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ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです

1 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:05:29 ID:0tlWAR460
夢と言われれば、ただの夢。

それなりの疲労を溜め込んだ体をベッドに投げ出し、全身の力を抜いたその瞬間

浅い眠りに吸い込まれるとそこには、彼女が今生きる現実とは違う世界が広がっていた。


ただ、『それだけ』のこと―――。



ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです
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556 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:15:17 ID:dtaqAlqQ0
◆第25話◆

XX28年 Y月


酔っ払いを乗せた車を見送り、大通りから外れたツンはまだなんとなく、店に戻る気にはなってなかった。


そういえば、式が始まる前からやたら人に見られ続けてたし、二次会で少しは肩の力は抜けたがそれでも常に周りに人がいた。

疲れたと言ってはなんだか失礼だが、気がつけば今日一日、一人になって考え事などする暇がなかったせいか、今この瞬間が本当の意味でやっと一息つけたのかもしれないとツンは思った。

557 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:18:18 ID:dtaqAlqQ0


ξ゚⊿゚)ξ「………」


これから、内藤の姓を名乗ることになる。

住まいも引っ越して、環境が著しく変わる。


誰かと生活を共にするというだけで、だいぶ自分のペースは崩されるというのに

それが、誰かと一生添い遂げることとなると、自分のペースどころの騒ぎではなく、人一人の生活が大きく動かされるのだ。

結婚する前に、同棲して春夏秋冬を共にしたが、それの延長線上で動かせる話ではない。
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558 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:19:22 ID:dtaqAlqQ0


しかし今更、これでよかったのか?なんて思わない。

親を亡くしたツンには、出戻れる場所があるわけでもない。

あの人との生活が、数年先にはもう幕を閉じていることを知ってるはずなのに、一人になると軽いマリッジブルーになる自分が


べつに特別な力を持ってるわけでもなく、全てにおいて達観してるわけでもなく

至極一般的な、ただの普通の女性の一人なんだと思う。

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559 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:21:31 ID:dtaqAlqQ0

あの不思議な夢は、最近見なくなっていた。

そうやって気まぐれに現れては消えていく不可思議な現象など、なんのための何だったのかなんて追究しても答えなんか出ない。


あの夢を見ようが見まいが、結局何も変わらなかったのだから。


夢の中では触れた記憶がなかった、ただ一つの現実を除いては。

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560 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:22:50 ID:dtaqAlqQ0



( ^ω^)「…ツン、大丈夫かお?寒くないかお?」


なかなか戻って来ないツンを心配してか、晴れて旦那となったブーンが迎えに来た。

確かに、ウェディングドレスは肩周りや腕の露出が多いので、緩やかとはいえあまり夜風に当たってると冷えてしまいそうだ。

初めてお互いの気持ちを確かめ合った時も、同じようなことを言われた気がする。
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561 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:24:33 ID:dtaqAlqQ0

ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫よ。…よっこいしょっと」

(;^ω^)「あーあー…ドレス汚れちゃうお…」


いつかと似たようなシチュエーションを思い出したツンは、店の入り口に通じる階段に座り込んだ。

その時と同じように、ブーンが隣に座ってくれることを促すように。


主役がいないにもかかわらず、相変わらずの盛り上がりを見せてるらしい店内の活況を背中に感じながら、やっぱりブーンもツンの隣に腰を下ろす。

そういえば今日一日、ブーンともまともに会話らしい会話をしてなかった。
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562 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:25:42 ID:dtaqAlqQ0

( ^ω^)「ツン、お疲れ様だお」


そう言ってブーンは、薬指の指輪が光るツンの手を優しく握った。

いつも仕事が終わった後に投げ掛けてくれる『挨拶』とはまた違う、同じ空間を共有した者だけに伝わる、確かな『言の葉』だった。


ξ゚⊿゚)ξ「ブーンこそ。緊張してたんじゃない?」


普段はゆるキャラ扱いをされているブーンだが、式の最中はさすがに強張っていたような気がする。

親や親戚、友人や職場の人間など、こぞって人が集まる滅多にない機会だったのだ。

ツンとは違うプレッシャーもあっただろうし、これから一家の大黒柱となる男性には男性なりの覚悟や決意があるのだろう。

そんな誰にでも訪れる、ごく普通の新郎しかるモチベーションでいてくれてよかったとツンは思ってた。
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563 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:27:32 ID:dtaqAlqQ0

( ^ω^)「…キュートさんは、無事に帰ったかお?」


ツンが、キュートのことを厄介な奴としか思ってないことはブーンもよく知ってる。

だからこそ、珍しいこととはいえお祝いの席でさっそく醜態を晒したキュートの話などあまり聞きたくはないかもしれないと思ったが

そのキュートを送り出してから、いつまでも戻って来なかったのだ。一応気にはなる。


ξ゚⊿゚)ξ「たぶんね。斎藤君が送ってってくれたみたいだし」


呆れてはいるようだが、思ったより素っ気ない感じでもなかった。

なんにしても、それに対するツンの気持ちが処理されているのならよかった。
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564 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:30:40 ID:dtaqAlqQ0

( ^ω^)「またんきかお…あいつも苦労人だお」

ξ゚⊿゚)ξ「…やっぱり前にもこんなことあった?」

( ^ω^)「いやまぁ…初めて会った飲み会の時にちょっと…」


あの時ツンとハインが先に帰り、一人残されたキュートはその後今日のように飲み散らかして、一人で帰れる状態ではなくなったらしい。

酔いのせいなのか、何故か泣き出してしまったキュートとタクシーに乗って、彼女の自宅まで送り届けたのがまたんきだったそうだ。
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565 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:32:26 ID:dtaqAlqQ0

その時何があったかは、ブーンもドクオも知らない。

それ以降二人に交流があったらしい話も聞いたことなければ、それから飲みの席にキュートが現れることもなかった。

しかし今日、この場にキュートが来ることを知ればこうやって帰る足を調達する。

運転しなきゃいけないとなると、もちろん酒も飲めないはずなのにだ。

きっかけはわからないが、またんきにはまたんきなりに、思うことろがあるのだろう。

566 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:34:32 ID:dtaqAlqQ0

ξ゚⊿゚)ξ「そっか…悪いことしちゃったかな」


当時は、自分が置き去りにした友人に手を焼く彼らの苦労など一切考えなかった。

ましてやそれが、今でも根強く続く交遊関係に発展するとなどまるで思ってなかったのだ。

しかしそれが結果なのだ。さすがにツンも多少、自責の念を感じずにはいられない。


( ^ω^)「ツンが気にすることないお。またんきはまたんきで、キュートさんはキュートさんでああいう人たちなんだから」


ブーンは優しく説き伏せた。
その声は、どんな呪縛からも解放されてしまうようだった。

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567 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:35:59 ID:dtaqAlqQ0


ξ゚⊿゚)ξ「あーーーーあ。あたしも少し酔ったかも」

(;^ω^)「え!?今日はお酒飲んでないのに!?」


唐突に奮い立たされたような声で予想外な自己申告をしたツンに、ブーンは頓狂な声をあげた。

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568 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:37:47 ID:dtaqAlqQ0

ξ゚⊿゚)ξ「んーなんていうか、雰囲気に酔えることもあるじゃない」


とりあえずそういうことにしておいてよ。と言いたげな強引さだった。
なんだかそれに、水を差してはいけない気がした。



ξ゚⊿゚)ξ「…だから酔っ払いの戯言なんて、あんまり真に受けてくれなくていいけど」

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569 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:39:28 ID:dtaqAlqQ0



ξ゚⊿゚)ξ「…もしブーンが先に死んだら、毎年お盆とか誕生日とか、それ以外にも会いたくなったらいつでも会いに行く」


ξ゚⊿゚)ξ「ちゃんとお墓きれいにして、お花とかお酒とかいっぱい供えて、近況もいろいろ報告して…」


ξ゚⊿゚)ξ「…あたしだったら、必ずそうする」


( ^ω^)「…僕は、あんまり考えたくないお」

.

570 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:40:55 ID:dtaqAlqQ0


それでも、先立った妻のために尽くす時間を作って

そうやって共有してる時間を大切にしてくれることを、ツンは知っているから


ξ゚⊿゚)ξ「…うん。だから真に受けなくていい。あんまり深く考えなくていいよ」



だからあんたもそうしろ。
だなんて、言う必要はなかった。


.

571 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:42:40 ID:dtaqAlqQ0


ξ゚⊿゚)ξ「ただの戯言だから。酔っ払いの、戯言なんだから…」


戯言。暗示するように呟くそれが、本当であってくれればどんなに良かっただろうかと思わなくもない。

今でも時々、ほの暗い絶望感に襲われることはある。


でも、今隣にブーンがいる。

守りたい人、傍にいてほしい人がいっぱいいる。


そんな人生を自分が生きるなんて、昔は思ってなかった。


それを不幸だなんて思うことなど、できるわけがなかった。

.

572 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:43:47 ID:dtaqAlqQ0



( ^ω^)「ツン……」


ξ゚⊿゚)ξ「………」




何も考えなくていい。

深く考えなくたって、隣にブーンがいるだけで、勝手に幸せになるのだから。

.

573 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:45:01 ID:dtaqAlqQ0


ξ゚ー゚)ξ「…ブーン、ありがとう」



ツンは微笑みながら、ブーンに握られた左手に静かに力を込めた。


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574 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:47:20 ID:dtaqAlqQ0



――――…ツン。僕は……―――


―――君と出会えて、結婚できて、幸せだったんだお。――――



ξ*゚ー゚)ξ「あたし、ブーンと出会えて、結婚できて良かった」



.

575 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:48:53 ID:dtaqAlqQ0



――――もし、君が抗った結果、僕と結婚する未来がなくなったとしても――――


―――今こうしていられるだけで、僕は幸せだお――――



「でも、こうしていられるだけであたしは幸せだよ」





いつか言ってくれたブーンの言葉に重ねるようにそっと呟いて


ツンはただそこにある思慕の情に身を委ねていた。


.

576 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/28(水) 22:52:11 ID:dtaqAlqQ0
25話おわりです。
次で、最終話まで一気に投下しようと思います。

577名も無きAAのようです:2013/08/28(水) 23:25:43 ID:D3UheQJA0
乙!
いよいよかぁ
楽しみだけどまだ終わって欲しくないなぁ

578名も無きAAのようです:2013/08/28(水) 23:28:10 ID:z.pPWy1E0
乙!
次で最終回か
わくわくしながら待ってるよ

579名も無きAAのようです:2013/08/28(水) 23:32:42 ID:jjiP/U4s0


580名も無きAAのようです:2013/08/29(木) 00:12:10 ID:wVQI6GeI0
もう終わっちゃうのか・・・
だが楽しみにしている

581名も無きAAのようです:2013/08/29(木) 03:17:43 ID:BM6P2Ex.O
次で終わりということは明日じゃねえかよ 
最終回くらい予告スレ活用しろ

582 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/29(木) 04:21:47 ID:cqf7UHSE0
たくさんの乙ありがとうございます。
連日投下の流れできておいてなんですが、最終話に関しては明日投下できるかどうかわかりません…
目処が立ったら予告しますので、最終話もお付き合いいただけると嬉しいです。

583 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/29(木) 04:23:03 ID:cqf7UHSE0
たくさんの乙ありがとうございます。
連日投下の流れできておいてなんですが、最終話に関しては明日投下できるかどうかわかりません…
目処が立ったら予告しますので、最終話もお付き合いいただけると嬉しいです。

584名も無きAAのようです:2013/08/29(木) 04:31:04 ID:BM6P2Ex.O
うん、大事なことだね!

585名も無きAAのようです:2013/08/29(木) 06:01:02 ID:bj1wbk3kO
(`・ω・)y-゚゚゚

586名も無きAAのようです:2013/08/30(金) 07:38:02 ID:o9Vdctb60
一気読みしてきた。
素敵な話だな。好きだ。

587名も無きAAのようです:2013/08/30(金) 15:53:34 ID:xAd0Vn.EO
17:00からか最後のほうはリアルタイムで読めるかもだな 
まだ始まってないけど支援

588 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:05:18 ID:yvFXxYeo0
最終話となりました。
投下します。

589 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:06:19 ID:yvFXxYeo0
◆第26話◆






ζ(゚ー゚*ζ「……なんかまた呼ばれた気がしたんだけど」


ζ(゚ー゚*ζ「さすがに、ちょっとは老けたんじゃない?そっちは今いつなの?」


ζ(゚ー゚*ζ「ふぅん…結婚か…」


ζ(゚ー゚*ζ「またネタバレかよ」


.

590 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:07:21 ID:yvFXxYeo0



ζ(゚ー゚*ζ「で、結婚ってどうなの?子どもは?」


ζ(゚ー゚*ζ「…さすがにそこまではネタバレしないか」


ζ(゚ー゚*ζ「自分で呼んだくせに」



.

591 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:08:23 ID:yvFXxYeo0




ζ(゚ー゚*ζ「………え?」


ζ(゚ー゚*ζ「…いや、ちょっと意味がわからない」


ζ(゚ー゚*ζ「自分自身に向かって、もう会えないみたいな言い方してるのが」


.

592 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:09:40 ID:yvFXxYeo0



ζ(゚ー゚*ζ「っていうか今更改まる必要ある?」


ζ(゚ー゚*ζ「今までだって、不可抗力だったわけでしょ?」


ζ(゚ー゚*ζ「……どうせあなたのことだから、またいつか気まぐれで現れるんでしょ」


.

593 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:10:47 ID:yvFXxYeo0



ζ(゚ー゚*ζ「………」


ζ(゚ー゚*ζ「………」


ζ(゚ー゚*ζ「………」



ζ(゚ー゚*ζ「…何があったのかはよくわからないけど」


.

594 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:11:34 ID:yvFXxYeo0


ζ(゚ー゚*ζ「あたしら、会えるとか会えないとかの次元じゃないでしょうよ」


ζ(゚ー゚*ζ「あたしはあなたを常に追いかけてるけど」


ζ(゚ー゚*ζ「…追いつくことなんてできないはずでしょ」


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595 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:12:27 ID:yvFXxYeo0



ζ(゚ー゚*ζ「…あたし、たぶんずっと覚えてるだろうから」


ζ(゚ー゚*ζ「いつかあなたがまた、気まぐれで現れてもいいように」


ζ(゚ー゚*ζ「……たぶんね」






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596 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:13:42 ID:yvFXxYeo0




XXXX年 T月




从 ゚∀从「………」





从 ゚∀从「…急すぎんだろ」




.

597 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:14:44 ID:yvFXxYeo0



そう呟いてハインは座り込み、持っていた袋から一本のボトルを取り出す。


べつに好んで飲みはしない、スコッチウィスキー。

平べったいボトルの、バランタインだ。


それを持ってきたロックグラスに注いで、目の前に置く。

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598 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:15:50 ID:yvFXxYeo0


从 ゚∀从(…なかなか周到だろ。やっぱりこれがイメージだからな)



声には出さず、姿の見えない親友に語りかける。


そして、注がれてちょっと減ったウィスキーをボトルごと煽った。
いわゆるラッパ飲みってやつだ。

酒に強くないハインが、親友といえど人前では絶対にやらなかった飲み方だった。

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599 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:16:50 ID:yvFXxYeo0


从;゚д从=3ブハッゲホッ



从;゚∀从「………」ゼーハー



从;゚∀从「……全然美味くねぇじゃん」



わかってたつもりだったが、少量飲んだだけで噎せた。

それを美味しそうに飲んでた親友の気が知れない。

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600 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:17:59 ID:yvFXxYeo0


从 ゚∀从(…まぁ、献杯にしちゃ豪快だったかもしれんが)


从 ゚∀从(ツンと飲む最後の酒らしいっちゃらしいよな)




なぁ、そうだろ?と問い掛けたところで、答えてくれる声は、もうない。



.

601 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:19:56 ID:yvFXxYeo0



从 ゚∀从「………」


―――よし、ハイン飲め―――


苦手な酒を無理矢理促すあの声も






从 ;∀从「………」


―――よかったー!ごめんねハイン!―――


謎に目を輝かせて張り上げられた、あの声も






从 ;∀从「…やっぱり美味しくないな……」




ハインの記憶の中でこだまするだけで、それを発する主は、もういないのだ。


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602 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:21:33 ID:yvFXxYeo0


お酒は得意じゃなかったが、親友が隣にいる酒の席は楽しかった。



オススメしてくれたあのカクテルだって、破壊力はあったけど甘くて美味しかった。



.

603 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:22:37 ID:yvFXxYeo0



从 ;∀从「………」




―――足、治ったの?もう走れる?


―――うん!


―――じゃあみんなと一緒にケイドロやろ!


―――…えっと…どうやるの?


―――…あ、そっか。そうだよね、ごめん。あのね………



.

604 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:23:57 ID:yvFXxYeo0



从つ∀从「………グスッ」




―――ハイン、誕生日おめでとう


―――ありがと。…って何これすごい


―――エッチングって言ってね、部活で作ったデザイングラスだよ


―――すげぇー…ガラスのコップにこんな彫刻できるんだぁ…


―――…うん、そこはグラスって言ってよ…ちゃんとハインの名前彫っといたし、あたしの分も作ったから。卒業したらこれで一緒に酒飲もうね。


―――そうだな!飲めるようになったらな!


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605 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:25:20 ID:yvFXxYeo0



从 ゚∀从「………」





从 ゚∀从「…あたしもう飲めないから、あとはツンが飲めよ」




そう言って、半端に空いたバランタインのボトルをロックグラスの傍らにそっと置いた。


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606 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:28:48 ID:yvFXxYeo0




('A`)「…バランタインだ」



既にそこに置かれていたウィスキーに気づいて、思わず呟いた。





('A`)「…考えることはみんな一緒だな」



そう言うドクオが持ってきたのは、ラフロイグだった。

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607 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:30:13 ID:yvFXxYeo0



女の子らしくない、スコッチやらシングルモルトやらが好きだった。



ロックで美味しそうに煽る姿は定番だった。


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608 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:31:48 ID:yvFXxYeo0



―――……うん。久しぶり。名前は覚えてないけど



―――ちょ、急に話し掛けないでよ!手元狂うじゃない!





飾らない人だった。


あまり遠慮のない人だった。



それでいて、芯がしっかりしてる姿は、ブーンと似た者同士だと思った。


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609 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:33:33 ID:yvFXxYeo0


('A`)「………」



一緒にTシャツを作った時は、その段取りや要領の良さにひたすら感心した。


おかげで周年パーティーも大成功だった。


ハインの提案で企てたバースデーサプライズの時の、驚きすぎのあまりほとんどノーリアクションだったあの顔も、企てた側からしてみたら肩透かしをくらった気分だったが


あの状況が飲み込めてないようなぽかんとした表情は、普段飄々としてる彼女には頗る珍しく、なかなか見れる顔じゃなかった。

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610 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:35:22 ID:yvFXxYeo0



ブーンが作った料理は全て幸せそうに頬張ってた。


それを見て、彼女はブーンが与えた『幸せ』をすべて飲み込んでくれる人なんだと思った。



だから


ブーンとの結婚が決まった時は、心の底から祝福した。


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611 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:36:43 ID:yvFXxYeo0




('A`)「……ありがとう」




('A`)「あいつのこと、幸せにしてくれて」





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612 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:38:07 ID:yvFXxYeo0




(・∀ ・)「…酒ばっかりじゃん」


o川* ー)o「………」





(・∀ ・)「…ほら、キュート」


o川* ー)o「……うん」


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613 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:39:36 ID:yvFXxYeo0


キュートは、まだ詮の開いてないカナディアンクラブを目の前に置いた。


しゃがみ込み、俯いたまま何も言わない。


ここに到着するまでも、ずっとそんな有様だった。

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614 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:40:39 ID:yvFXxYeo0


o川* ー)o「……いないの?」


(・∀ ・)「………」


o川* ー)o「…プレゼント、用意してたのになぁ…」


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615 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:42:06 ID:yvFXxYeo0


この場に持っていくものとして、昔酒の席を共にした時に飲んでいたウィスキーを選んだのはまたんきだった。


対し、もうすぐ誕生日だからとキュートが前々から用意していたプレゼントは、ヴィトンのセカンドバッグ。


高価なものではあるが、この歳になって貰って嬉しいものなのだろうか。そんなことまで考えてなかった。



相手の好みを考えて選んだまたんきに比べて、自分はなんて無神経なのだろうと、キュートは初めて気がついた。

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616 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:43:33 ID:yvFXxYeo0


そんなプレゼントでも、もし本人の手に渡ったら多少の文句は言われるだろうが



なんだかんだで優しい彼女のことだから、最終的には『まぁキュートだからしょうがないか』って呆れて苦笑いしてくれたかもしれないのに。

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617 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:44:57 ID:yvFXxYeo0


o川* ー)o「あんなの、べつに使ってくれなくてよかった…」



o川* ー)o「できれば喜んでほしいけど、呆れられても文句言われてもよかったのに」




o川*;ー;)o「…それすらもう、してくれないんだね…」


.

618 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:47:27 ID:yvFXxYeo0



(・∀ ・)「………」


またんきは咽び泣くキュートの肩に手を置いた。


もしツンがその場にいたら、その黙って傍にいてくれる優しさに『斎藤先輩』の面影が見えたかもしれない。


そんな彼の弟も、きっと頼もしい人なのだろう。



薄弱なキュートを、守ってやれるほどに。


.

619 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:52:37 ID:yvFXxYeo0


o川*;ー;)o「…あたしまだ、ツンに謝れなかったこと、いっぱいあるのに……」


o川*;ー;)o「どうして急に……いなくなっちゃうの……?」






キュートは知らない。


あの日譫言のように繰り返してた『ごめんね』が、ちゃんとツンに届いてたことを。



直情で知恵がない分、昔から言葉が足りないことはあっても嘘はつかない子だった。


そんなこと、ツンはとっくに知っているということを。



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620名も無きAAのようです:2013/08/30(金) 17:53:51 ID:t1DoGWdU0
泣きそう

621 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:54:34 ID:yvFXxYeo0


またんきとキュート。

各々は、何も変わらずツンが知ってる頃のままだ。


でもその二人が歩み寄ってる姿を見せてやれば、ツンは安心して旅立てるのではないかとまたんきは思っていた。




(・∀ ・)(…ツンさん。お疲れさま)



まだ泣き続けるキュートに寄り添って、またんきは心内で弔った。



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622 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:56:20 ID:yvFXxYeo0






みんな、変わらない。



祝う時も悼む時も、こうして来てくれる。



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623 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:57:38 ID:yvFXxYeo0




―――なんだよ今日はツンツンな要素があんまりねぇな。昔みたいにデレって呼んでやろうか?―――



―――それでは新郎新婦の輝かしい未来と、末永いお幸せを祈念致しまして―――



―――兄貴も、おめでとうって言ってたよ―――



―――ツンおめでとー!!ほんと超きれー!!―――



.

624 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 17:59:14 ID:yvFXxYeo0



祝ってくれたときは、みんな笑顔だった。



そして、弔う時は泣いてくれた友人らもいた。



…そんな当たり前のことを、当たり前にしてくれてよかった。



あんたらに囲まれた人生は、決して不幸なんかじゃなかった。



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625 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:06:57 ID:yvFXxYeo0





「……みんな、来てくれたのかお」



「ツン、見てるかお?見事にみんな酒ばっかりだお」





ねぇ、ブーン。


もしあたしが、あの日見た夢の話を、あなたも含めみんなに打ち明けてたら



みんなを、こんなに悲しませることもなかったのかな?




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626 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:08:40 ID:yvFXxYeo0




「みんなツンと、乾杯したかったんだお……」




急にいなくなってしまってごめんなさい。


みんなにそう伝えてあげられなくて、ごめんなさい。



でも



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627 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:09:48 ID:yvFXxYeo0




「……ツン。おめでとうだお」





―――会いに来てくれてありがとう。


一緒にはいられなくなったけど



今年も最高の誕生日になった。



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628 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:13:39 ID:yvFXxYeo0










ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです

―――――――――Fin.

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629 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:14:25 ID:yvFXxYeo0
◆エピローグ◆



XX47年 W月



キッチンは城だ。

やっぱりそこに立っていると落ち着く。



( ^ω^)「………」トトトトトトトトン



『早っ!何それちゃんと切れてんの!?』



( ^ω^)「………」トトトトトトトトン



『怖いなぁ…手気をつけてよね…』



妻の前で料理をした時は、何かと横槍を入れられて少々気が散ったものだが

いざそれがなくなると、途端に物悲しくなった。

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630 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:15:46 ID:yvFXxYeo0


結婚する前に独立し、自分で飲食店を経営するようになったブーンは今、現場を退いて売上や人事を管理する裏方の仕事に徹している。

だからこそ、自宅で料理する機会が増えた。

それが仕事ではなくなっても、一つの趣味であることには変わりなかった。

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631 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:17:13 ID:yvFXxYeo0


ノパ⊿゚)「…お父さん」


ブーンが振り向くと、そこには妻によく似た顔立ちの少女が立っていた。


ヒートと名付けられた娘は、今年18歳になる。

凛とした表情や思ったことをハッキリと口に出す性格なんかも、妻から継承されたものらしい。

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632 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:18:32 ID:yvFXxYeo0


ノパ⊿゚)「…お父さん」


ブーンが振り向くと、そこには妻によく似た顔立ちの少女が立っていた。


ヒートと名付けられた娘は、今年18歳になる。

凛とした表情や思ったことをハッキリと口に出す性格なんかも、妻から継承されたものらしい。

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633 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:19:42 ID:yvFXxYeo0


( ^ω^)「…ごめんおヒート。うるさかったかお?」


夜も更けていた。
受験生のため、遅くまで起きてることが多いヒートに何か夜食でもと思ってキッチンに立っていたのだが、それがかえって勉強の妨げになったのだろうかとブーンは憂色を浮かべた。


ノパ⊿゚)「ううん。いい匂いがしてるなーと思って」


その匂いが空腹感を刺激したなら、結果的には勉強の妨げになってしまったかもしれない。

しかし、お腹を空かせて物欲しそうな娘の表情が可愛くて、ブーンは困ったように笑って料理の続きに着手した。

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634 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:21:16 ID:yvFXxYeo0


ヒートがまだ物心つく前に、妻のツンは急逝した。

取り乱す余裕さえ奪うほど、本当に突然のことだった。


ブーンが自分の店に立たなくなった理由もそれだ。

まだ幼いヒートを一人残して、労働時間が不規則で拘束時間も長い仕事などしていられない。

オーナーシェフたるもの、現場に立って料理してこそという信条はあったが、そんなこと言ってる場合でもなかった。
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635 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:22:54 ID:yvFXxYeo0

料理なら、家でもできる。
母を亡くしたヒートの食育に貢献できるならむしろ本望だ。


ヒートが常に目の届くところにいてくれることに安心しながら、ブーンは自宅でできる仕事主体にシフトしていった。

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636 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:24:43 ID:yvFXxYeo0


ヒートは、父子家庭でも捻くれずに育ってくれた。

素直に言いたいことは言ってくれるし、疎まれた記憶も特にはない。

思春期の頃は、相応に多少気難しい時もあったが、男親には言いにくかっただけで嫌われたわけではないことはわかってし

どうしても女性にしか理解できない問題は、ハインやトソンの助力もあって、何とか乗り越えてこれた。


おかげで今も、拗れることなく生活を共にできている。

こう言っては失礼かもしれないが、ツンももともと片親だったそうだし、このような環境には適応できるDNAだったのかもしれない。

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637 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:26:18 ID:yvFXxYeo0


ノパ⊿゚)「…ねぇお父さん」


いつの間にかヒートは、料理するブーンの背にあるダイニングテーブルに座っていた。

出来上がり次第ヒートの部屋に運んでやってもよかったのだが、美味しそうな匂いを目の前にすると待ちきれないのだろうか、本人は部屋に戻ろうとはしなかった。

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638 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:27:44 ID:yvFXxYeo0



ノパ⊿゚)「唐突だけど、お母さんってくも膜下だったの?」



本当に唐突だった。

当時まだ幼かったヒートにはツンの死因をちゃんと説明してあげることはできなかったが、時が経ったら経ったで改めて説明するタイミングも掴めず、聞かれもしなかったので結局言わずじまいとなっていたはずだった。


( ^ω^)「…なんで知ってるんだお?」


隠してたわけじゃないのだが、急に知られると対応に困る。

もし自分が何かの拍子に口を滑らせたなら、無神経すぎたと反省するべきだと思った。

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639 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:29:22 ID:yvFXxYeo0


ノパ⊿゚)「…実は、さっきちょっと寝ちゃってたんだけど」


ノパ⊿゚)「夢に出てきたお母さんがそう言ってたの」


( ^ω^)「………」


いつだかも、聞いたことのある話のようだ。

ブーンは黙って、話の続きを促す。

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640 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:30:38 ID:yvFXxYeo0


ノパ⊿゚)「お母さん、どんな顔してたかあんまりちゃんと覚えてないけど」


ノパ⊿゚)「写真とかで見た印象よりもずっと若くて…あたしよりちょっと上ぐらいにしか見えなかった」


ノパ⊿゚)「確かに顔は似てたけど…そんな若い人にお母さんだなんて言われても信じられなくて」


ノパ⊿゚)「…そしたら、本物だって証明したかったんだか、聞いてもいないことを勝手に喋り出した」



( ^ω^)「…今でもやってるのかお…」


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641 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:32:05 ID:yvFXxYeo0


初めて顔を合わせる相手に対して、馬鹿正直に自分の素性を明かす強引なほどの無謀さ


信じてもらえなくても自分の気が済むまでは説得するマイペースさ


なるほど確かにツンならやりそうだとブーンは思う。



( ^ω^)「それで…お母さんとは何を話したお?」


ノパ⊿゚)「んー…あんまり覚えてないんだけど…」

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642 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:33:25 ID:yvFXxYeo0



ノパ⊿゚)「あたしの宿題手伝ってくれた」


( ^ω^)「…彫刻かお?」


ノパ⊿゚)「そう。お母さん、すごく上手だった」


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643 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:34:42 ID:yvFXxYeo0


ヒートの宿題。
それは、美大受験を目前とするヒートが課せられたある制作だった。

油絵、陶芸、更には映像など作品の様式や題材は問わないのだが、ヒートが選んだのは彫刻だった。


ツンとは、よく一緒に画集を開いた。

時間があれば一緒に美術館にも行った。

そこに、まだ歩き始めたばかりのヒートを連れて行ったこともあった。


絵画の完成に付随する背景、画家の奇行や波乱、ちょっと掘り下げた美術史。

いろんなことを教えてくれた。


唯一の、共通の趣味だった。


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644 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:36:05 ID:yvFXxYeo0


( ^ω^)「…お父さん、ヒートにいろんな画集を見せてきたおね」

ノパ⊿゚)「うん」

( ^ω^)「あれは、ほとんどお母さんの趣味で集めた画集なんだお」

ノパ⊿゚)「そうだったんだ」


ブーンは、壁に掛けてある控えめな額縁に入った絵を見遣る。

昔ドクオと働いてたあのダイニングバーの外観を描いた、セピアの絵だ。

ヒートも、ブーンの視線の先を追う。
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645 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:37:43 ID:yvFXxYeo0


ノパ⊿゚)「…この絵好き」


そうやって、幼い頃から美術を愛した二人を見て育ってるのだ。
自らも興味を示してスキルとして身につけようと志すのは、なんら不思議なことではない。


( ^ω^)「…昔お母さんと一緒に見た絵に感動してね、あれが描けたんだお」


( ^ω^)「その時いろいろ教えてくれた、お母さんのおかげだったんだお」
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646 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:39:22 ID:yvFXxYeo0

ノパ⊿゚)「…お母さんも、絵が得意だったの?」


( ^ω^)「…お母さんが得意だったのは、彫刻だお」


ノパ⊿゚)「!」


夢で会ったあの人の正体が、証明されたようだ。

正直まだ、それで腑に落ちてしまっていいのだろうかという懐疑はある。

しかし、あまりにも情報が一致しすぎて疑う要素がないのが事実らしい。
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647 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:40:59 ID:yvFXxYeo0


( ^ω^)「ツンは…ヒートのやりたいこと、応援してくれてるんだね…」


ノパ⊿゚)「………」




ノパ⊿゚)「あたし、それ作るのに何度も失敗して」


ノパ⊿゚)「お母さんも最初は黙って見てたんだけど、だんだん痺れ切らしたみたいで」


ノパ⊿゚)「不器用だとか、下手だとかボロクソ言われたりもしたけど」


ノパ⊿゚)「あたしの娘なんだからできるはずだって、励ましてくれて」


ノパ⊿゚)「どこをどうすればいいかも、ちゃんと教えてくれた」



ノパ⊿゚)「……やっぱり、お母さんなんだね」

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648 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:42:50 ID:yvFXxYeo0


ツンが手を貸した宿題の制作は、なんとか形になったらしい。

それで完成した気になったのだが、あくまでそれは夢の中の話で、目を覚ました時に手元にあった石材は、ほとんど彫られておらず未完成も未完成だった。

しかし、それをどのような形に仕上げれば納得のいく作品になるかというビジョンは見えたそうだ。

ツンの、アドバイスによって。

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649 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:44:19 ID:yvFXxYeo0


( ^ω^)「ヒート。お父さん実は、ツンが亡くなった後……会ったことがあるんだお」


ノパ⊿゚)「会った?」


( ^ω^)「夏休み、ヒートがおばあちゃんの家に泊まりに行ってた日に、僕らが初めて出会った頃の姿で会いに来てくれたことがあるんだお」


ノパ⊿゚)「………」

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650名も無きAAのようです:2013/08/30(金) 18:45:07 ID:xAd0Vn.EO
ξ゚⊿゚)ξと( ^ω^)の結婚生活は5、6年だったのか 
支援

651 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:46:02 ID:yvFXxYeo0

なんだか怪訝そうな顔だった。


まぁ、信じないと思ったから言わなかったけど。と溜め息交じりに言うブーンの世迷いごととも思えない。


やっぱり、先ほど夢に見たあの奇妙奇天烈な女性がツンならば、ありえない話ではないような気がする。
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652 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:47:48 ID:yvFXxYeo0


ノパ⊿゚)「…あたしも会えるかな」



ヒートがツンと過ごせた時間はあまりにも短い。

しかし、こうして夢に現れたりブーンに会いに来たり、母の趣味をなぞるような進路を志したり

その存在は身近にあるものと感じさせることばかりだ。

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653 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:49:52 ID:yvFXxYeo0


近くにいるなら、もっといろいろ話したい。

聞きたいことも、相談したいことも山ほどある。

普通の母子よりも限定的なものかもしれないけど

傍にいるなら、自分のことを見てくれてるなら

それを、一度でいいから本人の口からちゃんと聞きたい。

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654 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:51:19 ID:yvFXxYeo0


( ^ω^)「…いつか会えるお」


( ^ω^)「お母さんはちょっと気まぐれだけど、ヒートが会いたいと思えば、会いに来てくれるだけのパワーはある人だお」


( ^ω^)「一緒に待とうお」


ノパ⊿゚)「………うん」


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655 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/30(金) 18:52:35 ID:yvFXxYeo0


ブーンは中断してた料理を再開し、仕上げてヒートの前に置いた。


ノハ*゚⊿゚)「わーい美味しそう!」


ノパ⊿゚)「…でもなんか、つまみっぽい?」


( ^ω^)「まぁ…夜中なんだからこんぐらい軽くていいんだお」

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