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ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです
1
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/12(月) 17:05:29 ID:0tlWAR460
夢と言われれば、ただの夢。
それなりの疲労を溜め込んだ体をベッドに投げ出し、全身の力を抜いたその瞬間
浅い眠りに吸い込まれるとそこには、彼女が今生きる現実とは違う世界が広がっていた。
ただ、『それだけ』のこと―――。
ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです
.
524
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/26(月) 00:58:20 ID:TIV7lN6Y0
23話おわりです。
525
:
名も無きAAのようです
:2013/08/26(月) 01:10:38 ID:AB/gEMd20
乙
526
:
名も無きAAのようです
:2013/08/26(月) 01:11:26 ID:WK07fGK60
乙!素敵だなぁ
感動する
527
:
名も無きAAのようです
:2013/08/26(月) 02:00:12 ID:Y1WyYr7s0
ツンは強い子なんだなぁ
528
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 01:41:02 ID:q5DmYYDA0
いつも温かいレスほんとに感謝です。
こんな時間から第24話
529
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 01:42:11 ID:q5DmYYDA0
◆第24話◆
XX28年 Y月
('A`)「それでは新郎新婦の輝かしい未来と、末永いお幸せを祈念致しまして乾杯!」
「「「「「カンパ―――」」」」」
('A`)「――をしたいと思います!」
「「「「「……………チッ」」」」」
('A`)「(チッ?)…では、今度こそ皆様ご唱和ください!!」
「「「「「カンパーーーーイ!!!!!!」」」」」
.
530
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 01:43:21 ID:q5DmYYDA0
ドクオの音頭は、セオリー通りでなんの捻りもなかった。
しかし二次会ともなると、それまでの厳かな儀式の空気が一変して、気のおけない仲間同士の単なる飲み会の空気になった。
二次会の会場は、以前ブーンがドクオと一緒に働いていたあのダイニングバーだった。
既にその店は退職してるブーンは、独立してシェフ兼経営者となった。
雇われてる頃から定評のあった料理の腕はもちろん、持ち前の人当たりの良さで獲得した常連客や同業者のコネクションなんかも手伝ってか、ブーンの店はそこそこの盛り上がりを見せている。
531
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 01:44:17 ID:q5DmYYDA0
結果としてその成功が、二人が結婚に踏み切れたきっかけでもあった。
絶対の繁盛が約束された商売ではないが、ブーンが夢を叶えることがツンにとっても幸せであることは確かで
お互いに守るものができた二人が身を固めることに、それ以上の理屈は必要なかった。
.
532
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 01:45:19 ID:q5DmYYDA0
前の職場のオーナーの計らいで貸し切りにしてもらったはいいが、ブーンとツン、二人の友人を呼んでも20人と満たしていない。
いつだかの周年パーティーの時なんかより大幅に人数は少ないはずなのに、熱気だけはあの頃の窮屈とさえ感じたボルテージに引けをとらなかった。
o川*゚ー゚)o「ツンおめでとー!!ほんと超きれー!!写真撮ろ、写真ー!!ねぇハインーーー!!」
こんなおめでたい席に…とも思ったが、こんなおめでたい席だからこそ、一応キュートも呼んでおいた。
しかし、さすがに厳かな席には呼びたくないテンションだし、ブーンのご両親にもあんなのが友達だなんて思われても心外なので、彼らとも円滑に付き合ってくためにもキュートは二次会から呼んだ。
だからキュートは駆け付けなはずなのだが、披露宴からずっと参加してた友人らの余韻を凌駕するかのようなハイテンションである。
いい加減動きにくいウェディングドレスにもうんざりしてきた頃のそのテンションは、はっきり言って暑苦しい。
まぁよほど誰かに迷惑かけるようならすぐつまみ出そうと大目に見て、今日は乗り切ろうと思う。
.
533
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 01:46:36 ID:q5DmYYDA0
('、`*川「ツンちゃんよかったね!」
从'ー'从「ツンちゃんおめでと〜!」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがと。しかしあんたらも祝福要因ね」
ツンは、小学生の頃も似たようなことを言われた気がする同級生に囲まれていた。
彼女らとは違い少々道を外したにもかかわらず、呼べばこうして駆け付けてくれる、貴重な友人である。
普段から密に連絡を取り合ってるわけではないが、久しぶりなりに話は尽きない。
.
534
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 01:47:33 ID:q5DmYYDA0
('A`)「しかしお前も勢いに乗るなぁ」
(・∀ ・)「さっさと出し抜けやがって畜生が!とりあえず飲みやがれ!!」
( ^ω^)「ありがとうだお。お前らもさっさと彼女作れお」
それは、ブーンも同じようだった。
いつも傍にいる密な友人たちに囲まれてるが、それでもやっぱり話は尽きない。
ξ゚⊿゚)ξ「………」
( ^ω^)「?」
ξ*゚ー゚)ξ
(*^ω^)
新郎と新婦、各々がそれぞれの友人に囲まれてあまり二人で並んではいられないが、たまに目が合っては微笑み合い、同じ空間を共有してることを確かめ合っていた。
.
535
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 01:48:29 ID:q5DmYYDA0
从 ゚∀从「なんだよ今日はツンツンな要素があんまりねぇな。昔みたいにデレって呼んでやろうか?」
そう言うハインも、お祝い仕様な今日ばっかりは華やかに決まっていた。
マゼンタベースの、ちょっとタイトなベアトップドレスは普段のハインのイメージではないが、こんな風に何を着せても似合ってしまう背の高い女はずるいと、主役のツンが少々羨むほどだった。
(゚、゚*トソン「ハインさんもその服素敵ですね!どこのブランドですか?…あ、ツン先輩も綺麗です!」
こんな風に、無垢なほどに馬鹿正直な後輩についでで褒められるのも些か心外ではあったが、自分がブーンとの仲を深めている時にこの二人もだいぶ仲良くなったらしいことに、なんだか嬉しくなった。
.
536
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 01:49:46 ID:q5DmYYDA0
ブーンと付き合い始めてからも四年が経ったが、ここに集まってるみんながみんな、自分が知ってる頃のままだった。
ずっと変わらず、いつまでもこうしていられたらいい。
けどいつか終わることがわかってるからこそ、このままでいたいと思えるのかもしれない。
.
537
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 01:50:55 ID:q5DmYYDA0
o川*´ー`)o「うぅ〜〜〜もぅらめ……」
いや、こいつだけはちょっとぐらい変わってほしいかもしれない。
駆け付けのくせに、シャンパンのような酔いが回りやすい酒を急ピッチで流し込んだりでもしたのか、既に呂律が回っていない。
そんなに極端にお酒に弱いわけでもないキュートが、動けなくなるほど酔っ払うなんて珍しいことなのだが、なんでよりによってそれが今日なのだろうか。
538
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 01:51:58 ID:q5DmYYDA0
从;゚∀从「あーあ…やられたなこりゃ」
ξ゚⊿゚)ξ「ったくろくなことしないんだから」
そう言って、辛うじて椅子には座ってるが今にも崩れ落ちてしまいそうなキュートの腕を自分の肩にかけて、無理矢理立たせた。
从 ゚∀从「大丈夫か?あたし連れて行こうか?」
ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫。ついでに外の風にも当たりたいし」
そう言ってツンは、キュートの体を支えつつ店の外に出た。
('A`)「…キュートさんも懲りねぇな」
(;^ω^)「………」
(・∀ ・)「………」
そんなキュートの姿に痛い目でも見たのだろうか、昔一緒に飲んだ野郎共も呆れ顔だった。
.
539
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 01:53:47 ID:q5DmYYDA0
店自体は大きな通りからちょっと外れたところにあるが、少し歩けばすぐ車通りの多い道には出れる。
ツンはキュートを引きずりつつ、タクシーでも捕まえようと大通りを目指していた。
ξ゚⊿゚)ξ「あんた少しはしっかりしなさいよ…」
呟くような声だったが、ほとんど密着しているキュートにも聞こえない声ではなかったと思う。
しかしフニャフニャと言葉にならない声を発するだけで、起きてるのか寝てるのかもわからないキュートに届いてるかどうかは怪しいところだ。
.
540
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 01:55:06 ID:q5DmYYDA0
本物の酔っ払いを支えるのは、さすがに重い。
以前ハインが酔ったふりをした時と同じ体勢だが、あの時彼女がいかに手加減してくれてたかが、今になってよくわかる。
外に出たいからと率先した自分も自分だが、仮にも主役にここまで手を煩わせるのも、自覚がなさそうなだけに余計始末が悪い。
そろそろ30を手前にしてるというのに、こうも変わらないのは腐れ縁といえど考えものである。
.
541
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 01:56:30 ID:q5DmYYDA0
o川* ー)o「うぅ〜〜……うぅうぅ〜〜〜……」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと大丈夫?まさか吐きそうとかやめてよ?」
ぐずるような、か細い呻き声だった。
吐きそうと言うより、今にも泣き出してしまいそうだ。
o川* ー)o「……ツン……ごめんね……」
キュートとの付き合いも長いはずのツンが、一度も聞いたことがないくらいしおらしい声だった。
声色以前に、キュートが自ら過ちに気づいて反省するなど、少なくともツンの目の前ではついぞなかったのだ。
542
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 01:57:41 ID:q5DmYYDA0
ξ゚⊿゚)ξ「…わかってくれたならまぁいいわ。とにかく無事に帰りなさい」
キュートのことを見直すにはまだ足りない一言だったが、反省してるなら咎める気もなくなる。
意外と言えば意外ではあったが、何かの気まぐれで片付けられるその一言にはあまり意識を向けず、ツンはタクシーを捕まえるために大通りに走る車の流れを目で追っていた。
.
543
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 01:59:13 ID:q5DmYYDA0
o川* ー)o「ツン……ごめんね……わかってるんだけど…ごめんね……」
o川* ー)o「…でも、あたし…嬉しかったんだよ……ごめんね…」
それでもまだ、キュートは謝り続けている。
その一言一言を、たどたどしくも少しずつ伝えていこうと懸命に絞り出してる気さえする。
.
544
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 02:02:28 ID:q5DmYYDA0
ξ゚⊿゚)ξ「……何が?」
これはもはや、今日一日ちょっと迷惑かけただけのことに対する謝り方ではないように、ツンには聞こえた。
o川* ー)o「……ほんとに…ダメなの、今までも…たぶん、これからも……」
今まで。これから。
そしてダメだとキュートは言う。
まるで要領は得ない。
.
545
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 02:07:40 ID:q5DmYYDA0
ξ゚⊿゚)ξ「どーーーせ素面になったら何も覚えてないんでしょうけど」
ξ゚ー゚)ξ「少しでも自覚があるなら今後はあんまり連絡よこすなバーカ」
そんな酔っ払った時の戯言一つで、良い変化への兆しだなんて浅はかには思い難いが
差し当たり、キュートに文句を言う気はなくなった。
とにかくだらしない酔っ払いは、早めに退散させるに限る。
.
546
:
↓>>545の前ですすみません
:2013/08/28(水) 02:11:37 ID:q5DmYYDA0
ξ゚⊿゚)ξ「……本当だよ。あんたには昔っから振り回されてたし、今更急には変わらんだろうけどさ」
ξ゚⊿゚)ξ「…でも、今までのあんたがいくらダメでも、これからあんたがいくらダメになろうとも」
ξ゚⊿゚)ξ「今この瞬間のキュートは、ダメなやつじゃないよ」
今まであったこと全てを水に流すことはできない。
これからもまた、無自覚に振り回されて迷惑被ることなんていくらでもあるんだろうと思うと、うんざりする。
しかし今そうやって、拙くもひたすらに謝り続ける彼女の心情は、腐れ縁だからこそ、なんとなく伝わるものがあった。
.
547
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 02:14:29 ID:q5DmYYDA0
「おーい、大丈夫か?」
タクシーを探すツンの前に、一台の車が停まった。
(・∀ ・)「キュートさんなら俺が送ってくよ。今日飲んでないし」
ブーンの友人らに混ざってた青年だった。
飲み会の席も共にしたことがあり、顔と名前ぐらいは知ってたが、個人的にちゃんと話をしたことはなかった。
ξ゚⊿゚)ξ「…大丈夫なの?」
キュートを預けるという責務が、なんだかやたら申し訳なく思える。
方法として可能なのかそうでないのかでなく、意識的に無理がないかどうかというニュアンスで、つい聞いてしまった。
.
548
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 02:16:19 ID:q5DmYYDA0
(・∀ ・)「そんな状態の女の子一人で帰らすのも危なっかしいだろ。俺は大丈夫だからキュートさん乗っけてくれる?」
拍子抜けするほど頼もしい返事だった。もしかして、前にもこんなことがあったのだろうか?
とりあえずツンは言われた通り、青年の車の後ろの席にキュートを寝かせる体勢で放り込んだ。
そのキュートの寝顔を見て、なんだか幸せそうだな、と青年は呆れたように呟いた。まさに、遊び疲れて寝てしまった子どもの寝顔を見守る父親の目そのものだった。
549
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 02:18:13 ID:q5DmYYDA0
その青年の車は、男性のステータスとは言い難いような、あまり格好のつかない小さな軽だった。
キュートはシートを占領してるとはいえ、なんだか窮屈そうだが無理矢理詰め込んだ。
(;・∀ ・)「あんまり乱暴にしてやるなよ…じゃあ、先失礼するわ」
ξ゚⊿゚)ξ「うん。キュートお願いね」
そう言って見送ろうともせずに振り返ったが、『あ、ツンさん』という青年の何か思い出したような声に呼び止められた。
.
550
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 02:20:18 ID:q5DmYYDA0
(・∀ ・)「…兄貴も、おめでとうって言ってたよ」
『斎藤先輩だよ』
『斎藤?』
『斎藤モララー先輩』
ξ゚⊿゚)ξ「……そう」
ξ゚⊿゚)ξ「…お兄さん、元気?」
(・∀ ・)「うん、まぁ。っていうかこういうめでたい席で兄貴の話するのもどうかとは思ったんだけど…」
.
551
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 02:21:59 ID:q5DmYYDA0
ツンが特に覚えてもいなかった人に、おめでとうだなんて言われて良いのだろうかと、ちょっと戸惑いもある。
でも、巡り巡ってこんなに近くで繋がった人の輪もまた、決して軽忽なことではないのだという気づきのほうが、肺腑に染みるようだった。
ξ゚⊿゚)ξ「…ううん。気にしないで。っていうか」
.
552
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 02:24:08 ID:q5DmYYDA0
ξ゚⊿゚)ξ「…ありがとう。斎藤君」
その『斎藤』は兄と弟、どちらに向けられたものかはツン自身もよくわからなかった。
照れたような満足したような表情で軽く頷いた青年は、何も言わずに車を走らせた。
ξ゚⊿゚)ξ「………」
何故か目を反らせなかったツンは、その車の後ろ姿が見えなくなるまで放心状態のままだった。
.
553
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 02:25:44 ID:q5DmYYDA0
24話おわりです。
終盤にして順番間違えたりまたんきのAAが狂ったり、ミス連発で申し訳ないです…
554
:
名も無きAAのようです
:2013/08/28(水) 02:56:52 ID:D4CL0L9o0
乙!!
555
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:14:18 ID:dtaqAlqQ0
第25話いきます。
556
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:15:17 ID:dtaqAlqQ0
◆第25話◆
XX28年 Y月
酔っ払いを乗せた車を見送り、大通りから外れたツンはまだなんとなく、店に戻る気にはなってなかった。
そういえば、式が始まる前からやたら人に見られ続けてたし、二次会で少しは肩の力は抜けたがそれでも常に周りに人がいた。
疲れたと言ってはなんだか失礼だが、気がつけば今日一日、一人になって考え事などする暇がなかったせいか、今この瞬間が本当の意味でやっと一息つけたのかもしれないとツンは思った。
557
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:18:18 ID:dtaqAlqQ0
ξ゚⊿゚)ξ「………」
これから、内藤の姓を名乗ることになる。
住まいも引っ越して、環境が著しく変わる。
誰かと生活を共にするというだけで、だいぶ自分のペースは崩されるというのに
それが、誰かと一生添い遂げることとなると、自分のペースどころの騒ぎではなく、人一人の生活が大きく動かされるのだ。
結婚する前に、同棲して春夏秋冬を共にしたが、それの延長線上で動かせる話ではない。
.
558
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:19:22 ID:dtaqAlqQ0
しかし今更、これでよかったのか?なんて思わない。
親を亡くしたツンには、出戻れる場所があるわけでもない。
あの人との生活が、数年先にはもう幕を閉じていることを知ってるはずなのに、一人になると軽いマリッジブルーになる自分が
べつに特別な力を持ってるわけでもなく、全てにおいて達観してるわけでもなく
至極一般的な、ただの普通の女性の一人なんだと思う。
.
559
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:21:31 ID:dtaqAlqQ0
あの不思議な夢は、最近見なくなっていた。
そうやって気まぐれに現れては消えていく不可思議な現象など、なんのための何だったのかなんて追究しても答えなんか出ない。
あの夢を見ようが見まいが、結局何も変わらなかったのだから。
夢の中では触れた記憶がなかった、ただ一つの現実を除いては。
.
560
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:22:50 ID:dtaqAlqQ0
( ^ω^)「…ツン、大丈夫かお?寒くないかお?」
なかなか戻って来ないツンを心配してか、晴れて旦那となったブーンが迎えに来た。
確かに、ウェディングドレスは肩周りや腕の露出が多いので、緩やかとはいえあまり夜風に当たってると冷えてしまいそうだ。
初めてお互いの気持ちを確かめ合った時も、同じようなことを言われた気がする。
.
561
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:24:33 ID:dtaqAlqQ0
ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫よ。…よっこいしょっと」
(;^ω^)「あーあー…ドレス汚れちゃうお…」
いつかと似たようなシチュエーションを思い出したツンは、店の入り口に通じる階段に座り込んだ。
その時と同じように、ブーンが隣に座ってくれることを促すように。
主役がいないにもかかわらず、相変わらずの盛り上がりを見せてるらしい店内の活況を背中に感じながら、やっぱりブーンもツンの隣に腰を下ろす。
そういえば今日一日、ブーンともまともに会話らしい会話をしてなかった。
.
562
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:25:42 ID:dtaqAlqQ0
( ^ω^)「ツン、お疲れ様だお」
そう言ってブーンは、薬指の指輪が光るツンの手を優しく握った。
いつも仕事が終わった後に投げ掛けてくれる『挨拶』とはまた違う、同じ空間を共有した者だけに伝わる、確かな『言の葉』だった。
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンこそ。緊張してたんじゃない?」
普段はゆるキャラ扱いをされているブーンだが、式の最中はさすがに強張っていたような気がする。
親や親戚、友人や職場の人間など、こぞって人が集まる滅多にない機会だったのだ。
ツンとは違うプレッシャーもあっただろうし、これから一家の大黒柱となる男性には男性なりの覚悟や決意があるのだろう。
そんな誰にでも訪れる、ごく普通の新郎しかるモチベーションでいてくれてよかったとツンは思ってた。
.
563
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:27:32 ID:dtaqAlqQ0
( ^ω^)「…キュートさんは、無事に帰ったかお?」
ツンが、キュートのことを厄介な奴としか思ってないことはブーンもよく知ってる。
だからこそ、珍しいこととはいえお祝いの席でさっそく醜態を晒したキュートの話などあまり聞きたくはないかもしれないと思ったが
そのキュートを送り出してから、いつまでも戻って来なかったのだ。一応気にはなる。
ξ゚⊿゚)ξ「たぶんね。斎藤君が送ってってくれたみたいだし」
呆れてはいるようだが、思ったより素っ気ない感じでもなかった。
なんにしても、それに対するツンの気持ちが処理されているのならよかった。
.
564
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:30:40 ID:dtaqAlqQ0
( ^ω^)「またんきかお…あいつも苦労人だお」
ξ゚⊿゚)ξ「…やっぱり前にもこんなことあった?」
( ^ω^)「いやまぁ…初めて会った飲み会の時にちょっと…」
あの時ツンとハインが先に帰り、一人残されたキュートはその後今日のように飲み散らかして、一人で帰れる状態ではなくなったらしい。
酔いのせいなのか、何故か泣き出してしまったキュートとタクシーに乗って、彼女の自宅まで送り届けたのがまたんきだったそうだ。
.
565
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:32:26 ID:dtaqAlqQ0
その時何があったかは、ブーンもドクオも知らない。
それ以降二人に交流があったらしい話も聞いたことなければ、それから飲みの席にキュートが現れることもなかった。
しかし今日、この場にキュートが来ることを知ればこうやって帰る足を調達する。
運転しなきゃいけないとなると、もちろん酒も飲めないはずなのにだ。
きっかけはわからないが、またんきにはまたんきなりに、思うことろがあるのだろう。
566
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:34:32 ID:dtaqAlqQ0
ξ゚⊿゚)ξ「そっか…悪いことしちゃったかな」
当時は、自分が置き去りにした友人に手を焼く彼らの苦労など一切考えなかった。
ましてやそれが、今でも根強く続く交遊関係に発展するとなどまるで思ってなかったのだ。
しかしそれが結果なのだ。さすがにツンも多少、自責の念を感じずにはいられない。
( ^ω^)「ツンが気にすることないお。またんきはまたんきで、キュートさんはキュートさんでああいう人たちなんだから」
ブーンは優しく説き伏せた。
その声は、どんな呪縛からも解放されてしまうようだった。
.
567
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:35:59 ID:dtaqAlqQ0
ξ゚⊿゚)ξ「あーーーーあ。あたしも少し酔ったかも」
(;^ω^)「え!?今日はお酒飲んでないのに!?」
唐突に奮い立たされたような声で予想外な自己申告をしたツンに、ブーンは頓狂な声をあげた。
.
568
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:37:47 ID:dtaqAlqQ0
ξ゚⊿゚)ξ「んーなんていうか、雰囲気に酔えることもあるじゃない」
とりあえずそういうことにしておいてよ。と言いたげな強引さだった。
なんだかそれに、水を差してはいけない気がした。
ξ゚⊿゚)ξ「…だから酔っ払いの戯言なんて、あんまり真に受けてくれなくていいけど」
.
569
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:39:28 ID:dtaqAlqQ0
ξ゚⊿゚)ξ「…もしブーンが先に死んだら、毎年お盆とか誕生日とか、それ以外にも会いたくなったらいつでも会いに行く」
ξ゚⊿゚)ξ「ちゃんとお墓きれいにして、お花とかお酒とかいっぱい供えて、近況もいろいろ報告して…」
ξ゚⊿゚)ξ「…あたしだったら、必ずそうする」
( ^ω^)「…僕は、あんまり考えたくないお」
.
570
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:40:55 ID:dtaqAlqQ0
それでも、先立った妻のために尽くす時間を作って
そうやって共有してる時間を大切にしてくれることを、ツンは知っているから
ξ゚⊿゚)ξ「…うん。だから真に受けなくていい。あんまり深く考えなくていいよ」
だからあんたもそうしろ。
だなんて、言う必要はなかった。
.
571
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:42:40 ID:dtaqAlqQ0
ξ゚⊿゚)ξ「ただの戯言だから。酔っ払いの、戯言なんだから…」
戯言。暗示するように呟くそれが、本当であってくれればどんなに良かっただろうかと思わなくもない。
今でも時々、ほの暗い絶望感に襲われることはある。
でも、今隣にブーンがいる。
守りたい人、傍にいてほしい人がいっぱいいる。
そんな人生を自分が生きるなんて、昔は思ってなかった。
それを不幸だなんて思うことなど、できるわけがなかった。
.
572
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:43:47 ID:dtaqAlqQ0
( ^ω^)「ツン……」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
何も考えなくていい。
深く考えなくたって、隣にブーンがいるだけで、勝手に幸せになるのだから。
.
573
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:45:01 ID:dtaqAlqQ0
ξ゚ー゚)ξ「…ブーン、ありがとう」
ツンは微笑みながら、ブーンに握られた左手に静かに力を込めた。
.
574
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:47:20 ID:dtaqAlqQ0
――――…ツン。僕は……―――
―――君と出会えて、結婚できて、幸せだったんだお。――――
ξ*゚ー゚)ξ「あたし、ブーンと出会えて、結婚できて良かった」
.
575
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:48:53 ID:dtaqAlqQ0
――――もし、君が抗った結果、僕と結婚する未来がなくなったとしても――――
―――今こうしていられるだけで、僕は幸せだお――――
「でも、こうしていられるだけであたしは幸せだよ」
いつか言ってくれたブーンの言葉に重ねるようにそっと呟いて
ツンはただそこにある思慕の情に身を委ねていた。
.
576
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/28(水) 22:52:11 ID:dtaqAlqQ0
25話おわりです。
次で、最終話まで一気に投下しようと思います。
577
:
名も無きAAのようです
:2013/08/28(水) 23:25:43 ID:D3UheQJA0
乙!
いよいよかぁ
楽しみだけどまだ終わって欲しくないなぁ
578
:
名も無きAAのようです
:2013/08/28(水) 23:28:10 ID:z.pPWy1E0
乙!
次で最終回か
わくわくしながら待ってるよ
579
:
名も無きAAのようです
:2013/08/28(水) 23:32:42 ID:jjiP/U4s0
乙
580
:
名も無きAAのようです
:2013/08/29(木) 00:12:10 ID:wVQI6GeI0
もう終わっちゃうのか・・・
だが楽しみにしている
581
:
名も無きAAのようです
:2013/08/29(木) 03:17:43 ID:BM6P2Ex.O
次で終わりということは明日じゃねえかよ
最終回くらい予告スレ活用しろ
582
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/29(木) 04:21:47 ID:cqf7UHSE0
たくさんの乙ありがとうございます。
連日投下の流れできておいてなんですが、最終話に関しては明日投下できるかどうかわかりません…
目処が立ったら予告しますので、最終話もお付き合いいただけると嬉しいです。
583
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/29(木) 04:23:03 ID:cqf7UHSE0
たくさんの乙ありがとうございます。
連日投下の流れできておいてなんですが、最終話に関しては明日投下できるかどうかわかりません…
目処が立ったら予告しますので、最終話もお付き合いいただけると嬉しいです。
584
:
名も無きAAのようです
:2013/08/29(木) 04:31:04 ID:BM6P2Ex.O
うん、大事なことだね!
585
:
名も無きAAのようです
:2013/08/29(木) 06:01:02 ID:bj1wbk3kO
(`・ω・)y-゚゚゚
586
:
名も無きAAのようです
:2013/08/30(金) 07:38:02 ID:o9Vdctb60
一気読みしてきた。
素敵な話だな。好きだ。
587
:
名も無きAAのようです
:2013/08/30(金) 15:53:34 ID:xAd0Vn.EO
17:00からか最後のほうはリアルタイムで読めるかもだな
まだ始まってないけど支援
588
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:05:18 ID:yvFXxYeo0
最終話となりました。
投下します。
589
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:06:19 ID:yvFXxYeo0
◆第26話◆
ζ(゚ー゚*ζ「……なんかまた呼ばれた気がしたんだけど」
ζ(゚ー゚*ζ「さすがに、ちょっとは老けたんじゃない?そっちは今いつなの?」
ζ(゚ー゚*ζ「ふぅん…結婚か…」
ζ(゚ー゚*ζ「またネタバレかよ」
.
590
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:07:21 ID:yvFXxYeo0
ζ(゚ー゚*ζ「で、結婚ってどうなの?子どもは?」
ζ(゚ー゚*ζ「…さすがにそこまではネタバレしないか」
ζ(゚ー゚*ζ「自分で呼んだくせに」
.
591
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:08:23 ID:yvFXxYeo0
ζ(゚ー゚*ζ「………え?」
ζ(゚ー゚*ζ「…いや、ちょっと意味がわからない」
ζ(゚ー゚*ζ「自分自身に向かって、もう会えないみたいな言い方してるのが」
.
592
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:09:40 ID:yvFXxYeo0
ζ(゚ー゚*ζ「っていうか今更改まる必要ある?」
ζ(゚ー゚*ζ「今までだって、不可抗力だったわけでしょ?」
ζ(゚ー゚*ζ「……どうせあなたのことだから、またいつか気まぐれで現れるんでしょ」
.
593
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:10:47 ID:yvFXxYeo0
ζ(゚ー゚*ζ「………」
ζ(゚ー゚*ζ「………」
ζ(゚ー゚*ζ「………」
ζ(゚ー゚*ζ「…何があったのかはよくわからないけど」
.
594
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:11:34 ID:yvFXxYeo0
ζ(゚ー゚*ζ「あたしら、会えるとか会えないとかの次元じゃないでしょうよ」
ζ(゚ー゚*ζ「あたしはあなたを常に追いかけてるけど」
ζ(゚ー゚*ζ「…追いつくことなんてできないはずでしょ」
.
595
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:12:27 ID:yvFXxYeo0
ζ(゚ー゚*ζ「…あたし、たぶんずっと覚えてるだろうから」
ζ(゚ー゚*ζ「いつかあなたがまた、気まぐれで現れてもいいように」
ζ(゚ー゚*ζ「……たぶんね」
.
596
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:13:42 ID:yvFXxYeo0
XXXX年 T月
从 ゚∀从「………」
从 ゚∀从「…急すぎんだろ」
.
597
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:14:44 ID:yvFXxYeo0
そう呟いてハインは座り込み、持っていた袋から一本のボトルを取り出す。
べつに好んで飲みはしない、スコッチウィスキー。
平べったいボトルの、バランタインだ。
それを持ってきたロックグラスに注いで、目の前に置く。
.
598
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:15:50 ID:yvFXxYeo0
从 ゚∀从(…なかなか周到だろ。やっぱりこれがイメージだからな)
声には出さず、姿の見えない親友に語りかける。
そして、注がれてちょっと減ったウィスキーをボトルごと煽った。
いわゆるラッパ飲みってやつだ。
酒に強くないハインが、親友といえど人前では絶対にやらなかった飲み方だった。
.
599
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:16:50 ID:yvFXxYeo0
从;゚д从=3ブハッゲホッ
从;゚∀从「………」ゼーハー
从;゚∀从「……全然美味くねぇじゃん」
わかってたつもりだったが、少量飲んだだけで噎せた。
それを美味しそうに飲んでた親友の気が知れない。
.
600
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:17:59 ID:yvFXxYeo0
从 ゚∀从(…まぁ、献杯にしちゃ豪快だったかもしれんが)
从 ゚∀从(ツンと飲む最後の酒らしいっちゃらしいよな)
なぁ、そうだろ?と問い掛けたところで、答えてくれる声は、もうない。
.
601
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:19:56 ID:yvFXxYeo0
从 ゚∀从「………」
―――よし、ハイン飲め―――
苦手な酒を無理矢理促すあの声も
从 ;∀从「………」
―――よかったー!ごめんねハイン!―――
謎に目を輝かせて張り上げられた、あの声も
从 ;∀从「…やっぱり美味しくないな……」
ハインの記憶の中でこだまするだけで、それを発する主は、もういないのだ。
.
602
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:21:33 ID:yvFXxYeo0
お酒は得意じゃなかったが、親友が隣にいる酒の席は楽しかった。
オススメしてくれたあのカクテルだって、破壊力はあったけど甘くて美味しかった。
.
603
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:22:37 ID:yvFXxYeo0
从 ;∀从「………」
―――足、治ったの?もう走れる?
―――うん!
―――じゃあみんなと一緒にケイドロやろ!
―――…えっと…どうやるの?
―――…あ、そっか。そうだよね、ごめん。あのね………
.
604
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:23:57 ID:yvFXxYeo0
从つ∀从「………グスッ」
―――ハイン、誕生日おめでとう
―――ありがと。…って何これすごい
―――エッチングって言ってね、部活で作ったデザイングラスだよ
―――すげぇー…ガラスのコップにこんな彫刻できるんだぁ…
―――…うん、そこはグラスって言ってよ…ちゃんとハインの名前彫っといたし、あたしの分も作ったから。卒業したらこれで一緒に酒飲もうね。
―――そうだな!飲めるようになったらな!
.
605
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:25:20 ID:yvFXxYeo0
从 ゚∀从「………」
从 ゚∀从「…あたしもう飲めないから、あとはツンが飲めよ」
そう言って、半端に空いたバランタインのボトルをロックグラスの傍らにそっと置いた。
.
606
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:28:48 ID:yvFXxYeo0
('A`)「…バランタインだ」
既にそこに置かれていたウィスキーに気づいて、思わず呟いた。
('A`)「…考えることはみんな一緒だな」
そう言うドクオが持ってきたのは、ラフロイグだった。
.
607
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:30:13 ID:yvFXxYeo0
女の子らしくない、スコッチやらシングルモルトやらが好きだった。
ロックで美味しそうに煽る姿は定番だった。
.
608
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:31:48 ID:yvFXxYeo0
―――……うん。久しぶり。名前は覚えてないけど
―――ちょ、急に話し掛けないでよ!手元狂うじゃない!
飾らない人だった。
あまり遠慮のない人だった。
それでいて、芯がしっかりしてる姿は、ブーンと似た者同士だと思った。
.
609
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:33:33 ID:yvFXxYeo0
('A`)「………」
一緒にTシャツを作った時は、その段取りや要領の良さにひたすら感心した。
おかげで周年パーティーも大成功だった。
ハインの提案で企てたバースデーサプライズの時の、驚きすぎのあまりほとんどノーリアクションだったあの顔も、企てた側からしてみたら肩透かしをくらった気分だったが
あの状況が飲み込めてないようなぽかんとした表情は、普段飄々としてる彼女には頗る珍しく、なかなか見れる顔じゃなかった。
.
610
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:35:22 ID:yvFXxYeo0
ブーンが作った料理は全て幸せそうに頬張ってた。
それを見て、彼女はブーンが与えた『幸せ』をすべて飲み込んでくれる人なんだと思った。
だから
ブーンとの結婚が決まった時は、心の底から祝福した。
.
611
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:36:43 ID:yvFXxYeo0
('A`)「……ありがとう」
('A`)「あいつのこと、幸せにしてくれて」
.
612
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:38:07 ID:yvFXxYeo0
(・∀ ・)「…酒ばっかりじゃん」
o川* ー)o「………」
(・∀ ・)「…ほら、キュート」
o川* ー)o「……うん」
.
613
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:39:36 ID:yvFXxYeo0
キュートは、まだ詮の開いてないカナディアンクラブを目の前に置いた。
しゃがみ込み、俯いたまま何も言わない。
ここに到着するまでも、ずっとそんな有様だった。
.
614
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:40:39 ID:yvFXxYeo0
o川* ー)o「……いないの?」
(・∀ ・)「………」
o川* ー)o「…プレゼント、用意してたのになぁ…」
.
615
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:42:06 ID:yvFXxYeo0
この場に持っていくものとして、昔酒の席を共にした時に飲んでいたウィスキーを選んだのはまたんきだった。
対し、もうすぐ誕生日だからとキュートが前々から用意していたプレゼントは、ヴィトンのセカンドバッグ。
高価なものではあるが、この歳になって貰って嬉しいものなのだろうか。そんなことまで考えてなかった。
相手の好みを考えて選んだまたんきに比べて、自分はなんて無神経なのだろうと、キュートは初めて気がついた。
.
616
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:43:33 ID:yvFXxYeo0
そんなプレゼントでも、もし本人の手に渡ったら多少の文句は言われるだろうが
なんだかんだで優しい彼女のことだから、最終的には『まぁキュートだからしょうがないか』って呆れて苦笑いしてくれたかもしれないのに。
.
617
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:44:57 ID:yvFXxYeo0
o川* ー)o「あんなの、べつに使ってくれなくてよかった…」
o川* ー)o「できれば喜んでほしいけど、呆れられても文句言われてもよかったのに」
o川*;ー;)o「…それすらもう、してくれないんだね…」
.
618
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:47:27 ID:yvFXxYeo0
(・∀ ・)「………」
またんきは咽び泣くキュートの肩に手を置いた。
もしツンがその場にいたら、その黙って傍にいてくれる優しさに『斎藤先輩』の面影が見えたかもしれない。
そんな彼の弟も、きっと頼もしい人なのだろう。
薄弱なキュートを、守ってやれるほどに。
.
619
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:52:37 ID:yvFXxYeo0
o川*;ー;)o「…あたしまだ、ツンに謝れなかったこと、いっぱいあるのに……」
o川*;ー;)o「どうして急に……いなくなっちゃうの……?」
キュートは知らない。
あの日譫言のように繰り返してた『ごめんね』が、ちゃんとツンに届いてたことを。
直情で知恵がない分、昔から言葉が足りないことはあっても嘘はつかない子だった。
そんなこと、ツンはとっくに知っているということを。
.
620
:
名も無きAAのようです
:2013/08/30(金) 17:53:51 ID:t1DoGWdU0
泣きそう
621
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:54:34 ID:yvFXxYeo0
またんきとキュート。
各々は、何も変わらずツンが知ってる頃のままだ。
でもその二人が歩み寄ってる姿を見せてやれば、ツンは安心して旅立てるのではないかとまたんきは思っていた。
(・∀ ・)(…ツンさん。お疲れさま)
まだ泣き続けるキュートに寄り添って、またんきは心内で弔った。
.
622
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:56:20 ID:yvFXxYeo0
みんな、変わらない。
祝う時も悼む時も、こうして来てくれる。
.
623
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/30(金) 17:57:38 ID:yvFXxYeo0
―――なんだよ今日はツンツンな要素があんまりねぇな。昔みたいにデレって呼んでやろうか?―――
―――それでは新郎新婦の輝かしい未来と、末永いお幸せを祈念致しまして―――
―――兄貴も、おめでとうって言ってたよ―――
―――ツンおめでとー!!ほんと超きれー!!―――
.
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