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( ^ω^)優しい衛兵と冷たい王女のようですζ(゚ー゚*ζ
453
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:07:59 ID:X94qherQ0
去年の夏、それまでデレの専属の付き人であった方が高齢のために退職した。
その抜けた役職を決める際に、デレはなるべく若い人を呼ぶように頼んだ。
そこでその年の従者見習いのうちで優秀な生徒から付き人を公募した。
デレ自身はその選ぶ場にいなかったが、その結果としてミセリが当選したのである。
(゚、゚トソン「そうですか。何分この子はまだまだ未熟な点があったので不安でしたが……」
まだトソンが納得のいかない顔をしていたので、デレは言葉を続けた。
ζ(゚ー゚*ζ「でも、たとえ成熟していなくても、見ていて楽しいですし
そういう親しみやすさって大事だと思いますよ」
デレはそういって、寝ているミセリに笑いかける。
ζ(゚ー゚*ζ「歳も近いし、話し相手にもなってくれるし
私はミセリで満足しています。そう不安に思わないであげてください」
不思議とお願いする形になってしまった。
トソンもまたミセリを見る。
少しだけ、笑みを漏らしていた。
(゚、゚トソン「わかりました。王女が言うならば、仕方ないです。
本当に、王女はお優しいのですね」
454
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:09:08 ID:X94qherQ0
瞬間
思考が止まった。
お優しい
数秒にも満たない間だったが、
そのワードはデレの鼓膜を刺激し、
身体の動きも鈍る。
455
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:10:00 ID:X94qherQ0
(゚、゚トソン「?」
トソンが目を瞬かせる。
疑問符を浮かべている。
咄嗟にデレは首を横に振った。
ζ(゚ー゚*;ζ「なんでもないですよ! なんでも。
早くミセリを介抱してあげてください」
(゚、゚トソン「あ、はい!」
急かすデレに促されて、トソンは軽々とミセリを運んでいく。
その場に残ったデレは、そっと自分の胸を触った。
鼓動がすっかり高くなってしまっている。
デレは息を吸い、長く吐いて、呼吸を整えようとした。
456
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:10:58 ID:X94qherQ0
トソンは不思議に思っただろうか。
どうかそんなことは忘れてしまってくれ。
デレは必死にそう祈った。
少しずつ、呼吸が落ち着いてくる。
自分の脈拍が正常に戻っていく。
ζ(゚ー゚*ζ「こんなんじゃだめ……」
誰にも聞えないくらい小さな声で、デレは呟いた。
自分に言い聞かせるために。
胸に置いた手のひらが、自然と拳を作り出す。
力が籠る。結びなれていない歪な拳。
でも、痛みは感じない。
もっともっと、強くあらねば。
あの程度で動揺していてはいけない。
どこから綻ぶかわからないのだから。
457
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:11:58 ID:X94qherQ0
瓶を握り、手持ちのグラスに注ぐ。
その飲み物を一気に飲み込んだ。
果汁の香りの混じった吐息。
グラスを置いて、目を閉じた。
こうしてデレは気合を入れようとしたのである。
しばらくは呼吸を整えるのに時間を割いた。
なぜだかなかなか脈がもとに戻らない。
「大丈夫ですかな」
声をかけられる。
落ち着いた、大人の声。
デレは反射的に顔を上げた。
( ФωФ)「私ですよ」
目の前にいたのは、衛兵隊長のロマネスク。
以前父に紹介されてから、知り合いだった。
458
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:13:01 ID:X94qherQ0
ロマネスクはグラスを掲げ、猫のような目をデレに向ける。
( ФωФ)「楽しんでおられますかな」
デレは答えなかった。
その代わり、彼を睨み据える。
その表情を見てから、ロマネスクが「やれやれ」と残念そうな声を出した。
( ФωФ)「おられないみたいですな」
ζ(゚ー゚*ζ「おかげさまで」
デレは短く畳みかけた。
目は変えず、首だけを動かしてなおのこと勢いをつけていた。
ロマネスクは虚を突かれたようで、微かに肩を震わせている。
それから、彼は目を細めた。
猫が知らない人を見るとき、相手を品定めするように。
459
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:14:00 ID:X94qherQ0
( ФωФ)「小娘め……」
他の人には伝わらないように、細心の注意を払って出した声だろう。
デレだけの耳に、それは届いた。
それをうけて、デレが鼻を鳴らす。
勢いづいていたためか、強気な態度になる。
ζ(゚ー゚*ζ「そんな言葉、私に向けていると牢屋に連れて行かれますわよ?
特にあの偏愛なお父様は黙っていないでしょうね」
すると、ロマネスクは不可解そうに眉を寄せた。
それから嘆息をもらす。
やがて口を開こうとするも、デレの指がその前に立たされる。
ぴんとのびたそれを、寄り目で見て、それからロマネスクはちらっとデレを向いた。
デレはにたりと顔をゆがめてその目線を受け止めた。
ζ(゚ー゚*ζ「私の腕の傷のこともまだ言わないんだから、感謝しなさい。
これだけでもあなたを虐め抜くには十分すぎるんじゃありませんこと?」
460
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:15:00 ID:X94qherQ0
そう言い切って、デレは指をロマネスクの口から離した。
ロマネスクは目を閉じ、肩を落とす。
側頭部に微かな汗があったが、それを拭った。
(;ФωФ)「……なんだかずいぶんと変わりましたな。
あなたがそんな態度を示すとは、いやはや、何が何だか……」
やや言葉を選んだ様子で、感想を述べてくれた。
ζ(゚ー゚*ζ「そう? ありがとう。これであの人も喜ぶわ」
今度は無邪気な笑顔を浮かべ、デレが言った。
なぜだか不思議と気分がいい。
今なら好き勝手になんでも言える気がする。
ロマネスクはテーブルの上の瓶をつかむ。
ラベルには洋梨が描かれている。
グラスに半透明の液体が注がれた。
ζ(゚ー゚*ζ「そうだ、あなたに頼みたいことがありましたのよ」
注ぎきるのを待ってから、デレが提案した。
ロマネスクは数秒だけ顔をゆがませる。
461
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:16:00 ID:X94qherQ0
(;ФωФ)「……断らせない気ですな」
ζ(゚ー゚*ζ「このお城を追放されたくなければ」
(;ФωФ)「……わかりました。
何ようですかな? あまりに突飛なことはできませんが」
ζ(゚ー゚*ζ「おそらく適役よ」
ロマネスクはデレの話に備えて、飲み物を一気に飲み込もうとする。
( ФωФ)「……ぬ!」
途中で止まり、ロマネスクが口をおさえる。
( ФωФ)「これはお酒ですな。
洋梨のジュースかと思ったのに、すっかり騙されてしまいました」
ζ(゚ー゚*;ζ「…………え?」
☆ ☆ ☆
462
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:17:00 ID:X94qherQ0
新嘗祭まで、あと1週間
朝早く
城下町中央広場
ブーンはお城を早々に出てきていた。
一週間ぶりに『三匹のカエル』に向かうために。
目的は、ある提案をするためだ。
( ^ω^)「お?」
噴水の前で足を止める。
(〆 ヽ)
从´ヮ`从ト「あかねさす〜」
いつか見た魔人の迷子だ。
噴水の傍で座りこんで、何事かを歌っている。
463
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:18:01 ID:X94qherQ0
それは聞いたことのない文字だった。
きっとこの国のものではない。
もっとずっと、どこか遠くの国の言葉のように思われる。
(〆 ヽ)
从´ヮ`从トそ
少女とブーンの目があう。
はっとしたように、少女は反応して、それからさっさと走って行ってしまった。
( ^ω^)「なんだったんだお?」
あの子は毎日この噴水にきているんだろうか。
少しだけ考えたが、今は用事もある。
早く酒場に向かうことにしよう。
黒猫に横切られたのでもないし、不幸になるわけでもないだろう。
464
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:19:01 ID:X94qherQ0
朝8時半
『三匹のカエル』の扉を叩く。
わずかに開かれる。
('A`)「……早いな」
ドクオが小さな声で言う。
顔色は悪い。朝に弱いせいもあるし、話し合いが長引いているのだろう。
( ^ω^)「早く伝えたいと思いまして。
提案があるんですお」
('A`)「本当か?」
眉根を寄せるドクオ。
それに応じ、頷くブーン。
('A`)「……よし」
ブーンはほっとし、足を進めようとする。
('A`)「あっと、ちょっとまって。
ひとつ気になったことがあるんだが、最近魔人と会わなかったか?」
( ^ω^)「……え?」
465
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:20:02 ID:X94qherQ0
('A`)「ちょっとな、気になって」
ドクオは鼻を指さす。
魔人か人間か判別することができる鼻。
ああ、とブーンは納得する。
( ^ω^)「それなら、たぶん会いましたお。
町にやってきてる魔人に何度か」
ブーンが頭に思い浮かべていたのは、先程噴水で会ったあの女の子だった。
('A`)「やってきてる?」
( ^ω^)「まあ、特に危害のある魔人とは思えなかったですお」
('A`)「……そうか。うん、まあいい。今は作戦のことを考えよう」
やや納得のいっていない表情のドクオであったが、ようやくブーンを招き入れてくれた。
466
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:21:01 ID:X94qherQ0
そうして、この日
ある作戦が敢行された。
都合上、ここでは先に時間を進めるとしよう。
☆ ☆ ☆
467
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:21:58 ID:X94qherQ0
同日 夜8時
ラスティア城、2階
会議室
今日はパーティではない。
新嘗祭へ向けての最終調整だ。
参加しているのは、町長を含めた城下町の代表者、お城の専属の司祭、
国王や王女、それに加えて政務官、執務官を含む各種大臣だ。
なぜ政治関係の人々も参加しているかといえば
この祭には他国からの使者も来賓として招かれることになっていたからである。
特に、ラスティア国は北のマルティア国との親交が深くなっている。
数年前にマルティア国から王女の誕生日を祝われて以来の付き合いだ。
ショボンの方からも何度も顔を出し、とある交渉を進めている最中なのである。
今回は日取りが急に変更になったため、他の国から来賓がくるかはまだ判断しかねる状態だったが
ラスティア国としてはどうしてもマルティア国王には参加してもらいたいと思い
積極的にアプローチを仕掛けていた。
その結果として、今回も今までと同様にマルティア国の王を迎えることになったのであった。
468
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:23:03 ID:X94qherQ0
その話し合いの中、デレはなるべく顔を無表情で保っていた。
真剣な会議であるので、下手に笑みを浮かべても意味はない。
むしろ訝しがられてしまう。
かといって退屈そうな様子を与えてもいけない。
だから顔には何も出さないでおく。
ショボンがデレを会議に参加させるのは、自分の血を受け継ぐ者がデレしかいないからだ。
たとえ将来の王を外から迎え入れるとしても、デレに仕事を知っておいてもらわなければ支障が生じる。
今のうちから学んでおいてもらわなければならないのだ。
しかし、デレはその気持ちの裏側も察していた。
これは自分に対する申し訳なさから来ているのだということを。
積極的に外交に参加させたり、人を触れ合わせたりするのは
今までずっと私を閉じ込めておいてしまったことに対する反省なのだろう。
そう、デレは感じていた。
ショボンはそれを決して口には出さなかったけど。
469
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:24:00 ID:X94qherQ0
その会議室に突然衛兵が走り込んできたのは、会議の終盤にさしかかった頃であった。
(√`ー´)「大変です! 南東の門が魔人に襲撃されました!」
南東の門というのは、基本的に来客が使う門であった。
(;´・ω・`)「何、本当かい!?」
ζ(゚ー゚*;ζ「!?」
ショボンが焦りの色を浮かべ、その場の全員に緊張が走る。
デレとしてもそれは同じ事であった。
(√`ー´)「ええ、それで城下町の代表者の方々の車が襲われまして……」
発言を聞きうけて、来客たちのどよめきはますます大きくなった。
(;´・ω・`)「落ち着いてください! 落ち着いて!」
ショボンが諸手を挙げてその場を治めようとする。
興奮した空気が少しだけ和らいだ。
(´・ω・`)「それで、魔人たちはどうなったんですか?」
470
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:25:07 ID:X94qherQ0
(√`ー´)「はっ! 実はある衛兵見習いがその場にいまして
運よく無事、撃退することができたそうです!」
(´・ω・`)「なんだって!?」
ショボンはテーブルに身を乗り出した。
デレは横からしか見えなかったが、ショボンの目が輝いているのがわかった。
ショボンは昔から、衛兵の功労に目が無い。
それは性格が変わる前から共通していることであった。
以前モララーの武功を異様なほどに称えたのも、その性格ゆえ。
衛兵の情報を聞いて、他の来客たちは先ほどとは別の意味でどよめいている。
そんなことができるとは、いったいだれがやったんだ
感心と同時にその衛兵見習いに対する興味が湧いている。
(´・ω・`)「いったい誰なのかな、その衛兵見習いは。
ぜひお会いしてみたいのだが」
(√`ー´)「はい、ご案内します。
その人物は2年前に入城してきたブーンという若者でして」
☆ ☆ ☆
471
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:26:02 ID:X94qherQ0
ラスティア城 南東門守衛室
(;^ω^)「はい、そうなんですお。
魔人たちは確かに、次は『デレ王女を狙う』と言ってましたお」
南東門での騒ぎの後に、彼はここに連れてこられた。
お城の直接の防衛をしている守衛班の控える部屋だ。
毎晩、常に各門につき4人の衛兵が門の警備に当たる。
2、3時間ごとに1人ずつが門の傍で張り込む。
今夜、ブーンを連れてきたのは南東門の警備をしていたうちの1人であった。
(√`△´)「次は王女を、か……なかなか不穏な言葉だ」
衛兵はそうボヤいた。
(√`△´)「その魔人、お前が追い払ったあとはどうしたんだ?」
( ^ω^)「ものすごい勢いで走って逃げましたお。
衛兵さんもご覧になられたんじゃないですかお?」
(√`△´)「確かに、何やらすばしっこい影が走っていくのは見かけたな。
あれが魔人だったのか……」
472
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:27:00 ID:X94qherQ0
衛兵は報告書にいくつかを書き込み、それから羽ペンをくるくるとまわしはじめた。
ブーンを連れてきてからすでに20分は経過している。
追求の声もとぎれとぎれになってきている。
そろそろ終わりなのではないか、とブーンが思い始めた頃だった。
守衛室の扉がノックされる。
(√`△´)「何用だ」
警備の衛兵は扉に向けて言う。
扉が開かれ、また別の衛兵が顔を出した。
(√`ー´)「国王様より伝言で、早急に報告をするようにと。
それと、ブーンを連れてこいとのことです」
(√`△´)「なに、こいつもか?
うーむ、国王の命令ならばしかたない」
そう言って、警備の衛兵がブーンを手で促す。
はやくいけ、とのことらしい。
( ^ω^)「それでは、失礼しますお」
丁寧に頭を下げ、ブーンはその場を後にした。
後から入ってきた衛兵に連れられて。
473
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:28:00 ID:X94qherQ0
まさかいきなり国王に接見できるとは思わなかった。
だから、いささか緊張もしている。
(√`ー´)「お前は2階の会議室に連れて行く。
先程まで客人たちが来ていたのだが、すでにお帰りとなった。
国王はその場に残ってお前の帰りを待っていたのだ」
( ^ω^)「そんなことまで……」
(√`ー´)「それに、国王だけではないぞ」
( ^ω^)「え?」
どういうことですか、と聞こうと思ったときに、衛兵は歩みをとめた。
観音開きの扉がある。会議室の入口だ。
ブーンは口を閉じた。
どうせ扉が開いたときにわかる、そう思ったからだ。
扉が開かれる。
中の光景が明らかになった。
474
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:29:00 ID:X94qherQ0
(´・ω・`)「やあ! 君がブーンくんだね!」
途端に、目の前で大御所が手を振ってきた。
不意打ちだったので、面を食らってしまう。
(;^ω^)「あ、はいですお……」
おずおずと頭を下げる。
ショボンは大きな声で笑って返してきた。
(´・ω・`)「硬くならなくてもいいよ、僕は君を称えたいんだ。
君、報告書をこっちに」
ショボンが衛兵を指さした。
衛兵はすぐに歩んでいき、報告書をショボンに渡す。
その間に、声をかけられた。
475
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:30:01 ID:X94qherQ0
「お久しぶりね」
ちょうど、扉の陰に隠れた場所からだ。
誰かがいるのだとわかり、ブーンは慌てて扉を閉めようとする。
(;^ω^)「あっと、気付かなくてすいませんですお」
見えてもいない相手にぺこぺこと頭を下げる。
だけど、その姿が見えてきたとき
頭を動かしている余裕すら、ブーンには無くなっていた。
(;^ω^)「あ……」
ζ(゚ー゚*ζ「もう2カ月ぶりかしら」
デレがわずかに首を傾けて、微笑んでくる。
ブーンは顔を引きつらせた。
記憶がフラッシュバックする。
476
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:31:01 ID:X94qherQ0
南の山の事件。
モララーのこと。
その首の前でしゃがみこむデレ。
お城に近づいて、また会える機会はあるだろうかと思ったこともある。
まだ彼女のことを疑いきれていなかったから。
でも、こうして実際に目の前にすると
身体は硬直する以外の反応を示さなかった。
受け入れるわけでも無く、拒否するわけでもない。
じっと相手の出方を伺ってしまう、待ちの姿勢。
ζ(゚ー゚*ζ「……モララーさんのことかしら」
(;^ω^)「え」
477
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:32:00 ID:X94qherQ0
いきなりその名前が出てきて、ブーンの神経が緊張する。
その目の前で、デレは首を左右に振った。
ζ(゚ー゚*ζ「あれから一度もお会いできなかったけど
きっとあなたもショックを受けたと思うの。でも、今は緊張しないで。
ここでは魔人も何もいないし、安心してね」
そういって、デレははにかんで見せた。
どうやらブーンがあの日のことを思い出して怖がっていると思ったらしい。
ああ、そうか。彼女は僕が起きていたことを知らないんだ。
ようやくそのことに思い至り、ブーンは急いで体面と取り繕う。
(;^ω^)「あ、ありがとうですお。
そう言ってもらえると安心できますお」
ブーンは頭をさすって、俯き加減になって頷いた。
ζ(゚ー゚*ζ「そう? 良かった。
お父様はあなたのことを呼んでるの。こっちにきてね」
デレはブーンを手招きする。
その目はブーンの目線とぴったり一致していた。
478
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:33:00 ID:X94qherQ0
その瞳を、ブーンも見つめ返す。
妙な気がした。
恐怖とはまた違う。
デレの和らいだ目線の奥に、とても真剣なものを感じた。
笑っているのに、目は真剣。
そんなことってあるだろうか。
いったいどうしたらそんな顔になるんだろう。
その妙な引っかかりは、一瞬だけで終わった。
デレが国王の方を向いてしまったからだ。
( ^ω^)「あ、いきますお!」
デレの後をついていく。
ちょうど国王も報告書を読み終わったらしく、顔をあげていた。
衛兵に帰るように指示している。
479
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:34:00 ID:X94qherQ0
衛兵が外に出る。
扉も閉まる。
(´・ω・`)「驚いたよ」
まずそう言われた。
(´・ω・`)「君はデレを助けようとしたんだね」
デレを狙う魔人を追い払った。
そういう意味では、助けたともいえるかもしれない。
( ^ω^)「そうですお」
ブーンが言うと、ショボンは大きく頷いてくれる。
(´・ω・`)「ありがとう。
なんだか君を見ていると、モララーくんを思い出すようだよ」
またあの人の名前だ。
そういえば、モララーがデレ王女を助けた話を聞いたことがあった。
あの人が昇進した理由でもある。
480
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:35:00 ID:X94qherQ0
(´・ω・`)「君には恩ができたようだ」
ショボンが身振り手振りで、ことの大きさをアピールする。
(´・ω・`)「どうだい、君の望むものならできる限りあげるよ。
この国でもっとも権力のある私なら、大抵のものをそろえることができるだろう。
なんなら衛兵にしてあげてもいいくらいだ」
(;^ω^)「い、いいんですかお?」
(´・ω・`)「いいんだとも。君はそれだけのことをしてくれたんだ。
私にとって、命よりも大事なデレのことを守ってくれたのだから」
ブーンは顔を俯かせた。
しばらくの間沈黙する。
顔に冷や汗を浮かばせて。
その間、ショボンもデレも、静かにブーンに注目していた。
( ^ω^)「……ひとつだけ、希望があるんですお」
(´・ω・`)「なんだい? 衛兵になるかい」
( ^ω^)「いえ、それじゃなくて……あの」
481
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:36:01 ID:X94qherQ0
ブーンは慎重に、言葉を切る。
ちらっとだけ、デレの方を見て、それからショボンの方を向く。
( ^ω^)「新嘗祭の日、僕をデレ王女の監視役にしてほしいんですお」
比較的すらすらと、ブーンは言ってのけた。
その場がしんと静まり返る。
嫌な沈黙だ。
ブーンはじっとショボンの顔を見た。
ショボンの方は小さく頷いて、「ほうほう」とだけ言っている。
デレの方はわからない。
ショボンの方を見るので精いっぱいだったからだ。
もしこれで、怒ったような顔をしていたら
自分は今度こそデレに近寄れなくなるだろう
そんな恐怖が心の奥にあるのも確かなことだった。
(´・ω・`)「ふうむ、そうしたい気持ちはなんだね」
質問が帰ってくる。
ブーンの心臓が拍動を速めた。
(;^ω^)「……今回の魔人はまた現れる可能性が高いですお。
それに、新嘗祭はお城の衛兵のうちのかなりの人数を国王や他国の来賓のために使わなくちゃなりませんお。
だからお城の警備が手薄になってしまいますお。そこをしっかり守っていきたいんですお」
482
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:37:01 ID:X94qherQ0
やや早口気味に、ブーンは理由を述べた。
ショボンは手の甲を口につけて、「ううむ」と唸る。
(´・ω・`)「こういうときの王女の警備にはいつも人間を使わず、魔人で済ませていたのだが……
人間に監視させるとどうもデレが嫌がるものでね」
ブーンの頭が白くなっていく。
もしデレが嫌がるのであれば、きっとブーンの要望は通してもらえない。
(´・ω・`)「だから、デレの意見も聞きたいんだけど」
ショボンが目線をブーンからデレへと移していく。
ブーンはそれを追わず、ただ下を向いていた。
ブーンの拳が握られる。
緊張のためだ。
483
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:38:00 ID:X94qherQ0
彼女の判断に全てがかかっている。
どうか、上手くいってくれ。
せっかくここまで計画どおりなのだから。
☆ ☆ ☆
484
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:39:00 ID:X94qherQ0
少し時間を遡る。
新嘗祭1週間前のこの日、朝の9時
酒場『三匹のカエル』開店前
この日まで、レジスタンスはずっと作戦を練っていた。
あのモララーの剣を取り戻すため、いかにしてお城に忍び込むか。
お城の警備兵は各門に4人。
それに、一旦見つかってしまえば警戒を強められてしまう。
もし強化されればもう入ることはできなくなってしまうだろう。
だから、警備兵を一挙に出し抜く方法が要る。
その方法は、どうするか。
(;^ω^)「思いつきましたお!」
お店に入ってきたばかりのブーンが勢いよく手を挙げる。
昨晩から集まっていたレジスタンスのメンバーの目が光る。
ブーンに視線が集中した。
485
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:40:11 ID:X94qherQ0
すでにブーンの座学の成績が優秀であることは知れ渡っていた。
それに、ヒートと追いかけっこをしたときから、彼の閃きが役立つことも分かってきた。
だから、自然とみんなの期待が高まっている。
ブーンはそれを感じながら、話した。
(;^ω^)「外からじゃどうやっても限界があるんですお。
衛兵といっても簡単に倒せるわけでもないんですお。
だから、内側に仲間を仕込んでおくんですお」
('A`)「仲間?」
( ^ω^)「そうですお。まず、ドクオさんはまだ衛兵の服が残ってますおね?」
('A`)「ああ」
( ^ω^)「それと、ジョルジュも」
( ゚∀゚)「え? あー……たぶん……」
それを聞いて、ブーンは一回深く頷く。
( ^ω^)「5人中3人が衛兵のふりをできる。
これは活用するべきですお」
486
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:41:00 ID:X94qherQ0
( ^ω^)「その方法は後で教えるとして、前段階で僕が国王から信頼されていることが必要ですお。
国王に信頼される人間になれば、衛兵だって無視できなくなる。隙を突くチャンスが生まれる」
ノパ⊿゚)「簡単に言うけど、信頼なんてそう簡単にしてもらえるの?」
( ^ω^)「ひとつだけ、知っているんですお。
あの国王にとって最も大切なもの、それは王女ですお。
僕らの手で力を合わせて狂言を設定するんですお、王女を狙う魔人が現れたという振りをして」
( ^ω^)「それで、その魔人を僕が追い払うんですお。
上手くいけば、僕は国王に感謝され、取り入ることができるんですお。
これが今朝、僕の思いついた作戦ですお」
('A`)「なるほど、モララーが衛兵になった理由を利用するというわけか。
王女を助けて国王に認められ、それで昇格できたという」
( ^ω^)「着想はそこですお」
ブーンはそう言って、次にシュールの方を向いた。
(;^ω^)「シュールさん、次に国王が会議を開くときがいつかわかりますかお?
たぶんお客さんがいるときならデレ王女も会議に参加しているから
彼女を狙って襲ってきたという設定に説得力が増すんですお」
lw´‐ _‐ノv「今日」
シュールが即答する。さすがの情報力だ。
487
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:42:00 ID:X94qherQ0
と、同時に彼女はにやりと笑う。
lw´‐ _‐ノv「今日、やっちゃおう」
(;^ω^)「え、ほんとですかお? 準備とか」
( ゚∀゚)「大丈夫だって。聞いてみた感じだと問題はなさそうだった」
ジョルジュが組んでいた腕を解いて、上に伸ばす。
( ゚∀゚)「そうと決まれば今から準備だ!」
それから、細かい点は準備をしつつ決めていった。
時間が無いのだから、面倒なことはしない。
魔人のように見える衣装を即座にシュールが作り
逃げ足の速いヒートが魔人っぽい演技を練習する。
ドクオとジョルジュが話し合い、決行場所を決める。
南東の門、そこに客の荷物が集中している。
まずその荷物を狙い、捨て台詞で王女を狙うと吐く。
そうすれば客も帰るだろうし、国王も心配する。
488
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:43:00 ID:X94qherQ0
お店は閉められたまま
その中ではみんなが騒がしく準備を進めていった。
そろそろお店の運営はあぶなくならないのかな、とも思うくらいに。
ブーンはその間、思った。
これが上手くいけば、僕は王女を救うために頑張ったことになる。
それだけの功績が残れば、ツンだって納得してくれるんじゃないか。
あの猜疑の瞳を僕に向けてくるのをやめてくれるのではないか。
そうなれば、自分としては助かる。
一石二鳥だ。
レジスタンスのためにもなり、自分のためにもなるのだから。
と、そこまで考えたとき、別の目的も頭に浮かんだ。
デレのことだ。
お城に忍び込めば会えるかもしれない、その真意を知ることができるかもしれない
そう思っていたことは確かだ。
もしうまく付け入る隙があれば、なるべくデレに近づける方法を選ぼう。
もしもそんな選択ができればだけど。
この件に関しては、さすがにブーンも希望的観測しかもっていなかった。
489
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:44:04 ID:X94qherQ0
夜7時半
ラスティア城 南東門前
建物の建物の隙間に、人影が二人分
.ワ''""''フ
ノパ⊿゚)「よし、誰もいないな」
( ^ω^)「……ものすっごいふわふわしてますお」
.ワ''""''フ
ノパ⊿゚)「動物なら問題ないさ。ほら、やるぞ」
南東の門の前の通りに踊りでる。
門までは100メートルほどの距離だ。
(;^ω^)「うわあああああああ!!」
できるだけの情けない声を、ブーンは張り上げた。
門の傍でじっとしていた衛兵が身構え始める。
.ワ''""''フ
ノパ⊿゚)「お城襲っちゃうぞおらあああああああ!!」
さらに大きな声が響く。
周りの住民にもきっと聞えただろう。
490
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:44:59 ID:X94qherQ0
「な、なんだ、どうした!」
門番の慌てる声がする。姿もわずかだが見える。
ブーンはそれを確認してから、木刀を構える。
(;^ω^)「くらえお!!」
振りかざした木刀は、正しく空を切る。
それでもヒートは迫真の演技で負傷したように見せてくれた。
そのやり取りがもう二回ほど起きた。
これ以上やれば衛兵がこちらに飛んできてしまうかもしれない。
.ワ''""''フ
ノパ⊿゚)「くそお、次は王女を狙ってやるから覚えとけ!」
指をびしっとお城に向けたのち、ヒートは全力疾走で町を駆けていく。
衛兵だってちゃんとは見えないだろうに、凝った演技をしてくれる。
その後ろ姿はもはや魔人そのものであり、
あの本気の走りにはとても追い付けないとブーンは思った。
(√`△´)「お、おい君、大丈夫か!?」
ちょうどよく、衛兵が駆け寄ってきてくれた。
これで、上手くいった。
ブーンはそう安堵し、なるべく顔に恐怖の表情を浮かべて衛兵に向かい合った。
491
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:46:04 ID:X94qherQ0
(;^ω^)「お、追い払いましたお!!」
興奮しているからこそ、できる演技だ。
緊張はする、でもそれを超えて
自分の作戦が成功する昂揚感を、ブーンは確かに感じていた。
それからは流れに身を任せた。
衛兵が質問してきて、ブーンはあらかじめ用意してきた設定を語る。
そして、客人を狙い、王女の命を狙う魔人像が出来上がったときに、国王に呼び出された。
これで国王に取り入れる。
もうその時点で作戦は終わったようなものであり、あとは適当に流していればよかったのだ。
彼からの信頼は得られたのだから。
それゆえに、会議室に入ってからデレと直接出会うことになったのは完全に誤算だった。
まさかこんなところで、こんなときに、再会することになるなんて。
☆ ☆ ☆
492
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:47:12 ID:X94qherQ0
デレの傍になるべくいられるようにする。
部屋の中に当の本人がいるものの、このチャンスを逃したくはなかった。
とはいえこの打診は、上手くいけばいいという程度のものだ。
もしダメでも、作戦に支障はない。
門番をしている衛兵になれるだけの身分にはすでになったはずだ。
国王から注目されるという当初の任務は果たしたのだから。
でも、もし上手くいくなら、王女の傍にいたい。
そして彼女の真意を知りたい。
レジスタンスの目的を超えて
自分の興味から、ブーンはそう願っていた。
(´・ω・`)「……デレ?」
ショボンが答えを催促している。
ブーンは顔を少しだけ動かす。
怖い怖いとも言っていられない。
いい加減に、デレの方を見ようとした。
493
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:48:00 ID:X94qherQ0
ζ(゚ー゚*ζ「いいですよ」
言うときは、あっさり。
まるでさっきまでの沈黙が、何でもなかったとでもいうように。
ブーンはようやくデレの方をはっきりと向いた。
彼女は相変わらず柔らかい目をブーンに向けてくれていた。
ζ(゚ー゚*ζ「彼はね、あのモララーさんの大切な後輩だったのよ」
デレが父親に説明する。
国王が息をのむ音がはっきりと聞えた。
(´・ω・`)「なんだって、あのモララーくんの!
それを早く言いなさいよ!」
ショボンがはしゃいで、椅子を叩いた。
ブーンはそれを、目を丸くしてみた。
入れ込んでいるとは聞いていたものの、ここまで極端に反応が変わるとは。
(´・ω・`)「それに、デレも彼が警備することを認めるんだね。
だとしたら、僕はもう言うことはないよ」
494
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:49:00 ID:X94qherQ0
ショボンはもう考え込む顔をやめてくれた。
ブーンはほっとする。
ここまで上手くいっていいのかと思い、溜息が洩れそうになる。
( ^ω^)「あ、ありがとうございますお!!」
勢いよく、頭を下げた。
国王に向け、その後、デレにも下げる。
心のうちでは、その間に何回ものガッツポーズをしていた。
明日にでも手紙を出してレジスタンスのみんなに報告しなければ。
新嘗祭までになんとかあと一度でも休暇を取り、作戦を練らないと。
大まかには考えているものの、まだまだ詰めが甘い。
みんなと準備する必要もある。
あの剣を取り戻すための、大掛かりな潜入奪還作戦を。
☆ ☆ ☆
495
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:50:01 ID:X94qherQ0
ζ(゚ー゚*ζ「詳しいことは後でお知らせするって」
デレがそういってくれたのは、会議室を出た廊下だ。
国王は大臣の部屋に向かって行ってしまった。
明日にでも再び会議を開くらしい。
ただ、今度はデレを参加させないでの会議になりそうではあった。
ζ(゚ー゚*ζ「といっても、お部屋の前にいればいいからね」
デレがそう付け加える。
どこからどう見ても普通の少女だった。
( ^ω^)「はいですお。精一杯努力しますお」
定型的なセリフ。
ここで唐突に、デレの真意など聞いても上手くいかないだろう。
なんとか、そのチャンスは彼女の監視をしているときに見つけなればならないはずだ。
だから、この場は静かに去り、寄宿舎へ帰ればいい。
ブーンは逸る気持ちを抑えた。
496
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:51:01 ID:X94qherQ0
二人はゆっくり歩んでいく。
見た目が完全に普通の少女だからといって、100%信用できるわけではないだろう。
でも、少なくともブーンの前にいる少女は今
単純に、ブーンにどんな言葉をかけていいか悩んでいるだけのようにみえた。
疑ってばかりもいられない。
自分だってぼろが出ないようにしなければ。
自分はあのとき眠っていたことになっている。
デレを疑う気持ちがあるなどと、デレに思わせてはいけないのだ。
階段を降りていき、1階へ。
まっすぐに歩めば、玄関。
南東の門に一番近い場所。
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、ブーンさん」
デレが声をかけてくる。
( ^ω^)「なんだお?」
497
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:52:02 ID:X94qherQ0
ブーンが返事をしても、デレが続きを話すまでに時間がかかった。
ζ(゚ー゚*ζ「……何かあったら、ちゃんとくまなく探してね」
それをいうと、デレはすぐに扉に手をかけた。
ζ(゚ー゚*ζ「さ、早く行って!」
妙に、急かす。
( ^ω^)「はいですお! おやすみなさいですお」
疑問はあるものの、言われた通りに早く出る。
それから振り向いて別れのあいさつをしようとしたときには、既に扉は閉められてしまっていた。
中途半端に前に出た手が、固まってしまう。
( ^ω^)「……?」
首を傾けながら、しかたなく、寄宿舎へと歩んでいった。
☆ ☆ ☆
498
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:53:22 ID:X94qherQ0
寄宿舎F棟 玄関前
入ろうとした。
そのときだった。
腕を引っ張られたのは。
( ^ω^)「!?」
慌てている暇も無かった。
少しバランスを崩していたら、一気に脇に連れていかれた。
(;^ω^)「だ、誰だお!」
思わず叫ぶ。
目の前にいる人の背は低い。
大きい髪型が見えている。
よく、見たことがある。
499
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:54:04 ID:X94qherQ0
やや欠け始めた月が、その人の姿を映し出す。
(;^ω^)「……ツン」
小さく、名前を呼ぶ。
彼女の黄金色の髪が、月光により青白く輝いて見えた。
彼女は振り向きもせず、ぐんぐんと足を進めていく。
若干ふらついたため、ブーンは寄宿舎の窓にぶつかった。
(;^ω^)「あいたっ」
大きな音が出る。
ツンにだって聞えたはずだ。
それでもお構いなし。
ツンはまったく振り返ろうとしない。
毅然とした歩みが続く。
500
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:54:59 ID:X94qherQ0
そのまま、寄宿舎を通り過ぎ、林の中へ。
いつの日か、ジョルジュを追って入った場所へ。
( ^ω^)「……どうしたんだお」
言いながらも、予想はついていた。
突然知り合いをこんなところに、無言で連れてくるなんて普通じゃない。
絶対に良くないことが起きようとしている。
そんな不穏な予感だ。
やがて、開けた場所に辿りついた。
ツンの手が離れる。
その手が、今度は彼女のポケットに進んだ。
501
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:56:04 ID:X94qherQ0
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン」
名前を呼んだのち、振り向く。
その腕がポケットから抜かれる。
一枚の紙が、ブーンの前につきつけられる。
三匹のカエルのマーク
そしてレジスタンスの文字
それは、いつの日かパフォーマンスの際に彼らが配布したものであった。
まさか、こんなにも堂々とヒントがあるとは。
油断していたと言うほかなかった。
502
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:57:14 ID:X94qherQ0
ξ゚⊿゚)ξ「……言い訳してみてよ」
ツンが突き刺してくる。
口調からして、端から信じる気もないことがわかる。
(;^ω^)「……」
何も思いつかない。
彼女の目を見ればわかる。
何を言っても無駄なことくらい。
ξ゚⊿゚)ξ「ねえ」
一歩、ツンが詰め寄ってくる。
ブーンは片足を引いた。
こつっと、背中に感触がある。
木だ。
場所からして、追い詰められていたのか。
503
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:57:59 ID:X94qherQ0
(;^ω^)「……遊んでいた、じゃだめかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「うん。今度は私も納得できないからね」
相変わらず、答えが素早い。
( ^ω^)「……わかったお」
溜息の塊が、口から押し出される。
目を泳がせるも、猛烈な引力を感じる。
ツンの青い目に引き寄せられてしまう。
まったくもって、見ていたくない目なのに。
( ^ω^)「観念するお。
僕はレジスタンスに参加していたお」
正直に言おう。
何を言ってもばれるなら、真実を言った方がいい。
504
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/01(日) 23:59:00 ID:X94qherQ0
(;^ω^)「でも、これは別に国王に刃向おうって気持ちじゃないお。
実はモララーさんもレジスタンスに協力していたんだお。
あの人への恩義もあるし、それで初めはあの人の後を追っかけている形で近づいたんだお」
(;^ω^)「それに……それにあそこは魔人と立ち向かえるお。
モララーさんを追いこんだのも奴らだお。
もしちゃんとした戦い方を学べば、必ずや国王や王女を守ることにも繋がるお」
(;^ω^)「僕は、立場上微妙な立ち位置かもしれないお。
でも何かを守りたいって気持ちでは変わってないお。
そこはどうか、信じてほしいんだお」
そう言って、頭を下げる。
ξ゚⊿゚)ξ「やめてよ」
瞬時に、切られた。
ξ゚⊿゚)ξ「あたしにそんなかたっくるしいことやめて」
505
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:00:05 ID:osgyY/P20
ブーンは汗を感じた。
自分の頬を伝う。
ツンの顔をゆっくりと見上げた。
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン……」
彼女は、怒っていなかった。
ただ、悲しそうな顔をしている。
ξ゚⊿゚)ξ「誤解しているよ。
あたしは別に、ブーンが国に刃向うなんて、思っていないもの。
そんなことする人じゃないし」
その声は、酷く痛々しく聞えた。
( ^ω^)「……それじゃ、誤解って、なんだお?」
今度はブーンがツンを見つめる。
506
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:01:02 ID:osgyY/P20
ξ゚⊿゚)ξ「……レジスタンスの目的は?」
いきなりの質問だった。
( ^ω^)「魔人に反対すること、かお」
ξ゚⊿゚)ξ「うん、あたしもそう思っている」
なんでこんなことを聞いたんだろう。
その疑問は浮かぶものの、ここはツンの言葉を待った方がいい気がした。
ξ゚⊿゚)ξ「あたしはね、違うの。
国家よりももっと別のことで、ブーンを危惧していたの」
そう言って、ツンはブーンから離れる。
開けた場所の真ん中へ。
ちょうど月明かりの下に、彼女はいた。
507
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:02:01 ID:osgyY/P20
彼女はその場でくるっとまわる。
その姿をブーンに見せている。
( ^ω^)「……ツン?」
胸の奥がざわついた。
直感が警戒信号を告げている。
これ以上、ここにいたら逃げられなくなる
なぜだかそう感じた。
何から逃げているのかもわからないのに。
ξ゚⊿゚)ξ「見ててね」
彼女はそれだけ言って
その場に立ち尽くした。
ブーンの目の前で。
508
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:03:09 ID:osgyY/P20
彼女は大きく息を吸う。
瞬きしている、そのうちに
彼女の髪よりもはるかに大きい影が、目の前に現れていた。
/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ) 「驚いた?」
斜めに伸び、先が垂れている。
月光に彩られた、ウサギの耳だ。
509
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:04:02 ID:osgyY/P20
( ^ω^)「…………なんの冗談だお」
ぽつりと言う。
笑うこともできない。
こんなときに、さすがにこれは趣味が悪すぎる。
そう思った。
でも、そんなわずかのブーンの希望は
ツンの憂いを帯びた瞳を見たことにより、書き消えてしまった。
510
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:05:00 ID:osgyY/P20
/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「……言ってなかったこと、たくさんあるの」
彼女は月を見上げた。
大きな耳の隙間から伸びる、小さな腕。
/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「たとえば、私はね、魔人の村から人間の町に出てきた家族の中で育ったの。
凄く、冒険が好きな親でね、いっつも世界を見て回りたいって言っていた。
暮らしていた町の人たちも優しい人でね。一緒に言葉とかも教えてくれたの」
/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「人間にはわからないだろうけど、私たちが言葉を覚えるのは大変なの。
口語なら、町にいれば勝手に覚えてくる。でも書き言葉は上手くいかない。
そもそも私たちには無い文化だから、覚えられない魔人もたくさんいるのよ」
/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「でもね、私はあの地球儀みたいに、結構頑張って文字の練習した。
おかげですっごい汚い字になっちゃってるけどね。
そんな意味であの地球儀は思い出があったのよ」
511
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:06:03 ID:osgyY/P20
ツンは腕を降ろした。
耳が揺れる。
確かにそれは実体だった。
今度はブーンに近づいてくる。
一歩ずつ、着実に。
/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「そんなこともあって、人間の風習をもっと知りたいと思った。
だから身分を偽ってこの寄宿舎に入った。
人間らしい習慣を学んじゃえば、どうってことない。溶け込むのは簡単よ」
/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「耳さえしまっちゃえば変わらないんだもの。
私、髪も大きめだったから、ちょっと盛り上がっちゃってもごまかせたし。
契約さえしていなければ、ただちょっと身体が頑丈な人に見える」
足が止まる。
すでにブーンとの距離は詰められていた。
普通に会話する距離よりも、やや狭く。
512
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:07:00 ID:osgyY/P20
/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「そんなわけで、うん。ごめんね。
今までずっと騙してた。それは申し訳ないと思う」
/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「でも、ね、これならわかるでしょ?
私がレジスタンスに入ってほしくないって言っていたわけ」
そういって、彼女は目を伏せる。
/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「確かに人間にとって脅威になる魔人もいるわ。
それは事実、隠しようが無いことだもの。ううん、隠す方が良くない。
だけどオープンにしていたって、偏見はつきまとう」
/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「でも、そんな世間の中でも
私たちみたいに人間に溶け込もうとしている魔人は結構いる。
社会に興味があって、人間と一緒に暮らしたいって思っている魔人たちが」
そこで言葉を切った。
顔を上げ、瞳がブーンに向けられる。
そこにあるのは猜疑じゃない。
期待を込めた瞳であった。
513
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:08:00 ID:osgyY/P20
/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「どうか、魔人をいっぺんに敵だってみなさないで欲しいの。
それが、私の言いたかったこと。
こんな場所まで連れてきちゃったけど、ね」
/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚⊿゚)ヽ)「ブーン……?」
そこで彼女は微笑んだ。
酷く歪んで見えた。
それは、彼女自身がぎこちなく笑っていたせいでもあったし
ブーン自身の主観の問題でもあった。
名前を呼ばれたことに気づくまでに、数秒かかった。
それほど、ブーンは心が遠くへ行ってしまっていた。
(;^ω^)「あ……う……」
言葉を出そうとする。
なんとか返事をしようとする。
514
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:09:00 ID:osgyY/P20
自分だって、思ったことなのだ。
一瞬でも思っていたさ。
魔人は全員が悪いわけじゃない。
差別するのはよくない。
噴水のタヌキ耳の女の子を見たときに、そう思ったのを思い出した。
でも、まさかこんなに身近にもいるなんて。
これまで、どこか遠くのものごとのように考えていた。
魔人の存在も、何もかも。
レジスタンスに所属していながら、その相手とする魔人の存在は認識しきれていなかった。
彼らに立ち向かうビジョンすら、ぼんやりしていたのだ。
515
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:10:10 ID:osgyY/P20
目の前の、友人の本当の姿を見て、思う。
自分がやろうとしていることは何なのかと。
何に立ち向かえばいいのかと。
でも
すでに歯車はまわり始めている。
自分はレジスタンスとして、活動し、今度はお城に忍び込もうなどと企んでいる。
516
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:11:00 ID:osgyY/P20
もう後には戻れない。
一度決心したはずだったのに。
なんで今になって。
( ω )「……ツンの敵には、ならないお」
そう答えるしかなかった。
彼は優しかったから。
517
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:12:02 ID:osgyY/P20
いつか、この過ぎ去ってしまった時の流れが
自分の首を締めあげることになるだろう。
そんな、ほとんど確信に近い予感が、ブーンの頭の中に浮かんでいた。
☆ ☆ ☆
518
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:13:10 ID:osgyY/P20
自分に無いものがあった。
今回の作戦に当たって、それは必要なものであった。
南東の門で仲間が計画通りに騒ぎを起こした。
そのどさくさに紛れて忍び込むことができた。
馴れてしまえば簡単なものだ。
きっと本番でも上手くいくだろうな。
彼はそう思い、探索を進めた。
寄宿舎には特別な防御はない。
だから簡単に忍び込めた。
元盗賊団が傍にいるから、技術を得ることは簡単だった。
それが今日も役になっている。
519
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:14:22 ID:osgyY/P20
彼は寄宿舎の倉庫にてそれを見つけた。
新しい衛兵の上着だ。
自分がいた頃と、今の衛兵の着るものが微妙に違っているとわかり
早々に盗りにきたのである。
これで準備に向けて前進だな。
そう思って、寄宿舎の窓から出ようとしたときである。
そばにあった窓に何かがぶつかった。
急いで確認し、眺めてみる。
歩いていく二人組の姿が見えた。
一人は知らないが、もう一人はよくわかる。
( ゚∀゚)「ブーン……?」
520
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:15:20 ID:osgyY/P20
何をしているのだろう。
彼はもう、国王と話を済ませたのだろうか。
あの女の子と一緒に、どこへ。
気になったから、窓を出てついていく。
林の中へ。
懐かしい雰囲気を感じながら。
そして、月下の告白を全て見、聞いた。
呆然としているブーン。
それに歩み寄り、話しかけている女の子。
それらを遠目で見て、状況を把握する。
話も全て聞えた。
521
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:16:21 ID:osgyY/P20
( ゚∀゚)「……」
そのうえで、考えを巡らせる。
ブーンが何をしているのか。
自分が何をしなければならないか。
それが、月の下で起きていたもう一つの物語だった。
522
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:17:32 ID:osgyY/P20
―― 第四話 おわり ――
―― 第五話へ続く ――
.
523
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:19:20 ID:osgyY/P20
―― コラム④ 主な登場人物、及び勢力紹介 ――
〜レジスタンス(勇者)〜
・( ・∀・) モララー(死去)…………勇者
・ノパ⊿゚) ヒート…………盗賊
・('A`) ドクオ…………戦士
・( ゚∀゚) ジョルジュ…………遊び人
・lw´‐ _‐ノv シュール…………料理人+発明家
・? 現在他国に赴いている
524
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:21:20 ID:osgyY/P20
〜ラスティア城(魔王)〜
・ζ(゚ー゚*ζ デレ…………王女
・(´・ω・`) ショボン…………国王
・( ´W`) シラヒーゲ…………政務官
・ミセ*゚ー゚)リ ミセリ…………M
・(゚、゚トソン トソン…………S
・( ФωФ) ロマネスク…………衛兵隊長
・|゚ノ ^∀^) レモナ…………貴族
・(-_-) ヒッキー…………レモナの息子+引きこもり
・? 他、衛兵全員
525
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 00:23:04 ID:amoF4Y2.0
ツン…
526
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 00:24:49 ID:osgyY/P20
〜魔人(モンスター)〜
・ξ゚⊿゚)ξ ツン…………旅人の娘+従者見習い
・从´ヮ`从ト ???…………迷子+詩人
・? 森とか山とかにたくさんいる
〜その他〜
・(;^ω^) ブーン…………衛兵見習い
全てのグループに縁がある
しかも優柔不断なくせに人を助けたがる
その結果、どんどん泥沼へとはまっていく
新しい登場人物はそのうち追加されるでしょう。
もちろん別の勢力へ移動することもあり得ます。
物語を三幕に分けるならば、今は第一幕、状況説明が終わった段階です。
次はもう少し書きためてから臨むので、時間をかけます。
それでは。
527
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 00:28:22 ID:LztZNF4EO
自分の仕える国が人間なのに魔王側ってのは不思議だな、とにかく続き気になる
528
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 03:23:39 ID:Exbs.TpMO
ω)おつん
529
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 05:35:49 ID:P0ZKPQhcO
そうか、('A`)はξ゚⊿゚)ξを見た時に感づいてたんだな
これで序章が終わっていよいよ本編か第二幕からに期待
/ヽ、 /ヽ
(/ξ゚ ゚)ヽ) これなら訴訟されることは無いな
530
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 11:04:25 ID:cbxAt3dU0
耳ありツンが可愛い
乙
531
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 16:40:47 ID:NCaUm5oM0
ξ゚撿゚)ξの口をξ゚&.#8895;゚)ξ(&と#の間の.を抜いて)にしてくれるとありがたいです。。。
おつです
532
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/02(月) 19:15:30 ID:osgyY/P20
>>531
そう見えてしまっているのでしょうか?
自分のパソコンからだと問題ない状態で見えるので、どうしたらいいかわからないんですが……
533
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 19:28:26 ID:aHChWRgQ0
2chmateでは
ξ゚撿゚)ξ←口が化ける
ξ゚⊿゚)ξ ( ξ゚&.#8895;゚)ξ から.を取った)←読める
534
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 19:39:27 ID:QtwptCaI0
投下しにくいだろうし気にしなくて良いよ
535
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 23:05:25 ID:N0S1unGI0
文字化けしたツンに慣れちゃって通常のツンに違和感があるw
乙
536
:
名も無きAAのようです
:2013/09/02(月) 23:53:30 ID:j4s2L9jI0
ここまで一気に読んだ
設定がすごい深いし面白い
続き楽しみにしてるが、ブーンの性格が悪い方向に動きそうだな・・・
537
:
名も無きAAのようです
:2013/09/04(水) 09:07:51 ID:79RJ37O20
iPadのSafariでツンやヒートの口が文字化けしてたがSafariだけじゃなかったのか
>>535
みたいに文字化けしたツンとヒートに慣れたから正常なのみると違和感w
538
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/04(水) 23:47:21 ID:K5seVBKE0
―― 予告 ――
.
539
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/04(水) 23:48:12 ID:K5seVBKE0
10月25日
午後6時
ラスティア城下町中央広場
秋の日は短い。
先程まで赤みがかっていたと思ったら、今ではもう深い紫色。
やがてそれも黒く染められていく。星と月の灯りだけをまばらに残しながら。
中央広場に人々は集まっていた。
高台が設置されている。
昼間の内に、お城の従者と衛兵が協力して立てた豪勢なものだ。
そこに座っているのは貴族たちと来賓の方々であった。
(´・ω・`)「拡声器ちょうだい」
中央の一際大きな椅子に座っていたショボンが、従者に手を差し出していた。
その手のひらに、錘状の筒が渡される。
ただの筒に、魔人の不思議な力が施されたもの。
ショボンはその筒の細い方を口元に寄せ、話し始めた。
(´・ω・`)「新嘗祭を始めるよーーーー!!」
540
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/04(水) 23:49:01 ID:K5seVBKE0
声が大きくなり、広場中に広がっていく。
群衆は一同に声を張り上げる。
歓声がその場に響き渡る。拡声器よりもはるかに大きな声で。
ショボンはその様子を満足げに見降ろしていた。
ショボンにとって、この瞬間はとても楽しいものだった。
拡声器を外して、従者に返す。
それから客人の方を向いた。
(´・ω・`)「いよいよですな、国王様方」
主要な参加国は二つ。
マルティア国王、テーベ国王、及びその従者であった。
541
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/04(水) 23:51:41 ID:K5seVBKE0
―― 新嘗祭とラスティア城 ――
明日木曜日の午後9時から前半
明後日金曜日の午後9時から後半を投下します。
口とかいろいろ不都合あるかもしれませんが
このまま投下を続けることにします。ご理解ください。
それでは。
542
:
名も無きAAのようです
:2013/09/05(木) 00:24:58 ID:RXmSuLvgO
おいっ、今までと同じ製作ペースじゃねぇか
今回はペース落ちると思ってたのに、まあ続き早いのは歓迎するんだが
543
:
名も無きAAのようです
:2013/09/05(木) 02:40:43 ID:rbGkzx5IO
>>542
なんなんだお前は
544
:
名も無きAAのようです
:2013/09/05(木) 13:03:26 ID:/fCDTzio0
ひとまず1話だけ見たけど、ひらがなと漢字の分量が丁度良くて読みやすいね
見習いたいもんだ
545
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 20:10:12 ID:es9erg9o0
ちょっと用事入ったので、30分から1時間程度遅れます。
546
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:21:21 ID:es9erg9o0
9時半から投下します。
547
:
名も無きAAのようです
:2013/09/05(木) 21:25:55 ID:1/FI.9xg0
よしこい
548
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:30:12 ID:es9erg9o0
10月25日
午後6時
ラスティア城下町中央広場
秋の日は短い。
先程まで赤みがかっていたと思ったら、今ではもう深い紫色。
やがてそれも黒く染められていく。星と月の灯りだけをまばらに残しながら。
中央広場に人々は集まっていた。
高台が設置されている。
昼間の内に、お城の従者と衛兵が協力して立てた豪勢なものだ。
そこに座っているのは貴族たちと来賓の方々であった。
(´・ω・`)「拡声器ちょうだい」
中央の一際大きな椅子に座っていたショボンが、従者に手を差し出していた。
その手のひらに、錘状の筒が渡される。
ただの筒に、魔人の不思議な力が施されたもの。
ショボンはその筒の細い方を口元に寄せ、話し始めた。
(´・ω・`)「新嘗祭を始めるよーーーー!!」
549
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:32:03 ID:es9erg9o0
声が大きくなり、広場中に広がっていく。
群衆は一同に声を張り上げる。
歓声がその場に響き渡る。拡声器よりもはるかに大きな声で。
ショボンはその様子を満足げに見降ろしていた。
ショボンにとって、この瞬間はとても楽しいものだった。
拡声器を外して、従者に返す。
それから客人の方を向いた。
(´・ω・`)「いよいよですな、国王様方」
主要な参加国は二つ。
マルティア国王、テーベ国王、及びその従者であった。
☆ ☆ ☆
550
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:34:03 ID:es9erg9o0
―― 新嘗祭とラスティア城 ――
.
551
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:36:03 ID:es9erg9o0
1時間以上後
ラスティア城8階
王女の間の前
( ^ω^)「…………本当に僕一人で守っているお」
彼以外の警備はいない。
魔人や、彼らの仕掛けた罠によって、お城の上階は守られている。
ブーンが眺めているのは赤い絨毯の敷かれた廊下。
脇には数本のろうそくしかなく、等間隔ではあるものの、薄暗い。
その光景はブーンの寂寥感を増幅させていった。
王女はこんな寂しいところにいるのかと思い、身震いする。
確か以前よりも彼女は人々と触れ合うようになったと聞いていた。
でも、今現在も彼女はあまりイベントに参加しない。
町が賑やかな時、彼女はこの薄暗いお城の中。
どうしてこんなところに籠るのだろう。
もっと町の人と触れ合いたいとは思いたくないのか。
( ^ω^)「……あ、時間」
ブーンは廊下にかけられた時計を確認する。
約束の時刻まで、あと30分弱。
それまでに、彼は一旦お城を出て、北西の門に外側から向かわなければならないことになっていた。
552
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/05(木) 21:38:03 ID:es9erg9o0
それが、お城にレジスタンスを迎え入れるための作戦の開始。
上手くいかなければ、その時点で終わってしまう。
結局、そこまで上手い方法が見つかったわけでもなかった。
ちょっとでも疑われたら終わってしまうかもしれない作戦。
だからなおのこと、細かいところで失敗してはならない。
ブーンは緊張を感じていた。
でも、その緊張を心地よいと感じていたのも事実だ。
彼は変わり始めていた。
引っ込み思案な性格だったのに、レジスタンスに入ってからはやたらと提案をしている。
その心境の変化の裏側には、どうにかしてモララーの無念を晴らしたいという思いがあった。
だけど、そのためには魔人と対立しなければならない。
そして魔人と対立できない理由が自分にはできてしまった。
正体を明かしたツンの姿が瞼の裏に浮かぶ。
長いこと友達として一緒に過ごしていた。それなのに全く気付いていなかった。
だからこそ、ショックは大きかった。
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