問題でもあった。

名前を呼ばれたことに気づくまでに、数秒かかった。
それほど、ブーンは心が遠くへ行ってしまっていた。

(;^ω^)「あ……う……」

言葉を出そうとする。
なんとか返事をしようとする。

514 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:09:00 ID:osgyY/P20
自分だって、思ったことなのだ。
一瞬でも思っていたさ。

魔人は全員が悪いわけじゃない。

差別するのはよくない。

噴水のタヌキ耳の女の子を見たときに、そう思ったのを思い出した。

でも、まさかこんなに身近にもいるなんて。

これまで、どこか遠くのものごとのように考えていた。
魔人の存在も、何もかも。
レジスタンスに所属していながら、その相手とする魔人の存在は認識しきれていなかった。

彼らに立ち向かうビジョンすら、ぼんやりしていたのだ。

515 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:10:10 ID:osgyY/P20
目の前の、友人の本当の姿を見て、思う。



自分がやろうとしていることは何なのかと。



何に立ち向かえばいいのかと。



でも



すでに歯車はまわり始めている。



自分はレジスタンスとして、活動し、今度はお城に忍び込もうなどと企んでいる。

516 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:11:00 ID:osgyY/P20
もう後には戻れない。






一度決心したはずだったのに。






なんで今になって。




(  ω )「……ツンの敵には、ならないお」




そう答えるしかなかった。





彼は優しかったから。

517 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:12:02 ID:osgyY/P20
いつか、この過ぎ去ってしまった時の流れが





自分の首を締めあげることになるだろう。





そんな、ほとんど確信に近い予感が、ブーンの頭の中に浮かんでいた。




     ☆     ☆     ☆

518 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:13:10 ID:osgyY/P20
自分に無いものがあった。

今回の作戦に当たって、それは必要なものであった。

南東の門で仲間が計画通りに騒ぎを起こした。

そのどさくさに紛れて忍び込むことができた。

馴れてしまえば簡単なものだ。
きっと本番でも上手くいくだろうな。
彼はそう思い、探索を進めた。

寄宿舎には特別な防御はない。
だから簡単に忍び込めた。

元盗賊団が傍にいるから、技術を得ることは簡単だった。
それが今日も役になっている。

519 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:14:22 ID:osgyY/P20
彼は寄宿舎の倉庫にてそれを見つけた。
新しい衛兵の上着だ。

自分がいた頃と、今の衛兵の着るものが微妙に違っているとわかり
早々に盗りにきたのである。

これで準備に向けて前進だな。
そう思って、寄宿舎の窓から出ようとしたときである。

そばにあった窓に何かがぶつかった。

急いで確認し、眺めてみる。

歩いていく二人組の姿が見えた。
一人は知らないが、もう一人はよくわかる。

( ゚∀゚)「ブーン……?」

520 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:15:20 ID:osgyY/P20
何をしているのだろう。
彼はもう、国王と話を済ませたのだろうか。

あの女の子と一緒に、どこへ。

気になったから、窓を出てついていく。
林の中へ。
懐かしい雰囲気を感じながら。






そして、月下の告白を全て見、聞いた。

呆然としているブーン。
それに歩み寄り、話しかけている女の子。

それらを遠目で見て、状況を把握する。

話も全て聞えた。

521 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:16:21 ID:osgyY/P20
( ゚∀゚)「……」





そのうえで、考えを巡らせる。




ブーンが何をしているのか。




自分が何をしなければならないか。






それが、月の下で起きていたもう一つの物語だった。

522 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:17:32 ID:osgyY/P20








―― 第四話 おわり ――




―― 第五話へ続く ――




.

523 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:19:20 ID:osgyY/P20
―― コラム④ 主な登場人物、及び勢力紹介 ――




〜レジスタンス(勇者)〜

・( ・∀・) モララー(死去)…………勇者

・ノパ⊿゚) ヒート…………盗賊

・('A`) ドクオ…………戦士

・( ゚∀゚) ジョルジュ…………遊び人

・lw´‐ _‐ノv シュール…………料理人+発明家

・? 現在他国に赴いている

524 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:21:20 ID:osgyY/P20
〜ラスティア城(魔王)〜

・ζ(゚ー゚*ζ デレ…………王女

・(´・ω・`) ショボン…………国王

・( ´W`)  シラヒーゲ…………政務官

・ミセ*゚ー゚)リ ミセリ…………M

・(゚、゚トソン トソン…………S

・( ФωФ) ロマネスク…………衛兵隊長

・|゚ノ ^∀^) レモナ…………貴族

・(-_-) ヒッキー…………レモナの息子+引きこもり

・? 他、衛兵全員

525名も無きAAのようです:2013/09/02(月) 00:23:04 ID:amoF4Y2.0
ツン…

526 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 00:24:49 ID:osgyY/P20
〜魔人(モンスター)〜

・ξ゚⊿゚)ξ ツン…………旅人の娘+従者見習い

・从´ヮ`从ト ???…………迷子+詩人

・? 森とか山とかにたくさんいる




〜その他〜

・(;^ω^) ブーン…………衛兵見習い

全てのグループに縁がある
しかも優柔不断なくせに人を助けたがる
その結果、どんどん泥沼へとはまっていく




新しい登場人物はそのうち追加されるでしょう。
もちろん別の勢力へ移動することもあり得ます。

物語を三幕に分けるならば、今は第一幕、状況説明が終わった段階です。
次はもう少し書きためてから臨むので、時間をかけます。

それでは。

527名も無きAAのようです:2013/09/02(月) 00:28:22 ID:LztZNF4EO
自分の仕える国が人間なのに魔王側ってのは不思議だな、とにかく続き気になる

528名も無きAAのようです:2013/09/02(月) 03:23:39 ID:Exbs.TpMO
ω)おつん

529名も無きAAのようです:2013/09/02(月) 05:35:49 ID:P0ZKPQhcO
そうか、('A`)はξ゚⊿゚)ξを見た時に感づいてたんだな 
これで序章が終わっていよいよ本編か第二幕からに期待 
 
/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚ ゚)ヽ) これなら訴訟されることは無いな

530名も無きAAのようです:2013/09/02(月) 11:04:25 ID:cbxAt3dU0
耳ありツンが可愛い


531名も無きAAのようです:2013/09/02(月) 16:40:47 ID:NCaUm5oM0
ξ゚撿゚)ξの口をξ゚&.#8895;゚)ξ(&と#の間の.を抜いて)にしてくれるとありがたいです。。。
おつです

532 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/02(月) 19:15:30 ID:osgyY/P20
>>531
そう見えてしまっているのでしょうか?
自分のパソコンからだと問題ない状態で見えるので、どうしたらいいかわからないんですが……

533名も無きAAのようです:2013/09/02(月) 19:28:26 ID:aHChWRgQ0
2chmateでは

ξ゚撿゚)ξ←口が化ける
ξ゚⊿゚)ξ ( ξ゚&.#8895;゚)ξ から.を取った)←読める

534名も無きAAのようです:2013/09/02(月) 19:39:27 ID:QtwptCaI0
投下しにくいだろうし気にしなくて良いよ

535名も無きAAのようです:2013/09/02(月) 23:05:25 ID:N0S1unGI0
文字化けしたツンに慣れちゃって通常のツンに違和感があるw


536名も無きAAのようです:2013/09/02(月) 23:53:30 ID:j4s2L9jI0
ここまで一気に読んだ
設定がすごい深いし面白い
続き楽しみにしてるが、ブーンの性格が悪い方向に動きそうだな・・・

537名も無きAAのようです:2013/09/04(水) 09:07:51 ID:79RJ37O20
iPadのSafariでツンやヒートの口が文字化けしてたがSafariだけじゃなかったのか
>>535みたいに文字化けしたツンとヒートに慣れたから正常なのみると違和感w

538 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/04(水) 23:47:21 ID:K5seVBKE0










―― 予告 ――









.

539 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/04(水) 23:48:12 ID:K5seVBKE0
10月25日

午後6時

ラスティア城下町中央広場

秋の日は短い。
先程まで赤みがかっていたと思ったら、今ではもう深い紫色。
やがてそれも黒く染められていく。星と月の灯りだけをまばらに残しながら。

中央広場に人々は集まっていた。

高台が設置されている。
昼間の内に、お城の従者と衛兵が協力して立てた豪勢なものだ。
そこに座っているのは貴族たちと来賓の方々であった。

(´・ω・`)「拡声器ちょうだい」

中央の一際大きな椅子に座っていたショボンが、従者に手を差し出していた。
その手のひらに、錘状の筒が渡される。
ただの筒に、魔人の不思議な力が施されたもの。

ショボンはその筒の細い方を口元に寄せ、話し始めた。

(´・ω・`)「新嘗祭を始めるよーーーー!!」

540 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/04(水) 23:49:01 ID:K5seVBKE0
声が大きくなり、広場中に広がっていく。
群衆は一同に声を張り上げる。
歓声がその場に響き渡る。拡声器よりもはるかに大きな声で。

ショボンはその様子を満足げに見降ろしていた。
ショボンにとって、この瞬間はとても楽しいものだった。

拡声器を外して、従者に返す。

それから客人の方を向いた。

(´・ω・`)「いよいよですな、国王様方」

主要な参加国は二つ。
マルティア国王、テーベ国王、及びその従者であった。

541 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/04(水) 23:51:41 ID:K5seVBKE0





―― 新嘗祭とラスティア城 ――




明日木曜日の午後9時から前半
明後日金曜日の午後9時から後半を投下します。

口とかいろいろ不都合あるかもしれませんが
このまま投下を続けることにします。ご理解ください。

それでは。

542名も無きAAのようです:2013/09/05(木) 00:24:58 ID:RXmSuLvgO
おいっ、今までと同じ製作ペースじゃねぇか 
今回はペース落ちると思ってたのに、まあ続き早いのは歓迎するんだが

543名も無きAAのようです:2013/09/05(木) 02:40:43 ID:rbGkzx5IO
>>542
なんなんだお前は

544名も無きAAのようです:2013/09/05(木) 13:03:26 ID:/fCDTzio0
ひとまず1話だけ見たけど、ひらがなと漢字の分量が丁度良くて読みやすいね
見習いたいもんだ

545 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 20:10:12 ID:es9erg9o0
ちょっと用事入ったので、30分から1時間程度遅れます。

546 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 21:21:21 ID:es9erg9o0
9時半から投下します。

547名も無きAAのようです:2013/09/05(木) 21:25:55 ID:1/FI.9xg0
よしこい

548 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 21:30:12 ID:es9erg9o0
10月25日

午後6時

ラスティア城下町中央広場

秋の日は短い。
先程まで赤みがかっていたと思ったら、今ではもう深い紫色。
やがてそれも黒く染められていく。星と月の灯りだけをまばらに残しながら。

中央広場に人々は集まっていた。

高台が設置されている。
昼間の内に、お城の従者と衛兵が協力して立てた豪勢なものだ。
そこに座っているのは貴族たちと来賓の方々であった。

(´・ω・`)「拡声器ちょうだい」

中央の一際大きな椅子に座っていたショボンが、従者に手を差し出していた。
その手のひらに、錘状の筒が渡される。
ただの筒に、魔人の不思議な力が施されたもの。

ショボンはその筒の細い方を口元に寄せ、話し始めた。

(´・ω・`)「新嘗祭を始めるよーーーー!!」

549 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 21:32:03 ID:es9erg9o0
声が大きくなり、広場中に広がっていく。
群衆は一同に声を張り上げる。
歓声がその場に響き渡る。拡声器よりもはるかに大きな声で。

ショボンはその様子を満足げに見降ろしていた。
ショボンにとって、この瞬間はとても楽しいものだった。

拡声器を外して、従者に返す。

それから客人の方を向いた。

(´・ω・`)「いよいよですな、国王様方」

主要な参加国は二つ。
マルティア国王、テーベ国王、及びその従者であった。



     ☆     ☆     ☆

550 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 21:34:03 ID:es9erg9o0










―― 新嘗祭とラスティア城 ――









.

551 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 21:36:03 ID:es9erg9o0
1時間以上後

ラスティア城8階

王女の間の前

( ^ω^)「…………本当に僕一人で守っているお」

彼以外の警備はいない。
魔人や、彼らの仕掛けた罠によって、お城の上階は守られている。

ブーンが眺めているのは赤い絨毯の敷かれた廊下。
脇には数本のろうそくしかなく、等間隔ではあるものの、薄暗い。
その光景はブーンの寂寥感を増幅させていった。

王女はこんな寂しいところにいるのかと思い、身震いする。
確か以前よりも彼女は人々と触れ合うようになったと聞いていた。
でも、今現在も彼女はあまりイベントに参加しない。

町が賑やかな時、彼女はこの薄暗いお城の中。
どうしてこんなところに籠るのだろう。
もっと町の人と触れ合いたいとは思いたくないのか。

( ^ω^)「……あ、時間」

ブーンは廊下にかけられた時計を確認する。
約束の時刻まで、あと30分弱。
それまでに、彼は一旦お城を出て、北西の門に外側から向かわなければならないことになっていた。

552 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 21:38:03 ID:es9erg9o0
それが、お城にレジスタンスを迎え入れるための作戦の開始。
上手くいかなければ、その時点で終わってしまう。

結局、そこまで上手い方法が見つかったわけでもなかった。
ちょっとでも疑われたら終わってしまうかもしれない作戦。
だからなおのこと、細かいところで失敗してはならない。

ブーンは緊張を感じていた。
でも、その緊張を心地よいと感じていたのも事実だ。

彼は変わり始めていた。
引っ込み思案な性格だったのに、レジスタンスに入ってからはやたらと提案をしている。
その心境の変化の裏側には、どうにかしてモララーの無念を晴らしたいという思いがあった。

だけど、そのためには魔人と対立しなければならない。

そして魔人と対立できない理由が自分にはできてしまった。
正体を明かしたツンの姿が瞼の裏に浮かぶ。
長いこと友達として一緒に過ごしていた。それなのに全く気付いていなかった。

だからこそ、ショックは大きかった。

553 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 21:40:03 ID:es9erg9o0
ツンの意見は限界まで聞きいれる。
一方で自分はレジスタンス。
板挟みの中、彼はこの活動に参加するかどうか迷っていた。

でもここまで計画を練っていた以上、せめてこの潜入計画だけは成功させたい。
そこから先は考えていない。ひょっとしたらやめるかもしれない。
とりあえず今はこっち、という妥協。

いつまでも妥協が上手くいくとは限らないが、とにかく今は迷いを胸に潜めた。
だいたい、潜入作戦は魔人とは関係ない、モララーの遺品のためだ。
それは自分のためでもある。ツンを傷つけることにはならない。

だから、これくらい許してくれ。
ブーンは内心でそう訴えかけていた。誰に聞かれるわけでもない訴え。

人間一つか二つ隠し事はあるんだ。
全部を誰かに告白しなきゃならないってわけじゃない。
取捨選択して体面を繕っていく、それくらいいいはずさ。

その結論は開き直りとも言えたかもしれないが、、ブーンはそれ以上悩みたくなかった。
むしろ今この場で企んでいることがツンにばれないかという方を心配するべきと思おうとした。

554 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 21:42:03 ID:es9erg9o0
( ^ω^)「……はあ」

ひどく草臥れた溜息を一つ。
まるで老人になったみたいだと、心の隅で自分を評価する。

それから時間が過ぎた。
7時20分になる。

目を閉じて、軽く伸びをするブーン。

そろそろ動かなくては。
そう思い、王女の部屋の扉を振り向く。

( ^ω^)「王女様、相談したいことが」

ζ(゚ー゚*ζ「なあに?」

すぐに返答がくる。
それは確かにデレの声だった。

555 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 21:44:05 ID:es9erg9o0
( ^ω^)「少し階下に忘れ物をしてきたんですお。
 取りに行ってもいいですかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「あら! そうなの?
 ……どれくらいで戻って来れる?」

( ^ω^)「えっと、お城も広いし、罠も避けて歩かなきゃなんで
 20分以上かかってしまうかもしれないお」

ζ(゚ー゚*ζ「そんなに……まあ、でもしかたないわね。
 構いませんよ。たぶんこのお城も無事でしょうし」

ブーンはほっと息をついた。
デレの顔色はわからないが、少なくとも許しはもらえた。

これから急いでレジスタンスのみんなの元へ向かおう。

( ^ω^)「……はいですお。
 ありがとうございますお」

556 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 21:46:03 ID:es9erg9o0
見えもしないのに、頭を下げる。
足早に立ち去っていった。

罠の位置は事前に聞いていたので、注意をしながら進んでいかなければならない。
この情報も早いところ彼らに伝えなきゃならないと感じていた。

もう、廊下には誰もいない。
少なくとも人間は。

彼がいなくなった扉の内側には、しっかりとデレがいた。
彼女はそのとき、真剣な顔つきでいた。

ζ(゚ー゚*ζ「……行ったわね」

扉に寄せていた耳を離す。

その鋭い眼光は、まっすぐに窓を捉えていた。

557 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 21:48:01 ID:es9erg9o0
     ☆     ☆     ☆




7時半

ラスティア城北西門

この場所は通常、あまり使われない。
南側の坂の下にある城下町からは遠かったからだ。
門の回り自体も木々が生茂っており、見た目からして鬱屈としている。

そのためこの門は衛兵が非常時に使う門となっていた。

簡単に言ってしまえば、防衛は一番薄い。
新嘗祭の日に使うなんて思ってもいなかったから。

それこそが狙い目であった。

(√・A・)「ああ……なんで新嘗祭なのにこんなとこの門番やってなくちゃならなんだろう。
 籤運が悪かったなあ、俺も花火見たかったなあ、ちくしょう」

ボヤいている警備の衛兵。
つまらなそうに石ころを蹴っている。
意識が低いのは明らかだ。

(√・A・)「……ん?」

その彼の目に、三人の人影が見えた。

558 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 21:50:00 ID:es9erg9o0
( ^ω^)「こんばんはですお」

集団のうち、先頭を歩いていたブーンが言う。

(√・A・)「やあ、こんな夜中に何の用だい?
 見たところ君らは衛兵のようだけど……」

衛兵は三人の姿を眺める。
三人とも、衛兵の基本装備を纏っていた。
ブーンの後ろの二人は大きな筒を持っている。

( ^ω^)「実は国王の頼まれごとで、こっそりお城にはいらなきゃならないんですお」

(√・A・)「頼まれごとだって? なんだろう、それにどうしてこの門から?」

若干訝しみながら、衛兵が連続して質問する。
ブーンは大きく頷く。

( ^ω^)「見た方が早いですお」

そう言って、ブーンは後ろの二人に合図を出した。
二人は門の横に移動する。
そして筒に手をかけ、両脇に引いた。

それは筒ではなかった。
広げてみれば、それは巨大な平たい物体となる。

559 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 21:51:59 ID:es9erg9o0
それは門の外から内側へと広がった。

(*^ω^)「今日の記念の旗ですお!
 これをお城に運ばなきゃならないんですお。
 秘密のことなので、みんなには内緒、だから正門を通るわけにいかなかったんですお」

楽しそうに、ブーンが説明する。

衛兵はやや慌てていた。

(√;・A・)「お、おいおいこんなところで広げるなよ」

(;^ω^)「え? あ、すいませんでしたお!」

(√;・A・)「謝らなくてもいいけど、ほら入っていいから畳んで」

(;^ω^)「わかりましたお。おーい、もういいお」

二人の男が、少しずつ旗を丸め始める。
ややぎこちない動き。
はた目から見れば、大きな旗を扱うのに苦労しているだけのように見える。

衛兵は気付いていなかった。

その旗の後ろ側で、二人の女性がこそこそと門を通過していたことを。

その女性たちは内側にある物陰にさっさと隠れた。
衛兵はブーンと話しているため、気付かないまま。

560 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 21:54:17 ID:es9erg9o0
(√・A・)「はい、それじゃあね」

( ^ω^)「まかせましたお。
 そういえばさっき道でちょっと不審な人を見かけましたお」

(√・A・)「なに、本当か!?」

( ^ω^)「ええ、なんだか挙動不審で。
 少し歩いて見てきた方がいいかもしれませんお」

(√・A・)「そうか……ありがとう。
 お祭り成功させてくれよな」

衛兵はそう言って、素直に道を進んでいった。
もちろん遠くまでいくわけでもなく、少し見回ったら帰ってくるのだろう。

でも、わずかな時間で十分だった。

( ^ω^)「よし、入るお」

そう、二人の男に言う。

( ゚∀゚)「旗はどうするんよ」

('A`)「隠しとけ」

旗を抱えていたのは、ドクオとジョルジュ。

561 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 21:56:02 ID:es9erg9o0
彼らはやがて、女性が潜んだ物陰へと歩いて行った。

ノパ⊿゚)「お見事」

lw´‐ _‐ノv「上手く言ったな」

物陰から、ヒートとシュール。

(;^ω^)「いい衛兵で助かりましたお」

軽く頭をかく。

( ^ω^)「さて、今のうちに入りましょうお。
 そろそろ僕は持ち場に戻らなければなりませんお」

門まで走って向かい、その錠を開ける。
重たい鉄の扉が動き、中へと繋がる道が見えてくる。

最初の作戦が上手く運んだことを、ブーンは心の中で喜んでいた。
幸先は良い。
迷ったりすることもあった。でも今は、自分に運が向いている。

今はひとまずこの作戦のことを考えよう。
レジスタンスの仲間たちを、国王の部屋へ連れて行くんだ。

( ^ω^)「こっちですお。僕が誘導しますお」

ブーンが大きい手振りで招き入れる。

こうして潜入が始まった。

562 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 21:58:04 ID:es9erg9o0
('A`)「……ううむ」

入ってすぐに、ドクオが呻いた。
鼻を抓って見るからに嫌そうな顔をする。

(;^ω^)「どうしたんですかお?」

('A`)「いやな。大したことじゃないんだ。
 前々から思っていたことなんだけど……」

ドクオの目線がお城中に向けられていく。
城の内壁、燭台、蝋燭、絨毯、飾りの鎧に部屋への扉

('A`)「このお城、なんだかすごく鼻にくるんだ。
 それも年々強くなっていってる」

ノパ⊿゚)「魔人かい?
 でも実際お城の中で働いている奴もいるんだし
 多少は仕方ないんじゃない?」

('A`)「…………だといいんだけど」

そう言って、ドクオは首を振る。
気合を入れなおしたのだ。

563 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 22:00:00 ID:es9erg9o0
('A`)「ぐだぐだ言ってしまってすまない」

( ^ω^)「いや、仕方ないですお。
 きっとそんな鼻があった方が役立ちますお。
 罠とかを仕掛けるのも魔人ですし」

('A`)「そうか。ありがたい話だ。
 先へと進もうか」

ドクオを先頭にして一行は進んでいく。

ラスティア城。

衛兵見習い程度では下の階しか行ったことこの無いお城。
貴族以外の誰も、その全景を見たものはないという。




     ☆     ☆     ☆

564 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 22:02:01 ID:es9erg9o0
潜入してからも、暫く大事は起きなかった。
魔人の罠といえども、場所がわかっていれば怖くはない。

( ^ω^)「あ、そこ」

例えば、とある廊下。

( ^ω^)「そのあたりの床板踏むと槍が落ちてきますお」

( ゚∀゚)「え、どこどこ?」

(;^ω^)「あ、歩くなって!」

足をちょいちょいと地面に触れていくジョルジュを、ブーンが取り押さえる。
つまらなそうにむくれるジョルジュを無視して、脇道を指した。

( ^ω^)「そっちが正しい道ですお」

こんな風にして、大抵の罠は回避することができた。
そうして、5階まで彼らは進んでいった。

565 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 22:04:00 ID:es9erg9o0
ラスティア城5階

この階の構造は特殊であった。

( ^ω^)「ここはちょっと説明しなきゃなりませんお。
 僕も今日初めて知らされたんですけど、ここには5つの大部屋があるんですお。
 それが階の四隅と中央にある部屋なんですお」

( ^ω^)「四隅の部屋には階段があって、それを登れば貴族の部屋に続くんですお。
 そして中央にある一際大きな部屋が、お城の中心にある塔へと伸びる扉ですお。
 国王の部屋と王女の部屋はその中央の塔の中にあるんですお」

('A`)「じゃあ、俺たちはその中央の塔を登る必要があるんだな。
 ブーンも王女の部屋の警備に戻らなきゃいけないんだし、一緒にいけるんだろ?」

( ^ω^)「それが……ちょっと中が複雑でして
 6階に辿りつくと分岐があるんですお。
 王女の部屋へ行くなら左、国王の部屋へ行くなら右、だから6階より先にはお別れですお」

ノパ⊿゚)「じゃあ、そこから先の罠の場所はわからないよってことか」

(;^ω^)「そうなんですお。僕は王女の部屋へ行く罠しか聞かされていないんですお。
 だからこれ以上は、ちょっと役には立てないかなと……」

( ゚∀゚)「いや、俺は一向に構わないぜ」

566 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 22:06:01 ID:es9erg9o0
ジョルジュが一層にやりと笑った。

( ゚∀゚)「避けてばっかりでつまんなかったからな。
 やっぱり潜入するからには楽しくやらなきゃだからよ」

lw´‐ _‐ノv「ああ……不安だ」

シュールの呟きもまったく聞えていないようであった。

(;^ω^)「ま、まあみなさんなら無事だと信じていますお」

('A`)「俺の鼻もあるんだ。協力すればなんとかなるだろう」

ノパ⊿゚)「ブーンは早く王女のところへ行ってなよ、怪しまれたらいけないし」

( ^ω^)「それなら……みなさん頑張ってくださいお!」

一行は中央の部屋に向かい、扉を開いた。

部屋の中には、幅の広い螺旋階段の登り口が一つだけある。
人ならば軽く5、6人並ぶことができる広さだ。
赤い絨毯が敷かれており、奥の方は道の蛇行のために見ることはできない。

567 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 22:08:00 ID:es9erg9o0
螺旋階段の壁には蝋燭が飾られていた。
金属質の燭台の上で、炎が等間隔で揺らめいている。

雰囲気は暗い。
煌びやかな雰囲気のあった5階から下とは違う、薄暗い道。

( ゚∀゚)「なんでこんなに暗くするんだろーな」

( ^ω^)「お城は暮らすための場所ってわけじゃないからだお。
 ずっと昔は、お城は戦争の拠点として使われていたんだお。生活よりも、攻め込まれないことの方が大事。
 今は趣があるからってそのお城を再活用しているだけで、貴族や王族の部屋以外はそこまで気を使っていないんだお」

('A`)「戦争していた時代か……今じゃ想像もできないな」


ドクオが呟く。
おそらく彼は単純に考えたことを述べただろう。
常に今の自分たち人間の立場を考えている彼の発想。

その言葉を聞いて、ブーンはふと思いついたことがあった。
聞いてみたいことが生まれた。

568 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 22:10:01 ID:es9erg9o0
( ^ω^)「ドクオさんは……戦争についてはどう考えているんですかお?」

魔人が来て、世界が変わった。
一番変わったのは、大掛かりな戦争が無くなったことだ。

不思議な力を使えば、契約をした個人個人が戦争の大局を変更できる。
だから魔人を活用した戦争はできなくなり、人間同士の戦争も簡単に治めることができた。

それが魔人の功績だと称える人も多い。
安心して平和を享受する理由でもある。

その一方で、魔人に反対する人たちはその功績をどうとらえているのか。
魔人の有用性を無視するわけにはいかないんじゃないか。

質問の裏にあるのは、その疑問だ。

(;'A`)「…………」

返事がすぐにはこない。
いつもなら歯切れよく、一般論まで交えて演説してくれるのに、どうしたのだろう。

ブーンは小首を傾げる。

569 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 22:12:00 ID:es9erg9o0
それから考え直した。
ここはもっと率直に質問した方がいいんじゃないかと。

戦争が無くなったという、魔人の功罪についてどう考えているのかと。

口を開く。

( ^ω^)「それじゃ、戦争が無k――」

けれど、途中で切れてしまう。

返事があったのではない。

背筋に悪寒が走ったからだ。

誰かに強烈に睨まれたような感じ。

(;^ω^)「!?」

首を振り、あたりを見回す。
誰かに見つかったか? いや、そんなものはないはず。

この螺旋階段に、そんな隙間はないはず。

じゃあ、誰が自分を睨んだんだ。

570 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 22:14:08 ID:es9erg9o0
('A`)「? どうした」

ようやくドクオが言葉を返してくれた。
ただ、もうブーンにはそれに答える意識は無かった。

(;^ω^)「い、いえ……」

曖昧に答える。
確証があるわけじゃない。
睨まれたのが事実かどうかもブーンにはわかっていない。

視線を感じたというただの思い込みかもしれない。

気になるが、それにとらわれすぎても良くないだろうと考えた。

下手に場を擾乱させるべきじゃない。
ここまで上手くいっているんだから。

(;^ω^)「何でもないですお」

不思議そうに覗きこむドクオの顔に向けて、ブーンは小さく首を横に振った。

( ゚∀゚)「さ、6階についたぞ」

ブーンの後ろにいたジョルジュが言う。

571 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 22:16:00 ID:es9erg9o0
( ^ω^)「お、本当だお。良かったお」

ほっとする。
緊張から解放された気がした。

ノパ⊿゚)「先に上歩いてるんだから気付けよなー」

わずかばかりの笑い。

その隅で、ジョルジュが笑っていなかったことに、誰も気づいていなかった。



     ☆     ☆     ☆

572 ◆MgfCBKfMmo:2013/09/05(木) 22:17:58 ID:es9erg9o0
中央広場

開始からすでに時間は経過している。
噴水の周りで光が爆ぜる。
町の技術者たちによる盛大な出し物が行われようとしていた。

ショボンは台座から降りている。
歩み寄っていく先は来賓の席。

(´・ω・`)「楽しんでいただけていますかな」

来賓の席は二つあったはずだが、一人はいなくなっていた。
仕方なくもう一人の方へ話しかける。

その来賓の老体は、しょぼくれた口を釣り上げて笑い返した。
やけに綺麗な歯並びが覗かせる。

/ ,' 3「ああ、見ていて愉快ですぞ。ショボンくん」

ラスティア国王を君付けで呼べる人。
そんな人はこの世に一人しかいなかった。

ショボンもまた、微笑み返す。

(´・ω・`)「それは良かった。マルティア国王様」


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