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ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです
589
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:06:19 ID:yvFXxYeo0
◆第26話◆
ζ(゚ー゚*ζ「……なんかまた呼ばれた気がしたんだけど」
ζ(゚ー゚*ζ「さすがに、ちょっとは老けたんじゃない?そっちは今いつなの?」
ζ(゚ー゚*ζ「ふぅん…結婚か…」
ζ(゚ー゚*ζ「またネタバレかよ」
.
590
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:07:21 ID:yvFXxYeo0
ζ(゚ー゚*ζ「で、結婚ってどうなの?子どもは?」
ζ(゚ー゚*ζ「…さすがにそこまではネタバレしないか」
ζ(゚ー゚*ζ「自分で呼んだくせに」
.
591
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:08:23 ID:yvFXxYeo0
ζ(゚ー゚*ζ「………え?」
ζ(゚ー゚*ζ「…いや、ちょっと意味がわからない」
ζ(゚ー゚*ζ「自分自身に向かって、もう会えないみたいな言い方してるのが」
.
592
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:09:40 ID:yvFXxYeo0
ζ(゚ー゚*ζ「っていうか今更改まる必要ある?」
ζ(゚ー゚*ζ「今までだって、不可抗力だったわけでしょ?」
ζ(゚ー゚*ζ「……どうせあなたのことだから、またいつか気まぐれで現れるんでしょ」
.
593
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:10:47 ID:yvFXxYeo0
ζ(゚ー゚*ζ「………」
ζ(゚ー゚*ζ「………」
ζ(゚ー゚*ζ「………」
ζ(゚ー゚*ζ「…何があったのかはよくわからないけど」
.
594
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:11:34 ID:yvFXxYeo0
ζ(゚ー゚*ζ「あたしら、会えるとか会えないとかの次元じゃないでしょうよ」
ζ(゚ー゚*ζ「あたしはあなたを常に追いかけてるけど」
ζ(゚ー゚*ζ「…追いつくことなんてできないはずでしょ」
.
595
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:12:27 ID:yvFXxYeo0
ζ(゚ー゚*ζ「…あたし、たぶんずっと覚えてるだろうから」
ζ(゚ー゚*ζ「いつかあなたがまた、気まぐれで現れてもいいように」
ζ(゚ー゚*ζ「……たぶんね」
.
596
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:13:42 ID:yvFXxYeo0
XXXX年 T月
从 ゚∀从「………」
从 ゚∀从「…急すぎんだろ」
.
597
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:14:44 ID:yvFXxYeo0
そう呟いてハインは座り込み、持っていた袋から一本のボトルを取り出す。
べつに好んで飲みはしない、スコッチウィスキー。
平べったいボトルの、バランタインだ。
それを持ってきたロックグラスに注いで、目の前に置く。
.
598
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:15:50 ID:yvFXxYeo0
从 ゚∀从(…なかなか周到だろ。やっぱりこれがイメージだからな)
声には出さず、姿の見えない親友に語りかける。
そして、注がれてちょっと減ったウィスキーをボトルごと煽った。
いわゆるラッパ飲みってやつだ。
酒に強くないハインが、親友といえど人前では絶対にやらなかった飲み方だった。
.
599
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:16:50 ID:yvFXxYeo0
从;゚д从=3ブハッゲホッ
从;゚∀从「………」ゼーハー
从;゚∀从「……全然美味くねぇじゃん」
わかってたつもりだったが、少量飲んだだけで噎せた。
それを美味しそうに飲んでた親友の気が知れない。
.
600
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:17:59 ID:yvFXxYeo0
从 ゚∀从(…まぁ、献杯にしちゃ豪快だったかもしれんが)
从 ゚∀从(ツンと飲む最後の酒らしいっちゃらしいよな)
なぁ、そうだろ?と問い掛けたところで、答えてくれる声は、もうない。
.
601
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:19:56 ID:yvFXxYeo0
从 ゚∀从「………」
―――よし、ハイン飲め―――
苦手な酒を無理矢理促すあの声も
从 ;∀从「………」
―――よかったー!ごめんねハイン!―――
謎に目を輝かせて張り上げられた、あの声も
从 ;∀从「…やっぱり美味しくないな……」
ハインの記憶の中でこだまするだけで、それを発する主は、もういないのだ。
.
602
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:21:33 ID:yvFXxYeo0
お酒は得意じゃなかったが、親友が隣にいる酒の席は楽しかった。
オススメしてくれたあのカクテルだって、破壊力はあったけど甘くて美味しかった。
.
603
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:22:37 ID:yvFXxYeo0
从 ;∀从「………」
―――足、治ったの?もう走れる?
―――うん!
―――じゃあみんなと一緒にケイドロやろ!
―――…えっと…どうやるの?
―――…あ、そっか。そうだよね、ごめん。あのね………
.
604
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:23:57 ID:yvFXxYeo0
从つ∀从「………グスッ」
―――ハイン、誕生日おめでとう
―――ありがと。…って何これすごい
―――エッチングって言ってね、部活で作ったデザイングラスだよ
―――すげぇー…ガラスのコップにこんな彫刻できるんだぁ…
―――…うん、そこはグラスって言ってよ…ちゃんとハインの名前彫っといたし、あたしの分も作ったから。卒業したらこれで一緒に酒飲もうね。
―――そうだな!飲めるようになったらな!
.
605
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:25:20 ID:yvFXxYeo0
从 ゚∀从「………」
从 ゚∀从「…あたしもう飲めないから、あとはツンが飲めよ」
そう言って、半端に空いたバランタインのボトルをロックグラスの傍らにそっと置いた。
.
606
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:28:48 ID:yvFXxYeo0
('A`)「…バランタインだ」
既にそこに置かれていたウィスキーに気づいて、思わず呟いた。
('A`)「…考えることはみんな一緒だな」
そう言うドクオが持ってきたのは、ラフロイグだった。
.
607
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:30:13 ID:yvFXxYeo0
女の子らしくない、スコッチやらシングルモルトやらが好きだった。
ロックで美味しそうに煽る姿は定番だった。
.
608
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:31:48 ID:yvFXxYeo0
―――……うん。久しぶり。名前は覚えてないけど
―――ちょ、急に話し掛けないでよ!手元狂うじゃない!
飾らない人だった。
あまり遠慮のない人だった。
それでいて、芯がしっかりしてる姿は、ブーンと似た者同士だと思った。
.
609
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:33:33 ID:yvFXxYeo0
('A`)「………」
一緒にTシャツを作った時は、その段取りや要領の良さにひたすら感心した。
おかげで周年パーティーも大成功だった。
ハインの提案で企てたバースデーサプライズの時の、驚きすぎのあまりほとんどノーリアクションだったあの顔も、企てた側からしてみたら肩透かしをくらった気分だったが
あの状況が飲み込めてないようなぽかんとした表情は、普段飄々としてる彼女には頗る珍しく、なかなか見れる顔じゃなかった。
.
610
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:35:22 ID:yvFXxYeo0
ブーンが作った料理は全て幸せそうに頬張ってた。
それを見て、彼女はブーンが与えた『幸せ』をすべて飲み込んでくれる人なんだと思った。
だから
ブーンとの結婚が決まった時は、心の底から祝福した。
.
611
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:36:43 ID:yvFXxYeo0
('A`)「……ありがとう」
('A`)「あいつのこと、幸せにしてくれて」
.
612
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:38:07 ID:yvFXxYeo0
(・∀ ・)「…酒ばっかりじゃん」
o川* ー)o「………」
(・∀ ・)「…ほら、キュート」
o川* ー)o「……うん」
.
613
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:39:36 ID:yvFXxYeo0
キュートは、まだ詮の開いてないカナディアンクラブを目の前に置いた。
しゃがみ込み、俯いたまま何も言わない。
ここに到着するまでも、ずっとそんな有様だった。
.
614
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:40:39 ID:yvFXxYeo0
o川* ー)o「……いないの?」
(・∀ ・)「………」
o川* ー)o「…プレゼント、用意してたのになぁ…」
.
615
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:42:06 ID:yvFXxYeo0
この場に持っていくものとして、昔酒の席を共にした時に飲んでいたウィスキーを選んだのはまたんきだった。
対し、もうすぐ誕生日だからとキュートが前々から用意していたプレゼントは、ヴィトンのセカンドバッグ。
高価なものではあるが、この歳になって貰って嬉しいものなのだろうか。そんなことまで考えてなかった。
相手の好みを考えて選んだまたんきに比べて、自分はなんて無神経なのだろうと、キュートは初めて気がついた。
.
616
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:43:33 ID:yvFXxYeo0
そんなプレゼントでも、もし本人の手に渡ったら多少の文句は言われるだろうが
なんだかんだで優しい彼女のことだから、最終的には『まぁキュートだからしょうがないか』って呆れて苦笑いしてくれたかもしれないのに。
.
617
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:44:57 ID:yvFXxYeo0
o川* ー)o「あんなの、べつに使ってくれなくてよかった…」
o川* ー)o「できれば喜んでほしいけど、呆れられても文句言われてもよかったのに」
o川*;ー;)o「…それすらもう、してくれないんだね…」
.
618
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:47:27 ID:yvFXxYeo0
(・∀ ・)「………」
またんきは咽び泣くキュートの肩に手を置いた。
もしツンがその場にいたら、その黙って傍にいてくれる優しさに『斎藤先輩』の面影が見えたかもしれない。
そんな彼の弟も、きっと頼もしい人なのだろう。
薄弱なキュートを、守ってやれるほどに。
.
619
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:52:37 ID:yvFXxYeo0
o川*;ー;)o「…あたしまだ、ツンに謝れなかったこと、いっぱいあるのに……」
o川*;ー;)o「どうして急に……いなくなっちゃうの……?」
キュートは知らない。
あの日譫言のように繰り返してた『ごめんね』が、ちゃんとツンに届いてたことを。
直情で知恵がない分、昔から言葉が足りないことはあっても嘘はつかない子だった。
そんなこと、ツンはとっくに知っているということを。
.
620
:
名も無きAAのようです
:2013/08/30(金) 17:53:51 ID:t1DoGWdU0
泣きそう
621
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:54:34 ID:yvFXxYeo0
またんきとキュート。
各々は、何も変わらずツンが知ってる頃のままだ。
でもその二人が歩み寄ってる姿を見せてやれば、ツンは安心して旅立てるのではないかとまたんきは思っていた。
(・∀ ・)(…ツンさん。お疲れさま)
まだ泣き続けるキュートに寄り添って、またんきは心内で弔った。
.
622
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:56:20 ID:yvFXxYeo0
みんな、変わらない。
祝う時も悼む時も、こうして来てくれる。
.
623
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:57:38 ID:yvFXxYeo0
―――なんだよ今日はツンツンな要素があんまりねぇな。昔みたいにデレって呼んでやろうか?―――
―――それでは新郎新婦の輝かしい未来と、末永いお幸せを祈念致しまして―――
―――兄貴も、おめでとうって言ってたよ―――
―――ツンおめでとー!!ほんと超きれー!!―――
.
624
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:59:14 ID:yvFXxYeo0
祝ってくれたときは、みんな笑顔だった。
そして、弔う時は泣いてくれた友人らもいた。
…そんな当たり前のことを、当たり前にしてくれてよかった。
あんたらに囲まれた人生は、決して不幸なんかじゃなかった。
.
625
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:06:57 ID:yvFXxYeo0
「……みんな、来てくれたのかお」
「ツン、見てるかお?見事にみんな酒ばっかりだお」
ねぇ、ブーン。
もしあたしが、あの日見た夢の話を、あなたも含めみんなに打ち明けてたら
みんなを、こんなに悲しませることもなかったのかな?
.
626
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:08:40 ID:yvFXxYeo0
「みんなツンと、乾杯したかったんだお……」
急にいなくなってしまってごめんなさい。
みんなにそう伝えてあげられなくて、ごめんなさい。
でも
.
627
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:09:48 ID:yvFXxYeo0
「……ツン。おめでとうだお」
―――会いに来てくれてありがとう。
一緒にはいられなくなったけど
今年も最高の誕生日になった。
.
628
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:13:39 ID:yvFXxYeo0
ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです
―――――――――Fin.
.
629
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:14:25 ID:yvFXxYeo0
◆エピローグ◆
XX47年 W月
キッチンは城だ。
やっぱりそこに立っていると落ち着く。
( ^ω^)「………」トトトトトトトトン
『早っ!何それちゃんと切れてんの!?』
( ^ω^)「………」トトトトトトトトン
『怖いなぁ…手気をつけてよね…』
妻の前で料理をした時は、何かと横槍を入れられて少々気が散ったものだが
いざそれがなくなると、途端に物悲しくなった。
.
630
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:15:46 ID:yvFXxYeo0
結婚する前に独立し、自分で飲食店を経営するようになったブーンは今、現場を退いて売上や人事を管理する裏方の仕事に徹している。
だからこそ、自宅で料理する機会が増えた。
それが仕事ではなくなっても、一つの趣味であることには変わりなかった。
.
631
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:17:13 ID:yvFXxYeo0
ノパ⊿゚)「…お父さん」
ブーンが振り向くと、そこには妻によく似た顔立ちの少女が立っていた。
ヒートと名付けられた娘は、今年18歳になる。
凛とした表情や思ったことをハッキリと口に出す性格なんかも、妻から継承されたものらしい。
.
632
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:18:32 ID:yvFXxYeo0
ノパ⊿゚)「…お父さん」
ブーンが振り向くと、そこには妻によく似た顔立ちの少女が立っていた。
ヒートと名付けられた娘は、今年18歳になる。
凛とした表情や思ったことをハッキリと口に出す性格なんかも、妻から継承されたものらしい。
.
633
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:19:42 ID:yvFXxYeo0
( ^ω^)「…ごめんおヒート。うるさかったかお?」
夜も更けていた。
受験生のため、遅くまで起きてることが多いヒートに何か夜食でもと思ってキッチンに立っていたのだが、それがかえって勉強の妨げになったのだろうかとブーンは憂色を浮かべた。
ノパ⊿゚)「ううん。いい匂いがしてるなーと思って」
その匂いが空腹感を刺激したなら、結果的には勉強の妨げになってしまったかもしれない。
しかし、お腹を空かせて物欲しそうな娘の表情が可愛くて、ブーンは困ったように笑って料理の続きに着手した。
.
634
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:21:16 ID:yvFXxYeo0
ヒートがまだ物心つく前に、妻のツンは急逝した。
取り乱す余裕さえ奪うほど、本当に突然のことだった。
ブーンが自分の店に立たなくなった理由もそれだ。
まだ幼いヒートを一人残して、労働時間が不規則で拘束時間も長い仕事などしていられない。
オーナーシェフたるもの、現場に立って料理してこそという信条はあったが、そんなこと言ってる場合でもなかった。
.
635
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:22:54 ID:yvFXxYeo0
料理なら、家でもできる。
母を亡くしたヒートの食育に貢献できるならむしろ本望だ。
ヒートが常に目の届くところにいてくれることに安心しながら、ブーンは自宅でできる仕事主体にシフトしていった。
.
636
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:24:43 ID:yvFXxYeo0
ヒートは、父子家庭でも捻くれずに育ってくれた。
素直に言いたいことは言ってくれるし、疎まれた記憶も特にはない。
思春期の頃は、相応に多少気難しい時もあったが、男親には言いにくかっただけで嫌われたわけではないことはわかってし
どうしても女性にしか理解できない問題は、ハインやトソンの助力もあって、何とか乗り越えてこれた。
おかげで今も、拗れることなく生活を共にできている。
こう言っては失礼かもしれないが、ツンももともと片親だったそうだし、このような環境には適応できるDNAだったのかもしれない。
.
637
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:26:18 ID:yvFXxYeo0
ノパ⊿゚)「…ねぇお父さん」
いつの間にかヒートは、料理するブーンの背にあるダイニングテーブルに座っていた。
出来上がり次第ヒートの部屋に運んでやってもよかったのだが、美味しそうな匂いを目の前にすると待ちきれないのだろうか、本人は部屋に戻ろうとはしなかった。
.
638
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:27:44 ID:yvFXxYeo0
ノパ⊿゚)「唐突だけど、お母さんってくも膜下だったの?」
本当に唐突だった。
当時まだ幼かったヒートにはツンの死因をちゃんと説明してあげることはできなかったが、時が経ったら経ったで改めて説明するタイミングも掴めず、聞かれもしなかったので結局言わずじまいとなっていたはずだった。
( ^ω^)「…なんで知ってるんだお?」
隠してたわけじゃないのだが、急に知られると対応に困る。
もし自分が何かの拍子に口を滑らせたなら、無神経すぎたと反省するべきだと思った。
.
639
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:29:22 ID:yvFXxYeo0
ノパ⊿゚)「…実は、さっきちょっと寝ちゃってたんだけど」
ノパ⊿゚)「夢に出てきたお母さんがそう言ってたの」
( ^ω^)「………」
いつだかも、聞いたことのある話のようだ。
ブーンは黙って、話の続きを促す。
.
640
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:30:38 ID:yvFXxYeo0
ノパ⊿゚)「お母さん、どんな顔してたかあんまりちゃんと覚えてないけど」
ノパ⊿゚)「写真とかで見た印象よりもずっと若くて…あたしよりちょっと上ぐらいにしか見えなかった」
ノパ⊿゚)「確かに顔は似てたけど…そんな若い人にお母さんだなんて言われても信じられなくて」
ノパ⊿゚)「…そしたら、本物だって証明したかったんだか、聞いてもいないことを勝手に喋り出した」
( ^ω^)「…今でもやってるのかお…」
.
641
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:32:05 ID:yvFXxYeo0
初めて顔を合わせる相手に対して、馬鹿正直に自分の素性を明かす強引なほどの無謀さ
信じてもらえなくても自分の気が済むまでは説得するマイペースさ
なるほど確かにツンならやりそうだとブーンは思う。
( ^ω^)「それで…お母さんとは何を話したお?」
ノパ⊿゚)「んー…あんまり覚えてないんだけど…」
.
642
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:33:25 ID:yvFXxYeo0
ノパ⊿゚)「あたしの宿題手伝ってくれた」
( ^ω^)「…彫刻かお?」
ノパ⊿゚)「そう。お母さん、すごく上手だった」
.
643
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:34:42 ID:yvFXxYeo0
ヒートの宿題。
それは、美大受験を目前とするヒートが課せられたある制作だった。
油絵、陶芸、更には映像など作品の様式や題材は問わないのだが、ヒートが選んだのは彫刻だった。
ツンとは、よく一緒に画集を開いた。
時間があれば一緒に美術館にも行った。
そこに、まだ歩き始めたばかりのヒートを連れて行ったこともあった。
絵画の完成に付随する背景、画家の奇行や波乱、ちょっと掘り下げた美術史。
いろんなことを教えてくれた。
唯一の、共通の趣味だった。
.
644
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:36:05 ID:yvFXxYeo0
( ^ω^)「…お父さん、ヒートにいろんな画集を見せてきたおね」
ノパ⊿゚)「うん」
( ^ω^)「あれは、ほとんどお母さんの趣味で集めた画集なんだお」
ノパ⊿゚)「そうだったんだ」
ブーンは、壁に掛けてある控えめな額縁に入った絵を見遣る。
昔ドクオと働いてたあのダイニングバーの外観を描いた、セピアの絵だ。
ヒートも、ブーンの視線の先を追う。
.
645
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:37:43 ID:yvFXxYeo0
ノパ⊿゚)「…この絵好き」
そうやって、幼い頃から美術を愛した二人を見て育ってるのだ。
自らも興味を示してスキルとして身につけようと志すのは、なんら不思議なことではない。
( ^ω^)「…昔お母さんと一緒に見た絵に感動してね、あれが描けたんだお」
( ^ω^)「その時いろいろ教えてくれた、お母さんのおかげだったんだお」
.
646
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:39:22 ID:yvFXxYeo0
ノパ⊿゚)「…お母さんも、絵が得意だったの?」
( ^ω^)「…お母さんが得意だったのは、彫刻だお」
ノパ⊿゚)「!」
夢で会ったあの人の正体が、証明されたようだ。
正直まだ、それで腑に落ちてしまっていいのだろうかという懐疑はある。
しかし、あまりにも情報が一致しすぎて疑う要素がないのが事実らしい。
.
647
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:40:59 ID:yvFXxYeo0
( ^ω^)「ツンは…ヒートのやりたいこと、応援してくれてるんだね…」
ノパ⊿゚)「………」
ノパ⊿゚)「あたし、それ作るのに何度も失敗して」
ノパ⊿゚)「お母さんも最初は黙って見てたんだけど、だんだん痺れ切らしたみたいで」
ノパ⊿゚)「不器用だとか、下手だとかボロクソ言われたりもしたけど」
ノパ⊿゚)「あたしの娘なんだからできるはずだって、励ましてくれて」
ノパ⊿゚)「どこをどうすればいいかも、ちゃんと教えてくれた」
ノパ⊿゚)「……やっぱり、お母さんなんだね」
.
648
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:42:50 ID:yvFXxYeo0
ツンが手を貸した宿題の制作は、なんとか形になったらしい。
それで完成した気になったのだが、あくまでそれは夢の中の話で、目を覚ました時に手元にあった石材は、ほとんど彫られておらず未完成も未完成だった。
しかし、それをどのような形に仕上げれば納得のいく作品になるかというビジョンは見えたそうだ。
ツンの、アドバイスによって。
.
649
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:44:19 ID:yvFXxYeo0
( ^ω^)「ヒート。お父さん実は、ツンが亡くなった後……会ったことがあるんだお」
ノパ⊿゚)「会った?」
( ^ω^)「夏休み、ヒートがおばあちゃんの家に泊まりに行ってた日に、僕らが初めて出会った頃の姿で会いに来てくれたことがあるんだお」
ノパ⊿゚)「………」
.
650
:
名も無きAAのようです
:2013/08/30(金) 18:45:07 ID:xAd0Vn.EO
ξ゚⊿゚)ξと( ^ω^)の結婚生活は5、6年だったのか
支援
651
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:46:02 ID:yvFXxYeo0
なんだか怪訝そうな顔だった。
まぁ、信じないと思ったから言わなかったけど。と溜め息交じりに言うブーンの世迷いごととも思えない。
やっぱり、先ほど夢に見たあの奇妙奇天烈な女性がツンならば、ありえない話ではないような気がする。
.
652
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:47:48 ID:yvFXxYeo0
ノパ⊿゚)「…あたしも会えるかな」
ヒートがツンと過ごせた時間はあまりにも短い。
しかし、こうして夢に現れたりブーンに会いに来たり、母の趣味をなぞるような進路を志したり
その存在は身近にあるものと感じさせることばかりだ。
.
653
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:49:52 ID:yvFXxYeo0
近くにいるなら、もっといろいろ話したい。
聞きたいことも、相談したいことも山ほどある。
普通の母子よりも限定的なものかもしれないけど
傍にいるなら、自分のことを見てくれてるなら
それを、一度でいいから本人の口からちゃんと聞きたい。
.
654
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:51:19 ID:yvFXxYeo0
( ^ω^)「…いつか会えるお」
( ^ω^)「お母さんはちょっと気まぐれだけど、ヒートが会いたいと思えば、会いに来てくれるだけのパワーはある人だお」
( ^ω^)「一緒に待とうお」
ノパ⊿゚)「………うん」
.
655
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:52:35 ID:yvFXxYeo0
ブーンは中断してた料理を再開し、仕上げてヒートの前に置いた。
ノハ*゚⊿゚)「わーい美味しそう!」
ノパ⊿゚)「…でもなんか、つまみっぽい?」
( ^ω^)「まぁ…夜中なんだからこんぐらい軽くていいんだお」
.
656
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:54:12 ID:yvFXxYeo0
そう言って出したのが、スモークサーモンのちゃんちゃんホイル焼きだった。
キノコや野菜も一緒に蒸してあり、女子高生の夜食としては優しい食材だが、甘い味噌とバターの香りが、それだけで腹が満たされてしまいそうなほど濃厚で、空腹時に香ってきたら確かに勉強の妨げになりそうだ。
だからこそ、ウィスキーともよく合う。
ブーンはロックグラスに氷を落とし、ヒートの前に座ってウィスキーを注いだ。
.
657
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:55:41 ID:yvFXxYeo0
( ^ω^)「………」
お母さんが作ってくれたこれは、すごく美味かったんだお。…とは、なんとなく言わないでおいた。
それを自分で作ったところで、あの時の感動は再現できないのだから。
でも
.
658
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:57:05 ID:yvFXxYeo0
ノハ*゚⊿゚)「んまーい!優しい味だけど染みるわ〜」
本当に美味しそうに頬張るその表情が、ブーンが好きだったツンそのもので
この歳になって、父親になったからこそこの幸せそうな顔を酒の肴にできるのだろう。
.
659
:
名も無きAAのようです
:2013/08/30(金) 18:57:13 ID:TXu3/S7U0
最終回支援
660
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 18:58:36 ID:yvFXxYeo0
―――見てるかお?ツン。
本当は、こんな屈託のない笑顔のヒートを目の前にしてツンと一緒に美味い酒が飲みたかったお。
その酒盛りが、いつかは三人でできればいいと思ってたお。
ツンが作ってくれるつまみとウィスキーで、ヒートにもあの時の僕と同じように、その意外な相性の良さに感動してほしかったお。
.
661
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 19:00:35 ID:yvFXxYeo0
(*^ω^)
ノハ*゚⊿゚)
でもこれが、ツンが残してくれた、新しい幸せの形。
それに気づけただけ、僕は人よりちょっと幸せなんだろう―――。
.
662
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 19:02:44 ID:yvFXxYeo0
ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです
ついに完結です。
たくさんの乙、支援本当にありがとうございました。
処女作未完という痛々しい過去があっただけに、こうして一つの作品を完成させるという達成感が半端ないです。実にすがすがしい。
実質、皆様の目に触れたこの作品が処女作といって差し支えないと思うのですが
こんな笑いどころもない駄文を目の肥えたブーン系読者様方は受け入れてくださるのかどうか、いつもgkbrでした。
しかしおかげさまで完結までこぎつけて、感謝しかないです。
もちろん、反省すべき点も多々ありますが、また懲りずに投下した際にはお付き合いいただけると嬉しいです。
本当にありがとうございました!
663
:
名も無きAAのようです
:2013/08/30(金) 19:08:54 ID:nVqY2d5o0
盛大に乙
664
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 19:10:38 ID:yvFXxYeo0
最後に、ありがたきまとめ様
Boon Roman様
http://boonmtmt.sakura.ne.jp/matome/
連日投下でお手を煩わせてたらほんと申し訳ないです。
本当にありがとうございます!
665
:
名も無きAAのようです
:2013/08/30(金) 19:11:16 ID:flcapWgs0
すごく好きだった
ありがとう
本当に乙!
666
:
名も無きAAのようです
:2013/08/30(金) 19:16:51 ID:TXu3/S7U0
乙!
最近ずっと読んでた
667
:
名も無きAAのようです
:2013/08/30(金) 19:20:24 ID:.ylwd4yo0
最後まで乙!
最近の現行で一番好きでした
幸せな終わりで良かった
668
:
名も無きAAのようです
:2013/08/30(金) 19:25:06 ID:up5D.clo0
微笑んでしまった、凄くよかったと思います
669
:
名も無きAAのようです
:2013/08/30(金) 19:32:44 ID:vjaOnxMoO
最大級の乙を!
670
:
名も無きAAのようです
:2013/08/30(金) 20:39:53 ID:OfLmdopE0
乙
671
:
名も無きAAのようです
:2013/08/30(金) 21:23:38 ID:YyTa/B76O
夢がメインの話じゃなくて伏線的なものだったのですかね。
綺麗でおもしろい話でございました。
672
:
名も無きAAのようです
:2013/08/30(金) 21:57:06 ID:gAId9Tgs0
乙!
最初から最後までずっと楽しませてもらったよ
673
:
名も無きAAのようです
:2013/08/30(金) 23:15:55 ID:C6SMqiu60
乙!
とてもいい話だった
674
:
名も無きAAのようです
:2013/08/30(金) 23:22:47 ID:edMeLnuk0
乙、よかった
675
:
名も無きAAのようです
:2013/08/31(土) 01:35:59 ID:YKe9WN0Y0
万感の思いを込めて、乙!
676
:
名も無きAAのようです
:2013/08/31(土) 03:39:11 ID:EpcAFTlcO
ω・)乙
677
:
名も無きAAのようです
:2013/09/03(火) 12:57:18 ID:eov.3Rdw0
(・ω・`)乙
こっこれはポニーテールなんだからね…
678
:
名も無きAAのようです
:2013/09/04(水) 18:20:27 ID:bop8rN5g0
おつ
一気に読んでもう……なんか幸せなんだなぁ
本当におつ!完結おめでとう!
679
:
名も無きAAのようです
:2013/09/05(木) 18:20:17 ID:z18lDqu60
一気読みしたけどめっちゃ面白かった 乙
680
:
名も無きAAのようです
:2013/09/15(日) 11:10:32 ID:R1j2XhhwO
すごいよかった、もう泣いてしまいそう
乙
681
:
名も無きAAのようです
:2014/02/14(金) 19:16:25 ID:wfCn0RbA0
久々に読み返したら泣いちゃったよ!改めて乙
次回作あれば教えてほしいなぁ
682
:
名も無きAAのようです
:2014/02/15(土) 04:13:17 ID:2YncC4MUO
逃亡したやつって何かな
683
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/02/16(日) 22:58:33 ID:CiPSalFY0
うおー
まだレスつけてくださる方がいるなんてほんま感動や…
ちなみに処女作は『刹那主義のようです』
ほとんど人目には触れてないはず……むしろ触れられたらちょっと痛い
次回作の予定はまだありませんが、もし質問とかあれば今更こっそり答えます……
684
:
名も無きAAのようです
:2014/02/16(日) 23:11:27 ID:W4EtT5c.0
質問じゃないけどリアタイで読んでなくて届かなかった乙を届けにきた!
685
:
名も無きAAのようです
:2014/02/16(日) 23:59:08 ID:agHH1q6cO
同じく質問じゃないけど1レス目とラストが同じなのに気付いて鳥肌たったよ!おつ!
686
:
名も無きAAのようです
:2014/02/17(月) 01:53:18 ID:bQKCk6mgC
>>683
読んできたぞ、まるで絵に書いたような逃亡劇だったな
そんな昔のことは気にするなよ、今の酉のほうが覚えがあるような気がするし
687
:
◆7mt.DZ.sYo
:2014/02/17(月) 15:00:27 ID:c03dBBII0
>>684
リアタイじゃなくても読んでくれれば嬉しす
乙受け取りましたぜありがとう!
>>685
つまるところ縁のある人らは同じようなことを考え、同じ気持ちであり続けると……
いや、そうであったら素敵だなと思っただけ!ありがとう!
>>686
触れちまったのか……ははっ。
まぁそれはそれとして、また次頑張りますぜ!ありがとう!
688
:
名も無きAAのようです
:2014/04/16(水) 19:19:03 ID:469lUkeM0
( ;∀;) イイハナシダナー
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