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ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです
1
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/12(月) 17:05:29 ID:0tlWAR460
夢と言われれば、ただの夢。
それなりの疲労を溜め込んだ体をベッドに投げ出し、全身の力を抜いたその瞬間
浅い眠りに吸い込まれるとそこには、彼女が今生きる現実とは違う世界が広がっていた。
ただ、『それだけ』のこと―――。
ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです
.
124
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/15(木) 07:24:30 ID:MzllV3rk0
ξ*゚⊿゚)ξ「よかったー!ごめんねハイン!」
从;゚∀从「いいからそんなに目輝かせて謝らないでよ…」
そう言って方向転換しようとする流れで一瞬足をふらつかせたのには気づいたが、それが酔いによるものかどうかまではわからなかった。
125
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/15(木) 07:25:26 ID:MzllV3rk0
ξ゚⊿゚)ξ「送ってかなくていいの?」
从 ゚∀从「ん。一人で帰れるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「べつにうち来てもいいけど」
从 ゚∀从「大丈夫だって。明日もバイト早いんだ。じゃな」
ξ゚⊿゚)ξ「…」
どこか急いでるようにも見えた。
まぁ大丈夫とは言うが、確実に普段飲む量は越えたはずだからそれなりにはしんどいのだろう。
危なっかしいがなんとか歩けてるその背中が見えなくなるまで見届けてから、ツンも家路についた。
126
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/15(木) 07:28:05 ID:MzllV3rk0
从;-д从(オェーーー…やっぱりちょっと気持ち悪いな…)
やはりちょっと無理があった。
まぁ普段あんなに必死に頼み事をすることがないツンだから、たまにはいいかと思ったのだが
从;-∀从(いやべつに…たまにはいいんだけどさ……)
从;-∀从(明日バイト大丈夫かな…)
もう少し、あと少しだと自分に言い聞かせ、何度もえづきながらハインは家路についた。
127
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/15(木) 07:29:57 ID:MzllV3rk0
8話おわり。
128
:
名も無きAAのようです
:2013/08/15(木) 11:56:08 ID:/LKhH5Io0
久々に追う現行ができた
乙
129
:
名も無きAAのようです
:2013/08/15(木) 14:50:54 ID:WlIarQds0
乙!
続き楽しみにしてる
130
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/15(木) 21:14:58 ID:6QwguhgA0
乙ありがとうございますほんと嬉しいです
でも百物語読んでる時に救急車の音と子どもの笑い声が同時に聞こえてくるのとかほんと勘弁してほしいほんと。
一応外だったけどね。ありえない場所ではなかったんだけどね。
短いですがマイペースに第9話
131
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/15(木) 21:16:22 ID:6QwguhgA0
◆第9話◆
XX24年 S月
帰宅するなりツンは缶ビールを煽った。
ハインのことは少し心配だが、一応ちゃんと喋れてたし歩けてたし、あの姿を信用して無事に帰宅したことを祈るしかない。
ξ*゚⊿゚)ξプハーッ
キュートと飲む酒が旨いと思ったことなどないが、まさかあんな冴えないメンツとの合コンだったとはさすがに予想外だった。
ジョルジュという存在を承知の上での無神経な誘いなのか
ツンが興味を示さないことを見越した上で引立て役にされたのか
いずれにしても飲み直さないと安眠できない気分なのだ。
132
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/15(木) 21:17:40 ID:6QwguhgA0
ξ゚⊿゚)ξ「………」
ツンはベッドサイドの棚に飾られた一つの彫刻を見遣る。
英国にある城を摸した作品で、硬度4と比較的柔らかく、色彩も鮮やかな寿山石に惹かれて手作業で彫刻刀を入れたそれは、ツンが高校生の頃に手がけた。
母が好きだった映画のロケ地にもなった仰々しい建造物だが、土台が掌に収まるサイズなのでディテールはかなり繊細な作業だった。
その工程の途中で母が倒れ、しばらく手付かずだったがその母が亡くなった後に再開し、悲しみを追いやるかのような集中力で完成させた。
133
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/15(木) 21:19:01 ID:6QwguhgA0
建造物や飛行機など、いわゆる設計図が存在してる造形は、細かい作業に定評のあるツンの得意分野だったが
今にも動きだしそうな躍動感や、風が吹けば靡いてしまいそうな繊細で柔らかい質感が求められる、人物や生花は苦手だった。
裏を返せば、動かないものを摸することしかできないのだ。
しかし突き詰めた芸術の世界では、後者の才が求められることの方が多いはず。
特別絵心があったわけでもなく、活動の一環として課せられたデッサンなんかも人並みで
致命的に創造力に欠けたツンが、大なり小なりいつか挫折を味わうことは請け合いだったかもしれない。
134
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/15(木) 21:20:44 ID:6QwguhgA0
ξ゚⊿゚)ξ(そんなのどこ行ったってそれなりにはあるんだろうけどさ……)
今でこそそう割り切れるが、高校生時分やりたいこととやるべきことは違うと、気づいていながら認めたくなくて
そんな未練が今でも、心の奥底に小さく燻っていたようだ。
.
135
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/15(木) 21:22:18 ID:6QwguhgA0
しかし何故今になってそんなことを思い出してノスタルジックになるのか。
言うまでもなく、ツンがあの夢を覚えていたからだ。
.
136
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/15(木) 21:23:43 ID:6QwguhgA0
最初の何回かはうすぼんやりと覚えてるかそうでないか程度だったので、覚えてる夢の前にも段階があったことまでは知らないが
過去、17歳になった自分に接触した夢は、それも少々断片的ではあるがその断片を繋ぎ合わせれば形になる程度には覚えてる。
その頃実際に経験した話なのだから、断片を形にするにあたりツン本人の実際の思い出が手伝う部分もあるかもしれない。
でもその頃の自分と今22歳になった自分が、会話をする。
それだけは夢でしかありえない話のはずだ。
.
137
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/15(木) 21:24:46 ID:6QwguhgA0
不思議だ。
ただそうとしか思わない。
でも夢なんてご都合主義でなんでもあり。それが何を告げてるわけでもなくただ『そういうもの』。
だから人に話すこともないし特に気にも留めてないのだが
ξ゚⊿゚)ξ(今日は、どうだろう)
普段は眠りに落ちる前に意識がまどろむのでそこまで考える余裕はないが、たまにこうして考える時間があると、確かにどうなるのか気にはなる。
138
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/15(木) 21:26:08 ID:6QwguhgA0
べつにあえて見たいわけではない。ただ、見たくないほど怖いものでもない。
その夢が今の自分に何か影響を与えてるわけでもないのなら、考えるだけ不毛であるし
自分の意識で操作できない以上、夢の中で会うかもしれない誰かに何かを用意したり備えたり、場合によっては気をつけたりすることも、何もできない。
139
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/15(木) 21:27:17 ID:6QwguhgA0
ξ゚⊿゚)ξ(何もできないなら何もしないに限る)
そう思ってツンはベッドに潜り込んだ。
意識がまどろむ間もなく、目を閉じたその瞬間に眠りに落ちた。
140
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/15(木) 21:28:49 ID:6QwguhgA0
ほんとに短かったおわりです。
141
:
名も無きAAのようです
:2013/08/15(木) 22:28:45 ID:/LKhH5Io0
完結かと思ってびびった
乙
142
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 00:39:54 ID:xH7vejbQ0
すいませんまだ続きます
僭越ながら第10話
143
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 00:41:03 ID:xH7vejbQ0
◆第10話◆
XX20年 W月
ξ゚⊿゚)ξ(そう思ってた矢先か)
今は止んでいるが、一面は薄く雪に覆われていて
ツンの目の前にある墓石にも、うっすらと雪が積もっていた。
ξ゚⊿゚)ξ「……」
退かしてあげたかったが、それがなんだか綺麗で少しの間見とれてしまった。
144
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 00:42:43 ID:xH7vejbQ0
「また来たの」
背後から自分の声がした。
なんか変な感じだ。
ζ(゚ー゚*ζ
黒髪で、少々着崩した制服姿の自分は、まだ変わらずデレだった。
145
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 00:44:10 ID:xH7vejbQ0
その髪色から察するに三年生だろうか。
気まぐれか必要に駆られたかは忘れたが、そのケミカルなほどわざとらしい黒色は、もともと色素が薄く黒髪でもなかった彼女には逆に不自然な色だった。
ξ゚⊿゚)ξ「なんかもうあんた妹のように思えてきた」
ζ(゚ー゚*ζ「嘘つけよ本人でしょうが」
会うたびに遠慮がなくなっていく発言だけは、徐々に今のアイデンティティに近づきつつある気もするがさておいて、今回もまたツンは自分の存在を説明する手間はないようだ。
146
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 00:45:47 ID:xH7vejbQ0
ξ゚⊿゚)ξ「今更だけど疑問持たなさすぎじゃない?」
ζ(゚ー゚*ζ「そんだけ何度も当たり前のように現れといて…」
ξ゚⊿゚)ξ「もっとも、何を聞かれても答えてあげられない可能性大だけど」
ζ(゚ー゚*ζ「でしょうね。でも…」
女子高生は墓石の前にしゃがみ込んだ。
ζ(゚ー゚*ζ「聞きたいこともないわけじゃないよ。…とりあえずお参りしよ」
二人は母の墓に手を合わせ、無言で簡単に掃除をした。
.
147
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 00:46:53 ID:xH7vejbQ0
ξ゚⊿゚)ξ「しかしあれだね、自分自身と気まずいってのもなかなかない感覚ね」
ツンは年甲斐もなく高校生である自分に買わせた缶コーヒーを開けながら言った。
ζ(゚ー゚*ζ「そのあっけらかんとした発言が信憑性をなくすけどね」
自身も同じ缶コーヒーを啜りながらつつがなく突っ込みを入れる。
ξ゚⊿゚)ξ「で、聞きたいことって?」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
言いたいことは思いついたタイミングで口にするマイペースさにちょっと呆れ気味な女子高生に気づいているのかいないのか、あくまでもマイペースな22歳は聞いた。
148
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 00:48:29 ID:xH7vejbQ0
ζ(゚ー゚*ζ「んー…今彼氏、とかは?」
大人になったからこそ『大人気ない』と思われることが増えるのだろうと女子高生は無理矢理納得して仕切り直す。
…それが自分自身の将来の姿だとは認めたくなかったが。
ξ゚⊿゚)ξ「いるけど」
ζ(゚ー゚*ζ「いるんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「今現在付き合い始めて間もないから、あんたが出会うのはだいぶ先よ」
ζ(゚ー゚*ζ「そっかぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「?」
女子高生時分相応に、淡い色恋沙汰にもやっぱり興味はあるんだと思った矢先だったが、思ったよりも掘り下げてこないことに些か違和感があった。
149
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 00:49:37 ID:xH7vejbQ0
ζ(゚ー゚*ζ「…例えばさ、今あなたがもし幸せじゃなかったとしたら」
ζ(゚ー゚*ζ「その人と出会うことさえ回避することも可能なのかなーって…」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ζ(゚ー゚*ζ「そうじゃなかったとしてもさ、何か後悔したこととか、辛かったこととか、今のうちに知っておけばまた違う道に進んだりするのかなー…とか」
ζ(゚ー゚*ζ「…ちょっと思ったの」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
150
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 00:50:57 ID:xH7vejbQ0
ξ゚⊿゚)ξ「…悪いけど」
ξ゚⊿゚)ξ「それはないと思うよ」
ζ(゚ー゚*ζ「………」
少し考え込むように見えたが、直後にはきっぱりと言い切った。
.
151
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 00:52:15 ID:xH7vejbQ0
ξ゚⊿゚)ξ「どんな理由でこうやって過去の自分と接触して、現在の自分の価値観を持ったまま会話できるのかはわからないけどね」
ξ゚⊿゚)ξ「回避したかったことを回避できたことなんて一度もないのよ」
ζ(゚ー゚*ζ「………」
.
152
:
名も無きAAのようです
:2013/08/16(金) 00:53:44 ID:54Y4jdIk0
支援
153
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 00:53:59 ID:xH7vejbQ0
もしも不自由な足が病気じゃなくて事故によるものだったら?
その事故が起きる前に回避できただろうか?
普通に学校に通って友達作って
今とは違う交遊関係ながら楽しい青春時代を過ごせただろうか?
母を働き詰めにさせることもなく
過労で死なせることもなかっただろうか?
.
154
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 00:55:23 ID:xH7vejbQ0
ξ゚⊿゚)ξ「最初はあたしもちょっと同じこと考えたんだ。だから…」
ξ゚⊿゚)ξ「…小学生の頃、退院した日に会ったこと、覚えてる?」
ζ(゚ー゚*ζ「…うん」
ξ゚⊿゚)ξ「あの時もしかしたら、あんたが言ったみたいに違う道に行けたかもしれないって思ったの」
ζ(゚ー゚*ζ「…斜に構えるのやめろって、言ってたもんね」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ξ゚⊿゚)ξ「…本来のあたしの記憶ではね」
ξ゚⊿゚)ξ「退院してからもなかなか友達ができなくて」
ξ゚⊿゚)ξ「頑張りもせずに諦めて捻くれて」
ξ゚⊿゚)ξ「気持ちが荒れてたからこそ、不良気質のキュートに拾われたの」
155
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 00:56:23 ID:xH7vejbQ0
ζ(゚ー゚;ζ「え、でもキュートが荒れたのって中学生からじゃ…」
ξ゚⊿゚)ξ「あたしの記憶では違う。小学生の頃からだいぶすれてた。それであっちも友達少なかったから、似たようなはみ出し者に手を差し延べてくれたってわけ」
一応、それでも嬉しかったんだけどね。とツンは締めた。
156
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 00:57:57 ID:xH7vejbQ0
ξ゚⊿゚)ξ「だからあの時あたしがあんたの背中を押して」
ξ゚⊿゚)ξ「普通の同級生とのわだかまりに打ち勝ってくれれば、もっと全うな友達ができるかもしれないってちょっと期待したけど」
ξ゚⊿゚)ξ「朝起きればキュートからメール来てるし、今でも腐れ縁よ」
ζ(゚ー゚;ζ「………」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたがあの時どう立ち回ったかはわからないけど」
ξ゚⊿゚)ξ「結果的には何も変わらなかった」
ξ゚⊿゚)ξ「キュートに振り回された学生時代も、お母さんの体調の変化に気づけなかったのも」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと変わった夢が見れるぐらいの現象じゃ、覆らなかったのよ」
157
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 00:59:11 ID:xH7vejbQ0
ζ(゚ー゚*ζ「………」
無言。
何か考え込んでいるのか残念がってるのかわからないが、ツンの言いたいことは理解したようだ。
ζ(゚ー゚*ζ「……ハインとは」
ζ(゚ー゚*ζ「今でも仲良いの?」
消え入るような、不安そうな声だった。
ξ゚⊿゚)ξ「ばーか。それはあんたのこれからの付き合い方次第でしょうが」
意地悪そうに言うが、でも……と続いた。
158
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 01:00:30 ID:xH7vejbQ0
ξ*゚ー゚)ξ「今でもあいつはいい奴だよ。その頭の回転の速さと優しさには、いつも救われてる」
それも腐れ縁だね。と照れたように笑ったその声に、女子高生も安堵した。
.
159
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 01:01:49 ID:xH7vejbQ0
離れていくものもあれば、変わらず傍にいるものもある。
これから出会うものだって、いくらでもある。
なんだ。普通のことじゃないか。
ζ(゚ー゚*ζ「…なら、いいや」
.
160
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 01:03:30 ID:xH7vejbQ0
後悔すること。
痛い思いをすること。
傷つくこと。
これから起こるそれらを、今から知れて回避できることならいいかもしれない。
18歳である今から22歳になるまで、今現在とは違う恋愛もしてるかもしれないし、怒ったり泣いたりも多々してるだろう。
でも、そんな感情の起伏があってこそ生きてるのだと今ならわかるから
そんな当たり前の生き方をしてるならそれでいいと、女子高生は素直にそう思えた。
161
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 01:06:13 ID:xH7vejbQ0
10話おわりです。
支援ありがとうございました。
162
:
名も無きAAのようです
:2013/08/16(金) 01:15:44 ID:54Y4jdIk0
自分とある共通の話題で盛り上がるのってなかなか新鮮だった
乙
163
:
名も無きAAのようです
:2013/08/16(金) 01:28:51 ID:KwFYRM.E0
乙
164
:
名も無きAAのようです
:2013/08/16(金) 02:23:48 ID:u5jfw6AE0
乙
165
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:13:14 ID:tbLElUNM0
第11話いきます
166
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:15:43 ID:tbLElUNM0
◆第11話◆
XX24年 S月
ξ゚⊿゚)ξ(………ファ)
ツンの仕事は、ほとんど動きもなくまぁ単調なことだ。
地元も住みにくいほど田舎でもなかったが、そこから離れてより栄えた土地に拠点を移し、その市内でも観光スポットとされる大規模な美術館に勤めているのだが
今日はとりわけ動きのない、監視役を任されている。
普段は受付やグッズの販売、簡単なガイドなど多少動きのある仕事が基本なのだが、それさえもメリハリがないこともざらにあるので、無表情のまま欠伸を噛み殺す変なスキルばかり身についた。
ちなみに、ジョルジュも同じ美術館に勤務しているが、デザイン科のある専門学校で得たスキルでパンフレットやポスターなど、広告関係の仕事に駆り出されることが多いので、館内で同じ仕事をすることはあまりない。
167
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:20:52 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ「……」
展示物が変わるたびに多少のマンネリ解消にはなったものの、これでも高校生の頃月に一度くらい通ってた頃ほどの感動は最早なくなってきたが
展示物を提案する学芸員の話を聞くのも面白かったし、単純に美術品に囲まれたこの空間に居続けてれば、気持ちの荒れようがない。
168
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:21:54 ID:tbLElUNM0
美術関係への進路を絶ち、挫折した身としては、そちらの世界に精通した学芸員たちや研究者、学生のアルバイトさえも美大生がほとんどであることに対し、最初は多少の劣等感も否めなかったが
展示物をガイドするために真面目に勉強する姿が認められ、学芸員の小難しい蘊蓄にも相槌を打てるほどの知識レベルとなった今、自分の立ち位置に疑問を持つことも少なくなった。
しかし暇だ。
監視役と言われればなんだか物々しいが、実際見物客が展示物に触れたり壊したりなんてことは稀である。
少なくとも、ツンがこの美術館に勤め始めてから今に至るまでは一度もない。
それどころか、今ツンが監視すべきフロアには、見物客は一人もいない。
169
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:23:29 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ「………」
この狭い行動範囲内の、すべての展示物が見渡せる場所でただ座り込むのも飽きたので、ツンは歩き回りながら展示物に近づいた。
さながら一見物客である。
ξ゚⊿゚)ξ「………」
近代美術。
壁画からキャンバスに変わり、文学や神話などの縛りから解放され、モチーフが自由化された時代の作品。
個人的には耳慣れた、やれルネサンスやマニエリスム、ロココなど有名な単語で引き付けた題材を提案するよりも、ビザンティンやロマネスクといった、王や神などの宗教権力者へ捧げられた美術の方が勉強する上では深みがある気がするが
実はこんな掘り出し物ありました!と言わんばかりにあまり日の目を見なかった作品にスポットを当てる。
この提案の仕方は、実は結構気に入っていた。
.
170
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:24:30 ID:tbLElUNM0
もともと日本においては、西洋の近代美術に触れること自体マイナーなはずなのだ。
単語単語に聞き覚えがあっても、ほとんどの人は中学校の授業で習うレベルか、それ以下でしか認識してない。
ポピュラーな作品なら、わざわざ美術館で目にする必要もないくらいそこらに溢れてしまってるので
少しくらい派生した方が、高を括った見物客をいい意味で裏切ることになるだろう。
しかし、さすがにこんな平日の昼間じゃ見物客はいない。
171
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:26:18 ID:tbLElUNM0
高校生の頃通った美術館だって、長期の休みシーズンでもない限りはほとんど人はおらず、だからこそ気に入ったというのも理由の一つだった。
単にその地元の美術館が地味だったせいだと思ってたが、そうでなくてもこの人出のなさだ。
きょうび現代人とは衣食住のみを生活の基盤として重んじるあまり、プラスアルファで心を豊かにするツールにはあまり興味がないらしい。
基盤の衣食住さえも、安く済むに超したことはないと、驚くほど見境ない人だって多々いる。
それが賢明で強かさで、大人になったらそれが当たり前だというのなら
高校生の頃、ただ興味があるからという理由だけで気が済むまで突き詰めたいと志したことが、本当に淡く儚い希望だったんだと思う。
172
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:28:31 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ=3フゥ…
そういえば、昨日見た夢も、なかなかきつかった。
苦痛というほどでもないが、何故か体の疲れが抜けきれず目覚めが良くないことがよくある。
夢の中で好き放題動き回り誰かと会話するのに、そんなにも体力を使ったのだろうか。
これは二度三度のレベルじゃないなとツンは薄々思っていた。
( ^ω^)「……お?」
音もなかったその空間で発せられた一言に、ツンは振り向いた。
173
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:30:28 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ「……あら?」
どこかで見たことのある顔だった。
よもやこんなところで知った顔に遭遇するとは。…と、お互いが思ったかもしれない。
( ^ω^)「こんにちはですおツンさん、覚えてますかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「内藤くん、だっけ?」
( ^ω^)「おっおっ。光栄ですお」
この特徴的な語尾と柔和な笑顔。
少々ふっくらした体格も、優しそうな雰囲気を醸し出すのに一役買ってるのかもしれない。
あの時はイライラしててにこりともしなかったが、実際何かと気を遣ってくれてる彼自体に悪い印象はなかった。
174
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:32:02 ID:tbLElUNM0
( ^ω^)「みんなからはブーンと呼ばれてますお」
と、律儀にも改めて差し出した名刺には、なんだか洒落てそうなダイニングバーの名前とシェフ、いわゆる料理長という偉そうな肩書きが記されていた。
ξ゚⊿゚)ξ「…なんで?」
『内藤ホライゾン』と書かれた名刺のどこを見ても、ブーンのブの字も見つけられなかったツンは、軽く目を細めた。
( ^ω^)「うーん…なんか、昔からのあだ名ですお」
よく聞かれるのだろう、由来のはっきりしないその質問になんとなしに答えながら、目線は絵画に向いている。
175
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:33:37 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ「絵、好きなの?」
料理人というあまり関係のなさそうな仕事と、美術館。
ツンの中では線にならない点と点ばかりが散りばめられている。
( ^ω^)「こう見えても、絵描くのは好きなんですお」
こう言っちゃ失礼だが、なんだか意外だ。
まぁ絵かきなんて見ただけで見抜ける趣味ではないのだが。
176
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:36:21 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、もしかして美大出身とか?」
( ^ω^)「いえ、もちろん興味はあったんですけど…生業とするならやっぱり料理かなって。たまに時間ができた時に見たり描いたりする程度ですお」
ツンとは違い、二つの道を天秤にかけた上で美術関係とは違う道に進みながら、今でもこうして趣味として手元に置き続けてる。
なるほど愚直そうに見えて、案外器用な生き方かもしれない。
一見要領良さそうで、全てか無かでしか欲しいものを選べないツンとは、まるで真逆だ。
177
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:37:41 ID:tbLElUNM0
( ^ω^)「………」
ブーンは一つの絵画に見入っている。
ジョン・コンスタブルというイギリスの風景画家の代表作だ。
ξ゚⊿゚)ξ「……知ってる?その人」
( ^ω^)「お…初めて見ましたお」
ξ゚⊿゚)ξ「…風景画は日本人には受けがいいんだけどね」
( ^ω^)「お?」
.
178
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:39:18 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ「その頃のイギリスの画壇ではね、宗教画とか肖像画が主流で古典的であることを至上とする風潮だったから、風景画はあまり人気なかったの」
ξ゚⊿゚)ξ「今でこそモネやセザンヌなんかの印象派は有名だけど、当時もバルビゾン派といわれるターナーなんかが現れるまで、彼は日の目を見ることはなかったわ」
ξ゚⊿゚)ξ「それどころか、彼の作品の多くは、同業者から未完成品だと馬鹿にされて、当然爆発的に売れることもなかった」
( ^ω^)「お…こんなに綺麗なのに…」
ξ゚⊿゚)ξ「…そうね。あたしは好きなんだけど。特に…」
ツンは一つの絵画を目指して歩みを進めた。
.
179
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:40:51 ID:tbLElUNM0
ξ゚ー゚)ξ「これが、あたしのオススメ」
悪戯っぽいような、なんだか誇らしげのような。
ブーンが初めて見たツンの笑顔だった。
.
180
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:41:44 ID:tbLElUNM0
( ^ω^)「おー…夕日かお…」
『ハムステッド・ヒースの木立、日没』と書かれたそのタイトルを、ブーンは目で追う。
ξ゚⊿゚)ξ「ハムステッド・ヒース…ロンドンの北のほうなんだけど、病弱な奥さんを気遣ってそこに引っ越したんだって」
その空や風景を描いたのがこれ。とツンは微笑みながら絵画を見遣る。
181
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:43:05 ID:tbLElUNM0
ξ゚⊿゚)ξ「…あたしが彼を気に入ったのは、ただ絵が素晴らしいからってだけじゃなくて」
ξ゚⊿゚)ξ「流行に媚びることなく、売れなくても誰も見向きもしなくても、ただ描きたいものだけを頑なに描き続けた姿勢が好きなんだ」
( ^ω^)「なるほどおー…確かに、今の芸術家さんたちにも共感できる部分が多そうだお」
ξ゚⊿゚)ξ「…まぁ、後にフランスのドラクロワにも衝撃を与えたって言われてるし、なんだかんだ言ってバルビゾンの先駆者は彼だと思ってる人もいるだろうから、全くの孤高とも言えないと思うけどね」
仕事半分でガイドしてるつもりだったツンは、だんだんそこに本音が混じり合ってきたことに気づき、急に気恥ずかしくなって巻き上げるように締めた。
182
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:44:38 ID:tbLElUNM0
( ^ω^)「…それにしてもツンさん詳しいお。ツンさんこそ美術関係の学校でも通ったのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「これも一応仕事ですから」
『へ?』とキョトンとするブーンに、首から下げた社員証を見せる。
( ^ω^)「…仕事中にしては、緩みすぎだおw」
先ほどブーンが近づいた時、声でもしなければ気づきもしなかった緩さ加減をやんわりと指摘した。
ξ゚⊿゚)ξ「いーの!こうしてちゃんと仕事したんだし、知識レベルも問題ないでしょ?」
きっと、彼女なりにいろいろ勉強した賜物だったのだろう。
その涙ぐましさと誇らしさが見て取れる。
183
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:46:04 ID:tbLElUNM0
( ^ω^)「お。いろいろありがとうだお。勉強になったお」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあお礼と言っちゃあなんだけど…」
( ^ω^)「ちょw普通それ僕がその気になったら言うことwww」
ツンはまた悪戯っぽい笑顔で先ほど貰った名刺をヒラヒラさせた。
.
184
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:47:37 ID:tbLElUNM0
ξ*゚ー゚)ξ「今度食べに行くから。ブーンのオススメお願いね」
(* ^ω^)「おっおっ。合点承知だ
( ゚∀゚)「………」
その二人を見つめる姿があることに気づきもしないほど、普段あまり愛想のないはずのツンは夢中で話に花を咲かせていた。
185
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 13:51:03 ID:tbLElUNM0
あかんさげるの忘れてた…
11話おわりです。
お気づきかもしれませんが、最後のブーンの台詞『お!』がどっか行きました。なぜだ。
186
:
名も無きAAのようです
:2013/08/16(金) 17:02:03 ID:54Y4jdIk0
最後のブーンのセリフがなぜかスネークで再生されてわろた
乙
187
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/16(金) 18:20:04 ID:tbLElUNM0
スネークわろたwww
終わりが見えてきました。
第12話明日投下します。
188
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 14:51:05 ID:.uv9GCZI0
今度こそこっそり12話
189
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 14:54:30 ID:.uv9GCZI0
◆第12話◆
XX24年 S月
次の日はお互い仕事が休みだったので、仕事終わりは久しぶりに外で食事したいとジョルジュに提案された。
ツンは一瞬ブーンの店を思い出したが、なんとなく避けて黙ってジョルジュについていった。
食事も一段落して、たわいもない話を酒の肴にする。
なんてことない、いつも通りの光景だ。
何度もボツくらったラフがやっと仕上がった、今度の企画はどのイラストレーターさんだ、など
ツンとは違って、過程を経て結果に繋がる仕事は、常に何かしらの刺激がありそうだ。
190
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 14:55:58 ID:.uv9GCZI0
かくいうツンも昔は、広告関係の職務に携わっていた。
その時ジョルジュと一緒に仕事をして、ぶつかり合いながら絆を深めたのだが
その仕事に必要とされるスキルに、ツンは秀でてなかった。
そのくせ言いたいことはすぐ口に出す性格も災いして、これ以上彼女をこの部所で使うことが負担になってしまったのだ。
本人は至極真面目だったし、失敗したと気づけば反省も学習もしてたのだが
早い話、的を得てなかった。
.
191
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 14:58:42 ID:.uv9GCZI0
ただでさえ流行ってもいない美術館だ。
企画や宣伝に殊更力を入れなきゃいけない時に、イレギュラーを残して話をややこしくするぐらいだったらと、足切りの第一候補は明白だった。
それでも、興味を持って真面目に取り組んでる勤務態度は買われて館内のスタッフとして残るに留まったのは唯一の救いである。
できることなら、そのままなんとなくジョルジュと疎遠にでもなってればまだ割り切れたのかもしれないが、ツンが館内スタッフに回された時は既に二人は付き合い始めてた頃だったので
一番やりたかった仕事の、その現場に立つ人間のリアルな話を延々聞かされなきゃいけないのは、しんどくないと言えば嘘になる。
それでジョルジュへの気持ちが変わるわけでは、少なくとも今のところないのだから何も言わないが。
192
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:00:01 ID:.uv9GCZI0
かといって、ツンの方は取り立てて話したいほどのことはない。
落ち込むほどうまくいかないことも滅多になければ、達成感を得られるほどのことも、あまりない。
来る日も来る日も同じ平穏な空間を眺めてるだけ。
もちろんそれらに関心はあるが、あえて話題にするほどのことでもない。
こと前述通りの性格のツンのこと、言いたければとっくに言ってるのだ。
そんなわけで、最近は専ら聞き役に回るのだった。
.
193
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:01:47 ID:.uv9GCZI0
( ゚∀゚)「…ツン、なんか考え事でもしてる?」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」
確かにしてたかもしれない。
でも、ジョルジュの話を聞いてないつもりでもなかった。
( ゚∀゚)「なんか上の空っぽいけど。疲れてるだけか?」
ξ゚⊿゚)ξ「…まぁ、週の終わりだしね」
.
194
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:03:21 ID:.uv9GCZI0
仕事に加えて最近たまに見る夢のせいか、疲れてるのは事実だが、ふて腐れたように『ふぅん』と軽く相槌を打つその態度は、本当にツンの疲れに気づいて気遣っているのだろうか?
それすら疑わしく見えるほど、今日のジョルジュは不穏で棘のある雰囲気を隠し切れずにいた。
( ゚∀゚)「…そういえばこの間さ、知り合いでも来てたの?」
ξ゚⊿゚)ξ「……あぁ」
ブーンのことか。とツンはすぐに思い出した。
.
195
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:05:50 ID:.uv9GCZI0
ξ゚⊿゚)ξ「キュートの友達でね、昔ハインとかその子の友達とか集まって飲み会したことがあって」
( ゚∀゚)「…ふん、べつにそこまで聞いてないけど」
実は昔というほど昔でもなくむしろつい最近の話なのだが、なんとなくそれを悟られたくない心理が先に働いて、聞かれてもいないことを勝手に喋ったのが逆にジョルジュの機嫌を損ねたようだ。
ξ゚⊿゚)ξ「何それ。っていうか見てたなら言ってくれればよかったのに」
思わず口を尖らせてしまうが、これ以上ジョルジュの機嫌を損ねないように、多少神経使ったつもりだった。
.
196
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:07:26 ID:.uv9GCZI0
( ゚∀゚)「なんか…邪魔しちゃ悪いと思ってさ」
その一言で、ツンは気づいた。
同時に、物凄く腹が立った。
ジョルジュはおそらく、そのこと自体が面白くないのだ。
.
197
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:09:47 ID:.uv9GCZI0
それだけでなく、ジョルジュからしてみれば何の気無しにツンの口から『この間知り合いが来てバッタリ遭遇しちゃったんだ』なんて話があえて出て来なかったのも、何故だかわからなかった。
しかもその現場にいたジョルジュが見たツンの笑顔。
確かに二人きりの時でも仕事の話ばかりだし、それさえも最近は職務が違うから噛み合わないことも多少はある。
前みたいに、喧嘩するほど会話がなくなってきてたことは薄々気にしてはいた。
あまつさえ相変わらず色気もない。
だけど、飾り気のないのがツンで
ものぐさでちょっとズボラなくらいが、自分が愛したツンだと思ってた。
だから
.
198
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:11:30 ID:.uv9GCZI0
ξ*゚ー゚)ξ
(* ^ω^)
そんな彼女に、あんな笑顔を向けてもらったのは、いつのことだっただろうか。
それがきっかけで、名も知らぬあの男より、自分は格下なのではないかとジョルジュは疑い始めていた。
もちろん、そこまではツンも気づくことはない。
.
199
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:13:31 ID:.uv9GCZI0
ξ゚⊿゚)ξ「…あっきれた。気になるなら最初に聞けばいいじゃない。それとも何?男と会話したら逐一報告しなきゃいけないわけ?」
なまじ弁が立つので心刔られるが、確かにツンの主張は正論だ。
何も悪いことなど、してないのだ。
( ゚∀゚)「いや、そうじゃねぇけど…」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあどうしろって言うの?」
そう言われてしまうと、勝手に嫉妬した自分の暴走だったと、気づかざるを得ない。
少し考えた素振りを見せた後、ジョルジュは観念した。
200
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:18:58 ID:.uv9GCZI0
( ゚∀゚)「…悪かったよ。勝手に嫉妬して、ちょっとピリピリしちまった」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
しばらく睨むように見つめてたが、気が済むと手元のロックグラスに残ってたラフロイグをくいっと飲み干した。
ξ゚⊿゚)ξ「あー久々に腹立った。でもわかってくれたならよし」
( ゚∀゚)(久々…)
すっきりしたような表情のツンが発する一言にまた引っ掛かるものを感じたが、今度は努めて顔に出さないように意識した。
201
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:21:17 ID:.uv9GCZI0
蝉の声。
墓石。
供えられた花や酒。
まただ…
今度はいつなのだろう?
そう思って、霞む視界をなんとか凝らそうとする。
.
202
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:23:27 ID:.uv9GCZI0
………あれ?
それ以外のものが、何も見えない。
それどころか、蝉の声は聞こえるが陽射しや暑さも何も感じない。
最近たまに見る夢に倣うなら、ツンがそうしたければ目の前にある風景を360度見渡すことなどたやすいはずだが、今日はそれができない。
いわゆる『普通の夢』だ。
こういう夢も、たまには見る。
しかし。
.
203
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:24:35 ID:.uv9GCZI0
ξ⊿)ξ『―――ザザッザザザッ―――――ザザザッ』
自分の声なのだろうが、音声が全く聞こえずたまに雑音まで入る。
もちろんそれを自分の意志で発してるわけではなく、夢に現れた自分が勝手に喋ってるのをただ見せられてる。
本来ならそれが、普通の夢しかる夢のあるべき姿のはずなのだが…
何故かこの世界でも、あの不思議な夢で見た記憶を踏襲してる気がする。
.
204
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:27:00 ID:.uv9GCZI0
( )『―――!?』
自分以外の人物が現れた。
声も聞こえないし、顔もよく見えない。
ξ⊿)ξ『―――ザザッ――――?』
( )『ザザッ――なんで――――に――ザザザッ―――!?』
なんだか緊迫した雰囲気だけは伝わる。
でも、それを何故か
.
205
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:28:22 ID:.uv9GCZI0
ξ⊿)ξ『―――!!――ザザッ―――ザザッ――――!!』
見たくない、見ちゃいけないと、誰かが強く拒絶してるようだった。
206
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 15:30:09 ID:.uv9GCZI0
( )『だって―――すザザザッザザザザザザッッ――!!!』
.
207
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 16:04:40 ID:uyLnk5Ys0
「ツン?ツン、大丈夫か?」
ぼんやりと目を開けると、心配そうに覗き込むジョルジュがいた。
.
208
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 16:06:23 ID:uyLnk5Ys0
先ほど食事しながら少々諍いがあり、許し合って終わったはずだがなんだか気まずい雰囲気が払拭できず、ツンはベッドで、ジョルジュはその下の床で眠りについたままだった。
(; ゚∀゚)「うなされてたけど大丈夫かよ?体調でも悪いのか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……大丈夫。ありがとう」
なんとか呼吸を落ち着かせながら、ジョルジュから受け取った水を煽った。
209
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 16:07:25 ID:uyLnk5Ys0
不思議な夢に体力奪われることはままあったが、こうしてうなされたのは初めてだ。
何が原因で何が起きたかはわからないが、今は何も考えたくなかった。
( ゚∀゚)「……そっち行っても、いいか?」
ξ゚⊿゚)ξ「……うん」
とりあえず、何も考えずに安心できる人の傍で眠ろうと思った。
もう、見たくない夢を見なくて済むように。
210
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 16:09:44 ID:uyLnk5Ys0
おわりです。
211
:
名も無きAAのようです
:2013/08/17(土) 18:04:42 ID:5MKaBJV.O
一発目のレスからこっそりじゃないじゃないかよ、まあ乙
212
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:29:42 ID:iCS14UEM0
すまんまたやった…
無遠慮に13話
213
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:31:51 ID:iCS14UEM0
◆第13話◆
XXXX年 P月
ミ"ーーーーンミンミンミンミ"ーーーー!!!!
( )「………」
蝉の声が煩い。
( )「………」
陽射しも強い。
薄着とはいえ、今度こそ暑い。
.
214
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:33:49 ID:iCS14UEM0
( )「………」
( )「……どうして…」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
その絞り出すような声を、ツンは確かに聞いた。
.
215
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:35:03 ID:iCS14UEM0
ξ゚⊿゚)ξ「それはこっちのセリフなんだけど」
( )「………」
ξ゚⊿゚)ξ「…どうしてなの…?」
.
216
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:36:14 ID:iCS14UEM0
ξ゚⊿゚)ξ「どうして、あなたとこんなところで会うのかしら」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン」
( ^ω^)「………」
.
217
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:37:58 ID:iCS14UEM0
まるで人の陰気を浄化してしまいそうな、穏やかで柔和なその顔つきは、間違いなくブーンだった。
でも改めてちゃんと見えたその顔は、なんだか逞しくなったようだ。
ツンが知ってるあの広い肩幅はそのままに、ふっくらしてた体つきもやや絞まっている。
それでいてなんだか元気はなく、どこか神妙な面持ちなのは、この茹だるような暑さのせいだけではないだろう。
.
218
:
名も無きAAのようです
:2013/08/17(土) 18:38:43 ID:s4ZwokiY0
これはアカンやつや……支援
219
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:39:43 ID:iCS14UEM0
( ^ω^)「……ツン」
( ^ω^)「出会った頃のままだお」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
ξ゚⊿゚)ξ「…今は、いつなの?」
( ^ω^)「…僕らが初めて出会った頃から、ちょうど10年経ったお」
それゆえの貫禄か。とツンは密かに納得した。
.
220
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:41:16 ID:iCS14UEM0
ξ゚⊿゚)ξ「…あんまり驚かないんだね」
この不思議な夢の世界において、自分自身以外の人物に出会ったのは初めてだった。
今度こそ、自分の存在を説明する必要がありそうだが、他人ともなると納得してもらえる説明ができる自信がない。
しかし、今目の前にいるブーンは、まるで動揺した素振りを見せない。
221
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:43:02 ID:iCS14UEM0
( ^ω^)「君はツンだお」
( ^ω^)「それだけは確かだって、わかるからいいお」
( ^ω^)「それに…」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「初めてのことでもないお」
.
222
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:44:40 ID:iCS14UEM0
ツンは静かに目を閉じた。
ツンに心当たりがあるとしたら、いつか見た、嫌な印象の夢。
うなされたことしか覚えてないが、見ないように、触れないように必死で逃げてた気がする。
( ^ω^)「…覚えてないかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「…あんまり…何も見えなかったし、ほとんど何も聞こえなかったから……でも」
ξ゚⊿゚)ξ「とてつもなく嫌な印象だった」
静かに、でもはっきりとツンは言った。
223
:
◆7mt.DZ.sYo
:2013/08/17(土) 18:47:11 ID:iCS14UEM0
ξ゚⊿゚)ξ「その時いたのも、ブーンだったの?」
( ^ω^)「……うん」
ξ゚⊿゚)ξ「……見当がつかないなぁ」
ツンは痺れを切らしたように言った。
ξ゚⊿゚)ξ「確かに、あの夢は見聞きすることを拒んでるみたいだった。それもたぶん、あたしの意識の中で」
ξ゚⊿゚)ξ「でもこうして、今度ははっきりと見せようとする」
ξ゚⊿゚)ξ「未来に来たのなんか初めてだから、どうしたらいいかわかんないんだけど…早速いろいろ気になることはあるわ」
( ^ω^)「………」
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