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(,,゚Д゚)HERObotsのようです
82
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:05:13 ID:z3O1mmhw0
ギコは言っていた。犯人は極力手を出さず、ハインを殺すつもりだと。
だとすると、直接手はかけないにせよ、どこか近くで見ているはずだ。
ハインを確実に仕留めるチャンスを狙う為に――
ミ;・∀・彡「とすると……奴が狙うとするなら……」
数々のビルを飛び超え、ひとつのビルの屋上に、到達する。
ミ・∀・;三;・∀・彡「爆弾ぽいもの、爆弾ぽいもの……」
ミ ・∀・彡!
辺りを見回していると、遂にそれらしいものを見つけた。
給水塔に取りつけてある。
ミ ・∀・彡「あった!これを回収すれば…」
モラランダーは爆弾へと駆け寄ろうとする。
しかしそこに、影が割って入った。
( ゚ -゚)「……なぜここが分かった?」
先程の青年だ。ポーカーフェイスだが、多少は驚きを隠しきれないようである。
83
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:06:02 ID:z3O1mmhw0
ミ;・∀・彡「(さっきの奴!)…簡単な話さ。爆弾でハインを確実に始末するなら、このビルを爆破するのがベストだからだ」
モラランダーがそのビルを選んだ理由。
今彼等がいるビルは、ハインがいつも通る通学路だ。
加えて、道は広いとはいえず、逃げ道は少ない。生き埋めにするならもってこいだ。
( ゚ -゚)「そうか……ただの熱血馬鹿だと思ったが、どうやら違うらしい」
青年は鎌を構え、モラランダーと対峙する。
( ゚ -゚)「やはりお前も、今ここで殺しておくべきか」
ミ ・∀・彡「やってみなよ、こちとら殺しても死なない正義の使者だぜ?」
( ゚ -゚)「ほざけ」
先に動いたのは青年だ。急接近し、鎌を振るう。
ミ ・∀・彡(早いっ!だが――僕よりは遅い!)
同時にモラランダーも駆け出す。
青年が鎌を振るった瞬間を狙い、更に加速してスライディング。
(;゚ -゚)「くそっ!」
モラランダーは刃部分から逃れ、青年に急接近。
鎌はリーチが長い分、懐に入られてはその力を発揮できない。
84
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:06:50 ID:z3O1mmhw0
ミ ・∀・彡「シッ!!」
(;゚ -゚)「くっ!」
モラランダーが拳で突く。
青年はやむなく鎌を手放し、素手で防御に出る。
(; - )「あがっ…!」
だが、受け切るには重すぎるパンチだったようだ。
青年は吹き飛び、コンクリートの床を転がる。
ミ ・∀・彡(しめた!今だ!)
青年がノビている隙に、モラランダーは給水塔に跳び移った。
ガムテープで無造作に取りつけられた爆弾をべりっと剥がす。
ミ;・∀・彡「よしっこれで爆発はー…って後20秒!?うっそ!!」
彼の言うとおり、時限爆弾は爆発まであと20秒弱しかない。
あわあわと取り乱し、モラランダーは空を見上げた。
ミ;・∀・彡「どっせーーーーーーい!!!」
いちかばちか。その爆弾を、自身の腕力をもってして、遥か上空へ投げ飛ばした。
数瞬の沈黙のうち、爆発。NYの空を、爆風が広がっていく。
85
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:08:00 ID:z3O1mmhw0
ミ ×∀×彡「うおばっ!?」
モラランダーも例外なく、爆風で圧される。
何秒続いたろうか。熱と風が収まり、やがて静けさを取り戻した。
ミ;・∀・彡「間に合った…のか?」
(;゚ -゚)「このおっ…!」
青年はうずくまったまま、右腕を突きだした。
すると次の瞬間、右腕がレーザーガンとして展開し、モラランダーに照準を合わせる。
その銃先からは青い光の筋が飛び出した。
ミ;・∀・彡「うおわっ!!?」
モラランダーはかろうじて避け、青白い光は給水塔に当たった。
ボゴンっと音を立て、給水塔が破裂する。
大量の水が空へと噴射し、それはビルの屋上に、近くの通りに、刹那的な雨を降らせた。
(;゚ -゚)「お前さえ…お前さえいなきゃ……!」
ミ;・∀・彡「あーもーっ、子供がそんな玩具で遊ぶな!」
両腕からワイヤーを噴出させ、青年の腕に絡める。
そのまま腕をねじり、自らのこめかみに当てるように固定した。
86
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:08:50 ID:z3O1mmhw0
(#;゚ -゚)「糞おおおっ…!」
青年はもがく。だが、強力なワイヤーが千切れる様子はない。
モラランダーはワイヤーで力比べしながら、青年に問うた。
ミ ・∀・彡「さ、説明してもらうぞ。何でハインを狙う?」
(#゚ -゚)「ふん!何もしらずに僕の邪魔をしたのか。未来を狂わせる片棒を担いだってのに、馬鹿な奴だ!」
青年は明らかに馬鹿にした様子で鼻を鳴らした。
その態度にモラランダーは引っ掛かりを覚える。
ミ ・∀・彡「どういう意味だ?」
(#゚ -゚)「そのままの意味さ。今この時点で、お前はこの国を滅ぼす反逆者を救ったんだよ…!」
大きな瞳を殺意で満たし、青年はモラランダーを睨みあげた。
青年の発言が支離滅裂で、彼には何を意味するのか分からなかった。
ミ;・∀・彡「待て!君が何を言ってるのかさっぱり分からない!国を滅ぼす反逆者だって!?」
(#゚ -゚)「そうさ。この年から10年後、この国は滅ぶ!一人の人間が起こしたクーデターによって……!」
青年の口から飛び出したのは、突飛もない話だ。
その口ぶりは、まるでその10年後の世界を見て来たかのような口調なのだから。
87
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:10:17 ID:z3O1mmhw0
モラランダーは次第に、腹を立て始めていた。
目の前の青年といい、あのギコといい、訳の分からないことばかり口走る。
自分が知らないところで、最愛の妹が命の危機に晒されて、こんな茶番に付き合わされている。
ミ#・Д・彡「いい加減にしろっ!そんな電波に付き合っているほど、僕は優しくないぞ!」
<<ズズゥウン!>>
直後、ビルが大きく揺れた。
モラランダーは体勢を崩し、這い蹲る。
ミ;・Д・彡「なにいっ……!爆発!?」
煙の上がっている方向を見ると、凄惨たる光景が広がっていた。
公園のすぐ横にあった、あのビルが半分が燃え、崩れている。
アスファルトの道路が吹き飛び、瓦礫があちらこちらに積もっている。
ミ;・Д・彡「何故だ!爆弾は確かに取り除いて…!」
( ゚ -゚)「フン。誰がいつ、爆弾はひとつだと言った?」
ワイヤーの拘束から逃れ、青年は小馬鹿にしたように吐き捨てる。
モラランダーはその場にへたりこんだ。その表情から、絶望が読み取れる。
ミ; Д 彡「嘘だ…あっちの方向には…ハインが…!」
.
88
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:11:06 ID:z3O1mmhw0
爆破された付近は、ビルのほかにも住宅街があった。
あの爆発具合だと、民家も巻き込まれたに違いなかった。
( ゚ -゚)「作戦成功。これより帰投する」
怒りで、モラランダーの体が震える。
それを尻目に、涼しい声で、そしらぬ顔をする犯人に、ついに彼の堪忍袋の緒が切れた。
ミ#・Д・彡「貴様ァアーーーーーー!!」
モラランダーは怒りに任せ、がむしゃらに拳を振るう。
( ゚ -゚)「これで世界は救われた……またな、『ヒーロー気取り』」
しかしその拳が、ビルを飛び降りた青年に届くことは、なかった。
後に残ったのは、人々のざわめきと、レスキュー隊と消防車のサイレンのみ。
ミ#・Д・彡「…………」
ミ#・皿・彡「糞ッ!!」
行き場のない怒りを、給水塔の残骸にぶつける。
何もできなかった。ハインを守るはずだったのに、これでは――
89
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:11:52 ID:z3O1mmhw0
ミ Д 彡「…………」
ミ Д 彡「…………?」
ミ Д 彡「……行かなきゃ。ハインが、待ってる」
それは、直感に近いものだった。
虫の知らせ、第六感、本能――どう呼ぶにせよ、彼の中で声がした。
「ハインはまだ、生きている」と。
ミ;・Д・彡「行かなきゃ……助けなきゃ!」
いてもたっても居られなかった。
ワイヤーを噴出し、モラランダーは一目散に、爆破場所まで跳んで行った。
――同時刻、爆破場所のビル周辺は大騒動となっていた。
ライブのヘリも出動し、その様子を生中継で放映している。
ミセ;゚д゚)リ『ごらんになれますでしょうか!とても人のなせる業とは思えません!』
(゚、゚;トソン『謎のビル爆発により、まだ大勢の人が瓦礫の下敷きとなっております。レスキュー隊も対応に追われているようです』
90
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:13:05 ID:z3O1mmhw0
現場では人命救助ロボットの要請に手間取っている様子だ。
何せ突然の爆発だったため、別の市で未だに救助活動を行っているロボット達を呼べないのだ。
ミ;・∀・彡(糞ッ!思ったより被害が大きい…!)
「ツンさん、無茶です!やめてください!」
ミ;・∀・彡「!」
聞き覚えのある名前がし、そちらに視線を向ける。
ξ#゚⊿゚)ξ「なによ、この惨事を黙って見てろっていうわけ!?」
「だからって、今の僕らじゃなにも出来ません!押さえて、押さえて!」
確か、先日の銀行強盗を追っていた婦警だ。
昨日より血相を変えて、瓦礫の山に突貫せん勢いである。
ξ#゚⊿゚)ξ「離してよッ!あそこにブーンが!ブーンがまだいるのよ!」
ξ#゚⊿゚)ξ「あの馬鹿が!瓦礫に巻き込まれそうになった私をぶん投げて!ひとりであそこに埋まってるの!」
ξ#゚⊿゚)ξ「許せないわ!レディーをあんな粗野に扱って、ただじゃおかないわよ!ヒーローになったつもり!?」
ξ#;⊿;)ξ「絶対に掘りだして!一発殴ってやるわよ!死んだらそれこそタダじゃおかないわよおお!」
91
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:14:34 ID:z3O1mmhw0
威勢良く言葉を吐き出しながらも、その両目からはボロボロと涙が零れ落ちる。
モラランダーは唇をかみしめた。
彼女の気持ちが、痛いほどに分かるから。
この瓦礫の山に、もしハインがいるとしたら……!
ミ;・―・彡(いや、居る。そして……生きてる!この瓦礫のどこかに、彼女がいる!)
モラランダーは駆け出した。
ツンが今にも突撃せんとする、ひとつの瓦礫の山へと。
ξ;⊿;)ξ「! モラランダー!?今更何しにきたのよ、役立たず!」
ミ;・Д・彡「ちょっと黙っててくれ!」
モラランダーは一番大きな瓦礫を、両手でしっかり掴んだ。
ツンが目を腫らして見守る中、モラランダーは瓦礫を、力任せに持ち上げる!
ミ;>Д<彡「う……おおおおおおお!!」
(; ω )「う…ううう……」
バッコンと、蓋のように横たわっていた瓦礫が崩れる。
果たしてそこに、傷だらけのブーンはいた。
ツンは同僚の手を振りほどき、駆け出していく。
92
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:15:32 ID:z3O1mmhw0
ξ#;⊿;)ξ「ブーン!ブーン、しっかりしなさいこのファッティフール!」
(; ω )「ファ、……ファッティは聞き捨てならないお、ツン…」
どうやら怪我はしているものの、命に別条はないようだ。
この瓦礫で下敷きになったのはブーンだけだったようで、彼はすぐさま救急車に担ぎ込まれた。
ミ;・へ・彡「よし…!この調子で、瓦礫を掘り当てて行けば、ハインが…!」
だが、先程のモラランダーを見て駆けつける群衆がいた。
皆誰もが、目に涙をためている。
「お願いだモラランダー、あの瓦礫をどけてくれ!」
「うちの人も下敷きになって…お願い助けて、モラランダー!」
ミ;・Д・彡「待って、ちょっと…押さないで!ちゃんと皆助けますから!落ち着いて下さい!」
* * * * * * * * * * *
まただ。また、この夢だ。
赤い光の筋が幾つも、夜空を駆けていく。
光が落ちて行く先には、闇に包まれた廃墟しかない。
93
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:17:27 ID:z3O1mmhw0
「…私も空を飛びてえな」
「飛べるさ。今からプロフェッサーに頼めば、飛行ユニットの1つくらい…」
「そうじゃなくて!」
これは、誰の夢だろう。
確かに自分の夢のはずなのに、視線はもっと高くて、声も体も大人びている。
後ろから誰かが抱きしめて、その温もりを確かに感じていた。
「ほら、あるだろ?何も感じずに、ただ空を飛んでいたいって気持ちが」
「……さあ。俺には分からない」
「もう、本当にロマンがねーなあ」
視点がぐっと下がった。
自分は空間の隅にいて、一組の男女の背中を見つめている。
「……明日がくるのが怖いんだ。この夜が終われば、私は敵地に行って、敵を沢山殺す」
「それがたまらなく、怖い。私が私じゃなくなるみたいで……もしかして、明日の終わりも見る事ができないんじゃないかって…」
女は…自分は怯えている。顔を手で覆い、震えている。
そうだ、この自分は戦火に飛び込む。炎と荒れ地だけの地獄へ、自ら足を突っ込んでいくのだ。
94
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:18:43 ID:z3O1mmhw0
「……顔をあげてくれ」
男が女の顎をつい、とあげた。
不器用な指のしぐさで、頬を撫でた。
「大丈夫。お前には意思がある。変わろうと思う心がある。その心がある限り…お前は前へ進めるよ」
「……ッ」
女は男の胸へ顔を埋めた。
小さな嗚咽をいくつか漏らし、再び視線を合わせる。
「一緒に変えよう。二人で、未来を」
「……うん。ずっと一緒にいよう。これまでも、これから先も」
その時、夜空にキラリと何かが流れた。
黒い空を、幾つもの青い光が輝かせる。
「あ……流れ星…………」
「願おう、俺達の未来を。沢山の星に、想いを託そう」
「…お前、いつからそんなロマンチストになったんだ?」
「さあな…………」
95
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:21:03 ID:z3O1mmhw0
从; ∀从
(,, Д )「ずっと愛してる、ハインリッヒ」
从;-∀从
从ハ ー )ハ「……オレもだよ。ギコ」
从;"∀从
全身が重い。
四方からアメフト選手に押し潰れされるより重いに違いない。
呼吸できるのが、不思議なくらいだ。
从;"∀从「モラ、ランダー……ドクオ…さ…アニキ……」
思いつく限りの名前を呼ぶ。思考なんてものはない。
意識は朦朧とし、動かない体に鞭打つだけで精一杯だ。
从;"∀从「ギ…………コ…………?」
意識が途切れそうになる中、ハインは無意識にそう呟いた。
知らない人間の名前のはずなのに、言葉にするだけで、不思議なほど安心できた。
96
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:22:13 ID:z3O1mmhw0
从;"∀从(何が…そうだ、いきなり、ビルが爆発して……オレは……)
まだ思考がまとまらない。右手を辛うじて動かし、何かに当たった。
人の腕だ。掌を地面につけて、垂直に立っている。
左肘も、人の腕に当たった。やはり同じように垂直に立っている。
从;"∀从(まるで、腕立て伏せの体勢…)
从;゚д从「ッ!」
首を少しだけ捻じって、ハインは驚いた。
完全な暗闇の中、瓦礫の隙間をぬって僅かに差し込む光が、それを照らした。
(,,メ Д )「ぐ……うううっ…………!」
男だ。
モラランダーの相棒と名乗ったあの男が、四つん這いで己を庇っている。
その背中に何トンもあるだろう瓦礫を背負い、ハインを圧死から守っている。
从;゚д从「おっ、オジサン……!」
(,,メ Д )「すまない……お前を庇うだけで精いっぱいで……!」
97
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:23:03 ID:z3O1mmhw0
体を支える両腕は、今にも折れそうなほどミシミシと音を立てている。
ハインの頬に、何かが零れ落ちた。ぬめりとして、血によく似た感触だった。
从;゚д从「オジサン、大丈夫かっ!?」
すぐさまハインは腕から抜け出し、瓦礫を支えようとした。
だが行動範囲がせまい上、両足が挟まれて、両腕を突きだすくらいしかできない。
从;>皿从「んうううううー!ぬううううう!!」
(,,メ Д )「もういい、やめろ。無駄な体力を消費するな!」
从;>皿从「い、や、だぁああ〜〜〜〜っ!」
小娘ひとりが足掻いたところで、この状況は変わらないだろう。
それでもハインは、目の前の男を救うために、何か行動を起こしたかった。
从;゚д从「…だめだ!びくともしない!」
(,,メ Д )「…おそらくッ……瓦礫が何重も積み重なってる…そりゃ、重いだろうよ……」
从;゚∀从「なおさら早くどかさないと!オジサンが潰れちゃう!」
(,,メ Д )「俺は、いいっ!これくらいの窮地、慣れている!」
98
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:25:07 ID:z3O1mmhw0
(,,メ Д )「う、ぐ、ぐ、うう、うおおおおお」
男は苦しげに声を張り上げる。
ようやくハインは、男が徐々に瓦礫を持ち上げつつあることに気づいた。
从;゚д从「オジサン……どうしてオレを助けようとするの?知らない人なのに……」
(,,メ Д )「……守るからだ」
更に、瓦礫が持ちあがる。
瓦礫がずれた個所から、光がどんどん入り込みつつある。
从;゚д从「守る?」
(,,メ Д )「そう、だ。お前を守るため、だからだ」
男はもう四つん這いではなかった。片膝をついて、瓦礫を背負っている。
(,,メ Д )「何度でも、何度でも、お前と共に生きる為に、繰り返してきた。それが俺の、生きる意味だから」
从;゚д从「…………?」
(,,メ Д )「お前を守りぬくために、俺はここまできて、今ここにいる」
(,,メ゚Д゚)「ハインリッヒ。世界中を敵に回す、ただ一人の、俺が愛する人よ」
.
99
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:26:26 ID:z3O1mmhw0
完全に瓦礫が持ちあがり、外の景色が顔を覗かせる。
同時に、瓦礫を外側から持ち上げるモラランダーの姿を見ることも適った。
(,,メ゚Д゚)「3つ数えて、一気に上げるぞ!」
ミ;・∀・彡「お、おう!1、2の……さん!」
完全に瓦礫を持ち上げ、レスキュー隊が中になだれ込む。
ハインらより更に下に埋まっている者が、次々運ばれていく。
(,,メ゚Д゚)「おい、生きてるか?」
(;×A×)キュー…
从;゚∀从「ドクオさん!」
ミ ・∀・彡「気絶しているだけさ。運よく瓦礫の浅いところに埋まってたんだ」
从; ∀从「う……」
ハインの体が傾いた。男が手を出すより早く、モラランダーがその体を支えた。
その眼差しが、まっすぐギコを射抜く。
ミ ・∀・彡「……ギコ。お前は、何者だ?どこから来た?何を、企んでいる?」
100
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:28:08 ID:z3O1mmhw0
今度は、ギコが口ごもる番だった。
モラランダーの腕の中で、静かに眠るハインを、優しげな目で見つめた。
(,,メ゚Д゚)「俺の名は、G-1K:0。正真正銘のロボットだ。……10年後の、未来から来た」
バッと襟をずらし、改めてその首筋を露わにする。
そこには確かに、G-1K:0と記載されていた。その隣には、10年後の2122の4桁の数字が刻まれている。
ミ;・∀・彡「…………未来、から」
(,,゚Д゚)「そうだ。未来から来る刺客達から、ハインを守る為に」
ミ;・∀・彡「は、ははは。ハインが、このどうしようもない悪戯っ子が、10年後に何をしようっていうんだ?」
サイレンや野次馬の声が、遥か遠くに聞こえる。
ギコはハインの額を撫で、静かな声で言った。
(,,゚Д゚)「……今より10年後、彼女はアメリカ中にクーデターを宣言する」
(,,゚Д゚)「そして、世界中に国際指名手配される、歴史上最大のテロリストとなる」
そして…と、ギコの指が真っ直ぐ、モラランダーを差した。
(,,゚Д゚)「最期は…………兄であるお前との一騎打ちで、命を落とす」
ミ;・∀・彡
ミ;-∀-彡「……オ―キ―ド―キ―、…………冗談きついぜ、全くよ……」
⇒To Be Continued...
101
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:29:46 ID:z3O1mmhw0
次回予告!
(-@∀@)ハロー!朝食のパンにはチョコレートを塗る派のモララー・J・スティールズだよ!
(-@∀@)いきなり現れて10年後からの来訪者だァ?まったく世の中はクレイジー&ストレンジで満ちてるぜ
(-@∀@)でもギコの言うことは次々的中、信じざるをえないな…信じていいのか、僕よ!?
(-@∀@)そして次々に襲い来る未来の脅威の前で、ギコは問う…それでも僕は、ハインを守る為に闘うか?と
(-@∀@)おいおい、いきなりクライマックスじゃないですかぁ?どうする、僕!選べるのか、僕!?
(-@∀@)次回、HERObotsのようですAct2:ReasonDetail(存在理由)!
( ・∀・)つ-@-@ それではみなさんご一緒に!
ミ ・∀・彡ノシ オ―キ―ド―キ―、ハローベイビー!
.
102
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:30:48 ID:z3O1mmhw0
おまけ
ミセ*゚ー゚)リミセリ&トソンの〜!何でも情報局ー!
(゚、゚トソン こちらのコーナーでは、作中では説明しきれなかった専門用語などの解説などをしていきたいと思います
ミセ;*゚ー゚)リねートソンちゃん、これ立派な電波ジャックだよね?局の皆に内緒でこんなことやっちゃっていいのかな〜?
(゚、゚トソン 構いませんよ、この特殊電波を受け取ってくださるのはごく一部の人だけですし
ミセ;*゚ー゚)リ???
(゚、゚トソン さ、早速解説に入りましょうか
【アメリカ合衆国】
ミセ*゚ー゚)リ USA!USA!我らが大国USA!
(゚、゚トソン ええ、元からあるアメリカの地理や名所をベースに、少々オリジナルが加えられているようです
(゚、゚トソン 100年前はたった50余州だったそうですが、現在は海を超えてジャパン州、ニューチャイナに10州ほど追加されたようです
(゚、゚トソン いわく、「未来だから何が起きても問題ない!」と……
ミセ*゚ー゚)リ いきなり一歩間違えたら夜道で刺されそうな発言だね…
103
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:31:43 ID:z3O1mmhw0
【リニア】
(゚、゚トソン ミセリ、100年前にタイヤのあるリニアが流行ったのはご存じですか?
ミセ*゚ー゚)リああ、あれはアレでクールよね!でも、タイヤのあるリニアって何か違和感バリバリー…
(゚、゚トソン リニアは≪自動車≫からタイヤを引っこ抜いたようなモデルですからね
(゚、゚トソン 自動運転機能付きですし、燃料も太陽光・電気・水のどれかですから。リニアの事故数も少ないですし
ミセ*゚ー゚)リ むしろガソリン?なんてどうやって燃料にしてたのかしら。科学ってふっしぎー
【ハインリッヒの重力シューズ】
ミセ*゚ー゚)リ あっこのシューズいいよね〜、ミセリも欲しい〜!
(゚、゚トソン 貴方ならすぐ怪我しそうですけどね…ドジって
ミセ*゚ぺ)リ ミセリ転んだりしないもん!こないだの3次元ペイントの取材では大ポカやらかしたけど…
(゚、゚トソン あれは痛ましい事件でした……なにせ七色でしたからね、ミセリの大事な…
ミセ;*゚д゚)リ わーわー!わーーー!
(゚、゚トソン …とまあ、こんな風に、2112年のアメリカでは、昔で言う「不思議道具」が当たり前のように存在しています
(゚、゚トソン 今後も色んな不思議道具が登場するようです。楽しみですね
104
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:32:43 ID:z3O1mmhw0
【飛行船】
ミセ*゚ー゚)リ 飛行船は、TVのない人達にとっての重要な情報源よ!
(゚、゚トソン 各局のスポンサー達が金を出して、あのように無償でニュースを流しています
(゚、゚トソン 無償とはいえど、不思議と儲かるみたいですね。広告代とかにもなりますし
ミセ*゚ー゚)リ それだけじゃなく、飛行船ニュースのニュースキャスターになることが今のティーンズの憧れなの!
ミセ*-ヮ-)リ ミセリも、あの場に立つまでどれだけ苦労したことか…
(゚、゚トソン 思いっきり醜態晒してましたけどね
【ASAP】
ミセ*゚ー゚)リ あさっぷ…ってどういう意味?
(゚、゚トソン いわゆる死語のネットスラングですね。この時代で使う人はほとんどいません
(゚、゚トソン As Soon As Possible(可能な限り早く)、ってことらしいです。Hurry!の方が分かりやすいでしょうけど
ミセ*゚ー゚)リ ふ〜ん、ミセリも今度から使ってみようかな
(゚、゚トソン 戦前のおじいちゃんおばあちゃん並みの扱いを受けますが、それでもよろしいのなら
ミセ;*゚ー゚)リ どんな迫害!?
105
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:33:39 ID:z3O1mmhw0
ミセ;*゚ー゚)リ ってあれ、もうこんな時間だ!急がないと局の皆が来ちゃう!
(゚、゚トソン そうですね、今日のあたりはここでお開きにしましょう
ミセ*゚ー゚)リ 最後にお知らせ!何でも情報局は貴方のおハガキを大募集!
(゚、゚トソン 「これどういう意味?」「○○ってどんなもの?」なメタな質問があればお気軽にどうぞ!
ミセ*゚ー゚)リ 司会は私、ミセリ・コメッタと
(゚、゚トソン 解説のトソン・リライアンがお送りしました
ヾミセ*゚ー゚)リ「まったね〜〜」(゚、゚トソンノシ
.
106
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 10:36:15 ID:z3O1mmhw0
【チラシの裏】
こないだまで連載して打ち切りにした(,,゚Д゚)Robotsのようですのリメイク版。
早めに次の話を投下できればいいなと思います まる
107
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 12:36:00 ID:huKW5O4U0
早朝から、乙であります。
108
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 14:17:17 ID:3fo2cOuA0
乙でーす
おもしろかったよ
109
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 14:27:00 ID:LfeKswCM0
おつ
世界観がらりと変わったけどおもしろい
次も期待する
110
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 16:13:01 ID:4OF7xGcU0
おーおかえり!
111
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 20:52:40 ID:J8MG1qzAO
リメイク前のも好きだったので残念だが楽しみにしてる
112
:
名も無きAAのようです
:2013/06/06(木) 00:18:02 ID:lLSHMMQs0
面白い
ギコ型ロボット好きだよ乙
113
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:34:21 ID:JVpwMjhM0
時間の都合により、2話を今から前半だけ投下
114
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:35:43 ID:JVpwMjhM0
「作戦完了。只今をもって帰投する。over」
「思ったよりあっさり終わりましたね」
「ああ……………お前、先に装置を起動しておけ」
「と、申しますと?」
「「保険」をかけておく。残党を処理する必要があるんでな」
「まさか…………」
「既に何体か仕込んであるが、念には念をだ」
( ゚ -゚)「……………楽しみだな」
.
115
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:36:45 ID:JVpwMjhM0
(;・∀・)「ふう、疲れたー……」
夜も9時を回る頃、モララーはようやく帰宅した。
『本日午前11時半ごろ、スタートミーツ通りで謎の爆破事件が発生しました。死傷者は――』
点けっぱなしのTVは、昼頃に起きた爆破テロ事件についてとりあげている。
モララーはTVを消した。見る必要はない。なにせ当事者なのだから。
(;-∀-)「はぁーあ……今日だけで色々ありすぎだよ……」
ソファーに寝転がり、足を放り出した。
とにかく眠りたかった。混乱する頭を整理したい。
『今より10年後、彼女はアメリカ中にクーデターを宣言する』
『そして、世界中に国際指名手配される、歴史上最大のテロリストとなる』
『最期は…………兄であるお前との一騎打ちで、命を落とす』
(;-∀-)
(;-∀-)「……僕に、どうしろっていうんだよ……」
.
116
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:37:40 ID:JVpwMjhM0
Act2:ReasonDetail
.
117
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:38:34 ID:JVpwMjhM0
今日も、厚ぼったい雲越しに太陽が昇る。
僅かな光が、カーテンをすかして部屋を照らす。
ピピピピ、ピピピピ……。
軽快な電子音で、モララーの瞼がゆっくりと開いた。
ノ
( "∀")「ん……今、何時だ……?」
音源を探し、モララーの手が這いまわる。
やがて音が自分の尻から鳴っていることに気づき、ポケットから引き抜いた。
ノ
( "∀")「なんだ……まだ8時45分か…」
モバイルフォンで時間を確かめ、再びクッションに顔を埋める。
鳥の鳴き声が耳に心地いい。もう少しだけ、こうしていたい……
ノ
( "∀")
ノ
( ・∀・)
ノ
(;・Д・)「遅刻だァーーーーーーーーーーーーッ!?」
その悲鳴は、NYの肌寒い朝によく響いたという。
.
118
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:39:58 ID:JVpwMjhM0
ノ
三;・∀・)「やばいやばいやばいやばい後15分しかない!!」
部屋中をかけずり回り、急いで支度。
朝食はシリアルのみだ。パンが焼けるのを待っている暇はない。
ノ
@-@-と(・∀・;)「えーと眼鏡眼鏡メガネ…あったっ痛ァッ!?フレーム刺さった!」
ノ
ヾ(;-@∀@)ノ「ネクタイネクタイ、どこに仕舞ってたっけー!」
ノ
(;-@∀@)そ「ヒゲはまだ剃らなくても大丈夫だな……って何だこのアホ毛!?」
嵐のように騒がしいとは、今の彼のことに違いない。
そうこうしている内に、残りあと10分だ。
ノシ
三;-@∀@)「行ってきまーす!!」
金属製のドアを乱暴に蹴り、ネクタイもまともに結べないままに飛び出した。
エレベーターも待たず、非常階段からひと思いに飛び降りる。
猫のように着地したならば、あとはいつもの裏路地をショートカット。
ノシ
三;-@∀@)「遅れたらまた教授に叱られる!今でも単位ギリギリなのに−!」
119
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:41:04 ID:JVpwMjhM0
モララーはわき目もふらず大学へ急ぐ。
もし空を見上げる人がいれば、屋根伝いにひょいひょいと駆ける青年が見れただろう。
「強盗よー!」
三;-@∀@)「ん?」
甲高い悲鳴とサイレンが聞こえる。
道路へ視線を落とすと、パトリニアが2人乗りのエアバイクを追い掛けている。
モララーは腕時計を見、ビルから地上へと降り立った。
(-@∀@)「何の騒ぎだい?」
「コンビニ強盗ですって。ほら、あの二人組よ」
群衆にまぎれて、それとなく尋ねる。
すんなり答えてくれた相手に感謝の言葉を伝え、再び路地裏にひっこんだ。
( ・∀・)「オーキードーキー!この街にいると退屈しないね」
鞄の中には、モラランダーの装備が一式。
カツラ、スーツ、ワイヤーを仕込んだグローブ。
ミ ・∀・彡「いついかなる時も、悪をこらしめるのが僕の仕事だ!」
120
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:42:24 ID:JVpwMjhM0
いつものワイヤーアクションで、みるみるカーレースに追いついていく。
道行く人がモラランダーを指差し、口ぐちにその名を呼ぶ。
『こちらC班、A班へ通達!モラランダーが出現しました!』
『放っておけ!先に捕まえればこっちの手柄だ!』
ところが、事は思ったより上手く運ばないのが現実。
彼等の進行方向にあるメインストリートは、渋滞でごった返している。
エアバイクはその渋滞の間をすり抜け、みるみるパトリニアを追い抜いていく。
ミ ・∀・彡「やれやれ、追いかけて正解だよ」
エアバイクの後をモラランダーも追う。
するとコンビニ強盗がモラランダーに気づき、銃を構えた。
ミ;・∀・彡「っあっぶね!」
間一髪、当たる直前に跳躍し、弾丸は道路にめりこむだけ。
クラクションと悲鳴のファンファーレの中、エアバイクとモラランダーが並んだ。
ミ ・∀・彡「おーいそこのライダーズ!食堂なんかでもそうだけど、順番抜かしはしちゃ駄目だろー!?」
「うるせえ、くたばりやがれ!」
121
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:43:09 ID:JVpwMjhM0
また銃弾がとび、モラランダーは首を動かしただけで避けた。
今回は時間がない、パパッとすませてしまうに限る。
ミ ・∀・彡「セイファー!」
両腕のワイヤーを噴出させ、コンビニ強盗の二人を捉えた。
二人組はあっという間に信号機に吊るされ、ワイヤーを切り離して固定する。
ミ ・∀・彡「よっと!」
乗り手のいなくなったエアバイクに、モラランダーが飛び乗った。
慣れた手つきで操作し、車の間を器用にぬって強盗たちの所まで戻る。
ミ ・∀<彡⌒☆「悪いけどこれ、借りてくぜ!」
「降ろせ、このヤロー!ぶっ殺してやるーーー!」
「わあああ!バイク泥棒ーー!!」
ミ ・∀・彡「人にされて嫌なことはするな、という僕からのアドバイスさ!バァイ!」
宙吊りのまま喚く強盗たちをさし置き、暢気にモラランダーはバイクを乗り回す。
大学まである程度距離を稼いだ後、バイクは交番に安置しておいた。
三;-@∀@)「間に合えー!」
122
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:44:18 ID:JVpwMjhM0
第4教室。
モララーが受ける遺伝子学の授業が行われる教室だ。
大きなモニターと教卓が据え置かれ、老人が出席簿を握っている。
( ´W`)「えー、それではそろそろ出席をとるぞ」
_
( ゚∀゚)「……なあオトジャ、いい加減シロクロつけようぜ」
(´<_` )「……というと?」
次々名を呼ぶ教授を、頬杖をついて眺めながら、屈強な青年が隣のオトジャに囁く。
オトジャと呼ばれた青年は、構わずペンを走らせている。
_
( ゚∀゚)「俺は来ないに10ドル、お前は来るに5ドルだろ?」
(´<_` )「そう焦るなよ、奴なら来るさ。あと3分30秒後くらいには……」
ノシ
シャッ三-@∀@)「3分30秒後に何があるの?ストリップダンサーが飛び入り参加とか?」
_
( ;゚∀゚)そ「「うわああっ!?」」そ(゚<_゚; )
(#´W`)「そこ、煩いぞ!それとスティールズ、その間の抜けた寝ぐせをなんとかしろ!」
ノ
(;-@∀@)「も、申し訳ありません、教授!」
123
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:45:31 ID:JVpwMjhM0
周りの忍び笑いが、教室中に広がる。
教授に叱られたモララーは、猫背気味に縮こまった。
( ´W`)「何をしている、座りなさい。シーマン、スティールズ、サスガは出席、と……」
突然現れた友人に驚かされた二人は、椅子を少しずらして間にモララーを座らせた。
オトジャが青年に目配せし、手をひらひらと上下させる。
屈強な青年は、少々恨めしげにモララーを見た。
(´<_,` )「ほらジョルジュ、15ドルだぞ」
_
( ;゚∀゚)「の、ノーカンだ!お前、『あと3分30秒で来る』って言ったろ、外れたじゃないか」
(´<_,` )「出たなヘリクツ、そんなみみっちい事ばかり言うからマドンナにいい顔されないんだぜ?」
(;-@∀@)「オーライ、二人共。僕を挟んでミニ・ラスベガスを展開させるのはよしてくれ」
モララーの仲裁が入ったタイミングで、講義の開始が告げられる。
各々が教材を開き、ペンを手に取った。
124
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:46:15 ID:JVpwMjhM0
(´<_` )「今日は久し振りにギリギリだったな、モララー」
(-@∀@)「まあね。ちょっと今日は、ハインがいなくて」
_
( ゚∀゚)「ひやひやしたぜ。お陰でそこの不良クンに15ドル巻き上げられる所だった」
(´<_` )「なんだよ、賭けを持ちかけたのはお前だろ」
モララーは呆れ気味に笑う。彼等の軽口も、もう慣れっこだ。
_
( ゚∀゚)「大体、遅刻するモララーが悪いのさ。こんな仏頂面と二人きりにするから、ちょいとジョークを飛ばしただけだってのに」
太い眉毛の屈強な青年は、ジョージ・シーマン。
皆からはジョルジュと呼ばれている。
女を口説くとき、いつもフランス語を使うので、オトジャが茶化してあだ名を付けたことが始まりだ。
(´<_` )「よく言うぜ、来ない方に賭けた上で、10分おきに切り上げようとした癖に」
こちらはオトジャ・サスガ。
やや小柄な、本人いわく生粋の日本人だ。
気さくなジョルジュとは正反対で、常に仏頂面。頬がゆるむ相手は、鼠くらいのもの。
(;-@∀@)「遅刻したのは謝るって。ただ……そう、落とし物を届けてたら遅れちゃって…」
そして、モララー・J・スティールズ。
これが、大学内でのいつものメンバーだ。
125
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:47:32 ID:JVpwMjhM0
( ´W`)「善行に勤しむのは結構だがなスティールズ、くれぐれも単位を落とさぬよう気をつけるんだぞ」
またも笑いがおこる。今度は遠慮することのない大笑いだ。
渋い顔をつくるモララーの肩を、ジョルジュが愉快そうに叩いた。
_
( ゚∀゚)「今日もまた一本取られたな、ミスター優等生くん?」
(;-@∀@)「は、はは。あははは」
(´<_` )「先生流の最後通達だな。上にあがりたきゃ、これに懲りて早起きすることだ」
オトジャに苦言を呈され、モララーは亀よろしく首を引っ込めるしかなかった。
そうして授業は始まり、モララーは終始、教授の機嫌を伺いながら大人しくするだけであった。
_
( ゚∀゚)「モララー、これからどうする?俺はこれからボウリングに行くんだけどよ」
授業が終わり、ジョルジュがモララーを遊びにさそう。
オトジャはまるで関心がないらしく、さっさと姿を消していた。
(-@∀@)「ごめん、今日は用事があるんだ。妹のお見舞いに行かなきゃならなくて」
_
( ゚∀゚)「もしかして、昨日の爆破事件のやつか?そういえば家が近かったな」
(-@∀@)「そ。検査入院で、今日退院だってさ」
126
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:48:28 ID:JVpwMjhM0
_
( ゚∀゚)「そっか…。オトジャも付き合い悪いし、お前は妹。俺様はひとり寂しく玉遊びってか?」
(;-@∀@)「悪いね。本当だったら僕も行きたいんだけど」
_
( ゚∀゚)「冗談だよ生真面目くん。他の奴ら誘っていくさ。また明日な」
妹によろしく、と肩をポンと叩き、ジョルジュは手を振って行ってしまった。
モララーは少しだけ手を上げたが、所在なさげに軽く振るだけだった。
(-@∀@)「…あ、もうこんな時間なのか。早く行ってあげないと」
時計の針は既に12時を20分も過ぎていた。
ハインには昼の1時までには迎えにいくと約束していた。遅刻するわけにはいかない。
( ´W`)「待ちたまえ、スティールズくん」
駆け出そうとしたところを教授に呼び止められた。
大抵、こういう時は何かしらモララーにとって良くないことが起きる。
( ´W`)「これ、君が今まで遅刻した分のペナルティだ。3日で済ませなさい」
どっさりと持たされたのは、大量のレポート。
塔のように積み上げられたそれを見上げ、思わず口許をひくつかせた。
(;-@∀@)「……分かりました、教授。3日ですね」
127
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:49:28 ID:JVpwMjhM0
5歩後、モララーは病院へ向かうべく走り出していた。
大学から病院まで、マンハッタンメトロを使えば20分で間に合う。
(-@∀@)「えーと、次の発車が12時30分だから…うん、間に合うな」
上着と、レポートがぎっしり詰まった鞄を抱えながら先を急ぐ。
このまま脇目もふらず走っていけば、30分発の電車に間に合う。
「キャーーーーーーーーーーー!誰かーーーーーーーーーー!!」
(-@∀@)キュッ「……ちぇ、今日は本当に多忙な日だ」
ただし、脇目もふらず走ることさえ許されないのが、世の現実なのである。
「ちっ、近づくんじゃねえどぉー!」
現場は15階建てのビルの屋上。
ひとりの肥満体の少年が、フェンスの外側で喚いている。
ξ;゚⊿゚)ξ「お願いデーヴ!こっちに戻ってきてらっしゃい!」
「うるせえ!頼むから死なせてくれぇー!」
(;□^ω^)「こちらホライゾン、ターゲットは未だ説得に応じてないようです」
128
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:50:48 ID:JVpwMjhM0
ブーンは屋上を見上げ、固唾を飲んで見守る。
先ほどのコンビニ強盗を逮捕したかと思いきや、今度は飛び降り騒ぎ。
(;□^ω^)「ど、どうしよう…今ここで行動を起こしたら、またツンに叱られるし…」
ミ ・∀・彡「いいじゃないか別に、何もしないよりマシじゃない?」
∩;□^ω^))「そうしたいのは山々だけどッ、下手にターゲットを刺激したりしたら……」
ミ(^ω^; )「ってえええ!?モラランダー!本物!?」
ミ ・∀・彡ノ「やっお巡りさん、もう現場復帰ってすごい体力だね。これどういう状況?」
背後にたっていたモラランダーに驚き、ブーンは目を丸くする。
モラランダーは今にも飛び降りかねない少年を見上げた。
(;□^ω^)「えっと、……見ればわかると思うけど、飛び降り自殺を図ってるみたいなんだお」
ミ ・∀・彡「なるほど。で、奴さんは落(や)る気満々と」
(;□´ω`)「事情はよく知らないけど、決意は固いみたいで……」
警官の話を聞きながら、モラランダーは顎をさすった。
確かに、少年はフェンスの内側に戻る様子が見られない。
129
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:51:32 ID:JVpwMjhM0
ミ ・∀・彡「ならいっそ、落とすか」ボソッ
(;□^ω^)「えっ?」
言うや、モラランダーは空に向けワイヤーを放っていた。
ワイヤーの先端にあるフックが屋上のフェンスに固定される。
ミ ・∀・彡「フンッ!」
グローブがワイヤーを巻き取り、その力でモラランダーは持ち上げられる。
またたく間に、軽々とその体を屋上へ躍らせる。
ミ ・∀・彡「やあ少年」
ξ;゚⊿゚)ξ「! モラランダー!」
「へっ!?も、モラランダー!?」
太った少年も目を丸くしてモラランダーを見た。
テレビでしかお目にかかれない存在が、隣で腕組みをして立っているのだから。
130
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:52:27 ID:JVpwMjhM0
ξ#゚⊿゚)ξ「ッ悪人退治専門のあなたが、何をしにきたわけ!?」
ツンは咄嗟に銃を構えた。
彼女はモラランダーの存在を危惧していた。
ミ ・∀・彡「僕、実は青少年びっくりアドベンチャー委員会も兼ねてるんだぜ。知らなかった?部員募集してるんだけど」
『超人的な力を以てして、正義を執行する正体不明の男』
今こそヒーローを名乗っているものの、彼が何をするか分かったものではない。
この瞬間にも、彼が『大衆の味方』から『世界中の敵』に回ってもおかしくないのだ。
ξ#゚⊿゚)ξ「御託やジョークはいらないわッ!とっとと居なくなって!」
ミ ・∀・彡「えらい嫌われようだなー…。それじゃ退散させてもらうとするよ」
そう言いながら、モラランダーは『隣の少年の体を掴んだ』。
ミ ・∀・彡「隣のボーイと一緒にね」
ξ;゚⊿゚)ξ「なっ…………!」
ツンがそれを止める間も、引き金を引く時間すら与えずに。
躊躇いなく、少年と共に飛び降りた。
131
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:53:41 ID:JVpwMjhM0
「うわああーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
ミ ・∀・彡「ヨロレイヒーーーーーーッ!」
地上に向かって二人は真っ逆さま。
見守る観衆からも悲鳴があがる。
だがモラランダーは慌てることなく、少年を抱えたまま片腕を突き出す。
ミ ・∀・彡「ッ!」
ワイヤーが噴出され、看板に巻き付く。
ピンッとワイヤーが張った瞬間、モラランダーが体を捻り、華麗に地上に着地した。
ミ ・∀・彡「フゥッ、一丁あがり!」
(;□^ω^)「だっ大丈夫ですかおー!?」
腕の中の少年は、ショックでノビていた。
驚嘆の表情を貼り付けて駆けつけてきたブーンに、そっと少年を引き渡す。
ミ ・∀・彡「ま、これにこりて、飛び降りなんてもうしないだろうよ」
三ξ#゚Д゚)ξ「ゴルァアアアアアモラランダーァアアア!!」
ミ・∀・ 彡「おおっと!おっかないレディが追ってくるから行かなきゃ!バァイ!」
般若が如き形相のツンから逃げるべく、モラランダーは颯爽と去っていく。
ブーンは少年を抱えたまま、
(;□^ω^)「あっありがとうお!モラランダー!」
と叫んだ。モラランダーが遠くで、手を振るのが見えた。
132
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:54:47 ID:JVpwMjhM0
視点は変わって、マンハッタン総合病院。
病室の時計は1時5分を指していた。
('A`)「来ないね、お兄さん」
从 ゚∀从「…ま、アニキの遅刻癖はいつものことだし」
ハインは、包帯の巻かれた頭を擦り、ニコリと笑った。
一般室にはハインとドクオに人の影はない。
从 ゚∀从「ドクオさんも、今日で退院?」
('A`)「そうだよ。また仕事探しが始まるのさ、やんなっちゃうね」
ハハハ、と軽く笑ってみせるが、表情は暗いまま。
あれだけ恐ろしい目に会ったのだから、当然といえば当然だ。
从 ゚∀从「でも、当てはあるんですか?」
('A`)「一応ね。これでも前はバリバリの若手キャリアマンで将来有望って言われたから」
从 ゚∀从「すっげー!それなら就職先もすぐに…」
('A`)「ま、面倒事押し付けられてクビになっちゃったけど」
从;゚∀从「……………」
.
133
:
訂正
:2013/06/11(火) 17:56:14 ID:JVpwMjhM0
視点は変わって、マンハッタン総合病院。
病室の時計は1時5分を指していた。
('A`)「来ないね、お兄さん」
从 ゚∀从「…ま、アニキの遅刻癖はいつものことだし」
ハインは、包帯の巻かれた頭を擦り、ニコリと笑った。
一般室にはハインとドクオの他に、人の影はない。
从 ゚∀从「ドクオさんも、今日で退院?」
('A`)「そうだよ。また仕事探しが始まるのさ、やんなっちゃうね」
ハハハ、と軽く笑ってみせるが、表情は暗いまま。
あれだけ恐ろしい目に会ったのだから、当然といえば当然だ。
从 ゚∀从「でも、当てはあるんですか?」
('A`)「一応ね。これでも前はバリバリの若手キャリアマンで将来有望って言われたから」
从 ゚∀从「すっげー!それなら就職先もすぐに…」
('A`)「ま、面倒事押し付けられてクビになっちゃったけど」
从;゚∀从「……………」
134
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:56:56 ID:JVpwMjhM0
('A`)「それでさ、聞きたいんだけど」
痛い沈黙を無理に破って、ドクオが口を開いた。
('A`)「外にいる人、ハインちゃんの知り合い?」
从;゚∀从「? ギコさんのこと?ううーん……」
ハインは腕を組み、首を傾げた。
正直なところ、彼女はどうとも答え難かった。
彼はモラランダーの相棒と言っていた。
一緒に行動していたようだし、現にハインを助けてくれた。悪人とは思えない。
从;-〜从「悪い人じゃ、ない、と、は、思う……多分」
(;'A`)「はっきりしないなあ。さっきからあの人、ジロジロ睨んできて怖いんだよ……」
病室のドアを一瞥し、ドクオは囁く。
彼の言う通り、病室のガラスから、男の刺すような視線がたまに投げよこされる。
('A`)「……悪い人じゃないってのは、俺も同意見だけどね」
怯えた様子ながらも、ポツリと付け加えた一言は、はっきりとしていた。
135
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:57:49 ID:JVpwMjhM0
('A`)「なんて言うか……おっかないけど、頼もしいっていうか……初めて会った気がしないんだよなあ」
从 ゚∀从「えっ」
('A`)「えっ」
从;゚∀从「う、うん……いや、なんでもない」
素っ頓狂な声が出た口許を抑え、言葉を濁した。
偶然の一致だろうか。ハインもまた、彼に――ギコに、初めて会った気がしなかった。
从 ゚∀从(何となくだけど……ギコって名前も、知ってたような気がして……)
そこまで考えて、かぶりを振った。
あらぬ妄想だ。ギコとは初対面で、彼の故郷も、好みも知らない。
あの危機的状況で救われて、彼にヒロイック的な憧れを抱いて、記憶が混濁しただけだ。
从 ゚∀从(それだけ……だよね)
ハインはそこで、ギコに関してそれ以上考えるのをやめた。
ギコが彼女に語りかけた言葉も、あの不思議な夢も、彼女はなにひとつ回想しなかった。
彼女の記憶の中から、それらは全て、すっぽりと抜け落ちていた。
.
136
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:58:31 ID:JVpwMjhM0
(,,゚Д゚)y-゛
病院の廊下で、佇む男がひとり。
ギコは火の点いていないタバコを、指の間に挟んで弄ぶ。
(,,゚Д゚)「…………….来たか、遅刻魔」
ギコは首を動かすことなく、そう言った。
汗だくのヨレヨレで駆けつけてきた、モララーに向けての辛辣な一言。
ノ
(;-@∀@)「……お前は……」.
(,,゚Д゚)「ギコだ。先日は世話になったな」
モララーは汗まみれの額をぬぐい、ギコを観察した。
昨日のバトルスーツチックなコスプレではない。
チェックの入ったベストとスーツ。どこからどう見ても普通のサラリーマンだ。
(,,゚Д゚)「積もる話もある。……屋上へ行こう。あそこなら誰にも聞かれない」
ギコは背を向け、屋上へ続く階段へと足を運ぶ。
モララーは少しだけ迷う素振りを見せると、ギコへと続いた。
137
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 17:59:28 ID:JVpwMjhM0
病院の屋上は、パスワード入力型のオートロックがかかっている。
万が一、患者に何かあった時のためにだ。
(,,゚Д゚)「確かロックナンバーは……」
ギコが解除用のパネルをタッチし、0と1の間を人差し指が行き交う。
10秒もしない内に、難なく扉を開けてしまった。
(;-@∀@)「……64桁もあったのに、よく覚えてられるな。ロボットだからか?」
(,,゚Д゚)「お前こそ、あのスピードでよく桁数を数えられたな。流石は超人といったところか」
モララーは肩を竦め、屋上へと足を踏み入れた。
長方形の領域には、洗濯物がいくつもたなびいている。
病院のてっぺんから見下ろす景色は、新鮮だった。
(-@∀@)(…………….)
(,,゚Д゚)「タバコ、いいか?」
フェンスに寄りかかると、隣でギコがシガレットをちらつかせる。
モララーが頷くと、火を点け、ギコはタバコを深く吸い込んだ。
138
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 18:02:01 ID:JVpwMjhM0
(-@∀@)「……ロボットがタバコを吸うなんて、初耳だ」
(,,゚Д゚)「俺以外にタバコを吸うロボットは、俺も見たことがないな」
ふわりと紫煙が漂い、風にさらわれていく。
今日の予報では、風が強い晴れの日だと言っていた。
(-@∀@)「未来から来た、か。昨日の話、本当かい?」
(,,゚Д゚)「どれが、だ?」
(-@∀@)「全部が、さ」
タバコを咥えたまま、ギコはしばらく沈黙した。
(-@∀@)「教えてくれ。未来で、何があった?僕たちの周りで、何が起こっている?」
日差しの暖かみと冷気を含んだ春の風が、頬をなでた。
風の勢いで、タバコの火が燻る。
(,,゚Д゚)「……今から10年後。ハインがクーデターを宣言し、アメリカを中心として、大規模な戦争が起こる」
(,,゚Д゚)「政府はハインら一味を指名手配し、未曾有の第三次世界大戦を危惧した」
(,,゚Д゚)「そして……お前とハインの一騎討ちを機に、それは勃発してしまう」
語り始めたギコの声は、あまりに淡々としていた。
139
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 18:02:45 ID:JVpwMjhM0
前半終わり。後半は明日。
140
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 18:14:33 ID:KFYCSV.s0
乙
141
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 19:12:04 ID:IJyIkM560
おつ
続きが楽しみだ…
142
:
名も無きAAのようです
:2013/06/11(火) 21:54:27 ID:LD9xz9UQ0
乙
10年後のハインについて…気になるな
143
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:31:20 ID:ypSb7b3o0
後編、ゆっくり投下
144
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:32:20 ID:ypSb7b3o0
(;-@∀@)「!」
(,,゚Д゚)「自爆テロ、紛争、虐殺……地獄が待っている。最早防ぎようのない、絶望が」
(;-@∀@)「なぜだ……ハインと僕の戦いが戦争を引き起こす!?たかだか兄妹の一騎討ちで……!?」
ギコは、指でタバコの火を摘み消した。
先ほどから彼は答えを選んでいる、そういう印象を受けていた。
(,,゚Д゚)「ひとつ、言えることは……彼女は消されるべき悪だと認識されている、ということだけだ」
(;-@∀@)「? 消されるべき悪……?ならお前はなぜ、ハインを守ろうとする?」
(,,゚Д゚)「……………」
(,,゚Д゚)「すまない。俺には、お前に与えられる情報が限られてくるんだ。モララー・J・スティールズ」
深く深く溜息をつき、二本目を出した。
再び火を点け、眉間にシワを寄せて、続きを語る。
(,,゚Д゚)「因果律の歪みってのがあってな。簡単に言っちまうと、ホイホイと未来のことを教えちゃいけないんだそうだ」
(;-@∀@)「因果律の、歪み……」
145
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:33:11 ID:ypSb7b3o0
その言葉でギコは口を閉ざしてしまった。
これ以上、答えてくれる気はないようだ。
目の前の男から得た情報を、モララーは脳内のメモ帳にまとめ始める。
・ハインは10年後、世界的なテロリストとなり、モララーとの一騎打ちで死ぬ。
・そのハインの命を狙って、未来から刺客が襲ってくる。
・ギコはハインを守るため、10年前の未来から来た。
(;-@∀@)「何だか、奇妙な話だな。SFの主人公になったみたいだ」
(,,゚Д゚)「みたいじゃなくて、これが現実だ。元々、お前の存在自体がSFみたいなものだろうに」
ごもっともである。
22世紀の現在、モララーのような超人的な力を、道具なしに使える人間は存在しない。
……少なくとも、モララー自身が認識している限りは、だ。
(-@∀@)「つまり、刺客たちってのは……ハインたちの敵ってことか」
脳裏に、あの「始末屋」の横顔がよぎる。
(,,゚Д゚)「そうだ。昨日のアイツは、俺と同じ人型戦闘ロボット「ギャーシャ」。戦闘能力はとても高い」
(-@∀@)「でも、アイツはハインを殺したって信じきって帰っちまったろ。なら、もうお役御免じゃない?」
否、とギコはモララーの言葉を否定した。
146
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:34:25 ID:ypSb7b3o0
(,,゚Д゚)「奴らはすぐに勘づくさ。未来に一切の変化が見られなければ、失敗に気づくだろうな」
(;-@∀@)「それじゃ、また戻ってくるってこと!?」
モララーが慌てるのも無理のないこと。
また先日のように、あちらこちらを吹っ飛ばされてはたまったものではない。
(,,゚Д゚)「いや、奴はすぐには戻ってこない筈。少なくとも、タイムスリップの誤差で3ヶ月は姿を見せないだろうさ」
(;-@∀@)「ふ、ふーん……?」
よく分からないが、ギコの発言が確信めいた調子だったので、信じることにする。
そこでモララーはふと、沸いてきた疑問を口にした。
(-@∀@)「あれ?過去に戻れるんだったら、手っ取り早く、生まれる前のハインを母親ごと殺せば済む話じゃないのか?」
(,,゚Д゚)「至極単純さ。俺たちの世界じゃ、10年前までしかタイムスリップできないんだよ」
(;-@∀@)「……それ、凄いんだかすごくないんだか、分かんないなー」
ひとまず、ハインが今すぐ消えるなんて悲劇は起こりそうにないらしい。
それだけ確認すると、胸の奥に巣食っていた不安感が、どっと抜けていく。
147
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:35:19 ID:ypSb7b3o0
(-@∀@)「もうひとつ、聞いていいかい?」
(,,゚Д゚)「なんだ?」
(-@∀@)「因果律の歪み……とか何とかって言ってたけど、僕にこんなペラペラ喋ってもよかったの?」
モララーの疑問は当然のものだった。
未来のことを教えることが良くないことなら、どうして重大な未来のネタバレをしたのか。
彼はどうしても気になって仕方なかった。
(;-@∀@)「君の言い振りだと、何でもかんでも教えると、まずいことでも起こるんじゃないのかい?」
(,,゚Д゚)「相変わらず、おつむの回転は早いな。ま、差し当たって俺がこんなに白状したのは……」
(,,゚Д゚)「『未来を変えたい』からさ」
数秒黙し、ギコの口から飛び出した答えが、それだった。
(,,゚Д゚)「過去の奴が未来を知ると、その未来は『歪む』。確率変動値が高まる」
(,,゚Д゚)「お前にハインリッヒの未来を話したことで、『ハインがテロリストになる未来』が歪んだことになる」
それはつまり、モララーがハインと戦わず、生き残る運命を示す。
(,,゚Д゚)「だが、それだけだとまだ確定的ではない」
148
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:36:57 ID:ypSb7b3o0
(,,゚Д゚)「例えば、今日おまえはコンビニ強盗を捕まえ、ひとりの自殺志願者の子供を助けた」
(;-@∀@)そ「ど、どうしてそれを……!」
一瞬うろたえたが、モララーはすぐに察して黙り込んだ。
目の前にいる男は、未来から来て、自分を知っている存在だ。なんらおかしいことではない。
(,,゚Д゚)「過去に起きた出来事を周知の前提で、終わった過去のことを開示しても何も起こらない」
(,,゚Д゚)「だがもし、今から起こることをお前に話すと『未来のドミノ倒し現象』が起こる」
(;-@∀@)「み、未来のドミノ倒し現象?」
タバコのケースからシガレットをいくつも取り出し、それを並べる。
まるでドミノ倒しのように、きちんと一本一本、素早く丁寧に。
(,,゚Д゚)「そうだ。未来を知って先回りして対処しようとすることで、未来に起こることが本来より早く起きる」
ちょん、とタバコを指で押すと、次々にタバコが倒れていく。
(,,゚Д゚)「例え些細なことだとしても、未来の事象が、本来より早く引き起こされ続けると、最悪……」
最後のタバコが倒れた。
(,,゚Д゚)「――――想定しているより早く、あの未来が待ち受けることになる」
.
149
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:37:08 ID:KSj2EeQA0
支援
150
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:38:33 ID:ypSb7b3o0
(-@∀@)「……だから、未来のあれこれを教えるわけにはいかないのか」
(,,゚Д゚)「遠すぎる未来ならば、多少は問題ないがな」
(,,゚Д゚)「それに、少し先の未来を変えることで、遠い未来を一気に変えてしまうこともある」
(;-@∀@)「わーお……ますます、恐ろしい話だな……」
到底、現実味のない話だ。
だが、骨の芯が冷えていくような感覚に襲われる。
(,,゚Д゚)「俺はあくまで、ハインと彼女の未来を守るためにきた」
(,,゚Д゚)「後はお前次第だ、モララー・J・スティールズ」
ひときわ強い風が、屋上に吹きすさぶ。
白いシーツが風を受けて膨れ上がり、バサバサと音を立てた。
「未来を敵に回し、妹を守るか?」
「正義を名乗り続け、妹を敵に回すか?」
(,,゚Д゚)「お前はどっちだ、モララー?」
. 自律歩行人型戦闘ロボット
. G-1K:0/通称ギコ
.
151
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:39:30 ID:ypSb7b3o0
モララーは、答えに窮していた。
受け入れ難い現実を噛み砕いて、どうにか飲み込もうとしていた。
(;-@∀@)「……もうひとつだけ、教えてくれ。ギコ」
(,,゚Д゚)「……………内容による」
胸が喧しく鳴り響き、嫌な汗が流れて止まらなかった。
本当は聞きたくないのに、耳を塞いでしまいたいのに、好奇心が彼の心を動かした。
(;-@∀@)「ハインが死んだあと……僕は、どうなる?」
(,,゚Д゚)
(,,゚Д゚)「……………お前は、ハインリッヒを殺したあと……………」
「『正義は死んだ』と叫んで、自爆する」
(-@∀@)
「俺にハインの亡骸を寄越して、俺にマフラーを託した」
.
152
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:40:32 ID:ypSb7b3o0
あくまで、遠い未来の話だ。
どれだけ足掻いたって、起きた未来をすぐに変えられるわけがない。
けれど。
聞かされた己の末路は、あまりに重く、心にのしかかった。
(,,゚Д゚)「……………満足か?」
事もなげに、ギコはそう尋ねてくる。
彼に悪気はない。ただ事実を教えただけ、それだけのこと。
だがモララーの心には、冷え切ったものが腹の底を渦巻いていた。
妹の骸を抱え、正義を否定し、泣き叫ぶ己の姿が。
――フラッシュバックの如く、浮かび上がった。
(;-@∀@)「僕は……………!」
「イヤァアーーーーーーーーーーーッ!!」
刹那、モララーの言葉を遮って、叫び声が聞こえた。
直後、破壊音。何発かの銃声。全て階下から聞こえてきたものだ。
153
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:41:37 ID:ypSb7b3o0
(,,゚Д゚)「「!?」」(@∀@-;)
二人共、咄嗟にフェンスから身を乗り出した。
音の元を探していると、程なくしてまたも銃声が鳴り、窓ガラスが割れる。
「うわああああ!な、何だこいつ……ぎぃっ!?」
「警察本部に緊急要請、銃と人質を奪われました!」
(;-@∀@)「ひ、人質だって!?ここは病院だってのに……!」
ハッとして、モララーはギコに目配せする。
彼は先ほど、今日のモラランダーの活躍を言い当ててみせた。
(;-@∀@)「ギコ、これも今日起こる事件かい!?」
しかしギコは、顔を僅かに歪めたまま首を横に振る。
(,,゚Д゚)「いや、この日は病院内で事件が起こるなんてことはなかった。何が……」
.
154
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:42:34 ID:ypSb7b3o0
階下はすっかりパニックに陥っていた。
窓ガラスが割れていく順番を見て、モララーは蒼白する。
(;-@∀@)「このままじゃ、犯人がハインの病室に……!」
ギコが右腕の腕時計らしきものに、手を当てると、電子音が鳴る。
すると、着ていた服が一瞬光に包まれ、あの近未来的なコスプレ姿に戻っていた。
(,,゚Д゚)「俺が先に追う。モララー、着替えて反対側から来い。挟みうちにするぞ」
この病院は3つの建物からなり、連絡通路で環状線のようにつながっている。
モララーはギコの言葉の意味を汲み取り、頷いた。
ギコはフェンスを飛び越え、綱もなしに軽々と病院の壁を伝って降りる。
少ない出っ張りに掴まって、犯人のいる階までたどり着いた。
(,,゚Д゚)(奴は背を向けてるな。ここからなら柱が死角になって見えないはず)
医師や看護婦は、恐れて逃げ出したようだった。
僅かに、煙の臭いが漂っている。
倒れた警官を踏み越え、のしのしと歩く巨体が見えた。
(,,゚Д゚)「! あれは――!」
.
155
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:43:27 ID:ypSb7b3o0
一方、モララーはバトルスーツに着替え、非常階段から降りていく。
扉を開けようとすると、ロックがかかっているようだ。
ミ#・∀・彡「ああもう、こんな時に!」
苛立ちをつのらせたモラランダーは、力任せにドアを引っ張った。
時速120kmを超えるリニアに安々と勝つ腕力に、どうしてドア如きが勝てようか。
ミ;・∀・彡「急がないとッ!」
嫌な金属音を立て、盛大にドアは取れた。
と思いきや、黒い何かが立ちはだかる。
( {゚▼゚)ヌウッ
ミ;・∀・彡「!?」
モラランダーが一歩引いた直後、黒いそれは拳を繰り出してきた。
俊敏な正拳突きを躱し、ボディーブローをくれてやる。
ミ;・∀・彡「誰だか知らないが退いてくれッ、通行の邪魔だ!」
だが再び、立ちはだかろうとする黒い影。
今までに見たことのない、天井まで背の高い脅威に、薄ら寒いものを覚えた。
156
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:44:42 ID:ypSb7b3o0
ミ;・∀・彡「お前、下で暴れていた奴か?」
( {゚▼゚)三シュッ!
問いに答える代わりに、またも突きが繰り出される。
それを避け、モラランダーは黒い影の股の下をくぐり抜けた。
三ミ;・∀・彡「あんな気味悪いの、相手してられるかッ!」
正体は気になるが、弱点すらも分からない以上は手のだしようがない。
それよりもハインのほうが気がかりだった。
警報が鳴っているが、誰も気に留めない。
なにせ先ほどから警報が鳴っているので、ひとつ増えたところで知ったことではない。
ミ;・∀・彡(ここがあの階だったはず……誰もいないな)アタリマエ ダケド
モラランダーのいる棟は、あまり日の差さない場所だ。
灯を割られたせいで、昼間だというのに、不気味なほど暗く、静かだ。
シン、と静まった廊下を、慎重に歩く。
願わくば、ハインも共に逃げていますようにと願うばかりだ。
ギイッ。
157
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:45:23 ID:ypSb7b3o0
ミ ・∀・彡!
今かすかだが、病室のひとつのドアが僅かに動いた。
逃げ遅れた人間がいるのだろうか、それとも、犯人が――?
「避けろ、モラランダァーーーーーー!!」
ミ;・∀・彡「なっ」
誰の咆哮かも分からぬままに、モラランダーは直感的に上へと跳んだ。
直後、モラランダーのいた場所に、人間大の何かが「飛んできた」。
(;□メ ω )「い゛、っでで…………….」
ミ;・∀・彡「い、一体何が……ってお巡りさん!?」
投げ飛ばされてきたのは、まさしく人間そのものであった。
ブーンと呼ばれていたと記憶しているが、警官は立ち上がれないようだ。
「ぉぉ……ぉおおおお……うおおおおおおおおお!!!」
ミ;・∀・彡「…………… !」
暗がりの向こうから、何かが突進してくる。
それが何なのかを視認した、瞬間。
モラランダーはブーンを抱え、一番近い病室に飛び込んだ。
158
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:46:34 ID:ypSb7b3o0
(;□メ ω )「わぶっ!?
ミ;・∀・彡「ッ!」
振り向きざま、モラランダーはドアの間から垣間見た。
廊下の奥から突進してきたものの、その正体を。
(#゜3゜)「う、ぐお、おおおおおおあ!」
(,,゚Д゚)「ぬう、ああっ!」
人が二人。片方はギコだ。もう片方の人間と取っ組み合っている。
だが、モラランダーは己の目が信じられなかった。
(#゜3゜)「ぬふぅ……ふぅ、ふぐうう……!」
人の3倍ほども膨れ上がった体。怒張し、血管が浮き出る赤い肌。
目は血走り、腫れ上がった唇からとめどなく涎が垂れる。
人の姿を保ちながらも、その姿は完全に「人外」のそれであった。
(;□゚ω゚)「馬鹿な……デーヴ!?」
ミ;・∀・彡「何だって!?」
159
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:47:36 ID:ypSb7b3o0
デーヴの名は記憶に新しい。
先ほど助けたばかりの少年ではなかったか。
ミ;・∀・彡「何の冗談だ?ただの小太りの子供が、1時間もしない内にどうやって化物になるってんだ!」
(;□゚ω゚)「で、でも間違いないお!彼はデーヴだお!」
<ガタンッ!
ミ・∀・;彡「誰かいるのか!?」
物音に反応し、ほぼ反射的に身構えた。
病室の奥で、複数の人影がチラリと視界に入る。
(;'A`)「モラランダー!?」
从ili゚∀从「あ……ああ……!」
ミ;・∀・彡!
そこにいたのは、身を寄せ合って縮こまる、ドクオとハインの姿。
モラランダーは跳ね起き、二人に手を差し出――
した瞬間、窓に映る、大きな影。
160
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:48:51 ID:ypSb7b3o0
( {゚▼゚)ズダァン!
ガラスを突き破って、影は侵入してきた。
ハインは恐怖をさらけ出し、絹を裂くような悲鳴をあげる。
全身は黒く、甲殻のようなもので覆われている。
四つん這いで、くねくねと軟体生物のような動きを見せ、気味悪いことこの上ない。
( {゚▼゚)ギラッ!
黒い影はハインに狙いを定め、ゆっくりとにじり寄る。
从ili;Д从「こ、こっち来んなぁああ!」
(;'A`)「ハインちゃんッ!」
ドクオは咄嗟の拍子に、黒い影へタックルをかます。
だがびくともしない。黒い影はドクオを小突き、ハインに再び狙いを定める。
从ili;Д从「こ、来ないで……来ないでったら!」
(#'A`)「こん……なろォ!」
黒い影が前足を大きく振り上げる瞬間、今度は足に飛びついた。
例えドクオが非力であろうと、不安定な体勢で不意を突かれれば、倒れる。
161
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:55:25 ID:ypSb7b3o0
( { 。▼。)ギギギッ
黒い影は仰向けに倒れ、足をばたつかせる。
ドクオは後ろ脚を押さえつけたまま、ハインへ叫ぶ。
(#'A`)「逃げろっ!」
从 ;Д从「逃げろって、どこに!?」
(#□^ω^)「どっせえええい!」
ドクオが弾き飛ばされる直前。もう片方の脚を、今度はブーンが押さえつける。
体重100kgオーバーの筋肉ダルマの四方固めで、化物は身動きが取れなくなる。
ミ#・∀・彡「二人共、そのままぁ!!」
刹那、モラランダーが踊りかかり、右前脚の関節にエルボーを決める。
メギャッと音をたて、体液がほとばしった。
ミ#・∀・彡「あーんど、モラランダースペシャル!」
次々に関節に技をきめ、脚がそれぞれありえない方向を向いた。
ドクオとブーンは交互に頷き、その黒い化物を、窓の外に放り捨てた。
ミ;・∀・彡「大丈夫かい!?」
(;'A`)「俺たちは、何とか…………あっ!?」
162
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:56:30 ID:ypSb7b3o0
赤く膨れ上がった腕が、病室のドアを引きちぎる。
その手は、間違いなく4人を狙っていた。
(;□゚ω゚)「う、おおお、おおお!!」
ブーンが咄嗟に銃を構え、撃つ。
装填された6発の弾が、巨大な腕を撃ち抜いた。
(#゜3゜)「ヴオバアアアアア!」
デーヴは獣のような咆哮をあげ、撃ち抜かれた手をがむしゃらに振り下ろす。
その拳を、モラランダーは間一髪で受け止めた。
ミ;・∀・彡「うおおおっ!?」
圧倒的に、重い。
1tリニアすら持ち上げるモラランダーの足が、僅かに沈むほどだ。
もし普通の人間が受けていたら、ぺしゃんこになっていただろう。
:ミ;・∀・彡:「な、何を食べたら、そんな体になるん、だッ…!!」
力こそ拮抗しているものの、今の彼に拳の下から逃げ出す術はない。
その場で硬直しているドクオたちに振り返り、腹の底から叫ぶ。
ミ;・∀・彡「逃げろ、3人共!ここは僕が引き受ける!」
.
163
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:57:45 ID:ypSb7b3o0
しばらく固まっていた3人のうち、初めに動いたのはブーンだった。
モラランダーの横をすり抜け、ドクオらに駆け寄る。
(;□^ω^)「早く、こっちへ!」
(;'A`)「でっでも、モラランダーが!」
(;□^ω^)「モラランダーに任せるしかない!逃げるお!」
それでいい。人外は超人に任せるに限る。ブーンの判断は的確だ。
ドクオはハインとモラランダーに交互に視線を投げると、ブーンの腕につかまった。
呆然自失のハインを立たせ、出入り口へ向かう。
(#゜3゜)「ウブ、グオアア!」
ミ;・Д・彡「ッ!避けろォ!」
ドクオたちが逃げようとする姿を、デーヴは目ざとく見つけた。
それが気に食わないとでもいうように、もう片方の巨大な腕で、3人を潰そうとする。
(,,゚Д゚)「ぬうあああああ!」
寸でのところで、三人と腕の間にギコが割って入る。
腕を受け止めた瞬間、ギコの体が少し後退した。
164
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:58:55 ID:ypSb7b3o0
(,,゚Д゚)「行けッ!早くしろッ!!」
从;゚∀从「ギコさんっ!」
堪りかねたように、ハインはギコへと振り向く。
ドクオに腕を引かれながらも、最後までギコを視界に留めんとしていた。
ミ;・∀・彡「ギコ、こいつは本当にデーヴなのか!?ゴキゲンってレベルじゃないぞ!?」
(,,゚Д゚)「ドーピング・トランスだ!」
ミ;・∀・彡「ドーピ……なんだって!?」
忌々しそうにギコの表情が歪む。
ジリジリと、腕を押しとどめるギコの足が、後退する。
(,,゚Д゚)「ドーピング・トランス、早い話が人間を化物に変える力だ!」
ミ;・∀・彡「化物!?まさかさっきの奴も、コイツも、未来から……」
(,, Д )「違う!多分コイツらは、何も知らずにギャーシャの手で化物に無理やり『変えさせられた』んだ!」
モラランダーは目を見開いて、デーヴを見上げた。
赤い皮膚からは、浮き出た血管が破裂し、体液が滲み出ていた。
ボコボコに腫れ上がった体は、最早人間の形など見る影もない。
165
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 18:59:48 ID:ypSb7b3o0
(,, Д )「やりがったんだ、アイツは!推測だが、おそらくギャーシャは金なり何なりでデーヴたちを釣ったんだ!」
( ゚ -゚)『報酬ならくれてやる。その代わり、ちょっと協力してほしいことがあるのさ』
『きょ、きょうりょく……?どんな……?』
( ゚ -゚)『心配はいらない、ちょっとした実験体になってもらうだけさ。お薬は得意だろう?』
(,, Д )「奴ならやる!どんな手を使おうと、どれだけ人を巻き込もうと、アイツ『等』にとっては関係ない!」
ギコは満身の力をこめて、腕を弾いた。
間髪いれず拳をねじ込むと、デーヴの腕は嘘みたいに、脆くも千切れる。
しかしデーヴは痛みすら覚えていないようだ。腕を千切られ、怒り狂うだけ。
(,, Д )「あの手術を受けた人間の殆どは、元の姿を奪われ、自我すら失くし、最期は体の変化に耐え切れずに死ぬ」
(,, Д )「恐らく、奴は他にも関係のない人間たちに、似たような手術を施した筈だ……」
ミ;・Д・彡「……ッ!」
モラランダーは絶句するしかなかった。
たったひとりの少女を殺すためだけに、相手はこんなえげつない事までする。
ギャーシャが冷たい表情で、事もなげに手術を行う姿を想像する。
彼(或いは彼女)の手によって、何人もの人間が化物に変化し、人生を奪われるのだ。
166
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 19:00:43 ID:ypSb7b3o0
(,, Д )「アイツ等は未来でも同じ行為を繰り返していた。全てはあの戦争で勝つ、それだけのために!」
跳び上がり、ギコは胸元のペンを引き抜いた。
ペンは剣となり、モラランダーを押し潰そうとする腕を叩き斬った。
(,, Д )「こうなった人間を元に戻す術は、存在しない!」
ミ;・Д・彡そ「そんな!デーヴはどうするんだ!」
(,, Д )「殺すしかないんだッ!!」
ミ;・皿・彡「ッ…………….!」
腕を叩き斬られたデーヴは、意味をなさない悲鳴をあげる。
赤い皮膚に反して、どす黒い体液が周囲にほとばしる。
(,, Д )「初めは救おうとした……だが、俺たちには術がなかった…………」
(,, Д )「もしアイツ等が自分の失敗に勘づいて戻ってくれば、もっと多くの人が化物に変えられる……」
剣を握るギコの両手は、カタカタと震えていた。
モラランダーが俯くと、己の手も、握り拳を作り、震えていることが分かった。
沸々と湧き上がるこの熱を、なんと呼べば良いのだろう。
久しく忘れていた、この腹の底でのたうちまわる流れを、どこへ向かわせればよいのだろう。
167
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 19:01:25 ID:ypSb7b3o0
モラランダーは、モララー・J・スティールは、その感情の名をよく知っている。
――――許せない!
(#゜3゜)「グウアアアアアアアアアアアア!!!」
ミ#・Д・彡「うああああああああああああっ!!」
デーヴは、臀部らしき部分から、尻尾のようなものを振りかざす。
壁を殴りぬき、がれきが舞う。
あらん限りの声をあげたモラランダーが、尻尾を受けきった。
ミ#・Д・彡「ギコ、手伝えッ!コイツを『捕まえる』ぞッ!」
(,,゚Д゚)「!?」
ミ#・Д・彡「僕が抑えてるから、尻尾を切り落とすんだッ!」
声の勢いにおされるがまま、ギコは剣を振るう。
ブヨブヨとした尻尾は、簡単に切り落とされて床を転がった。
ミ ・∀・彡「ギコ、シートだっ!こっちによこせ!」
(,,゚Д゚)「ッ、分かった!」
168
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 19:02:27 ID:ypSb7b3o0
ギコは病室のベッドのシートを乱暴に引き抜き、両端を持ったまま投げてよこす。
ひらりと舞うシートのもう片端を、モラランダーはジャンプして掴んだ。
ミ#・∀・彡「「でやああっ!」」(゚Д゚,,)
二人は、互いに両端を持ったまま、シーツをデーヴの顔に巻きつけた。
視界を奪われたデーヴは体を硬直させ、頭をせわしなく動かす。
ミ ・∀・彡「今だ!」
モラランダーは両腕からワイヤーを噴出させる。
ギコがそれを受け取って、デーヴをがんじがらめに縛り上げた。
「ヴヴヴ…………ヴァアア……!」
ジタバタとデーヴはもがくが、動くたびにワイヤーが食い込んでデーヴの巨体を縛りあげる。
体液はとめどなく溢れ、病室の床を満たしていく。
その量に反比例するように、デーヴの体は縮んでいく。
ミ;・∀・彡「……つ、捕まえたけど…どうしよう?」
(,,゚Д゚)「……どの道、デーヴは助からない」
鋭い視線が、ギコを貫いた。
こめかみに青筋をたてるモラランダーを制するように、ギコは静かに言い放つ。
169
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 19:04:26 ID:ypSb7b3o0
(,,゚Д゚)「こんな化物になった時点で、デーヴたちの末路は決まったも同然だ」
ミ;・∀・彡「な、治す手立ては?」
(,,゚Д゚)「……………ない」
ミ;・∀・彡「そんな……!……」
縋るような青い目が、ギコを見つめる。
しかし首を横に振るだけで、それ以上は言葉も見つからないようだった。
二人が見守る中、怪物デーヴは静かに息を引き取った。
(,,゚Д゚)(……………少なくとも、今のところは…………)
ミ; ∀ 彡「……………」
モラランダーは、黙って地面を殴った。
まただ。先日、目の前で爆破テロを許してしまった時のように、己は無力だ。
それを思い知らされ、悔しさが熱となって頬を、頭を熱くさせる。
静かに、モラランダーは立ち上がる。
拳から黒い血が滴り落ち、水音をたてる。
遠くから、パトカーと救急車のサイレンが聞こえてくる。
170
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 19:06:17 ID:ypSb7b3o0
ミ Д 彡「……ギコ。僕と手を組もう」
(,,゚Д゚)「!」
ミ Д 彡「僕は妹を、それにこのNYを守りたい。けど、今の僕じゃ無力だ」
未来の刺客たちは、モラランダーに自分の無力さを思い知らせてくれた。
彼はそれを痛いほどに、実感したに違いなかった。
ミ Д 彡「僕は強いのに、こんなにも弱い。妹ひとり、守りきれない」
ミ 。 Д 彡「許しちゃいけない存在がいるのに、そいつを罰することもできない」
モラランダーの声が、少しだけ上擦った。
ミ 彡「だから、ギコ。僕『たち』で、守ろう。ハインも、未来も」
ミ 彡「戦争なんて、起こさせない。悲しい未来は、作らない」
モララーは乱暴に目元を拭った。
そして振り返り、黒く染まった手で、拳を作った。
.
171
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 19:07:20 ID:ypSb7b3o0
ミ#。・Д・彡「『正義は死んだ』なんて、言うものか!」
(,,゚Д゚)「……………ああ。それでこそ、ヒーローだ」
ギコもまた、血まみれの手で拳を作り、コツンと合わせた。
壊れた窓から陽光が差しこみ、二人の拳を照らす。
そうしてここに、誰も知らない使命を背負った、二人のヒーローが誕生した。
→To Be Continued...
172
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 19:08:34 ID:ypSb7b3o0
おまけ・その頃の学友たちは
_
( ゚∀゚)ちぇーっ。モララーもオトジャも、毎度俺の誘い蹴りやがって……
(´<_` ),,,,,,
_
( ゚∀゚)おりょっ、ありゃオトジャか?
(´<_` 三 ´_>`)
_
( ゚∀゚)あっちこっち人の目を気にして、どーも怪しいなァ〜〜
|<_` )ミピュッ
_
( ゚∀゚)こりゃ、尾けるっきゃねーなwww←暇なだけ
(´<_` 三スタスタ
_
( ゚∀゚)(そういや、俺オトジャが普段何してるか知らねえや。帰り別々だし)
_
( ゚∀゚)(アイツについて知ってるのって、無駄に高圧的だとか、モララーばりの生真面目ってことくらいだし……)
(´<_` )?
.
173
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 19:09:40 ID:ypSb7b3o0
_
( ゚∀゚)(麻薬ってわけでもなさそうだし、さては女か?いやいや、まさか相手は男とか?)
_
(* ゚∀゚)ウケケケ(だとしたら傑作だぜ!散々証拠を掴んだあとでからかってやろうwwww)
_
| ゚∀゚)コソッ(さーてどんなスキャンダルが……)
ギャア!ミ,,・∀・彡(´<_`*)お〜〜〜〜よちよち待ってたか〜?今日はジャーキー持ってきてやったぞォ〜〜
_
| ゚∀゚)
ガツガツミ,,*・ ・彡゛(´<_`*)おいおいそんなにがっつかなくてもメシは逃げないぞ〜全く可愛いやつだなお前はァ〜
_
|; ∀ ):ガタガタガタガタ
ガブッミ,,・皿・彡(´<_`*)こら〜っ、俺の指はソーセージじゃないぞっこいつう!
_
|;゚Д゚):ガタガタ(うわ……うわあああああああああ〜〜〜〜ッ!?!!?)
終
174
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 19:12:49 ID:ypSb7b3o0
次回予告
(,,゚Д゚)よお、朝の血液占いはかかさず見る派のギコだ
(,,゚Д゚)モララーの決意が決まったようでよかった。俺はヒーローなんてガラじゃないがな…
(,,゚Д゚)それにしても、あいつの能力はどこで手に入れたのか?気にならないやつはいないんじゃないか?
(,,゚Д゚)ま、それは本人の口から語ってくれることだろうさ
(,,゚Д゚)次回、HERObotsのようですAct3:GrandFather(偉大なる父)!
(,,゚Д゚)ノシ また会おう!
.
175
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 19:14:04 ID:ypSb7b3o0
2話終了。支援、乙等ありがとうございます。また3話で会いましょう
176
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 19:36:53 ID:vA2Q4/3s0
乙
177
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 20:04:47 ID:6aRliJyI0
乙
178
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 20:09:07 ID:yn0JdnKY0
おつ!
モラランダーかっけぇ
オトジャ予想外だわww
179
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 21:11:35 ID:sPplmTYQ0
乙!面白いな
180
:
名も無きAAのようです
:2013/06/12(水) 23:05:18 ID:fLAWwngk0
おつ
ロボが血液占いwww
181
:
名も無きAAのようです
:2013/06/13(木) 02:26:12 ID:PYWqjrBI0
おつ
オトジャww
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